1.ノンジャンルのネタ発表の場です
書き込むネタはノンジャンル。
スレ違い/板違い/鯖違い/メディア違い問わず、ネタであれば何でもあり。
たとえばこんなときにどうぞ。
どこに投稿すればいいのかわからない‥‥
・ネタを作ってはみたが投稿すべき既存のスレが無い。
・投稿すべきスレがあるのかもしれないけど、よくわかんない。
・クロスオーバーのつもりなのだが各スレ住人にウザがられた。
・みんなの反応を見たうえでスレ立てるべきかどうか判断したい。
投稿すべきスレはあるが‥‥
・キャラの設定を間違えて作ったので本スレに貼れない。
・種々の理由で、投稿すると本スレが荒れそう。
・本スレに貼る前にあらかじめ他人の反応を知って推敲したい。
・本スレは終了した。でも続編を自分で立てる気がない。
ヘタレなので‥‥
・我ながらつまらないネタなので貼るのが躊躇われる。
・作り出してはみたものの途中で挫折した。誰か続きおながい!
迷ったときはこのスレに投稿してね。
ただ、本来投稿すべきと思うスレがある場合は
それがどのスレで(ヒントで充分)、しかしなぜこのスレに貼ったのか、
という簡単なコメントがあるとよい。無いとカオスすぎるからね。
ナマモノは伏せ字か当て字を推奨。
それ以外は該当スレのローカルルールに沿うか、自己判断で。
2.ネタ以外の書き込みは厳禁!
つまりこのスレの書き込みは全てがネタ。
ストーリーAAであろうが一発ネタであろうが
一見退屈な感想レスに見えようが
コピペの練習・煽り・議論レスに見えようが、
それらは全てネタ。
ネタにマジレスはカコワルイぞ。
そしてネタ提供者にはできるだけ感謝しよう。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ネタの体裁をとっていないラッシュフィルムは
| いずれ僕が編集して1本のネタにするかもね!
\ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | [][] PAUSE
∧_∧ | |
┌┬―( ・∀・ )┐ ピッ | |
| |,, ( つ◇ | |
| ||―(_ ┐┐―|| |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
| || (__)_), || | °° ∞ ≡ ≡ |
3.ネタはネタ用テンプレで囲うのがベター。
別に義務ではないけどね。
とりあえず用意したテンプレ。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| モララーのビデオを見るモナ‥‥。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| きっと楽しんでもらえるよ。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 僕のコレクションに含まれてるのは、ざっと挙げただけでも
|
| ・映画、Vシネマ、OVA、エロビデオとかの一般向けビデオ
| ・僕が録画した(またはリアルタイムな)TV放送
| ・裏モノ、盗撮などのおおっぴらに公開できない映像
| ・個人が撮影した退屈な記録映像、単なるメモ
| ・紙メディアからスキャニングによって電子化された画像
| ・煽りや荒らしコピペのサンプル映像
| ・意味不明、出所不明な映像の切れ端
\___ _____________________
|/
∧_∧
_ ( ・∀・ )
|l8|と つ◎
 ̄ | | |
(__)_)
|\
/ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 媒体も
| 8mmフィルム、VCR、LD、ビデオCD、DVD、‥‥などなど
| 古今東西のあらゆるメディアを網羅してるよ。
\_________________________
携帯用区切りAA
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
中略
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
中略
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
|__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ̄ ̄ ̄| じゃ、そろそろ楽しもうか。
|[][][]__\______ _________
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | |/
|[][][][][][][]//|| | ∧_∧
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ )
|[][][][][][][][]_||/ ( )
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | |
(__)_)
8 :
風と木の名無しさん:2006/05/19(金) 13:42:40 ID:9InumLKb
乙です。
スレ立て乙です〜
乙です。久しぶりに余計な物がないよ・・・!
いちもつ!
このスレも萌えでいっぱいになるといい
乙です。
ナマモノ書きの前スレ74さんが再び降臨しますように。
乙!
いまだにドクオクエストの続きを待っているのは私だけではないはずだ。
ノシ
16 :
1/4?:2006/05/19(金) 23:35:52 ID:avt5ML5B
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! モトネタハ エイブンガク
「おはよう、ジーヴズ」僕は言った。
「おはようございます、ご主人様」ジーヴスが答える。
相変わらずの細心さで用意された紅茶を啜りながら、僕バーティ・ウースターは満ち足りた気分だった。平和に勝る贅沢はない。
「ときにジーヴス、僕が注文した例のシャツだが」
「はい、ご主人様。わたくしが送り返しましてございます」
「送り返した?」
「はい。ご主人様にはお似合いでございません」
「そうか。いやダメだ、あれはやはり必要だ。ぜひ手に入れたい」
「…かしこまりました、ご主人様」
執事の分際でなぜそんな勝手を働くのか、と大抵のものなら言うかもしれない。しかし、このジーヴスの判断において僕が反論する根拠は常に薄かった。ジーヴスはことのほか服装にかけては保守的で、僕の好みとは相容れない。要は好き嫌いの問題が理由だった。
しかし僕はジーヴスを大変高く買っており、基本的には彼の意見を尊重した。時々我慢ならない事もあるが、それ以外はまったくもって申し分ない。
「つい先ほど、リトル氏からお電話がございまして、間もなくこちらへ向かうとのことです」
「急ぎの用とは心穏やかでないな。ビンゴの奴、一体…」
僕がビンゴ・リトルについて思い返すと、実に愉快でない数々の思い出が去来したのでそこで止めた。ビンゴは学生時代からの付き合いで悪い奴ではないのだが、いかんせん後先考えずかつ相手も問わず恋に落ちる頻度が多すぎた。
17 :
2/4?:2006/05/19(金) 23:36:46 ID:avt5ML5B
「やあバーティ、馬鹿面。ジーヴズの姿が見えないので勝手に入ってきたぞ」
「やあビンゴ、不細工。なんだいそのタイは。おめかしのつもりか」
「も、もらったんだ、悪いか。ところで折り入って話があるんだが」
「いつもの相談事ならクラブでも間に合ったんじゃないのか」
面倒な、という言葉を出すほど僕は不甲斐ない男ではない。それに、ビンゴは今までの経験からいって、不本意なことに、うちの執事の問題解決能力の高さを僕のそれより買っている。
「そうではないんだ」
ばつの悪そうなビンゴの様子に、僕は眼でジーヴスに合図した。ジーヴスが音もなく辞去するのを目の端で捕らえて、僕は座りなおした。
「で、今度はどこのお嬢さんだ。前回の失恋から2ヶ月も経っていないが」
「馬鹿だな、俺の話ではない。おまえ、気づいてないのか」
てっきり例の恋愛相談かと思いきや、どうやら僕に関連する話らしい。僕は愚鈍扱いされたようでいくらか気分を害したが、ウースター一族の誇りがこれで揺らごうはずもない。
「まさか、僕が知らないうちに誰かに恋をけしかけたなんてことは…」
「ないよ、うすのろ。俺は見たんだよ、後ろ姿だったけど、あれは名のある貴族だろうな」
「だから、誰がどうしたのかと訊いている」
「お前のところのジーヴスだよ。俺の見た限りでは、あれは引き抜きの密会じゃないかと思うぜ」
驚いた。確かにジーヴスの冴え渡る巧緻は(この僕を差し置いて)広く知られてはいたが、あくまでも彼は僕の家の現執事である。とんでもない、と思う反面、まさか、という思いもよぎった。僕はビンゴの意見を問うた。
「まあ俺はジーヴズを信じているが、そもそもよりにもよって、なぜ、おまえの下についているのかという謎はある。何しろおまえがオクスフォードを卒業した事は七不思議になるくらいなんだから」
18 :
3/4?:2006/05/19(金) 23:39:32 ID:avt5ML5B
あまりの物言いに僕は憤慨したが、ビンゴは責任は果たしたとばかりに帰っていった。
はっきり言って知りたくもない情報だったが、知ってしまった今では確かめざるを得ない。
しかし、根も葉もないことだと否定しきれない自分が恨めしかった。
万が一ジーヴスを失った時の損失を考えると、とても落ち着いてはいられなかった。
動転のあまり首にすがり付いて乞い願う羽目に陥るのは御免だった。
かと言って切り出すタイミングも掴めず、悶々とする日々がそれからしばらく続いたある日のことだった。
「ご主人様、かねてよりご様子がすぐれませんが、いかがいたしましたか」
「ジーヴス、それは…」
おまえの考えていることが全く読めなくて疲弊しきっているからだ、とは貴族の沽券にかけて言うわけにもいかず、
僕の調子はやはり彼にはお見とおしであることを今更ながら再確認した。
「何ということもないんだが(嘘だ)、あー、おまえは確か紹介でやってきたんだったよね」
「さようと存じます。先代のご友人よりご縁をいただいて参りました」
話をそらしたつもりが、なぜか確信に近付きつつある予感に慄きながら、同時に僕は平然と話している仮面を身につけた。
これはウースター家の伝家の宝刀とも呼べる。
「しかし来た途端に父が亡くなって、おまえも災難だったな」
「とんでもございません、ご主人様。先代の温情は誠に感謝しておりますし、わたくしは一度たりとも後悔した事はございません」
ジーヴスの真摯な物言いに、僕は一瞬彼の忠誠を疑った事が恥ずかしくなった。
父は確かに立派な人間であったし、本来ならばそれがあと数十年は続くはずだったのだが、運命のいたずらという奴でいち早く神の御許に召喚され、代わりに残されたのは年端も行かぬこの僕だったというわけだ。
「まあ、僕がおまえの立場だったら同じようにしたか疑問だよ。もっと他にいくらでも口は選べたろうに」
19 :
4/4:2006/05/19(金) 23:41:06 ID:avt5ML5B
「いいえ、それはありえませんバーティ様」
頑なに僕の事を主人と呼び続けてきたジーヴスに久々に名前を呼ばれ、僕は懐かしい気持ちで一杯になった。
「旦那様を失ってしばらくの間、誰もが意気消沈しておりましたが、たいそうお元気なバーティ様の姿、例えば自ら池に落ちたり、アガサ叔母様のドレスに傷をこしらえてひどくお叱りを受けたり、云々、を見るにつけ僭越ながらわたくしは生きがいを感じたものです」
「なんだか素直に納得しがたい部分もあるが、まあよしとしよう」
「というわけでございまして、このジーヴス、これからもお仕えしていく所存にございますので、どうぞいらぬご心配はなさらぬよう」
「何だ、僕は別におまえがどこに行こうと構わないぞ。…長期休暇の限りは」
「ビンゴ様の誤解には既にご説明を済ませておりますが、詳しくお聞きになりますか?」
「いやいい、遠慮する」やはりジーヴスの千里眼は健在だった。
「先日のシャツの仕立ての件ですが」
「あの藤色はもう…」
「ご報告が遅れましたが、今朝ほど『誤って』アイロンの跡をつけてしまい処分させていただきました。申し訳ありません」
言おうと思っていた事も口に出す必要がなくなったので、僕は黙って紅茶を啜った。ジーヴスがいる限り、僕の平和は続くと考えて良さそうだった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!カイギョウヘン&チョウブンスマソ
>>19 オチが非常にジーヴスだな!
主人を自分色に染める執事(*´Д`)ハァハァ
>>19 まさかこのスレでジーヴスが読めるとは!
GJ!
>>19 たたたたいへんテラウフフでした!!!
よろしければ作品名を教えて下さい…
23 :
1/5:2006/05/20(土) 16:47:09 ID:kI9qf0tv
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ガン種スレで思い付いたジサクジエンガ オオクリシマース!
「お、もしかして印パルスのパイロット殿じゃないか?」
食堂に向かおうとしていた途中で不意に横合いから掛けられた声に、ツンは足を止めて声
がした方へと体を向けた。
母艦が補給の為にとある基地に寄港し、自由行動が認められてからすぐの事である。
「あぁ、間違ってなかった。ちらっと見た時にもしかしたらと思ったんだけどさ」
声を掛けて来た人物は軽い口調でそう言うと、目を細めて笑う。
緑の制服に身を包み、少し斜に構えた風の男。と言うよりは、まだ青年だろうか。
取りあえずツンよりは年上だろう。
彼は立ち止まったツンのすぐ傍まで寄って来ると、再確認でもするかのように自分よりも
背の低いツンの顔を覗き込んだ。
「……何ですか、一体」
「ん?まぁ、ちょっと話してみたかったって感じ?」
ツンがあからさまに不快感を示しながら一歩引くのに、青年の笑みが深まる。
「ツン・アスカ、若くして印パルスの正規パイロットに選ばれ、最前線で戦うエース殿だ。
こういう所で見かけたなら、話したくなったりするじゃない」
24 :
2/5:2006/05/20(土) 16:48:12 ID:kI9qf0tv
「……俺は別に話したくないし、まだアンタの名前も聞いてませんけど」
良く口が動くものだと思ったツンの、やはり不快感丸出しかつ失礼な口の聞き方にも青年
の笑みが歪む事は無く、紫色の瞳はいかにも面白そうだと言わんばかりに輝いた。
「俺はディ/アッカ・エルスマン。ジュー/ル隊の……まぁ、隊長補佐みたいな事やってる。宜しく」
「……宜しく」
愛想良く差し出された青年=ディ/アッカの右手を見、ツンも気乗りはしなかったがしない訳
にはいかないので、渋々右手を差し出して握手を交わす。
「で、そのディ/アッカさんが、俺なんかと何を話したいんですか?」
ツンはそう言いながら、名乗った相手の顔をまじまじと見て、記憶の倉庫のあちこちから
浮き上がって来る情報を拾い始める。
先の戦いで輝かしい戦歴を残しているが、その反面理由は有るにせよ敵側に寝返ったと
して降格処分を受けた。今在籍している隊は、親しい者が長を勤めている云々。
自分がここに亡命して来た後、軍に籍を置いて訓練を受けている際に何度か耳にした事
の有る名前だった。
「だからぁ、特に理由は無いんだよね。世間話レベル」
25 :
3/5:2006/05/20(土) 16:48:51 ID:kI9qf0tv
「……降格されて補佐やるってのは、暇なんですね」
「俺の事知ってるのはともかく、いきなりキツイ事言うなぁ。前半は間違ってないけど
さ。降格されただけで済んだのが幸運だったって感じだし」
言い終えた後でまずかったか。とちらりと考えたツンだったが、返って来たのは相変わら
ず飄々とした言葉及び軽く肩を竦める動作のみ。
さすがに叱責されるかもしれないと身構えかけただけにツンは驚き、目を丸くした。
「何だ、怒るとでも思ったのか?はは、可愛い所も有るんだな」
ディ/アッカが再び笑う。
「これくらいの嫌みやら小言なら、毎日たっぷり聞かされてるからな。どうって事無い
し。気にすんなよ」
「いや、別に……」
「ディ/アッカ、何をしている。行くぞ!!」
気にするなと言われても、思わず口から出た言葉だ。反省するつもりは無いが、笑みと
共に言われるとどうも調子が狂う。
困惑したツンが小声で答えた時、ディ/アッカの背後に有る通路沿いの一室の扉が開き、中か
ら足音も高らかに白い隊長服を着た銀髪の青年が出て来たかと思うと、すぐにディ/アッカを
見つけて荒々しい言葉を投げ付けて来る。
何やら機嫌が悪そうだ。
26 :
4/5:2006/05/20(土) 16:49:29 ID:kI9qf0tv
「はいはい。また大荒れだったのか?」
「大荒れも何も、時間の無駄も良い所だ!全く、あの腰抜け共が…!!」
今にも頭の天辺から大噴火でも起こりそうな雰囲気を感じ取ったツンが更に困惑している
のにひらひらと右手を振って見せながら、ディ/アッカは口を開く。
「やれやれ……一応、戻ったらブリーフィングするんだろう?」
「当然だ。急ぐぞ!」
「りょーかい。……って事だから、話の途中で悪いけど俺行くわ」
「え、あ、はい」
「次に会う事が有ったら、もう少し色々話しような?」
「ディ/アッカ!急げと言っているだろうが!!」
「はいはいはい。そんなに怒鳴ると、後で声が嗄れるぞ」
自分達の艦へと戻るのだろう。歩き出そうとした銀髪の青年が手にしているファイルを
今にも投げ付けそうな勢いで振り上げるのに、ディ/アッカが苦笑する。
なるほど、嫌みや小言やらを彼に聞かせているのは、この青年なのだろう。
一人ツンが納得していると、やはりにぎやかに足音を鳴らしながら通路の奥へと先に歩き
出した銀髪の青年を追いかけようとして身を翻しかけたディ/アッカが右手を伸ばして来て、
くしゃくしゃとツンの髪を乱した。
27 :
5/5:2006/05/20(土) 16:50:20 ID:kI9qf0tv
「な、何するんですか!」
「シン君はむっつりしてるより驚いてる顔の方がずっと可愛いから、最後に見たかった
だけ。じゃあな」
ディア/ッカは悪戯っぽく妙に慣れた動きでウィンクし、背を向ける直前に崩れた敬礼を
一つ送ってから笑って走り出す。
銀髪の青年は既に遥か先を行っているので、歩いて追い付くには難しいからだろう。
「……何なんだ、一体……」
今日は良く似た言葉を使う日だ。
ツンは乱された髪を両手で撫で付けながらそう思い、遠ざかる二人の姿を見送る。
そもそも、食堂に行こうとしていて捕まったのだったか。
それを思い出した途端忘れていた空腹感が復活し、ツンはたかだか五分程の間に起こっ
た事を未だ整理出来ないまま、再び歩き出した。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、イキオイダケデカイタジサクジエンデシタ!
>>23 GJ!このカプに飢えていたから正直とてもうれしい。
>22
執事の名前でぐぐればたくさん出ますよ(・∀・)
ジーヴスハァハァ
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ナマモノ里予王求 戦力外通告×元ピッチャー
――――――――
あいつは、いつも笑っていた。
「忘れ物は、ない?」
「ないっす」
久々に来た寮。
明日は我が身と遠巻きに見ている後輩を尻目に、やっぱり笑っているあいつ。
僕の方が泣きそうだというのに。
「……まだ、時間はあるよね」
「ありますけど?」
「ちょっと、ゆっくり話そうか」
荷物だけ部屋から出し、後輩に玄関まで運ぶよう指示した。
がらんとした部屋。
あの頃を思い出す。
『初めまして!同じピッチャーですんで、仲良くしてくださいね!』
まだあどけない顔をしていた、チームのリリーフエース。
年下なのに、プロとしての自信に満ちあふれていた。
『お立ち台、緊張しましたねー!』
2人で立った、ヒーローインタビュー。
観客の声援を一身に集める快感。
『野手になったら、俺のバックアップよろしくっす!』
野手へのコンバート。
自分だって調子が悪いのに、いつだって励ましてくれた。
そして。
『俺、戦力外になっちゃいました…』
どの場面でも、笑顔しか浮かばなかった。
「これから、どうするの?」
「とりあえず、自分の時間がほしいっすね。その後、ゆっくり考えます」
「……そう」
今なら、誰も見ていない。
もう会えないかもしれないんだから。
「タカさん?」
「何でお前は笑ってられるんだよ…」
いきなり、力強く抱き締められたもんだから、そりゃ驚くよ。
きっと、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてるに違いない。
「何で辛いのに笑えるんだ…?」
「……タカさんに、笑っててほしいから」
プクプクとした手。
僕の頭を撫でるその手は、掌だけがちょっと硬かった。
「泣かないでくださいよ…俺だって、泣きたくなるから…」
「じゃあ泣けよ!悔しいんだろ!?辞めたくないんだろ!?」
「……」
重苦しい、痛い程の沈黙。
傍から見れば、大の大人が何をやってるんだと言われるだろう。
「今、1番辛いのは……1番泣きたいのは、ジョーだろう…?」
「……はい」
嗚咽が号泣に変わるまで、刹那もなかった。
枯れるまで、泣いた。
「タカさん、レギュラーになって、ベストナインとかゴールデングラブとか取ってくださいね!」
「ジョーも、今後のことが決まったら連絡しろよ?」
いつまでも手を振るあいつ。
その顔は、やっぱり笑顔だった。
―――――――――
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
>>31 飲食店でもがんがれ超がんがれ
んで2億円伝説信じてる
37 :
1/3:2006/05/21(日) 10:00:37 ID:pmoEq9j7
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガオオクリシマース
フレッシュと言われるゲイニソ。突っ込み×ボケ。
木目方と遊ぶということは滅多になくて。仕事ではいつも一緒な訳だけど。
一緒に居るとすげー楽しい。発想が違う。思考が違う。趣味も全く逆と言っていい程違う。
その違いが楽しい。
「なんだかなー…」
楽しい筈だ。なのに。
「なに、この緊張感…」
逸る胸は早鐘のよう。…や、そこまででもないか。冷静に分析。
「まいったなーー」
冷え切った空気が容赦なく鼻と耳を刺激。マフラーに埋める。
乾いたアスファルト。乾いた空。いつも通り歩き出す。
訳分かんない緊張は意識しないように。楽しいことだけ考えて。
目的地到着。その姿はまだ見えず。
オレ、早く来すぎ?一人で浮かれてるみてェじゃん?
なんて呟いてたら。
「ツンゴー?」
頭の少し上から低い声。仕事ン時より抑えた声。
「中入ってりゃよかったのに。鼻赤けー」
「オレもさっき来たとこだし」
なんて、指摘された鼻擦りながら応えて。
38 :
2/3:2006/05/21(日) 10:04:08 ID:pmoEq9j7
まるでデートだ、とか見当違いのことを思うオレ。
そんなオレを知ってか知らずか、変装用メガネ着用の木目方はいつも通り。
緊張してンのなんてオレだけ?
「早く中入ろうぜ。寒ィよ」
「あ、ごめんごめん」
一人では入りたがらない木目方の腕に掴まって店内へ。
まあ、オレも木目方も酒はあんま飲まないから、料理を適当に注文して。
空きッ腹に酒が利いてきた頃。
「ツンゴ楽しい?」
突然投げかけられた質問。
「なんで?楽しいよ?アチャソは?」
つまんなそうだったかなオレ、とか思いながら問い返す。
「あんま喋んないからさ。楽しいならイイけど」
酔った脳に響く低音が心地いい。もっと喋ればイイのに。
「アチャソは?答えてよー」
2回目。楽しいって言わせたくて。言うまで聞いてやろうと思って。
なのに。
「楽しいよ。ツンゴと来てよかった」
なんてボソッと聞こえて。
しかも顔見たら笑顔!でもトロンとした目は真剣で。
39 :
3/3:2006/05/21(日) 10:07:01 ID:pmoEq9j7
なんなのソレ!なんですぐ言っちゃうかな!?
「楽しい」
「…ッ分かったってば」
なんなのコレ!!この心臓、まるで早鐘のよう。今度こそ本当。
やばいやばいやばい…!!
ドキドキしちゃってんじゃん。男に?てか木目方に??
そんな筈ないと言い聞かせ、酒の所為だと思い込み、なんとか冷静に。
…ただ、それでも意識は逸れなかったけど。
「また来ような」
「ん、うん。来よう来よう!」
無駄なハイテンションで誤魔化して。
外に出て風に当たれば目も醒める筈。きっとそう。
家に帰ればアチャソのことなんて忘れてるさ。意識なんてしない。してやんない。
…多分ね。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウジサクジエンガオオクリシマシター
お目汚し失礼!
>>37 表記逆だった…orz
ボケ×突っ込みですよ…
>>37 GJ!
飲みに行ったってブログにあったよね
>>31 去年の今頃イースタンで見たっけなぁ…orz
ところで
>>35ってどういうことですか?スレ違いになってしまうができればkwsk
>>42 >>35姐さんじゃないけど、ジョーは飲食店で修行してるそうな。
だから第2の人生で『2億円伝説』
泣ける話だよ…
>>43 スレ違スマン
そうじゃなくてジョーは飲食店見習い
元ピッチャーの方は頭への死球でイップスになり投げることが出来なくなって
腹カントクに打者になれば2億円も夢ではないと説得されて打者転向=2億円伝説
あの二人好きだったからなんか目から汁が出てくるよ
なるほどすっきりー
>>31 この二人大好きなんで、ありがとうございます。
昨日イースタンで元ピッチャー見て来たから余計感慨深い
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ドラマ慰留の浅田×藤好(内科医)
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| あくまでドラマ萌えなんで、原作派の方&エロ最中描写が苦手な方&生もの苦手な方注意!
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
49 :
浅田×藤好1:2006/05/22(月) 21:07:50 ID:RKxR3h9y
この男の支配欲が、どう考えても一般人のそれの2〜3倍以上高く感じられるのは、
職業柄からなのか、元々の性格からなのか…。
今にも溶けてしまいそうな思考と僅かな理性だけが動く頭の中で、
藤好はそんなことをふと思った。
こうして、最中にさえ、本人しか知り得ないことを理論的に考えようとしてしまうこと自体も、
医者という職業柄のせいかも知れない。
と、またも、今度は自分自身のことさえも理論的に考えようとしていた時、
「……っ!」
「……考え事とは余裕だな」
体内を蠢いた熱と、背中越しに掛けられたその声。
堪らず、藤好は閉じていた目を開き、直後、顔を顰め、身体をびくつかせた。
現実が、開けた視界と思考に戻る。
そう。そうだ。俺は今、この男に抱かれている。
良い意味でも悪い意味でも見慣れた病室のベッドシーツの波を前に、
まるで、ポルノ小説の冒頭に出てくる様な一文が、藤好の頭に過る。
一体、何がどうなってこんなことになったのか、既に忘れた。
いや、どちらかと言うと、考えたくないだけだが、兎に角、これで7回目。
浅田という、自分より年下で、自分以上に頑固で、自分以上に態度がでかく、
自分以上に、悔しいことに医者としての腕も超一流である外科医に、藤好が抱かれる様になって、7回目。
50 :
浅田×藤好2:2006/05/22(月) 21:09:11 ID:RKxR3h9y
「最初はあんなに拒んでいた癖に、もう慣れたのか…」
「…っち…違‥う…っ」
辱めの言葉を、項辺りを舐めながら囁いてくる浅田に対し、藤好は何とかそう返した。
ゆるゆると力の入らない頭を左右に振れば、パサパサと短い髪がシーツを叩く音がした。
だが、浅田は、その否定の声も、聞こえているのかいないのか、
将又、聞こえていない振りをしているだけなのか、
藤好の腰を抱き込む様に回していた腕を下に下ろし、不意に藤好の昂ぶる熱の核心を掌で握り込んできた。
「……くっ…」
今まで、散々、女を抱いてきたのだろう。
その指先一つの動きからでも充分にそのことが窺い知れた。
別れた女房と、その前に付き合った女性数人としか経験していない藤好でも分かる程に、この男の抱き方は手慣れていた。
51 :
浅田×藤好3:2006/05/22(月) 21:10:10 ID:RKxR3h9y
だが、以前、藤好は聞いたことがある。
それは、初めての時だった。初めて抱かれた直後に、聞いたのだ。
『お前は今まで男を抱いたことがあるのか?』
すると、浅田は、答えた。
『無い。興味も無い』
余りにも衒い無く、先程までの情事さえも忘れ去ったかの様な台詞に、
藤好が更に尋ねを重ねようとして口を開く直前に、更に浅田は続けた。
『ただ、あんたという一人の人間には興味がある』
今思えば、それは、
本当にバチスタ手術成功の為だけの仲間としての台詞だったのかも知れない。
ただ、それでも、その言葉を聞いた時から、
藤好の中で『何か』が始まってしまったことは確かなことだった。
『あんたが欲しい』
更に、そう付け足された時には、何故かどうしようもなく居た堪れない気分にさえなった。
その時には、自分でも嫌悪感があるからだろうか等と思っていたが、今になって気付く。
あれは、羞恥心の一種であって、決して、嫌悪感等ではないということに。
浅田という男の支配欲は、凄いものがあった。
こうして藤好を抱く時さえ、決して、対等にはさせてはくれない。
52 :
浅田×藤好4:2006/05/22(月) 21:11:23 ID:RKxR3h9y
飽く迄、浅田が抱く側で、藤好が抱かれる側だ。
シーツの上に突っ伏している藤好の身体を、
後ろから覆う様に抱くのが、一番、浅田にとって適当な体勢らしい。
藤好の自由を奪っているこの状態が、一番良いらしい。
浅田のペースに流されているだけだと、藤好は自分に何度言って聞かせたことか。
この男の支配欲に全てを無理矢理に牛耳られているだけなのだと、
何度思い込もうと思ったことか。
そして、毎回、こんな風に二人きりの状況に追い込まれる度に、
言い訳を並べては逃げようと試みて、結局は、こうして抱かれているのだ。
「凄いな…あんた、さっきイったばかりなのに」
更に、浅田はそんなことを言いながら、激しく腰を打ち付けてきた。
7回目とは言え、元々、有り得ないこの事態に身体が慣れるのは難しい。
だから、藤好は、懸命に歯を食いしばり、声を抑えながら、
恐怖さえ感じそうなくらいに強烈に込上げる快感に、堪えていた。
「あっ、浅田…っ…明日の仕事に支障が出る…っから……っ…も…う……離せっ…」
そして、息も絶え絶えに、そう声を発する。
実際、抱かれた翌日には、全身に気怠さが残ってしまうのだ。
決して、動けないという訳でもないのだが、どうしても、体内にずっと浅田の存在が刻み付けられてしまっている様な気がしてならない。
53 :
浅田×藤好5:2006/05/22(月) 21:12:49 ID:RKxR3h9y
「いつもそう言うんだな。もう少しマシな理由は作れないのか?」
くつくつと、喉奥で噛み殺した様な笑い声を洩らしながら、浅田が言った。
そんなこと、分かっている。
藤好は、声が出せない為に、代わりに心の中でそう返した。
言われるまでもない。分かっている。
この状況から逃げる為に言い訳に仕事を理由として上げるのは、
自分でもおかしいことだと、薄々感じ始めているのだ。
ただ、認めたくないだけ。
今、自分がこうして浅田に抱かれているのは、浅田の尋常ではない支配欲のせいだと思い込んでいたいだけなのだ。
「いい加減認めろよ。あんた、俺に惚れてんだろ?」
「……っ」
まるで、そう言えと言わんばかりのこの態度。
藤好は、尚更に、口を閉ざした。
認めてなるものか。
ここで認めてしまえば、この男の、本当に言葉通り、全てを支配されたことになってしまう。
ここであっさりと、あの時から始まった『何か』の正体を認めてしまえば、浅田は、自分を手中に収めたと知って、他に目を向けてしまう。
認めてなるものか。
………あ…
そこまで考えて、藤好は、気付いた。気付いてしまった。
支配欲が頗る強いのは、何も、浅田だけではないということに。
浅田を他に向けさせてしまうのが嫌で、自分が未だにこの感情を認めるのを拒んでいるということに。
「……どうした?やけに大人しいな」
「………何でも…っ……何でもない…」
突然、一切の動きが止まった藤好を怪訝に思ったのだろう。
浅田がそう尋ねてきた。
藤好は、その声に、一度は口を開いたが、直ぐに閉じ、暫く逡巡した後に、再び口を開き、そう答えた。
そう。何でもない。
…と、思っていなければならないのだ。
今、自分を抱くこの腕に、内心では全てを許しながら、この感情を認めてはならないのだ。
「何でもない…か。あんたがそう言うならそれで良いが……益々、欲しくなるな」
「……ぁっ…!……っく…っ」
それから、また、動き始める浅田の身体。
藤好は、シーツの波を懸命に指先に掴みながら、気付いてしまった自分の支配欲は見てみない振りをして、浅田の支配欲に、再び、身を任せたのだった。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ お粗末様でした。このドラマ&CPに萌えまくりでサイトを立ち上げてしまいそうなのがテラオソロシスwwwwww
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
キ・キ・キ・キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
麻蛇×富士代氏イョ━━━━━━(=゚ω゚=)━━━━━━!!
楽しめました!GJGJGJGJ!
マッテター!!(゜Д゜*)
サイト作った際はぜひともご連絡を…。
ごちです、満足です。
堪りません!!
だよな、やっぱり富士由だよなと
GJ!
姐さん仕事早いです!GJ!GJ!!(*´д`)
>>56-60 IDが変わる前に。
GJコールありがとう。
また萌えが発生したら投下することにします。
それから本スレに変なの湧かせてスマンカッタ。
転載されているのはスルーしといて下さい。
>>61 お気に病まないでくださいね。萌えをありがとう(*´Д`)
姐さんのサイト立ち上げを心待ちにしてます!
63 :
1/3:2006/05/23(火) 01:41:06 ID:VsQ8Meet
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジャンプデモエタ ジサクジエンガ オオクリシマース!
眠らない町歌舞伎町。眠らなかろーが眠れなかろーが、朝は毎日やってくる。
例えば、真選組鬼の副長土方十四郎が朝の爽やかさと対極に思い詰めたどんよりとした空気を背負っててもお天道さんは今日も登る。
「多串くんさぁ」
寝てんだか起きてんだかわかんねーよーな顔して、隣の銀髪が口を開いた。
うっせーな、俺は今それどころじゃねーんだ。
ここは何処で、俺は今一体何をしてるんだ。
確か昨日は非番だった。山崎のヤローが今日は屯所の掃除をするんです!ミントン構えて宣言して、部屋ぁ追い出されたのは覚えてる。
あいつはミントンで掃除をする気だったんかね。
行くあてもねーんでぶらぶら歩いてたら、何の因果か行く先々に万屋がいやがって。
そうだ、それでサウナで持久戦になって…
変なおっさんぶっ倒して、身元調べてみりゃあ攘夷派だってんだから驚きだ。
屯所と連絡とっておっさん引き渡して取り調べしてたらいつのまにか休暇は明けてて、近藤さんが非番を増やしてくれて。
飲みに出た先に、もういいかげんしつけーよって万屋がいて、飲み比べ対決になって…
64 :
2/3:2006/05/23(火) 01:47:54 ID:VsQ8Meet
それでどうして万屋の布団で二人裸で寝てるんだ?
相撲か?プロレスか?
じゃあ、俺の口では言えないところがズキズキ思春期の乙女の恋心のように痛むのは何故だ?
すでに思い至ることは一つしかなく、さらにそれが酒に溺れながらもうっすら記憶にあるよーなないよーな。…やっぱあるよーな。
てゆーか、ある。
じんわり浮かぶ嫌な汗が背中を伝う。
イライラと煙草を取り出そうとすればライターが見つからない。ライターが見つかればここには灰皿がない。
舌打ちしたところで、万屋がまた口を開いた。
「勢いってもんは、怖ぇもんだねぇ」
勢い。酒の勢い。
確かに昨晩勢いだけが俺等を動かしていた。ぶっちゃけ勢いだった。
俺じゃなくて勢いという物体が俺の皮をかぶって万屋の皮をかぶった勢いという物体と
あんなことやこんなことをしました。
僕はお酒って怖いなと思いました。今度からは気をつけたいと思います。アレ、作文?
「勢いですむ問題じゃねぇぇぇぇっっっ!」
ガシャァァァァンッ!!
「うおおおおっっ真剣は待ったぁぁぁ!」
「俺の純情を返しやがれぇぇぇ!!」
「純情なら大丈夫!昨日の多串くんは花も恥じらう乙女のように…」
「斬る!!」
65 :
3/3:2006/05/23(火) 01:58:02 ID:VsQ8Meet
隣の部屋から、大きな音とともにふすまをぶっ潰して転がって来た二人を見て、新八は大きくため息をついた。
朝食後のお茶を神楽に渡すと、ソファに座る。
背後では、銀時がようやく手にした木刀で土方の剣を受け止めているところだった。
「神楽ちゃん、朝っぱらからホモの痴話喧嘩なんて見ちゃいけないよ。君の将来にもう遅いかもしれないけど、悪影響だからね」
「マヨも銀ちゃんもうるさいネ。わたし昨日もうるさくて眠れなかったアル」
「……もう遅いかもしれないけど本当にもう遅いかもしれないけど、君が将来に一欠けでも希望を持っているなら、昨日の記憶は消去しなさい。」
「勢い!勢いだって!ドンマイ多串君!」
「うっせー!今日という今日は、許さねぇ!」
江戸歌舞伎町。
灰色の空が、今日も明けた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウジサクジエンガオオクリシマシター
尻切れ気味…お目汚し失礼!!
>>65 GJ!余韻も色気もなく真っ先にバイオレンスに走る二人がいい!
