小説「モーニングライダー」

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461モーニングライター

「ノノできるんれすよ。」
ノノはそう言うと ピッー と言う音を立てて車内の
<TURBO BOOST>というボタンを点灯させた。
「何ができるのよーッっ!!!!」
そんな飯田の絶叫とともにモーニング2000は
まるで弾かれたようにグニャグニャのガードレールを
飛び越え、宙を飛んだ。
バシューッッ
「はうっ」
そして情けない程の飯田の言葉。

ガードレールを乗り越えて空高くジャンプしたノノは
そのすぐ下に走っていた道路の脇に作られた
砂利の敷き詰められた広いスペースに着地した。
462モーニングライター:02/02/24 01:16 ID:pAucuvvn

ボウンッ
そのボディと同様に特殊な素材で作られたタイヤが
着地の激しい衝撃でバウンドする。
「おうぅっ」
これまた情けない飯田の声。
無事に着地したモーニング2000であったが
車の中の飯田は完全に放心状態であった。

そして、青いコルベットは・・・
テールゲートから地面に叩きつけられたかと思うと、
くの字状に変形したまま砂利の上を滑走し、
中にいたドライバーが脱出する間もなく
数十秒後に爆発した・・・・・・。
463モーニングライター:02/02/24 01:22 ID:pAucuvvn

−− ノノかお −−

「・・・・・・・」
モーニング2000の車内には、口を大きく開け、
目も大きく見開いたまま微動だにしない飯田の姿があった。
「…やったね・・・。ノノ・・・」
着地してからしばらくたった後、しばらく放心状態にあった飯田は
ようやく我に返ると、こう言葉を漏らした。

「いいらさん…」
飯田の言葉を受けてノノがこう呼びかけた。
「何?ノノ」
「はじめてノノって呼んでくれましたね。」
「エッ・・・」
ノノからの思いがけない言葉に思わずこう答える飯田
「そうだったかな…?」
飯田は小さな声でそう呟いた。

464モーニングライター:02/02/24 01:24 ID:pAucuvvn

「あのれすね…。何かノノはすごく変な気分なのれす。」
「・・・?」
ノノの言葉に困惑する飯田。
「ノノは、ずーっと昔からいいらさんに“ノノ”って
呼んで貰いたいと思ってたような気がするのれす。
うーん…うまく言えないんれすが、ノノが製造されるより、
ずーっとずーっと前から呼ばれたかったような気がするのれす。」
「・・・」
それを聞いて飯田は思わず涙ぐんだ。
「ノノはね、余計な事は思い出さなくていいんだよ。」
ノノの記憶回路には、あの事故を含め、それ以前の記憶は
一切残されていない。…はずであった。

しかし、今ノノの頭脳に確実に変化が起こっている。
何かを思い出そうとしているのだ。
465モーニングライター:02/02/24 01:25 ID:pAucuvvn

「そうなのれすか。うーん、何か残念れす。」
「あれ?いいらさん、どうしたのれすか?泣いているのれすか?」
さすが高性能コンピューターというだけに主人の体調の変化に敏感だ。
まあ、そのようにプログラミングされているので当然だが。
「違うよ、バカ。目にね、目にごみが入っただけ。」
飯田は両手で目を拭って必死にごまかそうとする。

「ほぉ、人間も大変れすねぇ」
つい先程まで人間の感情を敏感に感じ取っていたノノとは
うってかわって、相変わらず呑気なノノに戻っていた。

「…ほんとはこういうロボットの役はいいらさんの役なのれすがねぇ」
「ん?何か言った?」
「いえ」