モララーのビデオ棚in801板34

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1風と木の名無しさん
.   ___ ___  ___
  (_  _)(___)(___)      / ̄ ̄ヽ
  (_  _)(__  l (__  | ( ̄ ̄ ̄) | lフ ハ  }
     |__)    ノ_,ノ__ ノ_,ノ  ̄ ̄ ̄ ヽ_ノ,⊥∠、_
         l⌒LOO (  ★★) _l⌒L ┌'^┐l ロ | ロ |
   ∧_∧| __)( ̄ ̄ ̄ )(_,   _)フ 「 | ロ | ロ |
  ( ・∀・)、__)  ̄フ 厂  (_,ィ | 
                  ̄       ̄
        ◎ Morara's Movie Shelf. ◎

モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
なにしろモララーのコレクションなので何でもありに決まっています。

   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |[]_||  |      | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ]_||
   |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   すごいのが入ったんだけど‥‥みる?
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   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ( ・∀・ ) _ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.||  |
   |[][][][][][][][]_|| / (    つ|8l|.|[][][][]_[][][]_.|| /
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    | | |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    (__)_)
前スレ
モララーのビデオ棚in801板33
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/801/1198744311/
ローカルルールの説明、およびテンプレは>>2-9のあたり

保管サイト(携帯可/お絵描き掲示板・うpろだ有)
http://wald.xrea.jp/moravideo/
2風と木の名無しさん:2008/01/15(火) 04:16:21 ID:lo0Gj53T0
★モララーのビデオ棚in801板ローカルルール★

ノンジャンルの自作ネタ発表の場です。
書き込むネタはノンジャンル。SS・小ネタ・AAネタ等801ネタであれば何でもあり。

(1)長時間に及ぶスレ占拠防止のためリアルタイムでの書き込みは控え、
   あらかじめメモ帳等に書いた物をコピペで投下してください。
(2)第三者から見ての投下終了判断のため作品の前後に開始AAと終了AA(>>3->>7辺り)を入れて下さい。
(3)作品のナンバリングは「タイトル1/9」〜「タイトル9/9」のように投下数の分数明記を推奨。
   また、複数の書き手による同ジャンルの作品判別のためサブタイトルを付けて頂くと助かります。

※シリーズ物・長編物の規制はありませんが、スレを占拠しないためにも投下ペースや分量を配慮して下さい。
※感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬はほどほどに。
※「公共の場」である事を念頭にお互い譲り合いの精神を忘れずに。

相談・議論等は避難所の掲示板で
http://s.z-z.jp/?morara
3風と木の名無しさん:2008/01/15(火) 04:16:54 ID:lo0Gj53T0
2.ネタ以外の書き込みは厳禁!
つまりこのスレの書き込みは全てがネタ。
ストーリー物であろうが一発ネタであろうが
一見退屈な感想レスに見えようが
コピペの練習・煽り・議論レスに見えようが、
それらは全てネタ。
ネタにマジレスはカコワルイぞ。
そしてネタ提供者にはできるだけ感謝しよう。

  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  | ネタの体裁をとっていないラッシュフィルムは
  | いずれ僕が編集して1本のネタにするかもね!
  \                           | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| . |
                               | | [][] PAUSE       | . |
                ∧_∧         | |                  | . |
          ┌┬―( ・∀・ )┐ ピッ      | |                  | . |
          | |,,  (    つ◇       | |                  | . |
          | ||―(_ ┐┐―||        |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   |
          | ||   (__)_), ||       |  °°   ∞   ≡ ≡   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
4風と木の名無しさん:2008/01/15(火) 04:17:15 ID:lo0Gj53T0
3.ネタはネタ用テンプレで囲うのがベター。

別に義務ではないけどね。

テンプレ1

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  モララーのビデオを見るモナ‥‥。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  きっと楽しんでもらえるよ。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
5風と木の名無しさん:2008/01/15(火) 04:17:38 ID:lo0Gj53T0
テンプレ2
          _________
       |┌───────┐|
       |│l> play.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
   ∧∧
   (  ,,゚) ピッ   ∧_∧   ∧_∧
   /  つ◇   ( ・∀・)ミ  (`   )
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |            ┌‐^──────────────
  └──────│たまにはみんなと一緒に見るよ
                └───────────────

          _________
       |┌───────┐|
       |│ロ stop.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]

                 ピッ ∧_∧
                ◇,,(∀・  ) ヤッパリ ヒトリデコソーリミルヨ
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |                                |
  └────────────────┘
6風と木の名無しさん:2008/01/15(火) 04:17:58 ID:lo0Gj53T0
テンプレ3
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < みんなで
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < ワイワイ
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 見るからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < やっぱり
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < この体勢は
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 無理があるからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"
7風と木の名無しさん:2008/01/15(火) 04:29:43 ID:t2y6pZSH0
テンプレ4

携帯用区切りAA

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

中略

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

中略

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

8風と木の名無しさん:2008/01/15(火) 04:30:36 ID:t2y6pZSH0
 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 僕のコレクションに含まれてるのは、ざっと挙げただけでも
 |
 | ・映画、Vシネマ、OVA、エロビデオとかの一般向けビデオ
 | ・僕が録画した(またはリアルタイムな)TV放送
 | ・裏モノ、盗撮などのおおっぴらに公開できない映像
 | ・個人が撮影した退屈な記録映像、単なるメモ
 | ・紙メディアからスキャニングによって電子化された画像
 | ・煽りや荒らしコピペのサンプル映像
 | ・意味不明、出所不明な映像の切れ端
 \___  _____________________
       |/
     ∧_∧
 _ ( ・∀・ )
 |l8|と     つ◎
  ̄ | | |
    (__)_)
       |\
 / ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 媒体も
 | 8mmフィルム、VCR、LD、ビデオCD、DVD、‥‥などなど
 | 古今東西のあらゆるメディアを網羅してるよ。
 \_________________________
9497:2008/01/15(火) 04:37:12 ID:t2y6pZSH0
>>1さんありがとうございました。

前スレ497です。
容量オーバにて前スレにとどめを刺してしまいましたorz
その上規制で新スレも立てられず、ご迷惑をおかけしました。
どうもすみません。
迷惑ついでにあと数レスなので落とさせて下さい。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )トチュウカラダケド ジサクジエンガ オオクリシマース!
10不手際だって恋は恋  准×作家 19/22 :2008/01/15(火) 04:39:07 ID:t2y6pZSH0
「……アリ/ス?」
寝室からアリ/スが出てきた。手で口を押さえるようにして、トイレに駆け込む。思わず追いかけてノブに手をかけたが、その直前にカチリという音が
聞こえて鍵をかけられたと判った。
閉ざされたドアをそっとノックしてみるが、反応はない。中からは微かに咳き込む音と、抑えたようなうめき声。
「アリ/ス、大丈夫か。おい、アリ/ス」
ようやく出てきたと思えば洗面所で口を漱ぎ、そのまま寝室に戻ろうとする。
「アリ/ス、ちょっと待て、おい!」
その肩に手をかけて、思いもよらない手ごたえに恐怖すら覚えた。はっきりと判る骨の感触。ちょっと力を入れれば折れてしまいそうだ。そのまま
引き寄せることさえ躊躇われて、思わず手を離した。
「……すまん、ほんま何でもないんや」
振り返ると、アリ/スはそっと視線を合わせて、また困ったように笑った。その顔を見て、どうして何でもないなんて思えるのだ。
何も言えずに、けれど何とかその真意が酌めないものかとアリ/スの目を見つめる。
笑顔を貼り付けたまま、アリ/スの視線は俺から逸らされ、そしてゆっくりと下がっていく。次の瞬間、アリ/スの瞳から、一筋涙が零れ落ちた。
11不手際だって恋は恋  准×作家 20/22 :2008/01/15(火) 04:40:43 ID:t2y6pZSH0
ああ、やっぱりダメだった。
玄関で火/村の姿を見た瞬間から、もうダメだと思った。いつものように出来ない。普通を装うことが出来ない。
せめて決定的な異変だけは気付かせてはいけないと思ったのに、この身体はどうやら隅々まで言うことを聞いてくれなくなったらしい。
勝手に溢れてしまった涙に続いて、喉から嗚咽が出てこようとする。
「……っ」
とにかく寝室に逃げ込もうとしたのに、手首を掴まれた。振りほどこうとするが、びくともしない。
反射的にもう片方の手で火/村の手を外そうとして、逆にその手も掴まれた。両手首を引き寄せられ、身動きが取れない。
火/村の闇を宿す瞳が、まっすぐに覗き込んでくる。断罪する目。暴かれる罪。膝から力が抜け、掴まれた手首を残したままその場に身体は崩れ落ちた。
「アリ/ス!」
どうして友人を好きになってしまったのだろう。どうしてその幸せだけを願ってやれないのだろう。
せめて、どうして、自分の気持ちを騙したままいられなかったのだろう。
私は火/村が欲しいのだ。火/村の幸せなんてどうでもいい、ただ火/村が欲しいのだ。だからこんなにも苦しい。
聞き分けのいい恋だと思っていた。尊敬や憧れに近い、現実味のない恋だと思っていた。だから、火/村が誰かを愛しても、それを彼の幸せだと
祝うことが出来るのだと、そう思っていた。
大した嘘つきだ。
私はこんなにも意地汚く火/村を欲しているではないか。他の人のものになると判っただけで、こんなにも混乱し、憤り、哀しんでいるではないか。
誰かが火/村を愛し、そして火/村が誰かを愛す。そのことにこんなにも我慢がならない。どうしてそれが私でないのだと、この胸が叫んでいる。
どうしてこの恋を忘れられるなど思っていたのだ。こんなにも強く存在しているのに。消し去ろうとするだけで私の身体も道連れにしようと
するような恋なのに。
ああ、なんて自分勝手な欲望。その上私は、火/村から気のいい友人というものを奪おうとしている。
12不手際だって恋は恋  准×作家 21/22 :2008/01/15(火) 04:41:29 ID:t2y6pZSH0
「……なん…で、も、……んや……」
ああ、涙が止まらない。気道が詰まったように声が出てこない。せめて涙を隠してしまいたいのに、火/村はこの手を放してくれない。
「…アリ/ス、お前は何でもないのに泣くのか」
「……な、き…い、とき…も、あ」
「ああ、判った判った、悪かった。立てるか?ここは冷える」
火/村の声が妙に優しくて、そしてこの優しさを失うことを考えて、また涙が溢れた。何も答えられない私に火/村は業を煮やしたのか、
そっと手を放すとおもむろに私を抱えあげた。驚きのあまりなすがままの私をソファの上に横たえるように下ろすと、その横に跪く。
「アリ/ス」
その声はやはり優しい。
けれど私はこの優しさを裏切っているのだ。
「アリ/ス、お前、俺が好きなんだな?」
火/村の視線から少しでも逃げたくて、両手で顔を覆った。なんて残酷な確認なんだろう。私は火/村から一人の友人を奪い、軽蔑する対象を増やし、
そして多分この優しき男の心に傷を付けるのだ。
「………」
「アリ/ス」
答えなければならないのだろう。
私は自分の罪を告白し、そして断罪されなければならないのだ。
ああ、涙が止まらない。
「……ご、め…、ごめ、なさ……っご、めん……」
願わくば、私という存在が、この男にとって取るに足らないものでありますように。
どうか、この男の中で私という存在が早く死んでくれますように。
「告白されたことは何度もあるが、謝られたのは初めてだな」
返ってきた声が笑いを含んでいて驚く。私が動くよりも先に、火/村の手が顔を覆っていた私の手をどけた。
「気持ち……わる、ないん、か……?」
火/村はひょい、と肩を竦めてニヤリと笑う。
「ああ、自分でも驚いている。どうやら俺は、喜んでいるらしい」
一瞬言葉を失って、すぐに気付いた。こいつは好きの意味を取り違えている。多分もっと軽い、そう、ついさっきまで私自身がそう思っていたような
軽い好意だと思っているのだろう。でなければ、こんな言葉を言えるわけがない。
と、火/村の片眉が器用に持ち上げられた。
「ふん、言葉のすり合せが必要か?」
ふいに身を屈めるようにすると、火/村はその薄い唇を私のそれに落とした。
13不手際だって恋は恋  准×作家 22/22 :2008/01/15(火) 04:43:27 ID:t2y6pZSH0
まあ俺も言ってなかったからな。そう一人ごちると
「今回の結婚はな、アリ/ス。ひとつのビジネスなんだよ」
そんなことを火/村は言った。
何度断っても見合いの話を持ってくる教授に、ある日火/村ははっきりと言ったそうだ。自分の人生に誰かを添わせるつもりはない。
独身ということが多少の研究の邪魔になるとしても、自分はそのために誰かと生きていくつもりはないのだと。その場は引き下がった教授だったが
それからしばらくして教授はまたお見合いの話を持ってきた。何とも異常な条件とともに。
「相手は、ある大学の助教授をしている女性なんだが、所謂同性愛者ってやつだ。トランスジェンダーといった方がいいのかな。出世のためには
形だけの結婚も厭わないというアグレッシヴな人物でね。今の大学で教授になるためには、結婚して安定した生活をしていることが条件だと
言われたらしい。それで、同じように結婚しても衣食住すべて別、とにかく結婚しているという形さえあればいいという変わった物件を探していたと
いうわけだ」
俺も結婚という大義名分があれば仕事がやりやすくなるな、と思ったもんで。
そう軽く言うと、驚きのあまりずっと固まっていた私の頬に手を伸ばし、親指でそっと涙を拭った。
「結婚式を急いでいるのも、三ヵ月後には彼女が海外の大学に出向するからだ。三年あっちで研究して、戻ってきたら教授のポストが
用意されているらしい。だから戻ってきたら離婚をしようという話まで出来上がっていたんだよ」
「……それ、ご祝儀詐欺やんか……」
思わず出た言葉に、火/村はおかしそうに笑った。
「お前が、何を考えているのか判らなかった。なぜこんなに痩せてしまっているのか、嘘をついているのか、泣きそうな顔をしているのか。
お前をこんなにも揺さぶる何かに、酷く腹が立った」
ぐちゃぐちゃになった私の髪を、火/村の指がそっと梳く。
「どうしてこんな感情になるのか考えた。お前が泣いているのを見て、それが自分のためであればいいと思った。それで、この感情がなんなのか判った」
なあ、と火/村が顔を寄せる。
「俺は誰とも共に生きていかないつもりだった。だけどよく考えてみれば、俺は既にお前と共に生きている気がするんだ」
そうは思わないか、という意味の言葉をさらりと英語で囁いて、じっと目を見つめる。
「……あまりに急な展開で、よう判らんわ……」
正直な気持ちだった。私は火/村のことが好きで、火/村の結婚が決まって、私は恋を忘れなければならなくて、そして上手くいかずに火/村に
振られる…はずではなかったのか。
「まあとりあえず、お前の正直な気持ちを言っておけよ。お前からは謝罪の言葉しか聞いていない」
よく判らない。でも、今の火/村の目は、優しい。
「…………好きや。…君が好きや、火/村」
言い終わらないうちに、再び火/村の唇が降ってきた。優しく触れるようなそれが、やがてゆっくりと蠢く。
首の下にそっと手が添えられ、薄く開いた歯の間から舌が差し込まれた。探るように動き、私の舌を捕え、絡ませる。
「んっ……」
徐々に激しくなる動きに息苦しさを覚えて声を出そうとするが、それも飲み込まれる。火/村の舌が味わうように動き回り、歯列をなぞり、
溢れてくる唾液を啜る。舌を吸われ、また押し込まれ、何がなんだか判らなくなる。
「ひ、む……っ」
ようやく唇が離れて、そのままの至近距離で見つめられた。
「お前が嫌というなら結婚はしない。だから、俺と生きろ。悪い話じゃないだろう?」
「…俺が好きや言うてんのに、何で君が口説いてんのや」
「さてね、初めて恋の自覚というものを体験をしたんで、舞い上がってんじゃないのか」
例の人が悪そうな顔でニヤリと笑って、それから破顔して、私を強く抱きしめた。
「なあいいだろう。俺と生きろ」
悪いわけなどあるか。
私はそう言って、そっと火/村を抱き返した。
 
15風と木の名無しさん:2008/01/15(火) 04:49:47 ID:t2y6pZSH0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 長い上にご迷惑をおかけしました…orz
 | |                | |     ピッ   (・∀・;)
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

16風と木の名無しさん:2008/01/15(火) 10:08:16 ID:jmY6LBji0
>>15
うおおおお
GJGJGJ!!!
ありす健気だな
大作GJでした!
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | ごめんなさいエロです。しかも…です。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| D伯爵でエロが見れない人は回れ右。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
指が奥まった所を撫でる。
それにはっとして身を硬くした。
「…」
目を閉じて、じっとして。何もしなかった。
ぺろりと指を撫でるレオン。その指を滑らせ、もぐりこませていく。
「うっ…」
異物感に身震いがする。
それに、少し痛い。
D伯爵の様子を見ながら、指を一本もぐりこませようとしたが、思うように入らないので、指をはずす。
そして顔をそれに近づけて、そこを舌で舐めた。
ぴちゃ、と音がして、たっぷりと唾液がそこに擦り付けられる。
そのうち中にもぐりこんでくる舌の感触に、たまらずD伯爵は声を上げた。
「!!や、やめてください、刑事さん!!やっ…!やめ…」
最後の方はもう声にもならなかった。
舌は指とともに中へ中へと入って行く。
なんでこんなことされているのだろう。何をしたって言うのだろう。
ただ片付けて、それで…
「なに考えてんだよ」
まだイラついているらしいレオンが、重低音でD伯爵に問いかけた。
「…な、にも」
声は、恥辱に震えていた。
それすら気に入らないといった様子で、指を二本、無理やり入れて行く。
「痛!や、嫌です、刑事さん…」
ふるふると首に降るその様は、肉食獣に恐れる小動物のようだ。
まさに今、D伯爵はレオンという肉食獣に食われようとしている。
おそらくどんな請いをしても許してはもらえない。
レオンは中を弄んでいた指を引き抜くと、ズボンのボタンをはずし、チャックを下ろした。
「…」
レオンのそれは、すでに硬く怒張していた。
それをD伯爵の後孔へあてがう。
太く、それはとても自分の中に入るとは、D伯爵は思わなかった。
中へと埋没させていく。
「痛…!無理です、刑事さん!―――レオン!」
がっ、と、レオンはD伯爵の脚をかんだ。
「!」
肉食獣の目。
その目が、D伯爵を見つめている。
苛立たしげに何度も舌を打つ。
そして一気に突き入れられた!
「―――――――――っ!!」
声も出せないくらいの激痛に、背をそらせ、目を見開いた。
酸素を求めて、大きく口が喘ぎ、腕が開放して欲しいとのた打ち回る。
が、腕はつながれたままで、実際はばさばさと音を立てているだけだった。
「苦しそうだな、ディー」
血が、にじみ、それが潤滑油のような役割を果たす。
じゅぷじゅぷと音がして、レオンはD伯爵の弱いところを見極めながら、ひたすらに突いた。
血とレオンの体液とが交じり合ったものが、シーツを汚す。
D伯爵は、少し落ち着いた、目を閉じて小さく息を吸い込んだり吐いたりしている。
落ち着いたとなれば次の段階だ。レオンは躊躇せずに、腰をつかんで出し入れを繰り返した。
 激しい動きに、D伯爵から小さな悲鳴と苦痛による声が漏れた。
だがしばらくたてば、苦痛ばかりではないようだ。
頬はほんのり色づき、たまに喘ぎ声が漏れた。
「っあ…、ああっ、刑事、さん…」
レオンがD伯爵のそれを扱き出すと、声は更に高くなった。
トロトロと蜜がこぼれおちていく。
ふ、と顔の上を通り過ぎたレオンの顔。
少し、酒臭かった。
(…酔っている…?)
そして今度は肩をかまれる。
その瞬間、体がわなないた。
同時に目の前がちかちかと光り、疲労感が襲ってくる。
レオンも、中で達していた。
「はあ…、刑事さん…この腕の戒めを解いてください…」
息を荒くつきながら、懇願する。
中から引き抜かれる感覚とともに、血の匂いがした。
出血したな、と、分かった。どうりでずきずきと痛むわけだ。
「…」
レオンは一瞬目を細めると、倒れるようにD伯爵に覆いかぶさった。
「刑事さん!?」
「…ぐー…」
眠っている。
「…刑事さん、…起きませんね…」
ふう、とため息をつくと、D伯爵も眠りに誘われた。

「…んあ?」
「…おはようございます、刑事さん」
レオンがゆっくり体を起こす。そして真下にいるD伯爵を見て、心底驚いたようだった。
「な、なんでおめーがここにいるんだよっ!ここ、俺の部屋だよな?!」
「…ケイジサン…」
D伯爵はいつものように笑ってはいても、心から怒っているようだった。
青筋がいくつも見える。
「え?なんで、ディーの腕、それに、シーツに血?なんでそんな格好してんだ、服ちゃんと着ろよ」
「押し倒して腕を拘束して服を脱がせたのはあなたでしょう!」
「へえ?」
駄目だこの男…何も覚えてない。
「とにかく、この腕の拘束を解いてください」
「お、おう」
言いなりになっているレオンの目は、昨夜のような肉食獣のような怒りはなかった。
いつもの、一本ネジが抜けたような青年がそこにいた。
 拘束がはずされる。
だるそうにD伯爵も起き上がると、身なりを整えた。
少し、衣服にも血がついている。
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 | |                | |           ∧_∧ マダツヅキマス
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23風と木の名無しさん:2008/01/15(火) 21:31:39 ID:nn72eIPD0
>>15
名作だー!GJでした!
保管所入ったらもう一度一気に読ませていただきます!
24あ/い/之/り 量×軽簿:2008/01/15(火) 21:44:27 ID:n3oJRm1Q0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  あ/い/之/り 量×軽簿だってよ。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  AAのコピペずれが怖いよ。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
25あ/い/之/り 量×軽簿:2008/01/15(火) 21:45:23 ID:n3oJRm1Q0
 最近量の事ばかり気になる。抱きしめられて嬉しかったとかスタッフの前で話しちゃう自分に気づく。やべぇと思う。思うたびに量に話しかけられる。
「軽簿奈ー良〜」
 前とは違う声。前とは違う空気。楽しくて。安心して。
二人部屋の時、量と組む事も多くなった。身を寄せて、話と笑い声が止まらなかった。
あの日、量が「貯めてたお金で」と持ってきたお酒に手を付けたのは当然の事。二人で一緒に酔ったのだって当たり前。勢いでちゅーされて、お返しにとちゅー返ししたのだってそんなテンションだったし。ただ、ふざけて倒れ込んだベッドの中、量の目がいつもと違った。
26あ/い/之/り 量×軽簿:2008/01/15(火) 21:45:52 ID:n3oJRm1Q0

「奈〜良〜」
「お前くっつきすぎだって」
 二人でもつれたベッドの中、床には空にした酒の瓶が転がっていた。さっきからベタベタと抱きついてくる量を制止しようとした手は、量に取られてベッドに押さえつけられた。
「ぅ、んっ」
 おいてめぇと反論する間もなく、酒臭い口で俺の口は塞がれた。こういうのが今時の大学生かよと言うために開いた口に今度は舌が侵入し、俺の中をまさぐり始めた。
「っ、ぅ」
 正直気持ちが良かった。気持ち悪いとか思う前に舌を吸い取られた。頭ん中にもやがかかる。体温と体重を感じて腰が疼く。やべぇ。もう。マジ。
「んんんっ」
 出そうな声はキスで吸い取られたままだった。スウェットの上から股間をまさぐられて、抵抗するために立てた足は量の腰で押さえつけられた。太ももと背中が一気に熱くなる。正直股間はもう反応している。しかももうじかに触られている。
「っは、あっ、うっ」
「エロい声、軽簿奈ー良」
 スウェットもパンツもずるずると脱がされて、舐められるまであっという間だった。唾液たっぷりめのフェラで追いつめられて、自分でも信じられない早さでイっちまった。
27あ/い/之/り 量×軽簿:2008/01/15(火) 21:46:27 ID:n3oJRm1Q0
「はは、初めてちんこ舐めたよ」
「はぁ、はぁ……量……お前……」
「ねぇ、触ってよ軽簿奈ー良」
 量に手を取られて、量の股間に導かれた。俺とおんなじ位固く熱くなっているそこの、俺よりちょっと大きい大きさに嫉妬しながら手を動かした。何やってるんだろうとか、どこかで思いつつも止められなかった。
「ふ、ぅ」
 上にいる量の、少し震える声。薄く開いた目がねだっているかのようで、量のスウェットの中に手入れて直接刺激した。どちらともなく合わさった唇のキスにも溺れた。
触りにくいなと量のスウェットを下ろすと、量に上だけ着てたシャツを脱がされて全裸になった。量も自ら全部脱ぐ。そのままうつぶせに押し倒される。
「軽簿奈ー良……」
 耳元囁かれながら息を吹きかけられ、ぞくぞくと反応する耳に舌が押し込められた。伸ばしているだけの髪も撫でられて震えが止まらなかった。その髪をほどかれて首に吸い付かれた所で声が出た。
「あっ、ぅ」
 背中に量の舌を感じたまま、尻肉を左右に開かれる。その尻に何か熱いものが押し当てられて、量のペニスだと認識する前に素股の様に腰を動かされた。
結構な早さで腰を動かす量とベッドの間に挟まれて、俺のペニスはまた熱を持ち始めていた。こんな状況に興奮する自分なんて知らなかった。そんな俺の体を引っくり返し、熱い息で覆いかぶさってくる量のあれを口に含むのも、もうそんなに躊躇もなかった。
「うっ」
 ほどかれた髪の中に、量の手が入り込む。やばくなるなんて最初から分かっていた。もう俺たちは、気持ちも体も、どうにも止められなかった。
28あ/い/之/り 量×軽簿:2008/01/15(火) 21:46:49 ID:n3oJRm1Q0
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 | |                | |           ∧_∧ 毎度短くてスマソ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
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29風と木の名無しさん:2008/01/15(火) 22:14:27 ID:CDZhZqux0
>>28
うおー昨日の萌えがパワーうぷして襲ってきたー!
GJ!GJです!
30風と木の名無しさん:2008/01/15(火) 22:18:13 ID:m513ewN/O
>>28
姐さんGJ
ヤバイヤバイ!軽薄可愛いよー!萌えマスタww
31風と木の名無しさん:2008/01/15(火) 22:19:07 ID:3D2dg+Kz0
>>15
長すぎ。しかもスレ占拠で停止で大迷惑。
せめて10ぐらいにしてそれ以上は分けて投下が望ましいって
前々から何度も言われてるぞ。判るまで2度とくるな。
32風と木の名無しさん:2008/01/15(火) 22:35:10 ID:LQO1Mr+B0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  ナマモノ注意です。極寒のやきうチームです。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  参壱と伍参だってさ
 | |                | |             \ しかも季節外れもいいとこだ。
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__)
33参壱と伍参 1/2:2008/01/15(火) 22:38:02 ID:LQO1Mr+B0
いつからだろう。気がつけば傍にいた。

 昨年、独り病気で沈んでいたときも何も言わずに傍に居てくれた。同い年の気安さからか一緒に
つるむ事がどんどん増えて。気がつけば、とても大切な存在になっていた。でも、自分がこんな思
いを抱いていることは知られたくなかった。「たー」の、あの屈託のない笑顔が見られなくなるこ
とが怖かったからだ。

 今日は札幌にしては暑い1日だった。夜となった今でもまだ蒸し暑く、まるで東京に居るよう
だった。夕食後、部屋に戻ってクーラーを入れて涼んでいると、たーが部屋にやってきた。最近は
よく、夜の暇な時間にやってくる。

 「なんだこの部屋。随分寒くね?」

 部屋に入るなり、腕をこすってそう言った。見れば妙にぶかぶかなTシャツを着ている。

 「どうしたんだ、これ。随分でかいじゃん。」
 「間違ったんだよ。Mの棚にあるからサイズ見ないで買ったら、LLだったんだ。」

 そんな間違い方あるのか、と思わず爆笑したら不機嫌そうに口を尖らせた。

 「取り替えてもらえば良かっただろ?」
 「だって、タグ取っちゃったし……」
 「そんなの、取ったタグ持っていけば取り替えてくれるって。俺、やったことあるもん。」

 そんなの考えもしなかった、とたーは頭を抱えた。でもすぐ、部屋着として着てるからいいんだ!
と強がった。そういうところが放っておけなくて可愛いんだ。
34参壱と伍参 2/2-1:2008/01/15(火) 22:41:07 ID:LQO1Mr+B0
 たーが寒がるので、俺はクーラーを少し弱めてベッドに腰かけた。たーはその隣に座る。
持って来た雑誌を俺たちの間に置き、あーだこーだと取り留めもない話をする。俺は雑誌を
見るよりもたーの首筋に目が行って仕方なかった。
 俺とは違って、細くて堅く締まった印象のあるたーは、青森の出身のせいかあまり日に
焼けていない。大きく開いた襟元から白い鎖骨が見え隠れしてドキドキする。目が離せな
くなってきてやばいな、と思っていた矢先に、雑誌を見ていたたーが俺の顔を見上げた。

 「えいちゃ、聞いてんの?」

 何か話しかけられていたらしい。聞いてなかった、と思った瞬間、たーは眉間にしわを
寄せ口を尖らせた。

 「えいちゃ……なんて顔してんだよ。」
35参壱と伍参 2/2-2:2008/01/15(火) 22:41:30 ID:LQO1Mr+B0
 やばい、どんな顔して見てたんだ俺。そんな、見るからに分かるような顔をしていたの
か。なんて言ってごまかせばいいんだ。思わずパニックを起こしかけた俺の胸元に、たー
がいきなり寄りかかってきた。

 何が起こったのか分からず、思考が停止する。何を言えばいいのか、何をすればいいの
か、どうすることもできずにたーを見ると、耳から首まで真っ赤になったたーがいた。そ
んなたーに愛おしさがこみ上げてきて、思わず抱きしめる。心の端で、拒否されたらどう
しようと不安に思ったが、逆にたーも俺のシャツを握りしめてきた。そのままたーは俺の
胸元に額をすりつけ、ゆっくりと顔を上げた。

 「遅ぇんだよ……もぉ」

 そういったたーの顔は、耳と一緒で真っ赤になっていた。俺の顔も熱くなっていたので、
負けないくらい真っ赤だっただろう。

 「お、遅いって……」
 「だって、大分前からずっとそーやって俺のこと見てたじゃん。待ってたのに…」

 最後の言葉を消え入るように言われ、たまらなくなった俺はたーにキスをした。何度も
キスを繰り返し、わずかに唇を離してようやくこう言った。

 「好きだよ、たー」

 俺の言葉を聞いたたーはにっこりと笑い、俺を抱きしめた。
36参壱と伍参:2008/01/15(火) 22:42:15 ID:LQO1Mr+B0
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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧  改行失敗……&
 | |                | |     ピッ   (・∀・;) マカーなのでAAのズレスマソ
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
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37風と木の名無しさん:2008/01/15(火) 23:06:44 ID:TLYdqWei0
>>15
姐さんGJすぎて涙出た
でも長いものの投下は時間をあけて三回くらいに分けてやるといいかも
38風と木の名無しさん:2008/01/16(水) 02:35:32 ID:/n+u1/46O
>>32
KKキタ────────!!!
待ってた。かなり待ってた!姐さんのお陰でKK好きを再確認出来たよ…
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | 完結編です。エロエロすみませんでした
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| D伯爵でエロが見れない人は回れ右。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
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「…」
「…」
二人は向かい合うようにしてベッドに座った。
D伯爵は後孔がまだ痛くて、足を崩してしか座れなかった。
先に口を開いたのはレオンだ。
「俺…何したんだ?」
ムカッ
「押し倒して腕を拘束して嫌がる私を無理やり…」
「無理やり?」
「…そのシーツのしみは私のものです…あんなに嫌ですといったのに」
「…やっちまった?」
その言葉に、D伯爵は無表情でこくりと頷いた。
次の瞬間ムンクの叫びのような表情で嘆くレオンがいた。
(俺の馬鹿野郎!いくら昨日は飲みすぎたからって…!伯爵とぉぉぉぉ!)
「体の調子で分からないんですか!刑――いえ、レオン」
するりとD伯爵が悩めるレオンの胸板にしなだれかかる。
「責任、取ってくださいね」
それは何かをたくらんでいるような、そんな表情で。
D伯爵はくすりと笑った。



そうだ。それから一ヶ月、夜には暇を見つけてはレオンの部屋に通った。
まるで情夫だ。いや、それそのものかもしれない。
あんなに痛かったのに、屈辱だったのに、最後に感じた快楽は忘れられない。
レオンも酔ってさえいなければ愛撫の手は優しい。
断ればいいのに、と思った。嫌で付き合ってるんじゃないかとおもう。
口付けは一度もこの一ヶ月で交わしていない。
それでもここにきてしまうのは、快楽の虜だからだ。
「はあ…、ん。中、入れてください、刑…レオン」
「おう。痛くねぇか?ディー」
「大丈夫です…」
レオンはD伯爵の片足を持ち上げると、猛った自分のそれをあてがった。
あの夜とは正反対に、D伯爵の様子を見ながら、ゆっくり埋め込んで行く。
「っ…は、刑事さん、嫌、ですか?」
「?何がだ?」
うつむいたまま、ゆるく首を振る。
「何でも、ありません」
全部が収まって、レオンが動き出す。ある所を擦ると、ぞくぞくとした快楽が走った。
「あっ、刑事さ…」
レオンにしがみつき、そこだと訴える。すべて分かっているかのように、レオンはそこを攻め続けた。

ベッドの中、疲労感から、瞼が重い。
レオンが隣にいて、こちらを見ている。
アレから三回も攻められて、すっかり体が火照っている。
「ディー」
「…なんですか?刑事さん」
「さっきの、どういう意味だ?嫌じゃないのか、とか言う」
ああ、と、D伯爵は頷いた。
「私を、抱くことですよ。一ヶ月前の責任を取ってくださいという言葉を、真に受けているんでしょう」
自嘲気味に笑顔を作る。
いや、と、レオンは答えた。
「別にそんなつもりねぇぞ」
「え?」
「ん〜〜〜」
困ったようにぽりぽりと頭をかく。
そして観念したように口を開いた。
「一ヶ月前に酒飲み過ぎたのは、例の王(ウォン)の事件の後だったろ」
「そういえば、そうですね」
「あの時は間に合ったからよかったものの、間に合わなかったらどうなってたのかと思うと…酒をあおるしかなかった。まあ、お前のことだから上手くかわせてたかもしんねぇけどさ。でも、王の誘いにはお前も乗り気だったし」
「ふぅーん…」
「ふぅーんってお前、人の話きいてんのか」
「聞いてますよ」
「まあ、酔った勢いでやっちまったのは物凄く謝る」
そのくせ態度はでかいのはなんなのか。
だがいつものことだと、D伯爵は笑った。
「有難う、ございます、刑事さん」
ちゅ
「!」
けだるい体を起こして、レオンの頬に軽く口付けをする。
嫉妬してくれたことが嬉しくて、笑顔がついこぼれてしまう。
 レオンはというと、口付けされた頬に手を当てながら、ぼけっとしていた。
「で、刑事さん。これからもここに来て良いんですか?」
「…」
「刑事さん?」
がばりとD伯爵に覆いかぶさる、濃厚な口付けがふってきた。
それは了解の合図だった。
「ん…」
舌を絡める口付けは、初めてだった。
やがてどちらからともなくはなれて、笑いあう。
「初めて、ですね、こんな口付けは」
そしてレオンにも聞こえないような小さな声で、つぶやいた。
「好きですよ」




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 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 終わりでした。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
なんか物凄い背徳感とともに書き始めました。お粗末様。
45風と木の名無しさん:2008/01/17(木) 02:19:03 ID:5U7S8v29O
>>44
おおお乙です姐さん!
前々から見たいと思ってたから凄いよかった!
漫画の二人はどう読んでもこれなんてBL?だ間違いない
46風と木の名無しさん:2008/01/17(木) 12:15:22 ID:abdIoJNuO
>>44
GJ!!姐さん長編乙!!
ちょっと旧の方読み返してくるよ
47風と木の名無しさん:2008/01/19(土) 09:27:39 ID:CQ1yzRxa0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

武/装/錬/金 前スレ12-20の続き。
変態が思いのほか自蝶しないのでやむなく表記変更。今回はずっとパピのターン。
48武/装/錬/金II ハ゜ピ力ズハ゜ピ 1/10:2008/01/19(土) 09:29:04 ID:CQ1yzRxa0
 全てが紫色に包まれた仄暗い空間は、どこか淫靡で非現実的だ。
 濡れたリノリウム床に情けない格好で尻をつく自分自身の足も、覆い被さる蝶々覆面の男も、
薄い靄を通したように力ズキの目には悪い冗談めいて映る。
「……く」
 それでも肌を這いずる相手の舌と指の感触は、嫌になるほど現実味に溢れていた。
 刺激を受けるたびに力ズキは息を詰め、漏れそうになるおかしな声を噛み殺す。
 わずかな反応も見逃さず、ハ゜ピヨンが喉を鳴らして笑った。

 ――くそ、遊ばれている。
 腹立たしいが、ここは我慢だ。力ズキはひたすら時間が過ぎ去るのを待つ。
 ハ゜ピヨンは着衣のまま。対する自分は全裸だ。
 これは不公平ではないのか――いや。
 脳裏をよぎった思いを力ズキはすぐに捨て去った。
 核鉄を左胸に埋めた裸の自分と、下着の中に隠し持つハ゜ピヨンとは、戦闘力において対等だ。
 先刻は不意打ちで動転していたが、今はこちらにも心の準備ができている。
 万が一目の前の男が力ズキの生命を脅かすならば、突撃槍の武装/錬金を、無音無動作で胸から
直接発動させる。この距離ならまず外すまい。
 それに生ける猥褻物陳列罪であるこの男が、その自慢のスーツを脱ぐまいが正直大差はない。
 股間や丸出しの臍なぞすっかり見慣れているし、過去には勃起した全裸まで見ているのだから今さらだ。
 むしろ脱いで余計なことをされるより、早いところこの取立てを終わらせてほしい。
 甘んじてこの行為を受ける羽目になった数分前の会話を、力ズキはもう何度も反芻していた。

                *
49武/装/錬/金II ハ゜ピ力ズハ゜ピ 2/10:2008/01/19(土) 09:29:35 ID:CQ1yzRxa0
「……ッ、武装――」
 突然のハ゜ピヨンの凶行に力の入らぬ身体を、力ズキは意志の力で無理やり奮い立たせた。
「そんなに怯えるなよ。何も取って喰いはしない。今はな」
 この男の場合、比喩ではないから始末に負えない。
 しかし一転して平常なその口調に、警戒しつつも力ズキは左胸に構えた手を下ろした。
 見かけによらず律儀な一面のある男だ。ひとまずその言葉を信用してもいいだろう。
 最後の一言はあえて聞かなかったことにして、何のつもりだ、と口を開きかけた――瞬間。
 暴力的に視界の一角に飛び込んできた、とても嫌な代物に思わず呻き声が漏れた。
 至近距離にある露出過多なスーツ。
 わざわざ注目を浴びるよう蝶の紋章が入った、その股間部分の隆起がいつもの比ではない。

 まさか。力ズキは未だ去らない切迫した危機感に、ようやく己の置かれた状況を顧みる。
 正面にはいつの間にか膝の間に割り込んだハ゜ピヨン。
 対する自分は腰にタオル一枚のみ。背後はフラスコ。退路なし。
 先ほどとは種類の違う戦慄が背を駆け抜けた。
 ――助けて、斗/貴/子さん!
 心で年上の恋人の名を呼ぶ。今度は比喩的な意味で、喰われる危険が迫っていた。
50武/装/錬/金II ハ゜ピ力ズハ゜ピ 3/10:2008/01/19(土) 09:30:02 ID:CQ1yzRxa0
 無駄かもしれないが、まずは説得による現状の打開を試みる。
 話し合いは人間関係の基本だ、たとえ相手が人間をやめた男でも。
「ちょ、ちょちょ蝶/野……おおお落ち着け、な?」
「落ち着くのは貴様だ」間髪入れぬ返答。「四の五の言わずさっさとよこせ」
「な何を!?っていうか、まずそこをどけ!」
「命令するな、そして何度も言わせるな。俺から奪ったエネルギーを返せと言っている」
「……え?」
 ハ゜ピヨンは力ズキの下半身をびし、と大上段に指差し、言い放った。

「飲ませろ」
「うわあああぁぁぁあ!?」

 反射的に全力で後ずさろうとするが、膝を掴まれたうえフラスコに阻まれて叶わない。
 ――コイツヤバイ!いや、ヤバイのは初対面で判ってたけど今は切実にヤバすぎる!
51武/装/錬/金II ハ゜ピ力ズハ゜ピ 4/10:2008/01/19(土) 09:30:30 ID:CQ1yzRxa0
「うろたえるな見苦しい。俺は構成物質ごとでしか人間を喰えないんだよ、貴様と違ってな」
 よりによってそんな手段しかないのか。
 力ズキは嫌な汗をかきつつ必死で窮地を逃れる術を考える。
 そうだ、この男がホムンクルス化した時は確か、掌から一瞬で人間を吸収していたはずだ。
「そんなに頭から丸ごと喰われたいのか貴様は?まあ俺はそれでも構わんが」
 代案は一蹴され、いよいよ泣きたくなってくる。
「……蝶/野、この埋め合わせはきっと他でするから……」
「俺は貴様に吸われた今、補給が必要なんだ。すまないとさっき俺に言ったのは口だけか」
「う……」
 痛いところを突かれ、力ズキは黙り込んだ。
 罪の意識を感じたのは紛れもない事実だ。謝罪の言葉にけして嘘はない。
 が、贖罪の方法に問題がありすぎる。
 ――コイツだって充分元気じゃないか……こんなことなら謝るんじゃ――
 心の片隅でそんなことを考えた自分にはっと気がつき、力ズキは自己嫌悪を覚えた。
 相手の態度がどうあれ、自分がハ゜ピヨンから生命力を奪ったことには変わりないのだ。
 自分はやはり偽善者なのだろうか。謝るなというハ゜ピヨンが正しいのか。力ズキの懊悩は続く。

 たっぷり3分間の葛藤の末、
「…………さっきみたいに痛いのは勘弁してくれ」
「決まりだな。安心しろ、優しくしてやる」
 ――ゴメン、斗/貴/子さん。一心同体の約束、オレ守れないかも……。
 やたら嬉しそうなハ゜ピヨンの股間の凶器から目を背け、力ズキはこっそりと落涙した。

                *
52武/装/錬/金II ハ゜ピ力ズハ゜ピ 5/10:2008/01/19(土) 09:33:39 ID:CQ1yzRxa0
「――あぅッ!」
 乳首に爪を立てられた激痛で、力ズキは意識を現実に引き戻された。
「……ッ、約束が、違う…」
「この俺を相手に気を散らすとはいい度胸だな、貴様」
 相手がオマエだから散らしたいんだ、と言いたいのを堪える。それこそ何をされるか判らない。
 薄く血の滲んだ場所を、すかさず熱を帯びた舌が舐め啜る。
「はッ……ぅ、…く…」
 自分の声を聞くに堪えず、口を手で塞いでやり過ごす。顔が熱い。
 ちらと顔を上げたハ゜ピヨンはどこか楽しげだ。
「初心な反応だな……あの女とはもう少し進んでいるかと思っていたが」
「――オマエっ……見てたのか!?」
 数日前に学校の給水塔で交わした斗/貴/子との口付けに思い当たり、力ズキはうろたえた。
 そういえば飛行能力を持つこの男の武装/錬金なら、文字通り高みの見物など造作もなかったはずだ。
「ほう。何だ、やることはちゃんとやっているんじゃないか」
 すっと目を細めるハ゜ピヨンに、力ズキはしまったと口を噤む。墓穴を掘ったか。
「ま、あんな凶暴な女なんぞどうでもいい。あの貧相な身体では何をどれだけやろうが知れている」
 本人が聞けば即座に殺意と処刑鎌を向けるであろう台詞で、あっさり話題は打ち切られた。
 怒るべきなのかほっとするべきなのかよく判らない。
 生き返ってからのこの男が、どこかしら掴み所がないせいか。
 力ズキ自身がこの男に抱く感情の正体が、自分でもうまく名状できないからだろうか。
53武/装/錬/金II ハ゜ピ力ズハ゜ピ 6/10:2008/01/19(土) 09:36:30 ID:CQ1yzRxa0
 べたつく内股を冷えた手が撫でてゆく。その感触に身を震わせつつ、力ズキは思う。
 ――いつ終わるんだ、これは。
 おとなしくされるがままになっていたが、いいかげん疑問になってきた。
 何しろ自分の意思とは無関係に、行為を始める前から力ズキの性器は既に臨戦態勢なのだ。
 本来ハ゜ピヨンの捕食対象はここではなかったか。
 考えてみれば男同士でツボなど心得ているはずなのだから、――あまり気は進まないが――
さっさと刺激して取るものを取ってゆけばいい。なのに一向に本筋に辿り着かない。
 切羽詰まったもどかしさに、つい力ズキは言ってしまった。
「なあ……、やるなら、その……早いところやってくれないか?……」
「おねだりか?はしたない奴だな貴様は」 
「ちっ……!違う!」
「そうかそうか。そうだろうな」
 慌てて否定した力ズキに、ハ゜ピヨンが加虐的な笑みを見せる。嫌な予感がした。


54武/装/錬/金II ハ゜ピ力ズハ゜ピ 7/10:2008/01/19(土) 09:37:09 ID:CQ1yzRxa0
 宣言通り、ハ゜ピヨンは優しかった――無慈悲なまでに。
 一度を除いては爪や牙の存在など微塵も匂わせず、ハ゜ピヨンは絹のごとき繊細さで、力ズキの
あらゆる場所にくまなく触れていった。臍や足指の間、陰嚢の裏側に至るまで。
 ただ一点、痛いぐらいに猛った力ズキ自身を除いては。

 人肌を感じさせない手が、脇腹から乳首をぬらりと一気に撫で上げる。
「ひ、ぁあうッ……!」
 声を抑える気力はとうにない。
 生乾きだった力ズキの全身は再び濡れそぼっていた。
 フラスコ周辺の床に零れた充填液のぬめる水溜まりを、ハ゜ピヨンは悪魔の執拗さで塗りたくる。
 そのたびに背筋をぞくぞくと走るものが、生理的嫌悪なのか恐怖なのか、快感なのか。
 もはやそれらの感覚は力ズキの中で混じり合い、同一のものと化しつつあった。
 ホムンクルスの掌は不可思議な力で、ひた、と肌に吸いつき離れない。
 体温を奪われ縮こまったその場所を、人間を超える高熱の舌が這い回る。
 その温度差にすら身体が熔かされるような目眩を覚え、我知らず声が上がり、視界が熱く滲む。
「いい声で啼くじゃあないか、武/藤力ズキ」
 てらてらと粘っこく光る両の乳首を捏ね回され、舌で転がされる。
 氷と炎の舌に同時に責められているかのような錯覚。
 触覚を起点に全ての知覚が狂わされ、力ズキは己の正気が奈落の淵に落ちかけていることを自覚した。
55武/装/錬/金II ハ゜ピ力ズハ゜ピ 8/10:2008/01/19(土) 09:37:41 ID:CQ1yzRxa0
 意に反して嬌声が漏れ続けた喉からは、もう無声音に近い掠れた声しか出ない。
 力ズキの理性は地獄の快楽の前に脆くも潰えようとしていた。
 肌への刺激だけで達しそうになると直前で行為を中断され、冷めかけた身体を再び限界まで
煽り立てられる。どれだけ繰り返されたかもう覚えていない。
 身体の中心はずっと前から硬く勃ち上がり、先端から透明な液体をとめどなく流していた。
 滞る熱の開放を求め、疼き続けるそこに半ば無意識に手が伸びる。と、
「食事の邪魔だ」
 手首を掴まれ――ついでのようにねっとりと指をしゃぶられ、片手でまとめ上げられる。
 限りなく優しい陵辱は、永遠にも等しい責苦に思われた。

「自分が今、どんな顔をしているか判るか?……武/藤」
 長い舌先で耳孔を犯しながら、ハ゜ピヨンが吐息混じりの声を注ぎ込む。
「そろそろ認めたらどうだ?貴様は男の愛撫でよがり狂う、淫乱な――」
「あ、…ぁああッ!」
 スーツ越しに昂ぶり同士を押しつけられ、力ズキの脳髄はその一点の強烈な快感で灼きついた。
 相手が誰かという認識も消し飛び、擦り合わせるように腰が動く。最後の一押しを求めて。
 寸前でハ゜ピヨンは、す、と下半身を引くと、力ズキの目を覗き込み、低く囁いた。
「――変態だ、って」
 覆面越しの瞳に映った顔は、己の見知らぬ懇願の色に染まっていた。
56武/装/錬/金II ハ゜ピ力ズハ゜ピ 9/10:2008/01/19(土) 09:38:22 ID:CQ1yzRxa0
 唇に征服者の愉悦を浮かべ、男が笑う。
「素直に認めたら楽にしてやろう。さあ、せいぜい上手におねだりしてみせろ」

 ――何だ。
 一瞬、突き上げる射精感も忘れ、力ズキは涙に潤む目を瞬かせた。

 表情と台詞に、ひどくちぐはぐに。ほんの刹那。
 覆面の奥の、瞳が――
 頼りなく、揺らいだ。

 ――何だ、何か、コイツ、――

「――!や、ッあ、うああッ!」
 次の瞬間、局部から全身を駆け巡る電流に、焦点を結びきらない違和感はたちまち霧散した。
 屹立の根元を押さえ込んだハ゜ピヨンがその目で嘲笑し、力ズキの下肢の間に顔を埋めてゆく。
「や、…めッ、…!…」
 張り詰めた茎を人外の舌が音を立てて舐め上げ、力ズキは背を仰け反らせて悶絶した。
 堰き止められた欲望は脳天まで響く疼痛に変わり、呼吸もままならない。
 自由になった手は指先に力が入らず、己を苛む男の黒髪を弱々しく掻き乱すのが精一杯だった。
「やめてほしいのか?じゃあこれはやめてやろう」
 先走りを綺麗にしゃぶり尽くしたハ゜ピヨンは代わりとばかりに、充填液をたっぷり絡ませた掌で
力ズキのものを扱き上げ始める。
「…!……ッ…!」
 もはや声もなく、力ズキは首を狂ったように左右に振る。
「我侭な奴だな。何が望みだ、言ってみろ」
57武/装/錬/金II ハ゜ピ力ズハ゜ピ 10/10:2008/01/19(土) 09:38:56 ID:CQ1yzRxa0
 もうこの無間地獄から逃れられるなら何でもよかった。
「イき、たい、…ッ…」
 心底からの切望が自然と口を割って出る。
「おやおや、自分のことだけか?大事なことを忘れるな、武/藤力ズキ」
 袋をやわやわと揉みしだきながら、ハ゜ピヨンが噛み含めるように告げる。
「貴様の相手が――誰なのか」

 獲物をいたぶる捕食者から発せられたはずの声音は、なぜか静謐な祈りにも、ひたむきな
幼子の懇願にも似た響きを帯びていたが、追い詰められた力ズキがそれに気づくことはなかった。
 きつく目を閉じて込み上げるものに耐える力ズキに、ハ゜ピヨンの表情は見えない。
 ただひとつだけ、混濁する頭でおぼろげに理解した。身体に覚え込まされようとしているものを。
「さ、もう一度だ。言え、貴様が本当はどんな奴で、誰に」
 ――この男が望む答えを言わなければ永遠に終われない。
「どんなことを、して欲しいのか」
「…あ、ああぁああッ!」
 鈴口に舌先を捻じ込まれ、力ズキの最後の理性が音を立てて弾け飛んだ。

「――オレは…ッ、」
 喉と唇が、生まれてこのかた口にしたこともない言葉を自動的に紡ぎ出す。

「淫乱…な、変態だッ…!は、やく、オレの…を、飲んで、お願いだ、から――イかせてくれ、蝶/野ッ!!」
 矜持も尊厳もかなぐり捨てた自分の声を、力ズキは他人のもののように聞いた。

「満点には程遠い回答だが――まあいい。ご褒美だ」
 声から一歩遅れ、力ズキの芯が熔鉱炉の灼熱に包まれる。
 二、三度の上下と同時に根元の縛めが解かれ、力ズキはあっけなく熔けた。
 堰を切った奔流はハ゜ピヨンの口腔に直行し、嚥下の振動が粘膜を通して直に伝わる。
 一滴漏らさず吸い上げるその貪欲な動きに促されるまま、力ズキは大量の精を吐き出し続けた。
「ゴチソウさま」
 かつてない放出の余韻に霞む意識の中、力ズキは場違いな食後の挨拶を遠くに聞いた気がした。
58武/装/錬/金II ハ゜ピ力ズハ゜ピ 10/10:2008/01/19(土) 09:42:15 ID:CQ1yzRxa0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )パピヨソラボハ ヘヴォンモウソウ パラダイス

まだ続きます、スマソ。次回でようやく逆転の予定。
もうちょっと簡潔に書けるようになりたい。
59風と木の名無しさん:2008/01/19(土) 11:14:03 ID:GZavZi4+O
>>47
GJです!!襲い受け蝶々さんが凶悪にやらしくてたまりません(*´д`*)
続きも楽しみにしてます!
60風と木の名無しさん:2008/01/19(土) 15:01:33 ID:z0xjL9+p0
>58
戦士>58、ブラボーだ!
これで続くとか楽しみにしてます!
61風と木の名無しさん:2008/01/20(日) 01:56:24 ID:OfupPBk20
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

ナマモノ注意です。エ/フワソの眉黄身です。
1月12日ごろ「眉は素晴らしいドライバー」と言っていた黄身のインタビューを
元にしとります。
62F/1 眉黄身 1/12:2008/01/20(日) 01:57:04 ID:OfupPBk20
11月の3週目までは確実に休暇を取ると決め込んだものの、レースに纏わる様々なことを
頭から追い出せるわけも無く、今年の最終戦の映像を何とはなしにリビングのテレビで
見始めてしまったのは、休暇も残り3日を切った日のことだった。
液晶テレビの中で、五つの赤信号が消えてレースがスタートする。
直後に、元チームメイトの「スーパールーキー」がコースアウトした。
俺は3位を走っていく。
その光景を前にして、俺が休暇中に意図して頭から締め出していた2007年の出来事が、
飛び出す絵本を捲るように次々と過って行った。
元ボスやチームメイトとのいざこざと、その他のごたごた。
フェアでは無いことが多過ぎた。
俺が居た環境も、そしてもしかすると、俺自身も。
最終戦が終わったあとのプレ力ンで語った内容は概ね本心だった。
俺にはいつも速いマシンがあったのだ。
だが、結果としては勝利を逃した。
マシンに乗って、ステアリングを握り、ただひたすらに勝利を目指す。
それは多分レースの全てなんだろうけど、俺はきっとそれ以外のことのために負けたんだろう。
そんな自分とは逆に、マシンに乗って、ステアリングを握り、ただひたすらに勝利を目指す事
しかしなかった彼の姿が目に飛び込んできた。
テレビの中で赤いマシンを駆る彼の姿が。
63F/1 眉黄身 2/12:2008/01/20(日) 01:57:47 ID:OfupPBk20
囲の雑音に耳を貸さず、前だけを目指して走る彼の姿。
最終戦での優勝とWC獲得がほぼ確定した残り5周になって、彼はファステストを叩き出した。
実況の声に興奮が帯びる。ここまでくれば、堅実に走りさえすれば勝利は確実なのは誰だって
わかっている。でも彼はそうしない。
『いかにも彼らしい』と解説者が口にして、いつしか俺は初めてレースを目にした子どもみたいに、
その映像に釘付けになっていた。
そして、彼は勝利を手に入れた。
聞く所によると、レース後、あるお偉方が「優勝したのが彼でほっとした。」とコメントしたらしい。
つまり俺やスーパールーキーが優勝したら不味かったと言うのだ。
それに大人しく同意する気はさらさら無いが、自分が勝利を逃した年に優勝したのが他ならぬ彼で
あったことを、俺は素直に喜んでいた。
(彼に会いたい。)
急にそう思った。
あの冷たく澄んだ青い瞳の前に立てば、胸の内にある鬱屈を追い払えるような気がした。
俺は携帯電話を探すため、つきっ放しのテレビもそのままにしてリビングのソファから立ち上がった。
64F/1 眉黄身 3/12:2008/01/20(日) 01:58:34 ID:OfupPBk20
とはいえ、俺は彼の連絡先なんて分からないのだ。
一端レースから離れると、彼のことは殆ど分からない。
俺は奇妙な寂しさを味わって、そのせいで逆に躍起になって頭を巡らせた。
繋がりが無いのは当たり前なんだ、彼とは友達でもなく、同じチームに同時に在籍したことも
無いのだから。でも…と、そこまで考えて唐突に思い至った。…同じチーム。
そうだ。彼とは『元職場』が同じじゃないか!
俺は携帯を片手に、ある人にメールを打った。
『元職場』のあのチームでテストドライバーをしている同郷の彼宛だ。
「もし知っていたら現チャンプの連絡先を教えてくれないか?」
そう送ると案の定、驚きの返事が届く。
「いきなりどういう風の吹き回し?君らは友達だったっけ?まあ良いけど、一応向こうに確認を
取ってから送るよ。まさかとは思うけど、二人で会ってもレース以外で勝敗を争うような真似は
やめてくれよ。拳で勝負をするとかさ。そんな事が起きたら又、今度はこのメールをF|Aに提出
しなきゃならなくなるぜ。」
(何でそうなるんだよ。)
俺はブラックユーモアの混じった返信に苦笑しながら、再び携帯が鳴るのを待った。
しばらくすると、電話が鳴った。
さっきの彼からのメールの返信を予想していたけど、着信音が違う。
メールの着信ではなく電話だった。
液晶に映ったのは未登録の電話番号…。
65F/1 眉黄身 4/12:2008/01/20(日) 01:59:26 ID:OfupPBk20
「もしもし!」
食いつくように電話に出ると、抑揚の無い落ち着き払った声が返ってきた。
「もしもし?」
必要最低限の返事。名乗ることすらしない。
だが、これでもし「やあ。連絡を貰って驚いたよ。いきなりどうしたんだ?」
なんて軽快な挨拶交じりに相手が名乗りだしたら、俺は逆に電話先の相手が本人じゃないんじゃ
ないかと疑っただろう。この無愛想な返事はまさしく彼だ。
「えっと、急にごめん。そっちから電話してくれて有り難う。もし良かったら、会えないかな?
会って話がしたくてさ。」
2、3秒の沈黙があった。
「急だね。何か用?」
耳から流れ込んできたその返事に、俺の心臓は凍りついた。
何か用かと聞かれても、用なんて何も無い。ただ彼に会いたいだけだ。
俺は周囲に目を泳がせながら、彼と会う口実を必死で探した。
すると、以前、母国のスポンサー関係者から貰ったスペイン産のワインが手も付けられずに
棚の上に置き去りになっているのを発見した。
「えーと…。実は渡したい物があるんだ。貰い物なんだけどさ。きみに渡した方が、多分
喜ぶんじゃないかと思って。」
今度は長い沈黙があった。
「いやでも、その…そっちが暇な時間があったらで良いんだけど…。」
弱気になって俺がそう付け足すと、
「今ヒマだよ。だから電話したんだ。」
と又も抑揚の無い返事が返ってきた。
俺から急に会いたいと言われた彼も驚いただろうが、今この返事を貰った俺の驚きに比べたら
大したものではなかったろう。
チャンスが到来したのだ。
短い電話を切った後、彼が指定した待ち合わせ場所に向かうためにガレージの車へと急いだ。
66F/1 眉黄身 5/12:2008/01/20(日) 02:01:33 ID:OfupPBk20
煙が出そうなほど車を飛ばしたので、待ち合わせの場所には意外と早く着いた。
彼も少し遅れて到着した。それは意外じゃなかった。彼の家はここから車で近いらしい。
この時期にスイスの自宅に居たことは互いに予想外のことで、顔を合わせるなり話題に
上ったのはその事だった。
「新聞には違う場所に居るって書いてあったのにな。」
俺が笑うと、
「二人もここに居る。妙だね。」
と彼はわざと自分の足元を見て言った。
小さな店の一番奥のテーブルに俺達は向かい合わせで座った。
「これを渡したかったんだ。」
おれは『口実』を取り出した。
彼は受け取った袋の中身を見ると、とても驚いた顔をした。
「…ワイン?」
「ああ。喜んでもらえるかと。」
「…ありがとう。」
彼は怪訝な顔をして、俺を見、ワインを見て、最後にまた俺を見た。
「でも…。…。…このためにわざわざ?」
俺は微笑んだ。
「うん。でも、良かったら又こうして会えないかな。もちろん、時間がある時で良いんだ。
せっかく同じ国に家があるしさ。会って、馬鹿な話をしたりとか…その…。」
俺が言葉に詰まっても彼は何も言わなかった。
いつも通りの沈黙。彼の沈黙だ。
だが次に現れたのは彼の言葉だった。
67F/1 眉黄身 6/12:2008/01/20(日) 02:03:14 ID:OfupPBk20
「なあ。」
青い目が真っ直ぐに俺を見ている。
「俺とあんたとは、飲み仲間や、一緒に馬鹿をやる仲間にはなれないと思うよ。」
俺は虚を疲れた。
「え。」
彼の表情を見たが、いつも通りの顔だった。
「それは…。俺が飲まないから?」
言った後に、なんて間抜けな返事を口走ったんだろう、と自己嫌悪に陥った。
けれど、彼は呆れるわけでもなく、ただただ生真面目に俺の言葉に驚いた、という顔をして、
彼にしては大きく目を見開いた。
「いや、そういう意味じゃなくて…。」
そう言うと彼は目を伏せた。
言葉を探しているみたいだった。
数秒、目線が机の上を彷徨って、再びあの青い目が真っ直ぐに俺の目を見返した。
彼の瞳孔がいつもよりわずかに大きくなっている気がする。
俺も彼の目を見つめ返した。
彼の口から紡がれたのは二言だった。
「だって、あんたは速いから。」
思わず息を呑んだ。
「俺達は、ライバルだから。」
時が止まった。
リップサービスを言わない彼の言葉が、すとん、と胸の奥に沈んで行った。
68F/1 眉黄身 7/12:2008/01/20(日) 02:04:09 ID:OfupPBk20
彼は続けた。
「俺は競争をしたいんだ。何にも縛られずに。速いドライバーと勝利を争って、速く速く走って、
アドレナリンが全開になる。俺はその感覚を愛してる。俺は勝つことを愛してるんだ。でもその速い
ドライバーと友達になったら、何かが鈍るかもしれない。」
俺はきっと、きょとんとしているんだろう。
彼が困惑したように言葉を切って、戸惑いながら他の言い方を探し始めた。
「だからつまり…自分が争う相手と近所付き合いを出来るほど俺は器用ではないし…。
俺の言ってる意味分かる?」
遂に音を上げた彼が、最後の方は言葉を放棄して俺に目線を送った。
「ああ分かるよ。」
一気に目が覚めた心地がした。心臓が早鐘を打って眩暈がする。
驚いた。
俺は彼が好きだ。
たぶん、彼が知っているよりも。
そしてもしかすると、俺自身が知っているよりも。
彼の心に近付いた途端に彼を好きにならずに居られなくなった。
それも、想定外の衝撃で。
(参ったな。)
確かにライバルってものは一緒に居ない方が良いみたいだ。
俺はコーヒーを飲み終わった頃を見計らって、「もう店を出よう。」と言った。
69F/1 眉黄身 8/12:2008/01/20(日) 02:04:43 ID:OfupPBk20
「なあ、さっきのあれ、記者の前でも言ってくれよ。」
駐車場に出てお互いの車に戻るという時になってから、彼にそう声を掛けた。
「え?さっきのあれって?」
怪訝な表情を浮かべる彼に、俺は微笑んで言った。
「『あんたは速い。』、『俺達はライバルだ。』」
すると彼は、さっき俺が間抜けな返事をして彼を驚かせた時と同じように、
再び大きく目を開いて驚きの表情を見せた。
彼はそのまま真っ直ぐにこちらを向いて、少しの間黙っていた。
ミステリアスな沈黙。彼はいつもそうだ。
けれど彼は急にニヤッと笑った。
「俺が急にそんなことを言い出したら、『彼があんな風に言い出したのは、史上最年少チャンプに
賄賂を貰ったからだ。』なんて書かれるよ。」
そう言って彼は片手でワインの瓶を掲げた。彼の言う賄賂とはワインの事らしい。
今のはたぶん、彼流のジョークなんだろう。
俺は苦笑いして肩をすくめた。
一連のやり取りに沈黙が訪れると、彼はさっさと踵を返して歩き出した。もう用は済んだというように。
けれど、数歩歩いた所で彼は不意に立ち止まり…振り向いた。
70F/1 眉黄身 9/12:2008/01/20(日) 02:05:17 ID:OfupPBk20
「来年も会えるだろ?」
急にそう聞かれた。
彼は俺が来季一年間、休暇を取るつもりかと聞いているんだろう。
まさか!ありえない。俺がそんな選択をする訳が無い。
聞いてきた当人もどこか、俺の答えを見透かしているように見えた。分かっていて俺に答えさせようと
しているような、奇妙なタイミングだった。
俺は少し意地悪になってみた。
「それを聞くの?」
そう返事して彼を煙に巻いた。さっき彼が俺を煙に巻いたみたいに。
こちらばかり手の内を晒すんじゃ、あんまり分が悪すぎるじゃないか。
すると今度は彼がさっきの俺そっくりに肩をすくめた。少し可笑しかった。
あとは振り返ることもなく、彼は去って行った。
俺はその背中を見ていた。彼と会った余韻がまだ残っていた。
そういえば結局、俺が頼んだことの答えはイエスなんだろうか、ノーなんだろうか?
俺には分からなかった。
71F/1 眉黄身 10/12:2008/01/20(日) 02:05:50 ID:OfupPBk20
それから暫くして…。
俺は結局、古巣へ戻ることになった。これは最良の選択だったと思う。
来季に向けて、重圧や緊張が無いと言ったら嘘になる。
むしろ、そういうものは常に付いてまわるんだ。
だが、未来の俺は今までよりももっと強くなれる。挑戦と勝利への執念こそがチャンピオンに
近付くための力だと、俺はちゃんと知っているから。
俺が休暇を決め込んでいる間に、世間では勝手に俺の移籍先を予想したり捏造したりして報道が
過熱していたらしい。そんな事態になっていると知ってから、俺は面白がって新聞やネットの
スポーツニュースをまめに見るようになっていたけれど、移籍先からの公式発表が打ち出された後には
ニュースも次第に静かになって、俺の面白半分の興味も徐々に削がれていった。
72F/1 眉黄身 11/12:2008/01/20(日) 02:06:33 ID:OfupPBk20
それから更に数週間後。
その日も、俺はチラ見しかしなくなったスポーツニュースの字面だけを目で追っていた。
流し読みは直ぐに終わる筈だった。
だが今日はいつもとは違った。
数週間前に会った現チャンプの、あるインタビューが目に留まったのだ。インタビューの中で、
彼は俺に賛辞を述べていた。
『彼は素晴らしいドライバーだ。』
彼はそう言っていた。
俺は少しの間、その文字をぼんやりと眺めた。
答えはイエスだったんだ。
俺は、座っていたソファに寄り掛かって天井を仰ぎ見た。まだぼんやりしていた。
足元からじりじりと喜びが湧き上がって…遂に頭に達した。
「イーッヤッホォォー!!」
俺は叫んだ。あらん限りに。
ソファの上に飛び乗って、天井近くまで飛び上がった。
嬉しかった。
俺は電話を掛けることにした。
だが、彼への電話じゃない。
数回音楽が鳴った後に電話の向こうで呼び出し音が途切れ、電話の相手がスペイン語で挨拶をした。
俺は口を開いた。
「もしもし?先日は素晴らしいワインを有り難うございました。実はあの後、私よりもアルコールの
好きな友人に贈ることにしたんです。喜んでくれました。その友人に又プレゼントを贈りたいんですが…
生憎私はワインのことが分かりません。お勧めはありませんか?」
73F/1 眉黄身 12/12:2008/01/20(日) 02:07:37 ID:OfupPBk20
そのワインを手土産に、また彼に会いに行こう。
彼に会うために見え透いた口実を作っている自分を可笑しく思いながら、それでも俺は嬉しいと思う
気持ちを抑え切れなかった。
彼に褒められたことが嬉しかっただけじゃない。
インタビューで約束を果たしてくれたこと、それが、あの日二人で会ったと彼がオープンに認めてくれた
みたいな気がして、俺は嬉しくなったんだ。
彼と俺は、飲み仲間や、一緒に馬鹿をやる仲間にはなれないかも知れない。
だけど…。
ふと、俺はある光景を想像した。
つい頬が緩んだ。
彼の肝臓に付き合う気はないけど、スペイン産ワインとコスケンコルヴァを片手に彼と乾杯を交わすなら、
酒を飲むのも良い気がする。俺はそう思った。
もしそんな日が来たら、乾杯の言葉はきっとこんな風なんじゃないかな…

『…ライバルに。』
74風と木の名無しさん:2008/01/20(日) 02:09:23 ID:OfupPBk20
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・;)イジョウ、ジサクジエンデシタ!

