モララーのビデオ棚in801板42

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1風と木の名無しさん
.   ___ ___  ___
  (_  _)(___)(___)      / ̄ ̄ヽ
  (_  _)(__  l (__  | ( ̄ ̄ ̄) | lフ ハ  }
     |__)    ノ_,ノ__ ノ_,ノ  ̄ ̄ ̄ ヽ_ノ,⊥∠、_
         l⌒LOO (  ★★) _l⌒L ┌'^┐l ロ | ロ |
   ∧_∧| __)( ̄ ̄ ̄ )(_,   _)フ 「 | ロ | ロ |
  ( ・∀・)、__)  ̄フ 厂  (_,ィ | 
                  ̄       ̄
        ◎ Morara's Movie Shelf. ◎

モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
なにしろモララーのコレクションなので何でもありに決まっています。

   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |[]_||  |      | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ]_||
   |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   すごいのが入ったんだけど‥‥みる?
   |[][][]._\______   ____________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |[]_|| / |/    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.||  |[]_||
    |[][][][][][][]//||  | ̄∧_∧     |[][][][][][][][].||  |  ̄
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ( ・∀・ ) _ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.||  |
   |[][][][][][][][]_|| / (    つ|8l|.|[][][][]_[][][]_.|| /
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    | | |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    (__)_)
前スレ
モララーのビデオ棚in801板41
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1221756804/

ローカルルールの説明、およびテンプレは>>2-9のあたり

保管サイト(携帯可/お絵描き掲示板・うpろだ有)
http://morara.kazeki.net/
2風と木の名無しさん:2008/10/16(木) 21:24:13 ID:3FU+Er+y0
★モララーのビデオ棚in801板ローカルルール★

1.ノンジャンルの自作ネタ発表の場です。
書き込むネタはノンジャンル。SS・小ネタ・AAネタ等801ネタであれば何でもあり。

(1)長時間に及ぶスレ占拠防止のためリアルタイムでの書き込みは控え、
   あらかじめメモ帳等に書いた物をコピペで投下してください。
(2)第三者から見ての投下終了判断のため作品の前後に開始AAと終了AA(>>3->>7辺り)を入れて下さい。
(3)作品のナンバリングは「タイトル1/9」〜「タイトル9/9」のように投下数の分数明記を推奨。
   また、複数の書き手による同ジャンルの作品判別のためサブタイトルを付けて頂くと助かります。

※シリーズ物・長編物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
※感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬はほどほどに。
※「公共の場」である事を念頭にお互い譲り合いの精神を忘れずに。

相談・議論等は避難所の掲示板で
http://s.z-z.jp/?morara
3風と木の名無しさん:2008/10/16(木) 21:24:54 ID:3FU+Er+y0
2.ネタ以外の書き込みは厳禁!
つまりこのスレの書き込みは全てがネタ。
ストーリー物であろうが一発ネタであろうが
一見退屈な感想レスに見えようが
コピペの練習・煽り・議論レスに見えようが、
それらは全てネタ。
ネタにマジレスはカコワルイぞ。
そしてネタ提供者にはできるだけ感謝しよう。

  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  | ネタの体裁をとっていないラッシュフィルムは
  | いずれ僕が編集して1本のネタにするかもね!
  \                           | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| . |
                               | | [][] PAUSE       | . |
                ∧_∧         | |                  | . |
          ┌┬―( ・∀・ )┐ ピッ      | |                  | . |
          | |,,  (    つ◇       | |                  | . |
          | ||―(_ ┐┐―||        |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   |
          | ||   (__)_), ||       |  °°   ∞   ≡ ≡   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
4風と木の名無しさん:2008/10/16(木) 21:25:29 ID:3FU+Er+y0
3.ネタはネタ用テンプレで囲うのがベター。

別に義務ではないけどね。

テンプレ1

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  モララーのビデオを見るモナ‥‥。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  きっと楽しんでもらえるよ。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
5風と木の名無しさん:2008/10/16(木) 21:26:08 ID:3FU+Er+y0
テンプレ2
          _________
       |┌───────┐|
       |│l> play.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
   ∧∧
   (  ,,゚) ピッ   ∧_∧   ∧_∧
   /  つ◇   ( ・∀・)ミ  (`   )
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |            ┌‐^──────────────
  └──────│たまにはみんなと一緒に見るよ
                └───────────────

          _________
       |┌───────┐|
       |│ロ stop.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]

                 ピッ ∧_∧
                ◇,,(∀・  ) ヤッパリ ヒトリデコソーリミルヨ
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |                                |
  └────────────────┘
6風と木の名無しさん:2008/10/16(木) 21:27:09 ID:3FU+Er+y0
テンプレ3
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < みんなで
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < ワイワイ
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 見るからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < やっぱり
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < この体勢は
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 無理があるからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"
7風と木の名無しさん:2008/10/16(木) 21:27:53 ID:3FU+Er+y0
テンプレ4

携帯用区切りAA

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

中略

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

中略

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
8風と木の名無しさん:2008/10/16(木) 21:28:41 ID:3FU+Er+y0
 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 僕のコレクションに含まれてるのは、ざっと挙げただけでも
 |
 | ・映画、Vシネマ、OVA、エロビデオとかの一般向けビデオ
 | ・僕が録画した(またはリアルタイムな)TV放送
 | ・裏モノ、盗撮などのおおっぴらに公開できない映像
 | ・個人が撮影した退屈な記録映像、単なるメモ
 | ・紙メディアからスキャニングによって電子化された画像
 | ・煽りや荒らしコピペのサンプル映像
 | ・意味不明、出所不明な映像の切れ端
 \___  _____________________
       |/
     ∧_∧
 _ ( ・∀・ )
 |l8|と     つ◎
  ̄ | | |
    (__)_)
       |\
 / ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 媒体も
 | 8mmフィルム、VCR、LD、ビデオCD、DVD、‥‥などなど
 | 古今東西のあらゆるメディアを網羅してるよ。
 \_________________________
9風と木の名無しさん:2008/10/16(木) 21:29:33 ID:3FU+Er+y0
   |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   じゃ、そろそろ楽しもうか。
   |[][][]__\______  _________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |       |/
    |[][][][][][][]//|| |  ∧_∧
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ )
   |[][][][][][][][]_||/ (     )
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   | | |
              (__)_)
101:2008/10/16(木) 21:32:30 ID:3FU+Er+y0
ドゾ。 500KB逝ってしまったみたいだ
前スレの投下神>>611は気付くかな・・・? お待ちしてます
11風と木の名無しさん:2008/10/16(木) 21:48:50 ID:IdDIFWWs0
>>1
自分もスレ立て試みたけど規制で立てられなかったんだ。GJ!
12風と木の名無しさん:2008/10/16(木) 23:15:17 ID:MySp/cCx0
稲葉浩志
13風と木の名無しさん:2008/10/16(木) 23:43:59 ID:JDs92Nm10
>>1乙!ありがとう
14風と木の名無しさん:2008/10/17(金) 03:38:31 ID:eq1xGI7n0
そろそろテンプレに「残り容量確認しましょう」って一言入れたほうがいいんじゃないか?
15風と木の名無しさん:2008/10/17(金) 06:57:08 ID:mv/u8frs0
>>14
>>2
>スレ容量(500KB)を確認して
入ってますよ。前スレでは気をつけて〜のアナウソスもあったし。
でも専ブラじゃない人は容量見られないのかも
16専能 九嶋愛と派瑠 1/6:2008/10/17(金) 07:09:14 ID:Kwkru9+k0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「R/D 潜/脳/調/査/室」久/島AIと波/留。
カプになりきれてないけど801板本スレで上がってたネタに乗っかったのでここに投下。


 私はある人間の記憶を元としたAIと言う存在であり、その身体もその人間の義体をそのままに使用している。リアルに生きる事をを捨てたオリジナルの「彼」は、自らの推論を大切な人々に遺すためだけに、私を作り上げていた。
 そして私はその役目をとうの昔に終えていた。最早私に存在意義などないはずだった。
 ――はずなのだが、私は何故か生き永らえている。24時間メタルが全停止しその結果全域が初期化すると言う、AIやアンドロイドには致命傷足り得る事件を経ても、何故か私は全てを失う事無く復帰出来ていた。
 そしてそれは私だけに限った話ではない。確かにあの時何かが起こったのだろう。
 ともかく今の私は、オリジナルの彼の部屋に厄介になっていた。
 私の義体の頭部には、その彼の脳核が収まったままになっている。その脳核は殆ど初期化された状態であるし、彼自身の意識がここに戻ってくる可能性はない。
 しかし確かにここに脳核が存在しているがために、一般的なリアルの人間達は未だに彼を死んだものとは認識していない。そう言う人間のために、自室療養と言う名目を取っている。
 だから私は不用意にこの部屋から外に出歩く事は出来ない。意識不明の状態であるはずのこの身体が歩き回っては、確実に騒動を巻き起こすからである。
 人間達に都合がいい事に、私は電脳操作型の車椅子の身の上である。オリジナルの彼は「推論を遺す」事のみを目的としたために、私は会話機能に特化したAIと設定されている。そのために、会話機能以外の制御系プログラムは殆ど全くインストールされていないのだ。
 結果、私は全身義体を得ているくせに、この身体をまともに動作させる事は出来なかった。バリアフリーのこの企業においては車椅子でも充分に出歩けるのだが、そこまで外出に拘るつもりはない。
17専能 九嶋愛と派瑠 2/6:2008/10/17(金) 07:10:40 ID:Kwkru9+k0
 この部屋を訪れる者はごく少数だった。
 当初は、危機に直面した末に「彼」の記憶に縋ろうとする者も居たが、その青年達もそのうちに自らの力で道を切り開く事を選んでいった。
 それは当然だ。私が保持している「彼」の知識とは過去のものであり、彼らの前に横たわるのは未来なのだから。
 だから、たまにやってくるあの男のみと、私は会話する日々を送っている。
「――失礼します」
 部屋の入口の自動扉が開くと共に、そんな言葉が私の耳に届く。若い男の声。
 次いで、扉によって切り取られた空間に、長身の男の姿が見えてくる。この企業らしく白衣こそ纏ってはいるが、その下の衣服は黒のシャツとジーンズだった。それなりに伸ばされた黒い髪は後頭部で纏められている。
 これらを総合するに、どう見ても、人間の常識と照らし合わせるに、研究者としては浮いている。そう言う男だった。
 その男は微笑を浮かべ、私に対して軽く会釈をする。いつも同様の態度だ。そして私の就いているデスクに向かって歩いてくる。
 私は彼を眺めやった。私の視界に展開されるダイアログには、彼の識別信号が表示される。これは無意識のうちに試行される行為だ。私は彼を「friend」――友人、親友と識別している。
 私ではない。私の記憶の元となっているオリジナルの「彼」にとって、そうなのだ。
「また資料を頂いて行きますよ」
 言いながら、その男は無造作に私のデスクに右手を伸ばす。
「好きに検索して持っていくがいい」
「ええ」
 私の無感動な言葉に頷きつつ、口許に微笑を浮かべた彼はデスクに掌を接触させた。途端に彼が触れているデスクの部分がハニカム形状に光を発する。
 このデスク自体が端末であり、この部屋のメタルに保持されている書庫へと接続が可能となっている。検索を試行する彼の命令に従い、デスクの中空に次々と様々なダイアログが表示されてゆく。
 言わば私はこの部屋の司書のようなものなのだが、書庫にある書物は勝手に検索させ勝手に持って行かせているために、特に何もやる事はない。だから私は彼の横顔を眺めていた。
 おそらく現在、彼の電脳では検索結果を処理して目的の書籍があるかどうか探っているのだろう。目星をつけた書物をざっと眺めているのかもしれない。何にせよ、脳が忙しく稼動している事には相違ない。
18専能 九嶋愛と派瑠 3/6:2008/10/17(金) 07:11:16 ID:Kwkru9+k0
 その横顔は、酷く美しいと言う訳ではない。それでも一般的な東洋人としては水準以上を保っている。しかし印象に残る顔であるのは、その意志の強そうな瞳の表情のせいだろう。そこに美しさと逞しさを見出す事が出来る。
 ――何故だろう。何時からだろう。
 私は彼のこんな横顔を見ていると、奇妙な感覚を覚えていく。それが、彼の訪問した際の、常だった。
「――資料、頂きましたよ」
 そんな声が私の耳に届く。それに気付き、私は思惟に耽る事を中断した。改めて彼の顔を見やる。親しみの持てる笑顔がそこにあった。
 彼の右手はデスクから離れており、デスクからも光は消えダイアログの類も全て消滅していた。全ての作業は終了しているらしい。
「――君はまた潜るのか?」
 私は彼に質問した。すると彼はきょとんとした表情になる。しかしすぐに微笑を浮かべた。
「それが仕事ですから」
「12月の海は冷たくは無いのか?」
 私の問いに彼は微笑を深めた。――今まで私は「どちらの」ダイブの事を指しているのか、特定はしていなかった。それがこの問いで判った事だろう。
「ここは常夏の海域ですよ?それに水温も環境分子で適度に調整されていますから、平常ですよ」
 彼は右手を挙げ、笑顔でそう答えていた。それは快活な笑みで、人好きのするものだった。それが私に向けられている。
 彼はリアルの海のダイバーでもあり、メタルダイバーでもあった。そのどちらにおいても、誰の追随も許さないレベルの人間である。この人工島だけではなく、おそらく世界を相手にしてもトップクラスだろう。
 彼としてはリアルの海のみに集中したいらしいが、どうやらこの企業の馴染みの人間達を見捨てる事は出来なかったようだ。
 初期化されたメタルのメンテナンスには莫大な労力を必要とするからだ。結果的に現状では彼がメタルの父のひとりとなりつつある。
 しかし、今、ここで話題になっているのは、リアルの海においてのダイブである。
「…まあ、7月末のあれ以来、環境分子も減少されてますけどね」
 苦笑気味に彼はそう付け加えていた。確かにあの事件により甚大な被害が発生していた。それを思うと、私は何処となく不安な感情が沸き上がってくる。
 ――その事実自体に、驚かざるを得ない。
 何だと言うのだこれは。まるで、人間が抱くような感情ではないか。
19専能 九嶋愛と派瑠 4/6:2008/10/17(金) 07:12:47 ID:Kwkru9+k0
 ふと、彼は小首を傾げた。口許から微笑が消える。それでも柔和な印象はそのままに、私に言葉を投げ掛けた。
「僕を心配してくれているのですか?」
「…心配?」
 私は訝しく問い返す。彼の言葉尻を捕まえた。これは、心配と言うのだろうか?
「違うんでしょうか?」
 彼もまた私に質問を投げ返してきた。互いに何が何だか良く判っていないらしい。
 ともかく明確な答えがないのに不用意に言葉を並べるべきではない。私のAIに、会話特化型としてのプログラムが優先してきた。だからこれ以上の発言は慎む事とした。一旦沈黙する。
 私から言葉が返ってこないからか、彼は視線を向こうにやった。強化ガラスの向こうに。ここは海底区画であるために、窓ガラス状のガラスの壁面の先にあるのは、深く蒼い海である。空の蒼と似ているようで、違うものだろう。
「――もうすぐ、12月22日ですね」
 ガラスに透過された蒼を横顔に当てつつ、彼はそんな事を言い出した。私は電脳でカレンダーを確認し、首肯した。
「ああ、そうだが」
 しかし私には意味が判らない。その日が一体何だと言うのか。私は只、彼の横顔を眺めている。――不意に、その瞳が何処か遠くを見始める。
「…今まで、その日をどんな気分で迎えていたんでしょうね」
 彼は主語を付与せずに、そんな台詞を口にしていた。
 しかし私には、そこに来るべき人名が誰のものなのか。そして彼が一体どんな気分だったのか。すぐに理解出来た。
 そこに彼の言葉が続く。表情は柔和であり、口許には微笑が浮かんでいる。それでも、瞳の印象は何処か寂しげであり、困ったような笑みであり――。
「だから、僕が歩けるようになった時から、今年からはきちんと無事なダイブを見せてやろうと思っていたのです。なのに、肝心な彼が居なくなってしまった。…まあ、海から見ていてくれればいいんですけど」
 全く、その通りだった。
 それを自覚した途端、私の胸に刺すような痛みが走る。しかしこれは身体的なものではなく、精神的なものであるはずだった。それでも思わず視線を落とし、胸の辺りを見てしまう。
20専能 九嶋愛と派瑠 5/6:2008/10/17(金) 07:14:28 ID:Kwkru9+k0
 これは、この不安は、私のオリジナルたる「彼」の記憶にあるものだ。
 彼が50年間抱え続けた後悔の念から発せられ、蓄積されたものだ。
 それが、記憶を受け継いだ私に影響を与えている。私が今抱いている「不安」は、そこから影響を受けているに過ぎない。
 精神的なものとは言え、胸が痛むと息苦しくなる。AIであり義体である私にはそもそも呼吸の必要がないと言うのに。
 私は眉を寄せ、微かに溜息をついた。手が動くならば胸を押さえていた事だろう。しかし私の手は震えるばかりで、車椅子の肘掛けからも上がらない。
「――では、お邪魔しました」
 不意にそんな声がした。私はゆっくりと顔を上げる。彼は、私に笑い掛けていた。そして私の前から立ち去ろうと、踵を返す。
 君は私の表情を見ていないのだろうか。何か――妙な表情を浮かべているとか、思わなかったのだろうか。AIのくせに、感情が篭ったような顔をとか――。
 私は何を思っているのだろう。オリジナルの「彼」の記憶の産物と言え、何を混乱している。
 しかし、その混乱を留める事は出来そうに無かった。
「――待て」
 思わず私の口からそんな短い言葉がついて出て来ていた。
 その声に、彼の足は止められていた。怪訝そうに私を振り返る。
 その表情は一体何のためにそんな事になっているのだろう。私が呼び止めた事か?それとも、私が妙な表情をしている事か?
 ともかく私はそのまま、動いていた。電脳制御の車椅子を用い、デスクから離れる。ゆっくりと切り返し、デスクの脇をすり抜け、部屋の中央付近に立っている彼の元へと進んでゆく。
 彼はそんな私の動きを只見ていた。不思議そうな表情を浮かべている。彼の視点は車椅子の私に合わせ、低くなってゆく。
 私は彼の前で車椅子を止めた。滑らかな動きの車輪がその場にぴたりと静止させる。彼を見上げる。その穏やかな瞳を視界に入れる。私の視界にあるダイアログでの彼の認識は――。
 長い、溜息をついた。少なくとも、私はそうしたつもりだった。
 そして、私は右手に力を込める。車椅子に置かれたその腕を、ゆっくりと持ち上げに掛かった。
21専能 九嶋愛と派瑠 6/7:2008/10/17(金) 07:22:38 ID:Kwkru9+k0
 私は全身義体を確保したAIだが、義体制御系プログラムはインストールされていない。だから僅かに同期が可能な義体の回路に接続してコントロールする術しか持ち得ていない。
 結果的にその腕は震え、僅かずつしか動いてくれない。私の視界に、懸命に持ち上がる自らの腕が入ってくる。身に纏っているジャケットやシャツの衣擦れにすら負けてしまいそうな、そんな心境だった。
 私は眉を寄せ、歯噛みする。どうにかその手を広げようとした。5本の指も私の制御下にはなかなか入ってくれない。ぎこちなく、妙に力が入り曲げられた指が、私の視界で震えている。
 その向こうに見える彼の顔には相変わらず不思議そうな表情が浮かんでいた。何をしているのだろうと思っているのだろうか。
 しかし、実は私自身も、それを知りたい。
 私は一体何をやりたいのだろう。彼に対してどうしたいのだろう。
 それも判らないのに、私は必死に彼に向かって、その右手を伸ばしている。まるで、縋るように。
 その時、彼の顔にふっと微笑が浮かんだ。目を細め、優しそうな表情になる。何かに行き当たったような、納得したような顔だった。
 そして彼の顔が下方に動いた。どうやら彼は膝を曲げ、屈み込んできたらしい。私に向かって視線を合わせたまま、その顔を近付ける。
 不意に彼の両手が私の右手に伸びる。優しげに、やんわりと、その両手が私の右手を包み込んだ。その感触が私の手に伝わってくる。
 彼はにっこりと微笑み、私に視線を合わせて頷く。そして彼は、私の右手を、自らの頬に押し当てた。掌を広げるようにして、私が彼の頬を広く感じるように仕向けてくる。
 思わず、私は彼を改めて見上げていた。おそらく表情にも驚きの感情が現れていたのではないだろうか。――驚きか。本当に人間のような感情だ。
 そんな私に、彼は再び頷いた。今度は力強く、訴えかけるように。或いは、安心させるかのように。まるで、自分はここに居るからと言いたげに。
22専能 九嶋愛と派瑠 7/7:2008/10/17(金) 07:25:10 ID:Kwkru9+k0
「――…あなたは、こうしたかったのではないのですか?」
 彼は笑い、そんな事を言った。その低い声が、私の耳を、思考を、くすぐる。
 私はそんな彼の顔を視界に捉え――そして、打ち切るように、俯いた。そして、小さな声で答えた。
「…おそらく、君が言う通りだ」
 実の所、私には自分が何をやりたいのか、全く判らなかった。心中の混乱は続いたままだった。
 今の私は一体どんな顔をしているのだろう。せめて彼からはそれを隠したくて、俯いていた。
 しかし、この掌に伝わる感覚が、何処となく私の混乱を沈静化に導いているような気はしていた。
 私の掌に伝わってくるのは触覚のみだった。人間の肌が感じる事が出来るような他の感覚は、私のAIに備わったプログラムでは受容する事が出来ていない。
 だと言うのに、私は確かにその頬の暖かさを感じていた。熱感知など備わっていないのに。その暖かさが、私を着実に安堵させてゆく。
 この感情は、「彼」の記憶からの影響に過ぎないのか。
 私はAIで、プログラムの産物だ。私自身のオリジナル足り得る確固たるものなど持ってはいない。
 しかし、重要なのは、私は今「そう感じている」と言う事実だった。
 私はこの男に――「好意」を抱いている。惹かれている。
 おそらくそれは、オリジナルの「彼」同様の感情だろう。その感情も私の保持している記憶に存在していた。それに影響を受けていないとも言い切れない。
 しかし、私はこの掌に伝わる「暖かさ」を信じてみようと思った。今となってはそれだけが、役目を終えたのにリアルに取り遺された私の拠り所であり存在意義なのだろう。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
すまん、番号増えた。
一方、海の深層では、怒りに震える「彼」の背中を眺めつつ「今晩、海が荒れるのかしら」と至高の話手様がぼやいてますよ。
23風と木の名無しさん:2008/10/17(金) 10:39:33 ID:NZ/z8fs+O
>>16
禿 げ 萌 え た
最後の方で表示されたダイアログに何と書いてあったか想像するだけで御飯3杯いける!
その後海に潜ったハノレは嫉妬に狂った海に性的な意味でお仕置きされるんですねわかります
24風と木の名無しさん:2008/10/17(金) 12:31:49 ID:SBufGJwQ0
>>16
なんという萌えハァハァ
AI=愛ネタ言いだしっぺとして深く感謝申し上げます

そしてオリジ串間が大人げなさすぎるwww
25風と木の名無しさん:2008/10/17(金) 15:57:20 ID:1QGUbvcz0
>>16
全裸で正座して待ってました!
AIがいちいち初々しくて可愛すぐるw
オリジナルも初めてこの感情を知った時はこんなんだったかもなーと思わせる初々しさだ
つかAIがオリジ串間が初めてまともに嫉妬を抱いた相手だったりしたらいいw
26風と木の名無しさん:2008/10/17(金) 18:58:52 ID:qduS/JTt0
稲葉浩志
27二ノレスの不思議な旅 グス夕×モルテソ 1/5:2008/10/17(金) 19:21:00 ID:H/Fn1dsZ0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ふと思いついて書いてしまったので投下させて下さい。
アニメの29話ぐらい、主人公が群れからはぐれた頃です。
グス夕一人称、18禁描写なし。


ニルスの野郎がいなくなって本当にせいせいしたっていうのに、隊長も他のやつらも、なぜかわざわざ探そうとしている。
仲間だって?
たまたまなんかの弾みで小さくなって、そりゃあちょっとぐらいはキツネを追っ払う役に立っているかもしれないが、しょせんは人間じゃないか。
だいたいあのキツネは、我々ガンを餌にする目論見ももちろんあるのだろうが、今や半分以上はあのチビの人間に対する個人的逆恨みでこの隊をストーキングしているに違いないと、俺は踏んでいる。
だからニルスと縁が切れたらきっとあのキツネの脅威も半減するんだから、この事態は歓迎すべきなんだ。
なのに、腹が立つことに、誰も彼もニルス、ニルスと心配ばかりしている。
隊長は昔っから大ワシなんかを育ててやったりして無闇やたらと人道的なところがあるからしょうがないが、スイリーやイングリッドまで、妙にあの人間に肩入れしてやがる。
――いや。
女なんぞ、どうでもいい。
しなしなして、男にくねくねして取り入って、そのくせいよいよピンチとなったら俺たち男の背中に隠れちまう女なんて、情けなくて仲間なんぞとは呼びたくもない。
誇り高きガンたるもの、ピンチには雄々しく立ち向かうぐらいじゃないといけない。

だから、ダンフィンの厳格な父親を前にして足をガクガク震わせて緊張するあのガチョウの情けなさときたら、見ていて歯がゆくて、みっともなくて、曲がりなりにも同じ群れのメンバーとして情けなすぎて、同じ群れの穴があったら入りたかったぐらいだった。
みっともないやつ。ガチョウのくせに、俺たちガンに張りあおうなんぞと思うから。
おとなしく、人間に飼われて、繋がれて、飛べないことを泣き暮らしていりゃあいいのに。
28二ノレスの不思議な旅 グス夕×モルテソ 2/5:2008/10/17(金) 19:22:06 ID:H/Fn1dsZ0
なのにあいつは、たったひとりでオジロワシに向かって行きやがったんだ。
馬鹿じゃないだろうか。
敵いっこない。分かりきっている。
自分の実力と限界をちゃんと知った上で、無理な相手には立ち向かわないのが利口ってもんなのに、あいつはボロボロになっても、なおもワシに体当たりしようとするのをやめなかった。思えばワシもさぞかし面食らったことだろう。気の毒なことだ。
それにしても馬鹿なやつ。
そこまでして、女に、というか今の場合は女の父親に、いいところを見せたいんだろうか。
きっとそうなんだろう。
しょせんは俺たちのようにかっこいい、誇り高きガンじゃない、単なるガチョウなんだから、そのくらいしないと婚約を認めてもらえやしない。
だが、まあ、婚約がかかっているという特別な事情をどけて考えても、意外に臆病でないことだけは分かった。わざわざ口に出して言ってやるほどのことじゃないが、ちょっとは俺たち群れのお荷物一辺倒の身分からは脱却したと思ってやってもいい。

だからって、あんな人間を探すために旅程を遅らせろという主張を引っ込めないのは許し難い。
この俺様がせっかく、こっそりその勇敢さを見直してやったのに、そんなことは気づきもせずにニルス、キャロットとばかり連呼しているガチョウが忌々しい。
ちょっと意見してやろうと、俺は相棒のラッセにも内緒で、ガチョウを探しに行った。
29二ノレスの不思議な旅 グス夕×モルテソ 3/5:2008/10/17(金) 19:22:54 ID:H/Fn1dsZ0
「おい、ガチョウ」
幸い奴はひとりだった。ダンフィンが一緒にいたらまたぎゃあぎゃあうるさいだろうから、いい機会だ。
「なんだよ、グスタ」
おっ。
ガチョウのくせに、いっちょまえに不機嫌なツラだ。
ニルスが見つからなくて不安なんだろうが、俺様がわざわざ話に来てやっているのに、別のやつのことばかり考えていやがるとは生意気きわまりない。
「あの人間のことだがな」
ガチョウの顔がさらに険悪になった。
頬っぺた膨らませて、変な顔。
生っちろくて、首にロープなんかつけて、実にみっともない奴。
変な、みっともない、ガチョウの分際で案外飛べるし、勇気も、なくはない奴。
普段はこいつなんかをまじまじと見ることなんぞないから、つい観察にふけってしまうと、ガチョウはさらに怒った。
「何をじろじろ見てやがんだよっ」
「お前な、ガチョウ」
なんとしたことか、ひとこと言ってやるつもりだった言葉を、こいつの様子を見ているのがけっこう面白かったので度忘れしてしまい、俺は予定外の発言をしてしまった。
「あんまり心配すんなよ。ニルスは大丈夫だ」
「!?」
面食らったガチョウの鳩豆顔に、心ならずもつい和んじまった。不覚だ。
まあ、しょうがない。友達の安否を心配してやたらカリカリしているこいつを落ち着かせてやるのも、群れの先輩としての役割だ。
30二ノレスの不思議な旅 グス夕×モルテソ 4/5:2008/10/17(金) 19:23:48 ID:H/Fn1dsZ0
「俺たちがラプランドに行くってのは、ニルスだって分かってるんだから」
「そりゃ、そうだが……」
煮え切らない奴。ああウザい。
「ニルスは人間だが、あれでけっこう賢いからな。大丈夫、追いつくさ」
いったい俺は何を喋ってるんだろう?
心にもないことを。俺はニルスたち人間はもちろん、ニルスを気にかけすぎのガチョウ風情なんか、大嫌いなのに。
「ニルスのことなんか、とりあえず忘れとけよな」
俺じゃないぞ俺じゃないぞ。
「そんなこと、言ったって……あいつは俺には友達で……」
ああ鬱陶しい。
聞きたくない。
こいつが、他の奴のことを心配して思い遣ってるセリフなんて、今は聞いていたくない。
俺は、ちょっと周りを見渡した。
誰もいない。
ラッセは巻いてきたし、偉そうな次期隊長候補も、どっかでイングリッドといちゃついているようだ。
ダンフィンはまだニルスを探しに出ている。
誰も見ていない。
「うるさい。ガチョウ」
このグダグダとうるさいガチョウを黙らせてやらなければならない。他に理由はない。ないったらない。
ということで、俺はこいつをびっくりさせないようにそおっと羽を広げて、ガチョウの生っちろい身体を抱きしめてやった。
31二ノレスの不思議な旅 グス夕×モルテソ 5/5:2008/10/17(金) 19:24:35 ID:H/Fn1dsZ0
温かい。
「お、お、お、おい、おい、おいグググググスタ」
「うるせぇんだよガチョウ。黙ってろ。じっとしてろ」
「グスタ、ははは離せ。離れろ」
耳元で、やかましい奴だ。
「……人間のことなんか、忘れてろ」
ガチョウは黙った。俺の気迫に負けたらしい。意外に素直な奴だ。
「大丈夫だから。な?」
俺じゃない誰かが、俺の口ばしを使って、ニルスの無事をガチョウに保証してやっていたが、そのせいでガチョウはちょっと落ち着いたようだった。
「ああ……そ、そうだよな。ニルスなら」
どうやら、自分が必要以上にテンパっていたのを、やっと自覚したらしい。
こわばっていたガチョウの全身から力が抜けて、その体重が俺にそっともたれかかってくる。
ずうずうしい奴だ。ちょっと安心させてやったら、さっそく俺を重い目に合わせようとしやがる。
だがその重みはなんとなく気持ちいい。
「その……ありがとうな、グスタ」
「馬鹿やろ」
ラッセあたりが俺たちを探しに来ないように祈りつつ、誰かに見つかるまでの短いあいだだけでもずっとこいつの温かみを感じ続けていようと、俺はガチョウの胴体に回した羽に、また少し力を込めた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
32風と木の名無しさん:2008/10/17(金) 19:30:47 ID:H/Fn1dsZ0
うぎゃ。
>>27の下から3行目ぐらい、「同じ群れの」が一個余分に消し忘れで入ってました。
なかったことにしてください
33オリジナル くらいつくまえに 1/7:2008/10/17(金) 23:05:45 ID:K+jgBrcA0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 好きな相手とするセックスは、喩えるなら極上のブランデーだろうか。とろけるような
舌触りと、熟れた果実の濃厚な香り。乱れた髪も震える睫毛もぴんと張り詰めた爪先も、
どれもこれもが愛しい相手と抱き合って、気持ちよくないはずがない。
 じゃあ愛がなければ気持ちよくなれないかというとそんな事は全然なくて、こっちはキ
ンキンに冷えたビールを風呂上がりの喉に流し込む感じに似ている。ただただ渇きを癒す
ため、汗まみれでスポーツのように快感を追求するあの感じは、一ミリグラムの情も絡ま
ないからこそ味わえる爽やかでダイレクトな感覚。美酒も毎日飲めば慣れてきてやがては
飽きてくるかもしれないけど、一仕事終えた後に飲み干すビールはいつだって美味い。
 ディスプレイに映った書きかけの報告書を眺めながらそんなことを考えてしまうぐら
い、俺はちょっと「渇いて」いた。十日間ぶっ続けの任務が終わって寮に帰り、ありあわ
せのもので腹を満たしてから死んだように眠り、昼過ぎに目を覚まして熱いシャワーで寝
汗を流せば、次に三大欲のあと一つが襲ってくるのはまあ自然な流れと言えるだろう。正
直報告書なんか書く気分じゃなかった。できるだけ早く提出するように言われているとは
いえ、体の欲求と天秤にかければつまらない仕事は後回しにしたくもなる。もしもこの部
屋に俺一人きりだったら、ワードは隅っこに最小化して秘蔵の動画フォルダを開いてたと
ころだ。でも、横には俺のベッドでごろごろしている国枝がいる。――そう、この部屋に
は国枝がいる。
34オリジナル くらいつくまえに 2/7:2008/10/17(金) 23:08:56 ID:K+jgBrcA0
「なあなあ武井、報告書どれぐらい書けた? そろそろ提出行けそうか?」
 国枝は枕に頬杖をつきながら、こっちで机に向かっている俺に催促してくる。シャワー
浴びたてで濡れた黒髪に、グレーのタンクトップの肩が片方ずれていて、これがもし巨乳
の女の子だったらなかなかの悩殺ポーズかもしれない。実際は悩殺どころか、男っぽいく
っきりした鎖骨が見えてるだけだけど。
「もうちょっと。ていうかお前そこにいるならもっと手伝えよ。副班長だろ」
「報告書作るのは班長の仕事だろ。俺の仕事はできあがったやつチェックして一緒に提出
しに行くことだし」
 国枝はごろりと仰向けになって四肢をベッドに投げ出した。短めの黒いハーフパンツの
裾からのぞく脚は、その内側に秘められたバネを想像させるようによく引き締まっている。
 国枝は足が速い。体格のこともあるからごく短距離なら互角に走れるが、二百メートル
を越えるとちょっと危うくなり、四百メートル走となると俺ではもう敵わない。大して太
くもないこの脚からあの瞬発力が生まれていると思うと少し感心してしまう。丈夫そうな
アキレス腱なんかは確かにいかにも走れるやつっぽいけど、ふくらはぎや腿は全然筋張っ
ていないしむしろラインだけ見たら滑らかと言っていいだろう。シーツの上に無防備に伸
ばされた国枝の脚は、うっすら日焼けした外側の肌に反して内側の肌だけが白い。
 ――ちょっと触りたいな、とか、思う。
 太股の内側なんか毛も薄いし、女の子みたいに柔らかくはなくてもそれなりに肌理は細
かくて、手のひらで撫でると気持ちいいかもしれない。いや、うん、そういえば実際に気
持ちよかった。ローションぬるぬるにして素股させた時なんかそりゃあもう――。
35オリジナル くらいつくまえに 3/7:2008/10/17(金) 23:12:20 ID:K+jgBrcA0
「ん、武井、なんか見てる?」
「え?……あ、いや、別に」
 仰向けになったまま不思議そうな視線を向けてくる国枝に、とりあえず平静を装って返
事をしたものの、いつものような軽口が咄嗟に返せない。これはかなりいけない感じにな
っちゃってるなあ、と他人事のように心の中で呟く。俺の体は思ったよりもかなりサカっ
てるみたいだ。ディスプレイに視線を移してマウスを動かし、上書き保存のアイコンをカ
チッとクリックした。
 男を抱ける自分に気付いたのは、つい数ヶ月前だった。単なる好奇心で悪戯半分にやっ
てみたそれが意外なことに悪くなくて、今ではすっかり国枝を抱くのに慣れてしまってい
る。けど、まさか男の体を見て性欲を感じる日が来るなんて思ってもみなかった。これっ
てやっぱりある情報と快感の記憶が頭の中で繋がっちゃったからなんだろうか。
 そんなことを頭の隅で考えながらも、もう脳内のほとんどは国枝を籠絡する算段で占め
られていた。力ずくで強引にいくのも悪くはないが、国枝も素人じゃないから組み伏せて
押さえ付けるところから始めるのは結構手間だ。何か抵抗を封じやすくするきっかけが欲
しい。一旦押さえてしまえばあいつは快感に弱いし、あとはテクニックで押せばどうにで
もなるだろう。十日間同じ任務に行ってたんだから、溜まってるのは国枝も一緒のはずだ。
 きっかけ、きっかけ――と視線を巡らせていると、国枝の左膝にある青痣が目に入った。
確か昨日の仕事中に、どこかでぶつけてできた痣だ。これでいくか、とほくそ笑んで、俺
は国枝の膝を指差す。
36オリジナル くらいつくまえに 4/7:2008/10/17(金) 23:15:23 ID:K+jgBrcA0
「あのさ、お前その膝のところ平気か? 昨日ちょっと痛そうにしてたろ」
「え? ああ、これか?」
 国枝は上体を起こすと膝を立ててベッドの上に座り、手のひらでぺたぺたと膝を撫でた。
「ん、大丈夫大丈夫。ちょっと触るぐらいじゃもう痛くもなんともないし」
「そっか、負傷報告はどうする?」
「報告するほどじゃないとは思うけど……んー、どうかな、思いっきり掴まれたりしたら
ちょっと痛いかなあ」
「そうか? ちょっと見せてみろよ」
 俺は椅子から立ち上がり、国枝の正面から片膝でベッドに乗り上げた。ベッドに左手を
ついて、右手で国枝の膝に触れる。
「痛いか?」
「いや、それぐらいなら全然」
 国枝は真顔で首を振る。割と至近距離で、しかも肌に直接触ってるのに国枝は全く警戒
していないみたいだ。この辺りが男同士のいいところだろうか。もしこれが女の子だった
ら完全に下心バレバレだろう。俺は膝に触れた手に少しだけ力を込める。
「これは?」
「んー、ほんのちょっと痛いかな? でもまあ平気」
「そっか、じゃあ――これぐらいは?」
 言って、俺はぎゅっと国枝の膝を握り込んだ。
「えっ、ちょっ、強すぎ……っ」
 慌てた声は無視して、片膝を掴んだままぐっと勢いをつけてベッドに乗り込む。ベッド
のスプリングが高く軋んで国枝が背中からベッドに倒れ込めば、狙い通り一秒でそういう
体位のできあがり。もし脱いでたらこのまま挿入できちゃうぐらいに、太股のあたりはぴ
ったり密着している。国枝の着ているグレーのタンクトップがめくれあがって、裾から腹
が見えている。
37オリジナル くらいつくまえに 5/7:2008/10/17(金) 23:18:36 ID:K+jgBrcA0
 国枝は数秒固まってから、引きつった笑顔をつくって首を傾げた。
「ええっと、あの、武井君。これは、どういう……?」
 完全に動揺している国枝の目を見つめ、
「この体勢で解らないかな、国枝君?」
 できるだけ低く色っぽい声で言って小首を傾げる。国枝は、うう、と小さく呻くような
声をあげた。
「わ……解るけど、意図はよーく解るけど! お前報告書はどうするんだよ!?」
 国枝は自由な方の右脚をばたばたさせて暴れるが、俺は国枝の脚の間にいるから、国枝
が右膝を曲げようが伸ばそうが大股開きなのは変わらない。ていうか暴れれば暴れるほど
タンクトップはめくれるし、ハーフパンツの裾はずり上がってくるし、むしろ状況は悪く
なっている。
「大丈夫大丈夫、あっちはあらかた書き終わったし、こっちは二十分以内で済ますから」
「済ますからって……俺はお前のオナホじゃねーの!」
「うわ、オナホときたか。せめてダッチワイフって言えよ」
「どっちも大して変わらないだろ!」
「いやだって少なくとも人の形してるじゃん。しかしなあ、おもちゃ扱いしてると思われ
たんなら心外だなあ、いつだって愛情込めてやってたつもりなのに。俺、いつも優しくし
てるだろ? お前俺に抱かれて感じなかったことなんてあったっけ?」
「……っ」
 暴れていた国枝の動きが止まる。きまり悪そうに視線を泳がせて、今までの行為を思い
出しているんだろうか。まあ、回想ならいくらやってくれたって構わない。その間こっち
はことを進めるだけだ。一旦脚を閉じさせてハーフパンツとトランクスのウエストゴムのあたり
を一緒に掴んでずり降ろし、下腹の肌がむき出しになったあたりで国枝の叫ぶような声が
耳を刺した。
38オリジナル くらいつくまえに 6/7:2008/10/17(金) 23:21:39 ID:K+jgBrcA0
「いやちょっと待て! やってることだけ見れば普通に強姦じゃねーか! 今さら愛情と
か言っても無理あるから! っていうかお前何勝手に脱がそうとしてんだ! やーめーろ
って……!」
「遅い遅い。そこで一瞬ほだされるのがお前の悪い癖だよなー。考えてる内にホラ、あら
れもない感じになっちゃいましたねえ」
 太股から足首までするっと一気に引き抜いたハーフパンツとトランクスを後ろに放り投
げ、俺は両膝を掴んで脚を開かせる。臨戦態勢にはほど遠いアレはこれからどうにでもす
るとして、やっぱり内股の肌はなかなか白くてうまそうだ。とりあえずこういう時は隙を
ついてひんむいちゃって戦意喪失させるに限る。丸出しで暴れるのって結構間抜けだし。
「た、武井……っ!」
 なんとか両手で隠そうとしてるのもそれはそれで間抜けな感じだ。でも、顔を赤くして
必死になってる姿はなかなかそそるものがある。相変わらず国枝ってS心刺激するよな
あと感心しながら、俺は五本の指先で国枝の膝から内股をすすーっと撫で上げた。
「いいじゃんやらせろよ、俺溜まってるんだ。やっぱ十日間も禁欲は辛いよなあ、健康な
成人男子としてはさ。お前もそう思わない?」
「その件に関しては俺も非常に同感ではあるからとりあえず内股触るのやめろ…っ!」
「何で? どうせなら一緒に気持ちよくなろうぜ。ちゃんとすっきりイカせてやるから」
39オリジナル くらいつくまえに 7/7:2008/10/17(金) 23:24:14 ID:K+jgBrcA0
 俺は二本の指を軽く咥えて唾液で濡らすと、ぴたりと国枝の窄まりにあてがった。途端
に国枝がぞくっと身体を震わせて大きな声をあげる。
「ひゃ……っ!? ちょ、お前、いきなりすぎるだろそれはっ!」
「二十分以内って言ったろ? 今日は手っ取り早くやっちゃおうと思って」
 唾液のぬるぬるをそこに塗り込めるように、じっくりと指先を動かす。国枝がぎゅっと
身を固くする。
「だ……だからってお前、手順ってものがあるだろ……!」
「そうだなあ、確かにお前は正しい。でも、順番にひとつひとつやらなきゃいけないって
決まりはないだろ? 手順は同時にだってこなせる訳でさ」
「え、あ、っ、……ッ!」
 俺は強引に国枝の唇を塞いだ。柔らかくてあたたかい粘膜の感触に、下半身が熱くなる。
国枝の逃げる舌を追いかけてねろねろと舌を絡ませればそれはもう決定的に力を持ってし
まって、俺は何度もくちづけを繰り返しながら、はあ、と熱い息を吐く。
 そろそろ我慢もききそうになかった。うっすら潤んだ目で恨みがましくこちらを見てい
る国枝にもう一度接吻けて、俺はいただきます、と笑みを浮かべた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
40風と木の名無しさん:2008/10/17(金) 23:37:09 ID:J7ygqVLfO
>>33
リアルタイムで遭遇しwktkしながら読みました。
国枝君の無防備っぷりに読んでてニラニラしてしまった。
GJでした!
41風と木の名無しさん:2008/10/18(土) 14:47:05 ID:ujWMB4ZL0
同じ群れの稲葉浩志
42オリジナル 優しい手 1/6:2008/10/18(土) 23:39:40 ID:Dnarnwri0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

お人好しのノンケニーチャン×恐慌の中を生き抜く天涯孤独の美青年襲い受け

オリジで半端なエロ。一応昭和初期の冬のつもり。
いきなり美青年が恋に目覚めたとこから始まります。


 高野はこの動悸を伝える手段を知らなかった。否、知ってはいたが、大人たちが戯れに
自分を稚児遊びで扱ったような汚れたやり方しか知らないのであった。それは高野には
思い出すにも堪えない黒い記憶である。原田に受け入れられるとは到底考えられなかった。
だが湧き上がる感情を抑え込む術も知らなかった。
 高野はおもむろに原田の住居を尋ねた。
「二駅向こうのアパートだ」
「一人か」
「ああ」
「行きたい」
 原田は頬ほころばせた。高野がようやく胸襟を開いて話してくれるものと思われた。
それならば夜を徹しても上等の酒を開けてやってもよい。それで高野が楽しそうに笑って
くれるのなら尚更いくらでも相手をする気になった。
43風と木の名無しさん:2008/10/18(土) 23:40:44 ID:OV5bEVlv0
遅レスすまそ 前スレ599にですが

リーマンものオリジ良かったです、ヌゲー萌えますた!
こんな友人関係のやつら最高

44オリジナル 優しい手 2/6:2008/10/18(土) 23:41:12 ID:Dnarnwri0
 部屋に着いてドアが閉まるなり高野は原田を引き倒し、咄嗟に受け身を取るも背を
したたかに打ちつけて呻く原田にそのままかぶさった。原田が自分が躓いて一緒に
倒れこんだものと思いすまないと口にするより先に高野は手で原田の頬をとらえて
短く、したい、と言った。

「嫌なら暴れるなり蹴飛ばすなりしろ」
 高野は状況を把握できずに呆然としている原田に顔を寄せて、息をつめ幾分躊躇
したのち、やっと触れるかわからないほどの口づけをした。そしてかじかんだ指で
原田の、それから己の冷たい外套のボタンをひとつひとつ外した。息は白く指先は
震え何度も空しく布地を掻いた。
 原田は身じろぎさえ忘れて、高野のかつてない必死の形相に目を釘づけていた。
高野はその沈黙を恐れた。
 上衣とシャツを肌蹴られてなお原田はされるに任せていた。ほとんど真っ暗な玄関先に
僅かに入る街灯の光を受けた高野の顔は歪んで今にも泣きそうに見えた。それは
美しいのである。高野は原田の喉もとに顔を埋めた。その冷えた頬に触れて粟立った
肌の熱さを唇で辿りながら、耐えられなくなり動きを止めた。

「なんで何も言わない」
 原田は高野がやろうとしていることは判った。しかし何故そうするのか判じかねた。
そして思いつめた顔をして己の衣服を剥いでいく高野を押しのけることにも、何か
言葉をかけることにも思い至らなかった。
45オリジナル 優しい手 3/6:2008/10/18(土) 23:43:01 ID:Dnarnwri0
「どうして、したいのかと思って」
 そう口にしてから、高野がいつか女は嫌いだと言っていたのは、暗にこちらの嗜好を
指していたのかもしれないと思い当った。
「男が好きなのか」
 胸の上に乗った高野の体が強張って、震えた声で女も男も嫌いだ、と言った。
原田は困った。
「なんでそんなに怖がってんだ」
 高野は答えなかったが体の震えが止まらなかった。自分が怖がるはずはなかった。
もしかしたらと期待しては裏切られることには慣れていたので恐れる必要もなかった。
 ただしこの場合の期待が突き放されれば致命的であった。しかも受け入れられるとは
露も思えなかった。何の非もない相手を組み伏せ不快がらせ、また敢えて己の首を
絞めることになるのを知ってなお触れずにいられなかった。高野は見返りを求めない、
一方的で無償の行為を知らなかった。ゆえに恐れた。

 原田は居た堪れないで震える高野の背を静かになでた。震えはやがて嗚咽に変わった。
この可哀想な青年は人の熱に飢えているのだと思った。高野が自分にそれを求めるのなら
与えてやりたかった。
「あんた、嫌じゃないのか」
「嫌じゃない」
 高野はようやく埋めていた顔を上げてかすかに笑い、少年のような赤い頬が濡れて光った。
「よかった」
46オリジナル 優しい手 4/6:2008/10/18(土) 23:44:24 ID:Dnarnwri0
 一応敷いた煎餅布団も、かぶらないので防寒の用をなさなかった。火鉢の赤い火を頼りに
原田は胡坐の上に乗せた高野の体をさぐり、また高野は原田を愛撫した。絡まる舌の間から
絶えず白い息が漏れた。高野は原田のぎこちない手の中で達し、その色めいた顔に原田は
見蕩れた。
 高野は原田を一度慰めおえたあとも手を休めず、そのまま空いた手を自分の後ろに回した。
「何を、」
 原田は問いかけてすぐにその意味するところを悟った。
「あんたは何もしないでいい」
 何か言おうとする原田の口を塞いで高野は両手をはたらかせた。原田はどうにか高野の
後ろ手を掴んだが、その指先から濡れた音がしたので息を呑んだ。
「手を放せ」
「やめろ、そこまでしなくていい」
「俺がしたいんだから黙ってろ。どうせあんた野郎としたことなんかないんだろう。俺が下でいい」
 高野は原田の手を振り払った。
47オリジナル 優しい手 5/6:2008/10/18(土) 23:45:33 ID:Dnarnwri0
「慣れてるんだな」
「妬いてるのか」
 高野は笑ってみせたが原田の言葉は傷を抉った。望んで人を抱いたことも抱かれたことも
一度もない。この行為が大人の歪んだ欲を満たす以外に意味をもつとは考えたこともなかった。
 原田の肩に額をつけるとそのやや荒い息と鼓動が聞こえる、ここはあたたかだった。

「ちょっとの間だからじっとしてくれ。よくなかったら後で謝る」
 再び動き始めた高野の手に、やがてこわごわと原田の手が添って共に動いた。高野は少しして
深呼吸をし、原田の上に腰を沈める。何度目でも決して楽にならない瞬間だった。肩にしがみつき
顔を顰めながら異物に耐える様は原田を煽った。
「大丈夫なのか」
「当たり前だ。それに」
 高野はぐっと顔を近づけて目を細めた。
「好きな奴とするのは初めてだ」
 原田がその言葉の意味を推し量る前に高野が動いた。互いに触れながら原田の体も揺れた。
48オリジナル 優しい手 6/6:2008/10/18(土) 23:47:34 ID:Dnarnwri0
 一組の布団に大の男が二人潜り込めば当然狭く、浮いた毛布と布団の隙間から冷い空気が
入り込んだ。兵役の間に雪の中での野営も幾度かしている原田は外套をかぶって出ようとしたが
高野は許さず、原田の懐に無理矢理収まった。原田は緩慢にその頭を抱えてやる。無邪気な所作。
 高野はすべてを許されるこの窮屈な場所に安らぎを見た。それが単なる感傷であっても構わな
かった。原田ののべた手が空気に呑まれたものであれ、憐れみによる慈悲であれ、もしくは本当に
愛であれ、涙が出るほどあたたかであるに違いなかった。
 そして己の感情さえ判じかねている原田も、できるならばいつまでも胸を貸してやりたい気持に
嘘はなかった。
 二人は子供のように眠った。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
49風と木の名無しさん:2008/10/18(土) 23:59:31 ID:OV5bEVlv0
>>42
割り込み申し訳ないorz

しかしその縁で一番に堪能させてもらいました。
うわっ、すごい良かったです!切ないけど好きです・・・
50漢塾 伊/達×飛/燕 1/4:2008/10/19(日) 12:14:04 ID:uFhfAll00
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )男塾、伊/達×飛/燕です。
スレ住人の姐さん方に萌え殺されそうになったので投下。
エロなしというか寸前話。


 しまった。しくじった。馬鹿をした。そう気付いてしまったのが間違いだった。
 男が正気を失くして同じ男を押し倒し、その上に馬乗りになって服まで肌蹴たんだ。そこで
正気に戻るなんざ愚の骨頂。だが、戻っちまったものはどうしようもない。
 しまった。しくじった。馬鹿をした。そればかりが頭の中をぐるぐると回る。そこから後に
も先にも退けない。
 そうして思考と一緒に体までこわばらせてしまった俺に気付いて、飛/燕は額に手をやりつつ
溜息を漏らした。
「……まったくもう、貴方というひとは」
 すまん気の迷いだ悪かった忘れてくれ。気の効いた台詞とまでは言わないが、それぐらいの
言い訳も出て来ない、己の口が嫌になる。まったくもってこの口は、きつい嫌味は吐けても、
それ以外には何の役にも立ちやしねえ。
 俺が頭の中でそんなことを喚いているうちにも、結構な時間が経っていたらしい。
いつまで経っても動く気配のない俺を待ち兼ねた顔をして、またも飛/燕が溜息をついた。
「そんな風に途中で余計なことを考えるぐらいなら、頭が回らなくなるぐらい飲んだ後か、
もっと切羽詰まってからにすればいいでしょうに」
51漢塾 伊/達×飛/燕 2/4:2008/10/19(日) 12:15:41 ID:uFhfAll00
 ああ、そりゃそうだ。納得した。それならこんなところで足踏みせずに済んだのに。
 いや、そもそも俺は進みたいのか? それとも今からでも引き下がりたいのか?
 後者じゃねえな、とは思った。それならハナからこんなことはしねえ。だが、嫌だと
言うのを無理矢理に、というのも趣味じゃねえ。
 いっそ見知らぬ他人ならそれでも良いかもしれないが、こいつとは随分長い付き合いだ。
それに、明日のことなど知れない身だが、命がある限りはこいつとの縁も切れない気がする。
そういうやつを無理矢理というのは気が進まない。
 しかも大体にして、こいつほど怒らせると怖いやつもいねえんだ。それを強引にあれこれ
して恨みを買うなんざ、考えただけでも寒気がする。それなら恥も外聞も投げ捨てて、土下座で
謝っちまった方がまだマシだ。
 そんなことを考えたところで、飛/燕が三度目の溜息をついた。いい加減、待ち飽きた風だった。
「あのですね、貴方がこの状況をどれだけ大変なことだと思ってるかは知りませんが、私が
どこ育ちか覚えてますか? 寺ですよ寺。千年前から小姓念友まかり通ってきた寺の中ですよ?」
「……それがどうした」
「その中に私みたいなのがいた、っていうことがどういうことかわからないですか? 自分で
言うのもなんですが、子供の頃から綺麗な顔をしてましたからね。こんなことは日常茶飯事
だったんですよ」
52漢塾 伊/達×飛/燕 3/4:2008/10/19(日) 12:17:17 ID:uFhfAll00
「こんなこと、だと」
「だから、兄弟子に押し倒されたり、物陰に引きずり込まれたり、ってことです。もちろん、
そんなやつらの好きにはさせませんでしたがね」
 その頃のことを思い出したのか、飛/燕は一瞬、口元に凄艶で酷薄な笑みを浮かべた。
怒らせると怖いやつだ。きっとその兄弟子とやらも、それ相応の恐怖を味合わされたことだろう。 それを思った俺の背にも、じっとりと冷たい汗が浮かんでいる。こんなことは慣れている、
と笑う飛/燕は、それでは俺を一体どうするつもりだろうか。
 だが飛/燕は得意の体術を使うことも、千本を構えることもなく、微笑はそのまま、ただ俺を
見詰める。
 そうして、小さく囁いた。
「……鈍い人ですね」
「鈍い?」
「言ったでしょう。「そんなやつらの好きにはさせなかった」と」
「ああ」
「貴方になら好きにされてもいいと思っているから、こうしておとなしくしているんですよ」
 それは要する、俺になら何されても構わない、ということか。要する、俺の肚ひとつという
ことか。
 呆然と見詰める俺に念を押すように、飛/燕はさらに言葉を続ける。
53漢塾 伊/達×飛/燕 4/4:2008/10/19(日) 12:19:44 ID:uFhfAll00
「で、貴方は私をどうしたいんです?」
 その笑い混じりの口調は弄うようで、俺の耳朶をざわざわとくすぐった。
 ひどいやつだ。ここまで来ておいて、そんなわかりきったことを、今更俺の口から言わせるのか。
 だから俺はこれ見よがしに舌打ちして、「残酷な奴だな」と言ってやった。それがせめてもの抵抗のつもりだったのかもしれない。
 だが飛/燕は、それすら事も無げに受け流して笑う。
「私が残酷だなんて、ずっと前から知っているくせに」
 くすくすと笑いながら、飛/燕は両手を伸ばす。俺の傷だらけの頬を細い指が掠め、太い首に腕が絡みついた。それに誘われるまま、俺は飛/燕の白い喉あたりに顔を埋めた。
 そうやってあの綺麗な顔と微笑が視線から外れると、こんな時ばかり不器用になる口も
少しは回るようになる。
「好きにさせろ」
 それでも、口にできた言葉はそれだけで。
 苦し紛れに、首筋に噛み付くように唇を這わせると、押さえつけられた身体がひくりと震えた。
 俺の正気は、そこでまた途切れた。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
改行ミスってました。すいません。
54風と木の名無しさん:2008/10/19(日) 13:55:29 ID:ca0vGS+N0
民明書房
55風と木の名無しさん:2008/10/19(日) 17:04:24 ID:rxjlRMF4O
姐さん方の素晴らしい作品、乙です。
投下します。

コーエー版西遊記の、悟空と三蔵(男)話です。
エチーはありません。
本当の意味でやまなしおちなしいみなしです。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
56コーエー版西遊記 1/5:2008/10/19(日) 17:05:58 ID:rxjlRMF4O
 綺麗な月の夜に、呼び出された。…というよりは、現れた。
 いつもの『仕事』を終えて眠ろうとしたとき、何気なく外を見てみたら、木の上に乗っていた。
長い赤髪に金色の輪を嵌めた妖怪…孫悟空。
 驚いて駆け寄った僕に「やっと気付いたか」と言って、僕を抱えたかと思えば
人気の無い静かな場所に連れて行かれた。
 下ろされて立ち上がり、ふと見上げると…そこに、綺麗な月があった。
見渡せば、そこが見慣れた地…両界山の頂上であることがわかる。
 ああ、だから月がいつもより大きく見えるのか、と、呑気にそんなことも思った。
「…悟空、どうしたんだ?いきなりこんなところに…。」
 久しぶりに会っても、挨拶はいらない。
それが、いつもの二人だったから。
「おう。たまには、な。」
僕と向き合って、悟空はそう軽く返す。
「…この両界山の頂上に、悟空が閉じ込められていたんだよね。」
「ああ。…まあ、出てすぐは思い出したくも無かったが
 こうやって出てみりゃあ、懐かしく感じるモンなんだな。」
お釈迦様に挑戦して負かされて、五百年もの間、ずっと岩の中に閉じ込められていたという悟空。
…五百年。そんな長い間、ここに閉じ込められていたなんて。
「悟空。」
「ん?」
「……五百年。五百年…ずっと、ここで…何を、してた?」
 尋ねてはいけないかと思って、胸に閉まった疑問。
いまなら話してもいいかもしれないと、そう思って言ってしまった。
57コーエー版西遊記 2/5:2008/10/19(日) 17:08:45 ID:rxjlRMF4O
 「…することなんかねえよ。岩の中に閉じ込められてたんだからな。
することっつっても、地面を這いずってる蟻を見てるか
晴れから雨に、朝から晩に変わる空を見てるだけだ。」
「…そっか……。」
 五百年。
それ程に長い間、悟空はここから地を眺め、空を眺め続けた。
動く事を好む悟空にとって、それはどんなにつまらなかったことだろう。
否、いっそ、発狂してしまった方が楽だと思うかもしれない。
「…………。」
「…おい、三蔵?」
 目を伏せて顔をそらす僕に、声をかける悟空。
 …どうしても、年の差を考えてしまう。
僕はこれから年をとっていく。
それが嫌だというわけじゃない。
それは生きる者としての摂理だから。
 けれど…今、目の前にいる悟空…、悟空に限らず、全ての妖怪は
年をとってもそれは、人と同じ単位ではない。
彼らは何十年、何百年と生き続ける。
…僕は、人で、悟空は、妖怪だ。
同じ時を歩むことが出来ないのが、つらかった。
58コーエー版西遊記 3/5:2008/10/19(日) 17:10:13 ID:rxjlRMF4O
「…三蔵、俺達は」
「言わないで。」
 …ああ、表情を見るだけでわかるんだろう。
僕が何を考えて、何を言おうとしているのかも。
だから悟空はいつも、それを察して僕に言葉を投げかけてくれる。
けれど…いまは、それさえも。
 「…悟空は、いつも、言ってくれる。
 『俺達はダチだ、何処にいたって変わらねえ』って。
 『何年経とうが俺達は一緒だ』って。
 …僕や悟空が何処にいても、この気持ちは変わらない…。
 少なくとも、僕は、…僕も、そう思ってる。
 でも…でも本当はそうじゃない……。
 悟空は妖怪で、僕は、人だ。」
「だから何だってんだ、俺が妖怪でも」
「傍にいられる?」
 視線をずっと見ていた地面から、悟空の顔に合わせる。
…悟空は、驚いたような顔をして、僕を見ていた。3
 「悟空は何百年も生きてるかもしれない。
 もしかしたら一千年以上の時を、もっと長い時を生きてきたのかもしれない。
 でも僕は、まだ十八年しか生きていない。
 それから先、何年生きられるのかわからない。
 きっと、長く生きられたとしても五十年…。
 …悟空の生きた年の半分にも、満たない。」
59コーエー版西遊記 4/5:2008/10/19(日) 17:13:01 ID:rxjlRMF4O
涙が頬を伝ったような気がした。
 …今、僕は悟空に酷い事を言っているんだろう。
悟空はいつだって僕を励ましてくれているのに、僕は悟空を傷つけている…。
でも、それでも、止まらなかった。
「それに僕は…その年になったらもう、お爺さんだよ。
 悟空はそんな僕に、会える?
 …面と向かって、同じ事を言えるのか?
 これから老いて死んでいくしかない僕に、ずっと一緒だって言えるのか?
 悟空は言えるって、答えられるかもしれない。
 でも僕は悟空に何て言えばいい?僕はどんな顔をすればいい?
 何も言えない…言えるわけないじゃないか!笑えるわけないじゃないか!!
 僕は悟空と一緒にいられない…!傍にはいられない!」
そう叫んだ瞬間――僕は殴られ、体が地面に打ち付けられた。
60コーエー版西遊記 5/5:2008/10/19(日) 17:20:26 ID:rxjlRMF4O
「…んなの誰だってわかってんだよ」
 次に聞こえてきたのは、低く唸るような悟空の声。
…起き上がろうとする間もなく、悟空は僕に乗りかかって襟首を掴んだ。
「…!悟空っ」
「んなこと誰だってわかってんだよ!!!
 てめえにわかって俺にわかんねえわけねえだろうが!
 俺はこれからてめえ抜きで生きていかなきゃなんねえんだぞ!!」
悟空の叫びに僕は、はっとする。
…見ている方が胸が痛くなるような悲しい顔をして、悟空は続けた。
「これから俺は、てめえ以外の人間を見ていかなきゃなんねえ…。
 考えただけで気が狂いそうになった。
 すっ飛んでお前の顔見なきゃ、頭がおかしくなりそうだった。
……今までこんなこと、なかったのによ…。」


□>STOP ピッ ◇⊂(・∀・;)イジョウ、ジサクジエンガオオクリシマシタ!