>65
mo e ta (;´д`)
(*´Д`)=3 八の反応がまたなんとも言えないですな
>PLAY ピッ ◇⊂(´┏┓` )短いですが、計画9の白←緑です。
72 :
白←緑1:2006/05/23(火) 10:36:37 ID:2WYxuszA
机に向かって、今夜も粘土細工。
急さんは俺の足元で横になりながら、パラパラと雑誌を読んでいる。
と思いきや。
「もう飽きてもーたでしょ、急さん」
「…………」
「急さん?あれ?」
久しぶりに振り向いてみれば、そこには急さんの無防備な寝顔。
「あーあ、寝てもーたか…」
そーっと立ち上がり、ベッドの上にあるタオルケットを手に取った。
急さんの細い身体の上、静かにそれをかける。
「……綺麗やな」
タオルケットからはみ出した久さんの手。
ふと目に入り、思わず口に出してしまった。
白くて長い指に、艶やかなピンク色の爪。
それは、いくら器用な俺でも作れない造形美。
「いいなぁ…」
気付けば、その手に触れていた。
指先でなぞる様に。
その形や温度、触感を自分の手に刻み込む様に。「………欲しいなぁ」
何が欲しいん?
73 :
白←緑2:2006/05/23(火) 10:43:19 ID:2WYxuszA
自分でも分からないまま、無意識に零れた言葉。
「急さん…」
深い間隔の寝息。
大丈夫、まだ起きない。
ゆっくり、自分の中指にはめたリングを外す。
外したリングは、急さんの細い薬指に。
「よう似合ってるわ…はは…」
今だけ。
今だけは、俺の物。
そう考えたら、純粋に嬉しくなって。
身体が熱くなって。
「ごめんなさいね、久さん」
堪えきれず、不純な唇でその指に何度もキスしました。
貴方の綺麗な指、俺が汚してしまいました。
その代償は、胸の奥深くまで満ちていく罪悪感。
そして、何処までも満たされない独占欲。
「んー……」
「あ。起きました?久さん」
「…ごめんな、寝てたわぁ」
「いえいえ」
「あれ…?この指輪…いつの間に」
そんな苦しい代償だって、ほら。
74 :
白←緑3ラスト:2006/05/23(火) 10:46:17 ID:2WYxuszA
「あぁ…それ、急さんにあげますわ」
「左の薬指?」
「うん」
貴方の側にいれば、心地良い幸福感だと錯覚してしまうから意味が無い。
「なぁ、須々木…」
「…はい?」
リングで重くなった急さんの薬指が、優しく俺の唇に触れる。
「…お前の唇、綺麗やなぁ」
「そんな事…」
「もっかい、して」
なすがまま、ゆっくりと組み敷かれた身体。
「さっき、してくれたみたいに…」
恐いくらいの優しい笑顔に、何処までも堕ちていきたい。
「急さん…気付いてたん?」
「うん」
戸惑いながら、絡ませた細い指にキス。
欲しいなら、全部奪っていいから。
離れない様に俺を繋いで、ただ引き寄せて。
□ STOP ピッ ◇⊂(゚Д゚ )スレ汚しスマソ…。本命は橙青ですが、この二人も大好きです。
76 :
1/2:2006/05/23(火) 11:19:42 ID:hRBo31Tb
(・∀・) ノ【M●THER3ノ双子話】
(・∀・ ))) <思イッキリネタバレシテイルカラ、注意シテネ。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )デハ
隣にいるはずの人がいないことに驚いて、目が覚めた。
しばらく半覚醒の頭で、それが夢だったことを知る。
隣の体温を探していた右手は、当たり前だが何もつかんでいない。
覚醒した頭で、自分の無意識が取った行動を、後悔した。
いつも、僕の隣に寝ていたクラウスは、もう2年も前に行方不明になっている。
最後にクラウスと一緒に寝たのは、あの日、母親が殺された日だった。
泣く自分を、慰め、励まし、叱咤しながら、クラウスは隣で毛布にくるまっていた。
あの時、双子で良かったと思った。
母が死んでも泣かずに、自分を慰めてくれるクラウスの体温が、自分と同じ熱を持っていて、
ベッドの中で、どこからが自分でどこからがクラウスか分からなくなるぐらい、混ざり合っていた。
そのうち、悲しみとかも全て忘れて、僕はクラウスの手を握ったまま眠りについた。はずだった。
僕が目覚めた時は、クラウスはもう着替えて、母の仇をとりに家を出るところだった。
あれからずっと、僕が握る手は無くなったままだ。
77 :
2/2:2006/05/23(火) 11:20:27 ID:hRBo31Tb
「起きたのか?」
隣のベッドから、もぞもぞと動く気配がした。ダスターの低い声が、響いてくる。
「…トイレ…」
ごまかすように、僕はベッドを出て、トイレに立った。
寝ぼけているふりをしていれば、ダスターに心配かけることはない。
ドアを開けたところで、ダスターの囁くような声が追いかけてきた。
「…その……もしアレなら…俺のベッドにもぐりこんで来ても…いいからな」
僕は、ダスターに起きた理由がばれていた恥ずかしさで、聞こえなかったふりをして、ドアを閉めた。
あれから2年。一人寝には、もう慣れたから、心配しないで。
そう答える自信は、僕には無かった。
強くなりたい。もっと。
でもそれは、どうしたらいいのか、僕には分からなかった。
トイレへ行くための廊下は、冷たくて、暗くて、そして長くて。
怖かったけれど、それでも僕は、そんな自分に克つために、前に進んだ。
いつか、こんな夜は無くなる、と信じているから、前に進めた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )<イジョウ
(・∀・;) 萌エ心ノママ書イタラ、文字通リ、ヤマナシオチナシイミナシニナッタヨ。今ハ反省シテル。
YADOって最後まで使わなかった事思い出した。
>>75 美しいなあ…白の人はホント細いからなあ。
(゚Д゚)人(´┏┓`)<GJ!
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )前スレ>723-764ノ続キヲジサクジエンガオオクリシマス
>嘘つきさんと漫画家さんその後?
>またスレをお借りします。16/16くらい
82 :
01/16:2006/05/23(火) 22:12:22 ID:m9q8Jpl3
請け負っていた某ライトノベル小説家の文庫本カバーデザインの最終案が仕上がった。
好きな小説家から直接依頼されて多少舞い上がり、強引に自分のスケジュールに捩じ込んだ仕事だ。
月事の通常業務に加えて、僕の漫画家さんの連載作品の次巻コミックスの編集と仕上げをしなくてはならない時期で、多少忙しい。
漫画家さんの方は連載が一段落して、来月は休載予定だ。
少しの間ではあるが、骨休みも出来るしゆっくりプロットを切る時間もある。
彼にしてみれば、そのプロットこそが一番の気苦労らしいので、普段より時間に余裕があっても苦しみは一緒らしいが。
仕事場には僕以外、誰もいない。当たり前だ。
漫画家さんは現在、切羽詰まった仕事がない。必然的に彼に付いているアシさんも必要がないので、僕一人で自分の首を絞める業務を軽くする為に、仕事場に残っている。
望んで絞めているのだから、別に構わないのだが。
無人の仕事場で、深夜のアニメ番組をBGMにマウスを動かす。
この仕事場には、漫画家さんと僕の机以外は、決まった人間の席がない。
僕は普段から数台のパソコンを使うので、自席以外に座って仕事をする事もよくあるのだが、漫画家さんは自席以外に座る事がなかった。
彼が席から退くのは仕事場にいない時だけなので、仕事場で働いている誰かが彼の席に座る事もあまりない。
漫画家さんの席は彼だけの物だ。
だが、深夜。人気が無い仕事場で僕は漫画家さんの椅子に座っている。
普段僕が使っている椅子は開いたままだ。
漫画家さんがいない時はいつも漫画家さんの椅子を使っている。
83 :
02/16:2006/05/23(火) 22:14:15 ID:m9q8Jpl3
それだけで作業が捗った。
僕は長年愛用しているメールソフトを立ち上げて最終案を送信した。
デザインにOKを貰うまで仕事が終わったとはいえないが、それでもひとつやり終えた事に変わりない。
漫画家さんの椅子に座ったまま、メールの送信日時を何気に見て苦笑する。
気付けば窓から薄らと陽の光が紛れ込んでいた。
深夜アニメを流していたテレビは、男女二人のニュースキャスターがスタジオに並んでいる映像に変わっている。
寝不足だ。だが気分は悪くない。
喉の乾きを覚えて、僕は簡易キッチンに備え付けられている冷蔵庫の扉を開けた。
中には、最後に冷蔵庫の中を見た時には無かったビールが一本入っていた。
『全部終わってから飲むこと』
と、缶に直接、赤いマジックで書いてある。幼い少女が書く様な可愛らしく丸い文字だった。
僕は有り難くビールに手を付けた。酒はあまり得意ではないが、仕事を終えた後に呑む一口の快感は知っている。
缶の中身を飲み干し、ゴミ箱に捨て様として躊躇った。
暫く缶を眺めて、結局自分の机の上に置く。
僕の漫画家さんが書く文字は、それだけでも彼の作品の一部だ。
無性に、僕の漫画家さんに会いたくなった。
仕事場の入り口付近に掛けているホワイトボードに眼をやる。
彼のスケジュールは昨日と変化無かった。細長い線が横に伸びて、ネームと書かれている。
僕は椅子から立ち上がり、仕事場を出た。
小学生の団体が二人の女性に連れられて登校している。
チワワだろうか。三匹も犬を抱いた女性が、同じ年頃の女性と立ち話をしている。
僕はその横を寝不足の足取りで通り抜けた。
84 :
03/16:2006/05/23(火) 22:15:09 ID:m9q8Jpl3
外は眼に痛い程明るい。今日はきっと晴れるだろう。
午前中は僕の予想通り確かに晴れた。
だが、正午を過ぎた頃からぽつぽつと雨。
まるで僕の心境そのものじゃないか。僕は自嘲気味に笑った。
僕はその日、僕の漫画家さんに告白をして、振られた。
散々な一日だった。
昨日の話だ。
昨日の話だった。
それが今朝、一転した。
「お前を好きかも知れない」
昨日、僕を振った漫画家さんが、僕に向かって言った。
これは妄想ではないか。
以前、願望と妄想と現実の境目が分からなくなる病があるとクイズ$ミリオネマでやっていた。
通称、モウ症だったか。自分の頭の中で作った存在しない歴史を、現実にあった出来事だと信じてしまう病だそうだ。
実際は結婚してないのに自分の中ではしていて、友人止まりの人間を結婚相手だと思い込んでいたり、一度も就いていない職種が自分の職だと信じて疑わなかったり、どこにもいない兄妹に、手紙を書いたりするという。
極端な例だと、見ず知らずの家族を自分の家族だと思い込んで、毎日、現実には知らない家に帰って行く人間もいるそうだ。
理想とする自分と現実との隔たりを、病んだ脳が縮めて合体させる。人間の身体は何と複雑で繊細なんだろう。
恐い病だがある意味幸せだと思うのは、僕が、どうあがいても捨て切れない現実を歩んでいるからだろうか。それともすでにいかれているのだろうか。
何にせよセーラさんのシャワーシーンリメイク版を見るまでは狂えない。
遡れば、振られたてでハートブレイク三昧だった僕だが、それでも昨日一日でなんとか出社出来るまでには立ち直っていた。
85 :
04/16:2006/05/23(火) 22:15:51 ID:m9q8Jpl3
立ち直ったという言い方には語弊があるので訂正。立ち直ったのではなく、無理矢理立ち直っている素振りをしていた。
野望はさて置き、現実の僕は日本の平均的な一般市民である。
社長という肩書きを肩といわず身体の至る所に乗っけて、ツテを頼りつつ地道に仕事を貰ってはこなしているという状況で、一日でも無断欠勤する余裕等ない。
元々自宅を仕事場にしていたが、作業効率が悪いという事で最近新しい仕事場に移ったばかりだった。何かと出費が激しい上、元から繁盛には程遠い位置にある。
たまにきりきりする胃お慰める為に茶色い液体で白い錠剤を流し込んで机に向かう毎日だ。
僕の漫画家さんが白い錠剤をに手を伸ばしたら無論止めるが。
栄養ドリンク剤もあまり飲み過ぎないで欲しいのだが、彼はどうやら栄養ドリンク剤やサプリメントを集めるのが趣味らしい。
僕も含めてオタクと呼ばれる人種に収集癖があるのはどうしてか。
先日、時間があったので同じ人間が書いたオタク関連の本を二冊読んだ。
文体がオタクに優しくそれなりに楽しく読ませて貰った。だが、結局同じ作者だったからか、二冊の内容に大きな変化が無かったのは残念だった。
どちらも要約すれば、オタクは日本の文化で誇りらしい。埃でもあるんじゃないかと僕は思うが。
豊富な知識と教養で収集に余念が無いとか何とか。
何だか使い古された表現である。
漫画オタクとアニメオタクにしか触れておらず、僕が知りたいと思っていた事柄には踏み込んでいないのも残念だった。
何故収集癖があるのかを問うのではなく、それで得られる満足感に付いて考えるべきか。
結局オタクの心理なんて、オタクの数だけ千差万別。
愛の鉾先は皆別物。
鉾先の向かう先がオタク好みだと言われる物であればオタクと呼ばれる事になるのだろうか。
答えがないまま取り留め無く続けるのは建設的ではないので、今僕が出せる結論。無理だ。
86 :
05/16:2006/05/23(火) 22:17:14 ID:m9q8Jpl3
結局僕は自分をオタクだと納得しているが、オタクの何たるか等理解出来ていない。
一生理解出来ないだろうと思っている。
僕自身、漫画やアニメが好きで関連する仕事を選んだが、何を思ったのか、愛の鉾先は、ドジっ娘メガネっ娘ではなく、眼の小さい三十を越えたおっさんだった。
彼が僕好みのメガネっ娘を描くとはいえ、彼自身はおっさんだ。
女の子ですらないとは一体どういう事なのか。
自分の事ですら理解出来ていないのに、万人のオタクに付いて何を言える訳もない。
話が逸れた。
錠剤の変わりと言っては何だが、「疲れた」「癒して」「温泉」という漫画家さんの叫びはなるべく聞き入れるようにしている。三十を越えたおっさんに無理はさせたくない。
あと二十年以上は、働いてもらわなくてはならないのだ。
請け負っている仕事の目処が付き次第対応している。
しかし温泉とは。
僕の漫画家さんは、見た目だけでなく思考もすっかりおっさん色である。事実、おっさんだが。
温泉もドリンク剤も日々の糧すら、仕事が無ければ始まらない。
深夜アニメを観る為でなく、寝る間を惜しむ。
そんな時必ず「ちゃんと寝なあかんで」と言ってくる僕の漫画家さんの眼も赤い。漫画家さんの睡眠時間も限られているからだ。僕が忙しい時は大抵は彼も忙しい。
気遣いを有り難く受け取り、彼にもちゃんと睡眠を取れと言う。
とはいえ、彼は自分の職業が体力勝負だと知っているので体調管理に抜かりは無い。
会社を設立する前から、注意してきた結果だ。
彼は話作りにも作画にも妥協を許さないので、一コマ一コマ丁寧に描画している。
87 :
06/16:2006/05/23(火) 22:19:29 ID:m9q8Jpl3
単純な絵にも漫画家さんのこだわりが鏤められていて、僕も出来る限り彼が快適な環境で漫画を描けるようにしてやりたい。彼の漫画が評価される様に。
一般的に仕事として目立っているのは商業雑誌で月一連載漫画を描いて、コミックスを発行している漫画家さんで、実際見える所以上の仕事もこなしている。
だが、それを影ながら支えるのが仕事の僕も、休む余裕もなく、
就業と残業とプライベートの区別もつかない社長業をこなしている。
それが、結構な重力の僕の任務で僕の責任。休む暇なんて微塵も無いのだ。
たかが。
そう。
たかが、失恋で、そうそう休める訳がない。
失恋相手と同じ仕事場ということで、なるべく気不味くなりたくないのも事実だから見せ掛けの状態で、僕は出社した。嘘だ。
本当は、立ち直った素振りすら出来ていなかった。
実際は、たかが失恋で、仕事場に出社する気になれず。
かといって構想中の企業から請け負ったデザイン関連の仕事に手を付ける気力もなく。
漫画家さんの新刊の編集作業に励むでもなく。
自宅のベッドの上でHDDに溜まったメガネっ娘画像を眺めたり、何かよー分からん稚拙な駄文をだらだらメモ帳に打ち込んでいた。
自分で読み返してみたが意味不明だ。オタク?
柔らか羽毛を使っている布団の上なので、キーボードは叩き難く、マウスも操り難い事この上ないが、起き上がるのは億劫だった。
今も僕が自宅で使っているノートパソコンは八年活躍の古株である。昔はよくこれを持って僕の漫画家さんの家に遊び行った。
まだ会社を設立前の話だから、僕の漫画家が近所の漫画家だった頃だ。
昔といってもさほど前ではない。それなのに懐かしく感じるの何故だろうか。
88 :
07/16:2006/05/23(火) 22:21:28 ID:m9q8Jpl3
仕事をしている漫画家さんの背中に凭れて、持ち込んだパソコンで仕事関連の文章を綴っていた。
漫画家さんはさすが漫画家というだけあって、ネタがそれなりに面白い。
小さな話題でも必ずオチを付けて話すので、僕のキーボードを打つ手が止まる事は少なかった。
漫画家さんはかなり鬱陶しそうにしていたが。
僕が漫画家さんに凭れている間、彼はペン入れを出来なかっただろうが。
僕にとって、彼の暖かい背中は仕事をはかどらせてくれる一番のアイテムだったのだ。
漫画家さんの家で漫画家さんの隣で、ごろごろしているのが一番幸せだった。嘘だけど。
いや、多少事実。
何せその頃から僕のKOIGOCOROは僕の漫画家さんに向かっていたのだから。
嘘です。
いつ向かったのか等もう忘れてしまった。
そんなハートブレイク絶好調の僕の家に漫画家さんが来たのは、メガネっ娘画像のひとつをノートパソコンのディスクトップに指定した時だった。
僕が漫画家さんの家に遊びに行くことも、漫画家さんが僕の家に来ることも日常だったので、出社しない僕に電話ではなく会いに来たのはそう驚くことじゃない。
しかも昨日、僕は仕事場で思う存分項垂れていたのだ。
心配くらいはするだろう。
僕自身、さすがに昨日の今日で彼の顔を見るのは厳しいと思いながらも、来るだろう予感はあった。
だが、「お前を好きかも知れない」等と言うとは思わなかった。
昨日僕が言った告白とまったく同じ言葉だ。彼が普段使う関西弁イントネーションでは無く下手な標準語。
同情か嫌がらせか僕の感情とは別の想いなのか。それとも深く考えていないのか。
89 :
08/16:2006/05/23(火) 22:22:03 ID:m9q8Jpl3
何にせよ、自分の家にいてまで居た堪れない心地を味わわなくてはならないのは理不尽だ。
玄関先で、「好きかも知れない」と告げた漫画家さんは、僕には構わずさっさと中に入って、冷蔵庫から無断でペットボトルのお茶を出して飲んでいる。
どうせ、嘘、なのだろう。
僕の漫画家さんが僕に便乗せずに嘘をつくのはなかなか珍しい。
居た堪れない心地を通り越して、気分が悪くなった。
眼が痛い。昨日の如く泣いてみせようか。
嘘だと見破られていたのだろう、全く功を奏しはしなかったが。
昨日、僕の漫画家さんが、嘘だと思って僕の想いに答えてくれたのだと分かっていながら。
もう二度とないチャンスだと思ってしまった。
少しだけ。気付くまで。嫌がるまで。逃げられるまで。出来そうな所まで。
僕の漫画家さんは良い意味でも悪い意味でも無邪気で、自分の行動を顧みない節がある。
僅かなアルコールに勢いを付けて僕は調子に乗った。
中途半端だったがあれも一種の強姦か。
漫画家さんが、ペットボトルのお茶を飲み干して、僕を見た。
「なあ、嬉しいって言ってくれへんの? 俺は言ったのに。嬉しい、俺も好きやでって」
僕の漫画家さんはきっと怒っている。僕を虐めて楽しんでいるのだろうか。
よく見れば少し笑っている様に見える。惨めだった。
漫画家さんは僕が傷付くだろう言葉を的確に使用する。
これでも反省しているのだから、好きでもない相手に好きだなんて言わないで欲しい。
昨日「嘘だと思っていた」と言われた時点で僕は覚悟したのだ。
いつも嘘ばかり付いている報いか。
人を傷付ける嘘は付かない。付いているつもりもなかった。
だが結局は自分が付いた「好きじゃない」という嘘に、自分で傷付いた。これでは本末転倒だ。
反省だって、した。
90 :
09/16:2006/05/23(火) 22:23:05 ID:m9q8Jpl3
だが僕の漫画家さんは遠慮なく追い打ちを掛ける。
「なあ、好きなんやろ?」
「……悪かった」
「社長は俺の質問になかなか答えへんなあ」
漫画家さんが可笑しそうに言った。
嘘付いて悪かったよ。押し倒して悪かったよ。
そう思えど、言葉にするのに戸惑った。
嘘だからだ。
反省はしているが、悪いとは思っていない。
顳かみを押さえて唸る。
普段ならすらすら出る嘘が出て来ない。
昨日もそうだった。ずっと嘘を付き続けて空回る気力なんて無かった。素振りすら面倒だった。
落ち込みたかったからひたすら落ち込んだ。
漫画家さんが僕の傍に寄って、にこりと笑う。
「なあ、それ、自分に思ってるん?」
「……何だって?」
「悪かったって。自分に嘘付いて悪いと思ってるんちゃうの? 俺やなくて」
確かに、僕は傷付いていた。だから傷付いている自分に悪いと。思っているのだろうと、漫画家さんは言うのか。
「言ってみ。ほんまは嘘ちゃうって」
本当に言っていいのか。
昨日、僕の漫画家さんは困惑と嫌悪を隠さず、僕に「俺の事を好き」なのか訊いてきた。
いい気持ちはしなかったはずだ。気持ち悪いと、思ったはずだ。
彼も僕を好きだと言ったが、それは僕が望む感情と同等ではない。
だから僕は否定したのだ。
彼の問いに、彼の望む答えを返した。自分に嘘をついて。
昨日、一瞬、仕事関係を盾に、強引に組み敷いてしまおうかとも考えたが出来無かった。
結局僕は彼が嫌がる事など出来ないのだ。
「嘘なんか」
91 :
10/16:2006/05/23(火) 22:23:57 ID:m9q8Jpl3
ついていない。
最後まで言えなかった。
彼にまた、無理だと言われるのは辛い。
漫画家さんが嫌がる事だけで無く、自分も傷付きたくないとは。
「ああ、もうー」
呆れた声と共に、僕の漫画家さんが、膨らんだペンだこを飼っている指を僕の顔の前に持ってきて、眼の前で拳を作った。
殴られると思い、咄嗟に眼を閉じる。
多少身体が揺れたが、避ける気はない。
しかし、想像した衝撃は来ず、かわりに温もりが触れたのは僕の唇だった。
少しかさついていて、けれど柔らかい。
僕が仕掛けた訳じゃないから昨日とは全く別物だった。所為、バードキスというやつか。
眼を開ければ漫画家さんの顔が間近にある。
「……うそ」
「つきは泥棒のはじまりでーす」
彼が今のセリフを漫画で使おうとしたら全力で止めよう。恥ずかしい。
恥ずかしくて馬鹿馬鹿しくてベタすぎて、思わず口を歪める。
言葉が好きだ。言葉を使うのが好きだ。
考えて考えて考えて、自分の思考を相手に伝える為にまた考える。言葉を伝えるのは人間の重要なコミュニケーションであり、愛情表現であると思う。
結局、自分の頭の中で言葉をこねくり回し過ぎて、口にするのが面倒臭くなったり、上手く纏める事が出来ずにどうでもよくなる時もあるが、それでも僕にとって伝える相手がいて、相手に何かしらの想いを伝える事が出来る言葉が好きだ。
言葉を選び考え、話せる事に感謝している。
嘘だって言葉が分かる人間が相手だからつくんだ。
だが、今は。
僕は無言だった。
92 :
11/16:2006/05/23(火) 22:24:47 ID:m9q8Jpl3
無言で、僕の漫画家さんの腕を捕まえて、彼の伸びた髪が触れる肩に、自分の額をあてた。
腕を掴んだ掌と額。漫画家さんに触れた部分の熱がじんわりと僕に伝わってくる。
漫画家さんが肩を竦めたので、同時に僕の頭が揺れた。
「……なあ、もっとちゅう、せーへんの?」
小さな声が耳に届く。
僕の身体が勝手に震えた。
恋泥棒だなんて、よく言ったもんだ。
恥ずかしくて馬鹿馬鹿しくて、ときめいた。
そんな感じで本日の妄想混じりの回想終わり。
いや、本当に、恋泥棒だなんてよく言ったもんだ。
93 :
12/16:2006/05/23(火) 22:25:27 ID:m9q8Jpl3
ちなみに、僕の漫画家さんは今、僕の隣で僕と同じように寝転びながらベックの最新刊を読んでいる。
季節に反してなかなか暑いので、掛布団は腰までしか掛けていない。上半身裸で臀部も半分見えている。
鼻血ぶーだ。嘘だ。
さすがに、見事に弛んだ裸を見て鼻血を流す程マニアではない。
一応、やることはやったが。
嘘ではなく、僕の漫画家さんが強請ってきたのだ。
漫画家と好奇心ってイコールなんだと改めて実感した。
最中の漫画家さんは大変、エロうるさかった。
何故セックス中に笑ったり雄叫びをあげたり口笛を吹いたりするのか僕には理解出来ない。
雄叫びや笑いはまだ良いとして、口笛はどうにも気になったので、途中で何故吹くのか訊いてみた。だが、僕の質問は耳に入らない様で。答えではなく変な呻きしか返ってこなかった。
それでも、何だかんだで終わった後に、僕の漫画家さんが「受身にまわると何か自然に喘ぎ声みたいなんが出るなあ、不思議や」と、呟いていたのは印象的だった。
僕にはオークの呻きにしか聞こえなかったが。
きっと快感を制御出来無かったのだろう、と都合良く考える。
漫画家さんの顔から読み取るに、強ち間違ってはいなさそうだ。
僕も、初めてにしてはそれなりに気持ち良かった。
漫画家さんも「オナニーより良かった」と言っていた。
「それは何よりだ」という返事以外に、何と返せば。
94 :
13/16:2006/05/23(火) 22:26:03 ID:m9q8Jpl3
「なあなあ。紗耶香ちゃん好きやろ」
漫画家さんが首だけ僕に向けて話し掛けて来た。
「まあな」
紗耶香ちゃんとは漫画家さんが今読んでいる漫画、ベックに登場しているメガネっ娘の名前だ。
海外へ行ったヒロインの変わりに近巻で登場しているメガネっ娘で、なかなか良質メガネっ娘だ。
ヒロインと立場を取って変わるという展開を期待しているが多分裏切られるだろう。
ついでに、少年漫画の掟みたいなものを打破出来る漫画だと思っているので、初期からのバンドメンバーである千葉がベックを出て行くという展開も期待しているが多分裏切られるだろう。
「お前は千葉を気に入ってるんだったか」
紗耶香ちゃんは漫画家さんも好みだと思っていたのだが、口振りからしてどうも違った様だ。
漫画家さんは唇を尖らせて返事を返さない。どうやら怒っている。
「……」
僕が千葉がメンバーを離れればいいと言った事はないはずだが。
「どうした?」
「自分、」僕を振り返る。
「俺の描くめがねやなくても萌えるん」
なかなか可愛い事を言うので彼の耳を抓った。
さらに怒らせてしまったようだが、どうでもいい。僕は、尖った唇に口付けたくなった。
漫画家さんにキスしていいか訊ねる。
「……今、構想中やねん、邪魔せんといて」と眼を閉じながら鬱陶しそうに言われた。
つい数分前まで、「ちゅう上手いなあ、もっとしようや」と散々言っていたのは一体どこの誰だったか。
訊かずにさっさとすれば良かった。
95 :
14/16:2006/05/23(火) 22:26:38 ID:m9q8Jpl3
ぼーっとしてるだけだろうとか、漫画を読んでたんだろうだとか、眼を閉じると誘われているようだとか、どうせこのまま寝てしまうんだろうとか、いろいろ思う所があるにはあるんだが、それでも、僕が、僕の大事な漫画家さんに逆らえる訳がない。
取りあえず、「あとで必ずな」と念を押すに留めて置いた。
無理矢理するのは、漫画家さんが何かと馴れた頃にしよう。
僕も勉強したい事柄が山程増えた。
漫画家さんの剥き出しになった背中に、掛布と僕の腕を回しながら、僕も眼を閉じる。
押している仕事は無かったか。すでに日は高い。
仕事場へ行かずとも仕事は出来るし、僕の漫画家さんと打ち合わせも彼の体調管理も僕の仕事である。
腕から伝わってくる漫画家さんの体温は平常より高く感じる。
眠いのかすでに眠っているのか。
どうやら今日は一日中、僕の家で過ごす事になりそうだ。
仕事場の週間スケジュールを書いているホワイトボードを頭に思い浮かべ、本日中に終わらせる仕事と、明日のスケジュールを綿密にシミュレーションする。大きく予定を崩さずに済ませたい。
昨日早朝に送った文庫本カバーデザインに関するメールの返信が来ているだろうから、後でメーラーを立ち上げて、チェックしよう。
つらつらと考えていると、僕の漫画家さんが身動いた。
眼を開ける。さっきまで俯せになっていた彼は、いつの間にか、僕の方へ顔を向けていた。
眼は瞑ったままだ。口をわずかに開けて、一定の間隔で呼吸をしている。
どうやら本格的に寝入った模様。
そういえばこんなに間近で漫画家さんの顔を見る等、今まであまりなかった。
親指で漫画家さんの額から唇までゆっくりと一撫でして、顎に薄らと生えた髭のざらりとした感触を楽しむ。
一瞬、漫画家さんの呼吸が乱れたが、僕が手を離すとまたすぐに戻った。
萌えとは一体どこから湧いてくるのか。
96 :
15/16:2006/05/23(火) 22:27:20 ID:m9q8Jpl3
「……どう贔屓目に見ても、立派なおっさんなんだがなあ」
僕の鉾先は、何というか、とても、優秀だ。
暫く漫画家さんの寝顔を見ならがごわごわの頭を撫でたり、目元の皺の数を数えたり、鼻穴の大きさを指定規で計ったりしていたのだが、結局僕もいつの間にか眠ってしまった。
目覚めたら、漫画家さんは僕の隣にいなかった。
部屋の中にもいない。玄関から靴も無くなっていた。
多少残念だったが、別にこれっきりという訳じゃない。
僕は予定通り、パソコンで使い慣れたメールソフトを起動する。
容量の大きい物が混じっているのか、少し受信に時間が掛かった。
受信している間、僕の漫画家さんが途中まで読んで枕元に置いていったベックの新刊を手に取る。違和感があった。
中を開き、字を読まずに絵を眼で追う。
数頁綴って、最終頁までぱらぱらと一気に開く。
全頁を隈なく確認した訳ではないが、見た頁は全て、登場人物が全員メガネっ娘とメガネ野郎に変わっていた。
驚いた。
漫画家さん、無闇に商売道具が疲れそうな事はしないでくれ。
そんな感想。
97 :
16/16:2006/05/23(火) 22:29:03 ID:m9q8Jpl3
以上。
半分は出鱈目でだいたいが妄想で微妙に事実。も含まれる。ここ重要。
僕も、毎日嘘ばかりついている訳でもないみたい。
たまにはこんな日もあるみたい。
それなりに幸せみたい。
今日は晴れみたい。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ
>嘘ばかりダカラナー
>ソレニシテモ誰コレ面影皆無ダカラナー…
>お邪魔しました
>>98 リアルで投下に遭遇して、感激です!乙です!
社長、愛しすぎ…(*´Д`)ハァハァ
>>98 続きが読めて嬉しい!しかも社長視点!
面影って、もしかして元ネタありですか!?
漫画家と社長でググッてもみつけられなかった
ヒントきぼん
>PLAY ピッ ◇⊂(□∀□ )白緑に続いて、橙青を投下してみます。
102 :
計画橙青1:2006/05/24(水) 00:11:11 ID:zPv9u6Oc
突然ですが。
世間一般の意見では「見返りを求めないのが愛」というのが定説だそうで。
ふと、自分の事を考えてみる。
僕が彼に求めている物といえば、社会に不必要な激しい動きとあの顔だ。
それを見て、何やら心満たされる自分がいる。
そして彼は、そんな僕を見るのが好きで更に動いているらしい。
これも、愛の内に入るのか?
そうか、愛か。
いかりや氏の体を完コピしたとまで評された僕の体さえ、彼は好きだと言う。
それも愛…とも思ったが、彼はいかりや氏自体好きだったな。
僕は所詮、永遠の二番手か。
「だめだこりゃ」
彼の物まね(もちろん顔付き)が脳内で再生されて、少し噴いた。
そして、いつもの様に幸せな気分になった。
やっぱり僕はあの人が好きなんだな、と思う。
名前を呼ばれるのも、本当は好きだし。
それはさすがに恥ずかしくて、口に出して言えないけどさぁ。
ちなみに、舞台上で股間を触られるのは未だにしっくり来ていない。
そこは強調しておかなければ。
「比呂氏…」
「はい?」
「エッチの最中に、違う事考えて現実逃避する癖やめろや」
目を開ければ、汗だくの彼が僕の上に。
そうでした、今は性交渉の最中でした。
そして僕の中に、彼の何かが入っている模様。
これは相性の問題か、十二分にしっくり来ています。
しかし、自分の喘ぎ声だけは相変わらず許せません。
故に、現実逃避しているわけです。
…と、彼に説明したところ問答無用で腰を動かされた。
ひどい。
それからしばらく、部屋には二人分の荒い息遣いだけが延々と響いて。
背中にきつく回した腕も、段々だるくなって来て痺れ始めた頃。
我慢出来ずに、僕の口から小さく声が漏れました。
あなたが好きだ、と。
彼には聞こえてなかったみたいだけど、それでもいいや。
愛の言葉なんて、まだ僕には似合わないでしょうから。
□ STOP ピッ ◇⊂(ヽ`∀´>σ"(□∀□;)本命の割に、短文しか書けませんでした…。
でも好きです、この二人。
>>104 計画2本ともおいしく頂きました
青受けスキーの自分には堪らなかったよ。ありがとう!
今週末の某大イベントの去年の覇者→それをグランプリで下した相手
萌えを吐くところがわからないのでここに……人間じゃないナマモノでスマソ
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
107 :
1/2:2006/05/24(水) 18:10:19 ID:AVgiR8Hu
―ああ、またこの日が来るんだ……一生に一度だけの、頂点への戦い
日ごとに賑わう関係者達を見ながら、僕はしみじみそう思った。
賑わう反面、ぴりぴりもしている。それは、去年の僕も同じだった。
そう、去年参加した僕は、この時にはもうどうしようもないほどの自信と気合と、
それとあらゆるところからかけられる期待の重圧に押しつぶされそうになっていた。
―まあ、秋ほどじゃないけどね
心地よい風に目を細めながら、くらくらするようなあの秋の日も思い出す。
史上六番目の偉業への、最後の戦い。そしてそれを期待通りに成し遂げて満ち足りた思いと、
自分がこの世界全ての頂点に立ったような傲慢な自負……
でもそんなものは去年の終わりの冬、一つ年上の彼に木っ端微塵に砕かれてしまった。
108 :
2/2:2006/05/24(水) 18:11:02 ID:AVgiR8Hu
―なのに彼、その後海外に行っちゃうし。しかもそこでも勝っちゃうし
僕との再戦なんて、きっとどうでもよかったんだろう。
確かに、再戦なんて負けた側しかこだわらないものなのかもしれない。でも。
―向こうで会ったら、どんな顔をするかな
彼も僕と同じ、世界最高レベルの難関に登録したことを、ついこの間のニュースで知った。
あの日の着差は1/2。
海の向こうでなら、越えられるだろうか。
越えたら、彼は僕のことをもっともっと気にしてくれるだろうか。
―あー、でも自分自身以外に興味を持つような性格じゃなさそうなんだよなあ
追いかけるのは僕ばっかりか。まあいいや、僕って追い込み得意だし。
中山でもフランスでも、ずっとずっと追いかけて……追い越してやるから。
去年はゆっくり味わうことができなかった爽やかな初夏の風を受けながら、
僕はあの冬に見た彼の滑らかな後姿を脳裏に思い描いていた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
三冠君はもっとお坊ちゃんでもいいかと思ったけど、多少ふてぶてしいかなと。
凱旋門で再戦、今からwktk
>>107-110 日曜の美少年祭り(曲解)前にGJ!!
