シアター

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6934-2.7

ここでの生活はまるで止まるくらいゆっくりと流れ、それはどこか温かな水中を
緩慢に漂っているようでした。
保田さんのおかげなのでしょうか。私達はここでとても良い扱いを受けています。
使わせてもらっている和室は最上層から一段下りた階にあって、この層はきっと
賓客用なのだと思いました。真希ちゃんの最上階に比べたら、それは控えめで、
やっぱり常識的だけれど、ここだってずいぶんな品格なんです。
ちょっとしたホテルみたいです。

はじめの数日が平和に、やや怠惰に過ぎて行って、ひとつ意外だったことは、真希
ちゃんが結構、時間をもてあましていた事。真希ちゃんくらい有名で-----って言
うよりなにかと渦中のヒトです、-----寝る間もないくらいに忙しいんじゃないか
なって私は思っていたんですけど‥。真希ちゃんはなぜか、家にいることがほとん
どでした。

ひとみちゃんと真希ちゃんは、同い年なんです。私達にとって現在の状態で、接す
る人間の絶対数は決して多くありません。だからそれも手伝って、真希ちゃんたち
とは必然的に打ち解けることができました。
お当番の信者の方を除くと、真希ちゃんとひとみちゃんと私。多くないどころか、
本当に少ない。加護ちゃんはその頃お仕事がいろいろ忙しかったみたいで、昼間
はいないことがよくありました。でもちゃんと仲良くなれた。とてもいいコで、
かわいいし、すごく頼りになる。
694萌え男。 ◆wbNSRO6Y :02/01/23 03:41 ID:VRzyuyXq

ある朝、食事を済ませた私達がいつものように上層へ上がると、真希ちゃんはも
う起きていました。壁紙の部屋の真ん中で、寝転んで本を読んでるんです。
「おはよう。」
って、ひとみちゃんが声をかけると、うつ伏せのまま顔だけ上げて、
「おはよう。」
真希ちゃんはやわらかく笑いました。

「何読んでるの?」
私が覗き込むと、真希ちゃんはぼーっとしたカオで手もとの表紙を確認して。
「んー‥、『智恵子抄』‥。」
695萌え男。 ◆wbNSRO6Y :02/01/23 03:42 ID:VRzyuyXq

TVなどから受ける印象とは違って、とても予想外だったけれど、実際の真希ちゃん
は普段から、本をよく読む子でした。
それこそ一日中ずっと、というわけでもないけれど、一日のうち決まって数時間、
かならず読書をしています。感心した私はいつだったか、一度聞いてみた事
がありました。

「ほんとうによく読んでるよね。」
真希ちゃんはその時も本を、片手に持っていて。
「ま、でもコレはマンガだよ。」
「何?」
「スケバン刑事。」

「真希ちゃんが本好きだなんて、私、意外だったな。」
「うん、最近ね。なんかちょっと、世の中をいろいろ知りたいなー、なんて。」
696萌え男。 ◆wbNSRO6Y :02/01/23 03:43 ID:VRzyuyXq

真希ちゃんは、あまり積極的に自分のコトを話さないから、ちゃんとハナシをした
のって、あの時がたぶん最初でした。
真希ちゃんは、もう
「派手に遊びに行ったりするのは、さんざんやり尽くしたからイイ。」
のだそうです。自信に満ちた横顔は、とても大人びて見えます。
「そうよね、まさにそんな感じ。」
私はヘンに納得してしまった。だって今みたいな真希ちゃんの雰囲気って、ちょっとや
そっとじゃ出せそうにないもの。

ちなみに、
豪華で快適な居間ではなくて、決まっていつも壁紙の部屋で、固い床の上で本を読むの
は、広い部屋でぽつりと、ストイックな感じが気に入っているから。
なんだそうです。
これを言う時の真希ちゃんはでも、ちょっと照れて笑っていました。
697萌え男。 ◆wbNSRO6Y :02/01/23 03:51 ID:VRzyuyXq
アレ?なんでトリップが違うんだろう?
すいません、眠くて何も考えられないので、明日またあげます。
本当にすみません。
698萌え男。 ◆wbNSRO6Y :02/01/23 03:54 ID:VRzyuyXq
test
699萌え男。 ◆wbNSRO6Y :02/01/23 03:58 ID:VRzyuyXq
テスト
700萌え男。 ◆W2nema3. :02/01/23 04:03 ID:VRzyuyXq
test
701名無し:02/01/23 04:08 ID:4CQc/uE/
オツカレー
702萌え男。 ◆W2nema3. :02/01/23 04:10 ID:VRzyuyXq
すみません、なんか厨まるだしで。
取り合えず前々回までのトリップで、続きをあげようと思います。