所々に数字が書かれてるかもしれませんが、消し忘れです…orz
61風と木の名無しさん:2008/10/19(日) 20:13:50 ID:9TTfCvNF0
>>50
久々に来て萌えたw
姐さん、GJ!
>>54
いや、姐さん、民明書房はこうゆうのは出さんだろうw
62風と木の名無しさん:2008/10/19(日) 20:37:18 ID:uud38oRX0
民明書房
63風と木の名無しさん:2008/10/19(日) 22:17:40 ID:aY77zU8C0
>>50
うわぁぁぁぁ我が青春のカプキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!
64ナマ 白ぬこ王求団 1×7 1:2008/10/19(日) 23:11:26 ID:saA9JrzzO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
現在開催中の状態に、1×7という…前代未聞の組み合わせで…。
切り込み隊長の憂鬱に関して。



自分はリズムを狂わせると、結構長引かせてしまう性質だ。
これは自覚もしていて何とかしようと思っているけれど、わかっちゃいるけどどうにもならない。
一度ずれだすと軌道修正に、不振から脱出するのに時間がかかる。改めてそれを思い出し型丘は唇を噛む。
いつ間違いだしたか、それが見当もつかない。しかししかも、それを考えている場合でもないときている。
こんな短期決戦では時間が無い、と思い知って焦る。
焦っては堂々巡りに、袋小路に迷い込むぞとそれもわかっちゃいるんだが。
要するに、泥沼にはまり込むタイプなんだ、ということ。
プロの選手として、致命的だとわかっている。何とかしたい。何とかしなければ。
そうでなければ、気付かないうちに全てが終わっていきそうで怖い。
「…なーに、まだ居ったん!?」
不意に背後から声がした。軽く荒くなった息遣いで上下する肩の、その後方を振り向けば、九里山がいる。
65ナマ 白ぬこ 2:2008/10/19(日) 23:13:47 ID:saA9JrzzO
室内糸東習場の、少し狭苦しい入り口からこちらを覗きこんで、打王求避けのネットを掻き分けている。
「九里か」
「俺、自分最後やと思てたんやけど。やっさんまだ帰らんの?」
すっかり帰り支度している彼とは裏腹に、型丘のジャージは汗でぐっしょり湿っていた。
打撃糸東習をしている今だからいいが、少し休めばそれは冷えて、体の熱を奪うだろう。
ライトにたかる羽虫の数も、ぐっと減った。山中の王求場の、この季節の夕からの冷え込みはきつい。
「あー…もうちょい、打ったら、帰るっ」
言いながらまた一つ。マシンから飛んでくる王求を軽く振りぬく。軽い手ごたえと軽い音が響く。
ああ、糸東習ならこんなに思い通りに打てるのに。
「無理せんと帰って、休んでよー?」
「ありがとな」
次はカ一ブが来た。落ちるところを一瞬待って、右へ。
かっと掠った音とともに、打王求は傍らのネットに飛び込んで滑り落ちる。ファウノレだ、これじゃ。
ダメだダメだ。
「…やっさん」
「!」
もう一王求!
振りぬいたところに、思ったよりも近いところから声がして、方丘は思わずまた振り向いた。
66ナマ 白ぬこ 3:2008/10/19(日) 23:15:18 ID:saA9JrzzO
帰ったと思った九里山が、転がる白王求をいくつか拾い上げながら、傍らにしゃがみ込んでいた。
「…何」
「ティー、上げよか?」
「…いや、いい」
「ふうん…」
また構えたが、その視線が後頭部あたりに突き刺さる妙な居心地の悪さに、じりじり過ぎる時間が
やたら長く感じる。
早く来い、早く来い、次の一王求。早く来いったら。
首筋を、ひと筋汗が流れ落ちる。
「…」
「…もう、終わりちゃう?」
「…かもな」
「はいはい、終了。帰ろや、何か食べて」
撤収撤収、と手を叩きながら、九里山の笑う声がした。足元を転がる白王求に、方丘は目を落とす。
やっさん何食いたい?とりあえず先にシャワーかな、と彼の声が響くのが遠い。
一枚、感覚との間に膜がある。いや、まだだと他の誰かが言っている。
「いや、俺、もうちょっと打ってく」
「え」
「しっくり来るまでな」
「もう。明日休みやん。明日したらええやん」
「…」
「休むんも、大事やで」
「けどそれじゃ間に合わねんだよ!!」
まとわりつく彼の気配が、一瞬とんでもなくうっとおしくなって、型丘は思わず腹の底から叫んだ。
激昂なんて滅多にするタイプじゃない。自分でも言った後、一瞬で後悔した。
67ナマ 白ぬこ 4:2008/10/19(日) 23:17:13 ID:saA9JrzzO
いや、後悔はしたが、それ以上に自嘲の思いで体が一瞬さらに暑く火照って、そしてさっと冷めた。
「やっさん」
「…悪い」
八つ当たり。これはそれ以外の何でもない。
泥沼にはまり込んでいる。ますます動けなくなっている。日々それがきつくなっていた。
少しでもチ一ムの役に立ちたいのに、俺がやらなくちゃならないことがあるのに、何だこのザマは。
俺は一番オ丁者なのに。
そして本当に、何だこの無様な有様は。九里に八つ当たりしたところでどうなる。
俺が出来なかったことを、続く二番オ丁者として必死に埋めてくれているこいつに。
だからこそ居心地が悪い。
お前からは、逃げちゃいけないのはわかっていても、後ろめたい。
「…ま、座りや」
不意にジャージの上着の裾が、グイッと引かれた。思わず見ると九里山が不思議な無表情で、既に
座り込んだ自分の隣をトントンと指で突いている。
新しいだろうジーンズが土で汚れるのも気にしていない風だ。九里山らしすぎる仕草だ。
「やっさん。落ち着いて、大丈夫」
憑かれたように腰を落とす型丘の肩に、ぐいと腕を回して九里山は言った。
まるであやすようにさっきの指が腕をノックする。
68ナマ 白ぬこ 5:2008/10/19(日) 23:19:02 ID:saA9JrzzO
そして言い含めるかのような口調で告げる。
「シ一ズン中かて、こんな時あったやん。けど、大丈夫やって、いっつもやっさん、何とかしてきたやん?」
「…何とか?」
「うん。そやから俺も、頑張らなあかんて思たし。逆もあったやろ」
「…」
「俺が調子悪うて、やっさんがめっちゃ走って、助けてくれた時とか」
耳には入っている。けれど頭がそのイメージを再現することを拒んでいる。
「そやから無理せんと、俺見とってって。何とかするから」
「…!」
「やっさんの分も」
「だからそれじゃ何の解決にもならんだろーがよ!」
彫りの深い顔立ちで、しかしどこかのほほん言う九里山に、肺腑の奥がちりっと燃えた。
それは全く逆の発想だ。
そしてまた、型丘自身がどこか気付いていたことでもあった。
それだけ、自分がどうにも出来ていないということ。
九里山に、無理を強いている。二人分のノルマを負わせている。
「今まで散々助けてくれたンやしな。俺の番やろ?」
出瑠居も、選王求も、俺の仕事まで負って、何でお前はそんなに淡々としてるんだ。
手のひらが無意識に、地面の土を食んでいた。爪の跡をくっきり残していた。
「俺が出なきゃ意味無いだろって!」
俺だ。
69ナマ 白ぬこ 6:2008/10/19(日) 23:20:59 ID:saA9JrzzO
俺の仕事だ。お前じゃない、俺だ。
叫んでいるのは自分自身にだということ、それも型丘は知っていた。
冷たい土と、熱い手のひらの間に、何か生まれそう。
だって俺がやらなきゃ意味が無い。一番の俺が出なきゃ、二番のお前を生かせないだろうに。
ノルマだけ背負わせて、お前の仕事すら、俺が奪ってんじゃないのか。
「…そういうとこ、やっさんは可愛いんよなァ」
「あ?」
「そうでもないと怖いンよな。積み上げ続けんと、すぐ落っこちてきそうな気がしてんねやろ」
型丘は絶句した。何だって言うんだ。
俺自身が気付いてない俺そのもののことを、何でそんな風に言うんだ。お前は。
「やっさん」
「ぅおっ!?」
九里山が不意に、とんとん型丘の肩を叩いていたその指を、腕をぐっと絡めてきた。
首の辺りが締め付けられる。
そのまま倒れこんだところを、思いっきりまた、ぎゅうぎゅう締められる。苦しいくらいだ。
こめかみがちょうど鎖骨のあたり。気付かなかったけれど、彼の匂いがする。
初めて知る、匂いがする。
「九里っ…」
「そゆとこ、好きやで、やっさん」
見上げればそう、九里山は言った。
真っ直ぐ、前を見ていた。
70ナマ 白ぬこ 7:2008/10/19(日) 23:22:50 ID:saA9JrzzO
「けどもう休んで。俺がやるから。やっさんの分も、俺がやるから」
至近距離で見ると、その顔立ちや瞳は本当に、心臓に悪い。強くて深い。
こちらを見てはいない。けれど知っている。
お前が何処を見ているのかを、俺は多分知っている。
「…九里」
呼べば彼は、ん、と目だけを動かした。
「…この体勢で、その台詞は、ちょっとマズくないか」
「何で」
「誰かに見られたら、ものっそい誤解を…」
「えー、俺何か変かいなー?」
いや、変ていうか、あのな、と型丘はもごもご繰り返しつつ一瞬ためらったが、ええい離せ!
とばかりに腕を突っ張ると、案外簡単に彼は腕の力を緩めた。
一瞬ふっと安心しそうになった自分に、型丘は気付いていた。
繋がっている。一線になっている、そう感じた時のあの感触は、夢中になりそうだった。
同じものを見ている。俺とお前の、視線の先は同じだ。
「…あーもう、お前ちょっかいかけてねーで帰れ!」
「何で。やっさん帰らへんのやったら、俺ももっかい着替えてくるで」
「はっ?」
「俺もれんしゅーする」
「…帰れってよ!!」
「一心同体やん!一二番コンビて」
今後は真っ直ぐ、顔を見て言われた。
71ナマ 白ぬこ 8:2008/10/19(日) 23:24:40 ID:saA9JrzzO
何度も言うようだが、九里山の顔と目は、至近距離では有無を
言わせず心臓に悪い。
だから一瞬反論が遅れた。何だそれは、と言うより前に、九里山はあの顔で、にっこり笑って立ち上がる。
「誰と誰が一心同体だ!思ってても言うな、気味わりい」
「…思ってんのは一緒なんや」
「うわ、誘導尋問かよっ」
慌てて後ずさりするように身を離して、方丘はぶつくさ文句を言う振りをした。へらへら笑って、
いつもの振りをした。
帰れと言っても帰るタマじゃないのも知っていたし、誰より練習熱心なのも知っている。
だからこそ、九里山よりは一王求でも多く打たなければならなかった。
「…」
九里山が本気で着替えてくると言って消えたあと、方丘はまた白王求を片っ端から集め、バツティソグ
マシンを再起動する。
ぶうんと入った電源と振動に指を這わせれば、思ったよりそれが温くて自分が冷えていたのを思い知る。
ダメだダメだ。早く復活しないと。
気付かないうちに全てが終わっていくのはゴメンだ。それだけはダメだ。
「…っらぁ!!」
体中を血が回り、飛んでくる王求が見えた。ヒット!
また軽い音が、今度はしっかり脳に突き刺さって目が覚めるようだ。
72ナマ 白ぬこ 終:2008/10/19(日) 23:25:54 ID:saA9JrzzO
そうだこの感覚。この感触だ。
早く復活しないと。俺が生きないと。
俺が生きなきゃ、お前が死に体になる。それだけはダメだ。それは許せない。
軽い音と手ごたえが、ますます何かをたぎらせる。背中がむずむずする。
たった一人、誰もいない逆風の中走ることも、静寂の大海に漕ぎ出していくことも、慣れている。
そして後ろにはお前が居る。視線の先は同じ、どこか一点を拠点として、俺は走り出す、お前は指し示す。
心も体も全く別だか、見てるものが同じだ。視線の先は同じだ。
俺が生きなきゃ、お前が死ぬ。負けねえぞ。
負けねえぞ。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
予想外に長くなってしまった…
でもこれからの戦況には、個人的に7の復調が鍵となると信じていますよ。
73風と木の名無しさん:2008/10/20(月) 00:21:42 ID:yN4kWEAvO
>>55
乙です。あのラブラブっぷりはいいですよね。
久しぶりにこーえー版の西遊記を掘り出して再プレイしたくなりました。萌えをありがとう。
74風と木の名無しさん:2008/10/20(月) 00:27:49 ID:5WvesmnH0
ズンドコ細川
75風と木の名無しさん:2008/10/20(月) 00:28:53 ID:5WvesmnH0
中島裕之
片岡易之
涌井秀章
76風と木の名無しさん:2008/10/20(月) 01:44:27 ID:OCwfE0AvO
>>64
萌えました
姐さんの文章大好きです
頑張れ白ぬこー!
77風と木の名無しさん:2008/10/20(月) 02:22:50 ID:XmXSeqQqO
白ぬこの作者の人
マジでサイト作るか本出してください!
もしかしてもうある?
78血の月曜 藤と音 1/2:2008/10/20(月) 11:46:26 ID:LwKqTWPa0
まだどっちが右か左かよくワカラナイヨ......。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


華奢な指が、キーボードの上を跳ね回る。
鷹と呼ばれる彼の幼馴染みは、コンピュータを前にした時だけ、普段のとぼけたキャラクター
からは想像も付かないような力を発揮する。一瞬も気を逸らすことなく集中する、その白い
横顔を眺めながら、彼は不思議な気持ちに囚われていた。

ーーーこの顔。アダルトソフトを弄ぶ時と少しも変わらない。こいつにとっては、そこに謎
   があれば、それでいいというわけか。大勢の人の命が関わっているとしても、多分心の奥の
   何処かで、今こいつの気持ちは踊っているに違いない。

それはきっと道徳に対する、一種の冒涜だろうと彼は思う。でも、人並みはずれた才能とは、本来
そういうものではないのだろうか。凡人である自分は、それに惹かれ、渇望し、そして決して与えられる
ことはないのだろう。
「ホカク完了!」
「やったか・・・熱っ」
鷹が満足気にリターンキーを押した瞬間、ハッと我に返り椅子から立ち上がった彼は、口にしていた
コーヒーをこぼしてしまった。
「わっ、大丈夫?なにしてんだよ。まずネクタイ取れ」
「分かってる」
分かっているが、結び目が堅くてなかなか取れない。
「早くっ」
79血の月曜 藤と音 2/2:2008/10/20(月) 11:47:49 ID:LwKqTWPa0

鷹は急いで彼に近寄ると、素早くネクタイの結び目を解き、襟元をくつろげて、首から抜いた
ネクタイを椅子の背に掛けた。
「あー、赤くなってる」

さっきまでキーボードを叩いていた器用な指が、彼の鎖骨に触れる。二人の視線が一瞬絡まりあった。
鷹が赤い痕の上をそっと左右に撫でると、彼は、は、と息を吐いて、眉を顰めた。
「痛い。触るな」
「・・・ごめん」

ーーー指先がコーヒーより熱く感じたのは、やけどで痛覚がおかしくなっているからだろう。
   だけど、この胸の動悸は一体どう説明するんだ。

「冷やした方がいいな」
「氷もらえるか」
「冷凍庫の上の棚に、保冷剤の小さいのが入ってるから」
「わかった」

彼が横をすり抜けた拍子に、椅子の背のネクタイが滑り落ちた。パタンとドアを閉めて、彼が部屋を
出てゆく。鷹はネクタイを拾うと、頭をわしわしと掻きながらつぶやいた。
「エロソフトより、どきどきするなんて・・・」


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

今後の行方に期待を込めて。

80風と木の名無しさん:2008/10/20(月) 22:47:54 ID:Iv6+alsv0
週刊少年マガジン
龍門諒
恵広史
BLOODY MONDAY
高木藤丸
九条音弥
ブラッディ・マンデイ
三浦春馬
佐藤健
81風と木の名無しさん:2008/10/22(水) 00:43:45 ID:sqbnZzD90
以下のリンクは、球/団益子ット・北熊 ← 有袋類妄想文です。
http://a-draw.com/uploader/upload.cgi?mode=dl&file=5922
永久規制コースに巻き込まれてしまったので、txtでろだに上げました。
(このレスも、難民板のレス代行スレでお願いして貼ってもらっています)
passは「1994」です。
もし、スレに貼るべきだと思う方がいらしたら、本文をコピペして下さると本当に有難いです。

※一部時系列が捏造されてます。
※本当は週刊誌の発売は、交/流戦でB/Bがナゴ屋に来た日より後です。
82風と木の名無しさん:2008/10/22(水) 15:41:15 ID:fukRFQcH0
>>81
やろうとしたんだけど、改行が多すぎてエラーになるので、
適当に分割し直してくれませんか。
こっちでやっていいものかどうかわからなかったので。

タイトルは「球/団益子ット・北熊 ← 有袋類」でいいのかな?
83風と木の名無しさん:2008/10/22(水) 17:43:12 ID:PTR40Rei0
ブリスキー・ザ・ベアー
BB
エロズリー
84風と木の名無しさん:2008/10/22(水) 20:34:30 ID:Rd2xp2T30
>>83
正式名称を教えてくれるのなら、それだけ言われてもどれのことだか
分からないので、レスアンカーつけてくれんか?
ついでにまとめサイトで伏せ字になってるのを直してくれるとなお助かる。
8581:2008/10/22(水) 21:00:46 ID:LUBRyYko0
ご指摘の通り、よく考えてみれば
そこまでしてこのスレに貼らなきゃならないものでもなかったです・・・。
以前から何か書くとここに貼っていたので、ここに貼らなきゃという、
よくわからん義務感みたいなのがありました。
自分でもちょっとどっかおかしかったと思います。ごめんなさい。反省してます。
スレ汚しすみませんでした。
>>81はスルーして下さい。

>>82
せっかく見ていただいて、お時間を割いてくれたのに、
無駄手間だけになってしまって申し訳ありませんでした。
86DMCジャギクラ始まり:2008/10/22(水) 23:42:06 ID:7LXPbkk4P
前スレ>>384のクラウザーさん視点。
…という説明に大いに偽りあり、な話

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
87DMCジャギクラ01:2008/10/22(水) 23:43:32 ID:7LXPbkk4P
ガシャン、と鉄製のドアが閉じる重々しい音が聞こえて、僕は大きく息を吐いた。
その音は、僕が“クラウザー”から“根岸崇一”に戻ることのできる合図みたいなものだから。
今まで必死にとりつくろっていたクラウザーとしての虚勢を全部脱ぎすてて、僕は両手で顔を覆った。
身体中がだるかった。
特に下半身が鉛のように重くてすぐには起きあがることができない。お腹の辺りはいやらしいもので汚れていてひどく気持ち悪いのだけれど、それを拭うことすらおっくうで。
全部、ぜんぶ、僕がさっきまで男の人と――、和田くんと、セックスをしていたという名残だ。
顔を覆った手の隙間からもれ出たのは、うう、と我ながら情けないうめき声。
…ああ、今日もこれでやっと終わったんだ。

「……うう…今日も、最低だった…」
88DMCジャギクラ02:2008/10/22(水) 23:45:12 ID:7LXPbkk4P
初めて和田くんと関係を持ってしまったとき、僕はものすごく後悔した。
当然だ。童貞より先に処女を喪失してしまったなんて、悲しすぎる事実だ。
しかも相手は自分のバンドのメンバーで。
さらに悪いのは、誘ったのが僕の方だってこと……。
いつにも増して酷いありさまのライブの時だった。
一部のファンの子がケンカを始めて、それがだんだんと広がっていって、乱闘みたいになって。
最低なことに僕は、それを楽しんでた。
演奏のテンションを上げて乱闘を煽っては、僕自身も叫んで、暴れて。いつにも増して我を忘れた。
そして気がつくと僕は、和田くんに薄暗い機材室に連れ込まれていた。
壁に押し付けられた僕に覆いかぶさっていた和田くんの瞳は、ライブの興奮が冷めないのかギラギラと獣のようだった。
そんないつにない和田くんの様子と、頬を舐められたときに感じた戸惑いは、すぐに異様な興奮に取って代わられて。
頬から首筋を這う舌の熱さに、自分の身体がぞくりと震えたのが分かった。
僕にその感覚を与えているのが同じ男の人だとか、自分の仕事仲間だとか、そんなことはどうでもよくて。
ただ頭の中にあったのは、『もっと強い快楽を』ただこれだけ。
いったん顔を離して見上げてくる顔を、続きを促すように近く引き寄せると、和田くんは僕の鎖骨の辺りにむしゃぶりついてきた。
眼下にうごめく彼の白金色に光る長い髪に手を差し込んでかき乱しながら、僕はそのとき、確かに笑っていたのだと思う。
89DMCジャギクラ03:2008/10/22(水) 23:46:23 ID:7LXPbkk4P
こうして僕は、和田くんとセックスをしてしまった。
きっかけを作ったのは和田くんだったかもしれない。それでも、あれは確かに僕が誘ったんだ。
―――あのときの僕が、望んでそうなったことだ。
テンションが上がってしまうととんでもない行動をとってしまう自分の性分を、僕はこのときほど忌わしく思ったことはなかった。
それでも、立場が逆じゃなくて良かったとも思った。
ハイテンションの僕が和田くんをレイプしたんじゃなくて、僕が受け入れる方で本当によかったと、そう思うことにした。
どうしてそっち側になったのかそれは少し腑に落ちないし、最中はものすごく痛くて苦しかったけれど、受動的な立場に甘んじた方が、結果的には気が楽だ。
だってこの場合、和田くんにも多少なりとその気がなければ行為は成立しないわけで、つまり今度の件についての責任の所在は、僕と和田くんとで半分ずつ。おあいこってことで。
和田くんの方もシてしまった後、すごく動揺していたようだったし。
初めての行為で半分気絶していた僕を薄情にも置き去りにして逃げ出した、それには少し腹が立ったけれど、まあ仕方のないことなのかもしれない。興奮状態だったとは言え、こんな恐ろしい風体の、しかも男を抱いてしまったりしたら、誰だってそうしたくなるだろう。
そう思って、全てをなかったことにしてしまおうとした。
そして、そうすることは簡単だと思ってた。
僕さえ平然としていれば、何もかも忘れたようにいつもの態度をとっていれば、僕とのことを後悔しているだろう和田くんだって調子を合せてくれるに違いないって。
実際に、しばらくの間はそれで上手くいっていたんだ。忘れたふりをしている僕に和田くんも今までと同じような態度で接して、僕らの関係は以前と同じまま、同じバンドのメンバーっていう仕事仲間で。
そのまま僕らの間にあったことは日常に押し流されて、本当に無くなっていってしまうんだと、そう思っていた。
――でも、そうじゃなかった。
ライブの後にまた機材室に押し込められて、この前よりもっと切羽詰まって追い詰められたような顔をした和田くんに身体をまさぐられながら、僕はひたすらに混乱した。抵抗というものの存在を忘れてしまうほど。
ただただ、どうして…?と思った。
90DMCジャギクラ04:2008/10/22(水) 23:47:45 ID:7LXPbkk4P
…どうしてまたこんなことするの?
和田くん、あんな顔してたじゃない。
僕らがシちゃってから後、初めて顔を合わせたとき、すごく困った顔して口ごもってた。
僕が忘れたふりしてみせたらとたんにホッとした顔をして、だからそんな君を見て僕は、ああ、やっぱりあの時のことは何かの間違いだったんだって実感したんだよ?
なのに、どうして――――、

心の中に渦巻くそんな問いかけは、けれど竦んだような僕の喉元にひっかかって、どれひとつとして口には上らなった。
そして和田くんも、何を言うでもなく僕を抱いた。少しだけ乱暴なその行為の合間合間に、ただ、僕の名前を呼びながら。
「……っ、クラウザー…!」
けれど耳元で繰り返し呼ばれるその名前は、僕の本当の名前ではないのだった。
ああ、そうか。
僕は理解した。和田くんが、また僕にこんなことをする訳を。
91DMCジャギクラ05:2008/10/22(水) 23:48:50 ID:7LXPbkk4P
和田くんはいつも僕に言う。「さすがお前はメタルモンスターだぜ!」って。
そう言って、僕のことを心から尊敬してくれる。僕を誇りに思ってくれる。
きっと和田くんは信じているんだ。メタルの帝王たる“ヨハネ・クラウザー2世”という存在を。
衣装を身につけてステージに立つ僕が、本当にクラウザーという悪魔になっていると信じているんだろう。
もしかしたら和田くん自身も、ライブの間は“ジャギ”になり切っているのかもしれない。
DMCのファンの子たちの間で信じられているみたいに、僕たちにとってはセックスもレイプも日常茶飯事。モラルなんて物は持ち合わせていないんだって、そんな気持ちでいるのかもしれない。
だから、和田くん――、いいや、ジャギにとっては、こんなのは何でもないことなんだ。
ただライブで高まった興奮を醒ましたくて、それにちょうどいいから、ジャギは僕に手を伸ばしたんだ。同じ悪魔同士だから面倒な事もなくて都合いいって。
きっとそうなんだ。

そんな結論に至ってから僕は、ライブの後だけの和田くんとのこんな関係を、黙って受け入れることにしたんだ。
せめてこの格好をしている間は、和田くんの考える“クラウザー”でいたい、そう思って。
和田くんの手を拒まないように、むしろ進んで受け入れて、楽しんでいるんだと思ってもらえるように振舞おうって。
だって僕は、“異常性欲の持ち主”クラウザーなんだからさ…。
それはすごく独りよがりで馬鹿みたいな決意だったのかもしれない。けれど今となってはもう、後には引けない状況になっていた。
92DMCジャギクラ06:2008/10/22(水) 23:50:08 ID:7LXPbkk4P
「……っ、う……ぁ……っ」
だから今日も僕は、和田くん――、ジャギを受け入れて、快楽を貪るふりをしている。
……本当はふりなんかじゃない。始めの頃は痛くて苦しくて、それを耐えるのに必死だったけれど、今ではこんな事にもすっかり慣れてしまった。
大きく広げられた足の間に男を受け入れた僕の姿は、仰向けにされたカエルみたいでひどくみっともないんだろう。そんな格好でゆさゆさと揺さぶられているのは、恥ずかしくてたまらない。
それでも僕がどうしようもなく感じているのは、快楽に他ならなくって。
――すっかりジャギに作りかえられてしまった僕の身体。
「クラウザーっ、おまえ、すげーいい顔してんぜ……っ?」
上から降ってくるからかうようなジャギの言葉に、心がきゅうっとすくんだような気がしたけれど、僕はそれに気づかないふりをする。そして、必死に言葉を探す。
きっとジャギが考える“クラウザー”ならこう言うだろうという言葉を。
「…っ、くだらんことをほざくっ、余裕があるっなら…っ、もっと俺を……っ悦ばせてみろ…っっ!」
僕の身体の中のジャギが、とたんに質量を増した。
そして激しさを増した律動で、今の自分の発言が正しかったのだと実感する間もなく、僕は与えられる快楽に翻弄されるばかりになった。
固い床の上で不自然な態勢をとらされ続けて、身体のあちこちが悲鳴を上げている。けれど僕は、ジャギの腰に足をからめて、ねだるように身体をゆすった。
更なる快楽を求めて。
93DMCジャギクラ07:2008/10/22(水) 23:51:07 ID:7LXPbkk4P
そのうちにジャギが僕の身体を抱き起こして、膝の上に抱え上げた。
「…ぅぁぁああっ!!」
その衝撃に、僕の口から今まで耐えていた声が鋭く上がった。
自分の体重でより深く体内にジャギを飲み込んでしまうこの体勢は好きじゃない。苦しくて、辛くて…、ああでも、それすらも気持ちよくてたまらない。
そんな自分の浅ましさが嫌で仕方がない―――。
じりじりと僕を責めさいなむそんな懊悩を、くだらないことだと僕の中のクラウザーが笑う。モラルや理性など捨ててしまえと、ただ快楽に身を委ねればいいと、邪悪な魔王がそそのかす。
そんな自分の心の中の誘惑に抵抗して、僕は必死に首を横に振った。すると、
「――っ、ひ、あ…っ!?」
首筋を源にして、激しい痛みが全身を突き抜けた。
それがジャギに咬みつかれたのだと、僕は認識できたのかどうか。
「うあ゛あ゛あ゛ああぁっっ!!!」
獣のように吠えたてて、僕は、完全な“クラウザー”になる。
ライブのクライマックスのような興奮を得た俺の身体は、激しい痛みさえ快感に変える。
めくるめく絶頂感と俺を抱きしめる力強い腕と、身体の奥深くに注ぎこまれる熱が、今の俺の全て。
「……ぁ…、ぁあ……」
長く尾を引く深い快楽の余韻に恍惚となりながら、それでも心の片隅で殺し切れず息づいている根岸の部分が、悲痛な叫び声を上げているのが聞こえた。

僕は本当は、こんなことがしたいんじゃないのに―――、と。
94DMCジャギクラ08:2008/10/22(水) 23:52:17 ID:7LXPbkk4P
熱が冷めれば、僕の身体を支配していた“クラウザー”はとたんになりを潜めてしまう。
その代わりに後悔や自己嫌悪の念がじわじわと心の中に押し寄せてきて、そうなるともう、僕はひたすらにジャギが立ち去ってくれることを望むしかない。
……これ以上、彼の望む“クラウザー”を演じる自信がないから。
僕の身体を気遣ってくれるジャギの手を払いのけて冷たい言葉で追い払うのは、また新しい自己嫌悪の種になるけれど、そうでもしないと、ジャギに向って何か泣きごとを言ってしまいそうで。
部屋のドアが閉じる音がして1人になれた僕は、ようやくほっと息を吐いて身体の緊張を解いた。
「……うう…今日も、最低だった…」
すぐには起き上がれずにそのまま機材室の天井のむき出しになった鉄骨を眺めながら、僕はいつものように、さっきまでの行為をぼんやりと思い返していた。
…ジャギ、今日はなんだかいつもより激しかったな。咬みつかれたのなんて初めてだ。
首筋をそっと触ってみると、つきん、と痛みが走った。
「―――っ、ぃた…」
手に触れた部分は心なしか熱を持って、血さえ滲んでいるようで、相当強く咬みつかれたんだと改めて実感した。
「……ううぅ…ひどいよジャギ…」
跡目立っちゃうかな…と呟く僕の声が、ほかに人気のない部屋のなか虚しく響く。
95風と木の名無しさん:2008/10/23(木) 00:03:31 ID:7ZfojmcrO
さる?
96DMCジャギクラ09:2008/10/23(木) 00:12:57 ID:J1NjojtD0
砂糖菓子みたいな甘い恋がしたいと思ってた。
大好きな女の子とひとつベッドの中、抱き合って、笑いあえたら、ふわふわと甘いお菓子を食べたみたいな幸せな気持ちになれるんだろうって、いつもそんな夢を見てた。
でも現実はこれだ。
僕がいま横たわっているのは、ライブハウスのごみごみとした機材室の冷たい床の上。欲望を処理するためだけのセックスに疲れ果てた身体を投げ出して、ひとりぼっちで……。
何もかも、理想とは正反対のこの現実。

「………っ」
たまらなくなって僕は、きしむ身体をぎこちなく動かすと、なんとか起きあがった。
膝を抱えて小さく丸まると、かかえた足の付け根のいちばん奥まった部分から、さっきジャギが中に出したものがとろりと流れ出てくる。その感触に僕は身震いして、自分の身体を抱きしめた。
鼻の奥がつんとして、目の奥からは熱いものがせり上がって。こらえようと歯をくいしばってみたけれど、あっけない程すぐに僕の目からはポロポロと涙がこぼれ出した。
「………最低だ…っ」
なにもかも最低だと思った。
好きでもない音楽をやらされて、カリスマだ魔王だと祭り上げられて、勝手な理想を押し付けられて。
その期待に応えるために、こんなことまでしている。愛のないセックスに心をすり減らしている。
最低だ。デスメタルも、DMCのファンのみんなも、それからジャギも。
97DMCジャギクラ10:2008/10/23(木) 00:13:57 ID:J1NjojtD0
でも、分かってるんだ。いちばん最低なのは僕自身なんだって。
こんな風に被害者ぶって泣いている僕なんだって。
別にジャギだけが悪いんじゃない。僕はいつだって、彼に嫌だと言ったことがないんだから。
ジャギは僕に無理強いをしているわけじゃない。いつも僕を気遣って優しく扱おうとしてくれる彼なら、僕が嫌だと言えばすぐにこんな事は止めてくれるんだろう。
それなのに僕は自分の意思表示を何もしないで、流されるままに関係を重ねている。
あげく自分を憐れんで泣いたりするなんて、僕は卑怯者だ。
こうやって僕の思考は結局いつだって、自己嫌悪の念にたどり着くのだった。

ただひとこと、言えばいいのに。
彼に嫌だと言いさえすれば、この関係を終わらせることができるのに。
どうして僕はそれをしないのだろう?
こんな悲しい、虚しい思いを味わって、自己嫌悪に苦しんでまでなぜ、僕は彼の望むクラウザーでいようとするんだろう―――?


我ながら不可解でたまらないそんな自分の心の中をじっくり見つめてようとしたとたん、戸口からかけられた声に、僕は身体をこわばらせた。
98DMCジャギクラ終わり:2008/10/23(木) 00:15:06 ID:J1NjojtD0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

クラウザーさんと思いきやじつは根岸でした、という話。
切れ良く話を纏められなかったのが悔やまれます…


途中さるに引っ掛かってしまって中断してしまいました。
長時間スレ占領したような形になってしまって、本当にすみませんでした。
99風と木の名無しさん:2008/10/23(木) 00:20:53 ID:EAPs2XK10
デトロイトメタルシティ
100てんなる ラ/フ/ァ/ミ/カ 1/4:2008/10/23(木) 02:30:53 ID:2u73CcsT0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
スレ住人の方のレスに萌えてしまって・・・
山も意味も落ちもエロもないです。

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たぶんこの身体を、僕の思うままにしてしまうことは容易い。


月を見て綺麗だなぁと思うのと同じような感覚で、僕はぼんやりと思った。
思っただけだ。

ひとつ屋根の下で暮らせと言えば暮らすし、同衾しろと言えばする。
ごちゃごちゃと駄々はこねて見せるものの、基本的にミカエルは僕に逆らわない。
教官と生徒という関係は、おそらくミカエルが認識してる以上にミカエルを縛る。

勿論、それは他の生徒にも言えること。
だからこそ教官である身として、生徒との接し方には気を配らねばならない。
だがしかし、自分の横で素っ裸でこちらに背を向け横になっているクソ真面目な天使には。特にだ。

「・・・キミねぇ・・・何も本気で脱ぐことはないんだよ?」
「んな・・・!ラ、ラファエル様が布団に入る時には服を脱げとおっしゃるから・・・ッ!」

そらキタ。
僕は内心がくりと項垂れる。

「そりゃ言うさ。なんたって僕はキミとあんなことやこんなことやそんなことまでしてしまいたんだからね」
「あ、こ・・・そ・・・!?」
101てんなる ラ/フ/ァ/ミ/カ 2/4:2008/10/23(木) 02:32:49 ID:2u73CcsT0
あぁあぁもう。
そんな風に可愛く慌てふためいてるうちに、いずれ誰かに食べられてしまうよ。
頬を赤く染めるんじゃないよ目の毒だろうに。

・・・目の毒と言えば。

「羽が生えないねぇミカエル。」
「はい?」
「まぁキミはまだ天使じゃないから当然だけど―・・・」

身体を隠してるつもりで向こうを向いているんだろうけど、背中は背中でそそるよ。

眼前に晒される綺麗な項に指を這わせる。
つ、と首筋から背骨にかけて流して、人間で言う肩甲骨に触れた。
滑らかな曲線は、確かに翼の存在を思わせる。
そこに口付けそうになって、体温を感じるくらいまで唇を寄せて。
やめた。

「・・・何を震えてるのミカエル。」
「・・・」
「大丈夫、何もしやしないよ。」
「そうじゃありません・・・」
「え、してイイの?」
「それも違います!そうじゃなくてっ・・・」

肩越しにこちらに寄越した視線は恐らく羞恥と屈辱の涙で濡れている。
僕の言葉を何か曲解して誤解したらしい。
バカにされたと思い込んでいる。
月明かりに逆光になって、僕からははっきりとは見えないけれど。
鳥目だから。

「ラファエル様は・・・僕が天使になるなんて無理だと思ってらっしゃるんですか・・・?」
102てんなる ラ/フ/ァ/ミ/カ 3/4:2008/10/23(木) 02:34:08 ID:2u73CcsT0
語尾が涙に滲む。
可哀想に。
傷ついてしまったんだね。

「どうしてそう思うの?」
「先ほども同じようにおっしゃったじゃないですか・・・」
「”キミはまだ天使じゃない”・・・?」

ひくんと目の前の裸体が揺れた。

「気にしてたの?・・・ごめんね。」
「・・・否定はなさらないんですね」
「するよ、否定。」
「そんな御座なりな・・・」

言葉とは裏腹に、気の抜けたような声。
青い髪を撫ぜまわしてやれば、涙で強張った身体からも力が抜けていく。
弛緩したキミを、抱き締めたいけど我慢する。
横にしていた身体をうつ伏せて、僕は目を閉じた。

触れることは容易い。
抱き込んでしまうことは容易い。
暴いて、泣かせて、それでも気持ち良くさせてやることだって、きっと容易い。
でも今は駄目だ。

天使になって欲しいよ。
可愛い生徒だもの。
だけどその綺麗な綺麗な背中を破ってまで、翼を生やす理由が本当にあるの?
103てんなる ラ/フ/ァ/ミ/カ 4/4:2008/10/23(木) 02:38:36 ID:2u73CcsT0
「・・・ラファエル様」
「・・・なあに?」
「ラファエル様の翼は、やっぱりお美しいですね。時計台で久しぶりにお姿を拝見して、ちょっと見惚れちゃいました」

照れくさそうな告白に、思わず苦笑する。

「片翼だよ」
「でも、僕が知っているなかでは、ラファエル様が一番お美しいです。」

ちらりと横目に見れば、その瞳が『触りたい』と訴えている。完全に。
さっきまで恥ずかしがって向こうに向けていた身体をこちらに転がしてまで。
全部丸見えですけど良いんですかね、ミカエルさん。

「・・・さわる?」
「えっ!そんな!!」

そんな失礼な、とか。畏れ多くてそんな、とか。
わたわたと恐縮して、けれど否定の言葉は発しない。
ちょい、と羽を揺らしてやれば、おずおずと、でも嬉しそうに腕を伸ばした。

「・・・・・・きれい・・・」
「・・・くすぐったいよ、ミカエル・・・」

うっとりとして見せるのは僕だからか、それとも僕が天使だからか。

天使になって欲しいよ。
僕もキミの翼に触れたい。
早く触れたい。

せてめ額にキスしたくて、だけどやっぱり出来なくて、僕はまた青い髪を撫ぜた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
104風と木の名無しさん:2008/10/23(木) 12:39:27 ID:RWk/AwsrO
続きあるんならまだ読みたいぜー!GJ!!
105風と木の名無しさん:2008/10/23(木) 18:09:53 ID:d+W954jOO
なんという萌えなじゃきくら…!自己嫌悪ねぎうざーさん良いよね
私の理想の魔王様受けだぜファッキンクレイジー>>56!
106風と木の名無しさん:2008/10/23(木) 18:12:53 ID:d+W954jOO
間違えた>>86ね!!
西遊記も大好物です(^p^)
107風と木の名無しさん:2008/10/23(木) 22:44:28 ID:Y1m6kKIi0
>>86さん乙!!

ジャギクラサイコーですわんU#゚Д゚U
こういう切ないすれ違い系大好物!自己嫌悪たまんないっす。
続きあるならぜひぜひ〜待ってます!!
108風と木の名無しさん:2008/10/24(金) 00:14:29 ID:1RovOS850
>>100
いやいや、エロいっす、GJっす。
「羽が生えないねぇ」がなんかすげーエッチだと思ったのは自分だけか。

>鳥目だから。
ワロタw
109風と木の名無しさん:2008/10/24(金) 17:24:57 ID:qUlvbxEvO
てんなるの方 有り難う!
また是非おながいします
110風と木の名無しさん:2008/10/24(金) 18:16:38 ID:KrKJE8dF0
天使になるもんっ!
111風と木の名無しさん:2008/10/24(金) 20:23:28 ID:e5aDz+clO
>>84
ただの荒らしだと思うぞ
sageてないし
112影門(要英訳) 1/2:2008/10/24(金) 20:54:36 ID:Nn9Uc92b0
別の意味で伝説のゲームより、死神×勇者
任スレの人があんなこと言うから、ちょっと妄想してみた
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


ざんねん!!
わたしの ぼうけんは これで おわってしまった!!


そうして死んだ私の魂は、もう馴染みとなってしまった死神と対面していた。
死体となった自分を見下ろしながら。

「・・・・・・これで何回目だろうな、自称勇者さん」
「じ、自称って言うな!!」
「はぁ・・・俺もお前を助けすぎて、このままじゃ自称死神って言われそうだ」

そう、この死神には何度助けられたのか分からない。
入り口の所で松明を扱っている時に死んでからの付き合いなのだが、
彼は何故か死んだ少し前の時間に私を戻してくれるのだ。
10回ほど死んでしまった時に、何故助けてくれるのかと私は聞いてみた。

『その間抜けな死にっぷりに、同情したんだよ』

それは言わないでほしい。
私だってまさか中に入ることなく、持ち物の松明で死ぬなんて思いもしなかったのだから。

『本当にお前といると退屈しないな。次はどんな死に方をするんだ?』

まだ死ぬと決まっていないだろ!!
なんて叫んで戻ったすぐ後に死んだのも、今では良い思い出だ。
113影門(要英訳) 2/2:2008/10/24(金) 20:55:43 ID:Nn9Uc92b0
武器になる物を手に取るとすぐに実行していたせいか、最近では武器のセルフ禁止令を出されてしまった。
死にたくはないのだが、何故か反抗したくなる勇者の私。
自分じゃなきゃいいだろうと出てくる奴を叩いたりして死亡していたら、
切れた死神にパチンコでペチペチ苛められたのも、今では良い思い出だ。

「ほら、早く進めよ。終わりに向かってさ」
「あのさ、ここを出たら・・・」
「出ても付いていくからな。お前の最後は、もう俺専用だ」

なら安心だ。
何故だかそう思って、私は笑った。
最初は死神なんて冗談じゃないと思っていたのに、不思議なものだ。

「じゃ、行ってくるよ。次こそクリアしてやるからな!」

返事はない。けれどそれでいい。
言葉なんていらない。
私が目を閉じたその時に、ここにいてくれるだけでいい。


ざんねん!!
わたしの ぼうけんは(ry

「本当に残念って思ってるのかこのバカ!! 窓に移動したら落ちるに決まってるだろ!!」
「もう自分が分からなくなってきた・・・」
「本当にお前勇者か・・・?」

わたしのぼうけんは、まだまだおわらないようだ。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
自由度が高いからってこの勇者は自殺しすぎだろw
114風と木の名無しさん:2008/10/24(金) 21:02:52 ID:les6E/TlO
>>112
勇者の死にっぷりと、あの死神がパチンコでペチペチ苛めてるとこ想像して笑い萌えた。GJ
115オリジナル 1/3:2008/10/25(土) 01:37:24 ID:TkrEcZNx0
ノンケ受けってこういうのを言うんでねぇの?とか思い立ったテンションで書いてみた
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


失礼します、と声をかけながら作業室の中に入ると、
予想通りというべきか、期待外れというべきか、高橋さんが気まずそうに顔を下に向けた。
その様子を見て、持ってきたプリントの説明をしながら僕は心の中で舌打ちをする。
まだ、駄目なのか。

説明を終えたあと、僕は高橋さんの前にある彫刻に目をやる。
その像はどう見ても作りかけで、いや、展覧会まではまだ日があるのでそれは構わないのだが、
ただどう見ても昨日とどこも変わっていなかった。
もっと言えば先週から何も変わらず、白い女は表情も造られずにただずっとそこに立っている。

視線を感じる。スランプに陥っていると一目でわかるような作品を眺める僕を高橋さんは見ている。
ずるいかもしれないが、言い出すならこのタイミングしかないだろう。
「僕の」溜息と同時に言葉を吐き出した。「僕のせいですか?」
僕のせいですよね、すいません、そう付け足した。けれども本心ではあまり謝っていない。
だって、僕だけが悪いわけじゃない。高橋さんだって、同罪だ。
高橋さんはまだ黙りこくっている。あああ、もおおおおおおおお。いい加減にしてください。
僕は、気にしすぎな高橋さんを恨んだし、
先週に「彫刻科で飲みにいかね?」と発案したであろう誰かを恨んだし、
高橋さんと僕に酒をついだ生徒達を恨んだし、
へべれけの僕にへべれけの高橋さんを押し付けた教員も当たり前に恨んだ。
116オリジナル 2/3:2008/10/25(土) 01:38:16 ID:TkrEcZNx0

早い話、僕と高橋さんは酔った勢いでやってしまった。
それも、どちらかがどちらかを一方的に襲ったというのではなく、
本当の恋人同士のようにキスをし、指をからめ、何度も抱き合ったのだ。
目が覚めたとき僕は絶望した。発狂しそうになった。それをこらえて、笑った。
笑って済まさなければ、と思ったのだ。だから僕はなるべく軽く、高橋さんに、忘れましょう、
と言ったのだけれど、そんな僕の気を無視して、高橋さんは重苦しい顔で真剣に謝った。
それからずっと、高橋さんはこの調子だ。
そして高橋さんが変わってくれないから、僕までずっと意識している。笑って終わらせたかったのに。

「すまない」やっと口を開いたかと思えばまたこれだ。「本当にすまなかった」
「もう、いいですって。そりゃ、いれられたのは僕ですけど、僕も酔っててノリノリだったし」
言いながら、二度目の行為に、高橋さんの上に跨って自ら腰を振っていたことを思い出す。今きっと後ろ髪が逆立った。
そうだったな、と小さく高橋さんがいう。顔を下に向けて口元を手で押さえている。
そのしぐさに、やめてくださいよ、と僕は強く吐き捨てた。
もしかすると高橋さんはあの夜のことを僕ほど鮮明に覚えていなかったのかもしれない。
それを今、僕が話したことで思い出したのだろう。長い前髪がかかって、表情は読み取れないが、
自分の痴態を他人が思い出している姿を、目の前で見るのは流石に苦痛だ。吐く息が震えた。

「だから、忘れてくださいってば。作品にまで影響及ぼしてどうするんですか」
どうにかできませんか。思ったよりも大きな声になってしまった。こればかりは本心だから仕方ない。
117オリジナル 3/3:2008/10/25(土) 01:39:00 ID:TkrEcZNx0

「本当にどうにかできませんか。僕は、まだここの研究生としてやっていきたいんです。
 消えるわけにはいかないんです。でも、だからって高橋さんに消えられても困るんです。
 高橋さんの作る彫刻、すごい好きなんです。高橋さんがいるから僕も残って研究生になりました。
 ずっと追いかけるなんていいませんけど、今はまだ見ていたいんです。
 だから、二人いる形で、どうにかできませんか」

長い沈黙が続いた。
ヒかれただろうか。気持ち悪がられただろうか。
事故を起こし気まずくなった相手がまだ執着してくるなんて、と。
いや、そもそも事故を起こしてしまった時点で、もう充分にヒかれているだろうけども。

高橋さんが何かを言った。
あまりに小さい声で、聞き取れず「え」と言うと、今度はちゃんと僕の目をまっすぐ見て言った。
「その言葉を、もう一度言えるか?」
「え?」いつにもなく真剣な目だった。僕は高橋さんの瞳の中にとらえられた。空気が変わる。背中に嫌な汗が流れた。
何を言おうとしているのか、気づいて、しまった、気がする。いや、そんな、そんな。
「俺は…」俺は、と高橋さんが口ごもる。やめてくれ。こんなのは、いらない。望んでない。
けれどやはり高橋さんは僕の気を無視した。ああ、もおう、本当に、この人は。

「俺は君が好きなんだ」
118オリジナル 終わり:2008/10/25(土) 01:40:41 ID:TkrEcZNx0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
一番酔っているのはあー 私です!はいすいませんでしたー 
119風と木の名無しさん:2008/10/25(土) 01:51:13 ID:3QL+6Y7Z0
>>111
タイトルとか挙げて検索にひっかかるようにしてるんだろうねえ
120風と木の名無しさん:2008/10/25(土) 02:24:02 ID:DqeTan/tO
>>118
ちょ…萌えました!!
こういうのイイヨイイヨー
121風と木の名無しさん:2008/10/25(土) 09:06:18 ID:PDP9Bwq30
シャドウゲイト 攻略
122風と木の名無しさん:2008/10/25(土) 11:57:09 ID:r03Il3FdO
Pink板って検索規制かけてるんじゃなかったっけ?
123風と木の名無しさん:2008/10/25(土) 12:33:22 ID:ppn/UaSC0
普通に引っかかるんだが
124風と木の名無しさん:2008/10/25(土) 16:29:39 ID:ZHn7/rRI0
申し訳ありません、長文エロオンリー失礼します。
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  ハーメルソのバイオリン弾きです。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  オリ設定・ギータ受けで鬼畜エロ注意。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
125ハーメルン◇溶ける剣 1/14:2008/10/25(土) 16:30:55 ID:ZHn7/rRI0
跪く己と直立して敬礼する男を見下ろしたまま、時の上官は哂って言った。
己の仕込みを自慢でもしたいのだろう、上官は傍らにギータを控えさせたまま、
声音を落とす事もなく、ひたすら愉しげに、その歪な醜い喉を振るわせている。

――その弛んだ喉笛を、噛み切ってやりたいと思った。


装飾が少なく、サイズばかりが巨大なベッドの上に突き飛ばされ、人型になれと言われた。
「別にそのままでも構わんが、人型の方が肌は合わせやすいからな」
聞いてもいないのに下卑た答えを返した相手に、ギータは表面だけの媚びた微笑を送る。
怒らせても、増長させても己に得は無い。この男に限らず、己の優位を感じた大抵の魔族は
一度加虐のスイッチが入ってしまえば手に負えないからだ。ギータ自身は人型よりも多少
なりとも頑強な獣人の姿で伽を務めたかったのだが、相手がそう望むのならば仕方が無い。
この男には利用価値があるのだ。上官に取ってではなく、ギータ自身にとっての利用価値が。
望まれるままに、己の姿を人型へと変化させた。その姿は突き出た耳と尻尾以外は何ら人と
変わりなく、直ぐに降りて来た満足そうな声と共に、細く脆くなった顎を持ち上げられた。
「ああ、こちらの姿も悪くないな。機嫌取りに重用されるだけの事はある」
言いながら獣人特有の長い舌が、いきなりギータの喉奥まで差し込まれた。気管を圧迫されて
思わず苦鳴を漏らしそうになるが、醜態を晒すのはまだ早いと何とか堪えた。自分から相手の
太い首に腕を回して、無粋な舌を受け入れる。程なく生温かい濁った唾液が大量に口内へと
送り込まれて来て、ギータの全身に怖気が走るが、吐き気を堪えてそれを可能な限り飲み下す。
126ハーメルン◇溶ける剣 2/14:2008/10/25(土) 16:32:11 ID:ZHn7/rRI0

まだ始まったばかり、嫌悪感だけならば耐える事は比較的容易だった。
我ながら体を開く事に、良い加減慣れないものかと常々思うのだが、ギータの行為への反発心は
募るばかりだった。それに相反するように、諂う演技ばかりが上手くなっていく。
「………ふっ…、う…」
相手の体毛が敏感な乳頭部に触れ、思わず声が漏れた。
「どうした、肌を合わせただけでもう感じるのか?」
愚鈍に見えて戦場ではそれなりに有能な獣族の男は、ギータの小さな反応を見逃さない。
人化した事により剥き出しの状態になった敏感な柔肌が、相手の硬い体毛に直に擦り付けられて、
その些細な刺激にも体が反応する。加護を受ける代償に数多の魔族と交わり、開発され尽くした
体は滑らかな毛並に守られていてさえ、外部からの刺激に過敏に反応するようになっている。
生後間もない幼生のような人肌では、尚更に刺激が強い。
「おいおい、随分と可愛らしい事だな。そんなので、あの強欲な大隊長殿の相手が務まるのか?」
笑いを含んだ蔑みの言葉に、薄い唇を噛み締めそうになるが、動揺した事を悟られないように
見下ろされる視線に熱っぽい眼差しで答えてやる。自分にはプライドなど無いのだと演じて見せる。
「すみません……この姿では、久しぶりなもので…」
瞳を伏せて恥らって見せる仕草は、まだ演技の範疇だった。
「ふぁあ!……あんっ…」
不意に胸の尖りをキツク摘まれた。そのまま指の腹でグリグリと痛い位に押し潰されて思わず身を
捩るが、男の腕にすっぽり収まった状態ではどうにもならない。仮にどうにかなったとしても、
逃れるという選択肢は初めからギータには用意されていない。
127風と木の名無しさん:2008/10/25(土) 16:32:57 ID:4v8Da6yA0
ハーメルンのバイオリン弾き
128ハーメルン◇溶ける剣 3/14:2008/10/25(土) 16:33:19 ID:ZHn7/rRI0

何時もの事だ。後には、ただその先の行為が待っているだけなのだから。
滑らかな肌の先にある小さな蕾は、男がほんの少し力を込めるだけで簡単に潰されてしまうだろう。
自らのひやりと冷たい妄想に、ギータの毛足の長い尻尾の先がはたりと慄いた。
「ああ…可愛らしい尻尾だな」
それを目の端で捕えた男は、変化した頭髪と同じ色のギータの亜麻色の尻尾を空いた手で絡め取る。
性感帯でもある根元部を最初は緩く、ギータの様子を見ながら徐々に力を込めて握り込んでいく。
最初は唇を噛んで耐えていたギータだったが、引き千切られそうな程の力に、やがて耐え切れなくなり
ついには目前の男に自ら強請るように口付けて来た。
「…ぁっ…う、…お願いします…早く…、」
男の関心を逸らす為、自らその凶器に触れた。逞しい鋼のような肉体から生えるソレは、今のギータの
手首程もあり、何より長い。それは閨の中において戦場の剣にも匹敵するほどの恐怖の対象となった。
その刀身を己が身に受け入れなくては、この苦行は終わらない。これまでも幾度となく繰り返してきた
根源の痛みと強制される快楽。その中で懇願して逃れられた事など、片手の数程も有りはしなかった。
「ふん、いいだろう…乗れ」
人化してもなお小柄なギータに、シーツに横になった男が己の顔を跨がせた。
「咥えろ」
そう言われ、男のモノに従順に奉仕を始める。無論手首ほどもあるソレを口内に収める事など到底
不可能で、先端部を口で咥え両手で竿を擦りながら、雁の周囲や裏筋を丹念に舐め上げて可能な
限りの愛撫を施す。そう言えば昔、上官が寝室に蛇系魔族の女を連込んだ事があったが、その女は
上官の巨大な一物をギータの目前で軽々と飲み込んで見せた。もしも同じ事を強制されたらと、
ギータは蒼くなってそれを見ていたが、やがてギータが上官に背後から貫かれ悲鳴を挙げる頃には、
気が付くと女はベッドの脇で上司の剣で真っ二つに体を切り裂かれて息絶えていた。
129ハーメルン◇溶ける剣 4/14:2008/10/25(土) 16:34:35 ID:ZHn7/rRI0

「力を入れるなよ…?」
「!?…ひあ!」
ほんの少し思考を飛ばしていたせいで、身構える事無く男の指を根元まで埋め込まれてしまった。
一本だけとは言え、大剣を振るう節くれ立った男の指の存在感は半端ではない。この部屋に来る前に
化膿止めとそれ用の薬を服用していたが、この分では程なく裂けてしまうだろう。
くちゅりと濡れた音が己の下肢から響いてくる。恐らく薬の効いているせいもあるだろうが、
先ほど乱暴に乳首と尻尾を責められたせいで、慣れた体がすでに受け入れの準備を始めているのだ。
「普段から上の連中に猫可愛がりされていると思っていたが…確かに雌みたいな厭らしい穴を
しているな。これは上官殿だけの仕込みじゃあないんだろう、今は何人咥え込んでるんだ?」
「…ひ、あっ……それは……あ!…っ」
( 私が目指す場所へ辿り着くのに必要な数だけです―― )
「わ…私は……大隊長殿が命ぜられる方と、だけっ………」
男への奉仕を続けようにも、今下手に咥えれば牙を立ててしまいそうだった。ギータは必死に男の
一物に細い指を絡めるが、下肢に与えられる刺激に逆に肉棒へと縋り付く形になってしまった。
男はギータの形良い尻を片手で乱暴に割り開き、その中心を2本の指で乱雑に掻き回している。
「ふん、まあ構わんさ。俺は今ここで楽しめればそれで良い…面倒だから3本入れるぞ?」
言うと同時に、容赦無く体内に押し入って来た複数の節くれ立った指が、敏感な粘膜を好き勝手に
荒らしていく。男の手の角度に合わせて小さな後孔は無残に形を変え、指と壁との隙間から入り込んだ
空気がびちゃびちゃと卑猥な音を奏でている。やがて、太さに見合った長い男の指先が無造作に
ギータの最も感じる一点を抉った。
130ハーメルン◇溶ける剣 5/14:2008/10/25(土) 16:38:06 ID:ZHn7/rRI0

「ひあ!」
同時に限界まで引き延ばされたと思っていたギータの肉壁が、更なる柔軟性を帯びて男の指に絡み
ついてきた。男は厭らしい笑みを浮かべ「やれば出来るじゃないか」と鼻歌でも歌いだしそうな
様子で更に奥を掻き回す。
「いや…あ、ああ…!…まっ…」
最初は面倒臭そうにしていた癖に、ギータの反応が気に入ったのかしつこく同じ箇所を指や舌で嬲った。
長い舌は指と同じく深い場所まで入り込み内壁を刺激しながらギータの体の奥へと直に唾液を流し込む。
「…や、め!…止めて下さい…お願い、です……」
「うるさいな。せっかく丁寧に解してやってるんだから黙ってろ」
男は一度もギータの前に触れていないのに、後孔を弄られただけでイキそうになっている。
「ひ!…あ…あ、もうっ……」
「全くトコロテン所じゃないな。ほら、握っててやるから」
『キャウンッ!!』
イキナリ自身を強く握り込まれ、思わず獣独特の甲高い鳴き声を上げてしまった。堪らず突っ伏した
顔の横で、ギータの拙い愛撫では中々勃たなかったそれが、皮肉にも彼の苦鳴に呼応して凶悪な刀身を
持ち上げている。そのあまりの大きさに、暫し体の昂ぶりを忘れてギータは息を呑む。
「……どうだ、美味そうだろう。これから、たっぷりコイツを食わせてやるからな」
濃い雄の匂いを纏った男は、楽しげにギータの体を持ち上げて向かい合わせに己の膝上に降ろした。
「ぐっ…!あ、ああ……!」
男の剛直に狭い後孔を押し拡げられ、口を割るのは苦痛の声ばかりだ。
131ハーメルン◇溶ける剣 6/14:2008/10/25(土) 16:40:05 ID:ZHn7/rRI0

「ほら頑張れ、まだ先っぽだけだ」
確かにその通りだったが、嵩の一番太い部位の手前で止められた今の状態ではギータには生き地獄だ。
先程まで、はち切れそうになっていたギータ自身は激しい痛みのせいですっかり萎え、体は硬直して
しまっている。自分で残りを飲み込めと暗に言われ、男のソレに腰を降ろすよう命令されたが、
男の大きさに怖気づいて中々実行に移せないでいた。とっくに心は諦めているのに、いざとやると
なると踏ん切りが付かないのは、その身を裂かれる激痛を知っているからだ。実際にそれで生死の境を
彷徨った事が幾度も有った。嗜虐心をそそる姿はなるべく見せまいと思っていたのに、乱暴ではあるが
順序を踏まえたセックスは、次の予測が付くからこそ今更ながらにギータの恐怖心を煽っていた。
「おい…初心なのも結構だが、俺はそんなに気が長くないぞ」
一段低い声と共に、血を滴らせそうな鋭い牙を覗かせた男の顔が間近へと迫ってペロリと唇を舐める。
次の瞬間、腰に回された太い腕がギータの尻を肉棒の上へ押え付けていた。
「!!!」
突如侵入して来た巨大な異物に下肢を裂かれ、堪らず身を仰け反らせるも熱い肉槍に体を縫い止めら
れて動けない。限界まで引き伸ばされた花弁は男が戯れに施した愛撫のせいで奇跡的に切れる事は
無かったが、それが更なる苦痛を生んでいた。
「こら、手伝ってやったのに死にそうな顔をするな。半分挿れてやったから残りは自分で入れろ」
これでまだ半分なのか。ギータの深い青色の瞳から生理的な涙が零れて、全身から冷や汗が噴出し
小刻みに体が震えている。この身が魔族である以上どうしようも無い事だが、性交の際の個体差が
激しい為に慣れと云うものが無い。受け入れる男根も、時には火のように熱かったり冷たかったり、
触手の様なものだったりと多肢に渡っていて、共通するのは精々“痛み”くらいだ。

132ハーメルン◇溶ける剣 7/14:2008/10/25(土) 16:41:38 ID:ZHn7/rRI0

「ひ…ああ!……す、すみませ……少し…待ってっ……」
男のモノはサイズ以外は問題なく許容できるタイプだったが、それでも辛い。
   キシリ…
弱々しく懇願しながら、ギータのどこがが軋みを挙げた。
「早くしろ」
「あう!」
ゆさりと体を揺すぶられ、ギチギチと悲鳴を挙げてそうな、本来小さな孔が更に男を咥えこむ。
   キシリ… キシリ…
痛みに支配された下肢を男の手が這い回り、痛みに痙攣する小さな双丘を掌で無遠慮に捏ね回していた。
「あ、あ!やあ…っ」
「こんな小さな尻で、よく男を飲み込めるもんだ…」
パンッ!と男が撫で回していた大きな手でギータの尻を叩いた。
『キャン!』
またもや、ギータから獣の声があがった。
   キシリ… キシリ… キシリ…
立て膝にした両脚には、もうほとんど力が入らなくなっている。
ギータはほぼ無意識に、目前の痛みを与えてくる男の堅い首に藁をも掴むようにしがみ付いていた。
男はまるで己に全てを委ねてくるような、余裕の無いギータのその仕草に口の端を歪ませる。
そうしてギータの腰を両腕で固定して、突然ベッドから立ち上がった。
「!?」
133ハーメルン◇溶ける剣 8/14:2008/10/25(土) 16:43:08 ID:ZHn7/rRI0

自重で更に男を受け入れてしまいそうになり、朦朧としていたギータは慌てて男の首に回した腕に力を
込める。幾らギータの力が一般の魔族に比べて弱いとは言っても、己の体重を腕で支える事位は出来る。
だが………
「誰が、縋って良いと言った?」
(――!)
ギータの視界にあるのは、弱者を甚振りものにし悦に入る魔族の男の姿。
その大きく裂けた口からは、獲物を食い殺す事を何よりも喜びとする、肉食獣の鋭い牙が覗いていた。
   キシリ…
男の意図を理解したギータは、やがて諦めたように少しずつ腕の力を抜いていく。腰に回された男の
腕はギータの体が後ろに倒れ込まない様に添えられているだけで、力を抜けば当然のように男と
繋がったその一点へと体は真っ直ぐに堕ちて行った。
「ひっ…あ、……やああ……!」
身を貫く剣に自らを捧げる苦しみと、支配される事をどう足掻いても受け入れるしかない自我の喪失感。
やがて、ずぶりと云う感覚と共に、男の全てがギータの体内の奥深い場所まで侵入して来た。
内臓まで使って奉仕しろと言うのか。
   キシリ… キシリ…
痛い熱い、辛い苦しい。身勝手な欲望に臓物を掻き回される痛みは、まるで内側から喰われていくかの
ようだ。そして、それこそが相手の喜びの始まり。また、己が生きる為に享受する事を選んだ痛みの、
ほんの一片に過ぎなかった。ぐちゅりと音を響かせて、男のモノがギータの中で律動を開始する。
入り口付近の痛みは既に麻痺し始め、じくじくと疼くような熟れた熱に変わっていた。
縋る事さえ許されない両手は体の横で揺れている。涙で濡れた惨めな顔を見られたくなくて、
申し訳程度に男の胸に上体を寄せて、顔を伏せる。
134ハーメルン◇溶ける剣 9/14:2008/10/25(土) 17:02:06 ID:ZHn7/rRI0

「…大隊長殿のお勧めでは…お前は壊れる寸前まで犯された時が“一番良い顔”をするそうだな」
(!?)
同時に、激しく突き上げられた。
限度を越えた痛みで視界が霞み、四肢がバラバラになりそうな感覚に本能が怯えた。焼け付くような
男のモノが体内を我が物顔に蹂躙し、高い嵩が狭い孔全体を抉るように何度も往復する。
「あ!…ひ!…ああう…!」
無残な身体を騙すかのように、痛みが別の感覚にすり替えられて行く。それを成しているのが男なのか
己自身なのか、ギータには分からない。ただ無様に我を失って、下手な事を口走らないようにと、
それだけを意識に残して快楽に溺れていった。もう戻りたくても、体が付いて来てくれない。
「…あんっ…あ!…やあ!…っ」
自重で落ちる体を何度も肉棒で突き上げられ、その度再奥を削られた。その激しさに、呼吸を合わせ
られず、息苦しさに喘ぎながら男の顔を見上げた。ギータと同じく、獣人化したその姿からは、
本来の巨躯や凄まじいまでの豪腕はなりを潜め、変わりに怜悧さや残忍さを髣髴させる鋭い眼差しが
こちらを見据えている。その視線を受け入れた瞬間、ギータの背筋をゾクリと新たな快感が走った。
「ひああ!」
仰け反った体は、男の腕と肉棒でしっかりと支えられている。だが体内で男のモノの角度が変わり
腹の内側により強く擦り付けられる形になった。感じる部分をそれまで以上の圧力で抉り、貫かれ、
何時の間にか再び力を取り戻したギータ自身は、早くも達しそうになっていた。
「…あん……やあっ……!」
135ハーメルン◇溶ける剣 10/14:2008/10/25(土) 17:05:03 ID:ZHn7/rRI0

立ち上がった相手に抱きかかえられた不安定な状態で、荷物のように体を軽々と上下されている。
傍から見れば、見るに耐えないような醜態だろう。
   キシリ…
どこまでも惨めで、この上も無く無様だろう。
   キシリ… キシリ…
ギータの意志を無視して瞬く間に蕩けた体は、早く男に縋りたくてしょうがない。
早く逞しい胸に取り縋って、嬌態を晒けだして楽になりたい。この鋭い眼差しを受けながら、
厭らしく身悶えて卑しい姿を晒して、このギリギリの快感に溺れきってしまいたい。
「お前……本当に、嬉しそうだな…」
男がギータの上体を起こしてやると、待ち兼ねた様に細い腕が男の首に絡みついてくる。
「泣くほど酷く犯されるのは、そんなに気持ち良いのか?」
小さな愛らしい牙を覗かせる形良い唇からは、熱い呼気と甘い嬌声が絶えず零れていた。
泣き腫らしたギータの相貌は艶やかさを増し、蕩けそうな眼差しは男を誘っている。
「虐げられるのを喜ぶとは、澄ました顔して真性のマゾヒストだな?」
口角を上げて愉しそうに笑い、男はギータを侮蔑しながら、その哀れな位に快感を享受し易い体を
犯した。深く貫き入れたギータの内壁はギュッギュッと甘くキツク肉棒に噛み付いてくる。
それを振り払うように尚も激しく責め立てれば、男の腰を挟み込んだ肉感の薄い太腿がビクビクと
痙攣し、軽く腰を回して中を掻き回してやれば、悲鳴のような啼き声が心地良く耳に響いた。
136ハーメルン◇溶ける剣 11/14:2008/10/25(土) 17:07:05 ID:ZHn7/rRI0

「………!!っ」
ギータが腕の中でしきりに被りを振っているのを無視し、執拗に中を掻き回していると耐え切れずに
高い声を上げて達してしまったようだ。イッた直後のヒクヒクと痙攣しているソコを更に容赦なく
貫いて一番感じるらしい部位をゴリゴリと先端で捏ね回せば、しゃくりあげるような泣き声と
可愛らしい悲鳴で答えてくれた。
「我慢が効かん奴だ」
「…あん……やだ!…いやあ…っ」
従順な抱き人形を演じるその口から、降参の言葉を引き出せて、男の征服欲は満たされたが
勿論ここで終わらせる気は無い、益々堅く大きくなった己自身で執拗にギータの中を抉じ開ける。
男の首に回されていた腕からはとっくに力が抜けて、ギータは体の最も深い場所を男に明け渡して
喘いでいた。最初は痛かったのに、今だって痛くて苦しいのに、頭の芯が壊れそうな程感じている。
男はそろそろ自らも限界に近いのか、壊しそうな勢いで激しくギータの最奥を突き上げ始める。
気が狂いそうなほど感じるのは、きっと体の感覚が狂っているせいだ。
火のように熱い剛直が何度も体内を行き来する中、自分がボロボロと泣いているなんて
ギータ自身は恐らく気付いてもいない。酷くても良い、早く欲しいと願っていた――。
「ああ――――!!」
ギータの体躯には到底吊り合わない、巨大なそれを根元まで無理矢理押し込んで、男が達した。
体内の熱に押し出されるようにギータも達してしまい。男と自分の腹を汚す。
137ハーメルン◇溶ける剣 12/14:2008/10/25(土) 17:09:08 ID:ZHn7/rRI0

立った状態の男に抱えられたままの濃い絶頂は長く続いて、押し上げられた頂点からギータは
中々降りられない。軽く痙攣を続ける体に、今だドクドクと体内に流し込まれ続ける精が酷く辛くて。
抜いて欲しいのに、深く咥え込んだそれは栓となってギータの体内に男の精を全て止めてしまっていた。
ふう、と男は一息吐いて、後ろのベッドの上に勢いを付けて座った。男と繋がったままのギータは
そのまま男の膝の上に乗り上げる形になる。そのうえ、ベッドのスプリングの反動で、男の精液を
腹に抱え込んだまま、ギータはグチャリと中を掻き混ぜられた。
「ひゃん!」
「おお、可愛い声で啼くようになったな」
こっちは感じ過ぎて泣きたい位辛いのに、男はまだ余裕があるらしくギータの腰を片手で揺すっている。
「あう…お、お願い、ですから…一度、抜い……っ」
「駄目だ」
力無い懇願はやはり無視されて、男は繋がったままギータの体を反転させてうつ伏せの体勢にした。
巨大なそれに中を大きく抉られ、堪らず咥え込んだそれをギータは強く締め付けてしまう。
「ああっ…ひ!」
「気持ち良いな…」
完全に麻痺したソコは痛みと変わらない強烈な快感を送ってくる。目前のシーツにパタパタと落ちて
染みを作る水滴は、己の汗だろうか?熱で滲んだ視界でギータには良く分からなかった。もう堅い掌に
肌を撫でられるだけでも全身がビリビリする。ひくつく喉は嬌声すらもまともに挙げられそうになかった。
「……惨めで哀れで、被虐癖で堕落も良い所だが…俺は嫌いじゃ無いぞ」
138ハーメルン◇溶ける剣 13/14:2008/10/25(土) 17:12:05 ID:ZHn7/rRI0

その睦言を耳にした時、朦朧としていた意識の中、一瞬ギータの中に明確な殺意が燃え上がった。
だが、その殺気と同時に湧き上がった怜悧な理性が、たちまち己の殺気を押し殺し、霧散させた。
変わりに自らの思考を快楽で満たす事を己に命ずる。誇示など今の自分には必要ない、刃を捨てて、
只管雌の声で甘く啼く事を選べばいいのだ。この強く逞しい胸に抱かれ、雄の欲望で貫かれるのは、
確かに涙を流すほどに甘美で気持ち良いのだから。今は、只それを認めてしまえば良いのだと。
「あ……ああ、マウス・ピース様……!」
知らず男の名を呼び、ギータは歓喜の声を挙げていた。だが男の激しい熱に付いていけない体は
深く貫かれた腰だけを高く掲げ、上体と両腕は力無くくにゃりとシーツに突っ伏してしまっている。
「ふん、気持ち良過ぎて腰が抜けたか。まあいい、お前はそのまま泣いていろ」
ピクンピクンと震える尻尾は男の腹を柔らかく、怯えるように撫でている。その下の肉棒を咥え込ま
された蕾は限界まで花弁を開かされ、白と赤の体液を纏わり付かせた入り口部分は激しく擦られた
為にジクジクと熱を孕み、ぷっくりと腫れていた。その縁を指でなぞると一際高い声が上がり、
ギータの中が甘く切なげに絡み付いてくる。
「………そのうち、俺がお前をあの男から引き離してやるさ…」
嬌声の合間に己の名を呼ぶギータの声が、男の下肢の熱を増大していく。躊躇する理由も無い男は、
迷う事無くその差し出された肉体に手を伸ばし、欲望のままに再び自身でその体を激しく責め立てた。
破壊欲の人一倍強い男は、それでも愚かでは無い。ギータを壊しはしないだろう。
始まったばかりの夜、男の精はまだまだ底を付かない。淫猥な空気が纏わり付き、濡れた肌を焦がす。
体内を暴れ狂う男の凶器に喰われながら、容赦の無い交わりにギータの顔に恍惚とした笑みが零れるが
背後から犯すマウス・ピースは気付かない。弱い者は摂取され尽くすのが、魔族の在り方。
そのことを免罪符のように感じている自分がいた。
139ハーメルン◇溶ける剣 14/14:2008/10/25(土) 17:15:08 ID:ZHn7/rRI0

酷く扱われ、精神も体も虐げられて歓ぶ、堕落の果ての被虐性。それが自分の本性か。
“そうかも知れませんね…私は…この身の醜態を晒す事で生き延びたのですから”
ギータの始まりは、まるで人のように脆く儚く、爪も牙も小さく弱い無力な生き物だった。
元より保有する魔力も少ない。そんなギータがただ一つ生れながらにして持っていた力が、
“血液を介し他者の能力を取り込む力”。あまりに相手との力量に差があると血を飲んでも
能力を上手く取り込めない為、まず近い力を取り込み、自らの身にしっかり浸透させた後、
更なる上位の力を取り入れる行為を繰り返し、漸くギータは中級魔族程度の力を得たのだ。

――少しずつ少しずつ、強い力を取り込み、自身を塗り変えていく。

同時に剣技を磨き、策を巡らし、生まれ持った己の多くの弱さを覆い隠していった。
成長に時間の掛かるギータには、保身の為に他者の加護が必要で、その為の方法など限られている。
“この身が、痛みを喜ぶ堕ちた肉体だと云うのならば、それはそれで使いようがあります…”
既に汚濁に塗れたこの身に、迷いや誇示を残そうとは思っていなかった。
そう…最後に、誰かの血を飲んで…作り直せば良いのだ、弱い己ごと。

――夜明けを待つ月。隣に眠る男を嘲笑うギータの顔は、何時しか自嘲の笑みを浮かべていた。
140風と木の名無しさん:2008/10/25(土) 17:18:47 ID:ZHn7/rRI0
 ____________
 | __________  |
 | |                | | うあああああ!
 | | □ STOP.       | |         スレを占拠してしまってスミマセンスミマセンスミマセンスミマセン、
 | |                | |           ∧_∧ 全文エロで切りずらいのは言い訳です
 | |                | |     ピッ   (;Д; )人のいない時狙っといて連投規制
 | |                | |       ◇⊂    ) __ に引っ掛るアホですスミマセン!
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
141風と木の名無しさん:2008/10/25(土) 17:54:17 ID:e72Tnq4BO
長いわりにいまいち
142任スレ499:2008/10/25(土) 20:14:35 ID:JcqqiC1C0
>>112−113
言いだしっぺの499ですが
ビデオ棚でやってくれる人がいるとは!
死神さんとの蜜月には萌えますた
良い萌をありがとです GJ

つ けんのつか>せるふ>しり
143風と木の名無しさん:2008/10/25(土) 20:49:04 ID:G6PwNDYJ0
>>124
禿げ萌えた!昔好きだったのに書いてる人いなかったんだ
ギータ可愛いよギータ
有り難う!!
144風と木の名無しさん:2008/10/25(土) 22:06:31 ID:s0FFXt/bO
>>112>>113
影門…だと…!?

