跡亡き楽園

このエントリーをはてなブックマークに追加
1名無し募集中。。。
トライエム
2名無し募集中。。。:01/09/29 20:54 ID:563XkGvI
割れ鐘の様に激しい鳴り響く鼓動を自覚していた。
冷たい汗に全身を彩られて、ソレは白い裸身を震わせていた。

ただ一つ、もし仮にこの部屋に彼女以外の者が居たならば
必ず目を引いたであろう事があった。
彼女の右腕の肘から先が細かい黄色と黒の縞模様状に
繊毛で覆われており、その先にある爪は
鋭く巨大な漆黒のモノに変化していた事である。
奇異ではあったが、ソレは奇妙に美しい光景であった。

(・・・生命(ちから)が足りない。
 無理も無い、この生活の変化・慣れない場所・知らない人間達・・・)

故郷国見の山々へと馳せる思いを断ち切るように、
彼女は勢い良く起き上がった。耐える事を捨てる決心がついた今、
彼女の口元には先刻とはうって変わった冷酷な笑みが張り付いていた。
しかし、その立ち姿はどこまでも優雅で威厳に満ちていた。
3名無し募集中。。。:01/09/29 20:55 ID:563XkGvI
その日、新垣理沙が夜風にあたりたいと思い立った事を
誰が諌められただろうか。
その時には未だ誰もその結末を知らなかったのだから。

零時過ぎ、思い立った様に軽く羽織った浴衣姿で
夜の中庭を散歩していた新垣の姿が、
突然、かき消された様に見えなくなった事は
誰も気付いていなかった。
新垣本人さえ何が起こったのかは知覚していなかった。
4名無しさん:01/09/29 21:26 ID:D2Nr.0OA
俺、このゲーム好きなんすけど…
なんてかなこが新餓鬼メンバーなの?
5名無し娘。:01/09/30 01:23 ID:WF/bxTJw
小説総合スレッドで紹介&更新情報掲載しても良いですか?
61:01/09/30 23:43 ID:wy7iijjM
夜の暗闇を一陣の影が疾走する。
新垣を抱えたソレは二度ほど軽く跳躍すると
音も無く八階の自室に降り立った。

ソレは重力にがんじがらめに縛られた哀れな人間には真似の出来ない
己の様な存在のみにしか許されぬその能力を誇るでもなく、
無言で淡々と巣作りを始めた。

やがて純白の我が家を織り上げたソレは
ゆっくりと深い眠りに落ちていった。
威厳に満ち、それでいて何処か愉しげな表情を浮かべているその寝姿は、
かつて己が神として敬われていた時代を思い出しているかの様だった。
71:01/09/30 23:43 ID:wy7iijjM
保田圭は、半覚醒の不快感に包まれながら、
部屋の灯りを点けようと伸ばしかけた手を宙に踊らせた。

(・・・何か妖気を感じたような気がしたけど・・・)

結局破られる事の無かった夜の暗闇からは、
既に何の気配も感じ取る事が出来なかった。
冷蔵庫の音だろうか、断続的に鳴り響く低い小さな電気音と、
屋外の風の囁きだけが、控えめにその存在を主張しているだけだった。

得体の知れない不安を誤魔化すように軽く一つ咳をすると、
圭は再び眠りに就くべく最善の努力を始めた。
普段は比較的容易に成功することであったが、
その夜は根拠の無い不安がいつまでも圭の努力を嘲笑い続けた。
8:01/10/01 00:33 ID:/Ctyr/3c
>>4
元ネタはソレですが、すぐに路線がずれる予定。
新垣メンバーに関しては、そうじゃない扱いのなのでご安心を(w

>>5
よろしくお願いします。
頑張って更新します。更新出来たら良いな・・・
9:01/10/01 02:42 ID:PYqj3dvM
漏れも期待。
でも出番は無しか?
101:01/10/02 01:31 ID:PjHhZq6o
紺野あさ美は朝の光に頬をくすぐられて
いつになくスッキリと目覚めた。

