モララーのビデオ棚in801板55

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1風と木の名無しさん
   ___ ___  ___
  (_  _)(___)(___)      / ̄ ̄ヽ
  (_  _)(__  l (__  | ( ̄ ̄ ̄) | lフ ハ  }
     |__)    ノ_,ノ__ ノ_,ノ  ̄ ̄ ̄ ヽ_ノ,⊥∠、_
         l⌒LOO (  ★★) _l⌒L ┌'^┐l ロ | ロ |
   ∧_∧| __)( ̄ ̄ ̄ )(_,   _)フ 「 | ロ | ロ |
  ( ・∀・)、__)  ̄フ 厂  (_,ィ |  </LトJ_几l_几! in 801板
                  ̄       ̄
        ◎ Morara's Movie Shelf. ◎

モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
なにしろモララーのコレクションなので何でもありに決まっています。

   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |[]_||  |      | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ]_||
   |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   すごいのが入ったんだけど‥‥みる?
   |[][][]._\______   ____________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |[]_|| / |/    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.||  |[]_||
    |[][][][][][][]//||  | ̄∧_∧     |[][][][][][][][].||  |  ̄
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ( ・∀・ ) _ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.||  |
   |[][][][][][][][]_|| / (    つ|8l|.|[][][][]_[][][]_.|| /
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    | | |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    (__)_)
前スレ
モララーのビデオ棚in801板54
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1260027709/

ローカルルールの説明、およびテンプレは>>2-9のあたり
2風と木の名無しさん:2009/12/27(日) 21:02:42 ID:yvxJsr+K0
1の残り
保管サイト(携帯可/お絵描き掲示板・うpろだ有)
http://morara.kazeki.net/

2.ネタ以外の書き込みは厳禁!
つまりこのスレの書き込みは全てがネタ。
ストーリー物であろうが一発ネタであろうが
一見退屈な感想レスに見えようが
コピペの練習・煽り・議論レスに見えようが、
それらは全てネタ。
ネタにマジレスはカコワルイぞ。
そしてネタ提供者にはできるだけ感謝しよう。

  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  | ネタの体裁をとっていないラッシュフィルムは
  | いずれ僕が編集して1本のネタにするかもね!
  \                           | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| . |
                               | | [][] PAUSE       | . |
                ∧_∧         | |                  | . |
          ┌┬―( ・∀・ )┐ ピッ      | |                  | . |
          | |,,  (    つ◇       | |                  | . |
          | ||―(_ ┐┐―||        |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   |
          | ||   (__)_), ||       |  °°   ∞   ≡ ≡   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
3風と木の名無しさん:2009/12/27(日) 21:11:29 ID:IYj6wluT0
★モララーのビデオ棚in801板ローカルルール★

1.ノンジャンルの自作ネタ発表の場です。
書き込むネタはノンジャンル。SS・小ネタ・AAネタ等801ネタであれば何でもあり。

(1)長時間に及ぶスレ占拠防止のためリアルタイムでの書き込みは控え、
   あらかじめメモ帳等に書いた物をコピペで投下してください。
(2)第三者から見ての投下終了判断のため作品の前後に開始AAと終了AA(>>3-7辺り)を入れて下さい。
(3)作品のナンバリングは「タイトル1/9」〜「タイトル9/9」のように投下数の分数明記を推奨。
   また、複数の書き手による同ジャンルの作品判別のためサブタイトルを付けて頂くと助かります。

※シリーズ物・長編物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
※感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬はほどほどに。
※「公共の場」である事を念頭にお互い譲り合いの精神を忘れずに。

相談・議論等は避難所の掲示板で
http://s.z-z.jp/?morara

■投稿に当たっての注意
現在連投規制が厳しくなっており、10レス連続投稿すると、ばいばいさるさんに引っかかります。
長い作品の場合は、分割して、時間をずらして投下することをおすすめします。
1レスあたりの最大行数は32行、タイトルは全角24文字まで、最大byte数は2048byte、
レス投下可能最短間隔は30秒ですが、Samba規定値に引っかからないよう、一分くらいがベターかと。
ご利用はテンプレをよくお読みの上、計画的に。
4風と木の名無しさん:2009/12/27(日) 21:12:09 ID:IYj6wluT0
3.ネタはネタ用テンプレで囲うのがベター。

別に義務ではないけどね。

テンプレ1

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  モララーのビデオを見るモナ‥‥。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  きっと楽しんでもらえるよ。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
5風と木の名無しさん:2009/12/27(日) 21:12:40 ID:IYj6wluT0
テンプレ2
          _________
       |┌───────┐|
       |│l> play.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
   ∧∧
   (  ,,゚) ピッ   ∧_∧   ∧_∧
   /  つ◇   ( ・∀・)ミ  (`   )
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |            ┌‐^──────────────
  └──────│たまにはみんなと一緒に見るよ
                └───────────────

          _________
       |┌───────┐|
       |│ロ stop.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]

                 ピッ ∧_∧
                ◇,,(∀・  ) ヤッパリ ヒトリデコソーリミルヨ
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |                                |
  └────────────────┘
6風と木の名無しさん:2009/12/27(日) 21:13:26 ID:IYj6wluT0
テンプレ3
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < みんなで
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < ワイワイ
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 見るからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < やっぱり
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < この体勢は
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 無理があるからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ
7風と木の名無しさん:2009/12/27(日) 21:20:06 ID:IYj6wluT0
テンプレ4

携帯用区切りAA

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

中略

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

中略

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
8風と木の名無しさん:2009/12/27(日) 21:21:14 ID:IYj6wluT0
 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 僕のコレクションに含まれてるのは、ざっと挙げただけでも
 |
 | ・映画、Vシネマ、OVA、エロビデオとかの一般向けビデオ
 | ・僕が録画した(またはリアルタイムな)TV放送
 | ・裏モノ、盗撮などのおおっぴらに公開できない映像
 | ・個人が撮影した退屈な記録映像、単なるメモ
 | ・紙メディアからスキャニングによって電子化された画像
 | ・煽りや荒らしコピペのサンプル映像
 | ・意味不明、出所不明な映像の切れ端
 \___  _____________________
       |/
     ∧_∧
 _ ( ・∀・ )
 |l8|と     つ◎
  ̄ | | |
    (__)_)
       |\
 / ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 媒体も
 | 8mmフィルム、VCR、LD、ビデオCD、DVD、‥‥などなど
 | 古今東西のあらゆるメディアを網羅してるよ。
 \_________________________
9風と木の名無しさん:2009/12/27(日) 21:22:22 ID:IYj6wluT0
   |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   じゃ、そろそろ楽しもうか。
   |[][][]__\______  _________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |       |/
    |[][][][][][][]//|| |  ∧_∧
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ )
   |[][][][][][][][]_||/(     )
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   | | |
              (__)_)
10用義者Xの検診 石湯石 「初恋」 8/8:2009/12/27(日) 21:28:06 ID:IYj6wluT0
前スレからの続きです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 石上が落とした視線を受け止め、油川は目元を和ませた。
「違わないさ。少なくとも真理への欲求は同じだ」
「君と話していると、全ての科学が繋がっている気分になるな」
 石上がわずかに笑う。
 油川は数学や物理学はもちろん、工学や薬学、生命科学、果ては社会学や文化人類学まで詳しい。
理系と文系という学問のなおざりな区切りに油川は意味を見出だせないのだ。
「僕は間違いなくそうだと思っているよ。それに、物理学は数学をもって成立する」
 そうとだけ口にして油川は石上を見返して笑う。
 身を切るような風が足元を駆け抜け、コートの裾が翻る。
 油川は首をすくめた。鞄を左手から持ち代えかけ、右手に痛みが走って止める。
「夕飯でも食べにいかないか」
 油川が誘うと、思いがけず石上は首をふった。
「悪いが、うちに帰ってさっきの問題を検討したい。あと少しで解けそうな気がするんだ」
 石上らしい返答だった。
「ああ、わかった」
「すまないな」
「構わないさ。結論を楽しみにしているよ」
 油川は笑みを浮かべ、図書館前で石上と別れた。
 互いに歩き出して油川はふと足をとめる。静かに振り返ると、夜の闇に石上の背中が遠ざかっていく
のが見えた。
 もう少し近くにいたかった。叶うことならあのよれたジャンパーの背中に触れてみたかった。
 油川は右手を握りしめる。望みすぎれば、あの優しい暖かい時間を得る機会さえ失う。
 たった一つの喜びだけを大切に抱き続けることができれば、どれほど幸せだろう。
 油川は考えて小さくかぶりを振る。そのまま踵を返し、自分の家路へ急いだ。
11用義者Xの検診 石湯石 「初恋」:2009/12/27(日) 21:30:11 ID:IYj6wluT0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 前スレ使い切ってしまって申し訳ありませんでした。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
12風と木の名無しさん:2009/12/28(月) 00:16:05 ID:P55bFoVJO
>>11
あああGJ!禿げました
火曜日が楽しみすぎる…
13風と木の名無しさん:2009/12/28(月) 00:25:28 ID:6esFTaol0
>>1乙です
テンプレ改定について保管サイトの避難所で話し合ってるので、
投下する人はそっちも参照してください。
14野良と空 1/4:2009/12/28(月) 01:28:25 ID:kN/SJ7UJ0
某歌に出てくる野良猫のその後を超捏造。他の曲と混じってます。
曲知ってる人には分かるかもしれない小ネタをちょっと入れてみた。
恋愛要素より、仲良しコンビのほのぼのな友情話を目指してみた。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

進んで行く先から聞き慣れない音がしている。
絶え間無く繰り返していて、近くまで行ったらきっと大きな音だろうと想像はついたけど、決して不快な音ではなかった。
その音のする方へ歩き続けると、前方に人間の作った大きな壁が広がっていた。音は壁の向こうから聞こえているようだ。
壁は高くて跳び越えられそうにはなかったが、少し離れた所に切れ目が見つかったので、そこへ向かった。

切れ目の所に着くと、不意に視界が開けた。
目の前にあったのは見た事もない程大きな砂場と、もっともっと広い、目の届く限り広がる水溜りだった。
雨の後に出来る水溜りは見慣れていたけど、天気がいいのにこんなに大きな水溜りが出来ているなんてと驚いて、ただずっと呆けたようにそこに突っ立っていた。
さっきから聞こえていた音は、この水溜りの水が揺れる音だったらしい。

しばらく見ているうちに面白くなってきて、水際へ向かって走り出した。
濡れた砂の上を走って行くと、一定の間隔で足元に水がやってくる。
少し疲れて立ち止まると、なんだか水に足を引っ張られるようだった。
その感覚がまた面白くて、しばらく水溜りの方を向いたままじっとしていたら、突然大量の水が押し寄せてきて、結果頭から水をかぶる事になってしまった。
水際を走るのは面白かったが、さすがに全身ずぶ濡れというのはいただけない。
その上豪快に転んでしまうし、水もなんだか変な味がするしで、とにかく急いで水から離れた所へ避難した。
乾いた場所で全身の水を落とす。目もしみたので、治まるまで暫くの間きつく閉じていた。
そして再び目を開いてみて驚いた。さっきまで自分しかいなかった筈なのに、少し離れた所に誰かが立ってこちらを見ている。
15野良と空 2/4:2009/12/28(月) 01:29:53 ID:kN/SJ7UJ0
「大丈夫?」
目が合うと相手はそう聞いてきた。敵意は無いらしい。
「大丈夫だよ、ちょっとびっくりしたけど」
言いながら相手に向かって一歩踏み出す。すると相手は二、三歩後ろに下がった。
「それより、僕しかいないと思ってたけど、君はいつからいたの?」
今度は座って足を動かさずに聞いてみる。
「ずっといたよ、僕はここで暮らしてる」
こちらから近付こうとしなければ後ろに下がる事もしなかったが、立ったまま、いつでも逃げ出せるように構えているようだった。
ここが自分の縄張りだというなら堂々としていればいいのに、と思う。
「ここに住んでるなら聞きたいんだけど、この水溜りって何?すごい勢いで水が動いてるし、変な味と匂いがするし。」
「僕にもよく分からないんだ、初めて来た時からずっとあるんだよ。この水溜りの音が気に入ってここに住む事にしたんだけどね」
それからこちらに背を向けて砂地の高くなった方へと歩き出した。
「ここには僕しかいないし、しばらくこの辺で過ごしてもいいよ」
振り返らずにそう言って去っていく。その姿がてっぺんで突然見えなくなった。
驚いてよく見ると、彼自身の姿が消えたのではない事に気がついた。
彼の毛色は空と同じ色をしているから、背景が空になると溶け込んでよく見えなくなるだけだったのだ。
さっきまで存在に気がつかなかったのもそのせいかもしれない。

特に目的地や日程を決めた旅でもなかったので、お言葉に甘えさせてもらう事にした。
少し探すと、壁の近くに休むのにちょうど良さそうなくぼみが見つかったので、そこに腰を落ち着けた。
そこからは水溜りを見る事はできない。ただ、音だけが聞こえていた。
頭の上に広がる空を見上げる。次第に夕暮れ時が近付き、空の色が変わり始めた。
見上げていると、段々に色が濃くなって、ついには夜空になった。暗くなった空に、大小様々な星が煌めいている。
星空を見ているうちに、さっき逢った相手の事を考え始めていた。
昼間、空と同じ青い色をしていた彼の毛並みは、ひょっとしたら夕方には夕焼け色に、
そして夜になったら黒くなって星が光りだすのではないかという錯覚を起こしてしまう。
16野良と空 3/4:2009/12/28(月) 01:30:39 ID:kN/SJ7UJ0
そんなはずが無いと分かってはいても、どうしてもそのイメージが頭から離れない。
彼の毛色は、他に無い色で、そしてとても綺麗な色をしていたから、どこか神秘的な存在として感じてしまったのかもしれない。
そんな事を考えているうちに、次第に相手が本当に実在したのだろうかと思い始める。
さっきの出会いを、夢の中の出来事のように感じている。
確かに僕は彼と話をしたし、今ここで休んでいるのだって彼がいてもいいと言ってくれたからだ。
いくらそう考えても、現実感は希薄だった。
僕は、一晩中その事を考え続けた。そして、明け方近くなって眠った時、彼の夢を見た。
夢の中で、彼はゆうべ僕が考えた通り、夜の色と星の模様をした毛皮を纏っていた。
そして、僕は彼に導かれて、本物の星空を飛んでいた。
夢の中の彼は、星空について全てを知っていて、飛びながらそれを僕に教えてくれていた。

目を覚ますと、だいぶ陽が高く昇っていた。水の音は昨日と変わらずに聞こえていた。今日も晴れている。
外に出てみたが、そこには誰もいなかった。
彼の存在を確かめようと思っていたので、少しだけがっかりしたが、いるのならそのうち出てくるだろうと思い直して、昨日ここに来た時と同じように水際を走ってみた。
今日は、水をかぶってしまう事が無いように気をつけて走った。
しばらくそうやって遊んで、少し疲れてきたので、一旦高い所へ上がった。
そして改めて彼の姿を求めて辺りを見渡した。
空が見えている辺りは特に念入りに探したが、まだ見つからない。
一日中僕は走ったり休んだりを繰り返した。そして、夕方になった時、再び彼を見つけた。
今日は近付いて行ってもあからさまな警戒心は見られなかった。
西側の空は夕焼け色に染まり始めていたが、やはりというか、彼の毛色は変わっていなかった。
どうしてか分からないけど、今日は日が沈んで夜になるまで、僕達は黙って並んだまま空を見上げていた。
勿論夜になって、空に星が光り始めても、彼の色が変わることは無かった。
17野良と空 4/4:2009/12/28(月) 01:32:09 ID:kN/SJ7UJ0
不意に自分の想像に可笑しくなる。僕は今にも笑い出しそうになりながら、夕べ考えた事と、その後に見た夢の事を彼に話した。
話を聞いて、彼も笑い出した。でもしばらく一緒に笑った後、真顔に戻った彼が僕の方を向いてぽつりと言った。
「僕の色って、そんなに綺麗だと思う?」
勿論だ。他にこんな毛色は見た事が無い。僕は大して珍しくもない色だから、自分に無い物を持っているともいえる彼が羨ましくもある。
「そうか、綺麗だって思って貰える事もあるんだ」
自分の身体を見ながらそう呟く。僕以外からはこの色を褒められた事が無いのかな、と思った。
「ねえ、もうしばらく、ここにいる気は無い?」
そう言われて少し考えてみる。
この旅を始めたのは、誰か一緒にいる相手が欲しいと思ったからだったじゃないか。
前に仲がよかった相手が人間だったから、なんとなくまた人間の友達を探していたけど、そんなにこだわる事もないような気がする。
「君がいいと言うなら、ここにいたい。ここの水溜りは面白いし、君ともっと仲良くなりたいんだ」

翌日から、僕達は一緒に過ごした。
夕方には、並んで沈んでいく夕日を見ていた。
ふと後ろを見ると、僕達の影が砂の上に長く伸びている。
二つ並ぶ影に、旅の間の孤独感が消えていくのを感じた。
つられて振り返り、同じように影を見ていた彼と顔を見合わせる。
そしてまた、あたりがすっかり暗くなるまで、一緒に水と空を見ていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

公式に続編が出る前に個人的に好みな展開でやってみた。
彼らは一緒に幸せになったらいいと思うよ。
18風と木の名無しさん:2009/12/28(月) 09:58:32 ID:DpV7oD8jO
ごめん、コピペミスらないようにとかそっちばかり気をとられて肝心な事忘れたorz
>>1
19風と木の名無しさん:2009/12/28(月) 15:13:09 ID:MTfesqXiO
前スレ483

は〜萌えました!
その後、坊ちゃんがなんとか頑張ってアパートまでついて行けたといいなぁ(*´∀`*)
20義羅義羅 先エル×秀由 0/6:2009/12/28(月) 15:32:31 ID:avGsr/3k0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  義羅義羅を見直してたらうっかり萌えた
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  先エル×秀由です
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) 
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
21義羅義羅 先エル×秀由 1/6:2009/12/28(月) 15:33:52 ID:avGsr/3k0
激しい衝撃をくらってからの記憶がない。
ずいぶんと長いこと気を失っていたんだろう。
目を覚ました時、秀由は見知らぬ部屋のソファーに横たわっていた。
「な……だ、ここ……」
まだぼんやりとしたままの意識を奮い起こそうとかぶりを振る。
のそりと起き上がると、左頬に鈍い痛みが走った。
小さく呻く。いてぇ。

「まだ痛むの?弱いんだねぇ」
その声に秀由の肩がびくりと揺れた。耳障りな含み笑いと、肩をいからせた背中にゆっくり近付く影。
意識も覚醒し始め、秀由は勢いよく振り返った。
目の前に一見優男風な男が立っていた。
口角を引き上げて、可愛らしく小首を傾げている。
ただ、秀由に向けられた瞳だけがどこかおかしい。
こちらを見つめているようで、遠くを見つめているような、安定しない視線。
そのまま男は目尻を下げて微笑んだ。
「俺は先エル。ここの代表だよ。お前の名前は?」
22義羅義羅 先エル×秀由 2/6:2009/12/28(月) 15:34:28 ID:avGsr/3k0

「秀由、か。へぇ、お前、輪区のホストやってたんだ」
「ああ……」
そっと頬に手が添えられる。先エルはソファーに座る秀由の前、絨毯に膝をつき上目遣いで見上げていた。
よく知りもしない男のはずが、なまじ顔が整っているだけにじっと見つめられただけで少し緊張してしまう。
「いいね。やっぱり。お前、良い顔してる」
見透かすような視線に、秀由は思わず目を逸らした。
頬に触れた手をやんわりと退け、顔を背ける。
瞬間、指先が秀由の顎を強く掴み、顔ごと視線を先エルの元へ引き戻した。

「……っ!」
そのまま噛みつくように唇を寄せられる。
驚きに一瞬身を凍らせた秀由は、一歩遅れて抵抗を見せた。
「んんっ」
咥内に入り込もうとする舌を、歯を噛み締めて拒む。
そして自分より下の位置にある肩を思いきり突っぱねた時、唇にちくりとした痛みを感じ秀由は顔を歪めた。
先エルが離れる。唇からは血が溢れていた。
「ぁにっすんだよ……お前……」
乱れた息を整える。
想定もしない行動に心臓はどくどくと脈打った。
23義羅義羅 先エル×秀由 3/6:2009/12/28(月) 15:35:10 ID:avGsr/3k0

「俺はね、お前を助けてやろうって思ってんだよ?」
先エルの唇の端に秀由の血液が付着していた。
彼はゆっくりとした動作でそれを舐め取った。
「……は?」
「悲しいー助けてー慰めてーって、顔に書いてある」
「何、言ってんだか、わかんねぇ」
「お前のこと見た瞬間にね。俺、気に入っちゃった。だって、俺のことなんか、もうぐちゃぐちゃにしてくれって顔してるんだもん」
「……」
「やさぐれちゃってさぁ……捨てられた猫みたいで、拾いたくなったの」
その言葉に秀由の顔は切なげに歪んだ。
うるさい……。そう小さく漏れた声はほんの少し涙声で。

「お前、仲間に裏切られたの?傷つけられたの?かわいそう」
「ちが、う……ちがう」
「人なんてね、信用しちゃダメなんだよ。散々油断させて、最後には裏切るもんだ。
汚いだろ?平気で嘘ばっかりつく。そう言う奴に限って、綺麗事だけはご立派なんだよね」
「ちがう!!」

叫んだ秀由の瞳は涙で濡れていた。激昂して頬が紅く染まっている。
唇が戦慄く。潤んだ瞳が瞬くとポロリと一粒涙が零れ落ちた。
24義羅義羅 先エル×秀由 4/6:2009/12/28(月) 15:36:18 ID:avGsr/3k0

先エルは面白いものを見るように目を輝かせた。
秀由は顔をくしゃくしゃに崩して泣いていた。
それでも声をあげて泣きじゃくることは出来ず、唇を噛んで耐える。
「可愛いね、お前」
ふと、先エルが愛しげに呟いた。
ぎゅっと抱き締められる。秀由は先エルの腕の中で体を硬直させた。
「俺がお前を拾ってあげる。この場所はお前を裏切らないよ」
そう言って、しっかりと顎を掴む指。先エルが顔が近付く。
視界は涙でぼやけていた。
さっきのように抵抗する気力さえ湧かない。されるままに受け入れる。
焦点が合わずゆらゆらとさまよう瞳。
先エルは舌で押し潰すように秀由の唇の傷を刺激した。
「ふっ……」
痛みに眉を寄せる。
しかし、貪るような口付けに翻弄されかかっている自分が確かにそこにいる。
先エルは遠慮なく傷口を押し開き、その血を吸った。
赤く腫れ上がった唇の感覚。
下唇を甘噛みされる。
痛みの中に、密かな快感を感じピクンと体が震えた。
25義羅義羅 先エル×秀由 5/6:2009/12/28(月) 15:37:11 ID:avGsr/3k0

いつの間にか、二人の体はソファーに沈んでいた。
先エルは胸についた秀由の両手を左手で軽く纏め頭上に上げた。
右手が頬にかかると、更に深い口付けが秀由を襲う。
先エルの舌先は優しく歯列をくすぐり、今度こそ確実に秀由の咥内に侵入して来た。広がる鉄っぽい味。
奥に引っ込む舌を追いかける。
秀由はしばらく先エルの舌先から逃げていたが、その内観念してそれを受け止めた。
すぐさまかぶりつかれ、強く吸い上げられる。
舌に電流が走ったような、むず痒い感覚。先エルのキスに全身の力が抜けて行く。
「んん……」
わざと卑猥に水音を立てて、咥内の隅々を探る口付けに、こんな風にキスされるのは初めてだと秀由は思った。
男だから、いつも自分がリードしていたから。
こんな風に丁寧なキスをされると、どうして良いのか分からなくなる。

どうしよう、息ができない。キスする時、息ってどうやってするんだっけ?

首を振って逃げようとするが、がっちり両手と頬を固定され動けない。
どうしよう、どうしようと考えている内に先エルが鼻から息を吸った。それを見て思い出す。
そうか、鼻でするんだった。
真似をして何とか鼻で呼吸する。
それと同時に、口から「んふっ」とくぐもった声が漏れ、秀由の頬は羞恥で更に赤らいだ。
生暖かい舌が気持ち良いような、気持ち悪いような。
含み切れなかった唾液が顎を伝い、先エルはようやく唇を離した。
26義羅義羅 先エル×秀由 6/6:2009/12/28(月) 15:38:07 ID:avGsr/3k0

「はぁっ」
大きく息を吸う。酸素を求めて何度も喘ぐように呼吸を繰り返した。
「どう?気持ち良かった?」
先エルはそう言って笑うが、答えようにも答えられない。
秀由の瞳は涙と興奮とでトロトロにとろけていた。

気持ち良いなんてものじゃない。
これまでに起こったこと全て、頭から抜け落ちてしまうような濃厚なキスに、頭がくらくらする程だった。
優しく耳の後ろをくすぐる指。
「うちにおいでよ、秀由。嫌なこと、いつでも全部忘れさせてやるから」
一つに束ねられていた両手が解放される。そのまま指は下腹部に伸ばされ、ズボン越しに秀由のそれを撫でた。
秀由の下半身は先ほどのキスでしっかり反応を見せており、それを感じた先エルの嬉しそうな声さえも今は刺激になった。
「お前が思う通りに抱いてあげるよ。全部俺にまかせれば良い。ね?」
ちゅっともう一度軽く口付けると、先エルの唇はそのまま胸へと降りる。
「は、ぅ」
小さく声が漏れた。突起を直に舐められ、身を捩る。

やめろ、と言う言葉はとっくに頭から消えていた。
今は工兵のことも障子のことも、有奈のことさえも思い出したくはなかった。
「俺なんかもう、めちゃくちゃにしてくれ……」
「お前がそう望むならね」
秀由はきつく目を瞑ると、先エルの頭をぎゅっと抱え込み、自ら深い闇へ落ちて行った。
27義羅義羅 先エル×秀由:2009/12/28(月) 15:39:19 ID:avGsr/3k0

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ また義羅義羅やらないかなぁ…。有難うございました。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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28パ一シ一、シャワーをかりる 0/13:2009/12/28(月) 16:30:29 ID:pVTXfdJjP
英国の人面機関車の擬人化で2番×6番
「パ一シ一とひつじ」の序盤のあたりという時間設定です
何故か舞台が現代っぽかったり男としてあり得ない台詞があったりするけど
そこは擬人化補正で華麗にスルーして下さい




                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  本番は無いけどエロっぽい描写が有るモナ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  擬人化だけどショタ受っぽいから要注意
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ズーバー
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
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29パ一シ一、シャワーをかりる 1/13:2009/12/28(月) 16:31:27 ID:pVTXfdJjP
「……お願いです。帰る前にシャワーを貸してもらえませんか?」
ティータイムはとうに過ぎ、東の空から夕暮れが迫りつつある夏の日の事だった。


この日パ一シ一に与えられた仕事は、船から港に上げられた魚の積み下ろし作業だ。
朝から晩までずっと同じ作業の繰り返しだった。
その為、パ一シ一の服や身体にはすっかり魚の臭いが染み付いてしまっていた。
夏の暑さに蒸しあげられてしまったせいか、その生臭さは相当なものだ。
しかし、そんなパ一シ一の頼みに対し、港の作業員は顔をしかめて首を振った。
「すまないねパ一シ一。今日は貸してあげられないよ。シャワーが壊れて修理中なんだ」


「そ、そんなぁ……」
パ一シ一はがっくりと肩を落とした。
本当なら一秒でも早く、この強烈な臭いを洗い流してさっぱりしたいのというのに。
それに、パ一シ一が敢えてこの港のシャワーを貸りたかったのには理由があった。
今日は寮の共同入浴施設が工事の為に使えない。と、あらかじめ伝えられていたのだ。


寮に部屋を持つ他のみんなもそれを解っているから、今日は仕事先で入浴なりシャワーなりを済ませてくるはずだ。
それなのに一人だけ、こんなに臭い身体で寮に戻るとなると、みんなにどんな嫌味を言われるか解ったものじゃない。
そんな事を思いながら、それでも重たい足取りでパ一シ一は寮へと戻る。
これからトップ公ハッ卜卿による、夕食前のミーティングがあるというのだ。
30パ一シ一、シャワーをかりる 2/13:2009/12/28(月) 16:32:07 ID:pVTXfdJjP
「…… ……ハァ。嫌になっちゃうなぁ」
まったく、散々なミーティングだった。パ一シ一は夕食の盛られたトレイを手に、何度も溜息をつく。
先ずはミーティングに少し遅れてしまった為にいらぬ注目を浴び、さらにこの臭いだ。
近くにいたトーマスをはじめとして、いつも優しいトビーにまで嫌味を言われてしまった。
さらには、こんなに臭い奴がいたら折角の夕食がまずくなる。と食堂の隅にひとりだけで追いやられてしまったのだ。


(あーあ、僕だって好きでこんな臭いになっているわけじゃないのに)
大変だった仕事の後の待ちに待った夕食だというのに、パ一シ一はとても悲しい気分だった。
(こんな臭いのまま明日までいなくちゃいけないのか……)
明かりから離れた薄暗い食堂の片隅で、涙目になりながらスプーンを握り締める。
こんなみじめな思いをする位なら、もうさっさと食べて部屋に戻って寝てしまおう。と考えていた、その時だった。


「やあパ一シ一。今日は何だか散々だったみたいだね」
うつむいてたその頭の上から、覚えのある声が聞こえてきた。
涙目のままで見上げると、そこには夕食のトレイを持った笑顔の男がいた。
工ドワ一ドだ。


「やあ工ドワ一ド。今日はこっちに来ていたんだね。君も僕を馬鹿にしにきたのかい?」
パ一シ一が不満げな低い声でそう言うと、工ドワ一ドはパ一シ一とは対照的に、にこりと微笑んだ。
「ううん、そんな事はしないよ。一人でこんなところで食事なんて寂しいだろうと思ってさ」
そう言いながら、工ドワ一ドはパ一シ一の目の前にトレイを置いて椅子に座り込んだ。
31パ一シ一、シャワーをかりる 3/13:2009/12/28(月) 16:32:40 ID:pVTXfdJjP
「……いいよ工ドワ一ド。君が優しいのは解ったから無理しないで。せっかくのご飯が魚の臭いで美味しくなくなっちゃうよ」
何度も何度も、パ一シ一はそう言って工ドワ一ドを席から立たせようとした。
けれども工ドワ一ドはその度に、笑顔で首を横に振って食事を取り続けていた。
「僕はそんなに君の臭いなんて気にしてないよ。魚は僕の好物だからね」


工ドワ一ドは常にこんな調子で、周囲の人々に対して親切に接し、ねぎらってくれる。
みんなから臭いと馬鹿にされて悲しい気持ちでいっぱいだったパ一シ一にとっては、
そんな工ドワ一ドの心遣いが今はこの上なく有り難かった。
けれどもそれ以上に、こんな臭い中で食事をとらせてしまって申し訳ないという気持ちでいっぱいでもあった。


「ねえパ一シ一、良かったらこれから僕の部屋に来ない?僕の部屋にはシャワーがついてるからそこで身体を洗えるよ」
二人揃って夕食の皿が空になった時、工ドワ一ドはふとそんな事を口にした。
それを聞いたパ一シ一は驚き、そしてそれまでどんよりとしていた表情をぱっと明るくして何度も頷いた。
「本当かい?君の部屋って、君の支線の駅のところの…」
「そう。SCCの寮を間借りしている、あそこだよ。今からすぐ行けば門限にも間に合うよ」


ブレンダム港へと続く支線の運行を受け持っている工ドワ一ドは、普段はこのティッドマウスのソド一鉄道社員寮ではなく
支線の分岐点であるウェルスワースの駅近くにある、ソド一陶土社(SCC)の事務所兼社員寮の一部屋で寝泊りをしている。
今日はミーティングのついででこちらで夕食をとっているようだが、それが終わればこの寮ではなくSCCの寮へと戻るのだ。
そういえば、SCCの寮はつい数ヶ月前に改装され、随分と便利な作りになったと聞いた事があった。
それでもまさかシャワールームが各部屋ごとについているだなんて、パ一シ一には考えもつかなかった事だ。。


パ一シ一は思わぬ幸運にとても喜びを感じた。普段から穏やかな工ドワ一ドの表情が、今日は神様のようにさえ見えた。
「ありがとう工ドワ一ド!これで今夜は気持ちよく眠れそうだよ」
「それはよかった。さあ、早速行こう」
32パ一シ一、シャワーをかりる 4/13:2009/12/28(月) 16:33:06 ID:pVTXfdJjP
すぐさま二人は寮を後にすると、工ドワ一ドの操縦する機関車に乗せてもらってウェルスワースへと向かっていった。
「さあ、こっちだよパ一シ一」
案内されて向かっていった建物は、確かにパ一シ一や他の仲間達が住む寮よりも新しく、立派なものだった。
工ドワ一ドの部屋は寮の最上階の角部屋だ。中に入ると、新築の家のような良い香りがした。
「うわぁ…すごいいい部屋だね」
思わずパ一シ一はくりくりとした瞳をさらに丸くして、部屋の中を興味深くきょろきょろと見回す。
最低限の生活道具だけが揃ったこざっぱりとした室内は、工ドワ一ドの飾らない性格がよく表れているような気がした。
「着替えは僕のを貸してあげるよ。さあ、早く身体を洗っておいで。シャワールームはあそこだよ」
「うん。……ありがとう」


パ一シ一は早速シャワールームに入ると服を脱ぎ、そして真新しいシャワーヘッドの下に立つと、
早速湯を出し身体を洗い流そうと蛇口に手をかけた。
頭上から降り注ぐ適温の湯を浴び、身体中にこびりついた生臭い悪臭を先ずはさっぱりと洗い流す。
そして身体を洗おうと手前に備え付けられていたソープディッシュに手を伸ばす。
が、そこにあるだろうと思っていた石鹸を、パ一シ一の指先は見つけられなかった。
(あ、あれっ? 石鹸が無いよ……)
どうやら、石鹸は丁度使い切られていたようなのだ。
いくらシャワーを浴びたとは言え、やはり石鹸で身体を洗わなくては汚れや臭いを落とし切れない事だろう。
(ちょっと工ドワ一ドを呼んでみよっかな…)
そう思うとパーショーは少しだけシャワーの勢いを落とし、工ドワ一ドを呼ぶ為に声を出そうと大きく息を吸った。


その時、シャワールームのドアがバタリと開く音がした。
「パ一シ一ごめん、石鹸切れてたでしょ……」
「うわぁっ!」
石鹸が無かった事に気がついたのだろうか、工ドワ一ドがシャワールームにやって来たのだ。
パ一シ一は丸い瞳をさらに丸くして思わず叫びを上げてしまった。
前振れもなくいきなりドアが開いたものだから、元来怖がりのパ一シ一は大いに驚き慄いている。
そしてそのはずみで、ベタン。と、その場で尻もちをついてしまった。
33パ一シ一、シャワーをかりる 5/13:2009/12/28(月) 16:34:04 ID:pVTXfdJjP
「痛いっ!」
尻もちをついた勢いで、床に僅かに流れ溜まっていたシャワーの流水がバシャリと跳ね上がる。
パ一シ一が痛む腰のあたりをすりすりとさすっていると、工ドワ一ドの小さな悲鳴が聞こえた。
「うわぁっ…!」
一体何事か。と見てみると、工ドワ一ドの髪や顔、さらには着ていた制服までもが水浸しになってしまっていたのだ。
「……あーあー、すっかりずぶ濡れだ」
どうやら、パ一シ一が尻もちをついて跳ねた湯が工ドワ一ドにかかってしまったようだった。
「ごっ、ごめんよ工ドワ一ド!」


パ一シ一は打った箇所が未だに痛んでいたが構うことなく、工ドワ一ドに頭を下げながら何度も大丈夫か?と問いかけた。
しかし工ドワ一ドは怒るどころか、にこにこと笑みを浮かべながら顔にかかった水を拭う。
「はははっ、大丈夫。気にしないでいいよ」
「……本当にごめんね」
「いいっていいって。だけどちょっと濡れすぎちゃったかな? あっ、そうだ……」


工ドワ一ドは何かひらめいたような面持ちを見せたと思うと、すぐさま濡れた制服をその場で脱ぎ出した。
一体工ドワ一ドは何を考え付いたのだろう。と、パ一シ一は腰を落としたままで見守る。
「僕もシャワーまだだったから、一緒に浴びちゃおっかなって思ったんだ」
「えっ!?」
パ一シ一が思わず驚きの声を上げた時、工ドワ一ドは既にその場で服を全て脱ぎ捨てていた。
裸になった工ドワ一ドがパ一シ一の元へと歩み寄る。
パ一シ一は慌てふためきながら立ち上がり、ただおろおろと工ドワ一ドの行動を見届け続ける事しか出来なかった。
「えっ、工ドワ一ドっ??」
「ちょっと狭いけど、いいよねパ一シ一?」
「えっ、えっ…、いやっ、いいよ。いいんだけど……」
34パ一シ一、シャワーをかりる 6/13:2009/12/28(月) 16:36:13 ID:pVTXfdJjP
パ一シ一は戸惑うばかりだった。とは言え、別に工ドワ一ドと一緒にシャワーを浴びるのが嫌なわけではない。
寮の共同浴場では、トーマスをはじめ仲間達といつも同じ空間で風呂に入っているわけだし、
勿論そこで工ドワ一ドとだって一緒だった事もある。
けれども、寮の共同浴場とは比べ物にならない位に狭いこのシャワールームに男が二人も入るとなると、話は別だ。
「……おっとと、ごめんねパ一シ一」
「ううん、大丈夫。ちょっと狭いからね…」
ちょっとでも気を抜くと、すぐ隣で気持ちよさそうに湯を浴びる工ドワ一ドの身体にぶつかってしまいそうになる。
いくら見知りの者同士だとは言っても、裸の状態でこんなにも密接してしまう状況にはどうにも慣れなかった。


「あ、ごめん。パ一シ一が先に身体洗った方が良いよね」
ふと、思い起こしたかのように工ドワ一ドがそう呟く。そして手にしていた真新しい石鹸を見ると、
急に何かを思いついたようにぱっと表情を明るくしてこう続けた。
「そうだ!僕が君の身体を洗ってあげるよ。パ一シ一は若いのにいつも本当に仕事を頑張ってるからね!」
それを聞いて、パ一シ一はまた大きく目を見開いて驚いた。
「ええっ!いや、僕はひとりで洗えるって……」
「遠慮しないで。君が頑張ってくれるから僕の仕事もうまく行ってるんだから、たまには労わせて」


パ一シ一が首を振りながらうろたえても、工ドワ一ドは構う事無いと言った様子でにこりと微笑みながら、
手にした石鹸を泡立てたその手でパ一シ一の背中を優しくさすり始めた。
「あっ、ちょっ……くすぐったいって工ドワ一ド」
「ははっ、すぐに慣れるさ」
工ドワ一ドがやりたいと言ってやっている事なのだから、無理矢理に止めさせるのも何だか悪い気になる。
始めのうちは何とも言えないむず痒さを背中に覚え、パ一シ一は背中をよじらせながらも何とか耐えていた。
それでも工ドワ一ドの言う通りだんだんとその感触にも慣れてゆき、
泡を滑らせながら丁寧に洗ってゆく工ドワ一ドの指先にただただ、その身を委ねた。
35パ一シ一、シャワーをかりる アイキャッチ:2009/12/28(月) 16:37:01 ID:pVTXfdJjP
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 | | [][] PAUSE      | |
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 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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36パ一シ一、シャワーをかりる アイキャッチ:2009/12/28(月) 18:13:56 ID:pVTXfdJjP

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 | | |> PLAY.       | |
 | |                | |           ∧_∧ あまり間は開いていませんが
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) 続けさせていただきます
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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37パ一シ一、シャワーをかりる 7/13:2009/12/28(月) 18:14:37 ID:pVTXfdJjP
(人に身体を洗ってもらうのって結構気持ちいいものだね……)
シャワールームの壁に両手をかけ、パ一シ一は丁寧にその身を洗ってくれる工ドワ一ドの手の感触にうっとりとし続けていた。
背中に始まり、手足や胸元、おなかや腋の下までも、汗が滲んだり魚の臭いがこびりついた箇所も全て、工ドワ一ドに任せていた。
すると、太腿の辺りを洗い終えたようで、今度はその手が段々と上の方へと向かってゆく。
そして撫でるように優しく洗い上げる工ドワ一ドの手に、ぷるん。と何かが当たってしまった時、
パ一シ一ははっと息を飲むようにして驚いた。
(……ひゃあっ!)


すっかり気が緩んでしまっていた。工ドワ一ドの手先がパ一シ一の大事な部分にまで及んでいた事に、今まで気がつかなかったのだ。
「ちょっ……工ドワ一ド? そこは洗わなくてもいいよ…」
そう言って、パ一シ一が恥ずかしげにもじもじと内股をよじらせると、工ドワ一ドはふふっと笑った。
「恥ずかしいのかい? でもこれは僕にだってついているものだし、そんなに気にしないで」
そして恥じらうパ一シ一を尻目に、股座の至る所を手のひらから指先を細やかに駆使して泡で洗い上げる。


今までに感じた事の無い感触を敏感に感じ取ってしまい、パ一シ一は肩を震わせながら身体を強張らせた。
(んっ……! 何か変な感じがするっ……)
少しでも気を抜いたら、喉の奥から変な声が出てしまいそうだった。
それでも決して、痛かったりくすぐったかったりなどの不快な感触ではなかったので、
ここで声なんか上げたりでもしたら、折角身体を洗ってくれている工ドワ一ドに悪い。と、
パ一シ一は唇を噛み締めてひたすら声を堪えていた。
38パ一シ一、シャワーをかりる 8/13:2009/12/28(月) 18:15:08 ID:pVTXfdJjP
パ一シ一の大事なところの、先っぽから根元。さらにはだらりと垂れた袋の裏までも。
工ドワ一ドはにこにことしながらひたすらに泡で洗い続けている。
(ううっ……、もういいよぉ。早く終わらせて工ドワ一ド。じゃないと、僕……)
パ一シ一は心の中で泣きべそをかいていた。あまりの恥ずかしさに耐えきれなくなっていたからだ。


身体の中のとても敏感な場所に工ドワ一ドの指がとても優しく触れるものだから、
望まなくともそこに血が巡り、気付けば大事なところが大きく膨れ上がってしまっていた。
工ドワ一ドはその事について何も言わない。でも、見た目にも解ることだからもう気が付いているはずだ。
そんな何とも言えない気まずさが、パ一シ一の未だ幼い心を悪戯に締め付ける。


「……ひゃんっ!」
その時、不意に感じた刺激にも似た感触に、パ一シ一は思わず情けない声を漏らしてしまった。
それは工ドワ一ドの指先が、大事なところからお尻の割れ目へつうと線を描いた時のことだった。
どうやら割れ目の中に一か所だけ凄く敏感なところがあるようで、そこを触られた瞬間、我慢できない位の刺激が走ったのだ。
「あっ、どうしたのパ一シ一? どこか痛いところでもあった?」
優しい工ドワ一ドは元々赤みのある頬を湯気の熱でさらに紅色に染めながら、心配そうにパ一シ一に問いかけた。


咄嗟にパ一シ一は、ぷるぷるぷるっ。と激しく首を振り、そして心配をかけるまいと言葉を続ける。
「ううん、大丈夫。痛くなんか…ないさっ。ちょっとびっくりしちゃっただけ。だから心配しないで」
「そう、ならいいんだけど。もう少しで終わるから、痛かったらちゃんと言うんだよ」
「……うん、解ったよ」
パ一シ一の言葉に安心したような面持ちを見せた工ドワ一ドは、再びお尻の割れ目に手を宛がって、上へ下へと泡で丁寧に擦り上げた。
決して嘘をついたわけではなかった。工ドワ一ドの優しいタッチが痛いわけなど無い。
ただ、とにかくお尻から受けるその感触は、パ一シ一にとってはあまりにも刺激的すぎたのだ。
39パ一シ一、シャワーをかりる 9/13:2009/12/28(月) 18:15:38 ID:pVTXfdJjP
(ひゃぁぁっ……、駄目っ…おかしくなっちゃいそうだよぉっ…!)
腰のあたりがガタガタと震えを上げていた。唇を噛み締めないと、また変な声が飛び出しそうだった。
どうしてお尻を触られるとこんなにも変な気持ちになってしまうのか、パ一シ一には解らなかった。
工ドワ一ドが変な事をしているわけではない。工ドワ一ドはただ、自分の日頃の頑張りを労ってくれているだけなのだ。


大事なところは未だ膨れ上がったままで、しかも先の方からおしっこのような、潤んだ水が滲んできている。
(恥ずかしいよぉ…。僕、一人前の機関士なのに、なのに……おしっこ漏らしちゃってる…)
情けなさと恥ずかしさで、パ一シ一の胸は今にも押し潰されそうになっていた。
一秒でも早く終わらせてほしい。未だ丁寧に泡を立て続ける工ドワ一ドに向かって、パ一シ一はただただ祈り続けた。


「……よし、これくらいでいいかな」
背中から工ドワ一ドのそんな声が聞こえると、同時に頭上からシャワーの湯がどっと落ちてきた。
ようやく身体中を洗い終えたのだ。パ一シ一は温かな湯を浴びながら、ようやくこの変な気分から解放されるとほっと胸を撫で下ろす。
「ふうっ、ありがとう工ドワ一ド。おかげで全身すっきり綺麗になったよ」
「いえいえ、どういたしまして」


「じゃ、じゃあ今度は君の身体を洗ってあげる……」
そう言いながらパ一シ一が工ドワ一ドの手から石鹸を取りあげようとすると、それを工ドワ一ドは心配げな面持ちで止めた。
「パ一シ一、顔が真っ赤だよ。それと目も。きっとのぼせたんだ!」
びっくりしたパ一シ一が近くに取り付けられていた鏡のくもりを拭ってみると、そこには頬を真っ赤に染めた自分の姿があった。
きっと、長い事身体を強張らせて声を堪えていた為に、頭に血が上ってしまったのだ。
さらには泣き出しそうにもなっていたせいで、白目もひどく充血している。
40パ一シ一、シャワーをかりる 10/13:2009/12/28(月) 18:16:08 ID:pVTXfdJjP
「僕の事はいいから、早く出て身体を冷ましておいで。冷蔵庫にサイダーがあるから、飲んだらきっと良くなるよ」
そう言われながら半ば追い出される形で、パ一シ一は工ドワ一ドを残してひとりシャワールームから出て行った。
工ドワ一ドから借りたふかふかのバスタオルで身体を拭き、そして借してもらったルームウェアに素早く着替える。
港からほど近いからだろうか、夜ともなると夏なのに窓を開けるだけで涼しい風が舞い込んできた。
言われた通りに冷蔵庫からサイダーの缶を取り出し、ごくりと一気に喉に流し込む。
炭酸の刺激が喉を刺し、湯上りという事もあってこの上ない清涼感をパ一シ一は感じた。
海からの心地よい風。サイダーの涼感。けれどもパ一シ一の身体からは一向に、熱が抜ける気配は無い。


しばらくして、工ドワ一ドがシャワールームから出てきてこう言ってきた。
「涼しくなったかいパ一シ一? 門限までまだ時間があるからゆっくり休んで行ってね」
座れるような椅子が無かったのでとりあえずとベッドに腰かけていたパ一シ一は、サイダーを飲みながらこくりと頷く。
しかし、着替えたり髪を整えたりとしている工ドワ一ドに見つからないよう、
パ一シ一はこっそりと内股に力ませ、ぷるぷると震わせていた。


そのうち、身なりを整えた工ドワ一ドはタオルを首にかけたままで冷蔵庫を開け、同じくサイダーの缶を取り出す。
プルトップを開け、缶に唇を寄せる。シュワっと音を立ててながら、ゴクリと飲み干されてゆく。
気付けばパ一シ一はそんな工ドワ一ドの姿を、ほわんとした意識とうつろな眼差しで追ってしまっていた。
身体が言う事を聞かなかった。むずむずとしたパ一シ一の身体は、今にも立ち上がり、動き出してしまいそうだ。
(……何か、すごく工ドワ一ドの近くにいたい。何でなんだろう、わかんないよぉ…)
41パ一シ一、シャワーをかりる 11/13:2009/12/28(月) 18:16:56 ID:pVTXfdJjP
パ一シ一の頭の中はこの上なくくらくらとしていた。
どんなに涼を取っても収まらない火照りは、この未だ膨らみの抜けない大事なところから放たれる熱のせい。
しかし、どうしてこんなに収まりの付かない状態になってしまったのか。
そしてどうしたらこの火照りが収まってくれるのかは、未だ幼いパ一シ一には全く解らない。
折角、ついさっきまで身体中にこびりついていた嫌な臭いから解放されてこの上なく爽快な状態になったというのに、
どうして、こんなに身体が熱いのだろう。
どうして、工ドワ一ドの姿を目にする度にそちらへと引き寄せられそうになるのだろう。


「おや、まだ顔が赤いよ?大丈夫かい?まだ門限まで時間があるから少し休んでいきなよ」
サイダーを片手にパ一シ一の隣に腰かけた工ドワ一ドが、心配そうにパ一シ一の顔を覗き込んだ。
パ一シ一は大きな瞳をうるうるとさせながら、真っ赤になった顔をゆっくりと横に数度振った。
「だっ、大丈夫っ…!」
「大丈夫なようには見えないよ。ほら、僕の方に顔向けてご覧?」
工ドワ一ドはそう言うと、素直に顔を向けたパ一シ一の頬に両手を添え、ふにゅりと軽く押さえる。
そして静かに顔を近付け、そのまま額と額をぴたりと触れ合わせた。


(わわわわわわわわっ……!)
「……うーん、よく解らないなぁ。火照ってるだけかなぁ」
文字通り、目と鼻の先に工ドワ一ドがいる。
パ一シ一はこの上なく焦り、もう何が何だか分からなくなっていた。
そして工ドワ一ドが額を離し、それから頬に添えられた両手も離そうとした瞬間、
パ一シ一は思いもよらず、その手の上に自分の手を重ね合わせて、ぎゅっと掴みこんでしまっていた。
「?? どうしたんだいパ一シ一」
突然のその行動に、工ドワ一ドは目を見開いて驚いた。
当のパ一シ一自身も、自分のその行動に驚くばかりだった。
どうしたらいいのか解らない。でも、頬と重なるこの優しい手が、今は離れて欲しく無い。
42パ一シ一、シャワーをかりる 12/13:2009/12/28(月) 18:19:55 ID:pVTXfdJjP
そんな思いもよらぬ行動を取りながら、パ一シ一はくらくらと意識をふらつかせて大きく口を開いた。
「あっ、あのねっ工ドワ一ド……。その…僕、何かさっきから身体が変なんだ。それはね、そのー……。
き、君が僕の身体を洗ってくれた時から、ずっと」
目を泳がせながら甲高い声でそう言った後、一呼吸置くと今度は少し恥ずかしそうに工ドワ一ドに向けて上目遣いを送る。


「……なんだか身体がとっても熱いんだ。身体中、そのー……。男の子の大事なところとかも。ずっと膨らんだままで治らなくて」
パ一シ一はもじもじと身を揺らせ、余りの恥ずかしさに心が押し潰されそうになっても尚、言葉を続けた。
「それから、君の姿や顔を見ると、身体がむずむずして、うずうずして……。もう、どうしたらいいのか解らない
ねぇ、工ドワ一ド教えて? 僕の身体はどうなっちゃってるの? 僕は…どうすればいいの?」


大きな瞳をうるうると潤ませながら、パ一シ一は迫るように問いかけた。
こんなに恥ずかしい事を言ってしまったら、いつも優しい工ドワ一ドでさえも、嫌な顔を見せるのかもしれない。
そんな不安を抱きながら目の前の工ドワ一ドの表情を改めて伺う。
(困っちゃうよね。こんな事言われても、きっと困っちゃうよね…)
幼さの抜けないふっくらとした胸のあたりが、どくんと嫌な高鳴りを覚える。この上ない不安でいっぱいだ。
けれども、パ一シ一の目の前の工ドワ一ドは普段とまるで変わりの無い、優しげな面持ちで視線を送っていてくれた。


「何だ、そうだったんだねパ一シ一。ごめんね、気が付いてあげられなくて」
全てを許すかのような優しい眼差しが頬笑みで細まると、工ドワ一ドはパ一シ一の手をそっと握り返した。
そして、ちらりと遠くを除くようにして視線を逸らす。
そこには壁掛け時計があり、この静まり返った部屋にカチカチと冷ややかな秒針の音だけを刻んでいる。
「……まだ門限まで時間はある。か」
「工ドワ一ド……?」
パ一シ一が涙声で名を呼ぶと、工ドワ一ドは再度にっこりと笑みを返した。
43パ一シ一、シャワーをかりる 13/13:2009/12/28(月) 18:21:08 ID:pVTXfdJjP
「可哀想に、ずっと身体がむずむずしちゃってたんだね。でも、大丈夫。治す方法はちゃんとあるから。
でも…パ一シ一にとってはちょっとだけ、怖いと思う事になるかもしれない。それでもいいかい?」
優しみは絶やさず、それでも目の奥に真剣な気持を秘めるようにして、工ドワ一ドはそう問いかけた。
パ一シ一はほんの少しだけ不安げな表情を見せ、少しだけ考える為の間を置いた。
けれども、すぐに覚悟を決めたような面持ちになり、工ドワ一ドにむかってこくりと頷き意思を示す。
どんな不安や未知の恐怖があったとしても、それが工ドワ一ドからのものならば、どんな事でも大丈夫。怖くなどない。
普段は怖がりのパ一シ一がそう思えてしまえる程、今はただ工ドワ一ドに全てを委ね、身を任せてしまいたくて仕方が無かった。


門限まではまだ長い。未だ体中が疼き、そして熱い。
少しだけ荒ぎ始めた吐息のその先で、吸い寄せられるような微笑みが待っている。
「さあ、こっちにおいでパ一シ一…」
もう、我慢する事は何もなかった。
パ一シ一は身体の力をふっと抜くと、今、自分の身体が求めている全てに、限りなく素直に従っていった。


おわり






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 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧    このお話の出演は、工ドワ一ド。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )     そして、パ一シ一でした。
 | |                | |       ◇⊂    ) __ おそまつさまでした。
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
44記念日(0/3):2009/12/29(火) 02:02:24 ID:9qUyBZXa0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  邦楽ナマ注意
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  孫湖呂兄弟 佐倉伊×蔵餅
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
45記念日(1/3):2009/12/29(火) 02:03:09 ID:9qUyBZXa0
始まってはや数時間がたったというのに、宴会の勢いはとどまるところを知らなかった。

(今日のライブ出来、よかったもんねぇ・・・)周囲を見渡しながら佐倉伊はしみじみと思った。
出来が良くなくても反省会と称して盛り上がってきた、という事実はここではさておく。
とにかく客席の満面の笑顔を思い出に飲む酒の味は、『格別』なのである。

中座するのもはばかられるような盛り上がりの中、それでも生理現象には勝てずに
佐倉伊は部屋を抜け出した。ライブ会場近くの会場として使われているのは、小さな和風の
飲み屋で、きょうびの店にしては珍しく間仕切りが襖だ。閉めた襖の中から
ワッとひときわ大きい笑い声が聞こえ、後ろ髪を引かれる思いで階段を下る。
そんなに酒は過ぎていないはずだが、佐倉伊は狭く急な階段を慎重に足を進めた。
酔って足を滑らして骨折でもした日には、話好きの相方に針小棒大でMCで話のネタにされるのは自明の理。
無事階段を下りると、トイレの前の客室の(店は打ち上げのための貸切で、
他の客の姿もなかったのだが))小上がりに、その相方が座っていた。

うずくまっていた、というのが正しい表現かもしれない。小上がりをちょうど椅子のようにして
腰掛け、前かがみになっているのだ。
(気分でも悪いのかな?)
声をかけようと思ったがまずは自分の欲求を満たそうと、佐倉伊はトイレのドアをあけた。
46記念日(2/3):2009/12/29(火) 02:03:55 ID:9qUyBZXa0
(ふぅ、やれやれ)
ことを終えた佐倉伊がトイレから出てきても、蔵餅はまだそのままだった。
「陽金具さん?」
佐倉伊の声に、ようやく見せた顔は
「だ、大丈夫っ?」
声をかけたほうが動揺するほど蒼白かった。
「ちょっと・・・飲みすぎた・・・」
「水もってこようか?」
たのむ、とかすれた声を最後に、蔵餅はまた顔を伏せた。
通りがかりの店員にもらった水を渡すと、蔵餅は一口飲んで苦しげなうめき声を上げる。
「年だねぇ」
佐倉伊の遠慮ない一言を、蔵餅は、うるさいよと切って捨てた。
「一つしか違わないじゃない」
「その一つが大きいんですよ。先輩」
ふん、とそむけた顔はまだ色を失っていていて、
まだ具合が悪いのかもしれないと思った佐倉伊は、横に腰を下ろした。
「吐いちゃった方が楽なんじゃないの」
「それができたら苦労しないよ」
「勿体無いから?」
「バーカ」
オレはね、繊細なの。佐倉伊とは違って。
そんないつもの憎まれ口も、どこか精彩を欠いている。
どうやら本当に調子が悪いらしいと、マネージャーを呼びに行こうと立ち上がる佐倉伊の腕を
蔵餅がつかんだ。
「?」
いいからここにいなさいよ、と蔵餅がそっぽを向いたまま言った。
言われるがままに佐倉伊はいったんは浮かした腰を下ろす。
47記念日(3/3):2009/12/29(火) 02:06:04 ID:9qUyBZXa0
座ったはいいが、なんだか居心地が悪い。
口八丁手八丁な相方がだんまりを決め込んでいるせいだ。

「50周年って金婚式っていうじゃない」
「ハイ?」
「20周年ってなんていうんでしょうかねぇ・・・」
ようやく口を開いたと思ったら、何を言うかと思えば。
佐倉伊は呆れたが、酔っ払いのたわごとといなすことにする。
「さあねぇ・・・24金の半分弱だから10金かな」
「10金なんてないよ」
「じゃ、金メッキ?」
「ダサい!というかセコい!!いっそ銀のほうが立派だ」
「銀婚式は、確かもうあるよ」
「金でもなく銀でもなく・・・銅?」
「あんまりありがたくないねぇ・・・ってか、だいたい結婚何年目ってわけじゃないし、オレ達」
「同じようなもんじゃない」

いつもの調子を取り戻しつつある蔵持の軽口を聞きながら、確かに同じようなものなのかもしれない、と佐倉伊は思った。
ある意味家族より近く、心を許した存在。でも一番かっこつけたい相手。
大学で、思い出作りにでもと出演を決めたイベントの、ほんの短い間のパートナーのはずだったのに。
気づけば20年間、一緒に走り続けてきた。
48記念日(4/4):2009/12/29(火) 02:06:40 ID:9qUyBZXa0
「さぁて」戻りますか、と蔵餅が立ち上がった。佐倉伊も後に続いて階段を上がる。
そのまま素直に宴会場に入るかと思えば、部屋の手前でふいに立ち止まり
「ほら」
と腕が差し出される。
気持ち悪いなあ、といいつつ、でもちょっとウケるかもと思いながら腕を組んでしまう自分は、
まるでミュージシャンというより芸人じゃないかと佐倉伊は心の中で笑った。
「ウェディングマーチ、歌っとく?」
「・・・・アナタもノリノリだね」
言い出したのはアンタでしょ、と佐倉伊が言いかけた瞬間、勢いよく蔵餅が襖を開ける。
「ちょ、まだ準備が」
「皆様、新郎新婦の入場です。盛大な拍手でお迎え下さーい!!」
蔵餅の大声に気圧されたのか。なぜか沸き起こった拍手の中へと、二人は足を踏み出した。
49記念日:2009/12/29(火) 02:07:44 ID:9qUyBZXa0
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ナンバリング間違えました。。。スミマセン。

弐十周年めでたくてついつい書いちゃいました。
ツンデレ唄最強です。 なにげに先輩後輩な関係も萌え。

50風と木の名無しさん:2009/12/29(火) 14:28:02 ID:hOZ7fwMI0
>>49
gj!孫湖呂好きとしてはたまらんものがありました。
ラストシーンみたいに末永く仲良くしてもらいたい。
読めて幸せだ!
51風と木の名無しさん:2009/12/31(木) 00:39:03 ID:qammpgm10
前スレ>>489
遅ればせながら、バソユウキをアップしてくださる姐さん。
殺し屋に添い寝してもらった教主様は、朝どんなお姿だったのだw
来年も、教主・殺し屋の美形コンビのお話、楽しみにしてます。
52風と木の名無しさん:2009/12/31(木) 02:54:56 ID:coQFqjLs0
>>10
萌えすぎて息がつまる。
映画の空気感のままの2人が読めて嬉しいです。ありがとう。
53大晦日 1/8:2010/01/01(金) 00:18:45 ID:6As1gtxH0
ナマ注意です。
某動画サイトで活躍する歌い手、足助→寝下呂。読後感は悪いかもしれません。
長文失礼します。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!