昔はスレとかあったけど、そういえばいつの間にかなくなってたね……
ひそかに「後方から三冠君を見つめる(微ストーカー気味)大統領」なんてのもいいかも。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 某ビール会社のCMに出演中の5人組だよ
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 碇さん視点の青シャツx黄色シャツ(多分)だよ
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ワタシニシカ ジュヨウガ ナインダロウナ...
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
ふうん。なるほど、道理で尻がスースーするわけだ。
俺は尻をぽんぽん叩きながら、首をねじって肩越に自分の尻を見ようとした。
めっきり身体の硬くなった俺に尻の様子を見るのはちょっと無理だったが、別に
わざわざ確かめなくたってどうなっているかくらいわかる。
さっきから、フ゛ラウソやヶン├がくすくす笑いながら何度も何度も嬉しそうに
俺を覗きに来るわけが、ようやく掴めたぞ。
気がつかない俺も俺だ。あいつらめ、よくも俺の一張羅を。
俺は持っていたトンカチを放り投げると、ぷんすか息巻いてフ゛ラウソやヶン├の行方を追った。
年甲斐もなく屋根の上でじゃれ合っていたあいつらが踏み抜いた、
ぼろぼろに壊れた屋根の穴を、わざわざ俺が直してやっていたのに。
性懲りもなく、今度はその俺のズボンに穴を!
もうこうしちゃおれん。我慢の限界だ。
とっくりとお説教を食らわせてやる。ついでにゲンコツを二つほどくれてやる。
フ゛ラウソやヶン├を追う途中で、ハンモックに揺られながらのんきにウクレレを弾くJコフ゛、
準備運動で身体をほぐすマッ├を見かけた。
まったく、結局、面倒な雑用ごとは全部俺で、あいつらは遊びほうけるばかりだ。
たまには手伝ってくれてもバチは当たらんだろうに!
息巻く俺がどたばた走り回るのをのんびり眺めながら、Jコフ゛は手に持ったウクレレをぽろんと鳴らした。
「どうしたんだい、アン力一。そんなにいそいで」
「フ゛ラウソとヶン├を探してるんだ。あいつらめ、俺のズボンに穴を開けやがった」
鼻息荒く大声を張り上げる俺の言葉に数拍おいて、Jコフ゛は笑い出した。
あいつったら、いつだってワンテンポ―――いいや、ツーテンポ、ひょっとしたらテンテンポ遅いんだから。
「災難だったねえ、アン力一。きみの一張羅が台無しだね」
「全くだ。あいつらめ、目にもの見せてやるぞ」
数拍おいてまたJコフ゛は笑い出した。
「Jコフ゛、あいつらがどこに行ったか知ってるか?―――めぼしい場所は探したんだが」
小屋の中、屋根の上、裏庭、あいつらがよくふざけて追いかけっこをしている原っぱ、
全部探した。―――でもあいつら、どこに消えたのか、ちっとも見つかりゃしない。
俺はJコフ゛の足元に転がっている大きな石の下を覗き込んでみながら尋ねた。
数拍―――いいや、今度は数十拍だろうか。
だいぶ待たされた後、Jコフ゛ののんびりした声が頭の上から降ってきた。
「でもねえ、アン力一。今はよしといた方がいいと思うなあ」
言い終わるとぽろん、とウクレレを鳴らす。こいつの癖みたいなもんだ。
こいつときたら、寝る時まで楽器を手放さねぇんだから。
「何でだよ?あっ、もしかして、あいつら……またタチの悪い悪戯を」
そうか、そういうわけか。
道理で姿が見えないわけだ。
「ふん、どんな悪戯をされようと構うもんかい。返り討ちにしてやる」
言いながら、俺は握りこぶしを顔の前で振ってみせた。
曖昧な表情を浮かべながらしばらくウクレレを弾いていたJコフ゛は、
ハンモックからはみ出た脚をぶらぶら揺らしながら、ため息をついた。
「別にいいけど。僕は責任もてんからね」
乗り気じゃなさそうなJコフ゛から聞き出した情報の元へ、俺はすぐさま駆け出した。
あいつらは今、丘の上の大きな木の下にいるらしい。
お気に入りのビールと少しのおやつを持って、よく俺たちがピクニックに出かける場所だ。
あいつらにとっても、俺にとってもお気に入りの場所。
一体ぜんたいどんなくだらない悪戯を仕掛けてるのか知らないが、もうあいつらの好きにはさせないぞ。
原っぱまで出ると、なるほど、丘の上の丸太に並んで腰掛けて、脚をぶらぶら、
楽しそうに何やら話し込んでいる。
全く、どんな悪質な悪戯事を相談していることやら。
俺は素早くそばの木の陰に隠れ、駆け出した。
のんきに話し込んでいるあいつらの後ろから飛び出して、驚かせてやろう。
目にしみるほど真っ青な空に白い雲、一面に広がる青々とした緑。
風にそよぐ木の下で顔を突き合わせ、ビールを手に、楽しそうに笑っている青シャツと黄色シャツ。
―――あいつらめ、俺が汗水たらして屋根の修理に明け暮れてる間、こんなところで悪戯の策略を―――
不公平だ。あまりにも不公平が過ぎる。しかもビールまで!あいつらめ!
足音をたてないように忍び足で奴らの後ろへ忍び寄りながら、あいつらをこっぴどく叱ってやった後は、
Jコフ゛やマッ├を呼び寄せてまた皆でピクニックでもしようかと、俺は考えた。
屋根の修理は、また今度。だって、青空の下、緑の中で飲むビール、想像するだけで幸せになれるだろう。
俺はそろりそろり、足音を忍ばせて、奴らのすぐ後ろの茂みへ身を隠した。
茂みからはみ出そうな大きな帽子はひとまず脱いで、茂みからそっと目を出して奴らの様子を窺う。
いつ飛び出してやろう。腰抜かすあいつらの姿が目に浮かぶぜ。
あいつらの肝を冷やす絶好のタイミングを探りながら、俺は耳をすました。
「やあ、アン力一の奴、いつお尻に気づくかなあ」
「あいつったら、鈍いんだもんなあ。全然知らん顔で、屋根の修理に夢中だもの」
「頭でっかちなあの頭も、工事したらいいのに。ついでに、あの下唇も」
ヶン├の言葉にそろってケラケラ笑いながら、あいつらは脚をばたばたさせて大笑いだ。
今に見てろよ。
ひとしきり笑った後、唐突に笑いがやんだ。
不自然な沈黙の理由を目の当たりにした俺の心境は、どう表現すりゃ伝わるだろう。
いや、無理だ。どんな擬音語を駆使しても、世界一分厚い辞書を片手に四苦八苦しても、
俺の驚きを明確に表現できる奴ぁいまい。断言できる。
だって、俺の見知った悪戯小僧ふたりが、仲良しの恋人同士みたいに唇と唇を密着させてるんだ。
「……わっ!ヶン├!何、これ!ウェッ!ペッ!」
「やぁ、引っ掛かった!アン力一が良く飲んでる薬だよ」
笑い転げながら丸薬の載った舌をこれ見よがしに突き出して、ヶン├は得意げに鼻を鳴らした。
あいつ!
「何でお前は苦くないんだよ。口の中にずっと入れてたんだろ」
「ヘーキだよ。だって、見てよ。ほら、薬の下に紙があるでしょ。
このままビールだって飲めるんだよ、ほら、こうして舌の下に隠して、ビールを飲めば……
ッウ!ゲホッ!ペッ!うわぁ、苦いっ!」
「馬鹿だなぁヶン├!あれ、紙は?飲んじゃったの?」
無残にも地面に吐き出された俺の薬。あれ、結構高いんだぞ……
あいつらめ、悪戯のためには男同士でキスだって出来るのか……恐れ入った―――
安堵して息を吐く俺の目の前で、またふたりの影が重なった。
今度はさっきのより長い。今度は何の悪戯だ―――
「嫌なキスの味だなあ。アン力一の薬の味だ」
嫌そうに舌を突き出すヶン├の髪を撫ぜながら、フ゛ラウソはくすくす忍び笑いを漏らした。
フ゛ラウソからヶン├へ、額へのキス、頬へのキス、鼻のてっぺんへのキス。
今度はヶン├からフ゛ラウソへ、頬へのキス、瞼へのキス、首へのキス。
一通りすんだら、ふたりはギュッと抱き合って、ビールをそろって一口飲んで、
脚を少しぶらぶら揺らして、またビールを一口飲んで、にこにこ笑いながら唇と唇をくっつけた。
目にしみるような青い空、白い雲、青々と茂る緑に囲まれて、ふたりの悪戯小僧はそのまま、
悪戯の策略を練るでもなく、時々思い出したようにキスしながら、ぶらぶら脚を揺らしていた。
とっぷり日の暮れる頃、ふたりは並んで丘を下り、マッ├やJコフ゛が待つ小屋のもとまで帰っていった。
―――結局、出るタイミングを逃しちまった。
俺は意気消沈した気分で脱いでいた帽子をかぶり、茂みから出た。
薄紫色に暮れた空の下、少し冷たいくらいの風が下から吹き上げてくる。
あいつらめ、何ともはや―――いやいや、何とも……
しばらくその場に佇んだあと、俺も帰ることに決めた。知らん顔をして帰れば大丈夫。
Jコフ゛には見つからなかったとしらを切り、あいつらには知らん顔をして
ズボンの悪戯のお説教をすればいい。
力強くうなずいて、俺は丘を下るべく勢いよく足を踏み出した。
―――ところで、踏み出した足に何かが当たり、その小さな物体がコロコロと丘を転がり始めた。
小石かとも思ったが、どうやら違うらしい。薄暗い中、あまり目の良くない俺でさえ、
あれは小石なんかじゃないと認識できた。ありゃ、缶だ。―――ビール缶。
俺はてっきり、あいつらが飲み干した空き缶を放置して帰ったもんだと思って、
あわてて転がる缶を追いかけた。あとでこっぴどく叱ってやろうと息巻きながら。
でも違った。ようやく追いついた先で勢いよく缶を拾えば、ずっしりと重い。
中身が入ってることは間違いない。
あいつらの忘れ物か?―――そうでもなかった。
薄暗い中、よーく目を凝らした俺が見た、缶に殴り描きされた汚い文字。
――― For u, Anchor! Enjoy, Peeping Tom! ―――
『アン力一へ!よく味わえよ、覗き魔さん!』
―――あいつらめ!
俺は勢いよく缶のプルタブを開け、一息に飲み干した。
青空の下で飲むビールもいいが、夕暮れの下で味わうビールも悪くない。
もし明日晴れたら―――皆で、また久しぶりにピクニックでもしよう。
―――この丘で。
その前に、帰ったら、あいつらにはきつーいお説教だ。せいぜい首を洗って待ってろ。悪戯小僧どもめ!
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | | 某 麦酒CMに登場する5人組があまりにも似てる上
| | | | ∧_∧ 仲良しな様子が可愛くてつい…
| | | | ピッ (・∀・ ) みんなソックリで可愛くて大好きなCMだ
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
(*゚∀゚)=3 オーーーッフ!!
GJ姐さん!
キタ━━(゚∀゚)━━ヨ
姐さんGJ!
これは良い!!! 姐さんGJ!!
121 :
1/6:2006/05/24(水) 22:43:50 ID:5LDKtuvj
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ヌプー×801ちゃん←シモソちゃん
もう終わりにしよう、なんて。
そんな悲しいこと言わないで。
気付いたのは、新月の夜しか逢瀬をしてくれない彼が満月の夜に急
いでどこかへ行っているのを見たからだ。
彼はなぜか自分の姿を恥じているようで…、明るいうちに外に出る
事はない。満月の夜だって、自分の姿がはっきりと見えてしまうから
、と、わたしからの逢瀬の誘いを承諾してくれたことはなかったのに
。
(なにを急いでいるんだろう)
なのに、どうしてこの明るい月光の下、こころなしか嬉しそうに…
走っているのだろう。
好奇心に駆られたわたしはそっと彼の後を追う。
それはただ、無邪気に、彼のことが知りたかったからだ。
数分後に、やめておけばよかった、なんて思うとも知らずに。
…わたしの金色の髪が月の光に照らされて、笑うかのようにきらき
らと光った。
122 :
2/6:2006/05/24(水) 22:44:43 ID:5LDKtuvj
「…どうし、て」
目の前に広がる光景に、思わず声を上げてしまう。
その声に気付いた彼と、そしてその逢瀬の相手…801ちゃんとヌプーは、驚いたように目を見開いた。
ヌプー。最近、このおいでよ801の森にやってきた新しい住人。小さい子が好きで、それでも恐がらせてしまう、と悩んでいた繊細な愛すべき隣人。その彼が、どうしてわたしの…恋人と?
「どういうことなの、801ちゃん…」
好きだったのに。君が。君だって、わたしを好いてくれていたでしょう、なのに…何で?
悲しくて、涙が零れた。涙に月の光が当たり、光る。
それを見て801ちゃんが、きれいだ、と、呟く。
「やっぱり、あなたと僕は住む世界が違うんだヤオイ」
それは、もう諦めきったような響き。
わたしは驚いて、801ちゃんを見詰めた。
わたしの視線から隠れるように、801ちゃんはヌプーに身を寄せて…。
「これ以上あなたと一緒にいても、801ちゃんが傷つくだけだプー」
ヌプーが、力強く言った。
「あなたと一緒にいることで、801ちゃんが森の住人達から何て言われているか、知っているのかプー?」
「え…?」
そんなこと、全然しらない。わたしのせいで801ちゃんに何か、よくないことが?
わたしは驚いて801ちゃんを見る。801ちゃんは少し、身じろぎをした。
「ヌプー、それは言わなくていいんだヤオイ。そのことは、シモソちゃんの責任じゃ、ない…んだヤオイ」
「いいや、責任はないとしても、知らない事は罪なんだプー」
「ヌプー…」
「住む世界が違うということを、知っていて欲しいんだプー」
きらきら光る太陽の下で、なんのてらいもなく笑って生きることができるシモソちゃんには、夜の闇の中でしか生きることのできない自分たちの事はわからない。それは仕方ないけれど、それを知らないで愛しいものを傷つけることだけはしないで欲しい。
ヌプーは、わたしを見つめてそう言った。
123 :
3/6:2006/05/24(水) 22:45:22 ID:5LDKtuvj
わたしは、知らない間に801ちゃんを傷つけていたのだろうか…。そう思うと、わたしの胸は張り裂けそうだった。
(そうだ、わたしが夜に外に出るのは、彼との逢瀬の新月の晩だけで、わたしはいつも太陽の下、笑って暮らしていたのだ)
(その間、801ちゃんが何を思い生きていたなんて、考えもしないまま)
今日外に出てきたのは本当にたまたまで、きれいな満月の下を散歩したいなんて思わなければ、ここに居ることもなかった。
わたしはぎゅっと目を瞑る。
そうすると、今までの彼との思い出が溢れ出す。
ああ、しあわせだった。すきだよ。でも、傷つけたくなんてなかった。好きになった事が、間違いだとは思いたくないけれど…。
「801ちゃん」
わたしはいっそ切なげに愛しい彼の名を呼ぶ。
「シモソちゃん…」
震える801ちゃんの声に愛しさが増す。
抱きしめたい想いが胸中を渦巻くけれど、それでも彼をしっかりと支えているヌプーがいる。
わたしは一度深呼吸をして、そして言った。
「すきだ、よ」
「ヌプーと幸せになってください」
そう言うと、耐え切れなくなって、わたしは羽を羽ばたかせて帰路へと急いだ。
残されたのは、801ちゃんと、ヌプーと…
124 :
4/6:2006/05/24(水) 22:46:01 ID:5LDKtuvj
「ほんとうに、これでよかったプー?」
「うん…、僕なんかとは別れた方が、シモソちゃんの幸せになるんだヤオイ…」
俯いた801ちゃんに、ヌプーは抱きしめたい衝動に駆られた。
震える体、いとしい。こんな形相の自分を見ても、やさしく笑いかけてくれた…そして確かに惹かれ合った。それは所詮傷の舐めあいなのかもしれないけれど。けれど二人はまだ恋仲ではなく、ヌプーは801ちゃんからの相談に乗っていただけで。
それを勘違いしたシモソちゃんに、別れを切り出してしまった。
それは良かったのか悪かったのか…。
801ちゃんが望んだことではあるけれど、心から望んだことではないはずだ。シモソちゃんを光の国へ返す為に、それはどれだけの苦渋の決断だったのだろう。
(こんな彼を慰めようなんて、そしてできればこっちを向いて欲しいなんて…、本当に、化け物なのかもしれない、自分は)
抗いがたい誘惑に、ヌプーはそっとその耳を801ちゃんの角に絡めた。801ちゃんは顔を上げ、そして笑って…。
二人は満月の下、暗い巣穴に帰って行く。
二人のよりそう影が、月明かりに落ちていた。
125 :
5/6:2006/05/24(水) 22:48:07 ID:5LDKtuvj
「…バーーーーカ」
木の上に、影がひとつ。
自分の寝床の下での修羅場に、望まないにも関わらず、一部始終を聞いてしまった。
後味が悪い、と、住職は思う…。
だって、誰も救われないじゃないか。
このあと801ちゃんとヌプーが付き合うことになったとしても、二人の間のしこりがなくなることは難しいのだろう。
シモソちゃんだって、とうてい801ちゃんを忘れることなんてできない…。
本当に、バカだ。
お互いを思いすぎて、想いすぎて、ばかだ。
住職は明るすぎる月に、おまえのせいだと責任を転換して、眠ることにした。
月は、何も言わない。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
分割まちがえました。これでおわりです。
住職寺格好ヨス
>>121 姐さんにこれから付いて行くことに決めたww
GJ!!!!
笑えばいいのか泣けばいいのか…でもあの化物達想像してやっぱりワロタwww
つか801チャンって語尾「ヤオイ」なのかよ!知らんかった
耳を角に(;´д`)=3
切ない…
でも住職の「バーカ」だとあのポーズしか思い浮かばなくてムカつくww
ちょww2ちゃんの珍獣大集合ktkrwww
でも切ない。萌えてしまった…801ちゃんとヌプーにwwGJ
>>111 ……っっ!ちょ、姐さん、私が今一番萌えてるCMだ!
ヤバス。萌えた。可愛いよ最年少可愛すぎるよ
リーダー大好きだよ
>>121 \ U /
/ ̄ ̄ ヽ,
/ ', / _/\/\/\/|_
\ ノ//, {0} /¨`ヽ {0} ,ミヽ / \ /
\ / く l ヽ._.ノ ', ゝ \ < ワロタ! >
/ /⌒ リ `ー'′ ' ⌒\ \ / \
(  ̄ ̄⌒ ⌒ ̄ _)  ̄|/\/\/\/ ̄ 最高
バロス
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) 最近ようやっと読み始めた、し/ゃ/ば/けシリーズより
屏/風/の/ぞ/き×若/だ/ん/な?
ねっとりとした昼間の熱気を残す空気は、夜半になっても一向に変わらない。
ここ十日程は雨らしい雨が降っていない所為もあるが、この暑さに人はずいぶんと参っていた。
案の定、長崎屋の若.だ.ん.なもこの暑さにやられてしまい、しおれた様になっている。
飯もろくに喉を通らず、一日おきに倒れているような有様だ。
床についてから半刻ほど。暑さで何度も寝返りを打っていた一.太.郎もようやく眠りについていた。
とはいっても、やはり寝苦しい事に変わりはないようで、眠りながらも無意識に、かけていた布団を
暑いとよけてしまう。半分ほど跳ね上げられた布団は上半身にはかかっていない。
そうしていくぶん暑さが紛れて気持ち良さそうに眠っていた一.太.郎に、ふわりと布団がかけなおされる。
直したのはその様子を伺っていた屏.風.の.ぞ.きだ。
風邪でも引かれては困ると思いかけ直したものだったが、やはり暑いのかすぐによけてしまった。
「やっぱり暑いのかねえ。あたしらには障りはないけど」
半分だけ屏風から体を覗かせながらそれだけ言う。
かといってこのままでいれば、暑さ負けに加えて夏風邪も背負い込みそうだ。他の者なら寝込む
だけで済むだろうが、この若.だ.ん.なでは生死に関わるかもしれない。というか、本当に危ない。
このまま放っておけば間違いなく怒りの矛先は自分に向き、水に沈められるか火にくべられるかだろう。
若.だ.ん.な、それ以外という秤で動くあの二人なら絶対やる。そんなとばっちりはごめんだった。
そんな屏.風.の.ぞ.きの気も知らず、一.太.郎が寝返りを打つ。
屏.風.の.ぞ.きはするりと全身を抜くと、一.太.郎の枕元に座った。
額にはうっすらと汗が浮いている。暫く思案したあと屏.風.の.ぞ.きは布団を整え、その手を一.太.郎
の額に置いた。
妖は人ではないので、暑さ寒さの影響は受けない。ひんやりと冷たいその手は一.太.郎の熱を取り
去っていった。冷たい手が気持ちいいのか、嘘のようにぴたりと体が動かなくなる。
……さて、どうしたものかね。あたしゃ、このままでいなくちゃいけないのかね。
昼間ならあの二人に任せちまえば良いんだけどねえ。
その方が楽なのはわかっていたが、この離れに一日中いられるのはたまらない。それでなくても
体の調子が良くない一.太.郎を見舞って、頻繁に顔を出しているのだ。
闇夜でも見える妖の目で一.太.郎の顔を覗いていると、やおら腕が伸びてきて、額に置いた手を掴まれた。
あれあれと思っているうちに、腕は屏.風.の.ぞ.きの手を抱え込む。引かれて前のめりになった体が
布団に突っ伏しそうになるのを堪えると、すぐ目の前に一.太.郎の顔があり、ちょうど覗き込むような
姿勢になってしまった。
「あれま、こまったね。子供じゃあるまいし」
一.太.郎に腕を抱え込まれた屏.風.の.ぞ.きは困った。ひんやりとした腕が気持ちいいのか、一.太.郎は
そのまま、すうと寝息を立てている。外してしまっても構わなかったが、そうすればまた暑さで布団を
剥いでしまうの繰り返しになりそうだ。
仕方がないので腕を貸したまま、布団の横に添い寝をする。
……やっぱり、まだ子供かね。
あの二人や、この家の者達がどんなに大事にしようと、この子もあと五十年もすれば消えてしまう
だろう。なんと人の生は儚いものか。
「百年持たないんじゃ、あたしら付喪神にもなれやしないじゃないか……」
屏.風.の.ぞ.きは一.太.郎の顔をじっと見た。
妖である自分には、家族とか、親が子を、その逆に子が親を想う気持ちというものはよく分からない。
気がつけば自分はすでにいて、長い年月を過ごしてきた。常は人がその生の短さを不幸と思わな
いように、自分も独りであることを不幸とは思わない。この短い時をすごす人とは、その身にどんな
思いを秘めながら生きているのだろう。
人はややこしい。よく嘘をつくし、心変わりもする。約束をたがえた事を悔いながらも、すぐに忘れる。
おまけに己にさえ、嘘をついたりするのだから。
「本当に、めんどくさいねえ。人っていうのは」
あやすように、空いている腕でぽんぽんと布団の上から軽く叩いた。
「……趣味が悪いよ。黙って覗いているなんて」
屏.風.の.ぞ.きは振り向かずに、そう言った。半分ほど襖が開いていて、そこには仁.吉が立っている。
「安心おしよ。別に悪さはしていない。寝苦しいみたいだから、あたしの腕を貸しているだけだよ」
朝になったら、あんた達二人が面倒を見ておくれよと言った。
「わかっている、……若.だ.ん.なが体を冷やさないように頼んだよ」
仁.吉の言葉に驚いた屏.風.の.ぞ.きはそちらに目をやるが、すでに襖は閉じていた。
腕に縋りつく一.太.郎は眠ったままだ。
「言われなくても、承知していますよ……」
誰に聞かせるでもなくそうつぶやき、腕に伝わる一.太.郎の温もりを感じていた。
秋になるまでは、こんな夜が続くだろう。
まあそれも、悪くはない。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ ) 結局甘やかし 屏.風.の.ぞ.きってツンデレ属性っぽい気がする
134姐さん奇遇です!
私も昨日から、し/ゃ/ば/けシリーズ読み始めました。
しっとりと切ない雰囲気に萌えました!
VIBA!日本の夏!GJ!!!!!
>137
確かにあれはツンデレっぽいと思います!
GJ!
>>134姐さん、GJ!
あのシリーズのふんわかな雰囲気が出てますよGJ!
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ドラマ遺留の麻田×麻酔医。ナマモノ注意。
金で動く方が楽だ。深く考えなくていい。
人命の尊重とか、道徳倫理とか、そういうものは俺には必要ない。
そもそも今から考えても遅すぎる。
俺に貼られたレッテルはあまりに大きく、重かった。
中傷、批判、誹り。それらを代価にした大金。
酒をただ煽っては眠り、現実と夢の境界線をわざと曖昧にしておく。
金の為に働くのだと、そう自分に言い聞かせる。
そうでないと、奴がやってくる。
悲鳴が聞こえるのだ。
どこかから、何人もの悲鳴が。
か細いものもあれば、絶叫しているものもある。
そのどれも一様に言う。
「助けて」
それはふとした瞬間、現実と向き合った時にやってくる。
あいつを、見ていると。
ギラギラした太陽に当てられているようで、否応なしに現実を突きつけられているようで、
そうすると俺は直視できなくなる。
悲鳴が聞こえる。目の奥がチカチカする。目の前から、足から、喉元から、脳から。
「…おい、おいっ!」
ガシャン、と音がした。
フェンス越しに奴の叫びが聞こえる。
俺は何をしようとしているのだ。
悲鳴に。
飲まれる。浸食される。覆い尽くされる。
呼んでいるんだ。こちらへ来いと。
「やめろ!」
衝撃を感じた。また唐突に現実に引き戻される。
曇った空と息を荒くしている奴が目に飛び込んできた。
「お前、死ぬ気か!」
死ぬ気…?
どうやら自分は屋上から飛び降りようとしていたらしい。
それをこいつが引き留め、俺を押し倒したのだ。
「ラリってるのか?」
(お前のせいで悲鳴が聞こえるのに
どうしてお前に助けられなきゃならないんだ)
「おい、なんとか言ったらーーー」
「悲鳴が止まらないんだよ」
奴は訝しげに目を細めた。俺は続けようとした言葉を飲み込む。
奴が立ち上がったので俺も立ったが、バランスが取れず、奴の胸にもたれこんだ。
…当然のような沈黙。何をするにもおかしなこの状況。
力強い目線が俺に注がれているのが分かる。
なんともいえない。俺は何を言えばいいのだろうか。
「ふ、ひゃははははっ!」
強く突き放してドアの方へ向かう。もう嫌だ。こいつと関わっていたくない。
「何がそんなに面白いんだ?」
背後から声がする。俺は振り向けない。
振り向いたらあの目が俺を貫くんだろう。俺はそれに耐えきれる気がしなかった。
悲鳴をかき消す騒音でいい。あいつの沈黙はいらない。
曖昧に歪んだ世界でいい。あいつの現実はいらない。
それなのに、
「面白いに決まってるだろ! アンタが」
俺が
「俺を」
アンタを
「必要としてるなんてさァ!」
俺はただ笑うしかなかった。
悲鳴が肥大して脳にこだまする。
一番大きな声は、俺の声だ。
「助けて」と俺が誰かを呼ぶ声がする。
それはまだ止まらない。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
逆かもしれない…麻酔医に夢見すぎ。
>>142−144
姐さん仕事早いね。GJだよ。
( ´Д`)ハァハァハァハァ l \ァ l \ァ
なんかもう泣きそうだ。
>>144 うぅ、胸が痛いよ麻酔医セツナス…エロさにばっか目がいってたけど、
今週って結構重い話だったんだよね。あんなガラッと性格(と髪の色)変わっちゃうくらい。
麻田先生は責任とって早いとこ助けてあげるべきだ。ハーレムの中でも第一夫人にするべきだ。
姐さん本当にGJです。いつか救われた麻酔医の話も見てみたい。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| サ/ン/ト/リ/ー/ボ/スのCM(工場篇)から
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 出てくる人とかほぼ捏造
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ イロイロ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) フカクハカンガエズニドウゾ
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
この惑星の人間は、疲れることが嬉しいらしい。
「お疲れ」「お疲れ様です」
陽も傾き、工場の中には仕事の終了を告げる音が響いている。
ここでの仕事も今日で終わりだ。
「今日までよく頑張ったな」「元気でやれよ」
そう温かい言葉をかけてくれながら、仮設の休憩場を一人またひとりと出て行く。
ここでの探査中に置かせてもらっていた資料をまとめ終える頃には、いつも私の世話をしてくれていた若者と二人だけになっていた。
27という若さの割りにここでの仕事が長く面倒見の良い彼は、皆にもずいぶんと頼られているようで、
実際、突然雇ってくれとやって来た素性の分からない外国人(ということになっている)に、一から丁寧に仕事を教えてくれた。
「お疲れ様でした」
「お疲れさん、なァ、ほんっとうに今日でジョーソズさん辞めちゃうの?」
「はい、仕事をはじめる時から決まっていましたし。他の探査・・いや、仕事場も決まっています」
「そっかぁ。残念」
150 :
2/5:2006/05/26(金) 02:25:21 ID:owhzta2/
夕日が差し込み、部屋の中がオレンジ色に染まる。
互いに無言のまま数分が経ち、そろそろ出ようかと思い荷物に手をかけ、出て行くときにと用意しておいた挨拶を口に出す。
言葉は、ここへ来る前にしっかりとマスターした自信はある。今のところ生活に支障は無い。
が、こういった特殊な状況下で、自分の認識が実際に使用に堪え得るレベルなのかという事は、いざ使ってみないと分からないものだ。
少しの緊張が走る。
「今まで、ありがとうございました」
「な、なんすかいきなり。照れちゃうって」
「仕事といい普段の生活の事といい、あなたにはずいぶんと世話になりました」
「いや、ジョーソスさんは仕事の飲み込み早いから楽だったよ」
「そうですか」
しまった、ここはケンソンするべき場面だったか。何かいい言葉を付け加えなければ。
タイミングを失い、立ち去る事もできずに見詰め合ったまま再び数分が経つ。
これが「気まずい」ということかなどと考えていると、ぼんやりした表情で彼が口を開いた。
「あー、ジョーソズさんほんとイイなァ。その淡々とした感じとかさ。硬そうに見えて急に雇ってくれなんて無鉄砲に突っ込んでくるとことかさー」
「・・・」
これは褒められているのだろうか。こんな場合はなんと言えばいいのだろう。
「いっつも「光栄です」で流されてたけどさァ、オレ、マジでジョーソズさん好きだったんだぜ」
「・・光栄です」
「ほらーまた言った!う〜・・分かってんのかなぁ、分かってねーだろうなぁ」
机に突っ伏し、ガシガシと短く切った茶色の髪をかきみだす。
「好き」は人または物事への好意を表す言葉で間違っていないと思うのだが、何か反応の仕方が誤っているのだろうか。
私の言語力はまだまだらしい、少しの落胆と焦燥を感じる。
彼の反応もまったくもって不可解だが、とりあえずこちらにも好意があることを伝えなければならない。
「私も君に好意を抱いています」
私がそう言うと、彼は一瞬驚いたように目を見開き、しばらくして大きな溜息をつきながら再び机に突っ伏した。
やはり、いまいち理解しがたい行動だ。
「好意ねぇ〜・・・ありがと、オレも凄く好意抱いてますよ・・・」
右頬を机につけたままこちらに顔を向けそう言う彼の表情は、まだどこか不満そうである。
151 :
3/5:2006/05/26(金) 02:26:15 ID:owhzta2/
「なぁなぁ、ジョーソズさん。ここでの仕事は今日でおしまいだけどさ、これからも変わらずオレと会ってくれる?」
「はい、もちろん。住んでいるところは同じです」
彼の方から言ってもらえて良かった。こちらからお願いしようと思っていたところだ。
親切な彼に好感を抱いていたし、何より心強い。トモダチ第一号というやつだ。
いつかこんな風に、この星の住人と我々が交流する時が来るだろうことを考えると、嬉しくなり自然と笑顔になる。
彼は相変わらずぼんやりした表情でこちらをみている。と、思えば、急に真剣な顔になって立ち上がった。こちらに近づいてくる。
「あの、どうかしましたか」
少し恐い。怒らせるような事はしていないはずだが。
「・・・なぁ、ジョーソズさん。目、つぶって」
急な頼みを不思議に思いながらも、言われるがままに目をつぶる。
文化の調査および円滑な探査のためには、そこの住民に従うのが一番だ。
肩に重圧がかかる。これは、恐らく手だろう。
・・瞼はいつまで閉じていれば良いのだろう。何かの儀式だろうか、この手が離れるまでは、目を開けてはいけないのだろうか。
様々な疑問が頭に浮かび、時間が流れ、えい、と目を開けようとした時、唇にゆっくりと柔らかいものがあたった。
不思議な感触にますます頭の中の疑問符は増えていく。
これは手ではない、手はまだ肩にある。足、は無理がある。柔らかいものやわらかいもの・・・。
肩にかけられた手に少し力がかかり、不安はますます大きくなる。
堪えられずに目を開けると、目の前に彼の瞼が飛び込んできた。ああ、そうか。これは唇だ。
しかしこの行為はどんな意味を持つのだろう。・・・なぜか恥ずかしい。
理解できないまま固まっていると、閉じた瞼が離れていき、ようやく視界がひらけた。彼は笑っている。
「へへ、ジョーンズさんの国でよくやる、親愛の挨拶深いバージョンって事にしといて下さい。・・・じゃっ、また!」
なんだか慌てた様子でそうまくしたてると、勢いよくドアを開け出て行った。
なるほど、口と口の接触は、この惑星で深い親愛の情を表す挨拶なのか。そういえばこの星のどこかではそんなことがあったかもしれない。
原始的ではあるが悪くない。先ほどの感触を思い出し唇を触る。
そうだ、迅速に調査を進めるためにはなるべく多くの人間と友好をむすんでおく必要がある。
それなら、と一人の人物が思い浮かんだ。ここのリーダーを務めるシュニンだ。
彼は人望も厚いようだし、長く生きているだけ経験も多い。これからも彼から教わることはきっと多い。
この挨拶を自分から試してみるのにピッタリである。うん、我ながらいい考えだ。
新しい発見といい思いつきからであろう、胸が高鳴る。足取り軽く、この時間ならいつも工場に残っている彼のところへ向かう。
案の定、彼は難しい顔をしたまま今日の記録をつけていた。
「シュニンさん」
「お、ジョーソズじゃねえか。日本に来たばっかで大変だろうに、今日までよく働いてくれたな」
いえお役に立てませんで、と、今度はケンソンしながらさっきの手順を思い出す。
「あの、少し目をつぶって頂けますか」
「んー?何だ、なんかくれんのか?まさか目つぶってる間に今までこき使った仕返しでもするんじゃねぇだろうな」
まぁそんなことしやがったら100倍返しだけどな、そう言ってガハハと笑う。
目をつぶった彼に近づき、ひと呼吸。息を止めるのには慣れていない。
彼はこちらに手を出しているが、これは握手をしておいた方がいいのだろうか。目をつぶって、かつ握手したまま口を合わせるのは難しそうだ。
時間がかかると不信感を与えてしまうだろうと焦り、考えもそのままに、両手で彼の手を掴み唇をつける。
どうやら彼も硬直しているようだ、先ほどの私の反応は正解だったらしい。
153 :
5/5:2006/05/26(金) 02:27:58 ID:owhzta2/
1・2、と時間を計り顔を遠ざけると、物凄い勢いで彼が話し出した。
「なっ、何しやがる!お、お前・・・アレか!そっちのケがあるのか」
「そのけ・・・?親愛の情を表す挨拶・・・です」
間違ったか。まだ自信が無いだけに語尾が弱まってしまう。
「なっ!あー・・・なるほど・・あー。そっか・・そっか・・・ジョーソズさんはアメリカの人だもんなぁ」
なにやらブツブツ呟きながら考え込んでいるが、納得しているようだ。
ただ、先ほどの驚きぶりから見て、私になにか落ち度があったに違いない。
「あの、なにか間違っていましたか」
「うーん・・、間違っては無いんだろうよ。・・だがなぁ、俺みたいなのはこういう挨拶に慣れてねえから、むやみにするもんじゃねえぞ」
そうか、やたらにしてはいけない畏まった儀式なのだ。
先ほどの、突然に感じた彼の行動も、実はなんらかの条件を満たした上でのものだったのかもしれない。
「すみません・・」
「いやいや、謝る事じゃねえさ。親愛の情ってのはありがたく受け取っておくよ」
「またお会いしていただけますか」
順番が違うかもしれないが、彼にならってそう申し出る。
「ん?おう、困った時は助けになってやるよ。ここに電話しな。
・・・いいか、さっきみたいなのは人前でするもんじゃねえんだぞ。いや、確かに今も人はいなかったがよお」
なるほど、人目を避けて行うべき行為なのか。どうりで今まで知らなかったはずだ。
一定の友好度合い以上でなければするべきではないというのもあるし、なかなか決まりごとが多いようだ。
早速報告しなくては。
もう少しこの人と話していたいと思ったのだが、それでは失礼します、と言ってその場をあとにした。
別れぎわにシュニンさんに貰ったコーヒーを飲みながら空を見上げる。夕日は、今日も美しい。
本日の報告
この惑星の挨拶は、少々複雑らしい。鋭意習得中。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 番号抜けまくってスマソ
| | | | ピッ (・∀・ ) 間違ったまま覚える事ってあるよね
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
ジョーソズハァ━━━━━━━*´Д`*━━━━━━━ン
>154
リアルタイムキターーーーーーーーー!!!!
