モララーのビデオ棚in801板51

このエントリーをはてなブックマークに追加
1風と木の名無しさん
   ___ ___  ___
  (_  _)(___)(___)      / ̄ ̄ヽ
  (_  _)(__  l (__  | ( ̄ ̄ ̄) | lフ ハ  }
     |__)    ノ_,ノ__ ノ_,ノ  ̄ ̄ ̄ ヽ_ノ,⊥∠、_
         l⌒LOO (  ★★) _l⌒L ┌'^┐l ロ | ロ |
   ∧_∧| __)( ̄ ̄ ̄ )(_,   _)フ 「 | ロ | ロ |
  ( ・∀・)、__)  ̄フ 厂  (_,ィ |  </LトJ_几l_几! in 801板
                  ̄       ̄
        ◎ Morara's Movie Shelf. ◎

モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
なにしろモララーのコレクションなので何でもありに決まっています。

   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |[]_||  |      | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ]_||
   |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   すごいのが入ったんだけど‥‥みる?
   |[][][]._\______   ____________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |[]_|| / |/    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.||  |[]_||
    |[][][][][][][]//||  | ̄∧_∧     |[][][][][][][][].||  |  ̄
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ( ・∀・ ) _ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.||  |
   |[][][][][][][][]_|| / (    つ|8l|.|[][][][]_[][][]_.|| /
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    | | |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    (__)_)
前スレ
モララーのビデオ棚in801板50
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1246886877/

ローカルルールの説明、およびテンプレは>>2-9のあたり

保管サイト(携帯可/お絵描き掲示板・うpろだ有)
http://morara.kazeki.net/
2風と木の名無しさん:2009/08/16(日) 22:18:50 ID:X5aTEXrV0
★モララーのビデオ棚in801板ローカルルール★

1.ノンジャンルの自作ネタ発表の場です。
書き込むネタはノンジャンル。SS・小ネタ・AAネタ等801ネタであれば何でもあり。

(1)長時間に及ぶスレ占拠防止のためリアルタイムでの書き込みは控え、
   あらかじめメモ帳等に書いた物をコピペで投下してください。
(2)第三者から見ての投下終了判断のため作品の前後に開始AAと終了AA(>>3-7辺り)を入れて下さい。
(3)作品のナンバリングは「タイトル1/9」〜「タイトル9/9」のように投下数の分数明記を推奨。
   また、複数の書き手による同ジャンルの作品判別のためサブタイトルを付けて頂くと助かります。

※シリーズ物・長編物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
※感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬はほどほどに。
※「公共の場」である事を念頭にお互い譲り合いの精神を忘れずに。

相談・議論等は避難所の掲示板で
http://s.z-z.jp/?morara

■投稿に当たっての注意
現在連投規制が厳しくなっており、10レス連続投稿すると、ばいばいさるさんに引っかかります。
長い作品の場合は、分割して、時間をずらして投下することをおすすめします。
1レスあたりの最大行数は32行、タイトルは全角24文字まで、最大byte数は2048byte、
レス投下可能最短間隔は30秒ですが、Samba規定値に引っかからないよう、一分くらいがベターかと。
ご利用はテンプレをよくお読みの上、計画的に。
3風と木の名無しさん:2009/08/16(日) 22:19:38 ID:X5aTEXrV0
2.ネタ以外の書き込みは厳禁!
つまりこのスレの書き込みは全てがネタ。
ストーリー物であろうが一発ネタであろうが
一見退屈な感想レスに見えようが
コピペの練習・煽り・議論レスに見えようが、
それらは全てネタ。
ネタにマジレスはカコワルイぞ。
そしてネタ提供者にはできるだけ感謝しよう。

  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  | ネタの体裁をとっていないラッシュフィルムは
  | いずれ僕が編集して1本のネタにするかもね!
  \                           | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| . |
                               | | [][] PAUSE       | . |
                ∧_∧         | |                  | . |
          ┌┬―( ・∀・ )┐ ピッ      | |                  | . |
          | |,,  (    つ◇       | |                  | . |
          | ||―(_ ┐┐―||        |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   |
          | ||   (__)_), ||       |  °°   ∞   ≡ ≡   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
4風と木の名無しさん:2009/08/16(日) 22:20:21 ID:X5aTEXrV0
3.ネタはネタ用テンプレで囲うのがベター。

別に義務ではないけどね。

テンプレ1

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  モララーのビデオを見るモナ‥‥。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  きっと楽しんでもらえるよ。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
5風と木の名無しさん:2009/08/16(日) 22:21:01 ID:X5aTEXrV0
テンプレ2
          _________
       |┌───────┐|
       |│l> play.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
   ∧∧
   (  ,,゚) ピッ   ∧_∧   ∧_∧
   /  つ◇   ( ・∀・)ミ  (`   )
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |            ┌‐^──────────────
  └──────│たまにはみんなと一緒に見るよ
                └───────────────

          _________
       |┌───────┐|
       |│ロ stop.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]

                 ピッ ∧_∧
                ◇,,(∀・  ) ヤッパリ ヒトリデコソーリミルヨ
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |                                |
  └────────────────┘
6風と木の名無しさん:2009/08/16(日) 22:21:51 ID:X5aTEXrV0
テンプレ3
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < みんなで
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < ワイワイ
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 見るからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < やっぱり
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < この体勢は
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 無理があるからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ
7風と木の名無しさん:2009/08/16(日) 22:22:27 ID:X5aTEXrV0
テンプレ4

携帯用区切りAA

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

中略

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

中略

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
8風と木の名無しさん:2009/08/16(日) 22:22:52 ID:X5aTEXrV0
 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 僕のコレクションに含まれてるのは、ざっと挙げただけでも
 |
 | ・映画、Vシネマ、OVA、エロビデオとかの一般向けビデオ
 | ・僕が録画した(またはリアルタイムな)TV放送
 | ・裏モノ、盗撮などのおおっぴらに公開できない映像
 | ・個人が撮影した退屈な記録映像、単なるメモ
 | ・紙メディアからスキャニングによって電子化された画像
 | ・煽りや荒らしコピペのサンプル映像
 | ・意味不明、出所不明な映像の切れ端
 \___  _____________________
       |/
     ∧_∧
 _ ( ・∀・ )
 |l8|と     つ◎
  ̄ | | |
    (__)_)
       |\
 / ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 媒体も
 | 8mmフィルム、VCR、LD、ビデオCD、DVD、‥‥などなど
 | 古今東西のあらゆるメディアを網羅してるよ。
 \_________________________
9風と木の名無しさん:2009/08/16(日) 22:23:49 ID:X5aTEXrV0
   |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   じゃ、そろそろ楽しもうか。
   |[][][]__\______  _________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |       |/
    |[][][][][][][]//|| |  ∧_∧
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ )
   |[][][][][][][][]_||/(     )
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   | | |
              (__)_)
10風と木の名無しさん:2009/08/16(日) 22:26:45 ID:tHmHBbmq0
>>1乙です!
11最終幻想4カイエジ:2009/08/17(月) 00:03:39 ID:QtiXXYf10
          _________
       |┌───────┐|
       |│l> play.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
   ∧∧
   (  ,,゚) ピッ   ∧_∧   ∧_∧
   /  つ◇   ( ・∀・)ミ  (`   )
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |            ┌‐^──────────────
  └──────│>>1乙です!最終幻想4でカイエジだよ!
                └───────────────
12カイエジ1/3:2009/08/17(月) 00:04:02 ID:QtiXXYf10


「恨んでいるんだろう?俺のことを」
やや見上げた先にあったのは、孤独に囚われた青い瞳だった。
なんて、月が似合う男なんだろう。金の髪が、揺れていた。
静まりかえった夜の街の中、彼の周囲だけが色づいているように見えた。
「……おめえは操られてたんだ。だから恨んでねえよ」
それは、嘘だった。カインへ向けた鬱々とした思いで、眠れぬ夜もあったからだ。
逆恨みだとは分かっていた。けれど、暗くなっていく心を止められなかった。
「見え透いた嘘を」
カインが、唇の端を上げる。
そんな暗い感情を止めたのは、カインの、切なげな青い瞳だった。
「……俺は、お前の国を落とすことに加担した。恨まないほうがおかしい」
「恨んでねえって言ってんだろうが」
「どうだかな」
ひゅっ、という音と共に、カインが跳んだ。太い木の枝に飛び乗り、手招きをする。
「これくらいの高さ、何てことないだろう?……王子様」
煽るような言葉とは裏腹に、とても静かな声だった。
13カイエジ2/3:2009/08/17(月) 00:04:37 ID:bYdyMsO+0
忍者であるエッジの跳躍は鮮やかだった。足音一つたてず、彼は俺の傍にやってきた。
王子様――エッジは、面白くなさそうな顔をしていた。
「その、王子様って言うのはやめろ」
ちら、と緑色の瞳をこちらに遣りながら呟いた。
まじまじと見つめれば見つめるほど、エッジの体は細かった。
胸板が薄い。首も、そして腕も細い。自分達騎士のものとは違う筋肉は、まるで野生の獣のようだ。
俊敏さに特化した体は、俺の中にある何かを呼び覚ます。
この感覚の正体はなんなのかと自分に問うたけれど、答えは見つからなかった。
「おめえは馬鹿真面目過ぎるんだ。そんなんだから、操られちまうんだよ。俺みたいに、気楽に生きようぜ」
他の人間が言うと胸に突き刺さるであろうその台詞も、彼が言う、それだけで優しい言葉になる。
俺は、彼が気楽に生きているとは思わない。ただ彼は、気楽に生きているフリをするのが上手いのだ。
「だって、笑っているほうが楽しいだろ?」
口元に巻かれた布で、唇の動きは分からない。それを補うほどの満面の笑みで、彼はにいっと笑う。
エッジの国を滅ぼしたのは、他でもないこの俺なのだ。巨人を復活させることにも、加担した。
『操られていたから』。そんな言葉で赦されるはずがない。
黙っている俺を見て、エッジは刀を取り出した。抜き身にされた刀身が、ちらと光る。
「……確かに、色々思うところはあるさ。親父とお袋は死んじまったし、国の民達も犠牲になった。
これっぽっちも恨んでねえって言ったら……嘘になる」
しばらくの沈黙の後、「でもよ」と言って、エッジは俺の首に刀の刃を押し当てた。
ひんやりとした感触に、俺は身動きが取れなくなる。
微かな痛みに、息を詰めた。
14カイエジ3/3:2009/08/17(月) 00:05:00 ID:bYdyMsO+0
「おめえを殺したところで、俺の親は帰ってこねえ。
崩れた城がぴかぴかになるわけでもないし、ゼムスがいなくなるわけでもない。何の特にもなりゃしねえ」
うっすらと血がついた刀を、懐から取り出した布で拭い、
「だから、恨んでるとか恨んでないとか、そんなことはもうどうでもいいんだ。
ゼムスを倒せば、平和が訪れる。平和になったら、国の復興に全力を尽くす。
俺には、それだけだ。それだけでいい。難しいことは苦手だからな」
傷ついた俺の首を撫でて、ぐいと体を抱き寄せてくる。心臓が大きくはねた。エッジからは、香のような匂いがした。
髪をかき混ぜられる。鼓動が酷くうるさかった。
「……一緒にゼムスを倒すぞ、カイン。両親やエブラーナだけじゃなく、
俺はお前の仇も討ちたいって、そう思ってるんだからな!」
「……俺の、仇?」
「上手く、言えねえけど……おめえの心のどっかを壊した、その仇だ。
ゼムスの野郎が殺したのは、人間の体だけじゃねえだろ?」
俺の胸の中にぽっかりと空いた、大きな穴。
風穴のようなそれは、広がるばかりで閉じ始める気配すらない。
「おめえは、いつだって辛そうな顔をしてる。
背は高いってのに下ばっかり向いて、パーティの一番後ろを歩いて、ほんのちょっとしか笑わねえ」
エッジの手が、俺の髪に触れた。
ぐしゃぐしゃとかき回して、目を細める。
「俺は、好きだぜ。お前の笑ってる顔」
年上の癖に少年のような表情を見せる男の顔を見つめながら、
ただただ、この胸の高鳴りの正体は何なのだろう、と考え続けていた。
15最終幻想4カイエジ:2009/08/17(月) 00:05:20 ID:bYdyMsO+0
          _________
       |┌───────┐|
       |│ロ stop.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]

                 ピッ ∧_∧
                ◇,,(∀・  ) オウジサマヨビニモエル!
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |                                |
  └────────────────┘
16風と木の名無しさん:2009/08/17(月) 02:24:05 ID:rjkmkJMi0
>>51
GJ!萌えた!
王子様一番年長なのに年下っぽく見えてかわいいよな!
17風と木の名無しさん:2009/08/17(月) 11:54:21 ID:5aZHdiBF0
前スレもう少し容量あるので、長編でなければこちらへどぞー
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1246886877/
18風と木の名無しさん:2009/08/17(月) 16:39:32 ID:Uz/LktQi0
こっちにもお礼
前スレの>>508

ありがとうございました ずっと続きを待ってました
また書いてください ぜひ
また読めて幸せです
19U.F.O飛んだ 0/10:2009/08/17(月) 16:45:12 ID:H3H2X2fN0
長いのでこちらに失礼します。
・深夜ドラマ「取ッ九」より、金髪×帽子×金髪
・半ナマ注意。エロなしです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
20U.F.O飛んだ 1/10:2009/08/17(月) 16:47:01 ID:H3H2X2fN0
夏も終わりの真夜中に、失部はひとり車止めに腰掛けていた。繁華街の賑やかさに似合わない
しかめっ面を浮かべ、腕を組んで深くうなだれている。

(いや、俺も四十越えてる。四十越えたら、そらあかん時もある)

座っている車止めの道向こうにあるのはピンクに輝く看板だ。誘う先は小汚いビルの2階である。
ふたりして入ったその場所から部下がまだ出てこないので、失部はこうして待っているのだった。

(俺が困った顔した、ほんならあの娘ニコーッ、笑って『疲れてます?』ゆうから、
 あほなことした、こっちもつられていやあ、てヘラヘラしてもうたやないか)

確かにここのところ疲れがたまっていたかもしれない。サボった先で鉢合わせた課長に叱責されたり、
自分が有能だからといって難しい事件ばかり課長に押し付けられたり、
できの悪い部下のゆくゆくについて課長に呼び出されたり、なにかとストレスになることが多かった。
だがだからこそ、この耐えがたいもやもやした気分を晴らすべく、いつもより奮発して
ピンクの看板を選んだのではなかったか。しかもわざわざ部下を引き連れてきたのだ。
そこにきて自分の肉体の裏切りとは、あまりの仕打ちではないか。
みじめなので先に帰ろうと思ったが、車のキーをイツハラが持っていることに気が付いた。
少し寒い。晩夏のわびしさに失部が強く腕を組みなおした時、ビルから男が一人出てきた。
悪趣味な金髪を光らせた男はこちらに気付いていないのか、きょろきょろと左右を
見回している。頼んないよなあ、どう見ても、と失部は思う。

「イツハラ!」声をかけると、男はびくりと背筋を伸ばして振り向いた。
「あ、アニイ、もう終わっちょったんじゃの」そう言って、せかせかした動きで近づいてくる。
「遅いぞ、お前」
「いやあ、延長ギリギリじゃった。アニイはさすがじゃ、さすが早撃ちの、」
下手くそなヨイショを失部が拳でいなすと、イツハラは「ありがとうございます」と小さく言った。
実際には早撃ちどころかジャミングを起こしているのだから、腹立たしいことこの上ない。
浮かれているのか、妙につやつやとして若く見えるその顔を失部が睨みつけると、イツハラは
困った時にするように歯を見せて笑い返した。
21U.F.O飛んだ 2/10:2009/08/17(月) 16:48:35 ID:H3H2X2fN0
黙っていれば整った顔をしているのに、いかんせん挙動がおかしい。
くそ、こんなん『一人前の刑事』の顔ちゃうわ、と失部はますますおもしろくなかった。

「あのー、アニイ、わしなんか飲みもん買うてきます」
「別にいらん」
「はあ」
休憩するでも車に向かうでもない失部の態度に、イツハラは戸惑っている。失部が隣の車止めに
ちらりと目をやると、イツハラは素直にそこへ腰掛けた。

「…お前先のこととか考えてるんか」
「え」
「昇任試験どうするとか、地方回ってとか、あんまり考えてへんやろ」
「はい、まあ、わしゃ刑事がやれりゃあそれでええと思っとるけえ、のう」
「俺にひっついて捜査もええけど、いつまでも若造ちゃうねんからな」
「わ、わし、なんかやらかしたんじゃろか?」
「ああ?」失部が首をひねると、ますます戸惑った表情のイツハラが視界に入った。
肩をすくめるようにしているのは、失部に殴られはしないかと身構えているらしい。
「わしがなんか失敗したんで、ほいで、コンビ解消ちゅう…」
「アホか」と失部は平手で鼻っ柱を叩く。「ちゃうわ、そらどっちかゆうたら俺かてな、お前…」

そこまで言って、失部はイツハラの異変に気付いた。視線が失部を通り抜け、上空に向かっている。
咄嗟に振り向くと、ほんの一瞬、それは見えた。はっきりと見えた。赤い大きな光の玉が、
夜空を斜めに裂くようにして、勢いよく飛んだのだ。

「……!!………!!!…」
「み、み、み、見たかおい、今の!」
「はいっ、赤いのが、下からぱっ、しゅーっ上がってぽって、消えたよ!消えたよ!アニイ!」
「ユーホーや、ユーホーや、なんやあれぇ!こわ!」
「アニイ、本庁に連絡した方がええんじゃないですかいの?!」
「こわ、うあっ…帰ろか」
「アニイー…」
22U.F.O飛んだ 3/10:2009/08/17(月) 16:50:08 ID:H3H2X2fN0
驚愕で乱れた頭髪を直しながら失部が歩き出すと、渋々イツハラも付いてきた。
駐車場に着くまでも散々騒いでいたが、車に乗り込んでも興奮醒めやらぬ様子である。
「いやあ、あげなもん見たんは初めてじゃ。ユーフォー、ほんまにおるんじゃのう」
「昔見てたなー、謎の円盤ユーエフオー。懐かしいなあ」
「ああ、ピン/クレ/ディ、じゃけえの」
「ちゃうわい。…1980年、すでに人類は地球防衛組織シャドウを結成していた、ゆうて、知らんのか」
「知らん」イツハラはハンドルを切りながら即答する。
「なんで知らんねん。謎の円盤ユーエフオーて、知らんようなやつモグリやろが」
「そういう番組があったんは知っちょるけど、…わし、生まれとったかのー…」

途端、失部の気分はうなだれていたあの時にまで戻ってしまった。そういえばイツハラは一回りほども
年下なのだった。当たり前のことを思い出して、なんだかげんなりする。
時折話がかみ合わないのも、考えれば至極当然だ。なにやっとんねん、俺より遅く生まれやがって、
という理不尽な怒りがこみ上げてきた。

「アニイ?」黙りこくった失部を怪訝に思ってか、イツハラが問いかけた。
「やかましわい、どうせ俺はおっさんじゃ」
「わしもおっさんじゃよ」
「なにゆうとんねん、お前なんかどうがんばっても俺よりおっさんにならへんやないか。10年経っても
 20年経っても、俺の方がおっさんやないか」
「ほんまじゃ、ふしぎじゃのう、ハッハッハハハ、ありがとうございます!」

会話が途切れると、沈黙がいつもより重く感じられた。かき消すように失部は歌を歌う。
「♪気にしない、気にしないぃー、年の差なんかは、気にしなぁいぃー」
またもきょとんとした顔のイツハラを見て、失部は歌うのをやめた。

「……古っ」
23U.F.O飛んだ 4/10:2009/08/17(月) 16:51:14 ID:H3H2X2fN0
翌日の公安五課はあわただしかった。昨日のUFOをきっかけに、目をつけていた団体が動きだしたのだ。
俄然生き生きとし始めた課長は、失部とイツハラに科技大への訪問を命じて出かけていった。
「あのノッポの先生に、今回の件について助言をいただいてきなさい。失礼のないように!」
というのが、課長の言だった。

「いやーセンセ、ほんまにおるんですな、ユーホー。何を隠そう私もね、見たんですよ昨日。なあ」
「ええ、赤い光の球が、しゅわーて飛んで行ったんじゃ。ユーフォーじゃ、宇宙人じゃ」
「そもそもUFOは未確認の飛翔体のことですから、UFOが本当に『いる』という表現は間違いです。
 宇宙人と安易に結びつけるのもよくある誤解です」
研究室でくつろいだ姿の植え田は、季節外れの感のあるわらび餅をつつきながら言葉を続ける。
「それにね、そのUFOなら僕も見ましたよ。すでに調査を始めています」
「え、センセも見たんですか、ユーホー」
「ええ。昨日フィールドワークに出ていた時目撃しました。目が覚めてすぐ、助手の山田に命じて
 調査を開始して、今のところ流星の一種である火球説が有力です。燃える火の、球と書いて、火球」
「火の/玉KIS/Sじゃのう、せんせえ。陣/内さんの…ありがとございます」
「黙っとれ。植え田先生、お見事ですな。火球なんてものがあるとは、目からウロコですわ」
「まだ確認は取れてませんが、わかり次第気象台から連絡がきますから、お知らせしますよ」

自信に溢れたその様子に、失部とイツハラは顔を見合わせた。イツハラはうなずいて写真を取り出す。
「それは?」
「ウチが今睨んどる団体がありまして、ユーホーによる世界の終末を主張してるんです。そいつらに
 よると昨日の火の球はその前兆やと。これがその証拠や言うんです」
イツハラが手渡した写真には、火球にふち取られた怪しげな円盤が大写しになっている。
植え田はちらりと見てから、机の上に伏せて置いた。
24U.F.O飛んだ 5/10:2009/08/17(月) 16:52:38 ID:H3H2X2fN0
「馬鹿らしい。偽物でしょう」一瞬たじろいだ失部をかばうようにイツハラは答える。
「それがのうせんせえ、こりゃデジカメの写真じゃなぁで。合成ちゃうっちゅうことなんじゃよ」
「…UFOのトリック写真には、糸で模型を吊るす吊るし型、模型を投げる投擲型などが…」
「それなんですけどね先生」失部は啖呵を切るように、ぐっと肩を突き出した。「そのやり方やと、
 火の球とぴったり重なるように吊るしたり投げたりせなあかんでしょう。火の球が見えたのは数秒
 ですから、ただ撮るならともかく、不可能なんですよ」
「…そうですね」
「先生にはその写真の真偽を確かめていただきたいんです。できればその証拠も」
「UFOは、あまり、専門ではないんですよ。それに3限目からはずっと授業で、会議が」
「優秀な植え田先生の優秀な物理学の力、信頼してます」

帰りの車の中、失部は助手席でぐったり後ろにもたれかかっていた。科技大を出たことを見透かす
かのように、『団体の所有する建物に聞き込みをせよ』と連絡があったのだ。

「わけのわからん仕事ばっかりやなあ。イツハラ、どっかで時間つぶそう」
「まずいじゃろ、アニイ。あれがもしほんもんじゃったら、わしら怒られるけえの」
「本物やったら世界の終末や。ええやないか。ほんまに終わったらええのになあ」
完全にやる気を失ってしまった失部は心からそう思った。ただでさえ頭を悩ませているというのに、
男性能力にも翳りが見え、上司は虫が好かないし、馬鹿な部下は若くて未来がある。失部からすれば
一人前とは到底思えないのだが、いつまでも自分の下に置いてはおけないのだ。
「まあそう言わんで、ほら、団体のビルっちゅうんは昨日行ったとこの近くみたいじゃよ」
「なに期待しとんねんお前。今日は行かんぞ」
「あ、あれじゃあれじゃ」イツハラは見えてきた建物を顎で指した。
「えらいでかいな。そんな儲かんのか、ユーホー」
「怪しーニオイがプンプンじゃのー。うーん、わしの刑事魂が燃えちょる!」
「おお、ほんならちょっとガツンといったろか」
25U.F.O飛んだ 6/10:2009/08/17(月) 16:54:07 ID:H3H2X2fN0
一時間後、ふたりは建物内の駐車場をふらふらと歩いていた。絶句という言葉がぴったりである。
団体の人間たちは怪しかった。怪しすぎたのだった。おまけに、違法性はないときている。
雰囲気に中てられたらしいイツハラが、コンクリートの柱にすがってずるずるしゃがみ込んだ。
「なに座ってんねん。立て、立て」失部が軽く蹴飛ばすと、短く呻く。
「アニイ…わしちょっと気分が。気色悪かったのお。妙な匂いもしちょったし」
「俺かて気分悪いわい、見てみ、鳥肌ブツブツ。あいつらニチャニチャニチャニチャ笑いやがって。
 人間、不幸が極まると笑い出すんやなあ」
「ほんまに終わるような気ぃしてもうた。どうするんじゃ」
「どうするて、ゲタゲタ笑いながら呪文唱えてるだけやったら被害者おらんからなあ。俺らとしては、
 帰って報告して、終わりやろ。はよ立て」もう一度小突くと、イツハラはようやく立ち上がった。

ひと気のない駐車場は夕方という時刻にも関わらず静まり返っている。ふたりの車は、それなのに
なかなか見つからなかった。灯りがあちこち切れているせいか、場所を見失ったらしい。
「なんでや、こっちに停めたはずやけど」
「階は合っとるはずじゃよ、柱が似とって見分けがつかんのう」

その時、遠くで音がした。水を含んだ重いものが、床に叩きつけられるような音である。ふたりが
思わず立ちすくみ、耳をそばだてると、二回、三回、また音がした。
近づいてくる。
駐車場は死角が多く、音の正体がわからない。自分の体にぴたりと寄ってくるイツハラに、余計に
不安を煽られる。音が一層近づいた時、失部はイツハラの腕を掴んで近くの車の後ろに隠れた。
「アニイ、なんで隠れ…」ひそひそ声のイツハラをゆすぶって黙らせ、身をかがめる。
向こうから近づいてくる音が止んだ。すぐそこにいる気がして、飛び出していきたい衝動に駆られる。

ばしゃん!

大きな水音がした。真後ろから、した。振り向いてそれを見た時、頭が焼けるような、凍るような、
力が抜けていく感じがして、わからなくなった。
26U.F.O飛んだ 7/10:2009/08/17(月) 16:55:33 ID:H3H2X2fN0
けたたましいメロディで目が覚めた。辺りは真っ暗闇で、自分がどこにいるのやら、顔に当たる
ぬるいコンクリートの感触でようやくわかった。あの駐車場だ。失部は身を起こし携帯電話を探る。
携帯によれば今はほとんど真夜中で、現在植え田次郎から着信中である。

「失部です」まだ頭がくらくらする。壁にもたれると、床とは違って冷たかった。
『ああ、やっとつながりました。植え田です。トリックが解けたので報告を』
「解けた」と、言いながら、頭を直すのが精一杯だ。
『ええ、なんのことはない、お粗末なトリック写真でした。本物の火球の写真に、UFOの写真を
 貼り付けてもう一度撮影する。要は紙の上での合成です。元になったUFOの写真も見つかりました。
 これならあとから加工できる。60年代から流行っていた古典トリックだ』
次々まくしたてる植え田の言葉は、ほとんど失部の頭を素通りしていった。
「紙の上の、ほんなら、なんですか。とにかく終末は来んのですね」
『もちろんです。物理学の勝利です』
「どうも、ありがとうございました。先生」

得意の滑らかな口上も言えずに失部は電話を切った。落ち着けば、真っ暗闇と思えた駐車場も
非常灯の光でほのかに見渡すことができる。足元の塊にぎょっとしてから、イツハラだと気付いた。
顔を近づけて生きているのを確認する。自分と同じく気を失ったものらしい。

(目ぇ、ちょっと開いてる)
27U.F.O飛んだ 8/10:2009/08/17(月) 16:57:43 ID:H3H2X2fN0
覗いた白目をおもしろがって見ていたら、イツハラは大きく息をしてから目を開けた。
「イツハラー、大丈夫か」そう言った途端イツハラはひゃーともきゃーともつかぬ悲鳴をあげ、
失部の視界の片側が突然金色で埋まった。
跳ね起きたイツハラに、しがみつかれたのだと一瞬遅れて理解する。勢いで背中を壁に打った。
「おい、落ち着けて」
ぎゅうぎゅうと巻きついてくる腕がうっとうしい。黙ったままのイツハラに、失部はまた声をかけた。
「あのな、センセから電話あったぞ。写真はトリックですゆうて」
「どんなじゃ」
「ん?」
「どんな仕掛けじゃ」
「紙をな」と言って、説明を聞いていなかったことに気付く。「忘れたけど、なんかするんや」
「ほいじゃあ、終わったんとちゃうんじゃの。はあ、わしゃてっきり、真っ暗じゃけえ
 もうなんもかんも終わったんかと」そう言ってイツハラはやっと体を離した。
まだ混乱しているらしいな、と失部が軽く腕を叩いてやると、イツハラはまた軽い抱擁を
返してきた。失部はほっと安堵して、それで自分も随分混乱していたのだと思った。
強張りの取れないイツハラの体から発せられる何かのことを、失部は考えた。それは昔自分も
発していたもので、今の自分からはなくなりつつあるものだ。失部はイツハラに比べて、ほんの少し
くたびれている。この先何年経とうとも、失部の方がわずかに、より、くたびれ続けるのだ。
それが時間の差で、それが失部にはいまいましく、それに終わりはやって来ない。
28U.F.O飛んだ 9/10:2009/08/17(月) 17:00:02 ID:H3H2X2fN0
イツハラの体が重いので失部は無意識にまた壁にもたれ、もたれた後でそのわずかにして
大きな変化と、それが意味するところに思い当たり、あ、しまった、と思った。

(ああこれ、そう思われるか、いや男女の仲やあるまいし、ほんならどういう仲や、どういう)

急にわからなくなった。誰にすがりつかれているのか、それが自分にとって何なのかわからない。
のしかかってくる塊が、自分をどうしようとしているのか、わからない。
遠くに橙色の非常灯が見える。光は光源から離れるにつれ暗闇と溶け合って、滲んでいく。
その橙が完全に溶けきるところを、失部は見つけることができなかった。
しがみつかれたこと以上に、自分や自分の振る舞いがそれをさせたではないかということが恐ろしい。
服越しにイツハラの腕が動きだすのを感じて、失部は咄嗟に言い放った。
「寝惚けてんのか、こらっ」
はじかれたようにイツハラは飛びのいて、はずみで後頭部を車のテールランプにしたたかぶつけた。
「あだっ」
「帰るぞ」失部は壁に手をつきながら立ち上がる。
「アニイ、それ、ずれちょるよ」と伸ばされた櫛を反射的に払いのけようとして、やめた。
「お前のせいじゃ」

車に乗って建物を出ると、ごく普通の街並みが広がっている。
「ユーホーおらんかったのは、ちょっとつまらんな」
「ありゃ結局なんじゃったんじゃろ」アクセルを強めに踏みながらイツハラが呟いた。
「あれなあ。まあたちの悪いいたずらやろ」
「それでええんですかいのう」
「正直に報告して、捜査せえゆわれるの俺らやで、二度と行くかあんなとこ」
「ほんじゃあ、こげな時間に帰ってなんちゅうんじゃ、上には」
失部は携帯電話を取り出した。留守電が植え田から1件、五課から2件入っている。どれも呪詛の言葉
に違いなかった。かけ直すことはせずにまたポケットに突っ込む。
「一緒に怒られよか」
責任の所在をいかに四六でイツハラにかぶせるか、算段しているうちに失部は眠り込んだ。
29U.F.O飛んだ 10/10:2009/08/17(月) 17:01:24 ID:H3H2X2fN0
次の日の朝、大目玉を回避できなかった失部はひとり、露天駐車場を自分の車に向かって歩いていた。
今日は徹底的にサボり抜くことを誓い、ふらふらの足を踏ん張って歩く。

(あの時、ほんまやったらたったりしたかもしれん)と失部は思った。

(調子悪かったからたたんかったけど、よかったらたったかもしれん、ほんなら)

ほんなら、どうした。
どうもしないのだった。失部はたたなかったし、UFOは偽物だった。
建物の陰から何か飛び立つものがあって、失部はそれをはっと見上げた。UFOだった。
円盤状の小さなそれは、くるくる回転しながら空を上っていく。
ふと視線を下げると、向こうにイツハラが佇んでいるのが見えた。満面の笑みをこちらに向けている。

「ユーフォー、フォー、ユー!」

UFOは落下を始めると、すぐに二つに分解した。
二枚の灰皿は次々と失部の車に落ちて派手な音をたてる。
ひきつった笑顔のイツハラを睨みつけた失部は、こみあげてくるものを感じながら、
ぎゅっと拳を握った。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
30U.F.O飛んだ:2009/08/17(月) 17:11:22 ID:H3H2X2fN0
一箇所、「山/田」を伏せ忘れました。すみません。
31風と木の名無しさん:2009/08/17(月) 20:53:59 ID:ZS50PKkI0
お借りしまーす。
現在上映中の虹につき、バレ注意です。

夏戦争(要英訳)
謎多き自衛官×ひねた天才プログラマーですが、ねつ造過去エピソードなので、両方高校生。
映画の24年前のお話です。かする程度のエロ匂わせあり。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
 真面目に出来ないから校舎の窓を割るなんて、そんな歌が流行っていた頃。
 歌のように不器用で孤独で、いつも自由になりたがっていた同級生がいた。
 彼は天賦の才能を持て余したまま不器用な大人になり、最も愛していたはずの人を裏切って、自由を手に入れた。
 今も眼裏に、不意打ちのように蘇ることがある。
 目を凝らせば宇宙まで見えそうな蒼い遠い空、立ち入り禁止の屋上、塗装のはげたフェンス。
 それを切り取って夏風にはためく、白い、白いシャツの残像。


「理一、侘助どこか知らね?」
 休憩時間に入り、弓道場の外の水飲み場で顔を洗っていると、校舎の影から陣内邦彦がひょいと顔を出した。
「いや、見なかったけど」
 ちっと舌を鳴らす従兄弟に、タオルで顔を拭いながら目で問えば、素直な気性の兄貴分は、云いにくそうに
ため息をつく。その様子をしばらく観察した結果、身内以外には知られたくない内容なのだろうと判断し、理一は隣で顔を
洗っていた副部長に短く断ってから、道着のままで邦彦のほうに歩み寄った。
 腕を組んでなにやら言葉を選んでいたらしい邦彦は、壁に寄りかかり、眉をよせて低く云う。
「あいつ最近、風間のグループと付き合ってるだろ」
 県内屈指の進学校にそうそうはみ出し者が混じることはないが、名前の出た風間は、中学の頃の同級生だった。あれこれ
問題を起こした挙げ句、どうにか潜り込んだ高校を半年で中退したと聞いている。中学生の頃は、浮いていた同士でうまがあったのか、
侘助と時折一緒にいるのを見かけたが、その後も交流が続いていたのは知らなかった。最近留守がちだったのは、そのせいなのかもしれないが。
 首を傾げるだけの無口な従兄弟に、邦彦は苦い表情で続ける。
「なんだかんだでよくない噂ある連中だから、一応釘さしておかないとと思ってさ。理香に知られたら、またあいつうるせえし……」
 近所の女子高で生徒会に属している理一の姉は、ことのほか一族の素行には厳しい。そうでなくても、侘助の言動には従兄弟一同が
それぞれに不安を覚えることがあり、お目付役は自然と、侘助と同じ年の理一に回ってくることが多かった。
「ああ、じゃ、云っておく」
「助かるわ。あの野郎、最近は露骨に俺のこと避けてやがって、やりにくいったらねえよ」
 少々荒っぽいが、邦彦はまっすぐな性格で面倒見もよく、そこを慕う人間は多い。
 だからこそ、侘助とは相容れないのだろうと、理一は理解している。
 手を振って去っていく従兄弟を見送りながら、理一は校舎の上を見上げた。邦彦にはああ云ったが、姿をくらましている時の侘助の居場所は、
おおよそ見当がついている。
 あの、風の吹き渡る空に近い場所で、ひとりぼっちの天才は、昼寝でもしているのだろう。

 この界隈では、陣内の名は相当な力を持っている。なにしろ、もと領主様であり、かつてはこの地方一帯に絶大な影響力を誇った旧家だ。
今でこそ財産のほとんどを失ってはいるが、人脈の豊かさは相変わらずで、冠婚葬祭の際には屋敷への坂道が車で埋まり、
折々の挨拶にと足を運ぶ要人が絶えない。
 こうした家の場合、血縁で繋がれた子供達は二つの傾向に分かれる、らしい。一方は家の権力をたてに好き放題するタイプ、もう一方は
家の名前に泥を塗るまいと優秀さ清冽さを追及していくタイプ。
 当主である陣内栄の厳しく真摯な指導により、陣内の名字を持つ子供達のほとんどが、見事なまでに後者に収まった。
現在同じ高校に在学中の邦彦、克彦、理一しかり、近くの女子校に通う理香しかり。
 もっとも、どこにでも例外はいる。
 二年生、理一と同じ学年に属する侘助が、陣内一族で唯一の例外だった。
 彼はまず、血のつながりの上で陣内家では浮いていた。他の同世代の従兄弟たちがみな祖母の栄の血を引いているのに対して、侘助は唯一、
栄の夫、放蕩者だった前当主が外で作った妾の子だ。母親と死別した際に陣内家に引き取られており、年こそ同じだが、
理一にとって彼は叔父にあたる。
 引き取られてきた当初は、万作叔父のところの三兄弟がなにかとちょっかいをかけ、なんとか馴染もう馴染ませようと頑張っていたようだが、
暗い眼差しの少年は、栄以外には決して心を開こうとはしなかった。
 気付けば理一の側にいるようになったのは、懐かれたというよりは、理一が侘助に積極的に関わらないことに気付いたからだろう。
武道全般に長じて成績もいいわりに、どちらかといえば寡黙な質でマイペースな理一は、三兄弟から一目置かれつつも、
一歩引いた目立たない場所にいる。侘助に対しても、特別に構うことも避けることもしなかった。
 なにかと雑音に晒されることの多い侘助は、そんな理一の静寂を好んでか、気がつくと近くにいることが多かった。
 もっとも近くといっても、人慣れない野良猫が、絶対に触れられない位置を見はかって気だるく寝転ぶような、微妙な距離感だったが。


 入浴を終え、涼みがてら廊下を歩いていると、暗がりを見慣れた人影が横切った。
 肉付きの薄い長身に猫背、広いストライド。人影は、納戸の方へと廊下の角を折れる。
 少し迷ってから、理一は、一年に一度程度わきあがってくるおせっかいを、今日行使してみることにした。邦彦が気遣ってくれている
うちはいいが、親戚には口うるさい連中も多い。
 早足で追いかけると、納戸から明かりがこぼれていた。
「侘助」
「……ん」
 振り返らない背中。追ってきたのは気配で分かったのだろうが、理一に頓着することなく、侘助はなにやら納戸の本棚をあさっている。
「邦彦と話はしたか」
「風間がどうとかってやつか、今日つかまって説教された」
「ならいい」
 くくく、と低い笑いで肩を揺らす様子は、高校生にしては老成した、疲れきった大人のような仕草だった。
「ならいい、ってさ。おまえさ、わざわざ来て、それで終わりかよ」
「他に云ってほしいことでもあるか」
 それきり、侘助は口をつぐむ。立ち尽くす理一との間にあるのは透明な空気の壁。手を伸ばせば届くような、なにもかもを弾き返すような。
「……用、そんだけ?」
「なにか探してるのか」
 噛み合ない会話はいつものことで、侘助は本の背表紙を辿る指をとめないまま、「本棚探してるんだから、本探してるように見えねえ?」と嘯く。
 理一は黙って納戸に入り、部屋のもう一方の棚の前に立った。
「タイトルは」
「クラークのやつで、戦争ばっかしてた地球に、いきなり宇宙人が山ほど来る話」
「地球幼年期の終わり」
「それそれ」
 東京の大学に進んだ従姉妹の雪子は読書家で、今も納戸の一部には彼女の蔵書がある。うっすら埃のつもった棚に目をこらと、
以前見たときよりも本の並び順が大分違っていた。黙々と手伝いはじめた理一に、わずかな笑みのような気配を向け、侘助もまた背をかがめる。
 しばらくして、「ああ、あった」という声がかかり、理一は振り返った。侘助は、上に重ねられていた本に頓着せずに目的の文庫本をひっぱりだす。
バランスを崩して、横向きに入っていた新書が数冊、床に落ちた。
「お、懐かしいもんが」
 拾い上げようと手を伸ばした侘助は、そのうちの一冊に思わずといった感じで口元をほころばせた。
「流行ったよな、これ」
 節高い指先が取り上げたのは、『ノストラダムスの大予言』。小学校の頃に学校で大流行し、ついには持ち込み禁止になった、いわゆる禁断の書だ。
陣内家の子供達も例外ではなく、あまり騒ぎ立てるので、万里子がどこかに本を隠してしまったことがある。
「滅亡までは、あと14年、か」
 当時、どこか醒めた様子でブームを見ていた侘助がこれを信じていたとも思えず、理一は少し意外に思いながら、彼の手元を覗き込む。
 その拍子に、侘助の首筋、ゆるくひらいたシャツの襟に隠れる位置に、幾つかの赤いしみが見えた。
 それが怪我や、虫に刺された跡でないことくらい、朴念仁の理一でも見分けはつく。
 数瞬の緊張に気付いたのか、侘助が顔をあげた。同時に、理一の視線の方向と意味を悟ったのか、さりげなく襟をあわせる。
「……なんだよ」
 怒りや苛立ちとはまた質の違う、熱く焼けた燠が、急に吹き込んできた風でぱっと炎をあげるような、表現しがたい衝動が理一の胸底で閃く。
 どうにか押し伏せられたのは、長年の鍛錬の賜物だろうか。
「電気、消していけ」
 表情を消して声をかけ背を向ける。部屋を出るまぎわに、「ああ」と小さないらえが返ってきた。
 中学の同級生たちのグループが、ついに警察沙汰になる傷害事件を起こしたのは、期末テストが終わった翌週だった。当事者たちの名前は明らかに
されなかったが、地元での噂は簡単に回る。
 主犯格には、侘助と付き合いがあったらしい男の名前があったが、邦彦らの危惧をよそに、侘助の名前が出ることはなかった。

 理一は、屋上への階段を上る。
 生徒は立ち入り禁止だったため、階段付近には人影はない。本来なら閉ざされたままのドアを、どこからか手に入れた合鍵で開けた侘助が出入り
していることを、しばらく前から理一は知っていた。
 家でも学校でも、侘助はどこか所在なげだった。栄の分け隔てない愛情やいたわりを受けている時さえ、彼には誰も踏み込めない孤高さがあった。
誰にも気兼ねせずに気を抜ける場所が必要なのだろうと理解していたから、理一はいままでこの、彼の『王国』に足を踏み入れたことはなかった。

 最上部の踊り場に無造作に積まれた古い折りたたみ机を乗り越え、外開きのドアのノブに手をかける。予想外というか予想したとおりというか、
鍵はあいていた。
 押し開いたドアの外には、夏の青に塗りつぶされた空、雲。フェンスの手前に座り込む白い背中がやけに小さく見え、理一は少し息をのむ。
 物音に気付いているだろうに、ゆるい天然のウェーブが入った髪をなびかせた頭は動かなかった。
 ゆっくりと歩み寄り、数メートルの距離をおいた隣に、理一は腰を下ろした。手を伸ばせば届く、だがのばさない限りは触れ合わない、そんな範囲に。
「何をした」
 前置きなしに問えば僅かに肩先が動いたが、そのまま振り向かず、侘助は気のない声で返してきた。
「予防と、実験」
 理一はそれ以上訊かず、辛抱強く待つ。涼しい風が何度か二人を包む。グランドからは、高く澄んだ金属バットのノック音、ランニングのかけ声。
平和で穏やかで、ありきたりの風景。
「混乱、挑戦、……それから、崩壊」
 侘助は抱えていた膝を投げ出す。手を後ろについて空を仰ぎ、軽く目を閉じた。
「奴らの身内に、質の悪い不動産屋がいたんだ。神科のほうに飛び地が残ってたろ、あそこ欲しがってたらしい。面倒なことになりそうだったから、
まあ、いろいろ。もう関わっちゃこないだろ」
 上田には十年後、新幹線の開通が決まっている。数年前から土地関連ではあれこれごたごたし、陣内家にも多少の影響はあったらしいが、
理一はよく覚えていない。
 ただ侘助に関しては、前当主の直系ということもあり、何度か親戚内でその権利を取りざたされたことがあったのは知っていた。
「本家に迷惑かかるような下手はうってない」
「分かってる」
 即答すると、ようやく侘助が目線を投げてきた。意外そうにも、面白がってもいるようだ。
「信用してんの」
「おまえが、本家はともかく、ばあさんを裏切る訳がない」
「普段なんにも云わない奴に、そうまで見透かされるのは、不気味だな」
 くくく、と喉を震わせる。笑いのように聞こえるそれは、だが、本当は笑いではないような気がした。ざらついた違和感に苛まれながらも、
話の接ぎ穂を見つけられず、理一は口を噤む。
 ややあって、静寂をすり抜けるように、少し体温の低い指が理一のそれに触れてきた。
「……おまけに、一方的に俺の秘密ばっかり知られてるし」
 微かに繋がった指先と指先。そこから防壁が綻んで、侘助の体温が流れてくる。きっと、理一にこもったままの熱も、同じように彼に逆流している。
「なら、俺の秘密を教えておこう、引き換えに」
 手のひらをかえして手首を掴み、痩身を乱暴に引き寄せた。呆気なく落ちてきて腕の中に収まる体に、胸の奥にあった埋み火が、今度こそ激しく火花を散らし、
なにかを……心の中の壊れやすい綺麗なものを、あっというまに焼き尽くす。
「おまえが好きで」
「……叔父と甥だぜ?」
「関係ない。ずっと、やりたいと思ってた」
 愛の告白にしては甘さのかけらもなく、告げる表情もきっと固い。
 抵抗もせずに仰のいた侘助の喉元を、汗の雫が痕跡を描きながら落ちる。ひっそりと、シャツの奥へ……誘うように。
 覆いかぶさって抱きすくめる。閉じ込められた中でなお、侘助の目は、理一の肩越しに空を見上げていた。遠く遠く、その先にある何かを
見透かしたいかのように。
「なあ、理一」
 乱暴に開けたシャツの前からボタンが飛んだ時だけは軽く眉をよせたが、すぐに、少し皮肉気ないつもの笑みを口元に浮かべ。
「早く14年たって……あの予言、当たるといいのにな」
 14年後、栄の元から権利書を持ち出して山を売り、その金を手にして侘助は消えた。
 終わりそうもない世界や、かすりもしなかった破滅の予言にしびれを切らして、自分の手で、自分のいた世界を壊したのかも知れないと、理一は思う。
 不器用で孤独な歌を作ったシンガーも、何年も前に死んだ。
 あれからまた年月を重ね、また夏が巡ってくる。
 焼きつけられたフィルムのように、記憶の層から決して消えない、褪せない光景と同じ季節が。


 □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

 大変申し訳ありません……ナンバリング見込み違いで、大失敗しました……
39風と木の名無しさん:2009/08/18(火) 07:50:38 ID:+R5UPuNGO
乙です!
40風と木の名無しさん:2009/08/18(火) 08:54:07 ID:7LmuNACQ0
面白かった!
41風と木の名無しさん:2009/08/18(火) 09:14:44 ID:je6HcrsSO
GJ!
この二人の今も読んでみたい。
42風と木の名無しさん:2009/08/18(火) 19:56:31 ID:nwk8m7kCO
>>19
しみじみした萌えをありがとう
43春まで待ってて(0/3):2009/08/19(水) 02:07:32 ID:QuWLXa2eO

携帯から失礼します

・悪魔くん、最終回その後の話
・オリキャラ登場
・ユルグしか出てこない
拙い話ですが、いざ!

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
44春まで待ってて(1/3):2009/08/19(水) 02:09:41 ID:QuWLXa2eO
狐には珍しい銀色のきれいな毛並。
起きてるのか寝ているのかわからない目。
何の植物でできているかわからない蓑をまとっている彼は、自分のことをユルグと名乗った。

旅の途中、体力がつきて地面に不時着しかけたところを助けてくれたのがユルグさんだった。

 けがが治るまで一緒にいればいい。ここはとても厳しいところだから。

そう言って僕をそばに置いてくれた。

そばにいた間、ユノレグさんは昔の話をしてくれた。
ユノレグさんは昔、悪魔くんと一緒に12使徒の1人として、黒悪魔から世界を守ったらしい。
そういえば、旅の途中、急に空が暗くなったり、嵐が起こったり、花が枯れたりしてた時期があった。それのことだろうか。

ユノレグさんの話は聞いててとても楽しかった。
百目はドジもいっぱいするけどがんばり屋さんだとか
鳥乙女のナスカは皆をまとめるのが上手くて、きれいな子だとか
メフィスト2世はとても強くて頼りになるけど、ラーメンには目がないとか
幽子やこうもり猫は怖がりなところもあるけども、大事なところではがんばっていたとか
妖虎は大酒飲み、象人は大食らいで大変だったとか
他にも、ヨナルデ…さんは物知りだとか、ピクシーの薬はよく効くとか
サシペレレは何にでも変身できるとか、家獣は大きくて優しいとか

そして、悪魔くんは誰よりも優しくて、勇気がある子だと言っていた。

皆のことを話す時のユルグさんの目は、とても楽しそうな嬉しそうな、それなのに少し寂しそうな目をしていた。

皆のことが好きなんだと聞いてるだけで伝わってきた。
45春まで待ってて(2/3):2009/08/19(水) 02:13:16 ID:QuWLXa2eO
僕自身の話もした。
僕は世界中の春を飛び渡っているのだと言うと、ユルグさんはうらやましそうにしてた。
 でも、どうして世界中を飛び渡っているんだい?
ユルグさんはそう聞いてきた。僕は困った。そういえば、どうして世界中を飛び回っているんだろう?
 ユルグさんこそ、どうして皆と一緒にいないんですか?
ただはぐらかしたいだけで、そんな質問をした。

 約束したからさ。

ユルグさんは僕をまっすぐ見ながら言った。

 人間と悪魔が仲よく暮らせるユートピアを作るって皆で約束したからさ。
 その日までお別れしようって。

どこか遠くを見つめてユルグさんが呟く。
 寂しくないんですか?
思わず問いかける。
 寂しくないって言ったら嘘だな。
困ったような顔で笑ってユルグさんは言った。

 でも、また会えるって信じているんだ。

今度は少し真剣な目をして、それから空を見上げてこう言った。

 信じれば夢は叶うって、そう言ってたんだから。

ああ、きっと悪魔くんが言ったんだろうな。僕は何となくそう思った。
46春まで待ってて(3/3):2009/08/19(水) 02:16:28 ID:QuWLXa2eO
やがて、僕の怪我も治り、そろそろお別れすることにした。
 気をつけて。
ユルグさんが声をかけてくれる。
言うなら今だ。僕は心に決めていたことを口にする。
 僕、ユルグさんの仲間達に会いに行ってきます。
ユルグさんの、いつも半分しか開いていない目が大きく見開かれた。

 ユルグさんの仲間達がどんな風に過ごしているのか見てきます。
 そして、またここへ帰ってきてユルグさんにそのことを伝えます。

 だから、もう寂しそうにしないで。

ユルグさんの目から、ぼろぼろ涙が溢れてくる。

 皆にユルグさんのこと教えてもらって、皆がユルグさんのこと、どう言っていたか全部伝えます。
 一年後、それよりもっとかかるかもしれません。でも、春になるまで待っててください。絶対に戻ってきますから。

ユルグさんはぐいと涙を拭って笑いながら言った。
 世界は広いんだぞ?皆あちこちにいるんだ。わかりっこない。
 そんなことないですよ!だって、ユルグさんの話を聞いてたから…それに

 ユルグさんの仲間ならきっと優しい人達です。

ユルグさんは、はにかんだような、柔らかい笑みを浮かべた。きれいな笑顔。
 気をつけて!
ユルグさんが片手をあげて別れの挨拶をする。
 春まで、春まで待っててください!
再度、約束を口にする。
恩返しの旅。
初めての目的のある旅だ。
こういうのも悪くないかなあ。そう思った。
47春まで待ってて:2009/08/19(水) 02:18:52 ID:QuWLXa2eO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

最終回のユルグが寂しそうに見えたんだ。
それだけなんだ。

スペースありがとうございました!
48春まで待ってて:2009/08/19(水) 02:19:36 ID:QuWLXa2eO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

最終回のユルグが寂しそうに見えたんだ。それだけなんだ。
オリキャラは鳥なのか、鳥系の悪魔なのか自分でもわからない。

スペースありがとうございました!
49一角獣鍵盤×四弦:2009/08/19(水) 20:45:05 ID:g/lN0Y6jO
もしもしですが萌えが急にきたので投下させて頂きます。
一角獣、ナマにつきご注意をば。
CPは鍵盤×四弦ですが、読み返したらリバでもいけるかも…
ついでに飼い犬×四弦です。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
50鍵盤×四弦 1/4:2009/08/19(水) 20:46:06 ID:g/lN0Y6jO
すごく天気が良かったのに、どうしてだかわからないけどやる気が起きなかった。
堤防に腰かけて、じりじり陽に焼けながらきらきら光る海を見ていた。
次第に人も減り、陽も落ちて、だんだん静かな砂浜に戻る。
サンダルばきの足の指をにぎにぎと動かして、砂を弄んでいた。
なんとなしに考えるのは、彼のことだ。
黒くてつやつやした髪の毛とか、遠くから見たときのたたずまい、線の細さ。
話しかければ、にっこりと嬉しそうに笑顔を見せる彼のこと。

コンクリートの上の砂を踏みつけて、誰かが近づく音がする。
顔をあげれば、今まで考えていた彼そのものが見えた。
足下には小さな白い毛玉も連れて。
「なんども電話したのに」
少し離れた場所から笑って彼がそう言った。
言われてから、携帯電話は家に置いてきたことを思い出す。
51鍵盤×四弦 2/4:2009/08/19(水) 20:46:51 ID:g/lN0Y6jO
「ごめん。家に忘れてきた」
潮風が彼の髪をそよがせた。
夕陽に目を細めながら耳までかきあげるしぐさに、目が離せなくなる。
小さな犬がなにか言いたげにこちらを見ていた。
それから、あたりまえのように隣に腰をかけてくる。
「ココ、海だよ〜」なんつって、そのまま犬を膝に乗せながら。

でも、それからふたりはしばらく黙って海を眺めた。

嬉しいのは、大好きな時間とこの空間に、これまた大好きな存在が隣にあること。
これ以上の幸せはないなぁ、なんて軽く考えながら、黙って夕焼けの沈む水平線を眺めていた。
そう、ただ黙って夕焼けを。
沈黙に飽いて、でもその沈黙を壊す勇気もないまま、タイミングをつかめない彼はこちらにちらちら視線をくれる。
最初は気づかないふりをして、そのあとは少し笑って、手を握った。
彼の膝で丸まった犬のしっぽの毛が手にあたるのがくすぐったい。
52鍵盤×四弦 3/4:2009/08/19(水) 20:47:32 ID:g/lN0Y6jO
「サーフィンは?」
「今日はしてない」
「どうして?」
「気分がのらなかったんです」

彼はふーん、と視線を足元の砂地に戻した。猫背。
橙色から、紫色に変わってゆく海の上の空。二人のあいだを風がなぜてゆく。
夏もそろそろ終わりですよと告げるような雲が、美しい色に染まっている。
犬のしっぽで隠れた、密やかに握ったままの手はまだ離れない。とても離しがたい。
まだ砂浜にはまばらながらに人がいる。キスがしたいけど、だけどできない。
我慢していると不意に彼がこちらを向いた。
じいっと見つめてくる。恥ずかしくなる。彼のとくい技。
「…なに」
恥ずかしさをごまかしたような言い方をすると、彼はきょとんとした顔をした。
「なんとなく」
53鍵盤×四弦 4/4:2009/08/19(水) 20:48:35 ID:g/lN0Y6jO
「目立つね、その髪」
白みたいな銀みたいな髪の毛が残った夕焼けに反射して光っていた。
そうありふれてはいない色。改めて言われると照れてしまう。
彼がそんな色の髪にふれる。
まるでその膝に抱いている犬に対してするように。
彼のそういう気安さが、何だかとても好きだった。
そして、彼がこの髪に触れたがる以上に、自分が彼の髪に触れ、梳いてやりたいことに、まるで気がついていないところも。
ずいぶん暗くなり、ふさふさした小さい犬のしっぽがなくても繋いだ手がわからなくなってきた頃。
人影も減り、肌寒ささえ感じるこのくらいの時間。
意を決して実行して良かった。
完全に暗くなる前に、彼の照れて赤くなった顔を見ることができた。

ただ、キスをしたその瞬間に、さっきまで膝で寝ていた犬がとびおきて、彼に甘えて顔をぺろぺろなめ始める。
恋敵が犬、しかもチワワとは、40すぎてちょっと情けなくなってきた。
抱いてたら散歩にならないっつーの。

すっかり闇に溶けた海に、夕陽のかわりにのぼった白い月が、それでもしっかりふたりを照らした。
54おしまい:2009/08/19(水) 20:50:26 ID:g/lN0Y6jO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

本ヌレの犬四の流れよありがとう!
55風と木の名無しさん:2009/08/19(水) 20:56:54 ID:c/8JqNaLO
>>48
まさかここで悪魔くんモノが読めるなんて!
GJでした!
最終回思い出したよ〜。もう今日からは見れないんだよねぇ…
56風と木の名無しさん:2009/08/20(木) 11:36:37 ID:1FkO6icy0
>48
GJ!ユルグ大好きなので嬉しかったよー
凄くほのぼの出来ました!
57風と木の名無しさん:2009/08/20(木) 17:40:08 ID:iCnGupx20
>>54
まさかの犬四で禿げた。
GJ!
58演技の向こうの恋のはなし0/5:2009/08/20(木) 21:09:00 ID:LuSJcN9fO
・ナマモノ注意、田ロシ告正×ロ欠越満
・テロ朝水/9の掲示ドラマ「新・警/視庁/捜/査一/課Q係」の仲良しコンビの中の人です。
・マイナーだけどがんばります、ではどうぞー

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
59演技の向こうの恋のはなし1/5:2009/08/20(木) 21:12:05 ID:LuSJcN9fO
こころのなかが、へんだ。

撮影の合間、束の間の休息。喫煙所にいるのは僕ひとりで、立ちのぼる煙草の煙をぼんやり見ながら、あのひとのことを考えていた。
演技としてなら、だいたいのことはやった。
思えば何度も抱き合ったし(ハグのほうね、勿論)、キスまがいのこともしたし、「好きです」なんて大告白もしちゃってるし。このあいだ貴方を膝の上に座らせたときなんか、僕の心臓がどれだけばくばくいってたかなんて、知らないんでしょう?付記越さん。

「田愚痴、」

こちらの心を見透かしたみたいなタイミングで、付記越さんがやってきた。
「ねえ撮影終わったら飲み行かない?」
「ああ、いいですね」
自然と口の端が上がる。だって嬉しいのだ。
以前2人でインタビューを受けたとき、彼がぼそっと発した一言を僕はしっかり聞いていた。
『普段人を誘うことってあんまりないんだけど、田愚痴だけは誘ってもいいかな、って』
ねえ、それってどういう意味ですか。期待してもいいってことですか。
少なくとも、彼のなかで僕が特別な存在になっているという事実が嬉しかった。
「…何にやにやしてんだよ」
「いや、別に」
「気持ち悪ぃ」
えへへ、と笑う僕。感情はそのまま顔に出る。
60演技の向こうの恋のはなし2/5:2009/08/20(木) 21:14:41 ID:LuSJcN9fO
お前はほんとにおかしいな、と呟いて、付記越さんは僕の隣に腰掛け煙草を取り出した。
煙の筋が2本になる。もともと口数の多いほうでない彼はそれ以上何も言わず、僕の隣に佇んでいる。
心配になるくらい細いからだ。消えちゃいそうなくらい白い肌。喉仏の曲線。煙草をくわえる薄いくちびる。

うわあ付記越さんって、えろい。

図らずもそんな感想が頭をよぎって、僕はこっそり焦る。
付記越さんのことは好きだ。でもそれはほとんど尊敬とか憧れの意味で、のはずだった。同業者として。にんげんとして。そのはずなのに、いつからだろうか?邪な思考が止まらなくなっている。
ごくりと唾を呑み込んだ。

あの顔が、たとえばセックスのときにはどんなふうに歪むんだろう?…いやいやいや!何考えてんだ馬鹿!

こころのなかがへんだ。
この感覚ははじめてじゃないが久しぶりだ。何だっけ?胸の鼓動が速まる、そして世界が変わるような――

「…僕は恋をしているのかもしれない」
あるひとつの答えがふっと降りてきて、思わず声にした瞬間、心のもやもやがすとんと消えた。そうか。これは恋だったのか。
「はあ?」
眉をひそめた彼がこちらを向く。
「何言ってんのお前、」
61演技の向こうの恋のはなし3/5:2009/08/20(木) 21:16:52 ID:LuSJcN9fO
もはや体が勝手に動いていた。僕はだいぶ短くなっていた煙草を灰皿に押し付け、付記越さんに抱きついた。
「ちょ、田愚痴…っ!?」
「付記越さん、僕、やばいんです」
もう止まらなかった。
「気がつくと貴方のことばっかり考えてるんです。目が合うとどきどきするんです。貴方が笑うと僕も嬉しくて、なんか、一緒にいられる時間が、すごく幸せなんです」
これって完全に恋ですよね。

…言い切った。言い切ってしまった。恐ろしいことに、これは演技なんかじゃなくて、確かな僕の気持ちとして。
「すみません、迷惑なのは分かってます、でも」
「ひとりでべらべら喋んなよ」
「!」
付記越さんの声で我に返った。やっと耳に届くくらいの小さな声。
「…馬鹿」
「え?」

「そんなふうに言われたら、…もう戻れないだろ」

…え?