「なあなあ、もういい?もう食べていい?」
「だからもう少し待てって、さっきから言ってるだろ。今度それ言ったらアレだよ?」
大阪はミナミに位置する、知る人ぞ知るホストクラブ。通常であれば寝静まっている筈の日中の店内には、忙しなく働く小柄の青年─不ぁ寝る─と、それにまとわりつく関西弁の青年─下呂─の声が響いていた。
「えー?アレって何?」
「アレって言ったらアレだよ」
「何やっけえ?」
「何だったろうなー」
「なあ何やと思う?足助」

「寝るたん。嘔吐物の相手するんなら片手間じゃなくて真面目にしてくんない?こっちにまで被害が及ぶからさぁ」
 下呂が水を向けた先には、高価そうな革張りのソファーに靴も脱がないままで1人の男が寝転がっている。足助と呼ばれたその男は気だるげに、それでいて楽しげに瞳を光らせて上半身を持ち上げると、不ぁ寝るへと声をかけた。
それに不ぁ寝るは動きを止めて、手に持っていた銀テープを握り締める。
「足助、お前もダラダラしてないでちゃんと真面目にしろよ、店の模様がえをよ!」
「えー?やだよ。そんなのナンバーワンがやることじゃないじゃん」
「あっお前…そういうこと言っちゃう?言っちゃうんだ?じゃあ言わせて貰うけどな、こんなのオーナーの息子がすることでもねえからな!そもそも俺はこの店のホストでも何でもなくて、手伝ってるだけなんだからなー」
「はいはいそうだね、プロテインだね。
で、なんで寝るたんが1人でやってるわけ?それがそもそも仕事の奴らがごまんといるでしょうが」

54大晦日 2/8:2010/01/01(金) 00:22:45 ID:6As1gtxH0

「だっ、だって…」
 痛いところを突かれた、というように不ぁ寝るの表情が曇る。普段から店の影の支配者として名高く鬼畜眼鏡との評判(by下呂)のある彼の、そのような仕草は珍しいものだった。おや、と思って足助は首を傾げる。
「みんな頑張ってくれてるのは分かるんだけど…何ていうかさ。センスが、さ」
 どうもこの店の連中はノリで何でもかんでもやり過ごすことがある。それに関しては足助としても、常日頃から感じていたところがある。大阪という土地柄、求められているものでもあろうからとそれはそれでアリかなと思っていて、
足助自身もボケとツッコミとノリで過ごす独特の空間を居心地良く思っていた。─下呂がこの店に来てからは、その風潮は益々強くなったようだと苦笑することもあったが。
「うーん。まあ面白ければいいじゃん」
「おかしいだろ、それは。ホストクラブとして」
「そうかな?」
「いいか。年末だぞ。今日が大晦日なんだぞ。
…おかしいだろ!?なんで腐っても高級ホストクラブが、銀テープと安っぽい剥き出しの電飾で彩られて新年を迎えなきゃいけねえんだよ!がっかりだよ!このままじゃお客様もがっかりだし、その場にいるであろう俺としても居たたまれなさマックスなんだよ!」
 つい先ほど壁から剥がしたばかりの銀テープを手に、力強く訴える不ぁ寝る。自分がひと眠りしている間にそんな話になっていたのかと事態を把握して、足助はガランとした店内を見渡す。確かこのソファーで眠りに就く前は溢れ返るようにいた筈の同僚達の姿が見えないことも、
おそらくは、説得に困難を伴った不ぁ寝るが「後は任せて(笑顔)」とでも言って帰したのだろうと推量することが出来た。

55大晦日 3/8:2010/01/01(金) 00:25:06 ID:6As1gtxH0

「それはお疲れだねえ」
「…本当にそう思うなら、お前もダラダラしてないでさ、手伝ってよ」
「手伝いたいのは山々なんだけど…ところで寝るたん。アレって今日の俺たちの昼ご飯じゃないの?」
 アレ、と足助が示した指の先には、米粒一つ残さず平らげられた痕跡のある三枚の皿と、満足げに腹をさすっている下呂の姿。二人の視線が自分に向けられていることに気がつくと、親指を立てて器用に片目を瞑ってみせた。
「ごっそうさん☆」
「☆じゃねえよ!おっまえぇ、何勝手に食ってんだよ!?」
「イヤやなあ寝るたん、俺ちゃんと食う前に「いただきまーす☆」っておっきな声で言うたで?
ただそれよりもでかい声で、寝るたんが「がっかりだよ!」とか叫んでただけで…」
「計画的犯行じゃねえか!てか、その発言って何分も前の話じゃなくね!?お前数秒間で3皿も食ったのかよ!それは単純に、すげえな!」
 下呂の驚異の食欲に、怒りを通り越して称賛の声をあげるより他にない不ぁ寝るであった。つっこむだけつっこむと、溜息を吐いて空になった皿を集めて下呂へと押し付ける。
「はあ…これでもう満足したろ。洗って片付けとけよ」
「おう!任せろ!(いい声)」
「任せられたもんじゃねえけどな。厨房の冷蔵庫には今晩使う材料とかもあるんだから、つまみ食いは死んでもするなよ。するくらいなら死ねよ。別にしなくても死んでもいいけど…」
「おうおう!今日も毒舌が冴えわたるねえ!俺、イキル!!」
「とにかく、俺と足助は昼飯買いに出かけて来るから─な、足助…」

56大晦日 4/8:2010/01/01(金) 00:26:18 ID:6As1gtxH0

 このチャーハン厨が…と毒づきながら、ひとまず銀テープは置いておくことにして、不ぁ寝るが振りかえる。そこにはまだだらしなく寝転がっているのであろうと思われていた足助が、立ち上がって佇んでいた。
 まるで店の客を相手にする時のような、完璧なまでの笑顔を称えて。
「あ、足助?」
「どうしたの?あ、寝るたんそこどいてくれないかな。嘔吐物が倒せない」
「いや落ちつけよ足助。お前沸点おかしくね?あーほら、下呂りん、ちゃんと謝れって」
「えー?まあ尋常でない空腹に負けた俺の心の弱さに関しては、そら素直に悪かったと思っとるし謝るけど、そういう足助もなぁ。前に俺のチャーハン食ったことあったやん?ま、これでおあいこっちゅうもんやろ☆」
「黙れ」
 ゆっくりと近付いて来る足助に危機感を感じた不ぁ寝るが、盾にするように下呂を自分の前へと突き出す。それでも陽気に笑っている下呂のことをすごいと思うが、そうなりたいとまでは思わなかった。
 下呂の前で立ち止まった足助は、その高身長を活かし、いかにもわざとらしく上背をかがめて浮かべた笑みをさらに深めた。しかしながらその目だけは少しも笑っていなかった。

「あの時だって、お前俺の話に耳を傾けたか?」
「いやーあの時は俺も怒りで我を忘れてたっちゅうか!まあほら、今年の汚れ今年の内に!さっぱり水に流そうや?な?」
「で、なんでこの、俺が、自腹を切って、昼飯買いに行かなきゃいけないの?理不尽じゃない?嘔吐物ごときのせいで俺の貴重な昼食代がかさむってなんかおかしくない?不条理じゃない?」

57大晦日 5/8:2010/01/01(金) 00:27:01 ID:6As1gtxH0
「うーわこの守銭奴!ただの守銭奴!寝るたん聞いた!?こっわいわぁ…お前なあ、あかんでそんなん、もういっつもいっつも金のことばっか考えて。そんな奴はろくな大人になられへんねんからな☆」
「☆じゃねえよ。四六時中チャーハンのことばっか考えてる奴に言われたくねえんだよ」
「なっ…チャーハンをバカにしたらお前アレやで?ほんま…アレやで?」
「だからアレって何だよ。
あ?何?そんなにチャーハンが好きなのお前?女の子よりも?歌よりも?何よりも?」
「ああ好きやね!三度の飯よりも愛してやまへんね!」
「不ぁ寝るよりも?」
「当たり前…や、……ろ…?」

「ああそうなんだ?じゃあチャーハンとでも結婚してろよ」

 その声は、下呂の前からではなく後ろから聞こえた。調子良く言い返していた下呂の動きが止まり、顔色が青く変わる。冷汗のオプション付きである。
言い放った当人である不ぁ寝るは自分の前へと構えていた下呂を突き放すと、クルリと踵を返した。
「ちょっ…寝るたん、今のは、あーいや、ちゃうねんで?」
「足助。こんなやつ放っておいて、行こうぜ」
「いや俺はまだこの嘔吐物に用があるんだよねー」
「昼飯なら俺が奢ってやる!」
「MA・JI・DE─☆」
 ちょっと待ってろ!と言い残して、財布と上着を取りに控え室まで戻って行く不ぁ寝るを、足助はそれはもう良い笑顔で見送ったものであった。

58大晦日 6/8:2010/01/01(金) 00:31:50 ID:6As1gtxH0
「足助ぇええ…お前、なんちゅーことをしてくれたんやぁああ…」
「俺何かしたっけ?」
「こっ、この腹黒王子ぃー!」
「知ーらない。もとはといえば下呂りんが悪いんでしょー」
 先ほどまでの剣幕は何所へ行ったのやら、飄々とした態度で人の悪い笑みを浮かべる足助。ふたたびソファーへドサリと腰を落とすと、鷹揚に足を組んだ。
そんなナンバーワンを恨めしげに眺めて、関西店のナンバーツーはグッと息を飲み込む。
「お前ほんまなぁ。そんなんで大丈夫なん?大学でやって行けてるん?いじめられてない?」
「は?」
 不ぁ寝るが出て行った、奥へと繋がる廊下を見るともなしに見ていた足助が目を丸くする。かけられた予想外の言葉に疑問符を浮かべて、振り返り見た下呂は真正面に足助のことを見つめていた。それはからかうでもなく、真摯なような声音であった。
「いや…何?」
「お母ちゃん心配やわぁ。何かあったらすぐ俺に相談してええねんからな。いじめっこなんかぶん殴って倒したるさかい」
「お前よりも多分俺の方が強いんじゃない?背的にも…」
「性的にも!?イヤン足助たんったら〜それ何宣言ですか!?」
身長180cmを超す足助は、面
「足助ぇええ…お前、なんちゅーことをしてくれたんやぁああ…」
「俺何かしたっけ?」
「こっ、この腹黒王子ぃー!」
「知ーらない。もとはといえば下呂りんが悪いんでしょー」
 先ほどまでの剣幕は何所へ行ったのやら、飄々とした態度で人の悪い笑みを浮かべる足助。ふたたびソファーへドサリと腰を落とすと、鷹揚に足を組んだ。
そんなナンバー倒そうに160cm台の下呂を見下ろした。
「ていうか下呂りんってさ〜…」
「ん?何?」
「…いや、何でも」
 不ぁ寝るのことが好きなんじゃないの?機嫌損ねちゃったよ。追いかけたりしないの?
 どうして、俺の心配なんてするの?
 そのようなことを尋ねようとして、しかし気持ちをうまく表現する術を見付けることが出来ず、足助は言葉を濁した。代わりに笑って、一言だけ。

59大晦日 7/8:2010/01/01(金) 00:32:35 ID:6As1gtxH0
「お前も寝るたんにいじめられたら、俺に相談するといいよ」
「いやぁ。お前はなあ、相談したら一緒になっていじめるやろー俺のこと」
「まあそうかもね?」
「それに、寝るたんはええねん」
 常の快活な表情ではなく、落ち着いたそれで下呂がほほ笑む。下呂の笑顔などは見慣れていた筈であるが、柔らかなその笑顔は、足助には目新しいものだった。
「あの子はすぐああいうこと言うてまうけどな、俺のことは多分、俺よりも分かってくれてるんやと思うから。もし俺がいじめられていたとしたら、真っ先に飛んで来て、「この嘔吐物がー」って言いながら助けてくれると思うねん」
 そうして足助は理解したのである。この温かな笑顔が不ぁ寝るを思って浮かべられたものだということを。
「で、寝るたんは暴走してまうやろうから、その時は足助くんが「まあまあ」っつって。助けに来てな」
「はは。俺はストッパーってわけね」
「その代わり、お前がいじめられた時なんてもうすごいからな。俺と寝るたんが一緒になって守りに行ったるからな!」
「お前らが来る頃には、俺の手でもうみんなボコボコだっつーの」

「足助ー?ほら、行くぞ」
「はいはーい」
「…何和やいでたんだよ」
「寝るたんはかわいいねーって話してたんだよ。いやぁ愛されてるよねえ寝るたん」
「はあ?ああ、そう。意味分かんね」
「拗ねないのー。ほんとに、寝るたんは愛されてるんだよ」

60大晦日 8/8:2010/01/01(金) 00:33:39 ID:6As1gtxH0
 少しだけ声に真剣みを加えて足助がそう言うと、不ぁ寝るは仕方がなさそうにどうもと言った。その表情が緩やかにほころんでいたことに、足助は改めて、まざまざと、彼が愛されるその所以を感じ取る。
「足助、お前今日どうすんのこれから。どうせ店の模様がえは手伝わないんだろ」
「うーん?そうだねぇ。家帰って、仕事まで寝よっかなぁ。寝るたんはずっと店に?」
「まあね。店の用意は、シックな感じにしようと思ってるから、みんなが飾り付けたのを撤去したらすぐに終わると思うけど」
「ああ、そうなの」
「あいつがさ。ひと足先に新年会しようって言ってて」
「新年会?忘年会じゃなくて?」
「そう。ほんと何考えてんだろうな。祝いごとは…大切な奴と何回もするから、楽しいんだと」
「ふうん」
 隣りを歩く不ぁ寝るの表情を見ずに、前を向いて、足助はいつものように笑った。「だって…」と不ぁ寝るが口ごもった時のことを思い返して、一人でに傷付いたような気持ちになった。
「ね。それって、俺もいていいの?」
「?そりゃぁ、いいんじゃない?あいつもそのつもりだろうから」
「そっか。
─お前らってさ、何かおかしいよね」
「何だよー悪口やめろよ」
「褒めてんだよ」
 そして、こんなことぐらいで慰められたような気持ちになるなど、
「ナンバーワンも安いもんだね」
と、一人ごちた。

おわり
61大晦日:2010/01/01(金) 00:36:44 ID:6As1gtxH0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

乱文、長文失礼致しました。
生放送見てたら年越しちゃったよ…
次があれば、関東店の話も書いてみたいです。
スペース有難うございました!
6253:2010/01/01(金) 00:55:21 ID:6As1gtxH0
>>53の者ですが、
この設定はホストCDのパラレルです。
説明不足、大変失礼致しました。
63風と木の名無しさん:2010/01/01(金) 13:36:29 ID:c9axAcEQ0
あけましておめでとうございます

避難所の掲示板で新ローカルルールが決定しましたのでお知らせします
次スレからは>>3に以下のテンプレを貼ってください
64新ローカルルール テンプレ:2010/01/01(金) 13:37:20 ID:c9axAcEQ0
★モララーのビデオ棚in801板ローカルルール★

1.ノンジャンルの自作ネタ発表の場です。
書き込むネタはノンジャンル。SS・小ネタ・AAネタ等801ネタであれば何でもあり。

(1)長時間(30分以上)に及ぶスレ占拠防止のためリアルタイムでの書き込みは控え、
   あらかじめメモ帳等に書いた物をコピペで投下してください。
(2)第三者から見ての投下終了判断のため作品の前後に開始AAと終了AA(>>3-7辺り)を入れて下さい。
(3)作品のナンバリングは「タイトル1/9」〜「タイトル9/9」のように投下数の分数明記を推奨。
   また、複数の書き手による同ジャンルの作品判別のためサブタイトルを付けて頂くと助かります。
(4) 一度にテンプレAA含め10レス以上投下しないで下さい(連投規制に引っかかります)
   長編の場合は10レス未満で一旦区切り、テンプレAAを置いて中断してください。
   再開はある程度時間をおき、他の投稿者の迷惑にならないようにして下さい。

※シリーズ物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
※感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬はほどほどに。
※「公共の場」である事を念頭にお互い譲り合いの精神を忘れずに。

相談・議論等は避難所の掲示板で
http://s.z-z.jp/?morara

■投稿に当たっての注意
1レスあたりの最大行数は32行、タイトルは全角24文字まで、最大byte数は2048byte、
レス投下可能最短間隔は30秒ですが、Samba規定値に引っかからないよう、一分くらいがベターかと。
ご利用はテンプレをよくお読みの上、計画的に。
65余裕、時々焦燥:2010/01/02(土) 11:49:58 ID:OGfP4T0s0
棚50「自信、時々嫉妬」の当主と保守
・・・を想像しながら書くも、オフなのでオリジナルとして読んで頂けたら
両方に妻子がいる設定です

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
66余裕、時々焦燥 1/2:2010/01/02(土) 11:52:27 ID:OGfP4T0s0
りんごあめを持った少女が目の前の喧騒の中を駆けて行った。
母親は近くにいるのだろうか。
「あの子、近くに母親いるんでしょうかね」
隣を歩く彼の一言に頬が緩んだ。
「何笑ってるんですか」
「別に」
襟巻きをつまんで口許を隠す。髭を生やした隣の彼は、その風貌に似合わず
子供のように「気になるなあ」と口を尖らせた。
家族水入らずの初詣だったのだが、午後から関係者へ挨拶に行かねばならないので、
先に一人帰ることになった。
後ろ髪をひかれながら、とぼとぼ帰りの参道を歩いているところで
年下のチームメイ.トから声をかけられた。去年一番向き合うことの多かった人物だ。
彼もまた、家族と別れて一人での帰り道だった。
「スーツならこのまま直行しても良いんですけどねー。コレだから」
と、彼は袖口を持ってぴんと腕を伸ばす。
お互い、紺の着流姿だった。
「面倒なんですけど、この方が正月って感じしますよね」
「そうやね」
67余裕、時々焦燥 2/2:2010/01/02(土) 11:53:34 ID:OGfP4T0s0
屋台の喧騒の中からやっと抜け出し、人通りのまばらになった通りに差し掛かる。
袖の中で組んでいた腕を解いた。
「お前それ似合ってるしな」
「へ?」
「男前やで」
「どの顔が言ってるんですか!」
普段は言えないが、こんな日くらいは良いだろう。
慌てる彼を見ているのも楽しい。
「そっちだって、めちゃめちゃ男前じゃないですか。大勢の人の中で一際格好よくて」
強い口調に思わず隣を向くと、彼の視線と合った。
一瞬で、捕えられた。
先程までの余裕は消え、どうにか逃れたいと焦りだす。
「・・・何言ってんの」
「だから見つけられたんです」
眼差しが強く刺さる。
いつの間にか二人の足が止まっていた。
からりからりと足音。背後から家族連れが通り過ぎる。
途端、目の前の彼のことよりも、先程の話を聞かれていたのでは、という恥ずかしさが増す。
それは彼も同じだったらしく「・・・すみません」と項垂れて歩き始めた。
「別にええよ」
隣に並んで歩く。ざ、ざ、と雪駄が地面を擦る音。
「お前に誉められて、嬉しくないわけないやろ」
ばっと彼は顔を上げる。
その視線に捕らえられないように、もう一度襟巻きで口許を隠した。
68余裕、時々焦燥 (終):2010/01/02(土) 11:54:40 ID:OGfP4T0s0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・*)イジョウ、ジサクジエンデ カレラニキモノヲキセタイダケデシタ!
69鬼霧丸 幻雄×鬼切丸の少年:2010/01/03(日) 06:40:03 ID:MiDmsjdY0
本スレでかなり萌えたので、姐さん達のアイデアを少し拝借させてもらいました。
ただしネタばれ要素あり、最終巻の最後からの続きです。
後最終巻をなくしたので微妙にどういう状況かよくわかっていません。

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | 少年萌えでてっちゃんがらみです。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| さっちゃんはからかったりするタイプのような気がします。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
70鬼霧丸 幻雄×鬼切丸の少年 1/5:2010/01/03(日) 06:42:13 ID:MiDmsjdY0
やめろぉ、やめてくれぇぇぇぇぇぇっ!!
哲童の叫びが脳内にこだまする。それでも彼はぐぐ…と自分の首の後ろに愛刀を沈ませた。
ぽたり、ぽたりと己の血が学生服を汚す。
自分の体に憑依させ、しかも鈴鹿御前や幻雄の腕を切り落とした。
自分の責任だ、と、彼は一粒涙を流した。
身体を手に入れて狂喜していたはずの哲童は、その身体が失われることに、嘆き、悲しみ、恐怖していた。
だが。

びくん

「!?」
自分の首を切り落とさん勢いで首にだいぶ刃が入ったとき、彼は一瞬大きく弓なりに跳ねた。
――しまった!!
またも哲童の力が強くなる。自分の意思と哲童の意思。
哲童の意思を必死に押さえつけていた少年は、ふとした気のゆるみから、鬼切丸を落としてしまう。
哲童の意思だ。

ゲラゲラゲラ!!この身体は支配させてもらったぞ、その気のゆるみが盲点だったな!!

「くっ…う…俺の身体ごと…斬ってやるよ…」
ぼそりとつぶやく。鬼切丸に手を伸ばす。しかし身体が、哲童に支配された身体が、それを許さなかった。
「あ。ああああああああああああっ!!」
次の瞬間には、少年の顔には笑みが浮かんでいた。
鬼切丸を拾い上げると、少年…いや、哲童はその場に立った。
来る。やつはきっと来る。そう思いながら。

外で見つめていた片腕の幻雄は、痛みをこらえながら、しかし少年のことを心配していた。
血があふれる。後藤によって傷口を手当てされたとはいえ、簡単に治るはずはない。
裏僧伽だって死ぬ。
血を失いすぎれば。だが、裏僧伽が片腕程度で死ぬだろうか?幻雄はそう考えながら、脂汗をぬぐった。
71鬼霧丸 幻雄×鬼切丸の少年 2/5:2010/01/03(日) 06:43:13 ID:MiDmsjdY0
ぐっと残った腕で空をつかむと、後藤や鈴鹿御前から離れて、ずっと見つめていた建物の中へ走って入っていった。
「!ちょっと…幻雄!?」
「お前らはそこにいろ!!いいな!!」
それだけ言うと、姿が見えなくなった。

「哲童…」
「来たか幻雄」
「う…あ…く…るな…」
いまだ少年の意志が強い。それを抑えながら、哲童はにやりと笑った。手にした鬼切丸を放り出し、手に出来ぬようにすると、プチ、プチ、と、少年の着ている学生服のボタンをはずし、脱いでいった。
「何を…する…貴様…」
「鬼切丸…いや、今は哲童か…!?」
幻雄はあとずさった。
少年は脱がされる感覚を感じながら、まさか、と思った。まさか、この男に。
身体を開くつもりなのかと。
実は幻雄との関係は一度だけある。鬼を産み落とした女性が気絶しているそばで、腹に弾丸を食らった。
そのとき倒れた際に、幻雄が覆いかぶさってきたのだ。
裏僧伽の攻撃には、さすがの純潔の鬼である少年もだいぶダメージを食らった。
激痛の中で、幻雄に口付けされるのを、ちかちかする頭の中で、感じた。
舌を噛み千切ろうとすれば出来た。だがそれをしなかったのは…何故なのか。
ぬるりと舌が入ってきて、咥内陵辱される。
そして一気にこの学生服を開かれ、身体すらも開かされ、無理やり犯されたのだ。
初めての感覚に、ただ声を上げるしかなかった少年を弄んだのが、この幻雄なのだ。
少年はそのときのことを思い出していた。
「この純潔の鬼はどうやらお前と関係を持ったことがあったらしいな、意思が伝わってくるぞ?」
その言葉に、はっと少年の意思は何も考えないように勤めて努力した。
しかし、シャツさえも脱がされると、哲童は少年の身体で、幻雄を誘った。
「お前がほしいのはこの身体だろう、幻雄」
「やめ…」
少年の意思が少しだけ出てくるが、哲童がその意思を封じ込めた。
「哲童。そこまで堕ちたか…」
信じられないといった様子で、幻雄が哲童となった少年を見る。
筋肉がうっすらついた美しい彫刻のような体。
72鬼霧丸 幻雄×鬼切丸の少年 3/5:2010/01/03(日) 06:44:39 ID:MiDmsjdY0
「ああ、そうだ。俺はこの身体が欲しい、だが、それ以上に、鬼切丸の心が欲しい!!」
その言葉に、哲童も少年も驚いたようだった。特に少年は、哲童が隙を見せたうちに、大声で叫んだ。
「戻れ、お前はここにいちゃいけない。帰れええええええええ!!…くうっ!!」
すぐに少年は頭を抱えると、ゆっくりと卑下た顔を見せた。
「ほう、幻雄、この純潔の鬼に惚れたか。堕ちたのは一緒のようだな」
げらげらと、少年の姿で笑う。
「ちっ、わりぃかよ」
幻雄の片手をゆっくり少年の肌に這わせる。
そして少年の身体を操って、哲童は少年の姿で幻雄に口付けした。

やめろ、やめろ…

少年は弱々しい意思で哲童に訴えかける。
だが、哲童はピンクの突起に触れさせると、少年の意思も快楽を感じたようだった。
あの時犯された思い出がよみがえる。
幻雄も、惑わされているのがよくわかった。
身体はあの少年だ。愛しい、少年だ。
だが中身はあのかつての仲間と少年が戦っている。
けれどさらさらとした肌をなでていると、誘惑に駆られる。
自分は裏僧伽。
簡単には誘惑に負けないはず、なのに、誘惑に勝てないのは、少年が苦しそうな声で訴えているからなのか。
「鬼切丸」
「う…?」
「わりい、我慢できそうにない」
そこで、哲童がにんまりと笑った。
幻雄が片手で少年を押し倒すと、首にかぶりついた。
「ではこの純潔の鬼に代わってやるとするか…たっぷり楽しむと良い」
「あ…」
意識がスーッと上ってくる。目の前にある幻雄を抱きしめる。否、すがりつく。
舌は肌をさまよって、片手になった幻雄の傷口からは、血が滴っている。
さっき感じた快楽よりよりダイレクトに、抱かれているということが分かる。
意識下では哲童がせせら笑ってるのを感じながら、少年は声を上げた。
73鬼霧丸 幻雄×鬼切丸の少年 4/5:2010/01/03(日) 06:45:42 ID:MiDmsjdY0
「やめろっ、やめろ!」
そこで、滴る血が見える。腕を切ったのは少年だ。たとえ哲童が意識を支配していたときであっても。
少年は目を閉じた。
そして。身体を投げ出した。
「すがり付いてこいよ。俺、片手ですっげぇやりにくいんだぞ…」
「あ…すまない…。幻雄…これはお前が望んだことなのか?」
「どうだろうな…。何度も食い損ねて、でもな、俺はお前を食らおうとしたんじゃない。ずっと…悪い、なんでもない」
「?」
少年は人間に関してまったくの無知だ。相手が何を考えているか、など知りもしない。
分かろうとしない。
分かりたいのだろうが、分からないのだ。鬼ゆえに。
少年の唇を奪う。強引に歯を開かせて、舌を執拗に追った。
唾液が混ざり合い、少しだけ少年の咥内に痛みが走る。
けれどそれも些細なものだった。
鬼にとって裏僧伽の血肉は毒だという。
純潔の鬼たる彼には、抵抗が強いのかもしれない。
とろりとした表情が、少年にはあった。
今まで見たこともない表情だった。
思わずその顔に見惚れる。だが幻雄はすぐに彼のズボンに手をかけると、性器を取り出し、それを躊躇なく口に含んだ。
「!!あっ…」
「いー声出せよ、鬼切丸」
亀頭の部分を軽く歯を立てる。ひくひくと震える少年にあおられながら後ろのほうにも手を回した。
「片手ってのは不便だな」
「わ、悪かっ…あっ!!そ…そこはやめろ…幻雄!」
入り口付近をなぞっている。乾いてる成果指は一向に中に入らない。無理やりいれるのは.一度あの時、してしまい、中に出した精液ともに苦しんでいたので、やらないことにした。
そうだ。愛しているんだ。
初めて会ったあのときから、俺はこいつに心を奪われていたんだ。
「…優しくしてやるからな」
「…?」
汗が浮かぶ顔で、幻雄はいつもの、不敵な笑みではなく、優しく笑った。
74鬼霧丸 幻雄×鬼切丸の少年 5/5:2010/01/03(日) 07:51:47 ID:MiDmsjdY0
ぐっと十分ほぐした後孔に、幻雄の性器が入っていく。少年はその感覚に我慢できず、全身でしがみついていた。
「あ…あー…!」
「ん、気持ち、良いか?おい、そっちの手にしがみつくと血がつくぜ」
「あっ、あ、幻、雄、腕…悪かった、な…悪…、幻雄…!」
少年はとろけた表情で、必死に幻雄の名を呼んでいる。
最初に犯したときとは大違いだ。
押さえつけて、口をふさいで、剥ぎ取って、無理やり入れて、中で出した。
精液もどうやら彼にとって若干毒になるらしく、腹を抱えてうずくまっていたのを思い出す。
今思えば酷な事をしたと思う。
それでもこの少年が、腕を斬ったことを謝ってくるのが愛しかった。

ほう、快楽によっているか。裏僧伽と純潔の鬼の絡みは眺めていても良い余興だな。

「っ…!あっ、ふ、ああー!!」
少年が哲童にあおられながらも、しっかりと快楽は感じていた。いっそう幻雄の服をつかむ力が、入る。
少年が達したと同時に、幻雄は達する手前で引き抜いた。彼の太腿に精液が掛かる。
「あ…。んっ」
濃厚な口付けがふってくる。
気持ちよかったろ?そんな目をしながら、幻雄は少し微笑んだ。
二人とも服を調える。
少年は、哲童が気を抜いているうちに、カラン、と、幻雄に鬼切丸を投げた。
75鬼霧丸 幻雄×鬼切丸の少年 5/5:2010/01/03(日) 07:52:31 ID:MiDmsjdY0
          _________
       |┌───────┐|
       |│ロ stop.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]

                 ピッ ∧_∧
                ◇,,(∀・  ) 連続投稿に巻き込まれました
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |                                |
  └────────────────┘
76風と木の名無しさん:2010/01/03(日) 17:44:16 ID:GfTAbRck0
先月30日放送の「秋刀魚の本間でっかニュース」からの妄想
誰もが思いつくかもしれない収録後のふたり

!!ナマモノ注意!!

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
77鳳 粕×和歌 共白髪 1/3:2010/01/03(日) 17:45:59 ID:GfTAbRck0
長かった収録が終わって、やっと楽屋に戻ってこられたのに
「次、移動だから、早く支度して!」
焦ったマネージャーの声に急かされる。
「裏に車まわしておくから、早く来てね」
急ぎ足で彼女が出て行くと、狭い楽屋にふたりきりになる。

心なしか空気が重いのは、さっき収録した番組の中で
俺と和歌林の寿命が60歳と65歳だと宣告されたからで。

テロメアとやらの長さが根拠らしいのだが、正直言って半信半疑だ。
60で死ぬと言われて良い気持ちはしないけれど、裏を返せば60までは生きられるって事だし
人間いつかは死ぬんだからと、俺はあまり深く考えないようにしていた。

でも、生来ナーバスな相方は結構ダメージがでかいようで
スタジオを出てから一切口をきかない。
こういう時はヘタにちょっかいを出すと大怪我するので、俺もダンマリを決め込んでいた。

俺は和歌林に背を向けて、自分のカバンに手早くテーブルの上のジュースとお菓子を詰め込んだ。
先刻からずっと押し黙ったままの和歌林が、すっと俺の背後に立つ。
また文句を言われるのかと身を硬くした俺の背中に、こつんと和歌林が額を付ける。
「・・・粕賀さん」
普段よりずっと生気の無い声。その理由は見当が付くけれど
「なんじゃい、こら」
わざと茶化すように答えた。

背中に和歌林の消え入りそうな溜息が触れる。
振り返りたいが、意地っ張りな彼は弱っている自分を見られたくないだろう。
背を向けたままで、和歌林の次の言葉を待つ。
78鳳 粕×和歌 共白髪 2/3:2010/01/03(日) 17:47:59 ID:GfTAbRck0
しばらく黙っていたが、時間が押し迫っている事を思い出してこちらから声をかけようかとした時に
やっと和歌林が口を開いた。

「俺より、先に、死ぬなよ」

低く短く呟かれたその言葉は、言いようも無い不安を滲ませていて俺の胸を締め付ける。
俺まで不安に巻き込まれないように、またふざけた調子で返した。
「なんですか、いつもは粕賀の葬式では大笑いするなんて言ってるくせに」
「あぁ、そうだよ。大笑いしてバカ騒ぎして、焼香の灰をぶちまけてやる」
「・・・織田信長じゃないですか、それ」
「だから、そんなことされたくなかったら・・・俺より先に死ぬな」
背中に感じる微かな温もり。凭れ掛かってくる重みがやけに嬉しい。

「死にませんよ」

重苦しい空気を振り払えるように、はっきりと言い切った。背後の和歌林は動かない。

「あの時、粕賀は百歳まで生きたいって言ったでしょう?」
ぱんぱんになったカバンの口を閉めながら、後ろの相方に語りかける。
こくりと小さく頷いたのが背中越しに伝わってくる。
ああ、もう、なんて可愛いんですか、あんたは。

「お前百までわしゃ九十九まで、共に白髪の生えるまでって知ってます?」
「あぁ・・・聞いたことはあるけど」
「あれね、妻が夫に言ったものなんだそうですよ」
「・・・は?」
「だから、粕賀が百までお宅さんが九十九までって思って言ったんですけど」
「人の希望寿命を勝手に決めるなよ・・・ってか、誰が妻だよ!」
「え?だって、ベッドでは・・・」
「っ!それ以上言うなぁぁぁ!!このバカスガァァ!!」
79鳳 粕×和歌 共白髪 3/3:2010/01/03(日) 17:50:05 ID:GfTAbRck0
やっと和歌林がいつもの調子に戻ったのが嬉しくて、背中をぽかぽか殴られながら大笑いした。
「なに、笑ってんだっ!この変態!!」
なおも殴りかかろうとする和歌林の両手首を捕まえて、ぐいと引き寄せる。

「和歌林」
真正面から目を合わせる。黒目がちな瞳に真剣な表情の自分が映っている。
「なんだよ」
和歌林も負けじと俺を睨み付ける。

「いつ死ぬのかなんて、本当は何もわからないけど・・・」
掴んだままの和歌林の手にひとつキスを落とす。
「死ぬまで一緒にいましょうね」

和歌林の瞳が揺れて、すっと細まる。
「死ぬまで漫才するんだから、当たり前だろぉ」
柔らかく微笑んだその唇に、吸い寄せられるようにキスをした。

今、死んでもいいと思ったなんて言ったら、また殴られるかなぁ。
いやいや、まだまだ、やりたい事もいっぱいあるし、死んでる場合じゃないね。
ヤりたいコトもありますしね、和歌林君。
うふふ、とついにやけてしまって、軽くこめかみをはたかれた。

この痛みも幸福感も、生きていればこそだよなぁと実感してまた嬉しくなる俺だった。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
80うふ〜ん:うふ〜ん ID:DELETED
うふ〜ん
81鬼霧丸 幻雄×鬼切丸の少年 1/3:2010/01/04(月) 19:40:05 ID:RCUO+CyX0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「これで俺の首を斬れ。お前ならできるだろ」
少年は今までの情事がなかったことのように、冷酷な視線をしていた。
自分がいったん死ねば、哲童も死ぬ。
自分は身体の一部である鬼切丸で斬られても死なないが、首を切られたとなると再生するのにずいぶん掛かるだろう。
「出来るわけ、ねーだろ…」
「さっきは哲童に隙を与えてこうなった。お前なら哲童がでてこようが平気だろ?」
「お前はどうする」
「俺は死なない。鬼切丸は俺の身体の一部だからな」

!!まさか!!

意識下で、余裕ぶっていた哲童が突然あわてだした。
散々ためらって、幻雄は鬼切丸を手に取る。
「早く、哲童がでないうちに」
す、と彼は目を閉じた。
「鬼切丸」
「なんだ」
「再生するまで俺が面倒見てやるよ。もちろんその後もな」
わずかに笑うと、ざ、と、鬼切丸が振り下ろされた。

あああああああああ!!

少年は、哲童が意識下で消滅したのを聞いた。

鬼切丸と、少年の身体と首をもって帰ってきた幻雄に驚いた後藤が、彼の『死体』に上着をかける。
そうして家におのおの戻ったときも、幻雄は少年から離れず、首と身体が繋がるように、固定した。
きっと固定しなくても繋がったのだろう。
後藤はそんな二人を心配していたが、鬼切丸の身体が温かくなっていくのを感じ、幻雄はとても嬉しそうだった。首は完全に繋がっていた。
後は少年の意識が戻るのを待つだけだ。
82鬼霧丸 幻雄×鬼切丸の少年 2/2:2010/01/04(月) 19:40:37 ID:RCUO+CyX0
(寝顔も案外幼いんだな)
そんなことを考えながら、布団に寝かせた鬼切丸と少年を見ながら、考えていた。



「う…」
と、幻雄がソファにいたとき、寝室から声が聞こえてきた。
そのことを聞き逃さず、あわてて少年のそばによる。
「おいっ、鬼切丸!!」
そっと肩を揺らす。すると目が開いて、少年は居場所の確認をしだした。
「後藤の家だ。俺は後藤の家に居候してる。お前もな」
「…幻雄…」
熱い視線でも見つめられて、困ったように顔をそらした。
今は昼で、後藤はおそらく仕事に出かけたのだろう。
「…哲童の意識はない。…感謝する」
「鬼切…」
「悪いが鬼がいるかもしれない。斬りに行きたいんだが…」
控えめに言うと、幻雄に抱きすくめられた。
「なら組もうぜ?後藤は仕事で鬼の仕事を仕入れてくる。俺らは俺らで鬼退治と食料狩りだ。今度こそだめとは言わせないからな」
「…勝手にしろ」
少し頬が赤くなった少年の唇を、幻雄は奪った。

よく晴れた日のことだった。
83鬼霧丸 幻雄×鬼切丸の少年 2/2:2010/01/04(月) 19:41:20 ID:RCUO+CyX0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

正直思ったより短くなりました。
幻ちゃんに惚れさせてみた。
84きっと、いつか、の話。1/3:2010/01/04(月) 20:17:24 ID:4coFeksS0
なまもの注意で。

妄想の吐き出し口が無かったGCCX方向音痴×(→)手汗。
昔のを見てて思わず。捏造も捏造なんですけどね〜

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・;)ジサクジエンガ オオクリシマース!

目の前、背を向けた其の頭は其処から全く動かない。
何時の間にか目で追っかけてるのはもう日常茶飯事。自分で自覚してしまっていた。
「・・・・・」
何かを言おうとして、止める。
手を伸ばして、引っ込める。
ほんの数mの距離なのに。
自分はこんなに純情且つ乙女であったかと思うくらい(こっ恥ずかしかよこれマジで)
と。

「笹乃さん!」

先程までの恥ずかしさは何処へ消えたのか(や、そげん事考えとる暇無かったし)
急ぎで駆け寄った。

目の前で大きくぐらりと揺れた頭、倒れるかもしれないと脳みそが真っ白になって。

「・・・ぅおビックリした。何?裏川・・・」

驚きに、見開かれた大きな目が。
更に頭を白くした。
85きっと、いつか、の話。2/3:2010/01/04(月) 20:19:11 ID:4coFeksS0

「・・・あ、いえ、」
「いきなりあんなデカい声で呼ばれたら驚くんやけど・・・」
「すいません!」
「ええよ目ぇ覚めたし。で、どした?終わった?」
「・・・」

この前よりも、目の下の隈が酷くなってる様な気がする。
収録が遅くなって、編集にも時間がかかってたって聞いた。
まだこの世界に入って日の浅い自分の分、仕事が増えてるんじゃないだろうか。
ちゃんと寝てんのかな・・・。
「裏川?」
「あ、はい」
ぼんやりと見上げられた視線とかち合う。
見られていたと思うと、一つ心臓が大きく波打って(これは、挑戦以上に、)

「・・・ロケハン、大丈夫?」
「は?」
「疲れとんのかと思って」
「え、いえ。そげん事・・・」
「・・・なかですよ、って?」
ホンマおもろいなぁ。可笑しそうに其の頬が緩む。
顔が熱い。体温が上がる。
多分どころじゃなく顔は真っ赤だ。
86きっと、いつか、の話。3/3:2010/01/04(月) 20:19:53 ID:4coFeksS0

「ま、あんま無理せんでな」

キィ、と椅子の鳴った音。
同時に、軽く叩かれた肩。
コーヒーでも飲も。そうすり抜けた。其の場所。
じんわりと熱くなる。嗚呼、本当に。

「笹乃さん」

俺が淹れます。
仕事はもう終わってしまったけれど。
少し濃い目で、2人分。
お前もまだ残るのかと言われそうだけれども、其れは役得って事で。

いつか、きっと。
今は心の中思う。

□ STOP ピッ ◇⊂(−∀−;)イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ホントすいません申し訳ないでも2代目好きすぐる。
87風と木の名無しさん:2010/01/04(月) 21:26:04 ID:2VhlvHri0
>>86
きゃぁぁぁ!ここでGCCXネタが読めるなんて!
ありがとう、ありがとう!萌え滾ったよ!
88邂逅 1/10:2010/01/04(月) 23:26:47 ID:Pve/nnFh0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

某諸国漫遊記時代劇のお付きの二人のエピソード0。ほとんどオリジナル。
一方の家族構成は完全捏造。こんなのでも大丈夫そうな方だけどうぞ。
長くなったので途中で一度中断します。


お互い顔くらいは知っていたのだと思う。
同じ主人の下、同じ仕事に携わっている同年輩同士。
それでも彼は、同じような境遇にいる者達の中でも一際華やかな集団の中心にいるような
人物だったから、正直自分とは縁のない人間だと思っていた。
しかしだからと言って、
「げっ…」
顔を見た瞬間、その一言は無いだろうとも思う。
薄闇の下り始めた宵の口。
仕事を終え家路につく自分の前、突然大きな屋敷の門から飛び出てきた相手のその一言に、
熱海各之進はその秀麗な眉間に深い縦皺を刻み込んでいた。
そして手にした提灯で照らし、再度良く見直したその顔はやはり見覚えある笹木介三郎のもの。
勤め先で見かけた時よりは幾分くだけた着流し姿の、それでもその慌てぶりと表情に走った
狼狽の色に各之進がいぶかしさを覚えたその瞬間、これまた門の奥から飛んできた声があった。
「そこの御方!どうぞその人を捕まえて!」
「あっ…」
「あっ…って!」
「やった!」
耳に届いた叫びに思わず反射的にその首根っ子を取り押さえてしまった各之進に対し、
瞬間介三郎が批難じみた声を上げる。
しかしそんな彼の訴えを打ち消すように、この時、屋敷の中から追いかけ出てきた女は
2人の姿を見とめた瞬間、手を叩きながらうれしげな歓声を上げていた。
89邂逅 2/10:2010/01/04(月) 23:27:51 ID:Pve/nnFh0
「すいません…」
「…信じらんねぇ」
「だから何度も謝ってるじゃないですか。」
「でもだからって、人の事泥棒と間違えるなんていくらなんでもありえなくないか?!」
「いきなり門の外に飛び出してきた人間が、屋敷の家人から追いかけられていたら、
普通は誤解しますよ!」
「屋敷の家人って、ここは俺の実家だ!」
「そんな事知りませんよ!!」
「あら?どうかしました?」
「いーえっ!」
2人横並びに座る座敷の障子がすうっと開けられ、その向こうから現れた女性の姿に、
介三郎と各之進は同時に声をそろえて返事をしていた。
するとそれに女性、セツはにっこりとその丸い小柄な顔に笑みを浮かべ、運んできた茶を
各之進の前に差し出す。
「あの、どうぞおかまいなく。」
少し困惑の面持ちで各之進が遠慮の言葉を口にする。
けれどそれにセツは、浮かべた笑みを絶やさぬまま答えた。
「いえいえ、貴方様にじゃそこのやんちゃ坊主を捕まえていただいたのですから、お茶くらいは
お出ししないと。」
「やんちゃ坊主って。義姉上、私はもう子供ではないのですから。」
「旦那様に叱られるのが嫌で、屋敷からこっそり逃げ出そうとなさった方が子供ではなくて
何だと言うのですか。」
「それは…」
ピシリと言い切られ、介三郎が返す言葉を失う。
そしてその交わされるやり取りに、各之進は改めてこの女性が介三郎の兄嫁なのだと理解していた。
あの後、屋敷の門前で介三郎を取り押さえてしまったしまった自分が、実は彼と共に静山荘に
勤める人間だと知ると、この女性は喜びと共に自分を屋敷の中に招き入れた。
しかしお礼をしなければならないからと言う言葉は実は建前で、本音は一度捕まえた介三郎を
再び逃さぬようにする為の見張り役にさせられた感が無きにしも非ず。
そんな状況において、今こうして並び座る2人の間に流れる空気は言うまでも無く微妙なものだった。
厄介事に首を突っ込んでしまったかなぁと思わず後悔の念が頭をよぎる。それでなくとも、
90邂逅 3/10:2010/01/04(月) 23:28:55 ID:Pve/nnFh0
「ところで今更になりますけど、お友達をちゃんと紹介して下さいな。介三郎さん。」
「しょっ、紹介ですかぁ?」
普段の繋がりからして微妙なのに。
セツに促され、介三郎が困惑の声を上げながら視線をチラリと横に流してくる。
しかしそれにも各之進は(だから俺にどうしろと)と言う思いしか抱けなかった。
けれどそんな2人をよそにセツの攻撃は止まない。
「ですからお名前とかもまだうかがってませんし。」
「名前ですかぁ?」
(そうか、名前も知らなかったのか……)
思いっきり素っ頓狂な声を上げる介三郎の様子に大体の事情を察して、この時各之進は仕方無く
息を一つつくと、次にはその指先を畳みの上にそろえ、その頭を下げていた。
「申し遅れました。私、熱海各之進と申します。笹木殿とは同じご老公様にお仕えしている身では
ありますが、何分私が静山荘に上がったのはごく最近の事。故に笹木殿に友と呼んでいただくには
いささかおこがましい事情を、奥方様にはどうぞご理解いただけたらと存じます。」
暗に『友人と言えるような仲じゃねーんだよ』という思いを込めた挨拶を口にする。
しかしそんな各之進の腐心の甲斐も無く、この時セツが返してきた反応は人の話をまったく
聞いていないものだった。
「まあまあ、なんて丁寧なご挨拶。介三郎さんにこんな礼儀正しいご友人がいたなんてセツは
驚きました。どうぞこれからも仲良くしてあげて下さいね。」
にこにこと微笑まれ、毒気が抜ける。
だから友達じゃないし、てかあの程度の口上でこの反応ってあんた普段どんな奴らと付き合ってるんだ、と。
唖然とした面持ちで各之進がこっそり隣りをうかがい見ると、そこには彼は彼でどこか疲れたように
遠い目をした介三郎の引きつった笑みがあった。
彼もどうやらそれなりに、この兄嫁には苦労しているらしい。
思わず一瞬同情の念が沸きかける。
しかしそんな各之進の意識は、その時不意に廊下の方角に感じた人の気配の方へ流された。
障子に映る黒い影。そして、
「おや、えらく賑やかだな。」
穏やかな声と共に部屋の中に入ってきた、その人影の正体を察した瞬間、各之進は驚きのあまり
とっさに己が頭を低く下げていた。
91邂逅 4/10:2010/01/04(月) 23:29:59 ID:Pve/nnFh0
自分から僅かに遅れて、介三郎とセツも礼の形をとる。
そうして迎え入れたその人物は、いささか世辞には疎い自分でも知らないではすまされない、
笹木長頼、介三郎の兄にして現三戸藩主に使える重臣の一人だった。
「お帰りなさいませ、兄上。」
そんな相手に向け、介三郎は弟ゆえの朗らかな声で出迎えの言葉を口にする。
するとそれに長頼は静かな頷きを返すと、すぐさまからかうような声色で介三郎に言った。
「どうやら逃亡に失敗したらしいな。あの介三郎様が首根っ子をつかまれて屋敷に戻されたと
皆が楽しげに私に耳打ちしてくれたぞ。」
「そっ、それはこいつが!」
「ちょっ、な…っ」
「こいつ?」
痛い所を突かれてとっさに隣りの自分に指を突きつけてきた介三郎に、思わず狼狽して各之進が顔を上げる。
するとそんな見慣れぬ存在に、長頼はこの時すっとその視線を向けてきた。
「貴殿は?」
問われ、たまらず緊張に硬直する。
が、そんな各之進の心中など知らぬげに、介三郎は喜々として口を開きかけるが、しかしそんな動きは
すぐに固まり止まってしまった。
「こいつの名前は…えーっと…」
「…熱海各之進と申します。笹木長頼様にはお初にお目にかかります。」
いい加減名前くらい覚えてくれとの介三郎へのいら立ちに助けられ、なんとか名乗りを口にできる。
するとそんな各之進に、介三郎は瞬間不思議そうな目を向けてきた。
「あれ?おまえ、兄上の事知ってるのか?」
「……三戸の人間なら知らぬ者はおりませんよ!」
抜けるのも大概にしてくれと、さすがに語尾も強く小声で反論すると、それに長頼は穏やかに笑いながら
それでも一瞬何かに気づいたような表情を見せた。そして、
「熱海、と言うと、もしかして先日まで城の祐筆方にいた?」
問うてくる声。それに今度は各之進の方が驚きに目を見張った。
「はい、確かに先日まで…」
「あれあれ?兄上がどうしてこいつ…じゃなくて彼をご存じで?」
これはさすがに彼も意外だったのか、介三郎がまたしても横合いから口を挟んでくる。
するとそれに長頼は、こちらも幾分怪訝そうな表情を見せながら答えを返してきた。
92邂逅 5/10:2010/01/04(月) 23:31:03 ID:Pve/nnFh0
「先日ご老公様が自ら静山荘での書史編纂の為に優秀な若手を引き抜いて行ったとの話を聞いた。
その影響でしばらくの間城方の公務に支障が出たともな。」
「へぇー」
「へぇーって、おまえの方こそ知らなかったのか?」
暗に『友人なのだろう?』と目で問われ、それに介三郎はいやその…と言葉を濁す。
そしてそんな挙動不審な弟に畳みかけるように、長頼はこの時更に言葉を継いできた。
「なんにしろ、そんな優秀な人材がおまえと知り合いとは珍しい事もあるものだな。普段のおまえの
遊び相手と違って、この熱海殿はツケの取り立てが実家に来るほどの茶屋遊びに付き合ってくれるような
御仁には見えんが。」
「茶屋遊びの取り立てぇ?」
ギョッとするのと同時に、嫌悪にも似た非難のまなざしが隣りの他称友人に向けられる。
するとその声色に乗る様に、今度はセツからも小言が飛んだ。
「本当に恥ずかしかったんですからね!向こうのお店の方もこちらの体面を慮ってすまなそうな顔を
してらっしゃるし。でもあなたが捕まらないから仕方なくと。ねえ、介三郎さん。どうしていつも
そんなに遊び歩いてばかりいらっしゃるのですか?この家にはほとんど寄りつかず、静山荘で寝泊まり
ばかりされて。このセツになにか不満でもあるのですか?ならばはっきりとおっしゃって下さい。
直すように努力いたしますから。」
「いえ、義姉上に不満などは…」
「ならばどうして?!」
「…………」
矢継ぎ早に責め立てられ、とうとう介三郎が返事に窮して黙りこむ。
そしてそんな歯切れの悪い彼の態度に、この時各之進は一瞬何だ?との疑念を覚えたが、そんな行き詰った
部屋の空気は、次の瞬間放たれた長頼の言葉で破られた。
「セツ、客人の前だ。あまり身内のみっともない所を晒すのはよそう。熱海殿失礼したな。」
突然話を振られ、各之進がビクッと背筋を伸ばし、いえと小さな声で返事を返す。
すると長頼は今度は黙ってしまった弟の方へ視線を向けると、静かな口調で語りかけた。
93邂逅 6/10:2010/01/04(月) 23:32:06 ID:Pve/nnFh0
「そして介三郎。とりあえずおまえは今晩は泊まっていきなさい。そしてセツが立て替えた金は
きちんと返すように。」
「はい……」
まるで尻尾を掴まれた猫のように、介三郎が大人しく答える。
そしてそんな従順な弟の様子に長頼は無言で頷きを見せると、最後はもう一度各之進の方へ向き直り
声をかけてきた。
「なにやら落ち着かぬ状況での顔合わせとなってしまったが、とにかく君のような優秀な友人が
いてくれる事は、この子の兄としてとても喜ばしく思うよ、どうかこれからも仲良くしてやってくれ。」
やんちゃな身内への愛情を合くさずに告げられる申し出。
さして時間をおかぬ内に夫婦そろって同じことを頼まれ、これには各之進はもはや黙って頭を下げるしか
他なかった。



[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・)チョット チュウダーン!
94邂逅 7/10:2010/01/05(火) 00:32:41 ID:9i9DyObL0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )>>93の続きをいかせていただきます。

『少しだけ送ってきます』との言に『そのまま逃げちゃ駄目ですよ』と言うありがたい釘を背中に
受けながら、介三郎と各之進が屋敷を出たのはそれからしばらくたってからだった。
もうすっかり暗くなってしまった夜道を、それぞれが手に持った提灯で照らしながら、無言で歩く。
何とも言えない気まずさに互いに口にする言葉が見つからず、しかしそのくせそのままではさすがに
嫌だなぁと気ばかり焦って、考えあぐねた結果2人が取った行動。それは、
「あ、あのさ…」
「あの…」
どこまでも間悪く、同時に声を掛けあう事だった。
思わずお互いの顔を見合わせ、その視線を絡めあってしまう。
究極にばつが悪かった。だから、
「そうぞお先に。」
とにかくなんとか先手を打って、各之進が先を譲る。
するとそれに介三郎は提灯を持たぬ手で一度後頭部を撫でると、おずおずと言った感で再度口を開いてきた。
「いや、まぁ、その…色々とすまなかったな。巻き込んじまって。」
いささか聞き取りにくい小声で。
それでも一応悪いと思っていたのかと、告げられた謝罪に各之進がおっと言った表情を見せる。
するとそれを目ざとく見つけた介三郎は、半ば照れ隠しのように語調を強めながら反撃に出てきた。
「で?そっちは何だったんだよ!」
きつくこちら側の言葉の続きを促され、それに各之進は一瞬戸惑う。
あらためて問われても先程の言は苦しまぎれに発しただけのもので、特に内容は無く、実際何を
言いたかったのか各之進はすでに忘れてしまっていた。
けれど隣りで待つ彼は、そんな自分の言い訳をとても聞き入れてはくれなさそうで……
だから仕方なく、
「何と言うか…驚きました。まさかあんな気さくなお人柄だとは思ってもいなかったので。」
「ん?俺の事?」
「違います。」
真面目に呆ける相手にきっぱりと否定を口にする。
するとそれに介三郎はあぁと軽く手を打つと、ニッとその口角を引き上げてきた。
「どうだ、いい人だろう。高位にあって威に猛からず。清廉潔白、公明正大。俺の自慢の兄上だ。」
目に喜々とした色を浮かべながら告げてくる、介三郎のその言葉には一片の偽りも無いようだった。
95邂逅 8/10:2010/01/05(火) 00:34:56 ID:9i9DyObL0
だから各之進はそんな彼の表情をしばし見つめた後、一つの疑問を口にする。
「ならば何故?」
いささか言葉足らず君の問い掛け。
言外にどうして家に寄りつかないのか?と尋ねてみると、その真意を介三郎は過たず汲み取ったようだった。
「それはまぁ、色々事情はあるんだよ。一応俺もそれなりの年だからな。兄上に甘えてばかりも
いられないし、その結果の一人立ちって事さ。」
しれっと答える介三郎に、一瞬(茶屋に借金する暮らしのどこが一人立ちだ)と言う思いがよぎったが
さすがにそれは口に出さず、各之進は何とはなしに言葉を継ぐ。
「しかしそれが奥方様にはご不満だったようですが。」
武家の、しかも藩の重臣の妻女としては、これまた面食らうほどの大らかな気性の持ち主に見えた
小柄な女性の事を思い出しながら告げる。
と、それに介三郎はまたしても更なる笑みをその目元に浮かべてきた。
「あの人は昔からお節介な程世話好きだからなぁ。」
「昔?」
「あぁ、あの人は父の親友の娘で、物心つく頃から兄の許嫁に決められていたんだ。だから幼い頃から
しょっちゅう屋敷に出入りしていて、3人でよく遊んだりもした。おかげで今では本当に血の繋がった
家族のような感覚なんだが、まぁその分あまりに遠慮が無さすぎて責める言葉がなかなか手厳しい。」
「………」
「って、俺ばかりに話をさせるなよ。そっちはどうなんだ?」
「どう…とは?」
穏やかに語られる事情に耳を傾けていた矢先、いきなり話の矛先を向けられて各之進が瞬間言葉を詰まらせる。
「だからそっちの家庭の事情はどうなんだよ?家ここらなのか?でもだったら俺が知らない訳ないよな。」
長年居を構えているこの界隈に住んでいて自分が知らない事があるなんて許せない、とばかりに
強く問い質してくる介三郎の勢いに、各之進はわずかに気圧される。
が、そこはそれ。一度落ち着く為に深く息を吐くと、各之進はスラリと自分の事情を説明した。
「実家はこの付近ではありません。城勤めの時ならばともかく、静山荘に通うにはいささか遠く
なりすぎたので、今は叔父の家に間借りの居候をさせてもらっています。居を移したのもつい先日の
事なので、笹木殿が知らぬは当然の事かと。」
暗に家に寄りついていないのならば尚の事、との含みを持たせて丁寧に告げる。
96邂逅 9/10:2010/01/05(火) 00:37:09 ID:9i9DyObL0
しかし介三郎は今度はそんな嫌味には一向に気づく気配もなく『そう言えばご老公様に引き抜かれたんだっけ』
と小さく呟くと、不意に立ち止まり、真顔で問い詰めてきた。
「何故受け入れた?」
「はぁ?」
わざとではない本当の言葉足らずに、意味がわからず各之進が思わず聞き返す。
すると彼はさすがに己の性急さに気付いたのか、あっと一度天を仰ぎながら言い繕ってきた。
「いやその、兄上がおまえを優秀だと言っていたからさ。ならばそのまま城勤めを続けていれば
それなりの出世も見込めただろうと思って。確かにご老公様のお声掛かりはありがたい事ではあるけれど
今はあくまで隠居の身。そのお方に仕える事はやはり出世の本流からは外れるだろう?」
突然真面目に政治論を展開してくる。
そんな介三郎に各之進はこの時、驚くより何より…少し呆れてしまった。だから、
「その台詞はそっくりそのままあなたにも返せますけどね。」
いくら跡取りではないとは言え、城下でも屈指の名家に生まれた男が、自分を棚に上げて何を言ってやがると。
強くそう目で語ってやると、それに介三郎は初めて自分の境遇に思いが至ったようだった。
「それは、確かにそうだが…」
思いもかけない反撃に面食らったように言い詰まり、しかしそれでも介三郎は次の瞬間不意にその表情を崩す。
突然零れ落ちた笑顔。
意外な彼のその感情の変化に、一瞬各之進は目を奪われる。
それゆえ、何だ?といぶかしげに眉を微かにひそめると、そんな各之進に介三郎は朗らかに言い放ってくれた。
「俺はご老公様が好きだ。」
「はぁ」
「あのお人柄に惚れ、この人について行きたいと真剣に思わせてくれた初めての方だ。だから出世の為とか
お家の為ってのはこの際兄上にすべて任せて、俺は好きにさせてもらう。静山荘に上がった時にそう
決めたんだ。もっともだからその分、兄上にはまったく頭が上がらなくなってしまったんだが。でも
こんな気持ち、おまえならわかるだろう?」
「俺が、ですか?」
いきなり同意を求められ、戸惑いを隠せずおうむ返しにする。
しかしそんな各之進にも介三郎は尚も楽しげな表情を変えず、頷きを見せてきた。
「ご老公様の事、好きだろう?」

97邂逅 10/10:2010/01/05(火) 00:38:32 ID:9i9DyObL0
「ご老公様の事、好きだろう?」
打算でも、それは尊敬ですらなく、ただ純粋な好意からくる衝動で話を受けたのだろう?とまっすぐに、
それはあまりにもまっすぐに言い切られ、これに各之進は下手に言葉を重ねる愚を悟る。だから、
「そうですね。」
素直に己の意を口にして思わず表情をほころばせると、介三郎はそれに更に子供のような笑みを見せた。
しばし互いに笑いあって、でもそんな行為にはやはりまだどこか気恥ずかしさも残って、だから最後
各之進は息を整えるとこう切り出した。
「では、送っていただくのはここまでで結構ですよ。あなたは今日はちゃんとご実家に戻られて、
明日は遅刻しないように出仕してきて下さい。」
少し非礼に当たるかなとは思いつつ、説教じみた口調で告げると、それに介三郎は一瞬目を丸くしながら
それでもすぐににやりとした笑みを口元に浮かべてきた。
「おまえはまるで義姉上のような口のきき方をするな。」
発せられたからかうような語調。
しかしその中のある一点がこの時どうにも神経に触って、各之進は一度軽く咳払いをすると即座に返事を返す。
「あの、いい加減人の事を『おまえ』呼びするのはやめてくれませんか。俺にはちゃんと、」
「『熱海各之進』と言う名前がある、か?」
しかしそんな反撃の言葉尻を途中から奪い取って、介三郎がまたも得意満面とばかりにこちらを見つめてくる。
だからそれに各之進が再度渋面を作って咳払いを零すと、介三郎はこの時尚も笑いながら人の名を
繰り返し呼んできた。
「『熱海各之進』『各之進』な。よし、さすがに覚えたぞ。明日からはそう呼ぶから今日のところは
許してくれよ。」
98邂逅 11/10:2010/01/05(火) 00:40:45 ID:9i9DyObL0
なんのてらいもなく『明日』という言葉を口にする、そんな男に一々講釈を垂れるのもなんだか馬鹿らしく
思えて、各之進は一つ無言で頷きを見せ、それを了承の代わりとした。
それに介三郎は最後もう一度笑うと、それをきっかけにこの時「じゃあな」と一言言い置き、あっさりと
その背中を見せる。
そんな手にした提灯の明かりで少しだけ照らし見たその後ろ姿は、夜の闇の中それでもどこか軽やかで、
それに各之進はあらためて苦笑ともため息ともつかない息をつくと、自分も再び歩み出す。
「何だったんだかなぁ。」
そして無意識に零れおちた呟きの中、思い出すのは突き抜けたような明るい笑顔ばかりだったから。
(本当によく笑う男だったな)
そんな事を思いながらふと見上げた頭上。そこには丸い月が白く照り輝いていた。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ナンバリングを失敗しました。すみません。
規制解除記念に堅物の恋萌え、でした。



99風と木の名無しさん:2010/01/05(火) 19:45:35 ID:o1L7MEfJ0
>>98
骨太の長編、乙です。
自分にとって中の人は佐登美小唄郎と大輪駄深夜(古!)なので
この二人で妄想して萌えました!!
ごちそうさまでした。
100甘い飴 1/3:2010/01/05(火) 23:16:04 ID:y2NaS5gc0
やまなしいみなしおちなし。ナマ注意。|
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

珍しく。
自分にしては珍しく甘いものが欲しいと思った。
3時間半のステージを終え、休む間もなく次のイベントために振りを覚えている。
大人数、生中継、他人の歌、大先輩のバック・・・。緊張するネタには事欠かない。
「なあ、なんかない?」
ちょうど休憩に入ったのを見計らって隣で同じく振りを覚えていた別グループのメンバーに声をかける。
彼は若い後輩ばかりになってしまったイベントにおいて数少ない『同級生』だ。
「あ?なんかってなんだよ。飲みもんならケータリングのとこいきゃいくらでもあんだろ」
「食べ物もいっぱいあったけど、早く行かないとあいつらに全部食われちゃうよー」
『同級生』の後ろからひょいと顔を出した彼が言う。三十路を迎えても、相変わらず声が高い。
彼の言うようにケータリングのブースは成長期の野獣たちでごった返している。
自分が行けば場所を譲ってもらえるであろうが、なんだか権力を笠にきているようで気が進まない。
「取ってきてやろっか」
「おわっ!おっちゃん、びっくりするやん!」
「なんだよー人をお化けみたいに」
長身の親友が後ろからのっそり現れて俺は思わず声を荒げた。
気のいい親友はカラカラと笑っている。
「取ってきてやるよ。何が欲しいの?」
「別にええわ。それほど腹へっとるわけやない。水やったらあるし」
「えーんりょしないで。ほらほら何がいいの」
「やからええって。しつこいでおっちゃん」
「俺がおっさんならお前も、てゆーか俺らみんなそうっしょ!」
そういえば、なんとなくおっさんグループで固まっているな。
目をやると隣の二人も苦笑している。
若手グループがどんどんデビューし、この毎年恒例のイベントに参加するようになって、
俺達は年々居場所をなくしていくようだ。
かつて俺達の先輩もこんな気持ちで俺達を見ていたんだろうか・・・。
仕方ない事とはいえ、少し、虚しい。
何か、甘いものが欲しいと感じた。
101甘い飴 2/3:2010/01/05(火) 23:16:45 ID:y2NaS5gc0
「ん」
目の前に差し出された手のひらの上には青い包装紙。
「飴ちゃんやる」
俺の相方がそこにいた。
自分も飴をなめているのだろう、髭の下で口がもごもごと動いている。
こいつの口は小さいくせに物がこぼれやすい。
よくポロポロこぼしているし、口の端にお弁当をしょっちゅうつけている。
それをからかうと「そーいう構造やねんから仕方ないやろ」とむくれるのだ。
今だってほら、飴がこぼれそうだ。
口から赤い舌が覗く。

「薄荷キャンディーは嫌やなぁ」
ちらちら見える相方の舌をぼんやり見ながら何の気なしにそういった。
や、でも薄荷って気分とちゃうし。
途端、くふっ!っと相方が吹いた。その後も笑いは止まらずんふふふふと口にグーを当てて笑っている。
「なぁんやねん、何がおかしいん。好みをゆうただけやろが」
「やってお前、『薄荷キャンディーは嫌』て。薄荷とか薄荷味とかハッカ飴とかやったらまだしも薄荷キャンディーて」
「おんなしやん!」
「いやいや、そこが大事でしょ。俺らの場合」
「どういう意味や」
「えーわからんへんのぉ?」
「わからんわ」
102甘い飴 3/3:2010/01/05(火) 23:19:34 ID:y2NaS5gc0
そうやって俺らがぎゃあぎゃあやっていると静観していた親友が口を開いた。
「お前らのシングルじゃん?『薄荷キャンディー』」
「うぇぁ?」
あかん変な声でた。相方は相変わらず笑っている。
「なぁんでべイベの方が先に気づくかなぁ」
うっさいボケ!たいしたこっちゃないやろ!
「大事な大事な俺らのサクヒン、否定したあかんやろ」
「ふん、おれが嫌ゆうたのはその飴や。曲やないし」
それを聞いてニヤニヤしながら手を引っ込めた。
「ざぁんねんながら他の味はもうありませーん。最後の一個はぼくが食べてしまいましたー」
いる?と相方は親指と人差し指で口の中の飴をつまみ出して俺の前に差し出した。
宝石みたいに透き通った赤が相方の唾液でぬれている。ニヤニヤ笑いの相方の唇も同じようにテラテラと輝いている。

コイツ・・・俺の事なめとんな。
相方の顔には『コイツは絶対食うはずない』と書かれているようで、それが俺の中の負けず嫌いの虫を叩き起こした。
パクリっ。
次の瞬間、俺は相方の指ごと飴を口の中に入れてやった。
おまけに指から飴を取り上げる時は二本の指の腹を丁寧に舐めあげてやった。
ふふん、どうや。得意げになって口の中で飴を転がすと、心なしか視線が痛い。
不思議に思い見渡すと、ケータリングに夢中だったはずの後輩達がぽかんと俺らの方を見ていた。
しかし俺が視線を向けるとみな一様に気まずげに視線を逸らす。なんなんやいったい。
103甘い飴 4/3:2010/01/05(火) 23:20:19 ID:y2NaS5gc0
「お前ら、かわんねぇな」
「なんか懐かしい気分になっちゃったよ」
「当時はうんざりしてたけどやっぱり今でもうんざりするわ」
そばにいたおっさん組みが口々にそう言い俺の方を叩く。
お前らもなんなんやいったい。
わけがわからなくて相方の方を見ると、彼はやっぱり笑っていた。
「甘いもん、ほしかったんやろ?それもういらんからやるわ」
そろそろ休憩もおしまいやでと彼は自分の定位置に戻っていた。
よくわからないが俺は結局相方の筋書き通りに動かされたという事だろうか。
釈然としないものを感じながらも、彼が笑っているならそれでいいかと思うことにした。
俺は相方の笑っている顔が一番好きなのだ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ナンバリングミススミマセン
104風と木の名無しさん:2010/01/06(水) 00:14:33 ID:HhsywRXM0
>>100
ナマってことは、元ネタが実在してるのかな?
伏字でいいので、教えてもらえないだろうか
105風と木の名無しさん:2010/01/06(水) 00:22:42 ID:US0FvLRq0
>>104
蛇の関西二人組みです。
不親切ですみません。
106風と木の名無しさん:2010/01/06(水) 00:38:41 ID:/cLdfWq40
>>105
教えてくれてありがとう
そうか、だから関西弁なんだ
おっさん組とはあの6人組の事かな
みんな仲良さげな雰囲気が伝わってきてほんわかしたよ
良い萌えをありがとう
107風と木の名無しさん:2010/01/06(水) 05:17:28 ID:HNTz+xvAO
ナマ注意!

