かまいたちの夜で801

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904風と木の名無しさん:2007/09/25(火) 18:22:21 ID:kUH5y2HN0
>>900
これはお見事
905風と木の名無しさん:2007/09/26(水) 00:38:54 ID:EviUThxV0
>>900
これはよすよす
906風と木の名無しさん:2007/09/26(水) 03:30:06 ID:bxoQiUO50
>>900
神降臨ktkr
小林さんスキーとしてはオチがたまらない
907風と木の名無しさん:2007/10/02(火) 05:00:02 ID:XklODsOb0
3はもっと麗子さんに活躍して欲しかった。
もっと、透の尻を触ったり、
美樹本さんの尻を触ったり、
俊夫さんの尻を触ったり、
香山さんの頭を撫でたりして。
908風と木の名無しさん:2007/10/02(火) 20:24:14 ID:hPXYd1g30
ついでに香山さんの腹たぷたぷもお願い>麗子さん
909風と木の名無しさん:2007/10/03(水) 01:20:51 ID:aT/nbsTp0
麗子さんって何気にSの匂いがする。
オーナーが生きていたらさぞかし濃い関係になれたのではないだろうか。
910風と木の名無しさん:2007/10/10(水) 02:28:00 ID:mPdx6DuO0
なかなか埋まらないね。
やはりかまいたちだけじゃ厳しいようで。
という事は、次に立てるのなら

A:サウンドノベル総合スレ
B:ADV総合スレ
911風と木の名無しさん:2007/10/14(日) 04:27:03 ID:M0F2BqNM0
>B に一票
サウンドノベルだけだと過疎りそうな気がする
912風と木の名無しさん:2007/10/14(日) 17:30:20 ID:HGW8GqeL0
「サウンドノベル」って、チュンソフトの登録商標だと知ってる人と、
テキストアドベンチャー全般の事だと思ってる人といるから、
ややこしいよねw
913風と木の名無しさん:2007/10/14(日) 18:30:28 ID:QJLsgCg90
>「サウンドノベル」って、チュンソフトの登録商標
へぇ〜、ふ〜ん。

いま話題に上がっている「サウンドノベル」はテキスト形式一式でいいんだよね?
914風と木の名無しさん:2007/10/14(日) 23:00:38 ID:v6brBw3g0
「サウンドノベル」でググってみて(ウィキとか)くださいな。
例えば「セ■テープ」って名称は誰でも言うけど、
本来はニチバソって会社製のものしか示さないの。
だからホントは他社製のは「セ■ハン粘着テープ」って言うべきなの。
でもさー、誰もそんな事気にしてないじゃん。
「サウンドノベル」もそんな感じだと思うんだよね。
とはいえ「サウンドノベル総合スレ」ってスレタイにすると
「最終電車はヴィヂットだから(チュソじゃないから)
サウンドノベルじゃないのでは?」とかって事になるのでは…
なんてちょっと思っただけ。

何が言いたいかというと、
無駄話でちょっとずつ埋めてるだけなんだけどね。
クドくてすまん。
915風と木の名無しさん:2007/10/15(月) 17:33:18 ID:7+Q5jTTh0
じゃあこんなスレタイとか

[学怖]サウンドノベルなどノベルゲーの801[かまいたち]

学怖は普通にスレあるのかな?
ホラゲスレはあるよね
916風と木の名無しさん:2007/10/17(水) 15:46:58 ID:YQOtutby0
サウンドノベルって単語が生まれるまでは、そういう文字だけの
ゲームはテキストアドベンチャーだったからなあ。
うっかりかまいたちにも使いそうになるロートルな俺orz
917風と木の名無しさん:2007/10/18(木) 23:58:40 ID:ykUVs6GQ0
【サウンドノベル】ノベル系テキストアドベンチャー総合801スレ

ノベル系はいらんかな
918風と木の名無しさん:2007/10/20(土) 14:30:18 ID:lAOIL/ZU0
【サウンドノベル】ADVゲーム総合【テキスト系】
言葉の意味はよく考えずに作った
そんで>>1に注意書きしとけばいんじゃね?
919風と木の名無しさん:2007/10/20(土) 19:24:50 ID:FrjL5WC80
今思ったんだけど、板内検索で探す人もいるんだね。
じゃあ「サウンドノベル」は必要かも。
俺頭いいな!
と思ったら>>915>>917>>918もちゃんと入ってたw
どれにも決められんな。
まだ80レス残ってるからじっくり議論?すればいいけど。
9200/21:2007/10/24(水) 10:17:33 ID:7UBOrzgv0
流れぶった切りスマソ
今更萌えが高じてかま3俊夫×透びしょぬれED妄想が書き上がってしまいました。
やたら長いのでビデオ棚スレに書くべきなんだけど過疎ってるんで単独スレのうちに
こっちに投下ですすいません。

