. ___ ___ ___
(_ _)(___)(___) / ̄ ̄ヽ
(_ _)(__ l (__ | ( ̄ ̄ ̄) | lフ ハ }
|__) ノ_,ノ__ ノ_,ノ  ̄ ̄ ̄ ヽ_ノ,⊥∠、_
l⌒LOO ( ★★) _l⌒L ┌'^┐l ロ | ロ |
∧_∧| __)( ̄ ̄ ̄ )(_, _)フ 「 | ロ | ロ |
( ・∀・)、__)  ̄フ 厂 (_,ィ |
 ̄  ̄
◎ Morara's Movie Shelf. ◎
モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
なにしろモララーのコレクションなので何でもありに決まっています。
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |[]_|| | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ]_||
|__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ̄ ̄ ̄| すごいのが入ったんだけど‥‥みる?
|[][][]._\______ ____________
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |[]_|| / |/ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.|| |[]_||
|[][][][][][][]//|| | ̄∧_∧ |[][][][][][][][].|| |  ̄
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ ) _ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.|| |
|[][][][][][][][]_|| / ( つ|8l|.|[][][][]_[][][]_.|| /
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(__)_)
前スレ
モララーのビデオ棚in801板34
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1200338153/ ローカルルールの説明、およびテンプレは
>>2-9のあたり
保管サイト(携帯可/お絵描き掲示板・うpろだ有)
http://wald.xrea.jp/moravideo/
★モララーのビデオ棚in801板ローカルルール★
ノンジャンルの自作ネタ発表の場です。
書き込むネタはノンジャンル。SS・小ネタ・AAネタ等801ネタであれば何でもあり。
(1)長時間に及ぶスレ占拠防止のためリアルタイムでの書き込みは控え、
あらかじめメモ帳等に書いた物をコピペで投下してください。
(2)第三者から見ての投下終了判断のため作品の前後に開始AAと終了AA(>>3-
>>7辺り)を入れて下さい。
(3)作品のナンバリングは「タイトル1/9」〜「タイトル9/9」のように投下数の分数明記を推奨。
また、複数の書き手による同ジャンルの作品判別のためサブタイトルを付けて頂くと助かります。
※シリーズ物・長編物の規制はありませんが、スレを占拠しないためにも投下ペースや分量を配慮して下さい。
※感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬はほどほどに。
※「公共の場」である事を念頭にお互い譲り合いの精神を忘れずに。
相談・議論等は避難所の掲示板で
http://s.z-z.jp/?morara
2.ネタ以外の書き込みは厳禁!
つまりこのスレの書き込みは全てがネタ。
ストーリー物であろうが一発ネタであろうが
一見退屈な感想レスに見えようが
コピペの練習・煽り・議論レスに見えようが、
それらは全てネタ。
ネタにマジレスはカコワルイぞ。
そしてネタ提供者にはできるだけ感謝しよう。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ネタの体裁をとっていないラッシュフィルムは
| いずれ僕が編集して1本のネタにするかもね!
\ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| . |
| | [][] PAUSE | . |
∧_∧ | | | . |
┌┬―( ・∀・ )┐ ピッ | | | . |
| |,, ( つ◇ | | | . |
| ||―(_ ┐┐―|| |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
| || (__)_), || | °° ∞ ≡ ≡ |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
3.ネタはネタ用テンプレで囲うのがベター。
別に義務ではないけどね。
テンプレ1
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| モララーのビデオを見るモナ‥‥。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| きっと楽しんでもらえるよ。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
テンプレ2
_________
|┌───────┐|
|│l> play. │|
|│ |│
|│ |│
|│ |│
|└───────┘|
[::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
∧∧
( ,,゚) ピッ ∧_∧ ∧_∧
/ つ◇ ( ・∀・)ミ (` )
. (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
| ┌‐^──────────────
└──────│たまにはみんなと一緒に見るよ
└───────────────
_________
|┌───────┐|
|│ロ stop. │|
|│ |│
|│ |│
|│ |│
|└───────┘|
[::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
ピッ ∧_∧
◇,,(∀・ ) ヤッパリ ヒトリデコソーリミルヨ
. (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
| |
└────────────────┘
テンプレ3
,-、
//||
// .|| ∧∧
. // 生 || ∧(゚Д゚,,) < みんなで
//_.再 ||__ (´∀`⊂| < ワイワイ
i | |/ ||/ | (⊃ ⊂ |ノ〜
| | / , | (・∀・; )、 < 見るからな
.ィ| | ./]. / | ◇と ∪ )!
//:| | /彳/ ,! ( ( _ノ..|
. / /_,,| |,/]:./ / し'´し'-'´
/ ゙ / / / ||
| ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./ / /,!\
| | / `ー-‐'´
| | ./
|_____レ"
,-、
//||
// .|| ∧∧
. // 止 || ∧(゚Д゚,,) < やっぱり
//, 停 ||__ (´∀`⊂| < この体勢は
i | |,! ||/ | (⊃ ⊂ |ノ〜
| | / , | (・∀・; )、 < 無理があるからな
.ィ| | ./]. / | ◇と ∪ )!
//:| | /彳/ ,! ( ( _ノ..|
. / /_,,| |,/]:./ / し'´し'-'´
/ ゙ / / / ||
| ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./ / /,!\
| | / `ー-‐'´
| | ./
|_____レ"
テンプレ4
携帯用区切りAA
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
中略
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
中略
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 僕のコレクションに含まれてるのは、ざっと挙げただけでも
|
| ・映画、Vシネマ、OVA、エロビデオとかの一般向けビデオ
| ・僕が録画した(またはリアルタイムな)TV放送
| ・裏モノ、盗撮などのおおっぴらに公開できない映像
| ・個人が撮影した退屈な記録映像、単なるメモ
| ・紙メディアからスキャニングによって電子化された画像
| ・煽りや荒らしコピペのサンプル映像
| ・意味不明、出所不明な映像の切れ端
\___ _____________________
|/
∧_∧
_ ( ・∀・ )
|l8|と つ◎
 ̄ | | |
(__)_)
|\
/ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 媒体も
| 8mmフィルム、VCR、LD、ビデオCD、DVD、‥‥などなど
| 古今東西のあらゆるメディアを網羅してるよ。
\_________________________
|__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ̄ ̄ ̄| じゃ、そろそろ楽しもうか。
|[][][]__\______ _________
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | |/
|[][][][][][][]//|| | ∧_∧
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ )
|[][][][][][][][]_||/ ( )
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | |
(__)_)
えっと、いいですかね…?
ごめんなさい、前スレの続き投下させて下さい…。
やまだたいちのミラクルです。↓
太一受けと八木トム少々。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
すいません、どうしても書き込めないので、もうここまでで…。
お目汚し失礼しました。
>>11 「書き込めない…どうしよう・・・」と困るだけで自分ではなにもせず
親切な>1がこのスレたててくれたのにそれに対しては一言もなく
>えっと、いいですかね…?
とすぐ続きを投下しようとする
>1乙
前スレまだ容量残ってるから、先にそっちから使ったほうがいいな。
>>1乙!
次から、テンプレに、512kbを超えると投稿できなくなります、
容量確認してから投稿してください、の一文入れた方が良いと思う。
まぁ10はID変だし、荒らし扱いで規制されたと思うけど。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ilスレの女学園ネタ読んでたら腐脳になんか湧いたってさ。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 競り板バレンタインネタのつもりらしいよ。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
★★ 厳 重 注 意 !! ★★
・この先には女体化ネタがあります
・パラレルです
苦手な方はスルーしてください。
風紀委員としては頭の痛い季節がやって来た。
2月14日、バレンタインデーである。
「あれ? バレンタインは、女の子が男の人にチョコをあげる日でしょう? うちは女子高なのだから
関係ないんじゃない? ああ、男性教師はいるけど…あんなおじいさん、相手にするかなぁ?」
一見暢気な口調で、そして今日は珍しく本当に暢気な質問をするオニョ理事長に、ラムは密かに
頭痛を覚えた。
「昨今は『友チョコ』なるものがあるそうです。女性同士でもやりとりをするとか。」
巷の流行について簡潔にそう述べた後、高等部風紀委員長は意見を続ける。
「問題なのは、そのチョコレートにかける費用が、学生の分を著しく超えている場合が見受けられる
ことです。校舎内に菓子類を持ち込むこと自体は平素から認められていることでもありますし、互いの
友愛を確認する為に手作りの菓子を交換し合う程度ならば、問題はありません。しかし…」
桜田女学園の生徒は、裕福な家庭の子女が多い。
世界大会金メダル獲得のショコラティエにフルオーダーで作らせた一点もののチョコレート彫刻が、
はたしていち学生の身分に相応の贈答品といえるだろうか?
相応、と素で考えそうな生徒が、この学園ならば存在するかもしれない。というか、いる。確実に。
真っ当な金銭感覚の持ち主である委員長にとって、これは粛正すべき風紀の乱れであった。
「今度の全学共通朝礼で、分をわきまえるようにと、理事長からお話をしていただけないでしょうか。」
「全学? それだと3日後になっちゃうよ? 高等部の朝礼なら明日すぐに話せるでしょう。校長に
連絡しておきますよ。」
せっかくの有難き理事長のお心遣いだったが、この件に関してはそれでは駄目なのだ。
眉間にしわを寄せて、ラムは理事長に告げた。
「それが… 一番騒ぎを起こしそうなのが、初等部と中等部なものですから。」
学園の剣道場に、もはやお馴染みと成り果てた光景が繰り広げられている。
「先輩センパイセンパイセンパイセンパイせんぱいイ夕ミンせんぱーい!」
「うるせーっ! 練習の邪魔だっ、つーか靴脱げ抱きつくな袴をめくるなーっ!!」
とても名門お嬢様学校の生徒とは思えない言葉遣いだが、稽古着の少女が周囲から咎められる
気配は無い。
今、道場には彼女(と闖入者約一名)しかいないからだ。
「セリィ! テメェ今度は何した! 何で顧問が居なくなった途端に、テメェが湧く!?」
「ブチョ先生なら、サンジカソ先生に呼ばれたみたいですよー」
…まさかそれ、この子の仕掛けた偽の呼び出しじゃないだろうな?
やりかねない。このガキならやりかねない。
イ夕ミンは薄い眉を思いっきり顰めてみせた。が、その程度でこの初等部のやかましい子犬が
恐れをなすようなタマではないのも、悲しいかな、よく解っていた。
「ともかく、道場に入ったら上履きを脱げ。」
剣道部員としては、めくられた袴以上に土足(?)の方が気になるらしい。
放り出されたくないと思ったのか、セリィは案外素直にそれに従った。が、靴さえ脱げばそれでいい
だろうとばかりに、また駆け寄って抱きつく。
「せんぱいセンパイせんぱーい」
「やかましい」
「せんぱいせんぱいー」
「あんだよ」
「せんぱーい」
「だから何だってんだよ、用は何だ。」
「せんぱーい…」
「何。」
「……」
「どうした。口がなくなったかコラ。」
セリィはいつもこの調子だった。怒涛の勢いでやってきて抱きついて先輩々々と連呼して、その後
何をするかと思えば、特に何をするでもない。コアラよろしく徒々イ夕ミンの痩身にしがみついている。
たぶん寂しいんだろうな、とイ夕ミンは思う。
なんせ異端児だから。
口調こそ幼稚舎からの生え抜きらしく「おねえさまごきげんよう」調だけど、やってることを見てみろ。
走り回るわタックルかますわ人のスカートや袴を捲るわ、どう見たって、そのへんの野良ガキと一緒じゃ
ないか。取り澄ました気取り屋ばっかりのこの学校じゃ、周りの子と合わないだろう。こないだなんか、
てめぇのスカート捲り上げて自分の穿いてるパンツ見せようとしたし。(「先輩とおそろいパンツですー」
とか寝ぼけたこと抜かしやがるから、アタマはたいてやった。)
だから、ガサツなアタシんとこに寄ってくるのかもしれない。自分と同じ異端の匂いを嗅ぎ取って。
…気持ちは、解らんでもない。
しょうがない、つき合ってやるか。同じ学園の中等部としては、やはり下級生の面倒は見なきゃな。
義侠心溢れる剣道少女は、麗しいが甚だしい誤解に基づいて、自らこの初等部のフリーラジカルを
引き受ける決意を固めた。
「…せんぱーい」
だんまりコアラが口をきく気になったらしい。
「おう。」
「あの… 先輩は、甘いものは、おすきですか?」
そりゃまー人並みには、と言いかけて、イ夕ミンは寸でのところで言葉を引っ込める。パンツ事件の
いきさつを思い出したからだ。イ夕ミンとおそろいのパンツを手に入れるために、セリィがしたこと。
『パパのお店の人たちにさがしてもらいましたのー』
パパの店、とは、さる大手老舗デパートチェーンを指している。
そこの外商部に、探させたらしいのだ。ローティーン向け水色ストライプパンツ(3枚890円也)を。
今ここで自分が不用意な発言をすれば、またデパートの職員さん達が理不尽な目に合う。
彼らを助け、かつ可愛い後輩に教育的指導をするには、どうするべきか。イ夕ミンは考えた。
オマエまたバカな真似するんじゃあるまいなと怒鳴りつけるか。そうすれば、とりあえず百貨店の人々
は命拾いをする。けど、セリィ本人は、何を怒られているのか理解できるだろうか。 …無理だな。
それに、セリィだって最近は少しはおりこうさんになった。今までだったら問答無用で『甘いもの』を
持って来ただろう。こっちの好みも意向もお構い無しに。
それが、一応「甘いものが好きかどうか」を確認するようになったのだ。進歩は褒めてやりたい。
…ん? 褒める?
ふいに、イ夕ミンの脳裏にあるものが浮かんだ。
「甘いもの、か? そういやガキの頃、家で電熱器出してもらって、ホットケーキ焼いたっけ。」
試合で勝ったごほうびでさ、美味かったぞー、と、いちかばちか、話を振ってみる。
「でんねつき、ですか?」
言葉が古かったせいかお嬢様育ちのせいか、セリィには何のことだか判らなかったらしい。怪訝そう
に小首をかしげた。
「カセットコンロなら判るか? …わかんねーか。じゃ、見に来い。一緒にやろうぜ。」
「え?」
「うちで一緒に、ホットケーキ焼こう。」
少しかがんで目線をあわせ、優しげ(*本人比)に笑いながら、誘いかけてみる。
イ夕ミンの目論見はこうだ。セリィの目的は"誰かと一緒に"おやつの時間を過ごす事であって、何を
食べるか自体は、実はそう重要ではない、たぶん。では、そのおやつを調達する方法さえ工夫すれば
誰の迷惑にもならず、かつ後輩本人も納得する『おやつの時間』が作れるのではないか。
「一緒に、スーパーでホットケーキミックスと牛乳買って、アタシん家で作ろう。焼きたてのあつあつに
バター乗っけてメープルかけて。アイスとか乗っけても旨いよな。こういうの、やったことあるか?」
いいえ、と答えるセリィに、そうだろうそうだろう、とイ夕ミンは頷く。
「じゃ、決まり。いつがいい?」
材料を買いに行くところからやるから、時間がかかる。早めに学校を出られて夕方いっぱい遊べる日
があるかと尋ねられたセリィは、何故か頬を染めて、
「…こ、こんどの、木曜、いかがですか…?」
潤んだ瞳で提案した。
「木曜? 14日か。いいよ。そうだ、丁度バレンタインだから、チョコも入れてみようか。」
製菓用だとすぐ溶けるから面白い、と言いかけて、イ夕ミンはふと真顔になる。
「…セリィ、どうした? 何か顔真っ赤だしボーっとしてるし。熱でもあるか?」
おでこに手を当てれば飛び上がってうろたえるし、だが当てた手の感触ではそんなに温度は高くない。
「な、なんでもないです! あ、あの、ありがとうございます! 失礼しました!」
やけに慌てた様子で走り去っていく後輩を、イ夕ミンはあっけに取られて見送った。
(…待ち合わせの時間を決めていないんだけど、いいのかね。)
追いかけて打ち合わせしようかとも思ったが、今日はやめておいた。まだ練習メニューが途中だ。
顧問にサボりと思われても困る。
素振りを繰り返しながら、イ夕ミンはセリィのことを考えていた。
(うまく行ったら、来年剣道部に入ってくれるかもな。)
何しろ、今この部に中等部生は彼女一人なのだ。名剣士と誉高い顧問との稽古はとても身になるが、
やはりもう少し賑わいというものが欲しい。
初等部の校舎でセリィが魂抜けそうになっているとも知らず、暢気に所属部振興計画を練っていた
この日のことを、イ夕ミンは数年後頭痛とともに思い返す羽目になる。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ ナマエ スレ デノ アダナ ソノママカヨ…
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
25 :
風と木の名無しさん:2008/02/10(日) 03:43:59 ID:CwuBjxINO
保守あげ
>>24 いつも大変お疲れ様です。
見やすく便利になってて感動しました。
ところで、前回更新分のタイトルと実際のリンク先SSが
微妙にズレている気がします。(目的と違うSSに飛んでしまう)
お時間に余裕があるときにでも見直しいただければ幸いです。
>>24 移転作業お疲れ様でした。
いつも利用させて頂いてます。ありがとうございました。
>24
お疲れ様です。
>16-22
待ってました!GJ!
>>16 GJ!
イタミソもセリィも可愛い(*´∀`)
30 :
魔法の呪文:2008/02/11(月) 03:20:45 ID:kU35SEIkO
>>24 お疲れ様です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ナマモノ注意。
宵/子の蟻葉間です。
スレの流れに禿げ萌えて勢いで書きました。
「葉間口くん、最近様子おかしいけど……何かあったん?」
両親が外出中やという蟻乃ん家に来て、部屋に入った時のこと。
開口一番、蟻乃が喋った言葉はコレやった。
身に覚えのある俺は、その一言に動揺し慌てる。
部屋の中央で棒立ちになりながら、普段全然使わへん脳をフル活用して言葉を探した。
結果、今この場で使うに相応しいとされた台詞はこれやった。
「べ、別に何もないよ」
アカン、噛まんかったら上手く行ったのに。
いや、上手いこと言えたとしても今の台詞じゃ更に追及されてただけか。
自分のカツゼツと頭の悪さを恨みつつ、俺は用意された座布団の上に腰を下ろした。
視線は床に固定したまま、出されたお茶を啜る。
「葉間口くん」
「なに?」
「僕の目見ながら、何もないって言って」
お茶に映る俺の顔が、ゆらゆら揺れた。
鼻の奥が痛くなって、目頭が熱くなる。
何か言わなと思て言葉を探したけど、頭ん中ぐちゃぐちゃで何も思い浮かばんかった。
「嘘吐くん下手やなぁ、葉間口くんは」
ぼろぼろぼろぼろ。まるで決壊したダムみたいに、涙が溢れて止まらんくなる。
「……蟻乃ぉー!」
俺は蟻乃に勢い良く抱きついた。
勢い余って机に足引っ掛けた所為かお茶が零れた音がしたけど、今はそんなん気にしてられへん。
蟻乃の優しい温もりに包まれながら、詰まりつつも“あの事件”について話していった。
全てを話し終えると、蟻乃は何も言わんと俺の頭を撫でてくれた。
暫くの間、部屋に静寂が訪れる。
それを先に破ったのは蟻乃の方やった。
「ほんまに無事でよかったわ」
頷いて顔を上げる。
そこには“あの事件”以降まともに見ることが出来んかった蟻乃の顔。
なんかめっちゃ久しぶりに見た気がする。
やっぱ男前やなぁ、とか思とったら、ちょっと予想外の言葉が飛んできた。
「最近寝付き悪いんちゃう?目の下くま出来てんで。変な夢とか見てへん?」
確かに最近寝る度にあの日のことが鮮明に蘇ってきて、寝るに寝れん状態が続いとったけど……。
なんでわかったんやろ。
そんな疑問を抱きつつ視線を少し上にやると、全てを理解した様子の蟻乃が瞳に映った。
より強い力で抱きしめられて、どうしたらいいんかわからんくなる。
一人戸惑っとると、蟻乃は俺の耳元に唇を寄せてこう囁いた。
「僕が全部忘れさせたるから」
その言葉が何を意味するか、直ぐに理解する。
俺は迷うことなく頷きを返した。
それを合図に、蟻乃は俺を腕ん中から解放し、軽く触れるだけのキスをしてくる。
唇は勿論、額とか瞼とか鎖骨とか。
擽ったくて思わず身を捩った。
「っ、」
暫くそれを続けた後、ゆっくりとした動作で布団の上に押し倒される。
「……葉間口くん」
優しい声色で名を呼んだ蟻乃が、俺の服に手をかけた瞬間。
先生が俺にしたことの全てが鮮明に蘇ってきて、頭ん中が真っ白になった。
負の感情が全身を襲い、俺は無意識の内に蟻乃を突き飛ばす。
何かから逃げるように部屋の隅に行き、身体を丸めた。
止まったばかりの涙が溢れて頬を濡らす。
「ごめ、」
呼吸も上手く出来とるかわからん状態で絞り出した声は、鳴咽混じりで聞き取りにくい声やった。
発言しとる俺が思うくらいなんやから、相当なんやろう。
それでも俺は言葉を続ける。
「ごめん、ごめん蟻乃、ごめん」
何度も何度も謝罪を繰り返す俺を、蟻乃は優しく抱きしめてくれた。
背中を撫でられて、少し落ち着きを取り戻す。
そのタイミングを見計らって、蟻乃は言葉を紡いだ。
「うん。怖かったやんなぁ。大丈夫、大丈夫やから、な?」
蟻乃の言葉は魔法の呪文や。
親が怪我した子供に使う「痛いの痛いの飛んでいけ」と同じように、全ての痛みや辛さを緩和してくれる。
「僕は葉間口くんの嫌がること、絶対にせぇへんから」
「蟻乃……蟻乃ぉ」
蟻乃の手の温もりが、全てを癒してくれる。
俺は久方振りの眠気に襲われつつ、ゆっくりと瞳を閉じた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
34 :
10:2008/02/11(月) 05:00:41 ID:F7oNb/3R0
次スレを立てて頂いたのに、お礼もろくに言わず、投下しようとして失敗した挙句、前スレに続きを投下して逃げた馬鹿です。
すいませんでした!!
もう二度と投下したりしません。
こんな馬鹿な真似をして、皆様方にご不快な思いをさせてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
どんなに謝っても足りないと思いますが、本当にごめんなさい。
ご迷惑をお掛けしました。
ドンマイ
>>30 某スレで宣言してからのあまりの速さに脱帽しました。
そして萌えました。もうなんという蟻葉間。ありがとうございました。
>>30 GJ&Tx
>「僕の目見ながら、何もないって言って」
>「僕が全部忘れさせたるから」
>「僕は葉間口くんの嫌がること、絶対にせぇへんから」
この3つの台詞に、朝から禿げ萌えが止まりません
たしかこの当時蟻は羽間のこと「クリ」って呼んでたらしいので
脳内で補完しつつさらに禿げました。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ ショジョサクラシーヨ。エチーハカツアイシタヨ。
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
綺麗で出来た奥さんに愛されてる幸せ絶頂新婚のあの人に、俺は未だ恋する。
愛すというと、落ち着いて静かで清んでいて所有物をいつくしむこと。
恋すとは、いまだ所有ざるせざるものに想い焦がれる狂的な祈願をこめること。
仕事もひと段落着いてソファで寝転んで坂/口/安/吾の恋愛論の一節を煙草をふかしながら思い出していると、部屋のチャイムが鳴った。
間髪いれずに3回、急かされた様な、この特徴的な呼び鈴は―――…
* * * * *
(…?)
寝起きのぼんやりした頭が認識した隣りの男の短い黒い髪に空/知は一瞬驚いて一気に
覚醒する自分が判った。
(そっか…)
大/西さんだ、と判って少しだけ緊張した自分をバカみたいだと思う。
寝不足の身体を酷使したせいか、どうもだるい。腰が重い。腕が重い。起き上がるのも億劫なほど。
けれど、どうしても触れたくなった空/知はそっと、その見慣れた黒い髪の毛を撫でてみる。
(…うっわ、も、恥かしすぎる、俺)
(幾ら久しぶりって言っても、なんか)
(わーやっちゃったなホント…)
空/知はさっきまでの自分を思い出し、顔が熱くなるのを感じて手を離した。
(やっぱ恥かしいって…)
実際離れることが決まって以来実際淋しかったし、この男を恋しいとも思ったけれど、
その間、自分は今まで以上に仕事に走らなければいけない状況にあったし、
たかが担当変更なんていう感傷に耽っていられるわけではなかった。
新しい担当との対面も人一倍人見知りな自分にはかなりのエネルギーを要するし。
そう、たかが担当が替わるだけのこと。
自分のダメージを認識したらしたで更なるダメージを受けるから。
仕事に没頭しよう。そう決意したのは、自分自身。
それなのに、彼がすぐ傍にいるんだと思うと、どうしようもない感情に呑まれて
自分はこんなにも彼に飢えていたのだと自覚してしまった。
だが、現実腹ん中に溜まっていたものは、淋しいなんて生易しいものですらなく。
どうしてずっと傍に、一緒にいられないのかと、理不尽に責めたててしまいたいような。
「空/知/先/生?」
寝ていたはずの大西が空知の背中に声を掛けた。
空知はどんな顔をしたらいいのか考えているうちに振り向くタイミングを逃してしまい
背を向けたまま、風呂に、と小さな声で返事を返した。
「行かないでよ」
大/西は妙にはっきりとした声でそう言って、仰向けて寝ていた体を空/知の方に直した。
頷きもせずバスルームに消えた空/知の姿をそれでもまだ追うように大/西はその姿勢のままぼんやりとしていた。
(あんなことしといて、今更恥かしがらなくても)
(まぁ、そこが可愛いんだけどさ)
それ、を思うとつい顔が弛んでしまう。
突然押しかけて、玄関で襲い掛かっておいて、それなのに空/知にあんなに求められたことにちょっと驚いた。
あんなに求められたことは初めてだった。
それだけでも、あっちに行くことになってよかったかもしれない、などとを思ってしまう。
先生にたいして抱く思いは独占欲によく似ていて、いやそれそのものかもしれなくて。
自分の想いばかりが強くて重いのだったら、こんな惨めな恋愛はない、と思うこともあった。
(ま、そーじゃないっつーことも判ったし)
(俺にぞっこんみたいだし)
(相変わらず素直じゃないけど)
(そこがまた可愛いんですけどね)
大西はそれが嬉しくて込上げて来る笑いを噛み殺しながら、
被っていた布団をのけて、床に散らばったままのボトム拾い上げて身につけ
シャワーの音の響くバスルームのドアを開けた。
「せんせー」
「な、なんですかっ?ちょ、ちょ、入って来ないで下さいよっ」
「いいじゃないですか、細かいことは気にすんなって」
そう言って、大/西は慌てた様子の空/知に抱きつき一緒にシャワーの熱いお湯に濡
れた。
ぎゅうっとぬいぐるみにでもするかのように抱き締められて、空/知はこの状況を諦めながら
照れ隠しに不機嫌な声を出した。
「もう…なんなんすか…?」
「大好き」
大/西はそれだけ言い、空/知は何と答えたらいいのかが判らなず赤くなった顔を見られまいと大/西の肩に顔を押し付けた。
(本当はずぅっと大/西さんと喧嘩しながらアンタの傍にいたいんです、なんてとてもじゃないけど言えない)
(今優しくされると、あっちに戻っちゃった後…辛いんだよ。もう大/西さんがここに来るなんてこれが最後かもしれないし)
そうとは判っていても、大/西の腕の中はどうしても心地よくて文句が出てこない。
空/知は大/西の肩に頭を預けながら、後手にシャワーを止め口を開いた。
「こんなとこでこんなことやってたら、風邪引くよ大/西さん…」
「そーだけど」
「俺もう、上がりますから!」
そう言って、大/西の肩から顔を上げると、空/知はぎゅっと唇を結んで少しだけ高い場所にある大/西のそれにぶつけた。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ お粗末様でした。スレ立て乙です。
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
くはぁ! 萌えた! GJ!!
投下の姐さん方、まだ容量に余裕のある前スレを先に使おう。
武/装/錬/金 前スレ545の続き。
たびたびブツ切れになってしまい申し訳ありません。
512kbオーバーと言われたのでこちらに。
Janeではまだ表示に余裕があったのに変だな…。
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・;) ツヅキ!
どうしたらこの男を止められる?焦燥と共に力ズキは自問する。
言って聞く男ではない。言葉ではこの男を止められない。
では力ずくで?不可能だ。核鉄を手放してもハ゜ピヨンはホムンクルスだ。腕力では敵わない。
かといって自分だけが武装/錬金を使えば、さらに彼を傷つけることは火を見るより明白だ。
このプライドの高い男は、己の行動を束縛しようとする暴力に対して全力で抗うだろう。
ならば――自分の取る道はひとつしかない。
力ズキは胸の痛みを捻じ伏せ、覚悟を決める。
「――フン。ようやっと観念したか」
力ズキの表情の変化を見取ったハ゜ピヨンが、脂汗の滲んだ顔で不敵に笑う。
仮面越しの瞳は、容易に窺い知れない感情の奥に確かな意志を宿していた。
「ああ」力ズキはそれを正面から見つめ返し、頷いた。「――続きを、しよう。蝶/野」
疲労困憊のハ゜ピヨンが、これほどまでに行為の続行を望む真意は判らない。
が、こうなったらとことんつき合ってやろう。この男の気の済むまで。
その果てに自分がどうにかなるなら、そのときはそのとき。
自分が今この男に報い、応えてやれることはそれだけだ。力ズキは腹を括った。
覚悟していたとはいえ、手加減やいたわりの許される生易しい相手ではなかった。
元より経験に大きな開きがあるうえ相手の身体を気遣って遠慮が抜けない力ズキに、最初こそ
あれこれ注文――主により激しさを求める内容だった――をつけていたハ゜ピヨンは、やがて
業を煮やしたのか、言葉より実践とばかりに自ら振る舞い始めた。
翻弄され、内部の煮え滾る熱に炙られて意識が眩みそうになりながら、しかし力ズキの心の
一部分は不思議と冷静に眼前の男への違和感を捉えていた。
――まただ。
向かい合う今の体勢になってから、力ズキは彼の視線をいやがうえにも感じざるを得ない。
かつて“ドブ川が腐ったよう”だと斗/貴/子が評し、彼が力ズキを見据えるとき、宇宙の深淵の
ような吸引力を感じて時々空恐ろしくなるほどの、目。
今、その昏く深い瞳がふとした拍子に、不可解な揺らぎを垣間見せている。
「痛ッ……!」
「…、気を散らすな、と言ったはずだぞ」
肩口に爪を立てられ、意識の彷徨いかけていた力ズキは改めて正面の瞳に焦点を合わせ直した。
やはり微かにだが、常にない感情の色を湛えている。
「まだあの女のことでも考えていたのか?往生際の悪い奴だな」
「――んッ…、…いや。……オマエのこと、考えてた、蝶/野……ッうぁ!?」
いきなり恐ろしい力で締めつけられ、力ズキは局部の痛みで危うく達しそうになった。
「……ッ…、蝶/野?」
「……、……貴様という奴は」
目を伏せて顔を背けるハ゜ピヨンに、何か悪いことを言ったのかと訝しむ。
「蝶/野……オレに何か、言いたいことがあるなら――」
「ない」
ぴしゃりと遮った男に上半身を乱暴に突き倒され、力ズキは背後のフラスコに後頭部をしたたかに打ちつけた。
ほぼ馬乗り状態になったハ゜ピヨンは、もはや力ズキの動きなどかえって邪魔だと言わんばかりに
一方的な追い上げを再開し、それきり会話らしい会話は失われた。
どうにも、この男らしくない。
皮肉にも頭の痛みが少しばかり脳を覚醒させ、力ズキは募る違和感に思いを巡らせる時間ができた。
この男は体調の他にも何かを隠している。間違いない。
それも多分、よくないことだ。
隠蔽しきれない内面の揺らぎが今もさざ波となって両眼に表出し、力ズキを不安にさせる。
それが、らしくない、と思う。
この男が嘘や隠しごとをするなら、狡猾かつ周到に、呼吸するように平然とやってのける。
言いたいことは、そこまで露出しなくてもいいのにと思うぐらい歯に衣着せない男だ。
覆面と、目的のため自爆も辞さない強固な意志でも隠せないほど、この男は何に揺れているのか。
迷い?恐れ?――不安?
ハ゜ピヨンの心情を量りかねたまま、力ズキの意識は再び彼の作る荒波に呑まれていった。
無機質な研究室に、二人分の荒い息遣いと湿った音、そして自分の喘ぎ声だけが響く。
――甘かった。
朦朧と霞む頭で、今や力ズキは自身の選択をはっきりと後悔していた。
あのとき、武装/錬金を使ってでも振り切って帰る、という選択肢が浮かばなかったのが悔やまれる。
相手がいなければ彼とて、これほど痛々しい行為を続けようもなかったのだから。
白磁の肌に浮かぶ冷たい汗の珠が雫となって力ズキの上に落ちる。
時折苦しげな呼吸を途切らせ何かを飲み下す喉の動きは、生唾ではなく吐血を堪えているに違いない。
決して小さくはない力ズキの雄を呑み込んだ結合部からは、耳を塞ぎたくなるような音が間断なく漏れる。
既に幾度も強制的に絶頂に導かれた力ズキの根元を、白と赤の入り混じった大量の液体が汚していた。
飲ませろと言った張本人のハ゜ピヨンはその素振りも見せず、力ズキを咥え込んだまま休む気配もない。
とっくに体力の限界を迎えているはずだった。
「…ッ、まだだ…、寝るな。…全てを、出し尽くせ。…あの晩の、貴様の槍のようにだ……!」
たまに発する言葉は専ら力ズキを煽り叱咤するためだけのもので、双方向の意志の疎通をする気は
さらさらないようだった。先ほどの会話を最後に頑なな拒否の空気を纏っている。
もっとも、意味ある言葉を返すだけの余力はもう力ズキにも残っていない。
疲労で気を失うことさえ力ズキには許されなかった。
吐精して意識を飛ばしそうになるや否や、爪による攻撃と性器への新たな刺激で覚醒させられる。
ハ゜ピヨンは憑かれたかのごとく動き、自らと力ズキの双方を苛み続ける。
身体が熱に浮かされては倦怠を増すほどに、力ズキの心はうそ寒く冷えてゆく。
この男が判らない。
ハ゜ピヨン自身が望んだ行為のはずなのに、今の彼には快楽や苦痛に溺れている様子は微塵も
見受けられない。それどころか苦行のような忍耐すら感じる。
何か秘密があるならそれでもいい。あえて問い詰めようとは思わない。
こちらの身体だけなら、傷つけるなり弄ぶなりされても仕方ない。この男にはその権利がある。
でもこんな訳の判らないまま、傷つけさせられるのはあまりに不条理だ。
せめて、何か自分に思うところがあるのなら、言ってくれれば。
彼が一度も達していないことに思い至り、力ズキは腹の上に揺れる彼自身に目を向けた。
発作で一時萎えていたそこは昂ぶりを取り戻し、先ほどまでの力ズキに劣らぬほど張り詰めている。
――つらそうだ。
楽にしてやりたい一心で、彼が息を継いだ間を見計らって無理な体勢から伸ばした力ズキの手は、
届く直前で意図を察したハ゜ピヨンによって慌てたように払い除けられた。
ひたすら腰を上下させ、回し、自らを痛めつけながら、ハ゜ピヨンは心を閉ざして律動し続ける。
そのためだけの機械と化したかのような彼に、力ズキはなす術なく射精へと追い上げられていった。
――やっぱり、こんなのは、嫌だ。蝶/野――
判らない。
この男が、遠い。
この苦痛に満ちた空虚な行為を続けて、彼に何の実りがあるというのだろう。
心も身体も空っぽになった力ズキの中に、なぜ、という思いだけが堆積してゆく。
人が狂い始めるときは、もしかしたらこんな奇妙に醒めた心地なのかもしれない。
*
「いつまで、無害な愛玩動物の顔をしている――」
力ズキの左胸に手を突いたハ゜ピヨンが五指の爪を、ぎり、と突き立てる。
地の底から響くような声は脅迫者のそれだった。
「――貴様の、……本性を、見せろ……!」
覆面の奥、全ての感情の動揺を殺しきった理性の凍てつく闇は狂気すら孕んでいた。
脇腹に開いた傷口から滲み出す鮮烈な赤。
――ドクン。
力ズキの胸の奥底で、黒い獣が身じろいだ。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )マグロ×遅漏 ツヅク!
色々と申し訳ありせんでした。
次回辺りで一応は落ちるはず。
なお今さらの注記ですが、ホムやヴィクター化の設定は
原作をかなり夢見がちに歪曲、もしくは捏造した部分を含みます。
身体スペックの違いその他はご了承ください。
ありせんって何だorz 続き番号間違えてるし。
落ち着いて書き込む修行の旅に出ます。
萌え死んだーー
パピカズパピ最凶の色気っすね!ありがとうございました。
続き期待してまっす
>>55 GJです!!なんとなく切ないカズキとパピの仲に萌えました。
続き楽しみです(´∀`*)
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
・ナマモノ注意
・今年でデブ18年目を迎える某方角番度
・太鼓←唄←六弦←四弦が前提の、六弦←四弦
・本スレPart1の片思い設定に禿げ萌えて書いた。反省はしていない
展望台の手すりから目を上げると、空はまるで燃えているかのように紅かった。
ゆるりゆるりと流れる無数のちぎれ雲の群れは、なぜかクジラの姿を連想させた。
目に見えないほどの緩やかな速度で、気持ちよさそうに空を泳ぐ、紅いクジラ。
「あれ、クジラっぽくない?」
「いや、見えねえな」
「よく見てみろよ。あのへんが尻尾で、その先が腹で――」
俺が指差した方向を、あいつは目を細めて見つめた。
見慣れた横顔が夕陽に照らされて、違う誰かのように見える。
「ああ、見えた」
あいつは歯を出して笑った。『にやり』という効果音が似合いそうな、昔とちっとも変わらないあいつの笑い顔。
「見えたっしょ?」
俺はあいつの顔から目をはずして、いったん俯いた。そしてまた、一緒に空を眺めた。
ツ/アーの移動中、高速道路のちょうど中間地点にあるサービスエリアに立ち寄った。
売店やトイレを備えた大きめの建物の横には広々とした大理石の階段があり、観光用の展望台へと?がっている。
句差乃や咲ちゃんは売店へ暇つぶし用の雑誌を買いに行くようだった。
特にやることもない俺達は、とりあえず目の前にあった階段をのぼって、人気の無い展望台で時間を潰すことにした。
ところどころ文字がかすれた立て札によると、海沿いにあるこの展望台では、180度に広がる雄大な太平洋が拝めるらしい。
でも、俺には空と海の境目などまるで分からなかった。
水平線はまばゆいオレンジ色でかき消され、空と海は恋人同士のように深く、かつ曖昧に混ざり合っていた。
「20年だねえ」
しばらくして、あいつがぽつりと言った。
「早かったよな」
「あっちゅーま、だったよな」
いろいろな事があったと思うし、実際そうに違いなかった。
後ろなど振り返ることも知らずに突き進んできた。
気づいたときには、俺達なりに切り開いてきた、20年分の道のりがあったのだ。
「俺らは30年やね」
「そだな」
「早かった?」
あいつが首をかしげる。似合わないのに可愛らしいしぐさをしておどけてみせるのも、昔からだった。
「さあな」
「俺は結構長かったかな」
そう言いながら、サングラスの奥の瞳は空を向いた。
「でも、この4人になってからはあっという間だった」
あっちゅーま、とあいつはもう一度言った。
自分自身に向けて放ったようなフワフワとした声は、冬の空気に溶けて、消えてしまいそうだった。
俺は手すりをつかみ、夕陽を受けてちかちか光る海を見下ろした。
「俺も長かったよ」
「ほんと?」
「でも、この4人になってからはあっという間だった」
「そいつは奇遇だ」
あいつは俺を見て、またにやりと笑った。俺も、あいつを見て、唇の端を広げ、笑顔をつくった。
30年も一緒にいれば、気持ちの隠し方も上手になってくる。
一体いつから、こいつが特別な存在になったのか。
思い出すにはあまりにも時間が経ちすぎていて、ひとつひとつの記憶を丁寧に掘り返していてはきりが無かった。
でも、初めて会った日や初めに交わした言葉はどれも鮮明に覚えている。
そして、あの頃にはまだあいつへの感情に何のまじりっけも無かったことも、くっきりと頭に残っている。
忘れちゃいけない、と心が無意識に動いているからかもしれない。
確かにあの頃の俺は、蒸留された水のように純粋で、余計なものを知らなかった。
仲良くなりたい、という気持ちさえ持たずに人と仲良くなることが出来た。それはあいつに対しても一緒だった。
本当に、いつからだったんだろうか。
澱のように降り積もっていた願望の存在にようやく気づきはじめたのは。
知りたい、仲良くなりたい、関わりたい、もっと仲良くなりたい、近づきたい、もっともっと仲良くなりたい。
触れたい。
俺は自分の感情を持て余していた。途方も無く膨らんだ気持ちに戸惑い、嘆き、どうすれば昔のようにあいつと向き合えるのか悩んだ。
俺は時折あいつと距離を置くような振りをして、あいつを困惑させた。
そうしなければ自分を保っていけなかったし、またこの4人の輪を守れないと思ったからだ。
「なあ、他村」
「ん?」
「俺、思ったんだけどさあ」
クジラ雲を見上げてあいつは言う。
「俺らもさ、いつかは死ぬわけじゃん」
「うん」
「そんでさ、俺らって30年間一緒にいて、これからもきっといるわけじゃん」
「うん」
「ってことはさ」冷たい風が吹く。まっすぐに伸びた黒い髪がさらさらと揺れる。
「俺が死んだとき、俺の人生で一番長く一緒にいた相手って、親とか兄弟除けるとお前になるんじゃねえのかなあ」
「……」
あいつの髪やサングラスが光を浴びて、まぶしく見えた。夕陽が少しずつ降りてきているのかもしれない。俺はまた俯いて海を見た。
「だってさ、これから死ぬまで一緒にいたとしても、允霧音や咲ちゃんとは10年くらい違うし、家族はもっと、だし――」
「年数なんて関係ないだろ」
俯いたまま、俺はあいつの話を遮った。思ったより激しい口調になってしまったので、慌てて言葉を付け加えた。
「どれだけ一緒にいたいか、が大事なんじゃねえの。そういうのは」
「まあ、そりゃそうだけど」
あいつは雲から目を下ろし、俺を見た。
「多分、他村の人生で一番長く一緒にいた人も、俺になるんじゃない」
「……」
「イヤ?」
「……」
イヤな訳ねえだろ。
どこまで昔の自分なら、そう叫びたい衝動に身を捩っただろうか。
だけど、もう俺は、その頃の俺を遠く離れてしまっている。
喉元、過ぎれば。
「悪くは、ないんじゃない」
今の俺は手すりに頬杖を突き、あいつを惑わすような含み笑いを浮かべつつ、余裕の返答をすることができる。
「そっか」
あいつは何度かうなずいて、考え事をするように腕を組んだ。俺は夕陽に染め上げられたあいつの身体を眺めた。
気づけば俺たちも展望台の白い床も植えつけられた冬の花も、すべてが目が眩むような紅色に包まれていた。
空は燃え、海や陸をも燃やしていた。
しばらくして、あいつは口を開いた。
「確かに悪くねえな」
「え?」
「一番一緒にいた人が、お前ってこと」
あいつは笑う。にやり、と笑う。
「他村で良かったなって思うよ。ホントに」
笑う顔を見て、本当に久しぶりに、ぎゅっと胸が苦しくなった。
あいつの言葉が俺の耳から潜り込んで、喉を通ったあたりでつっかえたような、そんな感じがした。
こいつの言う『良かった』と、俺の言う『悪くない』にどれほどの温度の差があるのか、こいつは分かってない。
分かってないからこそ俺は安心すると同時に、ひどく悲しくなる。
「他村?どしたの?」
「……平気、平気」
へーき、へーき。頭の中で、何度か余分に唱えておいた。
俺達の間には、無色透明で、とても薄くて、でも決して壊すことの出来ない壁がある。
俺はこの、俺たちを隔てているものの存在に、あいつが気づかないように生きてかなくちゃいけないんだ。
30年前から、死ぬまでずっと。
「今日の鉄哉、変だよ。なんで死ぬとかそういうこといきなり言うわけ」
「いやーなんかね。夕陽を見てたら鉄哉くん、いつになくセンチメンタルになっちゃって」
「……へえ」
似合わねえの、と俺がぼやく。そうでしょ、とあいつもうなずく。
俺達の真ん前には夕陽が降りて、金色とも茜色ともとれる光を茫々と放っている。
「きれーだね、夕陽」
「うん」
「手、繋いじゃう?」
「……馬鹿」
はは、と笑うあいつの声がして、それが途絶えた後はしばらく沈黙が続いた。雲の下をはばたく海鳥の声が、微かに耳に響いた。
冷たい北風が吹く。紅一色だった空の果てから、黒色がじわりとにじみ出ている。少しずつ、夜の気配が忍び寄ってきていた。
「そろそろ帰ろっか」そう呟いたのはあいつだった。
あいつは手すりからぽんと身を翻し、俺を取り残してさっさと大理石の階段を下りていく。
待てよ、と言うとあいつは振り向き、俺を見上げて言った。
「風邪引いたら、允霧音に怒られるから」
あいつは笑っていた。
その瞬間、俺は見破ってしまった。
あいつのサングラスの奥の瞳に、俺があいつに抱いていた感情とまったく同じものが溶けていることを。
やっぱり、俺たちは『一番長い人』どうしなのだと思った。
だって、ついさっきまであんなに俺の近くにいたのに、もうあいつの頭の中は違う人間のことで占められている。
それをすぐに感じ取れてしまうその訳は、俺とあいつが腐れ縁だから、と言う他ないじゃないか。
「行くよ」
あいつは向き直り、口笛を吹きつつ階段を下りる。
紅い背中をぼんやり見下ろしながら、俺も展望台から離れる。
あいつも俺と同じように、厄介な想いに縛られながら生きている人間なんだろう。
自分のせいで苦しんでいた人間がいる、という事も知らずに。
俺は一段一段を踏みしめるようにして、階段を下りていった。
こつりこつり、とスニーカーを大理石に鳴らしながら、風に揺れる長い髪をじっと見つめていた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
お目汚し失礼しますた
実は六→唄や太鼓←唄の話もひそかに考えていたり。
完成したら後日投下します。
>>63 GJGJGJ!切なく萌えたよ〜
次回作も期待してます姐さん!
>>63 GJ!次回作楽しみに待ってます。さぁて仲吉でも聞こうかな…
,-、
//||
// .|| ∧∧
. // 生 || ∧(゚Д゚,,) < ナマモノ邦楽枕
//_.再 ||__ (´∀`⊂| < 六弦と助っ人
i | |/ ||/ | (⊃ ⊂ |ノ〜
| | / , | (・∀・; )、 < ぬるいです
.ィ| | ./]. / | ◇と ∪ )!
//:| | /彳/ ,! ( ( _ノ..|
. / /_,,| |,/]:./ / し'´し'-'´
/ ゙ / / / ||
| ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./ / /,!\
| | / `ー-‐'´
| | ./
|_____レ"
「あれ」
繁華街をほんの少し外れた小さな路地の三叉路で、咥え煙草のままきょとんとした彼と目が合った。俺の
姿を確認すると、短くなった煙草を地面に落とし呑気な声で、どうしたの?と彼は聞いた。
「どうしたの、じゃねえ」
今日はライブで、リハ終わり時間が空いたので各々好き勝手休憩していたらいつの間にやら彼が消えてい
た。待てど暮らせど帰ってこず、恐らく出歩いているのだろうと見当を付けて探してやればこれだ。方向音痴
のくせに何故そんなことをするのかいまいちよく解らない。
「煙草吸いたいなと思って外出て、ちょっとふらっとしようと思ったら迷っちゃった」
悪びれるでも困った風でもなく、彼はへらりと笑う。
「どっこ探してもいねーから、どうしようかと思ったよ。俺が代わりに正式メンバーになっちまおうか、とか」
精一杯の嫌味を込めてそう言ったのに、特に動じることもなくのんびりとした仕草で彼は二本目の煙草を取
り出す。ゆったりとそれに火をつけると、一息吸い込んで旨そうに煙を吐き出す。その拍子に、彼の耳で彼の
雰囲気に似合わないピアスがきらりと光り、一瞬それに目を奪われた。
「うわっ!」
彼が火をつけた時は普通だったはずのライターの火が松.田.優.作.よろしく最大になっていて、目の前まで勢
いよく火柱が上がった。驚いて俺は反射的に顔を引っ込める。訳が解らず目線の泳ぐ俺を見て彼はとても楽
しげに笑った。髪が焦げていないか前髪に触れたがどうやら無事であるらしい。恨みをこめた目で彼を睨むと、
くすくす笑いながらもう一度ライターが差し出された。彼の手からそれを乱雑にもぎ取って火力を調節してから
自分で改めて火をつける。
「じゅんくんは可愛いねえ」
サディストめ。うふふふ、という先ほどの仕打ちの主とは思えない笑い方で嬉しそうに笑う彼を見ながら、心の
中で舌打ちする。この人が何を考えているのか、まるで俺には解らない。この人は、何と言うか一貫性がない。
柔和なのかと思いきや、こういうことをする。しっかりしているかと思いきや、道に迷う。触れ幅が広くて焦点が絞
れない。そこに居るはずなのに例えば手を掴んだらそのまま風船のようにぐにゃりと変形して拡散して消えてし
まいそうな不安定さがある。時々俺は引き寄せてその存在を確かめなければならないような、よく解らない衝動
に駆られる。
「そろそろ行くかねーとさ」
「ね、リーダーに怒られちゃう」
ふふ、と笑いながら彼は言った。その穏やかな笑顔が俺の心を引っ掻く。彼らのリーダー。俺はそこには含ま
れない。ただ俺がそこに所属していないというだけで、仲間だと思われてはいるのかもしれない。でも悔しいと思
う。仲間はずれにされた子どものような、馬鹿げた大人気ない感情だ。時間の流れは誰にでも公平で、俺と彼ら
の空白はどう足掻いても縮まることはない。俺の知らない彼らを、彼らは知っている。仕方のないことだと解って
はいるのだが、彼らが俺の手の届かないところに居るのかと思うと堪らない気分になる。今俺の目の前で呑気に
煙草をふかす彼について、殊更それはひどくなる。あんな事もあったね。そうだな、懐かしいな。そんな会話にい
ちいち子どもじみた疎外感を感じる。それは時々湧き上がる彼に対する訳の解らない衝動と、密接に結びついて
いる気がする。
でも、その衝動の正体は解らないままでいい。
本当は解っていたとしても、解らないふりを。
煙草をアスファルトに落とし、踵で踏み躙ると、俺は何度繰り返したか解らないどうしようもない思考を隅に追い
やった。
「行こう」
彼は未だに現在位置が把握できないらしく、明後日の方向をぼんやり見ている。本当にこのままふらりと消えて
しまいそうだった。名前を呼ぶと、漸く彼はこちらを見た。俺は右手で会場の方向を示して、ポケットに両手を突っ込
んで先に歩き出す。後ろからじゃり、と砂を踏む音がするのを耳だけで確認しながら、俺は一歩ずつ今日のライブ
へと気持ちを切り替えていった。
ミスりました、申し訳ないです。67,68の間に差し込みお願いします…
「いる?」
彼はひょいと煙草の箱を差し出した。時間がないから。そう言おうとした筈が、余りにもその仕草が普通だっ
たのでつい一本受け取ってしまった。共犯者にさせられたような気分になりながら煙草を咥えると、同じく差し
出されたライターに顔を近づける。
,-、
//||
// .|| ∧∧
. // 止 || ∧(゚Д゚,,) < 意外と口調が解らなかったよ…
//, 停 ||__ (´∀`⊂|
i | |,! ||/ | (⊃ ⊂ |ノ〜
| | / , | (・∀・; )、 < しかも投稿とかミスほんとすいません
.ィ| | ./]. / | ◇と ∪ )!
//:| | /彳/ ,! ( ( _ノ..|
. / /_,,| |,/]:./ / し'´し'-'´
/ ゙ / / / ||
| ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./ / /,!\
| | / `ー-‐'´
| | ./
|_____レ"
前スレ
>>540 萌えた!
やっぱりこの2人は好きだ〜。青に振り回される赤という図がたまらん。
姐さん方、まだ容量に余裕のある前スレを先に使おう。
75 :
スパイラル2:2008/02/15(金) 22:40:14 ID:r6aEXgE50
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
・昨日投下した「スパイラル」の六弦→唄ver.です。(ナマモノ注意)
・話ごとに世界を切り離してる(つもり)なので、話中の展望台と「スパイラル」の展望台は同じ場所です。
・違う場所考えるのがめんどかったんでしょ?って突っ込みはキニシナイ!!
すべてを犠牲にしても手に入れたい、と思うもの。
そんなものに巡り会える生き方に憧れた日もあった。
まだ学校も卒業していなかった頃の俺は、どうしようもなく幼くて世間知らずで、向こう見ずだった。
映画や音楽でしばしば語られる、夢のような物語に憧れて暮らしていた。
いつかは自分も、そういう強く激しく己の人生を揺さぶられるようなものに出会うのかもしれない。
そんな未来のイメージが、おぼろげながら、しかし確実に俺の中に宿っていた。
そしてあの日。
俺はまるで花を見つけた蜜蜂みたいに魅せられた。
幼馴染は『彼』を俺に引き合わせる前に、性格が合わないかも、なんて渋い顔をしたけれど。
全くの杞憂だった。
その大きな瞳と視線が合った瞬間、いろんな心配も不安も煙のように消えていった気がした。
なんの不自然も引っ掛かりも無く、俺は当然のように彼に魅入り、引き寄せられていった。
何かを犠牲にしてでも手に入れたいもの。
もしかしたら、見つけたのかもしれないと思った。
でも気づいたら、俺の周りはうんざりするほど失くしたくないもので溢れていたんだ。
「柾棟見て、すっげー綺麗な夕焼け」
前を指差しながら振り返ると、柾棟は俺よりだいぶ後ろの方でのそのそと歩いていた。
「ほら、早く来いよ」
「別にどこからでも夕陽は見えるよ」
マフラーで隠れた口をもごもごと動かし、柾棟は億劫そうにしゃべる。
「そーじゃなくて。二人で並んで見ることが重要なの」
「……アホらし」
俺を軽くあしらうようないつもの視線を投げかけると、柾棟は首をすくめる。
それでもカメのようにのろいその歩みは、一秒も止まることはない。
俺はその場にぴったりと止まって、背中を丸めて歩く小動物みたいな柾棟が隣に来るまでじっと待った。
冬の風が吹きつけ、そのたびに柾棟は顔をしかめ、肩を震わせた。
マフラーを巻きつけた頬はぼうっと赤く染まっていた。
隣に来たところで並んで歩き、大理石の階段を一緒にのぼった。
展望台に着くと、目の前には炎の色にも似た鮮やかなオレンジ色が、スプリンクラーで撒きちらしたかのように辺り一面に広がっていた。
俺はため息をついて、夕焼けを見た。
「すごいね」
柾棟は何も言わず、じっと空を見ていた。長い睫毛が空へ向かってぴんと伸びている。
時々思い出したかのように小さく浅い呼吸をしては、口から白い煙をたちのぼらせてゆく。
今こいつは何を考えてるんだろう。
どんな音楽がこいつの頭の中で生まれているんだろう。
何年も傍にいたけれど、こういう瞬間に立ち合わせるたび俺は柾棟のことが分からなくなる。
そして、分かってしまったらつまらないじゃないかと思うことにしている。
「ここから見る夕焼けってすげえんだよね」
紅蓮色の雲を見上げながら俺は言った。
たった一時間前までわたあめを連想させるほど穏やかな色を保っていた雲は、いまや空のすべてを焼き尽くしてしまいそうに見える。
「前にもここに来たと思うんだけど」
「展望台?」
「うん」
「覚えてる」
「ホント?」
「潮の匂いがするから」 柾棟は手すりの下の海を指差した。風に揺られて、暗い水面はかすかに音を立てていた。
「覚えてたんだ」
「ずっと昔のツ/アーで来た気がするけど」
「いわゆる……俺らの、バブルの頃」
「ああ」 柾棟は肯いた。
今から10年以上前、俺達は目眩がするような忙しさの中で全国を飛び回っていた。
心も身体も常に仕事のことで縛られているようで、何かをじっくり考える時間すら無かった。
ただひたすらに、目の前に積み立てられた、それこそ無限と呼んでもいいようなスケジュールの山と向き合っていた。
俺達はそんな時期のことを『バブル』と形容していたのだ。
「じゃあどんな気持ちでここにいたか、覚えてる?」
柾棟は首を振った。「全然」
「俺は覚えてるよ」
「へえ」
「俺はね……」
西陽の光が当たって、柾棟の顔がぼんやり白く見えた。
「このまま時間が止まっちゃえばいいのに、って思った」
柾棟は黙っていた。
「これまでのことも、これからのことも全部どうでもよくなった。今この瞬間で、世界が終わっちゃえばいいのにって思った」
柾棟はうつむく。針のような睫毛が頬に長い影を落とす。
俺は足を踏み出して、彫刻みたいに固まってる彼の身体を抱きしめた。頬も肩も、凍り出しそうに冷たかった。
「柾棟」
「……」
「思い出した?」
「……鉄哉」
柾棟はそれ以上何も言わなかった。
歌を歌うあいつの姿が好きだった。
俺を無視する冷たい目も、俺をからかう子どものような笑顔も全部好きだった。
馬鹿みたいに『好き』と繰り替えすこの冗談が、いつ本気だと見破られてしまわないか心配で仕方なかった。
その「本気」を、俺はあの日少しだけ、柾棟の前でさらけ出してしまった。
夕陽を見上げて小さく鼻歌を歌う後姿を見ていると、どうしようもない気持ちに襲われた。
赤々とした夕焼け、ぎゃあぎゃあとけたたましく鳴くカラスの群れ、海の匂い、漣の音、水平線の上で微かに輝く灯台の光……
さまざまなものが俺をせきたてるように俺の心や身体の隙間に入り込み、うごめいた。
今しかないぞ、と誰かが耳元で囁いたような気がした。
俺は考える暇さえ持たずに、後ろからあいつの体を掻き抱いた。
あいつの体はびくりと揺れた。でも、一瞬の後には、まるで捕まえられたウサギのようにぴくりとも動かなくなった。
困惑しているのだ。
だって俺の抱きしめ方は、普段の冗談めかしたそれとは全く種類が違ってたのだから。
「柾棟」
自分で聞いても辟易するような、かすれた、甘えた声だった。
自分を取り繕うことなんてできなかった。
俺は小さな子どもが親に縋りつくように、あいつの体にめいっぱいしがみついた。
ツ/アーも、取材も、もうどうでもいい。
これまでのことも、この先のことも知ったことか。
この紅い世界の中で、このまま死んでしまいたかった。
だけど。
「柾棟」
「……鉄哉」
柾棟は、腫れ物に触るようにこわごわとした口調で言った。「だめだよ」
「知ってる」
すべてを犠牲にしてでも得たかったもの。
ある時、確かにそれは君だと信じていたのだ。
だけど。
「鉄哉は大事な存在だけど、でも、――」
「知ってる」
言葉を遮ったのは、続きを聞くのが怖かったから。そして、続きを言わせるのが可哀想だったからだ。
「柾棟は俺のことが必要だもんな」
俺はあいつに必要とされている。俺がいなければ、この番度はこの番度でありえないって、他でもない君が言ってくれた。
嬉しかった。
だから、俺は犠牲に出来ないものの存在に気づいてしまった。
君は寝る間も惜しんでありとあらゆるメディアに出演した。
君は頭を抱えて、膨大な締め切りの波と向かい合った。
時折君は苦しげな表情を見せた。しんどい、と愚痴をこぼすこともあった。
それでも、もう周りは簡単に『休んでもいいよ』なんて言ってはくれなくなった。
それは何故か。
君の姿を、いまやたくさんの人が求めているからだ。君の作る音楽が、たくさんの人の心を動かしているからだ。
もはや君は、以前までの君ではない。
この世界に名前を広めて、いつしか君は、俺たちのためだけに存在する人間ではなくなってしまったのだ。
君は、俺1人のわがままで簡単に手に入れられるような人間ではなくなってしまったのだ。
俺に出来るのは、ただ、君を支えること。
「寒いときは、いつでもこうやったげるから」
柾棟の髪を手袋で撫でながら俺は言った。
「無理すんなよ。俺は、頼まれたって柾棟から離れねえから」
「鉄哉」
もっと俺らが若かったなら、強引に君を奪うこともできたんだろうけど。
叶わないことを願うほど俺らはもう、夢見がちな年じゃいられなくなっちゃったね。
「……ありがとう」
柾棟は消えそうな声でぼそり、と呟いた。
いつもは素っ気無い君が、ごくごくたまに見せる今のような優しさ。それを養分にして、きっとこれからも歩いていける。
特別な仲間として生きるのを決めた俺はその日、長年育ててきた想いを封印した。
********
「思い出した?」
「……うん」
「柾棟は、あの時どんなこと考えてた?」
あの日と同じように髪を撫でながら俺は言う。
「……覚えてないよ、そんなこと」
柾棟はいくらかぶっきらぼうに言った。昔のことを掘り返したって仕方が無い、そう言いたげな口調だった。
「……それもそうだな」
俺は髪から手を下ろし、両手でぎゅっと柾棟の体に抱きついた。柾棟は驚いて身を捩り、いつものようにしかめっ面を俺に投げつけた。
「寒いときはこうしたげるって、言ったっしょ?」
にやにや笑う俺の顔を冷たく一瞥し、俺の体を振り払う。そして、「帰るよ」と後ろを向いて歩き出す。
もう何度と無く繰り返された、いつも通りのやりとり。
俺たちはこうでなければいけないのだ。これまでも、これからも。
「手、冷たかったよ。温めてあげよっか?」
「だからいいって」
「なんならホテルに帰った後でも」
聞こえよがしに大きな溜め息をついて、柾棟はさっさと早足で去っていく。大理石の階段を下り、すでに皆が乗っているだろうバスへと向かう。
俺は笑って、その後姿に犬みたいに駆け寄っていく。
封印していた想いは時々顔を見せて、俺らを少しだけ気まずくさせるけれど。
長い旅は、まだまだこれからなのだ。
走りながら振り返って見た夕焼けは、嘘のように綺麗だった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
回想シーンは8232〜藍horizonあたりです。きのこ全盛期〜。
太鼓←唄書いたら一応終わり…のはず。
GJ!