ざんねん!(ryを初めて知ったとき、ググって出た画像(ケース)の
主人公が美形過ぎてギャップにワロタ記憶があるんだ…
145ナマ白ぬこネタ 1:2008/10/26(日) 00:16:53 ID:eE0rrEzdO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ぬこの左腕のひとと某巨大チ一ムへ行った、守護神さま絡みで。
あの二人は過去にすごく仲良しで、今も交流あるようで…
ぬこ夕将の時、守護神からおめでとうメールが来たとのことから。



スポ一ツバッグの横ポケットに、何か重大な秘密が隠されているようだ。
穂葦は何気なく笑いながら、雑談にも興じながら、自分でも無意識にかそこを撫でくる仕草を繰り返している。
がりがりと、荒い生地の一部に爪を立てそうになったりときには恐る恐る指をはべらせたり。まるで恋に悩む指のよう。
一方で乱暴に洗濯物を突っ込んだりタオルを詰め込んだりもするので、結局どちらが本心なのかよくわからない。
背後で誰かが冗談を言って、皆ひとしきり笑った。次の言式合まではまだ間があるためか、雰囲気は底抜けに明るいままだ。
「これ、誰の本すかー?」
「あ、俺のだわ、すまん」
「その続き、早く持ってきて下さいよー!待ってんのにー」
ロッカーの隅っこで転がっている漫画本も、とりあえず整理整頓される。
まだ次の言式合はある。あるんだが、ここでの一年は一旦終了だ。
146ナマ 白ぬこネタ 2:2008/10/26(日) 00:18:29 ID:eE0rrEzdO
さすがに晴れ舞台には、汚れたユ二フォ一ムはまずかろう。出せるものは今のうちにクリーニングしておくに限る。
薄汚れた壁も一部タイルの剥げた床も、コンクリート特有の冷えが、随分肌に染みる季節になった。
残るのは、頂点への七言式合、だ。
「穂葦さん、それ何入ってんスか」
「んあ?」
結局整理したはずの漫画を一から読み直し始めてしまって、自分のロッカーの整理なんかどうでもよくなってきたのだろう。
とはいえ流石と言うべきか、並んで座り込んでいた後輩が、目敏く穂葦のその仕草を指摘する。
「は?…コレ?ケータイ」
「ホントにぃ?」
「…何勘ぐってんの枠、…ほれ」
じーっとジッパーの音と、なーんだと明らかに興味をなくした工一スの呟きが聞こえた。
なーんだ、はこっちの台詞だ、と思う。いや、下衆な言い回しをすれば、何か隠してるんじゃないの、と続く。
まあ思ってても口に出せることなんかほんの一握りだと、糸田川は黙々と、興味の無いふりのまま片づけを続ける。
振り返ったところで、もうその話題に乗り遅れることは明白だった。
「それ、結構年季入ってきてません?」
「言われてみりゃ長いかな、お前のは?」
147ナマ 白ぬこネタ 3:2008/10/26(日) 00:21:32 ID:eE0rrEzdO
「俺の…は、っと…、あ、メール着てる」
「またダノレからじゃねえの!?」
「っは、家族からですよーだ!」
気になるんだと言うのは簡単のようで、そう簡単ではない。
「…って、今頃おめでとうって」
「遅っせええ!」
「うっさい力さん!!」
ちらり見遣れば、いつの間にか何人も集まって、和久井の携帯電話を覗き込んでいる。暇なのかお前らは。
和久井がツッコミを入れた斧寺の、長い脛に肘を入れる。全く後輩らしくない。
「けど俺、ダイスケからメール来なかったぁ…」
「俺はきーまーしーたー!勝った」
「さすがえむぶいぴー様は違うなァ!」
図体はデカいが心優しい(すぎる)斧寺を、先輩と後輩のサンドイッチでいじる。よくあるパターンだ。
そうか、海の向こうのあのメジャ一リ一ガ一も、ニュースでこっちの状況は知ったのか。
「穂葦さんは?」
「俺、トヨさんから来たよ」
「マジで?いいなあ」
「…!」
ちょっと待て。糸田川は思わず振り返った。
「…何?」
「いや、…何でも」
振り返った先でタイミングよくというか悪くというか、ばっちり穂葦と目が合った。途端に気まずくなったのは自分だけか。
「どうなるんスかね、相手」
148ナマ 白ぬこネタ 4:2008/10/26(日) 00:23:13 ID:eE0rrEzdO
「わっかんね。でももうすぐ決まるんちゃうか」
「どっちでも…ぶっつぶそう!」
「何それ力、監督の真似か!」
思わずまた無言で背中を向けた糸田川には、笑う声だけが聞こえる。
握ったタオルから目が離せていない。その感触をただ握る。
含みは無いと思う。笑っているのも茶化しているのも、いつもの調子だと思う。
けれどあの人の言葉をそうそう流せるわけがないと思うのは、確信に近かった。
「…で、何て返した」
気になるんだと言うのは簡単のようで、そう簡単ではない。本当に簡単じゃない。
だから糸田川は呟いた。呟くように聞いた。
聞こえていないならそれでいいと思っていた。
だって、言わない権利も自由もお前にある。聞いてはいけないラインぎりぎり、もしかしたら越えてしまったか?
かつてあの人に、どれだけの憧憬があったかとか、そして今それが、どうなっているのかとか。
落ちるか落ちないかのような、タイトロープの上のような焦りが、こめかみから喉を締め付ける。
「…ん?返事?」
けれど聞こえる。笑っていない声が聞こえる。
振り返ったらまた目が合いそうな気がして、やっぱりタオルを見つめたまま、次の言葉を待った。
149ナマ 白ぬこネタ 5:2008/10/26(日) 00:24:56 ID:eE0rrEzdO
じわり嫌な汗が額ににじみながら、背中に視線を感じる。
冷えているのは自分以外全てで、まるで暑さだ、この視線は。
「…そら、相手になるんやったら勝たせてもらいます、って送った」
極々自然にそう言った、のが聞こえた。
知らず入っていた腹の力が緩み思う。ああこの感触はちょっと、嫉妬にも似ている。断じて認めたくはないんだが。
何に妬くのか、妬くということもそれが何かということも、考えるのも反吐が出る。
ゆっくり自分も、自然なふりを装いながら振り返った。後輩たちも不思議そうにこちらを見ている。
そして、もちろん穂葦と目があった。
「勝つしかないやんけ、そうなったら」
穂葦は言って、黙って握っていたそれ、をこつんと額に当てた。
目を閉じて、あの人の仕草によく似ている、と思ったが認めるのはやっぱり癪だった。
だから気付くのが遅れた。その言い切る口調に、言い方に滲むものに、気付くのが遅れた。
過去を振り切るためだとか、何かを得るために進むんじゃない。
切り拓くぞ、という意志表示だ。かつてのことも、今超えて行く。
「勝つぞ」
これから行く。
「…っスよねー」
「イイこと言うわ、穂葦さん」
だから反吐が出るんだ、自分の中身に。
150ナマ 白ぬこネタ 6:2008/10/26(日) 00:26:03 ID:eE0rrEzdO
もっとこれは高みの話だって、頭ではわかる。あの人から言われたぞ、って俺に言ったんじゃないのか、お前。
「いやー、俺今回何もしてへんし、また枠が2勝してくれるって踏んでるから!」
「え、また俺?」
「だってえむぶいぴー様やからなー」
まあ、投げるならそりゃ負けませんけど、とぼそぼそ和久井が言う。
荒くなりそうな息を押し殺し、糸田川は思った。さっき振り返って目があったのは、俺に向かって言ってたんじゃないのかと。
あの人から言われたぞ、って俺に向かって言ったんじゃないのか、お前。
あの人にすら勝ちたいんだと、お前は言ったんだ。
だけどそれは言えない。気になるんだと言うのは簡単のようで、いつもそう簡単ではなく、言えない。
そしてこれは、言わないことなんだ。




□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
151風と木の名無しさん:2008/10/26(日) 01:36:25 ID:Dzmdo63E0
白ぬこキタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!
最近多くてうれしいなあ!
その3人の関係性は色々萌え&燃えが多くて大好きだ
152風と木の名無しさん:2008/10/26(日) 01:47:46 ID:nZ5oz4zBO
>>145
イイヨイイヨー
相手決まったねえ萌え燃えしてくるわ
153風と木の名無しさん:2008/10/26(日) 03:03:31 ID:AxBOVa4zO
>>145
待ってましたああああ!
この二人のもどかしさがたまりません…
いよいよですなぁ頑張れー
154風と木の名無しさん:2008/10/26(日) 07:07:55 ID:jSbRahnU0
きよしのズンドコ節
155風と木の名無しさん:2008/10/27(月) 00:44:27 ID:ycgh9Kt1O
やきうヲタ、つか性豚ヲタ自重w
日シリ前に性豚ネタ投稿して腐を味方につけようとしてるみたいだが
所詮不人気は不人気www

やきうネタ自体しばらく控えろ面白くない
156風と木の名無しさん:2008/10/27(月) 02:14:15 ID:2V3KCJQDO
嫌ならスルーすればいいじゃん。
157風と木の名無しさん:2008/10/27(月) 02:24:09 ID:osMIim1L0
>>154
えっ・・・
これだけはマジでどの作品宛の嫌がらせなのか分からないw
158整備士と戦闘機乗り 1/2:2008/10/27(月) 11:00:53 ID:HtStby460
流れ読まずに投下。オリジナル。整備士と戦闘機乗りの話。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

戦闘機乗りは、その操縦席の限られたスペースの関係で、比較的小柄な人物が選ばれることが多い。

基本的に隊内での同性愛行為は禁止されているものの、男ばかりの環境で一定の規律を維持するために
上層部も黙認せざるを得ない状況下において、本来最前線要員として尊敬を集める戦闘機乗りが、その行為の
相手として選ばれがちなことも、あながち理由のないことでもないのだ。

腹に散った白濁を私に拭かせながら、彼はうっとりした声でこう呟いた。
「・・・油臭いなあ」
「悪い。よく洗ったつもりだったんだけどな。」
「いや、俺好きだから。コックピット座ると、計器と油の匂いがギュッと詰まってて、すげえ安心すんの。
 Gかかると、そのままイきそうになるし。」
「変態か」
「パイロットなんて、みんな普通じゃないよ」

くくくと笑うあどけない顔や、華奢な体躯からは、戦闘機を操縦するときの大胆不敵さはとても想像が
つかない。

「今日で何回目かな」
「ええと、6回?いや7回か」
「そろそろまずいな。」
「ばれなきゃいいんじゃない」

159整備士と戦闘機乗り 2/2:2008/10/27(月) 11:02:15 ID:HtStby460

はたしてそうなのだろうか。特定の相手を作ることを避けるのが、隊の中の暗黙の取り決めだ。
隠してそれを無視することはたやすいが、暗黙の取り決めには、大抵必然性があるものだ。

「ねえ、彼女、最近馴れてきちゃったのかな、感度が悪いんだ。もっとギリギリにチューニングしてくん
 ない?イグニッション入れただけで、こっちがブルブル震えが来るくらい。」
「馬鹿か。あれ以上反応速度上げてどうするんだ。死ぬ気か。」
「平気だって。俺がどれだけ上手いかよく知ってるでしょ?」
「過信すると、痛い目にあうぞ」
「関係ないよ」

確かに、“彼女”のナットを一つ飛ばせば、彼は跡形もなく飛び散るのだと想像して異常な興奮を覚えることが、
最近多くなっている。そろそろ潮時なのかもしれない。

「もういちどしようか」
「明日に差し支えるぞ」
「大丈夫だよ。まだ早いし」

問題は、この体をそうやすやすと手放すことが出来るか、だ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
160風と木の名無しさん:2008/10/27(月) 13:15:50 ID:GStP1kcV0
>>145
このスレシリーズで露出が多くなると日本シリーズ制覇って気がします
だから今年は白ぬこ…かと。

ぬこ絵ー酢さまのクマー11へ捧げる厚い友情と頭脳のキレに感服している最近です…
161Automatic 照退:2008/10/27(月) 18:15:38 ID:1x9Uh0NW0
前スレでの照と退蔵2008の続きというか、そこから10年前に遡った物です。
なので退蔵から先に好きになった設定のままで。サブタイは当時のEDから。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

162Automatic 1/8照退:2008/10/27(月) 18:17:10 ID:1x9Uh0NW0
7回目のコールで電話に出てくれた。
「…ぅあい。…もしもし」
まだ眠りの中にいるような照の声を聞いて、退蔵は見えないその姿に向かって笑いかけた。
「起こしちゃってすいません。そろそろ時間です」
「…退蔵。…そっか、もうそんな時間か」
名前を言わなくても声でわかってくれる。
「起こしてくれて、ありがと」
けほんと咳をひとつしながら、電話は切れた。
ありがとうという声を聞くだけで、退蔵の気持ちは明るくなっていた。携帯を耳にあてたまま、しばらく余韻にひたった。
「これからおまえらで張り込みか?」
急に声をかけられて我に返る。机ひとつ隔てた向かいの席から、田所が顔を出していた。パソコンに触る時はいつも、細縁の眼鏡をかけている。
「そうです。例のアパートです」
「おまえらも大変だな。昨日完徹なんだろ?オレも昨日からずっとこの作業。もー眼ぇ疲れるわ肩凝るわでさー…」
しかめ面で肩を押さえる田所に、席を立ちながら退蔵は言った。
「オレ、肩もみましょっか?」
「まじで?おまえは気が利くね!ほんっといいヤツだね!」
田所は満面の笑みで調子よく返すと、早速眼鏡を外して机に顔をうつ伏せにした。
「だいぶ凝ってますね」
「ぅおー、もうちょい上、…そこっそこ押して!…はー、うまいねーおまえ」
「オレね、結構コレ褒められるんですよ」
しばらく田所は「うあー」だの「もうちょい左」だの、こもった声で言い続けていたが、突然ごく普通のトーンで聞いてきた。
「照にもこうやって、肩もんだりすんの?」
「え?」
不意を突かれて、一瞬答えに詰まった。
「いや、そういやまだした事ないっすね」
「ふうーん?」
なぜか笑いを含んだように田所は顔を上げたが、またすぐ伏せて聞いてくる。
163Automatic 2/8照退:2008/10/27(月) 18:21:21 ID:1x9Uh0NW0
「おまえらが2人で組むようになって、結構経つよな。もうオレよりも長いんじゃねえの?」
以前は田所と照の2人で組んでいた。
「…そう、ですね…オレ入ってからすぐだったんで…何年経つのかな…」
退蔵が考えだすと、答えを聞かずに田所は起き上った。
「あーだいぶスッキリしたわ。もう行っていいよ。時間ないだろ?」
言いながら眼鏡をかけ直す。退蔵は軽く頭を下げると照のいる仮眠室へ向かった。
歩きながら入署当時の事を思い出していた。
照に自己紹介した後、全然自分のことを思い出してくれなかったのにショックを受けた事。とはいえ、思い出された方が実際にはまずいのに、その時初めて気づいた事。
刑事に就任したばかりの新米が、先輩と初対面の時に万引未遂してたなんて、シャレにもならない。

高校生の頃の自分はつくづくバカだったんだろう、と退蔵は振り返っていた。
言い訳にもならないが、若気の至りというか若さゆえの過ちというか、「誰もオレのことなんて気にしない」「誰にも見向きもされない」という拗ねた気持ちで不貞腐れていた時期があった。
特に目的もなく入ろうとしたCDショップ。いきなり入口で、出てきた男とぶつかりそうになり「すいません」と謝りかけたら、そいつは退蔵を一瞥もせずさっさと去って行った。
心が冷えた。その時急に魔が差した。どうせ誰もオレなんか見ない。そう思ってそのへんの適当なCDを、突発的に自分の鞄に入れてみた。
当然かもしれないが、すぐにバイトらしい店員に腕を掴まれた。
「今、鞄に入れたものを出しなさい」
「……」
パニクり過ぎておかしくなっていたのかもしれない。どうしよう?とか、しまった!とかいう気持ちよりも先に、目の前に現れたその人に、何故かハッとしていた。
心が動いていた。この気持ちがなんなのかは、よくわからない。
だけど、目の前の人の自分に向ける視線もまた、どこか柔らかく揺れている気がしていた。
同じ気持ち?この人も、同じ何かを感じ取っているんだろうか?なんだろう、これ…
そんな場合じゃないのに、心が浮き立ってわくわくする気さえしていた。多分本当にバカだったんだろう。
164Automatic 3/8照退:2008/10/27(月) 18:24:23 ID:1x9Uh0NW0
そのタイミングで、適当に取ったそのCDの曲が、突然店内に流れ出した。
『ラブストーリーは突然に』だった。
驚いて顔を上げた店員の脇をすり抜けて、退蔵はその場を立ち去ったが、店員はそのまま追っては来なかった。

それからずっと、もう一度あの人に会ってみたいと思っていたが、よりによって万引未遂なんてしたんだから、店だと警戒されるに決まっていた。
こっそり陰から見たり尾行したりでほぼストーカーだったが、ずっと気にかかってどうしようもなかった。
その人が刑事になった時、自分も刑事を志した。ゆくゆくは叔父の経営する大原田物産の後継者になる事が決まっていたので、叔父を始め親戚中に猛反対されたが退蔵は曲げなかった。
そうして長い時が経ち、春になって、再び出会うことが出来た。
ところがその日、自己紹介の後、退蔵は椅子に腰をおろした途端急に気が抜けて、天井を仰いでへたり込んでいた。
―全然オレのこと憶えてなかった。その事実で力が抜けていた。
期待し過ぎな自分を自覚もしていたが、それでもせめて「どこかで会った事ある?」程度には思い出してくれるんじゃないかと思っていたのに。
ここまでして、オレは結局何を得たかったんだろう…。この気持ちは何なんだろう…。
ただ、こうして間近で会えるようになって、改めて思った。
やっぱりこの人は、なんだか可愛い。遠くから見てた時も思っていた。年上でしかも男なのに。
目がクリクリしていて、真面目な顔してる時も口の端がキュッと上がってて、いつも少し笑いを含んでいるように見える。
人を寄せ付けないように伏し目がちで、一人で物思いに沈んでいるのかと思えば、声をかけられた途端ふわっと笑う。その一瞬で周りの空気が暖かくなる気がする。
多分、この人が女だったら、なんのためらいもなく恋愛感情だと思えるこの気持ち。
どう表現していいのかわからないこの気持ちを、退蔵は「尊敬」だと思おうとしていた。
165Automatic 5/8照退:2008/10/27(月) 18:26:13 ID:1x9Uh0NW0
椅子にへたりこんでいた退蔵は、一度大きく息を吐くと、立ち上がって廊下に出た。
角を曲がると、木の実を齧るリスみたいな後ろ姿で、うずくまって何かしてる人がいる。と思ったらそれは照だった。
近づいていくと、床いっぱいに広がったゼムピンをせっせと拾い集めているのが見えた。
横に並んで拾い出すと、照は顔を傾けて退蔵を見た。
「落として全部ぶちまけちまったよ」
「オレ手伝いますね」
退蔵はでかい手のひらでザーッと寄せ集めると、照の持っていた箱に入れた。
「悪いな。ありがと。…おまえ、どんくさいとこ見て、今、安心してるだろ」
照はチラッと上目使いになって笑った。つられて退蔵も笑った。
「言っとくけど、これからビシビシしごくからな」
そう言って笑顔のまま、照はゼムピンの箱を持って去って行った。
その後ろ姿を見ながら、あ、オレまたカワイイって思ってる、と退蔵は思った。

かといって「先輩」は可愛いだけの人間ではなかった。
2人で組んで行動するようになった最初の頃、中国マフィアの構成員を追っていた時の事だった。
香港の中国返還に伴って流れてきた、下部組織の構成員のその男は、本国での組織にいるbQの実弟だった。
拳銃を持ったまま走り去る男の逃走経路を読み、覆面パトカーで先回りする。
発砲沙汰が初めてな退蔵は、その時正直びびっていた。そんな退蔵に照は静かな口調で言った。
「援護しなくていい。運転に専念していてくれ」
それからはっきりこう言った。
「おれがおまえを守るから」
一瞬息が止まった。前だけを見ていた照は声を上げた。
「ここだ。停めてくれ」
路肩に停めて、角から現れるであろう男を待ち伏せる。照は車から降りた。
防弾衣を着用してるとはいえ、車から降りては危険だと退蔵は思ったが、照の目に不安はなく澄んでいた。
166Automatic 7/8照退:2008/10/27(月) 18:29:04 ID:1x9Uh0NW0
左足の爪先をわずかに外側に移動させただけで、車から降りたときの姿勢のまま、無造作に見えるほど自然な体勢で、照はゆっくりと拳銃を持った右手をまっすぐ伸ばした。
その先に、角から飛び出すように男が現れた。
照の姿に気付き慌てて銃身を構えるが、その腕は大きく揺れている。
パアン。
乾いた爆竹のような音がひとつ。火薬の匂いが立ち込める中、男は肩から血を流して倒れていた。

容疑者の動きがないまま、明かりを消したアパートの一室で張り込んでいると、いろいろな思い出が頭に浮かんで止まらなかった。
思えば長い年月、ずっと一緒にいた。一緒にいるうち、なんとなく照の考えがわかるようになり、細かく世話を焼いて、それを感謝されると嬉しかった。
今では署の誰より、照の事を理解出来ていると思えた。
真夜中だ。照は布団で仮眠をとっていた。夕方にもうとうとしていたが、毛布をかけてあげたら起こしてしまった。今はぐっすり眠っている。
暗がりの中で、窓の隙間から双眼鏡で外を眺めて、退蔵は夕方の照の言葉を思い返していた。
「毎日毎日顔を合わせていたら、考えも一緒になってくるってもんだ」
そうかもしれない。照が何を考えているのか、次に何を望んでいるのか、読み取りながら行動するようになっていた。
先輩も、オレと同じ考えになってくれているんだろうか?
オレが思うように、オレのことを思ってくれてるんだろうか…
夕方、交替で仮眠をとって寝かかっていた時、退蔵は照の顔が近づいてくる気配を感じていた。
あれって…、もしかしてキスしようとしてた?
寝かかった意識の中で少し、それに気づいていた。次に「うわ、オレ歯磨いてない」と気づいた瞬間にはもう飛び起きていた。
…もったいないことしちゃったのかな……まさかな…
退蔵は窓から離れて、照の枕元にしゃがみこんだ。
同じ気持ち。本当にそうだったらいいのに。
退蔵は静かに膝をついて、照の額にそっと唇をおとした。
照の瞼と指がぴくっと動いたので、慌てて離れる。
一瞬2人とも動きが止まった。それからまた寝息が聞こえてきた。
退蔵はそーっと音をたてないように、窓際まで後退りした。そんな自分に急に笑いがこみ上げてきて、つい笑った。
だめだオレ。この人の事が可愛い。
どう考えても「尊敬」だけの気持ちではなくなっていた。
167Automatic 8/10照退:2008/10/27(月) 18:31:11 ID:1x9Uh0NW0
射撃訓練の的の中心を、最後の弾が撃ち抜いた。
なんとか中心に狙いをつける事が出来るようになってきた。退蔵は拳銃を下ろした。
「息の止め方が上手くなったな」
後ろから見ていた照が声をかけてくる。耳栓を外しながら退蔵は振り返った。
「ほんとですか!」
「照準も正確だし、銃口の動きも最小限だ」
笑いかけられて退蔵はめちゃくちゃ嬉しくなった。嬉し過ぎて落ち着かなくなる。
「退蔵。また指噛んでるぞ」
照が退蔵の仕草を真似して、指を口元に持っていって見せた。
「え?あ。」
無意識に指の第二関節を噛んでいた。そわそわしてる時の退蔵の癖だ。
「おまえ、その癖子供っぽいぞ」
言った直後、照は急にクシャッとくしゃみをした。両手を揃えて顔の半分を覆う。
「……」
退蔵は黙ってその姿を眺めた。
「そろそろ捜査会議の時間だな。退蔵、訓練後の点眼とうがい忘れるなよ」
「あ、ハイ」
後片付けしながら退蔵は照の後ろ姿を見た。スーツの袖から指先だけチョコッと出てる。
…スーツ、でか過ぎるんじゃ?心の中で呟いた。
子供っぽいのって…。見送りながら退蔵はまた笑った。

会議室には既に大方が集まっていた。ホワイトボードに田所が被害者の写真を貼り付けていた。
照と退蔵で横並びに座る。始まるのを待っている間、退蔵は横で照の足がカタカタ揺れているのに気付いた。貧乏揺すりしてることに本人は無自覚だ。
退蔵はひょいっと照の太腿に手を伸ばして、ギュッと押さえつけた。
「ぅあっ!?」
照がすっとんきょうな声を上げた。退蔵は大口を開けて笑いかけた。
「貧乏揺すり。悪い癖ですよ、先輩」
「………急に、びっくりするだろ……」
照はぼーっと退蔵の顔を見た後で、少し焦ったように周囲を気にした。
あれ?耳まで真っ赤…。退蔵は笑いを噛み殺しながら前に向き直った。
168Automatic 9/10照退:2008/10/27(月) 18:34:27 ID:1x9Uh0NW0
田所に声をかけられたのは、会議後、退蔵が一人になった時だった。
「これ内密の話だから、絶対誰にも口外しないでほしいんだ」
他に誰もいなくなった会議室に、田所の声がやけに響いた。
「三合会の下部組織に、呉朴龍がいたのを覚えてるか?」
それが昔、照が狙撃した男だった。退蔵は頷いた。
「あいつは本国に送還された後、公開処刑になったらしい」
「…麻薬で摘発されてましたからね。あっちじゃ重罪ですよね」
「それでな、あいつの兄が幹部となって、東京でまたドラッグと不正送金に手を出している。組織も前より拡大して、山根組とも繋がってるようだ」
「強制捜査、行くんですか?」
「いや…、それが難しくてさ…、…あそこは前からなんていうか…人とは思えないような事するだろ?」
残虐なリンチや報復は、それこそ公開処刑同然だと知らされていた。
「裏から証拠を集めて、一斉検挙に繋げたいというのが上の判断だ。その極秘捜査の担当に、照の名前が挙がっている。朴龍を逮捕しているからな」
それを聞いて退蔵の表情が翳った。
「…でも…それは…」
「朴龍の兄が、どれだけ照を恨んでいるか、おまえ知ってるか?」
田所の顔が強張っていた。
「とっ捕まったら、ヤク漬けどころじゃすまないぞ」
「……」
考えたくもないのに、裏切り者として始末された組織の女の死体写真が頭に浮かんで気分が悪くなった。退蔵はかすれた声を絞り出した。
「先輩は外すべきです」
「オレだってそう言いたいよ。ただ、上から任命されて照がどう答えるかだ」
田所は青ざめた顔で、退蔵の顔を真正面から見た。
「あいつは引き受けると思う。自分が一番実情を知っていると言って」
退蔵の額に冷たい汗が滲んできた。
「あいつはこんな時、危険だとどんなに周りが止めても自分から飛び込んで行ってしまう。それが出来ないならいっそ刑事を辞めてしまう。そういう極端なヤツなんだよ」
「……」
その通りだと思った。まるで自分を痛めつけるかのように、自分から進んで危険な現場に飛び込んでしまう。
「……オレだって実情は知っています」
退蔵は乾いた声で言った。やけに喉が渇いていた。
「先輩にはこの件は伏せてもらえませんか。オレが一人でやります」
169Automatic 10/10照退:2008/10/27(月) 18:35:51 ID:1x9Uh0NW0
田所はしばらく黙ってから、少し目を反らして言った。
「ずっと照とコンビを組んでたおまえが、単独行動をとるのか?…照に怪しまれないか?」
「言い訳は後で考えます、とにかくこの件は先輩を外して下さい!」
必死だった。万が一にも照を、危険だとわかりきっている現場に晒したくなかった。
田所は探るように退蔵の目を覗き込んでいたが、ぼそっと呟いた。
「……おまえが、いっそ死んだことにすれば…」
「……え」
退蔵は静かに目を見開いて田所の顔を見た。田所の眼は座っていた。
「照の目の前で殉職するフリをするんだ。その後おまえは現場で別人として潜入捜査をする。そうすれば照があの現場を任されることは無い」
「……」
突飛過ぎる考えに声を失った。
しかし、少し考えるうちに、それはベストかもしれないと思えてきた。
「2、3年。早けりゃ1年ちょいで戻ってこれるんじゃないか?そうすりゃ後で笑い話になるはずだ、そうだろ?」
急に饒舌になった田所の言葉に、退蔵は激しく混乱しながらも、首を縦に振っていた。

翌日、止めていたタバコを吸いたくなって署の外に出た退蔵の目に、自動販売機の前で会話する照と田所の姿が見えた。
田所が何か冗談を言ったらしく、照が田所の背中をはたく。それを退蔵はぼんやりと眺めていた。
やけに楽しげに笑いながら何か言い返した田所が、ふと視線に気づいたらしく、退蔵と目を合わせた。
―その瞬間、田所は何故か激しく動揺した。
それから「しまった」と思った表情を反射的に浮かべ、次の瞬間にはその二つの表情を完全に消し、最後に何の感情もない顔で退蔵を見据えた。
「……」
一連のその変化を見て、退蔵はなんとなく気付いてしまった。田所の本心に。
何もなかったように照の背中を押して去って行く田所の後ろ姿を、退蔵はいつまでも睨みつけていた。
170Automatic 照退:2008/10/27(月) 18:38:36 ID:1x9Uh0NW0
つづく。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ごめんなさい8で終わるつもりが10までかかっちゃった。
何かと設定はムチャした。続きは多分10日くらいかかりますが、この設定で続こうと思ってるんで、よかったら気長にお待ちください。
171風と木の名無しさん:2008/10/27(月) 19:48:25 ID:0GfY6ydD0
>>157
細川亨が打席に入るときの曲がきよしのズンドコ節
172風と木の名無しさん:2008/10/27(月) 20:04:04 ID:xrWLCIeAO
>>171
そうなのかwww吹いたwwwwww
173風と木の名無しさん:2008/10/27(月) 20:42:26 ID:4G6mjR96O
>>170
乙!
普通に小説読んでる気分だ。続きwktkで待ってる!
(´・ω・`) そんなわけで、ブーン系小説へようこそ。お帰りはあちらだよ。
(´・ω・`) うん、「また」( ゚∀゚)×( ゚д゚ )なんだ。済まない。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
( ゚∀゚)「トリック・オア・トリート!」

( ゚д゚ )「ん」

( ゚∀゚)「………何コレ」

( ゚д゚ )「見て分からんか? 濡れ煎餅だ」

( ゚∀゚)「……ムードもクソもねぇな」


( ゚∀゚)はお菓子をくれなきゃイタズラするようです


( ゚д゚ )「正直、俺とお前でムードが出ると思われていたことに驚きを隠せない」

( ゚∀゚)「いや思っちゃいねぇけどさバリボリ」

( ゚д゚ )「食べながら喋るな」

( ゚∀゚)ムグモグゴックン

( ゚∀゚)「何つーの? こういうイベントの時ぐらい? 万が一って言うか?」

( ゚д゚ )「その頭の悪そうな喋り方も直せ。……一応聞いてみるが、」

( ゚∀゚)「ん?」

( ゚д゚ )「万が一、何があると思った?」

(*゚∀゚)「………ほら、菓子用意してないなら性的なイタズラすんぞー、とか…」

( ゚д゚ )ピク

( ゚∀゚)「?」

|д゚;)))スササササ

(;゚∀゚)「ちょっ、引くなよ! 言ってみただけだろ!」

(;゚д゚ )「あらゆる意味でもう駄目だと思った」

(;゚∀゚)「テメっ……俺だって傷つくんだからな!?」
( ゚д゚ )「…まぁ、そんなこんなで寒い妄想を聞かされた訳だが」

(;゚∀゚)「寒い言うな!」

( ゚д゚ )「お前はどうなんだ?」

( ゚∀゚)「は? どうって何が?」

( ゚д゚ )「トリック・オア・トリート」

( ゚∀゚)「……………あ」

( ゚д゚ )「菓子がないならイタズラするが」

(;゚∀゚)「……濡れ煎餅は?」

( ゚д゚ )「不可だ馬鹿」
( ゚д゚ )「で、俺がやった濡れ煎餅以外に菓子の手持ちは?」

(;゚∀゚)「ありません」

( ゚д゚ )「ふむ」

( ゚∀゚)「…ちなみに、ミルナさん」

( ゚д゚ )「何だ?」

( ゚∀゚)「参考までに、どのようなイタズラを?」

( ゚д゚ )「………その鬱陶しい髪を5分刈りに、とか」

(;゚∀゚)「イタズラってレベルじゃねーぞ!!」
(;゚∀゚)「後遺症が残るネタ禁止!」

( ゚д゚ )「つまらんな」

(;゚∀゚)「他人事だと思って無茶言いやがる方がいらっしゃいやがりますからね!」

( ゚д゚ )「実際他人事だからな、仕方ない」

( ゚∀゚)ピク

( ゚д゚ )「?」

( ゚∀゚)「他人かぁ、ふーん。へぇーえ」

( ゚д゚ )「あ、拗ねた」(言い過ぎた、すまん)

(;゚∀゚)「逆だろ馬鹿! 大体拗ねてねーし! 俺拗ねてねーし!!」
( ゚д゚ )「機嫌直す気はないか?」

(♯゚∀゚)「だから別に怒ってねぇって」

( ゚д゚ )「ほう」

(♯゚∀゚)「べっつにー。俺とアンタは赤の他人だしー。怒ってなんかいませんけどー」

( ゚д゚ )「面倒くせぇ」(やっぱり怒ってるじゃないか)

(;゚∀゚)「テメェわざとやってんだろ?!」
( ゚д゚ )「俺が悪かった。だからそう怒るな」

( ゚∀゚)「だから怒ってn

( ゚(   )

( ゚∀゚)

( ゚д゚ )フゥ

(*゚∀゚)

( ゚д゚ )「イタズラ、兼、謝罪」

(*゚∀゚)「え、わ、」

( ゚д゚ )「機嫌直ったか?」

(*゚∀゚)「べ、別に嬉しくなんかねぇけどな!」

( ゚η゚ )「そうか」

(;゚∀゚)「って何拭いてんだよ!! そろそろ泣くぞ?!」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
183風と木の名無しさん:2008/10/27(月) 22:08:40 ID:CbgPuug90
>>182
GJでした!
デレないツン、でも可愛げありってのがいいなぁ
184風と木の名無しさん:2008/10/27(月) 22:30:00 ID:ikow6Rn10
>>182
なにこれすごく面白い…!
新たな萌の形をありがとう!
185風と木の名無しさん:2008/10/27(月) 23:59:02 ID:KeKVsMPP0
>>174
かわいい!おもしろい!
どの板なんだそのスタイルの発祥は・・・・。

そうか今年も万聖節の季節か。濡れ煎餅ww
チューに萌え転がった。GJ!( ゚∀゚)
186風と木の名無しさん:2008/10/28(火) 00:58:28 ID:pG1JPhPPO
>>182
乙!
187風と木の名無しさん:2008/10/28(火) 11:00:30 ID:XpIcMwBYO
流石な兄弟の弟×兄文だよ! ぶっちゃけ名前以外面影薄いよ!
あと絶賛本番真っ最中だけどエロいってよりは暗いっぽいよ!

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

188風と木の名無しさん:2008/10/28(火) 11:01:52 ID:XpIcMwBYO

こんなことして何になるってんだろうなぁ。

なぁ、弟者。



「ふ…っ、ん、…ッ」

なんて呼び掛けることもできなかったりする今の俺だけど、情けなさとは無縁の心持ちだったりするんだぜ。
単にちょっとばかし、不思議なだけ。

「…、ゃ……あ…」

だってそうだろ? 俺らは元々一つの存在で、俺はお前でお前は俺で。
そんな二人が交わったって自ら慰めるのとどれだけの違いがあるっていうの。

「兄、者…」

ぎり、と爪が食い込むくらいに背中を抱かれる。ちょ、普通こういう時爪立てんのって俺の方じゃね?

「ん、ッ…と……、ぃあ…!」

ツッコみたいけど突っ込まれててそれどころじゃないとか、それなんてひでー下ネタ?
あぁ、ったくもう。
いつもキッチリ整えてる髪ぐちゃぐちゃにしちゃってまぁ。
必死だなっつって、笑ってやりてーなぁ。
189風と木の名無しさん:2008/10/28(火) 11:02:59 ID:XpIcMwBYO

な、弟者。

別に嫌悪も憎悪もありゃしないから。てか、そんなもんお前に持つわけないだろ。
今更俺らにハグキスアイラビューとかそんな手順必要と思わなかったの。
だから面食らったんだ。だから冗談だろっつったんだ。

「あ、ァ……っ、ゃ…!」

ヤじゃないって。嫌じゃないんだって。
拒絶したいんじゃないから、否定したいんじゃないから。

「く、…!」

だから、そんな苦しそうな顔してまで抱かないでくれよ。
それともあれですか、罪のイシキとかそんな感じのアレですか。
なぁ、抱かれちゃってる俺にすら意味見出しきれてないってのに、他の誰がこれを咎めるっての。
咎められるだけの根拠がどこにあるって言うの。

190風と木の名無しさん:2008/10/28(火) 11:04:09 ID:XpIcMwBYO

「ぉ…と、じゃ…!」

あ、やっと呼べた。
ったく、いくらオトコノコったってお初だってのに激しすぎなんだって。
いきなり止まられるのもそれはそれでキツいもんがあると知ったけど。

「弟、者…」

とりあえず笑ってほしくて頭撫でたら、えらく切なげな目がすぅっと伏せられて深く深くをえぐられる。

「―――…ッ?!」

あ。
や、っべ、これ。

脳の内側でちかちかしていた白が弾けて。
思考、が、飛ぶ。

「か、は…ッ!」
「っカヤロ…、が…!」

怖いくらいに痛みは遠くて万雷の拍手も真っ青な音がおとが弟者が俺を攻めて責めている。
手は弟者の手の下で今の俺と同じように時々ひくひく震えてる。
飛んだ思考はくるくる狂って苦しいくらいに言葉を散らして、
とっくの昔からうわ言めいてた脳内言語を更に破綻に近付ける。

191風と木の名無しさん:2008/10/28(火) 11:04:59 ID:XpIcMwBYO

「ぅあ、あっ…!!」
「……んで…、アンタ、は…」

ぱたぱたぱたぱた降ってくるのは雨ですか飴ですかどっちだっていいことですか。

「俺、…れが、…ッ、甘えて、るだけと、思ってるのかと…!」

甘い雫溢す亜麻色の目に舌を伸ばすのは本能の本望ってヤツだから怒らないで起こさないで。
良すぎてヤバイとかお約束がお約束になるのにも理由があんのな。でもこの体勢はマジヤバイって。
顔近いし奥まで行くしなんか一つに戻るのも悪くないかもなんて新鮮味真剣に感じ出してるし、
涙も結構綺麗でやっぱり甘いななんて思うよああもう。

「ち、きしょ…!」

うん、それ俺も言おうとした台詞だこんちきしょう。こんな時でも被るとは流石、っつってもこっちは喘ぐしかできてないんだが。
あぁまぁとどのつまりは自分の半身だからって以上に異常なくらい異存ないのよ今の行為自体には。
大体恋と愛は違うとごねてたけどそこに底にある情にどれほどの違いがあるっていうの。
俺はさ、俺はあえて体繋ぎたいなんて気にもなんないくらいに当たり前にあったりしただけなんだって。
互いが互いのもんだって自覚感覚みたいなヤツが、さ。

192風と木の名無しさん:2008/10/28(火) 11:05:38 ID:XpIcMwBYO

「に、じゃ…兄者…!」


なぁ。なぁ弟者。


「―――…きだ、…好き、なんだよ、っ…!!」


んなこと生まれる前から知ってますよと。


「…………そ…」

「…、…ッ!」


なぁ。


「…れこそ、……!」


俺こそなぁ、恋なんて大事なはずのポイントすっ飛ばす勢いで愛しちゃってんですよ、と。
お前が俺を想ってくれてる、その強さに負けやしないくらい、俺もお前を想ってますよ、と。


なぁ、そんだけのことが何で今のお前にゃ届かないの。


193風と木の名無しさん:2008/10/28(火) 11:07:00 ID:XpIcMwBYO

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ベクトルの向きは同じだけどなんか噛み合いきってない感じ。
194風と木の名無しさん:2008/10/29(水) 20:28:05 ID:Eu489FLyO
>>193
とりあえずタイトルないならそれでいいけど通し番号はつけて
欲しかったんだぜ
一瞬だけ迷っちゃったよ
195風と木の名無しさん:2008/10/30(木) 03:17:48 ID:yVxPGOPKO
>>185 VIP発祥。801にも( ^ω^)系のスレあるよー

>>182 ksmsとは全く違う萌えをありがとう!
196風と木の名無しさん:2008/10/30(木) 12:00:43 ID:d6kGXdvNO
>>182
萌え転がった。ご馳走さま!
ジョルジュ攻めって可愛くて和むなー
197ボカロ マスター×がくぽ←レン4:2008/10/30(木) 16:33:57 ID:NcrycR0T0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | ずっとアク禁されてました。ヤット投稿します。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|レン極悪注意
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
198ボカロ マスター×がくぽ←レン4-1:2008/10/30(木) 16:35:18 ID:NcrycR0T0
「あーん」
がくぽは、大きな口をあけて、レンの持っているバナナに食いついた。
甘くて、やわらかくて、ちょっと酸味があって、とても美味しい。
これが果物というものか、これがバナナというものか、と、食べながらしきりに感動していた。
「うまいだろ?」
「うむ、とても美味じゃ」
ぱっと扇子を広げると、パタパタと扇ぎだす。
どうやらがくぽは、とても感動したときや困ったときがあると、扇子を広げる癖があるようだ。
がくぽが一口食べたバナナを、レンが食べる。
間接キスになってることに二人は気づいていたが、兄弟ということから、大して気にはしてなかった。
ただし、マスター一人を除いては。
先ほどから、ソファに座ってバナナを食べているレンとがくぽの横で、せっせと部屋の掃除をしているマスターがいる。
部屋の掃除をしているというのに手伝わないレン。
がくぽは手伝っても被害拡大するだけなのでいいが、レンは本当に何も手伝わない。
料理を先ほど教えたが、なかなか手馴れている節があって、筋がよかった。
手伝うのは料理くらいだと思いながら(手伝っているわけではなく、がくぽの食料を作っているだけであるのだが)、マスターはせっせと掃除機をかける。
「レン、手伝ってくれると嬉しいんだけど」
こそっとそれだけいうが、レンは聞こえなかったふりだ。もくもくとバナナを食べては、がくぽと話している。
「レン、手伝って?」
マスターは今度は大きな声で言った。しかしレンは、冷たい目でマスターを見ると、はき捨てるように言った。
「何で俺が?」
「だって君ボーカロイドでしょぉぉぉぉぉぉ、居候でしょー!!」
「好きでこの家にいるわけじゃねぇ」
なんて奴だ。バナナも食うだけ食っといて、感謝もなしで手伝いもなしとは。
確かにこの家にいるのは不本意かもしれないが、少しくらい感謝してくれてもいいだろう。
がくぽのように毎日可愛いことを言ってくれれば、少しくらいマスター大好きといってくれたら、ちょっとは見る目が変わるのに。
「俺がそんなこと言うかよ」
ぎくりと心臓がはねる。
もしやこの男は、人の心が読めるんじゃないだろうか。
「そんなわけねーだろ」
といいつつも、口に出していない言葉に突っ込みを入れるレン。
これでマスターがレンに一目置くようになったのは内緒だ。
199ボカロ マスター×がくぽ←レン4-2:2008/10/30(木) 16:35:49 ID:NcrycR0T0
「?兄者、もう一口ほしい」
「ん?じゃあもう一本食うか?」
バナナの皮をぽいっと床に捨てる。
それを踏んでしまったマスターは、漫画のごとく見事に滑って横転した。
怒りにわなわなと震えるマスター。
脇腹を打って痛いが、何とかして起き上がると、レンに怒鳴りつけた。
「お前っ、ごみはごみ箱へ!!」
「す、すまぬ、主…」
「うるせぇよ。がくぽ、こいつの言うことなんて聞かなくていいから」
「でも…」
あわててがくぽがバナナの皮を手に取ると、キッチンにあるゴミ箱まで捨てに行った。
その一方で、マスターは今度は腹にレンの蹴りがヒットしていた。
「うおおおおお…」

「がくぽ、散歩に行こうか」
マスターが、がくぽに笑いかけた。
アレから怒りを抑えて部屋を綺麗にしたおかげで、見違えるようにぴかぴかになった。
がくぽもがくぽで、ちゃんと窓を拭いたりもしてくれた。
レンだけは何もしなかった。
「兄者、一緒にマスターと散歩にいこうではないか」
またバナナを食べているレンに、がくぽが笑いかける。
ここでマスターは、レンなんて誘わなくてもいいのに、と思ったが、黙っておいた。
「んー…。じゃあ俺もいくかな」
「じゃあみんな支度してー。ついでにスーパー寄ってくぞ」
「なあがくぽ、スーパーって何だ?」
「コンビニより大きな、買い物をするためのところじゃ。我も何度か連れて行ってもらったことがある」
「ふーん…あ、ならコンビニにいく道とおるか?」
「通るぞ」
えっへんと、何でも知ってるかのように話すがくぽがなんとなくかわいくて、レンは笑顔でがくぽの頭をなでた。
しかしその笑顔の裏で、とんでもないことを考えていようとは、マスターは知らない。たぶんがくぽも知らない。
200ボカロ マスター×がくぽ←レン4-3:2008/10/30(木) 16:36:31 ID:NcrycR0T0

「おい」
マスターにむかって、レンが指図する。
「おいじゃなくて、マスターだ」
「何でもいい。あの叢のあの辺に立て」
見れば、空き地の叢をさしている。
その叢の真ん中あたり、やはり草で埋もれていてどうなってるのかわからないが、そこに立てとレンは言う。
 誰もはいらないから、草はぼうぼうだ。
「なんで?」
「いいからいけ」
背中を蹴られ、仕方なく歩いていく。
「なにもな…」
叢の中程まで来たとき、べきべきと何かが壊れる音がして、マスターの姿が一瞬で姿が消えた。
「あっ、まさか…」
がくぽが察してマスターが消えた辺りを捜し回る。
背丈ほどの草が群がっていて、中々穴を探すのは難しい。落ちないように気をつけながら、がくぽは草を掻き分けていく。
「ほら、さっき掘った二メートルの落し穴」
「こらー!!おまえらー!!いいかげんにしろー!!」
「あっ、いた」
一メートルほど先にマスターの怒声が響き渡る。穴の中だからか、反響して聞こえる。
201ボカロ マスター×がくぽ←レン4-4:2008/10/30(木) 16:37:26 ID:NcrycR0T0
がくぽはマスターを見つけると、しゃがみこんで手を差し出した。
運良くマスターは身長は高いほうだ。がくぽの手をとって上ろうとするが、がくぽに力がなくて、そのままがくぽが穴の中に転がり落ちてきた。
「す、すまぬ、主…」
「どうするんだよ、二人とも転げ落ちちゃって。あ、レン、レン!」
レンが歩いてきて、がくぽに向かって手を差し出してる。
でも見た目子供なレンにがくぽや自分を外に出せるものかと思っていたら、いとも簡単にがくぽを地上に引き上げた。
 レンは意外に力が強いようだ。
しかしそのまま二人ですたすたとどこかへ行こうとしたものだからたまらない。
「こらー!!俺をほうっておいてどこいく気だー!!」
「あ、兄者、主も引き上げておくれ」
「えー、もうこのままにして帰ろうぜ」
なんというマスターのことを無視した発言。
しかしかぎは主がもっているし、主は大事な人だと一生懸命がくぽが説明すると、仕方なさそうに、レンはマスターを引き上げた。
202ボカロ マスター×がくぽ←レン4:2008/10/30(木) 16:38:47 ID:NcrycR0T0
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203金賞 幼馴染:2008/10/30(木) 19:58:46 ID:9xq+OgWW0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  80年代後半くらいのツアー三昧の頃だね
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 呼称は伏字だから実際と異なるよー
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 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
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204金賞 幼馴染 1/2:2008/10/30(木) 19:59:24 ID:9xq+OgWW0
ミトコンは、ツアーに出ると、たいてい必ずライブのあとで女の子を部屋にお持ち帰りする。
ホテルがメンバーと相部屋の時には、女の子にお持ち帰られたりもする。当たり前か。
いつも似たようなタイプの女の子。
地元じゃいろいろ顔も素行も知れてるから、地方に来たときに少し羽目を外すくらい、まあいいんじゃないかな。
もっと羽振りのいいとこは、もっとものすごいことになってるらしいから、それに比べればまぁ控え目だろう。
何度か、朝になっても帰ってこなくて、出発が遅れたりして、そういう時はさすがに怒るけど、そうすると今度は女の子がずっとついてきちゃったりして、さすがにちょっと、かなり、参った。
今夜も軽い打ち上げの間中、ミトコンの好きそうなタイプの女の子が(最近じゃ女の子がミトコン好みの格好でやってくる)ずっと隣にいて、ああ、また連れて帰るんだろうな、って思ってた。
別にいいんだけど、そうそういいホテルに泊まれるわけでもなし、壁が薄かったり、部屋が扱ったりするとさすがに気まずい。声が聞こえてくるからね。
ひとしきり騒いで店を出る。ホテルに戻ろうとするとミトコンに呼び止められた。
「火事、こっちの子が、このあと一緒にどうかって」
ミトコンの隣にいた子のお友達かな、おとなしそうな子。俺は少しだけ考える振りをして「やめとく」と答えた。
「何でよ」
「……漫画読むから」
女の子はキャハハと高い声で笑い、ミトコンは「何の?」と聞いてきた。
昼間空き時間にふらっと入った古本屋でフヅコフヅヲの古い作品を見つけて纏め買いしたのだ。今夜からの楽しみだ。タイトルを言うとミトコンは心底うらやましそうな顔で「今度貸して」と言ったけど、腕にしがみついてる女の子を振り払ったりはしなかった。
「読み終わったらね」
答えて、手を振って別れる。
お友達ちゃんはなんとも言えない表情で一度こっちを振り返ったけど、それから、女の子に何か耳打ちして、その場を離れて行った。
ミトコンは、女の子と二人。
明日は出発が少しゆっくりだから、きっと朝まで帰ってこないんだろう。
「あいつ、またか」
誰かが呟く声が聞こえた。呆れた風ではなく、単なる確認の声。
205金賞 幼馴染 2/2:2008/10/30(木) 20:00:16 ID:9xq+OgWW0
部屋に戻って2冊目も読み終えてきりが良かったので、寝ようかなと思う。シャワーを浴びたあと放っておいた髪がいつの間にかすっかり乾いていて、ひどく広がって鬱陶しい。
いっそ切ろうかとも思うけど、ないと顔を隠せなくて困るだろう。
腕を持ち上げて後ろ手に束ね、何か留めるものを探しているとドアが開いた。どうやら鍵をかけ忘れていたらしい。
顔を出したのはミトコンだった。
「あれ」
「よお」
さっき別れてから、まだ1時間ちょっとしか経ってない。少しだけ気まずそうにしてるミトコンに「どしたの」と聞くと「漫画読みたいから帰ってきた」と答えた。
「ばかだろ、お前」
言いながら読み終えてた2冊を手渡すと、ミトコンはやけに自然にベッドに座った。
「もう寝るんだけど」
「え、もう?」
ミトコンは頭をかきながら床に腰を下ろした。俺はベッドの上に散らかした荷物をちょっと除けて、ごそごそと潜り込む。人の気配があると眠れないとかそんな繊細なタチではないはずだけど、今日はなんだかすぐに寝付けなかった。
ミトコンが漫画を読みながら体を小さく揺らして笑う振動がマットレスを伝わるせいかもしれない。しばらくじっとして寝たふりをしていたけど、ミトコンがどこで笑ってるのかが気になってちょっと寝返りを打った。
ページを覗き込むと、俺が笑ったのと同じところでミトコンも笑っていた。
「ああ、そこ」
「うん」
ミトコンの肩越しに覗き込んで、俺も一緒に笑った。
しょうがない奴だけど、こういうのを共有できる間はまあ、しょうがないな。腐れ縁とか、そういうのとも違うけど、結局こうなるんだ。
ミトコンはいろんな女の子のとこ行くけど、でも居心地がいいとこに戻ってくる。そういうことだ。多分。
だから、俺はまあ、漫画読みながら待ってるんだよ。いつでも。
206金賞 幼馴染 終:2008/10/30(木) 20:00:53 ID:9xq+OgWW0
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207風と木の名無しさん:2008/10/31(金) 18:52:23 ID:HcEWEvnSO
>>203
元ネタ分からないがモエた!
意識しつつも、し過ぎない感じのやりとりが良かったです
208風と木の名無しさん:2008/10/31(金) 23:07:17 ID:sk1wa66u0
>>203じゃないけど
日本をインドにしたり、ダメ人間だったり、リュックサックに子猫をつめたりする楽団の
ボーカル(ミトコン)とベース(火事)
漫画話しかしなくてギターに「君たちロックの話をしろよ」と言われたほどの漫画好き
209風と木の名無しさん:2008/10/31(金) 23:19:10 ID:8D7gUNgC0
火事てwww

「俺達の801とかあったよねー」とかMCで言ってしまう人達
210風と木の名無しさん:2008/10/31(金) 23:29:45 ID:h0Gm3eAq0
未だにXジャンプとダメ人間のジャンプの違いが分からない自分だが>203GJ
211風と木の名無しさん:2008/11/01(土) 00:01:00 ID:olptw6aJ0
「あれは僕の家だよ」は名言&鉄板ネタだよね>火事
最近のネタとりいれた話があればぜひおねがいしたいです>203
212風と木の名無しさん:2008/11/01(土) 01:15:15 ID:AEGOIDB+0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  デトロイト・メタル・シティ レッド隊長と仁村
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  少しだけど流血、暴力描写ありです
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 801になっていないかも……
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
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213DMC信者に悪い奴ぁいない:2008/11/01(土) 01:17:55 ID:AEGOIDB+0
気に入らない奴
それが第一印象だった
騒がしいし、馴れ馴れしいし、図々しいし、ウザいし
勝手にステージに上がるわ、クラウザーさんの新技に勝手に名前を付けるわでやりたい放題フリーダムだし
(おかげで”鳳凰と邪馬台国”という素敵にイカした名前がお蔵入りになってしまった)
何よりDMCのメンバーを勝手に呼び捨てにしている事が許せん
クラウザーさんには”さん”をつけろ!ジャギ様には”様”をつけろよ!
まったくアイツには我らがDMCに対して尊敬の念ってモンが無いのかよ!!
そんな感じで奴に対する俺の感情は、初めて会った時から最悪だった

――あの時はまだ気付く訳が無かった

アイツに対する感情が、”大嫌い”って気持ちが180°反転してしまうだなんて
あの底抜けに陽気で人懐こい馬鹿を本気で好きになってしまうだなんて



それはある日のDMCのライブが終わった直後の事だった
「次回のライブは今月末の予定らしいな」
「あぁ。噂だと”トリックorトリート”ならぬ”レイプorキル”がコンセプトだそうだ」
「10月31日、地獄のハロウィンが俺達を待っているぜー!」
いつも通り興奮冷めやらぬライブハウスで仲間達とDMCについて熱く語らっていた時、ふと俺はドア付近にいる男に気付いた
帰国子女だからか、やたらノリが良くハイテンションで、ズバリ言えば煮ても焼いても食えない程にウザい男・仁村
同じDMC信者でなければ積極的に関わっていこうなんて到底思えないあの男が、数人のガタイのいい外国人と一緒だった
一瞬しか見れなかったその横顔はいつになく殺伐としていて、いつもの頭の軽そうな笑いが消えていた
その顔が、その眼差しが何故かやけに印象深く目に焼き付いて、仁村がライブハウスを出て行くまでの間、俺は奴を眼で追っていた
214DMC信者に悪い奴ぁいない:2008/11/01(土) 01:19:44 ID:AEGOIDB+0
「…………」
「どうした?イイ女でも見つけたのか?」
いつも一緒につるんでる仲間の声にハッと我に帰る
「い、いや、何でもない」
そう曖昧な返事をして俺はもたれかかっていた壁から体を離した
「ちょっと野暮用思い出したわ」
「おい、ちょっ…何処行くんだよ!」
自分でも何故だか分からないけれど、何となく気になって外に出てみる
そこから見える範囲内にアイツの姿はもう無かった
少しライブハウスの周辺をうろついてみたけれど、それでもそれらしき姿は見当たらない
俺は一体何をやっているんだ……
そもそも何でそこまであの男の事が気になるんだ?
奴がいつになく真面目で、らしくない顔をしていたからか?
一緒にいた外国人がやけにガラ悪そうだったからか?
仁村が、あいつらに無理やり連れて行かれるように見えたからか?
俺があの馬鹿を心配してるって事なのか?
「いやいやいや」
自分の頭の中に芽生えたふざけた考えを振り払うかの様に首を左右に振る
生贄に選ばれた事は無いものの俺は身も心もクラウザーさんの物だ
他の奴に気持ちが揺らぐなんて、それもあの仁村だなんて
そんな事は絶対にあり得ない
つーか考えたくもない
「はっ馬鹿馬鹿しい。さっさと戻るか」
大きく屈伸をして、仲間達がたむろしているあの場所へ踵を返す
その時だった
遠くで男の叫び声が聞こえた
215DMC信者に悪い奴ぁいない:2008/11/01(土) 01:21:58 ID:AEGOIDB+0
何となく聞き覚えのある、その声がした方向はライブハウスから少し離れたボロ屋
聞いた話だとそこはもうじき取り壊し予定のライブハウス旧倉庫で今はもう立入禁止になっているらしい
まさかあそこか?
しかしそうじゃない可能性も高い
万が一そうだったとしても構う義理なんかない
さっきの尋常でない叫び声からして、行った所で厄介事に巻き込まれるのは間違いない
でも……
自ら首を突っ込まず放っておけばいいのに、何故かそう割り切れない自分がいた
「チッ」
舌打ちして、その廃屋に向かって進路を変える
なんでそうしてしまうのか自分でも訳が分からない
「あぁ!何なんだよ、もう」
目的の場所にはすぐに辿り着いた
「邪魔するぜ」
そう呟いて中に入り、話声の大きくなる方へ向かって歩く
中では5、6人の男が何かを取り囲むように丸くなっていた
話声は全て英語
俺には”Fuck you”,”shit!”,”kill”等の簡単且つデスメタル的な単語しか聞き取る事が出来ない
そして男達の描く円の中心には
「あの馬鹿……ッ!」
膝を抱えた仁村が、うずくまって倒れていた
俺のいる位置からでは、長めの前髪に隠れた顔ははっきりと見えないし、声もくぐもっていてよく聞こえない
一人の男が奴の体を足で転がし仰向けにさせ、勢いよくその腹を踏みつけた
その途端に上がる悲鳴と男たちの嘲りの笑い
別あーな男が奴の襟首を掴み、宙吊りにする
男たちより頭一つ分高い所に見えるアイツの顔
傷だらけで痣だらけで血まみれで
一瞬だけ、目が合ったような気がした
「オイ」
そして俺は気づくと鉄パイプ片手に男たちの前に仁王立ちしていた
「俺が本当のSATUGAIを教えてやる」
216DMC信者に悪い奴ぁいない:2008/11/01(土) 01:23:47 ID:AEGOIDB+0

「……で?」
「で……って何がだよ?」
さっきの男達を徹底的に叩きのめした後、俺は目の前のボコられ男に事の説明を迫った
仁村は突然助けに現れた俺に驚くでもなく、いつも通りヘラヘラ笑っていた
「何でお前はこの外人共に喧嘩売られてたんだ?俺は状況がさっぱり飲み込めねぇ」
「え?お前分かってて助太刀に来てくれたんじゃなかったのか?」
「分からないから説明しろって言ってるんだよ!」
「あいつらがライブの最中に言ってるの聞こえたんだよ。あんなフザけた道化野郎がジャックのギターを持つなんて納得出来ないって」
「あん?そいつは聞き捨てならねえな?!」
「で、ライブ後にDMCの連中を襲撃して2度とメタルが出来ない体にしてやる、ギターも取り返してやるって。あいつら目がマジだったぜ?
サバイバル用のでかいナイフチラつかせてたし。そんで、下らなねぇジョークは止めてもうちっと落ちつけよと俺がフレンドリーに
話しかけたんだよ。そしたら……」
「そしたら生意気だって難癖付けられて、こんな所に連れ込まれて集団リンチって訳か」
「正解!」
「まったく、お前って奴は……てか、お前英語話せるんだ」
「ついこないだまでアメリカ暮らしだったからな。これ位の修羅場には慣れてた筈なんだけどなーやっぱ日本に来てから平和ボケ?してんのかも」
俺はため息をついて、仁村の顔面を手持ちのタオルで拭いてやった
「おいおいもう少し優しくしてくれよ」
「煩せぇ黙ってろ」
「しっかしお前も世話焼きだな。お人好しって言われね?俺を追ってここまで来てくれたんだ」
「ぶ……っ?!」
言葉に詰まって、つい吹き出してしまった
217DMC信者に悪い奴ぁいない:2008/11/01(土) 01:24:38 ID:AEGOIDB+0
「お節介ついでに、ちょっとおんぶしてくれない?俺ん家まで」
「何言ってんだよ、お前」
「太もも刺されちまって動けないんだ。頼む」
「だったら家より先に病院だろ!まぁ……放っといても大丈夫か。仁村だから」
「ちょっと悲しい事言わないで。傷つくぜ?」
結局、コイツの要求通りに俺が背負って近くの病院まで運んでやる事になったんだが……重い
体脂肪の少ない筋肉質な体な上、俺よりデカいのだから当然と言えば当然だ
背中の男はと言うとこれは楽だわと上機嫌
俺の大変さも知らずにいい気なもんだな
「なぁ」
「どうした?」
はぁと溜息をついていると、仁村が突然俺に話しかけた
「俺を助けに来てくれた時のお前さ、本気で超カッコ良かった」
「お前よくそんな恥ずかしい事を平気で言えるな」
「正義のヒーローみたいだったぜ」
「だから!そんなこっぱずかしい事を堂々と……!」
照れくさくてずっと俯いたまま返事をしていたら、さっきまで機関銃の如く喋りまくっていた口が急に閉じられた
そのまま、3歩、4歩、5歩、……10歩
「仁村?」
不審に思って、無理を承知で出来る限り首を後ろに回すと、ついさっきまで血まみれで酷く痛々しかった顔が満面の笑みになっていた
「ありがとうな」
「…………」
今、目の前の底無しに明るい男に見惚れてしまった自分に気づいてしまった
自覚したくなかっただけで本当は最初から分かっていたのかも知れないけれど、今日の行動の理由も――
「おっ、おう……」
咄嗟に言葉が出なくて、それだけ答えて再び歩き出す
あぁ!何でこんな奴に胸がキュンとしてしまうんだよ!
畜生
今日の借りは、次のDMCライブで逢った時に返してもらうからな!!
218DMC信者に悪い奴ぁいない:2008/11/01(土) 01:29:11 ID:AEGOIDB+0
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 | |                | |           ∧_∧ 2人のキャラ、これで合ってるのかな……?
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タイトルが自分の主張の全てと言っても過言ではありません
レッドは漢前中の漢前だと思います
219埃.及神話 彫栖×瀬戸(1/4):2008/11/01(土) 12:11:59 ID:gX/iaGQD0
前スレ二本の間の話で埃及神話の甥×叔父。精神的には叔父の兄(甥の父)←叔父も。
鬼畜気味な無理矢理エロです。獣面人身神の擬人化など自分設定多数注意。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 あの狡猾で非情な男は父を殺して王位を簒奪し、それだけでは飽きたらず父の死体の
腕を、脚を、首を切り落として尼羅の河に投げ捨てたのだと、彫栖は母の語る怨み言を子
守歌のように聞いて育った。父の敵を討って王座を奪い返すのが己に与えられた使命だと
信じ、叔父を倒す瞬間を幾度となく夢想してきた。
 他でもないその敵の体を大理石の冷たい床に組み伏せて、彫栖は静かな興奮が体を満
たすのを感じている。全身を巡る血が次第に熱くたぎってくるような感覚を覚えながら、頭の
芯は奇妙な程に冷えていた。――今なら、どんなに残酷な行為も平気でできる気がする。
 瀬戸の精悍な顔はひどく青褪めていた。普段は鋭く輝いている瞳も、今は追いつめられた獣
のように不安げに揺らいでいる。あちこちが破れて既に衣服の体を成していない王の装束と、
手首にくっきりとできた痣が痛々しく、その姿はいかにも「敗者」の文字がふさわしい。彫栖は
思わず唇に笑みを浮かべ、瀬戸の鳩尾に膝でぐっと体重をかけた。
「っ、う……ッ!」
 瀬戸の顔が苦痛に歪む。彫栖は瀬戸の頬にゆっくりと手を添えた。
「苦しいでしょう、叔父貴」
 瀬戸は低く呻いて唇を引き結んだまま答えない。否、単に言葉を発するだけの余裕がないの
かもしれない。別にどちらでも構わなかった。元より瀬戸の言葉を耳に入れる気などない。
「あまり手荒な真似をさせないで下さい」
 それは抵抗すればどんな手荒な真似でもするという警告だ。膝を緩めれば、空気を求めて
息を吸った瀬戸の喉がひゅ、と鳴った。繰り返し肩で息をする瀬戸の眼に、薄く涙が浮いている。
220埃.及神話 彫栖×瀬戸(2/4):2008/11/01(土) 12:15:02 ID:gX/iaGQD0
 彫栖は瀬戸の頬に添えた手のひらを、その首から胸、腹へと緩慢な動作で滑らせた。敏感な
素肌に触れられて、瀬戸の皮膚が緊張するのが分かる。
 流石によく鍛えられており、引き締まった筋肉の感触が手のひらに心地良い。触れるだけでも
その強靱さはよく分かるのに少しも無骨なところがなく、その肢体はまるで名工の手による彫刻
のようだった。闘神の力を秘めた美しい体を目の前にして、彫栖の背筋をぞくりと嗜虐の衝動が
這い上がる。
 彫栖が瀬戸の腹でぴたりと手を止めた次の瞬間――彫栖は鷹の獰猛さで瀬戸の首筋に喰らいついた。
「……ッ!」
 それが合図だった。首筋、肩、鎖骨、胸と、彫栖は何度も接吻けを落としていく。強く、弱く、時
には痕がつくほどに吸い、かと思えば濡れた舌で舐め上げて、唾液で光る皮膚にきつく歯を立
てる。支配の証を瀬戸の肌に残すたび、項のあたりが興奮でざわざわした。体中の血液が沸騰
している。この男を支配したい、貶めたい。胸にある小さな突起に歯を立てると、瀬戸は息を詰め
て仰け反った。
「ああ、失礼。ここは優しく扱わないといけませんね」
 言って、そこを慈しむように柔らかく舌を這わせる。強く目を瞑った瀬戸が、くう、と小さな声を漏ら
した。その声に濡れた響きを確かに感じ、彫栖は後頭部がじんと痺れるような感覚に酔い痴れる。
硬さを増した乳首の先端を舌先でねっとりと嬲ると、色を失っていた瀬戸の顔に少しずつ朱が差し
てきた。薄く紅潮した目元は羞恥のためか怒りのためか、あるいは――。
「――気持ちがいいんですか?」
 彫栖は一度唇を離して手の甲で口元を拭いながら、
「どうも、叔父貴は素質がおありのようだ」
 瀬戸の目を見つめて殊更嘲るように言う。潤んだ目で睨み返してくる叔父が、いっそ健気にすら思えた。
221埃.及神話 彫栖×瀬戸(3/4):2008/11/01(土) 12:17:25 ID:gX/iaGQD0
「何、の、素質だ……っ」
「文脈で掴めませんか?男に抱かれる素質に決まっているでしょう」
 じっと目を合わせたまま、唾液で赤く濡れ光っている乳首に軽く指先を滑らせると、瀬戸の顔
が一気に歪む。
「、っ……!」
「ほら、ね」
 もう片方も軽く咥えて唇の裏の粘膜でしゃぶるようにすると、倍になった刺激に瀬戸は熱い息を
漏らして顔を背けた。瀬戸の反応の一つ一つが、圧倒的な弱者の姿が、彫栖を更に昂ぶらせる。
人差し指の腹で押しつぶすように動かして、痛みと快感ぎりぎりの線を彷徨うように刺激すると、
瀬戸は堪えきれずに極まった声をあげた。彫栖は笑みを深くする。彫栖が瀬戸の太腿に手を触れ
ると、瀬戸はびくっと狼狽した。
「や、め……っ」
「やめませんよ」
 短く言って、彫栖は無造作に腰布の中に手を滑らせる。既に熱を持っている塊に触れ、ごくごく
弱く指を絡ませる。撫でる、というほどしっかりした刺激ではない。五本の指で形をなぞっていくだ
けの微かな愛撫に、瀬戸の腰がもどかしく震える。
「っ、く、……ぅ……ッ」
 指先で、手のひらで、散々執拗にいたぶってから彫栖は手を放し、己の唾液をとろりと手のひら
に垂らした。そして、今度はいくらか強めにそれを握る。
「ん……ッ!」
222埃.及神話 彫栖×瀬戸(4/4):2008/11/01(土) 12:19:33 ID:gX/iaGQD0
 瀬戸は体を強張らせた。彫栖は手の唾液を男根の全体に塗りつけるようにしてぬるりと動かし、そ
うして徐々に指を絡ませて動きを早めていく。粘着質な水音がくちゅくちゅと鳴って、瀬戸の体を追
い上げる。
「く、うぅ、ぁ、く……っ!」
 指の動きはそのままに、彫栖は瀬戸の耳朶に唇を寄せてそっと縁を舐め上げた。予想していなか
ったのだろう刺激に瀬戸は大きく体を震わせる。唇で耳朶を食み、軽く歯を立て、濡れたところに息
を吹きかける。指に感じる熱は存在感を増して、彫栖は一層緩急をつけてそれを扱き上げる。
 ふいに瀬戸が鋭く息を詰め、己の破れた衣服の端をぎゅうっと掴んだ。限界を察した彫栖は無慈
悲に指を止める。ひっきりなしに鳴っていた卑猥な水音が止み、瀬戸の上擦った呼吸だけが辺りに響く。
「――王よ、解放をお望みですか?」
 彫栖はまだあどけなささえ残る唇から、瀬戸の耳に残酷な問いを吹き込んだ。瀬戸の瞳が揺れ、
直後、絶望を映し出す。沈黙。震える瀬戸の唇。彫栖の濡れた指がゆっくりと、ゆっくりと張りつめた
先端をなぞった瞬間、瀬戸は弾かれたように敗北の言葉を口にしていた。

「も、早く……っ!」

 全身を駆け抜ける歓喜を感じながら彫栖は鷹揚に微笑み、屈辱にまみれた王の根本をくちゅり
と握り込んだ。

「――仰せの、ままに」


□STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
獣面人身神の擬人化って書いたのは他意ないよ!前作レス感謝です!
223風と木の名無しさん:2008/11/01(土) 13:02:44 ID:ek3EPACeO
>>222
続き来てた!今回も面白かった!
224風と木の名無しさん:2008/11/01(土) 19:58:27 ID:OV2EhVjP0
>>219
GJ!
おっぱいが・・・・おっぱいが・・・・(*´Д`)

精液サラダ食べさせられるわ犯されるわ、かわいそうだなー叔父貴(棒読み)。
なんかまた今度コソーリ読みたくなるような作品だ(今もコソーリ読んでるけど)。

神話スレと連動してるのかな?だったら仕事速いな〜。
彫栖様の敬語攻め素敵。
225オリジナル ご主人様(少年)とロボット1/4:2008/11/02(日) 01:13:13 ID:3fIRpczd0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

怪物が、大きな腕を振り下ろす。瞬間、私はご主人様と怪物の間に滑り込んでいた。
「キョウ!」
ご主人様の叫び声が聞こえ、私の体は地面に叩きつけられた。
よかった、ご主人さまは無事か。頭の端でそう思った。
顔を上げれば、銀色の怪物――元々は作業用ロボットだった――が、月光をうけて
ぎらぎらと光り輝いていた。
「……不良品め」
呟きは、いやに掠れたものだった。

作業用ロボット達が人を襲い始めて、もう一か月になる。
この街に残っているのは、狂ったロボットと死体、それから空っぽの街を漁る盗人と、
私のご主人様くらいだ。
ご主人様がこの街に残っていた理由は、彼の両親の墓がこの街にあるからだった。

