−− ケータイ・コンビニ・イイダカオリ −−
飯田は、道路沿いに大きな駐車場を備えたコンビニを発見すると、
その駐車場にモーニング2000を乗り入れた。
その大きな駐車場の中の、公衆電話に比較的近い位置に
ノノを停めた飯田は、車から降りたつと
真っ直ぐに公衆電話に向かって歩いて行った。
すぐに戻ってくるつもりであったため、
モーニング2000の運転席の窓は開けっ放しのままになっていた。
しかし、その時、駐車場の奥からモーニング2000の姿を
じっと監視する不気味な青いコルベットの姿があることに
飯田は全く気づいていなかった・・・。
「あー。ケータイくらい持ってくればよかったよ。」
慌わただしく飛び出してきたために、携帯も財布も持たずに
出てきてしまった飯田であったが、着ていた革のジャケットを
必死で探ると、かろうじてジャケットのポケットの奥から、
食べ終わったアメの包み紙や、街頭で貰ったサラ金会社の
ポケットティッシュに混じって、モーニング娘。時代に
大量に貰ったまま、未だに使っていなかったモーニング娘。の
テレホンカードが2枚程発見された。
「ラッキー」
飯田はそう独り言を呟くと、マニアが見たら涎を流して
欲しがりそうなそのテレホンカードを惜しげもなく公衆電話に入れ、
モーニング財団本部の電話番号をプッシュした。
「はい、モーニング財団です。」
そう言って電話口に出てきた中澤と2〜3分程話した時であった。
不意に、飯田の後ろから車のドアが閉まる音が聞こえた。
「ん?」
その気配に気づいて、飯田が振り返った瞬間
何物かがモーニング2000に乗り込んで発進させるのが見えた。
「あぁーー!」
飯田は持っていた受話器を投げ捨て、慌ててモーニング2000を追った。
ガタッ
飯田の投げ捨てた受話器は激しく壁に打ちつけられた。
「おい、待てー!」
しかし、2〜3歩足を踏み出したところで飯田は、
猛スピードで発進して逃げていくモーニング2000には、
とても追いつけないと判断し、すぐさま電話機の方に引き返す。
そしてブラブラとぶら下がっていた公衆電話の受話器を掴むと
受話器の向こう側の中澤に向かってこう叫んだ。
「裕ちゃん、大変だよ、ノノが誰かに盗まれて乗ってかれちゃったよ」
更にそんなモーニング2000の後を追うように
青いコルベットが一緒に駐車場から走り去って行った。
「あ、あの青い車は…」
飯田にはその青いコルベットには見覚えがあった。
そう、それは2ヶ月前に飯田と辻を瀕死の状態にまで追い込んだ
忘れたくても忘れられない自動車窃盗団の主犯格の車であった。
「まだ居たんだ・・・。」
飯田は、そう独り言を呟くと受話器に向かって叫んだ。
「裕ちゃん、例の青いコルベットだよ!
コルベットに2人で乗って来て、1人はノノに乗って行ったの!
あいつら窃盗団にノノを持ってかれたのよ!」
飯田は激しく興奮しながら中澤にこう告げた。