−−乗り逃げNONO−−
一方、こちらは、コンビニで飯田を待っている最中に、
何物かに勝手に乗り込まれて乗り逃げされたノノ。
今まで黙って相手の様子を伺っていたのだが
「自分を売る」と言う話になっているのを聞き
ついに声を発した。
「なんれすか!私を売るとはとんでもないのれす!」
「うわ、な、何だ?」
自動車泥棒は急に発せられた声に激しく驚く。
「か、カーナビか?あぁレーダーか。」
男は自分なりの解答を得て納得している。
「私は、かーなびでも、れーだーでもないのれすよ。
今すぐ私から降りてくらさい。」
「だ、誰だ?どこから送信している!」
男は怒鳴る。
「送信ではないのれす。
どこからも何も私はあなたの目の前にいるのれすよ。」
「な、なんだー?」
さすがの自動車泥棒も目を丸くする。
「あなたの目の前って・・・、車が喋ってんのか!?」
「失礼れすね、私は高性能こんぴゅーたーなのれすよ。」
「なにー?」
「最後警告れす。今すぐに車を停めなさい。」
「うるせえ、車に命令されるほど、まだ落ちぶれちゃぁいねえぞ!」
男はそう毒づくとアクセルを更に強く踏み込んだ。
「仕方ないれすね。」
ノノはそう言うと、全ての操作系をロックし自動操縦に切り替えた。
「なんだ、なんだ!」
突如、ハンドルの自由が利かなくなって焦る男。
「そっちがその気ならこっちにも考えがあるのれす。」
自動操縦に切り替えたノノは、そう言うと
スピードを思いっきりあげていった。
「うわ」
男は悲鳴をあげた。
急にスピードが上がったノノに、慌ててスピードを上げて
離されまいと追跡してくる青いコルベット。
「おい!どうした?」
男の持っていた無線機からは青いコルベットに乗った仲間からの
無線の声が聞こえてくる。
「わー」
前方に交差点が見えてくると男は体を硬直させた。
猛スピードのまま、少しも速度を落とさずに交差点を
見事に曲がっていくノノ。
激しい白煙を上げながら次の交差点も猛スピードでクリアする。
人間の腕では神業であるが、ノノには何の事もなかった。
「うわー、止めてくれー!降ろしてくれー!」
猛スピードで疾走するノノに恐れをなした男が叫ぶ。
「そうれすか。」
2つ目の交差点を曲がりきった所で突如ノノは
サイドブレーキを掛けるように後輪をロックさせると、
スピンターンするような形で車を急停止させた。
バン
「うぎゃっ」
男は激しくシートに叩きつけられた。
「お望みどうり降ろしてあげましょう。」
ウィーン
ノノはそういうと男が乗った運転席側のTバールーフを開いた。
「何する気だ…」
男が震える声でノノにたずねた。
次の瞬間、先程の交差点の角を、大きくテールスライドさせながら
猛スピードで青いコルベットが曲がってきた。
交差点を曲がったとたんに、先程まで向かっていたのとは
逆の方向である自分の方向に頭を向けて停まっているノノに
気づいて、少し怯んだ様子の青いコルベット。
ノノとの衝突を避けようと急ブレーキを踏む。
キャァアアア
激しいスキール音と白煙。
「ぐっど らっく」
ノノはそう言うと、緊急脱出ボタンをONにした。
バシュッ
「ぐわー!!!」
運転席シートの座面が天井方向に向かって発射され
男はTバールーフから空中に放り出された。
そして、次の瞬間
ガシャン
男は向かってくるコルベットのフロントガラスに
頭から突っ込んでいった。
青いコルベットは男に突っ込まれてフロントウインドウが
割れ、その衝撃からかハンドル操作を誤って、
豪快に歩道に乗りあがって停車した。