「キョウ、腕がっ!」
「そこに隠れていて下さい!」
226オリジナル ご主人様(少年)とロボット2/4:2008/11/02(日) 01:14:14 ID:3fIRpczd0
塀の陰から走り寄って来ようとする彼を制し、怪物に向かって右手をかざした。左手は使い物に
ならなくなっている。それは根元からもげて、地面に転がっていた。
あの手の作業用ロボットは、頭部に核がある。成功確率は低いが試すほかない。そう思いながら、
レーザーを放った。
掌からのびた青い光が怪物の頭を射抜き、同時に、怪物は静止した。
「キョウ、キョウッ!」
「ご主人様。お怪我は?」
駆け寄ってきた彼に訊くと、
「それよりキョウが」
とご主人様は泣きそうな顔になった。彼を安心させるために、私は唇の端を上げた。
「大したことはありません。腕が取れただけです」
「頬が」
「……ああ。人工皮膚が剥がれてしまいましたね」
ご主人様は私の頬を撫で、痛々しい表情で唇を噛みしめている。
「ごめん、キョウ……俺がこの街にいたいだなんて我儘を言わなきゃ良かったんだよね……
早いうちに逃げていれば、お前にこんな怪我をさせることもなかったのに」
「怪我ではありません、故障です。痛みも感じませんし、何てことは――――」
瞬間、視界にノイズが雑じった。
「キョウ?」
「申し訳ありません。何か……」
「キョウ、瞳の色が変だよ。凄く暗くて、まるですり硝子みたいだ」
227オリジナル ご主人様(少年)とロボット3/4:2008/11/02(日) 01:14:50 ID:3fIRpczd0
「少々お待ち下さい。故障個所を調べなおし、ます」
調べている間にも私の視界は暗く狭くなっていき、ついには明るさしか判別できなくなって
しまった。
しかも調べ直した結果、視覚だけでなく、非常用の回路やその他多くの箇所が故障している
ことが分かった。
正直、修理不可能な状態だった。
「キョウ」
涙声の彼の声が、耳に届いた。
「キョウ、嫌だ、死なないで」
キョウしかいないんだ。ご主人様はそう言った。
「機械に、死は、ありま、せん。ただの、ごみに、なるの……です」
「違う、違うよ!」
「壊れ……たら、同じ顔の、ロボッ、ト、を作ればいい……んです。そこに、私と同じ……
プロ、グラムを、入れて、やれ、ば、いい」
頬に温かな何かを感じた。何かが光っているのも分かった。
ああ、これは瞳なのか。彼の瞳と、それから、涙だ。
「同じ体でも、そんなのキョウじゃない。同じプログラムをインストールしても、キョウの
記憶は戻らない!」
「ご……しゅじん、さ、ま」
「キョウじゃなきゃ駄目なんだ。生まれた時から一緒で、これからも一緒で……っ」
涙を拭いたくて右手をのばそうとするも、それすらかなわなかった。
228オリジナル ご主人様(少年)とロボット4/4:2008/11/02(日) 01:15:50 ID:3fIRpczd0
彼が初めて歩いた時、学校に入学したとき、家出したとき、彼女ができたとき振られたとき、
家族が死に、一人ぼっちになったとき。
ずっと見つめてきた。なぜだろう、ずっと傍にいられるものだと思っていた。
「もうしわけ、ありません、いっしょう、そばにいると、ちかった……のに」
声にもノイズが雑じり始める。ご主人様が私の体を抱きしめる気配がした。
もう、彼の体温を感じることもできなかった。
「……キョウ、じゃあ……天国で、待っててよ。いつか絶対キョウの傍に行くから、
それまで待っててよ……っ」
天国。
生き物が死ぬとそこに行く、そう聞いたことがある。
私は生き物ではない。きっと、私は天国へ行くことはできない。
それを知りつつ、この人を悲しませたくない一心で、私は「はい」と言った。
「……てんごく、で……まって、います。だから、げんきに、ずっと、げんきに」
終わりが近づいているのを感じた。聴覚も、限界だ。
「ごしゅじん、さま、あなたの、えがお……が、すき、でした……」
「俺も好きだよ――……から……――……」
「……ごしゅじん……さま……」
「笑顔だけじゃなくて、俺は……――……」
ぷつり、何かが切れる音がして、それは私がただの金属の塊になる音だった。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ロボットに萌える。
229風と木の名無しさん:2008/11/02(日) 08:08:08 ID:8RuU+nYB0
>>225
朝から…泣かすなよ……・゚・(つД`)・゚・
230風と木の名無しさん:2008/11/02(日) 20:05:40 ID:aC8U7y/bO
>>225切なくてgj…!
目から汗が出そうになったんだぜ。
231生物 白ぬこネタ 1:2008/11/03(月) 16:00:57 ID:YaNDMz+9O
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
熱戦中に失礼します。今日はゲームがないので、閑話休題で。



疲れてるだろ、と言われればその通り。左肩を上げ下げするのも億劫だ。
緊張したのか?と問われればイエスかノーかよくわからない。途中から、投げることしか考えられなくなった。
それはいい意味でも悪い意味でも、余裕が無かったってことなんだろう。それはわかる。
流れを考えられるほどに、余裕は無かった。良くも悪くも、お前のミットしか見て無かったよ。
けれどそれを伝えるために待っているわけじゃない。そう穂葦は思っている。
疲れてるからだ、と単純に思っている。自分で運転するのも嫌だし、歩くのすら面倒だ。
ぶっちゃけて今回の自分はイーブンだ。よくも無けりゃ悪くも無い。
だからただ残ったのは、とんでもないこの疲労。
明日はやっとの休みだというのに、いつもなら乗っかっていける後輩たちは、もうさっさと王求場を後にしている。
言葉少なな奴もいた。やっぱりサ∃ナラは、されるほうはやっぱり嬉しいもんじゃない。
あーあ、と穂葦は息を吐いてべったり床に座り込む。目の前のミ一ティングルームの扉は、まだ開かない。
232生物 白ぬこネタ 2:2008/11/03(月) 16:02:24 ID:YaNDMz+9O
しんしんと床の冷たさが手のひらと、シャツ越しに腰のあたりに忍び込む。
多分残っているのは、もう自分ひとりだろう。この中のあいつを除いては。
「…」
肩がだるい。投げた数以上に、そして脚が重い。
息が浅い。まだ体が現実になじまない。
黙っていると息苦しくなって、時折意味なく深呼吸してしまう。肺も固いのか、そんな気がする。
静かなのか、耳が聞こえていないだけなのか。
もしくはあんまり聞きたくないだけなのか。
そうは思いながら、でも俺はまだマシなんだと思う。明後日のことを考えなくてもいいからだ。
俺が考えるのは数日後の未来のことで、お前は多分ついさっきの過去から、明後日から、だから今も、考えてる。
考えて考えて、だからまだ出てこないんだろう。
わかってんさ。
俺は誰より知ってんさ。
「…っは」
穂葦はまた大きく息を吸って吐いた。少し冷たい空気が体に入ってくる。
がちゃりという音がした。扉が開いたな、と思ったけれど面倒で、疲れていて、そのまま目を閉じていた。
だからじっとしてんだ。踏み込まない。
俺からは踏み込まない。
「…何やってんの、お前」
案の定と言うか予想通りというか、気の所為か少し固い糸田川の声がする。
233生物 白ぬこネタ 3:2008/11/03(月) 16:04:23 ID:YaNDMz+9O
わんわんと、思った以上に無人の廊下にそれは響く。コンクリートの壁に染みる。
かたんと後ろ手に扉を閉めた音。中にはまだ、缶得とかコ一チがいるのかな。
そして不機嫌そうな息の音。
「…つっかれたんで、お前待ってた」
「だから何で」
「腕動かんからよ、送って」
「車どうすんだよ」
「また取りに来るから」
薄く目を開ければ、これも思ったとおりで、まだ糸田川は真っ青なアンダー姿のままだ。
手にあれやこれやの書類とかノートを持って、ゴツい指で頬を掻いて、不審そうにこちらを見ている。
それには配王求だとかデータだとか、多分細かく書き込まれては、さらに幾つもの付箋がついてさらに厚くなっている。
現在進行形で厚くなって、意味を持っているそれを見て思う。わかってんさ。俺は、誰より。
お前の頭ン中くらいは。
「…いいけどよ。俺着替えるから、まだかかるぞ」
「おー。構わん構わん。待ってっから」
「変な奴だな、疲れてんだろうに先に帰れば?」
「だから、動くのも面倒なのよ!」
疲れすぎだろ、と今度は苦笑いで、思ったより優しい声になった。ほら立てよ、と腕を引っ張られる。
穂葦はそのままよろけた勢いで、糸田川の肩にしがみつく。耳元で言う。
234生物 白ぬこネタ 4:2008/11/03(月) 16:06:11 ID:YaNDMz+9O
「なあ」
耳にゆっくり言う。後頭部が少し見える。
目の前の扉の中には、まだ誰がいるんだろう。
「…おい、自分の足で立てよ、穂葦」
「明日休みだろ」
「練習は、あるだろ」
「いいから、送るなよ」
衝動が抑えきれない。考えれば考えるほど、自分の中で鎌首をもたげる。
俺を見ないでお前が何か考えているときの、その頭の中くらい、誰よりも知っているが。
知っては、いるんだが。
「なあ」
これは衝動だ。もうそうとしか言えない。糸田川の耳に言う。
もしくは喰らいたいという貪欲だ。
誰を攻めるか、どう引きずるか、次に何を見せるか、そんなことの類は、お前の領域だ。
膨大なデータと、個人の性格が交じり合ってる生き物だ。そんなのは百も承知。俺はそれを信じて、ミットしか見ない。
糸田川の体は固い。顎を乗せているこれまたごつい肩の、アンダ一越しの筋肉から、拒否に近い他人行儀な固さが伝わってくる。
そこに穂葦はわざと、頬を埋めて呻く。
「送るなよ、お前」
単純に言えば、一発抜いとけ、そしたらもうちょい、気楽になるんじゃねえ?という考え方。
どうせお前、サ∃ナラで打たれた球のこと考えて、それを含めて明後日のこと考えて、明日一日潰すんやろ?
235生物 白ぬこネタ 終:2008/11/03(月) 16:10:50 ID:YaNDMz+9O
ああ、そう言えればどんなにいいか。その程度だったら、どんなに楽か。俺もお前も。
だけどちょっと違うんだな、と穂葦はわかっている。
「…」
糸田川の無言の息の音を聞きながら、穂葦は考える。
手に持っているノートが震えているかもしれない、とも思う。
悩んでるし考えているだろうこと、しかし糸田川のその部分を、誰よりも知っているけれどだから踏み込まないと、不文律のように決めている。
決まっているし決めている。
それを例え貪り食いたいと思ったとしてもだ。
こんな風に、その衝動がどうにもならなくなったとしても、だ。どんなときでも。
真理に近い。肌に爪を立て、髪を握り締めるとき、その最中であったとしても、絶対ってことがある。決まっているし、そう決めている。
知っている、だからこそ喰らいたい、そんな衝動だが。
だけど、そこはお前の領域だ。だから俺は、絶対に踏み込みゃしない。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
2747で47視点で。
×テリーは複雑だ。
236風と木の名無しさん:2008/11/03(月) 16:19:25 ID:5p1S0qWg0
まさかこんな時間にリアルタイム遭遇するとは…!
姉さんの文体大好きすぎる。
47はもう一回チャンスがあるかな?次は頑張ってほしい
237風と木の名無しさん:2008/11/03(月) 18:22:14 ID:u8PEkOLNO
>>231
姐さんいつもGJ!
ちょうど保管庫覗いていて47はどう考えてるんかなと気になってたところの今日でした
それが叶って嬉しい気分
そして引きずりすぎないように明日からもまたがんがれ27
238風と木の名無しさん:2008/11/03(月) 18:40:26 ID:7w7PeIzQO
姐さん正座して待ってました!
腰砕けました。昨日のロッカーではどうだったんだろうと思ってたので…
頑張れめげるな4727
239風と木の名無しさん:2008/11/03(月) 23:35:27 ID:tLxAzMSH0
【正捕手】西武ライオンズ 細川亨 part10【27番】
http://ex24.2ch.net/test/read.cgi/base/1220020881/
240風と木の名無しさん:2008/11/04(火) 00:23:24 ID:1rjU13zLO
>>203
ちと亀だがGJ。
それくらいの距離感が好きだ。
241風と木の名無しさん:2008/11/04(火) 00:33:59 ID:eoQM/+uEO
>>231
姉さんGJです!
いつも楽しみにしてます。
姉さんの話は萌えもありつつ、どこか燃える要素もあって、そのバランスがたまりません!
47視点に萌え転がりましたー!
242風と木の名無しさん:2008/11/05(水) 00:23:20 ID:li8H7A2KO
帆足
細川
裏金
243風と木の名無しさん:2008/11/05(水) 00:37:34 ID:QqE58A9JO
>>231
47視点、非常に萌えました
244親高校 三男次男1/2:2008/11/05(水) 01:25:31 ID:cq3CpwRq0
ドラマスレの年齢設定にキュピンときたので。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「ユーゾーはさぁ」
舌足らずな声で次男が歌う。三男の髪の毛をかき回しながら、調子外れの歌声は「かわいいよね」と続けた。
兄ちゃんたちの方がかわいいんだけど、ともそもそと口の中で次男を転がしながら三男は呟く。その声は次男の耳には届かず「何?何?」と頭上から声が降ってきた。
あまり付き合うということに興味がないのか(はたまた本気でコツがわかっていないのか)、次男は女性と付き合ったことがないようだった。黙っていればモテるだろうと思う。いや黙っていなくても充分に兄は魅力的だと三男は密かに思っていた。
そんなこんなで兄弟きってのモテ男の三男は童貞の次男を抱いたりしている。

東京でのバンド活動も思うようにいかず、生活費を浮かせるために次男の家へ上がりこんだ時、本当はもっと拒絶されるかと思っていたのだ。
(長男には家庭があるので近寄らないでいた。長男は家族が困っていれば妻を無視してでも家族を選んでしまうということを次男三男は知っていた。まさかその後長男までも次男の家に上がりこんでくることになるとは考えていなかったが)。
これでなかなかガンコな兄だから、二度拒絶の意を聞いたらおとなしく諦めようと思っていたのに、次男から想像以上の歓迎を受けてしまって三男は驚いたのであった(そして部屋のどこにも女性の気配がないことも口には出さなかったが驚いた)。
もちろん兄たちが自分のことを好いてくれているのは知っている。
だけれども長男の自分に対する愛情と違って、次男のそれは無条件に自分を許すものではない、というのも三男は知っていた。それに次男の優しさの奥に押し殺されて渦巻いていた嫉妬を知らないわけではない。
本来ならば三男に向けられるはずだった感情を、次男は長男の悲しみと同調することでなかったことにしたらしかった。
245親高校 三男次男2/2:2008/11/05(水) 01:29:49 ID:cq3CpwRq0
例えば昔、6歳ずつ歳の離れた兄たちの卒業式と、三男の卒園式の日程がかぶったことがあった。結局祖父母も両親も三男の式に出席した。
そのころ三男はまだ幼かったからどんな経緯があってそうなったのか知らないままだが、だからこそ兄たちを除く家族全員が写っている卒園式の写真は三男の中でちいさなしこりとなって時々疼く。

ゆっくり眼球を動かして兄の顔を伺い見ると、目が合った。

「こういう時は、目え、閉じとくんだかんね」
「うん」と答えながら次男はじっと三男を見ていた。アドバイスを参考にする気はないらしい。目じりに無垢な愛情の切れ端を見つけて三男はうんざりとした。
家族の中で一番気安く話せるはずの兄が時々最も自分のことをわかっていなかった。
兄ちゃんはオカンにはなれないんよ、と言おうとして止めた。
「そんなんじゃ女の子にモテないよ」
「困ったね」
 小さく歯を立てればくすぐったいのかあまり危機感のない声で次男が笑った。三男はますますうんざりしたが、裏腹に自身はますます固く直立した。同じく出来上がった次男自身から口を離し、次男の腹筋に口付けて、次の行為に進むより他になかった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
次男は基本マグロなんじゃないかなと思いました。
246風と木の名無しさん:2008/11/05(水) 02:34:25 ID:4oypI55G0
>>231
よもや尻ーズ中に読めるとは!
いつもながら燃え萌えさせて頂きました。

時に、名前欄に入れるタイトル、>>2のように
「タイトル1/9」〜「タイトル9/9」
と、されては如何でしょうか?
いえ、「今回はどれくらいの長さなんだろう」とwktkして読むのもいいものですが、
もしや見落とされているのかなと思い。
247風と木の名無しさん:2008/11/05(水) 06:51:57 ID:UH4OeLLCO
東尾
死球
細川
248風と木の名無しさん:2008/11/05(水) 11:57:07 ID:KkKZMJ7A0
>>244
おお、何かいいな!
自分も三男次男に密かに萌えてる
次男は他の兄弟ほど個性は強くないけど
髪型が女の子ぽかったり、アホの子結び?したりして可愛いよな
三男は馬鹿だけどイケメンだよ、モテ男だよ
兄弟の中で一番経験ありそうだw
249風と木の名無しさん:2008/11/05(水) 19:13:03 ID:YpDdL1U+O
>>244

うぉぉ!!GJ!!
まさか読めるとは思わんかった!!

あの3兄弟は萌えるよなぁ
250オリジナルSF風味 0/6:2008/11/05(水) 22:45:09 ID:EOE5Osbr0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  オリジナルなんちゃってSFフォモです
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  理系の知識がないので色々おかしいかも…
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )   
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
251オリジナルSF風味 1/6:2008/11/05(水) 22:48:31 ID:EOE5Osbr0
 横で本を読んでいたカフカが、ふいにページをたぐる手を止めて宇宙船の
窓に目をやった。俺にはただの暗闇にしか見えない夜の空を、焦点を合わせ
るために目を細めて観察している。カフカのまっすぐな細い首にはのど仏は
見えない。最低限の食べ物しか摂取しない彼の体は全体的に骨ばっているが、
細部に子供の持つやわらかさを残している。
「何が見える?」
 カフカはすぐには答えない。いつものことなので俺は辛抱強く待つ。慣れるま
では人の話を聞かない奴だと思い込んでいたが、彼は的確な言葉を探すのに
時間がかかるタイプだった。
今では吟味された言葉の重みがわかる。誰よりも深く思考する彼は、船の中でも
信頼されていた。
「オーロラが発生するかもしれない」
 そう言われて窓の外を眺めたが、俺の目はまだ光を捕らえられない。それも
道理だ、カフカが認識できる光の範囲は俺の倍はあるのだから。俺は地球生まれ
の地球育ちで、彼は小さな変光星生まれのステーション育ちだ。
252オリジナルSF風味 2/6:2008/11/05(水) 22:50:47 ID:EOE5Osbr0
 カフカが見る極彩色の世界を知りたいと思い、本人に尋ねたことがあった。
うまい表現が見つからなかったのか、彼を1日中考え込ませることになった
ので、もう二度と聞くまいと胸に誓った。難しいことを聞いて悪かったと謝ると、
彼はポーカーフェイスを崩さずに、すまないなと言った。
 その1週間後、突然カフカが俺の個室にやってきた。用がある時は事前に
何らかの断りをいれてくるのが常だったので、俺は驚いた。彼は一冊の画集を
抱えていた。それはずいぶん昔の地球の画家のものだった。船員の一人が
実家の書斎から持ってきた大型の本で、四隅はすりきれ、厚手の紙を綴じる
糸もほつれていた。カフカは生まれたての赤子を扱うかのような丁寧な手つきで
ページをめくり、ひとつの絵を指差した。熱帯の地の青い樹、黄色い砂、赤い犬、
そして白い服を着た女。鮮明な対比の配色はまぶしいほどだった。
 ――これに似ていると思う。カフカはいつもより早い口調で言った。その瞬間は
意味がわからなかった。何が何に似ているって? 戸惑う俺をよそに、カフカは
更に別の絵を指して、日が沈みきった頃はこのように見える、と言った。それは
先ほどの絵より暗い色調で描かれていた。青暗い景色の中で、人の肌が明るく
浮かび上がっている。俺はようやく気付いた。一週間も前の質問を、それも一方
的に痺れを切らしてもういいと断りを入れた質問を、カフカはずっと気にかけて
いたのだ。彼の誠実と純粋に撃たれて、俺はしばし言葉を失った。隣に腰掛けて
俺の反応をじっと待っているカフカを見たら、あらゆる波長の光を映す彼の瞳に
部屋の照明が入り込んで、小さな星を作っていた。
 ――きれいなもんだな。俺の声は擦れていたと思う。カフカは「お前に教えたか
ったんだ」と言って、はにかむように微笑んだ。形の良い唇の端からのぞく小さな
八重歯を愛しいと感じたのは、その時が初めてだった。
253オリジナルSF風味 3/6:2008/11/05(水) 22:55:26 ID:EOE5Osbr0
 それ以来、俺とカフカの距離はどんどん近付いていった。俺はカフカの少ない
言葉からあらゆる感情を読み取ろうとしたし、彼もそれに安心して様々なことを
話すようになった。カフカの星は男女比が4対1で、ヘテロの夫婦よりホモの夫婦
が多いこと。そのため人口胎盤の技術が進み、違う星からも子供を願う同性の
夫婦や恋人が訪問すること。地球の人間とは加齢速度が違うため、ステーション
では色々と誤解を生んで大変な思いをしたこと。俺はカフカの理知に溢れた端的
な話し方が好きだった。決して意図的に笑わせようとしているわけではないのだ
が、彼の話はいつも俺を幸福にした。会話に多少のタイムラグが生まれることも
あったが、それさえ心地いい距離感を作る要因になった。
 ひとつだけ引っかかったのは、カフカの身体的な幼さだった。実年齢は俺と一つ
しか変わらないのだが、外見的には15、16くらいにしか見えなかった。加齢速度
が遅いためだ。ただでさえ性的に無理が生まれてしまう関係であったし、十も離れ
た容姿を持つカフカに手を出すことはひどくやましいことのように思われた。彼の
きめの細かい白い肌は十分魅力的だったが、彼の体が成熟するまで待つのだと
自分に言い聞かせ、俺は耐えた。
 時には食事の時間にカフカの皿にポテトのペーストを盛ってやり、もっと食べて
早く大きくなれと発破をかけることもあった。結局カフカは残してしまい、ほとんど
俺が食べるのだが、そんな時彼は、塩の効いた白いペーストを俺が平らげるまで
身じろぎもせずに待っているのだった。
254オリジナルSF風味 4/6:2008/11/05(水) 22:59:01 ID:EOE5Osbr0
 俺は腰掛けていたベッドから降り、個室のコンピュータから船外の観測データ
にアクセスした。プラズマ粒子の数値を確認すると、確かにわずかな変動が見
られた。データはまだ誤差の範囲内だが、カフカの予測が外れたことはない。
「どのくらいの規模かわかるか?」
 カフカは窓に頬杖を付いて空中を見つめている。俺は黙って過去にオーロラが
発生した際の詳細なデータを眺めることにする。この星では数年に一度、巨大な
オーロラが観測されることがあるのだ。もしそれに出会えるなら、大きな収穫だ。
20年前までデータを遡った頃、カフカが答えた。
「はっきりとはわからないが、おそらくそう大きくはない」
 小規模のものならすでにデータをとってある。本腰を入れて観察する必要は
ないから、コンピュータに任せればいい。
「カフカ、地表に出てみるか」
 カフカが間を空けずに頷いたので、喜んでいることがわかった。机のボックス
から酸素シールを取り出して、喉元に2枚、胸に2枚をそれぞれ貼り付けた。
カフカに渡そうとすると、彼は手を伸ばす代わりに顎を上げてのどを露わにした。
カフカが人を頼るような仕草をするのは珍しかった。親指で擦りつけるようにして
丸いシールを貼りつけてやったら、彼の体がかすかに震えた。
「冷たかったか」
 何気なく聞いたのに、カフカは黙ってしまった。不自然な沈黙を訝しく思ったが、
俺はすぐにその意味を理解した。残りのシールを彼の膝に置いて、扉の方に
向かった。カフカは俯いたままだ。
「飲み物を用意してくる。ガレージで落ち合おう。それ少し温めてから貼れよ、
両手で挟んでおけばすぐだ」
 返事を待たずに部屋を出て、足早に歩いた。食堂に入り、奥の調理スペースに
向かう。ボタンを押して、水道管から流れ出てきた冷水で顔を洗った。そのまま
手ですくって一口飲む。深く息を吐いて、再度顔を洗った。水は肌に冷たく染みた
が、そうでもしないと血が上ってしまいそうだった。心臓がうるさく音を立てていて、
自分の鼓動しか聞こえない。あの一言は自然に言えただろうか、気付かないふり
をしたまま全部やってやればよかっただろうか、一人でいるカフカは傷ついていな
いだろうか。動揺して思考が整理できず、ばらばらの事柄だけが浮かんでは消えた。
255オリジナルSF風味 5/6:2008/11/05(水) 23:03:42 ID:EOE5Osbr0
 今まで俺は、カフカは実年齢に見合った精神構造をしていると思っていた。
冷静さは人並み以上だし、少々わかりにくいが他者への思いやりも持っている。
外見と内面はアンバランスだが、内面だけを見れば船内の誰よりバランスが
取れているように見えた。
 でも、と俺はポットに湯をそそぎながら考える。混乱している時は体を動かした
ほうが落ち着くものだ。この星の気温は氷点下だから、防寒服を着たとしても
ずいぶん冷える。数時間に及ぶオーロラの変化を見るなら、温かい飲み物が
あった方がいい。そのことを俺に教えたのはカフカだった。
 ポットをスティックで撹拌し、一口飲んでみる。インスタントコーヒーをスプーン
1杯分追加して、もう一度よく混ぜてから蓋をした。もしもカフカに、25歳の部分
も、15歳の部分もあるのだとしたら。俺は今までずっと勘違いをしてきたことに
なる。
256オリジナルSF風味 6/6:2008/11/05(水) 23:07:30 ID:EOE5Osbr0
 ガレージには既にカフカが待っていた。カフカが先にバイクの電源も入れて
いたので、後は出入口を開放して出発するだけだった。
「運転していいか」
 カフカは何事もなかったような顔でヘルメットとゴーグルを渡してきた。声音も
いつも通りだったので、俺は拍子抜けした。ただの考えすぎなのか、カフカの
切り替えが飛びぬけて早いのか。前者だったら笑って済むけれど、きっと後者
だろう。カフカの黙り方には多くのバリエーションがあるが、あんなパターンは
初めてだった。しかしあまりにカフカの振る舞いが自然なので、俺はオーロラを
見ながらゆっくり話せばいいという気分になっていた。
「安全運転してくれよ」
 ハンドルを握り、計器をチェックするカフカの後ろで言うと、カフカは小さくうな
ずいた。バイクが好きなのかオーロラが楽しみなのかはわからないが、機嫌が
いい。
 そのことに安堵した途端、予期しない圧力がかかってきた。カフカが急に発進
したのだ。俺はたまらず彼の腰にしがみついた。砂煙が舞い、前輪に巻き込ま
れた砂が体中に当たり、ちりちりとした痛みが走る。
「カフカ!」
 加速、加速、純粋なる加速。振り落とされると本気で思った。ものすごい速さで
視界が流れていくと共に、恐怖のあまり視界がぼやけてきた。風が刃物のよう
に頬をえぐった。
「カフカ!」
 大声で名前を呼ぶが、カフカは答えない。握りこぶしほどの大きさの石の上
に乗り上げ、数秒間体が宙を浮いた。俺は自分の体をカフカに密着させ、これ
以上ないほどきつく抱きしめた。
「そうだ」
 カフカが怒鳴った。カフカが怒鳴るというありえない事態を前にしても、命の
危機を感じていた俺はカフカを抱く腕をゆるめなかった。
「しっかりつかまっていろ!」
 小さな八重歯のカフカ、食が細いカフカ、闇を見上げるカフカ、いつも何かを
考えているカフカ。俺のカフカは、更にバイクのスピードを上げた。
257風と木の名無しさん:2008/11/05(水) 23:09:22 ID:EOE5Osbr0
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;) 実はまだ続きがあります…

後半はもう少しラブなかんじになるはず!
258風と木の名無しさん:2008/11/05(水) 23:17:07 ID:BdC/H6dnO
>>231
中途半端にあらすひともいるし、実況晒しもあったから心配してたお…
しろぬこさんをまた読めてよかったです

>>250
はじめてリアルタイムきたーしかも素敵作品だ!
こういうのだいこうぶつ!低温の、じんわりくる優しい感じですごくすき!
次回もはあはあしながら待ってます…
259風と木の名無しさん:2008/11/05(水) 23:26:00 ID:BgHhPlTqO
>>250イイヨイイヨ-(*´∀`*)ハアハア
続きにワクテカ
260風と木の名無しさん:2008/11/06(木) 02:43:17 ID:1HWPAbu/O
>>250
SFと異種間カプ好きには堪らない!
じわじわと萌えが襲ってくるよ。
ワクテカしながら待ってる。
261風と木の名無しさん:2008/11/07(金) 11:30:42 ID:2DopIHVE0
>>250
続きが楽しみすぎる
262映画3/人/の逃亡者より 1/4:2008/11/07(金) 15:03:41 ID:27c0JIMlO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
話が終わった直後ぐらい。気付いたら妄想してたよ。

やっぱりこいつら、いや特にこの男だ。
こいつは駄目だ。

さっきまで人質にされていた元・銀行強盗とその娘を車に押し込み、このタコと思わず呟く。
「仕方ないだろ!急に襲ってきたんだから!」
「うるさいこのタコ」
「なんで僕まで殴ったんだよ!」
咄嗟に銀行強盗を倒して逃げてきた。
だが慌て過ぎたせいか、人質にされていた馬鹿も一緒に殴ってしまった。
「僕に人質にされた時の、君の気持ちがすごくよく分かった」
「だがその犯人がまた別の強盗に銃をつきつけられて、銀行から出てきた時の気持ちは分からないだろ」
263映画3/人/の逃亡者より 2/4:2008/11/07(金) 15:05:09 ID:27c0JIMlO
「ママ」
「メグ、もうパパと呼んで良いんだ」
「パパ、おじさんにお礼言わないの?」
「だけどこいつは僕を殴って…いやそうだった、ありがとう。また君に助けられた」
小さな娘はこんなにしっかりしているというのに。
「やっぱりお前は駄目だな」
「ごめん、せっかく色々助けて貰ったのに迷惑しか…」
「本当に駄目だ」
「そう何度も言わなくたって良いじゃないか!」
「だって駄目だろう、俺が付いてないと」
「だから何回駄目駄目って…、ん?」
264映画3/人/の逃亡者より 3/4:2008/11/07(金) 15:06:48 ID:27c0JIMlO
「じゃあ一緒に居てくれるの?!」
車の後部座席からすごいスピードで小さな頭が出てきたから、苦笑しつつ答えてやる。
「ああ、メグ。君の父さんは時々…いや大抵とんでもない事をやらかす」
「じゃあ一緒に居てくれるの?!」
これは親父の方。
「そうだ、このタコ」
「あああありがとう!君は何て良い奴なんだ!ありがとう!良かったなメグ、お祝いしなきゃ!愛してるよ!」
「パパ、助手席で踊ると危ないわ」
「泣くな、騒ぐな。サツに見つかる」
265映画3/人/の逃亡者より 4/4:2008/11/07(金) 15:07:55 ID:27c0JIMlO
思えば最初に関わった時点でこうなる運命だったのかもしれない。
プロの銀行強盗の自分を人質にするぐらいの馬鹿。
娘と二人だけで行かせたら、何をやらかすか分かったもんじゃない。
しかも被害を被るのは何故かいつも自分。
こいつらを助ける為に必死で駆け回っている自分の姿を想像して、少しだけ後悔した。

でもまあ、いいさ。
こんな危なっかしくてのんきな奴等をほっとけるか。

「やっぱり面倒見ないと駄目だ」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
266照退 ロビンソン 0/13:2008/11/07(金) 18:15:56 ID:fiVdcYrU0
照退の続き。通算3話目です。
公式の「中国マフィアの潜入捜査のため死んだふり」発言からエスパーした結果、
あらぬ方向に話が進んでいます。しかもものすごく長文。スマナイ。キレナカッタ。
サブタイは前回から、10年前の話ということで当時よく流れていた曲で統一。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
267照退 ロビンソン 1/13:2008/11/07(金) 18:17:06 ID:fiVdcYrU0
吐いてしまった。
路地裏に駆け込んだ退蔵は、うずくまって口をぬぐっていた。
気配を感じて顔を上げると、痩せた野良猫が壁と壁の細い隙間から、目を光らせて退蔵を見ていた。
手を伸ばしても逃げない。元は飼い猫だったんだろうか。
抱き上げて喉の下を撫でると迷惑そうにもがいたが、無理にギュッと抱いて顔を寄せた。
「…なにやってんの?」
まるでネコが喋ったみたいに、柔らかい声がした。退蔵はネコの顔を見てから、ゆっくり後ろを振り向いた。
その隙にネコは手の中からすり抜けて、暗がりの中へ消えた。
ネオンの淡い光を背にして、自分を見下ろしている照の顔を退蔵は座り込んだまま見上げた。
「先輩…帰ったんじゃ…」
「おまえがここ入ってったから。…こんなとこで吐くなよ」
柔らかく言いながら手を伸ばしてくる。さっき退蔵がネコに向かって伸ばしたように。
何も考えずに握り返した手は、ちょっと驚くくらい柔らかかった。引っ張られるように立ち上がった後も、手を離せずに握ったまま立ち尽くしていた。
照が少し途惑って顔を覗き込んでくる。急に照れくさくなって手を離した。
「…すいませんでした」
よろけながら歩き出すと、さりげなく体を支えてくれる。これも役得だと思って、どさくさにまぎれて照の肩に手を回し、更に抱きついた。
「すいません先輩ー」
全体重かけられて照の足がよろけた。その拍子に支える手にも力が入る。
「…ちょっ…重いって…」
腕の中に納まって文句を言う照の顔を、退蔵は覗き込んだ。
少し赤い。酔ってるからかと退蔵は思った。
268照退 ロビンソン 2/13:2008/11/07(金) 18:18:11 ID:fiVdcYrU0
明るい場所まで出ると、退蔵はそっと体を離した。照はまだ心配そうに、退蔵の背中に手のひらを残している。
手を煩わせてすまなく思ったので、「大丈夫です」と言おうとして退蔵は口を開いた。
「「大丈夫…」」
2人同時に同じ言葉が出て、同じように途惑って語尾を濁した。
気を取り直して、退蔵はもう一度口を開いた。
「「電車で…」」
なぜかまた2人同時に言う。顎を引いて笑いそうになるのを我慢していたら、照が笑い出したので退蔵も笑った。
「電車で帰るのか?」
照がさっき飲み込んだらしい言葉を言いなおす。退蔵も「電車で帰ります」と言おうと思っていた。
2人で並んで、駅までの道を歩くことにした。
急に、今いっそ全て打ち明けてしまいたくなる。
呉朴龍の兄の組織に潜入捜査をする事になった、と今ここで照に伝えたらどうなるだろう。
考えるまでもない。「おまえにはまだ無理だ」と諭される。
「何も心配するな。おれが現場に出る」と言い出すのが目に見えていた。
打ち明けるなんてダメだ。オレが先輩を守るんだから。
ふと、先輩がオレを庇おうとしてくれるのも、オレと同じ気持ちなんだろうかと思いつく。
信号待ちで足を止めると、照が顔を上げて言った。
「退蔵。何かおれに隠し事あるんじゃないのか?」
少し焦った。横目で照を窺うと、口元に笑いを浮かべて照は言った。
「何年一緒にいると思ってるんだよ。顔見りゃわかるよ」
また何もかも口走りそうな衝動に駆られる。酔った勢いだからなんて、これじゃひど過ぎる。
「…いえ。別に、ないです」
退蔵は視線を落とした。
269照退 ロビンソン 3/13:2008/11/07(金) 18:19:24 ID:fiVdcYrU0
照と別れて一人になった途端、唐突に「田所さんはずっと前からオレが目障りだったんだ」という考えに取りつかれた。
田所にとって退蔵を潜入捜査にまわすのは、きっと一挙両得なのだろう。
オレを先輩から引き離したがっているんだ。退蔵は思った。
ただの勘。半ば妄執にも似た考え。だけど多分当たっている。
だからといって今更他に方法もない。
自分が「殉職」すれば照はきっと悲しんでくれる。でもしばらくしたら田所とまた一緒に組んで、退蔵が来る前と変わらない生活を始めるんじゃないかと想像した。
何もかもどうしようもなくてやるせなかった。
せめて、離れ離れになる前に、自分の気持ちを告げられるだろうか。
もしかすると、先輩も。前から何度もそう思っていた。
だけど確信が持てない。本当は一方通行の思い込みかも。告白して拒否されたら終わりだ。
それが何よりも怖かった。
言ってしまった途端、今まで積み上げてきた全てが失われる。
そして、言ったところでどうなると言うんだろう。
いつ戻ってこられるかも約束できない。下手したらこのまま二度と会えないかもしれない。
伝えてそれからどうするんだ?結婚出来るわけでもないのに。
オレはどうしたいんだろう。どうしたらいいんだろう…。

数日後、照と退蔵は暴力団の取引現場を押さえようとして反撃を食らった。
2人は倉庫に身を潜めた。田所が救援に来るはずだ。それを待っていた。
てっきり照に連絡が来ると思ったが、退蔵の無線に来た。すぐに出て声を潜める。
「…はい。退蔵です」
『そばに照はいるか?いたら電波のせいにして少し離れろ』
田所の押し殺した声が聞こえた。かがんだ姿勢で照から離れながら答える。
270照退 ロビンソン 4/13:2008/11/07(金) 18:20:31 ID:fiVdcYrU0
「電波の調子が悪いんで、ちょっと待って下さい。…聞こえますか?」
『離れたな?』
「ハイ」
『そこはもう解決した。現場から逃走した犯人は全員確保した』
なんだ…と安心しようとした矢先に田所の声が冷たく響いた。
『この状況を利用する。おまえは今から殉職≠オてくれ』
頭の奥がスーッと冷えた。
「今……ですか?」
『今が一番自然だ。おまえが逃走犯の一人から撃たれた事にする。東の出口に向けて立ってくれ』
田所の声は至極冷静だった。
『こっちからは確認とれているから、立ったら出来るだけ体を前面に向けろ。念の為聞くが防弾衣に血糊を装着しているな?』
「…はい」
『真っすぐ狙う。必ず体を前面に向けろ。3分後実行する。サイレンを鳴らすから照には様子を見てくると言って離れろ。いいな、照は東の出口に近づけるなよ』
「…わかりました」
そこで無線は終了した。
一瞬退蔵の頭に、田所はまさか本気で自分を殺しかねないのではという考えがよぎり、それを押さえつけるように自分で消した。
なにもかも疑い出せばきりがない。決定事項に従うまでだ。
腹を括る。心配そうに退蔵の様子を窺っていた照に近づくと、緊迫した表情で言った。
「回り込まれました。全部囲まれてるようです」
自分でも迫真の演技だと思った。照の目にも緊張が走った。
「田所さん達も近づくのが難しいようです。救援が来るまで隠れていろと。こっちへ」
東の出口が見える場所。そして間違っても照には当たらないように、積荷の物陰へと移動した。
ここからだ。照を騙し通さなければいけない。
271照退 ロビンソン 5/13:2008/11/07(金) 18:21:35 ID:fiVdcYrU0
覚悟は決めていたが突然だった。これでもう照とは離れ離れになる。
これが一緒にいられる最後。
急に手の震えが止まらなくなった。頭じゃ落ち着いているつもりなのに。
照が腕を負傷しているのに気付いて、いつも以上に動揺した。なんだか、照の態度もいつもと違うような気がした。
それなのに、自分の事で精一杯で、照が何か言おうとしているのにも気付かなくなっていた。
気持ちを振り切るようにして、退蔵は立ち上がった。
「先輩、オレちょっと様子見てきます」
東の出口へ向けて飛び出そうとした時、
「頼む、聞いてくれ!」
突然照から引き戻された。
なぜ?何かを察した?自分の動揺を伝染させてしまったんだろうか?
驚いて顔を見た退蔵に、照は退蔵の腕を掴んだまま、急に切羽詰まったように口走った。
「おれは、おれはおまえのことが」
先輩?
「…す…き、だ」
ぎこちなく言葉が押し出されて、退蔵の心臓もぎこちなく跳ね上がった。
息が止まる。
「おまえが署に入ってきた時から…」
転がり始めて止まらないように、照の口から言葉が溢れ出した。
「ずっと、ずっと、死ぬほど、死ぬほど死ぬほど死ぬほど…」
突然。どうして今。先輩。これって。なんで。
「…すき、……」
語尾を唐突にちぎって、照は視線をそらした。
272照退 ロビンソン 6/13:2008/11/07(金) 18:23:27 ID:fiVdcYrU0
照が視線をそらすのと同時に、退蔵は照の顔を見つめた。
先輩。
まさかこんなタイミングで。
オレはなんて応えればいい?次に会う約束さえ出来ないのに。
…田所は今のを聞いたのだろうか。どこかから見ているんだろうか。
もう、時間がない。
迷ってもがいた末に、退蔵は照に笑顔を見せて言った。
「…わかってました」
照が驚いて顔を上げるのを、じっと見ていた。
「なんとなく、わかってました」
こんな時だというのに、ものすごく幸せだ。
「オレ、なんて言ったらいいのかわかんないけど…」
正直な気持ちを告げたかった。
「すごく、嬉しいです」
「…退蔵…」
信じられないって顔してる。オレも信じられない。
もし、こんな時じゃなければ…。このまま2人だけでいられたら。
その時、サイレンが鳴り響いた。
反射的に退蔵は、一切の感情を殺した。
「やっと来た」
と笑顔で言ってそのまま立ち上がる。
「一度様子見てきますよ」
照に言うと、飛び出した。東の出口へ、体を前面に。
次の瞬間、体に強い衝撃を受けて後ろへ倒れた。
273照退 ロビンソン 7/13:2008/11/07(金) 18:25:00 ID:fiVdcYrU0
「退蔵!!」
照に引き寄せられた。田所は上手く当てた。血糊も流れている。
目を開けたらきっと自分を抑える事が出来なくなる。そう思って退蔵は目を閉じていた。
照が取り縋っている。名前を叫んでいる。
泣かないで。
そんな悲しい声で呼ばないで。
じきに田所が自分たちを引き離す。それまでの間だけ。退蔵は照の体を掴んでいた。

交差点の手前の、いかがわしいピンクの壁のビル。退蔵はタバコをふかしながら、その3階の窓を見上げて立っていた。
呉朱龍と2人の男がその3階へ上がってから、そろそろ1時間経つ。
見上げた丸い窓は薄汚れている。組織に入って日の浅い退蔵は、見張り役として外に出されていた。
ドラッグの取引だろうと退蔵は当りをつけた。多分、錠剤。粉じゃない。ゆるい合法のヤツ。
まだ朱龍は、本当にまずい現場には自分を連れてこない。そう退蔵は判断していた。
初めて朱龍と顔を合わせた日、朱龍は普通に日本語で、
「オマエ、中国語を喋るか?」
と話しかけてきた。
「?好と謝謝、再見と対不起。これぐらいしか」
と答えると目を細めて笑い、
「ワタシも最初に覚えたニホン語は、コンニチワ、アリガトウ、サヨウナラ、スイマセンだ」
と威圧感があるが人好きのする笑顔で言った。
274照退 ロビンソン 8/13:2008/11/07(金) 18:26:18 ID:fiVdcYrU0
組織の生活には自分でも意外なほど、あっというまに順応した。
入って3日目に、仲間を売った男が目の前で頭を吹き飛ばされた時も、何も感じなかった。
ああ、わざわざこれをオレに見せたんだな、と思って見ていただけだ。
壁に飛び散った脳髄や血飛沫を掃除させられた時も、感覚が麻痺していた。
こういうのを先輩は見なくて済む。よかったな、と思いながらモップで壁を拭いた。
何の感情も無くなっていた。
ただ、照がそばにいないことだけが、いつまでたっても慣れることが出来ない。
会いたい。
夜空には細くちぎれそうな三日月が出ていた。

翌日、田所と最初に顔を合わせた時、田所は退蔵を見て一瞬ぎょっとしたような表情を浮かべた。
以前照と張り込みした安アパートの一室。先に待っていた田所は、遅れて玄関から入ってきた退蔵を、目を眇めて眺めていた。
「…何か?」
「いや。溶け込んでんだな、おまえ」
態勢を取り戻したように、田所はスーツのポケットに両手を突っ込んだ。
まだ報告出来るような情報も無い。現状報告のみに留めて、すぐに退蔵が会話を終えようとすると、田所が沈んだ声で言った。
「…照のことを聞かないのか?」
なんでそんなことを。何が言いたいんだ。
「聞く必要があるんですか?田所さん、今は仲良く先輩と組んでんでしょ?」
田所と照が、以前のように一緒に組むようになった事は知らされていた。
「別に、不定期だし、まだ3回だけだ」
機嫌悪そうに田所はそっぽを向いた。退蔵は厭味混じりに聞いた。
「先輩は元気ですか?」
275照退 ロビンソン 9/13:2008/11/07(金) 18:27:44 ID:fiVdcYrU0
田所は視線をそらしたまま、用心深く言葉を選んでいるようだった。
「…仕事が荒れてる。あんまり寝てないみたいだし、ちゃんとメシも食ってない」
「……」
聞いてしまうと胸が苦しい。今はいっそ、何も聞かなければよかった。
…先輩。オレのせいでガタついたりしないでください。
「様子がおかしいとさ、オレも気になるから、気をつけて見てたんだけど…」
田所はどう言葉に出そうか迷いあぐねて、退蔵を見ないままぼそっと呟いた。
「あいつ、時間が空くたびにおまえの墓参りしてる」
「……」
「あんな所におまえはいないのにな。ずっと墓の前から動かないんだ」
田所はぼんやりと、独り言のように話し続けた。
「あいつの心の中にはおまえ専用の場所があって、いつまでたってもそこを空けようとしない。それどころか日が経つにつれて拡がっていくみたいだ」
退蔵も田所を見ないまま、呟いた。
「…なんでそんな話をオレにするんですか」
「見てられないんだ。これ以上」
退蔵が田所の顔に視線を上げると、田所は大きく息を吐いて口調を変えた。
「…後、これはまだどうなるかわからないが」
気持ちを切り替えての業務連絡だろう。退蔵も向き直る。
「近々、組織から署へ戻る事になるかもしれない。潜入捜査は続行で、逆潜入という形、つまり呉朱龍がおまえを署にスパイさせる形になるが」
「…どういう事ですか?」
276風と木の名無しさん:2008/11/07(金) 18:32:28 ID:0k6H4E/J0
支援?
277照退 ロビンソン 10/13:2008/11/07(金) 19:02:17 ID:fiVdcYrU0
「おまえの設定は、元々刑事だったが道を踏み外した挙句、内部情報を手土産に組織に潜り込んだ男だ。その男を利用して、あちらも警察から新しい情報を持ち出させようと、オレたちと全く同じやり方を考え付いたってわけだ」
「…どこからそんな話が」
退蔵の問いに、田所は事もなく答えた。
「オレが直接、朱龍と話した」
「……は?」
退蔵は眉を顰めて田所の顔を見た。田所の口調は変わらなかった。
「オレは朱龍と繋がりがある。朴龍が処刑された後からだ」
「……何を言ってるんだ?」
言葉を咀嚼する前に、口から滑り出た。口調の崩れた退蔵に、田所の表情は変わらないままだ。
「退蔵。組織に潜り込むのはいやに簡単じゃなかったか?オレが根回ししといたんだ。もし今情報が漏れているとあちらが気付けば、真っ先に疑われるのはおまえじゃない、むしろオレだ。朱龍はオレを自分の駒だと思っている」
「あんた何言ってんだ?」
怒りが沸き出して笑いさえ浮かんだ。田所は落ち着き払っていた。
「身を守る為には多少手を汚す必要があったんだ。必要悪ってやつだ」
「見返りがあるからやってんだろうが!」
「そっちはそれほど重要じゃない。危険回避が最重要項だ」
「…先輩がこれを知ったら、なんて言うでしょうね」
急に感情を押し殺した退蔵の声に、田所の顔が固まった。
「田所さんがそんな事に足突っ込んでるなんて、先輩は想像もしないですよ、きっと」
「オレはあいつの、…」
早口で言いかけて田所は言葉を止め、また表情を元に戻した。
「…そうだな。照は何も知らない」
2人は黙ってお互いを見つめた。先に口を切ったのは田所だった。
278照退 ロビンソン 11/13:2008/11/07(金) 19:04:27 ID:fiVdcYrU0
「おまえが署に戻るにしても、絶対に照と顔を合わせるわけにはいかない。おまえの配属先はオレが考える」
退蔵はタバコに火を点けた。吸う前に、不意に明るい声を出した。
「前と同じ配属にして下さいよ」
「…なんだ?」
「殉職した兄≠ニ同じ配属にして下さい」
退蔵は薄く笑いながら田所を正面から見た。田所はイラついて声を荒げた。
「冗談なら他で言え、退蔵。こんな時につまんねえ事言うな」
「本気ですよ。オレは別人として行動します。元から朱龍の下で働いているのは退蔵≠カゃないですしね」
「そんなことバレないわけないだろ?引っ掻きまわす気か!何もかもぶち壊す気か!?」
「うまくやり通します。そうして下さい」
田所は苛々しながら溜息を吐いた。
「バカかおまえ、通るわけないだろ!」
苦々しい表情で睨みつけてくる田所を、退蔵は面白そうに見ながら煙を吐いた。
この状況すべてに笑いがこみ上げていた。
そんな退蔵を不審そうに探るように見ていた田所は、しばらくしてぼそっと呟いた。
「案外、通るかもな。今のおまえはまるで別人だ」
「……」
退蔵は黙ってタバコをふかしていた。
「オレは絶対通さないがな。…連絡事項はこれで全部だ。また連絡する」
叩きつけるように話を終えると、田所はアパートの鍵を手に取った。
279照退 ロビンソン 12/13:2008/11/07(金) 19:05:51 ID:fiVdcYrU0
霊園に降りて行く照の姿が、遠くから確認できた。
退蔵は安らいだ気持でそれを眺めていた。田所の言ったとおり、時間が空けば墓へ行っているのは本当だった。
今でも自分を想ってくれている。それどころか、呪縛され過ぎて脆くなっている。
夕闇の中に小さくなっていく姿は、やけに頼りなくて儚かった。
―逃げないでください、先輩。
オレなんかの為に、ガタガタになっちゃダメなんだ。
静かに眺めながら、会えない間はずっと、顔を見たら胸が詰まって、涙が出るだろうと思っていたのを思い出した。
今、自分が落ち着いて、穏やかでいられるのが意外だ。
ただ落ち着いているだけじゃなく、優越感すらある。自分が優位に立っているという感覚。
誰に対してなのか。
田所に対して。
それから、照に対して。
今湧き上がってくる気持ちは何なんだろう。
独り占めしたい。誰にも触らせたくない。
あんたはオレのもの。全部オレだけの。
退蔵は静かに照に近づいて行った。照は墓に向かって話しかけていた。
「退蔵。どうだ。そっちで元気にやっているか」
久しぶりに聞く声。退蔵は、照の背を見ながら足を止めた。
「おれはだめだ。…正直、まだ気持ちを整理することが出来ない…」
先輩。今までオレのこと、どう思ってるのかわからなくてずっと不安だった。
「…情けないよな、全く」
今ではわかる。あんたの気持が全部わかる。
退蔵は後ろから声をかけた。
「わかりますよ。その気持ち」
280照退 ロビンソン 13/13:2008/11/07(金) 19:08:21 ID:fiVdcYrU0
振り返って驚いた照の瞳の色を見て、退蔵は確信していた。
わかってる。全部わかってる。だってオレも同じ気持ちだから。
「驚かしちゃったようだな」
退蔵は照に笑いかけた。照が自分から目を離せないでいるのを、じっと観察しながら言った。
「兄貴がよくお世話になりました」
照が自分を見たまま、ゆっくり立ち上がる。
「退蔵の弟の、退史郎です」
退蔵は軽く頭を下げた。


つづく。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


すいません!!規制引っ掛かってました!ばいばいさるさんて初めて呼ばれた。
しかも7/13の朱龍のセリフが、中国語が表示されませんで、最後から4行目の最初は「ニイハオ」です。
そんなわけで、退史郎=退蔵と同一人物という異端解釈で書いています。(珍説ともいう)
ぶっちゃけ書きたいのはココ!中身が退蔵の退史郎の暴走なので、
次回から特にがんばります!ええ。また10日くらいかかりますが。

それにしても本来の照退からはだいぶ離れて行く…
「おまいはあの場面がこう見えるのかね?」と自問自答してみた。
見えた。サーセンとしか言いようがない。
281風と木の名無しさん:2008/11/07(金) 19:31:49 ID:jHbTuHEW0
>>266
長編乙です。照鯛続編まってました!
読めてうれしいです。
282風と木の名無しさん:2008/11/07(金) 21:26:29 ID:n/vIzqMqO
>>266
萌えたよ!
283( ゚∀゚)と( ゚д゚ )とこたつのようです(0/6):2008/11/07(金) 21:56:41 ID:owcjWv1tO
( ´_ゝ`)そんなわけでブーン系小説だぞー。
(´<_` )苦手な人は回避してくれ。
( ´_ゝ`)ちなみに今回も( ゚∀゚)×( ゚д゚ )です。
(´<_` )ブーン系ではカップリングが受け×攻めで表記された気もするんだがジョルミルだ。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
284( ゚∀゚)と( ゚д゚ )とこたつのようです(1/6):2008/11/07(金) 21:57:40 ID:owcjWv1tO
( ゚∀゚)「なぁ」

( ゚д゚ )「?」

( ゚∀゚)「みかん剥いて。みかん」

( ゚д゚ )「……は?」



( ゚∀゚)と( ゚д゚ )とこたつのようです



285( ゚∀゚)と( ゚д゚ )とこたつのようです(2/6):2008/11/07(金) 21:58:48 ID:owcjWv1tO
( ゚∀゚)「いやだから、みかん」

( ゚д゚ )「何で俺が?」

( ゚∀゚)「
俺様
こたつ
出たくない」

( ゚д゚ )「………なんというか」

( ゚∀゚)「?」

( ゚д゚ )「お前の奇行には馴れてきたつもりだったが、今のは久々にイラッときた」

(;゚∀゚)「ごめんなさい!」
286( ゚∀゚)と( ゚д゚ )とこたつのようです(3/6):2008/11/07(金) 21:59:45 ID:owcjWv1tO
( ゚д゚ )「全く……」

(;゚∀゚)「どちらに行かれるんでしょうか」

( ゚д゚ )「ミカン」

( ゚∀゚)

( ゚д゚ )「俺も食いたくなったからな。ついでに持ってきてやる」

( ゚∀゚)

(*゚∀゚)

(*゚∀゚)「なぁなぁ、それもうちょっとツンデレっぽk」

( ゚д゚ )「……帰るか?」

(;゚∀゚)「すみません!!」
287( ゚∀゚)と( ゚д゚ )とこたつのようです(4/6):2008/11/07(金) 22:00:57 ID:owcjWv1tO
( ゚∀゚) ジー

( ゚д゚ )「どうした、食わないのか?」

( ゚∀゚)「や、剥いて欲しいなー、と…」

( ゚д゚ )「………」

(;゚∀゚)(やべ、怒ったか?)

( ゚д゚ )「……子供か、お前は」

( ゚д゚ ) ムキムキ

( ゚∀゚)「……それ、もしかして俺の分、とか?」

( ゚д゚ )「剥けと言ったのはお前だろう?」

(*゚∀゚)「愛してる! お前を愛してる!」

( ゚д゚ )「纏わりつくな、鬱陶しい」

( ゚∀゚)そ

( ゚д゚ )「白いところも剥いておくか?」

(;゚∀゚)「突き落とすか持ち上げるかどっちかにしろよ! あと剥いてくださいお願いします!」
288( ゚∀゚)と( ゚д゚ )とこたつのようです(5/6):2008/11/07(金) 22:01:49 ID:owcjWv1tO
( ゚∀゚)「あーん」

( ゚д゚ )(鳥の餌やりみたいだな)

( ゚∀゚)「みかんうめー」

( ゚д゚ )「そうか」

( ゚∀゚)「こたつぬくいー」

( ゚д゚ )「良かったな」

( ゚∀゚)「ミルナ好きー」

( ゚д゚ )「ん。俺もだ」

( ゚∀゚)

( ゚д゚ )「?」

( ゚∀゚)「……え、それはあれだろ? お前が自分大好きとかそういうオチなんだろ?」

(;゚д゚ )「お前は何を言ってるんだ?」
289( ゚∀゚)と( ゚д゚ )とこたつのようです(6/6):2008/11/07(金) 22:03:04 ID:owcjWv1tO
( ゚∀゚)「え、え、え、……マジで?」

( ゚д゚ )「マジで」

( ゚∀゚)「…ミルナ愛してる! 結婚しようぜ!」

( ゚д゚ )「だから纏わりつくな。あと結婚はせんぞ」

( ゚∀゚)「じゃ、じゃあさ、じゃあさ、」

( ゚д゚ )「ん?」

(*゚∀゚)「こたつかがりしたい」

( ゚д゚ )「……………前言撤回してもいいか?」
290( ゚∀゚)と( ゚д゚ )とこたつのようです(*/6):2008/11/07(金) 22:06:02 ID:owcjWv1tO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

(´<_` )あ、開始は>>283です
( ´_ゝ`)予想通り開始AAが省略されたから一応な
291オリジナルSF風味 0/5:2008/11/08(土) 00:18:58 ID:8exuIphL0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )>>250-257のなんちゃってSFの続きです

>>258->>261
ありがとうございました。とても嬉しかったです!

前回の分に明らかな誤字を発見したので訂正…
>>251 下から3行目
 × 光を捕らえられない
 ○ 光を捉えられない
292オリジナルSF風味 1/5:2008/11/08(土) 00:22:39 ID:8exuIphL0
 人間とは環境に慣れていくもので、恐慌を来たして涙目になっていた俺も、
数分後にはカフカのスピードにいくらか対応できるようになった。カフカの後ろ
から首を伸ばしてバイクの計器をのぞくと、予想通り速度を表す針は右下に
振り切れていた。その隣の温度を示す針はマイナス15度を指している。
 ゴーグルをしているため目は無事だが、直接外気に触れている耳は
感覚が鈍くなっているし、鼻の奥の粘膜が凍りつきそうで呼吸が浅くなった。
酸素シールを使用すれば鼻や口で呼吸する必要はないのだが、無意識に
行っている胸郭運動をコントロールすることは意外に難しいのだ。
船に戻ったら、鼻まで覆うタイプのゴーグルの購入を提案しようと考えた。
 俺はカフカの指示通り、前のめりになって彼に抱きついていた。おかげで
隙間なくカフカと重なっている部分には一切寒さを感じなかった。俺は
助かるが、カフカ自身は真正面から風に吹きさらされている状態だ。
旧式の水素バイクの派手な走行音に負けないように、彼の耳元に顔を寄せて
寒いだろうと問うと、否定の意味で首を横に振られた。顔を近付けていたせいで
カフカの細い髪が俺の唇を掠めた。彼が前を向いたまま何か言ったが、
爆音にかき消されて聞き取ることはできなかった。
 俺は言語コミュニケーションを諦めて、バイクの動きに合わせて重心を移動
し、カフカの運転を補助することに集中した。バイクが跳ねる時はカフカの体
に回した腕に力を入れる。岩場を避けて曲がる場合は、遠心力に逆らわず体を
倒した。そのうち砂地にわずかに育っている植物や、観測地点に立てられたフ
ラッグが目に入るようになった。最南端に近づいているのだ。簡素なつくりの
基地が見えてくると、カフカはやっと減速した。惑星交通法に準じた運転は、
適正速度であるはずなのにやけに遅く感じられた。
293オリジナルSF風味 2/5:2008/11/08(土) 00:23:48 ID:8exuIphL0
 二人分の船員コードを打ち込み、俺達は基地に入った。船の停留地に近い場
所にあるため、遠隔地の基地とは設備が異なり、内部には数台のコンピュータ
とソファ、救急医療器具、バスルームくらいしかない。
 カフカは防寒具を脱いでソファに座った。俺はポットの飲み口を開けて差し
出した。カフカは素直にそれを口にした。
「苦いか」
 カフカはもう一口ゆっくりと味わい、コーヒーを飲み下した。首に貼られた
酸素シールが上下するのが見えて、俺は個室での出来事を思い出した。
「ちょうど良い」
 俺は横のソファに腰を下ろし、カフカが持っていたポットを受け取った。熱
さをこらえて飲んだら、凍えた体が内側から温まっていくのがわかった。
「カフェをひらけるな」
 カフカはくだらない自画自賛をまじめに受け取って、経営者になりたいのか
と尋ねてきた。その頭がヘルメットと風のせいで面白いほど乱れていたので、
軽く手で撫で付けてやった。またシールが視野の端に映る。話し出すタイミン
グを考えた。今はまだ早いだろう。
「俺は経営には向いていないから、船員で良いんだ」
 カフカは真意を量りかねているようだった。冗談だと伝えるために「カフカ はドライバーになれるな」と付け加えると、彼は目で笑った。無口なスピード
狂への仕返しのつもりで、その鼻を軽くつまんだ。
「まえのふねではうんてんさせてもらえなかった」
 カフカは苦しげな様子も見せず、鼻声で喋りだした。
「賢明な判断だ」
 俺だって事前に知っていれば、無理にでも彼を後部座席に乗せただろう。あ
れを安全運転と呼ぶのなら、オルクスの巨大テーマパークにある360度回転
のジェットコースターだって安全運転だ。オート滑走だからあちらの方がまだ
ましかもしれない。
「ちがう。おれがぎむきょういくかていないのこどもにみえたからだ」
「過程内の者は適正速度なんて知らないもんな」
 たとえ不当な理由からであっても、前の船の連中は結果的には間違っていな
い。俺はカフカの反論をなおざりに聞いていた。
294オリジナルSF風味 3/5:2008/11/08(土) 00:25:48 ID:8exuIphL0
「あれがおれがかんじているせかいだ」
 カフカは表情を変えずに、彼の主張を邪魔する俺の腕をつかんだ。何か重要
な話が始まる。そう判断し、俺は彼の鼻を離した。 
「ステーションでも船でも、俺の基準では考えられない速さで人や物事が進ん
でいく。自分なりに付いていこうと努力しているが、目を回しそうになる。皆に
置きざりにされそうな気がすることもある」
 カフカは自らの言葉を確認するように、一文ずつ区切って言った。感情を匂
わさない淡々とした口ぶりが、逆に彼の孤独を浮かび上がらせた。
 俺は深く息を吐いた。あぁ、バイクの上で震えていたのは俺だけではなかっ
たのだ。カフカもまたスピードに怯え、流れる風景に戸惑って必死にしがみつ
いている一人だった。
「俺はカフカを待っているつもりだ」
 それは画集の一件から、彼の無垢な魂に報いたいと行動してきた俺の本心
だった。カフカが思索の旅に出てしまったら、帰ってくる時に迎えてやればいい
と考えていた。
「そうだ。お前がいるからここで生きていける」
 カフカは何の迷いもなく言い放った。
 体が甘く痺れた。とんでもないことを言われてしまった。俺は二の句が継げ
なかった。カフカの怒声が蘇る。――しっかりつかまっていろ! よく響く良い
声だった。折れそうな人間を鼓舞し、正しい方向に導く声だ。彼と重なって
いれば俺は前を向いていられた。カフカも同じだと、彼は言ったのだ。
「カフカ……」
 今まで気付かなかった15歳のカフカが、目の前に確かにいる。その体に
触れたいと強く願った瞬間、間が悪く彼が立ち上がった。
「そろそろだ」
295オリジナルSF風味 4/5:2008/11/08(土) 00:28:32 ID:8exuIphL0
 一見ただの休憩所のようなこの基地だが、最新の基地にも負けないすばらし
い仕掛けがある。カフカが扉の横にある操作パネルをいじると、合成プラスチ
ックで出来た長方形の天井に対角線が現れ、そのまま4つの二等辺三角形に
割れた。この1枚目の天井は、それぞれの三角形の底辺にあたる部分から巻き
込まれ、収納されていく。特殊ガラス製の2枚目の天井がむき出しになった。
決して曇らないガラスから、宇宙が透けて見えた。
 俺は戻ってきたカフカを手で制し、それまでカフカが座っていたソファの背を
一度押して、逆側に倒した。今はあまり見かけない古典的なソファベッドだ。
「こっちの方が見やすいだろう」
 ソファがベッドに変わったのを見て、カフカは固まった。性的な躊躇ではなく、
未知のものに対する好奇心からだ。
「……知らなかった」
2枚天井とは比べ物にならない単純なからくりが、逆に彼を惹きつけた。よ
ほど興味を持ったのか、カフカはベッドの端をつまんで捲りあげたり、スプリング
の弾性を確かめたりしていた。
 俺は仰向けに転がって空を見た。気温が低くガスも出ていないから、弱い
光の星もクリアに見えた。カフカならもっと多くの星を見つけるだろう。
彼のソファベッドに関する考察が済むまでの間、俺は頭の中で星座の線を
引いて楽しんだ。カメレオン座のβ星がきらめいて、舌を出した愛嬌ある
爬虫類にウインクされた気がした。
296オリジナルSF風味 5/5:2008/11/08(土) 00:30:00 ID:8exuIphL0
 つる座、くじゃく座、みずへび座にとびうお座、ケンタウルス、インディアン。
今夜は俺にも6等級の星まで確認できた。
「どこを見ている」
 膝を立てたまま寝そべったカフカが、俺の目線の先を探った。
「南十字星の辺りだ」
 俺は人差し指を立てて、胸の上で十字を切って見せた。
「カフカ、アクルックスが見えるか」
 アクルックスは1等星なので、俺にも見える。ただし俺にとって1つに見える
光は、実際には3つの星が重なってできたものだ。その3つの星を判別できるか
という意味を含めて質問した。
 彼からの返事はなかった。横を向いて様子をうかがうと、カフカは目を細めて
上空を見つめていた。
「もう発光しているのか」
 俺は片手を支えにして体勢を変えた。せめてカフカの瞳の中にオーロラが
映りこめばと思ったが、彼の目は遠く澄むばかりだった。
「ディフューズタイプだ。よく変化する」
 光度が揺らぐと焦点がずれるのか、カフカは目元をこすり、何度か瞬きを
くりかえした。カフカの真似をして両目をまぶたの上から揉んでみた。それ
でもガラス越しに見えるのは満天の星空だけだ。同じ空の下にいても、俺た
ちが見るものは違う。
「俺にも見えるだろうか」
 少し考えた後、カフカはじきに見えると静かに呟いた。


[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;) すいません、もうちょっとだけ続きます…
297風と木の名無しさん:2008/11/08(土) 00:36:03 ID:GJj8TZsB0
>>283
GJ!
今回も季節感漂うネタですな〜。いや、全国的にはちょっと早いか。
こたつかがりって何かわからんかったので思わずググったわいな。(*゚∀゚)

簡単に謝罪するジョルジュワロタw
簡単に読めるのに奥が深い・・・・。

298風と木の名無しさん:2008/11/08(土) 01:18:00 ID:5tQbDjQR0
>>283
このシリーズ好きだぁw
こたつがかりについて>>297 (*゚∀゚)人(゚∀゚*)
299風と木の名無しさん:2008/11/08(土) 01:20:50 ID:5tQbDjQR0
ageてしまった…すみません…_| ̄|○
300風と木の名無しさん:2008/11/08(土) 01:26:50 ID:Romos56/O
>>291
この二人にも勿論萌えるんだが、世界観にも萌える。
楽しみにしてます!
3011/3:2008/11/08(土) 07:01:23 ID:0VuW5SjT0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「明美、大変だ」

千紘が真顔で言う。
明美は相棒がまたどんな破天荒なことを言ってくるのか半ば呆れていた。
しかしどこかで期待を噛み殺せずに、彼は顎で先を促した。

「俺が見習い悪魔で、人間の明美を悪の道に引き摺り下ろそうと誘惑を…」

そこまで聞いて、明美はもう充分とばかりに手を振った。

「もういい、予想はついた。おまえはまだ昨日の酒が抜けてなくて、
悪い夢を見たんだ。それだけだ」
「明美!!」

適当にいなそうとする明美に千紘は憤慨した。
ここで放置したら拗ねることは必至だ。
無駄に永い付き合いでもうパターンは嫌になるほど知っている。
被害は自分のところで収めようと明美は覚悟を決めた。

「わかった。…長い話になるんだろうな?」

明美がため息をつきながら千紘の隣に腰を下ろすと、
いっぺんに千紘の顔が明るくなった。
まるで子供だ、と思いながらやっぱりそんな相棒を憎みきれずに頬杖をつく明美。
水を向けると、千紘は勢い込んで話し出した。

「おまえが見習い悪魔って、ぴったりじゃないか」
「何言ってるんだよ、本当は俺も人間だったの!
それが手違いでおまえと双子になり損ねたばっかりに大変な目に遭うんだよ」
3022/3:2008/11/08(土) 07:02:14 ID:0VuW5SjT0
大変だと言う割には目を輝かせて話す千紘。そこで明美は疑問を呈した。

「じゃあなんでそもそも天使になれなかったんだ?」
「天使になっちゃったら明美みたいな素行の悪い奴は見てやれないの!
だからいっそのこと悪魔になってお前も一緒に…」

そこまで千紘が言ったところで、明美は間髪要れず言った。

「じゃあ何か、お前は俺を堕落させようと派遣されて来たってのか?」
「きっかけはそうだったんだけど、違うんだって!だってお前は殺せないだろ」
「ころ…勘弁してくれよ!」
「だから、俺も改心して結局ちゃんと生まれ変わったんだよ」
「天使にか?」
「違う、人間に!!それが今の俺だっていうわけで、筋は通ってるだろ」

千紘、それって…めちゃくちゃだ。
ほとんど口から出かかった言葉を辛うじて明美は飲み込んだ。
どこまでも突っ込みどころ満載の夢物語に
俺以外の誰がこいつに付き合ってやれるというんだろう。
ほんのちょっと泣きたくなりつつ、明美はほんの気なしに、
どこか誇らしげな元悪魔千紘の改心の理由を問うた。
千紘はほんの一瞬押し黙った後、囁くような声で
「…愛、なんじゃないかな」
と手元の帽子のつばをいじりながら言った。
明美は(なんで今更照れてるんだ!?)と思わず後ずさりながら、
「もし俺がその立場だったら、初めから天使に生まれ変わって、お前を矯正するだろうよ」
と言うのが精一杯だった。その言葉を受けて、千紘が真顔で考え込む。
明美はものすごく不審に思ったが、これ幸いとあえて触れないでおこうと思った瞬間、
予想は裏切られた。
3033/4:2008/11/08(土) 07:04:14 ID:0VuW5SjT0
「なあ明美、質問していい?」
「また天使とか悪魔とか以外の話だったらな」

