小説「モーニングライダー」

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254モーニングライター

−− 圭織の行方 −−

飯田圭織を追うように、モーニング財団本部から
5台のトヨタ・カローラランクスが一斉に飛び出して行く。
このカローラランクスは、モーニング財団の機動車として
財団総帥のつんくが調達してきた特殊車両である。
モーニング財団本部のガレージには、何故か全く同じ
このカローラランクスがメンバー全員分揃えられている。
このクルマの発売直後のCMのキャラクターがつんくだった事もあり
メンバー達はタダでトヨタから貰って来たのでは?と
密かに思ってはいたが、車に乗れるだけで充分満足であると考える
メンバー達は特に何も言わなかった。

中澤、安倍、矢口、後藤、吉澤…。
失踪した飯田を探して、メンバー達の
カローラランクスが街中を駆け回る。
「どや、なんか情報あったか?」
「だめだよー、全然見つからないよ。」
カローラランクスの無線機を使って情報交換するメンバー達。
「ほんま、どこ行ったんや・・・」
メンバー達は必死に飯田を捜索した。
255モーニングライター:01/12/24 01:25 ID:C/pt5N17

しかし、そんなメンバー達の必死の捜索にもかかわらず
飯田の姿は見つけられなかった。
数日後、とある精神科の病院に
飯田に良く似た娘がいるという情報をつかむまで…。

そんな聞き込みの情報を元に、中澤と安倍の2人が
その精神科の病院に向かった。
安倍と中澤の2台のカローラランクスが病院の入り口に到着する。
中澤は車から降りると、何階か建ての病院をまぶしそうに見上げた。
中澤は病院の雰囲気が苦手だった。
「裕ちゃん、行くよ」
しかし、後ろから、安倍に声を掛けられ中澤も後に続いた。
256モーニングライター:01/12/24 01:27 ID:C/pt5N17

受付けで、それらしい人物が入院していると聞かされて、
お世辞にも若いとは言えぬ年輩の看護婦さんに案内されるままに、
長い廊下を歩いて行く中澤と安倍。
建てられてからかなりの年数が経っていると思われるその病院は
雰囲気も暗く、正直、中澤には耐えられない雰囲気だった。
長い廊下の突き当たりの部屋まで案内すると
看護婦さんは、2人をその部屋の中へと招き入れた。

果たして、そこにいたのは飯田圭織本人だった。
「お友達の方ですかな?」
不意に、後ろから長い白衣をきた初老の医師が安倍に話し掛けてきた。
「え?あ、はい。ずっと、ずっと彼女の事探してたんです。」
急に話し掛けられて慌てながらも、安倍はそう答えた。
「そうですか。実は数日前ですが、街で訳のわからない事を
口走りながら大暴れしている大女がいる。と
警察の方達に連れて来られましてな…」
「・・・・・」
中澤と安倍は無言でお互いの顔を見合わせた。
257モーニングライター:01/12/24 01:33 ID:C/pt5N17

精神病院の医師は、なおも続ける。
「彼女が最初にここに連れられてきた時には
興奮して手がつけられなかったんじゃが
鎮静剤と精神安定剤を投薬したら随分落ち着いてくれましてな。」
「ただ、それから、ずっとあの調子じゃ」
その医師は飯田の方を指差した。

中澤と安倍は医師の指差した方を見る。
そこにはただ一点をじっと見つめたまま口をぽかんと開けて
ボーッとしている飯田の姿があった。
「圭織!圭織っ!」
中澤が飯田の体を揺さぶりながら呼びかける。
「ん?あ、裕ちゃん…」
中澤の呼びかけに驚いたように応じる飯田であったが、
目はうつろで相変わらずボーっとしたままであった。
初老の医師はこう言った
「何かこの娘は心に相当大きなショックを受けたのじゃないのかな?」
その医師の言葉に中澤と安倍は、
再びお互いの顔をじっと見つめあった。
258モーニングライター:01/12/24 01:38 ID:C/pt5N17

「実は…」
中澤が事の顛末を精神病院の医師に話し始めた。
         ・
         ・
「そうでしたか…。そんな事があったのですか。」
中澤の話を聞き終えたその医師は、全てを悟ったかのようにこう言った。
「彼女、圭織君にとって、その娘さんの存在はかけがえのない物だったんじゃな。」
「・・・」
中澤と安倍は何も答える事が出来なかった。
「焦らずに、ゆっくりと圭織君の傷が癒えるのを待つしかないじゃろうな。」
先生は静かにこう言った。
思わず涙がこみ上げてきそうになる中澤。
「あの、彼女、これからもずっとこのままなんですか・・・?
彼女、どうしたら元に戻るんですか?」
たまらなくなった中澤が、こう医師に尋ねる。
「彼女が受けたショックを自分自身で克服する。それしかないじゃろうな。
そして、それを克服した時に彼女は元のようになるだろう。」

そう言った先生は、付け加えるようにこう続けた。
「でもな、彼女なら大丈夫じゃ。きっと、この境遇を乗り越えて
一回りも二周りも大きな人間になれるじゃろう。」
初老の医師はそう言いきった。
「はぁ・・・」
中澤と安倍は、2人して、ただボケ−ッとしている飯田を見つめていた。