初投稿でお目汚し失礼しました〜。
黄身インタビューを読んで我慢できなくてやった。
今では反省している。
次はもっと恋人っぽい二人を書けるようがんがります。
75風と木の名無しさん:2008/01/20(日) 19:43:18 ID:SjtjEMPc0
>>74
ゴ、ゴメ…悶えました姐さん。ああ悶えたともさ!
ウキウキな眉が目に浮かぶよ!
上手く伝えられない黄身も禿げ上がるほど萌えました。毛根返して!
そして寺薔薇好きな自分にとって彼が出てきたのも死ぬかと。
次作も楽しみにしてますー。
姐さんありがd!!
76風と木の名無しさん:2008/01/20(日) 20:00:04 ID:zxOBy84S0
>74
すっごくイイもの読ませてもらいました!
実際、眉と黄身はこういうやりとりしてそうだなーと思いましたよ。
こういう関係すごく好きです。
77風と木の名無しさん:2008/01/20(日) 20:30:36 ID:iYGeFkpi0
>>74
うぉおお!イイ!
良質な萌投下、ありがとうございました。
眉かわいいし、黄身の反応もメチャ好きです。
微妙な関係ってオイシイもんですね。
78風と木の名無しさん:2008/01/20(日) 22:15:48 ID:2UydpLsUO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・`)ジサクジエンガ オオクリシマス

・北の芸能事務所、旭川室蘭
・1レスしかないです……
79旭川室蘭:2008/01/20(日) 22:16:28 ID:2UydpLsUO
 ロケバスの中、前方で話をするメンバーから離れ、最後部で寝ている男が一人。そして、その男を見つめる俺。
 俺はみんなから離れ寝ている男の隣に座り、耳元で囁くように名前を呼んでみた。
「けーんさーん」
 少し身じろぎしたけれど、瞼は閉じたまま。
「マジで寝てんのね」
 ちょっとメンバーの様子を見ると、俺達を気にかけている人間はいない。そういう奴らだ。
「……いただきます」
 体を寄せ、緩んでる唇にキスをした。
「ん、う?……た、くちゃん?」
 さすがに起きたようで、回らない頭で今の状況を考えているらしい。
「おはよう、けんさん」
 今度は頬にキスをしてやると、顔を真っ赤にして慌て始めた。
「お、おまっ……ここ「静かにしないとバレちゃうよ」
 何か言われる前に、また唇を塞いでやった。
80旭川室蘭:2008/01/20(日) 22:19:07 ID:2UydpLsUO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・`)イジョウ、ジサクジエンデシタ

ギャグを甘めに変えようと考えたら1日かかったwww
私の室蘭は何でか寝てばかりです……
またむしゃむしゃしたら利用させていただきますw
81風と木の名無しさん:2008/01/20(日) 23:15:05 ID:dVMVs1IH0
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

・武/装/錬/金のソ/ウ/ヤ×パ/ピ/ヨ/ン
・生まれて初めて書いたので、拙い点は多めにみてやってください。
82武装蓮金 ソ/ウ/ヤ×パピヨン4/1:2008/01/20(日) 23:16:06 ID:dVMVs1IH0
ソ/ウヤは一人部屋に篭り、一心不乱に、時折何かを思い出すように手を止めては
ノートにペンを走らせていた。その様子はかなり苛立っているように見える。

「ほう、この家では客に茶も出さんのか」
不意に聞こえた聞きなれた声にはっとして振り返ると、そこには見慣れた毒々しい
仮面と破廉恥極まりない衣装を身に着けた彼が、ベッドに腰掛け口元に薄く笑みを
浮かべこちらを眺めていた。
「な…!ちょっ、あんたどこから入った!?」
ノックはしたんだがな、と言いながら窓を指差し
「忙しそうなんで声を掛けなかったんだが…全く、そんな注意力でよくムーソと渡り合えたものだ」
彼のその言葉に、ソ/ウヤは我が耳を疑う。
「あんた今、なんて…?」
聞けば、過去で出会ったソ/ウヤから『歴史を変えようと旅立った日』を聞いて
覚えていた彼は、その日に何が起こるか観察していたという。
「お前の父親に電話してみたら、急にお前がよそよそしくなった気がするとか
言っててな、今日は部屋に篭ってしまったと心配していたので来てみたんだ…
大役ご苦労だったな、ソ/ウヤ」
その言葉を聞いた途端、ソ/ウヤは彼に縋り付くように力一杯抱きしめた。
83武装蓮金 ソ/ウ/ヤ×パピヨン4/2:2008/01/20(日) 23:17:11 ID:dVMVs1IH0
「なんだ、お前の望んだ世界だろう、楽しんだらいいじゃないか。両親にも思い切り甘えたらいい」
「そんなことは後回しだ、実は…」
確かに、人と緑と活気に溢れた町並みや戦いのない日々、すべて望んだ
ことが叶ったことは嬉しい。
しかし、ソウヤがこちら側(ソウヤが歴史を修正した平和な世界)にやってきてから
気づいたことがある。こちら側の記憶が鮮明になるにつれ、向こう側
(ムーソと蝶/成体によって破壊された世界)の記憶が徐々に薄らいでいるのだ。

「歴史を修正した結果だ。向こう側は無かったことになった今、こちら側で生まれ育った
ソ/ウヤに吸収・同化されつつある証拠だろう」
「…覚えているだけでも記録しておこうと思ったんだ」
机の上のノートを見つめながらソウヤは言う。
「嫌だ、あんたと一緒にいた時間が無かったことになるなんて、全部忘れるなんて!」
ソ/ウヤは彼に抱きついて、子供のように泣いた。こうしている間にも、記憶は消えていっている。
「こっちのあんたに会うのも、本当は怖かったんだ」
こちらの彼は顔も声も同じでも、ソ/ウヤが強くなりたいと願えば容赦ない厳しい修行を
つけてくれた彼でも、幼い頃熱を出して寝込んだとき、一晩中手を握っていてくれた
彼でもない。顔も見たことがない両親より、育ててくれた厳しく優しい彼は尊かった。
もうその彼はいないと確信したくなかった。
84武装蓮金 ソ/ウ/ヤ×パピヨン4/3:2008/01/20(日) 23:17:57 ID:dVMVs1IH0
いつしか美しく誇り高く聡明で、一人でホムンクルスと渡り合える強さを持つ彼は、
ソ/ウヤにとって憧れ以上の存在になっていた。強さの反面、未完成のホムンクルスの
うえ病気のままの脆さを持つ彼を、自分が危険から遠ざけるんだと決意もした。
なんでも自分一人で出来る、そんな考えは思い上がりだった。おせっかいな彼の
おかげで気づいた。過去の彼と両親とで力を合わせてムーソを倒した、この成長した
姿を見て褒めてもらいたい、そんな願いも叶わない。

「なんだ、この俺では不満か?」
なだめるようにソ/ウヤの頭を撫でながら彼は言う。
ソ/ウヤは、記憶を全て失ったとしたら、このノートも若気の至りで書いた空想と
思うのだろうか、と思うと悲しかった。
「ごめん、あんた俺を育ててくれたのに…」
「信念で行動した末の結果には、代償への覚悟は必要でも後悔はいらないんだぞ」
ソ/ウヤは彼が苦笑したように見えたが、それがなぜかは分からなかった。
「俺は、何もかも忘れるのか?」
「たとえお前が全て忘れてしまっても、俺は忘れんぞ、過去で共に戦ったお前のことを…何十年でも何百年でも」
その言葉は、ソ/ウヤにとって何よりも嬉しかった。
85武装蓮金 ソ/ウ/ヤ×パピヨン4/4:2008/01/20(日) 23:18:55 ID:dVMVs1IH0
「そのノート、出来上がったら俺にも見せてくれないか?」
彼はメモに今俺はここにいるから、と研究所権アジトの場所とロック解除のパスを書いて
ソ/ウヤに渡した。なんでも、最近は気が向いたので新薬の研究をしているという。
「向こう側には少し興味があるんでな…いつでも来るといい、俺がいなくても
蔵書庫の本は勝手に読んでいいぞ」
照れくさいから彼に見せるノートは編集が必要だ、なんて考えつつやっと泣き止んだ
ソ/ウヤは笑顔で答える。
「ありがとう、ちょうの…」
その言葉に、彼は明らかにギクリとする。
「おじさん!」
こちら側のソ/ウヤが使う、彼の呼び名だ。
「蝶のおじさんではないと言ってるだろう、パピヨンと呼べ!…じゃあ、またな」
パピ!ヨン!と高らかに叫ぶと、彼は夜空の闇に消えていった。
またな、か…過去の彼も言っていた。そういえば、向こう側で自分を送り出すときの彼は
そう言わなかった、きっとすべて分かっていたのかもしれない。
そして、あの特別な呼び名は父にしか許されていないのだ、とまた嫉妬を募らせる。
向こう側で彼に認めてもらおうと厳しい修行を乗り越えるたび、「それでこそあいつの息子」
と褒められ、その度苛立ちと同時に沸き起こる気持ちの正体が、最近ソ/ウヤにも分かってきた。
向こう側の自分の、例え一部であっても彼は覚えていると約束してくれた。そう考えると
ソ/ウヤはさっきより気が晴れるのを感じた。
今は早くノートを完成させて彼に会いに行こう。父を超えるという決意と彼への思いはきっと忘れない。

後日、ソ/ウヤは彼のアジトに出入りしていることが母にばれて諌められそうになったが
父のおかげで免れたとか、こっそり彼のアジトに入ったら見知らぬ屈強な男と彼が
睦みあっている姿を目撃してまた部屋に篭ってしまい、説得する彼を苦労させたとかなんとか。
86風と木の名無しさん:2008/01/20(日) 23:20:34 ID:dVMVs1IH0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

勢いで書いた、きっと後で後悔する。失礼しました!
87風と木の名無しさん:2008/01/20(日) 23:31:25 ID:LpY4M4oLO
>>58
パッピー素敵です!
続きも楽しみに待ってます!
88風と木の名無しさん:2008/01/20(日) 23:37:40 ID:jwRMnQcl0
>>61-74

r'⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒ヽ ⊂゙⌒゙、∩
ヽ__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__ノ  ⊂(。A。)<モーエーシーンーダー シアワセ!!!!!
89風と木の名無しさん:2008/01/21(月) 00:25:21 ID:uddxKtT6O
>80
是非とも、またむしゃむしゃして頂きたいwww

ビバ末っ子攻www
90風と木の名無しさん:2008/01/21(月) 09:30:35 ID:cOXr6kel0
>81-86
GJ!!
ソウヤかわいいよソウヤ。
後日の話も見たいです……。
91風と木の名無しさん:2008/01/21(月) 17:58:36 ID:gbeXLBdsO
     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |



これは恋とは違うものなのかも知れない、と、ふと思う。
べつに、街中を手を繋いで歩きたいとか、他の誰かに触れさせたくないとか、そういう想いとは、少し違う。
女の子と接するような臆病さではなく、友達と接するような気軽さでもなく。
これをなんと呼ぶのか、知らない。知らないまま、もうここしばらく陥ってしまっている。

自分を呼ぶ誰かの声がしたけれど、あの人じゃなかったから気付かないふりをして芝生の上に出てきた。
これだけ呼ばれればもうだいぶ慣れたけれど、ずいぶんと可愛いあだ名が浸透してしまっている。
けれど、この図体にはとてもじゃないけれど可愛らしすぎるそれで、あの人は呼ばない。
似合わないからだろうか、呼ばない。
苗字。
簡単な苗字でいつも呼ぶ。残念ながら、ありふれた苗字だ。
何が悔しいって、あの人が電話でこの苗字を呟くたびにびくりと振り返って見てしまう。
もう一度言おう、ありふれた苗字だ。自分のことではない。誰だか知っている。
知っているけれど、知らない。そいつについて、詳しくは知らない。
そいつがあの人と組んでいた、そのくらいしか知らない。
あの人が語るのなら聞いてもいいと思えるのに、あの人は大学時代の話をするとき、仲間に入れてくれない。

92風と木の名無しさん:2008/01/21(月) 18:01:28 ID:gbeXLBdsO

そりゃそうか。
こっちがつまらなくなるだろうと気を使ってくれているのだろうから。

同じ苗字を持つそいつに対する感情は、嫉妬に似ている。
嫉妬をするということは、恋か。でも、やっぱり少しちがう気がする。
あの人の名前を、こっそりと口に出してみる。
発音すると普通の響きだけれど、それは、文字にしてみると実に彼に似合うしなやかさを感じる名前。
いつものように、さん付けで、もう一度口に出す。

「呼んだ?」

背後から突然の気配に飛び上がって驚いた。
ぼんやりと転がしていたバランスボールが、てんてんと跳ねる。
振り向くと。その人はいた。
逆光になって見えづらい表情は、それでも笑っているのがわかった。

「   」

自分を呼ぶためにその口から声が発されるのは、一文字一文字が気持ちが良い。
ありふれた名前であってもそれが自分を示すことは、その目線からわかった。
わかるから、一瞬で、すべて構わない気持ちになった。
どんな名前であっても好きになれそうな気がする。そんな想いは、たしかに、どこか、恋に似てはいる。

93風と木の名無しさん:2008/01/21(月) 18:03:02 ID:gbeXLBdsO
見ていたい、触れたい、手を引きたい、名前を呼びたい、
けれど、負けたくはない。

この感情をなんと呼ぶのか、知らない。
知らないから、あなたの名前をそのまま名付けていいですかと尋ねれば、なんのことかと尋ね返された。

答えずに、ただ、笑おう。



 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
>>91のふきだしまで空欄になってた。ごめんなさい。
同士いなそうなCPなのでそのまま伏せておきます。
携帯から失礼しました。
94風と木の名無しさん:2008/01/21(月) 20:45:04 ID:jlkCJi49O
>>93
ほのぼのというか、しみじみと萌えました……GJ!!
できればカプ教えてホスィ
951:2008/01/21(月) 23:42:13 ID:4P5pAYgd0
          _________
       |┌───────┐|
       |│l> play.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
   ∧∧
   (  ,,゚) ピッ   ∧_∧   ∧_∧
   /  つ◇   ( ・∀・)ミ  (`   )
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |            ┌‐^──────────────
  └──────│昨日誕生日だった受けに贈ってみる。
            │とても短いよ。
                └───────────────

いつものように勝手にもぐりこんだ無人の事務所件住居の中で、練は妙なものを見つけた。
フンと形の良い鼻を鳴らしながら、手に取りしげしげと見つめてしまう。
いや、それは見つめるほど大きなものではないのだが、練にはなんだか禍々しい物に見えるのだ。

「かわいいラッピングじゃん。」
アクセサリー。しかも大き目の量販店で見かけるチェーンの宝飾品店の品なのはすぐに分かる。
「ちょっと目を離すとすぐコレだよ。」
練はあきれたようにわざと声を出してみる。
もちろん部屋の主のいらえは無い。
962:2008/01/21(月) 23:43:16 ID:4P5pAYgd0
「お目付けつけなきゃダメかなあ」
思案投げ首に傾げながら、もう一度今度は小さな声で呟いてみる。
元々あいつは節操の無いバイセクシャル。
ちょっと謎めいた女に出会うと直ぐにフラフラしてしまうヤツなのだ。

実は赤と緑と金色のラッピングの小箱は、クリスマスの前から彼のために温められているとも気が付かず、
握りつぶし窓から捨ててしまいたい衝動と戦う練であった。

          _________
       |┌───────┐|
       |│ロ stop.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]

                 ピッ ∧_∧
                ◇,,(∀・  ) 攻めは出さない。長くなるから
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |                                |
  └────────────────┘
97風と木の名無しさん:2008/01/22(火) 01:30:56 ID:PKiPzUtO0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  自分ではヤンデレで書いたつもりなんだけど…
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  もはやジャンル不明w
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
981/2:2008/01/22(火) 01:31:43 ID:PKiPzUtO0
「今日って何の日か覚えてる?」
「あっ…うん」
「忘れたの?今日、記念日」
「うん、そうだったね」
「……」
「忘れてたわけじゃないよ…」
「じゃあどうして?どうして一人でどこかに出かけようとしてるの?
僕はこの日をどんなに待っていたのか知らないの?
一年前から毎日毎日今日がくるのを今か今かと待っていたんだよ?
知らないの?僕がこんなに今日を楽しみにしてきたことを。
知らないの?僕が今日の日のためにしてきたことを。
どうして知らないなんていえるの?
僕は君が好きだから、大好きだからこんなに頑張ったのに、頑張って選んだのに」

〜回想〜
「あの、すいません…」
「いらっしゃいませ。何かお探しでしょうか?」
「えっと。ブレスレット…でオススメのものありますか?」
「ブレスレットでしたら、今こちらが人気です。プレゼントですか?」
「あー…まあ。じゃあそれください」
「ありがとうございます。ではお会計はこちらで」

(帰り道)
「喜んでくれるかな?いや、絶対喜んでくれるね絶対!」
992/2:2008/01/22(火) 01:32:34 ID:PKiPzUtO0
「ねえ、どうしてなの?」
「いや、あの、だから僕の方も…」
「僕よりもやっぱり用事が大事なの?
もしかして他に好きな人でも出来たの?
そうなの?でも僕が別れてあげると思ってる?
僕は君が好きだから、大好きだから、愛してるから別れてあげないよ。
だって僕が好きなのにどうして別れてあげなくちゃいけないの?
だって絶対にそいつより僕の方が君の事をすきだよ、絶対!
絶対!絶対!絶対!絶対!絶対!絶対!絶対!絶対!絶対!絶対!絶対!絶対!絶対!絶対!絶対!絶対!絶対!」
「ごめん!驚かそうと思って秘密にしてたんだけど、実は今日ホテルを予約したんだ。
きっと君が喜ぶかと思って!それから安心して、僕には君以外好きな人なんていないよ。
これからもずっと君だけが好き」
「ほ、本当?本当に本当に?本当に本当に本当に?本当に本当に本当に本当に?本当に本当に本当に本当に本当に?」
「うん、だからちょっと先に行って用意しておこうかと思ったんだ。不安にさせてごめんね」
「う、嬉しいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
「うん、だから用意は二人でやろっか。ほら泣き止んで」
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「行こうか」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「さあ行こう」
「あああ…うん、僕やっぱり君のことが大好き!」
100風と木の名無しさん:2008/01/22(火) 01:34:51 ID:PKiPzUtO0
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101風と木の名無しさん:2008/01/22(火) 01:53:26 ID:YL7GWush0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  ナマモノ注意らしい
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  棒の某2504
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 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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1021/4:2008/01/22(火) 01:54:08 ID:YL7GWush0
「や〜いい式だったっすねー」
まるで自分の部屋のようにソファでくつろぐ後輩をひと睨みすると、冷蔵庫から出した水を一口飲

んで、そのボトルを投げつける。
「スーツ、皺になるぞ」
「はーい」
返事だけは素直だが、脱いだ上着はそのままばさりとソファに投げっ放しだ。
なんで俺が…とぶつぶつ言いつつ、ハンガーにその上着を掛ける。

「花嫁さんもすげー綺麗だったし」
昼間の同期のチームメイトの結婚式の様子を思い出す。
光に溢れたチャペルで、純白のドレスに身を包んだ花嫁は、以前紹介してもらった時以上に美しか

った。
真白いスーツを着た新郎は…多少は笑えるものだったが、鐘の音が響き、花と紙吹雪が舞い降りる

中で微笑みあう姿は、この上なく幸せな光景だった。
参列するためにハワイへのご褒美旅行へは欠席となったが、友人を祝福できて、後はその分トレー

ニングにつぎ込めるから、まぁ文句はない。
1032/4:2008/01/22(火) 01:54:34 ID:YL7GWush0
「あいつ、でれでれに溶けきってましたね」
お湯を注ぐだけのインスタントのコーヒーを入れると香りが部屋に広がる。
カップを二つもってテーブルに置いて、ソファを占領している新居の足元へ座り込む。
立食パーティだったから立ちっぱなしで少し足が疲れた。
「幸せっていいなぁ…」
新居の大きな独り言に、ぴくりと反応してしまい、後悔する。
今日一日ぼんやりと心の中を漂っていた思いがまた浮かび上がる。

(『アレ』があるべき『幸せ』の形なんだよ…な)
今の関係は不自然で、いつまでも続くものではないという覚悟は出来ていたはずだった。
呑気にコーヒーをすすっている、この男との。
世間にも親にだって言えない、誰にも祝福もされないこんな。
いつかこいつも、可憐な女性の隣で、今日の友人の様に幸せにつつまれて微笑むんだろうか。
その想像に、予想外のダメージを受けている自分に驚く。
胸の深い所が痛む気がする。
1043/4:2008/01/22(火) 01:55:08 ID:YL7GWush0
不意に後ろから相変わらずの高い体温の腕に抱き込まれた。
「また何か暗いこと考えてるでしょう」
「暗いって何だよ…」
「ま。大体想像つきますけどね」
こいつはアホだが、時たま妙な勘の鋭さを見せることがある。

「俺は今が幸せですよ?」

思わず息を飲んで、新居を見上げる。
「やっぱり」
にやりと笑われて、自分が失態を犯したことに気づく。
「アホの癖に…カマ掛けたりするなっつの」
悪態をついてみるが、新居は涼しい顔だ。
「不二井さんは可愛いっすね」
「お前は後輩の癖に全然可愛くねーな」
どこかのインタビューでも言ってたっすよねそれとか言いながら喉の奥で笑う。
こいつの笑ってる顔は、嫌いじゃない。
1054/4:2008/01/22(火) 01:55:41 ID:YL7GWush0
そこでずっと腰に回されていた腕に気づいた。
「おい…いい加減放せ」
「嫌です」
駄々をこねる子供のような口ぶりで、さらに腕に力を込める。
ぐぐ…っと押しのけようとするがびくともしない。くっそ…馬鹿力め。
「もう帰らないと、寮の門限だろうが」
「鬼の寮長もいないんで。外泊許可はゲット済み」

「不安にさせてしまったんでしょう?思いきり分からせてあげますよ」

「俺はアンタを離すつもりはないんで」

耳元に唇をよせて、普段よりも低い声で囁かれて、背中をぞくりとしたものが走った。
(最っ低だ…)
こいつの、こんなただの一言が…嬉しいだなんて。
「あ。そこでその顔は反則…」
「どんな顔だよ。ばーか」
ぐいと胸元をひっ掴んでこちらへと引き寄せると、ゆっくりとキスが降ってきた。
106風と木の名無しさん:2008/01/22(火) 01:57:59 ID:YL7GWush0
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107ガンダム00 公録 1/6:2008/01/22(火) 02:08:24 ID:vZcdhE6UO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・Ω・`)ジサクジエンガ オオクリシマス
・ダブルオー15話でグラロク
・棚お借りします
〓〓〓〓

追い詰めたかと思ったガンダムが淡く光を放ち始めた。本能的な恐怖を抱いて
グラハムはその場から離脱する。部下にも警告を促そうとしたとき―――爆音が轟く。
土煙が視界を塞ぐ一瞬、なにかがガンダムから射出された、気がした。

 ★ ★ ★

「結局どの陣営も鹵獲は一機もならず、か」
「こちらの被害は数百、ソレスタルビーイングの被害はガンダム一機……あとは、
未確認の機体を引きずり出したことぐらいか。犠牲の対価に見合うものかな」
カタギリは探知装置を振る。爆発した機体の残像破片や情報の回収だ。
ガンダムの爆発はすさまじいものだった。情報秘匿のためだろう、特にコクピットや
動力炉は破片すらほとんど残っていない。爆発に巻き込まれ、オーバーフラッグスも2機が大破した。
「それより君、休んでなくていいのかい?」
「平気だ。昨日はたいして動いていない。早く調査をするに超したことはない……
しかしこの貞操の固さには恐れ入る」
演習のために―――正確にはガンダム鹵獲のために掘った溝は、爆発で大きく
崩れてしまっている。ガンダムのもの、ユニオンやAEU・人革連のもの、機体のかけらが
大量に飛散して足場も視界も悪い。
かけらを排除しなければ調査機体を派遣することもできない。だが、パイロットの
殆どが疲弊している。小回りのきくフラッグにカタギリを乗せ、グラハムは本隊に先行し爆発現場を訪れた。
「それにしても酷いものだね、君のフラッグの乗り心地。欠陥でもあるんじゃないかい」
「それは悪いことをしたな。今度整備技師長に問い合せてみることにしよう」
軽口を叩きあい、辺りを探索する。棒状の探査装置を振りながら、空いた手で
カタギリはデータをモバイルに打ち込む。危なっかしい足取りだ。この技術顧問は運動能力が異常に低い。
108ガンダム00 公録 2/6:2008/01/22(火) 02:09:21 ID:vZcdhE6UO
転びそうになればすぐに支えることの出来る位置まで近づこうとし―――グラハムはふと
視界の隅に不審なものを見留めた。
「……どうしたんだいグラひゃっ」
「気をつけたまえよ…」
こちらを振り返った拍子に、カタギリは瓦礫の山から足を滑らせた。尻餅をつき、
そのままずるずると傾斜を下がっていく。グラハムはため息をつき、立ち上がるための手を貸した。
白衣はすっかり土で汚れてしまった。気休めだろうが、広げた手ではたく。
力が強いよ、とカタギリは眉を寄せた。
「機材は?」
「無事。技術者の鑑だろうわわ」
「全くだな。―――カタギリ。あれを」
顔を上げようとしてまたバランスを崩す。その腕を取ってやりながら、
グラハムは少し離れた場所を指差した。瓦礫の山からなめらかな楕円体が露出している。
表面の土埃を撫で落とし、カタギリは探査装置で楕円体に触れる。ぴーぴーと装置が反応する。
「……これは……とんだ拾いものだ」
「なんと見る?」
「救出ポッド。うちとも人革連とも違うね。多分……」
それ以上は言わず、カタギリは装置を肩にかけた。眼鏡を直し、ポケットからなにか部品を取り出す。
装置の先へ装着する。吸盤のような形をしているそれは、ぴたりとポッドに吸い付いた。
見た限り継ぎ目は見当たらない。電気を流し内部機器に干渉するのだろう。
「開くか?」
「うーん……変わった言語で組まれてるみたいで。グラハム、ちょっと蹴ってくれるかい」
「は?」
「いいからいいから」
うながされるままに、足裏でポッドを蹴った。もっと強く、とディスプレイから顔
も上げずダメ出しをされる。もう一度―――がん、という音にかぶさって電子音が鳴る。
解析終了、とカタギリはキーを叩いた。
109ガンダム00 公録 3/6:2008/01/22(火) 02:10:13 ID:vZcdhE6UO
「……日頃からこんな雑な扱いをしているのか」
「失敬な。綿密な計算によるものだよ。……で、どうする?開きそうだけど」
「生体反応は?」
「微弱。あまり上等な装置じゃないからね。誤差の範囲内だ」
音を区切ってカタギリが答える。相当衰弱しているか、気を失っているか。
あるいはその両方だろう。途中から参戦したグラハムと違い、ガンダムは二十時間近く連戦していたのだ。
「ソレスタル・ビーイングの構成員を生け捕ったとなると、これは大ニュースだよ。
どの陣営もこぞって手に入れたがる。本人にとってはこの上なく暗いニュースだろうけど」
「捕虜の人権は保障されている」
「ソレスタル・ビーイングは私設武装組織だよ? 軍の仮想敵リストにはない。条約の対象外さ」
「胸糞悪い。―――どちらにせよ開いてみるまでわからんか。君は下がっていたまえ」
「本隊の到着は待たないのかい」
「日が暮れる。それに私が落とした機体だ。初めに触れる権利だって私にあるさ」
コードを伸ばしながらカタギリは息を吐く。グラハムは腰からブラスターを抜いた。
彼を背中に庇い、構える。
開けるよ。カタギリが合図を出す。ポッドが震えた。
「―――ハジメテナノ! ハジメテナノ!」
「なっ!?」
顔の中心に衝撃が走る。グラハム、とカタギリが声を上擦らせた。
「ヤサシクシテネ! ヤサシクシテネ!」
「AI……? 派手に行ったね、グラハム。大丈夫かい?」
じんじんと痛む鼻頭を押さえ、グラハムは視線を上げた。オレンジ色の球体が跳び回る。
これが顔にぶつかってきたのだろう。機材を地面に置き、カタギリは球体を持ち上げる。
球体は耳に似た部品をぱたぱたと動かした。ハロッハロッと短く鳴く。
「これがパイロットかな。遠隔操作の可能性も浮かんでたけど」
「まさか。ガンダムは全機生身のパイロットが搭乗しているよ。対峙した私が保証する」
AIはカタギリに任せ、グラハムは開閉部の縁に手をかけた。ブラスターを突き出す。
それから、慎重にポッド内部へ身を乗り出した。
110ガンダム00 公録 4/6:2008/01/22(火) 02:10:57 ID:vZcdhE6UO
―――ポッドの内部は狭く、胎児のように身を丸めて男が横たわっていた。
ヘルメットのせいで顔は見えない。
手を伸ばす。銃口を喉に押し当て、パイロットスーツを掴んで無理矢理引き寄せる。
余程衰弱しているのだろう。反応はない。しばし迷い、グラハムはブラスターを傍らに置いた。
ヘルメットを脱がせる。片手で行うのは難儀な仕事だった。
「……随分と細い」
弱々しい呼吸音が零れる。白人で、まだ年若い青年だ。汗で湿った茶髪が
青ざめた肌に張り付いている。
カタギリを振り返る。視線があったのでうなずくと、彼は数歩前に出た。グラハムの隣に立つ。
「コーカソイドだね。君とそんなに年は変わらないんじゃない?」
「兵士の体ではないな。筋肉のつき方が不均等だ。―――眠り姫というよりは白雪姫か」
「じゃあこのAIが小人かい? キスで起こすのがセオリーだろうけど、
あいにく僕らは女王の役回りだよ」
独り言のつもりだったが、カタギリは律義に相槌を打つ。この青年がソレスタル・ビーイングの
パイロットなら―――十中八九そうだろうが、そうならば彼は公安の預かりになるだろう。
グラハムは顔をしかめた。あそこは国家の利益のためならどんな非人道的手段も辞さない機関だ。
「ロックオン! ロックオン!」
AIの表面、目を模したランプが点滅する。カタギリの腕の中でAIはせわしげに動いた。
「自動追尾(ロックオン)?」
「オキテ! ロックオンオキテ!」
「―――……は、ろ……?」
掠れた声。
111ガンダム00 公録 4/6:2008/01/22(火) 02:11:44 ID:vZcdhE6UO
ぐたりとしていた青年が薄く目を開けた。さまよう視線が、グラハムに向く。
こちらを見上げる双眸は赤く充血していた。掴み寄せられた首周りが苦しいのか、眉間に力が入っている。
目の縁に雫が溜まっていた。薄い唇が小さく動く。切れ切れに紡がれる言葉は聞き取りづらいが、
どうやら英語のようだった。グラハムはやや身を屈める。こぼれる言葉を逃さないように。
やがて、浅い呼吸を繰り返しながら彼は目を閉じた。気力がつきたのか。青年の全身から力が抜ける。
抱き込むようにしてその体を支えた。
「……なにか言ってた?」
「いや。よく、聞き取れなかった」
「そっか。とりあえず本部に報告を―――」
通信端末を取り出そうとする手をグラハムは押さえた。眼鏡の奥でカタギリが瞬きする。
その目が不意に、剣呑に眇められる。
「何を考えているのかな」
「君が想定している中で最低の事柄を」
「……グラハム、君ねぇ。正気かい?」
大袈裟なため息をつき、カタギリは顎を軽く上げた。
「捕虜の私兵化は軍紀違反じゃなかったっけ」
「一般人の保護だ。ソレスタル・ビーイングは我が軍の仮想敵リストに入っていない」
「ひどい詭弁だ」
「承知している。だからこそだ」

 ★ ★ ★

「エーカー上級大尉! ご帰投お疲れさ……あの。そちらはカタギリ技術顧問……ですか?」
動かせる機体や人員のほとんどは回収作業に駆り出されていた。
どうやら人革連が事前に取り決めていたユニオンの領域を侵犯しガンダムのかけらを
得ようとしたらしい。そのおかげで格納庫は閑散としていた。だが、それでもグラハムが
カスタムフラッグから降りると、整備兵が近寄って来た。
あまり見ない顔だ。新兵だろう。グラハムは肩に担いだ男を背負い直した。
頭から白衣を被せたので彼から顔は見えないはずだが、気持ち、遠ざける。
「慣れないドライブで酔ったらしい。私のフラッグが汚れる前に眠らせた」
「それは……メディックを手配しますか?」
112ガンダム00 公録 6/6:2008/01/22(火) 02:13:17 ID:vZcdhE6UO
「結構だ。大事ない。……互いに不名誉なことだ。できたら口外はしないでくれるかな」
「イエス、サー。フラッグの整備はどうされますか」
「カタギリが目を覚ますまで私の機体は後回しでいい。
技術顧問殿以外に任せるとすぐ機嫌を損ねるんだ。他の者にもそう伝えてくれ」
イエスサーと快い返事にうなずいて、グラハムは格納庫を後にした。
人気のないルートを慎重に選びカタギリの部屋に向かう。
幸い、たどり着くまで誰にも会わずにすんだ。借りたカードキーで入室する。グラハムに割り当てられている
士官用の個室と間取りが左右対象だ。ベッドに男を下ろす。
カタギリ―――ではない。
寝顔は白く、血の気が引いている。名もまだわからぬパイロットのためにグラハムは掛け布団を引き寄せた。
改めて見ると、まだ幼さが残る顔立ちだ。柔らかな茶の髪に戯れに触れる。
かあさん、と。グラハムを見てこの青年はつぶやいた。母親はブロンドなのだろうか。
会いたかった。ごめんなさい。いい子になれなかった。ごめんなさい。
許しを乞うように彼は何度も謝罪を繰り返していた。
「―――あまりのんびりもしていられない、か」
フラッグの中で震えているカタギリに替えの衣服を持って行ってやらねばならない。
隙を見て彼を連れ出したら、次はセキュリティカメラの確認と情報改竄だ。
この青年の手当も必要だ。
―――正気かい?
カタギリの問いがよみがえる。自分の行為がどんなに馬鹿らしいか、重々承知だ。
狂気と思われても仕方ない。グラハム自身でさえ、自らの行動に戸惑っているのだから。
人を救うことに理由など不要だ―――自分に言い聞かせるようにグラハムは一人、つぶやいた。

〓〓〓〓
□ STOP ピッ ◇⊂(´∀`*)イジョウ、ジサクジエンデシタ
・ムラムラしてやった。後悔は(ry
・あと5番数字間違えました……
113風と木の名無しさん:2008/01/22(火) 05:05:40 ID:ykW5ns/c0
>>101-106
まさかこの2人が読めるとは!GJ!!!!!
またの投下まってます
114選択者 始:2008/01/22(火) 07:42:38 ID:kEsqhP/70

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  91さんに便乗
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  「歯車」の作者です
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
115選択者 1:2008/01/22(火) 07:43:16 ID:kEsqhP/70
「また死んでしもうたわ」
「ほんまよく死ぬなあ」
「なんやろね、死ぬような運命やったのかな」
「お、雨や」
ポツポツポツポツ・・・
「なんや、天気が悪うなってきたな。さっきまであんな晴れてたのに」
「次生き返りたい?」
「そうやな。満足な生き方してへんからな。でも死んだ後、記憶が残っているのは嫌やな」
「嫌やけどそういうもんやから仕方ないんちゃう?」
「そやなぁ」
ポツポツポツポツ・・・
「死んだらいつもオマエがおるな」
「生きてても側にはおるよ。目に見えんだけで」
「触れられないとなかなか気付きにくいもんやないか。最初オマエ見る前はな、オレ死んだら天国か地獄のどっちかに行くと思うとったんや。
それがいきなりオマエが現れてな”生き返りたい?”って。そりゃあ生き返りたいと思ったよ、やりたい事もあったしな」
「でもお前の元の体は既に焼かれて灰になってたからな、他の胎児に転生するしかなかったんや」
「折角生まれたのに、まさか刺されて死ぬと思うてなかったな」
116選択者 2:2008/01/22(火) 07:44:28 ID:kEsqhP/70
ポツポツポツポツ・・・
「天寿をまっとう出来んやっちゃな」
「それがオレの人生ちゃうのん?」
「せやな」
「オマエに会うの何度目だっけ?」
「とうに忘れたわ」
「死ぬ間際になってオマエの顔を思い出すんや。ああ、またあいつに会うのかって。それまでは結構忘れたりしてんやけどな」
「忘れてええよ。僕が側におったからといってどうなるわけもないし。ただもう一度人生やり直したいかって聞いた時にお前がうんと言えばやり直させるだけや」
「っつか、死んで別の人間として生活する時に死ぬ前の記憶?っていうの?前世の記憶っちゅーんか?があるんやけど、それが一向に役に立たんのや」
「まぁ役に立たんやろな。何処の国に誰の子で生まれるかはランダムでこちらからは決めれんのやし」
「一つ聞いていい?オマエは何でオレにこういう事させるん?もしオレが生まれ変わらないでこのまま消滅したい言うたらどうする?」
「そん時は別んやつをターゲットにするだけや。教えたるか?こうやって死ぬ度に消滅か生き返るのかを迫った時に毎回生き返るのを選択するわけやろ?
そしたら、毎回僕を頼るようになるわけや。死んだ時に僕がいないと逆に不安になって僕を求めようとするんや」
「何でオレやねん。じゃオレをターゲットに選んだワケは?」
路上で刺された死体から流れる血を雨が洗い流していく。その様子を幽体の二人が見ている。雨は降り止まず、空は暗く、助けも来ないまま放置されている死体だけがただ、そこにある。
「僕もね、お前と同じように死か生まれ変わるか選択させられた側だったんや。そん時にそいつに言ったんや。”あんたみたいに選択を提示する側になりたい”ってな。
したら”じゃあターゲットを見つけて、次の選択者が見つかるまでお前が選択者になれ”と言われたからずっと選択者してる。
お前に決めたワケはな、最初にお前が死んだ時に”死にたくない、まだまだ生きていたい”と無念のまま死んでいったからや。最初は交通事故やったかなぁ」
117選択者 3:2008/01/22(火) 07:45:16 ID:kEsqhP/70
「ああ、何度か死んで生き返ってるけど不慮の事故しか無いのはどういうわけや」
「知らんわ、んなもん。だから僕は選択者になったんや」
「もしかしてオレが選択者になるまでオマエはこのまま消えれないままちゃうか?」
「そういうことになるな」
「選択肢が一個増えたってことか。もしな、オレが選択者になりたいって言ったらどうする?」
「・・・ほんまになりたい?何百年も他人の人生を見続けたいならそれでもええかもよ」
「選択者になったら消えることも出来んわけやけど、でも今の段階だと転生するか消滅するか選べるわけやし。前世の記憶があってもそれは断片的なものでしかないのがな。もし今の記憶を完全に保ったままで転生出来るんやったらそっち選びたいけど」
「今の状況は人間が見る夢のようなもんや。だから断片的にしか覚えておらん」
「なぁ、選択者二人にはなれへん?一人でおるの嫌やろ?」
「このままずっと消えることも出来なく、他人の人生を覗くだけの存在に成り果てるだけやけどいいんか?」
「一人でおるより二人でいた方がええやないか。オレ、オマエとおるの悪くないで」
「さよか。僕を頼ってほしかったり求めてほしかったりしたのも、こんな展開を予想してたかもしれへんな。一人でおるのは孤独やからな」
「これからは側におるよ」

こうして選択者は二人になった。選択者達は次のターゲットを探し、その人間の人生を共に見ることになる。選択者が存在するその謎はまだ解明出来ていない。ただ今日も二人は他人の人生を見続ける。語り合いながら。
118選択者 終:2008/01/22(火) 07:45:56 ID:kEsqhP/70
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SS、好評のようでありがとうございました
119風と木の名無しさん:2008/01/22(火) 12:51:06 ID:juaERyWu0
>>101-106
GGGGGJ!!!このカプ大好きだ
後ろから抱く体格差に萌える(*´д`)
120night mare 【opening】:2008/01/22(火) 13:00:17 ID:ooHgFmDW0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )

○リーダムより、タケカズ・ドロタイ前提のタイカズ(一部リバ描写あり)
内容はシリアスで悲恋です。精神的に痛いのが苦手な人はご注意ください。
121night mare 【1/15】:2008/01/22(火) 13:01:20 ID:ooHgFmDW0
なぁカズマ。苦しいよな?ほとんどの時間一緒にいて、楽しいことやったり、くだらねぇこと話したり、
笑い合って、バカなこと言って、時々真剣に自分のこと打ち明けたり、
同じ部屋にいながらお互いに何も話さず、全然違うことをしていても気を遣ったりしないでよくて、

時と身体を重ねるにつれて、何も言わなくても、心の中も身体のいいとこも
全部知ってくれていた大切な人の声を、体温を、存在を、もう直に感じることが
できないのは、すごくすごく苦しいよな?

だから俺たち、愛する人を失った者どうし、利用し合えばいいんじゃねぇ?


『なぁタイラ・・・・・・。俺、どうしたらいい?』
「寄宿舎に・・・、俺の部屋に来いよ。」


先の見えない、あやふやで脆くて、下手すればお互いに傷つけ合う
諸刃の剣のような関係になることくらい、簡単に想像できたんだ。

でも、止められなかった。

・・・・・・・・なぁカズマ。タケルがもう自分のところに戻って来ないとわかった時、
お前どう思った?何を感じた?何を考えた?
俺は、俺はさ・・・・・。
122night mare 【2/15】:2008/01/22(火) 13:02:02 ID:ooHgFmDW0
その日の朝方、頬を伝う自分の涙で目が覚めた。

「なんで・・・・・?」

悪い夢でも見たかと記憶を辿ってみたが、まるで内容を思い出せなかった。ただ、
ひどく懐かしいと感じたような、淋しいと感じたような、はっきりとは言葉にできない朧げな感情と、
頬とピローを濡らした涙の跡だけが、確かに残っていた。

それでも、一日が始まればそんなことはどうでもよくなっていた。
否応なしに再教育プログラムを終わらせることに集中してしまうからだ。
だから、昼過ぎには、どうやって保護監察官を出し抜いてやろうかということや、
プログラムを受けての感想と反省のレポートをどう手短かに終わらせようかなどの
かなりどうでもいいことで頭がいっぱいになっていて、
いつの間にか、流した涙の理由どころか泣いたことすら忘れていた。
それで一日は終わるはずだった。ところが、

その日のプログラム終了後、寄宿舎へ戻らなくてはならない門限までの
わずかに残された自由時間を、できるだけ満喫してやろう、と
空の色が変わっていくのを見ながら一人でビークルを走らせていると、どうしてかわからないが、

「・・・・・・・・・・・・・。」

ある男のことをふと思い出した。それでなんとなく気になって、
かつての仲間と集まっていた場所へと、考えるよりも先に向かってしまっていた。

多分この時に、既に波長が合っていたのかもしれない。
123night mare 【3/15】:2008/01/22(火) 13:02:39 ID:ooHgFmDW0
ビークル街を抜け、ショッピングモールの駐車場に自分のビークルを停めて、
少しずつ人の気配の薄れていく小さな細い道へと入り、さらに歩くと
「Mellow Yellow」は変わらずそこにあった。

フィッシュが死んで彼の身辺捜査が行われ、
(と言っても、事件の主犯であるフィッシュは交通事故で死んだのだし、結局テロも何も
 未遂に終わったのだから、身辺捜査をしたところで何の意味もなかったはずだが、
 エデン法で定められている、という理由だけで義務的に執り行われたのだろう。)

とにかく、それをきっかけにここ「Mellow Yellow」の存在が明らかになり、
反エデンの要素がいくつも並べてあるここに出入りしていた人間たちは全員、
身元がばれるのを怖れて、彼の死後以降、運営局の人間以外は多分誰一人として
ここには近づかなかっただろう。俺もゴッシュもその内の一人だった。

懐かしいな・・・。
と言えば、まだ1年と経っていないのだからその言い方は大げさなのかもしれないけど、
短い期間だったとは言えずいぶんと世話になった場所なだけに、衰退の有り様に少しだけ心が痛かった。

当時のことを色々と思い返しながら、今は封鎖されているはずの白い扉にそっと手をかけると、

「ん?」

当然立ち入れないだろうと予測していたはずが、鍵はかかっていなかった。
124night mare 【4/15】:2008/01/22(火) 13:03:30 ID:ooHgFmDW0
もしかして、誰かいるのか・・・・・?

好奇心と恐怖心が混じり合う中、音を立てないようにそっと中へ入ると、
少数ながらも賑わっていた時と変わらず色々なもので溢れていたが、
主も客も失った今は、あれだけ生を実感させてくれていたプラントの数々も枯渇し、
ただの冷たくて薄暗い廃墟と化していた。

しばらくの間、息を殺して、目を凝らして、できるだけ物音を立てずに辺りを探してみたが、
誰かいるようには感じなかった。そこでさらに奥へ進むと、

「!」

地下へと続いている階下からゴソゴソと物音がした。
一気に心臓が高鳴って、無意識の内に警戒態勢に入る。

どうしよう、声をかけるべきなのか・・・?でも運営局の人間だったら・・・?
でも、もしかしたらかつての仲間なのかもしれないし・・・。
そんなことを考えていると、

「っ・・・!」

足音が近くなって、恐怖にのまれそうになる感覚に耐え切れず、
先のことは構わずに咄嗟に声を出した。

「だっ、誰かいるのか!?」

相手が運営局のやつらだったらずいぶんとでかい地雷を踏んでしまったことになるが、
とにかく運営局員のようなふりをすればなんとかこの場をしのげるだろうと考えた。
125night mare 【5/15】:2008/01/22(火) 13:04:12 ID:ooHgFmDW0
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

返答はない。どうやら運営局の人間ではなさそうだ、それはよかった。
でも正体がわからない以上、安心もできなかった。
何が起こってもいいように、と使えそうな物はないか左右を確認していると、

『タイラか・・・?』

聞き覚えのある声が、暗闇のずっと奥から聞こえてきた。

「え・・・?」

頭の中で少し考えただけで、あっという間に声の主が絞られる。
あぁ、読みが外れたな。この声は間違いなく運営局員の声だ。

「カズマか!」

急いで階段を降りて地下へ行くと、3〜4メートル四方を照らす携帯ランプの明かりが見えて、
そこには白い制服を着たカズマが佇んでいた。

「久しぶりだな!元気にしてたか!?」

思いがけぬ再会が嬉しくて、興奮を抑えきれずに思わず大きな声で話しかけたのだが、
カズマは俺が降りてきた時にチラリとこちらを見ただけで、すぐに目の前の棚に目を戻し、
再びゴソゴソと何かを探していた。
126night mare 【6/15】:2008/01/22(火) 13:04:54 ID:ooHgFmDW0
「なんだよ、忘れ物かよ!?」

それでもただ嬉しかったから、そんな無礼で他人行儀な行為にも構わずに
カズマの背にバン、と手を置き、顔を覗き込むようにして話しかけると、
カズマはいつものように、全く普通の顔をして、

『タケルを探してるんだ。』

と言った。

「え・・・?」

一瞬聞き間違えたかと思ったが、カズマの口調は確かにはっきりとしていた。

「わ、笑えねぇ冗談はよせよ!返答に困るだろ・・・!?」

俺は、一生懸命作り笑いをして対応してみせたが、内心はひどく困惑していた。
まだ、タケルが死んだことを笑い話にできるほど、心の傷は完全には癒えていなかった。

おかしいな、なんて小言を言いながら、次々と引き出しや開き戸を開けていく。

「お・・・・おい・・・、カズマ・・・・・?」
『いないんだ、どこにも。』
「・・・・・・・・・カズマ、タケルは・・・・・。」
『お前、タケルがどこに行ったか知らない?』
「カズマ・・・!」
『あいつ、連絡もよこさないで・・・。』
127night mare 【7/15】:2008/01/22(火) 13:05:41 ID:ooHgFmDW0
そう言いながら、どこかぼうっとした表情で、俺たちの腕さえ収まらないような小さな引き出しを開けたり、
幾重にも重なる紙の束を一枚一枚覗いたり、薬かピアスしか入らないような半透明のピルケースを
一つ一つ丁寧に開いていくその姿は、滑稽と言うこともできないほど哀れで、あまりにも可哀相で、

「カズマ!!」

カズマの両肩をがっしりと掴んで、壁に背中を打ちつけるようにして制止させた。

「お前何やってんだよ!!タケルはもう・・・!!」

死んだんだろ、と言いかけた言葉をそのまま呑んだ。今それを言ったところで、
精神崩壊を起こすほど追い詰められているカズマに追い討ちをかけるだけだったろうし、
それに、それを言葉にすることは少なからず俺自身にも影響があった。

カズマの肩を握り締めていた手の力を少し緩めると、二人して壁伝いに、
固く冷たい地面にずるずると引き込まれるようにその場に崩れ落ち、座り込む。

『タイラ・・・・・痛いよ・・・・・。』

俺の手を肩から外そうとこちらへ伸ばしたカズマの指先は、プラントの土だかインクだかで
真っ黒に汚れていて、ところどころに切り傷を作っていた。
128night mare 【8/15】:2008/01/22(火) 13:06:17 ID:ooHgFmDW0
「お前・・・こんなになるまで・・・・・・。一体いつからここにいたんだ・・・?」

カズマは俺の手の上に重ねるようにそっと自分の手を置くと、

『昨日の夜から。』

と、小さく言った。

「昨日の夜って・・・!」

仮にタケルが生きていて、例えばここにいたとしても、
こんなに狭いところ30分もしない内に見つけられるはずだろ・・・!

「カズマ・・・!」
『タイラ、ちょっとどいてくれよ。あの引き出しまだ全部終わって――。』
「いい加減にしろよ!!」

カズマの肩をもう一度強く掴み直して、壁に強く押さえつけた。

「カズマ!現実を見ろって!!」

壁を支えにカズマの身体を強く揺らしてもまるで反応がない。顔は確かにこちらを見ているようだったが、
こっちがいくら目を合わせようと必死になったところで、ちっとも焦点は合っちゃいなかった。
129night mare 【9/15】:2008/01/22(火) 13:08:06 ID:ooHgFmDW0
それは本当に辛くて、やりきれなくて、そんなカズマを直視するのに耐え切れず、

「カズマ!!」

思わず手を出した。
パァン、とカズマの頬を打つ乾いた音が、暗くて冷たい空間に吸い込まれていって、
少しの間、何とも言えない静寂が訪れた。

「・・・・・・・・わりぃ。」
『・・・じゃないかって・・・。』
「え・・・?」
『タケルとビスが死んだのは、結局俺のせいなんじゃないかって・・・!』

ぶたれた左頬を指先で触れるように押さえながらカズマが続ける。

『無謀で危険な計画だってわかってたんだ、最初から!だから止めなくちゃいけないって
 途中で何度も思った!でもできなかったんだ!タケルを飛ばせてやりたかったから!』
「・・・・・・・・。」
『あの時タケルを止めることができたのは俺だけだったのに、タケルを思う気持ちが   
 仇になっちまって・・・!気づいたら・・・気づいた時には・・・!』

『死んだって・・・・・・。』

カズマは、俺にすがるように右手で俺の服の胸元をギュ、と握り締め、
カタカタと身体を震わせていた。
130night mare 【10/15】:2008/01/22(火) 13:08:48 ID:ooHgFmDW0
『・・・・・なぁタイラ。』

少しの沈黙の後にこちらをぱっと見上げた顔は、今度こそ俺の視線をしっかりと捉えていて、

『俺、どうしたらいい?』

その目からは、薄い頬を何度も撫でるように大粒の涙をボロボロと零していた。
その姿を見た途端、目の前のカズマと今朝の自分がリンクした。

「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

・・・・・・あぁ、そうか、思い出した。思い出したよ、今朝の夢の内容を。
どうして涙を流したのかやっとわかった。
ドロワの夢を見たんだ。ドロワが夢の中で、夢の中でさえも俺に、

「みっともねぇ。」

と、愛想を尽かしたんだった。
それで、絶望的な気持ちになったところで目が覚めたんだ。

なぁカズマ。俺たち別に大の仲良しってわけでもないし、
俺はお前のこといつもすごく近くに感じてるわけじゃないけど、
今絶対に同じこと考えてるよな?俺と同じように感じてるだろ?

ビークルを走らせていた時に受け取ったシグナルは、フィッシュのものじゃなくてお前のものだったんだ。
きっと、形は違えど愛する人を失ったものどうし、お互いを呼び合う波長が残酷にも出会ってしまった。

そして、今、完全にシンクロした。
131night mare 【11/15】:2008/01/22(火) 13:09:38 ID:ooHgFmDW0
なぁカズマ。苦しいよな?ほとんどの時間一緒にいて、楽しいことやったり、くだらねぇこと話したり、
笑い合って、バカなこと言って、時々真剣に自分のこと打ち明けたり、
同じ部屋にいながらお互いに何も話さず、全然違うことをしていても気を遣ったりしないでよくて、

時と身体を重ねるにつれて、何も言わなくても、心の中も身体のいいとこも
全部知ってくれていた大切な人の声を、体温を、存在を、もう直に感じることが
できないのは、すごくすごく苦しいよな?

だから俺たち、愛する人を失った者どうし、

「寄宿舎に・・・、俺の部屋に来いよ。」

利用し合えばいいんじゃねぇ?


