【スカ描写あり】
最初は後始末の欲求。
床に落ちた多量のものは勿論、跳ね返り腿を伝った残り滓は既に乾き始め、臭いを放ち、イグレクは辟易しながらその存在を忘れようとしたが、叶わなかった。
そして、喉の渇き。腸内の水分までをも巻き込み流し去ってしまったのか、激しい渇水への欲求が喉と舌から訴えられた。
敗北感に打ちのめされるイグレクは、はじめはどちらも拒否した。
嗚咽しながら首を振った。
それも時間の問題。不快感の改善よりも、すぐ生理的欲求が上位に立った。
カラカラに乾いた口内で、熱さにうかされ腫れ上がった舌。行使できる内に呼べ、と心の一端は叫ぶ。けれども大部分―――それは少年の最後の最後まで保った矜持―――はそれを許さない。
(ここぞとばかりに、嘲笑われるだけだ)
(どうせ、昨日だってそうだ………)
自分が眠りに逃避した後、憎きあの拷問官が入って来て―――どうせ扉の向こうで悪賢い狐みたいに耳を傍立てていたに決まっている―――欲望にまみれて倒れる椅子を見て、してやったりとほくそ笑んだに決まっている。
意識があるままそんな辱めにあうのならば、舌を噛んだ方がマシだ。
………意識を手放した後ならば、どうにでもなれ、だ。
朦朧とする中、考えをそこまで纏めたイグレクは………舌を噛まなかった。
手鎖に体重を預け、途切れるのを待つ。
この忌まわしい思考と入れ替わりに、睡眠でもいい、失神でも構わない。
とにかくこの苦境から意識を切り離してくれるものを望む。
時間は凪のように過ぎた。
渇きだけが増す地獄の時が流れ、石造りの部屋の温度は変化していった。
闇をもたらす低温へと。
舌に柔らかな夜気を感じ取り、その冷たさに感謝した瞬間、けたたましく鉄扉が押し開けられた。
ギョッとしたイグレクは睨み眼を作る暇もないまま、厳しく眉を吊り上げるテッドと顔を合わせた。
とても言葉を紡ぐ余裕も気概もなかったが、この拷問官の行動を咎める唯一のチャンスでもある。
「よ、呼んでもないのに、押し入るなど………さすがの、サディストも痺れを切らし………」
どもる。腫れ上がった舌が廻らない。
口上の冒頭も紡げないまま、イグレクは天井の鉤から外され、痺れる手鎖の両腕に水差しを押し付けられた。とどめに白い布が視界を塞いだ。
よろめき、その場に尻餅をつく。
腰の痛みと貴重な水が零れないかの心配に、一瞬気が逸れた。
布を跳ね上げ、続きを喚こうとした時には、すでに床の後始末を終え、大柄な背中を見せたテッドが退出する現場を目にしただけだった。
まるで怒っているかのように、鉄扉は開く時も閉る時も、同じ響きであった。
喉を潤すと、瞬く間に眠りがイグレクに圧し掛かった。
残った水と投げられた布で下腹部を拭い、ぐしゃぐしゃに丸めてから部屋の隅に放った。
今日の嗅覚はとっくに麻痺してしまったのか。
藁もトワレも、殆んど匂いを感じなかった。
家を出る前にと更新してみたら…キテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
ガンガレ強気な少年!
乙です!
この先、この折れない心もくじかれてしまうのか
ガンガレと思いつつもちろん完膚なきまでにヘシ折られる様も見たい。
続きまってます。
650 :
少年Y:2006/10/28(土) 12:06:48 ID:s+HJz10v0
前回投下分、
前置きに、スカ要素ありの警告忘れ
番号のズレ
申し訳ありません
今回投下分
少年が登場します。
後半拷問要素があります
生き物(鰻)侵入と排出。
ご注意ください。
五日目。
肩を開く程度の余裕をもって吊るされたまま、イグレクは放置されていた。
鉄扉の向こうに気配がある。複数で、甲高い話し声は揉め事の部類に入るだろうか。
怪訝に少年が眉を潜めた時、テッド一人が入ってきた。
唇をへの字に曲げ、厳しい目をしている。
今日は何を使うか知らないが、器具でも道具でも、まずこき下ろしてやる。
そう身構えるイグレクは、次の瞬間呆けて言葉を紡ぎ損ねた。
テッドが取り出したのは、細長い布切れ一本であったから。
黙々とテッドはその布をイグレクの眼部に回す。耳の後ろを通して後頭部で結んだ。
布地が厚いのか、光は一筋も通さず、影の動きを感じ取る事も出来ない。
一面の暗闇に怯みかけたが、とにかく何でも荒を探して責め立ててやろうと口を開いた矢先、耳元に囁かれた。
「何かあったら、呼べ」
反論すべき主題は決まったが、題目を唱えるより先に、重厚な足音は去って行った。扉が閉まる。
戸惑いを反芻する暇もなく、閉じたばかりの戸が開いた。
ペタリ。石材の床に吸い付くような靴裏の響きに、得体の知れないものを感じ、イグレクは唾を飲み込んだ。
視覚が閉ざされた分、聴覚が鋭敏になっている。
肉に押しつぶされ悲鳴を上げる履物。
歩く度ぴたぴたと肉鎧が打ち合い、立てる音。どちらも聞き覚えがなかった。
少なくとも、この部屋に入ってからは一度も耳にしていない。
その条件で除外出来るのは、テッドだけであるが。
嗅覚に意識を集中し、かすかな脂ぎった匂いを捉えた時、それは中断された。
「………ぃ、ひ………ゃっ」
猪突猛進。その単語が似合う外見かも確かめる術のないまま、獣じみた息遣いが、目の前に迫っていた。
太い指がイグレクの胸元をまさぐり、かっちりと閉じたシャツのボタンに掛かる。
例えるなら中身を入れすぎた腸詰、もしくは肥え過ぎたアヒルのくちばし。
悲鳴めいた奇妙な声を上げたきり、少年の意識は行動に伴わず、気がついた時には前身ごろを全てはだけられていた。
空気と、それから脂と獣欲が入り混じった息が、身体の前面に突き刺さる。
「な、何をすっ」
威圧を込め、退ける成果を期待する言葉も、発せないままに終った。
掌が、イグレクの肌の上を這いまわる。
目隠しにより高められた感覚は、嫌でもそのグロテスクな手触りを受け取ってしまう。
例えるなら海底に潜む異様な形の生物、地獄にある魔女の釜から上がったばかりの元食材。
捏ね上げるようにあちこち触れ回る。
粘体の生き物が這ったように、跡に脂めいた軌跡を残しているのではないか。そんなぞっとしない想像も浮かぶ。
十本の芋虫の何本かに、硬い輪の感覚が混じっている。指輪だろう。
そういえばどっちかの部下は―――思い出せる限りでは、鞭を振るう右手に―――既婚者だか何かの証で、嵌めていたようだった。
ぼんやりと記憶を思い浮かべていると、鋭い刺激が、胸の表面を掠った。
色染まり始めた敏感な先端を、よりにもよって思考の主題であった、指に嵌める凶器が、やや押し潰すように撫でていったのだ。
声を上げた自覚はなかったが、その後の流れで、嫌でも思い知らされる。
目隠しの向こうで歯を剥き、いやらしく笑う姿が見えた気がする。
その何者かは手馴れた様子で、イグレクの胸の突起を責め始めた。
太い指の中で転がし、舌先で舐め、ねぶる。
一度試みた抵抗、蹴り、は行動に移す前に察され、両足の甲を纏めて踏まれた。
骨が砕けんばかりの重みが、圧し掛かった。
だが頭の中でもやもや渦巻く感情は、一時の痛みで去らなかった。
自身でさえも殆んど触れる事のない部位。
こんな風に他人の手で弄ばれる予見など全くなく、構えの取れない感覚に、イグレクは唇を引き結んだ。
