___ ___ ___
(_ _)(___)(___) / ̄ ̄ヽ
(_ _)(__ l (__ | ( ̄ ̄ ̄) | lフ ハ }
|__) ノ_,ノ__ ノ_,ノ  ̄ ̄ ̄ ヽ_ノ,⊥∠、_
l⌒LOO ( ★★) _l⌒L ┌'^┐l ロ | ロ |
∧_∧| __)( ̄ ̄ ̄ )(_, _)フ 「 | ロ | ロ |
( ・∀・)、__)  ̄フ 厂 (_,ィ | </LトJ_几l_几! in 801板
 ̄  ̄
◎ Morara's Movie Shelf. ◎
モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
なにしろモララーのコレクションなので何でもありに決まっています。
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |[]_|| | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ]_||
|__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ̄ ̄ ̄| すごいのが入ったんだけど‥‥みる?
|[][][]._\______ ____________
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |[]_|| / |/ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.|| |[]_||
|[][][][][][][]//|| | ̄∧_∧ |[][][][][][][][].|| |  ̄
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ ) _ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.|| |
|[][][][][][][][]_|| / ( つ|8l|.|[][][][]_[][][]_.|| /
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(__)_)
前スレ
モララーのビデオ棚in801板62
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1289539923/ ローカルルールの説明、およびテンプレは
>>2-9のあたり
保管サイト(携帯可/お絵描き掲示板・うpろだ有)
http://morara.kazeki.net/
★モララーのビデオ棚in801板ローカルルール★
1.ノンジャンルの自作ネタ発表の場です。
書き込むネタはノンジャンル。SS・小ネタ・AAネタ等801ネタであれば何でもあり。
(1)長時間(30分以上)に及ぶスレ占拠防止のためリアルタイムでの書き込みは控え、
あらかじめメモ帳等に書いた物をコピペで投下してください。
(2)第三者から見ての投下終了判断のため作品の前後に開始AAと終了AA(
>>4-7辺り)を入れて下さい。
(3)作品のナンバリングは「タイトル1/9」〜「タイトル9/9」のように投下数の分数明記を推奨。
また、複数の書き手による同ジャンルの作品判別のためサブタイトルを付けて頂くと助かります。
(4)一度にテンプレAA含め10レス以上投下しないで下さい(連投規制に引っかかります)
長編の場合は10レス未満で一旦区切り、テンプレAAを置いて中断してください。
再開はある程度時間をおき、他の投稿者の迷惑にならないようにして下さい。
(5)シリーズ物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
また、長期連載される書き手さんはトリップを付ける事を推奨します。
(参照:トリップの付け方→名前欄に「#好きな文字列」をいれる)
(6)感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬や、書き手個人への賞賛レスはほどほどに。
作品について語りたいときは保管庫の掲示板か、作品が収録されたページにコメントして下さい。
※シリーズ物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
※感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬はほどほどに。
※「公共の場」である事を念頭にお互い譲り合いの精神を忘れずに。
相談・議論等は避難所の掲示板で
http://s.z-z.jp/?morara ■投稿に当たっての注意
1レスあたりの最大行数は32行、タイトルは全角24文字まで、最大byte数は2048byte、
レス投下可能最短間隔は30秒ですが、Samba規定値に引っかからないよう、一分くらいがベターかと。
ご利用はテンプレをよくお読みの上、計画的に。
2.ネタ以外の書き込みは厳禁!
つまりこのスレの書き込みは全てがネタ。
ストーリー物であろうが一発ネタであろうが
一見退屈な感想レスに見えようが
コピペの練習・煽り・議論レスに見えようが、
それらは全てネタ。
ネタにマジレスはカコワルイぞ。
そしてネタ提供者にはできるだけ感謝しよう。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ネタの体裁をとっていないラッシュフィルムは
| いずれ僕が編集して1本のネタにするかもね!
\ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| . |
| | [][] PAUSE | . |
∧_∧ | | | . |
┌┬―( ・∀・ )┐ ピッ | | | . |
| |,, ( つ◇ | | | . |
| ||―(_ ┐┐―|| |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
| || (__)_), || | °° ∞ ≡ ≡ |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
3.ネタはネタ用テンプレで囲うのがベター。
別に義務ではないけどね。
テンプレ1
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| モララーのビデオを見るモナ‥‥。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| きっと楽しんでもらえるよ。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
テンプレ2
_________
|┌───────┐|
|│l> play. │|
|│ |│
|│ |│
|│ |│
|└───────┘|
[::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
∧∧
( ,,゚) ピッ ∧_∧ ∧_∧
/ つ◇ ( ・∀・)ミ (` )
. (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
| ┌‐^──────────────
└──────│たまにはみんなと一緒に見るよ
└───────────────
_________
|┌───────┐|
|│ロ stop. │|
|│ |│
|│ |│
|│ |│
|└───────┘|
[::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
ピッ ∧_∧
◇,,(∀・ ) ヤッパリ ヒトリデコソーリミルヨ
. (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
| |
└────────────────┘
テンプレ3
,-、
//||
// .|| ∧∧
. // 生 || ∧(゚Д゚,,) < みんなで
//_.再 ||__ (´∀`⊂| < ワイワイ
i | |/ ||/ | (⊃ ⊂ |ノ〜
| | / , | (・∀・; )、 < 見るからな
.ィ| | ./]. / | ◇と ∪ )!
//:| | /彳/ ,! ( ( _ノ..|
. / /_,,| |,/]:./ / し'´し'-'´
/ ゙ / / / ||
| ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./ / /,!\
| | / `ー-‐'´
| | ./
|_____レ"
,-、
//||
// .|| ∧∧
. // 止 || ∧(゚Д゚,,) < やっぱり
//, 停 ||__ (´∀`⊂| < この体勢は
i | |,! ||/ | (⊃ ⊂ |ノ〜
| | / , | (・∀・; )、 < 無理があるからな
.ィ| | ./]. / | ◇と ∪ )!
//:| | /彳/ ,! ( ( _ノ..|
. / /_,,| |,/]:./ / し'´し'-'´
/ ゙ / / / ||
| ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./ / /,!\
| | / `ー-‐'´
| | ./
|_____レ
テンプレ4
携帯用区切りAA
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
中略
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
中略
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 僕のコレクションに含まれてるのは、ざっと挙げただけでも
|
| ・映画、Vシネマ、OVA、エロビデオとかの一般向けビデオ
| ・僕が録画した(またはリアルタイムな)TV放送
| ・裏モノ、盗撮などのおおっぴらに公開できない映像
| ・個人が撮影した退屈な記録映像、単なるメモ
| ・紙メディアからスキャニングによって電子化された画像
| ・煽りや荒らしコピペのサンプル映像
| ・意味不明、出所不明な映像の切れ端
\___ _____________________
|/
∧_∧
_ ( ・∀・ )
|l8|と つ◎
 ̄ | | |
(__)_)
|\
/ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 媒体も
| 8mmフィルム、VCR、LD、ビデオCD、DVD、‥‥などなど
| 古今東西のあらゆるメディアを網羅してるよ。
|__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ̄ ̄ ̄| じゃ、そろそろ楽しもうか。
|[][][]__\______ _________
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | |/
|[][][][][][][]//|| | ∧_∧
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ )
|[][][][][][][][]_||/ ( )
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | |
(__)_)
>>1乙です。
前スレ
>>427の続きで、時代劇「参匹がKILL!」より、素浪人の殿様×仙石。
訳あって殿様がオカマちゃん風味。エロなし。
全三回投下の二回目です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
しぶる親父を拝み倒してその夜は飯屋に宿を借り、翌日ふたりはまた色街の近くに訪れた。
親父に梅乃屋まで言づてをしてもらうと、おきみから事情を聞いた女達が、老婆の目を盗んで代わる代わる船着き場まで足を運んだ。
女達は死んだ筈のお絹と話が出来る喜びや、薄情な千吉への恨みごとを口にし、それぞれの目に涙を浮かべていた。
別れがたい女達の願いと、旅仲間と待ち合わせをしている都合もあって、ふたりはしばらくこの土地に留まることにした。
そうなると宿代や飯代を稼がねばならず、あちこち訪ねて運よく、柄の悪いやくざ者に目を付けられている大店に、用心棒の口を見つけた。
男達を叩きのめしている最中にひょっこりお絹が顔を出し、兵四郎がきゃあっと悲鳴を上げてうずくまったりするので、真之介は気が気ではなかった。
ほとんどひとりで働き、なおかつ兵四郎を気遣ってやらなければならないので、いかに頑丈な真之介といえども少し身にこたえた。
だが乗り掛かった船だと開き直り、船着き場に通う兵四郎に付き添い、しつこく押しかけてくるやくざ者相手に暴れて、憂さ晴らしをしていた。
大店に泊まり込んでの用心棒暮らしが、そんな調子で三日を過ぎた頃。
親父の飯屋でふたりはまた、酒を酌み交わしていた。すると店に入るなり、声をかける者があった。
「あっ殿様!仙石さぁん!」
「あらっ、ほんとだ。元気にしてた?昼間っから酒飲んで、珍しく羽振りがよさそうじゃないの」
「やあ、お恵ちゃんに陣内。元気だぞ、酒は旨いしな」
「お前らも一杯やるか?おーい親父、もっと酒、酒くれ」
兵四郎は笑って挨拶を返し、真之介は奥に向かって徳利を掲げた。
そのかたわらに、鍔黒陣内とお恵は腰を落ち着けた。
「いや親父さん、俺達には飯を頼むよ。腹ぺこだし、ゆっくり酒飲んでもいられなくてさ。急いで梅乃屋に行かなくちゃ」
「そうよね。ねえ殿様、ここの宿場にある梅乃屋って店知ってる?」
着いたばかりのふたりの口から因縁のある店の名前が飛び出したので、兵四郎と真之介は大いに驚いた。
「ああ知ってる。この先の色街の中心にある店だ。陣内、そこに何の用だ」
「あら……ってことはお絹さんて人はもしかして、お女郎さんなのかしら」
「おいお恵、お前なんで、梅乃屋のお絹を知ってるんだ」
お恵の言葉にますます驚いて真之介が尋ねると、ふたりは旅の途中で出会った男から、梅乃屋のお絹という女に言づてを頼まれたのだと答えた。
三日前、陣内とお恵が連れ立って歩いていると、道外れの林の中からただならぬ悲鳴が聞こえた。
そっと覗いてみると旅姿の男達が何やら争っており、刃物を抜いた三人が寄ってたかって、ひとりの男に襲いかかっているようだった。
ふたりは襲われている男の顔を見て驚いた。旅仲間の真之介に、まるで瓜二つだったからだ。
慌てたお恵は人殺しだと大声を上げ、飛び出した陣内は仕掛け槍を振るって男達を追い払った。
駆け寄ると傷だらけの男は、もはや虫の息だった。
よく見れば髷の形や着ている物は違うし、何より腕の立つ真之介がごろつき連中風情に簡単にやられる筈もなく、全くの別人だとわかった。
男は千吉と名乗り、絶え絶えの息の下からふたりに頼み事をした。
とある宿場の梅乃屋という店にいるお絹に、自分が死んだことを知らせてくれ。
博打で当てた金を持って帰るつもりだったが、賭場から自分を付け狙っていたらしい追いはぎに襲われて、叶わなくなってしまった。
約束を守れなかったことをどうか代わりに詫びてくれと、涙を流してふたりを拝み息を引き取った。
陣内とお恵は、真之介によく似た男の最期の言葉を、無視することは出来なかった。
千吉の懐にあった残り少ない金で最寄りの寺に供養を頼み、遺髪を携えてお絹のいる宿場にたどり着いた。
なんという因縁であり皮肉な話なのだと、聞き終えた真之介はため息をついた。お絹が風邪をひかず千吉が追いはぎに遭わなければ、ふたりは再会を果たせた筈なのに、幾日かの差で相次いで命を落としてしまうとは。
すでにお絹も生きてはいないことを告げると、恋人達のあまりの運の悪さに落胆し、陣内とお恵はしばらく黙り込んでしまった。
「そうだったのかあ。とんだ無駄足になっちゃった。せっかくお絹さんに、渡してやろうと思ったのに」
陣内が懐紙に包まれた遺髪を懐から取り出すと、兵四郎が手を伸ばして受け取った。
「ねえ殿様、どうしたらいいかしら、それ」
「またあの寺に戻って、墓に入れてもらうしかないかなあ。千吉の実家まではわかんないしね」
「うん……あのな、ふたりとも、よく聞いてくれ。実はな、お絹って女は」
兵四郎の手の中にある遺髪を悲しげに見つめるお恵と陣内に、真之介は現状を説明しようと切り出した。
すると兵四郎がいきなりぽろぽろと大粒の涙を零したので、一同は仰天した。兵四郎は遺髪を胸に抱きしめ、俯いて震えながら泣いた。
「ちょっと、ど、どうしたんだよ殿様!」
「やだあ、お腹でも痛いの?初めてだわ、殿様が泣くなんて」
うろたえる陣内とお恵を、真之介は慌てて諭した。
「大丈夫だ、お前ら落ち着け。おい、お絹、お絹だな。話を聞いていたか」
「お絹ってなんだよ。仙石、お前何言って」
「しいっ。黙って、陣内さん」
戸惑い喚く陣内をお恵が制し、真之介が女の名前を呼ぶと、兵四郎はゆっくりと顔を上げた。
「……勝手だよ、全く。今更、こんな姿で戻って来て。お金なんかの為に命を落として……あんたが帰って側にいてくれたら、あたしはそれでよかったのに。せんさんの馬鹿、せんさんの馬鹿野郎……」
振り絞るような声で呟くと、兵四郎はまた顔を伏せた。
「ねえ仙石さん、これってまさか」
「ああ。信じられんだろうが、お絹の魂は今、殿様の身体にいるんだ」
「え、えーっ!またまたあ……どうせ、殿様の冗談なんでしょ」
「たこ、この馬鹿。いくら殿様でも、こんなたちの悪い冗談なんぞやるか。なあお絹、そいつをどうしたい。お前の墓に一緒に入れるか?」
優しく語りかける真之介の様子に、これはまさしく本当らしいと、お恵と陣内は顔を見合わせた。
再び顔を上げた兵四郎の涙は止まり、悲嘆に染まっていた顔付きは随分穏やかになっていた。
「お絹……いや、殿様、か?」
「うん。お絹は引っ込んだ。俺の奥深くに、隠れちまったようだ」
様子を伺う真之介に頷くと、兵四郎は取り出した手ぬぐいで涙を拭き、遺髪を台の上に置いた。
「そうか。よっぽど悲しかったんだな。幽霊が死んだ男を悼むってのも、なんだかおかしな話だが」
「ああ、今お絹は自分でも、どうしていいのかわからないんだ。落ち着くまで、そっとしといてやろう」
そうだな、と真之介が呟くと一同はまたしばらく沈黙し、それぞれ物思いに沈んだ。
静寂を破る声と共に、男が慌てて店に転がり込んで来た。見れば用心棒を勤めている店の手代で、また例のやくざ者達が、今日は更に人数を増やして押しかけて来たと言う。
兵四郎と真之介は押っ取り刀で飯屋を飛び出し、陣内とお恵も取りも直さずその後ろに続いて走った。
「てめえら、いい加減にしろ。あんだけ痛め付けられて、まだ懲りねえのかっ」
「うるせえ、さんぴん!今までみてえにゃいかねえぜ、今日のこっちの人数を見ろい!」
真之介に喚き返した男の言葉通り、店の前には目つきの鋭い喧嘩支度の連中がいつもの倍の二十人ばかり並び、兵四郎達を取り囲んでいた。
連日不様に追い返されたのが余程腹に据えかねたのか、一家を挙げて挑んできたようだ。
「どうだかねえ、数が増えたからいいってもんでもないぜ。こっちも今日はひとり多いが、役に立つかは微妙だからなあ」
「なんだと仙石!そんなこと言うと陣ちゃん、いち抜けたってしちゃうよっ。大体俺にはこんな喧嘩、関係ない……んん?」
居並ぶやくざの中に、旅から帰ったばかりなのか、手甲脚半を身に付けた男達が三人混じっていた。その男達を顔をしかめて睨み付ける陣内に、平四郎が尋ねた。
「どうかしたのか、たこ」
「うん、ちょっとね殿様、あそこの三人、見覚えがあるような……」
「あーっ!陣内さん、あいつらよ。殿様、仙石さん!あの三人が、千吉さんを殺した奴らよっ」
「なぁにぃ!?ほんとか、お恵っ」
「陣内、確かか。確かにあいつらか」
「うんうんそうだ、間違いないよ。くそうお前ら、よくも千吉の金を奪ったな!」
兵四郎達が怒りを漲らせた表情で向き直ると、追いはぎ一味はうろたえたが、やがて開き直り胴間声で叫んだ。
「な、なんでえ!千吉なんて奴、知るもんかっ」
「俺達ゃ、この一家の身内だ。おかしな難癖つけやがって、てめえら叩きのめしてやる!」
それを合図に、やくざ達が一斉に長脇差を抜き放った。
「このろくでなしの盗っ人共が、しらばっくれやがって!千吉の仇討ちだ、手加減しねえぞ」
愛刀を抜いた真之介の喚き声を皮切りに、兵四郎と陣内も刀と槍を構えた。
野次馬達が悲鳴を上げて遠巻きに眺める中、喧嘩は始まった。次々と襲いかかる刃をかわし、三人は難無くやくざ達を殴り倒していった。
兵四郎は追いはぎの男達と向き合い、険しい顔で睨みつけた。
別のやくざを峰打ちで倒した真之介は、刀を構える兵四郎の肩が震えているのに気が付いた。
「よくも、よくもせんさんを……ぶ、ぶっ殺してやる!」
呻くように叫んだ兵四郎の身体からは、怒りと憎しみの焔が噴き出し、揺らめいているように見えた。だが慣れぬ刀の重さに腕はがくがくと揺れ、その危なっかしさに真之介ははらはらとした。
「お絹、待て!気持ちはわかるが、今は出て来るな。俺達に任せろっ」
諌める声に聞く耳を持たず、兵四郎は刀を振り上げ、やみくもに追いはぎ達に斬りかかった。
追いはぎのひとりの長脇差が唸りを上げて刀を叩き、その衝撃に兵四郎は刀を取り落とした。
ぎらつき迫る刃に目をつぶった兵四郎の前に、素早く駆け付けた真之介が立ちはだかった。
男の刀を力任せに跳ね返すと、返す刃で着物の前を斬り裂いた。
すると懐から零れた紺色の胴巻きが、ずしりと重そうな音を立てて地面に落ちた。
「おっと、どうやら当たりだな!そいつに幾ら入ってる?音からすると、たかがやくざの三下が持てるような額じゃねえだろ」
「千吉は、五十両盗られたって言ってたよ!」
「そいつ、逃げる時に千吉さんから、その胴巻きを引ったくっていったわ。あたし、覚えてる!」
畳み掛けるように真之介と陣内、そしてお恵に追い詰められ、三人の男達はいよいよ泡を喰った。
「返してもらうぜ。千吉がいない今、そいつはお絹のもんだからな」
真之介は伸ばした刀の先に胴巻きを引っ掛け、掬い上げてから平四郎に手渡した。
涙を浮かべた兵四郎は、ひどく大事そうに両手で胴巻きを握り胸に当てた。
「お兄さん方、ご覧の通りこいつら盗っ人だよ!お上に訴えたら、そちらの親分さんもとばっちり食うかもよ」
「それがいやなら今すぐ、こいつらと縁切れ。ついでにこの店からも手ぇ引け。そしたら訴えずに、俺達で始末を着けてやる」
陣内と真之介の言葉を受けて、格上らしき数人の男達が話し合っていたが、やがて彼らは長脇差を鞘に納めた。
「わかった。役人なんざ怖くもねえが、そいつらあ一家の面汚しだ。代貸のこの俺が親分の名代として、たった今縁を切るぜ。店のこたあひとまず、置いといてやる」
ひとりが言うと、他のやくざ達も刀を仕舞った。身内に見放された三人は青ざめたが、やけ気味に罵声を張り上げ、再び刀を構えて真之介達に向き直った。
胴巻きを懐に抱いた兵四郎はふいに顔を上げると、先程落とした刀を拾い上げた。
「旦那、あたしゃやっぱりやりますよ。せんさんの仇を取るんだ」
「いや、いかん。お前は手を出すな。その手を血で汚しちまったら、千吉に極楽で会えなくなるぜ」
きつく諭す真之介の厳しい顔を、兵四郎は眩しそうに見つめた。
その隙を見て、男達が襲い掛かってきた。だっとその間を駆け抜けた真之介の愛刀が閃き、一瞬の内に三人を斬り捨てた。
どうっと倒れ伏した音を背に息をついた真之介は、刃を染めた血を袴で拭き取った。
「お絹、お前は綺麗なまんまで、せんさんの待つあの世に行くんだ」
振り返りにやりと笑った真之介に、泣き笑いの表情で兵四郎が頷いた。
それを見た陣内が、ちぇっ、あいつひとりでかっこつけやがってとぼやき、お恵はまあまあとそれを宥めた。
その夜、梅乃屋は店を挙げてのどんちゃん騒ぎとなった。受け取った金は楽しいことにぱあっと使ってしまいたい、というお絹の願いで、梅乃屋の女達を全て借り切った。
真之介達は元より、世話になった飯屋の親父や、真之介達の雇い主の大店主人、更には喧嘩相手だったやくざ一家の親分までもを宴席に招いた。
艶やかな遊女の酌に照れた親父は、顔を赤くして滅多に呑めぬ美酒を味わった。
つまらぬことが原因でいがみ合っていた主人と親分は、仲裁を買って出た陣内の口車と酒の勢いに乗せられて、今宵を限りに争いをやめることを誓い合った。
兵四郎とお絹は交互に入れ代わり、賑やかな宴を楽しんだ。浮かれた陣内がおどけた歌や踊りを披露し、それを見て真之介達も皆も声を上げて笑った。
上客に満面の笑みを浮かべたやり手婆は、いそいそと酒や肴を運んだ。
大いに盛り上がった宴は、やがて静まった。千鳥足で帰った客もいれば、酔い潰れた居残りの客が、広間で女達と雑魚寝を決め込んでいた。
滅法酒に強い真之介はあぐらをかき、ひとりまだ手酌で呑んでいた。
かたわらで寝転がっていた兵四郎が、ふいにゆらりと上体を起こした。
「……せんさん」
「おいお絹、お前まだ俺をそう呼ぶのか」
寝ぼけまなこで呼びかけられ、真之介は苦笑した。
「ふふ、冗談ですよ。これが最後ですから、勘弁しておくれな」
「おい、最後って……」
「ねえ旦那、ちょっとふたりだけになりませんか。あたしの部屋で」
真之介の手を取り立ち上がると、兵四郎は広間を出て彼を奥に招いた。
廊下から薄明かりがほのかに差し込むお絹の部屋は、隅に行灯や文箱などのわずかな調度品が寄せられ、すっきりと綺麗に片付けられていた。。
畳の真ん中に腰を下ろした真之介の正面に、兵四郎は正座をして向き合った。
「あたし、旦那方には本当に感謝してるんですよ。せんさんのお金を取り返してくれた上に、仇まで討ってくれて」
「まあな、いろいろ運がよかったんだ。それもこれも皆、お前のせんさんが引き合わせたのかもしれんぜ」
「そうねえ……あの人、約束を守ってくれたんだね。この世ではとうとう会えなかったけど、その気持ちが嬉しいですよ」
「うん……そうか」
切なげな表情の兵四郎に、真之介はただ頷くしかなかった。
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
次回で終わります。
>>1さん乙
>>12 続きを楽しみにしています!
映画「都論:LЁGAСУ」よりСLU×ЯINZLЁЯでエロなし。文章が硬め。
あと文中に出てくる用語を記載しておきますので参考にどうぞ、
GЯID=USЁRである不倫が新たに作りだした電脳世界。
USЁR=実世界の住人、文中では不倫が主。
СLU=不倫が自分の補佐をさせる為に作った、自身のコピー。
若かりし不倫の姿をしているが歳をとることは無い。
与えられた使命を守り続けるあまり、不倫を裏切ってしまう。
ЯINZLЁR=СLUに仕える謎の戦闘マシーン。
TRОN=不倫の盟友のセキュリティプログラム、裏切ったСLUに倒される。
ISО=GЯIDの世界を革新させるらしい存在。勝手に湧いて出てきた。
ネタバレを含むので、駄目な方は飛ばしてください。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
玉座に座る支配者は、窓からGЯIDを見おろしていた。
漆黒の闇が青白い光を包み込んでいる。大地にはコンデンサのようにそびえ立つ建造物、
トランジスタのような住居群、そして一律に共通しているのが、どこへでも分け隔てなく伸びる光、
一際高いこの塔から見れば、その光景はひとつの集積回路のように見えていた。
おそらくUSЁR達はこの光景を"美しい"と表現するのだろう。
にもかかわらず、СLUは苛立っていた。
GЯIDのすべてを支配し、何もかもが自分の思い通りにいく筈なのに、
彼の論理演算で予想だにしなかった出来事が次々と起こっていく。
彼が抹殺しようとした一人のUSЁRは幾ら捜索隊を出しても見つからず、
ISОの生き残り共は利害関係の一致をネタに怪しげなクラブを作り、
СLUに反旗を翻そうとする下級プログラムの溜まり場になっているという。
彼等を処理さえすれば、確実にGЯIDは彼の演算通りの世界になるというのに。
СLUのなかで"苛立ち" - 不正処理の塊が物理的な暴走となって現れる。
無意識のうちに、彼は憲兵であるプログラムに歩み寄り、殴りかかっていた。
もちろん彼の下僕として矯正済みであるから、文句など何一つ言わない。
例え反抗されようが、今はこの憲兵プログラム以外誰一人いない筈だ。
そうしてサンドバッグにされるプログラム、このまま行けばフリーズするだろう
とСLUが肩に力をいれて最後の一発を繰り出そうとしたその時だった、
誰かがСLUの腕を強い力で制御しているのだ。振り向くと、ЯINZLЁRが立っていた。
フルフェイスのヘルメットに覆われたそのプログラムは一際異彩を放っている。
お前か…」
例えСLUでもЯINZLЁRの力には敵わない、彼は静かに憲兵を解放した。
それと同時に深刻なシステムエラーに陥る憲兵を気にもとめず、СLUは彼を見やった。
セキュリティプログラムの名残か、矯正をしても僅かだが本分は失われぬようだ。
だがそれもСLUの許容内にすぎない。彼はЯINZLЁRの身体に視線を移していく、
均整のとれた肉体、この世界の特徴であるプログラムのスーツは、その肉体美を忠実に再現する。
そして彼はGЯIDが誇る戦士、アリーナの英雄、物言わぬ戦闘兵器…
この世界に生けるもの達に畏怖されると同時に尊敬されているЯINZLЁR、
そんな彼を従わせ、自らに与えられた使命「完璧な世界の構築」の為の駒とする
自分自身にСLUは陶酔していた。紛うことなく、私はこの世界の支配者だと。
ЯINZLЁRのヘルメットにСLUの手が添えられるが、反応はない。
СLUは彼の頸部を探る様に弄り、彼のみが知るあるプログラムを作動させた。
プログラムは顔全体を覆っていたフルフェイスのヘルメットを分解していく、
かつてのクーデター以降、СLU以外誰一人見たものがいないЯINZLЁRの素顔が現れた。
そこにはひどく無機質で、端麗な顔立ちが佇んでいた。
黒く艶のある短髪、鼻筋の通った正面、固く結ばれた形のいい唇、
整った眉と適切な大きさの眼と鼻、それらを含む全てが整っている。
驚くことにGЯID以前の遥か昔、MСPが支配していた時代から全く衰えていない、
プログラムに"加齢"の概念がないのだから、当たり前と言えばそうなのだが。
また矯正の成果だろうか、視点はおぼろげで、眼に意思がまるで感じられない、
顎を掴まれたことにも反応せず、ひたすら心許無い視線をСLUに送り続けている。
「相変わらずだな」
СLUは内心ほくそ笑んでいた。
それは幾サイクルも前の、彼を裏切った忌々しいUSЁRを叩き出した日のこと。
彼は記憶メモリのなかでも、特に甘美なメモリであるそれを引きずり起こす。
盟友であるTRОЙや不完全なISОと共に現を抜かす間抜けな男の顔を、今も忘れてはいない。
そしてそれらを破壊する瞬間は、"快楽"としてСLUの論理演算回路に刻み込まれていた。
記念すべき日。不完全な要素を排除できた"快楽"ほど素晴らしいものは無いだろう。
だが目の前のプログラムは、その不完全な存在を最後まで守ろうとして、犠牲になった。
それは彼の身体と忠誠心がСLUではなく、USЁRの為のものであったからだ。
哀れなプログラム、そう馬鹿にする一方でСLUは焼けつくような"嫉妬"を覚えていた。
USЁRは不完全な存在にもかかわらず、創造の力を含む全てを持っていたのだ。
彼が不完全な存在であるのはСLUの目から見ても明らかであったし、
欠陥を抱える者がGЯIDの全てを管理しているという現実に嫌悪さえした。
そしてその存在を過保護といえる程に守り続けた、愚直なセキュリティプログラム。
その身体と忠誠心を、完璧であるСLUの使命に役立てるべきだと考えていた
彼にとっては、腹が煮えくりかえる程に不愉快な事実であった。
СLUはその忌々しい過去を振り払うかのように、目の前のプログラムへ
半ば強引に、USЁR達が"キス"と呼ぶであろう行為をする、がこれは不正処理の結果ではない。
USЁR達が"快楽"を得たい時に"キス"をするという情報を事前に認知していたからからだ。
СLUは、彼のガラス玉の様な瞳が自分の顔を映し出したのを一瞥したあと、乱暴に唇を貪り始める。
次にСLUの舌が彼の上唇を押し上げて彼の口内に侵入し、口腔内の敏感な回路を刺激していく、
彼の回路の活動は活発になり、熱を帯び始め、呼吸活動は激しくなり、頬も色づき始めた。
が口内を犯されても、彼は依然として曖昧な表情で、蠢く舌を受け入れ続けるままだ。
それは異常な光景だったが、СLUはそこから得体の知れない"何か"に興奮していた。
だがその"何か"を具体的に掴むことは、プログラムであるСLUには難題であった。
これまでも何度か経験があったが、なかなかいい感触だ。
あの欠陥だらけのUSЁRがこれを見たら何と感じるだろう?
大切な盟友が自分のコピーに好き勝手されたら、どう思うだろう?
操り人形との"キス"を続けるうちに、СLUの苛立ちが少しづつ薄れていく、
舌と口腔の摩擦によって生まれた淫らな音を背景に、彼は"勝利"を感じていた。
完璧で、歳を取らず若いままの私と、老いぼれていくだけの不完全なUSЁR、
どちらが優れているかは明白…それはСLU自身にも分かりきったことだ。
あの男と来るべき息子とISОさえ処理すれば、真に「完璧な世界」が構築できる。
奴等は巨象に喧嘩を売る愚かな蟻にすぎない、だから今は"快楽"に身を任せればいい。
ЯINZLЁRの腰に添えられていたСLUの手が、緩やかにスーツの下部へと降りていく。
更なる淫行が始まるのだろう、彼は抵抗を諦めたかのように、そっと目を閉じる。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
25 :
襷 1/4:2011/01/10(月) 20:45:03 ID:rumhCbnA0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
朝銅鑼より馬尺伝とコーチの捏造昔話。年末年始の怒涛の萌えフラグにすなおに踊ってみた。
見物客の去った中継地点はガランと物寂しかった。
撤収作業にかかるスタッフの姿はまばらにあれど、つい数時間前まで大きな声援と熱気に包まれていた
場所とは到底同じに思えない。
そんな中、自分の足は我知らずとある関係者エリアに向かっていた。
本来は立ち入り禁止の、しかしロープで簡易に区切られただけの場所に今更入ったところで見咎める者はいない。
だから進む足を止められないまま奥へと入り込む。
その先に、その人はいた。
パイプ椅子を幾つか並べて作った臨時のベットに仰向けで、今も息荒く横たわっている。
身体は冷やさぬようジャージの上着が、一方目元から額にかけては逆に熱を冷ますよう濡れたタオルが覆うように
掛けられている。
視界が塞がれているならもう少し近づいたとしても驚かれはしないだろう。
そう思いながら足音を忍ばせ、側による。
そして見つめる。その人の片手には水の入ったペットボトル。そしてもう一方の手には一本のたすきが
握り締められていた。
それに反射的に自分の眉が寄ったのがわかる。
きつく握り込まれた、それは渡せなかったたすきだった。
練習の一環で、部活単位で見学に来ていた大学生駅伝。
そこで自分が目を奪われたのは、一人の選手の走りだった。
けしてトップを争うようなものではない。それどころか、その選手は途中調子を崩すと棄権を危ぶまれるような
走りになった。
フォームは崩れ、意識も朦朧となり。しかしそれでもけしてその足が止まる事は無い。
一歩一歩、とにかく前へ、諦めることなく。
中継地に置かれた小さなモニターに釘づけになる自分の背後では、次々と他校の選手達がたすきを渡し、
その度に大きな歓声が上がる。
華やかなシーンとは裏腹な苦痛に満ちた、しかし自分の意識はただ一つその走りに集中する。
26 :
襷 2/4:2011/01/10(月) 20:46:40 ID:rumhCbnA0
そんな中、一度だけ声をかけられた。
次の場所に移るから来いと。時計を見れば制限時間を過ぎており、その選手のチームは繰り上げスタートを
余儀なくされていた。
駅伝選手にとって、棄権と同じくらい辛く悔しい。そう思えば尚更足は動かなくなり、先に行っとってくれ、
短くただそう言い捨てれば、それに相手は一瞬苦々しそうな表情を見せたが、それ以上はもう何も言わなかった。
チームの中で抜きん出た才能を持ったエース。
そんな自分の立場をこれまで特に意識した事は無かったが、その特権による我儘を初めて通した。
そしてそこまでしてゴールを待った選手が、今目の前にいる。
辺りに人はいなかった。
後片付けか、続いているレースの様子が気になって見に行っているのか、彼と同じチームの者達の姿も
近くには無く、だからしばし無言でその人の姿を見続ける。
苦しそうだった。
呼吸は乱れ、冷や汗にも似た汗が止まらず、軽く脱水症状を起こしているようにも見えた。
同じ競技に携わっている者として、程度の差はあれ、自分にも似たような経験はある。
だから水分を取らないと。
そう思った矢先に、その人の手からペットボトルが滑り落ちた。
手に力が入らないのだろう。それでも下に落ちたそれを手探りで追おうとするような動きにはたまらず
自分の足が動いていた。
拾い上げ、もう一度握らせようとする。
けれどそれは叶わなかった。
先程まで弱々しいながらも懸命に動いていた手は、その時完全に脱力していた。
荒かった息も止まっている。
気を失ったのか。
一瞬ギクリとしたものの、すうっと眠るように意識が遠のく。それは別に珍しい事ではないからと
自らを落ち着かせ、その傍らに膝まづき、手にしていたペットボトルを相手の手へと返した。
27 :
襷 3/4:2011/01/10(月) 20:47:53 ID:rumhCbnA0
触れた指先は冷たかった。それをゆっくりと解き、もう一度握らせる。
そうして視線を上げれば、その人の唇は渇いていた。
本当は飲ませてやりたかった。
でもどうすればと思った時、ふと人が戻ってくる気配を背後に感じた。
反射的に焦り、立ち上がりながら視線を落とせば、その時その人のもう一方の手が自分の瞳に飛び込んでくる。
力などもう入っていないだろうに、それは今もたすきを握り締めていた。
なぜだろう、それが瞬間自分の胸に無性に切なく、悔しい気持ちを宿らせた。だから、
「そのたすき、俺がいつか繋いでやるから。」
無意識に口から出た言葉は、あても無ければ途方も無いものだった。しかしそれは、
才能がある。結果も残している。だから好きも嫌いもなくこれまでただ走ってきた。
そんな自分が生まれて初めて胸に抱いた、走りに伴う欲だった。
28 :
襷 4/4:2011/01/10(月) 20:49:09 ID:rumhCbnA0
「おーい、根元。ぼちぼち動けるか?」
耳にぼんやり届いた声に、すうっと意識が浮上した。
「……ぅ…ん…」
「まだえらいか?」
「……気ぃ失っとたみたいや…」
「おいおい、大丈夫か?」
「あぁ、もう大丈夫や。」
横たわっていた体制から起き上がろうとし、それを支えようとしてくるチームメイトの手を断って
椅子に座り直すと、根元は一度頭をしっかりさせるように首を横に振った。
そして聞く。
「レース、どうなっとる?」
「まぁ……最下位や。」
「俺のせいやな。」
「この競技に個人のせいは無いやろ。」
優しいけれど、気休めにもならない。そんなチームメイトの言葉に微かな苦笑を浮かべながら、根元は
弱気とはまた別の次元でやはり自分は選手には向いていないな、と声に出さないまま思う。
と、その時、
「……おまえ、水拾ってくれたんか?」
ふと視線を落とした自分の手の中の物に違和感を覚え根元が問うと、それに周囲の荷物をまとめ出していた
チームメイトは不思議そうな顔を上げてきた。
「ん?何の事や?」
「いや、俺確か寝とる時にこれ落として…」
「俺は知らんぞ。おまえ、夢でも見とったんちゃうか?」
逆に心配そうに問われ、そう言われてしまうと途端自分に自信がなくなる。それでも、根元はもう一度、
自分の手の中の水を見つめながら呟きを落としていた。
「誰かが側におった気がするねんけどな…」
選手から指導者へ。
進路を変えた根元がとある走りに出逢い一目惚れするのは、これからもうしばらく後の事となる。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
今後の馬尺伝とコーチの就カツ=婚カツが気になります。
ふたなりとか妊娠出産とかそういう特殊嗜好の作品でも投下していいの?
注意書きしておけば、あとは読む読まないは受け手の判断だから
良いのではないでしょうか?
何にせよ全てはネタですし
気になるならトリップ付けておけば
趣向が合わない人は避けることも可能ですしね
34 :
33:2011/01/10(月) 23:33:32 ID:3Vbv2ww80
ごめん、レス被った
>>18の続きで、時代劇「参匹がKILL!」より、素浪人の殿様×仙石。
訳あって殿様がオカマちゃん風味。エロなし。
全三回投下の最後です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「旦那、厚かましくって悪いんだけどさ、もう一つお願いがあるんですよ」
「構わん、俺に出来ることなら引き受けてやる。ただし、金絡みはいかん。俺の懐は大概寒い」
「ふふ、お金はちょっとは必要だけど、それは大丈夫。せんさんのを取っておいたから」
兵四郎は懐から、小判を二枚と懐紙に包んだ千吉の遺髪を取り出し、真之介の膝の前に差し出した。
「あたしのお墓に、せんさんを入れてやって欲しいんです。この一枚はお寺のお坊さんに渡して、ちょっとはましな供養をしてもらって下さいな。
どうせあたしのお墓なんて、ろくでもない出来に決まってるんだから。もう一枚はお礼として、旦那方に。路銀の足しにでもしてやって下さい」
「わかった、確かに引き受けたぜ。金もありがたく貰っておこう」
真之介は金と遺髪を一緒に懐紙に包み直し、懐にしっかりと入れた。
ほっと息をついた兵四郎は、さっぱりと清々しい笑顔になった。
「ああよかった。これで安心して、あの人に会いに行けるわ……ううん、待って。あのね旦那、もう一つだけ、我が儘言っていいかしら」
「いいとも。ただし俺は、金はあまりねえぞ」
からかうように駄目押しする言葉に笑い、兵四郎はじっと真之介を見つめた。
「旦那、あたし達この何日か、隣同士の布団で寝てたわね」
「うん、そうだな。お前は女だが身体は殿様なんだから、何も問題なかろう」
「そうね。でもあたし、いつだかの夜中にふっと目が覚めて……隣に眠ってる旦那の顔を見てる内に、変な気持ちになっちゃったのよ」
「変な気持ちたあ、なんだ」
「そのねえ、旦那の……口をね、吸いたく、なっちゃって」
「……ば、馬鹿!何言ってやがる」
唐突で意外な告白に、真之介は顔を赤く染めてうろたえた。あまりの狼狽ぶりに、兵四郎はくすくすと笑った。
「だってねえ、惚れた男に瓜二つの人が、すぐ側でかわいい顔してすやすや眠ってるんですもの。おかしな気にもなりますよ」
「そ、そりゃあそうかもしれんが、しかし」
「まあ、最後まで聞いて下さいな。あたし旦那の肩に手をかけて、そうっと唇を近付けたんです」
「う、うん……」
「そしたら旦那が、ぼんやりと目を開けてあたしを見つめるもんで、ちょっと慌てちまったんですよ」
「そ、それで?」
「旦那ったら、固まったあたしの顔を見て、それは嬉しそうに笑いなすった。それから『殿様』って呟いて、あたしに抱き着いてきなすったんですよ」
「なんっ……う、う、嘘だっ!」
「こんな嘘ついて、何の得があるもんですかね。抱き着いたまま、また旦那はくうくう寝ちまったんで、あたしもすっかり毒気を抜かれて……あんたの身体を布団に直してから、おとなしくまた寝ましたよ。旦那、覚えてないんだねえ」
いよいよ湯気が上がりそうな顔色になった真之介は、口をぱくぱくさせて兵四郎から目を逸らした。
兵四郎は慈母のように微笑むと、遠くを見つめるようにしてまた口を開いた。
「あたしね、死んでからも……死んだとは気付いてなかったんですけど、あの川のほとりにずっといたんです。せんさんは網元の息子だけど、家業が嫌いな人だったの。でも海は好きだって言ってた。
だからあたし、戻って来ないあの人はひょっとしたら海の側に暮らしていて、この川はそこに繋がっているんじゃないかしらって。そう思って、いつも川を見ていたの」
話題を変えられてほっとした真之介は、無言で頷き先を促した。
「そしたらある日、この八坂の旦那がやって来て、あたしのすぐ隣に立ち止まった。ふたりしてしばらく川を見てたんだけど、あたしなんだか、ずいぶんあったかそうな人だなって思って。
側にいると不思議と、すごく気分が安らいだんです」
「うん。こいつは、そういう男なんだ」
「ええ、本当にそう。それで今度は九慈の旦那がやって来て、八坂の旦那に声をかけたでしょ。この人はそりゃあもう、嬉しそうにあんたを振り返った。
あたしは目の前で笑ってるあんたを見て、てっきりせんさんが帰って来てくれたんだと思って喜んだ。そしたら、ぐいっと引きずられるようにして、この人の中に入っちまったんです」
「そりゃあつまり……どういうこった」
言わんとすることが今一つ掴めない真之介は、胸をぼりぼりと掻きながら尋ねた。
兵四郎は悪戯っぽく、歌うように耳元で囁いた。
「だからね、この人はあんたが好きなんですよ。あたしはその気持ちに、引きずられたんです」
「なっ……馬鹿!ふ、ふざけたことを言うなっ」
「ふざけてなんかいませんよ。あたしが何年、色の道でおまんま食ってきたとお思いだえ。これでもちょっとは、色恋を見る目はあるんだよ」
仰天して目を剥いた真之介を見据え、兵四郎は笑って啖呵を切った。
「八坂の旦那だけじゃないですよ。旦那も、この人を好いてるんでしょ」
「……お絹!」
「駄目だよ旦那、あたしにはわかるんですよ。いつかの夜のことだけじゃなく、あんたはぶっきらぼうな風でいても、いつもこの人のことを気にかけてるもの」
「そ、そりゃあお前が取り憑いて、ややこしいことになってるからだ!殿様だけじゃなく、お前の為でもあるんだ」
「うそうそ。例えばあたしがこの人以外に取り憑いたとしたら、旦那はあそこまで優しかったかしらねえ。ううん、元々優しい人だとは分かるけど、やっぱりこの人だったから、困りながらも旦那はあんなに親切だった。いつも愛しそうな顔をして、この人を見ていたのよ」
「いと、愛しそうって、どんな顔だ!」
「そりゃ、いろんな顔よ。今慌ててる、その顔だってそう。何も照れるこたないわ」
「……照れてねえ!」
真之介は真っ赤な顔で絶叫したが、兵四郎はころころと笑いこけ、実に愉快そうにそれを眺めた。
「まあいいわ、旦那が白を切ったところで見え見えなんだから。ふたりとも本当に、かわいいのねえ」
「……やかましい!おま、お前一体、何が言いたいんだっ」
「何って、あら、なんだったかしら……ああそうそう、お願いがあるんだった。旦那、聞いてくれるんでしたよね」
「う、うん……なんだ、言ってみろ」
あらたまった顔付きで見つめられ、真之介は深呼吸をして乱れた息と弾む胸の鼓動を整えようとした。
兵四郎はついっと右手を伸ばすと、真之介の顎に触れた。幾度も触れられた覚えのある感触が、真之介の胸をまた高鳴らせた。
指は緩やかに這い上がり、半開きの唇をそっとなぞった。
「あたしね、やっぱり触れたいんです。この、唇に……」
「お、お絹……」
「三年待ってたせんさんは、再び触れ合うことが叶わないままで死んじまった。あの人によく似たあんたの温もりを代わりに貰って、あたしはあっちに行きたいんです」
「だが、そりゃあ……千吉が妬きゃあしねえか」
「ふふ、優しい旦那。お世話になった旦那が相手なら、きっとあの人は許してくれますよ」
「し、しかし……」
「中身はあたしだけど、身体は八坂の旦那なんですからさ。惚れ合った仲だし、いいじゃありませんか」
「だっ、誰が惚れ合った仲だ!」
「もう、照れちゃって……それともやっぱり、本当の相手があたしだからいやなのかしら。仕方ないけどねえ、こんな女だし」
「いやっ、そ、そんなこたあねえが……」
からかった後に寂しげに目を伏せた兵四郎の言葉を、真之介は焦って否定した。兵四郎はにっこりと笑い、顔をぐっと慎之介に近付けた。
「嬉しい。じゃあ旦那……目を」
「う、わ、わかった……」
素直にぎゅっと目を閉じた真之介の肩に手を置くと、兵四郎も目を閉じて顔を傾け、ゆっくりと唇を触れ合わせた。幾秒か押し当ててそっと離すと、ふたりは目を開けた。
困ったように真之介が笑うと兵四郎も微笑み返し、その肩に腕を回して抱き寄せた。真之介も兵四郎の背に両腕を回した。
「ありがと、旦那。八坂の旦那にも、ありがとうって伝えとくれ。ずっと一緒にはいたけど、とうとう話は出来なかったからさ」
「ああ、必ず伝える」
「頼みましたよ。ふたりとも本当に、せんさんに負けないくらい、いい男だったよ……」
甘く耳元に囁くと、兵四郎は真之介の肩に顔を埋めた。
「お絹……?」
抱き着いて押し黙ったままなのを気にかけ、真之介が女の名前を呼ぶと、兵四郎は涙の跡が残る顔を上げた。
「俺だ、仙石」
「殿様……お絹は?」
「向こうへ行った。きっと千吉が迎えに来たんだろうな、嬉しそうにしていたよ」
「そうか、行っちまったか」
身体を離した兵四郎は、慎之介がため息混じりに呟くのを見て笑った。
「寂しいか、仙石。お絹に口を吸われて、満更でもなかったみたいだな」
「馬鹿、そんなんじゃねえ」
「そうか?俺は中で見ててちょっとばかり、妬いていたんだぞ」
「ばっ、馬鹿野郎!ふざけんなっ」
頬に朱を走らせた真之介を、兵四郎は穏やかに見つめた。
「……お絹からの言づてだ。ありがとう、だとよ」
「ああ、聞いてた。お前達の話は、みんな聞こえていた。俺達の仲について、お絹が言っていたこともな」
逸らそうとした話をまた引き戻され、真之介は慌てた。
「あ、あんなのは、女の戯言だっ」
「戯言か……俺はそうは思わんぞ。いや、思いたくない」
「と、殿様……」
「妬いたというのも本当だ。自分でも、狭量だとは思うが。気の毒な女の最後の頼みだからとわかっていても、俺が相手だと、お前はあんなに素直になってはくれんからな」
まあ仕方がないが、と笑う兵四郎を見て、真之介は眉根を寄せた。
この人は旦那が好きなんですよ、というお絹の言葉を思い返してしばらく目をつぶった。
「仙石、どうした?俺の言葉が、気に障ったか」
無言でいるのを気にかける兵四郎の肩を掴むと、真之介は上げた顔を彼の顔近くに寄せて傾けた。
そして兵四郎の唇に、自分のそれを荒っぽく押し当てた。
驚いた兵四郎が目を閉じる間もなく口を離すと、しかめっ面を真っ赤にして突き飛ばすように肩を離した。
「真之介……」
「うるせえ!何も言うなっ」
「しかし真之介、今のは」
「黙れってんだ、殿様!お前が、く、くだらん嫉妬なんぞ、するからだっ」
真顔になりいざり寄ってきた兵四郎から、真之介は喚きながら畳を後ずさりに這って逃げようとした。
兵四郎は腕を掴むと力任せに引き、気まずさと恥ずかしさに火照る身体を胸に抱き寄せた。
「は、離せ、殿様っ」
「真之介、頼む。このままでいてくれ」
「殿様……な、泣いてんのか?」
身じろいだ真之介は、触れ合う兵四郎の頬が濡れているのに気付いた。
「ああ、そうだ」
「なんでだ。何を泣いてんだ」
「何故だろうな。まだお絹の気持ちが、俺の中にあるのかもしれん……いや、違うな。俺は嬉しいんだ。ただただ、嬉しいんだ」
静かに優しく囁くと、兵四郎は真之介を抱いたまま、身体をそっと横たえさせた。
流れ滴る涙を頬に受けた真之介は、覆い被さる背中に腕を回して抱きしめ目を閉じた。
淡い闇と静寂が、抱き合うふたりをひそやかに包み込んだ。
女は川を見ていた。
滔々と流れる水に切なる想いを託し、いつかはきっと海にたどり着くと信じて、ひたすらに川を眺め、祈り続けた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
蛇足・お絹さんのイメージは在りし日のタイチキワコさんだったり。
最後までお読み下さり誠にありがとうございました。
あと処々にてお言葉を下さった姐様方、身にあまる喜びでした。ありがとうございました。
>>40 はらはらと髪が抜け落ちたじゃないですか!
すばらしく萌える話をありがとうございます。
保管庫何かあった?
あれ?繋がらない…
保管庫管理人です。
メンテナンス中にサーバ上のファイルが全部消えるという事態が発生しました。
現在、ローカルに保存していたバックアップから再びアップロード中ですが
FTPが重いので少々時間がかかっております。
最後にバックアップを取っていたのが2010/12/31になるので、ここ10日ほどの
wiki変更分がやり直しになってしまいそうです。
本当に申し訳ありません。
>>44 いつも管理ありがとうございます
気長に復旧をお待ちしております
>>44 本当に本当にいつもありがとうございます。
どれだけお世話になっているか…
感謝。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ナマモノ、某移動王国の宰相×王様
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| デビュー前イメージだから今とキャラが違うのに注意してね
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
49 :
1/4:2011/01/12(水) 02:35:03 ID:2sI5+rf20
どこにでもある安アパート、そのまた一室。
そんな場所でも、簡単な録音機材さえ用意すれば、立派なスタジオに早変わり。
巧みなタコ足配線で繋がったパソコンマイクキーボード、あと良くわからない諸々の機材が我が物顔で席巻する手狭な空間を眺めまわして、
いやあまったく時代は便利になったものであると改めて感心した。文明の進歩様様だ。
俺自身はざっくりとした作曲こそ家でやれるものの、音楽スタイルの関係上アコギをじゃんじゃか鳴らしたり、
バンドに任せることが多いから、どうしても収録は家だと難しいところが多いのだけれど、
DTMの打ち込み中心、一部生音という彼のスタイルなら結構な割合の作業をこの家の中で終わらせることが出来るのだ。
ちょいとしたお隣近所の方々への配慮の心さえあれば、案外苦情は来ないもので、
午前の収録はつつがなく終わらせることができた。
ちーん。
そこまで考えたところで、レンジが温めを終了する小気味良い音を立てた。
「はいはーい」
誰にともなく返事をしつつ台所へ向かう。
ほかほかと湯気を立ち上らせるコンビニ弁当の淵をつまみ、予想以上の温まりにあちちっと声を上げながらテーブルへと放った。
家スタジオの便利なところは、スタジオ以外の用途に使えることだ。
仮眠を取るのも、だらだらと雑談して時間を費やすのも、こうやって好きな時間に飯を食うのもはばかることはない――いや、寧ろ当たり前なんだけど。家だし。
「Re/voちゃん、俺自慢の飯を召し上がれ☆」
「……何だか本当にすみません……」
俺渾身の場を和ますギャグを見事にスルーして、目の前の青年は身を縮こまらせた。家主は彼だというのに、俺の方が堂々としている気がする。
家主。そう、彼が今回の俺の音楽のパートナー、Re/voちゃんである。
外見としては、微妙に垢抜けない暗めの茶髪に眼鏡をかけた、何処にでもいそうな地味寄りの兄ちゃん。表現が非常にありきたりだが、これ以上のものは浮かびそうもない。
この傍から見れば平平凡凡な人間が、音楽の才能の点は(同業者としてのの嫉妬さえ抜きにすれば)手放しで『最高』と言えるのだから、人は外見によらないものだ。
50 :
2/4:2011/01/12(水) 02:35:36 ID:2sI5+rf20
「コンビニ飯くらいで恐縮しないでよ。
ほら、冷める前に食っちゃおうぜ。午後も収録続くんだし」
パンやらおにぎりならまだしも、如何せん俺が買ってきたのはパスタだ。冷めて固まり、尚且つ伸びきったパスタ程物悲しい食べ物はなかなかないだろう。
しびれを切らして、ビニールに包まれたプラスティックのフォークを彼の前に突き出すと、漸くRe/voちゃんは俺の手からフォークとパスタ容器を受け取った。
「本当に良いんですか?Ji/mangさん」
「これで取り上げたら俺わりとガチで鬼でしょ」
Re/voちゃんがやたらと恐縮している原因は、このコンビニ飯が俺のおごりだという点だ。
昼食を取ってこいと勧めつつ、自分は食べる様子が見られないので一緒に行こうぜと誘ってみたら、
しぶしぶと「CDを作り込んでいたら、いつの間にか生活費までつぎ込んでかつかつだ」と理由を告げた。
それを聞いての感想は、一点集中タイプだなあと呆れ半分羨み半分、それくらい言えよ俺そんなに頼りないかよと言う不満がほんのひとかけ。
とりあえず聞いた以上はと俺が纏めてRe/voちゃんの分と俺の分、コンビニで買い出しをしてきたのである。
俺とてRe/voちゃんと同じインディーズのアーティスト(俺としてはエンターテイナーを自称してる)、金に余裕があるわけではないが、
一回り年下の若造が腹を減らしているのを放っておいて一人で飯を食いに行くほど非情ではないのだ。
51 :
3/4:2011/01/12(水) 02:36:23 ID:2sI5+rf20
どうやら俺が最初に食べるのを律義に待っているらしく、Re/voちゃんはフォークのビニールをのろのろ剥がして間を持たせている。
「んじゃ、いただきます」
「いただきます」
あまり待たせるのも酷であるし、率先して手を合わせ、パスタを口に突っ込んだ。
んー、ちょっと冷めたか。
口に広がるカルボナーラのまったりとくどい口当たり。程良く濃い味付けが、鳴る寸前まで減った腹には丁度いい。
次いでRe/voちゃんもパスタを頬張り、ゆっくりと咀嚼する。頬が緩んでいるのを見ると、どうやらご満足いただけたようだ。
「うまい?」
「ええ。ありがとうございます」
「そりゃ結構」
「気遣いさせてしまって本当にすみ……」
「感謝するんだったら『ごめん』禁止」
「…………」
続く言葉を封じられたRe/voちゃんが、むぐむぐと口の中で言葉をこねる。
数年前からRe/voちゃんの音楽活動にゲスト的な形で出演させてもらって以来、結構な付き合いだが、まだ微妙に収録の時間以外は遠慮がちな気がする。
……逆に言うなら、収録の時間は鬼も裸足で逃げ出す厳しさだったりするんだけど、その点に不満を言うつもりは無い。
これでも初対面で俺が抱いた「愛想悪い奴だな」という印象よりは大分進歩していたりするんだから、単に人見知りなのだろう。
「腹が減っては戦は出来ぬ、ってね」
ずぞぞ、と蕎麦のようにパスタをすすり、Re/voちゃんに笑いかけた。
52 :
4/4:2011/01/12(水) 02:36:51 ID:2sI5+rf20
一旦食べだすと遠慮は薄れたらしく、Re/voちゃんは順調に食事を進めている。
黙々と、但し非常にご満悦な様子で食べ進めている姿は、何とはなしに小さい犬を彷彿とさせる。
きゃんきゃん騒ぐタイプではなくて、静かにちょろちょろ、但ししっぽだけは感情を露わにしている感じの奴だ。
彼が犬だったら、今は、尻尾がぱたぱた揺れているに違いない。
なんつーか、ちょっと可愛いかもしれないなあ。
成人を過ぎた野郎相手に小型犬みたいだという感想を抱くのは失礼かもしれないが、抱いてしまったものは仕方ない。
理屈ではないのだ、こういうものは。
衝動のままに、手を伸ばす。
「わっ、Ji/mangさん、何するんですか!」
それこそ犬にするようにわっしゃわっしゃと頭を撫でてみると、残念ながら犬ではないRe/voちゃんは抗議の声を上げた。
「いやー何となく。愛でてあげたくなって」
「何となくって……」
「飯の代金代わりだと思ってよ」
そう言うと途端に黙ってされるがままになるのは、素直すぎやしないだろうか。
「ま、午後も頑張りましょーねということで」
くしゃくしゃになった頭をぽんとひと叩きして離すと、むうと口をへの字にしたRe/voちゃんが頭を守るように抱えた。
「Ji/mangさんのこと、まだいまいち良く解らない……」
そりゃまた残念。俺はこんなに単純明快、欲望に忠実だというのに。
呻き声をあげるRe/voちゃんの耳がほんのり赤らんでいる。
もしかしなくても、照れてるのだろうか。
……やっぱり、こいつ可愛いんじゃなかろうか。
それを目にして、何とも形容し難い衝動が湧き上がってしまったのは、俺にとっても不意打ちだった。
誤魔化すように手を打って、さあそろそろ休憩はしまいにしようか、と言うと、ほっとしたようにRe/voちゃんはそれに賛同する。
相変わらず音楽のこととなると途端にスイッチが切り替わるRe/voちゃんの性格なら、俺の誤魔化しには気付かないだろう。
ちょっと厄介かもしれない彼の性格に、俺は今回ばかりは感謝した。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ジャンルスレを見て衝動に逆らえなかったよね
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| そもそもこれカプ小説と言っていいものやら
| | | | \
| | □ STOP. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
暖かいお言葉有り難うございます。ご迷惑をおかけして本当に申し訳ない。
なんとか復旧が完了いたしました。
あと、感想BBSを移転というか新しく新設いたしました。
最近、感想掲示板に業者の広告書き込みが増えてきて、管理人さんが不在の為に
削除もままならない状態になっているので、管理できる掲示板に変えた方が
いいかなと思ったので。
個人的に専ブラで読めたら便利だなと思ったので、2ch形式の掲示板に
なってます。
http://bbs.kazeki.net/morara/
>>54 乙です。またありがたく利用させていただきます。
>>54 ナイスリカバーとチューンナップ、いつも本当にありがとうございます。
勢いで投下させていただきます。
半生、要義社Xの検診(映画版)の物理×数学です。
事件がきっかけじゃなく二人が再会してたら…という設定です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「君は…」
「なんだい?」
「いや、なんでもない」
「言いかけてやめるなんて君らしくないな」
くすりと目を細めて笑った石上に、油川は返す言葉がなかった。
日頃から非論理的なことは受け付けないというのが口癖なのに、さっき出かかった言葉ときたらこうだ。
(君はまるで数学の花園にいる妖精のようだ)
どうだ。この非論理的な空想、いや妄想の情けないことといったら。
(ありえない)
さすがの油川でも、常であればこんな類の発言をする人間――例えば度々大学を尋ねてきては空想や妄想を論じる女刑事など――にはっきりとそう答えるだろう。
17年ぶりに再会しても、石上は石上のままだった。
数学を愛し、時には数式の波に溺れ、時にはそれを操り、それと対話する。
油川は物理に常に一歩も二歩も引いた目で対峙しているつもりであり、それが正しい学者としてのあり方だと思っている。
それに対し、石上は数学に己の全身全霊を預けてしまう。だが石上に限ってはそれを愚かなこととは思えない。
何故なら数式と戯れている彼の姿は完璧なまでに無垢であり、
(それゆえにとても、美しい)
そう思う。
油川の口から花園だの妖精だのという妄言が飛び出そうになるくらいに、だ。
恋は人を詩人にさせる、とは誰が言った言葉だろう。
(恥ずかしくて蕁麻疹が出そうだ)
油川は薩摩切子の猪口の中身を勢いよくあおった。
現在石上が住んでいるアパートの場所が知れてから、油川は足しげくそこへ通うようになった。
石上の部屋は典型的な男のやもめ暮らしの様相をしていたが、何故だか居心地がよかった。
畳敷きの部屋に簡素な家具、書棚には数学関連の本やレポートが並び、それ以外には生活に必要最低限のものしか置いてない。
彼には必要のないものだからだ。
デスクにはパソコンと、やはり数学の書籍がうずたかく積まれている。その脇にはちょこんと、電動の鉛筆削り器が置かれていた。
学生時代にふと、油川は石上に質問したことがある。
「君は何故シャープペンシルを使わないんだ?」
書くたびに芯が丸まり、何度も削らねばならないのは面倒じゃないのか、と。
「僕こそ、なぜシャープペンシルが重宝されるのかわからない」
という答えが返ってきた。シャープペンシルの芯はいつなくなるかもわからない。
ノックした回数をいちいち数えていれば予測することはできるだろうが、それこそ面倒だ。
書けるのか書けないのか、鉛筆はそれが一目瞭然じゃないか。
そう言うと石上はがりがりと後ろ頭を掻きながら、また数式に目を落とした。
部屋で鉛筆削り器が動く音を聞くと、油川はそんなことを思い出す。
石上の部屋に顔を出すたびに油川はなんらかの手土産を持ち、石上はそれを見て無邪気に嬉しそうな顔をした。
土産はたいがい酒やその肴であったが、今日はちょっとした酒器も持ち込んだ。
「君が気に入るかと思って持ってきた」
そのガラス細工を手に取った石上は
「規則性のあるものは嫌いじゃない」
そう言って目元を緩ませた。
一対の猪口と徳利で、赤や青のガラスに順序良く鋭い切れ込み模様の入った、スタンダードなものだ。
人はそれを見て、綺麗だ、美しいという。その色の鮮やかさ、細工の見事さ、丁寧さに。
しかし石上は人とはまるで違う視点から物を見ているのだ。
「ふ…ぁっ…!」
薄暗がりの中で、石上の身体が触れられて大きくビクッと震えた。
この世でただ一人、天才と呼べる男の考えていることは油川にも及びのつかないことがある。
いやむしろ自分自身の行動に及びがつかず、今でも戸惑ったままだ。
シュンシュンと、石油ストーブの上のヤカンが控えめに音を立てる。壁の薄い部屋だが不思議と冬でも寒さは感じない。
こうして二人、ベッドで身体を重ねているせい――という訳ではないはずだが。
初めはただ、手を伸ばしただけだった。
猛然と数式の証明に取り組んでいた石上が、ふとデスクチェアから立ち上がり、代わりに隣にあったパイプベッドに腰掛けた。
酒よりも何よりも石上を喜ばせるのは、数学の難問だった。油川はそれを手に入れるために
うーんと背伸びをするその姿を、油川は隣の部屋から目を細めて見ていた。
背を丸めデスクに向かう石上の後ろ姿を肴に、油川は愉快な酒を飲むことができる。とても快適な空間だった。
「どうした、もう終わったのか?」
「いや…もうちょっとかかりそうだよ…久しぶりに手ごたえを感じるんだ」
そう呟いた石上の顔は本当に幸福そうだった。そこは深夜の安アパートの一室であるはずなのに、
彼の周りだけは柔らかい陽光に包まれているかのように見えた。
まるで何かの小動物と会話するかのように、天井をぼんやりと見つめながら愛しそうな顔で微笑む石上の身体は、
浮世にあっても心は別の世界で遊んでいるのだろう。
(どこかへ飛んでいきそうだ)
全く、非論理的な話だ。重力や大気の条件を変えず、人間の身体を宙に浮かばせることなどできないのに。
元々、油川と石上は共鳴しあう部分がある。向いている方向も同じだ。
(しかし僕らはお互い全く別のエレメントに存在している)
と油川は思っている。17年前からどんなに親しくなろうとしても、その透明な壁は突き破れない。
相手の表情や向いている方向も見えているが、どちらかがどちらかの世界へ行くことはできないのだ。
石上に限っては、こちらの世界へ来ることなど考えたりもしないだろう。
(こんなにももどかしいことがあるだろうか?)
