−− ノノ −−
ふぉうふぉう
フロントグリルに埋め込まれたスキャナーの音が聞こえる。
ノノはコンビニの駐車場で、公衆電話から
どこかに電話を掛けている飯田の姿を見ていた。
「電話ならノノにも内蔵されているのれすが、
しばらく黙ってろと言うので黙っていたのれす。
それで、よかったのれすかねぇ?」
そんな事を言いながらスキャナーで辺りの様子を
検知していると不審な青いコルベットが
ノノの方に向かってゆっくりと近づいてきた。
ふぉうふぉう
ノノのセンサーでは2名の人間の生体反応が出た。
そのうちの1人がコルベットの助手席の扉を開けて
車から降りると、ノノに向かって近づいてきた。
ゆっくりと、窓が開いたままのノノの運転席に歩み寄って
その内部を確認すると、不審な男は、持っていた無線機に
向かってこう喋りだした。
「御丁寧にキーまで刺さったままだ。」
男はその他にも二言、三言何かを喋った後、
突然ノノに乗り込み車を急発進させた。
そしてノノにあわせるように、その後ろから
先程の青いコルベットがくっついてきた。
勝手にノノに乗り込んできた男は、運転しながら、
自分の持っていた無線機に向かって話始めた。
「おい、コイツはすげえぞ、中はコンピューターだらけだ。
こりゃあ、高く売れるぜ!」
−− 緊急集会 −−
例の飯田と辻の自動車窃盗団との対決以来、約2ヶ月間
別段、何をするでもなく怠惰に過ごして来たメンバー達が
1人そして2人と、だらだらと財団本部内のロビーに集まってきた。
まず一番初めに矢口に引っ張られるようにして
やってきたのは吉澤ひとみであった。
「おはようございます。テメーら」
「・・・」
「吉澤あんた別に帰国子女でも何でもないやろ…」
いくら無線で呼んでも最後まで起きてこなかった安倍は、
石川が直接、部屋まで呼びに行って連れてきた。
「ごめん、裕ちゃん、すっかり寝込んじゃって。」
安倍は中澤の顔を見るなり開口一番こう言った。
そして最後に石川が、息も絶え絶えでゼエゼエ言いながら
加護を引き連れて戻ってきた。
「おう、石川。ご苦労」
中澤はそんな石川を見て苦笑しながら、ねぎらいの言葉をかけた。
そんな中澤の言葉に、石川は半泣きになりながらこう訴えた。
「もー!。みんな、ひどいですょぉー。
ごっちんは2度起こしても3度寝しちゃうし、安倍さんは
何回起こしても起きてもくれないしドアノブには高圧電流仕掛けてるし
あいぼんなんかは、かくれんぼと勘違いして逃げ回るし…。うぇーん」
「なぁ、石川。みんな言う事聞かへんやろ。
私が娘。のリーダーをやっとった時、みんなをまとめるのが
どれだけ大変やったかこれで分かったやろう。」
そう言って中澤は石川の肩をポンと叩く。
「はい、中澤さん、こんなに苦労してたんですね…
石川、感動しました。」
まるで少女漫画のように、目を潤ませながら
中澤の目を真っ直ぐに見つめる石川。そして見つめ合う2人。
「そうか。最初から
こうやって大変な目にあう事が分かってたから、あんたをみんなの
所に行かせたんやけどな。感動してくれるとは、そりゃよかった。」
「えーー、中澤さん。ひどいですよー。」
石川と中澤の会話に、迷惑をかけっぱなしと言われた張本人達
後藤、安倍、加護の3人はお互いの顔を見合わせて苦笑いしていた。
全員が集まったと判断した中澤は、重々しくこう口を開いた。
「実はな、モーニング2000が盗まれた。」