我ながら、きついこと言ってんだろうな、と思う。
こいつが助けられるのは、死んだ人間だけなんだ。
あいつは死んじまってたから、ここから出してやれたんだ。
でも俺はまだ生きてるから、ここから出すことはできないんだ。
だから、俺を助け出してくれないことは責めないけどさ。
「あんた、俺を助ける気はまったくないんだよね」
俺は、意地の悪い気分になって、そんなことを耳元に囁いてみた。
客は何も言わなかった。可哀想に、目をギュッと閉じて堪えている。
でも、ちょっとくらい意地悪する権利、俺にはあるよな。
こいつは俺から、俺の側にいた唯一の人間をとっちまったんだから。
あいつは俺を見なかったけど、俺の同類、仲間だった。
最初見た時はお兄ちゃんだったのが、いつの間にか俺より小さくなってたけど、
あいつはずっと俺の側にいた。何をしてくれたわけでもないけど、
俺にとってはただ一人の大事な人間だったんだ。
あいつを助けてやることは当たり前で、それはいいことで、だけどこの客は、
独りぼっちになる俺のことなんて何も考えちゃいなかった。