「認めるしかないじゃん。…俺も、そうだったんだ、って」
語尾はほとんど声になっていなかったが、辛うじて聞き取ったその言葉をゆっくり反芻する。
まさか。
62演技の向こうの恋のはなし4/5:2009/08/20(木) 21:19:21 ID:LuSJcN9fO
「それって、それって…両想いだった…?」
「恥ずかしいから言うなっ」
いつになく余裕のない付記越さんは僕の胸に顔をうずめる。そんな彼がたまらなくいとおしくなって、溢れそうな嬉しさと一緒にぎゅっと抱きしめた。

「何やってんの?」
「「!!!」」

突然、あらぬ方向から声が聞こえて、反射的に僕らはばっと離れた。
「わ、綿瀬さんっ!!?」
「何やってんの?こんなところで」
再度同じ質問。えええええ!よりによって綿瀬さんに見られるなんて。
「あ、あの、…練習してたんです!蒼柳と谷沢のハグのシーン!!」
瞬間的に脳みそをフル回転させて、渾身の嘘を生み出した。かなり苦しいが、これも日頃アドリブ満載の撮影現場で揉まれているおかげだろうか。
そしてもうひとりのアドリブメーカーも流石、間髪入れずにのってくる。
「そ、そうなんです!どうも自然にいかなくて…」
63演技の向こうの恋のはなし5/5:2009/08/20(木) 21:20:53 ID:LuSJcN9fO
綿瀬さんはちょっと考えて、それから、にこりと笑って言った。
「良かった、僕はてっきり君らのイケナイプライベートに踏み込んじゃったのかと思った。…付記越君の顔、真っ赤なんだもん」
「!!!」
「じきに撮影始まるよ。じゃあね」
ひらひら手を振って、綿瀬さんは去っていった。
はっと隣を見ると、付記越さんは両手で顔を覆っている。ああ、このひと、ほんっとかわいい。

「付記越さん」
「何」
今度こそ周りに誰もいないことを確認して。

「好きですよ」
「…物好きめ」
「お互い様です」

こころのなかがへんだ。やたらと浮かれていて、やたらと爽やかだ。年甲斐もなく、恋ってすげえ、と思ったら、無意識に笑みがこぼれていた。
64風と木の名無しさん:2009/08/20(木) 21:23:59 ID:LuSJcN9fO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

初投下でした。えらい緊張しました…!
不備がございましたらすみません。
読んでくださった方、どうもありがとうございました!
65風と木の名無しさん:2009/08/20(木) 21:33:21 ID:kcsB9OXB0
>>58うわぁぁぁぁぁl!!!!キ、キター!!!
ぐっじょぐっじょ!!つーか生じゃねーかwよいw
かわいいよなあの二人…ハァハァ…
今度役のも書いてくれw
66流星群:2009/08/20(木) 22:51:26 ID:dUkYm+xc0
・夏戦争の理x侘x理で高校時代捏造
・彼女表現あるので注意
・理香と直美がでしゃばるのも注意

>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
67流星群1/4:2009/08/20(木) 22:53:32 ID:dUkYm+xc0
学生時代までの侘助との思い出は、いつもわんわんと五月蝿い蝉の鳴き声と一緒だった気がする。
あれが夏休み直前だったのか、夏休みの部活なのか。
つるんでいた仲間と木陰に座り込んでいた理一は、茹だるような暑さに頭を垂れた。
日陰でも吹いてくる風が生暖かく、汗の雫が鼻から伝い落ちる。
「陣内……あのお前の従兄弟?な。」
「……どれ…」
「佗助だよ」
ああ…と理一は呻いたが、あれは叔父だとか説明するのは諦めた。
「……佗助が何?」
「ホモってマジなの?」
蝉がわんわんと鳴く。
「……何だそれ」
信憑性のよく分からない噂に、理一が眉を寄せる。
高校2年生。
人とはどこかテンポのズレた理一は、とっくに流れに置いていかれていたが、気付けば回りは皆恋愛と下世話な好奇心で浮足だっていた。
佗助にも何人か彼女がいたのは見たことがあったから、その流れに特段逆らっているわけではないのだろう。
出が複雑なせいなのか、他人と深く付き合うのが苦手な佗助が、けして人嫌いでないのは理一も知っている。
理一にだけは彼女が出来たり別れる度にぼそりと伝えて来たし、彼女の誕生日だとかクリスマスだとかの度にショーウィンドウの前でうんうん唸っている姿は意外でおかしかった。
「佗助、彼女いるよ」
「そりゃ、あれだよ。カムフラージュだよ。
理一、一緒に寝たりするんだろ。気をつけろよ」
「バカ」
理一は呆れ顔で友人を見、首に巻いたタオルで汗を拭う。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
68流星群2/4:2009/08/20(木) 22:54:29 ID:dUkYm+xc0
その日の夜だったのか、或いは日を置いていたのか覚えていない。
受験が終わるまで距離を置こうという凄まじくありがちな理由で、理香が彼氏に振られた次の日だ。
丁度なんとかいう流星群が降るという夜。当然彼氏との約束が白紙になった理香は凄まじく荒れていて、
直美と理一、それに佗助を無理矢理引っ張って高台に来ていた。
−−−直美が新潟から来ていたということは、あれはやはり夏休みだったのだろうか。
直美と理香の恨み言と罵詈雑言は昔からマシンガントークな上に恐ろしく饒舌で、
特に理香の元彼氏など顔も知らなければフルネームすら知っているかわからない直美が、あそこまで相手をこき下ろす様は感動すら覚える程だ。
散々に落ち込んでいた理香が立ち直っているのだから、いいことなのかもしれないけれど女は怖い。
ヒートアップする二人を追うのは諦め、理一と佗助は傾斜の途中の、草むらに腰を下ろす。
「振られる度にあれだから怖い」
「……………」
「佗助は?彼女は?」
「昨日別れた…というか、フラれた」
「…………」
またかとお前もかという言葉はどうにか飲み込んだ。
「……オマエが、ホモって噂知ってる?」
その代わりに口をついた言葉は、飲み込んだ言葉と同じくらい無神経で、理一は自分で眉を寄せる。
「…………」
しばらく、沈黙が続き、理一は唾を呑む。
「噂になったのそこだけか?」
誰がそんなこと、という予想した答えとは違った。噂の主は想像がつくのか。なにかそれがすごく嫌だった。
「他になにかあるのか」
「…………うーん、俺ホモかもしれない」
「……はあ?」
いつもよく分からないこの男が、今日はますます意味が分からない。
「男が好きなのか?」
「それはない。」
「女に興味ない?」
「すごくある」
特殊な文化に造詣がない理一には、それ以上佗助に問う言葉が見つけられない。佗助は理一から目を反らし、夜空を見上げた。
「好きな奴がいるんだ」
69流星群3/4:2009/08/20(木) 22:55:53 ID:dUkYm+xc0
「………男?」
佗助は頷きはしなかったけれど、たぶんそうなのだろう。
佗助がどうであれ、疎むようなことにはならないと思っていたのに、いざそれを突き付けられると肺に重たいものが詰まる。
「好きっていうのか、元から好きだったから上手く言えないけど」
「誰?」
ちらり、と佗助が視線を向けてくる。理一の質問に答える気はないらしい。
「見てると、エロいことがしたくなる」
もう夜更けだと言うのに、風はやけに生暖かい。
「……エッチ」
「理一、きもちわるいな」
冗談めかした理一に、佗助が眉を寄せた。
「あ、流れ星!」
翔太が声をあげた方を見る。空を見上げた翔太は、高く天上を指差した。
その指に釣られて夜空を見上げると、理一の目にもキラリと降る流れ星が見えた。
「佗助、お前はそいつに告白とかするの?」
「うーん……とりあえず…」
はっきりしない答えを唸るようにつぶやきながら、佗助は夜空を眺め続けている。
倣ってもう一度見上げた理一の目の前に、また星が降っていく。
「キスしたいキスしたいキスしたい!」
あまりに唐突な願いごとに、理一は思わず吹き出す。
「全然間に合ってな…」
70流星群4/4:2009/08/20(木) 22:57:04 ID:dUkYm+xc0
佗助に振り返ろうとした理一の視界がぐるりと回る。
草むらとはいえ、地面に強かに打ち付けた頭の傷みは洒落にならなかったし、全体重をかけられた両肩はぎしぎしと悲鳴を上げる。
それでも、そんなものよりずっと弱い刺激に全神経が集中した。ふに、と柔らかく唇に触れただけの佗助の唇。
たぶん理一の見たことのない誰かに似たくせっ毛が頬を掠め、目を閉じることもできないまま佗助の睫毛だけを見ている。
「………………」
「………………」
例えばもっと大人のキスの仕方だってお互いに知っていたし、急激に血管を拡張して流れる血液は、心臓以外のところにも集まっていた。
「エロいなことがしたい」そうふざけた佗助や、この「とりあえず」のキスのことを考えながら、地面に投げ出された肘から先をどうにか持ち上げる。
その手が佗助の肩に触れると、佗助が驚いてビクリとした。
脳の酸素が足りない状態で何をしようとしたのかは、後になっても覚えていない。
でもたぶん、おそらくは---
「理一、佗助!何やってんの、上がってきなさいよ!」
全ての思考が突然霧が晴れたように全て飛び、ハッと体を引いた佗助が勢い付きすぎたのか、
それともどんな力エネルギーが作用したのか、理一と佗助はそのまま坂道を転がり落ちた。
「理香ー!理一がケンカしてる!」
ようやくそれが止まった頃に、直美がそう叫んだのと、理香の「コラー!」という怒声が聞こえた。
勢い馬乗りになった理一が佗助を見下ろし、なんと言っていいのかもわからず渋面を作る。
ふざけて投げキッスの真似をした佗助の頬を思いきり叩いてやると、いつの間にか駆け寄ってきた理香が理一の頭を殴る。


もう夜だというのに、蝉はしつこく鳴いていた。
71流星群:2009/08/20(木) 22:57:52 ID:dUkYm+xc0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

書き込みもたついてご迷惑おかけしました!
72風と木の名無しさん:2009/08/21(金) 01:18:15 ID:DXHcITz+0
>>58
この二人のSSを読める日が来るなんてマジ幸せだーっ!!
58姐さんありがとうです!
73風と木の名無しさん:2009/08/21(金) 12:09:02 ID:wC/4L6VVO
かなり亀レスだが
前スレ215

萌 え ま し た !!! 
ヒュンケルモテすぎです

コミックス全巻買ってこようかな…
名作だよな
74風と木の名無しさん:2009/08/21(金) 12:33:20 ID:8sK7s6aYO
>>66姐さんdクスです!
このあと二人がどうなったのか妄想が止まりませんw
75風と木の名無しさん:2009/08/21(金) 20:05:24 ID:lD3M1bgH0
>>58
GJ!
先日見てきたばっかりで、侘助に萌えて仕方なかった処にとどめを刺された。
侘助たまらん!
76風と木の名無しさん:2009/08/21(金) 20:06:22 ID:lD3M1bgH0
ごめん、安価ミス >>67宛でした。
77風と木の名無しさん:2009/08/21(金) 21:24:17 ID:NZiApIKo0
>>58
Q係に萌えてるのは自分だけじゃなかった…!!
超GJ!この二人は中の人でも外の人でも名カップル過ぎて吹くw
78風と木の名無しさん:2009/08/21(金) 23:50:15 ID:Ibv2ThQq0
>>48
GJ!!こういうの大好きだ、書いてくれてありがとう。
読ませてくれてありがとう。
悪魔くんを好きでよかった。
79ゴーストオブメガトロン:2009/08/22(土) 00:15:11 ID:6N9f1ujA0
実写版トランスフォーマー、ほのぼの(?)ギャグ
ゴーストオブイエスタデイのディセップメンバーinネメシス号

※注意
金属生命体同士です
性格はアメコミ、GoYを参考にしてますが、一部キャラが壊れています。
スタスクがひたすらヘタレです

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
80ゴーストオブメガトロン1/3:2009/08/22(土) 00:16:04 ID:6N9f1ujA0
漆黒の輸送船、ネメシス号。
そこにはディセプティコンの代表者達―つまりは侵略戦争という殺戮行為に少なくとも興奮を覚える者達が乗っている。
彼らがオールスパークと、それに続いたメガトロンを追い始めてから数千年が過ぎていた。
敵との最後の交戦からも数百年。戦闘に特化した彼らが退屈に耐え、1つの船に乗っているのは奇跡とも言えよう。
そんな彼らをメガトロンの代役として纏めるスタースクリームに、気苦労は耐えなかった。
司令席からは、倦怠感に支配されたクルーが見回せる。
隅でうたた寝をするブラックアウトと、足下に寄り添うスコルポノック。
中央で、その巨体を気にする事無く寝そべるボーンクラッシャー。
落ち着き無く兵器の改造をしているフレンジー。
そして、メインモニターを1人真剣に睨んでいる者…
「…バリケード、何かあったのか」
「この変化の無いモニターを見続けると破壊欲が収まる気がしてな」
「オールスパークの反応は」
「ない」
「メガトロンの信号は」
「ない」
「オートボットの痕跡は」
「ない」
「…お前の俺への忠節心は」
「同じ事を何度も言わせるな」
その返答に自虐的な笑みを浮かべると、スタースクリームは指令席に深く座り直した。
リーダーシップは、力と知略により得られるものだと彼は考えている。
しかしこの何の変化も無い状況で、それを発揮できる機会が果たして何度あるのだろうか。
己の力を発揮出来る舞台が必要だった。なぜならばこの阿呆共は未だに捉えられているからだ―メガトロンの亡霊に。
81ゴーストオブメガトロン2/3:2009/08/22(土) 00:17:22 ID:6N9f1ujA0
「うおおおおお!」
部屋の隅から突如上がった雄叫びに、船内の誰もが注目をした。
「今!メガトロン様が…っ!俺を呼んでいた!」
ブラックアウトが興奮にアイセンサーを光らせながら叫んでいる。
普段の落ち着いた彼とはかけ離れた姿だったが、”メガトロン病”の対処には、スタースクリームも慣れたものだった。
「ああ、それは良かったな。出来ればその発信源の正確な座標を教えて欲しいものだ」
「…それは分からない。だが、今はっきりと」
「寝起きの堅物め、冗談は寝てからにしろ」
「お前が信じるとは思ってない。だがスコルポノック、お前なら聴こえただろう?」
「………」
「あぁお前だけだ、判ってくれるのは…」
ガシャンと強く抱きしめられながらスコルポノックは思う。さっきのは貴方の夢だったんじゃないかと。
しかし指摘はしない。あまり喋る性格ではないし、主人の夢を壊すのも悪いと思って。
82ゴーストオブメガトロン3/4:2009/08/22(土) 00:18:11 ID:6N9f1ujA0
 スタースクリームはそんなブラックアウトに対して苛立ちを抑えなかった。
「貴様は口を開けばメガトロンメガトロンと!良いか、今の首領はこの俺だ。
 いつまでも過去の亡霊に捕われやがって…まだ判らないのかこのヒューズ飛びめ!」
「捕われているのはどちらだ、俺がメガトロン様と言う度に過剰反応するお前に言われたくないな。
 なぜそんなにメガトロン様を怖がる?また折檻されるのが恐ろしくてたまらないのか?」
「なんだって!」
「図星か?」
荒々しく武器を構える音によって、船内の倦怠感は一気に吹き飛ばされた。
フレンジーとボーンクラッシャーも「やるのか?」と息を荒くして集まって来る。
「おぉ!久しぶりだな!俺ジャッジやるぜ。スパークが壊れた方が負けな」
「負けた方を俺に千切らせろ。どちらも良い大きさでやりがいがありそうだな」
興奮を抑えられない様子で、一触即発の船内を見守る。なんせ最後の戦いから数百年も経っているのだ。
「では俺は勝った方を殺らせて貰うとするか」
「バリケード…俺の回路は何故そうなるかが理解できない」
「どうせ勝者も手負いだろう。治すよりは殺るほうが早いし心地良い」
「おいおい二人ともブレインは破壊するなよ!データ吸い取る俺の楽しみも取っといてくれ」
好き勝手なことを叫ぶギャラリーを尻目に、臨戦態勢の二人の緊張感は最高に高まっていた。
83ゴーストオブメガトロン4/4:2009/08/22(土) 00:19:13 ID:6N9f1ujA0
「さて…船外に出ろ」
「まてスタースクリーム、ここはワームホール地帯だ。自殺行為だぞ」
「では船内でやると言うのか?制御の効かない船に乗るハメになったら、今よりさらに退屈な旅となるだろうな」
「武器システムを外してやれば良いだろう。肉弾戦なら船内のダメージも抑えられる」
「何!?」
「ここまで盛上げておいて、殺りあわないわけないな?勇敢な首領様よ」
思いもよらぬ事態にスタースクリームは焦った。
最高のスピードとテクニックを持つ彼は宇宙空間や空で無類の強さを誇り、あのオプティマスさえ舌を巻くほどだ。
反面、近距離戦にはめっぽう弱い。肉弾戦ならなおさらだ。
宇宙を旅する彼にとってその弱点は目立たないものだったが、絶対に知られてはならないことであった。

「さて、やるか」
硬直していたスタースクリームの機体は、ブラックアウトの声でビクっと現実に戻される。
「…こんな」
「は?」
「…こんなことをするために俺達は旅をしている訳じゃない」
「おい、何を言っている」
「来るべき戦いにそなえて、力は蓄えて置くべきだ。俺達は愚かでは無いのだからな」
そう吐き捨てると彼は足早にメインルームから立ち去った。
急激に熱気の冷めた室内には呆然としたブラックアウト達が残される。
しばらくの静寂のあと、そこは罵詈雑言で埋め尽くされた。
「臆病者!」「この無能!」「スクラップ置き場の鉄屑が!」
けたたましい金属音が溢れる中、スコルポノックは誰にも聴こえない声で呟いた。
あぁ、メガトロン様はまだかな…と。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ごめんなさい、スタスクとBOのコンビ大好きなんです。
84風と木の名無しさん:2009/08/22(土) 03:15:57 ID:hJ6FbYJE0
>>80-83
GJ!へタスク和んだw
(肉弾戦以外は)強いのに全く尊敬されないスタスク好きだw
85年甲斐のないひとたち0/5:2009/08/22(土) 21:39:27 ID:YwG61i3DO
数レスお借りします。夏戦争で理(41)×侘(41)です。
おかしいところ多数あると思いますが、よろしくお願いします。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

86年甲斐のないひとたち1/5:2009/08/22(土) 21:40:20 ID:YwG61i3DO
乗ってけ。
理一から差し出されたヘルメットを見て、侘助はなんとも言えない顔をした。
「行くんだろう、警察。送っていく」
「あ、ああ……」
人工衛星が落ちたせいで陣内家の面々はその後片付けで皆が慌ただしく動いている。
功労者の健二は鼻血を吹いて寝込んでいるし、第一もともと栄の通夜と葬式の準備で忙しかったのだ。
侘助はそんな陣内家を見て、黙って警察に行こうと思っていた。
多分家の者に言えばせめて通夜が終わるまで、と言われるのは想像がついた。
特に夏希あたりには、泣いてすがられるだろう。
最終的に罪に問われるかはわからないが(侘助はラブマシーンを作っただけで、oz内に放った訳ではないからだ)、
栄ならばきっと侘助に、自分のことよりも警察なりなんなり出るところに出て事情を説明することを優先すべきだと言うだろう。
それをわかっているからこそ、侘助は警察に行く。
誰にも言わずに行くつもりだったのは、照れ臭いのと構われるのが面倒だからだ。
それを、要領よく片付けから抜け出した理一に見付けられたのは侘助の中では誤算だった。

87年甲斐のないひとたち2/5:2009/08/22(土) 21:41:35 ID:YwG61i3DO
侘助は渡されたヘルメットを被り、サイドカーに乗り込む。
田舎道でバイクを運転する理一。
サイドカーから斜め上に見上げるその姿は随分と久しぶりだった。
(老けたな)
渡米してから連絡を絶っていたせいかよりそれを感じる。
陣内家の人々は昔から相変わらずのかしましさだが、確実に皆年を取り、変化している。
自分だけが愛されていないと思い込み、胸を張って栄に会いたいただそれだけの
マザコンじみた屈折した思いを長い間変わらずに抱えていた。
それは侘助から色んなものを遠ざけた。

「お前さ」
エンジン音にかき消されないように大きめの声で理一は考え込んでいた侘助に声をかける。
「なんだよ」
負けじと侘助も声を張る。
「うちで仕事しない?」
「はあ?」
「あの国ほどペイは良くないけど市ヶ谷ならばあさんも空の上から見守り安いだろ」
戻ってこい、と理一は言う。
流れる景色が警察に行く道から幾分か外れているが、それを指摘するよりも
理一のいきなりの誘いの真意を探る方が侘助にとっては急務だった。
88年甲斐のないひとたち3/5:2009/08/22(土) 21:43:57 ID:YwG61i3DO
「何言ってんだよ」
「うちだってサイバーテロ対策のプロが必要なんだ」
「他を当たれよ」
俺じゃなくてもいいだろう、と侘助が言うと理一は「お前がいいんだよ」と返した。
「俺はお前がいい」
「バカ言え」
「バカはお前だ。何年も心配させやがって」
心配?
その言葉を聞いて侘助は呆気に取られる。
夏希以外であの家の人間がこんなにストレートに侘助にその言葉を使う人間はあまりいなかったからだ。
「第一お前寂しがりやだろ、市ヶ谷なら俺もいるからいいだろ」
「寂しがりやだあ?!寝言は寝て言えよ」
「寂しがりやだろ。あんなのにラブマシーンとか言う名前つけて」
「別に意図してあんな名前着けたんじゃねえよ」
「どっちでもいいけど」
理一はブレーキを掛けてバイクを路肩に止めた。
ゴーグル越しだが、まっすぐに侘助の顔を見る。
「俺はお前が側にいてくれるのがいい」
「……理一」
懐から理一は携帯を出して侘助の眼前に画面を見せる。
「俺の番号。お前なら覚えられるよな?」
「で?」
「うちに来るにしろ来ないにしろ電話しろよ」
「何で」
89年甲斐のないひとたち4/5:2009/08/22(土) 21:45:36 ID:YwG61i3DO
「もういきなり消えて欲しくない。それだけじゃダメか」
侘助は答えない。



代わりに、学生時代のことを唐突に思い出した。
あの時も暑い夏だった。東京の大学から帰省して、今と同じ様に理一のバイクに乗っていた。
他愛のない話をして、見晴らしのいい場所で夕暮れ時にどちらともなくキスをした。
友達とは言えない。素直に叔父と甥とも言えない。ましてや兄弟でもない。
微妙な場所にいた理一に対して侘助は表しがたい感情を抱えていた。
なんとなくでしたキスの味は、自分のものとは違う銘柄の煙草の味がした。
それだけだった。
あの時に誤魔化して明言しなかった感情が長い間遠回りして今、蘇っている。
抱えたままだった熱だ。
理一も、そうなのだろうか。
90年甲斐のないひとたち5/5:2009/08/22(土) 21:49:50 ID:YwG61i3DO
喉元まで言葉が出かかったが侘助はそれを飲み込んだ。
それを素直に口にするには侘助は年を取りすぎた。
元来、ひねくれた性格をしているのも作用している。
ただ、「考えとく」とだけ呟いた。

「そうか」
理一もそれだけ返して、またバイクにエンジンをかけ直した。


理一の職場に行くかどうかはわからない。
しかし、そのうちに電話でもしてやろう。
侘助は思った。
そうしなければ、ぶり返したこの熱に名前を付けられないだろう。
新たな悩みに内心舌打ちするが、それでも侘助は幾分かすっきりとした表情だった。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
年甲斐もなく素直に侘助を誘う理一と再燃した恋心にモニョる侘助を書きたかっただけでした。
お目汚しすみませんでした。
91風と木の名無しさん:2009/08/22(土) 21:52:15 ID:j9oNm4M8O
>>86
GJ!
リアタイで投下されていくのを読んでしまってテンションがおかしいww
92風と木の名無しさん:2009/08/22(土) 22:44:28 ID:zOge3aPKO
>>86
GJ!
自分の嗜好のど真ん中過ぎる
変なテンションになってしまって寝られない
93風と木の名無しさん:2009/08/23(日) 00:24:32 ID:f9NdlBwp0
幼なじみ萌えが襲ってきたのでお借りします。
オリジナルです

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
94アメリカ帰り 1/3:2009/08/23(日) 00:25:56 ID:f9NdlBwp0
去年からカリフォルニアに留学していた幼なじみのケンが久しぶりに帰ってきた。
こんなにあいつと離れていたのは初めてのことで、何となく会うのが恥ずかしくて迎えにいかなかった。
母は暇だったから向こうの親御さん達と成田へ行ったらしい。バイトから帰った僕を、キッチンに引っ張り込んで話しだした。
「ケンちゃんさあ、すんごい変わってたよ。ちょっと大人っぽくなってた気がする」
僕の中では一年前の姿のケンしか浮かばない。薄い反応が気に入らなかったのか、母はなおも引き止めて話す。
「あんたが来てないのを残念がってたんだから。昔は何かっていうとお互い泊りにいったりしてたのに、薄情者。あ、でも今日は止めときなね。明日から向こうのご両親、旅行に行くらしいから。
今日くらいは水入らずで過ごさせてやりなよ。ああ、私もお父さんにどっか連れてってもらいたいなあ。ヨウちゃん、さりげなくあんたから言ってくれない?」
話の内容がズレてきたので、部屋に逃げることにする。
それにしても電話しとくべきか、迷う。
最初の内は頻繁にメールをしていた。でもしばらくすると話が合わなくなってきた。
向こうは今日パーティがあっただの、ルームシェアしてる友人と何しただの、納豆が高すぎるだのと、海外ドラマかよ。
おまけに、だんだん英文字が増えてきて、自分の知っているケンがぼやけてきた。最後にメールしたのは一ヶ月前。それ以来返事も書いていない。
一回電話がきたことがあった。でも声は時間差があるうえに、金かかるから、とすぐに切られた。あの時何話したんだっけ?
今あいつはすぐそばにいるのに、まだ遠くにいるような気がする。
少し人見知りで、子供の頃よく泣いてたあいつが留学するなんてね。変わった、という母の言葉がよけいに僕を不安にさせる。
でも、明日には会わないと。2週間しかいないんだから。
95アメリカ帰り 2/3:2009/08/23(日) 00:28:38 ID:f9NdlBwp0
次の日、結局、何も連絡せずにいきなり家に行くことにした。
呼び鈴を押すと、しばらくしてケン本人が出てきた。そういえば、今日から親御さん旅行か。
「ヨウスケ!」
ぐいっと身体を引き寄せられ思いきり抱きしめられた。あげく、左右に振られた。
おかげで第一声に何を言うか考えてきたのに、色々ぶっ飛んだ。
全く動かない僕に、ケンは慌てて身体を離す。
「悪い。ついいつもの癖でさ。ここ日本だもんな」
引っかかる言い方だ。今のはアメリカンでフレンドリーなハグってやつですか。
ケンは確かに変わってた。少し日に焼けていて、健康的な感じだ。
前は短めの髪をハネさせていたのに、今は前髪まで目が隠れるほど伸びている。
「おばさん達は、旅行だって?」
「そうそう。久々に一人息子が帰ってきたのにこれだよ。結婚記念日だから、譲れないんだとさ」
先行っててと言われ、二階の部屋に行った。ここは一年前と変わっていない、ってこれは当たり前か。
七五三の時に一緒に撮った写真がまだ飾ってあった。
ケンが今にも泣きそうな顔をしている。あいつこの後おもらししたんだった。
その横にはやっぱり成人式の時に一緒に取った写真。ケンの目が腫れている。唐突に感動して泣いてたんだっけ。
本当にずっと一緒だったよな。
しばらくすると、ケンがコーラとグラスを持って入ってきた。
「なんにも言ってこないから、こっちからお前んち行こうとしてたところだったんだ。サプライズって感じで」
コーラをつぐ腕を何気に見ると、二の腕の辺りに痣のようなものができている。
「おまえそれ、もしかして」
刺青が彫ってあった。それもハートがTバックを履いている、良くも悪くもアメリカっぽいデザイン。
こんなことする奴じゃなかったのに。あきれたよ、と言うとがっかりとした表情になった。
「ルームメイトが入れるっていうからさ、留学の記念にと思って一緒に彫ってもらったんだ。
向こうじゃ皆タトゥー入れてるし、別に変じゃないだろ」
「向こうの事情なんて知るかよ。刺青持ちはプールとか銭湯とか入れなくなる」
絆創膏で隠すから平気だ、とケンは呑気に答えた。
96アメリカ帰り 3/3:2009/08/23(日) 00:29:22 ID:f9NdlBwp0
「向こうでさ、でかいプール持ってる奴がいて、よく泳ぎにいってたから、こっち戻ってきてまで泳ぎたいとは思わないな。何、ヨウスケは一緒にプールとか行きたかった?」
そうじゃなくて、と言いかけたが止めた。
多分ふてくされた顔をしてたんだろう。場の空気を変えようとケンはお土産、といってTシャツを投げた。
オバマTシャツ……。
「うわ、リアクションなしかよ。ウケると思ったんだけど。つかさあ、久々なのにさっきから、ギスギスしてるのな。会えるの楽しみにしてたのに。メールもよこさないし。何なんだよ」
今度はケンがふてくされた。うなだれて黙り込んでしまった。
そういえば、あの一回だけきた電話を思い出した。
お前の声が聞きたかったんだってあいつは言って、すぐに切られたんだ。
「ちょっと、忙しかったんだよ。そっちはそっちで楽しそうにやってるみたいだったし」
「それ、こっちのセリフ。俺たった一人であっちに行ったんだぜ。なのにお前が俺のこと忘れて楽しくやってんのかと思うと」
なんだ、それ。すねてたのはケンも僕も一緒だったってことか。
心のどこかで何となくほっとした自分がいた。
結局自分が苛ついていたのは、あいつが僕の知らない奴らと一緒に楽しそうに過ごしてることに、嫉妬してたのかもしれない。
僕は子供の頃すぐ泣き出すケンにしたように、頭を撫でた。すると向こうも昔と同じように、頭を持たせかけてきた。
「あっち行ってから、ずっとヨウスケのことばっか考えてた。でもお前はそばにいないし、こんなふうに撫でてくれない。そのおかげで少しは成長したと思うんだ。でもやっぱ」
ケンの腕が僕の首に周り、さっきと同じように引き寄せられた。
「ダメだな、俺、お前……」
何か言ったみたいだけれど、僕の耳はケンの首と腕に押しつけられて聞こえなかった。
どうでもいい。何か会う前にあったいろんな不安が消えていくような気がした。
こいつ全然変わってない。僕の知ってるケンだ。

でも、
「その刺青何とかなんないのか? ハートにTバックって趣味悪すぎ」
「ヨウスケさあ、何が悲しくてTバック履かせなきゃいけないんだよ。イニシャルだよ! ハートにYのイニシャル」
97風と木の名無しさん:2009/08/23(日) 00:30:19 ID:f9NdlBwp0
すっきりしました。 ありがとうございます。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
98風と木の名無しさん:2009/08/23(日) 00:54:29 ID:2YKITQir0
>>97
幼馴染み萌え(*´д`) ハァハァ最高です
ドストライクでした
99風と木の名無しさん:2009/08/23(日) 23:59:01 ID:Fp665sKq0
すごい今更だけれど前スレの五里抹躇煮萌えた…
将太さんは希代の誘い受け…ハァハァ 続き待ってます
100風と木の名無しさん:2009/08/24(月) 00:10:42 ID:63Ja6HTR0
前スレ501様
ありがとうございました!
しゃちほこ球団よ永遠なれ
新作もお待ちしてます
101里予Q 保守×当主:2009/08/24(月) 04:13:34 ID:Ze53v7AFO

ナマ注意。
里予Q、若保守×年上当主。

妄想補完箇所多数。
裏付けのない喫煙描写もありますので、重ねてご注意下さい。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

102里予Q 保守×当主(1/3):2009/08/24(月) 04:13:56 ID:Ze53v7AFO

男は、困惑していた。

「えー、と…おぉい…」
声は、確かに出ているはずだ。少なくとも、当主の耳には届いている。
そして声をかけている相手もまた、確かに目の前にいる…はずだ。

―だというのに。

先ほどまで興奮分かち合った相棒の保守である後輩は、完全に当主の呼び掛けを無視したままでロッカー内の荷物整理を続けている。

「えーと…あの、さ…」
普段のほほんとしているようで気弱な当主は、一度引いたはずの汗を再び額に滲ませながら精一杯の気遣いを投げ掛ける。
「明日、オフだし。良かったらこの後ちょっとー…」

「6球」

そんな当主の気持ちを知ってか知らずか、後輩は作業を続けたままわずかに一言だけを返す。
「え」
「6球連続、何回言っても、上ずった王求。さすが劇場オーナーさんですよね」

怒っている、というよりもすでに呆れている様子の後輩。変に丁寧な口調が、余計に恐ろしい。
103里予Q 保守×当主(2/3):2009/08/24(月) 04:14:34 ID:Ze53v7AFO
「な…何度もごめんな…」
「あんなアホみたいな指示出させないで下さい。サ/インですよ、普通」
恐らく、続けざまに高めの王求を投げた(もちろんカウン.トは全て『ボ.ール』となった)当主に対する自身の指示について言っているのだろう。
思い通りにいかぬ王求筋に余程苛立っていたのか、後輩はサ/インも出さずにただ勢い良く両手を下に振り下げた。
要するに『とにかく低く投げろ!!』だ。

「ああ、あれは本当に悪ー…」
二度目の謝罪を遮る形で、ガシャンと乱暴にロッカーが閉められた。
当主は、マ.ウンド上で追い詰められた時よりもさらに困惑した様子で目を泳がせる。

「アンタ、フツーに出来る癖に。俺は知ってんのに」
「………う……」
「だから言ってんのに、アンタは無茶苦茶わかりやすくビビる」
「ぎ、吟…」
「アンタは…出来るのに」
「えーと、ほ…誉めてる?」
小首を傾げながらの当主の問いに、後輩が厳しい顔をしてぴしゃりと返す。
「教育してます。尻叩くだけじゃ足りないすか」
「う…足りてます…」
言式合終了後の後輩のそっけなさを思い返した当主は、カクリと肩を落として俯く。
104里予Q 保守×当主(3/3):2009/08/24(月) 04:17:47 ID:Ze53v7AFO
「…あと」

後輩は、わざと勿体付けるように言葉を止めると当主へ一瞬だけ視線を送る。
そしてまだ何かあったかと構えるような顔つきの当主を確認してから、さらりと続けた。

「この後は、空いてます」
「あっ…そ、そっか!!」
勢い良く顔をあげ、鼻の穴を広げ破顔する当主。
8もある年の差も、キャリアの差も消し飛んでしまうような…かなりよく言えば割と愛らしい…そんな笑顔。
後輩は、少しずつ解されていく自分の苛立ちを感じながら小さくため息をついた。
叶うなら、マウ.ンド上でも常にこんな表情でいてほしいものだけど。いや、やっぱりそれは気色悪いかもしれないけど。

「てか俺、飲みだしたら朝まで引きますけどいいっすか」
「おう。うちに電話してから、すぐ車回してくる」
「あーじゃあ俺、コレ蒸かして待ってますんで」
後輩が、手の甲を当主に向けたピースサインを口の前で前後させた。
わかった!とバタバタ走り去る当主は、この力関係に何の疑問も抱いていない。
実に爽やかなものである。

「あーあ、バカじゃねぇの…」
そう零しながら立ち上がる後輩の顔も、口調も、数分前とはうって変わって穏やかに変わっていて。

つまるところ、2人の関係はすこぶる良好なのだ。



―しかしその夜、思い返すのも憚られるような『教育的指導』が投手に与えられた件に関しては、触れないでおく事にする。
105里予Q 保守×当主:2009/08/24(月) 04:18:32 ID:Ze53v7AFO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ-!!


誠にお粗末さまです。
過日の色々ひっくり返した力関係にすっかり毛髪が抜け切りました。
尻を叩いたり無視したり、実にけしからん、もっとやれ。
106風と木の名無しさん:2009/08/24(月) 23:21:40 ID:5rYrs/JnO
>>54
好きです!ありがとう!
107風と木の名無しさん:2009/08/25(火) 00:46:30 ID:5hrjb0n30
>>105
GJ!GJ!!
思いがけなく萌えました
ノーマークな二人だったけど注目してみますw
108風と木の名無しさん:2009/08/25(火) 01:08:36 ID:7AEUN+cWO
105姐さんありがとう!
強気吟チャソ×ヘタレヌマー様とは新境地…!
この当主を応援している自分としてはかなり萌えました…!
「教育的指導」オソロシス…ガクブル
109オリジ ゲイニソ 後輩×先輩:2009/08/26(水) 04:03:28 ID:S0xWBez00
お借りします。
キャラのモデルは生で一応ありますが、設定改編激しいのであえてオリジナルで。
ゲイニソでコソビ外カプ、後輩×先輩。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
110オリジ ゲイニソ 後輩×先輩 1/5:2009/08/26(水) 04:04:39 ID:S0xWBez00
「俺、あなたのツッコミが好きです、ていうかむしろ、あなたのことが好きです」

ある日のライブが終わって、相方が先に帰ってしまった後で。
それなりに可愛がっていた後輩が楽屋まで挨拶に来て、いきなりそんな告白をしてくれた。
「俺とつきおうてくれませんか?」
それに対して俺は何を思ったのか(九分九厘何も考えずに)「ん」と頷いてしまった。

こうして俺はアイツと恋人同士の間柄になった…らしい。
え?何で「らしい」なんかって?

恋人同士(?)になって変わったこととと言えば、アイツから頻繁にメールが届くようになったとか、あと2人だけでメシに行く回数が前よりちょっと増えたとか、そんぐらいで。
女の子と付き合う時のように、ちゅーやエッチをするでもなく。
(っていや、自分で言うといて何やけど、俺ら男同士やし、そんなんちょっと想像でけんねやけど)
とにかく、傍から見れば俺たちの関係は先輩と後輩のまま、ほとんど変わりはなく。
なにより当事者である俺自身に、全くと言っていいほどつきあってるという実感がなかったからや。
そんな調子だから、俺は正直、これはもしかしたらアイツの一世一代のボケなんやないかと思っていた。
下手したら俺が盛大にツッコミ入れるまでこのままボケ続けていくつもりとちゃうか?なんて疑い始めてさえいた。
111オリジ ゲイニソ 後輩×先輩 2/5:2009/08/26(水) 04:05:34 ID:S0xWBez00

そうこうしているうちに、アイツはコソビゲイニソとして、とあるお笑い番組をきっかけに鮮烈な全国区デビューを果たした。
たちまち人気は急騰し仕事のオファーが殺到、テレビでアイツの姿を見ない日はなくなり。
東京での仕事が激増した結果、アイツは東京に部屋を借りて、活動のベースごと向こうへ移すことになった。
一方俺はといえば相も変わらず、地元以外では泣かず飛ばずのローカル芸人のままで。
栄光の階段を一気に駆け上がっていったアイツに対して、芸歴に頼っていた先輩風を吹かすことさえ躊躇われるようになってしまった。
これで終わった、ていうかそもそも始まっとったかもようわからんけど。
とにかくあいつの栄転で俺らの恋人関係(?)も自然消滅してしまうもんやと思っていた。
ところが――。

「遠距離恋愛になっちゃいますね」
引越し前日の夜、アイツからかかってきた電話。
あまりにあっけらかんと言われたもんで、俺は自分の現在の立ち位置というものを把握できず、しばらく言葉が出てこなかった。
「でも安心して下さい。別にこっちでの仕事がまるっきりなくなったわけじゃないし。多分週1のペースで戻ってこれますって」
え、と……果たしてここはお礼言うところなんやろか?俺の頭の中を無数のクエスチョンマークが奇妙な音をたてて飛び交う。
「おまえなぁ…せっかく東京進出果たしたんやから、今がイチバン大事な時やんか」
もう俺のことなんか気にせーへんで前だけ向いて進んでいけや――俺はあくまで先輩ゲイニソとして至極当然なアドバイスを与えた、少なくとも自分ではそのつもりだった。
なのに。
112オリジ ゲイニソ 後輩×先輩 3/5:2009/08/26(水) 04:06:21 ID:S0xWBez00
「それ、別れるってことですか?」
へ?
「もう俺のこと、嫌いになってもうたんですか?」
「え、いや…」
あかん、コイツが何を言っているのか、ほんまに理解でけんのやけど。
とにかくもう、どこまでがボケでどこまでが本気なんかもわからへんようになっとるわ。
「あんなぁ」
こんなこと言うていいもんかと、一瞬躊躇はした。
けど、多分聞かなずっと今のまま、始まりも終わりもせん状態のままなんやろうと思ったから。
だからこそ、俺は意を決して聞いてみた。
「別れるも嫌いも何も、だいたい俺ら、ほんまにつきおうとったん?」
「何でそんなこと聞くんです?」
・・・間髪いれずに、しかも何を今更みたいな口調で、質問に質問で返されてもうた。おまえ、それは反則やろー。
「好きです、つきおうて下さいて俺が言うた時、ちゃんとOKしてくれたやないですか」
「いや、そりゃあOKっちゅーか、なんや俺もようわからんくて、ほんで…」
こうなるとまさか勢いだったとも、ましてや告白そのものがネタふりかと思っていたとも言えずに、俺はなんとなく続く言葉を濁してしまう。
「まさか女の子が友達に言う『トイレついてきてー』みたいなニュアンスで、つきおうて下さいて言うたとでも思てたんですか?」
そ、それは言いえて妙やけど、あん時はそこまで頭回ってへんかってん、とも言えず。
「………」
「………」
そのまま黙りこくった俺に業を煮やしたのか、やがてアイツはふうっと大きな溜め息をついた。
113オリジ ゲイニソ 後輩×先輩 4/5:2009/08/26(水) 04:07:23 ID:S0xWBez00

「わかりましたよ」
あ、ようやくわかってくれたんか。って何を?自分が勝手な思い込みしとったってことか?
「俺が何も手出してこんかったから、つきあってるって自覚がなかったんですね」
……は?何でそないな結論になんねん。
「いや、俺もね、悩んでたんですよ。こんなにあっさりOKもらっても、やっぱ男同士だし、最初は抵抗あるやろうなって」
ん?んんんんん?待てや、待て待て!
コイツ、今までのわけわからん話と違うて、明らかに(俺にとって)ヤバい類のこと言うてるんとちゃうか?
「俺も無理やりとか嫌やったし、あなたの方から求めてくれるまではとガマンしてたんですよねー」
俺の方から求めるって何やねん!って、もしかしなくても俺が女役!?
とそこまで考えて、このまま話を進めたらえらいことになるんやないかとハタと気づき、俺は慌ててアイツを止めにかかる。
「いやいやいや、待てって!おまえそれどういう意…」

ピンポーン
格安ハイツの2DKの部屋に、電池を入れ替えたばかりのインターホン(カメラ無し)の音が鳴り響く。
「あ、誰か来たわ。ちょお待っとってくれや」
俺はケータイを保留状態にして、慌てて玄関に向かった。
タイミングがいいんだか悪いんだかようわからんけど、ヤバめな話の流れを遮ってくれた来客の登場に、俺はほっと胸を撫で下ろした。
にしてもこんな時間に誰やろ?隣のおっちゃんか?いや、あのおっちゃんはいつもインターホン押さへんでドアドンドンやし。
かといって後輩でもないよな。今日は誰とも約束してへんし、あいつらには来るときは事前連絡するよう言うてるはずやから。
「はいはーい、今開けますー」
ガチャ
114オリジ ゲイニソ 後輩×先輩 5/5:2009/08/26(水) 04:09:50 ID:S0xWBez00
「!」
ドアを開けた俺は固まった。ちゅーか、固まらざるをえんかった。
目の前に立ってたのは、今まさにケータイを保留にしているアイツやったんや…。

アイツは俺の顔を見るやにかっと笑って、耳に当てていたケータイのボタンをピッと押した。
通話が切れたそれを、そそくさとジーンズのポケットにしまいこむ。
「おっおまえ、来るなら事前に連絡しろって言うてたやろ!」
「あー、駅ついて、コンビニで買い物済ませてからかけたんでー。今から行きますけどいいですかって聞こうと一応思たんですよ?」
いや、それ事前連絡ちゃう、限りなく事後報告に近いから。いいですかも何も、最初から来る気満々やん。
「いやー、うっかり布団まで梱包してもうて、一晩起きとかなあかんくなってしまったんです。ほんならせっかくやし、今夜は2人でゆっくり飲みたいな〜とか思って。酒とかつまみとか、いろいろ買うてきたんですけどー」
左手に大きなコンビニ袋を持ったアイツは、固まったままの俺を押すようにして部屋の中に入ってきた。
奴の後ろでぼろい扉がバタンという音と共に閉まる。
「まぁ初めての夜に、酒の力に頼るっちゅーのもカッコ悪いですよね。わかりました。俺今夜は酒抜きで、頑張りますんで」
「なっ、何を頑張るんや、何を!ちゅーか初めての夜て何やねん!!」
ケータイでの会話から終始調子を狂わされっぱなしだった俺の、本日一番のツッコミが決まる。
するとアイツは満足そうに笑って、俺をぎゅっと抱きしめた。
「ちょ…!」

「あー、やっぱ俺、あなたのツッコミが大好きです。ていうかそれ以上に、あなたのことが大好きです」

――次の日、アイツが東京に飛んでから、正式に遠距離恋愛が始まった。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ラストは「へー、センパイって意外と流されやすいんですね」ってことでw
115風と木の名無しさん:2009/08/26(水) 20:27:31 ID:AxoRly7z0
乙!すごくすいすい読めた
先輩もかわいいが後輩のノリもいいな
女の子がトイレついてきて〜あたりで思わず吹いたw
1161/2:2009/08/26(水) 23:23:04 ID:B5jwT2H60
バトルもの的な妄想。間接的に女関係あり・若干グロかも
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 間延びした拍手が鳴った。
「生還オメデトウ。新しい医者を探さなくて済む。めでたいついでに支払いもチャラにしてくれるとありがたいんだが」
「そうはいかん。せっかくの貸しだ。使える間は使わせてもらう」
 答えた男は戸をくぐり、荷物を卓に――青年の向かいに置いた。椅子を引いてその隣に据え、自らも腰掛ける。
「検診予定より早く来るとは殊勝な心掛けだ。…俺の鍋と俺の茶碗に入ったこの茶は俺の物と考えていいんだろうな」
「屑茶だが、それでも良ければ好きに飲んでくれ。茶葉は俺のだよ。――暇だったんで、押しかけに来た。
待つだろうと思って持ってきた茶だが、さすがにちょっとばかり待ちくたびれた。どこをほっつき歩いてたんだ、おまえ」
「お前が昔いたような業界だよ」
 男はごく当然のように言った。目を丸くした青年は、わずかに身を乗り出す。
「…あんた、男を買う趣味なんてあったの?」
「誰が男だと言った」
「……女?」
 元ゲイタウン住人である彼は男の顔を伺う。男は口角を上げた。
「お前には縁のない世界かもな」
「あー、お医者崩れの先生様は好みの人体ならなんでもいいんでしたっけ。残念だ、俺で良けりゃあ
ぼったくって普段の治療費取り返してやったのに」
 やれやれと彼は肘をつく。言われた男は鼻と口から同時に笑声を吐いた。
「脱臼は好きか?」
1172/2:2009/08/26(水) 23:23:40 ID:B5jwT2H60


 投げられた視線が青年の身体を滑り落ちる。彼が怯んだのは想像した痛みのためだけではない。戯れでは
済まないものを感じたからだ。肩口に絡んだ視線が、陽炎のように男に纏わりつく闘争の名残が、淡々と
したその冗談を信頼できないものにしている。
「利き手でない方の肩で二割、利き手側の肩で四割増しってとこか。いや、お前の場合は格闘に使うから
もう少し高いか? 痛いのが嫌なら適度に麻酔してやってもいいぞ」
  『適度に』という修飾語が、彼の耳にはことさら不吉に響いた。
「神経は傷めないよう注意するし、事が終わったらちゃんと元通りに嵌め直してもやろう。優しいだろう? 
あそこじゃこれでも優良顧客で通ってるんだ。あとは娼妓のご機嫌次第だな」
 鞄の中身の入れ替えを終え、外出準備を調えた男は青年を見る。
「――俺は、男娼上がりじゃない。元、ショーダンサー、だ」
 ようよう答えた青年を眺め、男はにやりと瞬いた。
「忘れてたよ」
 扉へ向かう男の背に向けて、青年は大きく息をつく。
「俺も忘れるとこだったよ。おまえ、変態だったんだな、そういえば」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
118嫉妬眼鏡0/6:2009/08/27(木) 12:06:04 ID:BIeF0atP0
レスお借りします。
夏戦争でカズケン←佐久間
初めてなので至らない点多いかもしれませんが、よろしくお願いします。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
119嫉妬眼鏡1/6:2009/08/27(木) 12:06:48 ID:BIeF0atP0
夏休みも残すところあと10日。健二が東京に帰ってきた。
「疲れてるだろうけど、バイトちょっと詰まってるんだ。フォローしに来いよな。」
そう佐久間から電話をもらった健二は家に荷物を置いて物理部の部室に向かっていた。
「まだあっついなー。」
8月も終わりだというのに学校の廊下は蒸し暑い。部室に辿りつくと健二はがらりとドアを開けて定位置にどかっと座り込み、手でぱたぱたと扇いだ。
「よう。人気者。」
画面に目を向けたまま佐久間が茶化してきた。健二がこの夏にやったことについて言ってるのだろう。
「何だよ人気者って。別にそんなんじゃないよ。」
「どうかな?あれ以来キングカズマと行動をともにするぶさカワリスに嫉妬のコメントが絶えないみたいだけど?」
ニヤニヤしながらログインをしている健二の顔をぐっと覗き込む。
「別に佐久間に関係じゃないじゃん。」
健二はそう言ってそっけなく佐久間の顔を押しのけた。
120嫉妬眼鏡2/6:2009/08/27(木) 12:07:33 ID:BIeF0atP0
「何だよ。冷たいの。」
内心は大分ムッとしたが、こらえた。
実は佐久間はずっと健二が好きだった。だからOZ内で佳主馬と一緒にいるのも気に食わないし、よく連絡を取り合ってるのも正直むかついた。
(刺客登場、か・・・)
健二の隣は自分のものだと思っていたから、佳主馬の登場は予想外だった。
自分が隣にいないときに、あっさりと健二の隣を奪われてしまった。
(まあ、当のご本人は無自覚なんだろうけどな。)
「でさ、バイトだけど。」
「うん。」
「お前のアバター仮だから何にもできないんだった。」
「はあ?!」
健二がガバっと振り返った。
「何だよー。早く気づいてよそういうの。」
せっかく暑い中チャリ飛ばしてきたのにー・・・といいながら机に突っ伏す。
そんな健二の背中を見ながら気づかれないように笑う。バイトが詰まってる、なんていうのは口実でただ健二と同じ空間に居たかっただけなのだ。
「ま、せっかく来ちゃったんだし外が涼しくなるまでここに居れば?」
「・・・ん。そうする。あ、メール。」
「誰?」
「佳主馬くんだ。えっと、『パーツ見たいからついて来て。いつものとこ。』って。」
(またか)
「ふーん。どうぞ。」
佐久間が不機嫌そうに椅子をくるりと回して画面に向かうのに、健二は気づかなかった。
121嫉妬眼鏡3/6:2009/08/27(木) 12:08:21 ID:BIeF0atP0
それからはしばらく無言で、キーボードを叩く音とマウスをカチカチとさせる音しかなかった。
作業の手を休めてちらりと横を盗み見ると、健二はキングカズマもとい佳主馬と楽しそうにチャットしながらOZ内のショップを回ってる。
(なんか、ムカつく)
そっと音を立てないように席を立ち、健二の後ろに立つ。
「あれ、佐久間どうしたの?」
「ん。なんでもない。」
「ふーん・・・。」
そう言って佳主馬との会話に戻ろうとする健二の動きを後ろから抱きすくめるようにして封じる。
「あ、え、ちょちょちょちょちょっと・・・!佐久間?」
「何?」
「えっと・・・なんていうか・・・その・・・・・・・これ。」
「何?」
「・・・具合でも、悪い?」
「・・・・・・。」
はあ、と体勢はそのままにがっくりとうなだれる。
(マジかよ・・・こりゃないぜ・・・。)
「ちょっと佐久間!?マジで大丈夫?」
黙り込む佐久間を心配して振り向きたいのか、必死に体をよじろうとする。
122嫉妬眼鏡4/6:2009/08/27(木) 12:08:57 ID:BIeF0atP0
そんな健二をよそにふと画面を見ると。いきなり動かなくなった健二を心配した佳主馬のメッセージの吹き出しが何個も表示されていた。
(いいこと思いついた)
「よいしょっと。」
健二を抱きしめたまま自分の椅子に座る。健二は引きずられて佐久間の膝の上に座る形になる。
片手で慌てふためく健二の体をがっちりとホールドしたまま、パソコンを操作して佳主馬たちがいるところへ行った。
『やあ佳主馬くん。健二と買い物?』
『どうも。そんなところです。でもあの、健二さんなんだか止まっちゃったみたいで。』
『そっか。あのさ佳主馬くん。ちょっと伝えたいことがあるんだけど。』
『?』
『健二の一番近くに居るの俺だってこと、忘れないでね。健二の隣は俺のものだから。』
『!!!!!!!!!!!!!』
『じゃ、それだけだから。買い物楽しんでね。』
これだけ言うと返事を待たずに佐久間はさっさとログアウトしてしまった。
『俺のもの宣言』の一部始終を見ていた健二はおそるおそる佐久間に尋ねた。
「あの佐久間これはどういう・・・?」
やっとこうしている意味がわかったのか、心なしか健二の耳が赤くなってるのが見えた。
「こういうことなんだけどなー。」
123嫉妬眼鏡5/6:2009/08/27(木) 12:09:32 ID:BIeF0atP0
ぐいっと健二の顔の向きを変え、キスをする。触れるだけではなく、深く舌を絡めて。
「ん・・・!んんん・・・!」
何度も向きを変えているうちに、本当に苦しくなってきたのか佐久間の胸をどんどんと叩いてきたので佐久間は健二を離した。
飲み込みきれなかった唾液が健二の口の端を伝うが、酸欠でそれどころではないのか肩で息をしている。
佐久間はそれを拭ってやると、茹でダコのように真っ赤になった健二を見て声を出さずに笑った。
「な、こういうこと。」
「なななななななななななななな・・・!」
佐久間を押しのけて立ち上がるとあわてて自分の椅子に座りなおして、佳主馬に
『ごめん急ぎの用事ができた!!』
『えっ、ちょ、健二さん?!』
『ごめんパーツ選びはまた今度付き合ってあげるから!』
そういい残してOZからログアウトしてウインドウを閉じた。
124嫉妬眼鏡6/6:2009/08/27(木) 12:10:35 ID:BIeF0atP0
「じゃじゃじゃじゃじゃじゃあ、僕、帰る!!英語の宿題まだ終わってないから!」
「おい、ちょっと待てよ!」
「待たない!」
そう有無を言わせない勢いで走り去って行った。
「行っちゃったか・・・」
佐久間はため息をつくと伸びをした。
(でも、今日はこれで満足かな。続きはまた今度でいいか。)

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
125キスのその後 1/6:2009/08/27(木) 15:14:25 ID:2PSg7k2eO
お借りします。
本スレのここ数レスから受信しました。
ルク/ス・ペ/インで劉アツです。

|〉PLAY ピッ ◇⊂(・∀・) ジサクジエンガ オオクリシマース!
どうしてこいつは俺が同じ部屋に居るのに平気な顔で眠ったり着替えたり、
あまつさえ風呂上がりにTシャツと短パンだけなんて姿でうろちょろしたりするのか。
誰にでもそうだと言うなら腹立たしい。だが俺だけがそれくらい安全な相手だと
思われているというのもまたしゃくにさわる。人の気も知らないで。
しかも、先週キス……してしまったというのに全く態度が変わらないのは何故なんだ。
126キスのその後 2/6:2009/08/27(木) 15:16:25 ID:2PSg7k2eO
気にもしていないのか、それとも眠すぎたから覚えていないとでもいうのだろうか。
いや……別に何かしようとか考えていたわけじゃないぞ。あいつが眠そうな顔で
おやすみなんて言いながらもたれかかってくるから……つい…だな、……。
まあその時はそのまますぐに眠ってしまったしいつもは寝顔にしかしないから……
……ち、違うぞ!別にいつも勝手にしてるわけじゃない!ほんの数回だ数回!
大体だ、所長が経費を削って仕事の度に俺達を同室にするのが悪い。
127キスのその後 3/6:2009/08/27(木) 15:18:39 ID:2PSg7k2eO
今日も薄着で、シャワーを浴びたばかりの髪はまだ僅かに水気を残していた。
その格好のまま俺のすぐ隣に座る。
「どうした?」
いつもの無表情でじっと俺を見上げてくる。そのまま何故か距離を詰めてきた。
「アツキ?」
押し退けるのは簡単だ。だが一体どうしたというのだろうか。
とりあえず見ていると、アツキは俺の膝を跨いでそのまま座り込んでしまった。
「こら、本が読めない。寝呆けるならベッドに入れ」
「眠くない」
アツキは俺の左手を取ると手の甲を自分の唇に押し当てた。そのまま動かない
何がしたいのか、というかいい加減密着し過ぎだ。
俺が……このままだとまずい。……色々と。
128キスのその後 4/6:2009/08/27(木) 15:19:49 ID:2PSg7k2eO
「おい、一体何なんだ?」
「どうしよう。これでダメならどうすればいいのかわからない」
「何の話だ?」
表情はやはり殆ど変わらないがどうやら困っているようだ。
「リュウ・イーはオレが起きていたら嫌なのか?」
いきなり何を言いだすんだ。
「何故そう思った?」
「……寝ている時とか、その、寝たふりをしている時にしか……キス、しないから
……それにリュウ・イーが何でするのかもオレにはわからなくて」
寝たふり、だと?
「それなら起きている時に自分からしてみたらどうだって言われて……
ごめんなさい。やっぱり嫌なんだな。何だか顔が恐くなっている」
いや違う!違うぞ!
「誰にそんなアドバイスをされたんだ?」
「桐生」
あの小僧!またアツキに余計なちょっかいを……。
しかしアツキはちゃんと理解しているのか?今わからないと言ったし……。
129キスのその後 5/6:2009/08/27(木) 15:21:05 ID:2PSg7k2eO
試してみるか。
「……だったらちゃんとしてみろ」
「え?な、何をだ?」
「キス。してくれるんだろう?」
「ちゃんと?……どうやって……したら、いいんだ……?」
「俺がしたのと同じ場所に。出来ないならやめてもいいんだぞ」
というかやめるなら早くしろ。俺はもう限界だ。
こら、そんなにくっつくと当たるだろ。まずいんだ本当に、冗談で済まなくなる。
「わかった」
そうかわかったか、ならばさっさとどけ……………………………何だと?
「アツキ、寝ていなくても目は閉じるものだぞ」
目を開けたまま普段とまったく変わらない態度で唇に触れるだけのキスをされた。
しかし俺の手を握ったままの手も、乗ってくる脚も強ばっていて
アツキがかなり緊張しているのが伝わってきた。
「ああ、じゃあ次は閉じるから……」
「もういい」
今度は俺のほうから口づけて抱きしめた。

130キスのその後 6/6:2009/08/27(木) 15:23:01 ID:2PSg7k2eO
「寝る前のキスって、何だか家族を思い出して嬉しかったんだ」
事を終えた後にそんな言葉を聞かされて俺は凍りついた。
そんな微笑ましさとは無縁の行為にアツキは後悔していないだろうか。
だがそれは杞憂だったようだ。
「だから、もう一度してくれないだろうか」
疲れて眠たげな瞼と唇と額に何度目かのキスをして、
それから俺達はようやく眠りについた。


□STOP ピッ ◇⊂(・∀・) イジョウ、ジサクジエンデシタ!

131ネクストチョコレート:2009/08/27(木) 16:37:36 ID:X/NBWuua0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  舞台「7にんの恋人」からてつろ×3宅マン
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  頭の悪いエロだよ。半生?注意
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
132ネクストチョコレート1/4:2009/08/27(木) 16:38:17 ID:X/NBWuua0
 バレンタインデーの次の日、三宅マンが持ってきたもの……チョコレート
フォンデュ。しかも専用の鍋ごと。
 どこから持ってきたんだか……僕はうんざりとしながら三宅マンを見た。
ふつふつ沸くチョコレートをまんまるい目で見つめている。ものすごく楽し
そうだ。
 まあ、楽しそうで何より。……今日の僕は、昨日、巨乳子ちゃんにチョコ
をもらったので寛大なのである。
 生ぬるい目で三宅マンを見る僕。それと、とろとろのチョコレートを見つ
める三宅マン。なんだか不愉快だが、僕は気のせいということにする。
 腹立たしくも、見るからにわくわくと心を踊らせる三宅マン。
 そして奴は――なんと指を鍋につっこみやがった。
「あっつぅ!」
 当たり前だ馬鹿!
 僕はあわてて救急箱を取りにいく。母さんがいなくてよかった……三宅マ
ンを見る彼女の目がますます冷たくなっただろう。
「三宅マン……指出しな」
「ん……いたぁい、てつろー」
「当たり前だろ」
 ほんとに馬鹿なんだから。
 まず真っ赤になった指を三宅マンごとシンクにひっぱる。じゃばじゃばと
冷水をぶっかけてから、薬。で、包帯。
 我ながら器用だ。
 くるくると巻き付けてやりながら、自己満足にひたる僕。
 三宅マンはというと……指をくわえて、チョコレートの鍋を見ていた。
 ……どうしようもない大人だ。
「三宅マン」
「ん?」
「頭の悪い子にはおしおきしないとね」
 僕はニッコリと笑う。
 三宅マンはきょとんとする。包帯を巻きおわった指をぱしんと叩いてやる
と、ひゃあ、と飛び上がった。
133ネクストチョコレート2/4:2009/08/27(木) 16:38:52 ID:X/NBWuua0
「ひどいよてつろー、今のがおしおき?」
「まさかだろ」
 僕は三宅マンに背を向ける。三宅マンと鍋の間に立ったわけである。
 スプーンで、チョコレートをくるくるかきまぜた。火を止めてすこし冷ま
す。ほんの少しね。あんまり冷めてもよくない。
「三宅マン、目ぇつぶって」
「や、やだよ……痛いことすんでしょ」
「しない、しない。大丈夫だからさ」
「本当にぃ?」
 恐る恐る、三宅マンが目を閉じた。
 僕は鍋を持って(手にはしっかりと鍋掴みをつけている)三宅マンが座る
正面に立つ。
 黄色いタイツ。青いマント。まるで駄目な大人が目の前にいる。しかし僕
は、この馬鹿に素直なマダオが嫌いじゃないのだから、困ったもんだ。
 くるくる、スプーンをまわす。三宅マンがずうっと欲しがっていたものだ。
だから決して、これからやることはいじめでも嫌がらせでもなんでもない。
そうだろ?
 僕はスプーンで一杯、まだ熱いチョコレートをすくって――三宅マンの太
ももに垂らした。
「ぅあっちぃぃ!」
 期待どおり、三宅マンが悲鳴を上げてひっくりかえる。僕はその体をまた
いだ。
「て、てつろー」
 びっくりした顔。涙も浮かんでいる。
 僕はそれに、ニッコリ笑いかける。
 三宅マンの頬を、一筋の汗がツーッとつたった。



134ネクストチョコレート3/4:2009/08/27(木) 16:39:20 ID:X/NBWuua0
「やっ、やだぁっ、熱い、あついよてつろー!」
「そうでもないだろうよ」
「熱いぃぃ」
 あれから、僕は体を百八十度回転させて、ぱつぱつの下半身と向き合った。
 茶色いチョコレートが、タイツについている。生地越しだけど……まぁ、
火傷してるだろうな。
 そして鍋に指を入れてみて、ある程度冷めたのを確認してから、とろり、
と三宅マンの股間めざして垂らした。
 それで、さっきの悲鳴ってわけだ。
「何、何してんの!? なんでぇ!?」
「だって三宅マンがチョコばっかりかまうから。あと自分から指突っ込んだ
しドMなのかなって」
 前半は本当。後半は嫌味。
 もちろん三宅マンは気付きやしない。いいながら僕が垂らした二杯目にさ
らに悲鳴を上げる。
「や……あつ、熱いッ」
 びくびく震えはじめる太ももに、僕はにやにやした。真ん中を見ると、パ
ンパンに膨れている。そこにこびりつくチョコレートが、やけにエロい。
「きもちいんじゃないの? たってる」
 僕は触ってないからね、と駄目押しでいうと、ぐぅと声を飲み込む音がした。
「熱くて痛いの好きなんだ」
「ち、ちがうっ! いやちがわないっ!」
 そりゃ別のコントのネタだ。
 ……と、何はともあれ。三宅マンはドM、そういう結論に僕は至った。
「ねー、三宅マーン」
 たらり。チョコレートが、たれる。どうやら僕はSらしい。
「ひぃ、あ、あつ……ッ!」
「きもちい?」



135ネクストチョコレート4/4:2009/08/27(木) 16:40:08 ID:X/NBWuua0
 こんどは、スプーンの先っちょでぐりぐり。
「や、やだぁぁ! て、てつろぉ!」
 ……泣き顔が見られないのが、惜しいな。
 そう思って僕は三宅マンからおりて、彼の股の間に向かい合って座った。
パンパンの股間。ちょっと遠いけど、ぐちゃぐちゃの泣き顔。ばっちり。
 僕は靴下を脱ぐ。
 三宅マンは律儀なのか真性なのか、逃げもせずじっと僕だけを見ている。
 ああ、他の人にこんなことされてもこうなんだろうか、こいつ……僕は少
し心配になった。
「他の人がこんなことしてきたら、さっさと飛んで逃げろよ」
 言いながら、裸足の足の裏で、股間をさする。
「ひゃあ! に、逃げるに決まってんでしょッ!」
「ほんと?」ぐにぐにと足の裏を押しつけると、三宅マンの腰が跳ねた。
「ん、ん……ッ! あ、きもちい……!」
「ね、本当にちゃんと逃げれる?」
 がくがくうなずく三宅マン。
「だ、だって、てつろーだから逃げないんだよ!」
「……」
 さて。この瞬間の僕の心中お察しいただけるだろうか。
 かあっと熱を持つ頬。
 思わず力一杯踏み付けてしまい、「ぎゃんっ」と悲鳴が上がる。でも萎え
ないんだから真性のマゾヒストだ……と馬鹿にする余裕もない。
 僕が三宅マンのせいで照れるなんて!
 真っ赤になった頬に三宅マンは気が付かない。ついに自分から腰をすりつ
けてきた。
「て、てつろー……も、いきたい。……脱がして?」
 涙目でお願いする三宅マンに何かが切れて、僕はあわてて彼の下半身のタ
イツを脱がす。
「あ、あ……ッ!」
 ……結局、足の裏でいかしてやったのだった。
136ネクストチョコレートおわり:2009/08/27(木) 16:51:39 ID:X/NBWuua0

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 季節はずれにもほどがあった
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )伏字忘れごめん
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

最後の最後に規制くらってしまいました
137風と木の名無しさん:2009/08/27(木) 17:23:14 ID:sD8wtfxo0
>>136
SMイイヨイイヨー
もっとひどく虐めて欲しい
続き求む
138Melt 1/1:2009/08/27(木) 20:50:43 ID:JrUaphI/O
お借りします。
夏戦争で健佳主です。携帯からなので改行など、見難い場所がありましたら申し訳ありません。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「佳主馬くん、はい」
お兄さんの手にはソーダアイス。なにこれ、と目線で訴えると、おばさんからだよ、と彼は笑って、まるで当たり前のように僕の隣に座った。
「うわ、相変わらず凄い人気だね、キング・カズマ」
応援のコメントが次々と画面内に映し出されていく。これは僕に対するものじゃない。OZの中の僕、キング・カズマへのコメントだ。本当の僕を知ってるやつなんかほとんどいない。
そんなの、当たり前なのに、時々胃のあたりが少し重たくなった。
「ねえ、お兄さん」
「ん?」
「お兄さんは、僕の事、どう思ってる?」
何でそんな事をきいたのか、自分でもよく分からない。少し溶けかけたソーダの部分をかじって横にいるお兄さんを見上げると、案の定アイスを持ったまま、固まってしまっていた。
「え、っと、えとえと」
「……溶けてる」
「へ?あっ、はいっ」
駄目だ。かなりパニクってる。はあ、と溜め息をついて、僕はパソコンの電源を落とした。
139Melt 2:2009/08/27(木) 20:55:28 ID:JrUaphI/O
なんとなく、少し居心地が悪くなった。しかしそんなのお構いなしに、お兄さんはアイスをパソコンの横にあった皿に置いて、意を決したように座り直して、真っ直ぐ僕を見つめてきた。……正座。
「そのっ、あの、佳主馬くんは僕なんかよりも、うんと大人だと思いますし、強いし、ただ、ちょっと恥ずかしがり屋さんで、その、生意気だなあとか、いつも偉そうだなあって思う時もたまにはありますよ?ありますけど、本当は優しいし、」
しどろもどろになりながら、お兄さんは必死に敬語で熱弁している。若干失礼な事言ってるって、わかってるのかな。
「でもほら、やっぱり夏希先輩は、可愛いなあとか思うんですよっ、ずっと憧れてたし…」
え、待って、なんの話。てかお兄さん大丈夫?なんか鼻血凄いんだけど。目線だけでティッシュを探したけど、あいにく手が届く場所にはなかった。
「でもっ、でも、佳主馬くんの事、僕は、僕はっ、す、す、すすす」
音のとんだラジオみたいに繰り返して、お兄さんはぐらりと後ろに傾いた。あ、やばい、壁にぶつかる。
「っ、お兄さ、…うわあっ」
140Melt 3:2009/08/27(木) 20:57:57 ID:JrUaphI/O
襟を掴んで上半身だけ支えようとしたけど、無理だった。そのまま高校生男子の全体重が、中学生の僕にかかって、やはりというか何というか、下敷きになった。
「いっ……、ちょっと」
早くどいて、そう言おうとしたのに、
「佳主馬くん」
やけに落ち着いた声が頭に響いた。耳のところに息がかかる。僕は天井、お兄さんは床をみてるせいで、顔は全く、みえない。なに、この空気。
「……すき」
唐突に、お兄さんが呟いた。小さな声で。好き。誰を?
「佳主馬くんが、すき、です」
言葉の意味を理解した途端、身体中の熱がぐん、と顔にのぼるのがわかった。なんで。だって僕は、そんな意味できいたわけじゃない。ただ、ただ、……ああ!もう訳がわからない!
僕は足に力を込めて、お兄さんの腹付近に蹴りをいれた。ぐえっ、とかそんな声がしたような気もしたけど構ってられない。
ただ風邪の時みたいに頬が熱くて、ぼんやりとして、どうしたらいいかわからなくて、僕は納戸から飛び出していた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ページ数やらなにやら間違えまくっててすみません…。お付き合いありがとうございました。
141風と木の名無しさん:2009/08/27(木) 22:04:16 ID:xzda0zYgO
>>118
GJGJGJ〜!!
読みやすかったし、凄い良かった〜
3Pこいこいw
142となり:2009/08/27(木) 22:28:07 ID:HHtE7mGfO
丹タ刊と概屋主です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
143となり 1/3:2009/08/27(木) 22:29:41 ID:HHtE7mGfO
コンビ二からホテルに戻り、エレベーターの上りのボタンを押した。
固く閉ざされた扉を見つめていると、今日の自分の戦いを思い出して、
ため息が漏れた。
人の気配がした。ヘラッとしまらない笑顔の男が寄ってくる。
軽く頭を下げるので、「ああ」と半端な挨拶で返す。
そういえば、戦いの場以外でこの顔を見るのも久しぶりだな。

並びながら暫しの沈黙。
また気持ちに暗雲が立ち込める。

怪我人が出て、補充のような形で復帰したせいか、いまいち調子が戻らない。
体が以前のように動いてくれない。
気持ちだけが焦る。自分らしくない。
今が正念場なのに。

「やっぱ、いると安心します」
突然話しかけられ、振り向くと、年下の彼は照れ臭そうに目を逸らした。
「何か、隣にいてくれないと、変な感じというか。
ほら、いなくなって俺もすぐ足をやっちゃったし」
「・・・俺はお前の御守りじゃないよ」
自然と口が緩む。彼も笑う。
先ほどまでの暗雲が一瞬で消えた。
ただ一言話しただけなのに。
気持ちがこんなに楽になるなんて。

雲ひとつない、夜明け前の空を思い出す。

144となり 2/3:2009/08/27(木) 22:31:01 ID:HHtE7mGfO
「俺も」
エレベーターの扉の奥から沈む音。
「お前がいると、安心するよ」
音が一瞬消えて、目の前のドアが開いた。
頬が熱くなる。
何を言ってるんだ。
久しぶりなので気持ちと言葉の調整がおかしくなっているのか。
まあいい、一晩眠れば忘れるだろう。
足早にエレベ一ターの中に入り、振り返った。
ぴたりと目線が合う。
彼から笑顔が消えている。
一重の目を見開いて、唖然とした表情。
どうしたのだろう。
ドアが閉まる。
「あ、待って」
彼は手を伸ばし、慌てて乗り込んだ。


しん、と静まる閉ざされた狭い空間。
汗で湿ったシャツ。
熱。
早い鼓動。
咄嗟のことだった。

彼の伸ばした腕に、強く抱き締められていた。

145となり 3/3:2009/08/27(木) 22:32:46 ID:HHtE7mGfO
***

カチリと下に向かうボタンを押し、エレベーターの扉が開くのを待った。
仲の良い年上の同僚と飯に行く約束をしていたのだが、時間に遅れてしまった。
もう行ってしまっただろうか。
ボタンのライトが消えて、扉が開く。
奥からは、先日復帰したばかりの小柄なひとが現れた。
「あ」
珍しく驚いた表情を見せるので、一瞬硬直する。
彼は頬を押さえながら「あついな」と呟き、足早に去って行った。
そんなに暑いかな、と思いつつエレベーターに乗ると、
小柄な男がもう一人、壁にもたれ掛かっていた。
「うわ!何やってんですか!」
「あー、お前かあ」
それは丁度飯の約束をしていた同僚だった。
いつもよりニヤけた口許。どこか遠くを眺めるような目線。
「・・・俺、やらかしたかも」
ごつん、と壁に頭を当てる音。そしてまた、ふふふと壁に向かって笑った。
・・・変、というより怖い・・・。
「ご飯、行きますよね」
「んー」
心ここにあらず、な返事に呆れつつ、手を伸ばし一階のボタンを押した。
146となり(終):2009/08/27(木) 22:33:57 ID:HHtE7mGfO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

エレベ一ターシチュを書いてみたかったのです(書けてない)。

147Melt2 1:2009/08/27(木) 23:16:30 ID:JrUaphI/O
>>138の続きです。連続投下すみません。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
おもわず、裏の林まで走ってきてしまった。――スキ、すき、好き。少し掠れた、熱に浮かされたような声で言われた二文字が、ぐるぐると頭の中を回る。
息が苦しい気がして、ずるずるとその場にしゃがんだ。心臓もなんだか痛い。
「す、き……」
自分で口に出して恥ずかしくなった。そんな言葉、ネットの中だけだと思ってた。キング・カズマじゃない、僕に向けられたもの。血縁以外では、記憶を辿る限り初めての好意。
でも、相手は男で、年上で、僕の従姉の婚約者で、数学オリンピックになり損ねた健二さんだ。いやオリンピックは関係ない、落ちつけよ僕!
「佳主馬くんっ」
「うわああああ!」
「……あ、ご、ごめん」
申し訳なさそうに眉を下げたお兄さんが、地面にへたり込んだ僕を立たせてくれた。
それにすら、鼓動がはやくなる。死ぬんじゃないのこれ。ていうか、かなり格好悪いよねこの状況。
「その、さっきは、いきなり蹴って、ごめん…なさい」
「僕の方こそ、びっくりさせてごめん……」
148Melt2 2:2009/08/27(木) 23:19:18 ID:JrUaphI/O
歯切れの悪い会話が沈黙に変わる。まだ触られた所が熱い。ちらりとお兄さんをみると、情けないような、頼りないような、胸が痛くなる笑い方をしていた。
「どうして、悪くないのに、謝るの」
「悪いよ。佳主馬くんがどう思うかわかってて、あんな事言ったし、しようともしてた。……佳主馬くんが欲しかったのはあんな答えじゃなかったよね、だから僕が」
「もういい」
なんだろう、苛ついた。僕に発した言葉を取り消そうとしてるから?それとも、悪くないくせに自分が間違ってると思い込んでるから?違う、そんなんじゃない。
「おにいさん」
ぐ、と背伸びをして、襟をつかむ。そのまま引っ張ると、お兄さんの顔が間近にきた。
「か、佳主馬くん…?」
「僕の目をみて、もう一回言いなおして」
ぽかんと口をだらしなく開けて、お兄さん思考をぐちゃぐちゃに巡らせているようだった。更に引っ張って、今度は耳元でゆっくりと発音する。
「僕の事、すき、なんでしょ?」
もうオリンピックでも婚約者でもなんでもいいから、好きって言葉がききたかった。
僕の行為に、お兄さんの顔が真っ赤に染まる。その表情に優越感を覚えていたのも束の間、かがんだまま、お兄さんが抱き締めてきた。耳に、ちゅ、と柔らかい感触がする。
149Melt2 終:2009/08/27(木) 23:21:27 ID:JrUaphI/O
「なっ」
「すき、すき、……だいすき」
唇が耳の下、輪郭、首と落ちてくる。離れようと肩をおすと、少しだけ隙間をあけて、お兄さんが僕をみつめた。
「……佳主馬くんも言って」
「は?」
「僕の事、どう思う?」
ああもうだめだ。ごめんなさいお母さん。なにも考えられなくなって、僕はお兄さんの唇に自分の唇を重ねた。……あ、ソーダの味。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
長くなってしまいすみませんでした。
150風と木の名無しさん:2009/08/28(金) 08:55:06 ID:qfOCG+IRO
>>149
かわええ!
昨日2回目見てきたばかりで興奮さめやらぬうちにこんな…
心からGJ!
151眼鏡越しの君0/3:2009/08/28(金) 09:39:02 ID:teNi3qjL0
>>118->>124
の者です。
嫉妬眼鏡の続編出来ましたので、数レスお借りします。
・夏戦争でカズケン前提の佐久間×健二。
・カズケン前提ですがカズマが空気です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
152眼鏡越しの君1/3:2009/08/28(金) 09:39:37 ID:teNi3qjL0
あれから健二と佐久間は微妙に気まずい。健二と佐久間が、というより健二がだが。
佐久間とは新学期に入ってからも放課後はいつものように部室で過ごしている。
健二は何事もなかったように振舞う佐久間が、ちょっと恨めしい。
(こんなに俺が悩んでるのに。)
ぼんやりと歩いていたら部室の前にたどり着いた。
(やば、引き返そうかな)
最近健二は極力部室を避けていた。そうでもしないと、息苦しくて胸が潰れそうになる。
扉の前でどうしようか考えていたら、部室のドアが開いた。
「あ、健二。何でそんなとこ突っ立ってるんだよ。」
「あ・・・ううん。考え事。」
「あっそ、じゃあ入れよ。」
佐久間に促される。断るのも不自然な気がして健二はされるがままに部室に入った。
153眼鏡越しの君2/3:2009/08/28(金) 09:41:00 ID:teNi3qjL0
そしていつもの椅子に座る。
「そうだ、健二。」
「・・・・・・。」
「健二?」
「・・・・・・。」
「おい、健二ってば。」
「・・・ぁ!あ、うん。ごめん何か話してた?」
普段からぼんやりとしがちな健二だが、そのことを差し引いても今の健二はひどくぼんやりとしていた。
「まったく、ちゃんと寝てるのかよ?」
「寝てる寝てる。今日はちょっとテスト疲れがでただけだって。」
嘘だ。あの日から毎晩なかなか寝つけずにいる。
寝つけないどころか、何をしても頭に入らないし上手くいかない。
「・・・そうか?まあそれならいいけどさ。それでさ、健二の仮アバターちゃんと使えるようにしたから。もう仮じゃないから普通どおりにOZのサービスも使える。感謝しろよな。」
「あ、うん。ありがと。」
いつもどおりに会話をしようとしても、やはり上手くいかない。目をあわせられずに佐久間の膝ばかり見つめて話をしてしまう。
そんな健二の様子を佐久間は見逃しているわけではなかった。
(やっぱりな)
思ったとおり、とでも言いたげに健二を見る。
154眼鏡越しの君3/3:2009/08/28(金) 09:42:16 ID:teNi3qjL0
「なあ健二。お前やっぱり最近変。」
「・・・・・・・。佐久間のせいじゃん。」
(きた)
「なんで俺?」
佐久間はここにきて尚、平静を装う。
「っ!だから、佐久間があんなことするからだってば。」
「あんなことって?」
佐久間はわざとらしくとぼける。最後まで言わせるつもりだ。
「だから・・・だから・・・佐久間が・・・。」
「俺が?」
「佐久間が佳主馬くんに健二は俺のものだーとか言ったり・・・。」
「言ったり?」
「・・・き・・・す・・・・・・とかしたじゃん。」
最後のほうは本当に蚊の鳴くような声だった。
うつむいていた健二だが、佐久間が何も言わないのでおそるおそる視線を上に向けると佐久間は・・・笑っていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
嫉妬眼鏡の続き前編はここまでとなります。
後編もどうぞよろしくお願いします!
155風と木の名無しさん:2009/08/28(金) 11:44:40 ID:FuY2CZKv0
>>151
嫉妬眼鏡もっとやれ!
続きも期待してます、わっふるわっふる!
156眼鏡越しの君後編0/4:2009/08/28(金) 20:36:05 ID:teNi3qjL0
レスお借りします。
眼鏡越しの君後編です。
夏戦争でカズケン←佐久間。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
157眼鏡越しの君後編1/4:2009/08/28(金) 20:36:49 ID:teNi3qjL0
「よくできました。」
「・・・は?」
予想外の言葉に健二は面食らった。
驚いているのをいいことに、佐久間は健二をこの前のように膝の上に乗せた。
今度は対面で。
「わっ、ちょっ佐久間!!降ろせって!」
キスしたときのことがよみがえったのか、健二は必死に抵抗しようとする。しかし佐久間は離すどころか抱きしめる力をさらに強くする。
「やだ。」
「降ろせって!」
「俺のこと嫌い?」
「・・・そういうことじゃなくて!」
「じゃあ何?」
「・・・・・・。」
佐久間は健二の言葉をすいすいとかわす。
歯が立たない、と感じた健二は黙りこくって抵抗をやめた。
「ねえ、俺と佳主馬くん、どっちが好き?」
「・・・え?」
「どっち?」
「えっと・・・えっと・・・どっちも好きだよ。」
「じゃあいいよな。はっきりしない健二が悪いんだからな。」
「は?何・・・って、え?え?な、何、佐久間ちょっとちょっと!」
158眼鏡越しの君後編1/4:2009/08/28(金) 20:37:25 ID:teNi3qjL0
佐久間は健二を床に降ろすなり押し倒した。
「ちょっとまって佐久間俺男だし!」
ネクタイをほどく佐久間に待ったをかけるように言う。
「俺も男だけど?」
何が問題なんだ、といった風に健二を見つめているも、シャツのボタンを外す手は止めない。
「それで?」
数学の問題の答えを聞くように、続きを促すような言葉を投げかける。
「それでって・・・ん!」
答えを待たずに健二の唇を奪う。ぺろりと唇をなめて舌を侵入させ、容赦なく口内を攻める。
「はあ・・・っ、ん・・・は・・・さ、さくまっ・・・。」
「限界?」
「んん・・・。」
健二が限界を訴えると、佐久間はあっさりと唇を離した。あふれる唾液を舐めとり、酸欠でぼーっとしている健二の額に触れるだけのキスを落とした。
そして無防備な首筋からそっと唇を這わせていく。
「はあっ・・・あ・・・・・・つっ!」
159眼鏡越しの君後編3/4:2009/08/28(金) 20:38:08 ID:teNi3qjL0
突然首筋にぴりっとした痛みを感じた健二は思わず声を上げた。
「悪い。」
「何・・・してんの?」
「痕、つけてるんだけど。これがどういう意味かわかるよな?」
「っ・・・!」
(あの時の、こと?)

