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『 オ ヤ ジ と 俺 』
その日、俺はたまたま実家に帰っていた。
別に用事が有った訳ではないが・・・・。
このバカ息子が・・・、ヤクザになんぞ成りおって、 うるせーな、クソオヤジ!
ワシは母さんに会わす顔が無いぞ!! お前なんかとっとと死んじまえ!!
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オヤジと会うと、いつもこうなってしまう。
昔からオヤジは俺を力で押さえつけ様として来た。
そんなオヤジに反発して、家を飛び出したのは俺が高校の時。
今じゃヤクザの真似事をしている。
オフクロは俺がまだ中坊の時に、ひどい病気にかかって死んじまった。
優しかったオフクロにたまには線香の一本も供えたいが、家に帰ればオヤジとケンカに成るのは
判りきっている。
実家に帰って来たのは一年ぶりくらいだろうか、やはり・・・、こうなってしまった。
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その時だった。
オヤジが突然、真っ赤な血を吐いた。
お前、親に向かって何て口のきき・・・・ オイ・・・、オヤジ・・・・
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../ /.|――n| | ゴホッ !
/ //||_.n/||.ー‐' ゴホッ ! lli|∧∧
l'|  ̄| |、 /||. ||/|| ∧,∧lli| (Д゚メ;)
l.| | |/, '| ||レ!'|| (,, ゚,д), _______ │ U
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俺は急いでオヤジを病院に連れて行った。
一通りの検査を済ませた後、医者は俺たち二人に向かってこう話した。
肺炎になっていますね。
点滴と、後、飲み薬を出しておきましょう。
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ゴホゴホ…
. ∧_∧ ∧,∧ なんだ、
ロ__ ( ´∀`) (д, ゚,,) ∧∧ 肺炎か・・・。
__/ ( <V>[]) | U (゚Д゚メ)
||/|| (、 ^ヽ ^ヽ ⊂⊂ノ.〜 │ U
─|| [ ̄(__)_) [ ̄ ̄] | |〜
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こんなクソオヤジ、どうなったって構やしないが、ついさっき「死んじまえ」と言ったばかりだ。
タチの悪い病気にでも成られては、俺も後味が悪い。
・・・ったく、肺炎ぐらいで
大騒ぎしてんじゃねぇーよ。
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__
目|| 騒いでるのは
∧∧ Y.||∧,∧ _ お前だけだ。
(,,゚Д゚) /(゚д,゚,,)/|
U | /~/⌒~~~|/||
〜| | / ⌒ //
し`J / ⌒ //
|| ̄ ̄ ̄||/
|| ̄ ̄ ̄||
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ところがオヤジの点滴中、医者は俺をもう一度診察室に呼び、話し始めた。
実は、お父さんの病気は肺ガンです。
それも、かなり進行している様です。
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. ∧_∧ /´ オイ・・・、待ってくれよ。
ロ__ ( ´∀`) ∧∧ ∠、 オヤジは肺炎じゃないのか? ,
__/ ( <V>[]) (゚Д゚メ)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
||/|| (、 ^ヽ ^ヽ ⊂ つ
─|| [ ̄(__)_) [ ̄ ̄] | |〜
__| |__ __| |__. し`J
∧_∧ これが早期ガンの場合でしたら、すぐにでも御本人に告知をして、早急に治療を
( ´∀`) 開始するところですが、お父さんの場合はガンの発生部位も悪く、まず、手術は不可能でしょう。
( <V>[]) また、既に頭をはじめ、体の数箇所にガンの転移が認められます。
結論を申しますと、これから出来る治療は延命治療に留まり、積極的にガンを叩く事は
最早、不可能です。
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病気の進行度合いから見ても、
もって三ケ月ぐらいと思われます。
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. ∧_∧ /´ 三ケ月って・・・・、
ロ__ ( ´∀`) ,, ∧∧ ∠、 何とかならねぇーのかよ ?! ,
__/ ( <V>[]) ('(゚Д゚メ)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
||/|| (、 ^ヽ ^ヽ │ U
─|| [ ̄(__)_) [ ̄ ̄] | |〜
__| |__ __| |__. し`J
∧_∧ もちろん、御家族の方が望まれるのでしたら、当院も出来るだけの事をします。
( ´∀`) また、大学病院や癌センターといった専門施設に紹介をする事も出来ます。
( <V>[]) そうすれば命を1〜2ケ月は延ばす事も可能でしょう。
しかし、それが患者さんの「QOL」を・・・、イヤ、失礼、命や生活の質を考えた時、
患者さんを病院のベットにくくり付け、沢山のチューブと機械で命を長らえる事が
はたして正しいのかは、御家族の方が考えて下さい。
色々な患者さんがおられます。
最期まで治療を続けてくれと言われる方もおられますし、御自宅で看病される方も
おられます。
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私の方からは「こうしなさい」とは言えません。
御本人と御家族がどう望まれるかです。
`─────y──────────────'
. ∧_∧ /´ ならば、オヤジを家に
ロ__ ( ´∀`) ∧∧ ∠、 連れて帰ってもいいのか? ,
__/ ( <V>[]) (゚Д゚メ)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
||/|| (、 ^ヽ ^ヽ ⊂ つ
─|| [ ̄(__)_) [ ̄ ̄] | |〜
__| |__ __| |__. し`J
∧_∧ 最近ではその様な患者さんも増えて来ました。
( ´∀`) 無論、死ぬ為に家に帰る訳ではなく、「在宅看護」というヤツですが、当院ではその部分も
( <V>[]) ちゃんとサポートさせてもらっています。
まあ、これは余談になりますが、現代医療は人が自宅で死ぬ事を出来なくさせてしまったのです。
しかし、一部では「それが当たり前で良いのか?」といった声が出ているのも事実です。
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結局、俺はオヤジを家に連れて帰る事にした。
医者の言っている「QOL」とやらの話しは良く判らなかったが、俺の収入から考えて、高い入院費がキツイのも本当だった。
ましてや・・・・、このオヤジの為にその金を払うなんて事は・・・・・。
|..伊|
|..田| ___________________________________
 ̄ ̄|..井|
|..歯|
|..科| 医者がもっと早く来いと 子供の頃から医者に縁が
| .. | ミィミィ 言ってたぞ。 無いのがワシの自慢だ。
l____.| ハ ハ____ `─────y─────' `────y───────'
|l l ll| /(・o・,,) /\
__|l l ll|__/| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\/____ ∧∧ ______ ∧,∧ ___
_| | | .|/ (゚Д゚メ) (д, ゚,,)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ │ U │ U
| |〜 | |〜
し`ヽ) ) ) ) し `ヽ) ) ) )
|..伊|
|..田| ___________________________________
 ̄ ̄|..井|
|..歯| ・・・・・・・
|..科| そうかい・・・・。 なんだ それは?!
| .. | ミィミィ そりゃ良かったな。 親に向かって!!
l____.| ハ ハ____ `────y────' `────y─────'
|l l ll| /(・o・,,) /\
__|l l ll|__/| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\/ ____ ∧∧ ______ ∧,∧ ___
_| | | .|/ (; ゚Д) (д, ゚,,)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ │ ヽ) │ U
| |〜 | |〜
し`J し `J
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|..伊| オッ・・・、
|..田| ______ 懐かしいなぁ。 _________________
 ̄ ̄|..井| お前も昔、こんな風に・・・
|..歯| `────y───────'
|..科| ゲッ・・・、知らなかった・・・。
| .. | ミィミィ じゃあ、オヤジが俺を拾って・・・・
l____.| ハ ハ____ ∧,∧ `───y───────────'
|l l ll| /(,,・o・) /\ (゚ ,,)
__|l l ll|__/| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\/ U | ∧∧ _________________
_| | | .|/ | |〜 (; ,,)Σ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄. し `J U │
| |〜
し`J
|..伊|
|..田| ______ ハッ ハッ ハッ ・・・ ________________
 ̄ ̄|..井| 軽いジョークだ !
|..歯| `────y───────'
|..科| どこが軽いジョークだ ?!
| .. | ミィミィ 一瞬、マジになったぞ !!
l____.| ハ ハ____ ∧,∧ `───y───────────'
|l l ll| /(,,・o・) /\ (,,゚,д゚)
__|l l ll|__/| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\/ U | ,, ∧∧ _________________
_| | | .|/ 〜| | ('(; ,,)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄. し `J │ │
| |〜
し`J
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|..伊|
|..田| ___________________________________
 ̄ ̄
心配するな。
お前はワシが産んだ子だ。 たいがいにしやがれ !!
`───y────────' コノヤロー !
ハ ハ____ `─────y──────'
| /(・o・,,) /\
__|... ∧,∧ /| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\/____ ,, ∧∧ ________________
_| (д, ゚,,) | .|/ ('(Д゚メ;)
│ U  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ │ U
| |〜 | |〜
し `ヽ) ) ) ) し`J
|..伊|
|..田| ___________________________________
 ̄ ̄|..井|
|..歯| いっその事、すぐにでも
|..科| この手で殺してやろうか・・・・。
| .. | ミィミィ `- - - - - - - y - - - - - - - - - '
l____.| ハ ハ____ 。
|l l ll| /(・o・,,) /\ ゚
__|l l ll|__/| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\/____ ∧∧ ________________
_| | | .|/ (゚Д゚メ)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ │ U
| |〜
し`J
10/45
それから暫らくの間、オヤジは以前と変わり無く過ごしていた。
不味い茶だな。 うるせー !
文句が有るならテメーで入れやがれ!
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/ //||_.n/||.ー‐'
l'|  ̄| |、 /||. ||/|| ∧,∧ ∧∧
l.| | |/, '| ||レ!'|| (,,゚,д゚) _______ (゚Д゚メ)
,,l.|__|,,/ ,,l| ||/~ (つ つ /旦 旦 /|⊂ つ
| | l,, "/~ 〜(⌒ヽ ´)/______/ (ヽノ⌒)〜
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時折ひどく咳きこむ事も有ったが、医者は週に一回は来てくれたし、看護婦も週に2〜3回
やって来て点滴をしてくれたので、病気の方は落ち着いていた。
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||____ 特に変わりは無いですか? |
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__ゴホゴホ… |`ll ̄ ̄ ̄l| .| ||\
l|' ̄ ̄ ∧,∧  ̄~~|l ∧_∧ ヽ⌒ノヘ | .|l___|| .| ||. \
||―(⌒(,,゚,д゚)⌒)-|| (´∀` ) (゚ー゚*) !、|≡__o| .| || \
|,ノ´ ̄´⌒ ̄⌒⌒`ヽ、 ( <v>[] ) |: U |`||ニニニニ. ∧∧ .|| ||
( ノ ヽ、  ̄ |_:_| ̄ /__ゝ γ⌒) _______ (゚Д゚メ) .|| ||
ヽ ' , ヽ, (_(__) U U [||三||] │ U . || ||
ヾ ノ ヽ ________,, | |〜\||. 0) ||
ヾ ノ ヽ, l\ \ し`J \ ||
ゝ 「| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄「| ll\\ \. \、 ||
. ヽ,,ノ|」――――――|」 '~ \l二二二二二二二二l \..||
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ところが、そんなある日の事だった。
オヤジが突然、変な事を話し始めたのは・・・。
そろそろ、母さんの七回忌の 七回忌なら何年も前に済ませたじゃねぇーか。
段取りをしなくちゃいかんな。 何をふざけた事を言ってるんだ。
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l.| | |/, '| ||レ!'|| (,,゚,д゚) _______ (゚Д゚メ)
,,l.|__|,,/ ,,l| ||/~ (つ つ /旦 旦 /|⊂ つ
| | l,, "/~ 〜(⌒ヽ ´)/______/ (ヽノ⌒)〜
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ふざけているのはお前の方だ! オッ・・・、オイ・・・、オヤジ・・・・・
この親不孝者めが !! マジで言ってるのか・・・・?
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l.| | |/, '| ||レ!'|| (,,゚,д゚)') _______ (Д゚メ;)
,,l.|__|,,/ ,,l| ||/~ (つ ソ /旦 旦 /| │ U
| | l,, "/~ 〜(⌒ヽ ´)/______/ (ヽノ⌒)〜
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/ ̄ ̄ ̄
オヤジは真剣に、もうじきオフクロの七回忌が来ると思っている様だった。
オフクロが死んだのは、もう十年も前の事だ。
七回忌はとっくの昔に済ませている。
何故そんな事を急に言い始めたのか・・・・。
ボケちまったのか・・・・。
まだボケる様な歳でもないだろうに。
12/45
しかしながら、思い当たるフシも有ったので、俺は病院に行って医者に話しを聴く事にした。
今日は息子さんだけが来られたのですね。
何か変わった事でも有ったのですか?
`─────y─────────────'
. ∧_∧ /´ オヤジが
ロ__ ( ´∀`) ∧∧ ∠、 急にボケ始めちまった様なんだ。 ,
__/ ( <V>[]) (゚Д゚メ)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
||/|| (、 ^ヽ ^ヽ │ U
─|| [ ̄(__)_) [ ̄ ̄] | |〜
__| |__ __| |__. し`J
ボケですか・・・・。
どんな症状か話してみて下さい。
`─────y─────────'
. ∧_∧ /´ 何年も前の事を、たった今の事の
ロ__ ( ´∀`) ∧∧ ∠、 様に大真面目に話しているんだ。 ,
__/ ( <V>[]) (゚Д゚メ)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
||/|| (、 ^ヽ ^ヽ ⊂ つ
─|| [ ̄(__)_) [ ̄ ̄] | |〜
__| |__ __| |__. し`J
成る程、わかりました。
症状としては老人性のアルツハイマーの物に近い様ですが、
お父さんの場合は、脳に転移した腫瘍が原因でしょう。
`─────y───────────────────'
. ∧_∧ /´ やっぱり、そうかい。
ロ__ ( ´∀`) ∧∧ ∠、 ,
__/ ( <V>[]) (゚Д゚メ)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
||/|| (、 ^ヽ ^ヽ │ U
─|| [ ̄(__)_) [ ̄ ̄] | |〜
__| |__ __| |__. し`J
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∧_∧ 以前にもお話ししましたが、おとうさんのガンは既に数箇所の転移をしています。
( ´∀`) 特に、肺ガンは脳に転移しやすいのです。
( <V>[]) 脳腫瘍の場合、脳の中でも場所によって症状が変わって来ます。
お父さんの場合は、物事を考えてたりする部分が腫瘍により影響を受けている様です。
その程度のボケで済んでいるのなら、
まだ良かったと思うしかありません。
`─────y───────────'
. ∧_∧ /´ 仕方無ぇーのか。
ロ__ ( ´∀`) ∧∧ ∠、 じゃあ、俺はどうすればいいんだ? ,
__/ ( <V>[]) (゚Д゚メ)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
||/|| (、 ^ヽ ^ヽ ⊂ つ
─|| [ ̄(__)_) [ ̄ ̄] | |〜
__| |__ __| |__. し`J
∧_∧ お父さんが言っておられる事を否定しない事ですね。
( ´∀`) 変な事を言っている様でも、それはお父さんの頭の中では現実に起こっている事なのです。
( <V>[]) それが否定されれば、この様な場合、パニックを引き起こしてしまう事が有ります。
また、パニックまで至らなくてもストレスとなり、体に悪影響を与えてしまいます。
まあ、聞き流すか、適当に口を合わせる様に
してみて下さい。
`─────y─────────────'
. ∧_∧ /´ 病気のせいとは言え、
ロ__ ( ´∀`) ∧∧ ∠、 めんどくせー話しだな。 ,
__/ ( <V>[]) (゚Д゚メ)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
||/|| (、 ^ヽ ^ヽ │ U
─|| [ ̄(__)_) [ ̄ ̄] | |〜
__| |__ __| |__. し`J
14/45
「ボケ程度で済んで良かったと思うしかない」か・・・・。
まあ、確かに動けなくなって、下の世話をさせられるよりはマシだが・・・・。
|..伊|
|..田| ___________________________________
 ̄ ̄|..井|
|..歯| この先・・・
|..科| どうなっちまうんだ・・・・。
| .. | コルァ `- - - - - - - y - - - - - - - - - '
l____.| ハ ハ____ 。
|l l ll| /(゚д゚,) /\ ゚
__|l l ll|__/| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\/____ ∧∧ ハア… ______________
_| | | .|/ (゚Д゚メ)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ │ U
| |〜
し`ヽ) ) ) )
|..伊|
|..田| ___________________________________
 ̄ ̄|..井|
|..歯|
|..科|
| .. | コルァ
l____.| ハ ハ____
|l l ll| /(,゚д゚) /\ ゲッ・・・
__|l l ll|__/| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\/____ ∧∧ ______________
_| | | .|/ (; ,,)Σ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ U │
| |〜
し`J
15/45
|..伊|
|..田| ______ コイツ・・・・、 ________________
 ̄ ̄|..井| 俺じゃーねぇーよな。
|..歯| `────y───────'
|..科|
| .. | ……
l____.| ハ ハ____ ∧∧
|l l ll| /(,゚д゚) /\ (; ,,)
__|l l ll|__/| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\/ U | ____________________
_| | | .|/ | |〜
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄. し`J
|..伊|
|..田| ______ 本当にジョークだったのか _______________
 ̄ ̄|..井| 疑わしくなって来たぞ・・・。
|..歯| `────y───────'
|..科|
| .. | ……
l____.| ハ ハ____ ∧∧
|l l ll| /(,゚д゚) /\ (; ,,)
__|l l ll|__/| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\/ U | _____________________
_| | | .|/ | |〜
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄. し`J
16/45
色々な不安も有ったが、俺にはどうする事も出来ない。
医者に言われた通りにするだけだ。
まあ、特に普段の生活で不自由する事も無かったし、普通に会話も出来た。
ボケている事が嘘の様だった。
「もしかしたらボケも一過性の物だったのかも知れない」
そう思った俺はオヤジにカマを掛けてみる事にした。
オヤジ、この前言っていたオフクロの お前も随分と気の早いヤツだな。
七回忌の事だけど、どうするんだ? 七回忌までまだ2年も有るぞ。
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|| |/ /
∧∧ ∧,∧ || /|/|
_______ (,,゚Д゚) (゚д,゚,,) ||/|/|
/ 旦 /| ⊂ つ U ) /|/.
/______/ 〜(⌒ヽ´) 〜(⌒ヽ ´) /|/θ |
| |-----------| |  ̄ ̄  ̄ ̄ /|/ /./θ
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/|/| . ̄
・・・・・そうだな。 ちょっと気になっただけだ。 お前に言われなくても、ワシが考える事だ。
こういうのは早めにと思ってな。 それよりも、お前は早く職に就け。
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∧∧ ∧,∧ || /|/|
_______ (;゚Д゚) (д, ゚,,) .||/|/|
/ 旦 /| U │ ⊂ つ /|/.
/______/ 〜(⌒ヽ´) (ヽ ノ⌒)〜./|/θ |
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/|/| . ̄
まいった・・・・・。
一過性どころじゃない、更に進んでいる。
ほんの数日の間にオヤジの頭の中の時は2年も戻ってしまっていた。
17/45
ある日、突然オヤジが怒鳴り始めた。
このバカ者めが、あんな事をしおって! 何んだよオヤジ、急に怒鳴って。
そこに座れ!! 何を怒ってんだよ ?
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l.| | |/, '| ||レ!'|| (,,゚,д゚)') _______ │ U
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| | l,, "/~ 〜(⌒ヽ ´)/______/ し`J
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/ ̄ ̄ ̄
「何んだ」じゃないだろう、バカ者。
人様のバイクを盗んで乗り回して、 そっ・・・・・、
その上、事故までしおって!! それはだなー・・・・。
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/ //||_.n/||.ー‐'
l'|  ̄| |、 /||. ||/|| ∧,∧ ,, ∧∧
l.| | |/, '| ||レ!'|| (,,゚,д゚)') _______ (゚Д゚メ)
,,l.|__|,,/ ,,l| ||/~ (つ ソ /旦 /| │ ヽ)
| | l,, "/~ 〜(⌒ヽ ´)/______/ (ヽノ⌒)〜
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そう言えば、そんな事も有ったな。
俺が高校の時だ。
18/45
挙句の果てが退学だ。
母さんが生きていたら すっ・・・、すまない。
どれだけ悲しむか考えろ !! 俺が悪かったよ。
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/ //||_.n/||.ー‐'
l'|  ̄| |、 /||. ||/|| ∧,∧ ,, ∧∧
l.| | |/, '| ||レ!'|| (,,゚,д゚)') _______ (Д゚メ;)
,,l.|__|,,/ ,,l| ||/~ (つ ソ /旦 /| │ U
| | l,, "/~ 〜(⌒ヽ ´)/______/ (ヽノ⌒)〜
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何だ、今日はやけに素直だな。 オヤジが向こうに謝りに行ってくれたんだろ。
さすがのお前も、今回は反省してるのか? 迷惑かけたな。
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l'|  ̄| |、 /||. ||/|| ∧,∧ ∧∧
l.| | |/, '| ||レ!'|| (,,゚,д゚) _______ (゚Д゚メ)
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| | l,, "/~ 〜(⌒ヽ ´)/______/ (ヽノ⌒)〜
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本当はあの時、俺は悪びれもしないで、ただ、オヤジに反発していた。
オヤジと大喧嘩をして勘当同然で家を飛び出し、街中をフラフラしてたもんだ。
医者の言う通りにするなら、ここでまた大喧嘩をするところだが、分別も付くこの歳になって
それをするのは、逆に恥ずかしい。
19/45
判ればいいんだ。 これからは気を付けろ。
しかし・・・、父さんは叱り方が下手でいかんな。
`──────────y──────────'
__ .⊂⊃
../ /.|――n| |
/ //||_.n/||.ー‐' 、、,
l'|  ̄| |、 /||. ||/|| ∧,∧ ∧∧ エッ・・・・?
l.| | |/, '| ||レ!'|| (,,゚,д゚) _______ (Д゚メ;)
,,l.|__|,,/ ,,l| ||/~ (つ つ /旦 /| | U
| | l,, "/~ 〜(⌒ヽ ´)/______/ (ヽノ⌒)〜
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何にしても、事故でお前にケガがなくて良かった。
壊した物は金で弁償する事が出来る。
勉強だって、お前が「やりたい」と思えば
何時からだって出来るんだ。
お前がケガをしなくて本当に良かった。
`──────────y──────────'
__ .⊂⊃ オヤジ・・・・・
../ /.|――n| | `───y─────'
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l'|  ̄| |、 /||. ||/|| ∧,∧ ∧∧
l.| | |/, '| ||レ!'|| (,,゚,д゚) _______ (Д゚メ;)
,,l.|__|,,/ ,,l| ||/~ (つ つ /旦 /| | U
| | l,, "/~ 〜(⌒ヽ ´)/______/ (ヽノ⌒)〜
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20/45
何だ ? なんであの時、そう言ってくれなかったんだよ !!
そうすりゃ俺だって、もしかしたら
`────y───' 今頃こんな風には・・・・・
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/ //||_.n/||.ー‐'
l'|  ̄| |、 /||. ||/|| ∧,∧ ,, ∧∧
l.| | |/, '| ||レ!'|| (,,゚ ,д) _______('(Д゚メ;)
,,l.|__|,,/ ,,l| ||/~ (つ つ /旦 /| | U
| | l,, "/~ 〜(⌒ヽ ´)/______/ (ヽノ⌒)〜
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何を言ってるんだ、お前 ? 何でもねぇーよ・・・
バカ野郎・・・・・。
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あの時オヤジがそんな事を考えていたなんて、俺は思いもしなかった。
21/45
それからもオヤジのボケはどんどんと進んで行った。
まあ、思った程の苦労も無かった。
考えてみれば、あの頃、俺はオヤジと話す事など殆ど無かったからだろう。
ただし、毎日の様に繰り返される、朝の行事だけには苦労させられたけど・・・・。
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|:::::::::::::::: なんだ、今頃起きて来て !!
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|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|| どこへ行くんだ、オヤジ ?
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〜| | (メ ,,)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ し `J  ̄ ̄ U | \
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し`J
21.5/45
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|:::::::::::::::: 「どこへ?」じゃないだろ、仕事だ !!
|:::::::::::::::: まったく、誰のおかげでここまで・・・・。
|:::::::::::::::: お前も早く学校へ行け !!
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|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|| 今日は日曜日だぞ。
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