−−中澤・保田・矢口−−
その間に、全てを察した保田は、電話している中澤と
目で合図すると、きびきびと動き部屋から飛び出して行った。
財団本部の玄関を飛び出した保田は、3段抜かしで長い階段を
駈け降りると、階段の脇に停めていた保田用の
カローラランクスに飛び乗り急発進させていった。
「カオリッ、いい?そこを動かないで。」
電話の向こうで激しく興奮している飯田に中澤はこう言った。
「圭織!今、そっちへ圭坊が向かったから!そこで待ってるんやで!」
中澤は、もう一度電話の向こうの飯田に向かってこう念を押す。
飯田は中澤の言葉を聞いているのかいないのか、走り去って
徐々に小さくなって行く青いコルベットの後姿をじっと見つめていた。
「青いコルベットって…。そんなの、ありえないよ!」
財団本部の中澤の横で、飯田からの電話を聞いていた矢口がこう叫ぶ。
「だって、だって、あの青いコルベットは矢口とよっすぃーが…」
相変わらずドクター中松氏開発のジャンピングシューズを
履いたままの矢口がこう続ける。
「あの時、矢口とよっすぃーがやっつけた筈だよ!」
そう。飯田と辻の敵を討つべく自動車窃盗団の本拠地に潜入し
そして最終的に矢口、吉澤、加護の3人が追い詰めて
ミサイルによって撃墜した青いコルベット…。
「見たんか?」
中澤が静かな口調でこう言う。
「え?」
「最後まで、そのコルベットの最後まで見届けたんか?」
「え、あ、うん…」
中澤が問い詰めると、自信なさげな返事を返す矢口。
「ヨッスィー、呼んでくるっ!」
ビヨーン、ビヨーン
そう言うと矢口は、吉澤の部屋に向かって、
ジャンピングシューズのバネの力を利用して
凄い速さですっ飛んで行った。
「石川、吉澤だけでなくメンバー全員、この部屋に集めるんや!」
「はいっ」
中澤はそう言って石川に命令すると、無線機のマイクを取り
メンバー各自が腕にはめている腕時計型無線機に向けて
召集命令を発信した。
「ん?石川、そこで何してんねん?」
中澤が無線機でメンバー達を呼び出している様子を
その横で直立不動の姿勢でじっと見ている石川。
「え、石川は何をすれば…」
「1人ずつ捜し出して、捕まえて連れて来いや!」
「えー、それじゃ、その無線機の意味って?」
「うっさい、ボケ。つべこべ言わんと行って来いや!」
「ひぇーー」