煌くような雫に彩られた中庭の古木に
当て所無く視線をさ迷わせてながら、
緩やかにベッドから降りたあさ美は、
名残惜しそうに、そのCDをかけながら
似つかわしくない慌しさで朝の支度を始めた。

今日が自らの運命を大きく変える日になるという事は
この時点では微塵も知る由も無かった・・・


「新垣メンバー謎の失踪」
ようやく一報がメディアを賑わせたのは、
夕方近くになってからだった。
11名無しさん:01/10/03 19:54 ID:vPbakmHU
age
12:01/10/04 23:42 ID:hdfLASik
それは本当に慌しい日だった。

朝から非公式・公式の新垣捜索、関係者・警察への応対、
そして動いているよりも辛いジリジリとした待機の時間。
ほんの十数時間が、まるで何年かの時だったかのように
疲労が身体に層をなして蓄積されていた。

保田圭は少し味気無い夕食を摘みながら
誰にも見られない様に軽く溜息をついた。

(・・・新垣・・・ 何処行ったのよ。
 無事で・・・ 無事で居て欲しい・・・)

圭は、冷めた蟹の土瓶蒸しを摘みながら
向かいの飯田にチラリと視線を走らせた。

責任感と感受性の両方が強い飯田の憔悴した姿に
居たたまれず視線を外すと、砂のように味気なく感じられる料理を
無理やり飲み込んで、圭は挫けそうになる己の心に喝を入れた。

その日は未だ幕を開けたばかりだった事は、
この場の5人の誰も気がついていなかった。
13名無しさん:01/10/06 19:41 ID:AfnagZG6
あげ
14:01/10/07 02:14 ID:rU4Nsat2
嫌な・・・ 嫌な予感がする・・・

昨晩感じた気配の事が真綿で首をしめられるように
圭にジリジリとプレッシャーをかけ続けていた。

結局足止めされてもう一晩此処に泊まることになったのが
言い様も無く不安だった。

警察なのか、関係者なのか、誰かへの当て所無い苛立ちを噛み締めながら、
圭が、熱い水滴で疲労を流し落とす束の間の快楽に浸っている時だった。

耳障りな音量で部屋の電話が圭を呼んだ。
15:01/10/07 02:14 ID:rU4Nsat2
机の上のポータブルCDプレイヤーを取り上げると
小さなスイッチを動かして蓋を開けた。

あさ美は、小さな音共に外れたCDを名残惜しそうに見つめながら
これも傍にきちんと正面を向けておいてあったケースに
ソレを丁寧にしまい込んだ。

(・・・CD返さないと・・・)

部屋を出ようとして借り物のCDケースに
小さな汚れをつけてしまっている事に気がついて、
あさ美はポケットからお気に入りの白いハンカチを取り出して
丹念にソレを拭い落とした。

部屋を出る前に、特に理由は無かった筈なのだが、
以前真琴にMDじゃなくてCDを持ち歩いている事を
からかわれた場面が、あさ美の脳裏に浮かび上がった。
16梨華ヲタ ◆xMcoRIKA :01/10/07 23:17 ID:rfaqnEoY
うんうん
17名無し保全隊:01/10/09 01:12 ID:EmAN9rH.
『麻琴』ですね。
181:01/10/10 00:56 ID:If9Jag1I
「ちょっと・・・ 圭ちゃんと話がしたいんだけど・・・」

遠目の電話の中で後藤の声がボソボソと切れ切れに聞こえた。
それは、ハッキリと声色まで解った訳ではないが、
それでも何か深刻そうな、焦りを感じさせる口調だった。

一瞬躊躇した後に、圭がガツンと返事をしてやろうと意気込んだ時には、
出鼻を挫くように通話は後藤側から一方的に終了させられた。

(・・・あの子ったら人の返事も聞かずに。)

