―― 飯田(iida) ――
「もー、なんで執拗に追ってくるのよ!」
先程追い越したはずのAMG仕様の黒塗りのメルセデス2台が
猛スピードで逃げる飯田とノノを猛追してくる。
中央高速の中でも厳しいカーブの続く長野県の山道を3台とも
時速200km近いスピードで次々とクリアして突き進んでいく。
激しいデッドヒートを繰り返しながら進むモーニング2000と
2台のAMGメルセデスの速度は
いつの間にかに250kmを超えていた。
「いいらさん、おのぞみ通りのデッドヒートれすね」
「うるさいよ!!」
流石の飯田もあまりのスピード感に真剣になっていた。
信じられないような速度で突っ走る3台の前に
“飯田インター”の文字が書かれた緑の看板が現れた。
「いいらさん、“いいら”れす。」
「はぁ?ちょっ!あんた、ノノっ。どこ行くのよ!!」
ノノは飯田に意味不明な事を言うと、中央高速からそれ
スルスルと飯田インターの料金所に向かって進んでいった。
「何でこんな所で降りたのよ!」
と怒鳴る飯田に
「いいらという文字をみたら、ついおりたくなったのれす」
とノノは意味不明な答えを返した。
ほとんどスピードを緩めることなく、
2006年の現在では、ほぼ当たり前の装備となった
ETC車専用のレーンをすり抜けるモーニング2000。
先程までの緊迫するまでの超高速走行から
解放されてほっと一息ついた飯田が後ろを振り返る。
「うわ、ついて来るよ」
しかし2台の黒いメルセデスはぴったりと
モーニング2000の後からついて来ていた。
「ここからどうするつもりなのよ!」
と怒鳴る飯田に
「うーーん」
ICから出たノノは特に考えもないままに、とにかく
闇雲に右折左折を繰り返しながら車を進めて行った。
「くそっ、まだついてくるよ」
そんな、予測不能なノノの動きにも2台のメルセデスは
ぴたりと追随してきていた。
そして、そんなメルセデス2台の他に
更に飯田とノノを追いかける2台の車があった。
「ちょっと圭織とノノ、一体どこ行くべさ?」
カーナビに表示されるモーニング2000の位置表示を見ながら
懸命に追いかける安倍と後藤のカローラランクスであった。
「圭織達、何でこんな所で降りたんだろう?」
「ひょっとして飯田だから?」
安倍と後藤は口々に疑問を言いあいながら同じように
飯田インターチェンジで中央高速を降りた。
899 :
山崎渉:03/04/19 23:07 ID:6Mi1enm4
∧_∧
( ^^ )< ぬるぽ(^^)
飯田インターから降り、さらに幹線道路からも逸れて
山道へと進んでいくモーニング2000と2台のメルセデス。
その山道も次第に道が細くなっていく。
「やばい、行き止まりだよ」
猛スピードで山道を登ってきたものの、遂に舗装道路が
終わり、目の前には未舗装の細い獣道しかなかった。
「どうしよう・・・」
混乱する飯田。
「ノノできるんれすよ。」
しかしノノはいたって冷静にそう言う。
次の瞬間、突如ホイールハウス部分に隙間が出来始め
見る見る間に30cm程車高が上がっていった。
窓から左腕と顔を出してタイヤ部分を見つめる飯田。
「はぁー、凄いね。なんか4WDっぽいじゃん。」
「“ぽい”んじゃなくてノノはよんくなんれすよ。」
「よんくって4駆の事?そうだったんだ、知らなかった。」
そう言うと豪快に道なき道を突き進み始めた。
ローダウンされた2台のAMG仕様のメルセデスベンツは・・・
流石に獣道の入り口でタイヤを空転させてスタックしていた。
そのサンルーフから望遠レンズのついたビデオカメラが
顔を覗かせていることには飯田もノノも気づいていなかった。
「やった!もう追ってこないよ」
スタックしてもうそれ以上進めないメルセデスを後方に確認し
ガッツポーズをして喜ぶ飯田。
モーニング2000は砂利を跳ね、もうもうと土煙をあげながら
けもの道を突き進んでいった。
そしてその頃、安倍と後藤は・・・
中央高速道飯田インターを降り、ノノと飯田が来た道を
同じように後から追う安倍と後藤のカローラランクス。
「うわっ、危ない!」
山道を登っていく途中で、真っ黒なメルセデスとすれ違う。
「さっきの車、なんか見覚えがあるような・・・」
すれ違った車の姿に後藤がつぶやく。
「ごっつぁん、急ぐよ!」
しかし、安倍のその言葉に後藤も先を急いだ。
そして、安倍と後藤の車も先ほどの獣道の入り口まで
到達した。
「ちょっとー、なっち!これ後藤達の車じゃ無理じゃない?」
「ああ、ああ、でもノノはどんどん進んでいっちゃうよ」
安倍は、カーナビに表示されるノノの位置がどんどん
離れていく様子を見て焦りに似た気持ちになる。
「うーん、行ってみるっしょ」
そう言うと安倍は自分のカローラランクスを豪快にスタートさせた。
しかし、
ガリガリガリ
キュルルルルル
安倍のカローラランクスは底を擦りあえなくスタックした。
「あちゃー」
安倍は顔をしかめた。
―― 飯田大ピンチ ――
悪路を行く飯田とノノ。
「何よあれ?」
およそ誰も通らないと思われていた獣道に
突如1台のタウンエーストラックが現れた。
ノノの行く手をふさぐ、大きな幌の貼られたそのトラックの、
荷台の幌が開いたかと思うと、中から巨大なミサイル砲の
砲身が現れた。
「ちょっ、ちょっと何よあれ?」
黒光りするその砲身の向きは完全にノノの方にロックオンされている。
次の瞬間、トラックの荷台からはミサイルが発射された。
「いいらさん、逃げてくらさい!」
ノノが叫ぶ
「何言ってるのよ!逃げるって・・・」
飯田がそう言う間もなくノノは緊急脱出装置のスイッチを作動させていた。
バシュッ
運転席のTバールーフから飯田は車外に放出される。
その瞬間・・・
ミサイルはモーニング2000に命中した・・・
鋼をも跳ね返すモーニング2000の特殊ボディであったが
さすがにミサイルの直撃を受けたその衝撃は凄まじかった。
モーニング2000に命中して爆発したミサイルの爆風によって
モーニング2000の車体はそのまま吹っ飛ばされた。
爆風に吹き飛ばされボディを下に向けて地面に叩きつけられたノノ。
その車体からは、白い煙が立ちのぼっていた。
緊急脱出装置により車外に放出された飯田も爆風によって
地面に叩き付けられた。
しかし、飯田はノノに向かって必死に叫んでいた。
「ノノ!ノノーッ!!」
しかし、ノノは何も答えなかった。
地面に這いつくばりながら大声で叫ぶ飯田の目の前に、
先程のタウンエーストラックが現れて急停止する。
幌のあいた荷台からはサングラスをかけて迷彩服を着た男が
飯田に向けてバズーカ砲を向けていた。
「な、何よ」
それを見た飯田は思わずそう言った。
「死ね」
荷台の男はそう言うとバズーカ砲の狙いを飯田に向かって定め直した。