この誰かが期待する反応を見せない。
声も息も色も、お前などにはお断りだと、目隠しの下で瞳に炎を灯らせた。
唾液と脂の入り混じる肌の上の質感が、粟立つ気味の悪さを覚える。
それにより却って理性を取り戻せた。
ぴちゃぴちゃと嘗め回す舌音も、見えない故に雨漏りだと思い込む事も出来る。
雨泥に混じった芋虫が這いまわっている。
胸元の痛痒感は一昨日の続きだと考えれば、耐えうる条件には十分。
頭を回転させ始めると、間もなく感覚も身体全体にばらけたようだった。
上半身に集中していたほてりが霧散し、呼吸に混じっていた熱っぽさもとれた。
イグレクの何もかも見透かしたように、責めが止んだ。
安堵の息を吐く余裕はない。自身には強く言い聞かせていたが、それでも実際気色悪い手と舌が離れていくのには、喜びすら覚えたものだ。
なまじ、崖の縁を掴んでしまったからこそ、二度目の墜落は辛い。
溺れる者が藁を握る強さ。それがイグレクの未発達な分身に対して実行され、落下が再開した。
「………っう」
苦痛と恥辱に短く声を上げる。目の裏が白く点滅する。
自分ではそんな乱暴に扱った事はなく、他人、そもそも人に触れられるのだって初めてだと言うのに。
十本の指が、別々に動く虫と化す。
別個に体重を押し付け、荒い足音残して這い回る。
意識が一色に染まるに従い、感覚が己の先端に集中した。
刺激を受け、徐々に持ち上がっているのが分かる。
「やめ………っ」
拒否の言葉は意に介されず、身じろぎして逃れようとした直接的な行動は仇となった。
足を踏まれ両手を上に拘束され、逃れる場所は限られている。イグレクは腰を後ろへ引く。
十の脂ぎった腸詰の指は、勃ちあがりかけたそれの後退を許した。一応は。
ただ僅かな距離を移動する間にも、指の腹で圧力を加え、強く押し込む爪で刺激を与え、嵌めた指輪で、鈴口に留めを与える。
金属の部分で軽く小突いただけだったが、それが少年の最後の一線。
意識が染め上がった。全ての血が下半身に流れ込んだ感覚。
声は言葉とならず、熱い吐息めいたものを空気に溶かした。
「………ぁ、う………ん、ああっ」
精を吐き出し、同時に抗いようのない脱力感がイグレクを襲った。
力を失った両手首が鎖を鳴らした。
ぼやける意識の内、まだ自分の分身を掴む感覚があるのは分かっていた。
………いい加減、放せ。
思考に振り絞る気力もなく、次の行動に何も身構えがなかったのは少年の失策と言える。
それを包み込む、脂ぎった掌がなくなると同時に、目の前の気配も消えた。
足音を殺しているのか、捉えるだけの聴覚が働いていなかったのか、恐らくは両方の理由で、イグレクは何者かを見失った。
探そうなどという意図は毛頭なかった。
とっくに部屋を出ていて、足音を聞き損ねたのだと、そう思えればどれだけ幸せか。
夢想は断ち切られる。
背後から聞こえた水音、やや粘着性を帯びて手の中でかき回されたような音。
背中越しに聞こえたと悟る前に、既に少年の背筋は芯まで戦慄していた。
予感する。そしてそれは当たった。双丘に触れる、あの形容も忌まわしい感覚。
割れ目をこじ入った五本の芋虫が、置き土産を残す。
熱く、どこかべたついている………少年が吐き出したばかりの欲望の残滓。
これも予想の内、そしてこの先は決して当たって欲しくない。
しかし現実は無常だ。後孔のすぼまりに当たる、熱い塊。
それも脂ぎっている、耳元で煩い荒い息も脂ぎっている。
背後の脂ぎった獣が、欲望をそそり立たせて………身体ごと踏み込む。
「………い、ぃや………いやだーーーっ!」
喉を震わせ絶叫し、押し入る凶器から逃れようと反射的に歩を進める。
両脚を床に張りつけにする重みがなくなっている事実にはその時気付いた。
だが、もう一つの枷、天井から吊るされた両手は完全に失念していた。
前向きに一歩も逃れられず、イグレクの必死な全身は留められる。
ガクンと強引に止められた身体は、そのまま振り子の反動に従い、通った軌跡を逆に辿る。
終着地点は、イグレクが恥も外聞も捨てて叫び逃れようとした、何者かの欲望の塊であった。
無理やり押し広げられる醜い音も苦痛も一瞬。
勢いは止まらず、はちきれんばかりの痛みを味わうより早く、おぞましい侵入の感覚から逃れようと、全神経、全意識をもがきに与えなければならなかった―――無駄だと分かっていても。
反動による愚は二度と犯すまいと、身体を前方へ傾けようとする少年の行為をあざ笑うかのように、腰に手が伸ばされた。
五本の芋虫がイグレクの右と、左の腰をそれぞれ掴み、己の方へ引き寄せようとするその刹那、けたたましく音を立てて扉が開かれた。
過ってこれほど乱暴に扱われた事があるだろうか。
百八十度開き、金属材質の扉は反対側の石壁にぶつかった余韻でまだ震えている。
壁も同様に奇妙な響きを立てている。
先程叫んだ後遺症も残っているのか、イグレクの頭の中は鉄扉の立てる波動と同じ響きで煩かった。
だから、背中の何者かが引き剥がされ、連れられ、部屋の外に去っていく一連の流れだけで、途中にどんな会話が挟まったか、やり取りの間の感情は如何なるものか分からないままであった。
この時目隠しがなかったとしても、その正体を見ようとは思わなかったかもしれない。
ただただ、イグレクは茫然自失の体にあった。
鉤から鎖が外されても、全身が床に崩れ落ちるままに任せる。
カツン、と重く骨太な脚が運ぶ靴音が一つ。
大柄なテッドの身体が屈み込み、腕だけ伸ばしたその手先で、まずイグレクの目隠しを外し、それからシャツのボタンを嵌める。
日焼けした、どこか男らしさが漂う、逞しい指がゆっくりと―――おそらく繊細な装飾ボタンに慣れていないのだろう―――少年のはだけた前面を隠していった。
全て止め終えても、反応はない。
テッドはイグレクの腕を引き上げ立たせると、湯に浸した布で身体を拭った。
特に汚れている部位はなかったが、シャツから出ている部分を一通りぬぐう。
清浄の為というよりは、皮膚を刺激し血行を良くするのが主眼でもあった。
テッドはゆすいで裏返した布を差し出すが、少年は受け取る様子も見せず、焦点の合わない瞳は恐らく、布切れさえも捉えていないのだろう。
腕を離すと、イグレクの身体は粘土の人形のように、床に沈んだ。
黙ってテッドは湯を張った容器と、飲食物の乗った盆を置き去りに、立ち上がった。
方向を変える間際にふと気付き、汗で絡まるイグレクの前髪をそっとほぐす。
振り払われはしなかった。
しかし、音が。
少年の瞳に何かが灯る、燃焼の響きをテッドは確かに耳にした。
「しょ、商品管理は大変だな、責任ある立場は特にっ!
その背中に負った責任の為に、部下のっ。暴走も止められないのか。
なら、その立場ある身を退けっ。管理も出来ないようなお前が何でっ!」
イグレクの言は途切れ途切れではあるが、まだ続きそうであった。
それでもテッドは目を向ける。
単語のどこに反応したのか、厳しく口を結んだまま、眼だけは丸く大きく見開いて。
それは確かに少年の燃料として投下された。
「お前が、お前が、お前が、全部やったんだ! 全部お前の仕業だ。
何だよ、その意外そうな顔は。自分は知りません全部部下の一存だ、と言いたいのか!