No.35「僕は真理を殺した」No.59「その顔は」の俊夫死なないパラレルな感じです。
俊夫視点で、一階水没→停電→透の真理刺殺→物置部屋で俊夫の背後に犯人が…
の部分から始まります。長い上にあんまりエロくないです。
鬱注意。犯人バレ注意。矛盾や勘違い・細部の見落とし了承くだしあ
9211/21:2007/10/24(水) 10:18:45 ID:7UBOrzgv0

ライトを向けた瞬間、何かを大きく振りかぶる人影が目に飛び込んできた。
その光景の意味を理解するより早く、俺の足は床を蹴った。
どすっ。
弾丸のように飛び出した俺のタックルをまともに腹に受けたその人影は、
もんどりうって後ろに倒れる。
――柔らかい?
からん。
ふと感じた違和感を、何かが落下する音が打ち消す。
軽い金属音を立てて転がったそれを、俺は手にした。
鎌だ。
この物置部屋の窓に取り付けられていた風切り鎌に違いない。
前方からごそりと音がする。
暗闇が、恐怖が、俺の手を持ち上げてゆく。
一秒にも満たない一瞬のことだったのだろう。
だが俺には、自分の挙動の一つ一つ全てにスローモーションがかかったかのように
ゆっくりと感じられた。
「うおぉぉぉっ」
絶叫と共に鎌を振り下ろす。
風を切る音。
ずちゅっ。
嫌な手ごたえがあった。
鋭い鎌が肉に深く沈みこむ感触。
鎌を抜く反動で後ろによろめいた俺は、ペンライトで相手を照らした。
薄汚れたグレーのトレンチコート。
やはり―――。
コートの男はすでに動かなくなっている。
胸に刺さった鎌の一撃で、絶命したのだろう。
ライトをつい、と上に泳がせたその先に――俺は信じられない顔を見つけた。
9222/21:2007/10/24(水) 10:19:55 ID:7UBOrzgv0
「啓子ちゃん!!」
胸と口からどす黒い血を流して目を剥いているその人物は、まぎれもなく
啓子ちゃんだ。
「何故……何故なんだ……?どうして春子さんを………。
コートの男は君だったのか――啓子ちゃん?」
彼女は答えることはなかった。
カーテンのはためく音がして、ぬるい風がびゅうと部屋の中を吹きわたる。
これで…終わったのか?
これでもう、犯人の影に怯えなくてすむのか?
俺はしばらく呆然と啓子ちゃんを見下ろしていたが、透くんたちのことを
思い出してはっとした。
彼らは無事なんだろうか?
もしも啓子ちゃんが犯人でなかったとしたら――?
急に誰かの気配をドアの向うに感じた気がした。
俺は寒気を覚え、物置部屋を飛び出した。
「透くん!真理ちゃん!無事か?!」
声を上げ、廊下を慎重に照らしながら進むと、真理ちゃんの背中が見えた。
透くんがその身体をきつく抱きしめている。
「良かった…」
だが何かがおかしい。
彼女の背中はぴくりとも動いていないように見える。
「真理ちゃん…?」
恐ろしい予感にとらわれ、今度は透くんをライトで照らし出す。
彼は震えていた。
生きている――。
「透くん」
ほっとして声をかけると、彼は顔をゆっくりと上げた。
泣いている。
9233/21:2007/10/24(水) 10:21:02 ID:7UBOrzgv0
透くんの腕からずるりと真理ちゃんが崩れ落ちた。
まるで物体のように転がった彼女の仰向けの腹を見て、俺は絶句した。
何てことだ。
そうか、あのとき。
あのとき…物置部屋から出てきた彼女を、透くんは犯人だと思って…。
――ナイフなんて、持たせるべきじゃなかった。
俺は激しい後悔にとらわれた。
勢いをつけて突進した彼のナイフは、真理ちゃんの、
彼の一番愛しい人の腹に深々と突き刺さったのだ。
何てことだ…。
虚ろに涙を流す彼の目は、俺を通り越してはるか向こうを見ているようだった。
このままでは…彼の心は壊れてしまうだろう。
最も大切な人間を、自らの刃で刺し、殺めてしまう。
それはどんな絶望だろうか。
思いも及ばない程の彼の悲しみに同情する気持ちと同時に、
このまま彼に壊れられては困るという気持ちもあった。
皆、死んだ。
俺と透くん以外の全員が死んでしまったのだ。
彼には証人になってもらわなければならない。
俺がこれらの殺人の犯人ではないということ、
犯人が啓子ちゃんであったこと、
ここで起きた出来事全てを説明するための証人に。
9244/21:2007/10/24(水) 10:21:51 ID:7UBOrzgv0
俺は完全に力の抜けた透くんの身体に手をまわし立たせ、
肩を抱いて春子さんの部屋まで連れて行く。
彼は抵抗することもなく、のろのろと歩いた。
「…………」
声がかけられない。
こんな状態の彼に、何を言ってやれるというのか。
ドアを開け、誰も潜んでいないことを一応確認してから中に入り、
透くんをベッドに寝かせる。
鍵を掛けろと言っても無駄だろう。
俺は部屋を出た。
廊下に横たわった真理ちゃんの遺体を、苦い思いで見つめる。
死後硬直が進む前に、これを除いておかなくてはいけない――。
俺は口にライトをくわえ、ナイフを彼女の腹から抜いた。
瞬間、じわっと血が大きくにじんだが、勢いよく出血することもなく、
じくじくとシャツに広がった血はやがて止まった。
これは、死体なのだ――。
俺は自分に強く言いきかせる。
そうしなければ次の行動に移ることはできないだろうから。
ずず……ずず……ずず………。
真理ちゃんの遺体の肩を持って廊下を引きずっていく。
ロビーに出た。
階段の下を見ると、もう最上段近くまで水が来ている。
流れはもうゆるやかになっているが、二階も浸水するんじゃないかという
考えがよぎり、背筋を寒くする。
俺は真理ちゃんの体を抱き上げた。
悲しいほどに重かった。
9255/21:2007/10/24(水) 10:23:42 ID:7UBOrzgv0
階段の上に立ち、意を決して真理ちゃんの体を渦巻く水の中に投げる。
小さい水柱が立ち、彼女は見えなくなった。
食堂へのゆるやかな流れに乗ったか、沈んだか。
痛ましい思いだった。
できることならこんな冷たい水の中に放りこまずに、助けが来るまで
部屋に寝かせて、きちんと弔ってやりたかった。
しかしそれはできない。
透くんに刺された腹の傷から血を流す真理ちゃんの遺体を、
彼の前に置いておくわけにはいかない。
水が、うやむやにしてくれることを祈った。
まるで自分が犯罪の偽装工作をしているようで、嫌な気分になる。