明美は反射的に身構えた。
この歩くびっくり箱のような相棒は、時々想定外の言動で明美を楽しませたり、
あるいは困惑させたりするのだ。
一緒にいて驚きには事欠かないので慣れがあるとはいえ、
今回は前者であることを祈りながら明美は慎重にそう言った。
千紘は、誰も思いつかないいたずらを思いついた小学生のような瞳で
明美の顔をのぞきこんだ。

「じゃあ、崖から大久保、高田、俺が落ちそうになってたら誰を最初に助ける?」

(じゃあって…どこからつながってんだ)
突拍子のなさでは前回が上回っていたことを冷静に判断しながら、
明美はどうしたものかとしばし考えた。
「明美、考える時間長すぎだろ!マジで答えろよ〜」
千紘は待ちきれずに腕を振り回して急かす。

「じゃあ、言うぜ。俺はさっきお前の言った順番に助ける」
「えーっと…何、じゃあ俺が最後なの!?なんでだよ?」

千紘のあからさまに不服そうな表情を見ながら、明美は気だるそうに説明した。

「だって、大久保は根性なしだろ?
で、奴を最初に助けて2人がかりでデカい高田を助ける。おまえは最後」
「もし俺が持ちこたえられなかったらどうするんだよ?」
「どうせ崖から落ちる原因作るのはおまえなんだろ、
『青い鳥を追いかけて〜』とか。自業自得ってやつだ」
「そんなに言い切るなよ!」
「それに…もし、仮にだぞ、おまえが落ちたら…きっと俺も一緒に落ちるよ」
「明美…」
3044/4:2008/11/08(土) 07:05:13 ID:0VuW5SjT0
千紘が急に真率な顔をしたので、明美は不用意な発言をした自分を恥じた。
そして、いかにも女々しい口ぶりであった気すらしてきて、誤魔化すように大声で言った。

「マジで答えろって言ったのはおまえだろ!」
「そんなの…」
「何だよ」

千紘は無言で明美との距離を詰める。
やや途方に暮れたような顔で明美が見上げると、
次の瞬間思い切り千紘は明美を抱きしめた。

「ダメに決まってるだろ!明美が死ぬなんて絶対ダメ!!
俺は許さないからな」

自分から言い出しておきながら正直に答えるとこれだ。
明美は千紘の耳元でため息をついた。

「じゃあどうしろってんだよ…」
「だから、明美と俺がずっと一緒にいれば大丈夫ってことだろ?」
「いやそれは無理だろ」

大体そうかもな、と内心思いながら、
嬉々として過度に密着してくる千紘をそっと押し戻す明美であった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ナンバリング間違えました、すみません><
305風と木の名無しさん:2008/11/08(土) 08:00:59 ID:OHFBkckb0
>>291
お待ちしてました。
カフカのキャラが凄くいい。クールな文体も好きだ。
306風と木の名無しさん:2008/11/08(土) 09:40:19 ID:8r7o70t1O
>>290 いつもいつもごちそうさまです!
307風と木の名無しさん:2008/11/08(土) 19:48:17 ID:GJj8TZsB0
>>297
わわ。IDも褒め称えてる。
308風と木の名無しさん:2008/11/08(土) 22:46:27 ID:aexyGflc0
>>266
あー読みながら涙ぐんでしまいました
いつも本当にありがとう
309風と木の名無しさん:2008/11/09(日) 13:43:45 ID:5C3D9IVQ0
私も>>266に。
読んだ後で本家の動画、探して見て、姐さんの妄想力に吹いたw←褒め言葉
ずっと前にも見たことあるんだけど、もう本当にそういうふうにしか見えなくなって困るw
310風と木の名無しさん:2008/11/09(日) 16:14:04 ID:dPiCwXpQO
言っていいのかどうか迷ったんだが…
>>301、ほぼ登場人物名を変えただけの話を
某避難所のSS投下スレでだいぶ前に見たことがあるよ。
その板でも既存BL作品のパクリへの突っ込みが入ったことがあるので
もしかしたら同じ人の投下かもしれないけど、自重してくれ。
311風と木の名無しさん:2008/11/10(月) 05:23:16 ID:Gi7H8xheO
>>266
うほっ!待ってました照退!
同一人物説は中の人スレで見てからかなり萌えてたんで良い作品が読めて幸せです。
続きwktkして待ってます!
312APOCALYPTICA・パーヴォ×ペルットゥ 1/8:2008/11/10(月) 14:23:21 ID:RT2CNEZu0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  某チェロメタルバンドの短髪×黒髪
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  ラウドパーク後の2人です
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ シベリウスー
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
313APOCALYPTICA・パーヴォ×ペルットゥ 2/8:2008/11/10(月) 14:23:59 ID:RT2CNEZu0
10月18日、午後1時50分。オーディエンスの大きな歓声を背に、
アポカリプティカは日本での2回目のライブ演奏を大成功に終えた。
まずは汗だくの体をビールでも飲んで冷まそう――ライブ後独特の
興奮と達成感に全身を包まれながらステージの裾に下がった
チェリスト・ペルットゥの思いつきは、同じくチェリストである
彼の腕によってあっさり叶わぬものとなる。
「……っおい、パーヴォ!?」
「悪い皆、ちょっと楽屋貸せ!」
ぐい、といきなり強く腕を引っ張られうっかり手放してしまったチェロを、
ミッコがあわてて受け止める。そのままずるずる引き擦られていく
ペルットゥをぽかんと訳も分からず見つめていた彼は、
エイッカの「部屋は綺麗に使えよー」という言葉で漸く事態を飲み込み、思わず赤面した。
314APOCALYPTICA・パーヴォ×ペルットゥ 3/8:2008/11/10(月) 14:24:42 ID:RT2CNEZu0
「痛い痛い痛い、ちょ、まじで放せって!」
「ごめんな、悪いが余裕が無ぇんだ」
ライブで軽々とチェロを持ち上げてみせるパーヴォの腕力には容赦が無い。
いや、自分もそのくらいは出来るのだがそれでも彼の鍛え上げられた太い腕には到底適わないし、
その見た目の差に競おうと思ったことすら無かった。
「APOCALYPTICA」と貼り紙された扉が乱暴に開かれる。中に入った瞬間、
ペルットゥはやはり荒々しく閉じられた扉に今度はその体を押しつけられていた。
そのまま息をつく暇も与えられず唇を塞がれ、思わずくぐもった声が出る。
自分のものではないぬるりとした感触に歯列をなぞられ、かと思えば思いっきり舌を絡め取られる。
……と、自分のわき腹やら尻やらを撫で回す不審な手で、ペルットゥは漸く彼の本意に気づき唇を離した。
「『余裕が無ぇ』って……何かと思えばそういうことかよ」
「ああ、そういうことだ。つー訳で協力しろ」
返事を聞く前にズボンを脱がしにかかるのでは、協力も何もあったもんじゃないだろう!
思わずそう叫びたくなったが、先程のキスで勃ちかけた自身を遠慮無く扱き上げられ、
意図した言葉とはかけ離れた艶を含んだ吐息が漏れる。その隙に口内に指を突っ込まれ、
つい反射的に舐め上げるとそのままその唾液で濡れた指を秘所にあてがわれた。
「う……っ」
彼とは何度も体を重ねてきたが、いつまで経ってもこの瞬間だけは慣れない。
その初々しい反応に毎回気をよくする彼だが(正直癪に障って仕方がない)、
今回ばかりはそんな素振りも見せずすぐに抜き差しを繰り返し始めた。
甘い痺れが体を芯まで支配していく。
315APOCALYPTICA・パーヴォ×ペルットゥ 4/8:2008/11/10(月) 14:25:14 ID:RT2CNEZu0
「ん、あ……は……ぁ」
彼の指は太く、長い。そんなものを2本も挿れられているのだから、ペルットゥにはもう抵抗のしようが無い。
自分の体重も支えられず、パーヴォの首に両腕を回してすがりつくことになる。
すると必然的に彼の口元に近づく耳に舌を差し入れ舐められ、ペルットゥは一際高い声を上げた。
「ひ……っ、ぁぁっ」
「駄目だペルットゥ、俺もう我慢できねぇわ」
ぐちゅりと指が引き抜かれる。そしてそのまま体を持ち上げられ、挿入される……のかと思いきや、
なんと予想に反して体を反転させられ、ペルットゥは思わず後ろを振り返った。
「おい」
「悪い、ライブ後は流石に抱えらんねぇ」
しっかり体支えてろよ。切羽詰まった声でそう言い残されると、尻を引き寄せられ、
慣らされたそこに今度は指ではなくもっと太くて固いものが割って入ってきた。
「んん……っ」
「……っく」
後ろからしたことは何度もあるが、立ったままそうするのは今回が初めてだ。
膝がガクガク笑うが、それに負けてへたり込むことは許されない。
否、ペルットゥ自身、最早そうして行為が中断されるのを望んではいなかった。
無意識に腰を押しつけ、早く、とパーヴォが自身をペルットゥの裡に収め終えるのを急かす。
果たしてそれが終わると、間を空けずそのまますぐに抽送が始まった。
316APOCALYPTICA・パーヴォ×ペルットゥ 5/8:2008/11/10(月) 14:26:07 ID:RT2CNEZu0
「ひっ、あ、あ、ちょ、パーヴォ激し……っああっ!」
彼との情交は普段から決して穏やかなものではなかったが、
それにしてもこんなに激しいものは経験したことがない。
遠慮無く腰を打ちつけられる度にどこからか込み上げてくるそのあられもない声を、
ペルットゥはとてもじゃないが抑えることができなかった。
パーヴォの左腕はペルットゥの腰を支えると同時に彼の中心を攻め立て、
空いた右手はつんと立ち上がった淡い桃色の突起を悪戯に摘み上げる。
同時に襲いかかってくる強い刺激にその艶やかな長い黒髪を振り乱して何とか耐えるが、
背筋を舌でつ、となぞり上げられたときには、必死で目の前の扉にすがる腕も虚しく
そのまま床に崩れ落ちてしまうかと思った。
その間にもどんどん速まる腰の動きがパーヴォの限界が近いことを知らせ、
ペルットゥは同時に自身もそろそろ限界に来ていることを知る。
「パーヴォ、も、俺……っ」
「……っああ、一緒、に……っ」
顔を寄せられるがままにお互い唇を貪り合う。絶頂を迎える瞬間のキス程気持ちの良いものはない。
そのままある一点を突き上げられ、ペルットゥは今まで込めていた力の一切が抜けるのを感じた。
視界が揺らぐ。裡のパーヴォがびくんと震え、どくどくと熱いものが注がれるのが分かった。
ああ、彼も果てたのだ、良かった。そんなことだけをぼんやりと考えながら、ペルットゥはその意識を手放した。
317APOCALYPTICA・パーヴォ×ペルットゥ 6/8:2008/11/10(月) 14:26:49 ID:RT2CNEZu0
「……おーい、大丈夫かー?」
目が醒め最初にその視界に入ったのは、心配そうに自分の頬をぺちぺちと叩く短髪の男の顔だった。
「ごめんな、ちょっと無理させ過ぎた」
一瞬言っている意味がよく分からなかったが、すぐ横の扉に明らかに不審な染みが出来ていることに気づく。
と、同時に先程の情事が一気にペルットゥの頭の中で蘇り、ペルットゥは目の前の男の頭を思いっきりはたいた。
「いってーーー!!」
「お前まじふざけんな!何でったってこんなところであんなこと……!」
しかも案の定汚しちまったし!これエイッカにバレたら少なくとも向こう3ヶ月はネタにされるぞ!
わめくペルットゥに「ミッコが見つけたらしばらくは目を合わせてくれなくなるな」と付け加えてやると、
再び頭を殴られた。ひりひりする頭部をさすりつつ、でもな、と言葉を続ける。
「元凶はお前なんだぞ?」
「はぁ!?」
「腰パンも程々にしとけってことだ」
意味が分からない、といった風情のペルットゥに、やっぱり気づいてなかったか、
と溜息を吐きながらステージでのことを教えてやる。
お前、ズボンずらし過ぎて尻の割れ目見えてたぞ。
それを45分間何も出来ずにずっと眺め続ける羽目になった俺のことも考えろ。
「しかも激しく動き回るもんだからいつズボンがずり落ちるか気が気じゃなくてなぁ」
ペルットゥの表情は固まったままだ。ほらみろ、何も言えまい。
「……見るか見ないかは当人の自由だろ」
「馬鹿、目を逸らそうとしてもあれは無理だっつの。…それとも、」
またあんな風にされたいのか?そう耳元で囁くと、みるみる内に彼の顔が赤く染まった。
318APOCALYPTICA・パーヴォ×ペルットゥ 7/8:2008/11/10(月) 14:27:39 ID:RT2CNEZu0
「……バーに行ってくる」
「え、ちょ、おま、もしかしてほんとに」
「お前は来るなよ!」
つい先程まで気を失っていただなんて考えられないような勢いで立ち上がると、
バタンと激しい音を立てて部屋を立ち去る。パーヴォはきょとんとして、開けっ放しのその扉を眺めていた。
てっきり「そんな訳あるか!」とまた殴られるものかと思っていたのに。
――あの顔!一瞬期待に潤んだ瞳を、パーヴォは決して見逃してはいなかった。
これじゃ誘ってんのと同じだぞ畜生。元気なことに、いつの間にか僅かながらも再び
その存在を主張し始めていた自身に苦笑する。いや、それにしても予想外の反応だった。
次にこうした行為が出来るのはいつだろう。パーヴォは思考を巡らせた。
おそらく今日はもう寝室に入れてはくれないだろう。少なくとも、日本を発ってからになるのは確かか。
同じようなシチュエーションでも、今日とは違い次回は甘い言葉の1つでも囁いてやろうか。
彼は一体どんな反応を示すだろう。ああうん絶対可愛いなそうに違いないそうでない筈がない。
我ながら沸いた頭だ。そんなことを考えつつ、パーヴォはステージ袖に放置してしまった
チェロを探しに自身もまた部屋を後にした。
319APOCALYPTICA・パーヴォ×ペルットゥ 7/8:2008/11/10(月) 14:28:19 ID:RT2CNEZu0

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 楽屋のドアカワイソス
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
320風と木の名無しさん:2008/11/10(月) 14:29:22 ID:RT2CNEZu0
ページ数間違えたorzこれで最後です。お粗末さまでした。
321風と木の名無しさん:2008/11/10(月) 17:04:32 ID:9r0fNDu8O
>>311-320
メタルスレから飛んで来ますた。姐さんGJ!
ラウパ今回行けなかったのが悔やまれるorz
ライブ後のエチーてどうしてこんなに萌えるんだろ…
322この感情は処理に困る 0/7 :2008/11/10(月) 17:23:00 ID:q+3Vkjdu0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  前スレのちびっ子サラリーマンとその友人の続き
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  今度は友人視点
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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323この感情は処理に困る /7 :2008/11/10(月) 17:23:54 ID:q+3Vkjdu0
「見合い?」
 いつも通りおれはこいつの家でくつろいでいたが、今日はちょっといつもと違っていた。
「ああ、課長の勧めで」
「どんな人」
「さーな、知らねえ」
 さほど、興味なさそうに答える。実際、興味ないのだろう。
「知らない相手と見合いするのかよ」
「見合いってそんなもんじゃねえ?」
「あー、そうかも。でもま、お前もそろそろ身を固めた方がいいんじゃない?」
「お前だって独身だろ」
「おれ、自分の面倒は見れるもん」
「ああ、そうかよ。悪かったな、自分の面倒も見れない奴で」
「誰もそんな事言ってないでしょー」
 結局、普段の口喧嘩という名のじゃれ合い(こう言うとあいつは嫌がるけど)になった。
 まあ、ああは言ったけどあいつが結婚するなんて事は微塵も頭になかった。だってまず相手がいないし。
 絶望的に女にもてないからね、おれと違って。
 いや、顔が悪いわけじゃないよ。背が低いという短所はあってもルックスはかっこいい方だと男のおれでも思う。
 問題はあのひねくれ過ぎて脱出不可能の迷路みたいなっている性格にある。
 あいつは基本的にお世辞が苦手だし、女性に対する気遣いもあまりできない。そして、基本的に付き合い方も淡白だ。
 だから、仮に付き合ったとしても長続きしない。2ヶ月持てばいい方だ。大抵別れる時は女の方がキレて「あんたって最低!」という捨て台詞と共に一発ビンタを食らうのがパターンとなっている。
 よって、今回の見合いも成功しないだろうと思ってた。
324この感情は処理に困る 2/7 :2008/11/10(月) 17:24:50 ID:q+3Vkjdu0
 それから、暫くしてそんな出来事も忘れかけていた頃のことだった。
 町でぶらぶらしていると偶然あいつを見かけて、なんだせっかくの休日に一人かよ(おれもだけど)しかたねえから声を掛けてやろうとした時だ。
 あいつの隣に女がいるのに気付いた。
 なになにデート中? ちょっとからかってやろうかと近づこうとしたら、あいつの表情が目に飛び込んで来て足が止まった。
 楽しそうで穏やかな笑顔。
 あいつが女といる所は何度も見てきたけど、そのほとんどが無表情といっていいほど無愛想だったのに。
 あんな顔、何年か一緒にいるおれでさえ数えるほどしか見たことなかった。
 2人の間の雰囲気はとてもおれが割り込めるものではく、黙ってそこから立ち去ることしかできなかった。
325この感情は処理に困る 3/7 :2008/11/10(月) 17:25:40 ID:q+3Vkjdu0
 そんな事があった数日後、珍しくあいつがおれの家にやってきた。
「はい、これ。お裾分け」
 来るなり、いきなり大量の林檎を渡された。聞けば近所のおばちゃんから貰ったものらしい。一人暮らしでこんなに要らないからとのことらしいが、おれも一人暮らしでこんなに貰って……
 こいつが家に来るときは大抵自分の要らない物を押し付けにくるから困る。
「どうすんのよこれ……」
「アップルパイでも作ったら? それより何か飲み物くれ。喉渇いた」
 そう言うなり、ソファにどかっと座り込んだ。
 あのね、お前はよくおれに我侭だと文句言うけれど、お前も十分我侭だと思うんだ。まあ、ここで怒ってもしょうがない事は分かってるから、仕方なしに紅茶を入れてやる。
 言っとくけど、ここはおれの家だからね。ここは紅茶で我慢しろよ。
「はい、どーぞ」
「ん、サンキュ」
 入れたばかりの紅茶を手渡す。ついでに切った林檎も。
 おれもこいつの隣に座り、紅茶を啜った。
「そういえばさ……」
 おれはふと先日のことを思い出した。
「ん?」
「この前、お前が女と歩いてたのを見たんだけど、あれ誰?」
「ああ……あれね。前に見合いするって言ってただろ。その人」
 それを聞いて、なんでか心臓がえらい勢いで跳ねた。
「そういやそんな事言ってたなー。結構いい女じゃんか」
 確かに美人だった。見た目こいつよりいくらか年上の決して派手ではなく、どことなく落ち着いた雰囲気を持つ女性。
「んーまあ、いい人だとは思うよ」
 また、心臓が大きく鳴った。何なんだろうこの感じ。よく分からない。
326この感情は処理に困る 4/7 :2008/11/10(月) 17:26:22 ID:q+3Vkjdu0
「へー、どんな感じ?」
「聞いた話と会った印象では家庭的で大人で優しそうな人かな」
「それってお前の好みのタイプじゃね?」
 そうもろにど真ん中ストライク。
 こいつが好きになる女性の殆どは年上で家庭的で優しそうな人だ。でも不思議なことにその手のタイプとは縁がない。
 奴の場合、自分が気がある女でないとたとえ付き合ったとしても長続きしない。だから、今まで特定の女はいなかった。
 今回はどうなのだろう。
「相手はお前の事どう思ってるの?」
「さあ? もう一度会うことにはなったけど」
 ということは、相手も満更ではないってことか。
「もしそれで上手くいったら結婚とか考えてたりする?」
「そんな先のこと分かんねえよ」
 そらそうか。……結婚ねえ。
 さんざんネタにはしてきたけど、いざこいつがそうなるということは微塵も考えてなかったな。何でだろう、きっかけさえあればいつそんな事態になってもおかしくなかったのに。
 仮にこいつが……
「お前が結婚してくれたら、お前の面倒見なくて済むのにな」
 確かにお前の世話は嫁になる人がやってくれるだろう。めちゃくちゃ手間の掛かる奴だけど、こいつの嫁になるぐらいの女だ。それくらいの根性はあるに違いない。
327この感情は処理に困る 5/7 :2008/11/10(月) 17:29:49 ID:q+3Vkjdu0
「いつ、誰がお前に世話をしてくれと頼んだ。てか、おれにそんな結婚して欲しいわけ?」
 して欲しいかどうかと聞かれ、とっさに肯定できない自分に酷く動揺する。どうしてだ、だって、もしこいつが一生を共にする人を見つけられたのなら、それはこれまで人間関係に恵まれてこなかった男にとって一番の幸せじゃないか。
 喜ぶべき出来事だろう、友達として。
「そりゃまあ友達だしね。友達の幸せ願うのは当然のことだし」
「おれとお前は友達だったのか。初めて知った」
「まーたそんな事言う。その捻くれた性格が心配なんだって」
「余計なお世話だ。あーでも結婚したらお前のお節介も少しは減るかもな」
 その言葉に胸が微かに痛む。確かに結婚となれば今までのような関係じゃいられなくなる。こいつにとってのおれの立場は他の人間がやることになるわけだ。
 嫌だと感じた。よく知らない誰かがおれとこいつの間にあったものを全部奪っていくのだと思うと。
 けれどいつかはくる未来だ。受け入れなくちゃだめじゃないか、幸せになるのなら。
「でも、そうなっても友達としてちょくちょく遊びに行ってやるから安心しなさい」
「絶対に嫌だ」
 その後もいろいろ話してたような気がするけどよく覚えていない。ただ、頭の中で本当にこいつが結婚したらおれは友達のままでいられるかという不安がぐるぐると回っていた。
 友人の幸せを願っていながらいざ幸せを掴もうかという時、素直に嬉しいと思えないなんてどれだけ自分勝手なんだよ。
 自分がこんな嫌な感情を持っていたなんて今日初めて知った。ああ、もうすっごくもやもやする。
 それから、人生でこれだけ悩んだのはなかったんじゃなかろうかというぐらい憂鬱な気分で過ごしてたのだが、意外と早くこの件はケリがついた。
328この感情は処理に困る 6/7 :2008/11/10(月) 17:30:47 ID:q+3Vkjdu0
「破談!?」
「うん、相手から断わられた」
 仕事帰りにたまたまこいつに会ったので、あの女性との経過を聞いたら結果は見事玉砕したらしい。
「何で? 結構いい感じだったじゃん」
「んー、どうも相手が遠慮したみたいだな」
「遠慮?」
「相手の人な、バツイチで子どもがいるんだよ。それであなたはまだ若いし、もっと他にいい相手がいるでしょうからってことらしい」
 あーなるほど、それは確かに遠慮するかも。大人しくて優しいのなら尚更だ。
「ま、確かにお前が他人の子と上手くやっていけるとは思えないな」
「んな事はやってみないと分からないだろうが。確かに簡単な問題でもないけど。おれは別に気にしなくてよかったと思うんだけどな。まあ、縁がなかったってことか」
 その口振りと表情でやっぱり相手のことをそれなりには気に入ってたんだと分かった。と同時に破談になったことに密かに安堵している自分に気付く。
 最悪だなおれ。
「という訳で、見事振られたおれに何かおごれ」
「……」
「おい、どうした? 珍しく大人しいな?」
 おれはこいつの友達で、友達だからこの場は「そうか、残念だったなー。おごってやるから元気出せよ」って笑って言ってやらなくちゃ。
 分かってる、分かってるのに。
 こいつが少しでもあの女性を好きだったという事実が心の奥に突き刺さって、それが嫌だと思う自分が心底嫌だった。
329この感情は処理に困る 7/7 :2008/11/10(月) 17:31:29 ID:q+3Vkjdu0
「おい、マジで大丈夫か? 何か顔色悪いぞ」
「ごめん。気分悪くなって。悪いけどもう帰ってもいいか?また今度おごってやるからさ」
「え!? ああ、分かった。気をつけろよ、なんなら送ってやろうか?」
「いや、いい。大丈夫だから……」
 そう言って、あいつに背を向け走り出す。これ以上、情けない顔を見られたくなかった。
 ごめんな、今日だけはとても友人として笑ってやることが出来そうにないよ。
 明日になれば、いつものおれに戻れると思うから、だから今は一人にしてくれ。
 
 気付かなければよかったのに、この感情は処理に困る。
330この感情は処理に困る 終わり :2008/11/10(月) 18:01:18 ID:q+3Vkjdu0
 ____________
 | __________  |
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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧  最後の最後で規制に引っかかたorz
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) これで終わりです。本当にスイマセン
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
331風と木の名無しさん:2008/11/10(月) 21:35:28 ID:TceDeSrW0
>>322
GJ!! 切なくてイイ!
続きはないのかな〜。その後の展開も気になる(゚Д゚≡゚Д゚)
332生 白ぬこ王求団 1/6:2008/11/10(月) 21:58:22 ID:tkX0xQsZO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ぬこさんおめでとう。11さんはすっかり全国区ですね。
ナンバリングに挑戦します、ミスったらすみません。
麦酒かけあたりで萌えあがった1411…



俺の王子様は、ここ数日ですっかり有名人になってしまった。
それは本当に、嬉しいようでもあり、寂しいようでもあり。
疲れてヘロヘロしながらも周りに構われては照れくさそうに笑う、そんな変わらない姿を見ながらも、
テレビや新聞の取材に追い掛け回されているのを見ると、やっぱり距離を感じてしまうのも事実だ。
ま、うすうす思っていたことでもある、と斧寺はひとりごちる。
何となく、こうなる予感はしていた。
同じ人種だからこそ、その背中だとか腕の振り、走るボールの虜にもなる。
逆に強烈に嫉妬する時もあったし、それだけの力を感じていたのは、今に始まったことじゃない。
抱き締めて照れる耳を見ているときも、撫でた髪をこそばゆそうに首を縮める仕草のときも。
俺は力になれないよ、と思っているときも、いつでもその裏にあること。
俺の王子様は、俺の白馬の騎士は、いつか俺だけのものと言えなくなるだろうなと思っていた。
333白ぬこ 2/6:2008/11/10(月) 22:00:25 ID:tkX0xQsZO
幸せなようでもあり、哀しいことでもあり。
「チカラさん!なーにしてんの、始まるよ」
「…お、おお!?」
「ちからあああ、飲むぞおおおお」
「いや、穂葦さんは今回飲む権利ないっしょ」
「和久―!!こらー!!」
「冗談です」
「冗談に聞こえねわ!!」
もうすっかり白い記念Tシャツ姿の先輩と後輩が、傍らでプロレスごっこを始めた。
二人を見る周囲も、げらげら笑っていた。このポーカーフェイスの後輩すらも、口角を上げている。
ああ、今は心底、幸せだ。
この場所に、立っている。
「準備できたってよぉ!集合―!」
「合点!キャプテーン!」
ホテルの駐車場の、その一角を幕で区切っている中から、ひょいと阿家陀が邪念の無い顔を出す。
ちらりと見えたそちらには、がやがや大勢の取材陣と、テーブルに詰まれた無数に近いビールの山。
がっし、にんまり笑って、後輩が斧寺の肩に手をかける。こちらもにやりと笑う。
11月だ、また風邪を引くかもしれないな。
けれど全身で酔おう。
「タカくん、もオッケ?」
「!?」
「…お、おっけ!」
後輩がちょいちょい後ろに合図をするので、その名前に斧寺も思わず振り向いてしまった。
334白ぬこ 3/6:2008/11/10(月) 22:02:38 ID:tkX0xQsZO
疲れから色の白い顔が少し顔色悪いくらいになっている。白いシャツで白い帽子だから、余計そう
見えるのかもしれない。そんな棋士は和久井の声に素っ頓狂に答えて、周囲の失笑を買った。
「ホント今回、お前、すげえよ!」
穂葦がぐりぐり笑みを浮かべながら、棋士の帽子を深く撫でくりまわす。
棋士は棋士で、ここ数日の間に何度も見た、独特のはにかみ笑顔で返している。
「ヨシ行くぞワク」
「穂葦さん、行きますか」
似たもの同士、に見える7歳差の先輩と後輩が、タッグを組んで他の当主とさらに肩を組んだ。
おっしゃあ!と叫ぶ二人に、穂氏埜はにやにや笑っている。助っ人は誰彼構わずハグしている。
大シ召も、石居も、あの大ベテランも。皆唸るような声が抑えきれていない。
「…力さん」
「ん?」
そのわんわんとした声のこもり具合に、この場所に立っている、という実感が身を焼いた。
腕を組んだら、シャツの端っこを小さくそっと引っ張られた。
「棋士」
「ありがとう、ございました」
「…何言ってんの、お前がスゴイの」
「へへへ」
8cmの身長差は、こういうとき悪くない。俺の王子様は、帽子のひさしから上目遣いに笑う。
「あ」
「…はい?」
335白ぬこ 4/6:2008/11/10(月) 22:05:05 ID:tkX0xQsZO
「んー、何でも」
ああ、やっと自分から笑ったな、と斧寺は思った。同時にさっと肌が寒さを感じた。
11月だ、とまた思う。ああ、さっきまでそんなこと、頭でわかっていても理解していなかった。
冷え込む空気は地下のここまで忍び寄ってきていて、見れば記者の誰かはダウンジャケットも着ている。
高揚する身の熱が、それを理解させてなかったんだ。
「けど、実感がまだないんすよね」
「えー、マジで?」
「俺なんかが貰っちゃって、マジでいいのかなとか…」
「何で、いいんだよ!MVPなんて早々とれないんだからな」
肩を抱いて、さっきの先輩同様ぐりぐり頭をなでてやる。痛い痛いと、棋士が満面の笑顔でもがいた。
傍らでは和久井が、石居になにやら耳打ちしている。誰かの会話と俺たちの会話。
どこかからも唸る声、喧騒、ざわめき。
「お前が勝ち取ったんだ、って皆わかってる、俺も」
俺も、というのは正確じゃないかもな、とちらり思った。
俺は、ずっとわかってるよ、と。ざわめきの中で呟く。
俺の王子様は、いつかみんなのヒーローになるんだ。
「…じゃあ、貰っときます」
「そうそう!」
「力さん、好きです」
336白ぬこ 5/6:2008/11/10(月) 22:07:09 ID:tkX0xQsZO
幕の後ろから、わあわあ誰かの歓声が聞こえてきた、ああ、行かなくちゃ。
「…ん?」
「力さんは、そういう風に言ってくれるから、好きです」
岸が、腕の中から目を上げた。聞こえていたけれど、だからこそ、夢かと思った。
目が合って、棋士が斧寺の首に手をかけた。
秘密の耳打ちのように頬が近づく、唇が自分のそれを一瞬かすめる。
「力さん」
その声は本当に聞こえていたのか、よくわからない。
だって名を呼んだ自分の声も、喧騒もざわめきも、その一瞬は真っ白だった。
何も聞こえなかった。だからその声は本物だったのかどうかは。
「…タカくん!行くよ!」
「えー?う、んー…行こっかー?」
「お前ホントのんびりしてんなあ…」
目を見たかったけれど、背後からの声に一度に現実が戻ってくる。誰かの声、喧騒、現実。
喜び、哀しみ、幸せ、全部がやってきた。寒さも、熱も含めて。
「…行きますか!」
「う、ん」
ぐい、と王子様に手を引かれた。はすに見える耳と、帽子からはねるあの癖っ毛は、いつもの棋士だ。
「…力さんて、唇荒れてますよね」
「…そっかな」
「そうです」
もう片方の手で、荒れてると言われた自分の唇をなでれば、自然と頬が緩む。
温みだ。
337白ぬこ 6/6:2008/11/10(月) 22:09:15 ID:tkX0xQsZO
「棋士―」
「はーい」
「もうちょっと、だけな」
「はい?」
「ん、もうちょっと、だ」
「…変なの、力さん」
笑いながら呟くと、棋士は心底不思議そうにちらりこちらを振り向いた。
もうちょっとだけでいいから、ああ、俺だけの王子様でいて下さい。俺の白馬の騎士様で。
唇のそこに、熱さでも寒さでもないものが残っている。
これは、ぬくもりだと思う。
気付かれないように、繋いだ指に少し力を入れた。哀しいことでもあり、幸せなことでもあった。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
しかしぬこは固定カプでなくても萌えたぎるんだぜ…
とにかくオメ!
338風と木の名無しさん:2008/11/10(月) 22:19:14 ID:IEBXrcQ40
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
あの手つないで入場は目を疑ったw
騎士かわいいよ騎士
339風と木の名無しさん:2008/11/10(月) 22:20:27 ID:k3jvVwcp0
いやー、おめ!ぬこさんが優招決まった時から来るの楽しみに待ってた!

さなぎが蝶になるようにぐんぐん力をつける若者に感じる焦燥感は
大切な仲間ゆえに切ないよね・・・。
340風と木の名無しさん:2008/11/11(火) 00:02:59 ID:V9Frrp8LO
キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!
来年…いや今からでも遅くない、むしろ味尻でがんがれ、14!
そして1114直結かんぷーリレーだっ!

しろにゃんこ姐さん、いつもありがとう…貴女はマジネ申だ…!
341風と木の名無しさん:2008/11/11(火) 00:34:33 ID:5i5ReQ8jO
きたあああああ
姐さんありがとう!
あのシーン観てから萌え死ぬ思いで頭がぐるぐる
また姐さんの胸キュンな文にやられました参った!
手を取り合って語りたいです…

白ぬこおめ!姐さんこれからも楽しみにしています
342風と木の名無しさん:2008/11/11(火) 02:12:42 ID:RiAZTSRMO
白ぬこ姐さん待ってました!
あなたのおかげで1411にハマりましたよ!
おめでとう白ぬこ軍団!
343オリジナルSF風味 1/5:2008/11/11(火) 19:55:31 ID:8jwIfaoA0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )>>250-257,>>291-296の続きです

しばらくすると、カフカの言葉どおり、ぼんやりとした光の薄もやが
見えてきた。赤から青に、青から緑に、刻一刻と移り変わっていく。
時に強く光り、かと思えば今にも消えそうになる。これほど明暗の
サイクルが早いタイプは久しぶりだった。
「きれいだ」
「ああ」
 カフカは目のふちを指でなぞった。泣いているのかと思い一瞬焦ったが、
それは彼の目が慣れない場合に見せる行動だった。
「生まれ変わっていくようだ」
 カフカが言った。ある日生まれて、眩しく輝き、徐々に老いていって、
いつか死んでまた生まれかわる。オーロラの表現としては詩的だが、
彼らしい美しい例えだと思った。
 俺は隣り合っているカフカの手をたぐりよせ、柔らかく握った。
カフカがかすかな力で握り返し、俺の手を包み込んだ。二人ともオーロラ
からは目を離していなかったが、ごく自然な動作だった。薄暗い臨時照明の
中、目を合わせないままでも、互いが何をしようとしているのかが
伝わってくるのだった。
 カフカが俺の手を口元に運び、つないだ手を開かせて、掌の部分に
キスをした。拙いキスだった。田舎の娘のような純朴さがあった。
俺はたまらなかった。彼の指の間に自分の指を絡ませ、握りなおした。
かたく握った手を引き寄せ、音を立てて口付けた。少しずつ場所を変え、
何度もしつこくくり返すと、カフカがこちらを向いた。
344オリジナルSF風味 2/5:2008/11/11(火) 19:57:57 ID:8jwIfaoA0
「子供みたいな事をする」
 少年のままの顔でそんなことを言うので、おかしかった。
「男はいつまでたっても子供なんだ」
 言い返した俺は、カフカの手の甲を甘噛みした。カフカは反射的に
手をのけた。怒るでも泣くでもなく、彼はもう一度その手を戻して、
静かに俺の頬に触れた。
「こうして触ってみたかった」
頬から始まり、まぶた、眉、鼻筋、あごの輪郭、さまざまなパーツ
の形を覚えるように、カフカの指が顔の上を滑っていった。むず痒かったが、
あんまり真剣な手つきだったので我慢することにした。
「俺だって触りたかった」
俺もカフカのあどけなさの残る頬を掌に包んだ。親指のはらで鼻先を
くすぐると、カフカが八重歯をこぼして笑った。
「俺も触られたかった。……バベルに」
 名前を呼ばれて目が眩んだ。俺はカフカの肩を抱いて唇を押し付けた。
そのままカフカの下唇を舐めた。カフカが俺の上唇を吸った。異様な感覚が
背筋を抜けていった。角度を変えて幾度も唇を重ねた。俺がカフカの
髪に指を通して引き寄せれば、カフカは俺の服をつかんで体ごと
近付けようとした。
舌を口内に差し入れた時、カフカの体が跳ねた。嫌がるかと思って
離れたら、ぶつかるように口付けられた。ゆるく閉じられた唇を割って
中に入ると、今度は受け入れられた。戸惑う舌を見つける。またカフカが
震えた。しかし俺はもう離さなかった。カフカもそれを望んでいると思った。
カフカの粘膜は熱く、柔らかかった。俺は何度もカフカの舌を追い詰め、
彼はそれに応えた。俺たちは飽きるほど唇を貪りあった。
345オリジナルSF風味 3/5:2008/11/11(火) 19:59:29 ID:8jwIfaoA0
「酸素が足りなくなりそうだ」
 カフカが深く息を吐いた。唇が濡れていた。
「シールは?」
 俺はカフカの首筋を軽く押さえた。そのまま酸素シールと肌の境界を
辿ると、カフカが肩を竦ませた。
「2枚貼っている」
「船までもつのか」
 確かにカフカが必要とする酸素量は平均を大きく下回っていたが、
いくらなんでも見積もりが甘い気がした。
「何事もなければ」
 この状況でもカフカは自分のリズムを崩さない。彼自身は意図しなかった
かもしれないが、俺は絶妙の牽制を受けることになった。
「それは残念だ」
 俺は酸素シールの上からカフカの首に軽いキスをした。カフカは
とくに抵抗することもなく、腕をくぐらせて俺の頭を抱いた。
「もうすぐオーロラが消える」
 耳がカフカの体に触れているため、彼の声は頭の奥でやけに響いた。
俺はガラスの天井を見た。オーロラが一際明るく輝いて、それから次第に
暗くなっていった。
「また生まれ変わる」
 俺は先ほどのカフカの比喩を思い出して、そう言った。
 カフカは頷いた。俺を抱いたまま、彼の網膜に映る光を追っていた。
「何度も生まれ変わる」
 カフカが俺の額に頬をすり寄せた。俺は彼の心臓の音に耳を澄ました。
この二人の空間を全て記憶したいと思った。体に刻み付けてしまいたかった。
346オリジナルSF風味 4/5:2008/11/11(火) 20:03:13 ID:8jwIfaoA0
 帰りはやはり俺が運転することにした。カフカは未練があるらしかったが、
今回ばかりは俺も譲らなかった。彼を後ろに乗せて、ゆっくりと走り出した。
適正速度の半分の速さなら、走行音が目立たない。
「今度は流星群を見に行かないか」
 来月から立て続けに3つの流星群が発生することが予想されていたので、
俺はカフカに持ちかけた。
「けれども、正規の観測データが必要だろう」
「定常郡なら問題ないさ」
 カフカの表情はわからないが、彼がこの手の誘いを断るはずはなかった。
「D2基地が良い」
 カフカはオーケーを出す代わりに、少し離れた基地の名前を口にした。
「あそこのテレスコープを使えば、お前にもアクルックスが3つに
見える」
 カフカは俺の取るに足らない質問を聞き流していなかった。俺はそれが
妙に嬉しかった。
「楽しみだな。体中にシールを貼り付けていこう」
 何が起こってもいいように、と付け加えた。
「バベルが貼ってくれ。背中までは手が届かない」
 カフカは上機嫌だ。つられて口の端が上がるのを止められなかった。
カフカの星で受け継がれている、特別な時にしか相手の名前を呼ば
ないという文化を、俺は彼から聞いて知っていた。「お前」、「おい」、
あるいは無言で肩を叩かれて呼ばれてきたから、自分の名前がやけに
耳に甘く、くすぐったく聞こえる。なんて愛しい俺のカフカ!
347オリジナルSF風味 5/5:2008/11/11(火) 20:06:02 ID:8jwIfaoA0
「バベル?」
 後ろでカフカが首を傾げている姿が目に浮かんだ。彼が返事をしないことは
度々あっても、俺がそうすることは滅多にない。
「ああ、わかったよ。1枚ずつキスしながら貼ってやる」
 カフカはもう文句も言わず、俺にしがみついた。背中からカフカの体温が
伝わってくる。夜明け前の気温はマイナス20度になっていたが、
不思議と寒いとは思わなかった。胸の底がいつまでも温かかった。
それはカフカと分け合った熱だった。
 夜の惑星を、満天の星空の下、1台のバイクが走っていく。
それに乗っているのは二人だが、前後のライトが地表に照らしだす影は、
今や一つになっている。
俺とカフカの話は、今日はこれまで。さようなら。またいつの日か。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

>>300>>305
ありがとうございました!
348風と木の名無しさん:2008/11/11(火) 21:19:18 ID:Waw6+UN4O
>>343
待ってたよ〜〜〜!
カフカのキャラが超ツボでした。GGGGGJ!!
349風と木の名無しさん:2008/11/11(火) 22:13:04 ID:6xjfL/oz0
>>343
萌えました!
萌えをありがとう!
350風と木の名無しさん:2008/11/11(火) 22:19:12 ID:s9zZj4KbO
>>343うおーGJGJ
よかった好きだ姉さん
351埃.及神話 彫栖×瀬戸(1/4):2008/11/12(水) 00:07:35 ID:nHVrjzwy0
>>219-222の続きで埃及神話の甥×叔父。精神的には叔父の兄(甥の父)←叔父も。
エロはないですが露骨に事後です。獣面人身神の擬人化など自分設定多数注意。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 神殿の廊下を一人の男が早足で歩いている。肩を越す長さの白い髪と、知性の光を湛え
た銀色の瞳。姿こそ人間で言えば三十代半ばといったところだが、その物腰にはどこか老
賢者めいた落ち着きと風格がある。それも無理はない。瀬戸が王座につく以前、緒師李栖
が王座にいた頃よりもまだ遙か昔から、この男は――斗々は、神々の書記を務めているの
だ。秩序と癒しを司る斗々の叡智は、神々の誰もが認めるところであった。羅亜や緒師李栖
は勿論、瀬戸もその例外ではない。
 斗々が彫栖と瀬戸の姿を最後に間近で見たのは閉廷の直後、瀬戸が彫栖の腕を掴んで
強引に法廷を連れ出すところだった。嫌な予感がして後を追ったものの、無数に部屋がある
広い神殿の中、何度も廊下を曲がる内に二人の姿を見失ってしまった。斗々は途方に暮れ
て溜息を吐き、乱れた白い髪をかき上げる。もう先刻から大分時間が経っていた。あの気性
の荒い二人に何事も起こっていなければよいが――と、斗々は半ば祈るような心地で再び
長い廊下を歩き出す。
 斗々が歩を進めていると、廊下の向こうから歩いてくる若い男の姿が目に入った。膝を隠す
長さの腰巻に白金の飾り帯を巻いて、若々しい上半身を露わにしている。端整な顔にかかる
つややかな黒髪に、左右で色の違う金銀の瞳の持ち主といえば、この神殿にただ一人――。
「彫栖様!」
 斗々が駆け寄りながら声をかけると、彫栖は足を止めてにっこりと斗々に笑いかけた。
「ああ、斗々か。どうした?」
352埃.及神話 彫栖×瀬戸(2/4):2008/11/12(水) 00:10:25 ID:nHVrjzwy0
 その笑顔に、斗々は微かな違和感を覚えた。どこがどう、という程ではない。ただ、法廷で瀬
戸とやり合っていた時の彫栖と比べて、何かがほんの少し抜けたように感じる。
「彫栖様、今までどちらに……?」
 訝しげに斗々は問う。
「別に、叔父貴と少し話をしていただけだ。いくら父の敵とはいえ、事実に反する汚名を着せら
れたままでは瀬戸叔父貴も可哀想だろう」
 優しげな言葉を口にする彫栖の瞳には、それにそぐわない剣呑な輝きがあった。斗々は真
意を汲みかねて眉を顰める。
 ふと、視線を落とした斗々の目に、彫栖の腰巻と飾り帯が映った。法廷で彫栖が着ていたの
は、生前の緒師李栖が好んでいたような白い長衣だった。この昼日中に装束を替えたというこ
とは、何か汚れたのか、汗をかいたのか――。
「……っ!」
 その瞬間、斗々の背筋に戦慄が走った。この状況と、先程の違和感と、彫栖の言葉が繋
がって――ある想像が形を結ぶ。
「……彫栖様、一つお伺いしてもよろしいですか」
 信じたくはなかった。しかし、尋ねずにはいられなかった。
「ああ」
「つい先程は長衣をお召しだったように思いますが……何故お着替えになったのですか?」
 斗々は射るように彫栖の目を見つめる。
 彫栖はちょっと目を見張って沈黙してから、悪戯を見つかった子供のような表情でくすっと笑った。
「流石に斗々は、勘がいいな」
 ぞっとするほど無垢な笑みだった。斗々は確信する。彫栖は事実に反する汚名を濯ごうとしたの
ではなく、汚名自体を事実にしてしまったのだ。「甥に抱かれた王」という、この上ない不名誉を――。
「……瀬戸様は、どちらに」
「さあ、まだ白の間にいらっしゃるんじゃないか?きっとすぐには立てないだろうから」
 語尾がくすくすと笑い声になって消える。斗々は即座に身を翻して、白の間に向かって駆け出した。
353埃.及神話 彫栖×瀬戸(3/4):2008/11/12(水) 00:13:26 ID:nHVrjzwy0
 勢いよく白の間の扉を開けて、斗々は思わず息を飲んだ。むせ返るような精の臭い。大理石と
雪花石膏で造られた静謐の部屋に、特有の粘ついた空気が生々しく漂っている。口元を押さえ
ながら素早く視線を巡らせると、床にぐったりと横たわる瀬戸の姿が目に入った。
「瀬戸様――!」
 乱れた黒髪。蝋のように青褪めた肌に、歯形が、紅い痣が点々と咲き、白濁が散っている。王の装
束は無惨に引き裂かれ、露わにされた瀬戸の肢体はまるで打ち捨てられた彫刻のようだった。斗々は
駆け寄って長衣の上から羽織っていた衣を瀬戸の身体にかけ、側に膝をついて瀬戸の肩を揺する。瀬
戸の肌は驚くほど冷え切っていた。
「瀬戸様、瀬戸様……!」
 少し間があって、瀬戸の睫毛が微かに揺れた。緩やかに瞼が開き、現れた赤い瞳はぼうっと天井を
向いて焦点が定まらない。
「瀬戸様……っ」
 斗々が再び名を呼んだ瞬間、瀬戸はびくっと目を見開いた。怯えた獣のような目で、斗々を視界に認
めた途端、ほっと安堵の息を吐く。
「……斗々か……」
「彫栖様はいらっしゃいません。瀬戸様、お体の方は……」
 瀬戸はゆっくりと上体を起こし、顔を顰めて軽く首を振った。
「……生娘でも、あるまいに。この程度でどうにかなるような体ではない」
 そう言った瀬戸の手首にはくっきりと痣が浮いており、近くで見ると肩や二の腕には爪で引っ掻かれ
たような赤い傷もある。血の痕こそ見えないものの、行為の凄惨さは一目で推し量れた。
「しかし、治療は……」
「構うな」
354埃.及神話 彫栖×瀬戸(4/4):2008/11/12(水) 00:17:02 ID:nHVrjzwy0
 言いかけた言葉は一蹴された。えぐられた眼でさえも元通りに癒す斗々の力だ、痣や傷を治す程度な
らさほど時間もかからないのに、瀬戸はそれすら拒む。気丈さに半ば呆れて、斗々は溜息を吐いた。
「……では、体を拭うものと替えの装束をお持ちいたします」
「ああ」
 短く答えて、瀬戸は俯いた。前髪がぱらりと落ちて、目元に影をつくる。やはり体が辛いのだろう。もし
も内臓に傷がついているようなら、何と言われようが力を使った方がいいのだろうが――。
「――斗々」
 瀬戸は俯いたまま、片手で己の額を押さえた。
「はい」
 瀬戸は沈黙する。躊躇うように息を吸って、呟く。
「――止めてくれるなよ」
 何を、と問おうとした刹那、瀬戸の上体がぐらりと傾いた。斗々は慌てて倒れかけた体を抱き留め
る。瀬戸は獣のように小さく唸って、それからふっと糸が切れたかのように体重を斗々の腕に預けた。
 意識を手放した――というよりは、眠っているのだろうか。ひんやりとした身体を抱いて、斗々は瀬戸
の貌を見つめる。その膚はいっそ痛々しいほど白く、力の抜けた目元だけが存外に穏やかだった。一国
を支える王とは思えないような頼りない表情に胸を締め付けられて、斗々は静かに瞼を伏せる。

 斗々の穏やかな癒しの光に包まれて――瀬戸は、その細い頸を晒し昏々と眠り続けた。

□STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
前作レス感謝!開眼したって書いてくれた人もありがとう! 本当に嬉しいです!
355風と木の名無しさん:2008/11/12(水) 00:19:33 ID:ul+ixY+vO
空気読め不人気裏金球団
中島、岸、片岡、その他主力
こいつらのほとんどを裏金で乱獲したんだろ?
きったねーなwww
356風と木の名無しさん:2008/11/12(水) 00:19:51 ID:G7kNv6pY0
>>351
元ネタ知らんのに何だかドキドキしてきてしまった…!
これはあれか、目覚めか…w
357風と木の名無しさん:2008/11/12(水) 00:54:54 ID:kkPZlHdpO
野猿
358風と木の名無しさん:2008/11/12(水) 00:55:44 ID:kkPZlHdpO
誤爆に加え途中送信スマソorz
359風と木の名無しさん:2008/11/12(水) 13:07:34 ID:o4eq+A870
>>351
か、か、カッコいい〜!!色っぺー!!
映画みたいに情景が浮かんできて、「精の臭い」までしてきたよw

レイプ犯堂々としすぎワロタw 最早どっちが悪役かわからん。
斗々神の良識人っぷりが、この結構陰惨な話の清涼剤になってるな。
でも、見つけたのが彼でよかったよね。>甥っ子にテゴメにされた人

>>356
保管庫と神話スレを覗いてみましょう。
360風と木の名無しさん:2008/11/12(水) 19:49:58 ID:nl1S3jioO
>>355
(・∀・)ニヤニヤ(・∀・)ニヤニヤ
361風と木の名無しさん:2008/11/12(水) 20:47:49 ID:Gkx+58J00
>>343
楽しみに待っていました。
姐さんのクールな文体が凄く好きだ。
文明と文明が触れ合うときの、なにか原始的な感動みたいなもんを感じた。
超GJでした。
362風と木の名無しさん:2008/11/12(水) 23:13:26 ID:yxMqgCsd0
>>351
毎回読んで萌えさせてもらってます!
細かい描写に>>359じゃないが情景とか本当浮かんできてどきどきしっぱなしだった。
神話の独特な雰囲気も好きだからすごく萌え補給になる。
毎回のことだけど超GJです!!
363生 白ぬこ王求団ネタ 1/5:2008/11/12(水) 23:51:27 ID:HzW7555dO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
麦酒かけネタ再びなんで急いで…!17で。



「ナ力ジあいしてるー!!」
「イェーああああ!!」
大の男が抱き合ってびしょ濡れになって、しかも大声で愛してるだの最高だの。
思考がぶっ飛んでいるからこそ出来る。
またはここが、日本一のネ兄勝会のその場だから出来る事。今日の台詞も行動も、それに免じて許してくれ。
上手く言えばこの全身に浴びるビールの泡と同じように、はじけて流れてうたかたのように酔う。
今は何も隠さなくてもいいし、きっと思い出したら後で爆笑することばかり。酔いというのは恐ろしい。
「さんぺえェー!!お前スゴい、よくやった!!」
「ぶぎゃっ」
「お・れ・も!あ・い・し・て・ん・でっ!!」
ニ遊間コンビを組む相方とその巨漢のサ一ドを捕まえて、ダブルでビール砲撃を喰らわせる。
奴も奴でまるでどんとこいとでも言うように、両手を広げて甘んじて全身をさらしたりする。
大の男が、馬鹿みたい。酔い、は本当に恐ろしい。
「いて!」
「あー!やっさんヒロさーん!!」
今度は逆に、背後から誰かに捕まった。
364生 白ぬこ 2/5:2008/11/12(水) 23:53:47 ID:HzW7555dO
冷てえ!と暴れる片岡の頭に、思い切りのシャワーが振ってきた。
いや、もう冷たいのか何なのかわからない。苦さや痛みすら麻痺する。
そりゃ、11月に全身で冷えたビールを浴びれば寒くないわけない。同じく目に染みたら、痛くないわけが。
けれど今痛いのはそっちではなくて。
「ばっ…くーりー!!」
「あ、当たったとこ?やっぱさすがに腫れてます?」
「そりゃそーだろー。でも今日はもういい!って、なー!!」
「ぐぷっ」
上からぶっ掛けて、逃げるところを下から噴射。しかし久利山は水中眼鏡で防御している。卑怯だな。
さっきつかまれた背中の一部には、彼の握力の痛みがまだ尾を引く。
つい数時間前に硬王求が、時速150キロ近いスピードで当たったところだ。
多分今日これが終われば、もっとずきずき痛み出す。けれどそれは今はもういい。
もういいんだ。
「はぁーいお疲れー!」
肩岡は笑って、久利山の水中眼鏡を引っぺがす。お互いビールまみれになりながら、痛い痛いと笑いあう。
ぎりぎりの、同点のラソナーだった。それでも俺は前だけ見ていた。
お前を見ない、お前は後ろにいる。
背水の陣じゃない。足はすくまない。
俺は還るぞ。
「ちょマジ痛、眼鏡っ」」
365生 白ぬこ 3/5:2008/11/12(水) 23:56:41 ID:HzW7555dO
させるかよ、と伸ばした手をかわしまた新たな瓶を掴む。もう床もテーブルもべたべたのぐちゃぐちゃだ。
白いテーブルクロスの上に、四方八方にビール瓶が倒れている。
そして色んなものが絡まる。ぶつかり合う他人の濡れたシャツだの、まわる取材カメラのコードだの。
誰かの喜びだの、叫びだの、どこかで本気で泣いている声も。
「なっ、九里!」
「ぅぶば!!なびが!?」
「何でもないー愛してるー!!」
いつだって。俺が振り出しに戻してみせる。還ってみせる。
だから、後は頼む。
いつだって、何とかなると思ってた。お前がいるから、後は頼んだ。
頼んだぜ、なあ。
よくやるみたいに絶叫で抱きつき、残りのビールを頭から一緒に被った。久利山も反撃で背中に流し入れてくる。
デッドボールの跡の上も、多分幾つもの傷跡の上も、流れていく。
今度は誰かが自分たちの間に突っ込んできた。ヘッドロックをかまされて肩岡は後ろにのけぞる。
脚がすべる。もうヘロヘロだ。
「あー、やっさーん!!」
「うぁー!?」
「愛してるよー!!」
その声に振り向けば、今度はまた誰かの噴射がもろに顔面を焼いた。
366生 白ぬこ 4/5:2008/11/12(水) 23:58:27 ID:HzW7555dO
ぎゃーだかうわーだか、言葉と歓声が交じり合ってばたばたとそれから逃げる。
「何だって、久利ー!?」
げほげほ咳込みながらまた呼べば、今度は中木寸だか誰かの上に馬乗りになっている彼も振り向く。
歓声としずくでお互いまみれてぐちゃぐちゃだ。頭の中も外もめちゃくちゃだ。
声も叫び声で、そしてまた歓声に紛れていく。
声や騒ぎが一体になって、べたっとして、耳に蓋をされたようだ。
聞こえているけど、全部の中から何かひとつを探すのは難しい。
「え?」
「何つった、クリ!?」
だから何て言った?さっきの、お前の言葉は何だった?
「愛してますよ、て言うた!!」
「んー!?」
べちゃべちゃの髪をかき上げて、栗山が笑った。握ったビール瓶を高々と突き上げる。
目が真っ赤。
思わず片岡も、同じように手を天に突き上げて言った。
「んだそれ!それ、さっきの俺と同じ台詞じゃんよー」
「あー、そうっすねー!」
お互い、笑っているんだか泣いているんだか、な顔だ。頬も髪も、頭の中もぐちゃぐちゃだった。
一つの声を、拾う。
「何で二回言う!!」
砂漠の無数の中からたった一粒、煌く砂を拾い上げる。
そんな気持ち。
「え、何となくねえー!!」
367生 白ぬこ 5/5:2008/11/13(木) 00:00:19 ID:HzW7555dO
「…変な奴だな、わかってるけどっ」
「そうすかねっ?あんたもさっき言ったくせに!」
「俺は良いんだよ、バーカ!」
「馬鹿はアンタやー!」
「…お前もだ!!」



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
大事なことだから2回言うんだぜ
368風と木の名無しさん:2008/11/13(木) 00:06:06 ID:H65NLaMa0
>>363
麦酒かけキター!ありがとうございます。
7のはっちゃけっぷりが堪らないです。
369風と木の名無しさん:2008/11/13(木) 00:56:49 ID:is9O65nQO
>>363
第2弾キターー!
また読めるとは…姐さん萌えすぎて腰抜けました
麦酒かけは大爆笑と萌えの宝庫ですね
いつもありがとうございます
370風と木の名無しさん:2008/11/13(木) 01:02:48 ID:HFY8hTKnO
>>363
キター(・∀・)ー!
姐さんいつもごちそうさまです!
無邪気に悩殺しあう1と7がかわいすぎる…

>大事なことだから二回言う
吹いたw
371風と木の名無しさん:2008/11/13(木) 02:50:33 ID:cJguSf0L0
かなり遅レスですが>>343
続き楽しみにしていました。
主人公の名前がずっと出てこなかったのはそういう理由からだったのですね・・・
またいつか、をどこかで見ることが出来ればと思います。
素敵なお話どうもありがとうございました。
372風と木の名無しさん:2008/11/13(木) 07:57:39 ID:YXw9z8FjO
.
373風と木の名無しさん:2008/11/13(木) 12:40:23 ID:M6r6N5cm0
>>351
いつも楽しませてもらってます。
叔父様はこのまま甥との情事に溺れてしまえ!ww
また読ませていただけると嬉しいです。
374風と木の名無しさん:2008/11/13(木) 16:18:02 ID:vcpbvwpVO
>>351
続きが読めるとは!
神話良いですね良いですね
毎回悶えてます
375風と木の名無しさん:2008/11/14(金) 00:13:37 ID:RSkbeE59O
白ぬこ連投うぜーよ
自分のブログにでも書いてろ
不人気球団ヲタってほんとKYだね
376オリジナル 時代劇風 1/6:2008/11/14(金) 00:37:04 ID:ZJMrlQFNO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
オリジナル。えせ時代劇風。