姐さんにGJ三唱!GJ! GJ! GJ!!!
さらなる報告を期待しておるぞ、ジョーソズ君!
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 北の大地の社長×キラ星です。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 寝れなくて躍起で書き上げた短編らしいよ。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ヤマナシオチナシイミナシ……
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄
158 :
1/2:2006/05/26(金) 05:00:24 ID:kLhKIWwe
ザアザアと街に響く雨音が、放送終了後の砂嵐のように耳につく。薄暗いホテルの一室には、閉め切りの窓から湿気を含んだ重たい空気が流れ込んでくるようだ。
カーテンを開けても薄暗い初夏の午後。雨はこのところ降り続き、異常気象がこの北の大地にも梅雨を連れてきたのだろうかと鈴/井は辟易していた。
「雨……止まないね」
鈴/井の下で大/泉はぼんやりと呟く。肌蹴たシャツがじっとりと湿っているのは汗の所為だけではないだろう。鈴井が埋めていた首筋から顔を上げる。声とは裏腹に、瞳はしっかりと窓の外を眺めている様だった。
「何だか上の空だと思ったら、ずっと外見てたの」
枕の上に散らばった髪の毛を指で絡めると、そこで大/泉はようやく鈴/井の顔を見た。
「俺ね、この時期の雨って嫌いじゃないんですよ。」
皆嫌がるけど、雨の日は暗くて静かになるから。と付け足す。鈴/井は手を止めて、改めて大/泉を見つめる。
159 :
2/2:2006/05/26(金) 05:01:30 ID:kLhKIWwe
「オフの日雨降ったら、すごい嬉しいの。ベッドの上でなーんにもせずにぼんやり考え事すんの。晴れてたら、あっいい天気だな、どっか行かなきゃなって思っちゃうんだよね。したら、色々やってる間に1日終わっちゃって」
「君らしいね」
「雨の日はなんもせずにただ色々考えてて、時間が経つのがすごいゆっくりなんだね。ぞれが、すごい嬉しいんだわ。」
大/泉はまた閉め切りの小さな窓に視線を戻す。鈴/井もつられて目をやる。雨音はまた少し強くなったようだ。靄の掛かったような中で、雨粒が白い糸のように流れていくのが見える。大/泉は少し笑った。
「今日雨降って、すごい嬉しいんですよ鈴/井さん」
「そうかい」
「だって、鈴井さんといる時間が、すっごいゆっくりになるしょ」
ずーっと、一緒にいられるような気になるんだ、と、大/泉は少し潤んだ目で付け足す。鈴/井は何も言えず、只その目に、心底愛おしそうに口付けた。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ ドウベンガサッパリワカラナイ……
| | | | ピッ (・∀・;)
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
伏字見逃したorz
すんませんでした。今から寝ます。
>>160 リアルタイムktkr!!
姐さんありがとう萌えた・・
>154
なにそのかわいい宇宙人!儀式としてやられちゃってやっちゃうといいよ!gj!
>>148 おっちゃんと何かあって欲しい!と思っていたので、ktkr!と
wktkして読み始めて、おっちゃんどこ?!おっちゃんは?!Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)
と思ったらそうきましたか!
あのCM萌えなのでゴチでした。
真面目なのにどっか抜けてる宇宙人萌え。
>>148 ジョーソズktkrーーーー!!!
次なる報告をお待ちしております!GJ
>148
GJ!
間違った知識を持ったまま、この惑星の探査を続けて欲しいよw
ジョーンーズー!!
萌えすぎてGJ!GJですよ!
>148
ジョーソズに禿げ上がった。
何この可愛いオサーン!大 好 き だ
今週の放送見ていてもたってもいられず書いたドラマ慰留の外科医×麻酔医。
麻酔医の萌えポインツを盛り込めるだけ盛り込んだら尋常でない長さになりますた。
ギチギチに詰めたのでだいぶ読みにくいかもしれませんが、しばしのお付き合いを。
作中の写真や麻酔医の過去なんかはイッサイガッサイヤッサイモッサイ捏造です。
あ、過去の麻酔医のイメージはぶっちゃけ中の人ですww
前置きが長くなりました。それでは張り切ってどうぞ。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
人気がなく静まり返った心臓外科部の医局内。
辺りはほの暗く何もかもがぼやけて曖昧な中で、その男の影だけはしっかりと輪郭を保っていた。
もしも今ここに誰かしら運の悪い者が入って来ようものなら、
声をかける事すら躊躇ってしまうであろうほどの集中力で、その影――麻田柳太郎は、
雑多に物が散らばったデスクの上ただ一点を見つめている。
医学部を卒業し、某大学病院で研修中だった頃に撮ったのものだという一枚の写真。
興味があるのならくれてやると、ERの女教授に半ば押し付けられた形のものだが、
そこに写っている姿を見て愕然とした。
同僚らしき数人の医師達に挟まれて、はにかんだような微笑を浮かべる若い男。
確かに顔見知りであるはずのその男は、今現在知っている姿とはかけ離れており、
もはや同じ顔の他人でしかない。
年齢的な初々しさは当然としても、白く染め抜かれた院内で異彩を放つあの金髪は、
これを見る限り艶のある黒色をしていて、常に焦点の定まっていない双眸は、
揺らぐ事なくカメラのレンズを捕らえている。
自分の歩むべき道が遠く先まで鮮明に見えていて、上に立つ医師達をただただ尊敬こそすれ、
疑う事などあり得なかった時代。
そう遠くない未来、信じてついて行ったはずの医師達に最悪の形で裏切られ、その先は――…。
そこまで想像を巡らせて、麻田は酷い頭痛を感じ、考える事をやめた。
残った写真はこの一枚限りで、後は全て本人自ら破り捨ててしまったのだと、
あの女が肩を竦めながら言っていたから、おそらくもうこの世に2つとない代物なのだろう。
自分が持っていても仕方がないとわかっていながら、捨てるのもおかしい気がした。
過去の遺物でしかない写真から無理やり視線を引き剥がし、時計を見る。もう深夜といっていい時間だった。
何故だか悪い酒にでも酔ったような感覚に陥って、いてもたってもいられず席を立つ。
向かう先は決まっていた。
夜の外科部内は急変患者が出ない限り静かなものだが、舞台が救命救急部となるとそうはいかない。
至るところで担架や救急カートのキャスターが忙しなく回転している。
それらを扱う医師や看護士達の目はどことなく殺気立っていて、
部外者から見れば異様でしかない空気が当然のように立ち込めていた。
でかいのが突っ立っていては邪魔だ、といわんばかりに何人かの者が麻田の肩にぶつかり、
振り向きざまに小さく舌打ちするが、相手が誰であるのかがわかると途端に頬を強張らせる。
麻田がここの教授に大層気に入られているらしい事は、周知の事実なのだ。
異端者であるのは承知の上だ。この内の何人が、自分に対しいい感情を抱いているのだろうか。
そう思うと知らず知らず皮肉めいた笑みを浮かべてしまい、ちょうど傍らを通りかかった医師が、
それを自分に向けられたものだと勘違いして困惑の滲み出た笑顔を作る。
まっすぐ歩を進めながら、視線だけで目的の人物を捜す。どこにいても目立つその頭は、
医局の隅にある使用されていない医療ベッドの上に転がっていた。
一仕事終えたばかりなのか、それとも今日はやる気が起きないのか、
ベッドからはみ出した腕が力なく垂れている。
ちょくちょくここを手伝いに来るようになってからは既に見慣れた姿なので、
今更呆れる事もなく距離を縮めた。
愛用しているらしいアイマスクは目元からずれていて何の意味も成していないが、
あまり関係ないらしく、近づくにつれかすかに規則正しい寝息が聞こえてきた。
「新瀬」
返事はない。代わりに腫れぼったい上瞼がひくんと痙攣したように見えた。
「聞いてるのか、新瀬」
二度目の呼びかけに、髪と同じ色に染め抜かれた眉が不愉快そうに寄った。
意識は覚醒にまで至っていないようだが、惰眠を邪魔されて本能的な部分が抗議しているのだろう。
間をおいて片方の瞼が薄く開かれ、不届き者の姿を捜して色素の薄い黒目が右往左往し、
やがて麻田の姿を捕らえた。
「なぁにぃ?しゅじゅちゅ〜?……じゃねえよなぁ。まーた来たのか76キロ、しつこいねホント」
敵意、というより、会話するにも値しないと言いたげな声。
億劫そうなのを隠しもしない態度に、大抵の者は謝るなり黙って去るなりするところだろうが、
残念ながら麻田はそういった類の遠慮を持ち合わせていない。
「金は用意できたのかぁ?オレには思いっきり手ぶらに見えるけどな」
「用意したところで、また跳ね上げるんだろう。次は1億か?」
その冗談がいたく気に入ったのか、新瀬が声を上げて笑う。もっとも麻田は冗談など言ったつもりはない。
過去の一件以来、論文目的の手術には手を貸さないとその口から聞いたのだ。値段の問題ではないのだろう。
「俺のチームに入れ、新瀬。俺につけば、もう二度とお前に人を殺させたりしない」
予想していなかった言葉に、元々大きな新瀬の目が更に大きく見開かれる。
しかしそれも一瞬の事で、またすぐに弾けたような笑い声が麻田の耳をつんざいた。
「……ッひゃははは!か〜っこい〜い。オレが女だったら間違いなくビショビショだね」
下品な言い回しに、忙しく駆け回る看護士の一人が、まぎれもなく軽蔑の込められた視線を寄こす。
新瀬はそれを気にも留めず、一通り気の済むまで笑った後、満足そうなため息を吐いて半身を起こした。
「なめんなよ76キロ、オレは今や最高の腕を持つ麻酔医だ。どっかの天才外科医様にお誘い頂くほどのね。
少なくとも今のオレが処置した患者は死なねぇし、例えくたばっちまった所でそれはオレの責任じゃない、
お前ら外科医と病院の問題だ。……おわかりぃ?」
わかったらとっとと消えろ貧乏人――新瀬が吐き捨てるように言うと、それまで黙って聞いていた麻田が、
壁にもたれて独り言のように呟いた。
「昔は髪も黒くてかわいげがあったのに、今じゃたいした捻くれぶりだな」
「……あぁ?」
おかしな事を言う、頭にきすぎておかしくなったか?ここへ来てまだ数ヶ月しか経っていないような者に、
昔の――ましてや髪を染める前の己の姿を知る事など不可能なはずだ。
しかし、その情報は確かに身に覚えのあるもので、よけいに新瀬の困惑を誘う。
「お前のところの教授は物持ちがいいな。……そもそも、どうやって手に入れたのか知らないが」
そう言うと、麻田は白衣の右ポケットに手を突っ込んで、迷わず目的のものを探り当てた。
麻田の無骨な指につままれて、鼻先に突きつけられた一枚の古い写真。
興味なさげに一瞥した新瀬の表情が一変する。薄い唇に張り付く、人を小馬鹿にしたような笑みが消えた。
「?おい……っ!」
急激な顔色の変化を訝しみ、顔を覗き込もうとして身を屈めたところに、新瀬の白い腕が掴みかかってくる。
咄嗟の判断で何とかぶつからずに済んだが、やはりかわしきれず、麻田は体勢を崩しかけた。
「っ、何を」
「何で、どうしてお前がそれを持ってる!返せ!」
麻酔を吸入している時のそれとは明らかに違う目。紛れもなく憎悪のこもったそれに、麻田は息を呑んだ。
そういえば、新瀬にだけは見せない方がいいと、写真を貰う際に忠告された事を今になって思い出す。
(あれはこういう事だったのか?)
「返せよ!」
断る理由はない。写真を差し出すと、奪い取られるようにして手中のそれが新瀬に渡った。
「……悪かった」
謝るのも妙な話だが、写真を睨んだまま憎まれ口一つ叩かない新瀬の姿を見て、他に言葉のかけようがなかった。
謝罪の声に反応してか、新瀬の暗く沈んだ目が麻田を見上げる。
「新瀬……?」
ふと、怒りと混乱がない交ぜになったような表情の新瀬と重なるように、もう一人分の影が見えた気がした。
気がした、というだけで、当然そのような影など実際には存在せず、瞬き一つでどこかへ消えてしまう。
(……今のは)
泣き出しそうに歪んだ頬。噛み締められた唇。どちらも見た事のない表情だが、どちらにも見覚えがある。
微動だにしなくなった新瀬を見て、これ以上この場に留まるのもさすがに躊躇われた麻田はそのまま踵を返す。
「その写真は元々返すつもりで持ってきたんだ、好きにしろ……といっても、はなから俺のものじゃないが」
怪訝そうに眉を寄せた新瀬に、「じゃあな」と短く告げて、麻田は行きと同じ歩調でERを後にした。
+++
望まずして呼び起こされた記憶は、数年前。
人より低めの身長と、元来照れ屋な性格による積極性の低さを同期の研修医達にからかわれながら、
研修期間終了を記念して撮った写真。
最後くらいはと、むりやり中央に立たされた20代そこそこの自分は、困ったような笑みを浮かべていた。
「……っ」
脳裏に過ぎったそれら全てを掻き消すように、写真は新瀬の手によって引き千切られ、ただの紙屑と化す。
ふつふつと沸き起こる苛々を舌打ちで誤魔化そうとするが、唇が震えてしまい、叶わなかった。
行き場のない焦燥を抱えたまま、かたいベッドの上で再び横になる。
何かといえば自分のペースを掻き乱そうと現れるあの男――名前を、何と言ったか。
充血した目でER内を見渡すが、当然ながらその姿はもうどこにもなく、見慣れた光景が広がっているだけだ。
『もう二度とお前に人を殺させたりしない』
新瀬は、腹の底から笑った。酒ばかり摂取して痛めつけられた胃が突然の動きに驚いて悲鳴を上げるが、
それでも止まらない。無理な声の張り上げ方に、喉の方が先に耐え切れなくなり、大きくむせた。
「はぁっ、げほっ……ぅえ…」
あの言葉を、過去の自分が聞いていたとしたら、果たしてどうだったのだろう?
何も疑わず、ついていったのか?強引で、頑なで、自分の衝動以外何にも揺れ動かされないあの男に。
麻田――…。
短く切り揃えられた爪を立て、パニックに陥ったかのように髪を掻き毟る新瀬。
強引な力で抜け落ちた手の中の数本の髪は、院内の不健康な明かりに照らされ、金色に輝いて見えた。
その中に混じる、元々のものであろう黒いそれ。新瀬紋次という男の、本来の色。
「……麻田、柳太郎…」
初めて口に出して呟いた名前は、泡沫の快楽ばかり求める自分の中で、あまりに現実味を帯びて響く。
呆然と麻田が去った後を見つめる新瀬の背後で、散り散りになった紙片が呼応するように揺れた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ご、ごめ…5つでおさまりきらなかったよ。最後っ屁のような終わり方。
許容オーバーの萌えは結局まとまらなかったけど、めっさ楽しかった。
しかしこれじゃ麻田がすげー無神経な人間っぽいな…w
>>168 GJ!
麻酔医がホント可愛い。気弱な麻酔医モエス。
過去と現在の差が麻酔医の萌ポイントだからとても好きだ。
あと、IDが「脱ぎ男」になってるのがちょっと笑えた。
>>168 GJGJGJ!!!脳内で映像化して駆け巡りますた!!
>>168 GJ!!!
>>177さんと同じく映像が頭ン中浮かんだよ!!
外科医の事を体重じゃなくて名前で呼んだところが素晴らしく萌えww
ドラマでもいつか名前で呼ぶんだろうか…。
>>168 GGGGJ!!
あー、麻酔医やべーw 姐さんありがたす!
180 :
木凜 他皮:2006/05/28(日) 02:30:38 ID:LLw2fbPV
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!ナマ注意!某基地トップのゲ仁ソさん
「なぁ、今日一緒に帰らん」
「…なんで」
「なんでって…俺ら一応今日からコンビやんか」
「一応な」
「いや…そうやなくて…
これからのために親睦を深めるとゆーか…
いろいろお前のこと知りたいねん」
「…」
彼の世界と僕の世界は
絶対に交わらないはずのもので
平行な位置に存在しているはずのもので
けして触れることは無いはずのもので
だけど君は軽々とそれを飛び越えてぼくの手を無神経に掴み
僕が今まで目を塞いでいた、恐ろしく綺麗な世界へと
「……、」
「え?」
「ええよ、…一緒に帰っても」
「ほんまに!?やったー!!」
なんてまぶしい世界、なんてまぶしい君
こうしてぼくはゆっくりと、
めを、ひらく
end
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
二人の馴れ初め的なお話のはずがよくわからんことに…orz
精進します…
復活@復活より。
来週号が出て、口調とか関係とかに矛盾が生じる前にちゃっちゃと投下しちゃいます。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ーーーー
へらへらと笑う恋人にツナは無性に腹が立った。
今回の仕事は笑いながらできるような内容じゃない。
こっちがどんな気持ちで、口にしたと思ってるんだ。
どんな気持ちで、恋人に「死ね」とほぼ等しい命令をしたと思ってるんだ。
唇を噛んで俯く。
「お前、死ぬかもしれないんだぞ」
リボーンとこの件はランボに任せると決めた時、ツナは覚悟を決めたつもりだった。でも実際口に出すと本当に「覚悟を決めたつもり」だったようだ。
唐突に目の前に迫った恋人の死の可能性にぶるりと体が震えた。
「ちゃんと聞けよ、ランボ」
名前を呼ぶとさらに震えが止まらなくなった。
今この瞬間にでも彼を失うような気がして、ツナは彼のジャケットの襟を掴む。
出あった頃はツナの足下にしがみつくほどだったのに、いつの間に彼の背は自分を追い越したんだろう。
溢れる涙を見られたくなくて顔を埋めたそこは彼の胸だ。
183 :
2/3:2006/05/28(日) 03:08:26 ID:fZwl45tM
自分の手のひらで包めるほどだった手は、随分とたくましくなってツナの肩を掴んだ。
「ツナ」
額に彼の唇を感じた。そのキスに促されるように顔を上げると、恋人はやっぱりへらりと笑って言った。
「ツナ知らなかったの?ランボさんは不死身なんだよ」
なにいってんだバカ!そう言ってやりたいのに、口から出たのは嗚咽ばかりだ。
ちくしょう。お前なんか20年前からちっとも変わりやしない、食い意地はってて情けなくて泣き虫のランボのくせに、なんでそんな優しい顔で笑うんだよ。
昔はランボが俺に迷惑かけて、泣きついてたくせに。これじゃあ逆じゃないか。
バカ。
俺のほうが年上なんだから。お前のことずっと面倒見て来たんだから。これからもずっと面倒みるつもりなんだから。
だから、死なないで帰って来てくれよ。ランボ。
頼むよ。
184 :
3/3:2006/05/28(日) 03:12:52 ID:fZwl45tM
ぼろぼろと溢れる涙を止めることを諦めて、きつく抱きついた。
背中に手が回され、彼に包まれる。ランボのお気に入りの香水の匂いがした。
「仕事なんか無敵に片付けてツナの元に返って来ちゃうんだからね?だから泣かないで待っててよ。」
背をゆっくり撫でられ、耳元にそっと囁かれた。
Amare la Vongola.
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )
セリフはほとんど今週の復活から。
シチュ変えたらものそい萌えるんじゃないかと思った故の産物。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 侍7、イツモフタリデコンビ
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 地上波組・初書きの癖に死にネタですスマソ…
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ シカモユメネタダカラ、ミャクラクネェヨ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄
予感が、した。
「……、……――」
思わず足が止まる。周りから街の煩雑な音という音が消え去る。どこかの鉄
工所から常に聞こえてきた喧しい硬質の音、すぐそこの屋台での酔っ払い同
士の他愛の無い小競り合い。野良猫の鳴き声。道端で転んで、母を呼び泣き
叫ぶ子供の声。全てが消えた。
この感覚を、カソベエは知っている。
音が消えるのは、正直よくある事だ。9ゾウと競り合った時もそうだったし、
目の前で強い眼差しをした娘が落下していく様を見たときも。最早侍とは
名ばかりの押し込みを斬った時だって、カソベエの周りからは音が消えた。
その張り詰めた無音は実に心地良く、カソベエの肉体と魂を溶け合わせ、
刃を振るう一つの個としてくれていた。
しかし、この無音は違うのだ。
「――殿?」
「ッ……!」
顔を上げた瞬間、鉄の打ち合わされる音、酔った男の上げる罵声、暢気な猫の声、
母に抱かれて少し弱まった子供の泣き声が一気にカソベエの鼓膜を打った。
反射的に耳を塞ぎたくなる。この数瞬で一気に喉が乾いた。道の端に澱む泥水が
妙に芳しく、頭を突っ込んでそれを飲み干したい衝動に駆られた。
「カソベエ殿」
カソベエから数歩離れた先、ゴ口ベエが眉根を寄せてこちらを見ていた。
ヘイ8はその傍らできょとんと立ち止まり、菊千代は後続の異変に気がつかずに
結構先を歩いてしまい、慌ててガシャガシャと足音荒く戻って来る所だった。
「ンだよ急に立ち止まるんじゃねェやい! 早く行かねェと本格的にはぐれちまうぞ!」
ゴ口ベエの後ろで声を張り上げた菊千代は不機嫌そうに蒸気を上げた。
侍狩りに遭ったのだ。
こちらは七人という大所帯。加えて女性の綺羅羅やこと戦闘に関しては素人
そのものの利吉、利発ではあるがまだ幼い小町もいる。そして止めと言わん
ばかりの見た目も内面も派手な、真っ赤な機械の身体を持つ菊千代を連れて
いれば嫌でも人目につく。
追っ手に囲まれ、咄嗟に一団の散開を思いつき実行したのは果たして誰か。
今となってそれを追求するのは無意味だ。
カツ4ロウは、綺羅羅の手を引き路地へ走った。小町、利吉もそれにくっつく
格好となったが果たして大丈夫か。9ゾウが戯れるように追っ手を斬りながら
同じ路地へ入ったのは偶然なのだろう。菊千代も小町を追いかける形で走って
行った気がするのだが、道に迷いでもしたか、犬猫しか通らないような細い
裏路地に嵌まって喚いているのを最初に見つけたのはカソベエだ。その内
ゴ口ベエ、ヘイ8とも合流し、誰とも無く決めた集合場所――今やかなり近づ
きつつある、錆の浮く鉄塔――に向かって進んでいるところだったのだ。
「カソベエ殿、どうされました?」
ヘイ8の穏やかな声がカソベエの追想を破る。カソベエはゆるりと首を振り、
掠れた声を悟られぬ音量で「何でもない」と口にした。
「かーッ、何でもねェなら止まるな! ぼんやりするな! しっかりしやがれよ大将!?」
菊千代が顔を顰め――そんな雰囲気だ――再び唸った。そして話は終わりだと
言わんばかりに背を向け歩き出す。
予感が、した。
「――――――……」
足が、前に進まない。菊千代のずば抜けて大きな背中が遠ざかる。それに
ついて歩くゴ口ベエの後姿、大柄な二人に挟まれて余計小さく見えるヘイ8、
その刀にぶら下がるてるてるぼうずが左右に可愛らしく揺れていた。
「…………!」
待て。
その一言が、喉の奥で凝って出ない。
言ってしまえば、とんでもない事になる気がする。壊れた人形を目の前に
両目を覆って泣き咽ぶ子供のように、この目に入れさえしなければ、この口に
さえしなければ、予感が去って行ってくれる様な、そんな妄想に取り憑かれた。
分かっている。この予感は去りはしない。カソベエがそれと認識し受け
入れない限り、指先に埋もれてしまった小さな刺のように自分を苛むのだ。
分かっている。
それでもどこかで願っている。これが気のせいである事を。その僅かすぎる
希望に縋って、予感を未だ扉の締め出したまま動けない。扉の内側で鍵を
握り締め、『去ってくれ』『行ってくれ』とうわごとの様に祈っている。
「侍狩り、あったんだって?」
脇を通り過ぎた男の一言が、再びカソベエを現実に引き上げた。
「そうそう、随分な手練れだったらしいんだけどねェ。結局あそこ、廃材ばっかり
置いてあるあそこよ。そこに追い詰めて殺っちまったらしいねェ」
「何、殺したァ? 侍は捕らえるんじゃあなかったのかい」
「そりゃもうすげェ暴れたらしいから」
「商人もわからねェ事するよなァ」
「本当に、気の毒に。まだお若いようだったよ」
「連中相手に大立ち回りしたんだろ?そんな若いはずはねーよ」
「ああ嫌だもったいない。金髪で肌も白くってねえ――あたしが後十年若けりゃ」
そこで思考は止まる。『三十年の間違いじゃねぇの』という男の茶化した
物言いがやけに癇に障る。これか。いくら頑なに目を閉じ耳を塞いでも、
アレは遠回りをして入ってくるものなのだ。
ゴ口ベエが振り向いた。その顔は険しい。その厚い唇が僅かに動く。
『ご冗談を』。そう見えた。
ヘイ8もいつもの穏やかな笑顔が霞のように消えていっている。ゴ口ベエを
見上げ、それからこちらを見た。その顔はきゅっと引き締められている。
実に悲しげな顔をするものだ。何故かふいに、そう思った。
菊千代の足は止まっている。ああこの鈍感でも気づいたか。いい傾向だ。
それでもカソベエは歩き出そうとした。街のつまらぬ噂と決め付けた。
『先生らしくない』とカツ4ロウなら言うだろうか。言うわけが無い。何故なら
これは只の噂であり、決して自分の予感とは関係ないのだ。
「カソベエ殿!」
ゴ口ベエが、あの朗々とした声で怒鳴った。思わず踏み出しかけていた足は
止まり、カソベエはそっとその顔を注視した。自分が今どのような表情をして
いるのかは、考えたくもない。
「行け」
短いその言葉をカソベエは形を確定させた予感と一緒にまだ押し出そうとしていた。
朝、夢から引きずり出されかけながら、布団を引っかぶる事で夢へ帰ろうと
するのと一緒だ。
何を馬鹿な何を本気にしている?これは只の噂なのだ、気に留める事もあるまい?
それを言おうと、カソベエは口元を歪めた。こいつは酷い笑みだ、と影ながら自嘲した。
「行け!!」
ゴ口ベエの怒気すら孕んだ声に、今度は周りの人間すら足を止めた。
止まった雑踏の中、カソベエのみが駆け出していた。
「シチ口ージ」
零した名は、既に予感とは呼べない何かと一緒になってカソベエに喰らいつく。
*
++++++++++++
「……」
黄昏迫る斬刀艦の上で、カソベエは難しい顔で顎鬚を撫でた。
出撃を数日後に控えた、慌しさと穏やかさが混濁する駐屯地。どちらかと
言えば後者の空気漂う場にカソベエはいたが、その心中は何とも微妙な心持ちであった。
カソベエ本人は斬刀艦に『搭乗』する事は余り無い。空に無数に浮遊し続ける
野伏せりを、斬る。シチ口ージは艦を操って、カソベエの手となり足となり、
その斬撃の補助をするのがいつもの二人の戦いだった。
先日のカソベエとシチ口ージの獅子奮迅の戦い振りも、兵士達の新たな語り草に
なっている。それでも倒した野伏せりより死んだ味方が多い事には、誰も触れない。
「カソベエ様」
呼び掛ける声に視線を地面へと向ければ、妙な形の髷を風に揺らせるままにして、
シチ口ージが立っていた。
「何してらっしゃるんです?」
自分よりも空に近い位置に立つ男を見上げ、シチ口ージは眩しげに問うた。その目に『上がっても?』という問い掛けを見て、カソベエは無言で視線を
元に戻した。他の者が気後れするようなカソベエの仕草に混ざる無言の了承に、
シチ口ージが艦の梯子に手を掛けた。
カンカンカン、と小気味良いリズムでシチ口ージの靴音が上がってくる。カソベエは、暮れなずむ空を見ている。
「カソベエ様」
隣に並んだシチ口ージが、カソベエを見遣る。その顔に刻まれた表情に、
碧眼が楽しげに細められた。
「どうなさったんです?」
「……お前がそれを言うか、シチよ」
隠す事なく滲み出る、憮然とした色合いにシチ口ージは破顔した
「やっぱり、気が付かれましたか。もしや気づかれないのではと期待して
いたのですが、やはり貴方には敵わない」
「で、何だあれは」
振り向いたカソベエが指差したのは、操縦席の下にでかでかと彫られた
文字列だった。
【イツモフタリデ】
「見ての通りですよ、皆さんやってるじゃあないですか。嫁さんの名前彫ったりとか」
「それは知っている。だがそれが、お前があれを彫る事になる理由にはならん」
「ですよねぇ」
まったりとシチ口ージは微笑んで、持っていた包みを差し出した。
開いてみると、饅頭である。ほのかな甘い匂いは、餡子か。
「どうした、これは」
「飯炊きの方から頂いたんですよ。カソベエ様の分も貰うの、苦労したんですから」
「…………」
カソベエは再び難しい顔で手の中の饅頭を眺めた。隣に佇む妙に人受けの
いい副官は、夕陽に白肌を赤く染めながら饅頭にかぶりついた。
「……。待て、話を逸らすな」
「――やっぱり無理でした?」
饅頭片手に、シチ口ージはにやりと笑った顔を見せた。
「せっかくだから、彫ろうと思ったんですよ。私には、最早艦に彫る程の
愛着を持つ他の名前を知りません――貴方の名前を彫ろうかとも思ったんですが」
そこで言葉を切って、シチ口ージは再び眼を細めて夕陽を見つめた。やがて
パチパチと瞬きをして眼を逸らし、カソベエへと碧眼を向けた。
「わざわざ名を彫らずとも、貴方は私の隣に居ります故」
そこでくくっと肩を揺らし、共に死線を潜った相方へ、そしてその操縦席に
刻まれた片仮名の文字を目線を移す。
「子供じゃあるまいし、私の名を彫るのも妙な話。なので、あのような文にしたのです」
「……何故だ」
ぼそりと、カソベエは呟いた。
イツモフタリデ、【イツモ】――――。
この大戦の真っ只中に、それは劫火の前に揺れる一輪の花のように儚い言葉だ。
この戦いに身を置く以上、変わらないものなど何も無い。失わない物など
一つも無い。一つの戦が終われば、皆何がしかを落としている。それは命だったり、
魂だったり、手だったり、足だったり、友だったりする。
『いつも』あったものが次の瞬間理不尽にもぎ取られていく。そんな世界だ。
カソベエは、目の前で死んでいく戦友達を想った。彼らもまた、『いつも』
カソベエのそばにいたのだ。それが消えた。不変など、期待はしない。
カソベエはこの戦の中でそれを学び、刻み、己の生きる支柱とした。
それを傍らでずっと見ていたはずなのだ。この不可思議な金色髷の男は。
「――――――――願っては」
シチ口ージが口を開いた。自分の呟きに、無意識に何か言わねばならないような
気配が隠れていたのかもしれない。女房らしくこちらの心を悟るのに長けて
いるのはいいが、悟られるこちらとしてはたまに戸惑う事もある。
「…………願っては、いけませんかね」
すっとシチ口ージがしゃがむ気配がした。幼い仕草で両手を前にだらりと
突き出し、自分の腕に頭を埋めるようにしながらじっと、菫色に変わっていく空を見ている。
「叶わないかも知れません。願いなぞ、叶わない物の方が多すぎる。――それでも」
カソベエはシチクチージを見降ろした。呼応するように、シチ口ージの視線
が上がる。深茶と青。二つの目線が絡み合い、そしてそっと離れて行く。
「――貴方と一緒なら、叶うのかも知れないと思うんですよ。カソベエ様」
他愛も無い夢なんですがね、とシチ口ージは口元に笑みを形作った。己の言葉を
さっさと散らすかのように、饅頭に思い出したように齧り付いて、美味い美味いとやたら大きな感想と共に咀嚼する。
「……」
カソベエは自分もしゃがみ込むと、シチ口ージの横顔を少し見つめた。
それから空いた手を伸ばし、手を伸ばそうとして、手袋をしているのを邪魔に
思ったので口で布地を咥えて引き抜いた。この男の白肌は、男にしてはとても
手触りが良くて、上等の絹を撫でているような心持がして、頬のみならず胸や
背中や腿と言った部分まで延々撫で擦ってしまうしまうのだ。シチ口ージは
そんなカソベエの癖を時折嫌がって、あまり触らせてもらえないものだから
(たまには触っても罰は当たらん)
身勝手な結論を固めると、手を伸ばしてシチ口ージの形の良い顎をそっと捕まえた。
「? カソベエ様?」
やんわりとカソベエと向き合う形にさせられたシチ口ージの頬には、餡子が
盛大にくっついている。カソベエはためらいなくその頬に唇を寄せて、甘い塊を
舐め取った。
「ッ! カソベエさ――――」
あまり動揺を表に出さないはずのシチ口ージの慌てぶりがたまらなくおかしく、
そして愛おしく思ったので、程近い場所にあった唇にも優しく食いついた。
抗議の呻き声はすぐに立ち消える。自分の唇で挟み込み、感触を楽しむように
食んだ。シチ口ージの口が、観念したように薄く開いたのを見計らうと
カソベエはするりと舌を忍び込ませ、その咥内を浚った。甘い。
シチ口ージの舌が、カソベエの舌におずおずと触れた。すぐさま絡ませ、
水音まで立ててやる。ちろちろと上顎の天蓋をつつき、歯列をなぞり、
そしてもう一度挨拶するようにシチ口ージの舌を愛でてから、カソベエは唇を離した。
シチ口ージが息をついた。急な接吻だったので多少息が苦しげなようにも
見える。顔が赤いのは、もう沈んだ夕陽のせいか。
「――カソベエ様」
「叶うぞ」
抗議の第一声が叩き落とされた。
「シチ口ージ、お前の願いは叶う。儂は死なんし、お前も死なん。そうだろう」
既に疑問系ですらない。自信に満ち溢れた言葉に、シチ口ージは照れから来る
ぎこちない笑みを浮かべた。
「……野暮な繰言を申しました――正しく、その通りですね」
肩を竦め、一度頷いた古女房をカソベエは満足げに見つめた。それからいい加減
体温が移って生暖かい自分の饅頭を口に運び出す。接吻の後ではあったが、
シチ口ージの苦労には報いてやらねば、と、そう思ったからだ。
その仕草を半眼で思い切り嫌そうに眺めている視線には、気がつかない。
カソベエはそういう男だ。
空には、既に星が瞬いている。
++++++++++++
シチ口ージ。
まるで脳みそを三分割しているかのようだ。
一つは淡々と、道行くものを捕まえ件の侍が殺められたとされる場所を
聞き出し、去り際に礼を言う余裕まで持っている。
一つはあの忌まわしい大戦の頃、常に隣にいたシチ口ージのどこか人を
食ったようなおっとりした笑顔とか、敵を前にした時の氷のような鋭さとか、
戯れに肌の柔い部分に噛み付いたときの甘い呻きとか、そんなものばかりを
つらつら思い出している。
一つは、只ひたすらに喚いている。
シチ口ージ。シチ口ージ。シチ口ージ。シチ口ージ。シチ口ージ。シチ口ージ。シチ口ージ。
「――――っ!」
何故かカソベエの足は速まらないのだ。きっと足へ意志を伝える箇所の動力が、
壊れた機械のように名前しか喚かない部分に注がれすぎているのだ。どうにも
視界が狭くてまっすぐ前しか見えないのも、さっきから人にぶつかってばかりなのも、
怒る相手に謝る余裕が無いのも全てそのせいなのだ。
その場所は、あまりにも分かりやすかった。
ざわめく人々がたかっている。まるで線でも引いたかのように、その人だかりは
綺麗に円を描いている。その見えない境界を踏み越えるものは無く、只その
周りに立ち尽くして囁いている。呟いている。
その言葉は聞き取れない。血臭が強すぎて、鼓膜まで曇って固まってしまったかのようで。
カソベエは知らず強引に人の輪に突入した。怒る男も睨む女も泣く子も
構わず押し退けて、誰も侵入する事のない円の内側へ。眩暈がするほど紅い、その中へ。
シチ口ージはそこにいた。
常ならばいち早くカソベエの姿を見つけ、控えめな笑顔を向ける筈なのだ。
しかし今目の前に横たわっている男にそれは出来まい。薄紫の羽織物は赤黒く濡れていた。
もしかすると、乾きつつあるのかもしれない。あの独特のぬらりと生臭い光沢は、
日の光の下にあっても鈍く、時間の経過をカソベエに突きつけた。
カソベエは、ふらりと歩み寄っていく。
地面に突き刺さる彼の得物の紅い槍を眼の端に捕らえ、墓標のようだと
他人事のように思った。
カソベエはその場に跪いた。地に着いた着物がじっとりと濡れて気持ちが悪い。
シチ口ージの青い眼は閉じられていた。その口元は固く引き結ばれて、
死せる直前まで槍を振るっていた事が見て取れた。夜に着物を剥ぎ取れば、
月明かりに淡く目立った白肌は、赤みを失ってまっしろだった。
発作的に手袋を放り捨てて、その頬に手を滑らせた。――シチ口ージの肌は
雪の様に白い……その、温度さえ。
雪すら溶けない、冷たい白だ。
「――――、」
血溜まりに落とした両の手袋と、跪いた膝が、鈍い速度で紅く染まっていく。
シチ口ージなら苦笑するだろうか。『あァ、こいつはもう使い物にならないじゃあないですか』
両手でシチ口ージの頬を挟んだ。悲鳴を上げたくなるような冷たさだ。
ぱっくりと裂かれた喉の傷が、添えられた花の様で目障りだ。
残雪の如く、白く冷たいその頬を撫でた。指でそっと、色を失くした唇を辿る。
戯れるようなその仕草を、シチ口ージは恥ずかしがってよくかわした。
直接的な行為より、このようにどこか生々しいかけそい行為に耐えるのが苦手な男なのだ。蛍屋ではどうだったか知らないが。
しかしシチ口ージは、シチ口ージの骸は、カソベエの手から逃げる事はなかった。
その魂は、既にカソベエの手の届かぬところにいた。
「――――シチ口ージ」
呼びかけても応えは無し。間髪入れずに返ってきた、あの低いどこか気だるげな
声が恋しい。聴きたいのだ。返事をしてくれ。
「シチ口ージ」
とうとう視界が完全に曇った。眼前の事態に脳の容量が全て持っていかれたに
違いない、と思う前にぼやけた視界は一度揺らいで、そして落ちていった。
視界が晴れた瞬間に眼にしたのはシチ口ージの死に顔で、先程と違うのは
その目元に温かなしずくが垂れている事だ。
しずくはカソベエの頬にも伝う。時折落ちて、シチ口ージの肌に跳ねる。
二人して泣いている。死人と二人で、泣いている。
「シチ口ー、ジ…………」
【イツモフタリデ】なんて刻んでおきながら、お前が先に消えるのか。
確かにお前は儂がいなくなるのを恐れていたが、儂も同じ事を思っていたと
何故気づかない。いつも聡いお前だが、こういうところは抜けていたのだな。
……、――――。
「シ、チ――」
言葉が喉の奥で詰まった。出てこない。溢れるのは眼から零れ落ちるしずく
だけで、ぱたぱたと浅黒い肌と白い肌とに落ちて伝う。
この場から離れなければ、とカソベエの冷静な部分が呟いた。いつ追っ手が
戻ってくるとも分からん。行かなければ、あの鉄塔の下に。自分が行かなければ、あの娘は困るのだろう。
しかし、カソベエは膝を突いたまま動かない。
『…………願っては、いけませんかね』
ああ、シチ口ージ。
暫しここで泣いていては、いけないか。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ モメンワケカタヘタダッタ
| | | | ピッ (・∀・;)
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
回想だけでも良かった気がします。
けど私は謝らない。
>>200 GJ!!