一角獣 太鼓+鍵盤
太鼓の呉獣祭時にやった紫人間(要英訳)のスクリーン映像が元ネタ。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
108ひざ枕1/2:2010/01/06(水) 05:18:20 ID:HNTz+xvAO
移動車の最後尾に座るつもりでいくと、先客がいる。反対の窓際に座るのは寂しいから、一つ席を空けて座った。先客は亜辺。窓から空を眺めてぼんやりしている。
「亜辺」
夕ミ才が近くまで来て、声をかけると亜辺は夕ミ才をみて微笑む。
「なに、どした」
落ち着いた声。
「移動中、撮影入るってよ」
夕ミ才の声に、彼は苦笑混じりの声で応じた。
「寝てられないな、夕ミ才」
夕ミ才は笑いながら、眠いもんは眠いから寝る、そう言い切ってあくびをする。
「河仁士さんも寝れないね」
亜辺の声に俺は曖昧に笑う。
「いや、このおっさんは寝るだろ」
夕ミ才はそう言った後、言葉を付け足そうとした。
「寝顔撮られ」
「夕ミ才も撮られるね」
亜辺の静かな声に、ぐっと言葉に詰まった夕ミ才は、撮影班が入ってきたところで自分の席に戻る。
「河仁士さん」
「ん?」
亜辺がこっちをみて笑顔になった。
「うるさかったら、ゴメンね」
気を使われて悪い気はしないけど、複雑。あ、後であれ、やってみよう。
109ひざ枕2/2:2010/01/06(水) 05:18:56 ID:HNTz+xvAO
撮影が区切り付いたところで、不足しているであろう睡眠時間の確保にほぼ全員が動いた。少しの間サワサワしていた車内も直ぐに静まり、寝息やいびきが聞こえはじめる。
一つ開いた横に座っている河仁士さんを、横目で伺うと目があった。
「寝ないの?」
小声で聞くと、亜辺は?と返ってきたから、寝ない、と返す。
「そっか……ねえ、亜辺?」
河仁士さんの声は小声とは遠い音量だけど、幸い皆疲れてるから目を覚まさない。
「なに?」
問いかけると河仁士さんの身体が横倒しになって、俺の太股に頭を乗っけた。
「貸して、寝心地よさそう」
「えっ……か、河仁士さん」
すっと目を閉じた河仁士さんは、すぐに寝息をたてはじめる。……えーっと……どうしようかな。取り合えずちょっとだけ毒づいてみる。
「……自由過ぎでしょ」
ツンと鼻の頭を人差し指でつつく。額にかかった髪を指先でもてあそびつつ、視線は窓と河仁士さんの顔を行ったりきたり……ま、疲れてるだろうからね……これくらいならいくらでもしますよ、うん。
110風と木の名無しさん:2010/01/06(水) 05:19:23 ID:HNTz+xvAO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

太鼓を思いやる鍵盤が書きたかったんだ。
1は太鼓視点、2は鍵盤視点で書いてます、読みにくかったらスマソ。
111鬼霧丸2 幻雄×鬼切丸の少年 1/3:2010/01/06(水) 09:25:30 ID:NFjQU4/n0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


「ナウマクサマンダバサラダンカン!!」
ガッ
声とともに強烈な激痛が腹に走った。
それと同時に、フェンスに身体が跳ね飛ばされ、ぶつかる。
かはっと、腹の奥から血を吐いた。
「鬼切丸よぉ…これで三度目だぜ。さすがに効いただろ?」
長い霞を束ね、銃を持った男が一人、そして拘束されている先ほど鬼を産んだあとの女が一人。そして、もう一人は純血の鬼だ、鬼切丸を携えた少年だ。
立ち上がろうとする少年の手を踏みつけて、顔を掬い上げる。
少年は血まみれの口を拭こうともしないで、目をまっすぐに見つめてギリ、と歯軋りをした。
「そうそう、その表情だ。たまんないね」
言うが早いか、鬼食いの裏僧伽――幻雄は、彼に口付けした。もちろん唇だけの。
舌なんて入れたら噛み千切られるに決まっている。
唇の端から飛び散った血をなめる。首についた血も。
さすがは純血の鬼。極上の鬼の味だ。
少年が、強がっていても、弱っているのは明らかだった。
三発も呪符入りの弾丸を食らったのだ。
弱らないはずがない。
「ん…、はあっ、はあっ」
「そうそう、その顔でずっといろよ。色っぽいからよ」
「男に言う台詞か…」
少年の愛刀鬼切丸は遠くでぽつんと落ちていた。
呼び寄せるかとりに行くか…
だが、どうしても呪符のあとが痛んで、それが出来なかった。
幻雄は鬼切丸のズボンに手を駆けると、一気に下ろした。不意に突然行われたその行為に、思わず少年が固まる。
「へぇ、はいてねーんだ」
太ももを下からもちあげられ、少年はフェンスに軽く頭をぶつけた。
後孔がよく見える位置だ。
112鬼霧丸2 幻雄×鬼切丸の少年 2/3:2010/01/06(水) 09:26:47 ID:NFjQU4/n0
「あ、あんた一体…!」
「当たり前だろ、食うんだよ、ま、性的にな」
何度か唾液を指につけて中に指を入れる。
「いやだ…!!」
「初めてだろ?態度みりゃ初めてだって分かるさ」
「あんたはこんなことばかりしてるのか!!」
ずきずきと痛む腹を押さえながら、必死に抵抗した。
だが、後ろのフェンスを必死につかみ、動かされないよう固定された足を何とか動かそうとした。
「さー、どうだろうな、ま、言っとくが男は初めてだ」
ぐ、とさらに押し込むと、少年が苦痛にあえぐ。
中はうごめいていて熱い。
二本指が入ったところで、指を抜きに掛かり、自分のズボンからほぼ立ち上がりかけてるものを取り出した。
それを数回しごくと、少年の後孔にあてがった。
「!」
苦痛に声も出ない。それでも強引に進めていくと、全部収まった。
「あ、あ」
「痛いか?」
ぶんぶん首を縦にふる少年に、幻雄はにやりと笑った。
「中は最高だぜ。そら、もっとよくしてやるから、良い声で鳴けよ!」
前立腺を見つけると、そこを中心にこりこりと突いていく。
途端、少年からは悲鳴が上がった。
「ひ…あっ!!ああっ!!やだ、やめろ…!」
息の乱れた二人には、とめるものはいなかった。
先ほど鬼を産み落としたさやかは拘束されたままで気を失っている。
肉欲におぼれる幻雄。
少年もまた、肉欲におぼれ、フェンスから手を離し、自分を痛めつけ、快楽を与えている幻雄に無意識のうちに抱きついていた。
「あ…あ…」
もうすでに痛みはあまりなくなっていた。頭の中を支配するのは快楽。
弱々しく声を上げながら、少年は最後の一突きで達する。
「あ…!!」
「くっ」
幻雄も、少年の中で達した。
113鬼霧丸2 幻雄×鬼切丸の少年 3/3:2010/01/06(水) 09:28:12 ID:NFjQU4/n0
熱い飛沫が少年を一瞬支配し、しかしその後腸を溶かされるような強烈な傷みが襲ってきた。
「ぐうっ…」
腹を抱えて苦しみだした少年に、幻雄はよくわかっていなかった。
(あ、そうか、精液も毒になるのか)
少年の足を広げさせると、その中に指を忍ばせた。精液をかき出すつもりだ。
「う…うっ、…あっ…」
中から血の混じった精液がとろりと出てくる。なるほど、これは強力だ。
「次ぎやるときゃゴムしねぇとなあ、なあ、鬼切丸?」
ニヤニヤ笑いながら、幻雄は少年の額に口づけする。
ある程度かき出すと、ズボンをはかせてやり、幻雄はどこかへ消えた。
またあの少年と出会えることを願いながら。
少年も呪符による痛みも精液による痛みもなくなったころ、その場に立ち上がった。
「ちっ…また、な」


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
中途半端に終わる。
114風と木の名無しさん:2010/01/06(水) 14:50:34 ID:YuyhzcrF0
>>100
ほっこり萌えた!
潔癖症で他人の使った箸など言語道断だったくせに
何故か相方の物は平気な奴ならありえますw
115風と木の名無しさん:2010/01/06(水) 16:43:02 ID:/cLdfWq40
亀だけど>>86GJ!
私も2代目大好きさ
個人的に初代×2代目だったけど
3代目×2代目もいいね!
116際限ない夜の短い終わり 0/7:2010/01/06(水) 19:14:38 ID:yEKsextt0

               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < 元ネタはゲイビ、その改変。※トーンもほぼそれ系注意※
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < ※売り買いシチュ、アニャル・精液嫌いの方も要注意※
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < …それでは、しばしお目汚し
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"
  
117際限ない夜の短い終わり 1/7:2010/01/06(水) 19:15:24 ID:yEKsextt0

ほの暗いフロア全体を揺らすような、重低音の効いたダンス・ミュージック。
そのリズムに合わせ踊る――というよりは身体を揺すりながら、
ダンサーはカウンターの上でライトを浴びていた。
身につけているのはすべて黒。
皮の重たげなブーツ、リストバンド、それにぴったりしたショーツのみ――。

ダイヤを煌かせた白い指がそれに伸びると、彼は背中を向け、腰をたわめた。
そしてショーツをゆっくりと下へずらす――日に晒されたことのないような白さの膚が現れ、
影に縁どられた滑らかなカーブと中央の割れ目とがライトの下で扇情的に揺らめく。
遊びなれた様子の女は、手にしたチップをそこへ滑りこませた。
同様に手馴れた仕草でショーツを元に戻しながら紙幣を収まりのいいサイドへ移し、
ダンサーは正面のフロアへ向き直った。

客筋はいわゆるセレブリティ。
金と守りたいプライバシーとを持ち合わせ、あらゆる意味で安全に遊びたがっている連中だ。
安全さこそ第一で、それさえOKなら最先端のフロア・デザインや選曲である必要はない。
たまに現れるイタリア系オーナーは、常々そう口にした。
「だが、酒とダンサーだけは最高でなくては」
バイセクシャルの彼は、ダンサーのオーディションにだけはいつも同席するらしい――というのは、
クラブスタッフの間で周知の噂だった。

オーナーの趣味を反映してか、
客層は女性にゲイ、女性連れの男性、ドラッグクィーンも時々――セクシャリティも同様にまちまちだ。
ダンサーにチップを与えたがるのは、ここでは女性が多い。
男性はもっと直接的だ。金で買ってバックルームで愉しむほうを望む。
そう――この場所にはバックルームという秘密の小部屋がいくつかあり、
ごく限られた上客だけがそれを使うことができた。
118際限ない夜の短い終わり 2/7:2010/01/06(水) 19:16:37 ID:yEKsextt0

気に入ったダンサーを今すぐファックしたいと思ったなら、
いつも影に控えている仏頂面の黒服を呼び、金を握らせればいい――。

さっきから絡みつくような強い視線が自分に向けられているのを、エリックは感じていた。
客たちがくつろぐあたりはライトが落とされ、おおよそのシルエット以外ははっきりと見て取ることができない。
だがたぶん、長めの黒髪のスマートな女連れ――ああ、いま彼が手を挙げた。
黒服のアンドレアスが客からの耳打ちを受け、
ついでこちらへとまっすぐやってくる――メッセンジャーよろしく。いや、ポン引きか。

「連れも一緒に、ってなら嫌だよ」
カウンターの上でしゃがみこみ、声が音にかき消されないよう頭を黒服に近づけながら、
開口いちばんにエリックは言った。
普通クラブダンサーがそうでないのと同様に、ここでもダンサーは男娼ではない。
だから指名を拒否できるぐらいの自由は、ダンサー側もとりあえず持ち合わせていた。

「いや、男だけだ」
ごく簡潔に、アンドレアスは答えた。
彼はいつも事務的に取りつぐだけで、それ以外の何も態度に示すことはない。
「――どんなやつ? 常連?」
「新顔だ。一見ワイルド、だが手のエステを欠かさないタイプ」
エリックは短く笑った。
ボディガードを兼ねているので端的な観察に長けているとはいえ、
無骨で全く手のエステなど縁がなさそうなアンドレアスが言うのはちょっと可笑しかった。
「OK、行くよ」
と、軽い身ごなしでカウンターから降りた。
そして控えへと向かうのを見て取った客が立ち上がり、バックルームのほうに消えるのを
アンドレアスはサングラスの下から見送った。
119際限ない夜の短い終わり 3/7:2010/01/06(水) 19:18:22 ID:yEKsextt0

個室として仕切られているとはいえ、
そこもフロア同様腹から揺さぶるような重い響きのダンス音楽で満ちていた。
客がまっさきに望んだのは「ダンス」だった。
自分ひとりだけのための、特別なダンス。

どうやら、いきなりしゃぶらせたり突っ込みたがったりするタイプじゃないらしい。
エリックは客が充分目で愉しめるよう意識しながら、ゆっくりと手足を開き、蠢かせた。
壁に手をつき、脚を広げながら腰をたわめ、突き出して見せる。
ショーツを少しずつ下へとずらし、背中、腰、太腿に手を這わせ、腰を揺らす。
いちばん無防備で劣情を自ら呼び込むようなそのポーズを、大抵の客たちは好んだ。

今も――誘われるようにソファから立ち上がり、男が近づく。
「……あ!」
手にしたグラスの酒を背中に落とされたのは、かなりの不意打ちだった。
身体を震わせた拍子に、その窪みから琥珀色のそれが滴り落ちた。
「動かないで――」
再度、男はエリックの背中に酒を零した。
「――そう、いい子だ」
エリックの頭を撫で、男は酒を啜り、舌で舐めとった。
さらに、酒が腰に注がれる――それが割れ目をつたい脚へ流れる感触に、エリックは呻きをもらした。
グラスをテーブルに置くと、男はぐいっと強引にショーツを引き降ろし、エリックの尻を割った。
しげしげと、その部分が他人の目に晒される気配――
これだけは、いつまでたっても馴れることができない。
そして酒で濡らされたそこへ、ふうっと息を吹きかけられる。
前へ回された手は左右の胸から腹、脚の付け根で止まり――まだ直接触れられることはない。
思わず背後へ顔を振り向けると、男がその目を捉え、満足げに笑った。
120際限ない夜の短い終わり 4/7:2010/01/06(水) 19:19:32 ID:yEKsextt0

「――こういうのは好きか?」
問われるままこくんと頷く――男はさらに顔を近づけ、吐息まじりに囁いた。
「どうして欲しい――?」
エリックは腰の位置をずらした。
勃ちあがりかけたそれを、男の手に擦りつける。
そして片方の手を男の頭に伸ばし、甘えるように髪ごと撫でた。

手の中で増していく熱を楽しみながら、男がさらに問いかける。
「前だけでいいのか?」
呻きを噛み殺しながら、エリックは頭を左右に振った。
「――どうして欲しい? はっきり言葉で…とまでは言わないが」

大きく肩で息を吐き、エリックは自らの腰に手をあてた。
それから邪魔なショーツを急くように脱ぎ落とし、片足をソファの上に掛けた。
さっきよりさらに尻が顕になるのを意識しながら自らの指を舐め、そのまま中心に触れる。
「ん……」
ゆるく円を描くように、エリックは自らの指を動かした。
職業上の身だしなみとしてきれいに処理されたそこは、無防備で、清潔で、淫らでもあった。
その手をはらいのけ、喰らいつくようにあてがわれた口と息の熱さに、エリックは戦慄き我を忘れた。
121際限ない夜の短い終わり 5/7:2010/01/06(水) 19:20:21 ID:yEKsextt0

精を放ったばかりのそれはまだしっかりと硬く――
まるで賛美するかのようにエリックはなお無心に吸い、
そっと舌を這わせ舐めまわすのをやめなかった。
身体を離すと玩具を取り上げられた子供のようにエリックが自分を見上げるのを
男は満足げに眺め、息をついた。

「残念だが、今夜はあまり時間がない――」
男はじっとエリックの顔を見つめると、長い、深いキスを与えた。
自分の余韻を味わうのも厭わない、貪欲なキス。
何の躊躇いも計算もなく、エリックも同じくらいの貪欲さでそれに応えた。
ぐったりとソファに伸び、うとうとと眠りに落ちてしまいそうなエリックをよそに、
男は手早く身支度を直した。
そしてもう一度だけエリックを振り返り――何も言わず部屋から去った。
122際限ない夜の短い終わり 6/7:2010/01/06(水) 19:21:29 ID:yEKsextt0

数分後。ドアが開いて誰かがやってきた気配に、エリックはしぶしぶ目を開けた。
黒服のアンドレアスと目が合うと――といってもサングラス越しだが――黙って手にしたタオルを放ってよこした。
だがエリックが受けそこなって、タオルは床に落ちた。

「自分で拾えよ」
「……だめ。動けない」
その言葉どおりまったく動こうとしないエリックを見やり、アンドレアスはソファに近づき、タオルを拾いあげた。
「ありがとう、やさしいアンドレアス……」
「――寝ぼけるな」
アンドレアスは手にしたタオルでエリックの汗ばんだ顔を拭い、それから全身も同様にした――ごく淡々と。

「さっさと上がって帰れ」
喉奥で短く、エリックは笑った。
「ああ……払いのいい客だったものね」
「愉しんだんだろ、お前も――今夜は」
エリックは目を閉じ、息をついた。
「――うん。まあ、たまにはそんなこともないとね」

頬に当てられた手の甲の感触に、エリックは目を開き、アンドレアスの顔を見上げた。
その腕を掴み、なお瞬きもせずエリックはアンドレアスを見つめた。
「ねえ……目を見せてくれない? サングラスはずして」
黙ったままの男に、エリックは望みを繰り返した。
「――ねえ、お願いだよ。ちょっとだけでいいからさ」

あまり気乗りがしない、とでも言いたげにアンドレアスは首を傾げたが――
サングラスをはずし、その目をエリックに向けた。まっすぐに。
かなり薄い空色のブルー――冷たいと評されがちなそれをじっと見つめ、にっこりとエリックは笑った。
「うん、ありがと」
ぎゅっと腕を掴んだ手に力を込め、離すと、また目を閉じた。
その顔――そして全身からセックスの高揚感と熱が抜け、代わりに重たげな疲労の影が覆っていくのをアンドレアスは見てとった。
「あと2、3分したらここを空けるから――お疲れ」
123際限ない夜の短い終わり 7/7:2010/01/06(水) 19:22:23 ID:yEKsextt0

サングラスを掛け直し、アンドレアスは部屋を出た。
フロアに戻ると、ちょうどエリックを買った男が出口へ向かってくところで――
その全身から怒りが滲むような勢いと足取りだった。
その背中に短く叫び、確か連れだった女が追う。

痴話喧嘩か――と苦く、アンドレアスは思った。
カウンターのスポット下では、
エリックではない別のダンサーがチップを受け取り、女性客に笑いかけている。
もうしばらくしたら――いや、あるいはこの一瞬あとでも――客の誰かが自分を呼びつけ、
金を握らせようとするだろう。
次の夜も、その次の次も、この場所の夜がつづく限り延々と。

だが少なくとも、エリックの夜は今日は終えられた。
彼にとって、ラッキーなほうの夜として――。



いつのまにか硬く握りしめていた掌を開き、アンドレアスは息をついた。
そしてフロアから自分に向けて振られた手に気づくと、その主へと近づいていった。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
124風と木の名無しさん:2010/01/07(木) 08:38:52 ID:wYvN086x0
>>123
ぐっジョーーーーブっ!!
余情のある話でもの凄く萌えました
映像まで想像できます。
125いまは、もうすこし、の話。1/2:2010/01/08(金) 02:40:28 ID:OXWI2qwt0
行き場の無いGCCX萌え方向音痴+手汗。ほんのり方向音痴→手汗。
すきです、手汗。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・;)ジサクジエンガ オオクリシマース!

二日目に持ち越す事が決定して必要最低限の物だけ片付ける。
帰ってもええけど如何するかな。次の収録まで時間があるしもうちょっと残ってロケハンしてもいいか。
もうちょっとポイント絞って言う様にすれば有埜さんが分かりやすいかもしれんし。
結果的にそっちの方がええな。
よし、残るか。
ふっと息を吐いて席を立った。所で。
「あの、」
「え?」
落ち着かないのか、視線を彷徨わせながら後ろに立っている。
(・・・忘れとった)
(せやったな、此れからは俺がせんでもええんや)
「あぁ、えーっと」
「・・・すいませんでした」
「・・・は?」
素で固まってしまった。何で謝られたのかが分からない。
単にロケハンの事を教えようと思っただけで別に其の前に怒った覚えも無い。
?を浮かべて首を傾げた。
「あの、今日、遅刻してしまって」
「あ・・・あぁ。道に迷いましたーってヤツ?何、あれ嘘?」
「いえ!あれは、ホントです」
「なら仕方ないし。次しない様にすれば」
「はい、すいませんでした」
うん、ちょっとだけ表情が和らいだな。良かった良かった。
126いまは、もうすこし、の話。2/2:2010/01/08(金) 02:41:51 ID:OXWI2qwt0
笑顔とまではいかなくとも、緊張が多少解けた後輩の様子にほっとする。
何やろな、俺も新人の時こんな風に思われとったんかな。
にっこり笑って見せると、一瞬目を丸くされて(おぉ、デカい目)
そして。
はにかんだ様に。

(育て甲斐、ありそうやな)
そう思ったのは、きっと此れから先も言う事は無いんだろうけど。

「じゃあ、俺ちょっと残ってロケハンするから」
「えっ」
「どうする?一緒に残ってもええし初仕事で疲れてるやろから帰ってもええよ」
「や、残ります。僕もやります!」
いい返事を聞いてこっそりと口の端を上げた。其れはもう無意識に。
「・・・そう。じゃ、お茶とカップ持ってき。多分長くなるから」
「はい、あ、えーと、笹乃、さんは・・・」
「俺も飲むよ。俺の分も持ってきてな、裏川くん」
あぁ名前を呼ぶのは初めてやったとぼんやり思いながらゲーム部屋へ向かう。
さて、今日はどれだけ時間が掛かるだろうか。
多分あのポイントとかあの面で引っ掛かるだろうとは思うけれど、あの人は予期せぬ所で詰まったりもするから。
あんまり遅くなりそうだったら買出しにも行かんと、なんて思いながら電源を入れる。

背を向けた其の顔が、嬉しそうに微笑んでいるのを 今は未だ知らない侭。

□ STOP ピッ ◇⊂(−∀−;)イジョウ、ジサクジエンデシタ!ごめんなさい
以前投下した話にGJ頂いた姐さん方有難う御座いました・・・勝手に仲間増えたとニヤニヤしました!
127風と木の名無しさん:2010/01/08(金) 17:55:59 ID:/u2sjJCR0
>>126
2作目キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
GJです!ありがとう!!
128風と木の名無しさん:2010/01/08(金) 18:03:38 ID:eYxPYA9m0
間が空いたけど>111乙!
出会い編の方本当に書いてくれてありがとう、エロかった(*・∀・)ご馳走様でした
129風と木の名無しさん:2010/01/09(土) 02:35:59 ID:5eY2Ulwd0
今さらだが>>100GJ!
その世代が今でも大好きなんだ
2人はもちろん5人の雰囲気に萌えたよ
130蛙軍曹/黄×赤(0/4):2010/01/09(土) 22:34:17 ID:QlB1Fr2W0
蛙軍曹の黄×赤

本スレで吐き出させて頂いた地球人スーツネタです。
エロ有りっていうか、エロしかありません。すいません、ごめんなさい。
苦手な方は、スルーして下さい。

|>PLAY  ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
131蛙軍曹/黄×赤(1/4):2010/01/09(土) 22:35:32 ID:QlB1Fr2W0
薄暗いラボに篭るギロロのくぐもった嬌声。
ぴちゃぴちゃという微かな水音に、艶かしい息遣いが混じる。

赤い上下の背広を着た地球人スーツ。
ギロロ専用の、この赤いスーツが完成したからと、クルルのラボに呼び出されたのは数時間前。

装着した当初、通常の3倍の性能を持つというその新スーツに、有頂天のギロロだったが
全身の性的な感度まで3倍になっていると告げられて、暗黒に落とされた。

今。地球人スーツが着ていた仕立てのいい背広は、所々無残に切り裂かれ、肌を露わにしている。
感度を増しているその肌を這い回るのは、四方八方の壁から伸びる、触手のようなロボットアーム。
アームの先端は、それぞれ羽毛状・毛筆状・吸盤状等に改良されていて、
ギロロに与える快感を、否が応にも高める。

快楽の波に流されないように、唇を強く噛みしめるので、ギロロの下唇には血が滲んできている。
一言たりともあられもない声を発しないようにと喉に力を込めて耐えているのに
絶え間なく襲う快感に揺さぶられて、小さく喘いでしまう。

赤いスラックスのベルトは外され、前のファスナーを下ろされた所にも、アームは潜り込んでいて
一番敏感な部分を攻め立てる。

「先輩も強情だねぇ」
移動式の台座の椅子に浅く腰掛けたクルルが、息も絶え絶えに床に這い蹲るギロロを見下ろしている。
クックックといつものように低く笑って、椅子から飛び降りると、ゆっくりギロロに近づいていく。

うつ伏せていたギロロの帽子を掴んで、無理矢理上を向かせる。
眉根を寄せて、硬く目を瞑ったその表情が、クルルの加虐心を煽る。
ごくりと生唾を飲み込んで、クルルが顔を近づけて囁く。

「パスワードさえ言えば、楽になれるぜぇ」
「・・・・・・・うる、さい。・・・・・いいかげんに・・・これを、外せっ・・」
快楽に喘ぎながらも、ギロロは強い意志で言葉を返す。
132蛙軍曹/黄×赤(2/4):2010/01/09(土) 22:36:55 ID:QlB1Fr2W0
「外すにはパスワードを音声認識させないとダメだって言ったはずだぜぇ?」
「・・・・・っ、それ、は・・」
ギロロの脳裏にクルルが告げたパスワードが浮かぶ。

『キ・モ・チ・イ・イ・モッ・ト』

「・・・・・言えんっ!!」
掴む手を振りほどくように、頭を振る。
「ク〜ックックックックック」
心底楽しそうなクルルのせせら笑いが響く。

「だから、こうやって、先輩が言いやすいようにお膳立てしてやってるのによぉ」
そう言いながら、クルルがぺろりと地球人スーツの首筋を舐め上げる。
「・・ぅ、あぁっ!」
抑えきれない嬌声が、ギロロの口から漏れる。
「ほら・・・・・言っちまえよ」
気持ち良いだろう?と、耳元で囁かれて、ギロロは身を震わせる。

こんな、無機質な機械に嬲られて、気持ち良いなんて。
こんな、クルルにいいように弄ばれて、気持ち良いなんて。
こんな、こんな・・・・・・あぁ、でも。

実は、その言葉は、もうギロロの喉元まで出かかっていた。
だが、最後のプライドが、それを口に出す事を許さない。
一度口にしてしまえば、自分の中の何かが崩れてしまうような気がして。

「・・・・・しぶといねぇ」
軽く嘆息して、クルルがギロロの下半身に移動する。
「これでも、まだ意地が張れるかい?」
下着の中に手を入れて、そこにある高ぶりを激しく擦りあげる。
133蛙軍曹/黄×赤(3/4):2010/01/09(土) 22:38:13 ID:QlB1Fr2W0
「あっ!ああっ・・・、くっ・・・」
思わず口をついて出た嬌声をかみ殺す。
息をすることさえ辛そうなギロロを横目に、クルルの手は悩ましく動き続ける。

硬さが増し、絶頂が近いことを告げる。
握る手の動きを早めて、2,3回強く擦ると
「・・・うぅっ!」
ギロロの喉の奥で鳴る呻きと共に、白い液体が爆ぜた。

ねばつく手の平を見せ付けるように、ギロロの目の前で小さく振りながら
クルルが楽しそうに解説する。
「これは、地球人のものに似せて作った擬似精液だが、射精感はホンモノだぜぇ、気持ち良かっただろう?」
一段と荒くなった息遣いの下で、ギロロがかぶりを振る。
「パスワードを言わないと、まだまだ続くぜぇ」
クックックとクルルの嘲笑が響く。

いったん達した所は、萎えることなく次の刺激を待っている。
「イク回数も3倍に設定してあるからなぁ、ク〜ックックックック」
ビクビクとリアルに脈打つそこを、今度は先端が筒状になったロボットアームが包み込む。
「うあああぁっ!」
射精後で益々敏感になっている所に、今までに無い刺激を与えられて、ギロロが仰け反って叫ぶ。

「地球人でも2,3回はイクやつもいるそうだから、先輩は二桁に挑戦してみるかい?」
クックックと小さく笑いながら、クルルがギロロの背後に回りこむ。
「もっと、いいコトを教えてやろうか?」
スーツの後ろから手を滑り込ませて、双丘の谷間にある、一点に指を這わせる。
「ああっ・・・・?!」
また違った快感と、微かな違和感に気付いたギロロが振り返る。
怯えたような視線と悪戯っぽい視線が絡む。
「ココは本来なら排泄器官だが・・・」
クルルがその小さな穴の周りに指先を滑らすと、切なげな喘ぎがあがる。
134蛙軍曹/黄×赤(4/4):2010/01/09(土) 22:39:23 ID:QlB1Fr2W0
「地球人スーツには排泄する必要はねぇからな、代わりに粘液が分泌できるように改良されているんだぜぇ」
色々突っ込みやすいようにな、と呟くと、クルルはその穴に指を2本捻じ込んでいく。
「・・っ!・・・・やっっ・・あっ・・・」
ケロン人の小さな手とはいえ、いきなり2本も挿れられて、あまりの圧迫感にギロロは声も出ない。

狭い秘所を掻き回す指が、奥にあるしこりに触れる。
探し当てた感覚にクルルは薄く笑って、ソコを強く押し付けると、途端にギロロの全身が跳ねる。

「地球人で言う『前立腺』ってやつだぜぇ。射精とは違う快感がじっくり味わえるぜぇ・・・・」
ぐりぐりと圧迫していると、しこりは少しずつ硬く大きくなる。
快感に応じて分泌される粘液が、中の指の動きをスムーズにしていく。

我ながらよく出来ているな、と満足してクルルの口角が上がる。
自らの指の動きに合わせて、全身で反応を返す目の前の男が、たまらなく愛しく思えてくる。

呑まれちまえよ、この快楽の波に。
そんなアンタが見たいんだよ。

悦楽に塗れた饗宴は、ギロロがパスワードを口にしないまま、意識を飛ばすまで続いた。

◇◇◇

ぐったりと動かなくなった地球人スーツに隠されていた小さなボタンを押すと
鋭く空気が抜ける音がして、ギロロの体からスーツが外れる。

ぴくりとも動かないギロロを床に横たえて、クルルはその頬を撫でる。
こいつは俺の最高のおもちゃ。
次はどんな風にいたぶってやろうかと、考えるだけでクルルの胸が躍る。

「この歪んだ感情を愛と呼ぶのなら、確かに俺はアンタを誰よりも愛してるぜぇ」
意識の無いギロロに口付けて、クルルは低く笑った。
135蛙軍曹/黄×赤(終):2010/01/09(土) 22:40:28 ID:QlB1Fr2W0
□ STOP  ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

萌の暴走にお付き合いいただき、ありがとうございました。
エロくてすいませんorz
136ベーカリー戦隊 ホワイト×イエロー(1/10):2010/01/10(日) 00:04:23 ID:0Vh31Fv60
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) 正義のパンの、白い人×辛い人です。


オレンジ色の夕焼けをバックに、カレーパンマンはのんびりと飛んでいく。
目当ての家を見つけたので下降を始める。村から外れたところにあるのはパン工場と一緒だ。
「よっ、邪魔するぜ」
「おや。いらっしゃい」
約束もしないでいきなり家にやってきたカレーパンマンだったが、しょくぱんまんも一々驚かない。
「どうしたんですか」
「どうもしない。用がないと来ちゃいけないのかよ」
「いーえ。ただ玄関から入ってきて欲しかったですね」
ずかずかと部屋に入ってくるカレーパンマンとすれ違いに窓に近づき、しょくぱんまんは窓を閉める。
「今日は何をしていたんですか」
「おくらちゃんとこの畑の水やりと草むしり。お前は?」
「学校にパンを配達して、午後からはジャム作りです。
 美味しく出来たのでお土産に持たせてあげてもいいですよ」
「オレ甘いのきらーい」
ソファーにどっかりと座って、カレーパンマンはべろを見せた。
しょくぱんまんはやれやれと頭を振って、台所に立つ。
「晩御飯はもう済ませたましたか」
「まだ」
「じゃあ食べていって下さいよ。ひとりのご飯は寂しくていけません」
「何作るんだ?」
「サンドイッチ」
「またか。お前ひょっとしてそれしか作れないんじゃねぇの」
「カレーしか作れない人には言われたくありませんね」
「失礼な! カレーうどんだって作れるやい!」
「わぁ、ついにレパートリーが増えたんですね。見てみたいなあ」
まな板を用意していたしょくぱんまんが振り返る。
「よーし見てろよ。じゃあお前のサンドイッチは朝ごはんな」
得意げに片方の目をつぶり、人差し指でしょくぱんまんをさしてからカレーパンマンはキッチンに立つ。
137ベーカリー戦隊 ホワイト×イエロー(2/10):2010/01/10(日) 00:05:43 ID:0Vh31Fv60
「はーい注目! カレーパンマン大先生のお料理教室の始まり始まり〜」
「ぱちぱちぱちぱち。先生、今日は何を作るんですか?」
「カレーうどんです。まずはカレーを作ります」
「ふむふむ」
「次にうどんを茹でます」
「ほうほう」
「そしてこのうどんに先ほど作ったカレーをかけます」
「うんうん」
「はいっ、カレーパンマンのスペシャルカレーうどんの出来上がり!」
「わぁ! すごいですね美味しそう」
へへんと笑って、カレーパンマンはどんぶりをしょくぱんまんに渡す。
「汁とばすなよ。お前の服は白くて汚れが目立つんだから」
「はーい」
カレーパンマンはそう言ったが、もともとゆっくりと丁寧に食べるしょくぱんまんだったのでその心配はなかった。
しょくぱんまんがお皿を洗っている間、カレーパンマンは植木鉢に植えられた花を眺めたり、
壁にかかった絵画にぎりぎりまで近づいていたりして時間を潰していた。
「なあ、この絵お前が描いたの?」
「そうですよ。あんまり美しかったので思わず。なかなかいい出来だと思うんですけど、どうですか」
「どうって。下手じゃないけどさ、これ、サインがキャンパスの半分埋めてんだけど」
「カレーパンマンもやってみませんか?」
「遠慮しとく」
皿洗いが終わってからも、しょくぱんまんは何かと家事をしていた。
部屋から部屋を行ったり来たりするしょくぱんまんを目で追っているだけのカレーパンマンは、
次第にうつらうつらと眠くなってくる。
今日一日の疲れと満腹感が、背もたれに預けた背中からじわりと全身に広がるようだ。
「カレーパンマン、寝てもいいですけど歯磨きしてからじゃないと」
カレーパンマンの肩を揺すって、しょくぱんまんは眠りかけている彼を起こす。
「眠い」
眉間にしわを寄せてほっといてとアピールするが、もちろんそんなことは全く聞き入れられない。
「ほら」
138ベーカリー戦隊 ホワイト×イエロー(3/10):2010/01/10(日) 00:06:27 ID:0Vh31Fv60
手を引っ張られて立たされ、洗面台まで背中を押される。
しかし歯磨きを終える頃には、カレーパンマンの眠気は幾分とすっきりとしていた。こういうことってままにある。
「とーう」
「わわっ」
両手を広げて、カレーパンマンは勢い良くベッドに飛び込む。
先にうつ伏せていたしょくぱんまんは掛け声と共に振り向き、慌てて体を反転させた。
「あーいいにおい。こんがり焼けたトーストのにおい」
ちゃっかりと抱き止められたカレーパンマンはしょくぱんまんの胸に頬を擦り寄せる。
「もー甘えたなんですから」
呆れ気味に言いながらも、しょくぱんまんはカレーパンマンの背中をぽんぽんと叩いた。
ずりずりとしょくぱんまんの体の上を這って、カレーパンマンは顔を近づける。
ちゅうっとして、その途端に短い叫び声を上げてカレーパンマンはしょくぱんまんの上から飛び退いた。
「あーまーっ!」
勢い余ってベッドから滑り落ちてしまう。
上半身だけを床にべったりとつけて、関節で90度に曲げた足をベッドに引っかけ、カレーパンマンはじたばたとばたつかせた。
「何食べたんだよお前!」
「クッキーですけど」
「こうなるの知ってただろ、なんでそんなもん食べてんだよっ」
「だって」
「言い訳は聞きません! ほら、黙って歯磨き歯磨き」
床に寝転んだまま、カレーパンマンは洗面台のある方向を指差す。
首を左右に振りながらも、しょくぱんまんは言われた通り洗面台に向かった。
戻ってきたしょくぱんまんがベッドに腰かけると、うつ伏せて待っていたカレーパンマンは
腕から顔をほんの少し持ち上げて、そしてそっぽを向いた。
「あれ。やめるんですか?」
「お互い歯磨き粉味だからな」
「勝手ですねぇ。わたしは別に構いませんけれど。明日も早いし」
「良く聞けよ。ちゅうはしないって言ってるの、ちゅうは!」
仰向けになりながら、カレーパンマンは『は』を強調する。
やれやれと息をついて、しょくぱんまんは手を伸ばし、カレーパンマンのマントの襟を緩めた。
139ベーカリー戦隊 ホワイト×イエロー(4/10):2010/01/10(日) 00:07:32 ID:0Vh31Fv60
やわやわとあちこち触ったり撫でたりして、しょくぱんまんはあまり反応を示さないカレーパンマンに問う。
「どうですか。気持ちいい?」
ふわふわの掛け布団を握りしめていたカレーパンマンは、一度だけしょくぱんまんを見て、
すぐに視線をあっちこっちにやりながら、
「あー」
「えーと」
「んんん…」
ごにょごにょとうそぶく。結局最後は、
「どっちでもいいだろそんなの」
と随分と投げやりだった。
「うん、どっちでもいいと言ったらそうなのかもしれませんね。痛い思いをするのはあなたですし」
しょくぱんまんのその言葉に、カレーパンマンは元からぐにゃぐにゃの口元をますます歪めた。
「うそですよ!」
しょくぱんまんは慌ててカレーパンマンから手を退け、それを肩まで挙げる。
それで見るからにほっとしたカレーパンマンだったが、
すぐに唇を軽く噛んで、軽く持ち上げていた頭を再びベッドに沈めた。
「………気持ちいい」
更に余所を向くのでしょくぱんまんにはカレーパンマンの顔が見えなかったが、
「そうですか。それは良かった」
と日常事のように答えた。
「オレもやるぜ」
くすぐるように手を這わせていると、もぞもぞしていたカレーパンマンが急に起き上がってそう言った。
そのまましょくぱんまんの手を退けさせる。
こういうことをされている最中に、ふと我に返ってどうしようもなく照れて、逆の立場に立とうとするのは
カレーパンマンには良くあるパターンなので、しょくぱんまんも好きなようにやらせることにしている。
そのせいでたまに酷い目に合うけれど。
「やるって何を?」
「いひひ〜」
笑い声をあげながら、カレーパンマンはしょくぱんまんのベルトに手を伸ばす。
しょくぱんまんのフランスパンを取り出し、
「いつもはこれ苦くて嫌なんだけどさ。いいこと思いついたんだ」
140ベーカリー戦隊 ホワイト×イエロー(5/10):2010/01/10(日) 00:08:12 ID:0Vh31Fv60
そう言って、カレーパンマンは服とマントの間に手を入れ、引っ張り出した小瓶を手の中で振った。
たぷたぷと揺れる液体は真っ赤っかだ。
それをひっくり返して、
どばっ
「こうするとピリリと辛口!」
びっと親指を立ててカレーパンマンが得意げに笑う。
「な? いい考えだろ」
「わあ、頭いいですねカレーパンマン」………と返って来るはずが、実際に貰ったのは賞賛ではなく本気しょくぱんちだった。
「いってー!! あにすんだよ!」
「それはこっちの台詞です!! カレーに溺れて死んでしまいなさい!」
「あーっ、死ねって言った今死ねって言った! ジャムおじさんに言いつけるからな!」
両手両足をじたばた振りまわし(ちいちゃなクリームパンダちゃんじゃあるまいし)全身で怒るカレーパンマンだったが、
むしろ続けざまにしょくキックを貰わなかったことに深く感謝するべきである。
「もう、どうしてくれるんですかこれ!」
「へへーん、お前なんてこうしてやるのだ!」
しょくぱんまんが思わず声を荒げると、どこかの悪役のようにそう言ってカレーパンマンはそれにかぶりついた。
「いっ……!」
叫びそうになって、しょくぱんまんはぎゅうっと目をつぶり、歯を食いしばって堪える。
痛いやらひりひりするやら軟らかいやら、とんでもない目に合っているのだから無理もないのだが、
みっともなく声をあげるのはカレーパンマンがひとりでやっていればいいことで、
それだけはしょくぱんまんのプライドが許さなかった。
しかし、そのままカレーパンマンの迷惑な思いつきに付き合ってやるほどもの好きでもないので、
しょくぱんまんは遠慮なく彼にでこぴんして口を離させる。
「なに? だめだったか?」
人の急所にタバスコをぶっかけて怒られ、それでもまだこうのたまうカレーパンマンに、
しょくぱんの白さと美しさと気高さをどれだけ主張しても聞く耳持たずに、そればかりかカレーの方が優れている
などと主張された時と同じくらいに、しょくぱんまんはいらいらとさせられた。
カレーパンマンの肩に手をかけ、布団の上に押し付ける。
141ベーカリー戦隊 ホワイト×イエロー(6/10):2010/01/10(日) 00:09:16 ID:0Vh31Fv60
「駄目なら駄目でなんか言えよー。怒ってんのか?」
「ええちょっぴり」
のんきに聞いてくるカレーパンマンに、しょくぱんまんは可愛らしく首を傾げて見せた。
「あ、やばい、怖い」
「怖いだなんて。心外です」
じりじりと逃げようとするカレーパンマンをしっかりと押さえる。
そんな彼を安心させるべく、しょくぱんまんはにっこりと笑って見せた。
「しょ、しょくぱんまーん……」
適当にほぐして中に押し入ると、仰向けのカレーパンマンは掛け布団をやんわりと握った。
「なんですかその声。おもしろい」
ちょっと意地悪になっているしょくぱんまんだが、そうじゃなくても面白い声だと思う。
いないいないバルーンに驚かされた時並みに声がふにゃふにゃしている。
いつもなら「馬鹿にしやがって!」なんて元気良く言い返すカレーパンマンなのだが、
今回ばかりはそうもいかないらしく、全く反論してこない。
それはそれで面白くない。
「あっつ……」
「汗、すごいですよ」
「激辛カレー食べてる時みたいだ。あつい」
「あなたって脳みそまでカレーで出来てるんですね」
「うるせぇやい」
唇を尖らせるカレーパンマンの頬に手を伸ばし、しょくぱんまんは汗ばんだそこを撫でた。
「ねえカレーパンマン、わたしたちの顔が汗や涙では汚れないのって、なんでだか考えたことありますか?」
「まったく。そう言えばそうだな」
カレーパンマンから一時両手を離し、しょくぱんまんはじっと彼を見つめた。
「わたしはね、ひとのためにためらいなく汗を流し、ひとのために迷いなく涙を流すためだと思うんです」
「ああ……うん。そうかもな」
「だからあなたもどんどん泣かされて下さいね、わたしに」
「そういう話!?」
142ベーカリー戦隊 ホワイト×イエロー(7/10):2010/01/10(日) 00:14:57 ID:0Vh31Fv60
思わず身を起こそうとするが、中に入りこんでいるものにカレーパンマンは顔を盛大に歪ませる。
されどしょくぱんまんは構わず、カレーパンマンの片足を持ち上げ、より深く食い込ませようとした。
「まてーっ! 不覚にもちょっときてたのに、返せよオレの中で芽生えた何かを!」
「あ、よだれでも結構ですけど、よだれかと思ったらカレーだったなんて展開はなしですよ」
「その耳は飾りかぁっ」
肘をついて怒鳴るカレーパンマンだったが、しょくぱんまんが詰め寄ると大袈裟に体を震わせ、がくんと背中を倒した。
しばらくじっとして、カレーパンマンの息が落ち着いた頃にしょくぱんまんは、
「ねえカレーパンマン。しょくぱんの方がカレーよりおいしいですよね」
肘をカレーパンマンの脇について、ぐっと体を倒す。
解りやすくカレーパンマンの目にぶわっと涙が広がるが、それでも数センチ先のしょくぱんまんを睨んだ。
「何言ってんだよ。ジャムやバター塗らないと味のしないパンより、カレーの方がおいしいに決まってるだろ」
「でも、しょくぱんは毎朝食べられていますし、ピクニックでも大活躍です。
 カレーは朝食には重すぎますし、持ち運びにも向いていません」
「バカだな、それをフォローしきれちゃうほどカレーはしょくぱんなんかより………ぅあ!?」
カレーパンマンの声が突然裏返った。しょくぱんまんが彼の体を掴み、強引にひっくり返してうつ伏せにさせたのだ。
「わっ、わっ」
遠慮なく背中にのしかかって来るしょくぱんまんの動きに伴って、
固いものがますます深く突き刺さり、カレーパンマンは目を白黒させる。
「ね、カレーパンマン、しょくぱんの方がカレーより勝っていますよね。あなたもそう思うでしょう?」
ゆっくりと手前に引き、またずぶずぶと押し込む。
「お、おい、しょくぱ……」
143ベーカリー戦隊 ホワイト×イエロー(8/10):2010/01/10(日) 00:16:19 ID:0Vh31Fv60
彼が何をしたいのか、何を自分にさせたいのかがそろそろ解って来て、カレーパンマンの声が引きつる。
「しょくぱんの方が皆さんから愛されてます」
けれど、日常での会話で使われるものとそう変わらない声と様子で、しょくぱんまんは言い続けるだけだ。
馬鹿だと思いながら、ほんとうに、心底馬鹿だ馬鹿だと思うのだが、
それでもカレーパンマンは自分の腰が浮くのを抑えられない。
しょくぱんまんを受け入れる体勢を取ってしまう直前に、ついにカレーパンマンは音を上げた。
「わかっ…た、って、もう、それでいいから!」
精一杯の、これ以上ない譲歩だったのだが、それを聞いたしょくぱんまんは身を引いて、
カレーパンマンの下のカレー噴出口から退いてしまった。
「それでいいじゃなくて、ちゃんと言ってください。カレーよりもしょくぱんの方がおいしいですって」
しょくぱんまんはカレーパンマンの噴出口に、ステックパンの先っぽを当てる。
手持無沙汰だからついでにとでもいう風に、しょくぱんまんはカレーパンマンの内腿を撫でた。
それにすら敏感に反応して、カレーパンマンは布団をぎりぎりと握りしめる。
「うぁっ…ふ、ふざけんな」
「わたしはいつだって本気です。今だってそうですよ」
カレーパンマンのそこを縁取るようにフランスパンを動かすと、電撃でも走ったかのように体が反り返る。
「なぁ、それ、いっ、言わなかったら……?」
「もちろんここでお終いです。そんなの困りますよね、カレーパンマン」
「おっ、まえも……だろ…!」
懸命にも言い返すカレーパンマンだったが、しょくぱんまんは全く聞き入れない。
「さんはい」
「うあっ………や、だ、ぜったい、言うもんか……」
頑ななカレーパンマンに、しょくぱんまんは「もう」と頬を膨らませた。
「じゃあおしまいですね」
とは言うものの、それは口だけで、実際にはしょくぱんまんはカレーパンマンから離れていない。押してもいない。
144ベーカリー戦隊 ホワイト×イエロー(9/10):2010/01/10(日) 00:18:06 ID:0Vh31Fv60
なのだが、
「言やあいいんだろバカ!!」
しょくぱんまんが離れていくと錯覚したカレーパンマンは、堪らなくなって叫んだ。
「そうですよ。バカは余計ですけどね」
言いながら、しょくぱんまんは再びカレーパンマンの中に割って入った。
あくあくと浅い呼吸を繰り返し、カレーパンマンは唾を飲み込む。
入ってこられる度に息が上がり、どんどん視界は濡れていった。
涙で霞んだその中で、ずっとほったらかしにされていた黄色いマントだけが目立ち、
カレーパンマンは夢中で手を伸ばしてそれをぐちゃぐちゃに握った。
「……かれぇよりも………ふぁ…ばか、動かすなっ! …はぁあっ…おまえ、ほんっと性格わるい…!!」
「どうとでも」
「しょく……ひっ…しょくぱんのほうが、……あぁ、やっ、めろ…いっ………」
顔を歪めて、カレーパンマンはますますきつくマントを握り締めた。
これまでなんとか目尻に留まっていた涙が、ぼろぼろと零れ落ちる。
「…おいしぃ、です……」
かすれた声で言って、カレーパンマンはぐったりと頭を落とす。
「言っちまった……おれのバカ」
「あはは気持ちいい! 今度から毎回これやりましょうか」
楽しげなしょくぱんまんの声色に、カレーパンマンはぐるんと体を反転させた。
「い、えよ、ほら」
余裕の笑みを見せようとして大きく失敗しながら、カレーパンマンは痙攣する足を伸ばしてしょくぱんまんの腰を抱える。
「カレーが好きって……しょくぱんよりも、か、カレーがだいすきですってよ……ほら」
そのせいで更にしょくぱんまんを奥にくわえ込むことになって、じわりとカレーパンマンは目に涙を浮かべた。
「えええ」
「だったらとーぜん、これでおしまい……おら、は、やく言えって……あぐっ」
溜め息をついてからしょくぱんまんは体を倒し、がくっ、とカレーパンマンの足が大きく跳ね上がる。
「一度しか言いませんからね」
「しょくぱんより、カレーパンマンが好きです」
「あっ、てめこのやろ……!」
溺れる直前のような、切羽詰まった声だった。
「はーっ。あー楽しかった」
145ベーカリー戦隊 ホワイト×イエロー(10/10):2010/01/10(日) 00:19:12 ID:0Vh31Fv60
はちみつトーストにしたわけでもないのにきらきらとした表情で、しょくぱんまんが朗らかに笑う。
マントを抱きしめ、その上から布団を被ってふてくされていたカレーパンマンは近くにあった枕を投げつけた。
難なくそれを受けとめて、しょくぱんまんはカレーパンマンが被っている布団を引き剥がそうとする。
「独り占めしないで下さいよ。わたしも寝るんですから」
「床で寝とけ」
「ひどいなぁ」
素直に手を離す。と、カレーパンマンがひょっこり顔を出した。
布団を捲り、黙ってスペースを開ける。
そこに寝転んだしょくぱんまんが布団を綺麗にかけ直す。
うつ伏せのまま、それを横目で見てから、カレーパンマンは眠り易い体勢をとった。
「カレーパンマン、しょくぱんまーん」
パン工場に遊びに行くと、メロンパンナちゃんが元気良く出迎えてくれた。
サンドイッチがたくさん入った籠を差し、声を弾ませる。
「昨日、ホットサンドちゃんに教えてもらったの。カレーサンドだよ!」
「なぁんだ。わたしたちってこんなに簡単にひとつになれたんですね」
「んー、うまい! でも、もうちょっと辛口の方でもいいんじゃないのかな〜」
「聞かなくていいですよメロンパンナちゃん。カレーパンマンの辛口は激辛ですから。とっても上手にできてますね」
「うふふ、ありがとう。いーっぱいつくったから、ロールパンナおねえちゃんにも食べてもらうんだぁ」
「気をつけろよ」
「うん! いってきまーす」
ふんわり飛んでいくメロンパンナちゃんに手を振り、
「流石はしょくぱん、どんな料理にも合うんですね」
「違う違う。おいしいのはカレーのお陰」
「いいえ、しょくぱんが優秀だからです」
「か・れ・え!」
「しょ・く・ぱん!」
顔をくっつけてぎゃあぎゃあ騒いでいるふたりを遠巻きに、アンパンマンはかまどを開ける。
「それじゃあぼく、パトロールに行ってきまーす」
「それいけ! アンパンマーン!」
言い争いをぱったりと止め、煙突から出るアンパンマンを声を合わせて送り、ふたりはまたいつもの喧嘩を始めた。
146風と木の名無しさん:2010/01/10(日) 00:29:54 ID:+DvTVech0
>>136
リアルタイムで読んでて、萌え滾ってました!GJ!
性格の悪い白い人イイ!

終了AAが無いのは、ひょっとして10レス超えたせいでバイさるに引っかかったのかな?
もしまだ終わってなかったのなら、ごめん
147ベーカリー戦隊 ホワイト×イエロー:2010/01/10(日) 01:05:41 ID:0Vh31Fv60
□STOP ピッ ◇⊂(・∀・ ) 終わりです。

すみません、さるさん食らってました。>>146さんありがとう。
148風と木の名無しさん:2010/01/10(日) 01:16:51 ID:CiNIHikp0
>>136
乙!
白い人が素直で鬼畜な展開に萌えたw
黄色い人もやんちゃで可愛いな
149キス 0/4:2010/01/10(日) 07:09:43 ID:aQJEdot00
>125さん素敵なお話ありがとうございます!!
GCCXはほんま萌えの宝庫やで・・・!

彼らには色々萌えてますが最近の24hエピでじわじわくすぶる8×7を置いていきます
誰かの萌えの足しになるといいけど

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・;)ジサクジエンガ オオクリシマース!
150キス 1/4:2010/01/10(日) 07:11:07 ID:aQJEdot00
「キス」
「は?」
唐突だったので何を言われたのか理解するのが遅れた。
「していい?」
タメ口を指摘する前に、ですか、と付け加えられて俺は口を閉じなおす。
一拍、二拍。
間を置いて、寝不足の脳みそが動いた。
「……あー。……自分で、する」
「は?」
今度はエモトが聞き返した。
寝不足脳二人組で会話もままならない。
待ち人を待ちくたびれてきつつ考えていると、じわ、と体温が寄ってきた。
肩に重みが乗って、首筋に他人の髪の毛の感触。
「で、結局していい訳? ですか」
「だめ」
「えー」
一緒に帰る予定のAD仲間の女子二人がなかなか降りてこないからって、これはない気がする。
「人目が気になりますか」
ぼそぼそと喋る声が耳に無駄に心地よい。疲れた体に思いっきり眠気を誘ってくる。
「眠い。やだ」
人目はあるような、ないような。
あんながっつり徹夜で長丁場の仕事の後だから。
駐車場の車の中でぐだぐだな格好で寄り添ってるのが例え男同士だったからって誰も気にしてない、と思う。
それでもって、本当に眠くなってきた。暑いし熱いし、ぬるい。
ハンドルにもたれたら間違いなく朝まで爆睡するだろうってレベル。
151キス 2/4:2010/01/10(日) 07:12:05 ID:aQJEdot00
「エモト、これ」
「ん、」
「乗って帰るの、無理かも」
「まじで」
またも後輩のタメ口。
「ナカヤマさん」
てゆうか遅い、イトウちゃんは寝てしまったワタナベサンを起こせなかったのかもしれない。
「帰るのやめよ? 危ないから」
チーフのあの爆睡ぶりじゃあ、確かに無理かも、とにかくエレベーターの表示が動かない。
――危ないって、何が。
ガラス窓の向こうへ視線を移す。
「ナンだったらもう皆で車の中で寝た方が」
地下の駐車場は無表情な感じだ、深夜の暗さもあまり感じない。
――ああ、事故るかもってことか、それは危ない、とか思って顎は勝手に頷いた。
「……ナカヤマさん」
もぞり、と肩の上でエモトが唸るように呟く。
ちょっとうるさい、と思った。
覗き込むと、目が合った。
少し上げた顔に生気がない。こんな死人な顔なのはきっとお互い様だと思う。
唇がまた何か言いたげに動きかけたので、やっぱりうるさいと思って前触れなく唇を重ねた。
途端、驚いた感じに顔が一瞬引いたのでしてやったりだと思う。
思ったけども、しばらくかさついた唇は追いかけあう形で触れ続けていた。
息がかかるのがくすぐったいと思う。
離れた隙間でエモトが喋る。
152キス 3/4:2010/01/10(日) 07:12:35 ID:aQJEdot00
「急に、どうかしましたか」
「うるさい」
敬語が戻った。相手の目が少し覚めたのかもしれない。
「負けっぱなしは、好きじゃないから」
「……はぁ」
「いつもお前からとか、ないから」
只でさえ仕事でも微妙に負け負けなのに。
「……はぁ」
覚めたかと思ったがまだ眠いのかもしれない、返事に覇気がない。
……眠いのは、自分も同じだ。唇を、顔をそっと、離す。
欠伸を一つかみころしてエモトの肩に寄りかかり返した。
「眠い」
「ですよねぇ」
人の体温が夏の終わりにも関わらず暑いくせに気持ちがいい。
いや、クーラーは効かせているけれど。
「ナカヤマさん、実は結構負けず嫌いですか」
彼の細い手指がそわそわとしている感じに、目が留まった。
「だから、エモトん家に帰る」
気にしない振りで顔を上げると目が合った、逸らして、エレベーターのある方向を睨みつける。
「だから、って……繋がってますかそれ」
シリメツレツですよ、と言った顔が視界の端でやけに嬉しそうな気がするけれど。
「帰るんだから、いいだろ」
「いいですよ」
目線の先に慌てて走ってくる人影がある。
……それが何故かやってきたのは一人だけだったけど。
153キス 4/4:2010/01/10(日) 07:16:23 ID:aQJEdot00

説明を受けて、つまるところは「先に帰っててくれ」という事だった。
待たせておいてそれはどうなんだろう。
と、思ったがエモトが無駄にいい笑顔で帰ることを了承したので(事故の心配はどうした?)。
自分の目がまだしっかと開いている内に車を発進させてみることにしたのだった。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

7が女王受くさいのは多分眠くて人見知り発動しないからなんだとか
適当に妄想した結果の産物でしたとさ
154風と木の名無しさん:2010/01/10(日) 09:25:07 ID:N7gQZk+Q0
>>147
大変萌えたのだけど、

>しょくぱんまんのフランスパンを取り出し、

>カレーパンマンの噴出口に、ステックパンの先っぽを当てる。

姐さんは私を笑い殺す気か!
155風と木の名無しさん:2010/01/10(日) 12:29:48 ID:6GU+WNYc0
>>153
GJです!7可愛いですね・・・!
4×7×4が好きなんですけど8×7も好き
156架空スタッフと某テクノ師匠:2010/01/11(月) 01:46:30 ID:lFDcPXnz0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  架空のスタッフと某テクノなおっさん師匠だモナー
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  2万/馬/骨記念だカラナ
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドマイナーダゴルァ!!
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
157架空スタッフと某テクノ師匠 1/2:2010/01/11(月) 01:47:11 ID:lFDcPXnz0
「本当に二万超えましたね。」
「…。」
ヒラ/サワさんがやっているツイッターのフォロアー数がとうとう二万人を超えた。
ファンクラブ会員数をはるかに超える数だ。
ファンクラブに入るほどのコアなファンはそりゃ一握りなのはわかるけど
これまでの販売数から見て興味本位だとしてもこの数はおかしい。
某アニメの影響らしいのでヒラ/サワさんの音楽も聞いた事が無い人もいるのだろう。
それどころか、ヒラ/サワさんが何をやっている人かも知らずにフォローしている人も大勢いたりするのだろう。
検索ワードの上位に来たりする事もあるくらいだ。
「いつも通りの発言ですけどねぇ。」
「んー。」
「かわいいって、言われてるみたいですよ。」
「…。」
「ま、かわいいとかは昔から言われてますけどね。」
「…怖い人なんだけど。」
「そうですね、怖い人ですね。…あ、ほら萌え〜って言われてますよ。」
ツンデレなんて言われている。
もうごじゅう…。あっと、年齢不詳でした。
この人はそんな言葉が生まれる前からこんな人だった。
偏屈で頑固なおじさんなんだけどねぇ。
お茶目でかわいらしい所があるんだよねぇ。
それに、抗えないほどのその才能。
出会えてよかったと、涙すら出てくるほどの音楽。
かっこいいなんてもんじゃないんだ。どうしたって惹かれるんだ。
「じゃああなた怖い人だって言ってきて。やつらに。」
「どうやって?」
「ヒラ/サワさんて前科5犯らしいよーとか。」
「微妙な数字ですね。」
「スタッフと喧嘩して激怒してそのスタッフやめさせたらしいよーとか。」
「有り得そうですね。」
158架空スタッフと某テクノ師匠 2/2:2010/01/11(月) 01:47:45 ID:lFDcPXnz0
あなたの周りからは人が居なくなるからそれなら信じて貰えそうですね。
「いいじゃないすか。みんなね、知らなかっただけなんですよ。ヒラ/サワさんの事。」
「マイナーで売ってるからね。」
嬉しい反面、怖いらしい。
得体がしれないもんなぁ。
「…もうあんまり嫌われたくないですね?」
「……。」
ふん、とでも聞こえるような冷たい目で顔をそむけられた。
誤解される事の多い人だし、こういう感じだし、ま、やっぱどっかおかしいし。
今までも色々あったんだろうなぁ。
「大丈夫ですよ。残る人は残りますから。」
「…別にいい。どっかいっちゃえ。一人にしてくれ。」
「僕だって残りましたしね。」
「今日付けで取引終了な。」
「いーや、よっぽど無能になったと自覚しない限りあなたについて行きますよ。」
「そんな事は私が決めますから。」
「駄目です。僕くらいですよ安い料金でこんな注文やるの。」
「いつもありがとうございます。」
「いきなりwそういう所に萌えられるんじゃないっすかぁ?」
「あなたは私に萌えますか?」
萌えないでしょ?適当な事言うな と、続けたいんだろう。この言い方は。
「まぁ、…かなり萌えてますけどね。」
ヒラ/サワさんの目が開く。
「…今日付けで取引終了な。」
はいはい。

ああ、やっぱりどこか憎めない、かわいい人だ。
159風と木の名無しさん:2010/01/11(月) 01:48:14 ID:lFDcPXnz0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |               以前感想くださった方
 | |                | |           ∧_∧ どうもありがとうございました。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
160風と木の名無しさん:2010/01/11(月) 02:14:24 ID:JJkMsie50
>>157
わー師匠のお話、読めて嬉しいです!
ほんと、あの人、ちょっとこわいけどかっこよくって
なんだかかわいいんですよねぇ。
また待ってます!
161風と木の名無しさん:2010/01/11(月) 02:32:02 ID:jSrfUZVj0
>>10姐さん、どうか続きを…!
あなたの書く2人が読みたすぎて死ぬ。
162風と木の名無しさん:2010/01/11(月) 11:29:15 ID:5Ec6L7v70
香水芳香消臭板
http://dubai.2ch.net/aroma/
163風と木の名無しさん:2010/01/11(月) 11:31:47 ID:Zf+BRJHD0
>>161
保管サイトの感想スレに逝けよ
164風と木の名無しさん:2010/01/11(月) 14:02:58 ID:6UzQksBC0
>163
え?
このスレに投下されている作品に対してなら、ココでいいでしょう?
感想レス禁止じゃないよ
165風と木の名無しさん:2010/01/11(月) 14:16:06 ID:eZ85hr9s0
だよねえ
感想が続くならうっとおしくなるのかもしれないけど
166風と木の名無しさん:2010/01/11(月) 17:03:42 ID:9m1uDFeb0
感想というか続きをリクエストしてるのが鬱陶しかったんじゃないか
167風と木の名無しさん:2010/01/11(月) 17:19:29 ID:4RpCoOOb0
なんか一部あぼーんされたからログ取り直せって出たけど、どんなレスだったの?
168キム×空:2010/01/11(月) 18:53:37 ID:PTzl5ukJ0
投下させていただきます。

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  キム/タクと唐/沢がドラマで共演したらという妄想からだモナー
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  勝手に作ったオリジナル作品だカラナ
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 棚15からダラダラと続いてるぞゴルァ!!
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) キム×唐だゴルァ!!
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___※本人とはなんの関係もありません
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
簡単なあらすじ
容姿端麗・性格も良く仕事のできる木村。30過ぎても結婚しない理由は
40過ぎの×1男、空沢に惚れていたからだった。
離婚の寂しさ、経済的な理由でルームメイト募集の広告を出した空沢。
やってきたのは木村だった。そこから二人の共同生活が始まった。
169キム×空 1/2:2010/01/11(月) 18:54:15 ID:PTzl5ukJ0
ランチは別々に食べる。
空沢さんがご飯を食べ終わった頃、俺は給湯室の冷蔵庫からタッパーを出して空沢さんを探す。
お、居た居た。
近くにある椅子を引っ張り空沢さんの近くに座る。
タッパーを開けて、つまようじを一本渡す。
今日はりんごですよ。
当り前のように空沢さんはその一つににつまようじを刺し、口へ運んだ。
「昼飯何食ったんすか?」
「かつ丼。」
俺も一つ刺して口に運ぶ。
うん、甘い。いいりんごだったな。よかった。
冬だなー。いやもう新春か。
「ふーん…じゃあ油ものはやめるか…」
小声で呟く。昨日はイタリアンにしたから今日は何にすっかな。
あ、おでんとか食いたいかもな。
この所めっきり寒いし。

シャリシャリという音だけが響いている。
俺、この空間すげー好き。
初めはなんか空沢さんがビビってこそこそしてたけど
今じゃ結構堂々と食べている。
でも今日はちょっと人前過ぎたかもしれない。
一応、部屋のすみっこの一角なんだけど。
それでもやっぱり女の子っていうのは目ざといもので、
「やだー!!木村さん空沢さん何カワイイ事やってるんですかー?!」
ギョッとした。
通りすがりの女の子に嬉々とした声をあげられてしまった。
見つかったかー。て、当り前かこんなとこじゃ。
「な、何が?」
「だってりんご〜!木村さんが剥いたんですか?」
170キム×空 2/2:2010/01/11(月) 18:54:57 ID:PTzl5ukJ0
空沢さんのでかい目がキョロキョロ動いて俺を見る。
助けを求められてます、か。ね。
「あーうん。あー、あの俺食後フルーツ食べたい派なんだけどね。
1個じゃ足りないけど2個じゃ多いからって余ったやつ空沢さんにあげたらさ、
それからなんかすっかり日課になったんだよねー。俺も今じゃ最初から二人分剥いてきてるもんw」
「へ〜仲良いんですね〜意外〜!」
納得したらしい女の子はそのまま通り過ぎて行った。
…そっかカワイイってなるのかこれ。
はぁ、と空沢さんがため息をついた。多分無意識だったんだろう。なんだか焦ったように俺を見た。
別に今更そのくらいのため息なら傷つきませんけどね。
窺うような目だ。
「空沢さん?」
「…別にいいからな。」
スッと目を逸らした。
ん?「別に(持ってきても)いいからな」ってことか。
「んじゃ明日からも持ってこよっかな。」
なんか、持って来やすくなった気もするし。
「俺果物好きだしな…」
空沢さんは下を向いたままシパシパと数回瞬きをした。
長い睫毛がバサバサ動く。
そんで、ちょっと顔あげて、またりんごを一個刺して口に入れた。
なんかニヤニヤしそうだから俺は口元を隠して頬づえをついた。

明日は何にしようかな〜。
171風と木の名無しさん:2010/01/11(月) 18:56:06 ID:PTzl5ukJ0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |                   
 | |                | |           ∧_∧      元ネタは11月頃のあほもスレより拝借。感謝。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )     保管庫の各々の皆さま 、
 | |                | |       ◇⊂    ) __  いつも読んでくださる方、感想くださる方
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |  どうもありがとうございます。
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
172風と木の名無しさん:2010/01/11(月) 19:11:20 ID:fsOF9vDH0
>>171
キム×空キテタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!
いつも萌え補給をありがとうございます!!
もうこの二人の何気ない日常を見ているだけで明日への活力が沸いてくるよ!
173サンクチュアリ 1/2:2010/01/11(月) 19:41:00 ID:ec0WRveS0
>>100姐さんの名作に禿げて電波受信。姐さん、勝手にすいません。
以下、テレビでしか蛇を知らない人間によるナマ注意。長身ちょい鬼畜注意。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


「っつ……!」
抗議じみた彼の声と視線を、しれっと受け流す。
「ごめん、痛かった?」
「お前な……」
“わざとやろ”か、“何すんねん”か、頭の良い彼のことだから、真理をついてくることだろう。
頭が悪いことで知られる俺は、それをいいことに、気付かない振りをして行為を続けた。
キレイなきれいな彼の顔が辛そうに歪む。細身の柔らかい体がぎしぎしと悲鳴をあげる。
今はそれが何より気持ちよくて、俺は猿みたいに無様に腰を振った。
そうして、今こうしていることの言い訳をつらつらと考える。大舞台の緊張から解放され、
打ち上げでしこたま飲んだから。新年を迎えた若者達の熱気に触発されたから。彼とするのは
久しぶりだから。いくらでも、何とでも言える。
けれど、物を考えるのが趣味だという彼は、やはり騙されてはくれなかった。
174サンクチュアリ 2/2:2010/01/11(月) 19:43:27 ID:ec0WRveS0
「どうしたん?」
向き合った拍子に正面から問われて、俺は他愛もなく素に引き戻されてしまった。互いに
肩で息をしながら見合って、初めに目を逸らしたのは、当たり前だが俺のほうだった。
「おかしいで、どないしたん?何かあったんやろ」
こんな状況なのに、彼の目は労りの色を含んでいる。仕事が仕事なので、嫌な目には事欠かない。
お前には価値がないと、公衆の面前で宣告されることも、幸せの絶頂にいたものを、ただの好奇心で
奈落に突き落とされることも、しょっちゅうだ。彼は多分、その心配をしている。
だけど、俺に言わせたらそんなことはどうだっていい。
再び突き動かされるものを感じて、俺は彼をうつ伏せに倒し、そのまま犯した。
彼は微かに抵抗したが、やがて諦めたように脱力した。荒れている親友のために、男娼になってやろうと
いう気らしい。
違うよ。別に傷つけたい訳じゃないし、痛めつけて喜んでる訳でもない。今だけ、混じり合って融けるぐらい
一つになりたいだけ。それは別に君じゃなくて、当たり前みたいに君の指に食いついた、君の片割れでも構わないんだ。
「コウちゃん」
果てる前に、彼の背を覆ってその耳を舌で犯した。彼の体は怖気が走ったみたいに震える。相方が、耳なんかより
もっと恥ずかしいものを人前で舐めたときは、平然と笑ってたくせに。
「俺もさ、欲しいんだ」
それがちゃんと言葉になってたのか、自信がない。少なくとも、彼から“何を”と問われることはなかった。
問われても、きっと答えられはしなかった。あの飴、君の唾で濡れて光って、何よりも誰よりも甘い飴。
共有できるのはこの世に二人だけで、だから二人は、世界が終わる日にも、当たり前みたいに二人で笑ってるんだろう。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
175風と木の名無しさん:2010/01/11(月) 20:19:38 ID:tSk5Q4Tx0
>>166
GJです!久々で嬉しいです!
姐さんのキム×空大好きだー
この二人なんて言うかかわいいなー
また是非お願いします。
176風と木の名無しさん:2010/01/11(月) 21:57:02 ID:hefpzMHO0
生。将/棋/星/人がhubなコピペネタ。春編。
御三家出陣。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ア、ジサクジエン
177春の修羅 1/3 +1:2010/01/11(月) 21:58:06 ID:hefpzMHO0
たばかられた、とは思っていない。
全ての瞬間が真実だった。

よく見知った料理屋で、突き出しをつまみながら、半身ともいえる友人をなだめている。
「だいたい、何なんですか、将/棋/星/人って・・・みんな本気で信じてるんですか?
 またあの人のよくわからない悪ふざけじゃないんですか。
 いつものように私たちのこと驚かせて、煙に巻こうとしてるんじゃないかと・・・!」
対照的な性質を持ちつつ気心の知れた友というのは不思議なもので、
彼が荒れ狂うほどに、かえって自分の心中は落ち着いてくるのがわかる。

激昂すると猫のようにふわりと逆立つ左藤のくせっ毛をそっと撫で付けてやる。
いよいよ荒れるようなら、娘の写真を見せてくれとでも言えば機嫌を直してくれるだろうか。
生真面目な激情家の彼が自分をすり減らすように消耗していく様は
いつも見ていて辛かった。

春は修羅の季節で在り続ける。
ただ、終わりが来るとは思わなかった。

地球は現在、外宇宙からの侵略を受けている。将/棋/星/人が攻めてきたのだ。
しかし何より私たちを打ちのめしたのは、既に地球に到着していた尖兵の存在、
その正体だった。
人類代表を決めるための全キシ参加棋戦を催す時間的金銭的余裕も無く、
季節は夏でも冬でもなく春だった。
話を聞くや、私は使えるだけの影響力を用い、自分でも信じられないような強引さで挑戦権を我が物にした。

左藤はその様を鬼のようだった、と語る。泣きながら我を通す鬼を、皆が恐れて避けたのだと。
春に、十八世銘人が十九世銘人に、これを逃すともう二度と実現しない百局目を挑むのだ。
いったい誰がそれを邪魔できよう?

ふいに左藤がびくりと震え、顔色を変える。視線は私の背後で凍り、次の瞬間じわりと涙ぐんだ。
私自身も気配で感じ取れた。
三人目が揃ったのだ。
178春の修羅 2/3 +1:2010/01/11(月) 21:59:35 ID:hefpzMHO0
こういうとき、取り巻く状況を簡単に忘れることが出来るのは私の取り柄だ。
振り返り、その姿を認めると自然に胸の中に懐かしさが湧いてきて
笑顔で席を勧めることができる。左藤が側で大きく息を吐くのが聞こえた。
hubはくすくす笑いながらメニューを取り、渋々と左藤は水っぽく文句を言いながら注文をつけ、
私は左藤から伝わる肌にぴりぴり来るような緊張に怯えながらも、
その情景の中にいるひとときの幸せに浸る。
前夜祭を、始めよう。戦いは明日からだ。

しかし当たり障りのない会話と食事と飲み物は次第に途切れがちになり
とうとう左藤が口火を切った。
おねがいです。どうか私を納得させてくださいと。
それは確かに私の気持ちでもあった。

・・・
僥倖、ええ、僥倖でした。あなた方に出会えなければ、私は、
ただひたすら岸の頭髪サンプルを採取し続ける日常のなかに埋没していたと思います。
高めあい、学びあう相手が居たからこそ、例えば櫓の5手目や後手イッテゾンの是非、
振り駒の必勝法を探し続けることができました。
でももう時間がありません。すでに連盟には極秘裏に詰/め/将/棋/解/答/星/人も潜入しています。
量産型15世クローンや朧飛車搭載ソフトや終盤をサイボーグ化したF井九段等が
用意され、じきに攻め込んできます。
でも私はその前にどうしても森家さんとの百番勝負だけは完成させたかった。
そして、森家さんが同じように思ってこの勝負を受けてくれたことが、嬉しかった。
それだけです。明日は最高の日になるでしょう。
一緒に、最高の日にしましょう。
179春の修羅 3/3 +1:2010/01/11(月) 22:00:41 ID:hefpzMHO0
しばしの沈黙のあと、左藤がゆらりと立ち上がる。
いつの間にかその手は硬く握り締めた私の手の上に重ねられていた。
「わかりました、もういいです。私の立会いで、明日全ての決着をつけましょう」
左藤の涙は既に枯れ果て、怒りすら通り越し冷たく鋭い舌鋒に移行しており、
ならば今泣いているのは私なのだろう。

「でもその前に、です! 嶋さんの髪の毛だけは返していって下さい!!」
「あー、それは駄目です」

彼はそこで私を真っ直ぐ見つめ、にこりと笑った。

一点の曇りも老いの翳りも見えない澄み切った笑顔に、全ての悪夢を忘れる。
もう一度考えてみよう。複雑な局面の、単純な前提を見失いかけている。
彼は私にとって、何であったのか。彼と私の間には、何があったのか。
そう、盤上の逢瀬だけが全てであり、永遠なのだ。もう雑音は聴こえない。

『大好きな人にもう全部あげてしまいましたから。』

決戦の地は、センダガヤ。いつものあの建物だ。
しかし、同時に私の心の中の少年は未だデパートの屋上に居て
人混みの中の赤い帽子を探している。
180秋の玲瓏 1/1:2010/01/11(月) 22:01:51 ID:hefpzMHO0
光速で終わる秋編。所謂形作り。


「現代感覚」と伸びやかな筆跡で表書きされた封筒には、沖縄行きの旅行券が入っていた。
龍凹からの贈り物である。
・・・若い子の考えることはよく解らない。

地球は現在、外宇宙からの侵略を受けている。将/棋/星/人が攻めてきたのだ。
征服は9月に始まり、9月に終わった。

少し考え、結局私はそのチケットを捨てた。
行かなければ。『彼』が待っている。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ショウギシラナイオンナガオオクリシマシタ!