後ろにカズマを乗せて、既に暗くなった夜の道を制限速度ギリギリでぶっ飛ばし、
寄宿舎に着いてからビークルを雑に駐車させると、自室の玄関へ至る頃には二人とも走っていた。
ドアを開けるなり靴を脱いで、閉まると同時にカズマが背中越しに鍵をかけ、
ライトを点けることもなくベッドまで点々と衣服を残しながら、
カズマの上になって掌を重ねる頃には一糸纏わず、
乱れた息と熱い視線がぶつかり合う時には、俺たちはお互いに泣いていた。
132night mare 【12/15】:2008/01/22(火) 13:10:19 ID:ooHgFmDW0
「カズマ・・・・。」
『タイラ・・・・・。』

今はカズマの考えていることが手に取るようにわかる。完全に、完全にシンクロしてる。
俺たちはお互いに、大切な人の影を相手に重ね、それで紛らわそうとしてるんだ。
なんて不埒で中身の浅い、虚しい行為なんだろう。

でも、止められないんだ。

最後に名前を呼んでからしばらくの間、何も話さず、何をするでもなく
掌を重ねたままお互いに見つめ合って、
それから、意思を確認し合うように、目を開けたまま何度も何度もキスをして、
数えきれないほどしたところでキスをしたまま唇を離さずに、
お互いの瞳の奥に迷いがないのを確信すると、やっと瞼を閉じて、ディープキスをした。
何度も何度も舌を入れて、唇の裏も、歯の裏も、歯列も全部、届くところは全部、優しく撫でた。

ポツリ、ポツリと、カズマの首筋に、鎖骨に、胸元に、涙とキスを落としながら、
時々身体を入れ替えて、腕や脚や指を絡ませて、愛されていた時の感覚を取り戻すように
お互いの身体中にキスをして、舐めて、吸って、触れて、撫でて、握って、掴んで、
擦って、入れて、出して、上下して・・・。

そうして、荒い息と甘い声とベッドの軋む音が部屋を埋め尽くす頃には、
どこがいいのかどうしてほしいのかお互いによくつかんでいて、そして、
お互いにもう何度も絶頂を迎えていた。
133night mare 【13/15】:2008/01/22(火) 13:11:00 ID:ooHgFmDW0
それから、多分最終ラウンドだと自覚した時、俺はカズマの腹の奥を突きながら、
陶器のようなカズマの背中に無数に残した自分の生々しい爪痕を見て、
かつてドロワの背にも同じように残したことがあるのだろう、と思うとまた泣けてきて、

『タイラぁっ・・・・もっ・・・と、奥に・・・!』

達する時には必ず涙を流すカズマを、綺麗だ、なんて思いながら、最後の最後まで中に出し切った。

お互いに身体をビクビクと震わせ、大きく息をしながら余韻まで充分楽しんだ後に、
力を抜いてゆっくりと引きずり出すと、向こう2、3日は使えねぇんじゃねぇかと思うくらい
酷使した足腰には予想どおりまるで力が入らず、カズマの右隣りにやっとの思いで転がった。

まだ肩で呼吸をしているカズマを腕の中に入れて、しばらくの間、カズマの体温と息遣いを感じながら、
今朝見た夢の中のドロワの顔と声を頭の中で思い返していると、

『ありがとな、タイラ・・・。』

カズマが静かに話し始めた。

『助かったよ、ほんと。』
「・・・・・まったく、狂っちまったかと思ったぜ。」
『ハハ、悪かったよ。ほんと・・・・・どうかしてたよな、俺・・・。でももう大丈夫だ。
 こんなことはこれでおしまいだからさ。こんなことは、もうこれっきり――。』
「いいんじゃねぇ?」
『え・・・?』

「別に、これっきりじゃなくてもいいんじゃねぇ?」
134night mare 【14/15】:2008/01/22(火) 13:11:36 ID:ooHgFmDW0
『タイラ・・・。』

こちらの目をしっかりと捉える深いアンバー色の瞳の奥が、妖しげに揺れている。

「いいじゃん、残されたもんどうし―――利用し合えばよくねぇ?」

先の見えない、あやふやで脆くて、下手すればお互いに傷つけ合う
諸刃の剣のような関係になることくらい、簡単に想像できる。
でも、止められないんだ。

「傷を舐め合うくらい、いいだろ?・・・・・うまくいけばそのうち癒えるかもしれないぜ。」

なんて、今日のお互いのシンクロ具合と行為の最中のあのはまりようからいくと、
癒えるどころかひどく膿んでしまう可能性だってあるけど。

「なぁカズマ。俺たち、利用し合っていいんじゃねぇ・・・?」
『・・・・・・危険だよ、それは・・・・・。』

そんなの俺だってわかってる。でも、お前だってそうだろ?
孤独な夜を独りで耐え抜く強さなんてないから、だからこうして俺のところに来たんだよな?
だったらいいじゃないか、俺たち。過去や思い出にすがって、
どうしようもない自傷的な行為や虚しさしか残さない自慰行為を繰り返し続けるよりは、

相手の影をほんの少しでも匂わせてくれるお互いを、利用し合えばいい。
135night mare 【15/15】:2008/01/22(火) 13:12:53 ID:ooHgFmDW0
カズマから視線を外さないままそっと頬に手を添えて、睫毛が触れ合う距離まで追い詰めて、
唇の先と先を微かに合わせ、胸と胸を重ね、誘うようにゆっくりと囁きかける。

「カズマ・・・・・・・。好きだって言えよ、俺のこと・・・。」

あれだけ盛り上がった後だ、とてもノーとは言えないだろう。
恍惚とした表情でこちらを見つめ返すカズマの口がゆっくりと開いて、
暗闇に消え入りそうな声で静かに言った。

『・・・・・好きだよ、すげぇ好き・・・。』

それから俺たちは、お互いに今日で何度目になるのかわからない涙を流しながら
何度も何度もキスをして、やがてどちらからともなく眠りに就いた。
カズマの目尻や頬を伝って落ちた二人分の涙が、今朝と同じようにピローを濡らしていた。

その後俺たちは、お互いに予期していたとおりの快楽と背徳の危険な関係に
なんの手詰まりもなくのめり込んで、日に日に深みへとはまっていくことになる。

・・・・・・・・なぁカズマ。タケルがもう自分のところに戻って来ないとわかった時、
お前どう思った?何を感じた?何を考えた?
俺は、俺はさ・・・・・、どれだけ寝返りを打ったって冷たいままのシーツの上で、
一生明けねぇんじゃねぇかと思うくらい長い夜を震えて過ごし、
ひどく悪い夢を見た朝にしがみつくことのできた温かい腕に、胸の中に、
もうすがることもできないのかと思うと、すごくすごく淋しくて、

それが怖くて泣いたんだ。
136night mare 【ending】:2008/01/22(火) 13:14:10 ID:ooHgFmDW0

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )

続きません。
最後まで読んでくださってどうもありがとうございます。
長々と失礼しました。
137ある日の荷史と叙雨:2008/01/22(火) 19:07:52 ID:dh8I7shE0
                  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |名作けんとうマンガの主人公と親友です。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 未熟者ゆえ、不備などあるかもしれませんが、
                            ご容赦ください。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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138ある日の荷史と叙雨:2008/01/22(火) 19:09:18 ID:dh8I7shE0
腹縞戦の後、血反吐を吐いて倒れた叙雨だが、弱りきった体で、激しい
トレ−ニングに打ち込んでいた。それは、自分自身を罰するかのような
鬼気迫る姿であった。
叙雨が心配でならない暖兵と荷史は、一日交替で仕事に出ることにし、
今日は、荷史が叙雨を見守る日であった。
自虐的なトレ−ニングが始まって数時間後、叙雨は突然倒れた。
荷史はあわてず、医者に言われたとおり、処方された薬を飲ませ、服を脱がせて
汗をぬぐい、清潔なパジャマに着替えさせた。
叙雨を抱きかかえ、布団に横たえようとした瞬間、叙雨の腕が、そのうつろな表情
からは、想像できない力強さで荷史の首に絡みついた。
「・・・じ、叙雨・・・!」驚きのあまり、思わず声をあげた荷史の耳に、叙雨は囁いた。
「・・・理木意志・・・。」荷史は優しく叙雨の腕を振りほどき、叙雨の目を見つめた。
薬のせいだろう、夢見心地の目に、涙を浮かべていた。
「・・・理木意志・・・。」叙雨は、再び荷史に抱きついた。
「わいは・・・、(・・・理木意志やない、荷史や・・・)。」
言葉は途中で遮られた。叙雨の唇が、荷史のそれをふさいだからだ。
荷史はゆっくりと目を閉じ、予期せぬ快感に身を任せ、体の力を抜いた。
139ある日の荷史と叙雨:2008/01/22(火) 19:10:58 ID:dh8I7shE0
そんな荷史に叙雨はこう囁いた。 
「・・・理木意志、抱いてくれ・・・。」荷史の心を悲しみが覆った。
(「叙雨は薬のせいで、わいと理木意志はんを間違うとるだけなんや・・・。」)
叙雨が愛しているのは、自分ではない。
そんなことは、とっくに分かりきっていたことだ。
それでもいい。叙雨が幸せであれば、自分はそばにいるだけでよかったのだ。
だが、こんな形で、身替りとして求められるのは、なんと悲しいことだろう・・・。
その時、荷史の首筋を叙雨の涙がつたった。
そのはかない感触に、荷史は心を決めた。
「身替りでもなんでもかまへん。叙雨が今求めてるんは、肌のぬくもりや。
 それを与えてやれるんはわいだけや。」
男との行為は荷史にとっては初めてだったし、叙雨の弱った体のことを考えて、
荷史は細心の注意を払って、叙雨を愛撫した。
全てが終わった後、叙雨の顔はほんのり上気し、生気が戻ったようであった。
まもなく、安心しきったのだろう。叙雨は荷史の隣で、眠りについた。
そのあどけない表情をみて、荷史は静かに泣いた。
(「わいはあんさんの幸せを心底願うとる。」)
荷史は叙雨に布団をかけてやりながら、そっとつぶやいた。
「わいは、一生叙雨を守る。絶対や。」
140ある日の荷史と叙雨:2008/01/22(火) 19:11:49 ID:dh8I7shE0
____________
 | _________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | | お粗末さまでした・・・。
 | |                | |           ∧_∧ 
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141風と木の名無しさん:2008/01/22(火) 19:16:40 ID:YNtk7PIrO
GJ!!!!すごい萌えた!!!
前回に引き続き萌えさせていただきました!
タイラノーマークだったのに!
カズマ攻め派だったのに!(´Д`*)ハァン
142風と木の名無しさん:2008/01/22(火) 20:06:07 ID:Q5xZ+JL90
>>120
ごちそうさまでした
あー、五月発売分で皆復縁しろよ寂しいだろ。でもこういう関係もまた良い
143風と木の名無しさん:2008/01/22(火) 21:12:35 ID:lAIIN8TZ0
>>107
うおおおお!公録萌えた!眠り姫キタコレ!
ひどい目にはあってほしくないが公とはぜひ生身で対面してほしい
ジレンマに悶々としてたのでまさに理想の展開
続き超楽しみに待ってるハァハァ
144風と木の名無しさん:2008/01/23(水) 00:14:35 ID:WavsT8sw0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

半ナマ注意
土曜ドラマ『壱£の福音』より、植田×石阪
145壱£の福音 植田×石阪1:2008/01/23(水) 00:18:36 ID:WavsT8sw0
時刻は午前0時を半周ほど過ぎた頃。
とっくに深夜と呼べる時間帯にも関らず、その日、向陀ジムのリングサイドには二人分の男の影が
残っていた。
ゆらゆらと揺れる影の内、一人はアクビを噛み潰しながら手元のストップウォッチを見つめ、もう一
人は一心不乱に目の前のサンドバッグへ拳を叩き込んでいた。

「よーし、ラスト20秒!スパート掛けてけよぉ」

ストップウォッチに視線を落としたまま、男――向陀ジムの最年長ボクサーである植田が檄を飛ば
すと、傍らで長身の青年が頷いて応える。青年は植田に比べ幾らか年若く、緩やかに垂れ下がっ
た特徴的な目をしていた。
この時刻特有の濃厚な空気を切り裂く、鋭い拳。すらりと伸びた腕からは無駄な肉の一切が削ぎ
落とされ、威力に拍車を掛けている。
理想的なフォームで繰り出される青年の右ストレートは、不規則に揺れるサンドバッグの中枢を正
確に捉えて、破裂音にも似た重い音を響き渡らせた。
「はいストップー。その辺にして一旦休めよ、石阪」
このまま放っておけば永遠にスパーリングを続けかねない。
青年の生真面目さを誰よりも知る植田が、ストップウォッチを掲げて休憩を促す。
「……はい」
石阪と呼ばれた青年は射抜くように見つめていたサンドバッグから視線を外し、そこでようやく額
に張り付いた前髪を掻き上げた。

床に直接座り込んだ石阪に乾いたタオルを渡した後、植田は先ほどから我慢し続けていたアクビ
をやっと一つ洩らす。
夕食後、日課と化したこのトレーニングを開始してから、いつの間にか3時間ほど経過していた。
「……けどお前さぁ、幾ら試合近いからっつって、何もこんな時間まで練習する事ないんじゃね?」
「会長には許可取ってありますけど」
「そういう事じゃなくてさ」
日中激しいトレーニングを幾つもこなした練習生が、この程度の物音に眠りを妨げられる事はまず
ないだろう。
146壱£の福音 植田×石阪2:2008/01/23(水) 00:20:16 ID:WavsT8sw0
植田が案じている問題はそこではなく、本来ならもっとも充実した睡眠を必要とするべき人間が、
こうして毎晩遅くまで肉体を酷使している点にあった。
事実、減量中のボクサー特有のどこか憔悴した表情に加え、石阪の目元にはうっすらとクマが浮
かんでいる。
「最近、どれくらいよ?睡眠間」
「……寝られて4時間くらい、っすかね」
「わー、信じらんない。試合中に睡眠不足でぶっ倒れでもしたらどうすんの、お前」
「ありえないですって」
試合を間近に控えた石阪が、ジムの皆が次々自室へ戻ってからも一人居残り練習をするようにな
ってから今日で五日目。
それを夜中たまたまトイレに起きた植田が目撃し、直々に指導――軽くミット打ちの相手をしてや
る程度だが――を頼まれてから、三日が経とうとしていた。
石阪に何かを頼まれるという事は非常に稀であり、思わず二つ返事で引き受けてしまった軽率さ
を、植田は今更になって噛み締めていた。
一見、何事にも無関心そうな男が実は人一倍に努力家である事を、知らぬ訳でもなかったのに。
「別に、無理してまで付き合って貰わなくていいんすけど……」
そんな植田の心情を察してか、石阪がポツリとこぼす。
かわいげという物が欠落した後輩にそう言われると、植田もどういう訳だか素直に頷く気になれな
かった。
三日前の夜。
ふらつく足元を気力だけで踏み締め、シャドーを繰り返す彼の背中を見てしまったからには尚の事。
「いいよ、オレ暫らく試合ないし」
そう言って500mlのペットボトルを石阪に差し出した。急激な体温低下を防ぐため常温に戻してお
いたミネラルウォーターが、小さく波打つ。
しかし、確実に石阪の視界に入っているはずのそれは、幾ら待てども受け取られる事はなかった。
植田は小さく首を傾げ、手の中のペットボトルを軽く左右に振ってみせる。
「……」
「おいっ、寝てんのか?」
痺れを切らし、ついつい語調をきつくすると、ようやく石阪の指先が動いた。
しかしその手は目の前のペットボトルをやんわりと押し遣っただけで、すぐに引っ込められてしまう。
147壱£の福音 植田×石阪3:2008/01/23(水) 00:21:35 ID:WavsT8sw0
「いりません」
「は。……いや、いりませんってお前」
「別に喉、渇いてないし」
抑揚のない声で拒絶されればいよいよ分からなくなってくる。
元々肌にフィットするタイプのトレーニングウェアが更に地肌に張り付くぐらい、大量の汗を掻いて
おいてこいつは何を言っているんだ。
植田が疑問を抱くのも当然であり、今の石阪の体が相当量の水分を欲している事は、誰の目にも
明らかだった。
「一口でも飲んどけよ。お前もう規定の体重余裕で切ってんじゃんか」
公式の体重測定が行われるのは明後日の午後。
これに落ちれば当然試合には出られないが、その間誰かのように無茶なドカ食いでもしない限り、
石阪が失格になる可能性は限りなくゼロに近かった。
むしろこれだけハードな運動後に一滴の水分も取らずにいた方が、脱水症状を引き起こす恐れな
ども大きい。
その程度の事も考え付かないような男では決してないはずなのに、彼は頑なに受け入れようとしなかった。
そればかりか、さも煩わしげに眉間に深い皺を寄せて、
「いらないって言ってるじゃないですか」
と、およそ先輩に対する口の利き方とは思えない調子で吐き捨てる。
「何ムキになってんのか知んねえけど、一口くらい飲んだところでそんななぁ……」
「一口一口って言うけど、それが呼び水になるって事もあるでしょう。植田さんが言うほど体重も減
ってないし……万が一失格になったら、責任取ってくれるんすか?」
責任、などと彼にしてはやけに子供じみた事を言われて、植田は言葉を失った。
石阪のストイックな性格は熟知しているつもりだったが、いくら何でも過剰過ぎるのではないか。
二人の間に流れる奇妙な沈黙に耐えかねたのか、じっと床を見つめていた石阪が不意に顎を上
げる。当然植田に向けられる事となったその視線は、何か訴えかけるような色を孕んでいた。
「……な、んだよ」
普段はその身長差ゆえ見下ろされる事の多い植田にとって、珍しい角度からの目線。思わず先ほ
どとは異なった意味で息を呑む。
石阪は自ら重ねたはずの視線から逃れるように顔を背け、再び訪れた数秒の沈黙の後、ぽつり
ぽつりと呟き始めた。
148壱£の福音 植田×石阪4:2008/01/23(水) 00:24:21 ID:WavsT8sw0
「……今度の俺の対戦相手、前に植田さんとやった事ありましたよね」
「は?」
唐突に登場した己の名前。
数秒遅れてその意味を理解した植田が周囲の壁に視線を巡らせれば、一枚のポスターが目に留
まる。いつ頃からか掲示板に貼り出されていた、数週間後に開催を控える試合の告知材料だ。
ことさら目立つレイアウトで中央に大きく掲載された写真は、試合の目玉であるA級ボクサー達の
物だが、現時点で注目すべき点はその右端の僅かなスペースにあった。
石阪と、その対戦相手である男――妙に冷めたアーモンド形の目から、石阪に負けず劣らず神経
質そうな印象を受ける――の上半身が、この手の広告にありがちな構図で並んでいる。
その対戦相手の顔には仄かながらも見覚えがあり、石阪の言わんとしている事がわかった植田
は「ああ!」と素っ頓狂な声を上げた。
「そういやそうだわ。ほらオレ場数だけは踏んでっからさぁ、いちいち顔なんか覚えてないんだよな」
「植田さん、そいつに負けたんですよ。3対0の判定負けで」
「……あ、そうだっけ」
まるで我が子の失敗談を懐かしむ親のごとき言い回しに、思わず苦い笑みが洩れる。
「ん?」
「なんですか。確かに3対0でしたよ」
「や、そうじゃなくて」
同時に頭を過ぎった微かな違和感。案外勘の鋭い植田がその正体に気が付くまでには、ものの
十秒と掛からなかった。
「……っつうか、え、何?ひょっとしてオレの敵討ちの為にそんだけ必死になってくれてるわけ?」
そう聞いた瞬間あからさまに曇る石阪の表情。その表情にも見覚えがあった。
「図星かよ」
思わず緩む頬に機嫌を損ねられたりしないよう口元を覆い隠すも、少しばかり遅かったらしい。
石阪の意志の強さを象徴しているような、太く形の良い眉が、それは不愉快そうにつり上がった。
「……水、やっぱいります。それ渡して下さい」
唖然としている自分の手からペットボトルを奪い取り、派手な音を立てて水を煽る石阪――の、
上下する白い喉元。
暫らく食い入るように見つめていた植田だが、無意識の内に相手の腕を強く掴んでいたらしく、鋭
い眼差しで睨まれてしまった。
149壱£の福音 植田×石阪5:2008/01/23(水) 00:26:04 ID:WavsT8sw0
「……今度は何すか」
トレーニングで荒れた呼吸はとっくに落ち着いているというのに、石阪の頬は未だ淡く、上気している。
「いや、なんか、なんとなく……キスしていい?」
なんとなくって何だよ。
眉間に刻まれた幾つもの皺がそう物語っていたが、見なかったふりを貫いて。
「俺、今汗くさいんですけど」
かたい床に膝をついて、俯いたままの相手と半ば無理やり視線を合わせる。
「知ってる」
片手で触れた頬はいやに熱っぽい。
「せめて着替え……」
「待てない。お前、試合決まってからろくに触らせなかったろ。ストイックなのも程々にしろっつうの」
まだ何か言いたげに薄く開いた石阪の口を、ボクサー必須の反射神経を駆使してすかさず塞ぎ、
ぽってりと厚い下唇に甘く吸い付く。
最初こそ身を捩じらせて抵抗を試みる石阪だったが、啄ばむようなキスを5〜6度も繰り返されると、
やがて植田の背にその長い両腕を絡みつかせた。

***

「……だから言ったのに」
密着した唇同士が酸素を求めて僅かに離れた一瞬、石阪が濡れた唇を僅かに震わせて呟く。
「え?」
「独り言です」
ぶっきらぼうに返して、キスの続きを促すように植田の舌先を軽く噛んだ。
「っ……」
酷く扇情的なその仕草に、まんまと煽られた植田と再び互いの呼吸を奪い合いながら、石阪は数
分前何気なく口にした自身の言葉を頭の裏側で反芻する。

“それが呼び水になるって事もあるでしょう”

「植田さん……もっと」
案の定、渇きはまだ当分癒えそうになかった。.
150風と木の名無しさん:2008/01/23(水) 00:30:45 ID:WavsT8sw0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


ドラマ本編での2人のじゃれ合いっぷりは異常だろ。
(クーデレって)こうですか?わかりません!><
          _________
       |┌───────┐|
       |│l> play.      │|
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   (  ,,゚) ピッ   ∧_∧   ∧_∧
   /  つ◇   ( ・∀・)ミ  (`   )
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |            ┌‐^──────────────
  └──────│多分ここまでしか描いてなかったと思うので←忘れた
                └───────────────
「この犬が!」
鈍い音を立てて、アイルは壁に打ち付けられる。
長年の冒険生活によって、受身は得意だったが、首輪のせいで思うように体は動かせない。
背中を強く打ち、呼吸困難に軽く陥った。
「げほっ…げほっ」
苦しむアイルの紙をつかんだその時、とんとん、と、扉を軽く叩く音が響いた。
 続いて、がちゃりと扉が開くおとがする。
「…チッ」
「何してんのさ。うるさいよ」
カルテラだった。
 その声に、アイルも振り返る。その時すがるような顔をしていただろうか。
床に広がるスープと、汚れた彼の顔。
 ちらりとアイルを見ると、カルテラは持ってたものを、アイルの前に置いた、
盆におかれた、スープと、パンだ。木のスプーンもちゃんと添付されている。
「あーあ、床がぐちゃぐちゃ。ディース、ちゃんと自分で片付けるんだよー?」
 べ。と、舌を出してディースをからかいながらたしなめる。
「うるせぇな…、お前がこいつの世話当番なんだから、お前が片付けても」
「ばーーーーか!僕はこの子の世話係であっても、お前のお守りしてるんじゃないんだよ!ほら、布かしたるから拭く拭く!」
無造作にポケットから、厚手の布を取り出すと、ディースの顔に投げつけた。
とても雑巾にするような安物とは思えない生地だったが、遠慮せずにディースはそれで床を拭き出した。
だが、ある程度拭いて嫌になったのか、布を投げ返すと、アイルの鎖をつないでいるベッドにごろんと横になった。
横目でそれを見ながら、カルテラは布を、アイルに貸す。
「アイル君も、顔ふきな。床拭いたので悪いけどさ」
「ああ…ありがとう」
敵対の人間に、癒されたのは恥と取るべきか。
 この暗い空間に、カルテラがいるだけで、心に張り詰めたものは、少しは取れる。
顔を拭きながら、おかれた食事に目をやった。
「おなかすいたでしょ。ディースと違って、僕はまだまだ良識あるもんね。ちゃんとスプーンで食べなよ?」
「犬にスプーンなんざ、いらねぇ」
「お前は黙ってろハゲ」
「誰がハゲだ。まだハゲてねぇ」
そんなやり取りをききながら、アイルはパンをかじった。
「…」



一方、リンドブルム。
 アジトの一室で、ベッドで寝転がる男がいる。
愛用のウルフキャップは床に投げ出され、冒険からかえったばかりだというのに、荷物も整理されていない。
 ロアは、一人考え込んでいた。
アイルが捕まってから、アイルの身を案じてばかりいた。
カルテラ、ディース、ジン…
スコルピオの人間は、強力な者達ばかりだ。この三人の名前を知らない、冒険者は少ないだろう。
 何故このギルドと敵対してるかは、知らない。
ジンとジークの間に何かがあったのだとは、アイルから聞いたが、それ以上は誰も知らなかった。
 これまで襲撃を受けたことは、稀にはあったが、ジンに捕まることは無かった。
だが。今回アイルが捕まった。
アイルは捕まって、どうしたか?
生きているか?
自分たちへの信頼は、蒼薄いものではない。簡単に、リンドブルムのことを話すわけは無いと思っていたが…

もしも。
もしも、彼が寝返ったら。
 何をして寝返ったかは想定していない。何か拷問でもうけて、こちらの事を吐いたかもしれない。
吐くかもしれない。
反面、心のどこかで、そんなことを疑ってはいけないと、警告してくる。
 アイルの笑顔を思い出す。
ジークのことになると、嬉しそうに語りだすアイル。
ロアとジークを信用し、今までともに戦ってきた仲間だ。
信じなければいけない。信じなければ。
だけど…?
 何かを思い立って、ロアは勢いよくベッドから起き上がった。
そして荷物の中から、少量のものを持ち出すと、ミルレスから出て行った。



それから時間は過ぎ、夜になる。
スコルピオのアジトの一室、ディースの部屋である。
首輪につながれたままのアイルに、ディースは明かりもつけず暗い部屋の中、語りかけていた。
「…分かるか?」
「はい…」
恍惚とした表情、その目が見つめるのは、自分の命令に従う、従順な犬である。
ベッドに座り、ぐ、と、アイルの頭を押さえ込む。
「噛んだら、どうなるか…わかってるな。お前は…犬だ」
 ぴちゃ、と、水音が響く。
アイルは、ディースの前でかがんでいる。
ディースのそれを、舌と、手とでなぜる彼がいる。
いやだ。本来ならば、こんな事、娼婦にでもやらせるべきだ。
それでも従ってしまうのは、彼が心底ディースに恐怖を感じているからだろう。
だが、そのおびえた表情が、たまらなくディースにとってそそることを、彼は知らない。気付かない。
「顔に出されたい?それとも口の中で、出されたいか?」
「?」
一心不乱にそれをなめる彼には、その言葉の意味がわからなかった。恍惚の表情でにやりと笑う、その男の口からつむがれる言葉の意味を。
 次の瞬間、頭をぐ、と抑えられ、それを口の奥で受け止めることとなる。吐き出された精液は、アイルにとって経験したことの無い味だった。
あまりの味の悪さに、おもわずはきだし、むせた。
どろりとした液体が、アイルの口からこぼれる。その様子を、ディースはニヤニヤしながら眺めていた。
 俺の犬。従順な犬。
今すぐにでも犯してしまいたい。
(いいや、楽しみは後に取っとくべきだ。今犯したりでもすれば、精神崩壊しかねない。弱そうな男だからな)
「おい」
くい、と、アイルの顎をつかんでこちらへ向ける。目線が合う。
出されたばかりの精液を口に付着させ、おびえる彼に、告げる。
「こんなことくらいで嫌がられちゃ、な。まだまだお前にはやってもらうことがある。それまでには口でやることくらいは、上手くなれよ」
 いつまで続く?
ずっと続く?
それともこれは悪い夢なのか?
助け出して欲しい。自分では逃れられない。
師匠、ロア。リンドブルムの皆。助け出して欲しい。



その次の日も同じだった。
食事を前に、おびえながら男のそれをなめる。
昨日よりはよっぽど上手くなっただろうか。あの後も、何度も何度もさせられた。
恍惚とした表情のディースの顔が、上にある。
「そうだ…上手く出来たら飯をやる。その調子だ。昨日よりは上手くなったじゃないか…」
吐精されたものを飲み込むと、ディースはにやりと笑った。
苦いそれは、吐き出したくなるほどだったが、これをやらねば何をするにも許してもらえない。
「ディース、朝っぱらから何やってんの?仮にも男にさ」
その瞬間後ろのドアからやってきたのは、カルテラだった。手には毛布を持っている。
「お前には関係の無いことだ」
「アイル君、拒否したっていいんだよー。それよりねー、今日はいつもより寒いから毛布もってきたよ。寒かったでしょ。この中で丸まってな」
毛布はアイルの寝床に広げられ、大分温かくなった。
にこり、と笑ったカルテラが天使に見えた。
「ああそうだ」
「?」
今までへらへらとしていたカルテラの顔が、急に厳しくなる。
「最近ちょっと…リンドブルムの人間がうろうろしてるみたいなんだ。団体じゃなくて一人らしいんだけど…まだ曖昧な情報なんだけどね。さっき帰ってきた奴が、つけられたような気がするってさ」
その言葉に、はっとアイルの瞳には希望が湧いた。
仲間が、助けにきてくれたのかもしれない。
隠密行動を得意とするのは盗賊だ。親しい盗賊といえば…?
「こいつ関連かな。ま、心にとどめておくよ」
「…」
ぼそ、と、アイルの見ぬうちに、カルテラがディースに耳打ちをした。
それに気付かず、アイルは出された食事に手をつけた。



それから二日が経った。
夕方、いつものようにアイルはディースのをなめていた。
 自分でも大分上手くなったと思う。あの味にも大分慣れた。
ディースの表情を見れば、アイルのテクニックに感じているのがよく分かった。
ごく、と、飲み干した。いつもはそれで終わる。
アイルが無言でディースを離れようと思った矢先、腕を捕まれた。
「マスター…?」
 不安げに瞳がゆれる。
「脱げ」
「…!」
その瞳の奥にはただならぬ欲望があった。
ディースは抵抗するアイルの衣服をはぎとり、襲い掛かる。
「いやだああああああっ!やめろっ、マスター、やめてください…!」
犯される。
ベッドから離れようと必死になる彼がいるが、鎖を捕まれ、自由はすでに無かった。
服をはがれ、ぐ、と、腰を捕まれる。
 手元にあった枕に顔をうずめ、ぎり、と歯を食いしばった。
慣らされていないそこに、ずぶずぶと進入してくるものは、先ほどまた怒張を張り詰めたディースのものだった。
「っ…ぐ、いた…痛いっ…!!」
「わりぃな、唾液ででも慣らすべきだったか?」
「嫌だ、嫌、だ、マスター、嫌だ…!」
叫び声を上げるアイルの口を封じるため、頭を枕に押し付ける。
息のしづらさと激痛とで、アイルは混乱した。
そしていつのまにか気を失ってしまった。
(…)
ディースは、腰を動かしながら、ちらりと外を見た。
カーテンの間から、何かうごめくものがいることに、彼は気付いていた。



惨殺、狂乱
「あー…、あ、は…」
糸の切れた操り人形のように、四肢を投げ出して、よがり狂うアイルがいる。
あれから何度目の射精をしただろう。同時に、流れ込んでくる熱いものは、ディースの精液だ。
深深とそれはささり、がくがくと腰を動かされる。何度も、泣きながら首を振った。
やめて欲しかった、これ以上かわっていく自分を感じたくなかった。
最初は痛いだけだったそれは、回数を重ねるごとに、いまや快楽として体に受け入れられている。
「気持ちいいか?」
「…」
答えは、yesだった。だがそれを肯定するのは、まだアイルにとって受け入れる準備は出来てなかった。
信じたくない、こんな男に犯されて快楽によがる自分を。
 ディースに背を向けて座るような体勢の彼は、ぐ、と、ディースに顎を引かれた。
じゃら、と、首輪の音が響く。
ディースもまた、快楽に没頭していた。
「良いっていえよ、なあ?」
「…いわ…ない…」
「ちっ」
そのまま顎からてを話すと、腰に手をかけた。
「ああっ!んっ…は、ああ…っ」
激しく上下に動かされる。こうして彼はこれを最後に開放された。
          _________
       |┌───────┐|
       |│ロ stop.      │|
       |│              |│
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         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]

                 ピッ ∧_∧
                ◇,,(∀・  ) まだ続きます
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |                                |
  └────────────────┘
159144:2008/01/23(水) 00:46:34 ID:WavsT8sw0
ごめんなすって。直そうと思ってたところが直ってなかった。
145の”スパーリング”は”サンドバッグ打ち”に訂正させて下さい。

新しく投下された方もいるし別に今更いいかーと思ったけど、
スパーリングとサンドバッグじゃえれえ違いだ……失礼しました。
160風と木の名無しさん:2008/01/23(水) 01:34:59 ID:qE0X+wI90
>>145->>150

石阪可愛いよ石阪w
植田の為に頑張っちゃう石阪萌w
姐さんGJ!!w
161風と木の名無しさん:2008/01/23(水) 01:55:51 ID:xWWo9evT0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  生 某番組 パーマ×とんち+運送
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  パーマが変態っぽい
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ それでもよろしい方のみどうぞ。
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
162深夜の話 1/3:2008/01/23(水) 01:57:20 ID:xWWo9evT0
草木も眠る丑三つ時、やっと仕事が終わった。
事務所で荷物をまとめてさっさと帰宅しようと事務所の電気を消して
出口へと向かったとき、ある一室から光が漏れていた。
まだ誰か居るのか、と不思議に思ったが
思えば明後日には事務所の看板番組の収録があるのだ。
その収録の為に、誰かがロケハンでもしているのだろう。
番組のスタッフとは全員関わりがあるため、少しくらいは顔を出していくか
と思い、そのドアの前に立った。

その時、思いもよらぬ声が、自分の耳に入ってきた。

「…あ!…や、ちょっと…待って下さい…っ!」
「待たん、いつまで待たせる気だ。」
「はあっ!…あ、もうヤバイ…!!」

おいおいおいおいおいおい。
全身から嫌な汗が吹き出た。
声からして中に居るのは裏河と猪上だろう。
二人で一体何をしているのだ、しかも男女ならまだしも男同士で。
いや、男女でも困るのだが。
ここは黙ってスルーして帰るのが正解だろう。
しかし、このままにして悶々と過ごすのも後味が悪いし
二人にこれから自然に接する事が出来るかどうかも分からなくなってしまう。
163深夜の話 2/3:2008/01/23(水) 01:58:31 ID:xWWo9evT0
ここは漢・とうじま、突入しかない!

「そろそろ行くぞ、時間がなか。」
「…ちょっと…待…あああああっ…!」

猪上の甲高い声が響いた瞬間、俺は突入した。

「何してるんだあああああああああああああっ!!」

その時、見えた光景は予想とはかけ離れたものだったと言うか。
自分のほんのりピンク色だった頭の中を整理したほうがいいのかもしれないと思った。

「な、何ですか!?」
猪上がビックリしてこちらを見た。
裏河は特に驚く様子でもなくこちらをゆっくりと向いた。
見えた光景はテレビにゲーム機、そして二人分のコントローラー。と並んで座っている猪上と裏河。
そしてテレビ画面には次の収録時に使うソフトであろうゲーム画面。
二人で対戦をしていたのか画面には『1P・WIN』と言う文字が映っている。

「え…あ…アハハハハハ、いや、なんでも…。
 蔓丘じゃないんだ?今回のサポートは。」
苦笑いを浮かべつつ微妙に不自然だが話題をすり替える。
「蔓丘は風邪で休みがちなので、今回のサポートは俺と猪上がする事になりました。」
そう言いつつ、裏河が立ち上がり近づいてきた。
164深夜の話 3/3:2008/01/23(水) 02:00:13 ID:xWWo9evT0
「へえ、そう、ならいいんだ、それなら…じゃ、お疲れ様。」
とりあえず二人がそういう関係ではなかった事に安堵し
そういう妄想を繰り広げてしまった自分の頭の中を少しばかり怨みつつ
扉を閉めようとした時、裏河が扉を押さえてきた。
「な…?何?」
微妙に笑っている裏河は半ば強引に俺の頭を引き寄せて耳打ちをした。

「アイツは、もっとイイ声で啼きますから。」

「は!?」
「じゃ、お疲れ様です。」
そう言って扉は閉められた、しかも鍵を閉める音まで聞こえた。
「……。」
俺は無言で頭を抱えた。
そういう関係だったのか、とかそういうのとか。
鍵を閉めたって事はこれからそういうのをする予定なのかとか。
アイツってのは多分猪上のことだろうなとか。
って言うか考えを読まれていたのかとか。
ぐるぐるぐるぐる頭の中を巡って

今日はどうにも眠れそうにないな、と思いつつ俺は事務所を後にした。
165深夜の話 オマケ:2008/01/23(水) 02:03:12 ID:xWWo9evT0
「…はー、また負けた。」

そう言って自分はがっくりと肩を落とした。
落ち込んでいるととうじまさんと何やら話をし終えた彼が戻ってきた。
「もう一回します?」
そう聞くと、彼は首を振って、その後時自分にキスをした。
突然の事だったので、コントローラーを床に落とす。
その拍子にゲーム機がバグってしまい、画面には壊れたドット絵が表示された。
それを特に気にする様子もなく、自分と彼は行為に溺れた。

「あ、はっ…うら、か…さん…!もう…ッ!」
「…猪上っ…!」
いつからこんな関係になったのか、分からない
元々は自分も彼も女の子が好きだったはずなのに。
切欠はほんの些細な事だったのだ。
コントローラーを床に落とすくらいの些細な事から。
自分も彼も、バグって、どうかしてしまったのだ。

ただ、それだけのこと。
166風と木の名無しさん:2008/01/23(水) 02:04:56 ID:xWWo9evT0
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お粗末様でした、この二人が好きすぎてしょうがないorz
ごめんなさい。
167邦楽枕 六弦×唄:2008/01/23(水) 04:14:23 ID:XI700uf40

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  ナマモノかつエロというコンボです。邦楽枕の六弦×唄
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  しかも何か鬱屈してるっていう
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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168邦楽枕 六弦×唄 1:2008/01/23(水) 04:15:15 ID:XI700uf40
「うあ、あっ…」
 薄暗い部屋に衣擦れの音と粘膜のこすれる音と彼の呻くような声だけが響く。
 僕の下で彼は眉間に皺を寄せて目を伏せ、シーツをきつく掴んで息を荒げて耐えている。
その姿はまるで、自分自身に罰を与えてるみたいだと僕は思う。
「ふっ…ぅあっ…」
 強く突き上げると首が仰け反る。立ち上がった彼のそこに手を触れるとびくりと体が震えた。
「ヤマナカ…」
「っあ…はっ…はぁっ…」
 呼びかけても彼はただ身を震わせて耐えるだけで、僕の声が聞こえているのか解らない。
彼との行為はいつもこうだ。ただ溺れるように事を進める。

 最初に声をかけたのは僕で、当時僕は彼の事を周囲の人物の中で最も解っていると自負
していた。彼はその当時独りでぼろぼろになっていた。僕たちの音楽はなかなか受け入れられず、
メンバー間は明らかに歪んでいて気分が悪かった。それでもぎくしゃくと動き続けようとするのが
何よりも不気味で、それが永続的に続くのかと思うと吐き気がした。彼は曲も作っていたから、その
辛さは僕の比ではなかったろう。
 助けてくれと言いたいのに言うのはプライドが赦さない。それを言えるだけの相手もいない。
 口にはしなくとも、彼からは助けて助けて助けてという声が聞こえてくるようだった。僕も
辛かった。だから少し魔が差した。
169邦楽枕 六弦×唄 2:2008/01/23(水) 04:16:06 ID:XI700uf40
 僕は、彼は多分乗ってくるだろうと思った。僕らはどこか諦めたような酷く自虐的な気分に
なっていた。彼の家でメンバーで酒を飲んで、最後僕と彼だけ残った時に僕は彼を抱き締めた。
彼は案の定逆らわなかった。空き缶やゴミクズで散らかった部屋の床に組み敷かれながら、
彼は口の端を吊り上げて残虐な顔で嗤った。
 それから僕らのおかしな関係が始まった。
 最初は僕もそれでよかった。体温が傍にあることと、擬似的ではあるが疎通していることに安心した。
僕は、僕にいいように組み伏せられる彼の姿に満足もした。
 でもある日、僕はこの関係に距離を感じるようになった。幽体離脱ではないけど、自分の体から
透明な膜を隔てて見ているような感覚。ねえ、これが罰を与えるためのことなら、誰だっていいんでしょ?
その言葉を何度も飲み込んだ。そこで手を引けばよかったのに僕はそれをしなかった。時々倒錯
したように、言葉も交わさず僕らはただセックスをする。
 動物みたいだね。
 そう思うと僕のしていることが無為に思えて、嘲笑いたい気持ちになった。

 今も僕に突き上げられて嬌声を上げるだけの彼を肩を掴んで引きずり起こす。突然の事に彼は
虚ろな目のまま訳の解らない顔をしてこちらを見た。しかしすぐに両腕が伸びてきて背中に絡むと、
子どものようにしがみつかれる。ぐったりと全身を預けるように、彼は顔を僕の肩に埋める。彼の体を
揺さぶるように動かすと、再び彼の呼吸が乱れていく。
「…んっ…う…」
 巻き付いた腕の力が増し、肩に額を擦り付けられる。呼気が右胸のあたりに掛かる。顔が見えない。
僕を見てない。僕である意味があるのかどうか。それが僕を不安にさせる。
 彼の頭を包むように右腕を回して首筋を晒すと、そこに強く歯を立てた。
「いっ…た…!」
 彼は首を振って逃れようとしたが、僕はそれを赦さなかった。大分きつく力をこめた。口を離すと、
皮膚こそ破れていなかったものの、そこにはくっきりと歯形が残されていた。
「…怒ってんの?」
 僕の行動に徐々に不安になったのか、彼の混濁していた目が、いつもの目に戻っていく。僕の
感情を推し量るような目線に、僕は漠然と悲しくなった。
170邦楽枕 六弦×唄 3:2008/01/23(水) 04:16:57 ID:XI700uf40
「マナベくん、俺、なんかした?」
 言いたい言葉はありすぎてどれも掴みどころが無い。彼の質問に僕はただ首を横に振る。
「ヤマナカ、僕は、ねえ…」
 苦しさを取り払いたくて言いたいことも解らないのに言葉を口にする。
 僕は。
 何か適切な言葉が見つからないか、言葉を心の澱からひとつずつ掬い上げていく。
 僕はね。君は僕が居なくても平気なのに僕は君を好きで好きで仕方なくてそれが悔しくて
僕は腹を立てているんだ。
 僕をずっと悩ませている痛切な感情は言葉に直すとあまりにも陳腐で、そんなことが言える
わけもなかった。
「マナベくん、どうした。悲しいのか。なあ」
 僕が何も言えずにいると、困りながら彼は笑って僕の頬に触れる。それが優しさなのか、
もし優しさでも、どの種類のものなのか、何なのか、僕にはよく解らなかった。僕は今まで彼に
何をしたいのか、傷付けたいのか、喜ばせたいのか、それすらも解っていなかったのだなと遠くで思った。
 どうしたいんだろう、僕は。
 問いかけてみた。あの当時は僕も自分を見失っていて、そこに焦点が合っていなかった。
 僕は。
 僕は彼に何かしてあげられればいいと多分ずっと思っていた。僕は彼の支えになりたかった。
 昔から、好きだったのかなあ。確信は無かったが、それは驚くほどすとんと心にはまり込んだ。
 …だけどもう遅すぎるよねえ。こんなことになっちゃって。自嘲気味に思った。もう身動きが取れなくて、
何をどうするのが最良であるか、そんなことを考えるのがもう面倒くさくなってしまった。どうなっても
もういいや。どうにでもなればいい。だからせめて、伝えたいことは言ってしまった方がいい。
171邦楽枕 六弦×唄 4:2008/01/23(水) 04:17:40 ID:XI700uf40
「…愛してる」
「へっ?」
 唯一僕の口からこぼれ出た言葉に、彼は目を丸くした。
「それを、何でそんな顔して言うんだよ」
「何ていうか…恐いから」
 覚悟を決めた筈なのに、喋る自分の声が頼りなくていよいよ心細かった。
「僕からふっかけたでしょう。同じバンド内でしょう?関係悪くなったらまずいから、逃げられなかった
 でしょう。だから、ほら。僕が何もしなければこんなことになってなかったでしょ?」
 誰でも良かったでしょ?
 僕じゃなくていいんでしょ?
 恐くてそれは言えなかった。こういうとき泣ける人間だったら良かったね。人ごとのように僕は思った。
「マナベくん…」
 そんな事思っていたのか。彼は言った。すぐにまた口を開いたが、ひどく言いにくそうに顔をしかめた。
この先何を言われるのか、この場から逃げ出してしまいたかったが、その願いが叶う訳もなかった。
泣きたい気分になりながら、僕は彼の次ぐ言葉を待った。
「愛してるよ」
 少しの躊躇ののち、彼がぽつりと言った。想像もしていなかった言葉に、僕の頭は白黒する。
反応が一瞬遅れた僕がその言葉を拾い終わる前に、彼は照れ隠しのように半端な顔で笑った。
何が起きたのかと困惑していると、額に軽くチョップを振り下ろされた。
「あのなぁ…。お前、あー、やっぱ、言わなきゃ解んねーもんなんだなあ…」
 独りせわしなく忌々しげに髪をくしゃくしゃと掻き毟る。
172邦楽枕 六弦×唄 5:2008/01/23(水) 04:20:30 ID:XI700uf40
「最初ん時!嫌だったらなあ、そんなんそこで解散してるっつーの!いい決定打になってたわ!解れよ!」
「だって、あの頃はお互い大分自棄になってたじゃない。だから…」
「そりゃそんな気持ちもあったけどよぉ…。正直な事言えば、それもかなりの割占めてたけどよぉ…。
 本気で嫌な相手ならやんねーよ、ぶっころしてるっつの。…アタシ、そんなに安くないわよっ!」
 最後だけ甲高い声を作って、顔を斜め下に伏せて自分の肩を両手で抱く。僕はただ圧倒されて
言葉が出なくて黙っていた。彼は顔を上げると一瞬で元の顔に戻って「解ったか」と言った。
それが、してやったり、みたいな口調だったので反抗したい気になったが、そこは素直に頷いた。
「初めて言われた」
 未だに衝撃の方が大きくて現実味が無い。でもやはり嬉しくてじわりと顔が緩む。
「そうか。俺ら、こんなこと言い合うのも初めてだったのか」
「うん。おかしいねぇ」
「しかもそんな大事な時なのに入ったまんまだしよぉ、バカかっつう」
 最もな指摘に、馬鹿馬鹿しくて僕らは笑った。くつくつと笑いながらまた背中に腕を回されて、
キスをする。角度を変えて何度もそれを繰り返しながら、彼はまたぴたりと僕に全身を預けるように
きつく抱きつく。唇を離すと、彼の顔が僕の首筋に寄せられる。髪がぱたぱたと触れてくすぐったい。
「こんな姿見せられるのは、マナベくんしかいねえからね」
 僕の耳元でプライドの高い彼は言った。 
173邦楽枕 六弦×唄:2008/01/23(水) 04:24:08 ID:XI700uf40
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 | __________  |
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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 初投稿でした…
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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六弦さんの一人称僕で統一させて貰いました。

174風と木の名無しさん:2008/01/23(水) 06:27:24 ID:L9rC8B/D0
>>114-118
萌 え た !!会話だけなのにすごい萌える
歯車さんでしたか!GJGJGJ!!

175風と木の名無しさん:2008/01/23(水) 19:45:50 ID:fNZuSEhdO
>>107
うおお…公録ktkr!!ビリと公のやりとりにも萌えました!姐さんGJ(*´∀`)Ъ
176風と木の名無しさん:2008/01/23(水) 21:11:17 ID:Fk6e/Pwk0
>>161
GJ!!!!
このカプでエロが読める日が来るなんて
思ってなかったよ。(*´∀`)
大変おいしゅうございました。
177風と木の名無しさん:2008/01/23(水) 21:16:21 ID:m1Njj/590
>>107
うわわわわ!萌 え る!超GJ!
公と録にも萌えるが公とビリにも萌える!
ていうか公テラ男前!

続き超気になる…。読みてえ…。
178風と木の名無しさん:2008/01/23(水) 22:59:05 ID:drIjkr8N0
>>161
自分もこのカプ大好物だよ。
すげー萌えた!超GJ!!
179ゲ仁ソ ボケ×ツッコミ:2008/01/23(水) 23:09:12 ID:XiapbOEl0



                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  某ゲ仁ソさんたち。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  都合上名前はボケ、ツッコミで。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
180ボケ×ツッコミ1:2008/01/23(水) 23:12:02 ID:XiapbOEl0
「聞いてくださいよ、この前嬉しいことがあったんですよ!」
「ほう?それはまたどんな?」
「あのね、この前のライブでね、前の席の女の子が僕の名前を呼んでくれたんですよ。
いつも名前呼ばれるのって大体貴方の方じゃないですか?だから嬉しくてね。『ツッコミさーん!』って絶叫ですよ?」

「ああ、そう」
(ボケ、急に話に興味を失ったようなやる気のない返答)

「ああ、そうって…そんな冷たい返事返さなくてもいいやないですか」
「ん、まぁまぁ、俺は名前なんて呼ばれ慣れてるからね」
「またそんな。自分どんだけ男前と思とうねん!」
「そりぁ、顔面みれば分かるやろ?周知の事実やないか!」

「…ったく、自意識過剰すぎやわ、自分。
でもね、名前呼んでくれたんは嬉しいかったんですけど、ちょっと気にいらない事があるんですよ」
「ほうほう、こんな不細工な顔にも拘わらず女の子の黄色い声で名前を呼ばれるという身分ふしょうような待遇を受けてまだ不満があると?」
「くッ!ふしょうようて?!噛んだやろ?そこ不相応やろ?」

「って、そこ、そんなに食いつくところですかねぇ?!
流すやろ?そりゃ人間やから噛むこともあるやろ?『ふしょうよう』ぐらい流れで分かるやろ?」

「いや、まぁ…そんだけ言うなら…それは、そうやけどな」
(ツッコミ、ボケの剣幕に引き気味な態度で話題を変える)
「まぁ、ほな話戻しますけど、気に入らんってのは決して名前呼んでくれるのが嫌とか言うんじゃないんですよ?
ただね、名前の後に『か わ い い〜!!』って言われたのがね、ちょっと」

「なんや?『かわいい』ってのが気に入らんのか?」
(ボケ、目を剥き怒ったような態度でツッコミに問い掛ける。ツッコミ、ボケの態度に押されたように言葉を濁す)
「いや、まぁ、気に入らんというか」

「かわいいもんをかわいいって言うて何が悪いねん!!」
(ボケ、力強く叫ぶ)
181ボケ×ツッコミ2:2008/01/23(水) 23:13:42 ID:XiapbOEl0
「はぁっ?!」

「だだ、だいたいなぁ!お前みたいなかわいい奴が舞台をちょろちょろしとんやぞ?
『かわいいー!』ぐらい出るやろ!!言わしたれよ?!それぐらい!!」
「いや、ちょろちょろはしてないやろ?漫才ですから、ほぼ動かずマイクの前で立ってますけども?!
しかも、お前、『お前みたいなかわいい奴』って何や?俺みたいなの見て可愛いも糞もないやろ?」

「な、何を。そんなに卑下することないよ?自分十分かわいいで?自信持てよ!!」
(ボケ、微妙な笑顔でツッコミの胸元に触れる。ハートの辺りww)
「いや、触らんといて?かわいないし」
(ツッコミ、引き気味にボケの手から逃れる)

「何言うとんねん?!お前はかわいいぞ!!
物凄い不細工なブルドックとか見たら逆に可愛いっていうんと同じや。叫びたなるやろ?!
『きゃー!!ブルドックの潰れた顔がカワイイー!!きゃー!寄生虫こんなにクネクネし・て・るー!!きもかわいいー!』」

「俺は潰れた顔の犬と寄生虫と同じレベルかっ?!」

「犬と寄生虫を馬鹿にするんかぁっ?!」
(ボケ、凄い剣幕でツッコミに突っかかる)

「え?」
「犬が家にいなければ誰が留守番するんや?誰もが誰もセ/コムに入れるほど裕福な世の中やないんやぞ?!格差社会やぞー!!」

「いや、別に鍵かけたらええがな」
「サナダムシがおらんかったらケツの穴にシール貼る意味ないやろがぁっ!!」
「いや、それも逆に貼りたくないですし!」

「お、おまえ、ギョウチュウ検査を馬鹿にするんか?
ああ、あの子のランドセルにもギョウチュウ検査したシールが入ってるんやろうなぁ、とドキドキ登校した小学校時代の甘い思い出を汚すんかっ?」
「いや、そんなんでドキドキせぇへんやろ?つーか自分小学校のとき、そんなんでドキドキしとったんか?
嘘やろ?小学校のときは普通の奴やと思とったのに〜〜〜〜〜!」
182ボケ×ツッコミ3:2008/01/23(水) 23:16:14 ID:XiapbOEl0
「ちなみに、俺が一番ドキドキしたんは誰のギョウチュウシールか分かるか?分かるか?分かるか?」
(ボケ、ノリノリで半笑い、テンション急上昇)

「いや!存じ上げませんけども!知りたくもないですけども!」
(ツッコミ、ドン引き。ボケと距離と取るように数歩後退。しかしボケ、更に)
「何を隠そうお前のや」
(ボケ、自嘲的に笑いつつツッコミに一歩歩み寄る。手は広げてw)
「な!何のカミングアウトですかっ?!いりませんよ!!そんな告白!!」
(寧ろ隠しといて!気持ち悪いし!その手何?飛び込みませんから!と半泣きな表情でツッコミ。マイクが拾うギリギリの小さい声で突っ込み)

「だいたいなぁ!お前が悪いんやろ?そんなダイエットとかして痩せるからカワイイとか言われるんや。
そんなにガリガリになって!ったく、アンタちゃんと朝ご飯食べようで!」
「オカンの真似すんな!」
「ツッコミ!アンタの部屋掃除しよったらベッドの下からエロ本出てきたで!」
(ボケ、さらにオカンな口調で)
「言うてない言うてない!だいたい普通母親だったら見て見ぬ振りするやろ?!
…それに別に痩せたんはええやろが?病気とちゃうねんから!」

「良い訳あるかぁ〜〜〜〜〜〜!!!!!」
(ボケ、絶叫。ツッコミ、びっくりして硬直する)

「だいたい何や?!この細さは!!こんなに細くなったら…丁度いいやろが!」
「は?何が?」

「こ、こうやってなぁ!抱き締めるんに丁度いいサイズになってしもたやろが!!」
「う、うわ!!」
(思いっきり抱き締められてツッコミ、ジタバタ)
「お前、こうやって漫才で舞台に立つ度に俺に公共の電波の前で悶々させる気かっ!お前どんだけデリカシーないねん!」
「ええええっ?!」
183ボケ×ツッコミ4:2008/01/23(水) 23:24:11 ID:XiapbOEl0
(暫し間を置いてボケの腕の中で考え込むツッコミ。そしてボケに問い掛ける)

「……俺?悪いのは俺、か?」
「お前やろ?どう考えてもお前が悪いやろ!」
「って!おい!うわ!!」
__________________________________

ロケ先のホテルの一室、ベッドの上に押し倒されたツッコミは圧し掛かってくるボケの肩を慌てて押し返す。
「ちょ、ちょっとタンマ、メモ落とした」
ツッコミはボケの腕の下で先程まで読んでいたボケの作ってきた新ネタが書かれた紙切れを拾おうと手を伸ばすが、それよりも先にボケの手が落としたメモを拾い上げる。

「ああ、もういいわ。このネタ、ここで終わりやし」
「え?ここで?!」
全然落ちてないやん?と顔を顰めるツッコミにボケは
「まぁ、後はアドリブでやってみよかなぁ、と?」
と、ツッコミの足に手を這わせた。その手の動きに律儀にビクリと身体を震わせてからツッコミはボケを見上げる。
「あ、アドリブって…俺、アドリブ苦手やし。つーか、この手何や?アドリブ?」
「うん?」
肯定とも否定とも判別し難い曖昧な笑顔のままボケはツッコミのTシャツの裾から手を突っ込んだ。

「うわあああああ!待て待て!どう考えても無理やろ!あかんやろ!こんなんTVでやれんやろ!
そりゃあホモネタって結構ウケるけども!これは人前ではアカンて!
だいたい本番舞台で今の勢いで押し倒されたら、俺、ガーンって床で後頭部ぶつけるやろがっ!」
ツッコミの必死な本気の叫びにボケは気付かない振りをして嬉しそうに笑った。
「そうそ、そのツッコミええやん?『そうか、ほなTVのないとこでやるか!頭打たんようにベッドの上とかで!』って返したらドカーンとくるな」
「いや、それはどうかなぁ?ウケる人はウケるかもしれんけど…ちょっと、やっぱりTVではやれんやろ?」
引く人は引くだろう?と思いながらツッコミはボケの肩を叩いた。
184ボケ×ツッコミ5:2008/01/23(水) 23:26:56 ID:XiapbOEl0
一端ネタ練習を中断しようという意思表示のつもりで、大抵の場合それだけでボケとは意思疎通が出来るのだが、何故かこのときばかりはボケはツッコミの上から退こうとはしなかった。
それどころか、更に楽しそうに笑いながら
「つまり、ツッコミ君は誰にも見られてない場所で二人っきりでしかやれんと?」
と、言いながらTシャツに突っ込んだ手を更に進行させる。
そしてボケはツッコミの乳首が指に掠めるのを確認し、無意識をよそおってコリリッ、と指の腹で押し潰した。
分かりやすく奥歯を噛み締めてビクリと震えたツッコミを見下ろして、ちょっと調子に乗りすぎたか?と内心思ったがツッコミが怒り出す気配はない。
ツッコミはツッコミでボケの言い様が漫才のときの調子と同じだった為、これも漫才の続きなのか?と認識し抵抗もせず律儀にアドリブの突っ込みを必死に考えていた。

こ、これは突っ込みを入れるべきなのか?そうなのか?
何か気の利いた突っ込みを入れない限りこの拷問みたいなネタ合わせは終わらないのか?
いつもボケにネタを考えさせている俺に対する試練なのか??

しかし、必死に考えるツッコミの思考を遮るようにボケの手が更に不穏な動きをする。
そればかりか更に両足の間に割り込むようにボケの体が入ってきてツッコミは情けないのはこの際、忘れる事にして半泣きで叫んだ。
「うわー!!悪かった悪かった!俺が悪かったから!!」
「…何が?」
あまりに必死なツッコミの叫びにボケは手を止めてツッコミを見下ろした。

「いつも…、お前にばっかりネタ考えさせて悪かった…、俺、今、全然いい突っ込みが出てこんわ。すまん!」
ほんとスマン!と力いっぱい謝られてボケは拍子抜けしたような顔になった。
185ボケ×ツッコミ6:2008/01/23(水) 23:28:28 ID:XiapbOEl0
「……ああ、そうか」
今、お前、まだネタの続きのつもりだったんか、と小さく呟いてボケは苦笑する。
そしてボケは呆れたように肩を竦めてみせた。

「あのなぁ、これぐらいの突っ込み、バチコーンって決めてくれな終いには俺が逆に『突っ込む』で?」
その言葉に、ちょっと違う意味を込めてみたが当然の如くツッコミが気が付く事は無かった。

「バチコーンってなぁ、そんな簡単に言うなや。時間くれ時間。
つーか、お前はどう考えても異次元妄想ボケがお似合いやろ?突っ込みとか無理やろ?
…それと、そろそろ手抜いてくれへん?こそばいし」
何の危機感もなく、ボケにベッドの上に押し倒されたまま笑うツッコミにボケはツッコミの上から退いた。


「いや、お前がそんなに油断してるとそのうち俺は華麗に突っ込むかもしれんぞ?せいぜい気を付けとけ」
吐き捨てるように告げツッコミに指先を突き付けるとツッコミは目を丸くする。
そして、どう解釈したのか暫くして
「何の宣言や、それ」
と面白そうに笑いながら小学校のときから変らない眼差しをボケに向けた。
186ボケ×ツッコミ(終):2008/01/23(水) 23:30:38 ID:XiapbOEl0
途中で書き込めなくなった。長時間スレ占拠すみませんでした。 

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 | | □ STOP.       | | 本人たちの漫才はもっと面白い
 | |                | |           ∧_∧ 
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
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187風と木の名無しさん:2008/01/24(木) 00:24:57 ID:p8LbBR6y0
>>179
場面を想像して萌えた!
ぜひ華麗にツッコンでいただきたい
188風と木の名無しさん:2008/01/24(木) 01:47:17 ID:DPLoPCbzO
>>187
(*´∀`)ニヤニヤが止まりません
そして

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・`)ジサクジエンガ オオクリシマス

・北の事務所、東川旭川
・またしても1レス……
・見守るお兄ちゃんとマイペース末っ子に挑戦して……失敗……orz
189風と木の名無しさん:2008/01/24(木) 01:48:40 ID:DPLoPCbzO
 今日は一人の仕事。
 空き時間で日記を書こうと、楽屋でキーボードを打っている最中だ。
「……これくらいでいいかな」
「何がぁ?」
 文章を読み直そうとした時、後ろからずっしりとした重みと間抜けな声。
「おとおー! 驚かせるなよ」
 俺の肩に顎を乗せ、パソコンの画面を覗き込むメンバー末っ子の緒十。
「日記かぁ、やりたい事ばっかじゃん」
 あれもしたい、これもしたい、行きたい食べたいなどと書き連ねた文章に、緒十は不満そうな呟きを漏らす。
「いいだろう、何書いても。ってお前黙って入ってくるなよ」
「えー? ノックしたよ」
「気付かなかった……あ、俺トイレ行ってくる」
「いってらっしゃーい」
「帰らないのか?」
「うん、ちょっと」
 俺を待ってくれるのかと、鼻の下がのびる。
 しかし、楽屋に帰るとヤツの姿はなくなっていた。
「おにーちゃんは、寂しいぞ」
 呟いてパソコンを見ると、俺の打った文章の後ろに括弧が付いており、中には『緒十と一緒に』の文字。
「……へへ」
 未送信のまま保護したメールは初めてだった。
190風と木の名無しさん:2008/01/24(木) 01:49:55 ID:DPLoPCbzO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・`)イジョウ、ジサクジエンデシタ

なんか、ダメね……書きたいけど思うように書けない。
見てくれたらありがとうなんです><
191107:2008/01/24(木) 01:55:48 ID:Kg2xjnC7O
公録書いた者です…録喋ってなくてごめんね。コメ嬉しかった。2000回保存する
棚投下で萌え消化できなかったので続きはサイトでやります
携帯厨なので携帯サイトだけど…ご縁があったら姐さんたちと再会したいノシ
192風と木の名無しさん:2008/01/24(木) 02:09:29 ID:o4mkAfGr0
>>107
貴女のおかげで公録に目覚めましたww
公録もえるよ公録
自力でサイト探すんで、続きおながいしますww
193風と木の名無しさん:2008/01/24(木) 02:58:24 ID:jjUQa8trO
北の芸能事務所 キラ星×代表取締役
ここ最近の公式HPに萌えた勢いのまま投下。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
194江別×赤平 2/3:2008/01/24(木) 03:07:10 ID:jjUQa8trO
彼ら5人が出たCMのラストカット、リーダーの東川くんが中央に立つパターン。
東川くんの横の彼が、あんまり愉快な表情をしていて、それがツボに入った。
で、ついHPに必見!と書いたのだけど。

言われてみれば、そうかもしれない。
画面に映る彼の、両腕を広げた姿に眼が吸い寄せられたのは事実。

それにしても、なんだか自信満々なトコが癪に障る。
惚れた者の弱み、なんて言葉、お互い様じゃない?

「やっぱ最近さぁ、飢えてるのかな」
「え?」

「……江別くん不足だからね」

携帯に向かって囁く。息を飲む音が聞こえた。

僕のことを知ってるように、僕だって君を知ってるから。
きっと今頃、携帯を握り締めて、じたばたしてる。
195江別×赤平 3/3:2008/01/24(木) 03:11:08 ID:jjUQa8trO
大人ぶって(いやもちろん充分大人過ぎる年齢だけど)僕の前で男前に振る舞おう
とするくせに、
こっちが素直に甘えた途端、激しく照れるのは変わらない。

「もしもーし?江別くん?」

まだ無言のままの向こうへ、笑いを噛み殺して彼の名を呼ぶ。
そして、

「声、聞かせてくれるんでしょ?」

「聞かせてよ、飢えてる僕に」

「……あんた、今絶対、なまら嬉しそうな顔してるべ」

「嬉しいよ?君の声が聞けてるもの」

 はい、とどめ。
携帯持って、しゃがみこんで。頭抱えた彼の姿が目に浮かぶ。

……冗談めかして言ってるけど、全部本気。なんて、悔しいからそれは言ってあげないけどね。
196風と木の名無しさん:2008/01/24(木) 03:12:19 ID:jjUQa8trO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

自己満足だがスッキリした。お付き合い、ありがとうございました。
197江別×赤平 1/3:2008/01/24(木) 03:21:10 ID:jjUQa8trO
うわ、何故か1/3が書き込まれてなかったorz
後から投下という、情けないことになってすみません……

「あんたエロすぎ」
「は?」

今頃、沖縄でロケ中のはずの彼から、電話が掛かってきたと思えば。
開口一番何を言い出すのやら。

「何々、いきなり」
「古端にさぁ、撮られてたっしょ?」
「ああ、赤ペソ先生?w」

いつの間にやら頬に赤ペソの跡を付けてたところを、ウチのタレントに写メられて、
しかも事務所のHPに載せられた。
その画像のどこがエロいんだか。

「伏し目がちの流し目って、ヤバいから」
「それ言う為に掛けてきたの?撮影中でしょ」

苦笑しながらそう言うと、ちょっと間をおいて、

「赤平さんさ、」
「ん?」
「俺の声、聞きたかったんじゃね?」

今度はこっちが間をおいて。

「……どして?」
「守がメインなのに、俺しか目に入ってないでしょ」
「……読んだんだ」
198風と木の名無しさん:2008/01/24(木) 10:04:40 ID:DPLoPCbzO
>>193-197
二人とも可愛いwwwごちそうさまでしたw
199赤平×旭川:2008/01/24(木) 11:27:32 ID:afjEYv2/0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

北事務所の赤平×旭川って需要あるのカナ?
まあ考えないで・・・初投稿でつw
では、いきまーす。
200赤平×旭川 1/2:2008/01/24(木) 11:29:07 ID:afjEYv2/0
革張りのリクライニングできるチェアの中で一人の男が電話を受けている。
周りには重厚かつ洒落たデザインの家具が並び、大量のファイルやビデオテープ、DVDメディアなんかが所狭しと並べられていた。
僕が彼の気まぐれな言いつけ通りにやたら高価(たか)そうなティーカップに紅茶を淹れて社長室に戻ると、彼の座るチェアがくるりとこちら向きに回り、今までしていた厳しい表情を一瞬綻ばせる。
電話の向こうと何かの交渉をしているのか、声は低く少し厳しい感じだが、受話器を肩と頬の辺りに挟み、そこに置いてくれる?と言うような身振りをする。
僕が少し乱雑に書類の置かれたデスクを左手で片付け、ちょっとしたスペースを作って紅茶のカップとソーサーを置く。眼鏡の奥の目を細め、ありがとうと、また身振り。
スーツに身を包んだ彼はとても急がしそうで、疲れている様にも見えた。
「えぇ、どうぞその様にお伝えください・・・失礼致します。」
ぼんやりしていると電話での用が終わったのか、彼はデスクの上の白い電話に受話器を戻し、一瞬ため息を付く。
「忙しそうですね。」僕は何も考えずにクチから言葉を発してしまった。・・・小さいとは言え今や東京の大手事務所と業務提携する芸能事務所の社長だ。忙しいのなんか当然の事なのに。
「・・・まあ、ね。」そう言って彼はまた目を細めて笑った。ちょっと背伸びをした後、僕の淹れた紅茶のカップに手を伸ばす。目を閉じて香りを楽しんだ後、ゆっくりと口に運ぶ。彼の喉の辺りが少し動いた。
「じゃあ、失礼します。」とりあえず用も終わったし、僕がいては仕事の邪魔になるだけだろう。そう思い社長室から退散しようとすると、紅茶のカップを手にしたまま、彼はちょっと驚いたように目を丸くしていた。
「あれ・・・音/尾/くんもう帰るの?」
「え?あ、いやだって・・・ほら、鈴/井/さん忙しそうだから。」
「折角来たんだから、少しゆっくりすればいいじゃないか。」
「ゆっくりって・・・社長室でゆるくなんて出来ないじゃないですか。」
僕が苦笑いをしながら言うと、彼はこちらに来いと手招きをする。デスクの前まで行くとカップをソーサーの上に戻しながら、右手で自分の顎の辺りを触れ、ふーん。と一言。
201赤平×旭川 2/3:2008/01/24(木) 11:30:42 ID:afjEYv2/0
「じゃあどこならゆるくリラックスできるの?」
「えぇ?どこって・・・?」
「よし、やーめた。」
そう言うと急に彼は眼鏡を外し、立ち上がりながら喉元のネクタイの結び目を緩めた。
「音/尾/今日バイクだべ?」
「あぁまあ。タンク錆びないように・・・って、え?」
「メットあったかなあ・・・。」
「ちょちょちょっと!どこ行くのさ?っていうか、俺のバイクで!?」
慌てて言うと、またびっくりしたような顔をして「そーだよ?・・・何で?」なんてしれっと言っている。
「待って、待って。つまり・・・やっぱり鈴/井/さんが運転?」
「俺後ろやだもん。」ネクタイをしゅるりと外し、シャツのボタンを上から二つ目まで外しながら当然のごとく身支度を始めている。
「バイク乗りたいじゃん。もう今年一回も乗ってないさ。」
「いや、あんた自分のバイクに乗ればいいべさ!」
「やだよ。お前とタンデムすっから楽しいんだべや。」ネクタイと、ついでに脱いだスーツの上着もデスクに投げながら、人差し指をぽってりした唇の前に持って行き、喋るなよと、また身振り。
電話の受話器を取ると内線ボタンを押す。電話機を持ったままテスクに軽く身体を預け誰かが出るのを待っている。
「あぁ、私です。今日ちょっとH/T/B/さんに行って来る。・・・帰りは夕方になりそうかな。今電話があってね。ああ、うん、そう。副社長にはそう伝えてくれる?」
夕方って・・・。そして嘘八百・・・さすが社長兼、俳優だよ。
僕が社長室の豪奢な時計に目をやる。時刻は正午過ぎ。
これは・・・夕方まで引きずりまわされるって事だろうか・・・?
202赤平×旭川 3/3:2008/01/24(木) 11:31:06 ID:afjEYv2/0
「はい、じゃあよろしくー。」受話器を置き、電話をデスクに戻すと髪の毛を両手でかき上げ、きっちり整えていた髪を、ラフな何時もの時みたいに戻す。
「あー、堅っ苦しいな。よし、行くべか。」
「ど、どこに・・・?」
僕が言うと、一瞬彼が悩む。

「音/尾/はどこがいい?」
「はあ!?」
「まあ、お前に決定権はないけどね。」
じゃあ聞くなよ!と、思いつつも、久しぶりに一緒にいれる時間を作って貰えた事に感謝。絶対にクチが裂けても言いたくないけど。
「よし、飯食って酒飲んで、寝っころがれるトコでも行くか。」
「・・・寝っ転がるって。」
「あれ、俺とごろごろしたくないの?音/尾/くんは。」
何も言わずに無言でいると、彼はまた目を細めて笑った。

「もちろん、やらしい事も込みで。」
ニヤリと笑っている彼から、タバコとオトナっぽい紅茶の香りがした。
203赤平×旭川 3/3:2008/01/24(木) 11:32:40 ID:afjEYv2/0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

あわわわわ!1/3が1/2になっている!
お目汚し+ミス、どうかお許しを!
204風と木の名無しさん:2008/01/24(木) 11:38:56 ID:Q6RUhzEzO
そのジャンルにはうっかりさんと誘い受さんの書き手しかいないのはわかった
205風と木の名無しさん:2008/01/24(木) 17:21:25 ID:kqIwqoLZ0
>107=191
乙です。
ヌゲー萌えたので携帯サイトでも何でもかまわないので続き探しに行きます。
ただサーチとかには登録して置いていただけるとありがたいです。おながいします。

ホントつるっぱげになるかと思うぐらい萌えたw
公録にすっころんだよ…
206風と木の名無しさん:2008/01/24(木) 21:53:33 ID:EgQeQh540
>>203
道民じゃないよね?
方言があまりにあまりでちょっとこそばゆいw
207風と木の名無しさん:2008/01/24(木) 21:56:24 ID:EgQeQh540
連投スマソ。>>206だけじゃあんまりなんで。
もっと普通にしゃべってくれて大丈夫だよ。
208風と木の名無しさん:2008/01/24(木) 23:16:20 ID:oIzQifGfO
|>PLAY ピッ◇⊂ (・∀・) ジサクジエンガ オオクリシマース!
エロなんで注意してね!
209邂逅1:2008/01/24(木) 23:19:21 ID:oIzQifGfO

「花京院君…恐れる事はないんだよ、友達になろう」

本当にそう思っているのならばこの様な暴挙に出る筈が無いと、優しい言葉とは裏腹に乱暴に捩じ伏せられたまま、僕は心中で細やかな反論をした。
冷えた石床に押さえ付けられた左頬が鈍く痛む。
放せと一言言ってやりたかったが、呼吸さえままならない程の恐怖と、口を開いた途端に逆流した血液に阻まれてそれは叶わなかった。

数十秒の静寂の後DIOは身を屈めて僕の視界の中に現れ、じわじわと床に広がっていく赤い染みに顔を寄せ、長い舌を巧みに使って血液を取り込んでいる。
顔までの距離は20センチ程度だろうか、少しずつ僕の方へと近付いてき、髪からする重苦しい香の匂いが強まっていく。
予想通り顔の目前までに迫った舌は躊躇う事なく僕の唇を数回舐め回し、それからまだ飲み足りないとでも言う様に、激しく口内の奥深くに立ち入ってきた。

