――さらに飯田とノノ――
「はぁ、それにしてもどうすんのよ。
お金なくなっちゃって・・・これからどう生きてくのよ」
モーニング2000のドライバーズシートに収まりながら
恨めしそうな声でノノに文句を言う飯田。
「ん?何よこれ?」
ふと飯田は、ノノのフロントガラスとワイパーの間に
何か紙が挟まっているのを発見した。
飯田は車を停めるとパワーウインドーを開けると
身をよじりながら乗り出して、
ワイパーに挟まっている紙を取ってみる。
飯田が手に取ったその一枚の紙には
"キャノンボールレース 優勝賞金1000万円”
の文字が。
「すごいよ、ノノ!!一千万円だって。」
「一千万円って言ったら何でも買えるよ。」
「8段アイスなら30000個はかえるのれす」
「あんた、一体、何買うつもりよ・・・」
「ところで、レースに出るためにはどうしたらいいんだろう?」
先程のワイパーに挟まっていた紙を改めて見直す飯田。
「なになに?とりあえず来るようにって書いてあるよ。」
「で、どこよ場所は?東京都板橋区・・・って、
ふーん、ぜんぜん分かんないや。ノノ、この場所分かる?」
そう言ってノノのカメラに向けて紙を向ける飯田。
「ノノのカーナビに死角はないのれす。」
ノノはそう言うと車内のカーナビゲションのモニターに
地図を示して見せた。
「この場所か・・・」
飯田はカーナビの地図を見ながらそうつぶやくと、
何かを決心したように、片手をギュッと固く握り締めた。
そして窓から手を出すと、固く握り締められた手を開いて
くしゃくしゃに丸められた先程の紙を放り投げると、
意を決したように、大声でこう叫んだ。
「よーし、行くよー」
そんな飯田の声に応えるようにノノもこう叫んだ。
「レッツゴー」
かくして飯田とノノは出発した。