ありがとうございました。
いろいろとごめんなさい。
もうありません。
181理性、時々衝動:2010/01/11(月) 22:04:55 ID:Ip+ufZU+0
>>65-68「余裕、時々焦燥」の続きです
好きな子で想像して頂けたら
両方に妻子がいる設定です

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
182理性、時々衝動 1/4:2010/01/11(月) 22:05:54 ID:Ip+ufZU+0
初詣の神社で、偶然彼と出会った。
午後からの関係者への挨拶の為、家族より先に自宅へ戻る途中のことだった。
参道を抜け、二人揃ってタクシーを待つが、なかなか来てくれない。
「今日は挨拶だけですか」
「いや、ジム寄って体も動かしていく。年末は忙しくて十分にでけへんかったしな。お前は」
「俺は・・・今日は、すぐ帰ります」
「そっか」
変に気を遣わせてしまったかな、と思った。
雲ひとつない、澄んだ青空を見上げ息を吸い込む。
「気持ちいいな」と呟くと、「そうですね」と隣の彼は応えた。
一緒にいるのも気持ちいい、とまでは流石に照れくさくて口にできなかった。
シ一ズン中、彼の与えてくれる信頼は、大きな自信になった。
例え次のシ一ズン彼と組めなくても、この自信を生かしたいし、その努力も惜しみたくない。
彼の為にも。
袖の中で腕を組んだ。ふと、何かが足りないような気がした。財布は持っている。
「あ!」
思わず声をあげてしまい、同じくタクシーを待っている家族連れがこちらを向いた。
隣の彼も「どうしたんですか?」と深刻な声で尋ねる。
「家の鍵がない・・・」

183理性、時々衝動 2/4:2010/01/11(月) 22:06:54 ID:Ip+ufZU+0

彼の住むマンションに着き、エレベーターに乗った。
紺の着物を纏った彼の後姿を見つめる。壁にもたれると、背中に機械音が伝った。
彼からスーツと靴を借りることになってしまった。
ついでに余っているからとトレーンングウェアまで貰うことになった。
さすがにそこまでは、と言うと
「元旦から予定が狂うなんて嫌です」と彼自身の予定でもないのに、言い切った。
「背丈は同じくらいじゃないですか。他のサイズがなあ。昔作った小さめのやつなら、誤魔化せるかな
それより趣味に合うかどうか」
「別に何でもええよ」
「まあ男前ですから何でも似合うと思いますけど」
と、振り向いてニコリと笑顔を見せる。
不意を突かれて、返答に迷うと、彼は気まずそうに再び背を向けた。
もうこちらを向いていないのに、恥ずかしくなって襟巻きで口許を隠してしまった。

「はい、どうぞ」
ドアが開かれ、他人の家を実感させる独特の香りがした。
彼が先に入って、スリッパを置く。
「すんません。寒くて。何か飲みますか?」
「いや、ええよ」
「えーと、そこの畳の部屋へどうぞ」
彼がさっと襖を開けたので、先程履いたスリッパを脱いで座敷に上がる。
「ちょっと待ってくださいね。取ってきます」
「悪いな」
すうっと襖が閉まる。
壁際に子供の玩具を無造作に集めた箱が置かれていた。
窓から差し込む光のあたる場所を踏んでみる。
ガラス越しに外を眺めていると、同じマンションだった頃を思い出した。
あの時はまさかお互い去年のような一年を過ごすなんて思ってもいなかったな。
懐かしくなって、頬が緩んだ。
184理性、時々衝動 3/4:2010/01/11(月) 22:07:44 ID:Ip+ufZU+0

日に当たっているとホカホカと暖かくなってきた。襟巻きを外して、羽織を脱ぐ。
ちゃりんと金属音がした。何かと思い、羽織を取り上げて振る。
目の前の襖が突然開いた。
「スーツなんですけど、コレ・・・」
彼の声に顔を上げると、ぽとりと何かが落ちた。
「「あ」」
声が重なるのと、しゃがみこむのが同時だった。
額に固い衝撃。
お互いがそれを拾おうとしたので、額がぶつかり、バランスを崩してしまった。
「わ」
背中から畳に倒れる。上から圧し掛かる重力。
恐らく倒れるのを助けようとしてくれたのだろうが、逆に彼が覆い被さるような形になってしまった。
「う・・・ん」
「すみません!大丈夫ですか」
「つ・・・か、上どけろ」
見上げると、彼が心配そうな表情で見下ろしていた。
そんな顔するな。大丈夫だから。
彼の細目を見つめていると、じわり、と触れた部分から熱が伝わった。
「え」
気付くと同時に顔が降りてきた。
その視線に、捕らえられてしまった。


185理性、時々衝動 4/4:2010/01/11(月) 22:08:36 ID:Ip+ufZU+0

彼の唇が優しく下唇に触れて、離れて、もう一度味わうように吸い付く。
舌が歯をなぞる。口を少し開けると、遠慮がちに中に入ってきた。
先が、ちょんと触れて、絡む。
もっと、とせがむように背中に手を回すと、彼の手は腰に回り帯を外そうとした。
外しにくそうだったので腰をわずかに上げてみる。熱が強く押し付けられる。
「ちょ、それは」
まずい、と言いたげに彼は唇を離す。
今さら何を言っているんだ、と足を絡ませて、彼の羽織紐を指先で引っ張り、ほどいた。
彼の唇が再び近づいて首筋をなぞる。髭がこそばゆくて、声が漏れた。
しゅるり、と衣擦れの音を立てて彼の手が帯を解いていく。
脇腹に彼の手がぺたりと触れて、思わず目を閉じる。熱に触れようと手が下腹部にゆっくり降りてくる。
彼の袖をぎゅっと握りしめた。

ムームー

はっとして、彼は体を離した。脱いだ羽織から携帯が震える音がした。
起き上がり、羽織を探って携帯を取る。同時に音が止んだ。液晶には妻の名前があった。
「すみません。ここに置いとくんで!」
彼は散らばったスーツとシャツを隅に置き、部屋を出て襖を閉めた。
しん、と静まりかえる。
頭の中の靄がはれて、冷静になって考える。
何だ、さっきのは。何をしたんだ。
二人の間に、突然生まれた衝動、行為、感情。
「嘘やろ。ありえへん・・・」
思い出すと、恥ずかしくなって両手で頭を抱えた。
落ち着くために、一度深呼吸をする。
体に中途半端に巻き付いた帯を外し、部屋を見回した。
ないと思っていた自宅の鍵が、ぽつんと畳の上に転がっていた。

186理性、時々衝動(終):2010/01/11(月) 22:09:17 ID:Ip+ufZU+0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・*)イジョウ、ジサクジエンデ キモノヲヌガセタカッタ ダケデシタ!
187ただの、閑話休題。:2010/01/11(月) 22:36:22 ID:5iCwTHdm0
行き場の無いGCCX話メイン+手汗。ほぼ会話。
現メンツも好きで前メンツも好き。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・;)ジサクジエンガ オオクリシマース!

ピッ、ピコピコピコ
「・・・笹乃よー」
「はい」
「何やねんあの面」
「しゃあないですね。此処突破しないと何処にも行けないスから」
「そら分かっとるわ今更Uターン出来へんやろマリオやったら死んでんで」
「そうスね」
ピピッ、ピコピコピ
「・・・笹乃よー」
「はい」
「此処、如何行くん?」
「あ、其処上行くと多分其処の出っ張りに引っ掛かると思うんですよ」
「ほー」
「なんでそん侭真っ直ぐ行って貰ってー」
「うん」
ピッ、ピピ、ピコ
「・・・笹乃ー」
「はい」
「落ちるよ」
「や、当たり前やないですか」
188ただの、閑話休題。:2010/01/11(月) 22:37:21 ID:5iCwTHdm0
ピピピ、ピコピコ
「・・・笹乃ー」
「はい」
「どないしよう」
「もう少し溜めて行って頂いてー」
「こう」
「あ、はいそうです。で、ちょっと待ってから」
「行く」
「はい」
ピッ、ピピッ、ピコッ
「・・・」
「はい」
「まだ何も言うてへんやんけ」
「あぁ・・・すんません」
「・・・・・」
「・・・・・」
ピッ
「・・・笹乃よー」
「はい」
「大丈夫かなぁ」
「はい?」
「ウラモンド」
「・・・あぁ・・・」
「若いなぁ」
「大丈夫ですよ。この前一緒にロケハンしましたけど、上手いです。飲み込み早いって言うか」
「ふーん」
「きっと有埜さんの助けになると思います」
「ほー・・・そうか・・・」
「はい」
189ただの、閑話休題。3/4:2010/01/11(月) 22:38:37 ID:5iCwTHdm0
ピピッ
「ま、お助けメカが言うんやったら、そうかな」
「はい」
「ほな期待しとくわ」
「ホンマヤバかったら俺も助っ人入りますんで」
「嘘付けや〜絶対お前たまにしか出てけぇへんで。レアキャラや」
「そんな事ないですよ」
「ホンマかぁ〜?信用出来へんわ」
「ホンマですって。俺課長のお助けメカやないですか」
「撤回」
「あははは、」
ピコッ
「・・・ちゃんと鍛えたってぇな、じゃないと安心してプレイ出来へんよ」
「はい」
「絶対やで」
「はい」
「意外に笹乃より上手くなったりしてな」
「はは、そうなったらええですね」
ピ、
「でも、メカはもうお前だけやろな」
「、」
「ガンダム系はもうおらへんやろ〜そんだけでもお前レアキャラやな」
「・・・はい」
ピピッ、ピコピコ、ピッ
「あっ!また引っ掛かった〜もうホンマ何やねんこれ」
「・・・・・」
「めんどくさいソフト選んだな〜」
「・・・・・」
「泣くなや笹乃」
「すんません」
190ただの、閑話休題。4/4:2010/01/11(月) 22:40:49 ID:5iCwTHdm0
□ STOP ピッ ◇⊂(−∀−;)イジョウ、ジサクジエンデシタ!
番号入れ忘れました・・・
スカスカでホントすいません。
191板缶板 1/6:2010/01/11(月) 22:53:27 ID:G6SmoLKb0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  il 伊民と神部モナモナ‥‥。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  ただ喋ってるだけモナ。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
192板缶板 2/6:2010/01/11(月) 22:55:29 ID:G6SmoLKb0
こと、食事をする、という段になると、伊民の外食率はほぼ100%だ。
朝は食べずに出て、駅前のコンビニでパンを2つ買い、本部に着いてから自席か喫煙室で缶コーヒーと一緒に片づける。
昼食は別館の食堂か、外に出ていればそのへんの飯屋で同僚と食べる。
夕食も似たようなものだ。仕事が立て込んで店に出向くヒマがないときには、後輩を2階の売店へやって、おにぎりでも買ってこさせる。
自宅の冷蔵庫に入っているのはマヨネーズとインスタントコーヒーの瓶がせいぜいのところで、ただ、冷凍庫には発泡酒の缶が一本転がっている。
去年の夏に、速く冷やそうと思って入れたまま、うっかり忘れて凍りつかせてしまったものだ。
何日か経って気づいたときには、わざわざ解凍して捨てるのも面倒くさくなり、それきり忘れたふりをして放置してしまっている。

毎晩、コンビニで発泡酒を2本と、スルメかチーズを買って帰る。タバコの補給もこのタイミングだ。
からっぽの冷蔵庫にそれらを袋のまま突っ込んでシャワーを浴びたら、深夜のニュースを見ながら発泡酒の缶を開ける。
午後に起きた事件のニュースが、耳を通り過ぎてゆく。この時間、犯人はとっくに所轄署の留置場の中だ。でなければ伊民は帰宅できていないかも知れない。
発泡酒が一本終わると、もう一本を開ける前に、タバコが吸いたくなる。
「・・・どこやったっけな」
確か退庁前に最後の一本を吸って、さっきコンビニで新しいのを買ったばかりだ。
タバコタバコ、どこいった・・・とごそごそ探すと、スルメの下で、これもほどよく冷やされていた。

そんな毎日だった。
それでいいと伊民は思っていたし、時折感じる寂しさのほかには、特に覚えるべき不満もなかった。

193風と木の名無しさん:2010/01/11(月) 22:56:04 ID:G6SmoLKb0
ところが今では毎晩のように、厳しいチェックが入る。
高価そうなボールペンを手帳の上にかまえられ、硬質な声で質問される。場所が違えば、まるで事情聴取のようなやりとりだ。
「はい、お昼のメニューはなんでした?」
「・・・麻婆ハンバーグのセット」
「晩は?」
「ちゃんと食った」
「何を?」
「・・・忘れた」
「えっ、もう?」
「忘れたもんは忘れたんだよ」
「ふーん・・・」
テーブルの向こうに胡座をかいて座った男が、傍らに置いたスーツのポケットから自分の携帯を取り出す。
伊民は頬杖をついたまま、おい、とそれをとがめた。
「どこかける気だ?」
「芹沢さん。きっと一緒だったでしょ、彼にきけば覚えてるかなって」
「ああもう、いま何時だと思ってんだ!」
「11時57分ですね」
携帯のディスプレイを見ながら、彼はさらっと答えた。伊民の制止を聞こうともせず、細い指先がボタンの上を滑る。観念せざるを得なかった。
「わかった、言うからこんな時間に電話すんな、事件でもねえのに」
「・・・最初から素直に白状すれば、俺だってこんな手は使いません」
カシャン、と携帯をスライドさせて閉じた相手は、きゅっと口角を吊り上げて微笑んだ。
「で、晩には何を食べたんです? さっさと吐いてください」

ここはほんとうにうちのリビングか、それとも取調室なのか?
伊民はハーッとため息をつき、左手に持っていた発泡酒をぐびりと一口、飲み下した。
194板缶板 4/6:2010/01/11(月) 22:57:01 ID:G6SmoLKb0
なんの因果か、「彼女いない歴」の長かった伊民に、この年になって相手ができた。
申し分のない美人で、頭の回転も良く、職種が同じだから共通の話題もどっさりある。
なにより、いつもニコニコしているので、話していても楽しい気持ちになる。
しょっちゅうこの部屋を訪れるようになってからは、面倒くさがりな伊民の世話をあれこれ焼いてくれるようにもなった。自分の仕事はヒマだから、と口癖のように言う。
ただ伊民にとって問題だったのは、相手が同性だという点だったが・・・それもまあ、いまさら関係ねえよな、という開き直った気分になってきている。
孫ができるのを楽しみにしてた実家の両親には、とても紹介できないが。

***

「・・・売店のサンドイッチだよ。ハムとレタスのやつ」
小さな嘘だ。実際はツナサラダだったが、こっちのほうが受けがいいと分かっている。相手はすんなり聞き流して、続きを促した。
「それだけですか?」
「夜はたくさん食わねえほうがいいんだろ?」
「カロリー的にはね」
しかつめらしく答えた男が、手帳を閉じる。テーブルの上に両肘をつき、その手を組んで、尖った顎を載せた。
次に何を言われるのかと身構えた伊民に、彼はにっこりと笑って言った。
「あのねえ、ずっと言ってるけど、もっと意識して野菜食べないと、ほんとに身体壊しますよ」
「・・・おお」
「前に、コーヒーとタバコが主食って言ってましたよね。俺、それ聞いてぞっとしたんですから」
「・・・」
「いい加減、無理の利くトシでもないでしょ。カロリーだけじゃ人間、健康は保てませんよ」

ああ、わかってる。わかってるよ。
和食がいいんだよな、サンドイッチとコーヒーじゃなくて、野菜ジュース飲まなきゃいけないんだよな。

伊民はそんなふうに思いながらも口に出せず、終わりかけているNHKのニュースに目をやる。
発泡酒の缶を持っている手に、そっと相手の指先が触れてきた。暖かかった。
195板缶板 5/6:2010/01/11(月) 22:59:09 ID:G6SmoLKb0
「・・・ま、俺も忙しかったときは似たようなもんでしたけどね。明日の朝は、ちゃんとしたもの食べてってくださいよ。買ってきてあるんで」
「・・・おお」
「ちょっと、伊民さん。聞いてます?」
いきなり、テーブルの向こうにいた相手が手を伸ばして、テレビの方を向いていた伊民の頬に触れ、ぐいっと前を向かせた。
この後の天気予報を見損ないそうだ、と思ったが、それも一瞬だった。まっすぐに見つめてくる目の力に早々と負けて、頬杖をついたほうの片目をつむった。もう片方は漫然とテーブルの上を見ている。
低めてはいるが、石を叩くような硬度の声が、伊民を責めにかかる。
「俺、そんなに面倒くさいですか?」
「・・・いや」
「俺よりテレビのほうが好きだったら言ってくださいよ、俺、タクシーででも帰るから」
「そうじゃねえけどよ・・・」
口ごもると、その唇にチュッと小さなキスをされた。
もうそのくらいでは驚かなくなっている自分に、伊民はいちばん驚いた。

驚きつつ、頭にぽっかり浮かんだ言葉をそのまま口にした。
「・・・まったく、口うるせえよな、おまえは」
10pほど顔を離した相手が、驚いたように目を見開いた。
それから、伊民が考えを巡らすひまもなく、クスッと笑われた。
「杉/下警部にもそう言われました。自分じゃ思ってませんでしたけど」

伊民は、たぶん酔いが回り始めていたらしい。でなければ、次の言葉は出なかっただろう。
たった500mlでお手軽なことだ、と我ながら思う。
頬杖をついたまま、じろりと目だけを相手に向けて問うた。

「おまえ、あの人にもこんなことしてんのかよ」
「え?」
「俺だけじゃねえのかよ」
「・・・伊民さんだけですよ」
くすくす笑いながら、かなり近い距離で相手が言う。低めた声が甘い。なんでもないことを言っているはずなのに、語調のせいだけで色っぽく聞こえる。
「俺、仕事とプライベートは分けるタイプですから。・・・だからちゃんと野菜、食べてください、ね?」

196板缶板 6/6:2010/01/11(月) 23:00:09 ID:G6SmoLKb0
まあいいか、と伊民はまたも思う。
どうして、なぜ、こんなことが起きてしまったのか、自分の生活が変わってしまったのか分からないままで過ぎているが、そんなことはもう考えるだけ無駄だという気がする。

テーブルに落としていた視線を上げて、間近に自分を見つめる彼の顔をちらりと見、ため息といっしょに言葉を吐き出した。
「ああ、わかった、わかった。出してくれりゃなんでも食うさ」
「メタボな中年は嫌いですからね」
「じゃあ俺はやめとけ」
「あなた、中年だけどメタボじゃないでしょ・・・」
いまのところ、と言いながら、テーブルを超えて神部がもう一度キスしてきた。伊民は軽くなったビール缶から手を離して、その背中に長い腕を伸ばした。

メタボになったら嫌われるのかな俺、と密かな危惧を覚えながら。


<おわり>
なんか区切り間違えた。慣れないことはするもんじゃないモナ

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧叱ってくれる系モナ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
197風と木の名無しさん:2010/01/11(月) 23:21:49 ID:d572QO390
>>176-180
将/棋星/人ありがとう待ってました!とうとう完結ですか名残惜しい…
春は切なく、秋は…千日手でハッピーエンドなのでしょうかこれは
アツツ君も星人だったとは、去年の一番長い日は母星と通信中だったのかw
198風と木の名無しさん:2010/01/11(月) 23:23:22 ID:NUApuQY40
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
激団親幹線「バソユウキ」から完獄島看守×殺し屋。殺し屋視点。
エロ有り、痛いのもちょっと有りなのでダメそうな方はご注意を。復讐鬼も少しだけ出る。
演劇スレからネタをお借りし、年明け早々、ムショーにエロが書きたくなりました…

199声の鎖 1/6:2010/01/11(月) 23:24:26 ID:NUApuQY40
堅く冷たい石の壁にくぐもった声が反射する。
「ん…っく……ぁ……」
橙色の松明の炎が揺れる岩牢の中、蠢く二つの色濃い影。
「……あぁ…ぅっ…」
壁際に立ったまま捕らえられた両の手元で、鉄の枷がジャラリと軋む音を立てた。
白い指が引きつる様にその鎖を掴み、握り締める。
そしてそれに合わせるように顎を引き上げれば、晒された首筋に途端食いついてくる
男の唇があった。
衣の前を肌蹴け、肌を弄ってくる手つきも荒い。
飢えた獣のように身を貪ってくる男の欲。
それに自分は喘ぐ口元、ひそかに嘲るような笑みを浮かべようとした。
しかしそれは上手く形になる前に、口に噛まされた布のせいで霧散する。
それでも、胸の可笑しさは尚も変わりなかった。
絶海の地に作られたこの牢獄の島に、多少の立場の強弱はあれど捕らわれているのは
看守も囚人も同じだと、今更ながらに思い知る。
そんな、荒涼と絶えぬ荒波の音と、希望のない日々に上げられる囚人達の呻きを一日中
聞かされる環境に身を置いていれば、今こうして指に滑らかな肌に触れていられる刻は
確かに束の間の極楽だろう。

例えその持ち主が、自国の王殺しの咎を負った稀代の暗殺者であったとしても――

警備強固な宮廷に潜り込み、王を害した後、捕り手千人の命を散らした。
多少の誇張はあろうとは思っていただろうが、それでも当初、この島に送られてきた
自分を見る看守達の目には、隠しきれない強い警戒の色が滲んでいた。
が、そんな緊張は慣れと共にやがて弛緩する。
最初に自分の誘いに乗ってきたのは、年輩の男だった。
彼は日々の食事を運ぶ内、甘い言葉に騙され、触れた肌に溺れ、最後首を折られて死んだ。
次に配されたのはまだ年若い男だった。
彼はおどおどと脅えながら、それでも寄せる唇には逆らわず、交わす接吻の途中、
絡めた舌を噛み切られて死んだ。
200声の鎖 2/6:2010/01/11(月) 23:25:30 ID:NUApuQY40
退屈しのぎに仕掛ける、死と隣り合わせの甘美な誘惑。
危険と知りつつ近づいてくるまるで自ら炎に飛び込む蛾のような彼らの、果たして
この男は何人目だったか。
不意に、迫り重ねられていた目の前の体が離れた。
そして支えを失いガクリと項垂れ落ちた己の視界に映った壮年の男は、この時
自分の足元にうずくまると、その片方の足枷を外してきた。
そのまま乱暴な手つきで下衣も引き下ろしてくる。
性急な……それでも多少なりとも慣らそうとしてくるだけ、まだマシか。
男が懐から取り出した油らしきものを後孔に塗り込められ、殊更背を仰け反らせながら思う。
「……ん…ふ…ぅっ……」
口を塞がれ、鼻から抜ける声は男の劣情を煽るように悩ましく。
いっそ弱々しさまで色を付けてやれば、それに男の我慢は容易く切れたようだった。
膝を取り、引き上げられ、怒張した欲望をあてがわれる。
そのまま一気に貫かれれば、その力任せな衝動にはさすがに息が詰まった。
「…くっ…あぁ…っ…ぁ…」
それでも痛みに疎いこの体がすぐに慣れ、その中に快楽を探り出す事は自分が一番
よく知っている。
拘束した壁に押し付けるようにして揺さぶってくる男の肩に、わずかにきく自由で
しなだれかかる様に顔を埋め、抗うように首を振り、黒い髪を揺らす。
その一方、乱暴に暴かれる下肢にじわじわと力を込め、押し入ってくる男の欲に
病んだ熱を持ち始めた内襞をひたりと絡みつかせてやれば、それに男は食い締めた
歯の隙間から情けないような呻きを洩らした。
それが腹の底から愚かしくも可笑しくて、自分は伏せた顔の下に笑みを忍ばす。
けれどそんな胸の内は、この時さすがに重ねた肌越し、僅かなりとも男へ
伝わったようだった。
不意に片方の手が自分の顎を捉え、引き上げてくる。
そのまま至近距離に覗きこまれる瞳。
そしてそこに隠しきれなかった艶然とした笑みを見咎めた時、男は刹那、慄然とした
呟きを落としてきた。
201声の鎖 3/6:2010/01/11(月) 23:26:32 ID:NUApuQY40
「魔物め…」
魔物、悪魔、化け物。自分は本当に色々な呼び方をされる。
もっとも名などに興味は無いからどうでもいいが。
思いながら、恐怖を抱き潰すように律動を早めてきた男に身を委ねながら、
自分は岩牢に染みてゆく自らの嬌声を聞く。
それはこの時遠くどのように聞こえるのか……しかしそんな冷静な思考は、やがて
押し寄せた爛れるような情動の前に甘く溶け消えていった。



項垂れていた頭の後ろに手を回され、解かれる布の結び目。
そのまま口の拘束を外されれば、途端に押し寄せた空気の密度に喉が痙攣したように
咳き込んだ。
それでも、
「……口を塞がなければ、もっといい声聞かせてあげられたのに。」
息が落ち着いた後、そんな戯言をポツリと口にすれば、それに男は微かに舌打ち
するように言葉を返してきた。
「それと引き替えに噛み殺されるのは御免だ。」
「それで鎖に繋いだまま抱くのかい?憶病なわりにひどく欲張りだね。」
「何とでも言え。」
熱に浮かされた夢現の時間を通り越せば、後に残るのは後ろめたさと恐怖だけなのか。
自分の挑発をにべもなく跳ね付けながら、男は黙々と濡れた布で自分の体を拭く
後始末を始め出す。
もっともそれも労りとは程遠い、事務的なもので。
同僚達の目を盗み繰り返す自らの愚かな所業の痕跡を、一つ残らず消し去ろうとでも
するかのように、丹念に清めてくるその行為を、自分は落とした視線の先、
面白がるように見つめ続けた。
首筋から胸元、そして腹へと落ちる。
しかしその手はある一点に触れた時、不意にその動きを止めた。
「……これだけが無粋だな…」
ボソリとひとり言のように呟かれた言葉が指し示す、その横腹にあったのは引き攣りの
残る傷跡だった。
202声の鎖 4/6:2010/01/11(月) 23:27:35 ID:NUApuQY40
白く肌理細かい肌の中、その部分だけが生々しい血腥さを漂わす。
それは自分がこの島に身を捕えさせるきっかけとなった、同族から受けた因縁の
傷だった。
己の油断から刺され、癒える前に開くを繰り返していたその傷も、ここにきて
ようやく完全に塞がりつつある。
後もう少し。それまでは……もうしばし、戯れを。

「触るな――」

それまでの笑みを含んだものでは無い冷然とした口調で言い放った時、それにハッと
顔を上げた男が瞬間その場に凍りついた。
が、囚人と看守。その立場を思えば、気圧された事は明らかな屈辱で、それにカッと
耳朶を赤くした男は、直後ギッと唇を噛み締めると、手の動きを再開させた。
先程よりは幾分荒けない手つきで下肢の始末を終えると、衣の体裁を整えてくる。
そして最後、膝まづく。
この時にも自分は、男の神経を逆撫でしてやった。
「ほら。」
膝まづいた男の目の高さに、軽やかに差し出した白い足。
その爪先をふるふると震わせながら、告げてやる。
「鎖に繋ぎ直すといい。」
今度は先程とは違う笑みを滲ませた声で。
そしてそんな猫の目のように変わる自分の声に翻弄されるように、この時男は
その瞳に困惑するような光を灯した。
が、それも、再び視線が眼前の足先に落ちた瞬間、掻き消える。
刹那、自分の足首を掴み捉え、その甲にむしゃぶりつくように押し当てられた男の唇。

自尊心。矜持。自戒。
すべてをかなぐり捨てて魔物に魅入られる愚か者の末路。

それを眼下に見下ろしながら、自分の唇にはこの時、玲瓏とした笑みが浮かんでいた。
203声の鎖 5/6:2010/01/11(月) 23:28:45 ID:NUApuQY40
看守が消えてからいくばくか。
不意に頭上から聞こえてきたか細い声に、自分はふとその視線を上げていた。
それは聞く者によってはただの風の音とごまかせそうな、しかし自分の耳にははっきりと届くもの。
『看守は去ったのか?』
「あぁ、もういないよ。」
誰もいない空間に向け、声を放つ。
そんなこの声が聞こえたのは、自分がこの地下の岩牢に捕らえられ、しばらく経った頃の事だった。
最初は幻聴なのかと思った。
しかし耳を澄ませばそれは確かに人の声で。
どうやら岩と岩の隙間が上手く繋がり、声を響き伝えさせる役割を果たしているのだと気付いた後、
もう一度よく聞き取ろうとすれば、それはあの時、なんとこちらの身をひどく案じるように
発せられていた。
『看守にやられたのか?!』
何の事だと思うその直前には、確か自分は最初の男を誑かしていて。
だからもしかして、上げた嬌声が土の管を通る間に、囚人が受ける理不尽な暴行に対する
悲鳴にでも聞こえたのかと。
思えばたまらずその誤解に、大きな笑い声が口をついた。
それ以来の声だけの交流。
自分のいる牢より上にあるとは言え、やはりそこも地下牢らしい場所に長年捕らわれ続けていた
と言うその男は、久しく得られなかった話し相手にその身の上を繰り返し語った。
国の事。許嫁の事。その許嫁の兄でもある親友の事。
そしてその親友の死と仲間の裏切り、己の無実について何度も。
初めは軽く聞き流していた、その話の欠片が自分の中でパチリと当て嵌まったのは
いったいいつ頃の事だったろうか。

自分はこの男を知っている―――

その因果に思いを巡らせれば、この世にはやはり神も仏も無いのだなと、ただ可笑しさ
だけが込み上げた。
だから……逢ってみたいと思った。
204声の鎖 6/6:2010/01/11(月) 23:29:47 ID:NUApuQY40
次々と取り換える看守に与える甘い蜜の代償に、聞き出したこの島と牢の構造。
最深部にあるこの牢を作るにあたって、掘り抜かれた地下道が幾つかあると。
その情報と、頭上の声から得る土壌の質や声の反響具合から計算を働かせれば
おのずと頭上の彼が掘るべき場所の特定はついた。
後は、彼の体力と忍耐力がどこまで持つか。
「土の柔らかさはどうだい?」
『あぁ、数日前よりは確実に柔らかくなってきてる』
「なら、そのまままっすぐ掘り進めればいい。」
彼の報告の過程からゆけば、おそらくはもう一月と経たぬ内にその穴は地下道の上に
辿りつくはずだった。そうすれば……
『……なぁ、』
無意識に働かせる思考に没頭しかけた意識が、ふいに呼びかけてきた声に引き戻される。
それにハッとし、素早く「なんだい?」と口にすれば、それに頭上の声は少しばかりの
沈黙を落とすと、その後こう告げてきた。
『いや、ありがとうな。あんたのおかげで、俺は……』
素直すぎる礼。それに自分はあいかわらずだと思った。
あいかわらず、時機のずれたおかしな男。
だから、
「まだ早いよ。最後まで気を抜かずにね。」
『ああ、そうだな。』
諭され、返される声もこれまた率直で、それに自分の口元、ほころぶような笑みが浮かぶ。
そしてゆっくりと閉じた瞼の裏に、その時蘇った遥か遠い記憶。それは、
白い大理石で出来た王宮の階上から、落とした視線の先にあった組み伏せられる
裁きの間の長い黒髪。
あの顔はその時、見えなかった。
だから、

「早く君に、逢いたいよ……」

ひっそりと唇から零れ落ちた囁き。
それは今はまだ、頭上の――伊達怒門――と名乗った男には届かぬものだった。
205風と木の名無しさん:2010/01/11(月) 23:30:48 ID:NUApuQY40
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

パンフの捕らわれ殺し屋の女王様目つきが背中を押しました。
206風と木の名無しさん:2010/01/12(火) 00:48:55 ID:cv7t26ti0
>>176
神様!待ってました!
みっくん、切ないっす。そして、終盤を間違えない鰻は最強なのでは・・・
そんで、シマせんせー!シマせんせーだけには返してあげてー
207風と木の名無しさん:2010/01/12(火) 01:42:20 ID:CnHBIo2z0
>>191-196
ほのぼのだけどほのかにエロスな2人がよかったですー。
大人の男同士って素晴らしい。
208風と木の名無しさん:2010/01/12(火) 02:57:34 ID:jyz7SwsT0
>>176
ふwりwごwまwたwいwさwくwww
面白かったです、ありがとうー
209風と木の名無しさん:2010/01/12(火) 08:17:35 ID:22uGce200
>>190
本尊の声で脳内再生して萌えたよ!GJ!
課長の「・・・笹乃よー」 って呼びかけが…っ
たまりませんでしたw
210風と木の名無しさん:2010/01/12(火) 11:40:24 ID:JpGlVFw30
>>191
乙です!
会話っぽいのツボなので楽しかった
211SD 赤←暮 step on step(0/3):2010/01/12(火) 14:27:52 ID:FOovVkde0
結局このふたりの絆が一番強いんではないかと
でも試合中、赤がメンバーに言った言葉は暮は聞いてないんだよなあ
暮だって聞くべきだよなあ
そんなところから暮のために書いたお話
          _________
       |┌───────┐|
       |│l> play.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
   ∧∧
   (  ,,゚) ピッ   ∧_∧   ∧_∧
   /  つ◇   ( ・∀・)ミ  (`   )
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |            ┌‐^──────────────
  └──────│801ですらないかもよ
                └───────────────
212SD 赤←暮 step on step(1/3):2010/01/12(火) 14:28:45 ID:FOovVkde0
山王工高を79対78で下した僕たちは、愛和学院にウソのようにボロ負けした。
持てうる力を全て出し切って山王工高と戦った僕たちには、もうなにも残っていなかった。
終わった後、皆泣いた。
泣いたけれど、顔はすっきりとしていた。
スカスカになるまで戦った僕たち湘北バスケ部メンバーの夏は終わった。
そして僕と赤木は引退を迎えた。

「オレが新キャプテンの宮城リョータだ!!」
少し緊張した宮城の声が体育館に響く。
二人目のマネージャーに晴子ちゃんを迎え、冬の国体に向けての新しいバスケ部が
作られてゆく。
彩子ちゃんの張りのある声がメンバーにカツを入れる。
流川は全日本ジュニアに選ばれて、留守だ。
桜木は、山王との試合の中で傷めた背中を治療するために、リハビリ専門病院で
治療に専念している。
三年の中で、三井だけが残った。
彼はバスケから離れていた期間を取り戻すために、最後まで闘うのだ。
僕は一年前を思いだした。こうやって僕たちも引退する三年生を送った。
汗を流す三井や宮城を見ていると、制服を着て体育館の扉の外に立っている
赤木と自分が不思議な気がする。
「引退しよーが落ちるもんは落ちるんだよ」
と三井はぶつぶつ言っていたが、そう言うわけにも行かないことは三井だって
本当はわかっているのだ。
僕たちは湘北バスケ部を引退はするけれど、バスケットから引退するわけではない。
「行こうか」
「おう」
ボールの音と、バッシュが床とこすれて鳴る高い音が響く体育館を後にして、
僕たちは校門へ向かった。
213SD 赤←暮 step on step(2/3):2010/01/12(火) 14:30:15 ID:FOovVkde0
寝ても覚めても、僕たちの中心はバスケットだった。
何をしていても、意識はバスケットに向っていた。
苦しくて、楽しかった。
湘北でバスケ部に入って本当によかったと心から思う。
校門を出て駅に向って歩きながら、一抹の寂しさって言うのはこう言う気持ち
なのかなと考えた。
やり遂げたと言う充足感と、自分の一部をどこかに置いてきたような、スースーする感じ。
「赤木」
「なんだ」
「引退しちゃったなあ」
「おう」
「すごくバスケがやりたくなったら、練習付き合えよ」
「バカヤロウ、すごくやりたくなるまでボールに触らんつもりか」
「無理かな。一応受験生だし」
「俺は無理だ」
赤木は無理だろうな。僕も無理かもしれない。いつでもボールが恋しくて、
いつでも仲間が恋しい。
僕は歩きながら、大きく伸びをした。
「赤木とバスケがやれて、楽しかったよ」
赤木が一瞬黙った。
「?」
隣を歩く大きな男を見ると、真顔で正面を見ている。
「そう言えば木暮には言っとらんかったな」
「なにを」
「俺は湘北は最高のチームだと思ったんだ」
「うん」
「山王との試合中にな、つい口から出たんだ。肝心の小暮には言ってなかったな」
赤木がこちらを見て、
「俺も木暮と一緒にバスケが出来て楽しかった」
晴れ晴れと笑った。
「ありがとうな」
214SD 赤←暮 step on step(3/3):2010/01/12(火) 14:30:48 ID:FOovVkde0
「…ははっ」
一瞬にして、赤木と出会ってからのいろんなことが頭の中を駆け抜けた。
中学でバスケを始めたのは、ただ体力をつけたかったからだ。
あんなにずっと走っているスポーツだと思わなかった。
最初は体力も筋肉もなかった。
湘北に入ってから、2年間、仲間に恵まれなかった。
赤木も僕も弱音は吐かなかったが、部員が一人また一人と減っていくのはやるせなかった。
一度だけ、赤木が、小学校の時に買って以来の宝物だと言うバスケ雑誌を手に、
肩を落として部室のベンチに座る姿を見たことがある。
声がかけられなかった。
バスケは団体スポーツだ。
チームメイトがいて初めて「バスケットボール」が出来るのだ。
他の部員が皆帰ってしまい、仕方ないのでボールカゴに机を立て掛けてリバウンドするように
工夫して、シュート練習したこともあった。
その時も赤木が「リバウンドがうまく来ないのはおまえがヘタだからだ」と言いながら、
練習に付き合ってくれた。
僕はバスケが好きで好きで仕方がなかった。
赤木とするバスケが好きだった。
コートにいる時の赤木からは、全身から、バスケが好きだと噴き出していた。
赤木のプレーを見ているのも好きだった。
パワフルで、まっすぐで、かっこよかった。
おいおい、メガネが曇ってるよ、どうしちゃったんだ。
赤木に気付かれないように、レンズの下から指を入れて、涙を拭いた。
「こっちこそ、ありがとうだよ」と、赤木の背中を一つどついた。
僕たちは別々の進路を進むだろうが、また一緒にバスケが出来る時が来るだろう。
またいつか、最高のメンバーで。

その時にはよろしく頼むよ、赤木。
215SD 赤←暮 step on step:2010/01/12(火) 14:31:47 ID:FOovVkde0
          _________
       |┌───────┐|
       |│ロ stop.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]

                 ピッ ∧_∧
                ◇,,(∀・  ) 赤と暮ならこの程度だよね
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |                                |
  └────────────────┘
216風と木の名無しさん:2010/01/12(火) 14:41:18 ID:xWcqKOmW0
>>215
GJ!ちょっと本棚の後列から全巻出してくる!!
この漫画で何度泣いた事か…w
217風と木の名無しさん:2010/01/12(火) 20:06:38 ID:22uGce200
超亀だけど>>167
あぼんされた>>80の事なら一時期あちこちに貼られてたAAだよ
(゚ε゚)キニシナイ!!
218風と木の名無しさん:2010/01/12(火) 21:21:49 ID:FlIDTUmJ0
亀で申し訳ないが>>168
キム空来てた…!!!いつもありがとうございます!
読んでるこっちがニヤニヤしてくるww

219風と木の名無しさん:2010/01/12(火) 23:42:22 ID:KFkRydXA0
>>215
なんかもう感動してしまった
GJ
220大鳥゛ パソコン 0/2:2010/01/12(火) 23:52:27 ID:YRNUUpEQ0
お笑いナマ注意 オ/ー/ド/リ/ー で ボケ×つっこみ 
一部 ボケ×つっこみ母 表現あり
全2レス 前半801表現なし。
夢で出てきたのを必死に思い出して書いてみました。
返す返すもなぜ初夢じゃないのか悔やまれる。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
221大鳥゛ パソコン 1/2:2010/01/12(火) 23:55:14 ID:YRNUUpEQ0
W:どーもー。大鳥゛ですー。
  今日も和歌囃子・粕我でがんばっていきたいとおもうんですけどね
K:腐女子のみなさん、創作の粕我はいかがですか。
W:気持ち悪い所は本物に負けていないと思うんですけどね。
K:へっ!
W:それで、最近になってパソコンを買ったんですけど、あれ難しいんですね。
  まぁここにいるお客さんはパソコンとか使いこなしているんでしょうけれど。
  頭のよさそうな人たちばかりですから。
K:どう見てもそんな奴いねーだろw!<バシッ
W:しつれーだろ!<ベチッ
  そんなこと言ったら失礼でしょ。ほらあやまりなさい。
K:ごめんね。
W:ね、謝ったから許してやってほしいんですけれども。
K:だがお前はドリキャスでインターネッt
W:指を指すなっ!<ベチッ 
  あの人黒のW/i/i 持ってんだ。
K:ウィー
W:…………
K:つまんねーよっ!<バシッ
W:お前が行ったんだろ!<ベチッ
  くだらないこと言うんじゃねーよ。死にてぇのか。
  そいでね、パソコ
K:死にたくないねぇ!
W:いーよこたえなくてっ!
  本気で言ってねーんだからよぉ。
K:まだお前の母親を抱いてないからねぇ。
222大鳥゛ パソコン 2/2:2010/01/12(火) 23:58:18 ID:YRNUUpEQ0
W:気持ち悪いわ!<ベチッ
  おれの母親そういう目で見るんじゃねぇよ。
  お前いつ俺の父親になったんだ。
K:父親じゃなくて恋人だろ!<バシッ!
W:どっちでもねーよ! お前俺の相方だろ!
K:相方かーっ!
W:いやなのかよ! ちょっとショック受けたわ!
K:お前の相方より恋人の方がいいだろ?
W:何言ってんだお前。恋人とか超気持わりぃな。
K:おいド/リ/キ/ャ/スお前はどう思う。
W:あだ名をつけるな!
  えーと何の話だったっけっ?
  そうそう。そいでね、
  パソコンでインターネットをしようと思ったんですけどやっぱり難しくて、
K:……<バシッ
W:なんでいきなり叩いたんだよ!<ベチッ
K:恋人とか超気持ち悪いってお前それ本気で言ってるのか?
W:……ばか野郎。本気で言ってたr 本気だよ!<バチッ
  いい加減にしろ。
  どーもー。ありがとうございました。
K:ばぁい。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
223風と木の名無しさん:2010/01/13(水) 00:07:49 ID:fxqyQaAV0
>222
掛け合いのテンポがリアルで良かったんだけど
オチのWのセリフ&状況がいまいちよくわからない
タイプミス?
224段バイン とっど×シュンジ 1/2:2010/01/13(水) 00:20:55 ID:9ZUQLhLh0
今更ながら萌えてしまったので。
ゲームの主人公シュンジのカオスルートネタで敵全滅ED後。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

自分は運が良かった。
戦後処理が終わり落ち着いた日々をまた過ごせるようになったある日。
久々に二人きりになれたと思ったら、シュンジは唐突にそんな事を言い出した。
「様々な可能性があった。
あの日召喚された場所が違っていたら、私も貴方と同じようにどれいくの部下だったかもしれない」
その言葉に、初めて会ったときの事を思い出した。
俺たちと同じ地上から召喚された戦士でありながら、一国の王になっていた男。
「そうだな。俺が王様って事もあったわけだ」
「……その場合、貴方は本当に死んでいたかもしれませんけどね」
「何だと、この野郎!」
一度死んだと誤解させた事はあるが、それぐらいで弱いと思われたら困る。
思えばあの時戦線離脱した結果、
今ここにいるのだから、本当に人生どうなるか分からないものだ。
「冗談ですよ。そうやって貴方はすぐに怒るから、王なんて向いてないって事です。
でも、本当に私が兵士で貴方が王だったなら……ちゃんとこの身を盾にして、守りますよ」
ああ、その目だ。全てを見通すかのようなその目。
同じ地球人のはずなのに、今まで出会った誰とも違う。
鮮やかな軍略、比類なき戦闘力。この世の誰であろうと彼には敵わない。
いや、戦わせてやるものか。俺がいる限り、その姿を目に映す事すら許さない。

これは王。世界を統べる王だ。
225段バイン とっど×シュンジ 2/2:2010/01/13(水) 00:21:36 ID:9ZUQLhLh0
「……この、本当にそう思うならその喋り方止めろ! 嘘臭ぇんだよ!」
「相変わらず酷いな。……けど、それが良い」
すっと手をこちらに伸ばしてくるので手の平にキスをしたら、
それでは足りないとばかりに手を伸ばし掴んだ髪を引っ張ってくる。
二人きりの時、シュンジはこうして歳相応の笑顔を見せて甘えてくる。
普段は王らしくいつも大人びているというのに。
「俺がジャップに惚れるなんてな……」
思わず零れた言葉をシュンジはしっかりと拾い上げたらしく、途端に笑顔は曇る。
「ジャップは止めてくれ。悪気はないって分かってても、いい気はしない」
離れようとする手を慌てて掴んで引き寄せ、返事の代わりに逃げようとする唇を塞いだ。
一旦口付けてしまえばもう抵抗はなく、
そのままシュンジを玉座に座らせ耳や首に舌を這わすと、その頬に朱が差した。
いつも冷静なこいつの事だ。本当は怒ってなどいなかったのだろう。
それでも挑発に乗ってしまうのは、許してくれる瞬間が好きだからだ。
「マジで惚れてるんだ。お前を悪くなんて言わねーよ」
「……もう何度も聞きましたよ、それは」
少し不満げにシュンジは目を逸らす。
珍しい。久々の良い雰囲気のところで台無しにされたから拗ねているのだろうか。
どうするかと考えてすぐにさっきまでしていた王の話で攻める事にし、
トッドは玉座のシュンジの前に跪いた。
「王を独り占めなんて、最高の贅沢だ」
それがお前なら、尚更。
騎士のように手にキスをして顔を上げると、我儘な主の表情はいつものものに戻っていた。
「なら、偶には部下らしく愛して下さい。王の私を」

「我が王のお望みのままに」


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
17歳で世界征服してしまうとかこの主人公凄すぎる
226風と木の名無しさん:2010/01/13(水) 00:28:20 ID:8ktws9k40
222です。

>223
確かにわかりづらい表現でした。ご指摘ありがとうございます。
よくあるノリツッコミを表現したかったのです。

W:ばか野郎。本気で言ってたらお前と一緒に漫才してねーだろ。
2:…えへへへへへ〜
W:……って恋人とか違うわ!<ベチッ
  いい加減にしろ。
  どーもー。ありがとうございました。
K:ばぁい

の方がよかったのかもしれません。
227風と木の名無しさん:2010/01/13(水) 00:35:35 ID:ePcJ9Pyq0
>>223
途中で言うのをやめるノリ突っ込み的なものになっていると思われ。

>>222
これ系の文はイタタが多いので(失礼)敬遠しそうになったけど
流れがばっちりでテンポよくてよかったです。
楽しく読ませていただきました。
228風と木の名無しさん:2010/01/13(水) 00:36:13 ID:ePcJ9Pyq0
ウホッ
リロッてなかったすいませんでした。
229風と木の名無しさん:2010/01/13(水) 02:21:03 ID:QF4qqX2A0
>>159
まさか、まさか師匠の話が読めるなんて…!!
毎日ついったー見てはニヤニヤしてるよ、師匠!!
可愛かったです。
230風と木の名無しさん:2010/01/13(水) 02:32:39 ID:dGsE5IH30
>>205
待ってました!
まさにあのパンフの鬼畜スマイルで脳内再生されてたよw
最後の殺し屋の台詞にも萌えました!GJです!
231最後の晩餐:2010/01/13(水) 02:41:21 ID:G3DxYeJI0
やきう。当主と保守。
妄想甚だしいので、オリジナルとして読んでいただければ・・・。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
232最後の晩餐 1/2:2010/01/13(水) 02:44:01 ID:G3DxYeJI0
「俺、結婚するんだ。」

ギリギリ聞こえるかどうかという俺の呟きに、保守の手がピタリと止まった。
うなじに触れていたくちびるが、グ、と息を呑む。

「知ってるだろ?俺、彼女いるの。」

なるべく明るく言って、包丁の動きを再開させる。
行き場を無くしたらしい手が、するりと解かれて俺から離れていった。

「・・・そりゃあ、知ってたけど・・・。」

まさか、自分のために料理を作っている後ろからセクハラしている状況で
そんな事を告白されるとは思っていなかったらしい。
溜め息をついて、ガリガリと頭を掻いている。そして、呆れたように。

「何も、今言わなくても。」
「・・・だよね、うん。ごめん。」

自分でもそう思うよ。
だけど、おまえのために台所に立ちながら
言うなら今しかないんじゃないかって、思ったんだよ。

けじめもなくダラダラと続いた関係は、
いつか終わらせなければいけないとずっと思っていたから。
保守だってずっとそう思っていたはず、だから。
233最後の晩餐 2/2:2010/01/13(水) 02:45:47 ID:G3DxYeJI0
沈黙の中、保守のためにフル稼働しているキッチンの音が
やけに悲しく響いている。
それが辛くて、搾り出すように呟いた。

「今まで、ありがとうな。」
「馬鹿じゃないの・・・お前。」

振り返ると、保守は今にも泣きそうに顔を歪めていた。

泣かなきゃいけないのは俺なのに。
俺のワガママに付き合って、こうやって一緒にいてくれただけなのに
どうしてお前が泣きそうな顔してるんだよ。

耐えられなくて、情けない顔をした保守の首筋に、縋るように抱きつく。
戸惑いながらもその腕が背中に回されて、少しだけホッとした。
そんな自分にまた嫌悪する。

最低だ、俺。

「お前、馬鹿だよ、マジで。
 んなこと今言われて・・・お前が作ったメシ、食えるかよ・・・。」
「・・・頼むから、食べてよ。」

最後のワガママにする、から。
そして忘れないで。覚えていて。


最後の料理は、お前の大好きな、 。
234最後の晩餐<終>:2010/01/13(水) 02:47:34 ID:G3DxYeJI0
□ STOP ピッ ◇⊂(;∀;`)イジョウ、ジサクジエンデシタ!ケッコンオメデトウ!
235風と木の名無しさん:2010/01/14(木) 12:05:12 ID:LCVb5X3k0
一連のやきうの当主と保守が誰と誰なのか気になる(*´Д`)ハァハァ
236風と木の名無しさん:2010/01/14(木) 16:55:02 ID:gTokJsIr0
>>231
ずっとこの二人をwktkしていました…!
切なさと萌えが押し寄せました。有難うございます!ケコーンおめでとう!
237依存症 1/4:2010/01/14(木) 22:45:21 ID:tPBV6MNp0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ナマ注意。とある先輩と後輩の話。


「行かないで」
 無理やり腕を引っ張られ、俺はベッドの上に転がされた。
「……っ、いきなり、な……」
 目まぐるしく変わる景色。つい先ほどまで俺は、ドアノブに手をかけていたはずだ。
なのに、次の瞬間には、部屋の天井が視界にあって、そして今は――
「……っ」
 現状を受け入れたくなくて、きつく目を瞑る。
 それでも、感覚までは誤魔化しきれない。彼が――大好きだったはずの先輩の舌が、俺の口の中を蹂躙する。
 気持ち悪い。きもちわるい。キモチワルイ。
 どのくらい続いただろうか。換算すれば2、3分程度なのだろうが、俺にとってはその何倍にも感じられるほど、苦痛な時間だった。
 舌を絡め、舌で歯をなぞり、唾液を混ぜ合わせ――口の中という中を貪りつくすと、彼は俺を解放した。
 はぁ、はぁと荒く生温かい吐息が俺の頬にかかる。
 俺は、耐えきれずに咳き込んだ。
「ごほっ、ごほっ……何考えてるんですかっ!!」
 勢いよく起き上がり、彼を突き飛ばす。形勢逆転。今度は彼の方がベッドに倒れこむ形となる。
「はぁ、はぁ……」
 そこでようやく、俺は彼の顔を直視する。
 彼は、きょとんとした表情で俺を見ていた。どうしてこんなことをされるのかわからない、その目が、そう訴えかける。
「   」
 彼の口が、俺の名を紡ぐ。聞き慣れたはずの声。大好きだったはずの呼び名。しかし、今はその何もかもが遠かった。
「――もう、違うんですよ」
 俺は、彼から目を逸らし、ベッドから降りる。
「俺は、あなたとはもう、居られないんです」
 そして、一歩、また一歩遠ざかる。縋るように彼は俺の名前を呼ぶが、振り向かない。振り向けない。
238依存症 2/4:2010/01/14(木) 22:46:35 ID:tPBV6MNp0
「嫌だ」

 再び、彼が俺の行動を制止する。必死にシャツの裾を掴む指。
 違う。俺が知っている彼の指は、こんなに弱々しいものなんかじゃない。
「離してください!」
 無理やり振り払い、一気にドアまでダッシュする。
 もう、こんな彼は見たくない。一刻も早く未練を断ち切りたい。その一心だった。
 しかし、
「   」
 耳元で、名前を呼ばれる。
 彼が、俺を後ろから抱きすくめる。
「やめて、ください」
 振り払いたいのに振り払えないのは、彼の方が体格も良くて力も強いから?
 それとも、
「嫌だ」
 こうされることが、ずっと自然だったから……?
「離れるなんて、嫌だ――」
 彼の言葉が、行動が、俺の決心にヒビを入れていく。
「絶対に、嫌だ――」
 密着した背中が、ジワリと熱い。首筋には、ポタリポタリと温かな雫が伝い落ちる。
 ただでさえ繊細な彼の心が、直接俺を追いつめる。ニゲラレナイ。

「―――――」

 彼の名前が口をつくとともに、全身の力が抜けていくのがわかった。
 立っていられなくて、そのまま彼にもたれる形となる。彼はそんな俺を優しく抱えてくれた。
「俺だって――」
 彼を真っすぐに見上げる。思いが堰を切ったように溢れ出す。
「俺だって、本当は離れたくありません!!でも、でも仕方ないんですよ!!」
239依存症 3/4:2010/01/14(木) 22:49:39 ID:tPBV6MNp0
 別れは、突然だった。
 来季からは他の場所で働いてくれと、上から通告されたのだ。
 決まってしまった人事に、こちらが抵抗できるすべはない。どれだけ泣いても、惜しまれても、もう俺はここにはいられない。
 大好きな仲間たちの側にも、彼の側にも居られない。
 体が、がくがくと震える。こらえていたはずなのに、止められない。
「割り切るしかないのに――何で邪魔をするんですか! どうして楽にさせてくれないんですか!」
 心地よい彼の腕の中が、つらかった。恐ろしかった。
 こんな思いをさせるなんて、彼はなんて残酷な人なんだろう。
「何で、どうして――」
 彼と俺。二人とも同じ顔をしてる。ぐしゃぐしゃに顔を歪めている。涙と熱とが混ざり合って、何が何だかわからない。
 2人が1つになって、この部屋に溶けて、ぐるぐるかき回されてる、そんな感じ。
「それは――」
 ぐちゃぐちゃな意識の中――それでも、二コリと笑う彼の顔が見えた。
「好きだから」
「え」
 ゾクっと背筋が震えた。奇妙なほど、感覚が冴えわたる。
「好きだから、別れたくない。それって当然なことだろ」
 彼は俺を抱く腕に、さらに力を込めた。
「でも――」
 返そうとした言葉は、重ねられた唇に奪われる。今度は、不快感はなかった。
「今だけ、今だけでいいから」
 彼が甘く囁きかける。
「今だけは、おれのモノでいて。おれだけのモノでいて」
 頭が痛い。ガンガンと揺れるよう。
「…………」
 否定できず、俺は首を縦に振った。
 この選択が、間違いだって分かっているのに。
240依存症 4/4:2010/01/14(木) 22:51:39 ID:tPBV6MNp0
 彼はそんな俺を見て、満足そうに、ほほ笑んだ。
「ありがとう」
 そう、腹が立つくらい、爽やかに。
「好きだよ、  」
 これまで何度も聞いた言葉。でも今は、帯びた温度が違う。
「俺も」
 詰まりながら、口にする。
「――大好きです」

 再び、ベッドに寝かせられる。今度は優しく、まるでガラス細工でも扱うように。
「ん……」
 胸から脇腹に、脇腹からさらに下に――彼の手が、俺の体の上を這っている。
 その間にももう片方の手が、器用にシャツのボタンを外していく。
 重なる肌。伝わる温度。いっそうの、混同、混濁。
「はぁ……っ」
 熱に浮かされた頭で、考える。
 恋人以上、家族未満。いつだったか、自分と彼との関係を表した言葉。
 彼のことが、好きだった。大好きだった。ずっとずっと、大好きだった。
 でも、その好きは、いったい、どんな好きだったか――――

 一つのベットに、体を寄せ合って眠る。
 大柄の男二人じゃ、少し狭いくらいの空間。でも、その密着感がいい。
 彼の温度を、俺の体は覚えている。
 俺の温度を、彼の体は、覚えている。
 忘れたくても、忘れられない関係。
「……最悪」
 いずれ訪れる後悔を憂い、俺はため息をついた。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )突発的に書いてしまった。後悔はしていない。
241風と木の名無しさん:2010/01/14(木) 22:56:52 ID:J6BCZm7P0
>>237
元ネタ?が即座に浮かんできて切なくなりました・・・
もうあのイチャイチャは見られないんだよなあ(´;ω;`)
242風と木の名無しさん:2010/01/14(木) 23:04:43 ID:XVtJlHON0
>>237
自分もすぐわかりました(´;ω;`)
いくら遠恋ウマーとか思おうとしたって、イチャイチャが見られないのはやっぱり寂しい…
243風と木の名無しさん:2010/01/14(木) 23:16:58 ID:76NxG6xL0
>>236
感想ありがとうございます。喜んでもらえて幸いです。
逆に、これを機に既婚者同士で距離が縮まればいいなぁ・・・。
244風と木の名無しさん:2010/01/14(木) 23:59:05 ID:bpowIpwa0
>>237
自分は元ネタがわからないけど萌えられたよ!GJ!
誰と誰かなぁ、って色々妄想してみるのも楽しいわw
245風と木の名無しさん:2010/01/15(金) 16:08:36 ID:76V74ber0
>>107
亀ですがgj。
あのおっちゃん達は優しい萌えが良く似合いますな。
246風と木の名無しさん:2010/01/16(土) 00:52:58 ID:SaUDRK+E0
>>191
二人の口調がまんまで萌えたw
しかもなんと詳しい板の食生活w
確かに食堂は隣の建物の地下にあるって聞いたことあります!
有り難う!
247風と木の名無しさん:2010/01/16(土) 11:37:51 ID:aaO01mvu0
>>215
ありがとう。
今この二人が読めるとは…!
248社内恋愛ノスゝメ 0/4:2010/01/18(月) 00:57:45 ID:2FeGv55c0
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < 半ナマ・ドラマ腐妄痴態から回辺さんと豹同くんで業務本部時代のお話
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < 鬼畜で消耗したので一転ほのぼのに走った
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、< 回→豹ちっくなものの攻受どころか豹のまとも台詞も無い微妙さだよ
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"
249社内恋愛ノスゝメ 1/4:2010/01/18(月) 00:58:53 ID:2FeGv55c0
大きな仕事の終わった夜。
数刻前の騒々しさが嘘のように静けさに包まれた業務本部の部屋へと入ってきた回辺仮名芽は、
ふとその中にひとつの影を見つけて立ち止まった。
「おや?」
デスクにうつ伏せた状態で微かな寝息を立てているのは彼の同僚である豹同真一郎だった。
まだ少しやることが残っていたのだろう、机上には紙の束が積まれている。
(あー、遅くまでお疲れさん)
かくいう自分も例外ではないが、この業務本部の長の片腕にあたると言っても過言ではない豹同は
普段から己の仕事に下の者たちとは比べ物にならないほどの並々ならぬ熱意を傾けている。
業務本部長――域忠志の指示ひとつで海外へ飛び、影ながらその分身のようにして動くこともよくあることだ。
流石にここ最近の疲れが溜まっていたのだろう。今くらいはゆっくり寝かせてやろうじゃないか。
そう考えて、回辺は豹同の隣の椅子を引き、音を立てないようにしてその椅子にそっと腰掛けた。
そのまま何の気なしに豹同の寝顔をひょいと覗き込む。
柔らかく閉じられた瞼、呼吸のために少しだけ開いた薄い唇。無防備な表情は普段よりも少々幼い印象を与えて。
(おお、睫毛長げえなあー)
ここぞとばかりにその造形をまじまじと観察する。
そういえば普段はあまり意識することも無いが、豹同の見目はスマートな長身と目鼻立ちの整った貌に加えて
その声は低く通る美声で、まあ女たちに騒がれる程度には美丈夫と言っても差し支えないものなのだ。
(羨ましいことで)
自慢ではないが自分は異性に騒がれた栄光など無い故に、そこには少しばかり羨望の念を覚えてしまうが。
まあ、仕事の出来る出来ないに見た目なんぞ関係無い!と開き直ってしまえば何ら問題は無い。
これも自慢ではないが、正直その辺の切り替えは速いという自覚がある。大いにある。
「…ん…」
豹同の秀麗な眉が僅かに顰められ、その唇から微かに吐息が漏れた。
もしや自分の気配で起こしてしまったかと、もう一度その寝顔を覗き込むようにして様子を窺った瞬間。
「…域…さん…」
250社内恋愛ノスゝメ 2/4:2010/01/18(月) 01:00:18 ID:2FeGv55c0
「へっ?」
思わず素っ頓狂な声が口から漏れてしまい、まずいとその手でひたと押さえる。
幸い豹同に目を覚ました様子は無く、ただ少しばかり身じろいだだけのようだった。
胸を撫で下ろすと同時に今の一言が頭の中でぐるぐる回る。
今確かにしかと直属の上司の名前を聞いた気がするがありゃ何だ。
果たして本当に寝言なのか。寝言だとしてもどうなのか。
普通寝言で男の名前は呼ばない…だろう。…呼ぶか?呼ばんよなあ。ああ、呼ばん。多分。
自慢ではないがそこそこ察しはいい方だ。
ひょっとしたらひょっとして聞いてはいけないことだったろうか。
もしかしたらもしかして禁断のごにょごにょ…的なアレだろうか。
自分もきっと疲れていたのだろう、一気に変な方向に考えが飛んで、一人で無闇矢鱈にどぎまぎして、そして。
(…何か知らんが、こう、妙にもやもやっ…とするのは何でだ?)
ざわりと胸の辺りに違和感を感じた。
そのわけのわからない違和感を振り払うように、ぶんぶん首を横に振る。
とりあえずもうそっとしておこうそうしようと、ぶんぶん首を縦に振る。
知らぬが仏、触らぬ神に祟りなしという先人のありがたい訓辞もあるくらいなのだ。
回辺がそっと席を立とうとしたその時、再び低い声がした。
「付輪さん…」
(はいい!?)
ともに域を補佐するもう一人の名前を耳にして先程以上に面食らった。
今度は声を上げなかっただけでも自分を物凄く褒めてやりたい。
爪先立ちに中腰のまま間抜けに固まり首だけを後ろへぐるりと回したその耳へ、更にとどめのもう一声。
「回…辺さん」
(えええ、俺ええぇぇえ!!??)
心臓が口から飛び出そうなくらい一瞬のうちにどくんと跳ねた。
自分は、少なくとも自分は男の寝言で悩ましげに名前を呼ばれる覚えはこれっぽっちもありゃしない。
疲弊した脳味噌で完全に正常な思考が出来なくなっているのにも気づかず動悸はますます激しくなる。
「…で」
「ん?」
まだ続くのか、と心臓を無理矢理落ち着けて耳を澄ました。
251社内恋愛ノスゝメ 3/4:2010/01/18(月) 01:01:40 ID:2FeGv55c0
一秒がとんでもなく長く感じられる静寂の中で豹同の薄い唇が動く。
「この仕事…皆で…とりに行きましょ…う…ね…」
「へ…」
それはこの仕事にかかっていた間、豹同が毎日毎日口癖のように繰り返していた言葉だった。
「あー…」
そういう。ことです。か。
全身の緊張が解け、へなへなと崩れ落ちるように回辺は再び椅子に腰を下ろす。
キィッ、キッ、と椅子の背もたれが微かな音を立てた。
(いやいや、何でこんなにほっとしてるかな!)
そりゃほっともするだろう。
よりにもよって直属の上司と同僚の、
社内不倫の上、更に道ならぬ何とやらの発覚現場に立ち会ってしまうかもしれなかったのだから。
そうだそうだ。それ以外の理由なんて特に無い。ある筈も無い。
そもそも何がどうなってここまで妙な勘違いをしたのやら。我ながら全くもって理解に苦しむ。
そういえば自慢では無いが、昔からうっかりどっきり早とちりしてしまうことも存外多かったような。
…本当に自慢にならないけれど。
いや、全てはあんな紛らわしい寝言を発したこの仕事人間のせいだ。
責任転嫁甚だしくも、そう考えると今度は無性に腹が立ってきた。
「大体、何で俺が最後なんだってえのっ」
もう何でもいいから因縁をつけてやりたくて小声でぼそりとぼやきながら
びしっ、と豹同の眉間に曲げ伸ばした人差し指で攻撃を食らわせれば、
豹同は整った眉根を寄せて「んん…」と一言唸る。
しかし最早頑ななまでに起きる気配はちらとも見せない。
「…これでも起きないってどうなのよ」
252社内恋愛ノスゝメ 4/4:2010/01/18(月) 01:02:49 ID:2FeGv55c0
怒りを通り越して呆れてしまう。だけれど、幼い赤ん坊のように眠り続けるその姿に。
「………まあ、いいか」
神代の時代からいつの世も子供に罪は無いのだから。
「しかしよっぽど疲れてんだなあ…」
仕方ないから豹同が起きるまではここにいてやることにしよう。
済ませなければいけない残業仕事が多いようならそれから手伝ってやってもいい。
そしたら帰りのその道中、一杯引っ掛けて帰ろうか。
何故だか浮き立つ心を胸に、ひとつ大きく伸びをした。背もたれがまた、聞き慣れた音を立てる。
束の間の休息を噛み締め傍らの寝顔を眺めながら。
ほっと心を落ち着けたその裏の真実に今はまだはっきりと気づくことも無く。
後は静かな夜が息を潜め穏やかに、ただ更けてゆくばかりだった。





             ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < 誰得と訊かれれば敢えて言おう、俺得だと
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < 回豹いいなーと思わせてくれた姐さん&去年の鮫域にコメ下さった方と
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、< 今回お読み頂いた方もしいればありがとうございましたー
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
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 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
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 |         | ./
 |_____レ
253風と木の名無しさん:2010/01/18(月) 21:45:02 ID:upyccOB60
>>248
美人豹同と回転回辺GJです!2人ともカワエエw
254風と木の名無しさん:2010/01/19(火) 06:51:17 ID:byiVmH+Z0
>>248
去年からこのスレ覗いてなかったのに、ふと気が向いたら腐妄とか
ラッきード!
ほのぼのしますたw
255ふわふわ 1/2:2010/01/22(金) 01:15:20 ID:7RHjtrsP0
一応オリジナル。社会人×学生の雰囲気だけ801。短いのでサクッと読んでください。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

上京して3ヶ月の間に、僕は三度も彼に助けられた。
1度目は初めての顔合わせで、渋谷という街の人の多さに慣れない僕の手を彼は笑って引いてくれた。
携帯のメールアドレスと電話番号を交換した時は、文字通り天にも昇る気持ちだった。
2度目は「友達が出来ない」と冗談半分で送ったメールに、「俺からいるからだいじょーぶ^^」と返された時だ。
そんなに深刻な悩みではなかったはずなのに、彼に言われたその言葉がどうしようもなく嬉しかった。
なんだか彼に「側にいるよ」と言われたような気がして、嬉しくて嬉しくて、思わず踊り出してしまいそうだった。
だから、そのあと友達が出来た事も彼には言わなかった。言わなければ、あの言葉が効力を持ち続けるような気がして。
3度目は秋斗にかり出された飲み会の後だ。なんだかよくわからない味のアルコールを飲まされてダウンした僕の携帯から、遊が勝手に彼を呼び出したらしい。
256ふわふわ 2/2:2010/01/22(金) 01:16:02 ID:7RHjtrsP0
グダグダで意識も曖昧な僕を、彼はお説教しながら部屋まで連れて帰ってくれた。
乱暴にベッドに放り出されはしたものの、コップの水を僕にあてがう彼はやはり頼りがいがあって大人の男に見えた。
その時僕は何を思ったのか、着崩れたスーツを脱いでいる彼を眺めながら、つい口を滑らせた。
「飲ませて」
彼のキョトンとした顔は今でも覚えている。
自分でも何を言ったのか理解出来ていなかったから、僕たちはしばし間抜けな顔で見つめ合ったのだろう。
彼が何故僕に寄ってきたのか、真意は知れない。あるいは覚えていないだけで僕が彼をベッドに引き寄せたのかも知れない。
「冗談?」
「ほんき」
都合の良い頭が覚えているのは至近距離にある彼の黒くて丸い瞳。少し厚くておいしそうな唇。うっすらヒゲの跡。
「……知らないよ?」
どういう意味なのか分からなかったけど、なんだか体が暖かくなったことだけは覚えている。
嬉しかったのかな?恥ずかしい?ドキドキしたのかな?
「いいの。だいすき」
その後はただ、彼の厚い唇が俺の唇を挟んで押しつけ合って、なんだか水気の多いキスをしたことだけしか覚えてない。
どこまでやったのか、最後までやったのか、僕が抱いたのか彼に抱かれたのかどうかも。
あれ以来、彼とは連絡を取っていない。

特に前後はないです。やおい乙い。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
257風と木の名無しさん:2010/01/22(金) 01:32:41 ID:cERl9QsD0
一角獣関係、どうもありがとう!
258とんち頭に深々お辞儀。1/3:2010/01/22(金) 01:58:24 ID:NkJGIKAS0
GCCXふと思いついた4+7。そして+3。ホントにやまもおちもいみもないのでだらっとお読み頂ければと。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・;)ジサクジエンガ オオクリシマース!