――健二の隣は俺のものだから。

健二がまさか、という顔をすると佐久間は満足そうに笑った。
「目立つところにつけ・・・あっ!」
佐久間は無視するかのように痕をつけるのを再開した。唇で愛撫して、舌で舐めあげて甘噛みする。
虫さされのように赤い点が首筋からはじまり、鎖骨の辺りや胸の周辺に散らされた。
まだ佐久間の唾液が乾ききってないそれは、いやらしく鈍く光った。
「健二の体、すっげえやらしいな。痕だらけ。」
「はっ・・・わざわざ、言うことでも・・・なっ、」
「勃ってる。」
「うわっ!」
隠そうと閉じる足を押さえつけてがばっと開いたまま固定する。
「俺に痕つけられて、感じちゃった?」
佐久間は意地の悪い笑みをうかべている。
「ちがっ・・・そんなんじゃ・・・。」
「ふーん。なら続行。」
許可を得るまでも無いと言わんばかりにズボンのベルトに手をかけた。
160眼鏡越しの君後編4/4:2009/08/28(金) 20:41:36 ID:teNi3qjL0
ガラッ
突然部室の扉が開いた。
「け、健二・・・さん?」
突然の訪問者は誰あろう佳主馬であった。予想だにしない光景に唖然としている。
「ぁ・・・うそ・・・佳主馬くん、これはそうじゃなくて・・・。」
「やあ、早かったね。とりあえず入ってよ。今誰か来たらまずいし。」
誰かが来たらまずい、という点に同意したのか素直に中に入って扉を閉める。
「早かった・・・って佐久間知ってたのかよ!!?」
「まあね。っていうか俺が呼んだの。今日金曜日だし。」
「あの、健二さん。これはいったいどういうことなのか、説明してよ。」
「えっと・・・違うんだよ佳主馬くん。」
「何が違うの。」
「うっ・・・。」
佳主馬はものすごい剣幕だ。
「さあーて、俺は帰ろっかな。」
健二の上から立ち上がるとカバンを肩にかけた。
「ちょっと待ってよ佐久間さん。」
161眼鏡越しの君後編5/4:2009/08/28(金) 20:43:05 ID:teNi3qjL0
「ん、何?」
佳主馬はじろりと佐久間を睨み付ける。あの日以来敵対心を激しく燃やしているのだ。
「これ、どういうことなんですか?」
「さあてね。何なんだろう?」
「っ・・・!」
「あのね、佳主馬くんは甘いよ。うかうかしてると健二の初めては俺がもらっちゃうから。それじゃあね。」
佐久間は何も言い返せない佳主馬にひらひらと手を振り部室を出て行ってしまった。
部室が気まずい沈黙に支配される。
「あ、あのー、佳主馬くん?」
沈黙に耐えかねた健二がおずおずと口を開いた。
「健二さん・・・。」
「は、はいっ!」
「俺、健二さんの家に引っ越す。」
「ええええええええええええええええええええええ!!!?」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

規制が入ってしまい、ナンバリングミスってます;すみません。
162金賞 吃高×大月:2009/08/28(金) 23:59:10 ID:JTkYzMKt0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  金賞の吃高×大月です。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  生注意。さらに登場人物は40歳以上です。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
163金賞 吃高×大月1/5:2009/08/29(土) 00:01:08 ID:JTkYzMKt0
MC中にステージで一人ぼっちにされるのをネタにすることはよくある。定番ネタの一つだ。
しかし、打ち上げで一人ぼっちにされて、ネタにするのも憚られるような状況になるのは
流石に初めてかもしれない。しかもここではネタとして受け取ってくれるお客さんもいないのだ。
今、僕の上半身にはべったりと吃高君が腕を回してひっついている。
よって正確には一人ぼっちではなく二人っきりなのだが、気分的には一人ぼっちの方が近い。
自分と怪獣しかいない状況で、怪獣と二人っきりなんて言わないでしょ?
怪獣を目の前にして一人ぼっちというのが正しい表現だ。
その怪獣は右手で僕の肩を抱き、左手で僕の体を包むようにしてもたれかかっているが、
左手にはお酒の入ったコップを掴んだままだ。こぼれないか心配でさっきから気が気でない。いったい何杯飲んだんだこの人は。
今日はツアー最終日で、ライブは最高に盛り上がった。
通風…ではなくペインウィンドの僕は普段はお酒を控えているが、今日はせっかくなので飲むことにした。
もちろん打ち上げのはじめには他のバンドメンバーもスタッフもいたが、
打田は金賞の他に参加してるバンドの準備があるからと早めに切り上げ、
をいちゃんも別の仕事があるからと途中で帰ってしまった。
それじゃ僕もそろそろ帰ろうかと立ち上がりかけたのだがそれを止めたのが吃高君だ。
この時点で彼は結構酔っていて、僕は嫌な予感がしたのだけれど遅かった。
「大月!たまには二人で飲み明かそう!」と引っ張られて二軒目の飲み屋へ連れて行かれた。それが二時間前。
164金賞 吃高×大月2/5:2009/08/29(土) 00:02:32 ID:JTkYzMKt0
時間をかけてセットされた髪はライブの時とほぼ変わらないボリュームで、肌にあたるとふわふわしてこそばゆい。
二軒目のこの店からウーロン茶に切り替えた僕はすっかり酔いが覚めている。
対して吃高君はというとあれからもビールや日本酒を飲み続け、見事な泥酔状態だ。
これが女の子だったら美味しい状況かもしれないが、抱きついてもたれかかっているこの男は
俺と同い年で息子が三人もいるおっさんだ。せめて二十年前ならな〜って、いやいやいや。
とりあえずこの左手の日本酒をテーブルに置いてもらおうとコップに手をかけると据わった目の吃高君に睨まれた。
ライブの時の化粧のままなので普段より目つきに迫力があるように思う。

「大月…」
「はい…。あの、なんですか吃高君。怖いんですけどちょっと」
「俺は、まだ、飲み足りない」
「いやいやいやいや!もう十分飲んだでしょーが!これ以上はだめだよ!俺が困る!」

ぐぐっと力を入れてコップを引っ張ると、吃高君のコップを握る手にも力が入って抵抗された。
酔っ払ってるくせに何でこんな力が出るんだろう。
流石普段ステージでギターを振り回しているだけはある、なんて感心してる場合じゃないよ。
しかも分が悪いことに僕はコップの中身がこぼれることを心配しているが、
酔っ払いの彼はそのあたりのことを全く気にせず引っ張ってくる。
彼の引っ張る力と方向に合わせて中身がこぼれないようにバランスを調整しつつ
コップを奪うという高度な技術を強いられる僕の苦労を察して欲しい。
165金賞 吃高×大月3/5:2009/08/29(土) 00:03:59 ID:JTkYzMKt0
しばらく静かなコップの引っ張りあいが続いたが、戦いは突然決着がついた。
何がツボにはまったのか吃高君が突如大笑いを始めてコップから手を離したのだ。
さっきまでギリギリとコップを引っ張っていたのにいきなり手を離された僕はバランスを崩し、
吃高君をくっつけたまま背中から倒れこんだ。ドシンという音が畳に響く。
あれだけ苦労したというのに結局日本酒はこぼれてしまい、畳をつたって僕の首まで流れてきた。
その上には爆笑する吃高君が圧し掛かったままで、これはいったいどういう状況だろう。俺は何をしているんだ。
赤い顔で男らしく笑い続ける吃高君をぼんやりと眺めながら、
これをエッセイのネタにしたら吃高怒るかなぁ、なんてことを考えていたら吃高君はようやく笑い終わった。
しかし何を思っているのか彼がどく気配はない。とろんとした目で僕を見下ろしているが、
実際その目が僕を見ているのかは定かではない。

「あのー…。吃高さん?」

声をかけると吃高君の瞼が動いて改めて僕を見た。今度はちゃんと僕を認識しているらしい。
しかし体が左右にゆらゆら揺れているのであまり意識がはっきりしているようには見えない。
ゆらゆら揺れている吃高君を眺めていてもしょうがないので、上半身を起こして吃高君をどかすことにした。
あ〜、でもこの後どうしよう。こんな状態じゃ帰れないだろうしなーなんて考えていたら
突然ゆらゆら揺れていた吃高君が僕の両肩をがしりと掴み、ぐわっ!と畳へ押し返してきた。
すんでのところで両肘を突っ張って頭を強打することは防いだが、そうして中途半端な姿勢でとどまったせいで
吃高君の顔が目の前にある。しかも、あろうことか彼はさらにその顔を寄せてきたのだ!!
166金賞 吃高×大月4/5:2009/08/29(土) 00:05:11 ID:JTkYzMKt0
「ききききき吃高君!!?」

まさか!と嫌な予感を抱きつつ彼の肩を押し返す。しかし体勢的に彼の方がずっと有利だ。二人分の体重を支える肘が畳に擦れて痛い。

「ちょ!ねえ!吃高君!吃高さん!?」
「いや、落ち着け大月」

あろうことか酔っ払いに落ち着けと言われた。釈然としないが、とりあえず動きが止まったのでほっとする。
吃高君は少し顔を離すととろんとした目のまま大真面目な顔でこんなことを言い出した。

「いいか、大月。俺達はせっかく仲直りをしたんだ」
「ああ、はい。そうですね。シングルにもしましたね…」
「で、俺と大月は、今まで握手もしたことがなかっただろう?」
「ああ、うん。それで無理やり握手させられたときは恥ずかしかったよなー!
打田も面白がって二回もさせるんだもんなー!いやーあれは恥ずかしかった!お客さんは喜んでくれたけ…」

何とか話を別の方向に持っていこうと殊更大きな声で話す俺の言葉を遮って、吃高君は俺の予想していた恐るべきことを口にした。

「だからもっと仲良くなろうとしただけだ」

だからってキスかよ!!
吃高君の俺の肩を握る手に力が入り、唇がだんだんと…なんて表現するのは
俺の精神衛生のために控えたい。顔がだんだんと近づいてきた。
もちろん俺は必死で止めているが、無理。顔の両側が吃高君の金髪で覆われてマジで視界には吃高君しか写らない。
俺が吃高君のファンの女の子だったらうっとりするシチュエーションなんだろうな〜、ってそんなこと考えてる場合かよ!!
167金賞 吃高×大月5/5:2009/08/29(土) 00:06:22 ID:aETyql7i0
「ちょっと!待て!吃高!四十過ぎてボーイズラブは暑苦しいから!需要だってないよ!
俺らのやおい本が書かれたのなんて二十年前の話だよ!?そもそも二十年前だって俺と君の絡みは少なくって
ってねえねえねえねえ!やめて!吃高君!?吃高――――――っ!!?」

もうだめだー!俺の唇が奪われる!某スカ、パパは四十過ぎてこんなことになってしまってごめんなさい!
と観念して思わず目を閉じたとき、肩を掴む手の力が緩み、同時に全身に吃高の体重が押しかかってきた。
恐る恐る目を明けると目の前は金色で、それは顔にかかった吃高の髪だった。
先ほどまで俺に迫っていた吃高の顔は俺の真横で畳に突っ伏していて、全身に覆いかぶさる体は寝息で規則正しく上下していた。
間一髪のところでプツンと電源が切れて眠ってしまったらしい。とにかく俺は助かったのだ。
ひとまずほっと胸をなでおろした。本当にキスされるかと思った。
いや、俺も若い頃はステージでノリで男性客とキスしたこともありましたよ?
あったけどそれとこれとは意味が違うというか、ああ、とにかく、疲れた…。
ぐったりする僕の心情なんて全く知らずに吃高君は僕の上に布団のように覆いかぶさって熟睡している。
正直なところとても重いが、動かす気力も残ってない。あ〜店員さんが来たらどうしようかな〜。
2chで「大月と吃高が抱き合って眠ってた」なんて書かれたら嫌だな〜。なんてことを考えつつ、僕は吃高君が目を覚ますのを待っていた。
168金賞 吃高×大月おわり:2009/08/29(土) 00:07:46 ID:aETyql7i0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ぬるくてすみません。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
169ときめきのカズマ 0/4:2009/08/29(土) 19:23:51 ID:jftULoceO
レスお借りします
夏戦争で、佳主×健×佳主
三年後設定です(※ひとつ前のレスで身長ネタの素敵なカズケン書かれた方とは別人です)

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
170ときめきのカズマ 1/4:2009/08/29(土) 19:27:20 ID:jftULoceO
高校に上がって初めての夏、その人は長野を訪れて来なかった。
三年前のあの夏の出来事から、親戚一同がこの家に集う機会があれば夏希姉ちゃんと連れ立って、必ず顔を見せに来ていたのに。
「別れちゃったの」
遠慮というものを知らない親戚達から矢継ぎ早に問い掛けられる質問に、あっさりとそう答えた夏希姉ちゃんの言葉が、耳に張り付いたまま剥がれない。

別れた…?
そんな話、健二さんから聞いてない。
一番最近連絡を取り合ったのはいつだっけ…と記憶辿って春にきた入学おめでとうメールが最後だったことを思い出した。
それ以来メールの一通も来ていない。
OZ内で何度かあのリスのアバターを見かけたが、メールもOZでのチャットもいつも向こうからだったから、自分から話し掛けるのがなんとなく恥ずかしくて結局そのまま素通りしてしまった。
まぁ夏になれば会えるし、なんて思っていたのに。

健二さんと夏希姉ちゃんが別れるだなんて、そんなこと、考えたことも無かった。この家で親戚に囲まれた二人はいつも仲睦まじく微笑み合っていたし、喧嘩してるところなんか見たこともない。このまま良い関係が続いてゆくゆくは結婚するのだと思っていた。
そうか、二人が別れたら健二さんに会えなくなるんだな…なんて、今さらそんな当たり前のことに気がついて、なんだか呆然とする。

171ときめきのカズマ 2/4:2009/08/29(土) 19:29:25 ID:jftULoceO
ヴヴヴ、とポケットの中のケータイが震えた。ハッ、と我に返りポケットに手を突っ込む。パチンとディスプレイを開くと、数週間ぶりに見るリスのアバターがふるふるとしっぽを揺らしながら電話をかける仕種をしていた。
一瞬の躊躇の後、通話ボタンを押し耳に当てる。

「…もしもし?」

懐かしい、年齢にしては少し高めの声が響いて、激しく胸を打っていた鼓動が和らいだことが分かった。
「もしもし?あの、健二ですけど、佳主馬くん…?」
「………」
「あの、え…と、ごめんね、行けなくて」
「………」
「夏希先輩からもう聞いたかもしれないけど、僕達わか」
「なんでずっとメールくれなかったの」
「…え?」
ああ言ってしまった。
本当は寂しかったのだ。年に数回しか会えないのも、向こうの気が向いたときにしか連絡が取れないのも。親戚付き合い程度の関係しか築けないことも。

電話越しに、少し困惑した雰囲気が伝わってきた。ごめん、とか、高校忙しいかなと思って、とか、わたわたした声で言い訳されて、胸がきゅう、と痛んだ。
「夏希姉ちゃんにフラれたから、僕とも連絡取りたくない?」
声が震えそうになるのを必死で堪えれば、目頭が熱くなった。
「そんなことないよ!」
予想通りの文句が慌てた声色で返ってくる。健二さんの優しさを利用して、わざわざこんなこと言わして、僕は何がしたいんだろう。

172ときめきのカズマ 3/4:2009/08/29(土) 19:32:08 ID:jftULoceO
一年前の夏、二人で近くの市民プールに出掛けたことを思い出した。
かんかんと照り付ける太陽の下で、自分でも珍しいくらい二人してはしゃぎ倒したせいで疲弊しきった帰り道、暑さにやられた健二さんが貧血になってしまって。
公園の木陰になっているベンチで、僕の肩にくたりともたれ掛かる健二さんに、僕がプールに連れ出したからだよね、ごめん、なんて言ったら、今とおんなじように「そんなことないよ」と言ってくれた。
その時は、その言葉と弱々しい笑顔が凄く嬉しかったのに。
今は胸が苦しいだけだ。

もう電話を切ってしまいたかった。
でも今このタイミングで切ってしまったら、もう二度と連絡をくれることが無くなってしまうのだろうな、と思うと指が動かなかった。
「それに別にフラれたわけじゃ…。二人で話合って決めたんだ」
そんな話聞きたくない。何のために電話してきたんだろうこのひと。
無言で、耳に当てているケータイを握りしめる。
「なんかね、僕の先輩に対する気持ちはただの憧れだったんじゃないのかなって。
二人でいると楽しいし、夏希先輩が他の男の人と話したりしてるとそれなりに嫉妬もしたけど…大学も別で、お互いがお互いの知らない世界を持つようになってなかなか会えなくなって…それでもあんまり寂しくならなかったんだ。それで…」
佳主馬くん…?
押し黙ったままでいる僕を心配したのか、優しい声で名前を呼ばれた。

173ときめきのカズマ 4/4:2009/08/29(土) 19:33:56 ID:jftULoceO

「僕は寂しかったよ」
声が震える。我慢するのはもう疲れた。もうなんでもいい。どうせもう願っても会えないんだ。どう思われようとどうでもいい。
「ずっと寂しかった。夏希姉ちゃんと仲良くしてるの見せつけられて悔しかった。でも別にそれでもいいと思ってたんだ…」
「え…?佳…主馬くん?」
「健二さん…会いたい」
ふえ…と情けない声が漏れる。涙が溢れてくる。
僕の嗚咽と、健二さんの微かな息遣いと、ひぐらしの鳴き声だけが聞こえる。
子供みたいに泣きじゃくっている自分が恥ずかしい。

「僕も…会いたい」
え、と思った。
三年前のあの夏の健二さんを彷彿とさせる、珍しい真剣な口調に嗚咽が止まる。
去年の夏の、公園のベンチでの情景がフラッシュバックした。今までにないくらい距離が近かった。健二さんの体温を感じてドキドキした。あの時のあの公園のあのベンチは、僕と健二さん二人の世界だった。
「待ってて!」
「え?ちょっ…」
そう叫んで返事も待たずに電源ボタンを押した。
手荒く涙を拭い、数日分の着替えが入った旅行用のカバンに財布とノートパソコンを押し込んで長い廊下を駆け抜ける。
「ちょっと!佳主馬、どこ行くの!」
鉢合わせた母親に驚いた様子でかけられた問いに、東京!とだけ返して家を飛び出した。
174ときめきのカズマ おわり:2009/08/29(土) 19:36:20 ID:jftULoceO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

もう、電車も新幹線もないわよ!とかって連れ戻されたらマヌケで可愛いですね
お粗末さまでした
175風と木の名無しさん:2009/08/29(土) 20:25:51 ID:MoXktn9ZO
>>168
GJGJ!!まさかこんなところでこの二人を見れるとは…!物凄く萌えました
本当GJ
176憂鬱な悪夢 1:2009/08/29(土) 22:19:22 ID:FnhhYS30O
こないだケンカズを投下した者ですが、再びケンカズでお借りします。少し健二が情緒不安定気味なのでご注意下さい。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
午前一時。今日は久々の集まりで大宴会が行われ、疲れ果てた親戚、家族は熟睡。
僕はといえば、スポンサーから送られてきた契約の確認の返信やら何やらに追われて、結局こんな時間までキーボードを叩く羽目になった。
「……よし」
ボタンを押して、送信完了の文字が出るのをぼんやりと眺めていると、後ろから小さく戸を叩く音がした。律儀にノックする奴なんて一人しかいない。
「なに?」
ヘッドフォンを外しながら応えると、困ったような、若干頼りない声が向こう側から聞こえてきた。
「別に、特に用事がある訳じゃないんだけど、佳主馬くんなら、もしかしたら起きてるかもしれないなぁなんて……」
そう言いながら、入ってこようとしない。
パソコンの電源を落として、戸を引くと、右手に枕と薄い毛布を持ったジャージ姿の健二さんが、廊下に突っ立っていた。なんだか今にも死にそうな顔をしてる……気がする。ラブマシーンにアカウントを取られた時の事を、少し思い出した。
177憂鬱な悪夢 2:2009/08/29(土) 22:20:58 ID:FnhhYS30O
「や、やあ」
「とりあえず、入れば?」
お邪魔します、とか何とか、よくわからない礼儀正しさをみせながら、健二さんが壁の隅の方に座る。……無言。目で促しても、曖昧に笑って、それで終わりだった。わけがわからない。
「用がないなら――」
「あるあるある!ありますっ!」
「じゃあ何」
健二さんは一瞬目を泳がせて、やがて諦めたように視線を僕に戻した。ひとつ、深呼吸をする。
「あの、今晩だけ、ここで一緒に寝ちゃ駄目かな」
「……………は?」
「いや、変な事言ってるのは百も承知なんだけど、その、なんていうか、ええっと、あの」
赤くなったり青くなったりしながら、健二さんはそのまま不思議な動きをしながら必死に、その、とか、あの、を繰り返していた。理由はさっぱりだけど、なんだかこの必死ぶりは、段々と可哀想になってくる。
自然とため息が漏れた。
「……いいよ」
「ほ、ほんとに!?」
「布団ひとつしかないから狭いけど」
ありがとう、と、本当に嬉しそうな顔をするから、なんだかこっちが恥ずかしくなって、直ぐに明かりを消して、布団に潜り込んだ。少しして、健二さんがぽつりと呟く。
178憂鬱な悪夢 3:2009/08/29(土) 22:22:27 ID:FnhhYS30O
「……さっき、夢をみたんだ」
お互いに後ろを向いているから、顔はわからない。夢で落ち込むなんて子どもみたいだよね、と健二さんは笑ったけど、なんとなく、嫌な笑い方だ。応えるわけでもなく、僕はただ壁をみつめていた。
「ここに遊びに来るんだけど、陣内家の人達は、僕事なんか忘れてしまってるんだ。ラブマシーンの事も、お婆ちゃんの事も、まるで最初から何もなかったみたいに。翔太兄、おばさん、おじさん、みんな、僕なんか知らないって言うんだ。
……佳主馬くんも」
「……っ」
いきなり強い力で右腕を引っ張られて、天井、正しくは覆い被さってきた健二さんと目があった。
「ねえ、僕は、ここがなくなってしまったら、どこにいけばいいのかな」
譫言のように、それは聞こえた。何分だろう。それから暫くお互い無言のまま目を離せずにいて、その内健二さんは布団に入る前の、あの頼りない顔に戻った。
「……ごめん、僕ってばどうかしてた。本当に、ごめん」
そのままゆっくり、僕から離れて、戸の方へ歩いていく。
「……」
「……佳主馬くん?」
気がついたら、今度は僕が、健二さんの腕を掴んでいた。
179憂鬱な悪夢 終:2009/08/29(土) 22:25:04 ID:FnhhYS30O
「それでも」
うまくいえないけど、言わなきゃいけないと思った。
「ずっと、……ずっと、ここにいればいい」
我ながら素直じゃないし、いまいち答えになってない。
でも伝わったみたいで、暗くてよくみえなかったけど、多分、健二さんは笑っていた。返事の代わりに腕を掴んでいた指をそっと剥がされて、指を絡められる。ふわりと抱き付いてきた健二さんからはシャンプーの匂いがして、僕は繋いでいない方の手を、彼の髪に伸ばした。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ありがとうございました。
180風と木の名無しさん:2009/08/29(土) 23:33:16 ID:q4Ok4Gef0
>>168
うおー!まさかここで金賞の話が読めるなんて…
仲直り後の仲良過ぎなふたりを見ていてモヤモヤしてたので
とても嬉しい!GJ!!
40過ぎたおっさんでも二人ともかっこかわいいからBLでも問題なし!
181風と木の名無しさん:2009/08/30(日) 00:29:00 ID:4D2eaESA0
>>168
GJ!をスタンディングオーベーションで送りたい
むしろ40過ぎてからの方がどんとこいだ
O件の文章を読んでるみたいでした
和み萌えた。本当にありがとう!
182風と木の名無しさん:2009/08/30(日) 00:31:24 ID:gu0W2uTvO
>>131
まさかここで三/宅マソが読めるとは…!
gjすぎる萌えをありがとう
183近くに:2009/08/30(日) 02:09:31 ID:zDlWP5XG0
先日夏戦争801板でお騒がせしたものこと632です。
健二←佳主馬もので今度は佳主馬視点の小説です。
話的には続いてるんでお先にそちらをどぞ。保管庫に入ってます。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

キーボードを鳴らす音しか部屋に音はない。
佳主馬は未だ頬が火照ったまま治まらず、どうしようかと考えている。
あんな風に言われるとは思わなかった。
「くそっ」
一人そう吐いてみるものの、健二のことを考えれば苦しくなってしまう。
もうあっという間だった。
あの事件の後、自分の心が健二に惹かれているのは明らかだった。
どこがいいとはわからない。
ただ健二を見ると嬉しくなってしまうのは事実だった。
佳主馬にとってこれは初恋だった。
この一週間、佳主馬はひたすら頭を悩ますこととなる。
健二には既に夏希がいる。
元々健二は夏希のことが好きだったみたいだし、夏希もあの事件後健二に惹かれている。
自分の入る隙間などない。
キーボードを操作してる手を止め、佳主馬はパソコンの電源を切る。
そして、先程まで健二が座っていた座布団を引き寄せぎゅっと抱くとそのまま寝転んだ。
「くそっ」
もう一度そう吐いてみるも、その言葉は夏の暑い空気に消えて溶けた。
184近くに 2:2009/08/30(日) 02:12:37 ID:zDlWP5XG0
「佳主馬!晩ご飯よ」
聖美がそう言って部屋の戸を開けると、佳主馬は布団の上で丸まっていた。
「いらない」
「何言ってるの。冷めちゃうからさっさと来なさいよ」
そう言う聖美の言葉を無視して佳主馬は背を向ける。
本当はこの部屋でいるのも随分暑くなってきたし、お風呂でも入りたいところだったが出る気にはなれなかった。
佳主馬はずっと抱いていた座布団に力を込めると、顔を埋める。
頭の中は既に何を考えているのかわからない状態だった。
様々な思考が行ったり来たりして、複雑にからまりあっている。
ただ、その思考の全ての根元が小磯健二という人間に繋がっていることは確かだった。
佳主馬はやっと重たい体を起こすと部屋を出た。
涼しい風がさらさらと流れ、汗でべたついた体が涼しい。
先にお風呂に入ってしまおうかと思ったが、後で母さんがうるさいな、と考え茶の間へ向かうことにする。
茶の間へ向かっていると、段々と聞える声が大きくなってくる。
あの中に健二がいる。そう考えると胸が熱くなった。
嬉しいのか辛いのかわからないそんな感覚。
茶の間に到着すると、騒がしい食事が既に始まっていて、いつも自分の定位置に座る。
「速く食べてしまいなさいね」
聖美が横でそう言って、佳主馬の茶碗を持ってご飯を盛りに行く。
佳主馬はチラリと健二の方を見ると、夏希と談笑しながらご飯を食べていて、元々ない食欲が更に減った気がした。
185近くに 3:2009/08/30(日) 02:14:28 ID:zDlWP5XG0
「佳主馬、元気ねえじゃねえか」
少し遠くから万助が佳主馬に声をかける。
「別に普通だよ、師匠」
万助が自分を見ているが何も言わない。
佳主馬は聖美からお茶碗を受け取ると、お箸をとって食事を始めた。
万助もそんな佳主馬に何も言わず、手に持っていたビールをごくりと飲み、他の人と会話を始める。
少しずつ白ご飯だけ口に運ぶが減る気配はない。
お米の甘い味がやけに舌に染み込む。
「ごちそうさま」
「あれ、もういいの?」
「うん」
結局おかずには全く手をつけず、お茶碗に盛られたご飯だけ食べると席を立つ。
もう一度健二の方を見ると、まだ夏希と笑っている。
何故だか凄く腹がたってきて、早足で部屋へと戻った。
「……何やってるんだよ、ボク」
そう一人ごちてみるも返してくれる相手はいない。
はぁ、と溜息をつくと布団に寝転ぶ。
今日は何もする気が起きないな。
いつもならこのままパソコンを起動するけど、そんなことしている気分じゃない。
佳主馬は目をつぶり、寝ようとした瞬間ドアが開く。
186近くに 4:2009/08/30(日) 02:16:35 ID:zDlWP5XG0
「少し相手しろや」
「師匠……」
万助がそこに立っていて、佳主馬を見下ろしている。
「型とるぞ」
「……わかった」
佳主馬は立ち上がると、万助に連れられ庭へと出る。
そのままふぅ、と息をついて姿勢を正す。
「悩み事があるなら言ってみい」
「…………」
体全体を動かし、動きに集中する。
「まぁ、男だったら隠し事の一つや二つあるもんだが、まだ完全に大人になってねぇだろ」
「……どこから大人なの」
「そりゃあわかんねぇ。いつの間にかなってるもんだ」
「答えになってないよ」
ガハハ、と笑う万助に、佳主馬は溜息をつく。
「とりあえず何を悩んでるか知らんが、それが態度に出てたらまだまだ子供だな」
「……出してない」
「出とるわ」
そのまま沈黙が続き、夜風だけが流れる。
家の中からは様々な音が聞えてきて騒がしい。
「大人って難しいね」
「ああ」
一通り型をとり終えると、佳主馬は家の中へと入っていく。
「体動かしたら楽になった。ありがとう師匠」
「おう」
後ろからその返事だけ聞えて佳主馬は何だか心が少し楽になった気がした。
とりあえず今は忘れてお風呂にでも入ろう。
187近くに 5:2009/08/30(日) 02:18:19 ID:zDlWP5XG0
お風呂場はちょうど空いていたみたいで、脱衣所で服を脱ぐとお風呂に入る。
シャワーを出し、頭からお湯を被り暫く何もせずお湯にうたれる。
何も考えず、頭にあたった水が体を伝いタイルに流れていく。
何分か経って、そろそろ頭でも洗おうかとしたとき急に風呂場のドアが開いた。
「佳主馬くん、入るよ?」
「え」
健二が立っていた。
「おばさん達が後ろ込んでるから一緒に入っちゃいなさいって。大丈夫?」
「え、ちょ、ちょっと待って!」
あまりにも突然すぎて、頭の中でパニックが起こる。
いくら少し気が楽になったからってこういう急な展開は困る。
これはちょっとないだろ!バカ!
そんな誰に向けてかわからない罵倒を心の中で連発し、どうしたらいいかわからずとりあえず近くにあったタオルを腰に巻いた。
「だ、大丈夫?」
「…………大丈夫」
そう返事すると健二は一度ドアを閉め、服を脱ぎ始めたようだ。
佳主馬は、太極拳で型をとるときのように大きく呼吸をした。
少し落ち着いて、とりあえずシャンプーを出して髪の毛を洗い始める。
これで顔は見えないはずだ。
って、何で隠す必要あるんだ。
そうこう考えているうちにまた扉が開いて、健二が入ってきたのを感じ、佳主馬は体を少し固くさせた。
188近くに 6:2009/08/30(日) 02:20:31 ID:zDlWP5XG0
「えっと、先につかっとくね」
そう言って、健二は一度掛け湯をすると湯船の中に入る。
佳主馬は髪の毛を泡立たせ、洗っていた。
少しの間沈黙が訪れ、風呂場が急に静かになった。
どうしようかと佳主馬が考えていると、健二が口を開く。
「……佳主馬くん、昼間はごめんね」
そう突然健二が言った。
「何で謝るの」
そう佳主馬は返すと、健二が少し黙る。
「……何か変なこと言っちゃたし」
「別に謝ることないじゃない」
「そうかな……?」
「そうだよ。それにお兄さんのこと嫌いじゃないって言ったじゃん僕」
思い出したらまた恥ずかしくなってきた。
昼間に言われたことを思い出して、佳主馬は顔を赤くする。
あれは色々とダメージが凄かった。
それを隠すようにシャワーからお湯を出すと、頭についた泡が流れ落ちていく。
シャワーを出す音だけが風呂場に響いた。
暫くして、湯船の中で体を伸ばしていた健二が佳主馬の方を見て言った。
「じゃあ、明日遊ばない?」
佳主馬はシャワーを止めて健二の方を見る。
「……遊ぶって……何するの?」
「うーん……虫取りとか?」
「子供じゃん」
「じゃあゲーム」
「ゲームはしない」
せっかくこうして誘ってくれてるのにどうしてここまで言ってしまうんだろう、と佳主馬は少し後悔。
大人だと上手く返事が出来るようになるのだろうか。
健二は頭をひねり、色々考えているようだが口を出してこない。
佳主馬も何か話題を出そうと考えていると、まだ全く手をつけていない宿題のことを思い出した。
189近くに 7:2009/08/30(日) 02:21:58 ID:zDlWP5XG0
「……宿題教えてよ」
「え?」
「数学得意なんでしょ?」
「い、一応……」
「じゃあ明日教えて」
ジッと健二の方を見る。
ダメだ。やっぱり自分はこの人のことがどうしようもないくらい好きらしい。
こうして見ていると胸が今にも爆発しそうなのだ。
「わかった。じゃあ明日教えるよ」
「うん」
佳主馬はナイロンタオルをとると、石鹸をつかって泡立てる。
「頭洗う?」
「うん」
佳主馬は椅子から立ち上がると湯船の横に移動し、健二も湯船からあがるとその椅子に座りシャワーを出した。
体を洗いながら健二の後ろ姿を見ていると、何だか少し胸がドキドキしてきて目を逸らす。
細いけど、自分よりは大きい背中だ。
健二はもう大人なんだろうか。
万助の言う大人にはもうなっているのだろうか。
髪の毛から流れ落ちる水が鬱陶しくて首を軽くふる。
一通り体を洗い終えると、湯船の湯を桶で掬って流す。
健二も頭を洗い終えたみたいで、ナイロンタオルを軽く洗って健二に渡す。
そして湯船に入ると、ふうと息をついた。
「佳主馬くんって、何で勝つこと好きなの?」
そう体を洗いながら健二が佳主馬に尋ねる。
思わず肩がはねる。
190近くに 8:2009/08/30(日) 02:25:04 ID:zDlWP5XG0
「……ボクが昔いじめられてたの知ってる?」
「まあ、ちょっとだけ」
申し訳なさそうな顔をして返事する健二に佳主馬は少し笑う。
「別にいいよ。それで、すっごい腹たって負けたくないって思っただけ。そこからかな」
「そっか」
「お兄さんはどうして数学好きなの?」
今度は質問をし返す。
「どうしてって言われてもなぁ……気がついた時にはもう好きだったし……」
「……気がついた時?」
「うん、気がついた時」
シャワーをひねりお湯を出すと、健二は体についた泡を落としていく。
「それでどうしたの?」
「どうしたのって、好きだから頑張ったよ」
健二の顔を見て、すぐに視線を下げる。
「……そういうものなのかな」
独り言のように呟くと、健二が笑って言った。
「そういうものだよ、多分ね」
191近くに 9:2009/08/30(日) 02:28:05 ID:zDlWP5XG0
そういうと健二は立ち上がり佳主馬を見て言った。
「僕、もう出るけど佳主馬くんは?」
「……もう少し入ってるよ」
「わかった」
そう会話を交わすと、健二はドアに手をかけた。
「お兄さん」
ドアを開けて、健二が振り向く。
「どうかした?」
佳主馬は健二の顔を見て、今度は視線を落とさずに言う。
「明日、教えてね」
そんな佳主馬に健二は笑うと返事する。
「了解」
そう言って、健二は脱衣所に入ってドアを閉める。
佳主馬はふう、と息をつくと天井を見上げた。
「頑張る、か……」
先ほどの健二の言葉を思い出して、佳主馬は手をぎゅっと握る。
「頑張ろう」
そう呟くと、佳主馬は大きく体を伸ばして大きな息をついた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

男前な乙女佳主馬が大好き!
192夏戦争 理×侘 0/5:2009/08/30(日) 03:32:20 ID:VawoV20O0
レスお借りします
夏戦争の理一×侘助です。
陣内家の同年代男性陣萌え…!
>>31 >>66 >>85 の姐さん方GJです^^
若干ネタ被りすいませんorz

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
193夏の日の記憶 理×侘 0/5:2009/08/30(日) 03:33:12 ID:VawoV20O0
侘助と初めて会ったのは、十歳の時だった。
本家の大人達の噂話で、侘助がどういう存在なのかは知っていた。
姉の理香も、なぜそんな子供をうちで引き取るんだとムっとしていたのを覚えている。
だけど、理一は純粋に興味があった。
同じくらいの友人達は、理一が陣内家の人間だということで一歩引いて接してくる。
『大きなお屋敷の子だから。何か失礼があってはいけない』
大人たちのそんな余計な気遣いで、理一には心を許せる親友と呼べる相手がいなかったのである。
親戚でもある、年の近い頼彦邦彦克彦の三兄弟や太助だけが、理一が気兼ねなく遊べる相手だった。
ただ、彼らもずっと家にいるわけじゃない。
子供の頃から少しずつ疎外感を感じていた理一にとって、同い年の子供が家に来るということは大きな事件だった。
同じ陣内家の人間なら、気遣われたりしないだろう。
単純にそう思って、理一はその子供が来るのを指折り数えて眠った。

栄に手を引かれてやってきた侘助は、細くて色の白い、それでいて力強い目をした少年だった。
今思えば、あれが理一の初恋だったのかもしれない。

194夏の日の記憶 理×侘 2/5:2009/08/30(日) 03:33:52 ID:VawoV20O0
侘助がその家に連れてこられたのは、十歳の時。
母親を亡くしたばかりだった。
小さい頃から妾の子と罵られながら、病弱な母は女手一つで侘助を育てた。
だが、次第に身体は弱り、ついには起き上がれなくなって。
母が死んでも、どうしていいか分からなかった。
そんな侘助の元に現れたのが、栄である。
母の死後の処理を全て引き受けて、栄は「今日からうちの子になるんだよ」と言った。
そんな風に大人に真正面から目を合わせて言われたことなんてなかったので、侘助は思わず素直にその手を握っていた。
「うちにはあんたと同じくらいの子供がいるからね。きっと仲良くなれるだろうよ」
理香と理一っていうんだ。そう言われて、侘助は少しだけ気分が重くなった。
どうせ、妾の子のくせにとかなんとか言われて、いじめるような奴に違いない。
勝手にそう思い込んでいた。
実際、今まで周りはそんな奴らばかりだった。
期待するな。どうせ裏切られて、傷つくのは自分だ。

そう思っていた侘助は、ある意味で予想を裏切られた。
195夏の日の記憶 理×侘 3/5:2009/08/30(日) 03:34:21 ID:VawoV20O0
初めて過ごす陣内家の夜。
侘助は一人与えられた部屋で眠れない夜を過ごしていた。
初めて来たときは驚いた。
話には聞いていたが、こんなに大きな屋敷だなんて思わなかったのだ。
一人は慣れているが、この家には他にも人が居る。
なのに気配を感じない。
不思議な空間だと思った。
侘助の部屋は、本宅のかなり奥に用意されていた。外聞とかそういうことを考えた結果なのだろう。
それとも、栄が気を遣ったのだろうか。
吊り下げられた蚊帳の中で、侘助は月明かりに照らされた外をなんとなく眺めていた。
その時だった。
「なぁ、起きてるか?」
小さな声がかけられて、縁側の下からひょっこりと顔があわられた。
たしか、理一と言っただろうか。栄の孫、つまり自分にとっては甥という存在にあたる。
同い年なのにおかしな話だ。
理一は、侘助が目を開けていることを確認してからそっと蚊帳の中に入ってきた。
「なんだよ」
「ちょっと、出てこいよ」
「なんで?」
「いいから!」
初日から喧嘩でもしようというのだろうか。だが、理一の声はそんな雰囲気ではなかった。
どうせ眠れなかった侘助は、しぶしぶといった感じで理一の後についていった。
「…どこ行くんだよ」
「行ってからのお楽しみ」
そう言って悪戯っぽく笑う理一に、侘助はどうしていいか分からなくて顔をそむけた。
理一は、家の裏側の林を慣れた様子で進んでいく。
自分一人では迷子になりそうだ。
「こっち!」
いつの間にか、理一の手が侘助の手を掴んでいた。
なぜかその手をふりほどけなくて、自分の中で「迷ったら大変だから」と理由をつけてそのままにしておいた。

196夏の日の記憶 理×侘 4/5:2009/08/30(日) 03:34:47 ID:VawoV20O0
そして、ようやく細い道を抜けた、と思った瞬間。
侘助は声を忘れていた。

「な、綺麗だろ?俺達の秘密の場所なんだ。あ、俺達っていうのは、他の従兄弟達なんだけど」

理一に声をかけられるまで、侘助はその光景に見とれていた。
林の奥にぽっかりと空いた場所に、池がある。
そこに、無数の蛍が光っては飛んでいたのだ。
見上げれば、池の真上にはまん丸い月が浮かんでいた。
「さっき、あんまり話できなかったからさ。俺、お前が来るの楽しみにしてたんだ」
「俺を…?」
「なんか、弟ができるみたいっていうか…同い年なのに、変かもしれないけど」
「兄じゃないのかよ」
「俺の方が、背が高いだろ」
「まだ分かんねーよ。これから伸びるかも」
ムキになって答えた侘助に、理一は噴出した。
「もう、どっちでもいいや。とにかく、大人はうるさいかもしれないけど、俺そういうの気にしないから!」
「……勝手にすれば」
能天気に笑う理一に、すっかり毒気を抜かれてしまった侘助は、つられて少しだけ笑った。
理一と一緒に見る蛍の光は、悪くない。
「今度は頼兄達と一緒に来ようぜ」
他の従兄弟達も、理一のようならいい。


侘助は、ここでようやく本当の「家族」を手に入れたのだ。
197夏の日の記憶 理×侘 5/5:2009/08/30(日) 03:39:00 ID:VawoV20O0
「…行くのか」
「ああ、早いほうがいいだろ」
ラブマシーンを分解し、あらわしが落下してから数時間後。
皆が疲れ果てて寝静まった後、こっそり外に出ようとした侘助は、玄関で理一に捕まった。
「送ってくよ」
「へぇ、そりゃ助かる」
「別に。勝手に乗っていかれちゃ困るからな」
今や無事な車は少ない。翔太の大事なRX-7は、侘助によってボロボロになってしまった。
「信用ねぇなぁ」
「当たり前だろ。十年前を忘れたのか?」
理一に言われて、侘助はシシシ、と笑った。
「覚えてるさ。…忘れるわけねぇ」
「そう、だな」
あの日、この家で侘助は理一に抱かれた。
何がきっかけだったのか、今では覚えていないけれど。
渡されたメットを被り、侘助は理一のサイドカーに座った。
「俺は、あれが原因だったのか、とか結構悩んだんだけどな」
「…別に、そんなことはなかったさ。むしろ逆だな。出て行くから、抱かれた」
「なんだよそれ」
「後は自分で考えな」
エンジンを吹かして、理一が発進する。
「どこまで?」
「とりあえず、近くの交番かな。翔太んとこ以外でな」
「了解」
198夏の日の記憶 理×侘 6/5:2009/08/30(日) 03:39:57 ID:VawoV20O0
しばらくは、夜の上田市をお互い何も言わず走り続けた。
そうして、上田市の交番に着いたその瞬間。
「……っ」
理一の顔が、狭い視界に一杯になる。
カツン、というゴーグルの当たる音とともに、理一の唇がメット越しに落とされた。
正直、生でされるよりよっぽど胸が騒いだ。
「片付いたら、ちゃんと連絡しろよ」
動けないでいる侘助のメットを外して、理一が悪戯っぽく笑う。
ああ、俺達は結局、あの頃から何一つ変わっていないのかもしれない。

侘助は、あの日の夜の蛍を思い出して、一人苦笑したのだった。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

夏戦争続いてるのに空気読まずすいませんでしたああああ
あと連番ミス多すぎ失礼しました…orz
19920世紀の男の子検事&rarr;←乙著襲い受けエロ:2009/08/30(日) 07:41:38 ID:+zi0J5L00
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < 金曜ロードショー+劇場で三作目見たら色々抑えきれなくなったのでやった
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < 一応劇場版三章後設定のつもりなので半生+メンズラブ注意。ネタバレというほどの物はありません
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < でも設定が非常に適当なのでこれはもう別物かもしれないね
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"
200検事&rarr;←乙著・器用貧乏なぼくら1/4:2009/08/30(日) 07:43:05 ID:+zi0J5L00
なんとなしに流されてここまで進んでしまったがやはりこれはおかしい。
俺の体に覆い被さるように跨った相手はすっかり一人で肛門を解し終えて、
やわらかくなったそこに俺の一物を宛がいこちらを熱っぽく見つめている。
相手が少し腰を落とすだけでいつでも俺たちは繋がれるだろう、そんな状態。
やっぱりおかしい。
「な、ちょ、待て!待て、待て、待てってオイ!」
今更焦りながら目の前の体を押し返……せない。
……少し考えてみれば当然のような気もする。
普通に考えて俺なんかより色々やってきた相手の方が頑丈なのだろうから、
俺がちょっと押したくらいでびくともするはずがないのだ。当然なのだ。
仕方ないので穏便に会話で解決を試みる。
「なんで、こうなるんだよ!?」
本当、なんでこうなるのだ。
「何故?お前とこうして十数年振りにやっと再会できたからセックスする、何もおかしくはないだろう?」
たしかに俺たちはかれこれ十数年振りの再会だ。うーん、実に喜ばしい。
しかし、だからといって同性の幼馴染でありこの前までの戦いで共闘した戦友、
と再会したからとセックスするのはおかしくない事なのだろうか。
俺はおかしいと思う。そう、別に、俺たちはそういう事……
セックス、なんてするような関係……たとえば恋人同士、とかじゃなかったし。
「……俺たち、そういう関係じゃ、ねえし。いきなりセックスとか、おかしいだろ」
……自分で言ってちょっと傷付いた。
201検事×乙著・器用貧乏なぼくら2/4:2009/08/30(日) 07:44:38 ID:+zi0J5L00
「でもお前、俺の事、好きだったろ」
「なっ!」
まさかの爆弾発言。何故知ってる。
「俺もお前の事好きだった」
二つ目の爆弾投下と共に乙著は姿勢をずらし、剥き出しのままの俺の一物に手を這わす。
「でなきゃ俺もお前もこんな事何度もする訳無い、今も、……昔も」
そう言いながら、その大きな手のひらで二人分の性器をゆるりと握り込み、
どこか懐かしむような手つきでねっとりと粘着質に擦り合わせる。
うわ……ヤッベ、相変わらず気持ち良い。
「それともお前、昔、俺とこんな事何度も繰り返しておいて何も思わなかったのか」
こんな事。……たしかにこんな事は、した。
やらしいポスターやらエロ本やらに性を刺激されまくった少年の頃、なんとなく。
それこそ少年の発想、少年の衝動で、お互いのをさわりっこ、なんて真似もした。
でもそれだけだ。性欲に任せお互いの性器を刺激を与えあっただけ。
もちろん、何も思ってなかったと言えばそれは嘘だ。
本当に何も思っていなかったなら相手は丸尾でも義経でもよかった。
何か思っていたから、乙著の事が好きだったから、毎回相手は乙著を誘ったのだ。
しかしそれはあくまでさわりっこだけの関係、俺たちはお互いを好きだと言った事すら無い。
たしかに俺は内心乙著の事が好きだった、ずっと好きだった。
でもそれを口にした事が無い以上、俺たちはやはり、セックスをするような関係ではないような気がする。
202検事×乙著・器用貧乏なぼくら3/4:2009/08/30(日) 07:45:29 ID:+zi0J5L00
「検事……もう一度言うぞ。
 俺はお前が好きだ。あの頃だってお前が好きだった。お前も、俺が好きだろう」
そう言って、乙著がさっきからずっと逸らしていた俺の顔をぎょろりと覗き込む。
あの頃と変わらぬ強い目は、確信めいた色を以って俺の目を真正面から射抜く。
……ああ、やっぱり、嘘は吐けない。
「……そうだよ、ああそうだよ。俺はお前が大好きだ」
好きな奴に好きだと言われ、お前もだろうと詰め寄られ、どうして嘘が吐けるだろう。
「だったらやはり、セックスするのはおかしくないな。続けるぞ」
だけどやっぱり、それにウンと素直に頷くのは、何か違うような気がするのだ。

「なあおい、待てよって」
再び挿入の体勢に移った目の前の体を押し返……せないので押し止める。
一度ならず二度までも邪魔をされ、乙著は少しだけ不快そうに眉を寄せた。
「まだ何か問題があるのか?」
「いや、だってよぉ……」
「お互い好き同士だろ」
「でも男同士じゃんか」
「それでもセックスはできる」
「どうやって!」
203検事×乙著・器用貧乏なぼくら4/4:2009/08/30(日) 07:46:19 ID:+zi0J5L00
「どうやって……って、検事……
 ここまでやってるんだから、いくら童貞のお前でも分かるだろう」
いや、分かる。分かるけども。なんか腑に落ちない。つーか童貞じゃねえよ!
「俺の、ココに……お前のコレを、挿れるんだ。……これは、セックスだろ?」
低めた声で囁き、俺の手を誘導して該当箇所に触れながら説明する。
なるほどたしかにこいつは俺の知るセックスに似てるみたいだ。
「……なんでだよ」
「……?逆がいいのか?」
「違う!そうじゃ、なくて……」
なんでそんなにこなれてるんだ。

「……生きていると、色々あるのさ」
俺の心を読みでもしたのか、不思議と的確な答えをくれた乙著は、
「なあ、次はもう邪魔しないでくれよ」
俺はな検事、お前としたいんだ。お前も、同じだろう?
吐息混じりにそうとだけ言うと、ゆっくりと腰を沈めだした。
俺はやっぱり本当に乙著が好きだから、
これ以上つまらない言い訳をして邪魔をする気なんてもう無かった。
204検事×乙著おしまい:2009/08/30(日) 07:49:02 ID:+zi0J5L00
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < 中途半端に力尽きたので若干急ぎ足でまとめ
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < 冗長な上、本当にやまもおちもいみもない!!おまけにキャラ崩壊スマソ
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < さらに>>199-200のタイトル表記ミス失礼しました…
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ
205( ・∀・)と('A`)のようです 1/8:2009/08/30(日) 09:59:25 ID:Ky1OgTnUO
ブーン系です。注意です。
最初は総合に投下しようと思っていたものなので、愛情成分はほぼ無いに等しいです。
あと暴力注意です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!






抵抗してくれる彼の心に涙が出た。
同情と嬉しさと蔑む心。
その中立を保ちながら今僕は立っているのだった。


( ・∀・)「起きてよ」


言っても言っても起きないもんだから髪を引っ張ったらやっと起きた。
蹴飛ばした腹が痛いらしい。
うう、とうめき声が聞こえる。
いつものことなのに慣れないのだろうか。
痛みは調節できないんだから面倒だ。

彼は真っ黒い目で見上げていた。
気色が悪い。
そこに穴が空いているようだと感じる。


('A`)「…いてえ」
( ・∀・)「そう」
206( ・∀・)と('A`)のようです 2/8:2009/08/30(日) 10:06:29 ID:Ky1OgTnUO
それじゃあ声も出ないようにしてあげよう。
もう二、三回同じ所を蹴った。
むせている彼自信に吐き気がする。
死ねばいいのに。
生きてる価値無いんじゃないだろうか。
ああ、そのまま吐いてくれるな。
このスーツすごく高いんだから。

もうとっくの昔に閉店時間を迎えた居酒屋の裏の道。
この時間この辺の交通量は0に近い。
だから誰にも見つからない。
そのことを彼は知っているのだろうか。
知っていると良い。
もっと絶望して。
知らなくても良い。
来ない助けをこう彼を見るのも面白いかもしれない。
207( ・∀・)と('A`)のようです 3/8:2009/08/30(日) 10:16:38 ID:Ky1OgTnUO
( ・∀・)「ねえ痛い?ねえ」
('A`)「…うるせえ」
( ・∀・)「答えないとやめないよ?」
('A`)「どうせ答えてもやめねえんだろ」
( ・∀・)「おお、」


君にしては上出来だこれからのことを理解している腐った脳味噌にしては良くできた返答ではないか。
彼の腕は男らしさの片鱗も感じさせない。
白くて細くてガリガリだ。
気味が悪い。
強くつかむと骨の形と強さが感じられる。
折ってしまいたい。
きっとすごく気持ちが良い。
ああでも、こいつにそんな力を使うのももったいないや。
手を離すと真っ赤になった手首が毒々しい色を放ちながら急降下する。
彼はこちらを睨んでいた。
嫌いじゃないよ、そういうところ。
好きってわけじゃないけどね。
208( ・∀・)と('A`)のようです 4/8:2009/08/30(日) 10:24:51 ID:Ky1OgTnUO
空は彼の目や髪のように真っ黒で限りがない。
月すらも見えない。
今日は新月だっけ。
ただ天気が悪いだけかもしれない。
排気ガスに隠された星たちは存在などしないようだ。
それでいいと思う。
無意味なものなどこの世界には必要無い。


( ・∀・)「…残念だなあ」
('A`)「何が、だよ」
( ・∀・)「君に彼女がいないことだよ」


彼女でもいれば目の前で犯すなり何なりしてやるのに。
あ、そうだ。


( ・∀・)「君の妹なんてどうだろう!」
209( ・∀・)と('A`)のようです 5/8:2009/08/30(日) 10:33:25 ID:Ky1OgTnUO
がばりと起き上がって僕を見上げる。
思った通りだ。
彼の真っ黒い目が見開かれてふるえる。
唇がゆがむ。
舌の上からやめてくれと声が出る。
楽しいな。
非常に愉快だ。
信じなくていいよ。こんな嘘。
僕はあの子に興味がないもの。
だって、貞子ちゃん抵抗してくんなそうだから。


('A`)「やめてくれ、頼む、何でもするから」
( ・∀・)「…それじゃあドクオ君が代わりになってくれる?」
('A`)「なる、なるよ、なるから」


ももを蹴って踏みつぶすと小さく息の音が聞こえた。
ジーンズのそこだけが土で茶色い。
210( ・∀・)と('A`)のようです 6/8:2009/08/30(日) 10:40:34 ID:Ky1OgTnUO
だけど犯す訳じゃない。
僕は女の子が好きだし君にたつほど僕のソレは不能ではない。

横になった彼の首を踏む。
じわじわ、ゆっくり。
ひゅうひゅう口から空気が漏れる。
苦しそうな顔が汚らしい。
まるで酸欠の金魚のように口が開かれる。
顔中が涙と鼻水にまみれている。
ああ本当に気色が悪い!

