麻生「いい面構えだ。私の下で働いてみないか?」

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新閣僚発表会見の後の控室にて。
ちょっと一息つくか、と足を踏み込んだ中川は軽く息を呑んだ。
誰もいないと思っていた薄暗い室内に佇む人影。
「…麻生さん」
「ん?どうした、昭ちゃん」
どっかりと椅子に腰掛け、頬杖をついたまま中川の方を見やる。
「いや、ここにおいでになるとは思わなかったので」
「ここぁ控室だろ。控えさせてもらってるだけだ」
また屁理屈を…にやりとして中川は歩み寄った。
「何か飲まれますか」
「いや、今はいい…なあ、昭ちゃん、国ってのは…」
途中で言葉を止めるなど、普段の麻生ならやらないことだ。
いつもなら、言いたいことをずばずばと言いまくるものを。
中川は小首を傾げて麻生を見つめた。
「国ってのは…わかっちゃいたけど、重てぇもんだな」
溜め息とともに吐き出された言葉が、ズシリと響いた。
772/2:2008/10/05(日) 00:43:55 ID:a4CCPS2f0
今、目の前にいる男に課せられた重責。
それはどれほどのものなのか。自分には耐えることが出来るだろうか。
「…らしくないですね。もう弱気の虫ですか?」
暗い雰囲気を打ち壊すべく、中川は敢えて軽口を叩いた。
じめじめとした暗さなどこの男には似合わない。
「何だと、貴様!一体誰に向かって言ってやがる!」
途端に、火を吐くように反発してくる。そう、それでなくては。
これから麻生には、一国の総理としての孤独な日々が待ち受けているのだ。
せめて今日くらい、こんなやり取りを楽しんでも罰は当たらないだろう。
「一身を投げ打ってお支えいたしますから、総理大臣閣下」
わざとらしく居住まいを正し、恭しく一礼してみせると、麻生はからからと笑いながら手を振ってきた。
「もう遅いから、帰って寝ろよ。…これからもよろしく頼む」
もう一度一礼し、中川は部屋を後にした。
この後も麻生はいくつかの会合をこなすのか。
多分、休む間もなく働くのだろう。(勿論自分もだが)
僅かに訪れるはずの彼の休息時間に幸あれかし、と中川は祈らずにいられなかった。