いいかげん、保田を卒業させるスレ

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506【保田圭2011】
#Special Episode "Mission"

「紺野、ホントにここでマチガイないのか?」
「住所も表札も、間違いありませんよ」
「でっけー家だなぁ」

アタシ、吉澤ひとみと紺野あさ美は、保田圭のダンナの実家の前にいた。
それは、とんでもないゴーテーだった。
門だけでも、アタシの住んでる部屋よりきっと広い。
でっけーお寺みたいな、すんごい家。

「なんでなんで? ヤッスーのダンナって、すごいおぼっちゃま?」
「ここの家は、相当な資産家らしいですけどね」
「たしかダンナってサラリーマンだよな?」
「自宅勤務で設計の仕事をしてるそうですよ」
「はたらかんでもいいくらいの家じゃん」
「でも、大学を出てすぐに独立したそうですよ」
「へぇ。今日はいるのかな?」
「確か毎週月曜日は出社するって保田さん言ってたから、多分留守でしょう」

ふうん。くわしいね。
なかよしなのね、ヤッスーと。
ふん。

「まぁ、いねーってのはツゴウがいいかもな」
「いいんですか? 保田さんの旅行中に勝手な事して」
「こら、紺野」
「なんです?」
「オメーのクッキーのトモダチによれば...」
「クラッカーですよ」
「にたようなもんだろ」
「全然違います」
「...」
「クラッカーです」

か、かわいくねぇ。

「おうっ。そいつによれば、来週には週刊誌にヤッスーの記事が出ちまうんだろ」
「ええ、多分」
「だったら、ケータイスイッチオフまんまのヤッスーをまってらんないだろ」
「まぁ、そうですけどね」
「なにがなんでも、もどってもらうんだ」
「でも」
「子供がもどったら、もどらんわけいかんだろ」
「まさか、誘拐する気ですか」
「だ〜から。実家にハナシつけんのさ」
「かえって、こじれないかなぁ」

ニエきらんヤツ。
ノロマはなおったんじゃなかったんか、コラ。
もうじきヤッスーのリコンキキの記事が出ちまうかもしれんのに。
そもそも、そのこと電話で教えたのはオメーだろ。

「ところで吉澤さん」
「なんだ」
「質問があるんですけど」
「おう、なんだ」

「質問1。いつも『コンちゃん』なのに、なんで今日は『紺野』なんですか?」
「久々にオトコマエ・モードだからだ」

「質問2。自分で自分に『男前』って、恥ずかしくないですか?」
「ゼンゼン」
507【保田圭2011】:02/01/01 06:28 ID:Vfg0ivYD
「...」
「おわりか?」

「質問3。どうして私を連れてきたんですか?」
「オマエは、頭もまわれば口もまわるからな」

「はあああっ」

なんだよ紺野。
そのコレミヨガシなタメイキは。

「要するに吉澤さん、何にも考えてないんですね」

ぐっ。
コノヤロー、はっきりと。
ああ、そーさ。
アンタがたよりさ。
どうすりゃいーのかなんて、わかんねーよ。
へんっ。

「で、これが重要なんですけど」
「なんだよ」

「質問4。保田さんと何があったんです?」
「...なんにもねーよ」
「...」
「なんにもねーっての」

なんだよ、その顔は。その目は。
そんなジットリした目で見んなってーの。
トロイのなおっても、そんなとこは変わってねーのかよ。
変なプレッシャーかけてくんな。

こないだ、いいてーこと、いっちまったからな。
ちっとばかしキマズイのさ。
だから、ヤッスーのためになにかしたいんだ。
いいだろ、そんなの別に。
オメーは、ヤッスーのホゴシャか。

「とにかくよぉ、時間がねぇんだ」
「...」
「ヤッスーが『なっち』でウマイもん食ってる間に、なんとかしなけりゃ」
「...」
「週刊誌のこともあるけど、リコンしかけてんだぜ」
「...」
「なんとかしたいだろ、紺野だって」
「...」

「ま、いいか。真ちゃんにも会いたいし」

え、あったことあんの?
と、トツゼン。
紺野のヤツ、いきなりインターホンを押した。

ピンポ〜ン。

び、びっくりした。
ええ、おい。
いいのか?

『はい』

若い声がこたえた。
ダレだろ。
お手伝いさん?