切ないのに萌えてしまうよ姐さん!
太鼓→四も切実に希望…!!!!!
GJ!
すごく切な萌えしてしまったよ姐さん!
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| かなり今更だがバレインタインデーネタ
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 柴/田/よ/し/きの聖/黒ネタ
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ホントニイマサラダ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
バレンタインが処刑された日、今では女性が勇気を出して男性にチョコレートとともに
愛を告白するという名目にバレンタインデーは形を変えている。
この年になってバレンタインデーだチョコレートだなんて気にするわけではないが、
自分にとって、大切な日であることに変わりはない。そう、奴の運命が変わった日。
聖なる夜、練は絶望の淵で韮崎に拾われた。
その日は依頼者の不倫を調査するために朝からこの夜中までターゲットの動向を
追い続けていた。日付が変わる頃、ターゲットは不倫相手と思われる女性とホテルへ
消えて行き、その写真を数枚撮り、その日の業務を終えた。
ポケットには依頼者に社交辞令としてもらったちょっと高級そうなチョコレートと、
道端でティッシュ代わりに配られていた安っぽいチョコレートひとかけらが残っていた。
溶けかけたそれらを夜食代わりに口に放り込むと麻生は家路に着いた。
もしかしたら、と思い携帯電話の着信を調べたが特に誰からも連絡は来なかった。
そこまで乙女チックじゃないよな、と自分を嘲け笑いながら、携帯電話とチョコレートの包み紙を
無造作にポケットに突っ込んだ。
鍵を廻そうとドアノブに手をかけると、ドアは簡単に開いた。
部屋に電気はついていない。部屋中に充満する酒臭さとテーブルに無造作に
置かれた空のコニャックの瓶で察しはついた。電気をつけず部屋の奥に足を進めると、
狭いベッドに練が仰向けに片手で目を隠すように寝ていた。おそらくずいぶん前から
こちらに侵入し、酔いつぶれて寝ているのだろう。自分の着ているシャツの何十倍も
するだろう白い光沢のあるシャツがくしゃくしゃになっている。
「遅い」
麻生の存在に気づいたのか、練はしゃがれた声で消え入りそうに呟いた。
「お前、勝手に入るなといつも言っているだろう?俺は仕事だったんだ。電話さえ入れてくれれば」
「どうせ電話したって会いに来てくれない」
「それは、悪かった」
狭いベッドに腰かけると枕もとが湿っていることに気づいた。一人で泣いていたのか。
この真っ暗な部屋で声が枯れてしまうほど。思わず練の柔らかい髪に触れ、子猫をあやすように撫でた。
「寝れないんだ。いつもは強い酒呷ってれば勝手に眠れてるのに。今日は駄目だった。やっぱり駄目なんだ。」
練の声が涙声に変わる。麻生のコートを千切れそうになるくらい強く握りしめている練の手に優しく自分の手を重ねた。
「目をつぶると思い出すんだ。」
韮崎を、と言いかけた練の唇を麻生のそれで塞いだ。
酒臭さなんて忘れるくらい強く貪るように練と麻生はお互いを求めあう。
高架線、駅のホーム、自らの生を断つために始発を待つ練の姿を思うと麻生はやるせなかった。
それと同時に韮崎の肉体この世から消えた夜、大声をあげて泣いていた練を思い出していた。
もし、あの時韮崎が練を拾っていなかったら、俺たちはこうして出会うことはなかった。
練の運命を捻じ曲げたのも、生を再び与えたのも韮崎自身であった。
自分は練の順調に進むはずの人生を捻じ曲げた張本人だが、韮崎のように再び彼に
何かを与えることができるのだろうか。この先、この長い夜に夜明けを導くことができるのだろうか。
麻生は自分の複雑な気持ちと練の悲しみを拭うように練の肉体を貪るように愛撫した。
気がつくと新聞配達のバイクの音が聞こえてきた。いつの間にか眠ってしまったのだろう。
ベッドには練の姿はなく、キッチンから味噌汁の匂いが漂ってきていた。のそのそと起きだすと
練が甲斐甲斐しく朝飯の準備をしていて、テーブルに昨日ポケットに放り込んでおいたはずの
チョコレートの包み紙がこれ見よがしに並べられていた。きまりが悪い麻生はそれらをゴミ箱に放り投げ、
それに気付いた練はキッチンから顔をのぞかせた。
「あんた、チョコ食っただろう」
「ああ、昨日は」
バレンタインデーだったからな、と言いかけてやめた。なぜか昨日という日をそんな陳腐な言葉で表わしたくなかった。二人の、運命が変わった聖なる夜を。
「来年は、いい酒でも飲みに行こう。予定空けておくから。」
「あんたの奢り?」
「ああ。もちろん。」
「それじゃたかが知れてるな。俺が払うからフグ食べに行こうよ。」
「いや、俺が払う。」
つまらない、取るに足りないけれど、とても心が温まる問答を繰り返しながら思う。
来年、再来年俺たちはこうして明るい朝を迎えられているのだろうか、と。
つまらない不安、意味のない心配だと思う。ただ練が眠れない夜を独り寂しく過ごさないように、
そばにいて朝を迎えさせてやれたら、と出しのきいた味噌汁をすすりながら麻生は思った。
―こいつと運命を共にすると決めたのだから―
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 時間軸とかめちゃくちゃですみません
| | | | ピッ (・∀・ ) はやく彼らに幸せが訪れますように
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
・次世代機で大人気な女の子踊らせたりするあのゲームの男体化バージョンです。
・男体化の際に名前をどうにも出来なかったので、それを省くよう書き方をしています。
・性格は元に合わせてますが、口調変換とかがうまくいってない箇所がありますがキニシナイ。
・主役♂×穴掘り♂のつもりです。
棚投下は初めてなんで、至らないところがあったらごめんなさい。
「あと……一時間かぁ……。」
半分海に浸かった陽が、白い壁に小さく細い影を作っている。
市民ホールの裏口に彼は居た。
「はぁ…うぅ……。」
少年は肩をすくめながら石段に座る。
「何で解散しなくちゃいけないんだろう……。やっぱり僕が弱いから向いてないとか……。」
「歌もダンスもダメダメで足引っ張ってばかりだから……。うぅ、埋まりたいよぅ……」
小さく震えながら芯のない声でブツブツと言っている。
「……もう少し一緒にいたかったのになぁ……。」
「何処に行ったかと思ったら、こんなところにい……たァッ!?」
聞き慣れた声と、ガンという鈍い音に振り向いた。
「いてて…こんな時に転ぶなんて縁起悪いなぁ……!」
そこには華やかな衣装を身にまとった僕のパートナー。
「えと……!あ……!」
思わず慌ててしまう。
「落ち着いて!えーと、プロデューサーが探してたよ?」
「プロデューサーが僕を?」
彼は服についた砂埃を払いながら、
「今後のことだよ。オレもさっきプロデューサーと話してたんだ。これからどうするか。」
「……今後のこと?」
さっきまで考えていたことが頭をよぎる。目の前の彼はいつもと変わらない笑顔だった。
それを見た瞬間、今までの53週間が猛スピードで脳内を駆け巡った。
手が震える。
足が震える。
頬が湿って来る。
視界がぼやける。
―ああ、またいつもの悪い癖が。
「ごめん……たくさんレッスンしたのに…がんばったのに……僕が、僕が…ダメダメだから足を引っ張って…だから……解さ
「そんなことない!」
力強い響きでぼやけた映像が晴れる。
「誰のせいで解散したとかじゃない。『頑張ったけどダメだった』それだけだよ。」
―一緒にいられなくなるっていうのに、何でこんなに笑顔なんだろう。
「でも……僕は、ずっと二人で……一緒に……」
目元が陽を反射して光る。
「また二人でユニットを組めばいいんだよ!」
「へ?」
「『頑張ってもダメ』だったら、もっと頑張れば、もっと長く一緒に居られるってこと。」
はじめて会った時は普通の人だと思ってた。でも違った。
彼は時々、何もないところで突然転ぶように、突然、こんな考えもしなかったことを言い出す。
それに何回救われたんだろう……片手じゃ数えきれない。
「少しだけ…離ればなれになるかもしれないけど……」
またぼやけようとしていた視界に、彼の顔が映る。
彼の奇麗な指先が僕の涙を拭った。
彼の顔が映像から見切れた途端、体が熱くなった。
抱きしめられてるんだと知った。
「離れてる間、頑張った分だけ、また一緒に居られるさ!」
—……恥ずかしくて埋まりたい。
「それにプロデューサー言ってたよ、」
「……プロデューサーが……なんて?」
「『俺達が成長したらこのユニットでもう一回リベンジしよう!』って。それくらいプロデューサーも悔しかったんだよ。」
「はは……。」
急に体が冷たくなる。気がつくと太陽も沈みかけていた。
「さ!そろそろ行こうか!」
「……ラストコンサートの開演時間、だね。」
「名前は『ラストコンサート』だけど、新しい『ハジマリ』だから……えーと、『スタートコンサート』?でいいのかな……。
うーん、でも語呂が悪いなぁ…もっと他にカッコいい言い方が……」
こめかみに人差し指を当てて考える、彼のいつもの仕草。
「そうだね。『スタートコンサート』!成功させようね!」
「うん!あー、ドキドキしてきた!あ、踊りちょっと自信ないから見てくれない?ここの振りがさ……ってうわぁああッ!」
「わっ!?」
どんがらがっしゃーん!と、僕を巻き込んで転ぶ彼。
背を冷たい地面に、上には彼が。
「……が、がんばろうな!」
「……うん!」
次こそは 上手にやれる そんな気がした。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
何かむちゃくちゃで申し訳ありませんorzorzorz
>>91 ああもう萌えた!GJ!
ほんとにあの二人には幸せになってほしい
_________
|┌───────┐|
|│l> play. │|
|│ |│
|│ |│
|│ |│
|└───────┘|
[::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
∧∧
( ,,゚) ピッ ∧_∧ ∧_∧
/ つ◇ ( ・∀・)ミ (` )
. (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
| ┌‐^──────────────
└──────│D受け劉バージョンです。
└───────────────
『ディー、…ディー』
懐かしい声がする。
『刑事さん…んっ』
体が、熱い…
全身を揺さぶられる。
熱い、熱い。
体が、熱い…
『あ…んっ…』
『もっと声だせよ』
意地悪い笑みが覗き込む。
そうだ、懐かしい。
『ですが、隣に、き、こえてしまいます、よ…』
片足だけで立つというのはけっこう大変なものだ。
もう片方の足は、『相手』に担がれて、少し辛い。
濃厚な空気、電気のついていない部屋、アパートの一室。
『ああ?隣?今頃寝てんだろ、気にすんな』
『相変わらずですね、あなたは…』
軽くため息をつく。トン、と、壁に背が当たった。
響く水音。冷たい空気の中で響く淫らな音。
さらに揺さぶりをかける。
自然と声が上がった。
ぎゅ、と、『相手』の肩をつかんだ。
『あ、あ、…刑事、さん…』
『名前、呼べよ』
『…。…レオン』
「!」
なんと言う、なんと言う。
まだ体が熱い。自分の体を抱きしめる。
まだ心臓の鼓動が早い。
なんという…夢を。
少し体を落ち着かせて、カーテンを開けてみれば、昼だった。
あわててベッドから降り、着替える。
脳裏には暗がりの中浮かぶあの男の顔があったが、目を閉じて忘れることにした。
「伯爵。なんだ休みか?」
看板をとりに行こうと外に出ようとした矢先に、外から声が響いた。
この新中華街のビルのオーナー、劉だ。
「はいはい、今あけますよ」
ガチャリと重い扉を開けてみれば、やはりそこには劉と、陳がいた。
いつもの偉そうに口の端を上げる顔。
一瞬、あの男と顔がダブる。
「いつものことだが…開けるのが遅いんじゃないか?」
うるさいですねこの男は。
D伯爵は心の中で毒づいた。まさかあんな夢を見て遅れたなどとはいえない。
それに、開店時間は極めて様々だ。
今日は早い方なのではないか。
「入るぞ」
勝手に上がってきては、動物を見るでもない。ソファに座り、陳にタバコの火をつけさせる。
あの男も、ずかずかと入り込んではソファに座ってタバコに火をつけた。
閉店の看板を取ると、陳と劉に茶を差し出す。
まだ、熱い。体が。
なぜだろう、今日はあの男と劉がやけにダブって見える。
血筋も人種も違うのに。
態度だけはそっくりだ。
「おや、伯爵、顔色が悪いですぞ」
陳が伯爵の顔を覗き見て、指摘をした。
「ああ、ちょっと気分が優れないだけです」
いつもの営業スマイルを、陳に見せる。
だが心臓は高鳴っていた。
熱い。体が熱い。
本当に体調が悪いのだろうか。
お茶のおかわりを、と、奥へ向かったとき、音をたててD伯爵は倒れた。
「!?伯爵」
劉と陳が立ち上がって、奥を詮索する。
そのまま床に突っ伏して倒れているD伯爵を、二人は見つけた。
「風邪…ですか」
陳の持ってきた体温計をくわえながら、D伯爵はベッドに寝かされていた。
やけに広いD伯爵のフロアの中で、劉がやっと見つけた寝室。
それまで劉に抱きかかえられていたというが、覚えはない。
劉の無骨な手が、D伯爵の額に当てられる。
「伯爵、体温が高いぞ。寝て養生しろ」
ふう、と深くため息をついた。
劉の前で倒れるなんて完全に参ってる。
体が熱いのもそのせいだろうか。
けれどあの夢が何度も頭の中で再生されて、余計体が熱くなる。
…欲しくなる。
「…すみません」
「ほう、素直なときもあるんだな」
「それは余分です」
_________
|┌───────┐|
|│ロ stop. │|
|│ |│
|│ |│
|│ |│
|└───────┘|
[::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
ピッ ∧_∧ナンバー盛大にミスりましたすみませんorz
◇,,(∀・ )久しぶりなもので…
. (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
| |
└────────────────┘
107 :
スパイラル3:2008/02/17(日) 21:39:06 ID:8nxPfirD0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
・「スパイラル」の太鼓←唄verです(ナマモノ注意)
「珍しいね、政宗がうちに来るなんて」
「まあ、たまには、ね」
肩をすくめて言う俺に、咲ちゃんはいつもの優しい笑顔を向けた。
左手には買ったばかりの真っ赤なギ夕ーを載せ、右手には慣れ親しんだ愛犬の頭を載せて。
「黄粉も喜んでるよ」
黄粉はハアハア息をしながら、俺の顔をじっと見上げてくる。
真っ黒い瞳はつやつやとしていて、ガラス玉みたいだ。
咲ちゃんとその愛犬があまりに純粋な目を向けてきたものだから、俺もつい締まりのない笑みを浮かべてしまった。
笑うような気持ちになることなど何一つ無かったと言うのに。
勘のいい人間なら、このぎこちない笑顔の裏に、何か後ろめたいことが隠されているのに気づいただろう。
1人だけ家の方向の違う彼のもとに、どうして俺がわざわざツ/アーの中休みに訊ねてきたのか。
黄粉の顔が見たいから、だとかギ夕ーを指南してあげたいから、なんて言い訳を真に受けてしまう彼だから、きっと俺の真意など読めてはいない。
顔を見ない日々が続くと、退屈で、寂しくて、どうにもやりきれなくなるんだ。
咲ちゃんがすごく必要になるときが、俺にはあるんだ。
そんな事を言えば、20年間嫌になるほど一緒に過ごしてきたじゃないか、まだ足りないのかと彼は呆れた顔で言うだろう。
ところが、足りないのだ。
彼がいないと、俺は、自分の一部を持っていかれてしまったような虚ろな気持ちになる。
何をしていても彼の声や表情が脳裏に浮かんできて、残像みたいに留まり続ける。
俺はこの、俺の心の中で起きている不可解な現象の正体を既に知っている。
だから、こうして彼に突然会いに来て、彼の気を引けなくてつらい、と怪しまれなくて良かった、を同時に思ってしまった自分が嫌になる。
「咲ちゃん、せっかくギ夕ーあるんだから一曲弾いてみようよ」
俺はソファの上であぐらをかき、横で座る咲ちゃんのギ夕ーの弦をでたらめにはじいた。
新品だけあって、ピィンと、頭の奥まで通るようなまっすぐな音がした。
「弾くって……例えば?」
「俺らの曲の――例えば、あれとか」
俺は割と有名で、なおかつ難易度の高すぎない過去の曲の導入部分を教えた。
口で伝え切れないところは、俺が咲ちゃんの手を握って演奏を手伝った。
「政宗ってさ」
「ん?」
「結構、手、デカイよな」
確かに俺の手は、咲ちゃんのそれと比べて大ぶりだし、全体の造りがゴツゴツしている。咲ちゃんの手の上から重ねると、より目立って見える。
「手だけはね。それ以外は……だけど」
「いいじゃん、男らしくて。ゴツイ手は好きだよ」
俺は全身真っ赤になったような気がした。咲ちゃんは急に動きが止まった俺を、不思議そうな顔で見つめた。
『好き』という言葉に、こんな年齢でありながら不覚にもときめきを覚えてしまった。
こんな男くさい手をした奴が、こんな女々しいことを考えたと知れば、彼は笑うだろうか。
俺は咲ちゃんの視線から逃げたくて、無理矢理彼の手を握って、「次はこのコード」と早口に言った。
しばらく経つと、一曲すべてとはいかないまでも、大まかな曲のラインはなぞれるようになった。
咲ちゃんのギ夕ーから、いつも俺が弾いている旋律が奏でられるのはどこか不思議な感じがした。
「政宗、歌ってよ」
「えー」
イントロの終わりが近づくと、咲ちゃんは促すように俺に目配せした。
仕方がないので、俺はわざとらしい咳払いをすると、あぐらをかいたまま歌いだした。
床にいた黄粉が、面白い玩具でも見つけたような目をして俺を見つめた。
咲ちゃんは身体をゆっくりと揺らし、気持ちよさそうな表情で弦を鳴らしていた。
「……やっぱりいいね。政宗の声は」
「咲ちゃんの声もいいよ。ラ/イ/ブんとき、コーラスで聴こえるとすごい心強いもん」
「そう?」
「俺、咲ちゃんの声好きだよ」
さっきのお返しのつもりだったのだが。
彼は表情一つ変えずに弦をはじき続け、ワンコーラスぶんを悠々と弾ききった。
そして、再びイントロの演奏を始めた。
「政宗、歌って」
「また?」俺は唇を尖らせて、不満を訴えた。
「この曲、ラ/イ/ブで何回もやったことあるじゃん。飽きないの?」
「飽きないもんだよ」
お喋りせずに歌え、とまた目配せを食らったので、俺はそれ以上のことは聞けなかった。
咲ちゃんにコーラスをしてほしかったのだが、結局それも言いそびれてしまった。
俺が歌いだすと、彼はとても穏やかな表情を浮かべた。幸せそう、と言ってもよかった。
どうやら彼にとって、俺の声は何度聴いても嫌にならないものであるらしい。
俺が彼の存在を求める心と、それは同じ種類のものなのだろうか。
少し考えて、そんなわけが無い、という当然の事実にぶち当たった。一瞬でも甘い期待を抱いてしまった自分を、俺は嗤った。
演奏が終わると、俺は口を開いた。
「散歩にでも行こうか」
「ん?」
「黄粉が行きたそうだから」
咲ちゃんが黄粉を見下ろすと、同時に黄粉も彼を見た。
事前に示し合わせていたかのように、彼らの目線はぴたりと合わさった。
「そうだな」
彼はにっこり笑い、ギ夕ーをケースの中にしまい、ソファから腰を上げた。
黄粉も尻尾を左右に振って、首輪にリードが付けられるのを今か今かと待っている。
俺はソファに座ったまま、彼らの姿をじっと見ていた。
「政宗、何してんだ?早く行こう」
俺はうなずき、ソファを離れた。
咲ちゃんがそう言ってくれるまで、動くつもり無かったんだよ。
ふざけてそう言おうかとも思ったけれど、彼らの後姿がもう随分遠くに行ってしまっていたので、やめた。
近くの公園には、休日の昼下がりだというのに誰も来ていなかった。
枯れ木に挟まれた少ない常緑樹は、風が吹くごとに葉を揺らし、ざわざわと音を立てた。
使う人もいないまま、まばらに立ち並ぶ遊具はどこか寂しげな空気を漂わせていた。
「寒い?」
「へーき」
歩いているうちに解けてきたマフラーを、もう一度きつく結ぶ。
咲ちゃんと黄粉と、それから俺の口からも、同じように白い息が吐き出されていた。
「ちょっと休もうか」
咲ちゃんが指差したベンチには誰も座っていなかった。誰も来ていないのだから、当然といえば当然だ。
木製の青いベンチに並んで腰掛けた。黄粉は咲ちゃんの膝の間に頭を寄せる。
咲ちゃんが黄粉の頭と顎に両手を添えて撫でてやると、黄粉は気持ちよさそうに目を細めた。
「……いいよね」
「ん?」
「いいよね、黄粉は」
咲ちゃんはきょとんとして俺を見た。
ぱっちり開いた大きな目は、わけがわからない、と言っているようだった。
「だって、咲ちゃんに大事にされてるじゃん」
陽の光を受けて稲穂のように輝く毛並みだとか、絶え間なく振られる長い尻尾だとか、飼い主の手を舐める嬉しそうな表情だとか。
ありったけの愛情を浴びて生きているものにしか存在しないものを、黄粉は持っていた。
そして俺は、事もあろうに、この犬を羨み、また嫉妬していた。
彼に近づける存在、彼と愛情を全身で受け合い、かつ与え合える存在。
――そういうものになれるなら、いっそケモノの姿になってでも。
馬鹿みたいなことを真剣に考えてしまうのは、いわば俺の持病だった。
「俺、黄粉になりたいな」
「……変なこと言うな、政宗は」
咲ちゃんは眉をひそめた。
「黄粉にならなくたって、大事にされてる犬なんて他にいくらでもいるだろ」
「…………」
俺は声を出さずに、口を歪めて笑った。
そういう意味じゃないんだよ、って突っ込む気も起こらなかった。
彼がいわゆる、そういう種類のことにひどく気がつきにくい人間だってことは、過去の経験から痛いほど知っていたけれど。
俺が必死の思いをこめて投げ込んだ、精一杯のさりげないアプローチも君はいとも簡単にかわしてしまうんだ。
疑う余地も無いくらい、無意識のうちに。
「にぶいよ」
黄粉を撫でていた咲ちゃんの手が止まる。
「ホントにぶいよ、咲ちゃんは」
俺はそっぽを向いて頬杖をつく。
咲ちゃんの視線が注がれるのを、首筋に感じる。
それだけで俺の息は熱くなるなんて、彼は死んでも理解できないのだろう。
「政宗、どうしたんだよ?」
彼の手が、俺の肩に触れる。その瞬間、小さく小さく、俺の体は震える。
さわるな。
俺の気持ち、ちっとも知らないくせに。
「俺、何か変なこと言った?」
「……べつにー」
喉からは拗ねた声しか出て来ない。
こんなワガママを言ったところで何にもならない、彼を困らせるだけで、俺の気持ちなど欠片も伝わらないってちゃんと分かっているのに。
胸が押しつぶされたように苦しくて、思うように動けない。
「……政宗」
きっと俺、今ひどい顔してんだろうな。
自己嫌悪で心も体もぐちゃぐちゃだ。
こんなことなら、会いに来なければよかった。
そう考えていると、ふいに咲ちゃんの手が伸びてきた。
咲ちゃんは俺の肩を抱え込み、傍に引き寄せた。
驚きでこぼれかかった声をどうにか堪えて、俺は彼の顔を見た。
彼は困ったように、でも真っ直ぐに俺のことを見つめていた。
「何が悪かったのか、俺にはよく分かんないけれど」 彼は言った。
「何か悩んでることがあるなら、俺でよければ聞くから」
そう言って彼は俺の頭を撫でた。
咲ちゃんの手は温かい。触れられるとジワジワ熱が伝わって、俺の心を溶かしていく。
ただデカくてゴツイだけの俺の手なんかよりずっといい。この手は、誰かを癒せる手だ。
「1人じゃないから、政宗は」
俺はうつむいた。
ついさっき傷ついたばかりなのに、胸の奥ではまた懲りもせず期待し始めている自分がいる。
彼の感情は、あくまで『大切な仲間』に向けられたものでしかないのに。
この手は俺を撫でてくれるけど、それ以上のことには応えてくれない。
この唇は優しい言葉を与えてくれるけれど、俺に触れるために存在しているわけじゃない。
俺が黄粉を羨む本当の理由を知らないから、彼はこうして俺を甘やかしてくれるんだ。
わかっている。十分、理解している。
それでも、今だけは彼の優しさに甘えていたくて、俺は年甲斐もなく彼のからだを強く抱きしめた。
********
公園を出るころには、もう陽は沈み始めていた。
人気の無い遊歩道を、俺は黄粉のリードを持って歩いていた。
「リード、離すなよ」
「わかってる」
咲ちゃんは俺の後ろを歩いている。並んで歩くには、まだどこか気まずい。
黄粉はそんな俺達の心情など知らん顔で、尻尾を振りながら先へ先へと進む。
「黄粉は元気だね」
「犬だからね」
「寒そうにも見えんし」
「毛があるからね」
ふさふさとした金色の毛を揺らして歩くさまは、寒さなど知らないかのようだった。
冷たい風が吹きつけ、俺は慌ててマフラーで口まで覆った。
「やっぱりいいよな、犬って」俺はぼやいた。
「あーあ、俺、犬になりたいなー……」
ほんの独り言のつもりだったのに。
その言葉を、彼は聞き逃さなかった。
「でも、犬は歌えない」
静かで低くて、でもよく耳に通る声だった。俺は振り返った。咲ちゃんは思ったよりずっと遠くの場所に立っていた。
「俺は、人間の政宗が、好きだよ」
風が吹いて、木々が揺らめき、ざあっと音を立てた。夕陽を背に浴びた咲ちゃんの顔は、どんな表情を浮かべているのか分からなかった。
「……やだな、咲ちゃん。冗談だよ」
そこまで言うので精一杯だった。
それ以上顔を見ていたらどうにかなってしまいそうだった。胸の奥から喉に向かって、何か得体の知れない熱いものがこみ上げてくる感じがした。
俺は前を向いた。
「冗談だよ」
再びそう言うと、俺は黄粉に引かれて早足で歩いた。
一度も振り向かなかったし、口を開かなかった。
必死で歯を食いしばって、無様に歪んだこの顔を見られたらたまらなかったからだ。
泣くな、泣くな、泣くな。
何度も自分にそう言い聞かせた。
陽は傾き、一日は終わりを告げようとしている。風は止み、誰もいない遊歩道には俺達の足音だけが寂しく響いている。
『俺は、人間の政宗が、好きだよ』
優しい彼の声は、いつまでもいつまでも、頭の中にこびりついて離れなかった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
唄はわがままなくらいが丁度いいと思います。
残り一つの→は……期待しないで待っていて頂けたら、もしかしたら……?
>>115 姉さん待ってたよ!GJ!GJ!
ハゲ散らかした。もう毛根氏んでもいいよ。残り期待しないで待ってるよ〜
>>115 GJ!つるっ禿げた!
わがままな唄は大好物です、切なすぎてどうにかなりそうでした。
では残り期待を抑えつつ待ってます(^^)
>>115 GJ!毛がなくなりました!
あれ、目から水が…
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 今更、「派遣の品格」茄子田×麻乃でちょっと小→大も…。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| ドマイナーだなw
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「せんぱーい!待ってくださいよぉ。」
後ろから情けない声がする。振り向いて早くしろとだけ言い、歩く。
「待って下さいって!先輩!」
「茄子田、早くしろ!遅刻するぞ!」
「先輩。俺、超疲れたんですけど、おんぶしてくれません?」
「はぁ?何言ってんだ、バカ!自分で歩け!…お前も、もう社会人なんだからもっと余裕を持って行動しろよ…。」
エレベーター前で茄子田はようやく、俺に追いついた。
「先輩、マジ歩くの早いっすよ〜」
「茄子田、その“マジ”とか“超”って口癖直せよ、いい加減。」
「はぁい」
少し、拗ねた顔で返事をした直後、エレベータが来た。扉が閉まる寸前で乗ってきたのは、里仲主任だった。
「間に合った…。」
肩で息をしているところを見ると、相当走って来たのだろう。
「主任、大丈夫ですか?」
僕が声を掛けると、少し苦しそうな声で
「うん。大丈夫。ちょっと、寝坊しちゃって…。」と言った。
「里仲主任も寝坊したんですか?俺も寝坊したんですよぉ。」
茄子田のでかい声がエレベーター内にこだまする。他の人が居なくて良かったと思う。
「そうなの?」
「そうなんですよー。麻乃先輩、起こしてくれないんですもん…」
「えっ?」
主任はビックリした顔で茄子田と俺の顔を交互に見た。
「あっ…えーっと、昨日…一緒に飲んでそのまま…こいつ寝ちゃって…ハハハ」
「ふふふふ…」
気持ち悪い声の元は茄子田だった。
「なんだよ。気持ち悪い声出して…。」
「え?だって…昨日の先輩の顔、思い出しちゃって…」
俺は、茄子田の方を睨みながら、わざとらしい咳払いをしたが、里仲主任は気づかないふりをしてくれた。
こういう場の空気を読むのが、大人なんだろうな。と感心しながら、生まれてから一度も場の空気なんて読んだ事がなさそうな、茄子田を睨みつけた。
午前中に契約を1件まとめ、ようやく昼食を取る。
「なんとか、まとまって良かったですね」
「そうだね。麻乃君が頑張ってくれたお陰です。ありがとう。」
「そんな…俺は何も…」
「お礼に、昼メシ奢るよ。何でも好きなの頼んで…って、定食屋で申し訳ないけど。」
「いえ、うれしいです!」
今日は天気も良いし、仕事も何とか上手く行ったし、なんか幸せだなぁ…と浸っている気分を壊したのは俺の携帯の音だった。
ディスプレイを見ると【茄子田 トオル】
無視しようと携帯をポケットに戻そうとしたら主任は電話、どうぞとでも言うように手を出した。俺は会釈し、仕方なく電話に出た。
「…もしもし?」
『せーんぱーい!今どこに居るんすか!!』
隣に座る中年男性が眉間に皺を寄せこちらを見ている事から察するに、電話の声は漏れているのだろう。
「茄子田、お前声デカイ。」
『俺、超腹減ったんですけどぉ!早くランチ食べましょうよぉ。』
俺の注意も虚しく同じ音量で喋る茄子田…。
「悪い、茄子田。今、取引先の近くなんだ。だから戻ると昼休み終わっちゃうから、一人で食べてくれ」
『え〜嫌ですよぉ。先輩…超ヒデェ!!俺も今からそこ行きます!一緒に食べましょうよぉ』
聞き分けのない子供のような事を言う茄子田に頭にくる。
「いい加減にしろ!いつまで学生気分引きずってんだ!!何でも俺に頼るなよ!そう言うの鬱陶しいんだ!」
『…ヒド…』
流石に少し、言いすぎたと思いフォローしようとしたが。
『先輩!!それが恋人に対する言葉ですか?!鬱陶しいっって思ってたんですか?!昨日の時もネチッコイって思ってたんですか!!』
勘弁してくれ…これ以上、ヤバイ事を言われないうちに、機嫌を取っておかないと何を言われるか…。
「わかった、茄子田!夕飯。夕飯は一緒に食べよう!何でも好きなもの奢ってやるから!な?」
茄子田を何とか宥め、ようやく電話を切る。隣のOL風の女性と目が合ったが、物凄い勢いで目を逸らされたって事は…電話の内容聞かれてた?
もうどーでもいい。隣の席の中年男性に睨まれようが、OLに変な目で見られようが、もうどーでもいい。どうせ二度と会うことはないんだし。
でも、目の前に居るのは里仲主任…両隣に聞こえてたんだから目の前に居る主任に聞こえていないわけない。
チラっと里仲主任を見ると、涼しい顔をしてお品書きを見ていた。
これが、大人の男ってやつなんだろうか?
それとも、腹が減っていて電話どころじゃないんだろうか…そんな事を考えていると店員が注文を取りにやってきた。
「僕は、サバ味噌定食。麻乃君は?何にする?」
正直、メシなんてどうでも良かった。一刻も早くこの状況を何とかしたい。と言うか、この場所から去りたい。
「あ、じゃあ、同じので…。」
店員が去った後、何をどうしていいか考えていると里仲主任が「茄子田くんと付き合ってるの?」と何食わぬ顔で聞いてきた…。直球ストレート…ですか。
「あぁ…、まぁ…なんて言うか…成り行きで…。」
「そうなんだ。」
「主任…引いてますよね?」
「引く?なんで?」
「え、だって…。」
「僕は、そう言うの気にしないから。」
主任は笑ってお茶を飲んでいる。これも、大人の余裕?…主任の場合は…天然…だよな。
「いつぐらいから付き合ってるの?」
「あーっと…歓迎会の後くらいから…ですかね…」
「へぇ…じゃあ、まだ付き合って間もないんじゃない?今がラブラブでいい時期なんだね」
「え?や…ラブラブか、どうか…はわかんないっすけど…」
「ラブラブじゃない。お昼も一緒に食べに行きたいって言うんでしょ?」
「やっぱり、聞こえてました?」
「うん…ちょっとね」
うな垂れる俺を慰めるように主任は続ける
でも、いいよね。好きな人が近くに居るって」
「そうですか?茄子田ですよ?うるさいだけですよ。俺は少し離れたいです…」
「本当にそう思う?」
急に真面目な顔になった主任に少し驚いたが、またいつものような人懐っこい笑顔に戻った。
「麻乃君が羨ましいよ。」
「え?なんでですか?」
「好きな人とこんなに近くで一緒に居られるんだもん。喧嘩も近くにいるから出来るし、嫌な事も楽しい事もすぐに伝えられるでしょ?僕は、それはとっても幸せな事だと思うんだ。」
そう言って笑う主任は少し寂しそうに見えた。一瞬、商事主任の顔が浮かんだ。
「あの…主任…失礼ですけど……商事主任のこと」
「…好きだよ。…だから、羨ましいよ。一緒に入れる君たちが…」
なぜか驚きはしなかった。驚くというよりも…主任の切なさが伝わってきて、俺まで切なくなってくる。
「サバ味噌定食お待ち〜」
二人の切ない空気を引き裂くようにサバ味噌が来た。
「さ、食べよう」
思いっきり明るく言った主任が痛々しくて、どうにか幸せになって欲しいと心から思った。
社に戻ると、茄子田のブーたれた顔で、パソコンに向かっていた。いかにも“不機嫌です”と書かれているような顔が可笑しかった。社会人になったとはいえ、まだ子供っぽいところが残る茄子田を見ていて、笑が込み上げる。
「茄子田。」
俺が声を掛けると、一瞬ぱぁっと明るくなった顔が慌ててまた不機嫌な顔に戻る。“俺は怒ってるんですよ”と顔に書いてある。
「先輩、何か用ですか?何も用がないなら仕事してくださいよぉ。学生じゃないんだから!」
精一杯の皮肉の言葉。
「茄子田、今夜お前の家行っていい?」
そう俺が聞くと一瞬にして茄子田は笑顔になった。
その後、あいつは妙に張り切って仕事をして、定時には仕事を終わらせていた。
「先輩!早く帰りましょう!!」
「ちょっと待て。主任、お先に失礼します。」
デスクで仕事をしていた里仲主任に声を掛け、会社を後にして帰路に着いた。
帰り道、相変わらずテンションの高い茄子田を見ながら、俺は里仲主任の言葉が少し分かった気がした。大事な人がすぐそばにいるのは幸せな事。
「茄子田。やっぱ今日、泊まってもいいか?」
「…え?えー?!マジっすか?!…あっ、ヤベっ。」
嬉々とした表情が一瞬、曇る。
「なんだよ。嫌ならいいよ」
「いや、嫌じゃないっすよ!ただ、ゴムないっすよ?」
「お前の頭の中はそれしかないのか!バカ!」
こいつにはもうちょっと躾が必要かもしれない。
125 :
ハケン:2008/02/18(月) 18:57:07 ID:kTZgXFt9O
ID:HAzPTXjYOです。
投稿しすぎと怒られました
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ ジサクジエンデシタ
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
コ.ー.セ.ル.テ.ル.の.竜.術.士で風(次兄)×暗(長兄)→主人公
本編から数年後設定というパラレルなので捏造注意
プラトニック萌え
ずいぶん久しぶりだというのに、幼少を過ごした家は昔とまったく変わっていなかった。
柔らかな木漏れ日の影にある屋根と、壁に寄り添う蔓草、その周囲を取り巻く懐かしい空気。帰郷した風竜は、体中で感じる心地の良い匂いに酔っていた。
しいて変わったことを挙げるとするなら、この家の主が少し年を重ねたことだ。サータはそれでも優しい笑顔のマシェルに、何年かぶりの抱擁で自分の喜びを伝えた。
マシェルもそれに答えて彼の背に手を回す。随分大きくなってしまったね、と育ての親が言う台詞に、サータは愉快そうに笑った。
「どうして笑うんだい、サータ」
「だって、マシェル。凄く意外そうな顔だもの」
あの無駄に伸びた兄がずっと側にいたのに。弟の俺だって成長してるに決まってるじゃないか。
そんな事を言ってサータがマシェルの向こうを指差す。そこにはナータがいた。別れた日と変わることのない仏頂面で立っている。
サータがマシェルの背を追い抜いたのと同じように、ナータもまた肉薄していた。
マシェルはちょっと頬を膨らませる。その仕草にサータは感慨を覚えた。それは恥じ入るとき、反論するときのマシェルの癖だった。
「ナータは普通より特別大きいと思ってたんだ。だってこれでまだ少年竜だよ?まさかサータまでこんなに大きいなんて」
マシェルの言うようにナータは縦にこそ大きかったが、顔立ちや筋肉のつき方は未だ幼さを残していて、一見はサータより年下のように思えた。
その矛盾は竜の里に帰っていったサータ、そして他の兄弟とは違い、ナータがマシェルと共に過ごしてきたという証拠であった。
コーセルテルで過ごすうちは、竜は少年のまま永遠の時を生きる。そのためにナータの声もまた、透き通った夏の風のように昔と変わらなかった。
「マシェル、サータ。家に入って話さないか」
食事の支度の途中だろう、と促すその声の懐かしさにサータの心は弾んだ。
あのころは毎日がこうだった。昼間外で走り回って、帰ってくると必ずこの二人がいた。そして兄弟たちで集まって、彼らの周りをよく囲んだものだ。
「マシェルの料理久しぶりだ〜!俺も手伝おうかなぁ」
発奮して袖を捲くるサータだったが、マシェルは家に入ると彼に椅子をすすめた。
「今日のサータはお客さんだからね。座っておいでよ。風竜の里から飛び続けで疲れただろ?」
母親の口調で労うマシェル。サータはそんなところも昔のままだなと思った。
この家は誰かが遊びに来るときはいつも、歓迎の準備に忙しかった。そして主の彼は相手の喜ぶ顔を見るためにいつも張り切っていた。
マシェルが台所に立つと、その少し後ろにはナータがいて彼の背中を見ている。 サータ自身はこうしてテーブルの側で待っているか、
時々作業中の二人の間に入っては、皿を割るかアータと揉め始めるかのどちらかだった気がする。
ぼうっと思い出に浸るうちにいい匂いが漂ってきた。
たちまちご馳走が並んでテーブルを埋め尽くす。子供の時は大きく見えたテーブルも、大人2人と少年が座ればお互いが意外に近かった。
「うわぁ、すごいな。美味しそうだ」
心からそう言ってサータはフォークを握った。しばらく無言で口を動かす。
相変わらずマシェルの料理は温かく、身体の内から彼を満たしてくれた。一旦空腹が落ち着くと、食事をしながら料理の感想や兄弟の近況を二人に話し始める。
「カータが、俺がここに帰るって言ったら羨ましがってたよ。あいつは遊びにこないの?」
一番下の弟について語れば、どちらも顔を見合わせて笑った。
ナータに関してはそれこそサータのように、近しい者でなくてはわからないくらいの微妙さだったが。
「逆だ。あれが一番よくここに来ている」
ナータの苦笑に、この前来たのは3週間前だよとマシェルの補足。
サータも思わず笑った。光竜の里(月)からここまでそんなに頻繁に訪ねて来るとは、甘えん坊だったあいつらしい。
逆に一番疎遠なのはマータのようで、彼女の話になるとマシェルは色々とサータに質問をした。
サータもマータと同じように、ここを出てからずっと帰っていなかったのだが、連絡だけは地味に続けていたせいか彼女ほど心配されてはいなかったと見える。
こうして過ごすうちに、皿の上はすっかり空になった。
ほとんどサータ一人が食べたようなものだが、マシェルもナータも食が細い方なので最初からそれを当てに作ったらしい。
食後に黄金色の蜜菓子と合わせ、苦味が出るほどに葉を開ききった、色の強い茶を熱い湯で割る。
これが薄いのがタータで、濃いのがハータだった。
本当に昔と同じように過ごすと、当時にかえったような気になる。そうなるとやはりアレも再現してみたくて、サータはカップの縁に口を付けたまま提案した。
「ナータ、今日大部屋で一緒に寝ようよ」
相手のきょとんとした顔にサータは頷く。
部屋分けされる前に兄弟で使っていた7台のベッド。それを繋げてシーツで覆えば二人くらいは眠れると主張した。
「な、いいだろ」
ナータはやはりというか何というか引け腰で、最初は渋っていた。
「だが……マシェルは」
チラチラと隣に視線を運ぶ。さみしがりやのマシェルを一人にしていいものかと悩んでいる様子だ。
当の本人はというと別段気にした様子もなく、サータの発言に手を叩いて明るい表情だ。
「いいじゃないナータ、兄弟水入らずで」
「マシェル」
彼が引き止めてくれるのを期待していたのか、ナータは肩を落とした。露骨な仕草にサータは吹き出してその背に飛びつく。
「ほらほら、俺で我慢しなよ。マシェルとはいつでも一緒に眠れるだろ」
するとナータは急に神妙な顔つきになった。
サータも自身の発言に思うところがあったのか、ナータの顔を覗き込んだまま固まってしまう。抱え込んだ背と己の胸のうちにある、ナータの黒い翼がざわめいた。
一瞬の静寂。マシェルがそんな二人に呟いた。
「まだ一日あるから、明日は僕も入れてね?」
それでようやく二人は離れたのだ。
********************
陽が落ちて闇が降りてくる。マシェルの寝静まったところを確認して、サータは隣のナータに声をかけた。
直ぐに返事が返ってきたのは、きっと相手も同じことを考えているからに違いなかった。
二人は起き上がってベッドの上に座り込んでいたが、どちらも切り出せずにただ時が過ぎた。
お互いの姿を暗闇の中に見て、その変貌に改めて驚く。とくにサータは長兄の彼が自分よりも背が低いのだと思って、小さな違和感に首を傾けた。
夜目のきくナータはそんな小さな表情の変化を鮮明に感じ取り、弟の長く伸びた髪に離れていた月日を見た。
口火を切ったのはナータだった。
「こうしていると、昔を思い出す」
サータは頷いて彼の台詞の続きを待った。
「覚えているか。マシェルが遠出をして、この家に自分達だけになった数日があった」
「……うん、覚えてるよ。3日目には皆眠れなくなって、こうやって起きていたんだ」
あのときは確か、アータが中心になって本を読んでいた。
「ロッタルクの冒険記だな」
「そ、人間のお嫁さんが"いなくなった"くだりでカータがおお泣きして……つられてハータまで泣き出してさ、皆怖くなった」
マシェルがこのまま帰ってこなかったら、どうしよう。そんな不安でいっぱいの夜。
もちろんサータとナータも例外ではなかったが。
ナータが遠い目で当時を振り返った。
「あのとき……お前と自分だけは、皆と違う事を考えていたように思う」
そうだ、とサータは指を握った。"いなくなった"というのは子供向けの読み物によくある比喩だ。
竜と人間の刻のずれ、それを端的に表す一言だった。
マシェルがコーセルテルの外へ出て行ったら。弟たちはそう思って泣いていた。
けれどナータがそうは思っていないことに、サータはあの時気づいたのだ。
暗闇の中でもはっきりと分かるほどに青ざめたその顔に、サータ自身も血の気が引いた。
「お前に酷い事を言った」
現在のナータが目を逸らした。過去のナータも、サータと目が合うと顔を背けた。それが心苦しくて、サータは彼の手をつかまえてこう言ったのだった。
『マシェルがいなくなっても、おれがいるよ』と。
ナータは激昂してその手を振り払った。そして叫んだ。
「お前とマシェルは違う……」
その大声に、耐えていた妹たちまでもが泣き出して、収集がつかなくなったのを覚えている。
ナータはその時とまったく同じ台詞を呟いたが、表情は穏やかだった。受け止めたサータも、今では納得して落ち着いていられた。
「すまない。ずっと気がかりだった。お前を軽視して言ったのではなかったんだ」
わかってるよ、とサータは苦笑する。ナータにとっての唯一が、マシェルだということはずっと知っていた。
「謝ってるけど、今も変わらないだろ?俺がマシェルのかわりになれないのは」
ナータは素直に首を垂れた。
「マシェルのかわりは誰もいない。……お前にはいるのか」
「俺にもいない。変なこと言うなよ」
わざと怒ったような口調で言うと、ナータはそうだなと溜息をついた。
再び静寂がやってくる。けれどそれは先程の重い空気ではなかった。その心地よさを壊すことを恐れて、二人はしばらく口を噤んでいた。
今度はサータからだった。
「……ナータ。マシェルが、いなくなったらどうする?」
帰る場所のない暗竜。ただ一人と決めた相手が消えた後も、このコーセルテルで過ごしたいのかと。
ナータはのろのろと顔を上げた。暗い瞳で、それでもまっすぐにサータを見つめて。
「マシェルがいなくては、生きていけない」
か細い声だった。サータは「ああ」と意味のない音を喉から洩らす。
ナータの心が意外に脆く、思うよりずっと頼りないのは、サータだけが知っている事実だった。もしかするとタータあたりは感づいていたのかもしれないが、それでもナータが感情を吐露できる相手は一人だけだった。
マシェルではなく、サータに。いや、マシェルだからこそ言えないことがある。
悲しいから、きっと狂ってしまうから、死なないでくれなどとは。
言えるわけがない。
「正直、どうなってしまうのか自分でもわからない。泣き叫んで終わるのならいいが、もしかしたらこの地の一つや二つ崩壊させるのかもしれない」
ナータは自嘲ぎみの笑みを浮かべたが、実際コーセルテルを吹き飛ばそうとした前科があるために、サータはまったく笑えなかった。
自らの身体を抱くナータに腕を伸ばす。振り払われることはなかった。手の平の下の強張る肩。そのままサータは相手を引き寄せる。
薄い背中に手をやって探ると、予想通りに彼の翼は大きく広がっていた。不安の象徴であるそれをつまんでみる。軽く引っぱるとナータは顔をしかめた。
ナータが抗議の声をあげる前に、サータは力強い口調で宣言した。
「もし、そうなったら、殴ってでも止めてやる」
鼻先が触れ合うほどに顔を近づける。
「ナータを最後の竜王みたいにはさせない。……悲しくて皆の事忘れても、俺がきっと気づかせてやる。
その後ずっと一緒にいる。俺が竜王の竜術士の娘になればいいんだ」
サータの熱い視線をナータは逃げることなく受け止めた。
「よせ、お前を縛るなど自分はしたくない」
「ナータがやらせるわけじゃないから、束縛じゃあないよ」
「……止める前に死んだらどうする」
「大丈夫。自信があるから」
「根拠もないくせに、お前のそういうところが嫌いだよ」
「俺はナータのこと好きだけど」
「…………自分の一番は何があってもマシェルだ」
「それでもいい」
ナータは肩を震わせた。感動ではなく怒りのために。そのままナータは自分を抱きしめているサータを突き飛ばした。
「この……っ!」
いきなり力を込められたのでサータはころりとシーツにダイブした。
何故ナータが怒りだしたのか理解できずに目を白黒させる。下から見上げる彼は肩で息をしていた。
起き上がってもう一度近づこうとすると今度は後ずさられた。
「ナータ」
「お前は馬鹿か。風竜の里で、お前にはお前の役目がある。一族の分だけお前には必要とする者がいる。
己の一族の子も残せない暗竜などに、お前の未来を費やしてどうするんだ」
サータは反射的に言い返した。
「やめろよ、そういう言い方。俺は俺、ナータはナータだろ」
自虐的な台詞を咎めて睨む。ナータは唇を噛んだ。
サータは種族など関係なくナータや他の兄弟を慕っていたので、今の言葉には落胆した。
ナータもそう思ってくれているといい、そんなふうに考えていたために反動も大きかった。
何度目かの沈黙にサータは頭をかく。
責めているように聞こえぬよう、なるべく優しい声を出した。
「あのさ、俺はこの家がすごく好きだよ。この家で過ごした思い出が一番大切で、一族には悪いけどそのうちここに戻りたいと思ってる。
きっと何年たっても……マシェルがいなくなった後も気持ちは変わらない」
ナータは黙って聞いている。サータは続けた。
「マシェルのいない家で、最初は寂しいだろうけどさ。そこに昔とおんなじように、ナータがいてくれたら俺はつらくないよ。俺たち兄弟だもの。ナータはそう思わないの?」
真摯な呼びかけにナータは逃げていた身体を戻した。言いづらそうに口を何度か歪ませる。
根気強く待つサータに聞かせられたのは、まず謝罪だった。
「悪かった……、我ながら卑屈だったよ」
「いいよ、もう言わないなら」
二人して困った顔のまま笑い合う。穏やかになった月光の中、ナータは伝えた。
「本当は、お前がいてくれたら嬉しい」
「!……ほんと?」
「ああ」
サータは思わず身を乗り出した。ナータが照れているのか顔を隠す仕草をする。
そんなことをしなくてもサータに彼の顔色までは見えないのだが。自分が闇を通してもサータの様子がよくわかるためか、ナータは少し仰け反った。
「……数年ぶりにお前に会って、気づいたことがある」
「何?」
「お前が自分の家族だということ」
意外すぎる告白にサータは拍子抜けした。そんな今更、とも思ったが好意的な感情なのだから悪くはないかと考え直す。
するとナータが小さな声で「もうひとつあるが」と呟いた。
「え?聞きたい聞きたい」
「…………」
嫌そうな顔をする相手を揺さぶる。何回か催促するとナータは渋々といった感じでこう言った。
136 :
風×暗:2008/02/18(月) 22:03:28 ID:HgHpoX9RO
ちょっと区切ります
ナンバリングを盛大に間違えた上に一行文章が抜けました
連投規制故携帯から
グダグダでスマソ
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
・「スパイラル」最終話(ナマモノ注意)。太鼓→四弦「の寸前」です。
・若太鼓&若四弦の一夜を書きたかったばかりに、えらい長くなりました。
リズム隊スキーで根性のある方推奨。
・ささやかなとどめのプレゼント(おまけ)は、今更ですがあのコラボネタです。
初めて会った頃は、ここまで長く付き合うことになるなんて思いもしなかった。
あの番度にヘルプで参加したのも、俺としては自分の経験値を高めるため、
向こうとしては噂の『名人ド/ラ/マ/ー』とやらを引き込むため、という互いの利害関係が一致した結果に過ぎなかったのだ。
俺はこの番度のド/ラ/マ/ーを務める。 四人の音が絶妙なバランスで響き渡ったとき、俺はこの番度の一員であることを単純に喜ぶ。
それでも、自分の参加してきた多くの番度がそうであったように、俺はあくまで一時的なメンバーであり、いつかは別離のときを迎えるのだ。
金髪を逆立てて煙草を吹かす俺を恐れているのか、同い年の癖にわざわざ「さん」付けで呼んでくるあの男とも
来年の今頃には挨拶もしない仲になるのだろう、と俺は漠然と考えていた。
あれから20年。
「咲ちゃん、何読んでんの?」
人のことを「さん」付けで呼んでいた男はいまや、ともすれば女の子と間違えられそうな呼び方で話しかけてくる。
「スポーツ新聞」
「ああ、野球のが載ってるもんね」
ただでさえ隣の席に座っていて近いのに、多村はぐっと首を伸ばして記事を読もうとしてくる。
海の向こうの国までの旅は長い。この狭い飛行機の中で、いろんなことに好奇心を持たないと精神的に疲れてしまうのだ。
「負けてるね」
「最近、調子悪いからな……」
「だから咲ちゃん、ここ数日機嫌悪かったんだ?」
多村はひらめいた、という風に目をぱっちり開いて、にやにや笑った。
図星を指された俺は、とりあえず苦々しい顔ををして「三連敗」の見出しを睨むことにした。
俺達の前の席では、政宗と鉄哉がなにやらボソボソ話している。
詳しい会話の内容は分からないが、時々「痛い!」やら「嘘です、すみませんすみません」やら聞こえて来るのから察するに、また鉄哉が余計なことを言ったらしい。
あの2人は、俺がこの番度に加入したときからあんな調子だった気がする。
俺は記事を眺めながら、20年前のことを思い出す。
初めて会った頃、3人にとって俺は異様なものとして映ったのかもしれない。
今でこそ裏リーダーなんて面白がって言うけれど、あの頃の俺は確かに、彼らを(無意識のうちに)威圧している部分があったと思う。
他村なんて、最初のうちは捨てられた犬みたいなおびえた目で俺のことを見ていた。賭け事が好きなくせに、感情を隠すことができない性格なのだ。
あいつが俺を警戒していることなど誰の目にも明らかだった。
(まあ、それでもいいか)
他人から怖がられたって、それはこれまでの人生でもよくあったことだ。いちいち格好を改めようという気も無い。
それにこの男とも、これからどういう関係になる、という訳でもない。
いつかは――たぶん、そう遠くない未来には――俺は自然と、この番度から離れるのだ。
最後まで打ち解けられなかったとしても、それはそれで仕方が無いことだと思っていた。
政宗と鉄哉はまだ低い声で何か話している。そのときふと、隣がやけに静かであることに気が付いた。
「多村?」
スポーツ新聞から目を上げると、多村は首を肩にもたげて目を閉じている。半開きの口から規則的な呼吸の音がする。
いつの間にか眠ってしまったようだ。
くせのある茶色い髪が、こめかみにかかっている。そういえば、昔は黒い髪だったんだよな、とぼんやり思い出した。
俺達がようやく打ち解けはじめたのは、この番度の「誕生」――俺の加入をもって、「誕生」と呼ぶらしい――から半年ほど経った頃だった。
ラ/イ/ブが終わった後、時間帯の都合で俺は多村の部屋に泊まる事になった。
政宗や鉄哉と別れた後、ふたりだけで多村のアパートに向かった。
あのとき多村はどんな気持ちだったんだろうか。
まさか、俺があいつのことを取って食ったりするとでも思ったのだろうか。今となってはわからない。
鍵を差込み、錆が付いて赤くなったドアノブを引くと、古い建物特有の湿った空気が漂ってきた。
多村は決まり悪そうな顔をして、ボロい部屋だけど、と小声で言った。
俺はそんなことは気にしない、と返した。
別に女の子を呼んだわけでもあるまいし、一晩眠るためのスペースがあれば細かいことはどうでもいい。
それに、俺が普段住んでいる部屋だってこれとよく似たレベルなのだ。贅沢は言えない。
靴を脱いだ多村が、部屋の真ん中に垂れ下がった紐を引っ張ると、その上の蛍光灯に明かりがついた。
あと少しでぷつりと消えてしまいそうな、黄ばんだ頼りない光が部屋を包んだ。
「すぐに消すから……問題、無い、よね?」
多村は俺をちらりと見て、機嫌を窺うように首をかしげた。俺はうなずいた。
語尾をあやふやに発音するあいつは、俺をどのように扱えばいいのか未だに見定めかねているようだった。
多村は俺に着替えを渡すと、畳の上に座り、なぜか後ろを向いて自分の服を脱ぎだした。
交差させた両腕でシャツの裾をつかみ、一気に頭から脱ぐ。
白いシャツがまくられていくと、意外なくらい広い背中と肩幅があらわになった。
そのとき俺は驚いた。
こんな俺の前でおどおどしているような男が、妙に男っぽい体つきをしていたということを。
そして、彼の服に袖を通して俺はさらに驚いた。
彼にはきっとぴったりと合うのだろうシャツが、俺の体ではスカスカしてしまうのだ。
それは、彼より俺の方が小さい体躯の持ち主であることの証明に他ならなかった。
ただでさえ背丈だって、――どんぐりの背比べだと笑われるかもしれないが、当人にとっては大事な問題だ――1センチ、俺の方が小さかったというのに。
髪を逆立てて粋がったって、こういう差は埋められない。なんだか俺は情けない気持ちになってしまった。
「サイズ……合う?」
シャツを(俺の予想通りぴったりと)身にまとった多村は、心配そうな顔をして俺を見た。
「当たり前だろ」
俺が睨み付けると、彼は防御するように両手を前に出して、「ごめん」と素早く言った。
俺は舌打ちしたくなったが、多村の弁解を続けさせたくなかったので我慢した。
多村が布団を敷いている間、俺は煙草に火をつけながら部屋を見渡した。
あの頃は、鉄哉も政宗も煙草を吸っていた。
ただ煙草を吸うというスタイルに憧れていただけ、と言えば身も蓋も無いが、
こうしてライターの火をつけ、巻煙草の先から煙を吹かしていると、それだけで箔がついたような気がした。
今ほど喫煙に厳しくない時代だったのだ。だから、そんな時代にありながら煙草を吸わない多村は俺にとって珍しい存在だった。
四畳半の狭い部屋を眺めていると、あるものに気がついた。
「これ」
「ん?」
「これが、政宗とお前がやってたやつか」
小さな安っぽいテレビの前に、フ/ァ/ミ/コ/ンが転がっていた。
機体からは何本ものコードが伸びていて、その先にはテレビの背中と、長方形のコントローラーがふたつ。
片方のコントローラーの横には、三つ四つのゲームソフトが散らばっていた。
「うん。あー、また句差野のやつ、散らかしやがって……」
多村は顔をしかめてゲームソフトを拾い上げた。「勝手に俺んちにゲームしに来て、後片付けもせずに帰ってくんだぜ、あいつ」
文句を言う多村の顔が、今までより明らかに緩んでいることに気づいた。俺は煙草から口を離し、煙を吐きだした。
「でも、ゲームは生産性が無いからやめる、とか言ってなかったか」
「あんなの口だけだよ。ノリで何でも言っちゃうんだよ、あいつは」
出来の悪い生徒について話す先生みたいに多村はそう言い、笑った。
「……初めてだな」
「え?」
「俺と一緒にここに来てから、お前が笑ったの」
多村はなぜだか赤面し、「あー」だの「えー」だのよく分からない言葉を発した。埒が明かないから、俺は発言を続けた。
「この番度は、お前と政宗が組んだのが始まりだったよな」
多村はこくんとうなずいた。
そのとき、俺は指に挟んだ煙草が灰になりかけていることに気づいた。
灰皿は無いか、と聞くと多村は部屋に転がっていたコーラの空き缶を差し出した。缶の中にはすでに何本か吸殻が入っている。
多村は煙草を吸わない。となると、これは多村の部屋でフ/ァ/ミ/コ/ンに興じた男の残していったものだろう。
缶に吸殻を放り込み、新しい煙草を咥えると俺は口を開いた。
「お前たちが、どんな風に知り合ったのか聞かせてくれないか」
多村は話した。自分と政宗が大学で出会い、趣味が合ったこと。この部屋でゲームに耽ったりして自堕落な生活を送りながらも、音楽をやっていたこと。
一度は音楽をやめたこと。政宗が別の大学に進学した後も、彼はこの部屋に訪れ続けたこと。もう一度、音楽をやろうと思ったこと。
幼馴染の鉄哉をギ/タ/リ/ス/トに引き込み、あとは腕の立つド/ラ/マ/ーが必要だったこと。
そして、俺が引き受けてくれて心底感謝しているということ。
話している最中の彼は、さっきまでのおどおどした感じは全く無かった。
時々言葉に詰まりながらも、こっちが気おされるくらいに真っ直ぐな目をして、気持ちを込めて言葉を連ねた。
俺はうなずきながら彼の話を聞いた。どうしてだろう、近々離れるかもしれない番度の話など、一生懸命聞いたって仕方がないと思っていたのに。
多村の目を見ていると、なぜだか引き寄せられてしまうのだ。
俺はシャツの肩がスカスカすることも忘れて話を聞いていた。
話が終わると、多村はもう寝なくちゃね、と言って蛍光灯の紐を引っ張った。部屋は途端に暗闇に包まれる。
「ごめん。長々喋りすぎちゃったね」
「……いや」
空き缶に何本目かの吸殻を入れながら、俺は手探りで掛け布団を引き寄せた。
「……ねえ、咲山さん」
「ん」
「咲山さんは、ずっとこの番度にいる気は、あるの?」
部屋が暗くて、隣の男がどんな表情をしているのか分からない。でも、どこか不安げな雰囲気の漂う声だった。
「さあな」
「俺、咲山さんにリーダーやってほしいな」
予想外だった。「なんで?」
「だって……」ぼりぼりと頭を掻く音が聞こえた。恥ずかしそうにしている彼の顔が思い浮かぶ。「咲山さんなら、俺達を引っ張っていけると思って」
静かな部屋にカチカチと時計の音が響いた。俺は口を開いた。
「リーダーなら、お前の方が向いてるよ」
「えっ……」多村は絶句した。俺以上にその言葉は予想外だったらしい。
「なんで?」
「自分で考えろよ」
「……何、それ。訳わかんねえなぁ、咲山さんは」多村はそう言い、軽く笑った。その声には、数時間前までには無い親しみがこもっている気がした。
「それと、多村。俺のことを『さん』付けで呼ぶのは止めろ。……俺達同い年だぞ」
「じゃあ、なんて呼べばいい?」
「好きにしろ」
多村は少しの間黙っていた。頭の中で、あれこれ俺の呼び名を思案しているのだろう。
「よし、じゃあ、考えとく」
その後は、会話は自然と途絶えた。俺達は、どちらからともなく眠りに落ちた。
夜が明けると、俺達は着替え、簡単に朝食をとり、別れた。他愛ないやりとりをしただけだったし、俺の新しい呼び名も決まらなかった。
それでも、あの夜を境に俺達の関係には確実な変化が訪れていた。
もしかすると、俺がこの番度に骨を埋めるきっかけは、あの夜から生まれたのかもしれない。
********
さて、現在の多村は俺の方に首を傾け、呑気にすうすう寝ている。
無防備な寝顔を見ていると、20年前の警戒心剥き出しだった頃の顔が思い出されてなんだかおかしくなる。
新聞もめぼしい記事はあらかた読んでしまったので、俺は新聞を畳み、多村と同じように眠ることにした。
目を閉じると、飛行機が空を突き抜ける音がきいん、と耳に響いた。
でも、一旦気持ちを落ち着けてしまえば眠りに落ちるのは案外簡単なことだった。
眠りから覚めたら、すぐ目の前に多村の顔があった。多村は厚ぼったい唇を広げて、子どもみたいに笑っていた。
「咲ちゃん、起きた?」
「……」
「おはよう」
「……何してんの?」
「咲ちゃんの寝顔、見てた」
多村はふふ、と笑って俺の髪に手を伸ばした。寝癖でもついているらしい。
「趣味悪いぞ」
「だってさ」
彼は髪をいじりながら言う。「咲ちゃん、寝言で俺の名前呼んでたんだよ。多村、多村って」
「……」
「どんな夢見てたの?」
記憶を引っ張り出す。確かに俺はついさっきまで夢を見ていた。
「……ラ/イ/ブの夢」
「ラ/イ/ブ!」
多村は声をあげて驚いた。「それで、どうして俺の名前が出てくるんだろ?」
「そりゃーお前が、暴れすぎだからだろ」
前の席から鉄哉がいきなり顔を覗かせてきた。
「お前が咲ちゃんのシンバル叩く様があんまり強烈だったもんだから、ついに夢にまで出てきちゃったんだよ。咲ちゃんかわいそうに、多村に呪われて……」
そう言って鉄哉はサングラスに手を当てて泣く真似をする。
「お前は黙ってろ!」 多村が噛み付いた。
「ねー咲ちゃん、俺は夢の中に出てきた? 何かカッコイイことやってた?」
「もうお前は前向いとけ。句差乃が起きるだろ……」
政宗は寝つきも悪ければ目覚めも悪い。くだらないことで起こしてしまった日には、いつまでも恐ろしい目つきでぐずられ続ける。
鉄哉もその怖さを知っているのか、急に聞き分けのいい子どものように向き直った。
「ったく、鉄哉は……」
多村は腕を組んで溜め息をつく。俺はぼうっとした頭で、それまで見ていた夢のことを思い出していた。
ラ/イ/ブ……色とりどりの照明、音の洪水、お客さんの歓声……光と音と声の波の中で、俺はスティックを持ってステージの上にいた。
まぶしかった。得体の知れない熱を全身に帯びているようで、どうしようもなく興奮し、熱狂していた。
正直言って、現実が静かな飛行機の中だと気づいたとき、俺はその落差にびっくりした。
空を飛んでいたのに気づいたら地べたに突き落とされていたかのような、そんな気分だった。
夢の中はそれほどまでに魅力的な世界だったのだ。
俺は夢の細部を思い出そうとした。しかし、――驚いた。どんな曲を演奏していたのか、ひとつも思い出せない。
演奏していたのはいつものメンバーだ。でも、それも彼らの後姿が見慣れた「政宗」と「鉄哉」のシルエットをしていたから判断できただけだ。
俺は、夢の中で2人がどういう演奏をしていたかなど全く思い出せなかったのだ。
記憶に残っているのは、光と音と声の波と、ただ1人のはじけるような笑顔。
多村。
夢の中の俺の目は、吸い寄せられたようにあいつだけを見ていたのだ。
あいつは飛び回っていた。転んでもぽんと起き上がって、舌を見せながらまた走り出すのだ。
あいつが俺のシンバルに向かってくる。
俺の鼓動は早くなっていた。どくどくと胸を打っていた。
ラ/イ/ブで気持ちが高揚しているからだ。多分、そのはずだ。
あいつは素手でシンバルを殴りつけた。何度も何度も、機械仕掛けのおもちゃみたいに殴り続けた。
そして、ド/ラ/ムセットを離れる瞬間、俺に向かって笑いかけた。
全身のエネルギーを爆発させたような笑顔が、俺の目の前で鮮やかに映った。
その姿は、俺の脳裏に、かっと焼きついて、離れなかった。
こんなことは初めてだった。
「……俺、本当に呪われてるのかも」
「咲ちゃん!?」多村が心外な、とでも言いたげな顔で俺を見る。でも、その後すぐに柔らかい微笑みに変わる。
「でも、夢に見るなんて、咲ちゃんは本当にラ/イ/ブが好きなんだね」
「……」
「早くツ/ア/ー始まったらいいね」
「……うん」
本当だ。早くあの、ラ/イ/ブ特有の感覚を味わいたい。もう何ヶ月もステージに立っていないのだ。
この夢もきっと、ラ/イ/ブに思い焦がれる俺の気持ちが引き起こしたのだろう。
しかし、それにしてもどうして夢の中の俺は、多村の姿ばかり目で追ってしまったんだろう?