違うね、全部お前だ。間接だろうと糸引きだろうと、お前が全部やっている事だ!
殊勝な面を見せるのはやめろ、反吐が出る。
同情の瞳で治療されるよりは、商品管理は辛いと愚痴をこぼされた方が、まだマシだ。
お前が………お前なんか………お前の顔など見たくもない、出てけっ!」
囚人の身で到底無理な要求であったが、イグレクは自ら扉を閉めた。
人と向き合う心の扉を固く閉じ、藁の中に丸まった。
気配は、少年が癇癪を起こさない瀬戸際までそこに佇み、やがて足音の尾を残し、鉄扉が閉まった。
「………っ………くっ」
唇を噛み締めるが、嗚咽が漏れた。
藁は留めなくこぼれ落ちる熱い塩水と合い交じって、惨状を見せていた。
………本当に怒鳴りたかったのは「お前」ではない。
………全然覚悟を決めていなかった自分自身なのだ。
未来は分かっていたつもりだった。
けれど牙を封じられる予測は、今日の今日まで抱けなかった。考えたくもなかった。
たった一度。両親の仇を討つ機会は、エウロディヌス卿の性欲の対象にされる時、それしかなかった。
だが、あの悪党に相応しい用心さを身に付けた卿が行為に及ぶ時、果たして自分が四肢自由の状態で居るのを許すだろうか………許す訳がないと、たった今気付かされた。
両腕の中で鈍い音を立てる金属の枷。
明後日にはこれから解放されるのではなく、麻の縄か、それとも更に頑丈な金属に取り替えられるだけなのだ。
送り込んだここで牙を抜ければ結果的には良し。
それはそれで見えない鎖に繋がれたようなものなのだから。
「っ、くそ………っ」
固く瞼を閉じると、押し出された熱い涙がはらはらとこぼれた。
イグレクは涙と泥と藁が入り混じった、冷え切った床と変わらぬ温度のそこへ、頭部をうずめて眠る。
シャツから顔を背けるように。
とっくにトワレの香気は霧散してしまったし、他の匂いを捉えたなら、きっと涙が止まらなくなってしまう、そう思ったから。
【生き物/鰻プレイあり】
六日目。
浴槽、と呼ぶにはやや丈が長い。水槽と呼ぶのが適宜だろうか。
床にどっしりと置かれたそれには七分目まで水かさが届いている。
イグレクは今日も鉤に吊るされた状態で、水槽の中に身を浸していた。
水面が丁度腰の位置。槽の底まで足が届かず、浮力に身体を任せた奇妙な体勢となっている。
あくまで浴槽の単語が抜けないのは、その中身が湯であったからだ。
火傷するほどではない。ただ湯気は室内を真っ白に染めてもなお相変わらず上り続ける。
少年の頬も熱気で紅潮していた。
「釜茹でか。未開地の原住民的な思考だな。
ついでにお前の安酒でも温めたらどうだ?」
イグレクは短くそれだけ紡いだ。
どうせ反応がないのは分かっていたし、前日の疲労は色濃く残ったままだったから。
「雌はいない。雄の稚魚だけだ」
対するテッドの返答は不可思議なものだった。皮肉への切り替えしにもなっていない。
苦汁に満ちた顔、眉間に皺寄せ、樽を抱えている。
一字一句を発するのに唇が切れ出血する病の罹患者のように、息絶え絶えに、しかし少年よりも長く話した。
「熱帯に棲む鰻の一種だ。活動するのは暖かな春と夏。
初秋には卵を残して死ぬ。残暑が過ぎた水温では卵しか生き延びれないからだ。
雌は水温の変化で季節の入れ替わりを察し、卵を産む。
だが、この中には居ない。雄だけだ。
子孫を残す使命に駆られるから、狂暴なのは雌だけだ。
雄はそれほど生存本能に貪欲でない………筈だ」
大した生物博士だと、その言葉を皮切りにしようと目を細めたイグレクは、槽にぶちまけられた樽の中身に、紡ぎかけの言は押し殺した悲鳴になり代わった。
恐怖に瞳を見開く。
「ひ………っ」
【生き物/鰻プレイあり】
一瞬大蛇が投げ込まれたのかと誤解した。
鰻と呼ぶのが相応しからぬ派手な色。
鱗がない為、蛇だとの過ちはすぐに解けたが、稚魚の群はしばらく一塊になったままであった。熱い水流で一匹、また二匹と外れ、湯の中を泳いで行く。
小型のもので親指の太さ、成魚になりかけのものはその倍はある。長さはいずれも指先から手首位の体長がせいぜいであった。
イグレクはこの異種の居候をしばらく呆然と眺めていた為、その言葉の主が誰であるかに、気付けなかった。
「呼ぶんだ………頼むから」
懇願に似た響きが耳を打ち、戸惑いながら少年が見たものは、鉄扉を閉めて去るテッドの背中姿だった。
石造りの部屋には、イグレクと無数の稚魚だけが残された。
最初は、今まで無口を貫いた拷問官の長広舌を、その謎を解き明かそうと試みていた。
しかし頭が動き出す前に、この同居魚の振る舞いに思考を乱される。
湯の中を悠々と動き回る彼らにとって、イグレクの下半身など、水中の置石に過ぎないのだろう。
くねらせた体で通り過ぎ、口先で突いた後に、方向を転換する。
膝の裏、足指の間を刺激され、少年は対処できない痛痒感に身をよじる事しか出来なかった。
どの道、考えるだけ無駄であったのだ。
生態について解き明かしたとしても、なす術はない。
心構えをしたとしても、結局それは矜持と一緒に、秤に掛ける時間が必要だ。
その間に湯はぬるまり、水となっていった。
湯気が上らなくなり、白くかすんだ室内の風景はクリアになっていく。
窓は無いが、どこかから隙間風が入り込むのか、最後に残った白い蒸気は吹き散らされた。
水に浸かっていない肩が震えた。
異常に気付いたのはその時だった。
明らかに水の感触ではないものが、足全体に張り付くようにまとわりついている。
見ればグロテスクな色合いの稚魚が、少年の脚が唯一の寄り辺であるかのように、一団群となりその体躯を絡ませているのだ。
忌々しく睨みつけ片足だけでも浮上させようと試みるが、力の入れどころが把握出来ず、目的は達せないまま数滴の水を跳ね上げただけだった。
水、頬に掛かった感覚では、明らかに冷めた水であった。
大して時間は掛からず気温と同じか、またはそれ以下になるだろう。
その時、戦慄が少年の背中を貫いた。
テッドの言葉が思い出される。
「熱帯に棲む」「低温では生きられない」「生存欲求」
嫌な予感を浮べるより早く、視線を下向ける刹那に、水棲の生き物は行動を開始していた。
刻一刻温度を下げる水の中から、暖かな居場所へ潜り込む為に。
双丘の割れ目に群がるおぞましい感覚に、イグレクは身を震わせる。
髭だか触覚だか、細い毛のようなものがいくつも水の流れで蠢き、皮膚を擦る。
細い口先が確かな意思をもって、少年の後孔を開こうと突く。
逃れようともがくが、そもそもそんな道はない。
頭上で空しく鎖が鳴り、浮力に支配された身体は水をわずかに掻くだけだった。
湯だったものは完全にその痕跡を消した。
ぬくもりを発するのはもはや少年の下半身だけとなり、全ての稚魚が欲求に忠実に行動する。
足の裏を背びれで撫で、膝の裏を潜り、そうして大勢の仲間が集合している足の付け根へと辿り着く。