廊下を引き返し、物置部屋の前まで来る。
中の惨状を思い起こし息苦しさを覚えた瞬間、ふと思った。
啓子ちゃんは香山さんを殺すことができただろうか…?
財宝探しから戻ってきた透くんと啓子ちゃんを二階のロビーに残し、
管理人室へ向かった俺の目撃したコートの男…。
あれは啓子ちゃんではありえない。
ぞっとした。
犯人はまだこの館に隠れているのだろうか?
しかし、啓子ちゃんの着ていたコート…あれは一体どういう意味を持つのだろう。
…分からない。
とにかく俺は生き延び、帰らなくてはならない。
みどりのために。
9266/21:2007/10/24(水) 10:24:21 ID:7UBOrzgv0
俺はナイフをかまえ、そっとドアを開けて中をうかがう。
ペンライトで照らしてみるが、部屋の中には生きた人間の気配は感じられない。
重苦しい静寂だけが返ってくる。
春子さんと啓子ちゃんの死体に足を取られないよう慎重に歩を進め、
部屋の奥を目指す。
一階で水に呑まれた真理ちゃんは、この物置部屋から出てきた。
何か、仕掛けがあるはずだ…。
奥の方をライトで照らすと、戸棚がずらされた場所に開いた空間から、
水の音が聞こえてくる。
これだ。
この下は…たしか食堂。
そうか、暖炉だ。
これで二階にいたはずの美樹本の死体が食堂に現れたわけが分かった。
――それもこれも、啓子ちゃんがしたっていうのか。
俺は春子さんと啓子ちゃんの死体を見つめた。