抵抗などお構いなしに口中の血液を舐め尽くしたDIOは僕の顔から僅かに距離を開け、唇が開放されたのとほぼ同時に身体が反転させられる。
首筋に当てられた指先に力が籠り、ゆっくりと皮膚を裂いて食い込んでいくのが分かった。
210邂逅2:2008/01/24(木) 23:21:07 ID:oIzQifGfO
しかしどうやら殺す気までは無いらしく、血液が流れ出す程度で止められた傷口に生暖かく湿ったものが触れる。
顔に掛かる髪と呼吸音の位置からして、DIOの舌で間違い無いだろう。
出血が落ち着いた所で、今度は唇を押し当て夢中で僕の喉元に食らい付いている。
掠める程度舌が触れる度に腰の辺りが甘く疼き、この状況下で男相手に欲情し始めている自分にまさかそういう趣味があったのかと些か驚いたが、
考えてみれば、両親とエジプト旅行に来てからの一週間と二日の間、一度もマスターベーションをしていなかった事を思い出し、今勃起しかけているのもそのせいだと、僕はまだそれなりに正常な神経をした男なのだと、経を唱える僧侶の如く頭の中で何度も自分に言い聞かせた。

「どうした、勃起しているぞ。感じているのか?」

陽の光が一切入らない締め切った闇の中で、唯一の光源はでゆらゆらと頼り無い光を放っている蝋燭のみだ。
そんな環境にも関わらず目敏く身体の変調に気付いたDIOは、好奇の目で僕を見下ろし、盛り上がった股間に膝を押し当てる。
そのまま無遠慮に体重を掛けられると脊椎に沿ってビリビリとした刺激が走り、身体は釣られてすぐの魚の様に跳ね上がった。

211邂逅3:2008/01/24(木) 23:24:10 ID:oIzQifGfO
押さえ込む力が強いのか、それとも失血のせいなのかは分からないが、逃れようと身をよじっても僕の首根っこを押さえ込む一本の腕はびくともしない。
そんな頭の向き一つ自由に変えられない状況で耳に届いた制服のベルトを緩める金属音に、額からは嫌な汗が流れ落ち、慌てて上げた制止の声など聞き入れられる筈もなく、頭を擡げたペニスは無骨なDIOの手によって外気に晒された。

「思うに花京院、お前はまだ“女”というものを知らないだろう?あぁ、答える必要は無い、お前が素直にそれを認めない事くらいお見通しだからな。そこで私は…」

まるで愛猫を愛でるかの様な手付きで、質量を増し始めた形に沿って指を這わされ、その焦れったい感覚に抑えていた性欲が疼き始める。
ふっくらとした唇は弧を描き、癖のある金髪は少しずつ視界の外へと沈んでいく。
先端に生温い息を吹き掛けられた事でDIOの顔がごく間近に迫っていると感付いた僕は、これから起こるであろう“あの”行為を想像し一人期待に身悶えた。

212邂逅4:2008/01/24(木) 23:25:44 ID:oIzQifGfO
「今日、マスターベーションしか知らない哀れなお前に、肌を重ねて得る快楽を教え込んでやろうと思い立った。その為にこのDIOが直々に抱かれてやるという訳だ。
どうだ?今の私の言葉を聞いて、お前は男を抱く事への不安と同時に、得られる快楽への期待で胸が満たされている筈だ。違うか?」

ほぼ立ち上がった状態のペニスに柔らかな舌は形を変えて密着し、ざらついた表面がゆっくりと上っていくと全身の力が抜け、更に抵抗する気力を奪われる。

僕が以前読んだ官能小説の中でも同じ行為が描写されていた。無論それは男女間で行われていたのだけれど。
そこには「余りの心地良さに脳髄が沸騰しそうだ」とか何とか、確かそんな感じの言葉で受け手の感想が記されてあったのだが、
その表現は実際の行為を体感した事の無い僕の想像の範疇を超えており、視覚でのエロティックさ以外は今一つ理解できないまま、何故殆どの作家が「お決まり」と言っていい程に似通った文章でさして変化の無いこの行為を入れたがるのか、
そして読み手は食い入る様にその場面ばかりに拘って何度も読み返すのか、正直疑問に思っていた。

しかし今、漸く分かった気がする。
213邂逅5:2008/01/24(木) 23:28:12 ID:oIzQifGfO
自分でする時には無い、予測出来ないリズムで不定期に与えられる刺激に声を抑えられず、尿道から零れるカウパーは、快楽の種を逃すまいと糸を引いて唾液をたっぷりと含んだ舌に纏わりつき、濡れた表面がぼんやりと灯された蝋燭の明かりを反射していた。
その淫靡な光景に胸は高鳴り、早くも僕のペニスは支えが無くとも自立していられそうな程に硬直している。

「…しかし痛むな。肘に膝に…今し方寝そべったばかりだというのにもう痣になりかけている。この床は私の身体を受け止めるには硬すぎる上に肌触りも今一つだ、お前もそう思うだろ?」

DIOがこの上なく演技臭い演技をもって手を止めた真意など僕には計り知れなかったが、とりあえず問い掛けておきながら返答させる気など毛頭無いらしく、僕が口を開くよりも早く再び話し始めた。

「それより花京院、少し先にあるベッドが気にならないか?あれは私が最も気に入っている家具なんだよ。名の知れた職人にわざわざ作らせた特注品でな…私一人で眠るには広過ぎるが、空いているスペースに人間を連れ込めば何とも便利な事に、二人までなら同時に相手が出来る。
214邂逅6:2008/01/24(木) 23:29:21 ID:oIzQifGfO
おっと、短絡的に考えるなよ?手間が増えるだけで快感が倍増する訳ではない、それどころか、中には私を巡って腹の上で醜く争う連中だっている。耳障りな金切り声を上げられると殺してやりたくなるが…
まぁそれも、有り余る時間の丁度いい暇潰しになるんだよ。だがな、今日は違う、お前が望むなら二人分の空間を与えてやろう。つまり私を独占させてやってもいいという事だ……嫌だと言うのなら遠慮無く帰ればいい、出口はすぐそこにあるからな」

恥じらい無く歩んだ道なりに衣服を脱ぎ捨てていくDIOの身体は、中性的で美しく整った顔に不釣り合いな隆々とした筋肉で肉付けされており、腰掛けたマットレスは軋みを立てて沈んでいく。

一方で、それを呆気にとられて眺める僕は、下半身だけを露にし、男の口淫によって反り立ったペニスは唾液とカウパーに塗れて濡れそぼっている。
漸く身体を起こした所で目に入ってきた光景に、いつもの精神状態なら生きているのも嫌になっただろう。
けれど、先程のあの快楽を再び与えてもらえるのならと思うと、僕の足は迷い無くDIOの元へと歩み出していた。
これが浅はかな雄の本能というものなのだろうか。

215邂逅7:2008/01/24(木) 23:31:42 ID:oIzQifGfO
左右に開けた脚の間に顔を埋めて、期待通りにDIOは先程の続きを始め、一方で僕も先程と同じ様に押し寄せて来る快楽に身を善がらせている。
その中で一つ違う点を挙げるとすれば、行為に及ぶ為、先程とは違って自分自身の意思で大きく両脚を開いている事位だ。

「目を逸らすな花京院」

夢か現実か分からないぼんやりとした声らしきものが二、三度聞こえた後、惚けた意識を引き戻すかの様な鋭い痛みが頬に走った。

「痛ッ…う」

「目を逸らすなと言っているんだ、自分がどの様に弄ばれそこに快楽を感じているのかを、一秒足りとも逃さずその目に焼き付けろ」

随分と感覚が狂ってしまっているらしく、鼓膜を震わせるDIOの囁きでさえ、僕に喘ぎ声を出させるのには十分だった。

言われた通りに視線を落とすとDIOは再度僕のペニスに口付けた。
濡れた音を立てながら口内に収められ、僕からは見えないそこでどのようにして愛撫されているのか。そんな事を考えただけで激しい羞恥心に身が震え、気が遠くなり、腰が溶けてしまいそうに熱くなる。
しかしこれ程までの快感を得ているというのに、オーガズムに至るにはまだ刺激が足りない。
216邂逅8:2008/01/24(木) 23:32:32 ID:oIzQifGfO
このねっとりとした焦らす様なものよりも、強く扱き上げられ一気に上り詰めてしまいたいという思いばかりが頭を過り、無意識の内にDIOの唇を追って高々と腰を浮かせていた。

「も、もっと乱暴に…くッ、それじゃあ…足りないん…だっ…ッ」

焦れったさに耐え兼ねた僕はうわ言の様に繰り返し懇願し、口に出して応える代わりに愛撫が激しくなると、それに伴って耳に届く水音も大きくなる。
強く吸い上げられた拍子に出た声を止める事は出来ず、悲鳴の様な声を上げる僕をDIOは嘲笑した。
これだけ喘げば、この広い部屋の外まで声が漏れているかも知れない。
そう思うことで沸き起こる羞恥心も、今となっては僕の性感を掻き立てる一つの要素に他ならなかった。
吹き出した汗が腿を伝ってシーツに滴り落ちる。
息を吸っているのか吐いているのか分からず徐々に意識が遠のき、一瞬、全ての感覚が麻痺した。


どうやら僕はDIOの口内に射精してしまったらしく、目の前の男は酷く不機嫌な表情を浮かべている。
217邂逅9:2008/01/24(木) 23:35:21 ID:oIzQifGfO
その後は勿論、よくあるドラマのワンシーンの様に優しく労りながら抱き起こす等という事がある筈も無く、脱力した僕の髪は鷲掴みにされ力一杯上体を引き起こされる。
勢い余って突っ伏しそうになった僕は慌てて両手をつき、膝立ちになった彼の前に座り込んだ。

見上げた先のDIOは、口に含んでいた精液を僕の顔へと吐き掛け、勃ちかかった自分のペニスを突き出した。
続く彼の言葉など容易に想像がつく事だ。

「銜えろ」

僕は躊躇い無く彼のペニスを喉元限界まで銜え込み、唇をすぼめて味わう様に頭を引いた。
言われなくてもそうしてやるつもりだった。
だが決して、性欲が高まって分別がつかなくなっているなどという訳では無い。それどころか、射精したお陰でいつも以上に冴え渡っているくらいだ。

「歯を立てるなよ?舌を這わせる時は根元から尿道まで丁寧にねぶるんだ。さっき私がしてやった様にな」

このまま前歯を突き立ててこのペニスを噛み切ってやる位今の僕には容易い事だが、DIOの口から時折漏れる吐息が聞こえる度に背筋を走る、言葉では言い表せない何か得体の知れない危うい感覚に邪魔をされて…
218邂逅10:2008/01/24(木) 23:36:09 ID:oIzQifGfO
いや、邪魔どころかその音をもっと聞きたいとさえ思っているのかもしれない。
実際僕はこうして、恥辱を感じながらもDIOのペニスに懸命に舌を這わせているのだから。
しかもその感情も、徐々にではあるが快感に変わりつつあった。
男のペニスを銜えながら自分のモノを勃起させているなんて、僕はいよいよ気が触れてしまったのだろうか。

そんな事を考えていると不意に限界以上までペニスを押し込まれた。
込み上げて来る吐き気に思わず唇を離すと、間髪を容れずに先程頬に走ったものと同じ衝撃が、今度は逆の頬へ与えられる。

「手を抜くな」

僕を睨み付ける瞳は快楽に溺れ虚ろな色をしている。
今のDIOに対しては捩じ伏せられた時の恐怖など微塵も感じていない。
この男も同じく、唯の雄なのだと分かったから。


暫く続けていると聞こえてくる吐息は艶を帯びたものに変わり、僕の舌から逃れる様、DIOは僅かに腰を引き始めた。
下腹部に手を当て押さえ付けると、始めは強固に姿勢を保っていた身体は呆気なくベッドに倒れ、喘ぎ声こそ上げはしないものの呼吸が荒くなっている。
219邂逅11:2008/01/24(木) 23:39:50 ID:oIzQifGfO
口を利く事も無くなり、与えられる感覚の一点に神経を集中させている様子からして彼の限界が近いのだと踏んだ僕は、自分がされた時と同じく何度も吸い上げ、手で刺激を与えながら懸命に愛撫を続けた。

仰向けに寝そべっているおかげで見えるひきつった腹筋の上では汗の粒が煌めき、掴んだ手を上下させる度に聞こえる粘着質な音は気持ちだけを先走らせる。
気が付くと僕は、自分がされている訳でも無いのに喘ぎながらDIOのペニスにむしゃぶりついていた。
おもむろに僕の頭部へと伸ばされた手は髪の根元をしっかりと掴んで頭を押さえ付け、シーツの擦れる音に紛れて悩ましげな声が耳に届く。
その声が聞こえたのと同時に口内のペニスが小刻みに震え、どろりとした生暖かい液体が数回に分けて放出された。

押さえ付ける手が離れた所で、出されたものを口に含んだまま辺りを見回すも、吐き出せる様な場所は無く、口元を拭える布切れも見当たらない。
かと言って無理矢理飲み込もうにも、身体がそれを拒み喉を通ろうとしない。
220邂逅12:2008/01/24(木) 23:40:40 ID:oIzQifGfO
口を開けばたちまち零れてしまうであろうそれを食い止める為に固く唇を閉ざせば、舌の上に広がっていく苦味がこの上なく不快で、救いを求めてDIOに手を伸ばすと彼は意地の悪い笑みを浮かべてその手を引き寄せた。

寝そべったままの身体に覆い被さる形になり、二本の足が僕の腰を捕らえる。
きっちりと着込んだ学生服の合わせ部分にDIOの指が入り込み、次の瞬間には、引き千切られたボタンが床に当たり跳ね返る音が響く。
唇が重ねられ、間を割って侵入してきた舌伝いに含んでいた精液はDIOの口内へ流れ込み、片頬に触れる手は先刻までの暴挙を忘れてしまいそうになる位、優しく僕の肌を撫でている。
引き寄せる為に手首を掴んでいた彼の手は徐々に位置をずらし、掌を軽く擽ると指を絡ませてきた。
汗で湿った手を握り返せば更に応える様に指先に力が込められ、何故だか込み上げて来る幸福感で胸が満たされていく。
身体を支えている腕は次第に言うことをきかなくなり崩れ落ち、触れ合った胸板を通して、もう一つの鼓動が肌を震わせる。

不意に絡んだ指が解かれ、熱を帯びた手が背中に伸ばされたかと思うと、刹那に視界が反転し冷えたシーツが腿に触れた。
221邂逅13:2008/01/24(木) 23:43:21 ID:oIzQifGfO
馬乗りになられた事で腹部にずっしりと重みが掛かり、一気に息苦しさが増したけれど、今は重なったままの唇を一秒足りとも離したくない。
髪を掻き乱されながらの深く激しいキスを繰り返している内に、先程出て行った精液は再度僕の元へと戻ってくる。
不快な味と、舌を嬲られる事で生じる快感に感覚が揺さぶられ、堪らず縦横無尽に動く舌を捕まえようにも、応え方を知らない僕は愛情を乞う子犬の様に高く鼻を鳴らし、口角から溢れ出した精液と唾液を垂れ流しながらDIOの背を掻きむしるのが精々だ。
乱れた二人分の呼吸音と共に唇が離れ、半開きの口元から覗く糸は僕に向かって伸びている。
それは彼の舌から伝ってくる唾液の重みでたるみ、僕の顎に滴が落ちると静かに切れた。

「私から出たものだというのにどうして飲まないんだ。ん?」

幼い子供に諭す時の様な、穏やかな口調で問い掛けながら顎を持ち上げられ、口元が固く閉ざされた。
鼻呼吸では取り込める酸素の量が少ない。
上がり切った呼吸は一向に落ち着かず、息苦しさに意識がぼんやりとしてくる。
222邂逅14(ラスト):2008/01/24(木) 23:44:12 ID:oIzQifGfO
DIOの唇が鎖骨に押し付けられたかと思うと繰り返し吸い付かれ、湧き出る生唾と一緒にとどまっていた体液が食道を通り、身体の奥深くに流れ込んだ。

口内が空になった事で、僕は添えられたDIOの手から逃れる様に首を捩り、口を開くや否や、空気を取り込むよりも先に喘ぎ声を上げた。
DIOの吐息が、毛先が肌を擽るだけで僕の指先はびりびりと痺れ、オーガズムに達する寸前の様な強い快感が押し寄せて来る。
意識と身体がリンクしていないと、そう気付いた所でどうにもならない。
最早僕は彼の思うがまま、されるがままの人形であり、蟻が噛み付く程度の抵抗だって出来ないのだ。

満足げな笑みを浮かべたDIOが身を起こし、立ち上がった僕のペニスを手に取り臀部にあてがった。
軽く身体を浮かせその一点に体重を掛けると、ゆっくりと、大きな抵抗も無く彼の中へと飲み込まれていく。
心地良い感触に思わず腰が浮き上がり、それをきっかけに彼は身体を上下させ始めた。
鼻から抜ける甘い声と弧を描いて反ったしなやかな身体は僕の感情を一層高ぶらせ、まるで恋でもしているかの様に激しく全身が脈打っている。


“このまま溺れてしまっても構わない”

そう思ったのを最後に、僕の思考は停止した。

223風と木の名無しさん:2008/01/24(木) 23:46:53 ID:oIzQifGfO
□STOP ピッ◇⊂ (・∀・) イジョウ、ジサクジエンデシタ!
緊張するな…
224風と木の名無しさん:2008/01/25(金) 02:03:01 ID:ERHwy1+L0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | |> PLAY.      | |
 | |                | |           ∧_∧ 半ナマ? 07日曜朝・単車乗リ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) 熊と主人公の人です。今回は映画の時の話(捏造)
 | |                | |       ◇⊂    ) __  最初に言っておく! 書いた人間は映画を見てない
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
225過去不運→赤鬼→不運 1/3:2008/01/25(金) 02:09:29 ID:ERHwy1+L0
思い出せよ……なあ……!

 ――切ない声が、胸を突いた。



 座り込む赤い背中。その隣に並んで、こっそり表情を伺う。
 仮面のように硬い顔なのに、彼が考えていることは判りやすい。
 だって、俯いているように見えて実はずっと一人だけを見ているから。
 彼と同じ人を見ながら、ぼくは呟く。
「……未来のぼくのこと、好きなんだ?」
 沈んでいた肩が跳ねた。
「っ、なっ……なななん……!!?」
 なんで急に、なのか、なんで分かった、なのかは判らないけど、ものすごい慌てよう。
やっぱり図星なんだね。
「見てればわかるよ。……ごめんね」
「……なに、謝ってんだ……」
「やっぱり、『あれ』はぼくだから。君を忘れちゃったのは、ぼくなんだ。
だから……ごめんね」
「……お前は、リョタロはリョタロだけどよ、『俺と戦ってきたリョタロ』じゃねえだろ。謝るな」
「でも、あれがぼくの未来なんだ。忘れたくないけど、忘れちゃう。きっと……」
「……わけわかんねェ……あー! だからっ、ガキが余計な気回すなっつってんだよ!」
 がしがしと頭を掻いた鬼は、そのままぼくの頭を乱暴に撫でる。
照れているだろう今の自分を見られたくないらしい。
226過去不運→赤鬼→不運 2/3:2008/01/25(金) 02:11:23 ID:ERHwy1+L0
 むすっと横を向いてしまった。その闇色の目が、どこか傷付いた色をしている。
 ……見た目に似合わず繊細なんだなぁ。
 そう思った瞬間、ぼくは確信した。

 そうか。だから。
 彼に守られる中で、彼を守りたいと思ったんだ。
 隣に並んで、共に戦って。
 対等に、なりたかったんだ。


 きっと、『僕』は彼を好きになる。
 そして忘れてしまって、絶対に思い出す。
 『僕』のことは誰よりも解る。だって、ぼく自身なんだから。


「……大丈夫」
 ぼくは赤鬼の首に腕を回す。『僕』なら絶対にそうしただろう。
 それから。
「絶対、思い出すから。元に戻って、また一緒に戦って……隣で、笑えるようになるから」
 一瞬固まった鬼が、そろそろとぼくの背に手を回す。服を掴んだ拳が震えている。
「……おう」
「大丈夫だよ。絶対……絶対……」
「おう……」
 何故か涙がこぼれて、ぎゅっと抱きしめてくれる優しい鬼にすがりついた。
これじゃあどっちがなぐさめているのかわからないや。
 ぼくは小さな子どもにするように、鬼の背中をなでる。ごつごつしてて大きい。
 彼はぼくを抱きしめているようで、本当はぼくの中に『僕』を求めていたのかもしれない。
思ったより強い力が胸をしめつける。
227過去不運→赤鬼→不運 3/3:2008/01/25(金) 02:29:21 ID:ERHwy1+L0
 どうして、ぼくはこんなに小さいんだろう。

 何故ぼくではないのだろう。
 何故、彼は『僕』を選んだのだろう。
 隣で戦いたい。一緒に笑っていたい。

 けれど、未来で出会えるなら、それでもいいか。

 この気持ちを忘れてしまうのはなんだかいやだけど。
 もう一度出会って、出会えた喜びを知ることができるなら、それもいい。

 赤に包まれながら、ぼくは思った。




 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 一見赤鬼の一方通行だけど、実は両片想いでしたというオチ
 | |                | |     ピッ   (・∀・)あの子はきっと生まれながらのトップブリーダーだと思うんだ
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
228風と木の名無しさん:2008/01/25(金) 05:38:53 ID:8baxH9/00
>>224
自分もまだ劇場版見てないんだ…。早くDVD見なきゃ…!!
ともあれ切なくて優しくてなんかもう大好きだよコレ!!
両片想い良いなー。GJ!!
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | ルナドンのレインと関係はあまりありません
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 楽しんでもらえるかな?
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
この世界には妖魔があふれている。
妖魔はどこかの山に群れて住んでいたり、一人でどこかの廃墟ですんでいたりとさまざまだ。
だが、妖魔の中には悪戯をするものもいる。しゃれにならない悪戯をして、殺される妖魔もいる。
 そして今日。夜明け、このだだっ広い館を歩き回る男がいる。
館はところどころが崩れ、蜘蛛の巣がはっている。随分と古い館らしかった。
手には大きな剣、その剣にはいろんな妖魔を蹴散らしてきたのか、血がついている。
そして屍が積み重なる部屋へとたどり着いた。腐臭がひどい。だが、そこには誰もいなかった。
どれもこれもみな、首に小さな穴が開いている。血を抜き取られている。
ヴァンパイアか。そう思い、隣の部屋を空けた。
 そこには、ベッドにしなだれかかった美しい妖魔がいた。
髪は腰まで伸びており、ワンピースのような服を着ているが、薄汚れていて、所々ぼろぼろになっていた。靴は履いていない。
男は剣を構える。
妖魔は、扉が開く気配に目覚めたようだった。
「あなたは…誰?」
小さな口から言葉がつむがれる。赤い瞳、長い犬歯。
「お前を殺しにやってきた。妖魔よ。隣の部屋の屍は全部お前がやったんだな?」
「そうです…お腹が空いていたの…だから…食べちゃった…。私を殺しにきたの?」
「そうだといっている。戦うか、妖魔よ」
妖魔は、立ち上がると、ゆるく首を振った。
そうしてみると女みたいだったが、これでも男らしいことは、胸がないことで分かった。
「いいえ、もうこんな寂しい世界は嫌。私を殺してくれる人を、待ってた」
そして男の前まで歩み寄ると、にっこりと笑って見せた。
花が、咲くような穏やかな笑み。
 そして手を組み、男の前に座った。まるで神に祈るかのように。
「…分かった」
剣をぎゅっと握る、その胸に突き立てた。
引き抜くと、血がしゅうしゅうと溢れ出て、妖魔はその場に倒れた。
妖魔は、満足そうな顔をしていた。



私は死んだ。
あの人間が殺してくれた。
もう、寂しくない。
もう、一人じゃない。
私は死んだ。
私は死んだ。
私は…
「!」
「アイオン様、目を覚ましたようですわ」
目の前には、知らない女性の顔。身なりからして、メイドだろうか。
「…?」
私は…死んだ、はず。
体を起こしてみようとすれば、激痛が胸に走って、力が抜けてベッドに倒れこんだ。
このベッドも、いつも自分が寝ていた埃っぽいベッドとはまるで違った。
豪華なシルクのシーツ。暖かい毛布。
「わ、私は…?ここは…どこ?」
見上げた天井は、いつものひび割れた天井と蜘蛛の巣のからみついたシャンデリアとは違った。
ここはどこだろう。不安に、辺りを見回すと、見覚えのある男が、少しはなれたところに椅子に座っていた。
「あ、あなた、は…うっ!」
しゃべろうとすると、胸に痛みが走る。
見てみれば、血にまみれたぼろぼろのワンピースは脱がされ、胸には包帯が巻かれたような感触があり、さらに綺麗なローブを着せられていた。
「胸が痛いか。貫いたからな。だがさすがはヴァンパイアだ、キズの治りが早い。俺のことがわかるか?」
「…はい。な、ぜ、私を殺さなかったの…」
痛みに耐えながらも、声を絞り出す。
「お前は、ただ人間を殺したようではなかったからな。生きるためだろう。それなら俺のそばにおいてやろうと思ってな」
「…?」
「つまりは、お前をペットにする」
ペット。この世界で珍しい妖魔や美しい妖魔をペットとして飼っている者も多い。
妖魔にとっては、特殊な力を抑制する効果のある首輪をされるので、逃げることができないというわけだ。
だが、この男…アイオンは、ただ単にペットにしたいから助けたというわけではなかった。
見せた笑顔があまりにも悲しげだった。
哀れだった。
 その妖魔を助けたかったなどと皆に言ったら、笑われるだろうか。
「あなたが…御主人様に?私の…御主人様?」
「そうだ。アイオンだ。お前は?…無理にはしゃべらなくていい」
「…っ、レ、レイン。ヴァンパイアと、夢魔のハーフです。今から、あなたのペットに、なります」
随分と素直だった。心に空虚のあるレインには、ペットになろうが殺されようが、もうどうでもよかった。
それに、もしかしたらこの人間が、自分を満たしてくれるかもしれない。
アイオンが机の上においてある首輪を持ち上げる。
青い首輪だった。
「この首輪を」
アイオンが、メイドに首輪を渡した。
一見何の変哲もない首輪だったが、これは妖魔の力を吸収する。
「あ、自分でやります…」
胸の痛みに耐えて起き上がる。
メイドから渡されて、その首輪を首に巻きつけ、固定した。
その途端、レインは意識不明になってしまった。
ベッドに倒れたレインは、汗をかいていた。
首輪はきつく閉められていないはずだが、その威力は相当なものだった。
 あわてたアイオンが首輪を緩める。しかし効果はない。
「リスティ、鶺鴒を、調教師を呼んでこい」
「はい、分かりました!」

「あーあ、この首輪は妖魔の体力を相当吸い取る奴だぞ。こんなのされたらか弱いこんな妖魔は倒れちまう」
ペットの調教師の鶺鴒が、カチャカチャと首輪をはずすと、持ってきた赤い首輪に付け替える。
「…」
程なくして、レインは目を覚ました。
「すまなかった、大丈夫か」
「はい…少し、胸の痛みが響くようになっただけで、さっきのように意識を失いそうな感覚はありません」
「従順だね。調教したら面白いことになるぜ、アイオン様よ」
鶺鴒が、まじまじとレインの顔を見て、アイオンに悪巧みを吹き込んだ。
だがアイオンは、調教などするつもりは毛頭なかった。
「レインにはそんなことはさせない」
「お硬いねぇ」
しかしこの首輪はといえば、アイオンの親友でもあり有能な仲間でもある、雷折が持ってきたものだ。
これなら絶対に大丈夫だといわれたが、大丈夫じゃなかったのはレインのほうだ。
きっと逃がさない目的で仕入れてきたのだろうが…。
「あの、御主人様」
小さな声で、アイオンの耳元で言った。
「なんだ?」
「…お腹が空きました」
斬られて血を噴出したのだから、食事で補給した方が良いだろう。
「パンでも食うか?」
「あの、私の食事は…血と、そして半分夢魔なので、精気です」
その瞬間、辺りにいる皆が頬を赤くした。
夢魔の精気収集といったら、人間もする口淫だ。
だがそれを恥とも思わないレインにとっては、なぜ皆の動きが急にギクシャクしたのか分からなかった。
「あの、御主人様?」
「な、何だ」
「御主人様の精気、貰えませんか?」
 ____________
 | __________  |
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 | |                | |           ∧_∧ 続きます
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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235風と木の名無しさん:2008/01/25(金) 17:08:07 ID:POcMvlJN0
>>224
亀ですが萌えた!GJすぎる!
236風と木の名無しさん:2008/01/25(金) 20:22:44 ID:azHB3EIn0
>>179
ちょっと亀レスだけど、禿げ萌えた!!(*´Д`)ハァハァ
映像として脳内上映されたよ〜
ボケが目を剥いてツッコミカワユスを叫んでる姿が浮かんだ
ツッコミに気づいてもらえんで拍子抜けする後半が好きだ
237風と木の名無しさん:2008/01/26(土) 01:51:42 ID:FnEBh3Lk0
>>167
亀レス申し訳ないけどやばい萌えた
唄可愛いよ唄
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | そろそろ死神さんと対決です
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| エロ部分も入れますよ、そのうち
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「はい、たまにここに尋ねてくる方たちの礼金で暮らしは成り立っております」
下僕は、クィンの向かいの席へ座ると、身の上をしゃべりだした。
「へえー…、けっこう繁盛してるんだな。美味い美味い」
「ありがとうございます」
「あのさー…あんたももしかしてあの老婆と一緒に…」
みてたんじゃないのか?といおうとしたが、下僕はどういう意味か分からなかったらしい。
「?何のことですか?」
「…いや、いい」
本当に知らずに、聞いてもいないんだろう。
自分たちの情事がお知られなくてほっとしたが、重要な問題を突きつけた。
「そういえば、俺らの向かう谷って、こっからどれくらいなんだ?俺たちの宿からこの山までは近かったが、どうなんだ?」
「はい、少々お待ちください」
下僕は隣の部屋から大きな地図を持ってくると、料理を隅に寄せて、地図を開いた。
「この山が今私たちのいる山です。そしてここが谷です。この近くには、寂れた村が一つ、あります」
山からずっと西へ指が移動する。
このルートは馬車も通っているから、馬車で移動したほうがいいだろう。
「さらに村にはなれたところには都市がありますが、死神を信仰しているので、あまり神に信仰をささげるものを近づけないほうがいいでしょう」
「死神信仰の都市…ねぇ」
ワインを喉に流し込む。
なにやら嫌な匂いのする都市だ。こういう都市は悪人が集まりやすい。
「村から馬車で谷の近くまではいけますが、次元に入るには人間は入れないので私は知りませんが、入って戻ってきた者は殆どいないとか。馬車の通らないまさに谷の底まで行かないと次元に入れないそうですよ」
「ううーん…この町からさ、どれくらいかかる?」
仲間たちのいる町を指差すと、今度はスープをすする。
「そうですね…馬車を乗り継いで、十日というところですかね」
「十日か…まあまあだな」
地図を羊皮紙に写させたてもらうと、食事を終えて部屋に戻った。

二日後
「お世話になりました」
「何々、気にすることはないでよ。腰の痛みは取れたかえ?」
荷物をもって、山を下る準備をすると、玄関先でスペルが老婆に頭を下げた。
乾物をもらって、酒も補充させてもらって、山を降りる準備は整っている。
クィンは、スペルに促されて頭を下げた。
確かにしてもらったことはたくさんある。この三日で変わったことは、たくさんある。
とはいえ、情事を覗かれてたのは気に食わない。
だがそんなことは知らないスペルは、穏やかな笑みを浮かべて、クィンを見た。
「はい、ありがとうございます。クィン、行こう」
「おう。それじゃ」
クィンが軽く手を振ると、老婆も杖を持ちながら手を振った。
「また何かあったらここに来るといいよ、じゃあな」

山道を下って二日、途中塩漬け肉を食べながら、疲れを取った。
「で、だ。例の町へは十日、それも次元には人間は入れないという。ユウに人材提供してもらえるかどうか交渉しようと思うんだが、どうだ」
ユウは人間だが、盗賊で、その人脈は計り知れない。
年齢も四十を超えた髭のおっさんだが、地元の都市では知らぬものはいない。
もしかしたらエルフやハーフエルフの人材を知っているかもしれない。ただし、エルフやハーフエルフとなれば、スペルを非難するものも出てくるだろう。
スペルは少し戸惑って、しかし次の瞬間には困ったような笑顔で、首をかしげた。
「うん、いいと思うよ。私たちだけでは心配だし…、私は前の私と違うんだ、クィンに愛してもらってから、自信が湧いた。こんな私でいいんだって。だから何も気にしないよ」
その言葉に、クィンは、ふ、と笑った。
スペルの頬に手を添えて、触れるだけの軽い口付けをした。
「愛してるよ。非難する奴がいたら全力でかばう」
「有難う、クィン」
スペルはクィンに抱きついた。
クィンも、スペルを抱きしめる。
スペルは、幸せだった。認めてもらえて、幸せだった。
今までもクィンはスペルを非難したことはないが、それでも愛というものがこんなにも心を満たすのだということを、初めて知ったのだ。
子どものように、甘えて何度も口付けを交わす。
「この関係、皆には秘密にしないとね」
「ケイに殺されるな」
「うん…でも、やっぱり、好きだよ。皆にはいえないけど、今ならいくらでも言える。私を受け入れてくれて有難う」
「お前も、俺を愛してくれてありがとな」
クィンが、にこっと笑った。
スペルも、くすりと笑った。
 ____________
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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 短くて
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )すみません…
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
244相乗り 量×軽簿:2008/01/27(日) 17:16:42 ID:QHSg73Ai0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | 相乗り 量×軽簿 帰国後ねつ造だモナー
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 今日までにしかできねー妄想だからな。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ エロナシダゴルァ!!
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) ナマヌルイゾ!!
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
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245相乗り 量×軽簿 1/3:2008/01/27(日) 17:17:18 ID:QHSg73Ai0
「軽簿ナーラ。
軽簿ナーラ。
軽簿ナーラ。軽簿ナーラ。軽簿ナーラ。軽簿ナ〜ラ〜。
俺ね毎日泣いてるよ。
お前が居ないんだもん。もう悲しくて寂しくて泣いてる。
俺こんなんじゃ無かったはずなのにどうしちゃったんだろうナーラのせいだー
ねぇこれやべぇんだけど。もしかしてあれっぽい。
言ってたじゃん。…大失恋てやつ。
それっぽいんだけどまじで。ほんとにしちゃったじゃん馬鹿。
失恋の大きいやつ。これの事言うんじゃねぇの?
失恋してないけどね。でも、そんな感じ。
軽簿ナーラが居ないせいでそんな感じになっちゃった。
俺さぁ軽簿ナーラ大好きだったから、ずっと一緒に居たかったから、だから今、死にそうなの。
悲しくて悲しくて寂しくて寂しくて死んじゃうよ。 逢いたいよナーラ〜
逢ったら抱きしめてやるよ。」
量から変な手紙が来た。絵葉書で。
つーか葉書でこういう事かかんといて恥ずかしいわそんで何よこいつ。かわいい事ゆって。
俺も寂しいよ。逢いたいよ量。あんなにすかしてて軽い嫌なタイプの男と思ってたのにね。
実はめちゃくちゃ素直で熱くて、いい奴だった。
量とはもっと一緒に旅したかったな。ほんと、なんで同じ人好きになっちゃったんだろう…
そうじゃなかったらさ、もっとさ…もっとお前と、色々話せたよね。もっと、話したかったな。いろんな事。
もっと知りたかった。そんで、教えてやりたい事もいっぱいあったしね。人生の先輩としてさ。
また逢えるかな。…抱きしめてやるって、あの野郎ほんと何回も…
あんな風にされたらちょっとドキドキするじゃん俺。
なんか変だもんあんな風に男にされた事ないもん俺。
自分がかわいい女の子にでもなったような気分になるよね実際。
量がもてるのわかる気がする。扱いがうまいっていうか母性本能をくすぐるっていうか
「面白いやつ」
元気かな。礼美とどうなったかな。いいな〜
246相乗り 量×軽簿 2/3:2008/01/27(日) 17:17:55 ID:QHSg73Ai0
あーこんな絵葉書寄越しやがって。
もうさぁ…だってさぁ俺だって、俺だってすっ…げーーー寂しいよ量。逢いたい。逢いたいよ量。
俺なんかおかしい。礼美にもふられちったけどさぁそれ以上にさぁ
あいつ告白すんのかなー応援してるけどなんか、なんか、やっぱりなんか、
あー量。量に抱きつきたい。りょ〜…涙が出てきた。お前も泣いてんの?嬉しい。

「ナ〜〜〜〜〜〜ラ〜〜〜〜〜〜!!!」
「へっ」
何今の。
「軽簿ナ〜ラ〜!!」
声裏返ってるし!なんやねん!!
「量何してんの!」
声がする方の窓を開けたら、俺ん家の前に、量が居た。
「ナーラ!!!」
なんやねん幻か?!急いで外に出る。
量が両手を広げて走ってきた。そのまま勢いよく抱きしめられて、俺たちはよろけながらくるくる回った。
「何ー?!お前なんでここに居るの?」
「軽簿ナーラに逢いたかったから来ちゃったんだぜ。」
「それだけ?」
「おう」
「旅は?」
「ふふ。これ。」
「何?チケット?礼美と帰ってきたの?」
「違う。これ軽簿ナーラの。こっち俺の。」
「え?ここ日本やで」
「おう。ふふ。聞いて?」
「ちょっと…え、まじ?え、意味わからんねんけど」
「軽簿ナーラにー、チケット渡しに来ました。」
247相乗り 量×軽簿 3/3:2008/01/27(日) 17:18:28 ID:QHSg73Ai0
「…おま、お前なんやねん。え、ちょお待…え〜?」
量はずっと笑ってる。俺もなんか、かみ殺してもかみ殺しても笑顔になっちゃう。
量。量。逢いたかった。あー俺、やっぱ…そういう事だよな。そういう、感情で量の事…。
「軽簿ナーラ。」
「おう」
「大好き」
「おう」
もう量。アホやこいつ。アホや〜大好き。量大好き。
「一緒に帰ろう〜軽簿ナ〜ラ〜」
「ここ日本やー言うてるやん」
「ナーラは?」
「うん?」
「俺の事。ナーラは?」
「…大好き」
量が超笑顔になる。くしゃっと笑ったその顔が俺、すげー好きかも。
その俺の好きな顔が近づいてきたと思った瞬間、キスされた。あ、やっぱそういう意味やんな?つーか早業やな。
「軽簿ナーラ!!!やべぇーな。」
「ほんまやで。洒落ならん。」
「だって軽簿ナーラの事しか考えられなくなっちゃって、こうするしか無かったんだもん。ナーラ〜」
「はいはいわかったわかった」
ギュウギュウと抱きしめられて、痛い。でも、嬉しくてそんなのどうでもいい。量。量。
「軽簿ナーラ。家入っていい?」
「おう。来い来い」
「抱きしめてやるよ。」
「なんか怖いなそのセリフ」
「覚悟して」
「めっちゃ怖い」
でも、嬉しい。量、逢いたかった。逢いたかった量。
もうなんか色々、どうでもいいやーだって幸せだもん俺。
大好きだ、量。家に来てくれてありがとね。
248風と木の名無しさん:2008/01/27(日) 17:19:01 ID:QHSg73Ai0
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 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ まさにやおい。ありがとうございました。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
249風と木の名無しさん:2008/01/27(日) 21:15:19 ID:dQjGKYrO0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | オリジナルで小ネタだよ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 短いけど一レスで入りきるかな?
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ホントウニ改行苦手ダナ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )  ゴラァ
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
250オリジナル ある学生の日常 1:2008/01/27(日) 21:17:23 ID:dQjGKYrO0
安い学食を食いながら、俺達はとりとめない雑談で盛り上がる。
今日のお題は「無人島でたった一つ持っていくなら何が良いか」。
出てきた答えは「風邪薬」「ライター」「枕」「漫画」、果ては「空気嫁」まで。あからさまに受け狙いの答えだけれども、
妙に説得力のある回答に俺達はドッと笑う。
そして、俺の隣に座っていたコイツはと言うと「DVDプレイヤー」。ちょっと待て、電気も無いのにどうやって見るつもりだ、
たった一つしか持って行っちゃいけないんだぞ、ソフト持っていけないんだぞ、テレビだってないじゃないか、と周りから
総攻撃で突っ込みを受けると苦笑いを浮かべて、
「えー、それじゃどうしよっかな。お前何持ってく?」
ぽん、と俺の頭を叩いて話を振って来る。俺はその手を振り払い、ごくんとコロッケを飲み下した。
「そうだな。俺は釣竿持ってくわ。俺、釣り好きだし」
もちろん、釣った魚は飯にする。趣味と実益を兼ねた良い選択だ。誰もいない俺一人っきりで釣り三昧という
シチュエーションは悪くない。
すると、コイツも俺の話に乗ってきて、
「いいな、それ。じゃ、俺、包丁持ってく。で、美味い刺身にして食おう」
と瞳を輝かせた。途端に、またもや突っ込みの洗礼がコイツを襲う。
「無人島にお前一人っていう設定だって」
「そんなこと最初に言ってなかったじゃないか」
「言って無くても、普通はそういう前提だろ」
不満げにふくれっ面をして、あの野郎、
「せっかく良い考えだと思ったのになあ」
って、なんで俺に同意を求めるんだ。
だいたい、お前、包丁で魚をさばけるのか、得意料理はレトルトのカレーって前言っていただろう、そんな風に口先で
答えながらも、俺の脳内では、何故かコイツと俺との二人っきりの無人島、俺が釣った魚を俺自身が包丁で捌き、
甲斐甲斐しくコイツに刺身を食わせてやっていた。なんでそんな妄想になるのか分からないが、その刺身を食った
コイツの顔があんまりにも幸せそうで、こっちも幸せになったからすべて良し。

…・・・ああ、無人島に持って行きたいのは、コイツなのか。
それが俺にとっての模範解答なのだった。なんてこった。
251風と木の名無しさん:2008/01/27(日) 21:18:06 ID:dQjGKYrO0
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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ お粗末さまでした
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252風と木の名無しさん:2008/01/27(日) 22:51:29 ID:P3WQvvdHO
何かこういうのいいな>>249-251
隣の奴が頭悪くて可愛いww
253風と木の名無しさん:2008/01/27(日) 23:38:15 ID:CabZ80H00
>>249-251
GJ!
こういう小ネタ大好きだ。微笑ましいw
254風と木の名無しさん:2008/01/28(月) 16:29:02 ID:UxxXEJCpO
>>249
なんか和んだwGJです!
255魔王×黒野風味:2008/01/28(月) 23:41:23 ID:fNPEWm3SO
数字板で萌えたネタがあったから書いてみたよ。
初投下なんでいたらないところもあるかもしれん。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・) ジサクジエンガ オオクリシマース!


目が覚めて最初にぼんやりと見えたものは、涙ぐんでくしゃくしゃの顔と、ほっとして微笑んでいる顔。
記憶が混濁していた中、頬を撫でていった風の冷たさから、ようやく雪山にいることに気付いた。
そして、もう一つ。新しい旅の仲間を─しかも一度敵対したことのある魔王の姿を見つけたのは、
言うまでもなく一番驚かされたことだった。
256魔王×黒野風味2:2008/01/28(月) 23:42:32 ID:fNPEWm3SO




寒いな……


ぶる、と体を震わせ、自らを抱きかかえるように体に腕を密着させた。
もう片方の腕は、魔王の肩に担がれ、支えられている。
死の山で目覚めて間もなかったクロノの体は衰弱しきっていた。回復魔法で傷だけでも塞いだが、それでも歩くことはままならなかった。回復魔法で傷だけでも塞いだが、それでも歩くことはままならなかった。
そのため、前衛で戦えるカエルに代わって魔王がクロノを担ぐことになったのだ。
もともと魔王は魔法を主体にして戦うため、片腕が使えなくとも何の支障もなかった。
どういう経緯で旅に同行することになったのか、どうしてカエルが反対しなかったのかはわからない。
ただ、魔王と呼ばれ恐れられていたはずの彼が、こうして仲間になっているということに少なからずとも頼もしさを覚えた。
257魔王×黒野風味3:2008/01/28(月) 23:44:34 ID:fNPEWm3SO


……?


ふいに、何かがふわりと肩に掛けられた。
たったそれだけのことなのに、ずいぶんと寒さが和らいだ。
「気休め程度にしかならんが、マントの中に入っておけ。今のお前にこの雪山はきつかろう」
こちらには見向きもせずに、魔王がそう言った。
「……ありがとう。意外と優しいんだな」
彼は存外だと言わんばかりの顔を向けてきたけれど、嬉しかった気持ちは消えなかった。
本当に気遣う心がなかったら、さりげなくマントに入れるわけがない。
誰もが彼を魔王と呼ぼうとも、彼は優しい人間なのだ。
─そうクロノに認識されたことが、幸か不幸かは誰にもわからない。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・) イジョウ、ジサクジエンデシタ!
258風と木の名無しさん:2008/01/29(火) 00:18:01 ID:SpSsYz9zO
>>255ー257
むっはーGJGJ!魔王の無骨な優しさ萌え(*´∀`)
カエルが嫉妬しそうですな…誰にかはお任せでw
259255-257:2008/01/29(火) 00:23:37 ID:qxdMN9lOO
見直しに来たら一個文がダブっていた…orz
脳内で修正して下さい。
260風と木の名無しさん:2008/01/29(火) 00:51:39 ID:g9zwTI8B0
>>243
あの老婆がなんであんな事しようと思ったのか気になる。
下僕も知ってるのかと思ってたよ。

261風と木の名無しさん:2008/01/29(火) 01:52:17 ID:XLQaC1om0
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 | |                | |
 | | |> PLAY.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 剣世界リプ「次」シリーズ暮れ×麻呂のエロ。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
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262:2008/01/29(火) 01:52:45 ID:XLQaC1om0
部屋の壁が薄いのは言われるまでもなく分かっていた。
それ以前に羞恥心が先立って声など荒らげることはできない。
それでも押し殺すように漏れてゆく自分の声がいちいち気恥ずかしい。
耳元で暮れの声がする。
大丈夫か、痛くないか、気持ちいいか、とこちらを気遣う言葉ばかりだった。
普段そんな言葉などいっぺんたりともかけやしないくせに、
彼はなぜかベッドの中では意外なほどの気配りを見せた。
いや、何故かなどと改めて言う必要もなく、彼は命の危険が及んでいない場では人に対して優しい。
それでは今、余裕があるのかと思うと、チラリと目をやって彼を見るが、
そんな様子もなくただ必死に愛の行為を続けていた。
可愛いな、と思う。と同時に、自分は何をやっているのだろうかと思う。
色々と考えていると、いつもこの思考にたどり着く。
それと同じ頃に丁度与えられた快楽に耐えるのが難しくなってくる。
頭の中が白濁していき、今まで考えていたことがすべて吹っ飛ぶ。
自然、暮れにしがみついて、好き、好きと繰り返しているのが分かった。
か細く零れる自分の声はまるで別人のようだった。
腕にこもる力が強くなる。相手の力も、自分の力も。
「…っく…」
びく、と体が震えるのが分かった。生暖かい感触を腹の上に感じる。
吐精の感覚と全く別、じんわりと体に温かさが染み渡って、長い長い余韻が体の中に残る。
しばらくして、こつん、と胸に何かが当たるのが分かった。
薄目を開て見てみると、自分の胸に顔をうずめた暮れがこちらを見上げているのに気づく。
目と目が合う。自然と、微笑んだ。
自分が頭を屈め、暮れが顔を近づけて口付けする。
した後に、もういちど彼は自分の体にぎゅ、としがみつく。
普段ふざけている間にも、自分以外の相手にもスキンシップ過剰(で済む行動なのかは不明だが)なのは、
どこか寂しいと感じているからだろうか、とちらりと思った。
ならば彼も自分と同じその感覚を感じていたのだろうか?
263:2008/01/29(火) 01:53:12 ID:XLQaC1om0
…思えば幾度となく養父母に孫の存在をちらつかされた際も、中々妻帯しようとしなかったのは、
自分が自身の血を残したくないと思っているからだったと認識していた。
もともと、自分の姿が周囲と違うことについては、そう気にした事は無かった。
多少その姿が違うからといって偏見をもって接するような者は自分の周囲にはいない。
自分は幸せだった。
なのに、ふとしたはずみで感じるはずの無い疎外感を感じてしまう。
たとえば幼馴染たちと一緒に遊んで、夕方家に帰ろうと一人になった時、
夜中眠りにつく前、ベッドでひとりになった時。
今まで女性に好きだと言われた事もあったし、人並みに”恋愛”もしたつもりだった。
なのにその疎外感が心のどこかに引っかかって、それ以降どうすることもできない。
養父母の恩に報いる事が出来ない。だから必死に働いた。
ありがとう、の言葉の中には、6割方の、ごめんなさい、が混ざっていた。
王都に出たときは、世界の広さに驚いた。
自分と同じ姿の者も、非常に珍しい存在ではあったが見かける事はあった。
感じていたはずの疎外感など吹っ飛んでいくのが分かった。
それと同時に、ここなら養父母の願いを叶える事ができるのではないかと思った。
なのに、結果として”こうなって”いる。

ふと疑惑の念が膨れ上がる。
自分はただ寂しいだけなのではないだろうか。
誰でもよかった、そうなのかも知れない。
そして、同じように、この腕の中の彼も…

「   」

自分の名を呼ぶ声が聞こえた。
え?と静かに呟いて顔を覗き込もうとすると、長い指が動いて自分の手を探り、ぎゅ、と握る。
…面食らったまま、自分にしがみついてくうくうと寝息を立てる暮れの顔を見る。
体温の高い彼の手は非常に温かい。
少しだけ、気が軽くなった。心の中がゆっくりと満たされていくような気がする。
264:2008/01/29(火) 01:53:40 ID:XLQaC1om0
自分は危うい場所を歩いていると、そう思う。
暗闇の中を手探りで歩いている。
それでもこうやって暮れが自分の手を握っていて、それを手伝ってくれている。
こちらでは疎外感など感じた事はなかった。
一人ではないという事などとうに知っていた。
それでも、彼が自分の傍にいてくれることが嬉しかった。
やっぱり、暮れが好きだと、愛していると、そう思う。

安堵感とともに眠気を感じる。
このままここで眠っていきたいが、朝帰りなどしようものなら神殿の者に心配されるのは目に見えていたので、
起こさないようにそっと彼の腕を解く。
幸せそうな顔で眠る暮れの頬に口づけ、おやすみ、と告げた。

帰り道はきっと一人だろう。それでもあの疎外感を感じる事は、おそらく、ない。


-了-
265:2008/01/29(火) 01:54:00 ID:XLQaC1om0
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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 今更だけど本編完結オメ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
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266風と木の名無しさん:2008/01/29(火) 20:04:39 ID:Pq1KM2fz0
乙〜!!
あの二人か!
素敵な作品発見して幸せです!
267四つ葉と!ヤンダ→とーちゃん:2008/01/30(水) 02:51:59 ID:ygZuXb9A0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  二人の大学時代 捏造です
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  初なので見苦しいところあったらスマソ
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

268四つ葉と!ヤンダ→とーちゃん 1/3:2008/01/30(水) 02:55:40 ID:ygZuXb9A0
「いい天気だなー…」
昼飯をのんびり食い終わり、なんとなく午後の授業に出るのが億劫になった俺は、活動日以外は部員のたまり場と化しているサークル部屋に足を運んだ。
幸運なことに他の利用者はおらず、少し気だるい午後の一時を満喫できそうだった。
大きく開いた窓からは柔らかな日差しが差し込み、心地よい室温は満腹感とあいまって強烈な眠気を俺にもたらす。
欲望のままに惰眠をむさぼるのもいいが、なんとなくこのまったりした空気を味わっていたい。そう思った俺は眠気覚ましにと、煙草をポケットから出し咥えた。
しかし、なんとなく火をつける気になれず、そのまま座っていた椅子の背もたれに思い切り体を預けるようにして伸びをした。
その時、視界の端を白いものが横切ったかと思うと、何者かが俺の唇からさっと煙草を奪っていった。
「もーらい」
「!…なんだ、小岩井さんすか」
そこには優しく、でも少しいたずらっぽい表情で微笑んだ小岩井さんの姿があった。
突如部屋の中に現れたその姿に、俺は心臓が跳ね上がるほど驚きつつも内心ちょっとした高揚を覚えてしまう。
(授業さぼっといてよかった…!)
もちろんそんな思いはおくびにも出さず、平然を装って話しかける。
「小岩井さんもサボリっすか」
「馬鹿、お前と一緒にすんな。俺はもう単位とりきってるからいいんだよ」
彼はそういうと窓際に歩み寄り、俺から奪った煙草に火をつけた。
(あ、間接キス…)
俺が邪な考えを抱きかけた瞬間、げほっごほっというやや色気にかける咳の音がそれを遮った。
「うわー不味い。ヤンダお前こんな強いの吸ってんのか」
見ると、顔をしかめて涙目で咳き込んでいる。憧れの人のそんな姿に思わず笑みがこぼれる。
「あぁ、小岩井さんのは確か結構軽いやつでしたね。…あれの方が逆に不味くないすか?慣れてきちゃうと」
「お前それ完全に中毒だな。やめるの苦労するぞー」
まだ軽く咳をしながらも、小岩井さんはにやりと笑う。その表情がやたら魅力的で、俺はなんとなく悔しくなって言い返す。

269四つ葉と!ヤンダ→とーちゃん 2/3:2008/01/30(水) 02:57:33 ID:ygZuXb9A0
「そんなん、吸ってる時点で俺も小岩井さんも変わらないっすよ」
「俺はいつでもやめられるぞ?吸わないでいようと思えば吸わないでいられるしな」
「そういうこと言っちゃう人の方が案外依存しちゃったりするもんなんですよ」
根拠のない俺の軽口にも、彼は不敵な表情を崩さない。
そしてもう一度、顔をしかめながらも煙を吸い込み、吐き出す。そのまま目線を外に移し、ふと真顔になって呟いた。
「俺は何者にも縛られないんだよ」
いつもとは違うその表情に俺が目を奪われた瞬間、日差しが角度を変え、突如強い光が部屋に差し込んだ。
その白い強烈な光は、一瞬俺の視界から小岩井さんの姿を奪う。
「!」
慌ててぎゅっと目をつぶり、ゆっくりと開いてみる。そこにはついさっきまでと同じ、いたずらっぽい笑みがあった。
「…なんてな」
「…何すかそれ。カッコつけすぎじゃないですか」
動揺を隠しつつ言うと、小岩井さんはまたにやりと笑い、うるせーな、と呟いた。
俺もまた悔しくなって、少しわざとらしく目をそらす。
(ったく、人の気も知らないで…)

何者にも縛られない、だって?そんなの俺が一番よくわかってる。
壁を作り他人を寄せ付けないわけじゃない。むしろ、他者を受け入れ、包み込む度量を持っていると言える。
それはきっと誰にでもできることじゃなくて、だからこそ無自覚ながらもあんたに惹かれてしまう奴らがたくさんいるわけで。
でも、あんた自身は決して何にも執着しない。くだらない嫉妬や独占欲に身を焦がすこともない。ただ笑ってそこにある全てを受け入れるだけだ。
そしてきっと、いつの日かそれらがあんたの元を去っていったとしても、悲しい顔などせず、いつもの優しい笑顔で見送るのだろう。
―――でも、それなら。
これ以上ないほど、あんたに執着してしまった俺は、どうしたらいい?
あんたを望み、あんたに望まれたいと願ってしまう俺は、どうしたらいい?

(―――なんて、いきなり言ってみたらどんなリアクションするのかな)
そんなことを考えていると、自嘲にも似た笑いがこみ上げてきて思わずにやけてしまう。
それを見た小岩井さんは、なんだよ気持ち悪いな、と眉をひそめた。

270四つ葉と!ヤンダ→とーちゃん 3/3:2008/01/30(水) 02:59:09 ID:ygZuXb9A0
「――さて、俺はそろそろ行くぞ。お前次の授業はさぼるなよ」
小岩井さんは机の上の灰皿にぎゅっと煙草を押し付け、ドアに手をかけた。
思わず引き止めそうになるが、ぐっとこらえて適当に返事をする。
そんな俺にふっと微笑みかけ、じゃーな、と言って部屋を出て行く。
もちろん振り返ったりはしない。
ドアが音を立てて閉まったのを確認すると、俺は一気に全身の力を抜き更に深く椅子にもたれかかった。
「…あーぁ、たまんねーな」
思わずひとりごちる。そして唇に手を伸ばし、先ほど彼の指が触れた部分をそっと撫でてみる。
(…熱くなってるし)
不自然に熱を帯びたそこの温度は、しばらく下がりそうにもなかった。
これも、恋の病ってやつか。―――重症だな、俺。
そんなことをしみじみ思ってしまう自分がなんだか可笑しくて、周りに人がいないのをいいことに、ついくすくすと小さな声で笑ってしまう。
(―――まぁ、いいさ)
覚悟してろ、小岩井さん。あんたが何者にも縛られないというならば、俺はそれを追いかけ続けるだけだ。
追いかけて追いかけて、否応なしに俺の存在をあんたに刻み込んでやる。
『―――飽きっぽいお前に、いつまでそんなことが続けられるだろうな?』
ふと、いつもと同じ優しげな表情で、さらりとそんなことを言ってのける小岩井さんの姿が目に浮かんだ。
俺はにやりと笑い、その姿に向かって呟く。
「…続けさせてもらいますよ、気の済むまでね」
そう。
未だに消えないこの熱が、俺を縛り続ける限り。
271四つ葉と!ヤンダ→とーちゃん(終):2008/01/30(水) 03:01:44 ID:ygZuXb9A0

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 | |                | |           ∧_∧ お粗末様でした
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
272風と木の名無しさん:2008/01/30(水) 03:52:44 ID:2iX6aHYIO
>>179
亀だがGj。ものっそ想像し易かった
273風と木の名無しさん:2008/01/30(水) 15:57:10 ID:to8L9Cpg0
>>271
最近気になってたので読めてうれしいです。GJ!
274風と木の名無しさん:2008/01/30(水) 20:25:46 ID:aWHiaQt70
遅まきながら>>255GJ!
さりげなく優しい魔王と彼を信頼する黒野に萌えた。
275Nightmare:2008/01/30(水) 21:58:48 ID:TI7zgbFQ0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  某昭和の大スターとその周りの人達の話
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  ベース×スターだけどヤッテルノハ一人
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ エチ有りだぞゴラァ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |

276Nightmare 1/9:2008/01/30(水) 21:59:40 ID:TI7zgbFQ0
「…っ……ぁぁ…。」
聞こえてくる。
「は…く…っ。」
濡れた吐息。
その声を、姿を、男は固唾を呑んで見つめていた。

男の目の前で、自分を慰める彼を。



初めは他愛もない会話をしていた筈なのだ。
彼の所有するマンションの一室、そのベッドの中で、睦ましい想いを分かち
合っていたのに、
「…やっぱり、好きやと思っている奴とこうしているのは、嬉しいもんやな。」
裸の彼の胸に頭をのせて、
幸せそうに笑っていた彼。
その顔を見て、彼の髪を優しく撫でていた。
いとおしいと思った、男も、心から。
「…ならずっと、ここでこうしておればええ。」
だからこそ、出てきた言葉は、とても切なかった。
それは、決して適わぬ事実だということが。
彼は何も言わずに、ただ微笑んだ。
男の気持ちが、何よりも嬉しいとばかりに。

277Nightmare 2/9:2008/01/30(水) 22:00:22 ID:TI7zgbFQ0
彼の指が、
よく手入れされたきれいな指が、
濡れた陰茎に絡まる、
「は…ぁっ……ぃ…ぃ…。」
そのまま両手で何度も扱きあげる。
上気した頬、潤んだ瞳。
切なげな息を吐き出すにふさわしい、官能的な唇。
それは半開きに震え。
彼は行為に没頭している。
男の存在も気にならないほどに。



夜のベッドの中で、
傍らで寄り添う彼の身体を眺める。
胸に、腹に、腰に、
うっすらと影を残す情交の跡。
節くれだった指でその一つをなぞった。
彼は何も言わずに、男を見つめている。
「…辛いか?」
思わず出てしまった言葉。
彼は笑って、首を横に振った。
「お前がおるなら、平気や。」
お前と、こうしていられるなら。
彼の紛れもない、心からの想いだった。
278Nightmare 3/9:2008/01/30(水) 22:01:18 ID:TI7zgbFQ0
いつからだろう、
男の心の中に、一つの影か生まれてきたのは。
彼とこうして、
幸せなはずなのに、
自分は、
何故満たされない。
何故満足出来ない、
彼を抱いただけでは。



屹立した陰茎の先端から、しとどに先走りの液が溢れ出る。
彼の指を、手を濡らし、伝って床に零れる。
「う…く…ぁ…。」
彼の手の動きが早くなる。
脈打つ陰茎を右手でこすり上げ、左手で先端を撫でる。
「あ…い…ぃ…!」
親指で尿道をなぞり上げ、身体がおおきく仰け反った。
震える足、
息づく腹、
上下する胸。
喉元が何度も動き、首を苦しげに横に振った。
快感に囚われた顔で、
鮮やかに色づく肌で。
279Nightmare 4/9:2008/01/30(水) 22:01:52 ID:TI7zgbFQ0
この姿を、
お前は、
ほかのおとこたちにもみせているのか

苦しいのに、
辛いのに、
どうして、
俺は昂ぶっている。

涙が頬を伝った。



しばしの睦言の後、風呂場で軽く汗と汚れを流し、髪を拭きながらベッドに
戻ってきた。
彼にも入れと告げようと、
「お……。」
そこから言葉が続かなかった。
彼は枕に顔を埋めていた、
満足げな笑みを浮かべて、
右腕が、下腹辺りに置かれている。
それは緩やかに何度も動いていた。
微笑みの中に、淫靡な瞳が怪しく濡れていた。

かれは、ほんの戯れのつもりだったのだろう。
彼のいない合間に、彼の残り香を感じながら、
少しだけ、淫らな遊びに耽っていたかったのだろう。
280Nightmare 5/9:2008/01/30(水) 22:02:24 ID:TI7zgbFQ0
最後までいきつくつもりではなかった、
そこまで本気に、右手は動いていなかった。
それでも、
その姿を見て、
平然としていられる訳がなかった。

足早に彼の元に近づく。
気づいた彼が、羞恥で慌てて彼に背を向ける、
「何…してたんや?」
わざと優しく、問いかけた。
彼の背中を、撫でながら。
彼は答えられなかった。
恥ずかしさと情けなさで、身体が震える。
「俺じゃ…満足出来へんかったか?」
彼が慌てて振り向く。
「違う…!」
そこで初めて、
泣き出しそうな男の表情を見た。
「俺が…おかしいんや…。」
彼の顔が、哀しみで歪んだ。
「どうしようもない淫乱な…俺が…。」

理性ではどんなに否定しても、
抱かれることに慣れきった身体は、
常に快楽を求めて、
愛するものと共にいても、
自らの欲望に耽ってしまう。
281Nightmare 6/9:2008/01/30(水) 22:02:56 ID:TI7zgbFQ0
ほしい
ほしい
もっと
もっと

繰り返される
身体からの叫び。

「幸せなんや。」
彼の頬にも涙が伝った。
「お前に抱かれて、幸せなんや、すごい満足してるんや。」
哀しみに震える声が、男に向かって訴える。
「なのに、なのに…。」
顔を両手で覆って蹲る。
「俺は、こんなことしてしまう…!」
微かな嗚咽が聞こえる。
小さく丸まった彼の身体が、何度も震えていた。



青い匂いが、漂ってくる。
彼の絶頂が近いのか、
濡れそぼる先端が、白く濁っていた。
「もう……い…く……いく…!」
両手で勢い良く擦りあげながら、絶叫に近い声を漏らした。
体中が桜色に染まる。
閉じていた瞼が、微かに開かれた。
282Nightmare 7/9:2008/01/30(水) 22:03:27 ID:TI7zgbFQ0
男を見る。
哀しげに、
切なげに、
…うれしげに。



「…見せてや、俺に。」
哀しみにくれる彼に、彼は優しく語りかけた。
絶望の言葉を。
「一人でするのは…寂しいやろ?辛いやろ?」
男は笑っていた、
涙を流しながら。
「それ位なら…俺の前で見せてくれ。」
それは心からの彼への言葉、
「淫乱なお前の姿を…。」
彼を哀しませるだけの。

顔をあげた彼の表情は、哀しみに涙をながしながら、
どこか、
悦んでいるようにも見えた。
ベッドにひざ立ちになって、彼と向かい合う、
その右手が手がもう一度、下腹部にのびた。
「……見ててや、俺を。」
熱を帯びた声で言う。
男は何も言わずに、頷いた。
283Nightmare 8/9:2008/01/30(水) 22:04:02 ID:TI7zgbFQ0
「あ……あぁ……っ……!」
彼の身体が、大きく何度も震える。
何度も扱きあげた陰茎の先端から、白い液が何度も飛び散った。
勢い良く吹き出たそれが、男の右手にかかる。
「あ…。」
すまなそうな彼の声が漏れる。
それでも、彼の手の動きはとまらなかった、
最後の一滴まで搾り取ろうと。
最後の残滓がたれ落ちるまで、彼の両手は動き続けた、
名残惜しげに。
快楽の余韻で曇った瞳が、男の姿を写し出す。
男は右手の指を口に運んでいた。
彼の精液に舌で舐めとる。
「嫌や…ろ?」
小さな声で、彼は問いかけた。
男は首を横に振った。
「……お前の味、堪能させてもらったわ。」
舌で、口で、彼の精液を全て拭い取り、嚥下する。
青苦い味が、彼の痴態と合わさって、
それはとても、苦しく、
しかし濃厚な、
甘い味がした。
この味を、自分は知ったのだ。

彼は、自分だけのものではない、
だけど、少しずつ、
自分と彼は近づいているのかもしれない。
284Nightmare 9/9:2008/01/30(水) 22:04:30 ID:TI7zgbFQ0
それは例え間違った行為だとしても。