彼の真っ暗な目は真っ暗な空を見つめている。
やっぱり星なんて必要ないんだ。

************************

川д川「それじゃ、いってきまーす」
('A`)「おお、行ってこい」
211( ・∀・)と('A`)のようです 7/8:2009/08/30(日) 10:47:00 ID:Ky1OgTnUO
夏なのに長袖、室内なのにマフラー姿で彼が手を振っていた。
外は明るすぎて目が眩む。
それに暑くて汗が出る。
面倒だ。
それにこの子飽きたし。
でも、この子と仲良くしてなきゃ彼をどうもできない。
実に面倒だ。

彼女の目と髪は兄と同じように夜の色をしていた。
風が吹くとさらさらと揺れる。


川д川「モララーさん聞いて下さい。最近お兄ちゃんが変なんです」
( ・∀・)「変?」
川д川「夏なのにいつも厚着だし、それに何か隠してるみたいな…」
( ・∀・)「…へえ」


心配です、と漏らした彼女に涙が出る。
なんて美しい兄妹愛だ。
みんながみんな馬鹿みたいに勘違いしてる。
お兄ちゃんが隠し事をしてるのは君のせいだよって教えてあげたら、この子も彼みたいに泣くんだろうか。
212名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 10:49:07 ID:HIM8/8C40
>>204おおおお…とってもGJ!!自分も早く見に行きたい!
乙著は右だよなっwwww同士が居たので嬉しい
213( ・∀・)と('A`)のようです 8/8:2009/08/30(日) 10:54:39 ID:Ky1OgTnUO
( ・∀・)「今日はどこ行きたい?」
川д川「えっと…お洋服を買いに行きたいです」
( ・∀・)「そっか」


太陽に照らされたコンクリートを蹴る。
彼女の手はびっくりするほど冷たい。

きっとこの関係に終わりはなくて彼か彼の妹か僕が死ぬまで続くまるで回転木馬みたいだから一生僕らは救われないあの星のように誰もその事に気づいていないけれど
喜劇と悲劇ならばどちらが良いだろうか僕ならきっと後者を選ぶよ真夏日の太陽は僕を殺そうと躍起になっているなあドクオ折角だから明後日の夜にでも二人手首を切ろう。






□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
お目汚し失礼しました。
214名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 11:04:52 ID:HIM8/8C40
ごめん割り込んでしまった…GJ!
215健二←佳主馬 1:2009/08/30(日) 11:28:34 ID:zDlWP5XG0
昨日の183-191の前作にあたるものです。
こっちにあげてなかったのであげますね。
サマーウォーズで健二←佳主馬です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

夏の暑い日差しが差し込む中、二つの影が陣内家の畑の中で動いていた。
「佳主馬くん、ほかにいるものあったかな?」
籠いっぱいに入った採れたての野菜を佳主馬の目の前に置いて健二はそう言った。
「もう大丈夫なんじゃない?」
佳主馬はパチン、と最後にはさみでなすびを採ると、自分の籠の中へいれ、籠を持って立ち上がる。
そして汗が一筋流れたのを腕で拭い、健二を見上げた。
「そっか。じゃあそろそろ戻ろうか」
健二がそう言うと、こくりと佳主馬は頷き、二人は家の咆哮へと向かって歩き始めた。
「それにしてもおばあさんって凄い人だったんだね。毎日毎日こんなに人が来るなんてびっくりしたよ」
道中、健二が籠にある野菜を見ながらそう言う。
「まあ、顔は凄く広かったみたいだから」
「そっか」
あれから一週間。
本当に栄が亡くなり、世界を揺るがす大事件が起きたのかと思うくらい陣内家は落ち着いていた。
遺言の通りお葬式も身内だけで簡単に終わらせたのだが、彼女の死を悲しむたくさんの人々が毎日訪れるものだから、掃除や料理、お客のもてなしをしなければならない女性陣は物凄く大変そうだ。
あの事件の時あれだけ活躍した男性陣は、やってきた客達と思い出話に花を咲かせたり、居場所がなくなり毎日毎日落ち着ける場所を探すのでそれはそれで大変だ。
健二は夏休み中は陣内家に滞在することと決めたが、もちろん後者の人間だったため、ここ数日はあちらこちらを行ったり来たりしている。
今日は女性陣に頼まれて野菜の収穫。
佳主馬も母親に言われ、こうして手伝うこととなったのだ。


216健二←佳主馬 2:2009/08/30(日) 11:30:28 ID:zDlWP5XG0
「佳主馬くん、そんなに持って大丈夫?」
籠いっぱいに入った野菜を持つ佳主馬にそう尋ねる。
「別に平気だよ。お兄さんこそ普段体動かしてないみたいだけど大丈夫なの?」
ハハ、と少し苦笑いし佳主馬の方を見ると、こちらを見ていた目がスッと逸らされる。
「……どうかした?」
不思議に思い、そう尋ねるが佳主馬はこれといった反応もせず歩いている。
おかしいな、何かしたかな?
そう思い、色々考えてみるが特に何もしていないはずだ。
沈黙が続き、微妙な空気となる。
健二は何か話題を出そうと口をもごもごと動かすがこれと言った話題が思いつかず頭を悩ます。
そんな時、佳主馬が独り言のように呟いた。
「夏希姉さんのこと好きなの?」
「えっ?」
急な佳主馬の質問に健二は思わず籠持っている手に力が入ってしまい、そのせいでバランスが崩れ、端から胡瓜が地面へ落ちた。
「だから、」
「え、ちょ、ちょっと待って」
籠を一度地面に置き、胡瓜に傷がついていないのを確認すると、籠の上にもう一度載せる。
「いきなりどうしたの?」
苦笑いを浮かべながらそう尋ねる。
「質問に答えて」
217健二←佳主馬 3:2009/08/30(日) 11:32:17 ID:zDlWP5XG0
相変わらず目を合わせず、視線を籠の上に落としたまま佳主馬ははっきりと言った。
健二は思わず息を詰まらせる。
いきなりどうしたのだろうか。あまり恋愛とかに興味なさそうなのに。
籠を持ち上げ佳主馬の方を見ると、今度はこちらを見ている。
しかし、いつもの鋭い視線ではなくどこか弱弱しい、何かを求めているような視線を送っているような、そんな感じだ。
「……好き、だよ?」
そう答えた瞬間、視線がさらに弱弱しくなった気がして健二は首を傾げた。
「……そっか」
そのままいつの間にか止まっていた足を再び動かし、佳主馬は家の方へ歩いていく。
「何か悪いこと言った……?」
思わずそう口から出て、健二は少し後悔した。
もう少しまともなことは言えないのか、自分。
「行くよ、お兄さん」
佳主馬は答えなかった。
健二は、小走りになって佳主馬のあとをついていくと頭を悩ませる。
まだ佳主馬のことはよく掴めない。嫌われているわけじゃないんだろうけど。
健二は佳主馬の小さな背中を見て、家に帰ったら聞いてみようと思った。
218健二←佳主馬 4:2009/08/30(日) 11:33:52 ID:zDlWP5XG0
あの後、台所に野菜持って行くまで会話はなく、運び終えると佳主馬はさっさと自室へ戻ってしまった。
どうしようかと考えながら自分の部屋でごろごろしていると、突然わっ!と縁側の方から声がして健二は起き上がる。
「な、夏希先輩!?」
「先輩はなしって言ったでしょ」
「す、すみません、夏希さん」
「さん付けもちょっとなぁ……。ま、いっか」
サンダルを脱いで部屋にあがると、縁側に座りこむ。
「どうしたの?元気ないじゃない。何か悩み事?」
「そういう……わけじゃないんですけど……。その、佳主馬くんがよく分からなくて」
「佳主馬がどうかしたの?」
「どうかしたってわけじゃないんですけど、何か変なんです」
先ほどのことをもう一度思い返してみるが、別に悪いことは言ってない気がする。
「うーん……、私もあまり佳主馬とは喋らなくなっちゃったからね」
「そうですか……」
うーん、という唸り声をあげながら二人は考える。
「健二くんはどうしたいの?」
その夏希の質問に健二は考える。
「……仲良くなれたらな、って思います」
「じゃあ話してごらんよ。佳主馬、見てたら結構健二くんのこと気に入ってるみたいだし」
「そう、ですか?」
夏希が頷く。
「何か夏希先ぱ、夏希さんにそう言ってもらえると自信でました」
「よかった。って、もう先輩でいいわよ」
その言葉に健二はハハ、と照れたように笑う。
夏希もつられて笑うと、夏希の携帯が鳴った。
「あ、ごめんね。……うん、わかった。すぐ行く……はーい」
「どうしました?」
健二がそう尋ねる。
「ごめん、ちょっと手伝わなくちゃいけないみたい」
「あ、ありがとうございます。何か相談乗ってもらうみたいになっちゃって」
「別にこれぐらいいつでもいいわよ。じゃあね」
219健二←佳主馬 5:2009/08/30(日) 11:35:23 ID:zDlWP5XG0
サンダルを履いて、縁側の向こうに消える背中を見送る。
そしてゆっくりと立ち上がると、大きく背伸びをして部屋を出た。
今頃、部屋でパソコンしてるかな。
何を話すかは全く考えていなかったが、健二は佳主馬の部屋へ足を進めた。
向かっている間、何を話そうかと色々考えるが良い話題が思いつかない。
と、いうよりも話題が広がらなさそうだ。
向こうが少しでも興味持ってくれる物があればいいだけどな。
そうこう考えているうちに、佳主馬の部屋の前にたどり着き、健二はコンコンと部屋をノックする。
話すことができたら何とかなるだろう。
それが結局健二の行き着いた結論だ。
暫くしてドアが開くと、佳主馬が健二の顔を見上げ尋ねた。
「何か用?」
「あ、あの……ちょっと話でもしようかなって……」
さすがにちょっと急すぎたかな?と、意味もわからず緊張してしまい、上手い言葉が出てこない。
少し間が空き、チラリと佳主馬の目を伺うと、その視線は鋭かった。
「……入りなよ」
そう言って、薄暗い部屋の中へ健二を案内する。
健二は何故か少し腰を低くしながら中へ入ると、佳主馬に勧められた座布団の上に座る。
「話って何?」
佳主馬はそう健二に尋ねる。
「え、えっと……」
何を話そうか。それにしても何故自分はこんなにも緊張しているのだろうか。
相手は自分より四つも下の男の子だぞ。
暗示のように何度も何度も咀嚼しようとするが、上手くいかない。
あまりにも物を言い出そうとしない健二に痺れを切らしたのか、佳主馬が口を開く。
「何しにきたの?」
怪訝な顔を浮かべ、そう投げかける。
「そういうわけじゃないんだけど……」
「じゃあ何?簡潔に、分かりやすく、さっさと言ってくれない?」
「うっ……」
はっきりそう言われてしまうと、余計に言いにくい。
220健二←佳主馬 6:2009/08/30(日) 11:36:34 ID:zDlWP5XG0
健二は目に見えてわかるほどうろたえてしまい、両手で何か表現しようとしているのか忙しなく動かしている。
「……その……、えっと……」
佳主馬はじっと健二の方を見てる。
チラリと様子を伺ってみると、鋭い視線が健二を刺した。
思わず視線が下がる。
「……か、佳主馬くんと……仲良くしたいな……って……思って……はなしを……」
言っている間中、というより言った後、あまりの恥ずかしさに健二は顔から火が出るかと思うぐらい顔を赤くさせた。
思えば仲良くしたいと思う相手にいきなり「仲良くしてください!」なんて言うわけないのだ。
自分の気持ちをこれだけダイレクトに言うのがこんなに恥ずかしいとは思わなかった。
何の反応もない佳主馬の様子を伺おうと顔を少し上げると、顔を俯かせたまま動かない。
薄暗いため表情はよく見えなかった。
「か、佳主馬くん……?」
「お兄さん恥ずかしくないの?」
早口でそう言われたため、何だか怒られてる気がしてきた。
健二は肩をしゅんとさせる。
「……すっごく恥ずかしいです」
健二は恥ずかしさのためか、後頭部をひたすら手で擦っている。
「いきなり、何でそんなこと」
「何でって言われても……、避けられてる気がしたし……」
「バッカじゃないの?」
「うぅ……」
年下にここまで言われるとさすがに自分が情けなくなってくる。
健二はハァ、とため息をついてもう一度佳主馬の顔を伺った。
「……佳主馬くん?」
石のように俯いたまま動かない佳主馬に健二は不思議に思い声をかけた。
「佳主馬くん」
もう一度その名前を呼ぶが、反応はない。
221健二←佳主馬 7:2009/08/30(日) 11:38:16 ID:zDlWP5XG0
健二は腕を伸ばし、佳主馬の体を揺さぶろうと肩に触れると、「うわっ!」と大きな声をあげて後ずさる。
「ど、どうかした!?」
そう健二が尋ねると、佳主馬は目をパチパチと瞬かせて健二の顔を見た。
「な、何にもないから!」
「で、でも……」
「大丈夫だから!」
そうはっきり言われて、健二は伸ばしたままの手をそろそろと戻す。
ただ、目が合ったまま離れず、気まずい沈黙が流れ始めた。
そのまま暫くして、ようやく落ち着いたのか佳主馬はフッと目を逸らす。
そしてパソコンの方を向いて、カチカチと操作し始めた。
「その、佳主馬くん?」
「何……?」
どうやらメールが来ていたみたいだ。
パソコンの画面ではキング・カズマがメール持ってOZの中へと消えていった。
「僕のことは嫌いじゃないんだよね……?」
マウスを動かしていた手が止まる。
そしてまた暫く間が空く。
どこか遠くで子供達のはしゃぐ声が聞えた。
222健二←佳主馬 8:2009/08/30(日) 11:39:24 ID:zDlWP5XG0
「……嫌いじゃない。っていうかお兄さんのこと凄いなって思うよ」
こちらを振り向く気配はない。
「一週間前はお兄さんが居なかったらもっと大変なことになってただろうし、もう陣内の皆お兄さんのこと認めてる。夏希姉さんも……ボクも」
佳主馬の小さな背中は動かない。
「……ごめん、今からすることあるから出てってくれる?」
「うん、わかった」
健二はゆっくりと立ち上がり、佳主馬を見下ろす。
「ボク、お兄さんのこと嫌いじゃないから」
「……そっか。じゃあ、また後で」
「うん」
そう会話を交わすと、健二は佳主馬の部屋を後にした。
あまりよくわからないままだが、今度はもう少しまともに会話が続くといいなと思い、健二はゆっくりと廊下を歩いて自室へ戻って行った。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

健二視点なんでにぶにぶです。
223オリジナル・年下×年上 1/3:2009/08/31(月) 01:33:19 ID:8RfiwUNP0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

オリジナル・本番シーンの断片です。
はっきりいってチラシの裏。
シチュエーション等はご想像にお任せします。
それではどうぞ。
224オリジナル・年下×年上 2/3:2009/08/31(月) 01:34:48 ID:8RfiwUNP0
 粘膜が触れ合うと、骨の髄から震えた。
 嘉孝は、深く息を吐いて力を逃そうとしている。それだけ自分を迎え入れたいのだと思
うと、柄にもなく嬉しくなった。

 そっと嘉孝の腰をさすってから、意知朗は侵入を始めた。湿った粘膜の手荒い抱擁を受
け、欲望に任せてしまいたくなるのをこらえる。尖った肩甲骨が震えて、残像まで見える
ようだ。

「うぁ、あ、は……あ……」

 苦しげな呻きすら愛おしい。もっともっと聞きたい。意知朗は、自分で思っていたより
も意地悪だったらしい。

「こっち向いてよ」

 がくがくと音を立てる肩に手をやり、もう片方の手で顎を支えて振り向かせる。潤んだ
目と、頬を横切る涙が可愛い。もっと崩したくなる。奥深くまで腰を押し進めると、喉を
絞るような喘ぎが漏れた。

「水無瀬さんとのセックスって」
 色素の薄い瞳が動いた。
「こんな、気持ちよかったんだね」

 忘れてた、と微笑むと、水無瀬の唇も言葉を紡いだ。
「バカ、じゃ、ねえの、か」
 そんな可愛くないところも、別れた頃のままだ。愛おしさに心臓が高鳴る。
「でかく、してん、じゃ、ね……ぁぁああ」
「きつくしないでください」
「ああ、いえ、ば、こう……」
225オリジナル・年下×年上 3/3:2009/08/31(月) 01:36:11 ID:8RfiwUNP0
 憎まれ口が艶を帯びる。誤解を受けているが、意知朗としてはただ挑発しているわけで
はなく、本当に気を抜けば暴発しそうだったのだ。
「俺、まだ若かったんだな」
「なに……」
「なんでもない」

 意知朗は背後からの律動を始めた。柔らかい壁が脈打っているのを、薄い皮膚で感じる。
俺だってこんな感じてるんだよ、という思いを篭めて突く。意知朗の腕から流れ落ちた汗
が嘉孝の太腿を伝い、シーツに消える。こんな風に何もかも溶け合ってしまいたいのに。

 白い背中が、だんだん濃く色づいてきた。喘ぎの密度が自由落下の速度で高まる。
「いきそう?」
 リアクションはなかった。しかし意知朗は喘ぎを返事と受け止めて、右手を嘉孝のペニ
スに回した。それまで下半身を支えていた膝が折れ、引き締まった腰がしなる。

「ああっ!あああぁっ!や、やめ、やぁぁっ!」
 先ほどまで保っていた意地も崩れ、哀願は叫びになっている。
「やめてほしいの? やめたくないの?」
 問いかけても、狂ったようにシーツを掻く指は止まらない。
 


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
前後は書きだめできたらうpるよ!
226夏戦争 健二×侘助×佳主馬×理一:2009/08/31(月) 21:30:23 ID:5cw/XCIS0
はじめて投稿させていただきます。
題材は夏戦争。
CPにより、題名も変えてあります。


               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < みんなで
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < ワイワイ
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 見るからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"
227夏戦争 健二×侘助×佳主馬×理一 1:2009/08/31(月) 21:33:18 ID:5cw/XCIS0
「よう婿殿、花札でもやらないか?」
ちょうど風呂から上がり、縁側で寛いでいたところに
そう声を掛けてきたのは、侘助だった。
思わぬ誘いに驚く健二。
「僕とですか?でも僕…あまり強くないですよ
やるんだったら、夏樹先輩とかの方が―」
「いやぁ、こいつは婿殿でなければ駄目なんだよ」
笑いながら、健二にそう言い放つ侘助。
健二の返事を待たずに、侘助は既にこいこいの準備を整えていた。
何故、自分でなければ駄目なのか、その時はまだ意味が分からなかった。

「あれ、佳主馬。どうかしたのか?
誰かを探してるのかい」
「あ、理一おじさん。
うん、健二さんを探してるんだけど、知らないかな?」
廊下で鉢合わせになった二人。
佳主馬は健二を探しているが、理一は一体なにをしているのだろうか。
「理一おじさんこそ、何やってるの?」
「ちょっと言えないこと」
佳主馬は余計な詮索はすまいと、これ以上問いただすのはやめることにした。
「まったく、一体どこでなにをやってるんだろう。
…あれ?あれは健二さんの服だ。あんなところでなにを―」
駆け寄っていった二人は、思わず絶句した。
 そこにいたのは、勝ち誇った表情を浮かべた侘助と、ほとんど裸の状態になった健二だった。
228夏戦争 健二×侘助×佳主馬×理一 2:2009/08/31(月) 21:34:10 ID:5cw/XCIS0
「あ、佳主馬君!理一さん!助けてください!!」
雨に濡れた子犬のように目を潤ませながら、二人に助けを乞うた。
「涼しそうな格好だね、健二君」と微笑ましそうに話しかける理一と
「どうしてこうなったの」と憐れむように話しかける佳主馬。
健二は、侘助が野球拳形式のこいこいをやろうと誘ってきて、
乗り気ではなかったにも関わらず、半ば強引に参加させられてしまったのだという旨を
二人に説明した。
「侘助おじさん、一枚も脱いでないよね?健二さん弱すぎ」
「あー、暑い暑い。上着だけでも脱ぎたいところだ」
侘助はからかうようにそうひとりごちた。
そんな健二を少し気の毒に思ってか、理一が名乗りを上げた
「よし、侘助。僕と勝負しないか?僕が勝ったら、健二君の服を返してもらう
そして、もちろん君にも服を脱いでもらうけどね」
「シシシシ…冗談。もう婿殿からは十分に剥ぎ取らせてもらったし、
勝ち逃げは俺の性分だ、ここいらで幕引きとさせて―」
「まだ全部を剥ぎ取ったってわけじゃあないじゃないか?
それでは勝ちとは呼べないんじゃないか?まったく中途半端な男なんだなぁ、お前は」
その言葉にカチンと来たのか、立ち退こうとした侘助は再び臨戦態勢にはいった。
思わぬ事態に慌てふためく健二と、呆れ果てながら溜息をつく佳主馬。
「さ、張り切っていこうか、健二君」
「ま、風邪引かないように頑張ってね」
「お前もだ、佳主馬。こっちに来い」
侘助に引っ張られて、強引に参加させられることになった佳主馬。
抗議の声を喚き散らす佳主馬をよそに、勝負が始まった。
229夏戦争 健二×侘助×佳主馬×理一 3:2009/08/31(月) 21:36:02 ID:5cw/XCIS0
健二は理一の着ていたジャンパーを羽織っていた。冷え込んでしまわないようにという理一の配慮だ。
流石に大きいが、この気遣いは嬉しかった。
それから二人は、勝負の最中にも関わらず、話し込んだりした。
「夏樹ちゃんとはどうだい?」
思わぬ話かけに驚く健二。
確かにあれ以来、二人の仲は一気に進展し、男衆からは目をつけられ、
学校内では肩身の狭い思いをしているくらいだ。
「夏樹ちゃんから聞いているよ。健二君と一緒にいると楽しいって。
…っと、青丹だ!」
相手の役に軽く舌打ちを打つ侘助と、感嘆の声を上げる健二。
「こいこいするか?」
「もちろん、こいこいだ」
賭けごとにも関わらず、どこか楽しんでいる風な両者だった。

230夏戦争 健二×侘助×佳主馬×理一 4:2009/08/31(月) 21:36:50 ID:5cw/XCIS0
一方、無理矢理参加させられた佳主馬は、むすっとした態度で相手方を見つめていた。
理一とばかり楽しそうに話す健二。
話す内容には夏樹姉ちゃんとはどうだ、学校ではどうだ、などというものも。
佳主馬にはそれが気に入らない。
そんな佳主馬に気付いた侘助は、そっと話しかける。
「どうした?むすっとして、婿殿が理一と仲良くしてるのが気に入らないのか」
「違うよ」
「本当に?」
「本当だもん」
素直じゃないねぇ、と半ば呆れた表情を見せる侘助だった。
「お、猪鹿蝶だ」
「理一さん、すごい!!花札強いんですね!!」
目を輝かせながら理一を見つめる健二に、佳主馬はもう我慢がならなくなった。
「おじさん!僕もやるよ!!あんな二人に負けないでね!」
「よし、その意気だぞ、佳主馬!
理一、こいこいするか?」
「もちろんだ」
「よし佳主馬、負けたらお前が脱げよ」
「うん!!…え?なに―」
呆然とする佳主馬に自身の手札を見せる。それから、その手札と場に
置いてある札も見合わせる。カスにもならない、負けが確定している。
「よし行くぞ!」
「来い来い!」
佳主馬は恨めしそうに侘助を睨んでいた。
そんな佳主馬を見て、何事かと不思議に思う健二だった。
231夏戦争 健二×侘助×佳主馬×理一 5:2009/08/31(月) 21:40:15 ID:5cw/XCIS0
どれくらい経っただろうか―。
ジャンパーを着ているにもかかわらず、健二の風呂上がりの体は
すっかり冷え込んでしまい、体を震わせている。
佳主馬の方を見やると、ぶかぶかのタンクトップを下までおろし、
露出した下半身を隠して、膝を抱えながら恥ずかしそうにしていた。
先程の勝負で侘助が負けてしまい、何故か、佳主馬が脱がなくてはならなかったからだ。
抵抗し嫌がる佳主馬を理一が取り押さえ、侘助が楽しそうにズボンを剥ぎ取ったのだ
「面倒だ」と侘助が呟くと、ついでと言わんばかりに佳主馬の下着も脱がし始めた。
そんな光景をただ見ているしかない健二に、佳主馬は救いの眼差しを向けた。
その目は、捨てられた子犬の目のように潤んでいた。

佳主馬は、今度は健二に向って恨めしそうな表情を見せた。
それに気付きながら、あえて佳主馬から目線をそらした。
さて、他の二人、侘助と理一はどうなったかというと―
侘助はとうとう負けてしまい上着を脱ぎ捨て、上半身を露出させている。少し肌寒そうにしている。
理一の方は何度か負けてしまい、上着とズボンを脱ぎ捨てている。だが、こちらの方は存外、平気そうにしている。
そんな理一を見て、侘助は悔しそうにしている。それは、へっちゃらそうにしているからというだけの理由ではない。
確かに、へっちゃらそうにしているという点を除いても、割れた腹筋に逞しい二の腕、腿、端正に整えられた
素晴らしい体つきをしている。佳主馬もそれには関心を寄せ、小さく感嘆の声を漏らした。
流石は自衛官といったところか―。
「どうする?もう降参するか」
「まだまだ脱ぐところがあるだろ?丸裸にしてやるぜ!」
もうやめてくれ―健二と佳主馬はそう思った。
もっとも、二人はそんなことはつゆ知らず、お構いなしに勝負を続行した。
232夏戦争 健二×侘助×佳主馬×理一 6:2009/08/31(月) 21:41:42 ID:5cw/XCIS0
「どうだ、一気に勝負をつけないか?」
「これで勝ったら、負けた方は身につけている服を全て脱ぐってことかい?
うん、いいだろう。」
「よし、そうこなくっちゃな!」
勝ち逃げが性分の侘助とは思えないくらいにえらく好戦的だ。
理一は普段の理性的で落ち着いた雰囲気からは想像できないほどに楽しそうだ。
健二はもう流れに身を任せることにした。
佳主馬は抗議の声をあげるも、あえなく却下されてしまった。
二人はまず親と子を決めた。親は理一となった。
双方とも役を作ろうと躍起になるも、なかなか出来ない。
そして―。
「…こいつは―」
「親権…ってやつですよね?」
「と、いうことは」
「理一おじさんの勝ち…」
健二はほっと胸を撫で下ろした。これでようやく服を着ることができる。
佳主馬は嫌そうにしながらも、唯一身につけているタンクトップを脱ごうとした。
「か、佳主馬君!いいよ!風邪を引いたらいけないし…」
「だってそういう約束だし…健二さんたちが勝ったんだし…」
そうぶつぶつと呟き、顔を赤らめながら、健二をじーっと見つめる。

「あんたたち…一体何やってんのよ?」
そんな彼らに声をかけたのは陣内理香だった。
しかし、そこにいるのは彼女だけではない。
陣内万助や万作、それに三輪直美といった面々が勢ぞろいしている。
「理一…あんた、何ちゅう格好を…!」
理一は、「ハハ」と愛想笑いをして、誤魔化そうとしている。
その時、侘助がいきなり立ち上がった。
「俺も男だ。理一、よーく見ておけよ!」
「よし、その意気だ!」
侘助はすかさず服に手をかけた。
233夏戦争 健二×侘助×佳主馬×理一:2009/08/31(月) 21:44:51 ID:5cw/XCIS0
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < やっぱり
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < この体勢は
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 無理があるからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ


続きはまた後ほど。
未熟な出来ではありますが、どうかもう少しだけ、ご容赦下さい。
234夏戦争 続・健二×侘助×佳主馬×理一:2009/08/31(月) 22:47:48 ID:5cw/XCIS0
それでは続き、投下させていただきます。

               ,-、
                //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < みんなで
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < ワイワイ
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 見るからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"
「は〜。いいお湯だね、佳主馬君」
「そうだね」
すっかり冷え込んでしまったので、健二は佳主馬と一緒に風呂に入っている。
尚、佳主馬は侘助が騒いでいるのを見計らい、こっそり逃げ出してきたので、親戚の前で
素っ裸にならずにに済んだ。
「…佳主馬君、怒ってる?」
「何言ってるの、お兄さん。僕のどこが怒ってるって言うの?」
むすっとした態度から、「ああ、これは怒っているのだな」ということが分かった。
しかし本人はそれを頑として否定している。
困り果てている健二を見やる佳主馬が、口を開く。
「…健二さんってば、理一さんと一緒のとき、随分と楽しそうだったね」
「え、そうだったかな…?」
「そうだったよ。あんなに楽しそうにしてさ…」
健二はようやく理解した。彼は拗ねているのだと。
「う、うん。まあ、理一さんと話すのは楽しかったけど―」
「夏樹姉ちゃんとはすっかり夫婦みたいに仲良くなってるみたいだしね」
思わず湯の中に顔を突っ込みそうになった。思わぬ言葉だった。
「ふ…夫婦!?いや、そこまでは…言い過ぎだよ、それは―」
「ふーん…」
顔を近づけて、覗き込んでくる佳主馬。
その表情に、湯に濡れていることもあってか、妙な色気が感じられて、どぎまぎする健二。
「それほど好きじゃあないってことなんだ?夏樹姉ちゃんのこと」
意地悪そうにそう問いかける。言い訳を言おうとするも、しどろもどろになってしまう。
「そんなことないよ!大好きさ!!」
「じゃあ…僕のことは?…嫌いなの?」
上目遣いにこちらを見つめる。理性が吹き飛んでしまいそうだ。
「え、いや、それは…」
「嫌いなんだね…お兄さん」
健二から目線をそらし、落ち込んだ様子を見せる。
「そんことないよ!好きだよ!!
夏樹先輩も…か、佳主馬君も!!」
佳主馬は再び健二に視線を戻す。
「…何を言ってるの、お兄さん?」
「え、あ、いや、その…」
しどろもどろになる健二を見て、佳主馬は笑い出す。
きょとんとしながらも、健二もそれにつられて、微笑する。
「そろそろ体でも洗おうかな」
「背中、洗ってあげようか?」
「うん、お願い」
「うう…ヘックシュン!!」
「風邪を引いたか?あんな馬鹿な事をするから―」
「くそ、誰のせいだと思ってる―」
「もとはと言えばお前だろ?」
「ちっ…おう、お前のジャンパー借りるぜ」
「うん、ご自由にどうぞ」
満点の星空の下、縁側に座ってこんなやり取りをしている侘助と理一。
「子供のころから変わらないな、お前は」
「お前もな」
二人は同い年だが、境遇や、性格といった、いろいろな面で違ったところがある。
「今も昔も、お前は子供っぽい性格してるよ」
「あー、もう、うるせぇなぁ。いいじゃねえか、頭はいいんだし」
「そこが子供っぽいんだよ」と突っ込んでやりたかったが、あえて自重した。
10年前に祖父の所有する山を売り払い、その金でアメリカに行ってしまった時は、
呆れてしまいもしたが、あいつらしいとも考えていたのを思い出した。
親戚たちから忌み嫌われ、10年間、こういった親戚の集まりにも来なかった奴が、
こうやってやって来るようになり、健二や佳主馬といった人たちとも馴れ親しんでいる。
先程の花札の時、そんなことを考えて、感慨にひたっていたところだった。
「ん?なんだよ、じーっとこっちを見て、笑いやがって、気持ちの悪い奴だな」
「うん?ああ、いや、別に、なんでもないよ」
いつかは陣内家の人間として、迎えられる日が来るだろうかと考えていた。
それは、祖母、陣内栄がこの世を去ったあの日に、それは叶えられた。
「ビール、まだあったかな?ちょっと探してくる。
お前も飲むか?」
「もちろん。早くしてくれよ」
「やれやれ…分かったよ」
理一はそう言って立ち上がり、台所の方へと向かっていった。
ハヤテの鳴き声が近づいてくる。侘助の方へとやって来た。
侘助はハヤテを優しく撫でてやる。
どこを撫でてやれば気持ちがいいのか、侘助はよく知っている。
ハヤテは気持ちよさそうに、甘えた声を出した。
238夏戦争 続・健二×侘助×佳主馬×理一 終:2009/08/31(月) 22:56:18 ID:5cw/XCIS0
「あ、理一さん。なにやってるんです?」
「うん、ちょっとビールでも飲もうと思ってね。
でも、まだあったかな―」
「まだあったはずだよ。全部は飲みきれないとか言ってたし」
「お、そうか。そういえばそうだったな」
そう言って台所へと向かおうとした理一が、こちらに向き直った。
「そういえば佳主馬、健二君になにか用があるって言ってたよね?」
そう言い放って、台所へと消えていった。
「用って何だい?佳主馬君」
「…健二さん、さっき僕のこと好きって言ったよね?」
「え!?うん、ま、まあ、ね…」
「じゃあ一緒に部屋に来て…」
「な、なにをするんだい!?」
「健二さんじゃなきゃあ…駄目なの。
僕、健二さんにして欲しいんだ―」
少年特有の色気を存分に発揮する佳主馬からの思わぬ誘いに、健二は
鼻血が出そうになった。
「じゃあ、行こう。健二さん」
健二は、言われるがままについて行った。




「僕、数学が苦手なんだよね。夏樹姉ちゃんとか翔太にぃに聞いても分からないって言うし。
健二さんみたいな人が来てくれて助かったよ」
「…佳主馬君、数学が苦手なんだ。」
「うん。国語とか社会なら、もう終わったから、大丈夫
宿題はさっさと終わらせたいんだ」
そう言って、自身の傍に座布団を置いて、健二を誘った。
「ん?なにぼさっとしてるのさ。ここに座って。
さ、早く教えてよね、健二さん」
―何でがっかりしてるんだろう、僕…。
239夏戦争 続・健二×侘助×佳主馬×理一:2009/08/31(月) 22:58:40 ID:5cw/XCIS0
               ,-、
                //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < やっぱり
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < この体勢は
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 無理があるからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ

以上で投稿を終わります。
長々と書き込んでしまいました。
ご清聴を感謝します。
240風と木の名無しさん:2009/08/31(月) 23:22:12 ID:gGwtmayR0
そろそろ夏戦はしたらば辺りに専スレ作って頂けないだろうか…
241風と木の名無しさん:2009/09/01(火) 00:13:40 ID:iqhh9NQK0
夏戦争こんなに大漁なら外部に棚つくった方がいいんでない
感想いっぱいもらえるから書く人もやりがいあるのじゃないかな
801視点でおいしいていう宣伝には充分なったでしょ
うざがるROMがこれ以上増えないうちに撤退すすめる
242風と木の名無しさん:2009/09/01(火) 00:30:35 ID:sdQ3HLty0
>>240-241
うーん、そうですか。
ではそのことに関して、夏戦争801スレで、人がいる時に聞いてみます。
243金賞 大月と打田と某スカ:2009/09/01(火) 01:21:14 ID:ebcxnl3B0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  金賞の大月と打田と某スカです。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  生注意。登場人物は40歳以上です。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
244金賞 大月と打田と某スカ1/6:2009/09/01(火) 01:23:05 ID:ebcxnl3B0
僕達の楽屋は喫煙部屋と非喫煙部屋に分かれているが、大月以外は全員喫煙者なので非喫煙部屋を使うのは大月だけだ。
あとのみんなは喫煙部屋にいる。今日もそれは変わらなかった。
リハーサルが終って、本番までの空き時間に吃高が大月にメールを送ろうと誘いかけた。MC中に一人ぼっちにされたオーケソが
「喫煙部屋の方から楽しそうな声が聞こえてくるけど、楽屋でも俺は一人ぼっちだ!」と自虐ネタにしているので、
わざと全員で「ひとりさみしい?」とメールに書いて一斉に送信してみようという、つまり言えばイタズラだ。
いい大人がやるようなことでもないと思うけど、暇だったし、面白そうだったのでみんなでケータイを取り出して悪ノリをしてみた。
さん、に、いち、とカウントして全員で同時に送信ボタンを押す。
「怒って乗り込んでくるんじゃねぇの」「いや、あえて全員にメールで返信しかえすんじゃないかな」
大月がどんな反応を返してくるか、わくわくしながら予想を立てる。みんな自分のケータイと楽屋のドアの方に気を配っていた。
しかし大月からの反応はどちらの方にも返ってこない。あえて無視を決め込むことにしたのか、本当に怒ったのかわからないけど、
とりあえずみんなで様子を見に行くことにした。こんなことで喧嘩しちゃっても馬鹿らしいしね。
ゾロゾロと四十男が揃って非喫煙部屋へ向かい、ノックをしてからドアを開けた。予想はどちらも外れていた。
大月のケータイは本や筆記用具と一緒にテーブルの上に放り出されていて、大月本人は楽屋の隅で特攻服を体に掛けて眠っていた。
なーんだ寝てたのかって納得する場面だったと思う。
ところが、目の前の光景に僕達はイタズラメールの反応なんてどうでもよくなってしまった。全員が黙って大月を眺める。

大月は「わが子」と称して可愛がっている某スカのぬいぐるみを顔の横に抱きしめて眠っていた。
245金賞 大月と打田と某スカ2/6:2009/09/01(火) 01:24:48 ID:ebcxnl3B0

「赤ちゃんかこいつは」

吃高が的確なつっこみを入れた。うん、確かに赤ちゃんだ。
もちろんここにいる全員は大月が某スカのぬいぐるみを異常なほど溺愛していることも、
寝食を共にしているらしいことも知っているが、こうやって実物を目の当たりにすると何ともいえなくなる。
一人、絵ディだけが慣れた様子だった。しかもよく見ると特攻服がきちんと某スカにも掛かるように掛けてある。
風邪引かないようにって掛けてあげる様子が目に浮かぶなぁ。

「どう思う?これ」
「んー、いやー、しょうがないんじゃないかなぁ」

をいちゃんが苦笑するような、呆れたような顔で笑っている。
吃高は笑ってはいないけど、をいちゃんと同じようにしょうがないなと呆れてる様子だ。
お父さんみたいな顔にも見える。吃高の息子もぬいぐるみを抱いて眠っているのかもしれない。
ただ、こっちの赤ちゃんは吃高の息子よりずっと年上なんだけどね。

「こいついつからぬいぐるみにはまってるんだっけ」

吃高の問いに僕もをいちゃんも首をかしげる。爆/誕に「分合某スカ」って曲があるから、
得札結成時点では既にはまっていたんじゃないかな。でも詳しい時期までは思い出せない。

「打田の代わりだったりして」

吃高が独り言のように口にした。視線の先には大月、というより大月の抱く某スカがいる。
僕とおいちゃん、絵ディは吃高の横顔に目をやった。
246金賞 大月と打田と某スカ3/6:2009/09/01(火) 01:27:01 ID:ebcxnl3B0

「だからさ、打田がいなくなって寂しかったんじゃないの。それで依存先をぬいぐるみに求めたとか」

ははは、と笑いながら吃高は部屋を出て行った。
をいちゃんも「疲れてるみたいだから、時間になったら起こしてあげようよ」と言って喫煙部屋へと戻っていき、
絵ディもそれに続いた。僕は立ち止まったまま三人の背中を見送って、眠る大月に視線を戻した。
カチ、コチという時計の秒針が進む音がやけに大きく聞こえる。比べてたまに聞こえる大月の寝息は静かなものだ。
僕は足音を立てずに移動して大月の横に腰を下ろした。
熟睡する大月とは対照的に某スカの黒目はパッチリと開いている。その黒目をしげしげと覗き込んだ。
そういえば僕が得札を脱退するまで僕と大月はずっと一緒だったんだな。考えてみればすごいことだ。
どんなに気の合う友達でも、普通は社会に出ればそれぞれに進む道ができる。
ところが僕達は中学で出会い、高校の時に作ったバンドで世に出て、
下手をすれば家族よりも長い時間を共有してきたわけなのだ。
大月がソロやるときにも僕がベースを弾いたしな〜。悪く言えば自立の時期を逃し続けていたのかもしれない。
今、金賞が復活して僕達はまた同じバンドでロックをやっている。けど僕は金賞以外のバンドにも参加しているし、
大月もいろんなミュージシャンと活動を共にしている。昔とは違って、金賞しかない状態ではなくなった。
他のメンバーにも言えることだけどね。
あの時ようやっと僕達は互いに自立したのかなー。なんてことを考えるが、
このぬいぐるみを抱きしめて眠っている僕の同級生は本当に自立できたんだろうか。
さっきの吃高の冗談じゃないが、これはやっぱ依存だよな〜。某スカが僕の代わりってのには賛同しかねるけど。
だったら打田は戻ってきたわけだからそいつもういらねぇんじゃねえの。
自立前だって四六時中べったりしていたわけじゃないしねぇ。
247金賞 大月と打田と某スカ4/6:2009/09/01(火) 01:28:16 ID:ebcxnl3B0


ぼんやりとした視界の中に誰かの膝が見えた。
誰だろう、マネージャーかなと思って顔を上げたら打田君があぐらをかいて僕の顔を覗き込んでいた。何故だ。

「……なんで打田がここにいるの?」
「…ん、ああ、起きたんだね」

打田、それは返事になってないぞ。俺はなんで打田がここにいて、寝ている俺を見ていたのか聞きたいんだ。
あれ?寝る前は確かに一人だったよな。だってここ楽屋だもん。おっかしいなぁ。
僕は横になったままぼーっと打田君を見上げていた。彼も僕を見下ろしてるけど、相変わらず何を考えているのかわからない。

「何か用があったんじゃないの?」
「ああ、用か。うん。用ね。あったよ」
「あったってことはもういいの?」
「うん。いいんじゃないかな。時機を逸したしね」

よくわからないが打田がいいというのならいいのだろう。
ふと、打田がおもむろに手を伸ばして、僕の腕の中の某スカに触れた。

「うん、やわらかいね」

もふもふと某スカの感触を確かめる。…なんだろう、打田君の行動がさっぱりわからない。
やっと俺の某の愛らしさに気付いたのだろうか。しばらく打田君は某スカの手を触っていて、僕は黙ってそれを見ていた。
248金賞 大月と打田と某スカ5/6:2009/09/01(火) 01:29:57 ID:ebcxnl3B0

「…俺どれくらい寝てた?」
「…うーん。そうだね。そうでもないんじゃないかな」

打田君がiPhoneで時計を見せてくれた。うん、確かにそうでもないような微妙な時間だ。
空き時間はまだあるがもう一度寝直すほどでもない。僕が体を起こすと打田君も立ち上がった。
某スカはパパのお膝の上でちょこんと座っている。いい子ちゃんだなぁ。

「それじゃあ、またね」
「え、ああ、うん。またね」

マジでいったい何しに来たんだ。俺の寝顔を見に来たのか、ってねーよ!それは!
あ、もしかして顔に落書きされてたりとか。ヒビが逆に描かれてたらどうしよ〜って小学生かよ!
一人っきりになった部屋で某スカの両手を上げ下げさせながら俺は馬鹿なことを考えていた。
まぁきっとライブについての確認とか、そんなところだろうなぁ。
勝手に納得してテーブルを見るとケータイがメールの着信を知らせていた。
特攻服を脱いでケータイを手元に引き寄せる。おおっ!?なんかたくさん来てるぞ。
しかもこれ全部メンバーからじゃん…って

あいつら小学生かよ!!
249金賞 大月と打田と某スカ6/6:2009/09/01(火) 01:31:37 ID:ebcxnl3B0


楽屋でタバコをふかしていたら、ガハハ!と豪快な笑い声が聞こえた。絵ディだ。
椅子に座ったまま肩越しに振り向くと「あいつ起きたみたいだな」「きっとびっくりしたんだろうねぇ」と
みんなケータイを見ながら楽しげに笑っている。全員に一斉送信したみたいだけど、僕のiPhoneには着信がない。
ふむ。どんな返信をしたんだろう。トントン、とたまった灰を灰皿に落として
みんなにメールの内容を聞いてみようかどうしようか考えていたら、
今になってiPhoneに着信の知らせが入った。電波の状態は悪くない。

メールを開くと、やはり大月からのものだった。
250金賞 大月と打田と某スカ おわり:2009/09/01(火) 01:32:50 ID:ebcxnl3B0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ありがとうございました。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
251風と木の名無しさん:2009/09/01(火) 02:13:44 ID:GBBhBqKp0
>>250
前に金賞投下した姐さんかな?GJ!!!
絵ディ含めたメンバー総出演が嬉しすぐる…(´Д⊂
Oケンの起きるタイミングが遅ければ何したかったんだ打っちー!
252風と木の名無しさん:2009/09/01(火) 11:37:57 ID:RDcotAPx0
>>250
MCネタで絵ディの笑い声で目が覚めたっていうのあったよねw
253風と木の名無しさん:2009/09/01(火) 21:30:19 ID:yD4Cj1R30
>>205さん
あの、人違いだったら申し訳ないのですが
よ○みくん日記の方ですか・・・?
254風と木の名無しさん:2009/09/01(火) 21:58:06 ID:hrYxNyMZ0
特定すんのは間違いじゃなくても失礼な行為だぞ
255風と木の名無しさん:2009/09/01(火) 22:28:00 ID:VB3hmOl/0
>>254
自分だったら嬉しいけどな
256風と木の名無しさん:2009/09/01(火) 22:36:46 ID:hrYxNyMZ0
ごめんサイトじゃなくて前ここに投下したか聞いてるだけ?
だったらすまんかった
257205:2009/09/02(水) 18:11:31 ID:6K+ZUZZgO
205です。

>>253
違います。
棚への投下はこれが初めてで、サイトも持っていません。
遅くなってすいませんでした。
258風と木の名無しさん:2009/09/02(水) 21:51:14 ID:P2K6G/1i0
>>205さん

>>253です。
人違いすいませんでした。
棚以外の掲示板でお見掛けした方と
文章がとても似ていたので声をかけてしまいました
ほんとに失礼いたしました。

ロムに戻りますー
259風と木の名無しさん:2009/09/03(木) 13:12:16 ID:c1PUkSznO
>>250
姐さんGJ!
前のと相まってうっかり僅少にハマりそうだ…
26009戦隊・赤×光(1/10):2009/09/03(木) 22:08:41 ID:pZJO8k+20
09戦隊・赤×光で、またまたお借りします。

・半ナマ注意
・エロあり注意
・ただ二人がイチャコラしてるだけなので注意
・26話〜27話の間、赤が右肩を大怪我した後、少し経ってから。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
26109戦隊・赤×光(2/10):2009/09/03(木) 22:09:09 ID:pZJO8k+20
 決闘など、小さい時に読んだ絵物語の中にしかないものだと思っていた。
 しかし自分の前に対峙する相手との命のやり取りに、普段の戦いとは何かが違う、言いようのな
い高揚感を感じたのも事実だった。
 
 
「タ〜ケちゃん!具合いどうだ?」
 座敷にて思慮にふけるタケルの耳に、にぎやかな足音と声が届いた。
「ゲンタ」
 先日の戦闘にて負った疲れはほぼ取れたのか、ゲンタは相変わらずのテンションでタケルの座る
高台に腰掛けた。
「ほいこれ見舞い。お?外れてんのな」
 手に持った寿司詰めをタケルに手渡してから、ゲンタはタケルの腕に三角巾がない事に気づいた。
「ああ」
「そりゃあ良かった!」
 タケルの言葉に、ゲンタは心底嬉しそうにその右肩をばしんとひと叩きした。
「痛っ、」
「あっ!悪りぃ悪りぃ!そりゃまだ痛てぇよな」
「大丈夫だ」
「てか、腕、動くのかよ?」
 ばつの悪そうな顔をしながら、タケルの肩口を覗き込むゲンタ。
「幸い、神経への傷はあまり深くなかったからな」
 言いながら右腕を動かしてみせるタケル。まだ本調子ではないが、日常の動作はできるようになっ
ている。
「…俺としては、そろそろ動かさないと鈍ってしまいそうなんだが、じいもリュウノスケもうるさ
くてな」
「そりゃそうだ。あん時のリュウノスケ、頑固だったもんな〜。そりゃ神経質になるってもんだ」
 腕を組んでうんうんと頷くゲンタ。その様子にタケルは少し笑ってから、ふと何かを思い出し、
「そういえば、」
「ん?」
26209戦隊・赤×光(3/10):2009/09/03(木) 22:09:28 ID:pZJO8k+20
「お前も、俺が一人で行く事を止めなかったな」
「何だよタケちゃん、止めて欲しかったのかよ?」
「いや、そういう訳じゃないんだが……」
 まじまじと自分を見るゲンタの視線に、タケルは少しばつが悪くなって目線を反らした。
「アイツに「お前に免じて一日待とう。寿司が食えなくなるのは惜しい」なんて言われちゃなぁ〜」
 言いながらゲンタはタケルに背を向けて立ち上がり、大きく伸びをする。
「それに、」
 くるりと自分の方へ向き直ったゲンタの顔には、普段は見せる事のない好戦的な笑みが浮かんで
いた。
「多分、俺もアイツとは闘ってみたかったんだろうな。一人の侍として」
 自分があのとき抱いていた感情をゲンタの口から言葉にされて、タケルの胸がぎくりとする。
「強い者に惹かれちまうのは、お互い様だって事だ」
「お前…」
「ま、タケちゃんがこうやって元気ならいいや!」
 何か言おうとしたタケルの言葉を遮って、ゲンタはいつもの笑顔を浮かべてそう言った。
「んじゃ、俺行くわ」
「もう行くのか?」
「おうよ!そろそろ夜の準備しねぇとな!じゃあなタケちゃん!」
「ゲンタ…!」
 ひらひらと手を振り、座敷を後にしようとしたゲンタに、タケルは無意識のうちに手を伸ばして
その名を呼んでいた。
「ん?」
 呼びかけに足を止めたゲンタは、きょとんとした顔でタケルを見る。タケルは伸ばした手を戻し
て、静かに握り込んだ。
「…終わったら、また来れるか?」
「別にかまわねぇよ?」
 
26309戦隊・赤×光(4/10):2009/09/03(木) 22:09:46 ID:pZJO8k+20
 時計の針が日付を跨がり、少し経った頃、
「…ゲンタか?」
「おう」
「入れ」
 障子の外の気配にタケルがそう呼びかけると、先程とは違って普段着を着たゲンタが部屋に入っ
てきた。後ろ手に障子を閉めて、タケルの横に腰を下ろす。
「お前、また玄関から来なかっただろ?」
 既に就寝の準備を終えたタケルが、布団の上で胡座をかいたまま少し呆れた声を出す。
「タケちゃんの部屋、裏からの方が近けぇもん」
「まぁ、そうだな」
 昔からそうやっていつの間にか屋敷に潜り込んでいた事を思い出し、タケルは懐かしさを覚えた。
「で、どしたいタケちゃん?」
 屈託なくそう聞いてくるゲンタを、タケルは少し強引に胸元に引き寄せた。
「…しばらく、触れてなかったからな」
「なんだそういう事かよ…」
 耳元で囁かれたタケルの声に状況を察したゲンタは、タケルの両肩に手を置いて顔を近づけ、そ
のままゆっくりと口付けた。
「…チュウくらいなら、別にさっきでもよかったんでね?」
 しばらく無言で唇を重ね合った後、ふとゲンタが言葉を漏らす。
「誰かに見られたらまずいだろ」
「確かに、殿様とこんなことしてるなんてばれちまったら、まずいどころの話じゃねぇもんな」
 悪戯っぽく笑うゲンタ。しかしタケルは少し表情を暗くして、
「…すまん」
「おいおい、謝んなよタケちゃん」
 ゲンタはタケルの頬にあるホクロ辺りに、ちゅ、と音を立てて唇を落とした。
「俺、大好きなタケちゃんとこんなことできんのが、すっげー嬉しいんだからよ」
「……ゲンタ」
 言葉とともに、タケルの胸が締め付けられる様に痛んだ。その痛みをごまかす様に、今度は深く
口付け合う。互いの唇を舌でなぞり、そのまま絡め合う。
「ちょ…、タケ、ちゃん」
26409戦隊・赤×光(5/10):2009/09/03(木) 22:10:09 ID:pZJO8k+20
 呼吸のため一瞬離れた唇から、ゲンタの声が零れる。
「どうした?」
「まだ痛てぇん、だろ?」
 ゲンタの手が、まだ包帯の巻かれたタケルの右肩をそっとなぞった。
「別にいい」
「よくねぇよ…」
 ゲンタは体を起こして、タケルの体をそっと抱え込んだ。そのまま少し体重をかけて、くるりと
タケルを布団へと沈めた。
「俺がすっから、殿様は、じっとしてろって」
「ゲンタ…?」
「へへ、ちょっとやってみたかったんだよな」
 ゲンタは着ていたシャツを脱いで、タケルの上に跨った。傷口にはできるだけ触れないように気
をつけながら、タケルのシャツも脱がしてしまう。
「んっ……」
 何度も唇を重ねつつ、ゲンタはタケルの下半身に手を伸ばした。
「…タケちゃん、もう熱いのな」
 目の前で囁かれたゲンタの声に、ピクリとタケルの眉間が動いた。
「お前な…」
「だから、タケちゃんはじっとしてろって」
 首筋から胸元にかけて音を立てながら唇を落とし、胸の先端を口に含む。
「…っ、ゲンタ…?!」
 口元でぬるぬるとそこをなぶりながら、手は硬さを増すタケルのそれを布越しにゆっくりと擦る。
「っ、ふっ…」
 タケルの息が上がっていく。それを楽しむかのようにゲンタは動きを強めていった。
「タケちゃん、大丈夫、か…?」
 ずっと見つめたままのゲンタの熱っぽい声に、タケルは眉をしかめながらも小さく頷いた。
「よかった」
 ゲンタは空いた手でゆっくりと素肌に触れる。戦いの中で傷付いて、それでも起き上がってきた
体を労わるように。ゲンタはタケルの胸から顔を離し、口元に少し笑みを浮かべながらズボンに手
をかけた。
26509戦隊・赤×光(6/10):2009/09/03(木) 22:10:29 ID:pZJO8k+20
「おいゲンっ…!」
 なにか言いたそうなタケルを無視して、ゲンタはのタケルのズボンをずり下げてそれを引っ張り
出した。体を下げて、歯を立てないように注意しながらくわえ込む。
「く、っ…!」
 タケルの体がビクリと震えた。その右手が力なくゲンタの頭を掴む。ゲンタはできるだけ口の中
を唾液でいっぱいにして、口での奉仕に集中していた。
「ゲン、タ…っ…」
 ゲンタは自分を引きはがそうとするタケルの左手を掴み、先端にわざと音を立てて吸い付いた。
そしてもう片方の手も使ってゆるやかにタケルを責め立てていく。
「はっ…」
 慣れたものではないものの、ちろちろと舌を這わし、咥内全体で飲み込むようにして擦り上げる
その動きに、タケルの官能はいやがおうにも煽られていく。それを自分の幼馴染から施されている
事が、堪え難い興奮とすこしの罪悪感を沸き起こした。
「ゲン…タっ、もうっ、やめ、ろっ…」
 タケルは尚も口撫を止めぬゲンタの腕を強く掴みながら、体を起こして無理矢理止めた。
「……なんだよタケちゃん、きもちよく、ねぇ?」
 続けるうちに自分も煽られたのか、熱っぽくも不服そうな目を向けるゲンタを、痛みの残る腕で
自分の元へ引き寄せた。
「ちょっ、タケちゃ…!」
「俺が何もできないのは、嫌だ」
 タケルのその言葉にゲンタの顔は耳から首筋まで赤く染まった。タケルはその熱くなった頬に唇
を落とし、つつ、と耳たぶまで這わせる。
「う、わっ!」
 のぼせ上がった熱を舐めとるようにゲンタの耳たぶを口でくわえ込むタケル。間近から直接響い
てくるその濡れた音と息遣いに、ゲンタの体が震える。
「タ、ケちゃ、ん……!それっ…、やべぇっ…って!」
 今度はゲンタから引きはがされようとされたが、タケルはそれを力づくで押さえ込んで、耳裏か
らうなじにかけて執拗に舌を這わせる。
「う…く、っ……は……」
26609戦隊・赤×光(7/10):2009/09/03(木) 22:10:42 ID:pZJO8k+20
 唇を噛み締めるゲンタの息遣いが耳に届き、思わずその肌へ強く吸い付いて痕を付けてしまいた
くなるが、タケルはそれを何とか自制しながら口付けを落とす。右肩の傷が自分の鼓動に併せて痛
みと熱を発しはじめていた。
「…っふ……っ……」
 ゲンタの右手はそれでもゆるゆるとタケルのそれを擦り上げる。何とも言いがたい快感が全身を
支配していくのをタケルは感じていた。
「タケ、ちゃんっ……」
 タケルの名を呼び、ぎゅっとしがみつくゲンタ。下半身のそれも熱を帯びてその存在を主張して
いる。タケルは無言で枕元に置いてある引き出し付きの小箱から、小さな瓶を取り出した。
「……おいおい、用意いいなぁ殿様…」
 目の端でそれを捉えたゲンタが、呆れたように声を出した。
「少しでも、楽な方がいいだろう」
 タケルはゲンタの背中側で瓶の蓋を開けて、中の半固形状の軟膏をたっぷりと左手の指先にとっ
た。そしてズボンの隙間から手を差し込み、そのままゲンタの秘部へぬるりとなすり付けた。
「は、っ……んっ……」
 丹念に周囲へ擦り付けたあと、タケルは少し力を込めてその中に指を押し込んだ。ぬめりの勢い
もあってあっさりと奥まで飲み込まれる。
「んあっ…!!」
 びくりと大きくゲンタの体が跳ねた。タケルのそれを掴む手が思わず緩む。
「力を抜け」
 強張ったそこを丹念に解きほぐしていく。粘ついた音が耳に届く度にびくびくとゲンタの体が反
応を返した。
「はっ…はっ…はぁっ……」
 タケルに与えられるむずがゆい快感に応えようと、ゲンタは浅い呼吸を繰り返していた。
 膝立ちのまましがみつくゲンタの腰を、強く抱え込むタケル。
「…くっ……」
 途端、右肩に鈍い痛みが走り、思わず眉をしかめた。
「タ、ケちゃん……?」
26709戦隊・赤×光(8/10):2009/09/03(木) 22:11:00 ID:pZJO8k+20
 その変化に気づいたゲンタが、心配そうな声を上げる。
「……やっぱ、俺、が…するって」
 ゲンタはタケルから体を離し、自分の中に入っていたタケルの指を自ら引き抜いて、下半身にま
とっていた衣服を脱ぎ去った。
「ん………」
 胡座をかくタケルの上に跨がり、自らの手でタケルのそれを自分の秘部へと添えて、ゲンタはゆっ
くりと体重をかけていく。
「っつ、あ…っ……!」
 先端がずぶりと中へと侵入し、思わずゲンタは声を上げた。
「は…っ…くっ……!ふっ…」
 苦しそうな表情を浮かべながらも、全て飲み込んでしまおうとゲンタは深く腰を落とす。自身を
締め付けるその熱さにタケルの表情も歪む。
「こっ、ち…動かしちゃ、ダメだぜ…」
 傷の残る方の手を取り、指を絡めながら、ゲンタは自ら腰を揺らし始めた。
「んっ………はっ…ぁ……!」
 空いた手をタケルの膝に置き、少しでも奥で感じようと体を反らすゲンタ。タケルは汗の光るそ
の喉仏に舌を這わせながら、その尻肉を抱えて自ら揺さぶる。
 脳天から脊髄までを容赦なく快感が走り抜けてゆく。それはいつぞやの決闘とも似た、自身を根
本から揺るがすような快楽。溺れてしまえば、戻れなくなる。
「タケちゃんっ…タケちゃ、んんっ……あっ、あっ、」
 それでも、目の前で苦しそうな嬌声を漏らすゲンタのその姿に、たまらなく愛おしさを覚えて、
タケルは両手で強くゲンタを抱きしめた。
「タ……ケ、ちゃん……っ?」
 ゲンタは動きを止めてタケルの目を覗き込んだ。
「お前が居てくれて……よかった」
 何か言いたげなその口元を自分の唇で塞ぎ、根元まで飲み込まれた自身をさらに強く押し込む。
「あ、うっ……!つっ、く……あっ…!」
 それに耐えきれずゲンタの体がびくりと大きく震えた。
「っん、はっ……!あ…っ…あっ…」
26809戦隊・赤×光(9/10):2009/09/03(木) 22:11:18 ID:pZJO8k+20
 幼い頃の約束を抱いて自分の為にと駆けつけてくれた大切な人間。自分が抱く幼い独占欲でさえ
も全部受け止めてしまう相手の存在に、自分は救われているのだ、とタケルは熱に浮かされる思考
の端でそう感じていた。
「んんっ…あ…ふ……っ…んっ…」
 舌の根元まで容赦なく舌を伸ばし、深く口付け合う。ゲンタはタケルの頭を抱え込んでそれに応
えた。
「んっ、んっ、はっ……ぁ…」
 自分の腹の上で震えながら先走りの液を零すゲンタのをそれを掴み、ぬるぬるとした感触と共に
擦り上げる。
「ふあっ…あっ…、あっ、うっ……」
 その感触にきゅう、とゲンタの中がタケルを締め上げ、タケルの快感を煽った。
 タケルは繋がったまま膝を立て、そのまま多い被さるように布団の上にゲンタを寝かしつけた。
「ちょっ………肩っ…!?」
 こんな状態になってもタケルの怪我を心配するゲンタ。
「悪い、止められそうに、ない……」
 熱っぽく漏らしたその言葉の後、間髪を入れずにタケルは腰を動かし始める。
「あっ……!あっ…タ、ケ…ちゃ…っ……!」
 容赦ないタケルのその動きに、ゲンタの腕がずり落ちた。敷き布団を強く握り絞め、意識が飛ん
でしまいそうなほどの衝動に必死に耐えようとする。
「うあ……っ…!あっ…はっ、んっ……」
 仰け反る顎に唇を落とし、左手は腰を掴みながら、右手で昂るゲンタのそれを掴むタケル。
「俺っ……す、き……タケ、ちゃ、んがっ…好…きっ……!」
 息も絶え絶えに訴えられたその言葉に、タケルの胸が強く締め付けられる。自分を慕ってくれる
その強い想いに、応えたかった。
「ゲン、タっ……!俺、も……だ…っ…!」
 苦しそうな声の中に混ざる快感をもっと高めようと、タケルは少しずつ動きを変えながらゲンタ
を攻め立てた。
「あっ、はっ…あ…あっ…タ、ケ…ちゃ…ぁん…っ!」
 熱さと快感に溶かされていくような感覚が、ただ二人の間を境目なく繋げていく。
「っ、く……イ、っく……!やっ……」
26909戦隊・赤×光(10/10):2009/09/03(木) 22:12:12 ID:pZJO8k+20
 首を振ってその衝動に必死に耐えようとするゲンタ。しかしタケルはそれを無視して追いつめる。
「ぅあっ…!あぁ…っ……!!」
 タケルの指先が先端を強く擦った瞬間、限界に達したゲンタのそれから白い体液がほとばしった。
「はっ…あっ…ぅっ……!」
 吐き出されるそれに合わせて震える体に、嫌がおうにも自身の限界が近づくのを覚える。
「ひ、ぁっ……!あ…はっ…」
 ゲンタの体を押さえ込んで、自分自身を追いつめていくタケル。それに応えるようにもう一度ゲ
ンタの中が強く締め付けられた。
「うっ……っく…ゲ、ンっ……!」
 ゲンタの上に倒れ込み、自らの衝動を注ぎ込んでいくタケル。ゲンタはわずかなその感触を体の
奥で感じながら、もう一度タケルを抱きしめた。
 
 
 肩口で疼く傷の痛みにあの時の記憶を揺り戻されながらも、ここにお前が居る限り、自分は大丈
夫だ、と、大切な幼馴染へと想いを馳せた。
 
 
 END



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

本編の破壊力が凄すぎて、妄想が追いつかない…。
一部文章が変だけど、気にしていられないほど本編の寿司屋に萌えた。
お目汚し失礼しました!
270風と木の名無しさん:2009/09/04(金) 07:09:58 ID:mDy1mIaG0
>269
GJ!!!
271風と木の名無しさん:2009/09/04(金) 07:33:11 ID:H8j6yEvmO
>>260
GJ!
姐さんのお陰で赤金に目覚めますた
27220世紀の男の子検事×乙著×検事 老年期捏造:2009/09/04(金) 08:01:04 ID:mJBOUBa90
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < 検事×乙著×検事への萌えが過ぎて変な所に着地した
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < 物語終了後の未来捏造です。よってMLどころじゃないおじいさん設定注意。一応半生…?
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < >>199の延長のような。もはやオリジナルレベルの似非ぶりなのでものすごく注意!
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"
273検×乙×検・70年目のへびにらみ2/3:2009/09/04(金) 08:03:41 ID:mJBOUBa90
「なあ、いいだろ検事」
……またか。今日もなのか。いい加減勘弁してくれよ。

あのさぁ?俺は普通の男なんだ、お前とは違うんだよ。
お前のような年中フェロモン垂れ流してるようなエロオヤジじゃないんだよ。
お前さぁ、分かってる?俺たちもう70代だぜ?いちいち憶えてるのも面倒になるような歳だ。
普通な、こんな歳にもなれば性欲なんてモンは誰でも減退すんの。
俺が多数派。お前が少数派。正直俺はお前ほど性欲旺盛じゃないのな。
だからさ、そんなに性欲発散したいんなら適当にそこら辺で若い女の子でも捕まえてこい、な?
きっとお前は歳とか関係無くモテるだろうしさ。男でも捕まる奴は捕まると思うぜ。大丈夫大丈夫。
……だいたいお前、空しくならないのか?俺もお前ももうお互いジジイなんだぜ?
髪も白く寂しくなったし、体だって若い頃の張りは無い。……お前は、鍛えてるからそうでもないだろうけど。
でもさ、そんな相手にお前、欲情できるのか?
……できるんだろうなぁ。でなけりゃそもそもこんな事言い出さないだろうしな……
だけどな、少なくともこっちはお前と違って普通の爺さんなんだ。
腰から関節から痛いんだよ、そんな激しい運動の相手はごめんだぜ。
それにこの歳でそんな事して心臓早く動かしたら止まるかもしんねえだろ。
止まんなくたってな、心臓動かした数だけ寿命は縮むんだよ。
聞いた話じゃ、夜は寝てゆっくりトクトク動かすモンらしいぜ。心臓ってやつはさ。
せっかく早死にしないでこの歳まで生きられたんだ、もう少し長生きしたくないか?なあ。
「検事、」
なんだよ、催促か?でもな、悪いけど俺は「ハイいいですよ」と快く応じるような気分じゃないんだ。
……よし、無視。無視だ。決めた、これが俺の結論。応えてなんかやらないぞ。やらないからな。
274検×乙×検・70年目のへびにらみ2/3:2009/09/04(金) 08:05:43 ID:mJBOUBa90
「……検事」
おうなんだ。
「昔に比べて口数減ったか?」
そうか?そうでもないと思うけど。
「返事もくれやしない」
それはお前が返事しにくいような事しか訊かないからだよ。
「……嫌なら拒否すればいい、俺は別に構わないんだ」
なんだその言い草。お前から言い出しておいて。構わないなら最初から言うな。
「本当は嫌なんだろう?」
本当にそう思うなら最初から言うなって。
嫌がっていると、本気でそう思ってるならさ。
嫌われるかも、とか気にするもんじゃないか?普通。

「承諾してくれるなら嬉しいが、無理強いするほどじゃない」
「検事が嫌だと言うなら今日は無しにしよう」
「はっきり言ってくれ」
「良いか、悪いか」
「承諾か、拒否」
「さあ」
275検×乙×検・70年目のへびにらみ3/3:2009/09/04(金) 08:08:09 ID:mJBOUBa90
……なんなんだよお前、さっきから。いくら挑発したところで残念だったな、何も出ないぞ。
さっき無視って決めたからな、
「……黙っているという事は、」
イエスなんて絶対言わないぜ。
「拒否ではない。……承諾と受け取っていいな」

……なんだよ。おお、おお、そうかよ。そうくるか。
くつくつと満足そうな笑い声が聞こえる。……笑うな。
お前さ、ここにきて揚げ足取りとか卑怯だろ。なんだこの、確信犯か?むかつくな。
「好きだよ、検事」
俺が否定はしないと知って。これだから頭の良い奴は。
そうだとも俺は決してお前とするのが嫌じゃあない。
なんだかんだと理由を付けた文句も考えるだけで口には出さないし、
そもそも決定的にお前を拒むような言葉はこの胸に浮かんですらいないんだ。
なのに拒否なんか出てくるはずないだろ。バーカ。
「よかった」
露骨に嬉しそうにするな。お前ほどの男が、こんな事で。
そんな、そうやって俺を喜ばせたって、何も出ないんだからな。
「好きだ検事。愛してる」
承諾も、拒否も。

……しかし本当に拒否の言葉が出ないとは俺も中々の末期だ。
あー……これは本格的に来たかな、バリアフリーの時代……そろそろリフォームとかすっかなー……
「……俺も、好きだぜ」
なんだかんだ言っても毎度こうして最後には調子に乗らせてるんだ、そうでもしないと体が保たねえよ。
心の隅っこ、そんな悪態を吐きながらも巻きついてくる腕を愛しく思う俺は相当手遅れだった。
276検事×乙著×検事おしまい:2009/09/04(金) 08:10:17 ID:mJBOUBa90
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < まさか老年期捏造して萌える日が来るとは思ってもみなかった
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < ツンでマグロな検事も萌えとか思ってただけなのにどうしてこうなった!
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 本編設定絡まないとかこれいいんだろうか…しかもワンパorz一人称むずい。
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ
>>273分数ミス失礼。×→2/3 ○→1/3
277風と木の名無しさん:2009/09/04(金) 19:31:41 ID:3vcNwiX20
>>276
GJ!
老検事かわいいな。
乙著相手に拒めない検事に萌えました。
278風と木の名無しさん:2009/09/05(土) 00:05:46 ID:Q2e4VnJ90
>>116
おお、この二人好きだったGJ!
279バースデイ:2009/09/05(土) 00:40:49 ID:jpQW7A+QO
年下と年上。
好きな子で想像して頂けたら。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
280バースデイ 1/1:2009/09/05(土) 00:42:39 ID:jpQW7A+QO
駐車場へ向かう廊下に人はなく、自販機の音だけが聞こえる。
長椅子に腰掛け、ちらりと隣のひとを伺う。
彼は前に屈んだ格好で開いた缶のフタをじっと見つめていた。
戦いの場から降りた時より、幾分穏やかな顔になった気がする。
憤りを通過した表情に、寂しくなった。

前回に続いての乱調。
ふてぶてしいほど強気な彼のプライドを、彼自身の左腕で
何度も何度も殴り付けるような自作自演の戦い。
目の前よりも、自分の武器が一番の敵になっている。
そんな彼にかけられる言葉なんて、何もない。
自身もまた、右腕と常に戦い続けているのだ。
でも。

彼に笑顔がよく似合うことを、知ってる。
そして今日は何があろうとも、彼が笑うべき日なのだ。

彼は深くため息をついて上体を起こし壁にもたれた。
力無く放り出された彼の左の手のひらに、右手を重ね、固くなった彼の指の勲章を確かめる。
きっとこの腕の方が、彼の腕のことをよく知っているのだろう。
「何やってんの、お前」
抑揚のない声で彼は呟く。
けれど振り払わない。
じん、と手のひらに温かさが伝わる。
「誕生日、おめでとうございます」
「全然めでたくない」
「俺、今日と明日送り迎えしましょうか」
「・・・そこまで沈んでない」
彼はふっと笑った。
そして、手のひらを握り返した。
281バースデイ (終):2009/09/05(土) 00:43:48 ID:jpQW7A+QO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
282風と木の名無しさん:2009/09/05(土) 00:55:56 ID:yCel5OeV0
>>276たまらん
283リンダキューブアゲイン:2009/09/05(土) 20:17:08 ID:5n8Rrz4x0
まだプレイ中なんだがネクが女社長殺すとこのアニメまで見て書いた。
後悔はしていない。

ケン←ネクでネク独白。激短壺ポエム調。ヤンデレ。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

284リンダキューブアゲイン2:2009/09/05(土) 20:17:48 ID:5n8Rrz4x0
兄ちゃん。
兄ちゃん。
いい響きだね。
ああ、綺麗な顔だ。俺と同じだけどな。
分かるだろう兄ちゃん。俺たちはこの世でたった二人きりの兄弟なんだ。
会いたかったよ。兄ちゃんも俺に会いたかったろう?
あんたを手に入れる日をどれだけ夢見たことか。
そうさ、そのためなら俺はなんだってするね。
このババアとここまで生きてきたのも、あんたに出会うためだと思えばなんてことはないさ。本当に馬鹿で薄汚ねえ女だ。気狂いってのはこのババアみたいな奴のことを言うんだろうなァ。
なあ、俺はもっと普通に生きられたはずだよ。こいつと過ごしてきたせいで、こんなに汚れて。
それに比べて兄ちゃんは綺麗だ。比べるまでもないか。ああ、たまんないよ。
怖い?
怖いの?
怖いもんか、ほら、あんたの大事な弟じゃないか。
キスしてもいい?
震えてる。かわいい。
リンダ?
リンダは俺が戴くよ。当たり前じゃないか。
だって兄ちゃんはリンダを好きなんだろう?
まあまあ落ち着きなよ。
リンダは俺のことが好きだってよ。なあリンダ?
おお怖い。兄ちゃん、そんな目で睨むなよ、イッちまう。
なあ、俺はあんたが全部欲しいんだ。リンダはあんたの一部みたいなもんだろう? それなら俺が手に入れて、それからゆっくり壊してあげる。
おっかねえなあ。俺は兄ちゃんをただ愛してるだけなのに。
ほら兄ちゃん、時間がないよ。さっさとゲームをリスタートしよう。
そうだ兄ちゃん、もうリンダとは寝たの?
あっはは、そうか。
じゃあもう何があっても、兄ちゃんは俺から逃げられないね。
いや、深い意味はねえよ。
じゃあな兄ちゃん、またあとで。ケツは洗って来いよ。あはは、冗談。
285リンダキューブアゲイン3:2009/09/05(土) 20:18:40 ID:5n8Rrz4x0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!



そのあとちょっとプレイしただけでネクが…ネクが…orz
286風と木の名無しさん:2009/09/05(土) 21:04:06 ID:GUI+JCONO
>>285
GJ!
まさかここでリンダ物が読めるなんて…!
リンダ大好きだからテンション上がったよ!ありがとう!