啓子ちゃんのコートのポケットを探る。
春子さんの部屋―3号室―の鍵と、マスターキーが出てきた。
春子さんの部屋の鍵を盗ったのだろうか。
殺害した後に。
あるいは鍵を奪うために殺したのか?
一体、何のために――?
………。
もう考える気力は残っていなかった。
ひどく疲れていた。
俺は2つの鍵をズボンのポケットに入れると、物置部屋を後にした。
9277/21:2007/10/24(水) 10:25:01 ID:7UBOrzgv0
廊下を進むと、3号室の前に人影を見つけた。
心臓が跳ね上がる。
かざしたペンライトの光に照らし出されたその顔は――
透くんだった。
涙はもう乾いている。
「透くん」
「俊夫さん……。真理が、真理がいないんです」
ぎくっとした。
同時に悲しみが広がる。
彼の声には事態に対する焦りは全く感じられず、その言葉は無感動に、
ひどく虚ろに響いた。
…彼は、覚えていないのだろうか?
強烈な絶望が、彼から悲しい記憶を奪い去ってしまったというのだろうか?
それとも単に、彼女の遺体が無いことを言っているのだろうか。
「真理はどこに……」
「覚えていないのか、透くん。
彼女は一階で濁流に呑まれて…」
彼の目がゆっくりと、俺の目に焦点を合わせる。
俺は重ねて言う。
「俺は辛うじて君だけ助けることができたが、真理ちゃんは……。
…すまない」
心からの思いだった。
あのとき、二人とも助けられていたら。
あるいは、透くんの手を離してやれば良かったのかもしれない。
そうすれば彼は、こんな後悔をすることはなかったはずだ。
例え彼らが二人とも溺れ死ぬことになったとしても。
9288/21:2007/10/24(水) 10:25:32 ID:7UBOrzgv0
俺はふいにみどりのことを思い出していた。
みどりの拭い去ることのできない苦しみを目にするうちに、
「あのとき殺されていたほうが彼女は幸せだったんじゃないか」
と思うようになっていったことを。
しかしみどりには俺がいる。
どんなに重荷に感じられようとも、彼女を救うつもりでいる俺が。
しかし透くんには…透くんは……。
はっと我に返ると、透くんはふらふらとロビーの方へ歩き出していた。
「透くん!」
あわてて駆け出し、両肩をつかんで止める。
「真理…」
「真理ちゃんはいない!もう無理だ!」
「………」
「天井まで水が来ているし、もう…もう30分近く経つ。
生きていられるわけがない!」
俺はあえてはっきりと言った。
「彼女はもう――いない。
溺れて……死んだんだ!!」
「………………」
透くんは激しく震えだした。
俺は肩をつかんでいた手を離し、彼の前にまわる。
再びその目に涙があふれていた。
これでいい。
これで、彼の後悔は一つで済む。
9299/21:2007/10/24(水) 10:26:10 ID:7UBOrzgv0
彼は、悪くない。
みどりのときも何度も重ねた自問自答だ。
みどりは悪くない、と何度も俺は言った。
彼女は首を振る。
人を轢いてしまったことは事実で、責任は自分にあるのだ、と。
それでも俺は探しに来てしまった。
彼女の後悔を、罪悪感を軽くする何かを。
結局は見つからなかったのだが――。
透くんは償うべきなのだろうか。
多くの死の因果のようにめぐり合わせた不幸から、
自分の恋人を刺し殺してしまった罪を。
背負わなければならないのだろうか。
みどりのように。
…俺にはわからない。
その答えの見つからない今、できることはひとつだ。
彼を救うこと。
忘れてしまえばいい。
あのとき、真理ちゃんを刺していたのは、俺だったかもしれないのだ。
そうだったらどんなに良かったか――。
俺が後悔しようと、透くんが償おうと、それで救われる人間は誰もいない。
だから――忘れてしまえばいい。

俺はいつのまにか、透くんを抱きしめていた。
肩にうずめた頭が震えるので、腕にさらに力を込め、きつく抱く。
彼はしがみつくように俺の背中に腕をまわした。
それでやっとバランスを取ろうとしているみたいに。
93010/21:2007/10/24(水) 10:26:41 ID:7UBOrzgv0
真相を暴こうという意気込みも、危機を乗り越えるための気力も失せていた。
ただ疲れていた。
俺は透くんを春子さんの部屋へと促し、再びベッドに横たわらせた。
鍵を掛け、ベッドの傍らに座り込む。
張りつめていた緊張が解けたためか、すぐに眠くなる。
透くんの泣きはらした目も、徐々にまぶたが下りてきて、
ついには目を閉じてしまう。
「マスターキーとこの部屋の鍵はここにあるから、大丈夫だ。
もし香山さんを殺した犯人が他にいたとしても――」
「朝になったら物置部屋から泳いで出て、防波壁からロープを使って
外に出よう。丘の上なら携帯がつながるから、警察に連絡するんだ」
「一階が水没してて地下室の切り替えバルブが動かせないから、
排水もできないしな…」
俺は自ら確認するかのように、一人ボソボソと話しつづけた。
スースーと透くんの寝息が聞こえる。
何だかホッとして口をつぐむと、眠気が一斉に襲ってきた。
今は眠ろう。
朝になってこれが悪い夢じゃないと分かっても、大丈夫だ。
俺は一人じゃない。
透くんを救うんだ。
使命感だけが俺を支えていた。
この悪夢に押しつぶされないように――。
93111/21:2007/10/24(水) 10:27:14 ID:7UBOrzgv0
朝になった。
俺は透くんに事の経過を話し、犯人の正体を告げた。
隠し通路のトリックについては謎のままにしておく。
真理ちゃんがあそこから濡れねずみになって出てきたことを、
思い出させたくない。
中庭は見事に水没しており、淡水魚が泳いでいるのを見ることができる。
俺たちはロープを使い、防波壁から外に出た。
俺が丘の上から携帯で警察に連絡を取り状況を説明する間、
透くんは島の内湾に目を馳せていた。
朝からふさぎ込んではいるものの、毅然とした態度を崩さない彼に
不安を覚える。
何か――変なことを考えているんじゃないだろうな。
その横顔には何の表情も見えない。
港で警察の船を待つ間、透くんの見ていない隙に、
俺は折りたたみナイフを海の深みに落とした。
こんなものは無いほうがいい。