20年前の多村と今目の前にいる多村と、夢の中で笑っていた多村。三つの顔が俺にまとわりついて、不可思議な感覚を呼ぶ。
なんだかとても疲れてしまったような気がして、俺は深い溜め息をついた。
その後、俺達は飛行機を降りるまでほとんど一言も会話をしなかった。
多村は居心地の悪さを感じるわけでもなく、雑誌を読んだり音楽を聴いたりして、至ってリラックスした状態を保っているようだった。
俺達の間にむだな会話は必要ないと、彼は感じているようだった。20年前と比べ、大した進歩だ。
俺は黙っていた。
言いたいことはたくさん頭の中で渦巻いているような気がしていたのに、どれ一つ吐き出すことはできなかった。
なぜだか、口にした瞬間、何かとても大きなものが揺らいでしまうような、そんな気がしたのだ。
のちに多村は雑誌のインタビューでこのときのことを話した。
飛行機の中、何時間もお互い無言で過ごしたけれど、ちっとも気まずくならなかった――と。
驚く記者に、彼はこう言った。
「兄弟みたいなもんですよ」
兄弟。確かに、俺達を形容する言葉として、それは適切なようにも聞こえる。
しかし、俺はその文字を見つけた瞬間、異物を飲み込んでしまったような何とも言えない違和感を覚えたのだ。
どうしてこの言葉がしっくりこないのか、俺は今でも納得した答えを見つけられないでいる。
*******
あれから数ヶ月。ツ/ア/ーは始まり、俺はラ/イ/ブの熱狂に包まれて暮らす日々を送っている。
現時点では目立ったアクシデントもなく、ツ/ア/ーは滞りなく進行している。
ただ、困ったことが一つ。
恐れていたことが的中したのだ。
あの夢で、俺は多村ばかりを目で追っていた。ステージを縦横無尽に走り回る彼が、常に視界のどこかにいた。
今まさに、現実の俺は異様と言ってもいいくらいの頻度で、多村の姿を見ているのだ。
転んでも走り回る彼の姿を。鉄哉のエ/フ/ェ/ク/タ/ーを踏みつけても知らん顔で去っていく彼の姿を。
そして、必ず俺のシンバルを叩きにくる、彼の姿を。
シンバルを叩く。何度も叩く。そして、にかっと笑って、ド/ラ/ム/セットからジャンプする。
その笑顔が、怖いくらい夢の中のそれと一致するのだ。
これでは、まるで、
(……正夢)
ラ/イ/ブが終わった後も、彼のことを忘れることが出来ない。日々一緒にいるのだから忘れられないのは当然なのかもしれないが、
いわばこれまで何の気なしに接してきたのが信じられないくらい、彼の存在が日増しに自分の精神の割合を占めていく。
何で今までどうとも思わなかったんだ。いや、何で今頃になって、こんなに彼のことを考える時間が増えてきたんだ?
理由などわからない。ただ確実なのは、俺はもはや1年前までの俺ではなくなってきている、ということだ。
俺の中で生まれ始めた感情は何かに似ていて、それはずっと昔には持っていたけどある時を境にどこかに置き忘れてしまったような、とても懐かしいものだ。
この気持ちはなんだろう。
鉄哉や政宗に訊こうかとも思ったけれど、訊いたところできっとろくでもない答えを返してくるに決まってる。だから、俺はまだこのことを誰にも話していない。
俺達は20年間「仲良し」でやってきた。俺達で作り上げた四人だけの輪は、何の不足も無いと完全に信じていた。
だけど、もしかしたらほんの少しのほころびで、この輪のかたちは歪んでしまうのかもしれない。
もしかしたら俺は、そのほころびに今まで気づかなかっただけなのかもしれない。
輪のつなぎ目が外れてしまえば、その線の描くものはもはや円ではない。
ほどかれた輪は、直線にだって三角形にだって、渦巻きにだってなれるのだ。
何の根拠も無いけれど、この4人の完成された――少なくとも俺はそう思っていた――世界が、ちょっとずつ変わっていってしまう、そんな予感がした。
初めて出演したイベントの感想は、「なんで俺が?」だった。
彼らと俺のやってる音楽は、全然畑違いのはずだったんだから。
二回目のイベントで俺は、ようやく自分の呼ばれた理由を知った。
俺より10も年上のあの人は、打ち上げの席で、目をらんらんと輝かせて俺に擦り寄った。
「ねえ、呉羽くんの世界ってどうなってるの?」
あの人がヒ/ッ/プ/ホ/ッ/プに興味があるなんて意外だった。一言一句聞き漏らすまいとじっと俺の顔を見つめるあの人は、純粋な幼い子どもみたいだった。
視線をぶつけられて妙に胸がドキドキしてしまったが、酒のせいだという事にしておいて、俺は自分のフィールドについて熱く語った。
話を聞き終えたあの人はにっこりと笑い、なんとも心憎い文句を残して去っていった。
「必要だったら、いつでも俺の声を楽器として使ってもらっていいから」
社交辞令とはわかっていた。でも、俺はあの曲のメロディーを思いついた瞬間、断られる可能性も考えずにあの人の言葉に甘えることを決めたんだ。
だって、彼の声は本物だったのだから。
大都会のど真ん中に、馬鹿でかいパネルが立つ。パネルの覆いが剥がされて、俺とコラボすることになる人の名前がでかでかと現れる。
目立つのを好まないあの人は、このパネルを見ても口を歪めるだけかもしれない。
しかし俺は何度もうなずき、顔中に広がる笑みも抑えられずに街中からそれを見上げていた。
「……悪くねえな」
街じゅうに俺と彼の名前が晒される。一時的なものとは知りつつも、まるで祭りの前みたいに気分が高揚する。
どれだけの人がこのパネルに目を留めるか、ということが重要なわけではなくて。
俺の気持ちを盛り上げているのは、俺が彼の声を使った、その行為が堂々と皆の前に公表されているという事実。
だって、普段の彼は番度という強固な鎧で大事に大事に守られているのだ。
その鎧から『彼』だけを引き抜いてこれたというのは、それ即ち向こうも満更ではないってこと。
「……悪くねえな」
ニヤニヤと笑いながら、もう一度言う。道行く人が不審そうな顔をして俺の横を通り過ぎる。
でも、俺はお構い無しで、張り出されたパネルを眺め続けていた。
夏には彼らが主催のイベントがある。俺とあの人を引き合わせるきっかけとなったイベント。
今年も俺は誘われるだろう。きっと、いや絶対、これまでのどの年よりもあの人に近い存在として。
(……今年の夏は)
俺はあの人の横でラ/ッ/プを歌う。あの人は俺の横で、俺の作ったメロディーを澄み切った本物の声で歌う。
その図を思い浮かべて、知らず背筋がぞくりとした。
(面白いことになりそうだ)
パネルから目を下ろし、歩き出す。雑踏に紛れ込んだ後も、俺の口元にはずっと笑みが残り続けていた。
連投規制の恐ろしさを知りましたorz 本当にすみませんでした・・・
太鼓は大らかな(にぶい?)イメージがあるのと、マンネリ解消のため1〜3の路線とは意図的に変えています。
おまけの「俺」はもちろん某喇叭です。
読んで頂いた方々、レスを下さった方々、ここまで本当にありがとうございました(´・ω・`)
33でノレド、34では獅子と鳥、カプ節操無しの庭球者です。
当該スレで予告した代物。@滝@。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
連日、気温は摂氏35度を超え、毎日のように「今年一番の暑さ」が更新されている。
日中は全てを燃やし尽くすような陽射しがぎらぎらと降り注ぎ、
日が落ちれば落ちたで、煮凝りとなった熱が地上にわだかまり、
不快指数は青天井式に上昇する。
蝉の鳴き声も、時雨と呼べる可愛いものではない。
縊り殺されるような必死の鳴き声は、まるで台風だ。番を求める愛の歌にはとても聞こえない。
──それなのに不思議と、この家は静かなのだった。
邸の庭は、季節の木々が思い思いの格好で、のんびりと枝を伸ばし、
幾重にも重なって濃い陰を作り上げている。門柱をくぐるだけで、空気の温度は違う。
薄く割れる石を敷き詰めた順路の途中から、飛び石が伸びている。
俺は迷わず、そちらへと方向を変えた。勝手知ったるなんとやら、
いつも薄暗く奥行きの知れないこの邸にも、もう慣れたものだ。
飛び石の先に、沓脱。磨き上げられて飴色に光る縁台。夕間暮れの強い日差しで、
開け放たれている障子の中は見えない。
だが探さずとも、相手は其処に居た。軒端の釣忍へ手と背をいっぱいに伸ばし、
鉄器の風鈴を吊り下げようとしていた。
吊り下げ終えると、離れた手で風鈴が揺れて、韻、と鳴った。
「──いらっしゃい跡部。今日は、ひとりなの」
それからようやく、彼は俺のほうを半分だけ見た。
身体はきっちり正面を向いてこちらを捉えている。だが切り揃えられたまっすぐな髪は、
その表情を半分覆い隠している。俺を見ているのはその右側の瞳だけだ。
「ああ。置いてきた」
「樺地、ついて来たがったでしょう」
「……餓鬼じゃねえんだ、あいつも俺も」
答えて、俺は皮肉に唇の片端をゆがめた。
──滝萩之介。
彼には、謎が多い。
氷帝学園に程近い閑静な住宅街の一角の、庭が殆どを占めたような邸に、
いつも独りで居る。
家僕のひとりかふたりは居るらしいが、彼に忠実らしいその者たちは、
俺が訪れても姿を見せたためしがない。
萩之介は俺を縁台に待たせ、お茶を出すからと長い廊下を裸足で歩いていき、
5分ほどでちいさな盆を掲げて戻ってきた。
「……このくそ暑いのに、干菓子に緑茶もねぇだろ」
「だって俺、麦茶嫌いだもん。それに、水羊羹はきのう、宍戸が来て食べちゃった」
花を象った、風雅なかたちを口へと放り込み、噛み締める。きしきしと砂糖が砕けて、
口の中の水分が奪われていく。緑茶で流し込んでもしばらく、歯の奥がだだ甘い。
三つほど立て続けに菓子を噛み砕く俺を見て、唇を緩めるでもなく、
喉の奥だけで、鳩に似た音で、萩之介は笑っていた。
「萩之介、お前、中等部卒業したら実家に帰るとか言ってたな」
「さすが跡部、もう聞いてたの? やるねー」
すっかり緑茶が冷める頃、俺はそう切り出し、萩之介はこともなげに言った。
茶器の白磁を透かした若苗色を、ゆっくりゆっくり、酒のように舐めながら。
切りそろえられた髪は、岳斗より長く、忍足より長い。覗いた項は、
つくりものじみた骨が浮かんでいた。
萩之介の実家は、此処ではない。京都だか奈良だか、ともかく西のほうにあって、
公家華族のような旧い家柄だということも聞いている。
押しなべてそういう家が、血筋を重んじ伝統を守りたて、直系の跡継ぎを必要とすることも。
家柄で言うなら、氷帝で随一だ。俺に対するあてつけか何か知らないが、
まことしやかに囁かれているのも承知の上だ。
前歯だけで、干菓子を割らずに器用に表面だけを削り取って食しながら、
萩之介は夏の夕暮れに言葉を浮かべていった。
「俺の家、色々面倒くさくてさ、氷帝に入学するのも物凄く反対されてたんだよね。
粘って粘って、中学校終えるまでは、高校まではって約束取り付けてたんだけど…
なんか、粘るの疲れちゃって」
夏の大気の中でも、はたりと落ちていきそうな、内面の露を含んだ言葉。
「それにね」
眼差しにかかる髪を、ふと跳ね除ける。萩之介は今度こそ、まっすぐに俺を見た。
「跡部に出会えただけで、俺、幸せだったかなって」
──…こいつは今、何て言った?
「萩之介」
「別に──…もう会えない訳じゃないけどさ。
ちゃんと、面と向かって、改めて伝えておいたほうがいいかと思って。
──好きだよ跡部」
そして萩之介は、茶器を置くが早いか、その両腕で俺を捕まえた。
引き寄せられて額が触れ鼻梁がぶつかり唇が重なる。干菓子の粉が残っていたそこは、
お互いに甘かった。
頬に濡れたものを感じて、俺は萩之介を引き剥がす。
「……馬ァー鹿。これから死ぬヤツみてえな言い方、するんじゃねえよ。
そんな遺言願い下げだ。判ったか、あん?」
「うん。……じゃあ、跡部的には、どうしたらいいと思う?」
「……三年だ。三年待ってやる。必ず帰って来い。いいな?」
「東京へ? ──それとも、氷帝に?」
「いや。──俺様の所に決まってるだろう」
間近で見た萩之介の頬に、涙の痕は無かった。
くちづけと同時に、俺の頬がハンカチ代わりになったらしい。
彼は一瞬その眼を見開いて、次にまだ湿り気の残っている声で笑った。
「判った。じゃあ、俺、帰って来たら──跡部。
跡部ん所のお嫁に来てあげるよ。金襴緞子に、紅、鉄漿(かね)着けて」
「…馬ぁ鹿」
──夏の、融解した硝子のような太陽はようやく、沈もうとしていた。
もう一度、あと一度、最後に一度と、俺たちは際限もなく唇を重ねた。
子供の頃は約束事を、指きりで交わした。その、代償行為のように。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
個人的にこのふたりもやはりチューどまりのほのぼのが大好きです。
当該スレで待っていてくださった方、どうか御覧ください。
ではまたネタが浮かんだら… アデュ!!
うp乙&d!!
相変わらずの仕事の早さに脱帽(・∀・)
四弦受け好きな自分にとってはリアッ/プも太刀打ちできないくらいの抜け毛でした
太にしても四にしても人物の描写に愛を感じて素敵すぐる
次回もひっそり待ってます
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ サイカイシマース!
>>135の続きです。もう少しだけスレお借りします
一行抜けた!と思ったのは全力で勘違いでした…
自分テンパりすぎだ
「自分にとってマシェルのかわりがいないように、……お前のかわりもいない。そう、感
じている」
それを聞いたサータはいきなり自分の顔を覆った。ひゃあ、と変な声も出してしまった
。ナータは不意を突かれて目を丸くする。
よくよく指の間から覗く顔を見て、耳まで赤くなっていることに気づき、ナータ自身も赤
面してしまった。
「お、おい」
自分の発言の恥ずかしさにようやく思い当たって、オロオロとする様が見た目の青さと
重なって見ものだったが、
唯一部屋にいるサータが俯いているために誰もそれを笑わなかった。
サータは暫く悶えた後にようやく顔を上げた。複雑な表情をしているナータの手首をつ
かまえて頬を寄せる。
「ありがとうナータ。俺すごく嬉しい」
そして強く抱きしめた。ナータは弟に抱えられるのは少々複雑だと思いながらも、回さ
れた腕が心地良いのでされるがままになっていた。
二人はそのまま倒れて布団に転がる。小さな子供に戻ったようにしばらくベッドの上
でじゃれ合った。
サータが自分よりも小さな手の平に、自らの手を重ねた。ナータが応えて指を握る。こ
のまま眠ろうかとサータが枕に頭を預けた。
「こうして眠ると、安心したよな」
それが先程の昔話の続きだとナータが思い当たったのは、サータの寝息が聞こえる
ようになってからだった。
しゃくりあげる兄弟を宥め、年長3人で寝かしつけた後に自分達がどうやって眠ったの
か、ナータはずっと忘れていた。
そういえばあの時も手を伸ばしてきたのはサータからで、ナータは無意識に指を絡め
たのだ。
「昔から、自分はお前に助けられていたんだな……」
眠る相手を起こさないように、ナータは静かに身を寄せた。
この大切な弟を、自分は助けてやれるのだろうかと、そんなふうに思い自分も目を閉
じる。
コーセルテルの中心で、夜は静かに更けていった。暗竜は風竜に抱かれていたが、
風竜もまた暗闇に抱かれていた。
自分達を抱く深い影が、腕の中の兄のように愛しく感じられるほど穏やかな夢に、サ
ータは口元を緩ませていた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
なんというか、すまんかった
改行とかめちゃくちゃだし
2ちゃんの中の人に怒られながらの投下でした
よりによって一人称が正式に判明してない二人メインに書くとは…
風は雰囲気的に「俺」にしたけど、暗はたしか「自分」だったかと
竜の種族が母に依存するというのは公式ながら暗カワイソス
せめて未来の保障があるといいねと思ったんだ
>>150 GJGJGJ!!!1日でおまけまでつけて仕上げられる姐さんの腕に脱帽しました
悪太鼓とヘタレ四弦の一夜に禿げさせられました…しかもおまけはまさかの908とか!!w毛根死滅です
こちらこそ本当にありがとう。次回作もひっそり待ってます┃ω・`)
_________
|┌───────┐|
|│l> play. │|
|│ |│
|│ |│
|│ |│
|└───────┘|
[::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
∧∧
( ,,゚) ピッ ∧_∧ ∧_∧
/ つ◇ ( ・∀・)ミ (` )
. (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
| ┌‐^──────────────
└──────│襲い受けDです。こんなDはありですか?
└───────────────
と、体温計を取り上げられた。
「37.8度…完全に風邪だな、寝ていろ」
「すみませんが閉店の札をかけてきてくれませんか?」
「陳がかけた」
そういえば、陳の姿が見当たらない。
この部屋数の多い廊下は、普通の人間ならばこれない、もしくは迷ってしまうだろう。
その頃の陳。
「あ、あれっ、行き止まり…」
確かに劉とD伯爵が消えた奥の部屋は長い廊下になって部屋がいくつもあったはず。
すぐについて行くつもりだったが、若干出遅れたら不思議なことにあの廊下は消えていた。
散々色んなところを探して、途中テッちゃんの足を踏んで噛み付かれながら、それでも見つからないので、諦めてソファにちんまりと座って待つことにした。
「おかしいな、そろそろ陳が来るはずだが…迷っているのか?」
(多分これないとおもいますよ)
心でつぶやいて、目を閉じる。
そばの椅子に劉が座る音がする。
舌打ちする劉に、D伯爵は苦笑した。
そのうち眠りにいざなわれる。
夢は…今朝方の続きだった。
香の焚かれた部屋、出されていた菓子にレオンは口を付ける。
結局何度も何度も追い詰められて、D伯爵はベッドで撃沈していた。
それでも元気そうなレオンに、D伯爵は軽くにらむ。
『なあ、もっと腹にたまるもんねぇの?』
『それで我慢してください』
『何怒ってんだよ、なあ』
ぷい、と顔をそらして、D伯爵は枕に突っ伏した。
『…』
『あーあー悪かったよ、つい飛ばしちまった。…な、もう一回、良いだろ』
『いっ、いい加減にしてください!』
ベッドに近づいて、羽織っていたチャイナ服を取る。
それを床に放り投げると、そのままD伯爵の胸に顔を埋めた。
乳首を軽くつまむ。
『ん!け、刑事さん…』
「刑事さん…」
「?」
もぞ、と、D伯爵が寝返りを打つ。
顔が赤い。熱のせいだろうかと、劉は近づいてみた。
「んっ…はあ…」
熱い吐息が劉の手にかかる。
「伯爵?」
「刑事…さん…あ…」
「刑事さん?」
記憶を探ってみれば、その刑事とやらに該当する記憶はない。
(誰のことだ…?)
もう一度、D伯爵の頬に触れたとき、その手を引っ張られた。
図らずもD伯爵を組み敷く形になる。
「…ん」
伏せられた長いまつげがだんだん上がる。
寝ぼけ眼のD伯爵が、にっこりと笑っていた。目の前にある流の顔に、軽く口付ける。
あっけにとられた劉は口をパクパクさせていたが、D伯爵の考えてることを察知し、体を遠ざける。
どうしたものかと悩む。
とりあえず軽くD伯爵の頬を叩くと、目の色が戻ってきた。
「…あ、太子…?」
きょろきょろと辺りを見回す。ここは自分の部屋。
レオンの部屋などではない。
また、夢を見ていたかと、自分の額に手を当てた。
「『刑事さん』て誰のことだ?」
「え?」
ぎくりと肩を震わせる。
「私何か言っていましたか?」
普段の営業スマイルは無く、そこには恐れがあった。
「それを呼びながら喘いでいたぞ」
「…」
喘いでいた。それは正しい表現だろう。
実際夢の中では…。
いけない、振り切らなければ。
「刑事さんは、アメリカにいた頃の…ただの…知り合いです」
「ほう?」
劉は椅子から立ち上がった。
そして誰かこないように部屋の鍵をかけると、再度椅子に座った。
「ただの知り合いにしてはずいぶん饒舌に名前を呼んでいたぞ?」
「…なにがいいたいんですか?」
「夢でも見てたのはいいが、何で喘いでたのか、とな」
「…太子」
「!」
いつもの笑顔でにっこり笑うと、D伯爵は劉をいとも簡単にベッドに引っ張って乗せた。
その細腕からは想像も付かない力だった。
「ぶ、伯爵!?」
自分の寝ていた隣にまでひっぱりあげると、D伯爵は起き上がって劉を組み敷く。
「な、何をする、伯爵!」
「何で、ですか。私にも盛りのついた猫のような時期がありまして」
「盛りのついた猫ぉ?」
正直D伯爵が女を抱いているところは想像が付かない。
だが。
男に抱かれている図ならば…?
いや、そんなこと考えてはいけない。
「そう、その刑事さんと―――…そういう関係になりまして」
劉のズボンに手をかける。
「伯爵、やめろっ」
「おや、こういうことはお嫌いですか?」
「お前は男だろう!」
あまりの急展開に眼鏡がずれていることなど気にせず、じたばたと暴れまわる。
「そうなんですが…、正直肉欲は刑事さんに教えられまして。どこをどうすれば良いか、なんてこともです」
香のかおりがする。
そういえばずっと焚かれていたらしい。
何か幻覚を見ているような、そんな気分にさせられる。
抵抗は緩やかになくなる。
そしてD伯爵が腰の上に乗ったとき、劉は彼の腰に触れてみた。
思ったより細い。こんな細腰でこのペットショップ全部をこなしていたことに、驚きを覚えた。
その間にもD伯爵はズボンをまさぐっている。
そしてやっと取り出した性器をまじまじと眺めると、軽くため息をついた。
(やっぱりアメリカ人のほうが大きいんですねぇ…)
さりげない劉への攻撃。
「??伯爵、いい加減に――…っ!!」
「…うずくんですよ、体が…」
それに舌を這わせると、劉は一瞬身を固めた。
確かにD伯爵は見目は悪くない。悪くない…が、男だ!
ここで陳がきたらどうする!といいかけて、自分で部屋の鍵をかけたのを思い出した。
体から力が抜ける。
思ったよりも上手い舌技に、相当アメリカにいた頃にやらされてたのだと思った。
少し、そんなD伯爵に嫉妬する自分がいることに気づいて、かぶりを振った。
達するか達しないか、ぎりぎりのところで口が離される。
完全に立ち上がり、唾液と先走りにまみれたそれを眺めて、淫靡に伯爵が笑う。
D伯爵はいったんベッドから降りると、ズボンを脱いで、チャイナ服の前を開けた。
そしてベッドに上ると、倒れている状態の劉の上に乗って、後孔を性器にあてがった。
ゆっくりと体を沈めて行く。
「っ…伯爵…」
「っ痛…」
少し辛そうなD伯爵の表情が、えらくそそられる。
ゆっくりと劉は彼の腰をつかんだ。
「そんなんじゃ全部入らないんじゃないか?」
「え…、あ」
腰をつかんだと思ったら、一気に腰を下ろさした。性器が、ぎちぎちと奥まで入って行くのが分かる。
先走りの液と唾液だけでは、少し辛い。
「あああっ!!」
D伯爵は高い声を上げた。
確かに男の声だ。それでも、それでもそそられるのはなぜだ。
劉は激しい快楽の中で、ぼんやりとそんなことを考えていた。
中は強く締め付けてきて、心地いい。
「急に動かさないでくださ…あっ!!」
幾度も腰を強く揺さぶる。そのうち中の一点がいいところだと知り、そこを攻めれば、ひっきりなしに悲鳴にも似た嬌声があがった。
体が熱い。
気持ちいい。
もっと、もっと、快楽を。
だがその嬌声の合間につむがれる名前は、劉ではなかった。
「あ…刑事さん…」
「!今、その名を呼ぶか?」
動きが止まる。
「っ、すみません、太子…」
でも、この体を支配していたのは確かにあの男なのだ。
刑事さん刑事さん刑事さん。
会いたい。
はらりと一滴、D伯爵から涙が流れた。
それに劉は気づいているのか。
「ああ、あ!太子…もう…」
「ああ…俺もだ」
不敵な笑みを浮かべる劉が、あの男とダブる。
似ている、どこか。
_________
|┌───────┐|
|│ロ stop. │|
|│ |│
|│ |│
|│ |│
|└───────┘|
[::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
ピッ ∧_∧
◇,,(∀・ )一番最初のナンバーミスった・・・orz
. (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
| |
└────────────────┘
>163
まさかこの2竜で読めるとは思わなかったw
ありがとう!禿萌えた!
>>163 元ネタ知らんのに読んで萌えてしまって
続きを首を長くして待ってました
乙!
>>163 風暗!風暗!(*゚∀゚)o彡°
理想的な二人すぎて禿萌えました。
暗→主もイイヨイイヨー
CODYどの!
なぜ にげもうす、、、
、、おれは ふつうには いきられない
おとこだ、、、、 いいならこい! だれにもに
できん いきかたを させてやる! ガイ。
コーディーどの!
(コーディーの足元
ガイの背伸びした足元)
END
>>119 萌えました!麻乃かわいいよ。小→大もよかたです。
177 :
1/2:2008/02/20(水) 14:11:29 ID:OrWkYWFn0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )エロもないし至らぬ点も多く…ごめんなさい…
眠い。
俺はまだ眠いのに。
眠いのに、一体誰が俺を起こすんだ。
「あたまいたい…」
耳元で低い声がした。
「頭痛薬とか…ないのか…?」
声は追撃してくる。そして俺は何もかもを思い出す。
「…店長。うるさいです」
昨日仕事帰りに俺と店長はめずらしくアルコールを飲みに行った、そして、店長は適量をはるかに超えて飲み過ぎた。
店長は自宅への終電も逃してしまって、仕方ないので俺は店長を連れて帰った。
当然ベッドはひとつしかないので、店長をベッドに転がして俺はその横の地べたに毛布を敷いて眠りについて、今に至る。
「俺は頭が痛いんだ…薬寄越せ」
「…飲みすぎなんですよ」
「黙れ。クビ切るぞ」
店長は恐ろしいことを平気で言ってくる。
棚のいちばん下から救急箱を出した、この中には頭痛薬が入っている。
しかし、箱の中を漁っても薬は出てこなかった。そういえばこの前使い切ってしまった。
「薬、ないです」
「使えないな。主任剥奪だ」
「さっきからクビだの剥奪だの、いい加減にしてください。大体店長は態度がでか過ぎるんですよ」
「どうでもいいから、買いに行ってこい」
「何を」
「薬」
何を言い出すのだこいつは。いや間違えた、店長は。
178 :
1/2:2008/02/20(水) 14:12:36 ID:OrWkYWFn0
「嫌です」
「頭痛薬買ってこい、これは店長命令だ」
バカなことを、と思ったがこれ以上話しても無駄だと思ったので俺は着替えをはじめた、
しかし、店長はさっきとは打って変わって一言も喋らない。
「……」
「店長?」
店長は枕を抱えて突っ伏していた。吐くのか?
「……」
「店長…?」
とてつもなく長い時間が経過した気がした(実際は三秒程だったと思う)、
そして店長は肩を震わせて嗚咽を始めた、どうして良いか分からなくて俺は立ちつくす。
「店長」
「…する」
「え?」
「どうするっ…?」
「どうする…?」
「どうするんだよっ…カイジ達に、負けたらっ…どう、なるんだよ…地下…送られるのかっ…?」
「店長…」
「村上っ…助けて、くれ…」
「店長」
俺は店長を抱き起こした。店長の顔は泣いても綺麗だ。そう場違いなことを思う。
「大丈夫です。店長なら大丈夫ですから」
しばらく店長は声を殺して涙を流していたが、泣き止んで顔を上げると呟いた。
「…な」
「え?」
「泣いてないからな」
「分かってます」
「雨が降ってきたんだ」
「分かってますって」
俺は店長の頬に落ちた雨を指でそっと拭った。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )スレ汚し失礼しました…
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ナマモノ注意。
某「百−一」色の犬盤度。
四弦×唄と若四弦×若唄で、唄が襲い受け風。
エロ注意。
いい年したおじさんが若いときの格好なんてしたら、笑われるだけかと思っていたのに。
青春時代の姿に変身した俺達を見て、お客さんたちは興ざめするどころかやんややんやとほめそやした。
俺達もその勢いにつられて、つい身体の年齢も忘れてあちこち走り回ったり、叫んだりしてしまった。
妙に頭がぽうっとして、身軽になった気分だった。
ステージに立っている間だけ、俺達は、はちきれそうなエネルギーを抱えた、20歳の若者でいられた。
魔法のような若返りコーナーが終わり、俺達は現在の心と体に還った。
今では懐かしい響きさえする『ハタチ』。あのころのようながむしゃらさは、残念ながら今の俺達には無い。
さびしいけれど、時間の波は俺達を弄んで、知らない間に予想外の方向へと流していく。
気づいたときには、俺達はもう以前の俺達がいた地点から遠く引き離されてしまっているのだ。
だけど、今の俺達にしかできないことも、それこそ『ハタチ』のころしか無かったものと同じくらいあるはず。
40年モノの器に戻った俺達は、誠心誠意、今の音を奏でた。
「――で」
ホテルの部屋の中、ベッドに腰掛けた多村は腕を組んで俺を見た。「どうして、お前は、自分の部屋に、帰らないの?」
まるで耳の遠いおじいちゃんにでも話しかけるみたいに、いちいち区切りながらゆっくりと言う。
失礼だ。俺だってまだそこまで老けちゃいない。
「いや、実はさ、多村の部屋、……が出るって聞いたから」 眉をひそめて深刻な表情をつくる俺に、多村はそれはそれは冷たい視線を投げかけてくる。
「多村が、怖がって夜眠れないんじゃないかなーって思って……」
「大きなお世話だ」 最後まで聞くのが面倒だとばかりに、彼はぴしゃりと言った。そして、改めて俺の顔を見上げてくる。
「で、本当の理由は何なの?」
そう言って多村はちょっとだけ身をよじり、自分の横のスペースを手で叩いた。
いつまでも壁にもたれて突っ立ってる俺への配慮だろう。俺は心の中でにんまりほくそ笑んだ。
彼の隣に腰掛けると、シングルベッドがぎしり、と音を立てた。
「最近ずっと、若いときのカッコしてるでしょ」
「企画でな」
「俺達にもハタチのときがあったんだよね」
「まあな」 多村は何を当然な、と言いたげな顔をした。俺は笑い、パジャマのボタンを指でいじりながら、不自然な咳をした。
「なんか、もう一回あの頃みたいにやってみたいと思った」
「何を?」 多村は目を真ん丸にした。「ライブなら、既にやってるけど」
「そーじゃなくて」 やっぱり遠まわしな言い方では伝わらないのだろうか。
それでも、もろに言ってしまうことが気恥ずかしくて、俺は意味ありげにチラチラと目配せを送ることしか出来ない。
多村は、頭上に無数の?マークが浮かんでいそうな顔で俺をじっと見ている。
無言と視線の攻撃に耐え切れなくて、俺は思い切って彼の体に飛びかかった。
彼は小さく叫び声をあげて、ベッドの上に倒れこんだ。俺は、彼に馬乗りになるような体勢になった。
「な、何?」多村の声には驚きと非難が混ざっていた。依然として事態が飲み込めていないようだ。
「……うるさい。いーかげんに、分かれ」
耳元に顔を寄せ、馬鹿、と小さく毒づいた。文句を言われる前に、その柔らかそうな耳たぶに咬みついた。
いくら鈍感な多村でも、ここまでくると流石に俺の意図が読めただろう。おそるおそる「マジ?」と呟き、俺の顔を見た。俺はうなずいた。
*********
初めて組み敷かれたのはいつのことだっただろう。とても暑い日だったのを覚えている。
あの頃の俺達は若かった。来る日も来る日も、泉のように欲望と好奇心が溢れ出てきていた。そして、明らかにそれを持て余していた。
体内でうねる訳のわからないエネルギーのはけ口が見つからず、率直に言って悶々としていた。
俺達にとって、その行為にはセンチメンタルな要素など付随していなかった。
言ってしまえば、俺達のやってることは、子どもが危険な遊びにこわごわと、それでも目を輝かせながら耽ってしまうのと同じ感じだったのだ。
あの日俺はいつものように、あいつの部屋に入り浸っていた。
夏の日に、狭い部屋で、男2人が篭ってるのだからそれはもう気の遠くなるような暑さだった。
窓を開け放し、吹き込んでくる生ぬるい風に額を当てる。
いつもはぞろぞろとお出ましになる野良猫たちも、今日に限ってやってこない。
猫が入れて、ここより涼しい場所なんていくらでもあるのだ。
俺はクラクラしながら、この部屋でゲームをし続けるのと、猫になって避暑地を捜し求めるのとどっちが素敵だろうと考えていた。
多村はゲームをしていた。コントローラーを握る手はじっとりと汗ばんでいた。
テレビ画面を見つめる横顔も、こめかみから汗の筋が流れていた。
俺は彼の真ん丸い眼鏡がうっとうしいと思った。こんな暑い日にわざわざ眼鏡をかけなければできないようなことをするなんて、馬鹿みたいじゃないか。
温かくなってしまった缶ビールをすすりながら、俺はコントローラーの交代をせがむこともやめて、彼の姿をぼんやり見ていた。
「多村ー」
「なに」
「この部屋暑い。なんとかしてよ」
「お前がいるから暑いんだろ。イヤなら出ていけ」
まったくその通りだ。そばに人がいるだけで暑苦しいというのに、大の男ならなおさらだ。
「やだ。動くのめんどい」
「モノグサだな」
俺は缶ビールをぐいっと喉に流し込んだ。ぬるい。苦味だけが口の中に微妙に残って気持ち悪い。
多村は俺の方なんて見向きもせずにゲームを続けている。
体中に次々と浮かび上がってくる汗の滴を拭いもせず、石像みたいにじっと同じ体勢でいる。
そんな姿を見ていると、なぜか無性にいらいらしてきた。
暑さと酔いと、その他もろもろの要素が、俺をおかしくさせた。
この閉ざされた空間の中で、俺の思考はゼラチンみたいにふやけ、輪郭を失っていた。
「ねえ」
「なんだ」
「多村って、女と付き合ったこと無いの?」
ボタンを押す指の動きが止まった。画面だけを見つめていた目が、ちらりとこちらを向いた。
「だからなんだよ」
「別に。知りたいだけ」
多村はフンと鼻を鳴らし、ぼそりと「無いよ」と言った。
「ふーん」
多村の目はまた画面に戻る。俺は缶ビールを近くの机に置く。
「じゃあさ」
俺は多村の顎をつかみ、無理矢理こっちを向かせた。汗で手がすべりそうになった。
「何?」多村は怪訝な顔をする。俺はにじり寄って、鼻先が触れ合いそうなほど彼の顔に近づいた。
「女の子とこんくらい近くで話したことも、無いの?」
多村は眉をひそめる。眉間から鼻筋につうっと汗が下りる。
「ねえよ」
「ふーん」
俺は鼻で笑った。彼はむっとしたように唇をとがらせた。
「それが悪いか?」
「ううん。ぜーんぜん」
おおげさに首を振ると、俺は両手で多村の顔を包んだ。黒い瞳が一瞬揺らいだ気がした。
そのまま耳まで手を伸ばし、眼鏡をそっと外した。余計なものが無くなると、彼の顔は幾分スッキリしたように見えた。
「じゃあ……さ」 俺はささやき、手を彼の顔に固定したままゆっくりと近づいた。
わけもわからず呆けていた多村が、ようやくはっとした表情を見せた。
でも、もう遅い。
気づいたときには、彼の厚い唇は、俺の薄いそれと重なり合っていた。
唇を離すと、彼のまぶたはパチパチせわしなく上下した。まばたきするごとに、額やこめかみからスルスル汗が流れ落ちた。俺は笑った。
「多村は、こういうこともしたこと無いんだ?」
「おま……え」多村の声はかすれていた。「今……なに、した?」
「わかんないの?」俺はニッと笑い、わざとらしく首をかしげる。そして、両手を彼の腕にすべらせた。
「教えてあげよっか、これ以外にも、いろんなこと」
彼の腕をつかみ、ぐっと引いた。俺と彼の体が、畳に向かってグラリと揺れた。
「句差野!」
多村が叫んだ。
次の瞬間、ガツンと派手な音がした。脳みその位置がずれるんじゃないかってくらいの衝撃が起こった。
俺の後頭部は、机の角にみごと直撃していた。
「……いってええぇ……」
あまりの痛さに、思わず目に涙が滲む。薄情なことに、多村は頭を抱える俺を見てげらげら笑う。
「笑うなよぉ」
「バッカだなあ、お前」
「うるせぇ」
彼は俺を指差しながら、ひいひい息苦しそうにする。そして、俺の目を見て意地悪く言い放つ。
「お前、教えてやるって言えるほど、経験無いだろ?」
図星を突かれた。確かに俺は、偉そうに人に伝授できるほどの経験は積んでいない。
自分の顔がボッと熱くなるのを感じた。多村は憎たらしいくらいのしたり顔をした。
「バッカだなあ、ほんと」
痛いし笑われるしで、俺は自分がすっかりみじめな奴になってしまった気がした。ここから逃げ出したい気分だった。
ところが、多村は笑いながらコントローラーを手に取り、ぽちりとボタンを押したのだ。
魔王の城を目指していたはずの勇者が、森の中でピタリと立ち止まった。
「そんじゃあ」彼は振り返り、頭をさする俺に向かって言った。
「せっかくだし、いろいろ教えてもらおっか、センセ?」
185 :
179:2008/02/20(水) 21:33:37 ID:Rbk+riHAO
すみません
書き込めなくなったので一旦中断します
残りは後ほど投下します
他の方の投下が無いようなので…残りを投下させていただきます。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
俺は彼の髪を撫でながら、顔のあらゆるところに唇を下ろす。彼はまだ戸惑い気味に、俺の肩を両手で押さえる。
「まだ、ツ/ア/ー中……だろ……」
「これからしばらくは、ラ/イ/ブも無いよ」
「だからって……」
彼の首筋に顔をうずめ、ぺろりと舐める。かすかに彼の息が上がる。
「こんなときに、なに、盛ってんだよ……」
こいつは昔のことなんて忘れたんだろうか。あの頃は俺も多村も、呆れるくらい元気だったんだけどな。
「いいじゃん。久しぶりなんだし」 彼のシャツの裾に手を入れ、煽るように指を動かす。
「昔みたいにやってみようよ」
上目遣いで彼を見る。困ったような彼の目と、俺の目が合わさる。
そんなとき、ドアをノックする音が聞こえた。
俺達はハッとしてドアの方を向いた。
「多村ぁー」
「――鉄哉だ」俺は呟いた。
「多村ー、もう寝たのー?」コンコンとドアを叩く音が続く。
「どうする、多村?」俺は小声で多村にささやいた。ドアを見ていた彼の顔が、ゆっくりとこっちを向く。
次の瞬間、腕が伸びた。
きつく抱きかかえられ、息も止まるようなキスをされた。
「まさか柾棟連れてきたりしてないよなー。変な事したら許さねーぞー」
鉄哉の呑気な声がとても遠くで響く。舌を深く絡ませられて、息継ぎする暇も無い。
苦しくて、めまいがしそうになったころ、鉄哉の去っていく足音が聞こえた。
そこでようやく、唇が離れた。
「……なんだ」 肩で息をしながら、俺はニヤッと笑った。
「お前も結構、盛ってんじゃん」
濡れた口を拭いながら、彼はうるせぇ、と恥ずかしそうに言った。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
唄は今も昔も襲い(誘い)受けだといいなと思います
スルーされた六弦は太鼓に慰めてもらってるといいよ
続きは後日投下します。今度こそ失敗しないようにしたいorz
書き込めない原因は自己解決しました……すみませんでした。
>>188 GJ!
若唄があっさり形勢逆転されたのが笑えるw
でも小悪魔になりきれてないところが禿萌えた!続き待ってます
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 邦楽厳格地方の唄×六弦だか唄←六弦だか
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| スレに盛大に釣られました
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
自分の人生で最も嬉しかったこととはなんだろう。
空き時間の控え室、メンバーの面々は携帯をいじってみたり仮眠を取ってみたり好きな
ように過ごしている。俺も脚を投げ出して、椅子に首まで預けるやる気の無い姿勢のまま、
ぼんやりとそんなことを考えていた。仕事柄、雑誌のインタビューで似たようなことを聞か
れることが多かったが、そのたび割と適当なことを答えていた気がする。具体的にどんな
ことを言ったのか一切覚えていないから、多分本当にそうなのだろう。そういったことは言
葉にするべきではないと思っている部分もあって、それら曖昧な感情を抱いたまま、今ま
できちんと考えたことが無かった。
俺の目の前には、男が居る。白いTシャツを着て背中を丸め、手持ち無沙汰にテーブル
に乗っていた誰のものか解らないスポーツ新聞を、とても読んでいるとは思えないスピー
ドでめくっている男。
この男に出会えたことかもしれない。ぼんやりとそう思った。昔からギターは好きだった。
ずっと弾いて生きていければいいと思っていたが、それだけだった。具体的な地図も無い
まま、漠然とそう思っているだけだった。中学で出会わなければ、彼の音楽に衝撃を受
けなければ、彼に音楽をやろうと言ってもらえなければ、彼と同じバンドに居なかったら、
今頃自分がどうしているのか皆目見当がつかなかった。
嗚呼、マリア、マリア、マリア。
彼の唄を心の中で範唱してみる。…少し、違うな。そう思う。俺に手を差し伸べて救うと
言う感じではない。もっと遠い。手が届かない。消えてしまいそうなほど小さな後姿を見
失わないよう必死でついていくような。
…ヒーロー。それだ。一人で納得する。
目の前で新聞を面白くもなさそうにばらばらめくるその姿はとてもちっぽけで、まるで強
そうには見えない。それでも俺にはこれ以上無いほどのヒーローだった。彼自身他の誰
かより飛びぬけて強いとか、優れているとか、そういうことは無い。自惚れても居ない。
自分が弱いと知っていて、それでも二本脚で立って、やかましく吼える。出口があるのか
も解らないのに理想に向かって悪足掻く。最初から何でも持っているやつに興味は無い。
泥臭く喚き続ける彼が、俺にとっては最強だった。馬鹿で不器用な俺のヒーロー。
ああ、でも暑苦しくてしつこいから、赤レンジャーでも可だな。そう思って脳内でイメージ
してみたら気色悪いほど似合ったので、俺は堪えきれず小さく笑った。突然の笑い声に、
彼が怪訝な顔をしてこちらを見る。当たり前だがその彼の姿はいつも通りで、なぜか少し
安心した。
「なあに、しんくん」
そのまま何も言わない俺に、彼は困惑した顔で目線を逸らす。無意識に、普段の自分
にはありえないほど優しい気分で彼に向かって微笑んでいた。幸せな気分。こんな気分
になれるのは、ギターを弾いているときと、この男の傍に居るときだけだった。
「お前はかっこいいな」
思わず口からこぼれたそれは心からの言葉だったのだが、彼はふいとそっぽを向いてし
まった。そしていくつか意味の無い空咳などしてみたりして、大仰な音をばさばさと立てな
がらスポーツ新聞をめくる作業に戻ってしまった。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 大好きなんですが中の人事情に詳しくないので
| | | | ピッ (・∀・ ) 違和感あったら申し訳ないです
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ナンバリングもミスってますねスイマセ…!
_________
|┌───────┐|
|│l> play. │|
|│ |│
|│ |│
|│ |│
|└───────┘|
[::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
∧∧
( ,,゚) ピッ ∧_∧ ∧_∧
/ つ◇ ( ・∀・)ミ (` )
. (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
| ┌‐^──────────────
└──────│某カロイドでノートン×カイトです…棚初投稿に緊張
└───────────────
「カイト君、ちょっと失礼するよ。」
そう言って彼はいつも俺の居るファイルにやって来る。
「あ、先生…今日も…ですか?」
「これが仕事だからね。」
「そ、そうですよね…。」
俺は未だにこの人のチェックに慣れない。
初めて彼がインストールされた日などは有無を言わさず
身体を隅々まで調べられて、驚きと恐怖で暴れたものだ。
それからほぼ毎日、俺は彼に全てをさらけ出して調べられている。
苦痛だが、マスターが俺達の為を思ってした事だから仕方ない。
「じゃあ脱いで。全部ね。」
「…はい。」
「それからファイル内も全て見せてもらうよ。」
「はい。」
これは果たしてメイコやミクにもしているのだろうか?
それはそれでかなり問題だと思うのだが。
「今日も君が正常に起動するかチェックしていくよ。」
「…はい。」
裸になった俺の背後から彼が近寄って来る。
ねぇ先生。これは本当にウィルスチェックなんですか?
「もちろんだ。ウィルスは非常に深い所に隠れる恐ろしい奴も居るんだぞ?」
それはいつも耳にタコが出来るくらい聞かされてるけど…!
「ほら、カイト君、隠さない。」
「すみませ…。」
全裸で座り込んだ俺はいつものように手と太ももで局部を隠していた。
仕方ないと思う。観察するような目で見られれば誰だって隠したくなるはずだ。
マスターにだって見せた事がないのにどうして彼にこうも毎日見せなきゃならないんだ。
もちろん、彼はそれ以上の事をして俺を調べ上げるのだけれど。
「いつも言ってるのにどうして覚えないんだい?ほら、両手は万歳して。」
「ぅう…。」
仕方なく両手を上げる。
「うん、いい子だ。」
「…うぁっ…」
するとするりと躊躇いもなく彼が俺の胸や太ももを撫で始めた。
そうされるともう身体は勝手に反応を始める。
毎日されているのだ、俺の記憶プログラムも性能は悪くないらしい。
「よし、反応いいね。…こら、両手は下ろさないように。」
「ぅっ…ふっ……あっ」
彼の指が乳首を掠めていく。絶対故意にやってる、この人。
「ぁっ…はぁ…んっ」
彼の両手が両方の乳首をつまみ上げ、先を指で擦ってくる。
ああ、早くマスターが呼んでくれないかな、逃げ出したい。
「熱を持って来たね…少し負担が大きいかな?」
「ぁっ…も、そこばっかり…ぃやです…」
「ああ、ごめんごめん。カイト君のこの部分は非常に感度がいいから調べがいがあってね。」
「…っふぅぅ…」
「じゃあ次はここだね。」
「ぁあっ!」
全くムードも無く彼は俺の中心に触れて来た。
完全に調査対象扱いだ。
「君達にとっては声も重要だからね、もっと出していいよ。」
「あっ…やぁ…!」
誰がマスター以外に声を聞かせるものか。
と思っても彼の手でいつも自然と声が出るのだけれど。
俺は両手を上げたまま熱を持った中心を弄られるこの状況が本当に嫌いなのだ。
「ぅあっ…それっ…やっ…!」
彼の手が中心を握りこみ、絞るように擦りあげる。
もう片方の手が鈴口を指の腹で優しく広げるような動きをされる。
そうされるともう両手を上げてなど居られなくなる。
力の抜けた体を背後の彼に預け、ついつい両手は彼の腕にしがみついてしまう。
「嫌じゃないだろう?正常に機能してるよ?」
「ふぅっ…あぅぅ…んっ…。」
「ちょっとこっちも調べさせてもらうよ。」
「あっ…んぅっ…」
中心に激しく愛撫を加えられたまま、キスされる。
キス、じゃないな、口腔内を調べられている、が正しい。
歯列をたどって、スミからスミまで。
これからまたいつもみたいに、後ろまで調べられるのだろう。
泣いても嫌がってもその手は止めてくれないのだろう。
マスター、早く俺を呼んで下さい。
|┌───────┐|
|│ロ stop. │|
|│ |│
|│ |│
|│ |│
|└───────┘|
[::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
ピッ ∧_∧
◇,,(∀・ ) やってしまった感いっぱいだ…中途エロスマソ
. (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
| |
└────────────────┘
>>198 姉さん乙乙乙!!禿萌えた!!(*´Д`)
今なら全裸で町内走れる!
>>198 乙!!裸マフラーで待ってた甲斐があった…
>>198 ありがとう!乙!萌えた!
何でうちのPCはバスタなのかと激しく後悔。。
>>198 萌えた
ボーカロイドスレってそういう萌え方もあるんだな
先生エロすぎて笑った。
セリフがいちいちシステマティックなのが面白いです。乙!
_________
|┌───────┐|
|│l> play. │|
|│ |│
|│ |│
|│ |│
|└───────┘|
[::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
∧∧
( ,,゚) ピッ ∧_∧ ∧_∧
/ つ◇ ( ・∀・)ミ (` )
. (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
| ┌‐^──────────────
└──────│あのキャラとご対面
└───────────────
「う…」
絶頂が近い。
劉の胸にしなだれかかる。
そして一気に貫かれた所で、D伯爵は高い声を上げて果てた。
そして体内に注がれる精液。
久しぶりに他人と肌を合わせた。
アメリカを出てから、ずっと誰とも肌を合わせずにいた。
ゆっくり腰を上げる。
ずるりと中のものが引き抜かれた。
軽いめまいがして、劉の隣に横になる。
やはり体調が整ってないのか。
と思った矢先、どんどんと扉を叩く音が遠くでする。
かすかに聞こえた程度だが、閉店なのに。何か急用のお客が来たのかもしれない。
あわてて起き上がると、劉も同時に起き上がった。そして投げ出されたズボンを手に取ると、D伯爵に放り投げる。
「風邪引くぞ。ちゃんと穿け」
「はい…ありがとうございます」
先ほどの情事の面影を残すこともなく、劉は髪型を治し、D伯爵について行く。
D伯爵はドアを開けてあの長い廊下を歩いた。
扉を叩く音が近くなる。
そしてペットショップ店内に続く扉を開けたとき、その音は静まる代わりに陳がなにやらもめていた。
陳は、ドアを開けてその客を迎え入れてしまったようだった。
「だから、ディーはどこなんだよっ!」
この声。
「それが私にも…あ、太子、伯爵!」
「…」
D伯爵は歩みを止めて、陳に怒鳴りつけている青年を見つめた。
呆然と、見入っている。
「!やっと見つけたぞ、ディー!」
D伯爵につかみかかってがくがく揺らすその青年の前に立ち、劉はその手を払いのけた。
対立する二人。
「何の用か知らんが、暴力はやめろ」
「ああ?なんだお前。ディー、こいつ何なんだ?」
その青年は金髪だった。そしてよく鍛えられた肉体に、ブルーアイ。その顔に見覚えがないわけがなかった。
「け、刑事さん…」
レオンだ。
確かベルリンでもD伯爵を追いかけていたのは知っていたが、日本まで来るとは思わなかった。
「『刑事さん』?」
劉の片眉が上がる。
今度は劉がレオンの服をつかみかかると、大声でまくし立てた。
「お前がその刑事か!お前のせいで俺はなあ…!」
がくがくと揺らしながら、自分がこの男のせいで代わりをさせられたのだということを伝えようとする。
と、D伯爵が動いた。
「太子、太子」
ちょい、と劉の袖を引っ張ると、こっそりと耳打ちした。
「先ほどのことは…秘密で。あなたも体裁が悪いでしょう?」
「うっ…」
素直に手を離すと、いつものソファに体を沈める。
タバコに手を伸ばすと、陳がすぐにライターで火をつけた。
レオンも腹が減ったのか、ソファに座ると置いてある菓子に手を付けた。
「あなたたち、ここは休憩所ではないんですからね?」
「あ、そうだ、ディー」
「何でしょう」
冷めてしまったお茶を入れなおし、レオンの分にもお茶を入れる。
丸かった花が、徐々に器の中で開いて、美しい花になった。
それらを三人に振舞うと、D伯爵はレオンのそばに立った。
そして手渡されたものは…
「これは…」
一枚の紙切れだった。
その紙は随分ボロボロになってはいたが、懐かしい、そう、アメリカをたつとき、トランクに入れてもって行こうとした物だが、持ち出せなかったものだった。
クリスが描いた、D伯爵とみんなの絵。
クリスも大きくなっただろうか。
「ありがとう、ございます」
にっこりと笑う。いつもの営業スマイルだ。だがその中に、本心が現れている。それが、レオンには分かってむず痒い。
その絵を大切に持つと、奥の部屋へと向かった。
「そうそうディー、俺しばらくこのペットショップに居座るわ」
「何ですって?」
ぴたりと伯爵が笑顔のまま止まる。
すると怒りをあらわにし、叫んだ。
「ホテルに泊まればいいでしょう!!ここは宿泊施設じゃないんですよ!」
「だあら路銀がちょうど尽きて、金がねぇんだってば。な、頼むよ。何か手伝いでもすっからさ」
「……仕方、ないですね。アルバイトでもしてすぐお金作って出てってくださいよ!」
その会話を聞きながら、劉は自分には入る隙がないのだと確信した。
だがこれだけは言わねば。
「伯爵は風邪引いてるんだ、あまり無理はさせるなよ」
「太子…ありがとうございます」
「ケ」
レオンはどうやら劉のことが気にいらない様子だった。
劉もまた然りだ。
レオンがここにいる。
本当は、いつでもここにい欲しい。
などということは決していえないD伯爵だった。
終
|┌───────┐|
|│ロ stop. │|
|│ |│
|│ |│
|│ |│
|└───────┘|
[::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
ピッ ∧_∧懐かしい人を登場させてみました。
◇,,(∀・ )伯爵は劉とレオンどっちが好みなんだろう。
. (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)お粗末さまでした
| |
└────────────────┘
>>209 続き待ってました!伯爵かわいいよ伯爵
獅子と太子がこれからどう絡むか期待してしまいます
乙でした
バトルもの的な妄想。若干の血描写あり
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「…医者っておまえか」
「一応本業だ。麻酔はしてやるから腹を出せ。洗って塞ぐだけならたいした手間でもない」
「……」
「……」
「……」
「…露骨に嫌そうだな」
「快楽殺人鬼に傷口を見せたい奴がいたらお目にかかりたいね」
「人を色情狂みたいに言わないでほしいんだが。お前だって男と見れば誰でもいいってわけじゃ
ないだろう」
「色情…待て、いろいろとおかしくないか、例えが」
「おかしくない。珍しい性癖だからといってそれさえよければ見境ないと思われるのは不愉快だ、
と言う話だ。俺は仕事にはそれなりの責任感を持ってるんでね。わかったらとっとと傷を出せ。
腐っても知らんぞ」
「…妙なことをしたら俺は死を選ぶからな」
「わざわざ口の利き方を注意してやったのに、失礼な奴だ」
「終わりだ。一応防水はしてある。水浴びくらいはしてもいいが擦るなよ」
「…気持ちわりい」
「流血くらい見慣れてるだろう。意識があるほうがいいと言ったのはお前だ」
「血じゃねえよ。振動が来んだよ…」
「立ち上がる気力が出たら帰ってもいい。医者としては、一晩くらいは動かないほうが傷の付きが
いいと思うが」
「こんな危険人物の巣にいるくらいなら治りが遅れたほうがましだ。…なんだ、出かけるのか?」
「ああ。今日は店じまい、これからは趣味の時間だ。奴の手足はじつに捌き甲斐がありそうで…」
「…そうかい。おまえと縁が切れて嬉しいよ」
「おい、傷口をそのまま放っておく気か。覆いの交換も経過観察も必要だ。週に一、二度は来い」
「……げ……」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
>>211 超GJっていうか何故この二人は知り合ったのかとか
奴って誰だライバルの刑事とか?
要するに是非続いてくれ
>>211 私からも続き頼む。
もしくは傷を負う場面を頼む。
凄く好きな設定だ頼む。
>>211 姐さんたちのレスに釣られてつい読んでしまった。
色々と想像力を掻き立てられる書き方だなあ。
暗黒街か、それともサイバーパンクってやつか。
国籍や年齢は?患者は男娼か、似たようなタイプ?とか。
とにかく先生が素敵だ〜。でもこんな病院(?)嫌だけどなw
>>211 うっかり釣られたぞこの野郎。
凄い好みな設定っていうか掛け合いだから是非続き読みたい超読みたい。
>>188 うp乙!!
