「理屈じゃない」
若者は1度自分で決めたことには、大人には想像もつかないようなエネルギーと好奇心でひたむきに
のめりこんでいく。彼女の役づくりの作法も、役柄に完全に「同化」することにあるようだ。
スクリーンではどんな役を演じても「長沢まさみ」の存在を感じさせない。
何を演じても「本人」を感じさせてしまうタレント、女優が多い中で希有(けう)の存在だ。
だから「世界の−」の撮影中、毎日泣いた時がある。別の作品の撮影で1カ月間、現場を離れ、
また戻った時だ。「アキに戻れない自分にすごく腹が立って、しっくりこなくて毎日、泣いてました。
現場でもみんなに見えないように隠れて…家でも…」。
スタッフの励ましもあってようやく立ち直ったという。
初主演作「ロボコン」でも、同化した。高等専門学校のロボット部の紅一点の部員役。
ハイライトの手づくりロボット大会のシーンは長回しでワンカットで撮影されたが、
彼女が実際に操縦した。古厩(ふるまや)智之監督からは「犬になれ」と指示された。
「考えるより体で演じろ、という意味です。その通りだと思いました。お芝居って理屈じゃないから。
ぶつかっていくのに必死で、あまり覚えていないですね」。