「涼宮ハルヒ」で801 第3話

このエントリーをはてなブックマークに追加
821SOS
 「肩を揉みなさい」
この一言が始まりだったんだろう

部室での作業、そう‘朝比奈みくるの冒険2’の映画編集作業を無事に終え
疲れ果て伸びをしていた所、奴は軽快に部室のドアを開け登場、即座に俺に言い放った。
労働で疲れたそんな俺に肩を揉めとは正に唯我独尊である。ハルヒらしいこった。
 「労わるって言葉知ってるか?」
こっちが揉んで貰いたいね。
 「いいから揉みなさいよ」
聞いちゃいない。しかし何故、俺なのだろうか。部屋には、いつものようにハードカバー小説を
持ち椅子に座り置物と化している長門、俺を負かそうとでも思っているのか一人二役でオセロをし
唸っている古泉がいる。無駄な事をするもんだ。俺は負けないぞ。っと、話がそれた。
朝比奈さんはお茶っ葉の買出しに行ってらっしゃるのでいない。肩揉みねえ?普通、婦女子たるもの
男性に肌を触らせるもんじゃないだろ。…いやこいつはそういうタイプではなかったか。
俺が言いたいのは疲れなど見せていない、長門、古泉辺りに頼むのが普通だってこと。
 「俺は疲れている、見ればわかるだろ? ほら、古泉なんか暇にしてるぜ」
 「いいから揉みなさいよ」
さっきよりもつっけんどんに返された。こ、こいつは。
 「僕は暇そうに見えて実は暇ではありません。わかりませんか?
  心の中ではあなたと接戦を繰り広げているんですよ」
何か身震いを感じるその言葉。わかりたくないぞ。
 「肩を揉んで差し上げる程度いいじゃないですか。…ああ、なるほど。あなたは恥ずかしいのですね?」
断じて違うぞ。そしてそのニヤニヤ顔はやめろっ。
 「あたしだって疲れてるのよ。台本書くのに二日徹夜したんだからねっ」

そうだったな。おまえが徹夜をし頭をフル回転、その一般人には思いもつかない発想で
こうして奇天烈な映画が出来上がったわけだ。今回の敵役は格段にパワーアップを果たした。
822SOS:2006/07/10(月) 18:39:24 ID:FvmUxmk6
鶴屋さんとその仲間たちは相変わらず登場。だが新手として孤島で世話になった、新川さんと森さんも
登場しているのだ。森さんがブルマだったのは良しとしよう。問題は他の服装であり、谷口、国木田は
デニムの半ズボンに上は白のTシャツだった。まあこれは問題はないと思う。
でもな、新川さんにそれをさせるとは思わなかったぜ。おまえはどういうつもりだったのか理解しかねる。
 「見たときグッとこなかった?」
グッとくるって意味が解らないな。何が来るんだよ。新川さんのちょっと引きつった口元が
おまえは気づかなかったのか?ああ、俺を労わるのはやっぱいい。代わりに新川さんを労わるんだ。
 「いえ、結構喜んでましたよ。確かに最初は戸惑っていましたが、後に新川さんはこうおっしゃっていました。
  飛び箱を飛ぶ時には小学校を思い出した。私は五段までしか飛べない子供であったのですが、
  それが悔しかったんでしょう。がむしゃらに一生懸命練習をし六段を飛べた時のあの感動が蘇りました。
  いやあ懐かしいものだ。と、大塚○夫のような声でした」
あ、新川さん…。
 「ほら、喜んで貰えてたんじゃない。いいからあんたは肩を揉みなさい。
  話を反らそうとしても無駄なんだからねッ!」
どうやら無駄だったようだ。仕方ねえな。
 「そこ座れよ」
肩口でうるさいハルヒはとりあえず団長席に座らせよう。
 「わかればいいのよ、わかれば」
と喋りながら満足そうな顔を浮かべ座った。なんか腹立つがまあ、やってやるか。
席を立ちハルヒの後ろへついたまではいいが、途端に緊張を感じ出した。
肩揉みなんて母親と親父に昔してやった以来で、気恥ずかしさなんて当然なかったさ。家族だからな。
でもハルヒは一応女の子なわけで、実際にこうなると恥ずかしさが込み上げて…いや、こいつはハルヒ。
ただのハルヒだ。
 「早くやんなさいよ」
 「う、うむ」
古泉の野郎が盤の上に手を組みこちらを楽しそうに見てるのがなんか嫌だ。
 「あんた口に出てるわよ」
 「あ…ああ、たまに自分でも気づかない。気にするな」
そろりとその華奢な肩へ手を向かわせる。ええい、ままよ。
823SOS:2006/07/10(月) 18:41:43 ID:FvmUxmk6