花魁の質もさることながら、この一服の味が格別でここを贔屓にしている客は多いだろう、とその
男は言った。
くゆらせる煙管のほの白い煙がゆうらり、ふわり、その柔らかい指が弄ぶたび揺れる。
かく言う俺も、これが目当てなんだがな、と続けて笑う。一仕事終えての一服はまたいい、と。
それはこちらの誇りでもあった。この店の障子の紙から行灯の油、煙草の葉にいたるまで、手を
抜いて揃えているものはない。
「…そうか」
番台で手早く帳簿を纏めながら、ふとその煙の行方に目を奪われそうになった己を戒める。
色派手なおもての火、薄暗い座敷の明かり、そのどれとも違いここは遊郭の一角とは思えぬ。ごく
ごく当たり前のような、和やかな空気が流れている。
じじ、と行灯の火が男の煙に身悶えた。ように見えた。
煙管片手の化粧師は、持参の漆箱の化粧筆を数える。ひいふう、みいよ、いつむうななや、はい
終わり。そしてごとりと恭しく蓋をかけ、朱色の袱紗に手早くそれをくるみこむ。
その間も煙管はくるくる、左手の指先で揺らしている。利き手抜きに、器用なやつだ。
377オリジナル 2/6:2008/11/14(金) 00:38:23 ID:ZJMrlQFNO
色あせた畳の目が、ぼけた行灯のあかりで照れている。色気はなくとも滑らかにうねる。化粧師の
袱紗と紺の帯が、強く見える。
この化粧師は、うちの女将のお気に入りだ。姐さん方の覚えもいい。
蓮っ葉な小娘のような喋り方と、人懐こい八重歯、艶はないがそれでいて腕は良い。化粧を施す
ときはまるで陶器を撫でるように肌を選び、紅を差し、細い目で柔らかく笑うそうだ。そうだ、という
のは伝聞でしかないからで、ごつい男の自分は当然、その場に立ち会ったことも、紅などさされた
ことも無い。
自分との接点はと言えば、姐さん方を座敷へ送りあげたあと、同じく一仕事終えたこの男に労いの
一服とひと杯を差し出すこの時くらいに過ぎない。お互い吉原の事情には長けていて、世間話のよう
にやれどこぞの呉服屋は傾きそうだの(若旦那の放蕩の噂はかねがね)、あの遊女の行方はやは
り心中だっただの、面白いことも面白くないことも、帯紋の流れのように続いていく。
「新しい子のお披露目も、無事に終わったもんかねえ」
「あんたの目から見て、どうだ」
「ああ、あの背の低い娘はいいな。歯並びは悪いが、男好きする。肌もいい」
378オリジナル 3/6:2008/11/14(金) 00:40:11 ID:ZJMrlQFNO
くっくっく、と小さく笑う声は、しかし全く嫌味でない。おれが磨き上げてやろうという、化粧師ゆえの
口ぶりだ。
いずれ、良いかむろをつけてやらにゃあなるまいな、と嘯く。
毎年毎月、この店のみならずこの街には、幾人もが入り込みそしてその分だけふるいおとされる。花
の命は短くてとはよく言ったもので、自分がこの店に来てからも既に、十を下らぬ花魁や太夫がある
ものは惨めに、あるものは消えゆくように、姿を消した。
そういえば以前、あんた、何だってでこんな商いしてるんだ、とこの男に聞かれたことがある。
「学もあるそうじゃねえか」
相変わらずの癖で、どこで焼けてくるのか僅かに日焼けしたその首を回しながら、化粧師は不思議
そうに口にした。
「俺と違って、もっと真ッ当なことも出来るだろう」
「…さてねぇ」
自分はそのとき、どう答えたかはあまり覚えていない。確固たる答えなどどこにも無いのだ。
零落した名家の名など、当に捨てた。勘当も食らい、髪も短くし最早ごろつきと変わらぬ。幼いころ
から病ひとつしないこの身のおかげで、どこへ行っても食うには困らないが。
379オリジナル 4/6:2008/11/14(金) 00:41:45 ID:ZJMrlQFNO
しかしそれでもこの男は、その独特の勘のよさ故か耳ざとい性質故か、自分に何か違う佇まいを感
じているらしい。芯から遊蕩の匂いはせぬ。
ごろつき仲間の口利きでこの遊郭に入り込んでから、もう幾年も経っている。見目のごつさとその逆
に算術にあかるいところから、女将にはえらく気に入られた。確かにあるとき、自分がこの番台に座っ
ていると、払いの悪い客はここに入り浸り辛いらしい、と気づいたときは密かに可笑しかった。喧嘩ご
とは今やとんと起こす気は無いが、それでも体のそこかしこには、もうしっくりと馴染んだ傷跡があった。
帳簿をつける筆先に、よく化粧師の興味深い視線が絡んでくるのは、よくわかっていた。読み書きで
きることすらも珍しいのだ。
そして右腕のその古傷にも、その男は遠慮なく視線と言葉を這わせてきた。
「それ、刀傷だな」
ご名答。それ故に答えぬ。
「…痛むか」
そう問われたのは確か冬の寒い日で、ちらちら粉雪も舞っていたように思う。杯のぬるめの酒から、
弱い蒸気が立ち上っていた。
痛みはしない、もうただ在るだけの傷だ。そう言ったのに、化粧師は聞かず要るならいい薬売りがいる、
とぶっきらぼうに答えた。
380オリジナル 5/6:2008/11/14(金) 00:44:48 ID:ZJMrlQFNO
冬は染みるだろうと、商売道具の利き手を火鉢にかざしながら、そう言っていた。
暗い石炭にあぶられた指は、今も変わらず柔らかそうだ。筆と布、白粉以外に触れたことがない風だ。
ふと、その指に触れられる感覚を想像する。花魁の姐さん方の頬に、首筋に触れるさまを。そして逆に、
この傷跡のうえを。
なぶるように、まじりあうように、拗ねた指先。
俺は触れてほしいのか、と自問自答する。化粧師は目を閉じて、座敷からの三味線に合いの手を入れ
ている。
「梅は、咲いたか」
桜はまだかいな、季節外れだがこの男の好きな歌だ。知っている。
春の夜には、勝手にここに上がりこんだまま眠る。月が出れば無粋だと、行灯の炎を取り上げられた
こともある。夜明けがくれば長屋へ戻るが、それまでのあいだは隣で眠った。
恋はするなと花魁に教え込み、決して自分も手は出さない。この街では暗黙の掟だが、むしろそれを
楽しんでいる風でもある。
裏を知らぬ。表もわずか。掴んだものは何も無い。
この男が眠っているときに思う。お前は誰に触れるのかと。暗闇で、誰か知らぬ女の柔肌を白い指が
すべる、そう思ったとき己の肌は総毛立つ。
「そういや、あんた、身を固める話も無いな」
381オリジナル 6/6:2008/11/14(金) 00:45:59 ID:ZJMrlQFNO
突拍子も無く化粧師は新しい話題を振ってきた。見透かされたのかと、一瞬こめかみが苦しく疼き、喉
が渇いた。
もういい年だろ、いくつだ、と化粧師は笑った。煙管をコンと叩き、八重歯を見せる。
そうだ。だがお前も変わらないだろう、と思う。いい年だ。ここに来て、もういく年にもなる。
女のことなら裏も表も、うその喜びも悲しみも、まずひととおりは見てきたつもりだ。美しさもあれば醜さ
も、強烈な艶もある。ただお前はそれを凌駕する。
そこに理由など無い。
綺麗な花魁はごまんといるが、お前がいい。言って、どうなることでもあるまいが。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
遊郭の番頭さんと化粧師さんの話。
382風と木の名無しさん:2008/11/14(金) 02:36:58 ID:RlIdV0E10
>>381
萌えた!
続きがあるならぜひ読みたいです!
383風と木の名無しさん:2008/11/14(金) 03:32:44 ID:Bk/c5YCsO
>>381
乙です。ものっそい萌エター!
是非続きを!
384風と木の名無しさん:2008/11/14(金) 11:14:10 ID:m98jVWxdO
>>381
心地よい萌えに襲われました!
GJ!
385風と木の名無しさん:2008/11/14(金) 18:49:02 ID:igxW28y8O
派手さは無いのに艶っぽいのが堪りません
GJです!
386オリジナル 若さと馬鹿さを足して二乗 1/9:2008/11/14(金) 21:08:00 ID:f4OXQz7M0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 夕食後、自室の床に寝転がってのんびり雑誌を読むのが有馬の至福の時間だ。
 毎日朝早くから厳しい訓練と講義に追い回される生活の中で、就寝前の数時間だけは
雑誌を読もうが何をしようがそれぞれの自由である。談話室で他愛もない噂話に興じる者、
仲間とカードゲームを楽しむ者と過ごし方はそれぞれだが、常に緊張が強いられる訓練生
の一日の中で、この自由時間だけが心からくつろげる時なのだ。もちろん一瞬の油断も許
されないとばかりにトレーニングや予習復習に励む者もいるにはいるが、大部分の者は一
日中フル回転させた頭と体の休息にこの時間をあてている。
 有馬は肘をついて雑誌のページをめくる。最近の芸能スキャンダルについての特集記事
はかなりくだらなかったが、辛く厳しいばかりの毎日を送っている身には、そのくだらなさが
妙に心地良かった。同室の親友である国枝も床に腹ばいになって、何か雑誌を呼んでいる
ようだ。国枝が雑誌を広げたまま寝返りをするのが視界の端に入った。
 特集記事を半分ほど読み終わった時、有馬はくい、と、シャツの背中が引かれるのに気が
付いた。振り向くとそこには、さっきまで雑誌を読んでいたはずの国枝が神妙な顔つきで正座
している。横になっていたせいか、少しくせのある黒髪がおかしな風にはねていた。
「何だ?」
 国枝は黙ったまま、片方の拳を握って軽く振った。「ジャンケンしようぜ」の無言の意思表
示である。有馬は軽く片眉を上げて身体を起こした。有馬と国枝が自室で二人きりの時の
ジャンケンには、ある特別な意味がある。
「……今日もか?」
「いや、あのさあ」
 後ろめたそうに横を向いた国枝の視線を追えば、きわどい水着姿の女の子が表紙の雑誌
が、無造作に床に置き捨てられている。
「ああ……あれ読んでたのか。武井から回ってきたやつだろ、国枝好みだと思ったんだよな」
387オリジナル 若さと馬鹿さを足して二乗 2/9:2008/11/14(金) 21:10:59 ID:f4OXQz7M0
「うん、本気で俺好みだった。あのグラビアのさ、白シャツ羽織って四つん這いのやつ、あ
れいいよな」
「ああ、あれは確かに良かった。俺はその前の全身びしょ濡れで立ってるやつが一番かな」
「あれもいいよなあ、ワンピースの透け具合とか身体に張り付いた感じとか。……でさ」
 国枝はもう一度拳を軽く振って、大きな黒い目でまっすぐに有馬を見つめてくる。
「……はいはい、分かった分かった」
 有馬は諦めたように拳を握った。二人で相手の考えを読むようにしばらく沈黙してから、同時
に叫ぶ。
「最ッ初はグー、ジャンケンほいっ!」
 出された手は国枝がチョキ、有馬が――グー。
「あ〜……」
 気の抜けたような声を出して、国枝はがっくりと床にくずおれた。
「残念だったな」
「マジで……これで三連敗目?」
「だったかな。国枝、風呂は?」
「さっき入った……」
「じゃ、俺ちょっとシャワー浴びてくるから待ってろ」
「いやなんかもう待つとか待たないとかじゃなくて、一気に気が萎えたんだけど……。もう下は
勘弁してくれよ……」
「ルールはルール。しかも決めたのお前だろ、観念しろ」
 有馬は雑誌を机の上に放り投げて、バスルームに向かった。
 残された国枝は一つ大きな溜息を吐くと、ずるずると床を移動して再びさっきの雑誌を広げた。
滑らかな裸身に男物の白いシャツだけを羽織った女の子がベッドの上に四つん這いになって、
潤んだ目でこちらをじっと見つめている。シャツに半分隠された豊かな胸と、少し持ち上がった
腰のラインがたまらなく色っぽい。
 落ち込んだ国枝の気分が、またほんの少しだけ高揚した。
388オリジナル 若さと馬鹿さを足して二乗 3/9:2008/11/14(金) 21:13:58 ID:f4OXQz7M0
 豆電球一つだけがついた暗闇の中に、湿り気を帯びた熱気が広がっている。二人の息づかいと
時折聞こえる衣擦れの音、微かな水音。
 国枝の太股がひく、と痙攣した。有馬が顔を上げて国枝の顔を見ると、国枝は頬を紅潮させ強く
目を瞑って、ひどい屈辱にでも耐えているかのような顔をしている。
「どうした?」
 有馬が声をかけてみると、国枝は返事の代わりに弱々しく首を振った。有馬はまた下を向いて、
張りつめた先端に舌を巡らす。その舌の動きを阻むように、あるいは促すように、国枝の手が有
馬の茶色い髪をくしゃっと掴んだ。有馬が唇をつかって軽く吸いたてながら指を絡ませて動かして
やると、髪を掴む国枝の手に更に力が入り、薄く開いた唇からは切羽詰まったような呻き声が漏れる。
「っ、う……」
「あんまり声出すなよ、余計萎える」
「……馬鹿、そっちこそ……せっかく、俺が、可愛い女の子にやってもらってる妄想してるのに、
声なんかかけるなって……っ」
 軽口をたたく国枝の声が、興奮のためか掠れてきている。絡めた指の動きを少し早めると、国枝
の喉が軽く反った。額に汗が浮いている。
「ん、く……っ」
「可愛い女の子ね。裸に白シャツだけ着た女の子?」
「ん……ッ、いや、今はまだ脱ぎかけのイメージで……」
「ああ、ベッドに上がって早々くわえてもらった訳だ」
389オリジナル 若さと馬鹿さを足して二乗 4/9:2008/11/14(金) 21:16:59 ID:f4OXQz7M0
「……あー、そうそう、可愛い顔して、割と、そういうの、好きな子って設定でさ……っ、ん、ん……っ!」
 平然と会話を続けながらも、有馬の指と舌は的確に動いて国枝を追い上げている。同性だというこ
ともあるが、身体を重ねたのも二度や三度ではない。国枝のツボは十分に心得ていた。扱きながら
弱い部分に繰り返し舌を這わせ、わざと粘着質な音をたてるようにして先端に口付ける。国枝の両腿
が自然と有馬の頭をぎゅっと挟んでくる。
「……ッ!」
 ふいに国枝が息を詰めた。腰がびくりと跳ね、たまらなさそうに両手で有馬の髪を掴む。有馬は手の
動きを更に早めた。
「あ、ちょ、有馬、やば……ッ!」
 国枝は咄嗟に腰を引こうとするが、有馬はそれを許さない。髪を掴む手を振り払い、仕上げとばかり
に一気に扱き上げながら国枝の耳元に唇を寄せて、甘い、甘い、全身が総毛立つような極上の声音で、
「な、とっとと――いっちまえよ」
 ――囁いた。
「……ッ、ん、ぅ、ん――ッ!」
 国枝の背が大きく仰け反る。国枝は有馬の手から与えられる快楽に身を任せながら、絶頂へと駆け
上がっていった。
390オリジナル 若さと馬鹿さを足して二乗 5/9:2008/11/14(金) 21:20:00 ID:f4OXQz7M0
「お、前……反則だろ。何でそう無駄にいい声なんだよ……」
 自分の額を押さえ、呼吸を整えながら国枝は呟く。いつものことだが、直後は有馬の顔をまと
もに見ることができない。指と前髪の隙間から有馬の表情を伺うと、有馬は普段と同じ涼しい顔
のまま、丸めたティッシュをゴミ箱に放り投げたりしている。
「持って生まれたもんだからな、文句があるなら親に言え」
「親ね……。……しかしこう、冷静になって考えると俺らさあ……」
「おい勝手に現実に戻るな、俺がまだだ。脚広げてろ」
 有馬はいきなり国枝の身体を割って足首をぐっと掴むと、そのまま強引に両脚を広げた。
「う、わ!?」
 突然無防備な体勢を取らされた国枝は脚を閉じようとするが、有馬に手荒く押さえつけられて、
もう抵抗は叶わない。
「おま……いつもやり方ちょっと乱暴じゃね……?」
「そりゃ俺も女相手ならもっと優しくするけどな」
「半分でいいから俺にもその優しさをくれよ……」
「優しさね……じゃ、これはどうだ?」
 その台詞が終わるか終わらないかの内に、国枝は敏感な部分にぬるり、と冷たい感触を感じた。
「わ……っ!? ちょ、今、何しやが……」
 有馬は無言で掌に収まる程度の細長い容器を国枝に示す。化粧水か何かの瓶にも見えるが、
この状況の中、国枝には一目でその正体が分かった。
「えーと……それはひょっとして……」
「ローション」
 簡潔な返答だった。
391オリジナル 若さと馬鹿さを足して二乗 6/9:2008/11/14(金) 21:23:01 ID:f4OXQz7M0
「だって女と違って濡れないんだし、涎とか精液使うと途中で乾いてきたとき面倒だろう。ワセリンも使い
心地イマイチだったし……」
「いや具体的に言わなくていいから! 俺もそれは分かってるけど、お前、わざわざそんなもん……!」
「時間も短縮できるし、俺は気持ちよくてお前も楽。優しいだろ」
「いや、そりゃ身体の負担が軽くなるのは嬉しいけどさ……!」
「あ、そうだ、お前後で半額払えよ」
「嘘だろ、ちょ、待、ぁ……ッ!」
 反論は有馬の指の動きで遮られた。ぬめる潤滑剤を丁寧に局部に広げる指はいかにも「必要な作業を
こなしています」といった事務的な動きで、それが余計に国枝の羞恥を煽る。
「ちょ、有馬、それ、ちっとも優しくないから……ッ!」
「お前ちょっと黙ってろ。動くな」
「だってそれ何かぬるぬるして、なんか、なんか……ん……っ」
「あんまり煩いと容れ物ごと突っ込むぞ」
 有馬の高圧的な冷たい視線に、国枝は反射的に身を竦ませてしまう。
「……ごめんなさい。……ん……ぅ、は……っ」
 潤滑剤をまとった長い指が、驚くほどスムーズに入り込んでいく。何度か抜き差しが繰り返され、付け根
まで入れられた二本の指が身体の中で好き勝手に動く。内蔵を嬲られるような感覚に、国枝はぞくっと身
を震わせた。水音がいつもより高く鳴るのが恥ずかしくて仕方がない。
「く……っ、ん、あ……ッ!」
 脆くする部分を探り当てた有馬は、中で軽く指を曲げて執拗にそこを刺激する。潤滑剤で滑りを良くした
左手でまた熱を持ち始めている国枝のものを巧みに擦り上げて、舌はゆるゆると蟻の門渡りを這う。快楽
のメカニズムの中枢を直接刺激してくるような有馬の愛撫に、国枝は声も出せずに背を引き攣らせた。あ
まりにも容赦のない強烈な快感に、ともすれば理性を失ってしまいそうになる。
「っ、ぅ――…ッ!!」
 頭では流されまいとしているのに、身体はもっともっと深い愉悦を味わいたくて勝手に腰を揺らしている。
シーツの上で国枝の指がもがく。閉じた瞼が震える。何度も首が打ち振られ、乱れた黒髪から汗が散った。
392オリジナル 若さと馬鹿さを足して二乗 7/9:2008/11/14(金) 21:26:06 ID:f4OXQz7M0
「そろそろ、かな」
 何気なく有馬が呟いた言葉に、国枝は汗に濡れた体をびくっと震わせた。
 国枝はジャンケンで負けたことを深く悔やんだ。その行為は一方に確かな快感を与えはするのだが、もう
一方の体にはかなり負担をかける。回数を重ねる内に、最初に比べればつらさは幾分ましにはなってきたも
のの、国枝がそれを苦手としているのには変わりがなかった。有馬が国枝の中からゆっくりと指を抜きとる。
ぞくぞくするような感覚が腰に走って、うう、と声を漏らしてしまう。
 国枝の位置からは見えないのだが、有馬がベルトの金具を外す音が聞こえた。緊張が高まる。ジッパー
を下げる音、ジーンズの布が擦れる音、ローションのくちゅくちゅいう音も聞こえる。有馬のしていることを想
像すると、これから与えられる痛みまでもがリアルに想像できて、萎えそうになってしまう。
 有馬が国枝の太股に両手をかけた。ぐい、と力が加えられ、関節に痛みを覚える程いっぱいに脚を開かされる。
「ちょ、有馬、痛い……っ」
「まだ挿れてない」
「いやそうじゃなくて、脚がさ、そんな開かないって……!」
「前から思ってたんだけど、お前体固いよな」
 少し緩められた有馬の手に国枝がほっとした次の瞬間、熱いものがぴたりと押しつけられた。
「っ……!」
「力抜いてろよ。……痛いのはお前だから俺は別にいいけど」
 有馬の言葉は相変わらず冷たいのだが、押しつけられたものがしっかりと硬直しているのに気付いて、国枝は
なんだか少しおかしくなる。国枝の表情が自然と緩んでいたのか、有馬は少しむっとした顔で言った。
「今日は余裕あるみたいだな」
「あ、や、余裕はあんまりないから……お手柔らかにお願いします」
「知らん」
 国枝の体にぐっと体重がかけられた。
「ぅ、ん……ッ!」
 有馬のものが狭いところにねじ込まれていく。無理矢理押し広げられる感覚はあったが、たっぷりローションを使
ってほぐされたせいか普段より痛みは少ない。いや、痛みが少ないどころか。
393オリジナル 若さと馬鹿さを足して二乗 8/9:2008/11/14(金) 21:29:02 ID:f4OXQz7M0
「……ん、ん、ぅ、んぅ……っ!」
 弱い場所を先端が抉った時、国枝の背筋に電流のような甘い痺れが走った。有馬が動かなくともそれが埋め込
まれているだけで勝手に中がひくついて、自動的に国枝の体に愉悦を送り込んでくる。
「う、そ、だろ……っこんな……ん、んッ!」
「動くぞ」
 有馬が腰を引き、ずる、と襞が擦られる感触にまた体が震える。
「嘘、ちょ、待っ……有馬、ぁ……ッ!」
 国枝が制止しようと叫んだのとほぼ同時に、有馬は思い切り国枝の最奥を貫いた。
「く、う…――ッ!」
 国枝は反射的に有馬の背に縋り付く。続けざまに突き上げられて、すさまじい快感が体を駆け巡る。有馬の息が
耳に当たって、それだけのことが国枝の体を更に熱くさせる。
「んっ、んんっ、う、あ……っ!」
「……いつもと、違う」
 体を奥から揺さぶられながら、有馬の声が耳に直接吹き込まれる。その低い声は確かに欲情に濡れていて、さっき
いかされた時のような意図的につくられた声ではない。
「中が、ひくひくして、絡みついてくる、みたいで……」
 激しく動きながら途切れ途切れに呟くのが、内容と声とも相まって余計にいやらしい。突く角度を変えざまに耳朶を
ぺろりと舐められて、国枝は思わず有馬の背中に爪を立ててしまう。有馬は少しも動きを緩めず突いてきて、その度
にあがる声をもう抑えられない。
「ん、う、んっ、んっ……う、ぁ、あ、あぁ……ッ!」
 強く、強く有馬の体を抱き締める。男の体は骨張っていて、抱き締めてもちっとも心地良くないのに、ただその体温に、
汗に濡れた皮膚に、縋り付かずにはいられなかった。
「……国枝、爪、痛い」
 返事のできる状態でもなければ、要求に応えられる状態でもなかった。国枝は繋がった部分から沸き上がってくる焼
け付くような官能を体中で味わいながら、有馬の動きに応えるようにただ夢中で腰を動かす。
394オリジナル 若さと馬鹿さを足して二乗 9/9:2008/11/14(金) 21:30:33 ID:f4OXQz7M0
「……お前、気持ちよさそうだ、な……っ」
 有馬の声にも余裕がなくなってきている。有馬の手が、さっき達したとは思えないほどがちがちに硬くなっている国
枝のものに触れてきた。
「え、あ、駄目だ……っ! ん……っ、有、馬、あぁ……っ!」
 有馬は根本から先端まで強く擦りたてながら、その動きと同調するように腰を突き動かしてくる。国枝は内と外から
攻め立てられて、狂おしいほどの快感に翻弄されながら高みへと昇りつめていく。
「有馬、俺、もう……んっ、あっ、ああ、ああぁ……ッ!!」
 脊髄が痺れるような感覚を味わいながら、国枝は声をあげて達した。次いで有馬も国枝の奥に精を放ち、二人分
の荒い呼吸と雄の匂いが、殺風景な部屋の空気を淫らに染め上げていた。


 事後の濃密な空気の中、二人は二匹の獣のように体を折り重ならせて互いの息を感じている。
「……ありえねー……」
 有馬の体の下で、国枝が腕で目を隠すようにしながらぼそりと呟いた。
「何でこんな……今まで、痛いばっかだったのに……」
「体が……慣れて、きたのと、ローションと、あと俺のおかげだろ、感謝しろ」
 息を整えながら言う有馬の顔を、国枝は少し腕をずらして精一杯睨み付けてくる。
「次俺がジャンケン勝ったら、ぬるぬるのぐっちゅぐちゅにして思いっきり突っ込んでやる……」
 半分涙目になっている国枝の頭を、有馬はにやりと笑ってぽん、と叩いた。
「勝ったら、な」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
395風と木の名無しさん:2008/11/14(金) 22:36:14 ID:c7jloMg70
>386
萌ーえーたー!!
タイトルのセンスも好きだー
この二人がこれからどうなっていくのか見てみたいな
GJ!
396北の王求団 31×前53:2008/11/15(土) 00:37:09 ID:lTj8K9ujO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
北の王求団31×前53(なってしまった)です。

取れーどネタなので、苦手な方はスルーをお願いします。
397北の王求団 31×前53:2008/11/15(土) 00:40:19 ID:lTj8K9ujO
ああ、これ剃らなきゃダメなんだよなぁ。

なごり惜しげにあごを撫でる。もう、髪は黒く染めた。
球団から告げられて、ばたばたと用意をしていたが、今が一番実感している。

おれ、明日から居人に行くんだ。

なかなか踏ん切りがつかずにもたもたしていると、後ろから囃し立てるように声が飛んできた。

「それ、剃ったらガキっぽくなるよなぁ。そりゃあ剃りたくねえよなぁ」

むっとして振り返る。そこには、笑ってはいるが複雑な顔をしたえいちゃがいる。
腕の包帯がまだ痛々しい。

「なに、わざわざ来て、そんなこと言いに来たんかよ」

えいちゃはそれには応えずに俺の後ろに立ち、ぎゅっと抱きしめた。

「未練がましいなぁ。俺が剃ってやろうか?」

言いながら、声が震えてる。腕に力が入る。鏡越しに見る顔は笑っているのに。

「……うん、そうだな。そうしてもらっかな。えいちゃに甘えられんのも、しばらくねぇだろうし」

そう言ってえいちゃの方へ向き直る。顔を見合わせると、どちらからともなく相手の身体に腕を回し、キスをした。
最初は少しだけ、ゆっくりと。そのうち唇を合わせる時間が長くなり。
離れがたくなる前に、俺はえいちゃから身体を離した。

「剃って」

えいちゃは俺のあごに手をかけると、その髭を剃り落とした。
398北の王求団 31×前53:2008/11/15(土) 00:42:37 ID:lTj8K9ujO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

勢いで書いてしまった。後悔はない…っ(つД`)
399オリジナル1/ 4:2008/11/15(土) 01:40:00 ID:ySySoYsg0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
オリジナル。現代もの

井戸水で冷やしたスイカみたいなつめたいキスだった。
三鷹は志井と交わした別れのキスを思った。
交際期間1年半。熱愛ではなかったがよく冷えた関係はとても好ましかった。
運命の人にめぐりあうまでの仮の恋人。三鷹にとって志井は「繋ぎの男」だった。
おそらく志井にとっても三鷹はそういう男だったはずだ。
熱いキスは一度も交わしていない。
志井とのキスは、いつだって二人の関係そのものの様に心地よく冷えていた。
セックスも男同士という点を除けば、いたってノーマルなプレイばかりだった。
志井に別れを切り出されたとき、何の感慨もわかなかった。
400オリジナル2/ 4:2008/11/15(土) 01:40:46 ID:ySySoYsg0
 志井と別れた翌日、三鷹はセフレとホテルで待ち合わせ、バーで飲んだあと寝た。
最中にキスをした。生ぬるいキスだった。
 事後、シャワーを浴びた。風呂上りに冷蔵庫のビールを飲んだ。
よく冷えたビールのきめの細かい泡に志井のくちびるを思い出した。
薄いくちびるだった。
美しい口元に小さなほくろがあった。左端だったか右端だったかは思い出せなかった。
401オリジナル3/ 4:2008/11/15(土) 01:41:16 ID:ySySoYsg0
 1年半前、夜の街で出合った時、貧乳の美女が男装をしているのかと思った。
心臓が動悸した。麗しい男というのを生まれてはじめて見た。
 見た目は本当に好みだった。
ちょっとした好意以上のものは最初から最後までずっとあった。
決め手が得られなかったのは、くだけたところのない志井の高雅さが
本当につまらなかったからだ。
無口で無愛想で、とにかく歯を見せない男だった。
すべすべの白い歯をはじめてみたのは結合中。
上になって顔を見下ろしていたとき、小さく喘ぐ口から
ちらっと見えたそれをきれいだと思った。
402オリジナル4/ 4:2008/11/15(土) 01:41:48 ID:ySySoYsg0
(この俺が別れた男のことを思い返している)
その事実に三鷹は激しい心の動揺を覚えた。
(志井は大事な男だったらしい)
自分のことながら、まだよく把握できていないけれども、
漠とした、しかし大変大きな喪失感に三鷹は唖然とした。
とりあえず、いま志井を思い返している。それが会いに行く理由になる気がした。
三鷹は先に帰ることをセフレに詫び、ホテルを出た。そして走った。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
恋のはじまりはじまり
403バ/チ/ス/タ 義兄×義弟 1/7:2008/11/15(土) 01:55:39 ID:a0JyXK7U0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

古い傷痕に桐生が恭しく口付けるのが合図だ。神聖な儀式のような
空気を纏わせながら、淫らな行為に繋がっていく狭間の時が一番
恥ずかしい。涼は羞恥を顔に出さず、動く気流の後頭部をじっと
見下ろしていた。

薄い唇が傷から手首に向かい、掌の柔らかい部分を啄んでから
指を丁寧に舐めていく。一本一本丹念に、弱い関節や指の股は
舌先を尖らせてくすぐった。

「ふっ……」

息を乱し始めた涼を一瞥もせず桐生は手の愛撫に専念する。
涼の手は滑らかで、指の腹は柔らかい。少なくとも指の皮膚はとうに
外科医であった過去を忘れてしまっていた。そこを口の中に含まれ
舌先や粘膜でいじられると、腰が震える。傷痕から右手にかけてに
桐生を感じる機能が加わるようになって久しい。


「義兄っ…」

小指に歯を立てられたのと同時にがくりと涼の膝が折れる。すかさず
崩れる細い身体を桐生が抱き留め机に押し付けるようにした。逃げる
気など始めからないのに退路を探すのはただの癖だ。
404バ/チ/ス/タ 義兄×義弟 2/7:2008/11/15(土) 01:56:44 ID:a0JyXK7U0
「もう濡れてる」

緩んだウエストから忍び込んだ指が先端のぬるつきを確かめるように
撫でる。わざとゆっくり扱くのは、涼の身体が素直になるのを待って
いるからだ。もどかしい刺激に焦れ、義兄の目論見通りに腰を動かすと
甘い痺れが走る。桐生の手と自身の腰に追い上げられ、そこはすぐに
濡れた音を立て始めた。

「は、あ…っ」

一度目の吐精はいつもたわいない。机の縁をきつく掴んで、涼は
程なくして桐生の手を汚した。ここから先どうするかは桐生次第だった。
手と口で一方的に涼を悶えさせるだけで終わることも少なくなかった。
405バ/チ/ス/タ 義兄×義弟 3/7:2008/11/15(土) 01:57:59 ID:a0JyXK7U0
「痛っ」

虚脱して全体重がかかったせいで尾てい骨が机の縁にえぐられ、
嫌な音を立てる。鈍い痛みに思わず声が漏れた。

「リョウ?…ああ、悪い」

打ったところを撫で、詫びながら優しく抱きしめられる。
何だかいたたまれなくて涼は桐生の股間をまさぐった。そこは
スラックスを押し上げていた。

「義兄さんも…」

身体で桐生を押し、椅子に座らせる。跪き、視線を頭頂部に感じながら
前立てを開いた。お互い抗うそぶりで初々しさを演じて見せるような
歳ではない。下着から取り出した性器に口付け根本を刺激しながら
舌先で形をなぞるとぐんとかさを増すそれを口に含んで頬の内側で
擦り、視線を上げる。桐生はひじ掛けにもたれるように身体を傾いで、
頬杖をついている。額に張り付いた髪を掬う指先が熱くて、
めまいがした。

「ふ…っ」
406バ/チ/ス/タ 義兄×義弟 4/7:2008/11/15(土) 01:59:05 ID:a0JyXK7U0
独特の味が広がり始めると、下肢の奥が甘く疼く。このぬるつきが
敏感な場所を濡らす感触を身体が思い出していた。たまらず指先に
唾液をまぶしてズボンの中に手を入れる。後ろにねじこんで浅い
ところを抜き差しすると、口内に唾液が溢れた。

「ふっ…んん…っ」

男のものをしゃぶりながら自分の後孔を慰める姿を想像するととても
正気ではいられない。考えないように行為に没頭していると、
桐生の指が肩に食い込んだ。

「リョウ、もういい」
「ん…まだ…」
「駄目だ」

腕を掴まれ、強引に立たされる。ファイルの詰まったキャビネットに
縋り付くと、すぐに後ろから押し入ってきた。

「ア……っ!」

自分で育てたものに粘膜を擦り上げられ、嬌声をあげそうになる。
慌てて唇を噛み締めると頭とキャビネットの間に桐生の腕が
差し入れられた。おずおずと白衣に唇を押し当てると、ゆっくり
律動が始まった。
407バ/チ/ス/タ 義兄×義弟 5/7:2008/11/15(土) 02:00:15 ID:a0JyXK7U0
「んっ…んんっ…」

激しく貪るのではなく、快感を飴玉のようにゆっくり舐め溶かして
味わう情交は真綿で首を絞められるように甘く苦しい。桐生が
動くたびに足にまとわりつく下衣が擦れ、サンダルがキュッと鳴り、
ベルトの金具が音を立てる。その一つ一つが涼を追い詰めていくが、
彼を一番興奮させる音はこれらではなかった。

「…っ」

背中にのしかかる桐生が色っぽく声を掠れさせる。腕の白衣に
噛み付いてあげかけた喘ぎを必死に堪えると、突き上げが強さを
増した。派手にスチールのきしむ音に心臓がひやりとするが、すぐに
桐生の生み出す熱にあぶられてどうでもよくなる。

「はっ…あ……ん…んぅ…!」

桐生の胸が熱い。熱情に煽られ、涼は自ら腰を揺らして快感を貪った。
中の桐生がぶるりと震え、今にも弾けそうだ。

「リョウ…っ」

耳殻を唇に挟んだまま名を呼ばれ、涼は全身を激しく震わせ、
中にいる桐生を締め付けた。桐生は涼の肩に、涼は桐生の腕に
顔を埋めてほぼ同時に果てた。
408バ/チ/ス/タ 義兄×義弟 6/7:2008/11/15(土) 02:01:26 ID:a0JyXK7U0
「…職場にシャワーがあるのも善し悪しだね」

息を調えながら振り返り、キャビネットに背を預けると熱が金属に
移っていく。緩慢な動きで額に張り付いた髪をかきあげる間に桐生は
すでに身づくろいを終え、タバコに手を伸ばしていた。そういえば
あまりキスをしていない。ふいに口寂しさを覚えたが、それを態度に
出すことはなかった。

「一緒に入るか?」
「馬鹿馬鹿しい」

桐生の横を素通りして洗面台の蛇口をひねった。冷たい水で
顔から欲情の膜を流すと、苦々しいものが胸に残るのはいつもの
ことだった。罪悪感や背徳感といった分かりやすい負の感情で
あったなら、そのどれかに納得して句切をつけられる。しかし
いつしかどこからどこまでが自分の意思で、どこからが義兄の
ものなのか涼には判別がつかなくなっていた。身体を繋げたことで
心にもバイパスが通ったのだろうか、そんなことをちらりと夢想しては
自嘲する。その繰り返しだ。
409バ/チ/ス/タ 義兄×義弟 7/7:2008/11/15(土) 02:02:56 ID:a0JyXK7U0
(…苦しい)

この身はすでに桐生に順応している。深海魚と同じだ。人がぺしゃんこ
になる程の高水圧下の世界に適応した生き物は、逆に低圧では
生きられない。桐生に窒息しているのを自覚しながら、それなしで
生きていける自分が涼には想像出来なかった。

「…何を考えてる」

いつのまにか背後にいた桐生が鏡の涼を見据える。
視線の先にいるのは涼だろうか、それとも桐生自身だろうか。
こうしていると涼が鏡の向こうから桐生を見ているようだ。まるで
桐生の鏡像であるかのように。弱さを見せれば桐生にも影響する。
だから涼は迷う暇がない。

「別に」

俯きたくなる衝動をこらえて鏡の中の男に答えると、涼は振り返り
桐生の唇を塞いだ。待ち侘びたように結合を深めてくる唇が憎らしくて
侵入してくる舌に甘く歯を立てた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

初投稿なので不手際などあったら申し訳ない。
お目汚し失礼しました
410風と木の名無しさん:2008/11/15(土) 02:28:04 ID:ygKZhALQ0
>>403
乙です!!
起きててよかった!
義兄カッコヨス義弟カワユスw
性的かつ複雑な関係にドキドキした(*´Д`)w
411風と木の名無しさん:2008/11/15(土) 02:37:29 ID:qJDKCRB30
>>403
GJ!
依存関係の義兄弟萌だv
ドロドロした感じがすごく“らしく”て良かった
412風と木の名無しさん:2008/11/15(土) 03:59:09 ID:8+u2hpm50
>>403
超ありがとう!ドキドキしました。凄くいいです大好きです
義兄弟エロいを再確信いたしました。
413風と木の名無しさん:2008/11/15(土) 11:52:21 ID:XJrmjdNt0
>>403
超GJ!!!
萌えた! ありがとう…!
414風と木の名無しさん:2008/11/15(土) 19:54:07 ID:t+coQGE4O
>>399
萌えた。大人な雰囲気がたまらん
続きが読みたい(´Д`*)ハァハァ
415風と木の名無しさん:2008/11/15(土) 20:31:21 ID:XEWJBQgyO
>>403-409

ネ申
ありがとう!禿た!
416A/C0 0/0:2008/11/16(日) 00:00:54 ID:gd/M6QAq0
南無子さんちの戦闘機シミュ、シリーズナンバー0 妖精×鬼神←フラグ男
M14〜15くらいの時期想定。


AWACSより全機へ。
今回のミッションではスルースキル兵装が不可欠となる。
捏造・自分設定・黒PJ・アホの子鬼神・不快文書などの危険空域を突破しなくてはならない。
嫌なもの見ても忘れられるだけのスルースキルに自信のある者だけが参加するように。
その他の者はすみやかに基地に戻り、次の萌えを待て。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
417A/C0 1/4:2008/11/16(日) 00:02:15 ID:gd/M6QAq0
「すみませんでした…」
どちらかというと大柄な体をかがめてしょげている様子は、まるで大型犬が飼い主に叱られると思って耳を伏せているようで。
対地で全然戦力にならなかったこと。さらに、一応平均以上だと周囲に思ってもらっている対空でも今日は2度も救われたこと。

「いい。気にするな」
サイファーの声からは本当に咎める色は窺えず、その事がPJを内心かえって焦らせた。
今の彼にとってはまだ、「あのこと」以外はどうでもいいこと…というより、あのことで頭の中が占められていて他のことの介入する余地がないのだ。
まだ早いだろうか?それとも?
そろそろ彼にも、もういない元相棒以外にも目を向けてもらわねば。
青臭い悲しみに足をとられてあげくに彼を壊し、それによって手に入れようとするあんな奴のことなど、いつまでもかかずらわっていられては困るのだ。
今はあいつではない、自分が「ガルムの2番機」なのだ。

「次も…」
「ん?」
遠慮がちな小さな声で、でも意を決したように問いかける。
「次も、一緒にあがっていいですか。俺は、まだあなたの僚機でいられますか」
「…ああ」
ほんのわずか空気がやわらいだ。「相棒」と言わず「僚機」と言ったのは正解だ。
「今度は、足手まといにはなりません。俺は絶対に落ちません。ちゃんと任務を果たしてあなたと一緒にもどります。だからっ…」
「わかったよ。がんばれ」
肩を軽くたたかれ、彼のエースは自室の方へ消えた。
食堂へは行かないらしい。
418A/C0 2/4:2008/11/16(日) 00:04:23 ID:gd/M6QAq0

少し大きめのドリンクカップのせいでバランスの悪くなった夕食のトレイを、無理矢理片手で支えてPJはサイファーの自室のドアをノックした。
予想通り返事はない。ノブを傾けてドアを押してみると、案の定簡単に開いた。
彼は以前から自室のドアをロックするのを忘れる。だからあいつはいつも我が物顔でこの部屋に入り浸っていた。
部屋を離れる時は大体きちんとロックをするのに、在室中にロックをしないのはあいつが来るからだろうか。
そんな風に想像して胸が焼けたこともあったが、やはり単なる癖だったのだ。
少し胸がすく気分で、PJはわずかに口角をあげた。彼が未だあいつの不在を認められずドアを開けているのかもしれない、という考えは腹の底に押し込めた。

眠っているかもしれない、という予想ははずれた。
サイファーはソファの端に座って膝の上に置いた本をめくっていた。向かいのテーブルにはスコッチのボトルとグラス。水は見当たらない。
「…PJ?」
サイファーが顔をあげた。

強烈なデジャヴュ。

ライトのあたるソファの端は、本をめくるピクシーの定位置。
2人で―ごくまれにPJや他の仲間も混じって―酒を飲んでいても、実はかなり酒に弱いサイファーはいつも早々に睡魔に襲われて、ソファの残りを占領してピクシーにもたれて眠りこんでしまう。
そうするとピクシーはあらかじめ近くに置いておいた本と空調のリモコンに手を伸ばして膝の上に本を広げ、室内の温度を少し上げる。

こうしてサイファーの自室を訪ねた時、何度も何度もそんな光景に出くわした。
眠り込む相棒を傍らに、部屋の主のような顔をしたあいつに、「PJか。どうした?」と声をかけられたことも、もう何度あったかなんて思いだせない。
そんな時、自分はいつもの「明るいクロウの3番機」の顔を、ちゃんとできていただろうか。
自分の焦がれてやまないものをさも当然のような顔をして傍らに置いている男に、ひきつらない笑顔をみせるなんて、できていたんだろうか。
あいつは全部知っていたんだろうか。自分の憧れ、執着、想いを全部。
全部知っていて、それでもサイファーに近づくのを許したり、自分の傍に彼を置いて行ったりしたのは、自分にはどうあがいても勝ち目はないと、所詮サイファーはあいつの物なんだと、そう確信していたからなんだろうか。
419A/C0 3/4:2008/11/16(日) 00:06:43 ID:WyaHK/MR0
「PJ,どうしたんだ?」
重ねて声をかけられてはっと我にかえった。トレイを持つ手が少し震えて、食器同士が軽い音をたてた。
「…いえ、今日、夕食召し上がらなかったでしょう?厨房で心配してましたから、僕が配達を任命されたんです」
不自然にならないよう細心の注意を払って軽く微笑んで見せ、テーブルのボトルを端に寄せて食事のトレイを置いた。
「飲むにしたって、なにか食べながらじゃなきゃ胃に悪いんですよ。『カロリーはアルコールで摂るから大丈夫だ!』が口癖の僕の伯父の胃痛の話、聞かせてあげましょうか?」
「いや、遠慮しとく」
彼は少し笑ってくれたが、トレイに手を伸ばそうとはしなかった。
彼が本を読んでいる所なんて初めて見る。軽い活字中毒の気のあった元相棒と違って、彼は新型機の仕様書すらまともに読もうとはしなかった。
それでも彼は必ずどんな機体も初フライトから10年来の愛機のようにあやつった。
それは、彼の天才性というよりもむしろ、あの鉄の翼達の方で彼を愛してやまない、そんな風に見えた。

「何、読んでるんですか?」
拒絶のそぶりがわずかでも見えたら撤退だ、そう自分に言い聞かせながらPJはさりげなくサイファーの横に腰かけた。
「ん?いや、別になんでもない」
そう言ってしおりも挟まずに本を閉じた。大きくはないその動きに合わせてアルコールの香りがただよった。
(かなり酔ってる?)
そういえば、サイファーが酔っ払っている所はほとんど見たことがない。そんなに皆と飲む方ではないし、飲むとすぐに寝入ってしまう。
もはや残りわずかになっているスコッチのボトルに、最初どのくらいの量が入っていたかは不明だが、ミッション後でかなり水分が失われた所に水も入れないで飲んでいたとすると…。
これはもしや泥酔の域ではないのだろうか。
「今日は大変だったんだし、早く休んだ方がいいですよ。できれば軽く食べて、それからきちんとベットに入って寝てください」
「ああ…」
生返事はするが、何もない宙をぼんやりと眺めているだけで動こうとはしない。
420A/C0 4/5…計算間違えたorz:2008/11/16(日) 00:09:29 ID:WyaHK/MR0
PJがそこにいるという事も、ほんの表層でしか意識していないのかもしれない。
「サイファー!」
自分を見ないサイファー。笑顔を見せたり、気軽にからかったりピンチで助けてくれたりはするけれど、心の奥までは決して入れてくれないサイファー。
怒りのような、悲しみのような、凶暴な愛しさを抑え込んで、ただ彼を崇拝してやまないだけの後輩の顔をして言った。
「ちゃんと休んでください。結構飲んでるんでしょう?上層部も傭兵仲間も、どんどんあなたを頼ってあなたの負担が大きくなってるんです。それでなくても大変なんですから、せめて体調くらいは万全に…」
「PJ」
ふっ…と、サイファーの瞳がPJを捉えた。
酔っているはずなのに、濁りのない瞳。
「お前も…隠すんだな」
「…何をです」
正面から見つめ返し続けるのは、正直かなりの胆力を要した。
「怒ってるのに、怒らない。腹立てても笑うんだ」
「…え?」
「いらついて怒ってるみたいだから『怒ってるのか』って聞く。でも絶対別に怒ってない、なんでもないって言う。だからこっちはそうなのか、気のせいかって安心するんだ。
なのに、本当はいらついて怒ってる。ちゃんと言ってぶつけてくれればいいのに、たまりに溜まってから爆発して行っちまうんだ。そんなのはずるい。言い訳も、ゴメンも聞く余地がないってそんなのは…どうしようもない…」
「ピクシーの事ですか」
サイファーはついと目をそらした。
「ピクシーの離脱はあなたのせいじゃありません。あの時の無線は僕も聞いてました。ちゃんと理由があったじゃないですか」
「あいつなりに色々考えてたみたいだ。でも俺に怒っていたのも確かなんだ。だってあの時・・・」
サイファーは口をつぐんだが、『あの時』がピクシー離脱のあの日を指すのではないと察しはついた。
ウスティオ解放以降、ピクシーが悩んでかなり煮詰まっていたのは傍目にも明らかだったから、救いを求めたピクシーの言動もなんとなく想像がついた。

それにしても、向けられた苛立ちの原因を、ただただ自分に不満があったのだ、怒っていたのだとしか読み取れないとは。
なんとまあ、まるで子供のようだ。鬼神とまで呼ばれた人が。
少しの「好き」と「嫌い」、残り沢山の「どうでもいい」。対象を見事に単純化している。
421A/C0 5/5…スミマセンスミマセンorz:2008/11/16(日) 00:10:27 ID:WyaHK/MR0
数少ないからこそ強くなる、その「好き」…誰も入れようとしなかった心の内に初めて入れた「相棒」が突然自分のもとを離れて、混乱し、おぼつかないまでも思い悩んでみているのだ。

「僕は怒ってなんかいません。本当に本当です。少なくとも、あなたに怒ってるんじゃありません。今も・・・そうですね、少し怒ってました。あなたが少し参っているように見えて、その原因を色々考えたから」

そうだ。怒りの矛先は彼に向いているのではない。彼が自分を見ない、その原因に向いているのだ。

「疲れているから、悪いように考えてしまうんです。さあもう寝てください。しっかり寝て、そして気持ちを切り替えて。空にあがればまたいつものあなたです。誰よりも綺麗に飛んで、誰よりも強い」
肩を抱くようにして立たせ、ベットに横にならせた。呂律も顔色も全く普通だったが、実は限界近かったのかもしれない。
少し痛いような表情で何かをつぶやき、すぐに寝息を立て始めた。

楽なようにシャツをくつろげてやりながら、彼の崇拝者、彼の偶像の顔を見つめた。
どうやってピクシーが彼の心に入り込むことができたのか、わかった気がする。
これは思いの外簡単にいくかもしれない。

「俺を見くびってましたね、ピクシー。でも多分後悔することになりますよ」

PJは立ち上がり、胸元と額とでしばし迷い・・・(唇ではいささか不都合な事態になると予想されたのだ)額に軽い、でも少し長いキスを落とした。

「おやすみなさい。よい夢を。あの男の出てこない夢を、ね」
常には見せない昏い笑みをライトを消す事で隠し、PJは部屋を後にした。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

酔った勢いでやった。
後悔は無茶苦茶するだろうが醒めた後にすることにする。
誰かピクサイでR18以上書いてくれたら神と崇めることにする。
とかほざく私を、愛しのMTDちゃん、音速で連れて逃げて!!
422オリジナル えせ時代劇風 0/7:2008/11/16(日) 01:35:17 ID:vo/ZmYVbO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
遊郭の番頭さんと化粧師さんの話の続きで。
そしてまだ色々続く、かもで。



色街での生業をしているくせに、日ごろよりどことなく日焼けしているその肌を、不思議には思っていたが
合点がいった。釣り道楽なのは初耳だった。
ひどい風邪をひいたと噂に聞いて、ここ数日その化粧師の姿は廓のどこにも見かけていなかった。
真っ昼間に使いに出るのは久しぶりだ。廓仕事は別に嫌ではないが(慣れだ、単に)、それでもひとりてく
てく商家のあたりを歩くのは、いい気晴らしになった。
天高い青空が、日差しの温さを助長する。そういえば遊女の姐さん方の衣替えも、すっかり終わっていた。
商家の続きから渡し場への橋の上から、真下の釣り人が見えた。さらさら日の光が川面をせせらいで、こん
な明るい中に釣られる魚がいるとしたら、それはよっぽどの阿呆だ。それを釣ろうとしている物好きとはど
んな奴だと見下ろしたとき、その男が顔を上げて目が合った。
「よお、あんたか」
例の化粧師は、ちょいちょいと利き手で仕掛けを弄りながら、細い目をさらに細めて橋の上に声をかけてき
た。見覚えがあるはずだ。
423オリジナル 1/7:2008/11/16(日) 01:37:26 ID:vo/ZmYVbO
もうすっかり袷にかわったというのに、まだ麻衣だ。そのせいで風邪を引いたのではないかと眉をひそめる。藍
に近く洒脱に染められたその色は、よく似合ってはいるが如何せん寒々しい。
「あァ、頼まれもんだ。ついでに用足しでな」
「あんたが使いに出るのか。珍しいな」
「たまにはな。それよか、病はいいのか」
「ああ?まあ、かれこれ三日はぶっ倒れてたが…」
今はこのとおり、よっとまた、竿の先の毛羽立った仕掛けをひょうおっと放りやる。橋げたから降りてきた
こちらをちらりと見やって、冗談じみた声をかける。
足袋も履かない。遊女のようだ。
「姐さん方が、寂しがってるか?」
そう笑いながら片手の風呂敷包みをいぶかしげに見上げてくるので、最近座敷へあがるようになった振袖新
造の名を言った。さらに、今の主人が一代で名を上げた呉服問屋の名を告げると、化粧師は話に乗ってきた。そ
この若旦那、背の高い優男が、最近その新造に入れあげているのは、この男もよく知っている。
新造から馴染み客への文の使いというのは、本来なら若い衆のうちもっと下っ端の仕事ではあるが、丁度付
け馬仕事のついでもあり自分が赴くことになった。
424オリジナル 2/7:2008/11/16(日) 01:39:12 ID:vo/ZmYVbO
新造の文に無邪気に喜ぶその若旦那は、日の当たるところで見ればますます優男で、ちょっと腹のどこかが
むずむず疼いたのはここだけの話。
そして「ご新造さんに、どうか」との言伝ものを、文の代わりに手渡された。やれやれ、色男の振る舞いは
時として面倒だ。
その問屋は、化粧師の馴染みらしい。呉服や化粧については当たり前だが化粧師は詳しくて、新しい品物が
入れば見せてくれと、いくつもの問屋に顔をきかせている。出入りの小物売りから簪を買うより、この男の
口利きのほうがよっぽど物がいいと姐さん方にも評判だ。
「まああのぼんぼん、懐具合は保証するが、ちょいと野暮だ。のぼせあがってんじゃねえか」
言って化粧師は何とも言えぬ笑みを浮かべた。己が手塩にかけた弁財天女(とこの男は言う、よっぽどのぼ
せ上がっている)の手練手管に骨抜きにされるであろうと予見しつつ、それを楽しむ風情がある。この男も、
遊郭では搾取する側だ。
「あんた、先月の初会の具合は見たか」
「いや」
「若旦那もあのあまもよ、かちんこちんで…全く、どっちが遊興しにきたかわからねえ」
しかしからから笑う声姿に、これまた一部の嫌味ったらしさもないのが、この男の特徴でもある。
425オリジナル 3/7:2008/11/16(日) 01:41:00 ID:vo/ZmYVbO
「まるで節句の女雛、男雛みてぇでよ、ありゃ傑作だった」
その新人の振袖新造は、かむろ時代からよくよく気にかけていたと見えて(これも、化粧師ゆえの気遣い
でだ。断じて男女の意味ではない)、座敷へあがるときには昨今珍しいくらいこの男が気を張った。女将も
親父もまったく任せっきりで、かれこれ小半時は仕度に費やしていたものだ。髪結い、櫛、帯、もちろん化
粧も、この男がすべて手にかけるというのは珍しい。
その甲斐あってか新造には、あっさり馴染みの客がついた。件の若旦那だ。金払いよし見目もよし、遊びな
れておらず花代を値切ることもしない。廓としてもほくほくものだった。
「しかしこれで、貸し一つだな」
「何だ?」
「俺は自慢じゃないが、化粧する女は必ず売れるンだ。あんた、逆に張ったろう」
そんな賭けには覚えは無かった。風呂敷包みを抱え込んで反論すると、待てと不意に声が大きくなる。仕掛
けがぐいと引かれて、川面に飛び散っている。
「鯉かっ」
引き上げた竿の先にびちびちはねる黒々した魚を、化粧師は一種驚いたような顔で見つめた。当たるじゃね
えか、珍しいとひとりごちる。
426オリジナル 4/7:2008/11/16(日) 01:43:44 ID:vo/ZmYVbO
さやさやと周囲の柳葉を揺らす風が、この男の結わえもしない中途半端な長
さの髪を、一緒に揺さぶって跳ねさせた。
この見た目のおかげだ、まともな仕事にありつけないのは。それは口に出さないが。
「って、わけだ。あんたは俺に貸しがあるわけだが」
空っぽだった魚篭(やはり)に今日唯一のあたりを押し込み、ぱっぱと手を払いながら化粧師は腰を上げた。
その手つきや腰のあたりすら、色街で見る具合とはどことなく違って、意味もなくどぎまぎする。素だと思
えばなぜか息苦しい。
「おい、認めたわけじゃねえぞ」
「固ェことは、言いっこなし。あんたもこれ、嫌いじゃないだろ」
付き合いなと言い、くいっと杯をあおるしぐさをする。細い目に、悪戯じみた表情が見え隠れする。
酒ならいけるくちだ。病み上がりを気遣わないわけではなかったが、酒は百薬の長と申しましてェとまくし
立てる化粧師に連れて行かれた小料理屋は、どうやらそれも奴の行き着けらしかった。
暖簾をくぐったときの亭主の声からして、化粧師と顔なじみだとわかる。化粧師は先ほどの釣果を亭主に放
り投げ、小太りのかみさんに二言三言声をかけただけで、店の一角へどっかとあがりこむ。
427オリジナル 5/7:2008/11/16(日) 01:45:47 ID:vo/ZmYVbO
「こっちの旦那にも、俺と同じのを」
言った後で、ああ店はいいのかいと途端に気弱な顔を見せるので思わず噴出してしまった。今日は使いに出
るとのことで、親父が番台に座ると言えば、あからさまににやりと笑う。一人で酒も飲めないのかと思えば、
妙にかわいらしかった。
まだ日も落ちきらぬ。杯と突き出しが出る前も、それに箸をつけながらも、化粧師の利き手は何やらをまさ
ぐっている。杯の上から不躾に眺めれば、それに気づいてその男は軽く首を回す。何かを弄ってないと落ち
つかねえ性質で、と紙こよりで出来た花細工を見せた。相変わらず器用なことだ。
先ほどの釣り仕掛けもかと問えば、自作だと言う。そういえば聞いたことがある、と思い出す。
簪や櫛を馴染み客に贈られるのが遊女の慣わしでもあるが、店にはこの男の細工物を身につけている者も
多い。
結い上げた髪に挿し、帯止めに一つ、と化粧師としてそこそこなのは認めているが、細工師としてもこの男
それなりの顔を見せる。
それを言うと、でも釣りの腕はさっぱりで、と亭主に冷やかされた。俺が坊主なのは真っ昼間だからよ、
と化粧師は反論する。仕事がら、朝夕に早々のん気に釣り糸をたれているわけにもいくまい。
428オリジナル 6/7:2008/11/16(日) 01:47:51 ID:vo/ZmYVbO
話の具合で、あの新造のことになると化粧師は饒舌になった。入れ込んでいるな、と思った。珍しい。
また、息苦しくなる。そして杯をあおることで話を合わせる。普段から無口で通っているので、化粧師もそ
れを不自然には思わない様子だ。
馬鹿げているが、嫉妬だ。店に火が入り、他の客とさらり言葉を交わす姿を目の当たりにするだけでも、腹
の奥はどす黒くなった。自分でも驚くほどだった。
嫉妬だと、思えば逆に情けなくもあった。当然のことだ。知らぬ姿が大概だ。
色町での、そして廓でのひと時のみの付き合いと思えば、情を交わさぬだけで遊女と客の仲と変わらぬ。文
を出す新造の態度も、あの優男の喜びようも、今なら受け入れられた。
文など書く気にもなれないが、ただあんたは今どうしてる、想っておくれというのは、他人事でないとぼん
やり感じる。
「明日っからは、また世話になる」
すっかり出来上がってほろ酔いで、化粧師はどことなく弾む声で前を歩いた。裸足の草履と麻の音も、子供
のもののように聞こえる。
「女将に言っといてくれ」
「あぁ」
新造への風呂敷包みが重かった。丸い月夜に空の魚篭を振りかざす、前の男とは対照的だ。
429オリジナル 7/7:2008/11/16(日) 01:50:45 ID:vo/ZmYVbO
あんたはどうする、想う相手はいるのかい。
廓の中であんたを待ちたいようでもあり、今ここで言いたいようでもあり。
「なあ、あんた」
呼びかけに振り向いた、そこで肩に手をかけると思ったよりもしっくり馴染んだ。やや冷えた麻が身を包み、
掌におさまる。
そこで振り向いてくれなければ、諦めもついていた。
月明かりを背にしたのは自分のほうだった。口付けるまえに訝しげな目が少しだけ、見えた。
無言で、しかし化粧師の唇は、苦もなくその舌を受け入れなめずった。薄い唇がこれほどまでにうまいとは。
女のそれとは何か違って、吸い付きはしないが飲み込みやがる。
この感情には覚えがある。荒くれていた若いころのそれ、喧嘩でも命とりでも、相手の誰彼も殴り飛ばし締
め上げ、足元に組み敷いてやるという凶暴なそれ、この首を指を手首を、己の指で締め付け許しを請うよう
に名を呼ばせたい、そんなそれ。
ただそれを舌で押しやろうとしたとき、不意に化粧師の唇は離れた。すいと、水鳥が川面を渡るかのごとく
流れるままの仕草。
気が抜けて、やり場のない目つきで眺めれば、化粧師はゆっくり目を開けた。開けたところで細くいらつい
たようなその目で、いつもの声で言う。
430オリジナル 終:2008/11/16(日) 01:52:53 ID:vo/ZmYVbO
「悪趣味だぜ、あんた」
ぽうぽう、聞こえるのは夜鷹の呼び笛だろう、か。いずこかから届く。
「酔いだ」
思わず野暮な台詞を口走った。いや、酔いに似ている。何かに酔っているのは違いない。
月は出ていたが、表情のわずかな影はほとんど動いていないように見えた。予想通りだ、と自分の中で誰か
が呟いていた。
遊女のほうが、ましだ。あんたの姿を、見ずに済む。
「止せ」
とん、と利き手が手刀のように、喉仏の真上をついた。あくまで軽く柔らかい感触だったが、まるで息の根
を止められたかのように、喉は絞まった。
化粧師は肩から抜け出して、橋の方へ歩いていく。さりさりと、すべるような草履と麻布の音だけが、耳に
残った。
真綿のような感触はただ、絹にも匹敵する。その残ったものが、声を奪っていた。さりさり、離れる音を聞
きながら、影縫いですくまされたかのように、足はまるで動かなかった。
さりさり。そしてぽうぽう。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
超過してすみません。
431オリジナル1/4:2008/11/16(日) 02:41:49 ID:LgA9sNjz0
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
現代もの。きのうのつづき。


走りながらハッとした。三鷹は志井の家を知らない。
デートは常に現地集合・現地解散だった。立ち止まり、息をつく。
衝動的に駆け出していた自分を片頬で嗤う。嗤いながら携帯を取り出した。
直ぐに掛けたいのに掛けられない。ちょっと全力疾走しただけで息あがっていた。
情けない。まだ31歳だと思っていた。もう31歳かもしれない。落ち着こう。
呼吸を整えてから三鷹は電話を掛けた。
(おかけになった電話番号は現在使用されておりません)
音声ガイダンスにそう告げられ夜空を仰ぐ。
共通の知人はいない。家も職場もわからない。どうしようか?
432オリジナル2/4:2008/11/16(日) 02:42:31 ID:LgA9sNjz0
心当たりがまるでない。せめてあの店があいていればと思う。
1年半前、三鷹が志井と出会った行きつけのショットバーは3ヵ月前に閉店した。
気取らない雰囲気の、男による男同士の為の男の店だった。
仕事帰りに良く立ち寄っていたそこで、はじめて志井を見かけた夜、
一緒に飲みたいと思った。声を掛けたのは三鷹だ。
その三日後、同じ店でまた志井に会った。
小さく会釈をされ、カウンターで琥珀色の酒を酌み交わした。
433オリジナル3/4:2008/11/16(日) 02:43:53 ID:LgA9sNjz0
三日後の三日後、また店で会った。ジャケットを脱いでテーブルサッカーとダーツをした。
テーブルサッカーで負けてプラットヴァレーを奢った。
ダーツでは勝った。濱田屋伝兵衛の野風を志井が奢ってくれた。
コーンのウイスキー「プラットヴァレー」と、とうもろこしの焼酎「野風」。
「とうもろこしを主原料にしたうまい酒が好きだ」という意見の一致をみたので、
どちらからともなく次に会う約束をした。
告白はしなかったし、されなかった。何度か店で会い、流れでホテルに行った。
それからの付き合いだ。一度関係を持ってからは、ホテル集合・ホテル解散が常だった。
434オリジナル4/4:2008/11/16(日) 02:45:19 ID:LgA9sNjz0
携帯の番号さえ把握しておけば連絡はとれる。
住所、名前、職業。余計な事をきかない関係をスマートだと思っていた。
セフレが数人いる事が志井に知れたのは付き合って3週間目。
「志井」という名前を知ったのは付き合って3ヵ月目。
不実さを責められためしはない。
まとわりつかれるのが苦手な三鷹にとって、志井の淡々さは都合がよかった。
1年半の交際中、意識的に知ろうとしたり、伝えようとしなくても、
何となく知り得たり、知られたりしてしまう事は普通に幾つかあった。
なのに、住所がその中に入っていない。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
435風と木の名無しさん:2008/11/16(日) 02:47:16 ID:4rYCJP7e0
>>422
続きキタ━━(゚∀゚)━━!!!!
読み進むごとにぞくぞくします
色々続いてください! ぜひ!
436風と木の名無しさん:2008/11/16(日) 10:02:13 ID:NpEx5r+a0
>>422
うわああああ!
素敵すぎて読んでて鳥肌立ったよ

ありがとう!
437人の関係についての事例検証:2008/11/16(日) 14:44:41 ID:T/P/nb9N0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  >>322の続きだよ。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  例の2人+同い年の係長
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧  ムダニナガイヨ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 名無しはつらかったので、名前をつけました。
 ちびっ子サラリーマン=鳴戸坂国彦、友人=吉田連です。
 前半が鳴戸坂、後半が係長視点となってます。
438人の関係についての事例検証 1/8:2008/11/16(日) 14:46:45 ID:T/P/nb9N0
 いつもは暇なくせに今月はやけに忙しい。雑務に追わるとストレスも溜まるいくものだ。
 そんな時、昔から煙草の量が自然と増えるのだが、今の世は吸える場所と時間がかなり限定される。この会社でも喫煙所は
廊下の隅にある自動販売機の横だけだ。でもまあ、喫煙所があるだけだろう。
 煙草に火をつけ、限りある休憩時間をゆっくり過ごそうとしていたのに、突如かけられた声に邪魔をされた。
「何だ、煙草まだ止めてなかったのか」
 おれはタメ息をついた。その言葉が嫌というほど聞いた台詞だったこともあるし、声の主のせいでもある。
「係長には関係ないでしょ」
 同い年の上司の方を見て――いや20cm程の身長差があるので正確には見上げて言った。
「関係なくはないな。吉田からまた愚痴を聞かされるのはごめんだ」
 その名前にぐっと言葉が詰まった。係長とおれは上司と部下、同期という関係の他にもう一つ接点がある。それは共通の知り合い
――吉田連の存在だった。係長が連と高校の同級生でおれはあいつと大学が一緒なのだ。会社に入ってからその事を知った。
「あいつ、係長にも文句言ってるのかよ……」
「心配なんだろ」
「おれは心配も度が過ぎるとウザイっつーに」
「まあ、世話焼きな奴だしな。健康に悪いのは間違いないし、この際禁煙したら?」
 係長との会話は仕事関連を除いては連の事がほとんどだった。それ以外で話す事はあまりない。というか必要以上に関わりたくなかった。
 苦手なのだ、正直言って。連もやたらと人を振り回す奴だが、係長もこっちのペースを異常に乱す。多分生理的に合わないのだと思った。
「できたら、とうの昔にやってる」
「やろうという気がないんだろそれは」
「少しはあるよ」
「どうだか……一人だと難しいだよな。嫁でもいればいいんだが……あっ吉田が嫁になればいいんじゃないか?」
「死んでもごめんだ」
 冗談じゃない。今でさえウザイのに、あいつと毎日一緒なんて想像しただけでうんざりだ。それ以前に連、男じゃねえか。
439人の関係についての事例検証 2/8:2008/11/16(日) 14:48:22 ID:T/P/nb9N0
「そうか、結構適任かもしれないぞ」
「冗談はよしてよ。これでもね。吸う量は少しずつ減ってきてるし、いきなり止めようとするとかえって吸っちゃうから地道に頑張るさ」
 煙草関連の話は決着付かない上に長引くことを経験から知っていたので、早々に話を切り上げた。嘘は言ってないしね。
 だが、これで済んだと思ったのに係長はその場から動こうとしなかった。
「まだ、何かあるの?」
「あー、うん。むしろここからが本題なんだが……」
 すこし言いづらそうに係長は話を切り出す。その時点で何か嫌な予感がした。
「この前、吉田に会ってな」
 やはり連か。おそらくおれの事でまた何か愚痴を言ったのだろう。煙草の件でもそうだが、あいつが係長に相談し、係長からおれに忠告
するという流れは今までもあった。
 頼むから直接言っても駄目だからって係長を巻き込むな。この人と対峙するのはある意味で取引先を相手するより労力使うんだから。
「へーそう。で、あいつは何て?」
「何て言ってたと思う?」
「はあ?」
 質問を質問で返さないで欲しい。てか、係長の目が嫌。何なんだよその全てを見透かしたような視線は。
 彼のこういう所が苦手だ。
「知らないよ。おれに関する愚痴だとは思うけど」
「あいつ、お前の愚痴は言ってなかったぞ。珍しく」
「え?」
 それは本当珍しい。あれ? それじゃ係長の用事って何?
 愚痴じゃないなら一体……
「お前、見合いして破談になっただろ? その後ぐらいに吉田に会ったんだよ」
 そんな事もあったね。相手の人、結構好みだったんだけどな……って、関係ないか。そういやそれを知った時のあいつ、少しおかしかったな。
次に会った時は普通だったから特に気に留めてなかった。
「で?」
「んー、酷く落ち込んでた」
440人の関係についての事例検証 3/8:2008/11/16(日) 14:49:37 ID:T/P/nb9N0
「落ち込んでた?」
「自分が嫌になったんだとさ」
 訳が分からない。ようするにおれの見合いの破談が連に何らかの影響を与えたってことだろうが、なぜその事であいつが自己嫌悪しなきゃならないんだ?
 破談が自分のせいだとでも思ったんだろうか。
「何でさ、見合いの結果は連に関係ないでしょうよ」
「吉田はお前の見合いに対する自分の受け止め方が嫌だったんだと」
「どういう意味?」
「後、こうも言ってたな。おれと国彦の関係って何なんだろうって」
「関係……?」
「そう。で、お前らの関係って何?」
 待って、ちょっと待ってくれ。情報が錯綜して上手く思考が働かない。関係? おれと連の関係って何だよ。大学の同期、腐れ縁……友達? そうだあいつ散々自分で友達だって言ってるだろうが。何で今更迷うんだ。
「友達じゃないの? 連がそう言ってるんだし」
「友達ね……前から思ってたけど、あいつ友達の趣味悪いよな」
「なっ」
 係長だけには言われたくないと心の中で即座に反論する。ちなみにおれも初めて連と係長が知り合いだと知った時、まったく同じ事を思った。
「親身にしても報われないし、変り者だし、よく付き合ってられるなと感心するよ。おれには無理」
「親身にしてくれと頼んだ覚えはないし、あいつが好きでやってるんだから係長には関係ないね。てか、変わり者はそっちもでしょ」
「でも、それは当たり前ではないんだぜ」
「え?」
 係長は声のトーンが変った。
「いつまでも続くと思っているのなら大間違いだ」
「……っ」
 ふと沸いた苛立ちを抑えるかのように煙草を灰皿に押し付ける。おれと連の事でアンタに口出しされる謂れはない。
441人の関係についての事例検証 4/8:2008/11/16(日) 14:50:19 ID:T/P/nb9N0
「そりゃまあ、物事に永遠なんてないからね。将来どうなるかなんて分からないさ」
「現状を分かってない奴に未来は見えないよな」
 一緒にして空気が重いくなった。係長の表情からは感情は読みとれない。しかし、こちらに対して好意的な雰囲気ではない事だけは確かだった。
「さっきから何が言いたい」
「言いたい事は山ほどあるよ。でも、それはおまえ自身が考える事だろうから黙っとく。ただ、吉田はお前と出会わなかった方が幸せだったんじゃないかとは思ったけどね」
 その言葉に腹の中が煮え滾るような怒りを感じた。たが、必死に冷静を装う。だって馬鹿馬鹿しいじゃないか。連の事でここまで熱くなる必要ないだろう。
「ハハっ確かにねえ。おれと会わなきゃこんなに冷たく扱われることはなかったかもな。だが、おれと付き合ってるのはあいつ自身の意思だ。アンタにどうこう言われる筋合いはないね」
 冷静にと思う割にはかなり強い口調だったのはきっと気のせいだ。さっきから人を試すような事をしてくる係長にイラついたんだ、きっと。
「たとえ邪険にされていても吉田はお前を見捨てはしないな。けど、昔からの付き合いがある身としてはあんまりあいつの悲しそうな顔は見たくない」
 昔という単語が耳つく。係長は高校の同級生、おれは大学の同期。知り合ったのは係長が先で、彼は連のおれが知らない3年間を知っている。
 それが気に食わなかった――ずっと前から。
「悲しそう……? 連のさんな顔見た事ないぞ」
「吉田はお前を心配させるような事はしないだろ。いつも近くにいるくせにそんな事にも気付かないのか?」
 一瞬、おれはわれを忘れた。
「さも、あいつを理解してる風に言ってんじゃねえ!お前が何を知ってるって言うんだ!!」
 説明のつかない怒りが胸の中で暴走する。廊下中に自分の声が鳴り響いていた。
「あー、煩い。少し落ち着こうぜ。ここ会社なんだから」
 呆れたような係長のもっともな言い分に少し落ち着きを取り戻すと同時に動揺する。連という存在がここまで自分に影響する事実に恐れが生まれ、この件を長引かすのはまずいと直感した。気付きたくない事に気付かされる。さっさと終わらせなければ。
442人の関係についての事例検証 5/8:2008/11/16(日) 14:51:27 ID:T/P/nb9N0
「ああ、ごめん。悪かった。でもさあ、おれ達がどうなろうが係長が口出しする事じゃないよね。もう終わっていいこの話。そろそろ休憩時間も終わるしさ」
「うーん、じゃあ、一つだけ聞いてもいいか?」
「……どーぞ。それで気が済むなら」
「結局、吉田ってお前の何?」
「またそれ? さっき言ったじゃん。友達だって」
「それは吉田から見てだろ。鳴戸坂はどう思ってんの?」
「……おれ?」
 係長に言われて、これまで連が自分の中でどんな位置にいるのか考えたことがなかった事を知る。だって、気付けばあいつは側にいたし、それが当然だと思っていたから考える必要なんてなかったんだ。
「おれは……」
「まっ、この場で答えを出す必要はないさ。もしかしたら一生出ないのかもしれないし、互いに」
「そっちから聞いといてそれって……。なら、係長はあいつの何なのさ」
「友達だよ一応。吉田は高校時代からの友達。そして、お前はおれの部下兼同僚。だから、つい構いたくなってしまうのさ」
「できれば、構うのは連だけにして下さい」
「つれないなあ……。ま、吉田の方が付き合いは長いけどね、お前より」
 最後がやけに強調されていた気がするが、勘違いということにしておこう。でも、やっぱムカつく。
「さて、話はこれぐらいにしてそろそろ戻るか。課長に怒鳴られる」
「そうだね。でもこれだけ言っとく」
「?」
「確かに知り合ったのはそっちが先かもしれないけど、係長はあいつの大学時代は知らないだろ。高校より大学の方が1年長いんだからな」
 早口で吐き捨てると、おれは急いで仕事に戻った。
443人の関係についての事例検証 6/8:2008/11/16(日) 14:52:22 ID:T/P/nb9N0

「……フッ、アハハハッ。面白いなー、あいつ」
 えらい速さで職場に戻った部下兼同僚の後姿を見ながら、思わず笑いが零れる。
 ちょっと鎌を掛けてみたが、あそこまで露骨に反応するとは思わなかった。まあ、おれも大人気なかったとは思うがな。だって、あまりに素直じゃないからさ。厄介な相手に魅かれたよな吉田も。
 旧友の顔を思い浮かべ、先日、吉田からの誘いで飲みに行った時の事が頭に浮かんだ。
 奴がおれを誘う場合、大抵鳴戸坂関連で相談という名の文句が付いてくる。
 会った時の表情で今日もそうなんだろうと思ったのだが、その日は少し違っていた。

「あいつさ、見合い駄目だったんだって?」
 飲んでいる途中、予想通り鳴戸坂の破談の話が出てきた。鳴戸坂が課長の持ってきた見合いに失敗するのはよくある事なので、おれ含め会社の連中は特に気にも止めてないのだが吉田は違うらしい。
「みたいだな。いつもの如く相手に断わられたって。ま、鳴戸坂も特に気にしてないだろ」
「いや、今回はいい感じだったんだよ。国も相手を気に入ってたみたいだし。だけど、向こうがワケありで遠慮したんだって」
「ふーん。そうか、それは残念だったな」
 おれが知り限り、鳴戸坂は気難しくて人間嫌いっぽい所があるので、なかなか女との交際は上手くいかない。だから、今回の見合いはあいつにとっては滅多にないチャンスだったわけか。
 それで、吉田も心配になったのかも知れない。おれらも先のことを考えなきゃいけない歳になってきたからなあ。
「うん……」
 やはり吉田の声には元気がなかった。世話焼きだねえお前も。鳴戸坂の人生なんだから本人の好きでいいと思うが、こうも結婚やら健康(主に煙草)について気にされると鳴戸坂のうんざりする気持ちも分からなくはないな。
 もういっそ吉田が嫁になりゃいいんじゃなかろうか。あ、日本じゃ結婚できないや。
「心配する気持ちも分かるが、鳴戸坂もそれなりには将来のこと考えてると思うぞ。だからあんま気にしない方がいい……」
「……そうじゃないんだ」
「え?」
 突然の否定に面食らう。鳴戸坂が結婚できるかっていう話じゃないのか?
444人の関係についての事例検証 7/8:2008/11/16(日) 14:53:41 ID:T/P/nb9N0
「おれって嫌な人間なんだよ」
……あれ? 何か話が繋がってないぞ。なぜ鳴戸坂の破談でお前が嫌な人間だってことになるんだ?
 そんな疑問をよそに吉田は淡々と話を続けた。
「破談したって聞いた時、おれ、正直ほっとしたんだ。おかしいよな? おれは国の友達なんだから、そこは残念だって思わなくちゃならないのに」
 おれは肯定も否定もしなかった。吉田も構わず思いを吐き出す。。
「自分から散々結婚の事煽っといてさ、いざそうなるのは嫌だって思った。自分勝手だよな。あいつが幸せになるのを素直に受け入れなられないなんて」
 どことなく泣きそうな顔に見えるのは、酒が入っているせいだけではないだろう。面倒な事態になった。実はいつかはこうなるだろうと予測はしていたのだが。
 おれは目の前の酒を一気に呷った。普段なら飲みすぎだと注意される所だが、注意する本人はそれどころではないし、こんな話素面でできるか。
「それはおそらくお前が見当違いをしてるからだろうな」
「見当違い……?」
「お前は鳴戸坂の友達だから、見合いに失敗したことを共に残念がらなきゃならないって思ったんだろ」
「うん……」
「まず、その前提を考え直せ」
 吉田はよく理解できないと言った顔でおれを見る。
「……何、言ってんだよ。国はおれの友達だろ。あいつは否定するけどさ」
 やっぱそう返してくか。気付きたくないのかもな。その方が平穏に過ごせるから。
「質問を変えよう。おれとお前の関係は何だろうと思う?」
「? 友達だろ? さっきから何が言いたいの?」
「よし、友達だな。じゃあ、鳴戸坂の破談をおれに置き換えてみろ。お前はどう反応すんの?」
「…………」
 鳴戸坂ではなくおれだったらきっと残念がるだろう。おれはお前の友人だから。
 要するにお前の中の鳴戸坂国彦という人間を無理に友達というカテゴリーに入れようとするからこういう事になるんだよ。
 無理すりゃ歪みが生じる。生じた歪みは限界を向かえて隠し切れなくなってくるもので、破談をきっかけに今になって表面に現れた。
 吉田にとってそれは気づいちゃならなかったもので、だからこうして受け入れられず苦しんでいる。
445人の関係についての事例検証 8/8:2008/11/16(日) 14:56:58 ID:T/P/nb9N0
「友達じゃないなら、一体何なの?」
「さあ……ひょっとしたら確実に名の付けられるものじゃないかも知れない」
 それが何であれ、おれが教えるものではないけどな。
「……なあ、だとえお前の言う通りだとしてもさ。あいつとの関係が友達でなくなってしまうと、今まで築いてきたものまで壊れてしまうような気がする……」
「かもな」
「そもそも国は別におれの事、友達とは言ってないし、おれがいなくても構わないじゃ……」
「いや、それはないから安心しろ」
 ネガティブになりすぎだ。鳴戸坂の前では絶対にそんな事言わないくせに(以前、鳴戸坂がこいつを図太いと言っていた)。
 鳴戸坂は素直じゃねえから冷たいように見えるかもしれないが、お前が考えてるよりはお前に依存してるぞ。でなきゃ、人に干渉されることが嫌いな奴が世話焼きなお前と今まで一緒にいないだろう。
「そうかあ? でもさ、ならこのままの方がいいじゃないか? 友達ですらいられなくなるのは嫌だ……」
「それはおまえ自身が決めるべき事だ。悪いけどおれからは何も言えない」
「…………うん」
 
 あれから、現在の所あいつらの関係に変化はない。それが吉田の判断だから構わないが。
 ただ、吉田の鳴戸坂への想いと鳴戸坂から吉田への想いがあまりにも違ったら、ちょっとあいつが哀れだなと感じたので(鳴戸坂は吉田と違って感情を表に出さないから分かりにくい)、向こうはどうなのかなあと余計な上にいらない探りを入れた結果が先ほどのやり取りだった。
 どうも、想像以上に鳴戸坂国彦という人間の中では吉田連という存在はでかいらしいことが分かった。ついでに鳴戸坂がおれを苦手にしている理由も何となく理解した。
 安心しな、あくまでおれは友人だからさ。それ以上でもそれ以下でもねえよ。
 やれやれ、お前ら性格とかはかなり違うが大きな共通点あるよな。肝心な事に鈍い。まったく持って面倒な奴らだ。
 歪みや葛藤を抱えながら変らぬ関係を貫き通すのか、それとも別の道を選ぶのか。どっちしろ、あいつらがごたごたを起す度に巻き込まれるのだろう。
 付き合ってやるけどさ。どっちも大事だしね。
 でもま、全ての決着がつく時がきたら、その時は嫌味の一つぐらい言ってやろう。
 それぐらいは許されるよな?
446人の関係についての事例検証 終わり:2008/11/16(日) 15:12:21 ID:T/P/nb9N0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧  実はまだ続きます。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )  次でラストの予定です。
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
4471/3:2008/11/16(日) 20:28:07 ID:E8UytRHb0
助っ人箪笥のチュウさん×スイッチ。先週のWJネタ。微エロい。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