単独は集団に。狭いそこに入り込む隙間を見出せない群れは、イグレクの別の敏感な部分を刺激する。
結果的に彼らは個々の作戦を取る事により、生存の可能性を高めたのだ。
唇を噛み締め、刺激に反応して声を上げるのだけは避ける、少年の試みは今のところは成し遂げれらていた。
だがそれが何になろう。
この生き物は聴覚を持たず、ただ群れならではの技によりイグレクの心も身体も緩ませようとしているだけなのだから。
「………っ、ん!」
強引に侵入を開始した一匹を、腰と筋肉に力を込めて身じろぎする事で振りほどく。
浮力により一瞬浮き上がった身体は、重力に従い舞い戻る。
無数の口先が侵攻を試みる群の真上へと。
「ぃ………ひ、ぁっ………」
再度開始され、身構えが完璧でなかったイグレクは声を上げる。
敏感な箇所への刺激に耐え切れなかった喘ぎ声。
僅かな間ではあったが、それを恥じ、顔を赤らめたのは少年ただ一人であった。
気の緩んだ綻びを、生きるのに懸命な生物は見逃さない。
口先を押し付け、細身な一匹が体全体をくねらせ、淫らな水音と共に潜り込んだ。
「………!」
【生き物/鰻プレイあり】
言葉もなく、衝撃に身を強張らせるイグレク。
狭い穴を押し広げられる痛みはなかったが、代わりに異物の侵入に対する嫌悪感が増した。
刺激により鋭敏にされてしまった感覚は、頭から侵入する生物の細く長いぬるぬるした表皮と、腸壁に身体を摺り寄せるように動き回る一連を、ありありと捉えてしまっていた。
「っう………ぁ、あ」
気持ち悪さに涙が込み上げる。ぼんやりと頭を包み込む白い靄は、少年の抵抗する気力を奪ってしまった。
それは明らかに失策であった。
種の存続を望むのは一匹だけではない。
放心に緩んだイグレクの中へ、二匹目の侵入者となろうと、群れが一斉に後孔を目指した。
侵入済みの痕跡を残したトンネルは多少体を曲げれば、抜けるのは可能そうだったので、稚魚たちはそうした。数匹が、全く同時に。
「ぃっ………ひ、ぁあああ………っ」
大きく見開き、背筋を凍らせたのは一瞬。
あとは無我夢中で振り払おうと、首を振り両足をばたつかせるが、侵入の歯止めにはならない。
並列して押し入る何匹かは、今度は確実に少年に痛みを与える。
すぼまりが強引に開かれ、内襞を口先と髭もどきの触覚がなぶった。
「………い………ぃやっ、や………」
【生き物/鰻プレイあり】
痛みと衝撃で声は枯れた。
絶望と放心で涙も尽き、頬には白い跡だけを残していた。
「ゃ………や、いや………助け………て、っ」
消え入りそうな響き。
跳ねる水も生き抜く生物も冷たい石壁も、イグレク自身も、誰にも届く筈がない、とそう感じていた。
しかし、届いた。
鉄を紙と見紛うかの如くに、過去最大の乱暴な扱いで、扉が開かれた。
重厚な足音が三つ。
主を確認出来ないままに、少年の目の前で巨大な水音が水柱と共に立ち上がる。
視界から垂直の水波が去った後、槽に増えた同居人が、大きな氷柱であったのをイグレクは知った。
痛みも忘れて横を見る。
縁から身を乗り出し、一抱えはある氷を素手で掴み、歯を食いしばりながら水の中にそれを押し込むテッドの姿を。
じわじわと忍び寄る冷たさも、寒水流にやられて腹を見せ、浮かび上がる稚魚も気付かないまま、イグレクは二度瞬く。
………どこで手に入れたんだか、こんな巨大な氷。
………真冬に素手で掴むなど、どこの間抜けだか。
自分では意図しなかったが、多分呆れた眼をしていただろうと、イグレクは思った。
そして身震いする。
氷の体積は減っていないのに、槽内はすでに氷水の温度だった。
ブルブルと全身が揺れ続けて止まらず、唇が青褪めた。
【生き物/鰻プレイあり】
氷の直撃を免れ、押し潰されずに済んだ生き物たちも、間もなくこの急激な温度変化に耐えられず、白い腹を見せ水面に上った。
テッドは右手で氷柱を押し込みつつ、空いた手で死体を回収していく。
ブツブツ呟きが漏れるのは、数を確認しているのだろう。
床の容器にグロテスクな色の死骸が投げ込まれていく。
間もなく槽は氷とイグレクが対峙するだけの場となった。
表面が白い冷気を空中に放出する他は、生物の動きは見えない。
それでもテッドは厳しい表情を崩さなかった。
「二匹、足りん。腹から出せ」
「か、釜茹での後は、か、寒冷責め、とは恐れ入っ」
「黙って、やれ」
寒さに震える少年は、命令に従った。
最初の一つだけは自主的に。
もう一つの「黙れ」は心で命一杯反抗したが、如何せん歯の根の合わない凍えた状態では、悔しいが言うなりになる他ない。
少年は腸内で弱弱しく動く稚魚を出す為、力一杯いきんだ。
苦痛も恥辱も伴う行為であったが、感情は余りそれに捕らわれなかった。
むしろ、日焼けした浅黒い手を白に変え、血管が青く浮き出るまでの低体温に晒し、氷を掴み続けるテッド―――彼こそが最も凍死寸前の状態を呈しているのではないか、そう思いを抱きながら見入っていたから。
664 :
少年Y:2006/10/28(土) 12:55:05 ID:s+HJz10v0
番号ずれました。すみません。
今回ここまでです。
少年タン、お、お、乙…!
よくまぁここまで次々と気色悪いネタを繰り出せるもの(誉め言葉)。
進行が早くて嬉しいです。
テッドが意外な面を見せてるのが気になる…。
続きwktk!
少年タン、乙。
扉も痛い目に遭ってるなw
667 :
追憶 24:2006/10/28(土) 21:42:20 ID:j7891QCH0
4人もの男を乗せて、ベッドがけたたましいほどに軋んでいる。
野上は尻を犯されながら、両手に握った2本のペニスを交互にしゃぶっている。
もう手も縛られていないし、頭を押さえつけられてもいない。
つまり野上は自ら進んで尻と口にペニスをくわえ込んでいるわけだ。結構なことだ。
そのくせ、野上の顔は情けなく歪んで涙で汚れている。みっともないな。
野上の口に、2本のペニスが同時に押し込まれた。いくらなんでも窮屈じゃ…。
俺がそう思う間もなく、男たちが笑いながら悲鳴を上げた。
「いて、いて、歯が当たるんだけどこれ」
「やっぱ無理か。お前、先でいいよ」
一度口が解放されると、野上はウエッと声を上げてえづいた。
首を振り、小さな声で「もうやめてください」と繰り返してぼろぼろ泣いている。
そんなに簡単に泣けるのか。泣くことはお前にとって大した意味を持たないか。
俺は泣かなかった。泣けなかった。泣いたら何もかもが終わりだと思っていた。
一人の男が野上の口にペニスを突っ込み、もう一人は野上に手で扱かせ、
尻を使っている男はラストスパートに入って腰を振りたてる。
ただ見ているだけだと単調な眺めだ。俺が退屈してあくびを連発した時、
野上の上着の上に放り出されていた携帯から、軽快なメロディが聞こえてきた。
見てみると、ディスプレイに着信記録が表示されている。
『朔美』と表示されているそれは、くだんの彼女だろうか?