ネクケンもありだね。
ネクだって世界で一番兄ちゃんが好きなのかもねー。
287風と木の名無しさん:2009/09/05(土) 22:19:49 ID:pwdctk+O0
>283
まさかここで、そして今の時代にリンダキューブが読めるとは・・・
GJGJ・・・!!とってもいいヤンデレでございました。ゴチ

久々にプレイしたくなったよリンダ。ちょっと引っ張り出してくるー!
288風と木の名無しさん:2009/09/06(日) 13:15:43 ID:A78NGy6TO
>>283
ヤンネクGJです!
パラサイドのホテルの102号室に連れ込んでほしい…
サンタ服でアレの薬を届けてほしい…
289風と木の名無しさん:2009/09/06(日) 13:16:21 ID:Ls8KaTz/0
>>283
GJ! そしてその後の展開はたしかに・・・orz
ネクは兄ちゃんに固執してたからね
シナリオAはたしかにヤンデレ風味だったねw
290わんこものがたり:2009/09/06(日) 13:28:17 ID:FAYWlcjO0
1人で勝手に感動した日ワンコとチュウゴワンコの物語。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

291わんこものがたり:2009/09/06(日) 13:32:29 ID:FAYWlcjO0
隣の四つの川の省に特別派遣された時、一番最初に連れて行かれたのが、
何故か小高い丘の上だった。がけ崩れの現場かと思いきや、街全部が
土砂に飲まれていた。2階建てのビルが見えたと思ったらそれは、10階
建てのビルだったと言う。
「それでも・・・!それでもヌホンわんこなら何とかしてくれる…!」
と思っていたらしい。本気で。

隊長はマジ無理。無理だから。わんこも全員そろってないし!何より
重機ないし!と説得して、余震の続く中、いろんなところに行って、
最後に例の中学校にたどり着いた。

現地のワンコもケーサツも、衣装は全く汚れていなかった。
ヌホンわんこ隊長は「こんな時に何もしないなんて何を考えてるんだ!」と
一瞬思ったらしいけど「もしかして慣れてないだけじゃ?」と思いなおし、
ヌホンわんこが手本と誠意を見せたら、絶対ほかのワンコたちもついてくる!
と思ったそうな。

親たちが泣き叫ぶ中、ヌホンワンコたちは崩壊しそうな校舎に入った。
初め、現地のワンコたちは入ってこなかった。自分達が死んでしまう
可能性があるからだ。

つづく
292わんこものがたり:2009/09/06(日) 13:38:56 ID:FAYWlcjO0
ヌホンのワンコは校舎から黒板を引きずりだし、状況把握を始めた。
教師達に聞きながら、分からなくなってしまった建物の見取り図を
描いていった。
そして偵察に入りながら、どこに何人、子ども達が取り残されているかを
図に示していった。本物の犬も偵察に入ったが、生存者はいなかった。

危険箇所を把握し、補強した。もう生きている人は居ないと知っていたが、
ヌホンワンコたちは子ども達を親元に帰してやろうと思った。
しばらくして、初めての遺体が校舎から取り出すことが出来た。
丁重に毛布で包んで取り出した、わんこたちは全員が敬礼をした。
遠巻きに見ていたチューゴワンコたちも、やる気になった。海外から来たワンコが
頑張っているのに、地元ワンコが頑張らなくてどうすると思ったそうだ。

チューゴワンコも校舎に入って、遺体搬送を始めた。ヌホンワンコの地図が
とても役に立った。

ヌホンワンコが生存者なしの報告をしてヌホンへ帰るとき、現地ワンコは
「ヌホンわんこのこと、誤解してた。大きな声ではいえないけど」
と言ってくれたそうだ。

わんこは日々頑張っている。人と人が戦うためにではなく、自然から
人々を守るために。

293わんこものがたり:2009/09/06(日) 13:40:13 ID:FAYWlcjO0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

おしまい。海の上の人に聞いた話。
なんかうまく書けなかったけど。がっちりしたヌホンワンコ萌え。
294鍵盤四弦 揺れる黒髪 1/6:2009/09/06(日) 21:48:53 ID:iM65POHo0
お借りします。
・ナマ、一角獣鍵盤四弦。
・ダーティーフォーティーなのに、漂う空気が妙に甘酸っぱい
・エロい人が出ていますがエロ一切無し


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
295鍵盤四弦 揺れる黒髪 2/6:2009/09/06(日) 21:49:39 ID:iM65POHo0
「あれ、亜辺1人?」
喫煙所で不貞腐れて煙草を銜えていると、遅れてスタジオを出てきたらしい海老がきょとんとした顔で首を傾げた。
「多三男は?一緒に出てったから一緒かと思ってたのに」
「んー、今取材中」
「え、取材って河弐志さんだけじゃん」
「1人で喋らせると心配なんだと。『通訳してやる』つって、オヤジ引きずって一緒に出てった」
最後の方は拗ねている子供の口ぶりみたいになってしまたが、隠す必要もないだろうと思い直してちらりと視線を上げてみせる。案の定海老はへえそう、と興味無さそうに応えて隣に腰を下ろした。
いつものことだがこの男の距離感はゼロどころかマイナスを叩きだすのが常で、今日もぴったり隣にくっついている状態になる。
いいかげん誰かが注意すればいいのにと思うのだけれど、あいにく亜辺にそんなつもりは毛頭無かった。

ふう、と細長く吐き出される紫煙を目で追い、ごく自然に足を組み直す海老は一つ年上とは思えない年齢不詳のオーラを放ち、黙っていれば麗しいと呼ぶに相応しい姿をしている。
(……ま、口開いたらただのギャルなんだけど)
疎遠になっていたとはいえたまに連絡は取っていたし、まったく会っていなかったわけでもない。
だが、実際再結成する、と心に決めて会うようになってからわかった。この男はある意味で化け物だ。
「なぁに?」
「……べっつに。何でもない」
ちらちら盗み見しているのに気付かれ、さっと視線を外す亜辺の腕にあくまでも自然に触れる白い指先は、ベーシストとは思えないほど綺麗で一瞬見愡れてしまう。
指先だけではない。その指先が頻繁に掻き上げる細い首にまとまりつく黒髪や、至近距離からじっと覗き込む漆黒に濡れた瞳や、目の前の彼を形成する一つ一つのパーツがいちいち目に留まって仕方ない。
いつだったか、相手をぼかした上で多三男にけっこう本気のトーンで相談すると、彼は至極真面目な顔でアドバイスをしてくれた。
『おまえ、それは恋だぞ。俺が言うんだから間違いない。そいつに恋しとるんやって』
それとこれとは話が違うだろう、と思いつつも、理解できない、と言い返さなかったのは、気が遠くなるほど長い時間を共に過ごしてきた彼自身が同じような状況に身を置いているからだ。
296鍵盤四弦 揺れる黒髪 3/6:2009/09/06(日) 21:50:27 ID:iM65POHo0
むしろ、うんうん頷く多三男がそれを〈恋〉だと認識していることに驚いた。いったいいつまであのおっさんに恋焦がれ続けるのか、変に意固地なところのある多三男はそこらへんを考えたことはあるんだろうか。
この年になると、恋だの何だので甘酸っぱい気持ちを味わうことなどほとんど無い。にも関わらず多三男は自分の感情を〈恋〉だと認識し、それがどこに向かっているのかをああもあっさり認めている。
「……思春期かよ、もう43だっての」
(恋ねえ……納得できるようなできないような、何となく複雑な感じなのはどうしてかね)
「何?誰が思春期なの?」
「いやいや、何でもない」
ならば、時折急に襲ってくる甘酸っぱさと苛立ちと期待がごちゃまぜになってしまう自分も、口を開けばあっという間にイメージが塗り替えられるこの男に恋をしている、ということになるのかも知れない。認めたくはないが。

多三男にはもちろん、誰にも言ったことのない秘密が1つだけある。自分と海老(当人が覚えているかどうか怪しい)2人だけの秘密。
足掻いても思い通りにならない現実にもがいていた自分の腕を力強い手で掴んでくれたのは、だんだん心の内を見せなくなっていた河弐志でも、ぶつかりながらも親友として常に隣にいた多三男ではなく、いつも飄々とした顔で我が道を進んでいるように見えた海老だった。
『笑えんなら、無理して笑わんでええんじゃない?今の亜辺見てると、ぜーんぶ嘘臭く見える』
だって苦しいんだよ、と吐き捨てると海老は笑ったのだ。とても綺麗に、まるで亜辺の中に渦巻く何もかもを知り尽くしているかのように。
『たまには頼ればええじゃん』
『ーー誰を』
『うーん、俺とか?伊達にお前より一個年食ってないし、優しくしてやれるよ?』
普段なら笑って聞き流す彼のセリフは、そのときに限って亜辺の心に深く突き刺さった。誰にも甘えることができなくなっていた亜辺に、彼の言葉は甘い誘惑そのものだった。
297鍵盤四弦 揺れる黒髪 4/6:2009/09/06(日) 21:51:53 ID:iM65POHo0
たった一度、ふと思いついて取材中にテーブルの下で誰にも見られないように指を絡めてみたことがある。
海老は驚く様子もなくふふ、と笑って指先の力を込めた。すべらかな皮膚越しに伝わってくる熱は熱く、眩暈がした。
(だから、なかったことにしたんだよな)
一つ年上のメンバー相手に性的な欲求を一瞬でも感じた自分に罪悪感を感じ、膨れ上がった歪んだ自尊心にがんじがらめになっていた亜辺は、海老の言葉を聞かなかったことにした。
結局そのまま忘れたような気になり、離れてからは顔を合わせても何も感じなくなった。
今となっては白日夢のような薄れた記憶の一片など、海老はもう忘れてしまっているだろう。あんな熱に浮かされていただけの色褪せた時間なんて、記憶に留めておく必要もない。
「……大人になったよなあ、俺ら」
「大人っていうかおっさんでしょ、それ言うなら」
「いや、アナタはどう見てもおっさんっていうよりギャルだから」
えー、と不満そうに頬を膨らませた海老はすぐに破顔し、ケラケラ笑って肩口にしなだれかかる。この確信犯的なボディータッチはいったい何のアピールなんだ。心臓に悪い。

リハーサル再開時間が迫り、どちらからともなく立ち上がった。僅かに煙が上がる灰皿に飲みかけのペットボトルの水を掛け、先を歩く線の細い背中をぼんやり見つめる。
白いTシャツに包まれた肩でさらさら揺れる黒髪。会う度にいつも手を伸ばしたくなり、すぐに我に返る。一度でもあれに指を触れてしまったら、もう取り返しが付かなくなる気がするのだ。
でも、触れたいと思う。一房摘み上げ、あの柔らかい髪にキスをしたい。
「ねえ、亜辺」
突然振り返った海老はすっと腰を屈め、浅ましい考えを見透かすような目で亜辺の顔を覗き込む。
「な、何」
「あんまりそういう目で俺のことじーっと見ないで」
くすり、と笑った海老は耳元に唇を寄せ、白い指先でプラチナに染めた髪にそっと触れた。
298鍵盤四弦 揺れる黒髪 5/6:2009/09/06(日) 21:53:19 ID:iM65POHo0
一瞬のことなのに、かあっと顔が上気していくのがわかる。情けない。たった一つしか年の違わない男に触れられて、年甲斐もなく赤面するなんて。
激しく動揺する亜辺は、続いて囁かれた言葉に息を飲んだ。
「誘いたいんならちゃんと言わんとわからんよ。ね?」
(え、あの、それはどういう)

「亜辺のこと大好きだし、優しくしてあげるよ?」

「……そっちなの?」
「え、違うの?」
「違うでしょ―、どう考えてもきついってそれは」
いつものように呆れ声で言い返すと、海老は即座に納得いかないという顔をした。
「何でぇ?俺のが年上なのに」
「年は関係ないって。だいたい、見た目の問題があるでしょ―が」
(……想像するだけでも寒気がするわ)
やっぱりこの男は肝心なところがちょっと可笑しい。まだ納得がいかないらしい海老の二の腕を引っ張り、スタジオへの道を急ぐことにする。
(もしかして、あのときもそっちのつもりであんなこと言ったんじゃないよな……でも、海老だしなあ)
まずは彼の想像がいかに不合理であるかを理解してもらうところから始めなければ、本気で流されてしまう気がする。
どうすれば海老がすんなり納得してくれるのか、そこらへんを考えるのはリハーサルの後にしよう。
あっという間にスイッチを切り替え、亜辺はスタジオの重いドアを勢いよく開けた。
299鍵盤四弦 揺れる黒髪 6/6:2009/09/06(日) 21:54:12 ID:iM65POHo0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!



鍵盤の目には四弦はジョシに見えている気がしてならないし
セクハラ受けてキャッキャする四弦も満更でもない感じが否めなかった。
萌え込みでこの夏はとても楽しかったです。
ありがとうございました。
300風と木の名無しさん:2009/09/07(月) 15:48:15 ID:qhUtuNwN0
>>283
大好きだったなぁ
301欺瞞の民達0/8:2009/09/08(火) 01:31:07 ID:L8h26SZD0
実写版トランスフォーマー フォールン+サウンドウェーブ×スタースクリーム
TFスレ10のスタスク色仕掛けの流れに激しく萌えてしまって…。
萌えるネタを提供して下さったTFスレ10の方々に感謝致します。

注意・金属生命体(ロボット)同士エロ。ヤってるだけ。
  ・スタスクがひたすら悲惨で、メガ様が調教済み。まったく愛無し。
  ・唯一彼らが絡むであろうゲームを未プレイです
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
302欺瞞の民達1/8:2009/09/08(火) 01:32:04 ID:L8h26SZD0
ガリガリガリ、と金属が鳴る。
大柄なディセプティコンに掴まれた一体のオートボットが床と奏でる音だ。
それには生命力を感じない。エネルゴンを与えれば動き出すだろうが、今は休止状態だ。
こいつは実験台か、はたまたダッチワイフか。スタースクリームは捕虜を引きずりながらため息をついた。至極退屈だ。
彼に出来る仕事は、ただフォールンの言う事を聞くだけ。
このような単純な仕事から、卵の世話、オートボットの撲滅…しかし重要機密や軍事的戦略は一切任されない。
ようは、ただの一兵士だった。
フォールンと対面してから僅かしか経っておらず信頼関係が無いのは仕方の無い事だが、彼は早くもこの状況に飽き始めていた。
スタースクリームの行動の全ては「どんな手を使ってもリーダーの座を奪い取る」という欲望の下に成り立っている。
セイバートロン星時代や宇宙探索時代、リーダーの座は手の届く範囲にあった。しかし今、それは遥か遠いもののように感じる。
何としても現状を打破しなければならないが、もちろんプライムと直接対立するほど無鉄砲では無い。
慎重かつ確実に、ディセプティコンの支配権を手に入れていく。そのために、フォールンの興味をこちらへ向ける必要があった。
今は亡き首領、メガトロンとの関係のように。

無数の物言わぬ幼生が見つめる中、ケーブルに埋もれるようにフォールンは居た。
通常では探知できないセンサーで世界を把握しながら、異次元から力を集めている。
その細めな機体は非常に高性能な回路を持ち、計り知れないパワーを眠らせているのをスタースクリームは知っている。
力に対して常に貪欲で、世界の全てを手中に収めようとするその姿は正にディセプティコンの創始者らしかった。
ガシャンと捕虜が降ちる音がしても、フォールンはこちらを向こうとはしなかった。
「お待たせしました、捕虜一体です」
片膝を付きながら改めて問題を認識する。こいつは、俺を本当にただの一兵士としか捉えていない。
303欺瞞の民達2/8:2009/09/08(火) 01:33:03 ID:L8h26SZD0
「フォールン様これの処遇は」
「…そこに置いておけ」
「かしこまりました」
「……」
業務的会話はそこで途切れた。いつもならここで会釈し引き下がる。だが、今日の俺は違う。
「その捕虜は何に使う予定でしょうか」
「お前には関係無い」
「用途によって必要なエネルゴンの量も変わってきます」
「……」
「エネルゴンの少ない今、適切な量を取り扱うのが大切です。私が持って来ましょう」
「…性欲処理として使う」
迷いの無い言葉、己の欲に忠実なディセプティコンらしい。そしてそれを待っていた!意を決して口を開く。
「私を、使ってみませんか」
フォールンの顔がゆっくりと、初めて俺に向けられた。じっとこちらを見つめてくる。
「……誘ってみろ」
その挑発的な笑みの裏に、俺の奥底を観察しようとする真剣な眼差しを感じた。

俺達は『欺瞞の民』だ。お互いを疑り、騙し合う。
これは俺が純粋な気持ちで言い出したのではない事を知ったうえでの承諾で、フォールンも何かを企んでいるのだろう。
だが、その企みは俺がお前を受け入れるごとに薄れて行く。
少なくとも「有事の時にディセプティコンを任せる」ぐらいの距離にはなって貰おうではないか。
その点で、メガトロンとはとても上手く行った。例えセックスが津波のように暴力的だとしても。
這いつくばい、泣き叫び、無様に懇願し、痛みに翻弄される…スリープモードへ強制的に入るまで。しかし俺達の感覚でいえば一瞬のこと。
その一瞬だけ心も身体も明け渡し、信頼を得る。目的のためなら何だってするのが俺のポリシーだ。
ゆっくりと装置に近づくと床に跪き、フォールンの開かれた足に軽くキスをした。
304欺瞞の民達3/8:2009/09/08(火) 01:34:03 ID:L8h26SZD0
血迷った兵士もいるものだ。フォールンはその忠節のキスに驚きを感じた。
しかし誘ってみろと言ったきり装置からは動かず、
一旦顔をあげた足下の部下が、おずおずと下腹部に手をやるのを見下すだけだ。
何を企んでいるかは知らないが、この愚か者は自分が相手を「使い捨て」にする可能性を考えてもいないらしい。
確かにこの兵士は戦闘面で最も優秀であり失うのは大幅な兵力減となる。
しかし自分の強さと比べれば、そんな評価は気分次第でゴミと化す。
そういえばこいつはメガトロンの慰み者だった。ならば少しは「持つ」自信でもあるのか。
壊すか壊さないかを考えながらフォールンは閉鎖回線で外部と連絡を取った。
305欺瞞の民達4/9:2009/09/08(火) 01:35:52 ID:L8h26SZD0
正直なところ、スタースクリームは少々戸惑っていた。さっさと犯されると思っていたが「誘え」と言われるとは。
そんなことをした事は一度も無いが、自ら行為を強請ったが故やるしかない。下腹部ハッチのロックを解除する。
しかし犯される側としてはメガトロンの衝動をただ受け入れる事しか経験が無く、何をすれば目前の相手を興奮させるのかが判らない。
どうしたらメガトロンに喜ばれたか、高速で過去のメモリをサーチする。
だが行為中誉められたことなどほとんど無く、ヒットした数少ないデータも最悪のものばかりだった。

―『お前の出す悲鳴は最高だ』

306欺瞞の民達5/9:2009/09/08(火) 01:37:03 ID:L8h26SZD0
芯まで凍り付くような低い声。それを言われた状況を思い出すだけで機体に震えが起きる。
心の中で舌打ちするとスタースクリームは手を口へ持って行き、太い指へ丹念にオイルを絡めた。とりあえず、受け入れる準備をするしかない。
立ち膝をし、長い腕を後ろに回して指をレセプタへと当てがう。しかし自分でやるのは初めてなうえ緊張もあり、指一本さえ上手く入らない。
焦って上を見ると、フォールンがつまらなそうにこちらを見下していた。まるでドローンでも見ているかのような冷めた目線。
急激に羞恥心が湧いてくる。早く終わらせてしまえ。一気に指を奥まで突っ込むと、痛みに機体がビクッと跳ねた。
「いっ…!」
その痛みで、自分の中で何かのスイッチが入ったのを感じた。
歯を食いしばりながら空いた手で己のプラグを擦り、快感を無理矢理生み出す。
2本目の指をこじ開けるように進めると、痛みに耐えきれなった上体が地面にガンッと落ち、腰のみを突き上げた体勢になる。
スタースクリームは無意識にメガトロンの指の動きを真似ていた。
拡張することのみを目的とした乱暴で粗雑な動き。そしてそれを待ちこがれたレセプタは過敏に反応し、締め付ける。
「んっ、く」
プラグを擦る速度をを早め、床に伏せた口から抑えきれない苦しげな声が漏れ始める。
(痛いです、メガトロン様…!)
早急に入れた3本の指は内部をギチギチと圧迫し、鋭い爪で最奥を引っ掻きながら、滲んできた潤滑油と時たま音を立てた。
9000年ぶりのレセプタ内の刺激に、スタースクリームは息を荒げながら記憶の世界へ没頭した。
感覚と記憶に翻弄されながら、プラグの先端付近を強めに擦り上げる。
「ぁ…、もう、イく…っ!」
達するときは申告しろ、そう教え込まれた。
「…閣下っ!」
307欺瞞の民達6/9:2009/09/08(火) 01:38:09 ID:L8h26SZD0
達した。今、自分は何を口走った!?
熱を帯びたブレインが一気に冷却される。レセプタから指をゆっくりと抜くが、顔を上げることができない。
内股に垂れるのは潤滑油だけではない。冷却液が全身に滲み出た。これ以上動くことを機体が拒否している。
床に這いつくばったまま、恐る恐るフォールンの顔を覗こうとした次の瞬間。
「サウンドウェーブ、そいつの口を塞いでおけ」
突如背後から乱暴に頭部をつかみ上げられると、口に太いケーブルを突っ込まれた。
「んぐううぅっ!!!」
喉の奥底まで犯され、猛烈な吐き気が襲う。視覚機関から反射的に冷却液が零れた。
サウンドウェーブだと!?冗談じゃない!いつから観ていた、離れろ!
勢い良く立ち上がるとケーブルに雁字搦めにされ、直立姿勢で固まった俺の背後にピタリと張り付かれる。
くくっ、と聴覚器官の隣で興奮した笑い声がした。細いケーブルが装甲のタトゥーを舐めるように這う。
背後から熱くなったプラグを押し付けられ、震えが止まらない…嫌悪感と、恐怖に。
こいつは他者のデータを奪い取ることで興奮するハッカーだ。
さっそく内部回路へ潜り込もうとしている電子的触手を必死にブロックする。
今はまだ対処できる。俺のセキュリティは人間共の幼稚な機械と違い甘く無い。しかし…
冷却液でぼやけた視界でフォールンの顔を見つめる。ディセプティコンらしい赤い眼差しは、酷く獰猛な輝きを放っていた。
「持ち上げろ」
サウンドウェーブは両手をスタースクリームの太股へ回すと持ち上げ、ケーブルで縛られた機体をフォールンへと導く。
もはや抵抗は無駄だ。それでもスタースクリームは最後の抵抗にと、ケーブルを銜えたまま首を振って嫌がった。
このまま犯され正気を失ったらハッキングをブロックしきれない。
野望にまみれたメモリからメガトロンに支配されていた先ほどの感情まで、全てを舐め尽くすように奪い取られてしまう。
絶望の浮かぶ顔が歪む。ゆっくりとフォールンのプラグがスタースクリームに飲み込まれていった。
308欺瞞の民達7/9:2009/09/08(火) 01:39:24 ID:L8h26SZD0
「――っ!」
目一杯開けた口と太いケーブルの隙間から、オイルが流れ落ちる。
苦しげな顔を観て、フォールンはそのケーブルを喉からズルズルと引きずり出した。
ぐえっとえずきながら、スタースクリームは細かく痙攣する。
喉を犯されて液体まみれになった顔がようやく落ち着いてくると、泣き出しそうな表情をしてフォールンを上目使いで見た。
「どうか…お願いします」
「なんだ」
「サウンドウェーブがいるのは嫌です…帰るようにお伝え下さい…」
「駄目だ」
「お願いします!データを、盗られたくありませっああっ!」
軽く腰を動かすと接触部から微量に快楽パルスが流れた。面白いくらいスタースクリームが仰け反る。
ハッキングのブロックで回路が精一杯だったのだろう。
「別にお前のデータが盗まれようがかまわない」
「やめ、動かないでくださっ、もう、駄目です、あ、ひぃっ!」
「お前は俺が満足する前に気絶するだろうからな。何度でも再起動させる為に奴を呼んだだけだ」
「そんなっ…、無理、やめ、がっぁああああ!」
サウンドウェーブが艶かしく身体を反らせるのが見えた。システムへのハックへ成功したのだ。
その表情は歓喜に満ちている。これからスタースクリームという存在を隅々まで奪い取る気であろう。
装甲の隙間から、いくつものケーブルがうごめきながら侵入して行く。
その感覚と全てを見られる羞恥心に泣くスタースクリームは実にみすぼらしく、そそられた。
「こっちを見ろ」
「っひぃ、あ、ひあ」
「お前の望み通り、犯してやろう。スリープモードには逃げられんぞ」
「お、お願い、ひっ、やめて、許して」
プライドも何も無い姿、オイルを垂らしながらの必死の懇願。
流石はメガトロンのお気に入りだった―実にディセプティコンの誘い方を心得ている。
フォールンは口角を上げて装置の中に深く埋もれ直すと、スタースクリームを腰へ激しく叩き付けた。
309欺瞞の民達8/9:2009/09/08(火) 01:41:05 ID:L8h26SZD0
ガン、ガン、と金属がぶつかり合う音が響く。
ぐちゃぐちゃとしたオイル音は、奇声によってかき消されていた。
「ひあああ、ぐっ、ひいい」
「っ、はぁ」
「や、があああああああああっ、あっ、ぎいっ!」
もはやそれは喘ぎではなく絶叫に近かった。度を越えた快楽パルスと共に、
強力なプライムの生体データがスタースクリームの体内へ、己を刻み付けようと駆け巡る。
「ひい、ぎあ、ぁ――っ」
一瞬スタースクリームの身体が脱力するが、間を開けずにビクンと再起動をする。
「っ、まだだ」
「――ひっ!無理…壊れ、がああああああ!」
スタースクリームのブレインは何度もショートし、その快感とデータの処理を放棄したが、
サウンドウェーブにより回線を簡易リペアされ、強制的に戻される。
もはやスタースクリームは自分で動くことを放棄していた。しかしその機体は休む事なくビクビクと痙攣し続ける。
プラグ元のオイルが枯れても達し続けているのだ。その動きはフォールンを満足させた。
「ひい、んああああ、ひぎぁっ」
大型機にも関わらず甲高く、加虐心を煽る悲惨で哀れな音。
スタースクリームの悲鳴は最高だった。
310欺瞞の民達9/9:2009/09/08(火) 01:42:13 ID:L8h26SZD0
フォールンが満足したのは、それから数時間後のこと。
最後まで壊れなかったのは久しぶりだ、良い拾い物をした。
そう思いながらフォールンはスタースクリームを引き離す。
機体は同時に引いたケーブルをすり抜け、派手な音を立てて仰向けに崩れ落ちる。
ぼんやりと天井を見つめるそのアイセンサーの輝きは失われかけていた。
フォールンはそれを見下すと言い放つ。
「好きにしろ」
サウンドウェーブの優秀な思考回路は、その言葉の意図を正しく理解した。
行為を終え気怠い感覚をさまよっている主は、さらなる楽しみを望んでいる。…もちろん自分も。
自身の既に数回達したプラグを取り出し、どろどろになったスタースクリームの両太ももをつかみ上げると躊躇なくレセプタへ挿入した。
スタースクリームは小さくうめき声を上げるが、それ以上の反応を示さない。
彼がもはや自分で稼働するエネルギーを残していないことは、スキャンせずとも判っていた。
しかしサウンドウェーブはそれを気にも止めず、細かく這わせたケーブルをキャノピーの内側から内部回路へ侵入させる。
レセプタの近くで電気を流し込むと、ビクンと機体が反射を起こした。
「きぃっ」
声か軋みかも区別がつかない音がする。その伸縮にサウンドウェーブは満足すると、
先ほどたっぷりと盗み取ったデータをブレイン内で再生しながら電気を流し始める。
ビクビクと、スタースクリームの意思に反して下半身が痙攣を起こしてプラグを締め付けた。


「もう…、もう…やめて、くれ…」
その懇願は小さ過ぎて、誰のセンサーにも届かない。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
メガトロンを利用してたつもりのスタスクは結局いつまでもNo.2止まりで、利用されてることに気づいてませんでしたとさ。
萌えネタ提供のスレ住民様、ありがとうございます。10回ぐらいあの流れ読み直した。
311風と木の名無しさん:2009/09/08(火) 01:54:39 ID:66mEKsqs0
>>299

よかったです!四弦の色っぽさに、鍵盤のようにドキドキしました。
中に出て来たもう一つのおっさんカポー達の話も、いつか是非!
312風と木の名無しさん:2009/09/08(火) 09:59:11 ID:IojXy20dO
>>250
遅まきながら激しく萌えた
Oケンもメンバーも可愛いすぎる!
もっとやってください!
313風と木の名無しさん:2009/09/08(火) 12:08:13 ID:XI6VrKxnO
>>299
鍵盤四弦大好きです!
ありがとう
314風と木の名無しさん:2009/09/08(火) 12:57:47 ID:TYxzWh7V0
>>229
すっごく良かったです!
315風と木の名無しさん:2009/09/08(火) 19:27:54 ID:b+V1rr110
>>310
機械汁に塗れた誘い受ニューリーダーを発見!ディセプティコン集結せよ!!
鬼畜なじいさまと音波にすっごい萌えたよ、GJ!
316月見酒 0/5:2009/09/08(火) 21:37:08 ID:XRormBTDO
こんばんは。
以前、悪魔くんのユルグで投下したものです。
今回もユルグです…すいません

スレの虎ユルに萌えて書き上げました…が
カップリングなのか、いまいちよくわからないものになりました…
少しでも楽しんでいただければ幸いです。

それでは!
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
317月見酒 1/5:2009/09/08(火) 21:39:10 ID:XRormBTDO

まさに轟音だった。
あまりの大きさに上からパラパラと小石が落ちてくる。

 まさか、この洞窟が壊れたりすることはないよな…

自分の大きな耳を塞ぎながらユルグは、この象人の大いびきが何かの攻撃に使えはしないかと考え始めた。
象人のいびきは、それほどまでに凄まじいものだった。

打倒・東/嶽大/帝のための手がかりを探すため、ユルグ、象人は現地に詳しい妖虎と共に中国に来た。
しかし、そう簡単に手がかりが見つかるわけもない。
 初日は静かに寝ていた象人も、3日目あたりから歯ぎしりや、いびきをかくようになってきた。
悪魔くんのため、他の十二使徒のために手がかりを探しにきたのだ。
手がかりが見つからなくて、ストレスが溜まるのも仕方がない。

 …だが、このままでは俺も眠れない。

思い切って外で寝ようかと、ユルグは出口に向かった。
318月見酒 2/5:2009/09/08(火) 21:41:01 ID:XRormBTDO

外にはすでに、先客がいた。

「あんたも、眠れないのか?」

地面にあぐらをかいて空を見上げている、妖虎に声をかけた。

「ん?」

人の姿をした妖虎は、いつものように人の良さそうな笑みを浮かべ振り向いた。

「そういう訳じゃあないが… わし『も』とは?」
「ほら、象人の…」

どうやら、象人がいびきをかき出す前から外にいたらしい妖虎は、ユルグにそのことを言われ、あぁ…とため息をもらした。

「疲れておるんじゃ、無理もない…」
「わかってるさ。だから、いびきが止むのを待ってる…」

ユルグは倒れ込むように、妖虎の隣にぺたっと座り込んだ。

「…お前さんも、疲れておるな」
「…じいさんこそ」

動物の姿をしてるユルグや象人はともかく、人間の姿の妖虎が、固い地面で寝るのは辛いのではないか?
旅の初日、ユルグはそう思ったのだが、妖虎はそのとき、それくらい何でもない、と笑って答えた。

「なに。酒を探していた時なんざ、こんなことしょっちゅうだったさ」
「また酒か…」

妖虎の酒に対する情熱は、呑んだことのないユルグには理解できなかった。
319月見酒 3/5:2009/09/08(火) 21:46:19 ID:XRormBTDO

「じゃあ、なんでこんな所にいるんだ?」
妖虎がただ何もせず外にいたとは考えにくい、と思いユルグは聞いた。

「ああ、それはな…」
そう言って、紺色の空に浮かぶ丸い月を指差した。

「せっかく帰って来れたんじゃからな、久々に見たくなってな」
ユルグの方を見ながら、笑ってそう言った。

「月はどこでも見れるがな、何が起こっても不思議じゃない今、自分の目で確かめたくてな」

その言葉に、ユルグは胸を突かれたような気持ちになった。

「じゃが、相変わらず美しいままじゃわい」
ユルグの胸中など知らぬ妖虎は、そう言ってどこからともなく、酒の入ったひょうたんを取り出した。

「…ファウスト博士に、禁酒と言われてなかったか」
「…見えない学校ではな」
罪悪感はあるのか、妖虎は言い訳がましく答えた。
帰ったらヨナルデと大掃除してやろう…ユルグは心の中でそう誓った。

「お前さんもどうだ」
これもどこから取り出したのか、いつの間にか杯に酒を注いでいた。
「いらん」
きっぱりとユルグは断った。
「…ま、そう言うと思ってたがの」
そう言って、注いだ酒をゆっくりと口にした。
 本当に、酒が好きだな…
もはや声に出すのさえ面倒だと、ユルグは心の中でこっそり思った。
320月見酒 4/5:2009/09/08(火) 21:48:30 ID:XRormBTDO

「そういえば、お前さんはアフリカだったかな?」
「あぁ」

アフリカの広大な大地と狐は、あまりイメージがつながらないのか、ユルグが出身を答えると驚かれた。

「やはり美しいんだろうなぁ。そっちの夜も」
「…そうだな」

故郷を思い出したのか、ユルグは遠い目をする。
「あっちの夜は、もっと闇が濃くて、深く、暗かった。
…静かではあったけど、見えないだけで動物たちが確かに息をしていた」

「…まるで魔界だな」
思ってたよりシビアな答えに妖虎が、思わずつぶやく。
「そうでもないさ」
苦笑いしながらユルグが応える。

「荒れた天気の日だってあるが、晴れた空は綺麗だし、虹だって見える」
真っ青な空に浮かぶ虹。
見たことのないアフリカの大地の風景が、妖虎の脳裏に浮かぶ。

「でも、一番は夕焼けだな」
「夕焼け?」

「燃えるように赤い太陽が、時間をかけて沈んでいくんだ。
日によって、橙色だったり紫色だったりするけども
赤い夕焼けが一番美しかった…」
321月見酒 5/5:2009/09/08(火) 21:54:48 ID:XRormBTDO

静かだった。
2人とも思い浮かべた夕焼けに、思いをはせているようだった。

「やっぱり、がんばらなくてちゃな…」
誰が言うともなく、ユルグが呟いた。
「じゃな…」
妖虎はそれに同意しながら、再び杯に酒を注ぎ、ユルグに差し出した。

「いらないと、言ったはずなんだが…」
酒に揺らめく月を見つめながら、ユルグが言葉を返す。
「少しだけなら、寝る手助けにもなる。
今は静かだ。寝るなら今のうちかもしれんぞ」
「…………」

妖虎の言葉に、じっと何かを思案していたユルグだったが、やがて踏ん切りが着いたのか、そっと一口だけ口にした。
そして、ゆっくり飲み干していく。

「………どこがいいのか、さっぱりわからない」
それだけ言うと、空になった杯を妖虎に返した。
「まだまだ若いの」
ふっと軽く鼻で笑って、妖虎は今度は自分に酒を注いだ。
「うるさいな…」
早くも酒が回ってきたのか、やや遅い口調でユルグが応えた。
「今日はよく喋ったなぁ…
もう寝てしまいなさい」
「言われなくて、も…」
言い終わる前に、ぴんと立っていた耳が、ゆっくり垂れ落ちた。
やがて、月の光を受けた銀色の毛並みが、上下に波打ちだした。
322月見酒 6/5:2009/09/08(火) 21:56:50 ID:XRormBTDO

「今日は昨日より月が綺麗だなぁ…」
妖虎はひとりつぶやき、月と同じ色をした背中を撫でてやった。
そして、すっかり寝入ってしまった仲間を運ぶために、残っていた酒を飲み干した。

誰もいなくなった後、月はただ辺りを照らしていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

オーバーしてしまって申し訳ない…

以前の話にコメントくれた方々、ありがとうございました!
323風と木の名無しさん:2009/09/08(火) 22:26:31 ID:y3SKGzrk0
>>310
自分もあのスレは未だに読み返してるwでもまさかあの流れを
こうやって読むことができるなんて夢にも思わなかったよ
超GJ!
324風と木の名無しさん:2009/09/09(水) 00:29:52 ID:+KrsddLQ0
>>316
新作待ってました、乙です!
キャラをすごく大事になさってるのがよく伝わってきます。
神よ、有難うございました。
325なぐさめ 0/3:2009/09/10(木) 01:12:16 ID:4Hhv4TE9O
スレお借りします。
かいけつゾロリのガオン]ゾロリです。
一応エロ注意です。
ケータイからなので読みずらかったらすいません。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
326なぐさめ 1/3:2009/09/10(木) 01:20:13 ID:4Hhv4TE9O
       
その日はとても天気が良かった。
町は活気に満ちている。
しかしゾロリはなぜか疲れた顔をしていた。
イシシとノシシが話しかけてもどこか上の空で元気がない。
「ゾロリセンセーあっちでなにかおもしろそうなのやってるだよ」
「いってみるだ!」
「すまん、オレさま今そういう気分じゃなくてな。気にせず二人で見てこいよ。オレさまはここで待ってるから」
「ゾロリセンセー…」
その時、すぐ横の宿の入り口から人が出てきたのでふと見るとガオンであった。
「む、ゾロリ」
「よーガオン、また会ったな」
「ああ…私はこれから食事でね。失礼する」
去ろうとするガオンをイシシ、ノシシが呼び止めた。
「ガオンはかせちょっと…」
「ん?」
「こっちに…」
ゾロリから少し距離をおくとこそこそと話はじめた。
「ガオンはかせにおねがいがあるだよ」
「なんだね」
「ゾロリセンセーきょうあさからずっとげんきがないだ」
「わけをきいてもおしえてくれないだよ」
「オラたちもうどうしたらいいかわからなくて…」
イシシとノシシは黙り込んでしまった。
「…わかった、私からも話を聞いてみるとしよう。君たちはその間少しどこかで時間を潰しててくれないか」
327なぐさめ 2/3:2009/09/10(木) 01:26:43 ID:4Hhv4TE9O
「ありがとうございますだ!」
「よろしくおねがいしますだっ」
イシシ逹と別れるとガオンはゾロリの元へ歩み寄った。
「イシシとノシシは何だって?」
「いやちょっと頼まれ事をね…それより久しぶりに会ったことだし私の部屋で話でもしないか」
「それはいいけど…お前メシはいいのか」
「ああ」

ガオンの部屋に入るなりゾロリはベッドにうつ伏せに倒れた。
「おい」
「わりー昨日あんまり寝てないんだよ」
ガオンはベッドの縁に座ると話を切り出した。
「何かあったのか」
「…別に何もねーよ」
「イシシとノシシが心配してたぞ」
「…」
「ゾロリ?」
「…」
「…寝てる」

ゾロリはママの夢を見ていた。大好きなママがいる楽しい日々。
ずっと続くと思っていたのにママはいなくなってしまった。

「ゾロリ」
揺すられてゾロリは目を覚ました。
見上げるとガオンが心配そうにこちらを見ている。
「大丈夫か、うなされていたぞ」
ゾロリは仰向けになると片腕で目を覆った。
328なぐさめ 3/3:2009/09/10(木) 01:30:54 ID:4Hhv4TE9O
「夢見てた…ママが死んだ時の夢」
「…」
「何でだろーな今更…」
「さびしいのか」
「…」
ギシリとベッドが軋みゾロリは太ももに重みを感じた。
見るとガオンがのっかかりもんぺ袴の紐をほどいている。
「な、なにやってんだお前」
「君がそんな状態だと私も調子が狂うんでね。仕方がないからなぐさめてやろう」
「へ?」
ガオンは襟元を掴み乱暴に開くと胸を撫でた。
「わ、やめ、ろってっ」
必死に抵抗するが気が動転していて腕に力が入らない。
起き上がろうとするとそれを阻止するように額や、頬や、瞼に口づけされ押し戻された。
ガオンはそのまま顔を胸元に近づけると乳首に舌を這わせた。
初めて体感するぬめるような感触にゾロリは思わず身をよじった。
「…あ…」
ゾロリの身体がびくりと反応した。
ガオンの手が下腹部から下半身を撫でゾロリ自身へと指を絡ませてきたのだ。
驚きまた起き上がろうとするとキスで押し戻された。
唇を執拗に舐められゾロリは口を固く閉じたがガオンの手にゾロリ自身を
擦られ、たまらず閉じた口を緩めるとガオンは強引に舌を割り入れた。
「ん…っ」
329なぐさめ 4/3:2009/09/10(木) 01:33:56 ID:4Hhv4TE9O
舌を吸われ、口蓋を舐められ思わずゾロリの鼻から抜ける声が漏れた。
その間もガオンの手はゆるゆるとゾロリのそれを刺激してくる。
絶え間なく身体を愛撫されゾロリの呼吸が荒くなっていく。
喘ぎながらゾロリは思った。
―熱い…―
ガオンと触れている部分に熱を感じる。
体温高いなーなどと快感に酔った頭で考えながらゾロリは無意識に安堵していた。
ガオンの体温が、匂いが、体にかかる重みが心地よかった。
徐々に意識が絶頂へと押し上げられていく。
「は…っ」
身体を強ばらせなんとか耐えようとするゾロリをガオンは容赦なく追い詰めていく。
「あ…っは…」
ガオンの脇に手をまわすと服を強く握り締めゾロリはガクガクと身体を震わせながら熱を吐き出した。

ぐったりとしたゾロリの顔や首筋にくちづけながら愛撫を続けるガオン。
ゾロリはたまらずその口元を手で押さえたが手のひらを舐められて慌てて離した。
たじたじのゾロリに対しそんなことはおかまいなしにガオンは愛撫を続ける。
疲れていたゾロリは起き上がることを諦めた。
身体を横にしてその目を閉じるとガオンの唇の感触を感じながら深い眠りへと落ちていった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
オーバーしてしまってすいませんでした!
330風と木の名無しさん:2009/09/10(木) 09:12:42 ID:f+9zaGfIO
オーバー以前の問題な訳だが
331風と木の名無しさん:2009/09/10(木) 10:17:18 ID:fZQb+ehX0
なんで?どこが??
332風と木の名無しさん:2009/09/10(木) 11:59:31 ID:7BT4W6/OO
ageてる
333風と木の名無しさん:2009/09/10(木) 16:30:17 ID:NNWtUCVtI
ageてるだけなら問題にするほどのことは無いな
334風と木の名無しさん:2009/09/11(金) 11:30:11 ID:lH/u4+FgO
大問題だろ
暗黙の了解に従わないってことはつまり
335風と木の名無しさん:2009/09/11(金) 12:31:11 ID:CnkCLqIP0
sage推奨でもないし、板としてはsage進行のところが多いけど絶対じゃないだろう
まあこういうめんどくさい人がいるからsageるけどさ
336風と木の名無しさん:2009/09/11(金) 13:49:15 ID:LySHmiV70
問題だって騒ぎたいだけだよ。棚はこういう仕切りたがりが湧くね。
337風と木の名無しさん:2009/09/11(金) 18:50:54 ID:Y2RD949jO
>>329
萌えたーGJ!!
よもやゾロリに萌えさせられるとは。
338円環1/9:2009/09/11(金) 20:28:29 ID:LpYN5Sb/0
ラノベ円環少女、破壊と沈黙。イチャイチャした友情です。ロリ→沈黙の三角関係(?)注意。
女性が出てくるのが苦手な方は回避推奨。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「じゃ、いってくるわね、せんせ。あたしがいない間もちゃんとお留守番してるのよ?」
「あのな、……いやいい。わかったからさっさと行ってこい」
 肩を落とした彼をのぞき込み、小学六年生の鴉木メイゼルはいたずらっぽく笑った。彼は
いまだにこの彼女の嗜虐的な愛情表現に慣れきれない。慣れたら終わりだ、という心の声を
聞きながら、武原仁はおろしたてのサンダルをしたがえた少女の揺れる黒髪と、その
すきまから覗く白いうなじを見送った。
「――さて」
 玄関に鍵をかけ、居間へと戻る仁は息を吐いた。

 鴉木メイゼルは魔法使いだ。
339円環2/9:2009/09/11(金) 20:29:01 ID:LpYN5Sb/0
 この世界には、大昔から、多くの《魔法使い》が来訪している。それが知られていないのは、
この世界の一般人に観測されると魔法が破壊されてしまうからだ。幾万の異世界から来る彼らは
この世界を奇跡燃え尽きる《地獄》と呼び、魔法使い以外の目には見えないオレンジ色の火の粉
とともに感覚のすべてで奇跡を粉砕する一般人を《悪鬼》と蔑む。
 そして武原仁は、現在知られている中で唯一、その魔法消去を停止したり再発動したりできる
《悪鬼》だ。彼は犯罪を犯した魔法使いを実力行使で取り締まる専任係官の一人であり、
この《地獄》に落とされ犯罪魔導師を狩ることをさだめられたメイゼルの監視のために小学校の
副担任を務めるニセ教師でもある。
 やれやれ、と仁は首を回した。休日に家に一人という境遇が、ずいぶん久しぶりのものに思える。
神和と出かけた倉本きずなが戻るまで、武原家にはつかの間の空白がおとずれる――はずだった。
 鍵のまわる音がした。
「おや」
「おやじゃねえ。ここは誰の家だか言ってみろ」
「ひどいな、仁。知らない仲でもないだろうに」
 顔を出したのはメイゼルではない。呼び鈴どころかノックすらなく合鍵を使ったこの男は、
両手にゴージャスな秘書とミニスカートの看護婦をはべらせていた。
340円環3/9:2009/09/11(金) 20:30:41 ID:LpYN5Sb/0
「学生時代にぼくと仁がさんざんお世話になった家だろう? いわば、ぼくらの家といっても
過言じゃあない」
 左目をつむったこの男は、名を八咬誠志郎という。

 鴉木メイゼルは魔法使いだ。神和瑞希も、倉本きずなも、そして、八咬誠志郎も。

 奇跡が存在しないはずの地球にも、突然変異的な特有の魔法がいくつかある。専任係官
八咬誠志郎の魔法はそのひとつだ。
 名を《破壊(アバドン)》。五感で観測したものを、魔法と自然物、さらに術者の肉体すら
区別せずに破壊しつくす凶悪なしろものである。この世界が異世界人言うところの《悪鬼》――
魔法消去のできる人間であふれていなかったら、八咬は生きていることすらできない。両手の
秘書と看護婦は、魔法使いではない一般人――魔法消去能力を持つ《悪鬼》だ。自分では
止められないこの異能から身を守るために、ふだんの彼は身体感覚を極限まで磨耗させている。
 彼は高校時代からの仁の友人であり、同僚であり、色素の薄い二枚目であり、胸板を半分以上
さらしたピンクのドレスシャツに派手なジャケットを引っ掛けたトンチキである。両手に秘書と
看護婦をはべらせ額にかかった前髪を払う芝居がかったしぐさはどこから見てもバカでしか
なかったが、それでも彼にはどこか、気障なセリフが浮かない気品があった。
 仁が虚を突かれている間に秘書と看護婦を下がらせた彼は、勝手知ったる他人の家で
居間へとあがりこむ。
341円環4/9:2009/09/11(金) 20:31:32 ID:LpYN5Sb/0
「おい、帰しちゃっていいのか」
「きみが魔法消去をしてくれてるだろう?」
「そりゃそうだが」
 掘りごたつにおさまった貴公子は両手を大きく広げ、愛しげに目を細めた。
「さあ友よ、遠慮はいらない。飛び込んできたまえ」
 学生時代から変わらない友人のノリに、仁は笑ってしまう。
「おまえな」
 まったく、笑うしかなかった。
 感覚したすべてを破壊してしまうからこそ、彼はこの世のすべてを愛し、人のぬくもりを
欲する寂しがりだ。

 小突いてやろうと屈んだ所をおもいきり抱きしめられた。不意を打たれてよろけた仁は
あやうく男の上に倒れこみかける。手を突いた彼の抗議の声をおさえるように、肩と頭に
かかった腕が引き寄せられた。ボタンを4つ開けた胸板にぎゅうと押し付けられ、いつか
ほんとに振りほどくぞ、と仁は嘆息した。
342円環5/9:2009/09/11(金) 20:32:18 ID:LpYN5Sb/0
 八咬の抱擁は全身で仁の存在を呼吸するようだった。強く抱かれたのち輪郭を確かめる
ように背を撫でられ、仁はくすぐったさに身をよじる。しあわせそうに笑った八咬が仁の
こめかみに頬を寄せた。甘く繊細な造作がすりつけられて、秀でた額に一房落ちかかった
前髪が仁の頬をくすぐる。八咬は満ち足りた猫のように喉を鳴らした。伸ばされた喉と
寄せられた眉には、同性である仁に直視をためらわせる色気があった。
「おい、こら」
 鎖骨に押し付けられた肩口をタップして、仁の背中と腰をホールドした腕を解くように
要請する。
「おまえ、いくつだよ。もう23だろ。ちょっとは遠慮しろ」
 耳のうしろで聞こえる声が、すねてみせるようにくぐもった。
「昔みたいに抱いてくれよ、仁」
「気色悪い言い方すんな」
 失笑した仁は、腕を回して長身の背を二度叩いた。
「ほら、これでいいだろ。ただでさえ暑苦しいんだからあんまり密着――」
 ――顔を上げた彼はその場に凍りついた。
 腕の中でこわばった肩と筋で異変を察し、八咬が振り返る。
343円環6/9:2009/09/11(金) 20:32:50 ID:LpYN5Sb/0
「やあ。おかえり、小さな魔女くん」
 はたして、そこにいたのは仁がつい10分前に見送ったはずのメイゼルであった。
 声も出せずに目を見開く彼女のちいさな手には、手土産にと持たせた菓子の袋が
ちぎれんばかりに握られている。何か忘れ物にでも気付いて戻ってきたのだろうか――
「……誤解だ」
 口に出してしまったあとで、この場でもっとも言ってはいけないセリフだったような
気がした。だが、フォローすら思いつかない状況では、取り消すわけにもいかなかった。
「せんせ」
 御陵甲小学校六年一組に通う少女の声は、冷えた鉄芯のようだ。
「これ、どういうことなのか、せんせには説明する義務があるとおもうの」
「待てメイゼル、落ち着け。そうだ、おまえ、遊びに行く約束が――」
「電話しておことわりするわ。残念だけど行けません、とってもだいじな用事ができた
から、って」
 魔法消去を発動している仁には、五感のどれを使っても魔法を感知することができない。
八咬の全身から噴き上がっているはずの、オレンジ色の《魔炎》も見えない。
 だが、少女の背後には、確かに危険なエネルギーが渦巻いていた。
344円環7/9:2009/09/11(金) 20:33:23 ID:LpYN5Sb/0



「友だちなんて言葉で、あたしが納得できるわけないでしょ!」
 やはりというかなんというか、少女は素直に許してはくれなかった。正座をさせられた
仁は頭を抱える。
「あのな。何度も言うけど、こいつは単なる抱きつき魔なの。俺の魔法消去をあてにして
昔っから容赦なく抱きつくもんだから、不本意なことに、俺はそれに慣れちまったんだよ。
それだけだ」
「ふうん。せんせはなぐさめてほしいっていわれたら、いっつもあんなふうに抱いてあげるの」
 容赦のない表現に仁はたじろぐ。後ろ暗いところはなくとも、男と抱き合っていたの
だと意識させられるのは精神的にきつい。今後も付き合いを続けていきたいとなれば
なおさらだ。背中に回っていた八咬の手が仁の腰骨と脇腹を撫でさすったことを、友愛
以上の意味のあることだとは、彼はできれば思いたくなかった。
345円環8/9:2009/09/11(金) 20:33:59 ID:LpYN5Sb/0
 少女と成人男性のやりとりを微妙な表情で見守っていた八咬が口を挟んだ。
「レディ、ぼくはただ友との交流を――」
「黙ってちょうだい。あんたがどんな顔してせんせに抱いてもらってたか、あたしが見て
ないとでも思ってるの」
 おもわず、仁は隣の男の顔を見た。仁と同じく正座をさせられている高校時代からの
旧友は、真顔になって、何かを確かめるように己の顔に触れていた。
「おい、やめろ、俺を不安にするな」
「せんせもよ! ああ、もう、そんな顔しないで! こんな男にそんな顔見せちゃだめ!」
 いやいやをするように首を振ったメイゼルは、万感の思いを込めて叫んだ。
「おびえた顔も、不安そうな顔も、困ってるくせに嬉しそうな顔も、ひどい目にあわされ
てるのに信じることをやめられない顔もだめ! そういう顔はぜんぶあたしに見せる
べきなの! せんせがそういう顔をしていいのはあたしの前だけなのよ!」
 もとが異世界人である彼女は、嗜好がこの世界の常識から若干危うい方向にずれている。
目を潤ませ、いとけない肌とやわらかい頬をほてらせた少女は、生粋の嗜虐趣味者である。
 八咬は形容しがたい表情をしていた。きっと自分も似たような顔だろうと仁は思う。
違うとすれば、仁の境遇に対する笑いと哀れみと呆れと諦めの比率くらいなものか。
346円環9/9:2009/09/11(金) 20:34:31 ID:LpYN5Sb/0
「だいじょうぶ、あたしは魔法使いよ。魔法使いにとって、生きるってのは戦うってこと
だもの。《地獄》落ちにだって犯罪魔導師にだって、あのグレンにだってあたしは
立ち向かってきたのよ。……ええ、たとえ相手が《破壊(アバドン)》、魔法使いの悪夢
だとしても、変わることなんかひとつもないわ。あたしのこと知ってるでしょ、せんせ。
ずっといっしょだったんだもの。せんせのこと、ぜったいに奪い返してあげる。あたしの
ことしか考えられなくて、なにをするときでもあたしに許してくださいって言わないと
気持ちよくなれないようにしたげるわ」
 魔法使いとしての本能的な恐怖すらおさえつけ、どこまでも固く鋭い決意を、メイゼルは
静かに研ぎ澄ましている。少女こと史上最年少の刻印魔導師と、軽薄一代男こと最悪の魔法
を宿した男を、言葉で――よりによってこの面子の間でいちばん共有しにくいしろもので
仲裁しなければならないという難題を思い、仁は気が遠くなった。
 軽薄一代男が優雅に首を振り、仁の肩に手を置いた。
「泣くな仁。困難に立ち向かうときに泣いてはいけない。エレガントであれ」

 幾万の魔法世界のうちに、ただひとつ魔法に見捨てられた世界がある。ここは地獄――
すべての奇跡が燃え尽きる場所。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
347あのひと (始):2009/09/12(土) 01:03:59 ID:NRmRQd+7O
丹タ刊
>>142とは別の子ら。
位置争いを勝手に妄想。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
348あのひと 1/2:2009/09/12(土) 01:05:35 ID:NRmRQd+7O
給水器から注いだ冷たい水が喉を潤して、ホッと一息つくと、
横から伸びた手が紙コップの中に水を注いだ。
小柄な影だったので、一瞬あの人かと思ったが、違った。
怪我人が出て、後半から出番の多くなったひと。
自分の順番と位置に最も近くなったひとだった。
彼はこちらを一瞥するも、すぐにコップを引いて、後ろに下がった。

水を飲み干して、少しの間。
薄暗い廊下の隅に置かれた給水器の前には、自分と彼以外いなかった。
落ち着かない。ざわざわする。
あの人となら、自然でいられるのに。
その日の反省であったり、無関係な話であったり。
気兼ねなく話せて、笑いあって、楽しくて。
最初は、そんなノリの延長で。

「譲らないから」

突然投げつけられた言葉は、あの日の記憶から瞬時に今へ引き戻す。
振り向くと、彼は瞬きしない眼でじっとこちらを捕らえている。
「お前らのこと知ってるけど、俺は今の位置をあの人に絶対譲らないからな」
何を。
何を知ってるんだ。
来てそんなに年数も経っていないあんたに、何がわかるんだよ。
349あのひと 2/2:2009/09/12(土) 01:07:40 ID:NRmRQd+7O
「何のことですか」
昂る心境とは裏腹に、涼しい顔で笑ってみせる。
彼は眉間にしわをよせた。
呆れたような、それとも少し、
困惑したような表情。
目を伏せて、独り言のように呟いた。
「・・・何でわかんないんだよ」
「え」
何を、と問う前に、携帯が震えた。
見なくてもあの人からのメールだとわかる。
今日はそういう日だから。
携帯を取ると、彼は紙コップを捨てて「じゃ」と立ち去った。

メールを確認する前に、彼の去った方向を見つめた。
彼は何を言いたかったのだろう。
350あのひと (終):2009/09/12(土) 01:10:05 ID:NRmRQd+7O
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

書き終えてから、これバツテりでも良いかな、と思いつつ。
自由に想像して頂けたら。
351太鼓唄 膝で眠る男 1/5:2009/09/12(土) 21:39:41 ID:OQtysdS60
お借りします。
・ナマ、一角獣太鼓唄+α。
・いい年したおっさんが右往左往しているだけ、エロ無し


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
352太鼓唄 膝で眠る男 2/5:2009/09/12(土) 21:40:58 ID:OQtysdS60
見てしまった。
最初はこんなふうにこっそり覗くつもりなんてなかった。
一人だけの取材が終わって手持ち無沙汰だったから、何となく楽屋に戻ろうと思っただけだった。
ただ、そのすぐ前にスタッフが「河弐志さん到着しましたー」と言っていたのを思い出し、
今朝方強行軍で東京に戻ってきたおっさんの疲れた顔でも見てやろうと思ったのだ。
(どうせ、阿呆みたいに元気なんやろうし)
この間貸すと約束したCDを忘れないうちに渡さなければ、なんて言い訳じみたことを考えながら
ただいまーと暢気な声で的外れな挨拶をするおっさんを想像し、少し足取りが軽くなる。

俺たちはいい年して、五人全員で使える大部屋の楽屋を用意してもらっている。
全員で好き勝手騒いでいることもあれば、それぞれの現場の仕事を片付けていることもあるが
頑として全員一緒を譲らない俺の意見が通って今に至っている。
いい大人になっても全員一緒はやっぱり楽しいし、何といっても気が楽なのだ。
今日のスタジオは何度も訪れたことがあるところで、楽屋はスタジオから少し離れた場所にあった。
鼻歌交じりで角を曲がると楽屋のドアは完全に閉まっておらず、中から妙に通る声が洩れている。
「もう、寝るならソファーで寝なって。重いって言うとるでしょー」
「ええじゃん、十分でええからちょっと寝かせてよ」
からかうようにケラケラ笑う海老の声に被さるのは、紛れもなく河弐志の声だ。
「朝早くてあんまり寝れんかったからちょっとだけ、ね?」
入り口に背中を向けた形で置かれた大きなソファーに座っているのがわかるのは
ご自慢の黒髪を揺らして笑う海老だけで、肝心な河弐志の姿は見えない。
(……あ、スニーカーあるやん)
河弐志が普段履いているスニーカーがソファーの横に脱ぎ捨てられているのをめざとく見つけ、
多三男は訳もなく息を潜めた。ようやく状況が理解できた気がした。
353太鼓唄 膝で眠る男 3/5:2009/09/12(土) 21:42:35 ID:OQtysdS60
有無を言わせない強さを感じさせる甘ったるい声に言いくるめられた海老は
五分だけだからね、と言ってソファーに寝そべっているらしい河弐志にのんびりしたトーンで話しかける。
「五十前のおっさんがメンバーの膝枕で寝てるとか、絵面はともかくけっこう衝撃的じゃない?」
「んー?そうかねえ、まあ亜辺には怒られるかもねえ」
「何で亜辺……ってちょっと、くすぐったい!河弐志さん!」
うひゃひゃ、と身体をのけぞらせて楽しそうに笑う海老の横顔に、何故か胸が痛くなる。
「脇腹はやめてよ―。落としちゃうじゃん」
「なら、落とされんようにがっしり抱き付いて寝るとしようか」
「はいはい、もうわかったからさっさと眠っちゃってよ。呼ばれたら叩き起こしてあげるから」
「ん、おやすみー」
「はーい、おやすみなさい」
慈しむような笑みを浮かべた海老は、膝の上でようやく口を噤んだらしい河弐志にそう告げ
小動物を撫でるような感じで腕を動かしている。
健やかな寝息が途切れ途切れ聞こえ始めるまで、一歩も動けなかった。

他の現場ではどうだか知らないが、最近の河弐志は多三男を始め
年下組に妙に甘えるところがある。
もちろん多三男は内心動揺しつつも真顔で切り捨てるし、亜辺ははいはいとあしらってかわすが
海老だけは笑ってそれに律儀に応え、夜な夜な連れ回されることさえも楽しんでいるようだ。
今となっては誘われなくても隣にいる海老が何かと河弐志の相手をしていることが多く、
自分はそれを少し離れた場所から見ていることが多い。
(……あいつ相手に、嫉妬なんて誰がするかい)
海老のようにフラットに対応できれば問題ないのかも知れない、とは思うが
そんな芸当がもし万が一自分にできたなら、こんなに長い間離れていることもなかっただろうし
もっと素直に色々なことを伝えられただろう。
354太鼓唄 膝で眠る男 4/5:2009/09/12(土) 21:44:27 ID:OQtysdS60
「でも、そんな多三男には河弐志くん惹かれなかったんじゃないかねえ」
苛々しつつ戻ってきた多三男を見るや察したらしい亜辺は、断片的な言葉から状況を察して
暢気に煙草を吸いながらそんなことを言った。
「はあ?おっさんが俺のどこに惹かれたって?」
「そりゃ声とかステージングとか色々あるだろうけど、結局それってその人となりに繋がるでしょ」
「……」
「ってことはさ、やっぱり多三男がこの多三男だったからこそ、ってことじゃないの?」
こういうときの亜辺の言葉は妙に人生を達観した感があり、絶妙なところを突く。
(そういうもんなのか……わからん、全然理解できん)

「だいたいねえ、俺は海老にやたら絡むこと自体が納得いかない訳よ。わかる?」
最近海老に振り回されつつもご執心(本人曰く毎日が甘酸っぱい初恋気分らしい)な亜辺は、
がしがしと煙草の吸い殻を潰しつつやたら大袈裟に舌打ちをした。
「俺がずっとあっためてきたのに、突然横入りされてかっ攫われるなんて真っ平御免だっつーの」
「……おまえも色々苦労しとるのな」
「まあそれでもいいんだよ、俺の苦労は報われる苦労だから」
聞きようによってはずいぶん身も蓋もないセリフを吐き、亜辺はよっこらしょと言いながら立ち上がる。
「そろそろ迎えに行ってきましょうかね、腹ぺこ狼にぺろっと食われちゃ流石に堪らんし。
あ、多三男も一緒に行く?」
「行かん」
「そう言うと思った。まあいいや、ちょっくら行ってくるわ」
ひらひらと手を振ってスタジオを出て行く親友を見送り、何となく想像してみる。
もし二人っきりで膝枕を強請られたら、自分は嫌々なふりをしつつも膝を明け渡すだろう。
膝の上に寝っ転がる見慣れた顔を真っ直ぐ見下ろせず、海老のようにからかったりすることもできず
ただ黙って河弐志の寝顔を見つめるので精一杯になりそうだ。
それこそ、髪を撫でるなんてとんでもない。
「三つ子の魂百まで、ってやつかねえ……」
「何が?」
355太鼓唄 膝で眠る男 5/5:2009/09/12(土) 21:45:35 ID:OQtysdS60
不意にすぐ後ろから聞こえた絶対に聞き間違えない自信がある声に、多三男は反射的に振り返った。
今自分が年甲斐もなくすごくうれしそうに笑っているのも、
どこかで呆れまじりで見ているだろう亜辺(と、いつも通りの海老)が視界にまったく入らないのも
全部このどうしようもなく愛しくてしょうがないおっさんのせいだ。




□STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

こっちも一度書いてみたかった、ので書いた。正直反省していない。
下三人に愛される太鼓様(と六弦)が大好きです。
356風と木の名無しさん:2009/09/12(土) 22:12:21 ID:tDHDlUkJO
>>346
ちょっと久しぶりにラノベ読んでみようかなって気になった
357風と木の名無しさん:2009/09/13(日) 00:14:43 ID:cdxkFEPm0
>>355
良かったですー。
(ただ最初「オレ」で一人称なのに、途中から三人称なのでちょっと混乱しちゃいました)
この二人は、とくに唄はじれったいですね。
太鼓は無邪気に下三人の膝を借りちゃいそうな人なので
実際そういう場面も起こりそうなのが、この人らのおっとろしいとこw

358355:2009/09/13(日) 00:28:47 ID:Fz0MWk2r0
>>357
スマン、校正漏れしてしまいました…保管庫だけ直してきます
359里予Q 保守×党首:2009/09/13(日) 08:14:15 ID:r7fB61M1O
ナマモノ注意。
若保守×超先輩党首。

以前とは別チィム別カポーですが、農場見てたらぐっときたのでやった。反省は明日します。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
360里予Q 保守×党首(1/3):2009/09/13(日) 08:14:44 ID:r7fB61M1O
9月に入っても、気候はまるで暦を読む気配がない。
照りつける日差しと額から流れ落ちる汗は、自然と眉間に皺を刻んでゆく。

大きく一つ、ため息。
日頃から屋外Q場で鍛えられていても、設備の整っていないファ/ームでの試合は予想以上に堪えるもので。
回が進むにつれて高まる熱気に加え、先ほど自らあげた才丁の興奮が未だ冷めない。
細耶麻田は、最終回を迎え半ば理性を手放しかけていた。

ーああ、柄にもなくかなり興奮している。
この回、きっちりと抑えなければ。

ノレーキーたるもの、頑丈・堅実・実直が肝心。これしきで乱れていては、笑われてしまう。
細耶麻田は熱の籠もったマスクを被り直すと、マ/ウンドを見据えてゆっくりと呼吸を整えた。

自分には、スポ/ーツ誌を騒がせるような飛び抜けたキャラクターも能力もないけれど。
それでもチー/ムが、何よりあの人が選んでくれた。そして見ていてくれる、それで十分だ。

だから、だから。
少しでも多く、あの人の勝ちを支えたい。そのために少しでも多く経験を積んで、あの人の元に戻りたい。

ー…早く、巳裏さんに会いたい。
361里予Q 保守×党首(2/3):2009/09/13(日) 08:17:24 ID:r7fB61M1O
サ/インを出すため僅かに腰をあげると、ぐらりと一瞬世界が揺れた。
慌てて右手を上げて審半リと党首に静止をかける。

揺らぐ視界の先で心配そうにこちらを見ている党首の姿が、段々と思い焦がれる彼の人の姿に重なっていく。

ー…すいません、御耶麻田さん。

ノレーキーは胸の内でチー/ムメ/イトに謝罪し、そっと目を閉じる。
時間にして僅か数秒、再び目を明ければマウンドの御耶麻田は巳裏に、そして景色はスタ/ジ/アムのそれに変わっていた。

今日は、俺がリードします。
…いいですよね、巳裏さん。

いまここにいない人を思いながら己を騙し、ひとり昂ぶり、満たされる。
まるで自慰のようなこの行為をあの人が知ったら、自分などあっさりと御役御免になってしまうだろう。

そう思いながら、球を受けるほどに増す罪悪感と高揚感。
面白い程に噛み合った細耶麻田の配球は次々と相手才丁者を打ち取っていった。

やがて、ゲー/ムセ/ットの歓声とともに魔法は解け、目の前ではよく陽に焼けたチー/ムメイ/ト達が破顔している。
最終回からの点差を守り切った自チ/ームの勝利だ。
362里予Q 保守×党首(3/3):2009/09/13(日) 08:17:55 ID:r7fB61M1O
「よくやったなぁ丈紙!巳裏さんにちゃんと報告しろよ?」
「え…!」
駆け寄るチー/ムメ/イトの口から頭の中を占領していたその名前が告げられ、思わず背筋を伸ばす。
「ん?言わねえの??」
「あ…、いえ、言います」

それはもう、誰よりも先に伝えたいのだけれど。
ヒーロ/ーイ/ンタビ/ューはお前だと笑う仲間にさえこの後ろめたさだというのに、一体あの人へどう報告したものか。
ベソチに戻り荷物を纏めながらひたすら思案する。

今日がニ/軍戦であったのは、幸運だったかもしれない。
もし実際にイン/タビューの指名を受けたら、確実に辞退していただろう。

ー…ああしかしどうしよう。
携帯忘れたことにして、夜まで保留してもいいかな。いや、ダメかな。
今日ばかりは本当に、離れ離れでよかった。よくないけど、よかった。

ノレーキーは人知れず胸を撫で下ろしつつ、次はしっかり一人でやりきってみせると決意した。
その頃、荷物の底に眠る携帯電話に巳裏からの祝報と帰郷後の食事の誘いが届いていたことを、彼はまだ知らない。
363里予Q 保守×党首:2009/09/13(日) 08:18:29 ID:r7fB61M1O

□STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

農場で鍛え上げられた新妻の、今後の活躍に期待してます。
364風と木の名無しさん:2009/09/13(日) 09:47:47 ID:NOB9Xr4VO
>>49
亀も甚だしいがGJ。波音を脳内再生しながら読めた。
365風と木の名無しさん:2009/09/13(日) 15:35:09 ID:BcKasBUcO
>>359
萌えたよ姐さん…!
366黒調味料 「嫉妬する人される人」 0/4:2009/09/13(日) 20:11:38 ID:F5uMcFIU0
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  生 鯨仁 黒調味料ボケ×ツッコミ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  前回の論派その後を捏造してみたよ
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧  ウマクノッテマスヨウニ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |

黒調味料とか萌えねえwwww」って姐さんはスルー推奨
あと初なので色々とおかしい所あるかもしれないので注意
367黒調味料 「嫉妬する人される人」 1/4:2009/09/13(日) 20:14:33 ID:F5uMcFIU0

「頼む!!」

 楽屋に戻ってくるなり、相方の第一声がこれだ。目の前には土下座をしている芳田がいる。
土下座をされている側である濃過ぎは今何が起きているのか、そしてどうして土下座されているのかよく分からなかった。

「いや…、自分何しとんのか分かっとんの?」

 とりあえず聞くだけ聞いてみる。

「分かっとるわ!せやけどな、頼むわ、マジで!」
「せやから何がや!」


「乳揉ませてくれや!」


 楽屋内の空気が凍った気がした。
芳田の言っている事を理解したくないと濃過ぎの脳が拒絶反応を出している…気がした。
…とりあえず、頭の中で整理してみた。
368黒調味料 「嫉妬する人される人」 2/4:2009/09/13(日) 20:16:00 ID:F5uMcFIU0
確か収録で呼び出されていて。
楽屋で休んでたらいきなり「御用だ御用だ!」と言いながらお江戸の警察かそこらへんの人達が入ってきて。
動揺しているうちにスタジオに担ぎこまれて。
そしたら厚さんが芳田の合コン隠し撮りVTRを流して。
内容は…省かせてもらおう。長いから。
結局の所、芳田に対する刑は、相方である濃過ぎを揉みまわす刑だった。