<よくまぁこれだけ作ったな>
合成音声が部屋に届く。鍵をかけていなかったのだ。振り返るまでもないので、中馬は手にしていたフラスコを揺らす。
「爆薬以外のモンを作ろうと思ったら、こんなにできちまった」
ただの高校教師でありながら、中馬は薬品の開発を趣味としている。その道に進むことも考えたが、興味の対象がバラバラで、一つのものを真剣に研究していられない中馬には、元々向いていないものだった。
入り口のドアを閉め、遠慮もせずにずかずかと歩み寄る。ノートパソコンを常に下げている少年は、スイッチと呼ばれている。教師にも遠慮のない話し方だが、そんなことを中馬は気にしない。
<何を作ってるんだ?>
「性格を変化させる薬。おら、飲め」
試験管を渡され、スイッチは眉を顰めた。
「全部自分で試してたけどよ、さすがに疲れた。まー少しぐらい手助けしてくれや」
助ける、という言葉に、スイッチが弱いことを中馬は知っている。助けられたことのある人間は、その重みを知っているからだ。案の定スイッチは嫌そうな顔をしながらも
<これだけなら>
と言って(正式にはパソコンに打ち込んで)それをくいっと飲んだ。
「すぐには変化しねーかもしんねーな」
<どういう性格になるのか、予測はできてるんだろうな?>
「あぁ? 判断力の低下、及び本能的な行動に出る、って書いてある」
自分で書いたレポートに目を落として中馬は言った。
<書いてある?>
「元々それ飲んだらよ、昨日はいきなりぐっすり眠っちまった。ちょっと変化させたら、今度は空腹が止まらなくなった。だから気分悪ぃんだよ」
<それを変化させたものだと?>
ぷかり。パイプから煙が溢れて、中馬が頷く。
<ロクなものでは>
それだけをパソコンに打ち、スイッチが体を震わせた。中馬は時計を見て、レポートに何事か書き留めている。
4482/3:2008/11/16(日) 20:29:02 ID:E8UytRHb0
「気分は?」
実験台にしたというのに、何も言わないスイッチに対し、中馬が質問をした。しかしスイッチは動かない。キーボードの上で指が泳いでいる。何を答えるべきか悩んでいるようだ。
「明確に表現しようとしなくていい。何かないか?」
<いきぐるしい>
それだけが返された。スイッチの口と首に手を当ててみると、確かに少し脈が早くなっている。額に触れると、予想より熱くなっていた。
中馬はやはりそれを書き留めながら、更に促す。
「他には?」
<た>
「た?」
俯いたスイッチの指が、短く言葉を紡いだ。
<たった>
ペンを走らせていた手を止めた。中馬が振り返ると、平生より少し顔を赤くしたスイッチが、困ったように両手の所在をなくしていた。
「たった、って、お前。勃起したのか」
ケロっと言われて、スイッチは少し批判的に中馬を睨む。実際、中馬にしてみればそれですら実験結果でしかないのだ。
<分からない。前が苦しい>
「見せてみろ」
パソコンを無理に取られ、近くのテーブルに置かれた。手を伸ばせば届く距離なので、会話に困るようなことはない。ついでにパイプも消し、机に転がせる。
制服のボタンを外し、ファスナーを下ろした。なぜかスイッチは抵抗しようともしない。これは薬のせいか、元来のスイッチの性格のせいか、中馬は考えていた。
下着に手をかけたところで、はっと気がついて中馬の手は止まる。
「嫌なら、言えよ。無理に確認する気はねぇ」
スイッチは頷いた。その真意が読めず、中馬は首を傾げる。スイッチは自ら下着をかきわけ、己の性器を取り出した。その行動に中馬の目が丸くなり、スイッチの顔を見るが、顔が赤いことと息が上がっていることを除けば、それは普段のスイッチの顔そのものだった。
4493/3:2008/11/16(日) 20:30:11 ID:E8UytRHb0
「…なんもしてねぇのに完勃ちかよ」
揶揄するように言うと、スイッチは己の手で性器を扱き始めた。目の前で唐突に生徒の自慰行為が始まり、中馬はまた目を丸くする。
手を出すのもじっと見ているのもおかしいと感じている中馬の手を、スイッチが取る。己の性器に絡め、上から一緒に擦った。
「ス、イッチ」
頭の隅から、パチパチと炎の爆ぜる音がする。強く握り込むと、無茶苦茶に擦り上げた。ひっ、と小さな声がスイッチから上がり、中馬はなぜか口角が上がるのを抑えられなくなった。
「もっと出せよ」
首を振られた。空いた手で口唇に触れると、開きはしたが噛み締めている。親指を無理に押し込む。口が開いたが、すぐに塞がれた。スイッチが片手で中馬の手を払い、口唇を重ねてきたからだ。
コツンと触れた眼鏡が邪魔だったので、スイッチは自らそれを外す。息苦しさに離れても、また息を継いではキスをしてきた。
さすがに自ら舌を捩じ込んできた時は中馬も驚いたが、吸ってやるとすぐにいい反応を返した。限界が近いのか、少し背伸びをした脚が震えている。
「…あ」
本当に小さな声で、荒い息がそう聞こえたといっても問題はなかった。びくびくと中馬の手に精液を吐き出したスイッチは、ずるりと机にもたれた。
罪悪感と後悔で胸を詰まらせた中馬は、背を向けてティッシュを引き、手を拭く。
<チュウさん>
その背中に言葉が飛んだ。何を言うべきか分からない中馬の手が、思わず握られる。
<胸が苦しいんだ>
振り返ると、やはり真顔だった。しかしその雰囲気に、いつものスイッチとは違うものを見て、中馬は開いていた口を思わず閉じる。カタカタとキーボードの音が軽く連なる。
<鍵をかけてくれ>
あぁ、眼鏡をしてないんだ。気付き、中馬の口は考え無しに動いた。
「泣いても知らねぇぞ」
後ろ手にカチリと鍵のかかる音がした。見たことのない笑顔が近づいて、首に腕を回しキスをされる。爆ぜる音は、まだ止まない。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
スレを見てたら書いていた。
450影門 1:2008/11/16(日) 23:16:28 ID:PBnwf35Z0
↑の人のに憧れ、自分も書いてみる。
スライム×勇者 です(笑)(最後・死神×勇者)
いきなりエロから始まるのでご注意…。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「うあっ・・・ひゃぁ・・・」
なぜ私はこんなことになっているのだろうか。
確か、今日は死神がいないからのんびりしようと思って横になってたら、
スライムに手足を拘束されて…。
それでこの現状…。
「あ・・い・・やだっ・・・ひっ!?」
足の間にスライムが入り込んできていた。
あちこちを一気にやられているせいか、
妙な感じが体中を襲う。
そんなものに負けないよう、なんとか意識を保っている。
だが…。
「ひいっ!?ひやぁああああああ!やめっ!やめえっ!」
突然動きが激しくなる。
力を入れても何にもならない手足に勝手に力がこもる。
「うあああああああっ!」
叫ぶのと同時に、何か中に吐き出された。
嗚呼、嫌だ、もう。これで終わって欲しい。
「ッ・・・!な、に・・・?」
なんだか体が急に熱くなってくる。
熱い。体が熱い。体を揺さぶられると、さっき以上の感じがこみ上げてきた。
まさか、あのいれられたやつに…。
「そんっ・・・な・・・っひゃぁ!」
また体を激しく揺さぶれる。さっきの感じが続く。嫌だ。やめてくれッ…もう…。
「うぁっ・・・ああああああああああああああ!!!」

そこで失神したらしい。
451影門 2:2008/11/16(日) 23:56:22 ID:PBnwf35Z0
「うぅ・・・ん」
「ああ、おはよう」
「ああ、おはよう死神っ・・・ってええええええ!?」
ええと、落ち着け自分。
スライムに変なことされる→失神→目が覚めたら目の前に死神
ということは…。
「夢ということか!わかったぞ!」
「馬鹿かお前。そんなわけがあるか。」
「・・・だよなぁ」
ん?待てよ。失神した後、死神が連れてきてくれたってことは…。
え、ちょ、ま、もしや。
自分のあんな姿…。
「うぁ・・・ひっぐひっぐ…。」
「!?ど、どうしたんだよ!いきなり泣いて!ビックリするじゃねーか!」
「み、見られたなんてぇ・・・。」
「お前は良くあるエロの奴のショタっ子か…。」
ああああああ!顔を恥ずかしすぎて見れないっ!
「ばーか。俺はお前が倒れているのを見つけて、もってきたんだよ。」
「え?」「だから、お前の変な姿なんて見てない(どっちにしろ裸は見たがな)」
な、なんだ、よかった。
452影門 3:2008/11/17(月) 00:00:02 ID:sDrT0R+y0
それなら顔も見れる。
安心して眠くなってきた…。ふぅ…。
「ま、まぁ、お前がまたワーロックにあんな事されたりなんかしたら…。
 俺が守ってやるから、安心しろよ・・・って!寝てやがるしっ・・・!
 せっかく勇気出して告白できたのにっ・・・!まぁいいか。こいつの寝顔見たら、
 怒る気失せた。」
「グーグー・・・うーん…。死神ぃ・・・。」
「!?///////」
「この血がないくせに良くのぼって…。」「(ピキ#)」

その頃ワーロック。
ワ「ええい!罠に勇者がかかってうっひょいだったのに!死神のやつめっ!」
ベ「…グオオォン。(コイツについていって大丈夫なのかなぁ…。)」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
あばばばばばばばっばば。駄文すみません!
土下座して謝ります!どうか頭をその足で踏んづけて(ry
あの作者さんの作品に、ひとかけらも追いつけません。
ちょっと頭冷やすため樹海いってきます。
453風と木の名無しさん:2008/11/17(月) 00:12:48 ID:VCSFPzyIO
おお、オリジナル大豊作だー!
>>422
すごい…ふいんき(がたまりません!
艶っぽい文章にドキドキしっぱなしです。
続き楽しみすぐる…!
454オリジナル1/4:2008/11/17(月) 07:01:19 ID:7D5UfvVs0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
現代もの。きのうの続き。


家を知りたい。
付き合っている間に一度ぐらい行っておくべきだった。
「また来週な」
帰り際、三鷹がそう声をかける。都合がよければ志井が応じる。
そしてホテルで会う。そんな逢瀬ばかりだった。
もっと交情を深めればよかった。
同僚と肩を組み合って笑うことはあっても志井とはなかった。
セックスもセフレとするより少なかった。
455オリジナル2/4:2008/11/17(月) 07:01:56 ID:7D5UfvVs0
たまに会い、たまに寝る。束縛も詮索も過剰なスキンシップもしないしされない。
相方への関心が低いのは志井も同じだった。
三鷹が聞かなかったように、三鷹もまた志井から何も聞かれなかった。
ホテルで待ち合わせ、抱き合うというより抜き合うに近いセックスをする。
口数の少ない顔のいい男と特に何を話すわけでもなく、一緒に酒を飲む。
それが心地よかった。志井とだからそんな付き合い方ができた。
無駄のないこの関係は、メールに一喜一憂していた初恋に決して劣らない。
付き合っていた間、三鷹はそう確信していた。
456オリジナル3/4:2008/11/17(月) 07:02:35 ID:7D5UfvVs0
春に似たぬくもりは求めていなかったし、求められなかった。
三鷹は満開の桜の花よりも、最後の一葉が落ちた冬の裸木の梢の向こうに、
星がまたたいているのを見る方が好きだ。花は咲いていないけれど星が咲いている。
志井は三鷹の好みに合う、ひんやり系のキラキラ系だった。
運命の相手だとは思わなかったが、まっしぐらに愛せる誰かに出会うまでは、
志井で何の不都合もないと思っていた。
よくよく考えると志井が何を思って自分と付き合っていたかがわからない。
三鷹の売りは長身長脚で男前な容姿と、軽薄と評されることもあるノリの良さだ。
志井は何を買ってくれていたのだろう。
457オリジナル4/4:2008/11/17(月) 07:03:13 ID:7D5UfvVs0
志井から別れ話を切り出されたとき、志井は自分より先に
特別な相手を見つけたのだろうと推測した。
「繋ぎの男」と別れ、本命の心に通う道を行くのだと思った。
その道をどうやって見つけたのか聞きたいと、ちらっと思ったが、
それ以外は何の感慨もわかなかった。
別れ際、どちらからともなくキスを交わした。それで「完」だと思っていた。
なのに、別れた直後、携帯の番号を変えられていた事が痛い。
家を知りたい。会いたい。話したい。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
458オサレ1/4:2008/11/17(月) 08:35:45 ID:CFT8HS5VO
オリジナル。いわゆるオサレ小説。はじめて書いてみたら意味不明だよ!

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!



 式、代数、x、y、幾何学的、ルート、マイナス、虚数、3じゅうに、i、二乗、ひゃく37、236ぶんの……、

 ころころころがる。文字がころがる。
 ゆらぁり溶けて、とけて、融けて、

(解けない!)

 今日やったばっかりのとこ。しっかりノートに記入もしてた。浅沼先生は指がきれい、で、しろいチョークにしろい指。X=iの二乗マイナス13きゅう、よって……。すらすら文字が生まれる。右下がりの四角い列。おれは見ていた。たぶん観ていた。ちゃんと、きっと。

 ぱちん!
 視界が弾ける。うん、違う。電気がついた。蛍光灯だ。8本のしろいひかり。

「実浦、まだいたの?」

 まえ、の、ドア。
 スイッチの基盤に指をひろげて、まぶしいみたいに目を細くする。

 しろい指。ほそくて、ながい、きれいな指。
459オサレ2/4:2008/11/17(月) 08:36:46 ID:CFT8HS5VO
「ミヤ。まだいたの?」
「電気、点けてないから、びっくりした」
「うん、忘れてた」

 教室の灯りは点けていい。点けるのがいい。逆はだめ、うちはだめ。いつも忘れる。わすれてじたいをわるく、する、おれ。
(だめだ、こんなの、)

「生徒会があったんだ」

 云って、指が動く。ミヤと一緒に、動く。指が。こっちに。

「実浦はなにやってたの、」

 おれ、ノート、閉じる。UBの問題集。あしたまでのお勉強。やらなきゃいけない。はやく、早く、速く。

「ああ、浅沼先生の課題か」

 しろい指が、おれの前でゆうらり揺れる。るーと「−」いち、これをiに置き換えると、……ぶつぶつ、指がなぞる。

「実浦は、いつも放課後に課題をして帰るね」
「うん、うちではできないから」
「……うん、でも、帰りが遅くなると怒られない?」
「それは大丈夫なんだよ」
460オサレ3/4:2008/11/17(月) 08:37:28 ID:CFT8HS5VO
(……いつ、も?)
 ミヤは目もきれいだ。ぐにゃりとけそうな水晶体。茶色の虹彩に、すこし、ミズイロ。コンタクトレンズのふちが、まるくまるく、覆う。しろい指がうすい膜を剥がすんだろう、か。やわらかなやわらかな眼球に指を突いて。やさしく? 長い、指が。
(いつも、?)

「ミヤ、は。いつもおれを見てるよね」

 わらう。なみだのたまる膨らみに、うすく小さなしわがひとつ。ちいさなちいさな変化。でもわかる、ミヤはきれいだから、わかる。

「バレてたんだ」
「わかるよ。ミヤは、きれいだから」
「うん?」
「ときどき、思うんだ。ミヤがいいなって」
「俺はいつも、思う」
「違うね」
「違うの?」
「違うよ」

 しろくてながい指はつめたい。きれいなものはつめたい。雪の欠片、夏の湖、おかあさんの部屋、綺麗は冷たい。ミヤの指。つめたい指。頬をなぞる。人差し指いっぽん。するするするするするする。

「それ、UBの問題集。俺がやってあげようか」
「え?」
「実浦は数字が難しそうだから」
「だって、ようこ先生が」
「読まなくてもいいんだよ、大丈夫」
461オサレ4/5 ごめん:2008/11/17(月) 08:40:32 ID:CFT8HS5VO
 そうなのかな。ようこ先生、困るって。


『バスや電車に乗――――』
(いらない)
『――――お買い物の計』
(いらないいらない)
『となになったらあなたはき』
(いらない!)


「そう、ミヤ、やってくれるの?」
「実浦には困難だろう?」
「しゅうとくはこんなんだ」
「うん、だから」

 ミヤがわらう。くちびるがあがる。ミヤはくちびるもきれいだ。綺麗は冷たい。くちびるも冷たい、か? どうだろう、どうなんだろう。
462オサレ ラスト:2008/11/17(月) 08:41:15 ID:CFT8HS5VO
「そのかわり、ね、実浦、」

 揺れる。しろい指が、ふらぁり。おれのあごがすうとうえをむいた。ミヤの目はきれいだ。透明なちゃいろにうすいミズイロの膜。黒い瞳の奥に細い神経の糸が設置され接続され右脳にはおれの形左脳にはおれの情報を送信し受信する。

(あ、触れ、る)

「俺と付き合ってよ」



『宿題との交換条件』



 綺麗は冷たい。つめたいくちびるのくちづけにおれは甘んじる。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

頭悪い子になってしまう不思議!改行が鬼すぎる。
463風と木の名無しさん:2008/11/17(月) 10:09:13 ID:GUjZdY6/O
荒らし?釣り?
464風と木の名無しさん:2008/11/17(月) 12:27:39 ID:4G5uqlykO
適当に言うとオサレっていう作風がある
まさにこんなの
465風と木の名無しさん:2008/11/17(月) 17:26:32 ID:tGnbf6Bz0
オサレって知らんかった。ちょっと調べてみようw

面白かったよーw
466風と木の名無しさん:2008/11/17(月) 18:30:34 ID:Odyjw6bzO
オサレ、の人、
(ほんとうにきてくれる、なんて)

思 わ な か っ た 。(フォントサイズ22)
467風と木の名無しさん:2008/11/17(月) 19:04:37 ID:hOULiUtk0
文章をマシにすれば結構いいかもしれない

あ、だからオサレなのか
468風と木の名無しさん:2008/11/17(月) 20:13:13 ID:lWzPZ8PiO
Uwaaaaa
469オリジ 余裕なにそれ美味しいの 前:2008/11/17(月) 22:04:33 ID:pjVPfiCp0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

ああ、だめだ、だめだだめだ。そう思ったのだけれど、
意識はぼんやりとしていて、体なんてもっとぐったりしていて、思ったとおりに動いてくれそうにない。
彼は色気のある声で僕の名前を呼び、愛おしそうに僕の耳を、頬を、顎を撫でる。
彼が僕の中で動くたびに、自分のものとは信じがたい、高く聞き苦しい声が漏れた。
彼の声が、彼の手が、彼が。僕の全てを溶かす。

でも、このままでは、だめなのだ。
霞んだ意識でどうにか自分に言い聞かせる。
僕の手はいつものように彼に指を絡めとられ握られている。
けれど彼は今 片手で僕の頬を撫でているので、僕の片手も解放されていた。やるなら、今だ。
そう思ったのだけれど、そう思ったまさにその瞬間に、彼の顔が近づいてきて、噛み付くようにキスされた。
彼の舌が僕の口内を犯す。同時に強く体を揺らされて、僕の中を彼のものがむちゃくちゃに荒らす。
気持ちがいいのに、声も出せなくて、呼吸もうまくできなくて、また意識が遠のいてきた。
それでもどうにか、解放されているほうの手を動かそうとした。

僕も彼の頬を撫でよう。首を、胸を、触ろう。
嫌なんだ、もう。されてばかりでいるのは。僕だけが余裕なく流されているのは。
僕も君に触りたいんだ。好きだと、愛していると、体で伝えたいんだ。
そんな思いで、彼の肩に手を伸ばす。
が。 
彼にその手を奪われた。 もう片方の手と同様、恋人繋ぎの形で指を組まれる。
思わず目を見開いた。彼は息を整えながらゆっくりと顔を離した。
僕と彼の唇の間で唾液が糸をひき、切れて彼の口元に垂れた。
470オリジ 余裕なにそれ美味しいの 後:2008/11/17(月) 22:06:23 ID:pjVPfiCp0

ああ、だめだ、だめだだめだ。そう思ったのだけれど、
理性などとうに切れていて、体は本能のまま動いている。止まれそうにない。
下にいる男を見つめる。彼の濡れた瞳、荒れた息、全ての原因が俺なのだと思う。
愛おしくて、仕方がない。彼に深いキスをし、強く腰を打ちつけた。
それでも物足りなくて、さらに中に中にと入りたくて腰を揺らす。
彼の中は熱くて、強く俺を締め付ける。もう、出たくない。

でも、これでは、だめなのだ。
薄れていく意識のなか、ちらりと脳裏をよぎる。
今日こそは、優しく。そう思っていたのに。
それでも。
息ができずに苦しかったのだろう、彼が俺を離そうと伸ばしてきた手を俺はまた反射的に掴んでしまった。
その手の体温すらも愛しくて、指を絡ませ、撫でるように握った。
彼の体がビクリと震えた。恐怖を与えてしまっただろうか。
それを思うと急に怖くなり、キスを止めて彼の顔を見る。

その瞬間、彼にキスをされた。
と、いうよりも、口元を舐められた。垂れた唾液を舐め取ったのだろうか。
彼は上目遣いで俺を見て、微笑んだ。
色っぽいというより、子どもが初めて何かに成功して喜んでいるような無邪気な笑みだったのだが、
私の戻りかけていた理性はすぐにどこかへ消えてしまい、俺はまた獣のように本能に従い体を動かし始めた。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
誤字とかあったらすいません 馬鹿ップル万歳
471風と木の名無しさん:2008/11/17(月) 22:52:35 ID:pm93PY+i0
>>447
目覚めましたありがとう!
本能の赴くままに行動するスイッチかわいいなv
472風と木の名無しさん:2008/11/17(月) 23:01:58 ID:00+HT13Y0
>>470
も、も、萌えた!!両方の視点がたまらない!
理性ある時は一人称私なのにエチーの時に我を忘れて俺になってるって萌え!!
二人の関係を妄想して激しく萌えました!
473オリジナル1/4:2008/11/18(火) 00:14:42 ID:ijWPC0hT0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
現代もの。きのうの続き。受けのターン。


株式会社志井商事は産業用フィルムの製造等をしている。
世間的にはコンドームの最大手で知られている会社だ。
社長である志井の父親は竹を割ったような性格の人で、志井の双子の兄は癒し系だ。
社員にパンダのような専務と呼ばれ、一卵性双生児の弟である志井は、
竹をパンダごと割ったような常務と呼ばれている。
志井の兄が率いるコンドーム部門は、昨年、特殊ポリウレタンを使用した
極薄コンドームの開発に成功し、社に多大なる利益をもたらした。
弟である志井が率いているオナホール部門は新商品の開発に苦戦中だ。
474オリジナル2/4:2008/11/18(火) 00:15:17 ID:ijWPC0hT0
停滞の原因は、メディカル用のシリコン系新素材を開発した地方の優良企業との
業務提携が白紙撤回になったせいだ。
契約の内容をつめる段階にくると、双方ゆずれない事項が幾つか生じ、
結局、破談という残念な結果になってしまった。
失望を隠せない社員は、契約破談の真の原因は志井常務の交渉力の無さだと噂している。
噂されるまでもなく志井本人が一番よく知っている事実だ。
癒し系で仕事のできる兄のコンドーム部門に配属された社員は勝ち組。
氷結系で無能な弟のオナホ部門に回された者は負け組み。
社で流れている噂に偽りはないと志井は自嘲している。
475オリジナル3/4:2008/11/18(火) 00:16:49 ID:ijWPC0hT0
この1年半、志井は仕事そっちのけで遊んでいた。
志井は「する」より「される」方が好きな質だ。男としては異質だと思うが、
はじめて体験した17歳のときから11年、セックスはずっと受身だ。
業務提携の件で訪れたはじめての街で、気軽な雰囲気に惹かれ、
男性限定のその手のショットバーにふらっと入ったのが間違いだったのかもしれない。
いい男でもいればとのぞいたそのバーで見つくろった三鷹という男のペニスは、
お気に入りのバイブに良く似た超がつく好みの形だった。ハマって誘われれば必ず会った。
呼び出された日、東京にいてもスケジュールを都合し飛行機で会いに行った。
1年半、遠距離恋愛ごっこを独りで楽しんだ。
志井は思う。1年半も酔狂が続いたのは束縛されなかったからだ。
いい加減、仕事に身を入れようと思い、別れ話を切り出した際も、
「マジで? じゃあな」と簡単に別れてくれた。
別れのキスのそっけなさは、ぶ厚いキスの押しの強い味が苦手な志井にとって丁度だった。
476オリジナル4/4:2008/11/18(火) 00:18:27 ID:ijWPC0hT0
でもいまは当分、愛とか恋とかはどうでもいい。「する」とか「キス」とかも然りだ。
兄に負けたくない。兄のコンドームに負けないオナホールをつくりたい。
志井がつくりたいのは、コストパフォーマンスの高い低価格の使い捨てオナホールだ。
ライバル社は洗浄が簡単で繰り返し使える画期的なオナホを販売している。
志井自身、試してみて実に衛生的だと思った。
使用感もパッケージのデザインも非の打ち所がなかった。
深夜、自室でライバル社のオナホを使いながら目が潤んだのは、
悔しかったからだけじゃない。あまりにも使用感が良すぎて涙腺がゆるんだ。
生理的な涙というやつだ。
ライバル社のオナホに打ち勝つには、1日使い捨てしかない。
志井は使い捨てにまさる衛生的なオナホはないと思っている。
何より、毎日新しいは、きっと毎日気持ちいいに直結するだろう。
問題は価格だ。ライバル社のオナホは6000円で約50回使えるとのこと。
1回120円。経済的だ。この安さと戦うならば、
自社商品は1回100円におさえたい。7日分入って700円。これが理想だ。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
477オリジナル えせ時代劇風 1/8:2008/11/18(火) 00:36:32 ID:cJT5eZO5O
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
オリジナルの遊郭の番頭さんと化粧師さん話。


廓仕事は日が高く上ってから漸く、ゆるゆると流れに乗り始める。前の晩のお客は夜明け前にとうに去り、
送り出した遊女たちが朝餉の支度とともに起きだしてくる音が、一日の始まりの合図だった。
寝ぼけ眼でもどこか凛としたその姐さん方は、朝餉のあと湯を使いさっぱりすると途端に艶も華もある風情
になる。丁度その頃に顔を出すのが小物売りや髪結いなどの出入りの輩で、台所や帳場の喧騒を横目に、件
の化粧師も例に漏れずぽっくりぽっくり、下駄を鳴らしてやってくる。
朱色の袱紗に漆箱が、化粧師のしるしだ。
廓一の花魁が、髪結い化粧のあと手持ち無沙汰に化粧師を囲碁に誘う。昼見世はとっくに始まっているが、
花魁ともなればそんな下界の(まさに)様相とは無縁で、にいさん一局と言われて化粧師も乗った。
ぱちりぱつりと、さあさあと秋風が冷たくなりかかる中、かたく高く鳴る音が表座敷の一間から響く。
その音の爆ぜる加減が、そろそろ近づく冬を思わせた。
師走になれば煤掃きも餅つきもある。早々に支度もせねばなるまい。
478オリジナル 2/8:2008/11/18(火) 00:39:13 ID:cJT5eZO5O
花生けの具合を確かめていると、背後の二人の笑み交じりの声が風に乗ってきた。そろそろ終局か、どちら
が勝ちかと、ふと振り返り盤を見遣る。また花魁は姉女郎らしく、先日の新造の話をしている様子だ。
振袖新造には名がついた。
重花、朝垣、多岐水、様々な案が出されたが、重陽の月に新造になったのだからと菊の花の字がついた。化
粧師もそいつはいいと、菊花をあしらった飾り櫛を、新造へ渡していた。
良い馴染みもつき、次の吉原細見にはどう評されるか噂になろうというところだが、しかし花魁の顔は晴れ
ない。
「あァ、そうだな」
晴れずとも美しいのだが、化粧師もなにやら難しい顔をして、いつものように煙管を回している。勝負事だ
けの話ではない。遣り手、女将、折檻などなどの剣呑たる言葉がぼそぼそと聞こえ、ああと合点がいきこち
らも人知れずため息をついた。ちょっとした騒動になっていたのだ、あの新造は。
それを花魁は心配しているようだ。姉女郎としての気遣いだろう。
「ほい、おしまいだ」
ひょいと、花魁の深刻さなど何事でもないかのように化粧師は黒石を盤へ置いた。途端に花魁が柄にも無く
大声で待ったをかける。
479オリジナル 3/8:2008/11/18(火) 00:40:48 ID:cJT5eZO5O
待ったなし、と化粧師は笑った。こういう男なのだ。ひとの隙にもぐりこむのがうまい。
しかし隙をつかれた花魁は、腹の虫がおさまらないらしい。もうひと勝負、と言いかけてふと、ああ次はか
るた遊びなんかどうだえ、と艶然と微笑む。
「かるたは勘弁してくれよ」
それはさっぱりだ、と化粧師。
「花魁、俺に学が無いのは知ってるだろう」
うへえ、と潰れた蛙のような声を上げて、化粧師は真っ平御免とばかりに首をすくめる。その手から花魁が
白い指で自慢の煙管を取り上げて、だからやるのサ、ところころ笑う声が聞こえた。
新造の騒動というのは、こうだ。言ってみれば、良くある廓話のひとつだ。
初めてついた馴染みの客に、我を忘れてすっかりのめりこんでいる、というやつ。これは廓としては、よく
あることだが最も良くない。
かむろ時代から何を見てきた、と女将や親父は怒鳴り狂う。横っ面を張り飛ばして客をとれと強いるが、あ
の方さんでないと嫌でありんすと、まあそんな風に言うわけだ。遊女の癖に馬鹿げている。
新米の新造の心構え云々は、姉女郎のあの花魁にも降りかかる。一世を風靡する花魁でも一皮向けばただの
おんな、妹分の言い分もわからんではない。
480オリジナル 4/8:2008/11/18(火) 00:42:39 ID:cJT5eZO5O
ただそこは廓を背負いこの世の蝶よ花よとされる遊女ゆえ、頑としてそれは否であると言い含めている。
女将が、奥の行灯部屋から化粧師を呼んだ。行灯部屋は暗く湿ったそのとおり、折檻だの物置だのに使われ
る部屋で、今日も今日とてあの新造は女将に引っぱたかれているらしい。
しかし、泣きながら声一つあげないのは、見上げた根性とでも言おうか。いつぞやちらりと見た、あの優男
を思い出してため息が出た。おもての掃除もひと段落し、さて夜見世よといそいそと戻ってきてみれば、二
階の座敷からどかどか降りてきた化粧師と顔を鉢合わせた。
さえざえとした夕闇が西の空に忍び寄る。大門からどやどやと、人の波の気配が始まる。
「あのあま、旦那さんが来るまで張見世に出さんでくれとか言いやがる」
格子の間の奥へ降りてきた化粧師は、とことん苛立っているようだった。ぐるっと見回し、こちら以外誰も
いないことにすら腹が立つのか、肌寒いかと引っ張り出してきた火鉢を完全に独占するように抱え込んでわ
めく。
夜前の、昼見世終わりの遊女たちはまた化粧なおしに夕餉に忙しい。油皿の仕度をしながら、半分流すよう
にその声を聞く。
「言って泣きやがる。白粉も紅もはげる」
481オリジナル 5/8:2008/11/18(火) 00:45:39 ID:cJT5eZO5O
ああ、それはこの男にとって、もっとも忌むべきことだろうと合点がいった。化粧師は遊女を美しく仕立て
るのが生業だ。女将は無理やりにでも仕度をさせようと呼んだのだろうが、泣き腫らした瞼に流れる白粉では、
どんな酔狂も寄ってくるわけが無い。
それでも、酔狂でも、誰であろうと近寄らせたくない、などと、正気の沙汰ではない。
遊女が見世に出なければ、客がつかぬ、廓がまわらぬ。
しかしどこの廓にも、どうしても染まらぬ女というのはいるものだ。つくづく思う。
旦那さんというのは件の若旦那のことだろうが、いくら金払いの良いあの男でも、早晩遊女のもとに通い続
けるわけにもいくまい。
それを承知の上で泣くというなら、かなりの女だ。もしくは、芯から阿呆なのか。
「畜生が。惚れやがったな」
ただそれが化粧師には我慢ならないらしい。煙管を出したばかりの火鉢に叩きつけては、何度も何度も悔し
がる。聞いてもいないのに訴える。
台所のほうから汁物の匂いがしてきた。あちらへこの声は聞こえているのかいないのか。
しかし化粧師は廓で惚れるなんてのは馬鹿のすることだと、声高に叩きのめしている。固く響く音とそれは
少なからず、胸に痛い。
482オリジナル 6/8:2008/11/18(火) 00:47:23 ID:cJT5eZO5O
色街で色恋沙汰はご法度だと、言われずともこちとら百も承知だ。あの新造とて知らぬわけがない。
しかしその上で惚れているのは、俺も同じだ。
叩きのめされるのを見るのは、心苦しい。痛めつけられているのは他人事ではない。ぐいと、ついその手を
掴んで止めてしまった。手首はこちこちに凝り固まっていて、いつもの柔らかさは微塵も無い。
「煙管にあたるのは止してくれ」
油皿がいくつか転がる。転々と弧を描き、それぞれに収まったように首を振るのを止めた。日の色が橙に、
格子窓から差し込んだ残りが畳を走る。
つとめて平然を装おうとして、やや押し殺した声になってしまった。化粧師はぴたり腕を止めて、かすかに
目を上げる。伏せもしない。
握った手首を離す間が難しい。ゆるゆる力を緩めればいいのか、それともさっと引くべきか、逡巡する。
そのためらいに、己を知る。何も出来ない。素気無くは、何も出来ない。
目を合わせて化粧師の口は二言三言、何かをかたどった。しかし声は聞こえない。黙っているともう一度そ
れを繰り返した。
そしてかすかにその、細い目を伏せる。声が死んだのか。
何か言えよ、あんた。何時だって口達者だろう。
483オリジナル 7/8:2008/11/18(火) 00:49:21 ID:cJT5eZO5O
声の無い姿を見ていたら、その唇を吸ったことを思い出し背筋がぞくぞくした。逢う魔が刻には、まだ早い
が、だが。一度口付けてしまえば自分のもののように思えて、そしてそれが化粧師の癇にひどく障った。
「遊びなら、他をあたりな」
触れる瞬間その一瞬前に顔を背けて、不意に化粧師は吐き捨てた。そして今、俺は気が立ってんぜ、と言う。
「酔いの一度なら、流してやる」
ぐいと利き手を引かれて、思わずあっさり離してしまった。既に態度も行動も、後手に回っている。
まだ平然を装おうとはしていたが、それでも焦りが体を蝕んだ。阿吽の呼吸で返さなければそれは、圧倒さ
れているということになる。
「何の、話だ」
挙句出た台詞がこれだ。畜生め、と心の中で己に悪態をつく。
惚れてるとか抜かすなよ、と化粧師。途端に熱いものと冷たいものが同時に、こめかみから頬を固く強張ら
せる。
「そっちがいいなら、陰間茶屋にでも行ったらどうだ、あんた」
「喧嘩売ってんのか」
「あんたが売るなら買うぜ」
今度は煙管をくるくる回して、薄くくわえながら言う。半眼で煙を吐く。この狐、とばちりと頭の中で何か
が弾けた。
484オリジナル 8/9 すみません:2008/11/18(火) 00:52:39 ID:cJT5eZO5O
がっと、強い腕の筋肉がめきめき太って、いとも容易く胸倉を撚りあげる。化粧師は落ちかけた煙管を軽く
手に取り、憮然というか悠然というか、殴り飛ばされそうなその姿勢でさえも黙っている。じじと煙だけが
身悶えて立ち昇る。
しゅるりと帯が、畳をすれる音がする。
「舐めるなよ」
こちらもただ一言、吐き捨てた。相手にされないのは構わない、どこ吹く風と流されるのも慣れている。
けれど後手に回るのも、舐められるのも真っ平だ。
あんたこそと化粧師は言い、とんとんと指で胸倉を掴む手を突付く。
それで充分、こちらが離すと思っている。畜生、この狐、舐めてやがる。
殴りはしなかった。そのまま右手一本で畳に大の字に叩きつける。さすがに堪えたのか化粧師は咽る。
そこで漸く冷静さが蘇ってきた。撚るのは容易いことくらい、この指を潰すことだって出来るくらい、どち
らも重々承知だ。
惚れたんじゃねえよとわめきそうになった。
もぐりこんできたのはそっちじゃねえか。
「てめえお武家の出なんだってな」
一瞬緩んだ何かを狙ったのか、それは知らぬ。化粧師は咽ながら叫ぶ。嘲りが含まれている。
「誰が、さむらいに頭なんぞ下げるかよ」
485風と木の名無しさん:2008/11/18(火) 00:53:30 ID:QGwUskWg0
さるさんかな?支援
486オリジナル 終:2008/11/18(火) 00:54:06 ID:cJT5eZO5O
この色街では誰もが叫ぶ。粋も知らぬ田舎侍、金も持たない貧乏旗本、此方の気風を舐めるなよ。そしてこ
の男はそれが特に顕著だ。何ゆえかは、それこそ知らぬ。
しかし何時知った。俺が来たときこの男はまだ出入りしだして間もなかった。その頃より廓にいるのは女将
と親父、それから一つまみの遣り手や針子の婆さんどもだけだ。何時だ。
がたがたと指が震えた。その太い指を、化粧師の手がいとも容易に掴んで剥がす。
「叶うわけねえだろう」
一発、鳩尾に蹴りを入れられて今度は此方が咽た。
「あんたもあのあまも、舐めてんじゃねえ」
その捨て台詞は、存外堪えた。見上げながらの癖に一字一句、ゆっくり噛み含めるように言われただけ、余
計に。
あの終局の、これでおしまい、という声の高さを覚えている。それと同じだったことが、ひどく堪えた。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
地味地味にゆらゆら次いでいきます。
487風と木の名無しさん:2008/11/18(火) 00:55:24 ID:yJA+Mkkn0
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
萌えすぎて胸が苦しいです。
続き楽しみにしてます!
488風と木の名無しさん:2008/11/18(火) 01:22:16 ID:3bPHCw9q0
これはいい 続き待ってるよ
489風と木の名無しさん:2008/11/18(火) 03:57:36 ID:19ekK9W5O
>>396
亀ですが、もう何か目から汁が…(ノД`)
数日ショックで立ち直れなさそうだったけど、これ読んで
萌えと同時に何とかなりそうです…。

姐さんの他の小説も読んでみたいものです。
490風と木の名無しさん:2008/11/18(火) 11:21:41 ID:Kn/lDF+y0
>>161>>267照退神
萌 え た 。
全力で続き待ってます。
491オリジナル 1/4:2008/11/18(火) 12:54:10 ID:D0Def5ZN0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
オリジで追う人と追われる人  ホンのちょっとだけ流血あり

捕まるのが先か、死ぬのが先か。どちらにせよあいつには破滅の道しか残されていない。
分かっていても、せめて最後はおれの手で終わらせてやりたかった。
昔を共にした者として……

薄暗く、埃っぽい路地裏。罪人にとってこれほど相応しい場所はないだろう。
銃を構え、周囲を警戒しながら慎重に歩を進めた。
「よお、久しぶり」
あまりにも状況にそぐわない明るい声。
突き当りの壁の前に男が一人。
おれはゆっくりと銃をその男に向けた。
「もう、逃げ場はないぞ」
「そうみたいだねえ。いやー参った。まさか行き止りだったとは」
陰になっているため、顔が見えづらいが男は笑っていた
長い逃亡生活のせいでやつれてはいたものの、そこにあった笑顔は記憶にのこっているも
のと全く同じだった。
一瞬、おれの中で戸惑いが生まれたが、理性でそれをねじ伏せる。法を守る者として法を
犯したものを見逃すわけにはいかなかった。
「大人しく投降しろ。今ならまだ間に合う」
「いいや、もう手遅れだよ。それはお前にも分かってるでしょうに」
「頼むから言う事を聞いてくれ。おれはお前を撃ちたくない」
奴は動かない。おれも銃を構えたまま様子を伺う。
道を違えてしまった者たちがお互いを見つめ、奇妙な静寂が辺りを包んだ。
その間、頭の中には過去の人生で一番楽しかった思い出が流れていた。あの時はあんなに
輝いていたのに、いま2人の間にあるものは闇より暗い。
一体、どこで間違った? どうすればこんな結末を迎えずに済んだ? 
考えた所で答えは出ない。
492オリジナル 2/4:2008/11/18(火) 12:55:07 ID:D0Def5ZN0
「昔さあ、よくお前と鬼ごっこしてたよね」
ふと、奴が口を開いた。
「で、いっつもお前が鬼なの」
「……じゃんけんで負けまくってからな。お前はなかなか捕まらなかったよ。やたら素早
っこかったから」
「最後には捕まってたけどね。結局、今回も逃げ切れなかったなあ……」
「どうして……」
銃を持つ腕が震える。目の前が涙で霞んだ。
「どうして、一体何が悪かったんだ? どうしてこんな事に……」
「理由なんかいらないんだよ。誰のせいでも何のせいでもない。こうなったのは自分の意
思さ」
そう言って奴は笑う。今度はさっきと違い、悲しみを含んだ笑顔だった。
おれの中に迷いが生まれた。このまま逃がしてやりたいという気持ちと捕まえなければと
いう使命感がひしめき合う。
493オリジナル 3/4:2008/11/18(火) 12:55:56 ID:D0Def5ZN0

「こーら。迷ってるじゃねえよ」
「!?」
こちらの葛藤を見抜いたのか。奴はおれを叱咤した。
「お前は私情を挟める立場じゃないでしょう。今の俺は犯罪者、昔のおれじゃないの」
「……説教できる立場じゃないくせに」
「説教した時だけは昔のおれだから」
「ああ言えば、こう言う所は変ってないな」
あいつにつられ、ホンの少しだけおれも笑う。
その時だけは昔に戻っていた。
しかし、聞こえてきた多数の足音により、現実に引き戻される。
「お仲間が来たようだ。そろそろ決着を付けないとな」
「…………」
もはや、奴の顔からは笑みが消えていた。
「さて、ここから脱出しようと思ったら手は一つ」
懐に手を入れ、何かを取り出す。それは銃だった。
「よせっ。馬鹿な真似は止めろ」
「ごめんな。おれは捕まる気はないんだ」
銃をゆっくりとこちらへ向けた。必死で止めさせようと、奴の名を呼んだ。
「さよなら――おれの大好きだった人」
引き金に指が掛かる。――そして一発の銃声が響いた。
494オリジナル 3/4:2008/11/18(火) 12:57:01 ID:D0Def5ZN0

「……?」
おれは傷一つとして負っていなかった。
眼前には仰向けに倒れた男。地面にはゆっくりと赤い液体が広がっていた。
「どうして……?」
訳が分からず、奴の方へ駆け寄る。まだ、微かに息があった。
「や……れ、やれ。騙されやすいなあ……相変わらず」
「……弾、入ってなかったんだな」
「ま……あ。こういう勝負は、情に流された……方が負けるもんだ」
その時、おれはこの男が行き止りと知らずこの道に入ったのではないという事を悟った。
「これが……お前の決着の付け方か?」
「お前、と一緒さ。せめて……最……後はお前の手で……」
それがこの男の最後の言葉となった。もう、奴の目が光を映すことはない。

「ここにおられましたか」
ようやく追いついた部下が声を掛ける。
「銃声が聞こえましたが、お怪我はありませんか? 奴は?」
「もう、全て方はついた」
後処理を部下に任せ、その場を後にする。
「結局、最後まで人を振り回しやがって。あの馬鹿野郎が」
もういない、かつて大切だった人に向かっておれはそっと呟いた。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
495風と木の名無しさん:2008/11/18(火) 16:51:22 ID:t0sv90En0
>>491-494
うおおおおおお
切ないけど萌えた(´;ω;`)
496風と木の名無しさん:2008/11/18(火) 23:00:29 ID:7nSpWn280
>477
姉さんのサイトがあるなら通いたいですよ。
池波の御大の匂いがする気が…とにかく好きだ。
497オリジナル1/4:2008/11/18(火) 23:12:43 ID:3gH4jg470
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
現代もの。ひき続き受けのターン。


気持ちよいのはあたりまえ。
使用中も使い終わりもスマート。衛生的で低価格な1デイズの使い捨てオナホ。
キッチュなジョークグッズではなく、厚生労働省の認可を取得し、
男性用生理用品として発売できるオナホ。志井はそんなオナホがつくりたい。
だが、開発チームのリーダーに「オナホールに革命を起こしたい」と告げたとき、
「革命はもう起きています」と返された。
巷では、確かな品質と洗練されたデザインで、あやしい、いやらしい等のオナホの
イメージを払拭したライバル社の商品が大ヒットしている。
「あのオナホがオナニーはうしろめたい行為ではなく健全な楽しみだと教えてくれた」
多くの男性がそう絶賛するオナニーがこの世にはすでにあるのだ。
耳に心地よいリーダーのロー・バリトンで、遠まわしに
「事業からの撤退を話し合う役員会議を開いては」と言われ志井は凹んだ。
498オリジナル2/4:2008/11/18(火) 23:13:19 ID:3gH4jg470
凹んだ気分をおいしいごはんで引き上げようと昼食をとるべく社員食堂に向かう。
「しーちゃんのおかげだよなぁ〜」
食事中、後の席から聞こえてきたコンドームチームの若手研究員たちの上司自慢が
やたらと気になった。
志井ちゃん、志井ちゃんと兄が部下に慕われていることは聞き及んでいる。
一卵性双生児の兄と自分を比べることは学生の時にもうやめた。
やめたけれども、きわめて達観し解脱した人ではない志井は、嫉妬の辛さを覚える。
心はひりひり、きりきりする。凄まじくまずい昼めしだった。
業務提携の話ひとつまとめあげられない自分の無力さが不甲斐ない。
まったりのったり動き、ごろごろ寝てばかりいる兄より、
仕事も努力もできない男であるところの俺……そんな自分が志井は大嫌いだ。
499オリジナル3/4:2008/11/18(火) 23:14:01 ID:3gH4jg470
だけれど、自分は大嫌いだけれど、ご自愛は大好きだ。
上質のオナニーは不幸なセックスに勝る、この世にはリアルを超えるオナニーがあると、
志井はそう信じている。志井の座右の銘は「オナニーを笑うな」だ。
何より現代社会には、自分を筆頭に「一緒にいてくれる人」がいない男があまたいる。
そんな男たちの人肌恋しい夜に、志井は典雅なオナニーをもたらしたい。
一緒にいてくれる人がいる人は談笑やセックスをすればいい。
一緒にいてくれる人がいるというのは、とてつもなく豊かなことだ。
(例えば兄さんみたいに……)
志井は知っている。兄には兄自身よりも兄が必要としているものを理解し、
ビジネスだけでなくプライベートの面倒も見てくれる個人秘書がいる。
(あの秘書は例え何があっても力強く兄さんの側にいる)
(兄さんも、本当に一番一緒にいたい人がわかっている)
嫉妬するのもむなしい関係だ。秘書への恋心は学生の時に生き埋めにした。
500オリジナル4/4:2008/11/18(火) 23:14:38 ID:3gH4jg470
恋愛よりも自愛派。志井はそう自覚している。
だからこそ自慰メンによる自慰メンのためのオナホールをつくりたい。
気ままでだらしなく、ときどき淋しい一人暮らしに、
静かだが力強い希望を伝えるオナホールを届けたい。
酒気帯びの溜息をついている夜、志井は幾度もオナニーに救われた。
いってる最中にドンッと次ぎが来るようなオナニーを、
裏返った声が息が続かなくなるまで延ばされるようなオナニーを、
持っているものを全部出せるようなオナニーを自社のオナホで提供できたら、
俺はもうそれでいい。志井はいまそう思っている。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
501風と木の名無しさん:2008/11/18(火) 23:24:19 ID:k4ST7AUr0
>>500
なんというご自愛愛w
ひょっとして志井って苗字まで自慰とかけてるのかw
続き待ってます。
502風と木の名無しさん:2008/11/18(火) 23:40:38 ID:Mp/NU6zw0
>>500
なんという典雅wwwwwww
開発者の名前調べちゃったじゃないかw
503( ・∀・)('A`)わんわんお事件のようです?:2008/11/19(水) 00:11:14 ID:xGTWrurtO
ξ゚听)ξ そんな感じでブーン系小説へようこそ。

ξ///)ξ べ、べつに総合に投下しようと思って書いたらこっち向きだったとかそんなことないんだからね!

ξ゚听)ξで、( ・∀・)×('A`)×( ・∀・)っぽいものです。ちょっと長いかもしれません。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
504( ・∀・)('A`)わんわんお事件のようです?:2008/11/19(水) 00:13:52 ID:xGTWrurtO

( ・∀・)「あー!今日も荒巻の講義は眠かった!!眠いだけだった!!もう何度意識を手放しかけたか……」

('A`)「おまえ寝てたぞ、大口開けて」

(;・∀・)「え、マジ!?」

('A`)「うっそぴょ〜ん」

(;・∀・)「この人でなしーっ!」

('A`)「…あ、じゃあ俺こっちだから」

( ・∀・)「おう、また明日…」

(;・∀・)「この人でなしーっ!」

('A`)「チッ、ばれたか」

(;・∀・)「モロバレだよ!僕たち同居してるよね、ねぇ!?」
505( ・∀・)('A`)わんわんお事件のようです?:2008/11/19(水) 00:16:17 ID:xGTWrurtO
('A`)「ソウダヨ。大学生ニナッテ一人暮ラシシヨウトシタラ、君ガ家賃モッタイナイシ"幼馴染み"ダカラトカ言ッテ勝手ニ…ブツブツ」

(;・∀・)「もうそれいいじゃん!家賃半分になってるんだし!つーかカタカナ読み難ッ!!」

('A`)「でも食費はどう見ても倍です」

( ・∀・)「そうとも言う」

('A`)「……今日おまえカップラーメンな。俺はスパゲチーでも茹でるから」

( ・∀・)「ごめんなさい。今度バイト代入った時にアイス買ってきてあげるから僕にもご飯作って下さい」

('A`)「この家庭科ダメ男め!じゃあ僕はハーゲンダッツちゃん!」

(;・∀・)「はいはい…」
506( ・∀・)('A`)わんわんお事件のようです?:2008/11/19(水) 00:17:57 ID:xGTWrurtO

('A`)「……なぁモララー」

( ・∀・)「ん、何?」

('A`)「あれは、お犬様だよなぁ」

( ・∀・)「え?…あぁ、あの犬?」


(∪^ω^)


('A`)「うん。あれさぁ、危なくね?」


(∪^ω^)わんわんお


( ・∀・)「たしかに道路のド真ん中でフラフラしてて……それが?」

('A`)「鈍いぜモララー。いいか、読んでる奴ァだいたいの察しがついてると思うから先に言っておく」
507( ・∀・)('A`)わんわんお事件のようです?:2008/11/19(水) 00:19:08 ID:xGTWrurtO
(;・∀・)「読んでる?は?おまえ何言ってんの?」

('A`)「そこも察せ。…俺、この戦いが終ったらハーゲンダッツ食べるんだ……」

(;・∀・)「おまそれ死亡フラ…」

    
ε≡(∪^ω^)わんわんお

車「うわっ!犬ッ!?」キキーッ

≡( 'A`) ダッ

(;・∀・)「!!」


ドンッ!




508( ・∀・)('A`)わんわんお事件のようです?:2008/11/19(水) 00:20:40 ID:xGTWrurtO

車「う、うわあ〜!!電柱にぶつかったぞ!犬を轢かなくて済んだけど電柱にぶつかったぞ!!うわあ〜!!」


タスカッタ… (;'A`)っ<∪^ω^)お…

(;・∀・)「ドクオ!!」

(∪^ω^)わんわんお!わんわんお!

(;'A`)「よかったねー、お犬様よかったねー。車が電柱にぶつかってくれてよかったねー」

(;・∀・)「おいドクオ!!大丈夫なのか!?」

('A`;)「え…ああ、モララー。お犬様は無事だぞ。車が逸れてくれたから…」

(#・∀・)「馬鹿野郎!犬はおまえが引っ張ったからいいが、おまえの位置だと車が逸れなかったらおまえが轢かれててお犬様は無事でおまえが…」
509( ・∀・)('A`)わんわんお事件のようです?:2008/11/19(水) 00:21:22 ID:xGTWrurtO
('A`;)「モララーもちけつ。日本語でおk。ほら、まずは車道から出てさ、な?」


 ……   ナ?
(#・∀・) ('A`;)っ<^ω^∪)


(・∀・#) ('A`;)っ<^ω^∪)


(・∀・#),('A`;),,(^ω^∪),,,



(#・∀・) ('A`;)(^ω^∪)

( ・∀・) ('A` )(^ω^∪)


( う∀;)Σ('A`;)(^ω^;∪)
510風と木の名無しさん:2008/11/19(水) 00:29:03 ID:zEhnp5hu0
支援?
511xGTWrurtOです:2008/11/19(水) 00:31:43 ID:MXvuwuuL0
ケータイさるりました…
パソコン駄目女なので直り次第続き投下します。ご迷惑おかけします…
512風と木の名無しさん:2008/11/19(水) 00:33:21 ID:FKO14Cw30
>>511
次からはナンバリングしておくれ
513xGTWrurtOです:2008/11/19(水) 00:35:32 ID:MXvuwuuL0
>>512
把握しますた。重ね重ね申し訳ないです…
514風と木の名無しさん:2008/11/19(水) 01:07:52 ID:iJp8CBnaO
好みの作品が大漁なんで、よーしパパ張り切って感想述べちゃうぞー

>>469
バカップル万歳!大好き。
前半の受けの、僕だって好きだって言いたいんだってところが大好き。


>>477
もうたまらないよ姉さん!
話の流れに身を任せながら、不意に押し寄せる萌えにもう、くらくらだ!

>>513
続き楽しみに待ってます。
このシリーズかわいすぐる………
5151/5:2008/11/19(水) 01:41:53 ID:JnOx5HY80
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
 ガリレオ草湯。新刊で今度二人でペンションに行くとか言ってたから行かせました
 ドラマから入ったんでキャラ混ざってるかも。最初女子視点につき苦手な人は注意されたし

草薙さんから休暇をとってペンションに行かないかと言われたときは何事かと思った。
私はハンドルを切り違えそうなほど動揺したのだが、なんのことはない、元を正せば
湯川先生からのお誘いらしい。
「なるほど、わかりました」
「なにがだ」
「女と違って男の二人旅は色々と誤解もありますよね」
「……いや、経営者は友人だから別に構わないんだが、湯川がお前を労ってやれって」
草薙さんはそう言ったが、引きつり気味の苦笑を見るに、要するに数合わせなんだろう。
「素敵ですね、是非」
かくして我々刑事二名と科学者一人という奇妙な取り合わせの旅が決定した。

草薙さんと湯川先生のご友人は気さくな方で、ペンションも清潔で心地よかった。
道中に至って初めて目的地に関する事件について聞かされた私は内心憤慨したが、
二人が誘ったのが自分だったことがようやく腑に落ちた気もした。
それに不快だったのはその事実が今まで伏せられていたという一点だけで他には特に
なかったのだ。無論気分がいいとは言えないけど、職業柄もう慣れっこだ。
その上私は一人で二人用の部屋を使わせてもらっている。都合上仕方ないとはいえ、
男二人で同じ部屋を使っている二人に少し申し訳なかった。
5162/5:2008/11/19(水) 01:42:40 ID:JnOx5HY80
揃ってつついた夕食もとても美味しくて、理由はとにかく旅に来たのは正解だったと
私はだんだん頬が緩み出していた。それは二人にも言えることで、草薙さんは珍しく
本格的に酔っている。つましく飲んでいた私と比べると、空けたグラスはかなりの量だ。
最も量で言えば湯川先生の方が多いのだが、彼は顔色ひとつ変えていない。
ザルとか枠とか思う前にロボットの類を想起した自分を恥じる。
瞬く間に夜は更けて、もう遅いと言える時間になった頃、湯川先生は
ぐでんぐでんの草薙さんを肩で支えると、颯爽と部屋へ戻っていった。
彼が先にと言ってくれたので、私は浴室へ行くことにする。

お風呂は私が上がる大体の時間を決め、湯川先生がラウンジで待っている手筈だった。
しかし女性である私を考慮したのか、やや長めだった設定時間は結局余り、
湯川先生はまだ姿が見えず、部屋まで呼びにいこうと思いつく。
“どすん”だか“どたん”だか、形容はしにくいが、とにかく鈍くて大きな音と共に
扉が揺れたのは、私がそれを叩こうとした時だった。思いもかけぬことにぎょっとする。
「ゆ、湯川先生?草薙さん?」
呼びかけるが返事がない。ノックをすると答えるように扉が軋む。
異常な事態に耳を押し付けると、くぐもった声が聞こえたような気がした。私は混乱する。
事件の話が頭をよぎった。今度は本物の強盗?侵入者?でも中にいるのがあの二人である以上
そう簡単には……とそこまで考えて、草薙さんが酔っ払っていたのを思い出した。
一気に不安が大きくなる。何度かノックと呼びかけを続けてもやはり返事はない。
「そうだ、マスターキー」
思いついてオーナーを呼びに行こうと振り返ったとき、背後でガチャリと音がした。
5173/5:2008/11/19(水) 01:43:27 ID:JnOx5HY80
「……内海君」
戸を開いたのは湯川先生だった。声を聞いてほっとすると同時に、振り返った私は
ますます混乱する。彼はなぜかチェーンロックをかけたままだったのだ。
「湯川先生?」
「すまない、着替えている途中なんだ」
チェーンを指差すとそう言われた。なるほど。確かに彼の衣服はいささか乱れていた。
「あの、お風呂あがりましたが、というか今の音……」
言いながら意識はどんどん新たな謎に持っていかれる。ほんの少し明けられた扉、
そこからのぞく湯川先生の顔はいつも通りとは言いがたかった。悩んでいる……いや、
苦痛に耐えているそれに近い。
「どうかされました?」
自然私の声も深刻になる。先生はいや、とうつむいて頭を振った。つられて視線を下げて
ぎょっとする。妙な位置に人の手があったのだ。高さで言うなら私のウエスト、湯川先生の
腰あたりだろうか。明らかに彼の手ではないから、となると残りは一人しかいない。
「……草薙さん?」
「あ、……ああ」
先生が息を吐くように返事をした。
「珍しくひどい酔い方をしてるらしい。トイレに行くつもりだったらしいが足取りが悪い。
遂に倒れそうになったから…っ、僕が、支えた」
「それが、今の音」
続けると首を縦に振る。なんとなく納得しつつも疑問が増えていく。明らかに様子がおかしい。
「もしかして湯川先生も酔ってます?」
「あ……あ、そう……かも、しれ、ない。気圧が違うの、を、失念していた」
「大丈夫ですか?薬とか……」
「いや、平気だ。わざわざ部屋まで……ありがとう」
湯川先生は早々に会話を切り上げたがっているらしい。邪魔する理由もないので
おやすみなさいと言って頭を下げた。扉が閉まる。もやもやはどうにも晴れなかった。
5184/5:2008/11/19(水) 01:44:38 ID:JnOx5HY80
「草薙……っ!」
扉を閉めるなり、湯川は堪えきれずに声を上げた。
呼ばれた草薙の方は湯川の腰を両手で抱き、シャツをたくし上げた背中に唇をうずめている。
「なにやってるんだ、離してくれ!」
湯川は懸命に振り払おうとするが、扉に押し付けるような形になっているのでうまくいかない。
アルコールの入った草薙の体は通常よりやたら重く感じられ、圧し掛かられると
動きようがなかった。草薙といえば制止がまったく耳に入らない様子でにやけている。
腰に回されていた手が腹を撫で、背骨の上を生温い舌で舐められて、湯川の体がびくんと震えた。
「く、さ、なぎ……」
結論から言えば草薙は酔っている。酔っていてついさっきまでベッドに転がっていたくせに、
湯川がラウンジに出ようとしたら、どこへ行くんだと言って起きてきた。
酔っ払いの相手などしておられるかと、湯川がかわして扉へ向かえば「やだ」ときたものだ。
なにを馬鹿なことをと無視しようとしたら、背後から全力で抱きしめられた。
突然預けられた体重によろけた結果、湯川は草薙に圧し掛かられるようにして扉にぶつかる。
打ちつけた痛みにしばし気をとられているうちに、草薙は湯川のシャツを引きずり出していた。
ここまでならまだ逃げようはあったのだ。あそこで内海が来なければ。
湯川の思考がそこでぶつりと途切れた。草薙の指が乳首を撫でまわしたのだ。
「んっ、……ふ」
いや、内海が悪いわけじゃない。悪いのはこの酔っ払いただ一人だ、それはとにかく
こんな状態で扉を開けられるはずもなかった。けれどあのままではそのうちマスターキーで
開かれてしまうだろう。ぎりぎりの妥協点がチェーンロックだった。
しかしそれはとてつもなく高い綱渡りだった。草薙ときたらまるで離すのを狙ったかのように
刺激を加えてくるのだ。本当に馬鹿なのか、まさか酔ったふりをしているのか、
どちらにしたって腹立たしいことこの上ない。
それなのに手つきだけはただただ巧みだった。
5195/5:2008/11/19(水) 01:46:10 ID:JnOx5HY80
「あっ、あ……」
素肌を這う指が、熱い。段々と足に力が入らなくなってくる。
「やめ、……あっ、は、うあ、あっ」
執拗な攻撃に耐え切れなくなり、湯川は扉にもたれるようにずるずると崩れ落ちて膝をついた。
もういい、身をまかせてしまえばいいじゃないか。理性が揺らいで悪魔が囁く。
「もっ……くさなぎっ」
遂に陥落した湯川が身を捻りキスを求めようとすると、ちょうどそこに草薙が頭を落としてきた。
唇を通り越して胸のあたりまで。
「……草薙?」
嫌な予感に苛まれながら湯川は名を呼ぶ。反応がないので肩を掴んだ。嘘だろう。
「ありえない……」
草薙は実に安らかに寝息を立てていた。

怒りを通り越して呆然だった。いつもなら絶対に言わない言葉も零れるというものだ。
ようやく拘束を解き払い、寝てしまった草薙を床に倒す。抑えきれない怒りと、
えもいえぬ悔しさがこみあげてきた。殴ってやろうかと思いつつも湯川の意識は他所へと向かう。
高まってしまった自身はもう、一度達せねば満足してはくれないだろう。
一瞬の逡巡の後、羞恥の極みだというように唇を噛んで、湯川は陰茎を握りこんだ。
はじめ躊躇い気味に動いていた手は、徐々に激しさを増して行く。
並大抵のスポーツでは乱れない呼吸でさえ浅く、熱を含んで湿っていた。
とろけたいというよりは楽になりたい一心で、湯川は行為を続ける。それ以上を望めば、
その先自分で自分の行いに後悔と羞恥に苛まれることこの上ない。
ふっと草薙の寝顔に目がいき、心臓が握られたようにぎゅっと収縮する。
かつては単なる性欲処理なら一人で充分だし、そのほうが効率的だと思っていた。
それが今はどうだろう、その肌に触れたくて仕方ない。
手中に白濁を吐き出した湯川は、そのまま草薙の胸に倒れこんだ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

酔わせていたずらもいいが酒豪受けというのもオツだと思うんだ
520風と木の名無しさん:2008/11/19(水) 01:54:21 ID:Xy8X36dj0
>>515
酒豪受け萌える!
萌えたよー!GJ!
色っぽい二人に萌えた、ありがとう
521オリジナル 1/6:2008/11/19(水) 08:03:45 ID:kjIKp8pVO

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


「決勝で会おう」

大会開会式、まだ幼さの残る顔を目一杯笑顔でゆがませ、あいつは言った。その言葉はそれからずっと俺の中をまわり続けていた。
約束だからな、とたたかれた肩に生まれた熱とともに、消えずにずっとずっと俺の中にある。
決勝を明日に備えた今日に至っても尚も存在を主張している。熱が飛び火した心臓が、苦しい。

あいつは俺の憧れだった。コートを縦横無尽に跳ね回るあいつの姿を初めて見た時、心が震えた。
自分とはまったく違うプレイスタイルに息を呑んだ。大げさな挙動は曲芸の一種かと見まがうほどだった。
その表情にも目を奪われた。相手に向ける強気な視線は、コート外の俺さえも惹きつける力を帯びたものだった。
勝てば心の底からわき上がる声を素直に上げ、負ければその経験を活かすために更に練習に励む。
あいつは心からテニスを楽しんでいた。これも俺とは異なる点だった。
俺はいつの間にかテニスが出来る喜びを忘れ、ただ機械的に技術だけを磨いていたのだ。それをあいつは教えてくれた。

そんな衝撃的な出会いから一年と少し。
ダイナミックで丁寧さに欠けるプレイをしていたあいつは、持ち味の豪快さに加え堅実さも身につけた。生まれながらの剛胆な精神力は何よりのあいつの強みだった。
522オリジナル 2/6:2008/11/19(水) 08:05:27 ID:kjIKp8pVO
明日俺はあいつと優勝をかけて争う。俺の前にあいつが、あいつの前に俺が立ち、コートで対峙する。
試合中のあいつの鋭い視線に射抜かれるのは俺なのだ。焦がれ続けた瞬間がようやく訪れる。
想像するだけで、気持ちだけでなく体までもが高ぶってしまう。こんなの初めてのことだ。
収まらない熱を冷ますため俺は外に出ることにした。


コンビニで買ったミネラルウォーターを一気に流し込むと、自然と安堵の息がもれた。
ベンチから見上げた空には満天の星が輝いている。明日は晴れるらしい。数時間後には星空が晴天に変わり、俺とあいつの試合が始まっているのか。何だか不思議だ。

コンビニ近くの公園のためか、周囲には塾の帰りらしき学生が数人見えた。あれはあいつの――折原の学校の制服だ。
「ちょいごめん!」
そんなことをぼんやり考えていると、集団から一人の学生が飛び出してきた。ああ、あいつもあのくらいの背丈だったな。
「有坂、有坂だろ!あの、俺明日お前と」
俺はあいつの声はあまり知らない。あの宣戦布告がほとんど初めて聞くあいつの声だった。
「折原……?」
しかし俺はあいつの顔を知っている。あいつは確かにこんな顔をしていた。そう、こんな風に人懐っこい笑みを浮かべていた。
「有坂、良かったらちょっと話さないか?」
523オリジナル 3/6:2008/11/19(水) 08:07:03 ID:kjIKp8pVO
「ついに明日なんだな、試合」
まだ信じられない、と折原はつぶやく。俺こそ信じられない。俺の隣に折原が座り、同じようにミネラルウォーターを飲んでいることが不思議でならない。
少しマシになっていた体がまた熱を取り戻していた。
「まさかお前とやれるなんて……夢みたいだ」
「うん、俺もだ」
「え?」
「俺はずっと折原と試合をしたかった」
「……え?」
ぽかんと口を開けたまま折原がこちらを見る。聞こえなかったのだろうか。

「俺はお前と試合をしたかったんだ」
「いや、そうじゃない、そうじゃなくてさ……」
「何?」
問うと、信じられないといった様子で見返してくる。大きな瞳が数回瞬いた後、折原は口を開いた。
「やっとここまで来れたけど、まだまだ俺はお前と釣り合ってない……正直もったいない言葉だよ」
「そんなことない!お前のテニス俺は好きだよ」
「有坂?」
「俺は好きだ。だから自分を卑下するようなこと言わないでくれ。頼むから」
「……」
折原の顔が困惑に彩られる。どうしてわからないのか、それが俺にはわからない。俺の心を掴むのは折原のテニスだけなのに。
524オリジナル 4/6:2008/11/19(水) 08:08:53 ID:kjIKp8pVO
「お前ってなんか……」
「え?何?」
「い、いや、別に」
「気になる。言えよ」
「あー……」
「折原」
「……あーもう!人が言うまい言うまいと隠してたこと先に言うなって言ってんの!」
「……は?」
「もうっ!俺なんか足元にも及ばないくらいお前ってすごいの!
憧れてるやつなんてうちの学校だけで何人いると思ってんだよ!女子なんか黄色い声援送りっぱなしだよムカつくことに!
って、外野なんてどうでもいいんだ。俺はお前の何倍も何倍も何倍もっ!お前に憧れてんの!わかってんのそこんとこ!?」
「わからない」
「何で!」

見返す瞳がこわい。何が彼をそうさせたのかはわからないが、折原は怒っているようだ。俺はしどろもどろになりながら何とか答えた。

「だって俺、ずっとお前を見てた。
密かにお前のプレイスタイルを真似てみて、全然うまくいかなくて落ち込んで……でも次またお前の試合を見たらやっぱりすごくて感動した。
ああ、同じことをしようとしても俺には無理なんだなって心から思い知らされて、なのに何かそれが嬉しくもあって
……そんなすごいお前に憧れてたなんて言われても、正直わからない」
525オリジナル 5/6:2008/11/19(水) 08:10:17 ID:kjIKp8pVO
「……けど事実だよ。悔しいけどさ、俺はお前の試合を見て荒削りじゃ先は見えないって悟らされたよ」

折原はペットボトルに手を伸ばす。
しかし手がふれるかふれないかのところで思いとどまると、両足のかかとをベンチの端にかけた。そのまま体を抱え込むように丸める。

「大好きなテニスを好きなだけ出来ればそれでいいって思ってた。
けどお前を知ってしまった。圧倒された。すごいなんて素直に感じられないほどの強烈な印象だった。
いつかあいつを負かしたい、見返してやりたい、俺という存在を刻みつけてやりたい……なんて、
不相応な望みを持ってしまうくらい鮮やかに、お前は俺の中に焼き付けられたんだ」
って何言わせんだよばか、と肩を小突かれても、どう答えていいものかわからず俺は瞬きしか返せなかった。
526オリジナル 6/6:2008/11/19(水) 08:12:06 ID:kjIKp8pVO
折原の言葉は信じられなかったけれど、そう正直に告げるとまた早口でまくし立てられそうなので、俺は必死に言葉を探した。
でも、だめだった。うまく頭が働いてくれないのだ。さっきからずっとこうだ。
他人の言動にこんなに心が動かされるなんて俺にとってはきっと初めてのことで。だから、どうやってそれを表現すればいいのかわからないのだ。
折原のテニスが好きだということは伝えた。だけど、それだけじゃ足りないのに。

「前日にさ、コーチに随分誉められて嬉しくて、つい調子に乗って開会式ん時お前に大口たたいちゃったけど、ここまで来れたこと本当に驚いてる。
ていうか、いきなりでびっくりしたろ?」
「うん……あの言葉はまだ俺の中に残ってる」
「そっか。忘れてたらも一回言ってやろうと思ってたけど、その必要はなかったな。明日はよろしく」

どちらからともなく手を差し出し、俺達は固く握手した。
初めてふれた折原の手はラケットを握っている時の力強さなんか微塵も感じさせない、やさしくあたたかいものだった。
真っ直ぐ見つめてくる強い瞳がくすぐったくて、俺は逃げるように顔を伏せてしまった。
早く試合をしたいやら、まだこの手を離したくないやら、どんどん欲求ばかりが生じてしまい、自分の気持ちを整理できない。
はっきりとわかっていることは、俺の心を震わせるのはこいつただ一人だという抗いようのない事実だけなのかもしれない。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
なんか恥ずかしい子達になってしまった。主に主人公。
527( ・∀・)('A`)わんわんお事件のようです? 7/9:2008/11/19(水) 12:33:58 ID:xGTWrurtO
>>509の続きです。
--------------------

('A`;)「泣くなよ!!大丈夫だから!俺達大丈夫だから!!」

(;'A`)「な!!!」

(^ω^;∪)おっ!!!


