*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレPart7

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120風と木の名無しさん
ゆっくり歩いて、今日もふたり、並んで自転車を押しながら、帰り道、人気のない河川敷をゆく。
他愛ないくだらない話をしながら、意味もなく笑いあいながら、僕たちはふたり、歩いてゆく。

芹沢が自転車通学だと知ったのは高校に入って一週間が過ぎたころで、
電車通学にあこがれていたはずの僕は、定期が切れるのを三ヶ月待って、その後すぐに
自転車通学に切り替えた。
理由なんて単純だ。ちょっとでもたくさん、こいつと一緒にいる時間が欲しかったから。

そしてこうしてふたりで帰るようになって、もう二年以上が経とうとしていた。

一年生のときにクラスメイトだった僕たちは、何かの縁でもあるんだろうか、二年生のときも、
三年生になった今も、同じ教室で授業を受けている。
それについて僕は「これって運命じゃない?」とことあるごとに茶化し、
芹沢は「んなわけねーよ」とことあるごとにはにかんでそれを否定する。

僕たちは二年と半年、ずっとこうして一緒の時間を過ごしてきた。
僕たちのことを何も知らない周りから見れば、僕たちは三年間クラスが同じふたりなだけで、
ただそれだけの存在としてしか思われていないと思う。
出身中学も、部活も、選択科目も、趣味も性格も好きな食べ物も、何もかもが僕たちふたりはかけ離れていたから。

でも。でも、だから。あの日、僕は芹沢に焦がれた。僕と違う世界を抱いたこの男に、よりによって僕は、恋をした。
いや、それはもしかしたら、恋とか何とか、そういうものじゃなかったのかもしれない。
もっとこう、それ以上の、何か別の。
けどそんなことは今となってはどうでもいいことだ。僕はこうして芹沢の隣を歩いていられる。
それだけがただひたすら幸せだった。
121to be continued >>4-60:2006/06/11(日) 04:27:49 ID:zpYDpmsb

やがて道が川から離れるところまで来て、そしてそれは僕と芹沢の道が分かれるところでもあった。

そして僕はその日、初めてかれにキスをした。ほほに触れるだけの、親愛のキスだった。
照れ屋の芹沢はいつも以上に顔を赤くして、下を向いて、そして言った。
「また、明日、な、三波」
僕は笑ってうなずく。夕日に照らされて、きっと僕も赤い顔をしているんだろうと思った。「うん、またね」

数歩離れて自転車にまたがって走り出す芹沢の後姿を見つめて、僕はこらえきれずにだらしなく笑った。
明日も、あさっても、きっと僕たちはうまくやっていけると、そのときは本気で信じていた。

このときの僕はまだ知らない。

同じ学校の同じ教室の子が僕たちを見かけてたこととか、それがクラスの中で噂になることとか、
それをかぎつけた大人たちが、僕たちを引き裂いてしまうこととか。

そういう悲しい明日を、このときの僕は、まだ、知らない。