そしてその収録が終わったらこの有り様である。

「あんな…、篤志さんも言いよったやんか。『濃過ぎはお前だけのものじゃない。みんなの濃過ぎなんだよ。』って。せやから相方お前の頼みであっても聞けへんわ。」
「なんや!お前お預け食らった犬の気持ち考えて見た事あるか!?俺はいまお預け食らった犬の状態やぞ!はよ『良し』って言えや!!」
「なんで乳揉むのがご褒美みたいになっとんねん!つかそれ人になんか頼む時の言い方ちゃうやろ!?」
「あん時やってそうや。中途現実やら芝多さんにチヤホヤされて俺はベルが鳴っても餌にありつけん犬状態やったぞ!」
「お前はパ○ロフの犬か!!つかさっきから例え方がおかしいやろ!!」

 なんだか漫才をしているような流れになってきていた。
このままでは収集がつかない、そう判断した濃過ぎは、

「とにかく駄目なもんは駄目やで。」

 と言って話題を終わらせた。
芳田は納得のいかないような顔をしていたが、素直に諦めていた。
369黒調味料 「嫉妬する人される人」 3/4:2009/09/13(日) 20:17:19 ID:F5uMcFIU0
 とりあえず椅子に座る。壁に固定されている、メイクする時なんかに使う鏡で芳田を凝視してみた。
鏡に映る芳田はふてくされた表情で携帯を操作している。こちらには気づいてないようだ。そんな芳田を見ながら濃過ぎは先程の収録の事を思い出していた。
 濃過ぎの前では素直になれる、と芳田があの時の映像の中で言っていた。
 親と濃過ぎが溺れていたら、濃過ぎを助けるとも言っていた。
あの発言は、普段ひねくれている芳田の、素直な気持ちなんだろうか。 
もしそうなら素直に受け止めてやらないといけないかな、と思い始めた。
良い所も悪い所も受け止めてやらないとアイツはずっとひねくれたままかもしれないから。
 

そう思い始めた濃過ぎ自身も、実際は芳田と同じ事を思っているのだが。

370黒調味料 「嫉妬する人される人」 4/4:2009/09/13(日) 20:18:35 ID:F5uMcFIU0

「…芳田。」
 数分後、相方に声を掛けてみる。返事はない。
「…ご、5秒だけやで?」
 携帯を閉じる音がした。鏡を通して芳田と目が合う。思わず動揺する。
「か、勘違いすんなや、ご褒美ちゃうで。仕方ないからさせてやるんやで?」
「せやけど俺の1秒は普通の人間の10秒やぞ。」
「なんで1分ぐらい揉まれなあかんねん!普通の感覚で5秒や!」
「しゃーないな…、分かったわ。」
 芳田はテーブルに携帯を置くと濃過ぎに近づいた。胸に手を置く。揉む。
「なんか鯨仁アンケートん時と同じ揉み心地やな。」
「そりゃそうやろ…。変わる訳ないわ。」
 
 5秒たつと芳田はちゃんと手を離した。…少し心残りな表情をしているが。
「なんや?なんか言いたい事ある?」
「いや…、やっぱ性転換せぇへんかなって…。」
「せぇへんわ!アホか!!」
 だが結婚して夫婦になるのだったら悪くはないな、と濃過ぎは思った。
いや、これだけ連れ添っていればもう夫婦も同然か、と思い直したが。

「あ、せや。言い忘れるとこやったわ、芳田。」
「なんや。」


「熱い話…、俺も好きやで、お前の事。」

371黒調味料 「嫉妬する人される人」 4/4:2009/09/13(日) 20:21:41 ID:F5uMcFIU0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 反省はしている
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
表現等で不可解な思いした方がいたら謝ります。すみませんでした。
あとナンバリングミスりました。本当すいません…。

さてROMに戻ろうかな
372風と木の名無しさん:2009/09/13(日) 22:58:35 ID:2cZ5xwqy0
>>363
あああありがとう
新妻ういういしいなー
萌えたぎりました
373風と木の名無しさん:2009/09/13(日) 23:41:53 ID:oyNKzY4u0
>>371
超GJ!何だかんだで最後は芳田に
許してしまう濃過ぎ萌えw
374風と木の名無しさん:2009/09/14(月) 10:18:27 ID:t/MsZXPi0
>>355
GJ!右往左往するおっさん、かわいいですねー
情景が浮かぶようでした
375背水の赤 0/6:2009/09/14(月) 22:05:48 ID:0S8AQGrZ0
なまもの。完全捏造です。ダメな方はスルーしてください。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
376風と木の名無しさん:2009/09/14(月) 22:05:59 ID:keB8DKOC0
ちょっと質問
42スレ目で影門の死神×勇者書いてらした姐さんっていらっしゃいます?
一年近く前だし、棚スレで探し人は難しいかなぁ
377背水の赤 1/6:2009/09/14(月) 22:06:26 ID:0S8AQGrZ0
準備を怠らないこと、物事は疑ってかかること、念には念をいれること。
いついかなる場面でもそれを実践すべきなのだが、今回ばかりはノーマークだった。
まさかこんなところで味方から牙を剥かれるなんて思わない。
抵抗する間もなく、背中は柔らかいスプリングに沈み、彼の頭の向こうに天井を見つめることになった。

「え、まて、え?」 待て待て待て、なんでいまこんなことになってんの、俺。
携帯が鳴って、ちょっと部屋から出てこいって言われて、出たらいきなり押し戻されて。
文句を言おうと思ったら腕を引かれて投げられて押し付けられて、身体半分乗りかかられて、いる。
正面には見慣れた彼の見慣れない表情。真剣なんだかふざけているのか、判断に困る。

「いま、すごく、いい気分なわけ」

それは、わかる。今日のお前の気持ちなんて、言われなくたって俺じゃなくたって誰だって。
よかったなと思っている。すこし、なんて表現じゃあ片づけられないくらい酒くさいのも仕方ない、大目にみよう。
だけどなんでお前の機嫌が良いとこうなるの。さっぱりわからない。
ただ、この期に及んで、キャーキャー言われるのに相応しい顔をしているな、格好良いもんな、
と冷静に考えることができる自分は、少しおかしい。職業病なんて立派なものでは、ない。
378背水の赤 2/6:2009/09/14(月) 22:07:13 ID:0S8AQGrZ0
「でね、一発やりたいと思ったから来たんだけど」
「それはむり、」 ぐいと顔が近付いたのを、右手を額に押し付けて避ける。
あからさまな直球勝負。どんな誘い文句だそれは。泣けてくる。
「明日のこと考えてよ!」
「大丈夫、一発で仕留めるから」
「それ違うって!」

仕留めるってなに、獲物か俺は。脳内が引っ掻き回されている間にも、シャツが半分剥がされている。
熱いてのひらが素肌に触れ、もう一方が躊躇なく腰に掛けられて、慌てて止める。

「ほんとに頼むから待って、お前さ、なんで雰囲気とか気にしないの」

電気はつけっぱなし、きりのいいとこで風呂に入ろうと思っていたからお湯は出しっぱなし。
机の上にはノートとペン、ちょうど画面いっぱいにお前が映ったままの状態で一時停止されたDVDプレイヤー。
どう考えても一発やろうって部屋じゃ、ないでしょ。

「この期に及んでなに言ってんの」 おおきくため息をつかれた。あからさまに眉があがる。
そのままの状態で固まって、数秒、至近距離で見つめ合う。
根負けしたのは彼の方で、掴んでいた服の裾を離してぱたんとこちらに覆いかぶさってきた。

「なんかやるきなくした、どうしておまえそんなにロマンチストなの」
まさか、雰囲気どうこうで断られるとは思わなかった。
明日がどうとか体調管理がどうとかなら、切り返し、考えてたのに。
379背水の赤 3/6:2009/09/14(月) 22:07:37 ID:0S8AQGrZ0
ちゃんと口が回っていない。ほんとうに機嫌がよかったのだろう。
腹から胸のあたりには、熱くなった上半身の体重がかかっていて、
自分に比べれば幾分細身とは言えど、力の抜けきった男の体重はとても重い。
しかし、追いやってしまうのは彼の心情を思うとかわいそうだし、せっかく来てくれたのだからもったいない。
後頭部を撫でてやると、まだ僅かに濡れている髪がちくちくと指先をさすように跳ねる。
すり寄ってくる体温がいとしく思えるのは、寒くなってきた9月の気温のせいだけでは、ない。

「せっかくいい気分なのに。なぐりたい」 彼がつぶやいた声が響く。本気で言っているわけではない軽やかな口調。
「いいけど左でやってよ、怪我されたら困るから。あと、あんまり顔が腫れると明日、被れないから、手加減して」
「なに言ってんの」

くつくつと控えめな笑い声が漏れて、上半身が持ち上がる。 「おまえ本当に馬鹿だよね」
30センチほど離れた位置からこちらを見下ろしている、きれいな笑顔。この顔がいちばん好きだ。
迫力では彼らに負けるけど、お前はそうやって、一段高いところにいるのが似合うよ。
それは生まれながらの才能だ。どんなに努力をしたやつがいても、あの場所に立てる人間は限られている。

「おまえの、そういうところ、おれはすきになれない」
「どういう?」
「勝負したいのか逃げたいのかわからないところ」
380背水の赤 4/6:2009/09/14(月) 22:08:24 ID:0S8AQGrZ0

涼しげな顔をしているくせに、中身は極端に攻撃的だ。しかし彼の言うことは間違ってはいない。
アルコールの分、普段より饒舌になっているのかもしれない。
こんなことを、面と向かって言われたのははじめてだった。思わず身構えて、次に投げ込まれる言葉を待つ。

「これだけ長いこと付き合ってきてんのに、おまえのこと、まだよくわからないんだよ。
わかってくれてんだなって感じることも増えたけど、でもなに考えてんのかとか、
さっぱり理解できないまま、頷くこともあるから、どうしようもない。
おまえのせいじゃ、ないから、どこにあたり散らしてやろうかって思ってる、自分が嫌になるんだよ」

ごめん。
浮かんできたのはそれだけで、しかし彼が求めているだろうものとは正反対の言葉。
それだけしか出てこない自分がもどかしかった。なにも言えないままではだめだ、このままでは、
「べつに、おまえじゃなくたって、よかったんだよ」

その先は、聞きたくない。
頭の中、ずっと奥の方ではもう、ちゃんと理解しているんだ。
ずっと彼の真正面に座り、いちばん近くで彼を見てきたのは自分だと断言できる。
しかし、彼をいちばん理解しているのは自分ではないのかもしれない。

とっさに力を入れて、体勢を反転させる。ひとまわり軽い彼は簡単に身体の下へおさまった。
ひどく熱い頬には似合わない、静かな瞳が近付く。
381背水の赤 5/6:2009/09/14(月) 22:08:48 ID:0S8AQGrZ0
「おまえじゃなくたって、誰だってよかったんだ。今だって、どうせ断られることわかってた。
いくらなんでもそこまで馬鹿じゃないし、自分のことより明日のことの方が大事だし、
だけど、誰かに電話しようと思ったときに、おまえの名前しか思い浮かばなかったからしかたないでしょ」

彼の指先が首筋に触れた。いとしい右腕に導かれるように額を寄せる。
想像していたよりもぬるいくちびるが掠めるように触れて、離れていくまでのわずかな時間で、
なにもかも忘れてしまうことができればしあわせだった。

「……一発やりたくなったんだけどどうしてくれんの」

「ばーか」 一回、二回。ゆっくりと瞬きをしたあと、目元にしわが寄り、くしゃっと顔を崩して彼が笑う。
やさしい罵倒文句を受け止めたのは、もう何度目か。
こらえきれない感情と一緒に、彼を抱え込む。
話したいことは山ほどあるけれど、それは今日でなくても構わないだろう。
いま伝えるべきことはたったひとつだけ。大切なものなんて、そんなに多くはない。

「おめでとう。お前は、よくやってるよ」
「ん、ありがと」

心の底から生まれた喜びをにじませ誇らしげに、笑う。その表情が見たくてがんばっているんだよ。
382背水の赤 6/6 おわり:2009/09/14(月) 22:09:46 ID:0S8AQGrZ0
それは俺だけじゃない、きっとあの彼だってそうだ。俺だって、お前以外のだれにだってそう思っているんだから。
でもその権利を、俺以外のほかの誰かに持っていかれたくないと思うことは、贅沢なことなのか。
「ありがとう、ほんとうに」 ぎゅうと、力を込めた腕に応えてくれる。
背中に腕がまわされて、左の耳に直接ふきこまれてくる声は穏やかだ。

お前は嬉しいだろう。だけど、いま、俺は素直にそれを喜べないんだよ。

ごめんな。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


強気×強気を目指してみたけれど。どうしてこうなった。
383風と木の名無しさん:2009/09/14(月) 22:13:34 ID:keB8DKOC0
ぎゃー、割り込みすいませんでした!
>>375-382
ジャンルはわかりませんがこういう微妙な関係好きです
GJ
384風と木の名無しさん:2009/09/14(月) 23:20:00 ID:kKYMo5px0
>>376
ここで訊くより、>>2の掲示板使うか、
保管庫の方にメッセージ書いたらどうかな。
現在、一作品毎にコメント入れられる仕様になってるので。

見ていればだけど、その方が筆者も返信しやすいと思う。
385風と木の名無しさん:2009/09/14(月) 23:40:58 ID:rGWk2FP6O
>>375-382
強気×強気、GJ!好きです!

二人が一緒でなくても、お互い刺激し合って悩んで、
成長してくれたら良いな。
386風と木の名無しさん:2009/09/15(火) 00:20:15 ID:YbqI71oLO
>>375
もも萌えました
なんかいいなぁこの関係
いつもありがとうございます
387風と木の名無しさん:2009/09/15(火) 07:40:54 ID:DdC9dw1Z0
>>384
ありがとう、後で行ってみます
スレ汚し申し訳ない
388風と木の名無しさん:2009/09/15(火) 14:02:59 ID:ZzI2rjL6O
>>384
あれだいっ嫌い
いい話の余韻にひたってる時に
萌えましたヽ(≧∀≦)ノキャー
とか目にしたくない

折角感想スレがあるんだからそっちに行こうよ
389388:2009/09/15(火) 14:18:38 ID:ZzI2rjL6O
あ、人探しには有効だと思うし異議はありません
いきなりごめんね
390風と木の名無しさん:2009/09/16(水) 01:12:58 ID:Os52r7TC0
>>250
遅いレスになってしまいましたが息が詰まるほど萌えました
特にoケンの一人称の変化やメンバーのキャラのイメージがそのままで…!
とても好きです。
391風と木の名無しさん:2009/09/16(水) 02:48:44 ID:sbPweXjw0
生注意
高学歴ゲ仁ソ 炉算 大阪府大×京大

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
392ボクノ不調ハキミノ所為 1/7:2009/09/16(水) 02:49:48 ID:sbPweXjw0
「おかえり〜、お疲れさん」
新大阪駅からテレビ局へ直入りすると、いつもと変わらぬ極上の笑顔に出迎えられた。
二日ぶりに見る相方の姿に、京大はほっと溜め息を投げる。
「なぁなぁ、今回3本撮りやってんやろ?大変やったなぁ。で、調子どうやった?」
楽屋で二人きりになると、大阪府大は興味津々の態で京大の方にすり寄ってきた。目がキラキラと輝いている。大阪府大は公共の電波を通じて相方の知的武勇を誇らしげに自慢することが、三度のメシより好きな男であった。
「ん、別に…特別良くも悪くもなかったわ。個人戦は1回もトップとれんかったし、チーム対抗の方もなぁ、いろいろと」
「そーかぁ、残念やったなぁ。まぁたまにはそんな日もあるって」
大阪府大は気にすんなー、と言って京大の背中を優しくポンポンと叩く。
「あ、そうそう。昨日は電話もメールもせぇへんかったろ?俺、局移動中に連絡くるかもって、夕方からずっと待っててんけど。何かあったんか?」
「あー……最初の特番用の撮りがかなり押してなぁ。結構な時間オーバーして、局移動で急っつかされたりして慌しかってん。ごめんなぁ」

《すがちゃん、ゴメン…。言えんねん。俺、お前にホンマのこと、言われへんねん》
成果が期待外れに終わり少し寂しそうな様子の大阪府大に、京大は心の中で詫びの言葉を繰り返すばかりだった。
393ボクノ不調ハキミノ所為 2/7:2009/09/16(水) 02:50:50 ID:sbPweXjw0
《特別良くも悪くもなかった?んなわけあるかい。もうめっちゃ最悪やったわ》
今回撮ったクイズ番組3本の内、そこそこ高い正答率を叩き出せたのは最初の1本だけで、それでもトップをとれたわけではなく、あとの2本にいたってはもうボロボロだった。
結果を出せなかったことが心底悔しくて仕方がなかった。自分が何を期待されてクイズ番組のオファーをもらっているのかよく理解しているから。というより、とにかく人一倍負けず嫌いであるがゆえに。
あまりの成績に、撮りが終わるや『大丈夫ですか?』『お疲れなんですか?』と共演者にまで心配される始末。
『いやー、ほら、ボク大阪から通ってるじゃないですか?何か最近新幹線の移動がキツクなってきたみたいなんですー。トシなんですかねぇー』
京大は相手の笑いを誘うように、自身は全く気にしてないといった風にアハハと笑っていた。

*****

ここ数年で、東京でピンの仕事が急に増えた。主に全国ネットのクイズ番組への出演という。
高学歴、しかも京大卒というゲ仁ソとしては異色の肩書きを持っており、共演の知識人・文化人にもひけをとらない正答率をあげていけば、そういった仕事が増えていくのは至極当然のなりゆきだった。
コソビゲ仁ソとして舞台やローカル番組へ出演する、10年以上続けてきた活動のベースは今も大阪においており、それは何も変わっていない。ただ京大が単身で上京する回数だけが確実に増えていた。
大阪でコソビでする仕事が極端に増減したわけではない。なのに東京でピンでやる仕事だけは急激に増えていた。
394ボクノ不調ハキミノ所為 3/7:2009/09/16(水) 02:51:53 ID:sbPweXjw0
確かに度重なる新幹線での移動で、疲労は確実に蓄積していた。それも今回のような不調の理由の一端を担っているには違いなかった。
だが京大の中にはもう一つ、ある種の確信があった。
《すがちゃんの所為や。アイツが傍におらんから…》
おそらくそれが不調の最たる原因なのだと。認めてしまえば自分の弱さを曝け出すも同然なので、けして認めたくはなかった。
が、自分の心に蔓延る虚無感は、もうそれ以外では説明がつかない。
相方と離れ一人、東京と大阪を月に数度往復する。そんな生活が京大の中で定着しつつある一方で、ふと気を抜いた瞬間に、胸にぽっかりと大きな穴が空いたような感覚を覚える。
そしておもむろに不安になる。どうして自分はここにひとりきりでいるのか、どうして自分の隣に大阪府大がいないのかと。
一種の精神論とでも言おうか、自分だけにオファーが来たからとか、とにかくそういう理屈の話でないことだけは確かであった。

無論いつもいつもそういう感情に襲われるわけではない。互いに一緒にいたいからという理由で飛び込んだ世界ではあったが、四六時中一緒にいなければ息もできないといった間柄ではないはずなのだ。
《相方がおらんから調子悪いんです、なんて言い訳が通るほどこの世界は、いや、社会は甘ない》
頭では重々わかっているのに。それが心で思っていることと完全に相反して、それが京大の調子をさらに崩す結果に繋がっていた。
395ボクノ不調ハキミノ所為 4/7:2009/09/16(水) 02:52:55 ID:sbPweXjw0
そんな調子だったから、昨日もむしょうに大阪府大の声が聞きたくて仕方がなかった
《ピンの仕事なんて、もう数え切れんくらいやっとるのに、たった1日のことやのに》
そのたった1日が我慢出来ずに、大阪府大と話したくて、大阪府大の声が聞きたくて。京大は局移動中に何度も携帯のリダイヤル画面を開いた。
だけど発信ボタンはどうしても押せなかった。

アイツの声を聞けたら。
『一人でめっちゃ寂しいよ、すがちゃん』
そう自分の気持ちを素直に言えたら。
どんなに楽になるだろう、と思った。
でも。
今の自分の声を聞かせれば、大阪府大は絶対に何か感づく。
《そしたらアイツ普通に言いそうやもん。今からそっち行くわー、って》
きっと言う。絶対に言う。新幹線代が自腹になっても、そんなことは少しも厭わない。
そして大阪府大に今から東京に行くと言われれば、今の自分はきっとそれを懇願してしまう。
それは結果的に大阪府大に迷惑をかけることに他ならなかった。
《それだけはアカン。俺の甘えですがちゃんに迷惑かけるのだけは絶対にアカン》
そうやって京大は自分をきつく律し、ディスプレイに大阪府大の名前を表示させては消し、消しては表示させてまた消し。
それを何度も何度も繰り返しているうちに次の局に着き、調子は回復することなく収録は始まってしまったのであった。

*****
396ボクノ不調ハキミノ所為 5/7:2009/09/16(水) 02:54:05 ID:sbPweXjw0

「…俺にもホンマのこと言われへんの?」
ふっと顔を曇らせ、いきなり暗いトーンで切り出してきた大阪府大に、京大は目を見張った。
「え、え?何?いきなりどないしたん?」
「なんでなん?なんで俺に隠すん?」
笑って誤魔化そうとする京大を、大阪府大はひたすら怒っているとも今にも泣き出しそうとも何とも判別しがたい表情で、じっと見つめている。
「いや、何も隠しとらんって」
「ウソや」
「いや、ウソなんかついてへんよ、ホンマ…」
「ウソや!」
そこまで広くはない室内に、大阪府大の鋭い声が響き渡った。薄い壁を通して廊下にまで聞こえて、何事かと人が飛んできても不思議はないほどの叫び声。
だが楽屋のドアが開かれることはなかった。誰も割り込んでこない二人だけの空間で、京大は体を強張らせたまま、涙目の相方から視線を逸らすことができない。
「すがちゃ……」
「しんどいんやろ?しんどいならしんどいてはっきり言えや。俺ら今までずっと、ギャラも嬉しいことも悲しいことも、何もかも全部分かちおうてきたやん。
せやから今みたいに、うじがしんどい気持ち一人で抱えてる姿とか、そんなん見たない。遠慮なんかせんと、ホンマの気持ち吐き出してくれや。俺にもお前のしんどさ、分けてくれや」
まるで機関銃のように捲くし立て、そして一呼吸置いて――
「なぁ、うじぃ…」
京大の名前を呼びかけ、俯いた大阪府大の目から一粒の雫がポタッと零れ落ちた。
397ボクノ不調ハキミノ所為 6/7:2009/09/16(水) 02:55:06 ID:sbPweXjw0
京大はすっかり失念していたのだ。
大阪府大に心配をかけまいとして嘘をつくことが、実は大阪府大に一番迷惑をかけることだったということを。
そして大阪府大も、京大と全く同じ気持ちだったということを。
「大人やから、仕事やからって割り切ることも大事かもしらんけど、俺はうじに、すがちゃんがおらんで寂しいーって言われた方がずっと嬉しいな。だって俺も、うじ…ううん、うーちゃんがおらんと寂しいもん」
京大が全てを話した後、大阪府大はそう言ってにっこり笑った。
《あぁ、やっぱすがちゃんは俺の力の源や》
京大は相方の天使と見紛うばかりの愛らしい微笑みを至近距離に見ながら、そう再認識するのだった。

*****

――それからどういう経緯でこういうことになってしまったのか。
「あかん…あかんよー。本番前やで、すがちゃん?」
ゲ仁ソになった以上、いつどこでドッキリをしかけられても文句は言えない。殊に楽屋は、隠しカメラを仕掛けるには恰好の場所である。
なので普段楽屋ではコトに及ばないように気をつけている二人であったが、今まさに京大を押し倒している大阪府大は全く手を緩める気配はない。
「もしもーし?すがちゃーん、すがちゃーん?」
「聞こえとるよー。もー、ええやん。どうせ撮られたって、こんなん放送なんてできひんのやし」
「いや、そういう問題やな…っ」
それ以上何も言うな、とばかりにいきなりキスで口を塞がれた。こうなると完全に大阪府大のペースである。
ひとしきり京大の口内を蹂躙して満足したのか、やがて大阪府大はゆっくりと唇を離す。
そして京大の活力源でもある、あの天使と見紛うばかりの、否、小悪魔上等の極上の笑みを浮かべて、口を開いた。
398ボクノ不調ハキミノ所為 7/7:2009/09/16(水) 02:56:19 ID:sbPweXjw0
「天下の京大ゲ仁ソ・うじはらサマに寂しい思いさせて、調子崩させてもうた責任はとらなあかんやろー?」
「俺はそういう意味で、すがちゃんの所為やて言うたんとちゃうでー!?ってまず、責任の取り方がおかしいやろ!?」

どうやら相方サマのおかげで京大の調子は確実に戻っているらしく、素敵なツッコミが二人きりの楽屋に響き渡るのであった。

*****


「うじのためやったら、新幹線代の自腹くらい何てことないで?アレやったら、毎回一緒に上京して、観覧席から見守っててもええくらいや」
「うん、それは俺も普通に嬉しいけど、多分制作サイドにめっちゃうざがられるから、呼ばれたときだけにしよな?」

と、一応釘はさしておくものの、今後の自分の精神安定のために、これからはクイズの賞金の中から大阪府大用の新幹線代を少しずつ積み立てておくか、と内心密かに考える天下の京大サマであった。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

少し前に書き始めてたものなので、コソビでクイズ番組の仕事も増えてきた現在ではやや違和感あるかも?スマソ
399風と木の名無しさん:2009/09/16(水) 08:00:26 ID:Qc299z/M0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |   半生 イ壬侠なへノレパー
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|   2と6だよ 何かできてるっぽい
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
4002と6 1/3:2009/09/16(水) 08:01:29 ID:Qc299z/M0
タイムカードを切った似本橋が寮へ戻ると、ひとり本を読んでいた無車と目が合った。
「お疲れ様」
短く言葉を告げると、眼鏡の奥の瞳は再び手元のページへと戻る。
株やら何やらの文字が並ぶその本をさして興味もなさそうに読み進める無車の隣に、似本橋はゆっくりと腰を下ろした。
「コーヒー、おかわりいりますか」
そう声をかけると、無車はテーブルに置きっぱなしだった空のカップに視線を移す。
「そうですね」
やはり言葉は短かったが、皮肉めいた普段のトーンとは違う声の響きに、
似本橋は頬が緩むのを感じながらカップを手に台所へと向かった。

「もっと堂々としていればいいのに」
本を閉じ、香りを漂わすコーヒーを飲みながら無車は独り言のようにそうつぶやく。
「はい?」
「愛想は良いし、腰は低い
ここにもすっかり溶け込んで…あなた極道でしょう」
小馬鹿にするような言い回しは相変わらずだが、
伏し目がちなその様子に、似本橋は不思議と不快感は感じなかった。
「無車さん、極道お嫌いでしたよね」
そう言うと、途端に無車の眉間にしわが寄る。
「だから僕があなたのことが好きだとでも?」
「いえ、そういうことでは…」
好きという単語に驚きつつも、きつくなった無車の語尾に、似本橋は慌てて場を取り繕うとした。
4012と6 2/3:2009/09/16(水) 08:02:20 ID:Qc299z/M0
「嬉しそうに僕のコーヒー入れに行って…
気がきくのはいいですけど、僕らは堅気じゃないんですよ」
口にしたカップをテーブルに置くと、無車は似本橋に顔を向ける。
改めて交わった視線に、似本橋はなぜか急にどきりとした。
一流大学出の所謂インテリである無車の言葉は、常に冷静な的確さをまとっている。
本人の性格もあってか時にとても皮肉な響きを持つが、似本橋はその言葉の根っこにある素直な部分を時々感じては、
じれったいような、くすぐったいような、そんな気持ちになることがあるのだった。
「何ですか、急に黙って」
「無車さん、心配してくれてるのかと思って」
「はあ?」
ますます深くなる眉間のしわをよそに、似本橋は思ったままの言葉を続けた。
「いやね、何だかんだで結構皆のこと見てるじゃないですか」
「研修は連帯責任ですよ
何かあったら僕まで巻き添えを食らってしまう」
「だからいつも先手先手で物事を考えているでしょう
そういうのは無車さんじゃなきゃ出来ませんから」
そこまで言って、似本橋は目の前で押し黙る無車に気付いた。
普段はそれこそ見下すような物言いで相手に言葉を畳みかける無車が、
何でもないような自分の言葉で大人しくなっている。
表情やしぐさには出ないものの、その普段とは違った雰囲気に、
似本橋はおかしさが込み上げた。
「そろそろここ、片づけましょうか」
半分ほど残った中身をどうするか聞くと、無車は「もういいです」と小さく答えた。
立ち上がり、流し台の蛇口を捻る。
何かしら言い返してくるかと思った無車の声は無く、カチャリとカップの音が鳴るばかりだった。
4022と6 3/3:2009/09/16(水) 08:03:15 ID:Qc299z/M0
若いなあ、と似本橋は思った。
頭の方は、それこそずば抜けているかもしれない。
一歩引いた目線で物事を見る無車を、初めは取っ付きにくいと思っていた。
しかし、こうして生活を共にすると、だんだんと彼への見方が変わってくる。
ただ単に打ち解けてきたというのもあるが、ここでの生活は彼の性格にも確実に影響を与えていると似本橋には思えた。
何より、無車が他人のことを思っているというのが、最初の頃には決してなかったことだと似本橋はなぜか嬉しくなったのだった。
「心配しなくても、ちゃんと極道続けますよ」
ぬるい水を流す水道の音は、静かな部屋には嫌というほど響く。
きゅ、と蛇口を捻って音が消えた時、似本橋は初めて無車が後ろに立っていることに気付いた。
「あ…」
言葉をかけようとした瞬間、ぐいと胸元を引っ張られる。
普段の彼からは想像できないような荒っぽさに驚くと、
微かにコーヒーの香りが残る唇が似本橋の口元に触れた。
「…無車さんもこんなことするんですね」
「どういう意味です?」
用が済んだとばかりに手を離した無車が、不機嫌そうに腕を組む。
「あまり好きだ何だという話には乗ってこない人だと思ってました」
急に外が騒がしくなる。
聞きなれた数人のにぎやかな声が聞こえ、耳障りだと言わんばかりに無車の眉間にしわが寄った。
「あ、あと片付けますんで、向こう行っててください」
何か言いたげな無車を遮り、似本橋は無車を追い出そうとする。
それを感じ取ったのか、無車はため息をひとつつくと、わざとらしい声を似本橋にかけた。
「それより、ごはんなんじゃないんですか」
そこ、と無車が視線をそらす。
その視線を追うと、にゃあ、と小さな声が響いた。
「ああ、ごめんね!」
ぷい、とそっぽを向く愛猫に、自分でも驚くくらい大きな声を出してしまう。
そんなにも動揺してしまう出来事だったのか。
そう考えた瞬間、似本橋は微かに鼓動が速くなり、頬が熱くなるのを感じたのだった。
403風と木の名無しさん:2009/09/16(水) 08:04:03 ID:Qc299z/M0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 最終回前に滑り込み投稿
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
404風と木の名無しさん:2009/09/16(水) 14:00:34 ID:8MwsXScz0
>>391
GJ!職人さん乙!
いや、この場合は、関西ワーカー乙!と言うのが正しい文法だ。

だる!なんちゅうだるいカップルや、勝手にやっとけ、
と、見る方が白けて脱力してしまうようなおしどりっぷり、比翼連理っぷり、
クリームソーダにエンゼルパイとマンゴープリン入れて喰わされたような甘々っぷりw

この後、テクニシャンな大阪府大は相方に相当サービスしたんだろうなあ。
そして、ドッキリの仕掛人たちは、「おいおい、こらシャレにならんで」と囁きあいつつも、
最後まで目を皿のように、いや水車のようにして鑑賞してしまったのであった。
405風と木の名無しさん:2009/09/18(金) 01:09:31 ID:U2RtEzNV0
>>399
放送前に開発された…!
6かわいいよ6 2かっこいいよ2
超GJでした!!
406ねこかぶり 1/8:2009/09/18(金) 03:18:28 ID:qjcGoqtu0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  モンスターを狩るゲームの樹海引き籠り迅/竜×我が儘俺様轟/竜
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  迅一人称の非擬人化注意です。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 自分以外スレと人外スレで
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) 同士を見つけた嬉しさのあまり。
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
407ねこかぶり 2/8:2009/09/18(金) 03:19:07 ID:qjcGoqtu0
 深く木々の生い茂った樹海の奥で、わたしは彼のことを考えていた。

 彼は何時も、風を切る、というより、無理矢理押しのけていくような飛びかたをする。
 人のことを言えた義理ではないが、彼は飛竜種の中でも飛ぶのが特に苦手な部類らしい。
まあ、わたしは他の飛竜との付き合いはあまりないから、正確には分からないが。
 彼はそのことを特別コンプレックスに思っているようで、自分が飛ぶ姿をあまり見せたがらない。
着地する時も酷くせっかちで、早く地面に降りたくて仕方がない、とでもいうように乱暴だ。

 そんな彼を見ていると、あの、人間どもには空の/王者、とか言われて気取っているリオ/レウスの
凄さを思い知る。確かに彼の飛行能力は素晴らしい。とても優雅で、気品に満ちている。
 だが一つ訂正させてもらうとすれば、彼は空で一番強いから王者なのではなくて、飛ぶのが
上手いという意味で王者なのだ、と。きっと戦ったらわたしのほうが強い。多分。リオ/レイアが
許さないから、しないが。妻の後ろで尾を丸めて震えている憎たらしい赤蜥蜴の姿を想像すると、
少しは気が晴れた。

 もう長い間、彼の翼が羽ばたく音を聞いていなかった。彼はわたしと違って、一つのところに
じっとしていない。明日は雪山、明後日は砂漠、空色の翼を不器用に動かして、風を利用するでも、
操るでもなく、力ずくで捩じ伏せて飛ぶ。彼の飛びかたは、彼の生き様そのものだった。
 と、飛竜の中でも格別良いわたしの耳が、彼の翼が空気を掻き乱す音を聞き取った! 間違いない、彼だ!

 わたしはここ数日まったく動いていなかった寝床から、のそりと這い出してきた。
わたしが一度ひとつの場所へ落ち着くと、当分動かないことをよく知っているアイノレーたちが、驚いて
蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

 そんなに慌てずともわたしは、小骨が多くて硬いうえに、酷く不味いアイノレーの肉など食べない、
そんなことを以前、ふとした気まぐれから言ってみたことがあったが、彼らの返事は「そうは言ってもダンナ、
アンタがひとっ飛びしようとするだけで、オイラたちは吹き飛ばされてしまうんですニャ!」というものだった。
なるほど、獲物と見なされていなくても、彼らには逃げるまっとうな理由があるのだな、と感心した。
408ねこかぶり 3/8:2009/09/18(金) 03:20:04 ID:qjcGoqtu0
 わたしは大型のモンスターが作った獣道……今となってはほぼわたしくらいしか使わないが、
そこを素早く走り抜けた。厚く生い茂った木々の間から微かに見える青空に、彼の姿を見ることは
できなかったが、近づいていることは感じられた。

 彼の目的地は、樹海の端の、湖があるエリアらしい。わたしがそこへ着いた丁度その瞬間、
ざばばばん! と派手な水音を立てて、彼……轟/竜ティ力゙レックスは湖の中へ着地した。
一瞬、着地地点を間違えたのかと思ったが、そうでもないらしい。

「……とても久し振りだ」
「そりゃぁ良かったな!!」

 ティ力゙レックスの声は普通の状態でも、とても大きい。わたしは非常に耳が良いし、それに、
わたしを見ると声を潜めてしまう樹海の生き物たちと長く暮らしていると、彼の普通の声でも
語尾に感嘆符が2つか3つくらいくっついているように感じられてしまう。
 だが、それだと非常に台詞が読み辛くなってしまうと思うので、これからは省略することにする。
ささやかな気遣いだ。

 ティ力゙レックスはのっそりと湖から這い出してきた。わたしは水が苦手ではないが、
進んでああいったことはしなくないな、と思った。別に苦手だからではない。断じて。攻略本にも書いてある。

「何故樹海へ?」

 以前にも、ティ力゙レックスは樹海へ来たことがあった。それも酷く傷付いた、瀕死の状態で。
 雪山で人間のハンターに襲われたらしい。今でこそすっかり尾も生え揃っていたが、その時は
まだ痛々しい切断面を晒していた。今でも尾をよくよく注意深く見てみれば、微かな古傷を
見つけることができる筈だ。

 勿論、そのことを話題にすると顔と腕に赤い警告色さえ浮かべて怒るだろうから、言わないが。
 今までなるべく他の飛竜との関わり合いを持たず、ひっそりと暮らしていたわたしには、
まさに天変地異の驚きだった。傷だらけの砂色をした鱗も、傷んでぼろぼろの空色をした翼も、
なにもかもが新鮮で物珍しく、美しかった。
409ねこかぶり 4/8:2009/09/18(金) 03:20:55 ID:qjcGoqtu0
 あろうことかわたしは、種族違いで、同性の、飛竜種たちから厄介者扱いされている暴君竜に、
一目惚れしてしまったのだ!
 かいがいしいわたしの看病の甲斐あってか、彼は全快し、ぶっきらぼうな彼なりの礼をして(どこから
掻っ攫ってきたのか、丸々と太ったポポ1頭。アレは確かに美味しかった)、さっさと行ってしまおうとした。

 慌てたわたしは、とっさに彼に言ったのだ。また来たら、ご馳走してあげようと。
情に訴えるよりも、駆け引きするよりも、彼にはこの言葉が一番効くに違いなかったので。
 わたしの質問に、彼はそっけなく、

「たまにゃこっちの獲物も良いかと思っただけだ。てめぇがいたのは予想外だったがな。

 と、皮肉げに言った。わたしに会いに来たわけでなかいようで、少し残念に思った。
 がっかりしたわたしに、彼はふと薄い水色の瞳を瞬かせ、

「てめぇ、水でも飲みに来たのか? あいにくだったな、ここじゃ当分飲めねぇぞ」

 ティ力゙レックスの顔を、わたしは思わずまじまじと見た。彼はわたしとの出会いがたまたま偶然、
運命の産物だとでも思っているようだった。
 意外と抜けてるんだな、とも思ったが、まあ、飛竜種の中でも格別の嫌われ者扱いされてきた彼だから、
まさか自分に進んで会いに来るような変わり者がいるだなんて、思いもよらなかったに違いない。

 わたしはティ力゙レックスの後ろの湖へ視線を落とした。確かに、彼が這い出た後の湖の水は
酷く濁っていて、とてもではないが飲めるような状態ではない。だが、わたしは水を飲みに
来たわけではないのだ。
 猫のようにぶるりと身体を震わせ、彼は全身の水を飛ばした。わずかな木漏れ日に反射して、
埃や汚れが洗い流された砂色の鱗がぴかぴかと美しく輝く。

「美しいな」
「は?」

 ぽつりと呟いたわたしの言葉に、彼は間の抜けたような声を上げた。
410ねこかぶり 5/8:2009/09/18(金) 03:22:00 ID:qjcGoqtu0
「だから、おまえの、」
「おい、止めろ、それ以上は言うな。また気味の悪い台詞言う気だったろ、てめぇ」

 わたしの台詞をぴしゃりと遮り、ティ力゙レックスは不機嫌そうにわたしを見た。
気味の悪い奴だ、と言われることはあったが、気味の悪い台詞だなんて、初めて言われた。
 彼がすることはたいていの場合、わたしにとって初めてであることが多く、わたしは何時も
新鮮な気分になれる。

「分かった、止める」
「あぁ……良い子だ」

 わたしが素直に頷くと、ティ力゙レックスはぎらぎらとした牙を覗き見せ、低い声で、
とてもサディスティックに言った。
 彼のそういった一面が、わたしはとても好きだった……良い意味でも、悪い意味でも。
悪い意味のほうを彼が知ったら、きっと尻尾を巻いて逃げだして、二度と戻ってこないに違いないから、
絶対に言わないが。わたしはとても酷い男だ。

「でも、何故、湖なんかへ着地を?」
「そりゃぁ……」

 わたしの質問に、ティ力゙レックスは珍しく口籠る。首を傾げるわたしの尾を、彼は誤魔化すように
伏し目で見た。彼に会えた嬉しさから、わたしの尾は落ち着きなくぱたぱた(というか、それなりの
重量があるからもしかしたらどすんどすん! のほうが正しいかもしれない)と揺れている。
 答えを待ってじっと見つめていると、彼は居心地悪そうにぐるる、と鳴いた。そして、いきなり叫んだ。

「……ッてめぇが!! 汚れたままで行くと!! 毛もねぇのに毛繕いしようとするだろ!!」

 ティ力゙レックスの大声はわたしの耳にとても痛いのだが、この時ばかりは天使の囁きのように
感じたものだ。
 なんということだろう。彼は、なんと、最初からわたしに会いに来てくれたのだ! そうでなければ、
樹海へきてすぐ水浴びをしようなどとするだろうか!
411ねこかぶり 6/8:2009/09/18(金) 03:25:04 ID:qjcGoqtu0
 わたしは思わず彼に飛びかかって、その喉元を甘噛みして、それからあんな水浴び程度では
落としきれなかった彼の汚れを、隅から隅まで落としたい情動に狩られた。
 が、そうすると彼はとても怯えてしまうだろうから、ぐっと我慢して柔らかい腐葉土の
積もった地面へ、こっそりと爪を立てた。

「そうか、気遣い有難う。とても嬉しい」
「はあ? 違う、俺はアレが嫌なだけで、」
「ところで、腹は空いていないか」

 わたしに会いに来てくれたのか、なんて台詞は、間違っても言わない。彼はとても恥ずかしがり屋なのだ。
わたしは気が付かなかったふりをした。とても酷い男なので。
 彼が一番好きな話題に話をすり替えてやると、彼は文字通りすぐに食いついてきた。

「あぁ、そうだ! 腹へって死にそうなんだよ。てめぇから獲物横取りするためにきたよーなもんだからなァ」
「そうか。では、ひと頑張りしてくるとしよう」

 嫌がりもせず素直に頷くわたしを、ティ力゙レックスは一瞬、奇妙な生物でも見るような目で見たが、
すぐに気を取り直す。

「てめぇは、狩りの腕前だけは確かだからな」

 わたしの後ろを、彼はとても無防備にのっしのっしと歩いて行く。不慣れなせいか、たまに太い木の枝に
頭をぶつけたり、葉の中へ顔を突っ込んでしまうのがなんとも可愛らしくて、わたしは笑いを堪えるのにひと苦労した。
 「これだから樹海は嫌なんだよ……」などとぶつくさ言う彼のご機嫌をとるために、丸々太った
獲物をとってくる必要があるようだ。

 少し開けた場所にあるわたしの寝床に、彼は我が物顔で寝転ぶと、早々に眠たそうな欠伸をした。
そこでわたしはやっと気が付いたが、後ろ脚近くに治りかけだが酷い傷が見える。以前のように、
ハンターにやられた傷ではないようだ。
 他の竜と喧嘩でもしたのだろうか。呆れこそすれ怒りは湧いてこなかったが、何故か少しだけ
その竜が羨ましくなった。やはりわたしはとても悪い男のようだ。
412ねこかぶり 7/8:2009/09/18(金) 03:25:53 ID:qjcGoqtu0
 とても疲れているのだろう。そんな状態のティ力゙レックスがわたしのところへわざわざ来て、
無防備な姿を晒していることに、深い喜びを感じた。彼はわたしをとても都合の良い、気の良い
お人好しの竜だと思っているのだろうが、それは大きな間違いだ。親切なナノレガクノレガなんてこの世には
存在しない。勿論、あの世にも。

「終わったら、起こそう」
「…………あぁ、……」

 彼にしてはとても小さな返事だった。半分は寝入っているんだろう。これは当分、なにをしたって
起きないに違いない。
 わたしは急いで狩りを終わらせることにした。そしたら余った時間は、こっそり帰って
うとうとしている彼の毛繕い(彼の場合は鱗繕いか)へ、思う存分費やすことができるし、あわよくば
その先だってできるかもしれない。
 わたしは姿勢を低くすると、音もなく、素早く太い木の枝へ飛び移った。それまで陽気に歌っていた
鳥たちのさえずりが、ひたりと止まる。

 狩りが始まったのだ。
413ねこかぶり 8/8:2009/09/18(金) 03:26:55 ID:qjcGoqtu0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 実はまだナノレガさんに遭遇したことないんだスマン。
 | |                | |     ピッ   (・∀・;) ゲーム ガンバル……
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
414風と木の名無しさん:2009/09/18(金) 20:32:02 ID:6XvhvptpO
マイナー承知で、胃さか甲たろうの「子供(要英訳)」より、仁ない×噛もい です

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
415枕元 1/3:2009/09/18(金) 20:41:39 ID:6XvhvptpO
 この男の言動は不可解で、この男の存在は異端だと、鴨居はつくづく思う。
ぐりぐりと擦りよってくる大型犬のような陣内の髪に指を絡めて、さっきまでの横暴で熱いセックスを思い返す。
人を労るということを知らない陣内は、変わらない。ヒリヒリする肛門にため息をついて、目の前の額に唇を押し付けた。
 陣内は不可解で異端だ。しかしこの男を憎めないことが、この男を愛していることが、鴨居には一番の不可解だった。

「……終わってすぐ寝るなよな」

 幸せを見せつけるような穏やかな寝顔。無邪気に爪を立てて独占欲を発揮するくせに、満足すれば安心する、奔放なこの男を。

「好きだよ」
416枕元 2/3:2009/09/18(金) 20:49:07 ID:6XvhvptpO
 陣内のやることなすこと、すべてに納得できない。反対側にいることを実感している。だから焦がれる。鴨居は唇を、陣内のまぶたに移動させた。
体に体をぴったり押し付けていた陣内が、肩を揺らした。

「…おい」

 鴨居はぱっと唇をはなすと、不機嫌な声を上げた。陣内は笑ったままだ。

「なんだよ、怒るなよ」

「お前が寝たふりするからだろ。……もう笑うな」

「だって可愛いこと言うから」

「……」

「なあもう一回」

 拒否の言葉を見透かしたように、陣内は鴨居の腰に両腕をまわした。色気のない手付きに鴨居はもがくが、敵わない。

「なあ、どこが好きなんだよ」
417枕元 3/3:2009/09/18(金) 20:58:09 ID:6XvhvptpO
 鴨居は面倒くさそうに眉をしかめる。にやにや笑う顔から目を反らしても、腰を引き寄せられて、促される。熱を放出しきった性器どうしがこすれると、それでも疼くものがある。

「……。歌が」

「ん?」

「お前に歌がなかったら好きじゃなかったかもな」

 鴨居は陣内に焦りを勘づかれないように、圧し殺した低い声でつぶやいた。
陣内は一瞬きょとんとしてから、すぐにまたにやついて、「そうか、うん、そうだな」とつぶやいた。

それから噛むようにキスをして、満足げにささやいた。

「子守唄を歌ってやろう」

418枕元:2009/09/18(金) 20:59:16 ID:6XvhvptpO

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
419黒調味料 「嫉妬した人された人」 0/6:2009/09/19(土) 00:21:25 ID:W2pvWpIw0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  生 鯨仁 黒調味料 ツッコミ×ボケ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  ROMれなかった結果がこれだよ!
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ゼンカイノハ>366だゴルァ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |

※黒調味料と中途現実と自.宅が出てきます(両方ともなんか腐的発言あるので注意)
自.宅は他事務所だけど奉.行の時に一緒に出てたんで…。

前に投下した物の続きっぽくなってます。
「黒調味料萌え?何それおいs(ry」っていう姐さんはスルー推奨
あとエセ関西弁です。
420黒調味料 「嫉妬した人された人」 1/6:2009/09/19(土) 00:22:33 ID:W2pvWpIw0
 ある日の夜、たまたま中途の二人に飲みに誘われた。
ロケの仕様上、昼間にしかロケが出来ないためホテルに一泊するし、どうせ一人で晩酌するよりいいと思い誘いに乗った。
芳田も『後輩と飲む』と言っており、夜は別行動だった。

「そや。俺見たで〜、タ.レ.コ.ミ.奉.行。」
 店の個室で飲み始めて数十分たった頃にいきなりこの切り出し方である。濃過ぎは思わず飲んでいた酒を吹きそうになった。
「と、特異…。みよったんかお前…。」
「俺も一緒に見てたで!子っすーメッチャ嫉妬されよったな!」
「副打もかいな…。」
 あえて何故一緒に見ていたのかについては触れない事にする。
「相変わらず芳田変わらへんなぁ〜!濃過ぎはまだ胸揉まれとんの?」
「んな訳あるかい!無いわアホ!!」
「そうや、そうに決まってるやろ特異!子っすーそんな奴やないで!」
 ここが個室のある店で良かったと少し安堵する。こんな事後輩や先輩芸人はおろか、ファンには聞かれたくない話だ。
まあ、嘘をついているのには変わりないが。
「でもな〜、濃過ぎと芳田って本当夫婦みたいやな。それだけは分かった。」
「夫婦言うなや!それに俺等の愛なんで5歳からの絆に比べりゃちっぽけなもんやで?」
 話題を変えようと試みる。
「そか!?やったで副ちゃん!俺らは遂に結ばれたで!」
「やったな特異!…ってなんでやねん!!気持ち悪いわ!」
「またまたご冗談を〜。本当副ちゃんは照れ屋やな〜、あんま照れよると照りがつくで。」
「テカっとるとでもいいたいんか!この変態!!」
「変態とはなんや変態とは!この酒乱!そこも好きやけど!」
「なんやとこのかっこつけ!つか好きってなんや!」
 中途の漫才のような言い合いを口出しもせずを眺めていると、携帯からメール着信音が聞こえた。
見てみると芳田からだった。
421黒調味料 「嫉妬した人された人」 2/6:2009/09/19(土) 00:24:06 ID:W2pvWpIw0
 本文は単刀直入に近かった。

『今どこにおる?後輩成敗しよるから加勢しに来てや』
 
「お前何してんねん!」
 思わず声を上げた。
中途の二人が言い合いをやめ、濃過ぎのほうを見た。
「誰?芳田から?」
「せや。なんか後輩成敗しよるらしいねん。今『中途の二人と○○で飲んでるけど?』って送った。」
 返事はすぐに返ってきた。
見てみると『そんなら△△にすぐ来い。自.宅を成敗してるから』とかいてある。
「…近くの店で自.宅成敗しよるんやて…。」
「他事務所の後輩やんか!すぐに自.宅助けに行った方がええで子っすー!」
「でも金は…。」
「俺らが払っとく。でもいつか返せや、分かったな?」
「勿論や!ありがとな特異!!」

 濃過ぎは荷物をまとめると、近くの店員に事情を話し、店を足早に後にした。


一方、店に残った中途の二人はというと。
「…やっぱ濃過ぎと芳田は夫婦やな。そんで濃過ぎは嫁さんやな。」
「そか?俺は子っすー夫や思てたけど。たまに見えるSな部分とか。」
「でも相方の事であんなに急いで行く奴おらんと思うで。…あと副ちゃんも嫁やな。」
「誰のや。」
「俺の…、あ、すんません、空の酒瓶こっちに向けないで下さいすいませんでした。」
 この後土下座して謝る特異であった。
422黒調味料 「嫉妬した人された人」 3/6:2009/09/19(土) 00:25:46 ID:W2pvWpIw0
 芳田のいる店はここから割と近場のチェーンの居酒屋だった。
店を見つけるのはそう困難な事ではなかったものの、何処の席にいるか分からなかった。

「すんません、この店にえらい人相の悪いおっさん来てません?そいつ4人で来てる思うんですけど。」
 店員に案内されたのは店の奥の方にある個室の一室だった。
入り口は襖になっているが若干開いており、中の惨劇―否、状況が見て取れた。
濃過ぎは店員に礼をいい、何処かへ行ったのを見計らうと、
「何してんねん!」
 と言いながら襖を一気に開けた。
「おお、遅かったな濃過ぎ。」
 真顔の芳田が谷田部に掴みかかっている状態のままで返した。
途端に椙耶麻と壷蔵が個室に入ってきた濃過ぎを取り囲む。
「濃過ぎさん!芳田さんに何か吹きこみました!?」
「いや…、何もしてへんけど。何が起きとんの?」
「芳田さんに飲みに誘われて、それでしばらく経ったら谷田部に手出してきて…。」
 濃過ぎには分かった。つまり芳田は論派の事を根に持っていたんだろう、と。
…だからと言って成敗はないと思うが。
「何しとんねんもー…。」
 濃過ぎは二人の間を抜けると谷田部を掴んでいる手を無理やり離した。谷田部に『すまんかったな』と謝る。
「何しとんのや。まだ終わってないで。」
「せんでええわ!てかお前まだ根に持っとんたんか、論派でのこと。」
「うっ…。」 
 図星だったらしい。芳田が言葉を詰まらせた。
423黒調味料 「嫉妬した人された人」 3/6:2009/09/19(土) 00:37:11 ID:W2pvWpIw0
 芳田のいる店はここから割と近場のチェーンの居酒屋だった。
店を見つけるのはそう困難な事ではなかったものの、何処の席にいるか分からなかった。

「すんません、この店にえらい人相の悪いおっさん来てません?そいつ4人で来てる思うんですけど。」
 店員に案内されたのは店の奥の方にある個室の一室だった。
入り口は襖になっているが若干開いており、中の惨劇―否、状況が見て取れた。
濃過ぎは店員に礼をいい、何処かへ行ったのを見計らうと、
「何してんねん!」
 と言いながら襖を一気に開けた。
「おお、遅かったな濃過ぎ。」
 真顔の芳田が谷田部に掴みかかっている状態のままで返した。
途端に椙耶麻と壷蔵が個室に入ってきた濃過ぎを取り囲む。
「濃過ぎさん!芳田さんに何か吹きこみました!?」
「いや…、何もしてへんけど。何が起きとんの?」
「芳田さんに飲みに誘われて、それでしばらく経ったら谷田部に手出してきて…。」
 濃過ぎには分かった。つまり芳田は論派の事を根に持っていたんだろう、と。
…だからと言って成敗はないと思うが。
「何しとんねんもー…。」
 濃過ぎは二人の間を抜けると谷田部を掴んでいる手を無理やり離した。谷田部に『すまんかったな』と謝る。
「何しとんのや。まだ終わってないで。」
「せんでええわ!てかお前まだ根に持っとんたんか、論派でのこと。」
「うっ…。」 
 図星だったらしい。芳田が言葉を詰まらせた。
424黒調味料 「嫉妬した人された人」 4/6:2009/09/19(土) 00:39:28 ID:W2pvWpIw0
 とりあえず、芳田を座らせてからビールを注文する。実の事を言うと、酒はあまり入っていないのだ。
「やっぱ根に持っとんたんか。」
「当たり前や。あん時のコイツの顔見たか!?いかにも『俺のもの』的顔を!」
「知らんわ!第一、他事務所の後輩やぞ、何かあったらどないすんねん!」
「それこそ知らんわ!俺かてこんな事したくなかったけどな…。」
 濃過ぎはいつの間にかきていたビールに口を付けた。
芳田はまだ弁解中で自分は悪くないと必死に訴えているが、こればかりは許してやれない気がした。
 とりあえず芳田はさておき、自.宅の二人の所へ戻った谷田部の方を向くと、
「ホンマ、すまんかったな。今日は俺らのおごりでええわ。飲んでいってくれ。」
と言っておいた。
「本当ですか!ありがとうございます!僕てっきり払わせられるかと…。」
「他事務所であってもそんなことはせんで。それに相方が迷惑かけてしまってすまんかったって言う、おわびの気持ちや。」
「でも分かるなぁ〜、谷田部に妬く気持ち。俺も谷田部の女装にはムラっと…。」
「何言ってんだよ壷!おれだって壷を見てるとクラっと…。」
「お前らが何言ってんだよだろ!先輩の前で何てこと言ってんの!?」
「椙こそそんなこと言いつつイジられたいんだろ?なんなら俺のフジヤマで「下ネタじゃねーか!」
 いつの間にやら、濃過ぎの進入が不可な程に自.宅の流れに流されていく。
あれ?これ自.宅のコソトスタイルやん…、と思っている内に3人のトーク(おのろけ入り)に変化を遂げた。
「どうしよ…、俺入れへん…。」
 ボソッとつぶやく芳田の声が聞こえた。
濃過ぎは絡む相手もいないので、とりあえず芳田に絡む事にした。
425黒調味料 「嫉妬した人された人」 5/6:2009/09/19(土) 00:41:00 ID:W2pvWpIw0
「…お前話聞いてなかったやろ。」
「せやけど。」
「聞いとけや!俺、今めっちゃ傷ついたで。」
 知らんわ、と言い返そうとしてやめた。
下手に言い返したら歪んだ愛をぶちまけられそうだったからだ。多分、胸に。
「大体、何でお前中途の二人と飲んでんねん!俺に言ってから行けや!」
「なんで言わなあかんねん!」
「彼氏、いや夫としての権利や!」
「勝手にならんといてくれる!?」
 ダメだ、止められない、と確信した。
「第一、逆を言えばなんで自.宅と飲んでんねんって話や。分かるか?」
「そ、そうやな…。」
「あん時俺に妬いて乳揉んだんなら、俺が妬いてもええよな?」
「乳揉ませろとか?」
「ちゃうわ!…まあ、明日のロケも日中に撮るやろうし…。」
 まで言うと、芳田の耳元で小さく、

「お前の足腰立たんくなっても、撮るまでには回復するよな?」

と言った。
 言い放った直後、濃過ぎが『今日は飲むで!』と言って場を(と言っても5人しかいないが)を盛り上げた。
芳田はホテルに帰ってから起きる事を一瞬で悟り、思わず苦笑いした。

その夜、二人がどうなったのかは、また別の話。


「先輩方仲いいね〜。」
「やっぱコンビ歴長いからだろうな。」
「ああいうの見てると俺のウィンナー串が「言わせねーよ!?」
426黒調味料 「嫉妬した人された人」 6/6:2009/09/19(土) 00:43:44 ID:W2pvWpIw0
____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 日中のみロケってあるのかな
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

一回二重になったあげく時間の間隔空き過ぎました。すいませんでした。
あと表現等で不可解な思いした方がいたら謝ります。ごめんなさい。

今度こそROMります…。
427風と木の名無しさん:2009/09/19(土) 12:06:55 ID:S3zm/UjSO
>>426
脳内再生率やばいww
gjです!!
428981:2009/09/20(日) 00:09:00 ID:xiFeGWO70
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < 場皿31スレ目>>893-896あたりに萌えて書いた
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < 竜の右目×真田の忍
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜  二人の主が山で遭難?で待ってる二人の話だな
         | |      /  , |           (・∀・; )、 <だらだら書いてたらもう次スレいっちゃってました
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!   それでもよければお付き合い下さい
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./                          時代考証とかまるで無く勢いだけで書いたので
 |_____レ"                                その辺は笑って許して松永先生
429場皿 小×佐 1/5 ↑名前欄ミスすみません:2009/09/20(日) 00:10:18 ID:xiFeGWO70
「てめえ自分の主の安否が気にならねえってのか?」
小十郎がそう言うと佐助は「大丈夫だって」と苦笑いを浮かべた。

そもそも何でこんな事になったのか良くは覚えていない。
勝負だとか何だとか、始めは何時もの事だった。
それが気が付くと二人で散策に行くとかそう言う話になっていた。
秋の味覚が〜そんな事も言っていたかもしれない。
もちろん自分もお供すると言ったが却下された。
「ちょっと言って来るのにお守りはいらねえよ」とか何とか。

「大体、てめえの主が『道なら某が良く知っておるゆえ心配ありませぬ!』とか言ってただろうが。」
「うーん。まあそうだね。真田の旦那は慣れてるから迷う事は無いかな?」
「じゃあ、何で帰ってこねえんだ!」
「さあ?あんたと二人でここで待ってんのに、あんたが知らなくて俺様が知ってるわけないじゃないの。」

妙に落ち着いているふざけた忍に腹が立った。
もう日は落ち真っ暗になっている。
そして自分の主は森へ散策へ出たまま帰らない。
これで何時もと変わらずへらへらしていられる神経が分らない。

「……まさか政宗様をはめたんじゃねえだろうな。」
そう言われて、きょとんとした顔で佐助は小十郎の顔を見返した。
「なんで。」
「落ち着き過ぎだ。こうなるのを知っていたんじゃねえのか?」
そこまで言われて漸く佐助はああと合点がいった顔をした。
430場皿 小×佐 2/5:2009/09/20(日) 00:10:52 ID:xiFeGWO70
「まさか。大体ね、今日あんたらが乗り込んでくるのも知らなかったのに何でそんな予定立てられんのよ。」
「だがな……。」
あーもう仕方ないなあと佐助は縁側に座ったまま、二人の向かった先を眺めている小十郎の手を引いた。
「なんだ。」
「そこ座ってたって、二人が帰ってくるわけじゃないでしょ?」
其処座って、と座布団を勧められる。
渋々座る小十郎に佐助は熱い茶の入った湯のみを渡した。
「それ飲んで落ち着きなって。あっと……。」
佐助は自分用に用意していたと思われる湯のみに口を付け少しだけ啜るとそれを小十郎に渡した湯のみと取り替えた。
「なんだ?」
「毒見。疑ってんでしょ?」
嫌味でもなく当然のように佐助は微笑むと部屋の端に腰を下ろした。

「何で……。」
「真田の旦那はね。ちゃんと帰ってくるよ。」
どうしてそんな所にそう聞こうとして遮られた。
「あんたが旦那をどう見てるのか知んないけどさ。ただクソ真面目なだけで馬鹿じゃあないのよ。」
「何の話だ。」
「何って心配要らないよって話。ほんとに旦那はあの辺良く知ってんのよ。うっかり奥まで入り込んでも地形で場所推測出来るし。」
「なら何で―……。」
苛立ちから、小十郎は茶を置くと佐助の前に立った。

「ほんとにもう……。」
佐助は立ち上がらずに、目の前に仁王立ちする小十郎の手を引いて座らせた。
「落ち着きなって、何時もそうなの?眉間に皺寄せて難しい顔してさ……。」
佐助の指が小十郎の眉間の皺をそっと撫でた。
殺気を感じなかったせいなのか、普段ならば例え身内であっても手を振り払う状況なのに小十郎はそうしなかった。
「いっつもそんな顔してるとおでこ凝らない?」
冷たい指が小十郎の額をするすると撫でる。
431場皿 小×佐 3/5:2009/09/20(日) 00:11:35 ID:xiFeGWO70
「落ち着きなって、こんな状況じゃ探しに行って一緒に迷うだけだしさ。」
今まで見た事の無い顔で佐助がふわりと笑う。
確かに焦っている。安否が気になり、直ぐにでも探しに行きたい。
だが不思議と佐助にそうされる内に気が落ち着き次第に思考も正常に戻っていた。

「あんたも普段割りと冷静そうなのにねえ。主の事となると皆吹っ飛んじゃうのは旦那と変わんないね。」
するりと佐助の腕が小十郎の頭を抱く。
よしよしと子供のように頭を撫でられて小十郎は思わず苦笑した。

「っち……」
「んー?」
「政宗様もこんな暗くちゃ動いてはいねえだろうしな。」
「そうそ。その調子。」
何時も苛立っていた軽い調子が今は妙に心地よい。
だからかと思う。
ただ忍隊の長というにはあまりにも大きい発言力。
二人の主から寄せられる絶大な信頼。
それは佐助のこういう部分から来ているのだろう。

其処まで考えて漸く部屋の隅に腰を下ろした理由に思い当たる。
そんな事にも気付けないとは余程頭に血が上っていたのだろう。
弁えているのだ。
味方にも敵にも決して感じさせはしないけれど。
432場皿 小×佐 4/5:2009/09/20(日) 00:12:24 ID:xiFeGWO70
「あ。」
不意に佐助が声を上げる。
「今、二人とも焚き火して収穫した物食べてるみたい。」
「?なんで―……。」
顔を上げると佐助はにこりと小十郎に微笑んだ。

「影、飛ばしてたんだよ。奥まで行き過ぎて日が暮れてんの気付いて無かったみたい。」
「おめえ……。」
「あんたも安心した?」
「おめえも心配してたんじゃねえか。」
まあねと笑う佐助に何で教えなかったと詰め寄る。
「えーだってさあ。教えたらあんた『どうだ?どうだ?』って五月蝿そうなんだもん。気が散ると影も散っちゃうし。」
不意に佐助の手が伸び目の前にある小十郎の髪を撫でた。
「髪乱しちゃってもう……。俺様はさ、こういう時結構冷静になっちゃうからさ、ちょっと羨ましいかな。」
そう言われて、一瞬だけ歪んだ眉を見て、胸が一瞬軋んだ。

「んっ……んっちょっと!?右目の旦那!?何してんの?」
気付けば小十郎は佐助に唇を重ねていた。
「……少し黙ってろ。」
「は?って、んぅ……そうじゃなくて!」
無理矢理口を押し開き舌を捻じ込む。
舌を絡め、その感触を味わっていると、ばふっと音を立てて腕の中の佐助が霧散した。
それと同時にさっきまでいた縁側に降り立つ気配がする。

「はーびっくりしたー。もう……。」
「ったく逃げてんじゃねえ。」
小十郎がそう言いながら立ち上がると、はああああとこれ見よがしなため息が聞こえた。
「あんたはこういうの楽しいのかも知んないけどね。俺様あんまり好きじゃないのよ。」
障子を開けると呆れたような顔で佐助はがしがしと頭を掻いていた。
チラリと小十郎を見て、ふうとため息をつくと腕を組んでこちらに身体を向けたまま壁に寄りかかった。
433場皿 小×佐 5/5:2009/09/20(日) 00:12:55 ID:xiFeGWO70
「真田の旦那を―――。」
佐助はそのまま顔だけを動かして、二人の消えた方向を見た。
「いや、悪いね。ちょっと何かあったからって直ぐ助けに行ってたんじゃ為にならないっしょ?」
助けるのはすっごい簡単なんだけどさ。と、苦笑いをしながら問いかけられて「ああ」と返事をした。
「明るくなったら二人とも帰るだろうし、そこ布団入ってるから好きに使って休んでてよ。」
「おめえはどうする。部屋にで戻るのか?」
そう聞くと、佐助はあははといつもの軽薄な笑い声を上げた。
「なにいっちゃってんの。これからが俺様達、忍のお仕事の時間さ。」
旦那達が戻ってくるまでにはまた此処に来るからと佐助はひらひら手を振った。

「佐助。」
「はい?」
返ってきた佐助の声に一瞬の動揺を読み取って小十郎は満足した。
名をこうして呼ぶのは初めての事だった。
「っち、まあ行き成り来たのはこっちだしな。続きは次回ってことにしといてやるよ。」
そう言うと佐助は困ったように笑った。
「なんの続きかは知らないけど、今度からこうやって来るときは予告してからにしてね。」
道化の振りをしたこの忍は案外聡い。
小十郎の言葉の意味も分かっていてこう答えているのは直ぐに分かった。
「ああ、そん時は時間を空けておけ。」
「あはは、分った。びっちびっちに予定入れとくわ。そんじゃね。」

先ほどと同じように手を振ると佐助はするりと闇に紛れた。
それを見送ると小十郎は部屋に入った。
はらりと落ちた前髪を掻き揚げ、先ほどの佐助の感触を思い出す。
「……さてと、どう攻めるか。だ。」
小十郎はそう呟いて唇の端を吊り上げた。
434場皿 小×佐:2009/09/20(日) 00:14:44 ID:xiFeGWO70

               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < あらためて読み返すと酷いなこれ
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < 勢いだけじゃ駄目ってことだ
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < お付き合い有難うございました
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ                   

43520世紀の男の子・ハウスキーパー1/2:2009/09/20(日) 00:18:01 ID:bYdaamfv0
検事×友達×検事…というか検事←友達小ネタ
時間軸的には一章終了直後くらい?友達の正体が劇場版仕様です、半生注意ー

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


結局あの爆発のあと検事くんは見つからなかった。
ああ、残念。絶対に死ぬ事がないようにと、あんなにも念入りに保険をかけたというのに。
肝心の検事くんが見つからないんじゃあ何の意味も無い。
検事くんを保護できた時のためと用意した、あれも、これも、ぜーんぶ無駄になっちゃった。
僕の考えていたイメージでは、僕が優しく検事くんを保護してあげて、
その後は鉋も呼んで、一緒に仲良く暮らしていくつもりだったのに。
検事くんを僕の元へ連れ帰れたら何をしよう、って。たくさん考えてたんだよ。

君が目覚めたら、まずおはようを言って。
ねえ、そしたら僕たち友達になるんだ。
なってくれるよね、いいでしょう?名案だ。君も素敵だと思うよね?
ああ、友達になったら何をしようか。
最初の日は、初めての約束をしよう。「いつまでも仲良く暮らしましょう」って、誓いを立てるんだ。
次の日は初めて手を繋いで、その次の日は初めての夜更かしなんてどうかな。
その次の次の日は、ロックの話をしようか。君のお気に入りのギターを聴かせてよ。
そのまた次の日には何をしよう。あれもいいな、これもいいな、決められない。
順番なんてどうでもいいのだけれど、やりたい事が多すぎて、カレンダーの予定は何年も先まで埋まっていく。
43620世紀の男の子・ハウスキーパー2/2:2009/09/20(日) 00:19:51 ID:bYdaamfv0
毎日一緒に起きて、一緒にごはんを食べて、一緒に眠ろう。
そのための部屋も用意したんだよ。一番見晴らしの良い、広くて綺麗な部屋。
プレゼントしたら、検事くんは喜んでくれるのかな。
贈り物なんて友達らしい事は初めてだから、上手く出来ないかもしれないなあ。
けれど、笑わないでね。きっと頑張って上手に出来るようになるから。
二人だけの秘密基地も作ろう、新しい予言の書を作るのもいいね。
僕と君、二人だけの秘密をたくさんたくさん作るんだ。だって僕たちは友達になるんだもの。
みんなに羨まれるような素敵な友達になろうね。他の誰にも負けない一番の友達になろうね。
僕の隣にはいつも君、君の隣にはいつも僕。
本当にそんな日が来るなら僕はその幸せを決して手放さない。他の誰にも渡さない。
だから僕は今の内に君の居場所を奪っておこう。
君の帰る場所は一つだって残してあげない。君を待つ人は僕一人で良い。
君は僕の所に来ればいいんだから。他に居場所なんて要らないね?

