きかんしゃトーマスで801

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9擬人化トーマス&ゴードン(1/5)
では参ります。

(「あなにおちたトーマス」より。一部擬人化に合わせて変更してあります。)

「そして君はいたずらものだ。全て見ていたぞ」
ハット卿がやって来てトーマスを叱った。
「どうか助けてください。もうこんなことは二度としませんから・・・」
トーマスはしょんぼりしながら懇願した。
しかしハット卿は難しい顔をしている。
「さあて、助けられるかな?ここは地盤が弱くて、クレーン車も使えないし、そう大勢の人間を入れる
わけにもいかん」
(そんな・・・)
トーマスはますます落ち込んだ。そんな状態で、誰がどうやってここに近づき、自分を助けられるのだろう。
「ん・・・いや、待てよ」
ハット卿が何かをひらめいたようだ。
「ゴードンなら、お前を引っ張れるかな?」
確かに、彼ならば一人だけでトーマスを引っ張り上げるだけの腕力はあるのだが・・・
「ええ・・・多分・・・」
トーマスはゴードンに会いたくなかった。あれだけ散々からかっておいて、今更どんな顔をして
彼に救い上げてもらえというのだろうか。
しかし、ここはもう彼に縋るしか、トーマスの助かる途はなかった。
10擬人化トーマス&ゴードン(2/5):2008/02/16(土) 13:25:03 ID:jMttm4HY0
「でーっへっへっへっへっ、トーマスが鉱山の穴に落っこちたって?ハハハハハ、面白い冗談だぜ」
ゴードンが大笑いしながら現場にやってきた。

(ああ・・・きっとゴードンは僕のことをここぞとばかりにいじめるんだろうな・・・
あんな酷いこと、言わなきゃよかった)
トーマスは穴の底で暗澹たる気分だった。

やがて上の方が騒がしくなった。ゴードンが到着したようだ。
おそるおそる穴の入り口を見上げると、ゴードンと応援の機関士たちがトーマスを見下ろしていた。
案の定ゴードンはニヤニヤ笑ってはいたが、それでも頼もしい声で呼びかけた。
「ちびのトーマス!すぐに助けてやるぞぉ!」

トーマスの前に、丈夫なロープがするすると下ろされた。
「そいつをしっかり、体に巻きつけろ!」
ハット卿が言った。
トーマスは急いで、ロープを自分の腰に巻きつけ、余った部分をぎゅっと握った。
引っ張られるとかなり痛むだろうが仕方がない。
11擬人化トーマス&ゴードン(3/5):2008/02/16(土) 13:25:57 ID:jMttm4HY0
「用意はいいか?」
地上でも、ゴードンの方の準備が整ったようだ。
「それ、引っ張れ!」
ゴードンがロープを渾身の力で引き始める。
トーマスの体も、少しずつ、しかし確実に上に上がり出した。
(痛い・・・!)
引っ張られるたび、ロープが腰に食い込み、ズキズキと痛む。それでも、歯を食いしばって必死に耐えた。

やがてトーマスの体が地上に覗き始めた。
「それ、もう一息だ!」
ゴードンは最後の力を振り絞ってロープをぐい!と引き、トーマスの体が殆ど露になったことを確認すると、
彼をすかさず強く抱き寄せた。
「うわっ!」
弾みで二人はドサッ!と地面に折り重なって倒れた。

思ったよりも大変な作業だったが、トーマス救出作戦は見事に成功したのだった。
12擬人化トーマス&ゴードン(4/5):2008/02/16(土) 13:27:05 ID:jMttm4HY0
「・・・ごめんなさい」
ゴードンの大きな胸の中にすっぽりと包み込まれたトーマスは、その広い肩口に顔を埋めながら
かすれた声で彼に謝った。
「僕は・・・生意気でした・・・」
本当はもっともっと、彼に言わなければならないことがあるのに、うまく言葉を紡ぐことができない。
無事に助かった安堵感と、散々からかった相手に助け出された気恥ずかしさとが入り混じり、
トーマスの目と鼻の奥がじんわり熱くなった。
「いいってことよ」
ゴードンはこの小さくて愛らしい後輩の頭や背中を、ポンポンと優しく叩いてやりながら言った。
トーマスはゆっくり頭を起こし、彼の顔をそっと見つめる。
「お陰で笑わせてもらったぜ。ま、俺も前にドジをやったがな」
そう言って、この大柄で気の良い力持ちは豪快に高笑いした。
トーマスもようやく笑顔になる。
「僕だって、そうです」
そう、誰にだって失敗やドジはある。いつ、誰の身に起きてもおかしくない。
だからこそ、皆がお互いに助け合わなくてはならないのだ。
13擬人化トーマス&ゴードン(5/5):2008/02/16(土) 13:28:19 ID:jMttm4HY0
「なあ、トーマス。俺たちは手を組もうじゃないか。お前は俺を助け、俺はお前を助ける」
「それはいいね!」
トーマスは弾んだ声で答えた。
もう、いつもの無邪気で明るいトーマスに戻っている。
「よーしよしよし。これでよし!」
ゴードンも満足そうにそう言って立ち上がると、
「うわっ!」
トーマスは思わず声をあげた。ゴードンがトーマスを、いきなりその逞しい腕に抱き上げたのだ。
いわゆる「お姫様抱っこ」である。
「ちょ、ちょっと!ゴードン!何するのさ自分で歩けるって!」
「穴にはまった奴が無理言うんじゃねえ!車庫まで運んでってやる!」
「やめて!恥ずかしいよ!皆が見てるってば!」
「見たい奴には存分に見せてやるさ!このゴードン様が救出した可愛い可愛い姫君をな!がはははは!」
「誰が姫君なんだよ!もう!ゴードンのバカ!」
「あぁん?助けてもらった恩人に言う言葉かそれは?お前にはまだまだシツケってもんが必要なようだな。
まあいい、今夜一晩かけてたっぷり教え込んでやるぜ!」
「助けてえ〜!」

トーマスの悲鳴と、ゴードンの笑い声、そしてハット卿や機関士達の苦笑いを包み込んで、
ソドー島の一日はゆっくりと暮れていった。
                                                                おしまい


以上です。SS初心者なもので、未熟な点も多々あると思いますが、
皆様のお気に召せば幸いです。