しばらくすると、今度はメール着信。倫理にもとるとチラリと思ったが、
野上相手に礼節もないものだと肩を竦めて、メールを開いて読んでみた。
『さっき電話したけど、出なかったからメールします。今日来れなかったのは
仕方ないとして、電話の約束まですっぽかされたら、ちょっと寂しいよ。
最近ドタキャンが多いけど、忙しいの? 待ってるから、電話ください。』
ほらな、野上。彼女は別れたいと思ってないみたいだぞ。
お前はいつも、他人の思惑を自分の都合のいいように捻じ曲げて解釈する。
知らない振りでもない。気づかない振りでもない。自分に都合のいい嘘を、
お前は本気で信じ込む。悪意なんてかけらもなしで。
昔のままだな、本当に。
668 :
追憶 25:2006/10/28(土) 21:42:56 ID:j7891QCH0
修学旅行が終わり、一日の休みを挟んで、また学校が始まった。俺はもう、
野上の近くに寄ろうとは思わなかった。あの事件のせいで、顔も見たくなかったと
言うこともある。だがそれ以上に、野上と言う人間が俺には理解できなかった。
俺が避けても、野上は人懐こく笑いながら寄ってきた。口止めするために
俺をレイプまでしておきながら、脅す素振りなんてまったく見せない。
からかうわけでもない。俺さえ忘れれば、まるで何もなかったことに
できそうなくらいだった。俺は本気で野上が怖かった。
怖いと思っていながら、俺はその恐怖に気づかない振りをしていた。
自分から野上に寄らない一方、野上が寄ってきても逃げなかった。
拒んだりせずに、冷たく笑って迎えてみせた。
俺の態度が変わったのを、クラスの連中がどう考えていたのかは知らない。
佐々木たちの嘘を信じ込んで、俺が拗ねていると思い込んでいたかもしれない。
他の級友たちからは何度か、俺の野上に対する態度が悪いと説教された。
俺が野上に対して突っ張るだけで精一杯だった間、野上は何らかの根回しを
していたのだろう。周りには、野上が根気良く俺の心のしこりを取り除こうと
しているように見えていたようだった。そして、ある意味では、実際に
そうだったのかもしれない。野上にとっては、確かにそうだったのだ。
669 :
追憶 26:2006/10/28(土) 21:43:28 ID:j7891QCH0
修学旅行から2週間が過ぎた時、俺は再び野上に組み敷かれる羽目になった。
その時俺と野上は、社会科準備室で、教師に頼まれた資料整理をしていた。
俺と野上が仲がいいと信じている教師の人選だった。野上は快諾し、
怖がっていると思われたくない俺は、同意してしまったのだ。
会議があるから1時間は戻らないと言って教師が出ていってすぐ、野上は
俺を抱きすくめた。その瞬間に俺は総毛立ったが、怯える様子を見せてたまるかと、
必死に冷静さを取り繕って睨みつけた。
「何のつもりだ?」
「いいじゃん。しようぜ」
「いやなこった。お前、まさか俺があれを気に入ったとでも思ってるのか?
もうちょっと修行してから出直すんだな」
せいぜい野上を馬鹿にしてプライドを挫いてやろうと口にした言葉だった。
だが野上はこたえた様子もなく、俺を抱く腕に力を込めた。
「だからさ、その修行の成果を見てもらおうと思ってるわけじゃんか」
「なんだと?」
「あれから2週間。俺も色々研究しました。2日目のあれ、俺ばっかり
気持ち良かったみたいだし。あれで終わったら男が廃ると思ってさ。
期待していいぜ。1日目みたいに気持ち良くさせてやるから」
1泊目のあれを俺が喜んだと、そう言いたいのか。怒りと羞恥で、
不覚にも頬に血が上った。それをどう考えたか、野上は嬉しそうに笑った。
「藤田クン、かぁわいい〜。やっぱ、忘れられない夜になった?
ドーテーなんだろ? 色々と、俺が最初の相手ってわけだよな?」
突き飛ばそうとした瞬間、俺の腕は背中に捩り上げられた。野上はそのまま
俺を壁に押し付けた。
「おい! 離せよ。俺にはその気はないぞ」
「その気にさせてやるって。悪くなかったんだろ? あんなことされて、
俺から逃げ回るかと思ったのに、そうでもないしさ。そのくせ怒った振り
してるじゃん? なんでそんなに俺の気を引きたいわけ?」
耳を疑うと言うのはこういうことか。
670 :
追憶 27:2006/10/28(土) 21:44:05 ID:j7891QCH0
後ろから回された手が俺の股間を愛撫した。もがいたが、腕に激痛が
走るばかりで、逃げられない。叫んだら助けは来るだろうか。泣き喚いて、
俺は野上が怖いのだと、自分で自分を守れないのだと、そう言えば。
野上はきっと何のことかとキョトンとしてみせるだろう。既に広まっている
噂は、野上の味方をするだろう。そして、野上が俺に無理強いするのなら、
なぜ俺は野上から逃げずに側にいたのかと――そう問われるのだろう。
「大人しくしろよ、藤田クン。可愛がってやるだけだって。怖くないよ」
「怖くなんかねーよ、てめえなんざ。思い上がるな」
「はいはい。だから、いいコにしてなって」
俺は抵抗をやめた。
それ以外にどうすれば、守れるものが残ったと言うんだ?
手に入らないものは、欲しくない振りをするのが一番いい。
できないことは、しないだけだと思うのが一番いい。
野上は俺の上着を脱がせ、シャツを肌蹴け、下半身をむき出しにした上で、
机の上に両手をついて尻を突き出すよう命じた。俺が従うと、後ろから密着して
俺の体を撫で回し、自分の腰を押し付けて揺らした。耳元で聞こえる野上の
荒い息遣いに、気持が悪くて鳥肌が立った。
「藤田、そう硬くなんなよ。ちゃんといい思いさせてやるから、な?」
野上が俺の耳に甘ったるい声で囁きかけ、耳朶を舐めた。
早く終われ、早く終われ、俺はただ心の中でそう念じていた。気持ち悪いとか、
腹が立つとか、悔しいとか、そういう感情のすべてを心から切り離した。
野上は約束通りに俺をイカせ、自分も俺の中でイッた。
良かったろと笑う野上に返事をせず、俺は黙って服を整えた。
それから俺は、野上とそういう行為を重ねるようになっていった。
野上には常に付き合っている女がいたが、野上はそれとは別だと俺を誘った。
俺は、都合がつく限りは付き合った。
野上にとってそうであるように、俺にとってもそれはただの気晴らしであり
性欲処理に過ぎないのだと、繰り返し唱えながら。
俺たちが卒業するまでその関係は続き、大学進学で進路が別れるのを機に、
連絡は途絶えた。
671 :
追憶 28:2006/10/28(土) 21:44:39 ID:j7891QCH0
「お前はどうすんの? こいつやんないの?」
シャワーを浴び終わった男が、ベッドの上に転がっている野上を
親指で指しながらきいてきた。
「いらねーよ、そんな奴。自分でやるのが嫌だからお前らに頼んだのに」
大体、俺はよほど気が向いた時でなければ男とは寝ない。野上と同じだ。
俺の呼んだ男は肩を竦めて服を着始めた。まったく親しくはないが、
たまにバーで見かける男。今日もいるだろうと思ってバーに電話をかけて
呼び出した。興が乗ればこのくらいのことは平気ですると評判だ。
その噂は今この目で確認できた。そういう連れがいることもわかった。
もう二度とこんなことを頼むことも、会うこともないだろうが。
「んじゃ俺ら帰るけど。ホントにホテル代も要らないんだな?」
「いいよ。払ってもらう筋合いじゃない」
男たちが帰ると、俺は野上に近寄った。野上はひどい有り様だった。
数えていたわけではないが、野上自身を入れて、1人2回ずつとしたら8回分。
尻の間は言うまでもなく、体中に白い汚濁がこびりついている。
気を失っているのかと思ったが、野上は目を開いていた。
涙で潤んでいる。俺は苦笑した。
「おい、泣くほどのことじゃないだろう。お前がしたがってたから
相手を呼んでやったのに。1人はネコだっただろ? 知らない奴とやるのが
いやだったとか、そんな真面目なこと言うのは無しだぜ」
「……なんで…藤田、なんでだよ…?」
「なんでって、何が」
「とぼけるなよ…。仕返しなのか? お前、俺を恨んでいたのか?」
無邪気な質問に、俺はまた笑ってしまった。
「まさか。大体、昔のことだろ。ろくに覚えてもいないのに」
「だったらどうして…!」
体を起こす野上の惨め極まりない様子に心が浮き立つのを覚えて、
俺はそれを抑え込んだ。そんな風に感じるのは許せなかった。
672 :
追憶 29:2006/10/28(土) 21:45:09 ID:j7891QCH0
「あのな。一言で言うと、俺、ナメられるの嫌いなんだよ。
昔だって、お前が好きだったわけでもないし、ああしたいとも思ってなかった。
ああするのが状況的に一番楽で得だと思ったからそうしてただけだ。
昔はナメられても仕方なかったんだろうけど、今も同じだと思われても困る。
誘われても迷惑だし、しつこくされたくないんだよ」
野上は、理解できないと言う顔で俺を見ている。だが俺は、
それ以上説明する気にもなれなかった。
「さっさとシャワー浴びてこいよ。1人で帰れるのか?