後藤とはメンバーの中でも長い付き合いである。
無論、後藤に直接面と向かっては言えないが、
圭にとって今のメンバーの中で
一番、親しみと言うか大切さを感じるのは後藤だった。
それは、友人ではなく妹的と言う意味合いであったことは
圭自身もあまりよく理解していなかったのだが・・・

その付き合いに基づくと後藤がそう言う電話をしてくる
という事自体が何かあると思わざるを得なかった。
根が寂しがりやで引っ込み思案な後藤との付き合いでは、
専ら圭の方から連絡をしてばかりだったのだ。
後藤の方から態々一念発起して連絡してきたということは
何かそうさせるに足る重大事があるのだろう。

得体の知れない不安に圭は少し視線を落とした。
そればかりかバスタオルを巻いただけの身体が
何とは無しに心もとなく思えてきた。
19名無し保全隊:01/10/11 00:06 ID:5kH43gFo
あげたりして
20名無しさん:01/10/12 16:14 ID:MBywOBBo
あげあげ
21名無しさん:01/10/14 05:00 ID:nQxbfLjt
age35
22名無し保全隊:01/10/15 00:36 ID:cmR5LPpA
あげ
23:01/10/17 00:39 ID:IW3Ku+Ut
オートロックがかかる寸前に、
握ったままのドアノブを離そうとした紺野あさ美は
行為が完結する事を躊躇した。
躊躇いがちに踵を返しかけて、一つ小さな溜息をついた。

(電話・・・ かけてから行った方が良いのかな・・・
 怒るかな・・・ 嫌われたらいやだし・・・
 でも・・・ いつまで経っても他人行儀なのも・・・ きゃっ!)

思いの他大きな音を立ててドアが閉まったので、
目の前に立っていた、あさ美自身が一番驚いた。
あまりにも真剣に考え込んでいたので、
手の方が疎かになっていたのだった。

あさ美は若干苦笑混じりながら、
思い切りのついた軽い足取りで二つ離れたドアの前に移動すると、
ノックをしようと右手を持ち上げた。
24名無しさむ:01/10/17 22:42 ID:s5Q9ht5L
ほぜ
25:01/10/18 23:27 ID:kdRXecyg
餌をもう一つ丁寧に巣に織り込むと彼女は一つ大きな息を吐いた。
その目は若干血走り、動きには余裕が感じられなかった。
彼女はただただ空腹なのだった。

昼間はメンバーの中で普通っぽい生活を演じなければならないし、
今日などは、これは自業自得であるが、
警官が個人の部屋のウロウロする始末である。

ようやく完成に近づいた巣を結界を張ったまま放置し、
空腹のまま心にも無い役柄を演じ続ける事で
彼女のストレスは限界値近くまで蓄積されていた。

(・・・ようやく食事が出来る。
 どちらから食べようか・・・ 今夜は長いわ・・・)

絹の様な純白の糸の中にぽっかりと浮かぶ
二つの首を眺めながら彼女は初めて満足そうな笑みを見せた。

目の前にぶら下がった餌に夢中になっていた彼女は、
肝心のドアがしっかりと閉まっていなかった事に
全く気がついてはいなかった。
そして結界を破いたままであった事にも・・・
26名無しくん:01/10/20 01:53 ID:3oIu3Dz5
あg
27名無しくん:01/10/21 00:07 ID:yv7QSC/n
e
28:01/10/21 23:29 ID:RJhdrmCW
遠慮がちなノックの直後に応えてドアを開けると、
ノックに比して実にあっけらかんとした勢いで
後藤真希が室内に飛び込んできた。

