*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレPart9

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210風と木の名無しさん
しぶしぶ問題集を広げた俺に、
「目安は30分だから、なるべく時間内に解けるようにがんばって」
優しい声で言って、やつは自分の腕時計に目を落とした。
「いい?今からはかるよ」
にっこり笑って俺の顔をうかがってくる。俺が無言でシャーペンを握ると
それを是の意と取ったのか
「うん。じゃ、はじめ」
怒った声を出したことがあるんだろうかと疑いたくなるような調子で、
やつは開始の合図をつげた。
こいつは俺の家庭教師だ。近所の大学の2年生。苦手の数学を中心に
試験前は他の教科も見てくれる。

俺はこいつに、今まで1回も、叱られたことがない。
たとえば品行方正に、言うことをよくきいていれば、それも当然だろう。
だけど俺はそうじゃないのに。

30分がすぎて、先生が俺に「そろそろできたかな?」ときく。
「まだ」と、つっけんどんに答えると、先生は、そう、じゃあ
出来たら言ってくれればいいからね、と、一段と優しい声で言った。

それからたっぷり30分。先に耐えられなくなったのは俺の方だ。
なんで何にも言わないんだよ。時間切れになってからさらに30分
もたったっていうのに。
「できました」
言うと、「はい、お疲れ様。じゃあ答え合わせするからね。
ちょっと貸して」と、彼は俺の目の前の問題集に手を伸ばす。
気づかれないように、ちらっと彼の顔に目をはせると、
やっぱり笑っている。
――イライラする。

問題集にちょっと目を通したヤツが、ため息のひとつでも
つくのを期待してたのに、ヤツの反応は真逆だ。