「ど、どうかな?」
…こんな感じでいいのだろうか。ふにふにだ。…どうかな?ってなんだよ!く、くそ!
俺今めっちゃかっこ悪いッ!何照れてんだッ。キモオタかよッ!同年代の女子の体を触るなんて滅多にないんだ。
こいつの肩を触って照れちゃ悪いかよ。いや待て、…ふにふに?普通肩凝ってるなら硬いんじゃないか?
 「全然効かないわ。もっと力を入れなさいよ」
 「いや、全然凝ってるように思えない」
 「えっ…凝ってるわよ! 全っ然効かないわね。アンタそれでも男?」
男だ。てかなんか様子がおかしい。こいつは何故か一瞬取り乱した。ようわからんな。ん?
古泉の野郎が盤の上で組んでいた手を解き口に当て笑いを堪えながらこちらを見ているのがなんか嫌だ。
 「あんた口に出てるわよ」
 「あ…ああ、俺は病気なんだ。気にするな」
どうゆうこった。こいつの肩は凝ってなどいないとこうして揉んでいてよく解る。そして俺達の様子を
見ている古泉の野郎は笑いを堪えていやがる。導き出される答え、それはこいつが肩など
凝ってはいなく俺にただ肩を揉ませ…優越感を得ようと…してるんだな!…そ、そうか!そいうことかよ!
なんて…高慢極まりない女だ。
 「何止めてんのよ、早く揉みなさいよ」
どうやら御仕置きが必要のようだ。俺を無礼るなよ。少しずつ手に力を加えていく。
 「…ん…ぜ、全然効かないわね」
そう言うと思ったぜ。…これでどうだ。
 「ぐっ…ぜっ全然! 効かないッわッ!」
そうかい。このくらいにしておこう。ハルヒも一応女の子であって、さすがにこれ以上は気が引ける。
 「手が疲れてきた。すまんがもう弱めにしか出来ない」
 「そ、そう? だらしないわね。弱くていいからやりなさいよ」
安心したようだ。よし。
 「え? な、何? ひゃッ!? や、やめ やッ! くッ!」
両わき腹に手をやりめっちゃ擽ってやる。
 「全然効いてない様だ。これはイカン」
更に続ける。
 「ぜっ…全ッ然! 効か!? はっ! くすぐッ…や、やめなさ! あ゙! やはッ」
身を捩り椅子から落ちるまでその我慢は続いた。さすがハルヒ。中々の我慢強さである。
これに懲りてもうあんなことは口にしないだろうよ。こうして悪は滅びたのであった。
824SOS:2006/07/10(月) 18:43:38 ID:FvmUxmk6

 「善が有る限り悪は決して滅びないものです」
古泉、おまえいつから精神感応者になったんだ。んで、何そのラスボスが最後に言いそうなセリフは。
どういう意味だよ。何指差してんだ?…ああ、ハルヒな。未だにぜぇぜぇ荒い息を切らし床に転がっていた。
 「はっ…は…はふ…。こ、今度はあたしが…してあげるわッ!」
 「なんてこった!! てことは俺が逆に擽られるわけかよ!」
 「モノローグと思われる」
長門よ、やっと喋ったな。てかまずい。ここは逃げるべきだ。こいつの復讐は何倍返しにも
なるのは目に見えて解る。その明らかに耐えて頑張りましたという口に入った一筋の髪の毛は
妙に艶っぽ…何を考えているんだ俺はッ、今は逃げるべきなんだ。目標は部室のドア。ちょろいぜ。
脱兎のごとく駆け出した。
 「有希、捕まえて!!」
 「長門がおまえの言う事なんて…ッ!?」
あっさりと捕まってしまいまんた。俺の体はドアノブを掴んだところで急停止、アストロンをご存知だろうか?
いや、なんでもない。…はて、今何か言葉を逆回しする呪文のような声が聞こえたような…。ま、まさかな。
 「長門さんはこのために部屋にいましたから」
何言ってるんだ?古泉、わけわからん。
 「そういうこと」
その言葉に俺は絶望した。これは仕組まれていた事になる。この展開を古泉は読んでいたっ!?
体が動かんのは長門の宇宙的パワーだろう。ああ、文句を言ってやりたいが。
 「ふふん…逃げるのは諦めたってとこかしら。覚悟するといいわ」
おまえがいるわけで何も言えないんだよな…。それにしても長門よ、こんな言葉がある。
長門ならきっとなんとかしてくれる!って有名なセリフがあるんだぜ。だがたった今これは廃止された。
おまえを信じていたのに…。
 「そ、それで? どう覚悟しろと言うんだ? 俺はちょっとやそっとじゃへこたれんぞ」
 「似た者同士、といったところでしょうか。涼宮さん、僕にいい考えがあります」
古泉はハルヒの耳元でこそこそと囁き始めた。
 「やめろっ、ハルヒ聞くな! やめろっ!」
走り出した格好のまま後ろを向きそう言う俺は情けなく見えることだろう。が、構っていられるかッ。
何かとてつもなく嫌な予感がするんだ。いい考えがあると言ったあいつの顔。それはとてつもなく邪悪で―――
825SOS:2006/07/10(月) 18:46:19 ID:FvmUxmk6