その場で口を開きかける後藤を手で制して、
圭は、意識的にゆっくりと部屋の中央に歩を進めた。

きちんと整えられた清潔感のあるベッドに向かい合わせに座ると、
お互い話すきっかけを失ったのか妙な間がしばらく続いた。

やがて浴衣の湿りが気になってきた頃、
圭は思い切って口を開こうとした。
29名指しさん:01/10/22 23:40 ID:W64SlKEi
age
30名無しさん:01/10/23 00:00 ID:DssyRzqj
>>29
IDが( `.∀´)
311:01/10/23 22:45 ID:KzcBdf9P
あさ美のノックの軽い音が廊下に響き渡った。
ドアが若干開いていることには直ぐに気がついたが、
それでも流石にズカズカと部屋の中に踏み込むのは憚られた。
何度かノックして、たっぷりカップラーメンが出来上がるぐらいの
時間躊躇した後に、あさ美はおずおずとドアを押し開けた。

あさ美は、遠慮がちに彼女の名前を呼びかけながら部屋に入っていった。

部屋の中には白い糸の様なモノが濃密に張り巡らされていた。
否が応でも頬に触れるそれは、しっとりとした絹の様な触り心地であり、
重量を感じさせない不思議な質感を持っていた。

あさ美は吸い寄せられる様に部屋の中央の、
糸が巨大な柱状にに纏め上げられている部分に向かって歩を進めた。

2、3歩進んだ時、背後で入口ドアが一人でに閉まったが、
幻想的な光景に魅せられていた、あさ美が気付く筈も無かった。
32m:01/10/25 08:02 ID:1/Og5YFt
age
33名無し餐:01/10/26 03:05 ID:URbNDpbF
age
34:01/10/28 02:00 ID:P7UlSYBZ
「っと・・・ ゴメン、圭ちゃん続けて。」

口を開きかけた途端、見事に後藤の喋りだしと被ってしまった圭は、
苦笑いを浮かべた。間が悪いとも言えるが、
お互い、文字通り息が合うんだと理解すれば満更でもなかった。

それより後藤だ。直ぐに若干表情を曇らせて言葉を仕舞い込もうとするのを、
圭は極力明るい顔をして見せて続けるように促した。

この辺の機微は圭にとって手馴れたものだった。
実の所、後藤は以前良く世間で言われていた様なクールなタイプでは無い。
むしろナイーブで傷つき易く、傷つく事を恐れるあまり、直ぐに殻に篭ろうとするし、
また必要以上に相手に気をつかわなければ安心していられないのだ。
日常的に無関心・無気力を装うのが後藤なりのメンタル面の防御方法であるのだ。
その辺に気をつけて接してやれば、実に素直で可愛げのある面が引き出せることに
気付くのに圭自身かなりの時間を要したのだが・・・

「うん。あのさ・・・ 圭ちゃん、何か心配事を抱えてるんじゃないの?」

一旦安心して口を開き始めると、
後藤は無邪気な鋭さで、的確に圭の状態を描写し始めた。
少しずつ自分自身の鼓動が大きくなっていく事に、圭は気がついていた。
35名無しさん:01/10/29 07:47 ID:y/3eVXGZ
.
36名無しさん:01/10/30 08:00 ID:j80rJxcq
abe
37名無しさざん:01/11/01 02:52 ID:F0124UFD
ageちゃん
38名無し募集中。。。:01/11/02 08:19 ID:2Irv7/JP
保全
39名無し募集中。。。:01/11/03 12:34 ID:fvI6+0Ow
.
40ねぇ、名乗って:01/11/04 23:36 ID:R7/yXdNj
41:01/11/04 23:56 ID:D/c8y17l
っと、あさ美は息をのんだ。
白い絹の様な糸の中にポッカリと糸以上に白い顔が浮かんでいたのだ。
必要以上に精巧に織り込まれたソレ等はある種の芸術を感じさせた。

人間の所業ではないとハッキリ解るような悪趣味さと共に、
その趣向を解らない愚かな人間を嘲笑うような高貴さを兼ね備えている、
その魅惑的なオブジェに、あさ美の心は徐々に取り込まれていった。

(里沙ちゃん・・・ 辻ちゃん・・・ な、何だか気持ちよさそう・・・)