俯く彼の頭をかき抱き、己の腹に抱き寄せた。
「俺は……お前のもんや。」
優しく何度も、髪を梳る。
「好きにしてくれていい……。」
男の言葉に、彼は何度も頷いた。
涙を流しながら。

「ほんまに…お前は泣き虫やな。」
こんな時でも、兄のように自分をいたわる男の優しさが、
とても嬉しく、
とても切なく、
とても辛かった。

流れ続ける涙は、男の腹を暖かく濡らしていた。
285Nightmare:2008/01/30(水) 22:05:48 ID:TI7zgbFQ0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 相変わらずマンネリネタでスマソ
 | |                | |     ピッ   (・∀・; )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
286SP オガ×カオ:2008/01/30(水) 22:12:13 ID:g2s9c5Ix0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | あの最終回のあとの話です
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| ムリヤリですイロイロ
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )  
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
287SP オガ×カオ 3/1:2008/01/30(水) 22:13:18 ID:g2s9c5Ix0
「――なんでわからないんだ!」
尾方は睨みあげる薫の背広を掴み、床に引き倒した。
「お前も見てきただろう!今のSPの現状を!」
薫は恫喝を続ける尾方の手を振り払おうと、手首を掴み指に力を入れた。
だが薫の襟首を掴んでいる尾方の力は予想以上に強く、引き離せない。
「――どうしてお前だけそんな目をしてられる」
強い目が尾方を射抜く。その瞬間、尾方の中に強力な思いが湧き上った。
貶めたい。こいつを、自分のいる深く暗い沼まで。
俺の身体にまとわりつく濁った泥沼の中に。
尾方は片手で自分のネクタイを外し、押さえていた薫の両手首に巻きつけた。
柱に巻きつけ固く結び、薫のシャツを引きちぎる。
驚いて声を上げようとする薫の口に、尾方は手の平を押し当てた。
柔らかい唇から漏れる息の温度は熱く、尾方の指をわずかに湿らせた。
目の端に潤みをもたせ、薫は不安げな顔で尾方を見上げる。
ボタンの千切れたシャツを開き、尾方はその中に手を差し入れた。
なめらかな肌に指をすべらせ、小さな突起を指先がかすめた。
288SP オガ×カオ 3/2:2008/01/30(水) 22:14:27 ID:g2s9c5Ix0
途端、ビクリと薫の肩が震える。
尾方はもう片方の突起に舌先をつけ、舐めとり跳ね上げた。
薫の口を押さえていた指の隙間から、声がもらされる。
尾方の指と唇を避けるように、薫は身体を左右によじらせた。
揺れる薫の肢体を見て、尾方の奥に更なる熱が帯びる。
舌で濡れた乳首の先を、指が絡めるようにつまみあげる。
薫の腰に微かに震えが走った。
尾方を制しようと薫は足を振り上げようとするが、力が入らない。
「無駄だ。お前は今、俺の動きを捉えるだけでいっぱいだ」
尾方の手が薫の太ももに伸び、ズボンの布を引き裂いた。
閉じられようとする膝を開き、下着を同じように裂く。露になった肌を乱暴に掴んだ。
すでに十分に熱を持った尾方自身を、薫の閉じられたそこへ押し当てた。
薫の腰が逃げるように浮くが、尾方はそれを許さなかった。
指でそこを押し開き、濡れた自身の先を当てる。
胸の突起を指で弄ぶと、薫のそれは震えるように小さく開いた。
その小さな隙間に尾方は容赦なく入り込む。
289SP オガ×カオ 3/3:2008/01/30(水) 22:15:36 ID:g2s9c5Ix0
叫びそうになる薫の唇を、尾方は自分の唇で塞いだ。
舌を絡めとりながら、腰を深く薫の中へ沈めていく。
逃がれようと揺れる薫の動きは、尾方を強く締め付けた。
現実に起こっていることを拒否するように、薫はきつく目を閉じた。
視界が暗闇になると、感覚がひときわ大きく薫を蹂躙する。
そこから逃げるようにまた目を開けた。
揺れた視界の中に、尾方の顔が見える。不意に見えたものに薫は目を凝らした。
二重に浮かぶ尾方の顔。
途端、強い哀しみの波動が薫に押し寄せた。
胸を押しつぶすような絶望の波動。
遠くなる意識の中で、薫の目に尾方の姿がゆらいだ。

290SP オガ×カオ :2008/01/30(水) 22:16:43 ID:g2s9c5Ix0
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) 初書きです、萌えのあまりスマンかった
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
291おっとこじゅく!:2008/01/30(水) 23:00:49 ID:Ga2vZdc+0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
292おっとこじゅく!1/2:2008/01/30(水) 23:01:37 ID:Ga2vZdc+0
叩いてかぶってジャンケンポン!を想像していただきたい。

どちらがどうなるということで桃と伊達は今揉めている。
二人共に上半身は脱いで、学ランの下にサラシを巻きつけた臨戦態勢である。
ヂッと向き合い睨み合い、正座したつま先がそろそろ冷たくなって、ぼわぼわと膨れたように感じるほどには時間が経っている。
正座した腿の上に拳を置いて桃、筋のきれいに入った腕をガッシと組んで伊達。
お互いに交わすのは目線で、言葉ではない。
つらりと伊達の額に汗が伝った。真冬である。真冬の丑三つ時に、汗をかいている。冷や汗であった。
「―――で、どっちが、」
乾いて冷えて色を失っていた唇をぬらと舌が舐めていき、湿らせる。
伊達が発した言葉は対象を明確にしたものではない。
きっちり四隅にシーツを張り渡した布団の上、睨み合ったまま膠着している。

叩いてかぶってジャンケンポン!を想像していただきたい。

293おっとこじゅく!2/3:2008/01/30(水) 23:06:18 ID:Ga2vZdc+0
言葉を発した伊達に対して、一旦は受け止めた上で投げ返す。
「どっちが?伊達お前らしくもないな、何がどうだとはっきり言ってくれ」
善人純度の高い笑みを浮かべさせたら桃に適う者はいない。伊達は隠しもせず盛大な舌打ちをした。
暗い部屋に伊達の舌打ちが響く。無音だった部屋の均衡が崩れ、伊達はその悔しいほどな男前の顔を殊更に歪めてみせながら言葉を発する。
意外にも普段取り澄ました風情の伊達がこうして犬歯をむき出しにして話す様子を桃は好きであった。
それを自分ひとりの楽しみにするのではなく、実際に桃はそれを他人が居ようがなんであろうがはっきりと言う。
『ああしてイラ立ってる伊達は、かわいいよ』
それにますます青筋浮かべいきり立てば桃を喜ばせるのではないかと考えた伊達は、奥歯をきりきりさせてブスくれる。
いつものやりとりである、が、今日はそういう訳にはいかぬと伊達は腕を組み直した。

「てめえのケツを、一発俺に貸せってことだ」

下品な物言いをさせると伊達の頬から気品らしきものは消えていく、変わりにすさみの色気とも言うべきものが色とともに匂い立つ。
毒でもありそうなその色すら桃の頬は微笑を消さない。返したのは頷きである。

「わかった」
案外あっさりと快諾した桃に、これは殴り合いや斬りあいに発展してもおかしくなかろうと身構えていた伊達は張り詰めていた気を解く。
それじゃあ遠慮なく――伊達は痺れた足を叱りつけながら右膝を立てた。

「だけどな、伊達」
まったがかかる。土俵際でこんなことを言い出されても伊達にはやめるつもりはチラともない。
294おっとこじゅく!3/3:2008/01/30(水) 23:07:49 ID:Ga2vZdc+0
「まあはじめる前に言っておくが、これは俺の性分に関することなんだ」
「わかったわかった、聞いてやるから言ってろ」
伊達は鼻歌でも歌いそうな浮かれ具合で立てた膝ごと自分の身体を桃へとにじり寄せた、腕を伸ばして身体を抱き込もうとする。
桃が何か言い出したのを唇でいかにも情事らしく塞いでやろうと顔を近づけると、桃の目は空の凍て星よりなお冴えていた。
どきりとする、伊達は桃の眼差しに弱い。腕が差し伸べたまま空中に止まる、その手を桃の指が捉えた。
ひやりとする、伊達は桃の微笑みに弱い。


「やられた分は、十倍にして返すぜ?」


伊達の手が完全に動きを止めた。浮き立つ気分は急転直下、それどころか桃が握る手をほどきたいとすら思う。
伊達の目が泳いだ。泳ぎはじめてもすぐに壁にぶつかる。狭い部屋に逃げ場があるはずもなかった。
桃の顔は完全に無邪気に伊達の挙動を楽しんでいる。

さあどうぞ、晴れ晴れ笑う桃を前にして、伊達はおやすみを言って自分の布団へもぐりこむ。見事に素早い。
これを敵前逃亡と言うのであればそのそしり、甘んじて受けようと伊達は顔を苦くして腹にとうとう情欲をしまいこんだ。
295おっとこじゅく!:2008/01/30(水) 23:08:52 ID:Ga2vZdc+0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

文字数制限を忘れてた!二つのつもりが三つになったぜ。
オス!映画がヒットしますように!
296悪/魔/の/よ/う/な/あ/い/つ:2008/01/31(木) 01:05:18 ID:pxlo5x8j0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  昭和時代の伝説的なテレビドラマを見て
                    | 二人の過去を捏造してみました
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  将来の元刑事×将来の3億円犯人
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ エチシテマス
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
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297悪/魔/の/よ/う/な/あ/い/つ 1/5:2008/01/31(木) 01:06:54 ID:pxlo5x8j0
脱走を試みたこともある施設なのだがあてにできるところは他になく、修二は就職先に提出する身元保証書を携えて、かつて暮らした孤児院を訪ねた。
院長は代替わりをして見も知らぬ男だったが、昔ここで暮らしていた少年が大学に合格し公務員になったという事実は彼を喜ばせたらしく、食事までもてなされ泊まって行くようにと引き止められもした。

部屋は狭い4畳半。修二が暮らしていた頃には4人の少年が2段ベッドを使っていたものだが、最近は入所者も少なくなったと聞かされたばかりだ。
今この部屋は良が一人で使用している。
小さな頃から弟のように可愛がっていた良と二人、取り留めのない話をしているうちに寝入ってしまったらしい。

夜半にふと目を覚ますと良のベッドは空になっている。
修二は急に部屋の温度が下がったような気がして、自分も尿意を覚えトイレへ向かった。
298悪/魔/の/よ/う/な/あ/い/つ 2/5:2008/01/31(木) 01:08:04 ID:pxlo5x8j0
他の入所者に気兼ねして暗いトイレのドアを静かに押すと月明かりのもと、下着を取り去り尻をむき出しにした良が必死に
何かを洗っていた。
「どうしたんだお前。」
飛び跳ねるように驚いてこちらを振り向いた良は口を尖らせ、多分顔も赤らんでいるのあろう多少乱暴な調子で、
「何でもねえよ。」
と毒づいた。
「ふーん、汚したんだ」
肩越しにのぞき込む真似をすると、良はムッと膨れっつらをして洗面台に向き直った。

修二はからかう口調とはウラハラに、改めて良の後姿を見つめた。
少女のようであった面差しは大して変わったようには思えなかったのだが、
背中から見る彼は確かに骨ばり少年らしさを増していた。

「修二さん・・・」
「なんだ」
「言わないでよこんなこと」
噴出しそうになりながら、良の背中に話しかける。
「誰に言うんだよ、そんなこと」
水道を止め、下着をきつく絞ると良は修二に向き直ったが俯いたままだ。
「ここんと多いんだこんなの」
299悪/魔/の/よ/う/な/あ/い/つ 3/5:2008/01/31(木) 01:09:18 ID:pxlo5x8j0
そっと手を伸ばし頭ひとつ小さい少年の顎を掴むと持ち上げ目を覗く。
ぎょろりと光る大きな瞳が不満そうに修二を見返した。
「自分で出しちまえよ」
と、笑いかけると良は不思議そうな表情を浮かべる。
「なに、それ」
あきれた事にこの少年は、自分で自分を慰める方法があることに気が付いていないらしい。
修二は両の肩を抱き寄せ、手を掴んだ。
「ほら、この手でしごくんだよ。」
「汚いよ」
逃げる良の手を掴みなおし、ペニスに沿えその上から包むように握り締めた。
「あ・・・」
もがいていた良の動きがおとなしくなる。
修二はそのまま手首を動かし続けた。

良の息使いが段々大きくなり、それにつれて手の中の熱も熱く大きくなってくる。
皮を引き下げピンク色の先端を親指の腹でなぞる。
空いていた左手が大きく跳ね上がり修二の背中に回されシャツをキツく掴んだ。

修二は良の腰を抱き寄せ尻をまさぐった。
良は小さく体を揺らし修二の手から逃れようとするのだが、彼はそれを許さず合間から手を差し込み柔らかな袋をそっと揉みしだく。
「あ、ああ・・・」
半開きの口元から形の良い歯が覗きあえぎ声を漏らし始めた。
3004/5で終了:2008/01/31(木) 01:10:28 ID:pxlo5x8j0
いつの間にか良の手は両手とも自由になり修二の首筋にまとわり付いていた。
良のシャツをたくし上げ口元に押し込んだ。
「しっかり噛んでおけよ、声が漏れてしまうだろう。」
むき出しになった乳首を舐めると良の背中がそっくり返り、腰が突き上げられる。
「ここは自分で良くするんだ。」
と、耳元でささやき良の手を乳首へ導くと、濡れ祖ばった良のペニスを握りなおしゆっくりと擦り上げた。

「・・・修二さん、なんか変・・・ヤダ」
良の甘いあえぎ声を聞きながら修二は戸惑っていた、自分自身も熱く固く昂ぶってきたのだ。
ただのいたずらのつもりだったのだが、コレではまるでセックスをしていると言えないか。

アレはオンナとスルモノダ。

修二は自分の中の欲望を打ち消すようにきつく激しく良を揺さぶった。
耐え切れずに小さな悲鳴とともに良はあっけなく達していた。

吐精のショックに呆然としている良を尻目に、修二はさっさと自分の体を轢きはがし手を洗った。
「先に部屋へ戻っていろ」
良はモソモソと床に脱ぎ捨てられていたパジャマを直に穿きつけ廊下へ出てゆく。
残された修二は今しがた見せた良の媚態を思い出しながら、自分自身の欲望にカタをつけるとそっと部屋に戻った。
後ろめたさからいくつかの言い訳を頭の中でひねくりだし、そっと部屋に戻ると良は修二が寝ていたベッドに潜り込んですっかり寝息を立てて寝入っている。
自分たちが何をしたのか気にしているのか気にならないのか、天使を思わせるあどけない寝顔を覗き込みながら修二はそっとため息をついた。
301悪/魔/の/よ/う/な/あ/い/つ:2008/01/31(木) 01:11:53 ID:pxlo5x8j0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 
 | |                | |     ピッ   (・∀・; ) 塾長〜・・・スミマセン。分量間違えました。
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
302風と木の名無しさん:2008/01/31(木) 01:42:22 ID:Zw/YLsxHO
大義であったぞ>>295殿!
拙者恥ずかしながら萌えもうした…
303風と木の名無しさん:2008/01/31(木) 01:50:05 ID:JnLb6IAB0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  肉体的な痛い描写とエロあり。
                     |  not版権。学園モノ。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|   誘導されてきました。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

身内ネタの改変にて前提失礼。
少年:鬼畜攻め。以前彼を無理やり襲いました。
彼:少年に襲われたことに屈辱を感じ、恨んでます。 
3041:2008/01/31(木) 01:51:18 ID:JnLb6IAB0


「私は少し見回りしてきますけど、気分がよくなったら勝手に出て行ってよいので」
「ありがとう、ございます…」
保険医の気遣いの言葉と、生徒の辛そうな感謝の言葉。保健室にはよくある光景。
保険医がカーテンを閉めると、少年は布団にもぐり、目を閉じた。
少年はふと背中に違和感を感じ、身を起こす。自分の髪留めが当たっていたらしい。紐を解き、枕元に置いて再び倒れこむ。

誰かの足音が室内に響いた。新しい怪我人か病人か、どちらにしても保険医はいないし、少年には関係ないはずであった。
しかし、怪我人でも病人でもない足音は、彼のベットの前のカーテンに立った。
足音は、しゃっと無遠慮にカーテンの中に入ってきた。
「よう」
まぶたになんとか抵抗しつつ、目を開ける。少年の目の前にいるのは、赤髪の学生服。それが見慣れた人物である、と認識するには数秒の時間を要した様子であった。
「ん…」
同時に、彼に焦点を当てるのにも苦労したように見え、彼はその反応の悪さを心の中で楽しんだ。
「見舞いに…来てくれたの? 嬉しい、なあ…」
弱弱しい声のまま無理に笑顔を作ってみせる。しかし少年は、冷静に彼を警戒していた。少年は彼に憎まれている存在である。今紡いだ言葉も、裏は嫌味である。
3052:2008/01/31(木) 01:51:49 ID:JnLb6IAB0
「苦しそうだな」
彼は嬉しそうに口をゆがめる。いつもなら反論のひとつやふたつでも返すところだ。しかし、そんなことなどどうでもいいほど、目の前の少年が弱っているのが快感だった。
掛け布団をはぎ、少年の上半身を無理やり起こさせ、自分の上に座らせる。もともと小柄だから、そう苦労はなかった。
「待っ」
必要な部分のみを露出させ、あてがう。少年の多少の抵抗はあったが、この状態では無いも同然であった。
「っが、は!」
そこから体へと走る貫通、激痛。慣らしもしなかったから当然である。小さな体にとって、彼は少々でもなく大きすぎる。
彼は少年の体のほうを往復させる。その衝撃のたびに、痛みで表情が苦痛に歪む様子がたまらなかった。体に対しては長い髪がさらさらと彼に触れる。
「あぁ!がっ、ぎっ、うぁ!」
彼のほうはというと、無表情に、ただ機械的に作業をこなしていた。技術もなんもあったもんではない。むしろ、どうすれば少年が苦痛に思うか、それだけで動く。心の中では非常に楽しんでいるのに、顔が仮面のようだったのが彼自身不思議であった。
やがて、彼は一方的に少年で果てた。

「俺の気持ちが判ったか」
肩で息をする少年を見下しながら、ベットに前へへたり込む彼に乗る。
「もう、やめ」
再び衝撃。1度で終わらせる気はなかったらしい。
苦しそうな少年の声は、心を満たす音楽のように聞こえ、彼の優越感を満足させた。
3063:2008/01/31(木) 01:54:16 ID:JnLb6IAB0
***

「これにこりたらもう俺にちょっかい出すな」
大して乱れているわけではない服を調え、一部をふき取る。
相手の乱れようはすさまじかったが、あえて何もしてやらない。少年一人が動けずに誰かに見られても自分には関係なかったからだ。
やることはやった、ときびすを返すと、少年に袖をつかまれていた。
「何だよ」
うつぶせ状態の少年は、頬を赤くさせた顔を上げ、一言、いや一単語つぶやいた。
「もっと」

「はぁ!?」
「いやぁ受け身ってのもなかなかいいもんだね。
 もっとやろ? あ、それとも今度俺がサービスしてあげようか?」
さっきの弱弱しい態度はどこへやら、少年は嬉しそうに口を動かす。これに驚かない相手はいないだろう。狼狽しながら彼は返する。
「お、お前風邪は!?
 ヤってる最中やめろとかいってじゃねーか!」
「ああ。汗かいたら治っちゃった。ありがとう!
 っていうか、やめてとか拒否するのはお約束っしょ、お約束。実際楽しかったっしょ?
 でも前戯なしは相手が俺だからよかったけど普通の人にやるのはダメよ、危険だから。
 ね、今度は俺楽しませて」
驚いたことに、少年は自分がした行為に対してへとも思ってない様子で、というより、演技であったらしい。瞳を輝かせて期待を彼に向ける。
「冗談じゃねえ!」
その場に似合わない、無邪気な笑顔を浮かべる少年に、怒りか、騙されたことに対しての恥か、彼は顔を真っ赤にし、つかまれている袖を振り切りってカーテンの外に出た。
307風と木の名無しさん:2008/01/31(木) 01:54:52 ID:JnLb6IAB0

 ____________
 | __________  |
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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 801書くのは初めてで
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) いろいろ至ってなかったらごめんなさい。
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
308風と木の名無しさん:2008/01/31(木) 02:15:04 ID:thguJWnA0
>>295
押忍!ステキであります!!
もうどっちがどっちでもいいよ!

なんだかんだ言ってラブラブじゃないですかこやつら
309トライアングル side A 1/7:2008/01/31(木) 16:26:35 ID:3m0lKAOg0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
※ナマモノ注意。ぷろやきう北の球団です。三篇構成になる予定。

耳馴染みの着信音が流れたのは、ほんの数秒前のことだった。
――またか。
半ば呆れながらも携帯を手に取ってしまうのは、条件反射みたいなものか。
携帯を操作してメールの受信BOXを開くと、これまたお馴染みの文面が顔を覗かせる。
『今日は何やってるんだ?』
休日ともなれば決まって送られてくるメール。
毎回用件も同じなら、送り主も決まって同じ。さみしがりな二人のどちらかだ。
まぁ着信音の時点でどちらが犯人かなんて丸わかりなわけだけど。
どうやら今日は大酒のみの先輩の番らしい。
――さて、何て返そうか。
携帯の画面と睨めっこをしていると、突然、画面が切り替わった。
「?」
手紙が飛んでくるアニメーションが流れたと思ったら、これまた耳馴染みの着信音が響き渡る。
――ちょっと待て。あの人たちタイミング良すぎだろ。
いや、この場合は悪いと言った方がいいんだろうか。
続けざまに届いたメールは、先ほど届いたものと一字一句同じで――
違うのは二点。差出人と絵文字が使われていることだけだ。
狙ったかのような偶然に俺はつい笑ってしまう。
こんな所でまで気が合うなんて、どれだけ仲が良いんですか先輩達。
310トライアングル side A 2/7:2008/01/31(木) 16:27:19 ID:3m0lKAOg0
「――――」
これで返す手間も二倍に増えたわけだが、どうしようか。
実際の所、特に用事があるわけでもなかったので、「家でゴロゴロしてます」と返す他無い。
しかしあれだけ見事なシンクロを見せられてしまっては、こちらとしても何か面白みのある返信をすべきだろう。
じゃないと、何だかちょっと悔しいし。
「――あ」
良い方法を思いついた。
俺はいつもよりも速いテンポで親指を動かして二通のメールを完成させた。
『今、○○さんとメールをしているところです』
大酒呑みの先輩に対しては、○○には爽やかな先輩の名を。
爽やかな先輩に対しては、○○には大酒のみの先輩の名を。
「送信っと」
送信ボタンを続けざまに押す。
あの人たちはいったいどんな反応を見せるのだろうか。

やがて、再びメールの着信を知らせる音が鳴った。
今度もまた順番は同じ。メールの届いた誤差も同じ。
そう、狙い済ましたかのように同じで。
「?」
若干の気味の悪さを感じつつ、俺はメールを開いた。

「…………」
予感的中とはこの事か。
どうしてこうも悪い予感って言うのは当たるものなのだろう。
どうせなら試合中にこういった運は使いたいものだ。
311トライアングル side A 3/7:2008/01/31(木) 16:28:47 ID:3m0lKAOg0
『じゃあ、お前はどっちの相手をしたいの?』
返ってきたメールに書かれていた内容は、差出人と絵文字の有無以外はやっぱり同じで。
先ほどよりもさらに返答し辛い問いかけに、俺は頭を抱えた。
「……何も、こんな返し方しなくっても」
迂闊。先輩方の方が一枚も二枚も上手だった。
あの人たちは裏で手を結んだに違いない。その上で俺をからかっているのだ。
「どっちの、って言われてもなぁ」
その問いの真の意味を、俺は嫌と言うほど理解していた。
単刀直入に言うならば「どちらに抱かれたいのか」と問われていると同じなのだ。
俺たち三人の関係はと言うと、某先輩の言葉を借りるならば「最強トライアングル」とでも称するようなもので。
傍目からも一目瞭然な俺たちの仲の良さは、チーム内にも、ファンの間にも広まっている。
そりゃ、一緒にビアガーデンに乱入したり、TVやラジオであれだけ互いの話題を出し合っていたらそれも当然だろう。
――だが、それはあくまで表の関係だ。
もちろん、表が主ではあるのだが、俺たちには秘密裏な関係があるのだった。
始まりが何時だったのか、きっかけが何だったのか、今となっては思い出せやしない。
けれど、いつの間にかそういう流れが出来ていた。
三人で食事に行くまでは、何らおかしな点は無い、普通の関係。
関係が変わるのは、終わり際。俺はどちらかに連れられて、そのまま一夜を共にする。
まぁその先に行うことは……げふん、ごふん、とりあえず俺が相手を「癒してあげている」のは確かである。
その詳細はこれまでの発言から察していただきたい。
えぇい、そんな目で見るな。哀れむような目で見るな。俺らは好きでやってるんだ。
脳内にいる何者かと激しい口論を繰り広げると、俺は改めてそもそもの論点に立ち返った。
312トライアングル side A 4/7:2008/01/31(木) 16:29:29 ID:3m0lKAOg0
「どちら、か」
そう考えてみれば、自分から相手を選んだことなんて、一度たりともなかった。
どちらにお持ち帰りされるかは、いつもランダムで。言わば、先輩方の気まぐれだったからだ。
何となくで付いていって、そのまま落ちていく。俺は、流されるまま、溺れれば良かった。
だから、こんなこと考えたこともなかった。
「――――」
二通りの未来を思い描いてみる。
何度も経験したはずの光景なのに、何故か胸がグッと詰まって、息苦しさに襲われた。
快楽も、安心も、その未来には見出せなかった。
「…………そんなの」
携帯を額に当てて、そっと呟く。
「……選べるわけ、無いじゃないですか」
それが、本心だった。
そう、選べるわけが無い。だって、俺は、二人のことが――

「――――?」
けたたましく鳴り響く着信音が、俺を現実に引き戻す。
『本気にしたか?』
新たに届いたメールには、そう書かれていた。
再び、選択肢は先輩方の手に委ねられた。やっぱり俺はからかわれていただけなのだった。
「何だ、やっぱり冗談――」
ホッとして気が緩んだせいだろう。
直ぐそこまで出掛かっていた言葉が思い出されて、俺は、自滅した。
313トライアングル side A 5/7:2008/01/31(木) 16:30:11 ID:3m0lKAOg0
「――――――!!!!!」
声に鳴らない叫び声が部屋中に木霊する。
明らかに不審がられる奇声だったが、隣部屋の奴が熱唱中なのが幸いした。今日ばかりは感謝しておく。
顔は既に真っ赤だった。確認しては居ないが、これだけ熱を帯びているのだから真っ赤に違いない。
ゴロゴロゴロゴロと床の上を転がりまわっても、そう思ってしまったのは事実だ。隠蔽できやしない。
「…………」
心臓はバクバクと早い脈を打っていて、現実逃避を許さなかった。
一旦、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
そして、段々と冷静になってきた頭をフル回転させていく。
分析対象は、胸に生じたままの、未知の感情だ。

俺は、あの二人のことをどう思っているのだろう――
「……まぁ、嫌いっていうわけでは無いよなぁ」
そう、嫌いではない。
嫌いだったら、あんな行為に溺れたりはしない。
でも、この感情を、全て肯定するわけにはいかない。
あんなのは擬似恋愛だ。いや、恋愛にすら到達していない。ただの戯れだ。
あの人たちが俺を求めるのも、手軽だからという、ただそれだけの理由だ。
絶対、そうに決まってる。
「――嫌いじゃ、ない」
だからと言って、全て否定するわけにもいかないから、結局、そうとしか言えない。
必死で自らに言い聞かせる言葉は「好き」と同意語で。
好意は好意に違いないのだから、たちが悪い。
314トライアングル side A 6/7:2008/01/31(木) 16:37:04 ID:3m0lKAOg0
三度、携帯が着信を伝える。
交互にメールを送ってくるのは何か意図があるからなのか、それとも単なる偶然なのか。
綴られた言葉の端端には、俺の機嫌を窺う旨が感じられた。
俺が全然返事を返さないものだから、先輩たちの方が不安になったようだ。
心の中で、文句が浮かんでは、直ぐに消える。
あれだけ沸騰したはずの熱も、引いていく。
伝えたいことは、山ほどあった。ぶつけたい不満も、少なからずあった。
それなのに――
「馬鹿」
呟いたのは、ただ、それだけ。
画面に目を落とすと半ば無意識に打っていた言葉が目に飛び込んでくる。
『まさか、そんなわけないじゃないですか』
差しさわりの無い返事に、我ながら苦笑いを浮かべる。
でも、直ぐに同じ先輩から、
『良かった』
と返信が来て、まぁこれで良かったのだと本気で思えた。
文字だけじゃわからないけど、きっと、あの人は本気で「良かった」と思ってくれているのだろう。
あの人の嫌味なまでに爽やかな笑顔が頭に浮かぶ。
何もかもがどうでも良くなるくらい、爽やかな笑顔だった。
何と言うか、どうにも考えすぎてしまう自分が、バカらしく思えるくらいに。
315トライアングル side A 7/7:2008/01/31(木) 16:37:56 ID:3m0lKAOg0
そうこうしている内に、もう一方の先輩からメールが届く。
その内容――というより字面に俺は笑うしかなかった。
『暇なら一緒に食事にでも行くか』
その下には無駄な改行が二行ばかり挿入された後に、”三人で”と付け加えられていた。
本当素直じゃないんだから、この天邪鬼め。さそり座B型め――って、それについては人のこと言えないか。
――さて、何て返そうか。
厳密に言うならば、今の俺は暇なんかではなかった。
休日の貴重な時間は、先輩たちの手によって現在進行形で削られているのだ。
刻一刻、刻一刻と――そしてそれは、この分だと夜遅くまで終わりそうに無いだろう。

一通りのやり取りを終えた頃には、満タンだったはずの携帯の充電も一つ減っていた。
「えーっと、充電器は、と」
見回すと、机の上に目当ての品はあった。
携帯をセットすると、赤いランプが灯る。俺は「お疲れ様」とその働きを労った。
集合時間までにはまだ余裕がある。その頃にはこいつの腹もいっぱいになっていることだろう。
そして俺はと言うと、いつものように大酒呑みで大食いの先輩の長話に付き合わされて、お酒が呑めない先輩と一緒にそれを聴いてあげて

、そしてその後には「癒し」と称したあれやこれやが待っていて――
ため息のち、晴れ。
あの人たちのことを思うと自然と笑みが零れてしまう時点で、この状況が嫌いでは無いことを自覚させられる。
「……いや、こういうのはむしろ――好き、っていうのかな」
悔しいけれど、俺はそう認めざるを得なかったのだった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
side Bに続きます。後日投下します。
316風と木の名無しさん:2008/01/31(木) 16:41:44 ID:jieEZTR70
>>315
リアルタイムで萌えますた!感謝感激です
sideB、楽しみに首を長くして待ちます!酸Pとか…萌え〜
317風と木の名無しさん:2008/01/31(木) 23:54:34 ID:yUaAlzsE0
>>315
トライアングル来たー!GJ!
318仮面・三位一体(英訳) 長男←次男:2008/02/01(金) 01:34:02 ID:JTPbBbyH0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  どうにも萌えすぎたので。4話のとあるシーン。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  次男長男のつもりが長男次男に。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
319仮面・三位一体(英訳) 長男←次男 1/2:2008/02/01(金) 01:34:29 ID:JTPbBbyH0
教えられた電話番号を初めてダイヤルする。
洵がいない、そう告げた時に電話口から聞こえた声は、どこか昔の兄に戻っている気がした。
ファミリーレストランの側、ポートラムの駅で落ち合う事になり、慎は広い道路を見つめる。
人気も車の通りもない夜半、ただ諒の赤い車が見えるのを待っていた。

ふわり、落ちてきた白い羽。
目の前には、赤い服の女の子が立っている。
「この羽…」
拾い上げた、良く見知った白い羽。
女の子に差し出せば、強い風が吹いて手の中から飛び去っていく。

次の瞬間、眩しい光が自分に迫っていた。
慎は驚いて尻餅をつく。目の前で止まった光、次に聞こえてきたのは、待ち望んでいた声だった。
「慎!」
「…に、兄ちゃん…」
何故か慎は動くことが出来ず、ゆっくり近づいてくる諒の姿を見つめる。
「車道の真ん中で突っ立ってるんじゃない。危ないだろう」
厳しい声と比例した眼差しで見下ろされ、慎は言葉なく俯いてしまう。
脳裏に浮かぶのは、仲良くなったクラスメイトと共に事件に巻き込まれた夜。
自分がやったわけじゃない、なのに何故怖い顔をするんだという訴えは聞き流されてしまった。
数時間前、ようやく3人が揃った食卓でもそうだった。はっきりとした理由も告げず、側から離れろなどと突き放す兄の物言いに慎は納得出来なかった。
「……んで、一緒にいちゃダメなんだよ…」
あの時の言葉を再び呟く慎の頭上へ、諒が小さく溜息をついた。
「このままでは邪魔になる」
諒の手が伸び、座りこんだままだった慎は引き起こされる。
320仮面・三位一体(英訳) 長男←次男 2/2:2008/02/01(金) 01:34:51 ID:JTPbBbyH0
力強くはあるが決して乱暴ではないその手に、慎はますます混乱した。
立ち上がり、歩き出そうとしているのにもかかわらずまだ離れない手を振り解こうとして腕を動かす。
しかし、
「慎」
たった一言、諒が呼ぶ自分の名前を聞いただけで、それは中途半端に止まってしまった。
「…何、兄ちゃん」
口から出た返事は思いのほか低く、かなりぶっきらぼうな口調になってしまう。
再び聞こえる溜息の音。諒の顔を見るのが怖くて必死に顔を逸らす。
「あまり面倒をかけるな」
穏やかな――さっき、電話越しに聞いたような柔らかな口調で告げられる言葉に、慎が弾かれたように顔を上げる。
グラス越し、一瞬だけ絡んだ視線は、確かに昼間見た幼い頃の写真と同じだった。
「……ごめん、兄ちゃん」
小さく零した謝罪の声に、諒が短く「もういい」と告げる。
それは再会後のそっけない声に戻っていて、慎は少し寂しい気持ちがした。


赤い服の女の子、成長した結祈の姿。
共に幻と頭で理解する事は出来ても、感情がついていかなかった。
それは、今まで遭遇した出来事にも共通する。時折見ていた夢が不可解な現実となって目の前に広がっている事に戸惑っていた。
だが、意識を失った洵へ駆け寄った諒の姿を見て、慎はひとまず兄へのわだかまりを吹っ切る事が出来た。
分からないことは山ほどある。諒が何かを隠しているかもしれないという刑事の言葉は確かに真実だった。
それでも、兄を信じようと慎は思う。

分からないことはいつか兄が教えてくれる、そう、信じようと。
321仮面・三位一体(英訳) 長男←次男 2/2:2008/02/01(金) 01:35:30 ID:JTPbBbyH0

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 | __________  |
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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ お邪魔致しました。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
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322ナマモノ&マイナー要注意:2008/02/01(金) 06:02:03 ID:LFAXIT5LO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
マイナー邦楽より由良由良定刻の六弦唄→四弦
勇気だして投下します。
323雨が降る日は 1/4:2008/02/01(金) 06:20:11 ID:LFAXIT5LO
端正な顔立ちと青白い肌は、ひょっとしたらぬらぬらと光るその黒髪を際立たせる為にあるのかもしれない。
『あ…ども。初めまして』
『ーどうも』
初対面でそんな身勝手な感想を抱いてしまう原因は、長い年月を経て、彼自身の代名詞となる程にその体を占めている。
夜光虫がどんな生き物か当時も今もはっきりとは分かっていないのだけれど(図鑑で何度も調べたのに、何故かいつもすぐに忘れてしまう)、きっとそれは擬人化したらこうなるのだろうと。
いつどんな風にどれくらい神経を割いているのか、いっそ女に産まれた方が良かったんじゃないかと、度々思わざるを得ないそれ。

「四弦さんてどこのシャンプー使ってんですかね、羨ましい」
「さあ…そう言う話しないですから」
「どこの美容院行ってるとか」
「ー分かんないですね」
20年。娘よりも妻よりも長く、会話のネタが尽きる程の時間を一緒に過ごしているのに、その話題が上った事は無かった。
特別意識して避けた訳じゃなく、単に触れられなかったのだ。無意識の内に。よく知りもしないくせに神聖化して。
(バカじゃねぇの)
324雨が降る日は 2/4:2008/02/01(金) 06:23:43 ID:LFAXIT5LO
格好こそ漫画の登場人物を思わせるほど非現実的なものだけと、彼が人間である事なんて自分が一番知っている。飯も食うし大声出して笑うしトイレにだって行く。
妙なイメージを持たれる事の不快感は自分だって知っているのに。何を、そんなに、遠慮するのか。

「……」
「ん?」
「雨」
「ー布団干すんじゃなかったな」
練習が終わり、用事があるのかバタバタと帰ったドラマーを見送った後。特に用も無いのに2人でモタモタしていた所に、窓をぱたぱたと刺激する水音。
「さっき『湿気がある』って言ってたの、当たったね」
「今に始まった事じゃない。…髪がベタベタするから」
確かに。雨の日限定のその口癖は、歌詞として使ってしまったくらい耳にこびりついている。鬱陶しそうにサイドの髪を耳にかける仕草も、不機嫌そうに皺の寄る眉間も、日常生活の光景でしかない。目に焼き付いたかなんて、一々意識しない。
「雨は嫌い?」
「うん」
「湿気のせい?」
「だから髪が「でもこんなにきれいなのに」
「!?」
エアガンの銃口を向けられて瞬時に飛び立つカラスを思わせた。静かな余韻を残して、髪が暴れる。「あ…ごめん」
「ーびっくりした」
325雨が降る日は 3/4:2008/02/01(金) 06:26:29 ID:LFAXIT5LO
たまに見せる下手くそなその半笑いはシャイな彼なりの精一杯の社会性の表れで、自分はこの表情がお気に入りだった。「昨日の取材で、髪が羨ましいって…ライターが女の人だったんだよ」
「ああ…」
「洗うの大変じゃない?」
「もう馴れたから…別にそんなに色々やってる訳じゃないけど」
「きれいなのに」
「…ありがとうって言った方が良いのかな」
これ以上この話を続けたらイジメになってしまうかもしれない。
「いやいや…そろそろ帰んなきゃ」
「布団?」
「カミさん今外だし、子供もいないし」
狂ってぐるぐると回り続けていたコンパスの針が、ようやくぴたりと止まった様な錯覚。砂漠の真ん中、もう迷わない。砂に足を取られながら、歩く。
「傘は?」
「無いけど迎え来るから」
「ん…じゃあ」
「ん」
そう言えば彼が車の免許を持っているかどうかもよく知らない。
20年。そこらの動物ならまず死んでしまう時間。
(他愛の無い話はいくらでもして来たんだけど)
吐き気がする程長く濃い間柄のつもりだったけど、自分の思い過ごしでしか無かったのか。例えば「迎えに来る」のが「誰」なのか、それすら自分はたった今知り損ねた。
326雨が降る日は 4/4:2008/02/01(金) 06:29:48 ID:LFAXIT5LO
(ーだからどうしたって気もするけど)
あの髪がまだ肩に付かない頃から自分は彼を知っている。小さな事柄の一つや二つじゃ覆せない関係を、今更どうして考え直す必要があるだろう。

うつろな表情で迎えを待つ彼を目の端で確認して、勢いを増した雨の音に耳を傾ける。不思議と、音楽をかける気にはなれなかった。
(20年か…)
賛辞を言うついでに何の気なしに触れた髪は、今まで出会ったどんな女のそれよりも柔らかく、幾筋か混じった白髪さえ美しいと思った。いつも病的な色の肌が赤く染まり、目には恥じらいと驚きと警戒の光が浮かんで、まるで全く違う生き物に見えた。あんなもの、俺は知らない。
(ーだからどうした)
初めてだ。あんな表情も、あの黒髪に触れたのも。そしてそれは彼に笑顔を繕わせるほどの出来事だった。
こんなに近くにいるのに、ずっとそばにいるのに、触れられない場所がまだ腐る程残ってる。
「…畜生」

2人きりだった小さな砂漠に雨が降り注いでぬかるみに足がはまる
でもきっと君はそんなのをものともせず1人行ってしまう
君に触れられない俺をそのままに
327風と木の名無しさん:2008/02/01(金) 06:31:38 ID:LFAXIT5LO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
一部改行失敗サーセン!
お目汚し失礼しました。
328風と木の名無しさん:2008/02/01(金) 22:56:10 ID:iagi0zUf0
>>327
ちょwマイナーかつぶさ萌えにも程があんよww
とかいいつつ個人的には唄の人は受属性、髪の人は攻属性
だと昔友人に主張していた私が通りすがりに反応w
329風と木の名無しさん:2008/02/02(土) 04:44:53 ID:sO5KsZLWO
>>318-321
三位一体ハマりたての今、燃料投下嬉しいです!GJ!
ご馳走様です!
330トライアングル side B 1/6:2008/02/02(土) 15:53:25 ID:Zb4valfz0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )感想ありがとうございます!
※ナマモノ注意。ぷろやきう北の球団です。
>>315の続き。side Aと対になってます。

通信を切り、ため息を付く。
「ちょっと、アイツに甘すぎやしませんか?」
俺がそう指摘すると、目の前に居る彼は罰の悪そうな笑みを浮かべた。
「まぁ、あんまり苛めるのも可哀想だしね」
「はぁ」
そんなやり取りを続けていると、アイツからメールが届いた。
「何て返ってきたの?」
俺がメールを確認しようとすると、彼も身を乗り出して小さな画面を覗き込む。
「そんなに気になるならそっちがメールすれば良かったじゃないですか」
文句を言いながらも、彼が見やすいようにと携帯を持ち変える。
『わかりました!』
一行で、さらに絵文字はビックリマークのみ。”わかりま”がついてるだけまだマシか。
ただソレだけのメールだというのに、彼は緊張の糸が切れたみたいにテーブルにうな垂れた。
「良かった、来てくれるんだ」
その呟きにも、安堵の色が垣間見える。
「そりゃ来ますよ。どうせ暇なんだろうし」
「いや、そうだけど、臍曲げてるんじゃないかって思うと、どうしてもね」
「だったら最初っからあんなこと聞かなきゃ良かったんですよ」
「――――」
痛いところをつかれたためだろう、彼が押し黙る。
――そう、そもそもの発端は彼にこそあるのだった。
331トライアングル side B 2/6:2008/02/02(土) 15:54:48 ID:Zb4valfz0
彼と会ったのは、偶然だった。外出先で声をかけられたのだ。
休日と言っても特に何もすることが無いのは、俺も彼も同じで。
どうせならアイツも誘おうと話が纏まったところで、彼はこんなことを言い出した。
「ただ誘うだけじゃ面白くない」
その言葉の下に提案されたのが、同時メール攻撃だった。
文字にしてしまうと、何とも安っぽい名称だとつくづく思う。
同時に動くという意味ではダブルスチールとかと似たようなもんだろうか、いや、それも違うか。
まぁそんなことは全く関係ないので置いといて。
つまりは、わざと偶然を装ってアイツの反応を伺おうという意地の悪い遊びを決行したわけだ。
とりあえずは俺の家に腰を据えて、俺たちはアイツからの返信を待った。
すると、予想外の切り返しをされた。
俺に対しては彼と。彼に対しては俺とメールをしている所だという返信がなされたのである。
「一緒に居るってこと、素直に明かしますか?」
このまま騙し続けているのも面倒だったので、俺は彼にそう促した。
しかし、中々答えは返ってこなかった。彼は何やら考え込んでいるようだった。
そして、
「せっかくだから、確かめてみない?」
「何をですか?」
「アイツが、俺とマ/ッ/ク、どっちを選ぶか」
332トライアングル side B 3/6:2008/02/02(土) 15:56:08 ID:Zb4valfz0
「……は?」
とんでもない提案に唖然としたのは、ほんの一瞬。
「それ、どういう意味ですか?」
そう問いかけてはみたものの、彼が冗談で言っているのでは無いことは、その表情や声色から直ぐにわかった。
「マックは気にならないの?」
「――――」
そして、彼が言いたいことも既にわかっていた。
俺の意思を察してくれたのだろう。問わずとも、彼は断言してくれた。
「アイツさ、今まで一度も自分から選んだ事無いんだよね」
「あぁ――そうでしたね」
言われてみれば、アイツの所有権を選択するのは、いつも俺たちの側だった。
アイツの意志なんて無視して、俺たちの気分によって所有権は行き来した。
時にはじゃんけんで決めたりもしていたのだから、我ながら酷い話だと思う。
それでもアイツは素直に付いて来てくれた。
文句を言いながらも何だかんだで付き合ってくれた。
まぁアイツだって子どもじゃないし、遊びは遊びだと割り切っているのだろうけど。
「本当はどっちの相手をしたいのかって、凄く気にならない?」
もし、アイツがこんないい加減な現状を知ったりしたら、さすがに呆れるだろうか。
それとも、怒りをぶつけてくるのだろうか。それに関しては、反応を知りたい気もした。
「因幡さんは気になるんですか?」
俺はアイツがどちらを選ぶのかなんて、一度も気にしたことが無かった。
こうした現状が当たり前だと思っていたし、何の違和感も無かったからだ。
「うん、気になるよ、すごくね」
だから彼がそんなことを気にしていたというのは意外だった。
これもプレイボーイの性ゆえか、それとも負けず嫌いの性ゆえか。
333トライアングル side B 4/6:2008/02/02(土) 15:57:38 ID:Zb4valfz0
「俺は、因幡さんの方を選ぶと思いますよ」
素直に思ったままを口にする。
大体、V旅行ゴルフでは一緒にカートに乗ったり何だり見せ付けてたでしょう、貴方らは。
それに、決定的な証拠だって、俺は知っているのだ。
「そんなの、本人に聞いてみないとわからないでしょう」
それなのに、何をそんなに気にする必要があるんだろうか。
遊びにそこまで真剣な答えを求める方が野暮な話と言うもので。
単純に割り切ってしまえば、もっと気楽に付き合えるっていうもんでしょ、こんなの。
「――まぁ、そりゃそうですけど」
本音は、心の中だけに留めておく。こっちで揉め事を起すのも面倒な話だ。
「だから、試しに聞いてみたいんだよね」
断る理由もなかったので、俺は首を縦に振った。
そんなこんなで始まった駆け引きだったというのに、先に彼の方が折れたというのだからおかしな話だ。

「でも、何で答えなかったんでしょうかね、アイツ」
結局、アイツがどちらかを選ぶことはなかった。
ということは駆け引きとしては、こちらの負けとなるか。
「うーん、俺たちに悪いと思ったとか?」
アイツの性格を考えるなら、それもあり得るだろう。
だが、あの長い沈黙にはそれ以上の理由があるような気がした。
この点に関しては、正直気になる。
334トライアングル side B 5/6:2008/02/02(土) 15:59:28 ID:Zb4valfz0
「――もしかしたら、ですよ」
指示した集合場所へ移動する最中、俺は彼にこう切り出した。
「アイツ、本当は嫌だったりするんじゃないですかね」
「えっ」
ハンドルを握る彼の表情から余裕が消える。
「あくまで一つの可能性としてですけど」
俺はそう定義してから、自論を続けた。
「本当は嫌だけど仕方ないから付き合ってる、そういう可能性もあるんじゃないですか。だから、選ぶなんて気も起きなかったとか」
詭弁だと思う。でも、もしかしたらとも思う。
絶対なんて言いきれないのが人間だ。どれだけ仲が良くったって、相手の胸の内を完全に読み取ることは出来やしない。
「まぁ俺の主観なんて当てにならないでしょうけど」
あの一線を越えた関係の中で、アイツが何を思っているかなんて、断言できる自信は無かった。
情事を思い返そうとしても、ぼやっとした靄がかかってしまうのは、いつも酔った状態だからだろうか。
覚えているのは、体温や鼓動と言った、肌の触れ合いばかり。
戯れでは、心が溶け合うことなんてない。だから、アイツの本心だって知れやしない。
あの時間は、浮世離れしたもののように思える。
確かに存在しているはずなのに、目が覚めてしまえば夢とも現実とも知れないような時間だと。
335トライアングル side B 6/6:2008/02/02(土) 16:02:04 ID:Zb4valfz0
「…………」
彼も同じようなことを考えているのだろうか。暫く沈黙が続いた。
車の走行音と、変わり行く街並みばかりが、俺の感覚を刺激する。
「ねぇ、マ/ッ/ク」
先に口を開いたのは、彼の方だった。
「それ、どのくらい信憑性があるのかな」
「さぁ、俺にはわかりませんよ」
「うーん、そうだよね」
不安になるくらいなら、もっとアイツを信じてやればいいのに。
そんなことを思いながら、彼の横顔を見つめ、その表情に、はたと気づく。
――あぁ、ここに一人居たか、大きな子どもが。
「そんなに気になるんでしたら」
だったら簡単だ。最も単純な方法がある。
信号が赤に変わる。
俺の方に視線を向けた彼に向かって、俺は、ニヤリと笑ってこう言った。
「直接本人に聞いてみれば良いんですよ。どうせ直ぐに会えるんですし」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )次回でラストです。
伏字一箇所失敗してたorz
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  思った以上に長くなってしまった…。(全編で)
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 長いのでその1から読むことをお勧めします。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「でも、あの人間はなぜ私たちにあんなことをさせたのだろう。もう少しまともなことをやらせてもよかったのじゃないかな」
『おぬし、あのハーフエルフを愛しておるな。孤独な、魂を百年以上も抱えたあのハーフエルフを』
「うっ」
『この儀式はおぬしの心の底からの望み。あのハーフエルフを抱きたいというな』
「それは…」
『どうじゃ?体だけでもつながった喜び。幾度もあのハーフエルフを抱いただろう、わしは無償で占ってもよかったんじゃがの、あまりのおぬしの一途さに打たれて』
「それは?」
『以前にも似たようなことがあっての。そのときは願ってるほうが無理強いをして相手と不仲になってしまっての。だがおぬしなら…』
「…俺が…」
『おぬしならあの孤独なハーフエルフを癒してやれると思ってな。まあ、そんなことは言ってもただの遊びじゃ、老婆のな』
「お前を…」
『まあ、ええもんみしてもらったわい、やはりハーフエルフといえども、肌が綺麗じゃのう』
ぷち。
頭に血管が浮かび上がる。
なんだかんだ言ってただ見たいだけだったのと違うか、あの老婆。
「?」
スペルが見上げてくる。
「何でもねぇ、とっとと寝てろ、俺が火の番をしてるから」
老婆の言葉が耳について、今日は眠れそうにない。毛布を被る。
スペルをひざに転がすと、満天の星空を見た。
「私の番になったら起こして、クィン」
「おう。それまで寝てろ」
星は光り、美しかった。
スペルが甘えるようにひざに顔を擦り付けてきた。
髪をなでる。
そのうち寝息が聞こえた。
いつも眉間に皺寄せて。何かを警戒するように眠っていたスペル。
あの夜から、変わった。子どものような無垢な寝顔。クィンの笑みがこぼれる。
安心しきって、何もかもを任せてくるような。
とろんとした目で、愛してるといった。
結局はあの老婆の計らいがなければこんな関係になることもなかったのだろう。
見られたことはいまだに根に持つが、とりあえず感謝、しておこう。
『ほうれ、よかったじゃろ?』
あの老婆の声が聞こえてくるようだ。



真っ暗。暗闇。
周囲には、ぽつぽつと青い炎がともっている。
それはなんだろうと近づけば、その炎の中に、人間が見えた。
人生。
その魂の人生だ。
一歩下がる。注意深く暗闇を見る。
分身ともなる石をはめたイヤリングがゆれる。
後ろを向く。そこに、それはいた。
『弟を、帰せ!』
叫ぶ。
だがそれは一つ魂をつまむと、骨だけの手で握りつぶした。
しゅう、と、青い魂の炎は消えた。
『やめろっ!』
だがその声は聞こえない。次々とそれは魂をつぶして行く。
「やめろ!」

「!…どうした?」
目を開けると、クィンがいた。
いつもの表情、優しくなでる手。
ああ、夢だったか、と、スペルは思った。額に汗がにじむ。
暗い、夢だ。
確かに、ぼろ布をまとった骸骨のようなそれが、カタカタと笑うのを見た。
大きな鎌を持ち――…死神か。
「顔色が悪い。寝ていろ」
「いや、いいんだ、今度はクィンが寝て」
起き上がると、火の中に枯れ木を入れる。
「分かった。なー、俺にも膝枕やってー」
「何を甘えているんだ。…全く」
反省する様子もなく、クィンはスペルのひざの上に頭を乗せた。
そのまま目を閉じる。彼は心底嬉しそうだ。
スペルは、まんざらでもない様子。
早々に寝付いたクィンの頬をなでる。
そしてそっと、その唇に唇を重ねた。



それから山道を歩いて町について、やっと皆に会えた。
皆が、無事を祝うように出迎えてくれる。
ベッドの上のケイは顔色が悪く、依然としておきる気配はない。
「ケイ…」
恐る恐る近づいてみる。
胸に手を当てると、上下しているのがわかって、ほっとした。
一気に疲れが襲ってくる。
いいや、休んじゃいられない。早く、早く助けなければ。
「ねぇクィン、何か分かった?」
レナが、恐る恐るといった風に話しかけてくる。
「ああ、まあ、分かった。ユウ、話がある」
クィンは助っ人要請にと、ユウに話しかけている。
スペルはその場から動けずにいた。体温はあっても、それでも低いわが弟に、眉をしかめている。
はやく、はやく。
焦ってはいけないと分かっているのに、心は焦ってケイの手を強く握る。
「スペル、休んだら?」
レナの姉、レイムがスペルのその様子に気づき、隣室で休むようにと促す。
レナは剣士だ。なのに、戦力になれないなんて。
あの次元は人間は入れない。
「そう、だね、少し疲れてるみたいだ。休むよ。ありがとう」
ゆらりと立ち上がる。
足がもつれて、クィンがそれを受け止めてくれる。
「大丈夫か」
見上げた顔は、泣きそうだった。
 ____________
 | __________  |
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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 続くよ続くよー
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
3421/2:2008/02/02(土) 22:09:15 ID:Y2TaMQpf0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
唐突に思いついたもので。
元ネタはあるようなないような。

疲れているのはお互い様だが、この状況は悪くない。
肩に担ぐは想い人。
その重ささえ心地よい。

ちょっとした騒動のあった後。
それまで一番元気に走り回っていたくせに、まるで糸が切れてしまったように動かなくなってしまった。
手伝うという連中をなんとかごまかして、二人きりで宿へ戻ることに成功した。
部屋へ入りこみ、少々てこずりながら肩の相手を寝台におろす。
「ぅー……」
「さてと……どうしたものかな。」
かすかにうめき声をあげてはいるが、意識があるのか眠ってしまっているのかは分からない。
仰向けのままぴくりとも動かない。余程疲れたのだろう。
そんな時に手を出すというのも卑怯な気がしないでもない。が、この妙に元気で負けず嫌いな意地っ張りが、まともな時に大人しく受け入れてくれるはずもない。
今回の礼をしてもらうだけ、と自分の理性に言い訳しつつ、相手の唇に顔を寄せていく。
3432/2:2008/02/02(土) 22:10:18 ID:Y2TaMQpf0
と、ふいに頭に腕がまわされ、引き寄せられた。肩口に。
違う。狙っていたのはここじゃない。
「起きてたのか?」
「んー……」
寝惚けたような声のくせに、腕の力は結構強い。
「……放してくれないかな。」
「あー……悪い。今ほんっとーに疲れてんだ……だから、悪い。今回はその、そーゆーコト、パス、な。」
悪いついでにこのまま眠らせてくれ、と言った時に意識はどの位保たれていたのだろう。
すぐに返って来るのは寝息だけとなった。
普段ならこの意地っ張りからは絶対聞けない、甘えるような台詞。
まわされた腕の重み。
夢を見ているのはこちらではないかと疑いたくなるような暖かい感覚。
しかし。
やはり少し面白くない。
かかっていた腕をはずし、手首を掴んで胸のあたりでまとめ、双方の体の間に挟み混む。
更に腕を回して抱き締める。
起こさないようそっと、しかし決して離れないよう力を込めて。
好きにされるのは趣味じゃない。
うん、こっちの方がしっくり来る。

疲れているのはお互い様。
胸に抱くは想い人。
伝わり来るは暖かく安らかな寝息と鼓動。
機会ではある、あるけれど。
たまにはこういう夜も、

「悪くない……」


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
お邪魔しました。
3441£ゴスペル 上×石:2008/02/02(土) 22:36:12 ID:4B6hv8UB0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | 来週は石阪の恋愛話っぽいのでその前に! 
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 改行ばっかりだyo!サーセンw 
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
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3451£ゴスペル 上×石1:2008/02/02(土) 22:43:42 ID:4B6hv8UB0
冷たい、とか、厭味だ、とか、そんなことをよく言われる。 しかしそういう性格なんだからそれに文句を言われても困る。
それに自分では厭味なことを言っている気はないし、至極当然のことしか言っていない……つもりだ。


……あの時は、少しだけ違ったけれど。

あの人が……あいつのことばかり気にかけるから。


“やめたいならやめてしまえばいい”


なんてことを挑発するように言ってしまった。 あの人はきっとあいつのことが好きなんだろう。
もし、俺があいつと同じような立場に立たされたとしたら――そんなことは金輪際起こり得ないが――、あの人は俺のために怒ってくれるのだろうか。

……答えは恐らくノーだ。

俺のことは引き留めもしないだろう……。
そんなことにまで考えが及び、胸が締め付けられるように痛んだ。

――馬鹿馬鹿しい。

と、一蹴出来たら良かったのに、今は到底無理なようだった。
物音を立てないようにそっと布団から抜け出す。 眠れる気分ではなかった。

一人になりたかった。 食堂だといつあいつが来るともわからない。 俺の足は自然と階下へ向かっていた。
3461£ゴスペル 上×石2:2008/02/02(土) 22:45:43 ID:4B6hv8UB0
――コーナーの端に腰掛ける。

やはりここが一番落ち着く。 ここにいると余計な雑念に苛まれず済むのだ。変なことは考えたくなかった。

――あの人が誰を好きだろうが俺には関係ない。

俺は、俺のすべきことだけに集中すれば良いのだ。
それは俺が最も得意とすることではなかったか。

「はぁ……」

なんだか思考がどうしようもないことになってる気がする。

「……疲れた」
「意志坂?」

その声に体がビクリと跳ねた。 声のした方に恐る恐る顔を向ける。

「こんなとこで何してんの?」
「ぅ……えだ……さん」

よりによって何でこの人が。 これならまだ食堂であいつに会った方がマシだった。 心拍数が上がるのがわかる。

「おい、意志坂聞いてる?」

そう言いながら俺に近付いてくる。

「え、いや……」
「なんだよ、なにボケッとしてんだよ?」

落ち着け、落ち着くんだ俺。 いくらなんでも動揺しすぎだ。
しかし上がった心拍数は治まらない。
3471£ゴスペル 上×石3:2008/02/02(土) 22:48:13 ID:4B6hv8UB0
「あ! そういえばさぁ」

俺の気持ちも知らずに宇枝さんは話を始めた。 自分からは話なんて出来なかったから、助かったけれど。

「こないだのマフラー、工作にあげられない?」
「……は?」

頭がスッと冷えていくのがわかった。

「だからさ、こないだバザーで買っただろ? あいつが惚れてるシスターのマフラー。それをさ」
「そうじゃなくて!」

思いの外大きな声になってしまう。宇枝さんが目を丸くして口を閉じた。

「……何でそんなことを……宇枝さんが言うんスか?」

絞り出すような声で訊ねる。宇枝さんはきょとんとした顔をしてから、しかめっ面になり、

「工作がさぁ、うっさいんだよ。シスターのマフラー!シスターのマフラー!!って」

答えた。
……だからって、宇枝さんが……あいつのために俺にこんなこと言う必要あるのか。
俺は俯いて、呟いた。

「……嫌です。あれは俺のです。」
「そんなこと言わずに頼むよ!」

俺の肩に手を乗せつつ宇枝さんが言う。

「嫌です!!」

俺は宇枝さんの手を払うようにして立ち上がった。
3481£ゴスペル 上×石4:2008/02/02(土) 22:49:57 ID:4B6hv8UB0
「……どうしたの?」
「何でも……ないです」

どうして宇枝さんは畠中のことばかり考えてるんだ。

すごく腹が立った。
胸が痛い。

涙が出そうだった。

頭の中がごちゃごちゃだ。

「意志……坂……?」
「……ぅえださんの……バカ……」
「へっ?」

「宇枝さんはバカだって言ったんです」

彼に背を向けたまま、震える声を抑えて言った。
宇枝さんが立ち上がる気配がした。

「宇枝さんは、あいつのことばかり気にしてる。……自分のことはいいんですか?」

これは厭味だ。 わざと言った。

「意志坂……」
「余計なことを考えて試合に負けるわけにはいかないんですよ。俺たちは……プロなんだから」

そうだ。俺はプロだ。感情になんて左右されない。

俺は自分に言い聞かせた。
349風と木の名無しさん:2008/02/02(土) 22:50:30 ID:PhtREcUz0
 
3501£ゴスペル 上×石5:2008/02/02(土) 22:52:58 ID:4B6hv8UB0
沈黙が続いたので、
「……おやすみなさい」
と言い、逃げるようにして階段へ向かった。階段を一段、昇ろうとしたところで腕を掴まれた。
再び心臓が跳ねる。

「離して下さい……」
「嫌だ」

宇枝さんが即答する。 掴まれている部分が熱くなってくる。

――宇枝さんに言っておいて何だが、俺はバカだ。かなりのバカだ。

「バカなんて言ってすみませんでした。だから離して下さい」
「そういうことじゃないよ」

こっちに来て、と言われ、階段にかけた足を戻してしまう。腕は掴まれたままだ。

「意志坂は……俺が工作のことばっか考えてると思うの?」
「……」

答えたくなくて顔を背けた。

「それならバカはお前だな」
「……どうせ」
「ったく……何でわかんないかなぁ」

掴まれた腕に力がかけられ、宇枝さんのところに引き寄せられた。

「……ちょ、」
正しくは引き寄せられた、ではなく抱き締められた、だった。
「な……」
3511£ゴスペル 上×石5:2008/02/02(土) 22:53:58 ID:4B6hv8UB0
「よく聞きなよ? 俺にとって工作は弟みたいなもんで、四六時中工作のことを考えてるわけじゃない」

わけがわからない。 宇枝さんの話が、ではなく、この状態が、だ。
抱き締められ、その上耳元で話すものだからどこもかしこも熱くなって全身心臓になったみたいだ。

「お前はなんか勘違いしてるよ」

そう言うと、俺の目をじっと見つめてくる。

「勘違い、なんて……」

目を逸らしながら必死に言葉を発する。 頭ではもう何も考えられない。

「そう? じゃあ俺が一番誰のこと考えてるか知ってる?」

横目でチラリと見ると宇枝さんは何やら楽しそうな笑みを浮かべている。

「し……知りません」

俺だけこんなに必死で。 もうおかしくなりそうだ。

「教えてあげるからこっち見て」

そう言われて、ぎこちない動きで首を動かす。
宇枝さんの顔を見るか見ないかのところで、俺の視界は真っ暗になった。

そして、唇に柔らかい感触。


……思考停止。
3521£ゴスペル 上×石7:2008/02/02(土) 22:55:37 ID:4B6hv8UB0
唇を割って舌が侵入して来ようとしたところでハッと我に返り、飛び退いた。
「な、なにして……っ!」
しかし言葉は最後まで発せられることなく、今度は強引に引き寄せられ唇を塞がれる。
「んぅ……っ」
唇のわずかな隙間から舌が入ってくる。 唾液の絡み合う音が響いた。
俺の手は、いつしか宇枝さんの肩に回っていて、まるで恋人同士のようにお互いの唇を貪っていた。


「……ねぇ、わかった?」

どのくらい、キスしていたのだろうか。 一分なのか、十分なのか……長い口接けを終えて、宇枝さんが不意に言った。
俺の息は切れ、そのせいか頭がボンヤリしている。
「なに、がですか?」
「俺が誰を好きか」
「そんなこと、話してないですよ」
俺は何となく目を逸らす。

「意志坂」
宇枝さんの息を耳に感じる。
そして、

――好きだよ。


囁くように、言葉が続いた。

「……宇枝さん」
顔を上げると、宇枝さんが微笑みながら俺を見つめている。

「好き、です」
そう呟いて、今度は自分から唇を重ねた。
3531£ゴスペル 上×石おわり:2008/02/02(土) 22:56:57 ID:4B6hv8UB0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ テンパりました…ごめんなさいorz
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
354風と木の名無しさん:2008/02/02(土) 23:10:45 ID:RFwzSNuL0
>>353
乙+ゴチです。やきもきする石阪かわいいよ石阪。
今週の放送でも工作に構う植田を石阪が気にしてるようなシーンが多かった(ように見えた)から、
ドンピシャで萌えました。来週も見ようによっては幾らでも腐萌えできるに違いない。
355オリジナル1/1:2008/02/03(日) 00:22:58 ID:IM3s6nOm0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) ちょっとした思いつき

視力回復手術するつもりなんだけどって言ったら、そりゃいいね、とニコニコ笑顔で返事が来た。
だって、そうしたらコンタクト落としたと言って大騒ぎせずに済むもんな。もう俺は金輪際コンタクト
探しに付き合いたくないよって笑顔のまま付け足されて。
宣伝文句の通りに目がよくなったら、この煩わしいコンタクトから開放されて、目の乾きに悩まされ
ることなしに、もっとお前の顔をはっきり見る事が出来るな。それが楽しみなんだけど、とは口にし
なかった。俺の顔を見るより、もっとちゃんと見るべきものがあるだろって怒られそうだし、思ってい
てもこういう台詞って恥ずかしくて口に出来ない。
目、どれくらい良くなるんかな? もし、1.0以上になっちゃったら、朝起きてすぐにこーんな顔で、俺
の顔を覗いてくることなんてなくなるんだろうな。
そう言って、彼は眉間に皺を寄せ瞳を細めたしかめっ面で俺の顔を覗きこみ、そしてそのまま俺の
上に覆いかぶさって唇を重ねてきた。
ベッドが一瞬大きく揺れる。
瞳を閉じて何も見えなくなっても温もりはしっかり感じる。そして、再び瞼を開ければ、思ったとおり人
懐っこい彼の笑顔がそこにある。
目つき悪くてごめんなと謝って抱き寄せて、そのまま腕を滑らせて肉付きの薄い尻を撫で、そして身
体をさらに開かせようと奥を探る。
俺のこと必死で見てくれているお前の顔が近くにあって嬉しかった、艶っぽく喘ぐ唇からそんな言葉
が漏れるのを俺は確かに聞いた。
乾く瞳を潤ませるに十分な告白に、そんな心配しなくても俺はずっとお前を見てるから、という俺の返
答は果たして彼に届いたのか。もしかしたら、思っただけで言っていないのかもしれない。
ただ確実なのは、明日の朝はまだよく見えない瞳で必死に彼の顔を覗きこんでいるということだ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ ) おしまい
356邦楽真直ぐ 唄×太鼓:2008/02/03(日) 00:49:24 ID:wAlxwrsb0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  ナマモノでぬるいエロあり。邦楽真直ぐ 唄×太鼓です
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  太鼓がかわいこぶってる感じで
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
357邦楽真直ぐ 唄×太鼓1:2008/02/03(日) 00:52:30 ID:wAlxwrsb0
「おかえり」
「え、」
新しいアルバムのリリースを控えて、絶賛プロモーション活動中の或る日、
また、何故かしんぺいは俺の部屋にやって来ていた。
三人で一日中インタビューを受けたり、コメントの収録をして、
すっかり夜も更けた頃、やっと今日の全ての仕事を終えて。ようやく帰宅となった。
ヒ/ナ/ッ/チもしんぺいもそれぞれの仕事を終えて先に帰宅していたので、
俺は1人でマネージャーの運転する車に送られて帰宅した。

疲れ切って、深い溜め息を吐きながら部屋のドアを開けて、靴を脱ごうとすると、
足元には何処かで見た覚えのある靴が並んでいて、
まさか、と思いつつリビングへ足を踏み入れると、
そこには先に仕事を終えて帰ったはずのしんぺいの姿があって。
「……なんで」
「何でって、俺がここに居ることになんか理由要んの?」
「いや、そうじゃないけどさ」
今日来るとか何も聞いてなかったし、急にどしたの?と続けると、
しんぺいは、うーん、とかちょっと考えるような仕種をして、
「……なんとなく」
「なんとなく?」
「そう、なんとなく」
「……ふーん……」

(なんとなく、ねえ……)

358邦楽真直ぐ 唄×太鼓2:2008/02/03(日) 00:55:01 ID:wAlxwrsb0
首を傾げつつ、まあいっか、と上着を脱いでハンガーに掛けると、
しんぺいの隣りによいしょ、と腰掛けた。
「あー……疲れた……」
そのまま背中から床に仰向けに倒れ込んだら、
しんぺいが顔を覗き込んで来て、視界が翳った。
長い髪の毛が目の前でさらりと揺れて、
いつもよりも強くシャンプーの薫りがふわっと鼻を擽る。
(……あれ?)
そのシャンプーの薫りは、しんぺいがいつも使っているものではなくて。
この部屋の浴室に置いてある、俺の使ってるシャンプーの薫りだった。
しかも、こんなに強く薫るってことは、洗いたての髪、ってことになる。
(先に風呂まで入ってたっつーこと?)