この業界にいると何かしらおかしな事と遭遇する。まあそう珍しい事でもないと思うんだけども。
時間の感覚は無くなるわ年齢の感覚も無くなるわ。
入って初めて就いた仕事は最たるものではないかと今でも思う。楽しかったけど・・・
そして今。
母さん、俺は其の中でも5本の指に入りそうな不思議に遭遇しとります。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
えーと。
どうしよう。
こう黙った侭だと俺も如何すれば良いのか分からんとです。
いやいや俺先輩だから別にいいと思うんだけど年上だしうーん。
・・・て裏川さんに言ったら「よかたいお前のが先輩やけん」て流された。
そんな事は分かっとっとですよ言えませんけども!
「・・・・・先輩」
「は?!い・・・」
「コーヒー、零れますよ」
「へ、あっ!あぁあああぁ!」
「猪上うるさい!」
「あぁああすいませんすいません!」
うわカッコ悪・・・!
う、裏川さんそげん呆れた目ばせんちゃよかじゃなかですか自分だって笹乃さん来た時緊張してたくせに!言えませんけども!
バタバタ机の上を片付けながらその元凶をちらりと見遣る。
ぱっちりとした目を瞬かせながらきょろきょろと視線が挙動不審。
いや嫌いじゃない。嫌いじゃなかとですよ。出来れば仲良くしたかとです。折角出来た後輩ですから。
唯、やっぱりこう、話して交流を深めたいと言うか何と言うか。
259とんち頭に深々お辞儀。2/3:2010/01/22(金) 01:59:17 ID:NkJGIKAS0
「あ、あの、」
「・・・・・」
反応なし。
「な、仲山?くん・・・」
「あ、はい・・・」
呼びかけてるのに気付かれてなかったとです。
「・・・えー・・っと、金魚、元気・・・?」
「はぁ・・・元気に泳いでます。この前水換えしたんで・・・」
「あ、そっか・・・」
見りゃ分かるって話でした。
「あ、有埜さん、どう?挑戦の調子とか」
「・・・ゲームにもよりますかね。この前ちょっと苦戦してましたけど」
「あ、やっぱ相変わらずなんだ」
「そうですね」
お、これはいい調子じゃなかですか?
「この前とかどうだったの?」
「え?えーっと意外と序盤で詰まってですね・・・」
今かなりいい感じで進んどるよお母さん!ちょっと嬉かですよ!
「く、クリアはした、んだよね?」
「はぁ・・・俺サポート入ってないんでその辺は柄本に聞いて貰った方がいいと思います」
しまった終わりそうな雰囲気作った!
「え、えーっと・・・」
「仲山さーん」
「あ、柄本・・・すいません、ちょっと失礼します」
「あ、うん・・・」
ぺこりと頭を下げられて(所謂ぽんころんってヤツですか)背を向けられ。
こ、後輩に終わらされた・・・いや終わりそうな雰囲気だったけど。
因みに今向かい側で裏川さんが必死に笑いを堪えとるとです・・・。
大きく溜息吐いて肩を落とす。今日はかなり上手い事いったと思ったんだけどなぁ。
260とんち頭に深々お辞儀。3/3:2010/01/22(金) 02:02:21 ID:NkJGIKAS0
「お疲れさん」
「・・・どうも・・・」
「お前いつもん調子で話せばいいのに。下手に気ぃ遣うけん続かんつたい」
「はぁ・・・」
向こうで後輩同士が話してる。どうやら柄本とは普通に話してる様だ。
あれ、そういえば綿邉さんとも普通に話してない?
てっか裏川さんとも普通に・・・あれ?
「お、俺だけですかこの状態!」
「いや気にしとるのがお前だけやけんが。別によかろーが無理に話さんでも」
「そ、そりゃそうですけど!」
無理に話させようとしてる訳なんじゃないけれども。気持ち的に、釈然としないだけで。
自分でもよく分からんとです。
あんまり考え過ぎんな、と言葉を掛けられて。くしゃくしゃ頭を掻き回す。
もやもやした気持ちを抱えて目線を上げると。
未だ話している途中だったその猫背が、顔を上げて。
目が合って。
相変わらず、無表情の侭。だったけど。

ぽんころん。

音が、聴こえた気がした。

□ STOP ピッ ◇⊂(−∀−;)イジョウ、ジサクジエンデシタ!
自称人見知りがまっくす先輩って呼んでるのが可愛いなと思うんです。
261風と木の名無しさん:2010/01/22(金) 03:28:34 ID:MbP48AH0O
>>260
仲山に気を使う猪上がなんだかカワイイ。GJ!
262板缶:2010/01/23(土) 20:51:01 ID:oBEu29P30
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  ilの板と缶モナ‥‥。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  また喋ってるだけモナ。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
263板缶 1/4:2010/01/23(土) 20:52:36 ID:oBEu29P30
一緒に夜を過ごす機会は、一ヶ月の間にほんの数回しかなかった。
なんでもかんでも大量消費、近隣のつきあいも減った現代では、犯罪者の検挙もどんどん難しくなるばかりだ。
伊民たち、都内で起きる凶悪犯罪を専門に扱う捜査一課の刑事たちの仕事も、年々増えこそすれ減ることはなかった。
ヒラの地方公務員は労働基準法に守られているとはいうものの、自分よりも一般市民の安全を優先するのがまっとうな警察官の仕事だ。

だから、不規則に組まれる非番の前の晩、宿直にも当たっておらず、もちろん帳場も立っていないときに限って、伊民は自分のプライベートを充実させることができるのだった。
目下のところそれは限りなく、神部と過ごす時間とイコールで結ばれていた。

***

真っ暗な寝室、ベッドの上。
伊民は寝てしまうのがもったいなくて、もう少し起きていたいと思ったが、頭の芯から酸素と血液がうせたような感じで、目を開けているのがつらかった。
あとは、もう一本タバコが吸いたかった。
だがそれも、タバコとライターをリビングのテーブルに置いてきたことを思い出すと億劫になってしまい、この温かい布団から出る気にもなれなかった。
カーテンを閉め忘れた窓から、月明かりと冷気がこぼれおちてきていた。白い月光は伊民と、彼にゆるく抱きしめられている神部の頬を冷たく照らしていた。

「伊民さん。もういいから、眠かったら寝たら?」
だんだん重くなってくる伊民の身体を受け止めながら、神部が言った。その口調はやさしかったが、伊民はなんだか自分が責められているような気になった。
なにしろ、今夜はまだなにもしていない。
久しぶりに風呂に湯を溜めてゆっくり浸かったあとで、伊民がメールしたのに応えて来てくれた神部と、彼の好きな赤ワインを一本空けつつリビングのソファでのんびりと時間を過ごした。
それからテレビを消して寝室に移り・・・互いに服を脱がせあって、何度も何度もキスをした。
264板缶 2/4:2010/01/23(土) 20:53:40 ID:oBEu29P30
それだけだ。
すっかり温まって気持ちのよくなった伊民は瞼が重くなり、思い人を身体の下に敷いているというのに、もうまるで使い物になる気がしなかった。
神部のほうも、今夜はそれだけでいいと思っているらしく、布団と伊民の下にすっぽりとおさまって、静かな息をついていた。
半分だけ、無理に目を開けた伊民が見下ろすと、神部の白い頬に、長いまつげの影が落ちていた。
こいつはつくづく鑑賞に堪える美形だなと、伊民はまた思った。

「・・・なんで俺なんかがいいんだよ、あんた」
かすれた声でささやくと、知らず知らずのうちに、眉根に皺が寄っていた。
一瞬置いて、神部はふっと口元をほころばせ、そんな伊民の眉間に人差し指をそっと這わせた。
上から下へと、つるりと指先を滑らせながら、この距離だからこそやっと伝わるほどの小声で、神部が答えた。
「まあ、八割、見た目です」
「・・・はァ?」
「誰にでも、好きなタイプってあるでしょ。伊民さんはね、俺のどストライクなんですよ」
「そりゃ・・・どうも」
ほかに、言葉が浮かばなかった。ふふっ、と余裕の笑みを浮かべる神部に、ずっと言ってやりたかったこともなにも、すっかり抜け落ちてしまった。
神部はなおも微笑を頬にとどめたまま、間近にある伊民の額から瞼へ、頬へ、そして首筋へと、指先をすべらせて行った。
すこしも荒れていない指の腹の感触はとてもなめらかで、特に唇をなぞられるのは気持ちがよかった。いつまでもつるつると撫でられていたくなるような気がした。
笑みをたたえて細められた瞳はまるで、すべてに満ち足りてご満悦なネコが喉を鳴らしているときのようにも見えた。
265板缶 3/4:2010/01/23(土) 20:54:30 ID:oBEu29P30
しかし次の瞬間我に返り、おかげでわずかに眠気もさめた伊民は、そんな考えが馬鹿馬鹿しくなって、まだ鎖骨の上にあった神部の指をてのひらのうちにつかみ取った。
すんなりと長い指先はまるで捕らえられた小鳥のように伊民の手の中でわずかばかりもがいたが、すぐにおとなしくなった。
「・・・だが、あのなあ。そりゃなんのシャレだよ」
口調ばかりは苦々しく、言ってやった。眉根はぎゅっと寄せたつもりだったが、口元はいささか緩んでいたのかも知れなかった。その証拠に、神部の唇に掃かれた笑みは消えなかった。
「八割方、見た目ってのはな、そりゃこっちのセリフじゃねえのか。あんたがその気になって、落ちないやつぁいねえだろ」
「ははっ、そんなこともないでしょ。俺から見れば伊民さんのほうが、よっぽどいい男に見えますよ」
「・・・どうだかな」
「ひっどいなあ。・・・あのね、言っときますけど、俺はけっこう臆病なほうなんです。誰かを落とそうと思ってアプローチするのなんて、人生でもめったになかったんですから」
「・・・本人目の前にしてこんだけ言えるやつが、臆病なわけねえだろが」
「ほんとですってば。それより、俺は残りの2割が気になりますね」
「2割?」
「だって、8割まで外見なんでしょ。残りの2割って、それはどういう要素なんです、か?」

とがめるような口調で言われて、伊民はニヤリと笑った。
この手の応酬には、容疑者の取り調べで慣れている。
266板缶 4/4:2010/01/23(土) 20:54:54 ID:oBEu29P30
とがめるような口調で言われて、伊民はニヤリと笑った。
この手の応酬には、容疑者の取り調べで慣れている。

「先に8割とか言ったのはそっちだろ。あんたが言ったら答えてやるよ」
「ずるい人だなあ、まったく・・・」
「つべこべ言わずにとっとと吐けよ、ホラ」
尖った顎を持ち上げるようにして詰問すると、神部はやれやれといったふうに息をつき、またニッコリと微笑みを浮かべた。
「たぶん、伊民さんと同じですよ。そんなもんでしょ」
「答えになってねえぞ」
「それで問題ありますか?」
「・・・チッ」

眠気のせいか、別の理由でか。
もう頭が回らなくなった伊民は面倒になって、憎らしいことばかり言う唇をもういちどキスでふさいだ。首の後ろにそっと回された手はとてもやさしく、あたたかかった。

<おしまい>
267板缶:2010/01/23(土) 20:56:07 ID:oBEu29P30

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 分割仕方がわからん。ゴメソ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
268風と木の名無しさん:2010/01/24(日) 00:06:02 ID:+1OkYfz00

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  ざわざわ漫画の13歳アカギを凌辱
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  多人数から襲われる/本番なし/エロ中心
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
269アカギ(13)「制裁」1/12:2010/01/24(日) 00:09:32 ID:+1OkYfz00
仄暗い雀荘の中、むんむんと熱気が満ちていく。
胡散臭い中年の男どもと、その男どもに囲まれた一人の少年を中心に、その熱気は発せられている。
少年の名はアカギしげる。
「悪童」「天才」「伝説」などといった数々の二つ名を持つアカギも、まだ若干13歳。
麻雀での勝負なら鬼神のごとき彼であっても、これがいつもと違う夜になることにはまだ気付いていない。

もしアカギが「そこそこ」という引き際を知っていれば。
そうすればまた違う結果になったのかもしれない。
けれどもアカギはやりすぎたのだ。
たった一人、ふらりと寄った雀荘で誘われるまま勝負し、大勝した。
若造だと油断してふっかけてきた相手達の顔がみるみる青くなっていくのを、
やすやすとアカギはあしらい、結果的にむしり取った。
これでもアカギとしては腕やら命やらを賭けない分我慢をしたつもりだった。
しかし凡暗の男達にとっては、その夜そのハコの資金全てをそんな奴にむし取られるなど、到底認められなかった。
アカギの中の引き際と男達の引き際の差異。
これに気付けなかったアカギにこそ非があった、というのがここの男達の勝手な論理である。
つまり入った雀荘の質そのものが悪かった。ここには筋を通す侠気のある者はいなかった。
ただ群れるしか出来ない、それでいて力を誇示せずにはいられない者達は、
こうも昂ってしまってはもう引くことが出来なかった。
270アカギ(13)「制裁」2/12:2010/01/24(日) 00:10:25 ID:+1OkYfz00
そしてアカギがむしり取った獲物――現金で800万だ――を片手に外へ出ようとしたとき、それは始まった。
一人の掛け声を皮切りに、屋内の全ての男達が立ち上がった。
気がつけば学生服姿の少年一人を、大の大人達が大勢で囲みにじり寄っていた。
それは異様な光景だった。
決してお前を逃さないぞという圧力のようでもあり、
またアカギの底知れぬ不気味さに畏怖した大人達が数に恃んでいるようでもあった。
実際のところ、アカギは身一つだった。
武器になるようなものもなく、味方になってくれるような知り合いなど誰一人ここにはいなかった。
頭上では裸電球に集まる虫達の羽音が微かに響く。
頼りないオレンジ色の灯りの下、場の緊迫感がじりじりと肌にひりついていく。
もはや時間の問題となったそのとき、アカギは鋭く挑発の言葉を吐いた。
その台詞を口火に突破口を開く――そういった心算である。
そしてアカギは急激に身を繰り出した。
271アカギ(13)「制裁」3/12:2010/01/24(日) 00:11:26 ID:+1OkYfz00
結果的にそれが失敗だった。
アカギの急な動きに男達も扇動されて、なり振り構わずにアカギに襲いかかってきたのだ。
結局アカギは数に負けて取り押さえられた。
複数人に押さえつけられ、あっという間に四肢を固められる。
あまりの不条理さに苛立ち、呆れ、アカギは相手を強く睨んだ。
けれども男達にとってはこの帰結は当たり前の結果だったし、
アカギの態度も最早捕えられた獲物の負け惜しみにしか見えない。
四つん這いに近い体勢の中、アカギの頭上から振って来るのは、男達の不気味な息遣いだった。
そうして、たった一人の少年に味わわせられた圧倒的敗北の腹いせに、
男達が脂ぎった額をつき合わせ、アカギを懲罰する算段をつけ始めた。

私刑。
アカギが逃れられない状況に陥ってから、まずはすぐにリンチが始まった。
チンピラがただ年を食っただけのような質の悪い男達の私刑は、感情的なものだった。
初めはお決まりのパターン、つまり殴り、蹴り、脅し、賭けを反故にしろ、謝れなどと迫った。
けれどもアカギは全く動じなかった。
身動きひとつ取れないくせに、恐怖のひとかけらさえ顔に浮かばせず、
血を流しても表情ひとつ変えず、臆病な奴らだとせせら笑っているようでさえあった。
それが男達を煽り、執拗に暴行を続かせた。
アカギは殴られる部位をかばうことも出来ずに、ただされるがまま暴力を浴びた。
それでもアカギは屈しない。
そこそこ時間が経ったところで男達は飽きた。
というより、末恐ろしくなったのだ。
元々非がある方は間違いなく負けた男達の方だったし、
自分達のしていることは間違いなく言いがかり。
いやそんなことより、何をされてもここまで動じないこと自体が純粋に恐ろしい。
272アカギ(13)「制裁」4/12:2010/01/24(日) 00:12:04 ID:+1OkYfz00
もう終いにしようか……そんな空気が流れたときだった。
恐恐としながらも私刑に参加していたある男が言葉を発した。
男は初めから、卓を囲み勝負に熱中していたアカギに耽々と狙いをつけていた。

この男は普段から道歩く少年に心惹かれ、出来ることなら会話を交わしたい、触れ合いたいと思っていた。
つまり少年に特別な関心を持っている、そんな性癖の男だった。
しかし現実には今までそんなチャンスは男になかなか来ず、
来たとしてもこの男は大抵どこかでヘマをしてしまうタイプの人間だった。
結局男は今日までに理想通り少年を誘い込むことは出来ていない。
けれど今夜は違う。
相手の方から飛び込んできた。たった一人でふらりと、なんの後ろ盾もなく。
絶好の機会だと思った。
本当は少年から巻き上げその代償になどというつもりだったが、それはもういい。
もう少年は手中に納めたようなものだ。
そして皆の感情が倦み始めたこの場面で、男は機を読んだようにこう提案した。
直接的な暴力に怯えないのならば、せめて鬱憤を別の方法で晴らしてやらないか、と。
男ははやる気持ちがおさえられない。
273アカギ(13)「制裁」5/12:2010/01/24(日) 00:13:31 ID:+1OkYfz00
「ごじゅ、ちゅぐっ、じゅっ……」
アカギの口から淫音が響いていた。
初めはざわついた男達も、日頃から溜まっていた鬱憤やら何やらの捌け口として、
この方法は半ばうってつけだと最終的には受け入れられた。
まず一人の男がモノは試しだと四つん這いにさせられているアカギの前に膝をついた。
前を開いて萎えた男根をその口に近付ける。
初めアカギは意味が分からなかった。
しかしすぐにその意を察し、たちまち眉をひそめて抵抗を露わにする。
見てすぐ分かる不潔さもツンとする臭いも不快極まりなくて、頭上を睨みつける。
けれども真上でにやついた顔は変わらない。
すっとヤニ臭い指が近づいてきたかと思うと、鼻を摘まれ呼吸を遮られた。
息をさせないことで口を開けさせようというのだ。
楽しむようにアカギの唇を男の性器がぐいぐいと押す。
アカギは固く唇を閉じてただ耐える。
すぐに息苦しくなる。身体が呼吸をしろと悲鳴を上げる。
所詮こんなことには限界があるのだ。
そうして口を開けば待ってましたと言わんばかり、男根がすぐにアカギの咥内に捩り込まれる。

押しこむように突っ込まれて、アカギの喉が委縮する。
味覚を襲う気持ちの悪い味。
吐き気をもよおすのも無理はない下劣な行為だった。
それでも今のアカギに拒否など出来る状態ではなく、
ただアカギは力を込めなんとか口を閉じようとしながら口内の凌辱に耐えた。
それ以上の反抗はしようにも力が入らない。
四肢の自由を完全に押さえ込まれている上に、
平気そうな顔をしていても暴力による体力の低下は深刻だった。
更に男達がいきなり突き付けてきたことは、アカギを混乱させてもいた。
いかにアカギとてまだ齢13歳の少年なのだ。
思考がいつものような神算を辿れない。一瞬一瞬の処理に手いっぱいだ。
だからまるで成すがままのようにアカギは扱われる。
274アカギ(13)「制裁」6/12:2010/01/24(日) 00:16:12 ID:+1OkYfz00
口に突っ込まれた後でも依然鼻は塞がれたままで、アカギはまたも呼吸が出来ない。
また同じ選択を突きつけられる。息を止め続けるか、口を開くか。
しばらくその苦渋の選択は続けられたが、結局は同じこと、
やはり生の欲求には抗いきれず、酸素を求めてアカギの口が開く。
「ふ、はあっ、はふっ、ぶじゅっ」
抵抗が薄くなったアカギの咥内を肉茎が縦横無尽に動き出す。
アカギの切羽詰まった吸気と入口を塞ぎ中に押し入る肉茎が相まって、
自然に液体と空気の混じる音が漏れる。
こうなってしまえば後はなし崩しだ。
再び息を止めようとも一度弛緩した気持ちは戻らずに、
苦しさに身を任せて口が緩み、性器の挿し抜きがされるがままに許される。
おぞましさもさながらだが、呼吸のコントロールを奪われた苦しさはそれ以上に尋常ではない。
苦悶から逃れようとアカギの頭が四方に揺れもがく。
それを押さえて男が固くなっていく男根を奥につつくようにして留めれば、
邪魔な肉塊を押し出そう、飲み込もうと、ほとんど本能的にアカギの舌の根元が反応する。
なんとかその生臭い異物を排除しようと、蠢き、喉を締め、舌の腹で押しやろうとする。
まるきり愛撫のように動く柔らかい咥内に、男がにやにや笑いながらアカギの頭を撫でる。
よしよし、なかなか上手いじゃねえか。
よかったなあ。そんなに美味いかあ。もっとやらせてやるよ
愚昧な幼な子をあやして口を動かせているかのように男は撫でる。
いい気味だと嗤い声が響いた。
更に男は周りの男達を見回して言う。
おい、こいつ結構いけるぜ、やってみるもんだ。てめえらもやれよ。
275風と木の名無しさん:2010/01/24(日) 00:17:33 ID:+1OkYfz00
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・ ) 規制回避のためいったん中断します
276風と木の名無しさん:2010/01/24(日) 00:26:31 ID:jhnP1N2f0
es
277風と木の名無しさん:2010/01/24(日) 01:23:15 ID:+1OkYfz00
|> PLAY.  ピッ ◇⊂(・∀・ )再開ダヨー
278アカギ(13)「制裁」7/12:2010/01/24(日) 01:25:53 ID:+1OkYfz00
「そうだな、天才だのなんだの言われてたってえよ、
こうして押さえつけちまえば、なんてこたねえただのガキ……!」
「全く、あんなイカサマに違えねえような勝負しておいて、
ここから無事に出られるとでも思っていたのか」
「さて、生意気なガキに大人の怖さってもんを味わわせなくっちゃあな」

調子に乗った男達の下品な笑い声と息遣いがアカギに降ってくる。
ようやく鼻にかけられた指を離されたかと思えば、
必死で息をするアカギの顔に寄ってたかって男根が押しつけられていく。
「ほら坊主、こっち向けよ。あの点差じゃ点棒一本じゃ足りねえよな」
「そうそう、ちゃんと点数分受け取らないとな。だから俺の点棒も受け取ってくれよ」
口に押し込まれるばかりか、顔のあちこちに近付けられる醜悪な肉塊。
逃れようと首を振りたくとも、顎をしっかり固定されていては逃れようがない。
びたびたと頬をつつかれ、擦られ、気持ちの悪い体液でアカギの顔が汚れていく。
けれどもこれほど凌辱されながら、必死に息を継ぎながら、
アカギの目の光は冷えついて、死んだマグロのように微動だにしない。
まるで世界から剥離したような目つきだ。
「なんだなんだ、こんなときにこんな目する奴初めて見たぜ。
冷静っつうか全然平気そうっつうか。
こんな人形みてえな無表情に突っ込んでてもイマイチなんだけどなあ……」
後ろに回った男がアカギの下半身に腕を伸ばした。
279アカギ(13)「制裁」8/12:2010/01/24(日) 01:28:10 ID:+1OkYfz00
「!…っ、……っ!」
アカギが押さえられた腕を振り、身を捩らせる。
勿論そんな動きはなんの抵抗にもならず、アカギはあっさりと下着ごとズボンを脱がされてしまった。
アカギの若い素足、程良く締まった腿、そして臀部が露わになる。
超人めいた精神とは打って変わって、年齢相応の少年らしい下半身だ。
その足の間に野蛮な男の手が荒々しく入り込む。
「……が、っじゅ……!」
アカギが何か言いたそうに喉を動かすが、口いっぱいに詰まった肉塊が邪魔で言葉にはならない。
代わりに男の先走りの混ざった唾液が唇の端から流れる。
周囲の屹立した男根と比べれば幼茎と言っても差支えない、成長途中のアカギの性器が、
ヤニ臭い男の指に握られて無遠慮に扱かれる。
流石のアカギもこれには反応せざるを得ない。
「ちょっとつらそうになってきたなあ、坊主」
「いいじゃねえかその顔、目を白黒させてよ。そういう顔の方がそそるぜおい」
「そうそう、そういう年相応の可愛い反応をしてくれたら、
優しくしてやってもいいんだ、へへ……!」

上半身に乱れた学生服を羽織い、下半身を裸に剥かれたアカギは、今ややられたい放題だった。
手で弄られていただけの性器は、いつのまにか男の咥内で啜られていた。
上からも下からもアカギに押し寄せる異様な感覚。
太く臭い肉棒をしゃぶらされ、体中に生臭くこすりつけられ、
股間には気持ちの悪い男の口が張り付いている。
「おいおいお前ちょっとがっつきすぎじゃないかあ?」
「だから言ったじゃねえか、俺はこういうのがイイんだってよお。
本当美味えよ、やべえよ……」
「やべえのはてめえだろ!全くどういう趣味してんだ、ははは……」
やり取りをしている一人はアカギの股間にむしゃぶりついている男だ。
始末の悪いことに、それは初めにアカギに目をつけた男だった。
280アカギ(13)「制裁」9/12:2010/01/24(日) 01:31:01 ID:+1OkYfz00
鬱憤と欲望を晴らすだけの他の男達とは違って、その男は完全に、少年の身体そのものに欲情していた。
男はアカギに性感を与えるためというよりは、むしろアカギから精力を吸い取るように、
自分の欲望を満たすために、ずっと執拗にアカギの性器を愛撫している。
生温い口腔内で、隅々まで舐めまし、嬲り、吸いつく。
溜まりに溜まった少年愛願望の成就に狂喜して、アカギに酔うようになってなりふり構わず責め立てる。
「……はっ、……うあっ……っ」
13歳の少年にとって、流石にこれはもう今まで想像したこともない異常な事態だ。
いくら神がかったアカギでももう、身体と思考、感情が結びつかなくなっていく。

「は、ハァ、ア、ハァ……」
「坊主、もういっぱいいっぱいだな?」
「気持ち良さそうな顔してよお……!たまんねえって顔に書いてあるじゃねえか」
「おっと、もしかして出すの初めてかあ?」
「……うぐ、う……っ!」
「へへ、イイ顔になったところだし、そろそろぶっぱなしてやるか」
その言葉と同時に口を犯していた男の動きが性急になった。
口の端から涎がだらだらと溢れ流れていくことにも構わずに、男が力の緩んだアカギの口をガシガシと荒らす。
肉塊が一瞬膨らんだ。
「……っ!?……っ、ん――!!……おェ、えっ、んむ――!」
奥まで突き立てられた後に勢いよく発射された精液が、容赦なくアカギの喉と咥内を犯していく。
たまらずにえづくアカギを容赦せず、しっかりと顎を押さえて、
男が腰を突きつけて最後まで全てアカギに注ぎ込む。
口を塞がれては飲まざるを得ず、アカギはどろどろの精液を喉奥へと下していく。
男の濃い精液が喉にねばりついて流れていかない。
こくこくとアカギの喉仏が動く。
281アカギ(13)「制裁」10/12:2010/01/24(日) 01:35:24 ID:+1OkYfz00
男がようやくアカギから離れた。
アカギはやっと自由になった口で荒々しく呼吸を繰り返す。
けれどもとてもではないがアカギに落ち着くことは出来なかった。
未だ絶えずあの男がアカギの下半身を夢中で弄んでいる。
負担がひとつ減った身体はむしろ下半身からの性感を余計に大きく響かせた。
急にアカギの意識の中に身体からの感覚が襲い込む。
性器が嬲られている。蕩けてどろどろに男の咥内と混ざっている。
意識が捕らえられれば同時に身体全体をそれが襲ってくる。
何本もの男の性器に囲まれた中、アカギは腰を揺らして悶えた。
「……っ!やめ、ろ……う、う……!!」
そして腰を震わせながらアカギは達した。
それはあっけないくらい唐突で、早かった。

「あっ、はあっ、うあっ……!」
幼茎の先端から何回かに分けて吐き出される精液に合わせるようにアカギが喘ぐ。
初めての露骨なアカギの反応に男が満足そうに、
そして美味そうにその精液を口内で受け止めた。
男が直にごじゅごじゅアカギの薄い精液を飲んでいく。
腰をしっかりと掴まれて、アカギはその間さえ逃れられない。
射精し終わった後でも、まだ足りないと言わんばかりに男は執拗になおも竿に吸いつく。
快楽を底の底まで吸い出すようなその吸引がアカギを更に苦しめる。
心臓はどくどくと脈打っていた。気がつけば汗で制服が張り付いている。
アカギは上を仰いだ。
嫌そうに瞼を閉じ、頬を上気させ、半開きの口から何度も息を繰り返す。
そうするとやっとアカギは年齢さながらの容貌になった。
指先にさえ力がこもらない。自分に向けられた肉塊も今は目に入らない。
初めての絶頂が気持ち悪いはずなのに気持ちよすぎて、もう訳が分からない。
アカギはそんな幼くなった顔を晒している。

長い昂りが終わっても、未だ男は愛撫を終わらせずにしがみついている。
下半身が離されないことに気付いてアカギが振り向き声を上げようとする。
それを遮るように、アカギの口に再び別の男根があてがわれた。
282アカギ(13)「制裁」11/12:2010/01/24(日) 01:37:14 ID:+1OkYfz00
おまけ


少しだけ時間が経った。雀荘内には相変わらず熱気がこもっていた。
何人かの後、アカギの口を犯そうと交代しに来た男が、不意にアカギの目を覗いた。
最早目の前の少年の身体は一時の欲望の捌け口としか扱われていなかったが、
男にはあれだけ生意気で不動だったこの少年が
今どんな卑しい顔をして犯されているのか見てやろうという気持ちがあったのだろう。
けれどもその瞬間、男は夢から覚めたようにぞっとした。
アカギの目には何の色もなかった。
初めの時のような冷えついた目に再び回帰していた。
性器を弄ばれ無理矢理達せられたときにだけ晒していた乱れぶりも今はもうない。
ただ色がない。

あまりのショックで壊れてしまったのだろうか。
いやそうではない。
その目は何かを見切ったように男には映った。
男にとってはこんな姦淫など狂気以外の何物でもないと思っていたが、この目は違う。
この狂乱を狂気などとは捉えず、こんなもの腐った戯れだとでも言いたげな、
そして今の自分の身や周りの男達、それどころか全てへの興味がないような……。
283アカギ(13)「制裁」12/12:2010/01/24(日) 01:39:23 ID:+1OkYfz00
何を考えているのか、何を思っているのか。
アカギの心中は男には到底察することなど出来なかったが、
ただその目と合ったままで飲み込まれていくことに、男は空恐ろしさを感じた。
得体が知れない。
蹂躙したはずなのに、逆にこっちが闇に片足を踏み込んでしまったかのように男には思えて仕方がない。
男は降ってきた慄きを吹き飛ばすように、がむしゃらにアカギの咥内を犯した。
いきなり始められた荒々しい強制口淫によって、
アカギはされるがままに頭を前後に振るばかりだ。
下半身は未だ男の手中で弄られ、尻さえ愛撫され始めている中でのこのアカギの状態。
男に降りたおかしな直観は他の誰にも気付かれることはなく、
周りの男達はこの狂った雰囲気に圧迫されるように、アカギに一層と群がる。
男達は目の前の少年に向かって精液を垂らし、代わる代わる口に突っ込み、
身体に手を伸ばし、後ろへと回る。
終わらない行為にアカギはただ喘いだ。
アカギの白髪や顔、体中を、男達の精液が更に汚していく。



その後数ヶ月から数年に渡ってこの場に居た者達の全ては
全財産を失い、或いは二度と元通りには戻らぬ身体にさせられる。
お前を本当の狂気に引き摺りこんでやろうか。
そんな目で闇からひたりと現れたアカギによって。

『久しぶりだな。覚えているか。
いやそんなことじゃない。ただ俺はお前と賭けがしたいだけだ。
ただし天井は……ククク……!』
284風と木の名無しさん:2010/01/24(日) 01:41:03 ID:+1OkYfz00
 ____________
 | __________  |
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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧    アカギしげるの揺れない心を凌辱するの難しすぎワラタ
 | |                | |     ピッ   (・∀・;)    ……書いた後神域見て全力で土下座した
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
285風と木の名無しさん:2010/01/24(日) 01:44:34 ID:EArz52VJ0
>>284
アカギの狂気がひしひしと感じられて、でも年相応なかんじもして
とてもよかったです
長編乙でした
286風と木の名無しさん:2010/01/24(日) 08:07:47 ID:WyC4KT1V0
>>284
アカギ読んだことないんだけどエロい文章にヤラレタ
GJでした!
287風と木の名無しさん:2010/01/24(日) 13:08:31 ID:8vEJCHtr0
>>262
GJ!前回もGJでした
すごく綺麗な文章に惚れてうっかり板缶に目覚めたwくっついた過程が気になるw
季節1からずっと板は受寄りかと思ってたけど攻だと異常にかっこいいなー
スーパーかっこいいじゃなくてどこかくたびれた中年的な良さがリアルで素敵です
缶もドラマそのままみたいで禿げ萌えました、ありがとう!
288風と木の名無しさん:2010/01/24(日) 15:37:28 ID:kqJ0WxKL0
>>284
アカギ13とリンカーン物が大好物な私は狂喜乱舞でした超GJ!!!
289風と木の名無しさん:2010/01/24(日) 16:45:00 ID:nTc7FZVP0
>>284
モブ×アカギで、愛のないレ○○物が好きなので、最高でしたありがとうございました!
290東洋 ボケ×ツッコミ 1/2:2010/01/24(日) 19:09:03 ID:vGnr0V3f0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  ゲ仁ソ東洋ラヅオ ボケ×ツッコミ ボケ一人称
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  チュー止まりらしいよ
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

291東洋 ボケ×ツッコミ 1/2:2010/01/24(日) 19:10:18 ID:vGnr0V3f0


収録終わりに、久しぶりに自分の家で飲もうかと誘うと、尻尾をブンブン振って(いや、尻尾ないけど)ツンゴはついてきた。
なんだかふと学生時代に戻ったような気がして、ソファに二人で座ってぽつりぽつりと話していると、不意にこちらに向き直り彼は俺の目を見つめて言う。

「前から言ってたし、こんだけ一緒にいても言わなきゃ伝わんないと思うから言う。」
「?」
グラスを手に持ったままキョトンとしてしまう俺。ツンゴは少しのアルコールでほんのり頬から耳に赤みがさしている。

そして、あっちゃん大好きだよ、といつもの調子で言ったその鳶色の瞳はまったく冗談を言っていなくて、静かに光に瞬いていたので、俺はその輝きを思いのほか長い間見詰めてしまった。
「オイオイ、なんかあるでしょーよ!」
 肘でツッコんでくる。咄嗟に言葉が出なくて、ただ素直な脳内が漏れだしてしまった。
「いつまで経ってもキラキラしてんな、お前」
目を少し見開いたその顔は、至近距離で見ると余計色素の薄さが目立つ。あ、冒しちゃってもいいかな、過ち、なんて、もともと誰よりも近くて、その一線なんてあってなかったようなものなので。
 過ちというかきっと自然な感情の流れだ、と納得して、自分が次のステップに進もうとしていることと、行為に及ぶという展開の自然さにこの世界はネジが何本か飛んでいるという気になった。
 二人で笑い合いながらグラスを置く。肉の薄い肩を抱き寄せると、懐かしい香りとアルコールの匂いが混じる。
 きっと俺はわかっていたのだ。一目惚れとは言わないが、辛かったことも何もかも乗り越えていく過程で、何よりもこいつが大事になることを。
 出会ったときからきっと気付いていたに違いない。
 そのまま黙ってぎゅう、と抱きしめる。
292東洋 ボケ×ツッコミ 2/2:2010/01/24(日) 19:12:08 ID:vGnr0V3f0
 顔を上げたツンゴは、心底嬉しそうで、先ほど口にしたこととは裏腹に俺の脳内を見事にキャッチしたようだ。
「うん、キラキラするよ? 精一杯キラキラしてやる、何十年後でも。ここで」
「頼もしいねそれは」
ツンとした鼻先をくすぐり、そのままゆっくり唇を吸う。
 薄いくちびる。上、下の順に啄んで、ていねいに歯列を舐める。不敵に上がった口角も。
 番組企画では幾度かキスしたことがあるものの、真剣なキスは初めてだということにふと気付いた。
 ゆっくりと少しだけくちびるを離す。視界にキラキラの瞳が映るところでストップ。
「アッハ、糸引いてる。スゲーねあっちゃん、エロイなー」
いひひ、と笑う顔をじっと観察する。うーん、造形美だ。
なんというか。自分の好みなんだろうなとは思うが、
あらためて『かわいい担当』の力を確認させられるようで、褒めれば喜ぶのだろうがなぜか悔しい。
「あっちゃん?……あ、オレ今日はやめないかんね?
ぜってー最後までやるから。最初から最後までやるから。
そんでめろめろにさせたる」
ニッ、と笑う顔に、思い出したことがある。喧嘩のことだ。
彼は、その時、もし友人のままなら、ただずっと笑いあっているだけでよかったのに、と思ったと言っていた。
しかし、困難も何もかも引っくるめて、ずっと隣にいたかったのだと。強がりでもなんでもなく、ごく自然にそう言っていた。
思えばそういった、この天真爛漫さは何度も自分を救ってきたのだ。
「あは、はははは!お前やっぱり最高だわ」
「…何さ?」
「お前しかいねーわってこと」
「何、急に」
くすくす笑う相手に確かな欲情を感じて、上体を押して、ゆっくりとソファーに倒していく。
最初から最後までだろ。
それは今日も明日もずっと続いていく毎日にも当て嵌まるようだ。
そう考え、そしてその思いが伝わればいいと思いながら、
まだ笑いの余韻に震える鎖骨に、最初のキスを落とした。
293東洋 ボケ×ツッコミ :2010/01/24(日) 19:14:49 ID:vGnr0V3f0
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 | __________  |
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 | | □ STOP.       | |                   
 | |                | |           ∧_∧      改行ミスって申し訳ない…
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )   エピソード改変しております…
 | |                | |       ◇⊂    ) __  ありがとうございました!
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |


294風と木の名無しさん:2010/01/24(日) 22:56:31 ID:MU0fka930
>>284
長編乙&GJ
最後までアカギらしさがちゃんと表現されていてとてもよかったです!
295般若 某CM設定 「本気で、フミダス。」 0/4:2010/01/25(月) 00:23:01 ID:0s7YBRTh0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  生 鯨仁 般若 You Can(カナ読み)設定
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  とても801っぽさが少ないかもよ 
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ゼンペンwebデミレルヨ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
あえて本人様ではなくCM設定です。
ダメな先輩→行.政.書.士.になりたかった後輩
※CMネタバレ注意 webで般若編を全部見てから読む事をお勧めします
296般若 某CM設定 「本気で、フミダス。」 1/4:2010/01/25(月) 00:25:34 ID:0s7YBRTh0
「俺が本気出したら、人生なんて余裕だし!」

 いつだったか、中学生の時に後輩に言った覚えがある。
部活で使う荷物を背負ったまま、後輩はこう言った。
「じゃあ見せて下さいよ、本気。」

 俺が本気を出したのはたったの2回。
アイツが一度イジメに合っている所を助けた時と、ネットゲームの中で戦っている時。(まぁ、神って言われてるしな、俺)
 本気を出したら凄い事になる、とは言うものの、それはまともになった事は少ない。
言うだけ言って、結局、どうにもならない。
 そう思いながら、これから先もずっと、なんら変わりのない人生を送るは
ずだった。

だが、
今は違う。
今の自分は本気を出す事が出来る。
今の自分は何だってやれる。
資格だって、その気になれば取れるはず。
死に物狂いでやってやるという決心がある。


アイツのために。
297般若 某CM設定 「本気で、フミダス。」 2/4:2010/01/25(月) 00:26:46 ID:0s7YBRTh0
 武.志が、死んだ。
俺の一つ下で、いじめられっ子で、行.政.書.士を目指していた、武.志が。
事故に遭ったと、警察が言っていた。
 あんまり唐突だったから、嘘だと思った。
現実味が無いから、いつものようにコンビニで立ち読みをしていた。
いつものようにコミック誌を読んで、破らないと見れない付録を破らずに見ようとしていた。
 ふと、あの時アイツが声を掛けてくれたことを思い出した。

「ア.キ.ラさん。ア.キ.ラ先輩っ。」
「うわ、ちょ…、なんだよアキラかよ…。」
「相変わらずですね、ア.キ.ラさん。」

一緒に、居酒屋で飲んだときのことも思い出してしまった。

「ア.キ.ラさんは本気でがんばっていることって、あるんですか?」

武.志。俺な、まだ、ねぇんだ。
まだ本気なんて出したこと、無いんだよ。
でも…、でもよ、お前待てよ。なんで死んじゃうんだよ。

「俺まだ…、アイツに本気見せてねぇし…」

声を殺して、泣いた。
 ああ、俺の中で武.志はこんなに大きい存在だったんだな、と思った。
俺、アイツの事、知らないうちにこんなにも大切だと思ってたんだ。
世話焼きだけど、好きで好きでしょうがなかったんだ。

その時に決めた。
武.志が果たせなかった夢を、俺が果たそう、と。
298般若 某CM設定 「本気で、フミダス。」 3/4:2010/01/25(月) 00:28:07 ID:0s7YBRTh0
筆で「本気」と書いた半紙を部屋の壁一面に貼った。
何枚書いたかも分からない位書いた。
 墨汁は、ちゃんと硯で磨ったものを使った。
それ位、俺は本気なんだ。そう見せ付ける為に。
 ハチマキにも「本気」の2文字。なんだか、ビシッと見える気がする。
気合を入れるためでもあるけど、本気だということを上にいる武.志に見せたいから。
「よし・・・。」
 軽く意気込んで、届いたばかりの教材を開く。民法なんて、何年ぶりに聞いた言葉だろう。
 一目見るなり、中身はマンガやイラストもあって分かりやすそうだ。
こういうのは内容がズクダンズンブン…じゃなくて、ちんぷんかんぷんなものだと思っていた。
 これなら、取れるかもしれないと思った。いける、やれる。絶対に途中で投げ出さないで、ちゃんとしてみせる。

アイツのためにも、夢を叶えるんだ。


「僕ね、行.政.書.士.目指してるんです。」
「ぎょ…、ぎょう、ぎょうせ、しょ…?」
「行.政.書.士です。」
「な、なんだよ行.政.書.士って。」
「行.政.書.士って言って、書類とかを作る仕事なんです。」
「へぇー…。」

まってろよ、

お前の夢は、おれがかなえる。
299風と木の名無しさん:2010/01/25(月) 00:28:47 ID:Do/IvsCn0
>>262
前回から密着度が上がっててフォアアアアアーー!!!と変な声出ました
いつも滾る萌えをありがとうございます
300般若 某CM設定 「本気で、フミダス。」 4/4:2010/01/25(月) 00:29:26 ID:0s7YBRTh0

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 | | □ STOP.       | |                   
 | |                | |           ∧_∧    なんかもうゴメンナサイ 
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )   
 | |                | |       ◇⊂    ) __  
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

勢いに乗った。反省はしているが後悔はしていない。
スランプ脱出するべく書いたが、出来が良くないような…。
でもこれで萌えてくれる姐さんがいるならありがたい。

表現等で不可解な思いした方がいたら謝ります。すみませんでした
301風と木の名無しさん:2010/01/25(月) 01:07:21 ID:BME91GqO0
>>300
萌えましたよーGJです!
切なくて泣けてきます

>297で「ア.キ.ラ」が二人いてもキニシナイ!w
302風と木の名無しさん:2010/01/25(月) 05:58:10 ID:D2jA/kO00
>>284
姐さんのせいでfkmt作品を腐った目で見れるようになってしまったよ
どうしてくれる!アカギ受最高じゃないかはあはあ!
303風と木の名無しさん:2010/01/25(月) 07:52:59 ID:wRgcAn+z0
>>300です

>>301さん
なん…だと…?
ちょっとまとめサイト行って修正してきます
304月光 1/5:2010/01/26(火) 00:29:42 ID:bQ0fwgTo0
タイガードラマ半ナマ…?
史実考証とか辻褄合わせはあきらめた!
トサ弁もあきらめた!
エロも(ry
なまぬるく許してつかーさい!
史実では13歳の涼真×19歳の先生ってとこだが
涼真15歳くらいでお願いしたい!

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
305月光 2/5:2010/01/26(火) 00:31:53 ID:bQ0fwgTo0
「リョーマー!!リョーマー!!!」
おなごの声で稽古が中断して
ほどなく姉やんが道場に駆け込んできた。
「どうしたがじゃ姉やん血相変えてー」
「竹知さんの…お母上が亡くなったって…早うあんたも帰って支度しーや!!」
「は…?竹知さんとこはこないだお父上が亡くなったばっかりじゃないがか」
「ほれぼさっとしとらんで早う!!」

姉やんに急かされ竹知家に参じると、すでに竹知さんの嫁いだ姉様方やご親戚の手により弔問の準備が整っていた。
竹知さんの姿を探す…いた。弔問客に礼を述べる姿はいつもどおり凛として一分の乱れもない。
ついひと月前にも見た姿。お父上が亡くなり、消沈したお母上の代わりに立派に喪主を務めていた。
あれからたったひと月…竹知さんの悲しみを思うと何も言葉が出て来ない。
わしも姉やんに連れられ挨拶に行ったが口の中でごにょごにょ言うて頭下げるくらいしかできんかった。
竹知さんはそんなわしにも深々と頭を下げていた。
つと、竹知さんを見やる。
青白く表情のない顔はひと月前と同じだが…
(竹知さん…また痩せとる…)
お父上が倒れられたとき、お城に代勤していた竹知さんは急ぎ帰宅し、帯も解かぬまま献身的に看病していたとお医者が言っていた。
父の葬儀で悲しみを見せず、母を助け、気丈に振舞う姿が周囲の心を打ち、助力を申し出る者が後を絶たなかったという。
そして今度はお母上…。
306月光 3/5:2010/01/26(火) 00:34:31 ID:bQ0fwgTo0
わしの母上が亡くなったとき、竹知さんは酒元家に来て父上に頭を下げた。
いわく、「わしが涼真をちゃんとみていれば、わしがお母上に助けを求めなければ、お母上は死なずに済んだのだ」と。
竹知さんが自分を責めているなど思いもよらんかった。
襖の陰で聞いていたわしはびっくりして飛び出そうとしたが、姉やんに止められた。
部屋では父上が「おんしがおったから涼真は助かったがじゃ。幸もおんしに感謝しておる。」と諭していたが、
「わしが涼真からお母上を取り上げたんじゃ。わしにはもう涼真にあわす顔がない!!」っちゅう竹知さんの搾り出すような声にたまらず姉やんを振り切って竹知さんに飛び付いた。
「涼真…」
「竹知さんのせいじゃない!わしが…わしが」
わしは竹知さんが自分を責めていることも竹知さんに会えなくなるのも悲しうて悲しうて涙と鼻水でぐしゃぐしゃじゃったが、竹知さんの目からも一筋の涙が流れとった。
「竹知さん、涼真に会えないなどと言わんどいてつかーさい。あんたには涼真の手本になってもらわんといけんがじゃき」
父上がそう言うと、竹知さんはわしの背に腕を回し力強く抱きしめてくれた。
「涼真、おんしはわしが守るき」




通夜ふるまいの煮炊きの薪割りやら火起しやら雑用にこき使われてやっと座に着いたとき
竹知さんの姿が見当たらなかった。
「竹知さーん?」
中庭に出てみるが、いない。
一旦屋敷に戻って綿入れを失敬し、屋敷の裏手にまわってみた。
307月光 4/5:2010/01/26(火) 00:37:26 ID:bQ0fwgTo0
竹知さんが、いた。
薄着のまますっと立ち、月を見ているようだった。
そのまま月光に溶けて消えてしまうような危うさを感じてあわてて声をかけた。
「竹知さん」
「涼真」
「どうしたがかえ。寒いですろ。これ着てつかーさい」
「いや…わしはいい」
竹知さんの手を取った。氷のようだ。
「ほら、冷え切っとられます」
竹知さんが拒まないのでしばらくそのまま手をさすっていた。
沈黙が落ちる。
ぱたり…
手に冷たいものが落ちてきた。
はっとして竹知さんの顔を見る。
表情は硬く凍ったままだったが、深い色の瞳がゆれ、透明な雫がしたたっていた。
「わしはもう竹知家の当主じゃ。侍は泣いてはいかんのに」
隠さねば、と思った。この気丈な人がちゃんと泣けるように。
とっさに竹知さんの腰と肩に手を回し、抱きこんでいた。
こうしてしまえば自分の羽織った綿入れに竹知さんの姿が隠れてしまう。
「涼真…何」
「誰も見とらんけ、泣くんじゃ」
「え…」
わしはもうなにも言わんで、じっと竹知さんを抱きしめとった。
しばらくして、竹知さんの肩がかすかに震えだし、鼻をすするかすかな音がした。
肩口が少し冷たい。
ずっと堪えていたのだろう。いじらしく感じて抱きしめた腕に力が入った。
竹知さんの首筋が見える。やっぱり痩せた。月光に骨が浮いて見える。
腕の中の背と腰はしなやかに細かった。
猫のようじゃ…そう思ったとき、腰のあたりがズンと重くなった。
308月光 5/5:2010/01/26(火) 00:41:08 ID:bQ0fwgTo0
この感覚はまさか…
いかん!何を考えちゅうがか!わしは竹知さんに何を!
考えまいとすればするほど、白い首筋に歯を立てたい、細い腰をまさぐりたい欲求が湧き上がってつい前かがみになってしまう。
あわてるわしをよそに竹知さんの腕がそろそろとわしの背にまわる。

「ん?」
気づかれた!?
「なんか大きくないか?」
ばれた。
わしの肩口から顔をあげ、竹知さんがこちらを見ている。
泣いたせいで鼻の頭が赤い。黒曜石のような目が潤んで色っぽ…いやいやいや。
終わりだ。竹知さんに嫌われる。
暗澹たる気持ちで腕を解くと、竹知さんが力の抜けた顔で言った。
「おまえ…わしの背越したか?」
「すんません!!……は?」
「肩幅も。わしより広い?ばかな」
竹知さんはいやそんなはず…とぶつぶつ言っている。
はは…ばれてなかった。
「あんなこまかった涼真がいつの間に…もうおぶってはやれんな」
そう言うて竹知さんが笑った。
「これからはわしが竹知さんを背負うちゃるぜよ」
竹知さんは
「なまいきじゃ」
と笑って通夜に戻って行った。


わしが…竹知さんを守るき。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
改行ヘタいわエロないわでいろいろすみません。すみません。
309風と木の名無しさん:2010/01/26(火) 01:01:14 ID:NpMW1MH/0
>>304
ひいやあああああ!萌えた!GJGJ
センセーは確かにリョマの母上のことを気に病んでそうだなあ…
月明かりに溶けてしまいそうなセンセーから大切な人を守りたいリョマから
まだまだ幼い色気成分に微笑ましいオチまで楽しませて頂きましたd!
おかげでリョマタケに目覚めそうぜよw
310風と木の名無しさん:2010/01/26(火) 22:10:40 ID:X0C8+UN50
>>304
うわあああああ素晴らしいです!すごい萌えました!
いいなぁ、先生もリョマもそれぞれ違う色気や可愛さを持っていて本当に萌える。
311風と木の名無しさん:2010/01/27(水) 14:42:13 ID:tNTzVoIJ0
あげ
312風と木の名無しさん:2010/01/27(水) 14:42:34 ID:tNTzVoIJ0
あげ
313風と木の名無しさん:2010/01/27(水) 23:17:04 ID:NTo3f2RL0
蛙軍曹の紫→←赤 エロ無し

うっかり紫赤兄弟に萌えてしまってコソーリ投下
発情期をネタにした捏造昔話
紫が軍に入隊済み、赤は地球でいう中坊ぐらいの年齢設定で

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
314蛙軍曹 紫赤 1/8:2010/01/27(水) 23:17:54 ID:NTo3f2RL0
遠い銀河で、華々しい戦果を挙げた自慢の兄が
久しぶりに休暇を取り、帰省してくると聞いて
ギロロは、何日も前からその日を心待ちにしていた。

それなのに。
家に帰ってきたガルルは、自分とは目も合わせぬまま、自室に閉じこもってしまった。
食事ですら部屋に運ばせて、一人で済ませている。

ニュースや人の噂で伝え聞くだけだった、遠い戦場の輝かしい侵略作戦の様子を
兄本人の口から聞くことを楽しみにしていたのに。
ギロロが、何度部屋の外から呼びかけても、ガルルは応える気配すらない。

とうとう、ガルルがこの家で過ごす、最後の夜が来てしまった。
明日の朝には、前線へ帰隊するという。

今夜を逃せば、また何ヶ月も兄に会えない。
ギロロは、意を決して兄の部屋の扉を叩いた。

「おい!ガルル!」
例のごとく、返事は無い。
「ガルル!!いいかげんにしろっ!!」
ドアを叩く手に力がこもる。

「このまま、何も話さないままで、また行っちまうつもりかっ!!」
叫ぶ声も大きくなる。時刻はもう夜半を過ぎていたが、そんな事には構っていられなかった。
「ガルル!ここを開けろっ!!ガルルッッ!!」
強く叩きすぎて、拳が痺れてくる。

ダンッダンッとしばらく無言で叩き続け、それでも全く反応の無い扉に腹が立って
両手で叩くのと同時に、思いきりドアに頭を打ち付けた。
315蛙軍曹 紫赤 2/8:2010/01/27(水) 23:20:22 ID:NTo3f2RL0
ガンッと一際大きい音がして、ギロロの額に衝撃が走る。
その痛みと、返事を貰えない悔しさで、目に涙が滲んでくる。
「―――にぃちゃんっ…」
泣きだしそうになるのを堪えて、幼かった頃の呼び方で声を振り絞る。

と、いきなり、ギロロの目の前のドアが開いた。
支えを失った体は、部屋の中へと前のめりになって、転がり込む。

ギロロは、咄嗟に両手をついて、床への激突を免れる。
ふと傍らに目をやると、暗闇の中、ガルルが音も無く立っていた。

部屋の照明は全て消されていて、窓から差し込む街灯の僅かな光が
兄のシルエットを、浮かび上がらせている。

「…ガルル?」
ようやく扉を開けてくれたものの、立ち尽くしたまま、自分を見ようともしない兄を訝って声をかける。
ガルルの肩が、ピクリと震えた。

ギロロは、部屋に転がり込んだ拍子に四つん這いになっていた体を起こして、動かない影に近づく。

「来るなっ!」
拒絶の言葉に一瞬ひるんだものの、苦しげに浅い息をする兄が気がかりで、ゆっくりと側に寄っていく。
額に脂汗を浮かべ、浅い呼吸を繰り返す、小刻みに震える体は、じっと何かを耐えているようだった。

「どうしたんだ…ガルル…どこか、悪いのか?」
震える肩に手を置こうとしたギロロを、ガルルは身を引いて避ける。
「…触るな」
部屋が暗い上、俯いているガルルの表情は全く分からないが、その声音はとても苦しそうだ。

「…すまない…ギロロ…」
316蛙軍曹 紫赤 3/8:2010/01/27(水) 23:22:42 ID:NTo3f2RL0
 # # #

発情期だと気付いたのは、休暇を過ごす為に、実家へと急ぐ車の中だった。
(よりにもよってこんな時に…)
ガルルは、苦々しく舌打ちをする。

微かに火照りを帯びる体の、奥底から湧き上がる欲情が
思い起こさせるのは、本来なら発情の対象となる異性の姿ではなく
無邪気な笑顔の彼の弟―――ギロロ。

いつからだろう。
自分を慕ってくれている弟に、家族愛以上のものを己が抱くようになったのは。

それは、決して悟られてはいけない想い。
ガルルは欲望を心の隅に押し込んで、良き兄としてギロロの前では振舞ってきた。

それが今、発情期という自然の摂理によって箍が外されようとしている。
しかも、これから弟本人に会い、数日を一緒に過ごすというのに。

(しばらくは、部屋に篭るしかないか)
ふっと短いため息をついて、ガルルは車のスピードを上げた。

家に着くと、出迎えてくれた家人との挨拶もそこそこに、自室へと急ぐ。
後ろから不満げな声が追いかけてきた。ギロロだ。

ガルルは振り返りもせず、目を瞑ってやり過ごす。
応えられない、応えてはいけない。今は。

数ヶ月ぶりに見る自分の部屋は、家族が掃除をしてくれていたのだろう、埃ひとつ落ちていない。
手に持っていたカバンを、適当に放り投げると
ま新しいシーツのかかったベッドへと、仰向けに倒れこんだ。
317蛙軍曹 紫赤 4/8:2010/01/27(水) 23:25:10 ID:NTo3f2RL0
まあ、久方の帰省で気が緩んだだけだろう、しばらく安静にしていたらすぐに収まるだろうと
高をくくっていたのに、部屋に篭って二日経っても三日経っても、欲情は収まりをみせない。

少しは静まったかと思うと、部屋の外からもれ聞こえる、まだあどけなさの残る話し声や
この部屋の前を気遣わしげに行き来する、小さな足音を聞くだけで、欲情は易々と甦る。

ギロロが、欲しくて、抱きたくて、堪らない。

しかし、相手は血を分けた、たった一人の弟。
自分を他の誰よりも尊敬し、信頼してくれている、あの澄んだ瞳を、汚すことなどできはしない。
そう理性が叫ぶ傍らで、ガルルの身の内に潜む獣は、毎夜声ならぬ咆哮をあげて、己を苛む。

この欲を満たす術は、容易い。
ここを出て、愛おしい弟の部屋をノックするだけでいい。
自分を信頼しきっている彼は、なんの迷いも無く自分を招き入れるだろう。
兄がどんな欲望を満たそうとしてるのかなど、微塵も気付かないままに。

そしてあの小さな体をこの腕にかき抱いて、唇を奪い
その身を引き裂き、貫いて、弟の全てを自分のモノに…

「なんと、浅ましいっ…!」
そんな妄想を抱く自分が許せなくて、下唇を噛む。
暴走する体を、己の腕で押さえ込むように抱きしめた。
熱い熱いこの体。忌まわしいこの本能。
どうしようもなくて、ただギロロを避けることしか出来なかった。

 # # #
318蛙軍曹 紫赤 5/8:2010/01/27(水) 23:27:33 ID:NTo3f2RL0
なのに今。ギロロはガルルの部屋にいる。
気遣わしげな表情で、手を伸ばせば届く距離に立っている。

「…発情期、なのか?」
しばらくの沈黙の後、ギロロが確かめるような口調で問うた。
ガルルが短く息をのむ。

返事を待たずにギロロが続けた。
「それならそうと、早く言ってくれれば良かったのに」

「俺だって、もう幼年組じゃないんだぜ。その…そういう事もあるって知ってんだ。
 なんにも、恥ずかしいことじゃないって、みんな言ってるぞ。自然の摂理で普通の事だって」
そう言うギロロの方こそ、どこか恥ずかしげで、ついガルルの頬も緩む。

少し笑顔になった兄に気を良くしたのか、ギロロもにっこりと微笑んで言った。
「隠さなくっても良かったのにさ」
あくまで、自分がその欲情の対象だとは、考えもつかないらしい。

その無垢な物言いが、ガルルの心をあわ立たせる。
燃え立つ激情を抑えきれずに、ギロロを両腕に抱き込んだ。

「えっ?!…にいちゃん?」
幼い頃のままの呼びかけが、さらにガルルの欲情を誘う。

「…すまんっ」
熱い息の下、それだけ言うのが精一杯だった。
驚きで少し開いたギロロの口許に、己の熱い吐息を押し付ける。
受け入れ方も知らない幼い唇を強く吸い上げると、腕の中で身じろいで逃れようとする。

追いかけるように深く深く口付けて
それでも、もっともっとと湧き上がる欲に背筋が寒くなり
ふっと我に返って、唇を離し、抱きしめる手を緩めた。
319蛙軍曹 紫赤 6/8:2010/01/27(水) 23:30:16 ID:NTo3f2RL0
ギロロは大きな瞳に涙を浮かべて、兄を見上げている。
怯えるような、その視線に耐え切れなくて、ガルルは目を逸らした。

ギロロを抱きとめていた腕を、ゆっくりと下ろしていく。
「悪かった…だが、これでお前を遠ざけていた理由が分かっただろう」
感情を押し殺し、つとめて平静を装う。

「…出て行け」

突然の抱擁から一転、冷たく言い放たれて
それでもギロロは、兄の側から動こうとしなかった。

「…ガルル…俺は…」
ギロロは混乱する頭で、なぜ兄が自分を抱きしめて、キスをしたのか考えていた。
兄が自分に発情している?自分は、男で、弟なのに?
発情期というものは、それほど激しいものなのか。
あの冷静な兄が、前後不覚に陥るほどに。

混乱する思考の中、ただひとつ、はっきりと思うのは
目の前で、苦しんでいる兄の、助けになりたいという事だけ。

「…俺で、いいんなら。俺は…その…なに、されても、いいから…」

思いもかけないギロロの言葉に、今度はガルルが狼狽する。
(お前で、いいわけじゃない…他の誰でもない、お前が、いいんだ)
(お前が欲しいんだよ、ギロロ。)
声に出せない想いが、胸を駆ける。

「俺は、こんな辛そうな、にいちゃんを見てられないよ…だから…」
ガルルを見上げるギロロの瞳には、憐憫の情が浮かんでいる。
320蛙軍曹 紫赤 7/8:2010/01/27(水) 23:33:03 ID:NTo3f2RL0
(違う。)
(お前から欲しいのは、そんな憐れみの情ではない)
己のプライドがそう叫ぶ一方で、ガルルの身の内の獣が言う。
(憐れみでもいいじゃないか)
(抱いちまえよ。こんなチャンスはもう二度と無いぜ。)
心の、暗く深い淵から湧き上がる、欲望の黒い声。

この欲に、身を任せてしまえば、楽になれるのだろう。
しかし、その先はどうする。
己はともかく、この純真な弟に、同性愛と近親相姦という、重い十字架を二つも背負わせるのか。

自身の罪深さを悟ったとき、ガルルは情欲が引いていくのを感じた。
ちょうど発情期が、終わる時期だったのか。
それとも、ギロロが、自分を受け入れようとしてくれた事の喜びが、狂気を去らせたのか。

「…ガルル?」
遠くを見つめて動かない兄に、ギロロがためらいがちに声をかけた。
「…いや、なんでもない。心配をかけたな、もう大丈夫だ」
にっこりと笑いかける兄の瞳はいつもどおりで、ギロロの緊張もとける。
「そうか、良かった」
無邪気に微笑み返すギロロに、ガルルの身に僅かに残っていた情欲の火が、ちろりと揺れる。
ガルルは軽く頭を振って、その小さな炎を振り払った。

「さあ、もう、部屋に戻れ。夜も更けたぞ」
「あ、ああ…そうだな」
ばつが悪そうに、部屋を出て行こうとする弟へ、ガルルは殊更に優しく声をかける。
「朝になったら、ゆっくり話をしよう。帰隊時刻を少し遅らせてもいい」

その言葉に足を止め、
「…ありがとう、にいちゃん」
そう言って、振り返ったギロロは満面の笑みで、ガルルの胸に愛しさを募らせる。
321蛙軍曹 紫赤 8/8:2010/01/27(水) 23:34:41 ID:NTo3f2RL0
部屋を出て行く背中を、思わず引きとめようとして伸ばしたガルルの右手が
軽く音を立てて閉まったドアに、阻まれる。
行き場を無くした手を持て余し、ガルルはそっとドアに触れた。

その扉の向こう側では、ギロロが元々赤い顔を、さらに真っ赤にしてドアに背をもたれさせていた。
発情期がうつったのかと勘違いするほど、体中が熱をもっているようで
とりわけ、兄のそれと重なった唇が、熱い。

さっきまでの、部屋でのやり取りを思い返すと、また一層頭に血が上る。
兄の助けになるなら、自分はなんでもできると思った。
それは本心に違いないのだけれど。

あの時、ガルルが、望んだことは何だった?
抱きしめて、キスをして、そして…?

湯気が出そうなほど熱くなった顔を、ぶんぶん振ってギロロは大きく息をついた。

自分の部屋へ戻ろうとして、一歩踏み出したものの
なぜだか名残惜しくて、踵を返して兄の部屋の前に向き直る。

ギロロは、閉まったままのドアにそっと手を触れた。
扉の内側で、兄が同じように手を添えているとは知らずに。

もしも、この時、もう一度ドアが開いていたら
お互いが、お互いを拒まなかっただろう、ということは
それぞれの胸の内の、永遠の秘密。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
お目汚し、失礼しました
322風と木の名無しさん:2010/01/28(木) 01:37:20 ID:a2aOYqvBO
亀ですが

>>293
大本命の東洋ktkr
がっつり萌えさせていただきました!
素敵ss投下ありがとうございます
お陰様で週末乗り切れます
セリフや語りがいちいち本人達の声で脳内再生されましたよ…リアリティ抜群でした
匂い立つような色気がたまらんかったです
キスだけなのに…!
ツッコミの可愛いアヒル口を思い出してハァハァしましたw
323風と木の名無しさん:2010/01/28(木) 17:04:24 ID:SaEgbVOFO
亀ですが…

>>100姐さん
ここでまさかの大本命ktkr
読めるなんて思ってなかったよ・゚・(ノд`)・゚・。
規制でずっと書き込めなかったけどやっと伝えられる!
GJでした!
324風と木の名無しさん:2010/01/28(木) 19:11:11 ID:Dt9Lbp7zO
>>262
このカップリングキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
ラム缶も好きだけどドラマを見ててもっと板民と絡むシーンがあればいいのにと思っていた缶スキーなのでGJです!
残りの二割が気になる…Hのテクニック?w

そういえば缶の中の人は何人かの男性から告白された経験があると記事で読んだ事があるのを思いだしました。
こっちから誘わなくても向こうからくるタイプなのかな缶も。
325山の王様 1/3:2010/01/28(木) 21:17:41 ID:8BjIiN1tO
ナマ。今年の国民的某馬尺伝の優月券大学。ネ申童周辺で萌えてみた。




|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!