蝋のように白い血の気の無い二人の顔からは、
まるで生気が感じられなかったが、かと言って生気が無い訳ではなかった。
二人とも、まるで普段より格段に深い眠りを
愉しんでいるかのような表情だった。

立ち尽くす紺野の斜め前方の空間が揺らぐと、見知った顔が現れた。
高橋愛だ。無論、高橋の部屋であるから
その事自体には、あさ美は大した違和感を覚えなかったが、
眼を惹いたのは、高橋が全裸であった事と、
彼女の右腕の肘から先が細かい黄色と黒の縞模様状に
繊毛で覆われており、その先にある爪は
鋭く巨大な漆黒のモノに変化していた事であった。

薄明かりに浮かび上がる、高橋の白い裸身と黒い髪、特異な右腕、
あさ美は言葉を失って、その光景に魅入られていた。
42:01/11/05 23:45 ID:MpaWeKyb
音も無く、滑るような足取りで高橋愛は、あさ美の真正面に移動した。
そして、その硬質で滑るように黒光りする巨大な爪を
ゆっくり持ち上げると、あさ美の特徴的な少し福よかな頬から
喉に向かってゆっくりと這わしていった。

高橋の大きな吸い込まれるような黒い瞳に、
対照的な赤い唇に、あさ美の何かが音を立てて引き込まれていった。
恐怖よりも、何か身体の深奥から熱いモノがこみ上げてくるような
不思議な感覚に、あさ美は包まれていた。

無言で頬を赤く染めている、あさ美の姿がよほど可笑しかったのであろうか、
高橋は冷たいながらも若干表情を崩し、僅かながら真紅の唇を動かした。

「何故声をあげないの?あさ美。 私が怖くないの?」
43名無し募集中。。。:01/11/07 08:21 ID:qxGJ/bIs
age
44ねぇ、名乗って:01/11/07 22:55 ID:67TfQ1Gz
sage
451:01/11/09 01:13 ID:fC0aMHsL
爪痕が二筋の紅い線となり、ぽつりぽつりと線上に紅い珠が姿を見せた。
やがて、ゆっくりと頬を伝い落ちる生暖かいソレが、
あさ美を情熱的に彩った。

高橋愛は底無しの優しさを込めて、尚も、あさ美に語りかけてくれた。

「どうしたの? 泣き叫んでも良いのよ。
 蔑みと、怒りと、憎しみと、悲しみと、哀れみの
 篭った視線を向けても良いのよ。
 何故、逃げ出さないの?」

高橋の爪がジリジリと、あさ美の白い喉に食い込み始めていた。
その黒い瞳を見ている限り、高橋に今この瞬間に害意が無いのは
あさ美には理解できていた。
高橋にとって、これはピンセットで豆腐を
摘み上げているようなものなのだろう。
そんな高橋の所業を責めるのは、あさ美には、とても出来なかった。
46ねぇ、名乗って:01/11/10 07:31 ID:XTvvS4mn
47ねぇ、名乗って:01/11/11 11:06 ID:cW/mkJKH
age
48ねぇ、名乗って:01/11/11 23:29 ID:nVL3GEW3
age
49ねぇ、名乗って:01/11/13 00:02 ID:nF6OR2UY
next
50:01/11/13 23:28 ID:1oTtFRpL
「・・・今日の様子は絶対普通じゃなかった。
 ねえ、圭ちゃんの思ってる事を全部言ってみてよ。
 ・・・その、心配させないように嘘をついても無駄だよ。
 後藤はさあ、圭ちゃんの嘘をつく時の癖を知ってるんだから・・・」

正直な所、保田圭は後藤真希に圧倒されてしまった。
無論、悪い意味ではなくて、悪い気もしなかったが。

(ぼーっとしてるように見えて、この子は何てよく観察してるんだろう・・・)

圭は軽く溜息をついて、一つの決心を固めた。
後輩が此処まで心を開いて接してきてくれたのだから、
それ以上の対応をしてやらなければ、圭自身のプライドが許さなかった。

