客はそれからまだしばらくぶつぶつ呟いていたけど、やがて口を閉じた。
大きな溜息。疲れることなのかな。
客がそっと俺を振り返った。額に汗をかいていた。やっぱり疲れるんだ。
「あいつ、どこに行ったの?」
俺が聞くと、客はまた困った顔をした。
「彼は、いるべきところにいるよ。もう苦しんではいない」
ふうん。どこかわからないけど、いいところなんだな。
少なくともここよりは。
客が、俺の頭を軽く叩いた。
「じゃ、僕はもう行くから」
俺は慌てて客の袖を掴んだ。
「ちょっと待って、そんなの困るよ俺!」
「え?」
客が、困惑した顔で俺を見下ろした。何も知らないんだな。
「あんたがこんなに早く出て行ったら、俺を気に入らなかったってことに
なるんだよ。俺の不始末ってことになっちまうんだ。
ちゃんと遊んでってくれなきゃ困る」
客は呆然としながらも、納得して頷いた。
「ああ……そういうものなのかい。じゃあ、時間までここにいるよ」
「それだけじゃ駄目だってば! ちゃんと俺を抱けよ」
「そんなことできないよ!」
客は心底驚いた顔をして叫んだ。こいつ、本当にあいつを助けるためにだけ
ここに来たんだな。