○月○日
ご主人様は今日も犬のものまねをがんばった!
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ、もうちょっとだから、もうちょっとだからまだ切らないで、
ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ」
「いーよ、いってごらん、気持ちいいかい」低い、かっこいい、いい声だった。
電話のむこうの声はさいしょ女のひとだったのに、男のひとにかわっていた。
ご主人様は電話を切って、「あぶねーっ」と言いながらぼくをしまった。
○月○日
ご主人様は今日、犬のものまねをがんばらなかった! あたまをかきむしっていた。
○月○日
ご主人様は今日も犬のものまねをがんばらなかった!
自分であたまをかべにぶつけて、ごつんごつん音をさせていた。
○月○日
ご主人様は今日もかべ頭突きをがんばった!
○月○日
ご主人様は今日もかべ頭突きをがんばった! ぼくにはよくわからないけれど、
「世界頭突きコンテスト」みたいなのがあるんだと思う。
ご主人様はちゃんぴよんをめざしているんだと思う。
○月○日
ご主人様は今日も、かべ頭突きをがんばった! それから電話をした。
「もしもし、夜分おそれ入ります。ご主人はござい宅でしょうか?」
しゅっちょうなので今ばんは帰らないと言われた。
「ではまたごじつあらためてお電話さし上げます。たいへんおじゃまをいたしました」
ご主人様はこんなにれいぎ正しいし、こんなにがんばり屋だから、
きっとしゅっせするたいぷだと思う。
○月○日
ご主人様は今日もかべ頭突きをがんばった!
そのあと犬のものまねもがんばった! 今日は電話でだれかに聞いてもらうのはしなかった。
そのあとまたかべ頭突きをがんばった! 涙がでるまでがんばった!
こんなにがんばるご主人様にはきっといいことがある!