元ネタ知らないけど、泣いてしまいました…!!
>>200 GJ!!
ホント泣けた。古女房大好きだ
>>182 たのむから伏せろ
それでなくても厨ジャンル扱いされてるんだから
>>203 そうやって伏せ字強制するから厨ジャンル扱いされるんじゃないの
>203
釣られるなよ…
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ギャグθ和のマニアックなキャラ萌えだよ。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| オリキャラ×非力バンパイアって…
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ マニアックスギダロ。
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
--------------------------------------------------------------------------------
その瞬間、俺の世界が終った。
しんと静まり返った部屋で棺桶に腰をかけ頭を抱える
「デビルキラー夢子」が最終回を迎えたのだ。
夢子に俺は小松ほど肥えないにしても血を吸わなくても平気な程の力を
貰っていたというのに…
これからどうしたらいいんだ…
夢子に俺はもう二度と会えないのか…
声も出ずただ涙だけが流れ続ける
小松は「ドラゴンキラー愛子」が終った後
また新たに自分の力の元を「モンスターキラー勇子」に見出したようだが
俺は夢子のかわりを見つける気にはならなかった
代わりなど居ない。俺には夢子だけだったんだ
自分で作った同人誌「夢子と俺」を見ながらまた泣いた
始めは嫌がっていたけど、今ではその細い鎖骨がステキ!と
言ってくれていたのに、もう夢子には会えないのか…
このまま死んでしまうのだろうか?
新たな力の源を見つけないというのなら血を飲むしか自分の命を繋ぐ術は無い
しかし、力は前よりはマシだが泣き続けの毎日でかなり力が消耗しており
今ではカマキリより弱い。
血を吸わなくては死んでしまう、もう夢子は居ないのだ。
いつもの公園のベンチに腰掛ける
小松には一人にしてくれ、といってあるからここに来ることはないだろう
奴にも少しは俺の気持ちがわかるはずだ、最愛の人を失ったのだから
乗り換えられるだけ、小松の方が精神的に強いのだろうか?いたそれはない。
というかアイツにだけは何も劣りたくない。
どんどんネガティブな方へ行く考えを打ち切るために俺は女に襲い掛かった。
ーーーがやはり肋骨を折られてしまった。
もう折れていない肋骨の方が少ない
踏んだり蹴ったりだ、もう生きてるのが嫌になった。
…もう帰ろう、、、
そう思って歩き始めた
がっくりと項垂れて歩いていた俺は信号が赤だという事に気付かなかった
物凄いブレーキ音の顔を上げると
目の前いっぱいにバイクと眩しいライトが入り込んできた
そこで俺の意識は途絶えた。
―――――――――――――――――――――――――
「なんだよ、古谷!お前また振られたのかよ」
いつもは気のいい友人の声が酷く憎たらしく感じる。肩に手を乗せ
ニヤニヤと笑いながらこっちを覗き込んでくる顔を思わず殴り飛ばしたいと思った。
「振られたんじゃない、合意の上で別れたんだ。」
さっきから言っているのに本当にこの男は話を聞かない
本当に彼女とは合意の上で別れたのだ、正直お互いに冷め切った仲だったから彼女に未練があるだけじゃない
「でもお前、落ち込んでるじゃん」
そういってまた覗き込んでくる顔を手で押し返すと俺は盛大に溜息をついた
「悩みなら聞くぜ? 一回千円で」
そういって笑うこの友人にだけは絶対この悩みを言わないでおこうと思った。
これから彼女と夜のデートだ!という友人と別れるとバイクに跨ってぼぅっと前を見つめる。
こんな悩み、人には言えないなとまた溜息をついた。
俺の悩みとは「恋愛」が上手く出来ないことだ。
俺は容姿が母から受け継いだブロンドヘアーと外人の様な顔つきで子供の頃よく虐められた
その所為か初めからなのか今でも人と打ち解けるのが苦手だ
只でさえ人と打ち解けるのが苦手なのに恋愛など上手く出来るはずも無い
告白されたら断れずに了承したことになり、彼女が無口で無愛想な俺に飽きたら別れる
そんな恋愛を繰り返してきた。 といっても俺はこれが恋愛なのかもわからない
しかも俺に告白してくる子は大体、派手好きで髪を染めたギャルと呼ばれる部類の子達ばかり
(俺の好みはまさにその正反対なんだが)できっと彼女たちにとって俺は派手なブランドバックと同じなのだろう
自分でも恋愛に向いてないのはわかっている
どうせ職業は小説家なのだ、誰にも合わずずっと家に篭もって仕事していればいい。
そう思っていたのだが、次の小説の題材に恋愛要素を入れて欲しいと頼まれてしまった
俺は例の如く断れず了承してしまい途方に暮れた。
恋愛したことも無いのにどうやって恋愛小説を書けというのか…
普通、恋愛を経験しないと小説なんて書けるわけが無い
いっそ顔つきは仕方ないにしてもこのブロンドの髪を短く切って黒く染めようかと悩んだが
そうした俺を見たときの母の哀い顔が浮かんでそれも出来なかった(母は俺がこの髪のことで虐めを受けてると
知ったときから責任を感じているようだった俺はそれを否定するためあえてこの髪を染めることはしなかった)
恋愛でなくともせめて自分が心から愛しいと思う人ができれば…
でもそれは無いものねだりに過ぎない
ここまで考えて気がつくと周りはもう暗くなり始めていた
慌ててヘルメットを被り、エンジンをかけるといつもよりスピードを出して走った。
どうせこの辺り、特にこの時間は人が通ることがないし、、、
目の前の信号は青だったから少ししかスピードを緩めなかった
周りの闇にまぎれて黒い服を着た青年が横断歩道を歩いてくるのに気付くと俺は慌ててブレーキをかけた。
俺はまるでスローモーションのように目の前の青年が倒れるのを見ていた
轢いてしまったのだろうか?
怖ろしい不安が胸を過ぎり慌てて青年の方へ向かう
轢いた衝撃は無かった、しかし現に青年は倒れているのだ。
まさか、かすったのだろうか?
もしかしたらこっち衝撃は無かったが青年には衝撃があったのかもしれない
「は、、、早く病院に…!!いや救急車を…」
焦ってしまってとっさに何をすればいいのかわからなくなった。
俺は携帯を持っていないし近くに公衆電話も無い。
バイクに乗せて行こうにも青年の意識がなければ二人乗りは出来ない。
このあたりは暗く、民家も無い、電話を借りることも出来ない
「、、びょぅ、ぃん、、は、、駄目、、だ、、、」
その時青年が声を洩らした
「、え?、、」
青年の言葉の意味がわからず唖然とする、その間も青年は同じ言葉を繰り返した。
とにかく、病院は駄目らしい。
もしかして、いや、もしかしなくてもヤ○ザ関係の人なのかもしれない、黒装束だし…
だとしても自分が轢いてしまったのだ、ほっとけるはずも無い
自分のバイクを端に寄せると青年を抱き上げようと力を入れた
とりあえず表通りまで出られればタクシーが拾えるはずだ。
でも男一人の体重を表通りまでとはいえ自分一人で持ち上げられるだろうか?
「って、うわ、!、、軽ッ…!?」
しかし、持ち上げた青年は予想を反して異常なくらい軽かったのだった。
これは本当に男なのだろうか?そう思うほど軽かった。
もしかしたら自分がかつて付き合ってきた女性たちよりよっぽど軽いかもしれない
暗くてわからなかったがもしかしたら青年ではなく少年なのかもしれない
病院に行けないのは家出をしているとか事情があるのかもしれない
だとしたらよけい急いで怪我を診てもらわないと…
とにかく、早く表通りに、、、
暗い道を走り、表通りに出ると丁度通りかかったタクシーを呼び止めて雪崩れ込む様に乗り込んだ
運転手に自分の家の位置を教えると改めて青年の顔を見る
そして、息を呑んだ
夜の光に映し出された青年の顔は白いというより青白くさえ感じる肌
痩せこけてはいるものの白く整った顔
閉じられた瞼に長い睫、そして自分が憧れた黒髪が彼には備えられていた
手の方を見ると軽いわけだ、その辺の女性よりよっぽど細く白い腕が見えた。
胸が高鳴るのを感じる
彼に触れてみたくてどうしようもなくなる
そんな自分を戒めるため痛いほどぐっと手を握った。
俺はその日生まれて初めて恋に落ちたのだった。
…此処は何処だ?
目に映った天井はいつも見慣れたものではなかった。
俺は大きめのベッドに寝かされているようで起き上がりたいのだが身体がいうことを聞かない。
ついに起き上がる事すら出来なくなったか?このまま俺は死ぬのだろうか?
身体が動かないため視線だけ動かすと此処は結構広い部屋のようだ
寂しさを感じるほどものが無いがその代わりとでも言うように棚や机の上、さらに床にまでも本が積み重ねられている
窓のカーテンを通して薄い光が部屋に差し込んできている
おそらく今は朝か、昼なのだろう。
もしかして病院かどこかに連れて行かれて俺が吸血鬼とバレたのではないだろうか?
いやでも部屋の内装は病院の一室という感じではない、
しかし、そうだとしたら逃げ出さなくてはならない、しかし身体がまったくと言っていいほど動かないのだ
どうしようもなく暫くじっと天井を見つめる
このまま死ぬのか、、どうせ死ぬなら最後に夢子に会いたかった。
自分の同人誌の夢子でもいい、最後に一目だけ…
そう考えているとドアをノックする音が部屋に響いた
誰か来たのか?
どうせ起き上がれないから視線だけ横にしてドアの方を見る
「入りますよ」と声がした、男の声だ
男か、、と思ったがどうせ自分には女だったとしても襲って血を飲む力は残ってないのだ。
そう思うとどうでもよくなった
「目が覚めましたか?」
そう訊ねてきた男は背が高くがたいも悪くない。鼻が高く、洋画に出てくる外人のような整った顔をしていた
バンパイアだったら似合うだろう。まずそう思った。それでも、何も感じないからコイツは人なのだろう
コイツが人で小松がバンパイアなのが間違いのように思えた
「身体は大丈夫ですか?」
そういわれてはっとした。そして一気に質問をぶつけた
「此処は何処だ?」
「何故俺は此処で寝ている?」
「何があったんだ?」
「お前は何者だ?」
それを聞いた男は少しキョトンとなりそしてすこし困ったように笑った
「此処は俺の家の一部屋で、昨日貴方をバイクで轢きそうになったんです。病院に行こうとしたら
貴方がうわ言で病院は駄目だと繰り返していたから俺の家に運んだのですが…」
「そして俺の名前は古谷和輝です」
そういって手をこちらの伸ばしてきた。握手を催促しているのだろう
しかし俺の身体は腕すら満足に動かせない
「悪いが古谷、身体が動かなくてな。」
握手すら出来ないとは情けない、俺はもってあと1日2日で死ぬのだろう。
「やっぱり何処か怪我してたんですか!?」
急に青ざめた古谷という男は救急車を…と言いながら部屋を出ようとした。
救急者など呼ばれては困る、病院に行くわけには行かないのだ。
世間にバンパイアの存在を知られるわけにはいかない、それくらいだったら静かに死んだ方がマシだ
「待て古谷、病院は駄目だ!」
部屋を飛び出そうとしていた古谷はこっちを向き返し、俺のほうを見た
「なんでですか!?身体が動かないなんて病院で見てもらわなきゃもしかしたら手遅れになるかもしれない、、
俺が轢いた所為なのだから俺には貴方を病院に連れて行く義務があります」
「俺が動けないのはお前の所為じゃない。」
怪我だったらすぐ治るのだから、それに轢かれた形跡や痛みなどが無いという事は
初めから轢かれていないかもう治っているのだろう
「、、、でも」
古谷は納得していないようだった。それはそうだろうもし俺が古谷の立場でも納得など出来ない
バンパイアだと話してしまおうか?救急車を呼ばれて大勢に俺の存在を知られるよりは良いかも知れない
もし古谷が誰かに話したとしても誰も信じはしないだろう、証拠を見せようにも俺はもう死んでいるだろうし
そういえばバンパイアは死ぬとその身体は灰になって散る。
もし俺が死んだら古谷は灰だらけの部屋を片付けなければならなくなる、少し気の毒だな…
死を前にて俺は冷静だった。それもそうか俺はもう何度も命の危機を迎えているのだから
「俺が病院に行けない理由は俺がバンパイアだからだ。」
俺はそう一言言うと、古谷の反応を待った。
「バンパイアですか、、」
古谷の顔からはあきらかに困惑が見えた。
それはそうだろう急にバンパイアですといわれても信じる奴の方が少ないだろう
襲った女にもバンパイアですと言っても痴漢やらなにやらに間違えられてきたのだから
「そうだ、動けないのは血が足りないからだ。もう一年以上飲んでないからな」
「え゛、一年、、それって平気なんですか?」
「平気じゃないから動けないんだろうが」
「あ、そうでしたね」
古谷の頭の中は混乱しつつもありえなくは無いな、と思っていた
この人の白すぎる肌も痩せた身体も今の言葉が本当だったら
納得が出来るものだ,そしてあることを思いついてまた彼に声を掛けた。
「…あの、」
「なんだ?」
「血って俺の血でも大丈夫ですか?」
「……は?」
何を言ってるんだこいつは、、一瞬言ってる意味がわからなかった。
俺に血を差し出すというのか?本当にバンパイアかも怪しい俺に?
それとも今の一言で信じたのか?それとも俺が本当にバンパイアなのか試しているのか?
それよりも男の血で大丈夫なのか…気がついた頃から異性の血というイメージがついていたから
男の血など飲んだことが無い。
「男の血は飲めるかわからん。」
混乱した挙句やっとこれだけ言葉を返した。
「じゃあ、試してみませんか?」
そういって古谷は俺の顔を覗き込んだ
古谷は俺に自分の血を飲ませる気でいるらしい
今まで生きてきたが積極的に血を進めてくる奴は初めてだ。てゆーかまず居ないだろう。
とはいってもこのままじゃ死を待つだけだ、それだったら試してみたい気もする
運がよければ死なずにすむかもしれない
「あぁ、」
そういって起き上がろうとしたがやっぱり身体は動かなかった。
「悪いが起き上がれん、手を貸してくれ」
そう頼むしかない自分がやけに惨めに感じる。
古谷は「はい」と短く返事をするとベットに腰を掛けて俺の肩に手を廻した。
古谷は結構力があるようだった、軽々と俺を抱き上げると自分の膝の上に座らせた
起き上がっていられない俺は古谷の胸元に寄りかかるような形で何とかもっていた
それを支えて古谷が背中に手を廻している、傍から見れば抱き合っているように見えるだろう
流石に男同士とはいえ気恥ずかしい気がした。
「首からでいいですか?」
そういって古谷はシャツのボタンを外し首元を晒した
身体を動かせない俺はどうすることも出来ず古谷の背中に手を廻しその肩に牙を挿した
首に針を刺したような小さな痛みを感じた後、血を吸い上げられるのを感じる
それは妙な感覚で、痛くもなくむしろ心地よいものだった
ちらりと彼を見る、必死で自分の血を吸い上げる彼は何故か色っぽく目に映った
身体を動かせず自分に寄りかかる彼を支えるように抱き締める
自分の顔の温度が上がるのを感じる、おそらく今自分の顔は紅いのだろう
恋をするとはこんな様子になるのか
初めて知った感情だった、この腕の中に居る彼が酷く愛おしい
このままもっと強く抱き締めたい、髪を撫でたい、額に唇に口付けたい
今まで付き合ってきた女性に対してもこんなふうに思ったことは無かった
相手は男、しかも人ではない、名前も知らないバンパイアだというのに
そんなことは問題にならないほど彼が愛おしかった、一目ぼれとは怖ろしい
背中に廻された彼の手に力が入ってくるのを感じた
血を飲んで身体が動くようになったのだろうか?
どうしても彼の髪に触れたくなり彼を支えていた片方の手でそっと彼の髪に触れた
牙を挿したところから口の中に溢れてくる血を必死で飲み干した
口の中に溢れる本当に久々の生暖かい血の味に夢中になる
あまり吸い過ぎてはいけない、古谷が貧血になってしまうかもしれないからだ
彼は何故無償で俺に血を与えたのだろうか?男の血をはじめて飲んだがそれは女性のと何の変わりもなかった
牙を挿した時痛くは無かっただろうか?血を吸われるのは不快ではないのだろうか?
そう考えるが吸われたことはない自分にはわからなかった。
もたれた所から伝わってくる体温が心地よかった、おそらく古谷は自分と違って体温が高い
バンパイアとばれないために、俺には人の知り合いが居ない
知り合いといえば小松だけだがアイツの体温はきっと暑苦しいだろう。御免だ。
そういえば小松もあまり人がうちに来ないと言っていたな、バンパイアとは人と関わりをもてないものなのかもしれない
あれほど酷かった空腹も満たされてきて、目を閉じると古谷が頭を撫でてきたのがわかった
それが心地よくてもう血は吸い終わったがしばらくそのままじっとしていた
「男の血でも大丈夫でしたか?」
牙を抜いてから古谷が聞いてきた
アレだけ吸っておいて大丈夫じゃないわけがないだろう。
「あぁ、問題は無いらしい」
まだ満足には身体は動かないが意識は前よりだいぶはっきりしてきた
「よかった。」
そういって古谷が笑んだ、古谷はかなりお人よしな奴だと俺の中で認識された
笑った顔は普通の時の顔よりかなり幼く見えた、もしかしたら20代後半だと思っていたが半ばくらいかもしれない
「よかったら、貴方の体調が良くなるまでうちに居てください」
どうせ一人暮らしですからと古谷はまた笑った。
本当にお人よしだ、いつか騙されて借金とか背負わされそうだなとこっちが心配になるくらいだ
「じゃあ暫く頼む。」
そういうと古谷は何故か嬉しそうに笑った。
「名のるのを忘れていたな、俺の名は北島だ」
そういって今度はこっちから相手に手を伸ばすと古谷は嬉しそうにその手を握った
「よろしくお願いします」
首元を見ると傷はもう塞がっていてそれが酷く残念に思えた。
まだ血がついていると指摘されたので拭いてきますと部屋を出た。
「よっしゃ!」
部屋の戸を閉めると思わずガッツポーズをする、こういう性格じゃなかったはずなのになぜか喜びがあふれ出して止まらない
好きな人と暫く一緒に暮らせるのだ、それが俺を此処まで変えていた
恋愛とはすごいものだと改めて思った
しかし、北島さんは身体が治ったらすぐに出て行ってしまうだろう。
もしかしたら何処か遠くへ行ってしまうかもしれない、なんたってバンパイアなのだ、外国とかに行ってしまっても不思議は無い
そしたらもう二度と逢えなくなるかも知れない…
身体が治る前に、積極的に攻めれば女の子たちから攻められた時の俺みたいに了承してもらえるかもしれない
北島さんに好かれるように尚且つ積極的に、、頑張ろう
濡れたタオルで肩を拭うと酷く勿体無いような気がした
不思議と傷跡もなく、牙を挿した跡も無い。
シャツのボタンを締めると俺はまた彼が居る部屋へ向かった。
――――――――――――――――――――――――――――――
あれからもう一月経った、俺はまだ古谷の家に居候している
ベッドに仰向けに倒れた状態で天井を見上げるとそれは初めて此処にきた時とまったく変わっていなかった
その天井の様子と違って変わったものもある、それは俺と古谷の関係だ
始めてあった時よりもだいぶ親しくなった
古谷は夜仕事をするから俺と生活習慣が合っているし
もともと俺はテレビばかり見ていたから身体が動かなくても不自由はなかった
そのうち身体が動くようになっても外に出る気になれずずっと家に居た所為でよく古谷と会話した
古谷は俺に興味があるようだった
俺というよりはバンパイアに興味があるのかもしれないが
血液以外の食事は出来るのか?(栄養は摂取できないが食べることは出来る)とか
血を吸われたものはバンパイアになるのか?(それじゃあ世界中バンパイアだらけになる、ってかそれじゃお前もなってるだろ)とか
他にも年齢やら趣味やらバンパイアには関係の無いことも聞かれたが
趣味といえば俺にはテレビを見る趣味ぐらいしかなかったが、今はその代わりに本ばかり読んでいる。俺のじゃない古谷のだ
俺が寝かされていた部屋にも本が大量においてあったがそれは序の口だった。
古谷がよく篭もっている書斎は一面がスライド式の本棚になっていてそれに入るだけ本が詰め込んである
それでも足りないと机の上や他の棚、床にまでとにかく早いっぱいに本が乱雑に置かれている
古谷は本を書くのを仕事にしていて(見た目はそう見えないが)元々趣味が本を読むことだったらしい。
一冊読むとそれに関連する本も読みたくなり、そしてそれにまた関連する本も読みたくなり、、と
どんどん増えていく一方らしい、それとは別に仕事で書く物に必要な資料や冊子も大量にあるのだから
この家の床が抜けるのは時間の問題だと俺は思う
たまたま面白い番組が何もやってなくて外もいやになるくらい太陽が照ってる日にたまたま近くにあった本を読んでみたのが
キッカケで俺も本の虫になってしまった。
一冊読み終わると古谷がまたそれに関係した本を一冊薦めてくるからわざわざ選ばずにすむのが楽だった
古谷が仕事をしている時も俺はよく書斎で本を読む、始めは邪魔になるだろうと遠慮していたのだが、古谷は
別に構わないという、世辞かもしれないが俺がいたほうが安心して仕事が進むと言っていたこともある
真剣な目つきで仕事をする古谷を見ると時々そのまま魅入ってしまう時がある
胸が鳴るのはきっと、染めたのとは違った綺麗な金色の髪に仕事と本を読むときだけかける眼鏡が
夢子に似ているからだろうと思った、それでもあれほど泣くほどに想っていた夢子のことは時々思い出す程度に変わった
寝る前にも二人して本を読んでどちらかがキリがついたら一緒に寝る。
こうすると本で時間と寝るのを忘れてしまうことを防げるからと古谷が考案したのだ
俺が来る前は寝るのを忘れてしまいよく徹夜して仕事に支障が出たらしい、まったく仕方の無いやつだ。
古谷は俺より背はでかいが年下でちゃんとしているようで傍についててやらないと結構危なっかしい、お人好しだし。
本人も「北島さんが居てくれるんで安心です」とか言っていた、身体はもう動くけどまだ此処に居てやろう、と思う
まるでお互いが空気のようにその空間に在った、と俺は思っていた。
この一月でかなり距離を縮めることが出来たと思う。隣で黙々と本を読む彼を見ながらそう考えた
彼の傍に居るためなら多少趣味や性格を曲げることがあっても良いとすら思っていたのに
そんなことをしなくてもむしろ彼が俺の空間へ溶け込んできたのだ
それは彼が無趣味だったおかげかもしれない。
彼が本を読むのにハマってから一気に距離が短くなったように感じた。
そして外見だけで人目惚れした俺に、彼の性格がとどめを刺した。
俺がこの一ヶ月で知った彼のことは、俺より年上だという事、結構几帳面だという事、プライドが高いという事、
自分の意見をはっきり言う人だという事、そして案外抜けてるところがあるという事(これは多分本人は気付いてない)
そして普段は無表情だけど、時に俺に向ける笑顔が優しいという事だ。
多分弟や後輩のように見られているのだろう、けど信用はされている自信がある
「おい、古谷。丁度二章のところまで読んで区切りがついたんだが、お前は大丈夫か?」
考え事をしている頭に彼の声が響いた
ふと気付くと北島さんが俺の顔を覗きこむようにこっちを見ている
「あ、はい、俺も丁度区切りです」
慌てて返事をすると彼の口角が上がった、変に思われたのだろうか?と少し焦る
「じゃあ、寝るか」
「はい、」
ここからは俺にとって天国であり地獄だ。
俺が布団にもぐりこむとすぐ北島さんが俺の横に入ってくるのを感じた。
この家にはベッドが一つしかない。
始めは他の部屋のソファに毛布をかけて寝てたのだが身体が動くようになった北島さんに
ソファで寝てるのを発見されて酷く怒られたのだ。
お人好しもいいかげんにしろ!といわれ他に布団が無いというと一緒に寝ることを提案された。
変に断るわけにも行かず、それからずっと同じベッドで寝ている
そのベッドは俺がデカイ所為で普通のベッドじゃ足がつくためダブルのサイズだから男が二人で寝ても問題はない
そっちは問題ないのだが、好きな人と同じベッドの中なのだ、緊張しない方がおかしい
俺は性に対する欲求が少ないのか、北島さんを抱きたいとかSEXしたいと思うよりは
むしろ髪を撫でたいと思ったり口付けをしたいと思ったり強く抱きしめたいと思う方が上だ。
暫くベッドに身体を沈める。少しだけ触れ合っている肩が熱い
頭を傾け彼の方を見るともうよく眠っているようだった
暗い部屋にうっすらと窓から差し込む光(おそらく月の光だろう)に映し出された彼の顔を見ていると
初めて出会ったときのことを思い出した。
此処まで近くなれたのだ、それだけで満足しなければならないのかもしれない。
それでも、自分の中の欲求を抑えきれず彼を起こさないように自分の上半身を起こすとそっと彼の前髪を払った
白く浮かび上がる愛しいひとの顔を見る。眠っている所為で瞼の閉じられた顔は初めて見た彼の顔と同じだ
その唇を軽く指で撫ぞると其処に自分の唇を重ねた
そして、彼を起こさないように聞こえないような小さな声で
「好きです」と呟いた。
聞かれるわけにはいかない、この関係が崩れてしまう、、(それでも)聞こえていればいいのに…
俺はそのまま、また布団に潜り込むと静かに眠りに落ちた。
深く息を吸うと一気にそれを吐き出す
心臓が大きく鳴っているのがわかる、止まれ!いや止まっちゃ駄目だな、静まれ!
唇に手を触れる、この唇に先刻、古谷が口付けをしたのだ
これは夢なのではないだろうか?そう思って頬を抓ってみた、やっぱり痛い。
わけがわからなかった、何故、古谷が俺にキスをするんだ?いやそれは最後に聞こえた、と思う一言で解決しているはずだった
確かに聞こえたその一言は俺の冷静さを見事に奪い去って心の中をぐちゃぐちゃに荒らした
友人としてみていた古谷にキスされてそして好きだといわれたのだ
俺は一度もそういう風に古谷を見たことは無かった。
それでも思い出すだけで顔に熱が篭もる、顔が酷く熱い。
古谷が俺をそういう風に見ているなんて全然気がつかなかった。
明日からどんな顔をして話せばいいんだ?、、平然と話すのは、無理だという自信がある
どうしようか、まさかあの時、狸寝入りをしていた。など今更言えるはずもない。
考えた挙句、俺は古谷が起きる前にこの家を出ることにした。
置手紙に一言、世話になった。と書いた。玄関をあけると急に此処を出るのが惜しくて立ち止まってしまった。
その時、俺はそうとうこの空間が気に入っていたのだと気付いた。
ここに居てやったのではなく自分が此処にいたかったのだ。もう、二度と来れないのだと思うと涙が出てきた。
情けない、俺はバンパイアだというのにこんなことで泣いてちゃいけない
涙を拭うと苦手な太陽の光が指した道を全力で走った。
起き上がると北島さんの姿が無い。
いつもは俺が起きても寝ているのに珍しい。
「、、北島さん?」
部屋にも彼は居ないようだった。
だったら書斎だろうか?彼は遠慮しているのか俺がいないときは絶対書斎には入らなかったのに
書斎に行っても彼の姿を見つけることは出来なかった
急に不安が過ぎり、彼の名を呼びながら家中の部屋を探した、それでも彼を見つけることは出来なかった
外へ出かけたのだろうか?でもわざわざ苦手な昼間に出かけるだろうか?
部屋に戻ると机の上においてある紙を見つけた
【世話になった】と一言だけ書いてある紙を見つけて、俺は泣いた。
あれから何日か経った、久々に帰った家は埃が溜まっていて掃除するのに時間が掛かった
それでも身体を動かしてる間は何も考えずに居られたから楽だった
前はこの家で平然とひとりで生活していたのに、何故か酷く人寂しくなった
久々に小松の家を訪ねると小松の部屋の一面にあったドラゴンキラー愛子グッズがモンスターキラー勇子グッズに変わっていた
小松は相変わらず暑苦しい、アップになると気持ち悪そうな顔をしていて俺が居なくなったのを心配していたと言った
そして良い情報があるといってニヤニヤと笑った
「いい加減いわないと毛穴に十字架ねじ込むぞ!」
「い、言うよ!っていうか変わってないな、君ィ!」
「さっさと言え。」
「何様!?まぁいいや、あのね、希望者が多かったおかげで君のエンジェル『デビルキラー夢子』がDVD化するんだ!
これでいつまでも夢子ちゃんと一緒に居られるよ!」
その言葉を聞いて俺は固まった。
いま、俺は何だ、そんなことか…と思わなかったか?あれほど愛していた夢子のことを、、、
思わなかったにしても、俺は夢子にまた会えることよりも古谷のことのほうが遥かに心を占めていた
何故だ、俺が古谷を気に入ったのは夢子に似ているからだろう?