なんなら家まで送ってやるから」
野上の顔が歪む。俺を責めているような、そんな顔だ。
心外な話だ。あいつらが遊び終わるまで待っていてやったのを、
感謝して欲しいくらいなのに。暴走しないようにと、一応は見張っていて
やったんだ。ホテル代だって全額俺が持ってやってもいいと思っている。
冷たく見返す俺に、野上は項垂れた。野上にわかるのは、俺にはもう野上と
寝るつもりがないということだけだろう。
それでいい。勘違いされたままでは断っても意味がないと思うから、
一度で徹底的にわかってもらえるようにしただけのことだ。
それ以上のことはどうでもいい。わからなくていい。
野上にわかるとは思えない。
自分とは違う考え方をする人間が存在していると言う単純な事実を、
野上は一生理解しないだろう。別にそれで構わない。
一生繰り返せばいい。なぜ、どうして、と。
俺もまた、一生繰り返さなければならない問いを、背負い込んでいる。
自分に問うしかない、答がわかっているのに見つけられない、
そんな問いを。
終わり
追憶タン乙!
いい感じの復讐話で楽しかった。
野上の不幸に乾杯!
追憶タンの淡々とした報復、萌えますた。
過去と今のギャップが(・∀・)イイ!!
野上さん、素で天然というかある意味純粋なんだろうな。
少年タン、次がかなり気になるんですけど。(*゚∀゚)=3ハァハァ
お二方、乙です。
追憶タンGJ!
ご都合展開も無く、ただ淡々と進んでいく話も良いモンだね。
萌えとは違うが、楽しめました。
ありがちゅー(´З`)
676 :
資料室:2006/10/29(日) 00:03:41 ID:u7Gvhzfr0
容量そろそろぎりぎりっぽいですが、投下します。
「う……」
祐一の首筋に高崎の熱い息がかかる。
くすぐったい。高崎も興奮しているのだとわかった。
祐一は身じろいだ。棚に押し付けられた体勢が苦しく、肘がしびれて痛かった。
けれども、少しでも身体を動かすと、接合部が滑って中の精液が零れ落ちそうになる。
精液は高崎がいま放ったばかりのものだ。
高崎は祐一の腰を抱え上げると、ずるりと自分のものを引き抜いた。
「ぁ……ああ……っ」
中のものが引き抜かれた途端、祐一の太腿を伝い淫らな液体が滴り落ちた。
そのうちの数滴が、止める間もなく床を汚してしまう。
「駄目だね。零してしまったじゃないか」
「……うぅ…っ」
さんざん指で解された挙句、昂ぶったものをくわえ込まされていたのだから、
すぐに閉じろと言われても無理な話だ。
祐一は必死で後孔を押さえうずくまる。
もう足腰が立たない。
立った姿勢のまま後ろから貫かれ、中での射精まで受け入れなくてはならなかったのだ。
じゅくりと濡れる体の内側の感触に鳥肌が立った。
そこから滴り落ちる白濁液は高崎に蹂躙された証だった。
胸から下腹部にかけてはだけられ、下半身をむき出しにさせられている。
内股も尻もどろどろだった。あまりにも惨めな姿に泣かずにはいられなかった。
だが、それ以上に、まだ祐一の身体はつらい状態のままだった。
677 :
資料室:2006/10/29(日) 00:04:22 ID:ZxacyXhZ0
座り込んだ祐一の股間には、まだ射精を許されない性器が立ち上がっていた。
根元を黒い綴り紐で戒められたまま、絶頂を迎えることができずにいたのだ。
「う……」
さんざん身体を昂ぶらされながら放出できず、そこは張り詰めて痛いほどだった。
一刻も早く解放されたくてたまらなかった。
高崎はもう終えたはずだ。もういいはずだ…。
そう思って、性器を縛っている紐の結び目に指をかけようとした。
「あっ!」
「誰が解いていいと言った?」
高崎に両手首をつかまれ、紐の結び目から引き剥がされた。
「そんな……」
こんなつらい状態はもう限界だった。
祐一はプライドもなにもかなぐり捨てて高崎に懇願した。
「お願いです……紐を解かせて……」
「射精したいのかね」
「……」
「感じてしまって辛いから、出したいんだね?」
「………はい…」
祐一は涙を頬に伝わらせながら頷いた。
「じゃあ、それを自分で言って御覧よ。“射精させてください”って」
「……射精………させて下さい…」
イかせてほしい、などというぼかした言い方のほうがまだマシだった。
恥ずかしさのあまり死にたくなった。
あれほどまでに拒絶していたはずなのに、結局は与えられる責め苦に耐えられなかった。
なんて自分は意志の弱い人間なのだろうか。
678 :
資料室:2006/10/29(日) 00:06:10 ID:ZxacyXhZ0
「乳首を弄られて、後ろに突っ込まれて、中に出されて、射精したくなった?」
「はい…」
「男なのに突っ込まれて感じたのか。変態だね、君は」
くすくすと高崎が笑った。祐一は顔を上げられなかった。
まるで高崎の方が正しいような気さえしてくる。
身体の興奮は隠しようがない。
自分はもしかして、本当に淫乱な変態なのだろうか。
高崎は祐一の身体を引き寄せると、腰に手を回した。
祐一の性器に、高崎の指が伸びる。
「わかっていると思うけど、声は出さないように気をつけなさい」
祐一は口を手で押さえた。
よかった。恥ずかしかったけど、もう解放してもらえる。
ふと、自分は資料を探しにここに来ていたのだということを思い出した。
もう一時間は経ってしまっただろう。早く戻らないと不審に思われる。
「ふぅ……っ」
大きな掌で包み込まれ、祐一の性器がぴくりと跳ねた。
張り詰めたそこは普段より数倍敏感になっているようだ。
高崎は結び目に手をかけ、解こうとした。
…が、ふいにその手を止めたのだ。
「止めた」
679 :
資料室:2006/10/29(日) 00:07:40 ID:ZxacyXhZ0
祐一は耳を疑った。
思わず高崎を振り返ると、涙に濡れた頬を舐め取られた。
「かわいいね…。やっぱり君は泣いている顔が絶品だ。
今のところは許してあげようと思ったけど、もうちょっと遊ぼうか」
「………!」
冗談じゃない。
祐一は必死で高崎の腕を振りほどくと、綴り紐の結び目に指をかけた。
だが、すぐさま高崎に後ろから取り押さえられてしまう。
「お願いします…もう……もう駄目です……」
「聞き分けのない子だなあ。ちょっと静かにしていなさい」
高崎はそういうと、祐一の口に自分のネクタイを押し込んだ。