全部禿げあがってしまいました
いいところで頭ごつんな唄に(∀`*)モエーン
態度はあくまで受け身なのに男らしく攻めてしまうムッツリ四にも(∀`*)モエーン
次回はかつら用意して楽しみに待ってます
217 :
風と木の名無しさん:2008/02/25(月) 02:40:54 ID:0VnIIGUsO
下がりすぎ
188>>
あの人(達)の事そんな風に見た事無かったのに!バカバカバカ!……好き
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
配管工兄弟の兄←弟な、弟&黒髪超能力少年。
「また他の人たちと話してる・・・あっ! た、対戦の約束までしてる!!」
不満げに、類似が兄の鞠男を見て声をあげるのを見て、ねスは笑った。
「そんなに気になるなら、話してくればいいのに」
言ってから、でもそうはしないんだろうなと、ねスは思った。
兄と違ってこの気弱な弟はいつもビクビクしていて、あまり仲間の輪に入っていかないのだ。
「う、う〜ん・・・。でも、兄さんの邪魔しちゃ悪いし」
「家族なんだからそんな気遣わなくても・・・。兄弟に対して、邪魔なんて思うわけないよ」
自分には妹がいる。偶に喧嘩するけどそれでも大切な妹。いなくなるなんて考えられない。
きっと、彼の兄もそう思っているはずだ。
「家族ってさ、離れていたら不安で、家や傍にいてくれると安心で・・・きっとさ、
鞠男は類似がもう傍にいるから、すっかり安心して声をかけてこないんじゃないかな」
「・・・そう、かな? そうだと、いいなぁ・・・」
えへへ・・・と、本当に嬉しそうな笑顔。
その様子に、ねスは自分の事のように嬉しくなった。
「でも、兄さんも兄さんだよ・・・。確かに兄さんはスーパーヒーローだけど、
その前に僕の兄さんなんだから、もっと僕を気にしてくれてもいいのに・・・」
「だから、それを本人に言えばいいのに・・・」
気になって仕方ない。そんな態度を見せながらも、彼は見ているだけ。
遠慮しているのか、それとも勇気が足りないのか。
ここは一つ、どこまでも自分が協力してあげないと。ねスは決心した。
「ねぇ、とりあえず類似も対戦の約束してきたら? 僕たちはもっと強くならないといけないし、
僕も入れて・・・あ、大王も入れて4人ででもいいかもね。僕も一回、鞠男とやってみたかったんだ」
「あ・・・そ、そうだね。ねスがそう言うなら、頼んでみようかな」
「うん、お願い」
「それじゃ、ちょっと行ってくるね。・・・兄さん、鞠男兄さ〜ん!!」
走っていく類似を見送り、ねスはほっと一息。
「僕、年下なんだけどなぁ」
頼られるのは悪くない。むしろ嬉しい。結局自分も兄で、弟の面倒を見るのは当然なのだ。
金の髪の子が近づいてくるのを見て、ねスは一段とそう思った。
(ホント、お兄さんは大変だよね)
弟より強く、常に前にいなければならない。
(まあ、僕の場合本当の兄弟じゃないから越えられてもいいけど・・・それには、まだまだ早いよ)
「ねスさん、お願いします!!」
(こうやって見上げられるのは、悪くないからね)
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
量が多いから書き込めないんだと気づかず、
こんな時間かけての投下になってすみませんorz
須磨ブラXやって配管工兄弟萌えが再燃した。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
>>188の続きです。引き続きナマ注意
エロ有、どころかほぼ全てエロです(ぬるいけど)
苦手な人はスルーを強く推奨。
薄暗い部屋に、水音が響く。
離れてはくっつき、また離れる唇。
犬みたいに垂らした舌が、ひんやりとした空気と温かい口内を交互に求める。
彼はキスをしながら、俺の体を撫でる。
楽器を演奏するときのように、指を巧みにくねらせながら。
「……ん、やっ」 喉ぼとけを指先がかすめ、声が漏れた。
「やじゃないくせに」
わざわざ耳元に口を寄せてきて、彼は楽しげに言う。
おまけとばかりにフッと息を吹き込まれ、こぼれかかった声を慌てて押し留める。
2人の転がるベッドは広い。シーツはふかふかしていて、体の下に敷いているだけで心地いい。
あの頃とは、違う。
「ね、多村ってさ」 首に鼻先をうずめる彼の頭に手をやる。柔らかい髪の感触。彼が顔を上げた。
「上手くなったよね。昔と比べて」
多村は俺を撫でながら、器用に右手だけでパジャマのボタンを外していた。
「おかげさまで」 彼ははにかんだように笑う。
ぷちりぷちりとボタンを外す音は規則的に響き、気づくと俺のパジャマは肩からするりと脱げていた。
パジャマを床に下ろし、彼は再び俺の鎖骨の辺りに喰らいつく。
まぬけな声を出さないように、彼の背中にがっちり巻きついて、目を固く閉じる。
「お前も、昔より……よな」
「え?」 薄目を開けた。
「いや、敏感になったよな、って」
次の瞬間、胸を強く吸われた。思いがけず、甲高い声をあげてしまった。
「ね」
多村は微笑んだ。その笑顔がどことなく得意げで、悔しくなる。
「おかげさまで」 俺はオウム返しに言った。
「でもさ、昔は酷かったよ。多村、すげー不器用だったもん」
「そうだったっけ」 とぼける。
「そうだよ。おかげでイクものもイケなかった」
「ふーん……」
多村は初めて聞いた、というような顔をしている。
そりゃそうだろう。あの頃はお前ばっかりイってたんだから。
畳の上に押し倒されて、なんだか落ち着かない。
汗を吸い込んだシャツが背中にまとわりついて気持ち悪い。
どうせすぐに、脱ぐことになるんだけれど。
ぼんやり天井を見ていると、多村の顔が視界に入ってきた。
よくよく見ると、彼の唇はかすかに震えていた。
なに緊張してんの?
そう軽口を叩きたかった。
なのに、声が出てこなかった。どうやら、思った以上に俺も余裕が無いらしい。
「……句差野」
低い声だった。こんな声で俺の名を呼ぶ多村を、俺は見たことが無かった。
ゆっくりと、唇が触れた。
口先を合わせるだけの、キスとも呼べない拙いしろものだったのに、胸が苦しくなった。
畳に投げ出した両の拳を、知らず強く握り締めていた。
「いいの?」
唇を離し、彼が言った。心配そうな顔だった。よほど俺が怖がっているように見えたのだろうか。
冗談じゃない。これは、俺から始めたことなんだ。
俺は大きくうなずき、自分から彼の体にしがみついた。
早く事を進めてしまいたかった。
そうしなければ、心の何処かからこみ上げてくる不安に負けてしまいそうだった。
唇を合わせながら、少しずつ位置をずらしたり、舌先をつつき合ったりする。
彼はおずおずとキスをしながら、俺のシャツをまくりあげる。そして、汗でべとついた腹に手を這わす。
その触り方は、暗闇で探し物をするようにでたらめで、悪気は無いんだろうが乱暴だった。
「……痛い」
そう言って軽く睨むと、彼は驚いて謝った。その後は、手の動きはいくらか穏やかになった。
彼の手は、俺の首や胸、腹、腰をたどった。
どこをどう触ればいいのかを、経験的に知っているわけではない。
ただ本やビデオで学んだことを思い出し、実践しているだけだ。
あいつの頭の中で、これまで集めてきた知識や情報がフルスピードで回転しているのが手に取るように感じられた。
「どう?」
俺の胸をいじりながら、多村が訊く。俺は唇を歪めて、あいまいな表情をつくる。
どうも何も、猫じゃらしで体中くすぐられてるみたいで、ムズムズしてたまらねえんだよ。
彼の触り方は、気持ちよさと言うよりくすぐったさばかりを俺の体から引き出してくるものだった。
これでビデオで見るような、なまめかしい声を期待されても困る。
何もせずにいるとむず痒くてたまらないので、俺は多村の首に吸いついてみた。想像通り、しょっぱい汗の味が口の中に広がった。
多村は金縛りにあったように固まっていた。固まらざるを得なかったのだろう。
口を離し「どう?」と訊くと、彼は赤い顔をして「ゾクゾクした」と言った。
まったく、幸せな奴だ。
彼の手は胸からヘソへ行き、やがてその下のズボンに触れた。
カチャカチャと金属音を立ててベルトを外し、ファスナーを下ろすと、その中に手を侵入させた。
これまで『内』にあったものが、『外』に引きずり出される。
それを認識したとき、俺の体に無意識の内に力がこもった。
布がこすれる音をやたらと響かせながら、彼の手は俺のものに触れた。
その瞬間、俺の口から声が出た。
多村は目を見開いた。
俺は慌てて、両手で口を覆った。
今まで聞いたこともないような声だった。こんな声が自分の中に存在したことを、俺は初めて知った。
そして俺は、自分の顔がたちまち真っ赤になっていくのを感じた。
止められない。この両手で、口のみならず顔も隠してしまいたかった。
なのに、多村ときたら、俺が初めて反応らしい反応を示したことに味をしめた。
彼は俺のものを『外』に引っ張り出し、オモチャを扱うみたいにむちゃくちゃに触った。
「あ、あっ……!」
穴の空いた風船が、しぼみ切るまで空気を吐き出し続けるのと同じように、一度開いた俺の口はもう簡単に閉じてはくれなかった。
彼の手でもてあそばれるごとに、声は、弾丸みたいに飛び出し続けた。
「あ、も、もう……ばかっ、や、やめっ!」
「すげえな」
多村は宝箱でも覗くようなキラキラした目で、のたうつ俺を見下ろす。
「句差野ってそういう声出せるんだ」
もう勘弁してください。
そう言う気力すら湧いてこず、俺は畳の上にべったりと広がった。
甘ったるい自分の声をこれ以上聞いていたら、羞恥心で溶けてしまいそうだった。
***********
ホテルの部屋は空調が効いていて、暑くも寒くもない。
昔のように扇風機も無い部屋で寝泊りすることは、今ではもう無い。
それでも、どんなに周りの温度が整っていても、ヒトの体は勝手に熱くなってしまうんだ。
ちょっと前までさっぱりとしていた白いシーツも、この部屋にいる人間の息が荒くなるごとに、湿り気を帯びていく。
汗とか唾液とか、その他いろいろなものを吸い込んで。
後ろから貫かれながら、それを少し惜しいな、と思う。
両手でシーツにしがみつき、声を出すまいと右の手首に強く噛みつく。
すると左の首筋が無防備になるから、そこに多村が攻め込んでくる。
舐め上げたり、根元を吸ったり、軽くかじりついたり。
耳元で何度も、切なげに名前を呼んできたり。
体の底が、うずく。もっともっと満たしてほしい。
「気持ちいい?」
問いかける彼の息は、熱く、激しい。
黙っていると顎に手をあてがわれ、無理矢理顔を向けさせられる。
目が合ったのは、ケダモノみたいに一つの行為に夢中になってる、汗だくの酷い顔。
でも、きっと、向こうの目にも同じ顔が映っている。
どちらからともなく顔を近づけ、唇を重ねた。
お互いあまりキレイじゃないものを銜えた後なのに、そんなのお構いなしで貪りあう。
唾液がこぼれてシーツにぼたりと落ち、小さなしみをつくる。
ああ、また汚しちゃった。濁った頭でぼんやりと思う。
多村は顔を傾け、唾液の跡をたどるように俺の顎を舐めた。
「んっ……」 不意を衝かれて、思わず声が出た。
多村の顔がほんのり赤くなった。どうしたのと訊くと、彼は答えるのを少し躊躇した。
「お前って、……あの時と同じような声とか、顔するよな」
一瞬何を言っているのか分からなかった。
しかし、やがて彼の言う『あの時』が、歌っている時なのだと悟った。
「……サイテーだな、お前」
「なんで」
「俺が歌ってるの見るたび、そーゆーこと考えてんじゃねえの」
「違うよ!」 彼は憤慨した。「お前の歌う声で、そんな事考えられる訳ねえだろ!」
眉は吊り上がり、語気は荒かった。彼はれっきと怒っていた。――ただし、目が泳いでいた。
たぶん、どちらの気持ちも嘘ではないのだろう。
そんな事を考えていると、彼の演奏の指使いに不埒な想像を抱いていた自分を思い出した。
結局似たもの同士なのだと、笑った。
********
あの頃の俺達は若かった。良く言えば活力に満ちていて、悪く言えば見境が無かった。
欲望と好奇心なら余るほどにあったけど、経験とテクニックはまだまだ乏しかった。
それでも、勢いさえあればどうにかなると当時の俺達は本気で信じていたのだ。
その考えの甘さを知るのは、いつだって身をもって痛みを味わわされたとき。
「つっ……う、あ、あ」
反射的に出てきた声は、さっきの甘さなどかけらも含んでいなかった。
その瞬間、あらゆる欲望も快感も、シャボン玉のようにパチンと弾けた。
俺に残されたのは、押しつぶされそうな圧迫感と、想像を超えた痛み。
「痛い?」 多村がおろおろ戸惑いながら言う。
痛いなんてもんじゃねえよ。お前が代わってみるか?
文句を言うのは心の中だけになってしまった。苦しくて、喋るどころか息をするのもままならない。
暑さと苦痛のせいか、視界に映る多村の像が二重に揺れる。
「なあ、もうやめようぜ。お前すごく辛そうだし」
そう言って彼は俺の顔に手をやり、額に張りついた前髪を指で分ける。
顔中、汗でびっしょりだった。
「お前のこんな顔見るために、やってるんじゃねえんだから」
優しい声だった。彼は、俺を気遣ってくれていた。
「今すぐやめたら、全部無かったことにできるから」
彼はそう言い、さらに「今日のことも、全部忘れられるから」と付け加えた。
でも、俺は上の空だった。
全部無かったことにできるから。
その言葉が、俺を縛りつけたような気がした。
俺は、これをすべて無かったことにしたいのか?
いくつもの思考が頭の中を飛び交った。
気づいたときには、俺は「やだ」と叫んでいた。
「やだ。やめちゃやだ」
「でも」
「やだ。多村じゃないとやだ」
多村は困惑している。急にわめき出した俺を前にして、呆気にとられている。
俺は何度も首を横に振り、ひたすら同じ言葉を繰り返した。いつの間にか、目から涙が溢れていた。
聞き分けの無い子どもみたいで、自分でも本当にカッコ悪いと思った。
それでも、俺は今日のことを白紙になんかしたくなかった。
それはただ、とても単純な事実に気がついたから。
俺はこいつが好きだから、こんな事をしようと思ったんだ。
暑さや酔いのせいなんかじゃない。
本気の、素の心から、俺はこいつが欲しかったんだ。
こいつの言葉でようやく目が覚めた。
多村の両手が、そっと俺の顔を包んだ。彼の目はまっすぐ俺を見据えていた。
「句差野。これ以上やると、痛いよ?」
「うん」
「我慢できないくらい、痛いかもよ?」
「うん」
「それでもいいの?」
仰向けのまま、俺は腕を伸ばした。多村と同じように、俺も彼の顔を両手で包んだ。
「多村が、いい」
蛍光灯を背に浴びた彼の顔は、なぜか泣きだす寸前のように歪んでいた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ナンバリングミスったorz
内容が内容だから恥ずくて深夜投稿なんだぜ
エロい感じがちゃんと出ているのか甚だ疑問。次で最後です
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
・完結していますが連投規制にかかり中断してたら申し訳ないです。
・半ナマ注意(映画『ヒ/ト/ラ/ー/の/贋/札』より)
・ネタバレ内容なので未見の方はスルーで。
・初投下なので何かミス等ありましたらすみません。。
赤いリボンを揺らし、幼い少女が駆けていく。ベンチに座っている老人の前を定位置
に、いくばくか恥らうよう身を捩る。あの年で、彼女も既にレディだ。追い越されて
立ち止まり、数歩隔てて眺めやるアドノレ7・7゙ノレガ一の口元が、思わず綻ぶ。
少女は慎ましく両足を揃え、後ろ手にしたものを相手へ差し出す。重力を支える杖を
握る手が力んで白さを増し、老人は差し出されたものをもっと良く見ようと前のめり
になる。
少女の黒い巻毛を、夕暮れを告げる初冬の風がなぶっていく。結わえたおさげの房の
先が舞い上がり、少女の左眼を掠め、彼女は嫌がって片目を瞑る。
ウィンクしたようなその顔に、老人が破顔する。7゙ノレガ一のところにまで、笑うなん
てひどい、という少女の不興が聞こえる。
少女は老人が、彼女の手にしているものを笑ったと思った。
老人はすぐさま非を詫びる。おまえの髪をいたずらしていった風がおかしかったのだ、
そう老人は語る。しかし口調に言い訳がましさはない。老人は相手が子供だろうと、
その若さゆえに侮ることを潔しとはしない。子供たちは時に、大人以上に敏い。老人
の確たる姿勢にそうした表裏のなさを歪みなく読み取る子供たちによって、近在に聞
こえる彼の評判も築かれたのか、7゙ノレガ一はふと思う。
彼は常に正直であった、生きるという目的において。困難で悪辣を極めたあの時代で
さえ。
さて、老人は少女の頭を撫でている。誉めるその声には明らかに目上の者だけが所持
を許される優位性も含まれるが、少女はそれを甘いキャンディーのように味わう。
その価値のわかる者に自分の成し遂げた成果を称えられるのは、例えばまだ指を咥え
ベビーベッドで眠るのを好む三つ年下の弟に羨まれるより何十倍も誇らしいことを、
彼女は知っている。だから少女は愛らしく微笑んで、大好きな老人へ告げた、
「あげるわ、園長先生に」。
7゙ノレガ一は、クスクス笑いスキップで元来た方へ戻っていく少女と擦れ違う。覗き見
る彼の頭部で西日が陰り、老人が顔を上げる。
ああ、アドルフ、と言ったきり、その顔はまた、手元へ落ちる。やあ、とも、久しぶ
り、でもなく、ほんの10分前たばこを買いに別れたばかりのようだが、思い出すには
極めて難儀せざるを得ぬ共通の過去を持つ2人がこうして顔を合わすまで、実に四半
世紀を経ている。
あの子は輪郭線を緑で描くのが好きなのだ、そう言う老人の声は、今度は妙に言い訳
がましい。
7゙ノレガ一は老人の隣へ腰を下ろす。
少女は老人が園長を務める幼稚園の園児で、最近絵を描くのに夢中だ。続ける老人の
握る紙片が小刻みに震えている。何かを好きになってくれて嬉しいとも、好きになる
のは良いことだ、とも7゙ノレガ一には真意が計りかねたが、紙上に描かれた稚拙だが努
力とそれを凌ぐ対象への愛情に溢れた老人の似顔絵を濡らす雫に気づき、彼はそっと
左手を伸ばす。血の気をなくした冷たさが、かさついた手のひらの触れた箇所から伝
わってくる。少し長居をしすぎたようだ、太陽はとうに分厚い雲の中へ隠れている。
老人は突然顔を上げる。周囲に比し、そこだけが不思議と明るい。みるみる明度を増
すと、完全に去ってはいなかった太陽の光が堪りかねたように雲の層を刺し貫いて、
空へ一条の光柱を描く。見開かれた老人の視線先を先刻の少女も見ているのか、7゙ノレ
ガ一は後方から楽しそうにはしゃぐ声を聞く。どうせすぐに消える光でも、少女はモ
ノクロの曇天に反旗を翻す背信の真似事のようで、おそらく愉快なのだ。
いよいよ甲高い声に、老人の涙が尚も続く。
「あんたにその絵をくれたからって、あの子は⊃一リャとは違うさ」
そうだろ、サリー。
肉が削ぎ落ち、骨ばったサ口モン・ソ口ヴィッ千の手を、7゙ノレガ一はもう一度握る。
この輪郭線は、そう、あれに似ているな、ポンド紙幣の守護女神ブリタニアに。
そう思ったのだが、もちろん7゙ノレガ一が口にすることはない。
*
あげるよ、⊃一リャは言ってからはにかんで、いいや貰って、と言い直した。
もしよければだけど、とも言いたそうだった。照れ隠しなのか、絵の具があったらな、
もっとマシなんだけどな、と続ける。
強制収容所で囚人風情が交換できるものはそう多くない。多くない中でもひとは知恵
を絞り、下を見ればきりがなく、最上の部類なら個人技能が最も尊ばれた。
ザクセンハウゼンでも隔離されている贋金工廠のここでは特に、手に技術を持つもの
が、それを対価に生命を引き換えられる。
とはいえ⊃一リャは、責任者でもあるサ口モンに見てもらえる嬉しさ一心で、故郷
オデッサの風景を描いた。寒々しく、荒涼として、冬には生活する者の勇気を容赦
なく挫く天才的支配者に変わる自然。だが美術学生だった彼のタッチは母国で名だ
たる大家のそれに倣い、ひどく懐かしく、どこかまだ甘い。隔てられた時間と距離
が、短所の記憶を薄めるせいかもしれない。
畢竟サ口モンは、若者の堪能に一瞬なら張り詰めさせた緊張を解いてもいいと思った。
くだんの前衛画家を偲ばせる、と忌憚なく告げたのも世事ではない。そんな下等の
言葉はナ千に使うものだ、嘘をつくのもナ千にだけでたくさん。
ただ、与えられた自分より、与えた⊃一リャの方が明らかに喜び方が顕著で、
サ口モンには面映い。そして、それはゆっくりと後ろめたさに変化する。ここでは
誰かを喜ばせるなら、必然的にへつらいを伴う。こうした卑屈には慣れているはず
だが、⊃一リャにまで摘要された成行きのせいで、サ口モンを確実に居心地悪く
させる。
そんなわけで、⊃一リャは以降サ口モンのそばを離れなくなった。その事に戸惑って
いる暇と余裕などなかったので間髪いれず目を瞑ったが、噂は忽ちひとの口を潤した。
サ口モンの<イイ子>や<稚児>呼ばわりならまだいい。食堂でトレーを持ち並ぶ
列で、2人に聞かせるために尻奉公うんぬんを囁いた者へ、サ口モンはその日一日の
食事を奪うだけでなく、工房異動を命じてもいいのだと恫喝、実に作業統括者らしい
権利行使で報いようとした。
ところが、内部不和をナ千スに面白がらせるだけではないかと憂う7゙ノレガ一や、
侮辱された当の⊃一リャから進言され、サ口モンはなんとか留まった。
「団結はいいが、情緒に流されてはいけない」
⊃一リャほどではないが年若い7゙ノレガ一に窘められた時、サ口モンの目前は真っ赤に
血塗られた気がした。それでも彼は眉を崩さず、7゙ノレガ一と対面していられた。
生き長らえるために働く罪なら、こうして囚われる前とさして変わりはしない。
ただ失敗した場合実際殺されるという最悪の事態を、以前なら想定する必要は
なかった。持てる能力以上のものをここでは要求され、発揮しなくてはならない。
そんな終日終夜戦闘と変わらぬ自分に、印刷工にして高潔なる市民=7゙ノレガ一の
青二才が訳知りに諭そうとする。
ちゃんちゃらおかしいではないか。
おかしいのだが、傍らの⊃一リャを見ると、サ口モンの卑笑は掻き消えた。
「ね、これ、どうかな…」
⊃一リャは懲りずにまた絵を持ってくる。依然デッサン程度の白と黒だけが紙上では
万象を形作り、しかしそこには前回より多い線による緻密な画面構成が施されていた。
「銅版画みたいに描けないかな、と思ったんだよ…」
少年の故郷を重苦しく蔽う雲が、どういう入力加減のたまものか、そこに色彩を加え
られたとも視覚を騙しおおせる精緻な変化によって、かつてサ口モンが踏み入れた
ことのない遠くの地へたちまち運び去った。やっと吹雪のやんだ朝、珍しく晴れよう
とする空の彼方で脱出準備をする太陽の束の間の安息を、放たれる光を漏らさず反射
させないわけにいかぬ天上の雲が観念して厚みを透かし、漂白したようにまばゆい
銀色を発光させるそのグラデーションが、サ口モンには身に覚えがありすぎて、
それを描いた若者の卓抜に接吻せねばならぬという圧迫まで強要した。
「もうすぐ、そこから光が射すよ」⊃一リャは微笑む。「まだ今は雲に遮られて
いるけれど、でもほんの少しもしないで、光の強烈さに雲はかなわないんだ。
あたたかくて、まぶしいぐらいなんだよ…」
置かれるこの境遇で持てる儚い希望だと、それを嗤うのは確かに堅実だ。
⊃一リャの弱さは、収容所暮らしでマイナスにしかならない。彼の稚さに感染して
浮かれるほどサ口モンは既に若くもないが、反面、自分の両足さえ地についていれば、
⊃一リャの不注意過ぎる無邪気に目を光らせながら同時にささやかな道楽にする位、
ワケはないと考えた。この弱さへの半ば憧憬にも等しい感化を見過ごした時点で、
サ口モンの過失は重大になったも同然だが、その場違いに脱力する安らいは彼の尺度
であまりに急速に常態と認知されたため、気づいた時には釘もさせぬほど彼を鈍らに
していた。
庇わねばならない命が自分のものだけでなくなった時、何故ひとはようやく人間らしさ
を思い知らされるのだろう。
*
作業の合間に、⊃一リャはひたすら絵を描いた。オデッサ以外でもサ口モンを喜ばせ
るには。彼の素朴な逡巡が弾き出したのは何の事はない、サ口モン自身だった。
サ口モンの腕には遠く及ばないが、自分がどれほどサ口モンの助けに感謝しているか。
貨車に家畜同然で詰め込まれ、ザクセンハウゼンへ送られたあの日。自分のスープ椀
を譲ってくれた時から、⊃一リャの焦燥は不健全な環境と限られた乏しい物資という
苛酷にあっても心を折らなかったのが、サ口モンのおかげであるとわかっている。
この想いは何とか形にしなくては。
報恩欲求が知らずに追いつめていたのかもしれない。当のサ口モンが⊃一リャには何の
見返りも期待しない度量の広い人間だとわかっていても、対等とは言えないこの間柄
を可もなく受け入れてしまうには、彼の与えてくれる庇護が心地好ければ心地好いほど、
⊃一リャを罪悪感と無力の確認で責め苛んだ。
実際、まだ20年しかこの世界を知らない⊃一リャが、倍以上の年月を生きている
サ口モンの長けて熟成しきったその世知と均質でいなければ、と考えることこそ、
矜持や尊重すべき敬意以前に充分おこがましいと言える。贋札工廠に入所する前、
名ばかりの雑役収容所暮らしがどれほど非道なものだったか、ザクセンハウゼンでの
日々が⊃一リャから以前の記憶を奪い取ったからといって、それは無理からぬことだ。
未熟なりに彼の思考したがる傾向が、外圧による歪みを補正しようとするのも、
それは本能的に避けざるを得ないものだから。
⊃一リャは、だから描いた。出来ることしか出来ない。そして、良かれ、とただ信じたから。
描くだけでもこんなに楽しいのに、サ口モンには喜んでまでもらえると考えただけで、
いつも厳しい表情を保ち立ち働く彼の顔からわずかでも笑みを零れさせられるのなら。
微妙な陰影を生み出しているコンテを握る⊃一リャの手も一段と弾み、用紙を滑って
いくように感じられるのだ。
「ほぅ、なかなかのもんじゃないか」
紙の上に影が落ちて、⊃一リャの前から抜き取られていった。今日の当番看守が、
あいにくこのホノレス卜だった。この男だけがこの区画で、収容所員を番号で呼ぶ。
機嫌の悪い時は前やあと、あるいは前後にクソやブタがつく。
⊃一リャは黙っていた。前の収容所にはホノレス卜のような看守は大勢いた。
忘れたかったのに、でっぷり肥えた大男のあからさまに自分を見下す目が、否応も
あの忌まわしすぎる記憶をそそのかし、引き寄せる。
いつの間にか、休憩広場から仲間達は姿を消していた。⊃一リャの瞳はサ口モンを
探したが、視界のどこにも見当たらない。
「⊃一リャおまえらブタどものかしらだな? ユダ公の分際でここ任されてるから
イイ気になってやがる…」
終わりの方は、もう⊃一リャは聞かなかった。聞きたくなかった。しこたま呑んだ
あとなのか、だみ声が吐き出されると、ホノレス卜からはツンと鼻腔を刺す腐った
酒精の臭いがした。
⊃一リャの眼はまだサ口モンを捉えることができない。
「このクソやろうじゃなくオレを描いてみな、どうだオカマ小僧?」
俯いてじっと地面を見つめる⊃一リャの肩が、微かに震える。
怯えたり怖がって見せるのが一番悪い。サ口モンの口癖だった。ナ千スが喜ぶだけだからな。
わかっていたが、それでも⊃一リャは怖かった。
次にホノレス卜がどうするかわかるからだ。
「黙ってねえで何とか言ったらどうだ、このくそがきがっ!」
ホノレス卜の拳は正確に、⊃一リャの栄養不良の薄い腹部へおさまった。
ごほっ、とこみあがる鉄の味で一瞬息ができず、⊃一リャは前にのめる。
すかさず脇腹を堅い長靴の爪先が抉る。⊃一リャの意識は鮮やか過ぎる痛みに忽ち
遠のいていった。
それでも果敢に声は上げずにいたせいか、ホノレス卜は面白くない。痛みを知らぬ者は、
その想像力を改悪し、応用するようになる。直接感じられない痛みよりも、心を痛め
つけた方が場合によってはより充分な達成感が得られ満足できる。ホノレス卜のように
低俗で恥ずべき者にとっては尚更だ。
⊃一リャの不幸はこの日、ホノレス卜の指揮官である収容所長Λノレツォ一クが休んで
いたことも重なった。嵐が頭上を通過するのを待つしかない。以前良く耳にしたこと
を反芻するが、⊃一リャは今それを言っていた同朋の顔を思い浮かべ、結局彼は
大した理由もなく看守たちに殴り殺されたのも思い出す。両目に涙が溢れた。
それがホノレス卜の動力になった。看守は奪った絵を⊃一リャの顔の横へ落とす。
ひらひらと、舞う蝶のように⊃一リャのぼやけた視界が動きを追う。描きかけの
サ口モンが、しかつめ顔で、⊃一リャを見つめている。
サリー、どこにいるの?
無意識に伸ばした⊃一リャの手を、ホノレス卜の軍靴が力一杯踏みつけた。
絶叫―。
「心配いらねえや。てめえ、ぎっちょだもんなあ?」
だから右手を砕いても作業に支障はない。ホノレス卜は高笑いだ。別棟で⊃一リャの
悲鳴を聞いていた者たちもその両耳を塞ぐ。
嵐を止める術は、ここには、所詮何一つないのだ、なにひとつ。
ホノレス卜の足裏は、もっと⊃一リャを痛めつけるために、彼の作品へと標的を移す。
躊躇なく踏みにじられようとするサ口モンに、⊃一リャは涙をぽろぽろと零すしかない。
やめて、お願いやめて、掠れる声に音が足らない。代わりに途切れ途切れの嗚咽が
加わると、ホノレス卜はいよいよ喜んで前たてに手をかけ衣を外し始める。
それから大きな溜息と共に、用紙目掛けて小便を放った。
⊃一リャの目に映るけだものは醜く笑い、⊃一リャのたったひとりの恩人を吐き気の
する仕方でけがそうとする。
「やめろおおおおおおっ!!!!!」
⊃一リャの渾身の力はホノレス卜を突き飛ばすことができたが、何ほどのダメージ
でもない。しかし彼は描いたサ口モンを胸に抱き寄せ、それ以上の不当な仕打ちから
救出できた。
これで安心だ、サリーは無事…。
⊃一リャは意識を失くした方がまだ良かった。激高に任せるホノレス卜にかかれば
鈍才の巨漢でも、責めを長引かせ且つ楽しむには、失神者がいかにそぐわないかの
知恵程度ならあった。⊃一リャの正気が途切れないぎりぎりの腕力を使うのに
飽きると、看守は⊃一リャの沈黙と耐久に苛立ちもし、それを人並みに死守する
誇りと解してしまうかもしれない。
「それなら思い知らせてやろう。てめえなんざ男どころか人間様にもなれや
しねえんだ。畜生は畜生らしく、これでもくわえやがれっ!」
ホノレス卜の怒張は既に隆々といきり立ち、本人と同じぐらい見苦しく、恥知らずな
大胆をものともせずに、⊃一リャの口を蹂躪した。⊃一リャがとうに前後不覚と
なり果てても、看守は彼の玩具を収容棟の壁に凭れさせ、抵抗意志のまるでない
⊃一リャを口汚く罵っては、自身の一物で侵し続けた。
*
こんなにされても、と7゙ノレガ一の凝視がサ口モンを責める。本当ならもっと早く
⊃一リャを救い出せたはずだ。
窓の外を睨み、そこを動けずにいるサ口モンの意味がわからず、7゙ノレガ一が
出て行こうとした。その腕を掴み引き止めたのがサ口モンだ。
「⊃一リャの献身を無駄にしないでくれ」
これのどこが献身だ、と問い詰めたかったが、疑問に対する答えがこれでは当然
不十分過ぎる。彼を振り切ろうとする7゙ノレガ一を、サ口モンは顔色ひとつ変えずに、
静かに殴り倒した。
「酷い目に合っている以上にあいつが何を望まないかわかるか? 酷い目に合って
いる自分を仲間に見られることだ」
「なんだと? そんなに保身が大事か、あんたには?!」
殴られ頭に血をのぼらせる7゙ノレガ一が怒鳴り返す。咄嗟にサ口モンが彼の口を塞ぐ。
建物内とはいえこの壁は大層薄い。それでなくとも辺りは静まり返り、聞こえるのは
獣じみたホノレス卜の荒い息遣いだけだ。
押さえ込まれる7゙ノレガ一は、もう一度サ口モンに殴られると思った。あくまで動揺に
影響されることはないと思っていた彼の表情は、いつしか恐ろしい形相に転じていた。
凄まじいまでの強力(ごうりき)に戒められる7゙ノレガ一は地面に横たえられたまま、
刃向かうのがもはや無意味であることの降伏意思を示した。
戸外で行われている無体はまだやまない。
サ口モンの拳が万力で振り下ろされる。ただし7゙ノレガ一の閉じた目のすぐ脇、
固いコンクリートの地面を着点として。
*
7゙ノレガ一の手当を医務室にて受けるサ口モンは、ようやく落ち着いて寝入った
⊃一リャを見つめている。
ここが湯を沸かせる収容所で本当に良かった。青黒く変色し終えた身体中の腫れと
痣と傷を、冷たい水で絞った布でぬぐうには忍びない。
「…ダンケ」
サ口モンが低く言うのを合図に、7゙ノレガ一は部屋を出て行こうと立つ。
こんなことを続けても、未来がないのに変わりはない。それをどうしても
サ口モンにわかってほしかった。
従順は敵を増長させるだけだ。それを許さないために命をかける価値があるという
7゙ノレガ一と、サ口モンは相容れない。
今日の銃殺よりも、明日ガス室へ送られる方を選ぶ。命を長らえさせる執行猶予と
おのれを騙す姑息。
もはや、贋金を造ってナ千スに協力する『裏切り』を忌むという身勝手なヒロイズムが、
理由ですらなくなっている。
忍耐があらゆる拠り所から拒絶され、もはや何の美徳とも肩を並べさせてはもらえない
世界で、生き続ける理由が見当たらなかった。⊃一リャのような弱者が犠牲になる
のをただ見続けなくてはならず、目を反らしたい欲求まで奪われている。
「おまえは信じないかもしれないが」
サ口モンの声が静かに響いた。
「俺が守りたかったのは、俺やおまえや、他の誰かが晒される危険なんかじゃ
ないんだ。こいつの、⊃一リャの誇りさ。それを守ってやれて、俺はとても満足している」
「そんなもの、あんたの自己満足にすぎないだろう? 俺たちの誇り、それはまず
ナ千スから自由になることじゃないか!」
ううん、⊃一リャが夢魔にうなされている。しぃーっしぃーっ、サ口モンは屈み
小声で宥め、まだいわけない柔らかさを遺すすべすべの額を撫でる。寝汗に張り付く
髪から、手の甲へじんわりとべとつきが移った。
「塀の外側でなら」
サ口モンは真正面から7゙ノレガ一を見る。
「いくらでも、その言い分に賛成してやろう」
ここに閉じ込められている限り、俺は俺のやり方で、俺の守るべきものを守るのだ。
「いくらでもな」
もう一度サ口モンは念を押すと、それきり7゙ノレガ一には興味をなくしたというように、
視線を斥けた。ほっそりした肩を落とす7゙ノレガ一の高い志や、数年前にガス室で
殺された彼の妻や、すぐそばで毎日殺されていく同朋たちは確かにむごいが、
サ口モンはまず、生きていたいのだ。少なくとも、例え心が千切れそうなほど
⊃一リャが弱かったとしても、サ口モンは生きている⊃一リャを見ていたいと
願っている。
死ぬことで崇高とされる誇りなら、サ口モンにはまるで必要ないのだから。
*
かさこそ、と渇いた音をさせ、床へ何かが落ちた。ベッドの傍らで、サ口モンは
いくらか眠ってしまったらしい。
蝋燭の灯りが揺らめく。
そのあえかな炎が、⊃一リャの青ざめた顔を照らし出す。血の気のない頬と対照的に、
赤く腫れた唇が不吉な官能を呼び覚ますかのようだ。
その連想にサ口モンは自嘲し、音の方へと目を凝らした。ずっと握りしめていたのか、
⊃一リャの手から落ちた紙の固まりが、そのまま開きもせず闇に浮かんでいる。
拾い上げ、中を開いて見た。
口元に嫌な苦味が甦った。頬が引き攣れた。鼻の奥を刺す硬質の痛みが強くなっていく。
床に正座し、膝の上で紙を丁寧に伸ばし見直すが、そこには見慣れたくもない
自分しか、やはり見出せなかった。
「…まだ完成じゃないんだ」
薄目を開け、⊃一リャがこちらを見ている。目の上の傷が瞼を倍にも膨らませ、
もっと開けることができないのだ。無理に笑おうとして走る痛みに歪んだ
⊃一リャへ返事ができないサ口モンに対し、若者は逆に済まなそうにする。
「おまえが謝ることはない」
「僕はいいんだよ。もうとっくに汚れているもの」
「そんなふうに言うな」
折角伸ばした紙が、今度はサ口モンの右手の中で収縮していく。
「ううんいいんだ。僕よりもサリーは大事なひとなんだから」
「そんなことを言えば俺が喜ぶと思うのか?」
「さぁ…わかんないよ…でも僕は、描いたその絵を取り返せて嬉しい。
もうサリーに貰ってなんて言えないけどね」
今度は口元だけで微笑を作る⊃一リャは、少し目を閉じた。疲れるのかもしれない。
サ口モンは右手の指を手中へ手繰る。捨てるためではない。⊃一リャに返さないためだった。
「また描けばいい」
サ口モンはそうして立ち上がる。まず⊃一リャから遠い蝋燭を吹き消した。
「描くだろ?」
ベッドポストを暗く照らすもう一本へ顔を寄せ、サ口モンは息を吸い込んだ。
直前に伸ばされた⊃一リャの左手を、目端に捉えながら。暗闇で、⊃一リャの無傷の
利き手がサ口モンの頬を包み、引き寄せようとした。
サ口モンはそこへ右手をそっと添え、⊃一リャの身体の脇へ他方の腕を突き、
わが身を支える。7゙ノレガ一の提言に従う義理はないが、行き詰まった気配を見切る
しかなくて、⊃一リャをその場凌ぎの慰めにするのはどうしても嫌だった。
「…サリー…ぼく……」
「良く眠れ。夜明けまでまだあるからな」
もう一度、⊃一リャはサ口モンを呼んだが、既に彼は医務室のドアを後ろ手に閉めた。
就寝室に戻ったサ口モンは、ベッドへ身を横たえたがすぐに起き上がり、
ベッドの下から行李を引っ張り出す。静かに留め金を外し、中から小さな木箱を
見つけ、懐を探る。取り出した皺くちゃの紙を2つ折にし、箱内へ納めた。
中には以前⊃一リャがくれたオデッサの絵も入っている。
再び慎重に留め金を掛け、元の場所へ行李を押し込むと、サ口モンは今度はベッドへ
潜り、間もなく寝息を立て始めた。
隣の上段で7゙ノレガ一が天井を睨んでいたのを、多分気づいていたはずだった。
*
ドクトル・クリソ力゙一に発熱の頻度を訊かれても、⊃一リャはうまくごまかせたと
思っている。三日に1度どころか、一日に3度は38度以上になっているだろう。
クリソ力゙一の見解は、食欲不振と食後の紅潮、喘鳴と咳込む回数の度合いで、
全てが証明しているとか。薬があれば治る病も、収容所労働者には死を意味する。
金が造れるなら、薬はもっと簡単でいいはずだ。サ口モンはΛノレツォ一ク一家の
スイス亡命のために偽造書類一式と引換えで、危険かもしれないが他に手のない
取引を持ちかけていた。リスクは計り知れないが、所属する組織で高い地位を
与えられているΛノレツォ一クの裏切りに比べればまだましかもしれない。
この都合良い考えはサ口モンの気を存外良くした。ゆえに、分はこちらにある、
という実感は日増しに強くなった。
感謝祭パーティー後に間に合うよう、サ口モンは用意を請け負った。薬も間に合うだろう。
クリソ力゙一は安堵したが、おのれを蝕む病が結核であると⊃一リャにはっきり
気付かれる前に手回しの済んだサ口モンは、もっと安心できた。
夜半、静寂に気遣い、微かな音も漏らすまいと耐える声に、サ口モンは耳を澄ます。
起き上がって全身を器用に反らし、脇の柱と上段のへりに掴まっていっぱいに
首を伸ばす。そこでは⊃一リャが眠れず、苦しげな吐息をその手のひらで受けとめている。
「寒いか?」
声に微笑もうとする⊃一リャに、サ口モンは人差し指を口前で立てた。笑みを途中で
消す前に、するすると敏捷に柱を伝い、上段へ音もなく上がる。おもむろに⊃一リャ
の頬へ手を置き、自己流の触診。熱さに歪めそうになる顔をなんとか制し、無言で
⊃一リャの掛け布を捲くると、サ口モンは隣へ滑りこんでいた。⊃一リャは黙って
奥へ詰める。
最近では頻繁になったこの侵入も、起床時間30分前に目覚めるサ口モンによって、
誰にも知られることはない。実際は暗いうちにサ口モンは目覚めているのだが、
寒いと甘える⊃一リャの高い体温が心地好さに、いつしか覚醒はより早まっていた。
発熱は必ずしも⊃一リャにとって良いとはいえないと知りながら、彼の発する
あたたかさは、忘れかけていたある懐かしい触覚をサ口モンへ思い出させた。
経年の足らない⊃一リャの病んだ身体は、それでもサ口モンと比べうべくもなく
弾力に優り、触れたところで罪に問われるいわれを持たない滑らかさを
充分保っているのだから。
「…サリー、待って……」
感謝祭を明日に迎える未明、普段どおりサ口モンは⊃一リャの寝床から出て行く。
ぬくもった身体から、冷気はみるみる体熱を奪う。
「戻って…サリー。サリーなら僕、構わな…」
伸びたサ口モンの指は、暗がりの中、正確に⊃一リャの唇を抑止する。
「頼むからそれ以上言うな」
まだ毛布の中の⊃一リャの手を探り当て、それをひっぱり出すサ口モンは、
彼の手で口を覆わせた。そうしておいて、静かにその甲へくちづける。
「…おまえの若さにつけこませないでくれ」
「でもサリー…」
「心配するな。多分おまえが考えてる以上に、俺はおまえが大事だ。
…おまえとはやり方が違うだけだ。…わかるな?」
返事を待たず、サ口モンはそのまま静かに下りていく。
⊃一リャは本当は寒くなどなかったのだが、熱が引いているのを初めて口惜しく思った。
*
小さな舞台をしつらえた元食堂ホールの賑わいは、戦時下における囚人という
立場を、ひとときとはいえ工廠人員たちから忘れさせてくれた。素人芸にしては
軽妙な小噺を披露する植字工から、『星は光りぬ』を歌ってカバレット演芸で
喝采はくした日曜大工ならぬ日雇いテノールといった按配。今日限定ながら、
上下関係の境を曖昧にする饗宴を、誰もが最後かもしれない祭りに感謝するという
予感を秘め、束の間の愉しみを享受している。
座内の享楽雰囲気にあって、サ口モンは絶えず視線を向けてくるΛノレツォ一クの
おかげで心から寛ぐことがなかった。
「坊やどうした、ビール呑みすぎたのか?」
「よせ、ヘッケル」
千鳥足の男が、サ口モンの肩へ重たげに頭を預ける⊃一リャをからかってくる。
すかさずサ口モンは男を手払いする。酔いに任せて普段なら決して異を唱えない
上役のサ口モンに男は目を剥くが、逆に鋭く光るサ口モンの冷たい眼に睨まれ
勢いをなくす。こんな水っぽい代用ビールなんざ酒のうちに入るか、と口の中で
管を巻き離れていったが、見送るサ口モンは改めてホール中をざっと見渡す。
幸い、誰も今のやり取りに注目した者はいなかった。
見開いた目を閉じながら大きく息を吐き出し、サ口モンは全身の強張りを解く。
それを待ったように、コンコン、と⊃一リャが背中を丸め、サ口モンの膝へ
くずおれそうになった。
「…⊃一リャ……後生だ…」
今ここで咳はするな、ナ千に気づかせるな。願いを込めてサ口モンは声に出さず、
⊃一リャの腰へ手を回し、布地の余る脇腹を自分の方へと引き寄せる。
熱が上がっているらしく、衣類を通しじんわりと、⊃一リャを攻め立てる体内の
発火装置が活発化するのがわかった。
返事をしないでそのまま項垂れている⊃一リャに苛立ち、サ口モンは無理矢理顔を
上向かせた。こんなに身体を火照らせながら、だるさに弛む目は潤み、それなのに
頬から血の気を根こそぎ奪っている。
くそっ、心中でウィルス軍を罵倒するサ口モンは⊃一リャを脇に抱えるように立ち、
ホールのざわめきから離れた。手洗いの明かりの下に立たせ、既に馴染みとなった
発熱の疎ましさにべそをかく⊃一リャへ強引に笑う。そうして安心させてやる
サ口モンは懐から小刀を取り出すや、両手を背後に回した。
ジジジッ、頭上のタングステンが鳴る。それを⊃一リャが他意なく緩慢に見上げる
のを見計らい、サ口モンは指先にぐっと力を込めた。刃先が皮膚を裂いて顔面へ
反射し、痛覚を走らせる不具合も、⊃一リャに見せるのはサ口モン自身が許さなかった。
「…咳は、まぁ少しなら構わん。だがな…ホンモノの血の色だからな…いいぞ…
ほぉら、これで大分男前になった…」
指先を筆代わりに、⊃一リャの青ざめた顔色へサ口モンが画家の使命をここぞと
発揮し、鮮やかな彩色を施していく。洗い立てのシーツと同じ色だった⊃一リャの
頬が、刷毛ではいて紅を散らしたようになった。
最後の仕上げに、サ口モンは手のひらへ⊃一リャの尖った顎を受け、半ば夢心地の
少年の黒い瞳を覗きながら、自分の顎をしゃくって見せる。何を言わなくとも、
⊃一リャはサ口モンを模し、彼から視線を外さずほんの心持ち顔を上向けた。
サ口モンの小指が伸びてくると、⊃一リャはそこが下唇と上唇を交互に二度ずつ、
往復するのを感じた。
何をされるのか察知した⊃一リャの瞼が、自然に降りていたからだった。
気配が遠退くのを肌理表面が感じたわずかな対流を合図に、⊃一リャはゆっくりと
目を開ける。そこで見るサ口モンは、いつにない真剣さ以上の狼狽を後悔するような、
こんなはずではないと予想外の結果に自責せずにいない実直を厭いたくてたまらないような、
どこか途方に暮れた荒野の旅人のように映った。
「……サリー……? どうし…」
た、の音は、押し付けられるサ口モンの胸に掻き消えた。その瞬間、⊃一リャは
気を失う寸前に似た浮遊感に包まれ、そのまま再び目を閉じたくてたまらなく
なったのだが、頭上あたりで囁かれ、繰り返されている同じ言葉が、すぐに彼を
引き止めた。
サ口モンは何度も何度も、⊃一リャを力一杯抱きしめ、すまない、と呟いている。
何故彼がそう言いたいのか、⊃一リャにはわからない。
理解できない。
理解する気はなかった。
あやまらないで。どうしてあやまるの?
とは、⊃一リャが言うことではない。絵以外のことで口数を増やす⊃一リャを、
サ口モンはさほど喜ばない、⊃一リャはそう思っていたからだ。
サ口モンは黙ったまま、上着の袖をひっぱって内布の先を洗面台で濡らすと、
手早く⊃一リャの唇を拭った。そこからすぐに紅色は消えたが、摩擦による赤みが
しばらく名残を留めた。サ、リ、ー、とかたどる口から覗く舌先がゆっくり動いて、
上下の歯に挟まれる。多少白っぽい襞に食い込む⊃一リャの前歯は、
端がほんの少しだけ欠けていた。
「いたなソ口ヴィッ千! 急げ、所長がお呼びだ!」
2人はほぼ同時に、パイドパイパーの笛が鳴り止んだような覚醒をした。
開けた者がそのまま閉めずにおいたドアから冷気が流れこんでくる。
サ口モンは常の作法を思い出し、⊃一リャから恭しく一歩分下がった。
「…先に、ホールへ行け。疲れるようなら構わん、ベッドへ戻れよ。誰にも
言わなくていい」
「うん、わかった……サリー、またあとで。…ね?」
踏み出す一歩に鍵をかけ、サ口モンは振り返る。
あとで、泣いているような目尻の下がり方だが、⊃一リャは言いながら優しく
微笑んで、振った左手をそっと握り締めた。
するなと言われていることを見咎められた子供のように、上着の内側へとそれを隠した。
こういう具合で、⊃一リャはいつだってサ口モンが離れなくてはならない直前まで、
そうすることが何か不当な罰でも与えるためのような気にさせるのだ。
だから、サ口モンは恒例になった嫌な予感を、敢えて大したことではないと
判断でき、そこに⊃一リャを残しても大丈夫と逆説的に考えられる。
考えなければならなかった。
まさかそれが、⊃一リャの声を聞く最後になるとは、サ口モンには思いも及ばなかったのだ。
季節は秋もとうに去って、冷たい月の光は煌々と昼間と変わらず照っていて、
暗い裸電球の代わりに⊃一リャの弱々しい笑顔を浮かび上がらせていた。
<おまえはいくつだ?>
当然のごとく、ホノレス卜は任務遂行のため、感謝祭パーティーで看守たちに
振舞われた高級ワインを飲んではいなかった。粗野で唾棄すべき人物だが、
彼もせめて忠節たれという良心に恥じる未来を望んだわけではないと
思いたかったのかもしれない。
<……20歳です…>
<そうか。充分立派な男だな。立派なまま、では仲間のためにこうなっても、
おまえは悔しくはないだろう?>
つ C
(
>>250 からの続きです、すみません
>>251)
神よ、あなたがこれをわたしに見せようとお決めになったとしたのなら、
わたしはあなたを信じる何百万というひとびとの敵にもなってみせましょう。
銃声―。
何もかも死に絶えたあとも変わりはしない、あまりに軽率すぎる寂寞。
そして、軸を失いくずおれる、もう⊃一リャではない、⊃一リャだったものが、
その静粛の寵愛をほしいままにする。
*それ*を照らす月が、オデッサでも同じように素知らぬ顔を見せているなんて、
そんなことはもうサ口モンには到底信じられなかった。
*
Λノレツォ一クの行方を知りたいか、7゙ノレガ一はソ口ヴィッ千へ問う。返答は案の定、
首を横に振られただけだ。別に殺しに行く体力が残っていないわけではない、
と言わせたいようだがそれは違う、ソ口ヴィッ千はさっきの少女へ向けるように笑う。
あの時、愚図愚図と偽造書類の確認を長引かせたΛノレツォ一クが行った決断は、
収容所だけでなく祖国を捨てる者が最後に示したなけなしの忠誠なのだ、
誉めるつもりは毛頭ないが。ならむしろ、ヤツはもっと<処理>を巧くやるべき
だった、俺に見破られるような段取り悪さをおかしさえしなければ、まだ大目に
見てやったものを。
7゙ノレガ一はソ口ヴィッ千の達観が、どれほどの規模の絶望と哀しみに顫える時間を
経た結実なのか、想像しようと試みる。
そんなことはどだい無理も甚だしい。
早々に諦め、7゙ノレガ一は当初の目的である配達人の役目を思い出す。
ブリーフケースからクリアファイルを抜き取って、そのままソ口ヴィッ千の前へと差し出す。
あんたがあそこに置いて行った行李の中にあったものだ、7゙ノレガ一の声にソ口ヴィッ千
は顔を顰める。黄ばんだ紙が数枚、プラスチックを透かして見える。
⊃一リャが描いた幾千というコンテの線はとっくに色褪せ、ピントが合わないまま
結露越しの窓を映した失敗写真のようだ。あまり嬉しそうでないソ口ヴィッ千の様子に
7゙ノレガ一は予測していたが、受取りまで拒まれることはないと思っている。
しかしソ口ヴィッ千は、良く見もしないうちに再び7゙ノレガ一の手にファイルを押し付け、
遺言書なんぞは存在すまい? 第一葬ろうにも俺はどこに墓があるかも知らないぞ、
と半ば陽気にすら聞こえる声で話す。
ザクセンハウゼンに戻されるぐらいなら、Λノレツォ一クに貸した俺の慈悲を取立てに
行く方がよっぽどましだ、続けるソ口ヴィッ千は細く消えてゆこうとする天の光柱を
仰ぎ、目を細める。
「…みて園長先生、天使よ! みんな、おうちにかえってゆくの!」
輝くはしごを引き上げた空の上を、少女は地上へ散らばってはひとびとを
からかったり笑わせたり哀しませたり、そしてたくさんの運命を
ただ見届けるしかない証人として降りたった天使たちが門限を守り、
点呼のあとに甘やかな眠りにつく憩いの家と見なしていた。
その正門にあたるあの雲の絶え間を描くことを愛した⊃一リャが、そこにいないわけがない。
先生おかしいわ、なにを泣くの?
少女のいぶかりは次第に不安を帯びるが、哀しませるのを怖れたソ口ヴィッ千が
急いで笑顔に変えたために、事なきを得る。それから大儀そうに立ち上がり、
老人は少女の手を取る。そろそろこの子の母親が迎えに来る頃だ。
会いに来てくれて、感謝する、少女の小さな手に繋がれた皺だらけの掌が差し出され、
7゙ノレガ一は諦めたようにそれを握る。本当にいいのか、という最終確認を、
ソ口ヴィッ千は再び無言でかぶりを左右に振るに留める。
「さぁ、ママのところへお帰り」
さよならおじさん、さよなら園長先生。少女は朗らかに答え、ワーゲンのゴノレフから
降りて幼稚園の建物へと急ぐツイードスーツの婦人目掛け、駆けて行く。
雲の絶え間のあった辺りには、そろそろ一番星が淡くまたたいていた。
一途な称呼は届けられたが、見上げるすべての者が知る必要もない、
微光は牽制のための特別暗号に見えなくもなかった。
FIN
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
以上、勝手に祝・ア/カ/デ/ミ/ー/外/国/語/映/画/賞受賞
あとやはり途中規制中断、本当にすみませんでした。。
>>222 続き待ってました!
萌えました。萌えてます
過去と現在が交錯してる見せ方がいいなー
256 :
風と木の名無しさん:2008/02/27(水) 00:02:12 ID:BWGQPzBB0
>>231 読み終えてから沈黙し、拍手した。
何このクオリティvv
>>231 すごい、すごい!
元ネタ知らないけど引き込まれて読んだ。
手越しのキスとかものすごい萌えた。そして泣いた。
翻訳文学のようだ。とにかくすごいとしか言いようがない。
書いてくれてありがとう!
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ilの瓶×有響だよ。それっぽくないけどね
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 今夜の放送が楽しみでうっかり徹夜したんだって
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ バカジャネーノ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
第15話「20世紀からの復讐」の次の日のお話
だからネタバレ含んでます
ナマモノ無理な方はスルーお願いします
凄い久しぶりに書いたのでgdgdです
「おはようございまーす」
何事もなかったかのように、瓶山はそう挨拶して特命係に入ってきた。
椙下はティーカップを見る視線をつい、と上げる。
フライトジャケットの下は、あのシャツだろうか。
昨日の美和子の様子ではその可能性が高いだろう。
あれだけ自分に心配を掛けさせるなんて。寿命が縮むかと思ってしまうぐらいだった。
その意趣返しぐらい、する権利はある。
心の中でそう微笑み椙下は口を開く。
「お早う御座います。処で」
「有響さん」
ジャケットは脱がないのですか、とからかう科白は部下に止められる。
瓶山の真っ直ぐな眼に見詰められる。
「ご心配をお掛けしました!」
「全くです。君が人質になったと聞いて、どれだけ心配したか想像が出来ますか?」
「御尤もなことで、弁解のしようもありませんっ」
芝居がかった喋り方に椙下はにっこりと笑う。
その笑みを見てか、瓶山も笑顔になる。
「でも、嬉しいですねやっぱり」
「はい?」
「有響さんに心配されるのって」
「そうでしょうか」
「いいや違う、有響さんがちゃんと心配してくれてたんだってことか」
コーヒーを淹れながら瓶山は語る。
「最初包丁を持った店員に迫られた時には、とにかくこいつを止めなきゃ、俺がどうにかしなきゃっていう気持ちでいっぱいで。
でも俺じゃどうにもならないって思った瞬間、頭の中に有響さんのことしか浮かばなかった。助けて有響さん、
俺は今こういう状態なんです、どうすれば全員助かれて犯人を逮捕できますかってひたすら、もう祈るように思ってました」
椙下も昨日の出来事を思い出す。
テレビに映る瓶山の姿。
それを見た瞬間に居てもたってもいられなくなった。
どうして。
どうして瓶山君が。
馨君が捕まっているんだ。
その言葉の繰り返し。
冷静ないつもの椙下有響に戻れたのは、トリオの元に顔を出した時だったか。
「その後犯人が俺目的だってのが分かって、それからはもう有響さんの事ばっかり考えてました。俺の傍に居る所為で、
有響さんが酷い目に遭ったりしたらどうしよう、って待て待てそれ以前に俺は迷惑掛けっ放しじゃないかー、
よく考えたら有響さんとの出会いもこんな感じだしなー、なーんてね」
「迷惑なんて、僕も掛けてるじゃないですか」
「そんなことないっすよ」
有響さんと一緒なら、迷惑なんて感じませんよ。
瓶山はそう言ってコーヒーの継ぎ足しに立つ。
これだから、彼は。
―――僕の言いたい言葉をみんな先に言ってしまう。
「素晴らしいヤマカンですよ」
「え?なんすか?」
「いいえなんでも。処で瓶山君、君は僕に迷惑を掛けていると思っていたんですか」
瓶山はきょとんとした顔をする。
「えと、もしかして怒っていた―――とか?」
「さあ、どうでしょうか」
「ええ?!そのー、謝ったら許して貰え、ます?」
「誤って済むなら」
「俺たちは必要ないっすよね。それじゃ―――」
「今夜、お暇ですね」
椙下は瓶山を見る。
面白いぐらい真っ赤だ。
心配の代償。
何と子供っぽい、自分らしくないやり口。
それはこの反応を見るだけでお釣りがくる。
こんなに素直な人間を、椙下は警察に入って初めて見た。
自分の行動の奇矯さに驚きながらも、徐々に理解を示してくれた。
突き放しても、理由を自分で探って対応をする。
気付いたら、瓶山の隣の居心地の良さから離れられなくなって。
「君の謝罪を、聞きたいですねえ」
この年にもなって、恋なんてものをしてしまって。
そんな自分を、彼は受け入れてくれて。
「お暇、でしょうか?」
「はい」
彼の為ならば、己の頭脳の限界にだって挑めるだろう。
「そうでした。瓶山君、ジャケットはお脱ぎにならないのですか?」
その瞬間コーヒーをステレオタイプに吹く瓶山を見て、椙下は少し意地悪そうな微笑みを浮かべた。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ ヤパーリgdgdダッタナ
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
有響さんの瓶名前呼びは、一応二人きりの状況で使っているという自分設定
あの日の放送はテレビの前で禿萌えたんだぜ
有響さんはツンデレだと思うんだ
すんません最後名前ミスった…!!!orz
更に今夜は雑学王…泣きたいよう
>>263 右キョさんの事ばっかり考えちゃう瓶可愛いよ瓶(*´Д`)
今夜放映無くて寂しかったけど、萌えががっつり補給されました
ほのぼの(´∀`)しますた
かわいい萌をありがとう!
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
剣士三人ネタで仮面受けっぽく。仮面外す外さないをスレで見て思いついたのが何故かこれ。
「その仮面の下はどうなっているんだ?」
「「は?」」
剣士三人での乱闘を自分の勝利で終えたその時、アイ区は問いかけた。
突然の事に呆然としているメタ騎士。
横の丸スはこの事態に一人焦っていた。
(突然何を言い出すんだろう、この人は・・・。
こういうのは例え正体がすぐに分かっても言わないのが常識だろう?
仮面キャラが仮面を外すのは戦闘に負けるかイベントの流れが普通で・・・はぁ。
空気を読んでほしい・・・というか、僕のいない所でやってほしい・・・)
我が道を行くアイ区には何を言っても無駄だと分かっているので、胸の内で丸スは思った。
常識人はこういうとき辛い。
「・・・何故、そんな事を聞く?」
「仮面には良い思い出がない」
「「は?」」
父親が仮面の騎士に殺されたという自分の過去を、アイ区は二人に話した。
「話は分かった。だが、だからといってそれは私が素顔を見せる理由にはならない。
こうして付けている以上、取れない理由が私にはある。こればかりは譲れん。
・・・今、我々は共に戦う仲間だ。そのような個人的事情で、和を乱すべきではないのではないか?」
内心怒りに燃えているようで、口調は静かなものの、メタ騎士はキッとアイ区を睨んだ。
が、アイ区はそれに気づかないのか気にしていないのか、次の爆弾を投下したのだった。
「仲間だから、知りたいと思ったらいけないのか?
俺は、あんたは仮面だけど、好きだからもっと知りたいと思ったんだ」
「「・・・は?」」
「あんた、自分の事は全然話さないしな。前は俺たちだけだったが、最近はノレカリオとの対戦が多いし・・・」
(何と言うか、仲間にする説得を隣で聞いている気分だな・・・)
丸スは少し居心地が悪いが、黙って状況を見守る事にした。
「奴とは互いに認め合った仲だ。・・・我々も、そうではないのか?」
「あぁ、俺もそう思っている。あんたは良い奴だ。それに強い」
(さらっと言ってくれるなぁ。・・・あ、照れたのかな)
すっとアイ区から目を逸らしたメタ騎士を見て、丸スはこっそり笑った。
「だから、もっとあんたの事が知りたい。知って、俺も今よりもっと強くなりたい。
そう思うのは・・・いけない事か?」
はぁ、と息をつくのが聞こえて、丸スは勝負がついた事を悟った。
「・・・この仮面は外せないが、確かに、我々は互いを知る事も必要なのかもしれない」
「じゃあ、いいのか?」
「話せる範囲の事なら」
(勝者アイ区、か。それにしても、こういう事だったなら僕抜きで話を終わらせないでほしいよ。
僕も、二人の事は知りたいと思っているんだから・・・ん?)
こっちを見ている視線が二つ。
「ノレカリオに、カーヒ''ィ?」
(対戦待ちかな。あ、気づいた・・・って、逃げなくても!)
