ttp://1hp.jp/?id=isochrone 可愛い子も賢い子も結局はね ロザン宇治×菅
はたと視界が明瞭になった。あかあかとした蛍光灯のした、転がるアルコール類の空き缶。
フローリングの床にまるくなって寝ている相方。そうか、ネタ合わせをしていたのだ。
「またなんでそんな寝方なん…。」
身体は痛くないのだろうか。自分も壁に凭れたままうとうとしていたから、人のことは言えないけれど。
毛布をとってその背にかけてやる。と、まるい塊が身じろいだ。「うじ。」「あ、ゴメン起こした?」
のそりと身体を起こした菅は、手の甲で目を擦っている。「んーん。ゴメン、途中で寝てもうて…。」
あ、そうか。寝てしまう直前まで、何かの話の途中だった気がする。寝起きでぽやっとした顔のまま、見上げてくる菅。
「何の話やったっけ。」「何や、おまえも覚えてないんか。」
「なんか、ネタ合わせが済んだとこまでは覚えてんねんけど。」
結構イケるんちゃうか、ってネタができて、早い時間からいい雰囲気で呑んでいたはずだ。
ふたりともいい気分だったせいか、かなりのピッチで結構飲んでいて、その間のことがよく思い出せない。
「まあ、ええか。大事なことやったらそのうち思い出すんちゃう?」
「そやな。」「菅ちゃん、今日もう泊まってくよな?」
「うん。風呂貸して。」
「ええよ。あ、タオルいつもんとこ。」
眠っていて呆けた頭を掻きながら、空き缶を集める。…。思い出そうとすればするほど分からん。
そういう記憶ほど、頭の片隅に頑固にへばり付いて、出てこようとせんねん。
まあいいと思いながらも、思い出せないということがプライドに小さく火を点ける。
…?
「うじー、シャンプー切れた!」「…。詰め替え下の段の棚に入ってるから。」
菅ちゃん、タイミング悪いわ。もうちょっとで思い出せそうな気ぃしたのに、負け惜しみやけど。
「アヒル隊長買おうやあ。」「そんなもんどうすんの。」
「風呂に浮かべて遊ぶー。可愛いやろ?」
またそんな悪そうな笑顔で。わざわざアピールせんくても、十分可愛いで、おまえは。そう言うと菅は微妙な顔で黙った。
「ん?」「いや、何でもない。何か思い出しそうやってんけど。」