警察が到着し、捜査が始まった。
驚いたのは、可奈子ちゃんが生きていたことだ。
首を吊ったかのように見えたが、胸にロープをまわしてあったのだ。
長い間天井からぶら下がっていたため、かなり衰弱していたが、
彼女は生きていた。
啓子ちゃんの仕業に違いない。
そうして自分も同じ方法を使い自殺したかのように思わせておいて、
自由に動きまわり、春子さんを…。
しかし、何故可奈子ちゃんだけを生かしておいたのだ?
その謎は永遠に解けない。
93212/21:2007/10/24(水) 10:27:51 ID:7UBOrzgv0
可奈子ちゃんは状況を知ると、限界まで達していた何かがぷつりと切れて
しまったのか、わけの分からないことを叫び続けた後、
何もしゃべらなくなってしまった。
誰とも目を合わせようとせず、心配して覗き込んだその瞳は、
もうまともなものではなくなっていた。
美樹本を殺されただけじゃない。
親友の啓子ちゃんも亡くなっており、しかも犯人だったのだ。
もともと弱っていた可奈子ちゃんがおかしくなっても無理はない。
混乱をきたした彼女が、俺や透くんが犯人だなどと言い出すようなことが
なかったのは幸いだった。
ただでさえ俺たちは疑われていたからだ。
しかし透くんの証言のおかげで、鎌についた俺の指紋は正当防衛の方向で
片付きそうだ。
推理力を閃かせているときと同じ顔をして、この島で起きたことを
理路整然と警察に話す彼の横顔を盗み見て、
安心と不安がないまぜになったような気分になる。
彼は本当にもう――大丈夫なんだろうか。

驚くことはもうひとつあった。
村上つとむの死体が発見されたのだ。
彼は一階の食堂で見つかった。首を絞められた跡があった。
誰に殺され、どこから流れてきたのだろうか?
香山さんを殺したコートの男は彼に違いない。
ではそのコートを着ていた啓子ちゃんが、村上を殺したのだろうか…。
93313/21:2007/10/24(水) 10:28:22 ID:7UBOrzgv0
また食堂からは、他にも遺体が見つかっていた。
美樹本と、真理ちゃんだ――。
二人とも同じような死に方をしていたので、警察はこの二つの殺人を
一緒くたにして扱った。
二人の死体について色々と訊かれたが、俺はわからないと言い張った。
実際、美樹本は村上と同じように首を絞められていたらしく、では何故鎌が
胸に刺さっていたのか――俺にはわからないのだ。
透くんも、わからないと答えた。
彼は遺体が搬送されるまでずっと、真理ちゃんのそばにひざまづいていた。


12月。
俺は信州にいる。
透くんの経営するシュプールを手伝うためだ。
もうシュプールはたたんでしまった方がいいと方々から言われ、
俺もそう言ったが、彼の決心は固かった。
看板シェフのレイコさんと俺と透くんとで、オーナーや今日子さん、
そして真理ちゃんの遺志を継ぐことになったのだ。
事件のことは、刑務所の中のみどりの耳にも伝わった。
彼女はこの悲しすぎるきっかけから、俺の面会を受けてくれるようになった。
俺はみどりを問いただした。
「真理ちゃんは俺たちの離婚について知っていた。
何か、彼女に相談していたんだろ?」
「………」
「彼女は俺をひどく心配していて…ずっと何か言いたそうだった。
お願いだみどり、教えてくれ。何を隠してるんだ?
彼女に何を言ったんだ?真理ちゃんが俺に伝えられなかったことを、
――話してくれ!!」
93414/21:2007/10/24(水) 10:28:58 ID:7UBOrzgv0
みどりはそれでもためらいながら、獄中で子供を産んだことを話してくれた。
俺に…子供が……。
俺とみどりの絆は辛うじてつなぎとめられた。
真理ちゃんのおかげだ、そう思うと涙があふれて止まらなかった。