「う、わッ」
いきなり背後に人の重みを感じて振り返ると、肩越しに長い手足と黒い髪が見えた。
顔は見えないけれど誰だかすぐにわかってしまう。というか、この状況でこんなことを平然とやってくる相手を一人しか知らない。
「・・ちょ、重い」
「うん」
うん、じゃなくて。
全く悪びれもせず退こうという気配も見せない相手に少しだけ息を吐く。
鏡越しに見える目を閉じた横顔は連日の取材攻勢に珍しく疲れているように見えて・・・まあいいか、と緩く思いながらそのままにさせてしまう。
人の背中を枕か何かにして遠慮なくもたれかかってくる同じ歳のエース。
ああそっか、テレビ局で控え室として通されたこの場所には、上級生か、マイペースな1年生コンビしかいない。
もう一人居たはずの2年生は、興味津々な顔であちこち見て来ていいのかなあ?、とあっという間に姿を消していて。
だから、そういう相手は自分しかいない訳だ。
ウェアが触れ合ってシャリシャリとひそやかな音がする。
熱を逃がさない高機能な化学繊維越しにそれでもほんのりと体温ってわかるんだな、そんなことを思いながら手渡されていた進行予定が書かれた紙に視線を落とした。

326山の王様 2/3:2010/01/28(木) 21:21:37 ID:8BjIiN1tO
去年、織田原で。
必死に襷を手渡した相手は、その表情は、自分と同じように一年生、初めての筥音路という大舞台への緊張に強ばっていた筈なのに。
肆区を走った自分が葦乃湖に辿り着いた時には、彼は賞賛と羨望を一身に受け、1時間少し前とはまるで違う唯一の輝きでそこに存在していた。
仇位からの逆転、クカン新、央路優勝。
そして今年。彼よりも周囲が騒ぎ立てて、エースと謳われ、他校から徹底マークも受けていた筈なのに、彼は一番最初に葦乃湖にやってきた。
タオルを持って待ってて、と言われたのは、央路の当日。

おれ?
うん、そう。TVに映るよ?
イヤ別にそれはどうでもいいけど、うん。

トップスピードのまま山を駆け上がり、ゴールテープを誰よりも先に切った彼が自分に向かって飛び込んでくるってことだ。去年見られなかった、世間にネ申童と言わしめた彼の走りと歓喜を間近で見るということ。

・・・それってつまり、自分も流れを作る走りをしないといけないってことじゃないか?、そうじゃないと半分くらいの意味しかないってことじゃないか?と気がついたのは王手町のスタート地点。
そして約5時間後。あの時彼は。
広げていたタオルを半分すり抜けて、勢い余って先輩にぶつかりそうになりながらベンチコートを肩に掛けてもらい。そうして、いきなり自分を振り返って、倒れ込むように抱きついてきた。
知ってる体温、汗の匂いとまだリズム良く躍動する鼓動・・・周囲はみんな笑顔で、その背に腕を回して、あの時はやっぱり感動した、ような気がしたけど。
自分が壱区で出した大学記録を聞いて鼻で笑ったのを見て、あのふわふわした高揚感と特別な空気から、我に返った。
冷静になって今思えば、あの時だって一番近くにいた同級生が自分だったってことなんだろうし。

327山の王様 3/3:2010/01/28(木) 21:24:29 ID:8BjIiN1tO

ふと時計を見ると、番組の時間が迫っていた。出演はチームとしてだけど、背後で目を閉じたままの彼はその前に単独のインタビューが入れられている。
声をかけようかと思っていると、鏡の中で彼が目を開いた。同時にふ、と身体が軽くなって彼が立ち上がったってわかる。
「ありがと」
ちょっとだけ眠そうに掠れた声がして、振り返った時にはもうその後ろ姿は扉を開けて出て行くところだった。スタッフの人がどこかへ誘導していく。
「・・・・なんだよ」
また都合の良い何かにされたように思えて眉をしかめる。
でもさっきまで此処にあった体温と伏せられた瞳を思い返したりしてる自分は、結局残りの2年間もこんな距離感なんだろうなあと、少しだけおかしかった。






□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


同じチームだからこそのライバル心と近い存在感と感情ってあると思うんだ。
来年も一緒に頑張って欲しいな!
328風と木の名無しさん:2010/01/28(木) 21:42:01 ID:Ue3Uc0+X0
>>325
うわああああ!
ありがとうございます!萌えた!はげもえた!
いいですよね登用。振動もそうだけど壱区も可愛い…
329薬と犬と鐘の音 1/4:2010/01/28(木) 21:42:47 ID:FDjFjW+I0
大我ドラマ1話あたりの伊蔵→武智先生+涼真。
武智先生と涼真はたぶん気心しれた友情関係。
何はともあれ、土佐弁に撃沈。寛容に生温く見守ってもらえるとありがたいです。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


その家は主人に似て、いつも小綺麗に整った印象だった。
夕暮れ時の門前、そこで伊蔵は足を止める。
どうしてこんなところまで来てしまったのか。頭の悪い自分は自分の気持ちすら
まとめきれず、少しの戸惑いの後急いでその場から立ち去ろうとする。
しかしそんな背中にこの時かけられる声があった。
「伊蔵か?」
家の中から聞こえてきた声。
それに伊蔵が思わず後ろを振り返れば、そこには玄関口からこちらを眺め見る家の主、
武智の姿があった。
いつも道場で見るのとは違う着流し姿で、それに伊蔵の焦りは更に増す。
「すんません。具合はどうやろかと思うて来てしもうただけですきに。すぐ帰ります!」
慌てて叫び、脱兎のごとく走り出そうとする。
しかしその際握っていた拳の力をグッと強くすれば、途端手の甲に鋭い痛みが走り、
それに伊蔵は思わず手にしていた荷物を取り落としていた。
「…って…」
小さな悲鳴が口を突く。
するとそんな自分に武智はまたしても屋内から声をかけてきた。
「伊蔵、こっちに来いや。」
「えっ、でも…」
「えーから、言う事聞き。」
たしなめるように言うと、武智はそのまま家の奥に入っていってしまう。
だからそれに逆らう事も出来ず、伊蔵は落とした荷物を拾い直すと、トボトボと
気後れする足をその家の方角に向けていた。
330薬と犬と鐘の音 2/4:2010/01/28(木) 21:45:30 ID:FDjFjW+I0
家に上がり通されたのは、縁側に面した武智の部屋だった。
座れと促され小さく固まっていると、その前に薬箱を持った武智が現れる。
そして手を出せと言われ、思わず反射的に両手を差し出せば、武智はこちらだけでいいと
苦笑しながら痛む方の手を取り、一言腫れちゅうなと呟いた。
「誰にやられた?」
問いただしながら、武智はこの時伊蔵の手に箱から取り出した薬を塗ろうとしてくる。
それには伊蔵は答えるより先に驚いた。
「そんなっ、武智さん、ええですきにっ」
慌てて取られていた手を引っ込めようとするが、それを武智は柔らかい力で押し留める。
そして、おまんにこがな怪我させられるんは涼真くらいか、とひとり言のように呟くと
あいつは何をしちゅうがかと続けた。
呆れたような声。しかしそれと同時にそこににじむ親しげな響きに、伊蔵は瞬間胸の奥に
ザワザワとした感覚を覚える。
けれど武智はそんな伊蔵の気持ちなどまるで気付かないように、指に取った薬を有無を言わさず
つかんだ手の甲に塗り込んできた。
そしてまたしても短く、すまんかったなと告げられれば、それに伊蔵の目は大きく見開かれた。
「どういて武智さんが謝るがか」
「わしが二日酔いなんぞで道場に行けんかったせいだからの。涼真にはそれを伝えてくれとだけ
言ったつもりじゃったが、何がどうして…」
そう説明する武智の二日酔いとは、昨日の道場仲間の祝言に端を発していた。
文武両道に優れ、若くして人望に篤いがゆえに仲人役を頼まれたこの人の、唯一と言っていい
弱点は酒で、勧められたたったお猪口いっぱいの酒でもその場で酔い潰れてしまった。
そしてそんな人を背に負って帰ったのも、やはり涼真で。
武智とは遠縁にあたる6才年下の幼馴染。
その存在が時にどうしても胸にざわめくから、今日もつい武智の代理として道場に現れた彼に
突っかかってしまった。
その代償がこの手の腫れだった。
飄々とした態度が気に食わず、勝負を挑み、返り討ちにされた。
昔は細くて小さくて泣き虫だったくせに、いつの間にやら体もデカく、剣の腕まで上がっていた男。
それが悔しいと同時に、敵わぬ自分の非力が情けなくて、そのやりきれなさに気がつけば
足がここに向いていた。
331薬と犬と鐘の音 3/4:2010/01/28(木) 21:46:59 ID:FDjFjW+I0
身分の上下が厳しいこの国で、唯一人自分を侍として認め接してくれる、そんな武智の顔が見たかった。
たぶん、ただそれだけだった。なのに、
「さて、こんなもんでええじゃろ。」
塗り込んだ薬を最後更に押しこむように、広げた手の平を伊蔵の手の甲に重ねてくる。
その指が長く綺麗だと、本来の目的を越えた望外の展開に伊蔵はしばし無言で見惚れる。
が、そんな呆然としつつも幸せな時間は、さほど長くは続いてはくれなかった。
「しかし、ちょうど良かったのかもしれんのう。おまんがここへ来たがは。」
唐突にそんな事を言われ、えっ?と伊蔵が顔を上げる。
するとそれに正面に座していた武智は、手にしていた薬を見せながらこう口を開いてきた。
「わしも今日使うたところじゃったからな、おかげで探さんでも済んだ。」
普段は薬箱の中身なんぞ気にもせんからのぉ、と事もなげに言う。
それに伊蔵の眉は途端ピクリと寄った。
「どこか怪我でもされたがですか?」
心配そうに問う。と、それに武智は一瞬ん?とした表情を見せた後、それを破顔させた。
「おまんと一緒じゃ。涼真にやられた。」
そう言い、少しだけ着物の袖をめくりあげ見せられた手首。
そこにはうっすらと赤く浮かび上がる、小さな痣のようなものがいくつか散っていた。
「どうしたがですか?!」
思わず驚いて声を荒げてしまう。
しかしそんな伊蔵の心中など知らぬげに、武智の声はこの時、軽やかにいっそ面白がるような
響きを持っていた。
「昨日の事でちっくとやり合う事があっての。それでわしが暴れたら力任せに抑え込まれた。」
あいつは加減ちゅうもんを知らん、もうわしより体も大きく力も強うなったっちゅうに。
先程まで自分が考えていた事を、自分とは違う昔を懐かしむ様な口調で武智が語る。
それはまるで、長く成長を見守ってきた人懐っこい犬を愛おしむかのように。
だからそんな武智の様子に伊蔵はこの時、それまで必死に抑え込んでいた澱んだ感情が
一気に膨れ上がるのを止めようがなかった。
「どういて…」
だから最初小さく落とされた声は、一度溢れればもはやただただ大きくなってしまう。
「どういて武智さんはそんなに涼真に甘いがですか!」
「伊蔵?」
「そんなに大きい犬が可愛えがですか!」
332薬と犬と鐘の音 4/4:2010/01/28(木) 21:48:55 ID:FDjFjW+I0
感情のまま叫んだ言葉は、胸の中に渦巻いていた想いをそのまま形にした、それゆえに他人には
絶対に理解の出来ないだろうものだった。
だから案の定、
「……犬?」
呆然とした声色でポツリと零された、そんな武智の一言に伊蔵はハッと我に返る。
そしてそうなればもう恥ずかしさで、どうにも居た堪れなくなってしまった。
「すんません、なんちゃーないですきに!」
叫ぶのを止められないまま、慌てて立ち上がり、勢いのまま頭を下げる。
そして薬の礼もそこそこに、武智の前を後にすれば、その胸の中にはただ混乱と後悔だけが残った。
どういて、どういてわしはこう頭が悪いがじゃ!
家から飛び出て、手にした荷物を胸にギュッと押し抱けば、その手にはまた痛みが走る。
けれどその上には今は武智が塗ってくれた薬があって。
それが更に痛いのか、切ないのか、甘いのか。
泣きそうになりながら走る伊蔵に、この時考える力はもうカケラも残されていなかった。


一方、武智は。
「伊蔵?!」
走り去る背中に一度名を呼びかけてみるが、それに彼が振り返る事は無く、結局一人座ったまま
部屋に取り残される。
そしていったい自分の何が伊蔵を怒らせたのかとその場で自分の言動を思い返してみるが、
それでも心当たりはまったく無く、だから、
「わしは……小さい猫も好きじゃが……」
ポツリと小さく零した呟き。
しかしこの時それに応えてくれたのは、夕暮れ刻を耳に知らせる遠くの寺の鐘の音だけだった。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ガンバレ、ワカゾー!ならぬイゾー!
333全編1/7:2010/01/28(木) 22:47:46 ID:TbEjyKr5O
電車待ちの続き。
時系列では欠片の人の更に後になります。
長いので一端前編のみ投下させていただきます。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


マエダさんと出会って変わった事。
髪を五円玉から10円玉程度の色に戻した。
ピアスは左右で二つずつまで減らした。
すぐバイトを辞めるのを止めた。
脱いだ靴は揃える事にした。
何かを口に出すとき、一回だけ未来を考える事にした。
携帯を持ち歩くようになった。
結果、周りからの評判は良くなった。
そうすると人生がなんとなく悪くないと思えるようになった。
変わった事っていうか、自分が変わっただけか。
あの人に逢ってから、オレは何となく調子が良い。
バーテンとホストの中間のような仕事やら、時給だけで仕事を決めるのは止して、昼間に働くウェイターで落ち着いた。
偶に雑誌に載るような、ちょっと評判が良い健全な場所でのフツーの仕事。
友達からもウケがいいギャルソン風の制服は、私服なんかよりよっぽど小綺麗に見えると、嫌味だか誉められてんだか解らない事もちょくちょく言われる。
マエダさんと出会った時に、見栄をはってバイトと言った。
とっさについた嘘は拭いき
334前編2/7:2010/01/28(木) 22:50:33 ID:TbEjyKr5O
れずに、なんとなく受けた面接。
そうやってなんとなくバイトが始まったけど、なんとなく調子がいい。
なんとなく誉められているうちに、ちょっとずつ仕事を覚えて、思ってたより楽しくなった。
だからなんとなく頑張れてる。
更には、ここだったらこのまま働いてもいいかな、なんて漠然と思えて。
そんなオレとは裏腹に、マエダさんはなんとなく暗い。
何かを言いかけて止めたり、会える機会も随分減った。
もしかしたら飽きられたかな、と思う。
オレはといえば若さくらいしか取り柄も無いし、まぁ縁なんてそんなもんだろうと、なんとなくを言い訳に放置した。
最近途絶えがちだった携帯は鳴らない。
そうなるとますます電話がしにくくなって、なんとなく気分が晴れないまま、なんとなくそのまま。
年末だか年明けくらいに初めて会ったあの日から、だいたい今で10ヶ月?
よく保った方じゃないかななんて自分を慰める、なう。


もやもやする。
昼休みも終わり、散々込み合っていた店内がようやく落ち着きを見せる時間。
晴れないもやもやを誤魔化す為に、店中のコップを麻布で磨く。
曇りも指紋もないグラスは増えるが、やっぱりオレの気持ちは晴れない。
オープンテラス越しに見える外の世界は、黄色や茶色で枯れ葉の賑わい。
時々突風でも吹くのか、派手にくるくると踊っては散る。
溜め息をついて、箒を片手に外へ向かう。
「コータ。」
店長に呼ばれて振り返る。
煙草じゃないよ、掃除だよと手にした箒を軽く揺らす。
実際に呼ばれた訳は、オーダーを取りにいけという事は知ってる。
けど、どうも女の子の集団は苦手。
可愛いとは思うけど、可愛いで止まる。
じゃあ好みはどうなんだと考えて、少し困ったように笑うマエダさんの顔がパッと浮かんだ。
思っているより重症かもしれない。
335前編3/7:2010/01/28(木) 22:56:15 ID:TbEjyKr5O
もともと約束も何もない関係だから、いつ会えなくなっても不思議じゃない。
恋人ではもちろんないし、友人と呼ぶには笑える程遠い。
一時は会えばセックスをしていたのに、最後に会った時は専らぼんやりと抱きしめて終わっていたし、単なるセフレともやっぱり違う。
グダグダな気持ちを溜息で切り替え、掃除を再開。
日の射す場所は暑い癖に、日陰に入ると途端に凍える風の吹く昼下がり。
銀杏並木だか桜並木なんだかわからない通りは、とにかくやたらに落ち葉が多い。
油断をすれば半日程で靴底も埋まる。
毎日掃除はしているのに、毎日きっちり時間を巻き戻したみたいに山積みになる落ち葉。
ムキになって、店の両隣やら裏までの落ち葉をかき集め、業務用のバカでかいゴミ袋に次々つめる。
ひたすら詰める。
どんどん詰めても落ち葉は減らない。
業務用のポリ袋2袋分もはちきれんばかりに詰め終わった頃、始めた当初は肌寒く感じていたのが嘘のように熱くなっていて。
諸悪の根源とも言える落ち葉をやっつけるため、足で押さえて袋の口を縛る。
店の裏手にあるゴミ捨て場へと袋を投げ捨て、スタッフ通用口からホールに戻る。
呼ぶ人でも居ないかと周りを見渡した時、視界の端を掠める見慣れた背中。
何かの間違いかと思い、過ぎていったスーツを凝視。
真っ直ぐ伸びた背筋、僅かに癖のある短い髪。
歩き方が心無しか硬い。
「チーフ、オレ昼食まだなんで、今から休憩しやっす」
エプロンとベストをロッカーへと投げて、賄いのチキンサンドとアイスコーヒーを片手に席へ向かう。
チラとキッチンから見えた横顔は、やはり間違いなくマエダさんの物で。
二月程見ぬ間に、少し痩せた気もするが、元々からして標準より幾らか細かったかなと思い直す。
身勝手ながら、やつれてくれていたら良いなと願う。
口に出しているわけじゃない。
336前編4/7:2010/01/28(木) 23:04:48 ID:TbEjyKr5O
妄想くらいは個人の自由だ。
『珍しいトコで会ったけど、仕事?』
そう声をかけようとして、足を留める。
マエダさんの正面の席には、マエダさんより年上で見るからにマエダさんと同族の匂いがする男。
程ほどにカジュアルでベーシックなスタイルのジャケット、シャツ、ボトムにブーツ。
どれもが嫌らしくない程度に金のかかった格好。
自分で脱色しまくったせいで毛先が溶けたオレとは違って、毛先まで痛みなぞ見えない自然な明るさと艶やかさをもった髪。
どうしたいかだけじゃなく、端からどう見られるのかを演出する側の人間。
つまりは自分の価値を正しく理解して、最大限に生かす努力を怠らないような人間だ。
新しい男だろうな。
そう思えば、そこへ割って入れる訳もなく。
戦う前から戦意喪失。
マエダさんとは衝立で隔たれた、背後の席へと腰を下ろす。
何か言えるような関係じゃない。
今更本当にしみじみと、一人浮かれていた自分がつくづく恥ずかしくなる。
よく見れば制服だって、明日が休みと3日近く洗っていない。
袖の内側が皺に添って薄く茶けている事に気付けば、急に恥ずかしくなって両膝まで折り上げる。
少しは釣り合う人間になったつもりが、他人の褌で上っ面を綺麗に着飾らせてもらっただけだ。
さっぱり味のわからないサンドイッチを無理矢理喉に詰め込む作業。
ああ、思ってたより失恋じゃねぇか。
諦められない。
けどしょうがない。
元々出会いが何かの手違いで、少しばかり勘違いしただけだ。
ちょっとラッキーが続いただけだ。
337風と木の名無しさん:2010/01/28(木) 23:09:53 ID:wFmVzJ5z0
支援
338前編5/6:2010/01/28(木) 23:14:28 ID:TbEjyKr5O
既にシロップが入った市販のコーヒー。
今日はやけに喉へと絡む。
俯きながら、ぼそぼそと隣から聞こえる会話へ耳を傾ける。
泣きたくなるくらいに、知らない声が愛してるだのなんだの言っている。
盗み聞きっつーちゃちな犯罪に対して、罰が大きすぎませんか神様。
泣くに泣けないオレの代わりに、アイスコーヒーを入れたグラスの側面が涙を流す。
「いい加減、一緒に暮らさないか」
心臓がキュッと掴まれた気がした。
身体中がバクバク言う。
マエダさん、ノーと言え。
ノーだ。
他に答えはないだろ?
絶対にノーだ。
「考えておきます」
目の前がブラックアウトする。
さっき食べたばかりのサンドイッチが喉元までせり上がる。
慌てて冷たいグラスを掴んで、コーヒーを喉へと流し込む事で身体の奥へと押しやる。
吐き気は治まった物の、腹の底から湧き上がる薄暗い感情。
落ち着く為に数字を10からカウントダウン。
冷めてくる頭。
痛いままの心臓。
ゆっくりと椅子から立ち上がり、隣の席に向かう。
ウェイターと思ったマエダさんが、不思議そうな目でこちらを見上げる。
誰かとはっきり認識する前に、左手でマエダさんの胸元の隠しポケットへと指を入れる。
リップクリーム。
開封済み。
筒の根本をくるりと回せば半透明のスティックが飛び出す簡単な仕組み。
蓋をテーブルへと投げ捨て、光に透かして確かめるが、側面に使用の跡は無し。
「セックスこれから?」
びっくりし過ぎて固まった二人。
339前編6/6:2010/01/28(木) 23:19:45 ID:TbEjyKr5O
テーブルへと腰を下ろし、マエダさんのネクタイを引っ張る。
カラカラに乾いた唇。
これで最後なんだからと、何度も何度も唇を重ねる。
抗って肩を押す手がドンと一度背中を叩く。
仕方無く顔を離すが、泣き出しそうなレンズ越しの目を見ればもう無理だ。
座ったテーブルから降りて、放心しているマエダさんを肩へと担ぐ。
誘拐犯だって構うものか。
チーフらの呼ぶ声も無視して、マエダさんを抱えたままで店を飛び出した。



「あ…ッ……、ケィ…ゃ…あっ、……ひッ…」
甘く呼ぶ声にゆっくりと腰を回す。
必要最低限だけ脱いだ、結合部から濡れた音が漏れる。
薄暗いビルの陰、弄りあって繋がって。
「好きだよ…」
眼鏡のレンズ越しに目を合わせて微笑む。
座り込んだまま、何度も何度もキスをして。
走ってくる途中で無くしたリップクリームの代わりに、マエダさんには喉の奥までしゃぶらせ無理矢理飲ませて入れて。
それでもマエダさんから伸ばされる指に、もしかしたら愛されているのではと錯覚する。
逃げない事で、許されていると身体を貪る。
しているのは単なるセックスであり、それ以上でも以下でもない。
でも、今まで言えなかった事をやっと言えた。
「好きだよ」


◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

明日か明後日くらいに、またお邪魔させていただきます。
340風と木の名無しさん:2010/01/28(木) 23:21:34 ID:LRhETlK60
>>339
リアルタイムにktkr
ひそかに待ってました
341風と木の名無しさん:2010/01/28(木) 23:42:45 ID:OnOPSILtP
>>325
まさかここでこのようなものを見れるとは・・・!
振動かわいいよ振動

そういや振動は某常勝軍団のちっちゃい子とも仲良いみたいだね
振動から広がる萌えのネットワーク・・・
325姐さんありがとうございました
342風と木の名無しさん:2010/01/28(木) 23:54:25 ID:J1X5d+lp0
>>325
うわああ今年の正月この人ら見てニヤニヤしてたけど
まさか作品が読めるとは!!乙です!
343風と木の名無しさん:2010/01/29(金) 04:04:12 ID:S56TIFA1O
萌 え た
ちっさい犬でも魅力十分さ!がんばれイゾー
344太陽赤 蟹虎1/4:2010/01/29(金) 19:38:47 ID:BqL8fZm70
天対戦士3レッドから蟹虎でエロ? やまなしおちなしry

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「お前って毛並みいいよなぁ」
そう言いながら俺の喉を猫にするみたいに撫でるのは、カ二型怪人のガ二メデ。
このボロアパートの汚い部屋に遊びに来る数少ない友人の一人だ。
携帯を弄りながら、その片手間で俺を撫でる仕草は手馴れたものだ。
俺は猫じゃないから、喉を撫でられたって気持ち良くなんかない。
今日の小春日和の陽気のせいで眠いから好きなようにさせてやってるだけ。
うっとりしてるように見えるかもしれないけど、ただ眠いだけ。
喉がゴロゴロ鳴っちゃってるけど、こいつの膝枕が気持ちいいからとか絶対ない。
本当に。マジで。
「別にいいけどさ、俺、今日で三日シャワー浴びてないから汚ーぞ」
家賃が安いだけが取り得のこの部屋に、風呂なんか当然付いているはずもない。
俺は週に何度かコインシャワーで身体を洗い、給湯器のお湯で三日に一度頭を洗う。
夏場は濡れタオルで身体を拭く。男の一人暮らしなんてそんなもんだろ。
「マジで〜?でもさ、猫って風呂入らなくてもキレイじゃん。お前も自分で毛繕いしてキレイにすればいいじゃん」
「…俺は猫じゃねーよ」
「分かってるって、大きな猫なw」
「つか声でけーよお前…」
今日は隣の部屋のおっさん(夜間タクシーの運ちゃん)が寝てるから、それに気遣って
さっきからの会話も内緒話のような小声だ。
この不衛生さと物音を立てられない窮屈さを嫌って、この部屋に遊びに来る奴なんかそうはいない。
特にこいつみたいに入り浸るような奴は他にはいない。
何が楽しくて来てるんだか。
345太陽赤 蟹虎2/4:2010/01/29(金) 19:39:33 ID:BqL8fZm70
「そうそう、そうでした。うるさくしちゃ駄目なんでした〜」
物分りのいい言葉と裏腹に、奴の口元がニヤリと笑ったように見えた。
と言ってもそう見えただけで、実際は蟹みたいな口なので表情は分からないが。
俺の喉を撫でていた奴の手がするすると下に下がる。
嫌な予感…。
「な、猫のここってどうなってんの?トゲトゲ生えてるって本当?」
予感的中。奴の手がトランクスの上から俺のデスランス(槍)を撫で回す。
うとうとしかけていた眠気が一気に飛ぶ。
「おいガ二、変なとこ触んなよ。ふざけ…」
言いかけて奴の顔を見ると、頭に付いている6本の蟹足がかぱっと開いていた。
興奮している証拠だ。何でこの状況で興奮してんの?ありえなくね?
「…ふざけんならもう帰れよ、ガ二」
静止を聞くどころか、既にトランクスを脱がそうとしてやがる。
「やめろって!」
――ドン!
思わず声を荒げた瞬間、隣の部屋のおっさんに壁を叩かれた。
「ほら〜、大声出したらお隣に迷惑だろタイガ〜」
表情は分からないが、こいつ今明らかにニヤニヤしてる。
「テメェ…」
蟹挟みみたいな手で器用にトランクスを剥ぎ取られ、
弄られて半立ち状態の俺のデスランスが露わになった。
ヒトのそれとは明らかに違う、びっしりトゲの生えた凶器だ。
「ふ〜ん、こうなってんだw」
ニヤニヤすんなっての。
「いい加減にしねーとタイガー殺法食らわすぞ」
「おーこわw な、これ写メ撮っていい?」
「いいわけねーだろ!」
ドンドン!
また壁を叩かれた。これ以上うるさくできない。
ガ二は一層ニヤニヤして、口元に一本指を立て「静かに」のジェスチャーをして見せた。
そして……ぱくっ。
346太陽赤 蟹虎3/4:2010/01/29(金) 19:40:22 ID:BqL8fZm70
「!?」
食われた!俺のデスランスが蟹に食われた!
見れば、既に奴の蟹足は全開にオープンしている。
慌てて身を起こそうとしたが、急所を抑えられていてはどうにもならない。
下手に動いて噛まれでもしたら堪らない。
「き、汚いって言っただろ、やめろよ」
「じゃあ俺が舐めてキレイにしてやるよ、毛繕いだよ毛繕いw」
…トゲは痛くないのか?
まあ、こいつも怪人だから、口の中も丈夫にできてるのかもしれない。
舌先を使ってちろちろと舐めたかと思うと、深く喉の奥に銜え込んだり、
口内を窄めてきつく締め付けたり、AV女優ばりのテクで俺のデスランスを弄ぶガ二。
「っく…うぅ」
「ほら、声、我慢我慢」
口に入れたまま喋るなよ。
「このまま最後までしちゃう?」
俺は両手で口を押さえて声を殺すだけで精一杯だ。
「んぅ〜〜〜っ」
もう泣きそう。
無回答を肯定と受け取ったのか、ガ二はそのままラストスパートに入った。
「……!……!!……!!!」
俺の荒い息遣いと、いやらしい水音だけが室内に響く。
何でこんな事になったんだっけ?もうわけが分からない。
自分の口を塞いでいた両手は、いつの間にか顔全体を隠すように覆っていた。
「ん?何それ可愛いなw恥ずかしいの?」
恥ずかしいに決まってるだろこの変態蟹!
そんな蟹みたいな手で、そんな蟹みたいな口で、なんでこんなに上手いんだよ。
ただ喉を撫でられるだけでもあんなに気持ち良い……くないけど、これはヤバい。
もうイキそう、そう思った時、ガ二の動きが止まった。
「なあ、タイガー、俺の事好き?」
こんな時に何言ってんの。
「なあってば」
347太陽赤 蟹虎4/4:2010/01/29(金) 19:43:05 ID:BqL8fZm70
今はただ早く出したいのに…!
このニヤけ顔を見ていると何故か素直になれない。思わず首を横にぶんぶん振ってみせる。
それに気を悪くしたのか、ガ二は俺のピーンと伸びていた尻尾をぎゅっと引っ張った。
「ひぅっ?!」
反射的に身体が仰け反り、尻尾とデスランスが直結したみたいに電流が走る。
「うぁぁぁああああああああ!!」
と叫ぶと同時に、勢い良く奴の口の中に発射してしまった。
お前、そこで尻尾引っ張るのは反則だろ…。

そこへまたドン!ドドン!と隣人から怒りの連打。
急に現実に引き戻される。
絶対何してたかバレたよこれ。
次におっさんに会った時、俺どんな顔すればいいんだよ。
ガ二を見ると、またニヤニヤしている。…ように見える。
怒ってたんじゃないのかよ。俺をからかって楽しいのか?
普段は小心者の癖に、人の部屋だと調子に乗りやがって。
覚えてろよ。絶対復讐してやる!
今度お前の部屋で同じ事してやるからな!
そう怒鳴ってやりたかったが、隣のおっさんに迷惑なのでやめた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ!
ベタネタですいません
348風と木の名無しさん:2010/01/29(金) 23:54:52 ID:oa+k8IJS0
>>329
ここでこの本命カプが読めるなんて…!
着流し姿のテンテーが清楚エロい(*´Д`)ハァハァ
テンテーが大好きでリョマに嫉妬するイゾーがいじらしいです
超GJぜよw!
349後編1/7:2010/01/30(土) 09:46:23 ID:cAzDIzcVO
>>333続きです。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマス!

セックスが終わった後は、いつもなんだか冷めてしまう。
今日した事は、この人にとっては何になるんだろう。
泣きたくなって、マエダさんの肩を抱く。
もそりとマエダさんが動いて抱き返す。
寒空の下、路上で二人で抱き合うのも限界が近い。
現に腰は重く痺れてゆっくりと冷え、鈍い痛みを訴える。
「…そろそろ帰る?その…待っているだろうし」
携帯はロッカーの中。
帰ったら間違いなくこっぴどく叱られる。
もしかしたらクビだろうか?
叱られるのはともかく、この人を恋人の元へと返したくない。
帰らないでいい理由を探して、諦める事の繰り返し。
「…コウタって…」
控えめがちな声。
胸に置いた手が妙に距離を感じる。
「聞いてた?コウダケイスケ。コウダって女の子が前からいたから、コウダの男でタロウ。そっからコウダタロウって呼び名になってコータで定着したみたい。」
声としての返事はないが、もたれ掛かった腕の中で時折頷き相槌を打つ。
またしても沈黙。
いつの間にか落ちた夕日の残照も消え、空の天辺から藍の色が滲む。
350後編2/7:2010/01/30(土) 09:54:00 ID:cAzDIzcVO
「…言わないと、いけない事がある」
思い詰めた震える声。
汗で額に張り付いた髪を撫で、そっと眉間に唇を当てる。
「聞くよ。…マエダさんの話なら。」
サヨナラでも構わない。
もう十分過ぎる程に色々もらった。
「…ケイスケに……ずっと言えなくて、…騙してた。」
ポタリと眼鏡のレンズの内側へ水滴が落ちる。
眼鏡のフレームを持ち上げ、濡れた目尻を指で拭う。
「…ずっと……言えなくて…」

ああ駄目だ、自惚れてしまう。
もしかしたら少しは惚れられているんじゃないのかと。
「知ってた」
ホテルの支払いの時に財布からチラと見えた免許証で、本当の名前も年も知っている。
隠しておきたい事だろうと、特に聞かずにそのままにした。
「…ケイスケが、好きなんだ」
多分今なら死んでも良いや。
その言葉が嘘でもいい。
他の人に言っててもいい。
セックスの為のスパイスだって構わない。
オレもあなたが好きなんです。
「もっかい言って」
すぐに俯く顔を上げさせる。
憔悴しきってやつれた表情、腫れた瞼、赤い眼。
その眼が眩しい物でも見たときの様に、細められて俯いて。
「ケイスケ」
背中へ回った腕が痛い。
ああ、やだ、本当に帰したくない。
勘違いしてしまうのは、好きだけど好きじゃないんだ。
涙で塩辛いキスをしてから、マエダさんを立たせる。
351349:2010/01/30(土) 09:58:50 ID:cAzDIzcVO
ゴメンナサイ。
コピペミスりました。
昼にもう一度貼り直しにきます_| ̄|○
352後編1/7:2010/01/30(土) 10:29:04 ID:cAzDIzcVO
>>333の続きです。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマス!

セックスが終わった後は、いつもなんだか冷めてしまう。
今日した事は、この人にとっては何になるんだろう。
泣きたくなって、マエダさんの肩を抱く。
もそりとマエダさんが動いて抱き返す。
寒空の下、路上で二人で抱き合うのも限界が近い。
現に腰は重く痺れてゆっくりと冷え、鈍い痛みを訴える。
「…そろそろ帰る?その…待っているだろうし」
携帯はロッカーの中。
帰ったら間違いなくこっぴどく叱られる。
もしかしたらクビだろうか?
叱られるのはともかく、この人を恋人の元へと返したくない。
帰らないでいい理由を探して、諦める事の繰り返し。
「…コウタって…」
控えめがちな声。
胸に置いた手が妙に距離を感じる。
「聞いてた?コウダケイスケ。コウダって女の子が前からいたから、コウダの男でタロウ。そっからコウダタロウって呼び名になってコータで定着したみたい。」
声としての返事はないが、もたれ掛かった腕の中で時折頷き相槌を打つ。
またしても沈黙。
いつの間にか落ちた夕日の残照も消え、空の天辺から藍の色が滲む。
353後編2/7:2010/01/30(土) 10:32:25 ID:cAzDIzcVO
「…言わないと、いけない事がある」
思い詰めた震える声。
汗で額に張り付いた髪を撫で、そっと眉間に唇を当てる。
「聞くよ。…マエダさんの話なら。」
サヨナラでも構わない。
もう十分過ぎる程に色々もらった。
「…ケイスケに……ずっと言えなくて、…騙してた。」
ポタリと眼鏡のレンズの内側へ水滴が落ちる。
眼鏡のフレームを持ち上げ、濡れた目尻を指で拭う。
「名前はマエダでもないし、年も…29じゃない。」
うん。
知ってた。
「…好きなんだ。」
毒でも飲むような苦しげな言葉。
いつもの全てを受け流す余裕な表情は形を潜め、震えて丸められる背中しか見えない。
頬を両手で包んで泣き止むまで何度もキスを繰り返す。
言いたくなければ言わなくて良いのに。
「…32なんだ。ケイは…若くて…、っ…ずっと……言えなくて…」

ああ駄目だ、自惚れてしまう。
もしかしたら少しは惚れられているんじゃないのかと。
「知ってた」
ホテルの支払いの時に財布からチラと見えた免許証で、本当の名前も年も知っている。
354後編3/7:2010/01/30(土) 10:39:51 ID:cAzDIzcVO
隠しておきたい事だろうと、特に聞かずにそのままにした。
「…ケイスケが、好きなんだ」
多分今なら死んでも良いや。
その言葉が嘘でもいい。
他の人に言っててもいい。
セックスの為のスパイスだって構わない。
オレもあなたが好きなんです。
「もっかい言って」
すぐに俯く顔を上げさせる。
憔悴しきってやつれた表情、腫れた瞼、赤い眼。
その眼が眩しい物でも見たときの様に、細められて俯いて。
「ケイスケ」
背中へ回った腕が痛い。
ああ、やだ、本当に帰したくない。
勘違いしてしまうのは、好きだけど好きじゃないんだ。
涙で塩辛いキスをしてから、マエダさんを立たせる。
土埃や何かでクシャクシャなスーツは、マエダさんには似合わない。
今更だけど出来るだけキレイに汚れを払い、髪を整えるのを言い訳に頭を撫でる。
「帰ろっか。」
言葉とは真逆に帰りたくない。
緩く触れ合う指先を握って、表へ続く道に目を向ける。
すっかり闇に溶けた景色。
時折車が過ぎる音がやけに遠く聞こえる。
離れがたくて、泣きそうで、泣かないですむように空を見上げる。
嫌なくらいに満天の星。
せめて雨なら雨宿りが出来たのに。
神様は何時だってオレの願いを蹴っ飛ばす。


二人で足を揃えて駅に向かう。
さっきからずっと言葉はなし。
355後編4/7:2010/01/30(土) 10:43:45 ID:cAzDIzcVO
沈黙が肌に痛い。
けれど話せる言葉が足りない。
駅が近い。
そろそろ手を離した方が良いかと、マエダさんの様子を横目で伺う。
泣いたせいで眼鏡の奥、目元が少し赤い以外は特に何時もと変わらない。
さっきまでの痴態なぞ、他人ごとの様に慎ましやかで近寄り難い。
低い体温が伝わる繋いだ指も、気持ちの現れかと不安を煽る。
前から歩いてくる人を避ける時、自然と指が離れて右手と左手はサヨナラ。
再び手を握るきっかけも理由も無く、未練を隠して制服のポケットへと指を突っ込む。
チリチリする胸。
胸が痛むって、マジ肉体的に痛いんだな。
ずっと比喩だとおもってたのに、余計な事で実感出来た。
階段を上り、現在の駅がどこの路線か確かめる。
店から二駅隣。
どんだけ逃げたかったんだか、思えば遠くにきたもんだ。
カッコ悪い。
券売機に並ぶマエダさんに倣って、路線図を見ながら順番を待ち、いざ自分の番になってハタと気付く。
「財布忘れた」
携帯も財布も店のロッカーの中だ。
ああ、もうホントマジで勘弁して下さい。
カッコ悪すぎる。
オタオタしだしたオレに対して、何時見ても綺麗な爪の、いかにも事務仕事だろうしなやかな指がコインを入れる。
「仕事先?」
甘い色のない、サラリとした無機質な声での投げかけ。
冷ややかな横顔に、一瞬言葉がつまる。
その躊躇いを察したのか、マエダさんがこちらを向いて少し眉間にシワを寄せる。
眼鏡越しの目が冷たいと感じるのは、気にし過ぎだろうか。
「……」
上手く言葉が見つからない。
答えられずにいれば、マエダさんの指が伸びてきて、券売機のボタンを押す。
260円。
356後編5/7:2010/01/30(土) 10:50:46 ID:cAzDIzcVO
二駅には高い切符。
まだ固まったままのオレに、目を合わさずにマエダさんが囁く。
「ウチに来る?」
イヤがある筈ないだろう?


マエダさんに勧められ、渋々バイト先へと電話をする。
キッチリ10分ほど絞られたけど、思っていたより簡単だった。
今までだったら辞めていた。
明後日に再度怒られるのは仕方ないとして、バイトはどうやらクビにはならないらしい。
落ち着いてしまえば現金な物で、今マエダさんと傍に居られる時間が急に惜しくなった。
一緒に入るのはイヤだとゴネるマエダさんを言いくるめて風呂場で一回、風呂から上がってリビングで一回、ドギースタイルでクンクンと鳴くのが可愛くて、散々鳴かせたら泣かれた。
昼からの事を考えれば、セックスにハマりたてでもあるまいに、猿みたいに抜きっぱなし。
身体ばかりが落ち着いて、頭の芯が濁った水みたいに澱んだ夜明け、ぽつりぽつりとマエダさんが話し始めた。
マエダとは、親が離婚する前の名前だったらしい。
真枝祐一
手のひらへと乗せられた漢字。
離れてしまった両親の、幸せだった頃の記憶。
今の名字になったのは20年前で、未だにその事を引きずっている事。
母親が再婚する事になったのを、素直に祝福出来ない事。
昼に店へ一緒に来た人が、新しい父親らしい。
出会った頃はマエダと呼ばれる度に、幸せだった時が続いている錯覚がして、そのウチに騙している事が怖くなって、いつバレて愛想を尽かされるかとドキドキしていた事。
素性も知らぬ相手と、身体だけの関係を続ける事に自分でも気が狂ったのかと葛藤していた事。
一回り近くも年下の、本来なら自分が諫める立場なのに、相手に溺れている事。
「…反則」
357後編6/6:2010/01/30(土) 10:55:06 ID:cAzDIzcVO
少し目を反らして言葉を紡ぐマエダさんは可愛い。
嘘をつくときは平然としている癖に、本当の事を言うときだけ目を合わせないのは、どう考えても反則だろう?
「ユーイチ」
キスして、抱いて、耳朶を咬む。
期待と拒絶の混じった吐息を、唇で塞ぐ。
「ケイスケ、無理…」
力の入らない腕で肩へと縋り、泣きはらして濡れた瞼と掠れた声。
弱々しく頭を振るのを、「ダメ?」とねだれば、大抵は許してくれる。
キスをすれば、自分から口を開いて受け入れる舌に、この人は何時気付くんだろうか。
年上の、可愛い人。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ。


長らく場所をお借りしました。
支援下さった>>337さん、拙い作ですが覚えていて下さった>>440さん、ありがとうございました。
358風と木の名無しさん:2010/01/30(土) 14:26:34 ID:F9PZAt3m0
>>357
長編お疲れ様でした
2人のシリーズ大好きです!ハッピーエンドで良かった
続編でも別物でも良いので、貴方の作品をまた読みたいです。
GJでした!
359大地にそそぐ雨1/7:2010/01/30(土) 21:05:39 ID:QuWPjy0B0
主/将/!!/地/院/家/若/美 主将←副将 みたいな
ギャグ無しちょいエロ 攻がオ○マにつき女口調なのは仕様です
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )口ベス・ピエ子ガ オオクリシマース!(嘘

「帰らないの?」
 若見の声にはっとして、甘宮は顔を上げた。
 部室の中は閑散としている。すでに部員は皆、帰ったらしい。無意識に若取の姿を探し、今日は実家へ帰ると言っていた事を思い出す。
「……あ、いや、帰るさ」
 いつの間にか物思いにふけり、その当の対象である若見に指摘された気恥ずかしさに口ごもりつつも答えた。

 羅木奈と若見とが闘う姿を、甘宮は今日、初めて目の当たりにしたのだ。
 羅木奈が相当の達人である事は知っていたものの、本気の彼女は見たことが無かった。ましてや、兄である若見を相手の、地印家流の同門対決となれば尚更である。思わぬ一戦に、甘宮の血が騒いだ。

 常人には考えられないほどの速さで繰り出される羅木奈の手を、若見は難なくいなし、足払いを食らわせた。そして、羅木奈が着地する場所をきっちりと見切り、体を捻って再度、足払いで彼女を倒れこませた。
 あくまで柔道の技である。派手な地印家流の技のやりとりを期待していた甘宮にはしかし、それ以上の衝撃だった。
 ――あの速さで繰り出される打撃技に、自分は対抗できるだろうか。
 地印家流の技を使わず、あくまで柔道技で実質的に羅木奈を倒した若見を、甘宮は改めて驚嘆の思いで見た。それを回想し、ぼんやりと胴着のまま部室に座り込んでいたのだった。
360大地にそそぐ雨2/7:2010/01/30(土) 21:06:27 ID:QuWPjy0B0
「じゃ、お先に。鍵はよろしくね」
「若見」
 帰ろうとする背中に、反射的に声を掛けた。
「……手合わせしてくれないか」
 何か馬鹿らしい事でも言おうとしたのか、ふざけた表情で振り返った若見は、甘宮の顔を一瞥して、それを一変させた。
「……かまわないわ」

 すでに暗闇に包まれていた道場に、再び明かりが点った。
「……本気で頼む」
 甘宮の真剣な表情に応え、若見はすっと構える体勢を取った。
「……どこからでも、かかってらっしゃい」
 隙が無い。鋭い眼光が甘宮の一挙手一投足を見詰めている。襟を取ろうとした所で先ほどの羅木奈のように軽くあしらわれるのだろうし、彼女ほどの速さは甘宮には無い。
 逡巡している間に、若見が焦れた。
「来ないのなら、こっちから行くわよん」
 その言葉を聞き終わらないうちに、目の前に若見が居た。
 予備動作も無く一瞬で間合いを詰めた事に驚く前に、体が宙を舞っていた。
 
 柔道部に甘宮よりも強い部員は若見しか居ない。普段の乱取りで若見が本気を出すことなどまず有り得ず、大会でも無敗を通してきた甘宮は久しぶりに、畳に叩き付けられる屈辱を味わった。中学の大会で若見にあっさりと投げ技を食らった、あの時以来である。
「くっ……、もう一度」
「……」
 何も言わず若見は再び構えの姿勢に戻った。二人が見合った直後、今度は甘宮が攻めた。片袖に手を伸ばした刹那、視界から若見が消え、自分の下に回りこんだのだと気付いたのはかろうじて受身を取る寸前の事だった。
「……まだだ」
 起き上がる甘宮を無表情に見つめ、若見はまた構えに戻る。
361大地にそそぐ雨3/7:2010/01/30(土) 21:07:07 ID:QuWPjy0B0
 何度目かに甘宮が敗北を喫した時、若見が口を開いた。
「甘宮、あなたやっぱりドMね」
「……なんとでも言え。……もう、一度……」
「何度やっても同じよ」
 確かにその通りなのだろう。二年前とまるで変わらない。
 若見の強さの理由を知る為、推薦を蹴ってまでこの高校へ進学したにも関わらず、自分は何も学んでいない。自らの不甲斐無さを噛み締めつつ、甘宮は立ち上がった。顔色一つ変わらない若見に比べてダメージは大きく、すでに息も上がっている。
 組み合った、と思った瞬間、脛へ衝撃を覚える。またしても予備動作無く刈られたのだと気付いた時には倒れ込み、首を抱え込まれて、若見の顔が目の前にあった。基本的な固め技だが、全く外れない。腰を捻って逃れようにも身動き一つ出来ず、甘宮は観念した。
 力量差、と言うのも生温い程のレベルの違いを、改めて思い知る。
「……お前には勝てんな、若見」
 ふう、と息を吐いた甘宮を、若見が見下ろしている。長い髪がサラリと顔に掛かる。
 すっと顔を寄せ、若見が囁いた。
「甘宮……ホントはこうして欲しかったんじゃないの?」
「なっ……」
「私が若取クンばかり可愛がるから妬いてたのねん」
 馬鹿を言うな、といつものように怒鳴り返そうとして、甘宮は口を噤んだ。
 対象が若取でこそ無いにせよ、嫉妬に似た感情があるのは事実だからだ。
362大地にそそぐ雨4/7:2010/01/30(土) 21:07:40 ID:QuWPjy0B0
「……若見」
 至近距離で見上げる顔は、冷たく整っている。涼しげな切れ長の瞳が、すぐ傍にある。
「なんで、蜜柑ちゃんなんだ」
「……なんの事かしら?」
 それは若見が一番分かっている筈だ。彼が地印家流の弟子として唯一選んだのが女の蜜柑である事に、甘宮はどこか割り切れない思いを抱えていたのだ。
「女嫌いのお前が、何故よりによって彼女を選んだ?若取や、――」
 俺、と言いかけて思いとどまった。
「……若取や、他の部員じゃ、何故駄目なんだ」
 口にしてすぐ、甘宮は後悔した。聞くまでもない。自分や他の男子部員には無い才能を、蜜柑に見出したと言うだけの話である。
 振られた相手に恨み言を言うような不毛感に捕われ、気恥ずかしさで目を逸らす。
 慙愧の念が顔に出ていたのか、若見がふうっと息を吐いた。

「……甘宮。あなた、力が入りすぎなのよ」
 唐突な言葉に、視線を再び若見へ戻した。
「私とヤる時はいつもそう。気付いていなかった?」
 話を逸らされた事よりも、指摘の内容にはっとする。
 中学の時に敗北を喫して以来、勝てる筈の無い相手だと刷り込まれ臆する気持ちが無かったか、その為に余計な気合が入りすぎていたのではないか。
「もっとリラックスすればいいのよ……力をヌく所は抜いて」
 耳元で若見が囁く。甘宮は目を閉じ、大きく息を吐いた。
 密着する身体の、力の流れを読む事に集中する。どこに負荷が掛かっているのか、どこを極められているのか。どう力を流せばそれは解けるか。
 乱れた胴着の胸元に、若見の肌が当たっている事にその時気付いた。直に鼓動を感じる距離に、何故だか一瞬心を乱される。
363大地にそそぐ雨5/7:2010/01/30(土) 21:09:28 ID:QuWPjy0B0
「……甘宮」
 名を呼ばれ、吐息が掛かる。いつもの声よりそれは遥かに艶っぽく、妙に甘美な戦きが背筋を走った。目を開けると、若見がチロリと舌を出している。まずい、と思う間もなく、首筋を舌が擽った。
「……っ!!」
 突然の感触に息を呑む。汗の雫を舐め取るように、首筋を熱い舌が滑り、ゾクゾクする痺れが全身に広がる。鎖骨の上をチロチロと嬲られて反射的に腰が跳ね、しかしそれはすぐに押えこまれた。
 この程度のセクハラなら日常茶飯事の筈である。過去に幾度も、暴走した若見に似たようなイタズラはされていたし、自分よりも弱い部員たち――殊に若取――などはもっとえげつない行為を日常的に受けている。
 甘宮も冗談で、あるいは叱り飛ばして返す程度の耐性は付いている。
 だが、今のこれは。行為自体は同じでも、普段の冗談まじりのセクハラなどとは明らかに、トーンが違う。

「よ……、よせっ」
 声が掠れた。ウフフ、と若見が笑う。
「初心な反応ね……そそるわん」
 乱れた胴着の胸元に舌が滑り込む。
「……くっ……!」
 おかしな声を上げてしまい、途端に頬に血が昇った。収まっていた呼吸が再び激しくなる。
 動悸が早まり、密着している若見にもそれが伝わっている筈だと思うとますます羞恥で頬が染まる。
364大地にそそぐ雨6/7:2010/01/30(土) 21:10:12 ID:QuWPjy0B0
 本気でまずい、と思い始めた時、若見が顔を上げた。ねっとりと絡みつくような視線で、狼狽する甘宮の表情を楽しそうに眺めまわす。唇を舐める仕草が恐ろしく妖艶で、それが若見であることを一瞬忘れそうになった。
「力を抜いて……自分を解放するのよ」
 このままでは呑まれる。そう思った矢先、若見の唇が甘宮のそれに重なった。
「……っ!!」
 反射的に腰を捻り、肘をがっちり固定していた腕を跳ね除けて、甘宮は若見の拘束から逃れた。

「若見っ!おふざけが過ぎるぞ!!」
「ほら、解けたじゃない」
 言われて初めて、自分が固め技を解いた事に気付いて唖然とした。
「私には勝てないという先入観で、自分を縛っていただけなのよ……言ったでしょ、解放しなさいって」
 若見がすっと立ち上がる。先ほどまでの妖艶な表情はすでに無く、普段の涼しげな顔に戻っていた。
365大地にそそぐ雨7/7:2010/01/30(土) 21:10:46 ID:QuWPjy0B0
 道場を去ろうとする若見の背に向かい、呟いた。
「……やっぱり、お前には勝てんよ」
 艶やかな髪を揺らして、若見が振り返る。
「甘宮、あなた、自分を過小評価しすぎよ。この2年、あなたがどれだけ努力したか、どれだけ強くなったのか、私にはわかるわ」
「それでも、まだお前から一本取る事すらできん」
「……努力は、あなた一人の専売特許じゃないと言うだけよ」

 道場の扉が音を立てて閉まった。
 普段の言動からは到底想像も付かないが、甘宮以上に若見も努力を重ねていた、と言う事か。
 果たして自分が彼に追いつく日が来るのか、甘宮にはわからない。ただ、目指す背中があることに、妙な安心感を抱く。
 ふと、唇を指でなぞった。指に付いた口紅を眺め、改めて、唇を奪われた事に動揺する。柔らかい感触が蘇った。
 唇が重なった時、甘宮は言い知れない恐怖を覚えた。それで思わず、跳ね除けた。同性に襲われる事への恐怖では無い。若見の唇に、嫌悪を全く感じなかった自分に対して、だ。
「……若見のやつ」
 どうしようもなく困った男だが、甘宮はどうしても彼を憎めない。強さだけではない、どこか甘宮を惹き付けるものが彼にはある。
 何度煮え湯を呑まされようとも、恐らく自分はずっと彼の背中を追いかけ続けるのだろう。静まり返った道場で、甘宮は一人静かに笑った。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
「YO...YOSEっ」を入れたかった ツキ先生ゴメンナサイ
366風と木の名無しさん:2010/01/30(土) 21:16:39 ID:4nrq4Ag2O
>>327
萌えた!!!!ありがとう
登用メンバーかわいすぐる
また番組見直そうかな
367風と木の名無しさん:2010/01/30(土) 23:02:00 ID:fbn1ahvd0
>348
前作から印象的で気になってました
二人の距離感がツボです!!好きだわこういうの。
368道程:2010/01/31(日) 03:37:28 ID:joNB1k0g0
今やってるタイガー。
方言は適当です。史実も適当です。話もry
リョマとタケチが好きなんだけど、それをあえてイゾー目線からにしてみたw

エロとか皆無ですのでご注意を。
あと長くてすみません。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
369道程 1/8:2010/01/31(日) 03:38:44 ID:joNB1k0g0

「おんし待ちぃや」
背後から声をかけられ岡田似蔵は店を出ようとしていた足を止めた。
ほんの小さな飯屋だった。しかし女将の器量も味もよくそこそこ安価で贔屓の客も多い。
基本的に郷士や町人御用達で、もちろん似蔵たちもよく利用している。
……問題は、女将を目当てにたまに上士も来ることだった。

その日は似蔵一人だった。
道場の稽古後に飯を食い、帰ろうとしていたまさにその時に呼び止められた。
「……なんぞ粗相が有りましたろうか」
憮然と似蔵は答える。
似蔵に声をかけたのは二人組の上士のうち一人だった。どうやら泥酔しているようだ。
「おんし今わしの袴を踏んじょったな?」
「……踏んじょりません」
そもそも近くを通ったが袴を踏むほど近くはない。
余計な騒動を避けるため、むやみに上士に近寄るほど似蔵も馬鹿ではないつもりだ。
「止めい吉田、おまんは酔うちょるき」
もう一人の上士が窘める。こちらはあまり酔っていないのか或いはまだ良識というものがあるのか。
「澤口は黙っちょれ、わしはこいつと話しちゅう。こいつはわしの袴を踏んで謝ろうとせんき」
「踏んじょりません」
意固地になって似蔵も繰り返す。周囲の空気が張り詰めるのが分かった。
女将が心配そうに似蔵の顔を見つめてくる。女将は年若い似蔵をいつも弟のように可愛がってくれている。
その視線に気がついたのか、酔っ払いはますますいきり立ったようだった。
どうやら吉田は、女将が似蔵に良くしてくれるのを見ていて、それが似蔵が絡まれる原因のようだ。
「―――おんし、今ため息つきよったがか?」
370道程 2/9 :2010/01/31(日) 03:41:20 ID:joNB1k0g0

じり、と吉田が似蔵ににじり寄る。脇差しに手を伸ばしいつでも抜ける体勢だ。
「吉田、止めちょき……おまんも」
澤口が吉田を諌めながら似蔵に目をよこす。ここは似蔵に引けと言っているようだ。
女将を含む周囲の視線を背に受ける。きっとここで似蔵が手をついて頭を下げれば丸く収まるのだろう。
大した話ではない、大勢の前で似蔵の矜持が踏みにじられればそれで済むのだ。
郷士として、ここは頭を下げやり過ごすべきなのだろう。
そうすれば女将や周りにも迷惑をかけずにすむのだろう。そんなことは分かっている。常にそうなのだから。
……それでも。
(武士たるもの常に武士らしく在らねばならぬぞ、似蔵)
静かな声が脳裏に響く。似蔵が常に心に刻んでいる、心から尊敬している人がよく口にする言葉。
武士ならばここは争いを避け町民に迷惑を掛けぬようにすべきなのか。
或いは武士なればこそ、ここは名誉を守り吉田と立ち合うべきなのか。
似蔵は逡巡した。学がない上に生憎と首から上の血の巡りが宜しくない似蔵には中々結論が出せない。
「どういた、わしに言うことがないがかえ?」
「吉田、止めえ」
吉田はますます似蔵ににじり寄ってきた。いつ刀を抜いてもおかしくない気配に、周囲に緊張が漂う。
その緊張を感じ取り、必死に頭を動かしていたはずの似蔵は無意識に腰に手をやっていた。
刀の鍔に親指をかけたところで漸く我に返り似蔵は固まる。
相手にその動作を悟られれば、例えそれが無意識であっても斬りあいを宣言したも同然だった。
371道程 3/8:2010/01/31(日) 03:42:40 ID:joNB1k0g0

―――腹を括るしかないがか。
瞠目したのも一瞬、似蔵は刀を握る手に力を込める。
(武士たるもの―――)
これは武士らしい行動だろうか。
(常に―――)
それともただの愚か者の行動だろうか。
(武士らしく―――)
何度考えても似蔵の頭では結論が出ない。
(在らねばならぬぞ―――)
結論を出せない似蔵は武士ではないのかもしれない。
ならばせめて、全て終わってから腹を斬れば武士らしく在れるのだろうか。良く分からない。
吉田が刀を抜きかける。澤口は必死に止めているようだ。
似蔵は鍔にかかった親指に力を込める。そして、鯉口を切―――

「武士たるもの常に武士らしく在らねばならぬぞ、似蔵」

ずっと頭の中で響かせていたはずの声が何故か背後から聞こえた。
372道程 4/8:2010/01/31(日) 03:45:11 ID:joNB1k0g0

「た……弐市さん」
「ここに居ったがか。おまん道場に手拭を忘れちょったぞ」
「どういて、こんなとこに」
頭の中から現れたような弐市に似蔵は混乱する。
そんな似蔵に気付いているのかいないのか、弐市は懐からきちんとたたまれた手拭を取りだし差し出した。
「明日も使う手拭じゃき、きちんと洗っちょき。武士たるものは身なりも清く在らねばいかんちや」
貧しい似蔵は手拭もろくに持っていない。
道場で使うものも一枚を使いまわす有り様で、とても武士らしいとは言えない生活を送っている。
―――それを。
それでも弐市は似蔵を武士として扱い、武士らしく在れという。
似蔵が武士らしく在るために、たかが手拭一枚を届けようと探してきたという。
何故か堪らない気持ちになりながら手拭を受け取ると、弐市はそのまま似蔵の横をすり抜けた。
「わしの門弟が何かご迷惑をおかけしちゅうか」
弐市は似蔵を後ろに下げて吉田と澤口の眼前に立った。似蔵は呆然とその背中を見る。
「こ、こやつがわしの袴を踏んで謝らんき」
「吉田、もうえいじゃろう」
動揺しているらしい吉田と諌めようとしている澤口、その両方を見比べながら弐市は静かに佇む。
373道程 5/8 ←すみません超えますorz:2010/01/31(日) 03:46:33 ID:joNB1k0g0
「しちょりません」
後ろから似蔵が訴えたのをどう聞いたのか、弐市は一歩前へ出た。
「似蔵も酔うちょりました。わしが代わりに謝りますき」
弐市はいとも簡単に頭を下げる。そんな理由はどこにもない無いというのに。
いや、有るとすれば弐市が道場主で似蔵がその門人だというただそれだけだ。
それだけのことで、弐市はこうして頭を下げている。ますます堪らなくなって似蔵は拳を握る。
「ほれ吉田、こうして謝まっちゅうぜよ。もうかまんろう」
「待ちいや、まだ終わっちゃあせん」
弐市が頭を下げたことで気を取り直したらしい吉田はにたりと笑う。
「おんしゃら、わしと漢比べせい。おんしゃらが勝ったら許しちゃる。わしが勝ったら……褌姿で土下座せえ」
ちらちらと女将を見ながらそういう吉田に、澤口がため息をついた。
つまり吉田は、似蔵と弐市に女将の前で恥を掻かせたいのだ。
弐市が現れた瞬間に女将の顔が輝いたのも関係あるのだろう。弐市のことも女将は気に入っている。
374道程 6/8 ←すみません超えますorz:2010/01/31(日) 03:48:58 ID:joNB1k0g0

漢比べ―――つまり酒比べ。酒好きの土佐っぽが雌雄を決するのによく使う手だ。
作法は単純、鬼殺しの異名をとるひたすらに強い酒「三千世界」を相手が倒れるまで酌み交わす。
話には聞いたことは有るが似蔵はまだ酒比べに挑んだことはない。三千世界は強すぎるのだ。
一方、わざわざ挑んできた吉田は相当自信があるのだと思われた。
すでに酔っているようだが、吉田の限界はこんなものではないのかもしれない。
「ほがな勝負に乗るわけが、な……」
吉田に言い寄ろうとする似蔵を、弐市が振り返らぬままに手で制した。
そして吉田の近くにきちんと座ると女将に顔を向ける。
「女将、三千世界一升と、吉田様とわしの分の杯を」
「た、たけ……!」
「似蔵は黙っちょり。……吉田様、似蔵は若輩ゆえわし一人のお相手で許してつかあさい」
375道程 7/8 ←すみません超えますorz:2010/01/31(日) 03:50:18 ID:joNB1k0g0

勝負が決したのは一刻後だった。
周囲が食い入るように見守る中、弐市の分を注いだところで三千世界が空になり歓声が起きる。
一瓶空けたことで気が緩んだのか、すでにふらふらだった吉田が最後の一杯で倒れた。
それを見届けた武市はそれまでと変わらずに一分の乱れもなく最後の杯を空け、
倒れている吉田とその横に居る澤口にすっと一礼した。―――弐市の勝利だ。
「漸く吉田も大人しゅうなりよったがか。おまんらに礼を言わねばならんのう」
吉田を担ぎあげながら澤口が苦笑する。
「女将、銭はここに置いとくきに。……それから」
吉田を背負い出口に向かいながら澤口は言った。似蔵の横に来たところで足を止める。
「おまんの師匠は身も心もまっこと強い。おまんは恵まれちょるぜよ」
立ち去り際に澤口に肩を叩かれて似蔵はやっと我に返った。
唇は噛みしめすぎて血の味がしたし両の拳も握り締めすぎて痺れていたが、それよりも弐市だった。
「弐市さん」
そろりと背後から声をかけると、それをきっかけに弐市の身体が左に傾いだ。
地に激突する直前になんとか似蔵が抱きとめる。
「弐市さんがお強いなんて初めて知っちゅうがです。いつもお呑みになりませんき」
女将が惚れ惚れと言う。三千世界が空になるのはそうはないからだろう。周囲も尊敬の眼差しだった。
「呑めんがです」
「……はい?」
ぽつんと似蔵が呟いたのを女将は聞き損ねたようだった。
「弐市さんは酒が呑めんきに。婚礼の杯一杯で引っくり返るがです。
 酒気を吸うただけで酔うかもしれんち皆でゆうたこともあるぜよ」
376道程 8/8 ←すみません超えますorz:2010/01/31(日) 03:51:35 ID:joNB1k0g0

信じられないという顔をしている女将と客を置いて、似蔵は弐市を背負い店を出た。
よろよろと一歩進める毎に弐市が呻く。弐市が似蔵より背が高いため上手く背負えていないのだ。
鳥村の婚礼時には瀧馬が弐市を簡単に背負っていたことを思い出し、ますます似蔵は不甲斐なくなった。
弐市の呻きを聞いていられなくて、己の情けなさに耐えられなくて、似蔵は道の傍に弐市を下して休むことにした。
草むらに弐市の身体を横たえる。頭をどうするか迷った挙句、似蔵が正座をしてその上に乗せることにした。
弐市は青白い顔をして全く動かない。鳥村の婚礼時の帰りに瀧馬の背で幸せそうに眠っていたのとは大違いだ。

あまりに動かないので不安になり弐市の頬に手を当てる。想像より熱いことに似蔵は動揺した。
このまま弐市の魂が焼け尽きてしまうのではないかと思うと身が震えてしまう。
―――わしゃあ酔うた事がないき。
似蔵は酒に強い。深酔いもほとんどしない。だから酔いつぶれた人間の辛さは分からないし対処も分からない。
どうすれば弐市を少しでも楽にしてやれるのかも思いつかなかった。
せめて少しでも冷やそうと左手も頬に当ててみるが、
冷えていたはずの似蔵の手がたちまち弐市の熱を吸収して意味のない行為になってしまった。
―――もし。
もしも弐市がこのまま死んでしまったらその場で腹を斬ろう、と似蔵は思った。
弐市が冥府へ旅立つようなことがあるならば、すぐに追いついて礼と詫びを伝えなくてはならない。……否。
その前に弐市の身体を弐市家に届けるべきだろう。弐市と妻の宮は夫婦仲がとても良いから、弐市も帰りたいはずだ。
そして弐市を宮の元へ送り届けて、事情を話す必要もある。弐市はとても武士らしく在ったのだと伝えなければ。
きっと、宮は悲しそうに笑うのだろう。そして、似蔵さんが御無事でよかった、旦那様も本望だろうとでも言うのだ。
そういう夫婦なのだ、弐市と宮は。たぶんそれは、相手が似蔵ではない他の誰でも変わらない。
弐市はあの場に居たのが誰であっても同じことをしたのであろうし、宮も同じことを言うだろう。
……他の皆と全く同等に扱われるということが似蔵にとってどれほどの意味を持つのか、
おそらく彼らは全く考え及びもしないに違いない。だからこそ、似蔵にとってその存在は尊く美しい。
377道程 9/8 ←超えましたorz:2010/01/31(日) 03:53:00 ID:joNB1k0g0

ふと気が付けば両の手の感触が冷たくなっていた。
似蔵の身体が冷えている為なのか、弐市の酔いが醒めてきたのか、或いは弐市の魂が身体から抜け出ようとしているのか。
似蔵には判断が付かず、身がすくむような恐怖に襲われる。
がくがくと震えながら、それでもとりあえず弐市が生きているということを確かめたくて、右手を襟元へ差し入れた。
弐市の胸が温かく確かに鼓動していることを、ぺたりと当てた手のひら全体で感じ取り安堵でまた身が震える。
しかし安堵もつかの間で、すぐに弐市の心の臓が早鐘を打っていることに気が付いた。
こんなに早く動いたら心の臓が壊れてしまうのではないかと思い、もう似蔵はどうしてよいのか分からなくなった。
まるでそれは弐市が生き急いでいるようで、あるいは弐市の身体が魂を突き放そうとしているようで、
突き上げる衝動のままに弐市の身体を軽く起こすと掻き抱いた。
襟元に入れた右手で鼓動を確かめつつ、後ろから肩口を身体で包み込む。
鼓動が鎮まるように、魂が身体から抜け出ないように、両腕に力を込めた。
「弐市さん、弐市さん」
腕の中の弐市の耳元に囁いてみても、相変わらず項垂れた頭はびくともしない。似蔵は何の役にも立っていなかった。
―――いつもそうじゃ。
いつもいつも、似蔵が追いつくためにどれだけ努力をしても、弐市は軽々と遥か遠くの遥か高みへ行ってしまう。
たまに振り返ってくれる事があっても決してその距離がなくなることはない。多分、これからも永遠に。
「弐市さん……」
ずっと堪えていたものが込み上げてくる。それでも武士たるもの涙などしてはいけない。似蔵は武士たらねばならないのだ。
そうでなければ弐市が何を守ってくれたのか分からなくなってしまうではないか。
「わしを置いていかんでつかあさい―――弐市さん」
しかし、呼びかけるその声が震えてしまうのを似蔵にはどうしようも出来なかった。
378道程 10/8 ←超えましたorz:2010/01/31(日) 04:00:12 ID:joNB1k0g0

「そこにおるがは似蔵じゃないがか」
どれくらい時が経っただろうか。ひたすら弐市に呼びかけ続けている間に辺りは薄暗くなっている。
素っ頓狂な声に呼びかけられ、似蔵は顔を上げた。提灯を持って近づいてくるのが声の主のようだ。
「そん声は……瀧馬がか」
「おう、わしじゃわしじゃ。……似蔵、そこに倒れちょるんはもしや」
そう言って瀧馬は提灯を近づけてくる。暗闇に慣れきった眼には光がきつく、似蔵は眼を眇めた。
「……弐市さんぜよ」
「ここにおったがか弐市さん!こんなとこでなにしちゅう!お宮さんが心配しちゅうきに、弐市さん!」
「……ん、りょ、う……、……声が……大きいが、じゃ」
……似蔵がどれだけ呼びかけても微動だにしなかった弐市が、瀧馬が呼びかけただけで薄眼を開けた。
「瀧馬、静かにせえ。弐市さんは今お辛いがじゃ」
何故か心の臓が鷲掴みにされたように痛んだが、それを無視して似蔵は事の成り行きを瀧馬に伝えた。
そして、いざという時には弐市の身体を送り届けた後に腹を斬る心づもりであること、
ここに来たのも何かの縁であろうから介錯を頼みたいというところまで話すと、急に瀧馬が吹き出した。
「何がおかしいがじゃ!」
「ははは、すまんのう、似蔵も弐市さんも、らしいのうと思うただけぜよ。
 けんどもう、わしが来たからには大丈夫じゃ。わしゃあ深酔いの手当には慣れちょるし、家に薬もようけ持っちょるき」
似蔵は身体中から力が抜けるのを感じた。
「弐市さんは助かるがか」
「当たり前ぜよ。……さあ弐市さん、家へ帰りますきに。お宮さんはまっこと心配しちゅうぜよ」
「……家には、……帰らんき」
また弐市が薄眼を開けた。瀧馬が呼びかけたからなのか、さっきの瀧馬の笑い声が大きすぎて目を覚ましたのか分からない。
「どういてですか弐市さん。我儘言わんといてつかあさい。わしゃあお宮さんに頼まれて弐市さんを捜しとったがです」
「と……宮には、……このような、姿は」
呻くような弐市の言葉を聞いて、再び瀧馬は吹き出した。
379道程 11/8 ←超えましたorz:2010/01/31(日) 04:01:34 ID:joNB1k0g0

「お宮さんはどんなお姿でも気になどしませんろう。ただ弐市さんが御心配なだけじゃき」
「帰ら、んき……りょ、う、……わしを、置いちょき」
「弐市さん、考えちょることくらいは大体分かりますき。
 お宮さんにこげな酔うたお姿を見せるくらいなら腹を斬るとでも思っちょるがですろう。
 ―――弐市さんが腹を斬ったら似蔵も後追いする心積もりですき、ここは引いてつかあさい」
急に話を振られて似蔵はびくりとした。薄く開いた弐市の目が、似蔵の存在を認めたようだった。
「い、ぞ……?」
「似蔵は責任を感じとるがです。弐市さんに死なれたら似蔵も生きておれんですろう。
 わしゃあ幼馴染を一遍に二人も亡くしとうはないがです。後生ですき、考えを改めてつかあさい」
弐市の目がゆっくり動いて、頭を下げている瀧馬とその横でぼうっとしている似蔵を見比べた。
そして僅かにため息をついて目を閉じる。
「……好きにせい」
「礼を言いますき弐市さん!ほいたら、弐市さんわしの家にしばらく居ったらえいですろう。
 お宮さんにはそうお伝えすれば御安心じゃろうし、弐市さんはお宮さんに酔うてるお姿を見せずに済むがです」
了承の意なのか、弐市はもう目を開けない。
それを見た瀧馬は何故か乙女ねえやんが喜ぶ顔が目に浮かぶぜよなどと呟いている。
瀧馬は嬉々として弐市を背負い、そして似蔵に目を向けた。
「似蔵、おまんも家へ来。おまんも手当てが必要ぜよ」
「わしゃあ、怪我なぞしちょらん」
似蔵が言い募ると、瀧馬は似蔵の手を指差した。釣られて目を落とすと、手のひらに爪の痕が強くのこり血が滲んでいた。

軽々と弐市を背負って先を歩く瀧馬を似蔵は追った。
僅かに涙が滲むのは、手の傷が認識した途端に痛んできたからか、身体が冷え切ってしまっていたからか。
弐市が助かったことへの喜びか、自分が腹を斬らずに済んだことへの安堵か。
それとも現れた途端に絶望的な空気を一変させた瀧馬への感謝か、弐市と心が通っているらしいことへの嫉妬か。
頭の悪い似蔵には、やはり結論を出すことはできなかった。
380道程:2010/01/31(日) 04:04:54 ID:joNB1k0g0
レス番ふり間違うわ長い話ですみません。
訛りも適当ですみません。エロもなくてry
なんかヤンデレっぽくなってもうたw
でも自分がたのしかったからええがじゃ!