そうして、祐一のネクタイで祐一の両手首を後ろ手に縛ってしまった。
「う…っ、むぅ………」
身体の自由を奪われ、泣きながら身を捩る祐一を見て、高崎は満足そうに口の端を上げる。
そうしておいて高崎は胸ポケットから携帯電話を取り出した。
「ああ、高崎だ。さっき長島さんのほうから呼び出しがあってね。
そっちに寄ってくるから、一時間くらいかかるな。ああ、あと…」
高崎は祐一をちらりと見下ろすと、意味ありげな笑みを浮かべる。
「一課の柳瀬君。さっき会ったんだけど具合が悪いらしい。
医務室に行くように言っておいたから、しばらく休んでからそっちに戻るって、
杉本に伝えておいてくれ」
それだけ部下に言付けて電話を切った。
「心配しなくていいさ。仕事の事はね…」
そう言ってひざの上に抱え込むようにした祐一の頭をなでた。
680 :
資料室:2006/10/29(日) 00:08:34 ID:ZxacyXhZ0
高崎は祐一を抱え上げあると、資料室の奥にある長机のところまで運び、
その上に祐一を横たえた。
身体の下敷きになった手首が痛い。それに泣いてばかりいたので呼吸も苦しかった。
「やっぱりこれははずそうか。キスも出来ないしね」
高崎は祐一の口からネクタイを抜き取った。
「ぷはっ、はぁっ…はぁっ……、うっ」
祐一は高崎を睨み付けた。
もう我慢できない。
自分がここまで高崎の玩具にならなくてはならない理由がどこにあるのだ。
「最低だ…」
祐一は、最後に残っていた反抗心を振り絞って言い放った。
「訴えたら…勝てないのはあんたじゃないか…男の俺をこんな風に犯って喜んで…
変態なのはあんたじゃないか!」
681 :
資料室:2006/10/29(日) 00:09:06 ID:ZxacyXhZ0
この渾身の一言は高崎に果たして堪えたのだろうか。
ただ高崎は口の端に笑いを浮かべながら、黙って祐一を見つめていた。
面白がっているだけなのだろうか。
祐一は堪らなくなり、顔を横に背けて吐き捨てた。
「ただのエロ中年のくせに…」
「ぐっ…」
なぜか高崎が噴出すのが聞こえた。何が一体面白いのか。
こいつに何を言ってもどうせ無駄だ…悔しくて、祐一は唇を噛んだ。
「ああ、ごめん。そういうつもりじゃ…悪かったよ」
祐一の様子に気が付いたのだろう。高崎は慌てて言いつくろった。
「いや…ちょっとね。エロ中年ってのが笑えてね。いや確かにそうなんだけどさ。
なんでかなぁ……なんでみんなそれを言うかな」
高崎は祐一の額を撫でながら、あやすように口付けてきた。
祐一は抵抗することもなく高崎の舌を受け入れた。
逃れる努力など無駄なのだと思った。もうこんな奴どうでもいい。
いつも通り好きなだけ自分を玩具にしていればいいのだ。
682 :
資料室:2006/10/29(日) 00:09:52 ID:ZxacyXhZ0
「ひっ」
高崎の舌が祐一の乳首を舐めた。
「いっ、痛いっ」
歯で甘噛まれ、祐一は悲鳴を上げた。
刺激でぷくりと勃ち上がり、そこはすっかり敏感になってしまっていた。
「やっぱり腰に来るんだね」
「あう…ひっ、……ん…」
祐一の乳首を舌で、歯で追い詰めてゆく。
刺激を与えられるたび、指摘どおり祐一の腰は跳ね上がる。
そんな自分の身体が情けなかった。
「あ…」
乳首から唇を離すと、高崎は祐一の足首を掴んだ。
仰向けに寝かされた状態で、脚を大きく広げさせられる。
足の間の恥ずかしい部分を曝け出す格好を取らされて、祐一は捩って逃れようとした。
683 :
資料室:2006/10/29(日) 00:11:43 ID:ZxacyXhZ0
「あ……やめろ…もう嫌だ…いやだ…」
「やっぱりね、君はかわいい。普通にしていてもかわいいけどね。
泣いて嫌がっているのが、一番かわいい」
言っていることがむちゃくちゃだった。
これでは、嫌がれば嫌がるほど高崎を喜ばせるだけで、抵抗するだけ本当に無駄だということではないか。
やっぱり到底耐えられそうもなかった。
「…い…」
「何?」
祐一の太腿に舌を這わせようとしていた高崎が、祐一の顔を見た。
顔を寄せてきた高崎に、祐一は最後の気力を込め言った。
「……あんたを訴えて……辞めさせてやりたい…」
高崎はそれを聞いてどう思ったのだろうか。ただ、微笑むと、こう言った。
「いいよ」
今回はこれで終わりです。
資料室タン、待ってたよ!
乙乙乙!
どーにもこーにも憎たらしい室長、相変わらずいい味〜。
大人しくしてても逆らっても楽しまれるのでは、悔しくて気が遠くなるわな。
祐一、ガンガレ!
腐った呪いは、王子さまの口内にも及んでいました。
淫らな音を立て、乳兄弟のおちんちんの先っぽを吸い、残り汁を啜りながら、
王子さまはご子息を勃起させ、お尻の穴を濡らし、一心不乱におしゃぶりをしています。
強引に含まされた陰茎を生臭いと思えないのも、
またとないしゃぶり心地のよさに、舌と唇が虜になるのも、
後から後から溢れ出る涎で口の中が、ご子息や美肛のように濡れるのも、
すべて呪いのせい。
王子さまが、どんなにこの忌まわしい行為をやめたいと願っても、
王子さまの口はおしゃぶりをやめられません。
赤い靴を履いた少女が踊り続けるしかなかったかのように、
王子さまは乳兄弟の陰茎を口に含みつづけるしか無かったのです。
しゃぶればしゃぶるほど、王子さまの体は火照り、王さま譲りの碧い瞳が潤みます。
勃ちっぱなしの敏感なご子息は、撫で擦(さす)られることを望み、
美肛は乳兄弟の陰茎を恋う門と化し、濡れながら
いま、口の中にあるテラテラとした塊が再び押し入ってくるのを、
わくわく、ぬるぬるしながら待っています。
濡れれば濡れるほど、王子さまは感じました。
感じれば感じるほど、王子さまは濡れました。
濡れすぎて熱い。感じすぎて苦しい。気持ちよすぎておかしくなる。
身を灼く羞恥さえ甘美なものに思え、王子さまは乳兄弟の残り汁を吸いながら、
一筋、右頬に透明な涙をつたわせました。
喜怒哀楽。どの感情が極まってもひとは涙を流します。
王子さまの正直な体は、快感に高まり、喜びを感じています。
王子さまの誇り高い心は、快感に流されてゆく己の弱さに、怒りを感じています。
あさましく卑猥な姿を乳兄弟に曝す口惜しさ、哀しさ。
いつもいつも意識してきた乳兄弟に穿たれ、体じゅうを濡らしながら
獣になって共に快を追う楽しさ!!