「……ホリエ、うがいも手洗いもしてないでしょ。風邪引くよ」
「あ、そうだった」
「今あんま調子よくないんでしょ?気ぃ付けねえと。ほら、いっといで」
「あ、うん……」
しんぺいが笑顔で手を差し出してくれたから、
俺は有り難くその手に掴まってゆっくりと体を起こして、
言われた通り素直に洗面所へ向かった。

(急にどうしたんだろ?)
明日は休みだし、別に泊まりに来てもいいんだけど、
大体こういう時は昼間会ってるんだし、
その時に「後で」とか、一言あることが多いから。
こんな、何も告げずに突然部屋に来ていることは最近では珍しい事で。
……しかも、先に風呂まで入ってるとか。

どう考えても、この後の展開はそういうことしか考えられないだろう。

(まあ、別にいいけど……)
359邦楽真直ぐ 唄×太鼓3:2008/02/03(日) 00:57:41 ID:wAlxwrsb0
据え膳喰わぬは何とやら、だし。
とかぼんやり考えながら入念にうがいと手洗いを済ませてリビングに戻ると。

「ほりえ見て見て、じゃーん!」
そこには、真っ白いバスローブに着替えたしんぺいの姿があった。
「……え、それ、どしたの?」

意外な展開に、俺が目をぱちくりさせていると、
「や、こないだ撮影の時に着て遊んだじゃん?
そしたらその後でちょっと欲しいなーって思っちゃって。思い切って買ってみた」
「へええ……」
しんぺいは、おもむろに近くのソファーに腰掛けると、
脚を組んで、左手にグラスを持つようなポーズを取って、
「ちょっとゴージャスな気分」って、へらぁっと笑って言った。
俺も「ばーか」とか笑いながら、隣りのスペースに腰掛けた。
「でもさあ、バスローブって普通風呂上りにすぐ着るもんでないの?」
「……ほりえ帰ってくんの遅くなりそうだなーと思って」
「いいじゃん、そのまま着て待ってれば」
「だって、こんな薄着でずっと待ってたら寒いじゃん」
「あ、そっか」
……それで、わざわざ着替えるとか……。
単純に俺に見せびらかすっていうか、そういう目的で着替えたのかもしれないけど、
先に風呂に入ってたことといい、
今だって脚を組んでるから、バスローブの裾からは白い腿が大きく覗いているし、
はだけた胸元からはこれまた白い肌が覗いていて。
そんなしんぺいの姿はかなり扇情的で、どう考えても俺を誘ってるとしか思えなかった。
360邦楽真直ぐ 唄×太鼓4:2008/02/03(日) 01:00:25 ID:wAlxwrsb0
ごくり、と生唾を飲み込んで、
隣りのしんぺいの表情を伺おうとしたけど、
しんぺいは訝しげな表情でじっと見つめている俺に気付くと、
「どしたの?俺の顔なんか付いてる??」なんてきょとんとした顔をしていて。
「……それ、わざとやってんの?」
「何が?」
「全部だよ」
「全部って」
「帰ってきたら風呂上りとか、わざわざそんなカッコに着替えるとか、そのポーズとか、全部」
一つ一つ指摘しながら、
じりじりとしんぺい迫って、そのままソファに押し倒すような体勢に持ち込むと、
しんぺいは俺を見上げて、口の端を持ち上げてニヤリと不敵に笑って。
「……このカッコ、そんなそそられた?」
なんて言いやがって。
ちくしょう、やっぱり俺のこと煽ってやがったのかよ、とか、
しんぺいにいい様に扱われてる気がしてちょっと悔しくなった。
「……ずるいよ、しんぺいは」
疲れてたから普通に寝る気だったのに、と低く呟いて、
首元に唇を押し当てて、皮膚を軽く吸い上げると、
しんぺいは一瞬ピクッ、と体を震わせて、くぐもった小さな声を漏らした。
その声に益々煽られて、はだけたバスローブの胸元に手を差し入れて
滑らかな肌を撫でると、俺の手が余程冷たかったのか、
「ひゃぁっ?!」とか、かなり間抜けな声を上げて。
……そんな、今更俺たちの間にムードだとかそういうのも別にないけど、
今このシチュエーションでそんなかよ、って思ったら何だか笑いが込み上げてきて。
抑えきれなくて、あはははっ!て声を出して笑ったら、
しんぺいは「だってすげー冷たかったんだもん」って頬を膨らませた。

この後、場所をベッドに移動して、
いつもと違う格好に興奮したとか、別にそういうわけじゃないけど、
久々に、明け方まで盛り上がってしまって。
折角の休みなのに、俺たちは昼過ぎまでベッドから起き上がることはなかった。
361邦楽真直ぐ 唄×太鼓 終:2008/02/03(日) 01:02:26 ID:wAlxwrsb0
 ____________
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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ お粗末様でした…伏せ損ねが一箇所あってギャアアア逝ってきます…orz
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
362風と木の名無しさん:2008/02/03(日) 01:35:23 ID:vnw3XsDh0
>>342
待ってたよ(;´Д`)ハァハァ
ゴチですww
363風と木の名無しさん:2008/02/03(日) 08:50:37 ID:R+ki9j+UO
blog潰しに命懸けのうpタソ
364アウ/ターワー/ルド 1/3:2008/02/03(日) 23:29:45 ID:FElD5DgH0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

マイナーゲーで萌えたんでちょっとED後捏造してみた。


・1日目 天気/晴れ

今日から日記を書いていこうと思う。
異世界の為、月日を判断できない。その為、日数で書いていくことにする。
異世界など科学者の自分が書くのが信じられないが、これは確かに事実だ。
私、レス/ター・ナイト・チェイ/キンはここに存在しているのだから。

あの激しい敵対勢力との戦いも終わって、ここの生活も安定してきた。
とはいえ、自分は戦いの疲れもあってほとんど寝て過ごしていたので、状況はよく分からない。
思えば脱出の時も気絶していて、その後の戦いでも途中で電気ショックを受けたせいで気を失って・・・
気がつけば戦いはもう終結していた。
彼を助けに行ったのに逆に助けられて、男としては少々情けない。
あの時は彼が死んだと思って敵に飛び掛っていったが、もっと考えて行動するべきだった。
でも、彼が生きていた事は本当に嬉しく思う。

彼というのはこの異世界の住人で、敵に捕まった時に同じ檻に入れられたのが縁で共に脱出した仲だ。
その後、彼の仲間を開放する為に戦い、それが終わった今、私たちは一緒に暮らしている。
優しくて頼れる、私の相棒。

この出会いに、私は心から感謝する。
365アウ/ターワー/ルド 2/3:2008/02/03(日) 23:30:52 ID:FElD5DgH0
よく物語では異世界でも言葉が通じたりしているものだが、現実はそう甘くない。
全く言葉が通じない世界にどうしようかと思ったのだが、いざとなると人間どうとでもなるものだ。
だが、そのいざという時が終わった今、言葉が通じないという事がどういうものなのか改めて認識させられた。
まず問題だったのは、彼らは敵だった者達も含め他の者も全く同じ外見をしているという事だ。
男女の区別はつくが、同性となるとこちらには全く区別がつかない。
つまり、言葉が通じない為に名前すら分からないというのは、ここでは大問題だった。
幸い、詳しくは分からないが英雄扱いされているようで生活が困るという事はないようだが、
いつまでも今のままではいられないので、彼にも手伝ってもらって、新聞や本から少しずつ言葉を勉強している。
伊達に科学者で教授はやっていない。そう時間をかけずに習得してみせるつもりだ。
勉強の為にこの日記もこの異世界の言葉で書けばいいのかもしれないが、
さすがに読まれると困るのでそれはやめておく。
彼は私の行動が気になるのか、日記を書いていると覗き込んでくるからだ。
何度も彼の前で倒れただけに、私が何をしていても心配なのだろう。
そんな彼に大丈夫だと笑いかけると、彼も笑いかけてくれる。
それだけで異世界にいる事など忘れて、私は幸せな気持ちになれるのだ。

元の世界に帰るのはきっと楽ではないだろう。ひょっとしたら戻れないかもしれない。
そのあたりは色々考えなければいけないのかもしれないが、
あれだけの戦いを生き抜いたのだから、今は彼とのこの生活を楽しんでいたい。
366アウ/ターワー/ルド 3/3:2008/02/03(日) 23:31:58 ID:FElD5DgH0
今日はこのあたりで日記を終わりにしようと思う。
明日も早起きして言葉を勉強しないと。早く言葉を覚えて、彼と話がしたい。
彼には聞きたい事がたくさんあるけれど、一番に言いたい事はもう決まっている。

『このまま、君の傍にいてもいいですか?』

彼は、どう答えてくれるだろうか。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

続編のEDが受け入れられなかったから、自分で補完してみた。
367風と木の名無しさん:2008/02/03(日) 23:44:35 ID:vzKRBCaZ0
>>364
ちょwGJwwwあれはかなり萌えるよね。
寝る前に見てみて良かったー!!!
368場皿松永×慶次1:2008/02/04(月) 02:07:12 ID:kLWiwx8iO
何かムラムラ来て書いた
KGそんなに弱くないよーとか突っ込みは無しでお願いします

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「ハアハア……」
今何故自分は走っているのだろう?あいつがどうなろうと知ったじゃないのに。

慶次は人取り橋の氷穴を走っていた。既に突破された後なのだろう。破壊された氷塊の欠片と共に松永軍の兵士達が倒れている。
気を失っているのか死んでいるのか確認する余裕は今の慶次には無かった。
転ばないように足元の氷に注意しながら真っ直ぐに氷穴の奥へと進んでいく。
氷穴の奥の奥、その出口を目指しながら慶次は同じように走ったあの日の事を思い出していた。

何時もつるんでいた仲間が掴まったと聞いて此処に駆けつけた時、氷穴の入り口に居る兵の姿に背筋が凍った。
……松永久秀の兵だ。
幸せだったあの頃。何でも出来ると信じていたあの頃。それを打ち砕いたのが松永だった。
もしあの事が無ければ秀吉とあそこまでこじれる事は無かっただろう。道が分かれる日が早いか遅いか、他だそれだけの違いであったとしても。
出来ればもう二度と会いたくないと思っていたが、世の中はそれほど甘くも無かったらしい。
相手が誰か分っても仲間を見捨てる訳にはいかない。氷穴を抜け、久しぶりに見たその顔は相変わらず『悪人らしい』笑みを浮かべていた。
「やあ、少年。久しぶり……とでも言うべきかな?」
低く丁寧で威圧的なあの声が今でも慶次の耳に焼きついている。人質の命を握られ手出し出来ない慶次に松永は言った。
「そうだな……交換条件というのはどうだね。」
「交換条件?」
「そう卿の熱意に免じて人質を無事に帰しても良い。その代わり、卿は私の物になる……というのはどうだね?」
冷たい笑みを浮かべた唾を吐き掛けたかった。その衝動をぐっと堪える。
「慶ちゃん!俺らのことは良い!逃げろ!」
仲間が口にする言葉が痛かった。人は殺したくない。殺せない。だけれどもあの日松永を逃がしたのは自分なのだ。
そして、松永の部下の刀が仲間の命をつなぐ綱にかけられている。慶次にはその条件を飲む以外の方法が分らなかった。
369場皿松永×慶次2:2008/02/04(月) 02:09:14 ID:kLWiwx8iO
初めの頃、慶次は何度も逃亡を企て、牢を改造したという強固な扉をした部屋を宛がわれた。
松永はただ慶次が苦しんでいる姿を見るのが楽しいようだった。気まぐれに慶次を犯し、何処からか連れてきた遊び女の相手をさせた事もあった。
何故こんな事をするのかと聞いたこともあった。何が楽しいのかと。
「卿が壊れていく様を見たいのだよ。友に裏切られ、それでもまだ人を信じようとする、その頑なな心が砕け散るのがね。」
「悪趣味だな」
「卿にも何れ分る。人も物も失われる瞬間が一番美しいのだと。」
慶次には松永の考えも言っている事も何もかにもが理解できなかった。いや、理解したくなかった。理解してしまえば松永の望む瞬間が来てしまうかもしれない。それだけは避けたかった。
そのせいだろうか、不思議と慶次の心は折れなかった。どれほど陵辱されても、どれほど殴られても心の何処かにある光が堕ちる事を阻んでいた。
そして松永も慶次が堕ちず睨み返すたびに満足そうに笑みを浮かべた。

転機が来たのは松永に捉えられて暫く経った頃だった。偶然謀を知ってしまったのだ。
その頃の慶次は着たばかりの頃とは違い、随分大人しくなっていた。と、言うのも何度も連れ戻されるの
370場皿松永×慶次3↑変に切れた:2008/02/04(月) 02:14:47 ID:kLWiwx8iO
転機が来たのは松永に捉えられて暫く経った頃だった。偶然謀を知ってしまったのだ。
その頃の慶次は着たばかりの頃とは違い、随分大人しくなっていた。と、言うのも何度も連れ戻されるので、コレはしっかり計画を立ててからの方が良いと漸く思い至ったせいだった。
慶次は謀を知り当然のように妨害しようと思った。都合の良いことに最近の素行のおかげで随分監視は手薄になっている。
妨害が成功したらそれに乗じて逃げれば良い。それまで立てていた計画に加えてそれを実行した。

結果から言えば慶次の計画は失敗に終わった。被害を抑えることは出来たが結局松永は欲しい物を手に入れ慶次もまた逃げられなかった。
そんな事が何度か続いた。失敗するのが普通だが時折成功することもあった。
松永は松永で慶次のその行動を楽しんでいる節さえあった。たとえ謀に失敗しても慶次を捕らえることは止めなかった。
「卿は私の物だ。そう約束しただろう。少年。」
「あんたに言わせりゃ『約束は破る為にある』そうだろ?」
「はははは、流石に学習したようだな。だが残念な事に私はまだ卿を遊びつくしては居ないのだよ。そして卿が従わなければ……分るね。」
「分ってるよ。見張りの奴らを殺すって言うんだろ?帰るよ帰ってやるよ。」
「随分、素直になったものだ。いや関心。」
松永は悪人だ。人を信じていないし、人にある善意でさえ信じては居ない。思いのままに奪い、愛で、壊す。それは疑いようの無い事実だ。
それなのに気付けば松永の元へ戻っている自分が分らなかった。自分を見失った見張りを殺すという事でさえ嘘かも知れないのに。
371場皿松永×慶次4:2008/02/04(月) 02:16:23 ID:kLWiwx8iO
「……あんたなんで俺を此処に置いておくんだい?」
自分が逃げ出さないのと同じくらい疑問に思っていることを聞く。
「以前も話した筈だが。ならば逆に問おう。卿は何故逃げ出さない。私の部下の生死など卿には関係ないことだろう?」
「俺は……あんたを止めたい。」
思わず口に出した言葉にはっとする。そうなんだ俺は―――
「あんたが酷い事をやらずには居られないっていうのなら。俺はあんたが酷い事を出来無いようにしたい。それが俺が此処にいる理由だよ。」
松永は呆れた様に眉を片方上げると小さく息を着いた。
「それをする事に一体何の得があるというのかね?それともお得意の偽善か?それとも只の自己満足か?」
「知らないよ。俺は只あんたが誰かに酷い事を……何も感じずに酷い事をしているのを見たくないんだ。」
それを聞いた松永は何時ものように蔑むような試すような笑みを浮かべた。
分っていた。その微笑の本当の意味を。以前の慶次なら『誰かが酷い目に会うのを見たくない』と言ったはずだった。その変化を松永は笑ったのだ。
「卿にそれが出来るとでも?」
「やってみなくちゃわからない。そうだろ?」
「今、この場で私を殺すのが手っ取り早いと思わんかね。」

松永はきっと正しい。分っている。松永は変わらない。俺には変えられない。思いのままに人を傷つけ搾取するだけの存在でしか居られないのなら、多分殺してしまうのが一番良い。
自分が傍に居ても、どれだけ長くの時間その瞳に映されていたとしても何の影響も与えられないのだから。そう思うと慶次の胸の奥は少し軋んだ。
372場皿松永×慶次5:2008/02/04(月) 02:18:10 ID:kLWiwx8iO
「―――っ!」
不意に躓く、慶次は氷塊の欠片に脚をとられ氷の地面に倒れこんだ。
「くそっ!」
急いで立ち上がると口の中から血の味がした。冷たさと痛みと鉄の味に何故か泣きたいような気持ちが押し寄せてくる。
嫌な予感がする。不安で叫びだしそうだった。
どうしてあいつの為にこんな気持ちにならなきゃいけない。
どうして、どうして、どうして!
出口から光が差し込んでいるのが見える。もうすぐだ。
駆け足のまま出口へ向かう。

―――――――ドン!

視界が開け、着いたと思った瞬間何かが爆発したような音が聞こえた。
視界の端に黒煙が昇っている。それを見て心臓の鼓動が早くなる。
焼け焦げた地面の脇に見覚えのある甲冑の欠片が転がっていた。
「――あ……。」
咽が声にならない声を上げる。

「おいお前、前田の風来坊じゃねえか。なんで此処に。」
背後から誰かの声がした。慶次は振り向く事が出来ず、ただ呆然と焦げ跡へ歩いていく。
「おい!返事くらいしたらどうなんだ!」
「お待ち下さい。政宗様。何か様子がおかしい。」

特徴のある黄色い欠片を見て体の力が抜けていくのが分った。気が付くと慶次はその場に座り込んでいた。
「なんで……」
どうして、今日に限って間に合わなかった。見抜けなかった。
ここに居たのか?さっきまで、此処に?この焦げ跡があんたなのか?
「……松永、なんで」
なんで、どうして、それ以外の言葉が浮かんでこない。
373場皿松永×慶次6:2008/02/04(月) 02:19:39 ID:kLWiwx8iO
「おい、お前。こいつと……この松永久秀とどういう関係だ?」
低いドスの聞いた声に朦朧としたまま振り向く。視界には奥州筆頭伊達政宗とその片腕片倉小十郎の姿が入った。
そこで漸く自分にかけられていた声が彼らのものだと理解する事が出来た。
「黙って無いで答えな。その内容によっちゃ容赦はしねえ。」
「関係?」
俺と松永の?
そう思うと笑いがこみ上げてくる。
「わかんないよ。そんなの俺にだって。」
ブスリと音がして握りしめていた甲冑の欠片が手に刺さったのが分った。
痛かった。それ以上に胸が苦しかった。
目の前にあるのは黒い焦げ跡。
何も、何も語ってはくれない。
「止めようとしたんだ。こいつがもう手を汚さないように。」
そうだ、何時からか俺は怖かった。
松永がこんな風に居なくなってしまうのが。
松永は何も求めない。何も信じない。決して振り返らない。人の命に執着しない。ならば、いつかこんな風に簡単に自分の命さえ消してしまうのだろうと。
「止めようと?なら松永の仲間って訳じゃあなさそうだな。」
「……仲間などと言われてはこちらも迷惑だな。」
聞き覚えのある声に思わず慶次も顔を上げた。氷結の入り口に松永軍の兵が一人立っていた。何時も慶次の見張りを任されていた男だった。
「あんた……」
「その男は過去の因縁から常々松永様を付けねらっていたのだ。今回の件も嗅ぎ付けていたとはな。」
慶次の言葉を遮るように男は声を発した。
「庇っているようにも聞こえなくもねえなあ?小十郎。」
「は、しかしこの男が私の知る前田慶次という男で間違いないのなら、ありえない話でもありますまい。」
「信用するもしないも、あんた達しだいさ。じゃあ、俺は引き上げるとするよ。松永様の事を報告せねばならんのでね。」
「ちょ……おい!『じゃあ』じゃねーだろ!追うぞ!小十郎!」
「は!」
374場皿松永×慶次7:2008/02/04(月) 02:22:02 ID:kLWiwx8iO
頭の上で自分の処遇をどうするかのやり取りが行われているという事が何となく理解できた。
だが、それも全て人事のようでどうでもよかった。
ふと顔をあげると居なくなったと思っていた小十郎が目の前に立っていた。
「今回は見逃してやる。だが、次に怪しいまねしやがったら洗いざらい話してもらうぜ。」
小十郎はそれだけ言うと先に行った政宗の後を追った。

何を話すというのか。話す事など何も無かった。
松永にとって自分は暇つぶしの一つにしか過ぎなかったのだろう。気まぐれに手に入れた骨董と同じようにいらなければ壊すだけの。
そう思うと悔しいような悲しいような、どうしようもない憤りが胸を襲ってくる。
「……ちくしょう。なんでだよ。」
どんなに見つめてもそこにあるのは黒い焦げ跡だけ。
こんな風に何もかも消して、体さえ消して、何もなかった事にしようというのか?
「……あんた、やっぱり酷いよ。」
こんなに俺を苦しめて
こんなに俺をかき乱して
散々好き放題したくせに俺なんか傍に居なかったみたいに簡単に居なくなりやがって。

涙は出なかった。
心臓が握りつぶされたみたいに苦しくて体中に力が入らない。
正体の分らない喪失感だけが頭の中を支配していく。

「俺はあんたの物なんだろ?置いて行くなよ。」

カシャリと音がして握りしめていた甲冑の欠片が地面に落ちる。
刺さっていた場所の傷口が開き、指を伝って先決が地面に滲みを作った。
375場皿松永×慶次:2008/02/04(月) 02:23:45 ID:kLWiwx8iO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
終わり入れ忘れた

勢いだけが命です。なんかもうすみません
376風と木の名無しさん:2008/02/04(月) 18:21:02 ID:SSJw/RBbO
>>47
すごい遅レスだがGJ!
あなたのおかげでパピカズパピにすっころびそうです
377トライアングル side C part1 1/6:2008/02/04(月) 19:58:26 ID:QomYNDyV0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・;)
書いているうちに長くなってしまったので、side C のみ二分割となっております。
>>335の続きです。

「で、こういうの、嫌なの? 好きなの? どっちなの?」
気がついた時には、取り返しの付かない状況に陥っていた。
床にアイツが寝転がっていて、俺がアイツを押し倒す形になっていて。
いや、陥っていたという表現は正しいとはいえない。
正確には、俺が彼らを陥らせたと言うべきだろう。
「……それは――」
俺の下で、アイツが言葉を詰まらせる。視線も逸らされたままだ。
こんな至近距離に居るというのに、真正面から見てくれないのが、ちょっと寂しい。
「…………っ」
じれったくて、唇を奪う。そうすれば素直な気持ちを得られるように思えたから。
でも、アイツはいつものようには受け容れてはくれなかった。
強引に舌を差し込んでも、されるがままで、からめとってくれはしない。
それどころか、拒まれている気すらした。
違うのは、何故だろう。あまりにも俺が強引過ぎるから? それとも――
「そんなことしてたら、余計答え辛いんじゃないですか」
ずっと傍観者の立場を保っていた彼が、呆れたように口を挟む。
彼が言っていることは正論だが、一つだけ欠点がある。
それが示すのは、言葉による感情表現だけだ。
言葉が無くても、態度でわかることだってある。
むしろ態度からじゃなきゃ、真意を読めないことだってある。
「体は正直だ」とはよく言うものだけど、性欲云々を除いても、それこそ正論だと思う。
だから俺は、こうしてアイツを押さえつけているのだ。
鼓動の速さや吐息の熱さまで見逃さないようにと、食らいついているのだ。
378トライアングル side C part1 2/6:2008/02/04(月) 20:00:18 ID:QomYNDyV0
「げほっ……ごほっ……」
解放してやると、アイツは口を押さえ、咳き込んだ。
僅かに引いた糸は、絡み合いの少なさを象徴するように、直ぐに切れた。
何だかこれだけだと、すごく嫌われているような気がする。
「ひゃっ」
シャツを捲り上げ、素肌に触れると、アイツは小さな悲鳴を漏らした。
「んっ……」
わき腹を撫で上げてやると、熱の篭った吐息が溢れ出す。
必死で我慢しているようだが、快感は堪えきれないらしい。
このくらい心も素直だったらいいのに。反応を求めて、俺は愛撫を続けた。
「いつもこんな風にこいつとやってるんですか?」
彼はしゃがみ込んでアイツの様子を窺った。
アイツは息も絶え絶えに、目尻に涙なんて浮かべていたりしている。
違う――
反論が喉の奥に引っ掛かってしまったのは、アイツが彼の方を見て、彼の名こそを呟いたから。
まるで助けを請うかのように、縋ってみせたから。
アイツの気持ちを察したのだろう、彼はアイツの頭をポンと叩いてみせた。
撫でるのではないところが彼らしいと言えば彼らしい。
そして、そんなことで安堵をするアイツも、アイツらしい。
俺が答えないで居ると、彼は今度はアイツに同じ質問をした。
アイツは無言のまま、二度ほど首を左右に振って、否定する。
寝転がっているせいか、それは拒絶を示しているようでもあった。
彼は俺の方に視線を移すと、苦笑いを浮かべてこう言った。
「でしょうね。何かイメージにあいませんもん」
らしくないのは、俺だけか。
379トライアングル side C part1 3/6:2008/02/04(月) 20:01:37 ID:QomYNDyV0
そもそも、どうしてこんな状況になってしまったのだったか。
三人で食事に行くことになって、集合場所まで車を走らせて。合流して。
そこまでは何らおかしな所なんてなかった。
揃ってやって来た俺たちに対し、わざとらしくアイツが膨れてみせたくらいだ。
でも、俺の頭の中では彼の提示した可能性がグルグルと渦巻いていて。
アイツの姿を確認した途端、それは耐え難い不安に変わった。
何でこんなにも不安になったのかはわからない。
気づいた時にはアイツの腕を取って、車内に引きずり込んでいた。
アイツも彼も俺の行動を怪訝そうに見つめていたが、特に言及されるようなことは無かった。
まぁ勝手に予定を変えて引き返した時には、さすがに色々言われたが。
そして俺は彼の家に引き返すや否や、アイツを押し倒したのだった。

記憶が繋がる。それと同時に、頭が冷めていく。心が落ち着きを取り戻していく。
こんなことをしていても、最悪な答えが返ってくるだけだと悟った。
「?」
体を起こし立ち上がった俺に対し、アイツが意外だという顔をする。
ようやく目が合うと、アイツはハッとしたように視線を逸らした。何だその初々しい反応は。
意外だと思われる理由はわからないでもない。
いつもなら、押し倒した時点で引き戻ったりしないからだ。
どちらかが限界に達するまで、満足しきるまで手放したりはしないからだ。
――あぁやっぱりらしくない。
380トライアングル side C part1 4/6:2008/02/04(月) 20:03:11 ID:QomYNDyV0
「ほら」
未だに呆然と横たわっているアイツに、手を差し伸べる。
「――――」
アイツの瞳が戸惑いに揺れる。それでも素直に手は取ってくれた。
「わぁっ」
力を込めて、引き起こす。
思いがけない不意打ちに、当然の如くアイツはバランスを失って俺の方へ倒れこんで来た。
互いに座り込む形で、その体を抱き止める。
つい先ほどまで俺の下にあった体が、今は俺の腕の中にある。
最初からこうして抱きしめていれば良かったのかもしれない。
こっちの方が、よっぽど体温も鼓動も感じられる。
「見せ付けるのもいいですけど、このままだとこいつ、窒息しますよ」
どうやら俺は思った以上にきつく抱きしめてしまっていたらしい。
「い……因幡さ……くる、苦し……」
胸の辺りからくぐもったうめき声が聞こえる。
「あ、悪い」
力を緩めてやると、大げさに息を吐く音に続いて、
「殺す気ですかっ!!」
アイツの得意技である大声が、部屋中に響き渡った。
至近距離で浴びせられたため、耳がキィンとする。
「まったくもう……」
俺が座る姿勢やら位置やらを変えている間も、アイツはブツクサ文句を続ける。
「大体、自分がどれだけ力あるかくらいわかっておいて下さいよ。常人じゃないんですから」
「なんだそれ。それじゃお前だって同じだろ。仮にもプロなんだから」
「……それはそうですけど、年季が違うというか、経験が違うというか」
壁に持たれかかり、改めてアイツの肩を抱いた頃には、普段どおりの空気が流れていた。
アイツが自分から俺の胸に頭を預けてきたのも、そんな空気を感じ取ったからだろうか。
381トライアングル side C part1 5/6:2008/02/04(月) 20:04:43 ID:QomYNDyV0
「――――」
不安は、消えていた。
何を疑う必要があったのかと思うくらいに、腕の中に居る存在は、暖かい。
嫌がられているように感じてしまったのは、アイツが嫌がるようなことをこちらがしていたからだ。
自ら作り出した錯覚に、惑わされていただけなのだ。
「否」
問いの答えはわかっていた。
それでも聞かずにいられなかったのは、より確かな安心を得たかったからなのだろう。
「こういうの、嫌じゃない?」
肩を抱く腕に力を込めると、「いたっ」とアイツが顔を歪める。
そんなことがおかしくもあり、嬉しくもあるのだから、俺も単純だ。
「……こういうのは嫌じゃないです。痛いけど」
こういうのは、とアイツは重ね重ね強調してみせた。
「痛いのは別に平気だろ? 普段はもっと痛いこと――」
「わ――――っ!!」
「何で止めるの? 俺もマ/ッ/クもよく知ってることなのに」
「そ、それでも、恥ずかしいもんは恥ずかしいんです!!」
続けざまに大声を出したせいで息が切れたらしく、アイツの肩が激しく上下する。
「恥ずかしいって、どういうとこが?」
からかい気味に顔を覗き込むと、言葉通り真っ赤なアイツの顔がにそこにあった。
アイツは渋い顔をしていたが、
「それを、そっちが言わせますか……?」
と弱弱しく呟いた後に、ガクリとうな垂れた。
382トライアングル side C part1 6/6:2008/02/04(月) 20:06:57 ID:QomYNDyV0
「別にいいだろ。そのくらい言ってあげれば?」
「え」
「ねぇ因幡さん、知りたいですよね」
そう言って彼はニヤニヤと笑った。
一方、窮地に立たされたアイツはと言うと、
「え、え、えぇぇっ?」
俺と彼とを交互に見つめて、目を白黒させている。
まさか彼にまで問い詰められるとは思ってもみなかったのだろう。
アイツから彼へと向けられる視線は、半泣きだった。
だが、そんな抗議は彼の眉間に深く刻まれた皺によって跳ね返される。
「答えろ」という絶対の強制力が、彼からヒシヒシと発せられていた。
さすがは会長。俺もこのくらい厳しくならないとダメなんだろうか。
「うん、知りたい。お前がそういうこと言ってくれないから、俺も悩んだりしたんだからな」
情けないとは思いながらも、正直に告白してみせる。
「だからあんなこと聞いたんですか?」
それはどちらの問いのことを指しているのだろうか。
最初の方? それとも、つい先ほど問いかけた方?
――この際、どちらでもいいや。知りたかった本心は、どちらでも結局、同じなんだから。
俺が頷いてみせると、アイツは目を伏せた。
先の質問の時と同様に、沈黙が流れる。
でも、もうその沈黙に不安を抱いたりなんてしない。
アイツは絶対に答えを返してくれる。そう信じられたから。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )改めまして次回でラストです。
エロ爽やかさんの口調って難しい。
383風と木の名無しさん:2008/02/05(火) 01:22:13 ID:LRlZcOfU0
          _________
       |┌───────┐|
       |│l> play.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
   ∧∧
   (  ,,゚) ピッ   ∧_∧   ∧_∧
   /  つ◇   ( ・∀・)ミ  (`   )
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |            ┌‐^──────────────
  └──────│遊戯、続編はいりました。ちょっと短め。
                └───────────────
384風と木の名無しさん:2008/02/05(火) 01:22:59 ID:LRlZcOfU0
あたりを支配するのは静寂。
向けられたその言葉は、明らかに俺に対する挑戦だった。
「殺す・・・?」
思わず繰り返してしまう。
彼は何を言っているんだ。理解が出来ない。
 でも、1つだけ理解できたことがある。

この人は狂ってる。

 余程真剣な顔をしていたのか、俺の顔を見てぷっと吹き出す。
「いや、何もほんまに殺すわけやないで」
大げさに手を横に振って否定する。
そして少年のような笑顔を見せる彼だが、俺は騙されない。
彼の言葉に嘘が無いのは、目を見れば分かる。
「じゃあ、どうするつもりですか」
「そんな怖い顔すんなや」
にやり、と言う言葉がぴったりな笑顔で付け加える。
               ・・・
「そんなにイヤやった?トウジマのあんな姿を見るの」

 ほら、よく言うじゃないですか。
頭がカーッとなるって。
あれって、多分脳みそが沸騰してるんだと思う。
実体験した、俺が言うから間違いないね。

 気付けば、言葉より先に手が出ていた。
陸上部を引退してから何年も経過したなまった身体でも、
その力は彼の体をふっとばすのに十分であった。
まるでドラマのようにスローモーションで彼が遠ざかっていく。
そして、大きな音を立て、その場へ崩れ落ちる。
385遊戯04-2:2008/02/05(火) 01:23:48 ID:LRlZcOfU0
 タレントをADが殴った。
あぁ、俺、結構この仕事好いとったのにな。
まだ部下もおらんうちにクビか。
母さん、ごめん。俺、不良息子ばい。
じんじんと痛む拳を見ながら、そんな事を考えていた。
「あいたたた・・・。カマかけたつもりやってんけど」
ゆっくり立ち上がって、腰をパンパンとはたく。
そして口の中が切れたのか、口の端から血が零れた。
それをぐぃっと手の甲でぬぐい、にやりと笑った。
「図星やん?」
「言ってる意味が理解できません」
「何言うてんねん。タレントさんを殴っといて。」
ははは、と乾いた笑いが部屋にこだまする。

 彼の感情がまったく見えない。
彼は何をしたいんだ。俺をどうしたいんだ。
俺が、トウジマさんが好き?あぁ、好きさ。でもそれは先輩としてだ。
尊敬もしているし、もっとトウジマさんに学ぶべき事もたくさんある。
でも、その気持ちは今大きく揺らいでいる。
それくらい、ビデオの中身はひどいものだった。
 一つずつ、順を追って説明しよう。
386遊戯04-3:2008/02/05(火) 01:24:59 ID:LRlZcOfU0
 2週間前。
この部屋を訪ねた時、彼が囁いた言葉。
それは、人が生きるうえでもっとも大切であろう、
倫理に欠ける提案であった。
「いつも俺らの使っている小さい方の会議室。
あっこを録画してみ。来週の火曜日や。」
 盗撮。
彼は、俺に盗撮をしろといった。
トウジマさんのことが気にかかるなら、盗撮してみろ、と言うのだ。
 ・・・そうか。
あの時に気づくべきだった。
あれは「トウジマのことが好きなら」という意味だったのだ。
 そして、俺は・・・罪を犯した。
いや、盗撮される本人が自ら提案した事だ。
だから、法的にはきっとさほど問題はないんだろう。
そして、何より彼自身が問題にしない。
何故なら、
そのビデオは”決して他人に公開できるようなものではない”から。
 ビデオの内容、ですか。そんなに知りたいですか?
ははは。もうここまでくれば想像できるでしょう。
お察しのとおり。
蟻野さんとトウジマさんの・・・ふ。ふふふ。
世の中には色んな人がいるものですね。
男が、男を抱く。そんな世界には一生縁はないと思っとったんですけどね。
こんな身近に。こんなに知った人たち同士で。
出来るなら、こんな世界、一生知りたくなんてなかった。
そう思うのは、この二人だからだったからかもしれないですね。
387遊戯04-4:2008/02/05(火) 01:26:15 ID:LRlZcOfU0
「トウジマ・・・っ!」
「蟻・・・のさっ・・・!!僕、僕もう・・・!」
 不思議な光景だった。
蟻野さんは、トウジマさんをバックから何度も何度も突き上げる。
その度、トウジマさんから発せられている声とは思えないほど、
悩ましげな声で喘ぐ。
「あっ、ああああっ・・・!はぁ!んっ・・・あぁぁ!!」
頬を赤く火照らせ、だらだら唾液を垂れ流しながら歓んでいる。
蟻野さんは自分を気持ちよくしているというよりも、
トウジマさんが溺れるその姿を楽しんでいるように見える。
腰を動かしながら、その手ではトウジマさんのモノを擦り上げる。
激しく、時にゆっくり。ぐちゅぐちゅと生々しい音をたてながら。
親指でモノの先端をまるで某ゲームのコントローラーみたいにぐりぐりと
何度も何度もまわし、その度「あぁっ・・・!」と喜びの声が漏れる。
 トウジマさんは見ている限りでも、3回はイカされていた。
それでも、白く汚れた蟻野さんの手はモノを離しはしない。
トウジマさんもやめることを望まない。
ねっとりした白濁に絡まれて、絡み合う二人。
 行為は1時間ほどにも及び、最後は課長の顔射で締めくくられた。
その絵は、ご丁寧にカメラを意識したアングルで腹立たしささえ覚えた。
これが普通のAVなら最高でしょうね。
ただ、俺にとって見れば最悪な心遣いです。花鳥。
 大きく口を開け、トウジマさんに放たれる白濁。
さも美味しそうに、ごくんと音をたてて飲み込む。
その時の顔を、俺は多分一生忘れられないだろう。
白濁にまみれた、愛欲に満たされた自分の先輩のその表情を。
388遊戯04-5:2008/02/05(火) 01:27:31 ID:LRlZcOfU0
 吐き気がした。
でも、幸い朝から何も食べていなかったのでま逃れた。
ダイレクトな胃液の味だって、好きじゃないんやけどね。
「殺すって言うのは」
思考は、蟻野さんの台詞で一瞬にして幕を下ろされた。
「ここを、や」
自らの胸をトントン、と叩く。
「・・・もう少しわかりやすくお願いします。」
「なんや、できすぎ君も意外とにぶいんやなぁ」
くっくっと笑い、目線をはずす。
その目が見つめる先は、遠い。
「トウジマの、心を殺す。と言えばわかりやすいんかな?」
「心を・・・殺す?」
「そうや」短く返事をして、自信満々の笑みを浮かべる。
 あぁ、番組でよく見てきたあの笑顔とは似ても似つかない。
番組の笑顔が少年の笑顔ならば、これは悪魔の笑顔に違いない。
「トウジマは、ずっと俺が好きやってん」
「トウジマが俺を好きなんやろうなーってのはなんとなく気づいてたんや」
「あいつ、わかりやすいやん(笑)すぐ分かったわ」
「でも、知らんふりしとってん。気づかんふりしとってん」
「だって俺もトウジマも男やん?好きって言われても困るやん」
「それに、当の本人も気づいてへんかったんや。鈍いやろー」
「だから俺が気づかない振りすることで上手くいっててん」
「でもな、ある日、それが壊れてん」
「理由、わかるか?」
 一気に話した後、俺の目をまっすぐ見据えて言った。
俺は少し黙り、考えられる限りの仮定を並べてみた。
「思い当たる出来事がありません」
「せやろうなぁ」
と、分かりきっていたと言うように笑う。
「覚えてるか?一ヶ月前に、トウジマと飲みにいったやろ」
「あの時、交わした会話を覚えてるか?」
389遊戯04-6:2008/02/05(火) 01:29:52 ID:LRlZcOfU0
 鈍器のようなものが、高い空から降ってきて俺の頭に落ちる。
俺は足から地面に埋もれて、血を流して倒れる。
そんな、衝撃とでも言えばいいんでしょうか。
 俺との飲み。一ヶ月前の、飲み。
花鳥は何故そのことを知っているのか?
もちろん、トウジマさんから聞いたからだ。
では何故、その話が今持ち出されるのか?
もちろん、この話に関係があるからだ。
 ゆっくり目を瞑って、あの日の光景を思い出す。

 * * * *
「シ甫川、好きな奴とか彼女いるか?」
「えええ?な、なんですか急に!」
「今はおらんとです、仕事で手一杯でそんな暇ないっすよ」
「そうかー。忙しいもんな、俺達」
「そうですよ、恋愛とかそんな暇ありませんよね。」
 * * * *

 違う。足りてない。
思い出せ、思い出すんだ。
今必要なのは、こんな簡潔な記憶ではない。
明確な、記憶。じっくり考えろ。

 そもそも、何故一緒に飲みに行ったんだ?
 確か、あの日は長時間ロケで、くたくたになって・・・
 でも、なんだかトウジマさんが落ち込んでるように見えて、それをみて、
 盛り上げてあげようかなとか、話を聞いてあげようかなとか
 そんな風に思って、俺はトウジマさんに声をかけていつもの居酒屋へ
 いって、カウンターに並んで座っていつもの酒やつまみを頼んで、
 番組の話や、会社の話をだらだらしてたらぐいぐい酒がすすんで、
 いつもはトウジマさんが言わないような愚痴を聞いたりしたんだ。
390遊戯04 終:2008/02/05(火) 01:30:36 ID:LRlZcOfU0
          _________
       |┌───────┐|
       |│ロ stop.      │|
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         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]

                 ピッ ∧_∧
                ◇,,(∀・  ) マダマダツヅキマース
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |                                |
  └────────────────┘
391遊戯04 訂正:2008/02/05(火) 02:23:49 ID:LRlZcOfU0
遊戯04-4


最後は課長の顔射で締めくくられた。

最後はトウジマさんの顔射で締めくくられた。



失礼しました
392風と木の名無しさん:2008/02/05(火) 22:42:04 ID:KC8l5COg0
キタキタキター!待ってました!
できすぎくん、良い味出してていいよーいいよー
393風と木の名無しさん:2008/02/06(水) 00:16:30 ID:vRlsa5o50
>>296-301
おお!ドラマ見直したくなりました!文体が超好みです!GJ!!
394エフ/ワン 鰤眉:2008/02/06(水) 04:47:01 ID:PjwWGGey0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

ナマモノ注意
F/1の鰤眉
1月24日頃(?)に鰤が言った「眉が去ったら俺も去る」発言を元に捏造。

>>61-74 で、眉黄身を書いた者です。
こちらや本ヌレでコメントくれた姐さん方、ありがとうございました〜!
この場を借りてお礼を。
395エフ/ワン 鰤眉 【1/11】:2008/02/06(水) 04:47:57 ID:PjwWGGey0
2005年、フェノレナンド・ア口ンソは初めてWCに輝いた。
ドライバ−ズ・チャンピオン、そしてコンストラクタ−ズ・チャンピオンの
二つのタイトルを手に入れて、マイノレドセブンのライトブルーに彩られた
モータ−ホームは歓喜に湧きかえっていた。喜びを分かち合うクル−の間を
抜け、フラヒ゛オとフェノレナンドは取材陣の待ち受ける一角へと歩き出した。
勝利の喜びが体の隅々まで行き渡り、麻薬のように心身を甘く痺れさせる。
パト゛ックの物陰に差し掛かりほんの1、2分だけ二人きりになった時、
長身のフラヒ゛オはフェノレナンドの頭をすっぽりと腕に抱え込み、囁いた。
「おまえは最高だ。」
フラヒ゛オはそう言うとフェノレナンドの額に口付けた。
彼の祝福を青年は瞼を伏せて受けとめる。
「ああ、最高だね。みんな最高だ。今のこの瞬間も。」
男の唇が離れると、フェノレナンドはそう答えてこぼれんばかりの笑みを浮かべた。
その笑顔を覗き込み、フラヒ゛オも大きく口を開けて笑う。
辣腕を振るい富と成功を手に入れた男。私生活では多くの女性と浮き名を流した。
そんな彼だったが、この世で得難い宝物を見るように腕の中の青年を見つめた。
396エフ/ワン 鰤眉 【2/11】:2008/02/06(水) 04:48:49 ID:PjwWGGey0
フラヒ゛オは人の才能を愛した。
モデル達の美貌や、自分の元を去りながらも7度王者に輝いたあの彼の唯一
無二の栄光を。種類は違っても今までに彼が愛情を注ぎ心血を注いだ人々だった。
そして腕の中に居る新最年少王者のことも。
彼の才能とは一流のドライバーであること。なおかつWCとなれるドライバー
であること。そして今年それを証明した。
フラヒ゛オが見出し、これからも彼の手の中で磨いていくのだ。
フラヒ゛オは彼の才能を愛していた。
愛情のままに再び彼に口付けた。今度は唇を重ねた。
不意の行動に、フェノレナンドは僅かに肩を強張らせた。
見ると、瞳が大きく揺れている。丸い頬は紅潮していた。
「マノレボ口マンめ…。」
青年はそう囁くと、揺れる瞳を隠すように目を伏せてそっと唇を舐めた。
唇への口付けは香りを残し、その残り香が青年を強く刺激したのだろう。
フェノレナンドはフラヒ゛オの愛煙する銘柄を挙げて、有名なヘビースモーカー
である彼を揶揄したのだ。
それは青年なりの僅かな抵抗だった。
態度とは裏腹に、彼の瞳はフラヒ゛オの愛情を受ける喜びに溢れ、輝いていた。
397エフ/ワン 鰤眉 【3/11】:2008/02/06(水) 04:49:31 ID:PjwWGGey0
「さあ、祝福の時間は終わりだ。そろそろハイエナの相手をする時間だぞ。」
フラヒ゛オが言うとフェノレナンドは笑った。
「ハイエナ?記者のこと?まあ言葉は悪いが確かに言えてるね。貪欲だ。」
フラヒ゛オは不敵な笑みを浮かべた。
「記者はハイエナだ。だが他の奴らもハイエナだ。」
フラヒ゛オの言葉にフェノレナンドは更に笑う。
「それじゃあハイエナしか居ないじゃないか。」
フラヒ゛オは彼特有のおどけた仕草で続けた。
「そうだ、みんな他の奴の美味い肉を狙ってる。世の中ハイエナしか居ない
んだよ。よく覚えておくんだ。」
フラヒ゛オが持論を語り新王者の瞳を覗き込むと、目の前の彼は再び笑った。
こうしてフラヒ゛オがフェノレナンドに自分の物の見方を語って聞かせるのは
日頃からよくある光景だった。
「了解、ボス。」
行儀の良い生徒のようにフェノレナンドは返事を返す。
「余計な話はするなよ。一つの出来事にただの本当と都合の悪い本当が含まれる
場合は、半分の本当だけを話す。これがハイエナを相手にする時のコツだ。」
フラヒ゛オのおどけた動作に合わせて、フェノレナンドはくるくると瞳を回した。
「了解、ボス。今の会話も話さないよ。余計な話だからね。」
彼のちょっとした冗談に、フラヒ゛オは青年の髪を掻き回した。癖毛が指に絡む。
「そうだ。余計な話には本音がたくさん詰まっているからな。」
二人は笑い合った。
互いに肩を組み物陰から歩み出す。全てが、勝利の余韻と高揚感に包まれていた。
398エフ/ワン 鰤眉 【4/11】:2008/02/06(水) 05:10:49 ID:YvSnFpCz0
あれはもう二年前のことだ。
目の前に居るフェノレナンドが昔の話題を持ち出したので、フラヒ゛オはつかの間、
記憶に思いを馳せていた。フェノレナンドは自分の元を離れ、再び戻って来た。
二年前のフラヒ゛オにとっては想像もしなかった事態だ。2007年のノレノーは散々
で、フェノレナンドも散々な思いをした。どちらも痛手を負ったゆえの決断だが
得をしたのは自分だろう。そうフラヒ゛オは知っていた。そしてフェノレナンドも
分かっている。だが、どんな出来事よりもフラヒ゛オにとって意外だったのは、
一度自分に背を向けた人間を、自分が許していることだった。
今日は契約書に全てのサインを済ませる日となっていた。
他の人々はもう引き返し、広いフ口アの隅に配置されたテーブルを挟んで今は
二人だけがソファに腰を下ろしている。フラヒ゛オがフェノレナンドに残るように
言ったのだ。交渉の段階でフェノレナンドとは対話を重ねてきたが、フラヒ゛オは
もう少し彼と話すべきだと感じていた。過去の彼との決裂は決して穏やかなもの
ではなかった。彼と個人的な感情について話しをしたかった。
「父と息子のようだってさ。」
「なんだって?」
急な言葉にフラヒ゛オがテーブル越しに返事をすると、フェノレナンドは続けた。
「僕とあなたの仲を新聞がそう書いてたよ。だいぶ前のことだが…。」
どう返事をして良いものか分からず、フラヒ゛オは首を傾げた。沈黙するフラ
ヒ゛オに気が付くと、フェノレナンドは目を通していた契約書の束から視線を上げて、
唐突な切り出しについて説明した。
399エフ/ワン 鰤眉 【5/11】:2008/02/06(水) 05:11:31 ID:YvSnFpCz0
「こうして又戻ってくることになっただろ。そうしたら又書かれてたんだよ。
でも今度の見出しは“放蕩息子、育ての親元に帰る”だった。ゴシップ誌だ
けどね。」
言いながらフェノレナンドは苦笑した。
「がっかりだな。同じ仕事場に居るのにおまえの親呼ばわりされるとは、俺は
年寄り扱いってことなのか?それに、放蕩なら俺の方が自信があるってのに。」
フラヒ゛オがそうふざけるとフェノレナンドは歯を見せて笑った。
「父と息子か…。」
心ここにあらずといった調子で一言呟いてから、フェノレナンドは急に真剣な
眼差しになった。
「フラヒ゛オ、息子を欲しいと思ったことはあるかい?」
「…なんだって?」
思いもよらぬ質問にフラヒ゛オが問い返す。
「才能があって、タフで貪欲で、情熱と冷酷さを併せ持った息子だよ。共に
仕事をし、あなたに勝利と栄光をもたらす息子だ。」
フラヒ゛オは目を白黒させた。
「なんだそれは。おまえ俺の息子になりたかったのか?」
「違う。そう思ったことは無い。」
はっきりと否定しながら、だがフェノレナンドは意味深な言葉を続けた。
「でもあなたの息子になっちゃいけないとは思ってた。」
フェノレナンドの睫毛の奥に一瞬だけ暗い光が宿った。
(あなたの庇護の元だけで勝てるような王者には。)
そんな言葉がフェノレナンドの胸中を掠めたが、その言い方は彼の自尊心に触れた。
フェノレナンドは言い方を変えた。
400エフ/ワン 鰤眉 【6/11】:2008/02/06(水) 05:12:24 ID:YvSnFpCz0
「少し、余計な話をしても良いかな。」
余計な話。懐かしい言い回しだとフラヒ゛オは思った。二年前まで自分はこの
青年に勝利の哲学を仕込んでいるつもりでいたのだ。だが青年はフラヒ゛オに
いっぱい食わせ、彼の手元から飛び出して行った。自分は彼の所有物では無い
とでも言いたげに。
「俺は、待遇や開発や、チームの撤退の可能性や、目に見える部分にいくつも
不満を感じていた。移籍の理由はいくつもあった。もう話したけどね。でも
話さなかったこともある。俺にとっては目に見えない部分にも理由はあった。」
そこで彼は言葉を切ったが、フラヒ゛オは口を挟まずに聞いていた。
「俺は自分の力だけで王者になれると証明したかった。」
自分の力だけでも。それは多分フラヒ゛オが居なくても、という意味だろう。
フラヒ゛オは再び首を傾げた。
「俺の機嫌を損ねてから二度目のタイトルを獲って、おまえはもう証明した
じゃないか。それとも面と向かっておまえに文句でも言った奴が居たか?」
「いや。そんな奴は居なかった。」
「なら」
言い募るフラヒ゛オをフェノレナンドは遮った。
「だが俺は自分の耳に聞こえない所でもその声を黙らせたかった。目の届かない
所でもそんな口をきく奴が居ないと確信したかった。」
二人の間に沈黙が落ちた。
401エフ/ワン 鰤眉 【7/11】:2008/02/06(水) 05:13:13 ID:YvSnFpCz0
フラヒ゛オはソファから腰を上げてテーブルを回り込むと、フェノレナンドの隣に
腰掛けた。フラヒ゛オより頭半分ほど小さい彼は、隣に座った育ての親の顔を
見上げた。フラヒ゛オはその視線を正面から受け止める。
大きな手のひらでフェノレナンドの両頬を包み込むと、唇を重ねた。フラヒ゛オは
青年の舌を味わった。フェノレナンドは大人しくしていたが、唇が離れると再び
フラヒ゛オを見上げた。
「息子にこんなキスはしない。」
フラヒ゛オはそれだけ言った。
覚えのあるきつい残り香がフェノレナンドを刺激した。その残り香を掬い取るように、
青年は少しだけ唇を舐めた。
「マノレボ口マンめ。」
余裕を見せて僅かに微笑み、フェノレナンドは以前と同じセリフを言った。
その笑顔は二年前の彼とはずいぶん違っていた。今の彼は揺れる瞳を隠すために
目を伏せたりはしない。もう彼は自分の価値をよく知っているのだ。その価値を
使って他人に自分の意見を強いるべきだということも心得ていた。また、それが
通じる相手は現状では限られてしまっていることも。
銀の矢の元ではそれは叶わなかった。
402エフ/ワン 鰤眉 【8/11】:2008/02/06(水) 05:14:25 ID:YvSnFpCz0
だがそんな都合の悪い半分の本当は口にせず、フェノレナンドは訊ねた。
「じゃあこれはどんな相手にするキスなんだ?」
口付けの意味をはぐらかすような、それでいて相手を試しているような問いだった。
「どんな相手かな…。」
フラヒ゛オはそう言いながら少し考えると、答えを思い付き、再び青年の頬に触れた。
間近からフェノレナンドの目を覗き込む。
「そうだな、熱を上げてる相手かな?」
わざとフラヒ゛オが軽い調子で言うと、今日初めて、フェノレナンドの表情が驚きに
変わった。ぱっ、と顔一面に赤みが差す。
「ははは。それは…。すごい口説き文句だね。そんな言われ方をされちゃ、さすが
に照れるよ。」
そう言って顔を伏せると少し笑った。髪に隠れて顔は見えなかったが、耳まで
紅潮している。フラヒ゛オはようやく二年前と変わらない彼の姿を見付けた
気がした。
「そう言うなよ。言ったこっちが照れるだろう。」
フラヒ゛オが苦笑して彼の髪を掻き回すと、フェノレナンドは顔を上げて笑みを見せた。
403エフ/ワン 鰤眉 【9/11】:2008/02/06(水) 05:17:50 ID:YvSnFpCz0
「もう行くよ。これからはいつでも会えるからな。」
フェノレナンドはそう言って立ち上がった。二人は別れのハグを交わした。フラ
ヒ゛オは軽く腕を回しただけだったが、フェノレナンドはがっちりと相手の肩を抱き、
首筋に顔を埋めた。フラヒ゛オが驚いていると、聞き逃してしまいそうな小さな声
が耳に流れ込んで来た。
「本当はこの腕の中がとても好きだ。」
フェノレナンドは囁いた。囁きと共に彼の熱い吐息がフラヒ゛オの首筋に触れた。
半分だけの本当ではなく、全部が本当だと言える物がまだ二人の間にあるとした
なら、この熱い吐息がそれかもしれない。最良の瞬間を懐かしむような愛情だけ
は互いを偽ることがないのかもしれない。フラヒ゛オはそんな風に思った。
体の隅々まで甘く痺れるようなあの喜び。あんな勝利の恍惚を分かち合える
相手と、これから他に出会うことなどあるだろうか?今自分を抱きしめている
青年以外に目下そういう宛ては無い。フラヒ゛オはそう認めていたが、互いに手を
取り合い再び勝利したとしても、二人は、いや、彼はもう変わってしまっていた。
今では彼は腹の内でこちらを値踏みしている。
フラヒ゛オはそれを承知で、青年をきつく抱きしめ返した。
404エフ/ワン 鰤眉 【10/11】:2008/02/06(水) 05:18:37 ID:YvSnFpCz0
腕を放すと、フェノレナンドはサバサバとした表情で歩き出した。
「フェノレナンド!」
フラヒ゛オは、扉の向こうへ今にも姿を消そうとしている彼を呼び止めた。
「俺はおまえに賭けてる。おまえがうちを去る時が来たら俺も長い休暇を
取るつもりだ。」
フラヒ゛オにとってその言葉は、半分が本当で半分がかけ引きだった。
フェノレナンドは驚きを隠さずしばらくフラヒ゛オを凝視した。沈黙はとても
雄弁で、フェノレナンドが今、頭の中でいくつもの計算を弾き出している様を
フラヒ゛オに伝えた。フラヒ゛オは再び口を開いた。
「おまえをうちに引き止めるために言っていると思うか?」
2、3秒の間があった。
「いや。そこまで言って貰えるなんて嬉しいよ。すごく…嬉しい。全部本当だ。」
そう言うとフェノレナンドははにかむ様な笑みを湛えた。
405エフ/ワン 鰤眉 【11/11】:2008/02/06(水) 05:19:28 ID:YvSnFpCz0
(いいや。それは半分だけ本当じゃないのか?「嬉しい」以上の言葉はくれないか。
「俺もあなたに賭けてる」、ってな。)
かつての自分ならば彼にその返事を要求していた気がする。ふとそう思い当たっ
たが、今のフラヒ゛オは彼に強要しなかった。
部屋を出しなに今度はフェノレナンドの方がフラヒ゛オに声を掛けた。
「フラヒ゛オ、体を大事に。あなたのことはいつだって想ってる。これも全部本当だ。」
フラヒ゛オは彼の言葉に芝居がかったサムアップで応えると、直ぐに胸ポケットから
マノレボ口を取り出して銜えた。“禁煙なんてくそくらえ”、まるでそう主張している
かのようだ。フェノレナンドは困ったように眉根を寄せた。
(彼はまだ、自分が死なない体のつもりでいるんじゃないかな?)
そんな考えが過ぎる。
込み上げる苦笑を抑えることが出来ないまま、フェノレナンドは部屋をあとにした。
406エフ/ワン 鰤眉:2008/02/06(水) 05:35:39 ID:T35Ftng/O
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

途中規制に引っかかったので時間が掛かってしまいました。すみません。

鰤が眉に熱烈ラブコールをかましてくれたのでムラッムラきて書いた。
エフ/ワンの人々ってヌゲーですね。
眉は対鰤限定で魔性発動したらいいなー、とか日々妄想してます。夢見過ぎです。
鰤を書くのは眉や黄身を書くのに輪を掛けて緊張するので慄きながら書きました…
でも鰤が眉に熱烈ラブコールをかましてくれたのでムラッムラきて(以下エンドレス
いろいろ拙い点はご容赦を!
407風と木の名無しさん:2008/02/06(水) 11:36:30 ID:4kq+0ADa0
>>394
GJ!うはーこれは萌えて燃える!
開幕楽しみですww
開幕したらまた萌えネタわんさか出そうですね。
そしたらまた何か書いてくださると嬉しい!
待ってます!
408風と木の名無しさん:2008/02/06(水) 11:46:05 ID:Z/GtodSo0
亀だが>>336GJ!
いよいよ佳境に入ってきたかな?
膝枕いいな〜。岡妬きしてしまいそうw
「スペルをひざに転がし」って所がなんか好き。
満天の星に青い人魂の夢、舞台背景もいいぞ!
409Happily ever after:2008/02/06(水) 20:29:50 ID:Hut49qtu0
東野ケイーゴ氏の「名/探/偵/の/掟」で警部×探偵です。
萌えたぎった勢いで書いてしまった・・・
初めてで見苦しいところばかりな上に、
読んだことのある人でないと分らないかもしれません。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
410Happily ever after:2008/02/06(水) 20:30:37 ID:Hut49qtu0
「ハッピーエンドってどんな感じだと思いますか」

探偵が突然そう言い出したのは、
いつものように事件が解決した後のことだった。
因みに今回の事件がどのような話だったかは想像にお任せする。
まあいつものように、登場人物である我々にとっては
顔から火を吹くような展開の連続だった、とだけ言っておこう。

「さあ分らないな。私は作者ではないから」
彼の唐突な問いかけの意味が掴めず、私は曖昧に答えた。
そう言えばもう長いことこのシリーズに登場しているのに、
それはまったく考えたことのない問題だった。
「そうですよね」
探偵はそう呟くと、考え込むような顔をしながらソファに身体を預けた。
また随分と真剣に考えているものだ。
「だって自分たちのことですよ。気になるでしょう」
私の顔を見て探偵は言った。
「そうですね、例えばもしも・・・」
「もしも?」
「警部は捜査中に不慮の事故で殉職、
僕は追い詰めた犯人と相討ちになって死亡・・・なんていう
最終回だったらどうするんですか」
411Happily ever after A:2008/02/06(水) 20:31:58 ID:Hut49qtu0
それは確かに嫌だ。ものすごく嫌だ。
しかし我々は所詮、神である作者にいいようにされる運命なのだ。
というか今この男が挙げたその例は、このシリーズの最終回としては
十分ありうる展開のような気がするのだが・・・
・・・いやいやいや!
「君が死ぬってことはないんじゃないか?主人公だぞ君は」
「主人公の探偵が殺された作品が、過去にいくつあると思ってるんですか」
「いや君は大丈夫だ、君は死なない」
「もっと論理的にお願いできませんか・・・」
まったく相変わらず煩い男だ。
こんな状況で『かの名探偵の元祖もそういえば死んでしまったなあ』
などと言える人間がこの世のどこにいると言うんだ!
「最終回はアレに決まっている」
「アレって何ですか」
『そして彼らはいつまでも幸せに暮らしました。めでたしめでたし』
そう言った途端、探偵から矢のような反論が返ってきた。

「ちょっと待ってください警部。
本格推理が謳い文句の作品の最終回に、それは微妙な気がしますね。
いやそれよりもまず、この作者に『探偵と刑事が結ばれてめでたしめでたし』、
そんな超展開が書けるのかどうかが問題な気がする」
一気にまくしたてて息が切れたのか、探偵は黙り込むと私に背中を向けた。

その顔が思い切り赤くなっているのを見てしまったら、
こっちの顔まで赤くなってしまいそうなので、私は黙って煙草に火を点けた。
412Happily ever after:2008/02/06(水) 20:32:56 ID:Hut49qtu0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