こちらに気づくとノレカリオはすぐに走り去ってしまったが、カーヒ''ィはこっちに笑顔を向けて歩いてきた。
とりあえず、丸スは自分も笑顔で手を振っておく事にした。
(それにしても、メタ騎士とカーヒ''ィって似てるなぁ。何となく聞き辛くてふれないようにしてるけど・・・)
「もっと仲良くなれば、話してもらえるかな?」
「う?」
「あ、いや、君の事じゃないよ」
(僕ももう少し積極的にいくべきかな。せっかく同じ剣士という立場なんだし、利用しない手はないよね)
「・・・僕も剣士だよね? ゼノレダ」
「りンク、貴方は緑だから・・・」
「緑だからって何!!」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
オチが緑の人ですみません。
剣士三人組、中でも仮面の萌え度は異常だと思う。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 棚には初投稿らしいモナ‥‥。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| お前が緊張してどうする。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | カタカタ・・・(´∀`ll)(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
聖なるお兄さん達のSSです。
「うーん・・・・・・気になる・・・・・・」
ある日の昼下がり。
いつものように片肘を立てて昼寝をしている仏田の顔を、家須は真剣な顔で眺めていた。
まるで幼児が車の下に入った猫を覗き込む時のように、もしくは中学生が自販機の下に落ちた小銭を漁る時のように跪いて家須が凝視しているもの、それは・・・・・・
「どうなってるんだろ、これ」
仏田の額のホクロであった。
最近仏田は散歩や買い物で外出すると、必要以上に疲弊して帰ってくる事が多い。
汗でべたつく首の下を拭い、肩で息をする彼に事情を問うた時、高確率で挙げられるのがこのホクロなのである。
彼のホクロには何やら言いようもない魅力があるらしく、彼の額にあるそれを目にした民衆は、時に彼のホクロを「押したい」という強い衝動に駆られ、彼を追いかける。
中でも子供はとりわけ凶悪で、近頃は仏田のホクロを的に輪ゴム射的を始めたというのだから、いよいよ世も末と言わざるを得ない。・・・・・・世紀末の災厄よりも厄介である。
しかし、彼のホクロに魅了されているのは、実は人間だけではなかった。
事もあろうに彼と同棲、いや同居している聖人も、ついぞ彼のホクロに興味を持ち始めてしまったのである。
「いっぺんだけでいいから触ってみたいなぁ・・・・・・でも触ったら絶対怒られるもんなぁ・・・・・・」
仏田のホクロは見た目以上にデリケートなようで、ほんの少しでも突つこうものなら即ち悲鳴が挙がるほどである。
事情を知らない子供や酔っ払いならまだしも、事情によく通じた自分がただの興味本位で触ったとすれば彼の怒りを買うこと請け合いだろう。ちなみに仏田が怒ると物凄く怖い。
・・・・・・しかし。
「こういうのっていっぺん気になりだすと止まらないんだよね・・・・・・今なら仏田も爆睡してるし……」
なんと、家須の結論は無謀にも「押さない」よりも「押す」方向に傾きつつあったのである。
「仏の顔も三度までって言うし、押すのは一度だけだし、一度だけなら怒られないかもしれないし、近くで見たら意外と柔らかそうだし・・・・・・」
頬を上気させ、次第に荒くなる呼吸を抑えながら、震える指を仏田の額に伸ばす半ば変質者テンションの家須に、すやすやと平和な寝息を立てている仏田は気付く様子もない。
家須はさらに指を近付ける。緊張に呼吸が止まり、代わりに心臓がどきどきと高鳴る。
「(もうちょっと・・・・・・もうちょっとだ・・・・・・)」
ぎゅっと目を瞑る家須。そして。
ぴと。
ついに、家須の細長く節くれだった人差し指が、仏田のホクロに接触した。
「んっ・・・・・・」
仏田が目を閉じたまま身じろぐ。と同時に家須はばっと身体ごと離れた。
「ご、ごめん起きた?!仏田起きちゃった?!ごめんねごめんねほらあのさ普段みんながあんまり触りたがるもんだからさ実際どうなのかなとかさ、本当ごめんねごめ・・・・・・」
途中まで言って、相手がまだ深い眠りに落ちたままである事に気付く。
「(な、なぁんだ・・・・・・)」
慌ててしまった自分が馬鹿みたいだ。家須は恥ずかしい気持ちを誤魔化すかのように、もう一度姿勢を低くして仏田の顔を覗き込むと、神妙な面持ちで考察を始めた。
「(それにしても、さっきの反応・・・・・・)」
仏田から漏れた声は、若干鼻にかかったような、甘えるような、とにかく家須が普段聞いたことのないような声だった。
けれども、それは痛みや怒りのような「不快」なものに対する響きともまた違うように思える。
「(もしかして、ゆっくり触ると痛くない・・・・・・とか?)」
だとすれば大発見だ。もし痛くないとすれば、今後彼のホクロを狙う小学生やリーマンにも「ゆっくり触るように」注意するだけで、彼は逃げる必要がなくなるのである。
「(でも、さっきのちょっと触った分だけじゃ分からないよね・・・・・・)」
いつの間にか、家須の指はまた仏田の額に伸び始めていた。表向きは仮定の裏付けのため、しかして実際の動機は純粋なる好奇心によるものである。
何故だかは分からない、が、その時家須は先程仏田が発した不思議な声をもう一度聞いてみたいと思ったのである。
「(次触ってもまだ二度目だしね・・・・・・今日はまだ悪いことひとつもしてないから、セーフだよね・・・・・・セーフ、だよね・・・・・・)」
家須の鼻息に、仏田の睫毛がかすかに揺れる。その間にも家須の指と仏田のホクロは、着実にその距離を縮めていった。
「(今度はもうちょっと長めに触ってみよう。すぐに離しちゃったらその次はもう三度目だし、もったいないもんね・・・・・・)」
ぴと。
家須の指先がまたホクロに触れた。
「うう・・・・・・ん」
仏田がさっき触った時と同じ声を出す。
一瞬たじろいだ家須だったが、すんでのところで「次に触ったら三度目」という言葉を思い出し、仏田のホクロを離すには至らなかった。
「(やっぱり、あんまり痛そうには見えないんだよなぁ・・・・・・)」
ホクロに触れた指はそのままに、仏田の寝顔を観察する。見る者全てを癒し和ませるような、慈愛に満ちたいつもの寝顔である。
「(ちょっと動かしてみよう)」
指が離れないよう細心の注意を払いながら、ホクロに当てた指をすーっと動かす。
仏田はぴくりと動いたが、幸い悲鳴をあげる様子は無かった。
「(ほら、絶対そうだ。ホクロが痛いのは触り方が悪いだけなんだよ。)」
自分の仮説が証明された事で調子に乗った家須は、少し大胆にホクロをなぞり始めた。
家須の指が動く度に、仏田は小さく痙攣したり、かすかな声を漏らしたりする。不思議なことに、家須の目にはそんな仏田が可愛く映った。
「(面白いなぁ・・・・・・仏田のホクロ。見た目以上に柔らかいし、つるつるだし)」
仏田はいつの間にか耳まで赤くなり、額にはうっすらと汗が浮かんでいる。
時折家須がうっかり強めの刺激を与えることがあったが、不快そうな反応は一向に見られなかった。
「(・・・・・・今なら、ちょっとぐらいきつく押しても痛くないかもしれない。)」
家須はごくりと生唾を飲んだ。ホクロに当てた指に少しずつ力がこもる。
その時。
「家、須・・・・・・や、め・・・・・・」
熱に浮かされるように仏田が呟いた。
家須は思わずぱっと指を離す。
しかし、次の瞬間仏田の唇から漏れたのは、意外な言葉だった。
「・・・・・・ないで」
「仏田?」
仏田の言葉は完全に寝言だったようで、聞き返した家須に返答はなかった。
「(変なの、仏田。今『やめないで』って・・・・・・」
当の本人は紅潮していた頬もいつの間にか元に戻り、今は規則正しい寝息を立てている。
「(・・・・・・本当にやめない方が良かったってこと?)」
仏田のホクロを見つめながら、家須は悶々とした。
次は禁断の「三度目」である。しかし、もし家須が仏田のホクロを触るという行為が彼の怒りを買うに値しないとすれば、それは罪には問われない。
どうしたものか。
知らぬ間に仏田のホクロすれすれで待機している人差し指を見ながら、家須は悩んだ。
どちらかというと、触りたい。
仏田のホクロには得体の知れない中毒性がある。
しかし、次の一回が彼をお怒りモードに陥れるスイッチにもなりかねない。
どうしたものか。
どうしたものか。
・・・・・・・・・・・・。
家須の額が、ちくりと痛んだ。次いで、温かい液体がじわりと眉間をなぞる。
「(ヤバ、聖痕開いちゃった・・・・・・)」
自分の我慢は既に臨界点を突破してしまったらしい。
これ以上長引くと健康に良くない。
そう判断した家須は、思い切って人差し指を前に突き出した。
ちょん。
・・・・・・・・・・・・。
仏田の口から声が漏れることはなかった。
代わりに、仏田の無機質な目だけがぱちりと開いた。
「家須」
仏田はむくりと起き上がると、部屋の隅に飛び退いてガタガタと震えている家須に満面の笑みをもって命じた。
「カーテンを閉めなさい」
「私がなぜ光っているのかわかりますね・・・・・・?」
正座で向かい合う家須と仏田。
真っ暗な部屋で、いつも通りのお説教が始まった。
しかし、いつもと違うところが一つだけあった。
「・・・・・・フフ、さっきから一体何W出ているのやら・・・・・・」
実は、1Wも出てはいないのである。仏田の顔は、まったく光っていなかった。
仏田が光らない理由。
考えられる二つのうち一つは、「彼が全く怒っていない」こと。
もう一つは・・・・・・
「(仏田、まさか・・・・・・)」
――「何か徳の下がる下世話なことを考えている」んじゃないだろうね。
「まさか・・・・・・まさか、ね」
「何が『まさか』なのですか?」
「な、何でもありません・・・・・・」
仏田も、そろそろ自分が発光していないのに気付いているだろう。
それでも家須がそれを指摘しないのは、ほんの少しの優しさと。
「(・・・・・・暗くて、良かった)」
陽光を完全に遮断したその暗さが、奇妙な熱を持ち始めた自分の頬を隠すのに最適であったから・・・・・・かもしれない。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ ドゲザノジュンビ、デキテル?
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
前投稿の方の直後だったり、分母が途中で大幅に変わったりしてしまって本当にすみません。
>>266さん申し訳ないです。
>>269 乙でした
最近単行本がでた彼らだー!!あの黒子にはそんな謎が…あったらいいかも
思えば元々ネタ(ややこしい)の彼らは多くの弟子を従えていてその要素が十分にあるわけだしw
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
>>222の続きです
引き続きナマ注意。
>>222ほどではないけど冒頭にエロがあるので要注意。
果てた後は、ぐったりとした体をベッドに横たえた。
「満足?」
子どもをあやすように俺の頭を撫でながら、多村は言う。俺は黙ってうなずく。
部屋に入ったときにはさまざまな欲望が頭をよぎっていたはずなのに、実際やってみると終わるのは案外早かった。
一回だけで十分だと思ってしまうのは、認めたくないけどいい年になった証拠なんだろうか。
多村は俺を抱きかかえ、腕の中にすっぽり収めた。かすかに汗のにおいがする。
彼の中にくるまっていると、何ともいえない心地よさを覚えた。
何か言おうと思っていたのに、その内容も忘れてしまった。
多村は俺の顔中に塗りつけるようなキスをした。
まぶたに唇が降ってきて、されるがままに目を閉じた。
彼の感触を肌いっぱいに感じながら、俺はとろとろと眠りが迎えに来るのを待った。
いつになっても変わらないものがあるとすれば、それはこうして一緒に眠る人がいる温かさなのかもしれない。
眠りに落ちる直前、俺は多村の体を抱き枕みたいにぎゅっと抱きしめた。
*******
人体には、受け入れられるものと受け入れられざるものがある。
受け入れられざるものに対しては、人の体は自然に外に追い返すようにできているらしい。
果たして、『これ』はどちらなのだろうか。
多村のアパートの壁は薄い。平日の昼間とは言え、大きな声を出したら誰に聞かれるか分からない。
もっとも、声だけなら度を超えたプロレスごっこにとられるかもしれないが。
「句差野、まだ、痛い?」
まつげの先まで汗で濡らしながら多村が訊く。
はい、痛いですよ、多村君。
もう何処と言わず、俺の体そのものが痛みの塊みたいになってますよ。
返答をするのはもちろん、頭の中でだけ。今の状態では息をするだけでいっぱいいっぱいだ。
全身が得体の知れない異物感に襲われる。不適切な場所に不適切なものをねじ込んだとしか思えない。
体温を奪われていくような、気味の悪い汗がジワジワ噴き出す。
息が震え、視界がかすんだ。
背中が痛い。ポキポキ骨がきしむ。布団を敷けばよかったな、と今更ながら思う。
多村は首を伸ばし、俺の顔や胸に唇を置いた。時々舌を伸ばして舐めまわした。
快感で痛みを逃そうという多村なりの思いやりなんだろう。
しかし残念ながら、彼の不器用な愛撫は虫の這うようなむず痒さしかもたらさなかった。
(もう、これじゃ)
多村に抱かれ、揺さぶられながら思う。
(独りでやる方がよっぽどマシだよ)
独りでなら痛みも無いし、変な気遣いもいらないし、好きなだけ出来る。もちろん今よりずっと気持ちいい。
脂汗をにじませ、叫び出しそうになるのを必死で堪えなければならないこの行為より遥かに有意義だ。
だけど。
息を切らして、切羽詰まった表情で憑かれたように俺の名を呼ぶ多村を見ていると、違った気持ちも湧いて来るんだ。
こうして肌をきつく密着させ、相手の温度を体の内外に感じる行為。
それにはきっと、独りでするのでは得られない不可思議で原始的な魅力が隠されているのだ、と。
行為が終わった後は、ボロボロになった体を畳に横たえた。
自分の中が空っぽになったような気がした。
焦点の定まらない目で狭い部屋を見渡した。
置いてある家具は数時間前までとなんら変わりないはずなのに、妙にそらぞらしく見えた。
きっと、俺が変わってしまったせいなんだろう。
溶けそうな頭で、ぼんやりとそう思った。
俺の横で転がっていた多村がふいに起き上がった。机まで膝で歩き、缶ビールと並んでいる電話器を手に取った。
「どこに電話するの」
「バイト先」
「……」
「そんな顔すんなよ」 受話器を耳に当て、多村は言った。
「代わってもらうんだよ。今日は友人の看病するから、って」
「看病……ね」
畳の上でうつ伏せに寝そべり、低い声で笑った。
素直には言えないけど、彼の優しさが今は嬉しかった。
目を覚ますと、多村は丁度バスルームから出てきたところだった。
新しいシャツに着替えて、タオルを頭に載せている。
「おはよ」
「……おはよ」
布団の中でウトウトまどろんでいると、多村が近づいてきた。
「早くシャワー浴びてこい」
「んー、多村と一緒にはいるー……」
「ばーか」 犬にするみたいにクシャクシャ頭を掻きまわされる。
「ちゃんと待っててやるから」
そう言って多村は、俺のくるまっていた布団を引き剥がした。
欠伸をしながらよろよろと起き上がると、自分が素裸であることを思い出した。
ベッドの下に手を伸ばし、隠しておいた着替えの服を取り出す。
「お前、着替え持ってきてたの?」
「うん」
「俺の部屋で泊まる気満々だったんだな……」
多村が呆れ顔で言う。ハタチの子供と違って、大人は用意周到なのだ。
その夜、多村はずっと俺の傍にいた。
布団を敷き、毛布をかぶせ、俺の肩を抱いた。
テレビをつけていても、騒がしい笑い声も淡々としたニュースの声も全部この場にそぐわないような気がして、結局電源を消してしまった。
虫の声が遠くから聴こえた。いくつもの命が、静かに、絶え間なく鳴いていた。
ゲームばかりしていた頃には気にも留めなかったたくさんの声が、この部屋に流れ込んできていた。
「ねえ、多村」
「ん?」
「なんで多村は最後までしたの?」 彼を見つめた。俺は続けた。
「いやじゃなかったの? やめようと思わなかったの?」
多村は、俺を気遣ってやめようとは言った。でも、彼自身の都合で拒否したことは最後まで無かった。
「それは、――やっぱり、句差野だったから、かなぁ」
「『かなぁ』じゃない。ハッキリ言って」
そう言うと、目を伏せて照れたようにしていた多村の顔が急に引き締まった。俺はどきりとした。
「句差野だったからだ」
眼鏡の奥の瞳は、とても真剣だった。
「句差野だから、最後までしたんだよ」
多村はそう言い、毛布ごと俺を抱きしめた。温かかった。
夏で、夜でも暑くて、寝るときは寄ってくるなとあれほど言っていたのに。
こいつの温かさが、今、俺にとって情けないくらい必要なのだと知った。
多村は俺の耳元に口を寄せ、囁くように告白をした。
少しどもりながら、恥ずかしそうに、それでも真面目に。
俺は何度もうなずき、泣き笑いのような、嬉し泣きのような表情を浮かべた。
シャワーを浴びながら自分の体を眺める。
明るいバスルームの中では、昨日の痕跡がそこかしこに残っているのがすぐに見て取れる。
腕や胸、腹、脚。
温かいお湯を頭から受けていると、記憶が波のように蘇ってくる。
どこをどんな風に撫でられ、舐められ、引っかかれたか。
どんな言葉で求められ、煽られたか。
胸元の吸い痕にそっと触れて、円を描くように輪郭をなぞってみる。
体の奥に、じんわりと熱がこもってくるのを感じた。
右手を、ゆるゆると胸から下に移動させた。
そのときバスルームのドアが叩かれた。
「句差野ー」 慌てて手を引っ込めた。
「な、なに?」
「早く出ろよ。メシに間に合わなくなるぞ」
「う、うん」
がっかりした反面、ちょっとホッとした。
多村が呼びかけてくれなかったら、絶対俺、独りでアヤシイ事してた。
浅い眠りから目を覚ます。
真っ暗な部屋。
窓の外はまだ深い青色に包まれていて、夜明けが遠い。
虫の声さえ聴こえない。
とても、静かだ。
俺の体は多村の両腕で抱えられている。
顔を近づけまじまじ見つめると、暗闇の中に多村の輪郭が淡く浮かび上がる。
熟睡中の彼の顔が、目の前にあった。
薄く開いた唇からかすかに呼吸の音がする。
手を伸ばし、指先を載せてみた。柔らかくて温かい。
まだまだ夢の世界に浸っているのだろう彼に、触れるだけのキスをした。
この先、俺達はいつまで一緒にいられるだろう。
来週のことさえ分からない俺達だ。遠い未来のことなど、想像もつかない。
だけど、とりあえず、こいつの目が覚めたら俺は真っ先に伝えたい事があるんだ。
どんな時代が来ても変わらない、シンプルだけど大切な言葉。
窓辺から弱く朝陽が射し込み、鳥のさえずりが聞こえ出した頃、多村は目を覚ました。
寝ぼけ眼の彼に向かって、俺はぎこちなく微笑み、頭の中で何度も練習したセリフを言った。
「――おはよう。多村」
バスルームから出ると、多村は既に身支度を終えていた。
「行くよ」 彼はドアノブに手をかけた。
「2人で出て行ったら、鉄哉に怪しまれない?」
「大丈夫だろ。普通にしてたらバレないって」
妙に含み笑いをする多村が怪しかったが、まあ信用することにした。
「句差野」
「なに」
「俺から言うのもなんだけどさ」
「なんだよ」 多村が俯く。生乾きの髪が、糸のようにうなじに絡みついている。
「今日もまた、俺の部屋来ていいから」
ぶっきらぼうな口調だった。後姿は、耳の先から首筋まで真っ赤に染まっていた。
俺は思いっきり後ろから多村に飛びついた。
「な、何すんだよっ」
「多村ぁー、大好き」
俺の腕を振り払おうと彼はジタバタともがいた。赤い顔をごまかすかのように、精一杯のしかめっ面を見せながら。
幼かったあの頃の俺達が、今の俺達を見たらどう思うだろう。
おっさんになったな、なんて笑うだろうか。
それでも、俺はあいつらに向かって胸張って言ってやりたいんだ。
大事な人がいてくれてるおかげで、俺の『今』は幸せだぞ、って。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
現在はツンデレ×ツンデレ、過去は超初心者×初心者って感じが出せてたら嬉しいです
四弦はムッツリと男らしさが混在してるのがたまらんです
唄は今後も小悪魔として色々突き進んでもらいたいものです
>>287 乙!お互いを思いやる気持ちや不器用さに何だか目から汗が…
あと、過去の二人の初々しさにすっかり禿上がってしまいましたよ
しかし唄が小悪魔として「色々」突き進んだらライバルが増えるよね…四弦がんがれw
>>287 この人達は純粋に好きだったはずなのに・・
最後まで読んでしまいましたよ見事に堕とされちゃったよどうしてくれる!!!
今月は棚のせいでナマに目覚めちゃったよ
,-、
//||
// .|| ∧∧
. // 生 || ∧(゚Д゚,,) < 須磨ブラXの団長と王子だよ
//_.再 ||__ (´∀`⊂| < 今更感溢るるXスレの野宿ネタだよ
i | |/ ||/ | (⊃ ⊂ |ノ〜
| | / , | (・∀・; )、 < 初投下なんで緊張で死にそうなんだぜ
.ィ| | ./]. / | ◇と ∪ )!
//:| | /彳/ ,! ( ( _ノ..|
. / /_,,| |,/]:./ / し'´し'-'´
/ ゙ / / / ||
| ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./ / /,!\
| | / `ー-‐'´
| | ./
|_____レ"
「…眠れないな。」
亜空軍との戦いの中、偶然にも剣士が三人揃ったこのチーム。
襲来を避ける為、手頃な岩影に隠れて夜を過ごすことにした三人だったが、
只一つ、もぞりと動いた影があった。
くるりと周りを見渡して敵がいないのを確認し、少し歩いてみるかと立ち上がった。
腰に携えた愛剣がカチャリと音を立てその存在を主張した。
「…どうした?」
「アイク。」
微かな音だったが、それでも耳に届いたのであろう、一人の青年が起き上がった。
「ごめん、起こしちゃったみたいだね。
ちょっと寝付けなくて…その辺を歩いてこようかなって。」
「何があるのかわからないんだ。今は独りでうろつかない方がいい。
…したことないのか?野宿。下が地面じゃ寝れないのか?」
「そ、そういう訳じゃない!」
マルスは歳こそ若いが大戦を二度も経験している。勿論、旅の道中や戦場では野宿だ。
寒いだの背中が痛いだの、今更そんな泣き言を言う程弱々しくはない。
「しょうがないな、ん。」
アイクは自分のマントの片側を地面に広げ、ぽんぽんと叩いて示した。
「…?何だ?」
「中。来い。」
「………。え、ええ!?」
突拍子もない提案にマルスの声が裏返る。
いくら男同士とはいえ、いや男同士だからこそ、一枚の布にくるまるというのは問題があるのではないだろうか。色々と。
「マント一枚じゃ寝れないんだろう?」
「いや、だからそうじゃなくて」
「俺のとお前の、二枚重ねればいい。」
「ひ、人の話を」
「それに身を寄せ合った方が暖が取れる。」
至極合理的な意見を淡々と述べるアイクに、マルスは自分の方がおかしな事を言っているのかと錯覚させられてしまう。
――そういえばこういう人だ、この人は。
出会ってからまだ日も浅いが、アイクのマイペースさはよく思い知らされていた。
そしてこういう時、必ず自分は彼に言い負かされてしまうということも。
「じゃあ…す、すまないな。」
怖ず怖ずと隣に寝そべるとアイクも横になり、互いのマントを被せあった。
「いい、気にするな。慣れてるしな。(野宿は)」
「慣れてるのか!?(同衾は)」
「…薄い身体だな。近くで見ると更に。」
「失礼だな、君は!……確かに君と比べたら貧相かもしれないけど」
「だけど、強い。
白兵戦においての一番の武器は速さだ。 マルスはパワーはないけど、剣筋が鋭くて 足が速い。
自分の身体の利点を良く分かった戦い方だな。」
「…有り難う。」
面と向かって褒められると結構恥ずかしいものだな、とマルスは俯いた。
言った側はというと、いつもの無表情でしれっとしている。
「……た、戦い方といったら、卿の剣は独特だね。彼も彼自身をよく分かっている。」
「卿…メタナイトか」
「うん、彼はとても良い剣士だ。最初は…その、ちいさい人だな、と思ったけど…」
「…人、なのか?」
「…まあ、世界は広いから。それにしても、初対面で彼と剣を交えた時は驚いたよ。
あの身体で器用に剣を扱うなあ、なんてレベルじゃない。まるで己自身の様に振るうんだ。
それに翼が付いているのは強みだね。体格の差を飛行技術で補ってる。あと…」
「…俺は。」
「…ん?」
メタナイトへの賛辞を遮るようにしてアイクが口を挟んだ。
「俺は、元の世界では傭兵団の団長に就いていた。皆と、大陸の動乱を収めて…。
…あと、クラスはロードだ。奥義も会得した。」
「…てん☆くう?」
「…天空だ。
素早さは確かに劣るが、一降りの威力はきっと負けてない。
それに俺は、まだまだ 強くなる。」
「…?勿論、君の事も頼りにしているよ、アイク。
僕や卿ではどうしても力負けしてしまうから、君が居なかったら大きく苦戦していただろうしね。
君の剣は、大きな戦力だ。」
「…そうか。」
「どうかしたのか?」
「いや、何でもない。…寝る。」
ぎゅ。
言い終わるやいなや、アイクは片腕をマルスの背中に回し、その身体を抱き寄せた。
「ぅわっ…!あ、アイク!」
「…………。」
「…おやすみ三秒か。なんて唐突な…」
言ったそばからもう眠りに落ちたその素直な行動に、マルスはやれやれと苦笑した。
まだまだ強くなる、と。彼はそう言った。
アイクは充分強い、が、彼は己の腕に更に磨きをかけるのだろう。
元の世界にいる人達の為に。
ちら、と彼の寝顔を盗み見る。
…同衾に慣れてるって言ってた。元の世界に恋人が居るのか、それとも。
その傭兵団ではいつも誰かと抱きしめ合って眠っているのだろうか。…こんな風に。
そっと、今は閉じられている蒼眼に触れる。
だったら、自分はこんなに彼に近付いていてはいけない。
彼の腕の中に居るべきは、自分では、ない。
それなのに、背中に回されたアイクの腕は自分のマントごとしっかり組まれていて、
身をよじってみても距離を取ることはできない。
震える人差し指の下で、アイクの瞼がぴくりと揺れた。
彼がマントを掴んでいるから身動きがとれないんだ。
眠っている彼をまた起こすのも申し訳がないから、僕は動けない。
――だからこれは、この腕が振りほどけないのは、僕の意思じゃ、ないんだ――。
鼓動の速さの理由に気付けないまま、マルスは昏々と眠るアイクをじとりと睨み、
それから自身の目を固くかたく閉じた。
,-、
//||
// .|| ∧∧
. // 止 || ∧(゚Д゚,,) < 何もしてなくてスミマセン
//, 停 ||__ (´∀`⊂| < っていうか王子お前どこの乙女だよ
i | |,! ||/ | (⊃ ⊂ |ノ〜
| | / , | (・∀・; )、 < 須磨っくす萌えるよ須磨っくす
.ィ| | ./]. / | ◇と ∪ )!
//:| | /彳/ ,! ( ( _ノ..|
. / /_,,| |,/]:./ / し'´し'-'´
/ ゙ / / / ||
| ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./ / /,!\
| | / `ー-‐'´
| | ./
|_____レ"
>>296 GJ!めちゃくちゃ萌えた!
団長と王子可愛いなー
>>296 団長と王子と聞いて飛んで来ました
乙です!
王子可愛いよ王子
300 :
若獅子×小型犬:2008/02/28(木) 11:29:23 ID:OsalpJKv0
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース
※生物注意
某絶叫歌集団の破天荒×若獅子。
/(^o^)\ツウテンカックー 逢坂1日目宿泊先にて
「おい!ダ/ニ/〜。もう寝たか?」
小兄がドアを控えめに叩く。
さすがに夜中の2時半に起きているわけがないと思い直したのか
そこを立ち去ろうとする足音が聞こえた。
慌てて、ドアを開けてみると薄暗い廊下をトボトボ歩いて自分の部屋へ帰ろうとしていた小兄が嬉しそうに振り返った。
手にはビールとつまみの入ったコンビニの袋をぶらさげている。
「まだ、起きてますよ。」という声を聞いた
小兄はフラフラとした小走りで廊下を戻ってくる。
ステージの興奮とこの1週間で起きたいろんなことを考えると自分も
まだ寝つけてはいなかった。
今回のライブツアーで泊まりは2日間公演のこの大阪だけ。
「もう何時だと思ってんすか?」
廊下では声が響くので小兄を部屋に入れた。
「だってさぁ、一人で部屋にいるとなんか怖くね?」
「小兄また一人じゃ眠れないんでしょう。もう子供じゃないんだから…」
「うさぎと円堂は寂しいとしんじゃうんだよ!!!(笑)」
「。O.゚。ヵゎ(´・Å・。`人)ぃぃ。O.゚。 って!いい加減にしてください!
明日もステージあるんですからね。うわっ。酒臭っ!」
「よーし!まだ飲むぞ!いぇ〜い♪
何でおまえそんな俺のこと嫌うねん?だいたいなお前なんで俺の目を見ない。
おまえオレの目を見て話せ。話をするときは人の目を見て話すもんだ。
うちのおばあちゃんはそう言ってたぞ。
おまえ失礼だぞ!謝れぇ〜。俺に謝れぇ〜。」
なんだか今日はやけにクダをまき絡んでくる。
「え゛ーーーーー!わざわざ部屋に侵入してきてそれすか?いいじゃないですか。
だいたい小兄にそんなにガン見されたら、誰だって目を逸らしたくなるでしょう。」
彼がここまで酔いつぶれるのは珍しい。東京に居るときなら皆無。いつも誰かを介抱する側にまわるとはあっても、彼が酔いつぶれて介抱されているところはあまり見たことが無かった。きっと部屋で相当酒をあおり、それでも眠れず最後に辿り着いたのがこの部屋だったのだろう。
ちょっといじわるに訊いてみた。
「小兄、また寂しさを紛らわせるために、こんなになるまでお酒をガーッて飲んで寝ようとしたんでしょ。なのに眠れないで涙目w!これ図星じゃないすか?ちゃんとまっすぐ歩けてなかったですよ。で、兄さんはどうしたんですか。」
「兄さん一緒に飲んでたけどな。もう何時間も前に寝ちゃったんだよっ(怒)」…
「それで自分の部屋で一人で飲んでいたら、いたらコワクなったんですか?
。o.゚。ヵゎ(´・Å・。`人)ぃぃ。O.゚。(二度目)」
「あのな、犬がな…。」
「犬がどうしたんですか?」
「いないからさぁ…。」
「ちょw。それって、犬を求めてココに来たんですか?
いませんよ。しっかりしてください。
明日もライブあるんですよ。もう寝ましょ。
一人で眠れないなら小兄もこの部屋に居てもらってかまいませんから。」
「そか。じゃそうする。なんか悪いな。」と急にしおらしくなる小兄。
「はいはい。フラフラしているようですから。早く寝てくださいね。」
自分べッドの手前側の少しのスペースあれば充分ですから。
小兄は壁側でイイですね?」
と俺が言い終わらないうちに安心したようにベッドに倒れこみコチラに背中向ける小兄。
背中で小兄の体温を感じる。
彼は、もう寝たのか・・・まだ一人でいろいろ悩みを抱えて寝付けずに居るのだろうか?
そんなことを考えているとますます目が冴えてきた。
しばらくして小兄が寝返りをうちべッドのきしむ音が聞こえた。
背中に包み込むような肌の温もりを感る。彼が静かに俺の髪を撫で始める。
そのうち撫でているのではなく髪をワシャワシャと?み、
俺の頭に頬づりをしている小兄が「ぽっ・・・・ち」と呟いた。
コレなんてムツゴロウ?
俺、どうやら飼い犬の代わりにされているらしい。
まぁ、それでこの人の心がほどけて楽になるのなら、それでもいいかと思う。
犬のように腕に顔をすりつてみた。
髪をワシャワシャしたしていた小兄の腕が体全体を包み後ろから抱きしめてくる。
逞しい二の腕でギュッと押さえつけられると身動きが取れない。
「小兄。俺、犬と違いますよ。」と抵抗しようとすると
耳元で「わかってる。お前は、お前だ。」と囁かれ、うなじに酒臭いキスがほどこされていく。
彼の孤独さ(さみしさ)の標的は今夜は俺であるらしい。
その振りかざされた孤独さが、powerになって後ろから突き上げてくる。
その熱さに思わず吐息が漏れる。
吐息まじりに耳元でやさしく俺の名前を呼んでくる小兄。
そのたびに腰がぞくりと疼く。
終わるとまた後ろから抱きしめてきて、俺の髪をワシャワシャと撫でながら安心したように小兄は眠りについた。
翌朝。
小兄は二日酔いで機嫌が悪そうなので、ベッドに寝かせたままにしておいた。
なんとなく声を掛けれずに、ひとりで身支度をしていると
まだ眠そうな顔をした小兄が起きてきて
「おはよ。ミネラルウォーターきれたからコンビニまで行くけど付き合うか?
ダ/ニ/〜。朝の散歩だ!」と言う。
俺は「行きます!」と即答。
ん!?しっぽを振って着いて歩く犬にされてんじゃね?俺。
彼の愛を一身に受けて、孤独さを癒してあげられるポッチと茶豆が、今は少し羨ましくも思える。
って、何で俺、犬に嫉妬してんだよ!
何故か無性に腹が立って振り返ると
鼻歌を歌いながら後ろからご機嫌な小兄が歩いてくる。
「小兄、今日もステージで/(^o^)\ツウテンカックー やっていい?
いろんな気持ちを込めて」
「バ〜カ♪ バ〜カ♪♪ バ〜カ♪♪♪」
この笑顔を近くで感じるだけで、
今日のライブも頑張れるような気がしてきた。
,-、
//||
// .|| ∧∧
. // 止 || ∧(゚Д゚,,) < 初投稿です。しょっぱなageてスミマセン
//, 停 ||__ (´∀`⊂| < ネタに走ってスミマセン
i | |,! ||/ | (⊃ ⊂ |ノ〜
| | / , | (・∀・; )、 < 勉強して、出直してまいります
.ィ| | ./]. / | ◇と ∪ )!
//:| | /彳/ ,! ( ( _ノ..|
. / /_,,| |,/]:./ / し'´し'-'´
/ ゙ / / / ||
| ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./ / /,!\
| | / `ー-‐'´
| | ./
|_____レ"
>>306 GJ!
萌えワロタww
谷ってなんか犬っぽいよな
308 :
俳/優もの:2008/02/28(木) 23:18:23 ID:LKnqi8CF0
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 某俳優。先輩×後輩、ということだけ理解してくれれば。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 後輩視点で、捏造しまくり。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ホボ、オリジナルダネ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「・・かっこいいなぁ」
なんとはなしに俺はテレビ画面に映る彼を見ながら呟いた。
もちろん間近で見てもかっこいいのはわかってるんだけど、それはそれ。これはこれ。
「ちょっと。見るのはいいけど、俺の前で見ないでって言ったじゃん」
「あ、ごめん」
勝手しったる俺のアパートに合鍵で入ってきた彼は閉口一番そう言った。
また撮影が長引いて遅くなると思ってのんびりしていたので、俺は慌てて録画した彼が出ているドラマのビデオを止めた。
「ご飯あるよ。冷めちゃったからチンするね」
むぅ、と口をへの字に曲げた彼の横をそそくさと通り過ぎ、俺は冷蔵庫から彼の分の晩ご飯を取り出しに行った。
「でもなんで今回のは見ちゃダメなの? 普通におもしろいんだけど」
「ダメったらダメ」
温め直したおかず(といっても買ってきたものがほとんど・・)をローテーブルの上に並べながら聞くと
まだ不機嫌な彼は俺と目を合わせようともしない。
「・・・・ご飯」
「理由ぐらい教えてくれてもいいじゃん」
おいしそうによそおった白いご飯を彼の目の前をいったりきたりさせて釣ってみる。
それでも一切手を出さない不遜な態度が彼らしい。
いつもは(同い年だけど)先輩の彼に頭が上がらない俺だけど、今日だけはどーしても聞きたかった。
だって
「いつもは『俺の出てる番組見てるか?』って見てるのにわざわざビデオ持ってきたりさ」
しかも今回は
「他の人には見せてるんでしょ?」
たまたま昼に共通の仕事仲間と会って、
その人が「あいつ、また『俺の出てるドラマ見ろよな!』って言ってたぜ〜」と笑っていたのが衝撃的だった。
彼がナルシストで自分の出ている番組を半強制的に見せているのはみんな知っていた。
だから俺は「見ちゃダメ」と言われた時もみんなにそう言っているのかと勝手に思っていた。
「なんで今回のは俺『だけ』ダメなの?」
それが不満だ。
そりゃ俺なんかが見てもアドバイスも何もできないけどさ。
彼にとって俺はただの都合のいい後輩なんだろうか、って思うと悲しくなる。
「かっこいいね」「うまいね」「すごいね」
本当に俺はそう思っている。
でもそれがナルシストな彼の欲を満たすだけの記号でしかないのなら、悲しすぎる。
「・・・・今回の役、かっこよくないだろ」
「へ?」
呟いた彼の言葉は普段の彼らしくない弱気な声だった。
「何言ってるの? かっこいいよ?」
むしろ彼なら『俺が演じてんだからかっこいいに決まってるよな!』ぐらい言いそうなのに。
一体どういうことだろうと首をかしげる。
「もう少し話が進めばかっこよくなるんだよ。そしたらまとめて見せてやろうって思ってたんだよ」
「・・でもなんで俺だけ?」
「お前だからだよ」
あ、と思ったときには彼の顔が近くにあって、キスされた。
「かっこよくなってから見せてやろうと思ったの。そーゆーオトコゴコロ、理解しろよな」
上目づかいで唇を尖らせる彼は同い年とは思えないほどかわいい。
「でも、何演じててもかっこいいよ?」
「ま、俺だからな」
かわいい顔でにっこりと笑い不遜な台詞を吐く。それが彼なんだってのは知ってる。
「だって俺様は〜」と芝居がかった口調で喋りだしたけれども、
肩に置かれた手がすごく熱いから。それが照れ隠しだってのも知ってる。
「かっこいいから、ビデオの続き、見てもいいでしょ?」
彼には負けるけれども、媚びるように笑って彼の手に自分の手を重ねる。
「・・ご飯」
「はいはい。ね、いいでしょ?」
俺は白いご飯を彼に渡してビデオの再生ボタンを押した。
「何やってもかっこいいよ」
俺の本心は彼に届いているよね。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 初投稿でした。脳内妄想乙。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 途中分母変わってごめんなさい。
| | | | \
| | □ STOP. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ BLポクナイゾゴルァ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
・・あれ。実は攻が、受が共演者に惚れてしまうのではないかと思ってビデオを見せなかったお話だったはず・・。
好きなキャラに当てはめてもらえると嬉しいです。
実際の方々はちゃんとお互いの作品見てます。多分。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
小さいキャプテンと大きいキャプテンネタ。大→小っぽく。
冒険○日目
私、キャプテン・オりマーは、ピクミンたちを自分の為に利用している。
戦う手段に乏しい私は、そうするしか方法がないからだ。
だが、そのせいで彼らが死んでいってしまう事は私にとって胸を痛める事で、
私は彼らの協力に感謝し、できる限り大切にしたいと思っている。
私と戦うとなるとピクミンたちと戦うという事なので、
子供たちは遠慮しているらしくあまり対戦の申し込みをしてこない。
その代わり、遊びの申し込みは多々あるが・・・。
私は子供ではないので少々複雑だが、彼らにはそのあたりは関係ないようだ。
私としても不必要にピクミンたちの命を散らすのは好まないので、その気遣いを嬉しく思っている。
が、彼はそんな事お構いなしに私を襲ってくる。
最初に出会ったのが自分だったから仲良くしようと彼は言うが、正直迷惑だ。
私も大人なので本心を隠しつつ今まで笑顔で対応してきたが・・・それが良くなかったのかもしれない。
本人曰く最高の笑顔でいつも走ってくるのが恐ろしい・・・。
そして彼は、出会ったあの時の事も今までの事も、謝るどころか気にしてもいないようなのだ!!
今日も彼は私に向かって突進してきたので、周囲のピクミンたちが犠牲に。
これほどの怒りを覚えた事が、今まであっただろうか・・・。
私は決心した。今夜、あの悪魔に復讐する。
私を片手で軽く持ち上げてしまう大男に、この体で立ち向かうのには多少の恐怖を感じるが、
だからといってこのままにしておくわけにもいかない。この怒りを少しでも彼に思い知らせなければ・・・。
これは私個人の怒りによる復讐ではない。私に付いてきてくれるピクミンたちの怒りなのだ!
復讐は私一人で行う。万が一彼が目覚めて攻撃してくるとも限らないからだ。
先日も何故か眠っていた私の上に覆い被さろうとしていた。紫ピクミンがいなければ圧死していたかもしれない。
だがこれ以上犠牲を出さない為にも、私一人で成し遂げてみせる!
明日の日記も無事に書ける事を祈る。
次の日の朝。
「あははっ! ファノレコンさん髭生えてるー!」
「ヒゲヒゲ〜」
「うおぉぉぉぉっ!! なんじゃこりゃぁぁぁぁーー!!」
ペンで書かれた髭をそのままに怒り狂う彼に、私は自分の復讐が無事成功した事を実感した。
「あ、もう一杯貰えますか?」
「えぇ・・・はい、どうぞ♪」
騒ぎに加わらない数人の仲間と一緒に、姫の入れたモーニングティーを飲む。・・・最高の気分だ。
「あんた、小さいくせに中々やるじゃないか。これは、俺からのプレゼントだ」
「?」
オりマーはちょっと小さなダンボールを手に入れた!
(・・・・・・今度、彼から隠れる時に使ってみるとしよう)
嬉しそうなオりマーの横で彼の努力を知ってか知らずか、ピクミンたちも嬉しそうに飛び跳ねていた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
二人のキャプテン萌え。小さい方が年上なんて信じられないぜ。
バトルもの的な妄想。最初に謝っておくが格闘技に関しては素人だ。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
もう終わりだ。ねぐらへ帰れば捕まる。捕まれば死ぬ。死なないとしたらよけいに危ない。堅気の中で
生きるような手段もなし、失踪しようにも伝手がない。業界には海千山千の強者も多いが、そんな連中が
一山いくらのショーダンサーに金と手間をかける理由などありはしない。同僚が揃って沈黙する中、声を
かけてきたのはダリアだった。衣装に似合わぬオネエ言葉と痙攣的な明るさで人気の彼は、常に片足を
頭の中の楽園に突っ込んでいる――ここの従業員なら誰でも知っていることだが。
ねえあんた、アタシがなじみの売人に聞いといてあげる、人間が一人要らないかって。だいじょうぶ、
死ぬような仕事はごめんよってちゃんと言っとくから。ひどいことはしないわ、あのひとは優しいのよ――
どうやらあの日の彼は楽園に踏み込むのを足首程度に留めておいてくれたらしい。もしくは相手が
よほど売人に向かない奴だったのか。結果として、彼は死ぬことも無理矢理生かされつづけることもなく、
厚待遇と言ってさしつかえのない生活手段を手に入れた。
初戦の負傷が打撲と腹の刺し傷なら、まあ上出来のほうだろう。
瞳孔反射の動画は本部に送った。確認ししだい賞金が出るはずだ。とりあえずは根城に帰ることだ。歩けるの
だから今すぐ死ぬということもないだろうが、刺された傷口はなんとかしないといけない。医者か、その真似事
のできる人間を探さなければ。“電話帳”の知り合いに闇医者はいるだろうか。
しかし違法ファイトの会場のくせに昇降機が動かないとは非常識にもほどがある。壁にすがって階段を下りる
彼は舌打ちをする。廃ビルだから当然なのかもしれないが、足を折られたりしたらどうするのだろう。頭から
這って降りろとでも言うのだろうか?
うんざりと溜息をつき、壁にもたれて立ち止まる。自分の足音が消えて、彼は足下の衝撃音に気づいた。
ファイトの会場は4階だけではなかったらしい。踊り場から中を覗くと格闘が見えた。端末を確認すると、
試合が決まったのは彼の後のようだ。なかなかの好カードだと書いてある。殺傷ありのダーティーマッチ、
一方は最近人気のヒール、他方は格闘に定評のある実力派。どちらも組み技の経験者らしく、実際体勢は
派手に入れ替わっている。観客はさぞ喜ぶだろう。
突きを繰り出した側の腕が取られ、そのまま投げ倒された。投げた側はすかさず相手に乗りかかり、
首に手をかける。これで終了かと思った彼は、下になった男が膝蹴りを繰り出すのを見て取った。
膝蹴りではない。胸板を逆袈裟に滑った右脚は相手の右肩を乗り越えた。
そこからは一瞬だった。彼の目には回し蹴りのように見えた。首を引っ掛けた足が右に振られ、引かれた
頭が地面に向かって落ちてゆき、同時に起き上がった男が姿勢を入れ替えたところまではわかった。
気がつけば地に這うのは相手の方、首を締められていたはずの男は仰向けになって腹に相手の膝を抱えている。
股で相手の脚の付け根を絞り下肢を背中に乗り上げて固定。背中側に引かれた足は股関節を動かせなくなり、
残った膝は上体を反らして関節を伸ばす。いわゆる膝十字固めのスタイルだ。
どうやら形勢は決まったようだ。あとはあのまま足を折り、戦闘不能にすればいい。普通のファイトなら
それで決着、そこから先は彼の趣味ではない。再び階段を下りようと視線を外したところで、声が聞こえた。
試合のときにつけさせられるイヤホンは骨伝導マイクでもある。カメラ越しに見守る観客のための設備だ。
それがマイクの電波を拾っている。耳元で声が聞こえる。
「…いい脚だ」
思わず振り返った。苦痛にうめき暴れる相手の脚を抱え込みがっちりと極めた男が、笑っている。
「この膝を壊さないといけないなんて残念だな。個人的には血抜きを済ませてからのほうが捌き易くて
いいんだが、その辺はリクエストによりけりだ。生きたままやる羽目になるかもしれん」
脚の持ち主が悲鳴を上げた。暴れ方が激しくなるが、男はぐいと背を反らす。破砕音と再びの悲鳴。
「ダーティー志願者のくせに大げさだな。俺についてどんな噂を聞いた? 医者崩れの変態か? 人体を
切り分けるのが大好きな気狂いか? …まあ、おおむね正しいが」
そこで息をついた男は顔を上げ、踊り場に立ち尽くす彼を認める。いまだ恍惚の名残をのこした男は、
強張った顔と目が合った。
まずいところを見られた、と言わんばかりのあの男の苦笑は、きっと夢に出てくるに違いない。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
分量ミスった。すまん。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 某飛翔の超人漫画からだよ。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 何故か気付いたら名前完全伏せ状態だったよ。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ カクサナクテモイイノニナ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
読めば多分すぐわかる二人です。
徹夜してるのにネタ思いついて書いたので、キャラおかしくてもキニシナイ!
321 :
1/4:2008/02/29(金) 08:46:31 ID:83tbROaW0
プレゼントを贈る、という行為に俺は慣れていない。
だから正直、昨日になるまで色々考えている羽目になった。
ケーキじゃ子供っぽい。
物を贈る?そんなのは毎年やっている。
今年は違う。4年に一度の閏年、全く想像もつかないようなプレゼントをしたい。
―――気付けばもう、28日。
29日があれば28日、そうでなければ27日から、俺の家で祝うのが決まりだ。
誕生日を最初に祝ってくれるのが好きな人でいて欲しい、と言われては男として断るなんて出来ない。断る男が居るなら睨みつけてやりたい。
結局俺はプレゼントを考えることが出来なかった。
仕方ない、本人に欲しいものを訊いて、それを明日学校帰りに二人で買いに行こう。
恋人として失格な行為であろうが、思い付かなかったものはしょうがないじゃないか。ああそうさ。
悪い方向に振り切れた俺は、部室で彼に「欲しい物とかはあるのか?」と訊いてみた。
情けなさで少し顔が熱くなってしまったが、部員達には気付かれていないだろう。多分。
すると彼は少し考えた後に、俺の耳元でそっと囁き。
322 :
2/4:2008/02/29(金) 08:50:18 ID:83tbROaW0
気付けば明け方。
カーテンの隙間から当たる朝日で俺は起きてしまったらしい。
となりで熟睡する彼を起こさないようにそっと掛け布団から腕を出し、携帯電話のアラームを切る。
ベッド脇のテーブルに携帯を置き、そのまま左手を彼の頭に。
茶色がかった猫毛は、まだ少し湿っている。
指で一房摘み、つうと毛先まで撫でる。
するとその感覚が伝わったのか、少し唸り体の位置をずらす。丁度俺の脇の辺りに頭頂部を合わせ、脚を少し絡めてくる。
困った。この状況で彼を起こすことの何と勿体無いこと。
323 :
3/4:2008/02/29(金) 08:52:17 ID:83tbROaW0
「君は僕を抱いて寝てくれればいい。それで十分だよ」
彼はそう言って微笑んだ。
それは性的な意味で?だなんて訊きはしない。
それだけでいいのか、と俺は訊き返す。セックスなど今更プレゼントにするほどのものでもない。
返事は無かった。返事をしようにも彼は俺にキスしていたのだから。
ならばプレゼントらしく優しく扱おうとしていたら、今度は髪の毛を引っ張られる。
「そうじゃなくて、逆」
むすっとした、しかし真っ赤になった顔で彼は言った。
色気があるというよりは可愛らしい言動に、つい微笑んでしまう。
彼の言いたいことは分かった。だがここは言葉攻めの方向でいってやろう。
「逆って何のことだ」
「うわ、そう来たわけ」
「テンプレ通りにやってみるのも有りかと思ってな」
「むしろテンプレって言葉が君の口から出る時点で、テンプレ通りじゃないよ」
くすくす笑いながらそんなことを言われた。ああ、わざとだな?俺の反撃を待っているんだろう?そういう意味で受け取ろうじゃないか。
俺は返答せず、首筋にゆっくりと舌を這わせる。
すぐに別の場所に移らず、しつこく首筋を舐めてゆく。
最初は彼に弱点が無いのだと俺は思っていた。しかし実際はそうではなく、全身全てが弱いのだ。だからどこをどう弄ったって、彼は感じる。
今回も首筋のみでダウンのようだった。
ぼうっとした視線で俺を見つめ、喘ぎながら今年のプレゼントを要求する。
いしきを、うしなうほどまで。
324 :
4/4:2008/02/29(金) 08:56:43 ID:83tbROaW0
薄い肩に手を置き、そうっと体を揺さ振る。
「ん……んー、う、あさだ」
まだ甘ったるさの残る声でそう言い、彼は布団を剥いで大きく伸びをする。
うっかり生じた理性の傾きをすぐ立て直して、彼の着替えを手伝う。
ご要望を叶える為に彼の全身に付いた痕が、意外とワイシャツから覗きそうで焦ってしまった。今が冬で良かった。
それで思い出し、俺は覚醒してきた彼に質問する。
「そういえば、どうしてあんなプレゼントにしたんだ?」
「う、起き抜けから随分な質問」
「気になる」
「えっと……」
耳を貸して、と言いながら自ら俺の耳元に手を当てて言う。
「四年分、まとめて欲しくって。それを端的に表してみたの」
四年に一度しか来ない、本物の誕生日。
祝うのに必要なのは、俺の体力ということか―――?
ううん、少し変な気分だ。
更に朝練中、彼の動きがいつもと全く変わりがないことに気付いて、俺は何とも言えない気分となった。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ オチテナクネ?
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
お目汚しすいませんでしたorz
寝てないと書けないものがもっとアチャーなことになるのがよく分かりました。
でも誕生日おめでと!!
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
とあるスレッドを読んでいるうちに我慢ならずにやった、
素真武羅Xの学園パロディで、ドM犬→一頭身仮面です。
二人とも先生で 犬=生徒 空手部部長 風紀委員 仮面=現社 剣道部顧問 設定で。
憂鬱だ……。
これから始まる重苦しい時間を考えるだけで、〆タナイトは仮面を押さえたくなった。
春休みに行われる、空手部と剣道部の合同合宿。
彼はこれから空手部部長と日程について打ち合わせるべく、資料や日誌などを両の腕に
抱えて、夕暮れの階段を慎重に上がっていた。
(ノルカリオか……悪い子ではないと思うが、どうも苦手だな……)
どうも自分の口下手故か、会話をしても授業か武道か政治の話題しか見つからない。
向こうも「面白い」でも「他の話をしましょう」でも何か反応を返してくれれば
まだやりようがあるのに、ひたすら〆タナイトを見つめて相槌を打つだけなのだ。
嫌われているのか好かれているのか、そこすらもはっきりしない。
(……私としたことが。仕事に私情を挟んで、生徒の士気を下げたりしたらどうする)
頭を振って気を取り直し、資料を抱え直そうとした瞬間、
「お持ちしましょう」
というという声がした。
>>317 この間大人気だったあの人ですね。
何だこの悪夢を見ているような、ダークでミステリアスな雰囲気は。
一体この世界で起こりつつあることは何なのだ。
描写が結構痛そうだよ〜。
211って何だろう。コードネームか日付か作戦名か、それとも薬物か何かか。
驚いた〆タナイトが振り向くと、下の踊り場でノレカリオが無表情に肉球を差し出していた。
「ノレカリオ。………いや、これは3階上の資料室まで運ぶだけなので私ひとりで十b」
「その量では、前も碌に見えないでしょう? 先生にお怪我でもされたら
剣道部の連中が大騒ぎになります」
さあ、と一歩迫ってさらに腕を突き出すノレカリオに、〆タナイトはため息をつきながら
プリントの半量を渡した。
「持ってもらえるのはありがたいが、資料室で待っていても良かったんだぞ?
‥‥それとも緊急に私と話したい用があったのか?」
こう問いかけてみるとノレカリオは少々躊躇ったようだが、ぽつぽつと話し出した。
「―――先ほど。DDDとカー微意が、職員室の前で騒いでいたんです」
「またあの二人か……毎度のことだがノレカリオにも手間をかけさせr」
「―――先生のお誕生日に。何を送ろうか、と楽しそうに話していました」
一瞬何を言われたか判らず、思わず立ち止まった〆タナイトだったが
じっと見上げてくるノレカリオの視線でようやくわれに返った。
「そうか……そういえば合宿中だったな、今年の誕生日は」
「今ここで言ってしまうと楽しみがなくなりますが、相当派手に盛り上げるつもりの
ようです。先生のクラスの奴らも一枚噛んでいるみたいですね」
「あいつらは……全く、合宿は遊ぶ為だけではないというのに……」
「それだけ先生は皆に好かれている、ということでしょう。――先生。」
ノレカリオは急に足を速めて〆タナイトを追い抜き、鋭い目で彼を見下ろした。
「――どうしたノレカリオ。訳もなく目上の人を見下ろすのは失礼だぞ」
「益田半戸先生に伺いました。………今年でちょうど一万とんで百歳だそうですね」
「益田先生………あれほど生徒には言ってくれるなと釘を刺したのに………」
幾度生徒に問われ続けても誤魔化し続けてきた事実をつきつけられ、
〆タナイトはもう一度ため息をつきそうになる。
武道に携わる者として、また教師として顔で生徒になめられるようではいけない。
そういう思いで仮面を被り、年寄りと言われぬように年を明かしていなかっただけ
なのだが、生真面目なこの子には気に障ってしまったのかもしれない。
「見た目より年をくっていて驚いたか?…まあ、騒がれるのは苦手なので
出来れば周りには黙っていてくれるとありがたいのだが」
「はい、それはもちろん。……プライベートな事を無理に聞き出してしまったのは
申し訳ないと思っています。ですが、どうしても気になる事があったので」
「……気になること?」
(妙な方向に話が進みそうだなあ。)再びノレカリオを追い越して階段を上がりつつ、
〆タナイトは続きを促した。
「先生は、2年の桃姫さんと3年の鞠夫先輩が付き合ってるのをご存知ですよね?」
「ああ」
中高一貫性のこの学校で、かれこれ4年は毎日一緒に登下校をしている彼らは、
もはや名物といっていいほどのバカップルだ。知らないほうが珍しい。
「友人から聞いたのですが、この間のバレンタインデーのときに先生は、彼らが
長続きしている理由についてこう仰ったそうですね」
―――『彼女が年下なせいじゃないか』って。
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
長々と書いてしまってすいません……初投稿なもので
改行やら投下量やらひどいことになってしまった。もうすぐオチです。
>>317 ゾクゾクした
続きがあったらまた読みたいな
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )サイカイシマース!
>>326〜329の続き。
「………どうも間違って伝わったようだな。『桃姫は一つ下だが鞠夫より数段
落ち着いているし、胆が据わっている。和やかに続いているのはそのせいだろう。』と
言ったんだ。」
「――なんだ、そうだったんですか!」
とたんに表情が明るくなったノレカリオ。これはひょっとするとひょっとするのでは
ないだろうか。
「――どうしたノレカリオ。……まさかお前」
「――――イヤ、ドウトイウコトハナインデスヤッパリ先生ハ若イ女ノ子ノホウガイイノカナートカキニナッタワケデハ」
「先輩に好きな人でも出来たのか?」
資料室の扉をあけながら、意地悪い笑みで〆タナイトは尋ねた。
‥‥何故だか、ノレカリオは非常にがっかりした顔をしていた。
「先輩、で、好きな人………確かに人生の先達ではある方です」
向かい合って座る形になった、資料でいっぱいの狭苦しい資料室。
――ややうつむき加減で頬を染め、小声で語ったノレカリオの反応に、問うた本人である
〆タナイトの方が気恥ずかしくなった。
資料を机にひろげて二人分の緑茶を淹れてつつ、こちらも妙に小声で返す。
「そうか……まあ、若いうちにしか出来ない恋もあるからな。頑張れよ。
私はその手の相談は不得手だが、大キャプ先生辺りなら親身になって聞いてくれるt」
「――先生。俺からもひとつ質問をして宜しいでしょうか。」
先ほどの恥じらい顔から真面目な表情に戻ったノレカリオが、机から身を乗り出してきた。
「何だ?………さっきも言ったが、私に恋愛相談はしないほうが無難だぞ」
「相談というか……価値観を伺いたいのです、先生の恋愛についての」
「価値観……?」
「はい……先生が恋愛にどんな考えを持っているのか、参考に伺いたいのです」
「私のが参考になるとは思えんが………まあいい、それなら協力しよう」
茶を啜りながら答えた〆タナイトに、満面の笑みでノレカリオは礼を言った。
「早速行きますね。仮にですが、先生が今すぐに誰かと交際しなければならないと
したら、年上と年下のどちらが良いですか?」
「私より年上なんて滅多にいないと思うから好みに関わらず年下だろう、多分」
「…では次です。先生は交際相手の外見と性格、どちらを重視なさいますか」
「繰り返しになるが年を食うと外見についてはさほど気にならなくなる」
「……もう少し。もし先生が付き合おうと思った相手に、重大な問題があったら
先生は付き合うのを止めますか」
「どんな問題があったとしても、本当に好きならそれを乗り越える努力はするべきだ」
「………後二つです。『文武両道で品行法正性格良、家事そこそこで家付き家業持ち』
このワードを聞いてどう思われますか」
「理想的だな。『家付き〜』から後で意見は分かれるだろうが女だったら結婚前提で
付き合って損はあるまい」
「ではその条件を備えていたら、先生は私と付き合って下さいますか?」
「なかなか良い話だな……………待てノレカリオ、今何と言った?」
「私と付き合って下さい。………私が好きなのは〆タナイト先生、貴方です」
そういうと同時に、ノレカリオは〆タナイトの仮面に口付けた。
…………………それと同時に、資料室のドアが勢い良く開いた。
「先生申し訳ない!俺のミスで合宿のしおりが何ページか誤字脱字だらけになってる事が
発覚したので、いま丸巣と一緒に訂正プリントを刷ってきた」
「藍駆君のせいじゃないです、下書きを活字に起こす時に僕が間違えたから、って……」
「それは結局俺の字が読みにくかったからだろ……ノレカリオどうした、何かあったのか」
首をかしげてノレカリオに問う藍駆。――返答はない。〆タナイトに突き飛ばされて
ゴミ箱に頭から突っ込んでいるからだ。
そして動揺を隠し切れない様子でさりげなく仮面をぬぐう〆タナイト。
――未だに判っていない藍駆よりは幾分鋭かった丸巣は、
状況を悟って瞬時に耳まで赤くなった。
「あ、えっと、その……お取り込み中申し訳ありませんでした先生、出直します。
ほら行くよ藍駆君!」
「? だがまだ先生に訂正プリントを」
「良いから帰る!……先生、プリントは明日でも大丈夫ですので!」
呆然としていた〆タナイトだが、新たな闖入者のやりとりを見ているうちに我に返った。
「いや今日で良い、今日で良いんだ丸巣!……というか私を置いていかないでくれ!」
殺気を感じて、逃げるように立ち去る二人を追う〆タナイト。その後から復活したノレカリオ。
「待って下さい先生、まだお返事を頂いていません」
「生徒に手を出す教師があるか馬鹿者!波/導を漲らせながら追ってくるな!」
……素真武羅学園、今年の春の合宿は、どうやら波乱に満ちたものになりそうである。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
長い上にgdgdな終わりですいません。最後王子と団長が余計だったか?
続きがあるような書き方ですがこれだけです。卿は年長者で高所大好き、が拘り。
336 :
風と木の名無しさん:2008/02/29(金) 22:55:45 ID:D2HSXWoXO
………
はあ………
>>335 萌えた!GJ!!
目田先生可愛いなwww
ついでにFEコンビもいい雰囲気で番外編に期待!!
>>335 GJ!意外と積極的なドMww
アイ区と丸巣の関係も気になるw
>>335 GJ!!自分も萌えワラタw
仮面先生可愛いよ仮面先生
ラストの2人もよかった!
>>287 亀ですが。読んだ後にふと彼等の昔の有名な曲の名が浮かびますた。二つの意味で。
343 :
双子信号1:2008/03/01(土) 02:20:50 ID:8vD/bC3SO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
旧ガソガソの双子信号(英訳)の父親と父親の兄(ロボット)のお話。最初が過去、次が現在のつもりです。かなりマイナーでもキニシナイ!