古泉の耳打ちは終わった。ハルヒは悪戯を思いついた子供のような顔、そのにひっとした顔が恐ろしい。
何されるんだか…。何か袋の中を漁っている音がするのは解る。真後ろ過ぎて見る事など出来ない。
古泉とハルヒはせっせと、これじゃない、あれじゃないと何かを探しているようだ。 
 「あったわ!!」
 「何があったんだよッ!?」
おまえを歓喜させるモノは何だ。み、見えん!首がつりそうだ。
どうせ碌なもんじゃないのは解るけど、気になるんだよ!
 「こっ古泉君…何脱ぎだしてるの?」
ハルヒでもさすがに男性の裸には羞恥を感じるようだ。…って、脱いでるのか!?
部屋には衣擦れの音だけで他には何も聞こえない、これは古泉が服を脱ぎ奏でている音。
やがてそれも途切れ再度訪れる重厚な静寂が部屋を満たし、しばし経つと静寂を胡散させるかのように
軽快に歩き出すステップが響きだし俺の心を躍らせる。詩人と呼んでくれ。
 「相当参っているようですね」
肩に手を乗せ古泉は言った。振り返らなくても解る。今、こいつは微笑んでいるのだと…。
この状況で参らない奴がいるなら紹介してもらいたいね。
 「今からあなたにも着替えて頂きます」
声を出し異議を唱える前に両肩を掴まれくるりと反転。目前にした姿に絶句するしかなかった。
 「どうでしょうか?」
体は引っ張られ足は床を擦りハルヒ達の前まで等加速運動。
 「ちゃんと調べた方がいいですよ」
耳を筒抜けていく。なんでこいつは…。
 「半ズボンなんだ!」
しかも何かサイズが小さい。ぴちぴちとしており上向きでナニかが立っているのを生地が内側へ抑え付けていて。
禍々しい…目が腐るとはよくいう…。ハルヒの奴は顔を手で隠さずじっと見てるし。
普通は手の隙間からこそっと見るもんだろ。長門に至っては本を読んで我関せず。
ようするに俺を助けてくれる人間は誰も今いない。
 「グっとくるでしょ」
 「来ないッ!…ハルヒちょーっとおかしいぞ。今日のおまえと古泉はどっかおかしい。
  これのどこが………まさかこれを俺に履かせる…とでも言うのか」
 「さすがよくわかってらっしゃる。正解です。さあヌギヌギしましょう」
 「なんてことだ…」
826SOS:2006/07/10(月) 18:48:35 ID:FvmUxmk6
さっき絶望したと言ったが、まだ早かった。絶望するのは今が正しかったんだ。
古泉の手によりベルトが外されていく中諦めの境地を悟った。床へすとんと何かが落ちた音。
 「あなたのズボンになります」
いちいち言うな。きっと今俺は腰から下はトランクス一丁丸見えであり、とても情けない格好をしているんだろう。
古泉はトランクスの横から覗き、モノを出すための穴から中を覗こうとしていた。
 「古泉ストップだ。履くのは認めよう。だが、おまえみたいなぴちぴち張り付くサイズは絶対嫌だ!」
屈み、下から俺を見上げだした。舐めるようなその視線に身の毛がよだつ。何唸ってるんだよ?
 「いいでしょう。嫌がるあなたは充分に見られました。この辺りで許すとしましょうか、涼宮さん」
 「え゙っ? あたしはまだ…気が済まないわよ」
鬼がいた。
 「ハルヒ、頼む。さっきはすまんかった。…もうやめてくれ。これマジきつい。洒落にならん」
懸命に訴える。その古泉の履く半ズボンみたいなのを履く事になったらトラウマを負う。確実に。
 「涼宮さんもうやめましょう」
古泉は意外と優しいのかもしれ……撤回しよう。何かハルヒに耳打ちしている。新たな脅威に俺は打ち震えた。
ほらな、ハルヒの奴子悪魔顔しだした。ばればれなんだよ、ちくしょう。足に古泉の手が触れた。
 「半ズボンは普通のにしましょう。実はこれ一個しかないんですよ」
撫で回しながら言った。その手はほのかに温かく嫌悪を感じる。コノヤロウ…。
更にその手は二つに増えた。ハルヒだ…。
 「でもちょっとキョンはすね毛が目立つわね」
 「そうです…ねッ!」
古泉の気張った声と共に痛み。何が起こったって?こいつは脛毛を指で掴み引っこ抜いたのだ…。
 「痛いんだが」
もう何が起こっても驚かないぜ。俺の反応がこいつらを楽しませてるのに気づいたからな。
 「ふむ」
 「ふむじゃねえよっ!」
し、しまった。早速反応をしてしまったッ。
 「古泉君、剃刀あったわよね」
 「ええ、ここに」
827SOS:2006/07/10(月) 18:51:05 ID:FvmUxmk6
石鹸水と思われる水の張った洗面器、とその中に二つの剃刀。後ろ手にこいつは洗面器を隠し持っていた。
なんでこんなに用意周到なんだろうか。何がおまえをここまで突き動かすのだ。
 「「……………」」
無言でぺたぺたと脛に石鹸水を塗りたくり、剃刀で二人は剃り始めた。しょりしょり。
 「おまえらな、剃ると濃くなっちゃうんだぞ」
 「「………………………………………………………」」
カニを食べると人は無口になるという。それは身を穿るのに熱中、集中しているからである。まさに二人はコレ。
剃られる感触が気持ちいいのに無性に腹が立つ―――