圭は、多少まどろっこしかったが、順追って後藤に事の流れを説明し始めた。
部屋の中では二人の呼吸音と時計の音だけが
その存在を激しく主張し続けていた。
51:01/11/15 00:01 ID:G517b6GL
「・・・私のお婆ちゃんが巫女をやってた。
 ううん、やってたって言うのは変かなあ・・・ 何て言うのかな。
 まあ、簡単に言えば、私はその血をひいているのよ。」

ふっと言葉を切った保田圭は、何時に無く神妙そうな顔で話の合間合間に
頷いている後藤真希の顔に、ちらりと視線を走らせた。

その圭の話を真剣に聞こうという後藤の姿勢が、
あまりに一生懸命なので、圭は笑みを堪えるのに、
若干の努力を必要としていた。

「・・・お母さんは全然その・・・
 そう言った意味での素質が無かったらしいけれど、
 お婆ちゃんに言わせると、私には素質があるらしいの。

 勿論、巫女になる気は無かったのだけど、
 それでもお婆ちゃんは、何かあった時にと、
 私に知識を教えてくれたり、素質を磨くような行を教えてくれたの・・・」

時計が無機質に、それでいて気に障るほど大きな音で時を刻み続けていた、
同じ頃、ドアの外では一人の少女が
圭の部屋を目指して廊下を疾走していた。
52ねぇ、名乗って:01/11/16 02:07 ID:38ufNQ/A
age
53名無し募集中。。。:01/11/17 05:25 ID:zqx7/sNG
age
54ねぇ、名乗って:01/11/17 11:48 ID:tODDoTN4
age
55名無しさん:01/11/18 02:51 ID:TjwUVksK
age
56:01/11/18 23:11 ID:7M1Uc92n
「・・・やっぱり、そう言った世界の事って普通と違うのよね。
 最初は誰も信じないだろうけどね。素質のある人。と言うか
 素質が在って偶々めぐり合わせが合っちゃた人は、ある日突然。
 その、別の世界が知覚できるようになるの。その時に、
 今までの世界観が音を立てて全て崩壊するのよ。

 それまでだったら笑い話でしかなかった妖怪とか魑魅魍魎と言った話が、
 冗談ではなく、所謂昔話が、ある面からのモノの真実を
 語っている事を否が応でも思い知るの・・・」

一瞬、圭は、ふっと言葉を切って後藤の様子を伺った。
失笑される事を、ある程度覚悟して語りだした事であったが、
後藤の様子は以前変わらず、否むしろ、頷く事を忘れているぐらい
話に聞き込んでいたので、圭は胸を撫で下ろした。

少しずつ気持ちが軽くなるのを感じながら
圭は話の続きを訥々と語りだした。

「・・・俗に言う『妖怪』は、私達に言わせると、
 別の世界の存在って言うだけで、『アヤシイ』訳ではないのよ。
 ただ普通には存在が判り難いだけなの。
 これは彼等の側の大半のモノも同じ事で、
 彼等の側からこちら側が、任意に知覚できる訳では無いのよ。
 世間の妖怪伝説って言うのは、何らかの偶発的要因で
 偶々、人間と彼等が遭遇したというパターンが殆どなの。」
57名無し募集中。。。:01/11/20 02:31 ID:fjS61Krc
age
58ねぇ、名乗って:01/11/20 23:51 ID:XqUT0QMA
age
59ねぇ、名乗って:01/11/22 00:01 ID:Rye/EQOM
sge
60名無し募集中。。。:01/11/23 04:12 ID:9PJ3XGHl
age
61名無し募集中。。。:01/11/24 02:38 ID:BKKkcYAf
age
62名無し募集中。。。:01/11/25 02:15 ID:GO/OXckj
age
63ねぇ、名乗って:01/11/26 01:02 ID:FnBmD9Rm
ageage
64:01/11/27 01:13 ID:Lc7bH6bC
「ただ彼等の中にも、その・・・ 力を持った存在も稀に存在するの。
 そう言うモノは行動に制約を受けない場合があるし、
 中には私達の理解できない程高次のモノもいるらしいの・・・