あの最終回はちょっと忘れる方向で。
413風と木の名無しさん:2008/02/06(水) 23:17:45 ID:egECE12P0
>>394
おー、鰤様ステキだ〜。
07にそれぞれもどかしい思いをした二人ですもんね。
今年はまた楽しませて欲しいっす。
414風と木の名無しさん:2008/02/06(水) 23:49:32 ID:H3ueGboh0
>>355
いいね!いい、こういうの好き。
415魅せられた夜 猪野×受理:2008/02/07(木) 00:33:15 ID:SwQ+rPz00
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  ナマモノ注意です。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  某スターとギタリスト
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) ブンリョウマチガエンナヨ
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
416魅せられた夜 猪野×受理 1/4:2008/02/07(木) 00:33:49 ID:SwQ+rPz00
俺のバンドのヴォーカル。いや今はソロのシンガーそれも飛びっきり売れている。だな、
彼が部屋の鍵を無くしたとかで、真夜中にたたき起こされた。

明日も早いとそそくさとベッドに潜り込んできたくせに、いつまでも寝返りをうってじたばたしている。
「枕が替わると眠れないってか、そんなタマかよ。」
と声をかけた。
とたんに彼は体を反転させて俺を見上げた気配がする。
「なんか、疲れちゃってさ、眠れない。」
暗闇の中、ベッドの反対側から擦り寄ってくるとオレの左手を勝手に枕にした。

「重い」
少し怒ったふりをしてみても、聞いてやしない。
枕にした左手を目の前まで引っ張り上げ、指の股を撫ですさり弄びはじめる。
怪しい予感に背筋がぞくりとあわ立ち、あわてて手を振りほどいたのだが遅かった。
左手を逃した手はそのままオレの体の上をすべり、胸の上で止まる。

「猪野さん乳首硬くなってきたぞ。」
その言葉に肩を抱き寄せ自分の体の上に引っ張りあげる。
417魅せられた夜 猪野×受理 2/4:2008/02/07(木) 00:34:13 ID:SwQ+rPz00
「硬くなってんのは乳首だけじゃないさ。」
腰をゆっくりと動かし擦り付けるように動かす。
彼は笑いながら、自分の腰も合わせるように動かし始める。
「すげー。かなり溜まってんじゃない。」

溜まっているのはお前だろうと反論を飲み込み、優しく頬を撫で上げる。
そう、溜まりもするわこの仕事量。
取材、リハ、録画、また取材、生放送。それから取材。
俺はそれを黙って見ているだけだけどな。

瞬く間に下着が湿り気を帯びてくるのが感じられる。
「どする、このままやっちゃう?」
返事はせずに顔を引き寄せ左の目の下の黒子のある場所に口付ける。
「くすぐってー。」
体をよじって逃げ出そうとするが離さない。

目元から鼻筋目元に唇をはわせる。
「ん。。。」
腰の動きはますます早くなってきた。

「脱ぎなよ。」
乱暴にTシャツを脱ぐと現れたのは柔らかい肌を持った男の躰。
そのまま引き寄せ、右の乳首を口に含みころがした。
418魅せられた夜 猪野×受理 3/4:2008/02/07(木) 00:34:46 ID:SwQ+rPz00
「あ、ふ・・・」
あえぎ声を漏らしている唇の形なら見えなくても知っている。
その唇を指でなぞると、すかさず熱い舌が伸びてきて絡め取る。
「どこがイイトコなんだ。?好きなトコ舐めてやるから。」
指先で舌を、歯を、優しくなぞりながら訪ねてみる。
「全部」
「欲張りなやっちゃなー」

苦笑しながら体の上下を入れ替えて俺もシャツを脱いだ。
彼の下着の上から厚い欲望を掴み撫でさする。
「なんかいやらしいよ。」
「いやらしい事してるんだよ。」
いつの間にか体中に指を這わし、熱い吐息を引き摺り出すことに夢中になっていた。
419魅せられた夜 猪野×受理 4/4:2008/02/07(木) 00:35:09 ID:SwQ+rPz00
「ねえ、猪野さん。俺としたいって言って。」
切羽詰った声が語りかけてきた。
「猪野さんは俺のもんだよね」
彼は体を起こし俺と向かい合う。
暗闇に慣れた目には間近に彼の目がまっすぐに俺を見つめていることが分かった。

「当たり前だ。」
そっけなく言い放つと同時に、そっと彼の両肩を包み込むようにして引き寄せ頬に口寄せた。
「お前は俺の音楽だ。音楽なしの俺が想像付くか?」

答えにもなっていない答えに及第点はだされたのか?彼は声にならない声で笑いながら再びベッドへ沈みこんでゆく。
俺はその白い喉元を見下ろしながら、今夜は長い夜になることを覚悟した。
420魅せられた夜 猪野×受理:2008/02/07(木) 00:35:46 ID:SwQ+rPz00
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) オソマツ。最後ちょっと息切れw
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
421風と木の名無しさん:2008/02/07(木) 01:25:16 ID:I4WmeWCa0
>>409 まさかこの二人が見れるとは!嬉しい
422風と木の名無しさん:2008/02/07(木) 01:43:18 ID:0DHkpeDD0
>>415
超GJ!
この受理めさめさ好みです
お待ちしてた甲斐がありますた。アリマトー
423風と木の名無しさん:2008/02/07(木) 04:54:28 ID:2IUuy2nL0
>>394-406
⊂⌒~⊃,,Д,,)⊃モエシヌ
424風と木の名無しさん:2008/02/07(木) 14:45:23 ID:wmINrK640
>>394姐さん!
ニヤニヤが止まらないよ!
ご馳走様でした(*´∀`*)
425風と木の名無しさん:2008/02/08(金) 05:02:27 ID:7JsQjdE50

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  金紺 二氏乃×舵藁
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  まだ大/阪にいた頃、5年以上前の設定です。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 二氏乃変態注意
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

426二氏舵 1/3:2008/02/08(金) 05:04:03 ID:7JsQjdE50
 二の句が継げない舵藁に、二氏乃はただただ真っ直ぐな視線を投げ掛けるばかりだった。
その黒々とした瞳に映り込む自分の顔は、どんな表情をしているのか分からない。
――でも
唐突に投げ掛けられた、馬鹿げた悪ふざけに近いようなその言葉に、自分の体も一瞬反応した。その事実と。
目の前の、至極真面目な顔をした相方に、ほだされてみてもいいかもしれないと思った舵藁は、自分も相当おかしなところまで来てしまった、と自嘲する他なかった。

 何を言うでもなくタクシーに乗り込み、自宅の住所を告げる二氏乃の横顔をちらりと伺う。
整った鼻筋、ニキビの痕がちらほら残る頬、厚めの唇。不意に顔が熱って、舵藁はかぶりを振った。
何を今更、飽くほど見ている相方の顔だ。だけど――
突然、力の抜けていた右手を掴まれる。二氏乃の一回り大きな手がねっとり絡まるように舵藁の指を取り、先を擽るように爪で引っ掻く。
「な、に――」
指先のむず痒いような感覚が下腹部を刺激して、舵藁は手を払おうとするが、二氏乃はそれを許さず、そのまま掴んだ手を自分の股間へと導く。
二氏乃は前を向いたまま、目を細めて笑った。二氏乃のそこは確かに熱を持って、存在を主張するように頭をもたげかけている。
「俺、本気やで」
そこで初めて、二氏乃は顔をこちらに向け、絶句した舵藁の顔を覗きこむようにして囁いた。
掴んだままの手をゆるゆると扱くように動かされる。
しばらくの間、二氏乃が何をしているのか認識できなかった舵藁は自分の手を呆けたように見つめていたが、やがて弾かれたように二氏乃の顔を見、そして睨みつけた。
427二氏舵 2/3:2008/02/08(金) 05:06:03 ID:7JsQjdE50
「――お前、アホか」
舌打ちするものの、指が触れる度に熱さを増す二氏乃の股間から目が離せない。
舵藁はふ、と一つ小さな溜息を吐いてから、今度は自分の意思で西野の股間に指を這わせる。
指でなぞった通りに反応するのに、何故か快感すら覚えてしまっていた。
起きぬけのようなぼんやりした頭で、ただ指をそろそろ動かしているうちに、突然自分の股間にも緩やかな刺激を与えられて、舵藁の肩が跳ねた。

 「自分だけ真人間ですみたいな顔して、アホはお前や」
二氏乃の左手はいつの間にか自分の股まで伸びていた。自分がしていたように二氏乃の指先が形を確かめるように動く。
衣服越しのぼんやりとした快感は、それでもダイレクトに舵藁の欲望を突いてきた。
「ちょ、やめ――」
慌てて自分の手を引っ込め、二氏乃の手を引き剥がそうとしたその時、タクシーがブレーキを掛けた。
二氏乃は素知らぬ顔で料金を払い、舵藁の手を取ってタクシーを降りる。
「――何考えて」
「さっきのさ、タクシー。俺等がしてたこと、タクシーの運ちゃんに見えとったで」
「……お前マジに一回死ねや」
まるで昨日見た夢の話でもするかのような口調で二氏乃は言った。
あれ、家の鍵どこやったっけ、とバッグを漁りながら階段を昇っていく二氏乃の後姿を、追いかける気にはとてもなれない。
舵藁は羞恥心で一杯になった腹の底から一言搾り出すのが精一杯だった。


428二氏舵 3/3:2008/02/08(金) 05:07:59 ID:7JsQjdE50
が、一度火を点けられた欲望の吐き出し口はここにしかないのだ。
階段を一段上がる度に脚が股間に当たって変な溜息が漏れる。
ようやくの思いで二氏乃の部屋までたどり着くと、二氏乃はドアの前で待っていた。
「舵」
掠れた声が耳につく。腕を掴まれて玄関まで引っ張られる。
痛い、と思う間もなく頭を抱え込まれ、二氏乃の舌が唇を割って入り込んできた。
ドアに押し付けられていたのが、二氏乃の舌の動きを必死に追ううちに立っていられなくなって、舵藁はずるずるとその場にへたり込んだ。
「――お前やから、こんなんなってんねん」
肩で息をしながら二氏乃が呟く。お互いの腰を擦り付けるようにしながら、もう一度キスを求めてくる。
「あんな変態じみたことしておいて、お前も必死やったんやん」
口にした瞬間、もう何もかもがどうでもよくなって、舵藁は笑った。
何も二氏乃があんなことを言わなくても、自分でもこういうことを望んでいたんだ、と舵藁は思い直す。
腰を引っ込めてもとても誤魔化せそうにない下腹を見つめる。
どうせならもうどろどろに蕩けるまで一緒に居よう。純粋にそう願ってもう一度、二氏乃の唇に舌を這わせた。
429風と木の名無しさん:2008/02/08(金) 05:08:51 ID:7JsQjdE50

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 何か昔のことを思い出したら止まらなくなった。後悔はしていないんだぜ。
430風と木の名無しさん:2008/02/08(金) 06:58:52 ID:fcvyAtF5O
>>394
とんでもなく萌えました。
ちょ、前作の眉黄身で頭髪禿げ上がる勢いで毛根死滅、
今度は鰤眉ではからずとも全身脱毛な勢いだお!!
鰤カッコイイよ鰤(*´Д`)
またの投下を待ってます。
431風と木の名無しさん:2008/02/08(金) 22:19:13 ID:9tRn94qo0
>>429
乙でした こういう空気感大好きです
昨年末の某漫才大会からこの二人にじわじわ萌えてるので嬉しい
432でじかめ 1/3:2008/02/09(土) 00:02:15 ID:iKN2wvZw0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

オリジ。年上×年下のバカップルっぽい小話。

「こう?」
「や、違っ…」
「じゃあ、こっち?」
「そうじゃな…」
「え?ちゃんと言ってくれなきゃわかんないよ」


「あーもう!だから、こっちが再生でこっちが撮影だっていってるでしょ!」
あまりに飲み込みの悪い相手に俺は遠慮なくぶち切れた。
「そんな怒らなくたっていいじゃない…」
「さっきから何回同じ事言ってると思ってんですか!」
彼にデジカメの使い方を教えて欲しいと言われたのでレクチャー中だったのだが
どうにもこの人致命的にメカに弱い。何度教えても覚えないのだ。
最初は丁寧に教えてた俺もいい加減、我慢の限界だった。
「ったく、何に使うんですか。もう写ルンですでいいじゃないすか。」
キレ気味に吐き捨てる俺に、相手は首をすくめてボソボソと理由をいった。
「…だって、普通のカメラで取ったらお店に出さなきゃいけないでしょ」
「はあ?人に見せられないものでも撮る気ですか?ハメ撮りとか?」
まさかねと笑った俺を彼がビックリした顔で見ている。
「よくわかったね」
433でじかめ 2/3:2008/02/09(土) 00:03:12 ID:l/RCPua+0
当たりかよ!ていうかその場合、被写体、俺じゃん!
え、ていういか何ですか、その満面の笑みは。
「ひょっとしてお前もハメ撮りしてみたかったの?」
「え、ちょ…」
「すごいねー。やっぱり相思相愛だね、俺たち」
「ちょちょちょ、勝手に話を進めないでください!
だ、だいたい、そんなもん撮って何に使う気ですか!」
鼻歌でも歌いだしそうな相手を慌てて制止する俺。
「えーほら、会えない時とかさ、写真あったら寂しくないかなぁって」
ナニが寂しくないんだ、ナニが。
「でもむずかしいね。やっぱり普通のカメラにしようかな。普段行かないお店に出しに行けば…」
俺にとってありがたくない方法を本気で検討し始めた相手を見て、いやな汗が流れる。
しかし、やると言ったらやる男だ。この人は。まぁ、そういうところが好きなんだけど
…っていうのはこの際、置いといて。
万が一にでも他人の目に触れたら彼はともかく俺は生きて行けない。
なんとしてもハメ撮りなどという馬鹿げた考えをやめさせなくてはならない。
なんとしても、だ。
434でじかめ 3/3:2008/02/09(土) 00:03:51 ID:l/RCPua+0
俺はとっさに思いついた作戦を決行する為に、意を決して、彼の腕を掴んだ。
「ん?どした?」
問いかけてくる相手と目線を合わせる。
俺は目で訴えるようにたっぷり数秒間、彼の目を見つめてから口を開いた。
「…カメラなんかじゃなくて直接見てくださいよ」
相手の首に手を回し、顔を近づける。
唇が触れ合う寸前で止めて、囁く。
「写真なんかに、貴方をとられるのは、嫌です」
そのまま唇を重ねる。軽くついばむようなキスからだんだん深く。
互いの舌が絡み合いをはじめると、彼はデジカメを置いて俺を抱き寄せた。
俺はそれを横目で確認して、心の中で小さなガッツポーズした。

とりあえずハメ撮りを回避してほっとした俺が
「じゃあ、写真なんかなくても思い出せるくらいにしないとね」と微笑む相手に、
ひょっとして作戦ミスだったのかもしれないと思うのは、もう少し後の事。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ ) ヤマナシオチナシイミナシ!
435風と木の名無しさん:2008/02/09(土) 00:23:30 ID:hzktTzgr0
>>425
しっとりした雰囲気モエタ(*´Д`)
ここのコソビも絆強くて色々切な萌える
436白と黒:2008/02/09(土) 00:52:48 ID:N82UmKif0


                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  悲しんだり暴走したりする色白と色黒のゲイニソコンビです
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  黒白でも白黒でもある感じの日常っぽい話
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
437白と黒(1/7):2008/02/09(土) 00:53:35 ID:N82UmKif0
実は俺、マジで吸血鬼だったんだ。
それで今もう、ずっと血吸えてなくて、死にそうなんだ。

突然そんなことを言ったかと思うと次の瞬間、ヤマダは驚くキクチの白い首筋に噛み付いた。
まるで吸血鬼のようだと過去に何度もキクチが言ったヤマダの尖った歯は
今まさに吸血鬼の牙そのものとなって、人間のものとは違う長く尖ったそれが皮膚を突き破り、
伴なって生じる慣れない痛みによってキクチの眉間に皺が刻まれる。

ずっと血を吸うことができていなかったせいで死にそうだとヤマダは言っていた。
血を吸えなくて死にそう。血を吸えないから、死にそうだと。
──じゃあ、血を吸えればとりあえずまだ生きられるってこと?
キクチは考えた。考えながら、首筋に走る痛みと視界の隅に移りこむ色素の薄い髪をぼんやりと認識し、
ヤマダの背にしがみつく。力が抜けていったのだ。それだけでなく、足も勝手に震えだす。
血を吸われ、結果として急速に貧血状態になっていくせいで。
加えて、普通に考えてありえないはずのこの状況に対する当然の動揺も作用している。
だが最終的に、キクチは何を言うでもなく無言でゆっくりと目を閉じた。
その時どこからか聴こえ始めた、よくわからない音を遠くに聴きながら。
よくわからないその音はよくわからないのになぜか聞き覚えのある音。
彼は薄れる意識の中でその不思議な音の正体を思い出そうとした。

この音は───


438白と黒(2/7):2008/02/09(土) 00:54:16 ID:N82UmKif0


「…………」
枕元でピピピと鳴り続けている、脳に直接響くような不快な電子音。
毎朝耳にしているのにいつまで経っても心地良さを感じることのできない音。
心地良さを感じてしまってはその音の持つ意味が無くなってしまうのだが。

音の正体は、目覚まし時計のアラームだった。
キクチはたった今、目を覚ましたのだ。
いるのは自分の部屋の自分のベッドの、布団の中。
もちろん吸血鬼のヤマダなんていないし血を吸われてもいない。
念のため首筋を確認してみたが虫刺されの痕すら無い。
彼は夢をみていたのだ。
ヤマダが実は吸血鬼で、そしてその吸血鬼に自分が血を吸われるという馬鹿げた夢を。

なんて馬鹿馬鹿しい夢だと、キクチは鳴り続けたままのアラームを不愉快な気分で聴きながら心底思った。
夢なんて所詮ばかばかしくないことの方が少ないくらいのものだが、しかし今回のそれは群を抜いている。
果たしてどういった感情が作用してあんな夢を見るに至ったのかは全くもって不明だが、
とにかくキクチはこれ以上深く考えても時間の無駄でしかないと思い直し、そこでようやく鳴りっぱなしのアラームを止めた。
窓の外に広がる空は、薄く曇っていた。
439白と黒(3/7):2008/02/09(土) 00:58:00 ID:N82UmKif0
深く考えるのを放棄してはみたものの、この日のキクチはなぜか夢見の悪さをやけに引き摺ってしまっていた。
普段なら夢なんて起きてすぐ忘れるし、仮に覚えていたとしてもそれを引きずるなんてことは無かったはずなのに、
カーテンを開けても着替えをしても外に出ても無愛想なタクシーに乗り込んでも気分が変わることはない。
もちろん、この日の仕事場であるテレビ局に到着しても変化は訪れない。
── ……何かやな気分だ。
内心でそうぼやきつつ、すっきりしない心情そのままの足取りで廊下を進む。
すれ違うたびにかけられる挨拶に返す声も普段よりずっと低くて重い。
「はあ……」
いっそヤマダくんに八つ当たりでもしてやろうかな、などと考えながら深く嘆息し、
キクチは控え室のドアを開けた。
「よお」
すると部屋の中には既にヤマダが落ち着いた様子で到着しており、
その彼は、台本を読んでいたところに遅れて到着した相方の姿を見て
いつも会う時と何ら変わらない軽い挨拶とのんびりとした視線を送った。
眼鏡越しの瞳は少し眠そうで、薄く開けた口から覗くのは見慣れた尖り歯。
どこをとっても普段通りの彼だ。なのに、そのとき。
「…………」
キクチの動きが、ドアを開けて部屋に入りかけた体勢でぴたりと止まった。
「……キクチ?」
挨拶に対する反応が無かったどころか突然固まってしまったキクチを見て、
ヤマダは不思議そうに眉を顰め少々控えめな声色ながらも再度、呼びかけた。
が、それに対しての返事もやはり無い。
ただ代わりに、妙な質問を投げかけられることにこの2秒後彼はなる。
440白と黒(4/7):2008/02/09(土) 01:11:59 ID:N82UmKif0
「…なんでトマトジュース?」
「へ?」
唐突に脈絡のないことを言われ、ヤマダは思わず間の抜けた声を漏らした。
一方のキクチは相変わらずドアを開け部屋に入りかけた状態そのままの中途半端な位置と体勢で、
ただ視線だけをある一点に集中させている。視線の先にあるのは、ヤマダの手。
厳密に言うならばヤマダの手の中にある紙パックの飲料。それは何の変哲もない、トマトジュースだ。
「なんでって…なんとなく」
「………」
唐突な言葉やなぜかトマトジュースを必要以上に凝視しているキクチを不思議二思いつつも、、
とりあえずヤマダは律儀にそう返事をした。無論、彼の返事は嘘ではない。
ここに来る前に雑誌を買う目的でコンビニに寄り、たまたま目に付いたトマトジュースを
本当にただの気まぐれで一緒に買ってそしてそれを到着した控え室で飲んでいただけなのだから。
まさかそこに疑問を投げかけられるなんて彼は微塵も思っていなかった。

そんなわけでヤマダは困惑したが、しかしキクチの方も実は困惑していた。
困惑した彼はそこで昔、漫画だったかテレビだったかで得た知識を思い出す。
『血を吸えない、あるいは吸わない状態の吸血鬼は血液の代用品としてトマトジュースを飲む』
様々な吸血鬼ものの作品において使い古されたベタな設定。
キクチは瞬時にそのベタな設定を思い出してしまっていたのだ。
それもこれも全ては今朝の夢のせい。
ヤマダがトマトジュースを飲んでいたところで、普段なら気にしたりしない。
百歩譲って多少なりと興味を示したとしても、
せいぜい先ほどヤマダ自身が言ったようにああ気まぐれなんだなと思う程度だ。
なのに今は、無意識の中のほんの短い一瞬とはいえ夢の続きを錯覚してしまう有様。
441白と黒(5/7):2008/02/09(土) 01:12:30 ID:N82UmKif0
──馬鹿馬鹿しい……
いくらあんな夢みたからって、実際にそんなことあるわけないじゃないかとキクチは自分自身に呆れた。
しかしこの日に限ってこんなにも気になるのがなぜだろうという気持ちも膨らみ始める。
外はどんよりと曇り、電気がついてる部屋もなんだか薄暗く重く感じる。
今にも雨が降り出しそうな空は無意味な不安をかきたてる、嫌な曇天。

全てはあの夢と、よりによってそんな夢を見た日に変な気まぐれを起こしトマトジュースを買ったヤマダが悪い。
暫し思い悩んだ末、キクチはそんな言いがかりじみた責任転嫁を心の中でした。そして、意を決して口を開く。

「……あのさあ」
「ん」
「ヤマダくんて吸血鬼じゃねえよね」

先ほど同様に唐突で脈絡の無い、そして先ほどとは比べ物にならないほど突拍子が無い。
そんな発言を受け、今度のヤマダは間の抜けた声を漏らすことすらできず呆気にとられた。
そのまま数秒もしくは数十秒、沈黙が続く。
「いや、だから」
さすがに居心地が悪くなったキクチは自分の発言がいかにわけのわからないものかを自覚していることもあり、
相変わらず呆気にとられているヤマダに自身の発言の意味とその原因とを説明することにした。
「今日の朝ね……」
淡々と語られる、事の真相。というほど大げさなものでもないがしかしヤマダにとっては真相に他ならない。
彼は黙って聞いている。キクチはいつもとは違って終始気まずそうに説明を続けた。
そして、キクチから彼の不可解な発言の意味と原因その他諸々を全て聞き終えたヤマダがどうしたかというと、彼は──
「ぶはははははははははは!!!」
爆笑した。それはもう、涙を流すほどの勢いで。
キクチはもちろんむくれていた。ヤマダに笑われているせいと、
なによりも自分の発言が実際にこうやって笑われても仕方のないものだとわかっているせいで。
むしろ、そんなことをわかっていながら言わずにはいられなかった自分自身が
恥ずかしいやら情けないやらで、だからキクチはむくれながらも、ヤマダが笑い終わるのを大人しく待っていた。
442白と黒(6/7):2008/02/09(土) 01:13:04 ID:N82UmKif0
「お前……やっぱすげえなあ」
「……」
ようやく笑いの収まったヤマダは、目尻の涙を指で拭いながらキクチにそう言った。
まだ仕事前だというのに笑い過ぎて疲れてすらいる。
しかし今の彼にとってそんなことはどうでもよかった。
仕事のことを忘れるほど、ものすごく楽しい気分になっていたのだ。
──いくらそんな夢みたからって、それを本気で疑うか……
さすがは「悪魔を見た」と言い張った過去を始め様々な不可思議な言動をしてきた男だと、
ヤマダは爆笑の余韻と腹筋の微妙な痛みとを噛みしめつつしみじみと感心した。
キクチのことを馬鹿にしているわけでは決してない。本当に、素直に感心したのだ。
彼はそこで「でもさ」と、今はもう拗ね始めているキクチに向けて口を開く。
「俺がほんとに吸血鬼でもさあ、お前の血は吸わねえよ多分」
「なんで!」
ヤマダのその発言は、今度はキクチにとっての予想外だったらしい。
キクチは本気でそう聞き返していた。
が、ヤマダはキクチの反応にさして驚いた様子もなく、普段通りの口調で真意を告げる。
「だってお前から血吸ったら、お前倒れちまいそうだし」
「……へ?」
「俺のせいでお前が倒れたりすんのってやっぱ嫌だしさ、だから我慢すると思う」
よくよく見れば、ヤマダは少々照れているようだった。言葉に含めた甘ったるい意味に照れたのか、
それとも結局はキクチの吸血鬼話に真面目に乗っている自分に照れたのかは、本人もわかっていないが。
「……ああそう」
なんにせよ、ヤマダのその言葉にキクチは失った落ち着きをすぐまた取り戻した。
素っ気ない口調は照れ隠しだ。それをわかっているヤマダは小さく笑みつつ、
飲みかけだったトマトジュースを再び飲み始める。
白いストローの中を通る、赤い液体。キクチは小さくため息をついた。
だって、ヤマダは知らないのだ。
夢の中のヤマダが言った「血を吸えなくて死にそう」という言葉を聞いて、
キクチが血を吸われることを何も言わず受け入れたことを。
自分の血を吸うことでヤマダが助かるのならと、彼自身驚くほど素直にそう思ったことを。
もちろん知らなくて当然なのだが。
443白と黒(7/7):2008/02/09(土) 01:13:29 ID:N82UmKif0

「でもじゃあなに、俺以外だったら吸うわけ?」
「ん? まあ……死にそうになったら誰かに事情説明して頼んで吸わせてもらうと思う」
「誰に」
「誰にってお前……」
「誰の血吸うつもりなの?」
「……んー、誰だろ。ヒ■シとか?」
「………」
挙げた名前は適当な思いつきで特に意味は無い。
そういや血液型とか一緒じゃないとダメなのかな等と妙に現実的なことを言い出したヤマダを尻目に、
──だったらやっぱ俺の血吸やあいいじゃん
と、キクチは思った。他の誰かの血を吸うくらいならと。
でもそれがなんだか妙な嫉妬のように感じたので、口に出すのはやめておいた。
代わりに、ぽつりと呟く。
「……俺が吸血鬼だったら、ヤマダくんの血ばっかたらふく吸いまくってやっかんな」
ヤマダは一瞬目を丸くしたが、次の瞬間には盛大に吹き出しまた声をあげて笑った。

444白と黒:2008/02/09(土) 01:14:02 ID:N82UmKif0


 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ オジャマシマシタ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

445平→太主体気味太一受け:2008/02/09(土) 02:48:18 ID:MNbKDJnk0
やまだたいちのミラクルより。
基本太一受け、八木トム少々。カオスなんで気を付けて!!
初めての棚投下なんでお見苦しい点もあると思いますが…

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
446平→太主体気味太一受け(1/9):2008/02/09(土) 02:54:23 ID:MNbKDJnk0
平→太主体気味太一受け

 寒い日は。
 身体をくっつけて、暖をとってみよーかな、とか。
 足りない頭で考えてみる訳で。
 尤も実際にはそんなしっかりと形になった考えでは無く、単に冷えた身体が本能的に求めただけ、な感じだが。


 夜の食堂。
 「平田さーん!!」
 「お、たいちー。どーした?」
 勢いよく突っ込んできた太一を、いつも通りに受け止めるのは平田さんだ。
 ごろごろすりすり、えへへ〜なんて言いながら、いつもよりくっついてくる太一に少々疑問を抱きながらもそのままにさせておく。
 ついでに頭をなでなでしてみたり。
 と、顔を上げて平田を見上げた太一が、ほにゃ、と相好を崩し、嬉しそうに言う。
 「えへへ〜平田さん、あったかいー♪」
 平田が感じていた微笑ましさが上昇した。
 しかしそれに反比例するかの如く、周りの連中の不快指数も上昇した。
 具体的に言うと、三人程の。
 (何故そこで平田さんを選ぶ!!)
 かと言って自分に来られても素直に受け止められる訳が無いのだが。
 そんな実情は棚上げして、顔には出さずとも醸し出すオーラで心情丸解りな泰二さん、内心で絶叫。
 (……まあ、平田なら仕方無いか)
 冷静にそう思うのは矢島さん。
 しかし感情では納得しきれてはいない様で、その様子を無意識に鋭くさせた目で睨んでいる。
 (……俺に来る訳ねーけどな…。反射的に手が出ちまうだろーし)
 気の無い風を装ってはいるが、内心ちょっと複雑な和久井さん。
 野球の事となるとどれだけ殴られてもめげない太一だが、野球関連でなければ太一が寄っていく相手は限られるのだから。
 微妙な空気が流れるその場から、逃げ出す者も多い。
 残っているのは、相変わらず酒に酔ってほわほわしている岩田さんと、おろおろしていて逃げるタイミングを逸した浅見くらいなものだ。
 が、そこへとわざわざ入ってくる連中もいる。
 「お、なんだたいちー、そんなに平田にくっついてー。おめー相変わらず平田好きだなー」
447平→太主体気味太一受け(2/9):2008/02/09(土) 02:58:38 ID:0uMzxzWH0
 「あ、八木沼さん。うん、おれ、平田さんすきだぞー!!」
 入ってきた八木沼に、太一は笑顔でそんな答を返す。
 「うわー、直球…」
 後に続くトムが、なんともいえない表情で呟いた。
 八木沼も同じ様な顔をしつつ、
 「照れとかなんもねーもんなぁ…」
 呆れやら諦めやらの混じった台詞を溜息と共に吐いた。
 太一はといえば、ん?と首を傾げつつも平田にくっついたままだし、平田は平田でちょっぴり赤くなってはいるものの、太一のドストレートな言動には慣れたもので、そのままの体勢で苦笑しているのみ。
 二人の周りにほのぼの空間が形成されつつあるが、やはりそこを外れると、異様な空気が漂ってくる。
 意図的にそれを無視しつつ、
 「…んじゃ、俺達もくっついてみるか?トムよー」
 「…なんでだよ」
 にやぁ、と笑みを見せつつ言ってくる八木沼に、身を引きつつトム。
 「うわぁ、すっげー嫌そう」
 「やなんだよ、実際!!」
 じりじりと見合いながらの言い合い。
 「そーゆー嫌がらせって、燃えるよな!!」
 「ぎゃああ!!サドだ!!サドだこいつー!!」
 「たいちにくっついても嫌がんねーだろーし、それじゃつまんねーだろ?じんましん出そうだし!!」
 「知るかそんなもん!!ってうわーっ、来んなボケー!!」
 あれはあれで仲良いよなー、なんて苦笑しながら、なかなかの騒ぎにも関わらず、いつの間にか船を漕いでいる太一に目を移す。
 そこそこに遅い時間帯の所為か、それとも平田の体温に暖められた所為か。
 (こんなとこ本当に子供だよなー)
 ともあれこのままにしておく訳にもいかない。
 よいしょっ、と太一を抱き上げて、
 「泰二ー、今日は太一、おれの部屋で寝かせるな?」
 「えっ!?…い、いや、それはっ」
 「それじゃ、おやすみー」
 「ひ、平田さんっ!?」
 泰二の解り易い反応を気にする事も無く、平田は爽やかな笑みを残して食堂を後にする。
 太一、平田さんに軽やかに攫われました。
448平→太主体気味太一受け(3/9):2008/02/09(土) 03:03:11 ID:6ZCvDxOl0
 「「「………………………」」」
 何も言えずに見送った三人の周りの空気は形容し難いものに。
 「……えーっと、じゃあ俺もそろそろ……」
 「お、おれもーっ」
 じゃれてた八木沼とトムも、そそくさとその場を後にする。
 「……って平田俺と同じ部屋じゃねーか!!……うわぁぁ気まずっ!!トム、おめー今日俺泊めろー!!」
 「うえー?てか、別に平田はたいち襲ったりしねーだろー」
 「そんでもなんかこう……とにかく泊めろって!!」
 「……襲うなよ?」
 「……まーとにかく行こーぜー」
 「ちゃんと返事しろぉー!!」
 「「「……………………………………………」」」
 余計な会話の所為で、三人の周りの空気が重みを増した。
 (……おいら完全に逃げるタイミングはずしたーっ!!)
 金縛り状態の浅見が内心で悲鳴を上げる。動揺の為か一人称がぶち切れ状態のものになっていたりするが、勿論本人は無自覚だ。
 そんな空気の中、相変わらず岩田は起きる気配も無く。
 「……明日は俺が太一の面倒を見よう。マッサージがてら」
 「……明日は俺と投球練習です。その後の面倒も俺が見てやりますから、矢島さんは休んでいて下さい」
 「……兄貴の面倒は俺が見ますから二人共休んでいて下さい」
 三人して真顔。
 「「「…………………………………………………………………」」」
 そして無言の睨み合い。
 (……このまま気絶とかできないかな……)
 浅見が現実逃避を開始し、岩田が未だ寝こける食堂内。
 満ちる空気は悪化の一途を辿っていた。



 朝。アストロズ寮、食堂へと続く廊下にて。
 「おう、たいちー。今日はいつもよりおせーなー。なんだ、寝坊でもしたか?」
 「あ、おはよー、八木沼さん。ん〜と、平田さんあったかくて、おきれなかったみたいだー」
 早起きの太一にしては珍しい。自分でも疑問に思ったらしく、首を傾げて考えてみた結果、そんな答が出た様だ。
449平→太主体気味太一受け(4/9):2008/02/09(土) 03:07:52 ID:IwpYnB6D0
 「そっか。俺もでよー。まぁ、俺達はちょっと疲れる事したからだけどなっ」
 「つかれることー?なになになにー?それなにー?」
 「おー。たいちもその内することになるかもしんねーなー」
 「おれもー?」
 話が危険な方向へと突き進んでいきそうだが、八木沼と太一が会話するその後ろ、平田とトムからの突っ込みは入らない。
 二人して何やら疲れているからだ。
 「……あれ、どーにかしなくていいのか……」
 「……いい。あとでボコる。平田こそいーのか?たいち汚染されるぞ?あのえろばかに」
 「……あぁ、うん……。たいちもちょっとはそーゆー知識つけた方がいーのかなと……」
 「ええ!?」
 驚くトム。いや、確かに太一は知らなすぎるけど!!とかなんとか思いつつも、平田の口からこんな言葉が出るとは思わなかったと意外な気持ち。
 「……なんかあったか?」
 「……おれは違うと思ってたんだけどなぁ……」
 返答は溜息と共に、独り言の様な呟きだった。
 (……あー、なんとなくわかった。……て、いうか……)
 これも結構意外な気持ちで、
 「……お前もそーゆー意味で太一が好きなんだと思ってた」
 「……いや、流石にそれはまずいだろう……」
 実年齢はともかくとして、頭の中身と身体そのものが小学生。……色々と問題がありすぎる。
 しかし、あれはどうだろーか。反則とか言うものじゃないのか、と、平田は言い訳の様に考える。

 先に目が覚めたのは平田の方だ。
 目を開けて最初に飛び込んできたのは、黒いもの。太一の髪の毛だった。
 くっついて一緒に寝て、いつの間にか腕の中に抱き込んでいたらしい。なんとなく苦笑が漏れる。
 「……たいち、そろそろ起きろー」
 ぽんぽん、と背中を軽く叩いて目覚めを促すが、太一はむにゃむにゃ言うだけで起きる様子が無い。
450平→太主体気味太一受け(5/9):2008/02/09(土) 03:12:41 ID:rP12MAkF0
 困ったなー、と頭を掻いて、なんとはなしに寝顔を眺める。
 本当に子供の寝顔。
 これが信じられない奇蹟の数々を起こしてきた野球選手などと、誰が思うだろう。
 それでも、自分が救われたのも、アストロズが変わっていったのも、この子供の影響で。
 「……うん。ありがとうな」
 改めて感謝を。
 ついでに頭を撫でてみた。
 と、その感触の所為か、太一がゆっくりと目を開けた。
 「お、起きたか?太一」
 ぽやん、とこちらを見上げるその顔は、まだ完全に起きてはいない様で。
 「……えへへ〜……」
 それでも平田の存在を認識した為か、ほにゃあ、といつもより更に子供っぽい、蕩けた笑みを浮かべて。
 そのまま、猫が甘える様にすりすりと、頬を擦り寄せてきた。位置の関係で肩口辺り。
 元々くっついていて隙間など無かったのに、その行動で更に暖かく感じられる様な、体温が上がる様な。
 「た、たいち〜?」
 寝ぼけてるか〜?と声を掛けるも、すりすりするのをやめる気配は無く。
 (まいったなー)
 平田は困りながらも無理矢理起こすのもなんだし、と太一の好きにさせておく。
 暫くして漸くそれをやめた太一が、自分を見上げているのに気付き。
 「……起きたかー?」
 「……えへへ〜。平田さんすきー。あったかい〜」
 幸せそうな笑顔でそう言って、きゅうっ、と平田に抱きついた。
 そのまま太一は再び寝てしまい、こんな時間になってしまった訳なのだが……。
451風と木の名無しさん:2008/02/09(土) 03:35:14 ID:WkPb04so0
これもしかしてこれ以上書き込めませんか…。どうしよう…
452風と木の名無しさん:2008/02/09(土) 03:37:48 ID:NP8TypzmO
連続にひっかかった?
支援してもだめかな?
453風と木の名無しさん:2008/02/09(土) 04:04:29 ID:wyKoxc+00
とりあえず次スレ

モララーのビデオ棚in801板35
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1202497347/
454風と木の名無しさん:2008/02/09(土) 04:18:24 ID:wyKoxc+00
連レス失礼
>>444
GJ!読んでてすごく和んだ
そのコンビ大好きだ
455風と木の名無しさん:2008/02/09(土) 18:39:23 ID:oqBMhH/D0
>>434
萌えた!GJ!(*´∀`*)
456やんつん 1:2008/02/09(土) 22:05:57 ID:UIooQCsT0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
長くなっちゃいましたが梅のたしになればと。
なんだか攻めがどんどんあほに……

相手の過去などどうでもいい、今そばにいるのは自分なのだからと、頭では分かっていても気になるのは己の狭い了見か並外れた独占欲の為せる業か。
以前、耐えきれずに尋ねてみた事がある。
自分だけだと天にも昇るような答えが拳と共に返って来た。
あれは物凄く痛かった。
ともあれ、そんな事があっても今なお付き合いがある以上、好かれてはいると思う。
そう思いたい。
この無駄にプライドの高い意地っ張りがその気もない相手にこうまで体を許すとは思えない。
しかし。
それならば。
普段からだってもう少しこちらに打ち解けてくれてもいいのではないか。
今日だって、おもいがけず偶然出会えた事が本当に嬉しくて、気付いた時には抱き締めてキスしてた。
ちょっと賑やかな大通りで。
この再会に人目など気にしていられない、そう思っていたのはこちらだけだったらしい。
次の瞬間には突き飛ばされて頬を張られて持っていた荷物が飛んできた。
かなり怒ってはいたようだが、それでも誘いにはあっさり乗って来た。
確かに、少々強引な提案だったかも知れない。少々驚いていたようだし。
しかし、多少の事は多目に見て欲しい。
そう簡単に会えないものと諦めていた所に偶然再会できたら、誰だって多少は舞い上がるものではないだろうか。
その辺りは理解してもらいたいと思うのは、やはりわがままなのだろうか。

457やんつん 2:2008/02/09(土) 22:09:23 ID:UIooQCsT0
部屋に入り、二人きりになるやいなや抱き締めてキスをする。
先程のようなことはないはず。間髪入れず押し倒す。
夢に見るほど焦がれた体を腕の中に閉じ込めて、思いのたけを存分にぶつける。
欲しい。
感触が、声が、匂いが、熱が、もっと、欲しい。
いくら触れても求めても足りない。
泣いて制止するのも聞かず、何度も……泣いて?
少し体を離し、あらためて見てみれば、震えながらぎゅっとつぶった目からぼろぼろと涙をこぼしている。感極まって、とはほど遠い泣き顔。
すーっと冷たいものが頭の中を通りすぎていく。

……しまった!またやりすぎた!

酷いなんてものじゃない。どう見ても無理矢理乱暴されたようにしか見えない。
もしこの場面だけを見せられたなら、草の根分けても犯人を探し出し、八つ裂きにしてもあきたらない、そんな惨状。
体が離れた事に気付いたのか、ゆっくりと起き上がる。寝台の上に座り直しこちらを見る。目が合った。
違う。こんな顔させたかったんじゃない。
とても嬉しかったから。
最初に気付いた時に向けられた笑顔が、
張り倒された後苦笑と共に差し出された手が、
食事の時の楽しそうに話す声が、
部屋に誘った時膨れっ面を装いながらも赤くなってうなづいてくれた事が、
とても嬉しかったから。
すっかり有頂天になり、だんだんと理性のタガが緩んでいくのに気付いていながら止められなかった。
やっと会えたのに。楽しそうにしてくれていたのに。
全部自分で台無しにしてしまった。
「すまない!あの……やりすぎた、その、本当に……」
感情が消えていくその表情に謝罪を続けることすら出来なくなった。
「……お前、頭の中、こーゆーコトしかないのか。」
「……。」
ああ、怒ってる。これは凄く怒ってる。
意外にも静かな口調の少しかすれた声が痛々しい。いっそ思いきり罵倒された方がまだましだろう。
目をそらす。顔どころかまともに相手を見られない。
458やんつん 3:2008/02/09(土) 22:10:19 ID:UIooQCsT0
「前にもあったよな、こんな事。」
あった。
その時には手掛り一つ残さず姿を消し、一と月以上音沙汰無かったのを押し潰されそうな気持ちで必死に探し回った。
やっと見つけた時、あの時の心情はちょっと言葉では表現できない。
「……その時、何て言ったか覚えてるか。」
その時の事は忘れようもない。
どれだけ想っているかを言葉を尽して切々と訴えた上ただひたすら謝り倒し、もう二度としないと誓ってやっと許して貰えた。
「……もう、二度と、こんな事はしない、と……」
「で、これか。」
言うべき言葉も見付からない。
あの時、許して貰えた後もその態度からぎこちなさが無くなるまで、かなりの時間がかかった。
どれだけ傷付けてしまったのだろう。
その時と同じ思いをまたさせてしまったのだろうか。
見付け出したときの怯えた姿が今と重なる。
459やんつん 4:2008/02/09(土) 22:11:10 ID:UIooQCsT0
嫌われた。今度こそ。
それだけならまだしも、もう二度と顔も見たくないなどと絶縁宣言などされたら。また姿を消されたら。
触れるどころか二度と顔すら見られなくなったりしたら。
生きて行く意味など無くなる。
「君を殺して私も死ぬ!」
「はあ?!」
そして自分が死んだ後、見知らぬ誰かのものになるくらいなら。
「一緒に死んでくれ!」
「何の話をしてるんだお前は!」
掴みかかると、べちん、と両頬が鳴った。平手で顔を挟まれたようだ。物凄く痛い。
「少しは落ち着け!それと、逃げないからちょっと力緩めろ。」
痛いんだよ。と言いながら視線で肩を示す。見ればツメがくいこんで血がにじんでいた。
慌てて手を離す。
「そりゃ、会えて喜んでくれるのは嬉しいけど、今日のこれはやりすぎだ。」
「……。」
返す言葉もない。
「……何をそんなに焦ってるんだ。」
焦っていたわけではない。手の届く所にいる。ただ嬉しかった。それだけだったはずなのに。
なぜいつも行きすぎる?
大切なはずの人を傷付けて。
……やはり会ってはいけなかったのだろうか。
これまでの事が、全て一人勝手な思い込みに思えてきた。
だとしたら、苦しませていただけなのか?
楽しんでくれていたように見えたのは優しさから合わせてくれていただけ?
私のしていた事は、大事な人を不幸にしていたのか?
460やんつん 5:2008/02/09(土) 22:12:58 ID:UIooQCsT0
ばちっ。
再び頬が鳴った。
もう痛いというより熱い。
「だから、ちょっとは人の話聞け。お前今またわけ分からん考え事してただろう。」
「わけ分からんとは失礼な。こんなに悩んでるというのに。」
だからなんでそこで吹き出す。
「いや、悪い。しかし、どうしてそう両極端かなあと思って。」
それこそわけが分からない。
「だからさ。さっきみたいに考え無しにただ突っ込んでくのと、今みたいに考えすぎて一人でがんじがらめになってるのと。」
「……君のせいじゃないか。」
そうだ。他ならぬこの想い人だからこそ、こうまで心が乱される。
「なら、なんで何も言って来ない?そんな悩みの元凶が目の前にいるのに、なんで全部一人で完結しようとするんだ。言えばいいだろ、文句でも何でも。……少しはこっち見ろ。」
「あ……え?!」
今の言葉はどう解釈したらいい?
どう考えても都合の良い答えしか出てこない。
そんなはずない。あんなに傷付けてしまったのに。
461やんつん 6:2008/02/09(土) 22:13:57 ID:UIooQCsT0
「君が優しいのはよく分かった。だから、そんな誤解させるような言い方はやめてくれないか。」
両頬が今度はぎゅ、とつままれた。たいして痛くはなかった。もう感覚が無いだけかもしれない。
「多分、当たってる。誤解なんかじゃ、ない。」
「じゃあ、君は……」
「腹がたつのはお前がやりすぎるからだ。いきなりこれじゃ、誰だって混乱するだろ。会えて嬉しかったのはこっちだって同じだってのに。」
本当に?喜んでくれていた?自分一人の空回りでなく?
恐る恐る手をとってみる。ちらりとそちらを見ただけで手を退こうとはしない。
思いきって涙の跡の残る頬に手を添えてみた。流石に身じろぎはしたが、真っ直ぐ見返してきた。
「許して、くれるのか?」
「だから言ってるだろう、こっちだって会えて嬉しいって。何度も言わすな。ばぁか。」
すねた子どものように頬を膨らませ口を尖らせてあらぬ方向へ視線をそらす。顔が赤い。
よく知った照れ隠しの癖。
ゆっくりと抱き締めた。
先程の熱のように激しいものではなかったが、より確かに思える暖かさ。
これが欲しかったのかもしれない。
そのまま静かに押し倒す。
「おい。さっきの今で……」
みなまで言わせず唇を塞ぐ。
ゆっくりと静かに、深く。
「仕切り直させてもらえないか。」
「仕切り直し?」
やり直したい。できるものなら。
台無しにしてしまった再会を、不必要に傷付けてしまった今日を。
「さっきみたいな真似は、しない。その……やさしく、する、から。
いやでも、あの、無理に、とは言わない。それこそさっきの今で言えることでは……」
今度はこちらの唇が塞がれた。予想もしなかった事に、頭の中が真っ白になる。
「ここまで来といて、そこで引くな。ばぁか。」
埋め合わせはしてもらうからな、という言葉に応えるべく、もう一度こちらから唇を塞いだ。
462やんつん 以上です:2008/02/09(土) 22:15:04 ID:UIooQCsT0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )ヤンデレ X ツンデレッテ コウデスカ! ワカリマセン!イジョウ、ジサクジエンデシタ!
元ネタはあるような無いような。
つかもう原型留めてません。
長々とお邪魔しました。
463平→太主体気味太一受け6:2008/02/10(日) 00:17:43 ID:vae+rbem0
すいません、再チャレンジさせて下さい…。
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )トチュウカラダケド ジサクジエンガ オオクリシマース!


 「……で、その間中かたまってたと」
 「……いや、なんてゆーか……あそこまで無防備に信頼されきってると抑えなきゃならないって自制が働くんだけど……働いたんだけど……なんか、こう……」
 それでも、かわいいと思ってしまったらもうダメだ。
 子供に対するそれではなく、どちらかといえば女の子に対するそれっぽい気持ちだった。
 何よりマズイのが、その気持ちを躊躇も無く自然に受け入れてしまっていた事だ。
 ……土壌は既にあったのかもしれない。
 「……保護者立場から太一争奪戦の場に堕ちたってわけかー」
 「……堕ちた言うな」
 と、話している内に食堂近くに来たのだが、何やら入口付近が騒がしい。
 そちらに目を移すと、アストロズの面々が食堂の中の様子を窺っていた。
 「何やってんだおめーら?」
 「何やってるじゃねーよ!!てめーらこそ何したよ!?」
 「俺でも流石に入りずれーぞ……」
 声を掛けた八木沼に、言葉を返したのは大山と二階堂だ。
 大山はともかく、二階堂の引き攣り気味の表情は珍しい。
 「?なにがだー?」
 「アレだよアレ!!」
 太一の呑気な声に血管浮かせて大山が指差すその先には、某三人の姿。
 矢島、泰二、和久井だ。
 一様に目の下にクマを作り、三すくみ状態で睨み合っている。いや、実際は三つ巴だろうが。
 ともあれ、その三人の醸し出す異様な空気に誰も食堂に入れないでいるのである。
464平→太主体気味太一受け7:2008/02/10(日) 00:20:51 ID:vae+rbem0
 「……うえー……もしかして昨夜からずっとあのまんまかよ?」
 「……あ、岩田さんまだ寝てる。って、浅見もいるのかよ!!……でも浅見も寝てんな……」
 「いや……あれって気を失ってるんじゃないか?なんかうなされてるし」
 八木沼、トム、平田が会話する横で。
 「たいじ達、どーしたんだー?」
 「ちょっ、待て、たいちー!!」
 「わーわー!!」
 「やめーっ!!」
 状況を把握していない太一がひょこひょことそちらに近付こうとして、その場にいた全員に全力で阻止された。
 「なんでーっ!?」
 「修羅場になるだろが!!」
 「しゅらば?」
 「あー……ケンカ寸前ってことだ。……いや、ケンカ突入だな。主に拳で」
 「ええっ!?なんでーっ!?」
 「……よし、仕方無いから外に食いにいくか、太一」
 「えっ?平田さん?……でも……」
 やはり気になるのか、ちらちらと三人の方を見ている太一。ちょっと悔しい感じもするが、まぁ仕方無いだろう。
 「とにかく今あそこに行くのは……」
 「たいちーーーっ!!」
 「げっ!?」
 「うわっ!?」
 「……またややこしい事に……」
 何とか諭そうとした平田の台詞を遮った声の持ち主を目で確認し、八木沼とトムは声を上げ、平田は溜息を吐いた。
 「い、いしだーっ!?」
 巨人軍の四番、石田の登場である。
 「今日もがんばってるかーっ?」
 「わーっ!?」
 勢いよく太一に飛び付いて、そのまま二人してすっ転ぶ。
 「……つーか台詞と行動が合ってねぇ……」
 「……本人にしてみれば繋がってんだろ……多分……」
465平→太主体気味太一受け8:2008/02/10(日) 00:24:34 ID:8Oivs5Ee0
 「てか平田ー、あのままにしといていーのかー?」
 「……オイ来たぞ、あの三人が。殺気撒き散らしながら。……けーっ、やってらんねー!!」
 大山、逃走。
 他のアストロズメンバー達も一様に逃走を開始した。
 と、三人の脇を物凄いスピードで駆け抜ける一つの影。
 その影は石田とじゃれあっていた太一を引っ掴み、
 「たいちはおいらのだーーーっ!!」
 「あっ、浅見さんっ!?」
 そんな叫びと共に、太一の困惑の声もお構い無しに、あっという間にその場から走り去った。
 残された一同、呆然。
 「って、ぶち切れ状態の浅見に太一連れて行かれちまったぞ!?」
 「うわーっどーなるんだこれーっ!?」
 あわあわしている八木沼とトムの横、
 「……とんだダークホースだな……」
 こめかみを引き攣らせながら平田。
 「あーたいち〜。今日はおいら、たいち持って帰ろうと思ってたのにー」
 石田、何気に問題発言。
 (……どーして兄貴はこんな訳の解らん偏りまくった方面で無駄にモテやがんだ!!)
 「……やってくれるな」
 「………………」
 泰二、内心で絶叫。矢島は静かに目を光らせ、和久井は無言で拳を鳴らした。

 ……アストロズ寮に血の雨が降るのも、遠くないかもしれない。
466平→太主体気味太一受け9:2008/02/10(日) 00:27:03 ID:8Oivs5Ee0


 その後。
 「そんじゃーなー、太一。誰を選ぶのかとか聞かれたら、俺だって言っておけ。おもしれーことになっからなー」
 「えらぶ?」
 「おう。後はなんとかしてやっからよー」
 「何言ってんですかかんとくーっ!!つーか掻き回して遊ぶ気満々だろ絶対ー!!」
 「あぁぁ……どーなるんだアストロズは……」
 浅見、極限状態だったのかなんなのか、太一抱えてダッシュの途中でダウン。
 そこを三原監督に拾われ、太一の話から何となく状況を察知した監督がそんな会話へと繋げ。
 たまたま傍にいた武藤に突っ込まれるが、意に介する事も無く豪快に笑う監督と、頭を抱える大友コーチという図
が出来上がっていた。
 太一は監督に言われた通り、ダウンした浅見に膝枕をしながら、言われた言葉と皆の様子に首を傾げるのみだった。
467平→太主体気味太一受け10:2008/02/10(日) 00:41:21 ID:VDH1tEAy0
平→太主体気味太一受け
 ところで。

 「何で平田にしたんだ?」
 「えー?あったかそうだったから!!」
 「……他は?」
 「んー?」
 なんてシンプルかつ他者には解らん感覚での行動なんだ……などと思いつつ、問うのは完璧スルーされた連中の事。
 首を傾げ、うんうん唸りつつ考えた結果の答が、
 「じゃあ、今度は矢島さんにくっつくー!!」
 (今度は平田があの空気を醸し出す側にっ!?)
 戦慄。しかし、これは聞いておかねばなるまい。
 「……た、泰二と和久井は?」
 「ん〜……おれはくっつきたいけど……たいじおこるし、和久井さんもおこってなぐるし……」
 (なんといういつもの行いの結果ー!!)
 あーそりゃーフォロー不可能だわ、と断じつつ、荒れるだろうなぁ……とも思いつつ。
 「……そうかー、頑張れよー」
 「うーんっ!!おれ、がんばるーっ!!」
 軽い口調で、この件を投げた。
 我ながら無責任だなぁ、とか思ってはみるものの、大変な事になるのが確定している騒動に、これ以上関わりたくない八木沼さんなのでした。
468平→太主体気味太一受け終:2008/02/10(日) 00:46:57 ID:L8fe7YKA0

 余談だが、
 「……八木沼さんもくっつく?」
 「いや、俺はトムいっから」
 「そっかー。あったかいかー?」
 「その上気持ちいいぞー」
 「そっかー!!」
 ……そんな会話を聞いたトムが真っ赤になって頭抱えてしゃがみこんでいた事には、幸いというかなんというか、気付いた者はいなかった。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
色々とすいませんでした…。
469風と木の名無しさん:2008/02/10(日) 03:45:41 ID:CwuBjxINO
あげますよ
470風と木の名無しさん:2008/02/10(日) 13:08:06 ID:wuwAeuls0
>>468
>49 名前:風と木の名無しさん 投稿日:2008/02/09(土) 09:42:27 ID:nyqqo/siO
>5分と立たずにIDが変わってるんだよ、あんなの初めて見た。

>棚スレ連投の人
>とりあえず新スレ立ててくれた人にお礼くらい言おうや…あと、12はウイルスか何か?

>50 名前:風と木の名無しさん 投稿日:2008/02/09(土) 09:51:29 ID:wICpS2wiO
>棚ちょっと酷すぎるな

>142 名前:風と木の名無しさん 投稿日:2008/02/10(日) 08:00:53 ID:YKV9NCB2O
>棚
>あんだけ他の人に迷惑かけといて
>何か色々すみません再チャレンジとかやれる神経凄いよな
>続き書き込んでるのみて開いた口塞がらなかった

>143 名前:風と木の名無しさん 投稿日:2008/02/10(日) 08:46:00 ID:Y0r7TEDxO
>>142 私も驚いて絡みに来たところだw

>棚スレIDコロコロ変わってた人
>続き投下する暇があったら、新棚スレで注意されてるんだからまずは
>謝りに行くのが筋だろう。
471風と木の名無しさん:2008/02/10(日) 14:26:37 ID:Zn80JqRb0
>470
引用しないと言いたいことも言えないようじゃ……ポイズン。
472風と木の名無しさん:2008/02/10(日) 16:21:42 ID:VkSx7bwM0
結局、原因はなんだったんだろう
改行が多すぎた?
473445:2008/02/11(月) 05:12:41 ID:9aKXIMS30
今新スレの方にも書き込んできました。
新スレを立てて頂いたのにお礼もろくに言わず、皆様方にご迷惑を掛けてしまったのに、謝罪も何も無く逃げた馬鹿です。
新スレ、立てて頂きありがとうございました。
そして常識知らずの馬鹿ですいませんでした。身の程知らずにも投下しようとしてごめんなさい。もう二度と投下したりしません。
こんな馬鹿な真似をして、皆様方にご不快な思いをさせてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
どんなに謝っても足りないと思いますが、本当にごめんなさい。
ご迷惑をお掛けしました。
474風と木の名無しさん:2008/02/11(月) 14:29:44 ID:DnC26Br9O
>>473
(゚ε゚)キニスンナ
475風と木の名無しさん:2008/02/11(月) 19:03:59 ID:ziyhY9F30
投下するときはテンプレ熟読ってことだな。
476風と木の名無しさん:2008/02/11(月) 23:26:00 ID:9k0IkU0J0
>>436
ほのぼのしてて萌えた…gj!
477トライアングル side C part2 1/6:2008/02/11(月) 23:27:33 ID:V67cjKzD0
新スレ立て乙でした!

