656 :
asuhamatakuru :
「僕は、お金でこういうことをしたくない。だいたい、そっちの趣味もない。
君にひどいことをしたくもない。だから、時間までここにいるけど、
何もする気はないよ」
きっぱりと言う客に、俺はかっとして怒鳴った。
「時間までいてくれたって、俺もシーツも汚れてませんって状態を見られたら、
俺にとっては同じことなんだよ! あんたが払う金は、何かしてもしなくても
変わらないだろうけど、俺にとっては大違いなんだ!」
「きゅ、給料を減らされるのか?」
ちょっと弱気になって尋ねる客のその無邪気な質問に、俺は笑い出した。
こいつは本当の本当に何も知らないでここに来たんだ。
「給料!? そんなもんあるわけないだろ! メシを減らされるんだよ、
働いてないんだから食うなって! そうでなきゃ他の客を取らされる。
いつもより長く働かなきゃいけなくなるんだよ!」
客が、顔を引き攣らせて押し黙った。気の優しい、いい人なんだろうな。
頼まれたわけでもないのに、あいつを助けに来たんだから。
俺は、客の手を引っ張ってベッドまで連れていった。
「苦にすることない。俺がいいっつってんだから、やれよ。
やり方わかんなきゃ、教えてやるからさ」
ベッドに座らせて、肩を掴んで押し倒した。膝でベッドに上ってのしかかる。
「待って、待ってくれ、僕は……」
「あいつのことは助けたのに、俺のことはどうでもいいわけ?」
そう言うと、客がつらそうに目を逸らした。