小説「モーニングライダー」

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317モーニングライター


−− 保田博士と飯田とノノ −−

モーニング2000の停めてあるガレージに向かって
飯田と保田の2人が財団本部の廊下を歩いている。
「圭織、まだまだ説明しなきゃならない事がこんなにあるのよ!」
そう言って保田は歩きながら、手に持った書類の山を飯田に見せる。
「何よこれ?」
「何をじゃないわよ。」
そんな事を言い合いながら2人はガレージの中に入っていった。

飯田はもう一度、モーニング2000に近づいてみる。
車庫には黒いボディのトランザムが先程と同じように佇んでいた。
318モーニングライター:02/01/06 01:42 ID:Xkz7tCRj

ふぉうふぉう
フロントバンパーに埋め込まれた赤いLEDのスキャナーが
右に左に点滅を繰り返している。
飯田が近寄ると、その赤いスキャナーの往復が急に早くなった。
ふぉうふぉうふぉうふぉう
飯田には、その様子が、まるで飼い犬が喜んで
尻尾を振っているように見えた。
(つじ…)
そんな健気な様子を見ていたら飯田は、
また辻希美の事を思い出して目頭が熱くなった。
319モーニングライター:02/01/06 01:46 ID:Xkz7tCRj

飯田は、左ハンドル車であるモーニング2000の
左側の大きな扉を開けると静かに車に乗り込んだ。
そして賑やかに電飾の光る室内を改めて見回す。
「おでかけれすか。」
突然ノノがそう言って話しかけてくる。
しかし飯田は、そんなノノの言葉には答えず
保田の方を向いてこう尋ねる。
「ねえ、圭ちゃん。ひとつ聞いていい?」
「何でも答えるわよ」
眼鏡のツルに手を当てながら保田がこう言う。
320モーニングライター:02/01/06 01:48 ID:Xkz7tCRj

「このさぁ、今みたいにこの車が喋る度に
( ´D`)こう言うマークが出るんだけど何よこれ?」
飯田が、オーディオのグラッフィックイコライザーのように
パカパカと点滅している部分を指差す。
「その部分がノノの中枢部よ。」
「これが?」
怪訝そうにそのグライコのような部分に顔を近づける飯田。
( ´D`)「てへへ」
そういって笑うノノ。
「こうやって、ノノがしゃべる度にLEDに表示が出るのよ。」
保田が説明を続ける。
「ねえ、でも、なんでこんなマークなのよ。なんか気が抜けるよ。」
飯田は、そう言って納得の行かない様子で、
あらためて、そのLED部分をじっと見つめていた。
321モーニングライター:02/01/06 01:50 ID:Xkz7tCRj

「圭織、そんな事はいいから他に説明しなきゃならない
部分を説明するとね…」
「行くよ」
突然、飯田は保田の説明を無視するかのようにこう言うと
モーニング2000のアクセルを踏み込んだ。
「あっ、カオリッ、話がまだ…」
急いで飯田の後を追う保田。
保田の話など全く聞かぬままに再び飯田は飛び出した。

ドカーン
バキバキバキッ

またもやガレージの扉は無残にもぶち破られた。