( う∀;) ぅ…

( う∀・)

( ・∀・)「おっ」

(∪^ω^)おっ

(;'A`)「………」

( ・∀・)「…いいか、ドクオ」

(;'A`)「な、なんだよ……」

( ・∀・)「頼むから心配かけさせるようなことだけはもうしないでくれ」
528( ・∀・)('A`)わんわんお事件のようです? 8/9:2008/11/19(水) 12:36:07 ID:xGTWrurtO
('A`)「…モララー気持ち悪い」

(;・∀・)「そんなッ」

(∪;^ω^)" お…

(・∀・;)「犬まで!?」

('A`)「気持ち悪いっス。モララー先輩ちょー気持ち悪いっス」

(;・∀・)「だってご飯作ってもらえなくなるし家賃半分払ってもらえなくなるし一緒に大学行けなくなるしドクオいなくなるの寂しいし!!!」

('A`)「実家に帰らせていただきます」
529( ・∀・)('A`)わんわんお事件のようです? 9/9:2008/11/19(水) 12:37:02 ID:xGTWrurtO
('A`)「いくわよ、ブーンちゃん。パパにさよならして」

(∪^ω^)ばいばいお

(;・∀・)「犬喋んな!!あと勝手に名前つけるなよ!」

('A`)「飼おうよ」

(;・∀・)「は!?」

('A`)「このお犬様飼おうよ」

(;・∀・)「で、でもあのアパートは動物…」

('A`)「大丈夫だった希ガス」

(∪^ω^)希ガス

(;・∀・)「犬喋んな!!」

結局ブーンを飼うことにしましたが、アパートの管理人さんが犬嫌いだったので二日で捨てられました。

終わり
530( ・∀・)('A`)わんわんお事件のようです?:2008/11/19(水) 12:39:39 ID:xGTWrurtO

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

いろいろとご迷惑おかけしました。
(∪^ω^)ノシ おんでわ。
531風と木の名無しさん:2008/11/19(水) 16:32:22 ID:+fb/bXzv0
照退の続き書けたんですが、443KBまでいってる今、投下するのは無謀でしょうか?
どれくらいの量で500になるのかよくわからなくて。スイマセン。
前回、連投規制くらったのを反省して短くしたつもりが、結局11まで(TДT)あります。ホントウニスイマセン。
2回に分けて投下しようかと思うのですが、ここでやっちゃって大丈夫ですか?
とりあえず見直しして、5時以降にどうするか決めます。
532風と木の名無しさん:2008/11/19(水) 17:00:48 ID:sPCQaw4SO
途中で切れたらもったいないし
新スレたててここは感想で埋めるのが無難じゃない?
533風と木の名無しさん:2008/11/19(水) 17:13:46 ID:YgWUo8EkO
30行×11なら投下しきれるように思う。
思うだけだから一回メモ帳に保存して容量確認してからがいいよー。
534照退 今夜はブギー・バッグ1/10:2008/11/19(水) 17:45:36 ID:+fb/bXzv0
いけそうかも。容量がよくわからないのですが(嫌な予感)様子見つつ、思い切って半分投下してみます。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


また見てる。
照が顔を見つめてくるのには、今までずっと気付いていた。それでも退蔵は素知らぬ顔で地図に印をつけていた。
「水商売中心に聞き込みすりゃいいですね」
そう言って、それから初めて目を合わせた。
視線を外すかと思ったら、臆する事無く真っすぐ見つめ返してくる。
瞳の透明さに心を掴まれた。逆に退蔵の方が目を離せなくなって、たじろぐ心を懸命に隠した。
「ちょっと貸して」
照は退蔵から地図を受け取ると、重要な箇所に書き込みしていく。
退蔵は俯いた照の顔を横から見た。それからペンを走らせる照の指を見た。
白くて小さい子供っぽい手。深爪し過ぎて余計に幼く見える。
さわりたい。急に触れたくなった。
地図を覗き込むふりで、退蔵は照に顔を寄せた。お互いの髪の先だけが触れ合っている。
それだけで、髪の毛の先から柔らかくて温かい体温を感じた。
ふと、照が退蔵の書き込んだ字をじっと見ているのに気付いた。筆跡を見てるんだろうな、と退蔵は思った。
『退史郎』の時は『退蔵』の字とは変えていた。そこまでした。最も付け焼刃だから専門的な鑑定をされればすぐばれるだろうが、パッと見他人の字だ。
退蔵は照の肩に手をまわした。肩が少しこわばるのを手のひらで感じた。
「オレは兄貴に似てますか?」
照は何も答えずに、『退史郎』の書いた字に目を落としていた。
535照退 今夜はブギー・バッグ2/10:2008/11/19(水) 17:49:48 ID:+fb/bXzv0
退蔵が照に勝手に会いに行ったのを知って、田所は知るなり激怒していた。
しかし、ばれる前に前もって警視長に話を通し、元の配置につけるよう希望も出しておいた。それが効いた。
田所が様々な支障が考えられると配置換えを提案しても、一番のネックである照と既に会ってしまっているのだからと、『退史郎』という別の人間、『退蔵の弟』としてすんなり元の部署に納まってしまった。
小会議室の窓際で、田所はイライラとブラインドを閉めながら言った。
「そもそも身内や血縁者は、同じ部署へ配置しない前提なんだぞ」
「なんででしたっけ?」
「癒着や汚職の温床になるからだ」
「汚職ねえ?」
退蔵はからかうように顎を上げて田所を見返した。田所はカッとなったのを押し殺すように、
「おまえ、この状況をよく考えろよ?おまえが下手打てば誰か死ぬぞ?」
と退蔵を睨みつけた。退蔵は顔から笑いを消した。
「真面目な話だ。朱龍がおまえをスパイにした事の意味をよく考えてくれ。まだ会って日の浅い、信用しきれない人間を敢えて古巣に戻してやれと思いついた、その意味を考えろ」
田所は窓に背を向けると、退蔵に向き直って言った。
「堕落した元刑事が、かつての仲間にあっさり尻尾振って、組織の情報を簡単に流すかもしれない。それがわかりきっているのに潜り込ませたんだ」
「…オレが署内でどう行動するかで、オレの今後を見極めようとしてる」
「そういう事だ。一度黒社会に身を落とした人間が、このまま本当に身を染める覚悟があるのか見極めようとしてるんだ」
「つまりここで身内とよりを戻したと判断されれば、オレが始末されるってことでしょ」
あっさり言った退蔵に、田所はどこかが痛むかのように表情を歪めた。
「おまえが変な行動を起こせば、オレらは3人ともヤバいんだ。オレと、おまえと、照が」
「……」
「今言っとく。オレはおまえの見張り役だ。朱龍に直に命令されてる。…言われなくても見張るけどな。おまえの行動はめちゃくちゃで、今の段階で見てらんねえよ」
田所はやたらと部屋の中を歩き回っていた。退蔵はそれを黙って眺めた。
536照退 今夜はブギー・バッグ3/10:2008/11/19(水) 17:51:32 ID:+fb/bXzv0
「いいか、ここは上手くやれよ。下手に刑事らしくして、何も情報を持ち出さないなんて事になれば朱龍に見限られる。大事の前の小事だ。結構でかい情報でもここは売っとくべきだ。わかるな?」
落ち着かない田所を退蔵はじっと目で追って、頷いた。
「山根組の幹部に、朱龍にいいように使われてるヤツがいる。そいつをおびき出す。朱龍の名前を出して、山根組の強制捜査の時期を教えてやれ。それはスパイであるおまえの手柄になる」
「そんな事していいんですか?」
「許可済みだ。上も目をつぶる。おまえは山根組の誰が現れるか顔を確認して、そいつを覚えろ。これは後に繋がる。山根組と三合会がどこまで組んでるのかを調べろ。金はもらっとけ」
「ファイルは田所さんが持ち出すんですか?」
「照に頼んで、資料一式受け取ってくれ」
退蔵は眉を顰めた。
「…先輩の手まで汚させる気ですか」
「仕方ないだろ。オレは強制捜査自体には噛んでいない。照にしかわからない資料があるんだ」
「…そうしてオレの手も汚させて、一人すっきりした顔でいられるってわけですか」
「オレがすっきりしているように見えるのかよ?」
田所は自嘲気味に口を歪めて笑い、すぐに表情を失くした。
「来週の火曜にアポを取って、山根組と会え」
「その日はオレ、先輩と現場に出なきゃいけないんですがね」
「オレと大内とで替われるように空けておく。照には週明けまで密会の件は伏せておけ」
田所は腕時計を見ると、そこで話を切り上げた。

退蔵は昼食をとる為に、署内の食堂に行った。そろそろ1時だがまだ結構人が残っている。
ここの食堂にはカツ丼がない。刑事と言えばカツ丼じゃないか?くだらない事を考えながら、退蔵は日替わり定食を頼んだ。
空いた席を適当に探していたら、照と捜査課の千夏が2人で笑いながら食事をしているのが目に入った。
聞き耳をたてるわけじゃない、と退蔵は思った。そういうわけじゃないが、2人には声をかけずに照の背後の席に、2人から死角になるように座った。
「もー私がっかりしましたよー。なんのために早起きしたんだろって」
「あるね、そういうの。そーいう時に限って、時間経つの遅いのな」
どうせたわいのない話だ。だけどやけに楽しそうに喋っているから、妙に心がざわついた。
537照退 今夜はブギー・バッグ4/10:2008/11/19(水) 17:53:05 ID:+fb/bXzv0
味も感じないまま鮭をつついていると、千夏が声の調子を変えた。
「照さん、元気出てよかった」
「え?」
「心配してたんですよー、ずっと。安心した。もう大丈夫みたいですね」
照がその言葉にどう反応したのかはわからなかったが、千夏ははしゃいだ声で続けた。
「ねえ、またこの前みんなで行ったとこ、飲みに行きませんか?」
「ああ、焼鳥んとこ?」
「あそこのつくね、おいしいでしょ?私ね、あの店からちょっと歩いたとこに、もひとつおいしいお店見つけたんです。マレーシア料理のお店」
「あーおれ変わってんのはちょっと…」
「照さん、そこはね、本っ当においしいですよ!一度食べてみてくださいよ、ね?」
退蔵はそっと後ろを窺った。千夏は照に向かって、花が咲いたようににっこり笑っていた。
可愛らしい笑顔。それを退蔵は、媚びるような笑顔だと感じていた。

翌週の水曜日の夕方。誰もいないので好都合だと思い、退蔵は自分のデスクでノートパソコンを立ち上げていた。そこへ照がやって来た。
「たい、…」
呼びかけようとして、照は口を濁した。
まただ。これで何度目になる?今まで何度も照は、名前を呼び間違えそうになっては言葉を飲み込んでいた。実際に言い間違えたのは2回だ。
気付かなかったふりで画面に現れた文書に目を落としていると、不意に照が表情を険しくした。
「…ちょっと待て、退史郎、おまえ何見てんだ?」
「はい?」
「これ田所が編集した資料じゃないか、何嗅ぎまわってる?」
疑われちゃったか、と退蔵は思った。田所に見るように言われていた三合会の資料に目を通そうとしただけだったが、昨日の山根組との密会で、照の自分への信頼は地に堕ちたようだ。
538照退 今夜はブギー・バッグ5/10:2008/11/19(水) 17:54:29 ID:+fb/bXzv0
照は画面の内容を読み取ろうと身を乗り出した。
「おまえ、まさかまた何か…」
「見てただけですよ。ほら、たいした内容じゃないでしょ?」
退蔵は苦笑いを浮かべて、照に席を譲った。照は画面をスクロールさせて、怪しい箇所がないか探っている。
その肩に後ろから両手を置いた。顔を寄せると、一瞬照の体が固まった。
「…普通の資料でしょ?」
耳元で低く囁くと、肩が一瞬震えた。肩に置いた手を滑らせて、後ろからゆるく抱き締める。
さわりたい。なんだかやたらとさわっていたい。
腕に少し力をこめて、照の耳に自分の頬をこすらせた。
照はされるがままになっている。さわり始めると、ずっとさわっていたくなった。
今までずっと離れていた。こうして触れて体温を感じるだけで、ぞくぞくと一緒にいるのを実感する。
それと同時に、「なんでこんなに簡単に触らせているんだ」と思う自分がいた。
これは『退蔵』じゃなくて『退史郎』なのに。退蔵とは別の人間だと云ってあるのに。退蔵をすきだと言っといて、なんで他のヤツに触らせてんだ?
「…何を考えてるんだよ」
急に照が左手で退蔵の腕を掴んで、どこか苦しそうに呟いた。
「おまえが何考えてんのかわからない。…情報を売ってるのは前からか?」
退蔵は後ろから抱き締めたまま答えた。
「昨日も言ったでしょ?今の生活に満足してますかって。いつ死ぬかわかんないってのに、こき使われて」
照が自分の顔を見ようと顔を向けたので、肩に指先を残したまま、体を離して顔を傾けた。
「考え方ひとつでこの方がうまくいくんです。長い目で見た時わかるんです」
急に照は立ち上がると、退蔵を見下ろして言い返した。
「…そんなわけない。ヤクザと金で繋がって、何がうまくいくんだ」
退蔵も立ち上がって、10cm近くある身長差で照を見下ろした。以前田所が言ったのと同じ言い方をする。
「必要悪ってヤツです」
急に下から襟首を掴まれた。
「貴様、それでも刑事か!」
両手で掴んで、下から見上げるように照が睨みつけてきた。その顔をじっと見下ろした。そんなあどけない目をして。何も知らないで。
「…はい。そうですよ」
539照退 今夜はブギー・バッグ6/10:2008/11/19(水) 17:56:48 ID:+fb/bXzv0
退蔵は両手で照の髪に触れた。
「刑事だって、正義の味方でばかりはいられないんです。先輩も自分を大事にするべきです」
照は憤ったように、掴んでいた手で思い切り退蔵の手を振り払うと一歩後ずさった。息を荒げて睨みつけ、声を張り上げた。
「刑事として、信念と誇りを持つのが自分を大事にするって事だ!」
「きれい事だけじゃ潰れちゃいますよ、先輩」
退蔵は首を傾けた。今救いたいのはあんただけ。何が正しくて何が間違ってるかより、それだけ。
その時、照が見ているのが自分の目ではなく、左耳だと気付いた。
左耳を何故?と思ってすぐに、ピアスの孔だ、と気付く。左耳のピアスの孔を見ているんだ。
今までずっと、退史郎として見られている間、照は『退蔵』と似ている部分を探しているんだと思っていた。そうじゃなくて、違いを探しているのかもしれない。
退蔵との違いを一つ一つ探しているのかもしれない。そうして確認しようとしているんだ。これは違う人間なんだって。
急に照は目をつぶった。そのまま退蔵と視線を合わさず、何も言わずに、疲れたように部屋を出て行った。

それから30分後、退蔵はディスクを戻しに資料室へと歩いた。
「正直、退史郎をどう思う?」
中から田所の声が聞こえてきて、退蔵はドアノブに伸ばした手を止めた。
「いくらなんでも似過ぎだよな。最初に会った時、どう思った?」
田所が話しかけている相手はしばらく黙っていたが、やがて一言ぽつりと
「…わからない」
と答えた。照の声だった。
「なんだよ、わからないってことがあるかよ」
「本当によくわからない。そっくりだとは思うんだ。時々、本人みたいに似てる。でも全然違って見える時がある」
退蔵は扉にもたれかかって、照の声を聞いていた。
「少なくとも、退蔵はヤクザと懇意になったりしなかった」
「…そうだな」
田所が答えるのを聞いて、退蔵は吹き出したくなった。
可笑しくてたまらなかった。田所さん、あんた今どんな顔してそう言ったんだ?
「…ちょっと待て」
田所の声がして、椅子を引く音がした。次の瞬間、扉が勢いよく開いて、田所の顔が目の前に現れた。
反射的に退蔵はにやっと笑顔を見せた。
540照退 今夜はブギー・バッグ7/10:2008/11/19(水) 18:01:28 ID:+fb/bXzv0
「…退史郎」
声を上げたのは田所ではなく照の方だった。退蔵は部屋に入ると、照に向かってにっこり笑った。
「オレは兄貴とは違いますか?」
照はどことなくつらそうな顔をして、目を伏せると、
「おれは先に帰る」
と退蔵の脇をすり抜けて、部屋を出て行った。
また逃げるんだ、と退蔵は思った。
照の足音が遠ざかるのを待って、田所が念の為扉を細く開けて確認するのを、退蔵はじっと眺めた。田所は扉を閉めて、退蔵を振り向いた。
「どういうつもりだ」
「それはこっちのセリフですよ。田所さん言ってましたよね。絶対正体がばれないようにしろって」
退蔵は壁に頭をもたれさせて腕を組むと、田所を見下ろして強い口調で言った。
「あんたコソコソ何やってんだ?何を吹き込もうとしたんだよ」
「吹き込もうとしてんのはそっちだろうが。おまえ照に何言った?」
田所は退蔵に近寄ると、至近距離で睨みつけた。すぐにピンときた。退蔵は顔を反らすと、持ってきたディスクを棚に戻しながら聞いた。
「先輩何か言ってましたか」
「とぼけるな。なんか照にオレのこと言ったんだろ!」
山根組の密会の時に、照に言った事だろう。退蔵はストレートに答えた。
「田所さんだって同じような事やってるって言っただけですよ。なんか聞かれたんですか」
田所は両手を堅く握り締めて、声を絞り出した。
「おまえ、自分の立場を本当にわかってんのか?自分の首を絞めて何が楽しい?」
退蔵は感情の無い目で田所を見返し、そのまま部屋を出た。
541照退 今夜はブギー・バッグ8/10:2008/11/19(水) 18:03:38 ID:+fb/bXzv0
署の外へ出ると、照が立っていた。沈みかけた太陽を背にして、眩しくて表情が見えない。
「もしかして、待っててくれたんですか?」
馴れ馴れしさを装って、近付くと肩に手をまわそうとしたがスッと避けられた。薄い影の中で照が言った。
「これからどこへ行くんだ?」
「このまま帰りますよ。いけませんか?当直明けで昨日からずっと署にいたんでね。先輩もでしょ?」
退蔵は首を傾けて答えた。照は口を噤んで、夕焼けの中に佇んでいる。
空の上にはまだ青空がうっすら残っているのに、底の方は燃えさかるように赤い。太陽が沈みきる前の、強烈な光が2人を照らした。
群青と藍色と朱と茜色の合間に、雲の白と、山吹と金色の光の爆発。雲と空とが世界の終りのように輝いていた。
その真ん中に照がいて、光と影にふちどられていた。
これは、ここでしか見れない景色。ここでしか吸えない空気。
あんたがここにいるってだけで、この世界にも価値があると思えるんだ。
眩しさで目を細めながら、退蔵は聞いた。
「オレが言った事、田所さんにそのまんま聞いちゃったんですか?」
「…聞いた」
「ストレートな人だな」
笑いながら手に触れようとすると、後ずさって逃げられた。退蔵は行き場のない手を固めて、コートのポケットに突っ込んだ。
「田所さんはなんて?」
照は退蔵の目をまっすぐ睨みつけて言った。
「…田所はそんなことするヤツじゃない。おれは信じてる」
「オレより田所さんを信じるんですね」
「当たり前だろ。いきなり現れたおまえをどう信じればいいんだよ。おれと田所はそんな浅い付き合いじゃない」
その言葉に、心のどこか深い部分が本気でえぐられた。
きつい目をしていた照の表情が少し揺らいだ。どこか気遣うような色で退蔵を見た。
もしかして、自分で思う以上に傷ついた顔をしてしまったんだろうか。そんな姿を見せるのは本意じゃなかった。
退蔵はわざと軽薄な表情を作って笑うと、背を向けて歩き出した。いつのまにか日は落ちていた。
542照退 今夜はブギー・バッグ9/10:2008/11/19(水) 18:08:54 ID:+fb/bXzv0
朱龍の『オフィス』から徒歩3分のアパートに『退史郎』の現住所があった。
住民の半分以上が中国人だ。更にその全員が朱龍の下で働く人間だった。
監視されてるのも同然だ。部屋に盗聴器が仕掛けられているかまではわからないが、当然その可能性もある。
寒々しい打ちっ放しの1DKにユニットバスの部屋。退蔵は玄関でペンダントを外しかけて手を止めた。やっぱり外さず着けたままにしておく。
ロケットになっていて、中に写真が入れてある。照の写真。
恥ずかしくてくだらない。だけど会えない間は身に着けずにいられなかったお守り。
そんな恥ずかしくてくだらない代物でも、見つかれば命取りだ。だけど今更、処分することも出来ずにいた。
誰にも傷つけさせない。誰にも渡さない。退蔵は祈るようにロケットを握り締めた。
もし苦しんでいるのなら、『退蔵』のことは忘れてくれていい。
だけど他の誰にも惑わされないで。心変わりの相手なら『退史郎』を選べばいい。
退蔵はまた靴を履くと、もう一度コートを羽織って朱龍の元へ向かった。

螺鈿細工で鳥が描かれた背もたれの高い椅子に座り、黒いマオカラーのスーツ姿で、朱龍が指を組んで退蔵に言った。
「人を殺した事があるか?」
そういう話も出るかもしれないとは思っていた。慎重に答えなくてはいけない。
「まだ、ありません」
「試しに一人、消してみるか?」
朱龍は黒檀の円卓の上に、写真を一枚差し出した。退蔵は視線を写真に滑らせた。
照が写っていた。
退蔵は表情を変えなかった。
「こいつはワタシの弟の人生を終わらせた。そろそろこいつの人生も終わらせてやろうと思う」
朱龍は身を乗り出して、口元に笑いを浮かべた。退蔵も笑いを浮かべ、両手を組んで、朱龍の顔を見据えて言った。
「死ぬよりつらい事って、なんですか?」
「いきなりだな?」
ニッと笑う朱龍に、写真を指で押し返すと、退蔵はゆっくりとした口調で話し始めた。
「この人ね。正義は正義、悪は悪って思ってます。白か黒。中間が無いんです。だからグレーゾーンに踏む込むと凄く苦しむ」
退蔵は笑いを浮かべたまま、静かに話し続けた。
543照退 今夜はブギー・バッグ10/10:2008/11/19(水) 18:12:38 ID:+fb/bXzv0
「この前の山根組の強制捜査の情報。この人にファイルを持ってこさせたんです。密会の現場まで。その場で本人にも、自分がやった事について教えました。幹部にも紹介してやろうとしたんですけど、逃げられちゃいました」
朱龍は写真を手に取ると、眺めながらヒラヒラと振った。退蔵は声の調子を変えずに続けた。
「この人利用できますよ。まだまだ利用できます。ここからいくらでも引き出せますよ。今消してしまうのは本当にもったいないです」
朱龍は笑いを含んだ眼で退蔵を眺めた。その眼から真意は読み取れない。
「面白そうだから、しばらくおまえに任せよう」
そう言って朱龍は楽しそうに写真を裏返すと、椅子に背をもたれさせた。

退蔵は写真を目にしてから最後に席を立つまで、ずっと表情を変えなかった。
外に出て、アパートまで戻る間もそれほど表情を変えなかった。
玄関の鍵を開け、明かりを点ける。靴を脱いで、コートのまま洗面所へ向かった。
思い切り蛇口をひねった。勢いよく水を出して、退蔵はそこでいきなり吐いた。出来るだけ声を出さないようにしたが、少し咳こんでしまった。
前にもこんなふうにいきなり吐いた事があったな。そう思い出した瞬間、瞼の裏側に誰かが浮かんだ。
洗面台に手をついて、目を閉じる。照の姿が残像のように現れた。
淡いネオンの光の中から、薄く影になって、自分へと手を差しのべていた。すぐにその手を掴み返せそうなくらい、瞼の中にはっきりと見えていた。
その残像を退蔵は目を閉じたまま、瞼の裏で、大切に大切に眺めた。
絶対に守り通す。
あんたがオレの心を守ってくれているように。
ぎゅっとロケットを握る。退蔵は口をぬぐうと、力をこめて蛇口を締めた。

つづく

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

いろいろとスイマセン。全部入った!ヨカター
話の中に出てくる大内は、久々に藁う戌見た時に「大内?誰?…ああ!ハイハイ!いたいた!」と懐かしく思い出したので記念カキコ的に出してみた。
検索避けの伏名にしなくても、このままでいいだろなという理由もアリ。(大内に対して失礼)
また続きを10日前後かけて書いてきます。今度こそもう少し量減らします。
544風と木の名無しさん:2008/11/19(水) 20:50:43 ID:wvu1hC6g0
いや、できることなら、量減らさないで長編でおながいしたいです。
正直他ジャンル者ですが、毎回すごく面白いです。読み応えがあります。
続き、楽しみにしてます。
545風と木の名無しさん:2008/11/19(水) 21:59:58 ID:zaMhQckH0
>>515
原作のペンションに行く云々が
ものっすごく気になって悶々としてたから超萌えた!!ありがとう!
546風と木の名無しさん:2008/11/19(水) 23:05:26 ID:ERyjyA4a0
照退キテターーー!!!.+゚(*゚∀゚*)゚+.
待ってたからうれしい!

最近大豊作だね
基本的にエロなしとかアリエナイ!っていうタイプなんだが、ここのはエロなくても全然大丈夫なんだよな〜
読み応えあるの多いし、むしろこっちがドキドキして暴走しそうになる…
これからも神々の降臨待ってまつ(・∀・)
547風と木の名無しさん:2008/11/19(水) 23:11:22 ID:iJp8CBnaO
ところでそろそろ新スレが必要?
容量大丈夫?
548風と木の名無しさん:2008/11/20(木) 00:20:17 ID:adE7qtZt0
>>534
ありがとう。長年の照鯛好きで、毎回の素晴らしい出来に感謝しています
読んでいるとあの頃を思い出したりしてしまう。
すこしずつ読んで楽しんでるので、どうぞあせらずにね
549風と木の名無しさん:2008/11/20(木) 01:08:07 ID:77zB2pZB0
462k
550風と木の名無しさん:2008/11/20(木) 01:10:02 ID:hGkYdfIT0
>>547
今、462KB。
>>531の443KBから長編入ってこれだから、まだしばらく大丈夫じゃないかな。
551風と木の名無しさん:2008/11/20(木) 01:19:19 ID:yVWX9wTz0
照退作者の細かさにテラ嫉妬www
お前構成練りすぎだよwww予告編ねじ込むあたり、もう神かとwwwwww
そして自分は、弟存在してた派なんだけど、コレ読んでたら弟=兄なんじゃまいかと思えてくる恐怖☆
限りなくGJ!続きをキリンの首になって待ってるv
552オリジナル1/4:2008/11/20(木) 01:43:53 ID:2226fDhl0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
オリジナル。現代もの。オナホ開発部リーダーのターン。


六六六と書いてミロク。「めずらしいですね」とよく言われる名字を持つ、
オナホ開発部のリーダーは、昼休み転職サイトを見ていた。
きょう年下の上司に撤退を進言した。近々、辞表を出すつもりだ。
六六六はオナホールに携わる前は大手メーカーで歯ブラシのデザインをしていた。
六六六の最高傑作は国際特許を取得した、360度ぐるっと毛のある円筒形の歯ブラシだ。
コンパクトヘッドに一般の歯ブラシの3分の1の細さの超極細毛を3万本はやしたそれは、
従来の歯ブラシでは届きにくかった奥歯や前歯の裏など口内のすみずみまで磨けるうえ、
舌苔を取り除く舌クリーナーとしても使え、歯茎のマッサージもできる、
高性能かつ多目的な歯ブラシとして爆発的に売れた。
六六六は確信している。一般の歯ブラシの形状は歯を磨く用具として間違ってはいない。
あれはあれで正解だ。だが、大正解は自分がデザインした歯ブラシだ。
553オリジナル2/4:2008/11/20(木) 01:44:34 ID:2226fDhl0
六六六が描いた歯ブラシのあるべき形を独自の加工技術で具現化したのは、
歯科衛生研究所の技術者・三鷹だ。三鷹が開発した超極細毛をびっしりはやすことにより、
360度ぐるっと毛のある円筒形の歯ブラシが実現した。
究極の歯ブラシだと自画自賛できるものをつくりあげた六六六は、思い起こすことなく
歯ブラシの世界から身を引きオナホール界に飛びこんだ。
巷にあふれるオナホールのコンセプトとの無さに、六六六はかねてから、
冷めたカレーで顔を洗っているような気持ち悪さを感じていた。
女性器を模したキッチュなオナホはオナホのデザインとして正解かもしれない。
けれど絶対に大正解ではない。ずっとそう感じてきた。
「オナホールのあるべき姿」を明らかにしたい。それが志井商事に転職した動機だ。
554オリジナル3/4:2008/11/20(木) 01:46:07 ID:2226fDhl0
だが、六六六が志井商事で試行錯誤している間にライバル社が画期的なオナホを発売した。
洗浄しやすく乾かしやすい、くりかえし使える衛生的なオナホというコンセプトに、
先を越されたと思った。本体とパッケージを手に取った時、
これなら母や妹に見られても恥ずかしくないと思った。
そう思ったらデザイナーとして負けた気がした。
六六六が思う大正解が他社によって明らかにされ、市場に受け入れられていく。
突然訪れたゲームセットがたまらなく悔しかった。
なのに、六六六が開発競争は終わったのだと告げているのに、年下の上司は、
1デイズの使い捨てオナホをつくれと言う。
本格的なリサイクル時代が訪れようとしているのに、1日使い捨て。
しかも1回あたり100円。7日分ワンセット・1箱700円で売りたいらしい。
結果、志井商事のオナホ部門は、開発できる見込みのない新製品の開発に
多額の費用を費やし、赤字計上がつづいている。
オナホ部門の赤字を補填しているのは好況を謳歌しているコンドーム部門だ。
コンドーム部門を率いている上司の双子の兄を六六六は高く評価している。
いつもふわっとした笑みかトロッとした笑顔を浮かべ、
ひねもすのたりのたりとしているが、頭はキレる。半端ない。
555オリジナル4/4:2008/11/20(木) 01:47:33 ID:2226fDhl0
魅惑の微笑みを浮かべつつ、天然を装い複雑な計算をしている時と、
複雑な計算をしていそうでなにも考えていない時が明らかにあり、
その両方の見分けがちょっとつかないという噂もきく。
何よりコンドームチームのスタッフを爽やかな笑顔で鼓舞するだけでなく、
自身も技術者としてチームに多大なる貢献をしているのが素晴らしい。
女子社員からは癒し系だのパンダだの言われているが、あの男は
ほとばしり出る激しい創造のエネルギーに身を任せ、コンドームをつくっている。
はたから見ていてそれがわかる。それに引き換え自分の上司である弟は、
きりっと冴えているのは見た目だけ。頭のなかはとろっとろのふわふわだ。
会議をすっぽかし、飛行機で地方に遊びに行っていたという噂を聞いた時、
六六六は、ほとほと愛想が尽きた。この男の為に頑張ろうという気がまったく起きない。
六六六の目に映る上司は自分に甘く、被害妄想とプライドが高いダメ男だ。
チームのトップにはビジョンを伝える力がなければいけないのに、
伝えたいことを伝えられる伝え方ができないどころか、語るということをしないため、
何を考えているからわからないのもイラッとする。
整った無愛想な顔に、「兄へのコンプレックスがあります」と書いてあるのもノーグッドだ。
顔の造作は同じなのだから笑えば見た目は兄のようにもなれるだろうに、
思い至らないらしい。六六六は思う。俺の上司に魅力は無い。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
556風と木の名無しさん:2008/11/20(木) 02:57:49 ID:nSLMykir0
>>555
先が気になって仕方ない。
最初、設定ナンダコリャと思ってたけど、今ではそんなこたぁどおでもええ。
姐さん、先を…先をクレ
557風と木の名無しさん:2008/11/20(木) 06:46:41 ID:VVRFhja70
待ってたよ!これからどうくっつくのか楽しみで仕方がない。
自社製品と自分の開発した多目的歯ブラシを駆使したエロマダー?チンチン
558オリジナル 訪問者 1/9:2008/11/20(木) 18:23:49 ID:pFzMfX9e0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )オリジナルでニアホモ、片方に彼女が出てくるので注意。

 昼と夜のさかい目、日の光がまだのこっている頃にたどりついたのは、庭にある
大きな柿の木が目じるしの、みどり色の屋根の家。おれは庭の石の上をとんでいって、
げんかんの引き戸を開けた。
「あつしくーん、あそびましょ」
 耳をすましたけど、返事は返ってこなかった。あつし、いないのかな。前はこの時間
になるといつも帰ってたんだけど。来る前に知らせておけばよかったかな。そんなことを
考えてたら、おくの方から足音が近づいてきた。
「淳のお友達?」
 出てきたのはエプロンをしたお母さんだった。あのエプロンは、あつしが4年生だ
った時に学校でつくったやつだ。むねのところにアンパンマンがついている。一度
あのアンパンマンをむしっちゃって、あつしに泣かれたことがある。あつしはしばらく
おれと話してくれなくなったけど、お母さんがはりと糸で付けなおしてくれたおかげで
仲直りできた。おれはお母さんにとても感しゃしている。
「お母さん、ひさしぶり」
 おれが言うと、お母さんの目が丸くなった。
「あらあら、大きくなって。誰かと思っちゃったわ」
 丸かったお母さんの目が、今度は糸みたいに細くなる。おれはお母さんの目じりの
しわが好きだ。
「あつしいない?」
「やぁね、まだ帰ってないのよ。電話しようか?」
「ううん、いいや。おれが急に来ちゃったから」
 出なおそうかな。ぐるっと散歩してくるのも楽しいかもしれない。お気に入りの公園を
見てくるのもいいなと思ったけど、お母さんが部屋に上がって待ってれば? って
言ってくれたから、そうすることにした。
559オリジナル 訪問者 2/9:2008/11/20(木) 18:24:29 ID:pFzMfX9e0
 あつしの部屋は2階のはしにある。ふかふかのベッドに、広いつくえ。大きい本だな
には、マンガがずらっとならんでいる。おれは一番下の段にしまってあるアルバムを
引き出した。お父さんが写真をとるのがしゅみだから、アルバムは何冊も何冊もある。
おれはかたっぱしからそれをめくっていった。赤ちゃんのあつし。ランドセルを
しょってるあつし。黒いせいふくを着て、学校の門の前に立つあつし。野球の試合で
友だちといっしょによろこんでるあつし。いろいろな写真があった。おれと写ってるのも
いっぱいあった。
 3冊目のアルバムを見おわった時、遠くからバイクの音が聞こえてきた。きっと
あつしだ。大学に入る前の春休み、あつしは毎日バイトをしてお金をためて、かっこ
いいバイクを買った。彼女のユカちゃんをのせて走るためだ。
 もうすぐあつしに会える! おれは今さらだけどどきどきしてきた。うれしくて
たまらなかった。窓から外をながめていたら、ドアをノックしてお母さんが入ってきた。
おれはお母さんに、もうすぐあつしが帰ってくることを教えてあげた。
「そりゃ帰ってくるわよ、あの子の家だもの」
 おぼんにのって運ばれてきたのは、あっためた牛にゅうだった。マグカップを受け
とって口をつけようとしたけど、まだあつくて飲めなかった。
「あつしおれのことわかるかなぁ」
「わかるわよ。でも淳もにぶいとこあるからね」
 お母さんの答えは答えになってない。おれはちょっと不安になって、マグカップを
ゆすった。牛にゅうの表面にはったうすいまくがゆれた。
「わかんないかなぁ……」
 あつしならわかってくれると思ってたんだけど、急に自信がなくなってきた。
「試してみる?」
 え、どうゆうこと? 意味がわかんなくて顔をあげたら、おぼんを抱いたお母さんが、
いたずらっぽくほほえんでいた。
560オリジナル 訪問者 3/9:2008/11/20(木) 18:25:32 ID:pFzMfX9e0
 ヘルメットを脱いだ頬に当たる風が、俺に秋の深まりを感じさせる。庭の石を渡り、
家に入る前に、ふと気になって柿の木の根元に目をやった。そこには落ちた葉が幾重
にも重なっていた。時間があるときに掃いてやらないといけない、と思った。
「ただいま」
 玄関で靴を脱いでいたら、母さんが声をかけてきた。
「あんた、友達もう来てるわよ」
「友達?」
 今夜は誰とも約束していない。大学に入ってから家に誰かを呼ぶこと自体少なく
なっていた。遊ぶなら一人暮らしの友人の家の方が都合がいいし、まれにこちらに
来るとしても由香ぐらいだ。由香はもう両親とは顔見知りなので、「友達」という
呼び方はしないはずだ。
「誰?」
「名前忘れちゃった。会ったらわかるでしょ」
 連絡もなしに家に押しかけるぐらいだから、親しいやつだろう。健太か、洋介か。
しばらく会ってないけどヤスかもしれない。俺は早足で階段を上がり、部屋のドアを
開けた。
「おかえり!」
 満面の笑みで俺を出迎えてくれたのは、見慣れない顔の男だった。
「本当にあつしだ!」
 男が駆けよってきて、両手で俺の肩を叩いた。更に体を寄せて、片腕で俺の首を
抱き寄せてくる。野球部のやつか、小学校のクラスメイトか。このスキンシップを
見る限り、相当仲が良かったはずだ。思い出さないと気まずいことになってしまう。
俺は焦った。
561オリジナル 訪問者 4/9:2008/11/20(木) 18:26:15 ID:pFzMfX9e0
 無邪気に再会を喜んでいる男に水を差すようなことを言えなくて、俺は相手の背を
叩いて、マジで久しぶりだな、と話を合わせた。
 色の抜けた柔らかい髪に、黒目がちの懐っこい瞳。肌は健康的に焼けている。身長は
俺よりほんの少し低いくらいで、やせ気味だ。どこかで会っているはずなのだが、
それが思い出せない。しかたなく俺は探りを入れることにした。
「お前、どこの大学だっけ?」
 進学したのか、就職したのか。後者だとしても、そこは忘れていたとしらをきれば良い。
「おれ? おれが学校行くわけないじゃん」
 男は首を傾げた。あれ、この仕草は見覚えがある気がする。昔こうやって俺の話を
聞いていたのかもしれない。
「わかってる、冗談だよ」
 就職組、しかも口調から察するによっぽどのバカか不良グループ。しかし素行が
悪いようには見えないから、バカの方かもしれない。それなら野球バカか。
「まだ野球やってんの?」
「それ聞きたいのはこっちだよ! おれボール拾いくらいしかしたことないし」
 だよな、ははは。俺の乾いた笑いが虚しく部屋に響いた。野球部でもないとしたら、
思い出せる自信がない。なんだか胃が痛くなってきた。
「いまアルバム見てたんだ」
 男があごをしゃくった。見ると、ベッドの上にアルバムが投げ出されている。俺は
閃いた。アルバムの中からこいつが写ってる写真を見つけ出せばいいのだ。きっと
昔の顔を見たら名前と一致するはずだ。
「おまえ写ってた?」
 一冊を選んで、なにげなく男の目の前で広げて見せた。
「うん、ほらこれ」
 望み通りの行動だ。男自身が教えてくれるなら間違いない。しかし、男の指が
指したのは、我が家で行われた誕生日会の写真だった。写っているのは、家族と
十数人の友人たち。一人一人の面影を追うが、一体誰のことを言っているのか
わからない。
「お前、結構印象変わったよな……」
 そんなあたりさわりのない台詞しか言えず、俺はアルバムを閉じた。こいつ、
何者なんだよ。相手に聞こえないように小さくため息をついた。
562オリジナル 訪問者 5/9:2008/11/20(木) 18:27:03 ID:pFzMfX9e0
 おれはアルバムを片付けるあつしの背中をながめていた。トレーナーから背ぼねの
ごつごつがほんのちょっとだけういて見える。あの背中の、上から6番目のほねと
7番目のほねの間くらいに、ピンク色の細いきずがあることを、おれは知っている。
おふろ場のじゃぐちでこすったきずだ。体を洗いおわって立ち上がる時にやっちゃった
って話してた。あの頃のあつしは反抗きだったから、お父さんにもお母さんにも
けがをしたことを言わなかった。
 かわりに、ユカちゃんがあつしの背中にオロナインをぬってくれた。いたそう、
よくがまんしたね、あつし。ユカちゃんの指がやさしくあつしの背中をなぜるのを、
おれはいきを止めて見ていた。その日から、ユカちゃんはあつしの大切な女の子になった。
「あつし、ユカちゃんと仲良くしてる?」
 気になって聞いたら、あつしがふりかえった。へんな顔をしている。あつくもないのに、
はなのわきに汗をかいていた。
「おまえ、由香のこと知ってたっけ?」
 知ってるも何も、あつし。
「赤いリボンのセーラーふく着てるときから知ってるよ」
「へえ、そうだっけ……」
 そうつぶやく横顔がこわばってる。ばかだな、本当に気付かないなんて。そりゃあ
ユカちゃんはこういうとこが好きなのかもしれないけど、いくらなんでもげん度がある。
「おれ、お母さん手伝ってくる」
 下から良いにおいがしてきたので、おれは一人なやめるあつしを部屋にのこして、
一階に下りることにした。もうこうなったら、意地でも自分からは言ってやんない。
おれはあつしのためにここに来た。ちょっとくらい見返りをもとめたって、ばちは
当たらないと思うんだ。
563オリジナル 訪問者 6/9:2008/11/20(木) 18:27:36 ID:pFzMfX9e0
「お母さん、あつしわかってないよぉ」
 リビングのドアを開けて、俺はお母さんにうったえた。
「育て方を間違ったのかしら」
 お母さんはほっぺに手を当てておどけてみせる。こっちは笑える気分じゃないのに、
ずいぶんのん気だ。でも、おかげでちょっと気がはれた。
「ねぇ何作ってるの? すごく良いにおいがする」
「さて何でしょう。どんなにおいがする?」
 どんなにおい? 目をつむって考えてみた。しょっぱいのと甘いの、水っぽいのと
土っぽい。それぞれを分せきするのには集中力が必要だ。
「お魚としょう油とみりんと砂とうと、お肉と白菜としらたきと豆ふのにおい」
 お母さんが拍手をしてくれた。台所まで見にいくと、おれが言ったとおりの材料が
あった。これはもしかして……。よだれが出てきて、口元をシャツのそででぬぐった。
「すきやき?」
「そうよ。あなた好きでしょ」
「ありがとう! お母さん知ってたの?」
「そりゃお母さんだもの」
 お母さんはすごい。本当にすごい。天才だ。さっきまでの、さみしいのとかなしいのと
むかむかするのがまじったような嫌な気分がどっかへ行った。
「あれ、でもお魚は? すきやきには入れないよね?」
「秋刀魚は焼いて食べるの。さっき大根もおろしておいたし」
 サンマはお父さんが好きなお魚だ。きっと一緒にビールも飲むんだろうな。じゃあ
そっちのなべは? ぎもんに思ったら、おれの心を読んだように、お母さんがなべの
ふたを開けた。
「これは豚汁」
「あつしの好きなやつ!」
「そう、今日はごちそうよ。みんなでいっぱい食べようね」
 みんなで食べるごはん。なんてすてきなひびきだろう。おれはくるくる回りたく
なるほど幸せだった。早くお父さんが帰ってくれば良い、早くあつしがおれのことを
思い出せば良い。そしたらもっと回りたくなっちゃうかもしれない。
 お母さんが、少しだけ豚汁を味見させてくれた。ほっとするような、なつかしい味がした。
564オリジナル 訪問者 7/9:2008/11/20(木) 18:28:08 ID:pFzMfX9e0
 携帯のメモリを上から順に見ていき、登録されている相手の顔を思い出す。俺は
そんな不毛なことをしていた。3分の1をすぎても、それらしき名前は見つからない。
あの男についてわかっているのは、バカで野球が下手で、由香の知り合いだという
ことだけだ。由香に聞けば早いのだが、今はアルバイトをしてる時間帯だ。もしも
あいつが由香の男だったら――ついくだらないことを考えて、そんな自分に落ち込んだ。
 階下から帰宅を告げる父さんの声がした。ドア越しに声を張り、おかえりと返した。
もうすぐ夕食も始まる。うちには、父さんが帰ったら夕飯を食べはじめるという習慣が
あるのだ。核家族の一人っ子を健全に育てるために母さんが決めた。
 あいつも食べていくつもりだろう。俺は気が重くなった。名前を知らない奴と飯を
食うのは初めてだ。しかし他人の実家で飯の支度を手伝うとは、なかなかしっかりした
部分のある男だ。自分なら躊躇してしまう。ふわふわしているみたいに見えたけれど、
案外出来た男なのだろうか。
 あぁ、身近にそんなやつがいたような気がする。抜けているけれど、最後の最後は
ちゃんと決める。まっすぐな目をしたあいつは誰だったか……。

 夕食はにぎやかなものになった。すき焼きに豚汁に秋刀魚の塩焼き、そしてクルトンが
山ほど入ったシーザーサラダ。突然の来客に母さんが張り切ったのか、無駄に豪華な
メニューだった。
 父さんはいつもよりビールを飲むピッチが早く、赤い顔をしてよくしゃべった。
つまらない駄洒落にも、男は嫌な顔一つせずにころころ笑った。母さんは箸がうまく
使えない男のために秋刀魚を切り分けてやっていた。フォークで秋刀魚を食べる日本人が
いるのかと、俺は真剣に驚いた。
565オリジナル 訪問者 8/9:2008/11/20(木) 18:29:19 ID:pFzMfX9e0
「ほんとにほんとにおいしい!」
 頬を膨らませたまま男が言うので、唇の端からテーブルの上に米粒が落ちた。
男は指先でそれを拾い、慌てて自分の口に押し込んだ。幼い子供のような行動だった。
「さっきから肉ばっかじゃねぇか」
 彼の取り皿には牛肉ばかりよそわれていた。野菜も食えよと言うと、男は黙って
俺を上目使いで見た。
「男の子だもんね。たくさん食べていいのよ」
 すかさず母さんがフォローを入れる。
「今日は泊まっていくんだろ?」
 今度は父さんだ。両親はすっかりこいつを気に入ったらしい。4人で食卓を囲んで
いると、まるで昔からこうしていたような錯覚を起こしそうだった。俺自身がまだ
距離感を測りかねているというのに、彼は家に不思議と馴染んでいた。
「あつしが良いなら」
 箸を舐りながら男が答えた。そんな言い方をされたら、断るものも断れない。
「何言ってるんだ、良いに決まってるじゃないか」
「ねえ淳」
 3人揃って目を輝かせるものだから、了承せざるをえなかった。逃げ道なんて
最初から残されていなかったのだ。

 食事を終えて、すぐに風呂場へ向かった。風呂の湯を張り、溜まったら止めるのが
俺の役割だ。その間に母さんは皿を洗い、父さんが皿を拭く。合理的な分業だ。
 今日は父さんの代わりに、手伝いを申し出た男が皿を拭くことになった。父さんは
ソファに座り、野球のテレビ中継を見ている。ひいきの球団は大差で負けていて、
既に結果が見える試合ではあったが、週末のサラリーマンのささやかな楽しみに
口を出すつもりはなかった。
「風呂沸いてるけど、先入るか」
 危なっかしい手つきで皿を扱う男に尋ねたら、男は首を振った。
「ううん、俺風呂嫌いだから」
 嫌いだから。その一言で済ませるのはどうかとも思ったが、深追いすると墓穴を
掘りそうだったので、追求しないことにした。
「そっか、じゃあ先に入ってくるわ」
 男は返事をするかわりに、白い皿をひらひらと振った。
566オリジナル 訪問者 9/9:2008/11/20(木) 18:30:42 ID:pFzMfX9e0
 あつしがリビングから出て行ったとたん、お父さんがふきだした。背中を丸めて、
おなかをおさえている。つられてお母さんもにやにやする。
「あいつ、全然わからないんだなぁ」
「だから言ったでしょ」
 まったくひどい話だ。お父さんだって、げんかんで出むかえたしゅん間におれに
気付いて、いつ来たんだい? って聞いてくれたというのに。
 食器だなの中にお茶わんをとおわんをしまって、とびらを閉めた。それからソファに
向かって、お父さんのとなりにすわる。
「はいお父さん、ビール」
 空になっていたコップに、お酒をついであげた。思った以上にもわもわとあわが立って、
コップのふちをこえそうになったので、お父さんがしんちょうにそのあわをすすった。
「ありがとな」
 お父さんのはなの下にヒゲができた。いつかお父さんがおじいちゃんになったら、
こんな風になるのかな。もしもおじいちゃんになったお父さんがビールをすすったら、
ヒゲの上にヒゲができることになる。そうぞうするとおかしかった。
 楽しい酒はいい酒、かなしい酒は悪い酒。お酒のことをたしなめられた時、
お父さんはこう言ってごまかした。楽しいお酒に付き合うと、おれも楽しかった。
お父さんがかなしいお酒を飲んでいるところは見たことがない。
「ヤクル卜負けちゃったね」
 テレビの中では、しましまのふくを着た人がしゃべっていた。タイガースの人だ。
「もう今シーズンはどうしようもないよ」
「中つぎがもうちょっとしっかりしてくれないとね」
 松岡のカーブがどうだ、いや林のストレートはこうだ。野球ろんを語りあっていたら
お父さんは気を良くしたみたいで、さすがにわかってるなぁ、なんて言いながら、
おれにコップをおしつけてきた。ささ、どうぞいっぱい。ではいただきます。ドラマ
のせりふをまねして、ビールを飲みほした。火がついたみたいにのどがあつくなった。
目もちかちかする。でもこれは、まちがいなく良いお酒なんだ。

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;) 後半につづく。
567風と木の名無しさん:2008/11/20(木) 19:00:40 ID:z9DnUu430
480k超えました。規制で立てられないのでお知らせだけ。
568風と木の名無しさん:2008/11/20(木) 20:52:44 ID:r5kjj33C0
立ててみるのでちょっとお待ちを
569風と木の名無しさん:2008/11/20(木) 20:56:00 ID:r5kjj33C0
インポでした
誰かお願いします
570風と木の名無しさん:2008/11/20(木) 20:58:34 ID:C9Hh3vPX0
ちょっといってみる
571風と木の名無しさん:2008/11/20(木) 21:00:22 ID:C9Hh3vPX0
無理だったorz
572風と木の名無しさん:2008/11/20(木) 21:35:01 ID:GcpExzZC0
行ってみる
573風と木の名無しさん:2008/11/20(木) 21:46:10 ID:GcpExzZC0
だめだったorz
574風と木の名無しさん:2008/11/20(木) 21:48:19 ID:sqDRyaEU0
行ってみます
575風と木の名無しさん:2008/11/20(木) 21:52:11 ID:sqDRyaEU0
駄目でした
576風と木の名無しさん:2008/11/20(木) 22:06:43 ID:hJyCfmWw0
初めてだけど行ってみます
577風と木の名無しさん:2008/11/20(木) 22:09:14 ID:hJyCfmWw0
ダメでしたorz
578風と木の名無しさん:2008/11/20(木) 22:09:56 ID:Nnknh+0f0
通りすがりですが、やってみます
579風と木の名無しさん:2008/11/20(木) 22:14:11 ID:Nnknh+0f0
モララーのビデオ棚in801板43
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1227186819/

立ちました
テンプレ貼ります
580オリジナル えせ時代劇風 1/6:2008/11/20(木) 23:02:45 ID:6WinYv03O
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
新スレ乙です!
埋めがてら、以前の続きを投下します。
遊郭の番頭さんと化粧師さんの話の続き。地味な話の一番地味なところですが。




ざあざあと早朝より振り出した雨のせいで、今日は客足が鈍い。短い日の落ちるのもまたさらに早くなるが、
昼見世の閑散としたさまを見ると、油皿へ火を入れるのが惜しい。いつものように格子の間へ、滑るように
降りてくる姐さん方の中にも、今日は半ば諦めの気配も見える。
「てめえは道中の支度でもしてな」
背後の若衆へ言いやって、自分は首を回しながら、おもてを見た。もう向いの茶屋には火が入っている。
淀んだ真っ暗な天から大粒の冷雨が降りかかり、泥濘んだどろが好き放題跳ねては、板戸の染みを作ったり
渦になったりしていたが、こんな日でも花魁道中は、この世の春よと着飾ってつんと澄まして歩くのだ。
ざあざあと、涙雨なら相当だと柄にもなく思う。
誰の涙だ、あの新造か名も知らぬどこぞの遊女か、それとも俺か。
気の抜けた顔してんじゃないよと、今朝虫の居所の悪かった女将に張り飛ばされた、横っ面が僅かにしびれ
る。
581オリジナル 2/6:2008/11/20(木) 23:04:49 ID:6WinYv03O
誰がこの強面の無口な番頭が、恋煩いでまんじりとも出来ないなどと思うだろうか。
あの新造も俺のように張られたのだろうかと、同情でも憐憫でもなく淡々と思った。
恋煩いか、俺の涙か、と思えば笑えなかった。
泣いた覚えなど無い。生まれてこの方一度もだ。
かわいげのない坊主だったろうが、勘当された親父殿は、幼い頃は俺のそんな偏屈な性質も、さむらいらし
いと大笑いしていたっけ。
右腕の外側には盛大な刀傷がある。どうやって受けたかも覚えていない、些細なことのように思える。その
太い腕は、ごろつきどものなまくら刀なんぞでは、到底真っ二つにできるわけがないという自信があった。
首もとにも似たような傷がある。うまく身を固めて骨のあたりで受け止めれば、のめりこんだ刀ごと、相手
の利き腕を締め上げることも出来た。
傷も癒えてしまえば大したことはなく、少し引きつるのにももう慣れた。今はこの向こう傷のおかげでどす
も利く。
いつぞやの酒の席で、いつものようにしつこく問うのでそう言えば、化粧師は黙りやがて言った。
「逃げたことねえのか、あんた」
逃げることを知らぬわけではないし、それを別段卑怯とも思わぬ。ただ気付くのと足が遅い。
582オリジナル 3/6:2008/11/20(木) 23:07:43 ID:6WinYv03O
何かことが起こったとき、いつも逃げ足の速い奴はとっくに消え失せ、己ばかりが残った。狐につままれた
ように馬鹿をみることもあったし、貧乏くじを引くこともあったが、それぞれに天命があるのだと思えば腹
も立たぬ。
「お人よしだな」
そうでもないと思ったが、別に伝える必要も無かったので黙っておいた。こういうところが無口だと言われ
る所以だろうか。
無口で無愛想なので、すすんで冗談を言われる事も無いし、自分から泣き喚く事も無い。足が遅いので取り
残されるのにも慣れている、その後降りかかる火の粉があろうと、そんなものはどうとでもなる。黙って突っ
立っているに限る。
さむらいの出めと化粧師は嘲ったが、どこのどいつともわからぬ者の面倒と厄介ごとを背負わされた挙句、
恥と勘当されただけだ。全くよくよくの貧乏くじだが、むしろ出自はそのせいで飯の種に困ることのほうが
多かった。
まあ、今は過ぎたことに粘着してもどうにもなるまいと思っている。己には昔から、鷹揚に構えすぎるきら
いがある。
見ようによれば木偶のぼう、色恋沙汰もそうなのかと気付いたときは少し笑えたが何にせよ、俺が動くとうま
くはゆかぬと身にしみた。
583オリジナル 4/6:2008/11/20(木) 23:09:29 ID:6WinYv03O
だから待っている。
己という器から、化粧師が出て行くのを待っている。
「叶うわけねえだろう」
ぼそりと呟けば、頭の中では同じことをまた化粧師が言い、止めを刺す。
もぐりこまれた己を責めたところでどうなるものでもない。どんな時でも気付くのも、逃げ足も遅かっただけ
だ。
ごつく無愛想な風貌は、そのぶんの負を補おうとしてかまたは何らかの牙城を守ろうとしてか、この身はそう
なったのだろう。
黙って突っ立っているのには慣れている。
道楽は、酒で事足りる。特におんなを欲しいとも思わぬ。姐さん方の白粉のむっとする匂いにあてられれば、時
折猛烈に欲しくなるにはなるが、ただ所帯を持つなら話は別だ。おもてでは淡々と帳簿を付け、行灯をともし、
見せかけの春にはしばし我を忘れる。そして忘れている己を、逆に冷たく見つめてもいる。
改めて考えてみると、己にはどこか生まれつきの、虫喰いの穴がある。そこにすっぽり根を張ったのが、たまた
まあの化粧師だったのだろう。支えにするほど確実でもなく、慰めにするほど甘美でもない。
待ってんだ、ただあんたが出て行くのを。
ここ数日化粧師は姿を見せていない。
584オリジナル 5/6:2008/11/20(木) 23:11:10 ID:6WinYv03O
どうやら祝言が重なったらしく、あちらこちら大店の娘さんの嫁入り支度に呼ばれてんてこ舞いだそうだ。
今日は姐さん方も自前で髪を結い、化粧をして下に降りてきていた。
柳のような男だった。人に蹴りと捨て台詞をくれておいて、悪びれもせず顔を出す。その裏に矜持と威嚇が含ま
れているとは感じていた。
頭なんぞ下げるかと嘲笑っておいて、己の立ち位置は頑として譲らない。ここから外れ落ちるならあんたのほう
だという、痛烈な皮肉が含まれていた。表面においては揺ら揺らとしているように見せかけ、その実根っこは同
じ場所に張ったまま。こちとら行く当ては無い。
冬雨の中、迷い歩くのは御免だ。
「お出でまし」
向いの茶屋から下男の先立ちで、傘が渡ってくる。番台から降り座敷への案内に立った。やつれてはいるが見知
った顔だった。あの呉服屋の若旦那。
世話になりますときたものだ。今日のお渡りは前々から知っていて、例の新造は裏座敷へあがるように言われて
いる。相変わらず三日に明けず通うては来るがこの若旦那、目の下の隈が濃い。色男が台無しだ。
若衆や遣り手の噂話では、奴さん、新造を身請けしたいそうだ。だが奴の親父が、それは出来ぬと突っぱねた。
585オリジナル 6/8 すみません…:2008/11/20(木) 23:14:33 ID:6WinYv03O
さすが名の知れた商人は、遊興のさかいめも知っている。一人息子は可愛いしある程度の放蕩も許すが、大店の
嫁が遊女では面子が立たぬとのことだろう。
良くある話で笑いの種でも、若旦那は昨今目に見えてやつれた。親父には逆らえぬのだろう。
新造も新造で、奴さんの誓紙を抱いてはまた泣き暮らす。折檻もされる。叶うわけねえだろう、あの化粧師は正
しい。
しかし夢の中でも言うのは勘弁してもらいたいものだ、と思う。ようやく眠りについても夢見が悪い、恋煩いも
ここまでくるとほとほと己に愛想が尽きる。
せめてそこでくらい甘い言葉のひとつやふたつ、と思うものの、それを吐いている姿もことも見た事が無い。虫
喰いの穴だ。肝腎なところが暈けている。
慰みにでもしようとしても、またそこで思い悩んで止めるのだ。知らぬ姿が多すぎる。
叶わぬと身に沁みている。
「叶うわけねえだろう」
寝ずの番でもあるまいに、固い枕で雨の音を聞く。己に言って聞かせている。
黙って突っ立っていくだけだ。この身からあんたが出て行くまで。ぱたたん、ぱたたんと軒を叩く水音が、どこの
座敷の艶声よりもよく聞こえた。あァ、少しは小降りにでもなったか。
586オリジナル 7/8:2008/11/20(木) 23:16:10 ID:6WinYv03O
その規則正しい音が、久しぶりの眠気を連れてきてくれた。眼瞼がうっとりと沈む。その裏に誰の姿も見ない。
ぱたたん、ぱたたんがやや遠くなる。
あァ、ぼうやりだ。でも、あの唇は好かった。舌も。
夢でなら、どうせなら身ごと腕にくるんで味わいたい。息そのものも喰らい尽くしたい。あんた、そこに居るん
だな。
しかし腕を伸ばすのは、気が引けた。
何だいあんた、と化粧師がいつものいぶかしげな顔で見上げる。いや上背はそう変わらぬのだが。
叶わねえとは知っているが、と仕方なく言った。
流石にわかるだろ、惚れたはれたに、まともな言い訳なんぞできねえよ。化粧師はどう言ったか。
どう答えられたか、それを思い出す前に腕を引かれた。ばっと思わず飛び起きる。
夢の続きではない、この寒さと冷えは、うつつのものだ。
出入りの間に一番近い番頭部屋の、板戸の隙間が少し開いている。今何ときかは知らぬが一瞬で眼が冴えると、そ
こに情けない顔の男の姿が見えた。先ほどうえへ上げた、茶屋の下男だ。
うちの旦那さんは、何処に。
申し訳なさげに下男はぼそぼそと喋るので、その一言を問いただすのに随分かかった。
587オリジナル 8/8:2008/11/20(木) 23:17:28 ID:6WinYv03O
座敷がもぬけの空だと下男は言う、へえ、あたしは迎えに参りましただけで。昨晩はご新造さんと、確かに床入り
したはずで。それは知っている、登楼の案内をしたのは俺だ。
座敷へ駆け上がり、無粋だがちょいと失礼と踏み込めば、きちんと揃いの夜具がある。寝乱れてもおらず冷えてい
る。
あたしが参りましたときもへえ、この有様で、とまた下男は打ちひしがれた。何か己が不味いことをしでかしたと
でも思っているのか。
ふたりが、紅色の夜具だけを残して消えた。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
短くまとまらなくて申し訳ない。まずはここまで。
588風と木の名無しさん:2008/11/20(木) 23:18:21 ID:C9Hh3vPX0
キテル━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
このしっとりとした文体がたまりません
GJ!
589風と木の名無しさん:2008/11/20(木) 23:25:41 ID:9GQ0HD0GO
>>580
完成度高過ぎですー!これの前の話見逃したorz探してこよう
続き楽しみにしてます。
590風と木の名無しさん:2008/11/21(金) 00:02:00 ID:p1GgLhsq0
乙です 前回からしか読んでないけど文の分厚さがとんでもねえぜ…
591風と木の名無しさん:2008/11/21(金) 00:06:40 ID:zDNyfIEI0
>>558
むっちゃ気になる……
待ってる!
592風と木の名無しさん:2008/11/21(金) 00:09:35 ID:eIuXFCMP0
>>580の姐さんのしっとり感が大好きだ!
姐さんのおかげで最近このスレ開くのが楽しみで仕方ない。
593風と木の名無しさん:2008/11/21(金) 17:33:17 ID:vWrEubI30
待ってたよ〜!!
>>580 いつもいつもありがとう!!!
なんで文章だけでこんなに色っぽいんだぁぁぁ!!!

ところで>>569に思いがけず吹いたwww
594風と木の名無しさん:2008/11/21(金) 18:55:47 ID:/kyCZr0A0
493KB超えてるし、埋めてしまう?
595風と木の名無しさん:2008/11/21(金) 23:16:16 ID:+nRmT1TQ0
もう作品はこっちには来ないだろうし感想で埋めてしまっても良いよね?
というわけで乗り遅れた感想投下
>>386-394
あっけらかんとしているのにやっていることは結構濃密な二人が非常に萌えです。
国枝君のリベンジ編が見てみたいと思わされました。
萌えをありがとう
596風と木の名無しさん:2008/11/21(金) 23:21:57 ID:bqhG5diA0
>>386-394
自分もはげ萌えた!
もっとこの作者さんの作品読みたいな、気が向いたら投下してください。
待ってます!!
597風と木の名無しさん:2008/11/21(金) 23:34:01 ID:BO5UcMZ4O
私も便乗して感想を

>>558
続き気になる…!
食べ物描写が美味しそうでお腹すいたよ姉さんw
>>580
固い文章は苦手だったんだけど、するする入ってくる…
本当に全体的に色っぽくてドギマギするわー
598風と木の名無しさん:2008/11/22(土) 21:46:48 ID:yrRLSOSuO
>>566
メッチャ続きが気になる!
wktkしながら待ってる!
599風と木の名無しさん:2008/11/22(土) 21:47:14 ID:eTUqQZIJ0
埋めついでに感想を

>>580
すごく固めの文章なのに、読みやすくて色っぽくて。いつも楽しみにしています。
もう次スレにも投下されていて、続きがすごく気になっています〜
番頭さんはもちろんですが、なにげに化粧師さんも何かを抱えてるんじゃないか、と思ってみたり。
600風と木の名無しさん:2008/11/22(土) 21:48:31 ID:7bVFA73pO
では私も便乗して感想を

>>417エスコンの姉さん凄く萌えました!
でもすみません
実は原作知らないんです
Bell缶ウォーっていうのでいいんでしょうか?
601風と木の名無しさん:2008/11/22(土) 22:33:42 ID:LMeU5v3u0
自分も埋めついでに愛を叫ばせて貰います。

埃及神話の姐さん、番頭さんと化粧師さんの姐さん、オナホの姐さん、大好きです!!
素晴らしい萌えを本当にありがとう。
そして続きを物凄く楽しみにしてます。
602風と木の名無しさん:2008/11/22(土) 22:36:18 ID:5JrMOcL60
自分も愛を叫ばせてくだい。

照退姐さんの作品が大好きです。
退史郎=退蔵説いいね。
あの真面目な退蔵が照るさんだけのために悪い男になっていると
考えれば考えるほどゾクゾクと興奮してくるw
続き楽しみにしてます!
603風と木の名無しさん:2008/11/23(日) 00:49:39 ID:hX2LO/kAO
便乗

神話の鬼畜甥と敗者叔父貴に萌え転がった!
熟した果物みたいなエロさがたまらん
ひとつひとつ光景が浮かぶような文もすっげ好み
読ませてくれてありがとう。また気が向いたら一筆お願いします
604風と木の名無しさん:2008/11/23(日) 04:15:21 ID:Rk8/mgBjO
便乗します

照退姐さんの作品に毎回萌えまくってます
照さんの儚い感じがツボすぐる
そんな照さんのためにだんだん黒くなっていく退像も萌え
何気に多所さんの気持ちも気になります…

続き楽しみにしています
605風と木の名無しさん:2008/11/23(日) 18:38:42 ID:04TvMfOt0
超時空便乗
キム空の姐さん、二人の話がいまも大好きです。時々思い出しては今頃彼らはどうしてんのかなーとか考えてしまうくらい。
あの話を書いてくれてありがとう。
606KIZUNA−龍−1/3:2008/11/23(日) 23:28:59 ID:4La9Z+8v0
要領も容量もわからず、初投稿。先に謝っておきます。拙いもの載せてほんとにすみません。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「ァアーッ!政、、ぁ..」
まだ途中までしか入っていない状態でも苦しそうにしている佳を見ていると
政は胸が痛くなる。
「坊...無理しなくてもいいんですよ」
「ム、リなんッかしてないッ...ッ」
身体が引き裂かれそうな痛みに耐え、懸命に政を受け入れようとしている。
政にとっては、その健気な姿が可愛くて仕方が無い。
逞しい腕で佳の身体をそっと包み込むように抱き締めた。
「入れるタイミングとかもありますから、とりあえず、暫くこのままでいさせて下さい」
「でもッ、、、」
「大丈夫です。政は今の状態でも坊の中に入ってるから、めっちゃ気持ちええんです」
そう言いながら政は佳の身体の強張りを解こうと、佳の弱い部分を順に愛撫してゆく。
「ハァッ、アンッ...」
痛みが緩和され、佳の身体が熱くなってゆく。
濡れた声が佳の口から漏れだした頃、佳の中に入っているものがゆっくりと動きだした。
それはまるで大人のオモチャのように政の先の部分だけがうねるように蠢く。
「?...ま、政ッ?何?」
607KIZUNA−龍−1/6:2008/11/23(日) 23:29:51 ID:4La9Z+8v0

2/6

抜き差しされているわけではない為、挿入時のような痛みはなかったが、
初めての感覚にうろたえ、佳は反射的に逃れるように身を捩った。
逃げる佳の身体を政はグッと抑え付け、固定する。
「アゥッ!」
ゆっくりとしたうねりが佳の敏感な内壁を刺激してゆく。
「ハァッ、ァッ..ンッ..ンッ」
徐々に追いつめられながら佳は数週間前のことを思い出していた。
政に、挿入されても感じられるように自分を開発してほしいと願い出たときのこと。
『ほんまにええんですか?』と何度も念を押す政の言葉に強く頷いたが最後、
感じ過ぎて気を失いそうになるまで指で内壁を探られたことがあった。
その時に知られてしまった佳の感じる部分を政は的確に突いている。
指で弄られた時でさえ、最後には泣いて許してほしいと政に請うてしまったほどなのに、
今日の刺激は比べ物にならないくらい、更に強烈だった。
想像を絶する淫猥な政の動きに佳は翻弄されていく。
608KIZUNA−龍−3/6:2008/11/23(日) 23:31:07 ID:4La9Z+8v0
「や..ぁッ」
愛する政には何をされてもいいと思っているのに、あまりにも限界のない未知の快感に
怯え、思わず拒絶するような言葉が洩れてしまう。
「政ッ、いややッ!..いやぁッ、ぁン、、、ンッンッ」
身体の中をグチャグチャとかき乱され、あまりの快感に佳の意識が遠くなる。
その瞬間、
途中までしか入っていなかった政が奥まで一気にズズッと音をたてて突き上げてきた。
「アッアアーッ!!」
政の背に佳の爪が深く食い込む。
その姿はまるで政の身体に刻まれている青龍に犯されているようにも見える。
しかし痛みはもう快感と相まって何がなんだかわからなくなってきていた。
奥まで入った政は今度は佳の最奥でうねるように蠢きだした。
「イヤァァッ!!」
政は、佳の乳首を舌で舐め上げ、転がすように可愛がり、指は佳の反応しているものを揉みながら
愛撫してやる。
佳は政に身体の中と外、双方から敏感な部分を一気に攻められ、気がおかしくなりそうだった。
609誘導:2008/11/23(日) 23:31:38 ID:e+FzDpOW0
モララーのビデオ棚in801板43
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1227186819/
610風と木の名無しさん
これで埋まった・・・のかな?上の方、途中みたいだけど大丈夫ですか?
>>609で誘導されてる次スレへ移動を!
実は今自分も埋めにきたところだったんだけど、ちょっと確認投稿してみます。