「こんにちは。私たち保田圭さんの友人で、吉澤と紺野といいます」
『はい?』
「折り入ってお話があります。ご家族の方にお取次ぎください」
『はぁ。しばらくお待ちください』

「な、なんか作戦、思いついたの?」
「なんにも」
「ないの?」
「ありませんよ」

なんだよ、そのおちつきようは。
なんだよ、そのクソドキョーは。

コワっ。
紺野、コワっ。
508【保田圭2011】:02/01/01 06:29 ID:Vfg0ivYD
いがいと、あっさり中に入れてもらえた。
さっき出たのは、やっぱりお手伝いさんだった。
というより、メイドさん。
たぶん、つけてるエプロンはみんなでオソロなんだろうな。
あるんだねぇ、メイドさんのいる家。
マンガの中だけじゃなくて。
アタシと紺野は、メイドさんの後にくっついて歩いた。

すごいゴーテー。中もすごい。
タテモノもお寺みたい。
庭なんて広い広い。
どっかの公園みたいで、すごくきれい。
こりぁ、見物に金取れるよ。
ま、そんな必要もないほど、金持ちなんだろ〜けど。

庭のまんなかにもうひとりのメイドさんがいた。
やっぱり、おんなじエプロンをつけてる。
ひとりの男の子と遊んでいる。
年は、ひとつ半くらい?
と、いうことは...。

「真ちゃ〜ん」

紺野のヤツ、そう言ってとつぜんかけ出した。
それを見て、メイドさんがあわててる。
そりゃそうだよ。
フシンジンブツだ、どー見ても。

ところが、なんと。
男の子、紺野にむかってうれしそうに手をたたいてるじゃんか。
あはは。
まちがいない。
真ちゃん、だね。
ヤッスーによく似てる。
むくれるとかわいくないタイプだな、キミ。

紺野、真ちゃんの目の前で立ち止まった。
それから、芝生に正座して、真ちゃんに笑いかけた。
真ちゃん、ぺたりと紺野にくっついた。
なついてるなぁ。
うらやましいなぁ。

「こんちゃ...」
「そう、コンちゃんだよ。覚えててくれた〜?」

うれしそうに紺野、真ちゃんを抱きしめた。
いいなぁ。
アタシも、アタシも。

「真ちゃん、はじめまして〜」

明るく、ごあいさつ。
ところが、まぁ。
急にキビシー顔になった真ちゃん。
顔をそむけて、紺野にギュッとしがみついた。

「あらら、あははは」
笑うなよ、紺野。
あ、メイドさんも笑ってる。
ひどい。

こら、真ちゃん、こっち向け。
おおい、なんか、泣きたくなってきたぞ。

あ、そうだ。
アタシにはあれが、あるじゃない。

「ねぇ、真ちゃん、見て見て」

ちょっと下がって、お庭のまんなか。
さぁ、はじめるよ〜。
509【保田圭2011】:02/01/01 06:30 ID:Vfg0ivYD
「そそれそれそれ、ヨシザワだ〜んす」
あ、ハンノウした。
こっち見た。

「そそれそれそれ、ワンツーワンツー」
真ちゃん、紺野からはなれて、こっちを見てる。
めずらしそうに。
おもしろそうに。

「みんなそろって、ヨシザワだ〜んす」
あ、おどりだした。
いいぞ、いいぞ。

「テとテ、アシアシ、ワンツーワンツー」
ノリノリじゃん、真ちゃん。
やるねぇ。

もうね、歌っておどっちゃうもんね。
テレビサイズじゃなくて、フルコーラスだ。
って、この歌どっちでもあんまり変わんないんだけどさ。

真ちゃん、ガンガンおどる。
さすがに正確なフリはむり。
でも、元気でいいぞ。
オッケー、オッケー、気持ちが大事。

「はいっ、ポーズ」
最後のポーズも決まった。
やったね、真ちゃん。
ダンスで母をこえる日は近いね。
もう、こえてるか?

「真ちゃん、上手〜」
紺野、手を叩いた。
メイドさんたちも、拍手。

真ちゃん、たたたっとアタシのとこにきて、ぺたりとくっついた。
わお。
やったね。
抱きしめちゃうもんね。

「やったぁ。真ちゃん」
真ちゃん、ゴキゲンで笑ってる。
かわい〜。
「ねっ、真ちゃん。紺野よりヨシザワのほうがいいでしょ」

「は、張り合ってたんですか?」
あきれきったって感じで紺野が言った。
メイドさん、また笑ってる。
ちぇっ。
紺野、アンタなんかキライ。
赤面しちゃってる、アタシもキライ。
なんて、やってたら...。

「くしゅん」
真ちゃん、くしゃみした。

「まぁ、たいへん。汗かいちゃったのね」
後ろから声がした。
ふりかえって見ると、ひとりのキモノ姿のおばあちゃんが立っていた。
510【保田圭2011】:02/01/01 06:36 ID:mGzC6E9v
「あ、お邪魔しております。一度お会いしています。紺野です」
紺野、あわててあいさつした。
「はい、こんにちは。覚えてますよ」
「よ、吉澤です」
「はじめまして」

アタシより、ちょっと背が低いくらい。
かなりのお年に見えるのに、腰なんてゼンゼン曲がってない。
にこやかに笑ってるけど、なんか迫力あるなぁ。
この人がヤッスーのおシュートメさん?