シュプールのシェフ、姫宮麗子さんはいわゆるオカマだった。
完全なホモセクシュアルらしく、最初は警戒していた俺も、その明るく
頼りがいのある人柄を知って打ちとけていった。
彼…いや彼女なら信頼できる。
きっと透くんを支えてくれるだろう。
もちろん、俺も彼の力になりたい。
みどりが出所したら、夫婦で正式に雇ってもらおうと思っている。
今は部屋を与えてもらい、飯を食わせてもらえるだけでいい。
どうせ他にやりたいことなどないのだ。
透くんは、とても頑張っている。
大学は辞めてしまった。しかし、以前の彼からは考えられない程に
しっかりしてきたようだ。
特に今のような繁忙期は、朝から夜更けまで経営者として、
スタッフの少なさを補うために走りまわっている。
だがどんなに目まぐるしい忙しさの中でも、俺は彼に料理はさせない。
――刃物に近づけたくないのだ。
日中の、以前と変わらず明るく、キビキビと働く彼を見ただけでは、
その心の内にある苦悩や空虚を見つけることはできないだろう。
彼は夜が更けるにつれて、その顔から表情を失くしてゆくのだから。
93515/21:2007/10/24(水) 10:29:40 ID:7UBOrzgv0
夜になった。
夜食とも言えるような時間になってしまった夕食を終え、
俺は、元々はオーナーたち夫婦の居間だった部屋でテレビを見ている。
透くんも隣に座り、流れているバラエティ番組を見るともなしに見ている。
その虚ろに開いた目に、テレビの映像が明るく映りこんでいる。
レイコさんはスタッフルームでもう寝てしまったのだろう。
耳障りないびきが遠くかすかに聞こえる。
昼間は軽口を叩いていた透くんも、夜になるとじっと押し黙ってしまう。
俺もそんなに口数の多いほうではないので、間をもたせるために
いつもテレビをつけている。
時々、思う。
俺はシュプールにいない方がいいんじゃないか、と。
俺といることで、あの館での夜を思い出してしまうんじゃないか。
事件のことはめったに話さない。
俺も、透くんも、三日月島のことを話題に出すことはない。
しかし、彼は――。

  ある日の昼食後、透くんが倒れた。
  表の対応をレイコさんに任せ、透くんを寝室に連れて行くと、
  どうしても起きるという。
  寝てないと駄目だと言うと、
  『真理が帰ってくるまでシュプールを立派に切り盛りしなくちゃ
  いけませんからね、寝てなんかいられませんよ』
  と真顔で言う。
93616/21:2007/10/24(水) 10:30:48 ID:7UBOrzgv0
  またある晩、俺がスタッフルームでうとうとしていると、
  物音が聞こえてくる。
  ゴッゴッッとかすかに響くその音は二階からじゃない。
  オーナーの寝室に行くと、透くんが壁を殴りつづけている。
  何度も、何度も。
  右のこぶしは血まみれだ。
  訊くと、『眠れないから』だと言う。
  手当てを施し、彼が眠るまでいると、やがて小さく寝息を立てた。
  数日様子を見てみたが、彼はどうやら一人では眠れないらしく、
  一晩中起きているようなのだ。
  俺が『悩み事があるなら相談してほしい』と切り出すと、
  あいまいな笑顔を浮かべて首をかしげた。