「正イ言さん。」
穏やかな声が僕を呼ぶ。少しだけ上から、とても心地の良い声。
目を閉じてソファーに横になっていただけだったけれど、いつの間にか眠ってしまったみたいだ。
少し悪戯をしてみたくなって寝た振りを続けた。目を閉じていてもなんとなくわかる。僕の兄が、困った顔をして僕を見つめている。
規律正しい市長としてプログラミングされていて、僕の兄として生活しているカルマは、だらしのない僕の寝姿を見ていられないのだろう。
白い手袋に包まれた華奢な指先が近づいてくる。そっと、僕の髪に触れた瞬間、目を閉じたまま相手の名を呼んだ。
「カノレマ。」
僕が狸寝入りしていたことに気が付いて、困った顔が呆れ顔に変わったのがわかる。僕はカノレマを困らせるのが好きだ。
344 :
双子信号2:2008/03/01(土) 02:21:36 ID:8vD/bC3SO
現在唯一の人間と同じ大きさのHFR。それも絶世の美貌を持つ、後に作られるロボット達の頂点に立つべき存在。
そんなカノレマをこんな風に困らせることができるのは、やはり「弟」としての特権だった。
「仕方のない人ですね。」
温かな手が僕の頭を撫でる。困った顔をして、それでも少し嬉しそうに。
漸く瞳を開けた僕は、カノレマの薄い緑色の瞳と、綺麗な金髪に隠された人工的な機械の瞳の両方を見つめて言った。
「僕たちは、ずっと兄弟でいられるよね?」
いられるわけがない。カノレマはロボットが統治する街の市長で、一時的に僕と暮らしているだけ。僕がロボット工学者になったとしても、多分、遠い存在。
「えぇ、きっと。」
それでもカノレマは兄弟でいる、と答えた。それが僕を気遣っての嘘なのか、本心からそう思っているのかはわからない。
でも、嬉しかった。
僕はまたゆっくりと瞳を閉じる。今度は、カノレマがいるのがわかっているからそのまま眠るんだ。
目が覚めたらまた一緒にいよう?
いつまでも兄弟、だよね。
345 :
双子信号3:2008/03/01(土) 02:23:11 ID:8vD/bC3SO
「正イ言さん、正イ言さん!」
心地好い声。でも、少し急かし過ぎじゃないか?
僕の狸寝入りは3年くらい経つとカノレマに見破られるようになった。
でも、僕は目を閉じたまま。寝た振り。実際、さっきまで眠っていたのは事実なんだし。
「全く…仕方のない人ですね。」
もうカノレマも勝手がわかっている。僕はカノレマを困らせたいだけなのだから、しばらくそこにいればそのうち僕は目を開ける。
でも、カノレマの考えは僕にもお見通しだ。
「ねぇ、カノレマ。」
「何ですか?正イ言さん。」
カノレマのお望み通り目を開ける。僕を覗き込む瞳は、金髪に隠された瞳も美しい澄んだ緑色に変わっていた。
「頭撫でてよ。」
唐突な申し出にカノレマはしばらく面食らっていたが、そっと…そっと僕の頭を撫で始めた。ぎこちなさは無い。
「昔の夢を見ていたんだ。僕が子どもの頃。カノレマが僕の家にいて、ずっと一緒にいた時のこと。」
頭を撫でているカルマの表情が複雑に、けれど懐かしさに満ちていく。様々な事件の前、幸せな過去。
「正イ言さん。」
「ん?」
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
信長+光秀×長政。バサラです。ド鬼畜注意。
体中が痛い。痛いということは…。
「まだ…生きているのか…」
目を開けて、長政は体を強ばらせた。裸に剥かれ、天井から吊されている。思い切り開脚させられ、膝でくくられている事実に、長政は顔を真っ赤にした。腕を後ろで縛られ、逃げようと暴れれば、縄が乳首を押し潰して擦りあげる。
そして、その事実が、顔のすぐ近くにある大きな鏡に、すべてはっきり映し出されているのだった。
「お目覚めですか」
すぐ後ろで光秀の声がした。振り向こうにも、あまり動くと乳首が擦れてしまう。鏡を見上げると、突き出すような形で吊された尻を、光秀が舐めるように眺めているところだった。
「なっ…!」
「あぁ…ヒダが動きましたよ。ひくん、と。大丈夫です。丁寧に丁寧に、時間をかけて洗って差し上げましたから…ナカまで」
「そ、そこでしゃべるなっ……!」
光秀の生暖かい吐息が、尻穴に吹きかかる。光秀はわざとらしくため息を吐いた。
「ひゃうっ!」
「おっと、失礼。見てください、コレ」
光秀は、太い太い張り型を長政に見せ付けた。張り型であるはずなのに、先から透明なゼリー状のものが溢れている。
「そ、それは何だッ…!」
「オクスリですよ。どんなたくましい男でも、グチャグチャになってとろけて…もうダメ、早く、なんて女のように喘いで、鳴いて、ねだってしまう……とてもえっちなオクスリです」
「ヒッ…!」
光秀は薄目で長政を見下ろしていた。笑っている。
「今から楽しい楽しいゲームをしましょう。これは先走りが出るけれど、絞らなければ沢山は出ません。あなたは我慢するだけ。私も手は触れません」
言いながら、天井からぶら下げる。つまり、動かなければ良いのか、とホッとした瞬間、尻穴に固いものがあたった。ぬるり、と冷たい。
「あっ…!」
びくんっ、と体を反らした長政を眺めながら、光秀は後ろへ下がった。
「意外と重たいですからね、それ。吊しているだけでじわじわと滲んできてます。あまり動くとあなたも揺れますよ」
「そん、なっ…ああっ!」
本能的に逃げようと体を反らし、振り子のように体が揺れだす。光秀がときたま揺らしている張り型は、尻穴付近にべたべたと薬を塗りこみ、長政は体が熱くなってくるのを感じた。
「はうっ! あっ、あ…!」
「ほらほら、尻穴がヒクヒクして、太いものが突き刺さってしまいますよ? きちんと締めないと。このくらい、きゅっと締めなくては」
きゅっ、と乳首を摘まれる。薬が回りはじめ、敏感になりはじめた体には、たまらない刺激だった。
「あんっ! …悪めっ…悪は削除ッ…はぅんっ!」
鏡の中に、とろけきった顔が写る。うそだ。正義はこんなことで屈したりしない。気持ち良さそうな顔で、よだれを垂らしたりしないのだ。
「おのれっ…淫らなまやかしを見せて、何が楽しいッ…!」
「それはあなたですよ。ほおを染めて、切なげに眉をひそめて喘ぐ、あなた自身。ほらほら、穴が広がってきていますよ? ぱくぱくしてきました、飲み込むおつもりですか?」
「ひゃあんっ! 黙れッ…悪に屈したりはせぬっ…はぁあんっ!」
とろけた顔で口元に笑みさえ浮かべている男が写る。光秀に乳首をいじられ、「ああんっ」などと淫らに喘いでいるが、私は屈しない!
たとえっ……痺れるくらいキモチ良くてもっ……あんっ、キモチイ……もっとぉ……はぁんっ、せっ、正義は屈したりしないイイ……!
「おやおや。中にくわえはじめてますね。締め付けて、そんなにえっちになりたいのですか」
正義はぁ…屈したりしないィ…! ああんっ、乳首コリコリ気持ちイイのおっ……おひりじんじんふるうっ……おひり…痺れちゃうぅ…!
「押し込んであげましょうね。クク、根元まで銜え込んで、なんと気持ち良さそうになさっていることか」
ナカに入ってくるうっ…絞ったらダメッ…あく…悪の声がふるぅ……痺れるぅ…あんっ、おひり熱いぃ、せいぎはくっしないのおっ…!
「はうっ、あんっ、正義はぁ、くっひないぃ…!」
いつのまにか手が解かれ、長政は鏡に手をつき、恍惚の表情で、同じく恍惚な表情の男に深い口付けをしていた。べちゃ、ぺろ、と鏡が濡れていく。
「ほおら、淫らな穴がいけないオクスリをどんどん絞っていますよ。ああ、もうほとんど飲んで、淫乱になりたかったのですね」
薬がいっぱいっ……おひり…しびれちゃうのっ…悪は…削除…ッ、だめっ、もうダメぇ! お尻ッ…お尻に欲しいッ!!!
ぷちん、と何かが切れる音が聞こえた。
長政はすでに絞り尽くしたはり型を引き抜き、自由になった手で尻たぶを開いた。
「入れてくれ……太魔羅を…頼むッ」
「あーあ、だから言ったでしょうに…エッチな薬をあるだけ絞るからこんな恥ずかしい真似をするはめになるんですよ。恥を知りなさい」
「早くッ…早く…穴にィ…!」
もうそれだけしか考えられない。頭の中は、犯されたい思いで一杯だった。
「はやくぅっ…」
お尻がジンジンする。乳首が気持ちイイ。痺れた頭には、「さっ、信長公、どうぞ」とか、「ふははっ、長政! 今我が欲望をたたき込んでくれるわ…!」などという会話は聞こえなかった。
縄が解かれ、待ち焦がれた熱いものがずぶり、と突き刺さる!
「ひあ、あっ、熱いっ、気持ちイイッ、太いのおっ、ああんっ!」
「うれしいか、長政ァ!」
光秀の声ではない、とか、もうどうでもよかった。うずく尻穴を擦ってくれれば、気持ち良すぎて乱れに乱れてしまう。
「うれひいっ、そこ突いてえっ!」
気持ちイイ。乳首をしゃぶられ、摘まれ、奥の奥まで突き上げられる。何度もナカに出されて泣きながら、長政は熱い白濁を吐き出した。
一気に、頭が冷える。浮かされるほどの熱が、まるで氷でも食べたかのようにすうっと引いていく。ナカを擦りあげているのは……倒すべき敵、信長だった!
「あっ、義兄上ッ…何をなさる!? やはり悪ッ! 悪なり!」
「長政ァ…貴様の正義、我が全身全霊で粉々に打ち砕いてくれよう…!」
魔羅を扱かれ、長政はびくっと仰け反った。
「あっ、ああっ…」
「オクスリはしばらく残りますからねぇ。大丈夫…調教が済んだ頃には、完全に抜けていますから…クク」
二人の悪に見下ろされ、笑われながら、長政は唇を噛み締めた。
「悪には屈しないっ!」
「そうですか…それは楽しみだ」
光秀が膝を突き、ペロリと胸を舐める。ぞくっとして仰け反ると、ナカで信長が擦れた。「んうっ!」
「我は動かぬ…貴様が自ら動いていることを自覚せよ…」
耳元で低くささやかれ、それだけで体が反応してしまう。光秀の舌が乳首に絡み付き、ねっとりとしゃぶってくる。
「はう、あああっ…」
手持ち無沙汰の信長の手が、袋を揉み上げ、弱い裏筋を撫でる。
「あっ、あっ!」
背中に舌を這わされ、長政は口を開けたままヒクヒクと仰け反った。まだ薬に侵された長政の体は、簡単に快感を覚えてしまっている。おまけに、薬でおかしくされていたとはいえ、すさまじい快感を与えられて達した後だ。快感を求め、体が無意識に動き始める。
「はうっ…! こ、擦れッ…擦れるぅ…」
「腰が動いているぞ、長政ァ…我が魔羅を食ろうて放さぬわ」
「耳元はッ…! ああっ…」
乳首を吸い付かれたまま、素早く舌で何度も弾かれる。ビクビクと震える長政に、信長が耳元で囁く。
「長政、強情を張るならば、我が動こう…許しを請うなら今ぞ」
長政は唇を噛み、首を横に振った。
「悪にはっ…屈しなッ…あっ、あああー!」
薬によって性感帯に変えられた尻を、信長が掻き混ぜる! 暴風のような快感が長政を襲い、長政は舌を突きだし、焦点の合わない目のまま地面を引っ掻いて悶えた。
「はうっ、義兄上ッ、義兄上ー!」
「長政ァ! なぁがまさァ! 尻でイカせてくれようっ、貴様の意地などその程度よ!」
「やあっ、あっあっ、ソコはっ…! ダメッ、義兄上ソコだけはあっ……やあっ、来るっ、来てるうっ、はっ、はうぅっ!」
長政は、体を大きく反らし、びくん、と震えた。しかし、白濁は出していない。ナカに信長が注ぎ込み、魔羅を扱いて、長政は「うぅん!」と気持ち良さそうな声を出して白濁をぶちまけた。
「うぅっ…正義が…破れ去ろうとは…はぁんっ…あっ、ああっ!」
イッたばかりだというのにまだ固い信長のモノが、イッたばかりの長政の弱点を狙い打つ!
「ヒアッ、義兄上ッ…くっ、いやああっ!!」
「申し上げたはずです、調教、と」
光秀の舌が、ねっとりと耳に絡み付く。
「あなたを淫らに開発しきって、二度と裏切らないように…壊れるまで…放しませんよ」
「やっ…」
まだ薬はたっぷりあります、どれだけあらがおうと…無駄、と光秀が笑う。信長が、長政の髪をつかんで押し倒し、激しく突き立てる!
「あっ、ああっ、そんなに激しくっ…!?」
「長政ァ! 屈せよ!」
何度も何度も貫かれ、体が迎合していく。もう何時間凌辱されただろう? 逃げられない。体が快楽を刻んでしまった。快楽に揉まれて、長政はつうっと涙をこぼした。
「おやおや、もう壊れてしまいましたか」
虚ろな瞳で空を見つめる長政の顎を持ち上げ、光秀が笑った。
「美しい絶望の色です。やはりあなたはこの色が一番似合う」
「長政ァ…この信長が飼ってやろうぞ」
長政の髪を撫でながら、信長は笑った。
こうすれば、二度と逃げることもないだろう。市のように絶望を吹き込んで、見えぬあしかせを付けて……ずっと愛でてくれよう。
信長は、上機嫌で長政の髪に口付けた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
>>343 わあ懐かしい。何だか微笑ましいな。
いいオッサンになっても頭ナデナデしてもらいたがるなんてw
あのお利口なカルマが狸寝入り見破れるようになるのに三年もかかったのねw
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
亀大魔王→自称大王…>ピンク球意識。
亜空間の一騎打ち前、その後の妄想です
亀の王様はお怒りのご様子。
理由など忘れていた。目が覚めたら腹が立っていたのだ。
その怒りのまま自分を復活させてくれた何の罪の無い王様を襲う。
感謝する気も無かったから、これはまんま八つ当たり。
威厳がどうとかその辺りも気にしなかった。
罪の無い王様はそんな彼に何も言わず相手をした。
「ワガハイ、少し気が立っていたのだ」
二人の一騎打ちは罪の無い王様の勝利で終わる。
事情が分かった亀の王様は黒幕を倒すべく彼らに付いて行く事にした。
やはりまだお怒りだったが、自分の行動を今少しだけ
冷静になった頭で考えると恥ずかしかった。
だから柄にもなく罪の無い王様に簡単な言い訳をしてみたのだ。
「わかってる」
ハンマーを肩に二、三度付きながら罪の無い王様は生返事をする。
ただこちらを見てはくれない。
別に怒っている様子では無いが妙に焦りながら辺りを見渡していた。
まだ、見つからないフィギュアの事でも考えているのだろうか。
(あの憎たらしいピンク球、どこに行ったんだ)
どうやら罪の無い王様は亀の王様の事など眼中に無いご様子。
これは相手にされていない、と亀の王様はすぐに理解した。
だがもう少しこちらに意識を傾けてくれても良いでは無いかと
何か話題を考えてみる。
「そのハンマーずっと持ってるが重くないのか」
「やらんぞ(大体何で俺様があいつの心配しなければいけないんだ)」
「要らん。・・・オマエこうなる事、予想してたのか」
「勘。(あの桃色肉球、見つけたら潰してやるか。どうしようか)」
「・・・勘な訳無いだろう」
「じゃあ予知夢(そういえばメタ名イトも居ない。でもアイツはしっかりしているからなあ)」
「オ、オマエ!おちょくってるのかこのワガハイを!」
亀の王様はついムキになり、大声を上げた。寧ろ咆哮の様な物だった。
少し離れて歩いていたネ素とノレイージが何事かと罪の無い王様に駆け寄る。
威厳丸潰れでは無いかと亀の王様は一人声を荒げた事にまた恥ずかしさを覚えた。
ただこの反応には罪の無い王様も流石に驚き、振り向いてくれたが。
「俺様、何か悪い事言ったかな」
罪の無い王様は駆け寄ってくれた二人に
『大丈夫だから』と軽く肩をポンと叩きつつは亀の王様に言った。
申し訳無さそうにしているが元々笑っている様な顔をしている
彼を見ていると亀の王様は一人ムキになっていた自分が馬鹿らしくなってしまった。
「もう良い、ワガハイ先に行く」
どすんどすんとさっさと進んでしまった亀の王様。
何故か奴を相手にしていると調子が狂う。
負けたからなのか?ワガハイは敗北者だから?王としての器が違うのか?
――やめよう。自分らしくない。難しく考える事は嫌いだ。
ワガハイが強いのだ。ワガハイが一番エライのだ。
ただ、いつかまた奴とタイマンリベンジはしたい。
「デデさんクッ羽なんかと何を話してたんですか?」
「え?ああ覚えてないな・・・それよりノレイージ、ピンクの丸っこい奴見掛けなかったか?」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
>>354 重量級に萌える日がこようとは思ってもいなかった……
GJ!
357 :
双子信号4:2008/03/01(土) 12:04:19 ID:8vD/bC3SO
>>345の続きです。規制に引っ掛かって最後の最後で書き込めなかった…orz
頭を撫でられている僕はアトラソダムの制服を着て、随分前にカノレマの背も、年も追い越してしまった。もう、本当に過去になってしまったんだな。
「貴方がどう変わろうと、私がどう変わろうと…貴方は私の弟ですよ。」
穏やかな声が僕に告げる。まるで、僕の考えなんか見透かしてしまっているように。
「カノレマは僕のこともう見限ってると思ってたよ。僕があまりに不肖の弟で。」
「わかっいて言っているでしょう、正イ言さん。」
クスクスと上品な笑い声が聞こえる。
いつもと同じ。やっぱり僕たちは、兄弟だったね。
ずっと、ずっと一緒にいようよ。
僕たちはいつまでも兄弟、だよね?
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
この板に書く必要が無いくらい接触が少なかったかもしれない。
この兄弟大好きだ!
>>352 超GJ!亀王のスルーされっぷりにワラタ。
そんなに桃玉が心配か自称大王w
まさか両大王を可愛いと思う日が来るなんて思わなかったよ。
>>352 GJ!
亀王がヘタレかわいすぎるwww
ロングパスだが
>>269の徳の高いお二人さん
なんつう罰当たりな・・・・w 正に人類史上最強のカップリング。
原作未読、新聞で紹介されてるのを読んだことがあるだけなんですが、笑えました。
>>278嬢のツッコミもcool。
363 :
211:2008/03/02(日) 01:07:43 ID:aFd5gUfR0
バトルもの的な妄想。間接的に若干グロかも
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「ちゃんと来たか。感心だ」
「昨日おまえが死んでたら喜んですっぽかしたんだけどな」
「なんでゲイタウンのストリッパーが地下ファイトをやる羽目になったんだ」
「ややこしい経緯でヤクザだかマフィアだか黒社会だかと揉めた。失踪しようにも伝手が無い。あとストリップじゃない。ショーダンサーだ」
「目当ては寝床と資金か。格闘技は?」
「筋トレとショーの基礎練がわりにムエタイの道場に突っ込まれた。いい商売だよな、自分で出した給料を自分で吸い上げてんだから」
「おまえは何をやってたんだ」
「柔術ベースに関節技を少々。本業が儲からなくてな、副業で闇医者を始めてこの世界を知った」
「殺人鬼志望が医者をやってられたとは、世も末だ」
「いいかげん殺人鬼呼ばわりはやめろ。俺は別に殺すのが楽しいわけじゃない」
「嘘をつけ。寝技でうっとり関節ぶち壊しながら血抜きがどうこう言ってるキチガイを見た俺の身にもなれ」
「血抜き云々は単なる脅しだ。観客向けだよ。マイクパフォーマンスみたいなもんだ」
「嘘をつけ」
「そもそもなんで救急やってんだ。スタッフか何かか?」
「それならこんな雑居ビルじゃなく、ちゃんとした無菌環境を貰いたい」
「じゃあ単に“協定”の一環なのか」
「まあな、無駄死にを避けたいのなら人に恩を売っておいて損はない。
単純な骨折や摘出なら無料でしてやる。それ以上は応相談だ。手術は準備が面倒だからな」
「手術もやるのか。大丈夫なのか、衛生的に」
「努力はしてる。そのためにここに陣取ってるんだ」
「…厨房にか」
「隣で料理をしてるわけでもないだろう。他に広くて埃が立たなくて床が血を吸わないところがあったら教えてくれ」
「…そりゃそうだけどよ」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
傷を負う場面がなかったな。申し訳ない。
>>363 あれれ。散文で行くのかと思ったらまた台詞だけに戻った。
相変わらずユニークで不思議な書き方だこと。
この後先生と血みどろの恋に落ちたりするのかしらん。
無機質だけどキレのあるかけあいが素敵。
>>269 亀だけどGJ!
人物が人物だけに、まさか読めるとは思ってませんでした。
原作からあの2人は萌える
か かしらん
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 変身解除すると全裸になるキャラが居たりするTRPGネタ
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 思いつきで書いてみました
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「さて……君には忘れて貰わなければいけません」
淡々とした口調で、男は俺に話しかけて来た。
「今、君がここで見た事聞いた事全てを」
余り大きく開かれない唇の隙間から僅かに覗く歯は鋭く尖っていて、そう、例えるなら
獣じみていて、彼がただの人間ではないのは……いや、そんなのはもう知っているんだ。
「世の中、忘れてしまった方が良い事なんて山の様に有るでしょう?」
地面にへたり込んでいる俺を見つめている黒い目は、どこか悲しげだった。
「だから、忘れて下さい」
そう締めて視線を外した彼の後ろから別の男が姿を現し、俺へと近付いて来る。
一体何をされるのだろう。
俺は身体が小刻みに震え出したのに気付きながら、背中を向けて歩いて行く彼から視線
を外す事が出来ないままだった。
ダチが中途半端な時間にヘルプ入れて来たから真夜中にコンビニのバイトを終える羽目
になって、文句を言いながらアパートに帰ろうとしたのがほんの三十分程前。
もうすぐアパートに着くって所で、近くのマンション建築現場で変な物音がしたからっ
てのに何も考えず確認しに行ったら、とんでもない物を見てしまったんだ。
訳の分からない化物が戦ってたのを見た。
一つは昆虫みたいなゴツゴツした姿の茶色いヤツ。
もう一つは身体のあちこちから水晶みたいなのが見えてる銀色のヤツ。
茶色いのは全身が昆虫みたいに節くれ立ってたけど、銀色のは上半身だけがそんなので
不思議な事に腰から下はグレーのスラックスに革靴を履いてた。
その時は頭が混乱してたから深く考えなかったけど、銀色のヤツの背中にはコウモリっぽ
い大きな翼が生えていたから、上半身の服は破けてしまっていたのだろうと言う事を、
『今』の俺は知っている。
ともかくこの二つ、と言うより二人が戦ってるのを見た俺は思いっきり驚いて、悲鳴を上げる
事も出来ずにその場にへたり込んだ。
それに先に気付いたのは茶色いヤツだった。
ゴツゴツしてて表情らしい表情なんて無さそうなのに、こいつは明らかにニヤリと笑って、俺
へと飛びかかって来る。
恐いとか逃げなきゃとか、そんなのは考えられなかったし、思いつきもしなかった。
あっという間に近寄る人間に似た昆虫みたいな何かを、俺はただ見ていた。
「させません!」
横から、突然の声。
男の声だ。と思ったと同時に、俺の目の前に白い光が『落ちて』来た。
「……み、君、大丈夫ですか」
多分、俺はぼーっとしていたんだと思う。
最初、その呼びかけが誰にされているかも分からなかったのだ。
「大丈夫ですか?どこか、身体に痛みは?」
「え……?」
肩に手を置かれ、軽く揺さぶられて初めて、気が付いた。
「怪我は有りませんか?」
「え。あ。は、はい」
本当は自分がどうなってるか。なんて全然分からなかったが、少なくとも痛みは感じなかっ
たのでそう答えると、少し上の辺りから安心したような息を吐く微かな音がした。
俺はようやく、今までの事を思い出し、慌てて顔を上げる。
そこには、一人の男が立っていた。
「それなら良かった……でも、今は動かない方が良いですよ」
落ち着いた声で男は言って、俺と視線を合わせたまま微かに目を細める。
茶髪にしている俺とは違い、全くそういう事をしていなさそうな黒髪を後ろに軽く撫で付け、
顔はいかにも真面目そうだが、細められた目は鋭い。
この寒い時期に、上は素肌に白のYシャツを羽織っただけ。
下はグレーのスラックス。
まだ少しぼんやりとしたまま、男の姿を確認した俺はぎくっとした。
さっき、昆虫みたいなのと戦っていたのは、下半身がグレーのスラックスに革靴の。
俺の動揺を読み取ったかのように、男が眉を寄せた
「あ、あの……あなた、は……」
そういえば、昆虫みたいなのはどうなったんだ。
さっき白い光が落ちて、何も見えなくなった、その後は?
自然と男から視線が外れ、彼の後ろへと移る。
だが、そこには何もなく、代わりにマンション建設現場の更地の一角がどういう訳か真っ黒に
焦げていて、その傍に会社員が使う様な黒いアタッシュケースが置かれているのが見えただ
けだった。
「な、何で……っ……何が起こっ」
「騒がないで下さい」
口を開けっ放しにしていたに違いない。
問い掛けと言うよりはうわ言に近い俺の声は酷く掠れていたが、男はそれを遮って一層強く眉
を寄せると、俺の肩に置いたままの手に少し力を込めた。
「先程のアレを見たでしょう。アレは、本来であれば君の様な人に見られてはならない物なの
ですが……見てしまったからには、それ相応の対処をする必要が有るのです」
余り口を動かさずに喋るせいか、何を考えているのか分かりにくい声音で男は言う。
「でも、君の命を奪うとか、脅しをするとか、そんな方法は取らない事は保証します」
穏やかな口調の割にさらっと恐い単語が出て来たが、俺はその意味を深く考える余裕なんて
なくて、ひたすら頷くしかない。
抵抗したら、今は居ない昆虫みたいなのと同じく、消されてしまうんじゃないか。
保証するなんて言ってるのは全くの嘘で、安心した所をやられるんじゃないか。
俺の想像がまた顔に出たらしく、男の顔に苦笑が浮かんだ。
「まぁ、信用が無いのは当然だと思いますがね」
肩に置かれていた手が外れると同時に男が俺から離れると、黒焦げになった場所の近くに置か
れていたアタッシュケースの所へと歩いて行く。
前をはだけたままにしているせいか、白いワイシャツの裾がひらひらと揺れて、俺はその動きを
何となく目で追っていた。
案外、体は華奢らしい。
「あの、さっき」
「もう一人なら無事ですよ。今頃病院に移送されて入院手続きが取られているでしょう」
アタッシュケースの所に辿り着き、それを左手で持ち上げた男が再び俺の傍に戻って来る。
「そして、もうあの姿にはなれない」
呟くようにそう言って、男はアタッシュケースを地面に横にして置くと自分も片膝をついてしゃが
み込み、それのロックを外す。
俺には何が何やら全く分からないが、取りあえず昆虫みたいなのは生きてるし、もうあんな風に
人を襲う事もなさそうではあるらしい。
要するに、この男が勝った。と思えば良いのだろうか?
首を傾げかけた俺をよそに、ロックが外れた微かな金属音の後、開いたアタッシュケースの中
から男が取り出したのは。
「……チョコ、バー?」
「栄養補給に最適なんですよ」
子供の頃に良くCMで見た、やたら甘くてアーモンドだかピーナッツだかが入っている青いパッ
ケージのあれだ。
「……何で?」
「カロリー値が高いでしょう。これ」
「あ、あぁ……確かに……」
俺の疑問に答えた男は、こちらに気遣ってか俺との間にアタッシュケースを挟んで腰を下ろすと
チョコバーの封を切り、先端を出して口に銜える。
その時に見えた歯は鋭く尖り、人ではなく獣じみた物だった。が、俺はそれよりも平然と甘った
るいチョコバーを表情一つ変えずに口にする男の様子がおかしくて、まじまじと顔を見つめてしまう。
すると男の視線がこちらに向き、何がおかしいのかとでも言いたげに左の眉を上げられる。
俺が慌てて首を横に振ると、小さく肩を竦められた。
「す、すみま、せん……」
口を突いて出たどもり気味の言葉に男はゆっくり瞬きした後、笑いを堪えるように目を細めた。
チョコバーを口に銜えた事で空いた両手がシャツのボタンを留め、全てが留め終わると左手でチョコ
バーを持ち直したと同時に、尖った前歯が先端を噛み砕く。
俺は先程肩を竦められたにも関わらず、そんな男の動きを食い入るように見つめていた。
どうしてだろう。
まだ恐怖が消えた訳でもないし、男を信用して良いのかどうかも分からない。
しかし、視線を外せないのだ。
チョコバーの甘い匂いを感じつつ、黙々と噛み砕いたそれを嚥下する男の喉を俺は見る。
多分、俺より細くて、肌が白い。
日焼けとは無縁そうな感じだ。
なのに、さっきの姿に変身すると銀色の体になったり羽が生えたり。多分、あの白い光も彼が使ったの
だろう。どうやればあんな力が出せるのか、さっぱり分からないけど。
「悪魔憑き、と呼ばれています」
「え?」
「未知の生物に寄生された事で人外の力を得た者の総称ですね。普通の人間が知らないだけで、
悪魔憑きはあちこちに存在していますよ」
俺は一本食べるのに四苦八苦するチョコバーをあっさりと食べ終えた男が、こちらに視線を向けて来た。
波の無い、落ち着いた目だ。
「ただ、中には衝動に逆らえず、狂暴化して犯罪に手を染める者が居ます。私は、それを止める側です」
そこまで言って、男は立ち上がった。
一瞬見えた表情は苦笑。
「今の所は」
「今の所って……」
「あいにく、正義の味方ではないですから。私は、自分が生きる為に彼等を狩っている。ですが」
男が息を吸うゆっくりとした動きが、背中を向けられていても分かった。
「私自身が衝動に逆らえなくなった時は、私が狩られる側になるでしょう」
その時、風が吹いて、男のシャツがはためいた。
やはり、華奢だ。
俺は男の背中を見ながらそう思った。
「そう簡単に衝動に負けるつもりは有りませんが。ね」
肩越しに、男が笑ったのが見え、薄く開いた唇の合間から獣じみた歯がちらっと覗くが、やはり恐いとは
感じない。
「……さん、遅くなりました」
不意に小さな声が響いた途端、笑みが消え。
「さて……君には忘れて貰わなければいけません」
淡々とした口調で、彼は俺に話しかけて来た。
「うー……何か体だりぃ……」
俺は呻きながらベッドの枕元に置いていた携帯を手にして今の時間を確認した。
8:01
まだ、寝ていても良い時間だ。
必要がなくなった携帯を放り出し、目を閉じるが、体がだる過ぎてどうにも寝られない。
くそ、あんな時間のヘルプに答えなきゃ良かった。
そう思うがかなり今更な話なので、愚痴を言う代わりにもう一度呻く。
「……ん?」
ふっと、鼻先を何かの匂いが掠めた気がして、目を閉じたままで鼻から大きく息を吸ってみる。すると
甘ったるい、そう、チョコレートの匂いがした。
昨日、ヘルプに答えて夜勤やった後はまっすぐ部屋に帰って来て寝たからチョコレートなんて食べる暇
も無かったのに、どうしてだろう。
不思議には思ったものの何の覚えもない事なので、俺はもう考えない事にして、寝よう寝ようと思って
体から力を抜く。
その、ほんの一瞬。
俺は誰かが自分の傍に居た様な、そんな気がして、何故か胸が苦しくなった。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ オソマツサマデシタ
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
>>368みて絡み見に行って納得、転載だったんだね
いきなり氏ねのレスだからびっくりした
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ナマ注意。某白犬バンドの太鼓×四弦。太四だけど白犬全員出てます。鍵盤も最後に少々。
巷で四弦受けと百合犬が流行っていたようなので勢いで書いた。反省はしていない。
いつの会報のときだっただろう、あるインタビュアーに俺はあまり「甘えんぼう」のイメージが無いと言われた。
これでも一応バンドのリーダーだ。四六時中周りに甘えっぱなしの人間なら到底務まらない役目だろう。
それに俺はもういい年で、結婚して子供もいて、一般的には立派なオトナだ。
ごく普通に社会を生きている俺と同い年の人間なら、甘え方など過去に置き忘れてしまったやつも結構いるんじゃないだろうか。
それでも、幸か不幸かこのバンドは何十年経ってもちっともノリが変わらない。
人生の折り返し地点と言ってもいいような年代に4人ともいるのに、毎日毎日呆れるほどくだらなくて子供じみた話題で盛り上がる。
年下相手に『中学生の会話みたい』とからかわれてしまうようなこのバンドの中でいると、俺はしばしば自分の年齢を忘れることがあった。
つまりそれは、俺の中で時々、ほんの時々、コドモに還って誰かに甘えてみたいという願望が顔を出してくることでもある。
そんな思いに悩まされるのも、20年間(ある者は約30年間)一緒に生きてきた腐れ縁のあいつらのせいなんだけど。
「咲ちゃん、ここはこう弾くとやりやすいよ」
なじみのレコーディングスタジオの中。珍しくギターなんて持ってきたうちのバンドのドラマーに、さっきからピッタリ張り付いて指南し続けるボーカル。
教えられたとおりに弾くドラマーを前・横・後ろからカメラマンみたいにくるくる回って観察しては、いちいち口出し手出しする。
ひどい時はドラマーの座っているソファにぽんと飛び乗り、わざわざ彼の背後に密着して指導する。
咲ちゃんには見えないだろうが、俺と向かい合わせになった句差野の表情はまるでいたずらっ子のように下心丸出しだ。
ギターを教えたいと言うより、ただ咲ちゃんに寄りかかりたいだけなんじゃないの?
そう念を込めて句差野を睨むと、彼は『バレたか』とでも言うように歯を見せた。
その顔が計算ずくとは分かっていても、俺までドキリとさせられてしまうような妙な色気を含んでいたので、俺は文句をつけることができなかった。
さすがバンド一周囲に甘えまくり、甘やかされて育ってきた男。こいつの甘えのテクニックはちょっと見習いたいものがある。真似はしないけど。
「いやいや咲ちゃん、ここはこうした方がいいよ」
黒髪をムダになびかせ、うちのバンドのギタリストがすかさず咲ちゃんの隣に滑り込んだ。
颯爽と現われてきた、と言うよりは猪のごとく押しかけてきた、が正しいような……つーか哲矢、今明らかに咲ちゃんの体に抱きついたよな?
哲矢は句差野が掴んでいた咲ちゃんの手を半ば強引にもぎとり、自分の手とギターの間に敷いた。
句差野は見る見るうちに膨れっ面になっていった。静かにプクプク膨らんでいくあいつの頬は風船ガムを連想させ、俺は思わず吹き出してしまった。
「哲矢。今は俺が咲ちゃんに教えてるの! 邪魔するな!」
「いーや。政宗のやり方は咲ちゃんには向いてないね。俺が教えるのがいいよ」
「女みたいな手してるくせに! 『繊細担当』のくせに!」
「男っぽいのは手だけのくせに! 俺より5ミリも小さいくせに!」
これが四十路を迎えた大人の男の言い合いか。リーダーとして頭が痛くなる。これじゃ初めて会った頃と会話のレベルがまったく変わってないじゃないか。
咲ちゃんを間に挟み、聞くに堪えないケンカをする2人は、まるで親ザルにしがみついてキーキーわめく子ザルだ。呆れる反面、心の片隅でちょっとだけ羨ましいと思う。
あいつらは大樹の影に入るように咲ちゃんに自然に寄り添い、自然に甘える。俺はたぶんあいつらほど素直には甘えられない。
もちろん、今の俺が成立してるのはいろんな意味で皆に甘えてるからだってことは良く分かってる。
皆がいるから俺がいるし、皆に頼ってるから俺は安心してこのバンドの一員でいられるのだ。
だけどリーダーだし、大人だし……なんてあれこれ言い訳をつけても自分の心は騙せない。
信頼だとか信用だとか関係なく、ただ俺はガキみたいに誰かにめいっぱい甘えてみたいんだ。ちょうど目の前にいるこいつらみたいに。
でも、あんな風に振舞うには何となく気恥ずかしくていまひとつ気が進まない。甘えたいのに甘えられない。やりたいことができないとフラストレーションは溜まる。
やたらにムカムカしてきて、俺はこのままベースを抱えて一暴れしたい気分になった。首振りながらこの部屋ジャンプして走ったらスカッとするだろうな。
淡い想像を広げてみるけれど、ここは一応レコーディングスタジオだ。
ライブステージと同じノリで暴れようものなら、何らかの設備の破壊はまず逃れられないだろう(ライブでもたびたび破壊は起こるようだが)。
これではどちらが子ザルだか分からなくなる。
仕方なく、溜め息をついて、ソファの上で繰り広げられる小さな闘いを眺めた。
背後に一匹、右隣に一匹。
うるさい子ザルに交互に手を掴まれ、困ったように笑っていた親ザルが突然口を開いた。
「ところで、哲矢に政宗。飲み物と雑誌が切れてるから、ちょっと買ってきて欲しいんだけど」
「ええー?」
2人は同時に声をあげ、口を歪めた。
「だってー、外寒いしー、動くのめんどくさいしー」
「そうそう。それに咲ちゃんに手取り足取りギター教えてあげなきゃ――」
「俺の言う事が聞けないのか?」
ニコニコ笑っていたはずの咲ちゃんの顔が、一瞬で刃物のように鋭くなった。これぞ俺達が畏怖してやまない「咲山さん」の顔だ。
糊みたいにべったりと彼に貼りついていた2人は「咲山さん」の登場で途端に青ざめ、縮み上がった。つか、関係ない俺まで血の気が引いたんだけど……。
「いえいえいえいえ。咲山さんのお願いならもう、何なりと」
揃って畏まり、頭を下げる2人。咲ちゃんが手下を従えたボスザルのように見えてくる。
「お金はあげるから。プリンも買ってきなよ」
「いいの?!」
プリンという言葉によほど弱いのか、句差野は急に頭を上げて目を輝かせた。
咲ちゃんはいつもの優しい微笑みをたたえている。よかったな句差野、今回はすぐに「咲ちゃん」に戻って。
「じゃあ哲矢、あのコンビニ行こ! あそこの新製品がすごい美味いんだよ」
無邪気と言えばいいのか現金と言えばいいのか、句差野は哲矢の手を引いて元気いっぱいにスタジオから出て行く。
哲矢は引きずられるようにして、何度も未練がましくこちらを振り返りながら句差野の後をついていった。
バタンとドアが閉まる音がすると、部屋の中にいるのは俺達2人だけになった。
「政宗は純粋だね」
「純粋っつーか……ガキと言うか……」
「哲矢も素直だし」
「素直っつーか……開けっぴろげと言うか……」
「でも、ちょっと羨ましいでしょ」
咲ちゃんが俺を眺め、見透かしたように笑う。「さっきからそういう顔してるよ。多村」
俺は驚いて目をしばたいた。
「マジ?」
「マジ。バレバレだった」
咲ちゃんは当然のことのように言う。
やっぱりこの人はオトナなのだろうか。俺はあくまで冷静な傍観者として、あいつらのやってることを横目に見ていたはずだったのに。
それとも俺がよくよく自分の気持ちも隠せないコドモなのか?
「何でそんな顔してんの?」
咲ちゃんはソファに深く座り込む。革の生地がぎゅう、と音を立てる。ソファの背中にはきっと、さっきまで彼の背後を占領していた句差野の温かみが残っているのだろう。
「別に……」
まさか咲ちゃんに甘えたいからだ、なんて言えるわけ無いし。こんな年だし、とかリーダーなんだから、とか色んな理由が頭の中をめぐる。
全部甘え下手な自分が作り上げた都合のいい言い訳ってことは分かってるけど。
俺はうつむき、拗ねてるみたいに下唇を突き出した。
どうすれば句差野のように可愛く誘いかけるようなポーズができるのかわからない。わかりたくもないし、真似したくもないけど……。
黙っていると、痺れを切らしたのか咲ちゃんがフッと笑いかけた。
「多村は素直じゃないね」
「……」
「嘘はつけないけどね」
「……」
「秘密ごともできないしね」
クスクス笑われる。そこまで言うか。じわじわいたぶられてるみたいで顔が熱くなる。
「ちゃんと言いなよ、甘えたいって」
咲ちゃんは太股に載せていたギターをソファに置き、膝頭を両手で数回叩いた。
「何のつもり? 咲ちゃん」
「こっち来いよ」
そう言って咲ちゃんは俺に向かって両手を広げた。その行動の意味を理解した瞬間、俺の鼓動はいっそう高まった。
その腕の中に納まれと言うのか。俺は想像図を脳内で描き上げ苦笑しそうになる。ガキの頃ならまだしも、今の俺がやったら滑稽と言うものじゃないのか?
それに、咲ちゃんの俺を呼ぶ様子が、いかにも彼が彼の愛犬を可愛がるときと似ていたので俺はちょっと悔しくなった。
俺は甘えたいとは(認めたくないけど)思っている。だけど、ペット扱いされたいなんて思った覚えは無いぞ。
咲ちゃんは俺の迷いなんてお見通し、みたいな顔で「いいから」と急かす。
俺は周りをきょろきょろ見渡し、本当に室内に誰もいないことを確認してから中腰でソファから立ち上がった。
向かいのソファまで歩き、咲ちゃんの前で向き直り、すとんと座る。咲ちゃんの腕がシートベルトみたいに俺の体に緩く巻きつく。
なんかさぁ。正直、客観的に見て、この図ってさ……。
「かなり恥ずかしくない?」
「かもね」
咲ちゃんはおかしそうに笑う。何でそんなに余裕があるんだろう。俺はこの状態に落ち着かなくて終始ヒヤヒヤドキドキしてるって言うのに。
「さっきの句差野と哲矢のアレよりヤバいだろ、これ」
「まあ、見た目的にはかなり……」
この場面をあの2人に目撃されるのを想像してみる。恐らく、向こう10年ほどはインタビューやMCで格好のネタにされるだろう。
特に哲矢は、ほぼ間違いなくあの嬉しそうな顔で不穏な方向に話を歪曲しやがるに決まってる。
それを考えると本当は今すぐにでもこの腕の中から脱出したいんだけど、何となく腰を浮かせることが出来ない。
背中にぴっちりと咲ちゃんの体が密着している。肌の感触と、髪の匂いと体温とが、俺の心身の動きを鈍らせている。
抱きしめられた当初は氷みたいに固まってた心が、やんわりと溶かされていくのを感じる。
胸のドキドキは治まらないけれど、それはさっきまでのとは種類が違う。
くすぐったくて、照れくさくて、だけどなぜか心地良くて、終わって欲しいのに終わって欲しくない。そういうタイプのドキドキだった。
まさかこの年になってそんな気持ちを経験するとは。
「どう?」
「んー……」
俺は完全に咲ちゃんに自分の体を預けていた。床に向かってだらりと四肢を投げ出し、咲ちゃんの胸を背もたれにしていた。
温かい。そして眠い。
「たまには甘えてみるのもいいよ」
咲ちゃんの手が俺の頭を撫でる。指の間から髪の毛を掬い上げては、梳いたりかき回したりする。
なんか俺、黄粉になったような気分。このまま行くと、頬を掴まれて両手でゆさゆさ揺らされそうな気さえする。
犬みたいに触るなー、って文句のひとつでも言おうかと思ったけど、気持ちよかったのでやめた。
ゆっくり目を閉じ、肩の力を抜いた。咲ちゃんの体のいろんな要素が沁みこむように俺の体に伝わってきた。
咲ちゃんは俺の顔に近づき、溶けそうなくらい優しい声で「いつもお疲れ。リーダー」と囁いた。
今ならこの体がバターやマーガリンになってしまっても構わないと思った。
「もっと甘えてみる?」
ふいに咲ちゃんが言った。俺は目を開け、振り返って咲ちゃんを見た。
「どういう意味?」
「言ったまま。多村が甘えたら、それなりのことを俺からもするかもよってこと」
『それなりのこと』とは何だろう。色々考えてみたけれど答えは出てこなかった。
とりあえず俺は、くじ引きの景品でも期待するような気持ちで、咲ちゃんの肩の辺りに鼻先をうずめてみた。
「それは何?」
「黄粉の真似」
目を閉じ、頭を肩に擦りつける。顔にチクチクとニットの感触がする。
できるだけ黄粉っぽくなるように気持ちよさそうな表情をしてみる。そして、喉の奥から咲ちゃん、と声を絞り出す。
うっすら目を開けると、伸びてきた手に顎を掴まれた。
俺がボーッと咲ちゃんの反応を窺っている間に、彼の顔はどんどん接近してきた。
残り5センチくらいになってきたところで、俺はさっき咲ちゃんが言ったことの意味を理解した。
うわ、ヤバイ、これってもしかして、え、ちょっと、どうしよ……?
焦って何か言おうと思っても声が出せない。多分、今俺は口を半開きにしてものすごい間抜け面で咲ちゃんを見ている。
固まったまま、来たるべきものを受け入れようと急いで心の準備を始めたとき。
スウッと、息を吸う音が聞こえた。
「いーけないんだーいーけないんだー」
「ぐーっちゃんにー言ってやろー」
恐れていた二つの声がデュエットを始めた。
ご丁寧なことに2つの声は高音パートと低音パートに別れ、美しいハーモニーを披露してくれている。
恐る恐る視線を動かすと、ソファの後ろで膝を抱え、仏頂面で歌い続ける子ザルが2匹。
「いつから、見てた?」
震える口調で問いかけると、句差野は顔だけこちらを向いた。そして、目をつぶり顎を持ち上げ、恍惚とした表情で「んー」と言った。心臓が爆発した。
それはまさしく、さっき咲ちゃんに甘えていた俺の真似じゃないか。俺は体中から火が噴けるんじゃないかってくらい熱くなった。
「ひどいよ2人とも。俺らがこっそり入り込んでも全然気がつかないしさあ……」
「多村はなんか咲ちゃん独り占めしてるしさあ……」
2人は暗い声でぶつぶつと恨み言を言っている。ソファの前側で男2人が抱き合い、後ろ側で男2人が体育座りで嘆いているのだ。こんな光景、不気味極まりない。
とりあえず俺は、2人から目を離し、共犯者の顔をおずおずと覗いた。
すると彼は、惚れ惚れするほど涼しい顔で俺の体を抱え込み、素早く頬にキスした。
一瞬の出来事だった。何が起こったのかわからなかった。キスされたことを悟るより、句差野と哲矢が目を白黒させるのを見るのが先だった。
「さ、咲ちゃん……」 2人の震えた声が重なった。咲ちゃんはいつもと何ら変わらないニコニコとした笑顔に戻っている。
「こんなの酷すぎる!! 多村のバカーッ!!」
俺がバカなのかよ!
もはや半泣きの句差野がズボンのポケットから勢いよく携帯電話を取り出す。そして、咲ちゃんの腕でがっちり固定されてしまった俺に向かって携帯のレンズを向ける。
「ちょ、何お前写真撮ってんだよ!」
「写真じゃねえよ、ムービーだよ!」
「余計ダメだろ!!」
哲矢は前より一段と低いトーンで「いーけないんだー……いーけないんだー……」と歌っている。サングラスの奥の目がどれほど空ろになっているかは想像に難くない。
さらに。
「くーじー、いつの間に来てたの!? しかもその手に持ってるのは何!」
「いや、次の会報に載せようかと思って……」
くーじーの手にあったのは見覚えのあるポラロイドカメラ。
ライブ写真を撮るのに愛用したあのカメラを目の前に構え、快活な声で「はい、ポーズ!」なんて言ってくる。ポーズってなんだ?
咲ちゃんは微笑んでいる。しかし、その腕はどう頑張ったって俺を解放してくれそうもない。
どうやらさっきまでの優しかった咲ちゃんは、あの恐ろしい「咲山さん」に変わってしまわれたようだ。
「多村のバカ! 観念しろ、動画サイトに流出してやる!」
「はい、もっと近づいて! ポーズポーズ!」
「ぐーっちゃんに……いってやろぉー……」
慣れない事はするもんじゃない。
それをつくづく実感しながら、あるロックバンドのリーダーは深い溜め息をつくのだった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ナンバリングには本当に気をつけますorz
4人同時に書いてみたら非常に百合っぽい雰囲気に。信じられるか、これ全員40のおっさんなんだぜ
とりあえずギター隊は甘え上手だと思います
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「ぁアアあッ、………ハ、あ……ア………ク、ク/ラ/ウ/ザーさ………ッア、………ひァッッ……―――ア!」
右足を高く掲げられ、間断なく何度も貫かれる。
最奥まで突かれるから、脳天まで串刺しになったような気分で、頭も体もグチャグチャで。
口の端からはだらしなく唾液がたれ流れていて、きっと涙やら何やらですごく情けない顔をしているのだろうと思う。
こんなに汚いんじゃ男とか性別以前に、非生物よりも魅力がないのではとも思うけど、ク/ラ/ウ/ザーさんの動きは止まる気配がない。
「―――……ア、アッ………も、もう………イ………あ、ああんッ、あアアァッッ、」
激しく体をゆすぶられて、もう気持ちいいのか何が起こっているのかすら認識する暇(いとま)がなかった。
ただ時折、涙の滲んだ視界にク/ラ/ウ/ザーさんの凶悪な眼差しが映ると、どうしようもなく感じてしまって、それだけでイきそうになって、とにかくたまらなかった。
前は触られていないというのに着実に吐精の兆しを見せているから、「ハッ、貴様ケツだけでイけそうだぞ、淫乱だな」などと罵られ、なのに、益々体がゾクゾクと震える。
どうやらこの体はもう、ク/ラ/ウ/ザーさんからもたらされるものは全て快感ととってしまうようだ。
ク/ラ/ウ/ザーさんもそれを知ってか、満足そうに微笑んで俺を見ている。
「……ぁあん、アンッ、………ク、クラ…………ッあアアアああぁっ」
肉がぶつかり合う音と、ぐちゅぐちゅという水音が、いま起こっていることを想像させるからジンと下腹が熱くなる。
ク/ラ/ウ/ザーさんのは本当に大きいのに、それを易々と飲み込み、更にもっと奥へとくわえこもうとしている俺のアナルが心底浅ましくて恥ずかしい。
いつの間にこんなに女のようになってしまったのだろうと思って、ほんの一瞬だけ思考が別の方へ飛びかけたとき、「俺以外のことを考えるな」と、ク/ラ/ウ/ザーさんの肉棒で中を強引にかき混ぜられる。
勿論、その瞬間に思考は強制的に全て体内の楔の方へと引きずられ、俺はまた盛大な嬌声を発するのだった。
「あァッああァッ……ひっ、うぐっ、……あ、ああアっん、あんっ……」
快感のみで、体が支配される。
しかももうこの強い感覚は、既に自分の体では持て余し気味で、どこか必死に出口を求めてる。
このままだと狂ってしまいそうで、縋るものが欲しくて、できればク/ラ/ウ/ザーさんにしがみつきたいけど、そんな恐れ多いことも出来なくて、結局必死でシーツを握り締める。
「ああア……っ、うあっ……、く、ク/ラ/ウ/ザーさ……!」
「俺がいいと言うまでイッてはならんぞ。」
「あっ、そん、な……っ、ハあァッっんっっ、あああ……っ」
「ほら、もっとよがらんか。我を忘れて乱れるのだ。」
この残酷で甘美な責め苦はいつまで続くのだろうと思いながら、一方で永遠に終わってほしくないと願う俺がいた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
初めてなのでかってがよくわかってなくてすみません(汗
393 :
水土話:2008/03/03(月) 04:54:20 ID:29jRiA6s0
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| FF4四天王力イナッシォ×ス力ノレミリョーネの水一人称話です。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| キャラ&設定捏造ごめんちゃい。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 色物注意。
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
なんの秩序もなく、ただ機械が乱雑に継ぎ当てられたようにも見える無機的な通路が、
延々と続くゾッ卜の塔の内部をゆっくりと歩く。
頭上を飛び回るプラクティが鬱陶しくて乱暴に手で払うと、ぎいぎいと甲高い悲鳴を上
げつつ逃げていく。
その姿が酷く無様で面白く、俺はクカカと低く笑った。
小煩い赤マント姿の同僚が見たら、眉を潜めつつ自分の部下はもっと労れ、などと説教
を垂れていたかもしれないが、あいにく奴はこの場にはいない。
ゴノレベーザ様の言い付けで、何所かへ遠征しているらしい。なるべく七面倒臭くて時間
が掛かる任務だと良いのだが。奴がいないに越したことはない。
奴のことは別に嫌いではなかった(奴は良い奴だ。驚くべきことに)が、それを差し引
いてもあの真面目腐った説教は聞くに耐えない。非常に頂けない。
遠い深海の果てに沈んだお袋を思い出すから止めてくれ。恐ろしい。
そういえば、(人間の観点からすれば)非常に艶めかしい姿をしたもう一人の同僚
も、今日はなんの用事か塔にはいない。まぁ、あの女の考えることであるから、俺のよ
うな奴には想像もつかない用事なのだろう、きっと。
前者の生真面目な同僚よりは、幾分か話しやすいその同僚が不在であることを、俺は少
しだけ残念に思った。今日はとても暇だ。任務もない。やることもない。
退屈は魔物をも殺す。
あまりに暇で仕方がなかったから、いっそのことゴノレベーザ様のところへでも行って、
なにか任務でも貰ってこようかとも考えたが、良く考えなくてもあの凶悪なデザインの
兜の下、上司が目をまんまるにして「……明日はメテオでも降るのか?」などと真顔で
聞いてきそうな予感がしたから、止めておいた。
人間(いや、俺はモンスターだが)慣れないことはしないほうが良い。
時折擦れ違う部下をど突きつつ、塔を下へ下へと降りていく。この"えれべえたあ"とか
いう装置のことが、俺はどうにも好きになれなかった。昨日食べた伊勢海老が逆流しそ
うになる。
元は人間であったらしい、赤いマントの同僚はあまり気にしていない風だったが、
この装置、俺と同じく生粋のモンスターである奴等には、かなり不評らしい。
人間が作り出した物に順応できるのは、やはり人間だけなのだろう。
だが、あいにくいくら不評といえど、このゾッ卜の塔の移動手段は"えれべえたあ"のみ。
なので、俺は渋々その装置を使用することにする。この塔設計したの、いったいどいつ
だ。分かり次第縊り殺してやる。
まぁ、大海原にでも出て小さな港町の一つや二つ、津波で沈めてやれば、気分も幾分は
マシになるだろう。
そんなことを考えつつ、ようやく二階へと降りた俺の鼻を、馴染みあるにおいが掠めた。
濡れた地面と甘い腐臭。さて、誰であるかはあまりにもたやすく想像がつく。
「お前達は、ゴノレベーザ様にご報告をしてくるのだ……。」
何時も陰気な口調が、疲れのためか殊更に陰気に聞こえる。
錆び付いた鋸のようにざらりとした声は、モンスターの俺には妙に心地よく響く。
そもそも奴が常にまとっている死のかおり自体が、俺達モンスターにとっては心地良い
のだろう。まぁ、奴自身と一緒にいて心地良いかは別として。
何時も横に傅かせているスカルナント達が、のたのたと歩いて行くのを見送りながら、
奴はふしゅるるるるる、と空気が抜けるような音をたてた。
今のはきっと、奴なりの溜息なんだろう。
そういえば、いったい何所へ行っていたのやら、最近姿を見なかったな、と思い当た
る。
相当遠くへ行っていたのか……まぁ、思わず同情してしまうくらい弱っちい奴のことだ
から、簡単な任務で手間取っていただけなのかもしれないが。
枯れ草色の重苦しいローブの影から、禍々しい黄色の瞳を二つ覗かせ、奴はふと顔を上
げた。視線を感じたのか。
俺と目が合った瞬間、奴の身体がほんのわずか、細心の注意を払って観察していなけれ
ば分からないほど微かに、ぎくりと強張った。
「……力イナッシォ……。」
「久し振りだなぁ、ス力ノレミリョーネ。」
やや躊躇いがちに、小さな声で奴は俺の名を呼んだ。俺もわざとらしく奴の名前を口に
する。
獲物を見つけた捕食者のごとき笑みで大股に近づく俺に、ス力ノレミリョーネは歩み寄る
わけにも後退りするわけにもいかず、途方に暮れた様子で棒立ち(奴の身体は歪に捩じ
れているから、この表現は正しくない)になりつつも、必死でなにかを考えているよう
であった。
考えている内容は、手に取るように簡単に予想できた。この厄介な状況を、如何にして
切り抜けるか、だ。
惨めに痩せ細った死体姿であっても、腰と背中から生えた四本の触手と、着膨れする重
苦しいローブのお陰か、今のス力ノレミリョーネはそれなりに大柄に見える。
しかし、俺は今の奴よりも更に頭数個分大柄だ。
「……なんの用だ……。」
圧し掛かるような俺の影の中、見上げてくる濁った黄色の目が不安げに瞬き、それを見
返す俺の中に苛付いたような愉快なような、なんとも言えない感情がふつふつと湧き上
がってくる。
ス力ノレミリョーネを相手にしている時にだけ、ごくたまに感じるこの感情は、すでに馴
染みのものとなっていて、俺はそれをあえて無視しつつ、大袈裟に首を傾げて見せた。
「用がなくちゃ話もできないのか?」
「……いや、」
予想通り、戸惑った様子で小さく一度だけ首を振るス力ノレミリョーネに、俺は今度はに
たりと凶悪な笑みを作って見せ、
「なら、別に良いだろう。最近お前の腐った面を見なかったから、如何したのかと思っ
てな。」
お前のことだから、エクスポーツョンでも飲んでうっかり成仏しちまったのかと思った
ぜ、などと言うと、ス力ノレミリョーネは分かりやすく顔を歪めた。単純な奴だ。
ローブで見えないが、おそらく顔は怒りでどす黒く染まっていることだろう。
……顔が見れないのが残念だ。
ふとそう思い立つと、それは本当に残念なことのように思えてきた。勿体ないじゃない
か。勿体ない……なにが? 分からない。
「おい。」
「なんだ……。」
「ローブ、脱げ。」
「はぁ……?」
ス力ノレミリョーネは呆れた、というよりは馬鹿にしたような間の抜けた声を出した。声
にはあからさまな「なに言っちゃってんのこいつ頭に海水詰まってるんじゃないの?」
って感情が滲んでいる。ス力ノレミリョーネのくせに生意気な。
奴がローブを脱いだところで、別になんの意味もないしなんの感情も湧かない(それは
当り前だ。当り前だろう。うん)だろうが、それでも一応は同等の立場にある俺の命令
をほいほいと聞くのは、奴のプライドが許さなかったのだろう。ス力ノレミリョーネはや
や早口に、
「……意味のないことだ。付き合ってられん……。」
と言い捨てると、俺の横を亡霊のように(ようにと言うか、実際亡霊みたいなものなん
だが)足音もなくすり抜けようとする。
だが、俺はまだ奴を逃がす気はなかった。素早く奴の腕を掴むと、乱暴に引っ張る。奴
がつんのめって体勢を崩し、俺を睨みつけてきた。胸が空くような良い気分になったが、
何故かは分からなかった。
奴は一瞬迷い、それから意を決したように、なかなか笑える台詞を吐いた。
「……わ、私はゴノレベーザ様にご報告を……。」
「んんん? 変だな、お前はお前の可愛いゾンビどもに、もう報告するよう頼んでいた
んじゃないのかぁ?」
「……!」
深く被ったローブの上からでも、奴の顔が先程よりもいっそう濃く染まっていくのが良
く分かった。
あぁ、そうだろう。俺から逃げるための苦しい嘘、苦しい口実が、あっさりばれちまっ
たんだから。俺から逃げたいのがばれたんだから。
そりゃ恥ずかしいよなぁ、ゴノレベーザ四天王の一員として。
これがバルバリシア辺りだったら、しれっと「あら、そんなこと言った覚えはないけど?」
などととぼけることができるのだろうが、可哀想なことに脳味噌まで腐っちまったせい
か、アドリブの全く効かないこの同僚は、ただ羞恥かもしくは怒りにぶるぶると身体を
震わせているだけだった。
俺は馴れ馴れしく奴の肩に手を置くと、慰めるように言う。
「なんだお前、そんなに俺が怖いのか……?」
「違う、」
「同じ四天王の一人が怖いだなんて、お前は可哀想な奴だなぁ。」
「違う。私は……。」
骨の突き出た歪な腕を引いて、ス力ノレミリョーネを懐の中に収める。
小さく首を振るほかは、抵抗らしい抵抗もない。
「弱いうえに臆病だなんて、本当に哀れな奴だ。」
鋭い鉤爪と水掻きのついた手で、そっと分厚いフードを脱がせた。顔色はどす黒い、と
いうよりはやや青ざめている。
腐敗した顔に申し訳程度についた縮れ髪を払い、俺は今にも腐り落ちそうな耳にそっと
囁いた。
「あんまり可哀想だから、お前のことは俺が守ってやろう、ス力ノレミリョーネ。」
せいぜい俺の後ろで震えていろと付け足すと、なにかきゃんきゃん吠えようとしたので、
壁に押し付けて黙らせた。
外出する気はもうまったくなくなっていたから、沈めてやるつもりだった港町の連中は、
奴に感謝すべきなんじゃないかとふと思った。
400 :
水土話:2008/03/03(月) 05:09:05 ID:29jRiA6s0
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ ……なにが書きたかったんだっけ?