それでも夢子を思い出すと逆に古谷のことで頭がいっぱいになる、そして他に何も考えられなくなる
「ちょっと君、大丈夫!?」
小松の声が聞こえる。五月蝿い、黙れ。静かに考えさせろ。ただでさえ冷静になれないんだ
俺は確かに古谷に魅かれていた、でもそれは古谷が夢子に似ていたからで…もう一度、古谷の顔を思い浮かべてみる
真っ直ぐに伸びた男にしては長めの綺麗な金髪に、時に眼鏡の下に隠れた、それでもわかる優しいくっきりと二重の瞳
何もしていないと言っていたのに整っていた眉、すっとした高い鼻
全然、似ていないじゃないか、、同じなのは眼鏡と金色の髪だけだったんだ。
俺は夢子のことをここまで思い出せない。それは当たり前だ、夢子は二次元の存在なのだから
安心する心地よい体温もなければ、思い出せるその表情も限られている、その表情すら厚みも無い、薄っぺらなものだけだ
こう考えるまで夢子への気持ちは薄れているのに何故似ているからといって古谷に魅かれるわけがある
俺は夢子に似ているからではなくて、古谷自身に魅かれていたのだ。
其処まで考えると一気に体温が上がったように感じた
血が逆流するみたいだ、先刻よりもっと顔に熱が集まる、、
「ちょ、ホントどうしたの?熱があるんじゃ、、、」
顔を覗き込んできた小松を突き飛ばすと(でも突き飛ばせなかったらしい小松は少しも動かなかった)俺は慌ててその部屋を出た
気付いてしまった。俺は、古谷が好きなのだ。
もう五日になるだろうか、彼が目の前から消えてから。
あれほど順調に進んでいた小説はあの日から全然進まないでいた。担当の編集者が俺の様子を見て酷く心配していた。
本当に悪いと思うけど、これ以上書き進める自信がない。
打ち合わせした結末と違ってバッドエンドにするのならかけるかもしれないけれども。
数少ない友人からの電話に出ると声だけで状態が良くないのがバレてしまった、付き合いが長いだけはある
好きな子に振られたか〜?といわれたので降られるどころか告る前に駄目になったよというと友人は
興味津々に根掘り歯掘り聞いてきた。が答えなかった。当然だ、からかいのネタにされるのは目に見えてる
このことでからかわれたら俺は本当に泣きかねないのだから。
「他の男に先取りされたなら告って見ろよ!お前の顔なら案外乗り換えてもらえるかも知れねーぞ!」
相変わらずからかい口調で奴が言う。せめて告白出来ていたら、なにか変わっただろうか?想いを伝えることすら出来なかった
せめてもう一度だけでも逢えたら…
からかい口調で話つづける友人を無視して電話を切ると俺は外着に着替えた。
そして路駐していたバイクを取りに行ったあの場所へ、初めて、彼と出会ったあの場所へ向かう。
もしもまた、出会えたら今度は絶対後悔などしないように…
何故あのとき逃げてきてしまったのだろう、
いつもの公園のベンチに座りながらそう考える、自然と溜息がこぼれる
女性を襲う気にはならなかった。
今は血が足りているそれも彼の、古谷の血を吸っていたからだ
1年飲まないことすらあったのに週に一回は彼の血を貰っていたのだから
他の血など吸う気にはなれなかった、それくらいならいっそこのまま死んでもいいとさえ思えた
考えてみたらバンパイアにとって血を吸うというのはこの上ない愛情表現なのかもしれない。
だとしたら俺は始めて古谷の血を吸った時にはもう彼に一目惚れしてのかもしれない
でも俺は自らその世界を終らせてしまったのだ。
こんなところで考えていても仕方が無い、今さらノコノコと彼の家に訪ねるなんてできないのだから
まわりも薄暗くなってきた、騒がしかった子供たちが親に手を引かれて帰っていく
―――――――俺も帰るか、、
彼と出会ったあの道を通って。
二人が出会い、また世界がまた始まるのは数分後のこと。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ ナガスギダロウ…ホントスンマセン
| | | | ピッ (・∀・;)
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
言い訳書き忘れたorz
長文&投稿規制引っ掛りまくって2時間近く掛かってしまった
メモに書いてた駄文なので区切りとかいろいろ変です、ごめんなさい。
元ネタ知らないけどGJ!
ただ、視点がころころかわりすぎて誰が考えてることなのかわかりにくかったんで
どちらかに統一するとかしたほうが良かったかも。
>>234 GJ!
北島にもようやく春が来て、何だか嬉しいよ…(*´Д`)ハァハァ
「、、、」と読点が続いている時点で文章じゃない
>>234 GJ!!良い物を読ませてもらいました!
北島がこんなにも良い素材だったとは。目から鱗が五千億枚つづりです。
>>234 GJ!!北島可愛いよ(*´д`*)ハァハァ
一気に読んじゃったよ満足満足!ラストもイイ!
元ネタ知らんがGJ!
イイヨイイヨー(・∀・)モエタヨー!
>>238に同意。
あと「。」を付けるのか付けないのかはっきりしてくれ。
243 :
前編1/13:2006/05/30(火) 21:42:35 ID:8FSOPjIU
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) 松/谷/み/よ/子の「お/月/さ/ん/も/も/い/ろ」を801捏造
死にネタ入りますので、駄目な方はスルー願います
湿った潮の匂いが鼻をくすぐり、波が寄せては返す。
漁師たちが海に出かけても取れるものの限られている、けして豊かとはいえない漁場。
そんな小さな漁村に少年は生まれた。
両親を早くに亡くした少年は祖父と二人で暮らしていて、小船で海に漕ぎ出しては魚を釣り、
磯で海草や貝を取って暮らしていた。
少年は病弱でこそなかったが細く小柄で、村の同じ年頃の子供達と比べて明らかに見劣りの
する体格だった。皆と同じように働こうとはするが、細い体に見合った力しかやはりなく、それを
負い目に感じている。大人になればもう少し力がつくだろうか。もっと強くなって祖父に楽をさせて
やりたい。少年は祖父の曲がった背中を見る度にそう心の中で思っていた。
酷い嵐があった翌朝、少年が浜に出て貝や海草を取っていると、一抱えほどもある珊瑚が
打ち上げられていた。
昨日はひどく荒れていたから、きっとそのせいで折れた珊瑚が打ち寄せられたのだろう。
少年は暫く珊瑚をしげしげと眺め、手にした網にしまうと家に戻った。
持ち帰った珊瑚を祖父に見せると、少年の祖父はとても驚いた。
「こりゃあ、ももいろ珊瑚だ。磨けばもっときれいなもんになる。おまえの母親が生きていれば、
かんざしにしてやりたかった。おまえと同じでそりゃあ綺麗な髪をしていた。潮に吹かれても
粗くならずに、夜の海よりまっこと黒い髪じゃったから」
大事に持っておけよと祖父は少年の頭を撫でながら話して聞かせる。
少年は自分の髪を触り、次いで珊瑚を見て、わかったとうなずいた。
244 :
前編2/13:2006/05/30(火) 21:43:50 ID:8FSOPjIU
「おい、なにやってんだよ」
小船を浜に上げ、網を丸めていた所を呼び止められる。浦庄屋の息子の源太だ。
少年より二つ年上で今年十六になる。源太は父親に付いて、村の取りまとめの手伝いをしている。
嫌な奴に見つかったと、少年は僅かに眉を寄せた。
源太は事あるごとに少年を馬鹿にしていた。少し潮焼けはしていたが、それでも他の子供達
よりも白い肌や華奢な体を女のようだと言い、たいした漁も出来ないと笑っている。いつも一緒に
つるんでいる仲間は今日はいない。それがせめてもの救いだった。
「……家に帰るところだよ」
それだけ言って足早に去ろうとすると、源太が少年の腕を掴んだ。
「おまえ、いま嫌な顔したろ。厄介な奴が来たって」
「そんなこと……」
「おまえがそんな顔できる立場か? たいして魚も取れないくせに。女子供がするように、貝を
拾うのがせいぜいじゃないか。こんな細い腕しやがって」
村の皆が助けてやってるから暮らせていけてんだろうがと言われる。
少年は黙ってその言葉を受けた。
確かにそうだ。自分達の取るものだけではとても暮らしてはいけない。貧しいながらもこの村で
暮らしていけるのは、村の皆が助けてくれているからだった。
少年が黙っていると源太は、むっとした顔で手を離した。
「おまえの親父は浦で一番の漁師だったのに、お前は全然似てないな。いっそ女に産まれりゃ
良かったんだ、この役立たず」
245 :
前編3/13:2006/05/30(火) 21:44:57 ID:8FSOPjIU
本当に女に生まれれば良かったのかもしれない。こんな頼りない体で何の役に立つのか。
細かろうと病気にさえならなければ、女は子を産んで働き手を育てる事が出来る。
こんな手ではろくに魚も取れないし、何も役に立たない。
少年は黙って家に戻り、きしむ戸を開けた。
「じっちゃん……?」
先に戻っていた筈の祖父の姿が見えない。囲炉裏の火はついておらず、灰は冷たく冷えたままだ。
どこに行ったのかと少年は家の裏手へ足を向けると、そこに見慣れた背中を見つけた。
「じっちゃん、どうした。どこか具合悪いのか」
板張りの壁にもたれかかった祖父は少年の声に目を開けた。
「ちぃと疲れたみたいだな。横になれば平気だ」
少年は祖父を支えながら家の中へと連れて行くが、床に就いた祖父は、何の病かそのまま臥せってしまった。
何日たっても祖父の病は一向に良くならない。悪いものが憑いたのではないかと拝んでも貰ったが、
それでも祖父は床から起き上がることが出来なかった。
体が弱っているのなら熊の胆を飲ませれば良いとも人づてに聞いた。けれどそんな高価なものが
手に入るはずもない。
亡くなった両親の変わりに、小さな頃からずっと一緒にいてくれた祖父。早く良くなって欲しいと
重い心持ちのまま、少年が浜に打ち上げられた海草を拾っていると、崖の方から枝の折れる音と
獣の引き攣れた鳴き声が聞こえてきた。
246 :
前編4/13:2006/05/30(火) 21:45:49 ID:8FSOPjIU
顔を上げてそちらを見ると、山から一匹の猪が駆け下りてきた。
それから少し遅れて、一人の猟師が走り出て猟銃を構える。
追われた猪が狂ったように砂浜を駆けて海へと飛び込んだ瞬間、轟音と共に銃が弾を放った。
猪は数歩よろめいてどうと倒れる。飛沫が強い日差しに反射し、猪の腹からは、てらてらと
滑った赤い血が流れ出ていた。
仕留めた猪に猟師はゆっくりと歩み寄る。小刀を出して止めをさすと、そこでようやく浜に立って
いた少年に気がついた。
猟師はまだ若かった。背が高く、引き締まった体は浅黒い。全身に力がみなぎっているのが
傍目にもわかる。少年は猪を倒すその様に見惚れていた。
……そうだ、この人なら。
山に住む猟師ならば熊の胆を持っているかもしれない。少年は猟師に近づいた。
「あの……」
少年はつっかえながらも祖父の病気のことを猟師に話す。
村の者以外と話すのは初めてで緊張したが、猟師はそんな少年の言葉を黙って聞いてくれた。
「熊の胆なら持っている。一度に飲むと強すぎるから、少しづつ使うといい」
そう言うと腰に下げたどうらんから小さな塊を取り出して、少年の手に乗せる。
次に猟師は足元にある猪の前にしゃがみこみ、こいつの肉もやるから持って帰って
食わせてやれと小刀を突き立てた。
連投支援
248 :
前編5/13:2006/05/30(火) 21:46:51 ID:8FSOPjIU
それから猟師は度々、少年の祖父を見舞うようになった。
少年は漁に出ながら祖父を看病し、まるで兄のように接してくれる青年の訪れを心待ちにしていた。
「来ていたの」
家の前には今来たらしい青年が立っていた。海から戻った少年は嬉しそうに青年に駆け寄る。
「ああ、どうだ今日は。とれたか?」
「うん。今は潮の流れがいいから、群れが戻ってきている」
青年の手を引っ張って家の中に招き入れた。
獲ってきた魚を囲炉裏の火で炙り、粥を作る。精がつくようにと、青年が持ってきた山鳥の卵を
粥に落として祖父に食べさせた。
それから山でのこと、海のことを話す。少年は初めて聞く青年の話を、一言も聞き漏らさないようにと
熱心に耳を傾けた。
「ん……」
目を開けて最初に見えたのは、チロチロと燃えている囲炉裏の赤い炎だった。いつの間にか眠り込んで
しまったのかと起き上がろうとして、少年は自分の額に置かれている温かい手に気がついた。
「あ……ご、ごめんなさい。寝ちゃって」
青年の膝に頭を乗せて眠っていた事に気付いて少年は慌てた。
みっともない。眠ってしまうなんて。
恥ずかしさに顔を赤くした少年は俯いてしまった。
「昼間の疲れが出たんだろう」
「……じっちゃんは?」
「もう眠っている。大丈夫だ」
では自分の目が覚めるまでこうして膝を貸してくれていたのか。どれくらい眠ってしまったのだろう。
どちらにしろ長く引き止めてしまい申し訳ないことをしてしまったと、少年はその小さな体をますます小さくする。
そんな様子を見て青年は、気にするなという風に少年の頭をぽんと叩いた。
249 :
前編6/13:2006/05/30(火) 21:47:59 ID:8FSOPjIU
半月ほどすると、祖父の病状は漁に出るのは無理でも、起き上がれるほどには戻った。
少年は漁の合間に、訪ねてきた青年の話を聞く。知らない場所の話を聞くのは楽しく、
いつか青年が暮らす山へと行ってみたいと思うようになっていた。
「山では一人で暮らしているの?」
二人は山に近い松林の根方に座って海を見ていた。
「母はまだ俺が小さな頃に、親父は十二の時に山で死んだんだ。親父と仲の良かった猟師が
俺を引き取り、十五になってからは一人で暮らすようになった」
「……さびしくない?」
山での暮らしは何日も村を離れて、山小屋にこもりながら狩をする事も多いという。
「いつも一人というわけじゃない。仲間と一緒に狩りをすることもあるし、村へ戻れば皆がいる」
「そう。……嫁は貰わないの? そうすれば家に帰っても待っている人がいて、いいんじゃないかな」
唐突な問いに青年は少し驚いたように少年を見た。
「そうだな、もう十九だから貰ってもいいんだろう。だがこんな俺の所に来る女がいるかな」
青年はおかしそうに笑った。
「どうして? 猪だってあんなに上手く獲れるし、嫁になりたい女は沢山いそうだ。俺の父さんは浦で
一番の漁師だったんだ。母さんと一緒になった時は他の女が羨ましがっていたって聞いた」
以前、少年と同じくらいの年の子供を持つ母親がそう言っていた。
少年の父親は、かなり娘達に気に入られていたらしい。
「母さんもそんな父さんが好きだったんだと思う」
確かに仕事のできる男には女も目をやる。だがそれだけで夫婦になるのは難しい。
まだ子供にはその辺りはわからないかと、自分の目を見つめながらそう言ってくる少年に、
青年はおかしさを禁じえなかった。
「……なるほど。けど、俺の村の女でまだ嫁に行っていないのは、一番上でも年は十だ。嫁にするにはまだ早い」
本当の所、さほど年の離れていない者もいたのだが、青年はまだ妻を娶る気にはなれなかった。
もっと腕を上げて、家族を十分養える程にならないと無理だと思っている。
「そうなんだ。じゃあ、まだ少し先だね」
その言葉を素直に信じた少年は、黒目がちの大きな目を向けて青年に向ける。
春先に見る小鹿のような目だと青年は思った。
250 :
前編7/13:2006/05/30(火) 21:49:05 ID:8FSOPjIU
「おまえに似ていたっていう母親は、さぞ器量が良かったんだろうな」
青年は黒く艶のある髪に触れながら言うと、少年はすこし悲しそうな顔をした。
「……髪が黒いのも肌が白いのも、女なら喜ばれる。男じゃ何にも役に立たない。
それに、女だって働きがないのは駄目だ」
少年が青年の腕を取る。
「こんな手が欲しかった。力があって、よく働く、日に焼けた手の方がいいよ」
「おまえにだって出来る事はあるはずだ。力がないなら考えればいい」
魚が少なくなっていると言っていただろうと青年が聞く。
「昔はもっと多かったって、じっちゃんが言っていたんだ。それが年を追うごとに少なくなっている。
だから皆、沖まで漁にでないといけない。でも遠ければそれだけ危ないこともある。時化た海に
投げ出されて死んだ奴もいた」
「魚を追うんじゃなく、呼び寄せればいい」
「……どうやって?」
「喰うものも喰われるものも生きやすい場所っていうのがある。草や、木の実がならなければ鹿も猪も
いなくなる。次はそれを喰う山犬や熊も他所に行って、山から獣は消える。俺達猟師は捕りすぎず、
獣が仔を産み増え過ぎないよう、調子を取って狩りをする」
だから、と青年は少年に顔を向ける。
「魚の生きやすい場所を、作ってやればいいんだ」
少年は少し迷ったような顔をした。
「できるかな……俺に」
「やってみなきゃ、出来るかどうかは分からないだろう」
251 :
前編8/13:2006/05/30(火) 21:50:04 ID:8FSOPjIU
「浅瀬は砂地が続いているんだ。深い所へ行けば岩が多くなってくるよ」
浦の端に続く低い崖に立って少年が言う。
「この辺りに石を沈めていけば、魚が住み着いてくれるかも」
何年かかるか、わからないけどねと笑った。
石を沈める事は祖父から聞いた。岩場には小さな生き物が住み着いて、それを餌にするものが寄って来る。
小さな魚たちの隠れ場所にもなるから、それを狙って大きな魚も来るだろうと。
魚が多かった時には、誰も考えもしなかったことだった。
「でもね、砂地はあまり魚がいないけど、岩場は生き物が多くて綺麗なんだよ」
色とりどりの魚や海老、岩の間には磯巾着や名前も知らない生き物達が顔を覗かせている。
海の中に、たゆたうように身を任せて水面を見上げれば、陽の光がきらきらとまぶしく揺れるんだと、
青年に向かって言う。
「……俺はここしか知らないけど、この海が好きなんだ」
「俺には少し怖いな。海は広すぎて底が見えない」
「大丈夫だよ。波のない時は危なくない。外海にはフカがいるから、気を付けないといけないけど」
少年は青年の顔を覗き込む。
「もしかして、泳げない?」
「馬鹿言え、山にだって湖や川がある。泳ぎくらいは出来る」
少年の頭を軽く小突くと、少年は楽しそうに笑った。
「じゃあ今度、一緒に潜ろう。約束だよ」
二人は時間を作っては崖下にある石や、山から石を拾っては海に投げ込んでいった。
最初それを見ていた村の連中は胡散臭げな顔をしていたが、そのうちぽつぽつと倣うように、
こっそり石を投げ込んでくれるようになった。
252 :
前編9/13:2006/05/30(火) 21:51:25 ID:8FSOPjIU
源太には、少年が山に住むよそ者と親しくしている事が、どうにも面白くない。
少年の祖父を助けてくれた事はありがたかったが、他所の、それも山の者が頻繁に出入りを
しているのが、いい事とは思えなかった。
浦の事は浦で解決する。借りを作るのは性に合わない。
二人がしている事にしても半信半疑だった。こんな事で本当に魚が戻ってくるのか。
これで戻ってこなければ少年は笑いものだろう。
足元に転がっていた石を海に投げる。二人が沈めた石はまだたいした数ではない。
どれだけ続けるつもりなのかと笑おうとしたが、むっつりとした顔は変わらなかった。
「くそ」
源太は目に留まった石を抱えて海に投げ込む。別に信じるわけではないが、万一にも魚が戻れば
儲けものだからだと、源太は自分に言い聞かせた。
「え……?」
いつものように漁から戻った少年が石を持って崖に行くと、そこには先客がいた。源太だ。
源太は足元にいくつかの石を置いて、それを海へと投げ込んでいる。
「……源太?」
その声に驚いたように源太は振り向いて、ばつの悪そうな顔をした。
いつも自分に辛くあたる源太が手を貸してくれている。
思ってもみなかった事に少年も、なんと声をかければいいのか戸惑ってしまった。
源太は残りの石も全て投げ込んでしまうと、さっさと村に戻ろうと歩き出す。
「こんなもんで本当に魚が寄って来るのかね。無駄かもしれんが、暇だったからやってみただけだ。勘違いすんな」
すれ違いざまに少年にそう告げる。少年はその背中に、少しためらったあと思い切って声をかけた。
「あ、……あの、ありがとう!手伝ってくれて」
源太はちらと少年の顔を見て、ぷいとそのまま歩いていってしまった。
「おい、ここにいたのかよ」
崖から戻った源太に声がかかった。
「宇吉か」
宇吉と呼ばれた少年が源太に駆け寄る。
「いま船が戻ってきたんだけど、帰る途中で船同士がぶつかったらしい。
舵は壊れたが、何とか引っ張ってきた。手が欲しいから来てくれないかってさ」
「わかった。乗ってた奴は?」
「二人投げ出されたけど、大丈夫だ。怪我はしているけどな」
浜へと戻る道を歩きながら、宇吉は別の話を源太に振ってきた。
「そういえばおまえ知っているか? 親父が言っていたんだけど、珊瑚があるって」
「珊瑚?」
この辺りで珊瑚が取れるというのは知ってはいる。だが珊瑚は海女も潜る事の出来ない程深い所にあって、
まれに打ち上げられることがある程度だと聞いていた。
「ああ。はずれにあるあそこのじい様、祈祷を頼んだ時に親父も行っていたんだけどな、籠の中に
珊瑚らしいものが入っていたらしい」
「そんなもん持っていても何にもならんだろ。見つかりゃ取り上げられちまう。あそこは女もいないし」
自分達で売ることはできない。見つかればお上に取り上げられるだけだというのに、何故そんなものを
持っているのかと源太は不思議に思う。
「そうだな。俺らには縁のないものだ」
宇吉もそう言って頷き、二人は浜へと向かった。
ここ最近は村の人も手伝ってくれるという少年の言葉を、青年は嬉しそうに聞いていた。
「まだ岩場は小さいけれど、少しずつ広がっているよ」
「生き物を呼ぶには一朝一夕にはいかないが……がんばれよ、俺もできるだけの事はする」
「うん」
それからまた山の話をした。夏が終わり秋になれば楓やうるし、楢の木などの木々が山頂から
下るように黄色や赤に染め上げていくという。
「お前も外からなら山が色づくのを毎年見ているだろうが、山の中から見るのはまた違うぞ。
辺り一面、赤と黄金に染まって本当にきれいなんだ」
「いいな、見たい」
「そうだな、連れて行ってやりたい。お前にあの山の風景を見せてやりたいよ」
無理なことはわかっていた。青年がこうして自分の所へ来てくれるのも、あまりいい事ではない
のだろうとも。もっと自由に行き来が出来ればいいのにと思う。
一緒にいたいと思っても駄目なのだという事を考えると、少年は胸が苦しいような気持ちになった。
パチリと囲炉裏の火がはぜた。山へと帰るために青年は腰を上げる。
「もう帰るの?」
「うん」
青年は身支度を整えて家の外へ出る。少年もその後を追う。
「もう日も沈んでしまったし、泊まっていけばいいのに」
まだ話をしたい少年はそう言って青年を見た。
「今夜は月が明るい。道を照らしてくれるから帰るよ」
少年は落胆したが、思い出したように家の中へ戻ると、持ってきたものを青年に差し出す。
「なんだ?」
「これ、あげる」
少年の手には浜で拾ったあの珊瑚があった。
「大事なものなんじゃないか?」
「うん。だからあげるよ。……あんたに持っていて欲しい」
山に美しいものがあるように、海の中で作られた美しい珊瑚を知ってもらいたかった。
何も持たない自分にはこれくらいしかお礼が出来ない。大事にしていたからこそ、珊瑚を青年に
貰って欲しいと少年は思った。
「そうだな、じゃあ俺がこの珊瑚をきれいに磨いてやる。磨いたら……」
「……磨いたら?」
月の光を受けた浜木綿の白い花が風に揺れて、芳香がふわりと漂ってくる。
珊瑚を差し出す少年の肌がその白い花に重なった。
黒い髪、白い肌、そして夕映えの色をした珊瑚。青年は知らず少年の姿に見入った。
青年は、黒い大きな瞳で自分を見上げるその顔を両の手で包んだ。少年は少し驚いたように
体を揺らしたが、そのままじっとしている。
早鐘のように胸が鳴るのは、目が離せないのは何故なのかと少年は戸惑った。
そのままどれだけ見つめていたろう。
もうここに来てはいけないと青年は思った。山のものと浦のものが一緒にいることは出来ない。
このままいれば、きっと離れて暮らすのが辛くなる。今ならまだ間に合う。この子はまだ子供で、
自分を兄のように慕っているだけだ。この浦で大人になり、妻を娶り、家族を作るのだから。
少年への同情がいつしか別の気持ちへと変わっていた事に気付いてしまって、青年はその目を
まっすぐ見ることが出来なくなった。
一言、二言、言葉を交わし、青年は珊瑚を受け取ると山へと帰っていく。
まだ頬に残る温もりに指で触れる。小さくなる青年の後姿を、少年はずっと見つめ続けていた。
それから青年はふっつりと姿を見せなくなった。
何も知らない少年は、青年が来るのをずっと待っていた。
今日は来るのではないか、明日は来るのではないかと。
打ち寄せる波の音を聞く。物心ついたときから馴染んでいる音だ。
それを聞きながら少年は床の中で目を閉じた。
すると思い出されるのは青年の事ばかりで、最後に別れたあの夜を思い出しながら頬を指で辿った。
会いたくて会いたくて、たまらない。
少年は体を丸めながら、あの時に触れた青年の手を思い出した。大きく温かく、力強くて、やさしい手を。
その感触を思い出すと切なくなリ、涙が出てきた。
どうしよう、こんなにも自分は。
あの目や、声や、触れた手が、全て仔細に思い出せるほどに心を占めている。
慕っても叶わない事と己に言い聞かすが、なおさら辛くなるばかりだ。
波がざわめき渦を巻くように少年の心は乱れる。
あの人が好きだと。
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;) すみません、長いので一度分けます。後半は9レス分です。
支援レス、ありがとうございました。
257 :
後編1/9:2006/05/30(火) 23:10:00 ID:8FSOPjIU
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) お/月/さ/ん/も/も/い/ろ 後編です
青年が来なくなってからも、少年は石を海に投げ、漁に出て、祖父の世話を続けた。
傍目には変わりなく見えたが、時折だまって山の方を見つめているその目は、青年を慕うものに変わっていた。
子供らしい表情は時折憂いを含んで、大人びた顔になる。
そんな少年の変化に源太だけは気付いていた。
あんな顔は見たことがなかった。自分の前で見せる顔は、おどおどした自信のない、厭うようなものばかりだ。
いいようのない怒りが湧いた。少年にそんな目をさせる、あの山の猟師に。
「あとひと月は経たないと暑さも収まらないかねえ」
浦へ来た行商の男は式台に腰掛けて、汗を拭いながら言った。
「そうそう、ここへ来たとき小耳に挟んだんだがね、ここらで珊瑚がとれるって。どの程度のもんだい?」
男は人懐こそうな笑顔を浮かべて源太に尋ねる。
「……どこで聞きました? 珊瑚なんて滅多にとれるもんじゃないでしょう」
なにか嫌な感じがして、源太は男の問いかけをはぐらかした。
「最近は上がったかね?」
「さあ、聞いてませんね」
それに上がっても、自分達には縁のないものだからと源太は言った。
258 :
後編2/9:2006/05/30(火) 23:11:21 ID:8FSOPjIU
それじゃ、と男は腰を上げて屋敷を出て行く。それを見送っていると、奥から源太の父親が出てきた。
「もう帰ったか」
「うん、あまり実になる話はなかった」
だが男が言っていた珊瑚の事が気になる。
「ただあの行商人、珊瑚の事を聞いてきた。とれても取引なんて浦では出来ないのに」
父親の眉がひそめられる。
「……おまえ、珊瑚がこの浦でとれることを言ったか?」
「嫌な感じがしたから、そんなものは滅多に取れるものじゃないだろうと言った……」
険しい顔をして父親が黙り込む。源太はその様子を見て、自分が何かまずい事をしてしまった
のかと不安になった。
「その話、誰から聞いたかは?」
「いや、それは言っていなかった」
ふーっと息をつく父親の顔は、相変わらず険しいままだ。
「珊瑚がとれたら、そいつはお上に差し出さねばならん。……とれる事も、他所者に言うのはまずい」
源太は少年が持っているという珊瑚を思い出した。浦の者は知っている。誰かがそれを男に話したのか。
父親は源太に向かって言う。
「いいか、珊瑚を持っとるもんがいたら、すぐにお上に差し出すように言え。
あれは持ってちゃならんものだ。勝手すれば、ただではすまん」
「おまえが話したのか」
翌日、浜で網を直していた玄吉という少年が話の出所だとわかった。
「すまん……。その…しつこく聞かれたもんで……。ただ誰が持ってるかは言っていない。それは知らんと言った」
あの行商人が他の奴の喋らなければいいんだがと、源太は舌打ちした。
「……おまえの妹、新しい櫛を持ってたな。他のもんに見つからんように、よく言っとけ」
玄吉はその言葉に申し訳なさそうに身を竦める。
けれどその願いもむなしく半月ほど経ったある日、年寄り役から話が回って来た。
259 :
後編3/9:2006/05/30(火) 23:12:19 ID:8FSOPjIU
「珊瑚が取れたと市中で噂が流れている。本当なら珊瑚はすべて差し出せ。たとえ小さな欠片でもだ」
珊瑚が取れるという事は藩の秘密だった。
外に漏れてしまえば、いずれ江戸にまで知れ渡る。そうなれば珊瑚は全て召し上げられてしまうだろう。
そのため、外の者に話してはならないという決まりだった。
浜辺の村という村にお触れが回った。
少年の村にも浦奉行がやってきて、取調べのために村の男達が呼び出された。
「じっちゃん……俺」
青ざめた少年の頭を撫で、安心させるように祖父は話しかける。
「心配いらん。すぐにかえってくるから」
けれど少年の祖父は戻っては来れなかった。他の村人と一緒に引き出されたその場で、
急に胸を押さえたかと思うと、そのまま倒れて息を引き取ってしまった。
少年は夜の浜に出てぼんやりと海を見ていた。
これで自分は本当にひとりになってしまった。これからは家に帰っても、誰も自分を迎えてはくれない。
祖父の亡骸を運んできた村人に少年は言われた。
珊瑚を持っているだろう、お上はそれを探しているから早く差し出せと。
今なら、子供のした事と許してもらえるとも。
俺が珊瑚なんて拾わなければ。こんな事になるなんて、あの珊瑚がそんなに怖い物だったなんて。
祖父が死んでしまったのは、自分のせいだと少年は悔いていた。
260 :
後編4/9:2006/05/30(火) 23:13:25 ID:8FSOPjIU
そうして少年が浜に立っていると、後ろから近づいてくる足音が聞こえた。
振り向くとそこには源太が立っていた。怒っているような、難しい顔をしている。
「家に行ったらいなかった。こっちにいたのか……」
少年はそれに答えない。源太は少年を見ながら言葉を続けた。
「おまえ、珊瑚を持っているだろ。そんなもの持つな。漁師の持つものじゃねえ。すぐにお上に差し
出せば、許してくれるかもしれんと親父も言っている。珊瑚を持っていたら……おまえだけじゃない、
村の皆にもよくないんだ」
少年は口を引き結んで下を向いた。
珊瑚は青年に渡してしまった。どこに住んでいるかも知らない。
それを拒否と受け取った源太は怒ったように言葉を続ける。
「じい様やおまえを今まで助けてきたのは村の連中だぞ。この村や俺を裏切る気か!それにあの男、
なんであんな山のもんがいいんだ!山のもんは浦のもんを助けることなんて出来んのに!」
違う。裏切るなんてそんな事はしていない。黙って自分を助けてくれた村の皆を、そんな目に合わ
せるなんて。あの珊瑚がそんなに恐ろしいものなんて知らなかった。
少年はそう言いたかったが、いま口を開けば嗚咽しか出てこない。喉許まで出かかっている塊を
必死で飲み込む。
黙ったままの少年の手を源太は引っ張り、目の前に立たせた。
月明かりに照らされた少年の頬は青ざめている。何かを言おうとしているのか、唇が動くが声に
はならない。
珊瑚の事は、源太も詳しくは知らなかった。そんなものを持っていても自分達には無縁のものだ。
この海で採れようが、どんなに美しかろうが、それは自分達のものにはならない。知らなかったとはいえ、
行商人に口止めしなかった自分にも責任はある。源太はなんとかして少年を助けたかった。
「おまえの世話は、親父に頼んで俺の家で見る。漁が無理なら家の事をやればいい。
おまえに出来る仕事を探してやる」
源太は少年の体をきつく抱きしめた。
「おまえは知らなかっただろ。俺がいつもおまえを気に掛けていたなんて。あんなどこの輩とも
知れん男に騙されるな。あいつはおまえの珊瑚が目当てなんだろう。おまえから珊瑚を取り上げて、
他所に売り払うつもりなんだ」
261 :
後編5/9:2006/05/30(火) 23:14:43 ID:8FSOPjIU
「違う!そんなことない!」
少年は何とか腕の中から逃れようと身を捩る。
「違わん!会ってから、たいして長くもない奴を、なんでそんなに信用できる!」
もみ合うように二人は砂浜に倒れた。
体も大きく力も強い源太には敵わず、少年は腕の中から逃れる事が出来ない。
乱れた襟から荒れた指が滑り込んでくる。少年はびくりと身を竦ませた。
「あ…や……いやだ」
源太が自分に何をしようとしているのかが分かった。裾が割られて源太のたくましい足がその間に入ってくる。
喉に舌を這わされる。少年は背を逸らし、嫌悪感に肌を粟立たせた。
少年は自由になっていた右手で砂を掴み、力いっぱい源太の顔に投げつける。
源太は短くうめくと顔をこすった。砂が目に入ったらしい。少年はありったけの力で相手の胸を
押し返しながら、這いずるように抜け出して立ち上がった。その足を源太の手が掴む。
少年はバランスを崩して、ひざから砂浜に倒れこんだ。足を掴む手を必死で振りほどこうとする。
「はなせ!離せよっ!」
ようやっと手が外れると少年はよろめくように数歩走り、小船の浜に留めるために置いてあった
丸木を手にして源太に向けた。
「来るな……」
震えるような声でそれだけ言う。源太は目を押さえながら少年の前に立つ。
「……そんなに嫌か…そうか」
源太は砂を払うと、ぽつりと言った。
「……珊瑚だけはお上に差し出せ。村の皆もだが……おまえを死なせたくない」
それだけ言うと、源太は背を向けて歩き出した。
少年はその姿が見えなくなるまでじっと見つめる。
一人きりになって砂の上に座り込んだ少年は、声を殺して泣いた。
262 :
後編6/9:2006/05/30(火) 23:16:11 ID:8FSOPjIU
少年がそんな事になっているとは知らずに、青年は山で珊瑚の最後の磨きをかけていた。
ほうの木の炭と椋の葉で擦り、鹿の角を焼いた粉で磨き上げる。白く、くすんでいた珊瑚は次第に艶を帯び、
鮮やかな色を浮かび上がらせた。
磨いた珊瑚に、あの夜の少年の姿がうかぶ。
会いたいと思った。
仕事の合間に鋸を引き砥石にかけて、どれくらい経っただろう。
これを磨き上げた時、もう一度、たった一度でいいから会いたいと、青年は珊瑚を見つめた。
空がようやっと明けてきた頃に少年は起き出し、小船を操って海へ出た。
珊瑚がなければ村に迷惑がかかってしまう。青年に渡した珊瑚の代わりを、なんとしても探さねばならなかった。
しかし網を投げて何度も海を攫ったが、一向に珊瑚は取れない。とうとう少年は海の中に飛び込み、珊瑚を探し出した。
海の中は美しかった。魚がついと横を通り過ぎ、岩の陰にはゆらゆらと海草が揺れていた。
だがあの色の、濃い桃色をした珊瑚の枝は見つからない。息が切れては水面に顔を出し、また潜る事を繰り返す。
はやく、はやく、見つけないと。
少年は珊瑚を探しながらも目の前にひろがる光景を見て、この海を青年にも見せたいと思った。
きっと綺麗だと言ってくれる。そうしたら今度は自分が、青年の住む山の風景を見せてもらおう。
秋の、一面に黄金と赤に染まった山を。
珊瑚を見つけたら、きっと。
沖から黒い雲が迫ってくる。珊瑚を探すのに必死な少年はそれに気付かなかった。
突然びょうと風が吹き渡り、穏やかだった海面に波が立ちはじめる。
嵐がくる前兆だった。
263 :
後編7/9:2006/05/30(火) 23:17:30 ID:8FSOPjIU
青年は珊瑚を抱えて山道を駆け下っていた。
山を下り、海辺へと近づくごとに押さえていた想いが膨らむ。
これほど自分は少年に会いたかったのか。
嵐の過ぎた道はぬかるみ、足を取られそうになりながらも青年は走る。
早く見せてやりたい、こんなに綺麗になったのだと。
木々が途切れて海が見えた。嵐は去り、さざめく海面は銀の鱗のように光っている。
少年の家に辿り着くが、声をかけても返事がない。青年は戸を開けて家の中を見渡す。
家の中はしんと冷たく、小さな祭壇には位牌が置いてあった。
「……じい様」
一体いつ。少年は一人ぼっちになってしまったのか。
何故もう来ないようになどと思ってしまったのかと、青年は悔いた。
青年は珊瑚を抱えて砂浜を歩き、少年はどこにいるのかと探す。
あの家にたった一人でいた少年は、どんなに心細かっただろう。青年は自分の父親が死んだとき
の事を思い出した。狭い家がやけに広く、寒々しく感じられた、あの寂しさを。
浜に白いものが打ち上げられている。歩いていた青年の足が止まり、次の瞬間、駆け出していた。
打ち上げられた小さな体に駆け寄り、抱き起こす。
「おい!おいっ!……目を開けろ!」
何度も何度も体を揺さぶるが、腕の中の少年は目を開けなかった。
「……どうして」
血の気の失せた白い顔に濡れた髪が張り付いていた。青年は黙ってそれを直してやる。
そうして冷たく、かたくなってしまった手を取ると、その胸に珊瑚を抱かせた。
お前の珊瑚だ。お前のために磨いたんだ。
額を寄せて少年を抱きしめる。青年の口から、こらえきれない嗚咽が漏れ出た。
264 :
後編8/9:2006/05/30(火) 23:18:35 ID:8FSOPjIU
気がつくと二人の周りを、浦奉行の侍達が取り囲んでいた。遠くから村の者達が不安そうに見て
いる。その中には源太もいて、真っ青な顔をしていた。
若い侍が青年の前に進み出る。
「その珊瑚を置いておけ。それは藩のものだ」
「渡せない。……こいつの珊瑚だ」
「首をはねられたいのか」
「だめだ、これは渡さない」
青年は少年を抱き上げた。
これはお上のものじゃない。こいつが海でとって俺が磨いた、俺達のものだ。
青年は少年を抱えたまま歩き出した。その青年に、どこへ行く気だと侍の鋭い声が飛ぶ。
「俺の山へ連れて行く」
「待て!」
刀に手をかけながら青年に飛びかかろうとするのを、隣にいた年配の侍が止めた。
「行かせてやれ」
少年を抱いて青年は山へと向かった。
山へ連れて行く。いつも見たいと言っていた、こいつを連れていってやるんだ。せめて俺のいる山
に埋めてやる。
砂浜を抜け、山へと続く細い道を青年は登っていく。
「まだ葉は赤くなっていないが……すまないな、もう少しすれば綺麗に色づくから」
青年は腕の中の少年に語りかけた。
心配するな、岩場作りも俺がやろう。お前の代わりに魚が戻ってくるのを見届けてやる。
265 :
後編9/9:2006/05/30(火) 23:20:06 ID:8FSOPjIU
「珊瑚なんぞ持ったばかりに……」
侍の一人が言った。
「仕方がない。珊瑚の事が江戸のお上に知れれば、全て召し上げられよう。あれは海の深い所に
あるものだ。取らねばならぬとなれば海女も何人も死ぬ事になろうし、差し出すことが出来ねば
隠していると嫌疑をかけられる」
若侍を止めた男が答える。
藩のためには無理にでも取り上げねばならない。珊瑚一つで藩を危うくさせることは出来ないからだ。
「わずかばかりの情けはくれてやろう」
山へと帰る男の背中を見ながら、そう侍は言った。
しかし青年が山へと戻る事は叶うことはなかった。
その日のうちに青年は殺された。
「きれい」
白く小さな手が、かんざしを撫でた。
「ひと月ほど前に献上された珊瑚です。大きなものだったとの事で、そう滅多にはとれません」
珊瑚は暖かい色を浮かばせた中に、白い斑をまとっている。磨きこまれた滑らかなその表面には
細かな文様が刻まれ、ぐるりと取り巻いていた。
「珊瑚は海でとれると聞いた。こんなに綺麗なものが海にあるなんて、その村の者たちは幸せだな。
叶うなら私も見てみたい」
男はそれに黙って頭を下げて答える。
緋色に煙る珊瑚には白霞に混じり、一筋、二筋と赤い色。
まるで血のようなその色に隠れた二人を、手にした姫はけして知ることはなかった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )
原作の土地は黒潮のおかげで豊かだそうですが、ここは801漁村という事で一つお願いします。
また方言は、不正確な知識で書くのは難しいので、
どこのものともわからない方言もどきを、少しだけ混ぜる程度にしました。
長々とすみません。
うわああああああ
あああああ
言葉にならないよどうしよう
とりあえず週末に原作読みに図書館いてくる
子供の頃から大好きな話だ。
うわあああん・゚・(ノД`)・゚・。
おおおおお…
稀に見る作品ですよ…
本日放送の医療ドラマより、超キワモノを…教授×天才外科医です
今日のお祭りでは麻酔医祭りが起きる事を想定して、今のうちに投稿致します。
該当スレ166ですが、これが初創作なので、人様にお見せしていいのか
本当に迷いますた
先にあやまっておきます本当にごめんなさいすいません
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
272 :
1/3:2006/06/01(木) 22:07:04 ID:xIxxKvxO
「浅田君、知ってる?鑑賞魚っていうのはね、徹底した管理が必要なんだよ。」
綺麗だろう?と問う男の前には、きらびやかに魚が舞う水槽がある。
そこに写るもう一人の男の顔は苦痛に歪み、その力強い瞳は伏せられたまま
舞う魚も、猥雑な微笑みももはや見る事は無かった。
「いい加減に…うあっ…離せ…!」
教授室のソファーに、うつ伏せで腕を拘束された浅田が呻く。
いつもは乱暴に袖を捲り、裾を翻している白衣も長い裾を捲り上げられて腰の辺りで波打っている。
その下の腰もまた不規則に波打ち、鍛え上げられた内腿が張り詰めている。
いったい何故、こんな状況に陥ってしまったのか。
黒いゴムチューブで塞き止められた熱が、浅田の思考を錯乱させている。
通常なら採血の時に使うようなそれが根元を締め付けて離さない。
ぽたり、と革張りのソファーに汗ともう一つの液体が落ちる。
それはどこにも吸い込まれることなく、小さな水溜りを形成していた…
273 :
2/3:2006/06/01(木) 22:07:37 ID:xIxxKvxO
「キミ、ソーセージとか好き?魚肉ソーセージ。売店で売っているのを見て、
つい懐かしくなって買ってしまったよ」
言っている意味が分からないーそう浅田はつぶやこうとしたが、
その口から漏れるのは音にならない喘ぎだけ。
そんな浅田を知ってか知らずか、乃口はなおも話を続ける。
「僕もねえ、昔は結構切ってたんだよ?最近はキミや加東ちゃんがいるから
なかなか機会がないけどね」
包装を向きながらゆっくりと水槽に背を向け、浅田に歩み寄る。
おぼろげにその言葉を耳にした浅田は、どこか遠い所で納得していた。
乃口の手は執拗で、それでいて繊細に動く。
274 :
3/3:2006/06/01(木) 22:08:11 ID:xIxxKvxO
胸の突起を摘まれたまま、尾?骨の辺りにもう片方の指が滑っていく。
肝心な所には全く触れていないのに、指が肌に触れる度背筋に電流が走る。
「あぁっ!あーーー…う…」
突然、普段は晒す事の無い場所に指が触れた。
浅田が零した液体で滑りをよくした指が、ゆっくりとそこを解していく。
そして手に持っていた物を奥へと差し込んでいく乃口。
「そろそろ、降参する?じゃないとまた、経過観察だよ…」
張り詰めた下肢は、既に限界だ。
内壁を擦る柔らかい物体は、肝心な所でするりと逃げる。
快感が波となって押し寄せてくるが、放出を許されないそこはうっすらと涙を零すばかり。
手術中のような、鋭い瞳で乃口の姿を捉えると、浅田は喘ぎと共に口を開いた。
「 」
灯りの落ちた教授室で、水槽の青白い光が揺らめいていた―――――――
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
平謝りです…
オサーン主役になってしまってほんとにもう…
お目汚しすいませんでした
あーーーーお魚にエサをやるのを忘れた!!!