「俊夫さん」
はっと現実に引き戻される。
「あ、ああ…何だい」
「真理は、もう寝ましたか」
――――――。
テレビの中でどっと爆笑が起きる。
「ああ、もう眠ったよ。俺たちももう寝ようか」
「そうですね」
どこか寂しげな表情に、胸がしめつけられる。
――恋人が先に眠ってしまって少し淋しい。
――もうちょっとだけ話していたかったんだけど。
俺は彼のそんな顔を見ていられず目をそらした。
俺たちはオーナー夫婦の寝室へ向かい、扉を閉めた。
93717/21:2007/10/24(水) 10:38:27 ID:7UBOrzgv0
寝室の外では、吹雪いてこそいないが強く風の吹く音がしている。
この部屋は幸い、二階の客室とは内装が異なっている。
三年前の、真理ちゃんとの幸せなスキー旅行を思い出さずに済む。
俺は、ダブルベッドにもぐりこんだ透くんの隣に、布団の上から横になった。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
………………。
30分ほどが経った。
透くんが眠ったらスタッフルームに戻ろうと目論んでいたが、
彼はまだ起きていて、じっと天井の一点を見つめている。
俺のほうが先に眠ってしまいそうだなと思っていると、
――がたん。
びゅううぅぅぅぅ。
吹き荒れる風が窓を揺らした。
透くんが体をこわばらせる。
何かを思い出したんだろうか。
一年前の夏の暴風の日、かまいたちの夜を……。
「透くん」
声をかけるとハッと今気づいたようにこちらに顔を向け、
弱々しい笑顔を見せる。
「良かった…俊夫さん、いたんですね。風の音がすごいから、
怖くて」
93818/21:2007/10/24(水) 10:39:10 ID:7UBOrzgv0
「大丈夫だよ」
俺はそう言って布団をめくって中に入り、透くんの手を握った。
彼の体温で温められたベッドに、少しほっとする。
透くんはここにいて、ちゃんと生きている。
大丈夫。
彼のほうを見ると同じ事を考えているのか、安心した目をする。
たった今その存在を確認したところなのに、
彼の儚げな表情に不安を掻き立てられる。
俺は、彼をやさしく抱きしめた。
上から下へなでおろすように、ゆっくりと背中をさすってやる。
突如、四ヶ月前真理ちゃんを失った直後の透くんの姿がフラッシュバックし、
俺は手の動きを止めた。
――痛々しいほどに震える肩。
――ぬぐってもぬぐってもあふれ止まらない涙。
しかし今の彼は泣くこともできないのだ、と思うと悲しみで胸がつまった。
抱きしめているので透くんの表情は見えない。
俺は彼の耳に口をつけ、耳の後ろを首筋にそって唇でなぞった。
やわらかい髪をかき上げると、さらさらと横に流れた。
俺と同じシャンプーの匂いがする。
透くんがふいに顔を上げて体を離した。
「――ごめん」
「俊夫さん」
責める口調ではない。
謝る俺の名を呼ぶ唇を見つめた。
俺はいつのまにか彼の上に覆いかぶさっている。
仰向けの彼のわきの下に腕を入れ、体を密着させた。
安心する――とても。
93919/21:2007/10/24(水) 10:39:50 ID:7UBOrzgv0
俺は自分の後頭部に手をやり、しばっていたゴムを外し髪を下ろした。
そして、何も言わずに透くんの唇にキスをする。
胃の辺りからかあっと熱くなり、自分が高ぶってゆくのが分かる。
頭の芯がしびれたようになり、
彼を求める動きがだんだんと大胆になっていく。

…眠らなければならないのに。
頭の片隅でそう思うが、止めることができない。
毎晩のようにオーナーの寝室で眠る俺を、レイコさんはどう思っているんだろう。
そうも思うが、透くんの寂しげな顔を見ると制止が効かなくなる。
俺はみどりを裏切っているんじゃないだろうか?
透くんを傷つけているんじゃないだろうか?
彼を慰めているつもりでいて、
本当は自分が癒されたいだけなんじゃないか――?

こらえきれなくなると、俺はいつも彼を抱いてしまう。
体を重ねると、透くんも少しだけ安心するように見える。
もう言葉は、彼の胸に深くは刺さらないのかもしれない。
「…俊夫さん……あっ」
透くんは初めは少し辛そうにしているが、
次第に短い息を小さくつきはじめ、目を閉じる。
完全に俺に身をまかせている。
何を考えているのか、その表情からは読み取れない。
彼は、垂らした俺の髪に手を伸ばして触れてくる。
俺の首筋に手をまわし、後ろ髪を熱心に弄ぶ。
真理ちゃんの長い髪を思い出しているのか――。
94020/21:2007/10/24(水) 10:40:29 ID:7UBOrzgv0
俺はゆっくりと動きを止めた。
荒く息をつく。
すると透くんは目を開き、怖いくらいにまっすぐ俺を見た。
「あれ?俊夫さん、どうしてここに」
自分が俺の腕の中で組み敷かれていることには少しも頓着せずに、
無邪気に訊いてくる。
俺は少し苦笑して、これまで何度も繰り返した台詞を今一度口にする。
「シュプールに来て働いてくれないかって頼まれたから、
来たんだ」
「頼まれたって…誰に」
一瞬ためらい、答える。
「……真理ちゃんだよ」

「――真理が?」
ふいに明るくなる表情に、はっと胸を突かれた。
「そうですか。来てくれたんですか…これでシュプールは安泰ですね。
そうか………良かった」
微塵も屈託を感じさせない笑顔。
何か言おうと開いた口が苦味でいっぱいになり、
俺は言葉を詰まらせた。
涙で顔が歪みそうになるのをこらえる。
胸がきしむように痛い。
聡明で天真爛漫だった彼が、こんな風になってしまうのか。
これも、あの島の呪いだというのだろうか。

――――彼は、今も三日月島に囚われたままだ。
94121/21:2007/10/24(水) 10:41:52 ID:7UBOrzgv0
俺は、何も分かっていなかったのかもしれない。
夏美さんを失った香山さん。娘の亜紀を失った今日子さん。
美樹本を、啓子ちゃんを失った可奈子ちゃん。
そして、真理ちゃんを失った透くん。
――大切な人を、最愛の人を失った悲しみ――。
香山さんたちの前で、自棄になってやさぐれていた自分が恥ずかしい。
みどりは生きているじゃないか。
生きている限り、望みは限りなくあるはずだ。
やり直すことも、切り捨てて生きていくことも、
生きていれば――――。