                                ハァ、鬱
703萌え男。 ◆W2nema3. :02/01/23 04:15 ID:VRzyuyXq
>>696の続き

その日の午前中、真希ちゃんは少し離れたところで高村の詩集を読んでいました。
私達も同じ部屋にいてTVを点けていましたが、真希ちゃんに遠慮をして、音量は
当然控え目です。
「平気だから気にしないで。」
って、そう言われたから、まあいいかなってつけたんですけど‥。真希ちゃんは
本当にテレビの音とか気にしなさそうだったけれど、やっぱりちょっとでも邪魔は
したくないし。

ケーブルのミュージックチャンネルに合わせて、ミュージックビデオをぼんやり
と眺めていました。すると、
「も〜、疲れたッ!!」
本に没頭していたはずの真希ちゃんが、バタリと床を響かせました。振り返ってみると
もう本は閉じていて、仰向けになって、手足を投げ出しています。
やがて床を転がり始めて、真希ちゃんはそのままゴロリゴロリと、私達の側までやっ
て来ました。

ていうか距離、けっこうあるのに‥。
流石カリスマなだけある‥。って、ちょっと思いました。
704萌え男。 ◆W2nema3. :02/01/23 04:16 ID:VRzyuyXq

天真爛漫なところはでも、TVでのイメージとほとんど同じ。て言うより、もっと
奔放?そのぶんとやかく人にも言わない、真希ちゃんのそんな優しさを既に私達
は愛しはじめています。

「もー限界。とりあえずカナふって欲しい。漢字に。」
「でもさ、ずっと読んでたじゃん。すごいね。」
「私も。詩、ニガテ‥。いっぱいは読めないな。おもしろかった?」
こういう時の真希ちゃんて、本当に素直でかわいいんです。

グイグイと首を捻って。
「わっかんない。とりあえず『アタタラ山』ってドコ?ってなぐらいの感想。高尚
過ぎた。アタシには。」
「あたし的には真希ちゃんが『高尚』っていう言葉知ってるコト自体が、ちょっと
したオドロキかなー。」
705萌え男。 ◆W2nema3. :02/01/23 04:18 ID:VRzyuyXq

もちろん大好きなんだけれど、真希ちゃんとは思った以上に波長が合うようで、
ひとみちゃんは時々、真希ちゃんをからかったりするようになりました。

「よっすぃーはさ、心底バカって思ってるでしょ、あたしの事?」
「そんなことないよ。学校行ってないからって、あんまり気にしないほうがいいよ。」
真希ちゃんは笑いながら掴み掛かって、ひとみちゃんもニコニコ応戦。
706萌え男。 ◆W2nema3. :02/01/23 04:19 ID:VRzyuyXq

あまり仲良くなりすぎて次のステップに発展されても、私としては困るんです
けど、でもこうやって時々じゃれ合う2人は、子犬みたいでちょっとカワイイ。
私と2人でいる時の、しっかりしててカッコイイひとみちゃんもすごく好きなん
だけど、こういう姿を見るのも、やっぱり嬉しいものです。

ファンだという事をひとまず置いておいても、ひとみちゃんにとって真希ちゃんは、
久しぶりの同い年のコだったし、2人の様子を見ていると、本当に楽しいんだろうなー
と思います。真希ちゃんも、多分。触れあう人間の絶対数なんて、私達よりもむしろ、
真希ちゃんの方が少ないような気もするし‥。
プレッシャーをかけないように、ひとみちゃんは黙っているけど、もともと真希ちゃん
のファンなんです。もちろん一概には言えないけれど、お互いこのまま良い理解者に
なってゆくのは、2人にとって幸福な事かも知れません。