言い出しておいてほんとに馬鹿だーーーーorz
出だしの前にあげてると思ってください
姐さん変化球カプGJw
教授はニヤニヤネチネチ攻めるのが萌える。
>>271GJ!
今日もキャラ勃ちまくりだったな乃口てんてーw
キモかった半笑い思い出してゾクゾク萌えた!
>271
激しくGJ!!もっと見たい…!ありがとう、ありがとう。
1話目から望んでいたCPがついに陽の目を見た…!
あの仏像スマイルで、野生の獣を押さえつけてしまうといいよ。
きっと誰もが考えたであろうドラマ遺留の内科医×麻酔医 と言いつつ逆かもしれない。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「なぁ、手術って金取るのか?」
“化け物”改めチームの一員の男が、唐突にやってきて藤好にそう問うた。いきなりのことに少し躊躇していると、「どうなんだよ」と追い打ちをかけられる。
「そりゃ、手術だからな。具体的な値はまだ分からないが」
「どうして分かんないんだよ」
新瀬は部屋の棚に腰かけ、コルクボードの画鋲を色ごとに並べている。聞いてきたわりに興味のなさそうな態度だ。
「あまり考えたくないが、失敗する可能性もーーー」
「ないよ。だっておれと76キロが居るもん」
「…大した自信だな」
藤好は、彼のことだからきっと笑うのだろうと思っていた。普段から不遜な態度だったあの男だ。個人的な好悪でいけば嫌いな部類に入る。しかし腕だけは確かであり、患者を安全な状態に持っていけるとなれば、藤好としても認めざるを得ない。
「アンタも、だよ」
しかし新瀬は笑いなど少しも見せないで、カチカチとボールペンをノックする。
「…誉めてもらっていると受け取っていいのか?」
「最高の内科医って呼んだだろ」
黙っていると、新瀬は用事は終わったとばかりに部屋を去ろうとした。藤好は慌ててその腕を掴む。
「なんだよ」
そのまま、新瀬の手首を両手で掴んで顔まで持ち上げる。新瀬も振り払おうと思わないではないのだが、藤好が真面目な顔をしているので、それが少しためらわれる。
「お前、食べてないな?」
「…は?」
「自分の体ぐらい分かるだろうが。なんだこれは。酒で体に必要な栄養分が摂取できるわけないだろう」
掴んだままソファに座らせると、緑の布に包まれた弁当箱を新瀬に差し出した。
「何のつもりだよ」
「食べろ」
「馬鹿かアンタ。おれが何しようが、アンタにゃ関係がないだろ」
その言葉にむっとした藤好は、隣に座って弁当箱を開け始めた。見たところ、確かに栄養はありそうだ。新瀬は迷惑だという顔を向けるが、藤好は知ったことかという態度で、彼の手に箸を押しつける。
「食べろ」
これ以上の問答は無理そうだった。新瀬は一つ舌打ちをすると、乱暴にそれをかきこむ。
「よく噛め。おおかた、物の味も覚えていないんだろう」
「うっせぇな。つーかこれ、アンタの弁当なんだろ。アンタはいいのか?」
レンコンのきんぴらを噛みながら言うと、藤好は小さなタッパを取り出した。中身はきれいな色のサクランボだった。細い茎をつまみ、口に運ぶ。
「最低でもお前よりはマシだ」
「イヤミが得意なのか、知んなかったな」
新瀬もサクランボを一つ食べた。甘酸っぱいその味に、どこか懐かしさを覚える。知らず知らずの内に顔がほころんだ。藤好は少し驚いて、それから感嘆の声を漏らす。
「…へぇ」
「なんだよ」
「いや、お前もそうやって笑うんだと思ってな」
その言葉に、新瀬は目を丸くした。普段が普段なだけに、その表情は貴重だ。しかもそれが、そんな間近で見ることができるなんて。
しかし新瀬は口の端を歪めて目を眇める。まるで麻酔を吸引した時のような顔だ。
「これで満足か?」
「あれを見た後じゃ、それ、あんまり似合ってないってのが分かる」
また舌打ちをすると、食事を再開させた。藤好は、黙々と、そしてガツガツと食べる新瀬を見ている。時折食べこぼしを衣服につけていたが、それもつまんでゴミ箱に捨てていた。
ーーー結局、新瀬が弁当を空にするまで、藤好はただ新瀬を見ているだけだった。食べ方に注意をしたりしたが、それ以外の時は観察しているだけだ。
「旨かったか?」
「まぁまぁだな」
「そうか。お前、食事が嫌いなのか?」
「めんどくせぇだけだ」
フタを閉めてテキパキと片づけると、袋の端を結んで藤好は優しく笑った。
「じゃあ明日も作ってきてやるから、昼になったらここに来い」
「…アンタ、酔狂って言われない?」
「まさかお前に言われるなんてな」
新瀬は立ち上がって真っ直ぐドアに歩いた。ドアノブに手をかけると、藤好が先ほどとは違った真面目な声で、その背中に言葉を投げた。
「お前、死ぬ気じゃないだろうな」
金を使い切ったら、死ぬんじゃないかと。
藤好は常にそう思っていた。
あの不安定な存在を見るにつけ、その疑問が頭をよぎっていたのだ。
小さく含み笑いをして、新瀬は返す。
「さぁ」
表情は見えないが、どういう表情か、なんとなく藤好には分かっていた。
「生かすぞ、俺は」
「…どういうこと?」
「お前を死なせない」
弁当ごときで、という言葉が飛んでくると思っていた。しかしやはり、新瀬は藤好の予測の少し上をいくのだ。
「そりゃ、酷な奴だぁな」
どくりとした。生きたくない人間を生かすことは、真に正しいと言えるのだろうか。病院に来る患者は常に生きていたいと願っている。だが、新瀬は。
「それでも、生かすぞ」
新瀬は振り向かない。ドアを開けて部屋から去ろうとする。
「明日も待ってるぞ。弁当、わざわざ作ってやる。俺は卵焼きにだけは自信があるんだからな!」
何を言っているんだか。自分でそう思わないでもなかったが、何か言わなければという気持ちが先走って、変な自慢の文句を最後に、ドアが閉まった。
ドアの向こうで新瀬が笑っていたことは、藤好は知らない。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
世話焼きな内科医が萌えだー。だんだん麻酔医の心も解れれば良い。
なんか先週も同じように見終わった後にすぐに書いていた…そういうサイクルだ…
>>283 あ、あの仕事の速い姐さんかい?
何か今週の萌えを余す事無く具現化してくれてるよう。
ツンデレ×ツンデレが斬新wそして禿萌えた。
ありがとうありがとう、姐さんの書く話大好きですよ!
>>283 GJ!
内科医お母さんだよお母さん
手作り弁当ってこんなに萌えるんだ…
いやしかし、神がイパーイ(*´Д`)
>271も>280もGJ!
ノグチ教授はねちねちしてそうだなと思ってたよ。イメージ通りw
世話焼き内科医も世話の焼ける麻酔医も萌える…豊作じゃ〜
>>
(´Д`*)ハァハァ
いい、いいよこの二人!
卵焼きにだけは〜の内科医がかわいいw
姐さんのおかげで新しい何かが開花しそうです…
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) 今日はドラゴソ多めですな。外科医×内科医の3P風味大人味でお送りしマース。
粗背は扉をあけた。
すっかりソファで眠り込んでしまったらしい。院内は人陰もなく、廊下の照明も落とされている。
すでに夜半を過ぎていた。
周囲に人の気配を感じなくとも、欠伸を噛み殺しながら大きく延びをする。
「帰るか」
カットソーの裾を引っ張りながら振り返ると、向こうから見なれた長身の男が歩いて来る。
浅田だった。
その後ろを、同じぐらいの身長だが、遥かに細身の男性が追って来る。
「やば」
亜羅背はとっさにさっき出てきた曲り角の影に隠れた。
そうだ、廊下の先はロビーに繋がっていて、こちら側は全面マジックミラーになってたばず。照明の暗いこちらの様子は向こうからは伺う事がができない。
おそるおそる顔を出すと、案の定、二人はこちらに気付いた様子はなかった。
「おもしろそうじゃねぇ」
唇の端を歪ませて、亜羅背はガラス越しの二人に近付いた。
声は聞こえないものの、穏やかな雰囲気ではない。
浅田は腕を広げ、大袈裟な仕種で何かを訴えている。その様子を眉を寄せ、冷ややかな視線で見つめる富士葦。浅田は振り上げた富士葦の腕を払い除けるように取り、そのまま後ろに捻り上げ、体ごとガラスに押し付けた。
「おいおい、こんな所で喧嘩するなよ」
289 :
288の続き:2006/06/02(金) 03:23:44 ID:yH6ACvSo
ところが浅田は富士葦のシャツをたくしあげ、着衣の中に手のひらを忍び込ませながら、耳たぶを噛むように唇を寄せて、何事か囁いている。
額をガラスに押しあて、富士葦は眦を吊り上げ、陵辱する男を睨み付けるも、指先が彼の敏感な部分に触れたのだろうか、そのまま眼を閉じ、苦悶の表情に摺り替える。
「マジかよ…」
あの浅田が。
男を抱くのか。
咽の奥から笑いが込み上げて来た。
致命的な弱点じゃないか。
どうやってこの病院から追い出してやろうか?富士葦ともども、俺と同じ、破滅の道を辿らせてやろうか?
「手に手をとって、二人で地獄に堕ちればぁ?」
亜羅背はガラスに押し付けられた富士葦の顔に触れた。
細くうつくしい鼻筋が、ロビーの青白いダウンライトに照らされて、頬に影を落としている。
浅田は責める手を緩めない。
ベルトを外し、片足だけ曲げさせ、下履を脱ぎとっていく。
富士葦の、男にしては白い肉体。すでにその部分は硬く起立していた。
スラックスを脱がせた方の手で、浅田は富士葦を強く握り込んだ。
強い刺激に悲鳴し、浅田の腕の中で暴れている。
抵抗を押さえ込むようにして胸のあたりを這い回っていた指先は、かつて浅田がつけた手術瑕を探り当てると、その上を引っ掻くようになぞった。
まだ赤くテラテラと光る真皮が薄いせいか、それともそこは以前から彼の性感だったのか。富士葦は息をのみ体を仰け反らせると、浅田の肩に頭をもたれさせて、浅く呼吸を繰り返している。
瑕を責めていた指を引き上げると、浅田は富士葦の顎を捕らえ、無理な体制で口付けさせた。
あれほど冷たく輝いていた富士葦の、鋭利なナイフで切ったような甘さのない目蓋が今は朱をさされ、潤んでさえいるのだ。
290 :
288の続き:2006/06/02(金) 03:24:22 ID:yH6ACvSo
存分に舌で口腔を犯すと、顔を離した。鋭く息をする唇の前に差し出された浅田の指に、富士葦はなんの衒いもなく舌を這わす。
一連の行為が、今回がはじめてではない事を物語っていた。
空調か静かに唸っているだけの世界なのに、二人の息遣いが間近に聞こえる気さえする。
亜羅背は咽を鳴らした。ジーンズの中がきつい。
唾液で濡らした浅田の指が、後ろに回り、消えた。何をしているのかは明白だった。
足の間に差し入れられた浅田の膝に乗せられて、富士葦は崩れる事さえも許されない。
恐らく内部で指が激しく動いているのだろう、額を擦り付け、呼気でガラスを曇らせている。
再び耳に唇を寄せ、何事か囁いた。富士葦は激しく頭を振った。
「………」
浅田が自分のケーシーをくつろげた。富士葦のからだの影になり、亜羅背からは浅田のすべてを見る事ができない。
臥せるようにガラスに押し付けられている富士葦の腰を、浅田の黒い手ががっしりと掴んだ。
一瞬、硬く閉じられていた目蓋が、信じられないとでも言った具合に開かれた。
必死にずり上がり逃げようとする胴を、逞しい腕で抱きとめ、膝の上に戻す。
富士葦はガラスに爪を立てようとしている。
「なあ……そんなにイイのかよ?」
亜羅背は問うてみた。
ガクガクと揺すられるままに上下させる顔が、その答えのように見えた。
ニ、三回腰を揺すって、すっかり納めさせたのを確認すると、麻駄は片方の手を前方に回し、再び富士葦に指をからめた。
真顔になったかのような富士葦だったが、眼の焦点がどこか合わない。からめ取られた富士葦の先端をめくるようにして、浅田の無骨な人さし指が潜りこもとしている。
他の指で、富士葦の快感を引き出す事も忘れていない。
白すぎる程白い太股に戦慄が走ってる。
浅田の指先は、富士葦の分泌した体液で濡れ、爪の先端は体内に侵入しているようだった。
浅田は再び胸から富士葦を押し付けると、彼の髪を乱暴に掴み、上向かせると、ガラスに押し付けた。富士葦は諦めたように顔を斜に寄せると、ゆっくりと唇を寄せた。
おそらく浅田から、鏡の中の自分に口付けるよう強要されているのだろう。伏せられた瞼の間から、涙がはらはらとこぼれ落ちた。
291 :
288の続き:2006/06/02(金) 03:25:37 ID:yH6ACvSo
医師としての腕は認めても、年下の男に組み敷かれるのが口惜しいのか。
単純に快楽の涙なのか。
亜羅背は富士葦を、はじめて綺麗な男だと思った。
思わず亜羅背がガラスに唇を押しあてると、とたんに富士葦は弾かれたように背を反らせた。
浅田が動き始めたのだ。
自分の行為が向こうに知られたかと思い、亜羅背もガラスから離れその場に座り込んでしまった。
そんなにイイのかよ。
唇から、飲みきれない唾液が伝っている。
浅田にせき止められている肉体からも、体液が滴り落ちている。
もう、がまんできねえ……。
ジーンズのファスナーを下げるのももどかしく、自分の硬くなった欲望を握りしめながら、富士葦の前に跪く。
富士葦を抱いているのか、富士葦になって浅田に抱かれてるのか。
もう、どっちでもいい。
快感を追う事に熱中している富士葦は、浅田の動きに合わせて腰を突き出すようにし、やがて獣の交接のように四つん這いになって崩れ落ちた。
高く腰を上げた体制で犯される富士葦を出入りする浅田の、その逞しい肉体。白と黒の鮮やかなコントラストが眼に入る。
あ……いく……。
亜羅背の指の動きが早まった。
同時に、浅田も腰を激しく打ち付けている。
292 :
288の続き:2006/06/02(金) 03:27:36 ID:yH6ACvSo
……と。
ポケットの携帯電話が鳴ったが、向こうに音は聞こえないはずだ。
取り出して確認すると、目の前のガラスに亜羅背の顔だけが浮かび上がった。
目の前の二人が、驚いたような顔をして、亜羅背を見上げた。
「しまった!」
あわてて亜羅背は携帯をしまうと、一目散にその場から逃げ出した。
マジックミラーは、暗い部屋から、明るい部屋を見る事ができるものだからだ。
夜が更け、双方とも暗くなった照明の下では、携帯の明かりでも亜羅背の顔を浮かび上がらせるのには充分だった。
「だからこんな所じゃ嫌だって言ったんだ!」
悪態はつくものの、唐突に引き抜かれ、富士葦は身支度を整える事さえできない。
それどころか体に不定期に走る痙攣が、体がまだ浅田を求めている事を伝えて来る。
「見られたんだぞ!どうするつもりだ」
羞恥に肩まで赤く染めて震える富士葦に、自分の白衣を投げてよこしながら、浅田は言った。
「さあてね。おまえのイヤラシイ姿が忘れられなくて、抱きに来るかもな」
「あいつと寝ろと?」
真摯に浅田を射る視線もまだ、快楽の余韻を引きずってるかのように覚束ない。
「安心しろ。俺はこれでも嫉妬深いんだ。他の男に触らせるわけがない」
その言葉に、安心したような顔をしたのを、富士葦自身は気付いただろうか。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
>>288 GJGJGJ!!!内科医受(;´Д`)ハァハァ
今夜は名作イパーイで幸せだー
大漁じゃぁぁぁぁぁ大漁じゃけんんんんんヽ(*´д`*)ノ
教授も天才外科医も麻酔医も内科医も、みんなテラモエ!!!
姐さん方GJGJGJ!!!
外科医×内科医GJGJGJ
禿げたわー
慰留萌えの皆様超GJ!!!!
なんの祭りなんだ!
幸せだよー
____________
| __________ |
| | | |
| | |> PLAY. | |
| | | | ∧_∧ 以前のやきうスレのあったら怖いネタ
| | | | ピッ (・∀・ ) カソトク攻めバージョンで
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
頂点に立った喜びと、その後のテレビ出演や雑誌の取材と忙しくも嬉しい日々が過ぎた。
監督は活躍した選手達にカソトク賞を手渡し、この一年の活躍を思う。
前から欲しがっていた品々ではあるが、自分の腕で勝ち取った品。
単純に物を手に入れた喜び以上のものがあるだろう。
しかし監督にまだ一人、彼がいなければこの優勝はなかったという選手にカソトク賞を渡していなかった。
その選手が求めたのは、監督自身だった。
それはまだ、リ一グが混戦模様でどこが優勝するとも知れなかった頃の事だ。
チ一ム全体の練習が終わり、人の気配も少なくなった練習場で一人まだ練習を続ける選手がいた。
しばらく不調が続いており、思うような結果を残せていなかった選手だ。
この日も練習に納得がいかなかったのか、ため息混じりに練習場を後にするところだった。
監督として放っておけなかった彼は、選手に声をかけた。
「頑張ってるな、お前。そういえばお前にはまだカソトク賞の希望を聞いてなかったな、何がいい?」
しかし選手は暗い表情のままこう言った。
「何言ってるんですか、監督……今の俺にカソトク賞の事なんて考えられませんよ」
元気のない彼に優しい言葉をかけようかとも思ったが、あえて強い口調で投げかけた。
「お前こそ何を言う、今からカソトク賞を狙うぐらい強気で来い!」
「そうですね、ちょっと弱気になってました」
少し明るくなった選手に、カソトク賞の希望を聞いた。
「その気持ちで行け、カソトク賞は何でもやるし何でもするぞ!」
「何でも、ですか?」
少し生意気そうな表情から、明るい兆しを感じ取った監督は本気で何でもしてやろうと思った。
「ああ、何でもいいぞ!」
「じゃあ、俺を抱いてください!」
あまりにも意外な答えだったが、監督として言った以上は引っ込める訳にもいかなかった。
「そうか……じゃあ、そうしよう……」
一礼し、嬉しそうに去っていく選手の姿を見送るばかりだった。
それから彼はスランプを抜け、見違えるような活躍をしチ一ムを優勝に導いた。
彼にカソトク賞を渡さないというのは不自然だ、そして何と言っても約束は守らなければならない。
意を決して、監督は選手を訪ねた。
突然の訪問にも関わらず、選手はいつでも準備をしていたかのように監督を迎え入れた。
どれほどまでに彼は、この時を待ちわびていたのか……
挨拶を交わし、出されたコーヒーを飲みながら監督は言った。
「お前のカソトク賞の事だけど、どうする?」
選手はじっと監督を見つめた。
「やっぱり……嫌ですか?」
監督は最初に持ちかけられた時、正直抵抗があった。
だが彼の気持ちの中に自分に抱かれるために懸命の努力をした選手に対し、何かを感じていたのも本当だった。
「嫌ではないというか、お前はこのために努力したんだし監督として報いたい。しかしなあ、嫌というより、その……俺は男とは未経験だからなあ……」
困り顔の監督の手を握り、微笑みながら選手は答えた。
「俺、監督の事が好きだから……監督さえよければ、俺にまかせてくれませんか?」
「お前、そんなにしてまで……」
カソトク賞を渡す決心は付いた。
監督はシャワーを浴び、部屋で選手が来るのを待っていた。
やや緊張の面持ちで、選手が部屋に入る。
「監督……」
くちづけを交わし、体と体が触れ合う。
雰囲気はいいのだが、監督は問題を感じていた。
「お前の事は嫌いではないんだが、期待に答えられないかも知れないな」
彼のものは反応していない。
「大丈夫です、俺、なんとかします」
選手はそれを口にくわえる、唇と舌の愛撫に体の奥からだんだんと熱くなってくるのを監督は感じていた。
ふいに唇が離れ、何かがかぶさられると体が重ねあわされた。
導かれるままに中へ、思ったより滑らかに、しかし確かな締め付ける感触を感じながら挿入する。
「あ……」
選手は声をあげて監督にしがみついた。
「……どうした? 痛かったか?」
「いいえ、監督……」
シーズン中は何度も彼を助けてきた腕が、愛しそうに監督に絡みつく。
その愛しさが伝わったのか、監督は激しく熱さをぶつけた。
選手は監督を中で感じ、熱さをぶつけられるたびに喜びを感じた。
今までどれほどに望み、そして何度も諦めた事を現実にした喜びを伝える言葉は、快感の喘ぎ声となって闇に溶けていく。
喜びも快感も愛しさも熱さも混ざり合い、監督でも選手でもなくなり求め合う体と体になって交じり合う。
重なり合う二つの体は絡み合い、部屋は熱い息遣いで満たされていった。
快感の嵐が過ぎ去り静かになった部屋の中で、放心する選手に再び監督の顔になって聞く。
「カソトク賞、これでよかったか?」
「はい……」
とても満たされた声だった。
その年、カソトク賞としてその選手が何をもらったかは誰も知らない。
この世界でたった二人、監督とその選手を除いて。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 二番煎じスマソ
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
キタコレ!
個人的に、あの監督が彼の右腕と…と想像したw
ドラゴンばかりすみません、パラレル&エロ無です。
本スレで高じたネタですが、チームのメンバーが一緒に生活してるという設定。
キリシマンメインで彼はお向かいさんの設定です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
AM8:00---
迷信町の、とある高層ビルの一室。
カーテンがひらひらと風に舞っている。
窓から溢れる光に目を細めながら、
キリシマは手元の眼鏡をかけ、凝りを解すように首を回した。
シャワーを浴び、一息付いたところで彼の朝は始まる。
朝は、自分で淹れた紅茶とクロワッサンに限る、とキリシマは常々思っている。
それは昔からの習慣であり、彼にとって必要不可欠なものだ。
クロワッサンには少量のバター、紅茶には何も入れないことにしている。
少し遅い朝食が始まった。今日はオペも、目立った予定も無い。
優秀な外科医であるキリシマにとって、珍しい休みの日であった。
さて、何をするかーーー、キリシマは暫し逡巡した後、外出することに決めた。
近頃の帰宅は、いつも夜の帳が過ぎる頃だった、とふと思い返す。
今日は天気も良い。たまには外へ出て太陽を浴びることも大切だろう。
と、ぼんやり考えながらキリシマは紅茶を飲み干し、
簡単に片付けをした後、着替え、身支度を整えた。
今日は、お気に入りのジャケットを着ることにする。
今日は久しぶりに実家へ寄ろうか、それとも本屋へ?
あれこれ考えながら、キリシマは家を出た。
AM9:00---
マンションの一階に下りると、同じマンションに住む主婦達が、
大きな声で噂話をしているのが耳に入った。
「え!あの向かいの小さな家にお医者さんが住んでるの!?」
「ええ、しかも一人や二人じゃないみたいよ、皆お医者さんなのよ!」
「ええ!!物好きな医者も居るのねぇ…うちに住むキリシマさんとは大違いだわ」
「ほんとよね。キリシマ先生は優秀ですもの、あの暮らしも頷けるわ。
でも美男美女揃いらしいわよ、皆仲が良いとか…前を通ると良く笑い声が聞こえるし」
いつもはこういう話は気にも止めないが、その内容と、
不意に自分の名前を呼ばれたことで、キリシマは思わず足を止めた。
医者が集団で生活?何の為に?何のメリットが?
気にはなったが、元来噂話の類は本気にしないことにしている為、直ぐに忘れてしまっった。
そもそも、集団というものがキリシマは好きではなかった。
昔からキリシマは優秀で、何でも一通り出来たし、
仲間と助け合わずとも出来ることばかりだったのだ。
それに、有能である自分は、足を引っ張られこそされるが、
手を引っ張られ、助けられたことは無いに等しい。
だからキリシマは一人が好きだったし、役に立たない友人などは要らないのだった。
キリシマは、見つかっては気まずいだろうと、少し足早にその場を通り過ぎた。
ある音に気付いたのは、丁度マンションを出るときだった。
チリン、チリン、という音がどこからか聞こえるのだ。
気になって辺りを見回すと、数歩先に一匹の猫がこちらをじっと見ているのが目に入った。
黒くてらてらと光る瞳。プラチナの毛先と、大きな金色の鈴が特徴的だ。
先ほどの音の正体はこいつか、とぼんやり猫を見ていると、赤い首輪を嵌めていることに気付く。
「お前飼い猫なのか」そう呟くと、猫はそうだとでも言うように瞬きを数度繰り返し、
そして、ぱたりと倒れた。「お、おい!」慌てて駆け寄っても、猫はぐったりとして動かない。
繰り返すが、自分は優秀な医者だ。
しかしそれは対人間の場合であり、相手が猫ではどうしようも無かった。
首元を触ると、脈は規則的に打っているようで、キリシマは少し安堵する。
しかし猫の脈のどの状態が正常なのか、キリシマに解る術は無く、
思わず辺りを見渡したとき、ふと首輪の文字を、キリシマは見た。
「アラちゃん 迷信町○×-△」迷信町○×-△と言えば、ここから一分もかからない。
キリシマは住所の場所へ、猫を抱え走った。行ってどうなるかは殆ど考えていなかった。
そもそも、自分がなぜあそこまで焦り、必死になったのか。良く解らない。
あの猫はなぜか放っておけない気がしたのだ。普段なら考えられない浅はかさだった。
住所の場所に着いた時、キリシマは軽いショックを受けていた。
そこは普通の民家よりも少し小さめで、であるにも関わらず表札が普通ではなかった。
「あさだ りゅうたろう
けいすけ
のぼる
あきら
みき
じゅり
あらちゃん」
「あらちゃん」は猫だとしても六人家族とは。出生率が低下した日本では珍しい家族だ。
と、そんなことを考えている場合では無かった。
ピンポーン、とインターホンを鳴らすと、すぐに男の声が聞こえた。
「どちら様でしょうか」予想以上に高い声だ、丁寧で線の細い印象を受ける。
「すみません、お宅の飼い猫が道で倒れていたんですが…」
「またですか!直ぐに行きます」キリシマは耳を疑った。
何度もあることなのか、この家に飼われているこの猫は大丈夫なのか、
ぐるぐる考えていると引き戸がガラガラと開き、細身の男が姿を現した。
顔立ちはなかなか整っているし、真面目で神経質な印象を受けるが、
何故か彼は、白い割烹着を着ていた。
「…。」絶句。キリシマの状態を一言で言うなら、間違いなくそれであった。
「アラちゃん!」割烹着の男が怒ったように猫を叱る。
「にゃ〜」すると、さっきまでキリシマの腕の中でぐったりしていた猫はひゅるりと体を起こし、
身を翻したかと思うと、家の中へフラフラ入って行った。
どう見ても先ほどの様子とは違い、元気そうであった。
キリシマはその姿を目で追うことが精一杯だ。
「アラちゃんどこ行ってたの〜?探してたんだよ〜」
女の子の声が奥から聞こえ、キリシマは現実へ引き戻される。
「すみません、うちのアラちゃんは悪戯好きで…ご迷惑をおかけして本当にすみません」
白い割烹着の男がペコペコ頭を下げているが、キリシマはひたすら状況の理解に励んでいた。
「服も汚してしまったようで…すみません、良かったら上がって下さい、お茶でも用意しますから」
「…すみません。用事があるので、帰ります。猫が元気そうで良かったです」
「いえいえ、そう言わずに。クリーニング代も払わせて下さい、本当にすみません」
「良いんです、今日は急いでますから…」
「そうですか、、解りました。是非今度お侘びをさせて下さい、お名前は…?」
「キリシマ…です」
「キリシマさん…ですね。解りました、本当にありがとうございました」
キリシマは優秀な男だ。君子危うきに近寄らず。それがキリシマだ。
結局キリシマはその後、ぼんやりしたまま休日を過ごした。
考えることは今朝のことばかり。
来週こそは有意義に過ごそう、厄介ごとには関わらないでおこう。
と眠りに就くキリシマは、フジヨシがキリシマを探し回っていることや、
今朝の家族が噂話に出てくる医者家族だとは、露とも知らないのであった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
出来ればキリシマがファミリーに迎えられて人の温かさを知り、でも反発の心もあって、
最後は物陰でハンカチぎりぎり食いしばる所まで書きたいですw
深夜に失礼しました! 今ズレを見つけましたすみません…
GJGJGJ!
遺留は宝石箱だにゃー
>>309 GJ!アラタンが猫なのがちょっと残念だけど面白いお。
>>309 ほのぼのGJ!
アラ猫はマタタビでラリって倒れたわけじゃなかったのねw
キリシマの中に猫への愛着とうい名の独占・支配欲が湧いて
マタタビで釣って拉致監禁という可愛い光景まで妄想したよw
「奥さん、キリシマです」な是非続きをおねがいします
オチはキリシマ大家族ウラヤマシスでハンカチギリギリかみ締めでw
本スレでファミリーネタ書いたもんですが、
軽く設定引き継がれててテラウレシスwwそして萌えました、GJ!