油川は物言わず立ち上がり、ベッドのそばまで行った。石上を見下ろす。石上もまた、油川を見上げた。
油川はおもむろに石上の左手首を取った。そしてそのままベッドに縫い付け身体を引き倒し、流れに任せてその上から覆いかぶさった。
石上も抵抗などせず、ただベッドにぱたりと背中から倒れた。
「な…なに?」
石上の物言いは大学生だった17年前と同じように聞こえた。
こんなことを本人に言ったらどう思われるかわからないが、少し幼さを残したような舌足らずの話し方。
目を見開いて、下からじっと油川を見つめている。その薄く開いた唇に油川は自分のそれをそっと寄せ、触れる手前で呟いた。
「僕は、酔ってはいない」
その言葉を聞いても、身体の下にいる男はなんの反応もしなかった。
でも唇が触れる段になってようやく石上から、えっ?と小さな声が漏れ、同時にその身体がビクッと跳ねた。
「…っ…ぁっ…!」
耳の裏に柔らかく唇を落とすと、石上から引き攣れたような声が漏れた。
石上の、アイロンもかけていない洗いざらしの白いコットンシャツ。
そのボタンをするすると外していく油川の顔は何食わぬ顔をしているように見えるが、その目には慈愛の色が浮かんでいた。
鉄面皮の油川も、石上には何故か出来得る限り柔らかく、優しく接したくなる。
開いた襟元にそっと鼻先を埋めると、石上は恥ずかしそうに身を竦ませた。
「…っ…」
泣き声のような吐息に、嫌だっただろうか?と石上の顔を覗き込んだ油川は、目を見開いた。
石上はまっすぐに油川を見ていた。その目は――難問に取り組んでいるときと同じように――透き通っていて、涙で潤んでいた。
それは丸っきり子供のようにあどけなく、油川の胸を締め付けた。
このとき、石上の目は確かに油川を捕らえ、油川もまた、確かに石上の目の奥からその心の中を捕らえていた。
(透明な壁は、本当に存在していたのだろうか?)
17年前から感じていた、越えられない何かの存在を疑うくらいに、石上は近くにいた。
いや、彼は初めからずっと、そこにいたのかもしれない。
ただこの瞬間、自分は確かに石上と同じ世界にいるのだと、少なくとも油川はそう感じた。
再会するずっと前から心に溜めてきた感情が溢れ出し、油川は石上に熱く口付けた。
「き、君は、何故、黙ってるんだ?」
何度か言おうとして何度も失敗し、暗がりの中であまり役に立たないはずの眼鏡を
おぼつかない手つきで掛けることに気を傾けながら、ようやく尋ねることができた。
自分から押し倒しておいて訊くことではないが、油川はそうせずにはいられなかった。
石上は黙っているどころか、ろくな抵抗もしなかったように思う。
油川の手が恥ずかしい部分に及ぶとさすがに身体が逃げを打とうとしたが、それも容易く封じられるようなものだった。
「君は、意味のないことはしないだろう?」
石上はそう答え、油川の身体の下で驚くほど穏やかに微笑んだ。
(なぜだ)
石上がいわゆるセクシャルマイノリティであるという話は聞いたことがなかったし、
なにより自分がそうであるという話も生まれてこのかた聞いたことがないし、
自分がこんなにも感情にのみ任せた行動に出てしまうなど、決してありえない。
油川にしてみれば全てが腑に落ちない。
それゆえ、油川が石上にした行為の意味を問われても、それに答えるのは今の油川には難しいことだった。
全ての現象には必ず理由がある。
(それをiなどという、訳のわからないもので片付けるつもりはないが)
ひょっとして石上は何もわかってないのだろうか?何も感じてないのだろうか?
「いしが…」
「いや、それよりも僕が黙っていることに意味がある、と言ったほうがいいかな」
白いシャツに埋もれながら、ぼんやりと下から油川を眺める石上の表情は解け、柔らかい。
「…君に、この意味がわかるかい?」
そう言って石上はふわりと笑ったが、この瞬間、油川には実にたくさんの問題の解を求める義務が課された。
(さっぱりわからない)
何故シングルのパイプベッドに、裸同然の姿の男が二人、重なり合っているのか。
いや重なり合っているだけでなく、もっと色々な行為も行ったわけだが、
行った上で何故石上がこうして平静(この平静という定義も曖昧であるが)でいるのか。
「ふむ」
ここはひとつ、基本に帰ろう。
(わからなければ仮説を立て、実験で実証していくしかあるまい)
現象は目で見て確認できるのだ。これほど明らかなことはない。
油川は不敵に愛用のフチなし眼鏡をひとつ、指でずり上げた。
しかし油川がどのような仮説を立てようが、実証は既に済んでしまっているのだが、残念ながら今の油川は混乱していた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ありがとうございました。ナンバリングミスすみません。
天才同士のセクロスはどんなものか想像ができないのですが、
将棋みたいに全部頭の中だけで完結しそうなイメージでゲソ
____________
| __________ |
| | | |
| | |> PLAY. | |
| | | | ∧_∧ 退カヌ媚ビヌ省ミヌ
| | | | ピッ (*´ω`*)
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
いつも書いてるののスピンオフ的作品の劉家拳伝承者×主人公
ふたなり・妊娠出産・女絡み・眠れる森の美女パロという危険思想なので注意。
正直血迷った。
余りに酷いので葬り去ろうかと思ったが勿体無いので投下。
何が酷いかって、魔法使いの性格が一番酷い。
昔々である。呪いにかけられた城があった。いや、城と言うか、家かもしれない。
そして呪いにかけられているのは、城ではなくてその家主だった。
「…ここか」
さて今ここに立っている宗武という男は、バカなので…いや、バカではなく、
この城に纏わる伝説…というか噂を聞きつけてここにやってきたのである。
その噂と言うのは、「この城にかけられた数々の罠を突破し、呪いによって自室で眠りについている美しい城の主と契りを交わし、
その城の主が目を覚ませば、自らの望む物が手に入るだろう」という物である。
宗武はそういう信憑性の無い話が嫌いなので、そんな話を全く信じてはいなかった。
ただ、この噂が広まって以来、この城の罠を突破した者はいないというので、突破してみたくなっただけの事である。
どうせこんな話は嘘なので、城の中の部屋に行っても何もないだろうとは思う。
まあ、もし万が一本当だったら面白いなと思いつつ、多分「そんなわけはねえ」と思って入ってみた。
「フッ…どんな罠もこの北斗劉家拳の敵ではない!」
とりあえず建物の中に入るまでの罠は難なく突破した。
それから城主の部屋とやらを探すのに部屋を開ける度に罠があったが、それも難なく突破した。
宗武としては非常に物足りなく思えたので、明らかに寝室とは思えない部屋もわざわざ開けて罠を発動させてみた。
つまらなかった。
宗武と言うのはずっとこの数年何をやっても虚しいような、虚無感に支配されており、
とりあえず戦争を引き起こしてみたり武器を売ってみたり平和の架け橋になるような人物を惨殺してみたりと
争いを引き起こすような事をしていたが、どうも何をやっても憂さ晴らしにはならない。
そこでこういう明らかに嘘くさい伝説とやらにも乗ってみたのだが、
「詰まらん」
それで最後の部屋まで来た。
数十年間開けられた事が無いと推測される扉だった。
錠が下りていたので錠を破壊すると、部屋に入った。確かに寝台に人が寝ていたが、
「…おい」
思わず声が出た。
「男じゃねえか」
確かに別にブサメンではない、容姿からすればかなりいい方ではあるが、男。どう見ても男である。
「…帰るか」
「フォフォフォまあそう急くな」
寝台の反対側から声が聞こえて驚いてそちらを向くと、妙な老人が座っていた。この俺に気配を悟られないとは一体何者だ。
「なんだジジイ」
「契っていかんのか?」
「晩飯でも食べていかんか?」みたいな軽いニュアンスで老人は言った。
「男じゃねえか」
「別にワシは女だとは言っておらんぞ」
噂の元凶はコイツか。
「契って、彼…拳志郎が目を覚ましたらおぬしの望むものは手に入るぞ?」
「俺はそういう物に興味はねえ」
「まあそう言うな、契るだけだったらタダじゃぞ」
どっかの悪徳業者のように頻りに勧めてくる。鬱陶しい。
「おぬしも折角ここまで来たんだし」
そういってジジイは消えた。
契るだけなら…って拳志郎は新聞か何かか、と思って拳志郎を見やった。
まあ確かに顔だけなら大分いい方だし、体格はかなりいい方だが宗武の方がもっと体格がいいのでそこは気にならない。
「…」
どうせ家に帰ってもやる事が無いのだし、一丁やってみるか、という気になった。
鏈ってる最中や鏈った直後に目を覚まされたら面倒だと思ったが、自分には北斗劉家拳があるので大丈夫だろうと思った。
試しに拳志郎を抓ったり引っ張ったり打ん殴ったり目を覚ましそうな秘孔を一通り突いてみたりしてみたが、
目を覚ます気配が無い。ただ単に寝ている人間だったらこれで目を覚ます筈なので、
やはりこの男には呪いなり何なりが掛ってるのかもしれない。
とりあえず拳志郎の服を全部脱がせてみて、試しに一回射精させてみたが、それでも目を覚まさなかった。
そこで自分も服を脱いで寝台に上がった。
どうせ相手は寝ているのだから、愛撫せず一気に挿入していいだろうと思って手を伸ばすと、何か違和感を覚えた。
「?」
思わず見た。
「…おい、どうなってんだジジイ」
「呼んだかの?」
いきなり現れた。
てめえ今まで見ていたのか的な文句をつけるのも宗武は忘れていた。
「どういう事だ」
「見たままだがの?」
「なんで穴が二つあるんだ」
「生まれつきじゃよ」
消えた。全く何の説明にもなって無かった。大体「生まれつき」というのも本当か信用し難い。
あのジジイが呪いをかけた時一緒にこういう体になったのかもしれない。
しかし後ろに突っ込むのは前に突っ込むのに比べて大変だとか聞いた事があるので、手間が省けていいかもしれない。
ということで、鏈ってみた。
拳志郎は目を覚まさなかった。
「…おい」
こんどは老人は現れなかった。
最近ご無沙汰だった事もあって10回ぐらいやってみた。後ろにも入れてみた。
或いはと思って拳志郎の陽物を自分の後ろにも入れて見たりしたが、目を覚ます気配が無い。
「…おい」
あれか?騙されてたのか?
そこで宗武はある事に気付いた
「契りを交わし、目を覚ませば、望む物が」というのが噂の内容で、
確かにあのジジイも「目を覚ませば、望む物が」っと言っていた。
「契れば目を覚ます」とは誰も言ってなかった。
「…」
嵌められた。やはりこういう信憑性の無い話に乗るべきではなかった。早く身なりを整えて帰ろうと思った。
しかし今自分の下で色々な液塗れになっているこの男をどうしようかと思った。
このまま放置していくのは流石に気が咎めたので、風呂場に抱えていって洗ってやった。
多少の呻き声は発するものの、起きる気配はない。さっき鏈っていた時と同じような反応だ。
洗い終えると、拭いてやって、ちょっとしたサービス精神で新しい服(部屋の箪笥から出した)を着せてやって、
寝台の汚れた敷布等取り換えてやって、寝台に寝かせてやって、部屋から出た。
そのまま帰ろうと思ったが、腹が減った気がしたので、台所へ行って何か食べようと思った。
数日後。
宗武はまだ拳志郎の家に居た。「どうせ家に帰っても退屈なだけだ」と自分に言い訳するが、
どう考えてもずっと寝ているだけの拳志郎と一緒に居る方がずっと退屈な筈である。
自由に鏈れるとはいえ、そんな事は家に帰って女を買うなりなんなりした方がずっといい筈である。
寝ていて碌な反応を返さない拳志郎を抱いていても詰まらない、筈である。
「…」
数か月後。
宗武はまだ拳志郎の家に居た。
まだ宗武は自分への言い訳を欠かさない。「退屈凌ぎだ」と自分に言い聞かせているのである。
そう、毎日契るのも風呂に入れるのも髭を剃ってやるのも全部退屈凌ぎなのである、多分。
月日が流れた。
最近宗武はある事に気付いた。
腹が出てきている事である。
自分ではなくて、拳志郎の。太ったとかそういう意味ではなくて。
なので観察日記をつける事にした。
日に日に腹が大きくなっていくのを見て、鏈るのを憚っていたら、拳志郎が元気が無くなってきた気がする。
あれか、こいつは寝ているのになんで痩せないのかと疑問だったが、ひょっとして俺との契りで栄養を得ていたのか。
どんな物の怪だ。多分これも呪いの一環なのだろう。全く自分はオカルトの類は嫌いだというのに。
しかしだからと言って鏈る訳にもいかない。しょうがないので闘気を送り込んだらそれで元気になった。全くあのジジイは本当に変態だ。
それで数ヶ月したら産まれた。乳はどうすんだ、と思ったが、どうやら出るらしい。どうなってんだ。
一年数ヶ月が経った。
宗武はまだ拳志郎の家に居た。ガキの世話とは面倒な物だ。世話の合間に本棚の本でも読む。もう何度も読んだ。
しかし本棚の本を読んでいると未だ会話した事のない拳志郎という人間の人となりが多少なりとも分かる気がするのだ。
そう、自分は拳志郎の事を何一つ知らない。もう何年もずっと一緒に暮らしているのに、何一つ知らない。
いや、これは「一緒に暮らしている」と言える状況なのだろうか。
よくよく考えたら自分が勝手に上がり込んで勝手に世話をして勝手に鏈っているだけである。
拳志郎に目を覚ましてほしいとは常々思っていたが、目を覚ましたら不法侵入と強姦魔の誹りは免れないであろう。
「…」
そう考えると起きて欲しくないのだ。
本の余白の汚ないメモ書きももう暗記するほど見飽きた。本は全部読んだ。日記に書く感想も無い。
…いや、まだ読んでない本が一つだけある。拳志郎の日記である。
余りに字が汚いので今まで読む気がしなかったのだが、いい加減読む本も無いのでこれでも読むかという気になった。
人の日記を勝手に読む事について多少の躊躇いが無いでもなかったが、
もう拳志郎が目を覚ましたら非難されるであろう数々の禁忌は犯しているので今さらである。
読んだ。
重要な部分を掻い摘んで話すと、
「女房が死んで毎日酒とタバコに溺れて嘆いていたら、怪しいジジイが現れて、
『死んだ女房が転生を果たすまでここで眠らせてやろう。
生まれ変わった女房が寝てるお前と契りを交わしたら目覚める』
というので承諾した。しかし『契りを交わす』というのは些か問題ではないだろうか。
『口づけをする』とか条件を緩和できないか明日交渉しようと思う」
という事であった。
「…」
思わず日記を床に叩きつけた。拳志郎が目覚めない筈である。その女房の生まれ変わりとやらでなければ、目覚めないのだ。
「望む物が…」というのは、要するに女房にとって望む物は拳志郎なのだから、ただ単に拳志郎が目覚めるという意味なのだろう。
数日後。
ガキと一緒に居間でメシを食っていると、誰かが城に入ってきた気配がした。暫くすると女が現れた。
「あなたがこの城の主?」
「違う」
「じゃああなたも噂を聞いてこの城に?」
「そうだ」
「もう城の主に会った?」
「まだだ」
「なら私が先に会っていいかしら?」
「構わん」
「あら、城の主と契りを交わせば望みの物が得られるというのに…あなたは欲しくないの?」
「俺はただ暇つぶしに来ただけだ」
「そう…子供連れで?」
「そうだ」
女が拳志郎の部屋へ消えて行ったのを見て、宗武は、「…帰るか」と呟いた。
さて、拳志郎は目を覚まして驚いた。死んだ女房そっくりの女性が裸で自分の上に乗っていたら誰だって驚く。
「…あんたは?」
「私よ拳志郎!生まれ変わって、あなたにもう一度会いに来たの!」
宗武は山道を歩いていた。敷地自体が広大なので、延々と一本道を歩く羽目になるのだ。
ガキは歩くのが遅いしすぐギャーギャー喚くので眠らせる秘孔を突いた。抱えて行った方が早い。
歩いている途中で、宗武は自分の日記を拳志郎の本棚の中に忘れてきた事に気付いた。
突き詰めて言えば犯罪録である。自分が、拳志郎に対してした。
もう二度と会う事もないだろうから構わないかと思っていると、誰かが後ろから接近してくるのに気付いた。非常な速さで。
宗武も走ったがすぐに追いつかれた。
「よお」
タバコを咥えた拳志郎である。
「初めまして…かな?」
「…」
「まあ、あんたにとっては俺は初めましてじゃないんだろうけど、俺はずっと寝てたからあんたの事知らねえしな」
「…」
「名前は?」
「…劉宗武」
「ふーん。あ、その子俺が産んだんだろ。ちょっと抱かせろよ」
そう言って宗武の手から半ば子供を奪い取ると目を覚ます秘孔を突いた。
子供は目を覚ますと「まー」と言って拳志郎に懐いた。
「…秘孔を使えるのか」
「ああ、俺は北斗神拳伝承者だからな。…今までずっと寝てたから、多分今は他の奴が伝承者になってるだろうけど」
「その通りだ」
「あんたは?」
「俺は北斗劉家拳伝承者」
「ふーん」
「ずっと寝てたのか」
「そりゃお前見てたんだからわかるだろ、寝てたんだよ」
「その間の記憶は無いのか」
「無いよ」
「…」
宗武は拳志郎が子供をあやしているのを見ていたが、暫くして、
「もういいだろう、返せ」
「なんで返さなきゃならん」
「俺のガキだ」
「俺のガキでもあるだろ」
「…てめえの女房の前で他の男との子供を育てるのか?」
「お前も一緒に暮したらどうだ?」
「あ?」
「あじゃねーよ」
「お前、正気か?」
「ああ?」
「なんで見ず知らずの奴と同居する」
「見ず知らずじゃねーだろ」
「…俺は貴様が寝ている間ずっと勝手に貴様を」
「んー、まあ確かに知らない間に処女喪失したのはちょっと残念だったかなー。初産の喜びや授乳の喜びも味わえなかったし」
「大体、貴様の女房が許さんだろう」
「いや、俺の頼みだったら結構聞いてくれるよ?」
「…いい、そいつは貴様にやる」
子供を抱いたままの拳志郎を置いてその場を去ろうとした。すると子供が気付いて「まー」と言って泣きだしたので、
「ほら、こいつもお前がいいって」
「貴様の女房が、子供はともかく、俺を受け入れる気になるとは思えん」
そう言うと拳志郎はわざとらしい溜め息をついた。
「やっぱりそう思う?」
「当然だろうがボケェ!」
「だよなー。…あーお前との契りで俺が目覚めてたら良かったのに」
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧
| | | | ピッ (*´ω`*)
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ごめんちょっとサラダバーしてくる
>>58 GJ…!
映画を見てこの二人にハァハァしてたからたまらん!
石上と一緒にいる油川の表情の柔らかさはやばい
>>58 何というGJ!! 禿げ上がるほど萌えました!
ドラマ木目木奉のラムネ→ミナトすこし缶も。
エロ的なものは全くありません。
映画のネタがほんのちょこっとでるのでご注意を。
設定間違えてたらごめんなさい。
太河内春樹が己の甘さを痛感したのは目の前に竹刀が差し出された時だった。
戸惑う太河内をよそに道場内は沸き立ち拍手する者さえいる。
「奏が太河内さんに勝負を挑んだ!」
後輩の誰かが叫ぶ。
「奏、太河内さんからポイント取ったら昼飯奢ってやる」
「後輩に負けんなよ太河内ィ」
同僚たちが適当なことを言っている。太河内は頭を抱えたくなった。
頭が痛い。
そもそも通常稽古を終えたのだからいつも通りに早く道場を立ち去ればよかったのだろう。
それを、何の魔が差したのか分からないが今日に限って道場で一息をついた。
それが悪かった。
道場の片隅で一息ついている太河内のもとへ、奏哲郎がやってきてしまったのだ。
言葉の出ない太河内に奏は笑う。
「今日こそ一本勝負お願いします、太河内さん」
この事態が全くの想定外だと言えばそれは嘘になる。
むしろ、腕に覚えがあり常に上を目指す奏がいずれ太河内に挑んでくると
全く思わない方がどうかしていると言えるだろう。
だからこそ、太河内は常に真っ先に道場を去っていたのである。
道場内に在っては、何故か不機嫌そうと言われる顔の眉根をさらに寄せ、
新人が一睨みで五歩下がるような気迫を常に身に纏い、
それはそれは血のにじむような努力を重ね、日々薄氷を踏む思いで過ごしていたのだ。
しかし結局は予期されていた危険に真正面からブチ当たるという体たらくで、
市民を危険から身体を張って守らねばならない警察官としては大失態である。
知らぬ間にいつもの薬瓶を探している左手に気が付き、太河内はひっそりと苦笑する。
あんなものをこの道場内に持ち込むわけがないのに、自分は何をしているのだろう。
不承不承、太河内は立ち上がる。周囲がどっと沸いた。
こうなってしまえばもう負けである。
今日逃れても明日、明日逃れても明後日と太河内が勝負を受けるまで奏も周囲も鎮まらないだろう。
ならば気の進まない事は早めに終えてしまうに限る。
竹刀を受け取ると、奏は相好を崩した。
(こいつの結婚式以来か―――)
奏哲郎の、こんなに嬉しそうな笑顔を見るのは。
面と防具を着けて相手と向かい合い、改めて太河内は後悔した。
面を通しても奏が極めて真剣なのが良く分かる。
その瞳は太河内を真正面からひたと見据えていた。
堪らなくなってつと目を逸らす。……無性に、いつもの薬瓶が欲しかった。
頭痛がする。
目眩がする。
脈が速い。
息が上がる。
胸が、苦しい。
この心音が道場中に響き渡っているのではないかと不安になる。
こうなることが分かっていたからこそ、この事態を避けようと思っていたのに。
「始めッ」
審判役の同僚の声がどこか遠くで響く。
その刹那、右手に受けた一打で太河内は竹刀を取り落とした。
足早に道場を去る太河内を止める者は居なかった。
多分負けたから悔しがっているとでも思われているのだろう。
それはあながち間違いとは言えなかったが、今の太河内は他に明確な目標を持ってロッカーへ向かっていた。
ハンガーにつるした背広のポケットを探り、小さい薬瓶を取り出す。
乱暴に中身いくつかを取り出して音を立てて噛み砕き、それでようやく人心地がついた。
安堵のため息をつき、しげしげと薬瓶を見つめていると思わず苦笑が漏れる。
いつまでもこういうモノに頼っていてはいけないと常々思ってはいるのだが、
ちょっと手元にないだけでこの様だ。まだまだ卒業できそうにない。
こんなことが同僚に知られたら、きっと自分は警察に居られないに違いない―――と。
「……太河内さん?」
最も彼の身を竦ませて、最も彼を動揺させて、最も彼が今聞きたくない声が、背後でした。
「ここに居たんですね、良かった」
太河内はとっさに左手を強く握りこんだ。背後の奏哲郎に、薬瓶が見つからないように。
「急に居なくなるから探しましたよ」
奏が朗らかに言いながら近くに来た。
さりげなく身体の右側を奏に向ける。少しでもいいから左手を遠ざけたかった。
「……何か用か」
「いえ、大河内さん足早に帰っていったからもしかしてと―――」
太河内春樹は、左手の中の薬瓶に全ての注意を全力で向けていた。
でなければ、いつもの太河内ならばすぐに気が付いたはずだ。奏の視線が太河内の何処に向いているのか、に。
「……ああ、やっぱりだ」
太河内の右手を見ていた奏はそのまま腕を掴みあげる。
「手首、痣になってますね。太河内さんがあの程度を避けられないなんてもしかしたら体調が悪……」
「―――っ」
太河内は奏の手を弾いてしまった。
それは全く反射的な行動だった。とても大の男の冷静な反応とは呼べるようなものではない。
いや、もはや冷静であるだとかないだとかいう問題ではない。
いくら全く予期していなかったとはいえ。
この顔の赤さは。この手の震えは。……これではまるで。
(まるで、中学生の少女のようではないか)
警察組織において、自分のような人間は疎まれるというのに。
もう終わりだ、と太河内は思った。
奏はこれで何も気が付かないほど鈍くはないし、そこからなにも推測出来ないほど愚かでも無い。
よりにもよって奏に全て知られて、自分はもう警察に居ることも出来ないだろう。
お互いに命を預け合う警察の人間達にとって、己のような性癖の人間はある種の恐怖と言っても過言ではない。
むろん太河内とて、いくら特殊な性癖だからといっても誰でもいいわけではないのだけれど、
相手にとってみれば「自分がその対象に入り得るかもしれない」というそれだけで恐怖なのであろうし、
そしてそういう相手に命を預けられないというのは至極当然なのであろうし、
結束を重視する警察官にとって信用しきれない相手が居ると言うのはとても致命的なこととなるのはとても良く分かる。
だからこそ、太河内はそういうことはなるべく表に現さないように努力してきたのであって、
少なくとも今まではその努力は報われていたと、そう思っている。
太河内とてなにも警察組織を乱したいわけではないのだ。
むしろその秩序を愛してすらおり、組織としてさらなる高みを目指すために尽力したいと心から願っていた。
だから。
人を愛するだとか。
人に愛されるだとか。
そういうことは一切諦めて、気持ちは自分の内だけに仕舞いこんで、ただ警察組織の為だけに生きようと。
ほんの数秒前まではそう思っていたのに、全て終わりだ。
この警察をより良く改革するという夢も。
ひっそりと心に留めておいたこの想いも。
今まで大切にしてたものを同時にどちらも失ってしまうとは、一体何の罰なのだろう。
太河内は瞠目した。これから叩きつけられるであろう嫌悪の情に、自分はどれだけ耐えられるだろうか。
突き刺すような沈黙に太河内は身を縮める。
ひどく長く感じたが、実際は数秒経ったかどうかくらいなのだろう。
耐えきれなくなって太河内は目を開ける。
真っ先に見えたのは奏哲郎の屈託のない笑顔で、真っ先に聞こえたのは有り得ない一言だった。
「―――すみません、怪我してるとこ触ったら痛いですよね」
「あ、太河内さんやっぱり痣になってますね」
神部尊ののんびりした声で太河内は我に返った。道場で三本勝負を終えて、面を脱いで一息ついていたところだった。
神部の視線をたどって右手首に目を落とすとくっきりと赤い線が付いていた。
「お前が力を入れすぎなんだ」
「だってそれ、一本目のやつでしょ?まさかあんなに太河内さんがぼんやりしてるなんて思いませんよ」
唇を尖らせながら神部が手を伸ばしてきた。痣の状態を確かめようとしているようだ。
ばしりとその手を弾いて睨めつけてやる。
「触るな、かすり傷だ」
さらに不満げな顔をして手をひっこめる神部を見て、太河内はひっそりと苦笑した。
とっさの対応も我ながら上手くなったものだ。ということは数年前に比べて自分は少しは成長したのだろうか。
少なくとも今だにあの薬瓶を手放せないあたりは全く成長していない。
「そんなことより太河内さん、僕の勝ちですからね」
「分かっている」
その途端に神部は機嫌の良い顔になり、その単純さにますます苦笑してしまった。
ようやく手に入れたパルトネールをくれてやるというただそれだけだけなのに、
わざわざこんな回りくどいことせざるを得ない自分は成長したようでやはりしていないのだろうな、と
太河内春樹はこっそりとため息をついた。
<了>
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
最初のAA忘れてしまってどうもすみませんでした。
ラム→缶書きたかったのに何故かこうなりました。
最後のナンバリングもミスってしまいました……重ねてすみません
>>64 何この謎のロマンチックさ
そして相変わらずツッコミどころが満載w
次も楽しみにしてます
>>64 何だろう…すごく…癖になります
おっぱいおっぱい
本家も続き楽しみにしてます
>>64 盛り沢山のツッコミと面白さw
どう言えば良いかと考えてたら
>>82の 謎のロマンチック それだw
なんだこのかわいむさ苦しい漢と書いてオトコどもはw
加えて謎のほのぼの さらに謎の胸キュン
たまらんですw
>>64 某所の評価とやらも読んだけどこのタイプの小説がわからないとはwwwオバなのかなwww
このノリ最高!もっとやれ〜!次も楽しみにしてます
おっぱいおっぱい
雄っぱい
生。☆と元アフロネタ。これでお終い。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
まあ色々あったなと、溜め息みたいだけど全然違う息をついた。意味合いが全く違う。
色々で纏めるのもどうなのよ、と言えばそうなんだけども、お前の言い方も結構それどうなのよ、だったしね。
お互い様みたいな面はあるよな。
「こんな気持ちいいなら、もっと早くやっときゃ良かった」
しかし余韻無し、この発言。この言い方に何となくぐさっと来るあたり、俺の方が繊細なんじゃないのかと思う。
うんそのまあ、それ、が終わってから、一人でベッドでゴロゴロいつまでもしてたら、もう俺帰るよ、って。
ちょっと、ホントに俺の方が、ヤリ逃げされたみたいになってんだけど。別にゆっくりピロートークとか、期待してはないけども。
Tシャツを被るお前の頭を、寝そべったままぐしゃぐしゃとしたら、お前は笑った。ははっ、て、柔らかく。
そんで笑いながらどうだったよ、とか言われてもね。
「好きだよ」
「返事になってないよ、シンタ」
「そりゃ、ゴメンよ」
初回の思い出とか、実はあんまり余裕がなかったです、としか言いようがなく、俺の方が恥ずかしいのは実は本当だったりした。
ちゃんと、女の子相手みたいにしてみなとか、そういう煽り方をすんなって。
言われたら途端に、むしろ意識しちゃうだろ、お前なんだって。でもさ。
「あと、やっぱ声が好き」
「俺の?」
「うん」
エロく言えば、アノ声な。何かもう、たまんなかったよ。
お前あんな風に言うんだ。あんな風に。
途端に枕にばつが悪そうに埋めた俺の頭を、お前は思い切り小突いた。思い出すなバカ、とか、図星過ぎて身動きできない。
あんな声で、俺を呼ぶんだと。
耳に残る。
ずっと思ってたけど、お前の声は耳に残る。
寝ても覚めてもって言葉通りだ。夢の中でも多分聞いてた。
起きてからも、最初にぼんやりホテルの部屋の天井を眺めながら、俺はお前の声のことを思っていた。
で、まあ、うん。俺がおかしな具合だったのは、まあ仕方ないだろ。次の日タケシにどんだけ、訝しがられたことか。
ぼんやりしてんなよ。って、そりゃそうだ。
聞いてんの俺の話!?って、スマン聞いてなかった。
挙句にやっぱお前ら、話し合いじゃなくて喧嘩したんじゃないのとか、いや逆だむしろ逆、と俺は思ったんだけど。
だけどそれが、何でそう思うのよって言ったら、そりゃお前以上にタクヤがおかしいからだよ!って返された。
「…は?」
どゆことだ。
いや確かに言われてみれば、だった。いつものお前じゃなかった。
あのおっそろしいほどにクールと言うか、今まで残酷なくらいに、何が何でも全く態度を変えなかったタクヤが、だよ。
朝ロビーで顔を合わせた時、何だかこっちを眩しそうに見て、一っ言も何も言わなかった時点では、別にそんなことも
あるかとか、それくらいにしか思わなかった。俺もちょっとは変な気分だった、し。
でも確かになんだ。移動中の車でも何時も煩いお前が、黙って即、寝に入っちゃうし。だけどそれは無理させたかなとか、
ああ逆に俺は責任もあることだし、そっとしておいてやりたい気分になってしまったわけで。
その上で差し入れも欲しがらないとか、うわあ。そりゃ気付くべきだった、明らかに変だ。
ていうか、俺以外が気づく程度には変だ、元気がないってあっさりわかる。今だってそうじゃないか。
寂しい時に何時もするみたいに、ぼんやり何も無い窓の外を見てたかと思えば、弾く気もないギターをぽつぽつ鳴らしてる。
ここで気心の知れた後輩でも居れば、俺は間違いなくあいつのテンションを上げて来いって指令を出しただろう。
だけど悲しいかな、そうそう上手くはいかないな。今は俺とお前の、仕事なわけなんで。
要するにここは俺が何とかしなくちゃならない、そんな部類のことなわけで。正直自信はないんだけど。
黒めの髪が、そのはじっこが赤いシャツの襟の上で跳ねている。
ああ、何度も言う、何度も言うけど、たまらなく好きだな。
頼りない鼻歌とかさ。それでも微かなお前の気配とかさ。
「タクヤ?」
俺が呼ぶと、お前は思いっきり背筋を伸ばした。
「うぁっ?」
おい。何でそんなびっくりする?別にここで、昨日の続きとかそこまで俺、節操なしじゃないよ。
ぴんっ、てお前が爪弾いてたギターの弦を変な風にはじいて、不協和音が流れた。変な和音が。
「…次、リハ四時だって」
「お、おう」
「タクヤ」
「なんだよぉ」
「……コーヒー、空だよ」
ぷいっと横を向いて、とっ散らかったテーブルの上からマグカップを引っ張り出して、何かこっちと目を合わせないよう
頑張ってるみたいだけど。いやそれ、さっきから何回も空なの、なのに何もぐもぐやってんだ。
変だよ、確かに。何でこんな狭い楽屋でさ、俺に背中向けてんの。
そりゃ気まずいかもしれないよ。そりゃ、俺だってちょっとは気恥ずかしいよ、なあ。だけどそこまで嫌なら、出てってくれても
いいんだよ。
何でそこまでして、ここにいるの。でもって、俺の顔を見ないのさ。
「あのさ…後悔してんだったら、謝るから。なあ」
そんな気はなかったんだけど、そうなると俺も、段々心配になって来る。昨日のあの直後には、全然そんな風には思わなかったけど。
タケシからの出演メモを置いて、傍のパイプ椅子に座る。あ、意識してなかったけどこいつを、机と壁の方へ追い込むみたいになって
しまっていた。
「こっち向け、タクヤ」
「イヤだ」
「……は?」
ギターを抱え込んで、ぐるり反対方向に逃げる。明らかに俺を見ないようにしてる、これは。
お互いのジーンズの膝頭がくっつくくらいの距離なんだけど、そんな距離を、逃げようとしてる。
もっと離れたければ本当に、あっという間に光年の距離になることなんか、お前には簡単なはずだ。お前にはいつでも。
昔からお前には、俺を脱ぎ捨てることなんか簡単なはずだった。縋ってたのは俺の方。
俺が髪をぐしゃぐしゃに、昨日みたいに手を伸ばして乱しても、タクヤはじっとギターを抱きしめていた。
「…タクヤ、俺さ。…謝りたく、ないんだよ」
何か言ってくれ。頼むから。
「だから…どうしたらいいの」
お前中心にまた景色が変わっていく感覚に陥る。でも今は繋がってる、手の中の髪の感触を弄ぶ。
馬鹿だなと普通に、自分でも思う。
ただこういうものを見つけたことがない奴には、何て言われても別にいい。いいんだ、俺は。俺は。俺は。
「……喋らんで、くれるかな」
ぽつり。
「……え?」
「声、聞くと、ちょ……マジで。聞きたくないんで」
がたん。
「うわっ」
突然の展開、突然すぎる展開。
発言もいきなりなら、立ちあがるのもいきなりだ。少しぼうっとしていた、俺にギターを放り投げてきたと思ったらお前は。
「コンビニ行く!4時までに戻る!」
「え、え、え!?タクヤ!?」
「呼ぶな!喋んなよ!!」
酷過ぎないか、この仕打ち。
危うくパイプ椅子のまま後ろ向きに、俺はひっくり返りそうになった。それを見向きもしないでお前は吐き捨てて、相変わらず目を全然
あわせようともしないで、ああテーブルとかスタンドとかにガタガタぶつかりながら部屋を出て行こうとする。
ちょっと。
ショックで胸が潰れそうになるとか。女子か俺は、とも思ったけど事実過ぎて。
一瞬泣こうかと素で思った、素で。
たった数歩離れただけだけど、これが光年かと。縋ってたのは俺の方だったと。
瞬間に思い知って、俺は一人で泣こうかと思ったんだ。思ったんだよ、タクヤよ。
「…シンタ」
「……?」
だけどその事実を俺が、俺の頭が一応理性とか意識とかそういう物が受け止めて、数秒何とか理解しようと努めていたその時だった。
呼ばれてふと振り向くと、ドアの前でお前が固まっていた。
正確に言うと、凝り固まっていた。
片方の手はドアノブにあって、出て行こうとした瞬間に意識がこっち側に戻って、振り向いてしまった。
そんで振り向いてしまったらもう、どっちにも行けないんだ、みたいな。
「……。」
怒ってるみたいな顔だが、ごめん、泣きそうな俺だったけどちょっと笑いそうになった。
何でだか、耳も頬っぺたも真っ赤だからさ、お前。
そんな顔で凄んでも、って。怖くないよ、全然怖くない。
「何、…タクヤ」
お前が手を、ゆっくりあげた。掌を拳に変えながら。
真っ直ぐ俺を指す。
そのまま、また黙る。
「シンタ」
そして、しばらくして押し殺した風に言った。
何で。何でここでハイタッチなの。
そう言いたかったけど、お前が余りにも必死そうに見えるので、俺は黙っていた。
手を伸ばせば多分届くそれくらいの距離、だ。何とか、俺はパイプ椅子の角度をバランスぎりぎりまで傾けて、腕の先を拳にして、伸ばした。
お前の大事なギターは抱きしめたまま。
こつんと触れあうだけ。別に何でも無いこと。
「……コンビニ、行って来るし」
何俺、どうしちゃったのよ。
「…え?」
「コンビニ」
「…あ、うん」
それきり、いきなり現実に戻ったみたいにお前は背中を見せて、乱暴にドアを閉めて出て行った。ばん、と強い音と風が残った。
「…何だあいつ」
そう、それから数秒、俺が固まっててもそれは仕方ないことだと思う。
思わずゆっくり呟いて、さっきの拳の方の手で癖みたいに口髭を撫でる。ゆっくりじんわり、その手が柔らかくなっているような感覚があった。
その手を、ギターヘッドに置く。お前の指がいつもそこにあるところに。
二、三、音を出す。低い響き強い響き、幾つかのコードも鳴らしてみる。
けれどどんな音の中でも俺の耳はお前の声の方を、覚えている。
こんなの無い、のかもしれない。
こんなの無い。
こんなの無い、はずだ。
俺はどうしちゃったんだ。
何かがちょっとずつ、俺の感覚を逆なでている。それに俺はびくびくと、馬鹿みたいに過剰な反応を返してしまって、コドモじゃないんだから。
そう理性では思う。でも心のどこかでそれが怖くて、俺は目を閉じたり頭を止めたり、息も止めたりしてじっとしようと努めた。
だけど何で、それをあいつはわからないかな。
何であんな風に、俺を呼ぶかな。
耳に残るよ。お前の声は、耳に残る。あんな風に呼ばれたら、覚えちゃうよ。
あんな声で、俺を呼ぶんだ。
マフラー無しで出てきたことを、コンビニまでの十数分の間に俺は後悔した。寒ぃ、今日は。
天気はめちゃくちゃいいのに、空が青い分風が冷たい。冬になってる、いつの間にかちゃんと、冬になってた。
電信柱からの何重ものラインが、それもくっきりとして眩しいように見える。こんなの初めてだ。
ポケットに手を入れて手もぎこちない。右足、左足、そう次は右足。そんな風に思ってないと、上手く歩けない気がする。
どうやって昨日まで俺、歩いてたんだろう。一歩一歩、自分のスニーカーを意味なく見つめてしまう。
ああマフラー。耳を覆いたかった。
シンタ君の声が消えない。
すれ違う誰の声も。走ってる車のクラクションも。店先のコマーシャルソングも。
全部その外、みたいな感覚。
別に欲しくないガムを一個だけ買った。レジの前で並んでると、わけもなく俺は遠近感が狂った。
レジのおばちゃんに袋要る?なんて、要らないって言えばいいのに入れてもらっちゃったりして。地球にやさしくないなあ。
ドアを出たところで、深呼吸をしてみた。また冷たい風がくしゃっと髪を揺らして行った。
指に引っかけた袋もくしゃっと、鳴る。そんなこと今まで思いもしなかった。
こんなの無い、って何度も思った。でも本当に無い。
俺はどうなったんだ。何であいつには、それがわからないかな。
でも、こんなん、なんてのは。
「…無い、わぁぁぁ〜…!!」
こんなのは無いよ。こんなのなんて。本当に俺、どうしちゃったんだ。
何かがちょっとずつ、違う気がする。全部が。
くそ、シンタの方は何ぁんにも、変わってないって顔してるくせに。俺だけがおかしくなった。なってる、事実として。
うん、シンタだけは変わらないんだけど。
俺にとっても、それ以外と比べても、何も、うん。
俺はコンビニ前でへたり込んで、かっこ悪く頭を抱えてた。日だまりがやたら優しくて、笑ってるみたいだ、と思ってた。
だけどそれ以外の全部が。
そう、街ってこんな風だっけ。コンクリートってこんな色だっけ。冬ってこんな寒さだったっけ。
黙ってると、地面がグラグラ揺れてるみたいに思える。風の音が、嬉しそうに叫んでるみたいに思える。
意識も感覚も踊ってる。光の色は。冬の温度は。空の高さは。
それでまだ、耳にはあの声が残ってる。
世界が全部違って見える、なんて。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
戸惑う☆が大好物です。
ありがとうございました、また時々どこかで。
時の話題や勢いのある最新ニュースを掲示板の書き込みを読みながら一発理解。
2ちゃんねる 全板縦断勢いランキング(RSS生成可)
http://2ch-ranking.net/ ニュース板に特化した全ニューススレッド勢いランキング『2NN』(RSS生成可) や、一覧性が高い新着ニューススレッド見出しサイト、"速報Headline"『BBY』もどうぞ。
※両者とも2ちゃんねるトップページ最上部にリンクあり。
>>87 本尊の方はよく知らないのですが(スミマセン
姐さんの書かれる2人の関係性がツボでした
言葉の選び方も読んでいて心地よくて大好きで、投下が楽しみなシリーズでした
お疲れ様でした! またいつか、姐さんの文章を読みたいです
>>87 乙でした!
いつも投下を楽しみにして、
投下されたときはキタ━(゚∀゚)━!とwktkしながら読ませてもらってました。
またいつか姐さんの文章を読めることを期待しております
>>87 乙&GJ!
最後の最後でまた☆が可愛すぎるよ!!
またこの二人の話が読みたいです。ありがとう姐さん!!
99 :
初七日 1/5:2011/01/20(木) 01:24:26 ID:GgpUn3F30
ギ/ャ/グ/マ/ン/ガ/日/和 弟子×師匠です
死にネタなのでご注意ください
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
甘い香りがして目が覚めた。
そこは見たこともないほど広い広い花畑で、
色とりどりの花が咲き乱れていた。
「うわーどこだここ…ハウステンボス?」
呟きながらあたりを見回す。無意識のうちに、あの子の姿を探す。
そして思い出す。ああそうか、ここへはひとりで来たんだっけ。
「三途の川の手前ですよ、芭蕉さん」
驚いて振り返ると、そこにはさっきまでいなかったはずの弟子がいた。
「うわっ! 曽良くん何で!?」
「血の池で溺れる芭蕉さんとか、針のむしろでぶっ刺される芭蕉さんとか、
いろいろ見たいものがあったので……」
「なんで師匠が地獄に落ちるの前提で話するんだよ!
天下の俳聖だぞ! 極楽行きに決まってるだろこのバカ弟子!!」
「死人のくせにうるさいです芭蕉さん」
「だつえばっ!」
生前と変わらぬチョップの重さを保ちやがってチクショー…
鬼弟子に聞えないように呟きながらふらふらと立ち上がる。
「いい眺めですね」
「うん…私もあんまりきれいなんで驚いちゃったよ」
「いえ、芭蕉さんが無様に倒れ伏す様が」
「えええ…!? 久しぶりに会ったっていうのに相変わらず弟子がひどい…」
大事に鞄に下げて連れてきたマーフィー君を抱きしめながらめそめそと芭蕉は嘆く。
そして目を伏せたまま唇を噛んだ。
「…大体いくら私を心の底から尊敬してやまないからって
こんなとこまで追いかけてくるなんてバカだよ」
「微塵も尊敬はしていませんが、
芭蕉さんがひとりで旅なんて出来るわけがないですから。ほら」
曽良は懐から取り出したものを芭蕉に手渡す。
「何これ?」
「三途の川の渡し賃ですよ」
「あっ…」
「やっぱり持ってきてなかったんですね。
こんな汚い人形は文字通り後生大事に持ってきたくせにバカジジイが…」
「やめてー! 私の友達ひっぱらんといて! 中身出ちゃう!
だって道中のお金の管理なんて私やったことないんだもん!」
「渡し賃がないと衣服を剥ぎ取られるそうですからね。
芭蕉さんを僕以外の人間が全裸にするのは許せません」
「めずらしくちょっと優しいと思ったらやっぱりそんな理由!?」
「あと女性が三途の川を渡るときは処女を捧げた男が背負って渡るしきたりだそうです。
さあ芭蕉さん僕の背中におぶさって早く!」
「弟子が顔色ひとつ変えずにすごいこと言ってる!!
松尾死んだ後までこんな辱めが待ち構えてるとは思わなかったよ!」
「生きている間に受けた辱めとどちらが悦いですか」
「もういや!!」
顔を覆ってうずくまったところを蹴り飛ばされ、芭蕉は花畑の中を勢いよく転がる。
「バカやってないでさっさと行きますよ、芭蕉さん」
倒れこんでいる芭蕉を腕組みで見下ろし、
自分で蹴っておきながら曽良は早く立ち上がるよう促した。
「師匠に対してこの仕打ち…
まあ君は明らかに地獄行きだろうけどさ……」
呼吸を整えながら、芭蕉は仰向けに寝転がる。
「……それでも早すぎるよ。君はまだ一緒に来るべきじゃない」
その言葉に、曽良は何も答えようとしない。
弟子がどんな表情を浮かべているのか見るのが怖くて、芭蕉は目を閉じた。
「――芭蕉さん」
ゆっくりと足音が近付く。
咲き乱れる花を踏みしめながら、曽良が芭蕉に歩み寄る。
それはまるで自らの命を投げ打って芭蕉を追ってきた曽良をそのまま表しているようで、
芭蕉はひどく胸が痛んだ。
この子の人生はまだまだ、この花のように美しく続いていくはずだったのに。
バカな弟子だな、君はまったく。
だけど師匠の私にまでバカがうつっちゃったんじゃないだろうか、
少しだけ嬉しいんだ、君が来てくれたことが。
(そ…それにしても……
怖い! 生前受けた数々の仕打ちのせいでこんな場面ですら弟子の足音が妙に怖い!)
死んでなお殺られる!と身を硬くした芭蕉の腕を、
曽良の手がそっと掴んだ。
「置いていかないでください」
まるで迷い子のような、頼りなげな響き。
かつて何度も旅の途中で芭蕉自身が曽良の背中に投げつけた言葉を、
聞いたこともない声で曽良が呟いた。
驚いて思わず目を開けると、そこにいるのはやはりいつも通りの無表情な曽良だった。
(…ええ!? 何今の!? 聞き間違い?)
「そ、曽良くん、今なんて……ウボァッ!?」
掴んだ手がみるみるうちに力を増していく。
「痛い痛い痛い曽良くん腕痛い! ミシミシいってる!!」
「僕も行きます」
「ついて来ちゃだめ…!
ギャアアアア私のすばらしい上腕筋の全ての力をもってしても全然払いのけられない…!
何これ!? 万力!?」
「僕も行きます」
「壊死しちゃう! 死んでるのに壊死しちゃうから離して曽良くん! 曽良さま!!
そして帰って……!」
「僕も行きます」
「もう本当に帰れこの鬼弟子ィィィ……!!」
――ぼんやりと、見慣れた天井が視界に浮かび上がってきた。
地面に縫い付けられているかのように体が重い。
喉の奥が乾きすぎて、ひきつれるように痛んだ。
「……ちっ…」
おかしな夢を見たものだ。
「――僕を追い返すなんて何様のつもりですか……」
ぼんやりとひとりごちながら、目をこする。
戸を開ければ外は馬鹿馬鹿しいほどに良い天気だった。
花の盛りを迎えた椿が鮮やかに咲き誇っている。
澄み切って高い秋の空は、あの人のどこまでも無邪気な笑い顔を連想させた。
引き裂かれるような胸の痛み無しであの笑顔を思い出せたのは、
きっと彼が死んでから初めてのことだ。
(やっぱり僕が追い縋るなんて似合わない。こんなに急がなくともいつかは行く道だ)
旅のお供を頼まれたあの日だって、そういえば曽良は芭蕉を随分と待たせたのだ。
(せいぜい泣きながら僕を待っているといい。
僕はこっちでゆっくりしてから行くことにしましたよ、芭蕉さん)
右腕の包帯が緩んでいるのに気づいて、曽良は結び直そうと体を起こした。
手のひらをひらいて、ふとその手をとめる。
懐かしい人の香りがそこから立ち上ったような気がした。
「……かすかに老臭がする」
かつて傍らにいたその人に聞かせるように、曽良はそっと呟いた。
口元がかすかに緩んでいることには、曽良自身気づいていない。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
>>99 そばキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
ツンデレキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
弟子かわいいよ禿萌えたよちくしょうこんにゃろ
オリジナル 男前×初老紳士
題名の通り、始まる前の話ですので×よりは+の方が合っているかも…
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
その男は、イケメンと言うよりは男前と言う言葉があっていた。
涼しげな目元に、スッと通った鼻筋。
190近い長身に、長い手足。無駄のない、しかししっかりと筋肉の付いた身体。
整えられた髪の毛に、ビシッと決まるスーツ姿。
正に女も男も憧れる、自他共に認める男前である。
そんな男が大学時代からかれこれ10年以上続く俺の腐れ縁なわけで…。
確かに奴が男前であることに異論はない。
しかし、どんな人間にも欠点と言うものがある。
念のため、奴と自分を比べて虚しくなる日々はとうに終えてあるので、
嫉妬のために奴の欠点を挙げているのではないと言っておこう。
男前の友人の欠点とは、『来るもの拒まず去るもの追わず』の精神だ。
その言葉そのまんまの意味で、寄ってくる女や男までもとっかえひっかえ。
今まで奴に長い間付き合った特定の相手など居たことがない。
あまりのだらしなさ乱れっぷりに
「お前、ちゃんと相手に恋して相手を愛したことあんのかよ?」
と聞いたことがある。
そしたら奴は無駄なくらいに男前な顔付きをこちらに向け、怖いくらいに真剣な表情で
「なにそれ、美味しいの?」
とのたまいやがった。
呆れた俺に奴が言ったのは、恋や愛はされるものであり、自分からするものではないのだと言うことだった。
つまり、相手に恋をして告白をして受け入れられて徐々に愛を深めていく…
なんてまどろっこしい事をしなくても、自分に好意を持った人間が嫌というほど寄ってくる。
だから恋だの愛だのというプロセスを踏まなくても、楽しい事や気持ちいい事をしてくれるのに何故そんな面倒な事をしなきゃあならんのだ?と言うことらしい。
その言葉を聞いてから俺は、世の中には自分と違う考えを持った人間が居るもんだと結論付けて、それ以上は考えないようにした。
持てる人間と持たざる人間の違いを数えたって虚しくなるだけだ。
それからと言うもの、俺は奴とは所謂恋バナというものをしないで、楽しい遊び友達として付き合ってきた。
今日もその延長で、寂しく男二人でブラブラしていたのだが…。
「今日って雨降る予報だった?」
「いや、お天気お姉さんはそんな事言ってなかったな」
まさかの通り雨に降られ、やむを得ずシャッターの閉まった店の前で雨宿りをしている。
服もだいぶ濡れてしまい、俺はぶるりと身体を震わせた。
「くそっ、誰だよ雨男は!?」
そんな俺の独り言を拾った男前は
「同期が結婚し幸せな家庭を持つ中で、遊んでくれる女の子も彼女も居ない寂しいお前が雨男だろうなぁ」
と言いやがった。
非常に侮辱された気分だが、コイツに怒ったって無駄だ。
はぁ、と一つ溜め息をつき無気力に会話を続ける。
「お前だってそんな寂しい雨男と遊んでんだから、大して変わんねぇんじゃないの?」
「ひどいなぁ。その言い方。俺はあえて寂しいお前と遊んでやってんの。」
なんなら女の子でも男の子でも呼ぼうか?と携帯をいじり出す奴。
全く、酷いのはどっちだと口にしようとしたその時、俺らが雨宿りしている軒先に駆け込んでくる人があった。
「参りましたねえ」
と困り顔で呟いたのは灰色の髪の毛を持った男性。
「君たちも雨宿りですか?」
との優しい声が俺達の耳を撫でていく。
恐らくは50歳を過ぎ、もしかすると60歳以上かもしれないが、男性が発している柔らかい雰囲気が彼を若く見せているようにも思えた。
「朝の天気予報では晴れだったんですけどね」
と俺が答えれば、
「まんまと騙されてしまいました」
と男性が笑った。
そしてガサガサと自分の鞄を漁った男性は、あったあったと言いながら俺達にタオルを渡す。
よくわからないままタオルを受け取った俺の顔は心情そのままを映していたらしく、男性はあぁと声を上げて説明してくれた。
「このままでは寒いでしょう?一枚しかありませんが良ければ使って下さい」
「いや、でも一枚しかないなら俺達でなく貴方から…」
俺は戸惑いを声に乗せ訴えてみたが、男性はやはり優しく微笑むのみ。
「おじさんを通り過ぎた人間が拭いた後のタオルじゃ嫌でしょう?私はもうそういうのは気にしない歳なんです」
だからどうぞと勧めるタオルを断れず、ペコリと頭を下げた。
そして先に使うか?と奴に視線を向けると、そこには微動だにしない男前が居た。
しかも雨に濡れてるオプション付きで男前が倍増している。
こいつ人見知りだったかなと思いつつも、タオルの礼を言わせるべく脇腹を肘でつついた。
その衝撃でようやく動き出した奴は、何故か顔を赤らめ、しどろもどろで礼を言う。
「あ、あ、あの、ありがとう、ご、ございます」
「いいえ、気になさらずに。ほら、早く拭かないと風邪をひいてしまいますよ」
雨に濡れて少なからずとも不快だろうに、男性はニコニコと笑って俺達に気を使ってくれている。
なんて出来た人なんだろうなと奴に耳打ちしようとして、気がついた。
コイツ恋に落ちてやがる。
顔を紅潮させ、何度もパチパチとまばたきしている。
自分から湧き出た初めての感情を、どう処理すれば良いのか戸惑っているのだろう。
せっかくの男前がただの大型犬のように見えた。
奴のただならぬ様子を男性は異常事態と受け取ったのか、心配そうな表情をした。
「あの、大丈夫ですか?もしやもう風邪をひかれたのでは?」
そう言って、奴の体温を計ろうと伸ばした手を奴はがっしりと捕まえた。
驚いた男性を尻目に、奴は至極真剣な表情で、いや必死と言っても言いような表情で訴える。
「もし貴方がよければ、雨宿りがてらコーヒーでも飲みに行きませんか?」
ベタだ。男女の恋愛沙汰に慣れている筈の男前なのに、口から出た言葉は「俺とお茶しない?」だ。
唐突な言葉に男性は驚いているが、この言葉で俺は奴がマジで恋に落ちたのだと確信した。
今までまどろっこしい事を避けていた奴が、ナンパの定番、お茶に誘ったのだ。
「コーヒーですか?」
の戸惑った男性の声に、奴はぶんぶんと首を振っている。
俺はそんな奴の様子に苦笑を漏らした。
それから、三十過ぎてからの初恋に振り回されるだろう奴と男性に、若干の哀れみを込めて視線を送る。
手を握られたままの男性は少し困ったような顔をしていたが、ふっと表情を和らげ、柔らかい笑顔を浮かべる。
「…そうですね。せっかくなので喫茶店で雨宿りでもしましょうか」
その男性の言葉に、奴は思いっきりガッツポーズをした。
普段のすかした態度とは違う奴の様子に、俺は思わず噴き出してしまう。
そして男性の言葉を受けた心底嬉しそうな奴の表情を見て、俺はこの恋が上手いこと実れば良いなと思った。
頑張れ男前!!と心でエールを送りつつ、どこか寂しさを感じている俺の心情。
これは遊んでくれる奴が減った寂しさのせいにしておこう。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
>>106 萌えた!初老紳士めっさストライク過ぎましたありがとうありがとう。
113 :
1/6:2011/01/21(金) 02:44:09 ID:zxTwFfGF0
生ネタです。東/宝ミュー/ジカル、M!より、大司教×天才児。
初めて見たけど萌えたぎったよ…!
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
眼下の街並みは、薄らと白くぼやけ始めていた。朝方より上空をどんよりとした雲が覆い、案の定雪景色となった。
赤い屋根や煉瓦造りの時計台が、それでもまだ落ちきらぬどこかからの光を受けて静かに立っている。おかしな明るさだ。
窓の下を行き交う物売りのワゴン車や、ザルツ/ブルグ市民の外套の色も故にまだ、しっかりとしていた。
馬車馬の白い息も御者の鞭の響きも、冬の寒々しさを含んでいたが、だがガラス窓一枚隔てたこの部屋には入りこんでこない。
大司教は優雅にマントを翻し、窓際から暖炉の傍の椅子へ腰掛けた。ふっかりとそれが、好ましく身を受け止める。
生地はびろうどと絹に限る。それも最高の職人の手で、刺繍の全てを施したものを。
静かであり、温かい。薪はたっぷりと燃え明るく、余計な詮索は何もせぬ。
傍のテーブルには僅かに湯気を立てるカップが、またつつましく控えている。
もうすぐ夕食の刻だ。今頃シェフは大わらわで、この街の領主である大司教のディナーの準備に取りかかっていることだろう。
それまでの大司教の、この優雅な沈黙と高雅な空想の時間を、邪魔する者はいない。
いや、居ないはずだった。
「……猊下。申し訳ございません」
いつものように典雅に瞼を閉じた、その刹那。
不意に、重厚なドアをノックする音が聞こえた。
全てが大司教の好みに作られているこの居室の、その扉を開けまた触れることが出来る者など、それこそ限られている。
「……アル/コ。何事だ」
「は……」
配下の、媚びへつらうのが上手い伯爵の顔を思い浮かべながら、大司教はうっとりと目を閉じ、微動だにせず呼び掛ける。
アル/コ伯爵は伯爵で、またドアの外から焦ったように、しかし苦々しげに話を続ける。
114 :
2/6:2011/01/21(金) 02:44:43 ID:zxTwFfGF0
「モー/ツァルトの、件でございます」
「……あれか。どちらの方だ、父親か」
「息子の、方の……」
「ふん」
「あやつめ、猊下の命に背くだけでなく今度は……曲を聴いて頂くまで帰らぬと、まあ傲慢を絵にかいたような振る舞いで…」
「参っておるのか」
「いえ、勿論叩き出しましてございます、猊下!ところがあの若造、とことん思い上がり甚だしく」
「……。」
領主の嗜みとして、音楽家の一つも飼うのは常識だ。
しかしこの大司教の音楽への拘りは相当なもので、その鋭敏な感覚に対して、並みの音楽家など全く歯が立たぬ。
その中で古くから仕えているレオ/ポルド・モー/ツァルト、この男は面白みはないが下らぬ曲は書かぬ男だ。
だがそれでも、大司教を芯から満足させることなどは到底出来ない。それでも大司教がその男を見限らぬのは、今は偏に
その息子の存在あってのことと言えよう。
確か名を、ヴォ/ルフ/ガングと言った。
大司教はうっすらと、切れ長の瞳の瞼を開いた。ちらちらと舞う炎の明かりが、やや滲んでいるように目に映る。
「……あの男が、どうしたと」
ため息をついて黙りこんでしまった伯爵を、大司教は先を語れと促した。
そうか。確か昨日、フーガの一曲も書けぬものに用はないと、叩き出し追い返していた。それを持参したとでもいうのだろう。
ただし招かれざるものであることに違いはない。もう直ぐ夕食の刻限なのだ。
大司教とは、いやしくも神に仕える身だ。神の絶対性を彼ほどに崇め、口にする者はないと言っていい。
しかしそれを。あの男は踏みにじる。
声でも、態度でも、そして音楽のすべてにおいて。
「は……、ヴォ/ルフ/ガングめ、目障りなことに、その……お屋敷の庭に座り込んで、一歩も動かぬと……」
「……何時からだ」
「昼よりずっとでございます。いやはや気がくるっております猊下、この天気ですぞ」
115 :
3/6:2011/01/21(金) 02:45:11 ID:zxTwFfGF0
礼儀を知らぬ。唯のしもべに過ぎぬ輩であるのに、そのしもべが堂々と領主の館へ乗り込んでくるなどと。
日頃よりあの若者の振る舞いにはそれこそ、大司教への畏敬のかけらも見て取れぬというのに、愚かにもほどがある。
息子の所業に常日頃から父親は頭を抱えている、という噂も耳にする、当然だ。少なくともレオ/ポルドはこの大司教のしもべで
あることを、自覚している。
それはひいてはこの世を統べる教皇猊下への忠誠、神への信仰ということではないか。それを、あの愚かな息子は何を。
あの男はいつも、大司教のすべてを踏みにじる。
しもべとしてこれ程に、不愉快な男はおらぬ。
「……如何致しましょう猊下……、いや音楽家の一人や二人、病に倒れたとて何もお気になさることではございませんが……」
「アル/コ」
「はっ」
「シェフに伝えよ。ディナーは半刻、遅らせる様に」
「…は?」
溌剌とした目と天から授かった、そのままの髪を無造作に束ねる。
手足は自由に、どこまでも自由に空を駆け、そして声は高らかで朗らか。
星の光を具現化したようで、星そのものが降り立ったかのような輝きと煌めきを持つ。
だが、神を凌駕する天才など、認めぬ。
不意に内から開いた扉に、伯爵は明らかにひるみ、一瞬すくみあがったようだった。廊下の石の冷たさが、さっと肌に伝わり来る。
「げ、猊下!?」
結えた髪も、直ぐに冷えた。
大司教は唯一人優雅に、だが大股で歩く。
赤いマントに金の刺繍が、その度に翻る。こつこつと、靴音も響き渡る。
回廊を降り、大ホールへ抜け、幾人もの使用人どもが慌てて道を開け頭を垂れる姿を、大司教は見ているが目には入っていない。
路傍の石ころと同じようなものであるが故だ。
館のあちこちに、揺らめく蝋燭の炎が宿っている。
しかし雪空は、それでもまだ奇妙に明るさを残していた。
116 :
4/6:2011/01/21(金) 02:45:45 ID:zxTwFfGF0
手づから大扉を開けた瞬間、冷たい風と叩きつけるような雪が、そのマントに飛びかかって弾かれた。大司教はゆるり首を回し、
積もり始めた雪に白く黙り始めている門から、そろそろ凍りつこうとしている噴水のあたりにその姿を認めた。
一見、ただの塊だ。雪を積もらせ、しんと動こうともしない。
「……何の用だ、モー/ツァルト」
さく、さくと。
今度の靴音は響かず、一歩ずつ音と跡を残し大司教の歩みに続いた。
ただの塊だ。
大司教にとっては、唯のしもべ、唯の音楽家の一人に過ぎぬ。
天からは羽毛のように雪が降り、時折狂ったように風に舞いあがって落ちる。身の温もりがその度わずかずつでも失われて、ゆく。
その中にまだ、その塊は動こうともせず。
いや、ようやく顔を上げた。
「……目障りな真似をするな」
しゃがみこんでいたその男の頭から、輝く茶金の髪の上から、さらさら落ちるそれは確かに雪だ。相当に積もっている。
空は重く黒いのに、積もった雪のためか景色の色はむしろ、鮮やかさと艶やかさを増したようにも見えていた。
「はっ……」
ゆらり、ヴォ/ルフ/ガングは笑んだようだった。
「ようやくお出ましですか。随分とお待ち、いたしました、よっとっ……」
ばっと、そして。雪よりも白い、白い白い輝きが、まるでその男の手から放たれたように空に舞った。
一つ一つ、一枚一枚。舞った後、だが意志を持ったかのように風にさらわれず、落ちる。
落ちる。落ちた。
その一枚を、大司教はゆっくり身をかがめ手に取る。
微かに雪が、指に触れた。
「あんたのお望みの、フーガですよ猊下。春よりも美しく、光よりも気高い……!!」
旋律が紙の中、黒く黒く踊っていた。
117 :
5/6:2011/01/21(金) 02:46:10 ID:zxTwFfGF0
「……。」
「どうだ。……僕を侮辱したことを、撤回しろ」
「……何を、無礼な」
「あんた、フーガの一つも書けないだとか、僕を侮辱しただろう……謝るのは、あんただ!」
そう、あまりにも礼儀知らずな若者。
ヴォ/ルフ/ガングはくっきり、冷え切った指をこちらに向けた。その先に既に輝く何かで、こちらを斬り裂かんほどの勢いで。
みすぼらしいコートから、穴のあいた粗い布地のズボンから、雪が落ちる。
「……愚かな。貴様は……私のしもべに過ぎぬ。しもべにこの私が、頭を下げるだと?」
「はっ…!」
落ちる。落ちる。
「……だけどあんたは、僕の音楽には逆らえない!」
輝く。煌めく。
「僕は音楽だ!」
ヴォ/ルフ/ガングは、その名の通り吠えた。肩から髪から、さらさらと降り積もった雪がこぼれた。
「……。」
目尻から耳へうっすらと赤みが走っている。切れ上がった目が、彩られていた。
瞳には変わらず星が宿る。激しく燃え上がり、その輝きをどうにも抑えきれぬように身もだえている。
張りつめた肌はそれ以外驚くほどに白く。そして声は高らかでくすみなく。
これほどに無礼な若造の曲など、と。普段なら一笑に伏していただろう。
だがその時手の中の芳しい喜びを、大司教は知らず知らず、握りしめただけだった。
二人の間には雪がただ落ち続けるだけ。
神を凌駕する天才。
奇跡の子。星の子。いや星そのもの。
「パパだってそうだ!あんただって……、結局、僕の才能だけを愛してる!!」
それが瞬間、弾け飛ぶように叫んだ。
「僕の、才能、だけ……!!」
そしてゆっくり墜ちるのを、指先が緩やかに墜ちてゆくのを、大司教はただ見守っていた。
そしてゆっくり墜ちた時。瞳は揺らがずにこちらを睨みつけていたが。
そしてゆっくり墜ちきった時。
胸に踊る炎のように湧き出たその感覚のことを、何と呼ぶべきであったのか。
118 :
6/6:2011/01/21(金) 02:54:18 ID:zxTwFfGF0
熱く猛り、それでいて喜びに近くくすぐったいようで、力強く叫ぶようなそれ。
父親に何を言われて来たのか、知らぬ。だがあの堅物が、自由すぎる息子に酷い説教を喰らわせる姿など、容易に想像がつく。
この若造は、それを何度も味わってきたはずだ。
それでも何時も、父の後ろを慌てて追っては、その顔色をうかがっていた。
この星は叫んでいる。
今望みをかなえれば、星を手にすることが出来る。
その術を知って、大司教の中の感覚は勢いを増した。
「……もし、私が」
自由で、朗らかに、気高く、煌めくまま、愛されたい。愛されたい。愛されたい。
「貴様の、才能だけでなく……このまま」
このままの僕を愛してほしい。
手に取るように叫ぶ星。
「……身も心も、愛してやると言ったら?」
ならば星はこの手に宿るか。この手の中永遠に、神の手にすら渡すことなく輝き歌い続ける。
それは甘美で、至福のこと。
たとえ神を裏切ることで、あったとしてもだ。
ゆっくり今度は、大司教の指がヴォ/ルフ/ガングを指した。
言葉は落ちず、ヴォ/ルフ/ガングの耳に届いた。そのはずだった。
何故なら瞬間で、冷え切った眦が、見開かれた瞳が、理解したと赤みを増す。
身も心も。甘美な響きだ。
それはどちらにとっても、ひどく甘美で淫靡な響きだった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
大司教は天才児に固執し過ぎだと思うんだ。
>>113 わああああっ!神!神!