真理ちゃんの名前を聞いたからか、透くんは安心して眠ってしまう。
俺は彼から体を離し、少し吹雪き出した雪の音に耳を傾ける。
目を閉じると襲ってくる、とりとめのない思いの数々。
それらを振り払うように横を向き、透くんの手を握り、頭をそっとなでる。
彼はほんの少し眉間にしわを寄せているが、口元は微かに
笑ったようになっている。
閉じた目の端から、ひと筋だけ涙がこぼれた。
俺の手を握り返す力が強くなる。

“真理が、いないんです”
ここにいるよ。
せめて、夢の中にだけでも――。

透くんはもう、彼女の姿を探してさまよったりはしない。
どこにもいないことを、この手が知ってしまっているから。

俺は、握ったその手に、いっそう力を込めた。

____________<END>______________
942風と木の名無しさん:2007/10/24(水) 15:03:05 ID:yooEEYGB0
結局は誰も満たされていなくてなんか切ない
儚くも美しいって感じだけど

自分自身が曲がりなりにも文書くから
こういう力作を見ていると話に引き込まれつつも
創作意欲を刺激されて引いたところから見てしまって困る
943風と木の名無しさん:2007/10/24(水) 20:02:07 ID:3WlSls7W0
ビデオ棚スレに行くべきだったとは思うが…
凄い力作をdクス。
私も文章書きだが、素直にいい話?だと思ったよ。
でもやっぱりこのままだと皆があまりにも救われないので、「完」バージョンも
お願いしたいところだwww
今度はビデオ棚に誘導してくれな。
944風と木の名無しさん:2007/10/24(水) 21:10:23 ID:yYKruMGj0
すごい面白かった!大作乙です。
945風と木の名無しさん:2007/10/24(水) 23:20:43 ID:7UBOrzgv0
>>942,>>943,>>944

力作とか大作とか…
ありがd
文章書きの人に読まれるのが一番嬉し恥かしなんだぜww
原作への愛と妄想の間で葛藤しつつ書き上げたんだが、今見ると
夜書いたラブレター並のオナニー文に思えてもう自分では読み返せないorz
萌えを昇華させるのってほんと難しい。

バッドエンド好きなんでどんとこい鬱展開なんだけど、
やっぱり透は明るいアホの子の方がいいね。
かま1と2ではショタ本透エロ鬼畜派なんでそっちでもしまた書けたら
ビデオ棚に投下誘導させてもらいます。

こんな長いの読んでくれてほんとありがとう。
946風と木の名無しさん:2007/10/25(木) 04:31:42 ID:AMTIBiS20
良かった・・・!
自分も文章書くけど、ぐいぐい引き込まれたよ。
それにこういう設定大好物だから、萌えまくった。
アホの子透も可愛いけど、不幸な透もイイ!
俊夫さんも、頼れるばかりじゃなくて内心揺れててイガッタ!
947風と木の名無しさん:2007/10/25(木) 09:05:50 ID:Zr4HUT+10
非常にGJ
このスレはたまにひょこっと神が降りてくるからやめられねえ
948風と木の名無しさん:2007/10/29(月) 09:52:45 ID:uc31z1kO0
長編よかったです!

俊夫さんが男前だ…!!また待ってるよ。
949風と木の名無しさん:2007/11/02(金) 01:18:20 ID:hNclb8fS0
久しぶりに覗いてみたら‥‥!
すごくじんときた。ありがとう。
950風と木の名無しさん:2007/11/02(金) 21:17:25 ID:gtYelEZ10
すごくよかった!
良作ありがとう

ショタ本透エロ鬼畜も是非
951風と木の名無しさん:2007/11/03(土) 01:11:32 ID:43da/k5n0
よかった!!
力作を本当にありがとう!!
952風と木の名無しさん:2007/11/03(土) 06:04:21 ID:7sBHG2t10
このスレ、こんなに人いたのか!
自分を含めて三人くらいだと思ってたよw
953風と木の名無しさん
流れ豚切りで悪いんだが
1のミステリ編設定でオーナー×俊前提で美×俊とか(・∀・)イイ!!
と思ってるのは俺だけだろうかorz
鬼畜なんだけど時折垣間見せるミッキーの優しさにトッシーがオーナーの事考えて
凄い葛藤すればいいと思う。コイツは危ない半分判っててもついぐらつくトッシー・・・。
いいと思うんだけどなあ(*´・ω・`)
誰か同士の方いらっしゃいませぬか(;´д`)