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )※ナマモノ注意。ぷろやきう北の球団。
>>382の続き。これでラストです。
やたらと長いくせにエロくなくて申し訳ない。

「遅い」
彼が急かすと、アイツの体がビクリと跳ね上がる。
しかし彼が本気で言っているわけではないことは、口元の緩みから明らかだ。
それでも、声の鋭さは本物で。アイツはしどろもどろではあったが、
「……そりゃあ、その――」
ポツリ、ポツリと本心を語り出した。
「気持ち良いもんは気持ち良いですよ。だって俺、二人のこと好きですから」
その答えに、これまでの問い自体が無意味であったことを知らされる。
二人とも好きだから、選べない。
それは取りようによっては逃げのようにも感じられる。
でも、アイツがそんなつもりで言っているのでは無いことは、長い沈黙が証明していた。
「……好きとか何とか気持ちわりぃな」
「ちょっと、答えろって言ったのはそっちでしょうが!」
全く、彼も素直じゃないんだから。こういう時くらい優しくしてあげるべきでしょう。
「そっか、そりゃ答えられないわけだな」
ポンポンと肩を叩いてみせると、アイツはムッとした表情を見せて。
「そうですよ。因幡さんも悩んだって言ってましたけど、俺だってすっごく悩んだんですから。そもそもどうしてあんなこと――」
478トライアングル side C part2 2/6:2008/02/11(月) 23:29:00 ID:V67cjKzD0
どうしてどちらかを選ばせようとしたのか。
簡単に言ってしまえば、不安だったからだ。
俺では無くて彼を選ぶんじゃないかという不安が常に付きまとっていたからだ。
負けず嫌いもここまでくると重症で、俺はアイツを自分の所有物だと思い込んでいたのかもしれない。
いや、それは彼に対しても同じだ。俺は二人の一番で在りたかったのだ。
一番には絶対に慣れやしないってわかってるのに、その位置を望んでしまったのだ。
「――無理に分ける必要なんて無かったんだよね」
「分けるって、何を」
「うぅん、こっちの話」
こうして二人は側に居てくれる。三人で馬鹿をやっていられる。
それでいい。それが一番、いい。

「なぁ、否」
「……何ですか?」
そうこうしている内に、良いことを思いついた。
早速、これでもかと言わんばかりの爽やかな笑みをアイツに向けてみる。
俺の意図を薄々感じ取ったのか、アイツは恐々と引きつり笑いを浮かべた。
今にも口元が緩みそうになるのをグッと堪えて、質問を投げかける。
「二人とも好きって言うのは、人間として? それとも、あっちの方で?」
「そ――」
叫ばれる前に口を塞ぐ。もうパターンはお見通しだ。
「りょ、両方です、両方! これで満足でしょ!」
もう抵抗する気も起きないのだろう。手を離すと、半ば投げやりにアイツはこう答えた。
479トライアングル side C part2 3/6:2008/02/11(月) 23:30:15 ID:V67cjKzD0
「ふーん、そう。なるほどねぇ」
狙い通りの答えが返ってきて、俺は内心ほくそ笑んだ。
チャンスだった。前々から密かに構想していた計画の実行は、直ぐ目の前まで来ていた。
彼と、アイツと、それぞれに視線をやってから、話を切り出す。
「じゃあ、三人でしようか」
「…………は?」
プシューとアイツの両目・両耳から蒸気が出た。
いや、実際に出たわけではないが、出ていてもおかしくない様な表情で固まっている。
「だって、二人とも好きなんだろ? だったらこうするのが普通じゃん」
「だ、だからって、三人って、え、え、えぇぇぇぇぇぇぇぇっ」
本能的に危機感を覚えたのだろう、アイツは手足をバタつかせて俺から逃げようと試みた。
しかし体格で俺に勝てるはずがない。俺がアッサリと押さえつけてやると、
「……最悪だ、この人」
アイツはあっさり屈服した。この辺りは日ごろのプロレスごっこで培われた技である。
「でも嫌いじゃないんでしょ」
そう耳元で囁いくと、アイツは躊躇いながらもコクリと頷いた。
「そうそう、素直が一番」
ご褒美に耳を舐めてあげる。「ひっ」と小さな悲鳴が俺の耳をくすぐった。
顔を上げると、俺たちの行為を呆れた様子で見つめている彼が居て。
「ね、そうでしょ、マ/ッ/ク」
俺は、彼に目配せした。
480トライアングル side C part2 4/6:2008/02/11(月) 23:31:26 ID:V67cjKzD0
「何が言いたいんですか?」
彼は、目の前で俺たちがいちゃついていたとしても、特に不平・不満を訴えたりはしない。
素っ気無くただただ見守る――そんな姿勢を頑なに守り通している。
「俺は良いですよ。因幡さんだけ楽しんで下さい」
だから、今回もそう言って遠慮してみせる。
誰かに執着したり、ベタベタとくっ付いていたりするのは、自分のキャラには合わない。
もしかしてそんな風に思っていたりするのだろうか。
「マ/ッ/クもさ、もうちょっと素直になった方がいいと思うよ」
何だかんだでアイツが可愛いくせに。
じゃなかったら、たとえ酔った勢いとはいえ、アイツの所有権をかけて勝負したりしないでしょう。
「素直って、俺は別に」
「中途半端な気持ちで抱いたら、相手に悪いでしょ。たとえ遊びでも、その時は真剣に、ね」
あぁ何か、これじゃ相手によって対応変えてるみたいで、逆に印象悪いか。
俺の心配は余所に、彼は、俺ではなく、俺の下でうつ伏せに寝そべっているアイツの方こそを見つめていた。
視線に気づいたのだろう、アイツも、真っ直ぐに彼を見つめる。
「お前さ、因幡さんじゃなくてもいいわけ?」
彼は確認するようにそう言った。どこか迷いの感じられる声色だった。
「本当に俺に抱かれてても気持ち良いのか? 俺なんかより因幡さんの方が優しくしてくれるんだろ?」
「…………」
481トライアングル side C part2 5/6:2008/02/11(月) 23:32:16 ID:V67cjKzD0
この二人の情事の仔細を、俺は知らない。
「そりゃそうですけど、ま/こ/っ/さ/んには、ま/こ/っ/さ/んの良さがあるから」
「その割にはお前いっつも文句言ってるじゃねぇか。因幡さんならどーだとか、あーだとか」
「それは、その、あまりにも厳しいから……つい」
「厳しいってあんくらい普通だろ。あれで満足しろって方が無理な話だ」
「だって、因幡さんは、あれで――」
「は? お前いつもどれだけ因幡さんに迷惑かけてんだよ」
「ま/こ/っ/さ/んの基準が高すぎるだけです」
――けれど、とりあえず二人のやり取りから、俺の場合とは随分趣は異なるということは知れた。
「まぁまぁ二人とも落ち着いて」
「いったぁーっ!」
手近な所から黙らせる。ちょっと力を加えてやるだけでアイツは悶絶した。
「爽やかな笑顔でえぐいことしますよね」
「そう? 話を聞いている限りだとマ/ッ/クの方がえぐいことしているみたいだけど」
「アイツが下手くそだからいけないんですよ。たっく、いつまで経っても成長しねぇんだから」
「うーん、俺はそんなことないと思うんだけどね」
最初に抱いた時に比べれば、アイツも随分成長したと思っている。
俺はてっきり慣れから来たものだと思ってばかりいたのだが、実際の所は彼の指導によるところが大きいのだろう。
飴と鞭――そんな言葉が頭を過ぎった。
俺が飴なら、彼は鞭。なるほど、それじゃ単純に分けて考えることなんて出来ないな。
482トライアングル side C part2 6/6:2008/02/11(月) 23:33:13 ID:V67cjKzD0
「あの、二人とも、ここに本人居るんですけど……」
おずおずとアイツが口を挟むと、すかさず彼の鋭い突込みが走る。
「だから聞こえるように言ってやってるんだろ。お前はもっと向上心を持て」
「本業ならまだしも、こんなことで向上心もってどうするんですか」
「馬鹿、何事も一緒だろ。そんな気持ちでいるから本業の方でもあと一歩足りないんだよ」
「無理やりな理屈付けしないで下さい」
「そうだね。じゃあ本業の方もこちらの方も二人で鍛えてあげようか」
「ちょっと、因幡さんまで何言い出すんですか!?」
半分は冗談だが、半分は本気だ。
これまではとことん甘やかして可愛いところを見るだけで満足していたけれど、抵抗されるのも悪くない。
「そうですね。でも三人でやる場合ってどうすればいいんですかね」
アイツをさらにどん底に突き落としたのは、彼のその発言だった。
「え? だってま/こ/っ/さ/んやらないって……」
「気が変わった」
「えぇぇぇぇぇぇっ」
一人絶望に暮れるアイツをよそ目に、彼が俺の方を見て、控えめに笑う。
これでいいんでしょう――そう告げるかのように、諦めの中にも清々しさが感じられる笑みだった。
だから俺も、微笑み返す。頷くようなことは、しなかった。
「うーん、どうしようか、交互にする?」
「一応やろうと思えば出来ますけどね、何しろこいつだからなぁ」
「ちょっと、勝手に話を進めないで下さい! 大体明日は試合――」
やいのやいの言いながらも、三人の時間が過ぎていく。
まだまだ夜は長い。今宵の主役の小言をBGMにしながら、俺たちは議論に華を咲かせた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
自分なりのトライアングル像が書けて楽しかったです。お付き合い下さりありがとうございました。
483風と木の名無しさん:2008/02/12(火) 00:09:19 ID:H+fy0WDY0
>>482
GJ!萌えさせてもらいました!
484風と木の名無しさん:2008/02/12(火) 00:11:48 ID:dex5pYun0
>>482
長編乙でした!堪能させて頂きました。
大好きな3人組の話でしかも自分のイメージにも重なる人間模様だったので萌えまくりでした。
485風と木の名無しさん:2008/02/12(火) 09:08:15 ID:7Dm/ZHLZ0
>>482
もー、どれだけお待ちしたことか、規制にでも巻き込まれておられるかと…
もう堪能させていただきました、他線種の作品もお待ちしてます ムハー
486血の理由 始:2008/02/12(火) 11:57:10 ID:CKN4ATyl0

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  蟻葉間です。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  捏造注意
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ナマモノ注意
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
487血の理由 1:2008/02/12(火) 11:57:50 ID:CKN4ATyl0
手首を切ったと携帯に電話が入ったのは深夜2時の出来事だった。
収録を終えて家に直帰し子供の寝顔を見てから服を着替えようとするとそんな電話が。
冗談だろうと流してしまってもよかったのだが、なんとなく胸騒ぎを覚えあいつの家に車で向かった。

(ドア…鍵は空いてるな)
居間への扉を開くと、手首を真っ赤に染めたそいつが横たわっていた。
真っ赤な手首は携帯を力なく掴み、片方の手は剃刀を力なく掴んでいる。
「よぉ来たな。待ってたで」
そいつはクスクス笑うと僕の目の前でまた手首を切ろうとした。
僕は手首を掴み剃刀を取り上げてゴミ箱に投げ、濡らしたタオルで手首を拭き、医療箱の中から包帯を取り出し消毒したあと巻きつけ、ソファまで引きずって横たわらせた。
「これから寝ようと思ってた時に。明日も仕事あるんやで」
「ごめんな。オマエなら来てくれると思うててん」
心の荒廃を表すかのような汚い部屋。コンビニで食べた弁当の残りや、着た服をそのままその辺に放置するからこうなる。
「なんか痩せたな。メシちゃんと食うとるか?」
「ここ3日間な、ロケ無かったやろ。だから3日間メシ食うてない。ロケの帰りはコンビニで弁当買って帰るからその日はメシがあるんや。けどな、次の日になるともう何も無い。そしてそのままオンラインやってたらなんか外に出るのが嫌になったんや」
「ニートでももっとマシな生活するで」
「ほんまやな。なぁ、剃刀何処?」
「捨てた」
「そか」
「人間、体から一定量の血が抜けると死んでしまうんやで?といっても手首切ったぐらいじゃ死なへんけどな。血は固まるし」
488血の理由 2:2008/02/12(火) 11:58:27 ID:CKN4ATyl0
「剃刀って思うたより切れんな」
「分かっとんのやらもうこんなん止めや。じゃ僕は帰るで」
「そっか。剃刀があかんのやったら、ナイフの方が切れるかな」
「手首どころかオマエの体全部商売道具やろ。体張った外のロケばっかりやっとるヤツが何言うとんねん。腕でも足でも使いもんにならんくなったらろくに仕事も出来んくなるんやで」
「オンラインいつもの通りにやったんや。ほならな、TVの画面から声が聞こえるやろ?プレイヤーの」
「Xboxはそうやな」
「いつもはそのキャラクターから声が聞こえるから実在の人間が操作してると思えるんやけどな、その日は何でかそのキャラがいて中の人間はおらんと思うてしまって、ああここにいるやつらは皆人間やないんやと」
「……」
「そん時に、コンビニの店員含めて外にいる奴等全員人間やないと思うてな。自分、痛みつけたら少しは人間に思えるかなと考えてこう手首を」
「なぁ、僕も人間やないんか?」
「オマエは人間やよ。けど他のん全て”他人”やん。人やないんや」
「他人も人間の総評やで?」
家にメールをし、相方の家におるから帰りが遅くなると連絡をした。
「もやもやした灰色の物体や。人間の形を作うとらんのや」
「寝て起きたらもう仕事やろ。仕事しとる時はそんなん思わんで済むやろ」
「なぁ」
「何」
「抱いて、オレを」
覆いかぶさるようにして抱き締める。見た目以上に軽い。
489血の理由 3:2008/02/12(火) 11:59:45 ID:CKN4ATyl0
「普段どんな生活しとんのや」
「普通やよ。家に帰って買うてきたコンビニのメシ食うてゲームやって寝て起きてロケがある日は仕事場に向かうし、ロケが無い日は何も食わずに一日中ゲームや」
「それの何処が普通やねん。だからこんな痩せるんやで」
「原点回帰ってやつや」
「原点?」
「デビュー当時ぐらいに痩せてもええかなて。むしろあの頃に戻りたい。今のオレらは離れてるやんか。あの頃はいつも一緒で、他人の入る隙間は無かったんや」
「時間は戻れないし無理なの分かるやろ」
「せやな。家族、大事やもんな」
張り付いた笑顔がどうにも痛々しい。
「オマエもええ加減結婚したらええやないか。一人でおるからや。結婚して誰かのために生きるようになったらな、僕よりそっちの方が大事になるやろ。普段から結婚したい言うとるし」
「あいつらも結局人やないんや。所謂他人や」
「ちょっと待て。僕やオマエ以外の人間を人やないと思うたのはいつ?3日前やないやろ」
「いつかな。家族のもとを離れてオマエとコンビ組んだのが18ん時やろ?あん時もオマエ以外の奴等が色褪せて見えたんや」
そんな昔から兆候があったのか。全く気付かなかった。
「普段同じ仕事仲間と楽しそうに喋ってるやんけ。仕事もほんまに楽しそうにやるし。僕なんかはほんまやりとぉない仕事は笑って下さい言われるから笑顔作るだけで、実際しなくてもええ仕事は断っとるしな。
向こうがどうしても出て下さい言う仕事以外や、それ僕でなくてもええやろと思う仕事は断るようにしとる。でもオマエはちゃうやん。どんな仕事も断らへんし、どんな仕事も心から笑うやん」
「仕事やからな。流れ作業と同じ。ベルトコンベアーみたいに仕事がやってくるからそれをこなしてるだけ。
仕事しとると周りからこう認められるわけやろ?ステイタスがつくやろ?するとオマエに一歩でも近づけるような気ぃするんや」
「こんなに近くにおるのに?」
490血の理由 4:2008/02/12(火) 12:01:28 ID:CKN4ATyl0
「オマエは天才と呼ばれてるヤツで、オレはそうやない。アホやから、人の何倍も努力せんと認められへんし。オマエの隣におる資格あるのかなって」
「僕はゲーセンが売れたからこんな有名になったんやし、ゲーセン始まる前はむしろオマエが僕の収入の3倍はあったわけやん。
天才言われたんももうデビュー当時の頃やろ?今はむしろ周りから”結婚して腑抜けた”言われとんのやで」
「そうなんか」
「むしろオマエの方が凄いやんか。役者もやるし声優もやる、海に潜って魚獲るし他局で司会もやる。昔はコントも書いてたし、この前リレー小説も書いて完成させたし、僕はオマエを認めているんですよ。
僕も前にドラマやったけどな、あまりの棒読みっぷりにそれからオファーが全く気ぃへん」
「オマエが認めてくれてるんやったらええな」
「もっと自信持てや。オマエはやれば出来るのにやらんだけやろ。腹減っとらんか?でももう明け方やしな。24時間やっとるとこってこの辺何処やろ。定食屋かそれともチェーン店のレストランか」
「餃子食べたい」
「餃子…ラーメン屋この辺24時間やっとるとこ何処やったかなぁ。ってか3日間食うてないんやろ?あんま重いもん食うと気持ち悪うなるで。
この家に調理器具があればお粥でも作るのにな。包丁すらないってどういうことや。電子レンジとサバイバルナイフとぐらいか?」
「いらんやろ」
「コンビニ弁当ってあんま良くないんやで?添加物ぎょうさん入っとるしな。外出れるか?」
「出とぉない」
「仕事何時から?」
「9時。7時にマネージャーが迎えに来る」
「もう4時やん。餃子食ったら少し寝たらええ」
「オマエは帰るんやろ」
「帰るよ」
「こんな姿、マネージャーに見せてもええんか?」
「なんやねん。どうしたいねん」
「マネージャー来るまで側にいて」
「今日だけやで?」
「ほんま優しいなぁ。そういうとこ大好きや」
「うん。ありがとな」
491血の理由 5:2008/02/12(火) 12:02:44 ID:CKN4ATyl0
携帯に電話するために体を起こすとぎゅっとしがみついてきた。まるで不安がっている子供が親を求めるように。仕事は外のロケばっかりで、海の仕事が多くて、だからこんなに肩幅があって体つきもしっかりしてんのにどうしてこんなに儚いのやろ。今にも消えそうや。
(去年こいつに彼女が出来た時は、これで一人にさせても安心や思うたのに結局そいつともすぐ別れたし)
付き合う時間が短いから女を食い散らかしてるように見えるだけで、実際こいつが振られるのしか無いのがなぁとつらつらと思ってみる。


コンビニに電話して、宅配で餃子を持ってくるように頼んだ。
「何処に電話したん?」
「コンビニ」
「何処にも行っちゃ嫌や。オレと一緒にいよ?なぁ、もう今日は仕事すっぽかしてもええよ。オレ、オマエの望むことは何でもするから」
「どれだけ理性総動員させてんのか分かっとる?僕の心の中心部はめっちゃドロドロなんや。こんな汚い部分オマエに見せれるか?僕はオマエを壊したくない」
「オマエになら壊されてもええ。オレ、オマエに全部やるから、オマエも全部オレに頂戴。汚い部分も全て受け止める。だから」
この雰囲気のまま流されてしもうたら、間違いなく仕事間に合わへんな。むしろ今日の仕事どころかこのまま部屋出ないで二人で餓死して死ぬまで
一瞬浮かんだ考えに自分でもゾッとした。僕は何を考えた?家族がおるのに?家族を置いて?こいつの弱みに付け込んで欲望のまましてしまうのか?
そもそも、こいつが僕に求めてるのは安心感や。僕がこいつに求めとるのとは違う。
「違うんや」
「え、何が?」
考えが口から漏れてしまい、頭を振って考えを追い払った。
こいつは僕と堕ちるのも構わないと言うだろう。安易に抱いてしまうともうそこからは未来が無い。闇しかない。僕にはこいつを壊す権利は無い。
492血の理由 6:2008/02/12(火) 12:03:55 ID:CKN4ATyl0
コンビニの宅配餃子が来たので二人で食べた。
レンジで温めただけの妙にべちょべちょした餃子。
たいして旨くもない。今度二人がオフの日が重なった時にでも食べに行こうと心に決めた。

朝5時。遮光カーテンの隙間から光が漏れる。こいつは目を細めて嫌悪感を露わにすると起き上がって窓の方に行き、カーテンの隙間を埋めた。
「朝なんやからカーテン開けようや」
「嫌や。日の光が。カーテンの向こうにあるんは現実やん。オマエの世界やん。現実に戻らなあかんのやろ?抱いて言うてんのになして抱いてくれへんの?」
「抱き締めたやんか、ああして」
「違う。なぁ、言わへんと分からへん?そやな、男同士やもんな。分かるわけないよな。オレ一人が堕ちたいやのオマエに汚されたい言うとるだけで、オマエにそんな考え浮かぶ筈無いもんな」
「……」
「すまん、オマエを困らせてしもうたな。オレちょっと寝るわ」
「僕の方こそごめんな」
ベッドまで一緒に行き眠るのを見届けた後、部屋の掃除を開始した。
脱ぎ散らかしているものは洗濯し、その間コンビニ弁当の空き箱はゴミ袋に入れ、ついでにゴミ箱の中身も全て捨て、ペットボトルも透明な袋に入れ、絨毯をはがして丸めてマネージャーが来たら洗濯屋に頼むようにし、
起こさないように床をカーペットクリーナーと濡らした雑巾で拭き、洗濯が終わったので干してある洗濯物を畳んでカラーボックスの中に入れた後、洗い終わったばかりの洗濯物を皺にならないように干した。
(分かってて逃げたんや、僕は)
最低やな、と自嘲する。
いっそこの手で手をかけても拒まへんやろなと。
笑顔のまま死んでいくんやろう。
僕は後追いする勇気も無いのに。
一生僕だけのものに、なんて出来るわけもなく、一生僕だけを見てくれと思うのも自分勝手だ。
493血の理由 7:2008/02/12(火) 12:04:38 ID:CKN4ATyl0
マネージャーが来たので寝ているそいつを起こし、マネージャーに汚れた絨毯をクリーニングに出すように命じ(血の理由を聞くなと口封じをして)帰宅した。
そいつを起こした時にはいつもの笑顔に戻っていた。
あの時間は何だったんだ、実際何も無くただの僕の妄想だったのか?とふと頭に浮かんだがそんなわけはなく、そいつの手首の包帯が全て物語っていた。
帰宅後ヨメに散々怒られた。曰く、睡眠時間を削ってまで相方さんの家にゲームをしに行くなと。
ゲームちゃうねんけどなぁと思ったが言えるはずもないので怒られるままに謝っておいた。


結局その後そいつは手首を切ることはなく、変わらない日常が続く。
たまに呼ばれてそいつの部屋に行っても普通にゲームするだけであの日起こったような出来事は無かったようにそんな雰囲気になることもない。
そして僕は相変わらず僕の心の中心部はヨメにも他の誰にも見せないまま。
全てはこのままで。全てはずっと変わらず、この関係も全て。何も。


(終了)
494血の理由 終:2008/02/12(火) 12:12:47 ID:CKN4ATyl0
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
495庭球皇子 穴戸&鵬:2008/02/12(火) 13:30:39 ID:x59ijvD+0
前スレあたりでノレドルフの昼ドラ風味を書き込んだ者です。
保管庫にうpされていてとても嬉しかったので、その勢いのまま
今度は氷帝のD1ペア、ほのぼのに挑戦してみました。
庭球+「ごきげんよう」がご挨拶の某群青文庫のダブルパロなので、
ややご注意を。
496庭球皇子 穴戸&鵬 1/6:2008/02/12(火) 13:33:02 ID:x59ijvD+0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
 長太郎は、朝に弱い。
 ことに、部活がない日の朝は最大の弱点といってもよい。
中等部への登校途中、その目は水の中からものをみるように虚ろだし、
大きな上背も丸まりがちだ。
 あくびと一緒にふり仰いだ空には、木々の梢に隠れて、ちいさな十字架が見える。
 学園に建てられたその教会は、海外との交換留学生が盛んな氷帝学園においては、
海の向こうからやってきた生徒たちに、安らぎと祈りの場を提供している。
長太郎は大晦日も新年も盆会も、もちろんクリスマスも行う家に生まれたが、
そうした聖なるものに対する敬意は平等に持ち合わせている。
 だからいつもするように、十字架に向けて軽い会釈を──
「おい」
 ドキリとした。
 いっぺんで眠気もだるさも吹き飛んだ。
 心臓が跳ねた勢いのまま振り向くと、その視線から少しばかり下に、額と、
不機嫌そうなまなざし。
497庭球皇子 穴戸&鵬 2/6:2008/02/12(火) 13:34:45 ID:x59ijvD+0
「は……い」
 氷帝学園は、今更改めていうまでもなく、典型的な良家の子女の通う学校である。
その生徒とあれば、礼儀作法も授業のうち。声をかけられたら、まず、立ち止まる。
そして体全体で振り返り、何をおいても丁寧に挨拶を。
女子は「ごきげんよう」を用いることが多いが、男子には馴染みにくいこともあるから、時間時間に応じた挨拶をすればよろしい、
とは礼法の教師の言葉。
 油を注し忘れたブリキ人形さながらギクシャクと振り返ると、その、
やや小柄にも見える男子(187cmの長太郎からすれば、大抵の男子は小さな部類に入った)は、
変声期を経てすっかり安定した声で、言った。
「激ダサだな」
「…え、あ、あの」
「シャツの襟!ネクタイ!寝ぐせ!」
「はッ、はいっ!」
498庭球皇子 穴戸&鵬 3/6:2008/02/12(火) 13:36:18 ID:x59ijvD+0
 鋭い叱声。慌てて長太郎は、ブレザーから飛び出たシャツの襟を正し、
ネクタイを締め直し、髪の毛をかき回した。そうすると彼は、いかにも満足そうに笑った。
「忘れてたのかよ、今日、服装検査だぜ」
 なるほど。
 親指で示された校門には、教師がふたり立ち、行き交う生徒にさりげなく視線を配っている。
そのうちのひとり、襟元から覗くバレンチノ・モラディのスカーフも特徴的なオールバックの。
「そっか、榊監督だったんですね…」
 音楽教師、榊太郎。車はジャガー、愛器はスタインウェイ、カードはアメックスのブラック。
氷帝学園男子テニス部に、苛烈なまでの実力主義を布く男は、隙のないみだしなみから察しがつくとおり、
生徒の格好にも非常にうるさい。
499庭球皇子 穴戸&鵬 4/6:2008/02/12(火) 13:38:01 ID:x59ijvD+0
「注意されるならまだいいけど、無言で成績下げられちゃたまんねえだろ。
それでなくてもお前、目立つしな」
 と、彼は笑う。
 知っている。榊太郎に憧れる女子が、彼の関心欲しさに、
わざとタイを乱したかスカートを短くしたかして、服装検査に臨んだのだとか。
 それは相手が彼でさえなかったら、あるいはここ氷帝学園でなかったら、
単なる思春期のなせる微笑ましい悪戯であっただろう。
 しかし当の榊から返されたのは、軽蔑の冷たいまなざしと、無視。
そればかりでは飽きたらず、後日女子生徒は親と一緒に呼び出され、きつい一言を頂戴したのだそうな。
「さあ、急げよ。遅刻だ遅刻」
 そう言いおいて、彼は大股に歩き出す。
せわしない風情のまるでない、悠揚せまらぬ足取りとは、まさしくこのことだろう。
500庭球皇子 穴戸&鵬 5/6:2008/02/12(火) 13:39:21 ID:x59ijvD+0
「あ、あのっ」
 目まぐるしい展開に、ついていけない。
彼が背中を向けてから、慌ててお礼をいおうと長太郎は口を開いたが、そのときはもう、
彼は同級生とおぼしき二人組に声をかけていて、呼び止める声にも気づかない様子だった。
「宍戸、先輩」
 氷帝学園男子テニス部3年、宍戸亮。長太郎には未だ遠いその正レギュラーの座を、
並みいるライバルを退けて手に入れた。
 しかもそれが行われたのは、2年生に進級して間もない時だという。
 実力主義のテニス部といえど、先輩後輩の序列がないわけではない。
慣例的に、能力が高く且つ勝負強く、後輩を指導していく立場にふさわしい者として、
3年が対象になっている節がある。
501庭球皇子 穴戸&鵬 6/6:2008/02/12(火) 13:40:09 ID:x59ijvD+0
 それが易々と、彼の前にひっくり返った。
 彼は、2年生全員の目標であり、長太郎の憧れであった。
 …こんなのって、無いですよ。
 十字架をあおぎ、嘆息をかみ潰す。
憧れの先輩とのファースト・インプレッションは、こんなものではなかったはずだ。
 たとえば練習試合で偶然対戦するとか、あるいはダブルスのパートナーに選ばれるとか、
もっと絵になるものを、漠然と想像していたのに。
 それに──
「…俺の髪、寝ぐせじゃなくて、元からなのになあ」
 そんな長太郎の憂鬱を知らぬげに、どこか遠くで、ウグイスが鳴いた。
502庭球皇子 穴戸&鵬 6/6:2008/02/12(火) 13:44:15 ID:x59ijvD+0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

とりあえずこの二人はラケットとか、リストバンドくらいは交換していそうな気が
しないでもない。
愉しんでもらえるととても嬉しいです。次は棚の35のほうで投下することになるかと思います。
連日寒いですが皆さん風邪を引かれないように… アデュ!!
503風と木の名無しさん:2008/02/12(火) 15:16:09 ID:DD6GJ1cc0
>>495
GJ!!! この二人はほのぼのが似合うよね(*´д`*)
次も期待してます姐さん!
504花照れ日 1/4:2008/02/13(水) 08:57:38 ID:NRj/Z+n8O
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
※プロやきう、北のきう団
※ローカルテレビ穴と二/塁/手です。


きっかけは自分がパーソナリティを勤める番組の一企画だった。
夕方の奥様向け情報番組なのに、むさい男二人で街を散策、女性向けの何かお得な情報があるわけでもなく、
いわば彼のプロモーション活動に付き合う内容。
「だったら女性がナビゲートしたほうが良いんじゃないですか? 彼独身なんですよね? 大体札/幌案内っていっても、そもそも僕自体が兵/庫出身だし」
なんてディレクターに不満を言うことも出来ず(なにしろ僕は和を重んじるA型だ)、それでも渋っている態度が尖がった口に出ていたらしい。
番組の中心となる女性パーソナリティに「グダグダ言わない! 独身だから女性と行くと波風立つんでしょ! こんな機会もないと出歩かないんだから!」と
ぴしゃりと企画書を押しつけられてしまって……つまりはあまり乗り気ではない企画だったのだ。
実際僕はスポーツ観戦以外では出無精で、特に人ゴミは大嫌い、目的もなく街を歩くなんか考えられなかった。
渋っていたのはこの寒い時期に外のロケだから、そんな単純な理由だったが、社会人としてそんな我が儘が通る訳もない。
お相手するのが憧れの野/球選手じゃなかったら、うまいこと理由をつけて断っていただろう。
505花照れ日 2/4:2008/02/13(水) 08:59:22 ID:NRj/Z+n8O
待ち合わせ場所は札/幌駅前。曇天に寒風吹きすさぶ憂鬱な空の下、縮こまって彼は立っていた。
綺麗な青色のマフラーにまず目がいった。その僕に気が付いて「似合いますか?」とはにかんだ笑顔に視線を奪われた。
恥ずかしい話だが、その一瞬でときめいた、んだと、思う。
断言できないのは、未だに頭が付いていっていないからだ。
自分はストレートな、はず、だ。これも断言できないのは、完全に彼にのめりこんでいる自覚も、同時にあるからで。
「こないだファッションショーで全身コーディネートされたんです」「イメージカラーを今年は変えようと思って」なんて
彼のファンにとって重要であろうやり取りも、上の空で聞いてしまうし、車内では何故か視線を合わせにくかったし……。
やたら笑顔を振りまいてくれる、その斜め後ろらへんを見るようにしている自分がいた。
506花照れ日 3/4:2008/02/13(水) 09:00:46 ID:NRj/Z+n8O
それにしても、その、近い。密着してくる。いや、密着取/材なんだから、それでいいんだけど(あれ、密着取材だったっけ?)、
まぁア/ナウンサーとしては身長に恵まれている僕は、野/球選/手としてはそう大きくもない彼に、自然と見上げられる形になってしまうわけで。
最初は車内やエレベーターのように狭い空間だからと思っていたけれど、どうやら違う。これはまずい。素直に照れてしまう。
いや待て、見上げられて照れている時点でおかしい。
そんな自問自答を繰り返している自分を知ってか知らずか、二重の意味で彼との距離は縮んでいった。
なんだかフワフワした気持ちのままロケは終わってしまい、名残惜しいような演技をして冗談めかして笑っていた僕らだったが、
カメラが止まった次の瞬間だった。
「今度美味しいオーガニック料理のお店紹介してくださいね」と新人アイドルも真っ青な誘い文句を、彼は腕を掴んで耳打ちしてきたのだった。
……撃沈である。まさに試/合を決める一発というやつだ。
自慢ではないが、僕だって女性にそういうモーションをかけられたことの1回や2回はある。
しかしこれほどズドンと景色が揺れる感覚を覚えたのは初めてだった。
507花照れ日 4/4:2008/02/13(水) 09:01:20 ID:NRj/Z+n8O
ロケから局/内の報/道部にある自分のデスクに戻ってきた自分は、寒さで風邪でも引いたのかと心配されるほどぼんやりと上気した顔つきだったらしい。
いつのまにか交換されていた携帯のアドレスに、すぐにお礼のメールなんかがきたりして、そういうのもいちいち僕を動揺させ、弱いトコロを擽り……。
大量にプリントアウトされた「隠れ家的グルメスポット」の束で顔を仰いで、熱をやり過ごすしか出来なかった僕が、
迂闊にも一線を越えてしまうのは、また別の話である。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
彼、実家が米農家らしいし、嫁にいけば毎日オーガニックだと思うんだ。
508風と木の名無しさん:2008/02/13(水) 09:39:49 ID:h03ZLpGo0
>>507
お、おまっ…朝からこんなに萌えさせるなんてっ…あかん、頬が緩んで仕事にならん、続きをっ
このスレ、宝物になりそうな名作揃いです…
509風と木の名無しさん:2008/02/13(水) 20:29:52 ID:9gV2ANrB0
>>504
ローカル穴、どれだだれだと一生懸命考えた
タイトルに気付いて、二重の意味で赤面した
うわーなまら萌えー!
510忍者亀 青赤(赤青):2008/02/14(木) 00:05:19 ID:m8JYFj9L0
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
CG映画DVD発売記念 忍者亀の青赤 赤青前提なのでリバ苦手な人は注意
511忍者亀 青赤(赤青)1/4:2008/02/14(木) 00:06:41 ID:f1RUuhPM0
暗い部屋の中で、相手の吐息が聞こえる。俺は黙ったままラ/フのペニスを咥えこむ。
怒張したそれに根元から喰らいついて筋に沿って吸い上げる。
俺はこうやっている時、相手の顔を見ない。
ラ/フは俺のを咥えている時、大概俺の反応を見るように俺の顔を見てくるが、
その顔がひどくいやらしいから、俺がそんな顔をするのはなんだか気がひけた。
断続して聞こえる声と咥えこんだペニスの反応から絶頂が近いとわかったが、俺はいつものように口を離さずに
驚いたような顔をして射精するラ/フが出したものをそのまま飲み込んだ。
いつまでたっても、この味は慣れない。
「今日は、俺が挿れたい・・・」
口の端から流れ落ちた白濁した液体を拭いながら切り出した。
「んだよ、今日はやけにがっつくじゃねえか」
「嫌か?」
「おもしれぇ、俺をイカせてみろよリーダー」
512忍者亀 青赤(赤青)2/4:2008/02/14(木) 00:07:49 ID:f1RUuhPM0
ラ/フを四つん這いにして足の間に手を伸ばす、その窄まりにいつも相手がしてくれるみたいに唾液を垂らす。
その瞬間にラ/フの体が一瞬ひくついたのがわかった。それには構わずにゆっくりと指を体内に沈めてゆく。
「痛いか?」
「・・・ああ?こんぐらい痛くなんかねえよ」
「どんな感じだ?」
「わかんねぇな・・・なんか変な・・・感じ・・・」
そう言いながら、相手の吐息が上がってきたのに気づく。
「ラ/フ、こっち向け」
「ああ?なんでだよ?」
「顔が見たい」
正直に話した俺に、相手はまた意外そうな顔をした。今日はラ/フのそんな顔ばかりだ。

指を出し入れしているだけなのに、さっき射精したばかりのそのペニスがまた頭をもたげてきた。
「・・・まんざらでもないんだな」
「うっせえ、言うな」
顔が見たいと言ったのに、ラ/フは目を腕で隠してしまっている。その口が歪んでいるのは痛みか快楽のせいか。

「なあ、挿れてもいいか?」
513忍者亀 青赤(赤青)3/4:2008/02/14(木) 00:08:50 ID:m8JYFj9L0
「好きにしやがれ」
相変わらず目を隠したままのラ/フの足を広げて、窄まりに、自分のペニスを押し当てた。
もうずいぶん長い間弄んでいたせいか、柔らかくなっていたそこに挿入していく。
「・・・痛てぇ・・・」
「ああ・・・抜こうか?」
「ふざけんな。そのままにしとけ」
荒い息を吐くラ/フを見て、どうしたらいいかわからなくなる。
いつもこうされているのは俺なのだが、こういう時、自分だったらどうしてほしいか。
顔の上に掲げられていた腕をどかし、その目にキスをする。
「顔が見たいって言ったろ?」
そしてそのまま、その唇にキスをする。舌と舌が絡まり合う水音が部屋に響く。
「・・・これじゃ見えねぇだろうがバカ」
離れた途端に口からは悪態が漏れる。ため息をつきながらお仕置きのように、繋がったままの腰を突き上げた。
「っあ・・・あ・・・」
「良くなってきたか?」
「次・・・聞いたら・・・殺す」
その言葉に気を良くした俺は、相手のペニスを握った。
「!?やめろてめぇ」
「いいから・・・動くぞ、力抜いて」
いつも相手のいいようにされている俺が、立場が逆転だ。ラ/フが、俺に覆い被らされて、荒い息を吐いている。
その状況に頭がくらくらしてきたが、こっちもそんな理性はだんだん持たなくなってきた。
「・・・出すぞラ/ファエロ」
「っ・・・勝手にしろ」
514忍者亀 青赤(赤青)4/4:2008/02/14(木) 00:09:39 ID:m8JYFj9L0
「あー、痛てぇ、少しは加減しろよ」
脱力したラ/フが仰向けになったまま呻いている。
「お前は最初の時加減してくれたのか?」
そう言いながら俺は傍らに置いてあったコーラの缶に手を伸ばした。
いつの間にか起き上がったラフが、俺に覆い被さるように覗き込んでくる。
「しかし今日は一回もここをいじってねぇのに、お前のここは俺のケツ弄んでるだけで随分固くなるんだな?」
「・・・よく人のこと言えるなお前は」
「いや、これでもう俺に無理やり犯られても文句は言えねぇってことだ」
そう言って、今度は顔を覗き込んできた。
「何が言いたいんだお前は?」
「言えよ、俺のことどう思ってるのか」
「・・・言いたくない」
「かわいくねぇな」
その手はいつの間にか俺の足の間に伸びている。
「言いたくなるまで犯してやろうか?」
「かわいくないのはどっちだよ」
515忍者亀 青赤(赤青):2008/02/14(木) 00:10:40 ID:m8JYFj9L0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
まさにやまなしおちなしいみなしなんだぜ
516風と木の名無しさん:2008/02/14(木) 00:47:12 ID:7Jyib1380
これはいいリバ亀。
ラフがツンデレすぎてニヤニヤしました。乙です!
517武/装/錬/金 ハ゜ピ力ズハ゜ピIII 1/10:2008/02/14(木) 06:21:01 ID:3zAfgYom0
 ――終わった。
 深い脱力と共にその一言が力ズキの全身を占めていた。
 色々な意味で終わった、というか、何か大切なものを売り飛ばしてしまった気がするのは
多分気のせいだ、と思いたい。思わせてほしい。後ろの貞操は無事なのだし。
 誤魔化しきれない力ズキの喪失感など知らぬげに、ハ゜ピヨンはあくまで尊大だ。
「開発の余地は多々あるが、貧困な経験の割にはまあ見込みありだ。及第点をくれてやろう」
 褒められてもこれっぽっちも嬉しくない寸評だった。何の見込みなのかは訊くまい。
 ――ひとの気も知らないで……コイツは。

 声の方向を恨めしげに一瞥した力ズキの心臓――の代用の黒い核鉄――が、大きく跳ねた。

 ハ゜ピヨンが、力ズキの先走りで汚れた手を美味そうに舐めている。
 貴族的な造りの白い指をすっぽりと咥えた薄い唇から、赤い舌がちらつく光景が変に艶めかしい。
 先ほどまでの出来事が生々しく肌身に再生され、力ズキはいたたまれなくなって目を逸らす。
 その耳に、ちゅく、と、唾液の音がやけに鮮明に届いた。

「さて、と――武/藤」
 まるで見透かされたかのようなタイミングで呼ばれ、力ズキはぎくりと我に返った。
 いけない。この男が支配する異常な空間に、自分はあてられている。
 今日はもう帰って休もう、と自らに言い聞かせる。悪い夢は忘れよう。
「時間が許せばもっと念入りに調教してやりたいが、あいにくとそうも言ってられん」
 聞き捨てならない単語に突っ込む暇もなく、次の一言に力ズキは凍りついた。

「オードブルはこのへんで終了だ。小休止も済んだことだし、そろそろメインを頂くぞ」
518武/装/錬/金 ハ゜ピ力ズハ゜ピIII:2008/02/14(木) 06:22:05 ID:3zAfgYom0
AA入れ忘れた…。
武/装/錬/金力ズパピ >>48-57の続き。

前回シリアルNo.の位置間違えた上、襲い受とリバの違いがよく判っておらず
中途半端に改題した為、かえってサブタイに偽りあり状態にorz
もうコロコロ変えるのもアレなのでこのまま行きますが、実質当初通りの襲い受です。平にご容赦。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )エロハ モウアキラメタ!
519武/装/錬/金 ハ゜ピ力ズハ゜ピIII 2/10:2008/02/14(木) 06:22:54 ID:3zAfgYom0
「……な」
 何て言った。咄嗟に声が出ないまま、力ズキは悪夢の続きを聞く。
「まさかあれしきで足りると思ってたわけじゃないだろうな?さっきのは利子分のほんの一部だ。
貴様、今までどれだけ俺から奪ったと思ってる」
「う……で、でもオマエ、確かオレに体調管理がどうとか……」
 散々喘がされた喉から、自分のものとも思えない嗄れた声が出る。
「だからこそ、なおさら、だ。余剰分のエネルギーを俺に戻すべきじゃないか」
「余剰なんてもう」
 あるわけないだろう、と固辞しようとした力ズキは、ハ゜ピヨンの指す先を目で追い――
放出したばかりの自身が、最初の状態に逆戻りしていることを知って愕然とした。
 
「というワケで、イタダキます」
「…や…ッ!…」
 妙に礼儀正しい挨拶が下肢の間に降り、できることなら記憶から消去したかった感覚が再び力ズキを襲う。
 まさしく略奪だった。
 ――殺される。
 大戦士ヴィク夕ーとの対峙でも感じなかったほどの恐怖に力ズキは陥った。
 この男は本気で自分を搾り殺す気かもしれない。
 黒い核鉄の力で自己修復する肉体が耐えられたとしても、精神の方は早々に崩壊を起こすだろう。
 身体と心は竦みきり、武装/錬金を発動するという考えはちらとも浮かばなかった。

 ――斗/貴/子さん、ま/ひろ、六/舛、岡/倉、大/浜……色々とあったけど今まで楽しかった……
 大切な人々の走馬灯を力ズキが幻視しかけたとき、異変は起こった。

 どこか恍惚と力ズキのものを口に含んでいたハ゜ピヨンが突如、えずくような動きを見せる。
 力ズキを突き飛ばすように素早く飛び退き――

 
 大量の、血を吐いた。

520武/装/錬/金 ハ゜ピ力ズハ゜ピIII 3/10:2008/02/14(木) 06:23:24 ID:3zAfgYom0
 菫色の床を、赤黒く生臭い液体が侵食してゆく。
 舌打ちと共に手の甲で口元を拭い、おもむろに服を脱ぎ始める男を力ズキは呆然と見つめた。
 目前の身体が、ぐらり、とわずかに傾く。
 「蝶/野……オマエ」
 今さらのように力ズキは悟る。略奪していたのは、やはり自分だ。
 先のハ゜ピヨンの台詞には一片の誇張もなかった。
 度重なるエネルギードレインで、激しく疲弊していたのだ。この男は。
 生体の治癒を促進する核鉄でも、持病の発作を抑えきれないほどに。

 ハ゜ピヨンは無言でスーツを脱ぎ捨て――
 力ズキは今度こそ絶句した。
 一見人間と何ら変わらぬ色素の薄い裸身に、本来あってはならないものがあった。
 引き締まった脇腹にうっすらと走る、ひとすじの硬質な亀裂。

 何てことだ。この男はまだ、癒えていなかったのか。あのときの傷が。
 腕が千切れ、腹に巨大な風穴が開いた彼の姿を力ズキは思い出す。

                *   

 二ヵ月半前、LXE創始者であるかつての高祖父・バタフライとこの男は戦って、勝った。
 捨て身の自爆が原因らしい負傷は、確かに人間なら間違いなく即死の重傷だった。

 だが、おかしい。いくら何でも治りが遅すぎる。
 不治の病に侵された不完全体とはいえ、ハ゜ピヨンは高い自己修復力を持つホムンクルスだ。
まして錬金術師でもある彼はその肉体構造も熟知している。
 この男なら、今日までの間に自身を完治させることは難しくなかったはず――
 そこまで考えた瞬間、これまで見聞きしたいくつかの情報の断片が音を立てて繋がった。
 事の真相に思い至った力ズキの顔からみるみる血の気が引いていった。

521武/装/錬/金 ハ゜ピ力ズハ゜ピIII 4/10:2008/02/14(木) 06:23:48 ID:3zAfgYom0
 LXEとの戦いから二ヵ月後、錬金/戦団はヴィク夕ーIII・武/藤力ズキ再/殺の決定を下した。

 それを知った桜/花がハ゜ピヨンの助力を得るためこの秘密拠点に赴いたとき、彼は
フラスコ内で身体を癒しつつ黒い核鉄を研究していた――確かそう桜/花は言っていた。
 その後、逃避行中の力ズキと別れた斗/貴/子がハ゜ピヨンと合流した際、彼は人間の食物を
大量摂取していたという。病み上がりの体力を補おうとしていた、らしい。

 つまり力ズキに協力するために、この男は回復半ばの身を引っ張り出された形になる。

 間もなくひとりの屈強な再/殺/部隊の戦士と遭遇した力ズキは、彼との戦闘で精根を使い果たし
人事不省に陥ったハ゜ピヨンの姿を見た。
 背筋が寒くなった――殺されたのか、と。
 この男が、あんな姿を晒すなんて。どれだけの死闘だったのか。
 完調にほど遠い身体で武装/錬金を酷使しては、食事での微々たる回復などご破算になったはずだ。

 あの後すぐ力ズキ自身ブラボ−との対決があり、この男とは有耶無耶のうちに別れたが、
一日と間を置かずニュートン/アップル/女学院で再会したときはもう、彼は普段の飄々とした姿だった。
 元気そうでよかった、と力ズキは無邪気に安堵し――それきり、彼の怪我のことなど忘れていた。

 自身を殴りつけてやりたい衝動に駆られる。

 学院で力ズキを人間に戻す白い核鉄の情報を得てすぐ、彼はこの場所に篭り研究に没頭していた。
 力ズキの要請に応じて以降は、新型フラスコ開発に寸刻を惜しむ日々を送り、連日のように
生命力のドレインに次ぐドレインに晒され――
 現在こうして、血を吐く彼がいる。

522武装/錬金 力ズパピ力ズIII:2008/02/14(木) 06:43:44 ID:/PKV2LY6O
□STOP

連投規制食らってしまいました。続きはのちほど。
慌て者の上にご迷惑をおかけして申し訳ないです。
523武装/錬金 パピ力ズパピIII:2008/02/14(木) 06:47:46 ID:/PKV2LY6O
慌てすぎて名前欄まで間違えたorz
出勤前の投稿はやめよう…重ね重ねすみません。
524風と木の名無しさん:2008/02/14(木) 07:00:19 ID:JUN/cS7tO
>>523
出勤前ってw
続き待ってたよ〜
でも全部投下されるまでお預けか…
525風と木の名無しさん:2008/02/14(木) 11:33:43 ID:gmByC9Ph0
Happy Valentine's Day!映画スレ14の441です。
去年の今頃だったかな。ダ・○ィンチ・コー○スレの最後の方で、
幾つかのレスの応酬が物語っぽくなったのを、僭越ながら作品化したものです。
オリキャラ嫌いな人、強姦ダメな人、猫またぎして下さい。
ところで、みんな地べたにザコ寝してる牢獄なんかあるんだろうか・・・・。まあいいや。

小説&映画 ダ・○ィンチ・コー○
シラス輪姦@アンドラ

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
526アリマタヤの薔薇 1/7:2008/02/14(木) 11:35:23 ID:gmByC9Ph0
 「はあっ、はあっ、うっ、ああ、うう」
 冷たい石の壁に彼の掠れ声が反響する。薄闇の中でも、彼の白い裸身が艶めかしく悶え
る様が残酷なほどはっきりと見える。
 「あっ、ああ、バル・・・・バルトロメ・・・・」
 牢名主のバルトロメは彼の両足を抱えこみ、激しく突き上げている。私の所からは彼の
土踏まずや、反り返って痙攣する足指までもが見える。彼の片手が土の床を掻き毟る。苦
痛の為か、それとも快楽の故か。
 私は反対側の壁際で眠ったふりをしているが、その実、毛布の中からこっそりと二人の
交わりを盗み見ている。嫉妬で胸の内が煮え滾るようなのに、どうしても彼らから目を離
すことができない。
 私の下腹部にもさっきからずっと血が漲っている。衣服の上から、熱を帯びたそこをそっ
と握りしめる。私のその部分は、もう長らく、欲望を充足させる術を知らない。
 私が起きていることを知っているわけではないだろうが、バルトロメはまるで見せつけ
ようとでもするかのように、彼の唇を吸いながら、片手の指で乳首をキュッと挟んだ。
 「きれいだぜ、エスペクトロ。おまえは俺の女神だ。毎晩抱いても足りねえよ」
 彼の太腿をさすりながら、歯が浮くような台詞を囁く。こっちが赤面しそうだ。
 「もう寝かせてくれよ。お互い朝早くから重労働が待ってるんだ」
 素気なくそう返すと、彼はバルトロメの体の下からするりと抜け出した。背中を向け、
頭からスウェットシャツを被る。
527アリマタヤの薔薇 2/7:2008/02/14(木) 11:36:42 ID:gmByC9Ph0
 「おっと」
 バルトロメは諦め悪く、背後から彼を抱き竦めた。スウェットを捲り上げる。柔らかそ
うなベビーピンクの乳首を、黒い毛の生えた指が摘まむ。下から支えるように持ち上げる。
上下左右に弾く。
 「あ・・・・」
 双の乳首を責め苛まれ、彼の体が軟体動物のように張りを失って、しどけなくバルトロ
メにもたれかかった。バルトロメは彼の首筋にキスしながら、楽器でも弾くかのように、
彼のなだらかな胸に、腹に、脇腹に片手を滑らせる。「あっ・・・・あ、あ、あうっ」愛撫を
受ける度に、彼の体がびくんびくんと震える。バルトロメが忍び笑いを洩らす。
 「ふふ・・・・敏感な体だ、エスペクトロ。そのきれいな顔といい、白くて滑らかで柔らか
い肌といい、おまえは男に抱かれる為に生まれてきたんだよ。天性の娼婦さ」
 右手で彼の乳首を、左手で股間を刺激しながら、バルトロメは彼の左の腋の下から頭を
潜らせた。口髭に覆われた唇で乳輪を挟み、舌先で乳首をこねくり回す。
 「ああっ!バルトロメ、もう放して・・・・許して」
 彼は身をくねらせ、バルトロメの腕から逃れようとする。バルトロメはますます強く彼
の体に四肢を絡みつけ、そうさせまいと粘る。
 「だめだ。あと一回やらせろ。今度はワンコみてえに四つん這いになりな」
528アリマタヤの薔薇 3/7:2008/02/14(木) 11:38:25 ID:gmByC9Ph0
 看守たちにだってわかっていた筈だ。まるで狼の群れの中に羊を放すようなものだと。
 彼が初めてこの雑居房に連れて来られた時、囚人たちは色めき立った。その外見の奇妙
さから、手ひどい罵声を浴びせる者も少なくなかった。しかし、それは当然、彼のことが
ただの新入りという以上に気になったからであり、内心、その美しい顔形に、十八歳とい
う若さに、神秘的と言ってもよい不思議な容貌に惹かれぬ者はなかった。
 勿論、私もその内の一人だった。名前を尋ねると、彼は思い出せないと言う。囚人や看
守はその風変わりな姿から幽霊(エスペクトロ)と仇名を付けたが、私はその名前では呼
びたくなかった。幽霊よりも天使に似ていると思った。
 本の好きな、寡黙で大人しい青年だった。生活態度も模範的と言っていいくらいだった。
彼が実の父を含め、二人も人を殺していると知って驚いたが、私の彼に対する思いは変わ
ることがなかった。
 元浮浪児であれ、人を殺めるという償いきれぬ深い罪を犯して獄に繋がれている囚人で
あれ、その表情や言動の端々からは、彼本来の繊細さや、純粋な心根を絶えず感じ取るこ
とができたからだ。それらと、決して言葉にして語られることのない彼の孤独と誇りを、
私は何よりも愛した。
 聖なるもの、崇高なるものに対する憧れにも似た感情を、彼に対して密かに抱き続けた。
私の中にまだそんな部分が残っていたとは、自分でも意外だった。そのようなものはもう、
時の彼方に過ぎ去った幼少時代に置き去りにしてきたと思っていたのに。幾度となく人生
に裏切られ、運命に見放され、他者を呪い、社会を恨み、ついに犯罪に身を堕としたあの
時、跡形もなく消えてなくなったと思っていたのに。
 だが、他の囚人たちにとっては、彼の内面などはどうでもいいことだった。素直でもの
静かな性格など、この力の支配する檻の中では、寧ろ弱点に過ぎない。
 特異な体に対する興味は、すぐに性的な好奇心へとすり替わった。或いは、それを含む
ものとなった、と言うべきだろうか。
 「何をするんだ!やめろ!嫌だったら、放せ!」
529アリマタヤの薔薇 4/7:2008/02/14(木) 11:39:55 ID:gmByC9Ph0
 大勢で手足の自由を奪われ、衣服を剥がされる彼の悲鳴が、今も私の耳にこびりついて
いる。男たちが下卑た歓声を上げながら彼のスウェットシャツを脱がせ、腰紐を解いてス
ラックスを引き下ろす。下着が毟り取られ、下腹部が露になる。かわいそうに、手で隠す
ことすらままならない。
 その時私は、ちょうど今のように頭から毛布を被り、狸寝入りをしていた。目だけ出し
て、彼が素裸にされ、同房の囚人たちの慰みものになる様子を窺っていた。
 決して楽しんでいたわけではない。辛かった。彼を助けたかった。だが、その勇気がな
かった。バルトロメが、その取り巻きたちが怖かった。ただそれだけの理由で、私は毛布
の中で縮こまり、彼の美しい肉体が、気高い精神がズタズタに踏み躙られるのを黙って見
過ごしにしたのだ。
 バルトロメが彼の左の乳首をつついたり、輪を描くようになぞったりしている。「はあ
・・・・エスペクトロのおっぱい・・・・んちゅ・・・・甘い」太り肉で、知能発達に大幅な停滞が見
られるイノサンが、巨大な蟇蛙のように、右の乳首を舐め回している。興味津々の好色な
目に、手に、舌に、体中を余す所なく撫でられて、彼の薄青い瞳から止め処なく涙が溢れ
出す。
 「嫌だ・・・・やめろ・・・・ああ・・・・お願い・・・・やめて」
 彼が身を捩って哀願する。その姿態の息を呑むような妖艶さ。それでは相手の情欲と嗜
虐心を煽り立てるばかりだ。
 どんなに泣き喚こうとも、若く健やかな体は正反対の反応を示してしまう様が痛々しく
さえ見える。バルトロメがくつくつと笑いながら、滴る露に濡れそぼって戦くそこを揉み
しだく。
 「どうだエスペクトロ、気持ちいいか?もっとしてほしいか?え、嬉しいんだろ、この
淫売!」
 それ以上見ているのが耐え難く、寝返りを打って壁のほうを向いた。だが、背中で何が行
われているかは一部始終、手に取るようにわかった。「ああーっ!痛い、いた、痛いーっ!
バルトロメ、やめて!ジョゼフ!みんな!誰か・・・・誰か助けて!痛い!」耳を塞いだが、
同じことだった。地獄のような時間がやっと終わってからも、彼の忍び泣く声がいつまで
も続いて眠れなかった。いつまでもいつまでもいつまでも。
530アリマタヤの薔薇 5/7:2008/02/14(木) 11:42:59 ID:gmByC9Ph0
 あれから暫く経った。
 最初の頃は大暴れに暴れ、叫び、罵っていた彼も、次第に無駄だと気づき、殆ど抵抗し
なくなった。参加するだけの度胸はないが、彼が何をされるのか期待しながら見守ってい
た者たちも、最近は「またやってんのかよ」くらいの反応で、さっさと毛布にくるまって
寝息を立てるようになった。彼に対して幾分同情しながら、結局何もできずに張りつめた
思いで見て見ぬふりしていた者たちも同様だ。ただ一人、私を除いては。
 両手両足をついた彼の背中の上で、バルトロメの体が律動している。息遣いが、腰の動
きが速くなり、やがて低く呻いて、果てる。
 バルトロメが彼から離れる。草臥れたのか、解放された彼は裸のまま床の上に倒れ、身
動きしない。
 バルトロメは暫く、床に座って呼吸を整えていたが、突然こちらに向かって大声で呼ば
わった。
 「おい、ジョゼフ。いつまで出歯亀してる気だ。おまえもこっちに来てこのお姫ちゃん
といちゃつけよ」
 あまりに驚いて、思わず跳ね起きてしまった。バルトロメはニヤニヤ笑っている。彼は
床に仰向けになったまま、顔だけこちらに向けている。その表情から何の感情も読み取れ
ないことが私を安堵させ、同時にひどく狼狽させた。
 この房の住人なら、バルトロメの言うことに従わないわけにはいかない。私も例外では
なく、牢名主の手招くままに、ふらふらと立ち上がってそちらへ向かった。
 私の足元に、一糸も纏わぬ彼が横たわっている。ずっと私の憧れだった天使。人ならぬ
彼には、生まれたままのその姿が一番似合っているような気がする。
 「知ってるんだぜ、おまえが前からこいつに惚れてるってことは。さっきから俺とこい
つがやってるの見てて、随分と興奮したろ?たまにはおまえにもいい思いさしてやるよ」
 上機嫌で言うバルトロメの声など、まともに耳に入らない。私の視線は彼に釘付けだ。
口の中が渇く。目が眩む。鼓動が高まり、呼吸が乱れ、下腹部が痛いほど充血する。
531アリマタヤの薔薇 6/7:2008/02/14(木) 11:46:14 ID:gmByC9Ph0
 こんなに近々と彼の裸体を見るのは初めてのことだった。バルトロメの唇が這いずった
跡が赤紫の痣になって点々と残っているが、その純白の肢体はさながら神の芸術作品のよ
うだ。私の視線を浴びても別段どこも隠すではないが、その端整な顔には恥じらいの色が
浮かんでいる。心持ち目を逸らし、地面を見つめている。
 「な、いいだろ、エスペクトロ?」
 バルトロメが彼に声をかける。彼が小さな声で答える。
 「・・・・いいよ」
 私を襲った衝動がどれほど激しいものであったが、とても言葉で言い表すことはできな
い。彼に触れたい。抱きしめたい。その全身に口づけし、私の愛を刻みつけたい。彼と一
つに溶けあい、数えきれない私の分身を彼の中に解き放ちたい。
 「抱きたいだろ?こいつだっていいって言ってるんだ、素直に抱けよ」
 バルトロメの言葉が追い討ちをかける。
 私はもう少しで、彼の肌の上に我が身を投げ出す所だった。
 だが、その時初めて、私の眼差しと彼のそれとがぶつかる。諦観に満ちた、悲しげな瞳。
彼は明らかに、そうされることを望んではいなかった。私にもバルトロメにも、他の誰に
も。嫌だと言っても力ずくで言うことを聞かされると、いや、嫌だと言おうものなら今よ
りもっとひどい目に遭わされると、過去の経験から予測しているのだ。
 その鬱屈、その絶望、その悲哀。そして、押し殺した怒りと、捩じ伏せられた反抗心。
それらのものを彼の中に見たからこそ、私は彼を愛したのではなかったか。
 私は犯罪者で、しかも臆病者だ。
 だが、これ以上は穢したくない。貶めたくない。彼も、そして自分自身も。
 私がバルトロメに逆らったのは、その時が最初で最後だった。
 その場から動き、壁際に丸まって投げ出されていた毛布を拾って来た。跪き、彼の疲れ
きった体に掛けてやる。ポケットからハンカチを取り出し、顔を拭いてやる。
 「悪ふざけはいいからもう寝ろよ。さっき君も言ってたけど、明日早いんだから」
 自分の定位置に戻る為、歩き出した。すっかり興を殺がれて鼻白んでいる牢名主に、背
中でこう声をかける。
 「バルトロメ、あんたもだよ。あんまりしつこくすると嫌われるぞ」
 「何だと!?人の好意を無にしやがって、好きな女を抱く勇気もねえくせによ」
532アリマタヤの薔薇 7/7:2008/02/14(木) 11:48:38 ID:gmByC9Ph0
 まだ何やら、二言三言悪態をついていたが、私はもう聞いていなかった。ぶつぶつ言い
ながら、結局自分も素直に寝床に就いたようだ。
 バルトロメが鼾をかき始めたのを確認し、徐に姿勢を変えて、彼の方を見た。
 彼もまだ起きていて、薄暗がりの中で私を見つめていた。私と目が合うと、毛布の中で
ぎこちなく微笑んだ。

 そんな夜もあってから、また随分と年月が過ぎ去った。
 ある晩、大地がのた打った。牢獄を構成している石材が雨霰と降り注ぎ、囚人たちは悲
鳴を上げて逃げ惑った。
 最初の大きな揺れが来た時、私と彼とは辛くも生き残った。動転しながらも、私は素早
く同房の囚人たちの安否を確認した。バルトロメは何人かの男たちと共に、巨大な梁の下
敷きとなり、血塗れになって事切れていた。
 阿鼻叫喚の光景の中で、彼を守らなくては、と思った。腰抜けで不甲斐ない私は、彼が
バルトロメたちの獣欲の犠牲となった時、助けることができなかった。彼を傷つけてしまっ
た。せめてもの罪滅ぼしに、今この災厄の時には、いのちを懸けてでも守ってみせる。
 暫くして、余震が来た。いや、或いはこれが本番だったのかも知れない。
 彼の頭上に、大きな壁石が崩れ落ちて来るのが見えた。
 私は走った。
 私はついに、彼をこの腕に抱き、そして、すぐに突き放した。
 凄まじい重量を伴った衝撃が五臓六腑を押し潰し、世界は闇に閉ざされた。
 私のような咎人にも、神はお慈悲を垂れ給うものか。最期の十数秒間、意識が戻った。
 壁に穴が開いている。そこから仄白い月光が皓々と牢獄の内部に差してくる。
 霞む視界の中で、天使のように軽やかに、彼が壁を通り抜けようとしていた。穴から見
える外の世界は、もうだいぶ山の端に近づいた月に照らされ、さながら銀色の光の海だ。
 その月を目指し、彼の背の高い影が背中を向けて去ってゆく。こちらを振り返りもせず
に。

Fin.
533風と木の名無しさん:2008/02/14(木) 11:49:38 ID:gmByC9Ph0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

間抜けなことに、長らく棚というシステムを存じませんで、
また、他の作品との兼ね合いもありまして、お届けするのが遅くなってしまいました。
あの頃の人たち、見てるかな・・・・。お話できて本当によかったです。

勿論、他の読者様にも大変感謝しております。
534風と木の名無しさん:2008/02/14(木) 11:58:50 ID:NUh5mf9FO
>>523
GJ!続き楽しみにしてます(;´Д`)ハァハァ・・・
535風と木の名無しさん:2008/02/14(木) 12:01:49 ID:QaGI4CaS0
>>533
原作まだ未見なんですが、情景が浮かんでくるようでした。堪能いたしました…
これを機会にまたよろしくお願いします
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) ひっくり返る裁判 赤ヒラヒラ×青ツンツンです。
「好きだ、成.歩.堂」

 そう言ったのは、ボク目の前に立っている十数年来の親友。
 いつものように裁判所で法廷劇を繰り広げたボクは、その帰りにその日の敵、御.剣.怜.侍に突然声をかけられたのだ。
 神に微笑まれたような美しい顔立ちのその男は、背筋を真っ直ぐに伸ばして端正な口元からその一言だけをボクに投げかけてきた。ボクは映画のスクリーンに映し出された俳優を眺めるような気分で呆然と彼を見上げる。
 
「好きって……ええと、親友として?」
 自分でも阿呆な解答だとは思ったが、思考が真っ白に停止した頭では、そう返すのが精一杯だった。それ以上に何があると言うんだ。
 男同士だぞ。
 だったら、親友として以外の「好き」なんて存在するわけ無いじゃないか。
「残念ながら、それ以上の好きだ。あえて言うなら、キミを私の物にしたいと言う独占欲から来る「好き」だな」
 ニヒルに口元を引き上げ、法廷でボクを焦らせる時のような尊大な態度でそう返された。
「……独占欲?」
 今のボクは、ポカンと呆けた顔をしているに違いない。実際、頭の中には数え切れないほどの疑問符が漂っている。
「そうだ。キミと今以上の関係を築きたい。ただの友人同士ではなく、もっとプライベートに立ち入った付き合いがしたいんだ」
 熱弁を振るう御.剣のに、ボクは更に疑問符を増殖させながら恐る恐る彼を見上げた。
「ちょっと待ってよ、プライベートに立ち入った付き合いなら、今でも充分出来るだろ? そんな事、特に宣言は要らないんじゃないか?」
 ボクの問いかけに、もはやトレードマークと化している御.剣の眉間のヒビが大きく動いた。
「違う、そうではない。キミは……その、解らないのか。私がキミに何を言わんとしているか、が」
 右手の人差し指をボクに向かって突きつけ、ユラユラと動かしながら歯切れの悪いテンポでそう呟く。心なしか、若干焦りを感じているようだ。
「……わかんない」
 あっけらかんと答えると、明らかに心証が悪くなった顔で睨まれた。
「キミと恋人関係になりたいという事だ」
 御.剣が力一杯端正な顔を歪めてそう言いはなった言葉に、ボクは法廷であり得ない証拠を突きつけられて崖っぷちに追いやられたような感覚に陥った。冷や汗がだらだらと滝のように体をつたう。
「え、いま、なんて」
 まるで音声を読み上げる機械のような不自然な音調でなんとかそう絞り出すと、御.剣はムッとした表情のまま
「だから、キミと、恋人同士になりたいと、言っている」
 一語一句噛んで含めるように、そう返してきた。
 
「えええええええええええええ?!」

 裁判所の中で絶叫してしまった事はけしからない事だが、ボクの絶叫は正当だと思う。だって、御.剣の言葉は余りにも衝撃が大きすぎる。
 爆弾発言をしたにも関わらず目の前に平然と立つ銀髪の完璧超人は、ぴくりと片眉を上げて涼やかな目線をボクに投げかける。きっと、ボクの答えを待っているのだろう。
「こ、恋人同士は、イキナリすぎると思うんだ」
 ショックの余り飛びまくった意識をなんとか寄せ集め、ボクは必死で答えを考えた。
 考えて考えて、考えまくったあげくにボクの口をついた答えはそれだった。
 凡庸極まりないが、これ以上に的確な答えが一体どこにあるというのか。ボクは御.剣が嫌いではない。むしろ好きだ。だけど恋人同士になりたいと言われたって、性別の壁は余りにも大きい。ベルリンの壁よろしくコレを突然打ち壊すなんて、ボクにはどう考えても無理だった。
「なら、友達からなら付きあってくれるという事だな」
 いつも通りのポーカーフェイスなのに、そう言った御.剣の表情は何処か高揚して見える。
「う、うん。友達なら……って言うか、今までと同じ事だよな、それって」
 御.剣の勢いに気圧されながらおどおどとそう返すと、御.剣はにやりと口の端を引き上げてチチチ、と指を振った。
「同じではない。キミはもう私のペースに流されている。この勝負は、もはや私が勝ったようなものだ」
 尊大な態度で繰り出された御.剣の言葉に、ボクは口をパクパクとさせた。
「なら、食事をして帰ろう。キミを是非エスコートしたい店があるんだ」
 あたかも姫に挨拶する騎士のように右手を胸の前に寄せ、うやうやしくボクに頭を下げる。エスコートって……一体どんな店に連れて行くつもりなんだ、この男は。
 すっかり御.剣のペースに流されているのを感じながら、ボクは中空を見上げ、ふう、とため息を零した。
「キミのおごりで頼むよ」
 イタズラっぽくそう声をかけると、御.剣がにやりと微笑んだ。
「元来そのつもりだ」
 ホントにもう、この完璧超人ときたら。

「で、この場合、手を繋いだりとかしたほうが良いのかな?」
 何気なくそう呟くと、御.剣の顔にほんの少しだけ朱が走った。
「キミがそう望むなら」
 ボクとは明後日の方向を見ながら、ぽつりと答える。
「じゃ、人の居ない時だけ、繋ごうよ」
 そう答えながら手を取ると、御.剣の手は、ほんの少ししっとりと汗ばんでいた。思わず御.剣を見上げると、さっきより頬が赤くなっている。
 
「緊張、してたんだ」

 ボクの言葉に、御.剣がしかめっ面を返す。
「当たり前だ。告白をする時に、緊張しないはずが無いだろう」
 辿々しく返された言葉に、今度はボクのほうが真っ赤になる番だった。そうだ、ボクはさっき御.剣に盛大に告白されたんだった。
 
「御.剣」
 突然名前を呼ばれ、御.剣がいぶかしげにボクに視線を向ける。
「これからも、ヨロシクな」
 笑顔で告げた言葉に、御.剣も満面の笑顔を返してくれた。そんな些細な事がなんだか嬉しくて、ボクは繋いでいた手をギュッと握った。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

初めての投下なので緊張しました。ありがとうございました!
541風と木の名無しさん:2008/02/14(木) 14:30:55 ID:L9b+jS2WO
>>540GGGJJ!!!!!
禿萌えたー!
このまま髪の毛を撒き散らしつつきりもみ舞いで街に飛び出したい程だ!!
姐さんありがとう!!!
542風と木の名無しさん:2008/02/14(木) 20:18:06 ID:fX9bj88UO
>>510GJ!!
えーもん読ませてもらいました
映画版の青の、ちょい低めな声で脳内再生されたよ
543武/装/錬/金 ハ゜ピ力ズハ゜ピIII:2008/02/14(木) 21:14:00 ID:3zAfgYom0
武/装/錬/金 >>517-521の続き。

今朝はお見苦しい所多数で失礼いたしました。残りの投下です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエーン ツヅキ!
544風と木の名無しさん:2008/02/14(木) 21:14:44 ID:52u+l7dS0
>>540
GJ!!!
二人とも可愛かった!
萌えすぎて毛根なくなるほど禿げ上がりました。
激しくゴチでした。
545武/装/錬/金 ハ゜ピ力ズハ゜ピIII 5/10
 己の迂闊さに力ズキは唇を噛む。
 そうそう他人に弱みを見せる男ではないと、自分は知っていたはずなのに。

 桜/花を避難させるどころの話ではない。
 本来ならこの男こそが、修復フラスコに入り安静でいなければならない身だったのだ。
 怪物化しつつある己のことで精一杯だった力ズキは、今までこんな大事なことにも気づかなかった。
 他ならぬ、この、自分ではないか。
 ハ゜ピヨンが自らを回復させる余裕もなくここまで消耗した、全ての元凶は。

                *

「――ダメだ、蝶/野ッ!」
 最後の一枚に手をかけたハ゜ピヨンに、たまらず力ズキは叫んだ。
 どれだけ悔やんでも足りない。
 誰よりも、自分が察しなければいけなかった。この男の変調を。
「うるさい」苦痛を押し殺す声は、しかしどこまでも平静を装う。「今さらやめるのはなしだ」
「バカ!それじゃオマエの身体が――」
「黙れ。貴様に馬鹿と言われる筋合いはない」
「蝶/野!」
 制止も空しく、際どいデザインの下着が床に放り捨てられる。
 カラン、と乾いたその音を、力ズキは絶望的な思いで聞いた。――核鉄がハ゜ピヨンの身体を離れる音。
 ハ゜ピヨンは獣に似た指爪を引っ込めると、フラスコ充填液で自らの後ろを躊躇いなく解し始めた。
 手慣れたその痴態を前に、力ズキは言葉を失う。
 
 何を考えているのだ、この男は。
 半不老不死の肉体といえど、今の彼にこれ以上の無理は自殺行為に等しい。
 それに、これでは話がまるきり逆ではないか。
 最初にハ゜ピヨンは、力ズキからのエネルギー補給が目的だと言っていたはずだ。
 なのに今この男は核鉄を捨ててまで、己の身体にさらなる負担を強いようとしている。
 まるで自虐だ。彼の行動が力ズキには理解できない。