「なぁキョン。…キス、してみないか?」
ある昼休み、谷口がどことなく思い詰めた表情で言った。
「…はぁ?!」
あまりの驚きに、あんぐりと口を開いた間抜け面をしばらく晒してしまったではないか!
何を考えているというのだ、こいつは?!
横で国木田も呆れたような表情を浮かべたまま止まってしまっている。
言うまでもなく、俺はれっきとした男である。無論、男好きだとかそういう特性もない。
そして、目の前で爆弾発言をかました奴も当然、男である。
第一こいつは俺以上の女好きだろう。たとえ何人もの女性達に振られ続けても男に興味を持ったりはしないはずだ。
しないでくれ。しないと思う、……しないでください。
「お前、俺が女にでも見えるっていうのか?」
我ながら愚問きわまりないと思いつつも問う。
未だ衝撃から立ち直りきっていないので、これは仕方のないことである。
「いや、そんなわけねーって。何、キョンって自分が女に見えると思ってんのかよ?」
即答かよ、おい!しかもそんな平然と答えるなよ…俺がれっきとした男だと認識した上でキスを求めてるっていうことは…、