まさかM!で萌えてる人が自分以外にいるとは思わなくて驚いてるw
ありがとうございます…!
わーっ、ここが2ちゃんでなければw
生 ラクGO家 煙草に関するオムニバス
めだか(赤)×らくだ(雨)/焦点・紫緑(+合点×焦点(灰))
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
【めだか×らくだ】
吐く息が白く濁ってまた空気に溶ける。その白さは何となく煙草を連想させた。
一日に何十本も吸う訳ではないけれど、欲しくなる瞬間は一日の内に何度もあった。
煙草の害はよぉく知っているけれど、人通りも耐えた午前二時。これくらいは大目に見て貰えないだろうか。
誰にだろう。空の上からこっちを覗き見しているかも知れない、悪趣味な人にだろうか。
隣を歩く三つ歳嵩の弟弟子をちらりと盗み見る。
「ちょっと待て」
「どうしたの?」
「煙草吸わせろ。もうちょっと行ったら、歩き煙草禁止区域だったろ」
「よくそんなの覚えてるね、兄さん」
ただでさえ丸い目をさらにまん丸に近付けた志らくに、そんなのマナーだろと言い返しながらコートのポケットに
入れておいた煙草を取り出して咥えると火を点ける。オイルの残りが少ないライターは、中々火を灯さなかったけれど、
三度目で小さな炎が立ち上がりほっとした。此処まできて吸えなかったら怒るよ、俺。
あんたにマナーを語られたくはないという最もなご意見を無視しながら大きく吸い込んだら、軽い筈の煙草なのに
やけに咽喉に沁みた。
「兄さん、携帯灰皿持ってんの?」
「持ってるよ」
「似合わねぇな。でも貸してね」
言いながら士ラクも煙草を取り出して、一本唇に挟んでから、ぱたぱたとコートのポケットを叩く。
どうも探し物はないらしく、視線が此方を向いた。
「ライターも貸して下さい」
「いいけど」
点くのかなぁと思いながらも手渡してやると、士ラクも何度かカチカチと音を立てて奮闘する。けれどライターは
先程その役目を終了していたのか、今度は火を灯す事はなかった。
否、もうちょっとやってれば点いたのかも知れないけれど。
早々に諦めた士ラクは仕方が無いという風に言った。
「火、貰うよ」
煙草を咥えたまま、顔が近付く。思わず息を止める。煙草の先が触れ合う。乾燥した葉っぱにじりりと火が燃え移る。
昔かけていたものよりも随分と洒落た黒縁眼鏡のレンズの向こうの、士ラクの伏せた睫毛が街灯の下小さく影を
落としているのが見えた。
近付いた時と同じ唐突さで距離が離れる。ちゃんと火は点いたらしい。常にない近さに一瞬固まった自分が何となく
悔しかったけれど、顔には出さずに鷹揚に構える。バレてんのかも知れないけど。こいつの事だし。
「ありがとうございます」
「お前が勝手に盗ってたんじゃねぇか」
「貰うよって言ったよ、わたしは」
「うんって言ってないだろ、俺は。盗人だけだけしいな」
「だから一言入れたって言ってるだろ。もう耄碌して耳聞こえなくなってきたの? わたしより年下なのに」
「うるせぇ、たかだが三つだろうが。この歳になりゃ関係ないだろ」
「はいはい、そうだね。あんたが生意気なのは一生変わらないんだろうし。あーあ、出会った頃は見た目だけは
線の細い可愛い兄さんだったのに、今じゃブタさんだし、時の流れは残酷だね」
「お前だってそうだろ。女共から『カワイー』なんて言われて調子に乗ってた癖に、しゃらくせぇ」
言い合いにもならない、ただの言葉のじゃれ合い。普段の俺と士ラクならもっと辛辣で周りが引く位に
言い合うけれど、それも喧嘩でもなんでもなくて、ただのスキンシップの一環。
あれを目の当たりにして俺達が仲が悪いと思う人も居るらしいが、そんなのは見る目がないだけだ。
べたべた馴れ合うつもりは毛頭ない。これが俺と士ラクの距離。他人様には測れなくて当たり前だ。
立ち話は煙草一本分。言葉にして確認しなくても、多分こいつもそう思っている。
禁煙者の肩身はどんどん狭くなり、増税は財布を圧迫する。しかも咽喉を使う商売の俺達が揃いも揃って煙草を
呑んでいるのは褒められたものではないだろう。あれだけ稼いでいるんだから増税の所為ではないだろうけど、
志の輔兄さんだって禁煙をするご時勢だ。けれどうちの師匠や、士の輔兄さんを見ていれば、煙草が噺家にとって
害のあるものだとは到底思えない。師匠曰く、禁煙なんて意志の弱い奴がやる事だそうだから。
士ラクの吐いた煙が風邪に流される。俺のも同じで、流れて消える寸前の煙はどちらが吐いたものか分からない。
「人から火ぃ盗んだ煙草、上手い?」
「人から火ぃ貰った煙草、上手いですよ」
しれっとした顔で言い返す士ラクに妙に安心してしまうのはどうしてだろう。
後半分程度になった煙草の先が息を吸う度に赤く燃えるのを惜しむ気持ちが少し湧く。だから気付かれない程度に、
ゆっくりと残りの半分を灰にした。
***
【紫緑】
長年の習慣は中々抜けないもので、長年深く付き合ってきた煙草と縁を切ってもうすぐ一年になるというのに、
まだ何となく手が勝手にが箱を捜してしまう瞬間がある。
収録の合間の小休止。楽屋の机の上を滑った指先が無意識に捜していたものではなく、まだほんのりとした暖かさを残した
湯呑みに触れた時、唄丸ははっと顔を上げた。
そして、目が合う。
揶揄う風な、それでいて微笑ましく細められている様な、そんな柔らかい視線。
「……何時から見てたんだい」
「そりゃもう、ずっとですよ。俺が師匠から目を離す事がある訳ないじゃないですか」
「あんたが目を離せないのは、どこぞの美女じゃないんですかね」
「たい平じゃあるまいし、言掛かりですよ」
間髪入れずに飛んできた『それこそ言掛かりですよ!』の声を宴樂は無視し、唄丸は分かっているからと目線だけで返す。
たい平だって本気で怒っている訳ではないので、それで十分だ。
唄丸が無視をするのは、樂ちゃんの病気がまた始まったねと肩を竦めている固有三と公樂の面白がっている視線。
もう慣れっ子だ。
「こんなに何時も師匠に熱い視線を注いでいるのに、そんな疑いを持たれちゃうなんてまだまだ足りないんですかねぇ」
「そういう軽口はよしなさいよ」
「本気なんですけどね」
「余計に悪いよ」
「まぁまぁ、そう照れずに。口ではなんと仰っていても、師匠のお気持ちはちゃんと分かっていますから」
何処までもポジティブシンキングで笑顔を見せる宴樂に、唄丸は呆れて嘆息する。
分かり易く好意を向けてくれるのは嬉しいし、年の離れたこの友人を大切に想う気持ちは負けてはいないという自負もある。
そうでなければ一年に及ぶ長丁場だった襲名披露にあそこまで付き合って全国を回ったりはしない。
宴樂の『分かっている』はそういう事だ。ただ表し方が違うだけで。
「でも……もうすぐ一年ですね」
「そうだね」
「ようやく俺も煙草を吸ってらっしゃらない唄丸師匠に慣れました」
「そうかい。あたしはまだ自分で慣れてませんけど」
「慣れてくださいよ」
苦笑いを浮かべて嗜めた宴樂が自分の身体をとても心配してくれているという事は、唄丸にだってよく分かっている。
それでもやっぱり煙草を恋しいと思う時間は一日の内にあって、どうしようもない。やめると誓ったからには、
貫き通すつもりだけれど。
話を向けてみたのは、吸えない苛立ちの八つ当たりではなくて、ただの悪戯心。
「どうだろうね。禁煙は一生続けてナンボだって言いますからねぇ……ねぇ、翔太さん」
「何で俺に振るんですか。俺が煙草に縁がないの、師匠だってご存知でしょ」
唄丸と宴樂の会話が盗み聞く気がなくても聞こえていたのであろう翔太は、いきなり向けられた水に戸惑った。
洒落たフレームの眼鏡の奥のつぶらな瞳を怪訝そうな色を浮かべている。
一見そうとは見えない人の悪そうな笑みを浮かべた唄丸は、平坦な口調を心がけた。
「あんたにはないかも知れないけれど、今、身近に禁煙を頑張っている人がいるって噂を小耳に挟んだんでね。
ちょいとご忠告。一生続けてナンボって事は、周りのサポートも一生ですよ」
「何で俺が士のさんの面倒を一生見なきゃいけないんですか」
「誰も士の輔さんだなんて言ってませんよ、ねぇ、樂さん?」
「言ってませんね。それじゃ駄目じゃん、翔太」
勿論宴樂は唄丸の味方で、最近活動を潜めているブラック団の絆はかくも脆いものかと露呈させる。
ああっと大げさに頭を抱えた翔太は恨みがましく唇を尖らせたけれど、五十を過ぎた男がしても可愛くないと
一刀両断に切り捨てられた。最も、それを可愛いと思うのであろう人間が、揶揄の種になっているのだけれど。
「思い浮かべちまったんだから、仕方が無いと思って助けてあげなさいよ」
「そうだよ。どうせ士の輔は今、一年で一番忙しい時なんだろ?」
「だからこの前も飲みに行きましたよ。息抜きさせてあげようって」
支援
「あんた達、息抜きじゃなくてもしょっちゅう飲みに行ってるじゃない」
「ゴルフだって付き合う約束してますよ」
「あぁ、そりゃ親切だね」
翔太は自発的にゴルフをしない。最近は誘われればホールを回るらしいけれど、相手は主に士の輔だ。
翔太曰く『友達の少ない士の輔さんに付き合ってあげている』状態らしいけれど、全く持って素直ではない。
やらないゴルフをする様になる程度には、一緒にいて楽しいのだと、その行動が告げているのに。
何を張り合う気になったのか、急に宴樂が唄丸に向き直る。
「俺だって師匠の釣りにお付き合いする覚悟はありますよ」
「……翔太さんだったら覚悟とかなしに一緒に行ってくれそうだけど」
「あ、釣りなら全然オッケーですよ。今度一緒に行きま……なんでもないです」
隣に居る男がどんな視線を翔太に向けたのかは見なくても分かって、唄丸は大げさに溜息を落とす。
まったくいい歳をして悋気の強いのも困ったもんだね……とぼやくその胸中に、もう煙草の事はなかった。
***
【合点×焦点(灰)】
仄暗い夜の道のその先で、ヘンゼルとグレーテルの置いた小石みたく道標のように灯りを燈している自販機が
飲料水のものなのか、そうではないのか。
士のさんの視線はぼんやりとそれに吸い寄せられている。
最後の店でちょっと飲み過ぎたからお茶でも欲しいなぁ、などと思っていないのは明白で、どうせ「あー、
煙草吸いてぇなーっと考えてるんだろうというのは、手に取る様に予想が出来た。
何でも人生三回目の禁煙なんだそうで、その単語だけでもう「駄目じゃん」って気持ちになる。三度目って事は、
二回失敗してんだろあんた、なんだし。でもまぁその前にやってた時は年単位で止められていたのも知っているから、
今度も失敗しますよーっとは言い切れないし、この人の身体を考えれば止められるに越した事はない。ただ煙草の害と、
吸えないストレスのどっちが身体に悪いのかは知らないけれど。思い返せば師匠や兄弟子、弟弟子も吸ってる人達が
多いんだよねー、この一門は。
ふと思い出した言葉を舌のに乗せたのは、散々揶揄われた意趣返しを元凶に向けてみたかったからだ。
「あのさー、志のさん、知ってる?」
「んー、何を?」
「禁煙って、一生続けてナンボなんだってさ」
「……知ってる」
罰の悪そうな顔になった志のさんが可愛い。意外と顔に出る。というか、俺の前だから気ぃ抜けて出ちゃってる。
士のさんのこういう無防備さは愛おしい。
誤魔化す為になのか、自慢なのか、士のさんは威張って言った。
「一応言っとくけど、続いてるんだからな」
「知ってるよ。あんた、今日会ってからでも一本も吸ってないじゃん。それに大体士のさんの性格だと、一本吸ったが最後で、
『あああ吸っちまったぁ!』って自暴自棄になって前よりひどい本数になんのが目に見えてるじゃない」
「よくご存知で」
「長い付き合いだしね」
本当に長いよ。出会って二十七年だもん。それはそのまま、お互いの噺家人生に重なる。最もこんなに
仲良くなったのは出会って十年目くらいからだったけど。
支援
その間の数年を除いて、ずっと士のさんからは煙草の匂いがした。何時も同じ銘柄の、キャビンの赤い箱。
飛行機の禁煙席でも隠れて吸おうとする様なヘビースモーカーの士のさんが吸っていると、
俺にとっちゃ美味しくない煙草も、妙に美味そうに見えて不思議だった。前にそんなに美味しいのって聞いたら、
お前にゃ解んないよって言われちゃったけど。間接的になら、その味を知っている。
「長い付き合いだから、煙草の匂いしない士のさんって、変な感じするよ」
「あー、俺も自分でそう思うわ」
「だよねぇ……くしゅんっ」
続けようとした言葉はくしゃみになって飛び出した。コートの前をしっかり締めていても寒いものは寒い。
少し笑った士のさんが冬の間は咽喉の保護にと絶対に手放さないマフラーを外して、俺の首にくるりと巻いてくれる。
頬に触れた柔らかい肌触りと同じ位にその手は優しい。
けれど簡単に甘えは出来なくて、慌てて返そうとした手はやんわりと止められてしまう。
「いいよ、俺、大丈夫だし。あんたも咽喉大事にしなきゃ。パルコの公演まだ半分あるんだし」
「今年は禁煙してるから、何時もの年より咽喉の調子いいんだよ。大人しく巻かれとけ」
囁く様に言いながら、顔を覗きこんできた士のさんの唇が掠める様に一瞬だけ触れる。道端で……と睨んだら、
レンタル代だと軽口でいなされる。
「気前いいね」
「翔ちゃんが高いのは分かってるからな。まだ払ってくれるっていうなら拒まないけど?」
「……馬鹿」
触れたい、触れられたい。往来じゃんって気持ちとの間でゆらゆら揺れる。寒いんだから暖かいものが
欲しくなるだろうってのは言い訳だろうか。
身長分の十数センチ。踵を上げれば埋めるには十分。
迷って迷って……暗がりの中コートの袖を引く。嬉しそうに笑った士のさんに胸の奥がきゅっとなって、
見ていられなくなって目を閉じる。さっきよりもほんの少しだけ長く、熱を分け合う。
マフラーに微かに残る煙草の匂い。煙草の味がした口づけを、何時か懐かしく思う日が来るのかなぁ、とぼんやりと考える。
離れた唇の間から落ちた二人分の吐息が白く濁って交じり合って、空気に溶けた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
途中で連続投稿規制ひっかかったのと
バイさるさんにもひっかかったのでのでID変わりました。
手間取ってすみません。
ドラマ紅将軍の外線 将軍+愚痴
先日のSPの流れは踏んでいません…
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
病気が周囲に伝わってからは、早見は暇を持て余していた。
北への異動までは救命を任されているが、体調を気遣うメンバーは早見に極力時間を作らせ、
何とか休ませようとしている。
そのおかげで、8時出勤17時帰宅、昼休憩はきっちり1時間と言う、
医者になってからは信じられないくらいの規則正しい生活を送らされていた。
医師になって十数年、救命のセンター長になってから五年余り。
自分だけの生活、プライベートは無かったようなものだから、
急に出来た時間をどう捌いていいものか早見はわからない。
今日も今日とて、早見は17時ぴったりに救命を追い出されていた。
心配そうな顔で華房と出水に「しっかり休んでくださいね」と言われれば、
さすがの早見も「ああ」と頷くばかりでそれ以上は口に出来ない。
正直なところ、処置室や自分の司令室に居た方が心休まる。
しかし散々迷惑をかけた上、それでも自分の身体を本気で心配している部下に そんなことは言えなかった。
家に帰ったとしても少ない荷物の整理はとっくについていて、することは無い。
余りにも手持ち無沙汰な早見は、ふと愚/痴/外/来のことを思い出す。
勤務する病院内で行ったことの無い場所の一つであり、
これからも訪れることの無いであろう場所。
そう言えば、自分が起こしたゴタゴタが一応収束してから、
キチンと多愚痴に礼を言っていなかったことに早見は気付いた。
それに白取が愚/痴/外/来で出る珈琲の美味さについて、やけに語っていたことも思い出す。
「ちょうど良い機会かも知れない」
そう思った早見は、帰り支度を終えた身体を愚/痴/外/来へ向かわせた。
早見は少し疲れた顔で時計を確認した。
既に17時30分。
わかりづらい場所にあるとは聞いていたが、ここまでとは……と早見はこめかみを揉む。
十数年も勤めている勤務先で軽く迷子になるとは考えもしなかった。
おかしいような惨めなような気分が、早見の口元に笑いを作る。
このままさ迷っているのも無駄なように思えたので、今日のところは断念して帰ろうと思い立ち、身体を反転させた。
視線が移るその先に、今まで迷子になりながら探していた部屋の主が、やけにぼんやりとした表情で立っていた。
「こんなところでどうしたんですか? 早見先生?」
「そうでしたか。言ってくだされば、僕が救命まで迎えに行きましたよ。
ベテランの看護師さんでさえ、ここの場所を知らない人もいるんですから」
多愚痴は早見の前に珈琲を置きながら、笑って言った。
早見は無事、多愚痴の先導により目的の場所にたどり着いていた。
この歳で迷子になっていた姿を見られていた情けなさはあったが、
先ほどの多愚痴の言葉に少し安堵する。
「そうか。看護師も知らないのなら、俺がわからなくても当然だな」
苦笑しながら、多愚痴から出された珈琲に口つける。
尖りの無い上品な香りが、鼻を抜けていった。
「美味い」
「富士原さんが定時で帰っちゃったので、少し煮詰まっているかと心配したんですけど……」
「それでも、その辺の下手な喫茶店より美味い。白取が絶賛するのもわかるな」
会話の中で出てきた人名に、多愚痴は顔を歪めた。
そんな多愚痴の様子に、早見は内心首を傾げる。
「あの人はここを自分専用の喫茶店か何かだと勘違いしてるんじゃないですかね。
この間も来るやいなや、挨拶もなしに『愚ッ痴ー、珈琲』ですよ!まったくもう!」
共通の知り合いの傍若無人さを理解してもらおうと、多愚痴は早見に愚痴のような形で訴えた。
愚/痴/外/来の主でも、誰かに愚痴を聞いてもらいたいこともあるのだな、
と早見は珈琲を口に運びながらぼんやりと考える。
「それにあの人、この間の救命関連の事件のときも、ずーっとここに泊まっていたんですよ!七輪や冷蔵庫まで持ってきて」
多愚痴のその言葉に、早見は堪らず表情を崩し、噴き出した。
「あいつ、ここに泊まってたのか!?どおりで、四六時中病院内にいると思ったら……」
笑いと驚きが混ざり合った様な早見の表情に、多愚痴もふっと気を緩める。
そして、こんな辺鄙な場所にある自分の城に来てくれた客に対して、
ぐちぐちと愚痴を言っていたことに多愚痴は気付いた。
「あっ、すみません、早見先生。せっかく来てくださったのに、自分の愚痴を聞かせてしまって」
多愚痴は申し訳なさそうな表情で早見に謝った。
「いや、あいつのお守りは大変だろうからな」
早見の言葉は本心で、だからこそ、別に構わないと言うように速水は手を振る。
そんな早見の様子に多愚痴はほっとし、早見同様珈琲を口に運んだ。あれ、と、珈琲を啜る二人の間に流れたある程度の沈黙の間を破ったのは、多愚痴の声だった。
「早見先生はこんなところに何の用事があったんです?」
最近は救命でも、精神的ケアが必要な患者は少ないし、
何かあれば内線一本で済む話。
わざわざ救命の長がのこのこと、しかも私服で訪れるような場所ではないことは確かだ。
何かやらかしたかな?と記憶を巡らせる多愚痴に、早見は声をかけた。
「いや、大したことじゃない。ただ、先日の俺が引き起こした救命関連の出来事で、
多愚痴先生にはずいぶんと迷惑をかけたからな。礼を述べに来た」
言葉が終わると同時に、軽く頭を下げる早見。
思いもよらなかった早見の行動に、多愚痴は困惑しつつも、直ぐに首と手を横に振った。
「よして下さい。顔を上げてください、早見先生。
僕だって早見先生をはじめ、救命の皆さんにはお世話になったんですから」
そこで一旦言葉を止め、嫌な顔をしながら
「それに、白取さんだって救命の皆さんに嫌な思いをさせて、沢山迷惑をかけたんですし……」
と続けた。
そんな多愚痴の言葉に苦笑をもらした早見は、手にしている珈琲カップに視線を落とした。
そして、真面目な、しかしどこかここではない遠くを見るような表情を浮かべる。
「正直な話、アイツを不快に思ったことは幾度と無くあった。
だが、アイツと多愚痴先生がいなければ、俺は今ここに居れたかどうかもわからない」
もしかしたら生きていなかったかもな、と言う早見の言葉にどう答えていいのかわからず、
多愚痴は悲しそうな寂しそうな顔をした。
「俺は独りで戦っているつもりだった。俺独りでも、自爆テロぐらいすれば、
少しでも状況は変わると思ったんだが……。現実ではそう上手くはいかないようだ」
自嘲気味に話す早見に、多愚痴はでも、と口にする。
「でも、早見先生が捨て身同然で動いていなきゃ、
きっと白取さんは監査の時点で帰っていました。
早見先生が水面下で必死になって頑張っていたからこそ、
白取さんも何かを受け取って動いたんだと思います。
あの人も今後の医療を真剣に考えている人ですから」
そう話す多愚痴の顔には早見へのねぎらいと賞賛、
そして、これまで様々な事と戦ってきた相方への深い信頼が読み取れた。
「そうか……。だからアイツは戦ってこれたんだな」
少しアイツがうらやましい、と多愚痴に聞こえない程度の音量で呟き、
そうそう見られない柔らかい表情を早見は浮かべ、珈琲を飲み干した。
読み取れない早見の言葉とめったに見られない表情に、
不思議なような驚いたような多愚痴に向かって、
「しかし、愚/痴/外/来と言われているだけあるな。
多愚痴先生のせいで、話すつもりも無いことまで口にしてしまった」
そう言い、早見は困ったような顔をする。
未だ、何がなんだかと呆けている多愚痴だったが、照れたようにふにゃりと笑い、言った。
「でも、ここはそう言うことを話して、心の中をすっきりしてもらう場所ですから」
それに愚/痴/外/来ではありません、と続けた田口に
「そうだった」
と早見はニヤリと笑った。
鞄を持ち立ち上がった早見に、玄関まで送ります、と多愚痴も立ち上がったが、
「さすがにもう迷子にはならんさ」
と苦笑しながら返されると、
「それもそうですよね」
と多愚痴も可笑しそうに返し、答えるしかない。
早見は、立ち上がった多愚痴の頭を唐突にぽすぽすと叩くと
「俺は今暇なんだ。……また珈琲を飲みに来てもいいか?」
と将軍と言う名にふさわしくない、優しい笑みで多愚痴に尋ねた。
「ええ、いつでも」
多愚痴も嬉しそうに早見に笑顔を返す。
しかし、ふと表情を曇らせた多愚痴は、あ、と声をあげた。
「あ、でも、あんまり僕の頭を叩かないでくださいね。
……そりゃあ、僕が小さいことは自分でもわかっていますけど……」
早見先生や白取さんが大きすぎるんですよ、とうだうだこぼし始めた多愚痴に、
「ちょうどいい高さにある多愚痴先生が悪い」
と早見はニヤリと言い放った。
少し憤慨したような表情の多愚痴は、ふと何かに気付き、笑いをこらえるような顔になる。
「そう言えば、白取さんもおんなじ様なことを言ってました。
やっぱり、二人は同期で、仲が良いんですね」
そんな多愚痴の言葉に盛大に顔をしかめた早見を見て、
多愚痴は耐えていた表情を解き、声に出して笑った。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
たしか将軍って外来に来てないですよね?見落としていたらごめんなさい。
138 :
決戦前夜:2011/01/22(土) 12:21:50 ID:VLIoXlVIP
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
俺は、生まれ落ちたときから世界に忌み嫌われていた。
見る者すべてに驚愕と畏怖を抱かせる異形の身体。
母親は自分の産み落とした怪物の姿を見て悲鳴をあげ、闇に葬った。
俺は、ごみ溜めのような街で薄汚い浮浪者たちに拾われた。
生きるために何でもやった。その街では、力を持つ者だけが法だった。
俺を育て犯し続けた男を殺した日、俺はその街の支配者となった。
だが、そんな俺にも生きる道があったのだ。
他のものを圧倒する、純粋な力。
それを求めていたのだと、ある日俺の前に現れた師匠は言った。
厳しい修行が始まった。
だがそれは俺にとっては初めて生を実感できた日々だった。
ぎりぎりまで命を削り、自分の可能性に賭け続け、
思ってもみない特別な能力と、俺を慕う弟のような存在も手に入れた。
俺は、俺の強さをもって、俺を世界に見せつける。
生きる道を与えてくれた師匠をなんとしても世界に認めさせてやる。
第一歩を踏み出す朝。俺は、常に俺の後ろをついてくる兄弟弟子に声をかけた。
「行くぞ、餃子」
「はい、天さん!」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
>>120 乙乙!!!紫緑萌えなので最高だった!!他のも萌えた!!!!
掛け合いが軽妙でテンポよくてイイ!!
>>131 大好きな組み合わせのSSが棚で読めるなんてありがとう!
将軍にとっても愚痴はいい癒しになるよね
外来訪れる将軍が見られて満足です!
拳を合わせた所で完全にビルドアップだと思ったらまさかのハニーフラッシュだった
服がビリビリに破けて変身する姿が浮かんだのは絶対に私だけじゃない
せっかくサーガネタも出たから、そろそろ羽の生えた王子様とか出てくれないかな
あと、ブロッケンの靴に唾吐いて首はねられた兵士がGの竜馬に見えるんだよ
傷といいモミアゲといい…
でも似たようなパーツ持った人かなりいるからなあ
いくらなんでも主人公の首ちょんぱなんてしないよね
あしゅらについては、もう何も言うことはありません
すみません盛大に誤爆しました…
避難所で少し前に話題になっていたメロ→エメ←シーです
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ひばり亭、ある日の夕刻。
宿から出かけていたものたちがひとり、またひとりと帰ってきて
ホールは徐々に賑わい始めていた。
先日行われた神殿軍の襲撃とそれに伴う戦争のためしばらく遺跡や門が封鎖されていたこともあり、
冒険者や商人たちはその反動でこぞってそれぞれの商売に精を出しているらしい。
ほくほく顔の商人もいれば、泥まみれでうなだれた様子の冒険者もいた。
しかし皆手には一様にエールを持ち今日の慰めや明日への活力をその杯の中に求めている。
そして、ホールの中を所狭しと埋めているテーブルの中には
その杯を持つには若すぎる者が集った卓もあった。
「異常だろ、アレはよ!?
なんであの暗いオッサンがエメクに四六時中張り付いてんだ!?
スパイは止めたんじゃなかったのかよ!!」
「おや、君、いつものスタンスはどうしたのかね。
メロダークくんが誰に張り付こうが君には関係がないのではないかい」
「大有りだ!!」
シーフォンは、だん、と拳でテーブルを叩いた。
その拍子に湯気の上がるミルクコーヒーのカップが揺れる。
かろうじて零れることを免れたそれに、シーフォンは無造作に角砂糖を二つ放り込み
イラついた様子で音を立てながらスプーンでかき回した。
向かいのテレージャもそれを見ながら自分のカップに口をつける。
彼女は年齢的には飲酒を認められているが、(一応)巫女という立場もあり(普段は)酒を口にすることはない。
神殿のスパイだったメロダークがエメクの殺害を試み、失敗したあげく
何がどうなったのかは当事者以外にはさっぱりわからないが、
そのままエメクへ従者のように付き従うようになってしまったのはつい先日のことだった。
パリスやネルがエメクに尋ねても、本人は言いづらそうに口ごもるばかりで
「仲間の一人が実はスパイでそれに殺されかけました」というとんでもない事実以上に
言ってはまずいことでもあるのかと、周囲の疑問は膨らむばかりだった。
実際のところは、言ってはならないことというよりも、
あの体験をどう説明していいのかエメクやメロダークにもわからないのだった。
そのメロダークが梃子でもエメクの傍を離れようとしないため、
探索のメンバー構成はおのずと限られてくる。
最近では、遺跡の知識と盗賊の技術を兼ね備えたシーフォンが残りの一人になることが多くなっていた。
つまりその様子を最も目の当たりにしている。
「ひとっことも喋らずエメクの後ろにへばりついてよ、気色わりいんだよ!
スパイじゃなくてストーカーかっつうの!」
「ほほう」
テレージャは、いつもとさほど変わらない穏やかな笑みを浮かべ、
苦々しげな顔をするシーフォンに視線を向けたまま手だけを忙しく動かしている。
かりかりかり。
彼女愛用の羽ペンが翻り、白い表紙のノートに何かを素早く書き付けた。
「大体なんで妖術師の僕様が神官二人のパーティに付いて行かなくちゃならねーんだ。
テメーが行けよ、お仲間だろ」
「そうしたいのは山々なのだがね。
流石に得意の重なりすぎたパーティが危険だという事は経験の浅い私にも分かる。ああ残念だ」
テレージャは、少し口元を笑みに緩めたまま
声色は本当に悔しそうにため息を一つ吐いて見せた。
「まあまあ、シーフォンさんも落ち着いて。甘いものでもいかがですか?」
突然、お盆にいくつものプリンを乗せたアルソンが
二人の間ににゅっと顔を出した。
「おや、美味しそうだ。頂こう」
「……ふん」
二人は促されるままお盆の上のガラスの器をひとつずつ手に取る。
「あ、おかーさん、私にもプリン〜」
「だから僕、まだお母さんって歳じゃありませんってばー」
アルソンはそのまま呼ばれた方へ戻っていってしまった。
どうやら自分が焼いたプリンをひばり亭の中で配り歩いているらしい。
「うむ、頭脳労働の後の甘いものは格別だね」
「…………」
どこで手に入れたのかは分からないが、味の濃い立派な卵を使い、
あえて少し硬めに焼き上げられたカスタードプリン。
軽く焦がしたカラメルも良い風味で、更にその上へたっぷりの生クリームが乗せられている。
そのクリームとカラメルを同時にほおばり、
シーフォンの眉間の皺が少しだけ緩んだ。
「……とにかく。僕はもうあのパーティはイヤだからな。
ひとりで潜ってた方がまだマシだ」
「まあそう言わず。エメク君もせっかく君を誘ってくれてるんだろう。
愚痴くらいならいつでも私が聞いてやるから、行ってきたまえよ」
テレージャは相変わらずニコニコと微笑んで、傍目にも機嫌がよさそうだ。
対照的にシーフォンは、むっすりと膨れたまま無言で口にプリンを運んでいる。
それでも、単なる愚痴や雑談とは言え
あのシーフォンとここまで中身のある会話をするのは、実のところテレージャが最も多かった。
巫女と魔術師、本来ならば敵対しても不思議ではない間柄であるが
彼らは互いに巫女である以前、魔術師である以前にひとりの探究者なのである。
そういう意味では同じ世界に生きるものとして、何か共通の言語のようなものがあるらしい。
ちなみにこれをもっと砕けた言葉にすると「オタク」である。
けして二人ではない彼らは常に同じ世界観を共有している。
「まあな、アイツと行くとイイもんが見つかるのは確かだよ。
術の系統もかぶらねえし」
まだぶつぶつと何か文句を垂れながら、それでも明日も
誘われれば同じパーティで行くのだろうとテレージャは思った。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
テレージャさんは白表紙のノートを写本にして売り出すべき
ナンバリングミス失礼しました
147 :
P4 主人公×尚紀:2011/01/22(土) 23:07:41 ID:8orl0ZMG0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
柔らかい髪に手を差し入れて撫でると、決まって尚紀は一瞬困った目でこちらを見上げる。
それに笑って応えて、そのまま撫でているとゆっくり身体を預けてくれる。
そうしたら左腕を背中に回して、抱き寄せる。抱き返す尚紀の腕の動きはまだぎこちない。
髪を撫でていた右手も背中に回して、ぎゅっと抱きしめる。
高校一年生、もう完全に大人の体格、顔つきになっている者もいれば、成長しきってない身体、あどけなさの残る顔立ちの者もいる。
どちらかといえば尚紀は後者だ。特に身体はまだまだ細い。抱きしめるとよくわかる。
「尚紀」と耳元で囁けば、「はい」と律儀に返事が返ってくる。
もう一回りは成長するだろう身体に、素直な返事。
何かわるいことをしているような、いたいけな子を誑かしているような背徳感。
堪らない。
密着した身体を離し、赤くなって俯いている顔を顎を取って上げさせる。
眼はまだこちらを見ていない。だから
「尚紀」
もう一度名前を呼ぶ。
ゆっくりと尚紀の瞳が動く、眼と眼が合う。
「いい?」
聞いておいて返事を待たずにキスをした。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
これだけです。ただ、これだけです。
150 :
不身持1/4:2011/01/26(水) 13:45:05 ID:spEGzXHR0
注!三戸校門親分×8でエロ。
30年以上前の再放送で
8が親分の事を好きすぎなのを見て。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
おいらは、なんて罪深いことをしているんだろう。
今は足を洗ったけれど、
過去には岡っ引きに追われるような悪事もやらかしてきた。
当時反省こそしたが、こんな気持ちになった事はない。
先刻まで飲んでいた酒のせいにして
抵抗しつつも心の奥の己の欲に流されたことに、後悔する。
背後から抱かれ親分の奇麗な指先が全身を這う。
立て膝をついたそこはがくがくと震え、
崩れそうな身体は親分と壁との間に挟まれている。
普段鮮やかに風車を操るその繊細な手に
己の情けない体は悦び、あまつさえ
あられもない声まで上げてしまうなんてもう申し訳が立たない。
151 :
不身持2/4:2011/01/26(水) 13:46:57 ID:spEGzXHR0
「楽にしてな…」
耳元に唇をひっつけたまま囁かれて
思わず仰け反った所に、宛がわれていた熱い塊が押し込まれる。
「っひ…ぁ…っ―!」
「ほーら、力抜かねえか…」
「―…!!」
無理ですって、痛い、痛い、熱い、痛い。
痛てぇと叫びたくても、ひゅっと喉が鳴るだけで。
圧迫感に息もできずこのまま溺れるんじゃないかと思う。
「っはぁ……、は…っ…」
「息ってのは、吸って、吐いてってやるんだよ」
尚余裕の笑いを含んだ声がまた耳元で囁かれる。
痛みと圧迫感に耐えて呼吸を整えていると、
下半身からじわりじわり、今までに感じた事のない
痛みとは違う感覚が沸き上がってきてもうそれどころではない。
「…は…ぁ……は……!」
「ちょっとは、落ち着いたな…」
体を密着させたまま、じっとしていたかと思うと、
両手を後ろから壁に押し付けられて、急に突き上げられた。
152 :
不身持3/4:2011/01/26(水) 13:49:00 ID:spEGzXHR0
「ぅぁあ……っ―!」
羽交い絞めにされて、ゆっくりと
でも確実に奥まで突かれるその度に感じるのは
痛みでは無く、紛れもない快楽。
「く…んぅ……!…っあ…ぉやぶん…っ」
壁に縋りついて唇を噛みしめ、女みたいに溢れる声を我慢しようとするも
また揺さ振られて、一瞬で諦めさせられる。
「っぁ…こんなの、やっぱりいけねえよ…っ」
「おめぇは、今更過ぎるんだよ…」
親分が、こんな事をしちゃいけねえ。
親分が一声掛けただけで江戸だけでもざっと百人が動くっていう凄い人。
人の懐に手を入れて暮らしてきた自分にとっては、雲の上の人だった。
それでもずっと憧れで、大好きで、形振り構わず追い掛け続けてきた。
親分みたいなお人が、おいらみたいな人間と
それ以前に野郎なんかと何かあっていいはずがない。
そもそも、お傍にいるのを許してくれただけでも贅沢な話だった。
153 :
不身持4/4:2011/01/26(水) 13:55:26 ID:spEGzXHR0
「ゃ、あ…っでも―…!」
「…もう余計な口叩かずにいい声だけ出してな…っ」
「ひぁあ…っ……!!」
中を一層強く抉られ、そこからは抵抗など完全に放棄した。
あぁもう二度と高望みしませんから
好意を寄せる言葉など一言も紡いでくれたことはないのに
考え違いなおいらをどうか明日も傍にいさせて下さい。
平生では聞く事のない荒っぽい息遣いと熱い吐息を感じて
親分も少しは興奮しているのだろうかなんて
真っ白になっていく頭にちらりと過った。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
つい勢いで。申し訳なかった。
>>150 ふおお!萌え滾ったよ、ありがとうGJ!
余裕の親分カッコヨス
ヒカアキです。いつも感想をくれる方、ありがとうございます
新婚旅行はどうしても書きたかった
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
気がつけば窓外を流れる景色はのどかな田園風景に変わっていた。
空を覆う雲から初夏の白い陽射しが透けて見える。
東京では昨夜から雨が降りしきっていた。
新幹線で梅雨前線を抜けたのだろうか。
自分たちを取り巻く諸々の厄介事からも逃げることができたようで、ヒカルは小さく吐息を漏らした。
「キミの番だよ、進藤」
ぼうっとしていたらしい。ヒカルはアキラの声で我に返った。
窓枠に置かれた小さなプラスチック盤の右上、黒のハネに対し、白もハネて応戦している。
ここはツグべきか中央にオクべきか。
しばし悩んだ末、ヒカルは中央に進出する手を選んだ。
ヒカルの正面でアキラが細い顎をやや引き、考え込んだ。
恐らく、右下の黒石に上からツケるか下からツケるか迷っているのだろう。
アキラなら上ツケを選択するはずだ。
ヒカルとアキラは二列のシートを対面させて四席分を占領していた。
最初はおとなしく並んで座っていたのだが、静岡を過ぎたあたりで我慢できなくなった。
平日の昼間に新幹線を利用する客は少ない。
ヒカルは勝手にシートを回転させ、アキラに向かいに座るよう促した。
アキラは「あとから団体のお客さんが乗ってくるかもしれないだろう」と渋った。
だが、白のカカリに対し、三連星の真ん中にコスんで意表を突くと、黙って正面に座り、あとは何も言わなくなった。
先ほど松永を通過したから、そろそろ新尾道のはずだ。
アキラは予想通り上からツケてきた。
ヒカルはツイで黒を補強した。
その時、目的地到着が近いことを知らせるアナウンスが流れた。
「打ちかけだね」
「ああ」
ヒカルは碁石をくっつけたまま盤を折り、バックパックの外ポケットにしまった。
アキラは腰を上げ、旅行バッグを棚から下ろしている。
東京からここまであっという間だった。
今打ちかけの対局で四局目だ。
三年前に河合と広島を訪れた際はひどく遠い道のりに思えた。
あの時は河合にずいぶん失礼な態度を取ってしまった。
それだけ子供だったし余裕もなかった。
ヒカルはふと、当時よりもいくらか大きくなった手のひらを見つめた。
今、自分は大人と言えるのだろうか。
十八歳の誕生日まであと三ヶ月。
どんな契約も親の署名と捺印がなければ交わせない。
経済的に自立してはいるが、いまだ実家暮らしだ。
ヒカルの脳裏に行洋の渋面が浮かんだ。
「どうしたんだ、進藤?」
新幹線はすでに停車していた。
アキラは通路に立ってヒカルを待っている。
「なんでもねー」
ヒカルは慌ててバックパックをしょい、アキラのあとに続いた。
別の新幹線に乗り換えて三原駅に向かい、そこからローカル線を乗り継いで尾道駅で降りた。
昼食は三原駅ですませた。
二人は駅前で因島行きのバスに乗り込んだ。
バスは他に地元客を数人乗せ、因島めざして発車した。
「すごい、瀬戸内海を見るのは生まれて初めてだ」
アキラが嬉しそうに窓に顔を寄せた。
凪いだ群青の海に小島が点々と浮かんでいた。
二人は石切神社で参拝したあと、秀策記念館を開けてもらい、中を見学した。
河合と来た時はろくに展示物を見ることもなかった。
アキラは秀策の書やぼろぼろの碁石にしきりに感心した。
秀策の墓前でも熱心に手を合わせた。
ヒカルもアキラにならってしゃがみ、目を閉じて合掌した。
佐為、お前はそっちで虎次郎と打ってるのか。
オレがそっちに行くのはかなり先だけど、また会えたら思いっきり打とうな。
オレ、絶対負けないから。
塔矢がお前と会ったらどんな反応すんのかな。
やっぱ驚くのかな。
今さらかもしんねーけど、オレと塔矢――。
「いい眺めだな」
いつの間にかアキラは立ち上がり、眼下に広がる瀬戸内海を見下ろしていた。
ヒカルもアキラの隣に並んだ。
以前もこうして瀬戸内海を見下ろしたことがあった。
ヒカルの目から勝手に涙が溢れた。
「進藤、泣いているのか?」
アキラが驚いたように聞いた。
「大したことじゃねーんだ。いろいろ思い出しちゃってさ」
ヒカルは手の甲で何度も涙を拭った。
だが、涙は止まってくれない。
見かねたアキラがハンカチを渡した。
ヒカルはそれで両目をごしごしこすった。
事の発端は先月の囲碁ゼミナールだった。
ヒカルはアキラと同じ仕事が割り振られてはしゃいだ。
それがいけなかった。
同室の真柴にアキラとキスしているところを見られてしまったらしい。
らしい、というのはヒカルがその事実を知ったのが今月に入ってからだったからだ。
それも噂が日本棋院中に広まったあとでようやく聞かされた。
噂を教えてくれた和谷は「気にすんな」とヒカルを励ました。
ヒカルは今まで自分に向けられていた視線の意味を知り、納得した。
と同時に、これだけではすまないと直感した。
しばらくして、アキラから「父がボクたちに聞きたいことがあるそうだ」と電話をもらった。
ヒカルは腹をくくって塔矢邸に向かった。
二人の未成年を前に行洋は回りくどい言い方をしなかった。
単刀直入に「アキラと進藤君は恋人同士なのか?」と尋ねた。
ヒカルは迷わず「はい」と答えた。
「そうか」
そう呟いたきり、行洋は眉間に深い皺を寄せ、押し黙ってしまった。
佐為とネット越しに対局したあの日。
ヒカルはもちろん病院の個室にいる行洋の様子を知らない。
だが、プロ生命を賭けたあの対局の時でさえ、こんな顔はしなかったのではないかと思えた。
それほど行洋の表情は苦渋に満ちていた。
ヒカルの胸で冷たい不安が頭をもたげた。
行洋にとってアキラは目に入れても痛くないほどかわいい息子のはずだ。
その息子が男と付き合っている。
二人を別れさせることなど行洋にとってはいとも簡単だろう。
修行と称してアキラを中国に連れていくことだってできる。
そうなればヒカルには手も足も出ない。
ヒカルの胃がきりきりと痛んだ。
「お父さん」
アキラの低い声が重苦しい沈黙を破った。
「例えお父さんが反対したとしても、ボクは進藤を選びます」
ヒカルは座布団からどき、その場で土下座した。
「お願いします、塔矢先生。オレと塔矢のことを認めてください」
再び長い沈黙が続いた。
ヒカルがもうだめかと諦めかけたその時、行洋が「いいだろう」と頷いた。
「アキラと進藤君が選んだ道なら仕方がない。私は黙って応援しよう」
「ありがとうございます!」
ヒカルはもう一度深々と頭を下げた。
隣でアキラがほっと息をついたのが気配でわかった。
ヒカルは、サンダルをつっかけて門まで見送りに出てくれたアキラに因島に行かないかと誘った。
「新婚旅行は因島って決めてたんだ」
「新婚旅行か? それはまた大げさだな」
アキラは苦笑したが嬉しそうでもあった。
ヒカルは二人の手合いのない日を急いで調べ、尾道の旅館を予約した。
佐為と虎次郎が共に過ごした景色をアキラに見せたかった。
「塔矢、お前に話したいことがあるんだ」
旅館の大食堂での夕食のあと、部屋に戻ったヒカルは窓を開けた。
雨が降っていたが、東京と違い、不快な熱気はなかった。
一番安い部屋にしたため、目の前に広がる景観は駐車場と古びた商業ビルだけだ。
「なんだ?」
アキラも隣にやって来て同じように外を眺めた。
「佐為のこと」
アキラは勢いよく顔を振り向けたが、何も言わなかった。
ヒカルはまず、小学六年生の頃、祖父の蔵に盗みに入ったことを告白した。
蔵には古い碁盤があり、碁盤には血の染みがこびりついていた。
アキラは黙って静かに聞いていた。
佐為の名前、入水したいきさつ、虎次郎に取り憑いたこと、それでもなお成仏できずにさまよっていたこと。
話がアキラとの出会いに及ぶと、アキラの肩がぴくっと震えた。
ヒカルは佐為がどれほどアキラを評価していたか、佐為の言葉を忠実に再現して伝えた。
佐為に向いている目を自分に向けさせたいと願ったことも正直に話した。
思えば、それが恋の始まりだった。
アキラを追いかけることでプロになれた。
代わりに佐為に打たせてやる機会がなくなった。
「五月五日だった。すげーいい天気だった」
佐為はさよならも言わずに消えてしまった。
佐為を探すため、ヒカルは秀策ゆかりの地を巡った。
最後に行き着いたのは日本棋院の資料室だった。
そこで神様にお願いした。
佐為に会った一番初めに時間を戻してと。
神様は何も答えてくれなかった。
佐為がいないなら碁を打つ意味などない。
ヒカルは手合いをサボった。
だが、佐為はちゃんといた。
自分の打つ碁の中に。
碁を打ち続けたいと心の底から思った。
ヒカルは心地よい疲労を感じ、サッシにもたれかかった。
雨に濡れた車が電灯の光を反射し、整列した海ぼたるのようにちらちらと輝いていた。
アキラを窺うと、真剣な眼差しで遠くを見つめていた。
その端整な顔にかかった黒髪が風で音もなく揺れた。
「まあ、すぐには信じらんねーとは思うけど……」
「信じるよ」
アキラはヒカルの言葉を遮って目を戻した。
「キミの言うことだ。信じるよ」
その瞳に余計なものは一切なかった。
アキラが自分の正気を疑うわけはないとわかってはいた。
だが、やはり断言してもらえたことは心強かった。
「オレ、佐為にはすげー感謝してるんだ。佐為のおかげでお前にも碁にも出会えたんだもんな」
「ボクも感謝しなきゃね」
アキラは顔にまとわりつく髪をかき上げた。
「キミに出会えなかったらひどく寂しい人生を送っていたと思う」
「なあ、塔矢、一緒に住まないか? 塔矢先生にも認めてもらえただろ。それに、これは新婚旅行なんだし」
ヒカルは上目遣いでアキラを見た。
「いいよ、住もう」
アキラは微笑んで頷いた。
「よっしゃ。じゃあ、帰ったらさっそく雑誌を買わなきゃな。あと不動産屋にも行かねーと」
「進藤」
「ん?」
「話してくれてありがとう」
「オレの方こそありがとな、責めないでいてくれて。東京に戻ったらまた変な目で見られるだろうし、
いろいろ陰口叩かれるだろうし、根も葉もない噂だって立てられるだろうし……」
「ボクは気にしない。周りがとやかく言えないほど強くなればいい。それはキミだって同じだろう?」
「ああ、そうだな」
ヒカルはアキラの首に腕を回した。
「塔矢、お前がいてくれてほんとに嬉しい」
「ボクも嬉しいよ」
アキラもヒカルの背に腕を回し、そっと抱きしめた。
「進藤、ボクはキミを一人にしない。どんなことがあっても消えたりしない。いつまでもキミのそばにいる」
「ずりーぞ、塔矢。それ、オレが先に言おうと思ってたのに」
ヒカルは笑いながらぼろぼろと涙をこぼした。
「つらかったね、進藤」
アキラは幼い子供をあやすように優しく背をさすった。
「うん、すげーつらかった」
ヒカルは涙を溢れるに任せた。
「よく頑張った」
「自分でもそう思う」
アキラがおかしそうに笑った。
ヒカルはアキラの髪に顔をうずめて泣きじゃくった。
翌日、早めに宿を出た二人は慈観寺、糸崎八幡宮、宝泉寺を訪れ、新幹線で帰京した。
その日の夜、ヒカルは両親にアキラとの関係をカミングアウトした。
行洋からはすでに許しを得ていることも伝えた。
両親は相当ショックだったようで、絶句したまま口をぽかんと開けていた。
「オレ、塔矢と一緒に住むから」
ヒカルはそう言い残し、二階に上がった。
ジャージに着替えていると雨が降り出した。
勢いはたちまち強まり、室内は雨粒が世界を叩く音で満ちた。
ヒカルはベッドに潜り込み、目を閉じた。
陰気な雨音も今は快く聞こえた。
雨は降るが、じきに止む。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
某神話モノのAA小説の弟者×兄者です。ほぼ愛なし鬼畜で色んな意味で痛い電波です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
俺と同じその顔は滅多に表情を変えることはなく。
俺と同じその声音は殆どの場合抑揚がなく。
俺と全く同じ遺伝子のはずなのに。だけれど。だからこそ、
だから。
俺は、兄者が嫌いだ。
二人分の体重を支えるベッドからぎしりと悲鳴が聞こえる。
そろそろ買い換えるかなあ。まあ、いざとなったら床ですればいいか。
そんなことを考えながら組み敷いた兄を見下ろすと、そいつは平坦な声でぽつりと呟いた。
「ベッド、壊れるぞ」
ああ、こんな微妙なところでシンクロとかどうなんだよ。
つーか今この状況で相変わらずの無表情とかほんと死ね。
「いいんだよ、そんなの……それより、」
ぞんざいに言いながらスタンドに手を伸ばし、ペン立ての中に紛れ込ませた銀色のそれを目の前に突き出す。
「これ、何だと思う?」
兄はしばらく考え込んでから「医療器具?」と答えた。まあ、一応正解だろうが。
「ハズレ。これはぁ」
兄のズボンに手をかけ、下着ごと一気に引きずり下ろす。
一瞬だけ身体がびくりと反応したような気がして一気にテンションが上がった。
「兄者のここに突っ込む用の棒だよ」
意地悪く耳元で囁き、兄のペニスの尿道口を指でなぞる。
衝撃的であろうことを告げられた反応を伺おうと顔を覗き込むと、さっき身体が震えたのは完璧に気のせいだったのかやはり相変わらず能面だった。
「なるほど、カテーテルというやつか。だが生憎俺はそういう病気では「もういい黙れ死ね」
こいつと話しても時間の無駄だ。……昔から分かっていたことだが。
俺は言葉責めを諦めてさっさと目的を遂行することにした。
左手で兄の萎えたペニスを掴み、右手で通販で買ったばかりの尿道バイブを構える。
それは拡張用でもあるらしく、サイズの違うものが5本セットになっているお徳用だった。
しかし俺の目的は拡張ではないので、今手にしているのはその中で一番大きな物である。
俺の目的。兄者を組み敷く目的はいつも同じだ。
それは愛とか快楽とかでは断じてない。そんなの想像するだけで身の毛がよだつ。
俺の目的。ただのストレス解消。
それは、けれど俺にとっては非常に重要な大切なことだった。
「なあ、弟者」
兄が何かを言いかけた。
しかし俺は既に話すをする必要はないと結論を出した後だったので、それを無視する。
「お前はどうして――」
俺に何かを問いかけようとしたらしい言葉は最後まで発せられることはなかった。
兄の口からはその代わりにひゅっと間抜けな音をした息が零れ落ちる。
何の予告も予備動作もなく、強引に尿道にバイブを突っ込んだ。
本当は消毒したりローションを塗ったり、色々面倒なことをした方がいいらしいがこいつには必要ないだろう。
尿道用にしてはそれなりの太さを持ったそれは少し挿れたところで進みにくくなったので、ぐりぐりと回転させながら文字通り捻じ込んでいく。
奥へ奥へと押し進める度に兄はくぐもった呻き声を上げた。
それが無性に面白くて、持ち手まで全部挿れてやろうと俺は益々力任せにバイブを押し込む。
「うっ、ぐ……ぁ゛っ」
ああ、愉しい。なんて愉しいんだろう。
この兄の家族として、弟として生活を送らなければならない日常のストレスが、兄が苦痛の表情を浮かべる度に少しずつ癒されていく。
それにしても。
普段の忌々しい無表情を歪めることが目的なら、やはり兄には快楽よりも苦痛の方がいいらしい。
一度精液が出なくなるまでヌいてみたが反応はすこぶる悪かった。
きっと不感症に違いない。だから無駄に可愛い彼女がいるくせに童貞なんだ。
……なんだかまた腹が立ってきた。後でディルドでも注文しておこう。
「あ゛、い……ちょっ、お、弟者……」
尻穴用とか初心者用とかもあるらしいが、俺は兄想いだから膣用の極太サイズにしておいてやろうかな。
「ぃ、いたい。こ、れ、ちょっ、とっ……マジで痛いんだが」
こいつのことだからもし腸が裂けたって絆創膏でも貼って放っときゃ次の日には治ってるだろ。
「っ、弟者、弟者、痛い。痛いって」
「……んだよ、うるさいな」
話さないと割と最近決めたばかりだったのに、あまりにもうるさいのでつい反応してしまった。
「痛いです」
「痛くしてんだよ」
「なん……だと……」
何故かショックを受けたような口ぶりの兄を尻目に、バイブのスイッチを入れる。
殆どが尿道に埋まったそれは、電子音を立てながら軽く振動しはじめた。
「ぅあっ……おっ、弟者、ま、まって。タイム、タイム」
「うるさいと言ってるだろう」
兄が呻き声の合間にしきりに制止を訴える。今までは殆ど無反応でこんな反応はなかった。
そのことに戸惑う反面、マグロだった兄がささやかながら抵抗する姿に殊更被虐心をそそられる。
やはり思い切って買ってよかった。次からはSMでいこう。
「こ、これ、は、性行為、だよな?」
「……まあ、一応そうだな」
「じゃ、あっ、……うっ……なん、で……」
分からない。分からないと兄はしきりに繰り返す。
「何が分からないんだよ?」
「性行為、とは、好き、だからっ……やる、ん、じゃ……」
「は?」
「好きなの、に……ぁ゛っ、んで、痛い、ことっ、」
一瞬思考が飛んだ。飛んで大気圏に突入した。
何こいつこわい。
もしかして俺が自分のことを好きだと思ってた?
俺が自分のことを好きだから親や妹者が留守の度に強姦してるんだと思ってた?
だから今まで抵抗しなかった?
なにそれこわい。
「……実は俺、変態なんだ。朴念仁な兄者は知らないかもしれないけど、そういう愛もあるんだよ」
俺は上半身を起こして辺りを見回した。
調度ギリギリで手が届く位置に殺虫スプレーがあった。あれでいいか。
「変態、なのは、し、ってる……」
スプレーを手に取る。中身はまだたっぷりと入っているようで、ずしりと重い。
少し勿体ない気がするが……まあいいか。
「そう、か。なら……っ、仕方、……」
噴出口を上に向ける。
勿体ない。でも、調度いいんじゃないか。
ほら。これならもしかしたら消毒代わりになるかもしれないこともないかもしれないしな。
まあ多分無理だろうが。
「んなわけないだろう」
兄の下半身を持ち上げる。
尿道で暴れ続けるバイブの振動に身体は強張っていたが強引に両脚の間に入り込んだ。
「――ッ?!」
スプレーの噴出口を肛門に挿れた途端、兄は目を見開き声のない悲鳴を上げる。
続いて人差し指と親指も突っ込んでなんとか引き金を引くと小さく聞き慣れた音がし、それと同時に兄の身体が跳ね上がった。
それが面白くて、俺は反応がなくなるまで何度も繰り返す。
やがてそれにも飽き、スプレーの本体も押し込もうと兄の脚を左右に力いっぱい広げた。
ごきり、と嫌な音がした。
兄がなにやら言っているが当初の予定通り聞こえないことにした。
スプレーの底を思い切り殴りつける。
ぶつり、と嫌な音がした。
構わず何度も殴り続けえるとスプレーは半分以上埋まった。
今度こそ兄は普段からは想像もつかない高い声で悲鳴を上げる。
うるさいな。近所迷惑だ。
ハンカチとティッシュを丸めて兄の口に詰め込む。
すると悲鳴は呻き声に代わり、それはやがてすすり泣くような声になった。
すごい。こんな兄は初めて見た。
いつもこんななら、ちょっとは好きになれるかもしれない。
……いや。それは有り得ない。
俺が俺で兄が兄である限り。
「お前なんて、好きなわけないだろ。化け物のくせに」
兄が虚ろな目で俺を見上げる。その弱々しい姿が。まるで人間のように苦痛に涙を流す姿が。
ひどく、愉しい。気持ちいい。ゾクゾクする。
「どういう思考回路をしたら自分が好かれてるなんて思えるんだ?化け物のくせに」
「どうして泣いてるんだ?化け物のくせに」
「痛いのか?化け物のくせに」
「それとも俺に嫌われてると分かってショックだったのか?化け物のくせに」
化け物。化け物。化け物化け物化け物化け物。
俺はこわれたように、呪いのように「化け物」と兄を罵った。
「……違うな。お前が化け物なのは事実なんだから」
罵ってなんかいない。そう、ただ本当のことを言っているだけ。
なのに兄は目を細めて俺を見た。まるで傷ついたように。否定するかのように。
「どうしてそんな顔をするんだ?こんな時にまで人間の真似はやめろよ、気持ち悪い。化け物のくせに」
けれど兄は人間の真似をやめない。化け物のくせに。
兄が、こいつが人間の真似をするのが一番嫌だった。
全て知っている俺の前ですら人間の真似をやめることはない。
それが一番嫌だった。
俺と兄は同時に生まれて、顔も同じで声も同じで遺伝子も同じで、なのに俺が1で兄が9というただそれだけで、
兄がその本性を、その本音を俺の前に、ただの人間である俺の前に晒すことは永遠にないのだ。
きっとたとえそれが、遠い過去であっても遠い未来であっても。
どんな時間軸のどんな俺であったとしても。
それが一番嫌だった。
けれど俺がどんなに兄に詰っても、1と9はあまりにも遠すぎて――
「――う、ぐ、ぅううぅっ!」
今までの鬱憤を全て込めたような渾身の力でスプレーを殴ると、それはやっと全て兄の胎内に埋まった。
兄は糸が切れたようにぱたりとベッドに突っ伏し動かなくなる。
肛門と尿道から流れ出た血で出来た血溜りに倒れている姿はどう見ても死体だが死んではいない。
どうやら気絶したようだ。化け物のくせに。
掃除するのも面倒くさいので、尿道にスイッチONのバイブが、尻に殺虫スプレーが刺さったままというシュールな状態の兄を放置して俺は友達の家へ避難することにした。
……まあ、俺は兄想いだから、教団には連絡しといてやろう。
**************************************
「俺はれっきとした人間だぞ?」
自らの血で出来た血溜りの中に、俺は蹲っていた。
これのどこが人間なんだ、化け物め。
口の中で何度も「化け物」と毒づく。
兄はそんな俺を見透かしているのかいないのか、またさっきのムカつく笑い方をして見せた。
「なぁ、弟者」
兄が何か糞難しいことを言っている。
けれど傷を負った部分があまりにも熱くて中々頭の中に入ってこなかった。
「もうすぐ俺はこの時間を修正して、お前とのこの全てをなかった事にする」
ああ、そうか。
なら今度はもっと良い関係を築けたらいいな。
次の俺は今の俺を覚えていないだろうが、せめて今この時間軸の捻じ曲がりきってしまった俺たちよりは。
「折角だから、俺の精神の安定と、ある一つの可能性を引き起こす為に
忘却するお前への選別に、俺の胸の内を少しだけ聞かせてやろう。兄として」
――?
今、なんて。
『恨めしい。憎らしい。羨ましい。』
確かにそう言った。
兄が俺のことを、恨めしいと。憎らしいと。羨ましいと。
「……なんだよ、それ。化け物のくせに」
いつだって本音を見せないで。ただの人間に過ぎない俺を見下して――。
なのに、羨ましい?
羨ましいのは俺の方だ。
今だって、この時間を覚えているのは兄だけで、俺は忘れてしまう。
せっかく兄の本音を知れたこの時間を、兄の手によってもうすぐ忘れてしまう。
兄が笑う。世界が歪み、闇に包まれる。世界が変わる。
もう終わりか。今の俺と、今のこの感情とは永遠にさよならか。
ならばその前に、と目前の兄に手を伸ばすが届かない。
人間が欲しがる物を全て持ってるくせに俺の何がそんなに羨ましいのか聞きたくて。
笑っているのになぜ今にも泣き出しそうな顔をしているのか聞きたくて。
あの時、何を言いかけたのか聞きたくて。
引き千切れそうなほど精一杯手を伸ばす。けれどやはり届かない。
『割合が9:1ではなく7:3であったならば』
さっき兄はそう言った。
俺が3ならば、この手は届いただろうか?
いっそ0ならば、こんな苦しい思いをしてまで手を伸ばそうともしなかったのだろうか?
けれどどの時間軸でも、俺が俺で兄が兄である限り俺は1で兄は9で。
そして、1と9ではあまりにも遠すぎて――伸ばした手は、きっと永遠に届くことはないのだろう。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
書き忘れた…
弟者は自分と兄者の出自も全部知ってる時間軸な話です
AA系はスレが多くて元ネタが気になりまくってもなかなか割り出せないのが残念だ…
>>156 またヒカアキが読めて嬉しいです
若いなりにお互いを支え合うラブラブの二人もいいですねー!
萌えましたありがとう
日テロドラマ刑事犬です。
シゲコマはセフレですが残念ながらまだ出来上がっておりません。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ソレデハ オオクリシマース!
その夜、大捕り物を終えた警視庁刑事部捜査一課第八凶行犯捜査殺人捜査十三係の面々は傷の手当てを終えると、
ある者は飲みに、ある者は官舎に、ある者は家族の待つ自宅へと各々に消えていった。
それを見送り、デスクに一人残った柳誠士郎は、はぁっと大きくため息を吐く。
今日は別れた妻が引き取った愛息の誕生日だった。
プレゼントを贈るどころか、会うことすら叶わない。
そんな切なさを噛み締めながら、一人報告書の記入を進めて行く。
キャリアながら面倒な事務作業を若手に押し付けず引き受けるのは、人の温もりのない暗い部屋に帰るのを嫌ったからだ。
さらに言えば、しこたま取られた慰謝料と養育費を稼がなければならないという理由もある。
「はぁぁぁぁ…。」
黙っていると我知らずため息がこぼれる。
胸の奥をキュンと締め付けられながらも、キーボード上の指先を動かせば、見かけによらず優れた事務能力を備えて生まれてしまったせいで報告書の製作はあっという間に終わってしまった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…。」
柳は大きく肩を落とした。
こんな事ならもっとダラダラ作業をすれば良かった。
時計を見ればまだ九時を少し回った所だ。
できることなら家には寝に帰るだけでありたい。
まだまだローンの残る、一人暮らしには大きすぎる2LDKのマンションのあちこちに、一人息子の影を探してしまうから。
こうなったら未解決事件の資料でも読み込んで時間を潰す…もとい、残業代を稼ごうと、ヤナギは席を立った。
資料室は十三係の詰め所の一階上、南の端にある。
デジタル全盛の時代にあって、まだまだ紙媒体での書類が山ほど残るその部屋は、いつでも古いインクと紙の匂いが立ち込めている。
さながら、図書館のような雰囲気があった。
ヤナギはその扉を開けた事を、後にひどく後悔する事になる。
その日、資料室はいつものインクと紙の匂いに混じって、微かに甘い女の香水のような匂いがした。
立ち入った婦警の残り香かなにかだろうと大して気にも留めなかったヤナギは、そのまま扉を閉め資料室の中に足を踏み入れた。
「二〇〇八年、葛西臨海公園殺人事件…葛西臨海公園殺人事件…。」
目当ての事件を小さく呟きながら、キャビネットの間をゆっくり進んで行くと、奥の方で何やら人の気配を感じてヤナギはビクッと身を竦めた。
『…やめっ…バカッ、…ンっ…』
『…うるさい。』
どこかで聞き覚えのある声が、ヤナギの耳に密やかに届く。
「ん?」
ヤナギは眉を潜めた。
大きな身体を小さく屈めて、刑事の身のこなしで対象に静かに迫る。
『無茶ばっかしやがって、お前みたいな捜査の仕方じゃ命がいくつあっても足りない。』
『そんなヘマするか。いいから離せッ!』
大きな影が小さな影を捕らえるように、資料の詰まったキャビネットに押し付けていた。
そこから逃げ出そうと、小さな影が必死に抵抗している。
『こんな傷作ってよくもそんな口が利けるな。』
『ちょっと弾が掠めただけだ。』
ああ、なんだ、いつものケンカか。
それなら巻き込まれないうちにさっさと逃げるべし。
幾多の経験からそう思い、ヤナギが二人の影に背を向けると、妙に淫靡な濡れた音が静寂に包まれた資料室に響き渡る。
『ぅッ、あっ…舐めんな、バカっ!』
聞いたこともない甘い声に、思わず振り返ってしまった。
『俺に断りもなく怪我して来た罰だ。』
『な…んで、いっつも…違う女の匂いさせてるようなお前に…一々断り入れなきゃいけないんだっ…!』
『首も絞められたって?赤黒く残ってるじゃないか、痕…。』
厚く空を覆っていた雲が晴れ、現れた丸い月が、庁舎の外から二人の姿を明るく映し出す。
『許せないな。』
低くそう言ったシゲムラは、コマツバラの白い首筋に口唇を寄せて強く吸い付いた。
『や…めっ…はなせって…ッ』
上着は肩からずり落ち、襟元のボタンはいくつか外され、
ネクタイも緩められている。
引き出されたシャツの裾からは、シゲムラの手が図々しく差し込まれて、弄るように蠢いていた。
『シゲ…ッ、ァッ、』
震える細い指先で必死にシゲムラの身体を押し返そうとしているコマツバラの眼鏡の向こうの目が、薄っすら浮かんだ涙に頼りなく揺れている。
長めの髪は乱れ頬を隠し、薄情そうな赤い口唇は半開きで熱い吐息を零していた。
ヤナギは目の前で繰り広げられる光景に唖然とし、ポカンと口を開けながら、それでもつい見入ってしまった。
止めろと抵抗しながら、シゲムラに身体中を弄られ、キスをされるコマツバラは、反面、ヤナギがこれまで見たことのないイイ顔をしていた。
きれいだと思ったし、なんか可愛いなと思ったし、何より、ああ、きっとこの人は目の前の相手に恋をしている。
そう思った。
独り身になって早半年、そろそろ自分も恋をして構わないだろうか?
