小説「モーニングライダー」

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278モーニングライター


その1点とは、やはりモーニング2000の中枢部にあたる
コンピューターの部分であった。
いくら技術が日進月歩で進歩しているとは言え、
思考能力を持った人工知能コンピューターの開発は困難であった。
そして、もはやこの計画は絶望的かと思われた時、
保田達開発陣は、ついにある方法によってモーニング2000の
人工知能を完成させる事に成功した。

その方法とは・・・
人間の脳を利用した言わば“車型サイボーグ”を
作り出すことであった。
現代風に言えば、
「人間の脳とコンピューターのコラボレーション」
とでも言うのか?
279モーニングライター:01/12/29 00:28 ID:jn2Batyh

しかし、さすがに生きている人間を改造して
「車型人間」を作る訳にはいかないため、
ある心停止患者の脳に白羽の矢が立てられた。

脳死状態とは逆で、脳はしっかりしていたのだが、
外傷が激しく心臓が停止してしまったある患者の脳を、
つんくが金には糸目をつけずに集めた
日本医学界の第一人者達、医療スタッフによって
モーニング2000の頭脳として利用する事に成功したのだった。

こうして人間の脳とコンピューターを融合させた、
最強のドリームカー、モーニング2000はこの世に生を受けた。
280モーニングライター:01/12/29 00:30 ID:jn2Batyh


−−つんくと飯田−−

「飯田、ちょっとこい。」
そう言ってつんくは飯田を呼び出した。
飯田は相変わらず定まらない視点でボケ−ッと宙を見つめていた。

「今夜も交信中か・・・」
つんくは彼女達メンバーに負い目を感じていた。
自分がもう少し早くにドリームカー、モーニング2000を
開発し終えていれば、彼女達をこんな危険な目に
合わせる事もなかったのではなかろうか?
つんくは今まで常にその事を考え続けていた。
特に痛々しい程の飯田の姿を見るにつけ、
つんくは耐えられない気持ちになっていた。
281モーニングライター:01/12/29 00:32 ID:jn2Batyh

つんくが先導して、飯田をモーニング2000が格納されている
ガレージに連れて行く。
まだ放心状態に近い飯田は、つんくに言われるままにフラフラと
その後についてきた。
つんくは電子ロックを解除しガレージに通じるドアを開けた。
「なに、ここ・・・」
そこには今まで飯田が見た事のないような装置が色々と並んでいた。
「ようこそ、カオリ」
そして、そこには何故か長い白衣を着た保田がいた。
「圭…ちゃん…?」
パチッ
保田は、今まで明かりがついていなくて真っ暗だったガレージの
奥のほうのライトのスイッチをONにした。
282モーニングライター:01/12/29 00:35 ID:jn2Batyh

すると、明るいライトの下に光り輝くように、
真っ黒な1台のファイヤーバード・トランザムが姿を現した。
「ああっ!これって!!」
今まで放心状態だった飯田は、まるで何かのスイッチが
入ったかのように生き生きとした表情になった。


−−<※ポンティアック・ファイヤーバード・トランザム
/PONTIAC Firebird Trans-Am>−−

アメリカ、ゼネラルモータース社ポンティアック部門の誇る
アメリカの代表的なスポーティーカー。
車名は「Firebird」で「Trans-Am」はグレード名。
初代のデビューは1962年で現行モデルは4代目。
モーニング2000はその3代目にあたる。
本家ナイトライダーの"ナイト2000"は1982年式らしいが
モーニング2000はそれより10年新しい3rd最終型の92年モデル。
92年モデル基準車の主要諸元は(モーニング2000は若干違いあり)
全長 4.790mm/全幅 1.880mm/全高 1.300mm/重量 1.580kgで
駆動方式はFR。当時日本では、V8OHV5700cc 240ps/47.0kgの
エンジンを搭載した最上級モデルのGTAが505.0万円で販売された。

なお、残念なことに米GM社は米国の景気減速と
テロによる景気後退への懸念を強め、「シボレー・カマロ」と
「ポンティアック・ファイヤーバード」の生産を
2002年中に打ち切る事にしたそうである。