ああ……、まだかな、まだかな、早く来てね、検事くん。
その日が来るまで部屋のシーツは僕が替えておくから。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

βzのDIVEがものすごい検×友に聞こえてついカッとなって…
ストックしてたヤンデレもどきネタと融合して投下です
友達の子供っぽい喋り方の塩梅に試行錯誤してちょっぴり別人風味、かも
437風と木の名無しさん:2009/09/20(日) 13:45:18 ID:EuWxD1b20
>413
GJGJGJ!ティガさん可愛いよティガさん

自分もナルさんには会えてないのでお互い頑張ろうぜ
438風と木の名無しさん:2009/09/20(日) 17:33:15 ID:1U+WGV8L0
>>418
ここでこの二人が読めるとは!!!
禿萌えた!!
ありがとう!!!!
439風と木の名無しさん:2009/09/20(日) 23:52:35 ID:KY2TKNtt0
>419,>366
こっすーもかくやな勢いで禿げた。
それぞれのコンビやトリオの特色とか口調が
丁寧に書かれてて脳裏にその場面が容易に浮かぶ。
素晴らしい萌をありがとうございます。
4403宅マン 1/3:2009/09/21(月) 21:49:19 ID:+lYOJ9vx0
「7人の恋人」テツロウと3宅マンで下品な百合。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


「てつろぉ、またトイレ汚しちゃったあ」
 三宅マンは部屋に入って早々、そんなことを言った。またかよ、と僕はうんざりする。
 夏休みが終わって秋も近いけれど、三宅マンは相変わらずピッチピチのタイツであった。季節感も何もない。まあ、僕の半パンも似たようなもんだけれど。
「世は新学期だぜ?おまえもちょっとは成長しろよなー」
「だってさぁ! テツロウんちのトイレっていきなり便器じゃん!」
「それはもういいよ!」
 うちのトイレを身振り手振りであらわす三宅マンをさえぎる。
 もーっ、とベッドの上で頭をかいていると、三宅マンは飛び乗ってきた。なんだこの既視感。
「ママに、ごめんなさぁい、って、ね?」
 ごめんなさぁい、って。
 三宅マンが僕を下から覗き込んで猫撫で声を出す。はったおしたくなったので頭をはたき、丸まった背中に蹴りを入れてやった。いってぇ! と三宅マンはあぐらの体勢で頭を抱えた。背中もさすりたいようだったが腕が短いので苦戦していた。
 僕はさっきの三宅マンみたいににじり寄り、まるで二人が逆転した体勢を作る。四角い顔を覗き込んで、
「そんなに曲がってんの?」
 と、彼の股間をわし掴んだ。三宅マンが素っ頓狂な声を上げる。
「な、なにすんのっ」
「もしかしたらものすごい曲がってんのかなーって。だって僕はそんな散らさないもん。だから多分三宅マンはめちゃくちゃ曲がってるんだよ」
「あーそかそかそかそか、って、んなことないよ!」
「ノリツッコミありがとよ」
「よせやい……って離してよ、てつろー」
 ぐにぐに揉んでやったら、三宅マンは真っ赤になって体をよじらせた。
 僕は手を離す気なんてなくて、タイツの中で固くなるまで刺激しつづけた。それにともなって三宅マンの顔が泣き顔になっていく。
「や、なにもう……」
「確かめんの。ほら脱いで脱いで」
 後ろに体を倒させ、タイツに手をかけた。三宅マンは嫌がって、短いなりに足をじたばたと暴れさせた。
4413宅マン 2/3:2009/09/21(月) 21:51:26 ID:+lYOJ9vx0
「なんでやなの」
「恥ずかしいじゃんオレだけとか……あ、てつろーも脱ぐんならいいよ!」
 腹筋だけで起き上がりやがった筋肉馬鹿。
「意味わかんないんですけどー」
「だって曲がってるかどうかとか比べなきゃわかんないじゃんか」
 ……しまった、少し納得してしまった。しかし実のところ、曲がってる曲がってないは口実で、三宅マンをちょっといじめたかっただけなので僕は戸惑った。
 どうしよう。
「てつろぉ」
 放置プレイに意図せずなってしまっている三宅マンが、涙目で僕を呼ぶ。
 まあいっか。と僕は頷いた。だって男の子だもの。
「あ、靴下残しといて」
「なんだそのフェチ」
 ぐだぐだしゃべりながらそれぞれ下半身裸になった。……いや、僕は膝下の靴下だけ残ってるけど……。
 それからあぐらをかいて二人、向き合う。
「てつろーのもたたせなきゃ」
「わっ、馬鹿いきなりさわんな!」
「ちっちゃい、かわいい」
「うっせー馬鹿しね」
4423宅マン 3/3:2009/09/21(月) 21:53:01 ID:+lYOJ9vx0
 三宅マンのほてった顔が近い。
 太くてごつごつした指が下半身を揉みしだく。顔をあわせていたくなくて僕は三宅マンの肩に顔を押し付けた。
 そして僕も彼のを握る。上下にしごくと、三宅マンも同じように僕の肩によっかかってきた。
 なにやってんだかなあ、僕ら。
 女の子なんて乗せたこともない、ベッドのギシギシいう音。二人分の荒い呼吸。たまにまじる低い声に、ぞくぞくして、首にかかる息にぞわぞわ鳥肌が立った。
 駄目な大人だけどやっぱりかわいいなあと僕は熱にうかされた頭で思った。
「あ、てつろ、いっちゃう」
「うん、僕も……」
「いくまえに曲がってるか見なきゃ……」
「バカどうでもいいだろそんなのっ、手、止めんなバカ」
「てつろーが言ったのにぃ……ッうあ」
「はぁ……あーあ」
 体がめちゃくちゃ熱かった。気持ち良かった。三宅マンは体を離そうとしたけど、僕は離れない。首にかじりついたままドキドキが止まるまで待った。ひっついた三宅マンからも激しい鼓動が聞こえた。
 かわいーの。
 僕らはしばらくくっついたままでいた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
443風と木の名無しさん:2009/09/21(月) 22:21:27 ID:qR1eaBUzO
>>435-436
検事←友達ktkr
実写版友達で脳内再生余裕でした。
友達可愛いよ友達
444鳥籠の幻 1/3:2009/09/22(火) 04:02:36 ID:+In71QHHO
元ネタはありますが、作品が作品なので伏せさせていただきます。
原作設定で三角関係、描写はぬるいですがやってる最中の話なので注意です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!



なにを食べても太らないと言っていたその身体は本当に細くて、薄い胸に掌を置けば、そのまま心臓を握り潰せそうな気すらした。
肉よりも骨の感触の強いその胸には翼の刺青が左右対に彫られていて、両腕にも同じそれが広がっている。色素の薄い髪がシーツに散らばり、骨張った長い手足は投げ出されている。飛ぶ術を無くした鳥を手飼いにした気分だった。
繋げた腰を揺らしてやれば、薄い唇からかすれた声が漏れる。声量もなく、嬌声というには苦しげな喘ぎ。
声を出さないセックスなんて興醒めだと普段は思うが、俺はこの男の耐える様がひどく好きだった。眉根を寄せて俺の動きに堪え、肉のない体に汗を滲ませて胸を上下させている。
445鳥籠の幻 2/3:2009/09/22(火) 04:04:31 ID:+In71QHHO
鳥のように喉仏の尖った首を見る。
こちとら伊達に身体は鍛えていないし、両手をかけて力を込めれば、すぐに手折れそうだ。けれど、そんなことはしない。そんなことがしたい訳ではないのだ。

「…なあ、写真撮らせろ」

「、は!?ちょ、止め…っ!」

男が声をあげるよりも前に、俺は携帯を手にしていた。派手なシャッター音が空間を切り取る。広げた掌はカメラを防げず、乱れた上半身がきちんと画面に収められていた。

「…あんた、本当に悪趣味…」

「…は、お互い様だろ」

そう切り返すと、察しのいい男は顔を歪めた。どうして。どうしてどうして。その言葉を何回繰り返したか分からない。
なんであんな被虐趣味のペシミスト野郎なんかをこいつは好きで、俺は駄目なんだろう。
こんな風に、暴力の延長みたいなセックスまで強いるから?けれどそれはお前が俺を見ないからであって、それじゃあ俺はどうすればいいんだろう。
こんな風にシーツの上で所有者気分になれるのも、いまこのときだけだ。
446鳥籠の幻 3/3:2009/09/22(火) 04:06:44 ID:+In71QHHO
(やはり、脚の1本でも折ってしまえば、)

ふと、脳裏に暴力的な考えがよぎる。
そんな思想はいつものことだし(実際俺はよく男に拳を振るう)、いまこの状況だって、男にとっては暴力となんら変わらないのだろう。
ああでも、やっぱり違う。お前が好きだ。俺のものに、俺だけのものにしたい程に。けれど、壊したい訳じゃない。どんなに身体を傷付けても、それだけは出来ない。それはやさしさというより、きっと臆病者の表れなんだろう。口元に自嘲の笑みが浮かぶ。

「写真だけじゃ足りん。次はムービーな」

「っ、な、…っ!」

呆れて開いたままの口から抗議が吐かれる前に、俺は腰の動きを再開させた。
荒い呼吸とかすれた声の合間に、最後の抵抗じみた舌打ちが聴こえる。その悔しげな表情も、俺はしっかりと携帯に収める。
なあ、許せよ。お前を手に入れたと錯覚出来る時間を、俺はここに閉じ込めるのだ。
画面越しに男を見つめながら、俺はいま繋がっている熱を感覚に刻みつけようと躍起になるのだった。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

関係自体もそうなんですが、とある1コマに萌え過ぎた末の乱文でした…。
447風と木の名無しさん:2009/09/22(火) 22:12:44 ID:e1sLuGS5O
>>413
禿萌えたGJ!!
久しぶりにPSP起動させよう
448新ゲッ夕ーロボ Sideハヤト 1/4:2009/09/22(火) 23:02:50 ID:kdFZjttT0
スパロボに出るから見てみたら萌えたので書いてみた。
ハヤト×リョウマで9話以降のバレがあるので注意。前半ハヤト視点で後半リョウマ視点。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

Side ハヤト


「お前はどう思ってんだ? ゲッ夕ーがいたから敵が現れたって話、本当なのかよ?」
「可能性は高い」
「だったら、ゲッ夕ーを破壊してりゃ世の中は平穏無事だったってわけか。
ま、そんなことジジイが許すはずはねえけどよ」

「それに……お前もな」

ぐっと近づき、リョウマが睨む。
何故お前が怒る? 俺がゲッ夕ーを追い求めている事はお前も知っている事だろうに。
お前という存在は、俺にとって理解不能すぎる。
急に怒り出して喧嘩を売ってきたかと思うと、次の瞬間にはへらへら笑って近づいてきたりもする。
前に番犬などと称してみたが、よく知った今となってはこの自分勝手な俺様野郎は猫のようだ。
俺をどこまでも振り回す。そんな奴は初めてだった。
台風のように、離れずに敢えてその中心に飛び込めばもう振り回される事もないのだろうか。
結局俺は、どうするか決められずにいる。
449新ゲッ夕ーロボ Sideハヤト 2/4:2009/09/22(火) 23:04:17 ID:kdFZjttT0

風呂上りの体をベッドに押し倒し首に噛みついてやると、赤い血が滲んできた。
リョウマの首から出る血。俺と同じ赤い血。
いっそ俺と全く違うものであってくれたなら、こんなにも嫉妬の炎で身を焼かずに済んだものを。
そしてゲッ夕ーへの探究心の延長なのか、お前相手にこんな愛情の欠片もない行為に手を出す事もなかったのに。
「痛えな……お前、俺を食う気かよ?」
「大人しく食べられてくれるのか?」
「ふん、やってみるか?」
いつだってお前は挑発的だ。その自信に満ち溢れた目が、俺をどれだけ煽るのかも知らずに。
「……やってやるさ。それが望みだろう?」
「言ってろ」

何故お前なんだ?
お前だけが、どうしてゲッ夕ーに選ばれたんだ?
何故俺じゃないんだ? 何故、何故、何故!!
本当にお前を食ったならば、お前と同じものになれるだろうか。
俺も、選ばれた者に。
450新ゲッ夕ーロボ Sideハヤト 3/4:2009/09/22(火) 23:05:00 ID:kdFZjttT0

「おいハヤト、見てるだけでイク気か?」
リョウマの声に、ハッと我に返った。
最近はよくこうしてしまう。意外と情に厚いリョウマは心配するだけで不審には思っていないようだ。
「……そんなわけないだろう」
「そうかあ? この俺がセクシーだからジッと見てたんじゃねーのかよ?」
にやにや笑ってこちらに触れてこようとする手を叩き落とした。
「違う。大体お前、セクシーって言葉の意味が解ってるのか?」
「バカにすんなよ! そりゃあれだ、褒め言葉だろーが!!」
この馬鹿、やっぱり意味が解ってないじゃないか。俺は思ったが口には出さないでおいた。
ここで怒らせて部屋を出て行かれても困る。
女とは違う、抱く分には簡単でもなく楽しくもない、俺と同じ男。
「……もういい。黙って俺だけ見てろ」
「んだよ、偉そうに……」
だがその身が甘くはなくても、こうして食いたいのは事実なのだから。
451新ゲッ夕ーロボ Sideハヤト 4/4:2009/09/22(火) 23:05:46 ID:kdFZjttT0


あれから二年、お前はもうここにはいない。触れる事ができた日々が遠く思える。
『あばよ、ダチ公……』
一方的に別れを告げて、お前はそのまま行ってしまった。簡単には追いかけられない場所へ。
何故俺はあの時すぐに追いかけられなかったのだろうか。
リョウマ、お前は今も一人で戦っているのか?
一人で、この地獄の釜の先で生きているのか?

思えば俺はずっと、ゲッ夕ーと同じぐらいお前の事も考えてきていた。
ゲッ夕ーに選ばれた者だからなのか、単純にお前だからなのか。
ゲッ夕ーかリョウマか……。
今もまだ、俺は選べないでいる。

なあ、リョウマ。
俺は、本当は何がほしかったんだろうな。

もう一度お前に会うことができたら、その答えが分かるだろうか。

452新ゲッ夕ーロボ Sideリョウマ 1/3:2009/09/22(火) 23:06:45 ID:kdFZjttT0

Side リョウマ


第一印象は最悪で、最高。
邪魔なら部下だろうが平気でぶっ殺すイカれたテロリスト。
初めてのゲッ夕ーの操縦で暴走して、散々な目にもあわせてくれた。
でも、俺の顔に傷をつけた最初の男。
すげえ興奮したのを、今でもはっきりと覚えている。

男相手にセックスするなんざ考えもしなかった。
それでも、あいつとするのは気持ち良い。
あの日俺の顔に傷をつけた指が、俺を感じさせる。すぐにでも俺を殺せるこの手が。
もしかしたら俺をここで殺すかもしれないと、偶にぼーっとこっちを見ているあいつを見てるとそう思う。
俺だってそれぐらいは分かるんだぜ?
こうして裸で抱き合っててもお前が俺じゃなくてゲッ夕ーを見ていることぐらい、分かるんだ。
俺やベンケイには分からない難しい事ばかり出してくるその頭で、ゲッ夕ーばかり追い求めている。
ジジイみたいに、一人で勝手にやってくれるなら別にいい。
けど、お前は俺に手を出しただろうが! ゲッ夕ーも俺もなんて欲張りすぎるぜ!

……お前は結局、最後にはゲッ夕ーを選ぶんだろうな。

別にそれでもいいと、あの世界を見るまではそう思ってたんだ。

453新ゲッ夕ーロボ Sideリョウマ 2/3:2009/09/22(火) 23:07:52 ID:kdFZjttT0

夢か現実か、それとも未来か。
実験中迷い込んだ先で俺が見たのは、人間がゲッ夕ーになっていて互いに殺しあう世界。
俺の知っている奴等の変わり果てた姿は思い出したくもないが、だからって忘れちゃいけねえ。
これが理想の世界だというジジイ。そしてその答えを追い求めていたハヤト。
邪魔するなと攻撃して向かってくるから、俺も相手をするしかなかった。
動きを止める意味で、それだけの意味で武器を振るったのに……。
ゲッ夕ーを追い求める奴の末路が、これか。

俺が殺した。ハヤトを、俺が。



最後の戦いを終えて、俺は一人であの巨大ゲッ夕ーと戦う決意をした。
今頃、置いていったあいつ等は何してるんだろう。
無事に帰っただろうか。それとも、俺を追いかけているんだろうか。
ゆっくり後ろを見ている余裕はない。

無限地獄。
確かにここはそうだった。殺しても殺しても湧いてくる敵。
だけど終わりはある。俺が死ぬか、あのゲッ夕ーをぶっ潰すか。
どっちが先になるか……それとも、別の何かが起こるか。
454新ゲッ夕ーロボ Sideリョウマ 3/3:2009/09/22(火) 23:09:01 ID:kdFZjttT0
あいつ等とは、いつかまた会える気がする。俺たちは三人一組だからな。
ベンケイの野郎はまた俺に怒るんだろうな。一人で無茶しやがってって。あいつは俺たちの中でまともな奴だから。
ハヤトは……きっと俺を無視して、先に行っちまう。あの世界のように、ゲッ夕ーの答えを求めて。
俺は嫌だ。あの世界と同じになんて絶対してやらねえ!!
だからあいつがあのゲッ夕ーを追いかける前に、俺が全部ぶっ壊してやる!!
それでお前があの世界のように死なないってんなら……無茶だろうが何だろうがやってやるさ。

こういうのを、何て言うんだろうな。
恋とか愛とか、そんな甘いもんじゃねえんだ。
元々俺たちの間に、好きとかそんな言葉はなかったしな。俺も言う気はねえし。
思えば妙な関係だったな、俺たち。

なあ、ハヤト。
俺は、お前の中の一番になりたかった。

もう一度お前に会うことができたら、その時ぐらいは一番にしてくれよな!



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ヒーロー物だと勝手に思ってたんで、展開とラストに驚いた。
1、2話の時点じゃこいつらで妄想するとは思わなかったよ。
455風と木の名無しさん:2009/09/22(火) 23:26:26 ID:0gW4oH2V0
>>454
あああ!まさかここでこんなものが読めるとは!
新のラストは本当に切なくなる
真のラストと合わせて考えると余計たまらん
リョウとハヤトのぶっ飛んでる感じが萌えました、GJ!
456風と木の名無しさん:2009/09/22(火) 23:29:25 ID:pEO0hQT70
リョウマって言うから龍王リョウマかと思ってびびったよ
誰かシュラトの龍天で書いてくだしあおねがいします><
457愛車 菊×旺 1/8:2009/09/23(水) 00:17:40 ID:fPWK0pL/0
今更感漂うドラマネタですが、時間が経っても妄想と熱が収まらなかったので投下。
数ヶ月前にやってた金曜ドラマ愛車で、菊×旺です。女性関係アリが前提の話なのでご注意。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


旺次郎が海里を伴い、二年ぶりに日本へと帰ってきたことを正人が知ったのは、その旺次郎の突然の訪問を受けたからだった。
正人は他のメンバーがそれぞれの形で旅立った後にも、高級マンションの28階に相変わらず住んでいた。久しぶりに会った旺次郎は、少し以前より日に焼け、それでもあのニヒルな笑みを失ってはいなかった。
正人はとっておきのワインを出して、旺次郎を歓待した。
「どの辺りに行ってたんだい?貰った絵葉書で、ぼんやりとしたところは知っているけど」
「カンボジア、イラク、その他中東をふらふらとね。写真、見る?」
バッグから取り出された分厚い封筒を受け取り、正人は中の写真を取り出した。ざっと二百枚ほどはあるのではないだろうか。
目を通し、正人はほっと感嘆の息をついた。これは――
「凄いな。旺ちゃんの変化が見えるようだ。女性を中心に捉えていた今までの君のモチーフとは、まるで違っているね」
「こだわりがなくなったわけじゃねーんだけど、死の中に光る生ってのを撮りたくなってね。死と生は表裏一体だってことは、戦場でいやほど見るからさ。俺が選ぶんじゃなくて、撮ったもんに自然と死から生が浮き上がって見える」
「なるほど」
歩哨の間に、他の民間人と談笑する兵士。怪我人を手当てする看護人の、真剣な面差し、美しい横顔。ぼろぼろになった皮膚で、手で、子供の頭を撫でる老婆。配給のビスケットを分け合う幼い兄妹。
「……僕は芸術には詳しいとは言えないけど、実にすばらしい」
「そう?いやー、菊リンに言われると安心するね」
「ウサたんやユッキーは駄目なんだ?」
「あいつらにセンスは期待しちゃいけないと思わない?」
グラスの中のワインを飲み干して、二人で笑った。
458愛車 菊×旺 2/8:2009/09/23(水) 00:19:54 ID:fPWK0pL/0
「それにしても意外。菊リンは玲子さんと結婚すると思ってたんだけど」
「子供の認知は済んでるし、パートナーとして互助関係は続ける。父親が必要な時はいずれ来るだろうから、そのときは入籍も考えているけどね。それまで……心境整理がついてしまうまでは、
同居はお預けということになったんだ」
玲子の前夫の身辺整理が片付いたら。子供のためにもそのほうがいいだろうと、玲子と二人で相談した結果だ。正人が独りきりに過ごしている今は、それまでの、ささやかなモラトリアムだった。
ふと笑いを収めて、旺次郎が足を組みなおす。
「ここ来る前にアイアイに連絡とって聞いたんだけど。菊リンが、最近様子おかしいって」
「アイアイが?」
「ああ。菊リンは今も、恋人の命日には暗い顔をする。近頃は特に、なんだかつらそうな顔をするって」
正人は驚きに息を呑んだ。
まさか――このところの葛藤を、見抜かれているとは思わなかった。
「ずっと気にしてたみたいだぜ。俺はここんところ海外だったから部外者同然だし、好き勝手なことは言えねーけどさ。……明日なんだろ、恋人の命日」
「……ああ」
「玲子さんはいい女だ。お互いに恋愛感情はなくても、子供っていう絆がある。経済的に精神的に支えあっていくパートナーとして結婚すれば、きっとあんたは幸せになれると思う。
だけど、心の中であんたはその幸福を拒否してる意識がある。なぜか」
正人は黙ったまま、旺次郎の朗々と語る声を聞いていた。旺次郎はエアーカメラで、正人を覗き込むように見る。胸中を見透かすように。
「一家のパパとなったら忙しいだろう。身も心も仕事と家事手伝いに忙殺されちまう。子供は可愛い。奥さんは美人。あったかな家庭。でも、そこに、死んだ恋人は入れない。
もういないその人のことを、毎日の幸せにかまけて、忘れてしまうかもしれない。あんたはそれが怖い。もしかしたら死なせちまったかもしれないかつて愛した人を、忘れてしまうのが怖い……」
459愛車 菊×旺 3/8:2009/09/23(水) 00:22:01 ID:fPWK0pL/0
戦場への旅の間に、彼特有の心理分析にも磨きがかかったようだと思って、正人は微笑んだ。その台詞はすべて、まったく見事に、正人の心中を言い当てていた。
かつて、正人は呪縛から確かに解き放たれた。旺次郎の労わりの言葉で。
過去繰り返し見ていた夢も見なくなった。前向きに生きていこうと思えた。授かった赤ん坊は、その希望の橋渡しになった。
けれど――すべてがそれで、丸く収まったわけではない。
幸福への後ろめたさ。彼は死んだのに自分が生きていることへの罪悪感。のうのうと、幸福を甘受して生きていて良いのか。
己の愚かな罪深い過去の振る舞いのことも、贖罪すべきことまで、幸福な暮らしのうちに忘れてしまうのではないか。
沈殿した濁った想いは、消えうせてはいなかったのだ。

「菊リンはさ、もっと我儘でいいと思うぜ。欲しいものは欲しいって言うくらいじゃなきゃさ。前ん時だって、突き詰めるところ海里を死なせないために計画したことだろ。一度くらい何から何まで自分のために行動したって、罰は当たらないと俺は思うけどね」
「おーちゃん」
「ま、何でも己が思うままにやってきた俺に言われても、腹立つだけかもしれないけど」
「そんなことはないよ。……ありがとう」
旺次郎はその斜に構えたような言葉選びからは想像もつかないほど、ひどく優しい。ちりりと、胸が痛んだ。






杯を重ねて、夜もとっぷり深けるころになると、酔いも随分と回っていた。近況の交換も済ませ弾んだ話題も、旺次郎が噛み殺した欠伸に途切れる。
「やべ、眠くなってきた」
「そういえば帰ってきてあまり休んでなかったんだっけ。今日は泊まっていくといいよ」
「そうさせてもらおっかな。悪いね、菊リン」
「ただ、海里には連絡を入れておかないと心配するだろう」
「それなら大丈夫。海里は承知済みだから」
初めから泊まる気だったのかと、正人は苦笑した。気の置けない友人として付き合ってもらえるのは、本当に、有り難いことだと思うのだけれど。

来客用の簡易ベッドを出して敷き、大分眠気に侵食されているらしい旺次郎を支えて、寝床まで連れていく。
シーツに埋もれた旺次郎は、それから間もなく、寝息を立て始めた。
正人は顔を綻ばせ、自分はシャワーを浴びに立った。
460愛車 菊×旺 4/8:2009/09/23(水) 00:23:56 ID:fPWK0pL/0


* * *


旺次郎が眠ってしまってからも、論文の執筆や、読みかけの本を開いたりといった時間つぶしをしていた正人は、深夜に入ろうかという頃合になってようやく眠る気になった。
ガウンを脱ぎ、ベッドに向かう。
眠る前に旺次郎の寝顔をもう一度見ていこうと思ったのは単なる気まぐれだったが、そこで、本当は止めておくべきだったのかもしれない。

旺次郎はさっき見たときと、姿勢は変わらずに行儀よく眠っている。少し跳ねさせた黒髪に、夢に落ちても崩れることのない端正な寝顔。
こんな場面はいつかにもあったなと正人は思った。二年前だ。海里が失踪し、荒れた旺次郎を睡眠薬で眠らせたとき……。
無意識のうちに、手を伸ばしていた。あのときと同じように、彼の髪をそっと撫でつける。
本当は肌に触れたかった。
欲望には気付いていた。今日二年ぶりに面会したときから、否、実際には二年前彼が旅立つ以前に、肩を抱かれたときからだ。「あなたを愛していたから、心から」。
あの言葉にどれだけ救われたか知れず、あの一言に強烈に胸を焦がす想いが生まれたことも事実だった。
二度目の恋をした。顔立ちは似ているけれど、性格はまるで違うその人に。
生きているその人に――
「……まったく」
苦笑し、正人は腕を引っ込めた。このままではどうにかなってしまいそうだ。眠るとしよう。
461愛車 菊×旺 5/8:2009/09/23(水) 00:25:30 ID:fPWK0pL/0
「おやすみ、旺次郎。……愛してるよ」
囁いて、己の言葉に笑う。己の寝室に行こうと立ち上がりかけた正人だったが、立ち上がる一瞬に素早く手首を掴まれる。
正人は息を詰めた。
「……おーちゃん」
「そういうの止そうよ、菊リン」
ベッドの上で、複雑な面で正人を見上げる旺次郎がいた。正人は血の気が引く思いがした。―――聞かれてしまった。
「起きていたんだね」
「戦場にいたせいかね。最近、眠り浅くてさ。誰かが枕元に近づくとすぐに眼が覚めちまう」
「そう……参ったな。言うつもりはなかったのに」
正人は旺次郎の手に手を重ねる。すまない、と唇を震わせた。
「聞き流してくれていいんだ。僕は君と海里の間を邪魔するつもりはないよ。どうか、気を悪くしないでほしい」
「さすがに驚きはしたけど、前も言ったろ、俺に偏見はないって。想われて嬉しくないわけねぇよ。しかも、菊リンみたいに良い男に」
「おーちゃん」
旺次郎の懐の中身を取り出して見てみたいと正人は思った。彼は寛容に過ぎる。繊細さと強靭さを併せ持った彼の資質は、正人にはあまりに眩しかった。
「俺、モテんのは女相手だけと思ってたけど、男にもモテるってのは。あれかね。人間的魅力に溢れてるってやつ」
「はは。さすが、その自信家ぶりはおーちゃんらしい」
茶化すように笑い、それで誤魔化して終われるのならば御の字だったのだが、旺次郎はそうはしなかった。
腕を急に引かれ、バランスを崩した正人が旺次郎の上に被さるように倒れこむ。これまでにないような至近距離に旺次郎の顔があって、正人は身を硬くした。
462愛車 菊×旺 6/8:2009/09/23(水) 00:27:46 ID:fPWK0pL/0

「いいぜ、やってみても」
真正面から見据えられ、正人は声を上擦らせた。
「冗談はよしてくれ……」
「ばか、冗談でんなこと言えるかよ」
「冗談じゃないなら、なおさらだ。君は簡単に言うが、男同士というのは想像だけじゃとても実感できない領域だよ。軽はずみに試していいことじゃない。なにより、海里に会わせる顔がない」
旺次郎は首を振る。そうじゃない、というように。

「海里なんだよ。今日、菊リンに会いに行けって言ったの」
「………え?」
「あいつ、何か感じてたんだろうな。前みたいにしょっちゅうタナトスが見えることはないみたいだけど、それでも勘の鋭さは超ど級だから。どうしても今日、先生に会いに行けって。そうじゃなきゃ、きっと後悔するからってさ」
思考が追いつかなかった。あの子が――死にたがりだったあの子が、そんなふうに、正人を気遣って旺次郎を寄越した。そのことが正人には衝撃だった。
「治ったと思ってても、根深いところに傷跡がザックリ、なんてこともある。今日話してみてわかったけど、菊リンはどう見てもまだ治療段階だぜ。時間が経つほど思いつめるタイプ。
その癖、自分ではもう大丈夫だと思い込もうとする。そんなんじゃ、いつか潰れちまうんじゃないかって……」
「――――っ」
唇を噛み締める正人に、旺次郎は、どこまでも優しい。
「忘れるのが嫌なんだろ。幸せになって全部を忘れちまうのが。俺相手なら、忘れなくて済むんじゃねえの」
恋人の顔を、重たく悲しい記憶にしないでおくために。思い出すだけで沈み込んでしまうような、泥舟になるのではなくて。
正人は無心で手を旺次郎の首筋に滑らせた。鎖骨を指でなぞり、きゅっと爪を立てる。
正人は、ほんの一時迷った。ここで、優しい彼に付け込むように手を伸ばし、彼の肌をかき回し、よがらせて、己の熱で穿ってしまおうか。彼はすべて受け入れると言ってくれているのだから。
……そして、そんな一時の迷いをすぐに恥じた。
463愛車 菊×旺 7/8:2009/09/23(水) 00:29:35 ID:fPWK0pL/0
「……ありがとう。そこまで言ってもらえるだけで、十分だよ」
正人は微笑む。
想いは確かにあった。だが、その想いのままに後先を考えずに突っ走り、結果的に誰かを不幸にするかもしれないことはダメだ。それは子供のすることだ。幼いころならば許されても、いい大人がそうあってはいけない。
大切な友人たちの幸せを願うのならば、尚更に。
「だけど……」
「ふふ、おーちゃんには僕は情けないところを見せっ放しだからね。僕はさぞ頼りない男に映ってるんだろう。でも、誤解だよ。僕はそれほど簡単に世を儚んだりはしないし、刻み込まれた傷もいつかは癒えるものだ」
それ以上正人が決して踏み込みはしないだろうことを見て取って、旺次郎も息をついた。彼は頑固な男だから、そうと決めたならば、翻しはしないだろう。
そう悟った旺次郎は場を和ませるように、茶化すように言う。
「ってことは、渾身の俺の告白は無駄骨か。結構勇気入ったんだけどな、言うの」
「状況が違っていたらお世話になっていたかもしれないけどね。
……ああ、だめだな。飲みなおそう。あんな熱烈な言葉の後では、すぐには寝れそうにもない」
少し火照った体を冷まそうと、こめかみを押して身を起こす正人に、旺次郎も身を浮かせた。
「なら俺も起きるわ。目冴えちまったし。……つまみ作ろうか」
「そうだね、お願いしようかな」
464愛車 菊×旺 8/8:2009/09/23(水) 00:33:36 ID:fPWK0pL/0
旺次郎がオーケー、と伏し目がちに笑う。その瞬間の彼は、何処までも無防備だった。
正人は不意を狙い打っていた。滑り込ませた手を後頭部に回し、相手の顔を引き寄せて、唇に自分のそれを重ねた。
急のことで、旺次郎が過敏にはねさせた肩を、正人が宥めるように抱く。舌を入れてのキスに「んっ、……ん」とくぐもった声が漏れた。けしかけるような事を言っていたのは旺次郎だというのに、いきなり唇を奪われたのは予想外だったらしい、されるがままになっている。
口付けが終わると、旺次郎はぱっと正人から離れ、半歩後ろへと下がった。正人は苦笑して両手を開いて見せる。
「俺の誘い断っといて不意打ちって、趣味悪ぃな。あんたの真面目ぶりに感動した三十秒前までの俺の気持ちが粉みじんになったんだけど?」
「はは、そっちの実施はしないから、嘘はついてないということにして欲しいな。このキスは人を無闇に誘ってきた罰ってことで」
何の因果か、旺次郎は友人の宇佐美に「キスお裾分け」をやったことがあった。なので男同士のキスは初体験というわけでもなく、それ自体への衝撃はさほどでもない。
旺次郎は触れた後の実感を確かめるように自身の唇を暫くつついていたが、
「……問題です。俺の今の心境はなんでしょう」
肩を落とし、笑った。
正人は暫く考え込むようにしたあと、
「……コテンパンだ?」
ザッツライト、と呟く旺次郎に、それはちょっと苦しいな、という正人の声も何のその。掛け声とともに、旺次郎は正人に逆襲のキスをお見舞いした。
              
465風と木の名無しさん:2009/09/23(水) 00:43:46 ID:fPWK0pL/0
          _________
       |┌───────┐|
       |│ロ stop.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]

                 ピッ ∧_∧
                ◇,,(∀・  )
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |                                |
  └────────────────┘
エロ展開には力量不足で出来なかった
感動の最終回が色々と台無しで今は反省しています、ダケドコノフタリガスキダ!
ありがとうございました
466風と木の名無しさん:2009/09/23(水) 00:57:55 ID:RTMzB0yd0
>>457
GJ!
愛車懐かしいなw
467流行り神 霧崎×純也1/6:2009/09/23(水) 01:18:07 ID:vqUM93eL0
流行り神 義兄×主人公です。
某電波BADENDがあまりにもアレだったので思わず書いたでござるの巻|


>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

truth end

 爽やかな、秋晴れの一日だった。昨日までの長雨のおかげで微細な埃が地表に落ちた空気は澄み、暮れてゆく夕陽を一層鮮やかなものにしている。
霧崎水明は最後の仕事を終え帰宅の準備をすると、ろくに掃除もしない黒ずんだブラインドをわずかに開け、赤い夕陽に目を細めた。静かだった。
その沈黙を楽しむように、ことさらゆっくり煙草をふかす。美味いと思ったことなど一度もない煙草をフィルターまできっちり吸い終えると、
吸殻が山になっている灰皿に丁寧に吸い口を押しつぶしてから外に出た。

 簡単に食材を買い込んでから自分のマンションに帰宅する。ドアノブをひねると室内に上がりこんだ。締め切った室内の空気はわずかに淀んでいる。
リビングに求める姿はなかった。買ってきたものを冷蔵庫などに移した後、窓を開け放した。日が暮れて冷え込んだ風がカーテンをわずかに揺らし、
ゆるりと室内に流れ込んでくる。リビングでなかったらどこなのか。霧崎はふと思いついて寝室のドアを開けた。自分のベッドが人の形に隆起している。
静かな寝息を立てているその姿に思わず笑みを漏らして、ベッドの端に座りこんだ。そのまま体重をかけないようにそっと覆いかぶさる。
頬や額に何度か唇を押しあてるとその瞼が震え、ゆっくり瞳が現れた。霧崎はもう一度額に口づけを落とす。
「ただいま、純也」
468流行り神 霧崎×純也2/6:2009/09/23(水) 01:19:25 ID:vqUM93eL0
 義弟である風見純也の心が壊れて半年になろうとしている。薬物療法などを試したが症状は改善されていない。
もともと、繊細で心優しい性格をしていた彼が、奇怪かつ凄惨な事件に立て続けに遭遇し解決に奔走していたのだ。
絶え間ない緊張や恐怖に徐々に心が疲弊していったとしても不思議ではなかった。伸びきった糸のように極限までピンと張りつめていた彼の心は、
限界に達していたのだろう。些細なことで簡単に砕けてしまった。いや、きっと兆候はあったのだろう。
しかし霧崎を含め、周囲にいる人間は誰も気付くことができなかった。大きな体を折り曲げて慟哭した小暮。唇を噛みしめて俯いていた賀茂泉。
子供のように声をあげて泣きじゃくっていた間宮。病院の待合室で病状を伝えられた三者三様の嘆きはまだ忘れられない。
そうだ、あの時、ふと顔を上げた小暮が自分を見てみるみる顔を歪めたのだった、と霧崎は思い出して苦笑した。
「せ、先生!」
 気がつけば、拳を握りしめすぎて爪が手の平に食い込み、薄緑のリノリウムの床に血の滴を垂らしていたのだった。


「純也、すぐに食事を作るからもう起きているんだよ、分ったね」
 子供に対するように優しく言い聞かせると、純也はぼんやり霧崎の顔を見つめてからわずかに笑い、ベッドからゆっくり起き上がった。
最近はとみに外界に対する感度が鈍ってきている。そのうち自分の声も届かなくなるかもしれない。少し前まではちゃんと帰宅時に玄関まで出迎えていたのに。
 手早く夕食を作りテーブルに純也を座らせると、純也は大人しく口に運び始めた。こぼすような無作法はしない。こうなってまでも弟は手がかからない。
「今日はお前の好物だ、美味いか?」
 声を時折かけてやると、純也はふわりと笑う。その笑みに笑い返しながら霧崎は自分も食物を口に運んだ。
469流行り神 霧崎×純也3/6:2009/09/23(水) 01:20:13 ID:vqUM93eL0
 長年大学に勤めていれば人目に付かないサボリ場所の一つや二つ、心得ているものだが、友人である式部人見には
霧崎のささやかな隠れ場所などお見通しだったらしい。よく晴れた晴天の午後、講義もなく時間も空いた霧崎がめったに人が訪れない
中庭の奥まったベンチで煙草をふかしていると、視界にライダーブーツのつま先が現れたので、霧崎は物憂げに眼の前の人物を見上げたのだった。
隙のない美しい怜悧な女だ。
「とんだ象牙の塔の住人ね」
「俺は俗人さ。講義の合間のささやかな一服ぐらいしか楽しみがないときてる」
 そう言いながら相変わらず不味そうに煙草をふかすので式部はその形のよい眉をひそめた。
「話す時間はありそうね」
「次の講義までなら」
 しばらく沈黙が続いた。どこか遠くから学生の笑い声が風に乗って届く。霧崎達の周囲の植物を風がさわりと揺らしていった。
「純也くんのことだけど」
「その話は終わったはずだ」
「貴方が勝手に話を打ち切っただけでしょう!」
 美人が怒る様は迫力があるが霧崎は一向に動じなかった。ことさらゆっくりと紫煙を吸い込む。
470流行り神 霧崎×純也4/6:2009/09/23(水) 01:21:26 ID:vqUM93eL0
「前にも言ったけど、もう一度病院に戻すべきだわ。今の状態は貴方のマンションに閉じ込めているようなものでしょう。
外界からの刺激が全くない状態が純也くんの病気にいい影響を及ぼすとは思えない。せん妄がかえって進行してしまう危険さえあるのよ。
それでいいの? こんな生活でいいと思ってるの? ちゃんともう一度専門の治療を受けさせるべきだわ。私も色々調べたのよ。
専門家にも何人か当ってみたわ。純也くんは治るかもしれない。だから、」
「それで薬漬けにしてチューブを何本もつないで身動きとれないようにベッドに縛り付けるのか? 
沢山だよ。もう誰にも純也は触れさせん。あいつは暴れたりしたことなんか一度もなかった。俺のマンションでも大人しいもんだ。
ガス栓を悪戯もしないし、ナイフやフォークを持たせても何もしない。自傷行為もない。なのに抑制帯で身体を無理やり拘束していた。
あいつが苦しそうにしていてもお構いなしにな。もうこの話はするな、式部。あいつは十分苦しんだ。これ以上傷つけさせはしない」
 式部の話を切って捨てると霧崎は黙り込んだ。式部は口を引き結び俯いている。その顔が昂然と上げられた。まっすぐ霧崎の瞳を見つめ返す。
「それだけなの?」
「何?」
「自分のマンションに閉じ込める理由はそれだけなの?」
「……」
 すっと目を細めた霧崎に式部はなおためらっていたが、やがて意を決したように声を発した。
「今の貴方は純也くんが『こうなって』喜んでいるように見えるのよ」
「……ほう?」
471流行り神 霧崎×純也5/6:2009/09/23(水) 01:24:31 ID:vqUM93eL0
「私が見舞いに行ったとき、ご両親もお見舞いに見えられてた。でも純也くんは私ばかりかご両親にさえ怯えるばかりだった。
なのに後からやってきた貴方には安堵してしがみ付いたのよ。貴方が宥めるように純也くんを抱きしめてやっと純也くんは怯えなくなった。
ショックを受けているご両親には見えてなかったけど私からは見えていた。貴方はその時、笑っていたわ」
 顔色一つ変えずに霧崎は新しい煙草に火を付けた。新たに立ち上る紫煙は風にちぎれて霧散する。
「とても満たされた、満足げな笑みだった。その後で純也くんを引き取りたいとご両親に申し出たと聞いたわ。
私はそれは聞いて何だかゾッとしたのよ。狂気が伝染していると思ったわ」
 純也の父親に話を持ちかけたとき、あの男は意外にもあっさりと頷いた。面倒をかけるならと生活資金の援助までしてくれたのだ。
その額の多さに驚いたが、実質、2人で暮らしていく分にはもはや金銭の悩みは解決したも同然だった。
息子を頼むと頭を下げた父親の、格段に白くなった頭を見つめていてもそれほどの感慨は湧かなかった。
終始息子を抑圧し無表情だったあの男も、やはり父親ではあったのかと思いはしたが。

 霧崎は溜息のように深く息を吐き、煙草の立ち上る煙に目を落とした。その立ち上る様を見つめながら声に出す。
「……恋人が生きているかもしれないと知った時お前はどうした?」
「え?」
「いてもたってもいられずに無我夢中であの島に向かったんだろう?」
 ひとり言のように呟かれた言葉に式部は黙り込んだ。
「諦めていたんだ。俺もな。もうずいぶん長い間、諦めていたんだ」
「……」
 霧崎はうっすらと微笑んだ。
「でも、」
472流行り神 霧崎×純也6/6:2009/09/23(水) 01:25:36 ID:vqUM93eL0
 冷たい風が二人の間を吹き抜けた。ざっと梢がざわめく。
「手に入るかもしれないと思ったら、お前だって死にもの狂いにもなるだろう? お前が島に、渡ったように」
「貴方……」
「もう恐ろしい目には遭わない。悲惨なものも見なくていい。おぞましいものも、醜悪なものも、全て」
 歌うように霧崎は声に出す。
「俺以外のモノに心を奪われることもない。焼けつくような嫉妬をすることもない。……物分りのいい兄貴の仮面を被らなくてもすむ」
 クスリと笑う顔に式部は身を凍らせた。
「仮面の下はもうずいぶん昔からただの化け物だったんだがな。……今の純也はそんな俺でも手を差し伸べて笑ってくれるよ。
本当に、こうなってもいい子だ。とても」
 言葉が途切れた。ゆっくり霧崎が立ち上がる。式部はわずかに後退ってしまった。
「さて、そろそろ講義の時間だ。俺は行かせてもらうとしよう」
 何も話せない式部に後ろ手で手を振り、霧崎はぶらぶらと歩きだした。
「そうだ」
473流行り神 霧崎×純也ラスト:2009/09/23(水) 01:26:41 ID:vqUM93eL0
 なすすべもなく見送っていた式部を振り返り、霧崎はニヤリと笑った。悪戯を思いついた子供のような顔だ。
「せん妄がどうとか言っていたが、まだしっかりしているところもあるぞ、純也は」
「え?」
「俺の名を呼んで俺の目を見つめながら、俺に腕を伸ばす。――ベッドの中ではな」
「……っ!!」
 ワンテンポ遅れて顔を赤らめた式部を、もう振り返ることもしなかった。もはやどうでもいいことだ。

 特に急ぎもせずに霧崎は歩く。本当は講義などなかったのだ。だから当てもなくただ歩き続けた。
気分がよかった。本当にすがすがしい気分だ。こんなに気分がいいのは何年振りだろう。先ほどの式部の問いかけがふと脳裏をよぎった。
『それでいいの?』
「……ああ、いいとも。幸せだ、この上もなくな」
 晴れ渡る空を見上げて霧崎はそっと呟いた。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

むう、これはいかん。書いたらオラよけいムラムラしてきたぞ!
ホラーゲームにこんなに萌えるとは思わなかったんだぜ。
投下配分間違えてしまいました、すみません。目を通していただいた方々、ありがとうございました。
474風と木の名無しさん:2009/09/23(水) 02:01:24 ID:/I2VCKsi0
        _________
       |┌───────┐|
        |│l> play.   │|
       |│        |│
       |│          |│
       |│        |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
   ∧∧
   (  ,,゚) ピッ   ∧_∧   ∧_∧
   /  つ◇   ( ・∀・)ミ  (`   )
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |            ┌‐^──────────────
  └──────│オリジナル、留学生←大学生。
                └───────────────
475ある夜の話1/2:2009/09/23(水) 02:07:44 ID:/I2VCKsi0
「ひっ!」
 TV画面の中、若い女の背後に青白い手が伸びる。
その光景に、ウィルの奴は小さな悲鳴を上げて、俺の腕を掴む手に少し力をこめる。
 青白い手が女の後ろ髪を掴み、クローゼットの中に引き込んだ瞬間、俺の腕は折れそうなほど痛んだ。ウィルが力の限り握り締めてきやがったからだ。きっと、こいつの手形の痣が出来たに違いない。毎度のことだが。
「ウィル、痛い」
「す、すいません……」
 半泣きでTV画面から目をそらしたウィルが、蚊の鳴くような声で言った。
 レンタルしてきたホラー映画。マイナーなそれは、怖がりの怖い物好きであるウィルが借りてきたものだ。月に一度か二度、俺の住むワンルームでは一日中ホラー映画鑑賞会が行われ、
その後奴は二、三日泊まっていく。一人では怖くて見られなし、寝られないとウィルが言うからだ。

 ウィルは俺の通う大学の留学生だ。学部こそ違うが、俺とウィルは親しかった。
というか、ウィルが俺にくっついて歩いているというのが正しい。大学の馬鹿みたいに広い構内で迷子になったウィルを助けたのが縁だった。
 身長は、そこそこ背の高い俺より頭一つ近く高い。澄んだ青い瞳と、
美しいブロンドが特徴的な美形なのだが、それはあくまで黙っていればの話である。
 気が弱く、何かにつけて泣いているような奴で、悪い奴ではないのだが手が掛かる。
大柄なので保護欲もそそられないというのは、俺の悪友の弁だ。俺もそう思う。
 おまけに背が高いせいで、しょっちゅうどこかしらに頭を打ち付けては悶絶している。
この間は電車から降りようとして、思い切り額を強打していた。勿論額はこぶになった。いい加減学習すべきだと思う。

 さほど興味のそそられないホラー映画を見る振りをして、ウィルの横顔を盗み見る。
端正な顔には恐怖と、抑えきれない好奇の色が浮かんでいる。目じりに涙が少し溜まっていた。
 俺はウィルをじっと見つめた。ホラー映画よりも、ウィルの顔を見ているほうがずっといい。
最近ようやくそのことを認められるようになった。
 この異邦人のことを、俺は好きだった。LikeではなくLoveの意味で。
476ある夜の話2/2:2009/09/23(水) 02:18:06 ID:/I2VCKsi0
 友愛なのだと、思い込もうとした。だって、異常じゃないか。俺もウィルも男だし、大体今まで惹かれた相手は全員女だった。
約一名、女というカテゴリに入れるべきか悩む性格の持ち主がいたが、とりあえずそいつも生物学的には女だ。
 それが、男に惹かれたのだ。その青い瞳に、ほかの誰かを映すのを見たくなかったし、こいつの好きな女の子の話なんて、どうしても聞きたくなかった。失恋したウィルを慰めながら、
心のどこかで喜びを覚える浅ましい自分がいた。最悪だった。
 どうしようもなくなって、ウィルや悪友たちを散々心配させるほど荒れて、そしてようやくその感情を俺は認めた。ウィルに恋しているのだと。
 告げるつもりは、なかった。打ち明けたところで、ウィルが俺を軽蔑しないだろうとは思う。人を蔑むことが出来ないタイプだから。ただ、困らせるだろうと思う。それは、嫌だった。
 日本で一番の親友として、隣にいよう。俺は心に決めた。

 いつの間にか、ホラー映画は終わっていた。デッキからDVDを取り出す。
けたたましいお笑い番組を、TV画面は垂れ流していた。
「お前さ、何で俺んちで見るんだ?」
 ふと思いついて、俺はウィルに聞いてみた。
「迷惑でしたか?」
「いや、そういうわけじゃねぇよ。ただ、毎回俺んちで二人だなと思って」
「……一番、落ち着くんです」
 はにかんで、ウィルは言った。
「女性の前で、情けない姿は見せられませんし。陽さんはからかったりしないでしょう?」
 陽さん、というのは俺のことである。
「それに、いくら好きでも一日中ホラー映画を見るのはちょっとって方もいらっしゃいますし、
付き合ってくれるのは陽さんくらいです」
「……しばらく泊まっていくしな」
「はい」
「さ、もう寝ようぜ。俺は明日一限から講義なんだ」
「あ、私もです」
「じゃ、さっさと寝ようぜ」
 押入れから布団を二組引っ張り出し、並べて敷く。TVの電源を落とすと、
豆電球だけ残して、明かりを消した。
「おやすみなさい」
「おう、おやすみ」
 ウィルの気配を間近に感じながら、俺は目を閉じた。痣になっているだろう腕に触れながら。
477風と木の名無しさん:2009/09/23(水) 02:23:51 ID:/I2VCKsi0
          _________
       |┌───────┐|
       |│ロ stop.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]

                 ピッ ∧_∧
                ◇,,(∀・  ) うっかり続きそう。 開始AA失敗してすいません。
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |                                |
  └────────────────┘
478白い部屋 1/4:2009/09/23(水) 05:14:42 ID:XFh7NFHM0
流行り神兄弟最終話電波BAD妄想。
ついカッとなって書いて二週間ほど寝かせて発酵していた。反省はしていない。
というか>>467姐さんアザーッス!!!萌えた…
拙くて恥ずかしいけど自分も投下する。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


「兄さん、僕まだ退院できないの?」

 本当に最低限のものしか置いていない病室。
窓はぼくがどうやっても届かないような高いところにある。
(多分、小暮さんでも無理そうだ)
しかもご丁寧に鉄格子。ドアも外から鍵。まるで牢獄だ。

武骨なのにすっかり慣れた手つきで花瓶に花を生けてくれた
兄さんにいつものようにそう問うた。
ベッドの脇に申し訳程度に置かれた使い古しの棚に
ことん、と置かれる花瓶の音が兄さんの返答の代わりのようだ。
今日はオレンジがかった黄色い花。ゆうかさんのお気に入りの服を思い出した。

「ねえ、兄さん、まだぼく沢山やることあるんだよ」

兄さんのくたびれたシャツの裾をひっぱる。
この白い部屋に来てから何回このやりとりをしただろうか。
その度に兄さんは苦笑する。少し、困ったような。そうして頭を撫でてくれる。
昔を思い出す。小さな子供だったころ。兄さんはいつもそばにいてくれた。
頭を撫でてくれて、最近はその後抱きしめてくれる。それが、今好きな時間だ。
479白い部屋 2/4:2009/09/23(水) 05:17:17 ID:XFh7NFHM0
ぼくは正直ここの食事があまり好きではなくて食が細くなり
飲まされる薬のせいで寝ている時間も多いせいか、痩せてしまったようだ。
多分筋肉も落ちている。帰ったら羽黒さんにも笑われてしまうな。
痩せてしまったせいか、兄さんは僕をすっかり包み込むようにしてしまう。
すこし照れくさい。けど、温かくてほっとする。
兄さんの表情は見えないけど、ぼくも腕を兄さんの背中に回す。

「大丈夫だ純也、俺がついていてやる」

うわごとのようにいつも兄さんが繰り返す言葉。
少しだけ、ぼくを抱きしめる力が強くなった。
やだな、兄さんてば。ぼくがなんだか変な病気みたいじゃないか。
いまだになんでまだ入院してるのかも教えてくれないし。
人見さんなら教えてくれるだろうけれど、来てくれない。
いわゆる面会謝絶というやつだそうだ。兄さんいわく。

「兄さん、お願いだからお医者さんに頼んでよ、純也は大丈夫です、って」

そりゃ、ぼくは頼りなさげに見えるかもしれない。
けれども編纂室の仕事をいくつもこなしてるの兄さんも知ってるじゃないか。
早く戻らないと、加茂泉警部補の機嫌は悪くなる一方だろう。
犬童警部も目を離すとすぐどこかに行ってしまうし。

…いけない、また眠くなってきた。
いつもの時間に飲むんだぞ、ときつく兄さんに言いつけられたせいで
すっかり苦い錠剤を決まった時間に飲むのが習慣になった。
最近また量が多くなったけど、以前の無理やり注射で強制入眠よりマシだ。
頭にモヤがかかったようになり、体の自制が利かなくなる。
けれど、兄さんの腕で優しくゆっくりと自分の体が白いシーツに沈む感触が心地よい。
480白い部屋 3/4:2009/09/23(水) 05:19:00 ID:XFh7NFHM0
「にい、さ…」

「大丈夫だ、大丈夫だから」

兄さんには恥ずかしくてとてもじゃないけど言えないけれど、
時たまこうなるときに、兄さんの唇が首を掠めたりする、
それが、どうしようもなく嬉しい。
たまに宙をもがく自分の指に、兄さんがおやすみのキスをしてくれる。
(多分、いや絶対気のせいだけど。偶然触れるだけだ。)
兄さんの匂い。あのタバコの匂い。それで安心していい夢が見られる。

兄さん、兄さん、兄さんだけなんだよ。ぼく、ずっと。




「…駄目ですな、進行しているといっても過言ではない」

「…そうですか」

機械の様に同じ事を繰り返し、医師が部屋を出てゆく。
あいにくここはタバコが吸えない。
半ばチェーンスモーカーの俺には些か辛い仕打ちだ。
簡素なベッドに横たわる純也。そろそろ「面会時間」が終わる。
ベッド脇で純也を見下ろすと、時たま、唇が笑む。
いい夢を見ているのだろうか。せめて、それだけでも。
血色の良くない頬に、そっとくちづける。壊れ物を扱うように。



481白い部屋 4/4:2009/09/23(水) 05:20:28 ID:XFh7NFHM0
立て付けの悪いドアを閉め、外に待機していた看護婦に軽く会釈をし、
俺はあの白い部屋を後にした。後ろでカチリと鍵の閉まる音。





「ねえ、にいさん」




いつからか、純也が俺を呼ぶ声が何かをねだるような、少し甘い響きを含むようになった。
それはここから出たいという気持ちからかもしれないが、それだけではない気がする。
俺のシャツを握る青白い指。俺だけを見る瞳。回される細い腕。
そうして、それに期待をしてしまっている自分がいる。



もう壊れてしまっているのかもしれない。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
すまんかった。自分でもよくわからないなどと犯人は意味不明なことを(ry
482風と木の名無しさん:2009/09/23(水) 13:20:28 ID:L10aGZHyO
>>465>>478
GJ!GJ!!GJ!!!
姐さん方GJ過ぎますよ!
萌えに萌えて苦しいよありがとう!!
483風と木の名無しさん:2009/09/23(水) 13:22:51 ID:L10aGZHyO
>>467でした
焦り過ぎた、スマン
484風と木の名無しさん:2009/09/24(木) 00:16:16 ID:qIs5Ix5e0
オリジナル投下させていただきます

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
485ミルク 1/4:2009/09/24(木) 00:16:57 ID:qIs5Ix5e0
夏休みでしばらく家に帰ると言ったら、パーティ好きのキースが『しばらくお別れ』飲み会を無理矢理開いた。
何かしら理由をつけて飲むのは別にかまわない。なのにこういう時に限って女の子がひとりも来ないんだ。
何人か誘ったが、都合がつかなかったらしい。野郎ばかりが6人くらいやってきた。
キースは同じ家に住んでいるというだけの、ただの同居人に過ぎない。
人を引きつけるオーラみたいなものがあって、僕も含め、ここに来る人間は皆キースの友人だということが唯一の共通点。
だから、仕事も年齢も性格もバラバラで、何しているのか分からない奴と会社の経営者みたいな奴が普通に楽しそうに飲んでいたりする。
興味深い話も聞けるから女の子がいなくても、まあいいか、という気分にさせてくれる……んだけど、今回は少しばかり居心地が悪い。
彼も来る。
「ダグも呼んだの?」
「そりゃ、もちろん。なんで?」
確かにダグとは、キースの友達の中では一番仲がいい。
酔っぱらって大騒ぎするようなタイプじゃないし、人の話を静かに聞いていてくれるし。
でもこの前二人きりでいた時、少し変な雰囲気になった。向こうが抱きついてきたのだ。
酔っぱらっていたせいだと思うようにしてきた。とはいうものの、彼が酔って変な行動に出るなんてことは今まで一度もなかった。
酒に飲まれるような人間じゃないならば、あれは? あれはどういう意味なんだ?
その後、ダグの方は何もなかったように話しかけてきたが、僕は無理だった。
ぐるぐるいろんな考えが頭を支配してしまって、今までのように喋れなくなった。というか、彼を避けるようになった。
そんな空気を向こうも何となく感じたらしく、こちらを見ていることはあっても、話しかけてはこなくなった。
今回は単なる理由付けとはいえ、僕のための飲み会だから、逃げるわけにもいかない。
気まずい。気が重い。
486ミルク 2/4:2009/09/24(木) 00:17:31 ID:qIs5Ix5e0
しかし、飲み会は僕の気持ちを無視して滞りなく始まる。

彼とは少し距離を置いて、ソファの向かいに座った。こういう場合、逆に意識してしまってちらちら見てしまう。
ダグの睫毛は長いから、彼が瞬きするたびについ目がそこにいく。すると向こうも気づいて僕の方を見る、という悪循環。
目を逸らして彼の足元に視線を向けると、カーゴパンツから突き出たふくらはぎに大きな擦り傷があった。
「怪我したの?」
思わず話しかけてしまった自分にびっくりする。ダグもハッとした表情になった。後悔。
「おお、マジすげえ擦り傷。転んだかなんか?」
横からキースが割り込んできてくれて、少しほっとする。
「ハーフパイプで練習してて、てっぺん辺りで転げ落ちたんだ」
僕に説明するように、ダグは顔をこちらに向けて答える。キースが質問したのに。
「ああ、スケボーやってるもんなあ。でもお前らしくもない。どうせ、女のことでも考えてたんだろ」
ダグは少し顔を赤くしたものの、それには答えず、ただ笑っていた。
陽に当たり過ぎてブロンドの髪がバサバサになっている。ずっと外で練習してるのか。
前にボードを教えてもらう約束をしていたのを思い出した。具体的な話はしていないから、忘れてくれてるといい。二人きりにはなりたくない。

ところで、
女がいなきゃいないで、野郎だらけの飲み会はそれなりに盛り上がるものだ。
くり返すけれど、これは一応僕がメインのはずだ。なのに、終始下ネタばかりなのがなんともいえない。
酒も大量に入ってきた深夜になって、皆徐々に脱落してその場でゾンビのように眠り始めた。
リビングの電気を消すと、僕とキースも二階にあるそれぞれの部屋に戻って寝ることにした。
ベッドに入っても何となく目が冴えて眠れない。結局ダグと会話らしき会話はなかった。普通に話せばそれで、万事解決なのに。
487ミルク 3/4:2009/09/24(木) 00:18:03 ID:qIs5Ix5e0
考え過ぎて眠れないので、ミルクでも飲もうと一階のキッチンに向かった。
皆が皆適当に眠くなった場所で寝ているせいで、リビングはさながら殺人現場のようだった。
一応静かに死体の隙間を縫ってキッチンにたどり着くと、皆を起こさないように灯りはつけず、テーブルに置かれたでかいローソクに火をつけた。
どうせ熟睡しているだろうけど。
冷蔵庫からミルクを取り出してコップについでいると、背後に人の気配がした。
振り返るとダグが立っている。危うくコップを落としそうになった。
「脅かした? ごめん、物音がしたもんだから」
起きてたんだろうか? 下からのロウソクの火のせいで、背後の大きくなった影も手伝って、よけいに驚いた。
ミルクをね、とよく分からないことを呟きながら、僕はキッチンを出ようとした。
突然で、何を話していいか分からなかったし、前と同じ状況に思えた。
けれど僕よりでかいダグの体が、入り口を塞ぐように立っている。何か言いたげに。
「俺のこと、避けてるよね」
やっぱりきた! その言葉に反射的に満面の笑みを向ける。なんのこと? 的な、すっとぼけたいいかげんな返しだと我ながら思う。
とはいえ、彼の声は絞り出したような寂しい響きを帯びていて、心臓が締め付けられた気がした。
「いやならいやって言ってくれればいい。そしたらもう、ここ来ないからさ。でも無視は勘弁してくれないか」
「しっ、声でかいよ。起きるから、皆」
僕は出るのを諦めて、テーブルに腰掛けた。二人とも少し気持ちが高揚してる気がする。落ち着かないと。
「いやだなんて思ってないよ。好きに決まってるだろ」
言ったそばから失言した気がしてきた。
「いやつまり、ダグは話しやすいし。僕らいい友達だよこれからも」
その後も延々、友達という言葉を繰り返しながら、一人で喋りまくった気がする。
彼はそれを黙って聞いていた。何も言わないからよけいにぼそぼそと喋り続けてしまう。沈黙がいやだった。
488ミルク 4/4:2009/09/24(木) 00:18:34 ID:qIs5Ix5e0
「もういいよ」
途中で遮られた。僕は言葉を失って下を向いた。
呆れられたような気がして、不安になる。嫌いではないってことを、分かってくれてたらいいんだけど。
彼はテーブルに近づくと、僕を覗きこんだ。額がくっつく。長い睫毛が目元をくすぐる。目を逸らそうとしても無駄だった。
「ダグ、あんた酔ってる」
「酔ってない。あの時もね」
どういう意味、と言おうをして口を開いた途端に塞がれた。
逃げようと思えば逃げられた。あの時と違って彼は僕を押さえつけてるわけじゃないんだから。でも体が動かなかった。
それどころか、自分でも気づかないうちに彼の舌を求めて、開いた唇を押しつけてる。
唇が離れた途端、体の力が抜けて後ろに倒れそうになる僕を、ダグは慌てて抱きしめて止めた。
「後ろにコップあるから」
そういえばミルクをついだのに一口も飲んでいなかったっけ。
大丈夫だから離してくれ、と言っても彼は僕を抱きしめたまま。
「離したら、部屋に戻っちまうんだろ」
そのまま当分会えないのはいやだ、とダグは呟いた。
「なら、一緒に部屋に来れば」
僕は目をつぶって言った。恥ずかしくて顔を見ることができなかったから。彼はすぐに僕の腕を掴むと二階へ向かっていった。

階段を上っている途中、思い出したように彼が耳元で囁く。
「前にスケボー教えてくれって言ってたよな。こっち戻ってきたら、今度は俺んち来なよ」
やっぱり覚えてたか。今となってはもうどうでもいい。気持ちに素直に、なるようになれ、だ。

そういえば、ミルク置きっぱなしだった。明日キースに怒られるな、きっと。
489ミルク 4/4:2009/09/24(木) 00:19:17 ID:qIs5Ix5e0
ドモー