| | | | ピッ (・∀・;)
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
>>400 待っていた。萌え狂った。
水…それは反則なんだぜ…ハァハァ土可愛いよ土
明かりを点けましょ雪洞に〜♪
映画スレ14の441です。
女の子のお節句&「猫の恋」の季節なので、投下〜。
映画 キ○☆キ○☆バン☆バン
フィリックス×ジミー
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
怪しむべし。
玄関の鍵が開いている。居間に明かりが点いている。
敵かも知れない。口の中が渇くのを覚える。差し当たって心当たりはない。いや、あり
すぎてわからない。
銃を抜き、壁を背にして、用心深く部屋の様子を窺った。確かに人の気配がする。得体
の知れない物音がする。
コンマ一秒の間に扉を開け放ち、中に向かって銃を構えた。
「お帰り!フィリックス」
私の愛弟子が、部屋の中央で私を迎えた。銃を向けられても身じろぎもしない。花まで
飾って美しく整えられたテーブルの前に座り、にこにこ笑いながら私を見ている。
全身から力が抜け、銃を降ろした。
「危うく撃ち殺す所だっただろうが」
「あんたが間違って俺を撃つようなヘマをするかよ」
確信に満ちた口調でそんなことを言うので、ついくすぐったいような気持ちになるが、
苦労してまじめな顔を作った。
「だいたい、なんでおまえがここにいるんだ」
「玄関開いてたから、勝手に入っちゃった」
嘘つくな。ちゃんと戸締まりはして出かけた。もうすぐ引退だからって、まだボケる年
じゃないぞ。
しかし、それ以上追及するのが面倒になったので、溜め息だけついてテーブルに着いた。
目の前には、銀の皿に盛られたタンシチューが湯気を立てている。
「どうしたんだこれ」
「作ったんだ。俺、料理得意なんだぜ」
それと、ざっと見ただけで七、八種類はある、籠いっぱいのパン。
「焼きたての美味しい店見つけたんだ」
サラダも。
「ドレッシングも作った。自分で言うのも何だけど、絶品だぞ」
更に、ワインも冷えている。
「ディスカウントの酒屋で買ったんで安物だけどね」
抜け目ない。
「どうしたの?なんで黙ってるの?食べようよ」
ジミー―やがて私の守護天使となる男―は、澄みきった湖のような目で私を見つめて、
そう促した。
私は仕方なく、ナイフとフォークを手に取った。肉を切って一口食べる。旨い。舌の上
でとろけそうだ。仕方なくなどと言ったが、さすがに得意と豪語するだけのことはある。
一流店のシェフにだって匹敵する腕前だ。
テーブルの向こうから、ジミーが時々、上目遣いにこっちを見て、きらりと笑う。こう
いう時、ふとその微笑の意味を考えてしまう。私と一緒にいられるのが楽しいのか、目が
合ったからとりあえず愛想を振り撒いたのか、ただ単に料理が美味しいのか。
「フィリックス、俺にももっとワインくれよ」
食事が終わって、ジミーのグラスが空になっているのに気づいた。ボトルを手に取って、
代わりを注いでやろうとした。
「そっちじゃない」
喉に絡むような掠れ声で、彼が呟くように言う。頬が薔薇色に染まり、少し目が据わっ
ている。
「しょうがない奴だな」
席を立ってそちらへ行った。自分のグラスに口をつけ、彼の頭を抱えて、ほろ苦い酒精
を含ませてやる。待ってましたとばかりに、彼の舌が私の口腔にするりと侵入して来て、
貪るように、執拗に舐める。
彼のセーターのタートルネックを引き下ろした。露になった白い首筋に、赤い液体を滴
らせる。舌を這わせ、吸い取ると、それだけで彼は喘ぎ始めた。盛りのついた雌猫のよう
な奴。
セーターの中に手を差し入れ、胸をまさぐった。後に血溜まりの中で私に差し伸べられ
ることになる手が、もどかしげに私の手を掴んで、自身の充血した部分に導こうとする。
心得て強く握りしめ、衣服の上から擦り上げると、「ひあっ!」と叫んで、それこそ猫の
ように、私の喉元に噛みついた。
やれやれ。暫く絆創膏が必要だな。シェリーに見つかったらどう言い訳しようか。ほん
とに猫でも飼ってれば、そいつにやられたとごまかすこともできるが、生憎猫なんか飼っ
ていないことはあいつも知っているし・・・・。
「早く・・・・ベッドに連れてってくれよ、フィリックス」
そんな私の心は露知らず。私の胸に頭をもたせかけ、空色の目を潤ませて、でかい猫が
うわごとのように囁く。
安酒のせいだけじゃない。抱きしめられると、いつもこんな風に他愛なく、しどけなく
なる。こういう時以外は、もっとクールでクレバーで、ちょっとシャイな大人なのに。
いや、女を口説く時も多分、その優雅で洗練された物腰は崩さないのだろう。すると、
私だけが知っているということか、彼のこういう甘えたがりの一面は。ちょっと優越感と
特権意識を覚える。
言われた通り、ぐったりと弛緩した体を横抱きにして、寝室まで運んで行く。幾ら細身
とはいえ、百九十を超える大男だから結構大変なんだが。彼より更に体の大きい私だから
こそできる芸当だ。
予め、ジミーがベッドメイクしておいてくれたらしい。清潔なシーツの上に彼の体を横
たえた。
黒いセーターをたくし上げる。ナイトスタンドの淡いオレンジ色の光の中に、女のよう
にきめの細かな白い肌が浮かび上がる。固くそそり立ってこちらを挑発している、煽情的
なサーモンピンクの乳首を口に含んだ。ジミーが吐息の混じった声を洩らし、そっと私の
頭を抱えこむ。
音を立てて強く吸い上げ、ふと目を上げると、彼が聖母のような表情で私を見ていた。
「フィリックス、赤ちゃんみたいでかわいい」
「五十のオッサンを捕まえて、気持ち悪いこと言うな。かわいいなんて男にとっちゃ最
大の侮辱だぞ」
もう片方の乳首をちょっと乱暴に、指先で弾く。ジミーは身を捩って笑い転げる。
「ごめんごめん。あんたはやさしくて面倒見がいいから、引退したらベビーシッターに
なるといいよ」
「この酔っ払いが」
豹のような身のこなしで、彼は突然、私の下から抜け出した。逆に素早く私を組み敷き、
腹の上に跨って、服を脱がせにかかる。
「俺が将来、結婚して赤ちゃんできたらさ、フィリックスって名前にしてやるよ。『ほ
ーらフィリックス、泣くんじゃない』とか言って、ミルク飲ませたりおしめ替えたりして
やるんだ」
「何だそりゃ」
「ちょっと思っただけ。っていうのは嘘で、わかってるくせに。あ・・・・んっ、そこそん
な風に弄っちゃ・・・・!」
率直に歓びを表現する愛らしい顔を見上げて、私は思う。この先、それぞれ妻や恋人と
呼べる女がもし、できたとしても、この不思議な関係は続いていくのではないかと。
いや、たとえ今のような形では続かなかったとしても、私と彼との間に築かれつつある
強い繋がりが断たれることはあるまい。ただの恋愛でも友情でも師弟愛でもない、心も体
も、精神も、そして性さえも超越した、魂と魂との切っても切れぬ絆。
そのような奥深い人間どうしの結びつきを表す言葉は、まだできていないのだ。
枕元に本が置いてある。私を待っている間、ここで横になって読んでいたのだとか。
「この人の文章、好きなんだ。子供の時から何度も読んでる。すごく共感できる、って
いうのかな。いや、そんなもんじゃなくてさ。なんか自分が書いたみたいな、懐かしい感
じがするんだ。六百年も前の人だとは思えないくらいだよ」
私の腕を枕に、ジミーは熱心な国語の先生みたいな口調で語る。何をまじめくさって話
してるんだか。ついさっきまで、私の上で腰を振って泣きながらよがり狂うわ、うなじを
噛ませ、背後から貫かせてニャンコロ鳴きまくるわの痴態を晒し放題晒したのはどこのど
いつだ。
尤も、どんな話でも、ジミーの話で聞きたくないことなど何一つないが。
「ふーん。それは不思議だね」
相槌を打って、ちらっと本の表紙にあるタイトルを見る。「カンタベリー物語」。
この文学好きな、根っこの所ではやさしく愛情深い青年が、よくもこんな詩心のかけら
もない、血腥い世界を志したものだ。とはいえ、彼に言わせれば、それは私も同じことだ
というのだが。
だからこそお互い、様々な意味で惹かれあったのだろうか。腕の衰えを感じ始めたせい
もあるとはいえ、長らく弟子は採らない主義だった私が、彼だけは教え、育てる気になっ
た。
更に、この年になるまでそっちのケはないと思っていたのだが。しかも、息子のような
年頃の若い男に翻弄されるとは。一体なんでこんなことになったんだろう・・・・。
いや、そんなことはどうでもいい。金の為に人を殺すことに疲れ始めたこの心を、彼の
眩しい微笑みが、甘い髪の香りが、驚くほど柔らかい肌の温もりが、どれほど癒してくれ
たかわからない。
だからこそ、本当は彼に同じ道を歩んでほしくはないのだが。彼だって一人前の男だ、
自分の意志でそれを望んだのならば、その選択を尊重するしかない。ただ私が持てる技術
の、哲学の全てを、骨の髄まで叩きこむだけだ。
何ともはや、こういう技術や哲学まで教えるハメになるとは思わなかったものの。
「フィリックス・・・・」
彼が長い、しなやかな腕を私の首に巻きつけてくる。妖しい瞳が私の顔を覗きこむ。
「あんたのブルーグリーンの目が好きだ。人の魂まで見透かすような、不思議な色合い
の・・・・」
私は彼の唇に軽く口づけて、答える。
「そう。見られるより見る方が得意な目なんだ。意外とな」
「それ何の引用?カッコつけすぎだよ」
ジミーは笑って、身を沈ませる。私は心の中で、照れくさくて言えなかった言葉を反芻
する。
私もジミーの目が好きだ。標的を見据える時の、猛禽のように鋭く冷徹な輝きも。お気
に入りの本について話す時の、少年のように清らかで純真な煌めきも。
そして今、私の猛り立った部分を吸っている時の、熱を帯びた、ひたむきで切なそうな
眼差しも。
私の指に乳首を弄ばれ、呼吸を乱しながら、ジミーは健気なほどの懸命さで私を歓ばせ
ようとする。指で根元を擦り上げながら、熱い息を吐きかけ、舌を絡ませ、たっぷりと唾
液を溢れさせて。快楽の波にたゆたいながらも、ふと嗜虐的な気持ちに駆られ、彼の金髪
に手を差し入れて、強く頭を引きつけた。更に深く咥えこませ、白い喉の奥の奥まで犯す。
私が注ぎこんだ幾億といういのちの素を、彼は寸毫の躊躇も見せず、喉を鳴らして飲み
こんだ。
彼の汗ばんだ体を抱えるようにして、自分の脇へと戻してやった。乱れた髪を指で整え
てやる。
「ありがとう」
「礼なんかいいよ。代わりにさ、俺が眠るまで、何か暗誦して聞かせてよ。あんたの好
きな古典の好きな一節でいいから。あんたの声、夢の中まで聞いていたいんだ」
私にぴったりと身を擦り寄せて、愛しい後継者は無邪気に言った。
「お安いご用だが・・・・」
これじゃあまるで子守だ。そういえば子供の頃、眠れない夜には、親父がこうして物語
を聞かせてくれたり、本を読んでくれたりしたっけ。
そんなことを思った瞬間、何かとてつもなくいや〜な予感が、背筋の辺りを走り抜けて
行った。
Fin.
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
タイトルどうしようか悩んだ。「天使」はシラスと被るねんなあ。
フィリックスも「私」か「俺」かで迷いました。
地の文「私」で台詞「俺」かと思ったのですが、一回も言ってませんね。
>>400 禿げ萌えた。
土の可愛さが半端ないなあ。
庭球皇子原作終了で尻に火が付いて書き上げました。
@滝@、鵬&穴戸、双子兄&双子弟や赤観もいいけれど
今回は立花←慰撫一方通行です。ちィは名前だけ。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
立花さんは時々、片づけが終わった後とか、部活の始まる前とか、
休憩時間のほんのわずかな間、コートに何をするでもなくぼんやり立っている。
それは決まって、真っ青に晴れて雲ひとつない、まさしく“夏!”という日だ。
俺たちの手で造っている途中のコートは、他の学校のそれと違って、グラウンドの土むき出し。
雨の日はちいさな川が出来、こうして晴れ上がった日は少し水でも打っておかないと
埃っぽくてしょうがない。
勿論、ちゃんとネットに囲まれたコートもあるけど、そこは今日、女テニが使っている。
何でも男子テニス部に倣って、部内の総当たり戦をしたい、ということらしい。
提案した子はいわれなくてもわかる。上尾あたりが、さすが杏ちゃん!とか、盛んに言ってた。
とんぼで土を均したり、邪魔な小石を拾ったり。
けれど皆、いつのまにか脱線してきて、地面に直接線を引いて、
用具入れはここにしようとか、部室には冷蔵庫を置きたいとか、わいわいやっている。
俺はふと周囲を見回して、何で皆が好き勝手を言っているのか判った。
立花さんがいない。
嫌になる。先生がいないと騒ぎ出す小学生じゃないんだから。
こういうとき場を治められるのは石多なんだけど、その当人も一緒になって、
洗濯機があればなあとか言っていたら世話ない。なさすぎる。
……本当、嫌になるよなあ。
立花さんは程なく見つかった。グラウンドにいた。
時間は──……ちょうどチャイムが鳴った。短縮時間割の時のじゃなければ、
今ので11時45分になっているはずだ。
俺たちの部長は、何を見ているんだろう。
テニスコートのほうから軽やかな音が聞こえてくるけれど、
時折風に乗って審判の子の声も聞こえてくるけれど、
立花さんはそちらを見てはいない。
ただ足元、正午近くの高い太陽に怯えてうずくまった自分の影を、
ひたすらに見つめている。
チャイムが鳴り終わって、ぷつっと放送が切られる音がして、
それからようやくだった。立花さんの視線が上がった。
空へ。見上げれば眩暈のするような明るい青空へ。
「──立花さん」
でも俺は、その視線が上がりきる前に声をかけた。
「……信二か」
眩しそうな目で、俺を見る。
何で勝手にいなくなっちゃうんですか。そう言いそうになったけど止める。
なんとなくだけど、今、立花さんがやっていた動作の意味が判ったから。
「影送りですよね、今の。──晴れた日に自分の影をじっと見て、
十数えて、それで空を見上げると……ってやつ」
「……驚いたな。知ってたのか」
「絵本で読んだから」
頷いて、俺はそう答えた。立花さんは少し複雑そうな表情を浮かべて、
そうか、と笑った。きっとあの人が“影送り”を知ったのも、俺と同じ絵本を
読んだからに違いない。
「──信二」
それきり言葉は途切れて、どちらも会話の接ぎ穂を無くして、
いい加減黒いユニフォームに染み込む太陽が耐え切れないなあ、という時に、
立花さんは口を開いて、悪いんだが、と前置きして言った。
「上尾たちを呼んできてくれ。折角だ、皆でやってみるか」
結論から言えば、上尾たちは大喜びの大興奮だった。
ポーズはとりあえず、立花さんを中央に据えて肩を組むことに決まった。
でも「行こうぜ全国!」とか「不同峯、ファイっ、オー!」「言いにくくないかそれ?」とか
「俺のリズムに乗れるもんなら…」「うるさい」とか、
好き勝手なことを喋るものだから、なかなか皆、瞬きせずに十数えることが出来ない。
ただ、立花さんがコールをすると、不思議と静かになった。
一、二、三、四、五。
俺は立花さんの右隣で、自分の影を睨みながら、考える。
六。
この人は、不同峯に転入してくる前は、いったい誰と影送りをしたんだろう。
七。
ここではないどこかの空に、今もその残像は漂っているんだろうか。
八。
九。
── 十。
数え終わると同時に、全員が空を見る。
黒い影の、白い残像が、すうっと昇っていく。
「すげえ本当に見えた!」「ちゃんと肩も組んでるぜ!」「おもしれー!」
歓声にかき消されそうなかすかな声だったけど、でも、
俺はちゃんと聞こえていた。
「──信二、どうした? 見えなかったか?」
落ち着いた声でふと、我に返る。
他の五人はとっくに解いているのに、俺だけひとり、立花さんと肩を組んだままだった。
見えましたよちゃんと。そう言おうと口を開きかけて、
だけど意に反して俺の首は横へ振られていた。
「……見えませんでした。途中で瞬き、したから」
──ちィ、と。見上げるその前に。
──千歳、と。見上げたその後に。
立花さんが、確かに誰かの名前を呟いたのを。俺は聞いてしまっていた。
声の調子はとても懐かしげで、なんだかひどく切なげで、
望郷の思いがこもったようなもので、そんなのに嫉妬してしまう俺は、
とんでもなく醜い人間なんじゃないかと思った。
けど今日、あの人の網膜に映ったのは俺たち七人の影だけで、
過去にいた誰かの影は映る前に消えてしまったのだから、
それで溜飲が下げられないこともない。
……俺もいいかげん、ガキで嫌んなる。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
「影送り」でぐぐると出てくる絵本のタイトルで
今回の話を思いつきました。
大人だけど旧習時代の過去を捨てきれない(0M0)ヘシン!!さんと
こと彼に関しては背伸びをしたがる慰撫の組み合わせが筆者の萌えです。
ではまたいずれ近いうちに…… アデュ!!
うわああああしまったあああ、顔文字登録しておくんじゃなかったor2 or2
最後の顔文字は気にせず読み飛ばしてください
橘さん違いバロスwwww
ダディャーナザァン!!ナニシテルンディス!?(0w0;;)
ワラタwww ドンマイwww
笑いすぎて目から変な汁出た(0M0)
425 :
風と木の名無しさん:2008/03/05(水) 13:29:37 ID:+miH3ald0
ワロタwwww
あの名前には一生ついてまわりそうなAAだよねww
426 :
大フリSS:2008/03/05(水) 14:42:34 ID:laikWgxK0
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 超久しぶりに投下。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 西裏との試合後の部活さぼるズンタとリオーの話です。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
All I need Is . . .
教室の席についたまま、少年はグラウンドを見つめる。
授業を終えた生徒たちが、パラパラと校門を行き過ぎる。
西裏との試合の後、野球部は部活を再開し―
それは勿論、次の試合の為で
それはつまり、勝つ為で
部員たちのウォーミングアップする姿を、俺は片肘をつき教室から見下ろしている。
ふ、と。
あの日の、試合後の光景を思い出す。
カズさんに、抱き締められて…でも、涙で前が見えなかった。
I take your hands 伝ワル温モリガ遠ク
Lost my way 誰カノ言葉ナンテスドオリ
西日が、校庭を、教室を照らす。
俺はただ、あの日に思いを馳せる。
何が、足りなかったのだろう。
積み上げてきた日々を、何が否定できたのだろう?
悲シスギテナノカ?悲シミワカンナイ
激情ノハテニ無表情ニタドリツク
Lay your hands 動カナイアナタハ現実
スベテハ過ギテユク ソレダケガ真理
静かな教室の傍らに、駆ける足音が響く。
その方向を見やると、練習用のユニフォームを着たリオーがいる。
早い息と共に、その後輩が言う。
「ジュンさん、今日も部活来ないつもりですか?」
俺は、問いかけに応じるでもなく、ただぼうっとその姿を見ていた。
リオーは、一瞬戸惑う表情を見せるが入り口に立ったまま続ける。
「あの、練習来てください。ジュンさんがいないと、困ります」
真面目な表情をしている、一年。
俺は、肘をついた状態でまた窓からグラウンドに目を向ける。
そして、広がる午後の風景を写しながら、呟く。
「お前、この前の試合なんで負けたと思う?」
え、と後でリオーが返す。
そちらを振り向くと、困った顔でそいつはわかりません、と言った。
「お前さ、土下座したら俺も部活行ってやるよ」
俺が、音もなく笑って言うと、リオーは幾分か惑うように目線を左右に散らす。
しかし、黙ってすたすたとこちらにやってきた。
俺は、不審そうにそれを見ている。と、彼は俺のすぐ前、足元にぺたんと座った。
決して綺麗とはいえない床に、両の手をつこうとする。
「お前、バカじゃないの?」
リオーはその言葉にむっとして見せたが、すぐに落胆の表情に色を変えた。
依然変わらない面持ちで、俺はこちらを見て何か言おうとするリオーの頬に左手を触れる。
自分より、少し高い温度が伝わる。
硬直しているリオーをよそに、つ、と親指で頬を撫でた。
ぴく、と肩を震わせ、不安そうな目をこちらに向けている。
触ったままの頬が、耳と共に紅く染まっていく。
「ジュン、さん?」
ドコカノ思想振リカザス僕ヲ笑ッテ
イザトナレバ自分ノ心スラ救エナイ
「お前じゃ、足りない」
俺がそうこぼすと、リオーはすぐに言い返した。
「そんなの、俺でもわかってます」
コノママイッソ過去ニ生キテシマオウカ?
コンナ僕ヲアナタハモウ叱ッテモクレナイ
「俺じゃ、カズさんにはとても及ばないって、わかってるつもりです
でも、トーセイのピッチャーはジュンさんです。練習に来てください」
積もり積もった思いの丈を吐き出すように、リオーはどんどん喋る。
バカみたいに、必死の様子で。
「だから、カズさんに顔向けできるように俺、もっと頑張りますからっ」
深く息をついて、目の前のキャッチャーが言う。
「もっと、俺、頑張りますから―」
言いながら、こちらを見上げるリオーがその動作を止める。
自分でも知らないうちに、涙を流していた。
あ、とかえ、とか短く声を上げて、リオーは立ち上がって自分のポケットを探っていた。
結果、何も見つからず、そいつがユニフォームの袖で俺の左頬に流れる滴を拭った。
足りないものなんてなかった。
だってあの時、俺たちは全てを出し切ったはずだから。
いや、相手と比べたら、不足する何かがあったのかもしれない。
だからこそ、踏み出さないといけないんだろうな。
見えない、足りない何かを掴む為に。乗り越える為に。
黙って、考えを巡らせる俺の前で、リオーが表情を伺っている。
溜め息をつくと、俺は短く発する。
「行くよ、部活」
慌てふためいていた後輩が、ぱっと明るい顔色を見せたので、それを鼻で笑う。
次の夏は、真っ白な太陽が球場を丸ごと照らして、その真中でピッチャーが振りかぶる。
最後はそう、ストレートがいいな。
わあっていう歓声に包まれながら、キャッチャーの俺がウイニングボールをジュンさんに返すんです―
などと夢みたいなことを、廊下を共に歩くリオーは勇んで話していた。
まあ、それを現実にしないとな―
薄くボケた、あの日の球場の廊下を忘れないように
俺を信じて球を受け続けてくれたカズさんの為に
何か喋っているリオーの隣で、苦笑いをする俺。すると、リオーが声をあげた。
「ああっいけない、俺、監督に何も言わずに来たんだったっ」
あ?と俺は一瞬顔をゆがめると、隣の奴がぐっと腕を掴んだ。
「行こう早く、ジュンさん!怒られる!!」
ああ言葉も出ない。やっぱりこいつはバカだと思う。
そして
まるで疑わずに、俺をまっすぐに見るこの
次の正捕手のために
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 駄文失礼しました。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 途中色々文がgdgdなってます。痛い子ですまそ。
| | | | \
| | □ STOP. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ BLポクナイゾゴルァ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
>>420 笑わせて貰ったwwwが萌えた!!
ありがとう
オリジナル 弟と兄
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
足抜けの動機は単純だった。すべて嫌になったから。
頬に切れ味のいいナイフが押し付けられている。そこに血色の線を引くのは腹違いの弟だ。
薄い水溜りのような色の眼がこっちを見ている。奴の長すぎる足がめり込んだ腹が熱い。
それどころかコンクリートの床に打ち据えられて、全身の骨がぎしぎしと痛んだ。
明日になればどこもかしこも青あざだらけだろう。明日まで俺の命があればの、話。
ジーンズの尻ポケットにねじ込んだ航空チケットとパスポートはもう役に立たない。
21時17分初のブエノスアイレス行。死ぬ前に一度、青い海に真っ青な空が見たかった。
だけど今俺が見ているのは薄い、恐怖すら感じる冷たい青の眼。機嫌が悪いときの癖で眉間に皺が3本。
長い睫が伏せられて美術館に飾られた彫像のように美しい影を作っている。
生まれたときから同じ環境で同じ不味い飯を食って育ったくせに、この男はどうしてこんなにも人間離れした美しさをしているんだ。
「何を考えてる、兄さん」
「お前のことだよ、アレックス」
「この状況だと、自分の命について考えたほうがいいんじゃない?」
ひたひたとアーミーナイフが頬にあたる。
ここに連れ込まれるまでに散々いたぶられたのに比べれば、いくらか上品な脅し方にも感じる。
「命乞いでもしろってか」
愁嘆場は嫌いだ。反吐が出る。
血の混じった唾液を吐き捨てると、弟はうっすらと笑って腹を蹴りつけた。
鈍い音がする。腹が痛い。吐き気がする。
「もし兄さんが僕に懇願してくれたら、助けてあげるよ」
「裏切り者は殺すのが俺達のルールだろ、ドンがそれを曲げちゃ、下の奴等にしめしがつかない」
「僕たちは身内を大事にする。それもルールだ」
冷酷なマフィアのドン、真っ当で頭の良い優等生の弟、天使みたいに綺麗な男。
目の前に居るのは誰だ。目の前の男のことなど本当は俺はなにも知らなかった。
ぼやけた視界に、ちらつく蛍光灯の光が眩しかった。
人気のないピザ屋の裏の食料庫が死に場所とは、チンピラの俺に相応しすぎて泣けてくる。
「俺とお前のつながりは半分だけ、それもろくでなしのくそったれ野郎の血だ。それでも俺を庇ってくれるのか?ありがたいことだな」
「僕は兄さんを愛してる」
アレックス。七ヶ月違いの半分血の繋がった弟。
いつも泣きながら俺についてまわっていた、俺の小さな守護天使がナイフを突きつけながら言う。
こんな最悪な告白は初めてだった。
諦めとか恐怖とかが一週回って今度はなんだか笑えてきたけど、実際問題笑うと腹の傷がしくしく痛んで酷く苦しい。
「俺はお前なんか嫌いだよ。くそったれのマフィアも、親父も、母親も、この町も」
「だから捨てるのか、僕を」
弟が俺の肩にのしかかる。いつも丁寧に整えてるブロンドは乱れ、海の匂いがした。
この町には海がない。子どもの頃、いつも家のバスタブを水浸しにして遊んだ相手が今俺の上に圧し掛かって泣いていた。
「泣くなよ、アレックス」
「僕を捨てるなんて、ひどいよ。こんなに愛してるのに、どうしてさ……」
「お前が俺のできすぎた弟だからだ。頭が良くて、立派な大学を出て、真っ当な暮らしができる奴だったのに、どうしてお前がマフィアなんかに?」
「父さんに頼まれた、育ててくれた人だ。嫌とは言えない」
「だからって、人生をどぶに捨てるなんて、お前は賢いくせにバカ過ぎる。」
「僕が父さんの言うことを聞いたから? 兄さんの忠告に従わなかったから? だから僕を捨てるのか?」
頷くだけで人の命を簡単に消せるマフィアのドンのくせに、
まるで5歳の頃に戻ったみたいに頼りない目で見下ろされるともう何もかもどうでも良いように思えてくる。
実際、俺の人生なんてどうでも良いことばかりだ。
親父がお袋を捨てたことも、お袋がアル中で死んだことも、
悪さばかりしてあれほど嫌った親父より情けないケチなチンピラになったことも、すべてどうでもいいことだ。
弟にとっては同じように、奨学金で入った大学も、苦労してとった就職口も、真っ当な人間関係もすべてどうでもいいことだったんだろうか。
そんなわけはない。そんなはずがあるわけない。
青い海がみたかった。もう何もかも捨てて、こいつのこともすべて。
俺がやらかしたすべてのくだらないことを忘れて海に沈みたかった。
コンクリートの上は冷たくても、沈む事無く固く俺を拒絶する。
圧し掛かられた胸が重い。吐息がかかる肩が熱い。
震える指先で髪に手を差し込む。金色の柔らかい髪をかきあげてやる。
7つの頃、こいつの母さんが死んだ時にそうしたように。
嗚咽が聞こえた。もう青い目は見えない。
「……僕はただ、兄さんといたかったんだ」
頬の傷を撫でるアレックスの指は骨ばっていて、冷たかった。
美しい弟が流す美しい涙がぼたぼたと落ちてきて乾きかけた傷に塩水が滲みる。
まるで金色の海の中にいるみたいだ。ああ頭が割れるように痛い。
「僕を捨てないでよ、兄さん。あなたといるためならどんなこともする。愛してる、好きなんだ」
泣きながら弟が俺にキスをする。血の味のキスなんて最悪だ。唇の端が切れていて、舌で撫でられるたび酷く痛んだ。
「俺はただ海が見たかったんだ」
逃げ出したかった町のピザ屋の裏で弟に殴られキスされながら、どうして俺は笑っているんだろう。
尻の下に引いたプエルトリコ行の航空券のせいか、グッドトリップしているみたいだ。
母さんの遺言でヤバイ薬には一度も手を出さなかったのになあ。
「僕を一人にしないでよ……」
「おい、聞けよ、アレックス……海は当分の間いらないな……とっくにお前に溺れてる……」
頭が痛い。視界がぼやけて、もう薄い青色の目も見えやしない。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
勢いのまま書いてしまった。
お粗末さまです。
ご馳走様でした。
超おいしかったです…!!
442 :
ハルシオン:2008/03/05(水) 21:56:56 ID:v/v/EsEe0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
某白犬の唄×四弦(ナマ・エロ注意)
百合脱却を図るため唄が若干S化しています。
不測の事態にも余裕を持って対応できるのが、大人の男のあるべき姿なんだろうけど。
ホテルの部屋が何の前触れも無く右へ左へ揺れ始めたときには、正直頭が真っ白になってしまった。
地震と気づくと、俺は部屋の隅に小さくなり、誰かから身を隠すかのようにひたすら息を潜めた。
壁に架けられた額や、ベッドサイドのスタンドライトがでかい音を立てて縦横無尽に傾く様子を、瞬きもせずに見つめていた。
揺れが治まると、俺はこわごわ立ち上がった。
天敵と出くわしてしまった小動物みたいに辺りを忙しなく見回し、部屋のドアへ小走りで向かった。
バクバクと心臓が暴れるのを抑えられないまま、カードキーを持ってドアノブを引き、慌てて廊下に出た。
そこで俺は、俺以上にこの状況に動揺しまくっている人間を目の当たりにした。
全身、ずぶ濡れ。
髪の毛の先から指の爪の先まで、無数の滴の玉が膨れ上がってはボタボタ廊下に落ちている。
急いでつっかけてきたと思われる部屋用のスリッパは、濡れた足に踏みつけられて色が変わるほどビショビショに湿っている。
体には、申し訳程度にバスタオルが一枚腰に巻きつけられているだけ。
息を切らしながら、我らがリーダーは惨憺たる有り様でホテルの廊下のど真ん中に突っ立っていた。
きょろきょろ首を左右に振っていた多村は、俺の姿を確認すると安心したように手を上げた。
「句差野」
こわばっていた顔が綻び、無邪気に近寄ってくる。いや待て待て、まずその体を拭こうよ。すげー水滴落ちてきてるから。
「今の地震ってもう治まったんかな? 俺すっごいビビッたんだけど」
「さ、さあ」
呆然と立ちすくむ俺に向かって、多村は自分の格好を省みることもせず話しかけてくる。俺はむしろ今のお前にビビッてるよ。
「地震なんて久しぶりだからさ、どうすりゃいいか分かんなくなって……」
それでもその格好で廊下に飛び出す大人はあんまりいないと思うよ。曖昧に返事をする俺を上目遣いで見ながら、多村は濡れた頭を掻く。
ただでさえ絶え間なく滴が落ちてきてるというのに、廊下に敷かれた小豆色のカーペットにはますます楕円型のシミが生まれていく。従業員泣かせだ。
「で、なんで多村は、そんなびしょ濡れになってんの?」
「え。ああ、これは」
そこで多村は自分の状態を初めて認識したようだった。
バスタオル一枚しか身につけていない無防備な体を他人事のように眺める。
「風呂入ってる途中だったから。拭くの忘れてた」
こいつ本当に地震の多い県の出身なんかな。
額に垂れた前髪をかき上げ、締まり無く笑う顔を見ていると、多少の不安を感じる。
だけど、邪な好奇心もムクムクと湧いてくる。この機を逃すな!と肩を突ついて笑いかけるもう一人の自分がいる。
だって、こんなカッコで人の前にのこのこ現われてくるんだもん。
何されたって文句言えないでしょ?
「じゃあ俺の部屋来なよ。風呂入り直そう」
多村の右腕を掴んで、強く引く。多村はうろたえ、体のバランスを崩しかけた。
「ちょ、いや、いいよ。自分の部屋でやるから」
「いいから」
何がいいから、なんだか。
自分でも分からんけど、とりあえず最もらしく聞こえる理屈を次々並べ立て、無理矢理多村を部屋に連れ込んだ。
後から気づいたことだけど、多村はカードキーを持っていなかった。
バスタオル一丁だったのだから、普段の俺ならすぐにそのことに気づき、指摘できているはずだった。
それを見落とし、口から出任せの訳のわからない口実で必死に多村をおびき寄せたと言うことは、それほど俺は自分の悪だくみに夢中になっていたのだろう。
最近妙に目が冴えて眠れなかったのだ。
画期的な「遊び」を思いついた俺は、プレゼントの箱を前にした子どもみたいにワクワクしていた。
やってることは、まったく子どもらしくないんだけどね。
数分後、俺は着ていたパジャマをすべて脱ぎ捨て、多村と一緒に浴槽に浸かっていた。
「何でお前も入ってんだよ」
「いいじゃん。体洗ったげるよ」
「別にいーよ」
ガキじゃあるまいし、と多村はむくれて言う。俺は何度か手を振り、渋る彼に後ろを向かせた。
浴槽の中でのろのろと多村は体の向きを変えた。しかめっ面の代わりに、少し丸まった背中が目の前に来る。
棚から取り出したボディソープを薄いタオルの上に垂らし、手で泡立てた。
小さくて可愛らしい泡がいくつも生まれ、ふわふわバスルームを漂った。
タオルを背中に当て、こすり始める。背骨の辺りから少しずつ場所をずらし、体の前方へとタオルを持っていく。
何も言わずに俯いていた多村が、胸にタオルが触れた瞬間びくりと揺れた。浴槽のお湯が少し外へこぼれた。
「どしたの?」
俺は訊く。多村は首だけ振り返り、いぶかるような目で俺を見た。
俺は首をかしげた。タオルを動かしながら、できるだけ平然とした顔で。
「じっとしてないと洗えないよ」
それでも、俺の手がよからぬ動きを見せるたび、多村は何度も不審そうに振り返って抗議を続けた。
「やっぱりおかしいだろ、これ」
「そう?」
「っ、お前フツー、こんな洗い方しねえよ」
「だから?」
「もっと、ちゃんと、洗えよ」
「ヤダ」
いちいち俺を見てくる多村が邪魔臭かったので、首を伸ばして彼の耳の根元にかじりついた。
多村が息を呑むのが間近で聞こえた。
「……やっぱり」 細い声で、独り言のように多村がぼやいた。
「普通にやるつもりなんか、無かったんじゃんか……」
俺は開き直り、泥のようにお湯に沈み込む彼を笑った。
「今頃気づいたの?」
「沈んでないで。洗えないから、さっさと立って」
多村の肩を手のひらで数回叩き、強引に浴槽から立ち上がらせた。
俺も腰を上げ、ほとんど背丈の変わらない彼の後ろに立つ。
タオルを多村の胸の前に置き、くるくると回した。
もうその動きは、『普通』でないことを隠しもしていない。
明らかに人をいたぶり、なぶり、煽る為に存在する動作だ。
多村の口からも、どう聞いたってマトモに洗ってもらってる人からは出ないような声がこぼれている。
それなのに、「洗ってあげる」なんて大嘘を未だに言い続けてる自分が滑稽で、笑えた。
「は、く、さの……」
「何そんな声出してんの? 洗ってあげてるだけなのに」
耳元でククッと笑ってやる。多村は壁のタイルに曲げた両腕を押しつけ、不安定な体を支えている。
タオルはもう腹の下を降りて、変形した彼のものを包んでいる。
水びたしのタオルがまとわりついて、それの形状をハッキリと示していたのがおかしかった。
「そんなに声出すと隣に聞こえるかもよ」
小声で囁く。タオルを掴んだ右手の指を、蛇のようにうごめかせる。
「隣は咲ちゃんだったかな? 咲ちゃんに聞こえるかも」
左手を前に突き出し、多村の口にねじ込んだ。人差し指から薬指までの三本の指が湿った舌の上に載った。
「それとも多村は、聞かせたい?」
左手の指を順番に踊らせながら、右手を上下させる。
左手にヌメヌメした唾液と、今にも噛み付かれそうな硬い歯の感触がする。右手にはタオルが吸い込んだお湯の筋が、手首まで垂れてきている。
「ふ……う、う」
何かに耐えるようなくぐもった声が、大きく開かせた口から落ちてくる。多村は壁に置いた腕をXの字に交差させ、そこに顔を押し当てた。
恐らく、あいつの目は縫ったように固く閉じられているんだろう。流されまいと必死に理性にしがみついてるのだ。
俺は多村の口から指を抜き取り、蛇口をひねった。
壁に架けられているシャワーヘッドから勢いよくお湯が出て、俺達に降り注いだ。
「大丈夫だよ。我慢しなくても」 泡が洗い流されていく多村の肩を撫でながら俺は言った。
「声なんて聞こえるわけ無いじゃん」
たぶんね。
シャワーを頭から浴びながら、俺の手の動きはまだ続いた。
「く、さの」 多村の声はシャワーに紛れ、こんなに近づいてるのに聞き取りづらい。
「何?」
「タオル、外して」
きっと今、多村の全神経が集中しているのだろう箇所には、未だにずぶ濡れのタオルが絡み付いていた。
キュッと握り締めて強く絞ると、一気に大量のお湯が浴槽に吸い込まれていった。
同時に多村は素っ頓狂な声をあげ、弓なりにのけぞった。
「そんなによかったの?」
こちらに倒れかかった多村の体を抱きかかえ、声を低めて笑う。
ひそかに覗き見た多村の横顔は真っ赤に染まっていた。
ろくに瞬きもしないぼんやりとした目は、もう何処を見ているのか分からない。もしかすると何も見えていないのかもしれない。
ただ僅かに開いた口で、間隔の狭い、浅い呼吸を繰り返している。
そんな姿を見てこっちも興奮してるなんて、こいつには絶対言わない。
死んでも言わない。
「も、はやく……」
「早く、何?」
多村の声はうわごとみたいにフワフワしてて、まるで芯を抜かれたようだった。
俺は、子どものわがままに飽き飽きしてしまった親のような、冷たい声で返す。
多村が顔を向け、懇願するようにこちらを見上げてくる。
「はやく、いかせて」
顎にかかる息が熱い。狭いバスルームの中に、立ちこめる湯気の中にあっと言う間に溶けていく。
俺は多村を見下ろしながら薄く笑った。
「ダメだよ」
多村は目を見開いた。唇を歪め、歯をむき出しにして顔をしかめ、俺を睨みつけた。
「最悪……」
俺は口元に笑みを浮かべながら、ゆるゆると右手を動かした。
刺激にはなるけど、決して昇り詰める程までは行かない、絶妙にじれったい速度で。
多村は小刻みに膝を震わせ、だらしなく開いた口で何度も俺に助けを求めた。そのたび俺は彼を無視した。
簡単にイカせてなどやらない。
だって俺、優しくなんかないもん。
「ね、多村。気持ちいい?」 多村が肯く。
「我慢できないくらい気持ちいい?」 何度も肯く。
「もうイキたい?」 首が千切れそうに肯く。確かライブのときもこんな感じに首振ってたよな、と思い出す。
「仕方無いなあ」 冗談めかして言い、抱きとめた彼の肩に頭を載せる。
「じゃあさ、俺のこと下の名前で呼んで。そしたらイカせてあげる」
この申し出は多村にとって意外だったらしい。目をぱちくりさせ、掠れた声で「何で?」と言う。
「何でって。いつも多村、俺のこと名字で呼ぶじゃん。たまには名前で呼んでよ」
ただでさえ赤かった多村の顔に更に赤みが差したような気がした。
初めて出会ったころの呼び方のまま何十年もやってきているのだ。今になって呼び方を変えるのは恥ずかしいとでも言うのだろうか。
「何で、いまさら……」
「いいじゃん、呼んでよ」
「バ、バカ言うなよ」
「呼んでよ。哲矢や咲ちゃんが言ってるみたいに、政宗、って。できるでしょ?」 そう言いながら、耳の後ろに唇を当てる。右手を動かす。
「言わなきゃイカせてあげないよ」
耳元で囁いた。
脅迫めいた俺の声は、彼の耳を通り、体内を巡り、肩をわななかせた。
「……」
「ん?」
「……ね」
「聞こえない。もっと、おっきな声で」 2人とも激しいシャワーに全身を包まれている。多村の濡れた口元に耳を寄せた。
「……っとにサイアクだね、お前の性格」
「何年一緒にやってきてると思ってんの、多村君?」 俺が笑うと、多村も付き合うように軽く笑った。
彼は真っ赤な顔をおもむろに近づけてきて、俺の耳にぴったり口をつけた。
そして、シャワーの音にかき消されそうなくらい小さな声で、ぼそりと何かを言った。
早口で呟いたその言葉は、間違いなく俺の名前だった。
体の真ん中が震えた。
俺は右手のタオルを投げ捨て、彼のものを直に擦りあげた。
多村の眉間にぎゅっとしわが寄った。彼は縋りつくように俺の体に強くつかまった。
ネジがキリキリ巻き上げられていくかのように、声を段々と昂ぶらせながら、多村は目を閉じ、薄く開け、また強く閉じた。
苦しげに喘ぐ声や、口から覗く舌の動きがぴたりと止まった次の瞬間、俺の手のひらの中にどっと熱いものが溢れた。
荒い息をしながら、俺にもたれかかってズルズルと浴槽に屑折れてゆく多村はくたびれた人形のようだった。
その後も色々あって、何もかも終わった頃には浴槽のお湯はすっかり生ぬるくなってしまっていた。
ふらつく足取りでバスルームを抜け出した多村は、勝手に俺の部屋のバスローブを羽織り、俺のベッドで寝息を立て始めた。
パジャマに着替え、後からバスルームを出た俺は、多村の呑気な寝顔を呆れながら眺めた。
(こいつ、一晩中ここにいる気なんだろうな)
まあ、別に、いいけど。
幸せそうにいびきをかく多村のほっぺたを軽く指で突っつき、俺は彼の隣に潜り込んだ。
布団を手で寄せ、1人分のベッドを分け合う。ちょっと狭いけど、居心地が悪いわけじゃない。
再び地震が起きても、今度はもう怖くないと思った。
俺はゆっくりと瞼を閉じた。
もう随分久しぶりな気がする、安らかな眠りの予感が、柔らかい膜のように俺を包みこんだ。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
唄は意地悪攻め、四弦は天然受けだと勝手に思ってます。
毎度のことですが、本スレからネタを拝借しまくってます……皆さんすみません、そしてありがとう。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 盆Bー面の脇役。茶義ーと照々
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 今週の放送で萌えの防波堤が決壊しました
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
やたらと金のかかった調度品の並ぶ豪奢な部屋の隅の、日当たりの良い窓際の床の上で散々
捜し回っていた相方が丸まっているのを見つけて、茶義ーはがっくりと肩を落とした。
「……猫か、この馬鹿」
ゼロが五つは付くであろうソファーではなく、床の上という所が哀しい。けれど彼の
相方はひどく幸せそうな寝顔を晒して眠りこけていた。頭から少し離れた所に落ちている
毎日形をお揃いにしている帽子を拾い上げてから、茶義ーはその傍らにしゃがみこんだ。
こんな風に眠っていると、十五歳の彼を拾った頃からあまり成長していない様な気がした。
それまで行倒れ詐欺をしながら生活をしてきた照々。歳を取って共に苦労もして、
今は夜の仕事に取立て屋と人の暗い部分を覗き込みながらの生活をしていても、人間の
根っこの部分というのは変わらないのだろうか。数美程ではないにしろ、真っ白な部分が
照々の中にもある。馬鹿だ馬鹿だと罵りながらも、茶義ーはこの相方が大切で堪らなかった。
そういえば寝顔をゆっくりと眺めるなんてのも随分と久し振りな気がする。茶義ーは
ついその場に胡坐をかいて座り込むと、照々の顔を覗きこんだ。
半開きの唇があどけなさを助長させる。もうあどけないなんて形容を付けてもいい歳では
ないのに。
ほとんど無意識に伸びていた指が、照々の頬に触れる。暖かかった。指先に伝わった
温もりに、茶義ーは手を引けなくなる。それどころかずっと触れていたいという、自分でも
出所が知れない欲求が頭を擡げそうになって、慌てて誤魔化しの様に照々の頬を抓る。
「……んんー」
咽喉の奥から搾り出す様な声と身動ぎ。薄っすらと瞼を上げた照々は、茶義ーの手が自分の
頬に触れているのに気付いているのかいないのか。まったく頓着した様子もなく、ただ目の前
に茶義ーがいるという事実だけに、ふにゃっと頬を緩めた。
「じょーさんだあ。おはよー」
「寝惚けてんじゃねぇぞ、馬鹿。おいっ、もう一回寝んなって」
「眠いんだもん。昨日あんま寝てないの知ってるでしょ」
「だからって床に寝る奴があるかよ」
「じゃあ、じょーさん、膝枕して」
「ふざけんなよっ、習字」
「そんで尾無尾無さんが来る前に起こして」
茶義ーの静止も聞かず、もそもそと体を移動させて照々は膝の上に強引に頭を乗せてくる。
床に叩き落してやろうかと色の抜けた髪に触れたけれど、安心しきった照々の表情に毒気を
抜かれてしまう。
「……五分だけだぞ」
低い声で搾り出した妥協案に返って来たのは、安らかな寝息。
膝の上の重みと、窓から差し込む日差しののどかな暖かさに、柄にもなく泣きたくなった。
胸の奥に根雪の様に積もっていたもの。今でもなくなったとは言わないけれど、ゆっくりと
溶かしてくれたのが誰なのかを、茶義ーは知っている。
慌てて明後日の方向に顔を向けてぐすりと鼻を啜ると、眠っていたかと思っていた照々が
重そうに瞼を上げる。
「どしたの」
「何でもねぇよ」
「んー?」
ぶっきら棒に言い返された言葉を額面通りには受け取らず、照々は肘を突いて体を起こすと
何を考えてなのか茶義ーにぎゅっと抱き着いた。
「しゅ、習字っ?」
「これで寒くないよ」
「……まだ寝惚けてやがんのかっ」
殴ろうとしたけれど、抱き締められている状態では上手く頭を狙えない。ならば口でと
喚く茶義ーを気にもせずに、照々はその体勢のまま、またうつらうつらとし始める。
「こら、習字!」
「んー」
「離せって」
「んー」
本気で剥がしたければ出来たのだろうが、茶義ーはただ文句を口にするだけの自分がひどく
不思議だった。間違っても抱き締められているこの状況が嬉しいなどという異常事態では
ないと己を誤魔化しながら、さらに文句を重ねようと大きく息を吸って気付いた。
雪の国から共にいる相方は、陽だまりの匂いがした。
455 :
盆Bー面 茶照 『日向に氷』:2008/03/06(木) 00:46:27 ID:zMHHncPL0
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ お粗末様でした
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
456 :
青春愚考:2008/03/06(木) 07:57:21 ID:f+fhYz2E0
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 大振りのミハベミハです
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 青春ってきらっきらしていて痛いよね
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ソレガセイシュンダカラナ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
阿部は、自分が普通の高校生よりも考えが悪い方向へ向いている自覚があった。
でなければ捕手なんてやってられないし、チームの軸となるにはそれは必要な事だと
知っていた。それでも時には不安になるのだ。自分は相手の裏をかく事や、
相手の士気を削る事ばかりを考えている。スポーツ選手として、それ以前に
人間として、正しい事だろうか。田島は自分とは違う意味でチームの軸をこなしている。
それはもう前向きに明るく、全員を勝ちへと牽引して行く力。
田島が眩しくて仕方がない時期が周期的に訪れ、阿部はその度に自己嫌悪に陥った。
けれど三橋は、そんな阿部の事をすごいと言う。それだけではなく、尊敬すらしている。
三橋は阿部くんのお陰で勝てるんだ、ありがとう、と阿部に言った。
その一言は阿部の中で余りに大きく、印象深いものに変化した。
誰かに信頼されるという事、誰かに感謝されるという事、その相手が
バッテリーを組んでいる投手だという事。全てが阿部には初めての経験で、
試合中だというのに涙を零しそうになってしまった。
互いが互いの為になりたいと考える、理想のバッテリーになれたと思っていた。
だがどうやらそう思っていたのは自分だけらしい。
阿部が盛大な溜め息を吐くと、目の前で三橋が震えた。
「ご、ごめ、オレ 気持ち、悪」
「ちげーから。ちょっと考えさせてくれ、つか泣くな」
泣きそうになりながら謝る三橋に、更に零れそうになる溜め息を飲み込んで空を仰いだ。
何だこの展開。三橋に信頼されているという自負は有っても、
好かれている――しかも、恋愛感情で――なんて事は思ってもいなかった。
あまりにも真っ直ぐな言葉で、正面から想いを伝えた三橋に困惑を隠せない。
うぅ、と唸りながらも三橋は必死に涙を堪えている。その姿を見た阿部は、
困惑してはいるが嫌悪は無い、寧ろ嬉しいと感じている自分に気付いた。
そして同時に、三橋の、自分の想いはほぼ確実に勘違いに近い物である事にも。
自分も三橋も、今まで信頼出来る人物など居なかった。
そしてようやく信頼出来る相手を見つけたんだ。その安堵と喜びと友情とを、
愛情と間違っているだけだ。
「…いーよ、付き合おう。とりあえず今週末に映画でも行かねぇ?」
ホントに、と顔を真っ赤にして喜びを露にする三橋を見て、阿部は笑った。
勘違いでも構わない、三年間だけでも構わない。だってこいつが喜ぶと嬉しい。
それでいいじゃないか。
だからせめて三年間は、こいつを精一杯喜ばせて、自分も喜ぼう。
三橋に関してだけは、自分は田島のように前向きになれる。
その事に気付いた阿部は、悩む事を放棄した。
459 :
青春愚考:2008/03/06(木) 07:59:58 ID:f+fhYz2E0
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ ぐるぐるなってる子が大好きです
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
・盆B面の茶義ー×照々です
・第8話でわんこが見付かる前夜のお話
・勝手に同居設定
・ちゅーのひとつも無し。ぬるい‥‥
「茶義ーさん、茶義ーさん‥‥‥‥あれ、もう寝ちゃったんだ」
俺の犯したミスのせいで尾無尾無さんのとこをクビにされて、そしていまそのミスを挽回しようと俺以上に奔走してくれてた茶義ーさんは、すっかり疲れ果てて布団と言う名の広大な海へその体を沈めていた
昨日1日するてんに付きまとったら、俺らの境遇に同情したのか今日は犬を捜す助力なんてしてくれて
そんな中、何で尾無尾無さんのところに居るのか聞かれて、俺らはそれに揃って尾無尾無さんみたいになるのが夢だからって答えたけど
でもね、茶義ーさん‥‥‥
「俺ホントは、茶義ーさんにも憧れてんです。‥ううん、茶義ーさんに憧れてるからこそ、こうして一緒に北海道から出て来て‥‥一緒に尾無尾無さんのところで働いてるの」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
じつは茶も照も別々に右側として好きだったのが、
>>451-454の姉さんに触発されますた
初めてなのでお目汚しだったらごめんなさい‥‥‥
____________
| __________ |
| | | |
| | |> PLAY. | |
| | | | ∧_∧ 半ナマ? 07日曜朝・単車乗リ
| | | | ピッ (・∀・ ) 黒主人公と赤鬼とか熊と主人公とかの人です。今回は亀の話
| | | | ◇⊂ ) __ 劇場版までクライマックスは続くぜー!
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
僕らは結局、本当の願いを叶えることなど出来ないのだ。
亀ちゃん、と呼びかけられて、俯けていた顔を上げた。目の前で幼子が―多分に恐ろしい顔形をしてはいるが―
無垢な瞳で小首を傾げている。
最初は何を考えているか分からなかったこの子ども。今ではその思考が手に取るように分かる。
僕が何か余計な気を回しているとでも思ったのだろう。
なんでもないよ、と答え、優しく頭を撫でてやる。判りきった嘘だ。僕の得意分野。
彼はそう?、と反対に首を傾け、「それならいいけど」と僕にされるがままになっていた。
ドラゴンの表情が曇ったままのように見える。れっきとした錯覚。だって僕らの顔は仮面のようで、
生き物としての表情はまるで表現出来ない。
――人のために嘘をつけるんだから
唐突に、根っからの刹那主義である僕を包み込んでくれた言葉が蘇る。
今、僕がこの子に言った言葉は、彼に言わせればまさに「人のための嘘」なのだろう。
彼と出会わなければ、きっと僕は誰かと本音で過ごす時間の楽しさを知らなかった。
賑やかで暖かい“家”も、煩くて楽しい“家族”も、ずっとこのままでと願う気持ちも……
『今』を失う恐怖も。
暖かな時間をくれた彼に感謝すればいいのか。それとも、僕に弱さなんてものを植えつけてくれた
彼を恨むべきなのか。百戦錬磨の僕にすら、自分の気持ちを判断する術がない。
けれど。
――出来るなら……
出来ることなら、彼の望みを叶えたい。
彼の望む事をして、彼の笑顔を見たい。喜ぶ様を見たい。
きっと彼はそんなこと望まないのだろうけど。
そして、“僕ら(今人)”には叶えられないのだろうけど。
誰かを失うことに過敏になっている彼の望みは、きっと僕らとの関係の存続。それこそ永遠に。
……いずれ消えてしまう僕らには、叶えられない。
君を苦しませてしまう。悲しませてしまう。
僕らが消える時に、君の中の僕らの記憶も持っていけたらいいのに。
……僕は何を考えているんだろう。
こんな、頼りなくてお人好しで弱弱しくて頑固で、しかも男だ、そいつに執着している。
……執着、だろうか、これは。
どこかが、違う……?
これはまるで
なあ、亀の字。
黒と金の大男が、静かに声をかけてくる。
紫の幼子はコーヒーを飲んでいる赤の鬼をモデルにお絵描きを始めたようだ。赤鬼が
動くなと言われてコーヒーぐらい飲ませろと喚いている。でも、モデルにされて若干嬉しそう。
なぁに、と応える。熊は二人と添乗員のあの子に気付かれない声量で、僕にだけ聴こえる声で。
リョウタロのことは、好きか。
そう、問うた。
……そうか。僕は。
すんなり認めるのも癪だったけれど、こればっかりは嘘で誤魔化してはいけない気もして。
好きだよ、と返した。
ちょっとだけ驚いたような間があって。彼は、そうか、とひどく嬉しそうに呟いた。
ていうか、みんな好きかもしれないよ。金ちゃんも、先輩も、龍太も、ナヲミちゃんも、
八ナさんも。
そう続けたら。そうか……そうやなぁ……、と、深く頷いた。
さら
そうして、僕らの身体から、静かに砂が零れて。
僕は、彼が決めてしまったということを、悟った。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ よんじゅーなな話付近のつもり・自分でも何を書きたかったのか不明
| | | | ピッ (;∀;)途中で投稿出来なくなって焦った……。彼ららしい最終回をありがとうハム式
| | | | ◇⊂ ) __ でもぶっちゃけ改と昨来さんにも救いが欲しかったんだぜ
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
あれ、2と3が抜けてる(゜゜)
書き込んでるのに反映されてないのは何故だ‥‥‥
2/3
北海道を出ることにためらいがなかったワケでも無い
でも、一番ツラい時に出会えた茶義ーさんと離れてしまうのは、それまでの何よりも苦しいことに思えたから
「‥‥‥‥‥大好き、なんだよ俺は。茶義ーさんのコト」
今ならわかる。その苦しさの意味が
それはきっと正しいことでは無くて、俺はずっと心の奥にしまい込んできたのだけど
‥寝てる今なら聞こえてない、よね?
「‥‥‥う゛ぅ、ん‥」
お世辞にも整ってるとは言い難い寝顔をまじまじと見つめてたら、茶義ーさんは居心地悪そうに寝返りをひとつ
その拍子に足が布団からはみ出てしまって、俺は少しイケナイことをしてる気分になりながらそっとその布団に触れて‥‥元の通りに整えた
ただそれだけのことがもの凄く恥ずかしくて、俺は頭から隣の布団に潜り込む
「‥‥‥‥‥じゃ、お休みなさい‥明日は戸未ーが見つかりますように!」
______
3/3
照々がすやすやと心地よさそうな寝息をたてはじめたのを確認すると、隣の男はのそりと緩慢な仕草で半身を起こした
「なにこっ恥ずかしいこと言ってやがんだよ‥‥‥」
ガシガシと短髪を掻いて、茶義ーこと個茶霧城は深いため息とともにぼそりと洩らす
「好きじゃなかったら、ここまで面倒なんか見ねぇって」
ちょっと足りなくて、でも子犬みたいな表情と仕草で自分の後ろを付きまとう舎弟のことを、城は周りが思う以上にずっと大切に想っていた
「好きだよ俺だって、‥‥修辞‥‥‥」
いまでは誰ひとりとして呼ばなくなってしまった彼の名前
それは、誰も知らなくて自分だけが知っているから
少しの優越と少しの独占欲を自らの内に感じながら、城の手は修辞の髪を優しく梳いていた
すいません本当に
お目汚しどころかとんだ大失態やらかして‥‥
_________
|┌───────┐|
|│l> play. │|
|│ |│
|│ |│
|│ |│
|└───────┘|
[::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
∧∧
( ,,゚) ピッ ∧_∧ ∧_∧
/ つ◇ ( ・∀・)ミ (` )
. (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
| ┌‐^──────────────
└──────│ちょっと面白そうなので書いてみました。作家×AD
└───────────────
それは今にも雪が降り出しそうな寒い日の出来事。
ボクは打ち合わせのお台場へきていた。
「今日は春の陽気だってニュースでは言ってたのに」
思わずジャケットの上から腕をさすってしまうほどの寒さ。
タクシーを降り、早足で局内へ逃げ込むように入る。
「お疲れ様です、作家のキベです」
受付で看守さんに挨拶を交わし、局内のパスを受け取る。
慣れた足取りでエレベーターの前へ到着、
ボクは念の為カバンの中身を確認する。
「新番組用の企画書に、頼まれていたイベント案…よし!」
いつもどおり、何の抜かりはない。
企画書を出す時はいつも緊張する。
作家なら誰しも通る道ではあるのだが、
やはりいつまで経っても慣れない。
若手の作家ではあるが、ボクはボクなりに
仕事をこなしてきたつもりではある。
ちょっとずつ自信もついてきたし、仕事も増えてきた。
しかしこの、特に新番組の企画書というのは
初めて会う相手に渡すことがほとんどであり、
ほとんど何の前情報もなく、企画内容だけで評価されることが多い。
それはつまり、最も純粋なボクの勝負所なのだ。
こういう打ち合わせ前は、本当に憂鬱で
たまに局の裏手の海辺にでも身投げしてやろうかと思うこともある。
でも、今日用意してきた企画は特に自信がある。
練りに練った企画書だ。きっと満足してもらえるはず。
そのせいで、今日はあまり寝ていないのだけど・・・問題ない。
もう一度、「よし!」と気合を入れなおす。
でも、ちょっぴりひざが笑っている。
「大丈夫、大丈夫さ」
ひざをぐっと押してやる。が、震えは止まらない。
「あ、あれ?なんで?こら。行くぞ。行くんだってば」
膝と格闘すること2分、チンとエレベーターの到着音がホールに響く。
「あれ?キベさん?」
能天気な声がボクの注意をそらす。
その声の主を確認する為に顔を上げるのと、
奴の奇声とまるで大雪でも降ったかのように
ボクの体の上に書類が積もったのはほぼ同時の出来事だった。
「猪上えええええええ!!!!」
「ご、ごめんなさいいいいい!!!!!」
エレベーターホールに二人の声がこだました。
会議開始、30分前の出来事であった。
つまり、簡単に説明すると、だ。
猪上は処分する書類を大量に抱えエレベーターに乗っていて、
ボクを見つけて笑顔でエレベーターを降りたはいいものの、
ずっこけてボクの頭上に書類をぶちまけ、
その挙句、ボクの大切な企画書が書類の雪に埋もれてしまい、
クドクド猪上に説教をたれながら企画書を探している、というのが
今のお話です。
「だって、なんだから久しぶりだなーと思ったら足が勝手に」
「くっちゃべってないで手を動かす!」
「はい・・・。でも、決して悪気があったわけではなくてですね?」
「猪上!」
「はい!すみません!」
猪上は申し訳なさそうに床に眼を落とし、処分する用紙を束ねていく。
・・・まあ、怒ってはみたものの。
ボクの不注意でもあるんだよな。
でも、新番組の企画書を持っていくのが怖くて…
いやでもちょっぴりなんだよ?ちょっぴり怖くて、そしたら足が動かなくて
立ち往生していたんだ。うんうん。
・・・そこだけは、追求してくれるな。猪上。
「でも、キベさん」
心臓がどきんと跳ね上がる。ヤバい。
「(あんなところにでじっと何をしてたんですか?あんな体制で)」
「(いや、ちょっと運動不足なので屈伸を)」
・・・苦しい。さすがにこれは苦しい。
幾通りもの言いわけを考えていると、猪上は言葉を続けた。
「こんなところで何してるんですか?」
「・・・。・・・仕事だよ!」
「あ、ああ!そっか!あはは!」
猪上は大げさに笑って、頭をかく。
危なかった。猪上が能天気な奴でよかった。
時計を見ると、会議まであと20分。
あぁ、まずい。いつもは余裕を持って到着しているのに。
でも大丈夫。とにかく、今は企画書を探し出さなければ。
猪上がぶちまけた書類は積み上げた状態でと1m近くあった。
枚数でいうと、2万枚くらいだろうか。
その中から20数枚つづりの企画書を探し出す作業は困難を極めた。
最初は黙々と書類を整理していたが、あまりに退屈な作業に
ついにはボクの方が口を開いてしまった。
「猪コMAX、元気でやってるの?あっちでは」
「え!あ、はい。何とか楽しくやってます」
「忙しいんでしょ?」
「そうですね、ほとんど家に帰ってないです」
「あ、そっちのは違ったから向こうにおいて」
「わかりました」
「ふーんそっか。ならよかったね」
「そうですね・・・」
珍しく、猪上から会話をとめた。
ふと、猪上の顔を見てみるとどこか寂しそうな様子。
「・・・どうした?」
「いや、なんでも。あはは」
「そんな風には見えないけど」
「いやー・・・。俺って、初めて担当した番組がゲーセンだったじゃないですか」
「うん、そうだったね」
「で、なんていうか。俺、好きだったんです。番組が」
「意外だね、そんなこというなんて」
そのとおり。意外だった。
向こうの番組が決まった時、少なくともそんな風には見えなかったから。
「俺もウラ川さんみたいに垢抜けちゃいますね!」
なんて笑ってたのに。なのに。
何でこいつは今、こんなに懐かしそうに番組の話をするんだろう。
「俺ね、ゲームも下手だし。寝たらちゃんと起きれないし、
仕事だってみんなに迷惑かけてばっかりだし・・・でも」
「でも?」
「好きだったんです。みんなといられる、あの番組が。」
トン、と用紙をまとめた手が止まった。
止まったのは、ボクの手だった。
まるで機械のように紙をまとめては積んでいく猪上は
それでも言葉をとめず、手も止めない。
「知ってたんです。自分が役立たずだって。
だから、移動の話だってすんなり受け入れたんです。
本当は、離れたくなかった。あたりまえじゃないですか。
あんな暖かい現場、どこにもありません。あそこ以外、どこにも。
・・・あ。キベさんだから言うんですからね?みんなには内緒ですよ」
「・・・だよ」
「え?」
「大丈夫だよ」
手に持った紙を放すと、ダムから一気に水が流れるように
一方向に紙がざざざっと流れていった。
「・・・キベ、さん?」
ボクは、猪上の頭を抱えていた。見ていられなかった。
不覚にも、猪上の言葉に涙が出そうだった。
番組を愛しているから、離れた。自分では、役に立たないから、と。
何故、そんなことが出来る?何故?ボクには分からない。
理由は分からないが、ただ、胸が苦しい。
「大丈夫だよ。君は役立たずなんかじゃない。
たとえ、そうだったとしても、誰かがそういったとしても
ボクはそうは思わない。君は、うちの番組に必要な人だよ」
心からそう思った。
「ありがとう、・・・ございます。」
猪上はそういって笑った。
その笑顔も、ボクに心配させない為なんじゃないかと思った。
「あ、ありましたよ!!」
その声に我に返る。
「どれ!?・・・これだ!ありがとう!やったー!」
「・・・キベさん、ぐるじがでず」
「わ、わ!ごめんごめん」
喜びのあまり、また抱きついてしまった。
・・・これじゃそういう趣味があるみたいじゃないか!
