【なんぞこれ】永井兄弟で801 その5 【バニー豚】
元気で可愛いひろくんはもう動かない。
ぐったりと重い体を僕に預けるようにして、
焦点のあっていない半開きの目が宙を見つめている。
僕はひろくんのだらしなく開かれてしまっている口元を優しく閉じさせ、
床に座りながらひろくんを抱きかかえるようにした。
先ほどから何度もぐにゃりと曲がってしまっているひろくんの首をしっかり支え、
こちらに顔をむけさせる。されども、視点は左右に散ってしまっていて、
ひろくんはもう僕を見つめることをしてくれない。
「ひろくん」
僕はそう呟く。もう一度あの無邪気な声を聞きたくて。
「ひろくん、ごめん」
ぎゅっと抱きしめれば支えのなくなった首はがっくんと大きく上下に揺れ、
のけぞってしまった頭を僕はゆっくり僕の肩にかけ、抱き合う形にしてやる。
まだかすかに温かみのあるひろくんの体は驚くほど重く、頼りない。
ただでさえ色の白いひろくんの肌はさら真っ白になっていて、なんだか青白いほどだ。
しかしそのせいか赤い色が驚くほど映えて見えた。
そして僕の衣類も驚くほどひろくんの生命色に綺麗にそまっていた。
僕はもう一度先ほどよりもさらに強い力で精一杯ひろくんを抱きしめる。
ふいに、ごぼりという音と同時に肩のあたりで生ぬるい温度を感じたので体を離すと、
ひろくんは自分の液体を吐き出してしまっていた。
「ごめんね、僕の所為で」
口付けるようにひろくんの生命のスープを舐めとると、
内臓の奥のほうからの血だったのだろう、とても濃い血の味がした。
ひろくんの味。ひろくんの命と引き換えの、とても濃く深い深い、味。
僕はひろくんを、離さない。ずっとずっと。
全部僕が、ひろくんを消化してあげるから。
ひろくんは安心して腐っていってもいいんだよ。
はやくひとつになりたいよ、ひろくん。
はやくひとつになりたいね、ひろくん。
ひろくんが死なないようにひとつひとつの臓器を取り出して愛でながら
その臓器を舐める想像をしてたら時間があっというまに経ってた
だっていつもはあんなに元気があるひろきゅんが
顔とか表情が青ざめて標準語でやめてください...とか懇願してるんだよ。
あーどうしてあんなに可愛いんだろう