すべてが涙の理由になりました。
王子さまが泣き濡れながら、口に乳兄弟の陰茎を受けていた頃、
城から摘み出された黒魔術師は、森の奥の蔦(つた)の絡まる屋敷へ帰り着いていました。
帰り着くや否や、黒魔術師は、目深に被っていた鈍色のフード付きローブを脱ぎ捨て、
書庫に直行しました。心惹かれる影のある彫りの深い顔を嶮しく顰め、
分厚い魔術書を捲りながら、黒魔術師は呻きました。
黒魔術師は自身があみだした秘術が、王子さまの股間にまったく効かなかった事が、
悔しくて悔しくて堪りませんでした。
白濁を出し尽くせば、男の猛りは萎えるものです。
精を射することを強いる己の術に、絶対的な自信を持っていた黒魔術師は、
出すものを出しつくせば、一時的に王子さまの股間は萎え、
つかの間でも、王子さまの股間を落ち着かせることができれば、
それなりの褒美にありつけると思っていました。
ところがどうでしょう。
長い長い放出を終えた後、王子さまのご子息はいきり勃ったままでした。
(ありえねー)。
褒美がもらえなかったことよりも、間仕切りに阻まれ楽しみにしていた王子さまの顔が
見られなかったことよりも、自身の術が「北の魔術師」の術にまったく及ばなかった事が、
黒魔術師の眉間に皺を寄せさせていました。
黒魔術師のように「闇の魔術」に傾倒している者で、「北の魔術師」を知らない者が
いるとすれば、その者はもぐりです。胸の病で、一昨年他界したその男は、
独創的な魔術を多くあみだした奇才として知られていました。享年、43歳。
けむり草の葉を巻いてつくった太めの巻き煙草(たばこ)をたいそう好んでいた為、
煙に肺をやられたのだろうと噂される「あこがれの魔術師」の「早過ぎる死」を、
黒魔術師は惜しく思っていました。
王子さまの股間を診たとき、黒魔術師の目は「そこ」に敬愛している「北の魔術師」が
施したとしか思えない、常人の斜め上をいく滑稽な呪(まじな)いの層を見ました。
勃ちっぱなし。濡れっぱなし。感じっぱなし。発動は王子さま二十歳のころ。
無理に呪(のろ)いを解こうとすれば、股間が爆ぜるよう仕掛けられた罠などなど。
美肛と口内にかけられた呪(のろ)いこそ、見抜けませんでしたが
黒魔術師は、幾重にもかさなり絡み合っている、独創性あふれる高度な術に気付き、
見惚れながら、「挑みたい!」と強く思いました。
「つかの間」でもあの「北の魔術師」の術を押さえ込む。
黒魔術師は意気込み、(王子さまの股間を慮り、あえて実験的なことを避け、)
己があみだした秘術……「吐精の術」を選びました。
(これならば、確実に王子の股間を落ち着かせられる)。
自身の術により、王子さまが「大海原を悠々と泳ぐ白鯨」のように、
高く勢いよく潮を噴き上げたとき、黒魔術師は小さく右の拳を握りました。
自分の術があの「北の魔術師」の呪いの上から王子さまのご子息に効いたことが、
本当に本当に嬉しかったのです。けれども、放出を終えても王子さまのご子息は
きりりと勃ったままでした。
「勃ちっぱなしの術」に「吐精の術」が玉砕し、黒魔術師は打ちのめされました。
その上、王子さまが激しい吐精に酷く苦しまれた為、城の者どもに白い目で見られ、
追い払われるように森の奥の蔦の絡まる屋敷へ帰るはめになったのです。
黒魔術師は馬を走らせながら、己の矜持にかけ
「濡れっぱなし。感じっぱなし」はともかく、「勃ちっぱなしの術」だけは、
解いてみせると自身に固く誓いました。
そういうわけで、黒魔術師は屋敷に帰り着くなり書庫に飛び込み、
片っ端から魔術書を捲りました。けれども、どの魔術書にも
「勃ちっぱなしの術」を解く糸口さえ見つけることができません。
(これは、王子のためではなく俺のため)。
「北の魔術師」に少しでも勝ちたい一心で、黒魔術師はまるで自慰をするように、
魔術書を読みあさりました。
夜明け前、黒魔術師は眠気覚ましのどくだみ茶を飲みながら、ある術を思い出しました。
「死者との対話」
鏡を媒体に冥界の死者と直に話をすることができる難度の高いそれを、
黒魔術師はつい最近、修得したばかりでした。
誇り高い黒魔術師は、「北の魔術師」本人にこの難題の解を訊こうとは思いませんでしたが、
何故このような滑稽な呪いを王子さまにかけたのかは、聞いておきたいと思ったのです。
そうしてそこにこそ、この呪いを解く鍵が隠されているような気がしました。
黒魔術師は、凝った額縁を持つ美々しい壁鏡に向かい呪文を詠唱しました。
鏡が波打ち、ぼんやりと浮かび上がった人影が明確な像を結ぶその前に、
鏡から漂ってきた噎せ返るような煙草の匂いと、
もくもくと広がる白煙に、黒魔術師(以下、黒と略す)は、
「北の魔術師」の呼び出しに成功したことを悟りました。
太い葉巻を吸いながら「北の魔術師」は面倒くさそうに黒を見ました。
黒は「北の魔術師」に、「貴方さまが掛けたとしか思えない呪いで、
この国の王子が苦しんでいる」旨を伝え、「北の魔術師」に問いかけました。
「何故(なにゆえ)、あのような一風変わった呪(のろ)いを掛けられたのですか?」
「呪い!?」
まじめな顔で問うた黒に、「北の魔術師」は陰険そうな目をまるく見開き、
一拍後、腹を抱えて笑い出しました。
「あれは、呪いじゃねえよ。陛下のガキへの贈り物だったんだがな〜」
お子に恵まれなかった王さまとお后さまに、それはそれは美しい王子さまが産まれたとき、
国中の魔術師が「出生の祝い」に呼ばれました。
けれども、「いまは王子さまにお仕えしている侍従」と陛下をメグって、
たいそう醜い争いを繰り広げ、恋に破れた「北の魔術師」だけは招かれませんでした。
「俺様と侍従と陛下の濃ゆい話を聞かせてやろうか?」
首を横に振った黒に、鏡の中から煙りを吹きかけながらフッと自嘲すると、
「北の魔術師」は話を続けました。
「祝いには呼ばれなかったが、恋した『同性好きの男』が、
『異性(おきさき)さん』と頑張って、やっとこさつくったガキだぜ。
可愛いさ。祝福のひとつやふたつしてやりたくなるのが人情だろうが。
何にしようかさんざん迷って『大人になったら具合のいい体になりますように』って、
唱えてやったんだよ。どうせネコの子はネコだ。
二十歳にもなれば体を繋げてえ男のひとりやふたりできるだろ?
『呪い』だなんて哀しいこと云うなよな……。
侍従の野郎は口を開けば、俺様のことを『粘着だ』、『陰湿だ』だの云ってたが、
俺様の処世訓は『正直清浄礼和質朴(しょうじきしょうじょうれいわしつぼく)』だぜ?
ちんぽなんざ、勃ってなんぼなんだよ。見た目のもっこり感が気になるなら、
仕立て屋呼んで、膨らみが目立たない服をつくらせればいい。
頭痛と気だるさを演出する熱。遊び女(あそびめ)みたく濡れる穴。
ちんぽを好む口。おまけも、たくさんつけてやったんだがなぁ……。
あのガキは悦んでねえのかよ?」
「さあ……?」
黒は軽い目眩を覚えながらも、人として「北の魔術師」の心遣いを
無にしてはいけないと思い、王子さまの股間に関わることをやめました。
めでたしめでたし
ちょww これでめでたしww
王子さま、生き延びられるのか!?
メルヘンタン乙!
ということで新スレ行って来ます。特に変更は無い?
「美肛は乳兄弟の陰茎を恋う門と化し」ww
「ネコの子はネコ」www
笑ったよ。乙でした。
斜め上をいく北の魔術師、最高だw
工エエェェ(´д`)ェェエエ工工…メルヘンタンこれで終わり!?
ぅをい!!!w
資料室タン反抗ktkr
乙でした。
今スレも素晴らしかった!
自分も同じく工エエェェ(´д`)ェェエエ工工ってなった
北の魔術師素敵すぎw
個人的にすごく好きな終わり方でした
メルヘンたん乙でした!