しかし、その青いコルベットはしぶとかった。
フロントウインドウに、まるで大砲の弾のように
人間に突っ込まれ、その運転手も
相当なダメージを負ったかと思われた。
が、コルベットのドライバーは、すぐに車をバックさせると
ノノ同様に車をスピンターンさせ
リアタイヤから激しく白煙を巻き上げながら、
元来た道を戻るように、猛スピードで走り去って行った。
「やれやれ、世話が焼けますねぇ
中澤さんは、お魚が焼けるのれす。」
そう意味不明な事を呟くと、ノノもそのまま急発進し
青いコルベットを追跡して行った。
平和な街の普通の道路を、恐ろしい程の勢いで
かっとんで行く青いコルベット。
そのフロントガラスからは先程の男の足が2本飛び出ている。
およそコメディー映画の車にしか見えない、
その足の飛び出たコルベットと黒いトランザムの2台は、
元居たコンビニのすぐそばまで戻ってきていた。
その間わずか2分30秒。
コンビニの前の公衆電話の前で、先程と同じ格好で
ボーっと遠くを見つめている飯田。
その飯田の視界に、向こうから足が2本飛び出た
妙な青い車がやってくるのが見えた。
「あ、あれ…」
飯田はハッとする。
そして、そのすぐ後ろには猛スピードでこちらに向かってくる
ノノの姿があった。
「わぁー、戻ってきたー!」
飯田はコンビニの前を走っている通りまで飛び出して行った。
そんな飯田の脇をかすめるように青いコルベットが
猛スピードで走り抜けていく。
ふぉうふぉう
「いいらさーん!」
ノノはタクシーのように運転席のドアを自動で開きながら
飯田の元に近づいて来ると急ブレーキを掛けた。
「乗ってくらさい!」
飯田はノノに言われるままに飛び乗った。
飯田が飛び乗るとドアは自動的に閉まり、物凄い白煙と共に
コルベットを追跡して行った。
−− 保田圭 −−
あれから5分後
コンビニの前に到着した保田。
「はぁはぁ…、ようやく着いたわ…」
そう言って右手の甲で額の汗を拭う。
普段、財団本部にこもりっきりで、久々に車の運転をした保田は、
緊張のあまり、いつの間にか斜めになって
少しずれかかっていた眼鏡を、もう一度真っ直ぐにかけ直す。
そして、車から降りて辺りをキョロキョロと見回す。
ヒュゥゥゥゥゥ
「誰もいないわ・・・。」
保田はただ呆然とそこに立ち尽くした。