鳥インフルエンザ

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政府は、ワクチンを使えばウイルスが常在する「非清浄国」とみなされ鶏肉や鶏卵を清浄
国に輸出できなくなるとの見解だ。だが日本からの輸出は少ない。非清浄国のタイや中国
から安い鶏肉が入るのは問題だが、政府は「期限付きで清浄国を目指す」と主張して、ウ
イルス持ち込みの危険がある非清浄国からの輸入を拒否してほしい。ただし、無秩序なワ
クチン接種は混乱を招きかねない。2、3年程度に限り政府などが指定したワクチンを、茨城
県周辺だけでも接種すべきだ。

◇感染自体は防げない メリットはない--北海道大獣医学部教授・喜田宏氏

 現時点で鳥インフルエンザのワクチンを接種するメリットはない。養鶏農家にも業界にも、
国全体の経済や公衆衛生にもマイナスだ。接種すべきではない。ワクチンを打てば感染が
防げる、と期待するのは間違いだ。インフルエンザのワクチンは、鶏用も人間用も「不活化
ワクチン」で、ウイルスから感染力を失わせてワクチンにしたものだ。不活化ワクチンは一般に、
発病は防ぐが感染は防げない。人間の天然痘やポリオ対策にはワクチンが高い効果を発揮し
たが、これらは感染予防効果のある「生ワクチン」だった。インフルエンザウイルスは、まず呼
吸器などの粘膜に感染する。感染防止には粘膜に抗体を作る必要がある。しかし不活化ワク
チンを注射する場所は皮下や筋肉だ。抗体は血液中にしかできない。鶏への接種実験でも、
感染は防げないとの結果が出ている。接種直後なら見かけ上は防げたとの報告もあるが、
数カ月後には感染も死も防げなくなった。ワクチンで防げるのは発病だけだ。接種すれば、
感染しても症状が出ない鶏が放置され、周辺への感染源となりかねない。こうして感染が次々
に広がれば、病原性の弱いウイルスが、鶏を次々と殺す強毒型に変異する可能性がある。
人間に感染するように変異する機会も増す。
76:2010/12/02(木) 01:55:38
一部の鶏をワクチンを打たない「おとり鶏」として残し、ウイルスがきたら症状が出て分かるよう
にすればよいとの提案もある。だが、おとり鶏が感染したら鶏舎の鶏をすべて殺処分するのが
ルールだ。ワクチンを打つ利益はない。ワクチンを使えば日本は、ウイルスが常に存在する
「非清浄国」とみなされる。ウイルスがいない「清浄国」へ鶏肉などを輸出できなくなるし、非清
浄国からの輸入も拒めない。輸入した鶏肉にウイルスがついてくる危険が増して、なかなか清
浄国に戻れないし、経済的損害も大きい。ワクチンを使ったメキシコやベトナムは、結局、国内
にウイルスが常在することになった。日本の感染は茨城県などに限られ、殺処分で清浄化が
できる。昨年、京都などで発生した高病原性鳥インフルエンザもワクチンなしで封じ込めができた。

■人物略歴 ◇しまだ・ひでゆき 岩手大大学院修了。獣医。70年に旧農林省に入省し畜産行政
を担当。01年から現職。60歳。

■人物略歴 ◇きだ・ひろし 北海道大大学院修了。農林水産省家きん疾病小委員会座長。61歳。
ウイルス学。