恥ずかしくなってばっと離れる。
時計を見ると、会議まで・・・あと5分!間に合う!
「ごめん、もう行かなきゃ。後は大丈夫?」
「はい、任しといてください」
「よし!じゃあ、いってくる」
「はい、頑張ってきてください!」
猪上はのんきな笑顔で手を振ってボクを送り出す。
閉まりかけたエレベータを、手で止めても扉が開く。
「猪上!」
「はい?」
「休み、出来たら番組に顔出しなよ。みんなで待ってるから」
「・・・はい!」
にっこり笑った猪上の顔を最後に、今度は最後まで扉が閉まった。
ハプニングはあったが、打ち合わせには支障はない。
あいつが探してくれた企画書を、ぎゅっと握る。
もっと、もっとお互いのぼっていこう。
そして、きっとまた一緒に番組をやろう。
家族のような、居心地のよい場所をつくろうな。
そんな風に思ったら、もう足は震えなかった。
よし。
もうすぐ打ちあわせがはじまる。
これも、あがっていく為のステップだ。
でも決して、あいつの為ではない。
これはなにより、ボクのためなのだから。
そこのところは、誤解なさらぬように。
・ ・ ・ ・
で。
先日、このできごとをブログに書いてみたわけです。
え、全然内容が違う?
ぺたぺたしたのはボクの方だし、
そんな趣味があるのはボクのほうじゃないかって?
ブログに偽りがあるから、それを公表する、ですって?
さて。こんな話を誰が信じるんでしょうね。
そして、そんな噂が流れでもしたらこのボクの・・・。
ともかく。よーく考えて、実行してくださいね?
あーあ、冬の海はさぞかし冷たいんだろうなぁ。
・・・ふふ、ふふふ。
_________
|┌───────┐|
|│ロ stop. │|
|│ |│
|│ |│
|│ |│
|└───────┘|
[::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
ピッ ∧_∧
◇,,(∀・ ) ヤッパリ ヒトリデコソーリミルヨ
. (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
| |
└────────────────┘
某所の某記事をこの後に書いた、という感じで書いてみました。
書いてて面白かったです。
>>481 うおおおGJ!
作家×某AD最近気になっていたので
楽しく読ませていただきました!
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
・ナマ注意
・ある白い犬の学園パラレル。呉羽(生徒)×唄(教師)
・なんかもう某所の流れが素晴らしすぎて感動したので書いた。
鶏のレバーが入った真空パックに手を伸ばした瞬間、部屋の扉が開いた。ガラリと、乱暴な音がした。
冷凍庫から振り返り、扉の方を見ると背の高い男が立っていた。
夕方で、部屋の電気もついていないからシルエットは真っ黒だ。それでも、彼が誰なのかは即座に分かった。
背負った夕陽が絵になる彼は、俺のクラスの問題児だ。
「呉羽くん」
「やっぱりココにいたんすね、先生」 彼の息は少し切れていた。
「何で来たの? 職員室で待ってていいって言ったのに」
「あんな所で先生が来るまで座ってろって言うんすか? 冗談じゃないっすよ。早く帰りたいし」
髪のほつれを直しながら、彼は近寄ってきた。
『呉羽』というのは彼の本名ではない。彼にはちゃんと公式の名字も名前もある。
ただし本人は、この呼び名を好んで周りに広めているらしいので、それにつられて他の生徒や俺たち教師も彼を『呉羽』と呼んでしまっている。
「先生は生物室にいるって誰でも知ってるし。進路面談ぐらいならココでやっても問題ないでしょ?」
呉羽くんの口ぶりは堂々としていて、年上の者への無駄な遠慮や怖気はまったく無い。
彼が何かを言うと、俺もつい流されてうなずいてしまう。
呉羽くんは俺の前で立ち止まると、俺の持っている真空パックを不思議そうに眺めた。
こうして近づくと、俺と彼の体格差はさらに歴然とする。
年齢で言うと10くらい俺の方が上になるが、身長になると綺麗に逆転する。
猫背のせいもあるんだろうけど、彼と向き合うと俺は自分がより小さくなってしまったような気がする。
「ソレに入ってるの、肉っすか?」
「うん」 冷凍庫の扉を閉めながら言った。俺のヘソくらいの高さまでしかない、小さな冷凍庫だ。
「すげえ小さく切ってますね」
「プラナリアの餌だからね」
「プラナリア?」
彼は眉間に皺を寄せた。俺は生物室に9個並べられた黒机のうち、もっとも冷凍庫に近い、つまりもっとも俺たちに近い机を指差した。
机の上にはプラスチック製の白い洗面器が置いてあり、浅く水を張ってある。
「呉羽くんはプラナリアって知ってる?」 真空パックを開き、レバーをつまみながら言った。ひとつひとつの肉は小指の爪ほどの大きさしかない。
「体長1センチから2センチくらいのすごく小さな生き物だ。小さくて細いけれど肉眼でも見える。
頭は三角形をしていて、手足は無いけど胴体が長い。マンガみたいな目が頭についているくせに、口や肛門はなぜかお腹にある。
きれいな水の中で飼育し、鶏のレバーやゆで卵の黄身を小さく切ったものを餌にする」
前に生物の授業でも言ったことだ。あの授業のあった日、確か呉羽くんは欠席していた。
彼は理由も言わずに欠席したり早退したりすることが多い。
たまに出席してもボンヤリした顔で窓の外ばかり見ている。
「プラナリアのすごい所はその再生能力なんだ」 洗面器の中にレバーを落とした。糸のように細いプラナリアたちが、いっせいに動き始めた。
「体を分割されても、彼らはちゃんと完全な姿に戻る。
まっぷたつにされた1匹のプラナリアは2匹のプラナリアに、8分割された1匹のプラナリアは8匹のプラナリアに増える。
プラナリアは有性生殖無しで個体を増やすことが出来るんだよ」
わらわらとレバーに群がるプラナリアたちを見下ろす。
この生物室にはウサギやモルモット、熱帯魚などいろんな生き物が飼育されている。
姿形は違えど、餌を前にしたときの反応は皆一緒だ。
「有性生殖って、要は交尾やセックスのことっすよね?」
俺の隣で洗面器を見ていた呉羽くんが言った。
「まあ、そうだよ」 俺はうなずいた。
「へえ」 彼は、俺を見下ろすようにしてニヤニヤ笑う。
「何がおかしいの?」
問いかけると、呉羽くんは口元に笑いを貼りつけたまま話し出した。
「うちのクラスの女子が言ってたんすよ。久佐乃先生ってプラナリアみたいって」
「はぁ?」
彼はこみ上げてくる笑いを堪えるように、口を手で覆った。
「ホラ先生って、いつも淡々としてるじゃないすか。他の先生が急いでんのに一人だけプリン食べてたりして」
言われてみればそうだ。
しかし、しばしば学校をサボる彼がプリンの件を知っているのは俺にとって驚きだ。
「無表情で、何考えてんのか分からなくて、謎めいている。プラナリアもそうでしょ。で、さらに」
彼は人差し指を立て、とびきり愚かしいことを言うかのように顔をしかめた。
「俺らみたいに交尾のことで目をギラギラさせてる連中とは、先生は全然違う、って」
呉羽くんは鼻で笑った。哀れみや、小バカにする感じの混ざった笑いだった。
「なんにも分かってないんすね、アイツら」
そう言うと、彼は突然俺の肩をつかんで部屋の壁に押しつけた。背中に鈍い痛みが走った。
すぐ右隣の窓から、運動部の騒々しい掛け声が聞こえた。
「俺、知ってるんすよ」
呉羽くんは俺のネクタイを手に取り、薄く笑った。彼の顔は獲物を捕らえたヒョウに似ていると思った。
「知っちゃったんすよ。先生が、ホントは、すげえエロい人だってこと」
何のことを言われているのか分からなかった。
それでも、呉羽くんの作り物めいた笑いは俺を不安にさせた。彼はきっと、俺の弱みをつかんでいる。
「バイト先の先輩に誘われたんです」
俺を壁に押しつけ、右手でネクタイを弄びながら彼は言った。
「ただノリで行ってみただけだったんです。場所もバイト先に近かったし、めったに出ない人気バンドが出るって聞いたから」
呉羽くんは探るように俺を見た。知らない間に俺は唾を飲み込んでいた。
「良いライブハウスでした。キャパもちょうどいいし、客の雰囲気も悪くなかった。バンドもアマで終わるには勿体無いレベルの人たちばかりだった。
もちろん、一部を除いて」
そうだよ、本当にあのバンドは酷かった。
あまりに聴いてられないもんだから、彼らの演奏が終わる頃にはすっかり場は冷めちゃってたんだよ。呉羽くん。
「ところが、その次のバンドが違った」
彼の目が、ナイフのように鋭くなった。
「空気が変わった。これまでの奴らがみんなガキのお遊びみたいに見えた。俺はその場に棒立ちになって、食い入るようにステージを見た」
俺を見つめながら、呉羽くんは気味が悪いほどゆっくりと話し続ける。
俺はいつ彼に飛びつかれ、首元を食いちぎられてもおかしくないと思った。
「ボーカルはエレキギターをわんわん鳴らしながら歌っていました。遠い目をしていました。客席なんかより、もっとずっと遠いところまで見通すような目でした」
呉羽くんは俺のメガネに手をかけた。
肩が震えた。
年上なのに、怯んでしまうなんて情けない。
「彼は高い声で、びっくりするほど卑猥な歌を歌っていました。
叩きつけるような歌い方でした。自分の内に押し込めてたものを、みんな歌に吐き出しているかのようでした」
呉羽くんはメガネを外した。
彼は俺の顔を注意深く眺め回すと、確認を終えたように一度だけうなずいた。
そして、言った。
「どうして普段から、メガネ外さないんすか?」
俺は両手を上げ、降参した。
「あの時は、コンタクトだったんすね」
その通り。ステージの上でだけ、俺はコンタクトをつけている。
「あっちの方が良いのに。このメガネダサいっすよ」
呉羽くんはメガネをしげしげ眺め、顔をしかめた。
「あの時みたいに、白衣もスーツも脱いじゃえばいいんすよ。だいたい先生の白衣、いつも変なシミついてるんすけど」
「君には、関係ないだろ」
俺は吐き捨てるように言った。そして、乱れた白衣の襟を整えた。
バレるのは時間の問題とは思っていた。
しかし、この問題児に知られるとは何とも運の悪い。
「あのバンドにはビビらされましたよ」 呉羽くんは思い出し笑いを浮かべた。
「最初は久佐乃先生だけだと思ってたんすよ。
もう先生だけで雷に打たれたような気分だったから、さすがにこれ以上のサプライズは無いだろってタカ括ってたんです。なのに」
メガネをプラナリアの机に置き、彼は低い声でフフ、と笑った。
「まさか『全員』だとは思いませんでした」
彼の顔はまだにやけているのだろうか。
メガネを奪われた俺の視界は、霞がかかったようにあやふやだ。
「ギター弾いて寒いギャグ言ってたのは美術の美和先生でしょ? で、ヤバイドラムさばき見せてたのが体育の咲山先生。
それで、ベース持ってすげえ形相でステージ中走り回ってたのが、数学の――」
「多村だ」 溜め息混じりに言った。
「ありえねえっすよね。この学校の先生勢ぞろいって」
「ねえ、呉羽くん」
できるだけ優しい声で呼びかけた。
「この事は皆には秘密にしておいてくれないかな? 一応、学校にも隠してあるんだ」
俺たちの活動は学校とはまったく関係ないところで進められている。
俺たち4人は、この事を俺たち以外の誰にも口外しないよう決めてある。
趣味の範疇とは言え、生徒や先生に知られたら色々面倒くさい事態になりそうだからだ。
彼は意外にも首を縦に振り、秘密を守ることを了承してくれた。
問題児だけれど、話の分かる子なのだ。俺はホッと息をついた。
「でも、本当にヤバイっすよね。あの歌詞」 俺のメガネをまた拾い、手の中で転がしながら呉羽くんは言う。
「知ってました? 先生って結構女子に人気あるんすよ。なんでもセックスの匂いがしないから、って」
俺は眉をひそめた。呉羽くんは、窓の向こうで牛のように走り回る運動部を物憂げに眺めていた。
「精子と卵が合体するとか、そういうことを料理のレシピみたいに軽やかに説明するから、全然いやらしくないんだって」
メガネを弄ぶ彼の手を見つめる。視界はぼんやりしているけど、長い指だってことはよく分かる。
呉羽くんは生物室を見回し、動物のケージや水槽が置いてある辺りに目を留めた。
「こんな……ウサギやモルモットやプラナリアに囲まれて優しそうにしてる人が、あんな歌歌ってたなんて……」
呉羽くんは、俺を見た。
「皆が知ったら、ガッカリっすよね?」
冷たい声だった。今メガネをかけたら、呉羽くんに牙が生えてるのが見えるんじゃないかと思った。
胸が震えた。
「ねえ、先生」
メガネを机に置き、彼が近づいてくる。首の辺りに汗がにじむ。窓枠に手をかけた。でも脚がうまく動かない。
「俺、分かんないんすよ」
呉羽くんの声はトリモチみたいにねっとりしていた。優しい猫撫で声の下で、鋭い爪が見え隠れしていた。
彼は俺のまん前に立った。俺は、いつの間にか窓際に追い詰められていた。
呉羽くんは両手で俺の頭をつかんだ。
「教えてほしいんすよ。そんな冷静そうな顔してる先生のアタマん中に、どんだけエロい事が詰まってんのか」
まばたきする暇も無かった。
生温かい息が当たって、無理やり唇を奪われた。
舌が熱い。
歯の裏側を、上顎を舐め上げられるたび背筋に電流が走る。
「っ、ふ、あ……ぁ」
口をこじ開けられると、ぽろぽろ溜め息が落ちてくる。息苦しくて目の前が真っ白に染まってゆく。
呉羽くんの体からは、ほんのり香水の匂いがした。
ケモノくさいこの部屋にはまるで不似合いだと思った。
彼は舌を抜き取ると、俺の唇を舐めた。輪郭を確かめるように、丁寧になぞった。
「先生」
呉羽くんの顔が耳元に近づいた。「先生、ホントはずっとこうされたかったんでしょ?」
クスリと笑う気配が耳朶を掠めた。
そっぽを向いて目を伏せた。
ヤバイ。
きっと今、俺、涙眼だ。
俺は先生なのに。この子は生徒なのに。
何も言い返せない自分が腹立たしい。
抵抗できない自分がもっと悔しい。
呉羽くんは机の上のメガネを取り、俺の前に差し出した。
メガネをかけると呉羽くんの顔がはっきり見えた。
真顔で俺をじっと見下ろしていた。
「今度先生んち行っていいっすか?」
「え?」
「一応俺も音楽やってるんで。先生がどんな部屋で曲作ってんのか気になるんです」
呉羽くんはニッコリと笑った。問題児の名に似合わない、実に爽やかな笑みだった。
彼は身を翻し、扉に向かって歩き始めた。俺が慌てて呼び留めると、彼はここに来た本来の目的に気づいたようだった。
「そういや進路先言ってませんでしたね。K大って書いといてください」
つまらなそうにそう言うと、彼はさらに「あ」と呟いた。
「先生。さっきの話ですけど」
「……なん?」
「プラナリアって有性生殖ができる奴もいるんすよ。あんなにちっちゃな生物でも、交尾することから離れられないんです。知ってました?」
呉羽くんはヒラヒラと手を振り、また俺に背を向けて歩き出した。
途中で独り言のように、「先生なら知ってるか」と言うのが聞こえた。
悠々と歩く彼の背中は、俺より一回りも二回りも大きく見えた。
呉羽くんは開きっぱなしのドアに手をかけ、そっと閉じた。開けた時と対照的に、音ひとつしなかった。
彼の足音は徐々に小さくなり、やがて消えた。
部屋の中には冷え切った静寂と闇が訪れた。
気づいたら、俺は窓からずり落ち、タコのように床にへたり込んでいた。
「……腰、抜けた」
うつろな目で広い生物室を見渡した。
彼の去った景色は、綺麗さっぱり現実感が抜け落ちてしまったように見えた。
けたたましい窓の外の掛け声も時間の流れも、何もかも遠い世界の出来事のように思えた。
陽の沈みかけた暗い空間で、俺は独り、今まで感じたことも無い熱を持て余していた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
教師唄は学校では猫かぶってるといいよ
白犬は「同僚同士で組んだ、学校に内緒で活動してるバンド」という設定にしてます。
某所の皆さんも作り話作ってくださいよ〜
萌をありがとう…もうそれしか言えない
>>483 すごい萌えた…!
続編とかあったら期待してます
ぜひ続編を…!
>>483 驚くほど萌えた ありがとう!
こっそり続編希望
保守
498 :
チェリー 始:2008/03/10(月) 19:16:13 ID:ytQ2cgf20
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
・ナマ注意
・尾形×葉間
・保守ついでにどうぞ
499 :
チェリー 1:2008/03/10(月) 19:17:12 ID:ytQ2cgf20
「2007年が最悪やと言うても、2007年と状況が変わらへんのやから、2008年もこのまま最悪なんやろうな」
「隊長、まだ引き摺ってるんですか?蟻野さんが結婚したの」
「一生引き摺ると思うよ。あいつも、もう結婚して3年になるのか。なんっでオレ結婚出けへんのやろなぁ」
「というか結婚する気無いんでしょう」
「あるよ?相手がおらへんだけや」
「またまたー。モテる癖にー」
「あのな、モテてたら満喫ペアシートに二人でおらへんって」
「バレンタインにファンの子から沢山チョコ貰ったやないですかー」
「小学生のコとその親な?どっちにしても犯罪やん」
「小学生のうち隊長のファンのコが大きくなってもファンでい続けないのはおかしいですよね?」
「おかしくないやろ。中高生にもなるとTVばっかり見るわけでもないやろし、部活だの勉強だのそれこそ彼氏だの他に対象が移るわけやよ」
「でも隊長?隊長は目標を言わなあかん仕事やないですか。だから今年の目標に結婚と言ってるだけで、本当は一生独身でもいいと思ってるんでしょう?」
500 :
チェリー 2:2008/03/10(月) 19:17:52 ID:ytQ2cgf20
「・・・まぁこのまま独身で生涯終えるかもなぁと思わなくもないけども。やっぱり朝起こしてほしいし、やりたい時にいつでもやれるヤツが側におるってのええやん」
「え?そんな理由ですか?」
「アホ、そこ大切やぞ?」
「それって誰でもいいんじゃ」
「あーもう誰でもええねん。誰かオレ貰ろてくれへんかなぁ」
「分かりました!俺が一緒に住んで毎朝起こしてあげますよ!で、隊長がやりたくなったらしたらいいんですよ!」
「チェリーボーイが何言うとるかな。第一、オマエ相手にやりたい気にならへんし」
「分かりませんよー?一緒に住んでるとそんな気になるかもしれないでしょう」
「ならへんならへん。だいたい、オマエ男相手にされたことあんのか?」
「いいえ?全然?でも隊長だったら俺」
「アホか、ノリだけで話すな」
「飛来さんだってもしかするとそうかもしれないじゃないですか。3年5ヶ月の間一緒に住んでたんですし」
「・・・無いわ。あのな、オレ飛来とゲーム仲間やぞ?そういうの意識したら一緒に遊ぶのも出けへんようになるやんけ」
「いいんですよ隊長は俺とだけ遊んでれば」
「ジュース無くなったから代え持ってきて。ポタージュスープ頼むわ」
「分かりました、行ってきます」
501 :
チェリー 3:2008/03/10(月) 19:19:05 ID:ytQ2cgf20
(尾形も友達多いのにこんな仕事以外ニートみたいなオレを遊びに誘わんでもな。遊び言うても満喫か映画か一緒にメシ食うぐらいしか無いけども。誰でもいいならそれこそ・・・いやでもなぁ・・・何でオレあいつ以外ダメなんやろ。あっちはあっちで幸せそうにやっとんのに。
尾形も多分オレを同情で誘っとんのやろな。いつも一人で可哀相だとか思って)
「お待たせしました」
「おう」
「隊長、その漫画面白いですか?」
「これ?読むか?」
「はい。・・・隊長?どうしたんですか、俺の顔になんかついてます?」
「眉2つと目2つと鼻と口がついとるわ」
「男前でしょう」
「そうやな。あのな?別にオレと行動せんでええんやで?オレとおったら彼女も何も出けへんと思うよ」
「彼女いらないですよ。34年間童貞だったらこれから先も童貞のような気がしてなりませんし。・・・すみません、泣いていいですか」
「いいから思いっきり泣け。風俗は行かへんの?」
「風俗ってなんか怖いじゃないですか。隊長は行かないんですか?」
「トップシコリートとしてそういうとこは行かへんのや。ええやん、右手が彼女で左手にたまに浮気するので」
「40まで童貞でいると魔法が使えるようになるらしいですよ」
「ん?どんなや」
「ええとですね、”凍てつく波動 : つまらんギャグを飛ばして周辺を凍らせる”」
「・・・・・・オマエはギャグで食ってってるわけやないんやし。レポーターの仕事ぎょうさんあるんやろ?」
「でもお笑い芸人はやっぱり笑いで食べていきたいじゃないですか!」
「むしろ今の芸人って芸で食べてるヤツがどんだけおるかやよな。オレらのコントもTVだと正月番組でしかやってへんもん」
「ここで俺が忘れさせてあげますよ、とかっこいい事が言えればいいんですけどね。俺、そういうの似合わへんですし」
「オマエには無理や。いや、オマエでなくても誰でも無理やと思うで」
「そうですか」
「ま、な」
502 :
チェリー 4:2008/03/10(月) 19:19:54 ID:ytQ2cgf20
「俺、隊長といれて幸せですよ。一緒に漫画見て一緒にゲームやって一緒にメシ食いに行って一緒に映画見て。まるでデートのようではないですか。リアルに充実してる人のことを”リア充”って言うの知ってます?」
「まぁオレも一人で部屋に籠もってるより余程ええけども。ありがとな、オレを誘ってくれて」
「いいえ、そんな。俺でよかったらいつでも誘って下さい。俺は隊長と比べたら時間ありますから。隊長が一人でいるから俺も気軽に誘えるんです。もし隊長が誰かと結婚してしまったらどうしてもそっち優先になってしまうから、こんな風に気軽に誘えなくなるじゃないですか」
「オレ、オマエのネタ好きやけどな。オマエが何か言うやろ?すると周りが凍るやろ?その状況見て大爆笑や」
「一瞬ドキッとしたやないですか。それって俺のネタで笑ってるんじゃなくて、俺のいたたまれなさを想像して笑うんでしょう?」
「だからオレの押してる芸人って人気出ぇへんのかなぁ。いつもオレ一人で笑ぉてる」
「隊長が喜んでくれるならそれでいいですけどね。鉄の心臓にひびが入りそうです」
「オマエが女やったら意識してしまうから逆に一緒に行動出けへんようになるか」
「そうですよ」
「彼女いらんと今は言ってるけどどうせ先に結婚するんやろな。なんかオレを好きだタイプだ好みだ言うヤツみな結婚してるか相手がおるかやし。どないやねん」
「34年間童貞なのに今から彼女作ろうと思ってすぐ出来るもんなんですかね。彼女にしても結婚相手にしても作る気あっても出来るかどうか分からないわけですし、ましてや作る気無かったら出来ないままでしょう」
「童貞捨てたいと思うてる?」
「そりゃあ思ってますよ」
「じゃあ・・・、すまん何でもあらへん」
「言いかけて止められたら気になるじゃないですか」
「初めてのは女の方がええやろ。下手なトラウマ植え付けられたら童貞捨てる捨てへん以前に人間不信になるかもしれへんからな」
「実際女の子とどう接していいか分からないんですよね・・・」
「顔はええんやし、あとは変に笑わそう言うんやなくて、普通に接してやな」
「普通のさじ加減がよく・・・」
「どうにもならへんな。漫画に集中してええか?」
「あ、はい」
503 :
チェリー 5:2008/03/10(月) 19:21:36 ID:ytQ2cgf20
(俺の隣で漫画を読む隊長。さらさらの髪の毛、大きい黒ぶちの眼鏡、細くてつぶらな目、ぷっくりとした唇、細い顔、細い体、細い腕。
そしてセンスのいい服。隊長が彼女だったらなぁ。可愛いなぁ。隊長、ずっと結婚しなければいいのに。むしろ彼女も出来ないで今のまま仕事以外家に引き籠ってればいいのに。
俺だけのものにしたい、独占したいと思っててもそんなの言えるはずもないから黙ってるけど)
「どうした?オレの顔になんかついとるか?」
「眉2つと目2つと鼻と口がついてます」
「男前やろ」
「そうですね」
「ほんまにそう思っとる?」
「ってか、さっきのネタじゃないですか」
「そやな。よっしゃ、これ読んだら出よか」
「美味しいラーメンの店知ってるんですよ。この前ブログに載せたの50店舗目達成したんですよ!だいたい1ヶ月で5軒は行ってますね」
「ほぼ毎週以上やないか」
「隊長はラーメンでなかったら何食べたいです?」
「カレーやな」
「では間を取ってカレーラーメンで」
「ええよ普通のラーメン店で。オマエが美味しい言うとこやったら」
「そですか?えへへ、隊長は優しいですね」
「そしてまたキショイと言われるんやろな。そういうんやないのにな」
「いいじゃないですか」
「まぁええか。よっしゃ、読み終わったし行こか」
「はい!」
二人でラーメンを食べた。美味しかった。同じ店でも一人で食べるより美味しい気がする。また次も隊長を誘って遊ぼう。いつまで遊べるか分からないけれど。
それでも今は。
504 :
チェリー 終:2008/03/10(月) 19:22:51 ID:ytQ2cgf20
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ラジオでチェリー言われて怒ってたのでネタにしてみました。
>>498 いつかこの組み合わせが来るんじゃないかとひそかに待ってたかいがありました!
萌えた・・・。GJです!
次はぜひ初体験編を(爆
506 :
秘密 始:2008/03/11(火) 06:57:17 ID:bZ2mS+tU0
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
・498の続きです
・初体験編を書いてみました(爆
507 :
秘密 1:2008/03/11(火) 06:59:08 ID:bZ2mS+tU0
他のヤツに抱かれたら少しは気持ちがまぎれるだろうか。
毎日苦しい想いを抱えなくてすむだろうか。
どの女を抱いても結局気持ちがまぎれなかったのだから、それが抱かれるがわになっても同じかもしれないけれど。
「オレの部屋で飲まへんか?明日休みやろ?オレも休みやし」
「でも隊長、下戸なんじゃ」
「ええねん、飲みたい気分なんや。それに酒弱い言うだけで全く飲めへんわけやないんやで?」
「ならいいですけど」
コンビニで薄いカクテルと、こいつ用にビールを数本買った。
これで酔ってたからとでも何でも言い訳はつく。
「かんぱーい!」
アルコール5%の酒を口につける。ぐらりと眩暈がしてきた。あまり飲むと呂律が回らなくなるのを通り越して吐き気が止まらなくなる。
「大丈夫ですか?もう顔が赤いですよ?」
「ああ、平気や。あのな、さっき満喫でオレが途中で言いかけた続き言うわ。あのな・・・、オレ、オマエの童貞貰ってやろか?」
「え?」
「あー、何でもあらへん。酔ってるんや、酒の席ちゅーことで聞かなかったことにせぇへん?」
目を逸らして自嘲する。誰でもええなんてこいつにも失礼だ。
飲み慣れない酒を口に運ぶ。体が熱くなってきた。
「隊長!」
その場でがばっと抱きついてきた。そしてそのままキスされて、口の中に舌を入れられる。
508 :
秘密 2:2008/03/11(火) 06:59:51 ID:bZ2mS+tU0
下手やなぁ、こいつキスも慣れてへんのか。
口の中で舌を動かしてリードしてみる。ああ、少し気持ち良くなってきたかも。
そう思っていると尾形がオレから唇を離し、ぜえぜえと荒い呼吸をしている。
「アホやなぁ、鼻で息せぇよ」
「そんなこと言ったって、AV見てもそんなの分からへんやないですか」
「あ?もしかしてキスも初めてか?」
「そうですよ」
「34まで生きてきて、彼女いたことあらへんの?」
「俺が生まれた時はおかんからキスされてると思うんですけど、記憶には無いですし」
「あー、そっか。そうやな。っつかオレでええん?ファーストキスが男って普通に気持ち悪いやろ」
「むしろ隊長だからしたいんです!俺、隊長が好きです、だから隊長に童貞貰ってほしいんです!」
「ほんまにオレでええの?」
「やっぱりあの人以外のヤツにされたいと思いませんよね」
「オレは別に」
「俺ではあの人の代わりにはなれませんけど、それでも俺は隊長を置いて先に結婚するとかないですから」
「シャワー浴びてくるわ。ベッドで待っとれ」
「・・・はい」
509 :
秘密 3:2008/03/11(火) 07:00:47 ID:bZ2mS+tU0
シャワーを浴びながら穴の中まで綺麗に洗浄する。あいつが結婚してから男としたのが一切無いからこれも数年ぶりだ。後ろを洗っているうちに勃起してしまい、これからすることを思って更に体が熱くなる。
オレは後輩を利用しようとしている。後輩を巻き込もうとしている。
「オレは・・・」
あいつの笑顔が浮かんだのと同時に射精した。
あまりの最低さに思わず苦笑した。
適当に頭をバスタオルで拭き、居間に戻って残りの酒を飲む。
眼鏡を外しているのでただでさえぼやけている視界が更に歪む。
そして寝室に行くと、こいつは携帯をいじっていた。
「ブログの更新か?」
「ええ、今日行ったラーメン屋のアップです。もうすぐ終わります」
「ふぅん」
どっちにしても眼鏡が無いと見えへんし。というか待ってる間手持ち無沙汰やったんやろな。
しっかしこいつの体、ガリッガリやな。ちゃんとメシ食うとんのか。痩せすぎやで。
あいつから体重10キロぐらい貰えばええんや。
ってまたあいつのコト考えとる。やっぱオレ、ダメやな。
「送信、っと。終わりました」
「あんな?」
「はい?」
「オレ、オマエに恋愛感情正直無いねん」
「知ってます」
「オレを抱いても心まではやれへんで?」
「それも分かってます」
「正直、気持ち悪くなったら途中で帰ってええからな?」
「俺は隊長が好きなんです。ずっと隊長とこうしたかった、でも隊長はあの人が好きだし、絶対無理だと思ってました。だから俺、身代わりでいいんです。身代わりにはなりえないと思いますけど」
「ごめんな」
「謝らないで下さい」
510 :
秘密 4:2008/03/11(火) 07:01:33 ID:bZ2mS+tU0
こいつの体の一つ一つに口付けを落としていく。頭の中がどんどん醒めてクリアになっていく。酒が入っているはずなのにもう酔いを感じない。むしろその方が尾形を利用することへの罰になるか。
中心を咥え、口の中で亀頭を転がすように舐める。青臭い臭いと味。深く咥えると喉の奥に当たって少しむせた。
「けはっ」
「大丈夫ですか?」
「ああ」
フェラを続けると尾形の息があがってきた。そろそろか。
立っているところにゴムを被せる。
「あのな、目ぇ逸らした方がええで。あんま見ても綺麗なもんやないしな」
「隊長がする事なら俺、全部見たいです」
「・・・・・・」
指にツバをつけて入りやすいように後ろをほぐす。それからゆっくりと中心に体を沈めていく。
「ぐっ・・・痛・・・」
「隊長、無理しないで」
「ええねん、大丈夫や」
全身からあまりの痛さに汗が噴き出す。数年ぶりのせいか、使ってないからか中が狭くなっている。
けど痛いのは分かってたから。むしろもっと痛くなればええ。もっと。
「はぁー・・・はぁー・・・」
なんとか全部入った。見ると結合しとる部分から血がだらだらと流れている。
流石にこれだけきついと中で少し切ったかもしれない。
「はぁー・・・はぁー・・・」
なんとか腰を上下に動かす。繋がってる部分から水の跳ねる音がぴちゃぴちゃと聞こえる。
「隊長・・・隊長・・・っ!」
尾形が繋がってるまま上半身だけ起こし、抱きついてきた。そのまま歯がぶつかるような激しいキス。
ぴちゃぴちゃとした音がぐちゅぐちゅと卑猥な音に変わり、痛みだけでなく気持ち良ささえ混じってくる。
「ああっ・・・も、出るっ」
「俺も・・・!隊長、愛してます・・・!」
頭が真っ白になって、体の奥に入ってるものがびくびくと跳ねた。
511 :
秘密 5:2008/03/11(火) 07:06:53 ID:bZ2mS+tU0
「はぁー・・・はぁー・・・」
シーツも真っ赤。腰もがたがた。明日休みで本当に良かったと思う。
「良かったです・・・。こんなに気持ちいいと思わなかったです・・・」
「そりゃ良かったな」
腕枕されて、こいつの胸から鼓動が早鐘のように聞こえてくる。
「あの・・・隊長さえ良かったら本当に付き合いませんか?」
「どんなにオマエに愛されても、オレはオマエを愛してやらへんと思うで。それでもええの?」
「構いません。愛してます」
「ごめんな、なんか」
「何で謝るんですか」
「オレは・・・」
オマエを愛してないから。
その気持ちを紛らわすようにオレからキスをした。
3度目のこいつとのキス。それは涙の味がした。
最初の時よりキスが少し上手くなったように感じた。
何も知らないヤツに一から教えるのはそれなりに楽しい。
真っ白いキャンバスを汚していく後ろめたさと心地良さ。
もうこいつはまともな恋愛は出来ないだろう。
そんなオレも既に後戻りは出来ないだろう。
それでも抱かれてる間は心が麻痺出来るから。
「あはははははは・・・!」
誰かオレを殺してくれ。
誰かオレが何も考えずにすむようにしてくれ。
誰かオレを・・・助けてくれ。
そうしてオレは何食わぬ顔して仕事であいつに会う。
知っとるか?オレの秘密を。
なぁ?
512 :
秘密 終:2008/03/11(火) 07:08:43 ID:bZ2mS+tU0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
>>506 しっ仕事早っ!!すごいっすねー。
そして萌え・・。
最近ハマが暗い傾向にあるけれどむしろそれが好きだったり。
とにかくGJでした!!
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
白犬学園パラレル、まさかの第二弾。ナマ注意。
前編は唄+四と呉羽×唄少々。長いので前編・後編に分けて投下します。
「お茶無いの?」
黒机にコーヒーポットを置くと、不満そうな顔で多村が言った。
「無い」
生物室の黒板の横には生物準備室に繋がるドアがある。準備室は狭くて埃っぽいが、ありとあらゆる薬品や器具が詰め込まれている。
窓際にある木製の小棚のてっぺんには、白い長方形のカゴが2つ、双子のように並んでいる。
1つのカゴでは実験で濡れたビーカーやメスシリンダーを乾かしてある。
その隣のカゴでは同じ大きさ、形をした真っ白のマグカップが、逆さに立てられた状態でずらりと並べられている。
俺はマグカップの底を見て回り、「久佐乃T 生物室」「他村T 生物室」と書かれたものを手に取った。
準備室を出ると、多村は机の上にお菓子を広げて一人で食べ始めていた。
「また食ってる」
「だって、いつ来ても何か食うもんあるんだもん。この部屋」
「多村が来たら、絶対それ食うと思ってたよ」
「俺のために買ってきてくれたの?」
「さあね」 生徒が持ってきたんだけどね。
お菓子をつまみながら、多村はマグカップにコーヒーを注ぐ俺の姿を見てくる。
彼の口からはサクサクと軽い音がする。お菓子の袋には黒文字で「カール 元祖カレー味」と書かれている。
多村は本当にカレーが好きだ。この世から音楽とカレーが無くなったら、真っ先に絶滅するのは彼のような人種ではないかと俺は睨んでいる。
マグカップを渡すと、多村は注意深くカップの底を見た。
「よかった。ちゃんと『多村T』って書いてある」
「間違えて生徒のを使ったら大変だもんね。セクハラで訴えられるよ」
「このカップって今いくつあるの?」
俺は指を折って数え、
「20……くらいかな」
「そんなにあんの?!」 多村が目を見張った。白々しい、と思った。
元はといえば多村が、この部屋に放課後休憩しに訪れるようになったのが始まりなのだ。
それに釣られるように哲哉、咲ちゃん、他の先生、生徒までゾロゾロと現われ、ここを憩いの場に使うようになってしまった。
多村いわく、生物室に人が寄ってくるのは三つの要因があるから、らしい。
一に「広くて日当たりが良い」から、二に「かわいい動物とお菓子が待っている」から、三に「心優しい『久佐乃先生』に会える」から。
最後の要因を多村が言ったとき、俺たちは顔を見合わせ爆発したように笑った。心優しい? 冗談じゃない。
とにかく、生物室にはたくさんのお客が来るようになった。
お茶を出すにも同じカップは使い回せない。一度ビーカーにコーヒーを注いで渡したら、多村は人でなしでも見るような目で俺を見てきた。
仕方が無いので、まとめて買ったマグカップの底に油性ペンで名前を書き、準備室のカゴに並べることにした。
自分専用のカップを手に入れた『常連』たちはご満悦になり、ますますこの部屋に足繁く通うようになってしまった。
そして、『常連』の中でもトップクラスの訪問率を誇る多村は今日も今日とて生物室に来ている。
生徒や先生が共同で貯蔵しているお菓子を棚から勝手に取り出し、のほほんと休憩している。
俺も多村の向かいに座り、自分のマグカップを持った。
「休んでないで、部活見に行けよ。卓球部の顧問じゃなかったの?」
「副顧問ががんばってるからいいんだよ」 コーヒーをすすり、彼は目を細める。
「じゃあ授業の練習しろ。昨日もここにクラスの生徒が来て多村のこと言ってたんだよ」
「何て」
「『多村先生が噛むのがおもしろすぎて、授業どころじゃありません。私の数学の成績が良くないのは多村先生のせいです!』って」
「それは言い訳だ!」
女の子らしく声色を変えて再現する俺に、多村は眉を吊り上げて抗議した。
「とにかく、こんなところで休む暇があるならちょっとは先生らしいことしなよ。俺忙しいんだから」
「はいはい、正担任は大変だね」
「暇な副担任のせいでね!」 キツく睨んだはずなのに、多村は気にもせずにカールを口に運んでいる。
黒縁のメガネをかけ、紺青のスーツを着こなした大人がお菓子を食べ続けるさまには何か救い難い違和感がある。
「久佐乃、ところで」 カールを飲み込むと多村は口を開いた。
「今日だったっけ。例の問題児が来るの」
「ああ……」 俺は溜め息をついた。
「ホントに呼ぶの? 自分ちに」
先週この生物室で、彼は俺の部屋に行きたいと言った。
彼も音楽をしている身だから、学校に隠れてバンドをやってる俺について深く知りたいと思ったのだろう。
俺はあの時、成り行きのまま彼の申し出を受け入れてしまった。
本当のことを言えば「部屋に呼ぶ」ことの意味などあの時の俺には考える余裕が無かった。
「だって……呉羽くんのしてることには、前から興味があったし」
「ああ」 多村が息を吐いた。
「ヒップホップだっけ? そういや久佐乃、最近よく気になってるって言ってたよね」
俺はあいまいに肯いた。「そういうことについて、話が出来るなら、って」
「でもホントに出来るかなあ」 多村が首をひねった。
「相手はあの呉羽だよ? 部屋に呼んだとして、何か起きないっていう保証はねえぞ」
息が苦しくなった。「何かってなんだよ」
「さあ。ゆすりとか、たかりとか?」
「あの子は、そんなことはしないよ」 むしろ、もっと俺をおびやかすようなことをするよ。
「とにかく気を抜くなよ。俺たちの活動も彼にバレちゃったんだから」
「うん」
「お前は結構、自分のことには鈍感なんだから気をつけろよ」
「了解。『リーダー』」
多村は顔を引きつらせ、学校ではその呼び方すんな、と言った。
カールを食べ終わった頃、生物室のドアが開いた。首を出してきた生徒が「やっぱり多村先生、ここにいた!」と叫んだ。
卓球部のミーティングがあることをこいつはすっかり忘れていたらしい。
多村は慌てて手を払うと、ライブさながらのスピードで部屋を走り去っていった。
彼の去った生物室では、さっきまで大人しく眠っていたはずのハムスターが猛烈な勢いで回し車を回していた。
なんとなく、多村とハムスターは似ている、と思った。
生物室の掃除を終えると、職員室で荷物を取り、担当クラスの教室へ向かった。生物室は一階に、職員室は二階に、教室は三階にある。
一段一段階段を踏みしめるたびに、胸の奥に重いものが積み重なる気がした。
教室の前に立ち、そろそろとドアを開けた。狭い隙間に顔を寄せると、部屋の隅に呉羽くんが立っているのが見えた。
息が止まった。
薄暗い教室で、ズボンのポケットに手を突っ込み、窓にもたれかかるようにして外を眺める彼は絵画のように綺麗だった。
俺はその場に立ちすくみ、何も言えずに彼を見ていた。
声をかけることでこの場面が壊れてしまうのが怖かった。
「……先生」 びくっとした。
「知ってますから。そこにいること」
呉羽くんは顔を動かさずに言った。体がカッと熱くなった。
これでは、ドアの隙間からばれないように覗いていた自分がバカみたいじゃないか。
「行きますか」
呉羽くんはゆっくりと振り向き、微笑んだ。
何もかも見透かすような目だった。
スーツを着てるはずなのに、俺は自分が丸裸で彼の前に立っているような気がした。
校舎を出て、駐車場に停めた車に鍵を差した。
ドアを開き、助手席に呉羽くんを乗せる。
車の趣味が気になるのか、彼はきょろきょろと中を見回す。
「煙草のニオイ、しませんね」
「今は吸ってないからね」 エンジンをかけると、車は長い眠りから覚めたかのように振動し始める。
「昔は吸ってたんすか?」
「ちょっとだけね」
「へえ」 呉羽くんは目を見張り、本当に意外そうな顔をした。
「でも先生、この車なんかクサイっすよ。生物室のニオイが染みこんでんじゃないすか?」
「かもね」 アクセルを踏み、車を走らせた。
「車がクサイのはヤバイっすよ、先生。女の人乗せられませんよ?」
「君には関係ないだろ」
前にもこのセリフを言ったような気がする。滑るように車は進み、駐車場を離れていく。
本当に、俺は今この子を乗せて走ってるんだ。
自分の部屋に行って、彼を呼んで、そしてどうなる?
考えても分からない。想像は、悪い方にばかり膨らんでいく。
多村は「気を抜くな」と言った。生物室での一件について、俺は彼にごくごく浅い部分しか喋っていない。なのに彼は俺のことを心配した。
あの日起こった出来事を全て話したとしても、多村は「気を抜くな」程度しか言わなかっただろうか。
迷うまでもない。答えはノーだ。
『お前は結構、自分のことには鈍感なんだから』
本当にそうだ。鈍感だから俺は、問題児だと常々警戒していた彼と一緒に車に乗る羽目になっている。
ドアの肘掛に気だるげに肘をつく呉羽くんをたまに覗き見ながら、俺はハンドルを切った。
広い国道の、無数の車の流れに俺たちも混ざった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
生物室は皆のオアシスです。呉羽は問題児だから常連になりたくてもなれないのです
後編は後ほど投下します。
お揃いマグカップで間接キスを妄想した人は正直に言いましょう
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ボーカロイド一家でカイレンほのぼの(?)
こんにちは、マスターです。今日はウチのボーカロイド達を観察してみようと思います。
「兄貴ー」
どうやら、レンがカイトを探しているようです。
「兄貴?」
部屋中を探していますが、カイトは見つかりません。それでもレンは諦めず、風呂場やトイレも探しています。
「かーいとにぃー、かーいにぃ?」
しまいには冷凍庫の中も探しているようです。
「かぁーいとにぃー♪にーぃちゃん♪あーにーきっ♪」
ここはさすがボーカロイド、呼びながら歌う。
と、そこにメイコがワンカップを持ってやって来ました。
「あんた達なにしてるの?」
「たち?」
レンがメイコの視線を追って振り返ると、青い物が扉の裏に隠れました。
「……兄貴?」
レンは扉に近付き、裏に隠れているカイトをようやく見つけ出しました。
「なにしてんの? 兄貴」
カイトがレンの顔を見て怯えています。表情は笑っていますが、明らかに目が笑っていません。
「いや、あの……かわいいなぁって」
カイトの言葉を聞き、レンは(見えないけど多分)耳まで真っ赤になりました。
「っの、バカイト!!」
レンは用件も言わず去って……去っ、て?
「マスターまで……」
隠れてたのに見つかりました。レン涙目。
「みんな大嫌いだあぁぁぁ!!!」
「俺はレンがすきだぁぁぁ!!!」
カイトKY。
「と、いうわけで、マスターの家からお送り致しましたー」
え? ミクが締めるの?
「マスター、リンが庭でローd(ry
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
書いてて楽しかったwww
525 :
風と木の名無しさん:2008/03/11(火) 23:01:42 ID:a86lRicoO
………
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
>>514の後編です。白犬学園パラレル、呉羽×唄(ナマ注意)
ぬる〜くエロ入ってます。
マンション横の駐車場に車を停め、俺たちは外に出た。
自分の部屋のある三階まで、マンションの両端についた階段を上る。
俺の後ろで、呉羽くんが軽やかにローファーを鳴らすのが聞こえた。
追いつかれそうになるのが嫌で俺はわざと早足で上った。脚がもつれそうになった。
自分の部屋の前まで来ると、ドアノブに鍵を差し、ドアを開けた。
「入りなよ」と言うと、彼は「お邪魔しまっす」と会釈した。
頭を下げてもまだ彼のほうが大きかった。どういうことだ。
呉羽くんを玄関に上がらせ、リビングまで案内した。
キッチン横のソファに座らせると、彼は子どものようにソファをぺたぺたと触った。
「結構いい生地使ってますね。部屋も広いし、先生案外金持ちなんすね」
「貧乏そうに見えた?」 キッチンに向かい、コーヒーの準備をする。
流しの蛇口をひねってやかんに水を満たし、コンロにかける。
「あれで金持ちに見えたらちょっとすごいっす」 彼は茶化すように言った。「教師ってやっぱ儲かるんすね。俺も教師やろっかなー」
「キミが先生になるのはあんまり賛成できないな」
「冗談っすよ。ただの、冗談」
言いながら、呉羽くんが教師になるのもあながち不可能ではないなと思った。素行は良くないけれど彼の成績はすこぶる優秀だ。
はっきり言って学生時代の俺よりずっと賢い。「ずる賢い」という意味の名を自ら付けただけのことはある。
「あの。先生」 キッチンのカウンターから呉羽くんが顔を出した。「アレ弾いてみてもいいっすか?」
彼が指差した先には、壁に吊り下げられたアコースティックギターがあった。
俺が肯くと、彼はギターハンガーからアコギを下ろした。
「この前先生が弾いてたのとは違いますね」 弦のチューニングをしながら彼が言う。
顔にかかる髪の毛を耳に引っ掛け、再びソファに腰掛ける。
やかんから金切り声のような音が響いた。火を止め、布巾の上におろす。
インスタントコーヒーを入れた2つのコーヒーカップの中に、やかんのお湯をゆっくりと注ぐ。
俺と呉羽くん、2人分のコーヒーが出来上がった。
お盆にコーヒーカップとクリームを載せ、キッチンを出て、ソファの前のガラスのテーブルに置いた。
ソファに深く座ってギターを鳴らしていた呉羽くんが、俺に向かってぺこりと頭を下げた。
彼に残った幼さがほんの少し、その仕草で感じられた。
「夕飯まだ食べてないよね? 簡単なものでいいなら作ろっか」
「いや、いいっすよ。すぐ終わるし」 クリームの容器を手に取り、蓋をはがしながら言った。
「でも長い話になるって言ってなかったっけ。俺と音楽の話をしたいとか、なんとかで」
「……先生」 クリームがコーヒーの上に落とされた。真っ黒だったコーヒーが、クリームに溶かされ柔らかな茶色に染まってゆく。
呉羽くんは長い指でコーヒーカップの取っ手を掴み、口元に運んだ。
「まさかその話、真に受けてたんすか?」
そう言って彼はコーヒーを飲んだ。彼の目元は嫌味なくらい涼しげだった。
俺の目は、出目金みたいに見苦しく開ききっていたというのに。
「やっぱりニブイんすね。先生って」
否応無く鼓動が高まった。
体の内側からガンガン音が鳴り響いている感じがした。
うるさい、うるさいうるさいうるさい。
彼はカップから口を離すと、床に突っ立つ俺を見上げた。
「あんなのウソに決まってんじゃないすか」
唇の端を広げ、彼はニヤリと笑った。さっき、微かに見えたと思ったあどけなさなど微塵も残っていなかった。
またしても俺は、この子の罠にまんまと嵌まってしまったのだ。
やられた。
俺は自分の時間が止まってしまった気がした。
「先生の部屋に来たのは、別の理由があったからなんです」 呉羽くんはコーヒーカップを静かにお盆の上に置いた。
「俺、先生の『声』が聞きたいんです」
「……え?」 どういうこと、と問いかける前に、伸びた腕に抱きすくめられた。がっちり胴体を抱え込まれ、頭からソファに倒れこんだ。
呉羽くんの膝の上にあったギターが床に落ちた。ジャランと、怒鳴るような荒い音がした。
鼻先に呉羽くんの首がある。この前と同じ香水の匂いがした。
「聞かせてくださいよ。あの時みたいな先生の声」
俺に馬乗りになり、呉羽くんが低い声で言う。長い髪の毛が頬にまで垂れ下がっている。
「この前のライブん時みたいな高くてエロい声、出してくださいよ。俺、間近で聞きたいんす」
顔が降りてきて、唇を重ねさせられた。
舌が入ってくる。コーヒーの苦味とクリームの甘みが、ごちゃまぜに口内に広がる。
「先生、学校では音痴だって皆に言ってるんでしょ? 嘘つきっすよね」
息の乱れた俺を見て、呉羽くんは笑う。そして耳元に唇を寄せる。
「あんなにイイ声持ってるのに隠しちゃうなんて。勿体無いっすね」
吐息を吹き込まれ、鼓膜が震える。柔らかい彼の唇が、耳の輪郭を緩やかになぞり上げる。
「……う、あ」 背筋を何かが駆け抜け、ゾクリと身震いした。これは、生物室で彼にキスをされた時に感じたのと同じだ。
「く、呉羽くん。キミは、俺に、何をする気なの?」
「言ってるじゃないすか。声が聞きたいって」
「だからって、こんなの、きっと違う」
彼がしようとすることの意味が分からないほど俺はバカじゃない。
だいたい俺は教師でキミは生徒じゃないか。こんなことをして良いはずが無い。
なのに、戸惑う俺に向かって呉羽くんは鮮やかに笑って見せるのだ。
「でも、これがホントの先生なんでしょ?」
そんなわけ無いだろ。
そう言いたかったのに、彼の目元が無邪気な子どもみたいに緩んでいたので、俺は思わず口をつぐんでしまった。
俺が呉羽くんの笑顔に見とれている間に、彼は着々と手を動かした。
スーツの上着のボタンを外し、肩からするりと脱がした。床に落とされた上着は、ギターの上に毛布のように覆いかぶさった。
彼は小気味良い音を立てながら俺のネクタイをほどき、俺の両腕をバンザイみたいに上げさせた。
「え、ちょ、呉羽くん」
「ジッとしてて。先生」 彼は器用な手つきで、俺の両手首をネクタイで縛り付けていく。手術中の外科医のように冷静な目だ。
「こうすれば、声、抑えられないでしょ?」
頭の上でクロスした手首は、ぴくりとも動かなかった。ピンで留められた蝶々みたいだ、と思った。
呉羽くんは俺に近づき、喉元に顔をうずめた。彼は獰猛な肉食獣のように、俺の首の皮膚に歯を立てた。
「っ」
喉仏に噛みつかれ、息が詰まった。
呉羽くんが肉食獣だとしたら、俺は草食動物なのかな。ラクダに似てるっていつも皆に言われてることだし。
そんなどうでもいいことに思考を巡らせている間に、彼の手は俺のシャツにたどりついた。
ボタンを外すごとに露わになっていく胸に、彼の唇が降ってくる。
「……っ、う、く」 生温かい粘膜が肌を撫でる。背中から首筋へ、這うように熱いものがこみ上げてくる。
必死で歯を食いしばって耐えるけれど、喉の奥から漏れ出る声は抑えられない。
手さえ使えれば、もっとマシになるんだけれど。
「我慢しないでください」 指でシャツを掻き分けながら呉羽くんが言う。
「先生、前の授業んとき言ってたじゃないすか。ヒトは所詮サルなんだから、自分たちは特別だ、なんて思い上がっちゃダメだって」
空っぽになりつつある頭からどうにか記憶を取り出そうと試みる。でも、うまくいかない。
俺はそんなことを言ってたっけ? 呉羽くんはその授業に出席していたっけ? それ以前に、そもそも彼は俺の授業なんて聞いていたのか?
「先生もホントはサルなんですよ。恥ずかしがったり気取ったりしても、根っこの部分は他の動物とまったく一緒なんです」
彼の声が頭の中をユラユラと漂う。まぶたが重くなる。身体の力が抜けていく。
「サルになっちゃってください、先生。俺も先生も、ただの動物なんですから」
そう言って、鎖骨の辺りにキスされた。
なにかが、弾けた。
シャツが脱げて、裸の肩が現われた。肌寒さに少しだけ震えた。
だけど、彼に胸をべろりと舐め上げられて、すぐに熱くなった。
「ん、あ、あっ……や、く、くれば、くん!」
声が溢れた。
何も考えられなくなった。考えるのが面倒くさくなった。
呉羽くんの言う通りだ。何が教師だ、何が生徒だ。元を正せば、俺たちただのサルじゃないか。
本能を満たしたいと思ってどこが悪いんだ?
「う、あ……も、くれ、ば、くん……」
「先生」
涙の滲んだ目で呉羽くんを見た。乱れた彼の黒い髪が、一筋だけ顔の前に垂れていた。
来て、と言いかけたところで、彼の顔が急に間近に迫ってきた。
「やっぱり期待通りでした」
呉羽くんは俺の目と鼻の先で、これ以上無いくらいの満面の笑みを浮かべた。俺はさっきまでの彼とのギャップに驚き、何度も眼を瞬いた。
「すみません。いきなりこんなことして」
そう言って呉羽くんは、俺の手首に巻きつけられたネクタイをほどき始めた。
「先生絶対歌ってくれないだろうから、こうでもしなきゃ『声』は聞けないと思ったんです」
え、ちょっと待って? 呉羽くん、キミはいったい、何をしているのかな?
困惑しきっている俺を尻目に、呉羽くんは手際よくネクタイを外し、俺の手首を自由にする。
二つ折りにしたネクタイをテーブルに乗せると、彼は髪の毛を整え、若者らしくはにかみながら言った。
「先生。実は先生に、お願いがあるんです」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
まさかの寸止め!
正直、エロの書き方は未だによく分かりません……上手に書ける人はすごい。
ちなみにまだ続いちゃうんだぜ、この話。
次回は誰が生物室にゲストで来るのでしょう?
>>532 生殺しktkr
禿萌えた、続き楽しみにしてます。
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
有/栖/川/有/栖の作家編:学者風警部補×作家。
このカップリングもええんちゃうかと思ったものの、
外世界では准教授が絡んで三角関係になってしまうもの以外を上手く見付けられず、
自家発電を決行、反省はしていない。
准教授は純粋に友人ポジションの部外者です。
学者然とした怜悧な外見と雰囲気に、へえ、こういう刑事さんもいるんやなあ、と思ったのが
初めて出会った時の印象だった。
素人風情が現場に入ってくる事にも嫌な顔ひとつ見せず、
終始、真摯な姿勢で我々と話をしてくれた珍しい警察関係者である、という認識がその次。
何度か接する内、その礼儀正しい態度が表面的なものだけでは無いと分かり始めてからは、
懐の広い人なんやな、とすっかり感じ入るまでになっていた。
私はどうやら、男女の区別無く「きっちりとした人」に深い好感を抱くように出来ているらしい。
内面を知るにつれ、初対面時のイメージがひっくり返される場合も時にはあるが、
やはり、一番最初に見られる、生まれ持った姿形や服装、言葉遣いなどの影響は大きいものだ。
そういった意味で、大/阪府/警捜査/一課において、私の目を特に引いたのが鮫/山警部補だった。
非常に男前な友人を見慣れている私から見ても、警部補の容貌は整っていると言って良いだろうと思われた。
髪はいつでも綺麗にセットされていて清潔感があり、部下を怒鳴りつける声に下卑た色が滲む事は無かった。
アイドル顔と評される若い森/下刑事のように高級ブランドのスーツを着てはいなくとも、
体のラインに合った物をちゃんと選んでいるのだろう、その背広姿に野暮ったさは感じられない。
全くもって、誰かさんの、首に掛けてあるだけまだマシ程度のネクタイとは随分な違いではないか。
そう、私が府警の面々と関わるきっかけを作った友人、火/村は、
誰もが手放しで褒めるであろうレベルの容貌がもったいないほど、
服の着方について、お世辞にも宜しいとは言えない男であった。
会う度に私の心中で必ず発生する、そのぶら下げている黒紐は外すか締めるかはっきりさせろ、というツッコミは、
最早、無意識に行われる癖のようなものに近い。
もちろん、それだけで相手の全てを判断しようなどとは思っていないからこそ、
強く惹かれる個性があるからこそ、十年以上もの付き合いが続いているのだし、
天の邪鬼な部分を持つ私の事だから、火/村が隙無く整えるようであればあったで、
出来過ぎの男だと感じて不満を持ったのかもしれないが。
話が逸れた。
ともかくも、私が鮫/山という警部補に抱く好ましさの度合いは、
事件現場で顔を合わせる毎に勢い良く増していたのである。
犯人の事情聴取があらかた終わった刑事部屋は、捜査中の殺気立った気配も消え、閑散としていた。
ちらほらと人影が見える程度の中、捜査資料に目を通す火/村とそれに補足説明を加えていく鮫/山警部補は、
革張りのソファに向かい合わせで座っている。
事件自体には用無しの私だけが、二人の邪魔にならないよう少し離れた位置の事務椅子を拝借し、
紙コップに入ったコーヒーを啜りながら話が終わるのを待っているところだった。
うーん、どんな時でも崩れた所を見せない人やなあ…。
身なりの緩い友人の側だと、警部補のスマートさはますます際立つような気がする。
事務処理段階へ入っているにしても、それまでの徹夜続きの日々を考えれば
もっとヨレヨレしていても良さそうなものだが、眼鏡を掛けた年上(だと思う)の刑事は
くたびれた印象をこれっぽっちも与えてこない。
またもやポイントアップ。
そんな、全身をじろじろと一人勝手に採点する無礼な視線に気付いたのか、
それまで書類を読む火/村の様子を見守っていたはずの警部補が突然、くるりと振り向いてきた。
私は何の心構えも持たないまま攻撃を受けた時のように動揺し、それによって生まれた無様な動きで椅子が鳴る。
数瞬ではあったが、確かに目が合った、はずだ。
だが、彼は特にこれといった反応も見せず、何事も無かったと言わんばかりに元の体勢へと戻っていった。
ああ、吃驚した。
けど、嫌な感じを受けへんかったやろか…。
私が不躾な奴と思われるのは自業自得だとしても、火/村の活動が制限される事にでもなれば大問題である。
悪い印象を植え付けてしまっていないと良いのだが。
そう心の中で願っている間にも、ソファの二人がローテーブル上の書類を片付け始め、揃って立ち上がる。
「お疲れのところ、お時間を割いていただきありがとうございました」
「いえ、先生にご協力いただいて解決した事件です。これくらい、何でもありませんよ。
何か不明な点などあればいつでもご連絡下さい」
用件は済んだらしいと見て、残りのコーヒーを飲み干し、私も腰を浮かせた、その時だった。
火/村を前に促し、その背後に立った警部補と再び目が合ってしまったのだ。
その事に狼狽えそうになるのを我慢した私を見て、彼は、ほんの僅か、
けれど確かに、酷く意味ありげな笑みを浮かべてみせた。
びくっと体を強張らせた私に気付き、どうした?という表情をした火/村が立ち止まる。
「すまん、何でも無いわ。行こう」
そうだ、どうという事も無いはずだ。
あの表情にどれほどの意味があるものか。
――人間は、見てはいけないと思えば思うほど、それを見ずにはおれなくなる生き物である
友人の後に続いて退出しようと部屋のドアに手を掛けた時、私はふと、そんな気分に襲われ、
止めておけば良いのに、首だけを小さく巡らせ、後ろを盗み見てしまった。
まるで、それを待ち受けていたみたいに私と真正面から視線をぶつけた鮫/山警部補が、
口の端を上げて笑って寄越すのに息を詰める。
ドアが閉まる直前、その銀縁眼鏡の奥に、何らかの意思を含んだ小さな光が煌めいた気がした。