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
381風と木の名無しさん:2010/01/31(日) 07:29:44 ID:QsNWzufqO
よくない
382風と木の名無しさん:2010/01/31(日) 08:27:21 ID:nPnoz9P2O
字数くらい把握して投下しろっていう
383道程:2010/01/31(日) 09:23:51 ID:joNB1k0g0
ごめんなさい。
内容的に突っ込みたいところは多々あれど書いていること自体は楽しかった、
というつもりだったんですが、
これだとこちらのルールがどうでもいいと言っているように見えますね。
消してそういう意味ではなく、自分の甘さを反省してます。

住人の皆さん重ね重ねすみませんです。
384風と木の名無しさん:2010/01/31(日) 09:37:04 ID:N0vRaaLO0
>381,382
絡み逝けよ

>383
作品のナンバリングの分数明記は推奨だからあんまり気にすんな。
自分は「超えました」で笑ったよw
385風と木の名無しさん:2010/01/31(日) 11:27:57 ID:ozTrHMA70
>368
今すごく読みたい雰囲気の話をありがとう!!
386風と木の名無しさん:2010/01/31(日) 13:25:25 ID:BTvjPmyM0
>>383
テンプレ嫁
言い訳いらね
387風と木の名無しさん:2010/01/31(日) 16:27:24 ID:3mD1zLGt0
9/8 ←超えましたorz でどんどん増える分子に爆笑してしまった
間違いなんて誰にでもあるし次気を付ければいいんじゃないかな
388風と木の名無しさん:2010/01/31(日) 17:48:16 ID:8quUkwlF0
>>386
同意
次投稿する時があったとしたら言い訳しないように頑張れよ
389風と木の名無しさん:2010/01/31(日) 17:57:05 ID:ug3Ry6KE0
でもほんとに難しいんだよ、ここに書くの。
普通にサイト用と同じように書いてても、一行の行数が多すぎますなんて言われてエラーになったり。
それを見越して分割しようにも、何文字まで大丈夫なのかもよくわかんないし、
70字ぐらいで全部改行して揃えちゃおうかと思っても、見てる人の環境によって
それこそ変な改行しまくりになったら気持ち悪いし・・・。
自分も何回か失敗したなと思ったことあるよ。

だから>>386の気持ちも分かる。
へこまずにがんがれ。
慣れってのもあると思うし。
390風と木の名無しさん:2010/01/31(日) 18:52:54 ID:UhI6+3Yw0
専用ブラ使うか他人の書き込みで最大行数を確認してから
その最大行ごとにライン引いてメモ帳内を分割してる
391風と木の名無しさん:2010/01/31(日) 19:02:27 ID:BTvjPmyM0
>>389
>3
こんだけ詳しく書かれててわかんないとか('A`)
>2の掲示板も見て来いや
392風と木の名無しさん:2010/01/31(日) 19:22:36 ID:ug3Ry6KE0
>>390
自分は専ブラ使ってる。最大行数は確認しながら投下すっけど、全部で何話になんのか
最初から読み切るのが難しい。
ぶつ切りの文章書くほうじゃないからなあ。
最大行数ってのも、自分の環境での最大行数じゃないかと思うし。変なとこで改行されてるブログ小説とか読むのつらくない?

>>391
テキストエディタ上で書くときに、バイト数なんかわかるかよ・・・。
1レス32行つうのはわかってるけど、一行の文字数規制がどこまでかわかんなくて、それにあわせて書くのが難しいんだよ。
レスごとの区切りもちゃんとしたとこで区切りたいしな。


なんせ、投下はテストできない一発勝負だからな、失敗したからってあんまり責めないでくれ。
393風と木の名無しさん:2010/01/31(日) 19:30:12 ID:0Gjv+0ws0
エディタで書いたあと、レスウィンドたちあげて全部貼り付け編集したあとに
話数書いて投下したらいいだけじゃないのかね…?
394風と木の名無しさん:2010/01/31(日) 19:40:49 ID:/3CzSX2wO
絡みスレ行って下さい
395風と木の名無しさん:2010/01/31(日) 19:53:10 ID:HZTYFvlV0
絡みでも迷惑かと

相談・議論等は避難所の掲示板で
http://s.z-z.jp/?morara
396風と木の名無しさん:2010/01/31(日) 20:46:08 ID:joNB1k0g0
自分のせいでごめんなさい。
アドバイスくれた人、フォローくれた人、どうもありがとう。
393氏のような方法は全く思いつきませんでした。いい方法を教えてくれてありがとう。

以降こんなことがなきよう気をつけます。皆さんすみませんでした。
397風と木の名無しさん:2010/01/31(日) 21:34:41 ID:jkTfLaZWO
>321
まさかのカプ!ありがとう!
動物て発情期あるから大変だなw
398風と木の名無しさん:2010/01/31(日) 21:36:28 ID:hIcAqe8DO
>>396
二度とくんな
399風と木の名無しさん:2010/01/31(日) 21:57:11 ID:CXO1EDeKO
これは分母書かないで投稿した方がいいな
400風と木の名無しさん:2010/01/31(日) 22:18:29 ID:8quUkwlF0
>>396
謝る以前にスルーしてれば良かったものを
401風と木の名無しさん:2010/01/31(日) 23:01:24 ID:ogXr5sAs0
>>368
面白かったよ!また書いて!

つかこのスレいやな奴ばっかだな
>>391
>>2には「提供者にはできるだけ感謝しよう」とも書かれてるんだが
402風と木の名無しさん:2010/01/31(日) 23:33:54 ID:qyjoaaFp0
403風と木の名無しさん:2010/02/01(月) 00:02:02 ID:hT8ZAADE0
>>398
自分の興味ないジャンルの書き手だからって、そういう基地外な態度を取ってると
自分の好きなジャンルの神な書き手も
投下して何か失敗したらしつこくネチネチ言われるかもしれないと思ったら
嫌気がさして投下しなくなるよ
よく考えな


404風と木の名無しさん:2010/02/01(月) 00:21:42 ID:K6mpe3RD0
このスレの書き込みは全てがネタ。
だからずっとここに書き込み続けるのも誘導を無視するのもスレがgdgdになってるように見えても全てが演出!投下!
だから絡むだけ絡んで煽ってるように見える名無しもきっと投下の一部に違いない
405風と木の名無しさん:2010/02/01(月) 06:53:49 ID:RfbrF92z0
>>392
テストしようと思えばそういうツールだってきちんとある
そこまでせずとも調べればバイト数だって分かるし
ルールを守る努力しなかった自分を棚に上げるな
ここは一人のためのスレじゃない
406風と木の名無しさん:2010/02/01(月) 07:14:57 ID:dliZ73Hl0
ルールは確かに大事だけど、書き手あってのスレにおいて
たった一度のミスをここまであげつらうとは、自治厨何様
なレベルになってきたなぁ
それともここのスレを過疎らせたいだけの荒らしか?
407風と木の名無しさん:2010/02/01(月) 07:45:19 ID:PWzBAp/g0
先日の論派ーでの爆破ドッキリが
もし逆ドッキリだったら…という仮定の妄想話
エロ無しです

!!ナマモノ注意!!

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
408鳳 粕×和歌 逆ドッキリ 1/5:2010/02/01(月) 07:46:39 ID:PWzBAp/g0
雷鳴のように鳴り響く爆音。
爆風に煽られて、火柱が高々と上がる。

「さすがの粕賀も、これは死にましたねぇ」
自分が入っている事になっていた、今はもう残骸になってしまったコンテナを
遠目に眺めながら、呟いた。

「じゃあ、そろそろ行きましょうか、粕賀さん」
にこやかなスタッフの声に促されて、立ち上がる。

・・・他人を驚かせて、何が楽しいんでしようかねぇ・・・。
ドッキリは大好きだけれど、それは仕掛けられた時のことで
仕掛ける方に回るのは、気が重い。
しかも今回、ドッキリを仕掛けた相手は、和歌林。
ネタばらしの後の反応が恐ろしい・・・絶対キレる。殴られる。

正確に言うと、和歌林に仕掛けたのは「逆ドッキリ」ってやつで。
彼は、俺がドッキリに引っかかったと思っていたはずだ。
俺が閉じ込められた(事になっている)コンテナが、本当に爆発するまでは。

今の和歌林の心情を思うと、本当に気が滅入ってくる。
でもこれも仕事のうちだと割り切って、俺は現場に向かった。

事故だ、消防車だ、警察だと、迫真の演技で走り回るスタッフの間をすり抜けて
爆発現場の前で、棒立ちになっている相方に背後から近づく。
和歌林の隣に居た論部ーの亜津志さんが、俺に気付いて少し後ずさり、目配せをする。

『行け』ってコトだよなぁ。
小さくため息をついて、右手にもっていた看板を肩に担ぐ。
『ドッキリ大成功』と書かれたソレを両手で捧げ持ち、努めて明るく、声を張り上げた。
「てっ、てて〜〜ん!!」
409鳳 粕×和歌 逆ドッキリ 2/5:2010/02/01(月) 07:47:37 ID:PWzBAp/g0
びくりと肩を震わし、振り返った和歌林は能面のような顔で。
俺の姿をみとめると、2回瞬きをした。
そうして、ゆっくりと俺の方に近づいてくる。

能面のように無表情だった顔が、くしゃりと歪む。
泣き出しそうな、笑い出しそうな、いまにも壊れそうな表情に、目を奪われて動けない。

小刻みに震える唇が、小さく俺の名を紡ぐ。
「・・・粕賀・・・」
その声は、甘く切なく、俺の胸を刺す。

目の前まで歩み寄ると、和歌林の右腕が俺の方に伸びてきた。
殴られると直感して、反射的に肩をすくめて身構える。しかしその腕は、俺の首筋にそっと回された。
あれ?と思う間もなく、ぐいと引き寄せられて、前屈みになる。

もう片方の腕も首に回されて、まるで俺にぶら下がるかのように
ぎゅうっと抱きつかれてしまった。

「わっ・・・和歌林っ!ちょっと、ちょっとっっ!」
焦る俺。
周りには論部ーさんをはじめ、数名の共演者に大勢のスタッフ。
カメラまで回っているというこの状況で、この体勢はヤバイ。

ヤバイのだけれど、すがり付く肢体を抱き返したくて、両腕がうずく。
鼓動がどんどん早くなる。体中を興奮した熱い血が駆け巡る。
うわー、ファウルカップ付けといて良かったー!

馬鹿な事を考えていると、ふいに抱きついていた腕がゆるんで、ずるりと和歌林が崩れ落ちる。
咄嗟に片手で支えて、俺の胸にもたせかけた。

覗き込んだ和歌林の息が不自然にあらい。少し指先が痙攣している。
過呼吸だ、とピンときた。
410鳳 粕×和歌 逆ドッキリ 3/5:2010/02/01(月) 07:49:15 ID:PWzBAp/g0
「おいおい、和歌林、どうした?!」
「大丈夫?」
論部ーさん達が心配して集まってくれた。
「いや、ちょっと相方が驚きすぎたみたいで・・・」

過呼吸で大事に至ることはない。
けれども、本人には死にそうなほどの苦しみが襲うらしい。
真っ青な顔色で、目を硬く瞑った和歌林を見ると、俺の胸も痛む。

「すみませんが、ちょっと休ませてきます」
集まってきたスタッフに声をかけて、一礼すると
和歌林を両腕に抱き上げて、楽屋代わりのバンに連れて行った。

後部座席の隅に座らせて、俺もその横に腰掛けた。短くあらい呼吸を繰り返す和歌林に、そっと語りかける。
「大丈夫、また過呼吸を起こしてるだけだ」
「でも・・・苦し・・」
上手く呼吸ができない和歌林は、本当に苦しそうだ。

片手を和歌林の肩に回して、軽く抱き寄せる。
「うん。大丈夫だから。息、吐いて」
「息っ・・はっ・・・わかん、ねぇ・・・」
以前、和歌林が過呼吸を起こした時に、対処法としてやったペーパーバッグ法は、実はあまり良くないらしい。
まず落ち着かせて、息を吐かせるのが得策だと、どこかで読んだのを思い出した。

「じゃ、何か、しゃべって」
「え・・・?」
「しゃべってたら、息吐くでしょう?」
「でも、なに・・・を?」
「俺の名前でいいよ。呼んで、和歌林」
「かす・・・が?」
「そう」
411鳳 粕×和歌 逆ドッキリ 4/5:2010/02/01(月) 07:50:33 ID:PWzBAp/g0
「か、す.がっ・・・かす、が・・・かす.がぁっ・・」
俺の腕の中で、俺の名を何度も繰り返す和歌林。
胸を突き上げる愛おしさで、キスしたくなる衝動をなんとか抑える。

茶色の猫っ毛に唇を寄せて、呟いた。
「すまない・・・」
「・・・ばか、仕事、だろぉ。お前が・・・謝んな」
ようやく治まってきた呼吸の中で、苦しそうにしながらも、言い返してくる。

「だいたい、なぁ、俺はなぁ、お前が体はるたびに、こんな思いしてんだよっ!」
少しずつ、和歌林の声に力が戻ってきた。
なじられながらも、俺は胸を撫で下ろす。

「今までも、K−1の時だって、潜水の時だって、いつもいつも!!」
「・・・すまない。・・・でも・・」
俺は、俺に出来ることを精一杯やりたいんだと言い募ろうとしたのを遮って
和歌林が顔を上げて、俺に微笑みかけながら言った。
「でも、いーよ。お前、ソレがやりたいんだろ?」

和歌林の指が、そっと俺の頬に触れる。
「こうやって、ちゃんと俺の隣に帰ってきてくれるなら、
 どんなにドキドキしてもハラハラしても、待っていてやるよ」

そんな、いじらしい事を言わないでくれ、和歌林。
本気で泣きそうになってしまう。

「絶対、帰ってくるんだろう?・・・だって、お前、スゲーもんな」
「あ・・・当たり前ですよっ、あの、粕賀ですよ」
こみ上げる涙を誤魔化すのに、慌ててキャラを作る。
そんな俺の事なんか、お見通しだと言わんばかりに、和歌林も満面の笑みを作る。
412鳳 粕×和歌 逆ドッキリ 5/5:2010/02/01(月) 08:02:30 ID:PWzBAp/g0
「俺さー、今日、お前、死んだと思っちった」
「・・・っ!」
ふざけた口調の中に、和歌林の本気を感じ取って、俺の息がつまる。

「あの粕賀さんを信用しきれないなんて、俺もまだまだだなぁ」
普段の笑顔に戻った相方に、許されたような気分になって
俺もまた「粕賀」に戻る。

「本当に、まだまだ、和歌林君は修行が足りませんな」
「調子に乗ってんじゃねぇよ」
いつものように、こめかみを叩かれて、俺も笑顔になる。

和歌林の手を引いて、体ごと俺の胸に寄せ、ふわりと抱きとめた。
「必ず、絶対、何があっても、和歌林の隣に帰ってくるよ」
「・・・絶対だぞぉ、俺たちふたりでオー.ドリーなんだからな」

和歌林が粕賀を必要としてくれている。
それだけで俺は、こんなにも幸せになれる。

自分だけのパワースポットが、こんな身近にあったんだと
今更ながらに気がついて、抱きしめる力を強めた。




□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

退院&復帰御祝 早期回復祈願ナモナモ
413風と木の名無しさん:2010/02/01(月) 08:31:00 ID:tiNZAcN9O
おーありがとー
ピンクチョッキの人、思ったより復帰早かったねw
414唯、今は心淡く。1/5:2010/02/01(月) 11:38:23 ID:SIOTFrUS0
GCCXゲーム科長は名探偵パロ。方向音痴→(←)飛距離バント。相変わらずです。
ナマなのか半ナマなのか微妙ですがナマモノ注意でお願いします。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・;)ジサクジエンガ オオクリシマース!

今日も1日の業務が終わる。
漸く戻って来た自分の作業着を脱ぎながら大きく息を吐いた。
「裏川!お疲れさん」
「あ、有埜さん。お疲れ様です」
振り向くとドアの所に科長が立っていた。
額には冷えぴったん。って事は、残業だろうか。
「今日はもうあがりか?」
「はい。有埜さんは・・・」
「俺まだ仕事あんねん。ホンマきっついわ〜戻って来たら俺の分の仕事手つかずでちゃーんと残ってんもん」
「・・・大変、ですね」
「せやろ?まぁ確かに暫く工場の仕事出来んかってんけど」
有り得へんよ〜とぼやきながら目を擦る。目の下には薄っすらと隈が出来ていて。
この人が会社や取引先を巻き込んだ大きな事件を解決して戻って来たのは、つい先日の事だった。
誤認逮捕されて、逃げ回って。俺も色んな事で手助けはしたつもりだけど体力的にも精神的にもきつかっただろうと思う。
工場も緊急体制に入ってて気にしてる暇なんかなかったけど、だ。
「・・・有埜さん、後どの位残っとっとですか?」
「ん?後は書類記入と納品かな〜向こうも時間が時間やし早よ行かんと迷惑かかるなぁ」
確かにもうそろそろいい時間だ。
今から行ってギリギリ間に合う位の・・・
415唯、今は心淡く。2/5:2010/02/01(月) 11:39:11 ID:SIOTFrUS0
「俺、行きますよ」
「へ?」
「其のROM届ければ良かっですよね。俺行って来ますから有埜さんは書類記入しとって下さい」
「え?いや、でもお前もう帰るんやろ?」
「届け終わってから直帰しますから。有埜さんも其の方が早く終われるでしょ?」
ちょっと強引にROMを受け取る。じゃなきゃきっと有埜さんは遠慮すると思ったから。
会社の危機を救ってくれた人、出来ればゆっくり休んで欲しい。
「事件の事もあって、あんまり休めとらんとじゃなかですか?早く帰って休んで下さい」
「裏川・・・じゃあ頼もかな。有難う」
「いえ、じゃあまた明日」
「おう、また明日」
軽く手を振る科長に背を向けて、ロッカールームを出た。
ちょっと急げば余裕で着くだろう。
自分も早く帰宅するべく、足を速めた。
「・・・・・・・あれ、何やろ。何かひっかかるな・・・しまった!」

近道に、と細い路地を通って暗い道に出る。
此の先を曲がれば取引先に着く・・・筈なのだが。
「・・・・・あれ?」
行けども行けどもビルが見えない。寧ろ会社らしき建物が無い。
えらく鄙びた・・・
「此処、何処だろ・・・」
まさかとは思うが。
「・・・・・迷った?」
思わず頭を抱えたくなる(て言うか、泣きたくなった)
普段から確かに方向音痴だと言われてはいるが、こんな時に。
考えている間にも時間はどんどん過ぎていく。
416唯、今は心淡く。3/5:2010/02/01(月) 11:39:53 ID:SIOTFrUS0
ちょっとランニングも兼ねて小走りで来たとは言えど、もうヤバい。本気でヤバい。
結構ギリなこの時間に納品という事は間違いなく至急で必要な物だ。
届いてないとなったら有埜さんだけでなく会社にも迷惑が掛かる。
つぅ、と冷や汗が流れるのを感じながら立ち止まった。
「・・・・・」
どうするか。取り敢えず道を戻ってみるしかない。
ダッシュで戻って、思うのと逆の道を行けば着く(かもしれない)
嗚呼、取引先にも連絡を入れておかなければ。
そう思って踵を返した時。
「裏川!」
呼ばれて思わず足が止まる。驚いて、俯いていた顔を上げて。
其の先に居たのは。
「お前ROM何処持って行く気や、此処湖やろ!」
「さ、笹乃さん!」
息を切らして、駆け寄って。思い切り肩を叩かれる。
あーしんどい。そう言う笹乃さんを冷静に見ながら頭は混乱しっ放しで。
さっき俺が会ったのは有埜さん1人だった筈だ。何で。何で笹乃さんが?
「あ、有埜さんが慌てとったから、何事かと思って、話聞いたら・・・お、お前、いい加減ちゃんと自覚せぇよ」
「は、はい、すいません」
有埜さんが。そうか、俺と別れた後気付いて・・・でも、だ。
ふっ、と疑問が浮かんだのと同時に。
「先方には、連絡しといたから。行くで」
「え・・・!すいません!」
「謝ってばっかやな」
困った様に微笑まれて。きゅっと胸の辺りが締まった感じがする。
久々走って疲れたと漏らした言葉、此処まで走って来てくれたのだろうか。
いや、何処に行ったのか分からないのだから、きっと此処まで来るのにもっと掛かってる。
そう思ったら、側に寄った体温はいつもより高い気がした。
自分の情けなさに溜息を吐きたくなったけれど、それとは別に、もう1つ。
417唯、今は心淡く。4/5:2010/02/01(月) 11:40:29 ID:SIOTFrUS0
わざわざ自分を捜しに、この人が出て来てくれた事。
そして今、直ぐ側に。手を伸ばして、触れられる位置に居る事。
其れを不謹慎に喜んでいる自分が居る。
困らせて、迷惑かけて。凄く申し訳ないのに、だ。
邪な考えを振り切る様に視線を外した。
申し訳程度に夜道を照らしている街灯が目に痛い。本気で泣きそうになっているのかもしれない。
ゆっくりと、気付かれない様、息を吐いた。
「・・・そんな落ち込むな。向こうも時間大丈夫やって言ってくれたから」
「・・はい」
「有埜さんも助かったって言うてくれてたし」
「はい」
「でも行く時言えな、ちょっと寿命縮んだから」
「はい、すいません」
ちらと視線だけ向けると端正な横顔が照らされて、前髪を掻き上げる。
絵になるなぁなんて何となく冷静に考えながら、また邪な感情が湧いて来そうだった。
ぐっと唇を噛み締めて言葉を飲み込む。ホント、どんだけだよ。
言ってしまえればきっと楽になるんだろう。でも。きっとまた別の苦しさが出て来る。
其れは言い訳だ(知っとる、そんな事)
「裏川、」
「あっ、はい」
歩くスピードは変わらない。
この距離も、この関係も。
「終わったら、飲みに行くか」
・・・だけど、今は。
418唯、今は心淡く。5/5:2010/02/01(月) 11:44:37 ID:SIOTFrUS0
「いつもの店、多分まだ開いてるやろ」
「・・・はい」
「あ、俺荷物置きっ放しやった。取りに行かな」
「や、待っときます。大丈夫です」
「そっか、ほな急ぐか」
優しい声、ぐしゃぐしゃ髪を掻き回されて思わず頬が緩む。其の掌が温かい(手汗のせいか)
肩を並べて歩く。苦しい、心地良い其の距離を保って。
ぶらりと下がった手が、たまに触れそうになりながら。
其の度にぎゅっと拳を作って、何処の中学生だと笑う。
どうして居場所が分かったのか、来てくれたのか。
浮かんだ筈の疑問は、何処かへ飛んでいって訊く事はなかったけれど。

□ STOP ピッ ◇⊂(−∀−;)イジョウ、ジサクジエンデシタ!
すいませんまさかのゲーム萌えでした・・・
前の話にGJ頂いた姐さん方有難う御座いました!まだ萌えてます。
419風と木の名無しさん:2010/02/01(月) 15:27:26 ID:RBJxsm3T0
>414
GJです、いつも読ませていただいてありがとうございます!!
GJて言葉じゃ足りないな…てくらい
ほんのりしてるところが萌えです!
420風と木の名無しさん:2010/02/01(月) 16:43:08 ID:WttmJnqt0
>>414
イイヨイイヨー
もどかしい感じがたまらんですたいw
421風と木の名無しさん:2010/02/01(月) 20:58:20 ID:n6bzQuXGO
今更ですが>>255GJ。
文体も雰囲気も、終わり方も好きです。
422Funny Bunny:2010/02/01(月) 21:36:57 ID:QpFKqqOKO
ナマ。馬尺伝の某大学。作者が壱区スキーの為悪しからず。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「意外にキレイな造りなんだよね」
「・・・は?」
隣からマジマジと大きな瞳が華やかな顔で覗き込んできて言うから、半ば嫌みかと思ったくらいだった。
でもどうやら本気だったらしく、うんうん、と一人で頷いてまた元の位置に戻る。
「鼻筋とか唇とかさ、すっきりしてて、うん」
「・・そうデスカ」
「そうそう、今や二年の人気TOP3に入ってるって、マジに」
時刻はお昼を過ぎて、午前の試験だけを受けて合宿所に戻る列車内。
冬の穏やかな陽の光が溢れてキラキラしていた。
珍しく空いてる車両は、半分くらいのロングシートが埋まってるのみ。
はっきり言って眠い。
・・けど、適当に聞き流してた、隣で勝手に話してるヤツの言葉が引っかかった。
一位は言わなくてもわかる。日本中に名前と顔を知られているうちのエース。
で、ホントかわかんないけど、自分が入るとして。
「残り一人って・・・」
「ハーイ」
ニッコリと自ら手を挙げる姿にため息を吐いて、脇腹を小突いてやった。
423Funny Bunny 2/3:2010/02/01(月) 21:39:49 ID:QpFKqqOKO
「でも実績がイマイチ伴わないんだよなー」
「そうか?伊豆藻では・・・」
「でも、筺音、走れなかった。都道府県もグダグダだったし」
ふう、とため息が聞こえる。そのまま少し沈黙。
少しだけ勝ってるけどほぼ同じ高さの目線の隣。二人で並んで流れる景色を見てる。
タタン、タタンと緩やかな列車の聞き慣れた音とリズム。
「・・・調子合わせるのは難しいよ、未だに俺も失敗する」
「調子悪くても走っちゃうヒトもいるけどね」
「アイツは特別。・・・今のところ」
去年から、あの光に引っ張られるように、みんなが力を付けているのがわかる。
・・自分は。
特別だけど、特別じゃなく。背中を追いかけるだけじゃなく。
その前を、あの瞳が見ているものを見たい、そんな瞬間が幾度もあって。
・・でもまだこの位置にいる。
「16ビートなんだよね」
「・・・は?」
また何か言い出してるから、その横顔を伺い見た。
「そう言ってた。走る、リズムが。で、オレも伊豆藻はずっと頭の中そうだった気がする、好きな曲ずっと流れてるカンジ」
「・・へえ」
腕を振る仕草。脚を運ぶタイミングを思い浮かべる。「今は駄目なんだ、流れない。キザシ?はあるんだけどね・・・ってアレ?」
424Funny Bunny 3/4:2010/02/01(月) 21:53:15 ID:QpFKqqOKO
急行列車が駅に止まる。乗り換えの客がぱらぱらと降りて、代わりに乗り込む数人の中に。
「おー、山券たちじゃん。今帰り?テスト終わった?」
「なんでココから乗ってくんの?」
見慣れた凸凹コンビが手を振りながらこっちに寄ってきた。
「やー、たまには埼京線にしよっかってコイツが言ってさ」
ニコニコと潔く髪を短くした長身が頭一つ分低い隣を指さす。
「オマエだろ!」
「そんなに時間変わらないよね?乗り換えあるけど。今度大学行くときも使ってみよっか」
「・・なあ、リョーヘー、オレの話聞いてる?」
「いつも仲良いねー」
「良くない」
「え?良いよ?」
三人のいつものこの空気と会話を聞き流しながら、ぼうっと窓の外を見ていて。
「あ」
橋を渡った列車がスピードを緩め始める。
見慣れた景色、桜の木々の向こう、練習場のトラックの赤茶色。一瞬で過ぎていって。
「・・誰かもう走ってる」
「え」
「ジョグ?」
「誰?」
三人一緒に振り返るから、練習が好きなんだな、と思わず吹き出した。
駅を出て少し。すぐ工学部キャンパスとグラウンドが見えてくる。
心なしかみんな早足になってる。
走っていたのが誰か、予感があるから。

「なあ、16ビート・・ってどんな?」
「うーん、織田原から葦乃湖まで走ってるあのリズムが近いかなー」
「・・・区間新だろ、それ」
425Funny Bunny 4/4:2010/02/01(月) 21:56:03 ID:QpFKqqOKO
「なあ、16ビート・・ってどんな?」
「うーん、織田原から葦乃湖まで走ってるあのリズムが近いかなー」
「・・・区間新だろ、それ」
「そうなんだよねえ。でもさ、16ビートでもいろんな曲があるから」


きゅ、とシューズの紐を結び前を向く。
風の音と、地面を叩くシューズの、あの音。アイツにたくさんの同じ音が混じってまたひとつの大きな流れになる。
それは多分俺たちが一番よく知ってるリズム、なんだ。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ネ申童←2年生ズな感じです。前回レスくれた方々ありがとうございました!!
激しくナンバリングミス、ごめんなさいです…
426板缶:2010/02/01(月) 22:17:11 ID:M8+WH6yJ0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  ilの板と缶その3モナ‥‥。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  いつもぬるくてスマンモナ。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
427板缶3 1/5:2010/02/01(月) 22:17:51 ID:M8+WH6yJ0
数年前に、伊丹は官舎を出て民間のマンションに移った。
独身寮というところは、独り身でも40にもなると風当たりが強くて居心地が悪くなる。
新米刑事の頃から10何年も住んだ部屋は、いまどきどんな苦学生でも住まないだろうというほど老朽化したアパートだったが、立地だけは一等地だった。
神戸とこうなる前は、寮を出たことをいくらか後悔さえしていた。部屋がボロいことを我慢しさえすれば、たった数万の家賃で、職場まで15分で行ける環境に住まっていられたのだ。

「・・・散らかってっけど」
「おじゃましまーす」
「おう」
玄関の黄色いライトをつけながら、伊丹は無造作に靴を脱いだ。その後ろについて上がってきた神戸がドアの鍵を閉め、自分の靴を揃えるついでに、伊丹の靴まで揃えてくれた。
いちおう用意してあった客用のスリッパを持ってきた伊丹は、それを見てちょっと気まずい思いをした。
「いいよ、ほっとけよ」
「はーい」
いつも神戸は、返事だけは素直だ。
彼が脱いだ靴はぴかぴか光るようなグラスレザーの、見るからに高価(たか)そうな洒落たものだった。履き古してくたびれた自分の黒靴と並べて置かれると、いかにも見劣りがした。

部屋を暖めてリビングのソファに落ち着き、帰りにコンビニで調達してきたビールで乾杯した。いったんはテレビをつけたが、今夜はふたりとも見たい番組がなかった。
「・・・何にもねえな」
「ないですね」
あっさり同意した神戸がミュートボタンを押して、部屋は急に静かになった。もうすぐニュースが始まることを期待してか、今はバラエティ番組が映っている民放局だ。
伊丹はその神戸の手からリモコンを取り上げ、電源を切ってしまった。カタン、とテーブルにリモコンを放り投げ、空いた手で隣に座っている神戸の肩を掴むと、いきなりソファの上に引き倒した。
神戸は抗わなかった。いつもならきっと口にする「風呂は?」などという言葉ひとつ唇に乗せず、されるがままに伊丹の身体を受け止めて、ソファの肘掛けに背中を預けた。


***
428板缶3 2/5:2010/02/01(月) 22:18:40 ID:M8+WH6yJ0
今日は何時に帰りますか、と神戸からメールが来たのが、夕方の5時だ。
「まだ分からない」
と短く返信したら、9時までに終わったらメールください、と返ってきた。
了解・・・と声には出さずに呟きながら携帯を閉じたら、ついさっき味わったばかりの敗北感がどっと蘇ってきて、伊丹はまた深いため息をついた。

捜査一課の大失態が明るみに出たのは、今日の午後だった。
新宿で先週起きた殺人事件の、容疑者にまんまと国外に逃亡された件だ。
当初は被害者との利害関係はないと見られていた関係者の男に、実は強力な動機があったのだ。
伊丹たち捜査班がそれを知ったときにはことすでに遅く、その男は姿をくらましてしまっていた。
彼が偽名を使って成田を出国していたとわかったのは、それからさらに24時間経ってからだ。犯罪人引き渡し条約を結んでいる国など、日本にはそう多くない。
伊丹たち古株の刑事たちは、捜査一課長とともに刑事部長室に呼び集められ、かんかんになった部長の怒号を浴びせられる羽目になった。
すべては結果論だ、と言う者もいた。誰にもわからなかったのだ、と。
しかし伊丹にはそうは思えなかった。
あの男の企みに、捜査陣の誰かが気づいてもよかったのだ。否、気づかなければならなかった。
誰かが・・・伊丹が、気づくべきだったのだ。


この一件は、別に秘密でもなんでもなかった。刑事部長の怒鳴り声は庁内の廊下の隅々までも響き渡ったに違いない。
明日にはきっとテレビのワイドショーで面白おかしく叩かれるのに決まっている。早ければ今夜のニュースショーでだ。
神戸がその渦中にいる伊丹の心境を気遣ってメールをくれただろうことを、伊丹は素直にありがたいと思うべきだった。

だが、伊丹のような男にとって、それはとても無理な相談だったのだ。
他人を心配してやることも苦手だったが、自分を心配されることには、伊丹はいくつになっても慣れることができなかった。


***
429板缶3 3/5:2010/02/01(月) 22:19:29 ID:M8+WH6yJ0
21時10分前に交差点へ行くと、神戸の車が静かに寄ってきた。伊丹よりずっと早く庁舎を出た彼は、近くで待っていたらしい。
「すまねえな」
と乗り込んだら、ちらっと目だけで伊丹を見て、
「いいえ。呼び出したのはこちらですから」
さらりと言われた。
「えーっと・・・食事、しました?」
「一応、食った」
「実は俺もです」
「俺んち、来るか?」
「いいんですか?」
かまうこっちゃない。
そう答えながら上着の内ポケットからタバコを出そうとして、伊丹はこの車がどんなに高価な限定車かということを思い出した。車内禁煙だと言われたことはないが、灰皿はいつもきれいに空っぽで、まっさらそのままの様子だ。だいいち、神戸はタバコを吸わない。
さりげないふうを装って右手を戻し、そのままウィンドウの縁に頬杖をついた。
ガラスにふーっと息を吐くと、そこに映っていた神戸の気遣わしげな横顔も、窓外を流れてゆく街の灯りも、すっかりぼやけて見えなくなった。
しばらく黙っていたあとで、神戸がぽつりと言った。
「伊丹さん、今日はなんだかご機嫌ななめですね」
「別に・・・」
「俺、送ったら帰ったほうがいいですか?」
「気ぃつかうなよ。せっかく待ってたんだろ」
「ええ、まあ」
「会いたくなきゃ最初からそう言ってる。だから気ぃつかうな」
「・・・そうです、か」
ため息混じりの返事は胸に痛かったが、下手な慰めの言葉などかけられようものなら、もっと乱暴なことを言ってしまいそうだった。
それきり部屋に着くまでひとことも言葉は交わさなかったし、・・・もともと伊丹は、ベッドで饒舌なほうでもなかった。


***

やっと話をする気分になったのは、もうすぐ日付も変わろうかというころになってからだ。
溺れかけていた男がようやく水面に顔を出したかのように、ほーっと大きく息をついた神戸が、伊丹の下で身体の力を抜いた。
430板缶3 4/5:2010/02/01(月) 22:21:01 ID:M8+WH6yJ0
シーツの上に伸ばされた腕の付け根にも、肘の裏側にも、伊丹がわざとつけてやったキスの跡が色濃く残っている。声もなにも奪いつくされた神戸はかなり疲れた様子だったが、そのキスマークを見やって、しょうがないなあ、と微かに笑った。
「・・・何かあったんですか、伊丹さん?」
「・・・まあ、ちょっとな」
「ちょっと、って何です?」
「わざわざ聞くな。知ってんだろ」
「え? 何のことです?」
不思議そうに眉をひそめた神戸の表情を見て、伊丹の胸にいたたまれないような疑念が湧き起こった。

もしかしたら神戸は、ほんとうに知らなかったのかも知れない。
だとしたら伊丹のしたことは、ただの八つ当たりだ。
「ねえ、伊丹さん。何があったんですか、今日?」
神戸はなおも訊ねたが、伊丹はますます答えにくくなっていた。どうせ明日にはばれることだとしても、だ。
「・・・言いたくねえ」
「何でです」
「言いたくねえっつってんだろが」
ぶっきらぼうに突っぱねると、ほんの一瞬だけ、神戸の微笑がその唇から消えた。

神戸はときどき、こういう顔をする。怒るでもなく悲しむでもなく、ただ一瞬だけ表情を消して伊丹の顔を見て、・・・それからふっとまた微笑みを取り戻して見せるのだ。
今度もそうだった。
汗が引いて冷えかけた伊丹の肩を片手で抱きながら、いつものように彼はまた、悪戯っぽく微笑んで見せた。伊丹の胸に棘を刺したことになど、気づきもしないように。
「わかりました。わかりましたから、そんなに怒らないでくださいよ」
「・・・べつに、怒ってるわけじゃねえよ」
「わかってますよ」
ちゅっ、と音を立ててキスをされた。それから、余った片手で布団を伊丹の肩まで引き上げ、その中に鼻先まで隠した神戸は、囁くように告白した。

「だけどね、伊丹さん。・・・俺、実は今日、誕生日だったんですよね。だからどうした、って言われそうだけど・・・」

「この・・・バカ野郎」
驚き呆れたついでに、伊丹は舌打ちをした。神戸は伊丹の肩口に顔を埋めたまま、もごもごと
「だから、そんなに怒らないでくださいってば」
小さな声で、そう言った。
431板缶3 5/5:2010/02/01(月) 22:22:01 ID:M8+WH6yJ0

いまだ、と、そのとき伊丹の胸の奥で声がした。その声は伊丹の心臓をつかんで揺すぶるようで、低いながらもとても強く聞こえた。
いまだ、言え、伊丹!
「怒ってなんかない」と言え。
「八つ当たりして悪かった」と言え。
「勝手に誤解して腹を立てただけだ」と言え。
「最初から誕生日だと聞いてたら優しくしてやった」と言え。

・・・ああ、もうなんでもいい。
なんか言え、いますぐ!
せめてひとこと、なんか優しいことを言ってやれ!


***


だが、伊丹のような男にとって、それはとても無理な相談だった。
次から次へと頭の後ろに浮かんできた言葉はどんどん振り落とされてしまい、最後にひとつ、そっけない言葉が残っただけだった。
「・・・おめっとさん」

神戸が嬉しそうに微笑ったのが、抱きしめた首の角度だけでわかった。



<おしまい>
432板缶:2010/02/01(月) 22:22:42 ID:M8+WH6yJ0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 感想サンクス!嬉しくてまた書いちゃったモナ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
いつもいつも、ただくっちゃべってるだけで、ほんとにゴメソ

433鬼/龍:2010/02/01(月) 22:35:05 ID:ifzwCqHO0
原作のシチュ一部改変。
設定もちょっと捏造。ネタバレあり。


                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  ハンチョウとかの原作の人の別のシリーズだよ。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  初投稿ドキドキ。失敗しませんように。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
434鬼/龍 1/5:2010/02/01(月) 22:35:46 ID:ifzwCqHO0
「ちくしょう。起っちまったじゃないか……」
 富/野は心の底から舌打ちをしたい気分だった。
 隣にいる鬼/龍は笑いを押し殺している。いや、押し殺そうとしているが成功していない。おそらく、危険な亡者から命からがら逃げ出すことができたばかりで少しばかり気持ちがほっとしていたせいかも知れない。
 亡者とは世の人間の陰の気が固まったもの。この固まった陰の気に取り付かれた人間は亡者となり、淫楽と暴力の虜となってしまう。その亡者の親玉は女だった。富/野と鬼/龍/光/一はその女から陰の気を祓うために出かけ、逆襲にあった。
 富/野は亡者の陰の気に、淫楽の気に飲み込まれそうになったのだ。何とか脱出はしたものの、このありさまだ。
 タクシーに乗っている間に何とか下半身はおさまったものの、部屋にたどり着いて洗面所で顔を洗ってももやもやした気分は消えてくれない。
「富/野さん」
 洗面所からリビングに戻ると鬼/龍/光/一が話しかけてきた。
 鬼/龍は祓い師と名乗っている。亡者を祓うのが仕事だと言っている。警察官である富/野にとっては胡散臭い以外の何者でもないが、実際にそうとしか解釈できない現実に出会ってしまっては、胡散臭いとも言っていられない。
「気分は大丈夫ですか」
 大丈夫なわけがない。唇をゆがめて返事をした。
「ありゃあ……大したもんだ。あんなのにアテられたら若造なんざひとたまりもないな」
「ええ。ですから亡者の親玉を放ってはおけないんです。手下の亡者がどんどん出来てしまう」
「ああ……そうだな」
 彼女を何とかしなければいけないのは判っている。
「出直すと言ってきたが、出直すなら早い方がいい」
 二人は、亡者の巣窟から脱出する際に出直すと捨て台詞を吐いてきた。
「わかってます。でも、その前に」
 いつの間にか間近に寄ってきた鬼/龍の長い指が、つ、と富/野の頬を撫でた。
435鬼/龍 2/5:2010/02/01(月) 22:36:40 ID:ifzwCqHO0
「あなたの体にたまった陰の気を発散させないと」
「……発散?」
 鬼/龍の指がするりと富/野の胸に降りてくる。血まみれになったワイシャツは先ほど脱ぎ捨ててしまっていた。
「どういうことだ」
「発散といえばやることはひとつですよ。……本当はこういうことをすると孝/景に怒られるんですけどね。でも別に怒られる筋合いではないですし」
 鬼/龍の指は止まらない。胸をすぎ腹をすぎ、気づくとベルトを抜かれている。
「ちょっと……ちょっと待て。孝/景がどうしたって? いや、問題はそこじゃなくて」
「いいから黙って」
「黙ってられるか! というか、こんなことはそう、なんだ、陰の気を強めるんじゃないのか?」
「全然違いますよ。溜め込むために交わるのではなくて、発散させるために交わるのです」
 とうとう、富/野はソファに押し倒されてしまった。
「淫楽の気に飲まれかけたあなたは今、交わった気を溜め込むようになってしまっています。出直す前にその状態を正さなければいけない。わかりましたか」
「わかるか……!」
 わかるわけがない。しかし、鬼/龍に触れられた場所から何ともいえない快感がわきあがってきていて富/野の抵抗する気力を奪っていく。
「もういい加減あきらめなさい」
 いいざま、鬼/龍の手が富/野のそれを握りこんだ。
「う……」
 もともと淫楽の気にあてられたばかりだ。男の手でされている手淫なのに簡単に追い上げられてしまう。しかし放出は許されなかった。
 ゆるゆると撫でられ、リズムをつけて握りこまれ、口を刺激される。
 そして限界に近づくと唐突に刺激が遠ざかる。その繰り返しだった。
436鬼/龍 3/5:2010/02/01(月) 22:37:41 ID:ifzwCqHO0
 下半身に熱がたまっていく。さきほど味わった淫楽の気が徐々に富/野の全身を満たしていく。
「もう……許してくれ……」
 このまま続くと淫楽の気に飲み込まれてしまう。なのに既に許しを請う以外に富/野に出来ることはなかった。思うように体を動かせない。完全に鬼/龍に支配されていたのだ。
「そうですね。そろそろいいでしょう」
 妙にはっきりした鬼/龍の声に富/野は閉じていた目をあける。ぼやける視界の中で鬼/龍が黒ずくめの衣服を脱ぎ捨てるのが見えた。
「何……」
「もう少しがまんしてください」
 ゆっくりと鬼/龍が富/野の上に乗り、腰を落とした。
 富/野のそれが暖かくきついものに包まれていく。
「鬼……龍……」
 鬼/龍は富/野を完全に飲み込むと動き始めた。
 ゆっくりと、時には激しく動き、締め付ける。
 放出を許されないままの快感を持て余していた富/野はひとたまりもなく、嵐の中に引きずり込まれた。
 まったく自分の意思で動けなかった体が、さらなる快感を得るためにはなぜか自然に動く。
 腕が上がり、すがるように鬼/龍の腕をつかんだ途端。
 全身を満たしていた淫楽の気が爆発した。
 許されなかった放出が鬼/龍の中でようやく起こった。
437鬼/龍 4/5:2010/02/01(月) 22:38:44 ID:ifzwCqHO0
「う……あ……」
 そして、鬼/龍の腕をつかんだ手から何かが流れ込んでくる。
 いや、違う。
 鬼/龍に包まれたところから吸い上げられた何かが浄化され、富/野の中に戻されているのだ。
 まさしく吸い上げられているようだった。
 放出は止まる気配がない。
「……まったく」
 少し息が上がったような鬼/龍の声が降ってきた。
「それじゃあ効率が悪いんですよ。手を離してください」
 言われても自分ではどうしようもないのだ。富/野はゆるゆると首を振った。
「仕方ないですね」
 声が近づいた。
 そして、口付け。
 炎のように熱い唇だった。
 あわせた唇から、入り込んだ舌からさきほど腕から流れ込んで来た何かが、より強い奔流となって流れ込んでくる。
 富/野は夢中になってそれをむさぼった。いつしか手は鬼/龍の腕を離れ、より強い交歓を求めて鬼/龍の頭を引き寄せている。腰から下は別の生き物のように勝手に動いていた。
438鬼/龍 4/5:2010/02/01(月) 22:39:43 ID:ifzwCqHO0
 そして。
 富/野が鬼/龍によりいっそう締め上げられた時。
 終わりが来た。
 富/野から離れた鬼/龍が声をかける。
「……気分はどうですか」
「気分……」
 ふと富/野は体から何かが抜けているのに気づいた。もやもやと下半身に溜まっていたものがなくなっている。
「ああ。……ああ、大丈夫だ」
「それはよかった」
 さすがに少し疲れたような声に、富/野は眉をひそめる。
「鬼/龍」
「なんですか」
「いや、その。もしかして、こういうのは……その……しょっちゅう」
「そんなにしょっちゅうやってたら体が持ちませんよ」
「それは……そうなのだろうが」
「これはあくまで緊急処置。急ぎだからです。普通はね、放っておいても普通に発散されいくものなのですよ」
「だったら……!」
 富/野は抗議の声をあげる。だったら放っておけばいいのだ。
「でも、今日また出直すのでしょう? だったらそのままにしておくことは出来ません。それだけのことです」
「それだけって……」
 それだけのこと。そう言われても富/野の中には男と交わって、しかも快感を得てしまったという事実がどんどん大きくなってきている。
「それだけなんです。さあ身支度をしてください。孝/景を呼びましょう。出陣です」
「孝/景って、なぜ」
「俺一人の手には負えそうにないですから」
 鬼/龍は何事もなかったかのように身づくろいを始め、携帯電話を取り出した。
「さあ、早く準備を」
 うながされ、慌てて富/野は起き上がった。
 確かにぼんやりしている場合ではない。急がないといけないのだ。
 情交の余韻を振り払うように、富/野は自分の頬をぴしゃりと叩いた。
439鬼/龍:2010/02/01(月) 22:40:32 ID:ifzwCqHO0
一番最後のナンバリング間違えました・・・すみません。

____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ オソマツサマデシター
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
440風と木の名無しさん:2010/02/01(月) 23:47:15 ID:p7nG+/fC0
>>432
いつもGJ!今回も素敵でした。
今更甘くもなれない板見の、じれったいかんじがすごく好きです。
441風と木の名無しさん:2010/02/02(火) 00:00:50 ID:1GIPs2Oq0
>>432
板缶に転ぶきっかけをくれた貴方様に心から感謝の気持ちをおくりたいです
なんだこの可愛くて胸がキュンと切なくなる二人は
442風と木の名無しさん:2010/02/02(火) 00:04:38 ID:OnHk5uEm0
>>439
GJ!
まさかこのシリーズで、しかもこのカプで読めるとは思いませんでした。
鬼/龍の淡々とした感じとか、原作っぽさが出てていいですね。
443風と木の名無しさん:2010/02/02(火) 01:39:19 ID:iLljL5kbO
>>357
遅レスすみません
密かに待っておりました
また読めるなんて……GJでした!!
444風と木の名無しさん:2010/02/02(火) 02:34:13 ID:Mn/BY+O7O
かなり前に書いた「海を見る」の続編。前回はオリジナルで書いたけど今回は自ジャンルで。

生注意

一角獣
唄鍵盤 エロ描写一切無し

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
445星を見る1/3:2010/02/02(火) 02:35:22 ID:Mn/BY+O7O
今日は毛布とコーヒー持ちで星を見に来た。
「さぶっ」
彼が隣に座り込む。笑いながら毛布を渡すと直ぐに羽織った。
「今日じゃなきゃダメだったのかよ」
寒さに震えながら彼は俺をみる。俺は直接答えずに夜空を見上げた。彼の視線も空に向かう。満天の星空に彼が小さく息を飲んだ。
「綺麗だろ……空が」
視線を彼に移して言葉の続きを言う。
「どうしてもお前に見せたかったんだよ」
彼の視線も俺に移った。一瞬視線を合わせたけど、彼は直ぐに前を向く。
「……そっか」
素っ気ない言葉とは裏腹に嬉しそうに微笑む彼。……一緒に来てよかった。

コーヒーは彼の好みに合わせてある。それをカップに注いで渡すと彼は早速すすった。
「どう?」
彼の顔を覗き込むと、彼は照れ臭そうに笑いながら、視線を外した。
「ちょうどいい……悪いな、いつも」
言うべき事は言わないと、普通の事なんだよって。
「俺も好きだよ、これくらいの味」
446星を見る2/3:2010/02/02(火) 02:36:26 ID:Mn/BY+O7O
彼は一瞬目を丸くして俺を見て、直ぐにそらした。
短く返事をした後、彼はまた一口コーヒーをすする。コーヒーを飲み終わった彼が俺を見て、海を見た。
それを目の端に入れながら星を見つづける。
波の音が単調に、でもリズミカルに耳に届く。
「……何考えてる」
彼の声……耳馴染んだ、心地良いトーン。
「……まだ寒い?」
「いや」
彼は首を横にふる。
「そっか……」
言うべきか、言わざるべきか。
「なあ……言えねえの?」
「そう言うわけじゃないよ……何で」
「心配なんだよ」
少し声を出して笑うと彼は顔をしかめた。
「なに……」
「ありがとう、心配してくれて」
彼に微笑みかける。彼の前に座って大きめのブランケットを渡した。
「寒いからまとめて包んでよ」
彼の顔が想像できる、嬉しそうな、照れ臭そうな顔。
「おう」
照れ臭そうな彼の声。すぐに彼の温もりに包まれた。
447星を見る3/3:2010/02/02(火) 02:39:35 ID:Mn/BY+O7O
「……前にした約束覚えてる?」
俺の言葉に抱きしめる力を強めて彼は答えた。
「待たせたけどさ……やっと一緒に見れて、俺はすごく嬉しいんだ」
一息ついて言葉を続ける。
「お前と一緒って言うのが重要」
タバコを出して吸おうとすると、またライターが無い。
「ほれ」
ライターを出されて思わず吹き出す。
「んだよ」
「デジャヴュだろ、前もあったよ」
彼もそれに気づいて笑う。
「だな」
二人でクスクス笑い続ける。ひとしきり笑った後、俺の中にある想いを口にした。
「俺は、お前がいれば大丈夫…………俺の事……」
彼の手に力がこもる。……言わなくても伝わる関係……これがあれば、俺は大丈夫。
「……ずっと見てる……心配すんな」
彼の声は波音に消されそうな程小さかったけど、俺の耳にははっきり聞こえた気がした。
448風と木の名無しさん:2010/02/02(火) 02:39:59 ID:Mn/BY+O7O
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

前回書いたのはオリジナルなのに、続編は自ジャンルって…結局影響されてるって事か……orz
449風と木の名無しさん:2010/02/02(火) 02:48:58 ID:u+VcT6qv0
>>432
素敵です!
モロ出しにめげず是非次も書いてください
450風と木の名無しさん:2010/02/02(火) 07:27:41 ID:Fb0lwq8NO
>>432
不器用な板民に萌え。
缶はなんかこう、板のそういう所もわかってて包み込んでくれる感じですな〜。
そして>>449さんのモロ出しという言葉に吹いたw
451風と木の名無しさん:2010/02/02(火) 18:06:40 ID:4eTqyzSs0
>>426
板缶萌えた…!
二人ともカワユす
452風と木の名無しさん:2010/02/02(火) 21:40:45 ID:ACvxT/Yn0
>>426
うおお、本当に有り難う!
これはたまらん板缶w
二人が何故こうなったのかまでぜひ書いてくだしあ
453風と木の名無しさん:2010/02/03(水) 00:37:10 ID:MrRSyc940
>>426
GJ!素敵な板缶@缶バースデーをありがとうございました
特に>>431に至っては一文一文が隈なく愛しいです
板らしさがすごく出てて、缶も本当にリアルで抱きしめたい!
本当に、姐さんの文は板缶萌え文章燃え五分五分な気分

モロ出し吹いたwwまあアレだ、ドンマイということで
454439:2010/02/03(水) 01:46:15 ID:a8RUry6+0
>442
元ネタ知ってる人がいて嬉しいです。
他にも同作者のネタが色々あるので、そのうち投下するかも…かも…。
455風と木の名無しさん:2010/02/03(水) 09:57:55 ID:zSvCodBP0
>>422
2作目…!
弐年ズが可愛すぎます。
凸凹コンビ…目に浮かぶww
ひたすら萌えました。ありがとうございます!
456風と木の名無しさん:2010/02/03(水) 19:55:06 ID:O0E6D/vJ0
誘い受けうざ
457風と木の名無しさん:2010/02/03(水) 22:31:26 ID:CNDTNbg20
>>422
ありがとうございます!かわいいー!
458唯、今は心仄かに。1/4:2010/02/04(木) 02:01:56 ID:kEix4Hhd0
GCCX挑戦状科長は名探偵パロ。方向音痴(→)←飛距離バント+科長。
ゲームのキャラになってますがモデルがモデルなのでナマモノ注意でお願いします。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・;)ジサクジエンガ オオクリシマース!

忙しなくバタバタと動き回っていた期間も終わって、相変わらず担当のラインはゆったりと稼動していた。
元々ROMのライン程忙しい訳じゃないからたまにそっちにも加わったりして(あ、だから結果的には忙しいのか)
「お、笹乃お疲れ」
「あ、はい。お先します」
それにしても定時であがれたのは久々。
周辺機器の不具合だったりROMラインのサポートだったり、何だかんだ遅くまで残ってたなぁ・・・
「・・・」
そうだ。
気付かない内に、ぼんやりと涙を流した事もあった。其れを見られてしまった訳だが。
今思えばいやに気恥ずかしい。
まぁそれだけ仕事に打ち込んでいるという事か。
思い出して苦笑い。軽く頭を振って溜息。取り敢えず考えるのは、今からの予定。
「・・・暇かな」
ふっと過ぎったのは後輩の顔だった。確かアイツも早番シフトだった筈。
暫く大変な時期が続いたから飲みにでも誘おうか。
いや、ひょっとして残業とか・・・してる訳ないか。アイツ仕事早いし。ホンマ出来た後輩やな。
今頃は着替えているかもしれない、と足を向けると。
「アイツ、何処行ってん・・・!」
バタバタと慌しく前方からやって来た人影に目を丸くする。
「有埜さん」
「お、笹乃!裏川見てへん?!」
焦った様子の上司の口から出たのは今正に捜そうとしていた後輩の名前だった。
いや見とったら俺此処にいませんし。
額に冷えぴったん・・・って事は、残業の最中かな。
珍しく裏川が何かヘマしたんやろか。
459唯、今は心仄かに。2/4:2010/02/04(木) 02:03:49 ID:kEix4Hhd0
「いや、見てないですけど。どうしたんですかそんなに慌てて」
「居らんか〜うわー失敗したー!」
「取り敢えず落ち着いて下さい、裏川何かやらかしたんですか」
「いややらかしたって言うかやらかしたんは俺やな。取引先への納品裏川に任せてん。絶対届かんわ」
「え?」
「気持ちは有難かったんやけどなーやってもたー!アイツ何処行ったんやろ」
あの方向音痴が、納品に。
しかもこんな時間。結構急ぎの品という事か(余計に行かせられん!)
またどうしてそんな事に、と疑問は浮かんだが。
ふと目線を上げた時、其れは一瞬で消えてしまった。
「捜すのおっくうやな〜」
何処から行ったもんか、と何度も瞬きを繰り返す目。其の下に出来た隈。
そういえば、有埜さん昨日も残業だった様な気がする。
仕事だからと言えば其れまでだけれど。アイツは、きっと。
「有埜さん、俺が行きます」
「へ?」
「何処居るか分からんから結構体力使いますよ。俺もうあがりだし」
「笹乃・・・」
「ちゃんと見つけて届けときますから。大丈夫です」
「・・・・・」
「早よ帰って、ゆっくり休んで下さい」
当てがある訳じゃない。見つかるとは言い難い。けど、疲れきった有埜さんが捜すよりはいいだろう。
多分、裏川も考えた事は同じなんだろうと思う(ただ裏目に出ただけで)
この人があの事件でどれだけ頑張ったのかを知っているから。
だから、今は。
460唯、今は心仄かに。3/4:2010/02/04(木) 02:09:06 ID:kEix4Hhd0
「・・・じゃあ、お願いします」
「先方にも連絡入れときます。多分そう遠くまでは行ってないと思いますけど・・・」
「うん、そうしといて」
ふぁ、と欠伸が出たのを見届けて。じゃあ行ってきますと軽く頭を下げた。
電話を先にするとして、さて何処から行けばいいものやら。
途中で気付いて引き返して来とるかもしれんし。擦れ違ってしまったらこれは相当其の辺を回る事になる。
運動不足は解消しそうやなぁ、なんて。
切羽詰った状況の筈なのにどうでもいい事を考えながら苦笑した(あれ、ちょっと楽しくなってんのか)
ああ、其れから誘ってもいいかもしれん。
「笹乃ー」
「はい?」
「多分アイツ真逆に行ってんで、実際そうやったし。酷いからな〜アイツの方向音痴」
・・・・・。
「・・・・・はい」
あれ。
其れは何気無い一言だ。
早く見つかれば其の分向こうだって助かるし俺等も早く帰れる。其れにどうせ自分も捜していたんだから。
あれ、何やろ今の。ムッとした様な、気持ち悪い感じ。
別に怒っている訳じゃないし、何て訳でもないのに。
あぶらあげ、取られた様な。そんな。
あぁ、俺も結構疲れきてんのかな。早よ帰ったがええか。
「あ、そういえば」
「何ですか」
ふっと過ぎった感情は取り敢えず無視して。
代わりに足を速めようとした。
461唯、今は心仄かに。4/4:2010/02/04(木) 02:11:41 ID:kEix4Hhd0
「いや、裏川もお前も気持ち悪い位全くおんなじ事言ってんな思て。シンクロか」

一瞬、呼吸が止まって。
お前等助かるわー、と。肩を叩かれた所で我に返った。
鼓動が早い。じっとりと掌が湿っていくのが分かる。
泣いている所よりも、今を見られてなくて良かった。手で口元を覆い隠して溜息を吐く。
嗚呼何で動揺してん。別に何て事言われてへんやん。
もう1度、大きく息を吐いて頭を振る。
さっきまでのもやった感情は一気に吹き飛んで、自然と歩みの速くなる足。
急がないとって焦りだけじゃない事には、気付かない振り。

取り敢えず、アイツ見つけたら1発位はたいてやろうと思った。

□ STOP ピッ ◇⊂(−∀−;)イジョウ、ジサクジエンデシタ!