 「いやあ、綺麗になりました。いいフトモモをしていらっしゃる」
 「ツルツルだわ」
無毛と化しているだろうその足は想像するだになんと情けない事か。二人は処理を終え、好き勝手に弄繰り回していた。
 「ほら、早く半ズボン履かせろ」
 「おや? 自分から履きたいそうですよ。涼宮さん」
 「違う! 早く終わらせろってこった」
 「でもこれじゃあ、履かせられないわ」
 「は?」
 「そうですね」
このまま履かせればいいじゃないか。何を言ってるんだお前ら。って!?!?
…………。

 「これはご立派です」
トランクスを一気に下ろされた。
 「………す、すご…」
二人の眼前にはそりゃもう、愚息がこんにちは。降ろしたのは古泉。この…野郎が。
 「おまえら…見過ぎだ。もう上げてくれ」
 「ええ、解りました。恥ずかしいですよね」
 「おまえ顔近づけ過ぎ。早く上げろ」
モノを食い入るように見ながら顔を動かし古泉はトランクスを腰まで上げていった。ほっと一息。
さぁその手を離せ、今すぐに。
 「さすがに、これは恥ずかしいですよ…ねッ!」
また一気に下げられた。モノは反動にぶるぶると震えてしまっている。
828SOS:2006/07/10(月) 18:53:56 ID:FvmUxmk6
 「おまえな、これは小学生の苛めか? お、おい! 触ろうとすんなッ! 頼むよマジで」
 「いえ、半ズボンとなるとトランクスはだめなんです。はみ出す危険があります」
 「何を言ってるのか理解できないが、無駄な事はせず最初からそう言え!」
 「ここにブリーフがあります。さて涼宮さんは見ててください。僕は一人でドレスアップして見せます」
………―――

そしてここに半ズボンを履いた男子二名が生まれたのである。
一人はぴちぴちで窮屈そうな半ズボンを履き何故か既にモノは臨戦状態の古泉。
一人は普通の半ズボンでしなやかな無毛となった綺麗な足を持つこの俺。
ブリーフを履かせられたような気もするがもう記憶の彼方シャットダウン。
それにしてもさっきから股間へと突き刺さるその視線が堪らなくイヤだ。おまえだよ。
 「古泉、何見てんだよッ。…お!? 光った! 今、なんか光った! 雷きたーー! こええ!
  っておおおい!! ハルヒかよ!! 写真とってんじゃぁないッ!」
机の上に寝そべりパー子のように激写してやがる。
 「ふぁああああああ!?」
 「今度は、なんだよっ? うおっ」
あああ朝比奈さんがドアを開け登場したと思ったら、買い物袋を散乱させながら床へ倒れ伏した。
なんて嫌なタイミングなんだ…。
 「おまえら…どうしてくれんだよ」
 「どうやら朝比奈さんはこの素晴らしさを理解出来ていないようですね」
 「これは教育が必要だわ」
その冷静さに恐怖するね。ほんとにもう何なんだよ、今日はっ。今日という日に部室に来た俺が悪いのか?
頭を悩ませてる間に二人は、朝比奈さんを抱えゆっくりと俺の目の前へ運んで来た。何故?Why?
 「教育が必要。ええ、僕もそう思います。…ブリーフを履かせる辺りから見せるのがいいでしょう」
 「それがいいわね」

理解した瞬間意識が混濁。おまえら…おぼえてろよ…。現実という厳しさが闇の奥へ俺を誘って行った。

                                             終わる