218 :
土々呂:
■暗黙の了解を破っています。
■不快感を増幅させる為に特定の商業作品を連想させる固有名詞を使っています。
■キムラタイヨウのインスタレーションを意識しています。
■食べものを使っています。
■隔離の人ではないです。苦手な方はスルーお願いします。
219 :
土々呂:2007/02/14(水) 18:35:54 ID:ZyMBku0r0
僕の中で5月は、12ヵ月中いちばん爽やかな季節だ。
風薫る五月とか、新緑の頃とか言うし、
五月晴れの青空に鯉のぼりが泳ぐイメージは僕の中で濃厚。
実際問題、八十八夜も過ぎて夏が近づく。
そよぐ風も夏めいてくるし、庭には赤や白の平戸ツツジが咲きそろう。
何よりうちの街は街路樹がハナミズキだから、
五月になると街は淡い紅色の花で彩られる。花いっぱい。緑いっぱい。
それに五月といえば♪となりの卜っ、卜口〜卜っト〜ロのお姉ちゃんだ。
彼女は僕的に爽やかの象徴。だから僕の中で5月は、12ヵ月中いちばん爽やかな季節だ。
なのに五月という名前の目の前の男前はちっとも爽やかではなかった。
笑顔は爽やかだけれど存在がいや。不快だ。
彼の手には汚い油の入った天麩羅鍋がひとつ。
僕の眼下にはカレーをはったブルーの洗面器。
茶色く濁った冷めたカレーを見下ろしながら、
「と゛ろ ろ、はやく選べ」と、僕をせかす五月くんの声を聞いた。
五月君はビデオを回しながら油にする?カレーにする?と俺を見る。
220 :
土々呂:2007/02/14(水) 18:36:33 ID:ZyMBku0r0
と゛ろ ろ と呼ばれながら、セフレの前カレがプレイ中セフレに
日本の人なら10人中9人が知ってるんじゃないかと思われる
国民的アニメの主人公のお面をかぶせ、挿入しながらキャラの名前を呼ぶのを思い出した。
ふたりのセックスに混ぜてもらって3Pをしたとき
僕はそのアニメが好きだったので気分を害した。大好きなキャラを汚されたと思った。
不愉快で不愉快で、フェラも中出しもとっても気持ちよかったのに、
ずーっと吐き気を増幅させるツボを押されてるみたいだった。
顔は大好きなキャラ。体はセフレ。
セフレが腰を振るたび喘ぐたび、表情のないはずのお面が
超うまい能役者さんがかぶった能面みたいに息づいて、あんあん言った。
しょーもねえなと笑うなんてできなくて、ただただ生々しさが気持ち悪かった。
あとで聞いたら僕がそのキャラを好きだとセフレから聞いたセフレの前カレが
どMの僕の為にあえてそういう趣向を凝らしたらしい。
眼下のまるい洗面器を見てたらそのときのお面がフラッシュバックした。
まるい顔したブルーのロボット。ピンクのドアや黄色いプロペラ。
大好きだったものを汚された。
221 :
土々呂:2007/02/14(水) 18:37:20 ID:ZyMBku0r0
プレイ後、「不快に思ってもらえたら嬉しい」とセフレの前カレは言った。
むかついてむかついて、わかった。僕は気持ち悪いのは好きじゃない。
たとえばガラス。破片でリストカットはOKだけど、
破片で黒板を長く引っかくのは生理的にNGだ。
「と゛ろ ろ、どっちにする?」
五月くんが、セフレの前カレがセフレを某キャラの名前で呼んだみたいに、
僕のことをと゛ろ ろ と呼ぶ。
五月くんも誰かに「不快に思ってもらえたらうれしい」のかな??
今、五月くんはビデオを回してる。五月くんがそのビデオを
と゛ろ ろ 好きな誰かに見せたとしたら嫌がらせになりうるかもしれない。
ああだけど、コスプレをしているわけではないから視覚的にものたりないかな??
言葉だけじゃノーダメージかな??
本当のところ五月くんが何を考えているのか僕にはわからない。
「と゛ろ ろ、どっちにする?」
ビデオを持った五月くんが白くてつるつるの歯をちらっと見せながら、
爽やかな笑顔で僕をうながす。
男同士のえっちはファンタジーのはずなのに、ちっともよくない。
カレーと油に萎え。僕はまだ勃起もしていない。
222 :
土々呂:2007/02/14(水) 18:37:53 ID:ZyMBku0r0
僕が躊躇していたら五月くんが暗い悲しい目をして洗濯機を止めた。
「土々呂はカレーで顔ぐらい洗えたんだけどな……。やっぱ顔とか体格が似てるだけか。
おまえと土々呂は違うもんなァ。ごめん。俺が間違ってた。
俺の服なんか貸すからおまえもう帰っていいぜ。
土々呂に会いてえな〜。あいつ、今どこで何してんだろ……」
さっきの箱から透明の大きなごみ袋を取り出すと、五月くんは
洗濯機の蓋をあけ、臭い洗濯物を猛烈な速さで放り込み俺に手渡した。
「クリーニングに出せよ」
顔も本名も知らない土々呂に負けた気がした。
何の根拠もない直感だけれど、はじめて会ったとき
五月くんは男を抱くのが絶対にうまい気がした。
僕はきょう、五月くんに抱かれたくて此処に来た。
全裸になってカレーと天麩羅油を見つめる為じゃない。
このままキラれるように帰るのは嫌だった。もうカレーだ。カレーしかない。
僕は洗面器の中のカレーを両手ですくった。どろっとした感触に裸の肌が粟立つ。
つづく