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
490風と木の名無しさん:2009/09/24(木) 00:56:00 ID:bn9Vkf/XO
>>489
こういう関係好きだなー
主人公が帰ってきた第3弾ひそかに待ってます
491風と木の名無しさん:2009/09/24(木) 02:13:20 ID:iYEVhV9R0
>>19
ものすごく亀レスで申し訳ないが一言だけ言いたかったとです!
取っ九、続き(ですよね?)が読めるなんて、本当に嬉しい!!
最後、抱きつかれても、されるがままな殴らないア二ィに禿モエた!!金髪頑張れ金髪!
書いて下さって、本当にありがとうございました!!!ア二イ好きだー!
492風と木の名無しさん:2009/09/24(木) 02:34:53 ID:TKabEzJq0
>>467
>>478
うおー!
無印P/S/版を発売時買って、八割方やったところで止まってて、
その後放置してたんですが、すごい萌えました!
なんかあったのかと検索して、あんなに続編が出てたと知れました。
いろんな意味でありがとう!
493オリジ兄弟もの1/4:2009/09/24(木) 05:24:45 ID:SK7U4adK0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | オリジナルです
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  ※一応801だけど男女描写があるから気をつけて
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ちょっとグロっぽい描写もあるので注意が必要
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )  微妙にホラーぽくもあるかも知れないです
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
494風と木の名無しさん:2009/09/24(木) 05:27:44 ID:SK7U4adK0
彼は、AVをデッキに押し込んだ。
まもなく、黒い画面が変わり、何の脈絡もなく、男女が交わる姿が映し出される。
どこかの、本来は名もあるであろう女は顔を写されない、黒い腕をした男に貫かれ、嬌声を上げている。
短すぎるスカートは捲れ上がり、女の部分が露出され、大げさなモザイクがそれを隠している。
彼は、一つ溜息をついた。
この女は、どうしてこんな事をしているのだろうか。
仮に、金がなんらかの理由で無かったからだとしても、よりによってこんな体力も精神力も使ってしまうような仕事につく事もなかろう。
あるいは、この女が実はセックス依存症だとか、色情魔だとかの類だとしても、難儀なものに産まれついてしまったものだとも、彼は思いながらそのビデオを観た。
男に貫かれる毎に、どこか獣じみた声をあげる女は、どこか物憂げにさえ見えた。
素顔であれば、それなりに可愛らしいであろう女が、快楽と、ほんの僅かの苦痛に翻弄され、艶っぽく、そして奇妙に歪んでいると、そう思うと彼は誰ととなく頭を下げたくなる。
そんな姿を見せてもらっているのに、何一つ反応しないどころか、僕は君を詮索しているのだ。
そして、それは何もかも妄想であり、ただの空虚で下世話な曲解なのだ。君は何のために、そんな仕事を。
彼の瞳が、じっと女の動きを捉える。太ももをつかまれ、大きく開かされる女。
抵抗もせず、甘ったるい声を漏らし続け、連続する声が彼女の絶頂を伝える。
男のものが、女の顔に近づけられ、所有を示すように白濁が散った。
そこで、画面が暗転する。あっという間のものだったが、これで全て充分なのだ。
中には二時間や三時間といくものもあるが、おおよそは三十分ほどのものが多い。
いわゆる裏ビデオと呼ばれた類で、誰かがダビングし、それを更にダビングする。当然画質も音質も悪くなるのだが、彼らはそんな事は殆ど関係ないようだった。
抜ける、それが重要な事だった。
しかし、彼は冷めたような、諦めたような、そんな瞳でそれらのビデオを見ていた。
彼はもうじき二十二歳になるが、深夜のアルバイト、それも三時間ほどのものしかしていない。両親は何も言わなかった。いや、言う気力さえなかったのだ。
一月前、彼の弟が死んだ。自殺だった。
遺書があり、それで警察は自殺であると断定したし、彼自身も自殺だろうと予測していた。
495オリジ兄弟もの2/4:2009/09/24(木) 05:35:33 ID:SK7U4adK0
彼の弟は、神経質すぎる所があるものの、本質的には臆病者だった。
いつもいつも神経を張り詰め、次第に自分をコントロール出来なくなってしまったのだ。それが、彼の弟を死に追いやった。
彼は、弟が死ぬ数日前、ある場所に兄さんへの贈り物があると教えていた。昔、兄さんとよく行った隣の駅、あそこの近くの山の栗の木の下。
どうか見つけて欲しい。そう言って、独特の笑い方をした。擬音で言うならば、にたり、というものが一番近い。いやらしいのに、どこか機嫌を窺っている笑い方。
弟の遺言通り、彼はその山の中腹にある、太く大きな、栗の木の下に青と黒のまだらの岩が置いてあった。
即座にこれだろうと判断出来た。手で土を掘った。何か道具で掘るのは、弟に申し訳ないと感じていた。
出てきたのが、大量のAVだった。きっちりとビニール袋を何重にもし、口はガムテープで閉められているものが、大きな缶に詰まっていた。
弟の遺品だとは解ってはいても、流石にこれには彼も驚いた。そして、一つ疑問に思った。これを託す理由だ。
自殺して、家宅捜索などをされた時に恥ずかしいのは嫌だったのだろうか。
ビデオテープにはラベルが張ってあった。それは、どれもこれも、名前と番号のみだった。黒いテープに、白いラベル。
黒いマジックで書かれた女性の名と番号。何かの暗示にしても出来すぎている。
結局、彼は全て持ち帰り、ゆっくりと年代物のビデオデッキにそれを入れた。
彼の周りには、黒いビデオテープが積まれている。都会のビル街のように寸分の狂いもなく、綺麗に積み上げられている。
何も解らなくなる。この女は、この男は、どうしてこんな風になっているんだ。それは腐臭にも似たみずみずしい果実の香りだった。
優しい女神のようなものにも見える、それなのに、しているのは肉体を持つ人間で、女で、そしてセックスをしまくる。
それが彼女らであり、あるいは彼らなのだ。作られた、願われた喘ぎ声。
496オリジ兄弟もの3/4:2009/09/24(木) 05:35:54 ID:SK7U4adK0
最後のテープも、何の脈絡もなく始まり、男が果てて欲望を撒き散らすまででぶつりと切れた。
彼はそれを煙草を吸いながら観て、白い煙を吐いた。何を伝えたかったのか。彼にはそれが理解出来ていた。
彼女らが、一人一人、弟だった。同一人物ではない。物憂げな瞳。演技を続ける姿。張り詰めているくせに、諦めているくせに、何かは得てしまっているその身体。
そして、少し幼さを残した顔。何より、ただその時だけは男のものになっている、姿。彼は乾いた声で呟いた。
すまなかった。お前の骨も、体液も、恐怖も愛情も、哀れみも、憎しみも、隠していたものを全て受け取ろう。
それでも、お前はここに在るじゃないか。ここに残るお前が、必ず俺が死ぬ時まで消えはしない。
彼が立ち上がる。明るすぎる照明に照らされた瞳が、うつろに光り輝いた。薄く開いた唇は、小さく震えた。
497オリジ兄弟もの4/4:2009/09/24(木) 05:37:04 ID:SK7U4adK0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 色々とgdgdになってすみません
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
名前欄失敗してしまったので、NG指定はIDでお願いします
正直すまんかった('A`)
498風と木の名無しさん:2009/09/25(金) 01:45:37 ID:PbOt2ZCeO
>>484
続きキテター!!密かにお待ちしておりました!
うっかり大胆な大学生かわええ(*´∀`*)
予定より早めに実家から戻ってきたら、スケーターに沢山教わればいいよ(*´д`*)

素敵なお話ありがとう!
499風と木の名無しさん:2009/09/26(土) 08:24:31 ID:DPMXK7aXO
>>413
まさかの迅×轟!
轟/竜トラウマになってたけど、もう愛い奴にしか見えない…!
姐さん、エン/ジョ/イ、ハン/ターラ/イフ!
500半ナマ 難局シェフ"聖家族":2009/09/26(土) 14:29:57 ID:hf+/iK+V0
辛抱堪らなくなって書いてしまった。
映画 難局シェフの話です。半ナマ注意。
まったく801じゃないですが、投下させてください。
一寸だけ医者x料理人風味もあり。おっさん可愛いよおっさん。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
501半ナマ 難局シェフ"聖家族"1/4:2009/09/26(土) 14:32:00 ID:hf+/iK+V0
遠距離恋愛のよくある顛末のご他聞に洩れず、新やんが彼女にふられた。
さもありなん、此処は日本までの距離14,000km。
彼女が淋しい思いをしているからとて、直ぐに会いに帰れる距離ではない。
しかも、帰国まで一年半。若い男女には耐えられる物ではないだろう。
此処と違い都会には誘惑も多いのだ。
それにしても…

「こっちも仕事な訳だから、も〜少しその娘も我慢してくれないもんかね〜?
彼だって、こんな最果てで我慢してがんばってるんだしね〜?」
「だ、だいぢょぉぉぉぉ!!!」
今までビールと日本酒の瓶や缶の山に埋もれ、泣き濡れていた新やんが、
隣で飲んでいた隊長の朴訥とした呟きを耳にし、
盛大に鼻水やら涙やらを吹き出しながら、隊長の腹にタックルをかました。
眼鏡のずれたぐだぐだの顔で隊長を見上げ、鼻を啜る。
「おでのだびがだべだっだんでじょうでぇ」(訳:俺の何が駄目だったんでしょうね)
「まぁ、此処、遠いから。」「其れしか無いな。」
一斉にまわりで飲んでた隊員から声が上がった。
「…それ言ったら終わりでしょうがぁ、アンタ達。」
再び彼女の名前を呼びながら、おんおんと泣き声をあげる新やんの頭を
ぽんぽんと撫でつつ、隊長が肴の胡麻豆腐をつまむ。
「おで、ぎっぼんにがえりだいでずぅぅ」(訳:俺、日本に帰りたいです。)
隊長に抱きついたまま、新やんが呟くと、今までピーナッツの殻を剥くのに全神経を使っていた、主任が「わかるわ〜その気持ち。」と叫んだ。
「我慢しなさい。も〜男の子でしょ!卵焼き食べなさい。元気出しなさい。」
隊長が卵焼きを箸でつまみ、ぐずる新やんの口に押し込んだ。
502半ナマ 難局シェフ"聖家族"2/4:2009/09/26(土) 14:32:44 ID:hf+/iK+V0
今、此処、難局の最果てドーム藤基地では
誰が言ったわけでもなく、『失恋記念、新やんを慰める会』が催されている。
切っ掛けはこの一言。

「二士村く〜ん、なんか新やんの好きそうな物作ったげて。」

夕飯の準備をしている時、ふらりと厨房にやって来たドクターが
飄々とした笑顔で話しかけて来た。この人は何時も楽しそうだ。
しかし。…何故、半纏の下が下着のみなのだろう。
「はい、…あの、」「なに?」
「なんで、服。来てないんですか?」「ああ、これ?」
ドクターはニカッと笑うと「トライアスロン」と言い手を振って出て行く。
氷点下54度の屋外に。
自転車に股がり暗闇の銀世界に軽快に走り出す背中に
「お夕飯までには帰って来てねぇぇぇ」と声をかけると手を振り答えた。
相変わらず不思議な人だ。恐らく生きて帰ってくだろうが。…医者だし。

此処で料/理/人をしていて大体隊員の好みは把握している。
彼は案外というか予想どおりと言うか、子供っぽい味が好みらしい。
ガーリック醤油で下味を付けた鶏の立田揚げやら、
カレー粉でほんのりスパイシーな味付けにしたマカロニサラダやらを
用意していると、厨房の扉が勢い良く開いた。思わず菜箸を落とす。
其処には全身霜と氷で真っ白になった半纏一枚の下着男が立っていた。
しかもやはり笑顔だ。
「二士村くん。ただいま。」「…おかえりなさい。」
「お腹へったよ。二士村君。皆呼んで来るね。」「…お願いします。」
そして今に至る。
503半ナマ 難局シェフ"聖家族"3/4:2009/09/26(土) 14:33:43 ID:hf+/iK+V0
「そんなアホ女なんかコッチから願い下げだって捨てちまえ。みっともない。」
おんおん泣きまくる、新やんを苦々しく見遣りながら、雪/氷/学者の元さん
しかめっ面でがビールを呷る。

「びっどもだいっで、びどい!ぼとざん!」(訳:みっとも無いって、酷い!元さん!)
「そんな、また元さん厳しい事言ってぇ。お父さん厳しいな〜」
「そうだぞ!お父さん!息子が恋に破れ泣いてるんだぞ」
唐揚げをご飯の上に山盛りにして貪り喰いながら、凡君が言うと
比良さんが頷き、オニオンリングを刺したフォークをかざしながら同調した。
それを眺めドクターがビールを呷りつつへらへら笑った。
「まあまあ、お父さんは不器用ながら息子の心配をしている訳よ。」
「ツンデレか。」主任がぼそりと呟く。
「え?ツンデレって、何?」隊長が首を傾げ尋ねると、
「そこのお父さんみたいな人の事ですよ〜」凡君が唐揚げと格闘しながら答える。
「だから!誰がお父さんだ!そんなでかい子供を持った覚えは…
うわ!抱きつくな!鼻水が付くだろ!これでまず小汚い顔を拭け!」
「ぼどざぁぁぁぁぁん!!!」
一連の騒動を目をしょぼしょぼさせながら隊長が眺め、唐揚げを差し出した。
「ほら、泣いてないで、唐揚げ食べて元気出しなさい。お母さんの手作りだ。」
「…あの、俺も、お母さんではないですよ。」
「お母さん!ご飯おかわり!メガ盛りで!」
「あ、はい。」…しまった普通に答えてしまった。
504半ナマ 難局シェフ"聖家族"4/4:2009/09/26(土) 14:36:25 ID:hf+/iK+V0
凡君に差し出された茶碗に、米を山盛りに盛って食堂に戻ると、
新やんを中心に盛大に酒盛りが行なわれていた。
「ちくしょぉぉ!女なんて!女なんて!馬鹿やろぉぉぉ!」
「飲め!そして喰え!お前には此の難局の氷がお似合いだ!」
その騒ぎの中、新やんのコップにビールを注いでやりながら、
元さんが咳払いしつつ顰め面のまま言う。
「あぁ…、なんだ。お前は、あれだ。早く一人前の学者になって、
その女を見返してやれ。そしてお前をふった事を後悔させてやれ。」
「お、お父さん…ううう。」「だから!お父さんじゃないって言ってるだろ!」茶碗を凡君に手渡し、席に座るとにぎやかな食卓を見渡した。
こんな騒がしくて、楽しい食卓は久々だ。妻や子供と囲む食卓も勿論楽しい、それとはまた違う、なんとも愉快な、温かい風景。
疑似家族。とでも言うのだろうか。
「いいよねぇ、此処。俺は好きだねぇ。二士村君は?」
隣に座ったドクターがピーナッツを口に放り込み、ビールを啜りながら呟いた。「はぁ、俺も好きですよ。」
「お、気が合うねぇ、俺なんてずっと此処にいたいぐらいだよねぇ。」
「いや、ずっとは…どうでしょうかね。」
「男ばっかりで毎日気楽なもんだし、愉快な仲間もいるし、
上手い飯も喰えるし。此処はいいよねぇ〜」
冷えてしまった唐揚げを頬張り、ドクターがにこにこ笑いながら振り向く。「俺ねぇ、二士村君の作る飯好きだよ。」「あ、どうも。」
「嫁にもらいたいぐらい。」「は?」
へべれけな新やんの頭を、顔を顰めダラし無いとかぶつぶつ文句を言いながらも、
慰める様にぽんぽんと優しく叩く元さんにドクターが話しかける。
「お父さん、お母さんを俺の嫁にちょうだいよ。幸せするから。」
「はぁ!?何だか解らんがお前にはやらん!」
「キビシー、でもあきらめないよ〜ん」
げらげら楽しげに笑うドクターの横で温くなってしまったビールを
眉をハの字にして啜る。
明日も明後日もまだまだ続く、愉快で温かくて、むさ苦しい疑似家族の生活。たしかに少しでも長く続くといいなぁとぼんやり願ってしまった。
あ、今、尻をさわられた。前言撤回。
嫁にされる前にお父さんやっぱり早く帰りたいです。美幸、由香。
505半ナマ 難局シェフ"聖家族":2009/09/26(土) 14:37:04 ID:hf+/iK+V0

みんなでキャッキャしてればいいよ!
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
506新ゲッ夕ーロボ 1/5:2009/09/27(日) 00:25:41 ID:WwR8lI0W0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  新ゲッ夕ーロボで清明×リョウマ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  完全捏造なバッドED系なので注意
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 復活後だけど清明の体は人型で
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
507新ゲッ夕ーロボ 2/5:2009/09/27(日) 00:26:22 ID:WwR8lI0W0
「復讐の為だ。その為に甦ったのだよ!」
前に戦った時よりもギラついた目が暗闇で光る。それだけで人が殺せそうな程に。
完全に油断していた。倒したはずの清明が俺の前に現れるなんて。リョウマは己の失態を思い出し唇を噛み締めた。
突然現れた清明は前にも見た不思議な力でリョウマをあっという間に拘束し、異なる場所に一瞬で飛んだ。
実験中の事故で見た光景を忘れられず、研究所を去ったリョウマはその時運悪く一人。気分もいつもより落ち込んでおり、敵の存在を感知できなかったのは清明にとって幸運だった。
「さて、まずはどうするか……」
細い指がリョウマの頬に触れる。頼光の方が太いかもしれないと勇ましい女武者の手を思い出せば、この清明の指はそれより細い気がした。手だけで顔面の皮を剥いだハヤトの事を思うと、こうして顔に触れられるだけでも落ち着かない。
「触るんじゃねえ! この野郎!」
身動きはできないが、だからといって黙ってもいられない。目だけでこいつを殺せたらいいのにと少し考えてみて、逆に清明の方がそれをできそうだと気付いてリョウマは目を逸らした。
「貴様の事は分かっているのだぞ、ナガレリョウマ。ゲッ夕ーから逃げてきたのだろう?」
「な……何で、お前がんな事知って……」
そうやって動揺すれば清明に付け入る隙を与える事になるのだと、リョウマは気付かない。
「もう貴様も知っているはずだ。ゲッ夕ーこそ鬼を呼ぶ元凶だと! あれがあるからこそ多くの人間が死んだのだ!」
清明の言葉に応じるようにリョウマの中で事件中に見た光景が甦る。
地獄というものがあるのなら、それはきっとああいう所なんだろう。血と暴力に満ちた世界。思い出したくもない世界。
出てくるなとリョウマはきつく目を閉じるが、逃さないとばかりに地獄は追いかけてくる。まるで呪いのように。
「最初は知らなかったなどと言うでないぞ。あれが普通でないぐらい貴様にも分かったはずだ。貴様が一番ゲッ夕ーを上手く扱える……ゲッ夕ーに選ばれし者なのだからな!」
深く考えているわけじゃない。ただ我武者羅に、目の前の敵を倒したいというだけだった。
だが回数を重ねれば重ねるほどゲッ夕ーが思い通りに動き強くなっていく事をリョウマも感じていた。
508新ゲッ夕ーロボ 3/5:2009/09/27(日) 00:27:07 ID:WwR8lI0W0
どうしてと、いつも苛立ちながらこちらを見ていたハヤト。それの原因が嫉妬なのだとリョウマは今になって理解した。
違う、俺は選ばれた者なんかじゃねえ!
ここにいないハヤトに聞かせるかのように大声で否定しようとして声が出ない、その異常な事態に気付きリョウマは清明を見た。
思ったよりも近くにあった顔に動けたならば後退りをしていたかもしれないほど、リョウマは既に場の空気に呑まれていた。
「そうだ……苦しめ、もっと苦しめ。お前は私を殺したのだ。その報いは受けてもらわねばな」


言葉も動きも奪われ一方的に蹂躙される、この上ない屈辱。
異物の侵入を体は当然拒み、リョウマを引き裂くような痛みが支配する。
だが清明は綺麗に降り積もった雪原を無邪気に走り回る子どものように、笑いながら容赦なく力を込めて汚す。
人形のように何もさせずに一方的に弄るなら痛覚も奪えばいいものを、清明は当然それを許さない。
見られたくはないのに、涙が溢れてくるのをリョウマには止められなかった。
自分は女じゃない。犯されたからといって負けたわけじゃない。
リョウマは己の心を奮い立たせようとしたが、その度に清明は邪魔するように優しく体を突く。
全て読まれているような今、本当に自分は負けていないのか、もうリョウマには分からなかった。
出会ったばかりの自分に後を託して死んだ達人、清明を倒す為に命を懸けた頼光、そして共に戦った仲間の姿が浮かんでは消える。
『怖くなったのか? ゲッ夕ーに乗るのが』
研究所を出る時のハヤトの言葉。

違う、俺は……そんな事が怖くなったんじゃない。俺は、お前等が死ぬのが怖かった。
俺だけならいい。俺だけなら、どんな死に方だろうがこれまでを思ったら仕方ねえって笑っていられた。こんな生き方してたから早死にするんだって、自分の死体見下ろして大笑いしてから地獄に行けたはずなんだ。
俺だけなら、きっと。

何故今そんな事を思い出すのかも分からず、みんなに悪いと思いながらも感じ、リョウマは清明の腹に白濁をぶっかけた。同時に清明もそのまま中に放つ。
結局、どこへ行っても自分は地獄に辿り着くのか。
そうだと答えるかのように清明が笑う。
509新ゲッ夕ーロボ 4/5:2009/09/27(日) 00:27:48 ID:WwR8lI0W0
あれだけの事をしたのに、清明は汗の一つも掻いていなかった。
「この程度では気が晴れぬな。ふむ……」
自分の吐く荒い息と心臓の音が煩いくらいなのに、リョウマの耳は清明の声を逃さない。
だが体は初めての行為に疲れきっており、眠りを欲していた。

「お前の仲間を皆殺しにしてやろう」

そんな中だったので、何を言われたのかリョウマにはすぐに理解できなかった。
にやりと笑う清明を見て、言葉の意味を理解する。同時に湧いてくる血が沸騰しそうなほどの怒り。止めろと言おうとして、まだ声が出ないのだとリョウマは気付いた。代わりに睨もうとしたが、もう意識が続かない。駄目だと思うのに瞼が下りてくる。
「ゆっくりと眠るがいい。その間に奴等を殺し、全て破壊してくれよう。貴様は私だけ見ていればよい。他のものを見るなど許さぬ」


「私の復讐は、そこから始まるのだ」

510新ゲッ夕ーロボ 5/5:2009/09/27(日) 00:28:35 ID:WwR8lI0W0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 子安声の敵なんて妄想しないわけには
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
511風と木の名無しさん:2009/09/27(日) 00:33:42 ID:Gt85Fen7O
>>505
萌えたよ!
お父さん不器用だよお父さん
みんなかわいくてにまにましました。ありがとう
512風と木の名無しさん:2009/09/27(日) 01:28:21 ID:w1DaQkdx0
>>500
その映画見てないけど、なんか萌えました!
GJ!!
513風と木の名無しさん:2009/09/27(日) 02:04:34 ID:r8UeTaob0
>>505
うわあああ、ここで料理人一家が見れるとは!
GJです! ありがとうございます!
おかーさん割烹着のシーン、大好きなんだ!(><)
514召喚夜3ヤファスカ1/5:2009/09/27(日) 09:08:39 ID:ROpWFR4fO
初投下なので見づらいところがあるかもしれませんが、よろしくお願いします!
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
515召喚夜3ヤファスカ2/5:2009/09/27(日) 09:10:52 ID:ROpWFR4fO
「あーん」
スカーレルがつまみにと持ってきたプレッツェルをつまんでヤッファの口元にちょん、と触れさせた。
「あ?」
二人とも既にいくつかの酒瓶を床に転がして、かなり酔いがまわっているようだった。
「あーんして」
「……」
ヤッファはスカーレルの悪ふざけのまま、素直に口を大きく開ける。ふと酒精の匂いがふたりをかすめたがもはや気がつかないほどに酩酊している。
どちらか、いや両者とも、いつ潰れてもおかしくはない。
「ふふ、かーわいい」
へらへら笑って突き出していた指先を少し焦らすような仕種でひっこめたり、戻したりする。
「食わせろよ」
「んー」
くるくるとよく動く手首がじれったくてヤッファは大きな手で派手な袖口を掴んだ。
「食わせろって」
そのまま、人差し指と親指ごと小さな菓子を口に含む。
少し強張った指先から、舐めとるようにプレッツェルを奪ってしまった。
「あ……」
スカーレルはぽかんと薄く色褪せた口紅の色を開いて、いましがた自分の指がすいこまれていった口を見つめていた。
ぱ、と袖口を離され、唇と指先も別れたのにまだ大きくて熱い手のひらが、まだ残っている。
その締め付ける熱にスカーレルは心臓まで捕まえられてしまう。
516召喚夜3ヤファスカ3/5:2009/09/27(日) 09:13:12 ID:ROpWFR4fO
「ねぇ、ヤッファ」
まるで蛇のような動きで白い指が縞模様の毛皮を這った。
「アタシと」
−寝て?
尖った耳元に紫の口紅が少し色を移す。
遠くで木々が、ざわりと鳴いた。
そのくせ、ゆっくりと、風は凪いでいく。
「悪ふざけが過ぎるぜ」
低い、押し殺したような声に反して、ヤッファが取り落としたぐいのみが床に転がり氷と共に高い音を立てた。
それを合図にしたようにどこかではぐれ達の咆哮が聞こえた。
「アタシじゃ、抱く気になんかならないかしら?」
悪ふざけなんかじゃない、と鋭い視線が言外に伝えてくるのに耐えられず、ヤッファはそっと顔を背けた。
スカーレルは薄い唇で軽薄そうな笑みを作る。
瞳だけは、ヤッファの次の言葉を探すように留められている。
「俺は……」
酒のせいか、ヤッファの喉はひりついていつものように、さっと、答えが告げられない。
「嫌じゃ……ねぇ」
風が帰って来た。木を一本残さず折らんばかりに揺する。
「じゃ、決まりね」
まるで散歩の行き先を決める程度の気軽さでスカーレルは襟元を寛げた。
「どうして、こんな事」
ヤッファが少しだけ時をとめようとした。
「いやねぇ、そんな野暮な口利かないでよ」
「……面倒な野郎だな」
「アナタほどじゃないわ」
軽薄さを崩さないままにスカーレルは胡座をかいたヤッファの上へ向かい合わせで跨がる。顔が近づいて、互いの匂いが強くなる。
そっと唇を合わせて、ふたりははじめて夜明けまで一緒にいた。
517召喚夜3ヤファスカ4/5:2009/09/27(日) 09:15:49 ID:ROpWFR4fO
「シマシマさぁーん!」
マルルゥの可愛らしい大声が酒瓶が転がったままの庵に響き、本格的に朝が来たことを告げた。
いつもならうるせぇなぁといいながら怠けものの虎がゆっくり起き上がるのだが、この日は少しだけ違っていた。
「……」
ヤッファはぐちゃぐちゃになった床の上で座り込んでいたのだ。
眠ってはいないものの、マルルゥがいくら外へ連れ出そうとしても上の空で動こうとしない。
「シマシマさぁん、どうしちゃったんですかぁー」
途方にくれたマルルゥは涙目でスバルやパナシェに助けを求めるため、ふわふわと飛んでいくのだった。
それを見届けてから、ヤッファはおもむろに立ち上がる。
「……面倒くせぇな」


「スカーレル、お客さんだよー!」
ソノラが、甲板後部へと続く階段の途中からその上に佇むスカーレルに声を掛けた。
「ありがと、今行くわ」
しかし階段を降りようとしたスカーレルの足はすぐに止まることになる。
ソノラが案内してきたのは、昨夜を共にした亜人の飲み友達だったのだ。
「そっちで話す」
言葉少なにユクレス村の護人は階段を上がってくる。
スカーレルは少し気圧されて後ろ向きに甲板へと戻った。
518召喚夜3ヤファスカ5/5:2009/09/27(日) 09:17:43 ID:ROpWFR4fO
「話って?」
海風はやたらと優しく虎と蛇を撫でていく。
「昨日のことだ」
「あら、なぁに?」
まるで何事もなかったかのようにスカーレルが首を傾げる。
「はっきりさせときてぇんだよ。酔いにのっかってうやむやなんて−」
ぴ、とヤッファの口先へスカーレルが人差し指を立てた。
「やぁねぇ、ヤッファの旦那。そんなの野暮って、昨日言ったじゃないの♪」
へらへら笑って、スカーレルは一歩距離を置いた。
「……違ぇよ」
その一歩を、追い掛けるようにヤッファはつめた。
「好きだから抱いた、ってことを言いたかったんだ」
手前は、とヤッファが答えを求めた途端スカーレルの表情が見たこともないほど弱々しいものにかわる。
そして、戻された距離をさっとまた離した。
「野暮ね」
519召喚夜3ヤファスカ:2009/09/27(日) 09:18:22 ID:ROpWFR4fO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
520風と木の名無しさん:2009/09/27(日) 11:06:17 ID:NzDNJa63O
>>505
よかったっす!かぁさんかわゆい
最後の朝食のシーン、好きだったな〜
521カーテン 0/5:2009/09/27(日) 13:49:50 ID:Cq9riCl+0
・週間じゃんぷ連載/保健室のしにがみ
・新連載の為、捏造を多分に含んだ 藤×明日葉です。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
522カーテン 1/5:2009/09/27(日) 13:51:28 ID:Cq9riCl+0
今日もぼくはあの場所へ行く。


この扉の前に立つと否応なしにドキドキする。
だから、開ける前には、深呼吸。

すうはあ すうはあ すうはあ。

「…よし」
覚悟を決めて引き戸に手をかける。
「し」つれいしますという台詞は瞬間飲み込まれ、代わりに悲鳴が飛び出した。
「ぎゃあ!」

僕が開けるはずだった扉は、それより一瞬早く動いて、隙間からは死神がのぞいていた。
「せ、先生…」
いや、正しくは、死神みたいな保健室の先生。
この形相にも幾分慣れたとはいえ、やっぱり突然顔を合わせれば驚く。
僕らの保健室の先生は、存在自体が恐怖の塊みたいなもんだ。
「おやアシタバくん、いらっしゃい」
声をかけられ、まだ少し怯えながら、ようやく答えた。
「ど、どうも。あの、」
「お昼ごはんを食べにきたのかな?藤くんならいつもの場所にいるよ」
ここでの昼食は、もはや日課になりつつある。…藤くんのせいで。
「あ、ありがとうございます。えっと、先生はどちらへ?」
「校長先生に呼ばれてね。少し席を外すから、留守番を頼んでもいいかな?」
「大丈夫です」なにしろここにくる生徒は限られているから。
よろしくね、とおそらくは笑顔で、去っていった背中を少しだけ見送って、
僕はどこかひんやりしたその空間に足を踏み入れた。
523カーテン 2/5:2009/09/27(日) 13:53:52 ID:Cq9riCl+0
「アシタバ?」
藤くんの声がした。あからさまに起き抜けだ。
「もうおひるだよ。藤くん、教室にお弁当おいてったでしょう」
「んー」
重箱のような彼の弁当箱を、いつものテーブルに置きながら、カーテン越しに話をする。
「先生、少し席外すって。お茶どうする?」
「あー…飲む」
僕に入れろってことだ。藤くんはまだカーテンの向こう側。
勝手知ったるとばかりに、僕はお茶の支度を始める。
「お前だけ?」
「うん。今日は美作くんがね、鏑木さん誘って2人でランチだって」
「ふうん」
「邪魔すんなよって、すっごい張り切ってたけど。懲りないよね、だって鏑木さんは…」
「あー」

常より反応が薄い気がした。
「…藤くん?お茶入ったけど、まだ寝るの?」
そもそも今日、彼は2時間目からここにいる。
漫画だお菓子だと持ち込んでいるけど大抵寝ていて、よくそうも眠れるものだと思う。
授業を受けていないわけじゃない。でもこんな風な時は結構ある。
そういう時に、プリントだのなんだの、届けにくるのは決まって僕だ。

保健室に来るのは、抵抗ないって言ったら嘘になる。

ただ、藤くんと居るのは…嫌じゃない。
524カーテン 3/5:2009/09/27(日) 13:55:24 ID:Cq9riCl+0
藤くんはかっこよくて、でもそこには無頓着で無自覚で、不器用だけど優しくて、案外、不真面目。
こうして一緒にいることが増えて、わかったことがたくさんある。

「アシタバ」
「はいっ?」
不意に名前を呼ばれてぎくりとする。自然、身構える。

「カーテン開けてよ」
思いがけない注文で、即座に返事ができなかった。でも、理由はそれだけじゃなくて。
「カーテン。開けて」
藤くんの声が、藤くんじゃないみたいだったんだ。いや、確かに藤くんの声なのに、なんか…

「えっ…と…」
何だろう、心がざわざわする。体中の血が沸騰したみたいに熱くなる。
なぜだか、このカーテンを開けてはいけない気がした。
「…開けてくんないの?」
その声に答えた僕の声は、
「…まだ駄目…」
やっぱり自分の声じゃないみたいだった。
525カーテン 4/5:2009/09/27(日) 13:57:37 ID:Cq9riCl+0
その直後、空気を入れ換えるくらいの勢いでカーテンが開いた。
おあずけかぁなんて寝ぼけたような藤くんの声は、まるきり普段通りだ。
夢でも見たみたいだと思いながら、湯呑みを差し出す。
「はい、お茶」
「おう」
まだドキドキはおさまらなかったけど、できるだけ平静を装う。
先生や美作くんたちがいないのを、こんなに不安に思う時もあるんだな、なんてぼんやり考えながらお茶に口をつけたら、舌先を少し火傷した。

「わ、もうこんな時間!?」
ふと時計を見れば、昼休みはあと5分ほどしかない。
もう、藤くんが変なこと言うから…!
必死で昼食をかき込んでいると、ふと隣から視線を感じた。
二人きりだというのに、いつもの癖でつい隣に座った僕らの距離は、今やたったの3センチ。
「ふ、藤くん!近…」
「今日はこれくらいで勘弁してやる」
僕のほっぺたから、不自然な音をたてて離れたそれは、紛れもなく藤くんの唇。

「…!…!!」
二の句を告げられずにいる僕に、藤くんは言った。
「アシタバ、今後ともよろしく」
「そ」れってどういう意味ですかという言葉は予鈴にかき消されて、藤くんは再びカーテンの向こう側。
526カーテン 5/5:2009/09/27(日) 13:59:09 ID:Cq9riCl+0
「ちょっ、藤くん!5時間目もサボるの!?」
「もー今日はムリ」
「ええー!?」
藤くんの切り替えの早さについていけなくて、食べ終えてないお弁当を前にあたふたしていると、カーテンの間から藤くんが顔を出して言った。
「お前もサボれば?」
そんな度胸があったら、今頃もっと君と仲良しです!
「ていうか何すんのさー!!」
「アシタバ、顔真っ赤だぞ。」
「誰のせいだと思ってんの!?」
「お前って何気鈍いよな。…とりあえずさ、次音楽だし、今から行っても間に合わないって」
「いいい移動教室ぅうう!」
「だからさ、」

その微笑みは。
「一緒に寝てようぜ?」
まさしく病魔とやらなのではと。
「アシタバ、」
薄っぺらな隔たりを越えて伸ばされた手は、今度こそ僕を捕まえる。

そしてカーテンは閉じられた。
527カーテン:2009/09/27(日) 14:01:22 ID:Cq9riCl+0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

設定が出揃うまで待てなかった…。
お目汚し失礼。
528風と木の名無しさん:2009/09/27(日) 17:40:31 ID:2J2UK9UD0
現在471KB
そろそろ次スレ立てた方がいいかと
529風と木の名無しさん:2009/09/27(日) 21:02:14 ID:tUpvXeqS0
>>510
またも新……!燃え滾りました
子安声に加えあんなに多勢に無勢の量の鬼たちなんて、本当に妄想しないわけには!
どんな死に方だろうが〜のくだりが凄く良かったです
530風と木の名無しさん:2009/09/27(日) 23:19:54 ID:ne65E+180
>>528
480kb超えるまで大丈夫でしょ
20話以上になるような大長編なんて早々来ないよ
531風と木の名無しさん:2009/09/29(火) 00:05:27 ID:tjhut9CT0
関西ローカル「よーい○ン!」、青空無罪(現・青空敗訴)出演の回を視聴した折の偶作。
誰が読みたがるのか知りませんが、懐かしのコンビ、青空有罪・無罪で有罪受です。
著しく劣情を刺激する描写はあまり含みませんので、ビビらないで下さい。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
532エフェクティブ・ラバー・マネジメント 1/4:2009/09/29(火) 00:06:19 ID:tjhut9CT0
 「その時、橋下さんとロケに?」
 「ええそうなんです。『ホルモン焼きのホルモンっていうのは、実はれっきとした日本
語なんです。関西弁で“放(ほ)るもん”つまり、捨てる部分という意味なんですね』と、
結構普通のコメントしてましたよ」

 「あの場で他にどういうコメントを期待したんだよ」
 TVの画面に向かって、昔、二人で取材に行った時の懐かしいエピソードを話している
「相方」に華麗なツッコミを入れる。ご存じ、有能な法律家にして、今を時めく現・大阪
府知事、青空有罪である。
 お互い超多忙な中、どうにか時間を調整してやっと実現することができた数ヶ月ぶりの
逢瀬の翌朝。上半身裸のまま、副交感神経全開でベッドに横たわり、先日録画しておいた
関西ローカルの番組を鑑賞している所だ。
 「『能や狂言が好きな人は変質者だ』的な」
 台所でフレンチトーストとベーコンエッグを作っていた、同じく有能な法律家、青空無
罪は、エプロン姿のまま、出来上がった朝食をこちらに運んで来る。衣服はちゃんと着け
た状態でエプロンをしているので、読者諸姉は無駄な期待をなさらないように。
 有罪は頭を抱える。
 「ヒール時代の失言は忘れてくれよ。ただでさえツンツン突つかれどおしなんだから。
ああいう過激さが売りもののトーク番組では、多少の役割分担はするものだろ?」
 「どこが失言なんだい?全く同意見だけど」
 無罪は椅子に掛けて、優雅な所作でオレンジペコを淹れ始めた。
 「本性現しましたねーゲシロさん。なんかほんと、あなたってズルイよ、色々と」
 「何がズルイのさ?」
 聞き捨てならないなという風に、ベッドの側まで歩いて行って、腰に手を当ててみせる。
 それには答えず、寝っ転がったまま、両腕をいっぱいに広げて抱擁を乞うおん年四十の
オッサン、青空有罪であった。
 「なあ、英輝ぃ〜」
 鼻にかかった声で呼びかけられ、溜め息をつく。
533エフェクティブ・ラバー・マネジメント 2/4:2009/09/29(火) 00:07:28 ID:tjhut9CT0
 「エッチなら夕べ、腰が抜けるほどしたのにまだ足りないの?冗談じゃない、ツンツン
突つかれたくらいで参るような玉かよ」
 「ぼくはいつも、精いっぱい虚勢を張ってるんだよ。知事になってからは、前みたいに
ビジュアル的な戦術が取れないから余計にね。ほんとは傷つきやすい、繊細なハートの持
ち主なんだ。長いつきあいなんだからわかるだろ」
 有罪はしゃあしゃあと言いながら、一瞬の隙を衝いて無罪をベッドに引きこみ、組み敷
いた。手際よくカッターシャツを脱がせ、スキーで鍛えられた若々しい肢体を露にする。
 暫く、有罪の戯れるようなキスと愛撫に身を任せていた無罪は、俄に体勢を逆転させ、
有罪を抱き竦めた。耳朶を甘噛みしながら囁く。
 「ぼくがみんなにバラしたらどうする?九百万府民を束ねる敏腕知事閣下が、ベッドで
八代英輝に抱かれる時にはこんなに甘えん坊だって」

 「あーあ、トーストもベーコンエッグも紅茶も冷めちゃったねー。折角美味しくできた
のに」
 有罪に腕枕をしてやりながら、無罪が残念そうにテーブルの上を見遣る。
 「またあっためたらいいじゃないか。続きー」
 諦め悪く腕を巻きつけてくる年下の恋人の顔にぱふっとクッションを押しつけて、無罪
はベッドから滑り降りた。その背中に、有罪が不服そうな声をかける。
 「昔に比べて、こうして一緒にいられる時間も激減したっていうのに、つれないな」
 無罪は微かな胸の痛みを覚えながらも、敢て冷静な口調で答えた。
 「嫌なら政治家なんかにならず、ずっと芸能界で馴れあってればよかったろ。そうじゃ
なくても、お互い妻子持ちで、おまけに有名人なんだし、普通の恋人どうしのようにいく
わけないってことはわかってて始めた関係じゃないか」
 「そりゃそうだよ。でも・・・・」
 曾て、「茶髪の風雲児」と呼ばれた男は、ベッドの上に身を起こした。
 「・・・・なんか、淋しいねん。孤独やねん。うちに帰ったらカミさんや子供はおるけど、
でも・・・・時々思うねん。トップになんかなるんやなかったなって」
 いつもの負けん気の強さはどこへやら、歯切れ悪くそう言って、サングラスをしていた
頃には全くわからなかった、意外とつぶらな瞳で無罪を見つめる。
534エフェクティブ・ラバー・マネジメント 3/4:2009/09/29(火) 00:08:21 ID:tjhut9CT0
 その視線にぶつかると、何となく冷淡に突き放せないものを感じ、無罪は仕方なくベッ
ドへ引き返した。両手で頬を挟み、顔を覗きこむ。
 「徹、君のことを嫌う人も、親の仇のように貶す人も掃いて捨てるほどいる。時には身
の危険すら感じることもあるだろう。ぼくも正直、君のやり方、考え方が全て正しいのか
どうかはわからない。
 でも、大阪府民は君を選んだ。大阪は、いや、変わり目を迎えたこの国は、今、確かに
君を必要としているんだ。泣き言言っててどうする。もっと強くならなくちゃ」
 有罪は神妙な表情で無罪の言葉に聞き入っていたが、やがて、少年のような顔でニチャッ
と笑ってみせた。
 「わかった。英輝がもう一回してくれたら、また明日からも元気で働けるわ、俺」
 「えっ。そんな・・・・」
 無罪はしまったと思う。どうやら、お人好しの自分は、海千山千な有罪の謀略にまんま
とハマってしまったようだと気づくまで、それほど時間はかからない。
 「これがあんたの言う、『エフェクティブ・タイム・マネジメント』ってやつやろ?八
代センセ」
 有罪が勝利の微笑みを浮かべて、小首を傾げてみせる。言っていることは無茶苦茶なの
だが、自信たっぷりに言うので何となく納得させられてしまう。そんなものである。これ
にマスメディアの力が加われば、愚民ども、じゃない、一般大衆を操作するなど、赤子の
手を捻るように造作もないことだ。著作物にわかりにくい英語のタイトルを付けて失敗す
る、どこかのアメリカナイズ(笑)された国際弁護士とはわけが違うのだ。気をつけなけ
ればならない。
 無罪はふと考えこむ。
 「そうだなあ。機会がある時には、みっちり衆道を勉強しておくのもいいかも知れない。
お互い、どこぞの美形で高学歴な小悪魔がフェロモン全開で迫ってきても、うっかり惑わ
されて手を出したりしないように」
 「何の話?」
 「え?ぼく何か言ったかい?」
535エフェクティブ・ラバー・マネジメント 4/4:2009/09/29(火) 00:09:07 ID:tjhut9CT0
 「まだ聞いてないような気がするな」
 無罪の腕の中で、漸く満足した有罪がぽつりと言う。
 「何が?」
 「いつ、俺に惚れた?」
 「そりゃあ・・・・」
 無罪は小さく笑って、有罪の黒髪を指で梳く。
 「大阪にいた頃、『茶髪の弁護士が来るらしい』と、なぜか警備員が呼びに来た、あの
日からだよ。『そいつ、暴れるんじゃないか』とみんなが恐れ戦いた――、若かった君が、
利かん気そうな顔して、ノーネクタイでふてぶてしくぼくの前に突っ立ってた、あの時」
 「・・・・なんか殺伐としてるな。もっとロマンティックな話はないんかいな」
 「ぼくならともかく、君にそういう言葉はあまり似合わないと思うけど」
 「やっぱりズルイわ。いっつも俺にばっかり汚れ役押しつけるんやから」
 ぼやく有罪の頭を、有無を言わさず引き寄せた。今度はどんな発言が飛び出すやらと、
全府民、いや全国民がはらはらしながら見守るあの唇に、深く柔らかく、口づける。
 「色々と問題はあっても、君は熱い人だってわかってるよ。そうみんなの前でも言っ
たろ?」
 五本の指を絡めて繋いだ手を握りしめ、じっと顔を見つめてそう言った。
 有罪は頬を染め、恥ずかしそうに笑った。
 「もう、熱いだなんて、しかもそんなこと公共の電波使って言うなんて、やらしいなあ
八代さん」
 「そういう意味じゃないったら!」

ども、ありがとうございましたー。
536風と木の名無しさん:2009/09/29(火) 00:09:53 ID:tjhut9CT0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

タイトルは、lover(恋人)とrubber(コンドryを引っ掛けています。日本語って便利ですね。

それにしても、意外と紆余曲折な人生を送っていたんだなあ。>無罪先生
何ごとも外から見る限りではわからないものです。
537風と木の名無しさん:2009/09/29(火) 02:31:11 ID:PckJ8u2g0
究明病棟シリーズ4より、振動×元医局長。半ナマ注意。
エロなし生温いキスまで。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
538振動×元医局長 1/4:2009/09/29(火) 02:37:05 ID:PckJ8u2g0
医者は神様じゃない。
時には間違った判断もするし、自分の生んだ欲求に屈折してしまうこともある。
常に完璧でいようとするなと、そう教えてくれたのはアンタだったろ。

「足の調子はどうだ。」

面として聞かされた診療に沢井は一瞬コーヒーを口に運ぶ手を止めたが、
直ぐに薄く微笑んだ。

「お陰様で順調です。」

そう言ってコーヒーを啜る彼の視線は相変わらず振動を向いていない。
そんな沢井を何となく気がかりに感じながらもまるで変わらないその仕草と風貌に、
進藤は無意識にあの日の彼を重ねていた。


――彼、沢井悦二が海/南/医大を去ったあの日から一年。

察しの良い後輩の計らいで医局長室は昼休みの間だけ出入り禁止になっていた。
テレビや雑誌などのメディアを通じて目にすることはあっても、
こうして顔を合わせるのは実に退院の日以来。

「思い出話に花を咲かせたつもりはないぞ。」
「…分かっています。」
「後遺症があったらどうする。」
「緊急とは言えゴッドハンドの異名を持つ貴方に診てもらったんだ。
…傷は愚か、後遺症なんて残せない。」

そう言って憂いがちに笑う沢井の顔付きは一年前と変わらぬようでやはり少し変わっていた。
539振動×元医局長 2/4:2009/09/29(火) 02:40:46 ID:PckJ8u2g0
理屈っぽいのは相変らずだったが、敵意の解かれた表情は以前より穏やかで生き生きしている。

「…」

勿体無い、と進藤は感じた。
けれどそう思うのとは裏腹に、彼の誤解されやすい人柄にどこか感謝している。
不埒な自分に戸惑った。

「…完全に癒えるには惜しい傷だ。」

主治医としてのプライドなんてものは端からない。
しかし治るものを治らないでほしいと願うのは、自分のセオリーを酷く傷付けた。
やはりどうかしている。
そういえばそう感じたのもあの日以来だった。

「まったく…医者失格ですね」

静かな声に顔を上げると、疑心暗鬼に見舞われた先に待っていたのは困ったような笑顔を浮かべた沢井だった。

「…お互いに。」

そう力無く言葉を繋いだ唇はまっすぐ対峙した頭へと伸び、やがてコーヒーの残り香を帯びて優しく潰れた。
触れるだけの、臆病なキス。
隔てたテーブルに右手をつき、腰を浮かせて必死に高く口付ける姿にはそれまでの威厳なんてまるで皆無だった。

「んっ…!」

でも逆にそんな姿に魅せられてしまった。
強がるアンタを見る度に、俺はアンタを看たくなる。


あの時と同じように。
540振動×元医局長 3/4:2009/09/29(火) 02:44:25 ID:PckJ8u2g0
上品に締められたネクタイを抜き取り、一度離れた唇を今度はこちらから引き寄せてやる。
唐突に力強く身を引かれ僅かに体勢を崩した沢井は、
咄嗟にもう片方の手で身を支え弾かれたように瞳を開けた。

「振動せッ…んっ…」

息継ぎの間の訴えも虚しく半ば立ち上がった状態で頭を手前へ引かれ、開口につけこんだ舌が強欲に侵入する。
徐々に激しさを増す口付けの連続にやがて沢井は安定無く足をフラつかせた。
振動が胸ぐらを解放すると拍子に沢井の足はガクリと膝をつき、テーブルにすがって肩を上下させた。

「これでも治ったって言えるのか?」

振動はその場に立ち上がり、地べたに腰をつけた沢井を叱りつけるように見下ろした。

「…すみません」
「何故診せに来なかった。アンタほどの技量があれば自分でも治せたはずだ。」
「傷は…完治しています。ただ後遺症として…長く立って居られない時がある。特に今のような場合は…」

上がった息を整えながら淡々と語る沢井は口調こそ落ち着いていたが、いつになく焦りを見せていた。
新鮮な反応に少し動揺する。

「振動先生、」
「説明してくれ。」

内心毒づいてきたのを感じながら、振動は必死に真面目な顔を装った。
仕切り直したかのような声に辛辣そうな面持ちのまま沢井の顔が上がる。

「どういうつもりでそう言ったのか、こうしたのか。ちゃんと説明してくれないか。」
「…先にものを言ったのは貴方です。」
「先にことを仕掛けたのはそっちだろ。」
541振動×元医局長 4/4:2009/09/29(火) 02:47:03 ID:PckJ8u2g0
沢井は咄嗟の反論に応じようとしたが、適する言葉が見当たらなかったのか大人しく開きかけた口を噤んだ。
こんな攻防戦の先に果たして未来なんてあるのだろうか。
ばつの悪そうに乱れた襟元を整えながら沢井は地べたに折れた膝を立て直し再びゆっくりとソファーへ腰かけた。

「つまり…抽象的に言いますと、」
「具体的にお願いします。」
「振動先生…」
「俺はアンタの主治医だ。」

勘弁してくれと言わんばかりの沢井の表情を振動は抉るように見つめた。
何時なんどきも要領に優れたこの優秀な患者を逃さぬように。

「…ですから、」

意地の悪い振動の問診に沢井は暫く悶々と表情を濁していたが、
やがて諦めを決め込んで溜め息とともに静かに肩を落とした。

「残す傷は何も一つでなくとも良いと、そう言ってるんです。」

照れるわけでも不貞腐れるわけでもなく、沢井は見上げた先へただはっきりとそう告げた。
そんな姿が何よりも彼らしくていじらしい。

「医療改革の諮問委員にしては随分軽率な発言だな。」

振動は返答を聞くなり満足気に微笑むと、そのまま脱力した沢井の身を跨ぎ彼のソファーへと膝を埋めた。

「…医者にとっては致命的な後遺症だ。」

どちらとも分からない声が、切なくも幸せを噛み締めるように言った。
何度葛藤してもジレンマを生む医師としての誇りと愛情。
別物なのだと分かっていても心苦しいほどに、俺たちはいつまでも究明馬鹿だった。
542風と木の名無しさん:2009/09/29(火) 02:50:08 ID:PckJ8u2g0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

至らぬ文才で申し訳ない…
ドラマ板の姐さん方にはお先に謝っておきます。
543風と木の名無しさん:2009/09/29(火) 04:24:12 ID:oW5f5YzHO
>>542 GJ…いや GOD JOB!
この数日間の欲求不満が 一気に解消されたよ・・・ありがとう 神!

さ猥先生の口調といい 振動先生の態度といい、本気で萌え殺されるかと思った‥‥!!!
544DSS 麻×我ウェ:2009/09/29(火) 12:23:26 ID:7i1wvNfF0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  飛行計画のゲーム「DSS」の青の騎士団の二人だよ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  いろいろ間違ってたらごめんね
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
545DSS 麻×我ウェ(1/3):2009/09/29(火) 12:24:39 ID:7i1wvNfF0
束の間の休息。
ゆっくりとした時が流れ、ヴァリアント達はそれぞれの夜を楽しんでいた。
青の騎士団の大人達も、自室で昔話に花を咲かせていた。
はずだったのだが。
気がつくとガウェイソはベッドの上でア一サ一に追い詰められていた。

「ちょっ…何するんですか!?」
「大声出すなよ」
「だって…! ムグッ」
ア一サ一に手で口を塞がれ、ガウェイソは苦しい体勢で目を白黒させた。
「隣に聞こえるぞ? あいつは耳がいいからな…ま、飛んで助けに来て欲しいってなら話は別だがな」
ガウェイソは手を叩き落として、ニヤリと笑うア一サ一を睨みつける。
「…意地悪な人ですね…」
「俺が意地悪をしたことがあったか?」
「ずっとしてきたじゃないですか…あの時から、サラと、私に」
なのによくもそんな。ガウェイソは恨み言を飲み込み、拗ねたように俯いた。
ア一サ一は、特別親しい者にしか見せない優しい笑みを浮かべて、ガウェイソの髪を撫でる。
「だから今こうやって償いをしているんだろ?」
「…誠意が見られないんですが」
「それは心外だな…」
唇が重なる瞬間、ガウェイソの体が微かに震えた。
あの頃に戻った気がした。
546DSS 麻×我ウェ(2/3):2009/09/29(火) 12:25:59 ID:7i1wvNfF0
「あ、そ、んな…ダメです…っ!」
「ダメなわけないだろう?」
こんなにも濡らして、とア一サ一はガウェイソの雄々しい象徴を口に含み、喉の奥で味わった。
そのまま袋をやわやわと揉んでやると、面白いぐらいに反応がある。
「やめ、てください…本当に…もう…」
「…イキそう、って?」
ア一サ一は口を離して、充血したくびれを舐めた。ガウェイソの鋭く息を呑む声が聞こえ、内股に緊張が走る。
しかしそれっきり、ア一サ一は腿を撫で擦るだけで、それ以上刺激を与えようとはしなかった。
我慢の限界に来たガウェイソが自分で擦ろうとするが、止められてしまう。
「も、勘弁してください…!」
「何を言うか。誠心誠意可愛がってやってるんだが」
「アーサ、ァ…ッ!」
ガウェイソが泣きそうな声で訴える。
次期団長を譲ってやってもいい程に成長したが、こういうところは変わらない。
ア一サ一は小さな溜息のような微笑みを漏らした。
「ったく、しょうがねえな…」
「ぅあ…あぁッ!」
半ば無造作に扱き立てられ、ガウェイソは塞き止められていた欲望を吐き出した。
547DSS 麻×我ウェ(3/3):2009/09/29(火) 12:26:47 ID:7i1wvNfF0
ア一サ一はまだ息の整わないガウェイソの脚を開かせる。
「ア一サ一…ちょっと、待ってくださ…」
「いいや、待てないな。お前だってそうだろ? ほらここ」
両足を大きく割り開いた中心を探り当てられ、ガウェイソの腰が思わず跳ねた。
「昔より感じやすくなってるみたいだな」
「そ…んなこと…!」
「サラと一緒じゃ、禁欲生活が長かっただろうからな。これからは俺の前で思い切りぶちまけてもいいんだぞ?」
「…そういう下品な言い方はやめてください」
言い合ってる間にも愛撫は続けられる。
意地を張っていたガウェイソの体が次第に解け、呼吸が乱れて艶めいてくる。
「さあ、そろそろいいか?」
ア一サ一が着衣を脱いでいくのを惚けた様子で見ていたガウェイソは、現れた物を目にして頬を引き攣らせた。
「な、なんかおかしくないですか…?」
「何がだ」
「あ…その、それ…」
ガウェイソのおそるおそる向けた視線の先、ア一サ一のモノは50手前とは思えないほど猛っていた。
20も若いガウェイソと比べても明らかに不自然だ。
奇妙に光る瞳の色も気にかかる。
ガウェイソの恐怖も入り混じった疑念の表情に、ア一サ一は恥ずかしそうに頬を掻いた。
「白状するとな…俺もまあ年だし…若いお前に合わせようと『精力増強剤』ってやつを調合してもらったんだが…」
「はあ!?」
「ちょっと効きすぎちまってるみたいでな。効き目は一晩中続くそうだ」
「そ、んな…」
ただでさえ(以前のア一サ一なら)耐久戦は免れないというのに。ガウェイソは青くなった。
「ま、そういうわけで…覚悟してくれよな」
「ア一サ一!!!」
ガウェイソの悲痛な叫びは誰にも届くことはなかった。
548DSS 麻×我ウェ:2009/09/29(火) 12:28:17 ID:7i1wvNfF0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 周回プレイ行ってきます
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
549風と木の名無しさん:2009/09/29(火) 14:10:46 ID:I7C23Z0g0
490KB目前なのでスレ立ててきますね
550風と木の名無しさん:2009/09/29(火) 14:17:00 ID:I7C23Z0g0
規制中だった…orz
修正済みの>>1だけ置いておくのでどなたかお願いします

モララーのビデオ棚in801板52
551前スレ修正済み:2009/09/29(火) 14:19:01 ID:I7C23Z0g0
   ___ ___  ___
  (_  _)(___)(___)      / ̄ ̄ヽ
  (_  _)(__  l (__  | ( ̄ ̄ ̄) | lフ ハ  }
     |__)    ノ_,ノ__ ノ_,ノ  ̄ ̄ ̄ ヽ_ノ,⊥∠、_
         l⌒LOO (  ★★) _l⌒L ┌'^┐l ロ | ロ |
   ∧_∧| __)( ̄ ̄ ̄ )(_,   _)フ 「 | ロ | ロ |
  ( ・∀・)、__)  ̄フ 厂  (_,ィ |  </LトJ_几l_几! in 801板
                  ̄       ̄
        ◎ Morara's Movie Shelf. ◎

モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
なにしろモララーのコレクションなので何でもありに決まっています。

   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |[]_||  |      | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ]_||
   |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   すごいのが入ったんだけど‥‥みる?
   |[][][]._\______   ____________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |[]_|| / |/    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.||  |[]_||
    |[][][][][][][]//||  | ̄∧_∧     |[][][][][][][][].||  |  ̄
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ( ・∀・ ) _ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.||  |
   |[][][][][][][][]_|| / (    つ|8l|.|[][][][]_[][][]_.|| /
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    | | |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    (__)_)
前スレ
モララーのビデオ棚in801板51
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1250428669/

ローカルルールの説明、およびテンプレは>>2-9のあたり

保管サイト(携帯可/お絵描き掲示板・うpろだ有)
http://morara.kazeki.net/
552風と木の名無しさん:2009/09/29(火) 16:20:33 ID:B/lx9nwm0
では行ってみます
553風と木の名無しさん:2009/09/29(火) 16:26:07 ID:B/lx9nwm0
テンプレ貼り中だけど新スレどぞー

モララーのビデオ棚in801板52
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1254208900/
554風と木の名無しさん:2009/09/29(火) 16:56:53 ID:I7C23Z0g0
>>553
乙です
ありがとう〜
555風と木の名無しさん:2009/09/29(火) 23:09:58 ID:5N2IPxnY0
>>553
おつです!ありがとうございますー
こっちは埋めかな?
556風と木の名無しさん:2009/09/30(水) 03:05:42 ID:cog9XOjq0
>>457
遅レスだけど今読んだ
ドラマの空気そのままで、映像が浮かんだよ
ありがとう、最高!
557風と木の名無しさん:2009/09/30(水) 23:38:39 ID:Nij2g12q0
>>531
遅レスですが、この二人前々から気になってたんで
姐さんの作品、かなり萌えました!ありがとう!

また機会があればぜひ書いてください!
558風と木の名無しさん:2009/10/01(木) 21:19:06 ID:QcHU8yVc0
まだ容量あるか?
559風と木の名無しさん:2009/10/01(木) 21:22:31 ID:WvTF9eSR0
もうヤバいんじゃね
新スレ立ってるしそっち行った方が無難かと
560風と木の名無しさん:2009/10/01(木) 21:48:20 ID:LvTBxuxC0
493.2KBだよ
3レスものくらいなら平気だと思うけど、
まあここまで来たら作品投下は次スレに移動して
AAかなんかでざーっと埋めちゃってもいいかもね
561風と木の名無しさん:2009/10/01(木) 21:55:13 ID:Xk4hcuUj0
562風と木の名無しさん:2009/10/01(木) 21:59:29 ID:eLEyoaqm0
563風と木の名無しさん:2009/10/02(金) 10:43:15 ID:I5CknsrjO
もう埋めちまうぞ。
564風と木の名無しさん:2009/10/02(金) 10:43:39 ID:I5CknsrjO
埋め
565風と木の名無しさん:2009/10/02(金) 10:44:03 ID:I5CknsrjO
566風と木の名無しさん:2009/10/02(金) 10:48:39 ID:I5CknsrjO
埋め

だけじゃ何なので。

凄く今更になるし、このスレだったか前スレだったかも忘れちゃったんだけど、
某師匠と架空のスタッフさんのお話がとても良かった。
某師匠、動画#4でもお茶目さんな感じだったし、思わずこのお話を思い出してしまった。
また何か思い付いたら投下待ってるよ。
567風と木の名無しさん:2009/10/02(金) 11:03:36 ID:S4y3ijjC0
埋め

だけじゃ何なので。

凄く今更になるし、このスレだったか前スレだったかも忘れちゃったんだけど、
某31と有袋類の話のファンです
またお時間あったら投下待ってます。
568風と木の名無しさん:2009/10/02(金) 11:04:33 ID:S4y3ijjC0

569風と木の名無しさん:2009/10/02(金) 11:06:10 ID:S4y3ijjC0

渟啖攻中佚桴殱翩奧抔Ζヒゅχで∋辷Н竏鴆暉醵韈蠅蠶轆轆觸靂觸靂觸罫孝玉卯計
許怜村沿泊梧翻艤余ゴеスぇクqСゲΒ灯芝徽簾闇躑躪靂觸靂躪靂觸靂靈拶忿祁鳧
浤珍及古波軸躑靠泌РUСpеゎづどひ凵殳員軽黶幗韈蠅躅觸靂觸靂轆轆幎吮切放
狂岱没丱鋒蟹靈茸台дらΡPΤヅ广Ьи行吽呈褄皹孅圜壘躪闢蠅靂轆轆轆酷貝密稔
汲叺本呼搗纒醫澹仔ξ♪N卞Э±кカ什払市良鯲崟厩賺藺闢觸蠶觸轆轆轆躪献矍蒡
劣ぬ丈鳫譖鹽覲投ぎす卞グウ≒Nグ‡力仕仗况戎煢薮鰓醫醒醒躪闢觸轆轆靂閾蟄積
ΝМ宅麈矚輾陲粭叉かギサУ‖≡六ぉか匕お禾功拔寧盧圜蠹蠹靂轆靂觸轆轆圉幅届
ポ巾准腰轎軅罌仙匕ΕЕネΖβやW禾佶未命功形岐販聲鹽觸靂觸靂轆靂觸轆覊閭國
分坏鳫鰊鹽鞴薩恬芒浙悛衣今Еき柴頽憲卿敝種載耨麌輌羅靂觸靂觸轆觸靂觸團軈園
孔埓鬚輌羅壘蠧懶篩乕郡褊珎込偐飃霾肅荼琵贓鹽鱧蟹國蠡蠅靂觸靂轆靂轆靂蠅蝿輜
彷烽蹉屬醜躅韈轢躁嫖繭属狙尸綣墨鬟卓腰鱧蠡闔繩窯蜈圈蠹觸闢觸轆轆靂觸蠶覯魍
釿母鄙團翻靂鞭聢渝鬥堽鯰狩今嚆腰培化估緋斐腎仲双宥賺躅靂蠅靂觸轆觸靂觸囀闇
啝廖鰾釀韈觸椢炊正舮懷申谷Ξ駑胄凹并珱筏脊礼打許熾魑闢觸靂觸轆轆靂觸靂釀鑼
綱鮭匯轜鞴靂瀾冂ぁΒ⇔从мж魚秧中ひOエπ匸泱溺躾嬲蠅靂躪靂觸轆轆靂觸轜屬
闕朧蝠譁軅觸蟯日爿Åн夲だポ峡泯沿∃ピヱКΦ向旆嫖釀蠶觸闢蠅蠶觸靂觸靂醢曄
闇臟韆韈闡輾躍矜工В九止Σめ捗濛夸びれн儿芥凋偶匯韈觸靂蠅蠶觸闢觸蠶躪讎懼
蹶鱧鹽鱧躑軅壘涙й幺め伐今土庇簓忌き父尓共液癌鰭蟶輾靂觸蠶躪靂觸靂觸靂蠅鹽
靈鹽闡躑鱧靂觸楜矜文礼祉Ц似蟋濔虱ж斤庁究病嚼輌驢蠹觸靂躪靂蠅靂觸靂蠅蠶鞴
鹽鱧躑鞴闢蠅靂蜀耗佑矛卆臥棚韈鱧墟允於咬刺鍾聲靄醴躅靂觸靂蠅蠶觸靂轆靂躪蠹
釀輾躅軅蠅蠶觸躡繪吏毛分示蹇屬駟漲熱尿姙旁曉踝蠖圜躅觸靂觸蠶觸靂觸轆觸闢闡
轜鱧醒蠅鹽壘闢鱧霆銃疑游芹絋菖鑠豐鷭哽粘晧錬欝顳繭躪靂觸靂觸靂轆轆轆轆蠅鞴
轢鹽躅韈闡輾蠅靂畴級拷倉滂黛籍鯖襯誼赦祐硫岫弸鑒鱧闢觸靂觸靂觸靂轆轆觸蠶躪
攤釀鹽壘韈觸靂轆鹽戰有冷辺詒詭樋靼樟孤叟駒鵑擱靈躅蠅靂觸靂觸轆轆轆轆靂觸鞴
翩轜蠱蠹蠅靂觸轆轆繭狒迚茫抉酊絏熹蓼暗霆膈蠢轢躑醒靂觸靂觸靂轆轆轆轆觸靂軅
蝠閻醍鱧蠶觸靂觸靂轆醴奥代Вざ市啾箍崕頼醋藺鹽鞴蠶轆靂轆靂觸靂轆轆轆靂觸壘
570風と木の名無しさん:2009/10/02(金) 11:06:51 ID:S4y3ijjC0

法法法法法法法法法法法法麟麟麟麟麟麟麟麟麟麟麟麟麟麟麟法法法法法法法法法法法法
法法法法法法法法法法法麟麟麟麟麟鱗鱗鱗鱗鱗鱗鱗鱗麟麟麟麟麟法法法法法法法法法法
法法法法法法法法法法領麟麟麟鱗瞭緑緑緑緑緑緑緑諒緑領緑麟麟麟法法法法法法法法法
法法法法法法法法麟麟麟麟鱗瞭瞭瞭緑緑諒諒諒諒諒諒諒諒諒諒麟麟麟瞭法法法法法法法
法法法法法法法鱗麟麟麟麟鱗瞭瞭緑緑遼諒諒諒諒諒諒諒諒諒諒諒麟麟麟法法法法法法法
法法法法法法隣麟麟麟麟麟鱗瞭瞭緑緑遼諒諒梁梁防法法法諒諒諒瞭麟麟鱗法法法法法法
法法法法法法麟麟麟麟麟麟鱗瞭瞭緑緑諒諒諒梁梁梁防防法諒諒諒諒麟麟麟法法法法法法
法法法法法法麟麟麟麟麟麟鱗瞭瞭緑緑諒諒梁梁諒諒諒法防諒諒諒諒麟麟麟防法法法法法
法法法法法法麟麟麟麟麟麟鱗麟麟麟麟鱗瞭諒法法梁諒諒隣麟麟諒諒麟麟麟鱗法法法法法
法法法法法法麟麟麟麟麟麟麟麟麟瞭緑緑緑緑諒諒領遼領諒諒遼緑諒瞭麟麟法法法法法法
法法法法法法法麟麟麟麟鱗麟鱗瞭諒諒梁緑緑領諒諒諒領諒法防諒諒諒麟麟法法法法法法
法法法法法法緑麟麟麟麟鱗鱗麟麟麟麟鱗領瞭諒法法緑鱗麟麟麟諒諒諒麟瞭法法法法法法
法法法法法法瞭量麟麟麟瞭緑瞭瞭緑領遼諒緑遼防梁諒緑諒法防瞭諒梁麟緑法法法法法法
法法法法法法瞭瞭鱗遼鱗瞭緑諒諒諒諒遼緑緑緑諒諒防防梁諒諒法防梁防法法法法法法法
法法法法法法遼瞭瞭緑鱗瞭緑諒諒諒梁諒瞭瞭緑諒梁梁諒防梁梁法防防防法法法法法法法
法法法法法法法量瞭瞭鱗鱗緑諒諒諒諒量瞭瞭緑梁防防諒緑防法法防防法法法法法法法法
法法法法法法法瞭隣隣鱗鱗緑緑遼緑緑瞭麟麟麟緑緑緑法諒緑諒防防防諒法法法法法法法
法法法法法法法法法隣鱗鱗瞭緑瞭瞭瞭瞭瞭瞭諒諒諒防防防瞭緑諒梁防諒法法法法法法法
法法法法法法法法法瞭鱗鱗瞭緑緑麟鱗量量瞭瞭緑緑諒諒諒諒瞭諒諒防法法法法法法法法
法法法法法法法法法法麟瞭瞭諒緑瞭麟緑諒防法法法法麟緑諒緑諒諒法法法法法法法法法
法法法法法法法法法法麟鱗麟諒瞭瞭瞭緑瞭緑諒遼緑緑諒諒諒諒諒諒法法法法法法法法法
法法法法法法法法法法麟麟瞭瞭瞭瞭瞭量緑領領諒諒諒諒諒諒諒諒法法法法法法法法法法
法法法法法法法法法法麟麟鱗麟瞭瞭瞭鱗鱗瞭瞭緑遼諒諒諒諒諒諒法法法法法法法法法法
法法法法法法法法料鱗麟麟麟麟麟瞭緑緑諒諒諒梁防梁防諒諒法法法法法法法法法法法法
571風と木の名無しさん

∃儲霾ヲ露繍蠶髏騾臥猶鬱h  ご笵此∴        ∃f謳廱躔騾蔑薺薺體髏蠶蠶蠶蠶蠶蠶
ヨ儲諸隴躇醴蠶歎勺尓俎赴  f蠶蠶蠢レ      ∴f醴蠶鬪扠川ジ⊇氾衒鑵醴蠶蠶蠶蠶蠶
ヨ鐘諸薩讒蠢欟厂  ベ状抃  傭蠶蠶髏厂      .ヨ繍蠶蠶臥べ泣澁価価櫑蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
f罐諸醴蠶蠶歎      マシ‥…ヲ冖        .∴瀦醴蠶襲jJ鶴門門攤蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
加罐讒蠶蠶欟厂        ヘ              ∴f醴醴蠶甑欄鬮°f蠢蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
溷霾醴蠶蠶勸                        ∴ヨ繍醴蠶蠶鬮狡圷し醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
醴蠶蠶蠶蠶髟                        ベ湖醴醴蠶蠶蠶庇⊇⊇體髏髏蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶蠶欟                          f繍蠶蠶蠶蠶蠶曲三三巛憫髏蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶蠶歉                  澁畄_迢艪蠶蠶蠶蠶蠶蠶甜川⊇川川衍捫軆髏髏蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶蠶髟                コ醴蠶奴繍蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶齡辷シジ⊇川介堀醴醴蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶鬮か                .ベ苛ザベ繍蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶醯己に⊇三介f繙醴蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶髏鬮シ                        尽慵蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶自辷三沿滋鐘醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶醴勸                            氾隅髏蠶蠶蠶蠶蠶靦鉱琺雄躍蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶醴訃                      ∴∴∴沿滋溷醴髏蠶髏髏韲譴躇醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶髟              _山辷ムf蠡舐鑓躍醯罎體體體驩讎櫑蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶a            f躍蠶蠶J蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶醯註珀雄醴醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶廴          f醴蠶欟閇憊體醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶靦錐讒醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶欟シ          禰蠶蠶蠢螽螽f醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶躍蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶監シ          ∵ヴ門夢曠髏蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶a                ∴シ∃愬嚶髏蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶診            ベ沿u旦以迢u讒醴髏曠醴蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶髏蠶蠶蠶蠶蠶
蠶蠶蠶甑シ            .げ隅艪蠶蠶蠶蠶蠶蠢J蠶髏蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶蠶