モララーのビデオ棚in801板47

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1風と木の名無しさん
.   ___ ___  ___
  (_  _)(___)(___)      / ̄ ̄ヽ
  (_  _)(__  l (__  | ( ̄ ̄ ̄) | lフ ハ  }
     |__)    ノ_,ノ__ ノ_,ノ  ̄ ̄ ̄ ヽ_ノ,⊥∠、_
         l⌒LOO (  ★★) _l⌒L ┌'^┐l ロ | ロ |
   ∧_∧| __)( ̄ ̄ ̄ )(_,   _)フ 「 | ロ | ロ |
  ( ・∀・)、__)  ̄フ 厂  (_,ィ |  </LトJ_几l_几! in 801板
                  ̄       ̄
        ◎ Morara's Movie Shelf. ◎

モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
なにしろモララーのコレクションなので何でもありに決まっています。

   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |[]_||  |      | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ]_||
   |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   すごいのが入ったんだけど‥‥みる?
   |[][][]._\______   ____________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |[]_|| / |/    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.||  |[]_||
    |[][][][][][][]//||  | ̄∧_∧     |[][][][][][][][].||  |  ̄
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ( ・∀・ ) _ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.||  |
   |[][][][][][][][]_|| / (    つ|8l|.|[][][][]_[][][]_.|| /
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    | | |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    (__)_)
前スレ
モララーのビデオ棚in801板46
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1234768843/

ローカルルールの説明、およびテンプレは>>2-9のあたり

保管サイト(携帯可/お絵描き掲示板・うpろだ有)
http://morara.kazeki.net/
2風と木の名無しさん:2009/03/24(火) 22:08:06 ID:d/zpEjo50
★モララーのビデオ棚in801板ローカルルール★

1.ノンジャンルの自作ネタ発表の場です。
書き込むネタはノンジャンル。SS・小ネタ・AAネタ等801ネタであれば何でもあり。

(1)長時間に及ぶスレ占拠防止のためリアルタイムでの書き込みは控え、
   あらかじめメモ帳等に書いた物をコピペで投下してください。
(2)第三者から見ての投下終了判断のため作品の前後に開始AAと終了AA(>>3-7辺り)を入れて下さい。
(3)作品のナンバリングは「タイトル1/9」〜「タイトル9/9」のように投下数の分数明記を推奨。
   また、複数の書き手による同ジャンルの作品判別のためサブタイトルを付けて頂くと助かります。

※シリーズ物・長編物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
※感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬はほどほどに。
※「公共の場」である事を念頭にお互い譲り合いの精神を忘れずに。

相談・議論等は避難所の掲示板で
http://s.z-z.jp/?morara
3風と木の名無しさん:2009/03/24(火) 22:09:46 ID:d/zpEjo50
2.ネタ以外の書き込みは厳禁!
つまりこのスレの書き込みは全てがネタ。
ストーリー物であろうが一発ネタであろうが
一見退屈な感想レスに見えようが
コピペの練習・煽り・議論レスに見えようが、
それらは全てネタ。
ネタにマジレスはカコワルイぞ。
そしてネタ提供者にはできるだけ感謝しよう。

  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  | ネタの体裁をとっていないラッシュフィルムは
  | いずれ僕が編集して1本のネタにするかもね!
  \                           | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| . |
                               | | [][] PAUSE       | . |
                ∧_∧         | |                  | . |
          ┌┬―( ・∀・ )┐ ピッ      | |                  | . |
          | |,,  (    つ◇       | |                  | . |
          | ||―(_ ┐┐―||        |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   |
          | ||   (__)_), ||       |  °°   ∞   ≡ ≡   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
4風と木の名無しさん:2009/03/24(火) 22:10:35 ID:d/zpEjo50
3.ネタはネタ用テンプレで囲うのがベター。

別に義務ではないけどね。

テンプレ1

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  モララーのビデオを見るモナ‥‥。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  きっと楽しんでもらえるよ。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

5風と木の名無しさん:2009/03/24(火) 22:11:29 ID:d/zpEjo50
テンプレ2
          _________
       |┌───────┐|
       |│l> play.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
   ∧∧
   (  ,,゚) ピッ   ∧_∧   ∧_∧
   /  つ◇   ( ・∀・)ミ  (`   )
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |            ┌‐^──────────────
  └──────│たまにはみんなと一緒に見るよ
                └───────────────

          _________
       |┌───────┐|
       |│ロ stop.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]

                 ピッ ∧_∧
                ◇,,(∀・  ) ヤッパリ ヒトリデコソーリミルヨ
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |                                |
  └────────────────┘
6風と木の名無しさん:2009/03/24(火) 22:12:37 ID:d/zpEjo50
テンプレ3
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < みんなで
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < ワイワイ
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 見るからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < やっぱり
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < この体勢は
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 無理があるからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ
7風と木の名無しさん:2009/03/24(火) 22:13:52 ID:d/zpEjo50
テンプレ4

携帯用区切りAA

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

中略

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

中略

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
8風と木の名無しさん:2009/03/24(火) 22:15:24 ID:d/zpEjo50
 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 僕のコレクションに含まれてるのは、ざっと挙げただけでも
 |
 | ・映画、Vシネマ、OVA、エロビデオとかの一般向けビデオ
 | ・僕が録画した(またはリアルタイムな)TV放送
 | ・裏モノ、盗撮などのおおっぴらに公開できない映像
 | ・個人が撮影した退屈な記録映像、単なるメモ
 | ・紙メディアからスキャニングによって電子化された画像
 | ・煽りや荒らしコピペのサンプル映像
 | ・意味不明、出所不明な映像の切れ端
 \___  _____________________
       |/
     ∧_∧
 _ ( ・∀・ )
 |l8|と     つ◎
  ̄ | | |
    (__)_)
       |\
 / ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 媒体も
 | 8mmフィルム、VCR、LD、ビデオCD、DVD、‥‥などなど
 | 古今東西のあらゆるメディアを網羅してるよ。
 \_________________________
9風と木の名無しさん:2009/03/24(火) 22:16:36 ID:d/zpEjo50
   |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   じゃ、そろそろ楽しもうか。
   |[][][]__\______  _________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |       |/
    |[][][][][][][]//|| |  ∧_∧
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ )
   |[][][][][][][][]_||/(     )
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   | | |
              (__)_)
10風と木の名無しさん:2009/03/24(火) 22:42:31 ID:d/zpEjo50

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  スイプーの哲蓉、社会人同居中設定。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  長文失礼します。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
11スイプー 哲蓉 1/12:2009/03/24(火) 22:45:28 ID:d/zpEjo50
哲雄はいつも俺を助けてくれる。
朝でも夜でも、外でも家の中でも。それはどんな時、どんな場所でも変わらない。
・・・では自分はどうだろうか。
哲雄が与えてくれる優しさや安らぎを、自分は彼に返せているだろうか。
俺は哲雄に、何も――

ガチャ、と玄関のドアが開く音がする。哲雄が帰ってきたのだろう。
ドアの隙間から入り込んでくる雨音と同じぐらい、自分の心音がうるさくて落ち着かない。
リビングで机の上に料理を並べていると、聞き慣れた足音が近づいてきた。
「ただいま」
「お、かえり…」
哲雄の姿を見て、自然と体温が上がる。
朝出ていく時にはしっかりと着込んでいたスーツも、今はよれて複数の皺が刻まれ、その肩には水滴の痕がぽつぽつと残っている。
整髪剤で整えられていた前髪も、外の風に煽られ乱れていた。
「夕食、出来てるから」
「ああ」
「先、風呂入ってきたら?髪濡れたままだと風邪引くし」
「分かった、そうする」
「……」
「どうした?」
「…いや、何でもない」
「そうか」
12スイプー 哲蓉 2/12:2009/03/24(火) 22:50:38 ID:d/zpEjo50
風呂場に向かう濡れた背中を、蓉司はぼんやりと目で追う。
その視線の中、廊下に一歩踏み出したところで、哲雄が急に立ち止まり振り返った。
「出るから。それ、冷えないうちに」
それだけ呟いて、哲雄はリビングを後にした。
蓉司は一瞬何を言われたのか分からなかったが、すぐにまた気遣われたのだと知った。
夕食が冷えないうちに、早めに風呂から上がると言ったのだ。
そんな些細な哲雄の優しさが、今は苦しい。
やはり自分は与えられるだけ与えられて、哲雄に何も返せていない。
その事実をつきつけられる様で、ぎしりと胸が痛んだ。

2人で夕食を済ませ後片付けに入った時、食器を片付けようとする哲雄を見て、蓉司は慌ててその手を掴み、引き留めた。
「い、いいって哲雄。俺がやるから」
「別に…これぐらい手伝う」
「そんな、手伝わなくていいよ。ソファに座ってテレビでも見てろって…仕事、疲れたんじゃないか…?」
「けど、」
「―ッ、…!これは俺の仕事なんだ!手を出さないでくれッ―……、ぁ」
勢い任せに口から放たれた自分の言葉に、顔面蒼白になる。
違う、そんなことが言いたかったんじゃない。
ただ、これ以上助けられてばかりで、何も出来ない自分が嫌だっただけで―。
気まずさから哲雄の顔を直視出来ず、蓉司は視線を逸らして言葉を飲み込んだ。
哲雄はいつもの無表情のまま、わかった、と一言呟いてから食器をテーブルの上に戻し、白いソファまで移動すると、リモコンを手に取りテレビの電源をつけた。
13スイプー 哲蓉 3/12:2009/03/24(火) 22:57:07 ID:d/zpEjo50
こんなはずでは無かった―。
テレビから流れてくる楽しそうな笑い声が、自分を嗤っている様に思えて、蓉司は無性に泣きたくなった。


あんな些細なことで声を荒げてしまうなんて、自分は少し頭を冷やした方がいいのかもしれない。
そう思い、蓉司は夕食の後片付けを済ませてすぐ、浴室へ向かった。
生ぬるい湯につかりながら、うなだれる。
夕食の時―、今日哲雄がどんな仕事をしたのか、どんな出来事があったのか、本当はもっといろんな話をしたかった。
そして、外にいる時とは違う、胸が締め付けられる様な哲雄の優しい笑顔を、見たかった。
けれど、今日は何もかも最悪だった。
本意ではないとは言え、自分の勝手な焦りで哲雄を遠ざけた。
哲雄はあまり表情が変わらないから分かり辛いけれど、あの一言が彼を傷つけたかもしれない。
心には重苦しい後悔だけが募っていく。
湯船に浸かったところで結局は何も変わらなかったことに、蓉司は落胆した。

リビングに戻ると、哲雄の姿が見えず、もう寝室の方に向かったのかと思ったが、よく見ると白いソファの上で仰向けになって眠っていた。
規則正しく息が漏れるその唇に、意識が集中する。
今日の出来事を謝る様に、蓉司は優しく哲雄に口付けた。
14スイプー 哲蓉 4/12:2009/03/24(火) 23:01:59 ID:d/zpEjo50
「ん……ッふ…」
微かに触れるだけのつもりが、心地よさに唇を押しつける形になる。
「んっ、…む……はッ」
生温い体温から離れ、目を開くと、じっとこちらを見つめている哲雄と視線が絡まった。
「なっ!?…いつから…!」
「今さっき……けど、それより」
片手で身体をぐいと引っ張られ、耳元で囁かれる。
「続き、したいんだけど」
爛々と輝く獣の視線が、蓉司の瞳を射抜いた。
逃げられない。逃げる必要もない。
蓉司は小さく頷いてその背に腕を回し、哲雄に身を委ねた。

白いソファの上、蓉司は哲雄の隣に座った。
寝室まで行こうと言う哲雄の誘いを断ったのは、蓉司自身だった。
哲雄がジェルやタオルを、近くにあった机の上に置く。
その動作は、今から自分たちが何をするのかを暗示していて気恥ずかしい。
用意し終わったのか、哲雄が蓉司の隣に腰を下ろす。
相手が口を開くよりも先に、蓉司は彼の名を呼び掛けた。
「哲雄…」
「何だ」
「今日は先に、俺が……」
じっとこちらを見てくる哲雄の視線が、今はひたすらに痛い。
「いつも、してくれるだろ…その、舐めるやつ……今日は俺も、したい・・・」
15スイプー 哲蓉 5/12:2009/03/24(火) 23:04:43 ID:d/zpEjo50
小さな声で、詰まりながらも精一杯伝える。
「蓉司…」
今日聞いた中で一番優しい声が、部屋に響いた。

蓉司は床に膝をつき、ソファに座る哲雄の両足の間に体を割り込ませる。
ジッパーを下ろし、中から哲雄のものを取り出す。
自分から言い出したものの、当然ながらこんなことをするのは初めてだった。
やり方など、わからない。
いつも哲雄がしてくれていた行為を思い出しながら、ゆっくりと手を動かす。
両手で握りこめば、熱い脈動が直に伝わってくる。
自分のものとは明らかに違う大きな熱に、蓉司は小さな恐怖と共に沸き上がる情欲を覚えた。
自分の手淫が上手いかどうかなんて考えたこともなかったが、哲雄のものを扱きながらふと、自分の行為に哲雄は本当に感じてくれるのだろうかと不安になった。
そんな焦りからか、蓉司は手を使うのもそこそこに、哲雄のそれを口に含んだ。
けれど怒張したそれは大きすぎて、全ては含みきれず、舌を這わせるのがやっとだった。
「んぐ…っ…む…」
息苦しさに呻きながらも、必死で口に含んでいると、骨ばった手のひらで優しく頭を撫でられる。
「…ぅ、…ぁ…ふ…ッ」
哲雄のそれから自分の口内に放たれた液体を舌で感じ、蓉司は何かが満たされていくのを感じた。
16スイプー 哲蓉 6/12:2009/03/24(火) 23:06:11 ID:d/zpEjo50
哲雄が感じてくれている―。
そう思うとさっきまで生苦く感じていたそれも、甘酸っぱく舌を痺れさせた。
ちゅく…、と口の中で糸を引かせながら必死に舌を動かしていると、哲雄の手が汗ばんだ額を押して自身から蓉司を引き離した。
「蓉司、もう、いい…」
「ん…」
口から離すと、先ほどより大きく立ち上がったそれが目に入った。
しかし次に視界に飛び込んできたのは、真白い数枚のティッシュペーパーだった。
「蓉司」
そう言って口にティッシュペーパーを押しつけられる。
哲雄はたまに空気の読めないところがある・・・いや、あえて読まないのだろうか。
とにかくそういう部分があるのは知っていた。
そしてどうやら今回も例外ではない様だった。
「もう、いいから」
口の中の液体を吐き出せ、という事らしい。
蓉司はムッとして口の中に溜まっていたものを一気に飲み込んだ。
「うッ、げほっ、ごほっ!…ッは…」
むせ返し肩で息をする蓉司を、哲雄は目を丸くして見ていた。
「哲雄は…いつも、俺の、…した後飲み込むだろ…俺だって、そうしたい…」
「……」
心地好い動作で、哲雄が蓉司の髪をすく。
しかしその瞳には迷いが見える。
17スイプー 哲蓉 7/12:2009/03/24(火) 23:09:33 ID:d/zpEjo50
「何か今日、変だ…お前」
「…」
「何があった」
その言葉に塞ぎこんでいると、哲雄がぐいと蓉司の体を抱き寄せた。
「言いたくないなら別に良い…けど、心配になる」
蓉司の体に哲雄の匂いが染み込んでくる。暖かい温度、心地よい鼓動。
「俺、哲雄に心配かけてばかりだな」
蓉司は自嘲する様に笑いながら、心の底で泣きたいと思った。
「守られてばかり、与えられてばかりで…俺は哲雄に何一つ返せない…それどころか、また心配させて」
「蓉司…」
「もう嫌なんだ、そういうの。俺だってお前に、――」

最後まで言い終わらないうちに、蓉司の体はソファに縫い付けられた。
哲雄に押し倒されたと気付いたのは、きつく口付けられてからだった。
「ん…っ…!?」
哲雄の舌が口内を暴れる。
抑えられない熱を、蓉司に分け与えるように。
「…ッは……てつ、お…?」
「…っあんまり…そういうこと、言うな……」
「な、んで…」
「もたなくなる・・・俺が」
「!?」
18スイプー 哲蓉 8/12:2009/03/24(火) 23:13:27 ID:d/zpEjo50
突然のことに、頭が回らない。
目の前に見える哲雄の瞳が情欲に濡れている。
分かるのは、ただそれだけだった。

服を脱ぎ去った蓉司の、汗ばんだ胸の上を、哲雄の手が舐める様に滑る。
「はっ…ぁ…」
甘い喘ぎがリビングに広がる。
哲雄はそこに生える小さな突起を甘噛みし、もう一方の突起を手で煽る。
「ゃ…ぁっ……!」
下から押し上げる様に、上から押し潰す様に、突起の窪みに沿って這わせる様にと、哲雄は丹念に舌を動かす。
「ぅ、…は、ぁ……んっ、」
ちゅ、と突起の先を吸われ、蓉司の下肢からはじわりと欲望が滲み出す。
「ぁあ…っ、しろぬ、ま…ッ」
「何…?」
「…それ…や、め……ッ…!」
台詞を聞き終わる前に、哲雄がもう一度突起を甘噛みする。
「ぁ、…あぁ…ッ!!」
蓉司は敏感に反応し、一瞬背を反らす。
視線を下ろすと、震える蓉司の腹部に白濁が飛び散っていた。
舐められ、噛まれただけでイってしまった―。
その事実が恥ずかしいのもある。
けれどそれ以上に、また自分が与えられた様な気分になり、蓉司はうつ向いたまま顔をあげられなかった。
19スイプー 哲蓉 9/12:2009/03/24(火) 23:17:22 ID:d/zpEjo50
「もう、いいか?」
「ぅ、ん…」
ぼんやりとした頭に哲雄の声が降ってきて、蓉司は促されるまま足を開いた。
抵抗はしない。ただ、哲雄が欲しい。
「んッ…!」
蓉司の窪みに長い指が1本、差し込まれる。
用意していたジェルを馴染ませながら、ゆるりと円を描く様に動く。
「ぅ…ッ…」
「蓉司…」
「へい、き…」
中を優しく混ぜる哲雄の指に、きゅうと肉壁が絡みつく。
ほぐれていく窄みに、哲雄は2本、3本と指を増やす。
蓉司は感じ入る様に、体内の動きに集中した。

「・・・入れるぞ」
哲雄のものが入ってくる。
「あぁッ…くッ!…は、…」
熱く太いそれに、身体が引き裂かれそうな感覚に陥る。
痛みよりも強烈な、ずくずくと疼く中の熱に耐えられず、思わず自分から腰を揺らした。
「ぅ、…ん…哲、雄…」
覆い被さってくる哲雄の背に腕を回す。蓉司の淫肉がぎゅうと哲雄に絡み付く。
心が、体が哲雄から離れたくないと哭き叫ぶ。
熱い締め付けに耐えきれず、哲雄が小さく息をついた。
20スイプー 哲蓉 10/12:2009/03/24(火) 23:20:08 ID:d/zpEjo50
「蓉司…」
鼓膜に響く熱を帯びた呼び声を聞きながら、この行為は何かに似ていると思った。
そう、例えるなら愛情の様な――

哲雄の雄がある一点に触れると、蓉司の身体が素早く跳ねた。
「あぁッ…!!」
蓉司の反応を見て、哲雄がその一点を責め立てる。
「はッ…!…ゃッ…そこ、…」
快感の波に押し流されそうになり、意識を留めるために哲雄の背に爪を立てる。
哲雄が一瞬痛みに顔をしかめた。内側の熱が外にまで伝染して、びくびくと痙攣する躰が哲雄と同じ体温になる。
最後が近いと感じて、哲雄は蓉司の立ち上がったものを右手で掴み、掌全体を使い優しく扱き上げた。
「んっ…」
ぬるりと伝い落ちる白濁が、哲雄の手を汚す。
哲雄は自分のものを包み込む熟れた肉の締め付けに再び息を漏らし、蓉司のあふれ出る液をさらに練り込む様に、掌の全ての皮膚を使って蓉司自身を追い込んでいった。
「ぅッ…ぁ、哲雄…も、ぅ…」
「ああ…」
哲雄は蓉司の先の割れ目をこする様に撫で、中の一番奥深くを自身で貫いた。
「は…―ぁ、ッ…!!!」
「くッ…」
21スイプー 哲蓉 11/12:2009/03/24(火) 23:25:54 ID:d/zpEjo50
中に放たれた哲雄の性に、蓉司は心が満たされていくのを感じた。
自分の上に覆い被さってくる哲雄の背を強く抱きしめる。
「蓉司」
ビクリと肩がはねる。
「蓉司」
もう一度、さっきよりも甘みを帯びた声をかけられ、蓉司はゆっくりと顔を上げ、哲雄の瞳を見た。
しかしすぐに視線を逸らしてしまう。
「悩んでるのか、まだ」
甘い香りを漂わせながら、哲雄が問う。

守られてばかり、
与えられてばかりで、
俺は哲雄に何一つ返せない―

2人の間に沈黙が続く。
しばらくして蓉司が視線を戻すと、相変わらず哲雄が自分を見下ろしていた。
それに気付いた哲雄が、静かに口を開く。
「お前、気付いてないみたいだから、言うけど…俺がお前に何かを与えてるって言うなら、お前だってそうだ……だから、気にしなくて良い…」
すぐには分からなかった言葉の意味がふと明確になり始め、蓉司は目を見開いた。
まさかと思った。自分が哲雄に何かを与えた記憶は、ない。
哲雄はいつの事を言っているのだろうかと考えていたら、そういうの よくわかんねーけど、と呟くように続けられて、その素っ気なさに蓉司は思わず今の状況も忘れて噴き出してしまった。
何だよ、とバツが悪そうに言う哲雄自身も、どこか楽しそうだった。
22スイプー 哲蓉 12/12:2009/03/24(火) 23:29:43 ID:d/zpEjo50
こんな時でも哲雄は変わらない。
一度安心すると、さっきまでのわだかまりが嘘の様に薄れていった。
そんな現金な自分自身にも、思わず笑いがこぼれる。
「ごめん…俺、なんか1人で勝手に悩んで…」
「別に良い。そうやって悩むお前も……俺は好きだ」
流れる様な台詞で、単刀直入に告白されて、笑顔も引っ込み、耳まで真っ赤になる。
「……そういうの、やめろよ…卑怯だ…」
「何が?」
そう言って、哲雄が蓉司の顔をのぞき込む。
耳まで羞恥の熱を感じながら、蓉司はそらした視線を哲雄に戻す。
その時瞳に映った哲雄の表情に、蓉司ははっとした。
微かに意地の悪さを感じさせる少年の様な、哲雄の笑顔。
いつの間にか増えていた鮮やかな表情に、蓉司は息を飲み、漠然と思った。

もしかしたら自分は本当に―、哲雄に何かを与えているのかもしれない。

その何かが何なのかは、今はまだ分からない。
こんな風に思うのも、ただの自惚れかもしれない。
けれどもしかしたら―、

間近にある哲雄の頬に触れながら、蓉司はそうであって欲しいと、願わずにはいられなかった。
23風と木の名無しさん:2009/03/24(火) 23:32:12 ID:d/zpEjo50
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧  予想以上に時間が・・・
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) 申し訳ない
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
24風と木の名無しさん:2009/03/25(水) 01:29:17 ID:6OFtMuw+0
>>10
まさかこんなところで待ち望んでた蓉司からのフェラが見れるとは…
乙です
25風と木の名無しさん:2009/03/25(水) 01:55:29 ID:82ZBlPRU0
まだ前スレが27KBほど残ってるので、あちらから使いましょう。

モララーのビデオ棚in801板46
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1234768843/
26生 白ぬこ 0/9:2009/03/26(木) 23:52:36 ID:QTZMkQL8O
時事ネタなので急いで。
17です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

酔っ払いに肩を貸して、ずるずつエレベーターに乗る。ああ重い。できるだけ歩く努力はして欲しい。
全く、疲れてるのに飲むからだと思う。時差だってまだあるだろうに、はしゃぎすぎにも程がある。
とは言っても、はしゃぐ理由に水をさせるわけもなく。
そして盛り上がる周りのチイムメイトたちを止められるわけもなく。
世界一おめでとう!お疲れ様!お帰り!
「…ほら、もうすぐですよ」
殆ど素面の自分は、そういう場では損をするタイプだと久利山は思う。現に酔っ払いを押し付けられた。
笑顔マイナスイオンの先輩に、ほな、後はよろしく!と。ゲームでの相方はあんたでしょーに。
でもまあ、仕方ない。この世界一祝勝会の主役その1の言い分なので、素直に従うことにした。
「ほらっ!歩く!ちゃんと!」
「…ん」
しかしこの主役その2ときたら、ああもう、自分の足で歩いて欲しい。
そりゃ、まだシ一ズンも始まってないんだし、はっちゃけるのは今日くらいしかなかったのはわかる。
27生 白ぬこ 1/9:2009/03/26(木) 23:54:13 ID:QTZMkQL8O
でも、世界の誰も止められない韋駄天が、ずるずる革靴の先も痛むのに引きずられて、かっこ悪いったら。
マンションのドアを開けるときだけ手を離した。…ら、中に入った瞬間。
「…って!やっさん!!」
がちゃんとドアが閉まる音が、暗黒のまま聞こえた。ついで鍵の閉まる音。
後ろから思い切りつかまってきた、型丘の仕業に違いない。
靴を脱ぐはずの場所に、そしてずるずるへたり込むのがわかる。
ぱちりと玄関の明かりだけつけると、ドアにもたれうずくまった型丘は、ぼんやりその澄んだ顔をあげた。
「飲みすぎ。ほれ、ベッドまで行って。自分で」
「…」
型丘はまぶしいのか、少し目を細くした。目じりは酔いのせいか、赤い。
「…やっさん。疲れてるっしょ。俺、ソファ使うから…」
「久利」
「ん?」
「今日、あんまりお前と話してない」
まぶしいだけじゃないらしい。明らかに型丘は、眉をひそめている。
冷たい玄関に座り込んで、久利山を見上げている。
「…そうやっけ。ごめん、やけど主役独り占めするわけにも…」
「あんまり笑ってなかったろ」
「そんなことないよ」
「嘘つき」
28生 白ぬこ 2/9:2009/03/26(木) 23:56:09 ID:QTZMkQL8O
型丘はそして、動かねーぞ、俺は歩かないと言い捨ててぐったり体の力を抜いた。ジャケットに頬を埋める。
久利山は呆れた。子供じゃないんだから、帰ってきた日本の、ここ数日の冷えは体に悪いくらいわかるだろう。
「あんなあ、何であんたがヘソ曲げてるんですか」
「うっせ」
「世界一やろ。選ばれて行って、…不満やったらむしろ、選ばれんかった俺が言うのが普通っしょ」
「…」
「世界一になって、何が気に入らんねん」
「んなことねーよ」
「ほな笑ったらええやん。何で今日、俺の前でだけすねてんの」
祝勝会という名の飲み会の場では、こんなんじゃなかった。そりゃもう、弾け過ぎってくらいに大笑いしていた。
先輩後輩、皆に祝われていた。それはいつもの見慣れた笑顔で、確かに俺はほんの少し、安心したりもしていた。
だってテレビで見るあんたは、まるで違う星の人みたいにやたら現実味が無くて、混乱もしていたんだ。
帰ってきたと感じて、安堵した。
そして確かに、また俺は、深く滾る息苦しさに捉われる瞬間もあった。
「拗ねてねえ」
型丘はごそごそと、ショルダーバッグ(肩がけだから奇跡的に自分で運んできた)の中を探って、何かを取り出す。
ばさっと投げ
29生 白ぬこ 4/9:2009/03/26(木) 23:57:59 ID:QTZMkQL8O
ばさっと投げつけられた雑誌は有名な里予球雑誌で、そういえば自分のインタビューが載っていた号だ。
「何。これが何。読んだの?」
「久利」
「ん?」
「お前こそ、不満?」
半分閉じてこちらを見る目は、祈っているようにも見えた。
冷えた春の夜が、静かに落ち積もる。刷毛で伸ばしてゆっくり塗りかためていくように、一つずつ確実に。
久利山は、そのせいだけでなく、頬が歪んだと自分で思った。その影を、型丘はきっと見ている。
少し冷えた指を、伸ばした。
「…そう、見えんの?」
「ん」
しゃがんで抱きしめたら、今日初めてその人は、柔らかい声で耳元で呻いた。
こうなると冷えがもどかしい。ぬくもりが伝わるまでに間がある。
「…うっちーから、空港で貰ったんだよ、それ」
その世界大会に一緒に出た、別の選手の名前を言う。自分の体温が勝手に上がったり下がったりする。
聞きたくないと、今日初めて認めた。そうだ。
あんまり笑ってなかった。そうだよ。
俺は見たくも、聞きたくも無い。
深く滾る息苦しさ。
嫉妬だと。
「読んだよ。ま、大体わかってるけどな」
首筋に頬を埋めたら、匂いと体温が本当に懐かしくて、思わず腕に力がこもった。
30生 白ぬこ 5/8:2009/03/27(金) 00:01:07 ID:QTZMkQL8O
けれどこの裏に、俺の知らない何かがもう在るのだと思えば、腹の底あたりで何かモンスターが猛り狂う。
業が深い、と思う。
この嫉妬は、あんたに対してすらも滾る。
俺の持てない高みを得たあんたが、誰よりも妬ましい。
「お前が4番打ちたいとかさ、知ってるし。多分打てるやつになるだろって、俺は思ってんだよ」
「…褒め殺しかイヤミか、知らんけど」
「マジな話だよ。日本代表が言ってんだよ!」
そこで型丘はははは、とどこか空虚な声で笑った。耳元で聞こえた。
彼の腕が静かに、肩と背中にまわる。絡みつく喜びと苛立ちが、久利山の中でごっちゃにめぐる。
「それに、俺は必要ない話なんだってのも。俺、1番だしさ」
「だから?」
お前が2番だから、俺はお前と繋がってるなんて、馬鹿なことも思えるんだ。
それでもお前は、そんなこといつか終わるよと、あっさり言うんだ。
俺は、お前が居たから、ここまで来れた。
「…さあね」
「やっさん」
「俺の都合の話」
ふと思い出した。送ってくから、とタクシーを捕まえたとき耳元で、お前んちがいいとだけ呟いたこと。
べろべろに酔っ払っているようでいて、こちらの肩を掴む手だけは、しっかり迷い無かったこと。
31生 白ぬこ 6/8:2009/03/27(金) 00:02:32 ID:QTZMkQL8O
「…誘ったんは、あんたやからね」
ああこの嫉妬は、業が深い。
あんたに、あんたの経験に、あんたの周囲に、全部。俺の手が触れなかったもの全てに。
単純な独占欲じゃないから、性質が悪い。あんたが居る、その存在だけでまた回る、業が深いんだ。
「あー、そーだよ」
「悪いけど、今日は優しくできひんよ。嫉妬してるから」
「いい、好きにしろ。明日は出ねーし」
目の前の首筋から肩の筋肉にかけて、形岡は舐めてそして一瞬軽く噛んだ。
「つっ」
思わず息を強く漏らして、九里山の肌が張る。けれど身を離そうとはしない。
そのまま痛みごと、受け止める。
「…俺も今日は、そんな気分だ」
どっちが現実なのかわからなくなってるんだ。
夢も悪くない。ああ、世界一になったときは全くものすごい瞬間だった。
それこそ、何を引き換えにしても惜しくないと、このために生きてきたんだと思うほどに。
「正直、あっちに居るときは、ずっとお前の事なんか忘れてた」
形岡は言った。その吐息の具合が、ため息に似ているなと自分で思った。
もうさすがに白くはない。春の夜に舞う。
人間なんてそんなもんだ。目の前に大きな獲物がぶら下がっていたら、夢中になれば全て忘れる。
32生 白ぬこ 終:2009/03/27(金) 00:05:20 ID:QTZMkQL8O
忘れられる。
そうだ。お前なしでも俺は全く大丈夫、だった。お前なんか必要無かった。
「だからお前なんかいなくなっても、俺は大丈夫なはずなんだ」
お前が隣にいなくても俺は、忘れられる。
「…」
「九里」
「はい」
「何時までも傍にいる気なんか、無いんだろ」
吐き捨てるように言ったら、優しくしないと言ったくせに、とんでもなく柔らかくキスされた。
「どう、やろね」
刻み込んでやる。世界一すら忘れるくらいのものを、俺が必ずあんたに、あんたの中に。
忘れられなくしてやりたい。
「…お前は、色々、嘘つきだ」
本当に嘘つき、何時までも傍にいるつもりなんか無いくせに。嫉妬してるのは俺のほうだ。
ああ、忘れられるわけ無い。ただそのときが来たら、忘れる努力だけはきっとするだろう。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

計算ミス申し訳ないです。
33K0F シェソ×デュオロソ 2:2009/03/27(金) 00:09:37 ID:WtL094oj0
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) <その2です。
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  <そろそろ完結。
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 <堕瓏受は茨道なんでしょうか
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"
34K0F シェソ×デュオロソ 2-1:2009/03/27(金) 00:10:36 ID:WtL094oj0
そしてゆっくり身を沈めていった。
中は熱くて狭い。
「う…!シェン…こんな所にいれるのか?…少し、苦しい」
いくら肉体を鍛えていても、後孔に入れられる痛みは慣れてないうえに痛い。
肩で小さく息をしながら、シェンの肩に再度腕を回す。
ゆっくり気遣うように抜き差しを繰り返され、デュオロンは小さく喘いだ。
「ここ以外に入れる所ないだろ?…良い顔してるぜ、デュオロン…」
「シェン…声が、漏れてしまう。アッシュが起きてしまう」
デュオロンはシェンの肩に顔をうめて、恥ずかしそうに呟いた。
「俺は見られたって良いんだぜ」
「…」
シェンの言葉に、恥ずかしがる彼が可愛い。
見られたって良い。
本音だ。
むしろ見られる事を望んでいる?
…重症だ。
止めていた体を再び動かす。
今度は少し激しく。
先程指でよがっていた部分を突いてやる。
「あ!や、そこは!あ、あ!シェン、駄目だ!」
「嘘つけ。気持ち良さそうな声出しやがって。ッ、力抜け」
自分は犯されても喘ぐ事はないだろうと思っていた。
それが、中を突かれ、快楽に喘ぐ自分がいる。
力を抜けといわれても、締め付けてしまう。
35K0F シェソ×デュオロソ 2-2:2009/03/27(金) 00:11:35 ID:WtL094oj0
愛、か。
シェンは愛してると言った。
自分は?
シェンの事を…
「おい」
ひたひた、と、半ば意識を手放していたデュオロンの頬を叩く。
シェンの端正な顔が、デュオロンの瞳を覗き込んだ。
「好き…かもしれない」
「あ?」
男に。惚れるなんて。
こんな男に惚れては暗殺者失格だろうか。
「シェン」
おずおずとシェンの唇に口付ける。
初めて自分からした口付けは、シェンの煙草の味がした。
「あ!」
途端、突く速度が速くなる。
「燃えさせたお前が悪いんだぜ」
容赦ない突きは、デュオロンの快楽を随分と引き出した。
開いた口からは唾液がこぼれ、手はしっかりとシェンの肩を掴んでいた。
「あ、んあ、ふ、はあっ、もう、あ!」
「もう、イきそう、か?デュオロン」
夢中で頷いた。
36K0F シェソ×デュオロソ 2-3:2009/03/27(金) 00:12:08 ID:WtL094oj0
暗殺者で死霊使い。こんな自分を愛したのは、シェンが初めてだった。
「あー!」
「っ!」
デュオロンが吐精する。
そしてデュオロンの中で、シェンも果てた。
ゆっくり抜きにかかる。
「気持ち良かったろ?」
「…ん」
デュオロンは薄く笑顔を作ると、シェンの胸に顔を埋め、眠ってしまった。

起きたのは十二時だった。
隣にシェンの姿はなく、デュオロンは後孔の痛みに耐えながら起き上がった。
リビングには、爪の手入れをしているアッシュと、昼食を作っているシェン。
いつもどおりの光景だ。
「あ、オハヨーデュオロン」
「ああ、おはよう」
「昨日はデュオロンの声がこっちまで響いたよ?何してるかはシェンから聞いたけどー」
アッシュがけたけた笑い出す。
そう言われて、思わず赤くなる。
37K0F シェソ×デュオロソ 2-4:2009/03/27(金) 00:12:41 ID:WtL094oj0
「シェン!」
「あー、もー、知られちまったんだから良いだろ?」
「あ、でも可愛い声だったよ。デュオロンあんな声出すんだねー♪」
無邪気な子供とは恐ろしい。
その言葉を聞いて、いまにも死霊を呼び出しそうな勢いで真っ赤になっているデュオロン。
そこにシェンが、申し訳ないと言った感じで、聞きにくる。
「あー、そのだな、体は平気か?ちーっと無理させたような」
「だからここでその話はやめろ…」
低く呟いた声とともに、冷たい空気が流れた。
気が付けば死霊が辺りに漂っていた。
「…。わ、ワリィワリィ、部屋行こうぜ」
フライパンを置いて火を止めると、無理矢理デュオロンの手を引いて、寝室に戻った。

「でもな、昨日言ったことは本当だぜ」
愛してる。という言葉。
「…ん…」
軽く唇を押しあてる。
とさっとベッドにデュオロンを押し倒す。
「一発すっか!」
「〜!」
さっさと服を脱がされるデュオロンだった。
38K0F シェソ×デュオロソ 2 (完結):2009/03/27(金) 00:13:57 ID:WtL094oj0
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < 個人的にもっと
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < エロクしたかったです…
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 髪の長いお兄さんは好きですか。
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ
39風と木の名無しさん:2009/03/27(金) 00:47:57 ID:1UKZHX+60
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  半ナマ注意 某ミニドラマより 古風子守熊の2人
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  工事現場のバイトの人×主人公の兄。兄視点。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 元ネタにバイト君の名前が出てこないから
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )    中の人の名前を少しいじったんだってさ
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
40某ミニドラマ 1/2:2009/03/27(金) 00:51:38 ID:1UKZHX+60
朝早くに喧嘩して家を飛び出した妹に電話をかけて仲直りをし、今から迎えに行くと言った時には外はもう真っ暗になっていた。
妹が待っていた公園の前の通りは工事中で、ちょうどみんなその日の作業を終えて帰るところのようだった。

「あれ?コージ?」
不意に後ろから声をかけられる。振り返ると、そこには久しぶりに会う友人の姿があった。
いや、友人というより、彼──ユーイチとは、学生時代もっと特別な仲だった。
本来の目的をうっかり忘れて二人でしばらく話し込んでしまい、結局妹は呆れて、一人で近くのファミレスに行ってしまった。
今から一緒に飲みに行かない?と誘われるまま、二人で近所のバーに行き、
いい感じに酔って、二次会と称してユーイチの家に行って飲む事になった。

家で飲んでいると、突然横から抱きつかれた。驚いて身体を強張らせたが、酔いのせいか抵抗する気は起きなかった。
ユーイチの方に顔を向けさせられ、唇を奪われる。
僕の口内で動くユーイチの舌に、身体から力が抜けていった。
唇と腕が離れていくと、座っていたソファーに今まで以上に深く沈み込む。
余韻で思考が働かない間に、今度は正面に回られる。
パーカーの前を開き、中に着ていたシャツを捲り上げられても、僕はただぼんやりしていたのだが。
「ひゃあっ」
右手で露出した肌を撫でられ、思わず声を上げる。
昔一緒にやっていたバンドでギター担当だったせいかどうかは分からないけど、
当時から手による愛撫がやたらと巧かった気がする。
思わず逃げようとした体を左手で抱くようにして拘束される。
元々体力が無い方な上、今は更に力が抜けてしまっていて、完全に押さえ込まれてしまった。
「……んっ……、はぁ…」
無造作と言える動きで撫で回されていたかと思うと、所々集中的に責められる。
そしてその度に身体は大げさなほど反応してしまっていた。
「感じるとこ、昔と全然変わらないね」
笑みを含んだ声と口調で言われる。
声は聞こえていたが、思考が完全に麻痺していて意味は全く理解出来なかった。
41某ミニドラマ 2/2:2009/03/27(金) 00:52:50 ID:1UKZHX+60
身体からも脳からも力が抜けたところで抱き上げられ、寝室に連れていかれる。
「今回はこれだけにしておくからさ。もう日付変わっちゃったし、泊まっていきなよ」
ベッドに横たえられたところでそう言われて何となく相手の顔を見ていると、いきなり笑われる。
「もしかして、続きもやりたかった?」
「……っ」
どう答えていいか分からず、目をきつく閉じて顔を伏せる。期待していなかったわけではないと思う。
見えなかったけど、ベッドが軋んで、ユーイチが隣に入って来たのがわかった。
「最後までヤっても良かったんだけどね。でもこれからも会えるだろうし」
そう言いながら抱き寄せられたのが、その夜最後の記憶だった。


ユーイチの家を出た時、既に日はかなり高くなっていた。
家に帰っていた妹に今から帰ると電話してちょっと文句を言われた後、アドレス帳を開いてみる。
新しく追加されたデータをちらっと見てから電話をしまった。
これから夏になれば、多少夜遊びが増えても妹はそんなに怒らないだろうと思う、多分。
42風と木の名無しさん:2009/03/27(金) 00:57:40 ID:1UKZHX+60
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ うっかり萌えて勢いだけで書いちゃったよ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) 乱文失礼しました
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
43風と木の名無しさん:2009/03/27(金) 19:21:09 ID:t30t2ALqO
>>26
姐さん禿げ萌えた
二人の続き心配だったので良かったよ…!
ありがとうございます!
44P/e/t/s/h/o/p/O/f/H/o/r/r/o/r/s/ レオン×D伯爵:2009/03/27(金) 21:53:36 ID:U+MO+kje0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |33巻アタリに過去作品がありますが、またかいたので投稿します
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|ツンデレ伯爵。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
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45P/e/t/s/h/o/p/O/f/H/o/r/r/o/r/s/ レオン×D伯爵 1-1:2009/03/27(金) 21:54:37 ID:U+MO+kje0
ばたばたばた
昼下がり。
乱暴に階段を下りる足音に、D伯爵は頭痛がした。
「よーっすディー!」
「しーっ!」
D伯爵が、レオンに人差し指をたてて、静かにするように促した。
「なんだよ」
「あ、もう、刑事さん、いい加減静かに来て下さいねと、あれほど!」
と、店の奥から一匹のヨークシャーテリアが出てきた。
「ああ、せっかく良い雰囲気だったのに…」
「あーにやってんだあ?ディー、まさかその犬を使って麻薬を」
「何を言うんです!お見合いですよ、お見合い!お偉方から預かって、シフォンちゃんのお見合いをしてたんです」
どうやらD伯爵の足元にいる犬が、シフォンちゃんらしい。
余程大切にされているのか、毛並みはピカ一だ。
「そうだ、その犬の名前で思い出した。ほい、シフォンケーキ」
片手に持ってきた(振り回してるので形は少々崩れているが)シフォンケーキの入った箱を、D伯爵に渡す。
「ああっ!ちょうどお茶菓子切らしていたんですよ!すぐにお茶にしますね」
犬をおろすと、箱に入ったシフォンケーキを受け取り、奥へと入っていった。

「え、お見合い?」
今まで黙々とケーキを食べていたD伯爵の手が止まる。
「そ。俺は乗り気じゃねえんだけどよ。その」
パクリとケーキをひとかけら口に運ぶ。
そして甘さ控えめの紅茶をすする。
「ディー、お前とやっちまった仲だし」
「…」
数ヶ月前、レオンの部屋で半ば無理矢理された。
快楽は嫌いではないが、そこで言われた愛の告白に戸惑った。
「…してきたらどうです?」
「ディー!」
心外だ。
もっと悩んでくれても良いのに。
46P/e/t/s/h/o/p/O/f/H/o/r/r/o/r/s/ レオン×D伯爵 1-1:2009/03/27(金) 21:55:08 ID:U+MO+kje0
だがそんな事が言えるわけがない。
無駄なプライドが邪魔した。
「きっと良い経験になりますよ」
顔色一つかえず、お茶をすする。
それが何だかちくちくと不愉快になって、レオンは立ち上がった。
「そーかよ、俺はそんなにどうでもいいのかよ!」
「どんな、言葉を期待していたんです?」
辺りの空気がぴんと張り詰めた気がした。
何も言えず、レオンは乱暴にペットショップを出ていった。
「…相変わらず、鈍いですね」
茶器を持つ手は震えていた。
D伯爵がここまで動揺するのは初めてだ。
「全く、刑事さんは…。…レオン…」

一週間が経った。
その間、レオンはペットショップに立ち寄ることはなかった。
いらだちながら煙草に火を点ける。
見合いの話は着々と進んでいた。
その頃のD伯爵は、店内を掃除しながら、しかしぼんやりとしていた
47P/e/t/s/h/o/p/O/f/H/o/r/r/o/r/s/ レオン×D伯爵 1-3:2009/03/27(金) 21:55:39 ID:U+MO+kje0
「伯爵、どうしたの?」
狸のポンちゃんが、D伯爵のチャイナ服をひっぱる。
困ったように笑いながら、D伯爵はポンちゃんを抱き上げた。
「何でもありませんよ。そろそろお茶にしましょうか」

そして二週間後。
ばたばたばた、と音がして、はっと顔を上げる。
バン!と、扉が乱暴に開いた。
そこにはレオンがいた。
「刑事さん」
少し、けだるい雰囲気のD伯爵。
体を預けていたソファから、立ち上がる。
「お見合いはうまく行きましたか?」
いつもどおりの笑顔を作る。
だがそれに反して、自分の腕を掴む手はわずかに震えていた。
「ほらよ、モンブラン」
「ありがとうございます」
にっこり。D伯爵は落ち込んでいる事に気付いているのだろうか。
何か変だと察したレオンは、D伯爵の額に手を乗せた。
「何だ?熱あるぞお前」
「え、そんなはずは…ふう」
言われて初めて気付く。
そういえば、確かに体が熱いし、だるい。
熱は少しある程度だったが、働くのはレオンが許さなかった。
膝を付いたD伯爵を姫だきにする。
48P/e/t/s/h/o/p/O/f/H/o/r/r/o/r/s/ レオン×D伯爵 1-4:2009/03/27(金) 21:56:49 ID:U+MO+kje0
「あ、ちょ、ちょっと、刑事さん」
「寝室まで案内しろよ」
「…はい」
寝室までつづく扉を開けると、迷路が広がっていた。

この迷路に何がどこにあるのか分かっているのだから、D伯爵は恐ろしい。
「それから…真っすぐいって、右へ。ああ、ここです」
他のドアと大差ないドア。レオンが一人で来てたなら絶対に分からないであろう。
レオンはD伯爵を抱えたまま、なんとかドアを開けようとする。
それに気付き、D伯爵はそっとドアノブにかけているレオンの手の上に、自分の手を重ねた。

「ありがとうございます、刑事さん」
ベッドに寝かされて、D伯爵はにっこりと微笑んだ。
その笑顔に、思わずレオンもどきんと心臓がなる。
それをごまかすように、頬をぽりぽりとかいた。
「ちゃんと寝てろよ。ったく」
「お見合いは…」
小さな声で呟く。
だがその言葉は聞こえなかったらしく、レオンは聞き返してきた。
「あ?」
「いえ、なんでもありません」
あわてて平静を装う。何故こんなにも動揺しているのか。
『ただの人間』の事ではないか。
「そうそう、見合い断ってきた。俺の好みのねーちゃんじゃねーの」
複雑な気持ちでその言葉を受け止める。
受けないと聞けば嬉しいが、好みの女だったら受けてるつもりだったのだろうか。
そう思って、D伯爵は少し俯いた。
「好みだったら、受けてました?」
「あん?さーな。なんかよ、見合い中ディーの顔がちらついて集中出来なかった」
「そうですか…」
安堵の息があがる。
それに気付いて、D伯爵は首を振った。
49P/e/t/s/h/o/p/O/f/H/o/r/r/o/r/s/ レオン×D伯爵 1-5:2009/03/27(金) 21:57:24 ID:U+MO+kje0
何を喜んでいる!
「お前さ」
と、レオンがベッドに手をついた。
ギシ、と音が響く。
「お前俺の事どう思ってるよ」
「どうって…。不器用で乱暴で女好きの刑事さん」
「最悪じゃねーか!」
「そう…ですかね」
思った通りの事を言ったのに怒られても。
レオンは上体を起こしているD伯爵を、完全に寝かす。
案外面倒見が良い。
「なー」
「なんでしょう」
「治ったらまた抱かせろよ」
「…私はオネエチャンじゃありませんよ?」
「嫌なのか?」
嫌かと言われれば嫌じゃない。
だが最近欲が芽生えてきたのだろうか。
…その行為に、心はともなっているのか。
「何か忘れてませんか?」
「あ?えーと、…モンブラン?」
「全然違います」
D伯爵はため息をついた。
一言愛してると言ってくれれば良いのに。
ぷい、と、そっぽを向く。
「ディー。こっち向け」
「何ですか!」
50P/e/t/s/h/o/p/O/f/H/o/r/r/o/r/s/ レオン×D伯爵 1-6:2009/03/27(金) 21:57:55 ID:U+MO+kje0
レオンの方を向いた瞬間、額に柔らかな感触がした。
レオンが、D伯爵の額に口付けをしたのだ。
「俺そろそろ行くわ。じゃ、寝てろよ」
「…はい」
赤くなるD伯爵は、目を閉じる。
確かに少し熱があるようだ。
でなければ、こんな動揺したりしない。
そういえば、レオンにこの部屋に続く道から脱出する道順を教えていないが大丈夫だろうか。

次の日。
「どこが出口だー!」
「あ、まだいたんですね」
熱も引いて、一歩寝室の外に出た時に聞こえてきたのは、レオンの怒声だったという。





51P/e/t/s/h/o/p/O/f/H/o/r/r/o/r/s/ レオン×D伯爵:2009/03/27(金) 22:00:06 ID:U+MO+kje0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ オワリマス
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
いまだにDで萌えてます。新のほうにするかで迷って、太子より
レオンをかきたくなったので旧のほうにしました。
更にエロを入れるかで迷って、友達に聞いてエロいれない方向で書きました。
本音ちょっとエロ書きたかった。ちょ、ちょっとだからね!!
52風と木の名無しさん:2009/03/28(土) 00:08:07 ID:Ano8pQlTO
ここオードリー多いみたいだね

書きたかったらここ行けば
http://fujyoshi.jp/
53風と木の名無しさん:2009/03/28(土) 00:15:39 ID:QOeZS1k70
生、ロ○ン、京大×大阪府大です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
54一夜一夜(ひとよひとよ)にツッコミ所 1/7:2009/03/28(土) 00:16:44 ID:QOeZS1k70
 映画の放映が中断され、CMに切り替わった。
 「・・・・なあ」
 京大の肩に凭れて画面に見入っていた大阪府大が、掠れた声で呼びかけた。思わせぶり
に顔を見上げる。缶酎ハイを一本飲んだだけなのに、焦点の定まらぬ目は潤み、色白の滑
らかな頬はほんのりと桜色に上気して、化粧でもしているかのように美しい。
 「やらしいな」
 と呟いて、京大は抱いていた恋人の肩をより強く引き寄せた。軽く目を伏せる大阪府大
の半開きにした唇に、人さし指と中指を差し入れる。大阪府大は切なそうな顔で一瞬反応
し、すぐ気がついて目を開け、恨めしそうに京大を睨んだ。
 京大は声を上げて笑った。噛まれる前にするりと指を抜き出し、文句を言われる前に両
手で頭を掴んで、素早く唇を唇で塞ぐ。舌で歯列をなぞり、巨峰の甘みの残る舌を吸いな
がら、ふと、これを本に書かせたらすごいことになったやろな、と思った。勿論、事務所
が許さないだろうが。
 映画の本編が再開された。日本語吹替ではあるが、軍服を着たトム・クルーズが何か真
剣な顔で喋っている。大阪府大は構わず、京大の首に腕を巻きつけ、畳の上に倒れこもう
とする。
 「観いひんの?」
 「退屈やんか」
 と言い捨て、仰向けのまま、リモコンに手を伸ばした。哀れなトム・クルーズは消えた。
 ちょっと続きが気になっていた京大だったが、大阪府大のしたがることなら何でも叶え
てやるのも、いつもの通りである。心の中で苦笑いして、明かりを落とし、その小柄な体
をそっと抱きしめた。
55一夜一夜(ひとよひとよ)にツッコミ所 2/7:2009/03/28(土) 00:17:46 ID:QOeZS1k70
 真夏だった。
 漫才師として有名になる、遥か前だった。その日は体育館が使えず、外でバスケットの
練習をしていた。突然の雷雨に見舞われ、逃げこんだ部室で、たまたま二人きりになった。
 「好きや」
 大阪府大は十五で、勇敢だった。焼き尽くすような眼差しで自分を見つめるその顔を、
雨に濡れ、汗に塗れた裸の上半身を、この上もなく美しいと、京大は思った。
 京大は十六になっていた。IQ百四十六、天才と呼ばれるほどに聡明で、早熟だったが、
経験は浅かった。昨日まで、いやついさっきまで親友だと思っていた少年が不意に見せた
情熱に、戸惑いを隠せなかった。応えていいのか、応えるべきなのか、応えられるのか、
どう応えればいいのか、何一つわからなかった。
 「俺もや。おまえとは一番話が合うし、チームメイトやしな」
 目を逸らせ、口籠りながら、やっとそれだけを言った。大阪府大は激しくかぶりを振っ
た。
 「せやない!俺が言うてんのは・・・・宇治原、賢いんやからわかるやろ!」
 京大は片手の拳を握りしめた。一つだけ、確かなことがあった。
 「わかるよ。俺かて菅のこと・・・・」
 応えたい、という思いだった。
 「触れてええか」
 親友の、いや、これよりの恋人の泣きそうな顔をまっすぐ見つめ返して、京大は問うた。
56一夜一夜(ひとよひとよ)にツッコミ所 3/7:2009/03/28(土) 00:18:45 ID:QOeZS1k70
 京大が躍動している。彼の昂りを、その体を巡る血の熱さを、大阪府大は丹田の辺りで
感じている。
 京大の一物は、本人の人生と同じくらいユニークな形にひん曲がっており、挿入には熟
練を要する。最初、熱した槍で体を串刺しにされるように、ただひたすら辛かった交わり
も、三十路を過ぎた今はすっかり馴染みの快楽となっている。デビューして数年はさっぱ
り笑いの取れなかった漫才師が、何千回もネタ合わせをし、舞台をこなす内に、ある時、
絶妙の間の取り方とネタのキレを会得し、突然おもしろくなるのと同じようなものだ。
 「ああ、ええわ」
 京大が身震いし、小さく笑う。息遣いが、突き上げる動きが激しくなる。
 「あーっ、菅、俺もうあかんっ、イキそうっ」
 京大が強く、体にしがみついてくる。応えて、その汗ばんだ細身の体を掻き抱き、頭を
さすってやりながらも、長年の経験から、まだまだ先だと知っている。ひ弱なガリ勉だと
思われがちだが、実は元バスケ部のエースで、足腰は強く、スタミナも充分なのだ。
 一月ほど前になるか、関西ローカルの番組で、世界各国の人がセックスにかける平均時
間について取り上げられた。話を振られた京大が、例によって素人みたいにもじもじして
いたので、つい、「おまえ長いよな」と口を挟んでしまった。他の出演者に、「なんで相
方がそんなこと知ってるねん」とツッコまれて、二人とも大いに焦ったものだ。
 「どうしたん?何笑ってんの」
 少し律動を休めて、京大が尋ねる。
 「いや、ちょっと思い出し笑い」
 「アホ、そんなとこで正直に答えんなや。『うじの鉤チンが気持ちええねん』とか、もっ
と気の利いたこと言えへんの?」
 「おまえみたいな職業適性のないブサイクに言われたないわ」
 「せやな、適性はあんまりないと自分でも思うな。おい待て、ブサイクは関係ないやろ」
 客観的に見て、べつにブサイクではない(と思う)のだが、この相方と組んでいる限り、
そう言われ続けるのは宿命かも知れない。自身も一応、漫才師にしておくのは勿体ないよ
うな学歴を持つ大阪府大が、こともあろうに、「廬山のアホの方」と呼ばれてしまうのと
同じことだ。
57一夜一夜(ひとよひとよ)にツッコミ所 4/7:2009/03/28(土) 00:19:41 ID:QOeZS1k70
 「ブサイクにブサイク言うて何が悪いねん。諦め」
 「べつに今に始まったことやないけど、あんな、そんな小憎たらしいことばっかり言う
てたら、折角のかわいい顔が台なしやで。チンポも萎えてまうわ」
 「ちっとも萎えてへんやん。そんなんで萎えるような玉かいな。この歩く性欲が」
 「は、腹立つ・・・・。あーあ、高校の時はあんな素直で初々しかったのに、一体どこでこ
んな汚れてもうたんやろ。やっぱり、芸能界の荒波に揉まれたせいかな。うちの会社、エ
ゲツないもんなあ」
 「わ、チクったろ」
 「いや、そこんとこ勘弁」
 口では散々愚痴るが、その実、京大は平然と、相方の口の悪さをおもしろがっているの
である。彼のそうしたシニカルな部分が、ネタ創作の才能にも繋がっているのだろう。ど
ちらも、基本的に人のいい京大にはないものだ。大阪府大の肩をしっかりと押さえつけ、
再び、腰を速める。
 そんなもんどうやって計ったのか知らないが、日本人平均の十六分はとうに経過する頃、
京大はううっ、と低く呻いて、相方の胎内に射精する。
 「菅、最高やった。いつもにも増してよかった。なんかええことあったん?」
 いい香りのする相方の洗い髪に顔を埋めて、京大が囁く。
 「うじがクイズに出てる間に、色々とな。わかるやろ?」
 大阪府大は頬杖を突き、にっこりと笑う。白居易の「長恨歌」の中に「一笑すれば百媚
生じ」というフレーズがあるけど、この顔のことやな、と京大はインテリらしい発想をす
る。
 「おまえ、女やなくてよかったよな」
 自分も布団に片肘を突き、頭を支えて、京大がぼそっと言う。楊貴妃には負けるとはい
え、小悪魔の異名は伊達ではない。玄宗ならぬ自分も、この笑顔で落とされたのだ。そう、
いろんな意味で。
 「なんで?」
 大阪府大は無邪気に尋ねる。国を傾けはしなかったが、京大の人生は力いっぱい傾けて
しまったかも知れない。少なくとも、京大の親御にとっては、この男は小悪魔どころか大
悪魔、大魔王、ラスボス級である。
58一夜一夜(ひとよひとよ)にツッコミ所 5/7:2009/03/28(土) 00:21:00 ID:QOeZS1k70
 「女やったら、むっちゃタチ悪いビッチやで」
 「うじが女やったら、暗くてもっさいオタやろな」
 「・・・・おまえ、ほんまは言うてるほど俺のこと好きでもないし、尊敬もしてへんやろ」
 「正解、ファインプレイ!さすがですね宇治原さん」
 「くそ、なめとんのかこのチビは」
 京大は大阪府大の減らず口を自らの唇で封じた。それを機に二人とも黙りがちになり、
抱きあい、散発的にキスを交わす。
 京大の長い指が、大阪府大の耳から頬、顎から首筋へと至る。相方の快感のツボを知り
尽くしたその愛撫に、大阪府大は恍惚とする。乳首を摘ままれ、びくっと体が跳ね、声が
洩れる。
 大阪府大は息をつき、ふと、甘い追憶に陥る。高校時代、授業でついて行けなかった所
や、受験勉強で不確かな所を、いつも解説してもらっていた。直前までどんなに混乱して
いても、京大に教えてもらうと、縺れた糸がほどけるように、すっきりとわけがわかるの
だ。あれだけ悩んでいたのが逆に不思議だ、という体験を何度もした。
 数学の公式や英語の構文を指し示す京大の指が、魔法使いのそれのように感じられた。
憧れと尊敬と羨望と、そして、燃え盛るような欲望の入り交じった思いで、その整った指
を眺めていたものだ。
 「おまえ、人の手元をじっと見んなや」
 両の親指と中指で乳首を挟み、人さし指で刺激しながら、京大がきまり悪そうに言う。
 「ええやんか。今更恥ずかしがることもないやろ」
 「わかった。そうやってよう観察しといて、俺が東京に行ってて会えへん間、オナニー
する時に思い出そうと思ってるんやろ」
 「残念でした。おまえの方こそ、俺のきれいな顔にぶっかけるとこでも思い浮かべて、
『菅ちゃん、菅ちゃん』って熱っぽく喘ぎもって、一人淋しくシコってるんやな。その間
俺は、おまえのことなんか忘れて、もっとええ男としっぽり濡れさしてもら・・・・あ、こら、
何すんねん」
 「このいけず」
 京大は笑って、大阪府大の両手首を掴んで布団に押さえつけた。左の乳首に吸いつく。
火のような息をつきながら、周辺も含めて舌で大胆に舐め回し、時に歯を立てる。更に、
右にも同じ行為を施す。
59一夜一夜(ひとよひとよ)にツッコミ所 6/7:2009/03/28(土) 00:22:15 ID:QOeZS1k70
 「あ・・・・あ、ひゃっ」
 大阪府大は身悶え、京大の手を振り払い、首っ玉に齧りついてくる。俄に、峰不二子の
如く百八十度態度を豹変させ、鼻にかかった甘え声で訴える。
 「嘘やってえ。俺が愛してるのはうじ一人やってえ。うじよりええ男は、世界中探した
かっておらへんってえ」
 「どないしてほしいんや?」
 あらゆる面倒な手続きを省略することにして、京大は事務的に尋ねる。彼らしい合理的
な思考である。
 大阪府大は、あどけない、とでも形容したくなるような顔をして、すっ、と爪先を伸ば
し、無造作に京大の口元に突きつけた。
 「はい。ねぶって」
 「しばくぞ」
 言葉とは裏腹に、姫君でも扱うかのように恭しく大阪府大の足を手に取り、五本の指を
口に含んでやるのだから、まるでガウタマ・シッダールタ(BC563頃〜BC483頃)
くらいに人間ができていると言わざるを得ない。もしかしたら、単に色ボケしているだけ
かも知れないが。
 大阪府大は上半身を起こし、布団に両手を突いた姿勢で、じっと京大の奉仕に身を任せ
ている。指の間を丹念に舐めると、白い喉を反らせ、深い溜め息を洩らす。足の甲から踝
を回って、膨ら脛、膝の裏、太腿へと、丁寧に舌と唇を這わせる。相方の鼓動と期待が高
まっていくのが手に取るように感じられるが、まだ肝心なことはしてやらない。まるで何
も目に入らないかのように、素知らぬふりで内股やふぐりや、後ろの秘めやかな部分を舐
めていく。
 大阪府大が切羽詰まった声を上げる。血管を浮き上がらせて怒張した一物が、先端から
透明な雫を滴らせつつ、京大の鼻先でびくり、と震える。そうなって初めて、京大も我慢
しきれなくなり、愛しい相方の分身を喉の奥まで咥えこんでやる。大阪府大が京大の頭を
掴んで引きつけ、腰を揺らす。霓裳羽衣の天女のような顔に、苦悶にも似た色が滲む。相
方の名を呼び続ける唇は甘やかに湿り気を帯びて、雨に濡れた薔薇の花びらか、露の降り
た朝摘みの苺か。
60一夜一夜(ひとよひとよ)にツッコミ所 7/7:2009/03/28(土) 00:23:06 ID:QOeZS1k70
 「菅、立つで」
 京大は宣言して起立すると、子犬でも抱くように軽々と相方を抱え上げた。大阪府大の
手足をそれぞれ首と腰に絡みつかせ、そのまま、深々と刺し貫く。
 一つになった影が、部屋の壁に激しく揺れ動く。二人の繋がった部分が淫猥な水音を立
てる。大阪府大が悲鳴のような声を上げ、京大の肩に噛みつき、背に爪を喰いこませる。
その柔らかい肌の感触を余す所なく貪り尽くし、ねとつく熱い乳粥を掻き回すようなえも
言われぬ至上の快楽に、京大は彼らしい理性も英知もかなぐり捨て、獣じみた歓喜の雄叫
びを上げる。
 「・・・・うーちゃん・・・・」
 二人して絶頂を極める瞬間、大阪府大は熱に浮かされたような目で京大を見つめる。が
くり、と力を失い、滑り落ちかけた相方の体を辛うじて支え、結合を解いて布団に横たえ
た。相方の体から流れ出た自分の精液を拭ってやり、指で髪の乱れを梳いてやって、息を
吹き返すのを待つ。
 程なく、長い睫を震わせて、大阪府大が目を開けた。
 照れくさそうに微笑みかける京大に向かい、一言。
 「なあ、ビーンズ入りのバニラアイス買うて来て」
 「ええ加減にせえ!」

ども、ありがとうございましたー。
61風と木の名無しさん:2009/03/28(土) 00:23:49 ID:QOeZS1k70
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ド邪道っぽいですが、本命は京大受です。また近い内に。
62風と木の名無しさん:2009/03/28(土) 01:22:37 ID:rSgoOQD70
>>61
GJ!!
この前の関西ローカルネタも入っててすごく楽しめた・・・!
京大受でもいいのでまた読めるのを楽しみにしてます。
63風と木の名無しさん:2009/03/28(土) 07:34:23 ID:H2RltURAO
>>51
姐さんの動物店がまた見れるなんて…!GJ!
纏われてる空気からエロじゃないのに既にエロスを感じるw
64星に願いを:2009/03/28(土) 17:43:27 ID:4FOhfbZd0
半生 および中の人話ちょっとあり

軽テット「親友(要英訳)」PV<出演:静流(鯨人), 他>
ストーリーはそのままで、つじつま合わせの捏造設定とともに文章化。
一人語り二人分。笑いなし。ノマカプ注意。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
65星に願いを 1/6:2009/03/28(土) 17:52:25 ID:kMiPVE3S0
side.A



「私たちって」

「ベス.トフレ.ンドだよね。……ずっと」

 夕焼けを見つめてまぶしそうに目を細める君の横顔を、少しだけ盗み見る。
 同じ景色を見ているはずの君の心が永遠のように遠くて、僕は気づかれないように
ため息を風の音にかくした。



 繁華街のイルミネーションが、星空の代わりに僕の周りで輝いている。週末の街は、
浮き足立った人々や、幸せそうに身を寄せ合うカップルで祭りのような賑わいだ。
 僕は街角で一人、花束を抱えて人待ち顔で座り込んでいた。
 目を空に向けると、街の明かりにひっそりと隠れるように瞬く星たち。
 君と、あいつと、僕がいた、あのころ。何度こんな風に一人で星を見上げただろうか。
そしてそのたび叶うはずのない願いを口にした。
66星に願いを 2/6:2009/03/28(土) 17:53:47 ID:kMiPVE3S0

 あいつとは幼馴染で、高校で偶然再会した。
 受験の日に顔見知りになった君には、僕から声をかけたんっだっけ。
 クラスメイトの三人はすぐに仲良くなって、いつも一緒に行動してた。男二人と、
女一人で、他のやつには三角関係って冷やかされたけど、気になんてしてなかった。
 仲良くなってから知った、君のこと。大人びて、少しわがままで、でも本当はすごく
繊細だってこと。
 いつもは大人ぶってるくせに、ふとした時に「このまま三人ずっといっしょにいられる
のかな」なんて寂しげな顔を見せるから、「俺たちは一生ベス.トフレ.ンドだ!」って
でっかく宣言したら、「ばか」って、君は笑顔になった。そんな笑顔がうれしくて、
まぶしくて。いつからか、いとしくて。この気持ち、いつか伝えられたらいいなって、
思ってた。
 でも、あいつが君を好きだと知ったとき、僕は何も言えなかった。だって、僕が君を
思ってるのと同じくらい強く、あいつも君のことを思ってるはずだから。
 君があいつの気持ちを受け入れて、二人が付き合い始めても、まだ僕たちは
ベス.トフレ.ンド。僕には二人の笑顔が大切だから、並んだ背中を見つめるしか
できなかったんだ。
 君の隣にいるのが僕のベス.トフレ.ンドじゃなかったら。僕が君にとってベス.トフレ.ンド
じゃなかったら、こんなに苦しくなることもなかったのに。
 君の名前を呼ぶだけで、君の顔を浮かべるだけで泣きそうになる独りの夜。
窓の外には、星屑の空。
67星に願いを 3/6:2009/03/28(土) 17:55:13 ID:kMiPVE3S0

 クラスがバラバラになってしばらくして、二人が別れたって他のやつから聞いた。
僕はずっと二人の友達だと思ってたのに、相談にも乗ったりしてたのに何も知らされて
なかった。
「俺たちベス.トフレ.ンドじゃなかったのかよ!」
思わず手を出してしまった僕に、あいつは戸惑い、君はただ口をつぐんだ。悔しくて
情けなくて、頭の中がぐちゃぐちゃだった。僕はもう二人のベス.トフレ.ンドには戻れない
のかって思ったりした。ひとりで帰り道を行きながら泣いた。なんで僕が泣かなきゃ
いけないのかわからないけど、ぼろぼろに泣いた。
 その夜、あいつから電話があった。
「黙っててごめん」
それと、
「今まで独り占めしてごめん」って。
 何だよそれって、もっかい泣いた。
 あいつも泣いてた。



 きらびやかな明かりが彩る地上の星屑の街。
 今夜は夜空に思いを馳せて、奇跡を祈る。
68星に願いを 4/6:2009/03/28(土) 17:56:53 ID:kMiPVE3S0
side.B

 待ち合わせの場所で花壇の縁に腰掛ける彼の姿を見つけて、思わず足を止めた。
 ここまで来たのに戸惑いが先に立って、動けなくなった。
 彼の視線は天へ向けられていて……その場で同じ星空を見上げた。
 目をこらさないと見失ってしまうほどの、かすかな光が降っている。

 久しぶりのメールには、「いきなりこんな話してごめん」と前置きして、彼の気持ちが
率直に、でも誠実につづられていた。
 信じられない思いで何度も読み返した。「会いたい」と締められていたけど、すごく
迷った。
69星に願いを 5/6:2009/03/28(土) 17:57:56 ID:kMiPVE3S0

 高校受験の日が彼との初めての出会いだった。朝、駅で受験票を落としたのに
気づかずにいたら、向かいのホームから見ていて声をかけてくれたのが彼だった。
あまりの大声に、大勢の前でずいぶん恥ずかしい思いをしたけど。そのあと教室でも
顔を合わせたので改めて礼を言うと、照れくさそうに笑ってた。
「こいつは俺の幼馴染なんだ」と彼に紹介されたクラスメイトは、優しくて芯が強くて、
大きな心の持ち主だった。子供っぽくてお人よしで、時に真っ直ぐすぎて暴走する
彼とは対照的な。そんな彼らとの日々は楽しかった。二人といると心が暖かくなった。
 告白を受けたのは単純にうれしかった。紹介されたときから好感を持っていたし、
それに、まだ三人でいられると思ったから。
 ただ、返事には少し時間がかかった。
「友達」が「大切な人」に変わっただけ、まだ三人は一緒にいられた。それが幸せだった。
 でも、知らないうちに彼との距離は少しずつ遠くなっていた。

 学年が進んでクラスが違っても二人は一緒だった。だけど彼の姿は二人のそばには
なかった。振り向けばいつもそこにいて、優しい笑顔をくれていたのに。
 二人肩を寄せ合って歩いた日々も、もちろん、かけがえのない大切なものだ。
でもやっぱり二人じゃだめなんだって、気づいた。どちらからともなく。
 だから二人は元に戻った。
 俺たちベス.トフレ.ンドじゃなかったのかって彼に言われて、言葉を失った。何も
言い返せなかった。彼に黙って終わらせてしまったのは、ただの自分勝手だったから。

 何でも話せる友達だけど、本当は、ひとつだけ、言っていないことがあるんだ。
70星に願いを 6/6:2009/03/28(土) 17:58:41 ID:kMiPVE3S0



 茜色の空の下で思い出す、一つの風景。
 学校帰りに三人、町を見下ろす丘の上で、他愛のないおしゃべりをしていたこと。
 ゆるやかに、静かに流れていく時間の中、
「私たちって」
芝生をなでる風に前髪を揺らしながら、彼女がつぶやく。
「ベス.トフレ.ンドだよね。……ずっと」
 ぼくは、言えない言葉を風に飛ばすこともできずに、夕日を照り返してきらきら輝く
町並みを、暗くなるまでぼんやり見てた。



 星明かりも届かない、光の街に目を戻す。
 視線を落とした彼の顔は、さっきより沈んで見えた。
 ずっと言えなかった言葉を、今、伝える資格がぼくにあるのか、まだわからない。
だけど、こんなぼくに彼は気持ちを打ち明けてくれたんだと思ったら、ためらいも消えた。
 心を決めて足を踏み出す。
71星に願いを 終:2009/03/28(土) 17:59:49 ID:kMiPVE3S0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
文章に細工をしたせいで、ちょっとわかりづらくなってしまったことをお詫びします。

すいませんこの後のシーンはとても私の表現力では描写できません。
本人たちはいつもの友.情.コントの延長線のノリでやってるんだろうけどねぇ……w
しかし、あんなかわいい子を当て馬に使うなんて贅沢すぐる。
72風と木の名無しさん:2009/03/28(土) 19:31:42 ID:mAiVSKjo0



               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < オリジナルで教師×生徒
        //_.再   ||__           (´∀`⊂| 
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < プラトニックでぬるいです
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"


73オリジ 教師×生徒 1/6:2009/03/28(土) 19:33:11 ID:mAiVSKjo0
春が好きだと言う奴の気が知れない。
この季節には良い思い出なんてひとつも無かった。
花粉が飛び散るせいで重度の鼻炎持ちの俺はマスクと目薬が欠かせないし、
一年間続いてきた環境がクラス替えだの何だので御破算になるのも煩わしい。
春が来たというだけで気が触れたように喜んで、花見だ合コンだといそいそ計画を立てている奴らは心底めでたいと思う。

3月末、昼下がりの教室でそんなことをぼやく俺を先生は柔らかな笑顔で見つめていた。
教室の隅の机を向かい合わせに並べ、参考書やノートを広げて俺は補習に励んでいる。
俺の真ん前に座って解答の進み具合を観察する先生の影が、ノートの上に広がっている。

「君の言いたいことも分かるよ」

先生がそっと囁いた。
先生の声は低くて優しく、砂糖菓子のようにほんのり甘い。
品の良い物腰が如実に現れたその声は、鼓膜に溶け込むたびに俺の毛羽立った神経を簡単に宥めてしまう。

「僕も昔は春が嫌いだった。面倒な行事はたくさんあるし友人とは離れ離れになるしね」
「先生でもそうだったんですか」
「昔はね。僕は人付き合いが苦手な人間で、春はいつも本を読んで過ごしていた。
 当時は強がっていたけれど本当は辛かったんだろうね。
 あの頃に読んだ本のフレーズは今でも鮮明に思い出せるよ」

滑らかに言葉を紡ぐ先生の様子は、授業中に和歌を詠みあげる姿とよく似ていた。
先生は長身でスタイルが良く、おまけに紳士的だ。教師としても優秀で30代半ばにして俺らの学年主任を務めている。
古典の担当をしていることもあって『前世はきっと平安時代の貴族だ』等と噂されている。
学校中の女子の憧れを集めているのは勿論、男だって先生への羨望の想いを漏らす奴も少なくない。
先生が廊下を通るたびに誰もが眩しいものでも見るように目を細めていく。
そんな人気者の先生が何故俺だけを相手に補習にあたってくれているのかというと、理由は単純明快だった。
先生の担当生徒である俺の、国語の成績が絶望的なまでに低迷しているからだった。
74オリジ 教師×生徒 2 /6:2009/03/28(土) 19:34:48 ID:mAiVSKjo0
「君もひとりぼっちのときは古典を読めばいい。きっと記憶に深く残るよ」
「先生。それじゃあ俺は一年中読んでなきゃいけないことになるんですけど」
「じゃあ読めばいいじゃないか。周囲に気を回すことより、今は国語を8割取れるようになることが大切だ」

本気とも冗談ともつかない先生の口調に俺はただ顔をしかめるだけだった。
周りに適応するのが大の苦手で、へそ曲がりで愛想の無いガリ勉男。それが自他共に認める俺のパーソナリティだった。
この性格で損をすることも無かったとは言えない。
修学旅行や学園祭といったイベントは全く興味が湧かなかったし、ほんの少し可愛いと思ったクラスの女子とも一言も言葉を交わさなかった。
もともと友達と呼べる存在を知らない俺にとってそれは大した苦痛ではなかった。
寧ろ成績が低下して第一志望の大学に進めなくなる未来の方が俺にとっては大いなる恐怖だったので、俺はガリ勉の呼び名の通り勉学に励んだ――国語を除いて、は。
国立の四年制大学を目指す者なら極端に成績の悪い教科を作ってはならない。
理学部に進んで化学を専門に学びたいと考えている俺は、理系の御多分に漏れず国語が苦手だった。
春休み前の学年末試験でも、まずまずの結果を収めた「数学」や「化学」に引き換え「国語」は惨憺たるものだった。
解答用紙を俺に渡したときの先生の苦虫でも噛み潰したような顔は一生忘れないだろう。
先生は笑顔のお面でも被っているかのように滅多に表情を崩すことの無い人なのだ。

「大体、俺なんかが古典を習う意味なんて無いですよ」 シャープペンを手の中で回しながら愚痴を吐く。
「そうかな」
「俺は理科や数学しか出来ないアタマなんです。この先サイエンスを勉強するのに小説や古文の読解なんて必要無いっすよ」

教科書の頁をめくる先生の手はピタリと動きを止める。
先生は手の甲を顔に当てて頬杖を突くと、俺の顔を真正面から見つめた。
銀のフレームの眼鏡の奥で、切れ長の瞳がきらりと光って見えた。薄茶色の虹彩の中に俺の顔がユラユラたゆたっている。
先生が真顔になると俺は取調べされている犯人のような心持になる。
普段は猫のように緩んでいる目元が張り詰めると、俺の思考のすべてを読み取るような鋭い眼差しに変わるのだ。
75オリジ 教師×生徒 3 /6:2009/03/28(土) 19:38:22 ID:mAiVSKjo0
「無駄なことなんて無いよ」先生は落ち着いた口ぶりで語る。

「君たちの年ならどんな勉強でも必ず役に立つんだよ。一見無関係なことでも、いつかは君たちを支えてくれる何かになる。
 今は分からないかもしれないけどね」
「先生の言うとおりです。俺にはまだ国語を勉強する意味が分かりません」
「そうだよなぁ」 先生は間延びした声で言い、頭の後ろで腕を組んだ。
椅子にもたれて長い身体をうんと伸ばすと、小さな子供のようにペロリと舌を出した。
「僕も君くらいの年の時は同じことを言ったと思う。世間知らずの癖に生意気で大人の言うことは嘘ばかりと決め付けてたからね」
「先生もそうだったんですね」
「17歳なんて皆そんなものだ。
 ただ僕はそのせいで、英語も喋れなければ遺伝子の仕組みも分からない、古典を諳んじるしか能の無い大人になってしまったけどね」

先生はそう言うと大袈裟に肩をすくめてみせた。
先生は古典の造詣は誰よりも深いけれど、それ以外の分野に関しては無関心というか無頓着だった。
流行にも酷く疎い部類で、同僚に持たされた携帯の扱いさえ覚束ない。
女子はそんな先生の姿を「意外性があって可愛い」等と評価しているようだけれど、そのたびに俺は人生の不平等を実感する。
なぜなら同じことを俺がやれば彼女らは「オタクのくせに機械音痴」と冷笑を浴びせるに違いないからだ。
俺と先生の間には常にクレバスのような深遠な裂け目が存在する。そして俺はどう頑張っても先生の側には跳び越すことは出来ない。
先生のような『能の無い大人』になる方法があるのなら是非ともお目にかかりたいものだ。

「源氏物語を読む暇があるなら俺は微分積分の問題集をやりたいです」
悪あがきとも言える俺の呟きをたしなめるように先生はクスクス笑った。
「源氏物語は為になるよ。光源氏がなぜ数多の女性を虜にできたのかが分かれば、君の魅力も上がる」
教科書の片隅にある「源氏物語絵巻」を見つめながら俺は首を捻った。
いくら和歌や楽器が巧みでも、こんな下膨れで顔を真っ白に塗りたくった男が色男の筆頭になるとは俄かに信じがたい。
価値観や美意識は時代とともに移り変わることを実感する。そして、恐らく先生は、一千年前の日本であっても魅力的な男性と賞されるのだろうことも。
76オリジ 教師×生徒 4 /6:2009/03/28(土) 19:40:49 ID:mAiVSKjo0
先生は著しく出来の悪い生徒の面倒を見ることに流石に疲れてしまったようだった。
椅子から立ち上がると柳のようにしなやかな身体を伸ばし、窓辺のカーテンをめくって外の景色を眺めた。

「ああ、今日は良い天気だ。こんな日は生きててよかったと心底思うよ。やっぱり春は素晴らしい季節だ」

独り言を零しながら先生は嬉しそうに目を細める。春の陽射しが先生の黒髪を照らして天使の輪を浮かび上がらせている。
気障とも言える台詞を口にしながらまったく嫌味に感じさせないのは、先生が“繕う”とか“装う”とかいう概念からはある意味かけ離れた人間だからなのだろう。
誰もが欲しがるありとあらゆるものを備えて生まれてきた先生は、どうして地方の高校教師を職業に選んだのだろう。
大学に残れば先生の大好きな古典を一生研究する道があっただろうに。
こんな古ぼけた教室で、古文単語も漢文の句法も覚えられない愚図な生徒を相手にしている場合ではないんじゃないのか。
そう思うと突然先生に対して申し訳ない気持ちが芽生えてくる。
よしここは心機一転、しっかり勉強して枕草子の一節くらい暗唱できるようになってみせようじゃないかと教科書を睨んでみたが、
生来の国語アレルギーには案の定勝てなかった。
諦めて教科書に顎を乗せた俺は、開け放した窓に頬杖を突き暢気にハミングしている先生を見つめた。
口ずさんでいる歌を俺は知らない。流行にとことん弱い先生のことだから最近のJポップではまず無いだろう。
吹き込む春風に花粉は混じっているのだろうか、鼻の中や目頭にジワジワとむず痒さが広がる。
たちまち目には涙が覆われ、鼻腔の奥から鼻水が押しかけてくる。
くしゃみをしそうになるのを堪えながら俺は春を恨めしく思った。こんな季節、好きだと言う奴の気が知れない。
「先生って春が嫌いだったんですよね」
「そうだよ」 先生はやんわりと答える。「人間関係も難しいし、僕を置いてきぼりにして日に日に陽気になっていく街が大嫌いだった」
「でも今は好きだと」
「そうだね」
「何でですか」
先生はこちらを振り向く。そっと革靴を床に鳴らして、教科書の上で犬みたいに項垂れている俺に近づいてくる。
長く伸びた先生の影が俺の身体の上に重なる。次の瞬間、頭の上にフワリと柔らかな感触が降りてきた。
先生は俺の頭を撫でていた。
77オリジ 教師×生徒 5 /6:2009/03/28(土) 19:41:33 ID:mAiVSKjo0
「大学を出て、教師になってから」 先生は静かに呟いた。
「色んな生徒と出会った。担任した初日から分かり合えるような子もいれば、僕の力不足で最後まで気持ちが通じ合わなかった子もいた。
 子供たちは僕に幸せな出会いも苦い出会いも与えてくれた」
先生は歌うように囁きながら俺の頭を撫でていた。驚きはあったけれど、不快感とか拒否する気持ちはまるで湧いて来なかった。
先生の掌は俺と違ってずっと大きくて、よく焼けたパンみたいにフカフカしている。
太陽の光をたっぷり吸い込んだその掌は温かくて、俺は天からの恵みでも受けているような気分になる。

「だけどね」先生はそう言うと何がおかしいのか一人でニコニコ笑った。「中には“いる”んだよ」 
「時々僕の若い頃に似た生徒に出会うんだよ。僕はその子に会うと苦しくって仕方が無い。
 忘れたはずだった自分の弱点や過去の過ちを思い出さされてしまうからね。
 でも、苦しい反面……」

先生は一瞬口を閉ざした後、男でも見惚れるような可愛らしい照れ笑いを浮かべた。

「僕はその子が愛おしくて仕方が無くなる。
 その子が学校で上手くやっていけてるか気を揉んでしまうし、姿を見かけたらいつまでも目で追ってしまう。
 そういう厄介でも放っておけない子との出会いがあるうちに、いつしか春を憎む気持ちは溶けてしまっていた」

先生は俺の頭から手を離し、椅子に腰を下ろした。そして不意に俺の手を自分の両手で包み込んだ。
胸の中を得体の知れない熱いものが駆け抜けていく感覚がした。
こめかみに汗が滲む。心臓が痛いほど体の内側を暴れている。
驚きでも不快感でも煩わしさでもない、この頭の天辺から爪先まで何かで貫かれたような鮮烈な感情は何なんだ。
こんな感情、俺は今まで一度も知らない。

「先生」 掠れた間抜けな声を吐き出すので俺は精一杯だった。どうしたんだ、俺。どうしてこんなに必死なんだ。

先生は唇を薄く開いた。整った白い歯並びが奥からうっすら窺えた。

「世間知らずの癖に生意気で、大人の言うことは嘘ばかりと決め付ける、子供」
78オリジ 教師×生徒 6 /6:2009/03/28(土) 19:42:20 ID:mAiVSKjo0
一瞬先生が何を言っているのか理解できなかった。
鈍った頭を必死で回転させて俺はようやく記憶を蘇らせた――そうだ、これはさっき先生が言ってたことだ。
過去の自分のことを先生はそう形容していた。先生自身が俯瞰した17歳の先生は、そういう人間だったのだ。

「君は僕に似ている」

満足げに囁いた先生は俺の手を宝物みたいに優しく握り締めた。
先生の掌の感触がじかに伝わってくる、先生のぽかぽかした体温が直接俺に染み込んでくる、先生と俺が今繋がっている――
意識が混濁していく。テスト中でさえこんなに緊張した経験はかつて無かった。
気が遠くなりそうな感覚に襲われながら俺はひたすら先生を見つめていた。先生も俺を見つめ返していた。
先生の薄茶色の虹彩に俺の顔が映っているということは、俺の目にも同じ事態が起こっているのだろう……
当然と言えば当然なのに俺の心臓は波のようにうねりを上げて轟いた。
先生はゆっくり俺から手を離すと、いつも通りの愛想のいい笑みを浮かべた。
その表情はあまりにも普段見かける先生そのものだったから、今さっきまでの出来事はすべて俺の妄想なのかと錯覚しかけた。
先生は椅子に深く腰掛けて、三日月のかたちに口元を緩めた。

「……それが、僕が春を好きになった理由。分かった?」
「は、はい」
「よろしい。じゃあまた再開しようか。補習」

先生は長い指で眼鏡を整えると、分厚い古典の資料集を手に取りパラパラ頁をめくり始めた。眼鏡の中の瞳はいまや完全に資料集に向けられている。
俺はすっかり身体の力が抜け落ちてしまった気分だった。椅子にぐったりともたれ、焦点の定まらない目を彷徨わせていた。
源氏物語も枕草子も、もうこれっぽっちも頭に入らない。
使い物にならなくなった脳には古文単語も漢文の句法も暗記する余力は残されていない。
だから勿論、さっき俺を襲った眩暈にも似た強烈な感覚の正体を推測することも出来なかった。
花粉は飛ぶし環境は変わるしおまけに変わり者の先生と補習もさせられるし。
やっぱり、春が好きだと言う奴の気が知れない。
79オリジ 教師×生徒 おわり:2009/03/28(土) 19:42:58 ID:mAiVSKjo0

              ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < お目汚し失礼しました…
        //, 停   ||__           (´∀`⊂| 
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜 <もしかしたら続くかも
         | |      /  , |           (・∀・; )、 
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!  
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
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 |         | ./
 |_____レ
80風と木の名無しさん:2009/03/28(土) 22:23:09 ID:+5t26ehrO
生、某美容室のママ×次女。というか御大2人。
猿スレ住人に捧ぐ。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
81某美容室ママ×次女1/4:2009/03/28(土) 22:28:48 ID:+5t26ehrO
 上手いこと作ってあるもんだと思った。いい女を見ると抱きたくなる、いい乳を見ると揉みたくなる。気付いた時には手がしっかりと掴んでいたのだからしょうがない。
 先に女装のメイクを済ませた、あろうことか相方の(しかしながら偽物の)胸を堂々と真ん前から揉んでしまった。
「うっわ、柔らけえ…」
「なに揉んでんだよ!」
 男の理想と、何か柔かい詰め物が入っていると思われるそこはムニムニと掴み心地がいい。よくできてるなと感心する。最近の美術さんはすげえな。むらっとしたのが楽屋の中で良かった。人前でこんなことをやっていたら完全に変人扱いだな。
82某美容室ママ×次女2/4:2009/03/28(土) 22:31:03 ID:+5t26ehrO
「いつまで揉んでんのよ…離しなさいよっ」
 偽物の胸を触られている当の本人は腕を無理矢理剥がそうとしてくる。あんたも半分笑ってんじゃんか。
「いいじゃんか〜海苔ちゃんのケチぃ」
「うるさい、乳を揉まれて黙ってらんないわよ」
 綺麗に化粧をして目がチカチカするシルバーのロングドレスに身を包んでいても中身は男、板についたオカマ喋りで俺の顔を思いっきり押し退け抵抗してくる。
83某美容室ママ×次女3/4:2009/03/28(土) 22:32:31 ID:+5t26ehrO
だんだん楽しくなってきて、くすくす笑いながら相撲かプロレスのように押したり引いたりしてお互いの体を押し付けあった。
 上背も体格も俺のがあるってのに海苔竹は負けず嫌いだから一歩も引こうとしない。ぐいぐい体を押し付けてくる。こういうところは昔っから一個も変わんねえな。そういえば高校時代からこんな悪ふざけばっかりして遊んでたっけ。全然進歩ねえな、俺らって。
 そんな他所事を考えていた隙に海苔竹がえいっと体当たりしてきた。ついたたらを踏んで床の上に転がってしまう、派手に背中を打った。
84某美容室ママ×次女4/4:2009/03/28(土) 22:33:38 ID:+5t26ehrO
「痛えな…、」
「ははは」
 背中の痛みに眉を顰めつつ、ちぇっ、負けたかと思い上を見上げればいつの間にかそこには海苔竹が。
 ん、上に乗ってねえか?かっ…顔が近えよっ!
 気付いた時にはもう遅かった。俺の上に馬乗りになった海苔竹が唇を押し付けてくる。そのうち口ん中に舌まで入ってきて、意図せずディープキス。驚きのあまり抵抗するのを忘れていた。
「ッ…のっ、海苔ちゃんっ!!」
「多化秋が悪いんだからな」
 睨みつけてみてもいつも一緒にいるこいつには全く効かないことにまで頭はいかず、少々パニック気味。俺の腕を掴んで離さない海苔竹は俺の頭上で悠々と笑っている。さっきまで海苔竹の唇の上で眩く輝いていたピンク色は少し薄く滲んでいた。
85風と木の名無しさん:2009/03/28(土) 22:37:07 ID:+5t26ehrO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
この2人の話を書いたのは実に7年振りでした。
86風と木の名無しさん:2009/03/29(日) 00:51:43 ID:aC/EDbzCO
>>85
超GJ!!!
87風と木の名無しさん:2009/03/29(日) 02:29:02 ID:duDsnUTB0
怪物猿人のコント「神/々/の/遊/び」から、左×右
懲りずにまた書いてしまいました。導入部はこの前の
荒びき段でやってたネタです。
あれを見て妄想が膨らんでしまいました。
今回も、いろいろご都合捏造設定てんこもりです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
88神々 無理矢理(?) 1/10:2009/03/29(日) 02:29:42 ID:duDsnUTB0
「お前は」
「久しぶりだな…」
ひび割れた低音が、不吉に唸る。
「二千年前に、葬ったはずだ」
「今度はおれがお前を葬る番だ」
面フェンティスは、久方ぶりに再会した仇敵の姿を驚きをもって見つめた。

―――幸せを喰う化け物、マー。

不気味に光る黄金の仮面。ほぼ全てのパーツが人の身に似通っているが、
左手のみがグロテスクに膨れ上がり、爬虫類のような硬い皮膚で覆われている。
見間違えようもない、それは確かに、彼が二千年前に葬ったはずの闇なる存在
であった。
しかし彼は取り乱さなかった。勝算があったからだ。
「お前は、同じ過ちを二度も繰り返すのか」
そう言って、ゆっくりと呪文の詠唱を始める。
言の葉に呼応して青い空気が震え、研ぎ澄まされた力がマーの心臓目掛けて
針のごとく突き刺さっていく。
「ぐおおっ!な、なんだ、熱い、熱い、胸が焼ける、あ、熱いっ……があっ!!」
効果はすぐに顕れた。苦しみだす敵の姿に、面フェンティスは満足気な笑みを
浮かべる。
だがその時、急に悲鳴が途切れた。
辺りの景色がいびつに歪み、床が揺れる。
不意を突かれた面フェンティスが呪文をとぎらせた。次の瞬間、彼は不可視の
力で強く引きずられ、バランスを崩し床の上に倒れこんだ。
息を呑む間に蛇のようなうねりが腕と脚に巻き付いてきて、五体をがんじがらめ
に縛る。もがいても外せない。
89神々 無理矢理(?) 2/10:2009/03/29(日) 02:30:24 ID:duDsnUTB0
あっという間に、彼は敵の罠のえじきとなっていた。
「油断したな、ククッ……いい様だ」
怪物が勝ち誇ったように笑い声を漏らした。
言葉のとおり、彼は床上に大の字に拘束され、仇敵を見上げる格好となって
しまっていた。
四肢を動かそうとしても、見えない鎖が邪魔をする。
神は無表情を保ちながらも、内心激しく動揺していた。
―――何故だ?
先に闘った際、二人の間にこれほどの力の差はなかった。少なくとも二千年前の
様子を鑑みれば、呪文も使わずに自分を押さえこむという芸当がマーにできるとは
考えられない。
「おれの力が、昔と変っていないとでも思っていたのか。一度敗れた相手に、
勝算も無く再び挑むとでも?」
自分の驚きを見透かした嘲りに、面フェンティスは歯噛みする。
確かに、以前と同じ力と見て侮ってかかったのは、落ち度であったのかもしれない。
そう悔やんでいると、怪物の変形した左手が、ぐいと喉元に迫ってきた。
殺される。
面フェンティスはそう直感した。
黄金の仮面が沈黙と共に這い寄る。ちらりと相棒の顔が脳裏をかすめた。
彼は死を恐れはしなかったが、自分を失った面フィスはどうするのだろうかと、
それが気掛かりであった。

だが予想に反してその手は首を絞めようとはしなかった。
それどころか、鎖骨をなぞりながら下へと滑り、あらわになっている彼の胸や腹を
撫で回し始めたのだ。
「何を、しているのだ」
無遠慮な手の感触に、潔癖な神は怖気だつ。

90神々 無理矢理(?) 3/10:2009/03/29(日) 02:31:00 ID:duDsnUTB0
「殺す前に、お前を味わってやろうと思ってな」
面フェンティスは一瞬、何を言われたのか分からなかった。
「なんだと」
理解を促すように、逆の手がするりと下穿きの中に入りこんでくる。
「やめろ」
無論、怪物がその制止を聞くはずもない。
マーが短い呪文を唱えると、黒い衣装はふわと溶けて虚空に消えた。
一糸まとわぬ姿となった面フェンティスは、そのおぞましい二つの物体から自分を
引きはがそうともがいた。
「ヘヴェガストウーガストウディセーヴィア……っ」
詠唱をもう一度試みるも、枷はびくともしない。
「無駄だ、ここではお前の力は使えない。この家全体には結界が張ってある」
その言葉に、面フェンティスは今度こそ本当に驚愕した。もちろんその驚きは、
表情には表れていなかったが。
結界を張ることができるのは、神族のみのはずである。マーが何らかの方法で
その秘技を盗んだのだとしたら、それこそ上の世界を揺るがす重大事である。
「お前は、どうやって…」
詰問しようとした矢先、強く握られて面フェンティスは言葉を失した。
「神といっても、ここは人間と大差ないようだな」
マーは玩具を弄ぶ子供のごとく、手の中の雄芯を撫で回す。
全身の肌が不快感で粟立った。だが裏腹に、赤く色づいた性器は物理的刺激で
勃起し始める。
「固くなってきたぞ……意外と楽しんでるみたいじゃないか」
侮蔑の色をつけた台詞に、面フェンティスの胸は瞋恚で熱くなる。
茎から袋までくまなくもみしだかれ、会陰を指先で押され、執拗に弄られた
鈴口から、じわと雫が滲み出した。
ごつごつした手でわき腹を撫でられて、腰がひけそうになったのを笑われた。

91神々 無理矢理(?) 4/10:2009/03/29(日) 02:31:37 ID:duDsnUTB0
神は口をつぐみ、皮膚を這い回る手のおぞましさにひたすら耐えた。
このような卑しい者に体を汚されると思うと、怒りと屈辱で破裂しそうである。
だが、肉体は肉体でしかない。無様な哀願などして、この卑劣漢を喜ばせてやる
つもりはさらさらなかった。

「さて、こっちはどんな具合だ」
楽しげにそう言うと、怪物は固く閉じられた蕾へと凌辱の手を延ばす。
神はとっさに脚を閉じようとしたが、むろんそれは不可能だった。
長い指がすぼまりを貫いて侵入してくる。
仮面の下では貪婪な笑みを浮かべているのだろうか。その嫌らしい表情が
見えないことが唯一の救いだと思いながら、面フェンティスは心の中で悲鳴を
上げた。
「…お前は、自分が、何をしているか、わかっているのか」
「わかっているさ、初めてお前を見たあの時から、こうして汚してやりたいと思って
いた」
自分の内部を掻き回す異物に、面フェンティスは吐き気をもよおす。
とても耐えられない。だが耐えなければならなかった。
この下劣な怪物に弱みを見せたくはない。見せるわけにはゆかない。
せめて矜持だけでも守ろうと、神は総身を緊張させ、声一つ立てまいと歯を
食いしばる。
そんな面フェンティスの態度に焦れたのか、マーは浅く息を吐く。
「そうもったいぶるな、どうせ、あの男には散々抱かれているんだろう」
「…あの男、とは」
「真鍮の兜をまとった男のことだ」
(…面フィスのことか)

92神々 無理矢理(?) 5/10:2009/03/29(日) 02:33:41 ID:duDsnUTB0
マーがどうやって自分と面フィスの間を知ったか知らないが、それはもはやどうでも
いい。
この怪物が面フィスについて言及したことの方が、彼の神経に障った。
「お前のような、汚らわしい者が、面フィスと同等に、置かれると、思っているのか」
途端に、爬虫類のような爪で胸の尖りをひっかかれ、痛みと快感で身がわななく。
「そんな口を聞いていられるのも、今のうちだ」
下卑た声色の台詞とともにずるりと指が抜かれ、代わりに、熱い肉の塊が押し付け
られる。
おぞましい衝撃を予期した面フェンティスは、せめて声を出すまいと、天井の一点
に意識を集中させて唇を噛んだ。

それが、侵入者が狭隘を割って入ってくる感触が残酷なほどはっきりと感じられ、
高邁な神は屈辱に胸を震わせた。
脳髄まで届く、たとえようもない圧迫感が内臓をせり上げる。充分に慣らされていた
せいか痛みはさほどない。
それが余計に惨めさを誘った。
「どうだ、敵に犯される気分は」
「…………」
沈黙を守る彼に構わず、マーが腰を使いはじめる。
ゆっくりと、抜き差しを繰り返された。
予想外の丁寧なやり口に神は焦った。内部の楔が隧道を何度も擦り上げ、
慣らされている下半身は熱を帯び始める。
「感じているなら声をだせ、悪くないだろう?」
凌辱を続ける怪物が、低く笑う。
彼の身体はマーの揶揄した通り、勝手に昂ぶって熱くなっていた。
───しかし、心はぞっとするほど冷えていた。
面フィスに抱かれる時とは、まるで違っていた。

93神々 無理矢理(?) 6/10:2009/03/29(日) 02:34:25 ID:duDsnUTB0
面フェンティスは目をきつくつぶり、我が身に起こっている一切を意識の外に追い
やろうと努めた。人間なら泣き叫んでもおかしくないような状況下で、神は強靭な
精神力で全ての反応を押し殺した。
マーはそんな彼を、言葉で嬲り始める。
「こんなお前の姿を見たら、あの男はなんと思うだろうな」
「お前のような、外道に、面フィスは、心を乱されたりはしない」
「……ずいぶんあの男を信頼しているようだな」
「お前に、我々の絆が、理解できるとは、思っていない」
怪物が、ぴた、と動きを止めた。
「そんなに、あの男が、好きなのか」
そう問いかけるマーの声は、なぜか奇妙に澄んでいた。

「好きか、嫌いかの、問題では、ない……私と、面フィスは、同じ星の元に、
定められている。初めて、面フィスを見たとき、私には、すぐに、分かった…」
無反応で耐えていた面フェンティスだったが、相棒のことを口にした瞬間、ずしりと
重いものが胸にのしかかってきた。
自分はもうすぐ殺されるのだから、悩む必要もない。こんな恥辱を受けて生き恥を
さらすより、いっそ一思いに死んでしまえば気が楽だ。

だが、面フィスは?
この卑劣漢は、きっと自分を辱めたことを自慢げに触れて歩くに違いない。
それを知った彼がどれほど嘆き、傷つくことか。
(―――すまない、お前を、悲しませたくはないのだが)

多分、二度と会えないだろう。声を聞くことも、ない。
(面フィス)

94神々 無理矢理(?) 7/10:2009/03/29(日) 02:35:09 ID:duDsnUTB0
生温かい液体が顔を伝った。
ややあって、面フェンティスはそれが涙であることに気づいた。
(……私は)
情けない。
今の今までこらえていたというのに。

神々の間では、感情を表に見せないことが美徳とされる。まして、神が涙を流すと
いうことはかなりの非常事態である。
怪物のあざけりを予期した面フェンティスは、目を閉じたまま横を向き、残りの
涙を強引に押し込めた。
しかし、いつまでたってもマーは言葉を発しなかった。
そして長い沈黙の後に、名を呼ばれた。
「面フェンティス」
「…………」
「面フェンティス、目を、開けるのだ」
返事をしないでいると、髪を一房つかまれて何度かひっぱられた。
「目を開けろ、私だ」
───はっと衝撃を受けて目を開く。
「私だ」
「…どういう、ことだ」
混乱する面フェンティスの眼前には、ありえないものがあった。
気の遠くなるような時を共に過ごしてきた、見慣れたかんばせ。
「また、騙されたな」
かすかな揶揄の響きを含んだその台詞。
「おまえは」
95風と木の名無しさん:2009/03/29(日) 02:46:07 ID:yAnnrWNa0
支援?
96風と木の名無しさん:2009/03/29(日) 02:57:22 ID:YIQheesHO
すいません、さるさん…というのになってしまいました。(今は携帯から書いています)
続きはまた明日にでも投稿したいと思います。スレ汚しすいませんでした。
97神々 無理矢理(?) 8/10:2009/03/29(日) 08:14:52 ID:YIQheesHO
瞬時に全てを理解した神は、再び目をきつく閉じた。
「お前など、私は、知らない」
そう言い張る面フェンティスの四肢は、いつの間にか自由を取り戻していた。

身を起こそうとした瞬間腕をつかまれ、そのまま男の膝に身を乗せる格好に
させられる。
「本当に、私を、知らないのか」
黒曜石のような眸が、至近距離でこちらを見つめていた。
体はまだ繋がったままだ。逃れようとしたところを軽く突き上げられ、
面フェンティスは身をよじった。
「お前の体は、私を、知っているようだ」
その変化は面フェンティス自身も感じていた。
今まで侵入者を拒んでいた内壁が、なぜかざわめいて誘うように開いていく。
わざとではない。自分でも、止められなかった。
それでも目の前の男を喜ばせるのが癪で、面フェンティスは目を反らして 黙り続ける。
「……すまなかった」 沈黙を守る面フェンティスに、男は詫びを入れた。
「知らぬ……お前な…ど…」
形だけの拒絶を口にしながら男にきつくしがみつくと、男はかすかに笑って
彼を抱き返し、律動を再開した。
嗅ぎ慣れた体臭が鼻腔をくすぐる。緊張が霧散して、結合部から上がってくる波が
体中を甘く溶ろかせていく。
認識一つでここまで変わるのかと、面フェンティスはかすかに驚いた。
大きな手で脊柱の凹凸をなぞられ、首筋に噛みつかれ、吸われる。
面フェンティスは男と一緒に腰を揺らしながら、魂が官能を越えて澄きとおって
いくのを感じていた。
98神々 無理矢理(?) 9/10:2009/03/29(日) 08:16:55 ID:YIQheesHO
「ふ……っ」
肌と肌が触れ合う。荒い息を吐きながら、自分を解放して熱に酔う。
騙された意趣返しに、最後まで知らないふりを続けてやろうと神は考えていた。
だが極まる瞬間、彼はどういうわけか、腕の中の男の名前を口にしていた。


「すまなかった」
事が済んだ後、面フィスは騙した相棒に改めて謝った。
「本当は、もう少し早く、正体を、現すつもりだったのだが……つい羽目を、
外してしまった」
「お前は、趣味が悪いな」
面フィスの口元には、しっかりと見なければそれと分からないほどのかすかな
笑みが浮かんでいる。頭に血が上っていろいろ口走ってしまったことを、
面フェンティスは後悔していた。
「結界を作るのに、どれほど、かかった」
「三百年、ほどだ」
「そこまでして、私を、強姦、したかったのか」
「……ひま、なのだ」
「それは、わかっている」
悪びれる様子のない相棒に、面フェンティスは浅くため息を吐く。
「しかし、お前の涙が、見られるとは、思わなかったぞ」
「お前の、せいだ」
「だから、謝っているではないか」
許されることを知っていて謝るのは卑怯だと、面フェンティスは心中で憤った。
だからといって、どうしようもない。
もちろん彼も、本気で怒っているわけではないのだから。
99神々 無理矢理(?) 10/10:2009/03/29(日) 08:18:48 ID:YIQheesHO
「許せ」
「……もう、許している」
即座に唇を奪われた。しばし攻防を楽しんでいるうち、覚えある甘い感覚が背骨を
這い登ってくる。
面フェンティスは顔を離し、じっと相棒を見つめた。
「私は、お前一人で、十分満足している」
それを受けた面フィスは真顔で、私もだ、と答えた。

「暇をもてあました」
「神々の」
「イメージプレイ」

「……面フィスよ。イメージプレイとは、なんだ」
「お前は、知らなくて、よい」

100風と木の名無しさん:2009/03/29(日) 08:21:11 ID:YIQheesHO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
さるってる間にアクセス規制がかかるというギャグのような状況でした。
根性で携帯から投稿しました。

では、読んでくださってありがとうございました!
101風と木の名無しさん:2009/03/29(日) 10:19:38 ID:i42Mt09r0
>>87
萌えたよーGJ!
萌えに萌えたあとに、イメージプレイで爆笑させていただきましたw
神々かわいいよ神々
102風と木の名無しさん:2009/03/29(日) 13:23:33 ID:6BvrizGPO
>>87
乙。そしてGJ!!!!
萌えました。
103風と木の名無しさん:2009/03/30(月) 02:01:29 ID:nMZ+3mLgO
毎回ありがとう!
今回も萌えさせて頂いた…!
104生 白ぬこ 0/7:2009/03/30(月) 19:14:00 ID:GAfco+/wO
白→紺にゃんこ?171っぽく…。
まだWβCからの時差が抜けてないらしい7。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!



まだ、深く眠れない。
帰国して数日経ったのに、また開幕も近いのに、全く困ったことだと思う。
一度寝付くには寝付いたのだけれど、1時間も経たないうちに目が覚めた。
そしてそれからはまんじりとも出来ず、薄暗い壁のはじを眺めながら、久利山の寝息を聞いていた。
あまりにも規則正しい寝息が聞こえるので、最初はそのまま眠れるかと思った。
けれど何事も、そうそう上手くはいかない。
他人の寝息が、だんだんめんどくさくなってくる。
外を走る車の音が、何故かいらいらしてくる。
経験上、眠れないからとそういう時に羊を数えるのも、必死に悩むのも逆効果と知っている。
結局は、だらだら眠気が来るまで夜をやり過ごすしかないのだ。時々寝返りを打ちながら。
けれど隣に人が居ると、何度も寝返りを打つのもどうしたものかと、何となく気を遣ってしまう。
起こすのは悪いし、かと言って男二人でじっとしているのには、ベッドの上は流石に狭くて肩がこる。
105生 白ぬこ 1/7:2009/03/30(月) 19:15:52 ID:GAfco+/wO
形岡はゆっくりそこを抜け出して、足音を忍ばせながらリビングへ戻る。
小さな明かりと音量を絞ったテレビをつけて、出来るだけどうでもいい番組にチャンネルを合わせた。
「…ふ、っしゅ」
鼻が軽く詰まる。空気はしんと静かで、まだ冷える。
温もっていた体から、交じり合っていた体温が消えていく。花粉症もあり、鼻のとおりは良くはない。
冷蔵庫から水を取り出して、とりあえずソファに座って、クッションを抱いてみた。
テレビではニコニコ笑うキャスターが、こんなにもよく落ちる洗剤、の宣伝をやっている。
油汚れもソースも醤油の染みも、ほらこんなにもと。
ヘェすげぇな、と一応返事をしておく。
しかしそんなによく落ちる洗剤なら、ニーズにあった時間に宣伝すればいいものを。午前3時だぞ。
多分まっとうな主婦の皆さんは、この時間にはベッドの中だ。
水を飲んで、あー、と小さく呟いてみた。抱きしめたクッションに顔を埋めて、ぶつぶつ言ってみる。
体は疲れているのに、頭のどこかがくっきりしてしまった。
「あーあ」
自分の声が水面下のように聞こえた。
眠れない。
「…やっさん?何見てんの?」
「わっ」
不意に背後から声がした。
106生 白ぬこ 2/7:2009/03/30(月) 19:17:17 ID:GAfco+/wO
びっくりして、息を止めて振り向くと、眠たそうな顔で髪を掻く久利山が。
「あ…悪り、起こしたか?」
「んー、俺ものど渇いた」
言うと久利山はキッチンのほうで、バタンと冷蔵庫を開けた。
本当に眠そうに、億劫に、ミネラルウォーターのペットボトルを一気飲みする。
テレビでは相変わらず、キャスターが色んな物の油染みを抜くのに忙しそうだった。
「…何、通販?深夜番組?」
「そう」
「買う気なん?」
「まさか」
「やっさんらしいけどな。洗剤欲しがるて」
ぱたぱたとフローリングを歩く足音。笑う声が近い、と思った瞬間、ソファの後ろから腕が伸びてくる。
形岡の首に鼻を埋めて、久利山がぐりぐり頭をこすり付けてきた。
「どしたん。寝られへんの?」
こもった声に、形岡はそのスウェットの腕をぽんぽんと叩いて応える。心持ち背後に体重をかける。
「あー、まだ時差ボケ」
「疲れてるって言うてたのに」
「そーなんだけどなー、一回うつらうつらしたら、何でか目が覚めるんだよ」
困ったなあ。明日はちゃんと起きるつもりだったんだけど、形岡は言うが久利山は黙っている。
鼻をかるくすすると、またくしゃみが出た。
「…何や、そうか」
「久利?」
「…あー」
107生 白ぬこ 3/7:2009/03/30(月) 19:18:36 ID:GAfco+/wO
何故だかため息のように息を吐いて、改めて久利山の腕が強く絡み付いてきた。
離すまいとでもいう仕草だ。
「びっくりした…」
ぴったりあたる体温、耳の感触、髪がくすぐったい。構わず寝ろよと言おうとしたとき、久利山が呟く。
「また、おらんくなったんかと」
「…」
何だそれ。そう言ったつもりだった。
テレビがどっと沸く。今回は特別価格で、何とこんなおまけまで、とキャスターが破顔している。
それに応える声、声、笑い。そしてコマーシャルソング。
久利山は、一度寝たら早々起きない。それはよく知っていた。
いつだって、昔からそうだった。キャンプのときも、遠征先ででも。
絡む腕が、形岡の肩を掴む手が、何かを求めるようにうねるように、うごめく。
聞こえるのはコマーシャルソング。
そして、さっきの寝息の具合を思い出していた。
「…なあ久利」
「ん」
「しよう、か」
その指に、形岡は遊ぶように触れた。ほんの少し、だけ。
108生 白ぬこ 4/7:2009/03/30(月) 19:21:49 ID:GAfco+/wO
「…は?」
そうとしか口に出来なかったんだ。
しかし久利山の食いつきは悪かった。
場違いだとでも言いたげな不機嫌そうな声に、思わず口ごもる。
ヤバい、と自分の言ったことに頭の中が熱くなる。
「や、…その、…えっと」
「やっさんさ、とりあえず何かスポーツ的に考えてへん?」
「んん?」
「一発やってうまいこと疲れて、そんでぐっすりとか計画してへん?」
「…あ、バレた?」
「バレるわ!何やもう、ムードもへったくれもない人やなあ…っ!」
ぐぐぐと、腕の使い方が締め技に変わる。苦しい、ごめん、形岡は腕を叩く。
あんなに眠っていたのに、お前の目がそんなことで覚めるなんてと、思ったんだ。
もしかしたらそんな風に、俺のいない間何度も目を覚ましていたんじゃないかとか。
でもそれを、どうしてか口に出来なかったんだ。
そうとしか、言えなかったんだ。
ああもう、全く、ほんまにとぶつぶつ久利山は呟いている。
「…協力する」
そしてぼつりと、怒ったみたいに言う。
109生 白ぬこ 5/7:2009/03/30(月) 19:23:37 ID:GAfco+/wO
「協力するから」
「は?」
「ちゃんと寝て、ちゃんと起きて欲しいし」
「…ん、それって?」
「早く帰ってきて欲しい」
せわしなくまた、彼の額の辺りが頚と肩にぐりぐり押し付けられる。
こちらはソファの背もたれに、思い切りひきつけられる格好だ。柔らかい皮と、きつい筋肉に捕まる。
「その時差」
ブツ、と音がした。
見ればテレビの画面は、砂嵐に変わっていた。
「まだあんたが、あっちにいるみたいで嫌や」
誰も何も言わなかった。
肩岡は黙っていたし、久利山も黙っていた。もちろんテレビもざあざあと、雑音で震えるだけ。
白っぽい画面を見つめていたら、目の奥がちりちりした。ああ、やっぱり眠くない。
早く帰りたいよ。お前が引き戻してくれ。
「…じゃ、ベッドで」
「ん」
って、なーんちゃって。
さらさら髪をなでてやると、久利山はやっと腕を緩めた。
こちらの腕を引っ張るようにして、行くよと肩岡を立たせる。
110生 白ぬこ 6/7:2009/03/30(月) 19:25:49 ID:GAfco+/wO
指の感覚だけで引っ張る。顔を見せないで、背中だけ見せる。
もしかして照れてるのかとか、そう思ったら何だか笑えた。
「それに、こういうのは」
「こういうの?」
「…ひとりやったらできひんことやしね」
「お前、一人でやってたの?…って、痛ッてェ!」
面白かったのでふと言ったら、こっちが先輩なのに容赦なく殴られた。
ぐいぐい引っ張る力は変わらないくせに、器用な奴だ。
全く、ムードもへったくれもないのはどっちだ。
111生 白ぬこ 7/7:2009/03/30(月) 19:26:53 ID:GAfco+/wO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

昨日のコンビネーションを見て、さらにもうすぐ始まるのでwktkしてるんだぜ…
112風と木の名無しさん:2009/03/30(月) 22:34:48 ID:Jxq8l8y+O
>>104
本番前のご馳走ありがとう
ちょっと焦れったい感じがたまらなく萌えだ
昨日のあれ見て同じくwktk
113風と木の名無しさん:2009/03/31(火) 01:26:46 ID:ZnTVgiz7O
>>104
姐さんいつもありがとう!
じゃれあいたまらなく萌えますたよ…
昨日のあれを見られず残念
114風と木の名無しさん:2009/03/31(火) 02:44:08 ID:qQkQFxXy0
灯/火のR/O/Lで調子者→紅炎
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 ベッドに投げだされた身体を見下ろして、さてどうしようかとダニルは額に手を当てた。
毛布の上に横たわる赤髪は見間違えようもない、情報の対価を支払うため
マナン情報屋に住み込みを続けているフェルテスのものだ。

 ダニルが彼を見かけたのは街中でのことだ。ダンジョンから引き上げた直後だったのか、
フェルテスはふらふらとおぼつかない足取りで街を歩いていた。
普段、しゃんと背筋を伸ばして歩く男の薄汚れて頼りないさまに、一抹の不安が胸をよぎる。
 アビスターナはその土地柄、教国や帝国の軍人があまた駐在しているが、
それが治安の向上に繋がるかといえば一概にそうとはいえない。
むしろ軍人同士の諍いは日常茶飯事だし、大陸のあちこちから流れてくるハンターに盗賊団と、
アビスターナはモンスター以上に人間に気をつけなければならない土地だった。
 フェルテスの経歴がそれに拍車をかける。かれに恨みを抱く者たちは多い。
いくら街中とはいえ、あのいかにも弱りきっているようすでは、いつ盗賊団に
物陰へ引きずり込まれるかわかったものではない。無事情報屋まで辿り着けるかもあやしかった。
 手袋に包まれた指先を額に当てて、少しだけ考える。わかりきった結論を再確認するのに
たいした時間は要らなかった。
「ま、旦那のお気に入りを守るのも、部下の務めってことで?」
 誰にとも無く呟いて、薄暗いこの地にも明るく輝く緋色の髪を追いかける。
エルオがかれを気に入っているのなんて、いつも側で見ているダニルには知れたことだ。
にやりと、あまり性質のよろしくない笑みを浮かべて、ダニルは人ごみにそっとその姿を紛らわせた。
115風と木の名無しさん:2009/03/31(火) 02:47:09 ID:qQkQFxXy0
 情報屋の扉の向こうに消える赤毛を見送って、ダニルはふうと息をついた。
凝視しすぎた目と凝り固まった首がだるい。乾いた音を立てて首を回す。
見上げた空は常よりもなおいっそう暗く重たく、街を照らす灯りもその数を増やしている。
夜が近いのだ。
「仕事の残りは明日に回しちまいやすかねぇ……」
 こんなに近くで慣れ親しんだ家を見てしまうと、わざわざ離れる気なんぞ失せるというものだ。
順調とは言いがたいが、本業の情報集めもそれなりに進展したし、今日くらいエルオの小言を聞かずに眠ったって
罰はあたるまい。うんうんと一人頷いて、数分前のフェルテスと同じ動作をなぞる。
「旦那ぁ、ダニルがただいま帰りやしたよ〜……、……旦那?」
 見に覚えのありすぎる小言でちくりとやられるか、仕事の進展を問われるか。
帰ってきたダニルへエルオが尋ねるのは、そのどちらかだった。
 しかし今日、ダニルの目に飛び込んできたのは、ぽかんと口を開けたエルオの横顔だった。
その顔がぎくしゃくした動きでダニルに向けられる。瞳には特大の困惑。
「だ、旦那、どうしたんで? 何かあったんですかい?」
 エルオは黙ったまま、視線を横へ流した。
その先にあるのはダニルの私室だ。なぜか扉が半開きであるが。

 そして冒頭へ戻る。
 ダニルとハビルが共に寝起きする寝室、ダニルにあてがわれたベッドの上で、
何を思ったかフェルテスがぐっすり寝入っていたのだ。勿論かれの部屋はカウンターを挟んで向かい側である。
 明朝の探索にダニルを誘いに来て、待っている間にダウン。
フェルテスの疲労困憊ぶりをじっくり観察した身としては大方の想像がつく。
「しっかし、どうしたもんですかねぇ」
 フェルテスを起こさないよう、ごくごく小さな声で呟いた。それにしても寝るのが早い。
フェルテスとダニルがここに来るまでの差は五分もなかったはずだ。よほど疲れているのか、
フェルテスはダニルがその傍らに膝をついても、呼吸一つ乱さない。ハンターにあるまじき無防備さで、
ぐっすりと眠っている。普段の彼なら、ダニルの気配を察した時点で飛び起きているだろうに
(もっとも、ダニルがこんな夜更けにフェルテスの部屋を訪ねたことなど、一度としてなかったが)。
116風と木の名無しさん:2009/03/31(火) 02:52:38 ID:qQkQFxXy0
 フェルテスは、常に浮かべている冷えきった無表情ではなく、歳相応の青年の顔をしている。
少し開いた唇からちろりとのぞく赤い舌は、この世界に生きる男にしては――そう言えば彼は怒るだろうか?――
色の白い肌と対照的で、濡れそぼった様子に妙な色を感じる。
 一瞬、どくりと脈打った下半身にダニルはあわてた。たしかに最近、娼館とはごぶさたしている。
しかし寝込みの相手を襲いたくなるなんて、男というよりけだものか魔物のようだ。
「……これがお誘いなら、喜んでお受けいたしやすよ?」
 フェルテス何も答えない。眠っているのだから当然だが、何となく面白くないことだ。
 にやりと、見ようによらなくとも怪しい笑みになって、ダニルは部屋を出た。
カウンターに寄りかかったエルオが何だという目つきで見てくるのに、
「旦那ぁぐっすり寝込んじまってまさあ。起こすのぁ忍びねぇんで、このままにしといてあげてくだせえ」
 一息に言ってすぐに部屋に引っ込む。エルオがカウンターから慌てて出てくる気配がしたが、
なんだかんだでフェルテスに甘いエルオが、彼が眠っていると知ってまで大騒ぎすることはないだろうから、
鍵をかけて放置。ハビルのベッドから毛布を拝借して、フェルテスの隣に滑り込んだ。
 小さな呻き声に、さすがに起きたかとひやっとしたが、フェルテスは寝心地良い体位に身体をずらしただけで、
一向に目をあけようとしない。
 ……まあ、起きたら、自分のベッドで寝ていただけとでも言い訳しようか。
 毛布もかけずに投げだされていた身体が、温もりを求めるように擦り寄ってくる。腕が持ち上げられ、
眠りの世界の住人とは思えぬ強さでダニルの背中をぎゅっと引き寄せた。胸に頬を擦り付けられたときは
流石にぎょっとしたが、寝ぼけた相手を引き離す気にはなれず、持ち上げた腕が行き場をなくして空をかく。
フェルテスの満足げな吐息が胸を熱く濡らすのを感じて、上げっぱなしだった腕を静かに下ろした。
117風と木の名無しさん:2009/03/31(火) 02:54:07 ID:qQkQFxXy0
 ……なんというか。予想外、である。
 ダニルとしてはフェルテスと一緒のベッドで寝れてラッキー、くらいものだったのだが、
まさかこんなに密着できるとは……いや、そうではなくて。
 この強い男が、こうして誰かに温もりを求めて擦り寄ってくるなど思いもしなかった。彼だって人間だ、
自分と同じように悩んだりすることもあるのだろうと頭では理解していたが、本当の所はそうではなかった。
彼はいつだって強くて、ダニルとの間には高い壁がそびえているのだと、そう思っていた。
 自分は知らないうちに彼を人間と見ていなかったのかもしれない。壁を作っていたのは自分。
それを壊してくれたのはほかならぬフェルテスで、やはり旦那には敵いやせんなとダニルは少しだけ笑った。
 もう寝よう。明日は、彼が自分の力を必要としている。それに精一杯答えるのが、ダニルに出来る唯一のことなのだから。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
かっとなってやった。 色々ごめんなさい
118風と木の名無しさん:2009/03/31(火) 23:41:17 ID:X+Gi3JZo0
                   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  日曜8時の時代劇ネタだよ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  トラカツと言う名の永尾↑杉萌えのトラ様な話
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧  ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
119転地 トラカツ11の1:2009/03/31(火) 23:41:42 ID:X+Gi3JZo0
蔭寅に嫡子が生まれた。
幸いにして母子ともに健やかに三月を迎えたので、蔭勝は鐘継を伴って館を訪れた。蔭寅夫妻と花が嫁ぐのに伴って
館を移った戦闘院も打ち揃い、賑やかなひとときとなった。
が。
「しかし、めでたいことだが殿のほうはいかが相成っておるのだ」
「まことに。我らが殿と蔭寅様はひとつ違い。殿の嫁御の話もあって良いころあいと思うのだが」
「いや、それは御美城様の深いお考えが」
「なんだ、それは」
↑田衆が一同に集まると姦しい。那珂城の一郭で座り込んでは酒を囲んで、蔭勝の身の上を勝手に案じてああでもない
こうでもないと言い放ち始める。
「なんぞ、良い話でも聞き及んだか」
「いや、わしの考えじゃがの」
「ほおー。ただの絵空事か」
始めはそれでも声を潜めていたのだが、心安い仲間内に次第に声音は大きく会話は遠慮のないものとなっていく。
「じゃが、もはや猶予もなるまい。殿には明日にでも家中からおなごを呼んで仕えさせるべきではないのか」
「いや、そこは肝心の殿はどうなんじゃ」
「おお、それよ。おい鐘継、お前、なんぞ知らんか」
「いや、わたしはその、何も…」
「なんじゃ。余禄も知らんのか。やはり殿はおなごとはご縁がないのかのう」
「よもや、いまだ女の味を知らぬというのではあるまいな」
「おい、いい加減にせぬか」
少々下世話に傾いた話の行方に、謹厳実直な雅吉が止めに入る。
「殿の御身を手前勝手な噂話で語るな。不敬だぞ」
120転地 トラカツ11の2:2009/03/31(火) 23:42:04 ID:X+Gi3JZo0
「怒るな怒るな。雅吉とて気になるであろう。殿はまことは誰とも触れ合ったことがないのでは、と」
しかし酔いも絡んだ男たちの戯言は簡単にやむものではない。さらに怪しく際どくなる。
「いやいや、殿は戦はともかくおなごにはとんと疎いからのう。こればかりは相手から仕掛けてくるわけにもゆくまいし、
案外、まっこと知らぬのではないか」
「確かに。この粕画山で殿に強引に迫る者など、有り得んわ」
どっと笑い声があがったのと、めきり、と不自然に背後の床板がきしんだのはほぼ同時だった。
一同はなんの身構えもなしに笑いながら振り返った。と、弛んだ顔が凍りつく。
「と、殿」
ひきつった声音は誰のものか。
だが呼ばれた側もひどくぎこちない。片足を踏みしめ過ぎたせいで傾いた肩をぎくしゃくと起こす。
「いや。――いや、すまぬ。邪魔をした」
常よりもさらに動きの鈍い口でそれだけをようやく言うと、蔭勝はその場から逃げだす。
否。立ち去ろうと、した。
がたたん、とまたもや音を立ててつんのめったかと思うと、↑田衆のあるじは床に手をついて座り込んでいた。
「殿!」
あきらかに動揺している姿に何か声をかけねばと一同、焦るが後が続かない。そうした視線を一身に背負いながら蔭勝は無
言で立ちあがる。気まずい空気の中、もはや面も向けず立ち去る背中は、ひどく疲れて見えた。
影継が呆然と呟く。
「まさか。……図星であったか」
「何がだ」
だが空気を読まない比佐英の突っ込みは、雅吉と鐘継によって力づくで封じられた。
121転地 トラカツ11の3:2009/03/31(火) 23:42:24 ID:X+Gi3JZo0
珍しく花が同万丸に付き添ってやすんでしまったので、蔭寅は蝋燭の灯だけを頼りに夜のしじまを過ごしていた。
ひとり沈思することには慣れている。だが決して心地よいものとはなりえない。
ただひとりほの暗い部屋に座っていると、馴染んだ孤独が身を取り巻いて気持がふさぐ。まるでかつて身を苛んでいた暗い
闇のように。
心を呑みこもうとする暗い感情から逃れるために、蔭寅は先に館を訪れた義理の兄弟を思い起こした。
しかし思い浮かぶのは、妹に抱かれた甥を覗き込んでいる姿ではなく。我が手に捕らわれ惑い、珍しく心の内を露わにした顔
だった。

たった一度、戯れに触れた。
それはひどく他愛のないもので、心の通い合いなどはない様々な要因が重なり合った末の偶さかの出来事。ひととき腕の中
に閉じ込め唇を奪った、それだけのこと。
なのにそのひとときを蔭寅は忘れずにいる。そしてそれは、恐らく蔭勝も同じだろうと思う。
おかしなことだ、と蔭寅は笑った。
自分には花という最愛の妻がいる。嫡男はわが分身だ。
蔭勝はと言えば、生真面目な武骨者で周囲をひたりと忠義者たちが固めていてその姿勢は揺るぎがない。仮初めの縁につな
がる者の悪戯に心動かされるはずもない。
けれど、だからこそ彼の者に無体な真似を仕掛けたのはおのれひとりと確信するゆえか。
なんの因果か、このような思いに囚われたまま今に至っている。
自嘲しながら、今一度彼の者が目の前に差し出されたならば手を伸ばしてしまうだろうと蔭寅は自覚していた。
愚かしい衝動が身を灼くのを感じ、半ばそのような機会が二度とは訪れまいことを願いながら。
122転地 トラカツ11の4:2009/03/31(火) 23:42:45 ID:X+Gi3JZo0
意外な偶然が再び訪れたきっかけは、戦のさなかだった。
美城様が出兵を決めて植過軍が打ち揃って越中に向うという時。
こうるさい↑田衆の子犬が初陣を飾るという話は聞かずとも耳に入っていた。
そうして敵と小競り合いをした際、子犬は無様な失態を演じたという。
これはその被害を蒙った故の家臣の口から直接聞いたものだ。他意はない。心の内で鐘継を失笑し、あれを信じる蔭勝に対し
軽侮とも憐みともつかぬ情を抱いたが、それだけだった。
そのはずだった。
だが不徳の限りというべきか。日頃の↑田衆への蔑みの感情がおのが態度に滲んでいたのか、それとも当人たちが考えている
より美城様の養子二人の家臣の反目は強かったというのか。
陣中で不祥事が起こった。
蔭寅の家臣と↑田衆の出水沢と鐘継が刃傷沙汰を起こしたのだ。
思わぬ不測の事態に、蔭寅は呆然とした。
諍いの元を辿れば、蔭寅の家臣、評語が野犬に蔭勝の幼名をつけて追い回していたのを出水沢と鐘継が知ってしまったことだ
という。
遂には口論となり、抜刀した鐘継が評語に切りかかったのだ。
訳を知ってしまえば素知らぬふりはできなかった。
相も変らぬ、主君を大事に囲みながらその実、当人たちの気持ちを置き去りにして互いに相食む郎党どもに嫌気が差したが、
だからこそ放っておけばさらに蔭勝との距離は拓くだけ。あの寡黙な男はわが手の届かぬところに去っていくだろう。

懸念はすぐさま現実となった。
評定の場でも蔭勝は常と変わりなく平静だった。諍いの元と顔を合わせたとて彼はこちらを責めるでもなく、胸に波打つ感情を
すべて内に押し込めて、努めて意識を眼前のいくさ場に向けているようだ。美城様を挟んで相対していても彼の件には全く触れ
ることはない。ただ、傍らにいつも控えていた子犬の姿がなく、代わりに別の郎党が付き従っているという違いがあるだけで。
123転地 トラカツ11の5:2009/03/31(火) 23:43:10 ID:X+Gi3JZo0
蔭寅は苛立った。蔭勝の陣へ赴いてでもなんとか二人で会いたかった。無論そんな真似はかなうはずもない。
いたずらに日数は過ぎ、ついに弁明の弁明の機会は失われた。
刃傷沙汰を起こした↑田衆の二人が押し込めとなり、事は美城様の裁定を待つよりほかになくなったのである。
おのれにできるのは何もない。
それでも軍議の折りに蔭勝を捉まえて声をかけた。
だが。

「人の家臣の心配など無用じゃ」

差し出した手は掴まれることなく振り払われた。
意外な思いを隠せず蔭勝を見直したが、続く言葉に頬が熱くなった。
「今は小事に捉われず、次なる戦にむけて一丸となるべき時。いかがか」
おのが好意を無碍にされたことより、家臣同士の諍いという小事にこだわるおのれを卑小と指摘されたのが痛かった。
蔭寅はおのれを恥じた。
見誤った。
蔭勝は一家臣の去就に心をかける男ではなかったのだ。
居心地の悪い思いを隠し、逃げるようにその場を後にする。蔭勝の顔を窺うこともできなかった。
闇に沈む廊下を歩みながら、蔭寅は先刻の言葉をただ悔いていた。

結果として、刀を抜いた↑田の二人に美城様の沙汰が下り彼らは謹慎となった。
そうして、また決して触れ合わない距離を保ったよそよそしい二人の養子の何事もない日々が始まる…はずだった。
だが。
陣屋で遇う蔭勝は相変わらず無表情で何を考えているかもわからぬ風だった。傍目には。だが端然と、あるいは人知れずぼ
んやりとさえしているのが、どうにも様子が違うのに蔭寅は気づいた。翻せば、蔭寅は軍中で顔を合わせる都度、彼の者の様
子を窺う癖がついてしまっているというわけだが。
落ち着いたたたずまい。戦に向ける関心も高く判断も的確なのに、一段きつい緊張が蔭勝を取り巻いている。
原因はこれまで傍に傅いていた子犬の不在。
124転地 トラカツ11の6:2009/03/31(火) 23:43:38 ID:X+Gi3JZo0
鐘継がいない。
それだけで意識せぬまま、荒れてひどく尖った心を剥き出しにしている。
やはり。あれを気にしているのではないか。
蔭寅は先のわだかまりが溶けると同時に、ひそかなさざ波が胸に起こるのを感じた。
謹慎して引き離された火口鐘継という郎党一人のせいで、蔭勝は表情を取り繕うことに懸命だ。しかも蔭寅が気づいたように、
自身装うことに失敗していると知りつつどうにもできず、近しい↑田衆をも遠ざけ一人孤独の淵に沈んでいる。
そんな落ち着かない野の獣のようなさまに、心が動いた。

雪深い奈々尾の陣中。
蔭勝がこのところ近習さえもそばに寄せずにいることは聞き知っていた。守り固い本陣において御曹司の身は安泰ということ
だろう。まさか上に立つ者が守護すべき者を手に掛けようとは思いもしまい。
ほら、このように。
いとも容易く蔭勝の陣へ導かれ、目当ての者の姿を見つけた蔭寅はうっすらと微笑んだ。物思いに耽っているのかわずかに俯
いて立つ蔭勝は闖入者に気づかない。
静やかに歩み寄ると、ようやく目の前に射した影に人の気配を感じてか、顔をあげる。
「かげ、寅殿」
こちらを向いた面は、不意を突かれてか無防備に頼りなくみえた。
「このようなところへ…。何か、火急の変事でも?」
問いかけて、ならば子飼いの郎党が先に告げるはずと思い直し口を噤んだ、その機を捉え蔭寅は一息に間合いを詰めた。触れ
あうばかりに近づく。見下ろすと、わずかに身を引いて視線を合わせた。
ふっ、と蔭寅が笑んだのを見て蔭勝は首をかしげた。既に最前の警戒は解けている。
「蔭寅殿?いかがした」
「何を、惑うておられる」
笑んだまま、低く問う。瞬時に蔭勝の頬が強ばった。
「――っ。何も」
「傍に子犬がおらぬが、それほど不安か」
125転地 トラカツ11の7:2009/03/31(火) 23:44:15 ID:X+Gi3JZo0
言下に否定するのに重ねて切り込むと、眦を吊り上げて睨み据えた。
「埒もない」
短く吐き捨てて踵を返そうとする。それを蔭寅は腕を掴むことで引き留めた。
「離せっ」
力任せに振りほどくのをさらに引き寄せ、耳元に囁く。
「そうして。常になく声を荒げているのをご存じか。いつもよりはるかに多弁なのは、気のせいではあるまい」
びくり、と体が竦むのを捕えた腕で感じる。蔭勝がおのが言葉に揺れるのは愉快だ。だが同時に苛立つ心も隠せない。
滅多に見られぬ蔭勝の感情の起伏は、この場にいない鐘継が齎したもの。
今ここで対峙しているおのれは、何なのだ。
苛立ちは衝動となって蔭寅を突き動かす。掴んだ腕を離さぬままその身を抱え込んだ。
「何を――っ」
あげかけた言葉を唇をふさぐことでとどめ、今一度言を継ぐ。
「たかが一家臣。死んだわけでもあるまいし、そのように心に掛けるなど不用であろう」
「ふざけるなっ」
「ふざけているのはそなただ。目の前にいるのはわしだ。今、そなたを腕に抱いているのはこの蔭寅ぞ」
その言葉におのれの状態を自覚してか蔭勝が慌てたように身じろいだ。だが蔭寅は抱く腕に力をこめて逃さなかった。首筋に
顔を埋め唇で肌をなぞりながら続ける。
「いかに心安い者とて、ただの郎党ではないか。それとも。深い仲だとでも言うつもりか」
「――!馬鹿なことを」
虚を突かれたかのような呟きに蔭寅は満足した。身を起こし蔭勝に再び口づける。深く食もうとして、蔭勝の腕に押しとどめら
れた。
間近で息をつく蔭勝は目元を赤く染めていたが、それでもこちらを見据えるまなざしはきつく光を失っていなかった。
「なにゆえ、このような真似を。そなたには――」
短く吐いて先を言えず唇を引き結ぶ。
126転地 トラカツ11の8:2009/03/31(火) 23:44:36 ID:X+Gi3JZo0
あとに続くはずの言葉をたがわず察して、蔭寅は笑った。
「花も同万も愛おしい。わしにとっては大事だ」
だが、と唇を歪める。
「そなたを見ていると、身に衝動が起こる。近侍の↑田衆に囲まれているのを見ていると何やら落ち着かぬ」
恐らく、それは自身が持ち得ぬものゆえ。わかっていながらも、身に生じる熱は散じがたい。
「それだけで腕を伸ばすのはおかしいか。世の理に反していようと、誰かを欲したことはないのか」
詰るように問うて、その言葉の虚しさに自嘲する。
ふいに訪れた心の隙間を埋めるように誰かを求めたことなど。ないのだろう、彼には。
未だ女の影も見当たらない。その上、幼くして実父を失い、嫁いだ妹と共に実母が彼の元から離れても、蔭勝はひとりではない。
彼を守り慕う者どもが常につき従うゆえに。たとえ蔭勝が寂しさをひととき感じたとしても、それは真の孤独ではないのだ。
「そのようなもの、感じたことはない。わしは御美城様の目指す義をお助けするのみ」
蔭寅の思いがけなく激しい口調にとまどいを見せたものの、蔭勝は迷わず言い放った。
「その援けとなるのが我が郎党。鐘継は大事な一人だ」
予想どおりの蔭勝の答え。
傍から見たならば妻子のある蔭寅は蔭勝よりはるかに前途のある身に感じられよう。主君であり父でもある堅信公の覚えもめで
たい。だがそうして人に囲まれていてさえ、ふとした折に胸に冷えた塊を感じてしまうのだ。
そうして、不可思議な孤独にさいなまれた時に脳裏を過ぎるのはこの年下の義兄弟だった。
だが蔭寅の屈折した心が通じることはない。特に、今の蔭勝には届かない。
それでも、と望むことはできなかった。
127転地 トラカツ11の9:2009/03/31(火) 23:45:12 ID:X+Gi3JZo0
蔭寅の手から力が抜ける。蔭勝がすっと離れ、手にしたはずの温もりが失われていく。
それをどこか遠くに感じつつ、ふいに思う。
おのれは、なんと欲深なことか。↑杉のすべてが欲しいのか。そうでないと安堵しないのか。
蔭勝を手にしたなら、おのれは永遠の安らぎを得られるのだろうか。胸によぎる一抹の不安は消えてなくなるのだろうか。
手痛い拒絶にあっても尚、浅ましく考えるおのれに自嘲する。
それでも。
傍らにあるべき者と離されて、珍しく悲愴な空気を身にまとい、惑う心を持て余している今の彼に付け入るのは、あまりにも無体
に思えた。
欲が深いだけでなく非道な真似をするのは、いかにも憚られる。
大事な家臣が手元に帰ったおりにでも。
まだ、時はあるだろう。
128転地 トラカツ11の10:2009/03/31(火) 23:45:26 ID:X+Gi3JZo0
御美城様が亡くなった。

蔭寅にとって、その事実を認めるのは容易ではなかった。
↑杉の跡目は蔭勝と決まった。そのことに何ら疑義はないはずだというのに、心穏やかならぬはいかなるわけか。
ざわめくのは我が心だけではない。家中は、早くも我を跡目にと推す者と蔭勝を上に戴く者とで反目が露わになり、当人同士も互
いの間は深く隔たれ、意を通じ合うことは叶わない。
見えない対立が高まる中、恐ろしいほどの孤独が我が身を苛む。
ほんの少し前までは何もかもを手にして満たされていたはずなのに、一夜にしてすべてが失われてしまったかのようだ。
御美城様の慈愛も戦闘院様の慈しみも花の細やかな愛情も、同万丸の無垢な信頼も。色褪せ、消えていく。
ただ、蔭勝が我よりも上に立つというだけで。いや、上に立つゆえではない。上に立つことで我から決して手の届かない場所へ去
ってしまったゆえにだ。
それと同時に足元がぐずぐずと崩れて定まらぬ。心が冷えて、母の、花の言葉さえもわが胸に響かない。
身内の裏切りと孤独の不安の中にあったおのれに、敬愛する父と優しき母とおのが仕える守るべき家と愛する女とおのれの血を
受けた子と、温かく柔らかな心のすべてをもたらした永尾↑杉家。
そのうちにあってただ一人離れた位置にあった存在。
あれをも強引に捉えることを、欲が深すぎると戒め、為さなかった。
それは誤りであったのか。
ただひとつ、蔭勝の心を無理やりに拓くことを抑えた。そのことがこれまでわが手にしたはずのものを全て打ち崩してしまったとい
うのか。
そしておのれは、再び孤独と鬱屈の闇に沈まねばならぬ。
129転地 トラカツ11の11:2009/03/31(火) 23:45:47 ID:X+Gi3JZo0
そなたとは、御屋形様に共にお仕えすることを至上としている。そなたには、花と良い夫婦になることを心から願っておる

かつて直接に蔭勝の口から引き出した言葉。
それを信じたは浅はかであったのか。

い、や。
戦闘院様は美城様のご遺言を継ぎ、蔭勝を跡目と立てていこうとされてはいる。だがそれはご遺言ゆえのこと。わしに隔意があっ
てのことではないのだ。そして花は未だ我が妻。同万丸もいる。
なんということはないではないか。
そうして今ある事態をひとつひとつ確かめて。
愕然とする。
これはいったい何の為だ?
このように考えることがそも、疑心に揺れているのではないか。
欲深であるのに、愚かだ。
度し難い。
度し難いほど愚かだった。

――夏季埼が蔭勝の館に夜討ちを仕掛けたのは、その夜のことである。
130風と木の名無しさん:2009/03/31(火) 23:46:20 ID:X+Gi3JZo0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ いろいろともうスミマセン
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
カツ様サイドは無しで進行してますがそれはわざとだと思うと幸せになれるよ!なれるよ!orzorz
13話本編と被っているエピが一部ありましたが、その辺はスルー推奨。書き直す気力アリマセン
131風と木の名無しさん:2009/04/02(木) 05:41:31 ID:FZo1kcSn0
ヘ/タ/リ/アより、普伊。
歴史?何それ美味しいの?
神羅≒独説使用シリアス注意。
名前は漢字表記にしているため、各自国/名に脳内変換してください。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

神羅が解体された。
そんな知らせが飛び込んだのは、「彼」が消えたとされてからすで150年余りの時が過ぎてからのことだった。
いつかこうなるということは予想できていた。
しかし今更、「彼」の抜けがらでしかないあの国が無くなった所で何の支障があるだろうか。
そもそも、「彼」に止めを刺したのは今己を支配している国だ。
酷く憔悴しきった顔でそんなことを伝えられて、古くから俺の事を気に掛けていてくれた彼を責められるはずがない。

「…そんな顔しないでよ、仏兄ちゃん。俺なら平気だよ」

困ったような声でそういえば、俯いていた彼はようやく顔を上げてくれた。
彼の所為でないことなど分かっている。
自分たちは、あくまでも国の象徴。
時代の波に、国民たちの意思に、逆らえる訳ではない。
彼とて、愛する者を自分の手で救えなかったことをもう何百年も悔いている。
こんな事で泣く訳にはいかない、そう己に言い聞かせて、無理矢理に笑顔を作って見せた。
132風と木の名無しさん:2009/04/02(木) 05:42:14 ID:FZo1kcSn0
2階の自室に戻って淀んだ空気を入れ替えようと窓を開け放つと、湿気を含んだ生暖かい風が頬を撫でた。
風の音と、虫の鳴き声だけが辺りに響く。
つい先程まで雲に隠れていた月が顔を出し、暗い陰が落ちる庭を照らし出した。
不意に視界に入り込んだ人影に、そちらへと目を向ける。

「…普?」

見覚えのある姿に思わず男の名を呟くと、普段からは想像できないほどに真剣な表情を浮かべる彼に小さく眉を潜めた。
降りて来いと言っているのだろうか。
ここが男にとって敵地であることを考えれば、誘いに乗るのはあまり賢いとは言えない。
しかし、ここで彼に付いていかなければきっと後悔する、そんな確信があった。
ほんの一瞬躊躇いを見せたものの、すぐに身を翻したった今戻ってきたばかりの自室を後にした。
家主に気付かれないよう庭へと出ると影と同化するように立つ男のもとへと足を進める。
戦場で見かける派手な軍服とは違い、今はシンプルなシャツにズボンという珍しくも地味な出で立ちだ。
133風と木の名無しさん:2009/04/02(木) 05:43:03 ID:FZo1kcSn0

「久しぶりだな、伊ちゃん」
「久しぶり、だけど…大丈夫なの?ここ普兄ちゃんちなんだけど」

記憶に残るそれと全く変わらない声で掛けられた言葉と向けられた微笑みに、何故か安堵を覚えた。
幾分緊張を解くと、俺よりもずっと高い位置にある瞳を見上げ問い掛ける。
すると彼は、浮かべていた笑みを引き締め再び真剣な表情になった。

「…見せたいもんがある」
「……」

付いてこい、ということか。
しかし彼なら俺を騒がせることもなく攫っていくことも出来た筈だ。
己で選べということなのだろう。
返事を待つことなく身を翻した彼の後を、俺は迷うことなく追いかけた。
134風と木の名無しさん:2009/04/02(木) 05:43:40 ID:FZo1kcSn0
「…神…羅…?」

蝋燭に照らされる薄暗い部屋の中では分からないが、その髪はきっと太陽のような金。
閉ざされた瞼に隠された瞳は、きっと広がる大空のような蒼。
普の後を追って辿り着いた彼の家、案内された最奥の部屋にいたのは真っ白なシーツに横たわる、俺とそう年の変わらない少年。

「…なん、で…」
「拾った」
「ひろ…」

無意識に漏れた掠れた声に、あっさりと返される信じられない台詞。
思わず背後に立つ男を振り返ると、彼は存外に真剣な表情を浮かべていた。

「150年前にな。あれからずっと眠ったままだ」

150年前。
消えたと思っていた「彼」はずっとここにいたということだろうか。
ならば何故。
135風と木の名無しさん:2009/04/02(木) 05:44:13 ID:FZo1kcSn0
「…どうして、早く教えてくれなかったの…」
「…目が覚めるまで待とうと思ってたんだ。
 なのにいつまで経ってもこいつ起きねーし、国は解体されちまったし」

「彼」が目覚める理由が無くなってしまった。
このまま、あの抜け殻の国のように「彼」も消えてしまうのか。
穏やかな表情でただ眠っているだけに見えるのに、もうこの瞼の向こう側の瞳を見ることは出来ないのか。
幼いころに交わした、必ず会いに来るという約束すらも無かったことになって―――。

「まだ諦めるには早いぜ、伊ちゃん」

横たわる少年をじっと見つめたまま取り留めもなくそんなことを考えていると、不意に肩に重さを感じた。
いつの間に隣に来ていたのか、見慣れた(彼にはこの表情が一番似合う)不敵な笑みを浮かべた男がほんの一瞬前の俺と同じように少年を見やる。
136風と木の名無しさん:2009/04/02(木) 05:49:41 ID:IpNCS2qXO
「国が無くなったなら、新しく創りゃあいい」

何を言っているのか、理解できなかった。
創る?
国を?

「同じ場所に、新しい名前でな」

存在する国を守ることすら困難なのに、新しい国を創る?
それが簡単なことではないことなど目の前の男が一番分かっているだろう。
しかし少年から俺に視線を移した男の瞳には、何の迷いも浮かんではいない。
彼なら、本当にやってのけるかもしれない。
少年が横たわる寝台に近付いて、穏やかな表情を覗き込んだ。
そっと頬に触れてみるとひんやりとした冷たさが伝わる。


「…そしたら、起きるかな。神羅」

零れそうになる涙は、まだ流さない。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

とりあえずここまで。
137風と木の名無しさん:2009/04/02(木) 10:50:23 ID:Yfj60rsCO
>>130
GJ…!
ねぇさんありがとう、本家と同じぐらい禿げたよ
138風と木の名無しさん:2009/04/02(木) 11:21:19 ID:PWo5GfsQ0
139風と木の名無しさん:2009/04/02(木) 17:01:54 ID:erDz74nJO
>>118
GJGJ!!!
トラカツに萌え頃されそうですよー
140風と木の名無しさん:2009/04/03(金) 01:36:23 ID:/ZgAVlJF0
>>118
姐さんgj!凄い萌えた!
トラカツ最高っす!
141自宅 壺受け気味 1/2:2009/04/03(金) 02:35:28 ID:7bEsh99AO



鯨仁 下ネタ受けで。赤絨毯の時の女装話。




|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!




「好評だったな、女装」
楽屋に戻るとき、杉山が話し掛けてきた。
「元がいいんで。」
あっさり返したら、『うわ。でたよナルシスト』とでも言いたそうな顔をされた。
楽屋に着いて、カツラを取る。
ふと、背中に視線を感じた。
振り返ると、もう一人の相方谷田部。
「……何」
「いい感じ」
「何が」
「背中が。触っていい?」
142自宅 壺受け気味 2/2:2009/04/03(金) 02:37:14 ID:7bEsh99AO
俺が返事をする前に、無遠慮に触れる。
思わず、びく。と肩を硬直させてしまった。
「触るな」
極力、平静を保って言うと、渋々手は離れていった。
私服に着替える。二人はもう、着替え終わったらしく、雑談中。
「あ、坪倉。お前背中弱いんだって?」
杉山は何気ない話題のように話し始めた。
思いっきり谷田部を睨んだものの、全く気にする気配がない。
「んなこと、どうでもいい。さっさと打ち合わせ行くぞ」
二人を待たずに荷物を持ち、楽屋を出た。

「動揺してたな、坪倉」
「いいこと知っちゃった」

後ろで二人が話してた事など、知らない方が良かったかもしれない。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

143風と木の名無しさん:2009/04/03(金) 23:19:39 ID:VB1MyEFXO
>>141
ねえさんありがとう!
あの女装にはびびった…
妙にドギマギする色気あったよね…!
144がん種MS フリーダム×イージス 1/3:2009/04/04(土) 00:45:01 ID:tq4lH1El0
ガ/ン/ダ/ム種 MSの自由×盾です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

イージスのワインのように赤い外装が今日は更に真紅に燃え上がる。そっと触れたアームから伝わる温度は、冷たい金属の筈が、俺様の手を溶かすかのような熱さを発していた。
「フリーダム…」
イージスがびくりと反応し、その小さな機械音が格納庫に響き渡る。
「イージス…。お前変形しろよな」
「えっ…」
「いいからっ。早く変形しろってっ!」
 俺様の突然の要求に困惑した様子だったイージスだったが、しぶしぶとキゥーンという機械音と共にその機体は変形する。先程までのヒト型のMSはその姿を変え、飛行性と火銃性を高める為に四肢を前に投げ出し、顔を中へと引っ込める。
「変形したけど…でもなんで?」
 MAのイージスは顔部のカメラの機能が使えなくなり、視界が狭まったせいか少々不安になる―――という話を思い出したのだ。そして、一番の理由は―――
「合体するぞ、イージス」
「えっ、えっ、えっ?!」
 慌てるイージスを尻目に、俺様はSEEDを覚醒させる。普段は仕舞ってある6枚の翼を大きく羽ばたかせた。蒼い光を機体に纏わせる。
「行くぞっ!!イージスっ!!」
「えっ、あ、はいっ!!」
イージスの柔らかく開かれた四肢の間に機体を滑り込ませ、自分自身の機体に取り付かせる。
「お前の弱点…、ここだってことは調査済だ」


145がん種MS フリーダム×イージス 2/3:2009/04/04(土) 00:46:28 ID:tq4lH1El0
弱点って……ぃやぁぁぁん」
 イージスの甘ったるく甲高い喘ぎ声が響き渡り、接触する俺様の機体までをも震わせた。
「やだっ…。そこっ」
「ここが弱いんだろ」
「ああぁん」
 俺が触る場所、イージスMAモードの必殺技、スキュラの発射口である。相手に取り付き、スキュラを発射させ相手を一発で仕留めるこの残忍な必殺技は、自分の急所を隠すための技であるという一面も持っていた。
 俺様は発射口の周りの銀色に光るパーツを弄び、中へと腕を進めていく。
「どうだ。気持ちいだろ」
「あぁっ、ダメっ、そんなとこ触っちゃっ」
 俺様の機体に絡みつく四肢に力が込められ、痛い程機体を拘束する。
「ダメェェェ。でちゃう、でちゃうっ!!」
「いいぜ…、出しちまえよ」
「スキュラ、発射しちゃうぅ〜!!」
「えっ?」
 触っていた、発射口はヒュンヒュンヒュンとパワーを溜め、黄金色に輝くビームがイージスの奥から漏れ出してくる。いくら最強の俺様といえども、がっちりとロックオンされたこの状況ではただではすまない。
「ちょ、ちょっと待て、な!!」
 パワーを充電し終わった発射口からは収まりきらなくなった光が溢れ出し、視界全体を覆った。
「ああぁぁぁんんっっ!!!」
「ぃぎゃあああぁぁぁ!!」
146がん種MS フリーダム×イージス 3/3:2009/04/04(土) 00:47:59 ID:tq4lH1El0




「って夢を見たんだよ、今日。僕のフリーダム無事だったかなぁ?」
「さ、さぁ…」
「う〜ん。夢っていっても心配だなぁ。ねぇ一度見に行ってみようか」
「いや、俺は…」
 そう? と身を翻し、格納庫へ向かうキラの背中をアスランはただただ見送る事しかできなかった。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ここまでです。
147風と木の名無しさん:2009/04/05(日) 00:17:37 ID:6OnwYRSh0
生、ロ○ン、大阪府大×京大です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
148水兵、リーベ、ボケの竿 1/6:2009/04/05(日) 00:18:42 ID:6OnwYRSh0
 自動販売機でビールを買って戻る途中、厨房の前を通りかかった。中で、年取った仲居
が噂話をしているのが聞こえた。
 「あの二人連れの背の高い方の子、どっかで見たことある。俳優かしらね?すらっとし
てて、顔が小さくてかっこいいものね」
 「あら、そうなの?わからなかった。あんまりTVを観ないから。プライベートで友だ
ちと旅行かしら」
 俺かて一応、芸能人でベストセラー作家なんやけど、と大阪府大は心中複雑である。プ
ライベートはプライベートやけどな。
 近畿圏以外だと、特に年配の人にはあまり顔が売れていないらしい。相方の方は、最近
全国区のクイズ番組によく出演しているので、知っている人も多いようだ。相方と一緒な
ら自分も多少認知度が上がるが、一人で歩いていれば、特に変装しなくても気づかれるこ
とは少ない。これでも芸歴は結構長いのだが、そんなにオーラがないのだろうか。
 ホームグラウンドである京阪神及びその周辺地域では、自分の方が絶大な人気を誇って
いるのに、いつの間にか、相方も出世したものだ。勿論、自分が彼の伝記を書き、それが
売れたからでもあるのだが。
 嬉しい反面、何となく淋しいような気持ちを抱えながら、京大の待つ部屋へと急ぐ。こ
んなに短い間でも離れているのが辛く、早く会いたくてたまらない。いつも憎まれ口ばか
り叩いては手荒く扱っているが、その実、京大にベタ惚れ、ぞっこん、夢中、首ったけ、
メロメロなのである。いろは順である。
 その実も何も、そのまんますぎておもろいことも何ともないやないけ、という説もある
けれども。
 「ただいまー」
 襖を開けると、部屋は暗かった。床の間の照明だけがぼんやりと灯る中で、京大のひょ
ろ長い体が布団の上に仰臥している。緩やかな黒のタンクトップに、下はジーンズを穿い
たままだ。
 「お帰り」
 大阪府大はドン引きして言う。
 「もしかして、布団一つでええって堂々と言うたん?」
 京大はにこにこして答える。
 「言うたよ。『はいそうですか』って笑てはったよ。べつに珍しないんちゃう?」
 大阪府大は頭を抱える。
 「おまえは素人か。あのな、俺らスタアなんやから」
149水兵、リーベ、ボケの竿 2/6:2009/04/05(日) 00:19:22 ID:6OnwYRSh0
 「ええやん。ここの宿、婆さんばっかりで、俺らのこと知らんみたいや。よかったやん、
邪魔されんで」
 京大は色っぽい手つきで、ポン、と自分の脇を叩いて大阪府大を招く。知らんかったか
て、明日TVや雑誌で見るかも知れんやろ、と思いながらも、そそくさと相方の隣に寝そ
べり、体を擦り寄せてしまう大阪府大であった。
 まあ、この鷹揚さが大物の風格ってやつかも知れんけど。顔を近づけ、京大の頬に軽く
キスをする。京大はこちらの小柄な体を抱えるようにして、自分の上に覆い被さらせる。
 大阪府大は京大を抱きしめて、その唇に、首筋に、肩に唇を這わせた。京大の手が大阪
府大の左手を掴み、腰から下へと導く。大阪府大は、現在は一部矯正しているものの元々
左利きであり、京大は彼の左手で愛撫されることを殊の外好む。
 硬い生地の上からでも、早くも京大の熱が感じられた。留め金を外し、ファスナーを下
げて、下着の中に手を忍ばせる。温かく慕わしい生きものが触れてくる。握りしめ、先端
をやさしく撫で、上下に扱くと、京大が呻き、掌が湿った。
 京大が息を弾ませ、顔を上気させて大阪府大を見つめる。タンクトップがずれて、右の
腋下の部分から乳首が露出している。大阪府大の濡れた指がそれを摘まむ。
 「あっ・・・・気持ちいいっ」
 京大が小さく声を上げる。固くなった乳首を、人さし指の先で何度か、いたぶるように
小刻みに弾く。円を描くようにしながら、乳首から乳輪全体へと透明な先走りの雫を塗り
つけ、ゆっくりと捏ね回す。京大は身を捩り、片手でシーツを掴んで、女みたいに凄まじ
く喘ぐ。
 「うーちゃんのおっぱいも俺にいらわれてやらしなったな。成長したもんや」
 相方の反応を具に観察しながら、大阪府大はわざと呟いてみせる。少年の頃や年若い頃
は、下半身ばかりを構われたがって、耳や胸を愛撫されるのは鬱陶しがっていた。年を重
ねるに従って、新たな愛欲のツボが徐々に目覚めてきたのだ。大阪府大が長い長い時間を
かけ、あらゆる手練手管を使って開発を進めてきた成果である。ボーッとした天才肌の京
大と違って、彼はよく気の回る努力家なのだ。
150水兵、リーベ、ボケの竿 3/6:2009/04/05(日) 00:20:16 ID:6OnwYRSh0
 「せや。大事なこと忘れてた。あんなあ、うじ」
 ふと、大阪府大が身を起こし、改まった顔で居住まいを正す。
 「何や。コンビ解散か。別れ話か」
 「違うわ!何ちゅうこと言うねん、縁起でもない!」
 ちょっと本気で怒っている。剰え、泣きそうになっている。
 「ごめんごめん。うじが悪かった。何やった?何でも聞いたげよ、言うてみ」
 京大は大阪府大を抱きしめ、よしよしと頭を撫でてやる。
 「ビール冷やしてくるわ」
 「はよせえや!」

 バスケットで鍛えた京大の体は、細身ではあるがしなやかで、引き締まり、まだ挿入に
は至らないが、大阪府大の腕の中でよく弾む。
 絵のようなフォームで鮮やかにシュートを決めるその美しい肢体を、殆ど崇拝と言って
いい熱情を抱いて見つめたあの少年の日。同時に、自分は彼の恋人なのだ、あの琥珀の裸
体を知っているのだ、彼に抱かれ、彼を抱いているのだ、という、他者に対する圧倒的な
優越感に若い胸が打ち震え、自分で自分を持て余すほどだったのを覚えている。
 その思いは、バスケットをとうにやめ、年月を経た今も変わっていない。いや、二人の
関係性に「相方」という、並のビジネスパートナーなど比較にもならない、恋人や親友に
も匹敵する更に重要な要素が加わり、共に全国的な有名人となった今、寧ろ強まってすら
いるかも知れない。京大を掻き抱き、小麦色の胸に、腹に、噛みつくようなキスの嵐を浴
びせる。
 まだ下腹部を覆ったままだったトランクスを脱がせようとして、大阪府大は俄に目を輝
かせ、黄色い声を上げた。
 「へーっ、ピカチュウの柄のパンツなんて大人用にもあるんやー」
 「アホ、どうでもええやんけ!」
 京大は顔を赤らめ、何もそこまで、というほど慌てふためいている。
 「何?ファンから?」
 「いや、自分で選んだ」
 貰いものだと答えておけばよいものを、こんな所であっさり真実を話してしまう辺り、
職業適性があるのかないのか。すぐに墓穴を掘ってしまったことに気づき、頭を抱えて布
団に突っ伏してしまった。
151水兵、リーベ、ボケの竿 4/6:2009/04/05(日) 00:21:46 ID:6OnwYRSh0
 「あーしもた、おまえとお泊まりやって忘れてこんなん穿いてた・・・・」
 「そんなカッコで冷静になったらあかんて」
 「しかも自分で買うたって白状してもーたし・・・・」
 「うーちゃんてそういうことでものすご落ちこむよな」
 「俺としたことが・・・・」
 「いや、おまえらしいって。こんなんどこで売ってるん?俺も欲しいわ」
 言いながら、手を使わずにわざわざ口で咥えて引き下ろすのも、大変ご趣味のよいこと
で。ちなみに大阪府大は、かなりディープなオタである。
 気を取り直して、京大を仰向かせ、横に座って、すっかり元気をなくしてしまった一物
をやさしく口に含んでやる。そうしながら、琴でも爪弾くように、指先を腹から胸へと滑
らせ、乳首を弄ぶ。一時はどうなることかと思ったが、さすがは性欲魔人、ちょっと刺激
してやるだけで、忽ち海綿体組織に血液が充満してくる。
 抜け目のない大阪府大は、用意しておいたオイルの小瓶を取り出した。ショッキングピ
ンクの液体を指先に滴らせ、京大の秘めやかな部分をよく揉みほぐしてやる。「貸して」
京大が代わって、大阪府大の一物にも丁寧に塗ってくれる。オイルに塗れた長い指に絡み
つかれる感触に、射精しないよう堪えるのが一苦労だった。
 気分の華やぐようなローズ系の香りに包まれて、大阪府大は京大のこれまた長い足を開
かせ、少しずつ中へ押し入った。
 大阪府大は京大と違って繊細だと自負しているので、結合しても、ガサツな相方のよう
にすぐにはせっせと動き出したりしない(京大の方は、俺は合理主義者なんやと主張して
いるが)。繋がっている感覚を楽しみながら、じっくりと時間をかけて、キスや愛撫や話
をするのを好む。この時も例外ではなかった。
 「不思議やなあ」
 恋人の腕にじっと抱かれて、愛されるがままに身を任せていた京大が、ぽつりと言う。
 「何が?」
 京大の乳首をちゅぱちゅぱ吸い、ねちっこく舐めていた大阪府大は、猫のように、舌を
出したまま顔を上げる。
 京大の奥目、失礼、目は、天上の消えた電灯に緑の蛍光塗料で描かれた、銀河を思わせ
る神秘的な模様を眺めていた。
152水兵、リーベ、ボケの竿 5/6:2009/04/05(日) 00:22:23 ID:6OnwYRSh0
 「生まれる時間とか場所とか、行く学校とか、いろんなこと、お互い、なんか一つでも
違ってたら、こうして菅ちゃんと出会うことも、コンビを組んで人気者になることも、恋
人どうしになることも、いろんなことが起こらんかったんやもんなあ。当たり前のことや
けど、俺、それがすごい不思議やわ」
 大阪府大は珍しく、茶化しもせずに、神妙に耳を傾けている。
 京大は半眼になって天井を見上げたまま、抑えた声で、静かに語りかける。
 「相方っていうのも、不思議な結びつきやな。恋愛とか夫婦とかいう縁やなくても、芸
歴何十年っていう兄さん姐さん見てたら、ほんまそう思う。俺らは文字通り、二人で一体
なんや。どっちが欠けても、誰かと入れ替わってももう別もんや。お互いの半身みたいな、
ちょっと他には譬えるもんのない、独特の関係やんな。俺、菅ちゃんが先に死んだらどな
いしようか思うわ。多分、この世の誰を亡くすより悲しいやろな。俺、あかんたれやから、
自分も死ぬかも知れへん」
 「うーちゃん・・・・俺かて・・・・」
 大阪府大は胸が熱くなり、盛んに目をしばたたきながら、京大の頬をそっと撫でる。い
つもの痛烈な皮肉も、これでは出る幕がない。
 「ほんま、菅ちゃんがいてくれてよかった。感謝する。俺が生まれたことにも、菅ちゃ
んが生まれたことにも。出会えたことにも。
 一旦は親父に勘当されかけたけど、一回も後悔したことない。されてたとしたって、きっ
としてへん。絶対してへん。一生、一緒にいよな。おっさんになっても爺さんになっても、
ずっとずっと、俺の右に立っててな」
 京大は雲一つない青空のように、晴れ晴れと微笑む。大阪府大は唇を噛みしめて何度も
頷き、ただ無言で、相方を強く抱きしめた。
 「菅、動いてええよ」
 目を閉じて、京大が囁くように言う。
 「よっしゃ!うじ、覚悟しいや!」
 大阪府大は京大のすんなりとした体を押さえつけ、ゆっくりと腰を引いた。一気に、最
奥まで叩きつける。二度、三度、四度。
153水兵、リーベ、ボケの竿 6/6:2009/04/05(日) 00:23:21 ID:6OnwYRSh0
 小柄で色白で女のような顔立ちの大阪府大が、全てにおいてその逆の京大を組み敷き、
犯す様はなかなかに倒錯的で、尚且つ猥雑で美しい。いや、寧ろ女どうしの交わりのよう
に、果てもなく尽きもなく、ただ貪りあい、求めあう。
 突かれに突かれて、京大が激しく悶える。二人分の体液に全身ぬめりながら、相方の律
動に合わせて深く腰を揺りつつ、足指を痙攣させ、よがり泣く。
 至福の時の間近い大阪府大の耳に、遠く、潮騒が聞こえる。この世は荒海、人生は航路
である。人は皆、自分の舟は自分で操らねばならない。しかし、オールを握るこの手に添
えてくれる手があれば、どんなに嬉しく、心強いことだろう。
 大阪府大は京大の髪を指で梳く。京大は澄んだ真っ黒な瞳で大阪府大を見つめ、その手
に自分の手を重ねてくる。舞台の上でやり取りをしながら、互いの呼吸を読み、目と目で
ものを言い交わす、あの心地よい緊張に満ちた一瞬のように、視線と視線、思いと思いが
交じりあう。五本の指を絡ませ、堅く握り合わせた相方の手を、大阪府大はそっと、白い
シーツに押しつけた。
 京大の喉仏がくっ、と動き、イ・・・・イク・・・・という溜め息にも似た小さな呟きが洩れる。
背中を反らせ、ひくひくと身を震わせて、白いしぶきを上げる。それをしっかりと見届け
た後、大阪府大は京大の唇を吸い、深く舌を絡めながら、その胎内に精を放った。
 「えーと」
 精液を拭っている京大の横で、大阪府大が何か考えこんでいる。
 「どうしたん?」
 「いや、どうオチつけようか考えてへんかってん」
 「たまにはええんちゃう?」
 大阪府大はぱっと顔を輝かせた。
 「せやな!だって受験生の皆さんにとっては、オチのない話ほど喜ばしいものはないも
んな!」
 「オチてるやん」

ども、ありがとうございましたー。
154風と木の名無しさん:2009/04/05(日) 00:23:57 ID:6OnwYRSh0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

相方っていうのは元々、遊郭でのセックスの相手のことを言ったんだそうで、
「敵娼」とも当てるそうな。京大様はご存じかな?
155鐘→活→←寅:2009/04/06(月) 00:31:58 ID:82AAYtBcO
09タイーガの鐘→活→←寅で鐘活。

寅あぼん後の捏造で少々えろす描写ありです。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
156鐘→活→←寅 1/2:2009/04/06(月) 00:33:07 ID:82AAYtBcO
「わしを、抱け」

私を部屋に呼んだ殿が、搾り出すようにたった一言そう言った。それが殿の精一杯だった。

+++

「は、ぁ、ああっ!」

自身が殿を貫く。震える睫、頬に流れ落ちる涙。身体への快楽と心への痛みに喘ぐその姿は、目を反らしたくなるような痛々しさであった。

「んぁ、あ!か、影‥寅‥どの‥!」

呼んだ名の主は既に死んだ。救いを求めるように伸ばされた手が掴んだのは、その者ではなく私。
彼はもう、いない。
私たちが殺したようなものだった。
だから殿は苦しんでおられるのだ。
その傷は私では癒せない。今こうして行為に及ぶ事は傷を抉るようなものだ。

「ぅ、‥っく、ひぁ、あっ!」

それでも腰を動かす。更に甲高い喘ぎと、亡き者の名前が耳に響く。

「影寅殿、かげ‥と‥あ、やああっ!」

157鐘→活→←寅 2/2:2009/04/06(月) 00:33:54 ID:82AAYtBcO
私は、その名を聞きたくない。嫉妬というやつだ。殿が彼を想う程、私から殿への想いは伝わらなくなるから。
名を呼べぬように更に奥へ突けば叫ぶように啼いた。

「あっ、あ、もぅ‥」

いきそうなのだろう。かぶりを振り腰を揺らす。劣情を誘う姿だ。にも関わらず、

「構いませぬ」

やけに己の声は冷めていた。

「ひぁ、ああ!」
「く、‥!」

達した殿の締め付けに耐えかねて、私も中で達した。
失神した殿の睫や頬を濡らす涙。こうする事でしか泣けぬのだ。




哀れだ。
こんな事でしか泣けぬこの方も。
こんな形でしか殿と交われぬ私も。
互いに想い合っていたのに、遂に結ばれなかった二人も。
何もかもが哀れだ。

「殿、本当はもっと違う形で貴方と繋がりたかった‥」

呟いてみたとて、この想いはずっと届かないのだろう。
虚しさで目頭が熱くなった。

158風と木の名無しさん:2009/04/06(月) 00:35:21 ID:82AAYtBcO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

何かもう色々すいません。滝に打たれてきます ノシ
159風と木の名無しさん:2009/04/06(月) 02:07:49 ID:tGcfr3aq0
>>158
姐さんgj!
あまりにも切ない三人だけどそこがたまらなく萌える部分でもあるんだおなあ。
160風と木の名無しさん:2009/04/06(月) 17:57:29 ID:OOg30zsaO
>>158
禿げました。
うっかり職場から、帰宅の最中に見て、
にやにや変質者になる程にっ!
161風と木の名無しさん:2009/04/06(月) 22:12:13 ID:QAYCib/Y0
>>147
萌えました
リバに完全に目覚めましたありがとう!
162風と木の名無しさん:2009/04/07(火) 00:33:48 ID:hssK7bce0
エ/ス/コ/ン/6 パラレル花見ネタ シャム×幽霊目
本当は1回分の投下にするつもりがエラーが出た為、変な所で二つに分けています。
別スレで迷惑を掛けてしまったので、ルールにのっとって書けているか心配です。
もし違反していたらすみません。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

(2−1)
花見会場にタリズマンの姿が長い事見えないので、シャムロックは探しに出かけた。
ゴーストアイは夜一人では危険だから、と付いて行く事にした。
あてどなく探している内に、何時の間にかひと気の無い桜の森の奥深くに入り込んでいた。
「幾ら何でも、こんな所にはこないんじゃないか?方向音痴のシャムロックならともかく。」
ゴーストアイに言われシャムロックが引き返そうとした時だった。
一陣の風が吹き、花びらが雪の如く二人に降り注いだ。
163エ/ス/コ/ン/6 パラレル花見ネタ :2009/04/07(火) 00:39:01 ID:hssK7bce0
(2−2)
「シャムロック、いや・・マーカス・・・一度くらいは私に許してくれ。」
シャムロックの答えを待たずに彼を桜の木に押し付けるゴーストアイ。
「な・・何を・・・?」
シャムロックが戸惑っている間に、熱く柔らかい何かを彼の口に押し付けた。
そして耳元で同じ位に熱い言葉を例の美声で囁かれると、シャムロックは反撃する力を失っていった。
やがて桜の木が揺れだし、さらに花びらが散っていった。
ゴーストアイの手がシャムロックに触れる度にタリズマンの名を口にしかける。
だがその度に口を塞がれる。
「困った奴だ。まあいい。」
その手をシャムロックの中心に持って行くと、強弱をつけて責め始めた。
「あっ・・ああっ・・・」
「マーカス、私の名を呼ぶんだ。一度でいいんだ!」
「・・・ゴースト・・アイ・・・!」
その直後。シャムロックを桜の木に打ち付けるかの如く、ゴーストアイは彼を強く穿った。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ここまでです。お目汚し失礼しました。
164ヴォ椅子 元ヤン×オタ 桜 1/2:2009/04/10(金) 11:04:07 ID:vG42m4k40
半ナマ注意、某ゲツクです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

飲みすぎた。
畜生、ダイキの野郎。
無邪気な顔して人のグラスに注ぎまくりやがって。
「あれ?どうしたの?もう降参?」
そう言われて引き下がれるかっての。

花見の後、テッペイの部屋になだれ込んでの飲み会。
流石にアキは花見だけで先に帰り、酔ってんのか酔ってないのか分からないダイキと、明らかに酔っ払って
ご機嫌なリョウスケはさっき連れ立って帰っていった。
ふわふわする体をベッドにもたれさせて、妙な具合に回る視界を閉じた。

「ハネイさーん、大丈夫ですか?ハネイさん?」
耳障りのいい聞き慣れた声に目を開けると、目の前にテッペイのどアップがあった。
くっきりとした二重の、切れ長のでけえ目。
吸い込まれそうで慌てて逸らすと、柔らかそうな唇が目に入る。
いつもはちゃんと自分を押さえ込めるのに、今日は無理だ。

悪い、テッペイ。

重たい手を無理やり持ち上げてテッペイの首にかける。
肩をすくめ、硬くなった体を引き寄せて唇を重ねた。
固く引き結ばれた唇はそれでも甘く、頭の芯が痺れた。

ずっとこうしたかった。
酒の力を借りるなんて我ながら情けない。

165ヴォ椅子 元ヤン×オタ 桜 2/2:2009/04/10(金) 11:05:13 ID:vG42m4k40
薄く目を開けてみると、テッペイの目がこれでもかと見開かれている。
硬直したままの体を自分の下に引き込んだ。
もう一度、と顔を寄せるとテッペイがびくっと体を震わせた。
怯えた様子に一気に酔いが醒める。
「悪い……」
もつれた舌で謝り、緩慢に体を離そうとした時。
「ハネイさんっ」
小さく叫ぶようにテッペイが言った。
俺の服の胸元を握って引き寄せ、そのまま唇を合わせてくる。

技術も何も無い、押し付けるだけのキスがこんなにも気持ち良いなんて。
服を握り締めた手がかすかに震えている。
愛おしさが込み上げた。

桜よりも酒よりも──テッペイに酔った春の夜。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
失礼しました。
166風と木の名無しさん:2009/04/10(金) 13:36:41 ID:ce5L/aS80
伽羅王・大鳥の米親父

ほんわかっぽく書いたつもりです


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
167夕方(ラジオCMパロ)1/2:2009/04/10(金) 13:38:35 ID:ce5L/aS80
「明日は、うちの息子を、よろしゅうお願いします。頼みますよ」

親父が頭を下げれば下げるほど、イラついた。
一丁前にできた保護者ヅラして、俺のチームメイトに頭下げて・・・

けど、俺が口に出したところで、親父が動じるはずもなかった。

「そろそろ帰るか」
「・・・ああ」

こう見えて糞真面目な親父は、昔から仕事ばっかりで、酒も飲まないし、甘い物食ってるとこも見たことない。
その癖、収入はかなり微妙。
俺は、親父みたいになりたくなくて、収入の安定したスポーツ選手を目指そうと思い、社会人アメフトチームに入った。

そして明日は、俺の初試合。

「練習はどうだ」
「まあ、ぼちぼち・・・」
「試合とはな、日々の積み重ねを見せる時だ。それでも駄目なら、ハートでいくことだ」

「もういいよ。これ以上、プレッシャーかけさせんなって」

「・・・すまない」

いつもどおりの無口な感じだったけど、俺は何となく、親父の歩幅に合わせて、ゆっくり歩いた。
168夕方(ラジオCMパロ)2/2:2009/04/10(金) 13:39:28 ID:ce5L/aS80
「そこの店、寄っていいか」
「は?」
「ほら、前に『新しいスパイクが欲しい』って言ってただろう」
「あぁ・・・」
「お前、こうでもないと、一緒に出かけないからな」

・・・覚えてたんだ。

確かに、前にスパイクをせびったことがある。
初試合にかける熱意を、知って欲しかっただけだけど。

「・・・あ、あのさ」
「ん?」
「帰りにさ、その・・・アイスとか、食わねえ?」
「・・・暑いしな」


親父につられて、笑ってた。
169風と木の名無しさん:2009/04/10(金) 13:40:57 ID:ce5L/aS80
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
お粗末さまです。ありがとうございました。
170風と木の名無しさん:2009/04/11(土) 09:32:20 ID:kzweCc9+O
>>169
ほんわかしました
ごちそうさまです
171風と木の名無しさん:2009/04/11(土) 17:34:35 ID:1QpUnjXg0
>>164
gj!!きゅんきゅんしたよ
172黒子 黄笠:2009/04/12(日) 00:48:47 ID:5Z4DyUtiO
黒子のバスケで黄瀬×笠松
誠凜戦前、付き合いたての2人

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
173黒子 黄笠 1/5:2009/04/12(日) 00:51:57 ID:5Z4DyUtiO
さくさく。さくさく。
砂利を踏む音が、静かな夜道の向こうから近づいてくる。
やや盛りを過ぎた桜並木の下を、黄瀬と笠松はふたり並んで歩く。
「あー、今日も疲れたっスね」
げんなり、と大きくマジックで書いてありそうな顔で黄瀬がぼやいた。
「そーだな。今日の監督やたら気合入ってたし」
でも少しは慣れただろ?ここの練習。
そう言って微笑んだ笠松の横顔に、黄瀬は一瞬見とれてしまう。
「…? オイ、どうした?」それをいぶかしむ笠松の声に
「っ、あ、いえ、なんでもないっス、スイマッセーン!」
はっと我にかえっても…時すでに遅し。
「ったく、ボーッとしてんじゃねーよ!」
シバくぞ!と怒鳴る声と同時に、笠松は本日5回目の肩パンをお見舞いした。
「いってー!もうシバいてるっスよ、キャプテン!」
「部活終わったからってだらけてんじゃねぇ!
…まぁ、その様子じゃまだまだ慣れてねーみてぇだな」
「キャプテン…オレ海常で練習始めてから、まだ1ヶ月も経ってねーんスよ?」
ぼやく黄瀬を、ジジ、と鳴る街灯が照らしている。
「ハハ、それもそだな。キセキの世代っていっても、ついこないだまで中学生だったんだしな」
「だから、オレは下っぱだったんスてばぁ…」
まぁ、でもちょっとは楽になったっスよ。と笑う黄瀬に、笠松は安堵しかけたのだが…。
「…1つだけ、慣れたくても慣れられなさそうなコトがあるっス」
秘密を打ち明けるかのような黄瀬の口調に、慌てて気を取り直した。
「ん?何だそりゃ」
「キャプテン。…怒らないで聞いてくださいっスよ?」
174黒子 黄笠 2/5:2009/04/12(日) 00:54:50 ID:5Z4DyUtiO
耳障りな街灯の音は止み、辺りは静けさで満ちている。
監督のえこひいきか。それとも部員からの嫉妬だろうか。
笠松は海常バスケ部主将として、この有望な後輩であり、
大切な恋人でもある黄瀬の悩みを解決しようと決意したのだが。

「キャプテン。…あなたのハイソックス姿です」
まじめな表情とはかけ離れた黄瀬の言葉に、彼があっけにとられてしまっても誰が責められよう。
「きゅっと引き締まった足首!すらりと伸びたふくらはぎ!
そしてユニフォームとハイソックスの間からチラッ☆とのぞく生足!
それが部活中ずっと目の前にあるなんて…見てるともうムラムラしてたm」バキッ!!!

「な、何言ってんだこのバカ!!」
見事な飛び蹴りを食らわせた笠松が、真っ赤になって叫びだした。
「い、イッテー!!怒らないでって言ったっスよね!?」
あまりの衝撃にくずおれた黄瀬が、涙目で言い返す。「ふ、ふざけんじゃねーぞ!部活中になんつーこと考えてんだこのバカ!!」
恥ずかしさのあまり、全力で笠松は吠える。
その姿が可愛らしくて、黄瀬はこぼれる笑みをおさえられないまま、
そっと彼の唇をふさぐように人差し指を落とした。
「ダメっスよ、キャプテン。そんな騒いだら人来ちゃいますよ?」
ぐっ、と言葉につまる笠松。言い返したくても黄瀬の指のせいで何も言えない。
175黒子 黄笠 3/5:2009/04/12(日) 00:58:07 ID:5Z4DyUtiO
音もなく、優雅に桜の花びらが舞い落ちていく。

「好きな人見るとドキドキするのって、当たり前っスよね?
それともキャプテンは違うんスか?
部活中にオレを見ても、なーんにも感じないんスか?」
だったら、キズついちゃうなぁ…
笠松の顔を覗きこみながらそう問いかける黄瀬の瞳は、
ちょうど今浮かんでいる月のように、輝きつつもどこかさみしげな色をしていて。
少し冷たい指が離れていくのと同時に、つい笠松は本音をこぼしてしまったのだ。

「…んな訳ねーだろ。おれだって…と、ときどきだけど」
おまえから目が離せねーんだからな!
そう言い切って目をそらしてしまった愛しい人を、黄瀬は強く抱きしめた。
「キャプテンがそう思っててくれたなんて…。オレ、今すっげー幸せっス!」
「うわっ!…そーかよ」
ぶっきらぼうな言葉とは裏腹に、笠松はやさしく、自分よりも広い恋人の背中に腕を回した。

「キャプテン…」
いとしい、いとしいと言葉よりも冗舌に伝えてくる黄瀬の瞳の中に映るのは、同じ瞳をした笠松の姿。
その瞳が緩やかに閉じられると共に降ってきた唇を、笠松は胸を高鳴らせて受けとめた。
176黒子 黄笠 4/5:2009/04/12(日) 00:59:54 ID:5Z4DyUtiO
春の夜の空気は少し冷たいけれど、ふたりの唇はとても熱くて。
できることならずっとこのままでいたかったけれど、人目が怖くて黄瀬はそっと離れた。
「…帰りましょうか、キャプテン」
「…ん、そだな。って、黄瀬おまえ髪に桜ついてっぞ」
「え!どこっスか?」
ばさばさと髪を払ってみるが、なかなか取れないようで。
「あーあー、取ってやっからちょっと屈め」
「ハイっス!」
目線が同じになるくらいまで屈む。笠松の手、そしてなぜか顔が黄瀬に近づいてきて。


ちゅ。


柔らかく熱いものが黄瀬の唇をかすめていった。
「わかりやすすぎんだよ、オメー。ほら、取れたぞ」
花びらをつまんで、笠松はしてやったりと笑っている。
「きゃ、きゃぷてん…!」
黄瀬の顔はもう、夕焼けよりも真っ赤になっていて。
「はじめて、キス、してくれた…」
「あーもう、んな赤くなってんじゃねーよ。…おれまで照れちまうだろ!」
ホラ、と棒立ちしている黄瀬に手を伸ばす。
「帰るぞ」
177黒子 黄笠 5/5:2009/04/12(日) 01:02:18 ID:5Z4DyUtiO
黄瀬の視界に映るのは、街灯がともる長い長い桜並木と、
ほんのりと顔をあからめて、こちらに手をさしのべている愛しい人。
その光景は一枚の絵のようで、黄瀬は心の中でこっそりつぶやく。

…ああ、たぶんオレ、一生この光景を忘れないっス。

つぶやき終えると共に、黄瀬は笠松の手を取った。
「ハイ、幸男さん」
ささやかな仕返しに初めて名前で呼べば、笠松の顔は真っ赤に染まる。
「名前は反則だろっ…」
小さくつぶやくけれど、握りしめた手が離れることは、ない。

さくさく。さくさく。
砂利を踏む音が遠くなってゆく。

これは少し欠けた月と散りかけた桜が見守る中起きた、ある春の夜のお話し。
178黒子 黄笠 終:2009/04/12(日) 01:06:00 ID:5Z4DyUtiO
夜桜の中歩く二人を思いついたら、止まらなくなりました。幸男さんのハイソックスは正義
乱文失礼しました。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
179風と木の名無しさん:2009/04/12(日) 19:11:56 ID:2D417qCU0
>>178

かわいいよ笠松ぅう
180風と木の名無しさん:2009/04/12(日) 20:02:04 ID:s1pgd8Xg0
>>178
乙乙乙
ハイソ正義に全力で同意させてもらいます!
181風と木の名無しさん:2009/04/12(日) 21:58:24 ID:r++Wh4RTO
>>178
乙です!
チラッ☆は正義
182キム×空:2009/04/12(日) 23:07:05 ID:qrxfVpZt0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  キム/タクと唐/沢がドラマで共演したらという妄想からだモナー
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  勝手に作ったオリジナル作品だカラナ
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 棚15からダラダラと続いてるぞゴルァ!!
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) キム×唐だゴルァ!!
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___※本人とはなんの関係もありません
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
簡単なあらすじ
容姿端麗・性格も良く仕事のできる木村。30過ぎても結婚しない理由は
40過ぎの×1男、空沢に惚れていたからだった。
離婚の寂しさ、経済的な理由でルームメイト募集の広告を出した空沢。
やってきたのは木村だった。そこから二人の共同生活が始まった。
二人の関係:最後までは一度も無い
183キム×空 1/2:2009/04/12(日) 23:07:49 ID:qrxfVpZt0
「木村さんって空沢さんの考えてる事なんでもわかるんですねー」
昼間、会社の女の子にそんな事を言われてしまった。
俺があの書類どこだっけ?って言ったら木村がここですよ。って返した。
ただそれだけのたわいない会話を見て、だ。
そんなの普通だろうが。そう思っていたけれど、そんな風に言われたものだから改めて考えてみた。
その結果、よくよく思い返してみればこいつすごいなと思う事もあるかもなんて考えに至ってしまった。

この間だってこうだ。
「おい木村ー俺のあれ知らない?」
「昨日は空沢さん酔ってたから…ペン立てとかじゃないすか。」
この会話、主となる物が「あれ」になってる。でも、木村はわかったんだ。
あの時はおうあったあったなんて普通に返してたけど。なんでわかるんだこいつは。
まぁこの時のあれっていうのは歯ブラシの事なんだけど。
で、俺ですら知らない事をなんでこいつは知ってるんだ。
「かあさん」「ハイ醤油」てのはよく聞くけど…まぁ確かにもう結構長いしな。
俺も歳とったから最近じゃ余計にあれあれ言ってるしな。
慣れってやつだろう。
しかしこいつどこまで通じるんだ。
「なんすか。」
「いや、なんでも…」
ジッと見ていたらしい。木村に怪訝な顔をされた。
その顔がふっと緩み、自分の眉間に指をさして俺に指摘する。
「しーわ。……何考えてたんですか?俺見ながら。」
184キム×空 2/2:2009/04/12(日) 23:08:17 ID:qrxfVpZt0
何って、エスパー的な事だよ。
お前がどこまで俺の考え読めんのかっていうな。
例えば今何考えてたか当ててみろ。
そう思って黙ってジッと木村を見て念じていたら。
「どうせ昼間言われた事気にしてたんでしょー」
なんて言って笑いやがった。もうこいつ怖い。
「ばれませんよあのくらいなら」
あ、ちょっと違うし。やーいばーか
でもまぁすごいと認めてやろう。
…じゃあ、こういうのも伝わるのか。
またジッと木村を見てみた。
木村は俺をジッと見つめ返してきた。が、その目が逸れた。おうなんだ、こういうのはわかんないのかよ。
横を向いて少し笑ったかと思ったら、勢いよく俺の座ってるソファの隣りに腰かけてきやがった。
何至近距離でニヤついてんだよ。
こいつ、相変わらずむかつくくらい美形だな。
なんなんだ一体。何で俺なんだ。
視界が暗くなったと思ったら、口に生ぬるい感触が来た。この野郎。
何がチュッだ。はまり過ぎなんだよこういう行為が。これだからイケメンは手に負えない。笑いやがって。
「いきなりなんだよ」
「いや?なんとなくしたくなっちゃって。」

あーもう本当、こいつ、怖い。
185風と木の名無しさん:2009/04/12(日) 23:09:25 ID:qrxfVpZt0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |                   
 | |                | |           ∧_∧      今日見たテレビで萌えスレより
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )     富士50執念で思い出してくださった方へ感謝を込めて。
 | |                | |       ◇⊂    ) __  読んでくださってありがとうございました。
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |  
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
186風と木の名無しさん:2009/04/12(日) 23:39:02 ID:jG8J7cDN0
>>185乙乙
姐さん待ってたよ!!GJ
187風と木の名無しさん:2009/04/13(月) 00:29:07 ID:E6sIKswI0
キム空キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
188風と木の名無しさん:2009/04/13(月) 00:29:21 ID:E3TqZy3G0
>>185姐さん素敵です!!
リアルすぎて思わず笑ってしまいました。
189風と木の名無しさん:2009/04/13(月) 00:58:20 ID:EFRsFi79O
>>185
二人の共演決定してからというものの、棚に姐さんの新作来ないかなと待ち構えてた!
にやにやしながら読んだよGJ。本物ドラマのほうも楽しみだ
190風と木の名無しさん:2009/04/13(月) 04:23:05 ID:SVYSl2no0
>>185
待ってましタ─wwヘ√レvv〜(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜─ !!
191風と木の名無しさん:2009/04/13(月) 13:08:07 ID:6YEK4FeHO
>>182
あああああ期待して見にきたら来てたーー!!!
姐さん毎度ごちそうさまです。
これからも追っかけます。
192風と木の名無しさん:2009/04/13(月) 21:41:41 ID:ZM2wkOsE0
>>182
わあああ富士特番でニラニラしてたら新作キテタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!
相変わらず完全に本人たちの声が聞えてきそうなリアルさと
胸が痛くなるほどの萌をありがとう!!
空沢さん可愛いよ天然だよキム男前だよ
もう富士は姐さんの脚本でドラマ作ればいいのに。
193風と木の名無しさん:2009/04/13(月) 23:51:09 ID:tdkXrOV9O
社名が腐二照れ美に変わります
194風と木の名無しさん:2009/04/14(火) 00:37:40 ID:v3TLNeRIO
>>185
姐さん待ってました!
50周年見逃してorzだったけど姐さんの新作読めて幸せです!
195風と木の名無しさん:2009/04/14(火) 01:14:55 ID:jxbEblpe0
>>185
うわ〜嬉しすぎる!!GJです!
本当にそのままドラマにしてほしいです。
特番スレでもキムは嫁じゃなくて今度は旦那とちゅーするのかと
言われてたw
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | レオD四つ目です。まとめ三十三巻〜数週間前に投稿したものと
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|微妙に話がつながってます。でもエロです。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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「…どういう事ですか」
「それは俺の台詞だ」
レオンの部屋。汚らしく散らかった部屋の壁に、D伯爵は打ち付けられ、両手を上にあげる形で拘束される。
「痛いです、離してください」
拘束された状態でも強気なD伯爵が気に入らない。
「何でだよ。何が気に入らなくて最近触れさせねえんだよ」
つ、と、レオンの指がD伯爵の頬を撫でた。
「んっ」
首を反らして、指を遠ざける。
「何でだよ!」
何も答えない。触れさせない。
怒りが頂点に達したレオンは、D伯爵のチャイナ服のあわせのボタンを食い千切る。
ボタンがころころと床に転がった。
「!」
「今日は好き勝手やらせてもらうぜ。いつも逃げられてばかりだからな」
「刑事さん…」
D伯爵の目に恐れが浮かぶ。一度怒ると手が付けられない。
酔っ払ったレオンに襲われた日もそうだが、レオンは、怒るとD伯爵が嫌がる事を率先してやる。
そう、今肌があらわになった伯爵に向けた牙は、当然D伯爵の体に突き立てられる。
「もう、こんな事はやめましょう!刑事さん!」
悲痛な叫び声が部屋に響く。
だがそれ以上の怒声が、D伯爵の耳に響いた。
「理由を言え。ディー!」
そういわれて口籠もる。
言えない。言えるはずがない。
その態度にもイラついたのか、乱暴にD伯爵の服を開く。
真っ白い肌が月明かりによく映えた。
白い喉にそっと噛み付く。強く吸うと、跡がついた。
「刑事さん…」
悲しげに眉を寄せる。
「あの時お前から誘ったんだぜ。それを今更無しにしようだなんて気がすむはずがねぇ」
そう、あの時。数ヶ月前、この部屋で、D伯爵は責任を取ってくれと誘ってきた。
責任を取るつもりで今まで寝ていたわけではないが、急に態度を変えたD伯爵が気に入らなかった。
「他に男が出来たか?それとも女か?」
その声はあまりにも優しかった。
囁くように、D伯爵の耳元でつむがれる言葉。
答えはNOだ。
だが、その理由は今は言えない。
「…違います」
「じゃあなんでだ」
「…言えません」

「っ…」
声を上げないように、極力唇の端を噛んだ。
少し口の端に血がにじむのもかまわずに、声を上げないよう、なるべく努力した。
「声上げろよ」
ふるふると首を振る。
ちっ、と、舌打ちをする。
壁に押さえつけたまま、衣服を剥いでいく。殆ど衣服を脱がされて、舌はD伯爵の耳を愛撫する。
手は乳首を転がし、もう片方の手は相変わらず手首を拘束していた。
「くぅっ…」
体はこの数ヶ月ですっかりレオンの愛撫に応えるようになってしまった。
つんと硬くなった乳首を、少し痛いくらいに摘む。
それすらも快楽と捕らえてしまう己の体が、今は疎ましかった。
「はあっ…刑事さん…お願いですから…」
下を向いているため、表情は伺えない。だが声が少し震えていた。
「お願いだからなんだ?」
低い声で答える。
許してもらえないようだ。
今日ばかりは、と。D伯爵の体を弄ぶつもりだった。
「…」
観念したのか、目を閉じて、今までしていた小さな抵抗をやめた。
「あっ、あ…」
体を彷徨う手を受け入れて、やがて後孔に指を入れようとする時、D伯爵は力を抜いてそれも受け入れた。
一番感じやすい前立腺の辺りを執拗に攻められる。慣らす為ではなく、快楽を引き出すための行為だと気づいて、D伯爵は声を上げた。
「そうだ、いい声で鳴けよ」
「あっ、ああっ、そこ、は…」
指は抜き差しを繰り返しながらも、もう一本指を増やして、そこを攻め立てる。
悲鳴に近いD伯爵の声を聴いて、レオンはひそかに口の端をあげて笑った。
ぐ、と捕らえられた腕に力がこもる。
「駄目、あ、刑事さん…刑事さ…ああッ!」
達したD伯爵が、荒く肩で息をつく。
ぽと、と、一滴だけ涙が落ちた。
それはレオンの腕に落ち、筋を残して消えた。
「何、泣いてんだよ」
「泣いてなんかいません」
「嘘付け」
D伯爵の目の前に、レオンの顔が迫る。
噛まれるだろうか、と思った矢先、目じりにたまった涙を、レオンの舌が舐めとった。
「…!何を、するんですか」
少し悲しそうに、D伯爵はレオンを突き放した。
違う、本当は。
本当なら。
レオンを遠ざけるのにも意味はある。
そう、一緒になってはいけないのだ。
いけない。
いけない…。
「ちっ」
またもその態度に腹を立てたら仕入れ音が、小さく舌打ちする。
と、後孔に熱いものがあてがわれる。
「あっ…」
「入れるぜ?」
ぐ、と半ば無理やりもぐりこんでくるそれを、D伯爵は大きく息をついて受け入れる。暴れないせいか、いつものように、優しく入ってくる。
いつもの優しさだ。
傷つけないようにと、D伯爵の内部に入ってくる。
「あ…!」
完全に中まではいると、性急に腰を使って攻め立てられる。
弱い所を知り尽くしているレオンだからこそ、すさまじい快楽がD伯爵を襲った。
「あー…!あっ、んっ、ああっ!」
「ッ…、中はいつもどおりだぜ。ディー」
意地悪い声が部屋に響く。
やめなければならないのに。
それが『彼』のためでもあるのに。
「っ…!はっ、あああ!」
「くっ…」
中で熱い飛沫がどろりと入ってくるのが分かる。その感覚に酔いながらも、D伯爵は意識は手放さなかった。

腕の拘束は解かれ、疲れていたのか、ベッドに先に横になってレオンは眠っていた。
先ほどの情交が嘘みたいだ。
さら、と、レオンの髪を撫でる。
「…刑事さん、人はいつか結婚して子供をなして行く生き物なんです」
レオンはD伯爵の声が届いてないのか、相変わらず寝ている。
それでもD伯爵は続けた。
「だから私とこんなことしてはいけないんです。あなたはまたお見合いして、気に入った女性と一緒になるでしょう…?」
暗がりの中浮き出る裸体。少し寒い、ということに気づいて、ボタンの取れたチャイナ服を着込んだ。
「ではお店に戻りますね、刑事さん」
にっこりと、いつもの笑とは少し違った、邪気のない笑顔をレオンに向けると、背を向けて部屋から出て行った。

そしてD伯爵が部屋からいなくなると、レオンが目を覚ます。
否、目を覚ましたわけではない。元から眠ってはいなかった。
枕に頬杖をつくと、レオンは一人つぶやいた。
「俺は別におめー以外と寝るつもりはねぇよ。結婚する気もさらさらない。…なんでわかんねぇかなあ…」
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 規制に巻き込まれました。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )もっとレオD広まればいいのになー。
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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203風と木の名無しさん:2009/04/15(水) 19:08:31 ID:gH5UvRfL0
自分以外に喜べる者がいるのかわからないけれど、殿といっしょの島津次男×長男
史実云々とか時代考証とか突っ込み所は多いですが目をつぶってやって下さい


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
204鬼の片鱗  島津次男×長男:2009/04/15(水) 19:10:34 ID:gH5UvRfL0
”大将の首は絶対に渡してはならない”
常日頃から父や家臣に重ね重ね言われていた言葉が、その時パッと義弘の頭に浮かんだ。
この戦の総大将は父・貴久だ。
しかし自分の眼の先で窮地に陥っている彼の人は、他人はどうであれ自分や弟達にとっては大将に相違ない。
それからの彼の行動は迅速だった。
即座に馬を引いて返し、群がる者は轢かんばかりの勢いでの特攻。
そして全身全霊力をこめて一刃を標的めがけて振り下ろした。
「――――っ!」
その瞬間、赤い花でも咲いたかのように血飛沫が飛び散る。
更に刀を振るう義弘と崩れ落ちる敵兵を、義久は唖然として見ていた。
嗚呼、前にも何かこんな時が――
「兄上、無事か?!」
「あ……あぁ」
義久は敵の体越しに聞こえた弟の声で我に返り、再び戦場に復帰したのだった。



「すまなかった、義弘」
「んー?別に気にするな」
戦も、その後処理も無事に済み、ひと段落ついた薩摩・伊作城。
日のあたる縁側で並んで腰かけるのは、薩摩の誇る戦隊ヒーロー(?)島津四兄弟の長男・義久と次男・義弘。
「それよりさぁ」
義弘は大きく伸びをすると、大げさにため息を吐いた。
「折角の俺の活躍に、だーれも気付いてくれなかった事がさ……」
「悩む所そこ?!」
「あんだけ派手にやったのに」
「でも兜首取ったんだろう?雑兵だけど」
「いや、寸の所で逃げられた」
「…………」
「俺、どうやったら目立てるんだろうなー」
そう言うと、もう一度ため息をつく。
義久はまたか…といった顔で義弘を見ていた。
205鬼の片鱗  島津次男×長男:2009/04/15(水) 19:13:12 ID:gH5UvRfL0
しっかり者の長男で皆のまとめ役・義久、眉目秀麗で頭脳明晰な参謀長・歳久、戦場でだっていい笑顔・天真爛漫な家久
そして、他の兄弟に比べてこれといった個性が無い義弘。
今ではそれが持ちネタになりつつあるが、本人は真剣に影が薄い事を悩んでおり、現状を打開すべく剃髪したり、
女装にはしったり、熊のキグルミを着てみたりと日々迷走を続けている。
「何かを劇的に変えないと俺は日の目を見られねぇ訳か…うーん、どうすっかなぁ……」
「まだ言ってるのか、お前」
いつもと同じ義弘の愚痴を話半分で聞きながら、義久は先程の戦の事を考えていた。
不意を突かれた…と言っても、言い訳にもなるまい。
武勇で名高い島津の若殿が、一卒の兵に力で押し切られて刀を弾かれ、絶体絶命のピンチに陥った所を弟に助けられただなんて。
しかし、義久が引っかかる所はそこではない。
義弘に助太刀されたあの瞬間に感じた、既視感。
かつてあれと同じ光景を目の当たりにした事があったからだ。
それは今となっては笑い話に出来る程些細な出来事だった。



その日はいつになく蒸し暑く寝苦しい夜だった。
中々寝付けず「ちょっと外に出よう」と言いだしたのはどちらだったか。
城を抜け出して、月明かりが照らす夜空の下を義弘と二人で駆けていった。
ちょっとした悪戯のつもりだった。
しかし朝までに帰ってくれば大丈夫と楽観視していたのが間違いだった。
迂闊にも、弟とはぐれた上に道に迷ってしまったのだ。よりにもよって山の中で。
「……しまった」
早く城に戻らないとヤバい上に義弘の安否も心配だが、夜中の山を宛ても無しに進むのは危険だ。
このまま動かず朝が来るまで待ち、下山するか。
もし義弘が戻ってきていなければ改めて探しに来ればいい。
そう結論を出して義久は座り込み、傍の樹木に背を持たれかけた。
空を見上げると、いつもより一際美しい月。
「もういい、寝よう」
木を背にして無理矢理眼を閉じる。
その場に漂うムッとした熱気のような風を不快に感じながらも、眠りに落ちるまで時間はさほど掛らなかった。
206鬼の片鱗  島津次男×長男:2009/04/15(水) 19:14:12 ID:gH5UvRfL0
それから、どれだけの時間が経っただろうか。
「…………ん」
ガサガサと木々が揺れる音で義久は目を覚ました。
「義弘?」
複数らしい話し声が聞こえるが、返事はない。
寝惚け眼をこすって目を凝らすと松明の灯が近付いてきているのが見えた。
誰だ?
幾らかの可能性が義久の頭に浮かぶ。
自分達を捜索しに来た家臣達か。
仕掛けた罠か何かの様子を見に来た猟民か。
ここらへんを縄張りとしたゴロツキ共か。
はたまた狐狸妖怪の類か山男か。
「…………」
とっさに木の影に身を隠して息をひそめる。
しかし既に遅かった。
ガサッ!
「――――っ!!」
「何だ、餓鬼じゃねえか」
振り向くと、そこには松明の灯に照らされる隻眼の男。
その後ろにも人相の悪い男が二人立っていた。
「何者だっ!」
キッと相手を睨みつけて声を張り上げる。
「いやに威勢のいい餓鬼だな」
男はニヤニヤと笑みを浮かべているだけだった。
「どうする頭領?今からでも明日の船出には十分間に合うだろう?」
「しっかし餓鬼じゃ大した金にならねえよ。せめて女ならよかったのに」
「フフそう言うな、金になる分マシさ。百姓やるよりよっぽど稼げる」
口々に勝手な事を喋り出す男達。
207鬼の片鱗  島津次男×長男:2009/04/15(水) 19:15:20 ID:gH5UvRfL0
義久は彼らの目的を理解し呟いた。
「成程……人買いか」
最近、南蛮船相手の人身売買が横行していると父が言っていたのを義久は思い出した。
どうする?
自分が子供とは言えゴロツキ相手に泣いて命乞いなど島津の名が廃る。
出来る事ならこんな悪党共、とっ捕まえてお縄にしてしまいたい。
しかしこちらは丸腰で相手は大人三人。
隙を見て逃げるしかない。
自分を無視して更に会話を続ける男達を尻眼に義久はそっと後ずさる。
このまま気付いてくれるなよ……!
そう願ったのもつかの間だった。
「逃がすか!」
ドガッ!
隻眼の男によって両腕を封じられ地面にねじ伏せられてしまった。
「ぐぁっ!」
「いい身なりしてやがる……お前、武家の子だな?」
「だったらどうしたっ……!」
「なら売り飛ばすのは止めだ。お前を掻っ攫って身代金たんまり頂くとしよう」
「ふざけるな!このっ…外道が!!」
「餓鬼が!なにデカイ口叩いてやがんだ!!」
そう声を荒げると男は捩じり上げた両腕に一層力を込める。
骨がきしむ音、それと同時に走る激痛の所為で、義久は悲鳴を上げた。
「さぁ、大人しく観念する――――」
ゴッ!!
義久の頭上で高笑いする男の声が鈍音で遮られた。
思いっきり首を捻って後ろを見上げると、頭を抱えてしゃがみ込む男と棒っきれを手にした子供が一人。
吐く息を荒くし鬼気迫る形相で男達を睨みつける彼を、義久はただただ凝視していた。
月光に照らされたその姿はまるで――――
208鬼の片鱗  島津次男×長男:2009/04/15(水) 19:16:36 ID:gH5UvRfL0
「……義弘?」
思わず、その名を呟く。
「馬鹿っ!何ボーッとしてやがる!!」
義弘はすぐさま義久の腕を掴んで引き寄せた。
そして唖然とする男達を残して、二人は一目散に駈け出したのだった。
どこへ向かっているのか分からないまま遮二無二走って山を下る。
体が熱いのも息が切れるのも気にしていられない。
ただひたすらに。



山の麓まで辿り着いた時、ようやく二人は一息ついた。
「ハッ……っぶなかった……本気で…ハァ……死ぬかと思った……」
「あっ……あぁ」
それから暫く二人の間には荒い呼吸音しか聞こえなかった。
「おい……」
それを最初に破ったのは義久だった。
「義弘、手」
「あ」
その言葉で義弘は、人攫いから逃げる時から義久の手首を掴みっぱなしだった事に気付く。
「悪い」
そう言って手を離す。
今度は義久が義弘の手を握った。
「これならもうはぐれないだろ」
「ん、そうだな」
二人で並んで月明かりの下をてくてく歩く。
城はもう目と鼻の先だ。
「あーぁ、帰ったら父上に大目玉食らわされるぜーまったく……」
「馬鹿、父上よりもお祖父様の方が恐ろしいぞ」
「そうだった…一寸抜け出して気付かないうちに戻るつもりだったのに」
209鬼の片鱗  島津次男×長男:2009/04/15(水) 19:17:42 ID:gH5UvRfL0
「お前が俺からはぐれるのがいけないんだろ」
「いや、迷子になったのは兄上の方だろう」
「いいやお前だ。お前を探してウロウロしていなければ、悪党共に遭遇していなかったものを」
「くそっ!あの時俺が助けて無けりゃ、あんた掻っ攫われてたんだぞ?!」
「あ…………」
「あーっ、あったま来た!もう二度と助けてやんねー!!」
「…………」
脹れっ面になる義弘と、黙り込んで俯く義久。
「ん?どうした?」
「義弘、すまなかった」
そう義久が申し訳なさそうに呟くと、義弘は笑って繋いだ手を大きく振った。
「別に気にするな、兄上」
「うぁっ!」
その勢いで義久が前につんのめり、それを見て義弘は一層楽しそうに笑った。
「兄上探し回ってて、見つけた瞬間にアレだろ?ヤバイって思って、無我夢中で……。気がついたら兄上の手ぇ握って走ってた」
あの義久救出劇を、義弘自身よく覚えていないらしい。
「そ、そうなのか」
これが火事場のクソ力というやつかと、義久は妙に感心した。
「兄上だったからだよ、きっと」
「もう無茶するんじゃないぞ」
「分かってる」
そう言って二人は顔を見合せて笑い合った。



城に戻ると案の定、二人の脱走の件で家中は大騒ぎになっていた。
帰ってくるなり二人は母に泣きつかれ、祖父にカミナリを落とされ、父にこってり絞られ、家臣達にも説教を食らった。
そして、何故自分も誘ってくれなかったのかと拗ねる歳久をなだめ、いつもどおりの笑顔で二人を迎える家久に癒されていた。
勿論それだけで終わるはずもないのだが……それからの事はご想像にお任せしたい。
210鬼の片鱗  島津次男×長男:2009/04/15(水) 19:19:31 ID:gH5UvRfL0
その時以来、あの時の義弘に感じた”何か”の事など義久はすっかり忘れてしまっていた。
思い出せたのは、幼い頃の記憶とあの戦での光景が重なったから。
あの時の射殺さんばかりの眼光と気迫、身を呈して自分の事を庇ってくれた彼が見せたそれはまさしく

――――鬼

「おい、今何て言った?」
「えっ?」
義久が顔を上げると、怪訝そうな顔をする義弘がそこにいた。
先程考えていた事が口をついて出てしまったらしい。
「あー……」
なんて言葉を繋げようか義久が考えていると、急に義弘が両手をパンッと叩いて頷いた。
「な、何?」
「いいなそれ!」
「だから何が」
「目立つ方法!そっかー鬼かぁ、鬼!いいよな!!デカイし、カッコイイし、強そうだし!!!!」
「そっ……そうか」
「早速兜にツノでも付けてみるか!兄上ありがとう!!」
義弘は一人で勝手に盛り上り、上機嫌で自室へと戻っていった。
なんだって思い立ったら即行動、それが義弘。
「まったく、あの馬鹿は……」
一人取り残された義久はそう呟いて苦笑した。
「やっぱりあれは気のせいか」



動乱と野望渦巻く戦国時代。
ここ九州・薩摩の地に、いずれ全国にその名を轟かすであろう四人の兄弟がいた。
その名は島津四兄弟。
目立たない次男坊こそ義弘が、後に”鬼島津”と呼ばれる猛将になる事をまだ誰も知る由も無いのだった。
211鬼の片鱗  島津次男×長男:2009/04/15(水) 19:25:55 ID:gH5UvRfL0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

まずは満足。
回想シーン、二人とも幼名だろとも思いましたが、ややこしくなりそうなので今の名前で通しました。
島津四兄弟は”弟は兄思い、兄は弟思い”だといいなぁと思ってます。
212風と木の名無しさん:2009/04/15(水) 23:04:37 ID:Dk/cexAC0
>>211
うおおお萌えた! そして燃えた!
次男かっこいいよ次男

一言いうなら、名前欄にナンバリング入れてくれればなお良かった。

まさかここで殿いつネタが読めるとは思わなかったよ…!
次もお待ちしてます!
213風と木の名無しさん:2009/04/16(木) 07:39:34 ID:aRZAe/TgO
203さん以外にも番号忘れる姉さん結構いる
テンプレをちゃんと読んでください
214風と木の名無しさん:2009/04/16(木) 18:27:57 ID:RPHyJeJc0
確かに番号あったほうが便利だが、推奨は強制ではない件
215『Confessione』 始:2009/04/16(木) 19:09:54 ID:eFpMEu4MO
黒子のバスケ 黄瀬×笠松×黄瀬
誠凜戦後、告白話。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
216『Confessione』1/6:2009/04/16(木) 19:11:41 ID:eFpMEu4MO
心地よい風が渡り廊下を吹き抜けていく。
傾いた太陽がざわめく木々を照らしている。
「センパイ!お待たせしましたっス!」
その風景の中、物思いにふけっていた笠松は
かろやかな足音と共に届いた声にはっと振り向く。
「ったく、待たせんじゃねーよ!」
「スイマセン!絶対カバンに入れたと思ったんスけど」
やっちゃった、と黄瀬は夕日をうけて鈍く光る電子辞書をかかげてみせた。
「まぁ、小っせぇからすぐどこにあっかわかんなくなるよな」
ほら、と笠松は黄瀬のカバンを拾い上げて渡す。
ありがとうございます。と礼を言って黄瀬が受け取ろうとした瞬間、
ふたりの指先がかすかに触れあった。

びくっ、と黄瀬の肩が跳ね上がる。
「ん?どうした?」
「…な、なんでもないっス!さ、帰りましょセンパイ!」
何事もなかったかのように、あわてて黄瀬が笑う。
「黄瀬」「何スか?ほら、早く」
「なんでもねえわけねーだろ、そんな赤い顔して」
ごまかせなかったか、と黄瀬は小さく唇を噛む。

その様子をじっと見ていた笠松は、思い切った顔で声を掛けた。
「なあ、ちょっとおれの話聞いてくれねーか」
別に忘れていっから、と口元だけで笑って話し始める。
217『Confessione』 2/6:2009/04/16(木) 19:14:10 ID:eFpMEu4MO
「はじめて顔合わせた時のこと、覚えてるか?」
こくりと黄瀬はうなずく。
「きつそーな制服着て、監督のしゃべりに真面目にあいづち打っててさ」
「おれにあいさつした時の笑顔がすっげぇまぶしくって、…心に焼きついちまった」
青々とした葉桜に、ぼんやりと目線を投げて語る笠松。
「おまえが本格的に練習に出だしてからも、気になってしょーがなかった」
「でも態度には出さなかったぜ?仮にも主将だしな」

木々のざわめきが強くなった。
「そうして見てるうちに気付いた」
「一見ヘラヘラしてっけど、時々遠く見てさびしそうな顔してるって」
「うまく隠せてると思ってたろ?主将ナメんじゃねぇよ。
こちとら部員の様子ぐらいちゃんと把握してんだよ」
まばたき一つして、やっぱり口元で笠松は笑う。

「誠凛との試合で、やっとワケがわかったよ」
「…あの透明少年だろ?おまえが考えてたの」
笠松の瞳に、暗い影がさす。

「あの時、おまえいつもと全然違ってた」
「第4Qの時なんて、すっげぇ危なっかしかったぞ」
「そんで試合終わったら泣きやがるし」
「ありゃ焦った。それにちょっとムカついた」
「そんなに、あいつらに負けたのが悔しいのかって。…そこまで黒子が気になるのかって」
「嫉妬しそうになったけど、それ以上におまえをほっとけなかったよ」
「本当なら肩パンで十分だったろうけど、つい足が出ちまった」
ごめんな、と笠松は苦く笑う。
218『Confessione』3/6:2009/04/16(木) 19:15:39 ID:eFpMEu4MO
想像もしてなかった彼の言葉に、黄瀬はただあっけにとられるばかりで。
小さく首を振るのがやっとだった。

夕日を浴びながら、笠松は語り続ける。
「見上げてきたおまえの目、絶対忘れらんねぇ」
「涙がきらきらひかってて、すごくすきとおってた」
風がざあざあ、とふたりを包む。

「ずっと隠し通そうと決めてたのに」

すう、と深呼吸して

「あの目のせいで、我慢できなくなった」

ぐっ、と手を握り締めて


「黄瀬。初めて会った時から、おまえが好きだ」


ひた、と彼の揺らぐ瞳を正面からみつめて、笠松は想いを告げた。
219『Confessione』4/6:2009/04/16(木) 19:18:23 ID:eFpMEu4MO
ぱくぱくと口を開けては閉めるが、意に反して何も言葉が出てこないようで。
黄瀬はその場に立ち尽くしている。
それを見ていた笠松は、小さく小さくため息をついた。

「わりぃ、そりゃ驚くよな。…忘れていっから、今のこと」
「さっきおまえがあんな顔したから、ひょっとしたらって」
勝手に期待しちまったよ。とせつなく笑って、
「困らせてごめん。…先帰るな」
カバンを掴みあげて、笠松は立ち去ろうとする。
オレンジ色の夕日を浴びるその背中があまりにもさみしそうで。
必死に黄瀬は言葉を絞り出した。

「待ってくださいっス!あ、あの、たしかにびっくりしたんスけど」
嫌じゃないっス! 声をうわずらせて黄瀬は言う。
はた。と立ち止まってゆっくりと振り向く笠松。
「黄瀬。…ほんとうか?」
大きな瞳をさらに開いて問いかける。

「ハイ。ここ入ってからセンパイずっとオレのことかまってくれて」
だんだんと、黄瀬の舌がなめらかに回りはじめる。
「一緒にいてすっげー楽しくって。オレ、海常に入ってよかったなって思ってたんスよ」
「でも、なんでか時々帝光のコト思い出しちゃって」
「1年の中で浮いちゃう時なんか、黒子っちがなつかしくって」
ぴくり、と笠松の眉が吊り上がった。
220『Confessione』5/6:2009/04/16(木) 19:19:54 ID:eFpMEu4MO
「黒子っちは他のキセキにいびられてたオレに、なかよくしてくれて」
「尊敬してて、大好きで、ずっといっしょにいたくて…」
聞いているのが辛くて、笠松が思わず止めようとした瞬間。

「でも、恋してたワケじゃないっス」

「うまく言えないけど…黒子っちをそーいう目で見たことはないっス」
黄瀬の言葉に、ゆるゆると笠松から緊張が抜けてゆく。

「誠凛に負けてから、なんかいろいろふっきれて」
「もう帝光のコトも、黒子っちのコトも、あんまり思い出さなくなって」
「あの時、センパイが喝入れてくれたおかげっスよ!」
ありがとうごさいます。と言って黄瀬はにこっと笑う。
「べ、べつに、あたりまえのことしただけだ!」
そう言って笠松はそっぽを向く。
…顔が赤いのはきっと、夕日のせいだけではない。

「センパイは、あの時のオレの目が忘れられないって言ってくれましたけど、
それはオレもっスよ」
笑顔のまま、黄瀬が言葉を続ける。
「センパイの表情も、声も、蹴られた衝撃も全て…忘れらんないっス」
「心にガッと入りこんできて、出ていってくれないんスよ」
221『Confessione』6/6:2009/04/16(木) 19:21:55 ID:eFpMEu4MO
つ、と目線を伏せて。
「…それで、なんだか気になってきちゃって」
そっと黄瀬は肩を撫でる。
「正直、肩パンされてもドキドキしちゃって」
「ただの気のせいだって、忘れようとして」
「なんでもないフリしてたっスけどね…さっきのは反則っスよ」

「じゃあ…」
笠松の瞳が、夕日を受けてきらきら光る。
ええ、と黄瀬は頷いて。

「オレも笠松先輩が好きっス!」
言い終わるより早く、がばっと抱きついた。
「…ばーか。言うのが遅ぇんだよ」
口ではそう意地をはるけれど、想い続けたぬくもりに包まれた喜びに
笠松の顔は柔らかな笑みで溢れている。

「ごめんなさい」
思いの外小さな輪郭にどきりとしながら、黄瀬は返す。
「…まぁいいや、今すげー幸せ」
ぎゅっと抱きしめ返して笠松はささやく。
「オレも、幸せっスよ」
声にすら幸福な色をただよわせて、黄瀬はささやき返す。

朱色の夕日に包まれたふたりの影が、ひとつになって長く長く伸びている。
それはきっと、ふたりの未来そのもの。
222『Confessione』終:2009/04/16(木) 19:26:43 ID:eFpMEu4MO
タイトルの意味は『告白・自白』です
黄瀬を幸せにしたくて書きました。
それでは、乱文失礼。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
223「love you」 車両×餅道具:2009/04/16(木) 23:39:31 ID:mXGUSMbEO
8年振りの2ショットに悶えた勢いで八円 車両×餅道具

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
224「love you」 車両×餅道具 1:2009/04/16(木) 23:44:01 ID:mXGUSMbEO
「ぅ…んっ…」
ベッドがぎしぎしと軋む音にかき消されそうな程、僅かな声。鼻を抜け、声というよりも、もはや零れでる吐息のような甘い響きは、それだけで体の熱を上げる。
「…我慢すんなよ」
汗で張り付く前髪をかき分けてやると、キツく閉じられていた瞼がうっすら開かれる。涙に濡れた瞳が、じっとこちらを見つめている。早くしてくれと、訴える瞳。
「イキたい?」
それでも、阿見乃の口から直接それを聞きたくて、わざと問い掛ける。
「………」
返ってこない答えを急かすように、腰を大きくスライドさせ、イイところを擦ると、びくりと体が反り返った。
「ああっ!」
一際大きなその声に、きゅっと締め付けてくるその内壁に、こっちが先にイキそうになっちまう…
225「love you」 車両×餅道具 2:2009/04/16(木) 23:45:51 ID:mXGUSMbEO
「阿見乃」
また閉じられてしまった瞼の端からは、ボロボロ涙が溢れ、薄く色づいた頬を濡らしていく。背中に回されていた手に、ゆっくりと力が籠もり体を引き寄せられる。
「……も…イキ…たい、です…」
耳元で囁かれた待ち望んだ言葉に、思わず頬が緩む。
「いいぜ、イケよ」
後はただ、快楽の果てを目指すだけ。俺は強く腰を打ち付け、網野も俺にしがみつくように背中に爪を立て。
「鷹尚…っ」
「み、道秋さ…ん…っ」
名前を呼び合い、互いに白濁を溢れさせた。

果てた後、そのまま覆い被さるように網野を抱き込む。汗ばんだ肌がしっとりと重なり合い、荒く上下する胸は、こっちにまでその鼓動の早さを伝えてくる。
「…ほし乃さん」
ゆっくり開かれた瞳は、未だ涙で潤んでいて。吐き出したばかりの熱が、また下半身に集まっていくのが分かる。
「あみ」
「重いから…どいて下さい」
甘い甘い睦言とは程遠い、はっきりとした拒絶。
226「love you」 車両×餅道具 3:2009/04/16(木) 23:47:23 ID:mXGUSMbEO
「……お前さ、もうちょい雰囲気ってもんを考えろよ」
「はぁ?その年で何ロマンチックな事言ってんですか?それより、早くどいて下さい。風呂入りたい」
もぞもぞと動く腕は、今は力なんて入らないクセにグイグイと俺を押し返そうとする。
「嫌だ」
抵抗は許さないとばからに、その腕ごと細い体をぎゅっと抱きしめる。ホント、細いよなコイツ。
「…後ろ気持ち悪いんですって」
「んじゃ、俺が洗ってやる」
「あんたの場合、洗うだけじゃすまないでしょうが!」
まぁ、確かに。
「あれほど中出しするなって言ってるのに…」
「仕方ねぇだろ、お前の中気持ちいいんだし」
「あんたがいくら気持ちよかろうが、俺は気持ち悪いし、後が大変なんです」
「だから俺が…」
「結構です!」
227「love you」車両×餅道具 4:2009/04/16(木) 23:52:04 ID:mXGUSMbEO
情事の後はいつも、こんなくだらない会話だ。
馬鹿馬鹿しい問答の繰り返し。けど、俺はそれが好きだった。
普段、ぼんやりして表情の薄いコイツが、こうもコロコロ表情を変えるだなんて、誰が想像出来るだろうか。俺だけが見ることが出来る表情の一つ一つが、コイツの恋人である俺の特権だ。
「……なにニヤニヤしてんですか」
「………」
「は?聞こえないんですけど?」
「愛してる」
使い古され、随分と色褪せてしまった言葉だけど。ストレートに思いを乗せるならこの言葉しかない。
実際、小さな仕草や表情一つ一つが愛しくて仕方ないのだから。
「………っ」
一瞬何を言われたのか理解しきれなかったのか、呆けた表情で固まる阿見乃。数秒後にようやく言葉として理解したのか。
みるみるうちに色白の頬が、ぼんやりした闇の中でも分かるほどに、真っ赤に染まる。これも、俺だけが知る表情だろう。ホント、いい特権貰えたよな…
228「love you」 車両×餅道具 5:2009/04/16(木) 23:53:22 ID:mXGUSMbEO
「ほら、風呂入りたいんだろ?風呂場まで連れてってやるよ。どうせ立てねぇだろ」
「………」
先にベッドから降り、手を差し出すと、おずおずと白い手が重ねられる。
「……その」
「ん?」
「……俺も…ほし乃さんの事、好きですから」
たった一言、されど一言。
「!……んぅ…」
重ねた手を握って引き寄せ、倒れかけたところで唇を合わせる。
コイツは自覚してるのだろうか。自分の些細な一言が、こんなにも俺を興奮させる事を。
「……ぷは…急に…何するんですか…」
「風呂入る前に、もう一発やらせろ」
「はぁ!?何寝ぼけ…っ…」
耳朶を甘噛みしてやると、ぶるりと震える体。そのまま軽く押してやれば、あっという間にベッドに倒れ込む。
「風呂は後で、俺が入れてやるから」
それだけ告げて、胸の上で赤く膨れ上がった粒に舌を這わせると、甘い吐息が零れ落ちた。

コイツの言葉も、体も、感情も。
全てを愛する事を許され、また自分自身も愛してもらえる。これ程の幸せがあるだろうか。

「愛してる」

何万、何千回と繰り返し言葉にしても足らないこの思い。それを直接その体に刻む為、俺は阿見乃の快楽を引き出すことに専念した。
229「love you」 車両×餅道具:2009/04/16(木) 23:56:00 ID:mXGUSMbEO
2年後も、グダグダでいいから同窓会してくれるといいなぁ…乱筆乱文にて失礼いたしました

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
230風と木の名無しさん:2009/04/17(金) 00:05:29 ID:rn2wCn7oQ
>>229
うわー!当時、車輌持道具好きだったんで、萌えました!やっぱりいいなあ、車輌持道具。
231場皿で筆頭レイーポ:2009/04/17(金) 01:00:23 ID:2TYJX86D0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | |> PLAY.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 場皿の893×筆頭前提で筆頭レイーポ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

レイーポ・出血その他描写注意
・893が無力で
・筆頭が脆くて
・魔王が空気で
・無論パラレル
そんな感じです。
232場皿で筆頭レイーポ 1:2009/04/17(金) 01:01:20 ID:2TYJX86D0
何があったかを答えるのは簡単だ。負けたのだ。かの征天魔王を討ち倒さんとした
奥州が独眼竜、伊達軍の若き総大将は魔王に牙を剥いた報いを受けねばならなくなった。

 それだけの事だ。



 片倉小十郎は牢獄の中で石のような沈黙を保っていた。遥か頭上の小さな格子から落ちる日差しが右から左へ移動し
影を伸ばして消えるまでの時間を、ずっとそうしていた。そのあまりの気迫に、最初こそ捕虜を辱めようと
意気込んでいた織田の兵はすぐに近寄らなくなった。水や食事まで出なくなったが、どの道手をつけないので構わない。
粗末な物とは言え食材が無駄になるのは申し訳ないとすら思っていた。
全ては、敗者の奇妙な余裕から来るものだ。自刃か斬首か知らないが、この先自分が生き残る道などないと悟り切った壮絶な覚悟。

 小十郎が想うのは、織田に降ってから離れ離れにされた主の安否のみだった。
 雑兵すら口に出さないところを見ると、本当に何も起こっていないようだ。だがその沈黙は不穏な予感しかもたらさない。
結果的に負けたとは言え敗軍の将を何の予告もなく殺すとは考え辛かった。生きてはいるのだろう。
しかし、別れたあの日のままでいるのかどうか。
233場皿で筆頭レイーポ 2:2009/04/17(金) 01:04:18 ID:2TYJX86D0
 これ以上の犠牲は無用と、正宗は言った。

『魔王にヒトの理屈が通るか知らねえが、他にやれるもんがねぇ』

自らの首と引き換えに家臣と領民の命を贖うべく、小田の陣へと向かう正宗の背中を追った。怒鳴られたが、引き下がらなかった。
散々喚き馬上で押し問答をした挙句、正宗は初めて聞く響きの伴天連の言葉で絶叫した後子十郎の追随を許した。

いよいよ小田の陣という所で馬を止め振り返った正宗の、悲痛な表情を鮮烈に覚えている。
 すぐそれを打ち消して何かの表情を作ろうとした主の手を無理矢理引き寄せた。幾度となく絡めた手指を大切に撫で、
そっと握って同じ体温にした。正宗は、されるがままに任せてじっとそれを見つめていた。

 言葉は無かった。
 必要なかったから。


 出牢を命じられたのは、降伏から七日目の夜だった。
 後ろ手に縛り上げられると無言で進む兵に挟まれる。彼等と同じく黙りこくってついて行く。魔王が何を考えているか、
などは考えなかった。期待も不安も何一つない。持ち合わせているのはあらゆる最悪を想定し刻み付けた絶望だけだった。

 広い城の中を無感動に歩き回らされ到着したのは調度品の一つもない殺風景な部屋だった。そこにあったのは鉄製の檻だけで、
中に放り込まれ鍵を掛けられ黒い布で覆われて初めて子十郎は疑問を抱いた。全く意図が分からない。

 その内に、いくつかの足音が布越しに聞こえてきた。

 一つは上座にどっかと座ったようだった。もう一つは布の正面で止まる。ごそごそとくぐもった音が続いた後、
子十郎の周りの闇が唐突にすとん、と落ちた。

「――――!!」

子十郎の眼は真っ直ぐ前に吸い寄せられる。
234場皿で筆頭レイーポ 3:2009/04/17(金) 01:04:54 ID:2TYJX86D0
 そこには、一糸纏わぬ姿で天井から吊り下げられた伊達正宗がいた。


「……Hey,子十郎……。元気、そうだな……」
最後の情けなのだろうか、唯一残された眼帯に隠されていない方の瞳がゆっくりと揺れて唇が孤を描く。
 子十郎の腰が浮いた。
「!……正宗さ」
「来るなッ」
「待て」
余りにも無残な姿の主に少しでも近づこうとした所作は、二つの声で止められた。

 一つは他ならぬ正宗本人。そしてもう一つは上座で発せられた。

「声を発する事、動く事は許さぬ」

気怠げに鎮座している小田ノブナガは、やはり気怠げに規則を増やした。それからはまた興味の薄い視線を茫洋と揺らす。
捕虜に何の感慨も持っていないようだった。
 しかし、そのような状態でいてさえ魔王の威圧を放ち続けるノブナガに子十郎は主への言葉をぐっと飲み込んだ。立場は、あまりに弱い。

「子十郎……」
以前ならばまるで想像出来ない細い声に弾かれたように顔を上げる。どこか淀んだ左眼が見つめていた。
しかし子十郎と視線がぶつかる瞬間、表情が不敵に笑んだ。
235場皿で筆頭レイーポ 4:2009/04/17(金) 01:06:17 ID:2TYJX86D0
「どうも連中、俺を殺すだけじゃ飽き足らねェらしい……俺が壊れるのが見てェだの何だの、あの変態野郎の意見がばんばん通りやがる。
俺の事――――れ、Rapeすんのが楽しくてしょうがねェとか、なあ、笑えるよなあ、Crazyにも程があるぜ」
混ざった単語は子十郎の知らないものだった。だが、正宗の僅かに震えた声とその身体の有様が余りにも生々しくそれを訳した。
共通の言葉で告げるには酷過ぎる事実。

 子十郎が幾度となく愛した正宗の瑞々しい体躯。最後に味わった時より明らかに熟れた色に変わった乳首。
まだ何もされていない筈の性器は首をもたげかけていた。それを胡麻化すかの様に辛うじて床に触れるだけの足がくねる。
眼に見える傷がないのが逆におぞましいかった。

 それでも正宗は笑っていた。状況さえ頭に入れなければ、いつもの完璧な伊達正宗の顔で。

「お前が無事で安心したぜ。だが、いつまでも牢に押し込められてちゃキツいだろ?だから――」

足音が、した。

 独特のどっしりした響きは子十郎の知らぬ物だったが、正宗は違ったようだ。ひゅっと息を飲み込み、顔は色を失くして
眼だけが忙しなく後方を確認しようと動く。

 正宗の背後に、全裸の巨体が近づいて来ていた。小じゅうろうにはそれ以上の情報が処理し切れない。正宗の現状すら
まだ受け止め切れていないのだ。
 手が正宗の剥き出しの腰へと伸びる。正宗が息を飲むのが分かった。
「あ――」
男は正宗の腰を掴んで抱き上げた。天井から下がった縄が落ちる。

 子十郎の目の前で無様に秘部を晒け出され固定された正宗は、少しの時間を置いてまた先程と同じ表情を作った。仮面の様な不敵な笑顔。
「お、れが――何とかして、やる。俺が小田の、な……慰み、者。になれば――お前も、成実達も、民も見逃してくれるとさ。
……てめぇの体でそれだけしてもらえんなら、もう言うことねぇ、よ」
子十郎の中で何かがぶちりと切れた。だが頭とは逆に体内は驚くほど冷たく醒めて、腹に大穴でも開いているのだろうかと
どうでもいい事を思った。
236場皿で筆頭レイーポ 5:2009/04/17(金) 01:07:51 ID:2TYJX86D0
 正宗の秘部の直ぐ下には、胡坐をかいた男の勃起しきった剛直があった。
「大丈夫だ、子十郎……」
正宗が言葉を繋ぐ。
「散々お前と寝たんだ、今更相手が変わろうが何だろうが大したこたねェよ……Take It Easy,だ」
にっと歯を見せた唇の端は、ひくひくと引き攣っている。
「こ、これから……後ろの野郎に――――、あ・あ゛あァあああ゛ア゛アああ!」

絶叫。

 男のものは明らかに大きかった。それを無理矢理捻じ込まれる激痛で正宗の身体は末期の獣のようにビクビクと跳ねた。
「あ……ぐ、ぅん――」
全てを飲み込まされ、正宗の身体ががくりと脱力した。

 もう無理だ。
 子十郎の頭の中には何もない。何のために主と二人投降したのかを忘れた。目の前で辱められる正宗を救いたい、
ただそれだけが嵐のように渦巻く。正宗さえ、正宗さえ助けられるのならば他に誰が何人死のうと構うものか。
 血の巡る音が耳の中から直接響く。立ち上がりかけた。が。

「こ、じゅ……ろ……」

震える声がまた子十郎を縫い止める。視界の端でノブナガが暇そうに杯を傾けるのが見えた。

 正宗の頭が弱々しく振られた。
「いい、いいんだ……大丈夫……。……ちょっと、痛ェだけだ――こんな奴の腐れ摩羅なんざ、大した事…………あがっ!」
正宗の身体が持ち上げられた。ずるりと抜け出た男の性器は醜悪に紅く染まっていた。正宗の血だ。
「あ、ヒッ――んん……。平気、だ……!こんなの、痛ェだけ、で、うぐっ!」
秘部から出血しながらも正宗の精神はまだ折れていなかった。気丈に、凄絶に笑う。その左眼一杯に涙が溜まっているのに
子十郎は気づいてしまった。力を緩められて正宗は自重でずぶずぶと沈む。
237場皿で筆頭レイーポ 6:2009/04/17(金) 01:08:54 ID:2TYJX86D0
「い、うぅ……あ゛、あぐぁあー……」
強制的に男を味合わされる感覚に、あらゆる筋肉がわななく。 
「ぃぎっ!?」
唐突に正宗の腹がぼこりと膨れた。子十郎しか知らない正宗が到底受け入れきれる物ではないのだ。
 それでも正宗はギリ、と歯を食いしばった。両手を戒められたままで身をくねらせて抵抗を試みる。
それでも強制的な抜き差しに思うように動かぬようで、その左眼からは断続的に光が消えた。膨れた下腹部は血まみれだ。
 
 子十郎の身体はがたがたと震えていた。恐怖、怒り、様々な感情が混ざり合い沸騰したモノがぐらぐらと子十郎の内で燃えている。
 犯されながらも気丈に笑う正宗。場違いに、その健気さをいとしいと思った。
 
 正宗の背がしなる。爪先が宙を蹴り上げる。子十郎に結合部を見せ付けるような体勢で犯され続けていた。
「あっ、あ゛がっ……っ、――!」
声が飛び飛びになると、一際強く腰を叩き付けられる。理性の飛んだ、子十郎しか知らないはずの声が子十郎の耳まで侵す。
二人の房事と違うのは、痛みと屈辱に悶絶する呻きと不穏な水音が混ざっている事。

ぎゅっと握った手が震える。爪が肉を裂き生温かい血が衣服に染みた。

「!」
正宗の左眼が見開かれた。請うような視線は背後の男へ。
「……!…………!」
ぶるぶると震えて首を振る正宗。足が力なく跳ねるが無駄だった。男が低く呻く。
「…………!!」
いやだ、と唇だけが動いた。いやだ、いやだ。
「――――ッ」
正宗の身体が深く深く刺し貫かれた。男がブルリと獣のように身を震わせる。一瞬の硬直の後、再び正宗の身体は
持ち上げられた。その秘部から覗いた男の性器は、血と放たれた欲望とで桃色に染まっていた。
238場皿で筆頭レイーポ 7:2009/04/17(金) 01:10:39 ID:2TYJX86D0
 正宗の瞳から、ついに涙が一筋零れた。溢れる。一度流れ出した涙は留まる事無く、ぼろぼろと正宗の左頬だけ濡らした。
 
「…………!」
自分の唇から血が流れているのを自覚した。噛み締めすぎてずたずたになった肉。正宗の唇や胸、性器、あらゆる所を愛した場所。

「もう、良い」
信長が呟くように言った。
「飽いた。好きにしろ」
それだけ言うと、立ち上がる。目の前に広がる陰惨な光景など、まるで眼に入らぬかのように。

「正宗様ァ!!!!!」
転がるようにして檻の中を這い格子に手をかけた。隙間を潜らせた腕を伸ばす。押し付けられた方が悲鳴を上げた。
「あ、うぁ………ッ」
子十郎の声が耳に届いた瞬間正宗の精神も瓦解した。涙をとめどなく溢れさせ、滅茶苦茶に犯されながら。
「あ、あああああああっ!嫌だ子十郎!もう嫌だァ!!止めろ、もうやめてくれよ……っ!!痛ェ、いたい、
いたいいたいいたいいたいぃぃ!!裂ける、嫌だ、助けてっ……!」
ぼこんと膨らむ腹。正宗の手が伸びる。
「子十郎……ッ!!」
しゃくり上げながら正宗が子十郎を呼ぶ。指先が触れ合えばもう早かった。指を絡ませようとする。抽送が早くなった。
「あ、駄目、駄目だ、うあ、あ、ぎいっ……」
目玉を落とさんばかりに眼を見開いた正宗が幼児のように首を振る。
「ああっ、駄目、だ、こじゅ……っ!見るな、見ないで……なぁ……っ!」
「正宗様!」
懸命に手のひらを引き寄せる。互いの体温が混ざり合い、同じ温度になっていく。
239場皿で筆頭レイーポ 8:2009/04/17(金) 01:11:03 ID:2TYJX86D0
「あ――――…………っ」

正宗の身体が一際大きく跳ねた。その性器から勢い良く白濁が放たれる。男も達したようだった。

 色が変わるほど強く握り締められた手から、ゆっくり力が抜けていく。うつろな眼をして正宗は檻に寄りかかった。格子ごと抱き締める。男が出て行った箇所から、血と精液の混ざり合ったものがだらだらと零れていった。
 痛みと射精の余韻で震える正宗の唇が、僅かに動いた。必死で耳を寄せる。
「こじゅう、ろ……」

 ……ごめんな。
 
その細い細い言葉だけ残して意識を手放した正宗を抱いたまま。


 自分が泣いている事に気がついた。  
240場皿で筆頭レイーポ :2009/04/17(金) 01:13:17 ID:2TYJX86D0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ いろいろなものが残念
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

アヌメとの思わぬシンクロ吹いた。勢いでやるものじゃないな。
配分ミスとか改行とか伏せ忘れとか失礼しました。
241風と木の名無しさん:2009/04/17(金) 03:46:37 ID:niv5h86X0
生 麻草子供 玉×水

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


楽屋に無造作に置かれているパイプ椅子に深く腰を下ろして、博士は背もたれに凭れながらぼんやりと
すぐ隣を眺めていた。
しゅるっと小気味のいい音を立てて帯が回される。二三の手順を踏んで後ろ手に結ばれる帯。
何時見ても流れる様な手際だと感心をするけれど、褒めてみた所で相手は噺家。当然だと笑われるだけだろう。
それなりに広い楽屋の中には、様々なジャンルの芸人がいた。
落語、コント、一人芝居。今回はいないけれど講談師や音楽グループもいる。それに、漫才師。
その全員がとある放送作家の肝入りで集められた人間だった。
年に数度のこのイベントは、博士とその相方が『本場所』と呼んでいるものだ。毎回任されるトリに
感じるのは喜びと重圧。イベントの為に用意するネタは、時事の事件を取り入れたもので、一回こっきりの
掛け捨てすると決めている。彼らを選んだ放送作家は効率が悪いと苦笑いをしたけれど、
板の上での真剣勝負に掛ける熱意と気合を汲んでくれていた。
それ位する価値がある。特に主催者の放送作家は、彼らの敬愛する唯一神である殿のブレーンを
長年務めてきた男だ。彼らだってお世話になっている。
激しいリアクションには必須の袴を身に付け眼鏡の位置を直した噺家が、不意に博士に向かって
問いかけてきた。
「そういや、あんたの相方何処行ったの? 随分長い事見てないけど」
「何処ですかねぇ。便所にしては長いし」
「倒れてんじゃない?」
相方が極度のアガリ症であるのはよく知られていて、似た小心者さを抱える噺家が
揶揄い半分心配半分なのは見てとれた。コンビだからといって常に一緒にいる訳でもないけれど、
そう言われては放置も出来ない。重い腰を上げるべきか迷う。
「緊張のあまり腹下すとか、貧血起こすとか、あいつやりそうだなぁ」
「見て来てやったら? どの道出番まで時間あるでしょ」
「もし倒れてて使い物にならなかったら、師匠、俺と組んで漫才やってくれる?」
242生 博士の微妙な純情 2/4:2009/04/17(金) 03:48:05 ID:niv5h86X0
付き合いの長さ故の慣れた口調で、博士は噺家に笑いかけた。捜しに行くのは構わないが、
今すぐ立ち上がると心配を見抜かれそうで嫌だった。どっちにしろ、この噺家は人の気持ちを読むのに
長けているから、かなりの線でバレているのだろうが。
相方のメンタルの弱さに溜息が出る。慣れろよと思う気持ちがあるのも確かで、でもこのイベントは
特別だからと擁護する気持ちもある。気合が空回りするタイプというのは何処にでもいるのだ。
「つべこべ言ってないで捜しに行きなさいよ。アドリブで漫才出来る程、俺は芸達者じゃねぇよ」
「またまたぁ。落語家なんて一人で全部やってんだから、出来るでしょ」
「無理。小心者だからな」
「それじゃ駄目じゃん」
噺家の使うフレーズを口真似しながら言うと、「性格なんだからしょうがないってもんだよ。
って事でガッテンして頂けましたか?」と彼の仲間が司会をしているどこぞの健康番組の決め台詞を
引用しながら返された。そして早く行って来いとばかりに蹴りが一発。博士程ではないが小柄な噺家は、
可愛らしさを装っている外見を裏切るバイオレンスな一面も持つ。草履で蹴られた所で大したダメージは
ないけれど、相方に対しての気持ちを見透かされるのは気恥ずかしい。
 博士は仕方ない風を装って立ち上がる。意地悪く行き先を尋ねられたら誤魔化すつもりだったけれど、
噺家はただ笑って手を振るだけだった。


行き先の見当はついてはいなかったけれど、逃げ込める場所なんて数が知れている。二つ目に足を運んだ
人の来ない非常階段の踊り場で、博士は壁を睨んでいる相方を見つけた。
声をかけようと息を吸い込んだ瞬間、相方が気配に気付いて振り返る。
「また緊張してんのかよ」
「だって駄目なもんは駄目なんだよ」
大きな背を丸めて、相方は博士の顔を覗きこんで来た。でかい犬みたいだとよく思う。
これで昔は不良だったというのだから笑える。
「いいけどさ、別に」
「心配してくれたの?」
「帰って来ないと、最後のネタ合わせが出来ないだろ」
噺家に促されたのは秘密にしておく。心配で来たとは口が裂けても言いたくはないからだ。
243生 博士の微妙な純情 3/4:2009/04/17(金) 03:48:44 ID:niv5h86X0
大体舞台の上に立ってしまえば、逃げも隠れも出来ない訳で、ウケると天国スベると地獄。
緊張している暇なんてない。だからとっとと腹を括ればいいのに、相方は本番直前までそれが出来ない。
厄介な奴だなぁとは思うけれど、博士はこの相方が好きだった。同じ人に憧れて、この世界に飛び込んだ。
地獄の様に過酷だった麻草・仏蘭西座での修行を共に生き抜く為にコンビを組んで、それが今の自分達に
繋がった。芸暦が二十年を越えてもまだ若手扱いで、必要があれば身体を張らされる。
殿の名前を頂いている軍団の中でも一番下。それでもしゃんと立っていられるのは、相方がいるからだ。
「どうする、ここでネタ合わせしちゃう?」
「ネタ合わせの前にさぁ……」
ふと相方が言い澱んだ。どうしようかな、言おうかな。やめとこうかな。そんな逡巡が目の前で
もじもじしながら繰り広げられている。可愛い女の子なら言い出すのを待ってあげてもいいけれど、
相手は相方。博士はあっさりと尋ねた。
「何だよ、言えよ」
「じゃあ言うけど、キスして?」
「……はぁ?」
「ほんっとに緊張してんの。駄目なの。だから、ね?」
ちょこんと小首を傾げられても、大男を可愛いと思う趣味は博士にはない。しかも恐ろしい事に、
緊張を解す為に唇をねだられるのは初めてではない。ある時は人のいない楽屋で、ある時は幕間で。
昔からの悪癖はこのイベントに限り復活をする。最終的には押し切られてしまうと分かっていても、
博士は聞かずにはいられなかった。
「お前なぁ、毎回毎回毎回毎回、どうしてキスを求めるんだよ」
「緊張が和らぐ気がするんだよっ」
「気がするだけだろ」
「和らぐのっ」
「だったら他の誰かにしてもらえよ。お前の濃いから嫌だ」
「優しくするから。……博士じゃなきゃ駄目なんだって」
最初の勢いを削いだ口調でぽつりと言葉が落とされる。声音に混じるのは隠し切れない真剣さで、
博士は舌打ちしたくなった。芸人なら洒落で押し切れと思うけれど、それが出来ない相方を可愛いと
思わなくも……なくもない。
 だから結局は受け入れてしまうのだ。
「……さっさとしろよ」
「いいの?」
「いいから言ってんの。しないんだったら、楽屋帰るぞ」
244生 博士の微妙な純情 4/4:2009/04/17(金) 03:49:17 ID:niv5h86X0
睨みあげると相方は嬉しそうに笑った。なんだよ、緊張なんてもう解れてんじゃねぇの。
と言いたかったけれど、さらに背を屈めて顔を近付けてきた相方の真面目な顔を見ると、
文句すらもう口からは出てこなかった。
身長の高い相方は、小柄な博士に負担にならない様に、必ず自分の背中を屈める。
吐息がかかる。唇が重なる。腰に回される腕は逃がさない様にと縋る常と違い、言葉の通り優しかった。
やれば出来るじゃんと間違った感想を抱きかけた時、触れるだけだった唇が僅かに離れる。
数ミリの隙間で問いかけられた。
「舌、入れていい?」
「好きにすりゃいいだろ」
キスして良いつった時点で覚悟してるよ、博士は半場自棄の様に言い返す。僅かに唇を開いて、
相方を受け入れる。進入してきた舌に口内を掻き回され、零れそうになる吐息を飲み込んだ。
体温が一気に上がった気がする。着込んでいるパーカーを脱ぎたい位に熱い。
毎回の事ながら、相方にされるキスは長く濃厚だった。巧みに誘導され、絡めた舌を吸い上げられると
眩暈に似た陶然とした感覚が湧き上がる。
人生の半分近く連れ添ってきた相方は、大切過ぎて理由でもなけりゃうかつに触れも出来ない。
多分相手も同じ事を思っている。だからこれ以上の事はない。
コンビを組んでいる相方であるという一線からギリギリ落ちない、この儀式にどれ程の言い訳が
含まれているのか。
馬鹿野郎。博士は心の中で呟いた。俺もこいつも、大馬鹿野郎だと。
数分間触れ続けていた唇が離れるのは、なんとなく寂しかった。小さな声で名前を呼びかけて、
博士は口を噤む。甘さを引き摺るつもりはない。
何となくお互いに顔が見られない。だから視線を下に逸らしつつ。ぼそぼそとネタ合わせを始めた。
全体的な流れの再確認と、ポイントのおさらい。しばらくすれば元通りになれるのが長年コンビを
組んでいる強みだ。ふらふら酔った状態で戦える程板の上は甘くない。
出演者は強敵揃い。異種格闘技の場とはいえ、麻草キッドが負ける訳にはいかないのだ。
気を引き締めながら博士はちらりと相方を見上げながら、頭を切り替える寸前にふと思った。
どうせこの先もコンビでいるんだから、死ぬまでには一度位自分からキスしてみるのもいいかなぁ、と。

口に出せる日がくるのかは、博士も知らない。
245風と木の名無しさん:2009/04/17(金) 03:50:16 ID:niv5h86X0
長年の萌えがたぎって書いた。自分スレの人ありがとう。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
246風と木の名無しさん:2009/04/17(金) 11:43:41 ID:7kSGT0m00
>>241
うぉう!まさかの麻草!
あの二人は関係に年季入った感じでいいですね。
若手ゲ仁ン関連ばっかり読んでいたところにズドンときました。

247風と木の名無しさん:2009/04/17(金) 15:38:45 ID:BBeRcXTb0
>>241
すげえ、朝草でタカ妥小学校の舞台裏とかなんてニッチな、
なんて思ってたら見事にやられた。萌えた。
水際すれすれのところで退くおっさん同士がこんなにえろいとは。
GJGJGJ!!!!!
248風と木の名無しさん:2009/04/17(金) 18:55:39 ID:YIAP9nIu0
>>241
スゴス!GJ!結構この二人の関係性が好きなので、リアルに嬉すぃ〜!
有り難うございました!是非、続編をっ!!!
249風と木の名無しさん:2009/04/18(土) 19:43:44 ID:FkmF1ggDO
>>241 素晴らしいです!理屈っぽい文体がご本人っぽくて素敵
250風と木の名無しさん:2009/04/19(日) 01:47:02 ID:ZdxkVoOsO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )勢いで書いた今日のドラマ「ザ・クイズショウ」ものだお。

「思い出せ!俺は8年も待ったんだ」

 彼の顔が突如眼前に迫る。
 頭の中に映像がフラッシュバックする。息が逆流するように喉が痙攣する。視界が彼の顔で埋まる――

「…あ――」

 自分の喉が何か叫んでいた。しかしその声は隣の部屋から聞こえているのかというほど遠く、はっきり認識さえできない。
 息が苦しい。頭に血流が集中するかのようだ。塞いでくれ、喉を、鼻を、頭を、身体中を――
 混乱した自分の手は無意識に頭を押さえていたが、足りなかった。そう思った瞬間、体に暖かな圧迫を感じた。
 首筋に、吐息。
251風と木の名無しさん:2009/04/19(日) 01:48:05 ID:ZdxkVoOsO
 ぞくりとするのに、心地良いと感じてしまったのはやはり温度か、それとも。

「大丈夫だ…俺が救ってやる」
 その言葉を肌に感じた。
 自分の髪が彼の言葉に揺れる。髪だけではない、心すらも。
 彼の言う通りにして、今日も一日は終わった。無事に過ぎていった。
光の当たる場所に背筋を伸ばして立つ自分を、インカム越しの彼の声がやはり動かしていたのだ。
そう動けば、救われる。この信頼はいつから生まれたのだったか――

「…はい」

 それ以外の返事はいつから忘れてしまったのか。
 救われたいと思ってしまった。光の当たる場所にいる喜びを覚えてしまった。
それは華やかなステージでなくたっていい。彼の手が支えてくれるのなら。

「…立つんだ。わかってるな?」

 この薄暗い部屋だって、白い光に満ちる。
 立ち上がって、ベッド際に立って彼を見た。彼は、黙ったままこちらの反応を見るように冷たい視線を投げていた。
 亡くした記憶。不安定な感情。自分を繋ぎとめているのは今まさに彼だけだった。
彼が欲するこの失われた記憶は、取り戻されるとしたらその時はやはり彼が喚起してくれるのだろう。
 そんなことを思いながら、服の裾に手をかけ、頭上までめくりあげて脱ぎ捨てた。裏返しの白が床に落ちて溶ける。
微動だにせず見つめる彼の目の前で下も脱ぎ捨て、ただの人間になる。
252風と木の名無しさん:2009/04/19(日) 01:55:34 ID:ZdxkVoOsO
服も、過去も、記憶も、感情すらも脱ぎ捨てた、自分の持つ唯一のこの身体。
過去はなく未来も見えはしない。きっとそれを握る彼が掌を開くまでは。
 彼はゆっくり近づき、体に触れてきた。身につけたままの服が至るところを柔らかに摩擦するのに、一々熱くなる。
決して激しくはしない、触れるか触れないかの刺激が中心部に訪れた時、耐えきれず伏せていた目をあげた。
また、視界はほとんど彼の顔になっていた。程近い彼の顔に、今度は自分から吐息をかける。

「…はやく」

 早く、救って下さい。
 苦しいんだ。
 にやりと唇を歪めた彼は、いきなり乱暴に唇を塞いだ。何度も角度を変えながら奥へ奥へと捩じ込まれる舌に
口内の粘膜中を掻き回される。意識が快楽に支配されて、あのフラッシュバックの断片すら霞んでゆく。
 甘い嵐に翻弄される自分の体を、彼の腕が押し倒していた。脚を大きく開かされ、羞恥と期待とに呼吸が荒くなる。
 全てを思い出させてほしいと思っていた気持ちが劣情で薄れてゆく。
全てを忘れさせてほしい。その指で気持ちよくしてほしい。
全て思い出してこの関係が終わるくらいなら。
この白い箱から放り出されてしまうくらいなら。
 その声で、その指で、支配して。罠の檻で甘やかしてくれとさえ願いそうになる。
 自分が誰だかわからなくてもいい。彼しか知らない自分を、今はただ愛した。
253風と木の名無しさん:2009/04/19(日) 01:56:36 ID:ZdxkVoOsO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )色々違ったらごめん!なぜ録画しなかったんだorz

反省は来週する。
254風と木の名無しさん:2009/04/19(日) 14:38:04 ID:I8889zkO0
>>250
ありがとうありがとう萌えたぜ苦しいぜ
さっそく読めるとは思わなかった…あざっす!!
255風と木の名無しさん:2009/04/19(日) 22:25:57 ID:3RgqKWylO
>>250
GJ!
ドラマでは流れなかったその後の場面の妄想が、
おまいさんのおかげでしっくりきますた。
256D軽度 愚論義さんの災難:2009/04/19(日) 22:36:36 ID:uLnJZa6IO
本スレの愚論義恐い→愚論義さんカワイソスの流れに噴いて萌えた
801と言うより単なる萌えですが、しばしお付き合いください

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
257D軽度 愚論義さんの災難:2009/04/19(日) 22:37:24 ID:uLnJZa6IO
愚A「生き残ったのは我々だけか…」
愚B「案野運マジぱねぇ!」
愚C「倫戸も変わったよな…久宇賀に似せた鎧をまとって我々と戦うとはな」
愚D「なあ、もう下下留、案野運から逃げ切ったら勝ち、で良くね?」
愚E「お前はもう一度封印されてろ!」
愚F「俺、もう倫戸の中で生きようかな…パソコンスキルあるし、IT企業にでも…」
愚A「取り敢えず、暫くこの国を離れて様子を見てみるか」
愚C「いいねえ〜俺、南がいいなあ…」
愚D「逃亡と言ったら、南米だろ」
愚B「え〜南国だとマフラー巻いてるの暑いじゃん」
愚E「UV加工のさらさら素材にしておけ!」
愚F「(カチャカチャ…)ネットで飛行機のチケット予約しました」
他愚「仕事速いね〜」


愚D「あ〜天気はいいし、食べ物も旨そうだし、来てよかったな〜」
愚E「俺達は観光に来たんじゃないぞ!」
愚B「ここの倫戸はのんびりとしていて、下下留がしやすそうだな」
愚F「あそこに呑気に昼寝してる倫戸がいるぞ!」
愚A「では、あの倫戸を殺す下下留から始めるとするか」
愚C「寝てるのを殺すのは簡単すぎるから…おい、起きろ!」
青空の似合う青年「…愚論義……変身っ!」
愚一同「おか〜さ〜ん!!」
258D軽度 愚論義さんの災難:2009/04/19(日) 22:38:02 ID:uLnJZa6IO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

パラレルなD軽度ですので、彼らは青空の似合う青年が全滅させたのとは別愚論義ってことで…
259風と木の名無しさん:2009/04/19(日) 23:41:31 ID:IZtf/nYQ0
>>256
ちょ、余所に出掛けて迄やられるってwwwとなりつつ萌えたw
260風と木の名無しさん:2009/04/19(日) 23:55:11 ID:BNEfkp8E0
>>256
やべぇ腹痛いwww超笑って萌えましたb
愚論議可愛いよ愚論議
261風と木の名無しさん:2009/04/20(月) 00:02:55 ID:26bpKk8K0
ねらーをガチ告訴した実績をお持ちのあのお方が怖いですが、やります。
生、黒化、暴力表現NGの姐さん、スルーどうぞ。
前二作とは別次元でお願いします。

大沢○昌の代表作、シリーズ四作目のラスト辺りを無意味にパロっています。
なんでそんなアホなことをするのかというと、単におちょくりたいからです。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
262行列のできへん府民相談所 1/8:2009/04/20(月) 00:03:52 ID:5Ard7A180
 ちょっとばかり頭がよくて、ちょっとばかり顔がきれいで、またちょっとばかり道案内
が得意だからといって、たかが漫才師だ。
 それが、こともあろうに大阪府の最高権力者であり、有能な法律家であり政治家であり、
芸能人としての人気も知名度も圧倒的に上の自分に向かって、真っ向から牙を剥いた。
 泣かせたい。捩じ伏せたい。取り澄ました白い面を屈辱と、それを上回る快感に歪めさ
せて、謝らせたい。許しを乞わせたい。ぼくが間違っていました、正しいのは知事閣下で
す、と、その生意気な口に喚かせたい。
 執務机の上に置いた書類をぐしゃり、と握りしめたその手の関節が白く浮き上がる。
 「何遍も言う通り、ぼくは反対です。幾ら財政難やからって、府立大学をスケープゴー
トにするようなことは。しかも、いずれは廃止も考えてはるんでしょ?卒業生として――
いや、ほんまは中退なんですけど――、黙って見過ごすわけにはいかへんのです」
 誰に説明してんねん、とツッコミたくなるような台詞を吐いて、来客は煙草に火を点け
ようとする。その左手がなかなか決まっている。
 「おっと、庁舎は全面禁煙だよ」
 「あ、すんませんでした」
 「君、喫煙マナーがなってないって前に誰かに言われてただろ。誰だったかな」
 本当は覚えているのだが、わざと考えるふりをして、相手の反応を見る。案の定、彼は
ちょっと顔を強張らせて、話を元に戻そうとする。
 「とにかく、知事は何から何までやり方が強引すぎます。ぼくは子供の時から本が好き
やったから、児童文学館の件も、他人事や思えません」
 「そんな愚にもつかない、青臭いスピーチをする為に、一人でわざわざここまで来たの
かい?漫才師って随分暇なんだね」
 立ち上がり、窓から一望できる大阪市の景色を見るふりをして、さりげなく彼の後ろに
回る。
 「知事かて、就任してからも何やかやとよう出て来はるやないですか。仕事せえよ、て
みんな思てますよ」
263行列のできへん府民相談所 2/8:2009/04/20(月) 00:05:06 ID:5Ard7A180
 なかなか口の達者な男だ。あの相方、うすらでかい方、何といったっけ。京大法学部卒
か知らないが、ろくに喋りもできない、何に出てもただオロオロしてるだけの、使えない
男。あいつとは違う。最近は全国区のクイズ番組に出演したり、こいつの書いた伝記が出
版されたりしてえーカッコさせてもろてるようだが、近畿圏ではダメっ子ドジっ子キャラ
で通っているという事実を知る者は意外と少ない。
 「君は記憶違いしている。それは宮崎県知事だろ?ぼくはタレント業の方は殆どやって
ないよ。どちらにしても、君たちより人気があるのは確かだけどね。君たちには、リュッ
クサックからポンと現金一億円出して渡してくれるファンなんていないだろ?」
 そう言うと、いきなり後ろから相手を抱き竦め、襟元から手を差し入れた。
 「な、何しはるんですか!?」
 驚く相手に、低く笑って囁く。
 「この淫乱、おまえこういうの好きなんだろ?相方のあの奥目と毎晩ヤリまくってるん
だろ?」
 知事選に出馬して以来、トレードマークのサングラスも外し、髪も黒くした。こうして
みると案外ベビーフェイスだったりするのだ。時には泣きべそ顔も披露したりしていい子
ぶっては、「府議会やお役人にイジメ抜かれても、府民の皆さんの為に一生懸命頑張る健
気なボク」を演出しようと必死になっていた。
 しかし、今はもう完全に、トーク番組でのヒールだったあのイカレ鷹派極悪キャラを取
り戻している。来客の耳に息を吹きかけ、首筋を舐め回す。
 「な、なんでそれを・・・・あっ・・・・ああっ」
 乳首を探り当て、きつく摘まんで捻り上げると、相手が悲鳴を上げた。
 「痛っ!」
 独特の、甲高いその声に、背筋がぞくぞくする。ますます嗜虐心がそそられる。
 「おまえが相方を見るあの目つき、あの寄り添い方、あれを見てりゃ誰だってわかるよ。
完全に女の目、女の仕草だもんな」
 言いながら、執拗に胸を撫で回す。赤ん坊のようにすべすべした、柔らかな質感の肌だ。
三十過ぎとはとても思えない。
264行列のできへん府民相談所 3/8:2009/04/20(月) 00:06:04 ID:5Ard7A180
 「や・・・・やめて」
 来客は身を捩り、思わず、ここにはいない相方の名を呼んで助けを求めた。
 「そうそう、宇治原だったな、あの能なし芸なしのぼんくら」
 思い出してにやりとする。
 「い、嫌や・・・・うーちゃん以外の男にヤラれたない」
 来客は知事の腕から逃れようともがくが、あまりに突発的な出来事で気が動転している
のか、意識的に、もしくは無意識に手加減をしているのか、どうも力が入らない様子だ。
 知事は冷笑して、無慈悲にこう言い放った。
 「よく言うよ小悪魔。おまえはうちの『相方』も喰い散らかしてくれたんだろ?法曹界
でも噂になってるよ。堅物で有名なあいつをよくたらしこんだものだって、感心したぜ」
 「や・・・・八代さんとのことは・・・・もう・・・・」
 瞳を潤ませ、来客は呟く。花のかんばせに、ツーッと苦い悔恨の涙が流れる。
 Wind is blowing from the Aegean〜 女は海〜 好
きな男の腕の中でも違う男の夢を見るうう〜 ハァァ〜♪と歌ったのはジュディ・オング
だったか。曾て、相方であり、恋人でもある男の存在がありながら、別の男との情事に溺
れたことがあった。
 男には家庭があった。どこにも漕ぎ着かない、カタストロフが待っているとわかりきっ
ていながら――、下手をすれば、お互い全てを失うかも知れないと予測していながら――、
それでも求めあわずにはいられなかった。
 一時は心中すら考えるほど思いつめたが、結局、散々傷つけあった挙げ句に、男は妻の
元に、自分は相方の胸に戻った。心の底から、自分が悪かったと思った。罵られても殴ら
れても、去られても仕方ないと思いながら、相方の涼しい眼差しの、きれいな心の前に、
自分の過ちを洗いざらい晒け出して、詫びた。
 そして、相方は無限の包容力を以て、二人の男に一生の深手を負わせた彼を許したのだ。
 「そら嬉しくはないよ。せやけど、もう済んだことや。なんぼ言うてもしゃないやろ。
おまえの十字架は俺も一緒に背負たる。そうやって、これからも二人で生きていったらえ
えやんけ」
 何の罪もないのに、そう言って。
265行列のできへん府民相談所 4/8:2009/04/20(月) 00:08:29 ID:5Ard7A180
 「言ってみろよ。宇治原や八代にここを、こうされたのか?」
 知事の手が衣服の上から下半身をまさぐる。
 「嫌や!やめろ!」
 来客は拒否の声を上げて、知事の手に噛みついた。
 「・・・・やってくれるな」
 血の滴る手を押さえて、知事が言う。
 「ぼく、帰らしてもらいます。折角来たのにお茶も出えへんみたいやし」
 立ち上がった来客の肩を、知事の手が掴んだ。こちらに向き直らせ、予告なしにいきな
り頬を打った。
 「俺はおまえの人形みたいな顔をしばくことくらい、何とも思わへんのやからな」
 知事の言葉つきが変わったことが、不気味な迫力を醸し出していた。
 「それが法律家で政治家のしはることなんですか?」
 口の端から血を流しながらも、来客は毅然として問うた。言い終わるより早く、今度は
逆手をも使って、両の頬を張られた。
 目から火花が飛び、体勢を崩した所を、髪の毛を掴んで引きずり回され、ソファの上に
仰向けに投げ出された。知事の手がカッターシャツの胸元に掛かる。釦が幾つか弾け飛び、
床に当たって高い音を立てた。
 相方がいつも、「おまえの肌は最高や」「ぽよぽよで、もちもちしとって、阿闍梨餅み
たいで気持ちええな」と愛でてくれるきめ細かな白い肌が、今はこの冷酷無比な男の、欲
望にぎらつく視線に晒されている。悔しさと羞恥のあまり、抵抗する気力もなくして目を
閉じ、息をついた。
 知事の方は、とりあえず剥いてはみたものの、予想を上回るその体の美しさに、ただ目
を奪われていた。この年になるまで、いや、ついさっきまで、そっちのケはないと思って
いたのだ。まさか、男相手にあらぬ気を起こすとは思わなかった。皆、この男の天使のよ
うな顔と、甘ったるい声と、組み敷きやすそうな小柄な体躯のせいだ。そして、それらの
ものと全く見合わない、大阪人らしい強かな気質のせいか。
 くそっ。なんでこんなきれいで若々しくておまけに才気煥発で、変に倒錯的な魅力のあ
る男が漫才師なんや、と、わけのわからないことに腹が立ってくる。実は、漫才師である
という点も、「変に倒錯的な魅力」の中に含まれているのだが。
266行列のできへん府民相談所 5/8:2009/04/20(月) 00:09:41 ID:5Ard7A180
 乳房がないことが少し不満だったが、あったらびっくりするので仕方ない。寧ろ、ない
ならないなりに、妖しげで危うい、新鮮な美を感じる。
 知事は来客の両手首を片手で掴んで拘束すると、なだらかな腹に顔を寄せ、つ、と舌を
滑らせた。
 「あっ・・・・やっ」
 来客がびくっと身を震わせ、悶える。知事の舌が、鳩尾から胸へと這い上がり、乳首の
周囲をなぞる。
 ふと、腹の辺りにある感覚を覚え、知事は手を伸ばした。嘲笑う。
 「何や、嫌がるふりして、しっかりおっ勃てとるやんか。やらしい体やな」
 「いやっ・・・・違っ」
 「違わへん。やっぱりおまえは根っからの売女や」
 知事の手が充血した部分を握りしめ、上下に扱く。そうしながら、乳首を口に含み、舌
先で転がし、強く吸い立てる。来客は顔を背け、頬を赤らめて、真珠の涙をはらはらと落
とす。
 唇が頻りに動いて、何か言っている。最初は聞き取れなかったが、よく耳を傾けてみる
と、
 「うーちゃん・・・・ごめんな」
 と繰り返し呟いているのがわかった。
 「そいつと違て、俺のこと呼んでみいや。『徹、はよ、徹の大っきいのちょうだい』っ
て、あの京大法学部にいつも聞かしてるような、かわいい声で鳴いてみ」
 なぜか京大法学部に拘る知事であった。ちなみに早稲田大学政治経済学部卒業。
 「お断りや」
 来客は愛らしい顔を精いっぱい憎々しげに歪め、知事の顔に唾を吐きかけた。
 知事は顔を拭い、冷たく言い捨てた。
 「おまえは俺が誰やわかっとるんか?今に見とれよ。おまえのそのチンケなプライドも、
後生大事な府大も、俺が叩き潰したるさかいな」
 身を起こし、上着を脱ぎ捨てる。呼吸を荒くしながら、来客の上に伸し掛かる。
 頭をクッションに押しつけられながらも、来客も負けてはいない。舌戦ならお手のもの
だ。目の前の男も色々な意味でそうだが、こっちだって、この口一つで飯を喰い、また相
方を喰わせているのだ。軽蔑の笑みを浮かべて言う。
267行列のできへん府民相談所 6/8:2009/04/20(月) 00:11:05 ID:5Ard7A180
 「こんなド外道が法律家や政治家じゃな、そら世の中腐りきっとる筈やわ。こう言うた
かて、べつに名誉毀損にはならんよな。自分で自分のこと、悪徳弁護士やて得意そうに言
うてたもんな。知事になったからいうて、そんな簡単に性根が変わる思えへんわ。
 長いものには巻かれまい、これが俺ら上方芸人の心意気や、よう覚えとき!」
 知事は血相を変える。
 「何やと!?われ、調子乗っとったら、突っこんでよがり泣きさすぞ!」
 「やってみいや、この三百代言!おまえのちゃっちいモノで俺をどうにかできる思たら
大間違いや!」
 そう啖呵を切るなり、来客は一瞬の隙を衝いた。知事を突きのけ、素早くその体の下か
ら滑り出す。上半身裸のまま、扉に向かって全力疾走する。
 廊下に出た。転がるように走った。走った。後ろから、追いかけて来る足音と怒号が聞
こえる。振り向かずにただ、ひた走った。

 「いい天気やなあ」
 と、京大は呟く。こんなに気持ちよく晴れた、風も爽やかな休日には、相方であり、恋
人でもある大阪府大と二人きりで、どこぞへ遠乗りでもしたいものだ。
 しかし、生真面目で政治意識も高い大阪府大は、今日は府知事に面会を申しこんである
とか言って、府庁へ行ってしまった。折角の二人揃っての休みを、よくそんな退屈な行事
で潰そうと思うものだ。
 尤も、京大は大阪府大がしようとしていることに異議を唱えたことはない。
 面会はもう終わる頃だろうか。ふとした悪戯心が湧き、府庁の近くまでやって来た。ちょ
っと驚かせようと思って、携帯電話に連絡も入れていない。果たして会えるかどうかは時
の運だが、二人の間には並々ならぬ強い縁があるのか、だいたいこういう時には巧く落ち
あえると相場が決まっている。
 確かにその通りだったのだが、その時の相方との会い方は、さしも聡明な京大も全く予
想し得ないものだった。べつに洒落を言っているわけではない。
268行列のできへん府民相談所 7/8:2009/04/20(月) 00:11:57 ID:5Ard7A180
 建物の入り口から、こちらに向かって一目散に走って来る人影が見える。小柄なその姿
は大阪府大だと一目でわかった。しかし、何という格好だろう。腰から上は何も身に着け
ていない。京大の愛するあのハイジパンみたいな裸身を人目に晒している。「愛する」は
ハイジパンではなく裸身にかかるので注意。
 「うじ!」
 京大が立っているのを見つけて、この腕に飛びこんで来た。京大は勢いのついた不意打
ちにも全くよろけることなく、しっかりと抱きとめる。
 「菅!何や裸で。どないしたんや」
 「知事に・・・・最後まではされてへんけど」
 それ以上は言葉にならなかった。そのまま、京大の腕の中でワーッと激しく泣きじゃくっ
た。
 京大は息を呑んで、相方の頭や背中をさすってやった。よく見ると、その体のそこかし
こには、ぶつけたり引っ掻かれたり、噛まれたりしたような痛々しい生傷がある。普段、
あまり激情に囚われない質である彼の内にも、ふつふつと怒りが煮え滾ってきた。
 大阪府大の逃げて来た方から、怒鳴り声がした。
 「待てや、このクソ教育委員会、やない、クソ芸人!なめた真似しくさって、このまま
で済まされる思うなよ!」
 しぶとくここまで追って来た知事の顔面に、京大の鉄拳がクリーンヒットを決めた。細
身ではあるが、バスケットで鍛えている上にコンパスが長いから、意外と強いのだ。
 「なあ、こんな話にしてええん?」
 路上に伸びている知事を見下ろして、京大が呆れたように言う。
 「ええんちゃう?何でもありやで、ネタなんやから」
 京大が貸し与えた上着に腕を通しながら、大阪府大がケタケタケタ、と笑う。今泣いた
烏が何ちゃらとはこのことである。服はちょっと大きすぎるが、そのぶかぶか具合がまた
かわいらしい。
 「せやなあ。そしたら、今から二人でどっか出かけて、その後お清めエッチといこか」
 京大も嬉しそうに表情を緩ませ、大阪府大の肩を抱く。
 大阪府大はポンと京大の頭を叩いた。
 「あんなあ、おまえ、ちょっとは気遣いとか繊細さとかないの?俺、たった今レイプさ
れかけたんやで。ほんま、俺の体を貪ることしか頭にないんやな」
269行列のできへん府民相談所 8/8:2009/04/20(月) 00:13:05 ID:5Ard7A180
 「何や。嫌なんか」
 「そんなことないけど」
 と、婀娜っぽい流し目で答えた相方の気丈さに、京大の胸は愛おしさと誇らしさでいっ
ぱいになる。
 「よっしゃ、決まり。どこ行こ?宇治の源氏物語ミュージアムでも行って、あの辺の宿
にでもしけこもか」
 「・・・・何なん、その渋めのチョイス。自分の名前とひっかけてるつもりなん?」
 全然おもんない、と言いたげな大阪府大の冷めた視線に、京大は慌てる。
 「ちゃうよ。最後くらい、教育的配慮ってやつを行き届かせとこかな〜思てん」
 宿にしけこもか、のどこが教育的配慮を行き届かせているのか知らないが、大阪府大は
目を輝かせて手を打つ。
 「そうか!俺ら、よい子のお手本の廬山やもんな!やっぱり、うじは賢いこと言うわ」
 「・・・・寧ろ、こうなったらアカンってお手本や思うけど。進研ゼミのCMも持ってかれ
てもーたし」

 「くしゅん」
 「風邪?」
 と慶応に尋ねた拍子に、明治も派手にクシャミをした。
 「伝染ったかな?」

ども、ありがとうございましたー。
270風と木の名無しさん:2009/04/20(月) 00:14:08 ID:5Ard7A180
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

青空有罪×大阪府大芸人でした。
府立大学廃止問題と、保管庫21、24の青空無罪×大阪府大から着想を得ました。
両姐さん(別人だそーな)と、読者諸姉に、敬礼!

アーンド京大誕生日おめでとう♪
271風と木の名無しさん:2009/04/20(月) 04:32:01 ID:kGdMYpuD0
>>241
遅レスだけど 朝 草…!
際どい関係の二人に萌えた、萌え過ぎた
こんな素晴らしい朝草を読める日が来るなんて
こっちこそ自分スレに書き込んで良かったありがとう
272風と木の名無しさん:2009/04/20(月) 06:46:52 ID:hiS7ikF5O
>>240亀だけど禿げました。GJ!
273WβC 樽熊  1/4:2009/04/20(月) 15:30:36 ID:juNzNzeX0
公11×毛21です。
サムライエーヌ対決その後。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

本当に悔しいのは俺のほうなのに、全然そんな気も起らなかった。
だって俺は負けたのに。
本当に嬉しいのは彼のほうなのに、全然そんな気も起こってなかった。
だって彼は勝ったのに。
どちらが勝者でどちらが敗者なのか。
まぁ別にどうでもええことや、そんなんよりもっと大事なことがあるしと
ぼやいていたら、目の前にいる人物がこう言葉を返してきた。
「どうでもいいわけないよ。お互い大事な試合だったんだから」
「そうですけど・・でもたかが一試合だし、それにこれで終わりってわけでもないし」
「終わりではないけど、大事な始まりでもあるだろ。ここを勝てるか負けるかじゃ
意味がかなり違うと思うけど」
彼はいつものような柔らかい笑顔で言葉を返す。その笑顔にこっちが丸めこまれそうに
なるが、意地を張って俺はぐちぐちと他愛のない遠吠えを繰り返した。
岩熊さんは、黙ってそれを聞いていた。
仕方ないなぁって困ったような笑顔を浮かべて。



274WβC 樽熊  2/4:2009/04/20(月) 15:31:39 ID:juNzNzeX0
WBC効果のおかげか何つうか、帰ってきたら俺らはとんでもないヒーロー扱いに
なっていた。まぁ俺は当然(って言えるような活躍ができて内心良かったとホッと
してたんは内緒や)ヒーローとしても、岩熊さんがかなり好意的に迎えられたのは
それ以上に嬉しいことやった。
さてこれでシーズンまで少しは休めるんやろか・・と思ったところで現実は甘くない。
1週間もしないうちに開幕という超キッツキツのスケジュールやったが、それは
仕方がないことかと不安と期待が入り混じった形で俺は北海道へと帰った。
岩熊さんと別れるのは正直かなり寂しかったけど、幸いにして開幕は洛天と
当たるので、また1週間もすれば会えるやん!と前向きにとらえて俺は
調整へと打ち込んだ。
275WβC 樽熊  3/4:2009/04/20(月) 15:33:00 ID:juNzNzeX0
「だから、正直俺は勝ち負けよりも岩熊さんに会えればいいやって思ったんですけど」
結果、俺は負けてしまった。原因は明らかな調整不足だったが、まだ疲労も残っている
身体で意地で完投までしてしまったことは、無茶やったなと後悔している。
世界一の侍エース対決なんて言われたけど、無様な負けをしたのは俺の方なので
それも仕方ない。
だから、俺はそんなことより。
「さっきから何度もそれ言ってる。大事な試合だってのがわかんないのかなぁ」
「わかってますって。だから俺は勝ち負けやないんですって」
「そうやってふて腐れるのは、悪い癖だよ。ダノレ」
まるで我がままな子どもをあやすような声で、岩熊さんが言葉を繋げる。
その声が耳に心地よくって、もっと聞きたくなってしまった俺は相当アホな子やと
思う。まぁええか、アホやないとこんなことも思いつかんやろし。
俺は立ち上がってから窓に足を向けて、カーテンをしめて完全に外の光を遮った。
あっちゅうまに部屋が真っ暗になるけど、もともと夜も深い時間だったので
わずかにベッドサイドのランプが灯る程度だった。
試合が終わってから、互いに取材攻勢にあってなかなか時間が合わなかったけど。
ようやっと会うことができた。
試合前に挨拶行くふりしてメモ渡しといてホンマ良かったと思う。
276WβC 樽熊  4/4:2009/04/20(月) 15:36:52 ID:juNzNzeX0
ベッドサイドに座って長い足をもてあましているように揺らす岩熊さんの
隣に俺は腰かけた。そして静かな声でこう呟いた。
「おめでとうございます。やっぱ、岩熊さんには敵いません」
「そんなことないよ。僕だってきっと次は君に敵わない」
「・・そんなんお世辞ちゃいますの」
「心理作戦ともいうかな」
くすくすと静かな部屋に楽しそうな笑い声が響いた。
俺はそっと手を伸ばして、岩熊さんの耳元に指をふれさせた。
そのまま黒髪をかきあげて、唇を寄せてからこう囁いた。
「・・疲れてますよね・・」
「・・・少しは、ね」
「じゃあ、控え目にします」
そうは言ったものの、どこまで控えられるのかの基準は俺にもわからんかったけど。
岩熊さんは、また困ったような笑みを浮かべて。
そして俺の指先に自らの指を触れさせた。
その指をからめながら俺は、岩熊さんの唇に自らのそれを重ね合わせた。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
最強のライバル同士でありながら実は
やんちゃ弟×ほんわか兄なエーヌ達に萌えてみた。後悔はしてにゃい
277風と木の名無しさん:2009/04/20(月) 16:31:52 ID:UAMSaso6O
>>276 寸止めですか
殺生なwww
278クイズショウ・アンドウ×コマザワ:2009/04/20(月) 16:39:55 ID:sktP1Z6N0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |クイズショウからアンドウ×コマザワ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  生終了から逮捕までの間補完した
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |  短いよ             ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
279クイズショウ・アンドウ×コマザワ1/2:2009/04/20(月) 16:41:28 ID:sktP1Z6N0
 無茶苦茶な、生放送が終わって。俺とアンドウさんは控え室に戻ってきた。
「アンドウ、さん」
 裏切るようなことをした。でも、俺は、今のアンドウさんが見ていられなかった。俺の憧れた、そして俺の愛したあの人でなくなってしまったから。ジョンさんを手にかけたことで、この人はおかしくなってしまったのだ。
 それを、どうにかしたい。ずっと思ってきた。だから、あの男の提案に乗った。
「俺、は……昔のアンドウさんに戻ってほしくて」
 ああ、涙が出てきそうだ。
「悪かったな、コマザワ」
 いつの間にか、正面に立っていたアンドウさんが言う。
「アンドウ、さん」
「どこで、歯車が狂っちまったんだろうな」
 静かな、声だった。諦めたような、静かな声だった。
「お前も、逮捕されちまうな」
 そうだ。この人が捕まるということは、俺も逮捕される。偽証したのだから。
280クイズショウ・アンドウ×コマザワ2/2:2009/04/20(月) 16:41:55 ID:sktP1Z6N0
「……アンドウさん」
「何だ」
「全部、償い終わったらまた、歌ってください」
「コマザワ……」
「もう、きっと芸能界には戻れない。……それでも、歌ってください」
「……ああ、歌うさ」
 そう、言うと、不意にアンドウさんは俺を抱きしめた。
「そん時は、お前もいろよ」
「……はい」
 俺も、アンドウさんを抱きしめ返した。こんな穏やかな抱擁は、二年ぶりだ。
「じゃあ、俺が先に行く」
「俺も一緒に……」
「馬鹿、見られたくないんだよ」
 寂しそうな、悲しそうな。そんな顔で、アンドウさんは笑う。
「もう少ししたら行きます」
「そうしてくれよ」
 アンドウさんの顔が近付いてくる。俺は目を閉じて、アンドウさんからのキスを受け入れた。
 ここから出たら。もうこうやって触れ合うことは何年も、何十年もできない。だから、俺たちは長い長いキスをした。触れた唇から、全部混ざって溶けてしまえばいいなんて、馬鹿なことを思った。
「じゃあ、な」
「はい」
 長い長いキスを終えて、アンドウさんは先に控え室を出て行った。
 独りになった俺は、自分の体を抱いて、少し泣いた。
281クイズショウ・アンドウ×コマザワ:2009/04/20(月) 16:42:33 ID:sktP1Z6N0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ D×MCじゃなくてすまん
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
282風と木の名無しさん:2009/04/20(月) 17:33:35 ID:IRUKOaHMO
>>278

いいもの読ませて頂きました。
泣ける…
283風と木の名無しさん:2009/04/20(月) 19:38:53 ID:DRgV8CjC0
>>278
ブワッ(´;ω;`)
2841/3:2009/04/20(月) 22:56:50 ID:oQYd6hlqO
書きたいとこだけ書いたのでお邪魔します。
ボブゲ『鬼畜眼鏡』より眼鏡主従。エロなし。
その結果R眼鏡だか眼鏡Rだかわからなくなりましたが、とにかく変態人外への萌えがほとばしった文。
時系列とかは柘榴の世界ということでお許しください。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「……それは何だ」
「趣向ですよ。退屈をお好みにならないわが主は、そろそろ新しい趣向をお望みのころかと思いまして」
 瞼の帳の奥に広がる景色は、赤い調度と赤いカーテン。夢とも現実ともつかぬこの一室を、佐伯克哉は
よく知っていた。目に沁みるような赤い部屋、その中にたたずむ黒尽くめの男も見知った顔だ。黒い帽子に
黒コート、長く編まれた波打つ金髪、両手を覆う革手袋。この男の風体はいつ何時でも変わらない。しかし、
今日はひとつだけ見慣れないものがあった。黒い男の右手の中でわずかに余る、拳大の塊である。
 そこに収まっているものはいつもの柘榴ではない。男の髪よりほんのすこし暖かな色に濡れ輝くそれは、
切り分けられたハニカム――蜂の巣に詰まった蜂蜜だ。
「いかがですか?」
「……乳と蜜は、おまえの天敵の領分かと思っていたんだがな」
「甘い喜びは人間に必要なもの。ですが、効きの良い薬はすなわち危険な毒薬でもあります」
 男ははぐらかすように謳った。にっこりと笑って差し出されたハニカムを克哉は冷ややかに一瞥し、
その視線を男の顔へと上らせた。そうですか、と呟いて、男は手の中の六角構造に目を落とす。
 つと右手を掲げた彼は、その塊にがぶりと噛み付いた。

2852/3:2009/04/20(月) 22:59:53 ID:oQYd6hlqO

 予想外だった。不意を突かれた克哉は反射的に男を注視する。常にそぐわないほどの大胆さで閉じられた
男の口元から蜜が溢れる。瞬き一つの間に流れる金色は唇を伝い顎を伝い喉をも伝い、革手袋に包まれた
指を濡らして肘から床へ滴った。
 喉を鳴らした男が口角を指で拭った。甘く粘性に濡れた革を一舐めした彼は雫の溜まった肘に唇を寄せ、
掌までべろりと舐め上げて、手の中に残ったかけらにかぶりつく。勤勉な飼育昆虫によって組み上げられた
蜜蝋細工は掌の上であえなく崩れ、甘く濃い分泌物が溢れ出し、粘つく指先は再び唇から零れた蜜を拭い集める。
 人間は、予想もしなかったことが目の前で起きると冷静な思考がしにくいものである。それは佐伯克哉と
いえども例外ではなかった。最初の驚きが醒めて落ち着きが戻った後も、思考の焦点をうまく絞りきれない。
この男は飲食なぞできたのか、俺に食わせようとしたものを自分で摂取した理由はなにか、それにしても
男の喉を流れるあれは見た目どおりなら蜂蜜であるはずだが――まばたく克哉の前で、男は口中に溢れた
ものを優雅に飲み下す。
 ――どれほど甘いことか。見ているだけで胸焼けがしそうだ。
2863/3:2009/04/20(月) 23:02:39 ID:oQYd6hlqO
「そんなことはありませんよ。貴方の視線を受ける喜びにくらべれば、こんなものは甘いうちにも入りません」
 男が笑った。この男に心を読まれることは、驚きではないが不快である。眉を寄せた克哉のその顔に、
男は――ハニカムの最後のひとかけらを噛み砕いた男は、目を細め、うっとりと手を伸ばした。
「ああ……視線だけではありません。貴方はこの髪の一筋さえ私の目に甘く、貴方に許されるくちづけは
私の舌にこのうえなく甘い。貴方が戯れに下賜する接触は私の指が痺れるほど甘く、貴方のこの唇から
流れ出る命令は、私の耳がとろけそうなほどに甘い」
 頬に伸ばされた指先、蜜漬けの革を、克哉は首を傾げて拒否した。避けられた男はそれ以上追おうとは
せず、ちゅっと音を立てて中指を舐めた。
「命令に限ったことですらない。貴方の唇から零れるものであれば、罵倒であろうが吐息であろうが、それは
この世ならぬ甘美です。……ええ、蜜にまみれたこの指先など、及びもつかないほどに甘いに違いありません」
 もう一度男の手が伸びる。克哉は二度目の逃げを選ばず、挑むように男の目を見据えた。中指が克哉の
唇に触れた。きつく引き結ばれた唇を、甘く粘ついた革がゆっくりと辿る。克哉は表情を変えない。
 濡れ光る男の指からは、癖のある野木の蜜が色濃く匂い立った。じんと頭痛を催すほどの、こめかみから
頭の奥まで引き絞られるような濃厚な香り。閉じた唇の隙間からじわりと、唾液に溶けて甘さが滲む。
 男に身の内を侵食されるようで、克哉はどうにも不快だった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
287風と木の名無しさん:2009/04/21(火) 06:40:25 ID:/4VyuupOO
>>261
ちょっとばかり道案内が得意な府大可愛い
288権蔵9639 禁断の雫 1/19 :2009/04/21(火) 12:41:03 ID:zOYZNbfeP
今更ですが、再放送でまた再燃してしまったので。
権蔵の9639です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


 面白い物を手に入れたぞ───。
 96木はにやにやと一人で笑い、ジャケットのポケットに突っこんだ手の中の小瓶をそっと揺らした。
 ラベルに書かれている成分はガラナにクコの実、ウイキョウ、ナルコユリ、リュウガン、朝鮮人参、蛇胆、その他にも諸々聞いた事もない怪しいものがたっぷりの、無色透明、無味無臭の液体が硝子の小瓶の中に入っていた。
 それは催淫剤───いわゆる、『媚薬』と呼ばれるものだった。
  昨日の夜中に、新宿歌舞伎町の裏通りで、しこたまに酔っ払った外国人に強引に売りつけられたのを、こちらも酔っていた勢いでつい好奇心で買ってしまった。
 そんなものを買うのも手にするのも初めてだったが、これは試してみるしかないだろう、と96木は思った。
 ───もちろん、あいつに。
 くく、と96木はもう一度小さく笑い、流れる電車の車窓から景色を眺めた。
 動き出したばかりの電車は緩いカーブを曲がっていて、夕方の混雑したビルの街並みがゆっくりと過ぎていく。
 時折、線路沿いの桜並木が満開な花を咲かせているのが目に入ったが、96木は悪戯心で頭が一杯になっていたので、そんな光景を最早見てもいない。
 楽しい夜になりそうだ。
 胸に浮かんだ怪しげな予感に、96木はもう一度笑って小瓶を握り締めた。
289権蔵9639 禁断の雫 2/19 :2009/04/21(火) 12:41:44 ID:zOYZNbfeP
「───また来たんですか」
 出迎えた39間の第一声がそれだった。
 玄関先で不機嫌そうに腕を組み、呆れたように96木を見る。
「お前なあ、俺の顔を見るなり開口一番でそれはないだろう。待ってたんですの一言ぐらいたまには言ってくれてもいいのに、全く可愛げのない奴だな」
「いちいちあなたにつき合ってなんかいられるものですか。大体、どうして日も暮れかかってから人の家にくるんです、あなたは」
「目が覚めたらもうこの時間だったんだ」
「寝汚いにもほどがある」
 いくら人畜無害だと解っていても、媚薬なんぞを一服盛るのは可哀相だろうかという気持ちも多少はあったが、39間のその愛想の欠片もない態度で96木は腹の中の悪巧みの決意を新たにした。
「・・・今に泣きを見るぞ、お前」
「は? 何か言いましたか?」
 小声で呟いた96木を、39間が怪訝そうに見やる。
「いや、別に。それより、喉が乾いたなあ。コーヒー飲みたい」
「自分で勝手に淹れればいいでしょう」
 そう言うと思った、と96木は苦笑した。
「お前も飲むか?」
 ふん、と39間は返事もせずに素っ気なく顔を背け、96木が靴を脱ぐのも待たず、さっさと奥へ姿を消した。
 96木は勝手知ったるなんとやらで、そのまま部屋を横切り、キッチンへ向かった。
 39間は、リビングで読みかけだったらしい本のページをめくっている。
 毎度の事ではあったが、一応は客である96木をもてなそうという気は全くないらしい。
 96木はケトルで湯を沸かし 39間に気づかれないようにポケットからそっと小瓶を取り出して、蓋を開けてカップの中に中身を振り入れた。
「ありゃ、ちょっと入れ過ぎたかな」
 五、六滴ほどで十分だとこれを売りつけた件の外国人から言われたのを、つい焦ってその倍は入れてしまった。
「・・・まあ、いいか。多少多めがいいとか聞くし、これで効果もばっちりだろう」
 その分、あいつも───。
 カップにコーヒーを淹れながら、これからの事を想像するとつい笑いがこみ上げてくる。
 思わず声を上げて笑い出してしまいそうなのを押さえ、96木は小瓶をポケットにしまいこんだ。
290権蔵9639 禁断の雫 3/19 :2009/04/21(火) 12:43:16 ID:zOYZNbfeP
「ほら、コーヒー」
 そう言ってカップを差し出すと、39間は本から顔を上げた。
 39間はカップを受け取ったが、それを口にはせずに、そのままテーブルの上に置いた。
 やましい所がある96木は、一瞬何か勘づかれたかと思って心臓をどきりとさせたが、それでも素知らぬ振りでソファーに腰を下ろして、自分のカップを口に運ぶ。
 ───早く飲め。
 ちらちらと様子を見る96木を余所目に、39間は悠長に本を読んでいる。
 こんな時は、時間が経つのがいやに遅く感じられると96木は思った。
「・・・さっきから何をじろじろ見てるんですか」
 96木の視線に気づいて、39間が顔を上げた。
「べ、別にいいじゃないか、見るくらい。減るもんじゃなし」
「欝陶しい。どこかよそを向いてて下さい」
「う、欝陶しいって・・・なんて言い草だ、コラ」
 全く可愛くない奴・・・!
 96木は腹立ち紛れと手持ち無沙汰に、近くにあった新聞を手に取り、広げた。
 それを読む振りをしながら、39間の様子を改めてうかがう。
 それからややあって、96木のカップが空になった頃、ようやく39間がカップを手に取り、そしてこくりと一口、茶を口にした。
 とうとう飲んだな。
 さあ、これからどうなるか───。
 96木の口許が緩むと、39間がまたちらりと目を上げて、眉をしかめて96木を見た。
「・・・何をニヤニヤしてるんですか。一人で馬鹿みたいだ」
「───お前なあ」
 96木は手にしていた新聞をばさりと置いた。
「この96木様に向かって、馬鹿みたいだのなんだの雑言を言う奴は、お前ぐらいなもんだぞ」
「馬鹿みたいなものは馬鹿みたいなんだから仕方がないだろう」
 39間は鼻先で嗤い、言ってろよお前、と96木はむくれた顔をして黙りこんだ。
 そんな憎まれ口を叩いているのも、今のうちだからな。
 内心でそう思いながらも、とは言うもののどれくらいでクスリが効いてくるんだろう、と96木は考えた。
 液体だから吸収は早いとは思うが、何しろそんな代物を使うのは初めてだったので、どういう展開になるのかが今一つ読めない。
291権蔵9639 禁断の雫 4/19 :2009/04/21(火) 12:44:07 ID:zOYZNbfeP
 いくら『媚薬』だからと言って、その気になった39間が自ら迫ってくる事はまずないだろうし、一体どんな反応を示すのだろうと興味津々で39間を観察していると、39間はコーヒーを飲み干し、また本に目を戻した。
「・・・ああ、もうすっかり日が暮れましたね」
 さらに待つ事数分か、しばらくしてから、39間がそう言って立ち上がろうとした。
 その足が、かくり、と突然折れて、39間は思わず床に膝をつく。
「───え?」
 39間は驚いたように目を見開いた。
 きたか、と96木も目を見張った。
 さすがは濃縮エキスなだけはあって、やはりその効き目も即効性がある様子だった。
「おいおい、どうしたんだ」
 96木は白々しくもそう訊いた。
「・・・変だ、身体が・・・力が入らない・・・」
 39間は怪訝そうな顔でもう一度立ち上がろうとするが、すぐにふらりと身体を揺らす。
「・・・貧血・・・? いや、違う、何か変だ・・・」
 大丈夫か、などと言いつつ96木は傍に近寄って、39間を支えた。
 その身体が熱い。
「なんだか息苦しい・・・。暑い・・・」
 おぼつかない足下に、とりあえずソファーい座り直した39間は大きく息を吐いた。
 その白い頬はうっすらと紅潮し、明らかに体温と血圧が上がっている事がわかる。
 心なしか瞳も潤んで、唇もその色合いを朱く増している。
 へええ、こんな効果があるのか。
 96木はそんな39間の様子を見ながらそう思った。
 発情と言う言葉がぴったりとくる風情だと内心で妙な感想を抱きながらも、そろそろ頃合か、と思った。
「喉が変に乾くな。水・・・」
 そう言いながらまた立ち上がりかけた39間の手首をつかみ、床の上に引き倒して、96木は39間の首筋に顔を埋める。
 首の根元で感じる脈が早かった。
 いつもはひんやりとしている肌も、少し汗ばんでいる。
「ば、馬鹿ッ、いきなり何をするんですか! 今、それどころじゃ・・・!」
 脈打つ場所を唇で探り、そこをきつく吸うと、39間が怒って96木の身体を両腕で押し戻そうとした。
「でも、もう固いぞ」
 96木はそう言って、シャツの裾から差し入れていた片手の親指の腹で、39間の固さを増した胸の飾りを押し潰した。
292権蔵9639 禁断の雫 5/19 :2009/04/21(火) 12:45:11 ID:zOYZNbfeP
「・・・ッ!」
 39間がぶるりと身体を震わせる。
「や、やめて下さい・・・!」
 抗いながらも、39間は本当に身体に力が入らないらしく、その抵抗の力は弱かった。
 もがく39間の上にのしかかると、39間がそれでも腕を突っ張って96木を押し退けようとする。
 96木はそんな抵抗をものともせずに、39間のシャツの襟を大きく肌蹴させた。
 そうして剥き出しになった胸に顔を寄せると、上気した肌からふわりと甘い匂いがした。
 そのまま、既に固く尖っている胸の飾りを口に含み、舌先で転がす。
 右手は下肢に伸ばし、チノパンのファスナーを一気に引き下ろしてて、膝で足を閉じられないようにしながらその中に手を入れて中心を握りこむと、39間が短く息を吸いこんで96木の肩を両手でつかんだ。
「や、96木さん・・・!」
 そうしてやがて39間の中心を直接手のひらで捕らえ、まだ緩いとは言え、明らかにいつもより早く熱を持った中心をこねるように刺激すると、それはたちまち敏感に反応して、96木の手の中ではっきりした形に変わっていった。
 先端を指先で撫でると、すぐに溢れ出た透明な潤みが96木の指をたっぷりと濡らして、39間の身体が確かに普段にも増して一層敏感になっている事を証明していた。
「な、なんで、こんな・・・」
 自分の身体の反応のあからさまな様子に、39間も自分自身でそれが信じられない様子で、動揺した瞳を揺らす。
 この状態ならそんな心配もなかったが、それでも逃げ出さないように39間を身体の下に組み敷いて、96木は本格的に39間を抱き寄せた。
 39間の肌は本当に滑らかで、女でもこれほどにきめが細かい肌にはそうはお目にかかれない。
 その肌を手のひらで軽く撫でただけで、39間はぞくぞくと肌を粟だたせて息を吸った。
 96木は39間の中心をじっくりと苛いながら、首筋から鎖骨、胸と、あちらこちらに唇で濡れた赤い跡をつけて、薄く汗ばんだ肌の甘い匂いを楽しんだ。
 それから、39間の中心を弄っていた手を滑らせて、もっと奥まった所にある背後の窪みに指先で触れる。
 39間はびくりと身体を揺らし、身を固くしたが、96木はそれには構わず、そのまま、一番長い指をゆっくりとそこに潜らせた。
「・・・あ、やッ・・・!」
 39間は思わず目を閉じて身を固くした。
293権蔵9639 禁断の雫 6/19 :2009/04/21(火) 12:45:51 ID:zOYZNbfeP
「───お前、すごく熱いぞ。それに、相変わらずきつい」
 指の一本だけでもこれほどにきついのに、この先本当に自分のものが入るのかと、96木はこんな時いつも訝ってしまう。
 でも、実際ちゃんと入るんだよなあ、これが・・・などとおかしな感心をしつつも、幾度かその指を往復させて、少しずつ39間を慣れさせていく。
「や、96木さん・・・!」
 この後に及んで、まだ39間は96木を押し退けようとしていた。
「抵抗されればされるほど、襲う方は余計に燃えるんだぞ、佐久間」
「勝手な事を言うな・・・!」
「特にお前みたいな奴には、普段素っ気なくされてるだけに、こんな時ぐらいは好きなようにさせてもらわないとな」
「だから、勝手な理屈を言うなと言っているのに・・・!」
 96木は一旦引き抜いた中指に人差し指を添えて、もう一度39間の内部に捻りこむようにして差し入れた。
 揃えた二本の指を曲げたり伸ばしたりしながら出し入れすると、39間が左右に首を振りながら頭を反らす。
「・・・んッ・・・!」
 根元まで含ませて、中を引っ掻くようにして指を回すと、押さえつけた身体の下で39間は声を詰まらせて身悶えた。
「・・・やめてくれ、96木さん、やめろッ・・・!」
「何を言ってるんだ、これからだろ。まだ指しか入れてない」
 39間は余ほどのものを感じているのか、含みこんだ96木の指を強く締めつけてくる。
 そうやって後ろを淫らがましくいじっただけで、96木の左手の中にある39間の中心はしとどに濡れて弧を描いて反り返り、大きく張り詰めてそのまますぐにも達してしまいそうだったし、クスリの効果はテキメンだなと96木は思った。
「なあ、ここがいいんだろ?」
 96木は39間の耳元で囁いて、39間の内部の敏感な場所を曲げた指先で引っ掻いたり、つつくようにしたりして刺激した。
「・・・ん、うッ、や、あッ・・・!」
 39間は身体をびくりと跳ね上げ、腰を浮かせた下肢を攀じるように悶えさせて、息を飲んできつく目を閉じ、顔を歪ませた。
 96木の手の中の中心の先端からじわりと新たな滴が溢れて零れ、そのまま次々と溢れるままに茎を伝い落ちる。
 39間の目尻にも、生理的に浮かんだ涙が滲んでいた。
 96木は39間の両膝を大きく左右に開かせて、その間に腰で割って入って身を重ね、片手で自分のズボンのファスナーを引き下ろした。
294権蔵9639 禁断の雫 7/19 :2009/04/21(火) 12:49:38 ID:zOYZNbfeP
 96木の中心は39間の乱れる姿を見ただけで十分過ぎるほど勢いづいて硬くなっていたし、本当はもう少し39間を焦らしてみようかとも思っていたが、こんな39間のあられもない煽情的な様子を見ていたら、96木の方が39間が欲しくて、これ以上の我慢ができなくなっていた。
「39間、力を抜いてろよ」
 そう言って、指を引き抜いたばかりの39間の窪みに、今度は熱を孕んで硬直した自身の中心の先端を押し当てる。
「やだ、や・・・96木さんッ・・・!」
 96木しか知らぬその密やかな窪みに軽く切っ先を潜らせると、すぐに39間のきつい肉の抵抗にあった。
 女の秘所の造りとは違って、本来男を受け入れるようにはできていないそこは、中も外も狭いために入れにくい。
 毎回が生娘相手のようなものだと96木は思い、それは39間の方も、その身に生じる貫通の痛みは破瓜の時のそれと同じなのではあろうが、こればかりは仕方がないと小声で39間に詫びる。
 それから96木は39間の両足を腕に抱えこみ、体重をかけるようにして39間の抵抗を半ば無理やり押し開いて、一気に身を進めた。
「・・・んッ、う、んッ───!」
 圧倒的な存在感のある強張りが身の内の奥深くまで強引に入りこんできて、39間はこれ以上はないほどに身体を固くして背中を反らし、その侵入の瞬間に96木の肩に爪を立てた。
 気の強い39間は、こんな時にもはっきりした声を上げたり、痛いなどとは決して言わないが、39間が反射的につかんだ96木の腕や肩のシャツ越しにぎりぎりと食いこんでくる爪先が、身を二つに引き裂かれるような強烈な痛みを代弁している。
 それでも取り敢えず根元までを深々と含み込ませて、完全に39間と一つになってから、96木はせめてとばかり39間の中心を捕らえ、最初の痛みが去るまでの間ゆっくりとそれを撫でさすった。
「・・・さ、触るなッ・・・!」
 39間が肩をすくませて96木のその手をつかんだ。
 96木を包みこんでいる39間の肉壁が、心臓が脈を打つのと同じ早さで96木を繰り返し締めつけてくる。
295権蔵9639 禁断の雫 8/19 :2009/04/21(火) 12:50:16 ID:zOYZNbfeP
 それでも取り敢えず根元までを深々と含み込ませて、完全に39間と一つになってから、96木はせめてとばかり39間の中心を捕らえ、最初の痛みが去るまでの間ゆっくりとそれを撫でさすった。
「・・・さ、触るなッ・・・!」
 39間が肩をすくませて96木のその手をつかんだ。
 96木を包みこんでいる39間の肉壁が、心臓が脈を打つのと同じ早さで96木を繰り返し締めつけてくる。
 びくびくとした痙攣が96木の中心に伝わって、96木はこのまま動かずにいるのももう限界だと思った。
「・・・少し我慢してろよ」
 96木はそろそろと腰を引いて、またそれをゆっくりと39間の中に戻した。
 39間は唇を噛み締め、竦ませたままの自分の肩に横顔を押しつける。
 ───本当にきつい。
 96木は感じる快感に眉を寄せた。
 あれだけ指で押し広げるようにしても、慣れるという事を知らない。
 39間の狭い内部を屹立が往復する度、密着した肉と肉が直接擦れ合う刺激に、次第に96木は我慢がきかなくなり、徐々に手加減を忘れていった。
 39間を、自分のものにしている。
 そんな思いが96木を一層昂ぶらせて、たまらなくさせる。
「・・・あッ、あ───!」
 96木が39間を強く突き上げると、その律動の衝撃に、39間が小さく喘いだ。
 少しかすれた、いつもより高い声。
「39間・・・」
 名前を呼びながら髪を梳かしあげ、紅潮した頬を撫でると、39間が唇を開いて96木の親指を咬んだ。
 その仕草に、96木はぞくりと背を震わせた。
 39間の中はますます熱く、燃えるような熱を96木に伝える。
「・・・ああ、駄目だ。俺の方がもう持たない」
 96木はそう呟いた。
 こんなにも呆気なく達してしまうのははなはだ不本意ではあったが、取り敢えず一度済ませてからでないとおさまらない。
「39間、イイならお前もイけよ」
 96木は39間の中心を手のひらで包みこみ、擦り上げるのに併せて39間を犯す腰の動きを早めた。
「・・・いッ、いい訳がないだろ、馬鹿ッ・・・!」
 最奥まで96木に貫かれながらも、39間はまだ身を捩るようにして96木から逃れようとした。
「強情だなあ。お前だってもう限界だろう?」
 96木は、39間の腹の方に押しつけるようにして、39間の中心を手中に握りこんで弄う指に力をこめた。
296権蔵9639 禁断の雫 9/19 :2009/04/21(火) 12:51:03 ID:zOYZNbfeP
「ほら、イけよ。意地張らずにイっちまえ」
「・・・ッ!」
 瞬間、固く目を閉じた39間が、きり、と唇を噛みこみ、喉の奥で短い声を上げる。
 堪え切れずに39間の放ったものが96木の指を濡らし、それとほとんど同時に、96木も39間の中に白濁した欲望の証しを解き放っていた。
 ああ、これだ、この感じだ───。
 快感が背筋を走り抜け、96木は39間をきつく抱き締めた。
 クスリのせいでまだ力が入らないせいもあって、39間は荒い息を吐きながら達した余韻でぐったりと96木の腕に身を任せていて、そのしどけない姿に、96木は今放ったばかりだというのに、もうまたしても39間が欲しくなっていた。
「これからもっとよくしてやる」
 96木は閉じたままの39間の瞼に口づけして、目尻に滲んでいる涙を舌先で拭った。
 ───正直、女を抱いても、さしてイイと思った事がなかった。
 こんなものかと思うだけで、かといって男が好きな訳でもないだろうと96木自身は思うが、39間とこうなるより前に感じていた情事に対するそんな醒めた感覚も、こうして39間を抱いていると信じられないほどに興奮を呼ぶ。
「・・・39間、お前の中、絡みついて」
 96木は感じる悦楽に眉を寄せて低く呻いた。
「お前って、本当にイイ・・・」
 激しく突けば突くほど、その分に応じて締めつけてくる。
 最奥まで突き上げても、まだその先を望むかのように吸いついて、蠢く。
「もう少し力を抜けよ。じゃないと、俺も動きにくい・・・」
 96木は39間の両脚を肩に抱え直して、その身体を二つに折り曲げるようにして深く腰を沈めた。
「・・・あッ・・・う、んッ、ん・・・・!」
 最初は声を上げる事を意地で拒もうとしていた39間も、達して埒をあけるたびごとに余裕の出てきた96木の念入りで執拗な愛撫に耐え兼ねて、どうしても押さえ切れない声を乱れた呼吸の合間に微かに上げていた。
297権蔵9639 禁断の雫 10/19 :2009/04/21(火) 12:51:26 ID:zOYZNbfeP
 それでなくても感じやすい39間の身体が、今はクスリのせいでただならぬほどに高ぶっているのだから、いくら強情な39間でもそうそういつまでも我慢はできなかった。
「もっと大声出したっていいんだぞ」
 96木は39間の中心の先端からくびれにかけて、指で摘んで揉みこむように刺激した。
 立てた人差し指の先で、透明な涙をとめどもなく溢れさせている先端の中心にある窪みを穿るように弄う。
 その刺激がまた新しい涙を次々に零れさせる。
「───やッ・・・!」
 39間が首を振り立てて、喘ぎながら頭を大きく反らした。
 身体を波打たせてくねるように悶え、96木にすがりつこうと腕を伸ばして、ここまで39間が乱れる姿などそう滅多に見られるものではない。
 96木は思う様39間の身体を開かせ、折り曲げて、39間を貫き続けた。
 ゆっくりと引き伸ばしたり、じりじりと焦らしたり、強弱も緩急もつけて、ありとあらゆる快感を39間に与え、また39間から奪おうとした。
 一旦ぎりぎりまで屹立を引き抜いてから、しばらく39間の内部に通じる入り口の辺りで腰を回し、今度は不意に最奥まで一気に押し入ってそこを激しく突き上げて存分に責め立てる。
「・・・は、あ・・・ん、んッ───」
 39間は眉間を寄せて目を固く閉じたまま、不規則に乱れ切った呼吸の合間に、切れ切れな押さえ切れない喘ぎをこれは逆に閉じる事を忘れた唇から漏らす。
 白い歯の奥に、濡れた赤い舌が踊っていた。
 たまらない声と顔つきだと96木は思った。
 もう幾度、そしてどれだけの時間、こうして39間とくながり合っている事だろう。
 96木が動く度に、二人が深く繋がった場所で、96木がそこに何度も放ったものが濡れた淫靡な音を立てる。
 そのせいで滑りはかなりよくなっていたが、擦れ合った部分が熱で溶けそうだった。
「・・・お前の身体は、どこもかしこもいやらしい。卑猥で、理性なんかどっかへ吹き飛んで、どうしようもなくそそられちまう」
 96木はそう言って、39間の一番深い部分を思う様うがち、言葉の通りに本能のまま39間を貪った。
 それ独特の律動で身体を揺さぶられ、96木の屹立の固く張り出した部分で泣き所を的確に擦り上げられて刺激され、内臓を直接責め立てられている39間は、もう息も絶え絶えになっている。
298権蔵9639 禁断の雫 11/19 :2009/04/21(火) 12:53:10 ID:kcjh5M330
「・・・も、やめ・・・お、かしく・・・なる・・・」
 39間は荒波のような官能の悦楽に絶え間なく苛まれ続けて、思考がすっかり混乱した状態でそう苦しげに訴えた。
 それでも39間の内部はもっともっととばかり96木を誘って、まるでそこだけが違う生き物のようにすら感じられた。
 96木が39間の中心を捏ねるように揉みしだき、丸めた指の内側で上下に茎を擦り上げると、その刺激で内部が一際すぼまり、壁がひくつく。
 そうしながら、96木は身体ごと強く打ちつけるようにして、大きな動きで激しく39間の内側を責め上げた。
「・・・あ、や・・・やッ、く、96木さ、んッ・・・!」
 96木の手の中で、39間の中心が弾けた。
 耐え切れずに後ろと前で同時に絶頂に達して、とうとう愉悦の限界を迎えた39間が、短い悲鳴を上げて身体をこれ以上はないほどにがくつかせて硬直させる。
 その瞬間、39間の内部が一層きつく96木を締めつけて、96木もまた39間の中に熱いものを迸らせた。
 39間は半分気を遠のかせながら身体を震わせていて、もう何度目かも知れない絶頂感に、96木も39間の身体の上にそのまま突っ伏した。
 薄い皮膚の下で、39間の心臓がどきどきと激しく脈を打ちつけているのがわかる。
 ずっと39間を攻めて動き通しだったせいで、96木の心臓も同じように弾んでいて、96木は大きく息を吸うと、ゆっくりと目を閉じた。
「こんなに何度も欲しいと思うのは、お前だけだ・・・」
 96木の囁くような言葉は、その時にはただもうぐったりと目を閉じて意識すら手放しかけていた39間には届いたのだろうか───。
299権蔵9639 禁断の雫 12/19 :2009/04/21(火) 12:53:40 ID:kcjh5M330
 96木が目を覚ました時は、すっかり昼を過ぎていた。
 取り敢えず裸のままではなかったが、朝方まで39間と睦んでいたせいでさすがに疲れ切って、いつの間にか泥のように眠っていたらしい。
 いくらなんでも、あれだけ立て続けにやれば当然か───。
 そう思って寝返りを打つと同時に、
「・・・やっとお目覚めか」
と、すぐ近くで抑揚のない声がして、見れば39間が腕組みをして近くのソファーに座って96木を見下ろしていた。
「やあ、おはよう、39間」
 96木が呑気な口調でそう言うと、39間が組んでいた腕をゆっくりと解いて、すうっと96木の目の前に手を差し出した。
「───96木さん、これはなんです」
 39間が手にしていたものは、例の小瓶だった。
「・・・えッ、いや、そ、それはその・・・!」
 96木は息を飲んだ。
「ガラナにクコの実、ウイキョウ、蛇胆・・・精力剤というより、見事なまでの媚薬ですね」
 39間は96木の目を真っ直ぐに見据えている。
「───あんた、僕に、一服盛ったな」
 ぞっとするほどに低い声で威すように言われて、戦くくらいに兇悪な目つきで射竦められて、違うとも誤解だとも言えず、96木は返す言葉も顔色も一気に失った。
 誤魔化しようがなかった。
 39間に情の欠片もないこわい目で刺すように睨まれたまま、96木はその視線を逸らす事もできなかった。
「い、いつ・・・気づいたんだ・・・」
 あたふたとしながら身を起こして、そう尋ねた96木の声は引き攣っていた。
「・・・夕べ。最中にですよ」
「───」
「急にあんなふうになるのは、どう考えてもおかしいとは思っていたんだ。それで朝、あんたが寝ている間にまさかと思ってあんたの服を確かめたら、これが出てきた。・・・よりにもよって、こんな代物を使ってくれるとはな」
 顔も無表情なら、39間の口調もまた恐ろしいほどに静かだった。
「───信じられないケダモノだ、あんたは」
 39間は目を細めた。
300権蔵9639 禁断の雫 13/19 :2009/04/21(火) 12:54:04 ID:kcjh5M330
「けッ、ケダモノってお前・・・! お、お前だって気持ちよがってたじゃないか・・・」
「僕の本意じゃない。クスリであんな風にしといて、散々いいようにするなんて最低だ。卑怯にもほどがある」
「そ、それは単なる好奇心ってやつで・・・!」
「単なる好奇心で、僕に人体実験したとでも?」
「ち、違う、人体実験なんかじゃない。本当にただの好奇心だよ、出来心ってやつじゃないか・・・!」
「出来心にしちゃ度が過ぎてる。自分勝手に好き放題して何度も僕を犯しといて、出来心じゃ済まされませんよ」
「お、犯した、って・・・」
 96木は一瞬言葉を飲んだ。
「人を性犯罪者みたいに言うなよ。俺は刑事なんだぞ!」
 情けない口調でそう呟いたが、
「同意の上じゃないんだから、犯した、だろうが」
と、39間はとりつくしまもない。
 これは本気で心底から怒っている───。
 96木はそう思った。
 口調が静かな分、余計にそれがひしひしと骨の髄まで伝わってくる。
 96木は背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
 ほんの思いつきの好奇心と一方的な欲望で、39間を本心から怒らせる事をしでかしてしまったのだと思うと、血の気が引いて手足がすううっと冷えていく感じがした。
 ぬきさしならない切迫した事態だと96木は悟った。
「ふん。『禁じられた雫』か。禁じられているものを僕に使ったのか、あんた」
 39間は96木の目の前に『Forbidden Drop』とラベルに書かれた小瓶を投げた。
「───さ、39間・・・!」
 96木はたまらず、あわてて正座して居住まいを正し、すがるように39間を呼んだ。
「なんですか」
「・・・お、俺が悪かったッ・・・!」
 96木はへりくだって床にこすりつけるように頭を下げ、それに対して、ふん、と39間はまた唇を歪めて冷たく嗤う。
301権蔵9639 禁断の雫 14/19 :2009/04/21(火) 12:55:19 ID:kcjh5M330
「なんだ、ずいぶんと殊勝じゃないか。何が悪かったって?」
「な、何がって・・・! いや、だから、悪かったよ! 俺が悪かった! 人体実験みたいな真似して、無理やり・・・」
「無理やり?」
「・・・無理やりやって悪かった! 俺が全部悪い! 本当に反省してる、反省してるから、だから・・・!」
「だからなんだと?」
 96木はそれ以上何も言えずに言葉を失った。
「───そんなに僕が欲しかったのか、あんた」
 96木は俯いたたまま、小さく頷いた。
 本当の事だから仕方がないと呟く。
「クスリを使ってでも、お前の事が欲しかったんだ・・・」
「呆れて愛想が尽きる!」
 39間は眉間をしかめて、きつい口調でびしりとそう言い放った。
 返す言葉もなく96木が黙りこむと、39間は96木から顔を背け、それきり険悪な沈黙が部屋に満ちた。
 39間と96木との間に時折起こるどんな諍いも。
 言い争いも行き違いも、そんな時はいつも、96木を叱り倒し、罵りあげた揚げ句にだんまりを決めこむ事になるのが39間の常だった。
 そしてそうした場合、原因はどうであれ先に折れてくるのは決まって96木の方からで、そっぽを向いて口をきこうとしない39間の機嫌を、96木はあの手この手で取ろうする。
 96木は39間には心底から甘かったし、39間もまた、96木がそうしてそろそろと声をかけてくる頃には、内心ではこのまま突っぱねているのも大人げないという事を認めているので、それで片がついてしまうのだ。
 けれど、今回ばかりはさすがの39間も一服盛られた事に本気で激怒していたので、96木には声のかけようも機嫌の取りようもなかった。
 96木は39間に詫びる事すらも拒まれてどうする事もできなくて、嘘や冗談でなく愛想を尽かし切った態度で96木から目を逸らした39間の前で正座したきり、ひたすら押し黙って視線を落としてうなだれていた。
 が、突然、先刻39間が放り投げたまま床の上に転がっていた小瓶をいきなり手に取ると、蓋を開けて中身を一気に飲み干した。
「───ばッ・・・、馬鹿、何やってるんだッ!」
302権蔵9639 禁断の雫 15/19 :2009/04/21(火) 12:56:46 ID:kcjh5M330
 39間は96木を正面から見ていた訳ではなかったが、それまでみじろぎもしなかった96木がいきなり大きく動いた姿が横目に入って、思わずふと視線をやってその突拍子もない行動に気づき、あわてて96木の手から小瓶を奪うように取り上げた。
 だが、その時にはもう既に小瓶の中の透明な液体は全部96木の胃の中に流れこんでしまっていた。
「何をしてるんだ、あんたはッ! 何を考えてそんな真似を・・・!」
 39間は96木の唐突な所業に驚愕しながら、勢いに任せてきつく叱責したが、96木は叱られていじけた子供みたいな顔をしていた。
「お前をイヤな目に遭わせた責任を取ろうと思ったんだ。これを買ってきたのは俺だから、俺が始末する」
「始末するなら捨てればいい事だろうが!」
 39間は、何をどう考えて思いついたらそんな突拍子もない行動に出る結果に行きつくのか、まるで理解できない96木の思考回路と精神構造に目を見開いていた。
「お前と同じ目に・・・いや、それ以上に酷い目に遭って、反省する」
「いくらなんでも、一本全部飲むなんて、死ぬぞ、あんた!」
「死にはしないだろ。人畜無害だって言ってたし」
「馬鹿ッ! そんなに飲んで無害な訳がないでしょう! 僕にだって十二分に有害だったのに! とにかく吐け! 今すぐに全部吐け!」
 39間は96木の腕をつかんで強引にキッチンへ引っ張って行くと、半ば無理やりに大量の水を飲ませてから、吐くだけは目一杯に何度も繰り返して吐かせた。
「うう、ぐえぇ、く、苦しいぃ・・・」
 96木が喉元を手で押さえ、身体を折るようにして涙目で喘ぐように唸った。
「苦しくもなるだろうが! あんなものを丸ごと飲めば!」
 39間は眉をしかめて怒鳴った。
「クスリのせいで苦しいのか、無理に吐かされて苦しいのか、わっかんねえ・・・」
 96木はもうこれ以上は何も吐くものはないとばかりにふらふらとリビングに戻って、床の上にごろりと転がった。
「ああ、なんだか暑くなってきたぞ・・・」
 96木は呻いて身を丸くした。
 身体が火照ってきて、息苦しさを覚える。
 心臓はどきどきと音を立てて脈を打ち始めた。
「体温と血圧の急激な上昇、呼吸数と脈拍の著しい増加・・・。んむう、昨日のお前の気分がだんだんわかってきた・・・」
303権蔵9639 禁断の雫 16/19 :2009/04/21(火) 12:57:24 ID:kcjh5M330
「全く、一体何を考えているんです、あなたって人は・・・!」
 39間が目を吊り上げて96木に怒鳴り散らした。
「だから、この身をもって責任を取ろうと思って・・・」
「そんな責任の取り方をしろと誰が言った! 馬鹿が!」
「自分の気の済むようにしたかったのだ」
 96木はそう言ったが、喉が競り上がってきていて上手く喋る事ができない様子だった。
 声は掠れているし、息遣いは荒い。
「───ううん、暑くて息苦しいな・・・」
 96木は大きく息を吸って、吐き出した。
 鼻からの呼吸では追いつかず、何度も深呼吸を繰り返して、乾いた唇を舌で潤す。
「ああ、媚薬だって触れこみは嘘じゃなかったな・・・」
 体温の上昇に連れて浮かんだ汗が肌の上を伝って流れ落ちる感触にすら、身をよじりそうになる。
「昨日、あんたがどれだけの量を僕に盛ったのかは知らないが、僕の様子を見て知っているなら、大量に飲めばどうなるかぐらいわかるだろうに!」
「・・・頭の中がぐるぐるぐるぐる回っているう・・・。いや、回っているのは目かあ? 地球が俺を中心にすごい勢いで回っているう・・・」
 96木の声は震えていた。
 身体にもおこりのような震えがきていた。
「回りもするだろうが!」
「・・・も、猛烈に暑いのに、妙にぞくぞくもする。ああ、もやもやともしてきてものすごく変な気分だ・・・。なんだか頭も身体も何もかも全てが大暴走している・・・」
 96木が飲んだクスリの量は明らかに一回に摂取していい服用分を大幅に越えていて、血圧が上がって血流がよくなっているのなら紅潮するはずの顔色は逆に真っ青で、96木は意識さえも混濁しかけている様子だった。
 神経に賦活作用を起こす興奮剤の類の成分ばかり入った代物だったので、恐らく今の96木の心臓は不整脈の上に激しい頻脈まで起こし、脳にはすさまじい勢いで血が巡り回って発奮しているのだろう。
「・・・ううん、ああ、自分の身体が今まさに、男としてもんのすごい元気で大変にお盛んな事態になっているのも・・・あからさまにわかるぞ・・・」
304権蔵9639 禁断の雫 17/19 :2009/04/21(火) 12:58:42 ID:kcjh5M330
 その言葉通りに、96木の下半身の中心は、厚手の生地のズボンを履いた布地越しにもそうとわかるほどに興奮しきった状態になっていた。
「僕は相手しないぞ! 昨日の今日で冗談じゃない! あんたのせいで腰が酷く痛いんだ!」
 39間は怒りをこめてすかさずそう答えた。
「・・・い、いや、俺も、今はとても・・・そんな事はできそうもない・・・。身動きしたら心臓が破裂するか、脳の血管がぶち切れてしまいそうだ・・・。うう、うええ、き、気持ちが悪いい・・・」
「自業自得だ!」
「・・・うん、そうだ・・・全部俺が悪い・・・」
 ぞわぞわとする悪心にがくがく震えながら脂汗を浮かべてただひたすら身体を丸めている96木の姿に、39間はほとほと呆れ返って大きくため息を吐き、キッチンから氷を沢山入れたコップとミネラルウォーターのペットボトルを持ってきた。
「とにかくもう身体が吸収してしまったものは仕方がない。水を飲めるだけ飲んで、クスリの血中濃度を薄めた方がいい。喉も乾くだろう?」
「・・・うん、んん・・・」
 96木は朦朧としたような返事を返して、39間がつっけんどんに差し出したコップをぼんやりとしたまま震える手で受け取って、水を何杯か立て続けに飲み干す。
「救急車を呼びますか? いや、病院へ行った方がいいかも知れない」
「・・・ううん、いや、大丈夫だ・・・。多分・・・」
「───もう、あんたって人は本当に」
 驚いたり呆れたりするどころの騒ぎじゃない。
 39間は、強壮作用のある催淫薬の濃縮エキスを瓶から一息に一滴残さず飲むという信じ難い暴挙を起こした96木に対して、今まで胸に渦巻いていた憤りや怒りや憤懣の矛先をどこに向けたらいいのかがわからなくなった。
 そうした感情のやり所のないやるせなさに複雑な顔をして、興奮剤の限度を越えた大量摂取のせいで苦しげに身悶える96木を見る。
「頭が絶対にどうにかしてるぞ、あんた」
 そう言うと、96木は、ううん、うん、と唸り声で答えた。
305権蔵9639 禁断の雫 18/19 :2009/04/21(火) 13:02:15 ID:kcjh5M330
 それから丸二日、96木は瀕死の体で寝こんでしまい、そのまま39間の家に泊まりこんでいた。
 媚薬の濃縮エキスを原液のまま一気飲みするという無謀もはなはだしい行為の後、口を利けたうちはまだマシな方で、96木はしばらくすると激しい頭痛に襲われ始め、ひっきりなしの嘔吐を繰り返し、腰も抜けた状態になり果てて、満足に起き上がる事も歩く事もできなくなった。
 39間も、そうなった原因は全て96木自身にあるものの、そんな有り様で高熱に浮かされて、前後不覚に酩酊しているかのように苦しんでのたうっている96木を無下に追い帰す訳にもいかず、仕方がなく寝こんだ96木の看病をしていた。
「一体なんだって僕が、一服盛られた上にこんな面倒まで見なければいけないんだ、全く!」
 三日目になって96木がようやく調子を戻して半身を起こした時に、96木の寝ついているベッドまで重湯を運んできた39間は、極めつけに不愉快そうな顔で96木に向かって一気にそう毒づいた。
「お陰で僕はこの三日、あなたの世話に懸かりきりで夜もろくに眠れやしなかったじゃないか! こんな下らない事で休みまで取って! 大体、そもそもの被害者はこの僕の方だと言うのに!」
 病気ではないが、病気も同ような状態であったので、枕元で病人を責める真似をしなかっただけで、心の中ではずっと文句や鬱屈の十や二十や三十を悪しようにぶちまけたいのを我慢していたらしい。
「いや、本当にすまなかった。俺ももうすっかりつくづく懲りた。クスリはよくない。うん、よくないぞ、あんなものは。だから、本当にお前には悪かったと心底から思う。散々苦しんで嘘偽りなく実感した」
 96木は見るからにやつれきった表情で真剣にそう返して、本当に俺が悪かったと39間に真顔で何度も詫びた。
「あんなものがなくたって、俺は十分にお前を愛してるし、お前もいつものお前のままでいい」
 39間は眉間を酷くしかめたまま、深々とため息を吐いた。
 怒りはまだ消えてはいないし、文句も山ほど言ってやりたいが、これ以上96木を突っぱねていたら、詫びだと言って次はまた何をしでかすかわからない。
306権蔵9639 禁断の雫 19/19 :2009/04/21(火) 13:02:46 ID:kcjh5M330
 仕様のない人間だ。
 生まれついて根本的に性質がよくない。
 そんな性分の人間相手には、こんな時は不承不承にでも退くしかない。
「───今度僕に妙な真似をしたら、殴りますよ」
 39間には、そうとしか言えなかった。
「もうしない。絶対しない」
 ドスの利いた39間の低い声に、96木は頭を左右に勢いよくぶんぶんと振った。
「禁じられているものは使わないに越した事はない。例え雫一滴でも」
 96木のその言葉に、39間はもうそれが癖にでもなっているかのようにまたしてもため息を吐いた。
「禁じられているものには、そうされるだけの理由があるものだ」
 39間がそう答えると、96木は、ううんと意味不明に唸った。
「───ああ。でも、そうだ、39間」
 それからしばらくしてから、96木が思いついたように顔を上げる。
「同じ雫でも、禁断じゃなければいいと思わないか?」
「・・・どういう意味だ」
 39間は嫌な予感に眉を寄せた。
 96木がそんなふうに何かを思いつくのは、大概がろくな事ではない。
「今、ふと思ったんだが、イランイランなんかはどうだ。あれを使えばお前もアノ時にずいぶん楽だと思うぞ」
「───」
 ぴくりと39間の片頬が小さく攣る。
「イランイランはすごくエロい匂いがして、昔から催淫効果があるって評判の香油だろ。あれは別名を『愛の雫』と言って、入れる時にあの部分にたっぷり垂らすと、精油だからぬるぬるして俺も入れや・・・」
 言葉の途中で、96木は容赦の全くない力加減で、地獄の悪鬼が憎悪の余りに殺意を抱いたような顔をした39間から往復で顔面を思い切り目一杯に張り倒されていた。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

長々と場汚しすみませんでした。
ありがとうございました。
307風と木の名無しさん:2009/04/21(火) 21:33:04 ID:5/Ih0HHlO
>>288
権蔵gj!!
39間女王様素敵
9639ラブ読めて嬉しいです。
308風と木の名無しさん:2009/04/21(火) 23:31:42 ID:DFktyGue0
>>273
この二人が読めるとは!
ありがとー!
309生 春画バンド:2009/04/22(水) 01:46:19 ID:uhsK+ejj0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  ナマ注意 某春画バンドのGt×Vo Vo視点
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| ライヌ翌日のホテルでいちゃこいてるだけのぬるい話です
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 初投下ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(スイマセン、投稿ミスしました……ここからとナンバリングとサブタイつけます)

ふ、と息をつく。
柔らかいベッドにまた意識を持っていかれそうになって思わず唸る。
けれど起き上がるような気力はなく、かけたまま寝てしまっていた眼鏡を押し上げて、
差し込む光の眩しさに二度ほどゆっくりと瞬きをした。
昨日のライブは、すごかった。とにかく、お客さんの盛り上がり具合が尋常じゃなかった。
わしもそれに煽られるように、負けないようにステージ上ではしゃぎまくって、暴れまくって、歌いまくった。
そのあと疲れた体に鞭を打って、というかそのテンションをそのままに向かった打ち上げでも散々盛り上がって。
とにかく昨日のわしらは、その翌日の体への負担なんてことは微塵も考えもせずに、朝まで楽しい時間を過ごしていた。
「うー」
打ち上げの記憶はあまりないけれど、きっと相当飲んだんだろう。体は重いし、頭も少し痛い。
重たい体を動かせずにずっと暖かい布団の中なんかに居るから、意識は睡眠と起床の間で揺れたまま、もう一時間近く経とうとしている。
もちろんこんな事態はとうに予測されていたことで、集合時間は昨日のそれより随分遅く設定してあった。
だからわしは、昼十二時を回ったこの時間にもこうしてまどろんでいられるのだ。
それにしても、しんどい。
「きついよー」
がらがらに掠れた声で呟く。あまりの喉の痛みっぷりに、思わず眉を潜めた。
次の公演までには、何とかしないと。
ああそうだラジオ、心配されるかもしれないな。あさってには少しでも回復しているだろうか。
こんなとき、一日目の夜の打ち上げに参加できないからといって二日目の時やたらはしゃぐくせのある自分をちょっとだけ恨む。
けれど楽しかったという感覚は確かに残っているから、多分わしは次の公演後にもこんな風になっていることだろう。
そんな風に思っていると、ドアの開く音がした。
ふわふわ浮いていた意識が、覚醒のほうへぐいと引っ張られる。
何事かと一瞬身構えたけれど、近づいてくる聞き慣れた足音に持ち上げていた首をまた枕に沈めた。
「おう、まだ寝とったんか」
舌足らずな声とともに、やはりこちらもいくらかやつれた、相方の呆れ顔に見下ろされた。
「鳥の巣に言われたあないわー」
顔は洗ってきたらしいが、進堂だって髪はぼさぼさだ。どうせ彼も、隣の部屋でついさっきまで寝ていたんだろう。
「鳥の巣て……。こういうのは起こしにきたほうが勝ちなんよ、丘野君」
「なんじゃあそりゃ」
どうでもいいことをやたら自慢げに言う進堂が可笑しくて、掠れた声で笑った。
「で、何の用ですか、しんどうさん」
「いや、別に何もないんじゃけどさ」
ただお前とだらだらしたいなと思っただけよ。そう言って、進堂はベッドの上、わしの頭の横辺りに腰を下ろした。
「まだ時間あるし、集合3時じゃし、一人じゃ暇じゃけえの」
「今何時?」
「12時半」
斜め下から進堂を見上げる。髭を剃ったばかりの顎が、ちょっと柔らかそうだった。
突付いてやろうかと思ったけれど、ぐわぐわ騒ぎそうなのでやめておいた。間違えて、喉突いちゃったらまずいしね。
すると、なにやら指折り数えていた進堂が、ポツリと呟いた。
「3時間半ありゃ、2・3回はいけるな」
お前そんな事数えよったんか、とすばやく切り返すとどうやら期待通りの反応だったようで、進堂は楽しそうに笑った。
「まあ、無理じゃのお、その様子じゃ」
「あー、ちょっと今は喘げんわ、死ぬ」
「わしもちょっと、無理」
甘くもなんともない下ネタで少し盛り上がって、また間の抜けた沈黙が流れた。
張り詰めてなどいない、ただだらしないだけの沈黙だ。
くぁ、と進堂が欠伸をする。それにつられて、わしも大口開けて欠伸をした。
「うつった?」
「へへ」
進堂が、微笑みながら見下ろしてくる。と、突然顔の両脇に手が置かれて、その顔がぐっと近づいてきた。
「……うお」
キスでもされるのかと、思わず眼を瞑った。
けれど感じたのは前髪を指先でかき上げられる感覚で、眼を開けると顔は十数センチほどの距離のところにあった。
「……なんですか」
「丘野さん」
「はい」
「ちょっとおでこが広くなられたんじゃございませんか」
「……黙れアヒルが」
「否定はせんのね」
意外そうに眉を吊り上げる進堂。なんかその顔腹立つぞ、このやろう。
「うるさい、お前だって人のこと言えんじゃろーがあー」
言いながら鳥の巣頭をわっしゃわっしゃと乱してやると、進堂は苦笑いしてやめえや、とわしの手を退けようとする。
わしも負けじとじたばたと動いて、しばらく子供のようにじゃれあった。
それが一通り落ち着いたあと、気づけば向き合う形でベッドに沈んでいた。
「まあ、年取ったよな」
「そりゃあ」
ずっと一緒にいるから、老いみたいに徐々に変わっていく変化にはあまり気づかない。
でも、時々実感するんよね。こんな朝とか、こんなときとか。
「ちょっとなんか、寂しいよーな悲しいよーな」
わしがそう言うと、進堂はんん、と曖昧な返事を返した。
寝返りを打って仰向けになり、手探りで細い指先を探して触れた。
十本の指はすぐに絡んで、いわゆる恋人つなぎの形で落ち着いた。
「そんだけ一緒におるってことよ」
「そうね」
成長も挫折も、変化も、ずっと共有してきたんだなあ、と思う。
進堂のほうに少し寄ると、肩口辺りに柔らかい肉体が触れた。
その先だけが少し固い指先が、自分の髪に優しく絡んできて、つい意識がとろけてしまう。
「昔みたいに何回も出来んようなったしな」
「ねえ」
「そのうち起たんくなったら、どうしよ……」
そんなことを少し真剣そうに言うもんだから可笑しくて、小さく噴出してしまった。
それが癪だったらしい進堂が何わろとるん、大事なことじゃんかあ、と五月蝿く言うので、一応答えてやる。
「まあ……そん時は……こけしとか」
「ちょ、何それ! わし要らず!?」
「いやいやあなたにはそれを動かすという重大な役目が」
「いやいやいや、そういう問題じゃ」
声をひっくり返して騒ぐこいつの必死な顔といったら、ずうっと前から変わらなくて。
「はははは! じょーだんに決まっとるじゃんか、おっかしー」
わしがそれに声を立てて笑ったときの、少し眉を下げた呆けた顔だって。
こんなやりとりも、何回繰り返してきたかわからないほど。
「こんの、やろー、減らず口にはちゅーしちゃるわ!」
「ちょっ、おま、やめえー!」
そうして覆いかぶさられて、形勢が逆転してしまうのも、よくある話。
だけどそう簡単には屈してやらない、わしにもプライドがあるからね。
「こら、あきっと、じっとせえ!」
「いーやーじゃあー」
なんて大層なことを言ったけど、別にこいつとキスするのがそんなに嫌という訳じゃない。
ただ単に、抵抗したほうがこのおふざけが面白くなるから、それだけだ。
そうやって互いに子供じみた攻防を繰り返していると、進堂の動きが不意に止まった。
どうしたのか、と顔を上げてみて、思わず息が詰まった。
進堂は、さっきまでと同じ人物とは思えないほど鋭くて強い眼で、わしをじっと見下ろしていた。
逆光の中でよく輝くブラウンの瞳が、その奥の真っ直ぐな気持ちと、僅かな欲情を伝えてくる。
今までふざけていた気持ちがそっくりその瞳に吸い込まれて、鼓動が跳ね上がるように高まる。
しばらく何も考えられずに、その視線一つで簡単に変えられていく心情に身を任せることしか出来なかった。
――ああ、だめだな。
ようやく頭の片隅でぼんやりそう思ったときには、すでに唇は触れ合っていた。
最初のうちは柔らかかったキスは、彼のペースでだんだんと深く変わっていく。
その途中、熱い舌にぬるりと絡めとられると、いちいち背筋に甘い刺激が走った。
「ん、ん……! っ、んん」
しばらくして、ゆっくりと唇が離される。
その時少し口を開いて軽く舌を出すくせのある進堂のそれから、細い糸が引いているのが見えた。
「っ、は、はあ、っ」
薄い唇が、嬉しそうに、卑猥に歪む。
それに理性を持って行かれそうになった自分が、悔しかった。
いやいやでもそれはいけん。何より労わらなくちゃいけないのは自分の体だ。
「無理なんじゃ、なかったんですか、」
「丘野君こそ、喘げないんじゃなかったんですか」
「……まあ、でもヤれんよ、体力的に無理」
そりゃあね、あんたのキスはいつも気持ちいいし、声だって反射的に出ちゃうけども。
でもね、無理なもんは無理なんよ、キスだけで息が上がるような状態じゃ身が持ちません。
しかもしばらくやってないし、そんなん絶対激しいじゃないか。無理無理。
恥ずかしいから声に出しては言わないが、そんな事を数回心の中で繰り返して、気持ちを押し留めた。
「別にヤりたいんじゃないて、ちょっと深ぁーくしたかっただけよ」
そんなに嬉しそうにするんじゃない。もう。
見慣れたはずのその表情だけれど、見るたびに本当に馬鹿みたいに、どうしても嬉しくなってしまって。
なんだかなあ、と自分で呆れてしまった。
「くそー疲れた、こうなったら寝てやる」
「まだ時間あるもんなあ、寝ようか」
ふてくされたような声を出しても、進堂は飄々としていて、余裕たっぷりにわしの頭を撫でてくる。
ベッドの下に落ちていた布団を引っ張りあげてきて、向きも整えないまま乱暴に被った。
「寝るぞ、こら」
「はい、おやすみ」
なんじゃそれ、お前はわしのお母さんか。
馬乗りになっていた進堂がごろりと隣に寝転んでくる。仰向けのわしに寄り添うように、こちら向きで。
ちょっとした恥ずかしさを覚えつつも、わしはわしでいつの間にか離していた指先をもう一度探って絡ませた。
ふふ、と僅かに進堂が笑ったのが耳元で聞こえる。
優しい手つきで髪を撫でられると、意識はすぐに浮き足立った。さらさら、と細い指先に髪を梳かされる。
それはまるで親が子供を寝かしつける時のようで、なんだかやたらに甘えたくなった。
「しんどう」
「ん……?」
聞き返された声が暖かくて、口元が緩む。
「……ずっと、」
暖められた心からつい、ぽろりと言葉が零れそうになった。
けれど言いかけて一気に恥ずかしくなって、とっさに口を噤んだ。
「うん?」
その声が小さかったからか、進堂は聞き取れなかったらしく、軽く首をかしげていた。
「……おやすみっ」
慌てているのがばれないように、進堂の胸板に顔を押し付けた。進堂はそれ以上言及することなく、黙って抱き返してくれた。
暖かい体温でちょうどいい具合に気持ちよくなって、わしはゆっくり眼を閉じた。

「そんなん、言わんでもわかっちょる、て」

「ずっといっしょにいて、じゃろ?」

だって、今までだって、ずっとずっと。
そりゃあ、これからだって、ずっと、ね。

春一はすっかり寝付いた恋人の広くなったと言った額にキスを落とすと、嬉しそうに微笑みながら、自分も意識を手放した。
 ____________
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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ お付き合いいただきありがとうございました
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )    ネタ提供してくれたスレの人、ありがとう
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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317新興宗教オモイデ教 中間×ゾン1/2:2009/04/24(金) 20:45:01 ID:sAp0v+s00
読み返したら電波を受信したので投下。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

ライブの後、彼はいつもただ呆然としていた。
自分か観客のか、よくわからない血のついたぼろ雑巾のような服を身にまとい、
ライブハウスの控え室で天井をひたすら虚ろと眺めている姿はさながら殉教者のように見え少し笑う。
(神?そんなもん、僕もこいつも信じてないやろ)
のそのそと近づき、彼に明るく声をかける。

「ゾン、大丈夫か?」
空中をふらふらさまよっていた目は一瞬こちらを捕らえるがすぐに再び空をまう。
「キマってんな〜ゾンのおかげで今日もサイコーやったで」
今の状態の彼には聞こえてないだろうが思ったことを伝える。そう、彼はくだらないこの世界で、
数少ないサイコーと賛辞されるに等しい人間だ。そう、信じている。

「…中間さんは楽しかったか」
小さな声だが、確かに自分に問いかける声が聞こえて驚く。
「あぁ、めっちゃ楽しかったで。ゾンがやってくれるだけで僕は楽しいよ」
ゾンはフラフラと、まるで背の高い植物が風に揺れるように不安定に頭を揺らしている。
ライブ後のトリップ中に彼が人の理解できる言葉を発するのを見るのは初めてに等しかった。
318新興宗教オモイデ教 中間×ゾン2/2:2009/04/24(金) 20:48:10 ID:sAp0v+s00
少女めいた白い顔の口の端が少しあがっている所を見ると
彼は中間の言葉に喜びを感じているのかもしれない。
それを見て中間は何かたまらなくなり、思わずゾンの頭を撫でた。
いつも汚い大人たちにされているセックスに直結する愛撫とは違う、
ただ優しいだけの触り方にゾンは呆けたように中間の方に顔を向けた。
「ゾンが気持ちいいライブが、僕の楽しいライブや。またやろうな」
中間の言葉に少し笑みを浮かべてゾンは頷いた。
これなら次のライブもきっと成功するだろう。何故ならこれは、
ゾンが内に秘めているものを吐き出すたった一つの方法なのだから。

ふと、ゾンがいつか幸せになれば良いなと思った。普通に働き、普通に恋をし、普通に笑う。
あり得ないとわかっているが、幸せになって欲しかった。
(そうか、僕はゾンが好きなんだ)
小学生の淡い初恋のように胸にその気持ちが浮かんだが、それは言えなかった。


彼が死んだときも、それは言えなかった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
319幸運犬 ジュリオ×ジャン:2009/04/24(金) 23:04:52 ID:ieE1lGl/0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  同人ゲー幸運犬のジュリオ×ジャンです
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  ※すこしだけ流血表現あります
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
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320幸運犬 ジュリオ×ジャン 1/6:2009/04/24(金) 23:05:34 ID:ieE1lGl/0
 ほらよ、といって最後のカードを投げ捨てる。ジュリオは一瞬ぽかんとした顔をして、
すぐ表情をもどすと強いんですねとつぶやくように言い、自分のカードを無造作に床に置いた。
 これで12勝0敗。オレの圧勝だった。
 ――トランプで俺に勝てるヤツはそうそういない。イカサマでもやれば別だろうが、
俺に見抜けないほど上手くイカサマができるヤツもそういなかった。自身のこの強運のおかげでここ十何年、
オレはゲームで負けを経験したことがない。
 それにしても、ヒマだ。脱獄なんてそうそう簡単に実行できるモンでもなく、
待機しないといけない時間はおどろくほど長い。オレ一人なら多少ムチャしてもなんとでもなるだろうが、
他に四人も引き連れるとなると……。焦ったら負けだ。そう思っていた。ただそれと退屈なのとは全く別だ。
 あーあー、と足を組んで後ろ向きに倒れる。イヴァンがオレにゲームで勝とうと躍起になっていたころはまだよかった。
あれはいいカモだった。からかった時の反応がおもしろいからいい退屈しのぎになっていたというのに、
ここ最近は警戒して決して勝負しようとはしなかった。ちとやりすぎたか。そう思うが、
あいつがイカサマ下手なのが悪いのだ。
「…ジャン、さん」
 呼ばれて視線を向けると、ジュリオが慣れた手つきでトランプを繰っている。…まだやる、と言うんだろうか。
321幸運犬 ジュリオ×ジャン 2/6:2009/04/24(金) 23:06:05 ID:ieE1lGl/0
 はっきり言って、こいつとやっても面白くないのだ。イヴァンのようにカモにする気は起きないから何を賭けているわけでもなし、
楽しそうな顔をするでもなし、負けても悔しそうにするでもなし。まあ負けて暴れられるよりはよほどいいのだが。
「ジャンさん。……ジャンさんは…イカサマ、するんですか?」
 なめらかにカードを繰る、その手元から目を離さないまま、ジュリオはオレに問いかけてきた。そこには連敗しての
悔しさとか、うらめしさとかは一切ないように聞こえた。単なる純粋な疑問なのだろう。オレは笑ってひらひらと手を振る。
「しねーよ。する必要もねーからな」
「……そうなんですか」
「…ってか」
 とんとん、とジュリオの手の中で綺麗に整えられたカードを指さす。
「まだやる気なのか、おまえ?」
 呆れを滲ませてそう尋ねると、ジュリオは子どものような表情で首をかしげ、
「……ダメ、ですか」
322幸運犬 ジュリオ×ジャン 3/6:2009/04/24(金) 23:06:30 ID:ieE1lGl/0
 …ダメっつか。なあ。
「おまえ負けっぱなしじゃん。楽しいのか?」
「楽しい、です…とても」
 ていうか、スリルがないから面白くないんだよな。とはなんとなく言えなかった。オレとしてはもうやりたくないんだが、
そう言わせない雰囲気がジュリオにはあった。なんというか…実を言うと、オレ、コイツのことキライじゃないけどちょっと苦手なのよね。
 うーん、と困って唸っていると、ジュリオがその辺りのオレの葛藤を察したのか、わずかに眉尻をさげた。
「…ジャンさんは、俺とやるのは…いや、ですか」
「イヤじゃねえけど…」
 イヤだけど。なーんかはっきり言っちゃうのは罪悪感がある。賭けすりゃ多少スリルも生まれるんだろうが、
ジュリオから金を巻き上げるのはなんとなくよろしくない気がする……、……。
「……じゃあ、こっから賭けありだ。勝った方は負けた方のいうことなんでもする。どうだ?」
 起き上がってそう言うと、いつも全く動かないジュリオの表情がぴくりと動いた。
「なんでも…」
「や、別にんなヘンなことしねーよ」
 実際、軽くパシるだけで済ませてやるつもりだった。そこまでのスリル、というわけでもないが、CR:5の幹部を
パシらせられるなんて、ちょっと愉快じゃないか。うし、ちょっと気合入ってきた。
「はい、それで…いいです。じゃあ…」
 と言って、ジュリオがカードを配るのを、オレは少しだけわくわくしながら見ていた――。
323幸運犬 ジュリオ×ジャン 4/6:2009/04/24(金) 23:07:19 ID:ieE1lGl/0
*  *  *


「――…俺の勝ち、です」
 そう言ってジュリオが最後のカードを置くところを、オレは愕然として見ていた。オレが負けた。
まさかそんな。こんなことが――あるわけがない。
 だが実際にオレは負けてしまっているのだ。軽い混乱とともに手にしていたカードをバラバラと落とした。
 ――まさか。
 はっとしてジュリオの顔を見る。いつもと変わらない、いや、いつもよりほんの少しだけ嬉しそうなジュリオの
表情がそこにある。オレと一つしか年が変わらないくせにあどけない顔。だがこいつが不正を―イカサマをしたのは
間違いない。そうでなければオレは負けない。
 けど、いつだ。いつこいつはカードをいじったのだろう。すらりと長い、しなやかな指をじっと見つめる。
ナイフ使いというわりには、タコだのなんだのがなくてキレイな手だ。怪しい動きをしていたようには見えなかったんだが…。
「…ジャンさん」
 考え込んでいると、その手が近づいてオレの顔に添えられた。その指がぼさぼさのオレの髪をするりとかきあげる。
「なんでも…いいんですか?」
 そう言われてやっと賭けのことを思い出した。負けるだなんて思ってもみなかったから、心の準備なんて全然できてない。
いまさらながらに何をされるかわからない恐怖が背筋をすべりおりた。ちょっと待て、と静止する間もなく
ジュリオの顔がぐいと近づく。
「俺…なめたいです」
324幸運犬 ジュリオ×ジャン 5/6:2009/04/24(金) 23:07:47 ID:ieE1lGl/0
 何を。
 と思う間もなくジュリオの顔が更に近づく。唇にやわらかい感触が触れた。これは、キス、か?
 男には突っ込むが、男とキスをするのは初めてだ。そりゃそうだ、突っ込むのは性欲処理であってキスなんか必要ない。
予想外のことに目を白黒させていると、ジュリオがじっとこっちを見つめているのに気がついた。長いまつげが時折
動いてオレにまばたきを知らせる。なんなんだ、こいつ。そう思っていると触れているジュリオの唇がわずかに
開いた。
 舌まで突っ込んでくるつもりなのか!?
 それだけは勘弁願いたい。唇をかたく引き結んだが、ジュリオはまたオレの予想外の行動にでた。
「っつ、…ってぇ」
 がり、と鈍い音がして、唇の端で鋭い痛みが走る。噛まれた、と気づいたのは少し経ってからだった。
じわ、と口の中に鉄の味が広がる。――結構、深いキズだった。
「てめ、ジュリ、」
 さすがに何か一言言ってやろうと口を開いて、しかし最後までは言えなかった。傷口をべろりと舐めあげられて、
ぴりぴりとした痛みが駆け抜ける。
325幸運犬 ジュリオ×ジャン 6/6:2009/04/24(金) 23:08:07 ID:ieE1lGl/0
「ああ……」
 恍惚とした声がすぐ耳元でした。ジュリオの声だ、とは最初気付かなかった。こんなに感情を滲ませた声は
初めてだ。オレの頬のあたりに添えられていた手が、するりと下がってオレの傷口に触れる。
「つ、いて、」
 また滲んできた血を引きのばすように指が動いた。痛い。思わず目を瞑ると、ジュリオの口から、ほう、と満足気な
ため息が漏れた。
「きれい――きれいだ……ジャン」
 言ってジュリオはまた唇を重ねてくる。
 ――コイツ、絶対ヤバい。
 冷静なオレは警鐘をガンガン鳴らしてくるのだけれど動けない。やばいやばいと思っているのにジュリオの服の
袖口を握りしめて抵抗しようとする気がおきないオレっていったいなんなのだろう。
326風と木の名無しさん:2009/04/24(金) 23:09:26 ID:ieE1lGl/0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 発売前なので捏造も入ってます。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) 読んでいただきありがとうございました。
 | |                | |       ◇⊂    ) __発売とてもたのしみです。
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

327風と木の名無しさん:2009/04/25(土) 00:07:32 ID:BXDYFWeA0
>>23
亀レスですが
蓉司の愛され方に禿げ萌えた
ありがとう。
328クイズ D×MC:2009/04/25(土) 01:33:06 ID:JYR6RcC50
半ナマ注意 ザ・クイズショウでD×MC
深夜版は未視聴につき、矛盾があっても早漏乙でヨロ

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
329クイズ D×MC 1/4:2009/04/25(土) 01:34:32 ID:JYR6RcC50
ずっと見ていた。
明るい日差しの下、屈託なく笑う顔。彼自身が太陽のようだった。
どれだけ手を伸ばしても実体に触れることは一切叶わず
ただその強烈な光だけがこの網膜を焼き、身を焦がす。
ただ在るがままで一方的な影響を及ぼすそれを地べたに引きずり落として
何をも照らさぬよう囲い込んだらどんなに気分がいいだろう。
330風と木の名無しさん:2009/04/25(土) 01:35:00 ID:e4I7jNcB0
>>317
まさかこの二人の話が読めるとは・・・!
萌えました。本当にありがとう
331クイズ D×MC 2/4:2009/04/25(土) 01:35:33 ID:JYR6RcC50
「ぁあああああああああああああああ!!!」
遠く聞こえる絶叫を耳に捉え、本間は口端を微かに上げた。
外界と切り離された、真っ白な空間。その部屋へ続く薄暗い廊下を、ゆっくりと歩く。
途絶えることのない叫び声を味わうように。
「神山」
「あああ、っあ…ッ」
入り口に立ったまま名を呼ぶと、部屋中に響き渡っていた声がようやく弱まった。
床に蹲ったまま荒い息を吐き、上下する細い肩。怯えさせないよう静かに側へ寄り、その肩を緩く抱く。
「…ご、ごめっ…」
「何を謝る?」
腕の中、顔を上げぬまま身を固くした神山の言葉に、本間は目を細めた。
「俺、なに、も…」
―何も思い出せない。
長時間叫び続けたせいで掠れきった声はひどく聞き取り難かったが、本間は正確にその意を汲んだ。
「…そっか」
「っめ、なさッ…」
嗚咽混じりに繰り返される謝罪と、必死さを滲ませて震えながら縋りついてくる手。
それらは本間にたまらない愉悦をもたらした。
骨の浮いた背中に手を滑らせてそっと撫でさすると、引き攣るようだった呼吸が次第に穏やかなものへと変わる。
「焦らなくていい。だが、必ず思い出せ」
「…は、い」
「俺がお前を救ってやるから」
「…はい…」
従順な返事を褒めるよう、髪に手を差し入れて殊更優しげに撫でてやる。
そうして神山の顔を覗き込むと、虚ろな瞳の奥に情欲の色が兆したのが見えた。
332クイズ D×MC 3/4:2009/04/25(土) 01:37:05 ID:JYR6RcC50
繰り返しフラッシュバックする過去の記憶は、途方もない苦痛を伴って神山を苛む。
完全に体力の限界を越えてもなお絶叫しのたうち回る彼を、
本間はただひたすら快楽を覚えさせるやり方で抱いた。
無意識下の防衛本能はやがて、その男に抱かれることが唯一、苦痛から逃れる術だと認識した。
「ふ、…っん、んぅ…」
まもなく自分に悦楽を与えてくれる筈のものに、神山は必死で舌を這わせる。
病み衰えた体はどこもかしこも薄くて頼りないのに、拙く上下するその唇だけが
ぽってりと肉感的であるのがひどくいやらしい。
髪を掴んで軽く後ろに押しやると、唇から湿った音をたてて抜け落ちたそれに
名残惜しげな視線を絡みつかせている。
「次はどうするんだっけ?」
ぺたりと床に座っていた神山は、掛けられた言葉にのろのろと体を起こし、ベッドへ上がった。
向かい合う形で本間の腰を跨ぎ、中心に片手を添えてゆっくりと身を沈めて行く。
男のものをしゃぶりながら自分の指で準備を施した後ろは、貪欲に熱を咥え込む。
「ッは、ぁ…っ」
根本まで飲み込むと、本間の首に両腕を回して縋りついてくる。
密着した腹の間で擦れる神山自身は、既に張り詰めて限界を訴えていた。
「動け、ほら」
「いぁ、あああああああッ!!」
ぺちりと尻を叩いて促すとその刺激にすら耐え兼ねたようにびくびくと体を跳ねさせ、
弾みで呆気なく達してしまった。
「ひ…ぅッ!?ああ、あああ、アァ!!」
射精したばかりの過敏な体に休むことを許さず、腰を抱え込んで押し倒す。
そのままガツガツと最奥を穿てば、叫び声が一際大きく高くなった。
中のきつい締め付けと蠕動に加え、全身の痙攣がひどくなったのを感じ取る。
彼はもうすぐ失神するだろう。
待ち詫びるような気持ちで、本間が動きを早めた瞬間。
「    」
「…っ!」
神山の目がまっすぐ本間の目を捉え、音にはならない言葉を口の動きだけで語った。
それと同時に熱を吐き出した本間の視界は一瞬白い光に包まれ、次に見た彼は既に意識を手放していた。
333クイズ D×MC 4/4:2009/04/25(土) 01:38:36 ID:JYR6RcC50
―タスケテ。

そう言ったように見えた。
ああ、勿論助けてやるさ。お前を救えるのは俺だけだ。
「さぁ、物語の始まりだ」
本間は心の底から愉快そうに笑った。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
一週間が長くて長くて。

334風と木の名無しさん:2009/04/25(土) 16:16:48 ID:Jj/pOhN7O
>>328
禿萌えた
Dの黒さがたまらん
335R.u.i.n.a. 廃.都.の.物.語 メ.ロ.ダ.ー.ク×エ.メ.ク:2009/04/25(土) 21:53:29 ID:c3xM/gpp0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  R.u.i.n.a神官編メロさんエンド後です。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  とりあえず王道ネタやってみた
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ サツジンリョウリニン…
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚;)
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
メロダークが、彼を赦した少年に対し「お前こそを信仰する」と宣言して以来……
実際彼は何をするにも少年に付き従うようになった。
神官として、そして執行者としての立場も放棄し
エメクのために生きるという強固な信条のもと、神殿に転がり込むようにして今は共に暮らしている。
部屋には十分な余裕があるのでそれ自体は問題なかったが、
理由をアダに説明するのにエメクは苦心した。
まさか「自分は彼の神である」などと言う訳にも行かないので
「今回の騒動で世話になった仲間が、もう傭兵を辞めて静かに暮らしたいと言うが
家がないのでしばらく神殿に身を置いてもらう」という事にしてある。

アダは納得してくれたが、そもそも少年自身も神に仕える者であり
信仰の対象としてア.ー.ク.フ.ィ.アという立派な神が存在する。
その自分が信仰される対象になってしまうとは思いもよらず、エメクは当惑しきりだった。

しかしそこにどんな思惑があろうとも日常は彼らを待っていてはくれない。
いまだ混乱の収まりきっていない町で、神官としてするべき事はあまりにも多い。
家や畑を失ったまま神殿の施しを頼りにして生きている者もいるし、
先の戦で失ってしまった信用を回復させる必要もある。
そういった点では、若い男手であるメロダークの協力はむしろありがたい事だった。
アダも彼が良く働くので助かるととても喜んでいる。
エメク自身も、お互いに奇妙な関係ではあるが
エンダは毎日元気だし、メロダークも以前にも増して誠実で
家族が増えたようで楽しくもあり……こんな生活も悪くないかもしれないと思い始めていた。

――だが、ひとつ大きな問題があった。
「エメク。新鮮なイドが取れたから煮てみたんだが、味見してくれないか」
「(またか…………!)」

おお哀れな子羊メロダーク、神の託宣を良くお聞きなさい。
イドは間違っても食用にできるような代物ではありません。
大廃墟の淀んだ川の中に潜み、切り落としても瞬時に再生するその触手の中には
ふんだんな瘴気が流れているのを、そしてそれに散々苦しめられたのを忘れましたか。
またあなたは何を用いてそれを煮ましたか。
凝固させた血液の代わりとなるチョコレートですか。
自然の摂理に背く物を産み出すあなたのその行為を、
私は神として罰しなければなりません…………

色々と言ってやりたい事はあったが、エメクはそれらを口に出すのをぐっと堪えた。
以前、もう少し食べられるものを作るようにそれとなく注意した事はあったのだが
本人は「これはそんなに不味いだろうか?」と言いながら平気な顔をして
自分の作ったマッドシチューを平らげていた。
また、料理そのものを止めろと言う事ならばたやすいが
この寡黙で無機質な男の唯一の趣味が料理なのだから、それを取り上げてしまうのは忍びない。

しかし、このままではいけない。
ブラックプリンが厨房から這い出てくる程度の光景ならもう見飽きてしまった自分が嫌だった。
更に、彼が毎回の炊き出しも手伝いたがっている以上
このままだと一般人の中に犠牲者が出るのも時間の問題だろう。
そう危惧したエメクは、ある行動に移る決意をした。
「……料理教室?」
「はい!エメクさんにお願いされて来ました、一日講師のアルソンです。どうぞよろしく!」
「アシスタントのエメクです」
「おー。」

エプロンを着けた金髪の騎士と、銀髪の神官がぺこりとお辞儀をした。
「お母さん」こと騎士アルソンはもうこの町を離れていたのだが、
現在ホルムの領主が不在のままということもあり定期的に様子を見にやって来るのだ。
そこをエメクが捕まえて料理の講師をしてくれるように頼み込んだ。
彼自身も、遺跡の大図書館から掘り返してきた古書を読んで基本的な料理の知識は身につけている。

二人の向かいには、同じようにエプロンを着けたメロダークと
着慣れぬものに違和感があるらしくもぞもぞしているエンダが佇んでいた。
ちなみに彼らの長い髪を束ねている紐は、アダが編んだおそろいの祈り紐である。

今回の目的は、彼らにとりあえず「食べられる物」を作れるようになってもらう事だった。
料理をする人手という面ではエンダは必要なかったが、
彼女は放っておくと生魚を頭からかじって食べてしまうため
人間らしい生活を身に付けるためにも、料理をする習慣を覚えてほしかった。

「では早速はじめましょうか。今日のテーマは目玉焼きです!」

鍋の中に異世界を作り出す者と、料理の「り」の字も知らない者が相手としては妥当なメニューだろう。
しかし、曲がりなりにも料理を趣味としている人間として
メロダークからは抗議があっても良さそうではあったが、
彼は大人しく材料や道具の準備を整えていた。
これをエメクが望んでいる事だと正しく認識したためだろう。
「エンダは魚がいい!」

手順を説明しようとしたアルソンに向かって、エンダが元気よく手を上げて言った。

「そうですね。お魚もありますし、焼き魚にも挑戦してみましょうか。
 両方とも焼くだけなのでカンタンですよ〜」
「分かった」
「ういうい」

かくして、鬼が出るか蛇が出るか、先行き不安な料理教室は開講された。

最中の混乱は、十分に想像して頂けることと思う。
神への贄を捧げるために焚かれる燔祭の炎が、祭壇ではなくかまどから上がった。
「エンダ!息は吸わなくていい!ブレスじゃなくてそこの扇を使って!」という悲痛な叫びを、
不気味な「我思う故に我在り」という声の唱和を、礼拝に来た住民が聞いた。
不浄のものを清める理力の光が窓から漏れ、薔薇の花びらが散った。

そして数刻の後――――
すっかり異様な臭いに包まれた厨房を何とか片付け終わったあと、ぐったりと椅子に沈み込むエメクの
その足元にひざまづいて、メロダークは彼の主人を見上げた。

「すまない。お前を困らせたかった訳ではないんだ……
 ……エメク。俺の料理が嫌いならば、無理に食べてもらわなくとも構わない。
 元々俺が勝手にやっていた事なのだから……お前が責任を感じる必要はない。
 お前が望むのなら俺はもう包丁を手にすることを止めよう」

そう言う様子は雨に打たれてうなだれる野良犬のようだった。
少し端が焦げ、得体の知れない液体に湿ったエプロンも哀れさを助長する。
この色んな意味で不器用な男は、自分の為に生きるという事を知らないのに違いなかった。
幼いうちから村のために戦いへ身を投じ、長じてからは大神殿の手足となって
雷王のため神のためにあらゆる汚れ仕事で魂を泥に浸して生きてきた。
そして今は、その魂を掬い上げ、清い流れで濯いでくれた少年に帰依し生きている。
そんな生き方しか知らないのだ。
エメクは、彼に彼自身の生き方を見つけてもらいたいと思っていた。
信仰のために自分と他人を殺し続けてきた彼だが、元来はきっと優しい男なのだ。
町が襲われる前日も、雪山で吹雪から逃れたときも、そして墓場で相対したときも
彼は非情にはなりきれていなかった。

それに、ここの所は最初に比べてずいぶんと人間らしくなってきたようだった。
エンダの他愛のないいたずらに笑みを浮かべることもあるし、
出会った頃は何を考えているのか分からなかった黒い瞳も
今は悲しく揺れているのがはっきりと見て取れる。
それは彼が心を開いたためか、少年が彼を理解したためか。

さて、主人は反省した犬を褒めてやらねばならない。
神は罪を償った信者を赦してやらねばならない。

「そこまでしなくてもいいよ、メロダーク。
 君がせっかく好きな事なんだから、僕のためにそれを止めなくてもいいんだ。
 ただ、その……もう少し普通のものを作ってくれれば、
 僕もエンダも君の料理を食べてあげることができる。分かるよね?」
「ああ。分かる」
「今日は駄目だったけど、また今度から少しずつ練習していけばいい。
僕も手伝うから、一緒に頑張ろう」
「……、……ありがとう」

メロダークは、一瞬言葉に詰まったようだったが
やがて低く感謝の言葉を呟くと、彼の信じる少年の白い手の甲に
そっと自らの額を触れさせた。その姿はまさに神にかしずく敬虔な信徒だった。
「そうですメロダークさん!そんなに気にする事ありませんよ!
 今は上手くできなくても、これから頑張って覚えていけばいいんです。
 努力は必ず実りますから!あなたの夢だって必ず叶うはずですよ!」

アルソンは熱く拳を握りながら、歯が浮くような台詞を相変わらずの真顔で言い放った。

「エンダは?エンダもがんばるぞ!
 今日はどかーんってばこーんってなってたのしかった!またやろうな!」
「いや、どかーんとかばこーんとはならない方がいいんだけど……」

はしゃぎまわるエンダの頬についたままだった煤を、エ.メ.クは苦笑しながら拭ってやった。

「……エメク」

ひざまづいていた身体を起こし、
メ.ロ.ダ.ー.クは先ほどまで己の額が触れていた手を今度は真正面から強く握った。
白磁のように滑らかな両手が、武骨で不器用な両手に包まれる。

「いつか、俺が上手にチョコレートパイを焼くことができたら、お前が一番に食べてくれるか?」
「……うん」

暗黒料理の才能は、その者に天性のものとして与えられたという。
どんな勇者でも、努力でそれを覆すことが可能かどうかは定かでない。
だが、これもまた一夜の夢。可能性の一つに過ぎない。

再び立ち上がり、暗黒料理への挑戦を続けよ。<14>
342R.u.i.n.a. 廃.都.の.物.語 メ.ロ.ダ.ー.ク×エ.メ.ク:2009/04/25(土) 21:59:10 ID:c3xM/gpp0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |               お粗末さまでした。 
 | |                | |           ∧_∧ メロさんは多分信仰と愛の区別がついてないな!
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
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343風と木の名無しさん:2009/04/26(日) 08:15:17 ID:G23bqI5S0
>>335-342
ワロタそして萌えたwww
終盤に入りかけたところで積んでるんだけど続きやるわ
344黒子 緑高『Lacrime』 始:2009/04/26(日) 10:56:12 ID:4RIGHlzwO
黒子のバスケ、緑間×高尾。
高尾の一人称
入学直前、練習後の設定
緑間が偽物です、すみません。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
345黒子 緑高 『Lacrime』1/7:2009/04/26(日) 10:58:38 ID:4RIGHlzwO
風が、吹いてる。もう桜もぽつぽつ咲きだして、少しはあったかくなってきたけど、
こうやって日が落ちるとやっぱまだ寒いや。
練習も終わったしとっとと帰りたいけど、それがダメなんだよなぁ。だって、

「…っ、ぐすっ、ううっ…」
涙が止まんねーんだもん、オレ。

チームメイトになったばかりの「キセキの世代」緑間真太郎。
噂は聞いてたし、試合だって何回も何回も見た。だから凄さは知ってたつもりなのに…
一緒に練習してて、もうどうしようもないくらいわかっちまった。
アイツには追いつけない、絶対かなわないって。

「く、やし、ひっ、く、うぅ…」
アイツは何も悪くない。こんな風にかっこ悪く嫉妬してるオレが悪い。
でも、くやしい。天才に努力なんてされたら、凡人のオレ達なんかに追いつけるわけねーじゃん。

誰もいない校舎裏。木々がざわざわとうるさくて、オレの泣き声も隠してくれる。
…頭ではわかってる。こんなこと考えてもしょうがねーって。
自主トレでもしてる方がよっぽどいいって。
なのに。

「うえっ、ふっ、ひ」
泣きやめねぇ。
…ばかだなぁ、オレ。早く泣き止んでたらよかったのに。
よりによって緑間に、こんなオレを見せずにすんだのに。
346黒子 緑高 『Lacrime』2/7:2009/04/26(日) 11:00:03 ID:4RIGHlzwO
ざわめきがうるさいってことは、回りの音も聞き取りにくくなるってコトで。
オレがアイツの足音に気付くよりも先に、
アイツはオレを見つけてた。

「探したのだよ、高尾」
いきなり掛けられた声に、全身がこわばる。
なんで、どうして、ここにいるんだよ!

「…みどりま」
うわ、ひっでぇ声。ぬれた頬を見られたくなくて、ごしごしとぬぐったけど…
ちくしょう、やっぱまだ止まらねーのな。

「忘れ物だ」
そんなオレにかまわず、緑間はなんか光るものを投げてきた。

「うわ」
あわててキャッチする。固く尖った、感触。

「自転車の鍵を忘れるとはな。キャプテンに頼まれて、渡しにきたのだよ」
校内中探し回ったがな、とため息をつかれる。

「…さんきゅ」
なんかもう情けなくなって、こみあげてくる嗚咽をなんとか噛み締めて礼を言う。
なあ、もういいだろ、用は済んだんだ。…早くどっか行ってくれよ!
冷たい鍵を握りしめてそう願ってたのに、コイツはどうして。

「…高尾」
なんでそんな悲しい声で、オレを呼ぶの?
なんでそんな傷ついた目で、オレを見るの?
347黒子 緑高 『Lacrime』3/7:2009/04/26(日) 11:03:14 ID:4RIGHlzwO
「んだよ…見んなよ、頼む、からあっ…!」
ああ、もう、耐えられねぇ。
「ぐすっ、ううっ…!」
必死に顔を隠すけど、緑間の視線が痛いぐらいに刺さってくる。

「高尾」
…そんな声で呼ばないで。もっともっと、泣きたくなる。

「っ、うっ、うああっ、ひっ」
もう止まらなくなって、ひたすらしゃくり上げてたら。
がさがさっ。がさっ。
いつのまにか緑間の気配が、オレのすぐ隣に。

「高尾」
四度目にオレの名前を呼ぶ声には、なぜか熱がこもっていて。
つい顔を上げてしまった。
そして視界に映るのは、すごく不思議な目の色をしたいつもと違う緑間の顔。
それがどんどん近づいてきて。
思わず目をつぶったオレの目尻に、ほのかにあたたかなものが触れてきた。

え。ちょ、なにこれ。
とまどうオレをよそに、それは二、三度頬や目尻に触れてから、
もう片方にも優しく触れてくる。

「泣くな」
ってささやいてくる、いつもより低い緑間の声が
せつなく、けれど熱くオレの耳をふるわせる。
テーピングでごわついた指に、そっと前髪がかき上げられた。
そのまま頭を押さえられて、もう動けない。
348黒子 緑高 『Lacrime』4/7:2009/04/26(日) 11:06:10 ID:4RIGHlzwO
あたたかなものがそっと離れてくのと同時に、恐る恐る目を開けてみたら。
ちろりと唇をなめる緑間がいた。

「…しょっぱいな」
なんてつぶやいて、熱に浮かされた目でオレを見つめてくる。
こいつ、今、オレの涙を、く、唇で…!
ぼっと顔が熱くなった。頭ん中ぐちゃぐちゃで、何も言葉が出てこない。

「口直しさせろ」
そう言ってまた、近づいてくる緑間の顔。

…ああ、まつ毛長いなぁ、女の子みてぇ。

そんな事をぼんやり思いながら、オレは微かに湿った唇を受け止めるしかなかった。

さっきよりも、熱い。…なんだよ、オレ、おかしくなったのかな。
男で、チームメイトで、だれよりも嫉妬したヤツとのキスが。
こんなにもしっくりくるなんて。
振り払うなんて思いつきもしないで、いつのまにかオレは緑間とのキスに没頭してた。
じっとしてた唇が動いて、オレのをやさしくやさしくついばんでくる。
最後に上唇に触れて離れてった時、
「…ぁっ」
思わず声が出ちまった。
こんな近くじゃ、どんなにざわめきがうるさくたって、オレの声を消しちゃくれない。
緑間は一瞬目を見開いて。

「…煽るな!」
ぞくりとくる声で吐き捨てて、
荒っぽくオレの唇にむしゃぶりついてきた。
349黒子 緑高 『Lacrime』5/7:2009/04/26(日) 11:09:08 ID:4RIGHlzwO
「…!っ!んんっ!」
やばい。さっきとは全然ちがう。
いつのまにか顎をとらえられて。
唇よりもっと熱いのが、オレの口をつついてこじ開けようとしてきた。
抗いきれなくてそっとひらけば、ぬるりとした緑間の舌がなだれ込んでくる。

「んっ、ふぁっ!」
歯茎をなぞられ、上顎をつうっと舐められ。
ぞくぞくするものが首筋から背骨へと走りぬけてく。
「あっ、あぁっ、ん」
くちゅ、と舌も絡め取られて、もうオレはされるがまま。
ふたたび走る甘い痺れに背筋をのけぞらせれば、
いつのまにか伸ばされた腕に、がしっと受け止められた。

「っあ、んーっ!」
ヤになるくらい高い、女みたいなオレの声。
いつも冷静な緑間の、熱くてエロい息づかい。
2つがまざりあって、耳までぐちゃぐちゃにもてあそばれてるみたい。

…あ、なんか、ムカつく。こんな風にされるがままって、オレらしくないっしょ!
そうヤケんなって、自分の上にある頭をぐいっと引き寄せて、思いっきり舌入れてやった!

「んっ!?」
あ、動揺してやがる。
さっきまでやられてたみたいに歯茎をなぞって、舌を絡めて。
「っ…!あっ…!」
緑間の声が漏れてきた。…やべ、結構イイかも、これ。
350黒子 緑高『Lacrime』6/7:2009/04/26(日) 11:12:15 ID:4RIGHlzwO
そんな感じで調子のってたら。
ぐいいっ、てムリヤリひきはがされて、オレと緑間のあいだに一筋の糸が伝う。
はあはあ息をしながら、それを軽くぬぐって。

「なんで抵抗しないのだ、高尾。…気持ち悪いと思わないのか?」
なんて、口では強気に聞いてくるけど。
さっきまでの熱の名残漂う緑間の瞳からは、不安や怯えもちらりのぞいていて。
思わず息を飲んだ。いつも自信ありげで、全く揺らがないこいつが、
そんな瞳をするなんてさ。

「自分でやっといて、そんなことゆわないでよー!
…はぁ。ま、よくわかんないけど別にヤじゃなかったぜ!」
なんて、わざと明るく答えながら。
心の中にわだかまってた、くやしさとかそんなものが少しずつ消えてくのが、わかった。

「…そうか。それならいいのだよ」
あー。明らかにホッとしたよ!
ついニヤニヤ笑って緑間を見てたら。
「何がおかしい?」
つい、と眼鏡を直してこっちをにらんでくる。
351黒子 緑高 『Lacrime』7/7:2009/04/26(日) 11:15:07 ID:4RIGHlzwO
…いつも通りの緑間に戻ってく。
それ、なんだか、すっげーイヤだ。

だから。

「べつにぃ?…なぁ、それより」
もっかいしてよ。
誘うように、吐息にのせてささやく。

落ち着きかけてた緑間の瞳に、また熱が宿りだした。

「…止まれなくなるかもしれないのだよ、高尾」
ぎゅうっとオレの体を抱きしめて、そうささやき返してくるけど。

「いーよ。だから、なぁ」
はやくして。とささやいた言葉は、熱くてぬるりとした感触に溶かされていった。

夜はますます深まって、木々のざわめきも高まって、
オレたちを包み隠してくれる。
何処かからこみあげてくる甘い感情に、名前をつけることはまだできないけれど。

…その日はきっと、すぐ。
352黒子 緑高 『Lacrime』終:2009/04/26(日) 11:20:19 ID:4RIGHlzwO
高尾の泣き顔と、緑間が初めて高尾にデレるシーンを書こうと思いました

…緑間が暴走してしまいました(´・ω・`)
タイトルの意味は「涙」です
乱文失礼。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
353風と木の名無しさん:2009/04/26(日) 12:40:07 ID:e51v/rcA0
>>352 ごちでしたぁッ!
いやー自分、どこまでも高緑派かと思ってたけど
そんなことはなかったんだぜ!

このジャンル、一棒一穴主義の牙城を次々と崩してゆく
おそろしいジャンルだ……
354風と木の名無しさん:2009/04/26(日) 13:05:17 ID:v8uT1gxy0
>>352
GJ!
高尾が泣きじゃくるのが新鮮で良かったよ
この調子で秀徳関連カプが賑わうといいねえ
355アウトテイクス 00/07:2009/04/26(日) 16:37:14 ID:LfKz15+20
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  オリジナル、エロなし。
                     |  生のモデル氏イメージ拝借。
                   |  エピ等大方捏造です。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  思い当たったファンの方ごめんなさい。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
356風と木の名無しさん:2009/04/26(日) 16:38:11 ID:a4bfTq2x0
>>352
貴重な緑高ありがとうございます!
もともとは高緑プラトニックだったとは思えないな…
357アウトテイクス 01/07:2009/04/26(日) 16:39:18 ID:LfKz15+20
アポイントメントの時間どおりあらわれた彼は、
ランウェイさながらの優雅さで――
百聞は…をまさに実感させるルックスだった。
美しい。
ただただ美しい。エレガント。
彼にとっては今まで無数に浴びせられたひどく退屈な賛辞だろうが、
それ以外に言葉が見つからない。
小さめの頭、整った顔立ち、長い手脚にすらりとした姿勢、完璧な歩き方。
基本的にファッションモデルがひとにぎりの特別で選ばれた人たちとはいえ、
自分たちとおなじ生身の人間かと思うくらいだ。

インタビューに用意したこの部屋に入るとすぐ、
彼は待ち構えていたわれわれ3人
――カメラマンのアーティ、コーディネーターのポリー、そしてインタビュアーのわたし――
の顔をそれぞれまっすぐに見交わし微笑んだ。
撮影用ではない(エディトリアルでの彼は時に妖艶だ)その顔は、
初対面のせいかややぎこちなさも垣間見えるが、
あたたかみのあるものだった。
それは事前資料として見た何冊もの(スノッブな)ファッション雑誌、
シーズン・カタログ、ショー・ビデオのなかに
少しだけ混じっていた楽屋やパーティでの表情を彷彿させた。

わたしは彼がひと目で好きになった(たぶん他のふたりも)。
ちょっと意外だったのは、彼がたったひとりで現れたことだ。
マネージャーの同伴なし。
モデル界のプリンスは従者を必要としなかった…
わたしは頭に浮かんだ書き出しをすぐさまボツにした。

わたしたちはそれぞれ挨拶と握手を交わし、仕事に入った。
トップモデル・マーティス・Lとの独占インタビューとフォトセッション。
358アウトテイクス 02/07:2009/04/26(日) 16:40:42 ID:LfKz15+20
「ひさびさに母国語で話せてうれしい」
それが社交辞令でなく心からの言葉だというのは、
ひねたジャーナリストのわたしにもすぐ伝わった。

マーティスは17歳でモデル・エージェンシーにスカウトされ、
翌年には有名メゾンのキャンペーンモデルに抜擢された。
以来パリ、ローマ、ミラノ、マドリッド、ベルリン、そしてここNY――
世界中を飛び回る彼は、
英語はもちろん仏語、スペイン語の日常会話にも不自由しない。
現在の住まいはマンハッタンのホテル。

「でもあまり住んでるって気がしない。
いつも旅行者みたいだ。
まあ実際そうなんだけど」
本当は犬を飼いたいんだけど、と彼は肩をすくめた。

――犬。わたしはすぐ、ごく最近のエディトリアルを思い出した。
馬上の彼と、短毛種のすらりとした黒い猟犬。
「あの犬もよかったけど、ちょっと気が荒くて…」
と彼は苦笑した。
噛まれそうになった?
「あやうくね。主人にしかなつかないタイプの犬なんだ」
でも大丈夫だったから、とすぐ付け加える。
「犬は替えがきかなかったし…」
ピンときて、「カメラマンの気に入る犬がほかにいなかったんだ?」
とわたしは訊いた。
「そういうこと」
我が意を得たりと彼は笑った。
359アウトテイクス 03/07:2009/04/26(日) 16:42:32 ID:LfKz15+20
カメラマンって人種は頑固だからな、
と横からの茶々入れは撮影中のアーティ。
「そうそう、撮りたいイメージにこだわりがあるからね。
そのためにぼくらモデルをタキシードのままプールに落としたり、絵の具だらけにしたり、
羽毛を部屋中いっぱいに降らせてみたり……あなたもそう?」

彼に向けられた笑顔を抜かりなくカメラに収めていく。
「いいや、俺はいつだってあるがままさ。無理強いはしない」
アーティもプロだ。
リラックスした彼の表情が紙面満載ともなれば、
北欧の新聞日曜版でも、いつもの倍以上の売れ行きは固い。
なにせマーティスは我が国出身の世界的スターのひとりなのだから。

「たしかジャックだったね、そのときのカメラマン」
とわたしは脇に逸れかけた話を戻した。
ジャックは一般にも名の知られる大御所クラスではないにせよ、
ファッション界では一流どころのひとりだ。
若く、才能があってルックスもいい。
父は英国貴族、母はアラブ人。
エキゾチックな風貌も魅力的――と、どこかのゴシップ記事で読んだ記憶がある。

「…うん、そう。ジャック」
言いながら顔をちょっと俯けたせいか、声が少し小さかった。
彼の軽快さがちょっとトーンダウンしたように思えるのは気のせいだろうか?
「大変なのは犬だけじゃなかった?」
ふふ、と彼は膝に目をやったまま肩を揺すらせて笑った。
不愉快なことでもあったのだろうか
(だったら話題を替えたほうが?)と思ったのだが、
どうやらそうではないらしい。
360アウトテイクス 04/07:2009/04/26(日) 16:43:44 ID:LfKz15+20
マーティスは現在24歳。
モデルとしてその年齢は若いとは言えない、
キャリア的にも中堅というところか。
だが美貌と生活感のなさからか、どこかまだ少年ぽい。

「彼…ジャックは超がつくくらいの完全主義者でね――」
とマーティスはちょっとだけ顔を上げた。
なにか愉快な思い出が彼の頭のなかで再生中なのだろうか、目が輝いている。
「ぼくの乗馬が気に入らないというんだ。
はっきり言って下手クソだって。
これじゃ自分の絵が撮れないとまで言われた。」

これだね?とわたしは件の写真が載った雑誌を開き、テーブルに置いた。
――ぜんぜんそうは見えないが?
「特訓した…いや、させられたのさ彼に」
ジャックが連れて来たイギリスの元オリンピック選手に
一週間つきっきりで基礎から叩きこまれたのだという。
「そうでもしないと別のモデルを呼ぶとまで言われた…
プロとして役立たずと言われるくらい最悪なことはない。
どうでもやるしかなかったよ」

スケジュールの調整が大変だったのでは? なにしろ、きみは売れっ子だし――。
「ちょうど撮影のあとオフの予定だったんだ。
ほんとうは二週間と言われたけれど、さすがにそれは勘弁してもらった。
一週間以上の調整は不可能だった。
それにやりすぎて妙な筋肉の付きかたになっても困るしね」

冗談めかして彼は笑ったが――
その体型を維持しつつ乗馬のようにタフな運動をするというのはちょっと想像しづらい。
なぜなら、彼はほんとうに細すぎて――。
361アウトテイクス 05/07:2009/04/26(日) 16:45:02 ID:LfKz15+20
「モデル自体、結構タフな仕事だよ。見た目以上に」
と彼は肩をすくめたが、にわかには納得できっこない。

男性モデルは筋肉質の男性的タイプと、
ほっそりした中性的タイプとに大別されるらしいが、
マーティスはもちろん後者だ。
モデルとしての寿命も――後者のほうが短い、明らかに。

「…そうだね」
しずかに頷き、マーティスはちょっとだけ視線を落とした。
「でもサッカー選手とおなじようなものさ。
第一線でいられる期間は短い。
僕はこの仕事が気に入ってるし、自分に合ってるとも思う。
だからできるだけ長くベストな状態でいたいと思ってるよ」

だったらなおさら、ジャックの要求は受けがたいようにわたしには思えた。
たとえば、乗馬による怪我の危険性――。
「そうだね。実はそれを理由にエージェントがこの件をキャンセルしたがったんだ。
もしそうなってもぼくにダメージはないと説得もした」
たしかに、たった数ページのエディトリアルのために、
数シーズン継続中のメゾンのキャンペーンをフイにするような割りの合わない危険なんて
誰だって犯したくないにちがいない。

「うーん、そうだね…
自分でも思っていた以上に僕が負けず嫌いだったってことかな。
たとえキャンセルしてもキャリアに響かないとしても、
逃げたってことは自分自身のなかで事実として消せないわけだし。
そんなの、僕は極力抱えたくない。いつだってできるだけ身軽でいたいんだ」

トップにいる者の誇りなのか、それともその矜持こそ彼をトップに立たせたのか。
たぶん両方なのだろうと、わたしは思った。
362アウトテイクス 06/07:2009/04/26(日) 16:46:10 ID:LfKz15+20
そういえば――ふとわたしは思い出した。
モデルはときに、それぞれのチャームポイントを保険にかけることがある。

「保険? 一般的な保険ならいくつか契約しているけど…」
ちょっと的外れな質問だったのだろうか、とまどったように彼は答えた。
「そうだね、どこか身体のパーツに保険をかけるのは考えたことがない」
「おいカート、何を言ってる?」
と再度、アーティの茶々入れ。
「彼の場合、むしろ傷がチャームポイントだってのに」
忘れたのか?と眉を吊り上げてみせる。

「ああ、これのことだね?」
とマーティスは頬骨あたりから数センチ、うっすら残る細い傷痕を指でなぞった。
何気ない手の動きすらエレガントだ。
ちょっと顔を傾けると、伏しがちの目に睫の影が重たげに落ちる。
すかさずカメラのシャッター音が連続する。

完璧な美の調和(それは時に退屈でもある)を崩す、ちょっとした傷。
マーティスと組んだことのあるカメラマンたちの多くは、
むしろその傷を撮ることで彼という存在のユニークさ(一意性)を浮き彫りにした。
初期のヘッドショットは人工的な端正さのなかに傲慢さ、
パンクを彷彿させる暴力性を垣間見せる大胆でシャープなものだったし、
逆にひどく繊細で懐古的なモノクロのエディトリアルでは、
無垢にひそむ官能性を感じさせる。

傷の原因は――訊きかけて「プライベートな話は原則NG」との条件を思い出した。
たしか資料でそのエピソードを見た記憶はない。
彼の様子から特に秘密めいたものは伺えないが
――だったら訊ねてみても面白くないかもしれない。
363アウトテイクス 07/07:2009/04/26(日) 16:47:23 ID:LfKz15+20
再度話を戻すために、わたしはグラビアへと目をやった。
白黒――なにか圧迫感、
混沌の渦のような力を思わせるのは黒の分量のせいだろうか。
粒子の粗い映像に切り取られたのは、
重たげな雲、古びた城、森、荒涼とした丘――。

「イギリス的だよね。
しかもどこか呪術的な――ジャックの作風としてよく言われることだけど」
そう――そして付け加えるならば、時間軸すら定かではないような。
「ジャックの写真は…ドラマティックなものが多いんだ。
それに力強い。モデルもどちらかといえば個性的なタイプを好んで使う。」
それはつまり――マーティスとは異なるタイプということだろうか?
わたしの直球(かつ不躾)な質問に、彼は率直に頷いた。

「ぼくにとってジャックは組んでみたい写真家のひとりだったけど、
実現の可能性は低いとずっと思っていたんだ。
だからオファーがあったときは意外だったし嬉しかった。
本当のところ、
この仕事にぼくをキャスティングしたのは編集者でジャックではなかったんだけど、
ジャックが承諾したのなら、彼自身が選んだのとほとんど同じことだから」
それもマーティスが無理を押した理由のひとつ――わたしはようやく納得できた気がした。

美と才能との幸福なマリアージュ。
わたしの言葉がどんなに陳腐だとしても、
その結果生み出された3枚のシリーズはマーティスを後悔させない出来だったといえるだろう。
「もちろん」
きっぱりと彼はうなづき、かつ軽やかに微笑んだ。
「やり遂げられてよかった。
いまは――とても、満足しているよ」
364アウトテイクス end:2009/04/26(日) 16:48:21 ID:LfKz15+20
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

…ぬるくってすいませんすいません。ありがとうございました!
365風と木の名無しさん:2009/04/26(日) 18:06:44 ID:d+ivTFYaO
>>355
ぐぐぐGJ!超GJ!これすげー好きだ!!
366風と木の名無しさん:2009/04/27(月) 00:11:24 ID:xDS24PqtO
復活!のボス鮫+Dです。
ゆりかごから2年後くらいだと思ってください。
鮫とDの関係捏造注意です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
367風と木の名無しさん:2009/04/27(月) 00:15:36 ID:xDS24PqtO
跳ね馬は、いい奴だ。
あの事件のあと、奴は月に一度は俺のところへ来るようになっていた。
毎回毎回手を変え品を変え、俺を元気づけようとしていることくらいは、いくら俺でもわかっていた。
感謝をしていないわけではなかった。
その証拠に、俺は奴に怒鳴りかかったり、ましてや斬りかかったりなど(とは言っても剣は取り上げられていたが)けしてしなかった。
しかし、感謝するということと、実際にそれを有難いと思うということは、必ずしもイコールで結ばれるものではない。
奴の持って来る極上のワインも、とびきりの美女も、俺を満たすことがないことはわかっていた。
俺が欲しいのは、剣と、あの激しい憤怒だけだった。それがわかっているだけに、奴には申し訳なかった。
何度も もういい、と伝えた。俺に構うな、とも言った。待つしかない俺に割く奴の時間がひたすらもったいないと思った。
だが奴は、何を言われても、いつものように笑うだけだった。
いつだったか、なんでここまでするんだ、と訊いたことがあった。
奴はあのガキみたいな笑顔で、友達だからな、と言った。馬鹿な奴だと思った。
しかし、嬉しかった。もちろん奴には言ってないが。
その俺の感情が、俺の奴に対する警戒心をゆるやかに溶かしていっていた。
だからこの状況は俺のミスだ。
奴は今まさに、俺にバズーカを向けていた。
「いかなる者にも注意を払え」。暗殺者として生きてゆくためには基本中の基本の心構えだ。
それを怠った結果、まんまとこんなへなちょこ野郎に殺される自分が滑稽でならなくて、思わず自嘲の笑みが浮かんだ。
(こんなとこ、あいつに見られたらボコボコにされんだろうなぁ)
跳ね馬が笑うのが見えた。
最後に見るのがこんな奴だなんて笑える冗談だ。
(ボス、)
ぎゅっと目を閉じるとすぐに、爆音と衝撃を感じた。そっと目を開けて見れば、目の前を煙が覆っていた。思ったよりは苦しくなかった。
死というものがこんなに穏やかだとは知らなかった。殺されたのは初めてだから、知らないのが当たり前だが。
368風と木の名無しさん:2009/04/27(月) 00:17:34 ID:xDS24PqtO
この煙が晴れたら地獄が見えるのだろう。
何かの手が顎に触れていた。悪魔なんだろうか、それにしたらやけに甘ったるい触り方なのが気になるが。
煙が徐々に消えてゆく。悪魔だろうが斬り伏せてやる。
神に祈れるような生き方はしちゃいないが、剣を持たせてくれるくらいのサービスは期待してもいいんじゃないかと思った。
(まあ、なくてもなんとかしてやるがなぁ)
煙が晴れてゆく。全身を目の前の何かに意識を集中させ、身構えた。いつでも斬りかかれる準備はできていた。
しかし次の瞬間俺の、脳も含めた全ての器官は動きを停止した。
なぜなら俺の顎を掴んでいたのは、悪魔ではなく、あろうことか俺の愛しい君主様だったからだ。
あまりの驚きに、声が出なかった。何度も口をぱくぱくと動かした末、やっと声を絞り出すことができた。
「ボス、なんでここに、」
もしかしてもう死んじまったのか、と言いかけた震える言葉は、ボスのくちづけによって遮られた。
何度も抱かれたことはあったが、キスは初めてだった。予想外に、優しいくちづけだった。
顔が離れるとすぐにボスは言った。
「下らねえこと言おうとしてんじゃねぇ、ドカスが。」
わけがわからない俺に、畳み掛けるように話すボスは、本当に、いつも通りに理不尽だった。
「いいか、時間がねえ、よく聞け。
てめえは10年バズーカで過去から来た、そうだな?」
「いや、わかんねえ、跳ね馬が、」
「うるせぇ、黙って聞け」
頭を小突かれて、思わず倒れ込んだ先には枕が二つあった。それでやっと自分がベッドの上にいることに気付いた。
「ここに来る前、バズーカに撃たれたんじゃねえのか、てめえは」
「そうだぁ、跳ね馬の野郎が急に撃ってきやがった!」
慌てて起き上がりながら答える。なんでこいつがこんなことを知ってるのかはわからなかったが。
「そいつは10年バズーカとかいうふざけた武器だ。
撃たれた人間を5分間、10年後と入れ換える。」
ぐらりと世界が揺れた。心臓がどくどくとうるさい。
369風と木の名無しさん:2009/04/27(月) 00:19:41 ID:xDS24PqtO
「え、て、ことは、ここは10年後、なのかぁ…?」
おそるおそる切り出せば、ボスが、僅かにだが、笑った(ような気がした。)
「そうだ、俺は生きてる。
だからてめえはカスなりにちゃんとしてろ。」
わかったな、と付け加えて、ボスは俺の肩まで伸びた髪を撫でた。今まで見たことないような笑顔だった。(あくまでも僅かに、ではあったが。)
それを見ていたら、俺の目からはなぜか涙が溢れていた。
「ボス、」
自分が何を言おうとしたのかすらわからないが、気付けば俺はボスの名を呼んでいた。
ボスの手が俺の頬に伸びて、溢れてくる涙を拭いた。
「待ってるからなぁ」
精一杯の笑顔でそう言った。
「ドカスが。」
ボスのそう言う声が聞こえたのと同時に、ポン、という軽い音と共に目の前が白くなった。
次に煙が晴れたときには、俺は跳ね馬の前にいた。
370風と木の名無しさん:2009/04/27(月) 00:21:49 ID:xDS24PqtO
奴はいつも通り笑いながら、俺に言った。
「おかえり。」
おう、と答えると、ますますガキみたいにはにかんだ。
奴に礼を言うべきだろうかと一瞬悩んだが、やめることにした。
その代わりに、
「おい跳ね馬ぁ、決闘しねぇかぁ」
と声をかけた。
すると奴はまた例の笑顔で、言った。
「おっいいねぇ、負けた方がメシおごりな!」
せっかくだから中庭でやろうぜ、と言いながら、奴は俺より早く、外へ飛び出していった。





「なあそういえば、お前らっていつからデキてたんだ?」
「はぁ?」
「いやさ、さっきお前と入れ替わった未来のお前、服はだけてるわ涙目だわキスマークついてるわでめちゃくちゃエロかったからさ」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

なんか尻切れとんぼな終わり方ですみませんorz
お目汚し失礼しました!
371風と木の名無しさん:2009/04/27(月) 01:00:35 ID:MpAAUO8d0
>>352
原作が何かすら見当つかないんですけど、
えらく萌えさせて頂きました!
372風と木の名無しさん:2009/04/27(月) 01:07:47 ID:AUXqxh2H0
>>371
復/活じゃないかと。

しかしこれはいいボス鮫ですね
大変萌えさせて頂きました
373風と木の名無しさん:2009/04/27(月) 08:02:56 ID:5Xa6HmrMO
>>371
復活!と同じくジャンプで連載している漫画ですよ>黒子
374風と木の名無しさん:2009/04/27(月) 12:32:41 ID:FRpq1UyRO
>>355
ほんのり萌えた!
できればモデルにした人物の名を知りたい!
375374:2009/04/27(月) 12:54:09 ID:FRpq1UyRO
自己解決しました。スマソ…
376黒子 笠松×黄瀬 『Amazing grace』始:2009/04/27(月) 14:19:20 ID:5Xa6HmrMO
黒子のバスケで笠松×黄瀬
海常カップル再登場記念SSです
付き合って数年経った設定。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
377黒子 笠黄 『Amazing grace』1/1:2009/04/27(月) 14:21:37 ID:5Xa6HmrMO
白い雲がふわりと浮いた真っ青な空の下、すこやかに伸びた芝生が広がっている。
やわらかく輝く日ざしに照らされた木々が描くレース模様の影を眺めながら、
黄瀬と笠松はふたりきりで座っていた。
ねえ、と傍らのぬくもりにしなだれかかりつつ、黄瀬がささやきかける。

「幸男さん…オレ、あなたなしじゃきっと生きてけないっス」
「いきなり何言ってんだ、バーカ。…ああ、おれもおまえなしじゃ、きっと無理だ」
苦笑しつつ、そっと黄瀬の肩に手を回して笠松がそう応えれば。

「〜っ!」
「うわ、泣くな!ったく…しょーがねぇな」
引き寄せて抱き締めれば、黄瀬の頭は笠松の肩のくぼみにぴったりはまって。
ああ、こうなるほど長くおれ達はいっしょにいるのかと、笠松は幸せなため息をついた。

「そう思っててくれるなんて…。嬉しいっス、めっちゃ嬉しいっス」
ぽろぽろと水晶のようにすきとおった涙をこぼして、黄瀬がうっとりささやく。
喉元をくすぐる、甘いその声に理性をぐらつかされつつ、笠松はなんとか平静をよそおって応える。

「どれだけいっしょにいると思ってんだ。おれは、絶対涼太を離さねえ。…離れちまいそうになってもな」
広がる芝生よりも柔らかな、陽光に透けてきらめく黄瀬の髪を梳きつつ、笠松は穏やかに語りかけた。

「オレも、離れてなんかあげないっスよ。…こんな気持ちいい場所、誰にもあげない」
猫のように笠松の胸に擦り寄って丸まり、ほほえんでつぶやく黄瀬と、
やさしく彼を抱き締め、そのさらさらした髪に頬を寄せ、こみあげる愛しさに目を閉じる笠松。

輝き映える初夏の日ざしに包まれたふたりの姿は。
数多の画家が筆をふるおうとも、再現すること叶わない。
このひとときだけの、妙なる調和。
378黒子 笠黄 『Amazing grace』終:2009/04/27(月) 14:24:34 ID:5Xa6HmrMO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

黄瀬と幸男さんは互いにとってのAmazing grace
19Q冒頭は私にとってのAmazing grace
幸男さんの足首がたまりません…!
379クイズDMC◇月下美人 0/4:2009/04/28(火) 01:09:45 ID:EgNIZPXnO
半生。




クイズのDMCのつもりですが、左右は読んだかたの感性にお任せする感じでぬるめの仕上がり。
中の人の1ストアルバムの某曲にインスパイアされたようなされないような。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
380クイズDMC◇月下美人 1/4:2009/04/28(火) 01:19:48 ID:EgNIZPXnO
記憶と共に彼からは時さえも抜け落ちてしまったに違いない。
その証拠に、こうして目を瞑る神山の姿は、8年前のそれとなにひとつ変わらない。白い部屋のベッドの上で安らかに眠る神山を見下ろして、立ち尽くす本間はひとり思う。
否、少しやせただろうか。だとしたら、それは間違いなく自分のせいだ。眠る彼の横に腰を下ろす。音のない部屋でベッドがきしむ音だけがやけに響いた。
「月みたいなのはお前のほうだ…神山」
月明かりに照らされて、どこまでも美しい神山の白い肌。その頬をなぞりながら誰にともなくつぶやくと、本間はたまらない優越感に酔った。
8年前、彼は太陽と同じだった。
まぶしく輝き、人々を魅了してやまない。誰もが彼を欲したのに、誰も彼を所有することはかなわなかった。本間もそんな太陽に照らされていた、大勢の中の一人に過ぎなかった。
ある日神山が何の気はなしに本間に言った。本間が月に似ていると。それは本間が色白だからとか、黒い服が多くて夜が似合うからだとか、そんな理由だったのだろうが、本間は妙に納得したのを覚えている。
月は自分で輝いているのではない。太陽に照らされているだけだ。
それでも、構わないと思っていた。自分は彼に照らされた月なのだから。
幼馴染という特別であること。その事実だけは永遠に変わらない。それが、人よりほんの少しだけ早く彼とめぐり合ったという、ただそれだけの奇跡だとしても。そんな小さな優越感が、本間をつなぎとめる唯一の鎖だった。
せめて、太陽と月でいられるように。彼の特別でいられるように。彼が自分を見つめ、そして笑ってくれる。その瞬間さえあれば。それでいいと思っていたのに。
あの事件の後、初めて神山と面会が許された時、呆然と本間を見つめる神山と目が合った瞬間の、あの一瞬、地面がなくなってしまったのかと思った、あの時の薄暗い衝動を、一体なんと表せばよいのだろうか。
唯一ほかの人より勝っていたもの、彼と過ごした年月の長さ、それすらも失ってしまったら。こうするしか方法はなかった。
鎖はちぎれていた。
381クイズDMC◇月下美人 2/4:2009/04/28(火) 01:24:26 ID:EgNIZPXnO
あまりはっきりとは覚えていない。それくらい衝動的なものだった。
身寄りのない彼を引き取ると称してこの何もない部屋に閉じ込め、乱暴に自分のものにした。見たことも聞いたこともなかった彼の悲鳴と嗚咽と涙とが、本間の理性を吹き飛ばした。もっと早くこうすれば良かったと後悔した。
自分は太陽ではない。地球だ。
そして、彼は地球のまわりを回る衛星、つまりは月なのだ。神山は、本間の月になったのだ。
「おやすみ」
そう言うと本間は神山に薄く口付ける。彼の首筋に残る所有の印を眺めてにやりとほくそえむと、本間は自宅に向かうべく部屋を後にした。それは、ほんの小さな油断だった。
本間が白い部屋に鍵をかけ忘れたことに気づいたのは車のドアを閉めた時だ。まだ部屋を後にしていくばくも経っていない。だから、大丈夫だ。そう自分に言い聞かせて逸る心を押さえ込み、足早に白い部屋へと向かった。
ともすると、めまいと吐き気で倒れてしまいそうだった。
「神山!」
乱暴にドアを開けると、白い壁に白いベッド。だがそこに、あるはずのものが、ない。
心臓がはねた。
「神山!どこだ!」
もはや自分が何をしているのかわからなかった。ベッドを蹴り上げシーツをめちゃくちゃにした。壊せるものなどほとんどない部屋だが、それでもめちゃくちゃにしてやりたかった。
人の気配がして本間が振り返るのは、それから程なくしてのことだ。
ドアと壁の隙間で小さく震える神山がそこにいた。
382クイズDMC◇月下美人 3/4:2009/04/28(火) 01:29:13 ID:EgNIZPXnO
「どこに行ってた」
一瞬、自分の声だとわからなかった。自分でも、自分からこんな声が発せられるとは知らなかった。地の底から這い出るようなこの声は、悪魔の声だと言われても納得しただろう。
神山は答えない。
「どこに行っていたか聞いている!」
強引にその肩をつかんでベッドに引きずり落とす。彼のおびえがダイレクトに伝わってきて余計に苛立つ。なぜ彼が被害者面をするのだ。勝手に部屋を出たというのに!
引き裂くように服を脱がすとボタンがいくつも引き千切れて床に転がる音がした。ひっ、としゃくりのような悲鳴を神山があげたのを契機に、かじりつくように口内を犯した。
「ん・・・っふっあ・・・」
こんな乱暴な口づけをするのは、それこそ初めてここに連れてきた時以来だった。あの時と同じように、神山は泣いているのだろう。彼の顔の側につけていた腕に熱いしずくがかかるのを感じて、本間は神山の唇を解放し、その表情を眺めた。だが。
彼は泣いてなどいなかった。それどころか突然開放したこちらを不思議そうな目でうかがっている。
違う。この目は知っている。
彼のこの表情を、自分は知っている。
ずっと昔に見た。これは。
彼が記憶を失ってから初めて見る顔。
8年前、まだ彼が俺を知っていたころの顔。
彼が俺を・・・憐れんでいる時の顔。
ふたたび腕にしずくがかかる。

泣いているのは、自分の方だった。

383クイズDMC◇月下美人 4/4:2009/04/28(火) 01:34:50 ID:EgNIZPXnO
神山の腕が伸びてきて、本間の髪を優しく撫ぜた。本間はそのまま神山の胸に顔を埋めて嗚咽を洩らす。
「ここに・・・います・・・どこにも、行かない。あなたの・・・そばにいます」
かすれた声で神山がささやく。
知っている。そんな事は。わかっていた。行くところなど、ない。彼には。他に。
すべて自分が奪ったのだから。
道を閉ざし、踏みにじって。羽をもいで無理やり鳥かごに押し込めた。
なのに。
ダメだ。
サワレない。
力ずくで。
手に入れようとしても。
手に入れたつもりでも。
君の心は。
ココにはいない。
その時、少しだけ本間が顔を上げて神山の表情を見ることが出来たなら。その不安全て、払拭することができただろう。
だが本間はその顔を決して上げることはせず。神山の本心も知ることはないまま。ただ彼の手のぬくもりに心地よさを感じながら。
―神山、お前は月に似ている。
1千年もの古より、地球は月に憧れたまま―
384クイズDMC◇月下美人 終:2009/04/28(火) 01:39:08 ID:EgNIZPXnO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!



規制引っかかってたので携帯からになってしまった。
なんか失敗してたらスマソ
385風と木の名無しさん:2009/04/28(火) 02:30:58 ID:CunDPThpO
>>384
MCがDを慰めるのに禿げ萌えたw
今日も良い夢が見られそうだ。ありがとう
386風と木の名無しさん:2009/04/28(火) 09:25:22 ID:CobmgvR1O
支援とかいる感じ?
続き待ってるよー
387スマイル◇H×B:2009/04/29(水) 00:32:28 ID:GgrSATjW0
半生。

初投稿で短めでおまけに需要もないかもですが。
自分の中のもやもやを吐き出しただけの話。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
388スマイル◇H×B:2009/04/29(水) 00:35:36 ID:GgrSATjW0
 魅かれたのは狂気だったのか…。
「ビト」
 ベッドの上から誠司が呼ぶ。
「おいで」
 ペットを呼ぶように手招きする。楽しくて仕方がないというような優しい声。
「捕まえた」
 おずおずと近寄ると手首をギュッと掴まれた。この手は先ほどまでナイフを握っていた手だ。微笑んで…寧ろ、高らかに笑いながら人を傷つける。
 顔を覆うほど長い髪の間に今は笑っている瞳。
 否、今もあの時と同じ目をしている。少しも変わらない瞳。
「林さん…」
「ん?」
 抗うことなど最初から出来なかった。呼び出されればそれに従うしかなかった。気紛れに行われるただの遊び。誠司が飽きれば終わる。皆、すぐに飽きられた。誠司はそうだ。誠司は何にも心を動かされたりしない。
「ビトの肌の色は綺麗だね」
 口付けの合間に頬を撫でながら誠司が言う。父の顔など憶えていないが、外人の血が入っていると一目でわかる肌の色。
フィリピンなど行ったこともない。どんな国なのかなんて知らない。なのに、この肌の色が、母が酔う度に繰り返した父親譲りの顔が鏡を見る度に自分は異質だと知らしめる。その異質が、何故か誠司の心を惹いた。
 けれど判っている。ただの興味でしかない。誠司には人の心が欠けている。そういう意味ではまた誠司も異質なモノだった。
389スマイル◇H×B:2009/04/29(水) 00:37:27 ID:GgrSATjW0
「肌の色は千差万別なのに、血はなんでみんな赤いんだろうね?」
 左胸に口付けられて背中に電流が走る。
「林さん…」
「林さんって色気ないなぁ。誠司って呼んでいいよ」
 まるで歌うように誠司は言う。自分はフルフルと首を横に振ることしか出来ない。そして繰り返す、林さん、と。
「ビトって良い名前だよね。俺もビトって名乗ろうかなぁ。マフィアのボスみたいじゃない?」
 まさしく自分の名前の由来はそうなのだが、多分誠司に深い意味などないのだろう。応えなど求めていない。誠司は何も求めない。
 まだ起ち上がっていない性器を握りこまれて悲鳴を飲み込んだ。この男が怖い。心の底から恐怖を感じている。この優しい手は長くは続かない。わかっている。わかって、いる。
「ビト」
 それなのに、魅かれた。何度か気紛れに抱かれるうちに、その声に、その腕に魅かれてしまった。
母親に抱かれた記憶など残っていない。母親が連れ込む男たちは安普請のアパートの廊下に佇む自分にあの、「声」を何度となく聴かせた。
だから自分は女の子は抱いたことがない。それは嬌声であったのかも知れなかったけれど、幼い自分にとっては悲鳴のようにただ耳を劈いたから。
 あの男たちも誠司と同じように甘い声で母の名前など囁いたのだろうか。
「ビト、何を考えてるの?」
 顔を覗きこまれて心が震えた。こんなふうに瞳を覗かれたことなど自分の人生には一度としてなかったのだから。
「は、やしさんは?」
 この日初めての言葉に、誠司がニコリと笑う。背筋が凍るほどに完璧な微笑み。
「ビトは可愛いなぁ、とか?」
 警鐘が鳴ってる。自分の奥で鳴ってる。無視出来ないほど、それはどんどん高らかな音になる。
「林さん」
 背中に手を廻して縋りついた。鐘の音など聞こえないぐらい、自分の悲鳴と嬌声でこの部屋を満たしてしまえばいい。外の取り巻き連中は耳を欹てているだろうか。
 髪を優しく撫でていた誠司の手が強引に自分の脚を割り開く。
「ビトはー、俺のこと好き?」
「林さん…」
 涙が出そうだ。
「答えて」
 命令されて肯いた。
「俺も愛してるよ、ビト」
390スマイル◇H×B:2009/04/29(水) 00:38:42 ID:GgrSATjW0
「肌の色は千差万別なのに、血はなんでみんな赤いんだろうね?」
 左胸に口付けられて背中に電流が走る。
「林さん…」
「林さんって色気ないなぁ。誠司って呼んでいいよ」
 まるで歌うように誠司は言う。自分はフルフルと首を横に振ることしか出来ない。そして繰り返す、林さん、と。
「ビトって良い名前だよね。俺もビトって名乗ろうかなぁ。マフィアのボスみたいじゃない?」
 まさしく自分の名前の由来はそうなのだが、多分誠司に深い意味などないのだろう。応えなど求めていない。誠司は何も求めない。
 まだ起ち上がっていない性器を握りこまれて悲鳴を飲み込んだ。この男が怖い。心の底から恐怖を感じている。この優しい手は長くは続かない。わかっている。わかって、いる。
「ビト」
 それなのに、魅かれた。何度か気紛れに抱かれるうちに、その声に、その腕に魅かれてしまった。
母親に抱かれた記憶など残っていない。母親が連れ込む男たちは安普請のアパートの廊下に佇む自分にあの、「声」を何度となく聴かせた。
だから自分は女の子は抱いたことがない。それは嬌声であったのかも知れなかったけれど、幼い自分にとっては悲鳴のようにただ耳を劈いたから。
 あの男たちも誠司と同じように甘い声で母の名前など囁いたのだろうか。
「ビト、何を考えてるの?」
 顔を覗きこまれて心が震えた。こんなふうに瞳を覗かれたことなど自分の人生には一度としてなかったのだから。
「は、やしさんは?」
 この日初めての言葉に、誠司がニコリと笑う。背筋が凍るほどに完璧な微笑み。
「ビトは可愛いなぁ、とか?」
 警鐘が鳴ってる。自分の奥で鳴ってる。無視出来ないほど、それはどんどん高らかな音になる。
「林さん」
 背中に手を廻して縋りついた。鐘の音など聞こえないぐらい、自分の悲鳴と嬌声でこの部屋を満たしてしまえばいい。外の取り巻き連中は耳を欹てているだろうか。
 髪を優しく撫でていた誠司の手が強引に自分の脚を割り開く。
「ビトはー、俺のこと好き?」
「林さん…」
 涙が出そうだ。
「答えて」
 命令されて肯いた。
「俺も愛してるよ、ビト」
391D×音効:2009/04/29(水) 00:39:02 ID:D6FUsZN7O
携帯から失礼。クイズショウ、DMC前提のD×音効です。
なんか音効がえらいあっさりDに従ってません…?という疑問から生まれた妄想の産物。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )クオリティニハキタイシナイデネ・・・。
392D×音効 1/2:2009/04/29(水) 00:40:21 ID:D6FUsZN7O
「竹内さん、お話があります」

そう言って突然呼び出されたのは、番組が生放送になる数日前のことだった…と思う。
今となっては記憶が曖昧で、あの数時間の前後のことは思い出せなくなってしまっている。

――悪夢のような…けれど、幸せな夢と勘違いしてしまうような、あの時間…。


「…意味分かんないんだけど。要するにそれって、『放送中は何があっても俺に従え』って言ってるんでしょ?」

あまりに唐突な話に不満を露にすると、彼は口端を上げるだけの薄い笑みを浮かべた。

「そういう事ですね。まぁ、竹内さんに迷惑はかけませんから」

しれっと言ってのける彼に、怒りも呆れも通り越してもう何が何だか分からない気分になっていた。

「…そこまで大それた頼みごとしてくるんだったらさ、もちろんタダじゃないよね?…あんたも地位のある人なんだから、それくらい分かってるでしょ」
「もちろん。こちらから差し上げた物に満足すれば、頼みを聞いてもらうってことで構いません」

何が来たって適当に文句付けて断るつもりだった。…けど。

「…っちょ、何!俺そんな趣味ないんだけど!!」
本当に男かと疑ってしまうほど白くしなやかな手が、俺の胸元に優美な仕草で伸びてきたかと思うと…次の瞬間にはもう、服の中に滑り込んできていた。
「静かにしていないと、人が来ますよ…?勘違いされたくないでしょう…?」
そう言って俺の目を覗き込んでくる瞳を見た途端、もう文句を言う気力も抵抗する力も奪われていた。

あとは、もう、されるがまま。
まさか男に抱かれる日が来ようとは、当然思っていなかった。

気付いたらコトは終わっていて、彼はというと
「お返事は、行動で示して頂きますよ」
と自信たっぷりの一言を残して、さっさと去っていったのだった。
393スマイル◇H×B:2009/04/29(水) 00:40:38 ID:GgrSATjW0
 その言葉と共に充分に慣らされていない其処に圧倒的な質量を持ったそれが侵入してくる。
「ひっ…」
 殺しきれなかった悲鳴が口から空気と共に漏れた。
「アハハハハハハハ」
 心底楽しそうな誠司の笑い声。こんな時におよそ似つかわしくないほどに無邪気な。
「痛かった、ビト?ゴメンね」
 揺さぶりを続けながら誠司が言う。
「ひぁ、ぁっ、ぁ…」
 息が出来ないほどの苦しさに思わず誠司の背中に爪を立てる。
「唇噛んじゃダメじゃんビト。血が出てるよ」
 自分の背中に出来た傷なんか意に介してないように誠司が言う。
「ふっぅ…」
 唇を塞がれて口腔内を舐められた。
「血の味がするね、ビト」
 嬉しそうに誠司が言う。
 この人が怖い。この人が怖いのに。
 警鐘は鳴り続ける。
 この人はいつか自分を殺すかも知れない。笑いながら、愛してるよ、と嘘をつくのと同じように簡単に。
「あ、あぁ…」
 絶頂が近い。誠司の背中に傷は残るだろうか。
「ビト」
 髪を掴まれる。
 顔を埋めて耳元で囁く。
「ビト。俺の可愛いビト」
 耳朶を歯形がつくほど強く噛まれた。その瞬間、自分の中に熱は放たれ、俺は嬌声と共に自分の欲望も撒き散らした。
394スマイル◇H×B:2009/04/29(水) 00:41:04 ID:GgrSATjW0
「ビト」
 重い身体を奮い立たせて服を着る自分を見つめる誠司はまだベッドの上。無防備な姿だ。
「もう行っちゃうの?ビト…。ここで寝ていけばいいのに」
「そ、んなことは…」
 言いよどむ自分に誠司が笑う。
「ビト」
 扉に手をかけたところでもう一度呼び止められた。
 立ち止まる。けれど振り返れない。
「おやすみ。愛してるよ」
 声はやはり氷のように冷たかった。
395D×音効 2/2:2009/04/29(水) 00:41:22 ID:D6FUsZN7O
…そして俺は今、彼の言う通りに動いている。
あの表情からして恐らく、俺が言いなりになることは最初から分かっていたんだろう。

…彼も彼だが俺も俺だ。

男に抱かれて従わされるなんて、どうかしてる。
…ただ、あの感触が、触れてきた白い肌が、忘れられない―。

そんな目で見ているからか、すぐに分かってしまった。

「彼の行う全ては、神山の為だ。」

体を繋げながらも口吻だけは与えられなかったのは、誰かに誓いを立てているからだろうというのはうっすら感じた。
その誰かがどうも、神山であるらしいと気付いた時には、もう自分の気持ちが分からなくなっていた。
なぜこんなにも、心が淀むのだろうか―。

「ねぇ、言うこと聞いてんだからご褒美下さいって言ったらどうします?」
冗談めかして彼に言ってみたが、うっすらと笑みを浮かべてはぐらかされるだけだった。
もちろん、期待なんかはしていなかった、けれど。
褒美なんか与えなくても俺は従うって、彼は知っているんだ。

――あぁ、もう。

彼は今日も、モニタ越しにただ一人を見つめながら、満足そうに笑みを浮かべている。
396スマイル◇H×B:2009/04/29(水) 00:42:25 ID:GgrSATjW0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

何かてんぱって時間かかり過ぎてしまった。
駄作にお付き合いありがとうございました。
397スマイル◇H×B:2009/04/29(水) 00:43:29 ID:GgrSATjW0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

何かてんぱって時間かかり過ぎてしまった。
駄作にお付き合いありがとうございました。
398風と木の名無しさん:2009/04/29(水) 00:43:39 ID:D6FUsZN7O
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )

駄文で中途半端ってコレorz
単に浮かんだものを書きなぐっただけなのでもうムチャクチャです、スイマセン…。
399D×音効の者です:2009/04/29(水) 00:46:16 ID:D6FUsZN7O
うわぁもそもそしてた所為で割り込んでしまっていた…!
スイマセン吊ってきますorz
400風と木の名無しさん:2009/04/29(水) 00:54:34 ID:sxJtz9zN0
401風と木の名無しさん:2009/04/29(水) 01:47:36 ID:FsVaSDFQO
>>399
もう一度初めから再投下お願いします!
402風と木の名無しさん:2009/04/29(水) 01:50:23 ID:FsVaSDFQO
あ、ごめん
安価間違えました
403風と木の名無しさん:2009/04/29(水) 02:10:03 ID:kfFCsMLOO
>>387
自分も何だかもやもやしてたので、投下してくれてありがとう
萌えたよー
404風と木の名無しさん:2009/04/29(水) 10:40:47 ID:ezVG+YzWO
まあ今日は厄日だったということで
405日比谷その後:2009/04/30(木) 19:46:22 ID:9AoC009w0


                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  証券×受理は鉄板CPやねー
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  タノシンデモラエルカナ…
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・;)(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「'74青/春」日比谷動画収録後の2人です
全盛期知らずの後追いなもんで、もしかしたら事実誤認があるかもですが
そこはなにとぞヨロシクです
長い割にはぬるい内容ですが・・・

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
406風と木の名無しさん:2009/04/30(木) 20:03:46 ID:uIHqxJBO0
支援?
407日比谷その後:2009/04/30(木) 20:18:39 ID:9AoC009w0
ごめ、ちがw
家族がいきなり入ってきた…orz
続けます
408日比谷その後1:2009/04/30(木) 20:19:40 ID:9AoC009w0
「のーみーすーぎーたー」
そう言ってソファに寝ころぶと、細身の猫のように体を丸めてJは目をつぶった。
今や自分の時間などないも等しい2人にとって、今日の収録は久々にゆっくりと
会える逢瀬の時だった。
逢瀬? 
口づけも交わしていない、まして男との時間を逢瀬と名付けてしまう自分にSは鼻白んだが、
待ち合わせ前の衣装選びにかかった時間と、
間断なく続く胸の高鳴りが、その言葉が正しいことを証明していた。
そんな気持ちを気取られぬよう、Sは煙草を手に取りながらわざとそっけなくつぶやいた。
「しかしあんなんで番組になんのかねえ」
「ねえ、演出もなーんもなかったねえ。あれじゃただのデートだ」
(で、デート?!)自分の心の内を言い当てられたような気がしてSはうろたえた。
「今日のDさー、あのヒゲの。あの人いつもあんなんなのよ。
この前も船の上で撮影してたら、いきなり『じゃ次バッと脱いでみよう』とか
言われてさー」とJはいかにも楽しそうにくっくっくと思い出し笑いをした。
「ちょ、なんだよソレ! お前素直に脱いだの?」
「ん、全裸。すっぽんぽんで海にじゃばーん」
「ドキュメンタリーだろ? 別に裸になる必要なんて全くねえじゃねえ!」
「でも仕事やからね」至ってクールに返事を返すJにSはイライラした。
(こいつはいつもそうだ)
仕事となるとどんな無理難題でも文句一つ言わず空っぽな顔で当たり前のようにこなし、
しかもそのできばえは常に周囲の予想をはるかに上回ると来てる。
Sは自分を表現するために現場現場で小さなもめ事を起こす自分がたまらなく子供っぽく思え、
また、そんな自分を否定されたような気もしてJに対して小さな怒りを覚えた。
409日比谷その後2:2009/04/30(木) 20:22:14 ID:9AoC009w0
ソファのかたわらに置かれた真新しいギターを、Jは愛おしそうに抱いた。
「もったいないなあ。証券もまた歌えばいいのに」
女よりも白く細いその指がいくつかのコードを探し当て、ギターを甘く鳴かせる。
小さな声でJが♪This boyを歌い始める。
ジョンの手による切ない三角関係を歌ったそのレコードを、Jは少年の頃から何度も聞いていたのだろう。
サビの部分でジョンの声がかすれる部分までも、忠実に再現して歌っていた。
「テンションが上がるのはストーンズやけど、胸にグッと来るのはやっぱジョンやなあ」
観客やTVカメラの為ではなく、いかにも楽しげに、ただ純粋に自分の為だけに歌うJを見るうちに
Sは自分の小さな怒りがほどけていくのを感じた。
(こっちが胸にグッと来るっつーんだよ・・・)
ふと気づくと曲は終わり、Jが自然な様子でSの肩に頭をもたせかけてきた。
「証券もさ、またそのうち歌えばいいよ。歌ってる時の証券、かっこいいもん」
艶やかな髪に頬をくすぐられながら、Sはなんと返事をしていいか分からず言葉を失った。
Jもそれ以上何も言わずにじっとしていた。
部屋には、ぶーんという冷蔵庫の低いモーター音だけが響いている。
(こいつ・・・何考えてんだよ・・・)
そろそろとJの方をうかがうと、静かに目を閉じた美しい顔が目に入った。
Jの男にしては小さな肩は、Sがちょっと腕をのばせばすぐに抱き寄せられる場所にあった。
Sの鼓動が早まる。
410日比谷その3:2009/04/30(木) 20:23:00 ID:9AoC009w0
(どうする? どうすりゃいいんだよ)
と、その瞬間、ばちっと音がするようにJの目が開き、上目遣いにSを見た。
(やばい!)Sは自分の欲望を悟られたのではないかと、心の底から狼狽した。
「腹減った」
「あるあるあるある! なんかある、食いもん、多分、あるから!」
Sは一刻も早くその場を逃れたい一心で、がばっとソファから立ち上がった。
(くそ!)
もつれるような足取りでキッチンに向かい、冷蔵庫を開けたままの体勢でSは奥歯を噛みしめた。
(俺は中学生かよ! 天下の証券だぜ?)
「ねえ〜〜カップラーメンと牛乳ちょーだーい。そんくらいあるやろ?」
背後から、のんきな声とTVから流れる深夜番組の馬鹿騒ぎの音が聞こえてくる。
Sは深い深いため息をついて、湯を沸かし始めた。
411日比谷その4:2009/04/30(木) 20:23:43 ID:9AoC009w0
「熱いから気をつけろよ。ほれ、箸も」
「ん。なんや証券の方がお兄ちゃんみたいやねえ」
湯気の立つカップラーメンの器を前に嬉しげに割り箸を割るJを、なんとも言えない複雑な気分で眺めながら、
Sは自分の為に缶ビールを取りに行った。
「…はぁぁ」知らずにため息がもれる。
「…俺は自分から惚れんのは昔っから苦手なんだよなあ…」
少年の頃から追いかけられることに慣れすぎたSは、こんな時の対処法を知らなかった。
「なにー? なんか言ったあ?」
「なんでもねえよっ!」
怒りまじりの声で返事をしてから、Sは半分ヤケクソ気味にビールを喉へ流し込んだ。
412日比谷その5:2009/04/30(木) 20:24:25 ID:9AoC009w0
「さーて、食うもん食ったし、そろそろ帰るわ。明日は合宿のミーティングやから
鷹雪さんが朝早く迎えに来るんや」
カップラーメンのスープの最後の一滴まで飲み尽くし一息つくと、
Jはすぐに帰り支度を始めた。
Sは2人きりの時間が終わりを告げようとしていることに、寂しさと安堵両方の気持ちを味わった。
「そか。気をつけて帰れよ。うちの前の道、タクシー通らねえからな、
明治通りまで出るんだぞ。中野方面、どっち側が分かるよな?」
ロンドンで買ったというごついブーツに苦労して足をすべりこませているJに、
Sはまるで母のように言いつのった。
Jは靴を履きながらニヤリと笑ってSを上目遣いに見た。
「そんなに心配なら証券が送ってくれればいいじゃない」
「ば、俺だってそんなに暇じゃねえよっ」「冗談冗談」
からかわれていることに気づいたSはなんだか泣きたいような
笑いたいような気持ちになった。
413日比谷その6:2009/04/30(木) 20:24:57 ID:9AoC009w0
「証券」ブーツのジッパーを上げながら、Jが小さな声で呼ぶ。
「う?」
華奢な体が、Sのシャツからはだけた裸の胸元にするっと滑り込んでくる。
「証券だけじゃないよ。俺だって惚れてるよ。知らんかった?」
すぐに体を離し、棒立ちのまま固まったSを尻目にJはドアを開けた。
「んじゃまたね。あんまり飲み過ぎひんようにねー」
パタンとドアが閉まる。
「くっそーーーー! くそう!くそう!」
部屋に駆け戻り、ソファのクッションを引きはがして胸にかき抱きながら、
Sは板張りの部屋の中をゴロゴロと転がり続けた。
言葉とは裏腹に目尻を下げたじゃれつく子犬のような目で、
ゴロゴロといつまでも転がり続けていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

もう〜証券早く押し倒しちまえよーとイライラしながら書きますたw
お目汚し失礼しましたー
414風と木の名無しさん:2009/05/02(土) 16:54:09 ID:HG0vQOZf0
某ナゾトキゲームの英国紳士×助手

歳の差スレの姐さん方に捧ぐ
37歳大学教授×13歳少年です

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
415英国紳士×助手 1/4:2009/05/02(土) 17:15:43 ID:4fHuqWcTO
調子悪いので携帯からorz


自分の気持ちは知っている。
君の気持ちも、知っている。

それでも、私は…私にできる事は…


むむむと腕組みをしたまま、テーブルの上を睨み付けている彼の姿を、
開いた本の影からそっと見つめる。
窓から差す夕日が、栗色の髪を、丸い瞳を、柔らかい頬を、可愛い小鼻を、小さな指先を、
そしてその先にある、ぷっくりとした唇を、茜色に染め上げる。
彼の視線の先にあるのは、三角や四角に切り取られた大小の木片がいくつか。
タングラムと呼ばれる、古典的なパズルである。

今日は土曜日ですよ!と、彼が嬉しそうに研究室に入ってきたのは、確か正午を少しすぎた頃だった。
カフェテラスで昼食のサンドイッチを食べながらパズルのことを話し
(この時、「何でもすぐに謎と結びつけるの、先生の悪い癖ですよ!」と怒られてしまったが)、
挑戦したいと強請む彼の為に、コレクションの中からパズルを引っ張り出したのが3時間程前の話。
最初は軽々と解いていた様だが、徐々に悩む時間が増えてゆき、
難題の数問を残して、今は完全に手が止まってしまっている。

ヒントも求めず、うんうん唸ったり、腕を組んで頬を膨らましたり、ちょこちょことピースを組み替えながら
考え続けているところを見ると、どうやらこの謎は気に入っていただけた様だ。
さっきは怒られてしまったが、こうやって出される謎に嬉しそうに飛びついてくるのは、君の方ではないのかね?
思わず口元に笑みが浮かぶ。
416英国紳士×助手 2/4:2009/05/02(土) 17:17:23 ID:4fHuqWcTO
何かを思いついたのだろう、ふいに伸びた彼の右手が、パズルピースに影を落とす。
これはいけない。私は部屋の灯りを付ける為、窓前のデスクから立ち上がった。

「…あ!ありがとうございます、先生」
パッと明るくなった部屋に気づき、少し慌てた様に彼が言う。
「おっと、邪魔をしてしまったかな?」
私の言葉に、彼はいいえと頭を振り、笑みを浮かべた。
「随分悩んでいる様だけど、その謎は解けそうかい?」
そう言いながら、彼の隣に腰を下ろす。
「うーん…ねぇ先生、この謎にも、ちゃんと答えはあるんですよね?」
「もちろん、謎は解けるから謎なのだよ」
彼の問いに答えると、ですよね、と小さく呟いて、彼は再び視線を落とした。

小さなうなじがちらりと覗く。
触れたい衝動をポーカーフェイスで押さえ込み、先ほどまで手にしていた本を再び開く。
ひょこひょこと動く頭、それに伴ってちらちらと見え隠れする、睫毛、首筋、耳たぶ…
本当に、私は一体どうしてしまったと言うのだ。
もう本の内容など頭に入ってこない。
この子と出会い交流を深めるにつれ、胸を支配する様になった感情に、私は未だに慣れないでいた。
いや、慣れてしまっては困るのだ。この子と出合った、あの日と同じに戻さねば…
417英国紳士×助手 3/4:2009/05/02(土) 17:20:54 ID:4fHuqWcTO
「あー、もう外は真っ暗ですね」
いつの間にそんなに時間が経っていたのだろう、彼の言葉につられて窓に目を向けると、
暗く塗りこめられた窓ガラスに、彼と私の姿が映っていた。
「ふふふ、ちょっと夢中になりすぎた様だね。そろそろ帰ろう。お家の方も心配しておられるよ」
「はい、先生」
そう素直に返すと、彼はテーブルの上を片付け始めた。
何なら持って帰って遊んでも良い、と言ったのだが、
「いいんです。明日またここへ来て、再挑戦しますから!」と、ケースを元あった場所へ戻した。
明日も来るのかと、うっかり顔が綻ぶ。

研究室を後にし、二人で車に乗り込むと、彼の家へ向かった。
今日の事や今週起こった小事件などを話しながら、のんびりと車を走らせる。
楽しそうに、時々軽口を叩きながら、ニコニコと話していた彼だったが、
家が近づくにつれ、段々口数が減っていく。
そしてついに、車は家の前へと到着した。

「さぁ、着いたよ」
ブレーキを引いて彼の方を見ると、彼は浮かない顔でこちらを見ていた。
どうしたんだい、と彼の名を呼ぶと、「はい」と気の無い返事が返ってくる。
もう一度名を呼び、彼の頭をなでる。
「あの、先生…」と、おずおずと彼は口を開いた。
「先生、今日は楽しかったです。ありがとうございました」
うんと頷き、先を促す。
「それでその…今日が楽しすぎて、先生とお別れするのが寂しくて…」
「私も、今日は楽しかったし、君とお別れするのは寂しい。でも、明日も来るのだろう?」
「そうですけど…そうですけど、でも、寂しいものは寂しいんです!」
彼はぷうと口を膨らませて、少し怒ったような素振りでそう言った。
ほんの一時離れる事も寂しがってくれる彼に、抱きしめたいという衝動を押さえ込み、頭をなでる。
418英国紳士×助手 4/4:2009/05/02(土) 17:24:03 ID:4fHuqWcTO
と、突然彼が抱きついてきた。鼓動が跳ねる。
「どうしたんだい、驚くじゃないか」
冷静を装い、静かに問いかける。
彼は首を小さく横に振り、腕に力を込める。
そして、えへへと笑いながらゆっくり体を離した。

「それじゃあ、先生、おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ。良い夢を」
家の前に立つ彼に小さく手を振り、静かに車を発進させた。


自分の気持ちは知っている。
君の気持ちも、知っている。

それでも、私にできる事は、
ただ、全てに気づかない振りをして、君の成長を見守るだけ。
腕の中で小さく小さく呟かれた「好きです」という言葉も、風の音で聞こえなかった事にする。

胸の中を、何か苦いものが流れた。
419風と木の名無しさん:2009/05/02(土) 17:26:08 ID:4fHuqWcTO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

英国紳士分と生意気少年分が足りなかった…
文章書くのが久々すぎて、読みづらかったらごめんなさい
420風と木の名無しさん:2009/05/03(日) 15:20:22 ID:ysVb+9UVQ


一角獣の唄鍵盤。
若い頃の二人です。話し方とかはイメージ。夜の部活が忙しかったと言うエピからの妄想です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
421ツンデレ?1/4:2009/05/03(日) 15:23:36 ID:ysVb+9UVQ
素直じゃないねえ、そう呟いて俺は阿倍をみた。
「うるさい」
プイと顔を背けて怒ってるのをみても、可愛いとしか思えねえよ。
「夕ミ才なんか嫌いだ」
どっかのわがままなお坊ちゃんかよ、お前
「お坊ちゃんとか言うな!」
声に出てたか。
何を怒ってるんだよ
「……自分の胸に聞いてみろ!」
え?別に問題無いだろ。キスとかしたわけじゃないし
「俺、狙ってた娘いたのに!」
その場で抱き寄せられて、嬉しかった癖に
「…………うるさい!」
阿倍の手からクッションが飛んできた。ボスと音をたてて俺の腹に命中…以外と痛い。
「夕ミ才なんか嫌いだ!」
本心じゃ無い癖に
「ムカツク」
俺は好きだけど?
「なっ?!」
だーかーらー、好きだって
「いきなりっ……」
あの場にいた娘達よりお前の方が可愛いだろ?
「バッ……」
俺間違ってるか?
「……ゥ……ルサイ」
真っ赤になって。
「男に……可愛い……って」
あれ?どうした、何か言わないの?
「褒め言葉じゃないだろっ!」
うお、もう一個クッション飛んできた。顔に命中……うずくまってやれ。
422ツンデレ?2/4:2009/05/03(日) 15:28:27 ID:ysVb+9UVQ
振り返る気配。
「…………夕ミ才!大丈夫か」
……痛い
「顔に当たった?」
……うん
「うわ、マジごめん……大丈夫?」
阿倍がこっちにきて俺の横にしゃがんだな……よしよし。
「本当にごめん、夕ミ才」
キスしてくれたら治るかも
「……は?」
顔痛いの、キスしてくれたら治るかもって言ってるの
「……お前」
ん?
「調子に乗るな!」
いてっ……頭叩いたらまた痛くなるだろ
「……夕ミ才、顔上げて」
顔を上げた俺のおでこに阿倍の唇が触れる
「……今回だけだからな」
耳まで赤い……。いてっ!
「うるさい!」
また、叩いたな人の事。
「もう、帰る!」
あらま……本気で帰っちゃったよ。からかいすぎたかな。ドアの開く音。
「夕ミ才の馬鹿野郎!」
顔真っ赤なままだな、阿倍
「うるさい!もう、本当に帰る!」
まてって、ごめん
「……」
せっかく一緒にいれるんだから帰るな
「……うん」
阿倍、こっちこいよ
「うん」
423ツンデレ?3/4:2009/05/03(日) 15:32:13 ID:ysVb+9UVQ
抱きしめて、キスする。
「夕ミ才……」
首筋に舌を這わせると阿倍が震えた。
「っ……ふ……夕ミ……才」
ボタンを外そうとすると阿倍が止めた。
「まだ……まって」
なんで
「………………ベッド…………行こう」
目を伏せて、少し震えて恥ずかしそうな阿倍に……鼻血出そう。
「夕ミ才?どうした?」
いやいや、何でもない
「…………エロ」
お前が言うな!ってえ!
「早くしろよ!恥ずかしいだろ!」
はいはい
……まったく可愛いんだか、生意気なんだか。
「夕ミ才、したくないのか?」
したいです
「だったら早く」
はい
立ち上がって阿倍の後を追う。ベッドに腰掛けて笑う阿倍。品の良いお坊ちゃんって感じだよな。
「夕ミ才?」
阿倍、可愛いなお前
「……だから褒め言葉じゃないって」
さっきより怒らないんだな。
ごめん、嫌?
「…………別に……」
……嬉しいくせに。言わないけど。
「ジッとみるな…………恥ずかし……っ」
押し倒しちゃえ。
424ツンデレ?4/4:2009/05/03(日) 15:34:43 ID:ysVb+9UVQ
「夕ーミー才ー」
はい
「身体痛い」
はい
「なんで加減が出来ない訳?」
すみません
「まったく」
……怒ってる顔も可愛い。
「反省してるのか?」
……
「夕ミ才!」
えっ?
「お前、反省してないだろ!」
いてっ!叩くなよ
「話を聞いてない夕ミ才が悪いだろ」
……はい、ごもっともです
「まったく……マッサージしてよ」
足と手が怠いとぼやいた阿倍は、ベッドに転がった。甘えた声で名前を呼ばれる。ちくしょー、誘ってる様にしか聞こえないじゃないか。
「夕ミ才、まだ?」
はい、今いきます
「はぁ……気持ちいい」
……そう言う事言うなよ。してる最中絶対言わないくせに……。
「何?文句でもあるの」
……いいえ、無いです
「そ、んじゃ腰もよろしく」
やっぱり、ワガママお坊ちゃんだ……コイツ。
425風と木の名無しさん:2009/05/03(日) 15:37:36 ID:ysVb+9UVQ
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

今は唄にデレまくりな鍵盤が、若い頃はツンデレだといいなあと言う、妄想入ってます。お坊ちゃんと言わせてますが、鍵盤は我が儘な末っ子イメージです。
やっちまった感はあるが後悔していない。
426風と木の名無しさん:2009/05/04(月) 03:27:20 ID:2AN0dHvH0
ひっそりとショウギ界、生物注意です
例のあの人とモ/テ、小ネタです、すみません

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース
427眼鏡+眼鏡1/4:2009/05/04(月) 03:28:53 ID:2AN0dHvH0
砂糖は困っている。
目の前で無防備に寝息を立てている八部の眼鏡が、今にもずり落ちそうだ。

そもそも、と、やや混乱した頭を整理するために砂糖は考える。何で彼が今日将.棋会館の宿泊室にいるのだろうか。
ビジネスホテルめいた簡素な部屋の壁際で、落ち着かない気持ちのまま自分の眼鏡を何度か押し上げスーツの裾を引っ張る。
昨日タイトル戦の最終局をこの将.棋会館で戦ったばかりの砂糖である。後輩の棋.士相手に納得のいかない手を指し、結果としてタイトルを失い数年ぶりに無冠となった。
随分落ち込みもしたが一夜明ければ新棋.士会発足と副会長就任の会見が待っている。気持ちの切り替えも棋.士の仕事のひとつだった。
しかしさすがに疲れの拭えない表情で、それでも定刻より随分前に現れた彼を気づかって、職員が会見まで休んでくださいと宿泊室の鍵をくれたのだった。
で、と思考は再び始まりに戻る。なぜその部屋に八部が寝ているのか?
ちょっと昔なら邑山が対局中に空き部屋で休んでいることはよくあったし、タイトル戦などで八部が対局中にこっそり昼寝しているのは砂糖も知っている。
しかし、年度末な上に会見がいくつかあるバタバタした日の会館に、対局もない八部が忍び込んで寝ているなどということがあるだろうか?
砂糖はそのやや神経質そうな細面の顔を困惑に曇らせ、腕組みをして唸った。
いずれにしてもこのまま起こさないように出て行けば話は早い。多分隣の部屋も空いているだろう。
しかし問題は、眼鏡だ。
428眼鏡+眼鏡2/4:2009/05/04(月) 03:29:28 ID:2AN0dHvH0
薄手のセーターにジーンズというざっくりしたいでたちで身体を丸めている八部の鼻筋に、かろうじて引っかかっている華奢なフレームの眼鏡。寝返りでもうったら簡単に折れてしまいそうだ。
眼鏡を凝視しているうちに砂糖は何となく八部から目が離せなくなっていた。小学生時代からもう30年近い付き合いになるひとつ年下の手強いライバル、その見慣れた研究者めいた顔、癖のない髪に目立ちはじめた白髪とかすかに眉間に走るしわ。
そう、つまりは自分も年をとったというわけだ。砂糖は頬に手を当てて苦笑する。
その瞬間八部の首がかくんと枕から落ちて度の強い眼鏡が更にずれた。あ、と呟きながら反射的に身を乗り出す。
左手をベッドについて支点にし小柄な身体をそっと覆いかぶせると、右手で眼鏡を持ち上げ正しい位置に戻してやる。むしろ外したほうがいいんじゃないか、と迷った指が眼鏡のフレームをためらいがちに撫でる。
こんなにも近くにいられるのは、将.棋盤が二人を遮っていないからだ。
その事実が逆説的に砂糖の胸を刺した。
八部と将.棋が指したい。昨日別の相手とタイトル戦を指したばかりだというのに感じるこの圧倒的な渇きは何だろう。将.棋を指す以外でこの巨大な感情を処理する術を砂糖は知らない。
指がすうっと眼鏡の弦から八部の頬へと滑る。
今年は何局彼と指せるだろうか。
気がつけば数センチの距離に八部の顔があった。顎に指を当てるとかすかに剃り残した無精髭の手触り。一連の動きに引きずられるように砂糖の唇が八部の唇に寄せられていく。
あれ?
砂糖の頭の中に警報が鳴り響く。何だこれは、俺は一体何をやっているんだ・・・。
429眼鏡+眼鏡3/4:2009/05/04(月) 03:31:20 ID:2AN0dHvH0
しかし理性の囁きを無視するように身体の動きは止まらなかった。砂糖の形のいい鼻が八部の鼻筋に触れ、続いてその唇が軽く開いた八部の唇にぎこちなく重なる。
二人の眼鏡のフレームがぶつかってカチリと小さな音を立て、なぜか唇が触れた瞬間よりもその硬質な響きが砂糖を逆上させる。
朦朧とした様子で八部がゆっくりと眼を開く。大きな瞳の焦点が徐々に合ってくる。耳にガンガンと響く心臓の鼓動。言い訳を。何か言い訳を。
水の中でもがくように八部から身体を離す。そのままベッドの足元側へ後ずさりするように身体を滑らせた。ベッドの端に腰掛けてしばらくそのまま固まっている。
うつむいた姿勢のまま横目でうかがうと、八部は上半身を起こしてぼうっとした表情のまま砂糖を眺めていた。砂糖は、あああああとちょっと泣きそうな声を上げて天然パーマの髪の毛をぐしゃぐしゃに掻き回した。
40に手が届こうという年になって、いきなり子どもの頃からの友人にキスするだなんて、何なんだ。キスという単語が心をかすめただけで鼓動がバクンと大きくなった。違うんですと言いたかったが、何が違うのか自分でも分からない。
腕時計の秒針の音だけがくっきりと気まずい空気に刻印されていく。
「砂糖さん」
軽くかすれた寝起きの声。砂糖はうなだれて髪の毛に指を突っ込んだまま動かない。
「砂糖さんの・・・変態」
言うなり意外な力で引き寄せられ、砂糖はうろたえながらベッドに倒れ込んだ。今度は八部のほうが砂糖の頭を抱え込むようにして口づける。
ためらうそぶりもなく唇を割った八部の舌先が柔らかく歯列をたどり、ゆっくりと探るようにその奥へと侵入してくる。舌を絡めとられ、軽く歯を立てられ、そのままかき回すようなキス。
眼鏡のフレームがまたカツンと音を立てて、砂糖の脳が白く溶けた。
430眼鏡+眼鏡4/4:2009/05/04(月) 03:31:49 ID:2AN0dHvH0
八部はたっぷりと時間を使ってから息をつき、放心状態の砂糖のネクタイの結び目にその長い指を当てた。
「ここからどうするんですか?」
からかうような微笑みに砂糖は耳まで赤くなった。
「い、や、俺は、分かりません」
砂糖の低く柔らかな声がうわずる。今度は軽く触れるだけのキス。
「砂糖さんからしてきたのに」
「あれは、つまり、違います、そういう意味じゃなくてですね」
焦れば焦るほどですます調になるのは砂糖の癖だ。八部はその反応を楽しむように濃い眉を顰めてみせた。
「待ったするんですか?」
砂糖はその言葉にすがりついた。
「あ、ま、待った!」
「ダメ、です」
八部の身体がのしかかってきて、砂糖はきつく眼を閉じた。
脳内に大音量で秒読みの声が響く。10秒、20秒・・・。
しばらくして聞こえてきたのは規則正しい呼吸音。
八部は再び、深い眠りに沈み込んでいた。
安堵と奇妙な落胆で砂糖は全身の空気を押し出すような長い長いため息をついた。
そろそろ会見が始まる、早く行かなくては。
そう思いながらぐったりと重い八部の身体を抱えたまま動けないでいる。
これは夢か幻覚か、何かそういう感じのものだ。だって彼がここにいるはずがないんだから---。
自分に言い聞かせる痺れた頭の片隅で、眼鏡のフレームの触れ合った密やかな音だけがいつまでも繰り返し鳴り響いていた。
431風と木の名無しさん:2009/05/04(月) 03:38:07 ID:qywmHGd4O
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
メガネメガネでした
すみません、最後連投規制で携帯からになり手間取りました
432風と木の名無しさん:2009/05/04(月) 09:42:37 ID:3DTf15jr0
神様キタ-----!

眼鏡可愛いよ眼鏡。
眼鏡その1は起きたらまったく覚えてなくて、その2はまたドギマギするんだろうなー
433風と木の名無しさん:2009/05/04(月) 15:14:14 ID:tjWhf0Wj0
>>420
GJ!
再 結 成のPVで「あーーん」してたの見た以来のニラニラです
434ボカロ、KAITO×がくぽ2:2009/05/04(月) 20:17:44 ID:INi4IKh80
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | ずっと放置しててすみません。41巻の続きです
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|ちょっとかわったカイガクです
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
435ボカロ、KAITO×がくぽ2-1:2009/05/04(月) 20:18:20 ID:INi4IKh80
「あ…かい…と…、もう辛いのじゃ…、もう…」
「駄目、許さない」
ぐ、と引き抜いて、再度奥まで入れると、がくぽは高い声で鳴いた。そして次には何度目かの絶頂に達する。
爆ぜる息が愛しい。
だが許さない。自分のことを主と呼んだがくぽを、まだ許してはいけない。
中で出さない、が条件だ。
背中にかけるとティッシュで何度もぬぐった。
背中は精液でべたべただった。
(後で風呂に入らせる必要があるな…)
一体何回達したことだろう。がくぽにいたっては、達した回数はかなり多い。
苦しいのも仕方ないだろう。
「休みを入れようか、まだ昼だし、マスターが帰ってくるまでには遅い。ゆっくり休みなよ」
「う、うむ。あの…」
「何?」
「我は、感じているということは、主様のことが好きではないのだろうか?」
ふむ、そうきたか。
こんなに無意識に主主と呼んでおいて、嫌いとは思えない。
むしろ好きなんじゃないだろうか。
だがそのことを口に出すのが悔しくて、KAITOは言った。
「しーらない」
「ええっ、そんな…」
436ボカロ、KAITO×がくぽ2-2:2009/05/04(月) 20:19:00 ID:INi4IKh80
「ほら、次いくよー」
小さく舌打ちしたKAITOは、がくぽを押し倒す。
まだ休みきってないがくぽはとめようとしたが、KAITOが許さなかった。

「あっ、ああっ!かいと、もう…」
とろとろにとけた中に、KAITOの性器が抜き挿しされる。
辛そうな顔で訴えてくるのが面白くて。
それでも感じているのが、楽しくて。
 そう、今君の相手をしているのはこの僕だよ?この体に教えてあげる。
嬉しいでしょう、山崎さんより気持ち良いでしょう?
「主…様ぁ…」
KAITOは、その言葉に反応して、がくぽの髪を掴んで引き寄せた。
「君は誰としてるの?ねえがくぽさん、僕と山崎さんどう違うの?」
「痛!」
がくぽは、思わず息をのんだ。
KAITOの目には狂気と苛立ちをはらんでいたからだ。
あんなに優しかったKAITOが、今では怖い。
「主様、助けて…」
「え?」
泣きそうになりながら、山崎を呼ぶ。
怖いよ、怖い。
この狂った宴を終わらせてほしい。
KAITOは慌ててがくぽの髪を離した。
「ああ、怖がらせちゃった?ごめんね。がくぽさん。でも僕が相手だってこと、忘れないでね」
落ち着かせるように背中を撫でてやる。
「時々、かいとは怖くなる。何故じゃ?」
「…」
KAITOは少し考えるそぶりをすると、優しい目で、いつもの笑顔で。
結論を出した。
437ボカロ、KAITO×がくぽ2-3:2009/05/04(月) 20:20:23 ID:INi4IKh80
「独占欲、かな」
「独占欲?何故じゃ、何故我にそんなものを…」
心底わからないといった様子で、がくぽはKAITOに問う。
「わからない?がくぽさんが可愛いからだよ」
「かわ…いい…?今までかいとはそんなこと一言も」
そ、と、その唇に人差し指を置いて、言葉をさえぎった。
「今日してみてやっとわかった。ほんと、山崎さんをひたすら慕ってて、可愛いったらありゃしない」
ぞくり。
その言葉にはあまりにも邪気が多すぎる。
いつものKAITOじゃない。そう思って、目を伏せる。
KAITOの目を見ているとざわざわと背筋が泡だって、不安になる。
「動くよ」
「!う、ああっ!――!」

「ひどい…」
「ごめんごめんがくぽさん。はい、水」
行為が終わってしばらくたつと、KAITOは元のKAITOに戻っていた。
いつもの明るく、頼りがいのあるKAITOに。
ベッドで突っ伏して辛そうに呼吸を整えようとするがくぽに、KAITOが水を持ってくる。
水を受け取って一気飲みすると、ようやく落ち着いて、のろのろと服を着だした。
確かに見たところ跡はつけられてない。
「あ、ちょっとがくぽさんどいてー」
「何じゃ?」
「証拠、隠滅」
にっこりKAITOは笑うと、濡れぶきんで、乾きかけてるベッドについたがくぽの精液を拭い取った。
全部は拭えなかったが、それでも気づくものはいまい。
こもった空気に窓を全開にして、この雰囲気を追い出した。
「はい、がくぽさんにもアイス」
「あ、すまぬ」
ミルクアイスキャンディをがくぽに手渡す。袋の開け方がわからないらしく、苦戦するがくぽに、KAITOが教えてあげて、やっと開けられた。
当たり前だがアイスが冷たいので、恐る恐る舐めているところが、なんだかとても可愛い。
「前も食べたことあるでしょ?がくぽさん」
438ボカロ、KAITO×がくぽ2-4:2009/05/04(月) 20:21:17 ID:INi4IKh80
「う、うむ、だが毎度一口目が冷たくて怖いのじゃ」
武士のなりでアイスを怖いなんて、どういう性格なんだろう。
案外怖がりなんだろうか?最中の様子からしても、自分の豹変振りに、相当怖がっている様子だったし。
実際、怖いのだろう。
だが、自分が一番驚いている。がくぽさん一人相手にこんな感情がむき出しになることが。
「?」
やっとひとなめしたがくぽが、無表情になり考え込み始めたKAITOを不思議そうに見やる。
あわててKAITOは、なんでもないよ、と手を振って、ばくばくとアイスを食べ始めた。

風呂に入って汚れを落とし、さて気持ち新たになったところで、さっきまで怒って何もいえなかった分を取り戻すかのように、がくぽを甘やかした。
怖かったKAITOはもういない。
KAITOはがくぽを膝にねころがせながら、話した。
さっきは嫉妬でなせなかったけれど、大事なことなので話しておくことにした。
「あのね、がくぽさん。さっきしてて思ったんだけどね」
「何じゃ?」
「がくぽさんとても山崎さんのことが好きだよ。僕の名前呼ばないで、山崎さんのことばかり呼んでた。山崎さんのこと、がくぽさんは嫌いじゃないよ。だからこれからは僕やほかの人とはもうこういうことはしないでおこうね」
「うむ、我もかいととは良き友でいたい。すまぬな、色々と。そろそろ帰らねば、主様に怒られてしまう」
むくっと起き上がると、鍵を手にとって、KAITOに笑いかけた。
「また何かあったらかいとの所にきてよいか?」
「うん、おいで。なんか話そうよ」
がくぽの笑顔に笑顔で返すと、KAITOは手を差し出して、がくぽと軽く握手をした。
「ではまたな、かいと!」
パタン、と扉が閉まって、かいとはぽりぽりと頭を掻いた。
「…なんでああなったのかなあ…」
自分でも抑えられないほどの興奮と独占欲が、いまだに信じられない。
とりあえず本でも読むことにした。

「っはー、ただいまがくぽー」
「おかえり」
439ボカロ、KAITO×がくぽ2-5:2009/05/04(月) 20:22:55 ID:INi4IKh80
がくぽはナスの漬物を食べながら、山崎を待っていた。
がくぽに近づくなり、山崎はがくぽを抱きしめる。
「はあー、疲れたー、癒されるー、がくぽー。大好きだー」
「…我も好きじゃ」
意外な一言に、山崎は固まった。
かと思うと、猛烈に口付けをしてくる。
よっぽど嬉しかったのだろう。
「んんっ!」
唇を離すと、山崎はまたもがくぽを愛ではじめた。
「もう、可愛いな、がくぽはー!」
「…むう。それより腹が減ったぞ、何か作っておくれ」
山崎はとてもい笑顔で返事をすると、がくぽを話して調理に入った。
ナスの炒め物を作るつもりらしい。
 それにしても、と思う。
やっぱり自分は山崎の体温が好きなのだ。
山崎にKAITOとの行為がばれないかと思っていたが、取り越し苦労のようだった。
それに、山崎といると安心できる。
大きな手で抱きしめられると、気持ちよくて目を閉じたくなる。
やはり自分は山崎のことが好きなのだ。

KAITOの家にも間を置いて、深田が帰還していた。
どちらかというと勘のいい深田はなんとなくいつもと違うことに気づいたが、本を読んでいるKAITOが、いつものように笑いかけてきたことから、そのことは忘れることにした。
本を膝の上に置くと、KAITOは笑顔で言う。
「お帰りなさい、マスター」
440ボカロ、KAITO×がくぽ2:2009/05/04(月) 20:24:06 ID:INi4IKh80
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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 随分古いのなのでアレですが・・・。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )次は幸せな二人を投稿したいです
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
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441風と木の名無しさん:2009/05/05(火) 04:54:59 ID:ClLIGti80
>>426
キシナマモノ来た!信じられんが死ぬほど嬉しい
hubたんはピュアで可愛いけどやっぱりどSの鬼畜眼鏡だから
ぜったい攻めだと思ってた
モテの反応とか思考回路がいかにもらしくてで素晴らしいです
気が向いたらまた書いてくれ!
442風と木の名無しさん:2009/05/05(火) 15:59:25 ID:Dnx7m4tV0
>>426
キタ━━━∈( ゚◎゚ )∋━∈(◎゚ )∋━∈(  )∋━∈( ゚◎)∋━∈( ゚◎゚ )∋━━━!!!!
モテ可愛すぎるよモテ。Hubさんは寝ぼけていても魔性ww
今なら全裸で廊下を疾走できる
443風と木の名無しさん:2009/05/06(水) 00:34:13 ID:Ys5ZxlZj0
>414
GJ!ほっこり出来る文章だけど切なさが感じられました!
先生可愛いよ先生
444風と木の名無しさん:2009/05/06(水) 00:46:02 ID:S+CuMv6B0
本ヌレでは失礼しました。誘導してくれた方に感謝です。
生もので、一角獣の鍵盤四弦。


                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  妄想より現実のほうがいろいろすごいが
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  初投稿でいろいろごめん
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
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445鍵盤×四弦5/1:2009/05/06(水) 00:46:48 ID:S+CuMv6B0
は忘れんぼうだ。人の話も聞いてない。
だから、こんな酔った勢いの告白も、冗談ととられるか、翌朝には忘れているはずだと思っていた。
それなのに。
その日は新幹線で朝から移動。別のライブがある川西さんは先に現地で待っている。
ホテルを出るときからなんとなく感じていた違和感。ずっとこっちを見ない。嫌な予感。
駅のホームで電車を待っている間も、まったくこちらを見ようとしない。近づきもしない。
絶対に避けられているのはもう明白だった。これは、やはり昨日の言葉が原因なのだろうか?
……子供か。新幹線が到着して、乗り込むその瞬間に、民男がボソッとつぶやいた。
要らぬ誤解をさせてしまった。たぶん、原因は、俺なのに。

結局、いつものように民男と隣同士の席になる。こちらとしても照れがあるから、好都合でもあるのだけれど、さっきのつぶやいた言葉も気になってなんとなく目配せをしてみる。
「なに?」
「たぶん、俺のせいだよ。あれ」
「なに?なんかしたの?」
「うん」
何をしたまではさすがに言えなかった。でも、彼ならなんとなくでわかってくれただろう。
深く追求せずに、そのまま、「ふーん」と相槌で会話は終了した。
それから、わざと深めに座席を倒して、リクライニングしたそのちょっとの隙間から彼の表情を伺った。
窓辺に座って、ほおづえをついたまま無表情で窓のながれる景色を見ている。
長い黒い髪。ゆうべ、あれをかきあげて、あの唇にふれた。
446鍵盤×四弦5/2:2009/05/06(水) 00:47:46 ID:S+CuMv6B0
思い出して、恥ずかしくなって、リクライニングを元の位置に戻した。
うしろから手嶋の「何上がったり下がったりしとんねん」という声が聞こえた。

移動する時間は嫌いではない。なんとなしにする会話も楽しいし、携帯を見て一人でボンヤリ思惑をめぐらすのも好きだ。
ときどき近所の会話が聞こえて来て、それがやけにおかしかったりするときもある。
窓から外を見るのも、ほんのひとときの眠りにつくのも旅らしくていいものだ。
「テッシ一、よめさんみつかった?」
ぽそぽそと、うしろから声が聞こえる。いつもより低い声。それは音程というよりも声のトーン。
俺も民男も黙っていたから、自然と聞こえてしまった。ついつい聞いてしまう二人の会話。
「そうだなー」
「テッシ一、男とつき合ったことある?」
「え?」
「え?」
隣の民男も自然と聞き耳をたてていたんだろう。小さく吹き出している。
俺は吹き出す余裕なんてなかった。こんなところで何を言いだしているんだ。
会話に割り込んで、茶化してごまかして、話題を変えてやりたかった。
わかってる。あからさますぎてそんなことはできるはずがないんだ。ここはもう、寝た振りを決め込むことにする。
会話も聞こえないふりを決め込む。反応したら負けなのだ。
「なに?いきなりそういう話?」
「テッシ一って男に人気あったじゃん」
目をとじていても、理解不能で、頭の上にでっかいはてなが浮かんでいる手嶋が容易に想像出来た。
「そういう人気とは違うでしょうが」
「そっかー。そうだよねー」
ふー、とため息をついているらしい海老。いやな汗が浮かぶ。
この天然のやることだ、つい口を滑らせて、昨日の出来事なんかを他人に話してしまうこともありえなくない。
絶対に忘れていると思ったのに、どうしよう困った。
「やっぱりあれ、からかってたのかなぁ…」
すぐに車内アナウンスがかぶさって、彼の小さな小さなつぶやきはかき消された。
でも、俺は聞いてしまった。蚊のなくようなその言葉。
あまりに印象的すぎて、周りにいた者たちにももしかしたら聞こえてしまっていたかもしれない。
それでも、アナウンスで聞こえなかったことにして、彼の言葉は聞かなかったことにしているのかもしれない。
目を閉じていたけど、なんとなく民男がこっちを見た気がした。
447鍵盤×四弦5/3:2009/05/06(水) 00:48:16 ID:S+CuMv6B0

「アホなの?」
新幹線がホームに滑り込み、足早にみんな出口へ向かう。ざわざわとした階段を降りて行くどさくさにまぎれて民男が言う。
「なにが」
動揺して、答えた口が開いたままになった。
階段を下りる足取りももつれて転びそうだ。
「あんた」
「え…うん…アホかなぁ」
そしてそんなアホな俺に、民男はあきれてため息をついて、それから笑ってくれた。
448鍵盤×四弦5/4:2009/05/06(水) 00:48:36 ID:S+CuMv6B0
次の目的地のホテルは、それはまた綺麗な部屋だった。荷物をおいて、うーんと伸びをする。
そういえば誰と同室だっけ?部屋割りをまだ聞いてなかった。そして嫌な予感がする。
荷物をあけていたらドアが開いた。嫌な予感は的中、思わず歌いだしそうになってしまう。
「え〜。なんで〜…」
部屋に入って俺を見た海老が荷物を持ったままへなへなとその場に崩れる。
そんなにまで嫌なのか、とショックが隠しきれない。だいたいそんなのこっちの台詞だ。
「変えてもらう?部屋」
ゆっくりと腰を上げて、座っていたベッドから降りる。
しょうがないのでそう言うしかなかった。非常に情けない。心が重い。
「な、なんで阿倍がそういうこと言うのっ!?」
海老がバッと顔を上げる。俺にはそんな彼のリアクションがわからない。嫌なんじゃないの?ときいたら、
「嫌っていうか…だってさ、きのう…」
言いかけて、口の中で咀嚼している。荷物と一緒に床に踞ったまま、上がった頭がだんだんまた下がっていった。
449鍵盤×四弦5/5:2009/05/06(水) 00:51:05 ID:S+CuMv6B0
「あのね、俺はね、べつにからかって言ったんでなくてね」
「からかってたんじゃなかったの!?」
いちいちこちらの言葉にビックリしているのか、またバッと顔をあげた。それでも、さっきみた表情より、なんとなく明るく感じたのは気のせいなのだろうか。
「からかってないよ」
海老はぽかんとしてこっちを見ている。真っ黒の目がまんまるでこっちを見ているから、吸い込まれるんじゃないかと思った。
目を見開いてこちらを見ているのが、なんだか可愛らしくて、昨日の告白は間違っていなかったと確信する。
それから、恋愛なんかを超越したような、大事な大事な気持ちになるのだ。
犬のように、おもわず頭をなでてやりたくなるような。
頭をなでてやるつもりが、気がついたら腰をかがめて、唇をかさねていた。
離す直前にゆっくり目をあけると、ブラックホールみたいな瞳がまばたきもせずにそこにあった。
きっと今は、俺しかこの瞳に映っていない。
気がつくと、海老は俺の両腕をぎゅっとつかんで、目を合わせられないのか下をむいている。
「ほんとにからかってない?」
ふるえる声でそうつぶやいた。腕を掴んだ両手に力がこもって、すこし痛い。
「うん」、答えたあと、長い沈黙がながれる。1分くらいなのか、1時間もたったのかわからないほど、短くて長かった。
それから、かすれたような小さな声で、「ありがとう」と聞こえた。
450風と木の名無しさん:2009/05/06(水) 00:52:29 ID:S+CuMv6B0
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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ナンバリング間違えるわ
 | |                | |     ピッ   (・∀・;)脱字&伏せ字漏れあるわ…
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

出直してきます。緊張した…
451ボカロ、KAITO×がくぽ 捨て犬のように1:2009/05/07(木) 10:04:40 ID:/6s8VA/50
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  純愛です。私にしては珍しく純愛です。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 楽しんでいただければ幸い 
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
なぜか五回以上の投稿が出来ない・・・
452ボカロ、KAITO×がくぽ 捨て犬のように 1-1:2009/05/07(木) 10:05:40 ID:/6s8VA/50
そうだよね、最新のが出たら皆古いの捨てて新しいのほしがるよね。
だから僕が捨てられたのも当然なんだ…。
 KAITOはそう思いながら、小さな公園のブランコにいた。
たった今、新しいボーカロイドを購入したから、お前はいらない、お前は調整も難しいし、旧型だから。といわれ、家を追い出されたのだった。
こんなに雨が降っているのに。
傘もささない。いや、傘なんてものは持っていなかった。
ざあざあと降りしきる雨の中、誰かが近づいてくる。
傘を傾ける。KAITOが傘の下に入れるように。
「お主、こんな雨に何をしておる」
凛とした声が響いた。
顔を上げると、そこにはとても綺麗な紫の髪の、男型のボーカロイドがいた。
大切にされているのだろう、服もしみひとつなく、手には買い物帰りなのか、ビニール袋を持っていた。
最新のボーカロイドを買ったから。
お前なんて要らない。
捨てられる直前の、マスターだった人の声を思い出す。
「僕は…捨てられたんだ…。僕は…旧型だから…」
小さな声でつぶやいて、うつむく。冷たい雨は傘によってふさがれたが、その分、相手がずぶ濡れになっている。
着ている着物らしきところから、雨にぬれてしずくが伝う。
なんて綺麗な着物なんだろう。顔も、髪もとても綺麗だ。
紅で彩られた唇、結われた細い髪の束。そして着物をアレンジしたような服装。
そんな彼が、口を開く。
「なら来るがよい」
「え」
ブランコをこいでいたKAITOの手を握り締め、そのボーカロイドは半ば強引につれていく。
「ど、どこへいくんだい」
「我の家じゃ。正確には我と主の、じゃ」
黙ってついて来いとばかりに、ぐいぐい引っ張って公園から出ていく。
細身の体をしているのに、力はずいぶんあるのだと変な方向に感心しさせられた。
しばらく歩く。その間、何を話して良いか分からず、KAITOは黙って彼についていった。そのうちアパートにつくと、階段をとんとんと上がっていく。
「ここじゃ。中に入れ。マスター、すまぬ、少し遅くなった」
奥から出てきたのは、人間だ。そりゃ当然だろう。彼のマスターというのだから人間であることに間違いはない。
優しそうな、柔らかい雰囲気のマスターだ。
453ボカロ、KAITO×がくぽ 捨て犬のように 1-2:2009/05/07(木) 10:06:44 ID:/6s8VA/50
少し眺めの髪を後ろで束ねて眼鏡をしている。
マスター。
自分のマスターの優しかったころを思い出して、少しうつむいた。
「お帰りがくぽ。アレ、その人は…あれれ、KAITO?KAITOじゃないか、どうしたの、がくぽ」
どうやら最新のボーカロイドはがくぽという名前らしい。
なんかちょっと間抜けだな、と思ったのは口にはしないでおいた。
「マスター、茄子と塩じゃ。この者を知っておるのか」
驚いて目を見開き、KAITOの所々を見てまわる、がくぽのマスター。
しかし薄汚れて大して管理もされてなく、服もところどころ擦り切れていて、本当にKAITOかと疑わしくなる。
「知ってるも何も、がくぽの仲間だよ。KAITO、だよね?」
がくぽのマスターはうつむくKAITOの目を見て、確認をとった。
このままだんまりしているのもなんなので、KAITOは小さくうなずいた。
「どうしたの、なんでKAITOがいるの?」
「公園で拾った」
拾ったといわれても。困り果てて、がくぽのマスターはKAITOに質問することに決めた。まずは二人ともずぶぬれだから(KAITOに限っては、随分汚れてもいる)、新しい服を着てもらおう。
「KAITO、がくぽ、まずはあがって。新しい服を持ってくるからちょっと待ってて」
「分かった。上がるぞ、お主…かいとといったか」
KAITOの手を握り締めたまま、上がっていく。バスタオルが投げ出されて、あらかた拭き終わると、がくぽはKAITOの体を拭いてやった。
「寒いのう」
「二人ともこっち来てー」
がくぽのマスターは服をそろえたようだ。
二人が和室までいくと、二人分の着替えが用意されていた。少し大きめのものだが、KAITOにとってはぴったりで、がくぽにとってはぶかぶかだ。
それを着ると、二人の着ていたものは洗濯機の中へ放り込まれた。
KAITOはちょこんと部屋の隅に座っている。
「…」
それを同じく座ったままのがくぽが凝視する。
「ねえがくぽ、何があったの、もしかしてがくぽに気に入られてマスターから離されちゃった?」
お茶をがくぽとKAITOに渡す。
温かいお茶は、先ほどまでのKAITOの冷たい心の氷を溶かしていくようだった。
「はあ。いえ、そうじゃないんです。…がくぽさんに拾ってもらったって言うか…」
「へ?がくぽが拾った?捨てられてたの?」
454ボカロ、KAITO×がくぽ 捨て犬のように 1-3:2009/05/07(木) 10:07:34 ID:/6s8VA/50
「は、はい。捨てられたんです…新しい子が入ったからとかで…。旧式はいらないって…」
がくぽのマスターは、その言葉に心底驚愕して、はああ、と深くため息をついた。
「もったいないなー、まだ歌えるでしょ、君。それに、ボーカロイドにも心があるっていうのに…」
お茶を飲んで雨の町並みを眺めていたがくぽが、そこで口を開く。
「マスター、ここにおいてもよいだろうか。めんどうは我が見る。かいと、お主は我のぺっとじゃ」
その言葉に驚いたのはKAITOとがくぽのマスターだ。
ペットと言い出したのは、何かしら雨でやられたんだろうかとも思った。
だが自分を共感してほしい存在をほしがっていたがくぽには、KAITOが頼れる存在に映ったのかもしれない。
「ペットってがくぽ…」
「我はかいとが気に入ったのじゃ。かいとを飼う!!」
「KAITOをここにおいてもいいけど…まあ、食費がかかるけど、でもペットはちょっと…」
それでもお茶を置くと、かいとを抱きしめて、ペットペット連呼する。KAITOは困って首をかしげていたが、その一生懸命さが可愛く思ったのか、がくぽのマスターの声をさえぎった。
「僕はペットでいいですよ、がくぽさんに恩返しもしたいし…。あの、それで、僕のマスターになってくれるんですか?」
今度はKAITOが、遠慮がちに目をきらきらさせて、おずおずとがくぽのマスターに聞きだした。
マスターになってもらえれば、また歌える。いや、前のマスターはろくに歌わせてもくれなかったから、今度のマスターにはつい期待してしまう。
そんな期待した目で見られては、頷かないわけには行かない。
 がくぽのマスターは、にっこり笑うと、がくぽの頭を撫でた。
「良いよ、その代わりがくぽと歌ってもらうからね」
「は、はい!ありがとうございます!」
心底嬉しそうにマスターに礼をすると、がくぽが袖を引っ張った。
「かいと、少し冷たいぞ、それに薄汚れている。風呂に入れ」
がくぽが淡々とそういうと、またしてもKAITOは困ったように首をかしげた。
何気なく世話を見てくれてるのかな?
 がくぽの言葉に、マスターも賛成する。
「うん、ちょっと汚れているから、シャワー浴びるといいよ。がくぽ、めんどう見る?」
扇子をぱっと広げると、パタパタと仰ぎだす。
455ボカロ、KAITO×がくぽ 捨て犬のように 1-4:2009/05/07(木) 10:08:05 ID:/6s8VA/50
「我のぺっとじゃ、ぺっとのめんどうを見るのは当たり前のことじゃ。ほれ、風呂場へ案内するぞ」
そんなこんなで風呂に案内され、そしてKAITOはがくぽと、がくぽのマスターの家にすむことになった。
がくぽは実にKAITOのめんどうをよく見た。
朝起きれば、一足先に起きてきたがくぽが、綺麗に洗われた服を差し出す。着終わると、KAITOの髪を綺麗にとかしだす。
まるで飼い主は自分のような気がしてきたが、常にがくぽが、『おぬしはぺっとじゃ、茶とナスをもってこい』というので、パシリには使われた。
 けれど拾ってもらった恩は大きく、KAITOは嫌な顔ひとつせずにがくぽに従った。
いつも無表情のがくぽが、KAITO相手にたまに笑うと、KAITOの機械の心臓がはねた。
がくぽが嬉しいと、自分も嬉しい。
夜になると、二人で歌の練習をした。
がくぽはKAITOの曲がった背中を見て、背中を伸ばせと叩いたりした。
「そんなんでは良い声が出ぬぞ、素質はあるのにもったいない」
そういわれて、KAITOは胸のうちが熱くなった。
ボーカロイドなのに素質がないと、前のマスターにいわれてきたKAITOには、とても嬉しい言葉だった。

456ボカロ、KAITO×がくぽ 捨て犬のように 1:2009/05/07(木) 10:09:28 ID:/6s8VA/50
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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 今のところKAITOはぺっとです
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
457酩酊の赤 0/5:2009/05/07(木) 23:02:37 ID:H9QgqDR+O
なまもの。完全捏造です。ダメな方はスルーしてください。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
458酩酊の赤 1/5:2009/05/07(木) 23:03:48 ID:H9QgqDR+O
「ねえ、きいてますかああ、ねえねえ」

甘えた声をだして呼ぶなって。だから、いちばん最初に飲み過ぎるなって言ったんだよ。
酔っ払って甘えられるなら、可愛い女の子がいい。
おまえみたいな自分よりも図体のでかいやつに、腕を取られて膝に手を置かれても嬉しくない。
むしろ困るんだ、このあとの展開を想像したくない。ああまたはじまった。

「またあ、そーやっておれのことてきとうにあしらうんだからあ、ぐれますよー」

おまえみたいな育ち方をしたやつは絶対にグレないよ。どうやってグレるつもりだ、髪でも染めるのか。

彼には以前から「酒癖が悪いです」と言われ続けてきたが、どう考えても自分より彼の方が質が悪い。
脈絡なく笑いひたすら話し続ける、疲れると勝手に眠る。暴れたり吐いたりするわけではなく、被害は少ないけれども、
毎回毎回、酔い潰れてしまうわけにはいかないだろう。上手な酔い方を誰かが教えてやる必要がある。
そういうものは仲間内で自然と覚えていくものだが、こんな環境にいれば、それもきっと難しい。
459酩酊の赤 2/5:2009/05/07(木) 23:05:24 ID:H9QgqDR+O
つい十数分前まで気分よく笑い続けていた彼は、完全に力が抜けきった状態で眠りについている。
開いた口からはよだれがたれてきそうな、幼い顔。しあわせそうだ。
疲れているんだろう。責任も期待もすべて抱え込んで、それでも結果を残しているのだから立派だが、
やはりどこかでその代償が顔を出す。彼も生身の人間で、神様ではない。
ただ、そう思わせてしまうなにかを持っていることは事実で、彼には誰もを巻き込む魅力がある。
それに応えようと頑張りすぎなければいいと、どこか家族のような立場で見守っている、そんな気分だった。

「だからって飲み過ぎだろ…」

彼ひとりで、ふたりの合計以上の量を飲み干している。明日以降の予定が違うから、と言ってしまえばそこまでだが、
翌日に持ち越すような夕食というものは、あまり好ましくない。

「さびしいんじゃないすか」

彼のジャケットを投げるようにかけてやり、皿に残った揚げ物を手に取り男が言う。
ひとりごとか、それとも聞かせたいのか。判断できないものを放置できないのは自分の欠点かもしれない。
「なにが?」紛らわすようにグラスを手に取って、たいして残ってもいない液体を飲み干した。
あたためられた室温で、氷はとうに溶けている。ぬるい。

「いなくなっちゃったから、さびしいんじゃないですか」

…ああ。
460酩酊の赤 3/5:2009/05/07(木) 23:08:21 ID:H9QgqDR+O
ぼやけた味がのどを通り過ぎてゆくのと同時に、もうはるか昔の出来事のような現実を思い出し納得する。
人見知りの激しい彼が、とてもよく懐いていたひとが、いなくなった。その事実を唐突に突き付けられたのだから、無理はない。
いつなにがあるかわからない。それは常識だが、いくらなんでも、誰も予想していなかった。覚悟はしていなかったはずだ。
あのあと連絡は取っただろうか。ちゃんと挨拶はしたのだろうか。
彼の中で、消化した、過去のことにすることができただろうか。
指先ひとつの操作でいつでも話ができるけれど、距離ができてしまったことは確かなことだから、
それをうけとめるには時間がかかるかもしれない。

「でも、また会えるからさ」

「自分のこと、棚にあげてますよね」

予期せぬ言葉に、反射的に顔をあげる。正面に、男の瞳。
控え目で、それでもしっかりとした視線が至近距離から刺さる。斜めにした口元。
覚悟を決めたときみたいに、確固たる自信を持って投げ込まれる直球。

おれ、あなたたちのことも指してるんですけど。
461酩酊の赤 4/5:2009/05/07(木) 23:10:01 ID:H9QgqDR+O
まだふわふわとした頭が、外気の風でゆっくりと醒めていく。
会計を終えて店の外に出ると、もう既に男はタクシーを捕まえていて、
自分よりふたまわりほど大きな彼を無理矢理後部座席に詰め込んでいるところだった。
だいじょうぶ。声をかけると、ちらりと振り向いた男が笑う。男は頷いて、それから帽子を取る仕種と同時に頭を下げた。

「いつもごちそうさまです」
「いいよ」

成人男性の標準を悠々と上回る体格の彼を連れて帰るのは一苦労だが、それはもう自分の仕事ではない。
面倒なことだと思っていたけれども、ひとつ負担が減るのと同時に、なにかが消えてしまったようだった。
なにも背負うものがなくなると、逆に不安になる。とばされそうだ。

べろべろになっている彼に手際よくシートベルトまでつけさせた男は、運転手に声をかけ助手席へまわった。
乗り込みながらちょっと頭をさげて、いつもの斜に構えた笑顔をみせる。

「じゃあ、こいつ連れて帰ります」
「タクシー代いる?」
「いくら優しーセンパイにもそこまでたかりません」

にやにやと悪ガキみたいな表情を見せて、シートに座る男。一歩後退して、またあした、と手を振りかえす。

「ちゃんと帰ってくださいね」
462酩酊の赤 5/5 おわり:2009/05/07(木) 23:11:49 ID:H9QgqDR+O
季節は春だが、夜はまだまだ冷え込む。もうすこし厚い上着を着てくればよかった。

ちゃんと、かえって、くださいね。

去り際の男の台詞を反芻しながら、空のタクシーを一台、また一台と見送った。
ちゃんと帰る、当たり前だ。早く帰って、シャワーではなくバスタブに熱いお湯をためてゆっくりと疲れを取る。
明日だって朝は早い、起きたときに眠り足りないと思いたくないから、いますぐにでも帰らなくては。
どういう意味だろう。寄り道なんてしないし、タクシーですぐだし、ちゃんと帰らない方法は、思い付かないし。
そう思いながら、動けなかった。

いまここにいるのは自分ひとりだ。帰る場所には誰もいない。暗い冷たい部屋には誰もいない。

さみしいのは、おまえだけじゃ、ないよ。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
463風と木の名無しさん:2009/05/07(木) 23:51:19 ID:PmijH7OOO
なまもの、一角獣の唄×四弦です

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
464風と木の名無しさん:2009/05/08(金) 00:03:12 ID:yBmcCfHR0
支援?
465唄四弦1/4:2009/05/08(金) 00:09:12 ID:+D8fMlASO

ふふふと楽しそうに笑う海老に肩を貸し、ドアを開けた。
深夜まで呑んだ俺らはそのままホテルの部屋へ雪崩れ込む。
完全に体重を預けてくる海老の髪が首筋に触れて、いちいち擽ったくて仕方無い。

よっこらしょ

細い身体をベッドへ投げ落としたら、いたーい、なんて笑ってたがそのまま静かになる。
「おい、寝たのか?」
「んー起きてる」

ベッドで転がる海老から甘えた声が返ってきた。
四十路を越えても相変わらず高音は健在で、当時をいやでも思い出す。
…十六年も離れていたなんて嘘なんじゃないか。

「呑みすぎだろお前」
「えー、だって」

なんだその舌っ足らずな口調。
枕を抱えるな、おっさんのくせに。

466唄四弦2/4:2009/05/08(金) 00:14:19 ID:+D8fMlASO

そのくせ一人でワイン空けやがって、マダムか。

「楽しいと呑んじゃうよねー」
「お前は加減しろ」
以前じゃ考えられん。
俺が海老の世話するなんて。

「タミ才ー」
部屋にあった水を飲んでれば不意に声を掛けてきた。それは呟くぐらい小さな声。

「タミ才も楽しい?」
「…あ?」

起き上がった海老の大きな目と重なる。
乱れた髪と上がった口角。
「……ま、楽しいんじゃないの?」
こいつの純粋というか無垢な、正直すぎる発言は時々困る。
どないせーちゅうねん。
自他ともに天邪鬼な俺やぞ。
楽しすぎるなんて言えるか。

「そっかーよかった」

口をついた俺のそっけない返事でも、満足したのかまた転がる。
467唄四弦3/4:2009/05/08(金) 00:19:44 ID:+D8fMlASO

その拍子に捲れたシャツから細腰が覗く。
…白い。
ヤバい、絶対に今夜は酒が回りすぎだ。


「オレさー、ユニコーソ大好き。河西さんも阿倍もテッシ一も好き」

…俺は

「タミ才も大好き」

なんだそれ、なんだその発言は。
そして異常に反応した俺はアホだ。
体が熱くなるのは酒のせいにしとこうじゃないか。


「タミ才ー、…寝る」
「あ?ここでか」
「うん一緒に」

この酔っ払い、だとか、おっさん同士でアホか、なんて頭を巡る言葉は全部捨てた。
隣に感じた体温は子供みたいに熱い。
「タミ才はー、オレ達のこと好きー?」

また出た天然野郎め。
同じベッドにいるのにそんな台詞吐かせるか普通。
何度も思うがおっさん同士やぞ。
468唄四弦4/4:2009/05/08(金) 00:24:38 ID:+D8fMlASO

答えを待つ、きらきらした目に本気で息苦しくなる。
俺が返す言葉なんて素直じゃないの知っとるくせに。
「…そりゃ好きだろ…」
もぐもぐと咀嚼するように呟く。
恥ずかしいんじゃボケ。

「んふふー、だよねー」
アホみたいな幸せそうな笑顔。
あの日久し振りに会って、変わらない笑顔に嬉しくなったのを思い出す。

「ずっと、一緒にバンドやろうね」
目を閉じて呟く海老。
「…おう」

今夜の事は夢に違いない。
素直な自分が可笑しくて寝顔を見ながら笑う。

(終わらないで)

これから何回こいつの笑顔を見れるだろう。

(今になって)

「おやすみ」

夢か現か、それだけ言って俺も同じく意識を手放した。

(夢は再度の日)
469風と木の名無しさん:2009/05/08(金) 00:26:31 ID:+D8fMlASO
初投稿で手間取りました
申し訳ない!
再始動した彼らが愛しくて堪らないよー

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
470風と木の名無しさん:2009/05/08(金) 00:29:23 ID:LuYJ3YG/0
>>451
可愛い…濡れたマフラーにくるまってる兄さん犬を想像したら似合い過ぎて禿げた
それだけじゃ終わらなそうだけどw
続き楽しみにしてます
471風と木の名無しさん:2009/05/08(金) 01:18:25 ID:yU0PAixd0
>>465
いえいえ、ありがとう。楽しませて頂きました。
ホントに世話焼いてそうだなあ、唄w

449姐さんのもかわいいー
まるで杜の都の予言ですなww
472ボカロ、KAITO×がくぽ 捨て犬のように 2:2009/05/08(金) 07:23:25 ID:RN+ukgcC0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |感想ありがとうございます、これで半月は生きていける!
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|十三話まで最低あるので、付き合っていただけると嬉しいです。 
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
473ボカロ、KAITO×がくぽ 捨て犬のように 2-1:2009/05/08(金) 07:24:30 ID:RN+ukgcC0
ある夜だった。
KAITOはリビングにあるソファでいつものように寝ていた。
和室には、がくぽとマスターが寝ている。
マスターの寝息が聞こえる中、外に浮かぶ月をじっと見ていた。
寝れなかった。
なんとなく、何があったとかでもなく、今日一日も、一緒にがくぽやマスターと散歩したし、がくぽと歌の練習をした。
拾われてからいつもと同じ。とても充実した毎日、がくぽに甘えられて、がくぽと取っ組み合いの真似事をしてごろごろと狭いリビングを転げまわった。
それをくすくすと笑みを漏らして眺める優しいマスター。
拾われてよかったと思う。
と、ふ、と影が自分の頭の上をよぎった。
驚いて起き上がると、ゴン!という音とともに誰かの額とぶつかった。
額がズキズキと痛い。地味に痛い。
痛さに団子虫のごとく丸まっていると、相手が口を開いた。
暗くてよく分からなかったが、どうやらその声の主は。
「何じゃ、急に起き上がるな。額が痛いではないか…」
「あっ、がくぽさん」
「…」
がくぽは黙って枕を持っていた。
その枕をKAITOの胸の上に投げ、毛布をはぐと、ぐいぐいと押して寝転がってきた。KAITOの上に収まると、毛布を上からかける。
一人しか寝られないソファだ。二人寝るには無理に等しい。
 その分、がくぽはKAITOにしがみつくと、体を重ねるようにして眠りにつこうとする。
(おっ…重い…)
だががくぽは、KAITOの辛さにはおかまいなしのようだ。
「がくぽさん、どうしたの?」
「がくぽでよい。なんとなく、眠れないからかいとの所に来た」
眠れないのは一緒か。
でもそれすら一緒だったことがなんとなくくすぐったく嬉しい。
落ちそうながくぽの肩に手を添えると、KAITOも目を閉じた。
しばらくすると眠気もやってきて、眠りに落ちかける。
そんな時、声が小さく響いた。
「かいと、寝てしまったか」
「…ん、寝そうになってた所、どうした?」
474ボカロ、KAITO×がくぽ 捨て犬のように 2-2:2009/05/08(金) 07:25:24 ID:RN+ukgcC0
「それはすまない。なんでもない」
また沈黙が続く。どうしたのだろう。
何かあったのだろうか。そもそも、ここに来たのだってマスターと何かあったのかもしれない。
ただの深読みにすぎなかったが、なんとなく心配になって、KAITOはがくぽに尋ねた。
「マスターとなんかあった?」
「なにもない。ちょっと…かいとが気になっただけじゃ」
ぎゅ、と、KAITOの服を握り締める。足を絡めて、ソファから落ちないようにしがみついた。
「気になった?」
「お前は今幸せか。元のマスターといたいとは思ったことはないか」
その言葉に、ぼんやりしていた頭が少しさえた。
確かに前のマスターのことは忘れたわけじゃない。
だが、忘れそうになるほど楽しい日常がある。今、手にしている。
新しいマスターの優しさ、がくぽとの遊び。
がくぽとこうしてるだけでも嬉しい。
「幸せだよ、元のマスターのことも思い出すけど、今が楽しい。がくぽさん…じゃなかった、がくぽと一緒にいれて幸せだよ」
「…そうか」
「?どして?」
「なんでもない、寝るぞ」
心底不思議そうに問いかけたKAITOを振り切る。
複雑な表情はKAITOには見えなかったけれど、なんとなくいつもと違うことは分かった。
何かあったのだろうか。
朝がきたらちゃんと聞いてみよう、と決めて、KAITOは眠りに落ちた。

「あー、がくぽいないと思ったらここに来てたのか」
「うむ、たまにはかいとの所で寝てみようと思ってな」
そんな会話が頭の上で繰り広げられてるのに気づいて、KAITOは目を覚ました。
朝の光がまぶしい。
「今日は月曜じゃ、マスターは仕事じゃろう」
「うん、そうなんだ。そろそろ出るから二人仲良くね」
「あ…おはようございます」
起き上がると、胸の上に枕が乗っかっていた。昨夜がくぽが持ってきた枕だ。
がくぽの朝は早い。
475ボカロ、KAITO×がくぽ 捨て犬のように 2-3:2009/05/08(金) 07:26:45 ID:RN+ukgcC0
マスターとKAITOのためにお茶を入れて、待機していることが多い。
「おはよう、二人で歌の練習でもしててね。じゃ行って来る〜」
マスターは普段と同じ格好で、バッグを持って出かけていった。時間は九時だ。そういえば前のマスターはスーツを着て、七時ごろに会社に向かっていた。
職業が違うのだろうが、今のマスターは何の仕事をしているのだろうか。
手をひらひらと振ってみて、ドアが閉まると、がくぽはいつもの無表情で、マスターの仕事について述べた。
どうやらKAITOが不思議がっている様子から、察したらしい。
「げーむのさうんど何とかとか言っていたぞ。意味はわからぬが」
「ああ、音楽作ってるんだ。ゲーム会社だから普段着なんだ」
「ふむ。かいとは詳しいな、我にはさっぱり説明されてもわからなかったが」
ぱっと扇子を広げて、仰ぎながら冷えてきたお茶をのむ。
「そうだ…あのさ、なんでがくぽは僕のところに来たの?なんかあったみたいだけど?」
なんでもないとかたくなに言い張っていたが、何かを気にしていたのは分かった。
がくぽはその言葉に、お茶をテーブルの上に置くと、扇子で口元を隠した。
「…気になっただけじゃ…」
「何を?」
「おぬしが我に拾われて本当に良かったのかとな」
ああ、だからあんなことを聞いてきたのか。
何度でも言うよ、僕は後悔してない。
そう思って、がくぽの頬に手を添えた。その行動に若干驚いて目を見開くがくぽ。
「後悔なんてしてないよ。ありがとうがくぽ。僕は君のペットでいいんだよ」
「…!そうか」
目を伏せる。ああ、その仕草も綺麗だな、がくぽは本当に綺麗だな、と思う。
「ご主人様、何しますか?」
冗談交じりでそんなことを聞くと、がくぽは頬を染めた。
「天気が良い、散歩でもするか。お主はぺっとじゃ、温かくて居心地の良い場所へ連れて行け」
確かに外はすがすがしいほどの天気の良さだ。晴れた日の下でがくぽと話すのもいいだろう。
がくぽは棚から鍵を取り出すと、KAITOの手を引いて外へ出た。

朝の空気がぴんと張り詰めて、冷たい空気が頬を撫でる。
その一方で、太陽が控えめにがくぽとKAITOを照らし出す。
 今の季節、もう少し何か羽織たくなるような寒さだ。
476ボカロ、KAITO×がくぽ 捨て犬のように 2-4:2009/05/08(金) 07:27:37 ID:RN+ukgcC0
やがてなんと無しに歩くと、がくぽとはじめてであった公園が見えた。正直引き換えしたかったけれど、他に行く宛も知らなかったので、公園に入っていった。
晴れた日の下で見ると、雨の日だったあのときの公園の陰鬱さは影を潜め、鳥の鳴き声の聞こえる穏やかな公園が姿を見せていた。
がくぽがあの時のKAITOのように、ブランコに座る。
少しうつむいて、寂しそうな。
「寒くない?」
「うむ、少し、寒い」
えいっと言葉に出して、後ろからがくぽに抱きつく。
「!」
思いもかけない行動に、がくぽは慌てた。とはいっても特にリアクションをしたわけではなく、心の中で驚くだけだった。
「がくぽ?」
少し頬を染める。
KAITOは長いマフラーを半分がくぽにまいてやり、自分はがくぽの背中にぴったりくっついた。
「結構こうしてると、日差しがあったかいね〜。がくぽ、これで少しは寒くないでしょ?」
「…うむ。だが、恥ずかしい」
巻かれたマフラーを握る。あたたかい。
とくとくと、がくぽの心臓がなる。
なんだろうかこの感情は。不思議と、胸が熱くなる。KAITOといて楽しい。
嬉しい。
「かいとは不思議だな。お主といると、…あたたかい」
KAITOは驚いて目を丸くした。
がくぽが素直に感情を表してくるのは初めてのような気がする。
そしてわずかに、張り詰めた空気が和らぐような笑顔を見せた。
「かいとを拾ってよかった。かいとも、拾われて良かったか?」
「うん、よかった。僕はずっとがくぽのものだよ」
その言葉に安心したように、また笑う。
溜まらずがくぽを更に抱きしめた。
可愛いなあ、可愛いなあ。
がくぽが溜まらず可愛く見える。
「少し苦しいぞ」
俯いているがくぽのあごを軽く引かせる。
「がくぽってさ、笑うと可愛いね。最初無表情だったから分からなかったけどさ」
「可愛い?…気のせいじゃ」
477風と木の名無しさん:2009/05/08(金) 07:33:20 ID:jtjJDplTO
ふいっと手を逃れて、がくぽが俯く。頬が赤いことにくすくす笑いながら、抱きしめている手を離すと、がくぽの目の前に立つ。
KAITOはまじまじとがくぽの顔を見た。
「?」
「がくぽの唇もーらいー」
ちゅ、と軽く押し当てられた唇の感触に。がくぽは驚いて目を見開いた。
機能停止してしまったかのように微動だにしない。
かと思ったら、急に暴れだした。
「お、お主、せっ、接吻…!×○△×□!!」
「ごめんね、初めてだった?」
「〜〜、当たり前じゃ!馬鹿者!お主と違って我は…」
その言葉に、KAITOはにっこりと人のいい笑みを浮かべて、ぽりぽりと頬をかいた。
「僕も初めてだよ」
KAITOの言葉に、今度はがくぽがぴたりととまる。なんとなく見詰め合って、恥ずかしくて目をそらした。
478風と木の名無しさん:2009/05/08(金) 07:37:43 ID:jtjJDplTO
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ やっぱり駄目だ、五回以上書き込めません
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )途中携帯から失礼します
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

479風と木の名無しさん:2009/05/08(金) 11:27:55 ID:Z7fRc+tG0
>>457
おそらく彼らのことだと思うのですが、萌えさせていただきました。
奴のトレ─ドは本当に衝撃的でしたよね…
480風と木の名無しさん:2009/05/08(金) 15:27:52 ID:ArCdzMDj0
半ナマでクイズDMC(D→MC)です、暗くて短め

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
481クイズDMC「白籠の鳥」:2009/05/08(金) 15:31:26 ID:ArCdzMDj0
絶対に許さない―――

人が住んでるとは到底思えない、真っ白で生活感のない部屋。
そこで彼は、今日も何かに怯え叫んでいた。
痛みと苦しみを、忘れていた記憶を思い出して。
「―――……ぅ、あ、ああぁっ!」
「何か……思い出したのか?」
神山、と男が静かに呼ぶと、彼は叫ぶのを止めた。
床にうずくまる自分を見下ろす、本間の姿が目に映る。
ひどく取り乱す神山に、男は微笑んだ。
「どうした?また……思い出したんだろ?」
「な……に、も……分からな……い―――」
混乱している神山に対し、本間はそうか、とだけ言うと。
彼の襟元を掴み、無理やり引き寄せた。
「早く思い出せよ……!俺は絶対にお前を―――」

許さない、許せない。
思い出さない彼が、こんな想いをする自分が。
もっと苦しめなければ、償わせなければ。
そうでなきゃ、心が満たされない。
482クイズDMC「白籠の鳥」2:2009/05/08(金) 15:32:32 ID:ArCdzMDj0
「……ご、め……っ……なさ―――」
「―――……!」
掠れた声で呟く神山に、ふと我にかえる。
虚ろな瞳は、すがりつくようにこちらを見つめていた。
そんな彼の様子に、本間は小さく舌打ちし、壁ぎわにある白いベットに神山を押し倒す。
そして、
「……神山、俺の相手をしろ」
「―――……は、い」
拒否権はない、選択権もない。
全てを思い出さず、彼がこの部屋にいるかぎりは。
ずっとずっと、自分だけのモノ。
「俺だけが、お前の全てなんだよ……なぁ?」
甘くて冷たい言葉と共に、本間は神山を抱きしめる。
まるでうわ言のように、言い聞かせるようにと。
何度も何度も、神山に囁き続けた。

―――こんな想いをさせたお前を、絶対に許さない
483風と木の名無しさん:2009/05/08(金) 15:33:32 ID:ArCdzMDj0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
終了。
慣れないことはするもんじゃなry
明日の放送に備え妄想力をつけときます
484吸血鬼の飼い方:2009/05/08(金) 19:21:33 ID:r+Cjgr6z0
オリジナル。ややファンタジー。コメディを狙ったつもりが、なぜかややダーク。
お仕置きが勢い余ってそれなんてDV?な感じに。エチー無し。
現代日本、へタレ吸血鬼に懐かれてしまった、気が強い人間離れした特技持ちの若者の話。

>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
485吸血鬼の飼い方1/8:2009/05/08(金) 19:22:37 ID:r+Cjgr6z0
「またお前か、アホンダラー!!!!!」
 容赦ない大声と、無造作に振り上げられたように見えて、やはり容赦なく弁慶の泣き所を
強襲した足。
「とっとと死ね!!この鬼!悪魔!!」
 痛む片足を抱え、涙ぐみながら、罵られながら男は、大きな体を縮こまらせて、ぺこぺこと
頭を下げる。
「ご、ごめんなさい、つい出来心で……」
 その言葉が、まさに火に油を注いだのだろう、もう一度上がった足は、男の急所を蹴り上げ、
それだけでは怒りがおさまらなかったらしく、堅く握りしめられていた拳が腹に叩き込まれた。
「ぐ……ごふ……っ」
「謝る相手はオレかボケ!!お前なんかとっとと教.会のてっぺんの十.字.架にでも刺さって来い!!」
「……そっ、それだけは勘弁……」
「だったらなんで外で食事なんて来たんだ、っざけんな!!」
 身を屈めているところへ高く振り上がった腕に、覚悟を決めて身を竦め、きつく目を閉じると、
予想通り、サンドバック化した男の頬に、見事な右フックが決まった。
 −−だってさ、いっつも君じゃさ、いくらなんでも大変じゃないかなぁ?
 思いは言葉になって、届いたかどうか。
 体が傾いで、視界が暗くなっていく。
 目の前で倒れる男に、加害者は溜息をつく。垂らしたままの殴った手からは、血が滲んでいる。
一人の男を二度殴ったにしては、多すぎる量のそれは、すぐに盛り上がり、床に滴り落ちた。
486吸血鬼の飼い方2/8:2009/05/08(金) 19:23:38 ID:r+Cjgr6z0
 舌打ちして、まだ顔立ちや体つきに少年の風情が残っている彼は、洗面所に駆け込んで、そこに
置いてあったプラスチックのカップから歯ブラシを放り出して手に取った。拳から滴る血をカップで
受けながら洗面所を出、タンスから取り出したバンダナで、カップを満たしつつある、赤く染まった
手をきつく巻く。
「畜生……」
 漏らした視線の先には、玄関の床に転がった、意識を失った男の姿がある。
 傷ついた利き手を庇いながら、カップの中身をこぼさないように気を付けて台所に行き、
調味料入れから塩をひとつまみ振り入れて、スプーンでかき混ぜる。これで少しは保つはずだ。
 鬼、悪魔、十.字.架に刺さって死ね。
 彼が男に投げかける罵倒は、どれも真実だ。
 道で喧嘩になってしまい、血が止まらなくてビルとビルの隙間の細い通路に逃げ込んだ彼に、
においを嗅ぎつけた男が野良犬のように寄って来たのだ。飢えたみすぼらしい吸血鬼が。
 ふとしたはずみに大量に出血し、それが献.血に勤しむような尋常な量でも無ければ、健康を
損なうことのない、人間離れした異常な体質である彼にとって、吸血鬼を一匹養うくらい、
これが貧血というものか、と初めて知るぐらい、容易いものだった。
 だというのに。
 この馬鹿な大男は、彼の言いつけに背いて、「外で食事」をすることがあった。そして加減を
誤って、獲物が死ぬまで貪る。誰もが彼のような常識はずれな体ではないのに。
487吸血鬼の飼い方3/8:2009/05/08(金) 19:24:07 ID:r+Cjgr6z0
 満腹なのに、体のあちこちに痛みと、すぐ側に血のにおいを感じて、男は目を覚ました。
目の前に血を満たしたプラスチックのカップがあったので、体を起こして取りあえずいただく
ことにする。妙に塩気が強いが、慣れ親しんだ彼の味になんとなく幸せな気分になって、ゆっくりと
舌の上で味わいながら「食事」していて、体が痛む理由を思い出して、今口にしている最中なのだが、
さあっと顔から血の気が引く。
「えーっと……」
 彼の名前を情けなく呼んでみるが、返事も、気配もない。
 もうバイトに行った後なのだろう。
 ほっとするような、平謝りするのが先送りされて、かえって困るというか。
 いくらちびちび飲んでいたとはいえ、カップ一杯。赤く跡を残して、空になってしまっていた。
痛みによろめきながら立ち上がり、台所でもったいないから洗ってしまう前に、うっすら赤い
カップを濯いだ水も飲み干してしまう。
「いてててててて……」
 −−血を吸われてもね、痛くないんだって。うん、ちょっとちくってするだけだって。ほら、
人間って蚊に食われても痛くないって言うでしょ?多分あれと一緒。だから大丈夫。
 以前、自ら首を伸ばして初めて差し出し、痛くするな、と緊張した顔で釘を刺した彼に、
自分が言った言葉。血を吸い尽くされて死んだ犠牲者も、痛みなど感じなかったに違いない。
だけど死には変わりない。
488吸血鬼の飼い方4/8:2009/05/08(金) 19:24:45 ID:r+Cjgr6z0
 これだけ今、体中が痛くても。死んだのは「獲物」であって、自分でも彼でもない。葬られたのは、
どこにでもいる善良な一般市民。
 ……ああ、そうか。
 そこで男はようやく気づく。自分にとって、世界は、無機物と、「狩る者」と、「獲物」と、
どうでもいいものと、その他の僅かな無害な同族にしか分類されていないのだ。だから人間を
獲物にしてもなんとも思わないし、うっかり食べ過ぎて死なせてしまっても、失敗したなぁ、
としか思わない。「狩る者」は滅多にいないから、あまり気にする必要もない。
 そこに「特別」な存在である彼が含まれたことに、まだ慣れていないのだ。
 「食事」は外でするもの、できれば生活圏から離れた場所で。一度「獲物」にして「食事」を
採った相手は、殺さずに済んでも二度と狙わない、だから、同じ相手を繰り返し食事するのは
初めてなのだ。
 しかも、自ら獲物になろうとした、ちょっと変わった体質だけど、多分人間を相手にするのは。
 −−大丈夫だから、ね?
 緊張にきつく目を閉じ、体を強張らせた彼の、自分よりも小さな体を抱き寄せて、きつく
握りしめられた手を掴んで、自分の背に回させる。
 戸惑いに緩んだ首筋を舐め上げ、尖った犬歯−−正確には吸歯−−をあてがう。薄い背を
押さえた手に、再び彼の体を緊張が支配したのがわかる。
 吸歯がゆっくりと、即効性の麻痺成分を含んだ体液を流し込むのを待つ。
 すぐに効果のあるものだが、事前に相手が何者か知っていて、しっかり怖がっている彼には、
多すぎるくらいで丁度いいだろうと、男にしては珍しく気を回したのだった。
489吸血鬼の飼い方5/8:2009/05/08(金) 19:25:38 ID:r+Cjgr6z0
「っ……。う……」
 背に回されていた手から力が抜け、自分の手にかかる体重が増す。それに男は笑顔になる。
所詮吸血鬼など、食事の前には笑わずにはいられないものなのだ、ようやく獲物にありついた喜びに。
「……っ」
 恐怖がわき起こるほどに、彼の本能は強かったのか、一瞬逃れようと身動ぎする体、しかし
再びあてがわれた吸歯が流し込んだ体液のせいか、ようやく効いてきたのか、だらん、と
押し退けようとした手が垂れる。
 吸歯を、「食事」の深さにまで突き刺しても、反応はない。流れ込んでくる温かく新鮮な血に、
体が震える。
 久しぶりに口にした血に、自分がどれだけ空腹だったのか思い知る。
 血を失っても死なないばかりか、余るほどの特異体質。遠慮のいらない気楽な食事に、男は没頭する。
「……いつまで引っ付いてんだ、重いだろが……っ」
 不快そうな彼の声と共に弱々しく押されて、ようやく我に返る。顔は普段に比べて青ざめては
いるが、それだけだ。話すことも動くこともできるらしい。今まで食事の後にはなかった事に
茫然としつつも体を離すと、彼が倒れそうになったのに驚く。
「……なんだ?頭がくらくらする……」
 すっかり崩れた姿勢を、自分で直すまで見届けてしまった男を、額を押さえたまま彼が蹴る。
なんとなく痛くもないそれに、大袈裟に振る舞うのが礼儀なような気がして、これも男にとっては
珍しいことだが−−身を屈めて蹴られた脛をさすってみせた。
490吸血鬼の飼い方 6/8:2009/05/08(金) 19:27:42 ID:r+Cjgr6z0
「これでもうメシには困らないだろ?わかったらもう人を襲うな」
 顔色が悪く、よろけながらも彼はそう言って、男の自由を奪い、地域社会の平和を手に入れた
はずだった−−のに、男はつい、過去の習慣から、おいしそうな人間を見かけると襲わずには
いられなくなることがある。
 「家」−−彼の狭いアパートに帰れば、「獲物」である彼は、いつでも待っているというのに。
 −−どう言ったら機嫌直してくれるかな……。
 殴られて意識を失っている間に消滅させられてはいないし、「食事」まで用意しておいてくれた。
人外である男からすれば、これはもう許してくれているけれど、プライドが許さないから不機嫌でいる、
程度にしか思えない。
 物語の中の吸血鬼は日の光で溶けてしまうらしいが、そんなに簡単に男は死ねない。開け放たれた
カーテンが部屋の中に西日を素通しさせて、蒸し暑くさえ感じる部屋で、つらつら考えながら
ごろごろと転がる。
 彼には飾った言葉も、偽りの言葉も届かない。
 なんて言えばいいのだろうか。
「床掃除なら間に合ってるぞ?」
 不機嫌な顔で、床に落ちていて邪魔だから踏んでやろうとばかりに、帰って来たらしい彼が、
片足を上げて玄関側の廊下で待機していた。
「お、お帰り」
 慌てて隅へと寄ると、ぞんざいな歩き方で部屋の中央に、提げていたトートバッグを投げ出す。
鋭い目が、振り返り、男を見下ろす。
491吸血鬼の飼い方 7/8:2009/05/08(金) 19:28:50 ID:r+Cjgr6z0
 えーと、な、何か言わなきゃ。
 思うが、気の利いた言葉など、本来言葉など必要のない存在である男には、思いつくはずもない。
「ごめん」
 それだけを言って、頭を下げるのが精一杯だ。
「何がごめん?」
 冷ややかな声が降ってくるのにも、頭を下げたままでいることしかできない。
「君以外を食べたから……。だから怒ってるんでしょう?もう君以外食べない。それでいい?」
 途中憎々しげに口を開きかけた彼は、深々と溜息をつく。
 人外は本気でそう思っているから、これ以上彼が何を言ったところで理解できないし、
彼が納得できなくても男が約束を破らないのなら、それで少なくとも、彼の望む平和は維持される
はずだった。
 叱られた犬のように、実際床に座り込んで、大きな体を小さくして、男は彼を見上げている。
「……わかった」
 不機嫌なままで、苛立ちを抱えたままで、とりあえず頷いたものの、どうにもならなくて
彼は大の字に寝っ転がる。少し前まで一人だった部屋。人ではないし、「食事」の時以外は
死んだように寝ていることが多いから、男が増えたと言っても、気にするほどでもない。普段は
布団カバーでも掛けておけば、家具化して気にもならない。
 今は家具ではなく、人同様に動いている男は、膝で歩み寄って、寝転がった彼を覗き込む。
 なんだ、と彼がいらいらと言う前に、横に転がって、腕を伸ばす。
492吸血鬼の飼い方 8/8:2009/05/08(金) 19:30:20 ID:r+Cjgr6z0
「人間って温かいね〜……」
「当たり前だろ!」
 それを冷たくしたのは、誰だというのだろう。腕を払い除けようとしても、態勢が悪い。
身のこなしは人間と人外では、人外に軍配が上がるのは当然だ。しっかり腕に収まってしまい、
噛みついてやろうか、と牙もないのに彼は脱出方法を検討する。
 ずっとご飯でいてもらうにはどうしたらいいのだろう。
 真剣に男が考えていることも知らずに。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
493風と木の名無しさん:2009/05/08(金) 19:32:04 ID:LpWxRrKO0
>>484
萌えた!元々吸血鬼は好きだし、耽美なのもいいが
こんなへたれで可愛い吸血鬼もいいなー!
494風と木の名無しさん:2009/05/08(金) 20:24:45 ID:Oqhleq5DO
>>484
イイヨイイヨー
495風と木の名無しさん:2009/05/08(金) 20:28:02 ID:Jx3iDbN70
>>480
DMC萌えだー!
返事は「…はい」、これがたまらないよ。ご馳走様でした!
496風と木の名無しさん:2009/05/08(金) 20:34:33 ID:KqXCxir80
>>484
ハァハァハァハァハァハァ…ちょっと人外スレに行ってくる。
497風と木の名無しさん:2009/05/08(金) 23:18:20 ID:9gAZL4nq0
>>480
DMCー!萌 え る!!
ご馳走様です!
498風と木の名無しさん:2009/05/09(土) 01:50:20 ID:pDj6LCGmO
生で一角獣
ねらー鍵盤×四弦
アホとエロあるので、苦手な方はスルーしてください
四弦受書き姐さんに触発されました。後悔はしていない


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
499鍵四1/5:2009/05/09(土) 01:51:36 ID:pDj6LCGmO
その晩、彼は自分のパソコンをいじりながら、またくだらないことを思いついてしまった。
そういえば明日着るのはあの衣装。
思いつくと実行してみたくなってしまうのが性というもの。
ついにまにまと笑みがこぼれてしまう。
どうやって実行に持ち込もうか、そんな計画ばかりで頭の中がいっぱいになった。

翌日、たまたま早めにリハが終わる。
開演まで三時間といったところか。
シャワーを浴び、さっそく衣装に着替える阿倍。その日の衣装はカーキのつなぎだ。
「もう着替えたの?はや〜い」
後ろから間延びした声。振り向けばシャワーを浴びにきた海老がいた。
「なぁなぁ、海老」
好都合とばかりに、着たばかりのつなぎのファスナーをおろす。
「…やらないか」
500鍵四2/5:2009/05/09(土) 01:52:26 ID:pDj6LCGmO
「え?なにが?」
きょとんと不思議そうにこっちを見ている海老。
せっかくツナギの下は何も着なかったのに、と風のように虚しさが襲う。
「…いや、なんでもないです」
「なに?なにやるの?」
当たり前か、知ってるはずなんかないか。
わかっていながらも期待はずれな結果にため息を付きながらファスナーを戻そうとして、ふと気が付く。
自分のしたかったことはこんなことじゃなかったはずだ。
「ちょっと」
海老の手をひっぱって、そのまま一番近いシャワールームの個室へ連れ込んだ。
「な、何?」
「なにやるか教えたげるから」
海老のこめかみに嫌な汗。
なんだか不穏な空気になってきた。
狭い個室に40をすぎた男が二人。
阿倍のにまにました笑顔。
ドアの前に立ちはだかって、逃げることもできない。
501鍵四3/5:2009/05/09(土) 01:52:57 ID:pDj6LCGmO
促されるまま、阿倍のツナギを下ろすと、先端をちろりと舐める。
いつもの行為だ。でも、こんな場所でしたことはない。
誰か来るかも、そう思うと鼓動が早鐘のようになりひびいた。
目をとじ、のどの奥までくわえ込む。
「さっきシャワー浴びたばっかだから」
口元を緩ませて阿倍はそう言い、長い髪をさらさらと弄んだ。
切なそうな呻きと水音、揺れる黒い髪の毛を見下ろして、女のようだと錯覚する。
「ぷぁっ」
苦しくなったか疲れたか、海老が口を離した。
赤い舌から先走りの糸がひくのをみて、阿倍の欲求はさらに高まる。
「休んじゃだーめでしょ」
そう言って小さく笑うと、海老の小さい頭を無理矢理自分の股間へ引き寄せた。
「!むぁっ…」
「早くしないと、誰か来ちゃうよー」
502鍵四4/5:2009/05/09(土) 01:53:36 ID:pDj6LCGmO
許しを乞うように見上げても、口元が阿倍自身をくわえ吸い上げているのだから説得力がない。
手の甲で頬に振れてやると、彼は仕方なく上下の動きを再開した。
舌を絡ませて、時々軽く歯をあてる。
鼻でしか息をすることができないため、自然と荒くなる呼吸。
そんなものすべてを見下ろして、従えさせているような姿に、ちっぽけな支配欲が満たされていく。
「…喉に絡むとよくないね」
言うが早いか、海老の口からそれが抜かれると、その端正な顔に勢いよく飛び散った。
「!!ちょ…」
「わー、かかっちゃったね、俺の分身」
阿倍は満足げに、残りの白濁液とともに自身を彼の髪になすりつける。
海老は力が抜けたのか、その場にへたりこんだ。
503風と木の名無しさん:2009/05/09(土) 01:53:53 ID:GHH8Fe0N0
今回のスレ立てで
ユニコーンは厨ジャンルであることが分かりましたので
くだらんもの投下せずにすっこんでてください
504鍵四5/5:2009/05/09(土) 01:55:47 ID:pDj6LCGmO
「髪につけるとかありえない…」
黒くまっすぐに伸びた髪に精子を浴びたことに抗議の声を上げる海老。
阿倍は悪びれもせず、嬉しそうに彼を眺めてからキスをした。
「いいじゃない。どうせシャワー浴びるんだし」
「よくないよっ」
「俺が洗ってあげよっか?」
「い、い、で、すっ!」
さんざんじゃれあったあと、そろそろ人の気配を感じたのか
我に返った海老は、個室から阿倍を放り出した。
「このままシャワー浴びるからね。も〜、何考えてんの」
「いや、俺は阿倍さんごっこができたからいいんだ」
「はぁ?」
2ちゃんねるなんてやらない海老には何もわからない。
本番前にしてひとつ達成感が生まれてしまった阿倍は、意気揚々とシャワー室をあとにした。
505風と木の名無しさん:2009/05/09(土) 01:56:49 ID:pDj6LCGmO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
四弦かわいいよ四弦


>>503
こりゃまた失礼
506風と木の名無しさん:2009/05/09(土) 02:55:17 ID:AiSdA5KO0
>>505
503は相手しなくていいよ。

まあ、しかし、一角獣萌えしてる人が多いのはわかったw
自分は萌えてないけど世代だしな。
507生白ぬこ 1/6:2009/05/10(日) 02:09:00 ID:yDEqpQ7NO
生もの、最近調子よくないけれど、今夜ばかりは祝いたいネタ。
2747で。47☆オメ!

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

いつもはちくちく言ってくる後輩も、今日ばかりは「おめでとう」と言った。
勿論この図体のでかい後輩は自分のことのように嬉しそうに、もう大騒ぎだ。
「穂脚さん、穂脚さん!」
「んーだよ、ちから!」
「はい、おめでとうございま、っすー!!」
高々とビール缶を掲げられると、穂脚には正直届かない。全く、わかってることだろうに。
「へいへい、お前もお疲れさん、ありがとな」
本当は寒風するつもりだったんだが、とその言葉は己の頭の中で呟いた。
いやいや、左肩が抜けそうだ。久しぶりに渾身の出来だった、そのツケが今始まっている。
最後の最後ガス欠なんて決まらない、とは思うが、まあそれも自分らしいかと思わなくもない。
そのおかげで斧寺には、自分の尻拭いを押し付ける羽目になってしまったんだが。
「うあー、いい飲みっぷり」
「俺明日フリーやもんね!」
「ずっるい」
「おめーは明日もスタンバっとけ」
もう何本目かわからない缶を一気にあおる。
508生白ぬこ 2/6:2009/05/10(日) 02:10:39 ID:yDEqpQ7NO
ホテルの床の上には、多分自分が殆ど飲み干した亡骸どもが、累々と転がって鈍く光っていた。
それにしても気分は良い。何ヶ月ぶりだ、この気だるい爽快感は。
さっきから何度も、ポケットの携帯電話が震えていた。おめでとう、のメールも鳴り止まない。
穂脚は片手にビール、片手に携帯でそのどちらをも薄目で眺めた。
部屋飲み相手の斧寺はかなり酔いが回ったのか、正面のベッドに突っ伏して笑っている。
「お祝い、いっぱいっスね」
「おー」
「地元はつしょーり〜」
「へへへ、んだな」
プロ入りしてからもう何年にもなるが、この土地で勝ったのは実は初めてだ。
そう思うと、数ヶ月ぶりの爽快感よりもデジャヴの逆のようなものが、不意に穂脚のこめかみを閉めた。
「?」
顔をしかめた穂脚に、斧寺は端正な顔を緩やかにして、人のよさそうな笑みで問いかける。
ぼったりしたホテルのシーツに、その逞しい身も優しい笑みも存分に埋まっている。
周囲は静かで、まるで全くいつものことのようで、穂脚を余計混乱させた。
電話の中に文字盤が光る。「お疲れさま、おめでとう!」と、何てことないメッセージがまたひとつ。
509生白ぬこ 3/6:2009/05/10(日) 02:11:58 ID:yDEqpQ7NO
ただその差出人が、ここにいないことが、それだけが非日常だった。
「…何でもねーよ」
別に、今日の歩主のサインが気に入らなかったことはない。
それにまた、別にその構える姿勢に違和感をおぼえていたわけでもない。
ただ、お前はそこにいなかった、だけだ。
「メール、糸田川さんすか?」
「…」
斧寺は、必要ないところで勘が良い。それ以外は全然役に立たないくせに、と穂脚は思っている。
むしろ不要なそのセンサーは、隠しておけば良いのに隠せないぶん、時折彼の立場を不利にもする。
全く。穂脚の何かがざらついたのを、肌が粟立ったのを、多分斧寺は知らない。
「…おう、おめでとうって」
「あっちは調子どうなんすかねぇ」
「そこまで知るかよ、書いてねーもん」
パタンと携帯をまた、もとの二つ折りに戻した。部屋の優しいだけの明かりは反射せず、写りこむだけ。
お前がいないだけだ。別に。
それだけで簡単に、俺は欲しかったものを手に入れた。何だかあっけない。
「…あっけねぇ」
「はい?」
まさか、お前がいないなんて思ってなかったのが本音。怪我なんて、お前には無縁かと思ってた。
510生白ぬこ 4/6:2009/05/10(日) 02:14:50 ID:yDEqpQ7NO
丈夫さだけが取り柄、と何度も揶揄して笑ったことがある。その度うっせ、と三白眼で睨まれたことも。
浮き沈みするのは穂脚の肩の具合だけで、糸田川はいつでもそれを受け止めている、はずだった。
そう勝手に、穂脚はどこか思い込んでいたと、それを今思い知っている。
「独り言」
なあ、俺にここで何とか勝たせたくて、お前まで四苦八苦していたのはずっと知っていた。
だから何だか変な気分だ。本当に落ち着かないんだ、あっけない。
落ち着かないということを、逆に突きつけられているような気がする。お前がいない、何でだと。
お前がいない、それだけだという風には、何故かとても思えない。
穂脚は、たった、と笑えない。
「で、穂脚さん返事はー?」
誰も悪くない話、誰のせいでもない話。
だが、他人に立ち入って欲しくもないし触れて欲しくもない。俺と、お前の話についてだ。
「…後で出す」
ゆっくり思い知っている。自分の無意識について。
それから、今言えないあらゆることについて。
「へぇ?」
「呑んでんだもんよ、今変なことしか書けねって!」
511生白ぬこ 5/6:2009/05/10(日) 02:19:11 ID:yDEqpQ7NO
ざらついたものを、穂脚は隠した。
だからお前がいないなんて、変な気分だ。
お前抜きで得たものがここに、確実にあるなんて。
「…」
左肩を撫でさする。そこに呑みかけのビールは残っている。
穂脚がげらげら笑ってまた、利き手の缶を空にするのを、斧寺もまた笑って見ていた。
その視線はよくわかった。だが、虚空を見て穂脚が笑ったのは、多分気付かれていなかった。
虚空には本当に何もなかった、けれど穂脚は笑っていた。
欲しかったものは貰っておく。誰にも渡さない、お前にもだ。
ただそれとは逆に、突きつけられた話がある。
無意識の下の風景が、めくれ上がるように瞼の裏にフラッシュバックした。
俺は何時からか無意識に思い描いていた。必ずお前がいる風景を。
ずっと思っていた、欲しかった勝利の瞬間手を掲げるのは、俺にはお前だと思っていた。無意識に何度も。
何度も何度も、俺にはお前だと。
俺には、お前なんだと。
512生白ぬこ 終わり:2009/05/10(日) 02:20:18 ID:yDEqpQ7NO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

早く27も帰ってきて欲しいなあ。
513風と木の名無しさん:2009/05/10(日) 02:44:19 ID:1Pv2f+EGO
>>507
姐さんいつもありがとうございます…!
リアルタイムで切ないわ禿げ萌えたわですよ
同じこと27も思ってたのかな 早く帰ってこーい!
514ボカロ、KAITO×がくぽ 捨て犬のように 3:2009/05/10(日) 20:37:07 ID:R23oiAJv0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |うわー、携帯で書き込んだとき名前入れ忘れてすみません!
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|三話目です。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |

515ボカロ、KAITO×がくぽ 捨て犬のように 3-1:2009/05/10(日) 20:38:08 ID:R23oiAJv0
「がくぽ、KAITO、ただいまー。あれ?」
もうだいぶ遅くなってしまった。早くKAITOとがくぽの練習を行いたいからと早く抜けてくるつもりが、十一時という遅さになってしまった。
これでは完全に歌の練習は出来ない。
そんな折、目の前を見てみると、ぴしゃりと閉ざされた和室のふすまの前に、ぽつんと座るKAITOの姿が。
表情は複雑で、まるで犬が尻尾を垂れて座ってるように見えた。
「ねぇがくぽ許してよ〜」
「どうしたの?」
あわててそばによって見れば、がくぽがいない。
いつもKAITOのそばにいるがくぽが、今日いきなり和室に篭城してしまったようだ。
「ごめんってばー、もうしないからー!」
「KAITO…何したの?」
聞こうとすれば、KAITOが言葉につまり。がくぽに聞こうとしても、答えてくれない。
要は二人の問題ということか、と、ため息をつくと、食事の用意を始めた。
「がくぽ、出ておいで。ナスの味噌煮作ってあげるから」
「…」
「がくぽ」
「わかった」
ナスで釣ればひょいと出てくるのが、がくぽのまだ幼稚なところだ。
出てくる時に、尻尾を振っているKAITOにじろりと一瞥すると、いそいそとテーブルについた。続いてKAITOもがくぽの隣に座って、機嫌を伺っている。
(何をしたんだろう…)
見当もつかないながらも、ちゃっちゃと料理を仕上げていく。テーブルの真ん中にナスの味噌煮を置いて、あとは適当に買ってきた惣菜を並べる。
アイスも買ってきたから、あとでKAITOにあげよう。
「いただきまーす」
マスターの声を合図に、皆がいっせいに食べだす。
相変わらずがくぽはなすばかりで白飯が進んでいない。
「あ、あのさ、がくぽ、さっきのこと許し」
「許さんぞ。マスターにも言いつける」
「えっ、そっ、それは…ちょっと…!」
一体何を怒ってるのだというのだろう。
まったく分からないマスターは、自分からもう一度聞いてみることにした。
「何があったの?」
「かいとがおしたお」
516ボカロ、KAITO×がくぽ 捨て犬のように 3-2:2009/05/10(日) 20:39:02 ID:R23oiAJv0
その瞬間、KAITOの手ががくぽの口をふさいだ。
「わーっ、わーっ!!」
言えない、言えるはずがない。
KAITOは、はあ、とため息をつくと、手をはずした。
「あのな、かいとがお」
「だめーっっ!!」
またもKAITOの手が口をふさいだ。
「?」
よく状況が分からない、と、マスターが首をかしげる。
優しそうな目が、すっと少し鋭くなった。
とりあえずがくぽの言いたいことは、KAITOに何かされたということだ。
「KAITO、がくぽに何したのか言ってごらん?怒らないから」
静かに、しかし威圧感のある笑顔で、KAITOに話を切り出した。
さすがにその笑顔にはぞっとしたのか、ぽしょぽしょと語りだした。
「えっと…その…昼に公園でですね…」
「接吻した挙句に押し倒してきたのだ。押し倒したのはこの家でじゃ。マスターも呆れとるだろう」
言いたいことは全部がくぽが言ってしまった。
マスターは心底驚いた様子で、しばらく脳みその回転が止まったといったふうだった。
「っ…ぇ?」
声にならない。
願わくば聞き間違いであれと、もう一度がくぽに聞き出す。
「だから、かいとに押し倒されたのじゃ。服も剥がれてな。美振があって助かったが」
「KAITO君」
その声はとても静かだった。先ほどの威圧感よりも更に威圧感をかもし出していて、正直両肩を諭すように掴まれたKAITOは蒼白だった。
「ご。ごめんなさいっ」
「あのね、がくぽは男なの。分かるかな。どんだけ口紅してようが髪が長かろうが男なの。分かるよね?」
「は、はい」
ただその一言言うのがやっとだった。
マスターのオーラには、大事な一人息子に手を出しやがってこの野郎と書かれている気がして、何もいえなかった。
「君が抱いてるのが性欲だけなのか分からないけど、男同士でそういうことしちゃだめなんだよ。ボーカロイドにも性欲ってあるのかな?
恋をするなら他のボーカロイドつれてこようか?MEIKOとかいいかもね。とにかくがくぽは男なの。だから手を出しちゃだめだよ。キスもだめ、男同士なんだからね」
「は、はいい〜…。でも僕、がくぽの事は性欲発散の対象とはみてな」
517ボカロ、KAITO×がくぽ 捨て犬のように 3-3:2009/05/10(日) 20:40:31 ID:R23oiAJv0
「や・く・そ・く・だ・よ?」
「…はい…」
これで下手に手を出せなくなった…。
とはいっても、KAITOとしてはがくぽと一緒にいられればそれでいい。
がくぽがまた一緒に寝てくれるかは分からないが、反省の念を込めて一人で眠ることにした。
でもやはり一人寝は寂しそうだ。
食事を終えると、KAITOはソファに毛布を敷いた。
あちらの和室では、がくぽとマスターが布団を敷いている。マスターは相当疲れていたのか、食器も洗わないですぐに寝てしまった。
「…」
きっとがくぽも寝ているだろうと目を閉じると、唐突に胸の上に枕が投げられた。
「!?あ…がくぽ?」
「眠い…寝かせろ」
どすんとそのまま胸に倒れてきて、思わずさっき食べたアイスとナスの味噌煮が口から出てくるかと思った。
「がくぽ、ちゃんと布団で寝たほうが…」
「ん…嫌じゃ…。布団はかいとでいい…」
布団はKAITO『が』いい、じゃなくて布団はKAITO『で』いい、というあたりに何か引っかかるものを感じたが。
寝ぼけてはいるみたいだが、また寝に来てくれたのだ、手厚く歓迎しよう。
ばさりと毛布を羽織ると、がくぽを腕に抱いて眠った。

「KAITO」
「うん…あ。おはようございます…」
頭の上にはマスターの姿。
にっこり笑っているが、どことなく雰囲気が怖い。
と、腕の中を見ると、すぴすぴ眠るがくぽの姿があった。
「がくぽに何もしてないよね?」
「は、はいっ、違うんです、これは寝てたらがくぽが来たから…!」
思わず起き上がったところで、がくぽの頭の位置がずれてソファに落ちた。
そこでがくぽも目を覚まし、大きく伸びをして起き上がった。
「…なんでここで寝ているのじゃ」
「覚えてないー!?」
何も疚しいことをしていないのに、一人わたわたと焦るKAITOに、
ぺたぺたと自分の体を触って異常がないか確かめるがくぽ。
518ボカロ、KAITO×がくぽ 捨て犬のように 3-4:2009/05/10(日) 20:41:11 ID:R23oiAJv0
うん、とひとつうなずくと、マスターに向かってがくぽが説明をしだした。
「体で違和感は感じない。何よりこの服を脱がせるのは大変だからのう。大丈夫じゃろう」
(服?ああ、なんか凄いボディスーツのことか)
それを聞いて、マスターの怒りも収まったらしく、がくぽの頭を撫でながら、KAITOに謝る。
「疑ってごめんね、がくぽが寝ぼけてそっち行ったみたいだ。さて、僕はこれから仕事だから、二人仲良くしてね」
あわただしく支度をすると、手を振ってマスターは出ていく。
今日こそ早く帰ってきて歌の練習が出来るだろうか。
「マスターは忙しいぞ。そろそろますたーあっぷだからとかで意味は全く分からないが、そんな言い訳をされた」
マスターアップ?さすがに専門用語は分からないが、たぶんそれで時間をとられてるのだろう。
歌の練習はマスターがいないといまいち分からないし、と、がくぽを見る。
紫の髪を揺らして、こちらをがくぽも見る。
「散歩に行くか」
「そうだね。昨日行った公園に行く?」
その問いに、がくぽは、ふむ、とうなずいて。そうしよう、と応えた。
あそこは陽だまりが出来る。
ブランコに乗って少し会話しているだけで、気分がすっきりする。
519ボカロ、KAITO×がくぽ 捨て犬のように 3:2009/05/10(日) 20:41:58 ID:R23oiAJv0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 携帯のお世話になることにはならなくて
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )すみました。
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
520天知 鐘勝 春の来る頃:2009/05/10(日) 22:40:01 ID:DrR6kTKRO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

死にネタになります
521天知 鐘勝 春の来る頃 1/8:2009/05/10(日) 22:43:46 ID:DrR6kTKRO
年が明けてから、影勝は寝たり起きたりの日が続いたが、3月に入り、とうとう枕が上がらぬ容態になり、米沢の城内は重苦しい空気に包まれていた。江戸屋敷にいる嫡子の定活からも、容態を案じる書状が矢継ぎ早に届いている。
 今日は幾分気分がいいと思いながら、影勝はうとうとしていたが、そうしていると昔のことがやけに思い出された。歳をとるということは、過去を懐かしむ余裕ができるということなのだろうか。それとも、生の終わりが近いから、過去を振り返りたくなるのだろうか。
 あれは怒るだろうか、と考える。先に逝った鐘継は、きっと自分を待っているだろう。そして小言を言うに違いない。一体どうしてあなたという人は、こんなに早くにやってくるのです、と。そう言う鐘継の眉間による皺まで想像できておかしかったが、早くもあるまい、と思う。
522天知 鐘勝 春の来る頃 2/8:2009/05/10(日) 22:47:14 ID:DrR6kTKRO
五つ年下の鐘継のほうが、よほど早くに逝ったのだ。
お前が逝って、なお三年も生きた。充分ではないか。
 思えば鐘継は、まだ元服もしていない時分から、わたしは秋影さまより先に死にますよ、と言っていたものだ。
わたしより五つも年下ではないか、と言うと、関係ありません、と当たり前のような顔をしていた。
秋影さまを看取るのは耐えられませんし、追い腹を切る度胸もありませんから先に死ぬ方が楽です、と、十かそこらの子供が言っていた。
そして結局そのとおりに先に逝ったのだから、有言実行もいいところだ。まあ、あれは我儘な男だったから、と思ったが、一番我儘だったのは、自分だろうとも思った。
523天知 鐘勝 春の来る頃 3/8:2009/05/10(日) 22:49:42 ID:DrR6kTKRO
余禄と呼ばれたほんの幼い頃から仕えてきた鐘継は、それこそ子が親を慕うように自分の後をついてきた。
その眼差しに恋うる気持ちが宿り始めたのは、いつからだったろうか。欲しいと眼差しで、態度で、そして言葉で告げてきた時があったが、結局それに応えることはできなかった。
鐘継だからではない。誰に請われても、自分は誰の物になることもできなかった。
人質同然に香須賀山城に入った幼い頃は、この身は植田永尾の為にあったし、長じてからは植杉の為にあり、越後の為にあった。
心も、身体も、己の意思で自由になるものではなく、自由にすべきでもなかった。鐘継も、それは分かっていたのだろう。じっと忍び、ただ側にあることだけを望んだ。
それではせめて出自が低いことを侮られぬようにと、直衛の娘が未亡人になったのをいいことに、早々に婿入りさせたが、特に喜びもせず、ご命令であれば、とだけのそっけない態度だった。
524天知 鐘勝 春の来る頃 4/8:2009/05/10(日) 22:53:14 ID:DrR6kTKRO
年上の妻には、当主は直衛の姫だといわんばかりの四衣田衆がついていたし、気苦労もあったことだろう。
後に、お千は何よりも植杉が大事で、女子ながらに武士のような心持です、
と朗らかな顔で妻というより同士だと笑っていたが、
果たしてそこで安らげていたのかは分からなかった。
鐘継は歳若い息子にも娘にも先立たれ、跡継ぎもなく、
わたしの死後は直衛の禄はお返しいたしますと早々に直衛家の断絶を決め込んでしまったが、
今思えば、それはささやかな意趣返しだったのかもしれない。
そしてさっさと死んでしまった。
525天知 鐘勝 春の来る頃 5/8:2009/05/10(日) 22:56:40 ID:DrR6kTKRO
六十歳での死は、短いとは言えないのかもしれないが、
生来頑健だった鐘継が、大方の予想よりも早くにその生を終えたのは、
やはり若い頃からの激務が祟ったのだろうとも思う。
植杉の家中で絶対的な立場を築き、内政にも外交にも八面六臂の活躍ぶりだった。
それでも、と思う。
鐘継が一番腐心したのは、わたしに不満が集まらない仕組みを作ることだった。
家中で実権を握り、その配下を徹底して四衣田衆で固め、傲慢だとまで陰口を叩かれても、
そんなことはどうでもいいと、つらりとした顔をしていたが、
鐘継への不満が集まるのに反して、わたしには敬慕が集まった。
全ての不満や侮蔑をその身に集め、わたしの前に立っていたのだ。
鐘継をあれほど自由にさせて甘すぎる、と幾度となく言われたが、本当に甘いのはわたしではなく、鐘継だった。
だから結局、鐘継は全てを捨て、その身を植杉に、そして越後に、あるいは米沢に捧げた。
そうさせたのは、わたしだ。

526風と木の名無しさん:2009/05/10(日) 22:58:15 ID:wmbjtQVs0
支援
527天知 鐘勝 春の来る頃 6/8:2009/05/10(日) 23:01:14 ID:DrR6kTKRO
 あれは気づいていただろうか。
わたしは誰の物にもならなかった。
そして、鐘継のことも誰の物にもさせなかった。
 気づいていただろう、きっと。わたしに甘い男だったから。
そして、苦笑いしていたに違いない。

春の夜だった。
風が強く吹いていて、せっかくの桜も散ってしまうだろうと惜しんでいた夜。
その夜に鐘継が寝所に入るのを許した。
ただ一度だけの夜だった。
あの夜だけは、わたしの全ては植杉の物でも越後の物でもなく、鐘継だけの物だった。

 この魂が地上から離れたら、
わたしはようやっと誰かの物になることができるのだろうか。
528風と木の名無しさん:2009/05/10(日) 23:01:44 ID:v4GNOdLq0
支援?ついでにスレ立て行って来る
529天知 鐘勝 春の来る頃 7/8:2009/05/10(日) 23:03:51 ID:DrR6kTKRO
 誰かが手首に触れた。医師かもしれない。
まわりで聞える声は、清乃か、定活か。
いや、定活は江戸屋敷にいるはずだ。
ふわふわと身体が浮くような気がしてひどく眠い。
 御簾を潜る気配がする。

「秋影さま」
 幼い子供の声だった。
「桜が咲いています。一番日当たりのよい場所の木が。
秋影さまは、桜がお好きでしょう。」
「うん。では見に行こう、余禄。」
「はい。」
 香須賀山ののどかな景色の中に、早咲きの桜が見える。
ああ、きれいだ。春が来る。光の溢れる季節が。
光の中で、余禄が笑っていた。桜と共に。

530天知 鐘勝 春の来る頃:2009/05/10(日) 23:05:37 ID:DrR6kTKRO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

帰省くらって携帯でやったら大変なことに…
分割も間違えましたorz
531風と木の名無しさん:2009/05/10(日) 23:12:58 ID:v4GNOdLq0
ごめん、スレ立て無理だった。 >>1だけ置いていくので誰か頼みます
.   ___ ___  ___
  (_  _)(___)(___)      / ̄ ̄ヽ
  (_  _)(__  l (__  | ( ̄ ̄ ̄) | lフ ハ  }
     |__)    ノ_,ノ__ ノ_,ノ  ̄ ̄ ̄ ヽ_ノ,⊥∠、_
         l⌒LOO (  ★★) _l⌒L ┌'^┐l ロ | ロ |
   ∧_∧| __)( ̄ ̄ ̄ )(_,   _)フ 「 | ロ | ロ |
  ( ・∀・)、__)  ̄フ 厂  (_,ィ |  </LトJ_几l_几! in 801板
                  ̄       ̄
        ◎ Morara's Movie Shelf. ◎

モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
なにしろモララーのコレクションなので何でもありに決まっています。

   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |[]_||  |      | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ]_||
   |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   すごいのが入ったんだけど‥‥みる?
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    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    | | |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    (__)_)
前スレ
モララーのビデオ棚in801板47
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1237834835/

ローカルルールの説明、およびテンプレは>>2-9のあたり

保管サイト(携帯可/お絵描き掲示板・うpろだ有)
http://morara.kazeki.net/
532風と木の名無しさん:2009/05/10(日) 23:56:44 ID:b5EkymIJ0
>>531
行きます
533532:2009/05/11(月) 00:04:07 ID:71psXJ320
すいません、無理でした。
誰か頼みます。
534風と木の名無しさん:2009/05/11(月) 00:08:11 ID:pxAETvqA0
行って来る
535534:2009/05/11(月) 00:09:35 ID:pxAETvqA0
すまん駄目でした。次の人お願いします
536風と木の名無しさん:2009/05/11(月) 00:20:03 ID:BsvOrjw30
おk
いってくる
537風と木の名無しさん:2009/05/11(月) 00:23:56 ID:BsvOrjw30
モララーのビデオ棚in801板48
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1241968859/

どうぞー
538風と木の名無しさん:2009/05/11(月) 00:27:22 ID:GyFF6/HR0
>>537
GJ乙です!
539風と木の名無しさん:2009/05/11(月) 19:07:12 ID:fzWdZPVm0
>>537乙です!
540風と木の名無しさん:2009/05/12(火) 21:27:08 ID:U8NJTVgpO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

丹タ刊な二人です。
モデルはいますが、ちゃんと調べず、勢いで書いたので、
好きな二人で想像して頂けたら。
541ゆめ/うつつ 1/2:2009/05/12(火) 21:31:06 ID:U8NJTVgpO
フィールド場に自分とその人以外、誰もいなかったから
これが夢だとすぐに気がついた。

フィールドを照らす照明。
眩しい明りの帳の先に、深い藍色の空。

背の低い自分よりも、更に少し背の低いその人は、
いつも通り自分の左側に立って、ホ一ム.ベ―スの方向を見ていた。
見慣れた景色だ、と安心したのも束の間。
ついこの前、彼の復帰に長い時間を要すると聞いた時の、重たい衝撃を思い出す。

だから、これは夢だ。
もう一度、認識する。

彼の名を呼んだ。
彼はちらりと目線をこちらに向けた。
夢なのに、それだけで自分の顔が自然と緩む。

だから自信を持って誓った。

「任せてください」
彼はいつもの様に表情ひとつ変えない。
でも聞いてるのがわかる。
ずっと近くにいた。

「大丈夫ですから。だからしっかり直して戻って来てください」

やはり彼は表情ひとつ変えない。
だが。
彼の唇がかすかに開いた。

542ゆめ/うつつ 2/2:2009/05/12(火) 21:46:06 ID:U8NJTVgpO
目の前には白い天井しかなかった。

あれ、ついさっきまで。もう一度彼の名を呼んだ。
目の前には、やはり天井。
はっとして、誰かに見らてれるわけでもないのにうつ伏せになって、シーツに顔を押し付ける。
…夢だった…。夢の中とはいえ…。
会えたことを嬉しく思う自分が、大人げなく…恥ずかしかった。

顔を上げると、チカチカと光るものに気付く。枕元に置いてあった携帯だ。
手を伸ばして画面を見ると、つい先ほど夢で会った、その人の名が光っていた。
慌てて体を起こし、通話のボタンを押した。
一体何故。いつ。
なぜか正座をしながら、彼が出るのを待つ。
ふと「未明の時間帯だ」と気付いた丁度その時、呼び出し音が途切れた。

「わ…、あの、すみません!」
反射的に謝ってしまった。
夢で会ったからとはいえ、寝惚けていたとはいえ、安静にしなければいけない人に対し、
こんな時間に電話をかけるなんて非常識にも程がある。

目を瞑り、叱咤を、もしくは無言のまま切られることを覚悟した。
だが相手は眠そうな声で一言呟いた。

「ん、任せる」

そしてすぐに、通話が切れた。
543ゆめ/うつつ 3/3:2009/05/12(火) 21:50:32 ID:U8NJTVgpO
耳から携.帯を離し、呆然と液晶画面を眺めた。
まさか、彼も同じ夢を…。

「わーっ!」
自分のそんな考えに慌てて、再びシーツに顔を埋めた。

彼が戻って来たら、確認してみようか。
…絶対聞けないだろうけど。

携.帯を握ったその手に、ぎゅっと力を込めた。
544風と木の名無しさん:2009/05/12(火) 21:54:13 ID:U8NJTVgpO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
改行規制かかったので、ナンバリングをミスりました。すみません。

本音を言えば、すぐにでも戻って来て欲しいんだ…!
545風と木の名無しさん:2009/05/12(火) 22:00:42 ID:w6aWBlx40
うちの二夕刊にも去年こんなことがあったなとか思ってほっこりした。
二夕刊てなんか特別な繋がりがありそうな感じしますよね。
そちらの彼が早く復帰できますように。
546風と木の名無しさん:2009/05/12(火) 22:38:33 ID:GgzNpDsN0
540<うわぁ・・これはもしやあのやんごとなきお方のことですか!
萌え泣きました!GJ!
547風と木の名無しさん:2009/05/13(水) 01:57:11 ID:ePjNvQ2H0
>>520
GJ!泣けた。
あちらでは平和で幸せになれると良いな…!
548風と木の名無しさん:2009/05/13(水) 03:33:23 ID:Wpt1vP1c0
>>520
せつなくてきれいな話ありがとう
泣きそうだ
549車餅 「それは突然、嵐のように」 始:2009/05/13(水) 17:52:24 ID:RwL85j2FO
生注意



記念日をめってことで、8円車餅夫婦設定パロ。設定は某板からお借りしました。素敵な設定を考えてくれた姐さん方に捧げますm(_ _)m


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
550車餅 「それは突然、嵐のように」 1:2009/05/13(水) 17:53:15 ID:RwL85j2FO
澄んだ青空の下、真っ白なシーツが静かに揺れる昼下がり。ようやく大半の仕事を片付け、急須と湯呑みを乗せたお盆を置いて縁側に腰掛ける。
「疲れた…」
炊事、洗濯、掃除。
ごく当たり前の事ながら、いざ自分でやるとなるとここまで疲れるものなのか…これを何年何十年と、文句も言わずに続けているお袋を、改めて凄いと思う。
思い返せば、こんな主婦生活を送るようになったのはいつからだったのか。あまりにも突然に、まるで嵐にあったかのように巻き込まれていた。最初こそ戸惑ったし、急に巻き込まれた事に腹もたったが、何時の間にか今の生活を自然に受け入れていた。どうして俺は…

どたどたどた

ぼんやり青空眺めながら思考を巡らせていると、玄関から大きな足音が響いてきた。きっと、件の『嵐』のものだ。

551車餅 「それは突然、嵐のように」 2:2009/05/13(水) 17:54:04 ID:RwL85j2FO
「よ」
案の定やってきた『嵐』は、片手に紙袋をぶら下げニコニコと笑っていた。
「星之さん…あんた仕事は…」
「休憩だよ休憩。目と鼻の先に家があるんだし、家で休んだ方が落ち着くだろ。つうか、星之さんはやめろよな。お前も『星之』なんだからよ」
それが当たり前であるかのように、寄せられくる頭を手で抑え、顔ごと視線をそらす。
「…さっさと帰ってください」
「そういうなよ。おまえの好きな団子買ってきたんだし。みたらしたっぷりかかったやつ」
つい好物をちらつかされ顔を戻せば、隙は見逃さないとばかりに唇を重ねられる。触れるだけの、軽い口付け。
「…ちょっと」
「いいじゃねぇか。おやつぐらい」
「おやつって…あんたねぇ」
「夜までお預けくらうんだ。こんくらい多目にみろよ」
先程とは違う、深い深い意味を含ませた笑顔に、顔が一気に熱くなる。
「星之さん…」
熱くなった頬に、冷たい手がそえられた瞬間…
552車餅 「それは突然、嵐のように」 3:2009/05/13(水) 17:55:39 ID:RwL85j2FO
『『ただいま〜』』

玄関先から元気な子供の声と、こちらに向けて走ってくる音が届いた。
「…おいおい」
ずるっと漫画のように星之さんがこけると、背中にどんっと小さな体が抱きついてくる。
「しゅうさんただいま!」
「おかえり、カン」
振り返れば、肩に乗せられた小さな頭。その頭越しには、やはり小さな頭が見えてなんとも複雑な表情をして
「オヤジ…わり」
「…気にすんな、じぇりー…」
小学生らしからぬ気遣い?を見せた。
「ねえしゅうさん、きょうのおやつは?」
「台所の戸棚にカステラ、あと冷蔵庫にオレンジジュースが」
「おっさきー!」
言い終わる前に、じぇりーが台所に向けて駆け出す。
「あーじぇりーずるい〜!」
慌てて、かんも後を追いかけどたどたと走っていった。
553車餅 「それは突然、嵐のように」 4:2009/05/13(水) 17:57:00 ID:RwL85j2FO
「…はああ」
残されたおっさんからは、大きな溜め息。
「昼間から悪さしようとするからですよ」
「だってよぉ…」
「それより、俺はまだおやつ貰えないんですか?」
指差した先には、忘れ去られそうになっていた紙袋がぽつんと置かれている。
「へ?」
「お茶、いい加減冷めちゃいます」
お盆に乗せた湯呑みを1つ取り、とくとくとお茶を注ぐ。…お盆の上湯呑みは、形が同じ色違いの物が2つ。

『俺のとこに来いよ』

嵐のように連れ去られて、子供までこさえられて。今では、この人が来るだろう時間に合わせて、お茶を入れて待っている。どうして、なんで。あの日からずっと自分に問いかけてきた。

あの嵐に、心地いい笑顔に、一瞬に身も心も攫われてしまったから。

「なんだよやっぱり俺のこと待ってた」
「調子乗んなおっさん」
飛び付いてくるおっさんに、注いだばかりのお茶を、顔面目掛けてぶっかける。
随分前に出した答えを認めるにはこそばゆく、未だに悪態ばかりついてしまうけど…

今が幸せだから、まあいいか。
554車餅 「それは突然、嵐のように」 終:2009/05/13(水) 17:59:17 ID:RwL85j2FO
勢いで書いたからグダグダで申し訳ない(´・ω・`)団子は近所の761屋購入(番犬4匹いるんだぜ)

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
555風と木の名無しさん:2009/05/13(水) 21:29:29 ID:AGdLQBl70
本当にグダグダだな
556風と木の名無しさん:2009/05/13(水) 22:05:22 ID:Pp7DpYMH0
だな
557風と木の名無しさん:2009/05/13(水) 22:18:39 ID:W5TrCfmF0
作品投下の皆さん、色々な萌えをありがとう
次スレでも新たな萌えに出会えますように

次スレ
モララーのビデオ棚in801板48
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1241968859/
558風と木の名無しさん:2009/05/13(水) 22:35:48 ID:XZyHa1ADO
なんだこの簡素な文字レスは、と思ったらただの容量チェックか
559風と木の名無しさん
>>549
8円かー。懐かしくてほっこりしたよー。ありがとう。
近所の団子屋(犬4匹飼ってる)がツボったw