いや、むしろしたい。
きっとしよう。
二人の先輩の痴話喧嘩兼情事に妙な希望と決意を胸に抱きつつ、気付かれる前に邪魔者は退散しようと背を向けた時。
「ヤナー。」
背後から低い声で名前を呼ばれた。
ぎょっとして振り返ると、シゲムラがニヤリと笑いながらこちらを見ていた。
「シシシ、シゲさんっ!」
蛇に睨まれた蛙の如く、ヤナギは恐ろしさに身が竦んで動けない。
「あっ!て、て、てめぇヤナ…!いつからそこにっ!」
耳まで赤くしたコマツバラがひどく動揺した様子で、こっちを見ている。
「え〜っと…その……しばらく前から…?」
「しばらく前だぁ?」
「ででででも大丈夫です!大丈夫!このことは口が裂けても誰にも言いませんから!ていうか言える訳ないし!」
「いっそお前も共犯になるか?どうだ一緒に。」
必死に両方の手の平を振って、だから許して下さいと懇願するヤナギに、余裕綽綽な笑みを浮かべてそう誘って来るシゲムラの目は全然笑ってない。
それがまた一層恐ろしいのだと、ヤナギはこの時はじめてシゲムラに取り調べられるマル被の気持ちを理解した。
「い…いえ…ご遠慮させてもらおうかなぁ…なんて…。」
「ふざけんな、つうかいい加減放せ!」
シゲムラの腹にドカンと一発蹴りをお見舞いして、その腕の中からなんとか逃げ出すと、コマツバラは乱れた格好のまま、ビシッとヤナギを指差して言った。
「いいかヤナ、お前誰にも言うんじゃねぇぞ!わかったな!?」
「は、はいぃぃぃ。」
その迫力にヤナギは思わず土下座で頭を下げてしまう。
「それからシゲ!お前今度職場でこんなことしやがったらぶっ飛ばすからな!覚えとけ!」
「どうかな…。」
「覚 え と け !!」
怯えるヤナギと、どこ吹く風のシゲムラを残し、コマツバラは細い肩を無理やり怒らせてズカズカと去っていった。
資料室には男二人が取り残された。
「………あのぅ………」
ビクビクしながら見上げれば、シゲムラはコマツバラが去っていった薄暗い通路をじっと見つめている。
小さな背中の面影を追うように、優しく目を細めて。
それもまたヤナギがはじめて見るシゲムラの顔だった。
「可愛いだろ、あいつ。」
「はぁ…。」
「素直じゃないんだ。」
「はぁ…。」
「なんだよ、その気のない返事。」
「はぁ…。」
「まぁいい。ただ、あいつにだけは惚れるなよ。万年気が休まらなくなる。」
後ろ手に手を振りながら、妙な脅し文句を残してシゲムラもまた資料室を出て行く。
今、ヤナギは激しく後悔している。
こんな事なら無理に残業なんてしないでとっとと家に帰るべきだった。
見てはいけないものを見、知ってはいけないことを知ってしまった。
明日からどう二人に接すればいいのか。
というよりむしろ、より一層二人に絡まれることになるであろう日々を思えば、今から気疲れしてしまう。
そしてなにより、忘れられないのは月明かりに照らされたあの白い肌。
残された口付けの痕と、一瞬響いた甘い声、吐息。
涙がちの目でシゲムラを見上げ、誘うように睫毛を伏せたコマツバラの艶めいた顔。
「ヤバイ、どうしよう…。」
ヤナギは頭を抱えてその場にうずくまった。
確かに、恋をしたいと思った。
確かに、恋をしようと思った。
そして多分、恋をした。
その途端に失恋したような気もするが、何よりその相手に驚いてしまう。
「あああぁぁぁぁ…どうしよう…。」
風に乗って流れて来た雲がまた月を隠す。
「どうしようぅぅぅぅぅ〜………。」
薄暗くなった資料室で一人悶絶しているうちに、時間は過ぎ、その日ヤナギは終電を乗り過ごした。
終
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、オオクリシマシタ!
ヤナはコマさんの幻影を消すべく、
「俺はあのコが好き俺はあのコが好き、てゆうか俺デブ専!」と、
必死に自分に暗示をかけながら交通課婦警さんに恋してるフリだといい…。
盛大なるナンバリングミスと、1/9伏せ忘れ…どうぞご容赦下さい…orz
>>180 GJ!
ツゲさんに翻弄されまくるコマもヤナも可愛い上、コマのエロさがよく伝わる!
今後の△に期待して正座で待ってます!
>>180 普通にドラマとして楽しんでたのに目覚めたありがとう
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )昔のゲームから!デフォでゲーム内でやられかける受に乾杯
濡れた声が室内に響く。
波にゆれる船内で、まぐわる二人。
「っ…あ!あっ、ユキ…ヒサ、あーっ!!」
腕をつかまれて、中に入れられて揺さぶられる。頭の中が火花が散るような快楽に、イアンはしばらくもだえていた。やがて来る絶頂。
二人は同時に達し、イアンはぐったりと今いる副官室のベッドの上に横になった。
シーツを握り締め、荒く息をつく。
ゆるいウェーブの金髪に白い肌、女みたいな容姿ゆえにこんな思いは何度もしてきた。
今の提督と知り合う前。
ユキヒサと知り合う前。
自分が提督として父の船団を率いていたとき、そしてその後船が難破して路地裏で何人もの男に犯された。
そのまま明に売り飛ばされて、見世物小屋で遊ばれる宿命に合ったのを、今の提督が拾ってくれた。
なのに。
斬り込み隊長である日本人のユキヒサは、彼の過去をしらない。
今も冷たい目で、袴をただし、副官室を出て行こうと、イアンに背を向けた。
「ユキ…ヒサ…」
着物の端を、イアンがつかんだ。
ユキヒサのことは嫌いじゃない。嫌いだったら抵抗する。
自分を拾ってくれた提督の一員だから。
「なんだ」
「……。そばに、いて欲しい」
冷たい視線が、服が乱れているイアンを見つめる。
ぱっと袖を振り切ると、そのまま去ろうとする。
残念そうに見つめるイアンに振り向くと、ユキヒサは言った。
「そこまでする義理はない」
「…ん」
ふ、と長いまつげを伏せると、枕にぼしっと顔を伏せた。
乱れた毛布も直して、本格的に眠りに入る。
懐中時計を見てみれば、夜中二時半だった。
これが日常。
真夜中にいつもの仕事を終え、一部の人間が眠っているのを見届けると、ユキヒサが入ってくる
いつからだろう…いつからだっけ…。
イアンは一人、毛布の中で思い出しかけていた。
「いやだ!!」
気がつけばうりとばされて、そこは明の見世物小屋だった。
どさっと物置に押し倒されて、あごをすくい上げられた。
「あんたさ、売り飛ばされたんだ。結構な高値だったんだ、せいぜいその体で稼いでくれよ?」
「やっ…!!」
その手をどけて、あとずさる。
われながらなんと情けない。武器がなくては太刀打ちできない。
せめてその指を噛み千切ってやればよかったと思うが、体がいうことをきかない。
身体で稼ぐ?
男に犯されて、それを見世物にされる?
それとも単純に変わった容姿ということで、売られるのだろうか。
金髪に青い目なんて、この港町ではそう大して特殊でもないが、それでも希少なのは確かだ。
それに女性のような、それでも身長は高いが、この顔つきは相変わらず魅力的に映るようだ。
キィ、と、物置小屋の戸が開いた。何かを男が男に言伝しているのを聞いて、す、と隙ができた。物置から脱兎のごとく、光を求めて脱出すると、見世物小屋の外に出た。
「おっと」
たまたま通りかかった、いかにも日本人らしい格好をした男が歩いていた。後から追っ手が来る。この男なら腕が立ちそうだ。刀を携えているのが見える。
「頼む、助けてくれ!!」
「?」
「船に乗ってたら一服盛られて、見世物小屋に売り飛ばされたんだ!あっ、あの男たちから助けてくれ!」
「船に?」
男のこめかみがぴくりと動く。
話を聞いてるうちに、相手が近くまで走りよってくる。
ガッと手首をつかまれたとき、その男がゆらりと動き、紅い刀身のそれを取り出した。
魅了されるような刀だった。妖しい魅力のある、使い手を選ぶような刀。
ここで売りに出されている普通の刀とは違うことは明らかだった。
追っ手も、その男が刀を身構えたことに、うっと後に引き、手を離した。
「おまちなさい」
凛とした声が響いた。
まさにその男が警戒していたときだった。
後ろから現れたのは、二十代かと思われる、ショートカットの中国人の女だった。
さらにその隣にはフランス人と思われる男と、五十代の中国人の男がいる。
「提督…」
「え…」
刀を身構えた男が、その体勢のままつぶやいた。
「貴方…船に乗っていたといったわね」
その女が、イアンをしげしげと見つめて聞いた。
「?は、はい…。父の商船を率いて…、その後難破して乗った船でここまで来たんですが、売り飛ばされたようで…」
われながら言ってて情けない。
「ふう…ん。よし、分かったわ、貴方たち、この人は私が買い取るわ。いくらがいい?」
「ええっ!!」
イアンはその提案に驚いて身を引いた。
だが見世物小屋の男たちは相談しあって、足もとを見たのか、とんでもない額を請求してきたが、彼女はその提案を受け入れた。
中国人の男に何かを頼むと、即座に金を持ってきて、その場で交渉成立してしまった。
「さ、て。貴方。名前は?」
「イアン…イアン=ドゥーコフです」
「みたところ貴方頭よさそうね。ま、一服盛られたのはちょっと警戒心が甘かったのかしら?どう?副官の仕事やってみない?あ、私はマリア=リー。この日本人はユキヒサよ」
刀を鞘にしまったユキヒサが、イアンをちらりと見た。ふい、と後ろを向いて、とことことどこかへ去る。
それに気づいたイアンが、ユキヒサの腕をつかんだ。
「なんだ?」
不機嫌そうなユキヒサが、イアンのほうをむいた。いつもこんな感じなんだろうか。だとしたらちょっと苦手かもしれない。イアンはそう思いながらも、助けてくれたことに、お礼を言おうとした。
「礼ならいらん」
「何か、えっと、ユキヒサの、したいことなんでもいい、とにかく、…ありがとう」
何か、と、ユキヒサの唇がその形を作った。
ふ、と笑うと、イアンの耳元で何か言ったが聞き取れなかった。
こうしてこのあたり一帯を占めるリー家の仲間入りをしたイアンは、恩を返すように働いた。その仕事振りは最初の数日で見事に評価されるほどだった。
その容姿からも、通るたびに何人かが声をかけてきたが、前のようになるのはいやだったので、無視してきた。ただ、ユキヒサにだけは心を開いた。
容姿なんてくだらない。
こんな顔じゃなかったら、今頃ちゃんとした人間になって、屈服させられたり犯されたりせずにすんだのに。
父からも頼りないといわれて、やっと商船を引き連れて提督としてやっていけてたのに、難破はするわ、雇われた酒場で容姿を茶化されて喧嘩になるわ、その男たちに路地裏で好き放題されるわ、おまけにその後乗った船で一服盛られて売り飛ばされるわ、散々だ。
そのことにうすうす気づいている提督は、何も言わなかったが、時に厳しく、だが時々慰めるような優しい笑顔を向けてきた。
なんとなく、それがくすぐったい。
ユキヒサ、なら?
また興味ないといわれるだろうか。
なんとなく、そのとき、耳元で言われたことが気になった。
礼に何を欲しかったのだろう。
考えているうちに、夜になり、副官室には木のベッドがあったので、そこで寝てたときだった。
キィ、と扉の開く音がして、固まった。
だが、そろりとレイピアを抜くと、近づいてくるその男の喉元に当てた。
「誰だ!」
「!」
目がなれたころ、よく見てみるとその男は…袴に、そして髪を結った、まごうことなきユキヒサだった。
「ユキヒサ…?何の用?」
すっかり気を許したイアンは、レイピアを鞘にしまう時、不意をつかれてそのままベッドに叩きつけられた。
「っ…た!!」
背中がもろに木の板にぶつかって、本気で痛かった。
痛みも治まってきた頃、ユキヒサがそのまま覆いかぶさってきて、服のすそに手を忍び込んできた。
今イアンの着ている服はスカートのようなもので、タイツをはいている。
そのタイツを下着と下ろされると、まさか、と嫌な予感が頭をよぎった。
「な、何をする、ユキヒサ!?」
「礼を…貰おうか」
「は!?」
すっかりパニックに陥っているイアンに、止めが刺された。
強引に口付けされて、涙が出る。必死に、抵抗した。ユキヒサの胸を叩いて、何とか離そうとする。
しかし七歳年下だというのに、ユキヒサの力は、とんでもなく強いものだった。
(だめだ、力の差がありすぎる)
やっと唇が離されて、イアンはあとずさる。
「礼?!礼って、あの時の!?ちょっと待て、あの時何ていったか聞こえなくて…」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )続きます。HPに載せられない内容なので棚はありがたいです
元ネタあるっちゃあるけど特に描写してないのでオリジナル。好きに脳内イメージして読むと吉。
初投下で不備あったらすまん
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
お嫁さん降って来ないかなぁ
俺のお嫁さんはさぁ
毎日毎日顔つき合わせる事になるわけだけどさ
それが何の苦にもならなくってさぁ
毎日毎日飯作ってくれなくてもいいんだよねえ
たまにはこっちが作ってさぁ
それに「不味い」とか「美味い」とか一言感想言ってくれてさ
そんな感じで毎日毎日
ああでも毎日じゃなくてもいいんだけどさぁ
普段は別居でもいいし
共働きでもいいんだ
他に大切な人がいてもいい
俺にはお前だけだしなぁ
たまに会う日が決まっててさ
嫁さんの方から会いに来てくれるんだぁ
まあそれ以上に俺の方から会いに行ってるんだけどさぁ
子供は出来なくてもいいんだよなあ
もう愛が出来ちゃってるからさぁ
まあ俺は毎日「ああー嫁さん可愛いよぉハアハア」とか言うけどさぁ
気持ち悪かったら蹴り飛ばしてくれていいからなあ
喜んで蹴飛ばされるからさ
そんな感じで毎日毎日
笑ってくれたり怒ってくれたり蔑んでくれたり泣いてくれたり蔑んでくれたり
他愛もない話とか大事な話とかしたり
撫でてくれたり抱きしめてくれたり蹴り飛ばしてくれたり暴言吐いてくれたり手つないでくれたりする
そんなお前が欲しい
「・・・・とは言えんなー」
「ん?」
縁側に寝そべっている男とその隣で座っている男。
あと2,3時間すれば昼飯時になる。
そのころには座っている男は寝そべっている男を置いて、どこかに行ってしまっているだろう。
特に何をするわけでも話すわけでもないが、こうして二人で何となく傍に居れるのは幸せなことだろう。
と、寝そべっている男は思った。
この、隣で座って空を眺めている男に、まあ、いわゆる、一目惚れをしたわけだが。
まさに出会った、まだ幼かったその日に、だ。
そりゃぁあの時はまさか、お互いの立場も何もかなぐり捨ててまでも
『一緒に暮らしたい』とか
『それが死ぬときまで続いて欲しい』とか
『抱きしめたい』とか
友人以上の愛情を感じているとは夢にも思わなかったが。
まあ、大人になってきてそれが自覚出来てしまったのだからもう仕方ない。
完膚なきまでに一目惚れ以外の何物でもなかったのだ。
それを伝える、つまるところ告白してしまうかどうかは、まだ迷っている。
俺の大好きなこいつは恐らくノーマルな趣味だ。
俺が「好きだ」なんて本気で言ったら真剣に断ってくれるだろう。
そうしたら俺は爽やかに笑って「諦めがついた」と言って。
友人としての今までの日々がこれからも続いて行くことだろう。
それはそれでも、いいんだが。
もしも俺が「好きだ」なんて言いつつ強引に手やら何やら出したりしたら。
・・・爛れたセフレぐらいにはなってくれそうだ。
友人の強い願いを無視する奴ではないから。
「好きになってくれ」
今日も繰り返す。「好きだ」とは言えず。
たまに会うたび必ず言う。「好きになってくれ」
最初はきょとんとしていたこいつも、会うたび繰り返され気づいたのだろうか。
これを聞くと、苦虫を噛み潰すような顔をするようになった。
たまに思い描く、想像は。
俺がうっかり「好きだ」と言ってしまって
こいつは一拍おいて、「俺もだ」と言う。
ならもっと早く言ってしまえばよかったと、俺は死ぬ間際に笑う。
もう後には何も無い、死ぬ間際なんかにならないと、俺はきっと言えないだろう。
お前が欲しいと言えないだろう。
「・・・俺もだ」
「・・・・・・・・・・・・・・へ?」
幻聴にしてはリアルな響きに意識が覚醒する。
日のあたる暖かい縁側から飛び起きて、庭に立っている俺の大好きな奴を凝視する。
隣に座っていたはずなのに、いつの間にか俺の前に腕を組んで立っていた。
俺の目は点になっていることだろう。
「俺もだ」
「え?」
「・・・『好きだ』って言っただろう」
「い、言ってないぞ?」
「言った」
「言ってない」
「言った」
「・・・い、言ってません」
「言った」
相変わらず妙なところで頑固なヤツだ。
・・・いつ言ってしまったんだろうか、心の声を読まれたのだろうか。
「読んだのか?」
「何をだ」
こっちが聞きたい。
「あの」
「ああ」
「お前が、俺を、好き?なの、か?」
「・・・・・・お前が俺を好きなんだろう」
「へっ・・・・・・・・・・・・・・・は、はい」
死の間際とか言ってた恥ずかしい人は誰だろうなあ。
すんなり肯定してしまった。
よくよく落ち着いてみると、いやまったく落ち着けないが、それでも見ると、相変わらずの仏頂面のヤツの顔がほんのり紅い。
目も大分泳いでいるし、いつになく俯いている。
俺の方をキっと睨む様に見つめ「そうならそうと早く言え」と、吐き捨てるように言う。
「結構前から言ってたが・・・」
俺がなんとなくオドオドとしてしまいながら言うと、
「『好きになってくれ』だろう。お前が言ってたのは」
俺の好きな瞳が、真っ直ぐに俺を見つめながら言う。
なんだ、やっぱりもっと早く言ってしまえばよかったか。
「お前が欲しい」
「ああ」
「死ぬまで言わないつもりだったが、お前が好きだ」
「ああ」
「実は一目惚れなんだ」
「ああ」
「一生傍に居たい」
「鬱陶しいな」
「四六時中じゃなくてもいい、それでも一生傍に居たい」
「ああ」
「好きだ」
「ああ・・・・俺もだ」
はあー、可愛いなあ。ムラムラするなあ。
抱きしめたいなあ。いいかなあ。頭を撫でたり頬ずりしたりしていいかなあ。
蹴り飛ばされるかなあ。それでもいいなあ。
ああ、好きだなあ。
「なあ」
「ん」
「俺とお前の夫婦生活プランがあるんだが聞いてくれるか」
「・・・・ちなみにどっちが嫁なのか聞いてもいいか」
「勿論」
「お前が俺の嫁」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
棚たんいつもありがとうちゅっちゅっ
>>188 うおおーめっちゃかわええww萌えました!
素敵な作品をありがとう
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )二回目です。ゲームしらない人が多いしカプはマイナーだしorz
「お前の体を貰おうか…といったのだが」
「ゆ…ユキヒサって…男色家?」
素っ頓狂な声が出た。
ユキヒサはぱちくりと目を丸くさせると、すぐにその場で笑った。
こんなに笑うユキヒサは、はじめて見たかも知れない。
「女犯はしないだけだが、お前には興味があった。お前は男を狂わせる傾向があるな、それで今までひどい目にあってきただろう」
「…う…、そうだ…けど、だってまさかユキヒサが…」
イアンは思った。
(私には無関心で、目を合わせてもすぐにそっぽを向く。それでいきなり身体を求められても、今までと同じ目に合うだけじゃないか…)
どいつもこいつも自分のことばかり。
心も伴わずに身体ばっかり。結局は欲望を吐きたいだけ。
そう、きっとユキヒサも同じ―――。
ぐっ、と、シーツを握り締めた。
「一度、限りか?」
うつむいたまま、問いかけた。
「いや、気の向くときに、何度でもしたい」
「…娼婦でも抱けば?それか男娼でも抱けば良いじゃないか。私は金の掛からないそれらの代わりか?」
心が伴ってないのに。心が伴ってないのに。
いつもいつも皆勝手で勝手で。
ただ顔が良いからとそれだけで。
ぽと、と涙が一筋だけ流れた。今まで我慢してきたものが、せきを切ってあふれ出してきた。
一筋だけだったものが、次から次へと。
屈辱だった。
の代わりをさせられること。
それでも我慢して生きてきた自分。
いっそ難破したときに死んでいれば、こんな思いはしなかったのに。
信頼していた航海士仲間にさえこんなこと思われていたなんて…。
悔しい。
「何でもしたいことなら、いいといったので思いついた事を言っていたのだが…そんなに嫌か」
涙をぬぐいながら、イアンはそれに答えた。
「…嫌だよ。自分勝手すぎる。そんなことさせられるために私は…船に乗ったんじゃない…僕は…父上…どうしたら…」
「僕?イアン、少し無理しているのか?」
そこではじめて、自分が思わず言った言葉に、口をふさいだ。
イアンは、たまに僕という。それは気を抜いたとき、辛いとき、そんなときに出る。
普段は私として年齢分だけ背伸びしているが、実際はそんなことはない。
頭が切れることは間違いはないが、それでも迷うのは事実だ。
「…悪いか。そうだ、私はまだ子供だ。大商人の一人息子として育った。いずれは父上のあとを継ぐ。だけどこの容姿のせいで頼りないと、今まで船を任せてもらえなかったんだ」
ふいっと横を向いた。どうやら拗ねたようだ。
と、ユキヒサが手を伸ばし、押し倒した体制のまま、身体をまさぐり始めた。
「!い、嫌だといってるのに…!」
「…ま、もう待てんのでな」
「んっ…!」
再度口付けされて、もうこれは運命なのだと。そう思いながら、目を閉じた。
ああ、そうだ。忘れもしない。
はじめてユキヒサが襲ってきたときの事だ。
若いせいかほぼ無理やりに入れては勝手に動かして、痛がっているイアンを無視して、何度も何度もことに及んだ。
しかもそれは一日ではなく、次の日も、次の日も、やってきた。
もう今では諦めて受け入れることにしている。
でも。
(少しは…私に心を開いてくれてもいいんじゃないか?)
たまに、せがむ。
一人寝がさびしくて、熱い体が離れていったとき。そんな時、ユキヒサに頼むのだ。
『そばにいて欲しい』と。
一瞬驚いたような顔をしたが、すぐにいつものポーカーフェイスに戻って、やることだけやっといて、後はほったらかし。
『そんな義理はない』と。
信頼していた。ずっと信頼していた。
見世物小屋から救ってくれた皆の事。提督はいい。
ジャムも、シエンも、こんなことはしないし、一人前の航海士として扱ってくれる。
一人、ユキヒサだけが欲望を一気にぶつけてくる。
話を聞けば女を抱いた事がないらしい。
実はそれはイアンも同じだ。
だからか、最初はやや乱暴で痛いだけだったが、最近ではようやく扱いを覚えてきたのか、イアンにも快楽を与え、絶頂するのを見届ける。
時には何回もされるが、それでも彼にとって感じるところを覚えたのか、もうすっかりユキヒサのものになっていた。
(ユキヒサも斬り込み隊長という仕事があるから戻らないのは分かるけど…冷たい…。…?何で私はこんなこと考えているのだろう。もう寝よう)
一人ぶつぶつとつぶやくと、イアンは寝入った。
イアンがユキヒサに抱えている感情。
それは、恋である。
それから一ヶ月、リー家は地中海に入っていた。
アフリカという長い旅を終え、またも新たな強敵が現れる。
そこでマリアは、地方艦隊を作成し、挟み撃ちをして攻撃することを思いついた。
皆を船長室に集めると、早速会議が開かれる。
適任は誰がいいかということでもめ、新人のアルも立候補したが、アルも艦隊の重要な戦力だった。
誰が行くか?
統率力があり、武術にも優れ、砲術も使える…。
「第一艦隊…ガレオン重カノン砲百八十門、これを引き連れてもらうわ。ユキヒサ、貴方に決めたわ。船はアルブケルケ軍から奪い取ったのがあるから、それで行く。
ユキヒサ=シラキ、二日後に出航をお願いするわ。代わりの斬り込み隊長にアル=フェリド=シンを任命する。第二艦隊にはシエンを頼むわ。こちらもガレオン船五隻、重カノン砲百八十門」
「わかった」
「了解じゃ」
その話を聞いて、イアンは多々ショックを受けた。
唯一の彼との交流手段は、夜の交わりのみ。そんな自分たちが、引き離されてしまう。
だが彼は気づいていなかった。自分の想いと、ユキヒサの想いに。
副官室の机の上で、ぐったりとうなだれる。
セウタ、セビリア近辺で地方艦隊で待ち伏せして挟み撃ち。それを繰り返して、バルデス軍から多大な金とシェアを奪い取る。
地中海は、バルデス軍とパシャ軍が大幅にシェアをとっていた。
アルブケルケ軍は、たいした強さでもないのにやたら高い戦艦隊を率いていたので、ぽろぽろと高性能な軍艦が手に入った。
任務完了までの期限は未知数。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )続きます。バルデスは最初は強敵だけど後半は屑です
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
生。アフとヤサのくだらない話です
雪がちらほらと降る日のことだった。
タクヤの家に呼び出された俺は上着を羽織り耳当てを着け、タクヤの家まで車を飛ばした。雪で少し前が見にくくて、ワイパーを作動させて走った。
運悪く信号に引っかかって、予定時刻より20分ほど遅れて到着。この前貰った合鍵でドアを開ける。
「タクヤー、来たけどー……」
玄関先で声をかけてみても返事がない。
部屋に上がり込むと、冷え切った空間でテーブルに突っ伏して眠るタクヤが居た。
人を呼んどいて自分は寝るんかい。つーかよく暖房もストーブも付けずに居られたな。
俺はエアコンを付けると、耳当てと上着をソファに置いてタクヤを起こしにかかった。
「おい、来たぞ」
肩を揺さぶりながら声をかける。タクヤは眉間に皺を寄せながらうんうんと小さく唸っている。
頭をぐしゃぐしゃと撫で回してみたら、不機嫌そうに目を覚ました。
「……何でシンタ君おるん?」
「お前が呼んだんだろ!」
開口一番、人を呆れさせてくれる人間である。
タクヤは部屋の暖かさに気付き、おお、と一人びっくりしていたりするけれど、俺が聞きたいのはそんな言葉じゃない。
「で、何で俺を呼んだ訳?」
「何でだろう、忘れたわそんなん」
これは酷すぎる。寝たら忘れるってやつか。くだらないこと覚えてないで、肝心なことを覚えていてほしい。
「……まあ、寂しかったから呼んだんだよ。間違いない!」
くそう、適当に話を繕っていればいいと思いやがって。こうなったら朝まで俺の好きにさせてもらうぞ、タクヤよ。
こうなったら意地でも言うことを聞かせることしか自分の気持ちがおさまらない。
「とりあえず、ビールでも飲もうか!俺も飲みたいし!」
飲みたいのはお前だけだろうと心の中で呟きながら、まずは酔わせることから始めよう、そうしようとグラスを食器棚から取り出す。
嬉しそうにビールを飲むタクヤを見ながら、少しのときめきと多量の心配を感じた。
一人じゃないんだから、酒も煙草も控えめにしてほしい。そう思うのは、何だかんだ言っても好きだから。
「シンタ君が飲まないなら俺が全部飲んじゃうよ」
どうせ止めても聞かない奴だ。俺はいいよ、と返事するとにんまり笑顔で喉を鳴らした。
気が付くとタクヤは早くも500mlのビールを喉に流し込んでいた。全くペースが早いんだから。
キリのいいところで、酔いが回ってきたタイミングを見計らい、二人の身体にちょうどいいサイズのソファにタクヤの身体をしずめる。
ギシッとスプリングが軋む音は耳に、少し驚いたタクヤの顔は目に。
「何だ、これが目的だったのかよ」
困ったような笑顔を浮かべて、タクヤは俺の首に腕を廻した。俺は少し酒のにおいが漂う唇に噛み付いた。
寒い、と呟くタクヤを見て、早く春になればいいな、と少し先のことを考えながら、夜は更けていく。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
何だかめちゃくちゃですみません
この二人が好きなんです
>>184 元ネタ知らないけど萌えた、ありがとう!
続きも楽しみにしてます!
>>200 GJ!私も大好きだ!
また是非書いて下さい。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )三回目です。前回三つしか送ってなかった…。応援有難うございます!
バルデス軍をこの地中海、そしてこの七つの海域から追い出し、潰すまで。
きっと長い旅だろう。
バルデス軍は強い。
イアンはため息をついた。
いくらユキヒサが強くても、旗艦が撃沈されればそれまでだ。
運良く助かる場合もあるが、砲撃でマストが倒れて、それで…なんてこともよくある。
更に冷たい海に投げ出されれば、救出されるまで時間と体力が掛かる。
「はああ〜…」
イアンは、更に大きなため息をついた。
(もう…どうしようか…)
と、ユキヒサがいつものようにノックもせずに部屋に入ってきた。
しかし今は夕方だ。何しに来たのだろう。
うなだれるイアンを見て、何かユキヒサも思うところがあったらしい。
ゆさゆさと肩をゆすると、顔を上げた際にくしゃくしゃになった髪を手ぐしで整えてやる。
「なんだ?」
「…これを」
差し出されたものは、小さなナイフだった。
東洋の護身刀である。
木の鞘に納まったそれには、漢字で何かが書かれていたが、それがなんて読むのかは、イアンにはわからなかった。
ひらがなや言葉は多少話せるが、難しい漢字までは分からない。
不思議そうに、その手の中に納まっているものを見ていると、ユキヒサは、ずい、とそれを渡そうと手をとる。
「?何?」
「護身用の小さい刀だ。もし誰かが襲ってきたらこれで喉笛を切り裂け。レイピアよりは取り出しやすいし、小回りも利く」
「いらないよ、レイピアで何とかなる…」
「いいから持て」
と、手に持たされて、それをまじまじと見つめた。
鞘から抜いてみると、きらりと鋭く光る刀身。小さいが、これは切れ味がよさそうだ。
鞘に戻すと、それを腰につけているレイピアの横に、つなげた。
これでいつでも取り出せる。
「ありがとう、大事にする」
にっこりと、ユキヒサに笑顔を向けた。
それは初めてだったかもしれない。
いつも物憂げな表情のイアンが、ユキヒサに対して無垢な笑顔を向けた。
ユキヒサはポリ、と頬をかくと、そっとイアンに口付けた。
不意打ちだった。
イアンは驚いて、その場で固まった。
触れるだけの口付けだったが、そのままイアンの額にも口付けて、そしてユキヒサは背を向けた。
パタン、としまる音がして、ようやくイアンが自我を取り戻した。
(びっくりした、何されるかと思った…)
唇に指で軽く触れる。
(あんなに優しいキスは…初めてだったかな…)
ようやく海原へでるときが来た。
ここセビリアはバルデス軍の根拠地であり、シェアも96%(うち4%はリー家)は、バルデス軍がとっていた。おまけに地方艦隊を何隊か引き連れていて、すべてが軍用ガレオン五隻を率いているときた。
だがリー家だって負けてはいない。今までの戦いで得た、百八門の重カノン砲を備えたガレアスと東洋の戦艦である鉄甲船、キャロネード砲百八十門のガレオンと、キャロネード砲百八門を五隻率いたユキヒサ、シエン艦隊がいる。
聞けばバルデス軍は、ガレオンに積んでいる大砲は、カノン砲であり、百八あるかどうかだという。
接近戦ではどうかわからないが、遠距離なら負けない。それに、二艦隊と挟み撃ちならば負けることはないだろう。
もし、旗艦に乗り込んできた場合は、殆どが斬り込み隊長が一騎打ちの相手をする。
運が悪ければ、副官が一騎打ちを、ということもあるが。
「ち、逃げたか!後一歩なのに!」
「でも第二艦隊と第三艦隊は潰した、あと少しだ!」
そばで、砲術のフェルナンドが苦々しく木の手すりを叩いた。
水夫たちも、逃げていこうとするバルデスの、第一艦隊に懸命に砲撃している。
しかしいくらキャロネード砲でも、かなり遠くへ逃げたバルデスにはなかなか届かなかった。
そしてユキヒサ艦隊が、すばやく重カノン砲で叩く。
だが相手も必死だ。
巧に弾をかわしながら、黒煙を上げ逃げていく。
バルデスの第二艦隊と第三艦隊も潰した、もちろんこれからはハイレディンや他のシェアを奪っている艦隊を叩きのめす必要性があるが、今はまず入り口のバルデスを叩くことが先だった。
(…ユキヒサ…まだ…時間が…かかるな)
と、空がだんだんと暮れていく。
夜では戦いにくい。
ゆえに、戦うときは朝から昼にかけて、すばやく行う。当然相手が逃げ切ってしまえば、それで終わりだ。また、水夫を弔い、建て直し、次の戦いへ挑む。
辺りを見回す。
甲板の上には、折れたマストの破片と、下半身のない死体や、折れたマストによって潰された仲間たちの死体が目に入った。
甲板は血まみれ。それで滑ったりする人もいる。
そして内臓を出したまま気絶したり、死んだ人が、沢山。かつての仲間たち。もう、目を開けない仲間たちもいる。
(…商船時代には、ありえない光景だな)
撤退した敵の船が遠くなっていくのを見送りながら、水夫や航海士達は、死んだ仲間を、彼らの寝袋につめ、大砲の弾を詰めて水葬を行った。
怪我を負った仲間も多くいる。それを、治したり、ときに強い酒で眠らせ、患部を切り取るのも辛いが、医師の仕事。
医師のカルロが握っている骨きり鋸が血にまみれているのを確認すると、イアンは提督の部屋を目指した。
「提督、そろそろ夜です。バルデス軍は撤退しました」
「…バルデス、潰して見せるわ…。しばらく、ユキヒサとシエンには、セビリアで停泊するように信号を!」
マリアは、少し焦ったような表情をした。
「分かりました」
懐中時計を用意すると、再び甲板を目指した。
沈んでいく太陽の光を利用して、信号を伝える。
セビリアヘキコウセヨ
チカッと、相手からも了解の信号が送られる。
後二日すれば、セビリアへ着く。
戦いの中、少し浮かれたような、そんな思いがしてマリアたちの前では平静を装っていたが、心の中では会いたくて仕方なかった。
セビリアヘキコウスル
「ふー…疲れたー。もう少しで、バルデスが倒せそうだね!」
セビリアへ着くと、仲間たちが怪我を追いながらもそろって船から出た。
隣で、興奮気味にサムウェルがぶんぶん腕を振った。
まだ幼いのに、よくマスト要員としてやってくれている。
ただ、イアンだけはどこかほうけ気味で、書類を眺めながらため息をつく。
ずん、と、一気に肩に体重が乗ったので驚いて後ろを向くと、アルが、血のにじむ包帯を巻きながら、イアンの肩に腕を乗せ、笑いかけてきた。
「ごくろーさん、宿はいつもの所だそうだ。早く風呂はいりたいよな」
「うわっ、アル、すごい血のにおい!肩から凄い血が出てるよ!僕も怪我したんだよー。ほら、ココ。手首に少し。マストが折れたんだけど、その上に僕がいたんだけど…、マストを閉じていたおかげで助かったー」
どうやら折れたマストの上にいたサムウェルが、偶然にも束になってベッドのようにやわらかくなったマストの上に倒れこんで、助かったらしい。
しかし、潰され死んだ仲間の事も思うと、素直に喜べないらしく、サムウェルは少しうつむいた。
イアンは、しばらく彼らのやり取りを見ていたが、サムウェルの頭をなでると、言った。
「サムウェルはよく働いているよ。ご苦労様。ゆっくり休むんだよ」
遠慮がちに微笑むと、サムウェルの瞳に光が戻る。うん、と大きくうなずくと、軽いステップで宿へ向かった。
アルもそれを追って、宿へ急ぐ。
と、マリアが、少し難しい顔をして、イアンに近寄ってくる。
そしてぼそりと、彼の耳元でつぶやいた。
「ユキヒサ艦隊が到着したわ。貴方に話があるらしいの。宿は――」
「!」
「ユキヒサ…」
マリアが書いた地図を頼りに、宿へ着く。いつも自分たちが使っている宿と違い、港から少し遠い宿。
ユキヒサに会うのはどれくらいぶりだろう?
ずいぶん長い時間、バルデス軍を追い回していた気もする。
停戦を頼み込んでくる度にマリアが、その手紙をランプの火で焼いて処分した。
バルデスを殺す気満々なのだ。
もちろん、この地中海の入り口、セビリアやセウタを占拠しているからである。
そして態度も気に食わない、と、何度もアルたちがなだれ込んでくるバルデスと戦ったが、結局勝敗はつかなかった。
そう、それはユキヒサも同じ。
水夫を村正でなぎ倒し、進み、敵の血を浴びる彼を、遠目から少し見た。
「いるんだろう、ユキヒサ。私だ」
こんこん、と木のドアを叩く。
「…」
「ユキヒサ?」
「鍵を開けといた、入れ」
その声に、どきんと胸がなる。
久々に聞いた声。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )少し長いですが現在中盤です。中盤はエロスがないのでつまらないかもです。
海外旅行中に化け物に会う話。オリジナルですが、最近の写真集とか昔の映画とかが軽くネタ元です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
卒業旅行はパリにした。
別にヨーロッパならどこでもよかったけど、親父のツテで偶然アパルトマンが、
10日ほど安く借りられることになったから。とにかく面倒なことは勘弁で、気安い友達と、男二人旅だった。
パリはクールだ。女の子が超オシャレで、街は、遠目から見たらどこを切り取っても映画の背景みたい。
男達は想像してたよりも厳つくて背も高くなくて、服のセンスはいいけどそれほど負けそうな気もしなかった。
そんな気分も悪くなかった。
お決まりで美術館行ったり、カフェ行ったり、息してるだけで自分が変わってゆく感じ。やっぱ海外旅行ってすげえ。
でも、気楽で最高だと思ってたのに、実は二人って単位は意外と難しくて、俺は5日目の夜に、友達と口論をした。
むかっ腹を立ててアパルトマンを一人で飛び出した時は、もうとっぷりと日が暮れていた。
やばいと気付いたのは、うっかり細い道に入り込んでしまった時だ。
シンと静まった夜の乾いた空気の中に、自分のブーツの踵の音だけがカツーンカツーンと石畳に響く。
それがあんまり大きくて、俺は思わず立ち止まって一度深呼吸をした。
10メートルくらい先はもう完璧な闇で、ホラー映画で言えば、そこには絶対化け物が潜んでいる筈だった。
引き返そうとした。でもアパルトマンに帰るのは嫌だった。
悔しいから、もう少しどっかで時間をつぶそうと踵を返して一歩踏み出した時。
うう、ううう……
後ろから低い唸り声が聞こえてくる。
振り返った。マジで、何かいる。目を凝らすと、闇の中に黒い固まりがうずくまっている。
近づいちゃいけない。理性では分かっているのに、どうしてもそれが何なのか確かめたくて、
俺はビクビクしながら声のする方に歩いていった。
少しずつ、黒い固まりの輪郭がはっきりしてくる。カーゴパンツのポケットに手を突っ込むと、
俺はデジカメを引っぱり出して電源を入れた。
ポッと、小さな光が液晶画面からにじみ出して、周囲をほんのりと照らす。
予想はしてたけどその固まりは当然人間で、肩くらいまで伸ばした柔らかそうな明るい金髪が、
黒いコートの先に、ぼーっと浮かんでいる。体の大きさからするとどうも男だ。
「だ、だいじょぶですか?」
コートの肩に触ってみた。すごくしなやかで暖かくて、いかにも高そうだ。
「アレ ロアン」
「え?」
しまった、ここパリじゃん。日本語で大丈夫かって聞く俺はどんだけ間抜けなんだろうか。
固まりは、よろよろと立ち上がった。やっぱり男だ。俺よりずいぶん背が高い。
見上げると、真っ青な両の瞳がギラギラと燃えている。
フランスの男はゴツくて冴えないとか馬鹿にしてたことを土下座して謝りたくなるほど、
薄明かりの中の彼は、まるで黒い包装紙で包まれた大きな白い花束みたいにきれいだった。
一瞬、俺は口をポカンと開けてフリーズしてたと思う。
彼は眉を歪めて、デジカメをジッと見つめた。まずい、無断で写真を撮ったと思われたかな。
俺は焦って電源をオフにした。薄暗がりがまた闇に戻る。
と、俺は後頭部を大きな掌でがっちりと鷲掴みにされた。彼の顔がぬっと近づく、気配がする。
えっ、こいつ、ゲイ? そりゃきれいだけど、俺そっちの方は……いや、どうなんだろう。
頭の中を、役に立たない考えがグルグルと渦を巻く。そうか、これでキスされたりするのかな。
心臓が口から飛び出しそうになって目を閉じたら、急に首筋に鋭い痛みを感じて体が熱くなった。
驚いて目を開ける。叫ぼうとするのに、体から力がどんどん抜けていって声が出ない。
そのうち、夜だというのに目の前にパッと光が走って真っ白になった。
このまま死ぬんならそれも悪くないな、気持ちいいや。意識を失う直前、俺は多分そんなことを考えていた。
気がつくと、俺は柔らかいベッドの上に寝かされていた。
首筋に手をやると、ぽつりぽつりと二つの穴が空いている。さっきのことは夢じゃなかったんだ。
肘をついて、恐る恐る上半身を起こしてみる。首を回すと、ベッドの周りに下がったレースのカーテンが目に入った。
ええと、これ何て名前だっけ。そうだ天蓋だ。
自分の着ているペラペラのコットンシャツがひどく不釣り合いな気がして、俺は心細くなった。
頭が痛い。体が重い。どうやら死にはしなかったみたいだけど、一体どこに寝かされているのか見当もつかない。
そのうちに、カーテンの隙間から、さっきの男が入って来て枕の横に立った。
白い、大きなリボンのあるテレンと重そうなブラウスを着ていて、それが無駄に豪華なこのベッドにひどく似合ってる。
彼はこっちに顔を近づけると、またフランス語でモゴモゴと呟いた。だから分かんないっつの。
俺がボーッとしていると、彼はしばらく手を顎に置いて考え込んで、そして突然ハッとした気がついた様子で、
ゆっくりと言葉を切りながら俺にこう話しかけた。
「私の言葉が、分かるか?」
今度は英語だった。これなら何とか分かる。俺は首を縦に振った。
「よかった、気分はどうだ」
「すげえ喉乾いた」
「何?」
「かわいた、のど」
水を取ってくるつもりだろうか、天蓋の外へ行こうとする彼の腕を、俺はギュッと握った。
彼は、肩まである金髪を一つに束ねていた。剥き出しになった白い首筋の、どこに咬みつけば血が溢れてくるのか、
不思議なことに俺には手にとる様に分かった。
──吸いたい──。
俺はありったけの力を込めて彼の腕を引く。体勢を崩して彼が俺の上に倒れかかる。
目の前に彼の首筋が落ちてきて、俺は見つけたスイートスポットにがぶりと咬みつこうとした。
ところが彼の動きは俊敏で、素早く離れると俺の頬を平手で打った。
痛い。それに、なんだか息が上がって体がバラバラになりそうだ。
ゼイゼイと呼吸をしていたら、彼はベッドの脇に跪き、俺の両手を優しく握った。
「だめだ。吸えば、お前はもう元に戻れない」
ふざけんなよ。こんなにしたの、あんたじゃないのか? よく分かんないけどさ。
喉は乾いたし、体は怠いし、情けなくて泣きそうになる。彼は握っていた俺の手を離すと、
右の掌を開いてこっちに向けた。
「ここを、指の先で触れ」
意味分かんない。でも迷っている余裕はなかった。言われたとおり、人差し指の先を彼の掌の真ん中に当ててみる。
すると、一体どんなトリックなんだろう、そこから何か暖かいものがワッと流れ込んできて、
恐ろしい程の速さで俺の体は満たされていった。
気を失った時と同じくらい気持ちが良くて、俺はうっとりして目をつぶった。
ここはどこなんだろうとか、友達が心配してるだろうとか、気にしなくちゃいけないことが沢山あるはずなのに、
圧倒的に幸せで他の事がちっとも考えられなかった。
「もう、いいか?」
彼が苦しそうに呻くまで、俺は指先の暖かな感覚をひたすら楽しんでいた。
気がつくと、彼は白い顔を一層青白くして、辛そうにゼイゼイと肩で息をしている。
その時俺は初めて気がついた。指先から流れてきた暖かいものが、彼の、RPGで言えばライフみたいなものなんだと。
そして俺は血の代わりにそれを、指先からズルズルと吸っていたんだと。
急いで指を離そうとすると、その瞬間、ライフと一緒に彼の感情が、一気に溢れ出て俺に覆い被さってくる。
真っ黒な絶望と、深い深い後悔。
「……なんだこれ」
「精気を吸っていると、感情も一緒に、互いに混じる」
「あ」
「許してくれ」
さっきは、飢えのあまり、迂闊にも俺の血を吸ってしまったと、彼は悲しそうな顔をした。
そして、今なら少し休めば、きちんと元に戻るだろうと言った。
「途中で止めたのだが、こんなことに」
「なんで最後まで、吸わなかった?」
「私が獲物にするのは、死にたがっている人間だけだ」
死にたがっている人間が、そんなに都合良く見つかるのかと聞いたら、普段は別に苦労はしないのだと彼は笑う。
確かにあのまま死ねるなら、ずいぶんと楽なもんじゃないか。
彼はポツポツと語り出した。時々英語が分からなくなって、紙に書いてもらったりしながら、俺は彼の話を聞いた。
彼はルイという名前で、200才を軽く超えていること。
化け物にされてしまった時は、アメリカの南部に住んでいたらしいこと。今は一人でここに住んでいるということ。
不思議なことに、俺はルイの言う事を素直に信じられたし、ルイの事が少しも怖くなかった。
ただ、さっき覗いてしまった絶望と後悔を思い出すと、切なくて胸が締め付けられそうになった。
「一つ教えてくれ」
「なに?」
ルイは立ち上がると、ベッドサイドのテーブルの上にある、俺のデジカメを取り上げて持って来た。
「これは、何か」
「デジタルカメラ。知らないの?」
「カメラ? この小さな物が?」
ルイは目を大きく開けた。そういえば、この部屋の明かりは、多分全部蝋燭だ。
電気を使うものには、あんまり縁がない生活なのかも知れない。
俺は、ルイからデジカメを受け取って電源を入れる。ポーンと間抜けな音がして、
液晶画面にまたぽっと小さな光が灯った。よかった、まだバッテリー切れてないや。
この5日の間に撮った風景が目に飛び込んできて、何だかすごく懐かしくて泣きたい気分になってきた。
「ほら、ここを押すと、次の写真」
ルイは本気で驚いたみたいで、恐ろしげにデジカメを持つとスイッチをカシャカシャと押して、
写真を変えながら、ほーっとため息をついた。
「昼間のパリだな。夜と随分違う」
嬉しそうにしていた彼は、ふと指を止めた。
「これは、どうした?」
手元を覗き込むと、小さい画面の中で照れくさそうに笑っている俺がいる。
「……ああ、これ。この日、友達と、カメラ交換した。それで、お互いに相手を撮った」
考えてみれば、なんてガキ臭くて馬鹿なことしたんだろう。別にカメラを交換しなくったって、
後からデータを交換すればすむ話なのに。
だけどそれは俺の方から言い出したことで、その時は、それがとても特別で楽しいことに思えたから。
そういえば、撮りっぱなしで、自分がどんな風にフレームに納まっているのかまだゆっくり見てもいなかった。
ルイと一緒に液晶を覗く。
歯を磨く俺。部屋で調子こいて逆立ちしてる俺。カフェで緊張しながら何か注文してる俺。
コインランドリーであくびして寝っ転がってる俺。地下鉄の路線図を指差してる俺。
全部、小さくて、細くて、すごく不安定な俺。
「楽しそうだ。お前は、綺麗だな」
ルイが呟く。きれいだとか言われても皮肉にしか聞こえなくて、むっとしていると、彼はニコリと微笑んだ。
「お前は綺麗だ。生きている。太陽の下で生きるものは、全て美しい」
最後の写真は、バスタブの中だった。突然風呂場に入って来るから威嚇したつもりだったのに、
バスタブの縁から半分覗く俺の目は、まるで段ボールの中の捨てられた猫じゃないか。
俺は彼の手からデジカメを取ると、スイッチを切ってまたテーブルの上に置いた。
「ルイ」
「何だ」
「もし、一人に飽きてたら、俺を連れてってもいいよ」
「……何がそんなに寂しいんだ」
「え?」
「言っただろう、精気を移す時は、感情も一緒に混じる。お前の寂しい気持ちがどこから来るのか、私には分からない。
あんな風に、日の光の下で、明るく笑うお前が」
すうっと冷たい風が入り込んで来て、蝋燭の明かりを揺らす。ルイは天蓋を出ると、窓をバタンと閉めた。
翻ったビロードのカーテンの隙間から一瞬見えた外は、まだ真っ暗な闇の中だ。
俺にだって分からない。
少し前に会ったばかりの、しかも自分の血を吸った化け物に縋って、俺はどうしようというのだろう。
「今何時?」
「三時を回ったところだ」
「遅いな。疲れた、俺寝る」
「夜は、まだ若いのに」
「本当についていくから」
「考えておこう」
ルイは枕元の蝋燭を消した。ああそうか、夜は若いって、それ宵の口って意味だな、きっと。
そう気付く頃には、もう考えるのも面倒なほど眠たくなって、後はずるずると沈み込む様に、
俺は意識を無くしていった。
次に目を覚ました時には、もう天蓋も蝋燭も無くなっていた。
見慣れた天井に、ちょっと湿ったみたいな安っぽいベッドの匂い。あれ、なんだ帰ってきちゃったのか。
寝返りを打つと、バタバタと足音が近づいてきて、目の前に友達のアップが迫ってくる。
「おまえ、ふざけんなよなっ!」
あ、なんか真剣に怒ってる。
「今朝になってまだ帰ってこなかったら、マジで警察呼ぶとこだったぞっ!」
「ごめん」
「一体何やってたんだよ」
「うーん……色々と説明が難しい……」
「なんだそれ」
横の椅子にドシンと腰掛けると、フンと大きく鼻息を鳴らしてヤツは腕を組んだ。
あれ? 追求しないんだ。それでおしまい?
ヤツは難しそうな顔をして天井を睨みつけると、モゴモゴと呟いた。
「あのさ、俺、ちょっとこれから出掛けてくるから」
「そう」
「……彼女、来てるから」
「え?」
「さっき電話があったんだ。友達と、近くのカフェにいるって。いきなりでさ、俺もすっげえ驚いたけどな」
ああ、それでか。それで昨日の晩の俺の冒険なんかは、わりとどうでもいいわけね。分っかりやすいやつ。
そうか、凄いな彼女。ここまで追いかけてきたのか。きっと今頃、時差ボケですげえ眠いだろうな、好きなんだなあ。
──俺は、一体ここで何やってんだろ。
ヤツは俺に視線を戻した。睨みつける目が、みるみるうちに不安気に曇っていく。
「お前はさ、まだ超早いとかボケてんじゃないのかとか、茶化してからかうけど、俺は本気で彼女と結婚したい。
いくらお前でも、こればっかりは譲れないから」
そんなの、最初から分かってる。
「な、ちょっと手、貸して」
「は?」
俺はヤツの手首を掴んで引き寄せると、無理矢理掌を開かせて、その真ん中に、震える指を押し当てた。
意識を失う瞬間に、きっとヤツは俺の心の中を読むだろう。そして、夜までそのまま眠り続けて、
諦めた彼女は友達に慰められながらホテルに帰るだろう。
ヤツが目を覚ましたら、その時は、俺。
「……なにやってんだよ」
ヤツが、途方に暮れた様子で聞いた。
おかしい、何も起きない。俺は冷たい指先を、緊張して固まるヤツの掌に、ただひたすら擦り付ける。
なのに、擦っても擦っても、俺の指先は冷たいままだ。俺は、昨日の晩の力をすっかり無くしてしまっていた。
「あーあ」
観念して、俺はブランケットの上にバタンと腕を落とした。
「なんなんだよ、これ」
「タたなくなる呪い」
「てめ、このやろっ!」
「じょーだんだっつの。ほれ、早く行け。彼女待ってるぞ」
「おう。一人で大丈夫か?」
「平気」
「なんか食いたいものある? 買ってこようか?」
「んじゃ、卵かけご飯」
「ムチャ言ってんなよっ! 腹壊すだろっ」
どすどすとドアまで歩いてノブに手をかけたヤツは、振り返って気まずそうにに俺にこう言った。
「な、今日の夕飯だけど、彼女と友達と4人になってもかまわないかな?」
「いいよ、別に」
「そうか」
ヤツの顔が、パアっと輝く。
俺は、この姿をルイに見せたいと思った。彼はきっと、美しいと言ってため息をつくに違いない。
遠ざかる足音を聞きながら、俺はまた寝返りを打った。体の向きを変えた拍子に、目からぽろりと涙が落ちた。
結婚の話を聞いて部屋を飛び出してから、折角今まで我慢してきたのに、一旦出てしまうともう止まらない。
嗚咽を漏らしながら、俺は考えている。なあルイ、これが宵の口なら、この先夜はどれだけ長いんだろう。
どうして俺を連れていってくれなかったんだ。
首筋に触る。二つの穴は、もう跡形もなく消えてしまっていた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
生 ラクGO家 合点×焦点(灰)
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ただでさえ閑静な住宅街。
大晦日ともなればその静かさは増すもので、そりゃ昼間は年越しの用意だの、この日までに終わらなかった
大掃除が大詰めになってたりだの、正月の買出しで忘れた分をまた買いに行かなくちゃだのとそれなりに
みんなバタバタしてるんだろうけ家の中に居てればそれなりに静か。
独り者の俺んちもそりゃ静かで……一人位酔っ払いが増えた所で、それは変わらなかった。
「士のさん、もう一本飲む?」
「あー、飲みたいな」
「じゃぁ燗つけるよ」
レトロなものが好きで囲まれていたいんですっ生活をしている関係で、長火鉢を置いているのがこういう時は
本当に便利。
手土産に士のさんが持ってきた日本酒は、これを見越して燗にして飲んでも美味しいやつだった。
毎年大晦日になると、この人はうちに来る。
そんで二人でぐだぐだ飲んで、酔っ払って、帰っていく。
なんかもう年中行事の一環になっちゃってるし、俺としても士のさんが来ないと年越せなくなってんだよねぇ。
何で来るのとか、寂しいのとか、聞かない俺も俺なんだろうけど。二人でこうしているのは嫌いじゃないから、
あえて尋ねる必要なんてないんだし。
何時もは店で飲む方が断然多くて、そりゃ外でも色んな話をするし、げらげら笑ったり熱心に語ったり、
士のさんと居るって事には全然代わりないんだけど、二人きりだとなんとなーく距離が近い。
最近は忙しくて行けなくなっちゃったけど、二人で海外に行ってる時はこんな感じだった。
ただ二人で居るって事が、一番重要な気がする、この妙な時間。
燗の準備をして温まるのを待つ間、少しばかりの沈黙が落ちる。外は静か。今でも現役のブラウン管テレビは
今はお休み。ただただ静かに年が終わっていく。
士のさんとなら黙っていても平気だった。それは口から先に生まれたって言われるこの人も一緒らしく、
沈黙は気まずさを呼ばない。少し疲れの滲んだ目を伏せて――これは何時ものこの人の癖なんだけど、
考え事をしている士のさんをぼんやりと眺めた。
年が明ければ、俺は初席だの他の落伍会だの焦点だので駆けずり回り、この人は一ヶ月間のパル小公園だの
タメシテ合点だので疲労困憊になるから、こんな風にのんびする時間は当面持てそうにない。
どうせ俺はパル小に遊びに行くだろうし、士のさんとはお互いがいきつけにしてる近所のバーで絶対にばったり、
もしくは「今日寄る?」程度の連絡を取り合って顔を合わせるんだけど、『ゆっくり』っていうのは
二月も中旬以降にならなきゃ無理だろう。二月になれば俺は俺で自分がプロデュースしてる会で
気ぃ狂いそうに忙しくなるんだから。
眉間に皺。深く深く、何処かの底を覗き込んでいる様な眼差し。それはこの人の師匠に少し似ている。
芸風は似ていない癖にちょっとした仕草が似ているから面白い。高座でお辞儀をする姿や、少し丸い背中。
そんなものが壇士師匠を思い出させた。
面白いよね、血縁でもないのにさ。士らくなんて師匠の息子だと思われる位に似てるんだもん。
夫婦は一緒に居ると似てくるっていうし、師弟関係もそうなのかも知れない。
そろそろ温まったかと徳利を引き上げる。うん、丁度いいんじゃねぇの。
「士のさん、ほら」
「ん、え、あぁ、ありがとう」
軽く掲げてから手酌させてもいいけど注いでやろうと傾けたら、士のさんは慌ててぐい飲みを前に差し出した。
僅かに湯気の立つ様な透明な液体が器を満たす。そんじゃ自分の分を……っと思ったら、徳利がひょいっと
奪われて、逆にお酌してくれた。
お礼を言いつつ唇を近付けるとふわりと漂う日本酒の芳醇な匂い。先刻から飲んでるけど美味しい。
咽喉を滑り落ちて、胃の淵が暖かくなる。良い酒持ってきてくれたもんだ。
「何考えてんだか知らないけど考え込み過ぎ。あんた、いっつもそうだよねぇ。今度は何考えてたのさ」
「んー、毎年来させて貰ってるけど、お前んち、落ち着くなぁっとか?」
「疑問系かよ。でも、あんたの実家古道具屋だし、俺んち来るとそりゃ落ち着くんじゃねぇの?」
「それもあるけど、それだけじゃねぇよ」
「他にあるの?」
「あるだろ、とびっきりのが」
そこまで言うと士のさんは一旦言葉を切って、珍しく真っ直ぐに俺を見た。高座以外では掛けている眼鏡のレンズの
奥の目が、笑っている様で笑っていない。息を止めて見返してしまう。眇めた眼が何を見ようとしているか。
見透かされそうで怖いけれど、逸らしも出来ない。
何時もよりも少し小さくて、掠れた声は、静寂の中何にも遮られずに届いた。
「翔ちゃんの傍だから、じゃん」
短い言葉の中にどれだけの本音があるのか、俺は知らない。
その言葉を口から出すのに相当の力が必要だったらしく、士のさんは今までの鋭さが嘘みたいにふっと視線を下げた。
反応が怖いなら言うなよ、馬鹿。こういう所も分かっちゃうのが嫌なんだよ。
生憎と俺もだよなんて可愛らしい台詞が吐ける程素直にはなれない。あっそう。とすげなく言い返すと、
士のさんは何だよ冷たてぇのと今度は本当に笑う。深まった目尻の皺や、咽喉の奥で笑うその声に安堵してしまう。
言えば喜ぶって分かってんのに。でも言えない。けろりと言ってしまえる士のさんが憎たらしい。
きっと士のさんは何時もちょっと寂しい人だ。俺も多分そういう人で、けれど惹かれ合うのはそれだけが理由じゃない。
お互いに、同じ気持ちが胸の中。
士のさんは冗談の中に紛れさせて、俺は素っ気無さでコーティングして、口に出せば魔法が解けるって
怖がってるみたいに核心だけは言葉にしない。
「もう一本、燗つけるよ」
「ん、頼む」
空っぽになってる方の徳利に日本酒を注ぐ。注ぎ続ければ、器の容量を越えて溢れてしまう。花粉症と同じ事だ。
ねぇ、俺達は大丈夫なのかな。何時までこのまんまでいられるのかな。
どんな言葉もうっかり口から飛び出ない様にとぐい呑みに手を伸ばす。
どうか来年もこうして大晦日を迎えられますように。なんて似合わない殊勝さを込めて、日本酒と一緒に
すきだという言葉を飲み込んだ。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
スレの流れに滾ったもののツバハマごっこは入れられなかった。
大晦日に二人っきりで家呑みってどうなんだ。
>>208 凄く好きな系統の話で読みながらニヤニヤした。ありがとう。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )イアンを泣かせてるときが一番楽しいです!
戦っている間、何度もセビリアにはこまめに停まっていたが、すぐに出航するため、また、水夫候補の面接のため、イアンはユキヒサに呼び出される事もなかった。
なのに、ひと段落ついたとはいえ、戦いの真っ最中の今、ユキヒサから呼び出しがあるとは。
きちんと身なりを整え、風呂にも入った。
だからいつもの服とは違ったが、それでもいつもにたような服を買っているため、違和感はない。
ドアノブを握る手は少し、少しだけ、震えていた。
ぎぃ、と扉は難なく開く。
その先には、こちらに背を向け、机に向かう、ユキヒサ。
風呂に入った後なのか、髪を結っていなかった。
タオルを肩に乗せて、そのまま腕を動かしていた。
書類と戦っている最中なのだろう。
シエンやマリアへ伝えるための手紙を書いているのだろうか?
「…」
「扉を閉めろ」
「あ、ああ」
慌てて、扉を締めて、数歩、ユキヒサの近くまで行く。
「どれくらい、ここにいる?」
「え」
「停泊日数を聞いている」
そっけない、声。顔をこちらへ向けず、ひたすら英字をすらすらと紙に書いている。
「あ…、すぐに討ち取りたいって言っていたけど、船もだいぶ痛んでいるし、水夫も募集するから、二十日くらい」
「…。そうか。シエンは十日だそうだ。思ったよりシエンたちは被害はなかったらしい。やはり提督の船が一番狙われていたからな」
「…そう」
「航海士たちは無事か」
「アルが、肩に大怪我を。でも、本人は平気だって…。骨は折れていないらしいから…。あと、エミリオも少し、怪我を…他はあまり。水夫の死傷者が多い…船の損傷もかなり…ジェナスが無傷だから、ジェナスと船大工に任せて、船は造船所に預けてある」
淡々と告げられる。
その間もユキヒサは何度かうなずく程度で、こちらを向かない。
ただ、仲間の様子を聞きたいがために呼びつけなのだろうか。そう思って、少し、落胆する。
「…話がそれだけなら、帰る」
「…」
「…。…じゃあ、次の海戦のときも、気をつけて」
「そこにいろ。すぐ終わる」
踵を返した矢先、腕をつかまれた。
ユキヒサが、バスローブを着て、そこに立っていた。
威圧される。七つも年下の、まだ十九歳のユキヒサだというのに。
アルと同じ年齢だというのに。こんなにも違う。
ユキヒサには、独特の威圧感があった。
皆、それに恐れ戦く。
だから、一緒の船で旅していたときは、斬り込み隊長に相応しかった。
そしてその、今は机においてある村正で、数々の敵を切り倒し、やっと地中海までたどり着いた。
彼の活躍なしにしてはリー家は成り立たない。
だからといって、仲間に、こんなにも威圧するものなのか?
「…あ」
声が出ない。思わず座り込む。
「…どうした」
す、と、その威圧感が消え、年齢に相応しい目つきになる。
いつも眉に皺を寄せている。
はっとそこで気がついて、立ち上がるが、今度はベッドに突き飛ばされる。
「…え」
「じっとしていろ。久々なんだ。お前も我慢しろ」
(あー…話って、用事って…こういう事なんだ…?娼婦の代わりか…)
しゅるしゅると器用に片手でイアンの腰紐をといていくユキヒサに、イアンは諦めて天井を見上げる。
「!イアン、渡した守り刀は」
「今はレイピアだけしか持って来てない…から、宿に大事においてある。一回も使ってないけど…」
「外出歩くときに、持って行け。意味がない」
「…分かった…」
少しだけうなずく。片手は押さえられているから、動かせない。
やがて手は、服の中をまさぐる。
最近手を付けられていないから、なんだか違和感があった。
少し恥ずかしくて、押さえられていない方の手で、顔を覆った。
「…、ん、あっ…」
「拙者がいない間、何人の男に手を付けられた?」
軽く、胸板をまさぐり、乳首をきゅっとつまむ。ひくんと動く体に、痕を付けていく。
「!だ、誰も…」
「ああ、戦闘で緊迫していたからか?」
こんな、話をしたいんじゃない。
「…なんで…お前は私に手を付けた…?ん…、好奇心?」
「それに近い…が、最近は少し、違う」
言っている意味が分からない。
やや乱暴に服を剥ぎ取られ、奥のすぼまりに指を伸ばす。と、その前に唾液で十分にぬらすと、やはり乱暴に指を入れてきた。
「あ!ま、まって、痛い…!!」
だが体は正直だ。今まで触れられていない分、久々の快楽の予感に、もうすっかり欲情していてた。
白かった頬はピンク色に染まり、潤んだ瞳でユキヒサを見つめる。
すぐにぐちぐちと後ろからは音が聞こえ、耳を犯される。
イアンの身体を知り尽くしているユキヒサは、指で、イアンの最も感じるところに強く擦り付けた。
「あんっ!あっ、あっ!ユ、ユキヒ…サ、もっと、太いの、お前が、欲しい、早く…!」
ずいぶん素直に求めるようになったものだ。ずるりと指をひきぬかれ、一気につきあげられ、それだけでイアンは達してしまった。
荒く息をつくが、まだ達していないユキヒサは、強く、中を押し開いた。敏感な部分に強くすられ、そして引き抜かれ、射精された。
「んっ…!ああっ、ユキヒサ…!」
それと同時に、達したばかりだというのに、イアンも達した。ユキヒサの背に腕を回しながら、ユキヒサを見つめる。
「ユキヒサ…」
「まだ、余裕がある。まだいくぞ。お前が失神するまで。どれだけお前を抱きたいと思っていたか、お前は知らないだろう」
死刑宣告に似ている。失神するまで追い詰められる事は、よくあるが、本当に死ぬかと思うほどの地獄を味わう。むしろ、天国なのかもしれない。
天国と地獄の狭間で、いつも意識が朦朧として、ゆらゆらとゆれている。
何度懇願しても離してくれない。
「…ユキヒサ…」
「あっ、あー!!ユキヒサ、おねが、もう、もう…!!」
月は沈みかけている。なのに、まだ離して貰えなかった。
今度は後ろから、突かれて、思わず声が大きく出る。
乳首と性器を掴まれ、いじり倒される。そしてそのまま、後ろから。
汗が、ピンク色の肌に髪を湿らせてまとわりつかせていた。
ユキヒサは本当に容赦ない。
「じゃあ、これで。…くッ…」
「ふあっ…!!…はあ…」
目を閉じて涙をぽろぽろ流す。
そんなイアンの髪をすくうとユキヒサは、その髪に、口付けた。
「あ…明日…ううん、今日か、今日は…水夫の面接があって…提督の傍にいないと駄目だから…、後一時間したら帰る…」
「わかった。イアン」
「ん」
「お前はどんどん美しくなっていく。この手から逃れられると思うな」
ふ、と、ユキヒサに笑いかける。
「…ユキヒサ、好きだ…」
「…!」
と、がくんと一気に体重がユキヒサの腕に掛かる。
ずっと抱かれていたのだから、仕方ない。
(好き…か)
初めて言われた言葉。
眠っているイアンの頬に口付け、ユキヒサは着替え、いつもの和服に着替える。
そして先ほど書いていた手紙を封筒に入れると、机の上においた。
宛はアルとフェルナンドとジャムだ。
この四人は特別仲がいい。
アルはいつもは無表情だが、強気な性格で、それでも感情はずっとユキヒサよりある。感情以外の点ではユキヒサと似通っているし、年齢も同じな事から、すぐに意気投合した。
フェルナンドも同じだ。博打好きのフェルナンドは、仲間といつも娯楽室でゲームで賭けをしては勝っていた。その中には、他の三人もいて、そこに無理やりユキヒサも入れられたといった感じだ。
ジャムはこの中で最も明るく、楽しく人生を生きている。しかしやるべき事はよくこなすことから、ユキヒサも一目置いている。ただ、イアンになれなれしく接している事が、気にいらない所だろうか。
きっと、ずっとイアンの部屋に篭っていたことからも、この関係には気づいているが、言わないだけだろう。
気になる事が一点、あった。本当に、それはどうでもいい事だけれど。
西洋の事に詳しいとはいえ、まだ未知の扉は沢山ある。
だから、街中で見た男女が何故「アレ」をしているのか、気になったのだ。
「…というものを見たのだが、特にここ最近、地中海にやってきてよく見る。アレはなんだ?」
「あー、アレかあ。アレはなあ…」
ユキヒサたちは、街中を歩いていた。
ジュエリーショップの前に立ち止まると、ジャムは指をさした。フェルナンドはユキヒサから、それの事を聞いて、凄く驚いていたようだった。
「ほらほら、あれあれ。あそこにある奴だよ。ヒュー♪ユキヒサ、やる事はやってんじゃねぇか、相手は誰だよ、俺らの知ってる人物?」
「いや、だからアレは何のためにしているのだ。日本では見た事がない」
「…心の繋がり。というか。結婚する際や恋人の証として相手に送るものだ。シルバーだと特別な意味がある」
「…そうか。戻るぞ」
心の繋がり。
そろそろ、自分も一歩を踏み出してもいい頃なのか?
だが、また変なプライドが邪魔をして、ユキヒサは立ち去ろうと後ろを向く。
それをフェルナンドが、肩を掴んでとめた。
「…なんだ」
「相手は…あいつだろ?あいつ、知ってるか?俺、あいつに相談されたんだ。
…色んな水夫に手垢付けられたって」
あいつ、とは恐らくイアンの事だろう。
「手垢…」
「そうだ。お前に相応しくないって泣いていた。あいつがいつも暗い顔してるのは知っているが、あんなに泣いていたのは初めてだ。お前、イアンを抱いてるんだろ!?昨日だって!!イアンを呼び出したんだろ?」
やはり、鋭いフェルナンドには気づかれていた。
それを聞いて、他の二人は顔を見合わせてぽかんとしていた。
どうやら他の二人は気づいていなかったようだ。
「え…ユキヒサ、本当か?イアンと?確かに、顔立ちは整ってるけど、正気か?男だぞ?」
「拙者の国では小姓というものがある。戦場に女は連れて行かない。だから男を、
見目麗しい男をそばにおいておく。それと同じだ。恋愛感情なんてものは、ない」
ふい、と、顔をそらす。ジャムが、信じられないといった様子で、ユキヒサを見つめていた。
恋愛感情は、ない。そう言った後、少し、苦い気持ちになった。
うそつきめ。自分で自分の事をそう言える。
イアンの事を…。
「馬鹿か!」
と、アルが物凄い剣幕でユキヒサに掴みかかった。
思わず、一瞬、ユキヒサはひるむ。
「同性に手を出して、挙句の果てにはどうでもいいだと!?そうか、だからイアンはいつも傷ついたような顔をしてるんだな。
あいつは何か言ってるか?ユキヒサの艦隊が停泊したとき、船を見つめて笑ったのも、それのせいか!イアンだって仲間だ、今すぐあいつのために縁を切れ!お前が手を出していい相手じゃない」
「アル、おい、落ち着けよ」
ジャムがあわてて仲裁に入る。
拗ねたような顔をして、ユキヒサは言う。
「…お前に何が分かる。お前に…何が…」
そこで、気づいた。
ならば自分に何ができる?
アルたちの言っている事が本当だとしたら、無理強いさせているに違いない。縁を切るのが最良なのだろうか。
好き。
イアンは言った。初めて言われた言葉。
…アレは、心の繋がりの証だと、アルは言った。
縁を切った所で何も変わらない。むしろ一層彼を傷つけてしまうのではないのだろうか。
ぐっと手に力を込め、顔を上げた。
決めた。
「ならば、少し、付き合ってもらえないか。手放す気はない。だが…、これを贈れば、何かが変わりそうな気がする」
「うーーーん」
三人は難しい顔で、頭をひねり、相談しだした。
結局、ユキヒサの判断に任せて、自分達は見守る事にした。
ジェリーショップへ入っていく。
煌びやかな宝石を見ると、討ち取った艦隊から取り上げたお宝を思い出す。
そういえば、あの中にも、これがあった。
最初はなんだろうと思った。だが、それが、女に贈るものだと聞いた。
三時間ほどジュエリーショップに居座って、やっと出てきたときは、二つの箱をユキヒサは手にしていた。うっすら、いつもよりやさしく笑っている事に気付いた三人は、少し、笑った。
「頼みがある。今日も来るように、イアンに伝えてくれないか」
少し、照れているらしく、その箱を見つめている。いつもの仏頂面だが、眉間の皺は消えていて、唇は少し、弧を描き笑っていた。
「はいよはいよ。分かってるよ。お前も、変なプライド出すなよ」
ジャムが首を振り、大げさにジェスチャーする。
そしていつもの爽やかな笑顔を向けた。
「次、えーと…あなたは…、あら、珍しいわね、中国人なんだなんて。私も同じなのよね。じゃあ、面接はじめるわ」
結局寝た時間が、朝の五時だった。
その後すぐに起きた彼は、大急ぎで宿に戻った。
七時に面接があったので、それの手伝いと名簿作りのために、また働いた。寝不足のせいか、あまり内容が頭が入らず、ちょっとふらふらしている。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )すみません、まだ続きます。年下攻めにロマンを感じます。
>>208 全く見当違いだったらごめんだけれど
パリと写真集と卵かけご飯で個人的に萌えてる人物が浮かび上がってしまった…
それは別としてお話、不思議切ない萌えでした。友達はノンケ仲間ですかね。
大/航/海/時/代/4ユキヒサ×イアンの人はちょっと立て続けに投稿しすぎじゃない?
流石に自分のサイトでやれよ、と思ってしまうがw
サイトに載せられないって書いてるだろ。連投してるわけじゃなし
>>227 すみません。
もうすでに完結しているなだけに…。
二日か三日にいっぺんくらいにして見ます。
HPには本気で載せられません。
男性読者のほうが多いんで。
>>229 次からはトリップを付けるといいと思うよ
227性格悪いな…
連続投稿してないのに。
謝ってるんだし許しなよ。
絡みでどうぞ
>>227 せめて、NG登録したいんでトリップつけて下さい
とか丁寧にお願い出来ないもんかね
仕切りたいなら保管庫の掲示板で問題提起してみたらどうか?
>>231 227の方が謝るべき。
>>227 w付けてごまかさないで。
絡みじゃなくて保管庫の棚スレ会議室で、
ちゃんとどこがどうダメなのか問題提起してください。
お前らまとめて保管庫行けよ
正義厨ぶってる奴らもうぜえ
リンクで誘導すれば済むだろ
238 :
237:2011/02/05(土) 13:38:05 ID:JRS1tVkk0
すいません、重複しました。
極悪放火殺人鬼の獄中オナニー日記。
スレでちょっと人気あったお二人さんで、劇中劇ならぬ、妄想内妄想という代物です。
原作エピも入っていますが、基本、ドラマ版準拠。ビジュアルもドラマ版です。
漫画&ドラマ モリのア○ガオ
迫仁志×渡瀬満(※残念ながら迫氏の妄想の産物です)
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
咄嗟に枕に口を押し当て、声が洩れないようにして、迫仁志は己が右手に精を放った。
どうせ監視されていることには変わりないし、曾ては、看守の目の前で堂々とセンズリ
掻くようなおっさんもおったようだが、自分はまだ、そこまで突き抜けた死刑囚ではない
らしい。べつにそうなりたいとも思わない。
ゴミ箱まで立って行くのが面倒くさいので、横になったまま、丸めたティッシュを放り
投げた。案の定、外した。まるで彼の人生のようだ。
ちっぽけなゴミ箱の周りに散乱する、哀れなティッシュの残骸は、あの惨めな不合格通
知の山か、累々と横たわる落ち武者の死屍か。またぞろあの暑苦しい新人の看守が、「あ
ーあ、だめでしょ迫、こんなに散らかしちゃって」とか言いながら、世話女房みたいに、
片付けようとするだろう。
最近、彼がご執心の「オカズ」は、時々面会に来るあの辛気くさい顔をした女でも、見
飽きた雑誌の姉ちゃんたちでもない。
あのスカした「平成の復讐鬼」とやらを、ワン公みたいに四つん這いにさせて、締まり
のよさそうなケツに一発ブチこんでよがり泣きさせてやったら、どんなに気分爽快だろう。
きっと、煩いガキども八匹を蒸し焼きにしてやった時よりも、興奮するに違いない。
独房じゃなく、雑居房、しかも二人部屋だったらなあ。労役を課されるでもなく、請願
作業に精を出すでもない、年がら年中暇な死刑囚の妄想は止まる所を知らない。夜な夜な
あいつのとこに忍んで行って、かわいがってやるのに。
抵抗するかな。いや、何か、全てを諦めているような世捨て人ムードを漂わせているか
ら、大人しくされるままになってくれるかも知れない。
だが、少しくらいはやりあわないとつまらないよな。
布団の上に仰向けになり、迫は、早くも再び猛り立ちつつある自身を握りしめ、慣れ親
しんだ妄想を逞しくさせ始めた。
*******
「何の真似だ!?やめろよ、冗談」
妄想の中の渡瀬は、一応、最初はそんな風に言って、自分の上に覆い被さってきた迫の
体を突きのけようとする。
迫は難なくその手首を掴んで、布団に押しつける。空いた片手で渡瀬の頬や顎を撫で回
しながら、芝居がかった台詞を吐くのだ。
「おっと、これくらいで引き下がらないぜ色男。ほんとは嬉しいくせに」
「何!?誰が・・・・」
渡瀬は最後まで言うことができない。迫の唇に唇を塞がれてしまうからだ。
舌で唇をこじ開け、上顎や口腔を舐め回しながら、寝間着代わりのスウェットシャツを
たくし上げていく。二つの乳首を摘まみ、親指と人さし指で擦ると、そこはすぐに固くな
り、渡瀬の濡れた唇からは泣き声のような呻きが洩れる。
「あ・・・・迫、やめて・・・・嫌だ」
目を潤ませ、色白の肌を桜色に上気させて身悶える様に、思わず見とれてしまう。さす
がにそこまで気障ではないが、口笛でも吹き鳴らしたい。
「かわいいぜ、満ちゃん」
迫は淫靡に笑って、着ているものを脱ぎ捨て、上半身裸になる。渡瀬の胸に顔を寄せる。
早く吸ってほしいと言わんばかりに、ツンと立った乳首を口に含む。もう片方の乳首を押
さえたり撫でたりしながら、ゆっくりと輪を描くように、乳輪から乳首へと舌先を辿らせ
る。どうやらそこが弱いらしく、いつももの静かな彼が、甲高い喘ぎ声を上げ、体をビク
ビクと痙攣させる。
そして、奴は乱れた息の下から、苦しげに、こう哀願するのだろう。
「迫・・・・頼むからもうやめてくれ、悪ふざけは」
「何言ってるんだよ・・・・俺はおまえを、愛してるんだぜ。抱くこともできねえカミさん
なんかよりも、ずっとな」
息を弾ませ、耳を舐めながらそう囁くと、迫は渡瀬の体を横向きにさせる。重なりあう
ように後ろから抱き竦め、うなじを噛み、首筋に口づける。楽器を弾くように、腹から胸、
乳首へと片手を滑らせ、もう片方の手を下着の中に忍ばせて、とうに猛りつつあった肉幹
を擦り上げる。
「それとも、あのドンくさい、新人の看守の方がいいか?」
驚いたことに、それまで為す術もなく迫の行為に身を委ねきっていた渡瀬が、その言葉
に激しい反応を示すのだ。突然暴れだして、迫の手から逃れ、怒鳴る。
「いい加減にしろ!その汚い手を引っこめて、さっさと自分の所に戻って寝ろ!」
迫の顔から、まだ微かに残っていた余裕の笑みの余韻が、完全に消え去る。
渡瀬の先走りに濡れた手をペロッと舐め、ぐっと握りしめる。
「汚え手か。言われなくても、俺はこの手で、八人も殺してるからな。だが、人殺しな
のは、おまえも同じだ」
「なっ・・・・」
渡瀬は気色ばんで、何かを言い返そうとするが、言葉にならない。
迫は構わず続ける。
「『おまえは自分勝手な理由で、罪もない子供を八人も手に掛けたが、俺は違う』とで
も言いたいんだろう。だがな、どんな理由があっても、人を殺すってことは、何か、他の
罪とは違うんだよ。一線を超えてしまうというかな。深堀のおっさんじゃねえが、そうい
う意味じゃ、こっち側にいる人間は、みんな同じなんだ。俺もおまえも、だからこんな、
クソ色気のない場所にいるんだろ?」
長い間、渡瀬は黙っている。黙ったまま、燃えるような目で迫を睨んでいる。
迫は胡坐をかき、傲然と顎を上げ、腕を組んでいる。目は一度も逸らさない。
やがて、渡瀬は苦しげに口を開く。
「・・・・だから何だ。だからおまえと寝ろっていうのか?」
迫は鼻を鳴らし、不貞腐れたように答える。
「べつに。嫌ならもういいよ。おまえさんが本気出したら、腕力じゃ敵いそうにないし
な」
そこで、先程までの張りつめた空気が、少し緩むのだ。
渡瀬は顔を赤らめ、もじもじしながら言う。
「いや、その・・・・あんたがしたいんなら、何が何でも拒もうとは思わないよ。ただ、俺、
経験が・・・・」
迫は思わず吹き出す。
「俺も、男とはねえよ」
*******
しかし、あいつは俺に抱かれながら、あの若い看守のことを考えていそうだな。
現実に戻った迫は、ふと手を止めた。彼ら二人の間には、何か迫の知らない強い結びつ
きがあるようだ。以前からの知りあいか何かなのだろうか。
そういえば、よく夜中に二人でコソコソしているな。もしかしたら、デキているんじゃ
ないだろうか。
そうだとしたら、どっちが上だろうか。迫は一人で二ヤッと笑い、再び手を動かし始め
る。単純な興味が、彼の胸に生じかけた苦い嫉妬を上回ったのだ。
*******
あの、いつも隠者のように超然とした渡瀬が、生まれて初めて知る歓びに、我を忘れて
溺れる様は、どんなに艶なものだろう。
「あっ・・・・あっ・・・・迫、いいっ・・・・もっと・・・・」
きっと、そんな風に貪り求めるのだ。長い両足を迫の肩に担ぎ上げられ、荒馬のように
いきり立つ陰茎を咥えられ、淫らな音を立てて吸われながら。
「仁志って呼べよ・・・・」
舌を出し入れしつつ、尿道から亀頭、竿から根元へと、満遍なく舐め回す合間に、そう
答える。
「んっ・・・・ああっ・・・・仁志・・・・知らなかった、口でしてもらうのって、こんなに・・・・」
渡瀬が身を震わせ、一つ、大きく溜め息をつく。こちらの首に足を絡ませ、髪を掴んで、
より一層、自分の腰の方へと引きつけようとする。
じゃあ、当然、こんなことも知らないだろうな。迫は右手の中指に唾を吐きかけ、渡瀬
の後ろの窄まりに突き立てる。
といっても、俺だって、そんなによく知ってるわけじゃないが。
「ひゃっ・・・・」
渡瀬が仰け反る。口で陰茎を責め立てながら、迫は更に指を潜りこませる。渡瀬の驚き
と戸惑いに反して、後孔は平然と、且つ貪欲に、迫の指を呑みこんでゆく。
奥にある快楽の胡桃を探り当てるや否や、躊躇わずに、ぐっと押す。
「あああっ!」
瞬間、渡瀬の体を電流のようなものが走り抜け、手足の指先まで貫いたことが、迫にも
伝わる。
片手で腿を抱えこみ、舌を陰茎に絡みつかせながら、迫の指は刺激することをやめない。
自身も興奮に呼吸を乱しがちになりながら、目と耳にだけは、相手の反応を何一つ見逃す
まい、聞き逃すまいと、冷静な意識を集中させ続ける。
どれほど、世事に疎い生活を送ってきたものか。恐らく、何が起こっているのかすらも
理解できていない筈だ。
目を剥き、乳首を立たせ、汗なのか涙なのか涎なのか判別のつかない液体で顔をぐしゃ
ぐしゃに濡らしながら、獣じみた歓喜の叫びを上げ続ける渡瀬に、最早、世人に持て囃さ
れた孤高の英雄の面影は微塵もない。
「はあっ、はあっ、うぅ・・・・ふぅ・・・・おう・・・・ああーーっっ!!直樹!!」
迫の全ての動きが止まる。
無造作に渡瀬の首を掴んで引き起こすと、黙ったまま、平手で頬を打つ。渡瀬は無抵抗
に、褥の上に倒れる。殴られるまでのごくわずかな間に、自分の唇からついにまろび出た
その名を、信じられないという思いと共に、意識している。
褥に突っ伏したまま、今一度、その名を噛みしめている。迫に悟られないように、声を
殺してはいるものの、乙女のように、さめざめと泣いている。肩が震えているから、それ
とわかる。
「風呂の時に、気がついたよ。おまえらの間にそういう気持ちがあるってことは。あい
つ、おまえのそのきれいな裸をじっと見つめて、赤くなってたよな」
迫の言葉は聞こえている筈だが、渡瀬は顔を上げない。
持ち前の凶暴さが頭をもたげ、血流に乗って、迫の全身を駆け巡る。再び、渡瀬の肩を
掴んで、無理やり仰向かせ、今度は逆手をも使って両頬を張る。一瞬、意識が遠くなった
渡瀬の体に伸し掛かり、足を開いて、一気に貫く。
先程、指によって慣らされていたとはいえ、さすがに渡瀬が苦痛の呻きを上げる。構わ
ず、奴の両肩を押さえつけ、腹を突き破る勢いで、動き出す。
左手に違和感を覚える。手をずらしてみると、古い傷痕だった。
そうだ。野球をやってたんだったな。
ガキの時分から既にスター選手で、プロも夢じゃなかったのに、親を殺した男――こい
つに娘ごとぶった斬られた男――に刺されたせいで、断念せざるを得なくなったんだっけ。
しかし、それを口に出そうとは思わない。
「あ・・・・あ・・・・仁志・・・・仁志・・・・!」
渡瀬が迫の背を掻き毟る。かなりの力で、血が滲んだかも知れない。
「仁志・・・・熱い・・・・苦しい・・・あんたのが熱いよ・・・・中から・・・・焼けそうだ」
少しの間、迫は動きを止める。火のような息をつきながら、囁く。
「どっちが先に吊られるかわかんねえけどよ・・・・地獄でも、こうしておまえを抱いてや
るから」
渡瀬のもの憂げな瞳に、動揺のような、不安のような、反発のような、不思議な色が、
漣のように揺れ動く。
しかし、唇は半開きのまま、言葉を発することはない。
「俺は当然のこと・・・・」
迫は、これまでで最も大きく腰を引き、最も奥まで叩きこむ。
「おまえも、あいつと同じ所に往ける筈はないんだからな!」
*******
迫は果てる。渡瀬満の胎内で。
ではなく、再び、自分の手の中で。
ぶるっと身震いをして、射精の余韻を味わい、それと引き換えのような、あの猛烈な虚
脱感が襲って来るのを待つ。
我ながら、よくもこんなくだらないことばかり考えているものだ。
だが、悲しいことに、彼がこの世界から仰せつかった役割は、ただくたばることだけ、
他に何一つ、用事はないのだ。
しかしな。ティッシュを放り投げながら、迫は思う。
本当は誰だって、そうなんだけどな。
院内放送のラジオから、古い流行歌が流れてくる。
「こらっ!深堀、いい加減にしろ!」
という、誰かの胴間声がそれに被さる。
あの懲りないおっさん、また、調子に乗って踊ってでもいるのだろうか。
Fin.
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
津○寛治さんは(無駄に)色っぽいですが、犯行動機は原作の方が好きだなあ。
しかし、元々ネタは宅○だと思うと複雑だ・・・・。
某スタッフ×某師/匠です。
架空のスタッフシリーズとは別物の単発です。
性描写あり注意。
延々規制中のため携帯より失礼します。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「ああああーーっ」
その金切り声は外に聞こえる事は無かった。
ここは師/匠の自宅にあるスタジオの防音設備の中だ。
もう何回目だろうか。
師/匠の趣味はすべて仕事になってしまう。
一度興味を持ったものはとことん追及し、さらに独自の解釈を持ってついには極めてしまうからだ。
その類まれなる探究心は素晴らしく、身体の構造上諦めざるを得なかったバイオリン以外は
どんな物でも独特かつ華麗に乗りこなせる器用さも持っていた。
しかし今回ばかりは相手が悪かった。
今、まさに極めた所であり、まだ自分でコントロールができていないのだ。
皮肉にも極めてしまったがために起きた悲劇である。
「これは、マズイ…あっ…あぁ」
師/匠のお尻から不思議な蔓が伸びる。
すでに彼の意思に反して勝手に動く筋肉のそれに合わせて蔓が会陰部を押し上げ、中の凹凸が様々な器官を絶妙な力加減で圧迫する。
しかしながらそれは意志には反していない。
彼はこうなる事を望んでいたのだ。
思ったよりすごくてビックリ
そのような感想を抱いている余裕は、まだあった。
「これどうしたら、ど、あああっあっあっ」
師/匠がその食虫植物のようなものに溺れている頃、彼の優秀なスタッフが家の前に立っていた。
「鳴ってんなー…。また携帯置いてスタジオかなー」
家の前で師/匠のアンドロイド 携帯にかければ、他人が聞いたら振り返りそうな着信音が家の中からかすかに聞こえる。
師/匠は先日の会議で倉庫の鍵を事務所に忘れていた。
スタッフはその鍵をわざわざ持ってきたのだ。
何度も電話をかけているのに、一向に出ない。
事務所に届いたファンからのプレゼントを渡す任務もあった彼は、
仕方なくアポイント無しに家まで来てしまった。
インターフォンを鳴らすが、師/匠の居る防音設備の中にその音は聞こえない。
スタッフは何度かこの家に来た事があった。
携帯が家の中にある、愛車のプリ薄も停まっている、各種自転車で出かけるのは散策以外なら大抵午前だ。
なら、師/匠は現在風呂かスタジオに居るのだろう。
そう思ったスタッフは家の裏手に回り、勝手知ったるシミツの鍵の在り処を探った。
そうして難なく家内へと侵入したのだった。
「師/匠…」
次々現われては近づいてくる猫を避けながら室内を進む。
風呂場を覗くが、誰も居ない。
スタッフはスタジオに近付いた。
扉の向こうでは、あられもない姿の彼の師/匠が転がっている。
「ごめんね」と言いながら猫を追い払い、
そのドアを開け、中に入ると猫が飛びかかってくる前に即座に閉めた。
ここは猫禁止エリアだ。
あちこちにある観葉植物は相変わらずよく手入れされ、木漏れ日を受け元気に伸びていた。
スタジオには一見誰も居なかった。
「師/匠…?」
転がっている師/匠は、誰かが訪ねてきたのはわかっていた。
わかっていた所で、このように急に訪ねられては体裁を繕う事などできない。
とりあえず黙ってたら出ていくかな
と淡い期待を抱いてみたが、空気を読まない筋肉がお尻の蔓をグニャグニャと動かした。
「あっあああああーーーっっ」
「!!」
スタッフの目の端に黒いものがうごめいた。
師/匠は決断した。いや、決断せざるを得なかった。
かくなる上は、開き直るしかないと。
「…ごきげんよう」
「…いや、あの…………何してるんですか…」
「…何してるように見える?」
「………玄人のオナニー?」
「わかったら、回れ右、解散。」
「…えー」
「えーじゃない」
スタッフは師/匠の突飛な行動には慣れていた。
慣れていたとはいえさすがに相当驚いた。
とりあえず何が起こっているか事態を把握しようとまじまじ見つめた。
出た答えはこうだ。
師/匠が、下半身を露出した状態でエネマグラを挿入し現在ドライオーガズムを迎えている。
概ねあっている。否、間違い無い。
事態が掴めれば、次に来るのは純粋な興味だ。
「…すごいっすね。」
「……ハァ……キミが居ると集中できない…から、さっさと帰りなさい。」
ピクピクと動いていた蔓も、今はギュッと引き込まれたまま止まっている。
これでは痛いだけだろう。
「まぁ、もういいかな。…終わりを決めかねていたので。ちょうどいいから、おしまい。」
そうだ、いつまでもこうしてはいられない。
こんな痴態をスタッフにさらし続けるなんていただけない。
私は師/匠だぞ。本物だぞ。そのように心得よ。
そう思い蔓の持ち手を掴むが、スタッフの前で引きずり出すのもいかがなものか、と悩む。
だが、察して出て行って欲しいとも素直に言えない。
どうしたものか考えあぐねていると、スタッフが歩み寄ってきた。
「ドライの締めはウェットでしょう。」
スタッフは転がっている師/匠の傍に腰を降ろすと、上半身を抱き起こし自分の腿に乗せる形で横向きに寝かせた。
背後から手を回し、下半身に反してきっちり着ていたシャツのボタンを外す。
何か、される。
師/匠はそう思った。
しかし、ここで取り乱すほど低いプライドは持ち合わせていない。
「何をする」
静かに脅してみせても、無駄だった。
スタッフは彼の性格に慣れている。その程度の脅しでは止まらない。
シャツのボタンはスタッフの手によって全て外され、肌蹴られた。
そしてその手は師/匠が最も弱く、最も好きな部分に当然のように伸びた。
「はっ…」
キュッと摘まれ、師/匠の背中が浮く。
小刻みに指を動かされ、指の腹で捏ねられる。
その行為に師/匠は否応なく反応してしまう。
それでもまだ体裁を繕う事を諦められず、我慢をしてみせる。
しかしどんなに我慢をしても、筋肉の収縮で蔓が動くので感じている事はばれてしまう。
さんざん絶頂を迎えていたせいで、体中の力が抜けていた。
もはや師/匠は抵抗もできず、スタッフに翻弄されるしかなかった。
すぐに輪郭をはっきりさせた乳首を擦られる度にビクビクと肩が揺れる。
最初に見られた時から、羞恥に耐えるしかない事は決まっていたのだ。
「勃ってきましたね。」
右足の腿を後ろから掴まれ開かされる。
「あっ…」
羞恥に耐えられず上半身を乗せられているスタッフの腿を掴んで抗議する。
「ほら」
抗議は受け入れられない。先走りを絡め捕られ、そのままツー、と指が滑った。
「んんんっ」
自分の身体が言う事を聞かない。
あんなに絶頂を迎えた後なのに、いや、その後だからこそだろうか。
かつてない壮絶な快感が彼を襲う。
ヒクつく筋肉に蔓がまるで生き物のように揺れ、中も擦られてしまう。
同時に複数箇所を攻められ、どうにかなりそうだ。
「あっ……あっ!」
「…ここですか?」
「やだ……ぁ…」
意味を成さない動きで忙しなく彷徨う師/匠の手からも余裕が無いのが伝わる。
「そっち触ったらヤバイ…ヤバイってば」
「…そう言われると。」
スルスルと探るようにくすぐるように撫でられていたそれは、はっきりと5本指でズルリと搾りあげられた。
「あぁーーーーっっ」
一際大きい喘ぎ声が響く。
「…いい声すぎる」
上下に擦られ、いい部分を執拗になぞられ、美しい悲鳴があがる。
片方の手は相変わらずツンと勃った乳首をこね続ける。
「そういえば、エネマグラやるといっぱい出るらしいですよ。」
スタジオが汚れるからやめてほしい。
そう言いたいのに、出てくるのは喘ぎ声でしかない。
息が荒くなりうまく呼吸もできない。
鳥肌が立ち、背中が反る。
首を左右に振ってもやめてくれる気配は無い。
行きすぎた快感に意識が飛びそうになる。
もう、我慢できない。
「あっあっあっあっ」
師/匠の限界を悟ったスタッフは、すかさず肌蹴た上半身にひっかかっているシャツをひっぱった。
瞬間、ドクドクと脈打つ手の中のそれがはじけるように一際大きくビクンと痙攣し、
師/匠の絶頂は奇麗にシャツの中にぶちまけられた。
スタッフは、ぐったりと荒い息を繰り返す師/匠の肩から腕をなんとなく撫でていた。
だいぶ落ち着いてきただろうか。
気になるのは未だに蔓がピクピクと動く事だ。
「ふぅ……んん」
もぞもぞしていると思えば、師/匠がビクッと震えた。
どうもまたドライで絶頂を迎えているらしい。
「…もうダメですよ。」
危険だと判断したスタッフは、散々師/匠を弄んだ蔓をズルリと引き出した。
たっぷり塗られた潤滑油がトロリと出る。
準備万端で挑んだ後が見られ、スタッフは苦笑した。
「…ん…」
「これ、やりすぎると身体に悪いって聞いたことありますよ。」
まだ少し震える身体を子供をあやすように優しく撫でる。
「しばらくやらないでくださいね。」
珍しく反論が無い。
よっぽど疲れたらしい。
スタッフの腿の上で撫でられながらおとなしく寝ている。
「やりたくなったら…呼んでくれませんか。」
やはり反応は無い。聞いているんだろうか。
「また最後は俺がイかせますんで。」
師/匠がため息をつく。
「…私はプライベートでもキミが居ないと何もできないんですか?」
「はい。そうしてください。」
「…馬鹿者」
壮絶な疲労感と心地よい時間に、師/匠はゆっくり目を閉じた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
着信音やっぱり変なんだと知った今日のツイート
>>252 乙です
タイムリーかつマニアックなネタが盛りだくさんの投下をいつも楽しみにしています
ついに食虫植物登場で萌えました
254 :
緑蜂:2011/02/06(日) 20:46:03 ID:MYU7Duw+0
助手pov
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
断られるとわかっていてプレゼントするのと、
喜んでくれるのを期待してプレゼントを贈ってそれを断られるのと
どちらが悲しいのだろう。
僕の場合はこうだ。
「えっ何これ、俺は屁コキ銃で十分ってか?」
武器が必要だろうと思って気を利かせたつもりがアダとなった。
ガスガン(強力催眠ガス入り)を見せた時、この新聞会社の若社長兼
だらしないプレイボーイ兼僕の相棒兼僕の(偽)兄弟は僕に見くびられたと思ったのか、
ふくれっつらを見せた。
うまく意図を伝えられず、咄嗟にフォローしようと言葉を募る。
「君は特別(special)だから」
「まあな、否定はしないぜ」
彼はおぼっちゃま特有の悪気のなさ(と空気の読めなさ)でうなずく。
まあ、どっちかっていうと普通じゃない(less ordinary)っていう意味で言ったつもりが、
僕の英語のレベルではポジティブに伝わってしまったらしい。
でも、まあ、本来の意味で間違ってはない…ような気もする。
なんだか胸のあたりがもやもやするけど、深く考えないことにした。
255 :
緑蜂:2011/02/06(日) 20:48:27 ID:MYU7Duw+0
「おい、なに笑ってる」
「別に笑ってないよ」
「お前の鉄面皮を見慣れてる俺だぞ!そういうの(チャーミング)は反則だ!!」
「何??」
彼の英語がわからなくて聞き返すと、彼は頭を抱えようとした…拍子にガンを暴発させてしまった。
一撃で彼の体が沈む。なかなかの威力に満足したが、彼はすっかり昏倒してしまった。
意識はあるか、顔を叩いてみる。
「おーい兄弟…起きたらチャーミング云々について説明してもらうからな」
ブリットの間抜け面を見下ろしながら、僕は思わず笑っていることに自分で気づいた。
何だろう、彼といるとものすごく苛々するときもあるけど、こんな風に本当の兄弟のように思える時もある。
「まあ、とりあえず寝かせるか…」
ガスの効き目が強すぎて、オムツまで必要になり後で彼に涙目でキレられることになろうとは、
このときの僕はまだ知る由もなかった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ほんと、びっくりするぐらいツッコミどころ多いので(萌え的に)
よろしくお願いします。He's my manとかウッカリ言っちゃう若社長…
>>254 (たぶん)同じスレの住人として乙だけど
もしまた投下することがあるなら、ここのテンプレ一読してほしい
あとジャンル的に注意書きがあってもいい気がするかな。老婆心だが、よろ
>>239 萌えた、ありがとう
迫→満→なお君の三つ巴イイヨイイヨー
258 :
254:2011/02/06(日) 23:14:37 ID:MYU7Duw+0
>>256 おっしゃる通りです、ナンバリングも公開中のネタバレ表記もせず
大変失礼しました。
なお、いまさらですがタイトルは[a partner less ordinary]とします。
>>252 あー最高ですありがとう おっちゃん絶対自分で人体実験してるよね…
1ダース+1人の□、悪逆非道の藩主様と、兄将軍
名前は史実から借りてるけど捏造200%
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「上様の御成り」
抑揚をつけた呼び出しを合図に、皆が上座へ向かいひれ伏した。斉音召もまた座敷の中央で頭を低くする。
畳を摺る足袋の音が将軍の登壇を、袴を捌く衣擦れとが座したのを知らしめた。
「面を上げよ」
脇息にもたれた将軍、徳川家好しの視線を一身に浴びながら、流れるような所作で斉音召はゆっくりと命に応じた。将軍の袴の扇面模様がまず目に入る。その背後、大襖に描かれた松の根、棚に置かれた染付けの大壷と南蛮渡りの金魚鉢。
将軍と真正面から視線を合わせることは無礼であるとして、顔を完全には上げない。だが、そんな作法、慣例も斉音召に限っては当の将軍側から無用とされることが多かった。
「かまわぬ、もっと面を上げてみせよ。側へ近う寄れ」
「上様」
白皙の面に戸惑いを浮かべて見せながら、斉音召は膝を使って上座へとにじった。
もっと近くへ、と求められるままに進めば、将軍の座が置かれた一段高くなった畳縁に膝頭があたる。扇を持つ家好しの手が、斉音召の頬を撫でた。
「よう参った。明石はどうじゃ?なにやら一揆などという不穏な噂も聞こえてきたが」
「上様の御威光をもちまして、万事恙無く。ご心配には及びません。一揆と言うてもほんの些細な騒乱、直に首謀者を捕まえまして処断しております。それにそのような大事が起こりましては、この斉音召、このように江戸へ参ることもできておりますまい」
「そうじゃな、その通りじゃ」
鷹揚に賛同した将軍に、斉音召は口元を緩やかに持ち上げて笑みを浮かべて見せた。
「……ほんにそなたは本凛院様に良く似ておる」
斉音召の頬を、また扇が一撫でする。
「美しい女ばかりを集めた大奥の中でも、特に美しい方であった。後年の父上は、そなたの母君をことの他寵愛されていたものよ」
「上様のお言葉、仏門に入った母が聞けば何よりの慰めになりましょう」
形式を崩さぬ受け答えに、じれたように家好しの操る扇が一折開いてすぐにぱちりと閉じられた。
「堅苦しい対面は終わりじゃ。のう、斉音召」
そこでようやく、家好しの意識は斉音召の上から離れた。謁見の間の部屋端に居並ぶ家臣の一団に向かい声をあげる。
「皆下がれ。後は斉音召だけでよい」
「上様!」
反論の声を上げたのはそれまで無言で控えていた筆頭老中だった。他の老中の面々も腰を浮かしかけている。
「何じゃ」
重臣をないがしろにするわけにもいかず、渋々といった体で家好しは不快感をあらわにした。
筆頭老中はちらりと斉音召を横目に見ると、口を開いた。斉音召は涼しい顔で背筋を伸ばして座している。
「松平斉音召様におかれましては、尾張藩より上訴の一件、上様よりご審議のほどを……」
「ええい、分かった、分かっておる。分かっておるから皆下がれ」
追い払うように扇を振って家臣団を追い出すと、家好しは親子ほども歳の離れた弟の機嫌を伺うようにして隣に座し、浅黄色の裃に包まれた肩へ触れた。
「老中共がうるさいのでな。……そなた、江戸への途上、尾張藩領内で家老の家の者を手打ちにしたとか。真か?」
「真にございます」
「そうか、それはちと困ったの」
「退屈だったのでございます。それでそれらの者に遊びの相手を務めさせましたところ、無礼を働きましたので手打ちにいたしました」
血を吸われたので蚊を殺しました、というのと同等、あるいはそれ以下の事実を語るように、斉音召は罪悪の欠片もみせず淡々と認めた。
「なるほど、それでは仕方ないの。悪いのは退屈か」
「ええ、兄上様」
呼びかけが上様、から兄上様、に変わったことへ満足した家好しは、斉音召の罪の在りかを『退屈』という形のないものへと摩り替え、あっさりと決着させてしまった。将軍が許してしまえば、最早公に斉音召を裁ける者は存在しない。
「では、今はどうじゃ?まだ退屈か?」
「いいえ、周丸は兄上様とお会いできて嬉しゅうございます。兄上様のお呼びがあれば、周丸は退屈などとは思いませぬ」
周丸は斉音召の幼名である。更に斉音召は殊更幼い子供のように首を振って、無邪気に微笑んでみせた。
「良いことを思いついたぞ!そなた、次に江戸へ帰参してまいった暁には老中職へ就くがよい。さすれば余の傍らで退屈など失せてしまうであろう」
「ありがたき幸せ」
そうじゃ、それがよい、と膝を打つ家好しに、斉音召は狂気を含んだ美しい笑みを押し隠しながら平伏した。明石は所詮、一地方の領地に過ぎない。公儀の要職へ就けば手にした権力は明石のみならず全ての諸般へと振り下ろすことができる。
斉音召の残虐性は新たな獲物を見つけて大いに歓喜していた。
「さあ、兄上様、周丸とふたり、今宵は何をして遊びましょうか」
「そうじゃの……」
将軍家の兄弟二人だけを残した謁見の間、その背後で屈折する硝子の鉢の中を赤と黒の金魚が尾を絡ませ合ってひらひらと泳いでいた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
2分割だと量が多いって言われたよ
手際悪くて失礼しました
藩主様の悪逆非道最悪っぷりが凄すぎて
それを「乱心」の一言で片付けちゃう将軍様ってどーなのよと思った次第です
>>239 萌えましたありがとう!
ドラマキャストのおかげで新しい萌えの世界が広がって楽しいw
月産で連載中の殺し屋話 和流津で伊和西×瀬巳です。
ちょっと痛めのエロのみ。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
紹介された殺し屋は、すぐキレる、礼儀を知らない、プロ意識のカケラもないの三拍子が揃った陰気な十代後半の男だった。
腕が立っても、頭が悪い奴はこの業界では生きていけない。
考えなしに所構わず誰彼殺す、そういう奴の寿命はたかが知れている。
まぎれもなく粗悪品ではあったが、幼い顔をした男はこちらのオーダー通り、いやそれ以上に強かった。
なんの感情の発露もなく女も、イタイケな子供でさえも躊躇わずに切り裂くことができる。
その才能は金になる。金になるものは好きだ。信用できるのは金だけだからな。
孤独でどん底の生活を送っていた哀れな殺し屋、瀬巳は幸いにも俺との関係に執着を見せ始めている。
上手く手懐けられれば使える様になるかもしれない、うるさく噛み付いてくる割には順調に躾けられている手ごたえもあった。
その証拠に瀬巳は今、俺の目の前にうつ伏せのまま腰だけを高く掲げた体勢で荒い呼吸を繰り返している。
「…ッ」
「いつもみんみんうるさいのに静かだなァ、瀬巳」
色が抜けた髪を鷲掴んで引き上げると、のけ反った喉がひくりと震えた。
ペニスを飲み込んでいる穴が痙攣するように締まる感触は悪くない。
「こういう時は声を出すもんだぜ」
「…うるせえ、な」
汗ばんだ背中に爪を立てると、傷だらけの体が跳ねる。
これからはこの傷を増やさせないようにしないといけない。仕事の度に傷を負うようなド素人と手を組んだら俺の身が危ない。
ふと見ると4回も吐精した瀬巳のペニスはまた立ち上がり掛けていて、これにはさすがに呆れた。しかたなく抜いてやる為に手を伸ばすと瀬巳が小さく呻いた。
「変、態」
「どっちが」
「あ…ァ…ッ」
力任せにペニスを握り締めてやると、息を詰めて瀬巳がもがいた。両手首の手錠ががちゃりと重い音をたてる。
ヤッてる最中に殺されたらたまらないので宥め賺して最初から拘束しておいた。それがこうして役に立っている。
「男に突っ込まれてヒイヒイ言ってるのはお前じゃねえか」
「伊和西、殺すぞてめえ」
息も絶え絶えに脅されたところで痛くも痒くもなかった。繋がれた両手を闇雲に動かす様子は獣染みている。
「手が千切れるぞ」
「俺は、おまえの人形じゃねえ…」
「……」
また人形の話か。馬鹿馬鹿しさに思わず笑ってしまう。人形何ざ、誰が抱くかよ。
「お前は、俺の人形だってえの」
そう思いたいなら思えばいい。人形以上になれるか否かはお前次第なんだからな。
「クソ…ッ」
「操り人形は操り人形らしく繋がれた糸を有難く思え、とJCも言ってるぞ」
「こんなときまで、ジャック何とかかよ…!」
「当たり前だ。俺のすべては金とJCで出来ている」
敬愛するJCは人形についての歌を歌っていないのでたった今創作したが、なかなかいい出来だと思った。立場を弁えさせるにはもってこいな気がする。
惰性で緩く動かしていた腰を強く突き出すと、鋭く息を呑む音が聞こえた。
その名の由来通りこのままみんみん騒がれたらこちらが萎える。最初だろうからと手加減していたがもう充分だろう。
手の自由を奪われて体を支えられない瀬巳はただ揺さ振られるままになった。
「……」
やけに静かな瀬巳を覗き込むと、驚いた事に声を押し殺す為力いっぱい唇を噛み締めていた。切れた唇からシーツにぽたぽたと血が滴っているのを見てがっくりする。
これで手触り抜群な高級シーツが吸収したのは、4回分の精液に腸液、唾液のうえに血液、まるで体液のフルコースだ。
もうベッドパッドごと廃棄するしか道はない。瀬巳の報酬から天引きで弁償させてやろう。
「瀬巳、唇は美味いのか?」
まったく、一から教えてやらなきゃいけないなんて手が掛かりすぎる。
指を噛み千切られるのはごめんなので、額に手を当てて顔を上げさせた。覆い被さるように身を屈めて耳元に囁いてやる。
「こういう時はな、声出して良いんだよ。知らなかったか?」
「し、知ってるに決まってる、だろ」
嘘をつけ。他人と触れ合うこと自体初めてだろうが。
放置していた瀬巳の前を嬲ると、ようやく振り絞るように声を上げ始めた。
「ん、あ、ああっ…ハッ…ァアア…!」
「……」
タオルでも噛ませれば良かったと思ったがもう遅い。いくらなんでもでかすぎだろうが。
態度もでかいが、声もでかい。まったくしょうがねえなあと、俺は苦笑した。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
マイナーですまん。
原作の飛蝗(要英訳)から派生したオリジナル原作と聞いて単行本に手を出したら色々驚いた。
伊和西が想像以上のハイスペックで変な声が出ちゃったよ!
半生 某自動車メーカーのCMより
所長×研究員
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース
「ちょっ…所長!所長!」
大きな声で後ろから呼び止められた。
相変わらず可愛い声だ。
低過ぎず、ゴツ過ぎず、完全に男の声でありながら、どこか甘ったれた柔らかさを持っている。
末っ子の特徴だろうか。
わざわざ振り返らなくても、この声で誰だか分かる。
というより、スマートかつクールな理数系人間のみが巣食うこの最先端の研究所で、こんな風に大声を張り上げ、不恰好にバタバタと走って追い駆けて来る人間は一人しかいない。
まったく私の趣味に合わないドン臭さだ。
だから、今となっては完全に魔が差したとしか思えない。
この私が。
スマートかつクールな研究所所長である、この私が…。
そんな葛藤を胸中に抱えながら、息せき切って私を追い駆けて来たらしい研究員の顔を見たさに足を止め、振り返った。
無駄な物を徹底的に排除し、無機質でありながらも洗練された設計を施された長い通路の真ん中辺り。
白いトンネルのようなこの空間には静かな空気が満ちている。
フットライトの温かい間接照明に照らされた通路は母体の産道にも似て、歩く度に私の心を落ち着かせた。
しかし今は落ち着かない。
いや、分かっている。
分析するに、この目の前の新任の研究員のせいだ。
柔かな明かりの中に佇む、このドン臭くて、センスがなくて、機知も機微も備わっていないこの研究員のせいなのだ。
ユーモアを解さない、洒落た会話の一つも出来ない、田舎者のこの研究員が全ての元凶だ。
この研究員の……この研究員の、男にしては長い睫毛、大きな瞳、形良く引き結ばれた唇、少し茶色がかった髪の毛が、赴任して来た時から私の心を騒がせるのだ。
この私としたことが、まったく魔が差したとしか言い様がないじゃないか。
よりによって、こんな相手に。
そうは思っても、通路の真ん中で間近に向き合ってみると、改めて整った顔立ちに目が惹き付けられる。
…可愛い。仕方ない。自分に嘘は付けない。私は嘘とカエルが一番嫌いなんだ。
「低燃費をT/N/Pって本気ですか」
「私はいつでも本気だよ」
そう答えてやれば、途端に子どもっぽく唇を尖らせて言い返してくる。
大人同士の駆け引きも、建前に忍ばせた本音の応酬も、まるであったもんじゃない率直さだ。
「だって日本語だし短くなってないし」
今までの私なら、ここで相手に愛想を尽かしてお別れの言葉を告げ、早々にお引き取り願うところだ。しかし。
下からこちらを覗きこむように、上目遣いで言い募るその様は。
…可愛い。仕方ない。
「分からないのか?」
この私の気持ちが。クールでI/K/T/Rとしか言い様がないこのセンスが。
「ちょっと格好良いからだよ」
「……えぇ…?」
なんだそのしかめ面は。…可愛いじゃないか、まったく。
いや待て、もしかするとこれはこいつの作戦か?
実は天然を装った高度なトラップを仕掛けられているのか?私はそれにまんまと嵌ってしまっただけなのか?
そんな疑念を振り払うように目の前の研究員をマジマジと見据える。
…可愛い。仕方ない。
まあ良いだろう。まだ来たばかりなんだし、今から色々憶えていけば大丈夫だ。
早く研究所に慣れるよう、私が個人的に指導してやっても良い。
目の前の研究員は何やらしばらく頭を抱えていたが、やがて吹っ切れたように顔を上げた。
そしてまさに、輝くばかりの満面の笑みを浮かべて私を見る。
「僕……上手く言えないスけど、所長、その本気…付いて行きます!」
…マズい、凄く可愛い。
早鐘を打つ己の心臓をハッキリと自覚しながら、私は、これがM/K/5というものなんだろうか、とぼんやり考えていた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ナンバリング失念しました…スミマセンでした
>>270 やべえ笑ったw
あの二人気になってたので、読めて嬉しかったです
所長おもしれー!
>>270 略語に笑ったw
okdくんにべた惚れなenknさん萌えました
>>270 ぐっじょぶ!
かわいい研究員さんモエスw
>>270 I/K/T/Rってなんだ?と研究員みたいに考えてしまったww
>>274わからないのか?があの美声で聴こえたwwww
かわいいなー
生?じゃないとは思う…ネタものです。萌えません。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「どうして時々、口では嫌だと言ってるのに結局攻めにされるがままの受けが出てきてしまうのか。
どうしてだと思います?」
「'`ィ (゚д゚)/ そういうキャラ知ってるんですけど、聞いたことあるんですけど、
やっぱり攻めが好きだから流されちゃうって」
「はい、そういう言い訳はずいぶん言われてますよね。
ところがですね、もっと根本的な問題があるんですよ」
「えっ?! 実は受けが弱気だからとかじゃないんですか?」
「受けをそういう風にしてしまう攻めは、一体どんな方針をとっているのかという点を
細かく見ていくと、これは受けの問題だけじゃないんだな、ということが分かってくるんですね」
「へぇ〜」
「それを、こちらで説明していきましょう」
「まず、なんで攻めが主導権を握った状態になってしまうのか、その原因。こちらですね。
『執拗な言葉攻め』
そしてもう一つは、
『的確な愛撫』
というのがあります。
執拗な言葉攻めというのは、相手に喘ぎ声以外の発言を許さないくらい、
それぐらい非常に積極的に恥ずかしい言葉を言っていくんです。
いろ〜んないやらしい言葉ってあるでしょ?
例えば『男か女かは関係ない。お前だから好きになったんだ』とか、
『やめろと言われても、ここはこんなに熱くなってるぞ』とか、いろいろありますよね?」
「はい」
「それをもう、吐息がかかる程度の極めて耳に近い距離で、連続してささやいていく」
「あ〜」
「次に的確な愛撫というのは、これはもう分かりやすいですね。
事前に相手の性感帯の情報を入手しておく。あるいはその場で探っていく。
OJT(おまえの・状態を・確かめる)で見つけた性感帯を外さないように、
ピンポイントで突いていく方法ですね」
「あ〜〜なるほどね」
「そこで私が解説するキーワード。それは、こちらです」
『グレートマグナム砲』
「え〜? 全然分からない……。まぐなむ……?」
「初めて聞きましたー」
「グレートっていうことは、大きいわけですよね。
良く聞く言葉、『マグナム』だけでも充分大きいのに、
そこにさらにグレートってわざわざ付けてる訳ですから、
相当な大きさであろうということが、皆さん想像できるかと思います」
「ふんふん」
「大抵の攻めは、それこそ勃起したら天にも届くようなイチモツを持ってますよね?
そこで、じゃあそれをもっと効果的に使っていこうじゃないかという、
そういう考え方をする攻めが出てきたんですね」
「ほー」
「具体的には、先ほどの『執拗な言葉攻め』と『的確な前儀』で
受けのツン状態が解消されてきているところに、『グレートマグナム砲』で追い討ちをかける。
とろけるような快感で受けの頭の中を真っ白にさせてしまいましょう、という形なんです」
「あ〜〜〜〜〜なるほどー」
「一度そういう気持ち良さを知ってしまうと、身体がそれを求めてしまうでしょ?
だから次の時には、最初の『執拗な言葉攻め』の時点で受けがメロメロになってしまう。
この時点で、攻めが確実に主導権を握りましたよね?
もうその後は言葉だけでどんどん攻めることができちゃうんですから」
「おおおおー」
「でも、そのすごいグレートマグナム砲? ってそんな気持ちいいんですか?」
「いい質問ですねぇ」
「私達はついグレートだとかマグナムだとか、そういう大きさの方に注目しがちですが、
ところが実は『砲』、ここに一番大事な要素が含まれているんです」
「え? どういうこと?」
「グレートマグナムをただ挿れるだけじゃなくてね、動かし方ってあるでしょ?
速いとかゆっくりとか。どう挿れてどう動かすのか。そこが『砲』なんです。
グレートマグナムだけ持っててもダメで、それでどの部分をどう刺激していくか。
そういう繊細な感覚が要求される腰振り、つまり『砲』の部分が、
このタイプの攻めは非常に上手いんですね」
「そうなのか〜。知らなかった〜」
「それから挿入時にも気を使っていまして、ローション。これはまず大抵常備してますね。
または受けの方がですね、ローションの代わりになるぐらい、
ありえないくらい大量の白濁したものが出るキャラならば、そちらでも構わない。
まず手でやって、出させて、それを上手に使う」
「あ〜」
「つまり、受けが実は弱気だからというだけではなくて、
受けを言いなりにさせる攻めというのは、そういうことも考える前に自然に出来てしまう。
受けに対して隙が無いんです。
だから受けは、結果的にされるがままになってしまうというのもあるんですね」
── 次回、池○彰の学べる801は、
【そうだったのか!年下攻め】
立場的には下である筈の年下の男が、年上の男を屈服させてしまうのは何故なのか。
私達の生活に身近な801をどこよりもわかりやすく解説します!
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
>>279 GJ!!
これは笑える801ですねwハライテー
OJTワロタ
>>279 あの優しい口調で脳内再生したら異様な説得力がw
次回も期待してる!
>>279 素直に納得してる生徒に萌えたよw
次回も期待してます先生!
質問者は劇団ぼっちですなwww
今後テレビ見る度に思い出してしまうじゃないか
どうしてくれるwwwwwwww
腹筋返せ!w
ついでに「'`ィ (゚д゚)/」の可愛さに萌えたw
>>279 ちょwwwこれはwww
しっかり脳内再生されたw
もうテレビで見かけるたびに笑っちゃうよ先生〜
T/N/P所長といい逝け紙先生といい、物腰柔らかで我が道を行くオジサマ達が可愛くて禿げるw
ありがとうございましたGJ!
ドラマ刑事犬のシゲ×コマ。
×だけどエロなしです
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
被疑者は未だ所在が掴めず、関係人の元にも現れる気配を見せない。
捜査は長引いていた。
ソファで仮眠を取ったせいか、ひどく身体が重い。
ジャケットはおろか、身につけたベストもワイシャツも皺だらけだ。
せめてもと緩めていたネクタイを締めてみるが、それすらも皺が寄っているのを見て
シゲ村はため息をついた。
所轄の捜査員とI3係の面々はそれぞれ外に出向いており、警部は報告のため本庁へ。
人気のない早朝の本部はひどく静かだった。眠気覚ましに濃い目のコーヒーを飲みたかったが、
サーバー等と気の利いたものは見当たらず、シゲ村は大きく伸びをすると
地下の売店に足を向けた。
「コマ」
自販機の横にベンチが置かれた一角に見慣れた同僚の姿があった。
「よーお、いい格好じゃねえか色男」
「お前こそ人のことが言えたナリか」
うるせー、と軽く脛を蹴り上げられる。
実際、軽口を叩くコマツ原の顔にも疲労が色濃い。
飄々としているようで随分と無茶をするこの同僚は相変わらず
新人たちを差し置いて走り回っているのだろう。
シゲ村は苦笑しながら自販機のボタンを押し、ベンチに座り込んだコマツ原にコーヒーを放った。
「今は誰が張り込んでる?」
「ヤナとデーク。ワン小とキリには他を当たらせてる」
「動きは?」
「目ぼしい動きがあったらとっくに報告してるっつーの」
缶で暖を取りながら電子煙草を取り出し銜える彼の横に座る。
焦りはないがシゲ村は捜査が長引くのをひどく嫌っていた。
本部で指揮を執り続けていると、暗い感情が身体の深くで澱のようにたまっていく。
捜査方針は間違っていないか?判断に誤りはないか?
慎重に、慎重に、自分自身に問いかける。
今回正しかったとしても。次に間違わない補償なんてどこにもない。
ひとつ間違えば人の一生を狂わせることだってある仕事だ。
「なあ、コマ」
「あ?」
「俺たちは正しいと思うか?」
世界は加害者と被害者で溢れている。
けれど、その境界線はひどく危ういのではないか。
自分達の匙加減ひとつで両者をくるりと反転することもできる。
俺たちは、正しいのか―――?
「…だっ?!」
突然後頭部をはたかれ、前につんのめった。
落しかけた缶を慌てて拾い振り向くと、呆れ顔のコマツ原が現場離れて狭い部屋に
引き篭ってっからろくでもねーこと考え出すんだよ、たまには昔みたいに足動かせ!足!
などとぶつぶつ言いながら右手をひらひらとさせている。
「おい、シゲ」
「考えんのは調べつくしてからだ、バカヤロー」
「…ああ、そうだ。そうだったな」
シゲ村の眼に光が戻る。
そうだな。今、俺達がすべきことをやるだけだ。
んじゃ俺は戻るぞ、と立ち上がりかけたコマツ原を強引に引き寄せ、肩に顔を埋める。
スンと嗅げばコーヒーと僅かなニコチンの香り、肌の暖かい匂いが鼻腔をくすぐった。
いつもは蹴りのひとつも入るところだが大人しくされるがままのコマツ原がぎこちなく背に
手を回してくるのに自然と笑みが漏れる。珍しく弱音を吐いたシゲ村への不器用な気遣いか。
根はひどく優しい男なのだ。
――そんなだから、お前は俺につけこまれるんだよ。
「ワン小か、お前は」
「ヤニの匂いがするぞ。また禁煙失敗しただろ、コマ」
軽口で返すと足を踏まれ、引き剥がされた。
電子煙草を銜えなおしたコマツ原がニヤリと笑う。
――バーカ、
「正義の匂いがすんだろ?」
END
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
3話辺りの二人のつもりですが、事件はてきとーです。
シゲさんが中二病でホントすみません。
>>293 萌えたよーGJ!
二人の雰囲気がいいね!良い萌をありがとう
>>293 見事にSSしてるGJ!
余韻があってイイヨ!大人の色気も!
ありがとう、次も正座してお待ちしてます!
>>293 GJ!!
デカイ図体して自分より小柄な主人に甘えるとかホント大型犬そのものだよツゲw
てかコマさん、正義の匂いも素敵だけど
それ以上にフェロモン出しまくりで困ります!(ワンコ)
某若手アスリートのなおと×ひろと
100%妄想のフィクションです。
途中で視点が変わります。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「う、うあああぁ」
甲高い悲鳴が狭い部屋に響く。
何人もの男に押さえつけられて、無体なことをされているひろと。
そして、それを目の当たりにしながら何もできない僕。
「痛い痛い痛いっ!いやだあああぁ」
まだ幼さが残る彼の顔が苦痛に歪み、大粒の涙が零れ落ちる。
すぐにでも助けたい。代われるものなら僕が代わってやる。
そんな思いも虚しく、僕が縛り付けられているベッドはびくともしない。
「こいつすっげぇ!マジアタリだわ」
「ほんならはよ変わらんかい。独り占めすんなや」
「まあまあ……夜は長いんだから、ゆっくり遊ぼうって」
卑しい笑い声と肉感的な音と彼の呻き。
僕の存在を無視したヤツらが、遠慮なくひろとを苛む。
時折救いを求めるような視線がぶつかるが、すぐに絶望の表情になる。
その表情が僕を苛み、噛みしめた唇から鉄の味が広がる。
「も…やめて……ください…」
その言葉が終わるが早いか、押さえつけていたひとりが思い切り彼の頬を叩いた。
爪が引っかかったのか、一筋の赤い線が走る。
「何言うてんの。おもろいのはこれからやのに」
「ひ…ぃっ」
彼がまた甲高い悲鳴を上げる。
狂ったように頭や手足を動かして抵抗しようとしている彼を見て、僕の方がどうにかなってしまいそうだ。
「それにしても俺らって残酷だよなー」
「何言ってんの?後輩手込めにすんのは伝統だろ?」
「けどわざわざギャラリーの前でやるんは意外に燃えるわ」
チラチラと僕の方にも卑しい視線が飛んでくる。
何か言い返したいのに、全力疾走した後のように喉がひゅうひゅうと鳴るばかり。
「ひ、ぎゃあぁあぁあぁ」
一際大きなビブラートのかかった悲鳴。
耳を塞いで目を瞑れたら
どんなにいいか。
ヤツらはそれすら許してくれない。
ぐちゃぐちゃになっていく彼の体を更にいたぶり、僕にその光景を見せつけては下卑た笑い声をあげていた。
300 :
3:2011/02/12(土) 01:57:18 ID:v5nBerZEO
「ひろとぉぉぉぉぉ!」
「……と、なおと」
隣でうなされていたなおとが、僕の名前を叫んで目を覚ました。
額には汗が噴き出し、前髪が張り付いている。
「大丈夫?また怖い夢?」
「ひろとぉ…」
目に涙を浮かべ、縋るように抱きついてきた。
幼い子供を宥めるように、背中を優しく撫でさすると、ほどなくしてまた安らかな寝息が聞こえてきた。
「なおと…」
彼が見たであろう夢は、大体想像がついた。
僕らがまだ見習いだった頃の『事件』
僕がボロボロになっていく様子の一部始終を見せつけられたなおとは、精神的な成長が止まってしまった。
日常生活に問題はないものの、この仕事をしていくには致命的なことだ。
「大丈夫だよ…僕がいるから…」
301 :
4:2011/02/12(土) 01:59:09 ID:v5nBerZEO
あの時は本当に絶望的な気持ちでいっぱいだった。
ずっと憧れていた仕事すら諦めようと思った。
マンガとかなら、多分、なおとの立場にいる方が僕の立場にいる方を励ましてメデタシなんだろうけど、僕らの場合はまさに真逆。
皮肉なことに、僕はそれなりの成績を上げさせてもらっている。
反対に、あれほど期待されていたなおとは、どんどん成績を落としていった。
「……なおとは、なおとのままでいいんだよ」
耳に届いたのか、ちょっと顔をしかめて腕に力を入れてきた。
ぴったりとくっついた薄い胸から鼓動が伝わってくる。
僕もなおとも、いつどうなるか分からない。
でも、傍にいる限りは彼を見守っていたい。
僕の分まであの『事件』のトラウマを負ってしまった彼を。
「今度は、いい夢が見られるといいな」
しわが寄ったままの眉間を軽くつつき、僕もまた眠りについた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
彼のブログは小学生レベルだと酷評されているけど、たまにどえらいネタを投下してくれるから困るw
今回はわざわざプライズを穫ってきてくれた彼との話だけど、焼肉王子とのネタもそのうち書きたい。
闇金ウシジマくんで樺谷×社長。某姐さんからアイデアを拝借いたしました。エロありです。バレンタインデーのお話です。カウカウ・ファイナンスの休日は土日で、
今年の15日は火曜日ですが、話の都合上日曜日と言う事にしてあります。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「そういえば、知ってる?バレンタイン・デーに女性から男性にチョコレートを贈るのは日本独自の風習で、欧米では男女どちらからでも構わないから、自分の大切な
人に花やお菓子を贈るんだって。それに、近頃女の子の間では、同性のお友達同士でチョコレートを贈り合う習慣も出来たんだよねー」
「あっそ、その話まだ続くのか?」
樺谷は新宿西口方面にあるホテル、パークハイアット東京の41階のバーで丑嶋と並んで飲んでいた。嫌身に見えるほどのにこやかな笑顔が、つれない丑嶋の返事に少
し曇った。
しかし、つれないのはいつものこと、と気を取り直し、長めの髪を仰々しくかきあげ、整った顔だからこそ発揮できる気だるさと色気を孕んだ視線を丑嶋に向ける。
「・・・つまり、欧米の慣習や同性同士で贈り合ってもおかしくないということは、男が親しくしてる男に贈るのもそこまで変な事じゃなくてだね・・・」
髪をかき上げる手は額の前で止め、言葉も途中で止める。首は前に少し傾ける感じ。お洒落な間接照明しかない薄暗い店内なので、手の影で顔が見えにくいだろう。だ
が、それも全て計算の内だ。只でさえ薄暗い店内の中で、より濃い闇によって肝心の顔が隠れてこそ、淫靡さが増すのだ。
「おい樺谷、つまりって割には要点得ねェな。何が言いてェんだ」
照れて顔を反らす、などの可愛げなど微塵もない丑嶋は格好をつけた樺谷を正面から見据えた。
「つまり・・・、うん、取り敢えず・・・」
あそこまで言えば、絶対丑嶋だって樺谷の言いたいことは察している筈だ。否、察せれない筈がない。普段の樺谷ならば丑嶋相手でも全く物おじせずに言えるのだが、
さすがにこれ以上言ったら惨めになる。
樺谷は傾けていた首を力なく戻すと、カウンターの中にいるバーテンダーに向かって手を上げた。
「あれをお願いします」
「かしこまりました」
バーテンダーは店の戸棚からカクテルグラス一つ、スコッチ・ウイスキー、それに黒い瓶のリキュールなどを用意してきた。
数点の道具を揃え終わると、バーテンダーは手早く一杯のカクテルを作りあげていく。スコッチ・ウィスキー5に対して黒いリキュールを5。それを混ぜた物に上に生
クリームとミントの葉っぱを乗せる。
「どうぞ」
愛らしいカクテルが愛らしいという表現とは無縁の男、丑嶋の前に置かれた。
「俺からのバレンタインのプレゼント。気に行って貰えるといいな」
白い健康的な歯を見せ、樺谷が笑う。見てくれと頭だけはいい男なので、丑嶋の隣の席に座っている女性客が隣に彼氏らしき男がいるにも関わらず、まるで自分に頬笑
みをおくられたようにうっとりとした表情を見せた。
しかし、丑嶋は慣れているので死にかけた魚のような眼で樺谷を一瞥し、グラスを持ち上げた。
匂いは甘い。上に生クリームが乗っているのだから当然だが、何よりカクテル自身から香る甘いチョコレートの匂いが強烈だ。
味も匂いに違わずチョコレート味だ。だが、半分ほど入っているスコッチ・ウィスキーのおかげで大人の味覚にも耐えうる苦味がある。チョコレートの味自体も高級感
があり、丑嶋にも見覚えがあるリキュールのパッケージから言って、恐らく世界的に有名なチョコレート・メーカーの商品だろう。
それに、合わさっているスコッチ・ウィスキーのラベルも見覚えがある一級品だ。新宿のこのホテル自身の格から言って、そこらのバーで出す値段よりもかなり高額な
筈だ。大人の雰囲気の場所と、愛らしさと大人の品格を持つカクテル。それに何よりそれを御馳走してくれるのが色男だ。酒を飲める年齢になって間もないような若い娘
さんならば、キャーキャー言いそうだし、それなりに物事の判断のついた女性でも簡単に落ちてしまいそうだ。
けれど、受け取る相手は冷徹な丑嶋なので、有り難くカクテルは頂いても、樺谷のことは一切無視で飲み始めた。
酒は強いが甘い物も嫌いではないので、グイグイと飲む。飲みにくい筈の生クリームは緩い硬さだったらしく、呑み込んでいく段階で液体に融けて一体となり、喉をス
ルリと通って行った。
すぐにグラスを空にし、飲み終わった後に口を開けて歓喜の溜息をつくと、吐息は温かく、かなりアルコールの香りがする。甘くて飲みやすい子供向けのお菓子のよう
な味とは裏腹に、酒の弱い人ならば1杯で一気にご機嫌になってしまうであろうアルコール度数のようだ。
「・・・うまい」
「そう、良かった。じゃあ、もう一杯どう?」
唇を舐め舐め甘い余韻を楽しむ丑嶋を嬉しそうに見つめ、樺谷は同じ物を注文する。丑嶋はまたすぐグラスを空にしてしまう。
「ふぅ・・・」
2杯目を飲み終えてグラスを置くと、流石に口の中が甘ったるくて嫌になってくる。何杯でも飲めると言えば飲めるのだが、せっかく銘酒の集まるバーに来ているのだ
から、もっと色んな酒を楽しまなければ損ではないか。
「樺谷、お前何飲んでるんだ?」
「ん?」
丑嶋と違い、琥珀色の液体に氷を浮かべた物を飲んでいる樺谷を覗き込む。
「これはね、ブランデー。丑嶋くんも飲む?今日は俺がもつから、好きなだけ飲んだら?明日は休みだろ?」
「じゃあ・・・」
強請ったわけではない、勧められたのだから仕方がないとばかりに遠慮などせずに次々に頼んでいく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最初はスコッチ・ウィスキー。その後には特別に作ってもらったチョコレートのカクテル。その後にコニャック・ブランデー。その後には最初のウィスキーに戻ったが、
またスコッチ・ウィスキーでは能がないのでカナディアン、バーボン、テネシー、アイリッシュと原産地を変えて各種有名メーカーの物を1杯ずつロックで。その後はラ
ム酒だったが、サトウキビ原料のダーク・ラムは香りが豊潤で味も濃厚で美味しく、欲望のままに3杯飲む。
マラソンのように一時も休まずに飲んでいたのではない。勿論飲んでいる間にも色々と二人で話しをしていたし、適度にツマミのナッツやチーズも口にしていた。何よ
り、酒が強いので、簡単に酔う事はないだろうと分かっていた。だからこそ、丑嶋は自分の酒の強さを過信して、許容量を超える量を短時間で飲んでしまった。
それでも止まらず、丑嶋はメニューの中の豊富なウィスキーリストに眼を漂わせる。すると、先程飲んだものよりもかなりお高い物を見つけた。今度はこれにしよう、
と3杯目のラム酒を空けようとグラスをグッと傾ける。
ところが、3杯目のラムを半分まで飲んでいるうちに、急に眠気が襲ってきた。
時計を見てみると、すでに午前1時をまわっている。飲んでいるので車では帰れない。乗りはしないが、電車も今更動いていない。タクシーで帰るという手段もあるが、
眠気に任せ、このままベッドでぐっすり寝てしまいたい。
明日は仕事が休みな丑嶋としてはここが街中の店ではなく、宿泊施設のあるホテルのバーで本当に良かったと言える。部屋が開いているかどうかは不明だが、丑嶋の会
社の業績が昇り調子な時代なので、日本でも指折りのホテルの部屋が満室なのはありえないだろう。
丑嶋は3杯目のラムを飲みきると、樺谷の前に置かれたグラスを見た。飲み過ぎた酒のせいで途中から色んなものがぼんやりして覚えていないが、2杯目に頼んでいた
ブランデーからグラスを変えていないような気がしてならない。それさえも少し残っている。別にペースを合わせて飲まなければいけないのではないが、ペース差をまざ
まざ見せられた様で余計に酔いがまわってしまう気がした。
飲み終わったグラスを置き、心なしか重く硬くなったような肩を動かして解す。頭が揺れると、揺れに視線が遅れてぼやけていることに気がつく。やはり、飲み過ぎた
のだ。
「そろそろ帰るかな」
呟くと、隣の樺谷は僅かに残っていた酒を飲みきり、先に立ちあがった。
「そうだね。行こうか」
何故か樺谷は丑嶋の肩に手を掛け、立つように促す。そんなことされなくても、と丑嶋はそれとなく樺谷の手を払って立ち上がる。
立ち上がった樺谷に、まだちらほら残っている客の中の女性客の大半が注目している。
無理はない、と丑嶋とて思う。スラリとした体躯で、若いながらも余裕のある綺麗な顔の樺谷は、薄明かりの灯るバーカウンター、おまけに高層階の新宿の夜景をバッ
クにしているという抜群の雰囲気に無理なく溶け込んでいて、改めて見ても美しかった。
やはり、酔っているのだ、と丑嶋は感じた。酒とこの場の雰囲気に。
普段なら何かとスタイリッシュな樺谷のことなど大して気にしていないのだから。だが、たまにだったら酔わされるのも悪くない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
樺谷が会計を済ませている間、丑嶋はとっととバーから出て階下に向かうべくエレベーターのある方に歩いて行く。車は明後日にでも取りに来ればいい。まずはフロン
トに行って、宿泊手続きをしなければならない。
「ちょっと待って」
樺谷もすぐに追いつき、丑嶋に並んで歩く。
「どこ行くんだい?ちょっと酔ってるみたいだけど、そんなんで帰れるの?」
確かに、樺谷の言うとおり、上物の絨毯が床に敷かれているからというだけでなく、酔いのせいで妙に踏みしめる感触がフワフワしている。
「俺は今日はここに泊まる。じゃあ、お疲れ」
そう言うと、丑嶋は足取りを速めた。樺谷もそれに合わせて足取りを速めた。
「それならちょうどいいや。俺、もう部屋とってあるんだ。ツインだし、広いから二人で十分寝れるよ」
「あ?部屋、あるのかよ」
「うん、12階に。着いてきて」
ね、と笑顔を見せ、一歩大きく踏み出した樺谷は丑嶋を先導する。
丑嶋は舌うちし、面白くなさそ気に眉間に皺を寄せる。
何がちょうどいい、だ。最初からそのつもりだったのだ。一人で泊まるならシングルで良いではないか。ましてや、このまま部屋に行けるということは、ツインを一人
用でとっていたのではなく、宿泊手続きの時点で二人で泊まると予約して、料金も二人分支払済みだろう。
けれど、勧められたとはいえ、散々飲ませて貰って只で帰るのは丑嶋としても据わりが悪い。しかも、寝て起きるだけなのに一泊何万もする宿泊代を自分で払わなくて
も良いと言うのは魅力的だった。
どうせ泊まらねばならないのだ。それならば、樺谷の思惑に乗ってやり、等価交換となるので丑嶋の心も痛まない。元来等価交換など気にせずに、自分がより多くとる
ことしか考えていないが、相手は債務者ではなく仕事付き合いのある立場が同等の樺谷だし、借りを残すと面倒な相手だ。今夜で使わせた料金代りになるならば一晩好き
にさせるなんて安い物ではないだろうか。
エレベーターはすぐ12階に着き、樺谷がそれとなく丑嶋の肩に手をかけ、ペタリと触れ合うほど引き寄せて歩きはじめた。
丑嶋は、もし誰かに見られたら、大の男二人がくっ付いて歩くのはおかしいと思われるのではないかと嫌な気持ちになった。仮に目撃した人が樺谷が酔っている丑嶋を
支えながら部屋に向かっていると解釈したとしても、だらしない酔っ払いと思われるのが嫌だ。
「部屋は?何号室だ?」
やや乱暴に樺谷の手を払い、睨みつけてやる。だが、樺谷は懲りずに丑嶋の肩を抱き直し、頬笑みながら無言で歩く。
「おい、樺谷ぁ・・・」
「はい、ここ」
再びまわされた手を振りほどかれる間もなく、樺谷の足が1203号室の前で止まった。幸いにも誰かに目撃されることもなかったので、丑嶋の険しい顔も少し緩んだ。
「入ろうか」
スーツの胸ポケットからカードを出し、ロックを解除する。中は暗くて様子が分からないが、電気を付ける前に樺谷は丑嶋の背中を押して中に入った。
二人の後ろでドアの閉まった音がし、次の瞬間には室内の電気がついた。部屋それなりに広いようだ。
ベッドはツインだが、一つ一つは丑嶋が使っても余りある大きさなようなので、寝る分には左程不自由しなくて済みそうだ。
アルコールのせいで丑嶋の体は火照っている。少し大儀そうに、ベッドに腰かけると、軋む音も立てずに大きな体の体重を難なく受け止めてくれた。耐久力もある。こ
の丈夫さと広さならば、上で男二人が善からぬ事をしても壊れはしないだろう。
今更逃げる気もない丑嶋は、コートをハンガーにかけている樺谷を見上げる。
「風呂、入って来い。ヤルのはそれからだ」
「そうだね。じゃあ、入ってくるよ。もし何か飲みたい物とか食べたい物とかあったら、適当にルームサービスで頼んでいいから」
樺谷は「していいの?」などと野暮なことは今更言わず、自分のコートをかけ、ついでに丑嶋の分もかけ、風呂場に向かって行く。お互い大人だから、これ以上何を言っ
ても行きつく先は一緒と分かっているのだ。
風呂場のドアが閉まると、丑嶋は手持無沙汰になり、ルームサービスのメニュー表を見てみた。バーで酒と軽いツマミはとったが、夕飯をしっかりとるより酒を飲む事
に時間を費やしてしまったので、小腹が空いていた。
しかし、時間も遅く、今の時間に注文できるのはサンドイッチなどの軽食しかないようだ。一応ピザなどの腹に溜まりそうな物もあるが、後は風呂に入り、セックスを
し、寝るだけだし、何より今の気分に適していない。
気分が乗らないままページをめくっていくと、最後のページには酒類のリストがあった。どんな物があるのか、と一応眼を通してみると、そのリストの一つに先程バー
で気持ちをそそられたウィスキーがあるのを見つけた。
もう酔いは回り始めているが、まだ十分飲める。何より、こういう機会が無ければ中々飲む機会もない酒だ。樺谷だって頼みたい物があれば注文しろと言っていたのだ。
何も躊躇する事はない、と丑嶋は机の上に置いてある電話の受話器をとった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
丑嶋がルームサービスに電話し、注文したものがすぐに運ばれてきてから20分後、やっと樺谷が風呂からあがってきた。
「・・・・・・ええと、また飲んだの?」
「ああ、出たか。じゃあ、俺も風呂入ってくる」
丑嶋は、少し困ったような表情で立っている樺谷をチラリと見上げ、氷とウィスキーが僅かに残ったグラスを揺らした。
「ところで、何を飲んでるの?」
樺谷は相変わらず困ったような表情のままベッドサイドテーブルに置かれた瓶を見た。
「ううーん、これはまた・・・、すごいのだねぇ」
瓶を見た樺谷の表情がますます困ったような表情に変化していく。
無理もない。残すところあと僅かの中身の瓶にはマッカラン ファイン&レア1976と書いてある。今日の会計全てをもつと言ったものの、この酒、酒屋での販売価
格は平均で15万円程。ホテルのルームサービスとなれば、色んなものが加算されて恐らく20万程になるだろう。しかも、中身はほとんど空ときているので、樺谷が飲
んで楽しむことも出来ない。
瓶を眺めている樺谷を尻目にし、丑嶋はベッドサイドに置いてあった小さなキャンディ包みの物を手に取った。
「樺谷、口開けろ」
「え?」
「開けろ」
「あー・・・」
丑嶋は、素直に口を開けた樺谷の前で小さな包み紙を取り、小さな茶色の物を口に放り込んでやった。
「ん、甘い」
舌の上で小さな物を転がすと、甘さがまず広がった。続いて苦味が来て、それが合わさって美味な香りも漂う。
「これ、チョコレート?」
「それ以外に何かあるのかよ?」
表情は冷たいが、ウィスキー一本を一人で飲みきったおかげか丑嶋の口調は少し舌っ足らずで、頬の赤みも樺谷が風呂に入る前よりも増している。漂うウィスキーの豊
潤な香りも相まって、樺谷は少しクラッときてしまった。
「ありがとう」
樺谷がお礼を言うと、丑嶋は首を傾げた。何の事だ、と言いたげな表情だが、皆まで言わせてしまえばそれこそ野暮になる。
「このまま、しよう」
樺谷は丑嶋の腰に両腕を回し、体重をかけてベッドの上に押し倒した。丑嶋の予想通りベッドは丈夫で、二人で倒れ掛っても僅かに内部のスプリングがギシギシいった
だけだった。
押し倒された丑嶋は樺谷の胸を押そうとしたが、その前に樺谷が服の中に手を入れてきた。
「おいおい、焦るなよ。お前らしくもねェな。まずは風呂に入らせろよ」
「このままで良いよ。それより、良い声聞かせて」
「・・・分かった」
自分だけ風呂に入ってないのに、と不満を言おうとも思うが、今の酔っ払っている状態で風呂に入るのは危険だ、とも冷静に思う。理性と性欲、そして何より酔ってい
る故の体の億劫さがあり、丑嶋は樺谷の胸に押し当てていた手の力を抜き、ベッドの上にダラリとさせた。
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
社長はきっとこれ位飲まなきゃ酔わないと思うの。続きは後日。スペースお借りしました。
>>311 樺×丑キター(゚∀゚*)ー!
大人な雰囲気の2人がカコイイ!
続きをwktkで待っております!
>>226 久しぶりにのぞいたもんだから亀レス失礼
自分も同じ人物が浮かんで萌えた
>>208 じんわりくる素敵な話、ありがとう!
殺し屋のお話、和流津で伊和西×瀬巳です。
3巻までしか読んでないので、その辺りで捏造してます。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「伊和西あんた、瀬巳とやったでしょ」
<モモ>というポルノ雑誌店と同じ呼び名の女店主は、俺の顔を見るなりそう言った。
店で扱う雑誌から抜け出したような刺激的な衣装を纏っているにもかかわらず、卑猥さより迫力が勝っているのは体の造形があまりにも非現実的だからか。
「なんだよ、あいつなんか言ったのか」
モモはケータリングのパフェを食べる手をとめ、指についたチョコレートを舐めた。
「わたしは殺し屋として紹介したつもりなんだけどねえ。あんたにそっちの趣味があるとは思わなかったよ」
俺は肩を竦めて見せる。まさかそんな事を言う為に呼びつけたわけではないだろう。
「あの子、うちによく来る割にここにあるものはなーんにも興味ないわけ。うろうろして帰るだけなのね。それが昨日はいきなりセックスのマニュアル本見せろだもの、驚きよ」
「色気づいたな」
「ものすごく真剣に読んでたと思ったら、<マンネリを打破するには>のページ辺りで『伊和西、ぶっ殺す』とか何とか言って飛び出して行ってそれっきり」
「まあ教育の一環でだな」
「あんたの性癖はべつにどうでもいいんだけど、殺されてないって事はあの後会ってないんだね」
「……」
確かに瀬巳は昨日戻らなかった。与えた携帯のGPSで繁華街の満喫にいるのが確認できたので放っておいた。
「それならあの子、今やばいかもねえ」
「あ?」
「変なパーカー着た目つきの悪い茶髪の男の子がさ、絡まれてるのを見たやつがいるんだ。これ瀬巳だよね」
「誰に絡まれてたって?」
「相当面倒なやつらだよ」
手を出しても出されても、と朗らかな声音で付け足してモモは生クリームの塊を口に運んだ。
「いつの話だ」
「今朝の話」
時計を見て舌打ちする。もう昼になるじゃねえか。
「モモ、そういう話は先にするもんじゃねえのかよ」
「連絡入れてから現れるまで一時間以上無駄にしたのは伊和西、あんたじゃないか。ところであのパーカー、あんたの趣味なわけ?」
情報の価値はタイミングが全てだ。その事を一番知り尽くしているモモが勿体付けるのにはおそらく裏がある。
「…一体何を企んでる」
モモはクリームがついた唇をにやりと吊り上げた。
「まあ最後まで聞きなって、これからが本題なんだからさ。きっとあんたはわたしに感謝するよ」
★
GPSで辿り着いた路地の奥から、しつけえな!と聞き覚えのあるイラついた声が聞こえてきた。
あの子はそう簡単に死なないさ、と言うモモの声が蘇る。まあ俺もそう思っていたけどな。
「手こずってんなァ、瀬巳」
いかにもと言った風貌の男達に囲まれた瀬巳は、肩で息をしながら険しい眼差しでこちらを睨んできた。
「おまえがヤルなっつーから我慢してたんだろ!」
「そうか、偉いじゃねえか」
どうやらずっと逃げていたらしい、言葉よりもナイフが先に出るあの瀬巳が。連絡をしてこない点についてはマイナスだが、着実に手懐けられている実感に充実感を覚える。
「にやついてんじゃねえよ!クソ伊和西が!」
瀬巳を取り囲む男と、胸ポケットから取り出した写真を見比べる。
「いいぜ、瀬巳。そいつら殺しても」
「はァ?」
「ちょうど依頼が入ったからな」
――面倒ごとが片付く上に仕事になるなんて、こんないいことないでしょ。艶然と微笑んだモモは抜かりなく報酬を値切ってきた。
あんたのために大急ぎでフィックスしてあげたんだから当たり前だよね、と。食えない女だ、本当に。
「そういうことは早く言えっつうの」
低い姿勢から瀬巳の体が一気に跳ね上がる。
ナイフの切っ先が鮮やかに閃いて、次々に男達の首や腹に吸い込まれていく。
4人全員が地面に沈むまで1分も掛からなかった。
ああ本当にいい腕だと惚れ惚れする。ウサギの耳がデザインされたパーカーがまた、馬鹿馬鹿しくて最高だ。
★
今回の報酬を数えていたところに風呂上りの瀬巳がやってきた。
「手錠は作法だとかなんだとか、適当なこと言いやがったな。あれやっぱりSMじゃねえか」
部屋に入るなり、喚き出した瀬巳に閉口する。ああ面倒くせえ。
「おまえは変態だろ。おい何とか言えよ」
「あのなあ、セックスってのは100人いれば100通りの方法があるもんなんだよ。変態なんて野暮な言葉は使うな。気持ちよかっただろ?」
「……」
その名の通りみんみんと煩く反論してくるかと思ったら急に押し黙った。
「どうした」
「キ、キスって普通はするだろ。セックスの前とか、後とか最中とか」
「は?」
「…もういい」
追い詰められれば女の耳だって食いちぎる凶暴な人間とキスしようと思うほど酔狂ではない。当然の如く前回は回避している。
「キスしたいのか」
「したくねえよ!」
「素直じゃねえなあ。マニュアル本に何が載ってたんだ?ん?」
「うっせえ!にやにやすんな!」
それでも随分言う事をきくようにはなったと思う。大体赤い顔して横向くなんて可愛いじゃないか。
外した眼鏡をデスクに置いて立ち上がる。近づく俺を警戒して瀬巳は後ずさった。
ナイフを隠し持っていないことをさりげなく確認してから瀬巳の頬を引き寄せる。
「何しやがる…!」
「絶対噛むなよ」
瀬巳は一瞬目を見開いた後、取り繕うように不機嫌な表情を見せた。
「…噛まねえし」
ぱかっと口を開く様子に餌付けされる雛を連想して思わず笑った。
「開き過ぎだバカ、何食う気だよ。目は閉じろ」
何かを言いかけた唇を塞ぎ、隙間を舌でなぞるとびくっと肩が揺れた。
腰に回した手で離れようとする体を引き戻し、たっぷりと時間をかけて唇を吸い尽くす。唇に残る傷跡は少しだけ血の味がする。
口内に舌を潜り込ませる瞬間脳裏に噛み付かれるイメージが過ぎったが、今の瀬巳なら大丈夫だろうと考え直した。
両腕ともだらんとしてるしな。
口の中のあらゆる場所を刺激してやると、縮こまっていた舌がぎこちなく絡み付いてきた。
「ん、う…」
舌を貪られるままの瀬巳の鼻から息が漏れる。
どんな顔をしているのか見たくなって口を離すと、瀬巳は潤んで赤くなった目を重そうに開いた。
すぐに俯いて濡れた唇を手の甲で荒っぽく拭う。
「どうだ?」
「……」
随分大人しくなったと思えば既にデニムの前がきつそうになっている。
若いねえ。
「するか?セックス」
俺の問いには応えずに、なぜか両手を差し出してきた。
散歩に行く犬が繋がれるのを待つみたいに、手錠を掛けられるのを待っているのだと気付く。
手首の赤黒い擦過痕を指で撫でながら、顔を覗き込む。
「暴れないなら今日は手錠はしなくてもいい。どうする?守れるか?」
瀬巳は目をそらしたまま仏頂面で頷いた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
いろいろ夢見ました。
>>311 某スレでネタ落とした張本人です。ありがとうございます…!
神の小説待ってました!ちょ、鼻血が止まりませんがどうしてくれるんですかw
続きは正座をして待たせてもらいますね!
____________
| __________ |
| | | |
| | |> PLAY. | |
| | | | ∧_∧ 退カヌ媚ビヌ省ミヌ
| | | | ピッ (*´ω`*)
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
せっかくのバレンタインなので投下。しかしバレンタインとは全く無関係な話です。
青空のこぶしの劉家拳伝承者×北斗神拳伝承者
例によって特殊嗜好で申し訳ない。大変申し訳ない。
爆乳って巨乳のもっと大きいやつです。
爆根って巨根のもっと大きいやつです。
主にふたなりについている事が多い属性です。
でもこの話の中では一応拳志郎はふたなりでは無いと思います。
そしてエロはほとんどありません。
宗武が街を歩いていると、「よう」と声を掛けられた。
拳志郎だった。
「ちょっと話があるんだが」
「…」
「おい、無視すんなよ」
拳志郎と宗武とは、同じ北斗の拳の使い手ではあるが、特に仲がいいという訳ではない。
いや、むしろ戦争に対する考え方の違いなどで、仲は悪い方だと言っていいだろう。
「別にお前と話す理由が無い。今ここで、死合うなら別だが?」
「相変わらずだねえ…まあ立ち話もなんだから、お前の家で話しようぜ」
「なぜ俺の家なんだ」
「どうせお前もう今日は家に帰るんだろ?」
「その辺の喫茶店でもいいだろうが」
「嫌だぜ、お前が何か壊して弁償させられるのは」
「誰が壊すか!第一、修理費ぐらい自分で払う!」
「それとも、人に見せられない位見っとも無い家だとか?」
「…そんな訳、あるか!」
結局家に連れてくる破目になった。
宗武の家というのは郊外にあって家も大きいが敷地も広い。
あまり気は進まなかったが、宗武は拳志郎を家に上げた。
「へえー結構広いねえ。もっと狭いかと思ってた。しかし殺風景だねえ。なんかお茶菓子でも無いの」
「ねえ。用が終わったらとっとと帰れ」
「ったく、相変わらず素っ気ないねえ」
「…で、何の用だ」
拳志郎と宗武とは、同じ北斗の拳の使い手ではあるが、特に仲がいいという訳ではない。
いや、むしろ戦争に対する考え方の違いなどで、仲は悪い方だと言っていいだろう。
「いやさ、この前、俺の胸がさ…あっただろ」
「ああ」
この前の事というのは、拳志郎がヤサカに変な秘孔を突かれた後、胸が段々成長していって、
このままでは見事な乳房ができてしまうのではないか、という事になって、
「ヤサカを見つけないと…宗武、お前も協力しろ」
宗武はせせら笑った。
「なんで俺が」
「俺に見事なおっぱいができて、それでお前、俺とまともな死合ができるのか?戦いの最中に絶対上半身の服は破けるだろ」
それでなんとかヤサカを見つけて元に戻す秘孔を突かせて、
発達中だった拳志郎の胸は元に戻って、それで一件落着だった筈である。
「それがどうした」
今の拳志郎の胸は発達してなどいない、見慣れた只の筋肉の塊で何の変哲も無いように思われた。
「いや…」
拳志郎は逡巡していたようだが、意を決したように言った。
「更に悪化した」
「何が」
「話の流れでわかるだろ、胸だ胸」
「どこが」
「…大きく、なるんだよ」
「ああ?」
「触ると…大きくなる」
何を言ってるんだ、コイツは。
「はあ?」
そんな宗武の態度はある程度予想できていたとはいえ、話を進めづらい。
「しかも、胸だけじゃねえし…陽物も随分大きくなる」
「それは普通だろうが」
「いや、普通じゃねえんだよ。自分で言うのもなんだが、とにかく凄い。
ヤサカを捕まえて自白させてみたんだけど、これを直す秘孔は無いみたいで」
「お前の話には信憑性がねえ」
「いいだろ、証拠見せてやる」
そう言うと拳志郎は服を脱ぎだした。
「おい…」
宗武は止めようとした。男の裸など見たって、何も楽しくない。しかし、
「うるせーな、証拠見ねえとお前納得しないんだろ」
それで拳志郎は全部脱いだ。至って普通の男の体であると宗武には感じられた。
常人からみればこの立派な筋肉の付き様は今一「普通」とは言えないのだが、宗武は常人では無いので、自分の基準から見て拳志郎を普通と断じた。
「まあそれで、見てろよ…」
拳志郎は安楽椅子に座って、自慰を始めた。
男の自慰など見ても全く嬉しくないが、見ろと言われたので、見ていたが、
「あんまりジロジロ見るんじゃねえよ、変態」
「てめえが見ろと言ったんだろうが」
とは言っても拳志郎もやはり少し恥ずかしいようで宗武の方を見ないようにして扱いたり胸を弄ったりしていた。
普通だったらこの位扱いていれば疾うに変化しているだろうに、やはり人前であるせいなのか、なかなか変化し始めない。
ようやく拳志郎の陽物が変化し始めた、が…。
「…」
確かに、胸が大きくなっていっている気がする。いや、気がするじゃない、本当にそうだ。
ゆっくり思春期の女の胸が成長していく過程を早回しで見せられている気がする。気持ちが悪い。
「…これで五分立ちぐらいかな」
五分立ち…という割には陽物は長さだけならその件に関しては確かな自信を持っている宗武より長くなってたし。
流石に太さは劣るが。胸も、元々の胸筋で嵩上げされているのもあるだろうが、
その辺の女が太刀打ちできないほど大きい。
「…全部立ちだとどうなるんだ」
「んー陽物はこれぐらい」
拳志郎は顎の辺りを手で示した。
「胸は…このぐらいになるかなー」
「…で、俺にそれを言ってどうしたいんだ」
「…いやさ、これだけ大きくなると、全部入らないじゃん」
「その位我慢したらどうだ」
「…いや、なんだか性欲も凄く増して、入れるんだったら全部入れたいっていうかさ、
やっぱり、愛してる相手とは深く結ばれたいだろ?」
「…で?」
「お前、絶対精力すごいだろ?絶倫だろ?」
「ああん?」
「こんなに陽物が大きいと入れるのは無理だろ?だから入れられる側に転向しようかと思って」
「なんで俺なんだ?」
「いや、お前やっぱり精力凄そうだしな」
「それだけか?」
「?それ以外に何があるんだ?」
「………女房は知ってるのか?」
それを聞くと途端に拳志郎の歯切れが悪くなった。
「…ああ…まあ…一応…」
「止めとけ、お前みたいな性格の奴に浮気は無理だ」
「浮気じゃねーよ!愛してない相手とだったら、浮気じゃねえ!」
「ッ…いい加減にしろ!!てめえは人を性欲処理の道具としてしか見てねえのか!
大体てめえみたいな変態に誰が勃つか!」
言った直後に「変態」は拙かったと後悔した。
何故なら、その瞬間、拳志郎が酷く傷ついた顔をしたからだった。
それは本当に一瞬の事で、少し目を伏せた後、目を上げるとまた何時もみたいに笑っていた。
「…まあ、そうだよな、俺が…悪かった」
初めて聞いた拳志郎の謝罪の言葉に、宗武は本当に拙い事を言ったと思った。
「拳志郎…」
「うん…いきなり押し掛けていきなり変な事して…悪かった。ほか、当たるわ」
え。
「ほか?」
「お前がやらせてくれないんだったらほかの奴の所行くしかねえだろ」
他の奴…男?やる?寝る?他の男と?寝る?抱かれる?拳志郎が?
いつの間にか身形を整えていた拳志郎は「じゃ」と言って帰ろうとした。
「…待て」
「あ?」
何を言えばいいのか。
「晩飯でもどうだ」
「要らねえ」
「酒もつけてやる」
「いいって」
「奢りだ」
「いいって…変に気を使うなよ、お前らしくねえ。別にお前の言った事はまあ、事実だから、気にしてねえよ」
そんな訳は無い…。宗武は思わず拳志郎の肩を掴もうとしたが、素気無く拒絶された。
「もうお前の家に来たりしないから安心しろよ」
「拳志…」
「じゃな」
宗武は拳志郎が玄関の扉を開けて出て行くのを茫然として見送った。
それから大分経って我に返った宗武は、「拳志郎!」と叫んで扉を開けた。
勢いが強すぎて扉の蝶番を破壊してしまったが、そんな事は大したことでは無かった。
やはり拳志郎は既にいなかった。
宗武は拳志郎が気に入らない。拳志郎はガキのくせに何時だって態度が大きいし、偉そうだし、適当に人の事を遇うし。
それに奴の使う北斗神拳が自分の北斗劉家拳より格が上とされているのも気に入らない。
しかし。いや、だからこそ。
そんな拳志郎に惚れているという自分の心の動きが認め難かった。
大体、相手が俺に惚れて俺が相手に惚れてないならともかく、自分が相手に惚れて、
相手は自分に惚れてないというのは理不尽で納得がいかないのだ。
だから凍冷ない態度も取ったし、拳志郎の発言に腹も立てた。
いっそさっき承諾してしまえば、とも思ったが、情の伴わない契りなど耐えがたい。
互いに情が無いのならそれでもいいのだろうが、自分が相手に熱心なのに、
相手は自分の下半身しか見ていないなど、屈辱的すぎる。
「宗武(の下半身)が好き」なんて嬉しくない嬉しくない絶対嬉しくない。
いや、こうやって自らの虚栄心が傷つかないよう後手に回っていたからいけなかったのかもしれない。
大体「何故俺なんだ」と聞いた時、あそこで拳志郎の色良い返事を期待するとか姑息な事をせずに、
自分から言えばよかったのではないか。いややはりそれはしないでよかった。
好く思っても無い相手にそういう事を言われても嬉しくないではないか。
いくら「愛してないが鏈りたい」と言われた事に憤ったとはいえ、「変態」は無かったのではないか、「変態」は。
確かに拳志郎の體を見て怯まなかったと言えば嘘だが、別に正直言って体の事など大した問題では無い。
確かに真っ当であるに越した事は無いが、宗武は拳志郎がどんな変態でも勃つし、イケると思う。
…拳志郎が自分の事を好く思っているならば。
拳志郎が行った所の予想は大体つくのだが、今更追ってどうなるというのだろう。
雨が降ってきた。
雨は瞬く間に本降りとなり、先程家の中で会話した際に僅かに宗武についた拳志郎の匂いも押し流した。
「…」
ああああ今タイトルミスってた事に気がついた!!
「拳志郎が爆乳爆根になる秘孔を突かれる・女絡み」
ですから!すいません!!
宗武は先程の拳志郎の傷ついた表情を思い出すと暗澹とした気分になり、
しばらく滂沱の中濡れるままにしていたが、いい加減家の中に入ろうかと踵を返した。
「よお」
玄関の脇でタバコを吸ってる拳志郎が居た。
「ッ…何やってんだてめえ!」
「タバコ吸ってんだよ」
この雨でタバコの火はとっくに消えている。
「とっとと帰れ」
「俺が帰ってなくて嬉しいくせに」
「…誰が!」
「…素直じゃないねえ」
拳志郎は少し笑って言った。
「お前を待ってた」
「何?」
「お前が俺に気付くの待ってた」
「…趣味が悪いぞ」
「いや、確かに気配は消してたけどこの至近距離でタバコ吸ってたのに
今まで気付かなかったのはちょっと油断し過ぎなんじゃないの。…いくら考え事してたからって。…で、何考えてたんだ」
「お前には関係ない」
雨が降っているのに、二人とも家に入ろうと言い出さない。
「ちょっとお前、こっち来いよ」
「断る」
「雨の音が邪魔で聞こえないから、こっち寄れって」
拳志郎も宗武も雨の音程度で会話が聞き取れなくなるような人間では無い。
しかし宗武は拳志郎の言うとおり傍に寄った。
「俺はさ、浮気なんかしたくないの」
宗武はさっきの拳志郎の発言を思い出して気分が悪くなった。
「ずっと女房一筋でいたいのよ」
「…」
「でもさあ、こういう体になってさあ、そういう事しても玉玲に痛い思いさせるだけなんだよね」
「…」
「だから我慢してたんだけどこの前、無理強いしちゃって、本当傷つけて嫌な男だよ」
「…」
「『外でしてもいいわよ』的な事を玉玲の口から言わせる破目になったし…」
「…」
「でもさ、他の奴と愛し合ったら浮気でしょ?それは玉玲に悪いって思う。ただでさえこんなに傷つけたのに。でも、好きでも無い奴に身を任せるのも俺の自尊心的に嫌なんだよね」
「…」
「だから、好きな奴と好きじゃない振りをして鏈ればいいかなって思ったわけよ」
「何?」
「お前耳悪いの?」
「そういう問題じゃねえ!」
今拳志郎の言った事が本当なら。
「あー、うん、回りくどい言い方してさっきは悪かった。お前がノってくるか分からなかったし、
断られるのも嫌だったからな」
拒絶されるのは嫌だったから。
「ふざけるな、俺が…」
「ふふっ…駄目だよな、俺。こんな事言うつもりなかったのにな」
ずっと言わないつもりだった。隠しておくつもりだったのに。
「玉玲の事を不幸にして…自分だけ幸せになんてな…」
一人で我慢すればいいのにそれもできない。一人では満たされない、誰かと深く繋がりたい、思う存分果てたい。
自分がこんなに弱い人間だとは思わなかった。
「…ヤサカのせいだろう」
お前のせいではない。
拳志郎は首を振る。
「いや…結局は欲望に負ける俺自身が悪い。そもそも、俺が未熟だったからあいつの秘孔を避けられなかった訳だし」
「…」
「お前にも、玉玲にも悪いって思うよ…」
拳志郎は俯いた。彼は泣いているのかもしれなかったが雨が激しいので見た目には分からなかった。
宗武は黙って顔を寄せた。
そのままキスしようと思ったが拳志郎に力づくで制止された。
「よせって…」
互いの物言いたげな視線がぶつかり、一瞬二人の間に沈黙が下りたが、
「あーそれより立ち話も何だから早く家に入れろよ。晩飯奢ってくれるんだろ」
「勝手に入ればいいだろうが」
扉は開きっぱなしなのであるから。
「いや、だってここ、お前の家だし」
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧
| | | | ピッ (*´ω`*)
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
本当は3Pとか4Pとか5Pとかのエロを書きたいがためにこの話を書き始めたのですが、
無理だった。
申し訳ない。
ついでにヤサカの扱い申し訳ない。
329 :
1/2:2011/02/15(火) 02:05:07 ID:bbV2NRQr0
生。小さいけど性能がいい消防車なバンドの太鼓×六絃風味。
バレンタインに勢いだけで書いてみた。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
夜中までかかった作業が終わった時には、既に日付が変わってしまっていた。
それぞれに帰宅準備をする中、わずかな時間二人きりになった時を狙って声をかける。
「あー、すいません、この後ちょっと家に寄らせてもらってもいいですか?」
時間が時間だけにダメもとだったのだが、意外な程簡単にいい返事が返ってきた。
少しほっとしながら残りの準備を終え、一緒に外に出た。
帰り道では特に変わった事はしなかった。いつもと同じように話をし、振舞っていた。
家に着き、上がって、勧められるままに椅子に座った。
何か飲み物でも、と準備をしている後ろ姿を見ながら、急に緊張が高まるのを感じる。
さっきまでいつも通りにしていられたのが不思議なくらいだった。
目は相手の背中に向けたまま横に置いた荷物の中に手を入れ、目的の物を探し出す。
そんな単純な動作もぎこちなく、うっかり音を立てて注意をひいてしまうのではないかとひやひやしていた。
いつもよりずっと浅めに座って、腰が浮きそうになるのをじっと堪える。相手がこちらへやってくるまでの時間が妙に長く感じた。
330 :
2/2:2011/02/15(火) 02:06:17 ID:bbV2NRQr0
二人分のカップがテーブルに置かれるのを待って立ち上がり、探り当てておいた箱を差し出した。
「あの…、こ、これ……」
緊張のあまりどもりながらではあったが、なんとか渡す事が出来た。
「ありがとう」
受け取りながら子供のような笑顔になる。
一歩前に出て全て腕の中に抱え込んだ。
突然の行動に、相手の身体が強張るのが分かった。どういう反応を返せば分からないといった感じのようだ。
自分より少し低い位置にある頬に唇で軽く触れる。
「……好きですっ」
更に驚いた様子で固まった耳元に小声で伝える。
ほんの数秒の空白があった。実際の時間より何倍も長く感じたが、体勢を変えないまま静止していた。
正直に言うと、自分もどうすればいいかわからなかったのだ。
不意に、身体に相手の腕が廻されるのを感じる。
「俺も」
自分が言ったよりも小さい声だったが、確かに伝わってきた。
その言葉を認識した時、嬉しくなって、腕の中の身体を更に強く抱きしめた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・;)イジョウ、ジサクジエンデシタ! 日付変わっちゃったけど気にしない。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )前回はお騒がせしました。すみませんでした。皆さんありがとうございました。
ならんで自分の面接を待っている水夫たちの視線が刺さっているのに、イアンは全く気づいていない。
ここの所妙な色気が出てきたらしい。それは、相談相手のフェルナンドに指摘されたので、なるべく目立った行動はしなかった。
今度は新しい水夫たちが何かやらかさなければいいが、と、思いながら一生懸命に腕を動かす。
(うー…眠い…えっと、あの水夫は合格…甲板に配置…ということはこの人は見張りかマストかな)
「イアン?ちょっと大丈夫?」
「…」
うつらうつらと、視界が真っ白になっている。
「イアン!」
「!あ、はい!すみません、それで、その人は水夫に決定ですね。提督、これで大体そろったと思われますが、念のためもう少し水夫を入れておきますか?」
マリアが、うーんと上を向いて考えた。他に水夫候補は山ほどいる。
旗艦の水夫は揃った。これ以上はいるところもない。
だが他の船がまだあいている。バルデスと本格的に戦うなら、もう少し必要か、と、イアンは考えた。
そうして、夕方まで水夫面接は続いた。
「え?また?」
イアンは、同室のフェルナンドから、また宿に来て欲しい、といわれた事を伝えられ、ふむ、とうなずいた。夜十時の事だった。
それまで、寝ていたので気づかなかったが、何回かフェルナンドたちがやってきていたらしい。
「うーん、うん、分かった。でもなんでフェルナンドが?あっ、仲いいからか」
「今度こそお前に本当に伝えたいものがあるんだと。お前らが何かしてるかそういうのは俺突っ込まないけど…ユキヒサの事本気なのか?」
そういわれて、顔が赤くなるのが分かった。
「…あれでも、優しいときは優しいんだ。…まあ、身体目当てなのは知ってるんだけど…」
相談相手に相応しい相手だから言える事。こんな事提督や他の人には言えない。
「そうか、本気かー。うー…ん。まあいいか、でもお前一人息子だろ。家の跡継がないのかよ」
「それは…継ぐかもしれない。だから、今のうちに…」
はかないほど美しかった。目を伏せて、長いまつげが、綺麗に見える。金の髪が、少し顔を覆った。
なるほどね。
ユキヒサたちがつい熱中するわけも、男には興味のないフェルナンドでも分かった気がした。
「風呂入ったら、行ってくる」
パタンと、扉がしまる。着替えを持って、イアンは風呂場へ目指した。
(あーもうありゃ重症だ)
絶対無理だ、跡を継いでユキヒサの事なんて忘れる事はできっこないくせに。
絶対だ。絶対無理だ。
たとえ身体だけの関係でもいいと思っているイアンが不憫で仕方ない。
けれど、と、昼間のユキヒサの行動を思い出す。
(アレ買ったって事は…、ユキヒサも本気って事か。後戻りできないぞ、ユキヒサ)
窓を見る。
欠けた月が、輝いていた。
「あん、あっ、そこ、ひ、も、もう、あー!!」
ぎし、ぎし、と、安い宿のベッドはなった。
棚には二つの箱がある。それについては全く触れず、いきなりイアンを抱いた。
けれど、今日はやけに優しい、とイアンはおもって少し不安になった。
身体は熱い。快楽がゾクゾクと背を駆け抜けていく。足を持ち上げるユキヒサの背にしがみついて、耳元で何度もつぶやいた。
「好き…好き…ああっ!!ユキヒサが私の事嫌いでも、もう構わない…」
「イアン…」
「んっ!」
突然ユキヒサがイアンの唇を奪う。深い口付け、その巧みな舌使いと、下半身の動きに、頭はもう痺れっぱなしだった。
口付けをしながら一度、達した。イアンはやっと離された時には、荒い息をついて、涙を浮かべていた。
「嫌い、何かあるか。嫌いだったら抱いていない。…最初はともかく、今は…決めた…」
何を。
イアンが頭の中で、その言葉を何度か繰り返し再生する。
ずるっと引き抜かれた。腹に、熱い飛沫が掛かった。
「…」
昨日の今日、寝不足、とついで、また抱いたものだから、イアンの身体は限界にきていた。
イアンが涙を浮かべたまま、気絶している。
その涙を指でぬぐう。
「イアン…起きろ…」
「…あ、気絶、してた…?」
棚の上に手を伸ばすユキヒサを、寝転がりながら見ている。
二つの箱を持ち出すと、イアンはそれに釘付けになった。それは西洋人であるイアンは、見た事のある箱だった。
「左手の…薬指だったか。左手を貸せ」
ぱか、と、その箱を開ける。中にはシルバーリングがあった。
銀は貴重だから、とても高かったが、それでもユキヒサは後悔していない。
そう、エンゲージリンクであり、ペアリングであり、イアンだけに愛をささげる誓いである。ユキヒサなりのけじめ。
サイズが合うか心配だったが、フェルナンドの目利きは見事なもので、サイズがぴったりとあった。
イアンの薬指に、月に照らされた銀の指輪がはめられた。
大きく見開かれたイアンの目には、それが何とも神秘的で、夢を見ているかのようにうつる。
そしてユキヒサも同じように、自分の薬指に対なる指輪をはめた。
「これ…」
「まあ、その。気になったから、街中で仲のいい男女や既婚者が見につけていたのを見てな。
どうやってお前に伝えようか、悩んでいた。そんな矢先にフェルナンドたちに聞いたら、愛し合う人間が身につけるものだと聞かされた。
日本にはそんな習慣がないから、ずっと知らなかった。これを、お前に贈って。それで、けじめをつけようかと思った。拙者、正直なところ、
こういう想いを伝える事が凄く下手らしいのでな。どうだ、イアン。これが拙者の気持ちだ」
ぽりぽりと頬をかきながら、それでも真剣に語った。
いつからか、イアンを失くしたくないと思った。
第二艦隊を率いる事を任命されたとき、護身刀を渡したのは、せめてものイアンへの想いであったが、イアンは気づかない様子だった。
だから、今度こそ、と、ペアリングを贈った。
「ユキヒサ…あ、有難う、すごく嬉しい。ユキヒサ…!」
がば、と起きて、イアンがユキヒサに抱きつく。涙がこぼれそうだ。
「ユキヒサが好きで、よかった」
「…イアン…、迷惑かけたな。お前はずっと孤独に感じていたろう」
それはあたっていた。ユキヒサの心が分からず、悩んでいた。
それはユキヒサにも伝わったが、どうやってフォローすればいいのかわからない。
けれど今なら、言える。ぎこちなく、笑うと、イアンは今まで見た事ないほどの綺麗な笑顔を浮かべた。
大丈夫、今が凄く幸せだ。…でも、本当に私でいいのか?」
困った顔になるイアンに、ユキヒサはイアンを抱き寄せた。軽く、口付けを一つ落とす。
そして目と目を合わせた。
「何を言っている。当たり前だ。拙者が今まで口付けした事のある人物は、お前しかいない。これからもだ」
不思議に自信を持っていえる。
ずっと目に光のさしていないイアンを見てきた。
今は輝いている。それのなんと美しい事。ペアリングの銀の色の何倍も、輝いていた。
無言でイアンが、赤くなりながら、強く抱きしめ返してきた。
ユキヒサはその体制のまま、押し倒す。けれど、もう一度交わるという意味ではなかった。
彼の頬に手を当てる。
「イアン…この船旅が終わったらどうするつもりだ?」
「…うーん…。実家に戻って…跡を…」
「一緒に暮らそう」
それはまるでプロポーズのような言葉だった。
ユキヒサは前から考えていた。
新大陸、アフリカ大陸、インド洋、東南アジア、アジアの制覇をしてきて、残るは地中海と北海。
リー家が覇者になるのは、時間の問題。リー家の目的は世界の覇者になること。七つの海の、征服者。
それが終われば、大体の仲間たちは、もう船旅を終えるだろう。
イアンだってやる事もあるはずだ。仲間がばらばらになるのは少し悲しいが、イアンとは離れたくない。
ならば、今から掻っ攫おう。
結婚は出来なくても、ユキヒサは三男であるし、家を継ぐ事はない。
イアンは、少し難しいかもしれない。それでも説得して、どこかの町で静かに暮らしたい。
「ユキヒサ…うん、父上と母上には、私が説得する…」
「リスボンでも、日本でも、何処でもいい。お前が暮らしたい場所で」
優しく、問いかける。イアンは、泣きそうな顔で、何度もうなずいた。
その日から変わった。
イアンは積極的にユキヒサの元をたずねるようになった。何もしないでただくっついているだけの事もある。
それだけでも幸せそうにしているイアンに、自然に笑みが漏れた。
ユキヒサも、表情がついてきた。
それは時々遊ぶ仲間たちが見て分かるほどのものだった。
あの指輪を貰った後、イアンは嬉しそうに宿へ帰った。宿まで送ってやった後、誰もいなかったので別れ際に口付けをした。
イアンのほうが身長が高いので、イアンが軽くかがむのが、ユキヒサにとっては少し気になる所だったが、気にしないことに決めた。
マリアや仲間たちが、指輪に気づいたとき、イアンはかつてないほど笑顔だった。
それは誰との?とマリアが聞くと、イアンは秘密です、と答えた。だが、ユキヒサも同じ指輪をしていたことから、すぐにばれたようだった。
すべてが上手くいって、二人とも本当に幸せだった。
そうして、船旅を終えれば、一緒に暮らす。
はずだった。
「バルデス…私の所に来たか。副官では相手が不服だろうが、全力で潰してやる。さあ、こい」
イアンは、甲板にいた。
わーわーと水夫たちが声を出して、大砲の音が鳴り響く。
バルデスのシェアは残り数なく、金もなくなっているのが、参謀のチェザーレの調べで分かった。
この分なら、今度こそ、勝てば。これでバルデスを倒せる。
金がない所を見ると、海賊になるのも難しい。
今が、まさにチャンスだった。
バルデスが乗り込んできて、イアンにレイピアを向けた。
一騎打ちの申し込みである。
イアンは漆黒のレイピアをバルデスに向ける。
甲板で皆が見守る中、静かにレイピアがぶつかる音が響いた。
その頃、ユキヒサの艦隊はすぐ隣にいた。
「…イアン!」
バルデスが戦っているのは、アルではない。
副官であるイアンだった。
いくら彼が腕が立つとはいっても、バルデスとの一騎打ちでは苦しいものがあった。
「っ、くっ、はっ!」
鋭い突きが繰り出され、イアンの服はところどころ破かれる。
そしてかすり傷を追う程度だが、かわすのが精一杯だった。
それにも負けずに、イアンも突きを繰り出す。しかし、すぐにかわされてしまった。
「どうした、ふっ、案外弱いんじゃないか?」
「くっ…!」
「そら!」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )ナンバリング間違えました、すみません。あと今気づいたんですが、トリップつけるの忘れていました。
>>48-53 ほんっとうに今更なんだけどめちゃめちゃ萌えた
懐かしくて泣きそうになった ありがとう
微妙にタイミング外してるけど5話の釣りネタに萌えたので。
刑事犬のシゲコマ前提ヤナのお話。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「もぉーーやっぱ晴れてるしいぃいいいーーーーーー」
空は快晴。気持ちの良い早朝だ。日が高くなるにつれて暖かくなりそうな、まさにお出かけ日和。
昨夜のN○Kの天気予報は春ちゃんと冬将軍が相撲を取って春ちゃんが勝利するというシュールな内容だった。
あんなに必死に応援したのに冬将軍のバカ。
せめてどしゃぶりの雨だったらあの約束も気持ちよく反故になったのになあ〜〜・・・
なにせ捜査捜査が続いた中での久々の一日休み。
本来なら昨日犯人に汚されたコートを御用達店の開店と同時にクリーニングに出し、代わりに大量のワイシャツを
引き取ってきたい。それから部屋の隅々まで掃除機をかけ、ついでにフローリングにもワックスをかけ、
シーツに折り目正しくきっちりとアイロンをかけたい。そしてそして、なにより愛する息子に会いに行きたい。
別れた妻に面会を拒まれ続けているが、そっとのぞくくらいならいいよね?いいんじゃない!
あ、やっぱり神様もそう思います?ですよねー?もう行っちゃう?掃除より先に会いに行っちゃうー?
デーデーデーデーデデーデーデデー (ダース・ベイダーのテーマ)
息子への愛のあまり神様とコール&レスポンスしていたところに、携帯の着メロが鳴り響いた。
あの人だ。うう、出たくない。出たくないけど、出なかったら何をされるかわからない。
「・・・ハイ、オハヨウゴザイマス、シゲサン」
『ヤナ、今日だけどな市ヶ谷の××って釣り堀に9時だ。
お前のところからだと1時間くらいかかるだろ?そろそろ出たほうがいいぞ」
わーあ、もう行くこと前提に話が進んでる!異論は許さんってか、異論など存在しないばかりだNE!
ってか昨日の打ち上げで俺断りましたよね!?小声でだけど!シゲさんもコマさんも全然聞いてなかったけど!
「あ、あのーシゲさん、俺やっぱり、」
『ああ、なんだコマとの麻雀のこと気にしてるのか?』
「いやーっていうかあの」
『コマならまだ寝てるから安心しろ』
「は?」
『今日は一日足腰立たないだろうから、呼び出しもないぞ。じゃあ遅れるなよ』
・・・今電話の背後で「てめえ!ふざけんなシゲ!」とかすれたコマさんの声が聞こえた気がするが気のせい。
多分気のせい。うん、きっと俺の空耳アワー!警察に入ってから覚えた素敵な言葉「長いものには巻かれろ」だ。
この場合ヘビに睨まれたカエルの風情な気もするが・・・
「あ、釣り用の帽子どこにしまってたっけ・・・」
休日の予定が儚く崩れ去る音を聞きながら、クローゼットをごそごぞとあさる柳誠土郎の背中を
穏やかな朝日が照らしていた。
「なんだ、起きてたのかコマ」
「なんだじゃねえ!てめえヤナに何吹き込んでやがる!!」
「あ、帰りに何か買ってくるが、冷蔵庫にビールと軽いものくらいならあるから勝手に食ってていいぞ」
「軽くスルーしてんじゃねぇよ!」
「事実を言ったまでだろう。それともまだ足りないのか?」
「朝から盛るなバカ!」
「朝から誘う方が悪い」
「おいっ・・・ヤナとの時間、遅れ、る・・・っ」
「大丈夫だ、問題ない」
『あれー?シゲさんまだ来てなーいーー??』
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
改行エラーで半端になっちまった・・・
すみません。
>>337 ヤナかわいいいいい
シゲコマ要素もあってなんて俺得…!
又の投下をお待ちしてます!
>>337 昨夜の様子もすごく気になるけど
何よりヤナが不憫すぎて泣けましたwww
…さりげなく「大丈夫だ、問題ない」を入れ込むあたりが素晴らしいw
逆転検事2の、ラスボス絡みネタ。ネタバレ注意。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
憎んださ。恨んださ。
誰も助けてくれなかった、子供のころから全部を憎んださ。
今でも後悔なんか、してねえんだよ。
「……コゾウ、歩け」
ピエロの格好のまま、脱獄した了賢さんと一緒に、警察官どもに両脇を固められて歩く。
同じパトカーで護送されるのは、それはあの検事たちの好意、だとかなんだとか。そんなもの、クソ喰らえだ。
了賢さんのクロが、俺の手を。乗る前にぺロリと舐めて、俺はそれを握りしめたまま、涙も言葉も出なかった。
憎んできた。恨んできた。
子供の頃、友達だった奴に裏切られて、父親に捨てられて、引き取られた施設で事件に巻き込まれ、酷い尋問を受けて。
憎むしかなかったし恨むしかなかった。そうしなければ生きていけなかった。
いや俺は、そうやって生きてきたんだ。
掌を、ぎゅっと握る。涙も声も無い。
前の座席の刑事が、無線で何か指示を出していた。そのごつい肩を見て、親父を思い出した。
親父、助けてくれなかった。
「ゆるりと考えればよい。おぬしはまだ、じゅうぶんに若いでの。…はは」
斯様なことを申すとは、拙僧も老いたものよのう。了賢さんが隣でぽつりと、まるで笑うように呟いた。
俺の頭を軽く撫でてくれた。長く伸ばした髪を梳くように、宥めるように。
暗殺者として鳴らした手なのに、血のつながった家族がしてくれるみたいだった。
親父は俺を捨てて、異国へ出ていった。
憎んで、恨んで、復讐した。今でも後悔なんか、してねえんだよ。してねえよ。
手錠で繋がった手首が、知らない間に震えていたみたいだ。了賢さんはそれにもぽんぽんと、掌を当ててくれた。
見えてないなんて嘘みたいだな。ぼんやりと思った。
車が走り出す。そして、思い出す。
自分で運転するのは平気だけど、後部座席にいると、あの日のことを思い出してしまう。
憎む前の。恨む前の。
いや、一番。一番初めに、一番最初に裏切られた、あの冬の凍てつくような日の記憶のこと。
何より一番、激しく辛いあの日の思い出のこと。
「……拙僧は確かに、この手で幾度も人を殺めた。それはお主も知っておろうが」
「……。」
「暗殺が生業であったでの。人の命なんぞ、ただ消えゆくものとしか思うておらなんだ。……しかし不思議なものでな」
一度命を救うとな、まるで。
拙僧も生まれ変わったような、気がしたのだ。
「……了賢、さん……」
「コゾウ。お主を助けたこと、面白うあった。まこと、面白う思うておるぞ」
あの日俺を、車から助け出してくれたのがこの人だった。
あれからずっと、この人しか、了賢さんしか助けてくれなかった。そう、今もだ。
今もこの人しか、俺のことをわかってくれる人はいない、んだ。
憎んで、恨んで、生きてきた。それが全てだった。
「生き直せ」
どこからでも。
了賢さんはやっぱり、笑っているような声だった。
車のエンジン音に消えてしまいそうなくらいの小さな声だったけれど、俺にはそれが聞こえた。
「何度でも生きよ」
車が揺れて、髪がばさりと俺の頬、こめかみに墜ちた。いつの間にか俺は自分の膝の上の、手錠の手首と了賢さんの古ぼけた手を眺めていた。
何度でも、何度でも、毎日、毎晩、恨んで憎んで、復讐だけに頭を使った。
気が狂いそうなくらいにただひたすら、その一点だけを望んで生きてきた。
「……生き直せ、るんですか」
「ウム。お主が生きておる限り、人は……どこからでも歩める」
「どこからでも……」
あの日、最初に裏切られた日から、俺の人生は始まった。
喉が渇いて声が出ない。
くそ、こんなこと、今までなかった。どんな酷い計画を立てた時も、それが成功した時も、こんなことなかった。
俺をいじめた奴、俺を虐げた奴、何より俺を、俺を裏切った奴。
奴らが絶望にのたうちまわって、全てを失って行く様を眺めるのだけが、全てだった。その一点だけが。
「……無理です」
「コゾウ?」
「生き直しても…、きっと、俺は、恨むしか。…憎むしか、出来ない…!」
声がかすれる。畜生。
こんなこと、今までなかった。こんな、泣きそうな気持になったのは。
「……だから、言えなかった……」
恨みたくなかった。憎みたくなかった。
俺を裏切った奴。一番最初に、俺を裏切った奴。
だから殺してやった。自分の手を汚さずに俺は、計画を立てて人を操って、あいつの命を奪ってやった。
(ごめん、草太)
「俺を裏切ったから、だ……!!」
車が揺れた。俺はそのまま突っ伏して、ははは。
泣いた。
涙が出ていた。声も出ていた。
(草太、サーカスに入ったんだって?)
「だから殺したんだ!!」
(お前の芸、楽しみにしてるかんな。頑張れよ)
「殺したんだ!!」
(チェス以外に俺が楽しみにしてることなんか、そうねえんだぜ?)