正直、こえーや。

++++++++++ ++++++++++ ++++++++++ ++++++++++ ++++++++++

真ちゃんは、おひるねのお時間。
汗をふいて、きがえて、あったかい部屋のゆりかごの中。

アタシたちは戦いのお時間。
なんとしても、真ちゃんをヤッスーのところにもどしてもらわなきゃ。

応接間に通されて、なにやら高そうなお茶をいただきながら。
紺野は期待通りのネツベンをふるった。
いきなり、どなられるんじゃないか、とか。
おいだされるじゃないか、とか。
アタシ、びくびくしてた。
でも、おシュートメさんは、じっと紺野の話を聞いてくれた。
きっと子供にしか見えてない小娘の話を、シンケンに聞いてくれた。
さすがだねぇ、ばーちゃん。
一味ちがうよ。

でも、紺野の話を聞き終わった時。
ばーちゃんの出した答えはこうだった。

「これは家族の事ですから、家族で解決します」

「そんなぁ」
思わず、大声でさけんじまった。
そりゃないよ。
紺野、がんばったじゃん。
わかってくれよ。

「それはごもっともですが...」
紺野も、くいさがろうとした。

「週刊誌の事は心配要りません」
「えっ」
「もう手は打ってありますから」
「えええっ」
「連中、ジャーナリストでもなんでもないもの。欲しい物をあげればね」
「お金、ですか」
「ええ。単純で簡単な方法だわ。たいがい確実だしね」

金持ちの考え方だよなぁ。
ちょっと、ヘコむな、なんか。

「でも、このままじゃ保田さんは...」
紺野は、まだがんばろうとした。
でも、ばーちゃん、笑ってそれを止めた。

「圭さんは、本当に良いお友達がいるのね。うれしいわ」
「は、はぁ」
「おそれ入ります」

「あの子たちね。結婚して以来、ろくに喧嘩もしたことないのよ」
「はぁ」
「付き合っていた頃にも喧嘩らしい喧嘩をした事、無かったみたいなの」
「そうなんですか」
「今回の事は、良い経験になると思うの」
「えっ」
「夫婦なんてね、所詮は他人同士なんだから。問題を乗り越えていく方法を学ばなきゃね」

かっけー、ばーちゃん。
いいこというねぇ。
なんか、重みがちがうよ。
511【保田圭2011】:02/01/01 06:36 ID:mGzC6E9v
「女手ひとつで育てたせいか、優しくなってくれたけど、逆境に弱くてね」
そう言ってばーちゃんは、ちょっとこまったような顔をした。
ふうん。ヤッスーのダンナはそういう人ですか。

「圭さんは、しっかり者だと思ってたけど、意外とおっちょこちょいよね」
あはは。
ばーちゃん、わかってるぅ。

「それに、頑固だわ」
うん。
そのとーり。

「家族か歌か、どっちかしか選べないと思っているのね」
「そうかも知れません」
紺野、シンミョーな顔でうなずいた。

「ひとりで悩んでるんでしょうね、今頃きっと。可哀想に」
「はぁ」
「でも心配していただかなくて大丈夫ですよ。なんとかしますから」
「...はい」
「真は、たったひとりの大事な孫ですしね」
「はい」

「それに圭さんは、私の大事な娘なんですからね」
ばーちゃんはサラリとそういって、にこりと笑った。
あはは。
もうね。
なんなのよ、このうれしさは。
こら、紺野。なに泣いてんだよ。
つられて涙、出ちゃうじゃんかよ。

なんだよ、ヤッスー。
心配いらないじゃんかよ。
しあわせじゃんかよ。
ばかー。
早く帰ってこい。
ばーちゃんとこに、真ちゃん、むかえにこいよ。

「あ、でもね」
急に、ばーちゃん暗い顔をした。

「週刊誌から買い取った写真に気になるのがあって」
「どんな写真ですか」
「それが...」
「見せていただけますか?」

ばーちゃん、迷いに迷ってる感じ。
でも、しばらくしてから席を立って、袋をもってもどってきた。

「いけない事かもしれないけど、御存知でしたら教えて」
「はい」
「圭さんの男友達だと思うのだけれど、この方がどういう方か」
「へっ!? は、はぁ」

男友達?
まさか、浮気の現場写真?
ゆるされん。
ヤッスー、そりゃいかんぞぉ。

でも、その写真を見たとたん。

「ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」
なんだよ、紺野。
その笑いかたはよ。

まあ、しゃーねえか。
だって、それに写っていたのは...。
マンションの入り口。
泣きくずれるヤッスーをやさしくだきとめるロングコートのオトコマエ。
アタシ、吉澤ひとみだったってわけさ。
ちぇっ。

ちゃんちゃん。

[End of Special Episode "Mission"]