 肝心なのは、彼等は無条件で、人間に害意を抱いている訳ではないと言うこと。
 と、そして同時に、決して人間の味方と言う訳ではない、
 何かのきっかけで人間に害意を抱いても不思議ではないと言うことなのよ・・・」

言葉を切ると唇を軽く舐め、
今まさに額から右頬に流れ落ちようとしていた汗粒を拭い取った。
やがて、圭は一瞬の間を取り繕うように、少し上ずった調子で言葉を続けた。

「・・・で、要は昨日からチラチラと、そういったモノの気配を感じるのよ。
 その何かそっち系が関係あるとしたら、
 普通の人間にはとても解決できないからね・・・

 そう、そう言う意味で、マジで心配してたのよ。
 でも後藤が心配する事は無いのよ。

 因果関係が判らない気配を察知したってだけだからね・・・」

若干強引に話をまとめあげると、圭は大きく息を吐いた。
少し後藤から視線を逸らすと、圭は、最後に言えなかった一言を心の中で
ポツリと呟いた。

(・・・それも特大のヤツをね・・・)
65名無し募集中。。。:01/11/28 02:19 ID:JELDFYsq
age
66ねぇ、名乗って:01/11/28 08:35 ID:7sXi4+XJ
age
67ねぇ、名乗って:01/11/29 03:49 ID:g8Saw7A4
sageとく
68ねぇ、名乗って:01/11/29 23:45 ID:wQoLn49P
sage
69名無し募集中。。。:01/12/01 04:38 ID:3VPZXUME
sage?
70ねぇ、名乗って:01/12/02 01:11 ID:irzKNseW
sage〜
71名無し募集中。。。:01/12/03 04:41 ID:R2Unnw9L
sage
72ねぇ、名乗って:01/12/04 01:22 ID:Zgk4/pYw
sage
73ねぇ、名乗って:01/12/05 00:00 ID:JJekS2uc
ageてみよう。
74ねぇ、名乗って:01/12/06 01:36 ID:6hCsDqET
あげ
75名無し募集中。。。:01/12/06 23:03 ID:gdxfhpVW
sage
76ねぇ、名乗って:01/12/08 01:48 ID:QGsU9QLB
afe
77名無し募集中。。。:01/12/09 04:44 ID:hd6A4JWr
age
78ねぇ、名乗って:01/12/09 09:59 ID:HQovS2yz
あげ
79:01/12/10 00:53 ID:yO0djNmZ
小さな白い手が少し腫れ上がる程、
加護亜依は辻希美の部屋のドアをノックし続けていたが、
部屋の主からの応えは一向に亜依に届く事は無かった。

(希美・・・ お前、何処いったんや・・・)

部屋に電話した。携帯にも電話した。
こうして部屋を直接呼んでもウンともスンとも辻の気配は無い。

辻は人見知りするし、頭も良く無いし、
食い意地張っていて、変なプライドは高いし、
その他色々欠点もあるけれど、約束した事を絶対に守るヤツなのだ。
少なくともその点だけは、誰が何と言おうと
亜依は辻希美に全幅の信頼を置いていた。

(何でや? 九時にって言ったやないか・・・)

考えまいとは思ったが、思えば思うほど新垣の事が頭をよぎった。
亜依の背中に嫌な汗が這うようにゆっくりと流れ落ちた。
80名無し募集中。。。:01/12/11 04:12 ID:B6pQAyZn
age
81名無しさん:01/12/12 00:46 ID:hZrcMmP5
sage
82ねぇ、名乗って:01/12/13 00:08 ID:88CcfnSf
moge
83名無し募集中。。。:01/12/13 23:25 ID:D9ryn2Gn
sage
84ねぇ、名乗って:01/12/15 00:12 ID:S1RDZfn7
sage
85名無し募集中。。。
gesa