「俺が……っ」
本当は、恨みたくなかった。憎みたくなかった。俺を裏切った奴なのに。
お前のことだけは、そんな風に考えたくなかった。一番最初に、俺を裏切ったのはお前なのに。
お前だけ恨むべきだった。お前だけ憎むべきだったんだ。本当は。
でも俺はそれに気付きたくなくて、だから全てを恨んだ。憎んだ。
計画の為だってそれだけ、それだけを思って、俺はずっとお前の傍にいた。
だから言えなかった。好きかもしれないなんて、考えたくもなかった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
半ナマ注意。
映画「緑蜂」より、友達以上恋人未満wな社長と助手。助手視点で、台詞は字幕の口調風。
映画スレからネタをちょこちょこお借りしてます。姐さん達ありがとう。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ラボで新しい武器の構想を練りつつスケッチをしていると、したたかに酔った相棒がやって来た。よう、またエロい絵描いてんのかと陽気に笑って近付き、机の上にどっかりと尻を乗せた。
「なあ力ト-、この家で一緒に暮らさないか」
「嫌だね」
即座に断ると相棒は見る間に落胆し、この世の終わりのような表情を浮かべた。
「前にも同じように断ったよな。なんでだ!俺と暮らすのがそんなに嫌かよ」
「君こそなんで僕と暮らしたがるんだ。昼は会社で一緒だし、夜も二人で仲良くパトロールだ。この上一緒に暮らしたりしたら、四六時中同じ顔を見てることになるぞ」
不服そうに喚き立てる相棒に困惑して尋ねると、彼はしかめた顔をごしごしと乱暴に掌でこすってから、大きなあくびをした。
「眠いんなら、部屋に行ってさっさと寝ろよ」
「いいや、眠くない。それより答えろ、力ト-。四六時中一緒にいて何が悪いんだ。俺達はとっくに、公私ともに立派な『パートナー』だろ、今更何を気がねしてる」
「気がねなんかしてない。違う意味の『パートナー』に思われるのはごめんだから、嫌だって言ってる」
初っ端の紹介の仕方に問題があったせいか、社員の中には二人の関係を不思議に思う者があるらしく、社内で微妙な視線を感じることが少なくない。
これで同居なんかしようものなら、ほらやっぱりだ!とたちまち噂になるに決まっている。
「大丈夫だよ、俺が女の子ダーイ好きなのは周知の事実だし。お前が住んでもうちに女の子は呼ぶし」
「あ、そう」
「そう。だからいいだろ、ここに住めよ。そうすりゃ通う手間が省けるだろ?ガソリン代も浮くぞ」
「金持ちの癖に、みみっちいこと言うなよ」
「親切で言ってんだぞ。部屋はいっぱい空いてる、好きなとこを使え。引越し楽チンだぞ、家具備え付けだし。カーテンは好きな柄に変えてやる。花柄がいいか?お前、花柄好きだろ」
「あれは前の住人が置いてったんだ。僕の趣味じゃない」
一度夜中に忍び込んだだけなのに、そこまで見ていたのかと驚き呆れた。
そして同居を迫る相棒の熱心さに不審を覚え、あらためて尋ねた。
「カーテンの柄なんかどうでもいい。ブリシト、なんで僕をここに住ませたがる。ガソリン代のことは本音じゃないだろう?正直に言えよ」
「だってさ、俺達ションディーだろ?兄弟なら、一緒に住むのが当然だ」
「ブリシト」
名前を呼んでじっと見つめると、相棒は机から降りて冷蔵庫の方に歩いた。
扉を開けると、ビールを一本取り出した。
「お前もやるか?」
「いや、いい。そんなに酔っててまだ飲むのか」
「飲むとも!こういうの、日本語じゃ『フカザケ』って言うんだってさ。中国語だと何て言うんだ?」
酒喝得太多、と答えようとして、瓶を抱えて妙な動きをしている相棒に気付いた。
「栓抜きなら、その横にあるよ」
「力ト-、あれやってくれ。こう、シュパッて手で開けるやつ」
側に戻ってきた相棒の手から瓶を受け取り、手刀を振るって蓋を開けた。
空中に滑らかな曲線を描いて飛び去った蓋を見つめ、相棒はオーッと声を上げた。
「さっすが力ト-。俺、なかなか出来ないんだよなあ」
「鍛錬とコツが必要なんだ。そんなことより、ブリシト……」
「わかってる、理由だろ」
右手を上げて言葉を制すると、瓶を傾けてビールをあおった。それから顔をこちらに向け直し、瓶を玩びながら口を開いた。
「じゃあ正直に言うけど……怒るな」
「いいから言えよ」
「怒るなよ力ト-、約束だからな。俺はな、お前に、そのう……」
ちらちらと顔色を窺ってなかなか先を言わない相棒に、顎をしゃくって促した。
「だからさ、お前にコーヒーを、入れて欲しいからだよ!俺の好きな時に……ちょっと待て力ト-、ダメだ、怒らないって約束だろ!?」
ぴくりと眉根を寄せたのに敏感に反応し、相棒は顔の前に腕を上げてガードした。
「殴るなよ、いきなり殴るのは反則だ!」
「殴らないよ。でも言ったよな、僕にコーヒー入れろと命令したら……」
人差し指を突き付けて静かに抗議すると、彼は瓶を持ったまま手を振った。
「命令じゃない。頼んでるんだ、ションディーとして。何しろお前の入れるコーヒーは、美味すぎる」
「あの機械を使えば誰にでも出来る。使用人に頼めよ。前に何人かにやり方は教えたぞ」
「ダメだ。お前がいない時にやらせてみたが、お前のとは違ってクソみたいだった」
「じゃあ自分でやってみろ、教えてやるから」
「もっとダメ!俺の不器用さを知ってるだろ?瓶も開けられないんだぞ。それに漢字が読めない」
「漢字くらい覚えろよ。読めなくても、流れを掴めば出来るさ」
「いいやダメだ。やっぱりお前の入れてくれるあの味が、メッチャ最高なんだ」
全く譲る気のない我が儘ぶりに呆れたが、コーヒーの味を手放しで褒められて悪い気はしなかった。
だがそのために同居なんて、やっぱり馬鹿げてる。平行線を辿るコーヒーの件は置いておいて、別の方向から攻めようと考えを巡らせた。相棒はまるで構わずに、言葉を続けた。
「もちろん、ただコーヒー入れろとは言わない。見返りはあるぞ」
「見返り?」
「そうさ、例えば……そうだ、お前に泳ぎを教えてやるよ。ここにいればいつだって教えられる。万能ナイフの唯一の弱点を克服出来るぞ、どうだ?」
目を輝かせて条件を持ちかける相棒とは裏腹に、以前この家のプールで不様に溺れたことを思い出して、顔に血が上った。
「力ト-、恥ずかしがるな。誰にでも弱点はある。それを乗り越えてこそ、人は成長するんだ」
「……知った風な口をきくじゃないか。せっかくだけど断るよ、僕はそんな見返りはいらない」
自分は欠点だらけの癖によく言うな、という言葉を飲み込んで忌ま忌ましげに告げると、理解出来ないという風に相棒は目を瞬いた。
「マジか?あと泳げさえすれば、お前は本当のスーパーマンになれるんだぞ」
「そうだな、君はいい気分かもしれない。スーパーマンに好きな時に、美味いコーヒーを入れてもらえるんだからな」
「そうだ、お互いに損はないだろ?俺が手取り足取り、泳ぎを教えてやるからさ。なあ力ト-、一緒に住むって言えよ。」
皮肉を素直に受け取って笑うお坊ちゃんにイライラしながら、決定的に断れる言葉を頭の中で探した。
「力ト-?で、どうなんだ」
「……やっぱりダメだ。ここには住めない」
「なんでだよ!何が気に入らないってんだ」
「プールだ。君の話で気付いた。プールがある家になんか、僕は住みたくない」
「なんだ、溺れたのがそんなにショックだったのか」
「ああ、ショックだった。思い出しても体が震えるよ。もうあんな思いはしたくない」
沈んだ表情を作って首を振ると、相棒はなおも懲りずに口説いた。
「だから教えてやるって!スーパーマンにしてやるって、言ってるじゃないか」
「いや、泳げたところで、どうせ空は飛べないだろ?ならスーパーマンにはなれないよ。僕には無理だ」
「おいおい、屁理屈を言うなよ」
「うるさいな。とにかくプールがある限り、僕はここには住まない。どうしても住んで欲しいって言うなら、プールを埋め立ててくれよ!そしたら、考えてもいい」
「な、なんだって?本気で言ってんのか!」
唾を飛ばし叫ぶ顔を見つめて、真顔で頷いた。
美女達を侍らせてプールで遊ぶのが大のお気に入りのこの男が、そんな条件を飲む訳がない。
そんなこと出来るか!じゃあもう同居なんか無しだ、とキレて、誘いを取り消すに決まっている。
あまりの無理難題に相当驚いたのか、相棒はしばし固まっていた。
ざまあ見ろ、と内心ほくそ笑んでいると、目をぎゅっと閉じてまた開いてから、静かに言葉を発した。
「力ト-……どうしても、プールを埋め立てろって言うんだな」
「ああ、どうしてもだ」
「そうか。よしわかった」
「え?ブリシト、わかったって……」
「力ト-、ちょっと電話かけていいか」
「……いいけど」
相棒は机に瓶を置いて、携帯電話を取り出し操作した。
深夜のことで眠っているのだろう、なかなか相手が出ないらしく、相棒はせわしなく床を足で踏み鳴らしている。
「……俺だ!電話かけたらすぐ起きろ。今から仕事だ。すぐに来て、プールを埋め立てろ!」
「おい、ブリシト!?」
「正気かって?当たり前だろう!いいからやれ、今夜中にだ!」
「ブリシト!誰にかけてる?」
「うちのプール係だ。心配すんな、すぐに片付くから」
傍若無人なお坊ちゃんは携帯電話を耳に当てたまま、ぱちんとウインクをして来た。
思いがけない展開に頭が真っ白になりかけたが、気を取り直して立ち上がり、相棒に近付いて手から電話を奪い取った。
「おい力ト-、何す……」
「ああ、もしもし?夜中に悪かったね……うん、うんそう、彼は酔ってるんだ。気にしないで、ゆっくり寝てくれ」
寝ぼけ声で動揺するプール係を宥めて通話を終えると、不愉快さを丸出しにした相棒が携帯電話を奪い返し、肩を掴んできた。
「力ト-、なんで止める?埋め立てろって言ったのは、お前じゃないか」
「黙れよ、酔っ払い。勢いでそんなことしたって、朝になったら絶対後悔する癖に。そして文句の矛先はどうせ僕なんだ、そうに決まってる!」
肩から手を打ち払って睨んでも、彼はちっとも怯まず更に絡み続けた。
「俺を見くびるな力ト-、酔った勢いなんかじゃないぞ!プールが大嫌いなお前のために、俺の大好きなプールを埋め立ててやるんだ俺は!だから一緒に、住め!」
「……なんでそこまで」
呆れてため息をつくと、間近に寄せた赤い顔から、酒臭い息を吹きかけられた。
「住むって言えよ力ト-。さもないと、プールを埋め立てるぞ!」
「ブリシト、話が逆になってる。頭を冷やせよ、君は飲み過ぎでやけになってるんだ」
「ふん、飲み過ぎなもんか。まだ全っ然、飲み足り、ない……」
急に呂律が怪しくなり、ふらつきもたれかかって来た相棒の体を咄嗟に受け止めた。
立ったまま抱き抱える形になり、このまま意識を失われたら面倒だと焦り声を張り上げた。
「ブリシト!こんな状態で寝るなよ。しっかりしろ、部屋まで連れてってやるから」
「うーん、力ト-……なあ、一緒に住むか?」
「今ダメ、それどころじゃない」
倒れないように腕に力を入れて支えると、相棒もこちらの体に回した腕を腰の辺りで交差させた。
「じゃあ、今夜はとりあえず泊まってけ。朝にまた話をしようぜ」
「嫌だよ。酔っ払いの世話をした上に、朝から不毛な議論なんかしたくない。君を部屋に送ったら、僕は帰る」
「そうかあ?ところがそうは……させないもんねっ!」
耳元で囁いていた相棒の口調は不意にはっきりとしたものになり、くっついていた体を離して軽くステップを踏み、二人の間に距離を取った。
「ブリシト?」
「力ト-、これなーんだ?」
ひらひらと揺れる右手に摘まれている物は、見覚えのある革製のストラップだった。
思わず尻部分のポケットを叩くと、確かにそこに入っていた筈のバイクの鍵がない。
「ブリシト、返せ!」
「嫌だね!これで今夜は帰れないぞ力ト-、観念しろ。そして朝になったら俺に、とびきり美味いコーヒーを入れてくれよな」
「……いいか、返さないと、力ずくで取るぞ」
拳を握って凄みを効かせると、相棒はビビるどころかニヤリと笑った。嫌な予感がして、ドア近くに立つ彼の方に一歩を踏み出した。
「動くな、力ト-!いいかあ、力ずくだなんて俺を脅すと……こうなる!」
相棒は片手でベルトを緩めてズボンの縁を引っ張り、あろうことかバイクの鍵をその中へと落とした。
「……ブリシト!做什麼!停止……!」
思わず出た母国語で制したがその甲斐もなく、相棒は引っ張ったズボンを元に戻した。
「ダメだぞ、悪い子だ力ト-。俺を殴って取り返そうなんてしたら……ここでオシッコしちゃうぞ」
こいつならやりかねない、落ち着くんだと、怒りのままに襲いかかりたがっている自分を抑え、強く気にかかることを問い質した。
「……なあブリシト。訊くけど、鍵はただズボンに入れただけか?」
「安心しろ、お前の大事なお宝は、俺のお宝と仲良くしてるぞ。ちょっとひんやりしてるけどな」
自分の股間を指差す姿に、やっぱり下着の中か!とショックを受けて呆然としていると、相棒は愉快そうに大笑いしてドアを開けた。
「こいつは朝まで預かる。ゲストルームは開いてるから、好きなとこで寝てくれ。じゃあなションディー!おやすみ、いい夢を!」
高らかに叫び投げキッスを飛ばすと、悪ガキは勢いよくドアを閉めて、壁の向こうに姿を消した。
「イ尓……混蛋!惡小鬼!!任性小子!!……この、×××!×××××!!……信じられない!全くもう、なんて野郎だ!」
はっと我に帰り、母国語と英語を織り交ぜて悪口雑言をまくし立てたが、もう後の祭りだった。
悄然として机に戻り、椅子に脱力した体を預けてぼうっとしていた。しばらくすると急に、子供っぽいあの男の行動がおかしくてたまらなくなった。
バイクが使えなくても、隣のガレージに停めてある車のどれかに乗れば帰れるってことを、彼は思いもしなかったのか。
きっと今頃はパジャマに着替えながら、頑固な相棒をまんまとやり込めたと鼻歌混じりの上機嫌で、やがてそのまま心地よい眠りにつくのだろう。
「馬鹿だなあ、あいつ……本っ当、馬鹿だ」
苦笑しながら、開いたままだったスケッチブックを閉じた。それから立ち上がり、冷蔵庫からビールを取り出した。
相棒が出来ない離れ業で栓を開けると、一口あおって室内の様々な電源を落とした。
お望み通り、お目覚めの朝には熱いカプチーノを入れてやろう。ただしいつもとは一味変えて。
どうしよう、タバスコでも仕込んでやろうか……いや、匂いでバレるな。
バレないように細工して、唐辛子を底に沈めておこうか。日本食が好きな奴だから、ワサビでもいいな。
飲んだらあいつ、どんな顔するかな。
ささやかな復讐を思い巡らせてドアを開けると、悲惨な目に合ってしまった大事な物のことを思い出した。
「はあ……取り返したら、念入りに消毒しなくっちゃな……」
ドアを閉めて、悪ガキの眠る離れの屋敷へと、ビールを傾けつつ歩いた。
一工夫した特製コーヒーを入れて、我が儘なお坊ちゃん社長を説得し、それから鍵の消毒。なんだか明日は、妙な用事ばかりで忙しくなりそうだ。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
もっとギャグとか入れたかったけど、センス不足でスマソ。
助手の母国語は某興奮サイトの翻訳機能を使いましたが、知識ゼロなもんで本当に正しいかどうかは不明です。
なんちゃって中国語ということでお許し下さい。
「緑蜂」難しいけど楽しかったー。
>>353 久しぶりにのぞいてみれば緑蜂…!
社長アホ可愛いよ社長!そんな社長に振り回されちゃう助手にも萌えた
こういうやりとり好きだなあGJ!
>>353 女性ならさしずめ胸の谷間に…ってところか!かわいそう助手かわいそう!
強力マグネットの発明品でパンツごと奪っちゃえ!
GJでしたー
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )トリップはこれであってるかな?六番目です。
バルデスが、イアンが、大砲によって傾いた船で、一瞬でた隙を付いた。
ザク、と、音がして、イアンは思わずあとずさった。
レイピアが、イアンの胸に刺さっている。それでも、イアンは攻撃をやめない。よろけながらも必死に立って、レイピアを繰る。
そしてもう一度、今度は腹に、レイピアが刺さった。
そのまま更にレイピアが身体を突きさし、イアンは倒れた。
負けるか、と、皆が思った。
(このまま…負けるわけには行かない…)
朦朧とした意識の中、イアンは、目の前にあるバルデスの首めがけ、護身刀を抜いて切りつけた。
途端、目の前はバルデスの血で染まる。
「…!き、さま…」
首を深く、切りつけた。
イアンは口の端しから血をたらし、バルデスの返り血を浴びながら、バルデスが倒れていくのを見た。
そして動かなくなったのを確認する。
「…やった、バルデスを倒したぞ!」
わあっと歓声が上がった。
バルデスが死んだ今、敵船はおとなしく降伏し、名実ともにバルデスという勢力はなくなった。
「…イアン!カルロ、止血をして!」
マリアが、遠くで呼んでいるのが聞こえ、イアンはそっと目を開けた。
誰かに支えられる。
その感触さえどんどん遠くなっていく。
手には護身刀を持っていたが、それがカラコロと音を立てて転がった。
「いかん、これは…、血がとまらん!」
「しっかりしてよ、イアン!」
カルロが、懸命にその場で応急処置をするが、血は一向に止まらなかった。
サムウェルが、泣きながら覗き込んでくるが、もう助からないことは誰が見ても明らかだった。
「ユキヒサに…」
「イアン!」
ユキヒサがこちらにやってくる。船を近づけていたおかげで、すぐにこれたが、ユキヒサの顔が、もう、よくは見えない。
「ユキヒサ…護身刀…有難う…。おかげで…勝てた」
イアンは、くすっと笑った。
ごふっと血を吐く。
「提督…すみません…私は…これまでのようです…。ユキヒサ、リング、ありが、とう」
「やだよ、イアン!起きてよ!!」
「…!」
ユキヒサが、ゆすって起こそうとするが、イアンは目を閉じ、そして動かなくなった。
やがて大砲の音はやむ。
冷たくなっていく恋人を抱きながら、ユキヒサは初めて涙を流して絶叫した。
「…素直に、喜べないわ」
マリアは、ユキヒサと甲板にいた。
クリスティナが甲板の掃除をしながら、時折その二人をちらりと見る。
イアンの死体は水葬にしなかった。
なぜなら、たまたま、ドゥーコフ商会の船がセビリアに停泊していると聞いたからである。
イアンの父親がすぐ傍にいる。
ならば父の元に返そうと思ったからである。
セビリアへは、すぐ傍だった。
進む船はところどころ損傷していたが、マストは折れなかった。すぐにバルデスが一騎打ちを申し込んできたおかげだ。
ユキヒサは、マリアの声に反応して、そちらを向いた。
「皆、よくやってくれたわ。水夫も、航海士も。でも、イアンがこんな事になるなんて…。ごめんなさいね、貴方たちの事、知っていたんだけど…」
「…しばらく、イアンといたい。副官室へ、行って来ます」
「分かったわ、あ、そうそう、この刀。貴方のでしょ。行尚(ユキヒサ)って彫ってあったから、すぐにわかったわ。イアンがいつも持っていたわね」
そういって手渡されたのは、バルデスの首を切り裂いたあの刀だった。それを手に取ると、ユキヒサは見るからに気を落とした様子で、副官室へ向かった。
副官室はしんとしていた。
ベッドには、綺麗に血をふき取られた、イアンの死体があった。
そっと抱き上げる。
死体なのに、穏やかな笑みをたたえていた。
「っ…!」
涙が、ぽとりとイアンの顔に落ちる。
左手の薬指には、シルバーリングが輝いている。
ぎゅっと、イアンを抱きしめた。
「すまない…守ってやれなくて…お前を、絶対に幸せにすると…」
扉の向こうには、ジャムとフェルナンドとアルがいた。
三人とも、何も言わなかった。
扉の向こうで、ユキヒサが泣いているのを、静かに聞いていた。
死ぬ前、ずっと幸せそうなイアンを見て、三人は、良かったと心から思った。
そしてユキヒサも素直になってきた矢先、こんな事が起きた。
誰が手放しで喜べただろう。
サムウェルも、イアンと仲がよかった。ずっとサムウェルが泣いているのも知っている。
けれど、あんなに気丈に振舞っていたユキヒサが、ここまで落ち込むとは知らなかった。そこまで深い愛情があった事さえ、彼が死んではじめて知った。
一行はセビリアへ到着する。
毛布に巻かれた彼の死体を、副官室の寝台においてある。
イアンの父親は思ったよりイアンに似ていなかった。
だが、ブロンドの髪は間違いなく親子だと思わせるものがあった。
顔立ちはきっと母親に似たのだろう。
父親は、リー家の事を知っていた。もちろん息子がそこで働いていたことを。
マリアはすべてを話した。最後に何を言ったか、バルデスと戦い、倒れたが、それでも最後の力を振り絞って、バルデスを討ち取ったこと。
父親は、明らかにショックを受けていた。
案内された先に息子の死体。
眠っているように見えるが、触れてみると冷たかった。
「おお…イアン…」
ひざをついて、息子を抱きしめる。
「帰ろう、イアン。今度、生まれてくるときは私の息子にもう一度なりなさい」
と、左手の薬指に指輪がある事に気づいて、涙でぼやけた手で、彼の指輪をなでた。
「マリア殿。これは…?」
「ああ、それはですね…」
「拙者との対になる指輪です」
マリアがいいかけたとき、ずい、と、ユキヒサが姿を現した。
そして父親の前でひざをついて、土下座をした。
それが何を意味するのか、ジャムやマリアにはすぐに分かった。
「守ろうとしましたが、叶いませんでした。その指輪は拙者がイアンにあげたものです。この旅が終わったなら一緒に暮らそうと、約束しました」
「か、顔をあげてください。貴方は?」
「ユキヒサ=シラキです。イアンの恋人です。同性といえ、拙者はイアンのことを愛していました。また、彼もそうです」
ユキヒサは顔をあげると、その目から涙をこぼした。
父親は驚いたが、納得すると、頭を下げた。
「こんなに綺麗な死に顔です、息子はきっと幸せだったでしょう」
結局、遺体は故郷にはもって帰れないらしい。ならば、と、父親が自ら自分の船でこの近海に水葬するらしい。
その話を聞くと、ユキヒサは、はっと思いつき、自分の腰に刺してある護身刀を渡した。
「イアンに渡した守り刀です。水葬する際、一緒に…」
父親はそれを受け取ると、自分の荷物の中に入れる。
了解しましたと、一言添えると、息子の死体を抱きしめ、自分の船に戻った。
『ユキヒサ、ユキヒサ』
宿に戻った。泥のように眠るユキヒサは、夢を見た。
それはとても明るい世界だった。
イアンがそこにたって笑っていた。
『ユキヒサ、今まで有難う。父上が泣いているの、はじめてみたよ』
はっと、ユキヒサは顔を上げる。
いろんな人がいた。
イアンの後ろには、見た事のある死んだ水夫たちがいた。
ここは何処だ、と焦るユキヒサに、イアンはリングを見せる。
『このリングは貰っていくよ』
「待て、イアン、行くな!」
『ごめん、いかなきゃならないんだ。あ、でも。十年後に会いに行くよ。それまで、覚えていて欲しい』
「十年…?」
『きっとすぐに分かるから。それじゃあ、ユキヒサ、また、ね』
「イアン、待て、イアン!」
そこで目が覚めた。
光の世界に飲み込まれていく、イアンと仲間たちを見た直後だった。
夢。
それとも、現実と夢の境。
どちらだろう、と、ユキヒサは汗をかいていたので、額をぬぐった。
「イアン…。十年…?」
十年が経過した。
その頃には、地中海を制覇し、北海をも制覇する寸前だった。
あとはクリフォード軍のみ。それも、第一艦隊のみときた。
ユキヒサは二十九歳になっていた。
立派な大人として、そして斬り込み隊長として、活躍していた。
クリフォード軍との一戦の後、ユキヒサは疲れてそのまま宿に行こうかと思ったときである。
『十年後に会いに行くよ』
いつか夢に出てきた言葉が、頭を掠めた。
何故この言葉が今更思い出したのか、と、思った。
そうだ、今日はイアンの命日だ。
あれから恋人も作らず、誰かに手を出す事もなかった。
ただ、リングだけはつけたままだった。
「すーみーまーせーんー!」
と、遠くから少年の声がした。
振り返る。
水兵服をきた、その少年を見て、ユキヒサはぎょっとした。
息を切らして走り寄ってくるその金髪の少年の面差しは、イアンにそっくりだったからである。
とはいえ、十歳いくかいかないか位の少年である。
似ているとはいっても、振る舞いは全く違っていた。
手を振って、近くまで来ると、その少年はユキヒサをじろじろ眺める。
「すみません、えっと、リー家の船ですよね。貴方は日本の方ですよね。もしかして、ユキヒサさんですか?」
「あ、ああ、そうだ。君は」
少年は満面に笑顔を浮かべて、ぺこりとお辞儀をした。
「やっぱり!僕、イアン=ドゥーコフっていいます!父上がリー家の船に乗れって言ったので、ずっと探してたんです!兄上が大変お世話になったと聞いてます!」
「イアン…?」
ユキヒサが驚いて硬直するころには、仲間たちがぞろぞろとやってきた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )次で完結します。トリップちょっと失敗しました。
亀だけど
>>270GJ!
是非、エレベーター編もお願いします
姐さんのせいで、所長の「裏づけを〜」の台詞が
己の秘めた恋心を語っているようにしか聞こえなくて困ってますw
半生。邦ドラ淑女より、法医学者×地理プロ。エロなし。
#6〜#7の間のおはなし。既婚と未婚の不倫になりますのでご注意を。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「寺/田、戻りました」
午後1時。外部での用事を終えた寺/田がC/P/Sに帰ってくると、コンソールについていた奥/居が「おっかえりぃ」と陽気に迎えた。
寺/田は収拾したデータの入力を頼み、ブースに荷物を置くとコーヒーを淹れに休憩スペースに向かった。
「だから!アレは捜査の為に言っただけだって言ってるだろ!なんでまた蒸し返すかなーもー!!」
「それは新/堀さんが私にちょっかいかけるからですよ。ホントは本気だったんでしょ、あの時の声の揺れは真実を語る時のものと…」
「だぁーかぁーらそれは居場所を伝えてたからで!僕の居場所は真実なんだからそれは当たり前…」
休憩スペースには先客が居た。香/月と新/堀だ。どうやら、過日の無差別通り魔事件から発展した騒ぎの際に、人質にとられた新/堀が香/月へ告白めいた発言をしたことをまたやり玉に挙げているらしい。
たしかに、あの告白は真に迫っていた。「仲間を失うかもしれない」という動揺も手伝い、あの場に居た誰もが、新/堀は本当に香/月に想いを寄せていたと錯覚してしまう程に。
…寺/田の心は、さらに複雑な気持ちで揺れていたが。
壁をコンコンと叩き、騒ぎに割って入った。
「かづきー。結/城さんが探してたぞ。」
「あっ寺/田さん、おはようございます…結/城さん、なんて?」
「報・告・書」
「げっ」
結/城が香/月を探していたなんて、全くの嘘だ。報告書もでたらめ。だが、思い当たるフシがあったらしい。彼女は心底まずそうな顔をすると、そそくさと自分のブースに戻っていった。
「結/城さんが探してたって、ウソでしょ」
「ああ」
新/堀には見破られた。
新/堀は、件の事案で左鎖骨の辺りを負傷した。今日は病院で検査を受けてからの出勤だったと、寺/田は記憶している。
「検査はどうだった。もう、いいのか?」
「ハイ。この通り包帯も取れましたし、あとは激しく動かさなければ良いって」
そう言うと新/堀は左肩を少し動かし、イテッと顔をしかめた。おいおい調子に乗るなよ、と寺/田は苦笑いでたしなめた。
新/堀が無事で、本当に良かったと思う。
彼は天才的頭脳を持った科学者であり、優秀なプロファイラ―であり、C/P/Sの大切な仲間であり………自分の、恋人だからだ。
いや、恋人なんて美しい関係ではない。自分には妻と子供が居るし、彼と同僚以上の付き合いをするのは本当にわずかな頻度だ。言うなれば愛人、セックスフレンド。
コーヒーを淹れながらそんな事を考えて、寺/田はフッと笑みをこぼした。それを新/堀が見とがめる。
「なに笑ってるんですか、寺/田さん」
まさか寺/田さんまでさっきのこと蒸し返すんですか、と、眼鏡の奥から不満げな目で睨まれる。かわいい。自分と4つしか違わないこの男が、寺/田は最近かわいくて仕方がなくなっていた。元来が軟派なのだ。男にも情欲が湧くとはまさか思いもしなかったが。
寺/田は、それとなく壁際に移動するよう新/堀を促した。
2人が居る休憩スペースはC/P/Sの一角を占めており、三方が壁、入口は開放されておりすぐ前は香/月のブースである。その部屋も、報告書に集中するためか今はブラインドが閉じられていた。壁に身を寄せてしまえば、奥/居からも死角になる。
「そういうことか」と勘づいた新/堀は、照れているようなニヤついているような顔で、コップに口をつけた。
周囲に聞こえないように、寺/田がささやいた。
「嘘でもな…恋人以外を『好き』って言われるの…複雑」
予想外の言葉に驚いたらしく、コーヒーを口に含んでいた新/堀はゲホゲホと盛大にむせた。寺/田はその反応にムッとしながらも、背中をさすってやった。
「お前、そんな驚くなよ」
「ッませ…だって…寺/田さんが、ゲホッ、そんなこと言うなんて…!肩痛った…!」
「…俺が恥ずかしくなるじゃねえか」
しばらくすると咳はおさまり、今度は新/堀が口を開いた。
「でも、寺/田さんもけっこーズルいですよねぇ」
「あ?」
「だって、奥さんにもお子さんにも『愛してる』って言ってるでしょ?」
「うっ」
そこを突かれると、反論できない。
「まぁ、僕は別にいーんですけどね?子供じゃないんだし?体だけでも?」
あー心広いよなぁ僕って〜、と、新/堀は寺/田の心にグサグサと刺さる言葉を吐く。
墓穴を掘る形になってしまった。「してやったり」と笑う顔が、かわいらしくも憎らしい。
どうしたものかと言い淀んでいると、新/堀が上半身をひねるように下から覗きこんできた。
「僕、今月はまだ1日もお酒飲んでないんですよね」
「…は?」
「だぁから、まだ1日もお酒飲んでないんですってば!」
一度では理解できなかったが、繰り返されて合点がいった。
新/堀は几帳面な性格で、自らのカフェイン・アルコール摂取量を日割り月割りで決めている。故に結/城や奥/居からの飲みの誘いを断ることもしばしばで、顰蹙を買っているのだが。
そんな新/堀が、こんなことを言う、ということは……
「じゃ、その…こんや、どこか、飲み…行くか?」
寺/田はおずおずと尋ねた。
「寺/田さんが行きたいんなら?ま、付き合ってあげてもいいですけどね」
予想は間違っていなかったらしい。新/堀は「しょうがないな」という顔をしながらも、にこにこと笑っていた。
かわいい。寺/田はくしゃくしゃと新/堀の頭を撫でると「残業すんなよ」と言い残して自らのブースに戻っていった。新/堀も、緩む口角を片手で隠し、本日分の書類を仕上げるために自分のブースに戻っていった。
「うっっっっぜぇ…」
「途中から丸聞こえなんだよホモが…」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
良いタイトルが思い浮かばずこっぱずかいしいモノに…寺/田は新/堀の「かわいいところ」を知っているのです。
先々週・先週と公式に禿げ散らかしていたら今週の「指輪探して」でまた禿げました。もう髪が無い。
闇金ウシジマくんで樺谷×社長。某姐さんからアイデアを拝借いたしました。エロありです。バレンタインデーのお話です。
>>311の続きです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
丑嶋が形ばかりの抵抗を止めると、服の中に潜り込んでいた樺谷の手が内側から裏地を掴む。そのまま服を上にずらしていくと、くっきりと割れた腹筋が見えた。その
下にはズボンを腰ばきしている為に下着がチラリと見える。この中に手を入れてしまいと思うが、それよりもまずは、と服をさらにずらしていく。
鎖骨の上あたりで手を止め、すっかり胸を露出させる。天井のライトがスポットライトのごとく裸の胸を照らしだした。
いつもならここらあたりで「脱がせる・脱がせない」の一悶着があるところだが、丑嶋の半開きの口から漏れるのは溜息とも喘ぎともつかない鼻にかかった声だけだ。
従順すぎる丑嶋を嬉しく思う反面、何だか寂しくも思い、曝け出させた胸をきつめに掴んだ。
「んっ、んー・・・」
ひくり、と体が震え、今度ははっきり喘ぎ声だと判断できる声が漏れた。素直な声を聞くと、たまには従順すぎる可愛らしい丑嶋も悪くないな、と樺谷の表情も素直に
柔和になる。
ヘラヘラ笑いながら丑嶋の逞しい胸に倒れこむ。頬を押し付けると、トクントクンと心臓の鼓動が樺谷の頬を僅かに押し上げてくる。視線の先には行儀よく胸板に鎮座
している乳首がある。
「いただきます」
悩ましい薄目のあずき色の物に樺谷は吸い寄せられて、まだ反応していない柔らかい乳輪を口に含んだ。
「くっ」
小さな乳輪の大きさと口の大きさをちょうど同じぐらいにし、全体を吸う。ツルツルとした表面はすぐに鳥肌がたったように小さな突起物を出し、中央の乳首もすぐに
勃起し始めた。
しかし、樺谷はあえて乳首には触れず、あくまで乳輪全体を刺激するに止まった。
「うっ、あああっ」
乳輪だけを吸い、時折吸うのを止めて乳輪の周りにそって舌を這わせる。その行為を飽くなき情熱で5分程度繰り返してやると、ベッドの上に投げ出されていた丑嶋の
腕が動き、樺谷の頭を抱いて自分の胸に引き寄せてきた。
「はやく、もっとしろよ」
言葉はキツイが、その表情と声はおねだりをしているように甘い。
「うん。良いよ」
樺谷は一旦口を離した。執拗で意地悪な愛撫を受けた乳輪は唾液でべっとり濡れている。先程は薄目のあずき色だった乳首は紅色に変化していて、天をつくように勃起
している。唾液まみれの様子はグロテスクにさえ見えるほど生々しく卑猥だ。
樺谷の喉が唾液を嚥下し、舌を伸ばして再び丑嶋の胸に埋没していく。本当はもっと焦らしてやりたかったが、素直なおねだりと魅力的な乳首に負けるのも悪くは無い。
存在を主張する先端に舌を当てる。身体は愛撫に慣れていても、感触は年相応に硬さを残している。歯間に挟んでクッと噛んでみると、丑嶋は背筋をうねらせて赤裸々
な反応をする。
「んん・・・っ」
反応のよさに気を好くして更に噛みしめると、緩やかにうねっていた背中は硬直してしまう。血が出るほど噛んではいないのだが、敏感な部分なので特別痛く感じてし
まうのだろう。
痛さも快楽と受けとめれる様になれば、もっと行為のバリエーションも広がるのだが、今はそうした痛みを与える行為に慣らせる時ではないと思われる。今の状態を好
機として焦ったとしても、必ずと言っていいほど今の素直な丑嶋の態度は硬化し、いつもの傍若無人な態度になってしまうだろう。
焦らず、焦らず、調教するならこまめに行っていけばいい、と樺谷は自分に言い聞かせ、歯をたてるのを止める。
「んっ、んっ、ん・・・」
丑嶋の口から安堵の声が漏れた。我慢強くプライドが高いので、おいそれと「痛いから止めろ」とは言わなかったが、やはりちゃんと痛みと恥辱は感じていたようだ。
樺谷は身体の力を抜いて吐息を何度も吐く丑嶋を可愛らしく思い、今度は優しく舌先で乳首を突きまわしながら舐めてやる。
「うぁっ、はぁっ」
徹底的に舐めましてやり、敏感な部分を唾液のぬめりで摩擦してやると、丑嶋の下半身がモジモジしはじめ左右の膝頭が擦りあい始めた。舐めれば舐めるほど切なそう
に身悶えしている。
舌で胸を愛撫したまま、樺谷の右手は徐々に丑嶋の下半身に伸びていく。みぞおちを指でくすぐり、くっきり割れた腹筋に爪を立て、やがて股間に辿り着いた。ベルト
をズボンから外し、ボタンを外し、続いては金属が引っ掛かり合う音を立てながジッパーを下ろしてやる。猛々しく勃起した性器は硬いズボンの生地の中では窮屈だった
が、それから解放された後は下着の柔らかい生地を持ち上げて存在を主張している。
逞しい性器を下着越しに触ってやろうと手を伸ばすと、丑嶋は背中をベッドにしっかりついて腰を持ち上げて手に股間を擦りつけてきた。
羞恥をアルコールの力で取り去り、自分の快楽だけに素直になっている丑嶋を嬲る嬉しさを噛みしめ、樺谷はますます調子を上げてしまう。
「あんまり下着濡れたら困らない?それに、脱いだらもっと気持良くしてあげられるよ」
胸から口を離し、耳元で囁いてやる。丑嶋の眉が困ったように垂れ、閉じられた唇の間から生暖かい吐息が断続的に漏れた。
「分かったよ。脱ぐ」
丑嶋は下着に手をかけたが、樺谷の手がそれを制した。脱がなければならないと発したのは樺谷なのに、何故邪魔をされないとならないのか。丑嶋は濡れた下着に気持
ち悪さを感じながら樺谷を睨みつけてくる。
樺谷は睨まれても動じるどころか苦笑し、腰を叩いて合図をする。
「くそっ」
丑嶋は樺谷の合図を受け、らしくないハの字の眉毛を吊り上げた。何時も通りの不機嫌そうな顔をし、再び腰をあげて尻を浮かす。
「良い子だねー」
子供を脱がせる母親のように言うと、丑嶋の口を開いて文句を垂れようとする。だが、そのタイミングに合わせて樺谷の手がズボンと下着を一緒くたに掴んで、一気に
引き下ろした。
乱れた前髪を掻き上げ、樺谷は息を飲んだ。性器は野太く、真っ直ぐではなくヘソにつきそうに湾曲している。竿だけを見てみると赤黒い血管が浮きあがっていて、亀
頭はそれ以上に赤黒く充血している。睾丸は皺がほとんど見えない程に張りつめていて、卑猥極まりない。
「すごく大きくなってるね。もういっちゃいそうなくらいじゃないか」
目を細めて嬉しそうに言う樺谷に、丑嶋は目を閉じた。性器の大きさや膨張率を褒められているのだから、男としては誇るべきだが、樺谷の愛撫を甘受したと認めるよ
うで悔しくて気恥ずかしいのだ。
不機嫌になっても、丑嶋の身体は快楽に勝てない。それを重々承知で、樺谷の手は性器を扱き始めた。
「あ、ああああっ」
扱けば扱くほど先端からカウパーが流れ出し、すぐに下に向かって滴り落ちてくる。樺谷の手もすぐに濡れてしまった。カウパーはすぐに粘度を増し、性器もますます
張り詰めてくる。きっともう限界が近いのだろうという証拠の青臭い匂いも充満して鼻につくが、丑嶋が喜んでいるのだと思えば、嬉しいだけで不快感は一切ない。
むしろ樺谷は匂いに誘われ、素早く動かしていた手を止めた。濡れた手をスルスルと根元に下げ、搾る様に握り込む。反り返った竿はひくりと震えた。
「いっ、樺谷っ、もうイキてェよ」
「本当に今日は良い子だね」
いつもなら鉄の意思をもって樺谷の与える刺激をギリギリまで耐え、こんな簡単に短時間に射精しないのだが、アルコールに犯されている丑嶋の体は色々な部分が緩く
なっているようだ。握っている根元が大きく揺らいだかと思うと、竿も揺れに合わせて振り子のように僅かに揺れ始めた。睾丸から性管、尿道を熱い物が一気に上がって
きているようで、少し根元を締め付けられたごときでは止まらないらしい。
「出ちまうっ、うぅ・・・っ!」
尿道口が口を開き、今この瞬間出る、となった同時に樺谷は動いた。頭を前に倒し、亀頭に噛みつく勢いですっぽり唇を被せる。蓋をされた形の尿道口は一瞬で閉じた。
「くっ、樺谷っ」
丑嶋はせき止められて苦しそうに悲鳴を上げる。いかせてもらえないのか、と一瞬思ったが、樺谷が尿道口を強烈に吸い上げたことで、それが杞憂だとすぐ分かった。
「・・・っ!」
根元を握られ、先端を強引に吸引され、丑嶋の体内の粘りがいとも簡単に樺谷の口内に流れ込んだ。しかも吸引は強すぎ、性管という管をストローがわりにして、睾丸
から直接精液を抜き取られているのではないかと想像してしまうほど強烈な射精だった。
丑嶋はただ背中を弓なりにし、快楽の余り声も出さずに首を頼りなく振るだけしか出来なかった。
「うあっ、うぅ・・・」
樺谷は、射精の余韻の声をはしたなく漏らす丑嶋の股間から一旦顔を離した。
「んんっ、ぐっ」
口に溜まった精液の行き場に困り、手の上に吐き出した。精液は唾液と混じっていて、かなり緩くなっていた。
「これ使えるなぁ」
ちょうど良い物が出来た、と喜び、手の平から指にかけて伸ばす。手全体を粘液まみれにすると、今度は顔ではなく、濡れた手を丑嶋の股間に向けた。
丑嶋の体はまだピクピクと小刻みに揺れていた。樺谷は近くにあった枕を引き寄せると、震えている腰の下に敷いてやる。腰は高くもち上がり、性器よりも隠すべき恥
部が樺谷の手によって晒された。
「あ・・・」
恥辱的な恰好に丑嶋が小さく声を出したが、その声はもうすでに反抗的な感じはない。それどころか媚を含んだ甘い声音で樺谷を誘ってさえいる。
誘われるまま、樺谷は後孔に左右の手の人差し指を一本ずつ差し入れた。
「くぅっ、んっ」
更に甘い喘ぎ声を出す丑嶋に喜びを与える事を嬉しく思い、樺谷は指で穴を左右に押し広げながら第二関節まで埋めた。指の関節部分が入口部分に引っ掛かり、後孔の
形が歪んで見える。埋めた指を出すと、粘り気が強い液体が指に絡みつきながら掻き出されていく。
何度も抽送を繰り返すと、硬かった後孔は緩んでくる。樺谷の指はあくまで慎重に抽送を繰り返す。指を根元まで埋め込むと指先を細かく動かして前立腺をくすぐる。
気持ち良くて仕方がないのか、後孔は内部からざわめき、左右の手の指二本を勢いよく締めつけてくる。
「んうっ、樺谷っ」
股を大きく開かせて後孔を弄っているおかげで、一度射精した丑嶋の性器が目の前で面白いほどムクムクと膨らんでいく。夢中で手を動かしていると、丑嶋が切羽詰まっ
た声で呼びかけてきた。
「んー?」
しかし、樺谷は目の前の後孔を解すことに夢中で生返事をした。
「樺谷、もういいだろ?」
「んー?・・・・・・おうっ!」
このままではまた指でいかされてしまうと危機感を感じたのか、丑嶋が手を伸ばして樺谷の性器をズボン越しに握ってきた。敏感な部分に突然触れられ、樺谷はビクン
と大きく震えた。
驚いた顔で丑嶋を見ると、丑嶋は顔を赤く火照らせたままでしてやったりと笑っている。自分ばかり追い込まれているかと思ったのだが、手の中にある樺谷の性器は服
越しにでも血管が脈打っているのが分かるほどなので、少しだけだが余裕が出てきたようだ。
「お前もこんなにしてて、そろそろだろ?」
寝転がったままの丑嶋の手は素早く樺谷の下半身の衣類を寛げさせると、引き出した性器の先端を「良い子良い子」とばかりに撫で擦る。
「んっ、おっ、丑嶋くんっ、ちょっとタンマ!」
「嫌だね」
後孔から指を引き抜き、腰を引こうとする。だが先端を重点的に攻められると、うっとりとしてしまうような快楽が生まれて、丑嶋の手から逃げる事が惜しくなってし
まう。カウパーも流れ出し、指と性器の間で摩擦されて濡れた音が響きだした。
「さて、もう良いかな」
丑嶋は指が十分濡れると、やっと手を性器から離した。性器から離れした手で自分の後孔に触れ、すでに塗りつけられた自分の精液と樺谷のカウパーを混ぜ合わせた。
散々樺谷によって掻きまわされた後孔には快楽の名残がある。指の腹が触れる度に後孔は閉じたり開いたりを繰り返し、何者かの侵入を待ちわびている。
樺谷は丑嶋の行動から目を離せずにジッと見入っている。痛いくらいの視線を感じ、丑嶋の冷静な部分は途轍もない羞恥を感じている。だが、それ以上にアルコールで
沸騰し続ける頭では羞恥より快楽が必要に思えて仕方がないのだ。
後孔の内部も外部も濡らしきると、やっと丑嶋は手を離す。手はまだ濡れていて、見ているだけで興奮できる。
「樺谷」
濡れた人差し指をクイクイと曲げ、樺谷を呼ぶ。樺谷は素直に丑嶋のすぐ傍に近づいた。
「そろそろ来いよ。もうブチ込め」
腰の下に枕を入れられて恥部を晒しているにも関わらず、丑嶋の態度はどこまでも傲慢だ。
それでも、樺谷はその誘いにむざむざ乗るしかなく、卑猥な恰好で待っている丑嶋の股の間に鎮座する。膝立ちをし、反り返った性器を挿入し易いように亀頭が下に向
くように先端を下げ、欲しがってヒクつく後孔に押し当てた。
「あおおっ、ふーっ!」
弾力のある亀頭が後孔を押し広げ、緩まっていながらも狭さを残す直腸のど真ん中を太い肉感的な竿が開き、ついに根元まで埋まってしまった。
「ふう〜っ、ううっ」
丑嶋は喉を震わせながら喘いだ。
「うあうっ、あっ、太ぇよ!樺谷のやっぱりスゲェ」
何度しても驚くほどの逞しさを誇る樺谷の性器に、丑嶋の内部が急激に収縮してフィットしだした。だが内部の肉が竿に巻きつききる前に樺谷が動き出したので、凹凸
とした直腸壁は動き回る竿にそこらかしこを擦られてしまう。
丑嶋としては、普段なら奥に奥に来て欲しいのだが、裏筋が前立腺のある腹側を刺激し続けるので、太さと相まって、快楽は抜こうが指そうが一緒だ。眼をギュッと瞑っ
ても閃光のような火花が散って、眼球と瞼の間が明るい程に体が喜びを感じてしまう。我慢できずに手を前に回し、濡れきった自分の性器を触ると、その刺激にも敏感に
反応して、引き締まった丑嶋の体が生々しくうねり始めた。
「あーっ、締まるっ、やっぱり丑嶋くんの中は良いねェ」
丑嶋の体の蠢きにより、樺谷の性器が強烈に締め付けられた。
「ううん、締まりすぎだけど・・・」
余りに締めつけるものだから、樺谷の腰が止まってしまった。だが、根元の締めつけに対して、内部の直腸粘膜の柔らかさが同時に性器に襲いかかってくる。根元から
先を包み込む融けてしまいそうな快楽には、性に対して人並み以上に経験値がある樺谷でさえ圧倒される物がある。おまけに丑嶋が自分で自分の性器を撫で擦ると、痛み
を感じる程に締めつけている括約筋が徐々に緩み、丁度良い具合になってくるので、余計に快楽が増してきてしまって樺谷としては困ってしまう。
丑嶋の冷徹さともまた違った冷静さと余裕がある樺谷だが、もう余裕の笑顔を保つのも無理になってきて、必死の形相で性器を叩きこんでいった。
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
途中で忍者に出くわしてしまったのでID変わってます。途中から社長の逆襲が始まり始めましたが、やっぱり社長は身体的には受だが攻めの姿勢がお似合いです。
あと一回で終わります。スペースお借りしました。
>>365 淑女SSきた!ありがとうありがとう
「指輪探して」は自分も禿上がった…不倫は最高です。女子が絡むの萌える。
>>366 わっふううう!楽しみに待ってました!
素直な社長が新鮮でかわいすぎます…!樺谷GJ!
樺谷かっこいいし良いキャラだから原作にも再登場して欲しいですね!
全裸で続き待ってますー!
>>366 毎回素晴らしい萌えを有難うございます!
樺谷がスマートでかっこよく、酔った社長はいつもよりは少しだけ素直で更にエロ可愛いくて禿げました
続きも首を長くしてお待ちしております!
大昔書いたものが出てきました。成仏してくれるように、供養を兼ねて置いておきます。
いつかどこかで、誰かが楽しんでくれるといいなぁ。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
1999年2月23日
上空に輝くでかい太陽。真っ青な空が目にしみた。
ここはアリゾナ州ピオリア。
シアトルマ理ナーズの春季キャンプ。
真冬の日本と違って、かなり暖かい。
少し動いただけで汗が流れて、筋肉が柔らかくほぐれていく
帰りたくねーなー。
おれは呟いてグラブを軽くポンポンと二度叩く。
信じらんない。
目の前にケン・グりフィーじゅにあ。だよ。
打っては2年連続の50本塁打以上、3年連続140打点。
守っては9年連続のゴールドグラブ賞を受賞。
8試合連続本塁打という大リーグタイ記録も持つ。
生きながらすでに伝説の人。
そんなシアトルマ理ナーズの大スターが人懐っこい笑みを浮かべておれを見返した。
ウィンク。
明るい褐色の肌に、眩しく光る白い歯。
おれはクラッと目眩に落ちて、それからちょっと照れて笑う。
お返しにウィンク。
柄じゃないよ。
でも、うれしいんだから仕方がない。
自分はだませないからね。
全身の細胞がうれしいって叫んでるんだ。
マ理ナーズのみならずメジャーを代表するスーパースターで、常にファンを魅せることを考えてプレーする、おれの理想。
憧れ続けてもう何年たつんだろう。
なんて言ったらいいんだろう…メジャーの至宝なんだ。
その彼と今、同じグランドに立っている。
目の前で彼と同じユニフォームを着て、彼とキャッチボールしている。
今朝は、時差ボケか、それとも興奮のためか、とにかく朝の3時に目が覚めた。
昨日、関空を発って、そのまま宿舎のホテル(あのケン・グりフィーたちと
同じ高級ホテル)にとってもらった1人部屋で、スイッチが切れるみたいに
眠ったんだ。
朝の7時45分に球場に入って…もちろん一番乗りだよ、だっておれルーキー
だからね…ここでは。
それから、逸る心を押さえて、ロッカールームでマ理ナーズのユニフォーム
に袖を通した。
日本と同じ51番。
去年まではエースのラんディ・ジョンソンがつけてた51番。
似合う?似合う?って何度も聞いたら、モいヤー選手に「ヤングボーイみたい
だね」って笑われた。
みんながスタートする一時間前から一人でアップをはじめた。
9時頃から選手たちが続々とグランドに現れはじめて、とうとう。
とうとうだよ。
9時半、全員集合、練習開始。
でね。
おれ、180あるんだけど、やっぱり大きいメジャーの選手に囲まれる
とさすがに埋もれちゃうんだ。
今オフ、はじめてマ理ナーズのキャンプに2週間合流できるって聞いた時、神様、まさか
夢じゃないよな?って思った。
実現させてくれた球団とオーナーとコミッショナーには、いくら感謝してもしたりないと思う。
だから早々に、例年以上に気合を入れて自主トレしたんだ。
コンディションは万全、はっきり言ってシーズン中よりいい身体に仕上がってると思うよ。
体重はベスト、フィジカルは最高。
ついでに、少しもみあげを伸ばして無精ひげを生やしてみた。
0RIックスの今年の選手名鑑をこの顔で撮ったら、イチ口ーはどういう心境の変化かって、スポーツ紙に
痛くもない腹を探られたけど、別にたいした理由はないんだ。
アジア系は幼く見られがちだし、とくにおれは童顔だから。
彼には最上のおれを見て欲しい。
肩ならしの軽いキャッチボールなのに、ぐんと胸元で伸びるゾクゾクするほど良い球が返ってくる。
ものすごいナックルボール。
ため息が出ちゃうよ。
95年のOFF、V旅行の帰りに単独渡米してはじめて彼に会ったんだ。
あの時は豪華大名旅行だった。
シカゴでブルズの神様MJに会ったし、MJのレストランにもナイキタウンにも行った。
けどやっぱり、なんて言ってもハイライトは、ケン・グりフィーじゅにあ。とケン・
グりフィーシニアのMLBのスーパースター親子と食事できたことなんだ。
あの時のおれのはしゃぎようったらなかった。
スポンサーとの義理もあって、その旅の間中カメラがついて回ったのは仕方ないと思うよ。
でもさ、後日放映された特番を見て、おれは赤面してしまった。
てんでガキなんだもん、おれ。あの時22歳だったのに。
おかしいくらい大声で笑ってるし、顔面は崩壊してるし、うれしくってうれしくって仕方
ないって全身で喜んでるんだ。
ただ彼の隣を歩く時ですら、スキップ踏んでるみたいに跳ねてるの。
…恥ずかしいよ…。
おれをね、よく冷たいとかクールって言う人いるよね?
おれ、そう聞くとちょっと安心するんだ。
その人たちはきっと知らないんだね。
こんなにおれが分かりやすい性格してること。
バッティング練習。
エースのモいヤー投手相手に7球勝負。うちヒット1本。
この勝負、とりあえずおれの負けかな?
ケージの横でケン・グりフィーがおれの構えを真似てみせる。
ニカッと笑って一本足。でも、相当ぎこちないんだ。
お返しにおれも彼のフォームを真似して、バットを高く上げて肩をぐりぐりと動かしてみた。
お互い、なにがうれしいんだかってくらい爆笑してハイタッチ。
なんでだろう…おれ、彼に好感持たれているみたいだ。
素直にうれしい。
んでから、練習終了後、自主的に約2時間みっちりウェイト・トレーニングに汗を流した。
その後、日本から来てる100人近い報道陣からインタビューを受ける。
やばいなー…つい正直に、一日目にしてもう帰りたくなくなってるって言っちゃった。
また「今季終了後、イチ口ー大リーグ行き確実?」ってスポーツ紙の見出しに出ちゃうね。
チームの印象と練習の感想を聞かれる。
「どんな奴が来たかなあ、っていう風に、その辺でコミュニケーションを取るのが大変かな、
と思ったんですけど、すごく受け入れてくれたんで、そういうものはなくなりました」
本当に思っていることがするっと口から出て、我ながら驚いた。
「かなり短い時間で集中してやってますし、内容的にはすごい僕は濃いと思いますけど…」
「身体は同じ感じでも、空気の感じが違うんです」
――…どう言ったら、日本にいるみんなに伝わるんだろう。
この空とこのフィールド。
広々と果てのない緑のベースボールパーク。
バッティング練習の打球がきれいな放物線を描いて、スタンドに突きささる。幻の観衆があげる大歓声が、空耳のようにおれを包んだ。
鳥肌が立つこの雰囲気。
たった二週間っていうのがつらいね。
――…いつか。
今は無理でも、いつか必ず戻ってくるよ。
かなりキザなこと言ってもいい?
おれはバットを背負ってグラブを手に、Baseballの星の下に生れたんだ。
ホテルの自室に戻ったら、メッセージランプが赤く光っておれを呼んでいた。
受話器をとると、ケン・グりフィーが良く響く低い声で、帰ったら部屋に電話をくれって言っている。
英語はそんなに得意じゃないけど、それくらいはわかるんだ。
なんだろう…晩飯に誘ってくれるのかな?
彼のルームナンバーを押して、少し派手に動きはじめた心臓に苦笑する。
おれって、初デートの中学生みたい。
手の平ににじむ汗を意識して、こんなにアガったのは久しぶりだと頭の片隅で思った。
昼間彼が言ってた、美味いイタリアンの店ってやつかな。
コール音を聞きながら、おれはふと思った。
そこがカジュアルな店だといいんだけど…。
おれは素早く手持ちの服と靴を検討しながら、スーツケースの中の限られた服をどう組み合わせるか考えていた。
できれば、あんまり窮屈な店じゃないほうがいいな…。
「ルームサービス・メニューの値段を見たかい?」
大理石の床とマホガニーの調度品で統一されたホテルの雰囲気は、あくまでフォーマルだった。
スタッフはほとんどがタキシード着用で、客は全員「サー」か「マダム」と呼ばれるような場所なんだ。
ケン・グりフィーはゆったりとしたコットンのセーターを着て、裸足のまま深い絨毯を踏みしめておれを迎え入れる。
「ここはいいホテルだけど、なんでサンドイッチがあんな値段なんだろう。少し馬鹿げてると思わないか?」
球団が選手用にワンフロア全てを借切っているから、幸い、誰にも邪魔されずに彼の部屋まで歩いてくることができた。
「あなたのようなスーパースターがルームサービスの値段を気にするなんて、ちょっと意外だよ」
おれが言うと、彼は軽く肩をすくめて、なぜ?と問う。
「当然じゃないか。ものごとにはすべて妥当な値段ってものがあるんだ」
鮮やかな笑みを浮かべて彼は続けた。
「これからチャイニーズを食べに行こうと思ってるんだ。君の気に入るといいんだけれど」
そう言って、クローゼットからシックなグレーのジャケットを取り出す。
おれはノーネクタイだ。
悩んだ挙げ句、結局、ヨー時ヤマモトの黒のジャケットにシンプルな白のTシャツを合せた。
彼は、果たしてネクタイを手に取るんだろうか…。
「…そこは、ドレスアップしなきゃまずいかな?」
おれが恐る恐るたずねると、彼は大きな目を見開いて、次の瞬間声を立てて笑った。
「ショートパンツにスニーカーでも大丈夫だ。今の君なら、大統領よりいい席に案内されるのは間違いないね」
君が日本で一番稼いでるっておれは知ってるよ。
彼はそう言って、おれに視線を向けた。
ホテルの自室にいるケン・グりフィーは、緊張をとき、これまでになくリラックスしているように見える。
フィールドで見せる、完璧なまでに迷いのない、自分がなにをすべきか万事心得ているような自信に
満ちた態度とは違う、穏やかな暖かい雰囲気を漂わせている。
いたずらっぽく微笑んで、おれのジャケットの襟にすっと指をのばした。
「2000ドルもするジャケットなんて、いったいどうやったら買えるんだ?」
くるくると目を回して大袈裟にため息をついてみせる。
彼の大きな手が、おれの心臓の真上にあるんだ。
そう思っただけで、おれの鼓動は普段の倍の早さで鳴りはじめる。
どうしよう……やばい。
「そう言うあなたが、おれの何倍稼いでいるのか、ほんとにおれが知らないとでも?」
全米屈指の高給取のスラッガーに逆襲して、彼の革靴の美しいパッケージを指差す。
「ニーマン・マーカス…あんなところで買物をする人と話す日が、まさか現実におれの人生にやって来るなんて」
おれは、ほんの冗談のつもりだった。
なにを言っていいのかわからないから、最初に目に付いたものをとにかく話題にしようと決めていたんだ。
はっきり言って、彼の部屋で彼と二人っきりだという状況に、おれは舞い上がっていた。
だから、彼がこう答えた時には自分の耳を疑った。
彼はにっこり笑って、おれにこう言ったんだ。
「気に入ったのかい?サイズさえあえば君にあげるのに…」
ひとりの人間に対する思いを、どうすればそのまま伝えられるんだろう?
普段、大人同士ではまず口にしないようなことを、どうすれば言葉にできるんだろう。
やみくもに彼といると楽しいのはなぜだ?
おれは、そんなことを考えながら、レストランで彼と時間を過ごしていた。
ただ憧れている、だけではとうてい片づけられない、この特別な感情。
正直に言って、いささか持て余してもいた。
おれには兄さんがいる。
ケン・グりフィーに抱いてる感情は、もしかするとそれに近いような気もする…。
でも、兄弟に対する気持ちとは、明らかになにかが違うんだ。
親友に感じる愛情ともどこか違う。
もっとずっと前から、お互い知り合うことが決まっていたような奇妙な感じ。
彼はおれを、間違いなく誰よりも本質的に理解している。
そしておれもまた、同じだけ深く、誰よりも彼のことがわかる。
>>2 >(4)一度にテンプレAA含め10レス以上投下しないで下さい(連投規制に引っかかります)
しえん
支援?
テンプレをよく読まずに投稿したため、連投規制にひっかかってしまいました。
本当に申し訳ありませんでした。反省しています。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
そんな風に、なんの迷いもなく言い切ってしまえるだけの時間をおれたちは過ごしていないのに、
なのにおれたちは、お互いがそう感じていることを暗黙の内にわかっているんだ。
「イチ口ー…?」
彼が慣れない箸を持つ手を止めて、ふいにおれの名前を呼んだ。
褐色の瞳がおれをとらえて、ほんの少しかげる。
その顔には、子供がよく見せる表情が浮かんでいた。
ほんの一瞬、笑いを誘おうとしているかのようなあの顔。
口と目がわずかに歪んで、不安に眉を寄せた頼りないあの顔。
彼がこんな表情をおれに見せる…。
おれは。
…おれは……、どうしていいのかわからなかった。
ただ彼を見つめていた。
「退屈かい?」
次の瞬間、なにごともなかったかのように微笑んで、彼はいつもの大スターに戻る。
「まさか」
間髪入れずそう答えて、おれは彼のために新しく運ばれてきた大皿の料理を取り分けてやろうと席を立つ。
そんな風に、おれのピオリアの二度目の夜は静かに過ぎていった。
1999年3月6日
オープン戦第三戦。
気温29度。
緑の芝生に眩しく太陽は降り注ぐ。
日の射すグランドは30度を軽く超えている。
快晴。
さらさらした汗が、ゆっくり頬を流れ落ちて時が止まる。
湿気のない風がフィールドを吹き渡り、カーンと乾いた打撃音が響いた。
おれはゾーンに入っていた。
(集中力の極致、まるで彼岸の一歩手前にいるような冴えた境地を指して、タイガー・ウッズは「ゾーン」と呼ぶんだ)
半分醒めて、半分眠ったような不思議な感覚。
全身の感覚が研ぎ澄まされて、おれは最高にリラックスしている。
熱い身体の奥深く、今、この瞬間スイッチがONになる。
ボールを追いかけて走る。
振り仰いだ空に、高く高く光るアリゾナの太陽。
眩しくて目にしみる…。
蒼天駆ける白球。
ヘヴンリー・ブルー。
天国の青という名の空の色。
かたつむり枝に這い
神、天にしろしめす
すべて世はこともなし
こんな長い午後、おれはベースボールに恋をする。
楽しい時間であればあるほど、飛ぶように速く過ぎてゆく。
おれの2週間は、あっという間に終りを告げた。
4日のオープン戦の後、食事にいって食べたスペアリブのせいで体調を崩して、5日の第二戦を欠場したのはほんとくやしいけど。
でも今日は、万全じゃない体調ながらも、なんとか最善は尽くした。
あのバックホームは悪くなかった。
おれは、7日、日本に帰る。
----------------------------
アリゾナ州ピオリア。
6日の夜遅く。
シアトル・マ理ナーズ宿舎。
外野手ケン・グりフィーじゅにあ。氏のベッドルーム付近において異空間の出現。
おれと彼が二人で作った。
道徳なんてくそくらえ。
そんなもん、一足飛びに飛び越える。
おれと彼の間にだけ、法律があればいい。
「愛している」
彼の言葉を、おれは夢の中のように遠く聞いた。
彼が結婚しているとか…彼が誰で、おれが誰かなんてどうでもいい。
おれは今までストレートだったけど、彼がどうなのかなんて、そんなことも関係ない。
今夜で遠く隔てられるんだ。
また、1年会えない。
「今夜、君を天国につれていくよ」
彼はいっそ潔いほどキザなせりふを呟いて、そして、サラリとバスローブを脱ぎ捨てる。
………うそ。
おれは、彼が隠そうともしない両足の間を茫然と見つめた。
床を向いてぶら下がってんだから、あれはまだ戦闘状態じゃないんだ。
ちょっと待ってよ。
というと、あれがあれ以上に体積と長さを増すなんてことがあるんだろーか?
ベッドサイドの主審がプレイボールを告げると、あれは…。
――そんなことがこの世にあってたまるか。
おれはそれだけでもう逆上気味に、そう思った。
いいんだ。
おれはニッポン男児なんだ。
このさい、あまり関係ないことを考えながら、もはやかなりヤケで、彼の前で服を脱ぎ捨て一糸まとわぬ姿になる。
くるぶしにからみついたセーターを蹴り飛ばして彼を呼んだ。
「ずっとあなたに憧れていた。
だから愛したいんだ今夜」
彼は呆気にとられておれを見ている。
こうなりゃ、大サービスだ。
頬を染めて、さらにおれはつけ加える。
「愛ってなんだか教えてやるよ 」
ヒューッと口笛を吹いて、彼は爆笑する。
「 んじゃ、キス 」
低い声でおれにそう言って、楽しそうに微笑む。
うわーうわーうわー。
カッと顔面に血が昇った。
おれから、おれからっ?
死ぬほど努力して太い首に腕をまわした。
あーもう。
死にそうです。
成層圏の彼方までぶっ飛んだ。
これでおれの理性はたった今、八割方きれいサッパリ蒸発した。
「愛してくれよ」
そ…そんな。
恐る恐る彼の隣に身を横たえる。
「抱き締めてくれ」
あーもー…いちいち言うなよ…。
震えてるおれを彼のでかい手が強く抱いた。
「俺を良い気持ちにさせてくれ」
見上げたおれのまぶたに、彼の唇が静かに触れる。
「ほら、来いよ 」
んなこと急に言われても。
彼はちょっと肩をすくめて、それから、なんとも言えないワルい顔で笑いかけた。
「こうやって寝そべってるだけ?ただ強く抱き締めあうだけなの…?」
おれの手首をつかむ指先。
おれの身体にキスの雨が降る。
「君を焦らしたいよ」
真っ赤な顔で固まるおれを、彼は身体の下に抱き込んで呟いた。
「これって好き…?」
うわ。
マジかよー…。
やばいよ…。
「こんな感じは?」
…………。
だめだー…。
もー全然よゆーないんだー…助けてくれよ…ケン・グりフィー…。
----------------------------
…――sunrise.
呟いたあなたは、空を指差す。
白いバスローブをゆるやかに風になびかせ。
途方に暮れた子供のような顔でおれを見るんだ。
たまらないよ…ケン・グりフィー。
そんな顔しておれを見ないで。
…泣き出しそうだよ。
朝露に濡れた手すりにもたれて、澄んだ朝の大気を身体にまとう。
二人並んだバルコニーから、昇る朝日が見えた。
紫にけむる朝もやを切りとって、白く鋭い光線が一筋、薔薇色の雲間から輝く。
夜が明ければ、今日、おれは日本に帰る。
まだやらなきゃいけないことが残ってるんだ。
閉塞した日本野球に風穴を開ける。
力と力の勝負、野球のそもそもの醍醐味だった、個人対個人の対決。
野モさんが目指して、伊ラ部さんが焦がれたあのベースボールを、おれはおれなりに実現する。
おれは、今より強くなる。
Please wait for me.
You know…I'll be there.
FAまで、あと2年。
誰にも文句は言わせない。
血と汗を対価におれは自由を勝ち取る。
この手でつかむよ。
あなたの国に、おれが欲しいと言わせてみせる。
―――威風堂々。
いつか太平洋を超える風になる。
緑のフィールドを渡る涼しい風になる。
おれはあなたのうえに吹く、一陣のつむじ風になろう。
Make it last forever.
Don't let our love end.