続きそうで続かない脈ありだった方向音痴。
GJ下さった姐さん方本当に有難う御座います、拙い文ですがお言葉頂けて嬉しいです!
462風と木の名無しさん:2010/02/04(木) 17:02:41 ID:Ml2Pn3OL0
>>461
GJです!
課長にもやっとしちゃう笹乃が可愛杉
裏川!脈あるぞ!ガンバレw
463ムーンダンサー 1/4:2010/02/04(木) 21:46:35 ID:0ShFJkJx0
※半ナマ注意

デクス夕一 氷×デクで幸せENDパラレル、シーズン1最後まで見た人向け
出来るだけネタバレ避けたけど、氷そのものがネタバレっちゃネタバレなので注意
性格・設定はドラマ基準、人名表記は小説基準です

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


月の満つる夜でないといけないなどと思った事はないが、欲望に従う晩は決まって綺麗な月が出ていた。
だからどう、という事はないのだ。昼であったって別に構いやしない。
だが、異常者をルナティックと呼ぶように、月には人の手を闇へ引く何かがあるのかもしれない。

錆色の月が、建前上は釣りに出た事になっている僕ともう一人の自分とを照らしている。
ビスケ一ン湾から北大西洋方向に泳がせたボートは自分の所有しているそれよりもずっと立派で、
中央には豪華なギャレーが備わっていたが、僕らは海風に包まれる方を選んだ。

もう一人の自分、ビニーはこの数週間思うように獲物が食えず焦れていた僕をここへ誘った。
誰かの意図通りに動かされるのは好きではなかったが、ビニーにあやされるのだけは別だ。

なんの了解も得ぬまま自然に手と手が絡んで、唇が触れ合って、気付けば夢中で服を剥きあっていた。
マイアミの気候に暖められた体臭と潮の匂いが混じって、どれがどちらかわからない。
ボートの下に沈む死者達の生臭さかもしれないという考えが一層の興奮を煽る。

清潔とは言えない場所に、行為に、これ程までに溺れている自分が信じられなかった。
下からの突き上げに呻いて縋りつけば、同じように月夜に中てられているらしいビニーが満足げに吐息を微笑ませて頭を撫でてきた。

まるで、部屋の中にあるものをすっかり把握されているような気分だ。
464ムーンダンサー 2/4:2010/02/04(木) 21:48:12 ID:0ShFJkJx0
人の性格は家に例えるのが一番わかりやすい。
腹を割って話す、という言葉の"腹"が玄関扉だとする。

玄関までの距離や鍵の緩さは人それぞれ違って、
例えば人の好い義妹はすんなりと他人をリビングへ案内するだろう。
ラグェルタは年の分だけもう少し玄関アプローチが長い。
益岡はラボに入る者の気質なのか意外と曲者で、玄関先に防犯カメラを設置し──ただし、誰かが訪れるのを待っているかのように──窓から外を伺っている。
大抵は二人ないしファミリー物件で、皆そこに誰かを入れたがっているように見える。

僕の家は、簡単な鍵が一つあるだけだ。
室内をカーテンで隠しこむ事はせず、人を招く為の椅子があり、明るいインテリアで彩られているが、その下に、義父ですら顔を背けた(彼お手製の)隠し部屋を備えている。
僕はそこに住み、地上で客人をもてなすデクス夕一を操っているのだ。

だが──ビニーだけは。自分と同じ、人のナリをした怪物である彼には隠すものが何もない。
生身で抱き合う心地は、他の誰かと比べるまでもなく、正気を失いそうな程に気持ちがよかった。
シリアルキラーのビニーがサディスティックな行為を好む可能性を考えていたが、
彼はいつも信じられない程優しく僕の肌に触れる。
ビニーの目が、彼の中の果てしない奥へと僕を誘っていた。
465ムーンダンサー 3/4:2010/02/04(木) 21:50:09 ID:0ShFJkJx0
いくら声を出しても届かない海上で、小さく浅く声を弾ませる僕をビニーはからかって言った。
「目立たないように生きる癖がついているだろう、デックス。
 だが、小さな頃のお前は甘えん坊だった。そうしていいんだよ」
気を引いてごらん。耳から脳に焚き染めるように囁かれて身体が跳ねた。
「ビニーも、……したいようにすればいい」
「今は甘やかしたいんだ。長い間傍にいてやれなかったからね」
庇護される感覚は悪くなかったが、もういい大人だ。
しかし、不満を伝えようとして覗き込んだ瞳が保護者ではなくご同類の目をしていたので、
そこでもう我が身を止められなくなった。

向かい合って抱きついていたビニーの身体を繋がったまま押し倒し、自分から腰を振る。
溢れ出る声はすべて彼の名前になった。
二人きりの時にしか呼べなくなってしまった、彼の本当の名前に。

深く体内を抉られながら、同じ風にビニーに分け入ったらと考える。
やはり自分は捕食者なのだ。

"もう一人の自分"は、心得ているように不敵に笑い、また優しく僕の髪を撫ぜた。
466ムーンダンサー 4/4:2010/02/04(木) 21:52:08 ID:0ShFJkJx0
その日はオフではなかったから、ボートの中のソファーで仮眠を取り、
朝になってからココナツグローブの僕の家まで二人で戻った。

「邪魔。今日は早いんだ」
出勤時間の遅いビニーが後ろから抱きついて洗顔の邪魔をするのを、
彼の家の契約名で呼んでたしなめる。
「まだ二人きりだろう、デックス」
内腿をなぞられて手元が狂い、髭を剃っていた僕の首筋に鮮血が滴った。
ビニーは赤く汚れた肌を舐め清めると、陽光の下に似合いの可愛らしいキスを寄越し、
それから僕の舌を絡めとった。
「朝食はいつものメニュー?」
「いつもの──」
返事に被さるようにインターフォンが鳴り響いた。
この時間にやってくる不作法者は、間違いなく僕の可愛い妹だろう。

ビニーの起こした事件に何か進展があったのか。
いや、彼の宿泊を確かめに来ただけかもしれない。

とりあえず急いで服を着てくれとビニーに頼んで、ドアの方へ向かった。
今日も厄介事が舞い込んできそうだ。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

綺麗に完結したのに未だにデク萌えがおさまらなくてつらい!
初投下がしぬほど恥ずかしくてそれもつらい!
467風と木の名無しさん:2010/02/04(木) 23:57:56 ID:on2jTjOt0
>>444
ごちそう様でした〜!
いつでもまた待ってます
468つむじ 0/3:2010/02/05(金) 15:37:51 ID:hnSZzOgx0
                   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  生注意 六角形なクイズ番組煙草銘柄ユニット
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 紫色×水色 既にデキてる前提で
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゜Д゜ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
469つむじ 1/3:2010/02/05(金) 15:38:29 ID:hnSZzOgx0
「わー、世士ピーのつむじ、チーズみたいな匂いするー!」
「えー、嗅ぎたい嗅ぎたい」
「ホントだ!こんな匂いのお菓子あった!」
「ほんまやー、ほんまにチーズの匂いすんでー!ありえへんw」
「なんでなんで?なんでこんな匂いになるの?」

科川さんの号令で集まった日置サゴンの新年会。
いい感じに酔っ払い、どういう流れか女子が互いの頭の匂いを嗅ぎだした。
「良い香りー。シャンプー何使ってたっけ?」
「すーちゃんも良い匂いするー」
なんて和やかな会話から、俺の頭に移った途端、上記の流れになった。
大爆笑しながら代わる代わる俺のつむじを嗅ぐ女子たち。
あまりの盛り上がりに科川さんもやってきた。
「うわっ、マジ臭いぞ世士雄」
「マジっすか?」
真剣にショックを受けてる俺の顔を見て、また大爆笑。
いたたまれずに、鞄に入ってた部レスケアを頭皮に擦り付ける俺に、更に大爆笑。
笑いすぎてお腹が痛いと訴えられたけど、それって俺のせいか?
470つむじ 2/3:2010/02/05(金) 15:39:32 ID:hnSZzOgx0

「咲もん、マジでチーズスナックの匂いするから嗅いでみな」
サングラスをカチューシャ代わりに髪を上げ、片肘をついて笑いながらこっちを見ていた比呂巳に、
科川さんが声をかけた。
結構呑んで、上気した頬の比呂巳が近づいてくる。
心拍数が上がる。
比呂巳にも臭いって言われたら立ち直れないかもしれない。
すぐ隣に来ると、いつもの比呂巳の香りがした。
この香りを嗅ぐと抱きしめたくなる。
もう条件反射だ。
髪の毛に何かが触れた、と思うと同時に、周囲ではまた大爆笑が起きた。

「咲もん、なんでそんなにうっとりした顔してんだよ」
「つむじ嗅いでる顔じゃないー」
口々に囃し立て、携帯で写メを撮っている。
うっとり?
どんな顔をして嗅いでるのか気になってしょうがない。
俺たちの関係がバレたら洒落にならない。
「な、臭いだろ?」
科川さんに訊かれた比呂巳は俺の後ろから離れず、
「ホントだ。チーズっぽい……でもなんか癖になる」
そう言ってまた俺の髪に顔を寄せてきた。

比呂巳のリアクションに、みんなは笑いが止まらなくなってる。
俺は「臭い」と言われなかった事に内心胸を撫で下ろしていた。
その後もチーズネタでからかわれ、矢具っちゃんにさんざん突っ込まれてるところも写メで撮られた。
明日のみんなのブログは絶対俺のつむじネタだな。
望むところだ。
471つむじ 3/3:2010/02/05(金) 15:40:15 ID:hnSZzOgx0

トイレに行こうと個室を出ると、前から比呂巳がこっちに歩いてくる。
そういえば先に部屋を出てたっけ。
少し酔っているのか、ぼうっとした目つきが妙にそそる。
前から来るのが俺と分かった瞬間、目を輝かせて笑う顔に、無性にキスしたくなる。
「古嶋さん、トイレですか?」
「うん、みんなに臭いって言われたから石鹸で頭洗ってくる。俺短いからすぐ乾くし」
「えー、なんでですか?そんなに気にしてたんですか?」
笑いを漏らす比呂巳の髪のサングラスを取り、自分でかけてわざと睨む。
「うるせー。みんなに臭いって言われた俺の気持ちがお前にわかるか」
「別に臭くなかったのにな」
比呂巳はくすくす笑いながら俺の顔からサングラスを外しながら、小声で言った。
「駄目ですよ、ここで洗っちゃ。帰ったら俺が洗ってあげますから」
「え?」
心臓が大きく弾む。
一緒に入るってことか?
上目遣いで見る瞳がいたずらっぽく笑っている。
「比呂巳、それって……」
確認しようとする俺に素早くキスすると、
「先に戻ってますね。……洗っちゃ駄目ですよ」
と囁いて、横をすり抜けていった。
しなやかな身のこなしが相変わらず猫っぽい。

そういえば比呂巳、体柔らかいしな。
そう思った瞬間、ベッドでその柔らかさに感心し、かつ興奮したことを思い出し、慌てて頭から追い
払う。
ヤバイヤバイ。
今そんなことを思い出したらみんながいる部屋に戻れる状態じゃなくなってしまう。
いつ海パンでネタをやれと言われるか分からないのに、思い出して興奮してる場合じゃない。
ぶんぶんと頭を振り、浪人時代に必死に覚えた歴史の年号を唱えて煩悩を追い払いながら、廊下を
戻っていった。
472つむじ :2010/02/05(金) 15:41:47 ID:hnSZzOgx0
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 共演者ブログでウマー
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
473風と木の名無しさん:2010/02/05(金) 21:53:27 ID:pHqX3Nby0
>>472
ブログネタktkr
ちょっとしたやりとりに萌えた!
474ボドム湖チルドレン Key.×Vo. 1/10:2010/02/05(金) 23:32:24 ID:mgYZsYAq0
フィンランドの悪ガキ集団・ボドム湖の子供たちのKey.×Vo.です。ナマモノ注意。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 今日のツイてねぇことその1。ギターの調弦が何故かいつもより手こずった。
 今日のツイてねぇことその2。皆がむやみやたらに俺のことをジロジロ見てきやがった。
 今日のツイてねぇことその3。いつも夜中まで酒盛りするはずが、今日に限って全員さっさと寝やがった。
 今日のツイてねぇことその4。俺のベッドがどうも不自然に盛り上がっているような気がする。
 嫌な予感がした。もちろん、その予感はピタリと当たった。

「よーうやく来たな、待ってたぞ荒騎士!」
「うわっ!……ってやっぱりテメェかよ!」
 盛り上がりの正体は人間だった。それも、俺が嫌になるほどよーく知っている人間。
つまりはバンドのキーボーディストであり、同時に一応恋人でもある屋ン根だ。
毛布を幾枚も被り、きちんと整えられたシーツの上に何の遠慮もなく寝転がっている。
まったく、そのシーツを乱していいのは俺だけだっつーの。
 そんな俺の小言を屋ン根は「まぁまぁ」の一言で流し、
いそいそと端に寄って俺をベッドの中に向かい入れると、さも当然かのように早速俺の上にのしかかってきた。
「おい、何のつもりだ」
「え、分からないの?駄目?」
「分かるけど!……ここはスタジオだぞ」
 屋ン根の説明は次の通りだった。
曰く、最近個別の仕事が立て続けに入ってしまって2人きりで会える時間が全く無かった。
今回のレコーディングが終わったら、ツアーまでまた離れ離れになってしまう。
だから、皆に迷惑をかけるのは分かっているが、どうしてもこのスタジオに泊まっている内に2人の時間を過ごしたい。
「それで皆に頼んでみたらさぁ、皆迷惑がるどころか妙に乗り気なんだよね。飯食って風呂入ったらさっさと部屋に戻っちゃった」
 さらりと笑顔でそう言ってのける奴の下で、俺は思わず頭を抱えていた。
475ボドム湖チルドレン Key.×Vo. 2/10:2010/02/05(金) 23:34:30 ID:mgYZsYAq0
やたらと視線を感じたのも、酒を目一杯飲めなかったのも、
全てはこいつのせいだったのか。……というか、それ全員に言ったのか。
 明日の皆の反応が怖い。きっと根掘り葉掘り聞き出されるに違いない。
何しろ、今このスタジオにいるのは遠慮なんて言葉は知らない奴ばかりなのだ。
尤もそれはこいつや俺自身にも言えることなのだが。
「で、どうなの」
「どうって、何が」
「返事」
 屋ン根の顔を見上げた。口調こそふざけており、軽く振舞おうとはしているものの、目の奥には真剣さが見て取れた。
荒騎士は考える。確かに最近ろくに会えていなかった。仕事の合間、ふとこいつのことを思い出したことが
一度や二度ではなかったのも事実である。それに、過程はどうであれ、皆が気を利かせてくれたのだ。
「そんなことは訊くもんじゃねぇよ」
 両腕を奴の首に回す。
「大体な、こういうときの返事なんて1つしかねぇんだ」
 そのまま思いきり奴の頭をこちらに引き寄せた。
「お前に誘われて断る方がどうかしてるよ」
 促されるままに、目を閉じた。

「あ、でも今日チューニング上手くいかなかったのお前のせいにするから」
「?何それ」

 久々のキスは予想外に熱く、そして甘いものだった。
それはもしかしたら向こうも同様に感じていたのかもしれない。
事実、情事の事始めにしてはそのキスは少々深過ぎた。
唇を、歯列を舐め合い舌をきつくきつく絡ませる。相手の喜ばせ方やテクニックなどすっかり頭から抜けていた。
476ボドム湖チルドレン Key.×Vo. 3/10:2010/02/05(金) 23:35:45 ID:mgYZsYAq0
ただひたすらに求め合うだけのキスだった。それ故すぐに息が切れた。顔が真っ赤になるまで我慢し、
限界が来てしまったら一瞬だけ息継ぎをして再び口づけに戻る。その繰り返しだった。
キスだけでこんなにも夢中になれるものなのかと、熱気と酸欠で意識が朦朧としながらも少し驚いた。
 一度スイッチが入ってしまえばあとは速い。キスをしながら、互いの服をむしり取るように脱がせ合った。
屋ン根の肌が熱い。その熱を感じるだけで、自身もまた熱を帯びていくのが妙に気恥ずかしかった。
 キスだけでどれほど時間を使ったのだろうか。やがて離れ始めた唇が名残惜しくて舌を伸ばすと、
ちゅ、と軽く舌を吸われたのち、にこりと微笑みかけられた。
思考が鈍っていたこともあり、それに答えようとしたときには彼の舌はすでに首の方へと移動していた。
薄い皮膚の上でねっとりと蠢くぬるついた感触に、肌が粟立つ。
吐息を漏らしながらも顔のすぐ下にある屋ン根の耳を指でなぞると、彼もまたふるりと微かに震えるのが分かった。
「ん……っ」
 荒騎士の肩や二の腕をずっと撫でていた屋ン根の右手が胸元へと下り、
白く滑らかな両胸にそれぞれ1つだけある、薄桃に色づきぷつりと立ち上がった部分を掠めた。
吐息からついに声となって出てきた荒騎士の快感の訴えに、先ほどから始終薄く微笑んでいた屋ン根は口角を更に持ちあげた。
「おっと、荒騎士“ワイルドチャイルド”頼歩。
“子ども”のお前がこんなところを触られたくらいで、まさか何か思ったり感じたりするわけがないよな?」
 場にそぐわない、おどけた言葉。甘い雰囲気から一転して再びいつものように軽口を叩き出した屋ン根に、
荒騎士は思わず吹き出した。それから少し眉をひそめてこう答えた。
「だからもうその名前もやめるって。俺は“大人”だよ。大人どころか、お前と同じ、もうおっさんに入りかけの30だ!」
 2人でケラケラと笑い合う。映画に出てくるような甘ったるいセックスも良いが、
自分たちにはジョークと悪ふざけに満ちた関係の方が余程似合っているのだ。それはセックスに関しても全く変わることがない。
477ボドム湖チルドレン Key.×Vo. 4/10:2010/02/05(金) 23:36:36 ID:mgYZsYAq0
「オーケー、じゃあ荒騎士“ワイルドアダルト”頼歩!
大人のお前なら、自分が今して欲しいことだってちゃあんと俺に伝えられるよな」
「おうよ、さっさと俺のケツん中にお前のソレをぶち込んでくれ!」
 再びの爆笑。荒騎士が目に涙を滲ませて笑い転げていると、
それまで一緒になって笑っていた屋ン根がおもむろに荒騎士の耳元に口を寄せた。
「なるほど、余裕だなお前。……そんな余裕、すぐになくさせてやるよ」
 再びの劣情。

「ん、う、……っは、ぁ」
 数分後、荒騎士は屋ン根に後ろから抱きかかえられる形でベッドの上に座らされていた。
背後から伸びる屋ン根の両手は、それぞれ胸板と下腹部に添えられている。
胸板の手は右手から左手へと変わり、先ほどは僅かに掠めただけだった胸の飾りを今度は執拗に指で弄っていた。
薄桃色であったそれはすでに赤く充血し、小ぶりながらも痛々しいほどに硬く勃ち上がりその存在を主張している。
それをそっと指の腹で撫で、また柔らかく親指と中指で挟み込んでこりこりと刺激してやると、右手に収まった荒騎士の熱がドクリと脈打った。
「ふ、ぅ、んん、あ、ぁ、あ……っ」
 竿を根元からゆっくりと扱き上げ、先の方にあるくびれを指で作った輪で軽く締めると、
透明な液体がとろとろと先端から流れ落ちてきた。
それを全体に擦りつけ、今度はもっと素早く手を動かす。屋ン根の腕の中の荒騎士が身を捩った。
爪を黒く塗った荒騎士の手が、屋ン根の右手に添えられる。まるで「もっとやれ」と催促するかのように
屋ン根の手と連動して動くその手を取り、自分の代わりに陰茎を握らせると、
「馬鹿やろ」と笑いを含んだ呻きが聞こえてきた。
478ボドム湖チルドレン Key.×Vo. 5/10:2010/02/05(金) 23:37:37 ID:mgYZsYAq0
「いいから握ってろよ。悪いが俺は他のところに用があるんだ」
 荒騎士の先走りのお陰ですっかり濡れそぼった中指で、陰茎よりももっと奥、もうひとつ熱が潜んでいるところを軽くつつく。
柔らかな双丘に挟まれたそこがきゅうっと締まった。ゆっくりと指を沈めていく。
ヒュ、と荒騎士が大きく息を吸い込むのが分かった。置いてきた荒騎士の手をちらりと見遣ると、
陰茎に軽く添えられていたはずの手はとっくに離され、横で固く握りこぶしを作っていた。
緩やかに指を抜き差しする。音量を増した荒騎士の嬌声と共に、ますますこぶしに力が入っていく。
見かねた屋ン根がずっと荒騎士の胸元を弄っていた左手でそれを解いてやると、
縋るように彼の指が屋ン根の手に絡みついてきた。それを優しく握り返す。中がいっそう屋ン根の中指を締めつけた。
 指を2本に増やす。縦にスライドさせていた指を、今度は中を押し広げるように別々の方向へ動かすと、
ある一点を指の腹で押した瞬間荒騎士の身体が思いきり跳ねた。
もう1本指を挿入し、3本の指で一気にその一点を再び押し上げた。それを2、3度繰り返す。
荒騎士の身体が痙攣したようにふるふると震え出した。
――限界が近いと思った。屋ン根は荒騎士を膝の上から下ろして仰向けに寝かせると、
強張った彼の身体をしばらく撫でてやり、そしてゆっくりとその両脚を肩に担いだ。

「荒騎士、荒騎士」
 脚を担がれ、屋ン根の先端が荒騎士の後孔にあてがわれた。後は挿入されるだけだった。
その衝撃を目を瞑って今か今かと待ち構えていた荒騎士は、妙に明るい屋ン根の声に不満そうに目を開けた。
「……何だよ、早くしろよ」
「さっきお前、自分はもう大人だって言ってたよな」
「それがどうしたんだよ」
「それがさ、俺忘れちゃったんだよね。その後のお前の言葉」
「……」
 一瞬の沈黙。屋ン根がにやりと笑った。嫌な予感がした。
「だからもう一度教えてくれない?お前が、今俺にして欲しいこと」
 例外なく、今回も俺の予感はピタリと当たった。
479ボドム湖チルドレン Key.×Vo. 6/10:2010/02/05(金) 23:38:37 ID:mgYZsYAq0
「……馬鹿じゃねーの、だってお前この体勢」
「悪いな、でも本当に忘れちまったんだ」
 屋ン根のにやにや笑いは止まらない。
 こんな人の悪い冗談、乗ろうとは全く思えなかった。出来るならさっさと自分から事に及んでしまいたい。
しかしがっちりと荒騎士の脚をホールドしている屋ン根の腕が、それを許さなかった。
なんとか身動きしようと腰を捻るが屋ン根の腕はびくともしない。
そのたるみきった体のどこにこんな力があんだよ。荒騎士は心の中で密かに悪態をついた。
しかし、動けないならばどうにも仕方がない。
観念はしたが、それでもいくらか逡巡した後、ついに荒騎士は嫌々ながらも口を開いた。
「だからお前のさ、……いや」
 その言葉が最後まで言い切られることはなかった。
荒騎士は屋ン根から目を逸らした。顔が火照っていくのが分かる。
先ほどは簡単に言えたあの台詞が、今はどういうわけか口に出来なかった。
 そう、脚を担がれていたのだ。
その他にも荒騎士の手は屋ン根の両肩を掴んでおり、後孔には相変わらず熱くて固い感触があった。
屋ン根がほんの少々身動きすれば、簡単に事を進められる体勢である。
つまり、この体勢は軽くジョークを交わすにはあまりにリアル過ぎた。
その事実が、今更になって荒騎士の羞恥心を呼び起こしたのだった。
「ほら、早く」
「……言わねぇ。絶っ対に言わねぇ」
「“大人”なんだろ?」
「うっせー知るか……っ!?」
480ボドム湖チルドレン Key.×Vo. 7/10:2010/02/05(金) 23:39:39 ID:mgYZsYAq0
 横を向き、頑なに発言を拒んでいた荒騎士は、突如与えられた後孔への刺激に息をのんだ。
屋ン根の先端が荒騎士の後孔を軽くつついていた。もちろんそれは挿入の刺激とは程遠い緩やかなものなのだが、
つい先刻まで強い刺激を与えられ続けていた荒騎士にとっては、それは身の裡に秘められた欲望をより煽るものでしかなかった。
おまけに屋ン根が動いたことで、彼の腹に当たっていた荒騎士自身にまでその振動は伝わっていた。
「おま、何やって……っ、ん」
「早く言わないとずっとこのままだよ?」
「ふざけんな……っ!」
 屋ン根の軽い突きに呼応するようにひくついていた後孔に、先端がついにめり込んだ。
思わずそのまま彼を受け入れる体勢になるが、屋ン根はそんな荒騎士をからかうかのようにあっさりと身を引いてしまう。
浅ければ入口を少し掠めるだけ、深くても亀頭の半分も埋めない彼の焦らしに、荒騎士は気が狂いそうになった。
「おい荒騎士、何涙目になってんだよ」
「うるせぇっ」
「それにさっきからずっと腰揺らしてる」
「うるせぇっつってんだろ……っ、も、はやく」
「早く、なに?」
「……っ」
 屋ン根の腹に擦りつけられた陰茎も、後孔の入口も、もちろんその奥も、全てが熱くてたまらなかった。
自身の先端は絶えず涙を流しているのに、中は彼に慣らされきって蕩けそうなほどなのに、それに相応しい快感を得られない。
欲しい。彼が欲しい。自尊心や羞恥心など、もうどうでもよかった。今はただ快感を貪りたかった。何かがプツリと切れる音がした。
「……れ、ろ」
「ん?」
「入れ、て、……くれ」
「よくできました」
先ほどとは比べ物にならないほどの圧迫感、衝撃、そして快感が、ぐぷりという音と共に荒騎士を襲った。
481ボドム湖チルドレン Key.×Vo. 8/10:2010/02/05(金) 23:40:38 ID:mgYZsYAq0
「お前本当に可愛いね」
「ぁ……っ、あ、ぁあっ!」
 ずぶずぶと、屋ン根の熱い昂りが荒騎士の熱く蕩けたそこに埋め込まれていった。
身体に電流が走ったかのような衝撃が荒騎士を襲う。がむしゃらに屋ン根にしがみつき、荒騎士はその快感に耐えた。
そうして屋ン根が自身を全て荒騎士の中に収めきり一息ついたときには、彼の腹には荒騎士が出した白濁がこびりついていた。
「珍しいな、お前そんなに感じやすかったっけ」
「うっせ……お前が散々焦らすからだろ……」
 荒くなった息を整えつつ、すっかり乱れてしまった髪を手櫛で軽く整える。
ついでにこちらの顔にまで垂れてきた屋ン根の髪も、彼の耳にかけてやる。
そんな荒騎士の行動を屋ン根は愛おしげに見つめていたが、
荒騎士がすっかり髪型を整え終える前に、間もなく屋ン根は荒騎士の脚を担ぎなおした。
「イったばっかで悪いんだけどさ、実は俺も相当我慢してんだよね」
「は?」
「だからお前ももう1回イっとけ」
「え、ちょ、待……っぁあっ」
 ぐちゃりという粘性を帯びた水音が部屋に響いた。
ぎりぎりまで楔を引き抜き、そのまま思いきり荒騎士の中へと打ち込む。
あれほど荒騎士を焦らし、煽った屋ン根も、もはや先ほどの余裕などどこにもなく、まるで獣のように夢中で腰を動かし続けるだけだった。
荒騎士もまた、達したばかりで敏感になった身体ではそんな屋ン根の激しい責めに耐えられるはずもなく、
口の端から涎を垂らしながら必死に次々と自分を襲う快感をやり過ごそうと身を捩る。
金に染められた髪が荒騎士の額に、頬に、貼りついた。
482ボドム湖チルドレン Key.×Vo. 9/10:2010/02/05(金) 23:41:44 ID:mgYZsYAq0
「あ、ぁ、あ゛、っんぁ゛、あぁあ゛っ」
「……っ、は」
 シーツをきつく握っていた荒騎士の手を己の肩へと導いてやる。
屋ン根に導かれるまま最初は彼の肩を掴んでいた荒騎士だったが、
やがて屋ン根の頬を両手で挟み、彼の顔を自分の方へと引き寄せた。
互いの熱に浮かされたような視線が絡み合う。
荒騎士の舌が差し出された。屋ン根がそれを口で吸う。2人の唇が重なる。
屋ン根の長い髪の毛が、2人の顔を覆い隠すように垂れ下がった。
くぐもった声が更に激しさを増した水音、肌と肌がぶつかりあう音に混じる。
とうに屋ン根の肩からずり落ちた荒騎士の脚が、すでにぐしゃぐしゃとなったシーツを更に乱した。
唇を合わせたまま、互いの身体をきつく抱き締め合う。
身体が密着するその動きに任せ、楔が最奥を突いた。屋ン根の背に黒の爪が食い込んだ――
「んんん……っ!」
「――っ!」
 熱が弾けた。迸る液体となったそれは、荒騎士の腹を、中を、白で汚した。
483ボドム湖チルドレン Key.×Vo. 10/10:2010/02/05(金) 23:42:42 ID:mgYZsYAq0
 今朝のこいつらは、珍しく気が利いていた。
不躾で下卑た質問攻めに合うと思っていた俺の予想は杞憂に終わり、
メンバーもスタッフも昨夜のことには何も触れなかった。屋ン根にあんな馬鹿なことを頼まれたというのにである。
もちろん「何もなかった」などという言い訳は通用しない。朝早く俺の部屋から半裸で出てきた屋ン根(もちろん後で殴ってやった)を目撃して、
昨夜一晩部屋の中で何が起こっていたのかを理解しない者はいないだろう。
この際俺をじろじろ眺めては始終にやついた笑みを顔に浮かべる返可は気にしないことにした。
 それに、昨日と打って変わって今日はチューニングがやけに上手くいった。
ペグを1度回しただけで狙い通りの音程に弦が鳴り響いた時の快感は言うまでもない。
指慣らしにバンドの古い曲のリフをいくつか弾いた。今日もミス無し、素晴らしいコンディションである。
そのまま気分良く今日レコーディング予定の曲まで弾き続けていると、いつの間にか近くまで来ていた路ーペが声をかけてきた。
「なぁ荒騎士、確かにここはスタジオだ。それも俺たちが1番よく使う、すっかりお馴染みのスタジオだ。
音響設備は他のどこよりも整っていると俺は思ってる。だがな」
 路ーペが溜め息を1つ吐いた。

「流石に宿泊施設にまで防音設備を求めるのは、俺ぁ間違ってると思うぜ」

 室内が爆笑の渦に巻き込まれた。前言撤回、こいつら全員後で絶対ボコボコにする。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
484風と木の名無しさん:2010/02/06(土) 09:40:31 ID:w5BwdECg0
>>468
イイヨイイヨー
積極的な水色とうろたえる紫カワユス
485風と木の名無しさん:2010/02/06(土) 21:44:07 ID:ztT3CMchO
>>468

うっとりする水色と、
拗ねる紫色にnynyした
お風呂で逆上せさせられて
しまえw
486あなたのかげをおいつづけ。1/2:2010/02/08(月) 15:02:25 ID:yIH4/IUn0
行き場の無いGCCX萌えまったりパーマ野郎→お助けメカ。
ひたすら片想いですでもメカ殆ど出て来ません。妄想と捏造の塊です。
ナマモノ注意でお願いします。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・;)ジサクジエンガ オオクリシマース!

「何か、詰まりそうですね・・・」
不安そうな後輩の声。確かにさっきから同じ箇所で躓いて全く進んでいない。
今日の挑戦ゲームはアクション要素も強いし罠も多いから、其れは皆想定していた事だけども。
しんとした空気。
皆から漏れていた笑いは既に消えていた。
もっとこうすれば良いのに、そう考えては打ち消して。唯ひたすら見ているだけ。
「もういい加減助っ人に入った方が良いですか?」
「・・・・・」
もうそんな時間がどれだけ続いたのか。
焦りの混じった問いに、如何答えればいいものかと思う。
此処で手助けをすればきっと抜けるだろう。クリアは目前なのだから。
でも、もう少し。後少し。
そんな思いが口を塞ぐ。
収録時間にももう余裕が無い。
其れならば手助けして一気に突破してしまった方が。
有埜さんの体調も考えると其れが最善なのかもしれない。
どうするか。
「・・・・・」
ああ。
こんな時、あの人なら如何するだろう。
ふと以前の事を思い出した。
未だ自分が手助けをする立場。あの人は、側に立って見守っている。
時には真剣な表情で。時には微笑みながら。
そんなあの人を、俺はずっと見ていた。
そういえば、あの時の方が今よりもずっと焦っていた様な気がする。
暫く停滞すれば直ぐ手助けしなければ、と。時間も状況も全く読めない侭。
487あなたのかげをおいつづけ。2/2:2010/02/08(月) 15:05:03 ID:yIH4/IUn0
其の余裕の無さも今は笑い話に出来るものなのだが。
きっと後輩達もそんな感じなんだろう。
「裏川さん」
「ん・・・」
今でも覚えている。
あの頃の自分も、あの人もあの頃の事も。
『もう行った方が良かですよね?』
『助っ人?』
『はい・・・時間は、どげん、ですか』
『時間・・は、ヤバいよ』
『じゃあ、』
だから、今度は。
「もう行きましょうか?」
俺が。
「・・・大丈夫」
「え?」
「奇跡が起こるから」
『だから、大丈夫』
目を丸くした後輩を尻目に視線を移す。
停滞ムードは変わらないけど。
大丈夫。
もう、揺らがない。
溜息混じった落胆の声と、諦めた様な空気。
この数分後、起こった奇跡。
驚く人と、本人よりも盛り上がる周囲に安堵の息を吐いて笑う。
喜ぶ皆の中。其の刹那。
笑う、あの人の影を見た。
俺は、ほんの少し位。貴方に近付けているでしょうか。
今はまだ遠い道程だとしても、俺は。
いつか。
488あなたのかげをおいつづけ。:2010/02/08(月) 15:05:48 ID:yIH4/IUn0
□ STOP ピッ ◇⊂(−∀−;)イジョウ、ジサクジエンデシタ!すいませんでした・・・
判断を下すのはPとかなんじゃないかと思うんですけども。
どうも有難う御座いました!
489風と木の名無しさん:2010/02/08(月) 15:38:30 ID:uTERefcH0
>>488
GJ!
でも主語や固有名詞をぼかし過ぎて
ちょっとわかりにくいかも

雰囲気はいい感じなのにもったいないと思う
490風と木の名無しさん:2010/02/08(月) 16:41:08 ID:nk7svNgo0
>>489
わざとぼかしてるんじゃない?
あからさまなのだけが良いとは思わないな
491風と木の名無しさん:2010/02/08(月) 17:18:26 ID:ru04rW/P0
ナマモノだからぼかしてるのだろうと思うが
自分は他ジャンル者なので余計に人間関係が分かり辛かった
このジャンルを知らない人も読むんだって事も考慮して欲しいと言うのは贅沢かな
492風と木の名無しさん:2010/02/08(月) 17:26:31 ID:94G1oVx/0
基本は同じ対象が好きな人に楽しんでもらうために書くのが
二次創作なんじゃないかな
その上で、知らない人に楽しんでもらえたらそれはうれしいけど
493風と木の名無しさん:2010/02/08(月) 20:16:20 ID:uTERefcH0
489です
ふと思った事を書いちゃったんだ
変な空気にしてごめん

改めて>>488ありがとう
言葉の使い方とかリズムが好きです
494風と木の名無しさん:2010/02/08(月) 22:31:29 ID:yIH4/IUn0
>488です。
拙い文に色々なご意見頂いて本当に有難う御座います
確かに今回はわざとぼかして書いたんですが、読み易さの点でもやっぱり考慮が足りなかったと思います
雰囲気先行になって申し訳ありません・・・
ご存じない方にもお読み頂けて嬉しいです、次の参考にさせて頂きます。
有難う御座いました!
495風と木の名無しさん:2010/02/08(月) 22:41:52 ID:+6ro4qjcO
いや、今くらいで十分だと思うよ。
生なんだし。
496風と木の名無しさん:2010/02/09(火) 00:08:48 ID:Z7BK2FvxO
>>494
配慮云々じゃなくて好みだと思う。
自分はあのぼかし具合好きだよ。
497takaの,爪 総等×良しだ  0/3:2010/02/09(火) 00:23:09 ID:NM8Ns19/0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  映画3公開記念
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  短くてすん止めでちょいシモネタ!
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) 
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
498takaの,爪 総等×良しだ  1/3:2010/02/09(火) 00:24:43 ID:NM8Ns19/0
おだやかな昼過ぎ、時計の針はちょうど三時をまわる頃で
めずらしく平和な時を過ごす二人が居た
「とかいいつついつも休みみたいなものじゃないのかね吉田くん?」
ソファーですっかりだらけきっている戦闘主任にあきれながら声をかけたのは
吉田の上司、つまり総統だった

「やだなぁ、たまにはキチンとした休みを取らないと覇気が上がらないじゃないですか」
上半身だけを起こしながらそう言い返された
君の場合は毎日休みじゃないか・・・。なんて不満を持ちながらも言い返さず
しぶしぶといった感じで吉田の隣に座った

「そういえば皆はどうしてるんじゃ?」と吉田に問いかけたら
「博士は彼女に会いに行くって朝からはりきってました、フィリップは首にしたし・・・。
菩薩峠はちょうど昼寝してますね」
彼からは、たぶん皆なにかしてるでしょう。なんてうやむやな返事が返ってくるかと思いきや
以外にもちゃんと団員の行動を把握しているところはさすがだと思った、
・・・いつもこれぐらいちゃんと仕事をしてくれればいいんじゃのう
499takaの,爪 総等×良しだ  2/3:2010/02/09(火) 00:25:42 ID:NM8Ns19/0
なんて考えていると、下から吉田を顔を覗き込んでいた
「うおっ!?」
目が合った瞬間におどろいて思わずのけぞってしまった、考えている事がばれてしまったんだろうか
なんてドキドキしてしまっていた
「一体ど、どうしたんじゃね?吉田くん」
のけぞってしまった後もあまり反応がない彼に問いかけてみた。
すると、彼は
「その・・・たまには2人っきりなんですから」
なんていうと下を向いてしまった、よく見たら顔も赤いような気がする
「え・・・・?」
よく分からず、だらしなく口をあけたままになってしまった
「ああもう!」と彼は叫び、いきなり立ち上がるとわしの膝に乱暴に座った
「うわあぁ!」無理やり座られた痛みと驚きでまた間抜けな声が出てしまった
500takaの,爪 総等×良しだ  3/3:2010/02/09(火) 00:27:04 ID:NM8Ns19/0
そんなわしにかまわず彼は
「ほんとうに鈍いですね、更年期ですか?たまには・・・甘えさせてくださいよ」


なんていった、わしからは彼の後頭部しか見えないがきっとさっき下を向いてしまったときより
真っ赤になっているんだろうと思うと、猛烈にいとおしくみえてきたので茶色く跳ねた髪をやさしく
撫でてあげた
すると彼は、振り返ってわしの顔見るとすこし眉間にしわは残っているが
可愛らしい笑顔でこう言い放った

「・・・総統、下、堅くなってますね」


さっきまでのいじらしい態度とは一変し、ニヤリと不覚に笑うとズボンを脱がしはじめた


「よよよ吉田く―――――ん!!」




きょうも、あまり平和ではなかったみたいだ
501takaの,爪 総等×良しだ 「休みの休み」 :2010/02/09(火) 00:30:43 ID:NM8Ns19/0
____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )ツンデレで襲い受けな戦闘主任が書きたかったんだ
 | |                | |       ◇⊂    ) __  ・・・こっちは入らないけど映画化オメ!
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
502風と木の名無しさん:2010/02/09(火) 00:55:05 ID:RDTFY6dDO
>>501
高爪でSSが読めるなんて…!
がっつり萌えたぞ良しだくーん!
503風と木の名無しさん:2010/02/09(火) 01:03:05 ID:FGtxMzZaO
>>474
亀ですがものすごく萌えました
ありがとうございます
504風と木の名無しさん:2010/02/10(水) 00:27:08 ID:eZM+6oDp0
>>501
某しねコンでの上映前のマナー映像でしか知らないんだけど、
すごい萌えた!ありがとう!
ちょっとDVD借りてくるわ!
505泡沫 0/4:2010/02/10(水) 03:34:45 ID:IUlsg3HJ0
              ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < 半ナマ・ドラマ腐妄痴態で伊さん×域の士官学校同期コンビ域視点
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < 伊が域の家に来た晩で若干エロあり暗め、域が病み気味注意
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、< 結構前にスレで受信した痴デジの前後を少し足してみた短い話
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"
506泡沫 1/4:2010/02/10(水) 03:39:06 ID:IUlsg3HJ0
日本では随分と日が高い時分だろうか、アメリカでの夜もすっかり更けた頃。
一通り仕事の話が終わったところで一息に飲み干した酒のグラスを置き、伊が口を開いた。
「しかし今こうして貴方と酌み交わせるとは本当に思いもよりませんでした」
「私もです」
「士官学校の頃はそんなこと考えもしませんでしたね」
「ええ」
手元に視線を落とし、昔を懐かしむようにして返事をする。
ふと部屋の中が静かになった。怪訝に思って顔を上げると、男はただじっとこちらを見つめていた。
「…何か」
「いえ…ただ、域さんはあの頃と変わらずお綺麗だ、と思いまして」
「綺麗?」
「ええ」
伊は眼鏡の奥の穏やかな瞳をふわりと眇め、微笑んで言葉を続けた。
「外見ではなく内面から滲み出る美しさとでもいいますか」
「内面から…」
意外な言葉だった。
そう在りたいと思っていた時期が自分にも確かにあったことを否定はしない、しかし今は。
永劫終わらぬかとすら思われたあの年月を経て。
泥に塗れた生業。渇いた心。深く神経の末端まで刻まれた凍土の記憶。
この体さえ昔の通りではおられず、それでもまだ大事にしたいと思える存在は次々と周りから消えていく。
自分が災厄を運んでいるのではないかと錯覚したことも幾度かあった。実のところは、そんなものだ。
同じような世界に身を置きながらも柔らかい雰囲気を纏ったままの昔馴染みに真実を告げてやりたくなる。
内面から匂い立つような大和の美。そんなものは今や過去の幻想でしかない。
あてつけや厭味など口にする気は無かった。ただ少し、見てみたくなった。
汚れた自分を知らぬこの男がそれを知った時、どういう反応を示すのだろうかと。
男の持参した上質の酒がじわじわと五臓六腑に染んでいく。
507泡沫 2/4:2010/02/10(水) 03:40:20 ID:IUlsg3HJ0
「…買いかぶりです」
「え?何ですって?」
伊が怪訝そうな声音で訊き返した。静かに淡々と繰り返す。
「買いかぶりだと申し上げました。
 それに私は少しも身綺麗などではありませんよ…今は身も心も汚れてしまいました」
「域さん、それは」
「言葉通りの意味です」
果たして男に聞かせたかったのか、それとも自分自身になのか。
「汚れているんです。心根も、…この体さえも」
足元を見遣って呟いた口元に自嘲じみた微笑が浮かぶ。
ふと、伊の指がその頬に触れた。広い掌が慈しむよう緩やかに肌を撫でる。
促され視線を上げれば、少し困ったように細められる瞳がそこには在った。
「それでも」
伊は眉根を寄せ微苦笑を浮かべる。
「やはり域さんは私にとってあの頃のままです」
「っ、」
揺れぬその眼にまっすぐ見つめられると何故かしら無性に息苦しくて。
「頭が切れ、決断力があって。芸術にも造詣が深く、同期や先輩方、後輩を問わず好かれていらした。
 私も、そう…私も、貴方が好きだった」
「好、き…?」
「…あ、いえ、そうですね。言い換えるなら憧憬と敬愛、とでも」
男はすぐさま、取り繕うかのように言い直した。
その唇が美しくも耳障りな日の本の言の葉をひどく流暢に紡ぐ。
…違う。
もう違う。違うんだ。
そんな目で見ないでくれ。そんなことを言わないでくれ。
それ以上。

ああ。
いっそ―――――
508泡沫 3/4:2010/02/10(水) 03:43:15 ID:IUlsg3HJ0
「…いいえ。今の私がそんな人間である筈がありません」
「域さん?」
「その証拠に…私は今こうして貴方の厚意を利用しようとしているんですから」
声音が誘うような色を帯び、暗い瞳が目の前の男を見据えた。
僅かに、媚にも似た響きを感じ取ったのか頬に触れる伊の指先が一瞬戸惑うように固まる。
咄嗟に退く動きを見せる指に、自らの手を添えすいと引き止めた。
「勿論先程のお話でしたら、責任を持って会長に口添えさせて頂きますよ。域さんに任せれば万全だと」
ですからご心配などなさらずに、と伊が宥める口調で、けれどどこか焦った風に告げる。
独特の、むせかえるような生々しい空気が今や確かに場を覆い始めていた。
「ありがとうございます、よろしくお願い致します」
淡々と言葉を返す。同時に骨張った五指の間に冷たい指を滑り込ませ絡めた。
「…域、さん」
向かい合うレンズの奥の瞳が、今ははっきりと惑い揺れながらも決して視線を逸らそうとはしない。
或いは逃れられない――さながら極寒の地に捕らわれた虜囚のように――だけなのかもしれない。
その眼にはうっすらと、しかし確かに情欲の色が滲み出していた。微かに喉を鳴らす音が聞こえた。
「伊さん」
指をほどくこと無く。
視線をも絡み合わせながら名を呼ぶ声音に艶を含ませ、睫毛を伏せてもう一度低く呟く。
内心、慣れたものだと自嘲する。
「お嫌、ですか……?」
刹那、伊の指が域のそれを振り解き、代わりに勢いよく肩を掴まれたかと思う間に
唇に湿ったものが押し当てられ、硬質の冷たいものが肌にぶつかる感触が続いた。
衝撃を受け止めた後で薄く目を開け垣間見た瞳は既に固く閉じられ、揺れているのかいないのか。
それすらももう、わからなかった。
509泡沫 4/4:2010/02/10(水) 03:46:42 ID:IUlsg3HJ0
純度の高いアルコホルが五臓六腑を焼いていく。血潮に混じり総身を巡り体の熱を上げていく。
草木の一本も生えぬ荒野の如く渇き切ったこの心に、せめて濁水を吸わせてやろう。
幾度も触れては離れる舌の根から溢れて零れ落ちるつばき。剥き出しの体表をしとどに濡らす汗の雫。
身の内奥深くに注がれる熱く滾った欲望の飛沫、その全てを。
「ん…んん…ふッ」
「域さ…ん、私は、」
余計な言葉は聞きたくないと言わんばかりに全身を仰け反らせて大きく喘ぐ。
晒された喉元に口付けた唇が構わず苦しげな音を絞り出す。
「本当は、昔、貴方を」
そんなことを今更聞いても意味が無い。あの頃にはもう、二度と戻れないのだから。
だから。
ただ聞こえないふりをして首に縋りつきかき抱く。
指先だけが、冷えていた。
「…っも…っ、…あ、あア…ッ…!」



汚れるのならいっそ、芯まで汚れ尽くしてしまえ。
頭の何処かで鳴り響く声。
もはや過ぎ去った美しい日々すら逃れることは叶わない。
目の前には、綺麗、だった頃の自分、を知っていた、男。
全ては儚い夢まぼろしにすぎなかったのだろう。
―――これでいい。

汚れるのなら。
いっそ芯まで。

揺さぶられるまま目を閉じた。
揺れているのかいないのか、それすらももう。
わからなかった。
510風と木の名無しさん:2010/02/10(水) 03:48:25 ID:IUlsg3HJ0
            ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < 本編は鮫域豹域祭だというのに今頃伊域ですいません
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < 最終回に向けてもっと盛り上がりますように!
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、< お読み下さった方いらしたらありがとうございましたー
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
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 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ
511風と木の名無しさん:2010/02/10(水) 10:15:33 ID:JXV5Fq5+0
>>508
GJです!!禿萌えました
伊域読めるとは思わなかったので嬉しいです
512そういうこと 1/5:2010/02/11(木) 01:41:03 ID:SWnD8akr0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )クサッタナマモノチュウイ。ゲンジツニハコンナキジアリマセン。

ふっ、と沈んでいた意識が浮上する。
レギュラー番組収録のため入ったスタジオの楽屋でまるで行き倒れのようにうつ伏せで俺は倒れていた。
いやただ寝ていただけだが実際行き倒れに近い。
最近は間近に迫った舞台の練習のために夜も昼もなくレッスンを重ねている。
ちょっとした休憩には泥の様に眠りこけて本番までけっして起きない。筈、だが。
「起きたっちゅーことはあいつか・・・」
もともと寝汚い方な俺の目を覚まさせる事が出来るのは仕事とアイツの二択しかない。
間を置かず足音が聞こえてくる。苛立たしげに、乱暴な。
まずいな、怒っているあいつはうるさくてめんどくさい。
怒るよりも落ち込む事の方が多かった10代の頃を見ている身としては
健全に(?)怒りを表現できる今が嬉しいのだけどそれはそれ、これはこれ。
そんな事をのんびり考えていると足音は俺の楽屋のドアの前で止まり、同時に勢い良く戸が開いた。
513そういうこと 2/5:2010/02/11(木) 01:42:21 ID:SWnD8akr0
「こお!なんやこれは!!」
雑誌を握り締め、ドアの前で仁王立ちの相方は「怒っています」という事を身体全体で表している。
これ、というからには持っている雑誌が原因か?
チラと目をやると表紙がどうも見たことのある男前だ。
「きいとんのかこらっ」
「聞いとる聞いとる、とりあえず入りや」
廊下を通りすがるスタッフの好奇心に満ちた目を避け、とりあえず楽屋内に誘導する。
怒っている割には相方はおとなしく俺に従った。ん?相方は怒り心頭、といった様子で畳の上にドスンと腰を下ろした。
「で?なんやの来るなり怒鳴り散らしてからに」
「これやこれ!おまえはなにゆうとんのや!!」
「あんまり人の顔バシバシ叩くなよ。力いっぱいにぎっとったからぐしゃぐしゃやし」
俺は相方の手によって無残な姿にされた俺が表紙の雑誌を受け取ると、パラパラとめくった。

「ただのインタビューやん。内容も別にいつも通りでおかしなこと言っとらんし。」
「おまえのめはふしあなかかざあなかはとりあなか!あきらかにおかしいことゆうとるわ!!」
「つよ、ちょっと落ち着け。平仮名発音されたら何言うとるのかさっぱりわからん。
あとそこは女子アナにしといた方がええと思うで?」
「わかっとるやん!」
と、いつも通り息のあった会話のキャッチボールを交わしたところで相方も少し落ち着いたらしい。
改めて、と雑誌の該当ページを開き俺に迫ってきた。
514そういうこと 3/5:2010/02/11(木) 01:43:07 ID:SWnD8akr0
「光一さん、あなたが天然でうっかりでいろいろ考えてるように見えて実はそれほど考えてしゃべってないのを僕は良く知っていますが・・・」
「天然ちゃう、計算や」
「だまっとれ」
睨まれた。みんな俺の手のひらでコロコロコロコロこころさんされとるだけやのに。
「ただでさえホモだのなんだの言われているのにこの発言はないでしょう」
さて、俺はなんと言ったか。
別に相方の言うように天然なわけではないが(計算や)、数あるインタビューでどこで何言ったかなんていちいち覚えているわけない。
今度はもう少しじっくり雑誌の文面を眺めてみるがやはりたいしたことは言っていない。
要約すれば「ソロ活動が続きますが、お互いホームはグループですよ」というだけの事だ。
「なんもおかしないやん。この程度でホモ言われたらかなんなぁ」
すると相方は据わった目で俺を睨んだまま、ある一文をすっと指差した。
なになに・・・
「『僕はやはり二人でいるときが一番自然だと思っています。それは、俺の剛も(ry』」
「わーわーわー!!声に出して読むな!!」
「うるさいやっちゃな。別に変な事いっとらんやろ」
「ゆっとるやん・・・じゅーぶんおかしいやろそれ」
???
515そういうこと 4/5:2010/02/11(木) 01:44:06 ID:SWnD8akr0
本気でわからない、というのが顔に出ていたのか相方はため息をつきつつ説明してくれた。
「『俺の剛』てなんやねん。いつから俺がお前の物になったん」
俯き気味のぼそぼそとつぶやくので聞き取り辛かったが、相方はそういった。
「あぁ、『うちの剛』か『俺の相方』のどっちかといい間違えたわ」
しれっと言い放つと相方は一瞬目を見張り、次に怒った顔を作った。
なんだかがっかりしたように見えたが気のせいじゃないな。
「ふん、そんな事やと思ったわ」
じゃ俺自分の楽屋行くから、と腰を上げかけた相方の腕をとりもう一度座らせる。
自分でも顔が雪崩れているのがわかる。

「ごめんな〜がっかりさせて」
「何で俺ががっかりなんてせなかんねん。俺はおこっとったんや!あほな言い間違いする相方にな!!」
「えーでも・・・」
言葉を切った俺を不思議そうに見返した相方の目を捉え、俺はにやっと今日一番の男前スマイルで言ってやった。
「“怒った振り”せんといかんくらい俺の言葉に照れてたんやろ?」
「っ!!」
一瞬で首まで真っ赤になった相方はもう知らん!と言い放つと俺の楽屋の扉を開け、すぐ隣の自分の楽屋のドアに駆け込んだ。
あーもう、ほんま可愛い奴。
516そういうこと 5/5:2010/02/11(木) 01:47:22 ID:SWnD8akr0
「つーよし」
俺は「扉はふたつ、部屋は(間仕切りで仕切られていたが取り去って)一つ」の楽屋の隅っこで「ケータイに熱中して会い方の言葉なんて聞いてません」という振りをする剛の背中に声をかける。
「あれ、本音と建前が逆ってやつやで」
ちょっとからかいすぎたか?俺としてはけっこう恥ずかしい事を言ったんだが反応はなしか。
これはめんどくさい事になったかなと思っていたら携帯のメールに着信。
差出人は・・・相方

『全部わかってます。僕の光一は天然だからね』
・・・・・・天然じゃない、計算だ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )ヨクアルナマエデスノデジツザイノジンブツトハタブンベツジン。
517風と木の名無しさん:2010/02/11(木) 05:41:14 ID:D7FdXSBaO
>>512
GJ!!
ゴチでしたー!
朝から良いもの読ませていただきました。
まさかこころさんが出てくるとわ思わなくてふいたw
518風と木の名無しさん:2010/02/11(木) 10:43:43 ID:zqMsE37O0
容量も480KBを超えそろそろ新スレの時期なので
避難所の掲示板で決定していた新ローカルルールのテンプレを再度お知らせします
次スレからは>>3に以下のテンプレを貼ってください


★モララーのビデオ棚in801板ローカルルール★

1.ノンジャンルの自作ネタ発表の場です。
書き込むネタはノンジャンル。SS・小ネタ・AAネタ等801ネタであれば何でもあり。

(1)長時間(30分以上)に及ぶスレ占拠防止のためリアルタイムでの書き込みは控え、
   あらかじめメモ帳等に書いた物をコピペで投下してください。
(2)第三者から見ての投下終了判断のため作品の前後に開始AAと終了AA(>>4-7辺り)を入れて下さい。
(3)作品のナンバリングは「タイトル1/9」〜「タイトル9/9」のように投下数の分数明記を推奨。
   また、複数の書き手による同ジャンルの作品判別のためサブタイトルを付けて頂くと助かります。
(4) 一度にテンプレAA含め10レス以上投下しないで下さい(連投規制に引っかかります)
   長編の場合は10レス未満で一旦区切り、テンプレAAを置いて中断してください。
   再開はある程度時間をおき、他の投稿者の迷惑にならないようにして下さい。

※シリーズ物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
※感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬はほどほどに。
※「公共の場」である事を念頭にお互い譲り合いの精神を忘れずに。

相談・議論等は避難所の掲示板で
http://s.z-z.jp/?morara

■投稿に当たっての注意
1レスあたりの最大行数は32行、タイトルは全角24文字まで、最大byte数は2048byte、
レス投下可能最短間隔は30秒ですが、Samba規定値に引っかからないよう、一分くらいがベターかと。
ご利用はテンプレをよくお読みの上、計画的に。
519風と木の名無しさん:2010/02/11(木) 15:51:28 ID:MLa3jUaS0
行ってきます
520風と木の名無しさん:2010/02/11(木) 16:07:03 ID:MLa3jUaS0
ただいまです

モララーのビデオ棚in801板56
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1265871268/
521風と木の名無しさん:2010/02/11(木) 16:20:11 ID:nqaonkeo0
おつです
522風と木の名無しさん:2010/02/11(木) 16:36:55 ID:CByvkz6n0
おつでした
523風と木の名無しさん:2010/02/11(木) 19:29:13 ID:zqMsE37O0
新スレにテンプレ貼ってくださいとお願いした者です
自分も>>2>>3が入れ替わってる事にまったく気付かず
失礼致しました。
>>520さん、ありがとうございました
524風と木の名無しさん:2010/02/11(木) 19:55:21 ID:OCs14ucm0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
タイガーなドラマの上司×武智で伊蔵→武智で涼真テイストもちょっぴりなエロ有り注意話。
自己矛盾でグチャグチャな先生を書いてみたかったが、他の何より文がグチャグチャに…
色々史実捏造+少し先の展開なので、それらがダメでしたらお避け下さい。
525境界の橋 1/6:2010/02/11(木) 19:56:30 ID:OCs14ucm0
畳の上に光と共に色濃い翳を落とす橙色の蝋燭の灯り。
通されたのは屋敷の奥座敷だった。
その時点で何が起こるのかは容易く想像がつき、そしてそれはその通りになった。
待たされ、対面し、少し言葉を交わした後、さも当たり前のように手を伸ばされ、
圧し掛かられ、袴を剥ぎ取られた。
抵抗など出来るはずのない。そしてそれは相手も見透かしている。
だから散々に弄ばれた末に、力の入らなくなった下肢をうつ伏せの形で貫かれた。
何を塗り込められたのかもわからない接合部から立つ水音は、人払いがされ静寂の落ちる
室内に淫らに響き、耳を覆いたくなる。
けれどそんな事は許されるはずもなく、どころかその耳に背後から熱い息を吐く唇が寄せられ、
舌先で輪郭をなぞられるのと同時に耳朶に柔く歯を立てられれば、刹那背筋を這い上がる
痺れるような感覚に肌が震えた。
唇から溢れそうになる声は、認めたくない響きを纏う。
だから肩から落ち、手元でわだかまっていた着物の袖を懸命に噛んで息を殺す。
せめてもの抵抗。しかしそれはするだけ無駄な抗いだと言う事ももう自分は知っていた。
どれだけ真面目に誠実に生きようとしても、それだけではどうしても叶わない事があると
思い知らされてもうどれくらいの時が経つのだろう。
綺麗事だけでは何も出来ない。欲しいものを手に入れる為には捨てなければならないものもある。
悟り、身を汚し、心も汚して、そうしてまで望んだのはここでは無い遠い地。
名は江戸。
息がしたかった。光が見たかった。
愛する者も、守るべきものもここにはあったけれど、それでも一度でいい。外に出たかった。
自分が望んだ事だ。自分で決めた事だ。だから悔いなどしない。けれど、
腰だけを高く持ち上げられたその前に手を潜り込まされ、隠しようのない昂ぶりに指を絡められ、
その反応を耳元近くで揶揄されれば、内容より先にその言葉自体に嫌悪が沸いた。
国ではめったに聞かない流暢な江戸言葉。
生まれも育ちも江戸で、国元訛りなどまるで知らぬげなこの上役の口から溢れる言葉で
焦がれる程に求める唯一の光を汚されるのはたまらなかった。
『慣れているな、今までに望みを叶える為に何人咥え込んだ?』
そんな数などもう覚えていない。覚えていた所でしょうがない。
526境界の橋 2/6:2010/02/11(木) 19:57:33 ID:OCs14ucm0
思い、無言を貫けば、不意にうつ伏せていた体を表返された。
そのまま投げ出された両の手首を頭上で一纏めに握り込まれる。
と、その形に瞬間、脳裏に蘇る声があった。
それはもう遥か遠くに思える昔に聞いた『あきらめてください』と自分に頼む優しげな声色。
それが今はひどく悲しく、縋るように自分を呼ぶ。
『こんなこと、やめてつかーさい』
やめて……やめてどうなるのだ。誰が自分を助けてくれると言うのだ。
おまえにはわからない。自分は人の手など望まない。自分の事は自分でけりを付ける。
覚悟は出来ている。なのに……どうして……
今、眦に涙が伝い落ちる?
嫌だった。こんな涙は相手を誤解させ、喜ばせるだけだとわかっている。
案の定、上になり自分の顔を見た男は、下肢の繋がりを解かぬまま爛れた粘膜を穿つ動きを激しくしてきた。
畳の上、剥き出しの肩が擦れて赤くなる程に揺さぶられ、体を内から暴かれる。
嫌だ。
そう思うのに、噛み締める物の無くなった唇からは甘く掠れた嬌声が溢れ落ちた。
駄目だ。
そう思うのに、堅く閉じた目の端を流れ落ちる涙を止める事も出来ない。
綺麗なままではもういられない。いたいと望む資格も自分にはもう無い。
わかっている。覚悟もしている。それなのに、
『やめてつかーさい、武智さん!』
心と体を乖離させる。
そんな自分の名を呼ぶ遠いその声が、今の武智には愛しくも……哀しいほどに憎かった。
527境界の橋 3/6:2010/02/11(木) 19:58:47 ID:OCs14ucm0
喘ぎとも悲鳴ともつかない声を発し続けた喉は渇き、涙の流れ続けた目元は熱く腫れぼったい。
嬲られ続けた下肢は重く後始末などされているはずもなかったが、その不快さに耐え
武智が身を起こした時、部屋にはすでに自分以外誰もいなかった。
炎が揺れる蝋燭はかなり短くなっている。
それに過ぎた時間を思い、武市はおもむろに自らの着物に手を伸ばすと、そのあられもない着崩れを
無言で直し始めた。
襟元や裾を重ね合わせ、傍らにわだかまっていた袴にも手を伸ばす。
爪まで重い指先で、のそりと引き寄せる。その時、その袴の上からことりと落ちる一通の書状があった。
まるで投げ捨てられていたかのような、それを手に取り、開き見る。
中にあったのは旅手形だった。
自分が望み、払った代償として与えられたもの。
自分の物は既に持っている。
己が身一つならばなんとでも、どうとでも。
しかしそれ以上を望む事が、この国ではあまりに困難で……苦しい。
一方の与える側にしてみれば、それは胸先三寸の戯れに近い、軽い行為であるにも関わらず、だ。
たった一枚の紙片にさえ思い知らされる現実の昏い溝に、知らず指先に力がこもり、手にしたそれを
握り潰しそうになる。
けれど武市は寸前の所でそれを止めた。
そんな事をしたところで、何が変わる訳でもない事も自分は知っている。
どれだけの理不尽に憤ろうとこの紙自体は必要なもの。
湧き上がる感情とそれを押さえつける理性が交互に入り乱れ、結局は発露出来ぬ想いが澱となって
身の内に沈んでゆく。
積み重なってゆく。
それを自覚しながら、しかし指先はこの時手にした紙をもう一度丁寧に折り畳むと、それを静かに
懐へと収めていた。
528境界の橋 4/6:2010/02/11(木) 19:59:50 ID:OCs14ucm0
土イ左の城下は上司と下司の居住区域がはっきりと分けられている。
屋敷を辞してその上司区域を抜け、本来の場所に辿り着いた時、それまで懸命に堪えていた武智の体の
倦怠感は限界を越えていた。
人通りの完全に絶えた町の橋の袂で、思わず倒れかかる様に欄干に手を掛け膝をつく。
口元に当てられる手。
気持ちが悪い。
それでも胃の中には吐く物など何も入ってはいなかった。
ならばいったい自分は何を吐き出せば楽になるのだろう。
苦痛に苛まれるその耳に、この時不意に聞こえた声があった。
「先生?」
聞き覚えのある、その声に反射的に顔が上がる。
視線を上げて見る。そこには橋の中央、手にした提灯の灯りでこちらを伺おうとしている伊蔵の姿があった。
どうして、と思うより先に確信を持った彼の方が提灯を投げ捨てる勢いでこちらに向け駆け寄ってくる。
「どういたがですか?先生!」
うずくまる自分を抱き起こそうと肩に伸ばされかけた手が、しかし寸前で触れていいのかと迷いを見せた。
「気分が悪いがですか?」
その代わり、心配そうに口早く告げてくる。
だからそれに武智はこの時、懸命に声を振り絞っていた。
「大丈夫じゃ。先方で少し酒が出てな…」
強がりと嘘。しかしその声を張る事までは出来ない。
それが彼の不安を更に煽ったのか、伊蔵はそんな武智に尚も言い募ってきた。
「なら、わしの肩をつこうて下さい。家まで送ります。ああ、でもわしじゃと背が足らんか。
これが涼真じゃったら、」
自らの小柄を嘆き、突然一つの名を出す。
それに武智は瞬間、臓腑に更に鈍い痛みが走るのを感じた。
「……ない…」
だから小さな呟きが唇から零れ落ちる。
「えっ?」
「今、涼真は関係ないじゃろ…」
静かながらも語尾がきつくなる。そんな自分の語調に、伊蔵は気圧されるように慌てて謝罪を口にしてきた。
529境界の橋 5/6:2010/02/11(木) 20:00:53 ID:OCs14ucm0
「すいませんっ」
うろたえの中に混じる自分に対する脅え。
厭われる事を恐れる。
それを隠さない彼のまっすぐな感情の表れは、しかしこの時自分に新たな自己嫌悪を呼び起こす。
彼が自分に怒られる必要など何もない。
けれどそれを今、素直に告げる事はどうしても出来なくて。
「それより…おまん、どういてこんな所に?」
はぐらかすように問う。それに伊蔵はまたしても勢い込むように返事を返してきた。
「飛来さんに聞いて。」
「飛来?」
道場に通う年長の男の名を思わず鸚鵡返しにする。と、それに伊蔵は力強く頷いた。
「先生が、江戸への修行にわしを同行させるよう動いてくれちょると。それで今日も夜分遅うに出掛けられたと
聞いたきに、居ても立ってもおられんくなって。」
飛来は今度、自分と共に江戸での修行が許された者だった。それゆえに明かしていた、それを聞いたのか。
事が成ってから伝えようと思っていた。しかしならばもういいだろうと、武智はこの時自らの懐を探る。
そしてそこから折り畳まれた手形を取り出すと、それを伊蔵へと差し出した。
「おまんの分じゃ。」
「…先生…」
「藩命ではなく私費での扱いになるが、金ならわしがなんとか工面しちゃるきに、」
先程謝まる事が出来なかった。その代わりとばかりに告げる。
「一緒に来いや、伊蔵。」
命じると言うよりは願うように口にしたその言葉に、最初伊蔵はその大きな眼を呆気に取られたように見開いていた。
肯とも否とも答えない。
だからそれにたまらず不安が募り、武智が「伊蔵?」ともう一度その名を呼べば、それに彼は瞬間ハッとした
ように肩を震わせると、そのまま地面に手を付き、自分に向け深くその頭を下げてきた。
「あっ、ありがとうございます!」
歓喜に打ち震えるような、しかしその声さえも武智は複雑な思いで聞く。
530境界の橋 6/6:2010/02/11(木) 20:02:04 ID:OCs14ucm0
本当は、彼は自分に礼を言う必要も無いのだ。
自分が彼を連れていきたいと望んだのは、実はどこまでも私欲なのだから。
いつの頃からこんな事を思うようになっていたのだろう。
純粋に自分を慕い、憧憬の眼差しを向けてくる彼の大きな瞳は、自分の罪を映しだす鏡のようだと。
向けられる度に、汚れる事を受け入れた自分の業を自覚する。
だから傍に置いておく。それは罪に対する戒めの罰。
自らが望み、自らが決めた道だ。けれど……
それでも今、その眼差しが痛く、居た堪れず、棘のように胸に突き刺さるから。
伊蔵が顔を上げる。それに武智は見るなと思う。
近づかれれば酒など飲んでいない事を悟られる。目元の腫れを見咎められる。
思う焦りは動きとなった。
伸ばす手が体を起こした伊蔵の首筋に回り、それを引き寄せると武智は彼の肩に強く顔を埋めた。
「先生?!」
驚いたような伊蔵の声を耳元近くで聞く。
しかしそれにも離れる事は出来ず、どころか逆に回した腕の先で拳を握れば、掴んだ薄い彼の
着物の布が手の中でキリキリと鳴った。
しばし、そうして身を添わせる。と、そんな武智の耳にこの時届く声があった。
「守るきに。」
それは静かに、しかし力強く吐き出された告白。
「わしが命に代えても武智さんを守る気に。」
それまでの敬称ではなく、名を呼んでくる。
彼のその境目は何なのか。
わからないまま目を閉じ思い出す、それはこの国の古来からの言い伝え。
橋は彼岸と此岸、異界の境に掛けるもの。
正しく、清く生きたくて。しかし出来ずに汚れた我が身の脆弱さが許せなくて。
その真意を見透かしたように自分を止める声の持ち主が憎く、でもそれを失いきる事も怖くて。
揺れて揺れて揺れ続けて、自分はどちらの界に堕ちるか。
わからないまま二人で留まる橋の上で、
「伊蔵……」
この惑いの道連れにするかもしれないと予感しながら、それでも今自分が呼べるのは、
唯一つ彼の名だけだった。
531風と木の名無しさん:2010/02/11(木) 20:03:29 ID:OCs14ucm0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
実はノベライズを読んでないので先の展開は知らないまま勢いで書いた。
でもトサ弁からはかなり逃げた…後で七転八倒する覚悟は出来ている…
532風と木の名無しさん:2010/02/11(木) 23:51:29 ID:F1f64Bk30
>>524
ぎゃああグッジョブです!!
矛盾をかかえてグチャグチャの先生が悲しくも美しい…
イゾでもリョマでもいい!誰か守ってあげとおせ
533風と木の名無しさん:2010/02/12(金) 01:11:45 ID:NwRMy2L/O
>>524
うわあああああやばいですかなり萌えました!!頭ツルっ禿です!!
もう、本当に精一杯強がってるテンテが痛々しくもエロいし可愛いし…遺贈の純粋な愛を受けとめる屈折した姿にもう萌えたぎりました。本当にご馳走様でした。
534風と木の名無しさん:2010/02/12(金) 10:32:49 ID:9AY7d1950
>>524
我が妄想がこんなところにeeeee!
イゾの為だったんですね、テンテー!「守るきに」で泣けました
真面目に誠実に生きてきたテンテーが可憐だよおおっ!
535鳳 粕×和歌 茅ヶ崎 1/3:2010/02/13(土) 09:32:47 ID:iCqib1Z90
今更ながらの誕生日ネタ 先日のシャン伯父収録後のヒトコマな感じで

!!ナマモノ注意!!
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「ん。」
唐突に目の前に差し出された手の平。
その意味するところは直ぐに察しがついたけれども
なんだか妙にムカついたので、自分の手の平で、ぱちんと叩き払った。
「なぁによぉ」
叩かれた手を振りながら、おネェ口調で文句を言うのも腹立たしい。
「なんだよ」
思いっきり睨み付けてやるとニヤリと口の端で笑う。
「2万円」
「はぁ?」
「くれるっつーたのは、アータでしょうよ」
確かに言った。言ったけれども。
「誕生日のプレゼントに現金って、どうなんだよ」
「現金が一番ありがたいじゃないですか!」
「夢が無いねぇぇ!」
思わず言葉に力がこもる。
「お前って、昔っからそうだよな。
 デリカシーとかロマンとか、欠片も無ぇんだよ」
「ひどい言われようだねぇ」
罵られながらもニヤニヤしてんのが、また腹立たしい。
「金で買えないものにこそ、価値があんだよ!」
「まぁ、そういう事もあるけどねぇ・・・」
ちょっと考え込むように、目を伏せる。
しばらく押し黙った後、おもむろに口を開いた。
「そういう意味でなら、俺はアンタが欲しいよ」
「・・・っ!」
急に真面目な顔になられて、言葉に詰まる。
536鳳 粕×和歌 茅ヶ崎 1/3:2010/02/13(土) 09:33:25 ID:iCqib1Z90
ただ、今、こんな状態ですからねぇ」
松葉杖で左足のギプスを小突きながら言う。
「アナタに、上に乗って動いてもらわないと・・・つっ!」
へらへらと恥ずかしい事を言う口を、鉄拳で黙らせる。
頬をはられて、嬉しそうにしてんじゃねぇっ!
益々腹が立ったので、もう一発手が出そうになったところを、手首を握られて止められる。
そのまま引っ張られて、俺とアイツの距離が詰まる。
キレイな両目が、優しく細まるのを間近に見て、ドキリとする。
「じゃあねぇ、『愛の言葉』を頂戴」
「え?」
「俺の事『好き』って言って?」
「なっ・・・なに言ってんだっ!このバカ!!」
掴まれていた手を振りほどきながら、まくし立てる。
「んなもん、今までだって、散々言ってんじゃねーか!ネタ中とか番組の企画とかぁ!」
「だから、ネタじゃなくて本心で。カメラの前でなく、俺にだけに、言って欲しい」
そう言って、また真面目な目で俺を見る。
この目は苦手だ。何も言い返せなくて俯いてしまう。
俯いたまま、ちらりと目をやると、相方は、じっと真剣な眼差しで俺を見つめている。
―――マジかよ・・・
追い詰められた気分で、髪の毛を掻き毟った。
「・・・ロ/ケ/ッ/ト/団の見宇羅さんがさぁ」
「はぁ??」
全く予期していなかった言葉が返ってきたからか、素っ頓狂な声があがった。
「見宇羅さん、知ってんだろ?」
「あ・・・あぁ、うん。山形弁の人ね」
「そうそう」
わざと目を合わせないように、壁の方を向いて喋り続ける。
「その見宇羅さんがぁ、東京の地名で、山形弁で言うと面白くなるのを探してるっつーんだわ」
「なんでまた」
「さぁ?ネタにするんじゃねぇの」
「ふ〜ん、で?」
話の腰を折ったのに、律儀に俺の話に乗ってくれる。こんなところも、昔から変わらない。
537鳳 粕×和歌 茅ヶ崎 3/3
例えばさぁ『新宿』だったら『すんずく』とか」
「あぁ、なるほどね」
「それでも、そうそう面白くなりそうなのは出てこなくてさ」
「うん」
「でー、そん時は「すんません、あんま思いつかないっす」っつって別れたんだけどぉ」
「うん」
「なんか気になっちゃって、頭ん中で色々考えてみたの。
 んで、神奈川の方まで範囲を広げてみたんだけどぉ」
「鎌倉とか江ノ島とか?」
「鎌倉なんて、なんも変わんねーじゃん。多分『かぁまくらぁ』ぐらいだろ」
「はははっ!」
ちょっと顎をしゃくって、変なイントネーションで言ったのが
ツボにハマったのか、アイツが大袈裟に笑う。
少し空気が柔らかくなった。
視線を目の前の男に戻す。
自分が自然と笑顔になっていることに気がついた。
「ひとつ、面白いのがあってさ」
「へぇ、なに?」
「・・・茅ヶ崎」
「ちがさき・・・『つぅいがすぁき』?」
怪訝そうな顔をするヤツに、今度は俺の方から距離を詰める。
肩に手を置いて、耳元に息を吹きかけるように囁いた。
「・・・『てぃがすき』・・ティーが好き、だよ」
バタンッと大きな音を立てて、片方の松葉杖が倒れた。
体勢を崩したアイツが、慌てて立て直そうとしているのが
やけに可笑しくて、腹を抱えて大笑いする。
そんな俺を恨めしそうな目で見据える、その顔は耳まで赤い。
これで「2万はチャラな」って言ったら、どんな顔をするだろう。
想像するとまた可笑しくて、ヒャッヒャッヒャッと高らかに笑った。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!