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
中断してしまい、本当に申し訳ありませんでした。かさねがさねお詫びいたします。
闇金ウシジマくんで樺谷×社長。
>>375の続きで、某姐さんからアイデアを拝借いたしました。エロありです。バレンタインデーのお話です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
丑嶋も樺谷の動きに必死に合わせて腰を動かす。同時に手も動かし、性器を扱いて自ら追い込んでいく。
「ああっ、ああっ、あっ」
赤ん坊がおむつを替えられる時のような姿勢で交わっているので、丑嶋の体は真っ二つに折れ曲がっていて、二人で動けば頼りなく揺れる。
激しい動きに、つい先程あれだけ摂取したアルコールもすっかり抜けてしまっていて、体に残り、今なお上昇し続けているのは肉欲だけだった。
しかし、後孔を太い物で突かれ、性器を自ら嬲っても、何か足りない気がするのは何故だろうか。丑嶋は足りないものに考えが及ばず、樺谷に助けを求めるように左腕
を樺谷の首に回し、すがりついた。
「丑嶋くん、今日は本当にいい子だね」
首に腕を回して懸命に縋りついてくる丑嶋を本心から可愛く思い、樺谷も丑嶋を抱きよせてやった。
「んっ?!ああっ!」
互いに抱き寄せ合ったことで、丑嶋の肌蹴られた裸の胸は服を着たままの樺谷の胸に密着した。それだけで体がブルリと震える。おまけに樺谷が激しく腰を上下に動か
すものだから、自然と剥き出しの乳首が服に擦れ、性感を呼び覚まされて硬く尖りだした。
「うあっ、あっ」
何か足りないと思ったら、これだったのか、と丑嶋は頭の中で納得した。それと同時にあっという間にピークに突入し始めた。性器が手の中であからさまに膨張し、裏
筋が痛いくらいに張りつめてくる。やおら手の動きも早まり、夢中で扱く。胸ももっと気持良くなりたくて、上下だけでなく胸だけ左右に振ると、密着したままの乳首が
歪むまでに擦りあげられた。
「ふぐぅっ、ううっ、樺谷ぁっ」
性器も気持ち良い、胸だって同様だ。だが、欲張りかもしれないが、樺谷を受け入れている部分にだけ少し刺激が足りない気がするのだ。互いに動いているので十分だ
と感じなければならないのに、今の丑嶋にとっては決定打に欠けるのだ。
「樺ぁ・・・ゃ、もっと・・・、うあぁっ」
貪欲に求めたいが、これ以上どうしてくれと伝えれば良いのか分からず、丑嶋は喘ぎながら樺谷を呼ぶ。
「丑嶋くぅん、俺、もうそろそろ・・・」
樺谷は顔を真っ赤にしながら限界を訴えた。そして、丑嶋の心を見透かしたのではないだろうが、雁首が見えるまで腰を引いて引き抜く。
「うあっ?!」
奥に到達していた物を一気に抜けるギリギリまで引き抜かれ、丑嶋は弱々しい声で喘ぐ。だが、また弱々しい声で一声啼こうとした瞬間、樺谷が強烈なストロークをか
ましてきた。
「ひっ、おおっ!」
枯渇していた性感を的確に刺激され、樺谷を抱きしめる丑嶋の左腕に力がこもった。
これだ、と思った。だがどう求めれば良いか分からなかったのだから仕方がない。
けれど、丑嶋が口に出して求めずとも、樺谷は自ら答えを示してくれた。これだから、樺谷とのセックスは断れないし、止められないのだ。丑嶋は狂ったように性器を
弄る手を動かした。体全体が戦慄き、手の中で性器が心臓を内包したように大きく脈動した。
「はああっ!あっ!」
出る、と思った次の瞬間、射精と言うよりも放尿のように長々と精液が手の中に出た。余りの快楽に全身が硬直し、ガッチリした太ももを樺谷の腰に絡みつけた。繋がっ
ている部分を見せつける様に腰を突き上げ、直腸壁で中にある性器を扱き上げる。
「んんっ!」
性器全体を雑巾を絞るように捩じりながら締め付けられ、樺谷は呼吸を荒げた。我慢する間もなく射精感が痛みと勘違いしそうな強さで迫ってくる。圧巻の快楽に促さ
れ、自棄になったように腰を突き出し、中に射精してしまった。
「くふぅっ!うっ、丑嶋く・・・んっ」
「ばっ、馬鹿野郎、中に・・・、んんっ、くそっ!」
女性ならば孕んでしまいそうな熱い物を中で出され、丑嶋は射精した直後にも関わらず、ブルブルと体を断続的に震わせ、ドライ状態でまた達した。
「ふぅっ。すっきりした」
射精した後、樺谷は腰を引いて性器を引き抜いた。熟れた肉壺から出た性器はまだ芯を持っており、尿道口が少しだけ口を開いている。何となく根元を持ち、そのまま
手で先端に向かって搾り出す要領で握っていくと、管の中に残っていた精液が勢いよく飛び出た。爛れて赤くなった丑嶋の後孔は中から漏れ出た精液と、新たに絞り出さ
れた新鮮な物と混じり合い、垂れた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お泊まりの時の普段なら終わった後は、特にやることも無い場合、樺谷はすぐに身支度を整えて寝てしまう。だが、今日は何だかくっ付いていたい。樺谷は何も言わず、
うつ伏せでゲーム機を弄っている丑嶋の尻をズボン越しに撫でている。
まさか丑嶋が自分の為にチョコレートを用意してくれているとは思わなかった。今までただ単純に体を重ね合わせるだけの関係だった。それでも大して不満はなかった。
樺谷は男を抱けるのだが、相手は問わずという訳ではない。自分でも意識していなかったし、想っても届かないと思っていたので、はっきりと丑嶋に対して好意を示し
た事はなかった。
けれど、丑嶋の方からグイグイ来て貰えるとなると話はちょっと違ってくる。
「ねぇ、丑嶋くん・・・」
「あ?何だよ、今ゲームいいところだから後にしろ。それと、水持ってこい」
「はいはい。水ね」
照れているのかな、と良い方に解釈し、素直にベッドから降りて、立ち上がった。言われた通りに水を持って来てやろうとする。そう言えば、冷蔵庫はどこにあっただ
ろうか、と部屋の中を見回す。
「あれ?」
泳いでいた視線がベッドサイドのテーブルの上に停まる。そこには先程丑嶋がくれたチョコレートの包み紙と同じ柄の物が数点と、正方形の紙が入った透明のビニー
ル袋が置いてあった。
何となく手に取り、中の正方形の紙を取り出してみた。紙は二つ折りのカードのようだ。チョコレートの包み紙は中身がない。樺谷が貰ったのは一つなので、丑嶋が食
べたのだろう。どうせならば全部くれれば良かったのに、と思うが、恐らく丑嶋としては樺谷に直接あげる、と渡すのが恥ずかしかったのではないだろうか。
それならば仕方がない。樺谷は苦笑しながら二つ折りにしてあるカードを開かないままで見つめた。中には何が書いてあるのだろうか。もしかしたら、丑嶋からのメッ
セージではないだろうか。
樺谷は少し照れながら、カードを開いて中を読んでみた。
中には丑嶋の手書きの文字ではなく、素敵な印刷文字でこう書いてあった。
「いらっしゃいませ。ようこそ当ホテルへ。どうかゆっくりお寛ぎ下さいませ。こちらのチョコレートは些少ではございますが、当ホテルからのバレンタイン・プレゼ
ントでございます」
樺谷は頭をダラリと垂らし、力ない声でカードを読み上げた。
「・・・なるほどね。そうきたか」
燃え上がり始めていた頭が、見る見るうちに鎮火されていく。とてつもなく有り難く食べたのに、チョコレートはホテルの用意してくれた物で、しかも殆どは丑嶋が食
べてしまっていた。これはもう、まず望みが無い。
「樺谷、水」
「はいー」
樺谷は肩まで落とし、冷蔵庫に向かって歩みよっていく。
明らかに萎んだ返事をする樺谷を気にせず、丑嶋は夢中でボタンを押す指を動かし続けた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
社長総受の薄い本を出したしと思へども 初心者には個人誌はあまりにハードルたかし せめてニアホモ寸前の取り立てくんを読んで 妄想の旅にいでてみる by朔太郎
スペースお借りしました。そしてレスくれた方、ありがとうございました。
>>406 長編お疲れ様でした!堪能させて頂きました…
社長えろいよ社長
>>406 ありがとうございました!
バレンタインデーに対する2人の思惑の差やすれ違い、樺谷の勘違いがすごく可愛いかったです
ちょっと甘えモードの社長が可愛くて滾りました
GJ & 乙でした
409 :
ナマモノ注意!:2011/03/04(金) 17:33:26.02 ID:KlnuHymb0
禁断のナマモノ。ただしエロなしgdgd兄弟ものです。しかも超タイミング悪しorz
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 金9灰汁等でセクハラされまくりのウサギちゃん中の人とその弟テンテー
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| しかも灰汁等観てないと意味不明の不親切なお話
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
灰汁等のエロエロセクハラっぷりに萌えてみたんだが、あまりに殺伐としててカプが固定デキナカターヨ。
side兄
仕事を終え、久々に自宅マンションへ戻った光太郎は、車を降りたところでマネージャーに腕を引かれた。
「光太郎さん、マンション前に誰かいます」
背後にかばわれ、光太郎は目をこらした。街灯の陰に隠れるようにひっそりとたたずむ人。それが光太郎の姿を認
めて近づいてくる。
無遠慮なマスコミ関係者かはたまた行き過ぎたファンの待ち伏せか、と警戒するマネージャーに光太郎も一瞬身を
固くした。だが灯りに浮かぶ見知った者の顔に、表情を和らげる。
「ああ。あなたは確か」
手を挙げてマネージャーを制し、光太郎はダークスーツの男ににこりと微笑んだ。
「光太郎さん?」
不審な面持ちのまま光太郎を振り返るマネージャーに、小声で告げる。
「弟の、秘書」
事情を察して慌てて会釈する業界人に対して、お手本のように綺麗なお辞儀を返した男は、光太郎に向き直り短く
要件を伝えた。
「夜分、申し訳ありません。先生があちらに」
目線で促された暗がりに目をやれば、確かにマンションのエントランスからは死角に入る路上に一台の車が止まっ
ていた。
マネージャーを帰すと、光太郎は弟を伴って自宅マンションに帰宅した。
「驚いた。いきなり来るから」
「迷惑だったか」
コートをかけてソファにお互い腰を落ち着ける。光太郎の言葉に新次郎は眉をしかめた。
「んなことないよ。ただ、何もないんだ。ここんとこ仕事が立て込んでてあまり家にいなかったからさ」
「そんなの別に…」
「事前に連絡くれればよかったのに」メールでも、電話でも。
言うと新次郎は一瞬黙り込んだ。両手の指を組み、正面から光太郎を見つめた。
「急だったし。どうしても会って話したかったんだよ」
「?なんだ。電話じゃ言えないようなことか」
正月に会った時には何も言っていなかったのにと首をかしげると、新次郎がぼそりと告げた。
「ドらマ観たんだ。兄貴の出てるやつ」
ああ、と光太郎は破顔した。
「観てくれたのか。忙しいのに」
黒海も始まって、一年生義員は多忙だ。しかもヨ党の失態続きで正キョクも予断を許さない。今は与三餡が年度内に成
立するかの瀬戸際だ。その合間にわざわざ兄の出演する連続ドらマを観てくれているのが、素直に嬉しかった。
「観たよ。そのことで兄貴に会いに来たんだ」
頷いた弟に、光太郎は弾んだ声で語った。
「ちょっと視聴率は悪いけれど、結構ハードな刑事もので面白いだろ?ダークな雰囲気もいいし」
横浜が舞台って刑事ものの定番だよなー、と続ける。しかし新次郎の表情は硬い。
「て。あんまり面白くなかったか?」
「なんであんなドらマに出るんだよ。少しは、考えろよ」
低い声音に、光太郎はまばたいた。新次郎はきつい顔立ちだが兄である自分にはいつも穏やかだ。兄弟仲の良い方
だと自覚もしている。光太郎に対してこんな決めつけるような否定的な言い方は珍しかった。
しばしの沈黙。
「……もしかして。浅日のドラマだから怒っているのか」
窺うように口にする。
父は元より、弟や所属正トウに対し嫌がらせ以上の偏向報同を仕掛けてくる局に嬉々として?出演していることが腹
立たしいのだろうか。少々決め手に欠けるが、ドらマで新次郎の不機嫌の理由となると、この辺りしか思いつかない。
当然のごとく一笑に付された。
「んなこと今更だろう。仕事なんだし、局なんて選べないのはわかっているよ」大体、俺たちに好意的な局なんて
どこもないだろ。
さらに皮肉交じりに続けられ、光太郎は困惑する。
眉を下げた多分情けない顔で弟を見つめていると、新次郎は小さくため息をついた。
「兄貴は疑問に思わないわけ?」
「何が」
「あんな、出てくる奴ら皆に虚仮にされるような役、悔しいと思わないのか」
「虚仮って。ひどいなあ。一応、カカリ長だし?正義感の強いエリートが現実を知っていくみたいな真面目な設定じ
ゃないか」
「翻弄されまくって、空回りしてるだろ。しかも一番新しい回じゃ、兄貴の上司と部下がぐるだったぞ」
「うん、まあ結構ヘヴィーな内容なんだよね…ていうか、新次郎、お前本当にそれが言いたくてわざわざ俺に会い
に来たのか」
「そうだよ」
ふと浮かんだ疑問を口に出して、あっさり肯定される。
光太郎はあきれて天井に目を向けた。次いで先程会った秘書の顔を思い浮かべる。恐らく彼は今もどこかに車を停
めて弟を待っているのだろう。政サク秘書ではなく叔父の息のかかった公セツ秘書でもない。本人が私的に雇用した秘
書なだけマシなのだろうか。だが、こんなことに使われるなんて。
「……新次郎。お前、疲れているんだよ」
光太郎は労るように新次郎の肩に手を置いた。
side弟
見当外れの優しさを含んだ光太郎の手のひらに、それでもぬくもりを感じて新次郎は溜息を押し殺した。
光太郎は新次郎の懸念をまったくわかっていない。
当然だった。本当に言いたいことは口に出せないでいるのだから。
光太郎が口にした、マすこミと青磁家との微妙な関係はこの際関係がない。
マすこミには案外と青磁家の子女が入り込んでいる。業界にはコネも横行しているし、青磁家とは持ちつ持たれつな
側面があることは否めない。昨今の木春事件再来のような報同各社の姿勢ではもはやその不文律も途絶えがちだが、
有力者の子女という駒はやはりマすこミには有難がられるものなのだ。また時にマすこミに巣食う人種は、権力者ゆか
りの者を使役することに歪んだ喜びを得る。それが表の舞台では叩けない大物であればあるほど愉悦は増すだろう。
そう。叩きつぶそうとして潰せず、華々しくマすこミを翻弄して表舞台を去った父の息子などはいい生贄になる。これは既に
新次郎自身が受けているバッシングにも感じる怨念めいた感情だ。
だが、それにしても。
与三餡通過に伴うヨヤ党攻防が激しさを増す会期中、ようやく取れた時間に撮りだめした兄のドらマ4回分をまとめて視聴した。
正直、絶句した。
一話完結の刑事もの。各回で事件が起こり光太郎演じるカカリ長とその部下たちが犯人を捕らえ解決する。いわゆる定番の刑事ドラマだ。
だが初回から早々、兄は上司のネクタイを直させられ、部下の刑事達にはおとりにされてヤクザに〆あげられ、最後は
再び上司と二人きりで観覧車。
これはなんだ、と目を疑った。事件の細かい概要など頭に残らなかった。
そして2話、3話と続けても、光太郎の扱いは変わらなかった。新婚家庭という設定の光太郎の家に押し掛ける上司の過剰な
パワハラ。しゃくし定規の正義感で、部下たちから厭われ捜査をはずされ、また利用される係長。
ひどいものだった。狂言回しのようだと思った。
これはドらマという名を借りて、俳優という職に就いた兄を公けに辱める嫌がらせではないだろうか。
いや、嫌がらせではなく。
新次郎は気付かぬふりをやめた。
……確かに、このドらマには華が欠けている。壮年の男ばかりで刑事と記者に女性がひとりずついるきりだ。しかも役柄は画面に
華やぎを与えるに程遠い。(もしかしたら婦警にアイドルがいたかもしれない)
兄は、光太郎は、上司のパワハラや部下の反抗に、犯人の狼藉に、とまどい傷つき屈辱を受け、そのたび白い顔を感情のまま歪ませていた。
視聴者の目を楽しませるために。
そう考えて、あまりにひどい思いつきに愕然とする。だがそうと意図をもって作られているとしか思えないストーリー
展開と兄の翻弄されっぷりだった。
上司にも部下にも(両方男だ!)べたべたと体を触られる。女刑事や女性記者のほうがよほど隙がない。
毎回挟まれる上司とのシーンは、何故か決まって外だ。……なんで上司との密会場所がすべて横浜のデートスポット、もとい観光
スポットなんだ。横ス賀が地元の俺に喧嘩を売っているのかこの野郎。
思考を混乱させながら新次郎は唇を噛んだ。
だが、そんな混乱も何もかも、4話を見た後にすべて吹き飛んだ。
相変わらずの上司と部下。その中で捜査する光太郎。犯人に手錠をかけようとする兄は、部下に手錠を奪われ逆に拘束されてしまう。
その時の露わになった手首の白さが目を灼いた。
拘束されて動揺する横顔が頼りなく綺麗だった。
犯人が連行されるまで兄は手首に鎖を掛けられたままで。繋いだ部下が手錠を外した途端、殴りつけた兄の姿は…
。
融通のきかない正義感に満ちた刑事と、現場の現実を知る刑事との葛藤を描きたい製作の狙いはわかる。
わかるが兄に対する演出はあまりにも異常だった。
とにかく兄に会わなければ。会って話をしなければ。一心にそれだけを考えて、気づいたらスケジュールを調べて秘書に車を出させていた。
馬鹿馬鹿しいことに懸命になっている自覚はあった。
だが一瞬、惑ってしまったのだ。兄の、手錠をかけられた姿に。拘束された白い手に。
ひどく動揺した。
思い出して、幻惑を払うように軽く頭をふった。目の前には相変わらず柔和な笑みを浮かべた兄の顔。
「大体、ウサギってなんなんだよ。ふざけてる」
ひとり必死になっているのが滑稽で、言わずにおこうと決めていた語句を口にしてしまう。しまったと思うが、一度出てしまった
言葉は取り消せない。あんまりな形容だと思うのに、光太郎はしかし気にした風もなかった。
「そんなに気に障るか?ウサギとハイエナって」
でもなあ、とあっさりとさらにダメージを与えてきた。
「親父は面白がってたよ」
「あの人は…!」
暗に父から電話があった事を告げられ、新次郎は盛大に舌打ちした。
わかっていた。自分たちの父親がそういう人だとは。基本、自分の信念以外の事は結構面白がりで感覚の若い人なのだ。もちろん、
ソーリ時代に兄が黒海で攻撃されるという事態には真剣な怒りを込めて反論した愛すべき父ではあるのだが。
「だっけど、あんまりだろう!?ハイエナに食べられるとかさあ。たとえ話にしても不愉快だよ」
「でも、いつまでもウサギじゃないかもしれないだろ?」
不意に光太郎の声音が変わる。
「え――」
「これから、地べたを這いまわって、汚れた挙句、ハイエナになるって言ったら。新次郎はどうする?」
「ん、な」
大きい瞳を直ぐと向けた真顔で尋ねられ、言葉に詰まる。
兄が、ハイエナに?
戸惑い、兄の白い顔を何度も見直してしまう。
「なあんてな。先のネタばれはいくら新次郎にもできないよ」
にっこりとなんとも爽やかな笑顔で言い放つ。
「もしかして。新次郎は俺が汚れたハイエナになるのが嫌なのか?」
「あ――」
知らず頬を強張らせていた新次郎を覗き込んで、光太郎は首をかしげた。
向かいのソファから立ち上がり、新次郎の隣に腰掛ける。次いでよしよしと頭をなでてきた。
「驚かせて、ごめんな」
なんなんだよ、と思いつつも髪をかきまぜる手に安心する。
外見ほど何もできない世間知らずのおぼっちゃんではないことも知っている。青磁家の息子として心ない中傷やマ
すこミの攻撃に晒された経験は比類ないほどだ。人の心の裏だって幼い頃より嫌というほど見てきたはず。
なのに、ドらマの兄はあまりにも頼りなかった。
ウサギなんて言われて、上司や部下に小突かれて。全国の視聴者に絶対、欲情されている。しかも、変態「野郎」
どもにだ。兄貴は男に視姦されているんだぞ。
とは言えなかった。
兄に告げれば、それに気付いた自分までもが兄の姿に不埒な欲望を感じる下種みたいではないか。
だから、掴んだままの肩を引き寄せ首筋にかじりつく。
「――心配なんだよ、俺は」
「新次郎?」
吐息が触れる距離でもまったく警戒した風もなく優しい兄の声。
「だって、芸ノー界なんて裏があり過ぎるところだろ。兄貴が、変に染まるのも嫌なんだ」
「そんなの、正界だって同じだろ。魑魅魍魎の巣窟じゃないか」
「それはそうだけど。俺はいろいろ勉強してるし、正界の事はわかっているから」
「だよな。だから俺も心配だけど。信じてるから」
顔をあげた新次郎の視線を捉えて離さず、光太郎は極上の笑みを見せる。
「新次郎は大丈夫だと思ってる」
「――」
こういう時、兄貴はやっぱり親父の息子なんだと新次郎は思う。人たらしの、名人。
「……俺だって信じてるよ」
「ありがとう」
ディベートの訓練は兄にはまったく通じなかった。光太郎の前では新次郎はただの弟のままだ。
そして兄は。3歳年長の光太郎は、新次郎の常に上手をいく。
兄の手管を知り尽くしていながらも丸めこまれ、その上で尚、ドらマの配役のようにまっさらで鈍感な清廉さのみ
に満ちた人物と勘違いしてしまうのはどうしたわけか。
多分。
4歳の兄貴と一緒に母親に置いて行かれた時から、俺にとっては兄貴だけが大事な同志だったから。
伯母は厳しくて父は忙しくて、俺を誰も構ってくれなかった時。優しい母親の存在がなくて寂しかった時。その気
持ちを共有できたのは兄貴だけだった。
だからだ。
こんな風にされてとても落ち着くのは。心から安らげるのは。
そうに決まっている。
映像で見た、手錠をかけられた白い手がまたもや目の前にちらついたが、それは考えないことにする。
ぎゅっと今一度兄の首に抱きついてから、そっと離れる。
「大丈夫だって。それより次回以降も面白いから、録画でいいんでちゃんと観てくれよな」
にっこりとどこまでも清潔そうな笑顔で念を押され、新次郎は黙ってうなづくしかできなかった。
多忙な中でも、気まぐれに暇というものはやってくる。ぽかりと空いた時間に、新次郎は手持無沙汰に今後の正界
の力関係について予想を立てていた。
と、不意に部屋の電話が鳴った。この番号を知っているものは限られるので、秘書を制して自ら取る。案の定、聞
き慣れた声が耳に入った。
『新次郎さんですか?お忙しいところ申し訳ありません。今、お父上に代わります』
程なく、父親の遠慮ない声に切り替わる。
『なあ、光太郎のドらマ、観たか?』
「はあ?」
挨拶もなしに一方的に話し出されて間抜けな声が出た。兄貴の、ドらマ?
『昨日の。ちょっと話が進んだよな」
「まだ、観てません」
『なあんだ、まだ観てないのか』
「――。今がどんなに忙しいかよく御存じでしょうに」
『せっかく時差がないんだから、連ドラもリアルに通じると楽しみにしてたのに。がっかりだよ私は』
いかにも不満そうにこちらの咎であるかのように詰られ、新次郎は低い声を出した。
「そんなことのために電話してきたんですか」
『そうだよ。ああもう、せっかく電話したのに。青磁の勉強もいいけど、お父さんとの話題の為にも、新次郎もせめて
週回遅れにはならないように観なさいね』
言うだけ言って、父親の電話は切れた。
――なんだったんだろう。
「……暇だし、テレビでも観るか」
新次郎はリモコンを手に取ると、テレビ画面に向かった。
「クソ親父っ」
うっかり父の言葉を信じてしまった新次郎は、父の滞在場所に向けて強い呪いの念を送る。
騙されたという思いが強いが、たぶん父は騙したつもりもないのがさらに腹立たしい。
なにが面白いだ。
たった今観終えたドらマの展開は、面白いどころではなかった。
黒い。あまりにも黒過ぎる。兄の演じる刑事の上司のどす黒さ、そして兄(の演じる以下略)に対する非情なパワ
ハラっぷりに、そして兄(の演じ…)の変わらぬ花のような姿に、こちらまでもが暗い感情を育て上げそうだ。
「あのセクハラ上司がー!!」
このままでは幼い頃に憧れたカ面ラいダーを嫌いになってしまうではないか。
それでも途中リタイアは家族の手前、できそうにない。というよりこのままでは気になって仕方ないのだと、自分の
感情が訴えている。
叫んで気持ちをリセットした新次郎は、次回の予約の確認をした。さすがに秘書には頼めなかった。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ すべてはフクションの方イ更デス
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
あまりのセクハラっぷりに、ウサギタンの中の人の御家族が生真面目だったら超!イライラするだろーな、という妄想です。
上記SS投下者です。
改行失敗でスレ汚し、本当にスミマセン
>>418 萌えました!
兄も弟も父もかわいいなぁw
ドラマを面白く見てる人間から見ると正直いい気はしないな…
萌えに政治的思想を持ち込むのは勘弁してほしい
性界萌えの人は、意外と何言っても無駄だよ
仲川さんの死をネタにしたssも普通に投下されてた
(6)感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬や、書き手個人への賞賛レスはほどほどに。
作品について語りたいときは保管庫の掲示板か、作品が収録されたページにコメントして下さい。
殺し屋のお話、和流津で伊和西×瀬巳です。
お世話になってます。ネタ投下させてもらいます。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「あんたたち、その顔どうしたの」
ポルノ雑誌店の女主人兼情報屋のモモは呆れた顔で瀬巳と俺を交互に見た。
「伊和西に殴られた」
瀬巳は内出血した唇の横をモモから見えやすい角度に傾ける。なるほど、珍しく俺についてモモの店に来たのはこの嫌がらせの為だったのか。
「で、伊和西の唇の傷はなんなの」
「俺が噛んだ」
瀬巳が間髪を入れずに答え、モモが俺を一瞥して鼻で笑う。
「随分楽しそうじゃないの、伊和西」
まったく、俺としたことがとんだ失態を犯してしまった。
セックス中の手錠を免除してやった瀬巳は、何が気に入らなかったのか突然ベッドでキレた。
唇を噛まれる、髪は毟られるで散々な目に合ったものの、暴れる瀬巳を殴り倒してどうにか事態を収拾した。
あの殊勝なそぶりは何だったんだ、夢か。
「ちょっと伊和西、なにその十円ハゲ。超ウケるんだけど!」
「超ウケるんだけど!」
モモの声音を真似した瀬巳がいよいよ調子に乗り始めたので追い払うことにする。
「仕事の話があるから、お子様はマニュアル読んでお勉強でもしてきなさい」
憎たらしく舌を突き出してポルノ雑誌が並ぶ棚の間へ消える瀬巳をモモが目で追った。
「…懐いたもんだねえ、あんたが付けた変な名前も満更じゃなさそうだし」
「今となっては、あいつに他の名前があることの方がおかしい気がするけどな」
「あんたも変わったよね。前回のアレ、前のあんただったら瀬巳なんかあっさり切り捨ててたんじゃないの?」
「モモ様の<超安価!瀬巳救済お仕事紹介>がなければサヨナラしてたかも知れないぜ」
「ね、私に感謝でしょう?」
あの仕事は俺が瀬巳を見捨てないと踏んで上手い事カモられた感がある。
俺が放置したとしても、瀬巳は自分が殺されるぐらいならいずれ相手を殺したはずだ。どちらに転んでも結果的にモモのお気に入りの瀬巳は助かる目算だった。
「まあ、まだ使えそうだしな。投資した分を取り返すまではせいぜいコキ使ってやるさ」
モモは全てお見通しとばかりにくすくす笑った。
「気をつけなさいよ、伊和西。あんたたちがいなくなるのは寂しいからさ」
勝手に心中させるんじゃねえよ、縁起でもない。
「ご忠告どうも。さて、そろそろ仕事の話を聞かせくれよ」
★
「なんで仕事受けなかったんだよ?すげえ報酬だったんだろ?」
行儀悪くベッドに胡坐をかいた瀬巳が不満気に眉を上げた。
モモから聞いたところによれば、報酬が破格だという仕事は想像以上に胡散臭かった。業界中に声が掛かっていて何が起こるかわからないと言う。
リスキーなのはともかく、他所の殺し屋が絡んでくるとなったら話は別だ。瀬巳がまた必要以上に対抗心を燃やし厄介な事になったらと、想像しただけでうんざりする。
「今回は割に合わないからやめた。お前向きの仕事じゃなかったし、依頼人も胡散臭かったしな」
「はァ?人殺しを依頼してくるやつなんて胡散臭いに決まってんじゃん、ばっかじゃねえの」
「雇われの新人がデカい口利くんじゃねえよ。大体なんでお前が俺のベッドにいるんだよ」
ここは主寝室であって、居候の寝床ではない。
その上瀬巳は許可なくオーバーサイズの、つまり俺のパジャマを着てベッドに居座っている。
「だってソファじゃ寝にくいし」
「生意気言いやがって。あのソファは特注なんだ、寝心地だって抜群なんだぞ」
「今日はここで寝る」
「はあ?俺と一緒に寝るつもりなのか?やっちまうぞ」
「……」
瀬巳は不貞腐れたように膝を抱えて向きを変えた。
なんだよ、その気だったのか。
それならそうと『伊和西、エッチしよ♪』とか、可愛らしい台詞のひとつぐらい言えないのか――言わないだろうな。
使えそうな物がサイドテーブルに入れたままになっていたのを思い出し、瀬巳に放り投げる。
投げつけられた白い物体を拾い上げて瀬巳は顔をしかめた。
「包帯?」
「するなら両手首に巻け、手錠なしでは金輪際やらん」
ハゲを増やされるのもご免だが、手首をこれ以上傷めさせて仕事に支障を来しては元も子もない。
瀬巳は間が抜けた表情で俺を見たあと、包帯に目を落した。
「あっそ」
そのまま投げ返して来るかと思ったら、予想に反して膨れ面で手首に包帯を巻きはじめた。
ぐるぐる巻きにした両手を握り締めて顎の下に当てる。
「なんかボクサーみたいじゃね?」
「うーん、おじさんには躊躇傷にしか見えないねえ」
「…おまえやっぱり大嫌い」
★
時間を掛けて後孔の入り口を慣らし潤滑剤を多めに使って指を入れる。仰向けの瀬巳が反射的に腕を引いてベッドヘッドに繋がれた手錠が音を立てた。
「は…ぁ」
増やした指を奥まで入れて入念に解すうちに、苦痛を堪えていた表情が徐々に緩みだす。熱っぽい内部の粘膜は柔らかく指にまとわりついて具合がいい。
指を抜きペニスの先を入り口に当てるとひくっと体を震わせた。挿入の瞬間に備えるように、焦点のぼやけた目を開いて大きく息をつく。
覗き込む俺の視線を捕らえて、切なげに目を細めてみせた瀬巳にどきりとした。無意識なのだろうがこんな色っぽい顔ができるのかと驚く。
暫く動かずにいると瀬巳は焦れたように眉を寄せ俺を睨んできた。
「瀬巳、上に乗ってみるか?」
「え?」
「お前が俺に乗るんだよ、マニュアル本に載ってただろ?」
「…その話、今度したら本当にぶっ殺すからな」
「恥ずかしがるなって、勉強熱心で感心してるんだぜ」
「にやけた顔で言われても説得力ねえし」
よく考えたら両手を外すわけにはいかなかった。文字通り手放しで、ましてや腹の上で暴れられたら前回の二の舞どころの騒ぎではない。
右手だけを繋ぎ直して、ヘッドボードと瀬巳の間に入り込み座位の状態で体を跨がせた。
居心地悪そうに身じろぐ瀬巳の腿を軽く叩く。
「自分で入れろ、ゆっくりだぞ」
瀬巳は戸惑うように目線を揺らしたが、すぐに負けず嫌いな表情を取り戻した。
自由な左手を俺のペニスに添えると自分の後ろへ宛がい、指示通りにゆっくりと体重を掛ける。
自重で一気に沈まないよう腹圧を掛けている所為か上手く進まず、辛そうに顔を歪ませた。
「…ッ…」
なんとか全てを収め呼吸を整えている瀬巳の顔を眺めていると、困ったように目を上げた。この先どうしたらいいのかわからない、と言ったところか。
「動けるか?無理なら俺が動いてやるぞ」
「あ…っ、ちょっと、待てって…!」
「腰を使え」
「どうやって」
「こうやって」
「あ…ァ…ッ」
腰を掴んで揺すってやると、高い声をあげて身を捩った。
「ほら、自分でイイところを探せよ」
所在の定まらない瀬巳の左腕を俺の首に回させて、内心苦笑いする。締め技を掛けられたら終わりだ、命がけの交尾なんてカマキリみたいじゃねえか。
もぞもぞとぎこちなく動いていた瀬巳は、やがてコツを掴み快楽を追うことに集中し始めた。
「ん、……くッ…」
俺の首にしがみついて夢中で動く瀬巳にあわせ、結合部から卑猥な水音があがる。
ぎゅうぎゅうと締め上げられて無理やり搾り出されそうになる精液を息を詰めて堪えた。
目の前の首に口付けて軽く歯を立てると、瀬巳は目を開けて俺を見た。その瞳がすぐに快楽に蕩ける。
またあの表情だ。普段は絶対に見せない、俺しかいないと思わせる縋るような目がたまらない。
引っ切り無しに熱い息を吐く瀬巳の口を塞いで舌を差し込むと、すぐに舌を絡め激しく応えてくる。
同時にひくつく直腸壁が締め付けながら更に奥へ俺を飲み込もうと蠕動した。
「よさそうだなあ、瀬巳」
「ん…」
「お望みだった最中のキスはどうだった?」
意地悪く聞いて瀬巳の唇を舐める。
「…いわ、にし」
目を閉じたまま、瀬巳は弱々しくかすれた声で俺を呼んだ。
「なんだ」
「もうすこし…」
やっと、という風にそれだけ呟いてぐったりと俺の肩に凭れかかった。
汗で張り付く瀬巳の髪を掻き分けて耳に口を寄せ、続きを促してやる。
「もう少し、どうして欲しい?」
乱れた呼吸の合間に瀬巳が言葉を継ぐ。
「…すこし」
「少し?」
唾液を飲み込み、口を開く。
「だまっとけ、つうの」
「……」
あまりのことに言葉が出なかった。ショックだったと言ってもいい。
お前が言うなクソガキ、瀬巳の癖に瀬巳の分際で――絶対に泣かせてやる。
解錠するのももどかしく手錠をはずし、体を繋げたまま瀬巳を押し倒した。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
伊和西寓話的な何かです。
庫でコメくださった方、こちらこそありがとうでした!
いつも皆様ありがとうございます
ここ見て、いつもはなかなか見られないTVドラマをかなり真剣に見るようになったw
遅レスだけども
>>270のT/N/P最高でした
続編お待ちしとります
>>406 社長×竹本でイチャイチャしたのお願いします
____________
| __________ |
| | | |
| | |> PLAY. | |
| | | | ∧_∧ 退カヌ媚ビヌ省ミヌ
| | | | ピッ (*´ω`*)
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
触手×末弟と長兄×末弟。
第一部ラストで末弟に負けた長兄が昇天しなかったっていう某ゲーム設定です。
ケンシロウは夜中に目を覚ました。
ラオウはまだ寝ているようだったので、ケンシロウだけ寝台から出て、水場に行った。
ざぶん、と水に浸かる。夏とはいえ沙漠の夜なので水は冷たいのだけれど、ケンシロウはその程度の事は気にならない。
「…」
こんな事をしていてもいいのだろうか、とケンシロウは時々思う。
きっ と今、外の世界では悪党どもに苦しめられている人がたくさんいるに違いないのに、
どうしてこうもラオウと一緒に安息を貪っているのだろう。
だけど、ケンシロウもラオウも「戦いに戻ろう」とは決して言い出さない。
いっそ戦いなんてもう止めてずっとこのぬるま湯の様な生活のままで…
その時、ケンシロウは一瞬嫌な気配を感じて水から咄嗟に出た。
「…?」
気のせいか?
しばらく警戒していたが特に何の気配も感じない。
…戦っていないから勘が鈍っているのかもしれない、そう思ってケンシロウが歩き出した時、
いきなり足首を何かに掴まれてケンシロウは転倒した。
そのまま水の方へ引っ張って行かれそうになったので、それは抵抗して阻止した。
やはり先程の嫌な気配は錯覚では無かった。しかし今自分の足首を掴んでいる物は何なのだろう。
人間の手とも思えない感触である。ケンシロウはそちらを見やった。
(タコ…か…?)
今自分の足首を掴んでいる物はタコの足のような物に思われた。それにしてもこんな所にタコがいるのはおかしい。
そのようなものがいたら今までずっとこの水場を利用していて気付かないのはおかしい。
そのタコだかなんだかよくわからない生き物はなおも水の方へケンシロウを引っ張ろうとしたが、
ケンシロウがそうはさせなかったので、自分の方が水から出てきた。
そ の生き物は、なんとも形容し難かったのだが、
ケンシロウはなんだか昔読んだ手塚治虫や石ノ森章太郎の漫画に出てきた化け物を思い出した。
確か核戦争のせい で植物が暴れまわって人間が奇形ばかりになるという話で、
じゃあこの目の前の化け物も何かが変異した物なのかな、と現実離れした光景を前にやけに冷静な事を考えていた。
こう書くと、「今までは現実離れしていなかったのか」と質問されそうだが、あくまでケンシロウにとっての基準なのである。
しかしやはり危機感を覚えて、そうだ、この化け物を倒さなければ、という気になった。しかし倒そう―と思って気付いた。
こいつ、秘孔はどこにあるんだ?
外部から切り裂く事を得意とする南斗聖拳ならどんな化け物相手でも倒せるだろうが、
秘孔を突く事により内部から爆発させる事を得意とする北斗神拳では、秘孔が突けない相手をどう対処すればいいのか、
ケンシロウは一瞬その判断に迷った。
その一瞬の迷いが、命取りである。
その一瞬の隙に、そのタコの足の様な物に手足を縛られてケンシロウは身動きが取れなくなったのである。
(あの距離から一瞬にしてここまで足を伸ばせるとは…!)
振りほどこうとしても、滑滑していて滑るので、上手く振りほどけない。
自分はこれからどうなるのだろう。やはり食べられてしまったりするのだろうか。
仮にも北斗神拳伝承者が、こんなRPGの雑魚敵の様なものにやられて死ぬのは情けない。
とりあえずケンシロウは相手の出方を窺った。
相手は新たな蛸足をケンシロウの下半身に伸ばしてきた。
えっ
と思う間もなく、一気に陽物の苞を剥かれて露出した肉穂に触手は絡みついてきた。
「っ…」
どういう事なんだ。
だって普通生き物が人間を襲うって食べるかあるいは自分の領地を守るために攻撃するとかであり、
何故このような性的嫌がらせを行ってくるのだろう、この化け物は。
ケンシロウは、核戦争前にジャギの部屋に置いてあったエロゲーの設定資料集でこんな場面があったな、と思いだした。
そう、あのエロゲーじゃるまいし。
し かもいくら肉穂を弄られるとはいえ、こんな化け物に弄られているというのにどうして気持ちよくなっているのだろう。
多分いつもラオウと鏈る時に突いている秘孔の様な効果がこの化け物にはあるに違いない、
と思いながらも自分はこんな化け物相手でも気持ちよくなってしまうのかという戸惑いを感じずにはいられなかった。
だが、その戸惑いもすぐに消えた。
「ふあぁ…」
なんだかとても気持ちがよくなってきて、そんな事どうでもいい、と思わされた。
自分が北斗神拳伝承者である事とか、ラオウの事とか、全部ケンシロウの頭から抜け落ちていった。
触手の動きが激しくなってきて、
「っ!!」
ケンシロウは達して、液体を辺りに飛び散らせた。
今はもう、もっと気持ちよくなりたいとしか思えなくなっていた、
「…」
瞬く間に二度目の射精をして、もうケンシロウは陽物を弄られるだけでは物足りなくなっていた。
その期待に応えるように、別の触手が後ろの方に延びてくるのが わかった。
しかし、ただその辺りを撫で回すばかりで一向にそれ以上の事を進める気配が無い。
早く入れて欲しい、そう思ってケンシロウは思わず腰を動かし た。
「天将奔烈!!」
その声でケンシロウは我に返った。と、同時にラオウの天将奔烈が化け物の本体を消滅させた。
「うぬは何をやっておるのだ」
「…」
これは非常に決まりが悪い。どう考えても、見られた。
ケンシロウは素知らぬ顔で触手の残骸を振りほどいたが、ラオウが明らかに疑惑の目を向けているのがわかる。
「秘孔が無いから…」
「うぬは水影心で一度見た技は使えるのだから天将奔烈でも北斗剛掌波でも使うがよかろう」
そうなのである。秘孔を突かなくてもケンシロウは相手を倒せるのである。
「慌てていて…」
「北斗神拳伝承者が『慌てていた』で命を落としていれば苦労はせん!
ケンシロウ、その甘い性格でよくぞ今日まで生き抜いてきたな!親父は伝承者を誤ったわ!」
最近知った事だが、ラオウは怒りだすと話が長くなるので、とりあえず全身の滑りを落とそうともう一度水に入った。
そうしたらラオウも水に入った。この状況で向かい合うのは辛い。
「大体、何故春画の様な事をしていたのだ」
春画、と言われてケンシロウは一瞬何の事か分からなかった。「江戸時代のアレ」と認識するまで数秒かかった。
「いや、あれはあの化け物がああいう風に襲いかかってきただけで…」
「男を喘がせて何が楽しいのだ」
お前が言うか、とケンシロウは内心思った。
正直に言うとケンシロウはまだ先程の余韻が残っていて、
ラオウとしたい、と思ったが、今ここでラオウにそれを言うのはあまりに端なさすぎる。
ラオウはラオウで、同じような事を考えていた。
夜中に目を覚ますと、ケンシロウがいなかった。
水場の方から声が聞こえてくるのでそちらへ足を延ばすと、
ケンシロウが陶酔しきった表情で謎の化け物と春画みたいな事をしていたのでラオウは非常に激怒して、
化け物を粉砕した次第である。それで感じたのは怒りとか、嫉妬である。
自分以外のものがケンシロウを恣に していたことが腹立たしいし、
ケンシロウもケンシロウで碌な抵抗もせず快感に流されるままにしていたのはどうにも思い返すだけで腹立たしい。
しかし、先程の情景を見て聳られたのも事実。
今すぐにでもケンシロウとしたい、と思ったが、先程のケンシロウの振る舞いが腹立たしかったので、それを言いたくないと思った。
互いに、自分が言い出したら負け、と思った。
どうにも気まずい同浴の後、水から上がって、別々に寝た。一緒に暮らし始めてからそれは初めての事だった。
翌朝目が覚めて、朝食を摂った。
「「…」」
どちらも、したい、と言い出さない。意地である。それでもその日はなんとかやり過ごした。
その次の日。
やはり互いにしたい、とは言いださない。ほとんど会話も無く一日を終えて床に就く。
どうしてもしたい気持ちが治まらずなかなか寝付けない。しかし、したい、と言い出したらこちらの負けである。
自慰をしても、こちらの負けであると思えた。
それでもなんとか寝付いた。
ケ ンシロウは夜中に淫夢を見て危うく夢精しそうになり飛び起きた。射精してもこちらが負け、という気がする。
陽物から出た比較的粘度の低い液体で下着が滑滑し、それに擦れるだけで射精してしまいそうだが、どうにか堪えた。
自分は北斗神拳伝承者なのだからこれ位耐えられなくてなんだと言い聞かせた。
それにきっと、ラオウも同じ状況だろうと思った。
その次の日、最初から数えて三日目。
互いの顔を見るだけで、声を聞くだけで射精しそうになるので、 互いに顔も合わさないで食事をする。
性欲の事で頭がいっぱいなので食事で気を紛らわせようとするも、できない。
水場に行って(あの端ない記憶が甦るのであまり行きたくないのだが、体を洗えるのはここしかないので仕方が無い)
体を洗っているとつい陽物を弄っている自分に気づいて慌てて手を離す。
射精こそしていないものの、透明な液が陽物の先端から指先にかけて糸を引いた。
その情景を見ているだけで益々性欲が高まるが、自制する。
四日目。
常に 軽く勃起をしているような状態で、頭がフラフラする。小便をするのも一苦労だ。
この家のどこにいようが耳を澄ませば相手の声は聞こえる。研ぎ澄ませば相手の気配を感じる。
相手の気配を感じるだけで、陽物がもっと大きくなって、クラクラする。
そう考えていると、ラオウが黒王に乗ってどこかへ行った音がした。
(馬に乗ると振動が余計下半身に響くじゃないか…)
ケンシロウは内心そう思ったが、ラオウの事なので自分には関係ないと無視した。
ラオウの事だから、自分に隠れて射精をして、それで何食わぬ顔で帰ってくるような事はないだろう。
しないか、するんだったら直接ケンシロウの所に来るかのどちらかだろうからだ。
五日目、朝。
結局ラオウは昨夜は帰らず、ようやく帰ってきたラオウとうっかり顔を合わせてしまった、射精しそうになったが耐える。
あの様子ではやはりラオウもまだ射精はしていないだろう。
六日目
服が擦れるのが刺激になるのでいっそ服を着ない事にした。
しかしこれはこれで自分のかなり大きくなっている陽物が目に入るので辛い。
きっとラオウも同じ状況なのだと考えひたすら耐える。
七日目
ケンシロウは寝床に居た。もう陽物が射精寸前になって透明な液体が先の方から流れ出している。
違う事を考えようと思ってももうラオウの事しか考えられない。
いつもより一回り…いや二回りほど大きくなっている自分の陽物を見て、ケンシロウはラオウの陽物を思い出す。
いや、ラオウのはもっともっと大きいが。
自分のがこんなに大きくなっているという事は、ラオウのも普段よりもっともっと大きくなっているのではないだろうか。
いつもでもあれ程までに大きいのに、あれより大きくなっている、
とケンシロウはそれを想像するだけで達しそうになるので慌ててその考えを振り払った。
と、こちらへ歩いてくる足音に気がついた。
ラオウだった。
やはりラオウも服を着ていないで、そして陽物がケンシロウの予想通り、
いや、予想以上にもっとずっと大きくなっているのを見て思わず息を飲んだ。
(あれを…入れるのか…)
それを考えただけで下半身が熱いような気になって、透明な液体の流れがより一層激しくなった。
ラオウもこの一週間ひたすら禁欲に耐え、「自分から手を出したら負け、射精したら負け」と思っていた。
しかしもういつもよりずっと大きくなった陽物全体が自身の出した透明な液に塗れているのを見て、ふと、
「…自分は何を意地を張っているのだ?」
という気持ちがラオウを襲った。
やりたいのなら、やればいいではないか。それに一体何でこんな意地の張り合いをしていたのだっけ?
一応その原因は思い出したが、「もうどうだっていいではないか?」という気になった。となるとラオウは気が早い。
すぐケンシロウの元へ歩いて行ったのだ。
ラオウの陽物をうっとりとした表情で見つめるケンシロウを見て、ラオウは今すぐにでも犯したい衝動に襲われたが、
一先ずは、「ふふ…ケンよ、強くなったな」とよくわからない事を呟いて思い切り口づけした。
「んっ…!」
もう待ちきれなくなっていたケンシロウは口づけだけで達してしまい、液体が自分とラオウに飛び散った。
それを受けてラオウも達し、あっという間にラオウもケンシロウも液体塗れになった。
自分は今すぐにでも鏈りたかったし、当然ラオウもそうだろうと思っていたので、
ラオウが口づけから始めたのをケンシロウは少し意外に感じた。
「はあっ…」
当然一回達しただけで収まる訳は無く、ケンシロウは口元の液体を舐めて催促するような目でラオウを見た。
するとラオウはケンシロウの陽物を掴んで自身のと思い切り擦り合わせた。
「ああ…!」
あっという間に飛沫が上がり、自分の液や相手の液に濡れてケンシロウは何度も達する。勿論ラオウだってそうだ。
何度も達して、収まるどころか熱はどんどん上がって行く気がする。
液体は多く、濃く、粘度が高くなり、陽物は大きく、固く、太くなっていく。
「ラオウ…」
ケンシロウが物欲しそうな目でラオウを見上げ、上擦った声で囁くように言う。
それを見てラオウもケンシロウを押し倒して一気に突っ込んだ。
「―ッ!!」
二人とも余りに焦っていたために、いつも突いている秘孔を突くのを忘れて入れてしまった。
当然ケンシロウは痛い。しかし今のケンシロウにとってはその痛みさえ快感で。
あっという間に濃い大量の液体を撒き散らす。
「っ…ふぅっ…!」
ラオウもまた、ケンシロウの中に大量の液を出す。
液はあっという間にケンシロウの中から溢れ出す。
そのまま激しく動かれ、ラオウが少し動く度にケンシロウは液を吐き出す。
一回の射精が終わる前にまた絶頂に達するので、ずっと射精しているようだ。
「もっと…!」
ケンシロウはラオウの首筋に抱きついて深くキスした。
「…っ、はあ…」
もう何度達したかわからない。しかし物足りない。もっともっと達したい。
先程一度終わりそうになったのだが、互いに性欲を増進させる秘孔を突いて、まだ続けている。
この七日間しなかった分、いや、利子をつけてもう何度でも、いや、何十回でも何百回でも達したい。
互いに夢中で動いた。
……。
ケ ンシロウは目を開けた。また夜中だ。
起きようとしたが体に力が入らないくらい今日は(もう明日になってるのか?)一日中食事もトイレも忘れてひたすら交わっていた。
あの時は夢中だったが、思い返すとかなり恥ずかしい姿勢を望んでしたし、
卑猥な言葉も喜んで何度も口にしていたと思う。
本当に一週間分を一日でやった気がする。
普段一回するごとに大体六回ぐらい達して、それを大体一日三回やっていて、
大体一日二十回として、そして更にそれを七日間だから…。
「……」
ケンシロウは溜め息をついた。
暫くしたくないな、と思ったが、多分一晩寝て明日になればまたしたくなってしまうのだろう。たった一週間でこの有様だ。
いや、一日目でさえかなり辛かった。こんな事でもう一度荒野に戻れるのだろうか。
寝台の上のみならず、壁も床も天井も、辺り一面液体に塗れているので、
後始末が大変だな、とケンシロウはぼんやり考えた。
そして体を洗いたくなったので、水場に行こうと思ったが、ラオウに声を掛けた。
「ラオウ、起きろ」
「ぬ…」
「風呂」
「…夜中ではないか、一人で行け」
「一人で行きたくない」
この前の事を思い出して、ケンシロウは一人では行きたくなかった。
ラオウは「うぬは子供か!全く…」とかなんとか言っていたが何だかんだ言ってケンシロウについてきた。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧
| | | | ピッ (*´ω`*)
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
スマソ
>「秘孔が無いから…」
クッソワロタwwwww
どこからつっこんだらいいのかわからないwww面白すぎるwwww
481KB
次スレ行ってきます
すいません、だめでした。どなたか頼みます。
___ ___ ___
(_ _)(___)(___) / ̄ ̄ヽ
(_ _)(__ l (__ | ( ̄ ̄ ̄) | lフ ハ }
|__) ノ_,ノ__ ノ_,ノ  ̄ ̄ ̄ ヽ_ノ,⊥∠、_
l⌒LOO ( ★★) _l⌒L ┌'^┐l ロ | ロ |
∧_∧| __)( ̄ ̄ ̄ )(_, _)フ 「 | ロ | ロ |
( ・∀・)、__)  ̄フ 厂 (_,ィ | </LトJ_几l_几! in 801板
 ̄  ̄
◎ Morara's Movie Shelf. ◎
モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
なにしろモララーのコレクションなので何でもありに決まっています。
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |[]_|| | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ]_||
|__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ̄ ̄ ̄| すごいのが入ったんだけど‥‥みる?
|[][][]._\______ ____________
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |[]_|| / |/ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.|| |[]_||
|[][][][][][][]//|| | ̄∧_∧ |[][][][][][][][].|| |  ̄
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ ) _ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.|| |
|[][][][][][][][]_|| / ( つ|8l|.|[][][][]_[][][]_.|| /
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(__)_)
前スレ
モララーのビデオ棚in801板63
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/801/1294333262/ ローカルルールの説明、およびテンプレは
>>2-9のあたり
保管サイト(携帯可/お絵描き掲示板・うpろだ有)
http://morara.kazeki.net/
いってみる
乙です
スレ立て乙
感想板のアドレス変えも乙です
リク禁止じゃなかった?
>>456 感想スレとか本スレとかでずっと同じ文書いて粘着してる人
うめがてら
棚の姐さん方、萌えをありがとう
保管庫管理人さん、協力者の方々いつもありがとうお世話になってます
梅が寺
前スレの棚タソSS、テンプレに入れて欲しかった…
>>460 マジレスするがこれ以上テンプレ増えたら一度に貼り切れなくなるぞw
あのネタが秀逸なのには同意だが
以前八百長騒ぎでこの板が荒らされたとき投下された
サルとノミのネタも見事だった…
棚には荒れだすと光臨する神が宿っていると信じてるw
埋め?
埋めるなら、コレぐらいやらないと
Λ_Λ パンパンパン…
(;#゚Д゚ ) オラオラ! チンポチンポ! セィヤセィヤ!
(( ( つ Λ_Λ
) ,ィ⌒(;#゚Д゚ ) タマンネェタマンネェ! マジタマンネェ!
(_(__人__,つ 、つ
Λ_Λ パン!パン!パン!パン!パン!…
(;#゚Д゚ ) オッス!オッス! イクゼ!キメンゼ!オトコキメンゼ!イクゼッイグッ!!!
(( ( つ Λ_Λ
) ,ィ⌒(;#゚Д゚ ) ヴォースゲー!ヴォースゲー! ウォッ!ウォッ!!ウォオオオ!!!
(_(__人__,つ 、つ
Λ_Λ
(;#゚Д゚ ) アッー!
( つ Λ_Λ
) ,ィ⌒(;#゚Д゚ ) アッー!
(_(__人__,つ 、つ
Λ_Λ
( ゚д゚ ) ウホッ!
( つ Λ_Λ
) ,ィ⌒( ゚д゚ ) ウホッ!
(_(__人__,つ 、つ
や ら な い か !
((;;;;゜;;:::(;;: ∧_∧ ∧_∧ '';:;;;):;:::))゜)) ::)))
(((; ;;:: ;:::;; ⊂( ゚д゚ ) ( ゚д゚ )つ ;:;;;,,))...)))))) ::::)
((;;;:;;;:,,,." ヽ ⊂ ) ( つ / ;:;;))):...,),)):;:::::))))
("((;:;;; (⌒) | | (⌒) どどどどど・・・・・
三 `J. し' 三 どどどどど・・・・・
こっちくんなw
元気だなw
∧∧ コイヤァァァァ!!
(д´* )
(⊃⌒*⌒⊂)
/__ノωヽ__)
⊂ ⊂ヽ、 /)/)
c、 `っ( ヽ お断りします
( v)c、 `っ
V''V ( v) / ̄`⊃ お断りします
V''V | ⊃
( v) ハ,,ハ
V''V (゚ω゚ ) お断りします
⊂⊂ ヽ
>? )
(/(/
ハ,,ハ ハ,,ハ ハ,,ハ ハ,,ハ
( ゚ω゚ )゚ω゚ )゚ω゚ )゚ω゚ ) お断りします
/ \ \ \ \ お断りします
((⊂ ) ノ\つノ\つノ\つノ\つ)) お断りします
(_⌒ヽ ⌒ヽ ⌒ヽ ⌒ヽ お断りします
ヽ ヘ } ヘ } ヘ } ヘ }
ε≡Ξ ノノ `Jノ `J ノ `J ノ `J
ものすごくお断りされてるなw
こっちまだ20あるねぇ
短編投下来ないかな?
梅がてら
結構前に投下されていたオリジナル作品で、
外国のカフェの常連な紳士がいつも座る席を予約席扱いで待ってるウェイターの話
今もふと思い出します。
陽だまりにいるようないいお話でした。
いつかまた逢えてるといいなぁあの二人…
探してくる
初投稿なのでこっそり梅代わりに。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
Mr.コーヒーが力を入れた途端ビッと音を立てて布が裂け、
派手めな下着が露になってしまった。とっさにMr.ミルクが
自分の制帽でそこを隠すと彼は険しい顔で少しうなずいた。
そのままそろりそろりとホテルに入って台車にその大きな
檻をできるだけそっと下ろし、Mr.コーヒーは急ぎ足で
スタッフオンリーの扉を開けた。確か予備の制服がロッカーに
入っていたはずだ。上着でごまかせるとはいえ、このまま
仕事を続けることはできない。
扉を閉めるとMr.コーヒーはひとまず大きく安堵のため息を
ついた。ふと横を見るとMr.ミルクがいる。
軽く首を傾げると、それに気づいたMr.ミルクがハッとして
きまり悪そうに自分の帽子をかぶり直した。今までずっと
Mr.コーヒーのお尻を隠していたらしい。そんなことより
先程の檻やら何やらの荷物を運ばなければならないのでは、
ということに気づいたMr.ミルクが慌てて戻ろうとするのを
Mr.コーヒーが引き止める。同じくらいの背の高さ故に間近に
見えたその唇を、ありがとう、と言ったMr.コーヒーの唇が
掠めていった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
仲良くね。って言ってるしね!
>471
あなたにものすごくありがとうと言いたい。
あの二人、シリーズにならないかな。
>>471 ふおぉぉ!
あのCM見てモヤモヤしてたんだ!ありがとう!GJ!
基本、ドラマ版準拠ですが、原作エピも交じってます。ビジュアルはどちらでも。
「Silent Night」の続きですので、リバ苦手な姐さん、ここでバイバイ。
漫画&ドラマ モリのア○ガオ
渡瀬満×及川直樹
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
束の間、微睡んでしまったらしい。
一年で最も、日の出の早い季節だ。たとえごくわずかな間でも、寝ている場合ではない
筈だった。しかも、この夜を逃せば、俺にはもう永遠に、昼も夜も訪れることはないのだ。
俺に残されたのは、たった一つの朝だけだった。
それなのに、不思議と惜しいとは思わなかった。ただひたすら平安で、満ち足りた、清
清しい気分だった。
一瞬、あの抱擁は、口づけは、脳髄が痺れるような甘い陶酔は、夢だったのかと思った。
思えば、いかにも現実離れした、目くるめく体験だった。
だが、幸いなことに、直樹は側にいた。裸のまま、半身を起こし、俺の寝顔を見つめて
いたようだった。
腕を取り、再び隣に横たわらせて抱きしめた。あの甘美な時間が紛れもない現実であっ
たことを示す証のように、二人の体はまだ、どちらのものともつかない白い液体に塗れた
ままだ。
「どうだった?」などと、尋ねるのも野暮だった。黙ったままで直樹の上に覆い被さり、
思う存分に唇を、首筋を吸った。直樹は身を捩って笑い声を上げ、素早く体勢を逆転させ
てこちらを組み敷いた。そのまま、子犬のように、或いは、何も考えずにただ白球を追い
かけていたあの少年の頃に戻ったように、上になり下になりして転げ回った。
何度目かに俺が上になった時、ふと直樹が力を抜いて、俺を見つめた。息を弾ませなが
ら、彼の顔の側で手を繋ぎ、指を絡ませる。
さっき、俺にあれほどの快楽を与えてくれた、この指。明日、この指が釦を押せば、俺
の体は地の底に落ちて行く。
そして、衆人環視の中でみっともない姿を晒し、苦痛を味わいながら、数十分という時
間をかけて、じわじわと死んでゆくのだ。
人を殺めるという、深い、深い罪の代償として。
俺が指名したたった一人の教誨師は、たとえ人殺しであっても、心から罪を悔い改めた
人間は天国へ昇れると信じているらしい。彼を傷つけたくないから、口に出したことはな
いが、しかし、俺はそういった別の世界の存在をあまり信じている方ではない。
もし、慈悲深い神なんてものが存在するならば、両親のいのちを、俺の夢を、小春の声
を、奪いはしなかったろう。
もう一度、直樹の小柄な体を抱きしめた。数えきれない日々、数えきれない言葉を共に
語らってきた唇に口づける。
もし、神様があるのなら、俺が信頼したたった一人の親友が、そうなのだろう。もし、
天国があるのなら、今、俺が愛したたった一人の恋人と過ごすこの一時こそが、それなの
だろう。
今度は俺が、入ってもいい?
目でそう問いかけた。言葉で返事をする代わりに、直樹は微笑み、体の力を抜き、自分
から足を開いて、両腿を手で支えた。
どこだかわからなかった。まごついていると、彼自ら手に取って導き、先端をその箇所
に当てがってくれた。
さっき、直樹は、俺に些かの苦痛も感じさせることなく、入って来てくれた。
できれば、俺もそうしたかった。しかし、悲しいかな、男性は疎か、女性とすら経験が
ない。
遥か昔、血塗られた決意をしたあの日から、女性を近づけることなく生きてきた。一旦、
女性と関わりを持ってしまえば、心が揺らいでしまう。復讐の意志がぐらついてしまう。
だから、たとえ向こうから好意を持たれることがあっても、頑なに遠ざけてきたのだ。
直樹の方だって、男性を受け入れるのはこれが生まれて初めてだ。ましてや、彼は体が
小さく、俺はそうではない。
俺の歓びと同じだけ、彼の痛みは深かった筈だ。彼の額には汗が、シーツを握りしめた
指には白く関節が浮いた。
しかし、驚くべきことに、俺が散々もたついた挙げ句に、すっかり埋没してしまうまで、
直樹の愛らしい唇からは、小さな呻き声一つ洩れることはなかったのだ。
――君の苦しみを思えば、これくらいのこと・・・・――。
思い返せば、直樹はいつも、そう思ってきたような節があった。
思いもかけなかった、自分自身のおぞましい宿命を知り、迷子の小鳥のように、こんな
穴蔵みたいな所に逃げこんで来た、いつかの遠い夜。俺に肩を抱かれながら、為す術もな
く泣きじゃくっていた、あの子供っぽい姿。
あの時、口下手な俺は、慰めるつもりで、随分と自分勝手なことを言ってしまったかも
知れない。後で、どうせなら黙っていればよかったと思ったくらいだ。
それなのに、直樹は、俺に救われたと言ってくれた。
だが、それは俺も同じことだったのだ。彼が俺に助けを求めて、勇気を出して打ち明け
てくれたからこそ、こんな俺でも、まだ誰かに胸を貸すことはできる、誰かの苦しみに耳
を傾けることはできる、と思えたのだから。
少し悔しいが、彼に救われたのは、俺だけじゃない。
運命に見放され、人を恨み、傷つけた挙げ句に当然の報いを受け、来る日も来る日も、
この忘れられた森の奥で、蹲り、震えながら、ただ縊られるのを待つだけの連中。
その一人一人が歩んできた暗い人生に思いを馳せ、深く毒された心に、柔らかな羽毛の
ようにそっと寄り添う。普通なら絶対に、誰にも相手にされないような奴らと、いちいち
まともに口を利こうとする。どんなに裏切られても、嘲られても、人の良心と、自分の信
じる所に従って、挫けず、恐れず立ち向かってゆく。それが、俺の愛した刑務官、及川直
樹だった。
そして、幾つかの奇跡が起こった。荒みきった男たちが、彼の前に心を開き、自らの過
去と、罪と向きあったのだ。
その様はまるで、鎧も盾も武器もなく、凶暴なライオンを手懐ける乙女のようだった。
さながら聖人のようだった――、友の罪を庇って、絞首刑の苦しみに耐え抜いたという、
父の血なのだろうか――直樹・・・・。
彼の人の願いは叶えられた。思いを込めて付けられたその名の通り、若木のようにしな
やかな彼の体を、今一度、強く抱きしめた。
俺だけの直樹じゃない。
俺は明日、死ぬ。
直樹はこれからも、この森で生きていくべき人だ。
だが、今は――今だけは、この肌の温もりは俺だけのものだ。朝が来るまでのこの短い
一時だけは、二人だけのものだ。直樹と繋がっている体の芯から、脳天まで、手足の指先
まで貫くこの熱い、得も言われぬ至福の感覚を知る者は、この三千世界で俺一人なのだ。
こんなに汗だくになるほど体を動かしたのは、どれだけぶりだろう。
直樹の上げる啜り泣きのような声が、快楽故のものなのか苦痛故のものなのか、俺には
わからなかったし、彼自身にも、もうわからないようだった。
細い肩を押さえつけ、愛というよりも恨みでも叩きつけるかのように、何度も突き上げ、
引き落としながら、山中で、あの忌まわしい男と格闘した時以来だろうかな、と、自答し
た。
初めて、そして、この世で最後に目にする直樹の艶姿。その表情や仕草の一つ一つを、
眉一筋、指一本の動きに至るまで、逃さずに、この目に焼きつけておこうとする一方、視
界の端に、一瞬、別のものを捉えた。
それは、直樹がくれたボールを分解した糸で作った、あの二体の人形だった。
これでよかったんだろう、直樹。
直樹が荒い息をつきながら、俺の首にしがみついてくる。右肩を軽く、やさしく噛まれ
る。思いがけなくも、一瞬、意識が遠のくほど感じて、思わず声が洩れる。
それとも、たとえ彼から友情の終焉を宣告されたとしても、飽くまで助かろうと足掻く
べきだったろうか?
実際、小春の許に戻ってやることができたかどうかはわからない。だが、少なくとも、
精いっぱい、道を模索することはできたし、兄として、そうすべきだったのではないか。
直樹が涙を流していることに気づく。頬に唇を寄せ、素早く吸い取る。直樹が俺の頭を
抱えこみ、頬に、顎に、瞼に、鼻に、唇に、甘い口づけの雨を降らせる。
或いは――心の湖の最も深く、最も冷たい奥底から、得体の知れない、実体があるのか
どうかもわからない魔物が、ちらりと暗い影を覗かせる。
小春も、俺自身のいのちも、名誉も、他の何もかも、俺にとってはさして大切ではなかっ
たのかも知れない。あの男が死んだことを知った時には少し揺らいだものの、それは一時
の気の迷いに過ぎなかったのだ。
俺はただ、ここで直樹に見守られて、残りの生涯を平穏に過ごしたかった。外界から完
全に隔絶されたこの箱庭のような場所で、同じ年頃の若者たちがそうするように――いや、
失われた少年時代を取り戻すように、肩を寄せあって語らい、ゲーム盤を挟んで歓声を上
げ、時につまらない喧嘩をして、仲直りがしたかった。
最後に直樹に抱かれ、直樹を抱きたかった。
最後に直樹を見て、直樹の手によって、死にたかった。
永遠に、直樹の心の中に生き続けたかった――。
もしかしたら。最後の大波が来る。愛する人を掻き抱き、窒息させるほど締めつけ、獣
の咆哮と共に、直樹ぃぃぃぃ!!と、その名を叫びながら、噴き上げる。
あんな人形を作ったのも、ただ、直樹を欺き、自分の心を偽る為に過ぎなかったのかも
知れない――。
バターのように、互いの体液の中に溶けてゆき、一塊の何かになることが叶うならば、
そうしたかった。
俺と直樹とは、固く固く抱きあったまま、いつまでもいつまでも、離れないでいた。
直樹の髪の向こうには、相変わらず、人形が見えている。最初に作ったのと、次に作っ
た、それより一回り大きいやつ。我ながらかわいいと思う。
いつものように、その前にちょこんと置かれているのは、幾つかのキャンデーと、昔、
誰ぞやが好きだった、ふざけた名前のスナック菓子だ。
ついさっきまで、それらのものの輪郭は見えなかった。
今や、朧気ながら、夜明け間近の薄闇の中に浮かび上がろうとしていた。
Fin.