私もにゃんこ麻酔医は最初マタタビで酔ってるんだと思ってた。
単にキリシマンをからかっていたのね…いじわるばあさん…w
アラちゃんは猫と書いてあっても、ピンクのカットソーで赤い首輪な163センチで想像してオケだよね?
名前: 本スレ294/304
確かにマタタビにしておけば良かったですね…orz
>315 オケです!家族の居るところでは人語で話させる予定ですw
(寧ろ163センチが倒れてた方が良かったかもですね)
皆さんありがとうございました!
ドラゴン続きですみませんでした。それではまた本スレで。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )
ナマモノ里予王求 某低迷してるチームの後輩と先輩。捏造しまくり。
僕の隣では先輩がノートパソコンに向かっている。
先輩が最近始めたというブログ。
毎日書いていて、今日も試合直後の移動で疲れてるのにカタカタと音をさせていた。
「うるさくてごめんなー」
先輩はそう言って笑う。
この人は時々変な駄洒落を言うことがあるけれど、
そういう時は寝たふりをしてやり過ごしてる。
チーム内にはそんな人ばっかりで、もう慣れっこだ。
僕は平気ですよと言って、鞄から雑誌を出して読み始めた。
カタ、カタ、カタ、カタ。
気にならないはずがない。
何を書いているのか。
誰のことを書いているのか。
カタ、カタ、カタ、カタ。
僕のことは書かれているのか。
「お前は、ブログとかやらないの?」
「え、僕ですか? パソコンとかわかんないですから」
「若いのに……結構面白いぞ。気持ちの整理にもなるし」
ファンの声は厳しいけどなーと言って、先輩は苦笑する。
チームが低迷しているから仕方ないんだけど、
やっぱりキツイ言葉が投げかけられると辛い。
球場の野次もどんどんひどくなっている。
そんな中でも、ブログを続けている先輩はやっぱりすごいなと思った。
「はい、終わりっと」
そう言いながら、先輩はタンっと音をさせてキーボードを押した。
「書き上がりました?」
「おう。見せてやろうか?」
「いや、壊したら悪いですから」
残念と言いながら、先輩がパソコンを片付けている間に、僕は携帯を取り出す。
最近の携帯は普通にインターネットを見られるってこと、先輩は知らないんだろうな。
そうして、僕は先輩の更新したばかりのブログを見る。
誰よりも先に。一番乗りだ。
ああ、今日は僕の名前があった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ ) オチ弱くてスマソ。
誰のブログか容易に分かってしまったよw毎日更新はほんとエロイ。
何があっても応援してるからみんな頑張れ・・・・・・
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!ツイデニビンジョウ!
気にならない、って言ったらウソになる。
なんせ、同じ苗字、同じ年齢、加えてドラフトの順位まで同じときている。
4巡目。
悪くは無い。けれど、良くも無い順位。
ブルペンで投げていたって、呼ばれれば俺も彼も振り向く。
そして左、だの、右、だのと呼ばれて、どちらかが準備を始める。
名前、あるのにね。
彼は、今やこのチームには欠かせないリリーフエースだ。
ミットの位置へ寸分違わず吸い込まれていくボール。羨ましい制球。
それは、速球を投げられない自分が目指すべきものだ。
体格は、規格外とも言うようなほど小柄だ。
その体格で、この世界を生き抜くにはかなりの努力が必要だろう。
でも、彼はきっとやりぬくに違いない。
・・・気になる。
でもこれは、きっと、共通項が多すぎて、でも自分とはやっぱり違うから、気になってるだけでしょう?
***
気にならない、って言ったらウソになる。
なんせ、同じ苗字、同じ年齢、加えてドラフトの順位まで同じときている。
4巡目。
悪くは無い。けれど、良くも無い順位。
今年入って来た彼は、大学から社会人へ進み、やっぱり高卒ルーキーとして
ピカピカしながら入って来た後輩とは違った。(この経緯まで同じときている)
落ち着きがあるのは、普段もマウンドでも変わらない。
いくら年齢が俺と同じだとはいっても、今年入って来た「ルーキー」なのに。
涼しげな目元は、帽子の影に隠れては見え、その表情はあまり変わらなかった。
俺、1年目からあんなふうに、できてたかな?
それを思うと、この世界では俺のほうが先輩のはずなのに、
どうしても見上げてしまうような気になる。(まぁ身長的に常に見上げてるんだけど)
要するに、気になるのだ。細部まで見て、自分と違うトコ、同じトコ、探すくらいには。
でもこれは、きっと、共通項が多すぎて、でも自分とはやっぱり違うから、気になってるだけだろ?
***
でも、同じモノがたくさんあるから、彼とは自然と接点が多くて。
よかった、なんて思ってるのは、彼には秘密だ。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
里予王求連チャン キタコレw
馬奇馬軍団萌え!
>>317 >>320 スマソ、やきうには興味があるんですがどの船首どころかどのチムかさえ分からず…。
無粋な事を言って申し訳ないが、良ければ該当船首を教えて頂けないでしょうか?
>>323 >>317は低迷していて、毎日ブログ更新する若干天然なベテラソがいる糾弾
>>320は同姓で両方ドラ4のPがいる糾弾
ちょっと調べればすぐわかるよ
>>317 >>320 ふさしく萌えさせてもらいました。
最近、里予王求の作品がイパーイで嬉しいよ。
職人さん、本当にGJ!!
>>317 >>320 萌えマスタvvvvv
しかし
>>317が誰と誰なのか調べたがワカランorzもうちょっと調べます。
>>320は、この糾弾さんの話は始めてまともに読んだかも。(・∀・)イイデスネ
>>317-318 超GJ!萌えますた(*´Д`)
毎日ブ口グ更新チェックするまで眠れないw
可愛いよ灣々会可愛いよ
里予王求モノたくさんで(;´Д`)ハァハァ
まあしかし、低迷してるのは順位表見ればいいとして、
>毎日ブログ更新する若干天然なベテラソ
つうのはご新規さんにはちとハードル高い鴨ね。
>同姓で両方ドラ4のP
はヤホの名鑑あたりで調べれば割とすぐ分かるかな?
>>329 毎日ブログ更新してるエロいベテラソというと、派゚じゃなくて瀬のほうですか?
となると後輩くんはアゴをプチ整形した彼?
>>330 そうだと思う。後輩君は鬱顎だと思うけど、他で想像してみるのもいいと思った・・・
エロスな人は今日もエロかったです。
ドラマ遺留の内科医×麻酔医。ERO有り。でも言うほどEROくない。
該当スレの「麻酔医に同期(内科医似)が居て裏切られてプッツン化」のネタを拝借。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
壁に押しつけて、前髪を掻き上げて、口唇に舌を這わせて、それから新瀬は呟くように言った。
「似てるよ、アンタ」
それが何を意味するところか、藤好には分からない。新瀬が器用に右手のみで藤好のベルトを外し、下着の中に手を突っ込む。緩急をつけて扱いてやると、それはじわじわと形を変えていった。
空いている手でシャツを開き、藤好の鎖骨を甘噛みする。舌は這い上がって藤好の耳まで届いた。
「声聞かせろよ、感じてんだろ?」
歯を食いしばって耐える口元に指を添えると、おずおずと舌が伸びてそれを舐め始めた。しかし新瀬はそれを引き抜く。
「は、あっ…?」
「残念、そっちじゃねぇんだ」
おもむろに藤好の右手を持ち上げると、その指を口に含む。舌を絡め、丹念にねぶる。その舌の動きと、右手の動きが同調して、藤好は目を閉じた。
(こんな、こんなことがしたかったんじゃない)
藤好は、少しは新瀬が懐いてきたことが嬉しくて、あれやこれやと世話をしていた。今日も新瀬がソファで寝ていたから、毛布をかけてやろうとしたのだ。
それなのに新瀬はいきなり起き出して、藤好に憎いと言わんばかりの目を向けて、冷たい声で言った。
「二度と近寄るな」
理由が分からなくて多少押し問答をしていたら、キスをされて、…あとはもう、ただその通りのことが続いている。
(何を)
少しふやけた指を口から抜くと、新瀬はそれを自分の後ろ側に回した。下は何も身につけていない。誘われるままにそこに指を這わせる。本当にいいのか分からなくて、困った目を向けると、新瀬はにやりと笑って自ら腰を下ろしてきた。
「…っ!おいっ、…」
「ははっ…な、早く、かき混ぜろよ…」
薄い毛色の中に黒が見え隠れする髪の毛が近くにある。藤好は左手を新瀬の腰に回し、抱き留めるように指を動かした。新瀬の望むようにかき混ぜはせず、ただ中を解すように。
「じれってぇ…もっと、乱暴にしろっ…!」
「できるか」
「麻田にゃ、乱暴にされてるくせによ…」
藤好は動きを止めた。新瀬は短い息を吐きながら藤好を見上げる。
「麻田が、どうしたって?」
「アンタと麻田、ヤってんだろ」
はっきりと、藤好は動揺の色を露わにした。どうして新瀬がそれを知っているのだ。心臓が嫌な風に高鳴る。くくっと喉を震わせて、新瀬が首をすり寄せてきた。
「別に誰にも言わねぇよ。それより、なぁ」
少し萎えかけた藤好自身を手の中に握り込み、やわやわと揉みだすと、くすぶっていた熱が一気に上昇する感覚になる。
「ブチ込みたいだろ、ここによ」
示すように腰を揺らめかす。藤好は一つ舌打ちをすると、一度指を引き抜いてから、その本数を増やして突き立てた。
(何を求めているんだ)
初めて見た時から、似ていると思った。
おれがまだ理想を語ることができた頃、共に理想を語り合っていた、親友と呼んでいいほどのあいつに。
金を手に入れ、酒と麻酔に溺れていたおれを、「これじゃ駄目だ」と叱ってくれたあいつに。
先輩達にいいように犯されていたおれを、同じように犯して、罵声を浴びせてきたあいつに。
どうせこいつだって、善人面して、一皮剥いたらあいつと同じようになるんだ。
それなのに勝手に踏み込んで、勝手に優しくして、ずるいにも程がある。
ソファに丸くなっている新瀬を、藤好はじっと見た。こうして見ると、ひどく弱々しい。敵から身を守るために威嚇する猫となんら変わらない。
「麻田に嫉妬したか?」
「…自惚れてんな」
「飽きたか嫌ってるなら、触らせもしないだろう」
髪をさらさらと梳く手を払いのける。新瀬は喉からするりと言葉を出した。
「アンタが思うより遥かに酷い奴だ、おれは」
「でも、お前が思うより遥かに良い奴だぞ」
更にぐっと身を丸めて、顔をほとんどソファにうつぶせにさせる。泣くのだろうかと藤好は思ったが、さすがにそれはなかった。
「嫌われるより、嫌う方が怖いんだろう」
「……アンタ、どうしてぇんだよ」
「お前に言われたくない」
実際、それはお互い分かっていないことだった。成り行きと衝動に委せて身を繋いだことを、これほど後悔すると思わなかったからだ。
藤好は抱いたこと自体を、新瀬は演技をして欲を煽るのを忘れたことを、後悔していた。
「ただ、泣くような顔をして、誰かに抱かれないでくれ」
藤好は覚えていた。新瀬がぜぃぜぃと息を荒くしながら、誰のものともつかぬ名前を呼んでいたことを。
そして藤好には分かっていた。新瀬が、自分とそいつを重ねていることを。
「アンタにとって、麻田って、何?」
「…さぁ。でもな、なんか逆らえないんだよ。あいつと居ると、従うことの面白さが分かってくる」
新瀬は言葉を脳内で探した。しかし、どれも今の気持ちを上手く表現できる気がしない。
伸びてきた手をまた振り払うと、今度は毛布をはねのけて起き上がった。そのまま藤好にキスをする。舌のラインをなぞり、思うままに口内を蹂躙すると、そっと体を離した。
「ずるいとことか、ほんとアンタ、似てるわ」
泣き笑いの新瀬に、藤好は言葉を失った。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
とうとう木曜日でもないのに書いてしまった…
あんな素敵なネタが現れるなんて思ってもみなかった…
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 米コメディードラマ、友達(英訳)
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 恐竜博士+役者+元リーマン…半ナマですよ、と
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || | *9シーズン軽くネタバレ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
結構前の8辺りで友達ネタ書いた奴です、続きっぽい
室内にノックの音が響いた
名前を呼びかける声にも返事はなく部屋の住人は留守のようだった
ドアには鍵はかかっておらず引くと音もなく開く
不用心だと思いながらもどうせ近所のバーガーショップにでも行っているのだろうと
誰も居ない部屋に足を進めた
中には入れたままのカフェオレが置いてある
バタンとドアの閉まる音がした
しばらく室内を見つめながら考え
後でもう一度訪ねようと思い至りドアへ足を向けた
だがドアの前へ行くや否やドアがひとりでに近づいてきた
正確に言えばドアが開いただけなのだが
開いた先にはチャンドラーが立っていて
予想外の相手が現れてぎこちなくお互い肩をすくめた
「ロス?」
「やぁ、君か。ジョーイかと思ったよ」
「俺も」
「ジョーイの部屋だからね」
笑いながら中をチャンドラーが覗く
「いないのか?」
「ああ、でもすぐ戻ってくると思うよ」
テーブルの上のマグカップを見ながら答えた
「そう、少し待つかな。モニカがパイを焼いててさ。」
「…知ってたら出かけなかっただろうね」
ふはあ〜〜!モ、、モエますた!ありがとうございます!
内科医×麻酔医 いいですねえ
もっと、読みたい!
その様子を想像しながら置いてあったカフェオレを一口飲んでみる
まだ少し暖かかったが、酷く甘いのが先に口内に広がって
眉をひそめながらソファに腰を落とす
すると手持ち無沙汰に、方々へ目を移らせているロスに気付いた
「ロス?」
「え、あ・ああ、何だい」
「何か落ち着かないな」
「そうかい?」
「ジョーイに何か深刻な話でもあるのか?」
その言葉に思い出した様にウロウロさせていた目をチャンドラーへ移した
「…」
「…?何」
突然顔を見つめたまま考え事へ走ったロスの意識を呼び戻して
「あー、うん、そうか…」
「うん?」
「ジョーイに聞いたんだけど」
口調が少し怒っているのは気のせいだろうか
「君の一番の友達はジョーイって言ったらしいね」
「あ」
「酷いよ!君の一番は僕だと思ってたのに、親友だと思ってたのに!!」
「いや、それはさロス」
「僕は博士号も持ってるし本だって出してるし教授だぞ」
部屋を一周しながら身振り手振りで喚く[教授]の姿を呆れた様に眺めている
「離婚歴はあるけど、女性にもモテるし」
「論点はそこじゃないだろ!それに」
「確かキスが上手いからだとか言ってたけど僕だって負けてないぞ」
話の展開に以前のジョーイとのやり取りを思い出した
思わず後ろへ後ずさり一瞬でソファに座ってしまった事を後悔した
それは背もたれと眼前に迫るロスに挟まれたからで
「待て!!待てって!!ロス!!」
頭に血の登ったロスの手がチャンドラーの後ろ背もたれへ置かれた時
ドアが勢い良く開いた
現れたのは部屋の持ち主で
両手にドーナツショップの袋を持って、無人だと思っていた部屋の人影を驚き見つめていた
「…?ロス…とチャンドラー?」
「ジョー…!」
チャンドラーの助けを請う声に重なったのは
助けてくれそうな相手へ早々の退場を告げるもので
「ジョーイ、モニカの部屋に焼きたてのパイがあるよ」
「…!行かなきゃ良かった!」
両手の袋を一瞬見て悔しそうな顔で部屋を出ていった
「…ジョーイ…」
「さて」
ドアの方へと向いていた顔をギシギシと前へ向けると
臨戦態勢のロスの顔が間近にあった
「…スっ」
飲み込まれた名を呼ぶ声
間もなくぬるりと開いたままの口から舌先が入り込んできた
「…っ、んーっ!!!」
性急だったジョーイとは違いゆっくりと口内を這い回る舌先
逃げようにも顔は両手で抑えられ肩で体を押さえつけられている
何とか引き剥がそうと躍起になってロスの服を背に回した手で引っ張る
背に意識を集中させたせいで逃げていた舌先が絡め取られた
「んん…っ!!」
唇の端から流れ落ちる混ざり合った唾液がズボンに染みを作った時
「ロス!!!パイまだ焼けてなっ…」
先程より勢い良く開いたドアからジョーイが駆け込んできた
勢いのまま踏み込んだ部屋の奥を見て驚き固まってしまった
慌てて離れたロスがドアの方を向く
>>335 GJGJGJ!もえますたハァハァ(*´Д`)
「泣くような顔をして、誰かに抱かれないでくれ」がもう…!もう…!
姐さんのせいで眠れないよ!!
「はぁ…」
漸く解放されたチャンドラーはソファに沈み込む様に動けずにいた
何故友達にキスをされなければいけないのかをグルグルと考えてしまっていた
「…俺はモニカの夫なんだぞ…お前はモニカの兄だ」
濡れた唇を手の甲で拭いながら続ける
「一番だとか…友達だとかより、俺達は親戚…いや家族なんだぞ…」
その一言にロスが目が覚めたようにチャンドラーを見た
「家族…」
「そう」
「…そうか、そうだよ。僕らは家族だ!!君は義弟だ!!友達が義弟だなんてこんな嬉しい事はないよ」
疲れた顔で見上げるチャンドラーをよそに嬉しそうに笑いながら
未だ固まっているジョーイの横をすり抜けて
「ジョーイ焼けたら呼んであげるよ」
機嫌良くそれだけ言うとさっさとドアの向こうへ行ってしまった
「ふぅ…上手く言いくるめれた」
「チャンドラー」
いつの間にか横に立っていたジョーイが呼んだ
「ん?」
「家族と一番の友達はどっちが上なんだ?」
「や、それは言葉のアヤで」
「そんな難しい言葉は知らない!!俺は一番がいいんだよ!チャンドラーの!」
「落ち着けよ。ここ座って、な?」
自分の横を手で叩きながら言う
荒い息を吐きながらボスっとソファに座ったのを見てチャンドラーは小さくため息をついた
「だからな?俺とモニカの引っ越し先にちゃんとお前の部屋があるのは何でだと思う?」
しばらく考えて
「…寂しいから?」
「それもあるけど」
一瞬嬉しそうな顔になったがすぐに元に戻る
「ジョーイはもう俺達にとって家族なんだよ、お前だけ置いて引っ越すわけないさ」
肩をポンと叩いて顔をのぞき込むと笑顔で大きく頷いた
「そうだよな!俺達は家族だ、俺は一番の友達だからな!」
チャンドラーはまた一つ疲れたため息をついた
「ところで」
思い出した様に振り返ったジョーイと目が合う
「なんだよ」
「さっきのロスのと、俺とどっちが上手かった?
「わかるわけないだろ!そんなの!」
「じゃあ、比べてくれ!」
言うや否やチャンドラー両肩を押してソファに押し倒した
「ジョー…!?んんっ!!」
「存分に味わってくれよ…」
一瞬離れて女の子に囁く様に耳に息を吹きかける
「!!……っ」
どっしりとのし掛かられて重くて持ち上げられず
されるがままになってしまう
口内を這い回る舌先はやはり性急でどこか強引な口付け
けれども場数を踏み経験の多いジョーイは微妙に性急さをも変えてくる
絡められた舌でつい意識が朦朧となりそうになり
必死で繋ぎ止めようと意識を強く持とうとする
だがそうすると余計に背筋を上るゾクゾクとした刺激をはっきりと感じてしまう
押し上げようとしたまま肩に置いた手が震えた
ようやっと離れたジョーイは顔の横に両手をついたまま見下ろして問う
「どうだった?」
その様子はクイズの答えの正解を待つ子供の様で
とりあえずの正直な感想を言ってみる
「…あ、ああ…うん。お前…かな」
「本当か!!?」
「ああ…、っ!!?」
頷いてすぐチャンドラーは突然に驚いたように目を見開いた
「どした…?って…あ…」
「…」
思わず2人して無言で下を見つめてしまったのは
緩いめのズボンを持ち上げているであろう中のモノが容易に想像できるからで
意志とは裏腹な自身の反応に、自ら引き起こした予想外の反応に
2人して固まってしまっていた
「……………………………帰る」
そう呟くとジョーイを押しのけて起き上がろうとする
「え、ちょっと待てよ。何て言い訳するんだよ」
「いや…でも」
「俺が責任もって何とかするから!!」
「は?」
ソファから飛び降りたジョーイは引っ掴んだチャンドラーの腕を力任せに引っ張った
転げる様にソファから落ちたのにも気にしない
「ちょ、おい、ジョーイ!!」
怒ってみても笑ってみても何をやってもこの
ジョーイという人には敵わないのかもしれないな、と頭に浮かんだ
バスルームのドアを開いて半ば引きずっていたチャンドラーを押し込む
無理やりにトイレの前に立たせると
幼子にする様に背後から抱き締めてズボンのチャックに手をかけた
「おまえ何でこんな事だけ手が早いんだよ!」
「俺はいつだって素早いぞ」
「そんな事は聞いてないって!やるなら自分でやるから!」
「いいや!責任は取る!」
どうやら責任という重大な事に思える言葉が気に入ったようだった
繰り替えし問答は続いても
予想外に素早いジョーイの手の動きがとうとうチャックを下ろしてしまった
「うわっ、やめろって!」
暖かな手が先程までの問答の間ですっかり萎えてしまったチャンドラーのを掴む
握りつぶされるんじゃないかと思われる程に
一瞬きつく握られたがその後に
自分自身をする時と同じように根元から擦りあげる
「っ…やめ…っ!」
柔らかかったそれは徐々に硬くなり
先端から透明な液が溢れ出してきた
「男のイイ所を知ってるのは男だからな」
「んん…っ、何・冷静に…っ分析してるんだよ!」
トイレの壁に手を付いて震える足で何とか立っていた
外部的な刺激に弱い男の性か
濡れた音が下肢から聞こえてくる頃には体が射精時の快楽を想像して
それを欲していた
「ジョーイっ…もう・良いから、もう離せっ…!」
「駄目、だってほら、もう少しだろ?」
先端を滑る液体を塗りこむように指の腹で上下させると
付いた手が滑り落ちそうに震えた
「だから…っ離せって…言って!!ぁっ……うぅっ!!」
小さい呻き声の様な艶を含んだ声が聞こえると同時に
手はさっと下を向けさせ吐き出された白濁色を
トイレに受けとめさせた
バスルームに水の流れる音がする
「あー、もう信じられない…」
床に座り込んでいたチャンドラーが呟いた
手を洗っていたジョーイが振り返る
「もう、パイは焼けたかな」
「…、どうでもいいよ…」
「じゃお前は後で来いよ、俺行って来るから」
「…そうじゃなくて」
呼び止める声には覇気は無く
気付かないのかさっさとドアを開けて出て行ってしまった
よろよろと立ち上がったチャンドラーは開けたままだった
ズボンのチャックを上げてドアを見つめた
今日一日で友達に二度ディープにキスをされ
更にはその友達のキスで反応してしまったものを扱かれて
ここまで思い返して思い切り頭を振った
「はぁ…」
一つため息の後
ドアの向こうから声が聞こえてきた
「チャンドラー!俺のカフェオレ飲んだだろ!」
聞こえない様に大きくため息をつき乱れた服を直してドアから出て行った
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 番号振るの忘れてた、ゴメンヨ
____________ \
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ チュウガクセイニッキ?
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
あああ!/入れるの忘れてた…
焦ったら駄目ですね…orz
>>336 このドラマ大好きだったから、作品が見れてすごい嬉しい。
チャン度羅ーが可愛くてハァハァしてしまう。
>>332 GJ!GJ!この2人大好きだ・・・・
素敵な萌えをありがとう姐サン。もう一回読み返してから寝ます・・
>>332 麻酔医の同期ネタを読めて嬉しい!!
内科医と麻酔医、可愛いしセツナス…
姐さんGJ!GJ!!!
>>338,341
萌えたのは分かるけど
別作品の投下に割り込んでまでGJして、あやまりの言葉もなしってちょっとどうなん?
ここは遺留の為だけにあるスレじゃないぞ!
>352
気持ちは分かるが、かりかりしないで。
投下する人が連投すると、どうしてもスレ規制かかって書き込めなく
なるから、支援もかねたGJコールなんだ、という可能性もあるよ。
特に>338は投下の間隔が3分も空いた上での書き込みだし。
>353
それならそれで一言あるべきなのでは?<支援もかねたGJコール
>338,341は単純にリロってなかっただけでしょう
それで謝りもしないのだから厨と言われても仕方がないと思ワレ
つーか本スレあるなら乙コール位はそっちでやれと
作品以外のレスで長々と占拠するのは荒れる元
普通に注意しただけで「もちつけ」とか「カリカリしないで」発言して
相手を厨扱いしようとする奴って、激しく感じ悪いなーと思う。
こんなスレで揉めないでー。寂しいよ。
SS投下した人が感想あるかなーってリロして
出たのがこのやりとりだったらガッカリするでしょー
>>332 寝る前に何回も見返しちゃったよ
テラGJ
359 :
352:2006/06/05(月) 17:57:19 ID:kd2es5rt
別に揉めさせよう荒らそうとして注意した訳じゃないけど、感じ悪かったならごめんなさい。
でも、色んな人が来るスレだからこそルールや気遣いは大事だと思うんだ。
こういう流れになっても
>>338,341始めあれだけいた遺留ヲタから一言も謝りやフォロ-ないのはやっぱり残念だよ。
誰もが自分の萌えだけを好き勝手に叫ぶだけではこんなスレ成立しない。
該当スレでは避難所作る方向みたいだし、
中にはこの状況を危惧してる人もいるんじゃないの?
謝りにっつうのは同意だが、まあ勇気いるだろうなw
>>359 フォローしてるのが遺留の人かそうでないかはわかんないし、にちゃん覗く頻度も個人差あるしな
残念に思うのはまだちょっと早いかもしれんぞ。
でも私も割り込みに関しては今後はないほうがいいなーと思ったので乙。
投下作品にヘンに割り込んでしまわないようにネタ用テンプレがあるんだと自分は思ってたからね。
沈静化させようとしてる人に悪気はないんだろうけど、ここはある程度ルールの必要なスレだし
スレが表面的に揉めてなけりゃいい(意見の対立なけりゃいい)ってもんでもないと思うよ……。
さて次の投下は何ネタかなー。
>>359 332だけど、正直こんなことになってるとは思ってもみなかった。
自分の投下する間隔がかなり長かったのが原因だと思う。
355が言うように、作品以外のレスはしない方がいいかなと思ってたから、ずっと黙ってた。
「言われてからするのかよ」とか思われるかもしれないけど、言わせてほしい。
本当に各所の方々にご迷惑をおかけしました。申し訳ございません。
今後は避難所に投下します。
というわけで投下待ち。
____________
| __________ |
| | | |
| | |> PLAY. | |
| | | | ∧_∧ ご本尊とかけ離れた話に
| | | | ピッ (・∀・;) なってしまったので、こっちに投下
| | | | ◇⊂ ) __ させてもらいます。
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
※微妙に怖い話かもしれませんので、苦手な方は、スルーしてください。よろしくお願いいたします。
364 :
1/4:2006/06/05(月) 21:10:39 ID:oDwf0YYd
メッセージが、一件、あります、という、無機質で細かく区切られたメッセージの後に、
それは流れてきた。
『お前、隣の男のこと、好きなんだろ? 見てたら分かるぞ。気をつけろ』
機械を通した声だ、と、聴いた瞬間に分かった。
しかし俺は、その機械のざらついた声よりも、メッセージの内容に、背中がぞくりとした。
それは、俺が10年間以上漠然と持っていた恐怖が、実体化した瞬間だった。
他の人間が、分かるはずのない感情。そして、悟られてはいけない感情。
それが、自分以外の誰かに伝わってしまったのだ。
ピーという電子音が流れて、俺は反射的に、電話の「切」ボタンを押した。
しばらく呆然とする。今が一人でよかった。もしそうでなければ、この青い顔を見られて、
色々と詮索されるに違いない。
しばらくして、もう一度、留守番電話サービスにつないだ。同じメッセージが流れる。
今度は、メッセージごと削除した。削除したからって、消えるもんじゃないけれど、
それで少し落ち着くことができた。
「バレたの…か…まさか……」
俺は、後ろ向きになりそうな思考を、必死で前向きに戻そうと、頭を振った。
そう。これは多分…、よくある嫌がらせというヤツに違いない。聞き覚えの無い声に、俺は
なるべく意識を向けないように、気をつけた。
20年以上、意識の底に沈め続けてきた思いを、今更、俺の目の前につきつけないでくれ。
365 :
2/4:2006/06/05(月) 21:12:09 ID:oDwf0YYd
その留守番電話のメッセージは、次の日もはいってきた。そして次の日も。
ボーカルとギター、という関係上、俺とアイツは、二人一緒でいることが、必然と多くなる。
だから、勘ぐられてるに違いない、と、思うようにつとめていた。しかし、さらに日を重ねると、
今度は具体的に行動を指摘するようになった。
『お前は、ギターソロの時だけ、ギラギラした目で隣の男を見つめてるぞ』
『写真撮影の時に、意識と目線が、時々あの男にいっていることを気づけ』
『ライブハウスで、酒を渡すだけなのに、あんなに嬉しそうにしていたら、勘ぐられるぞ』
留守番電話の最後の一言は、必ず『気をつけろ』と揶揄するような響きでしめくくられていた。
俺は、気が付くと、ずいぶん消耗していた。
幼馴染として遊ぶ内に、想いを抱くようになって10年。その思いを隠したままバンドを組み、
今も続けて10年。ずっと上手く隠していると思い込んでいたことが、実は第三者にバレバレ
だった。しかも、客観的に見ると、自分の想いは、酷く濃密で気持ち悪いものに変容している
ことを知った。それだけで、俺は今にも叫びながらビルから飛び降りたくなる衝動にかられた。
しかも、そのメッセージの内容は、確かに俺が人前でやってしまったことを、的確に言い当てて
いるのだ。
眠れない夜を何度か過ごす。食欲が無くなる。彼を見ることをやめる。仕事以外で話すのもやめる。
しかし、それでも留守番電話は毎晩入ってきて、俺にメッセージを伝えた。
366 :
3/4:2006/06/05(月) 21:12:52 ID:oDwf0YYd
その留守番電話が来るようになり、一ヶ月後。
メンバーやマネージャーにも心配されるほど、疲弊しきった俺は、とうとう耐え切れなくなり、
その電話を着信拒否にした。
やってしまった後、もっと早くこうしておけば良かった、という安堵の気持ちと共に、今後は、
誰も自分の行動をチェックして教えてくれる人間がいなくなるのだ、という妙な不安感が、
俺の心にドロリと残った。
次の日から、留守番電話に悩むことは、なくなった。
それからしばらくして、俺達はツアーに出ることになった。
外国にも行くそうなので、これを機会、とばかりに、俺は携帯電話自体を買い換えた。
あの留守番電話は、多分、狂信的なファンがやったのだろう。
マイノリティー向けの音楽ばかりやっていて、売れない俺達には、ある意味ありがたい話
だったのかもしれない。
しかし俺は、最後まで、誰にも相談しないまま終わった、あの留守番電話に、いまだ怯えていた。
『気をつけろ』
気をつけなきゃ。彼が、俺の気持ちに気づかないように。
『バレてしまうぞ。気をつけろ』
そう、気をつけなきゃ。バレてしまわないように。
367 :
4/4:2006/06/05(月) 21:13:50 ID:oDwf0YYd
「おい、お前、大丈夫か?」
声が、降ってきた。
顔をあげると、至近距離で、彼の顔があった。
出番待ちの楽屋で、いつのまにかうとうとしていたらしい。
俺は、驚きながら、後ずさって、彼から離れた。そして、微妙に視線をはずした。
「大丈夫。ごめん、びっくりした。…つい寝ちゃったよ…」
「いや、いいけど。ステージに出た時に、声が枯れてないようにだけはしなよ。
それでなくても連日声だしてるんだから」
彼が微笑む気配がする。それを感じて、俺は幸せになった。しかし、それは表情に出さない。
他人の目があるし、彼の目もある。
「ありがと。気をつけるよ」
「そう。…気をつけろ」
彼がゆっくりと、低くそう呟いた。
俺は、反射的に彼の顔を見た。
俺と彼の目があった。
「そう、ばれてしまうぞ。気をつけろ」
ゆっくりと呟く彼の声が、俺の頭の中で反響する。
「気をつけろ」
彼の息が俺の耳たぶにかかった時、俺は自分の体が震えていることに気づいた。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ お目汚しスマソ
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
>368
おぉぉぉぉ
モデルが誰か分からんが、かなり好きだ!GJ!
エロイ。GJ!
マナー違反を精神的ショックにすり替えんなよ。
引っ張るな
蒸し返すな
次ドゾー
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ナマモノ里予王求 弾丸ライナー×『2×4』
―――――――――
困ったことになった。
落ち込んでたあいつにハッパを掛けるつもりの一言で、あそこまでやるとは。
「あなたのお陰ですよ!」
お立ち台の上で、目を潤ませながら謝り倒していたヤツと同一人物とは思えない。
目をキラキラと輝かせ、後ろから俺に抱きついてきた。
「やめろバカ」
「バカとは何ですかー。昨日だって『サヨナラ打ったら、キスしてやる』って言うから頑張ったのに、『明日、HRとサヨナラやったらな』って逃げるし」
「………」
なんて返したらいいんだ。
エラーで凹んでたから、その位言わなきゃ萎縮すると思って言った言葉だったのに。
この辺りが、単細胞だと思う。
「今日こそ、約束は守ってもらいますよ」
あぁもう。
これは腹を括るしかない。
俺がいくら言ったって打てない時は打てないんだし。
ただ、俺の想像をはるかに上回る活躍をしたこいつが羨ましいだけ。
「………ごちそうさまです」
「もうお前のこと励ますのはやめるわ」
「何でですかー?優勝したら、もっと期待しちゃいますけど?」
調子に乗るヤツに、俺は思いきり平手をくらわせた。
―――――――
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
チ仏名だけでもおながい。全然ワカラヌ
空気戻すためだけに無理して書かないでいいよ
そんな感じ
>374
あの活躍の裏にそんなことがw
萌えました。
>376
中心のリーグで今日現在トップのチームです。
>377
同意
あまりにやっつけ仕事なのが分かると萎えるよ
502 名前:風と木の名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/06(火) 00:31:15 ID:vBYM2exX
棚377
人間性を疑う
506 名前:風と木の名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/06(火) 00:47:42 ID:3d35YMB3
棚377
冷静で鋭いアテクシカコイイ臭がする。
507 名前:風と木の名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/06(火) 00:50:25 ID:2Jmgm9wp
棚
これはひどい
508 名前:風と木の名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/06(火) 01:04:26 ID:r0ieXlZG
棚
もう笑うしかないwww
509 名前:風と木の名無しさん[sage] 投稿日:2006/06/06(火) 01:15:32 ID:Uoidf5X5
棚377お前が消えればいいのに。
絡みスレって乗り込み禁止じゃなかったっけ。
お引き取り下さい。
引き取るべきはお前だ
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ピロ里予王求「ある投手の独り言」
俺はつい最近、このチームにトレードで入団した。
左腕のリリーフ不足というので、俺に白羽の矢が立ったのだろう。
元居たチームには、捕手と内野手が引っ張られていった。
以前のチームは、伝統あり人気あり、当然金もあるチームで、
雇われ身分には非常に好都合なトコだったんだが、まぁ、なんだ。
その伝統ゆえに、勝利が義務で、勝利が使命で、その他もヒゲは駄目だ茶髪は駄目だと
堅苦しい規則が沢山あったわけで、
それを考えると今いるチームのフリーランスな雰囲気(なんせこのチームの看板が
ヒゲと茶髪だ)も悪くないのかな、なんて思ったりもする。
たぶん来期の年俸は下がるだろうが(今から予想できるのが悲しい)、そこまでの不満は無い。
ただ、最近気になることが、ある。
でも、まぁ俺の勘違いかもしれないから、話半分に聞いてくれ。
つい最近だ。
まだこのチームに来て一ヶ月足らずだってこともあったんだろう、寝つきが悪い日が数日か続いた。
ふと、夜中の3時頃、目が冷めちまう。
俺は今月に入って数度目のホテル内徘徊を決行した。
がちゃっとドアを開くと、すぅっと心なしか冷えた空気を感じる。
ぺたぺたとスリッパのやる気のない音を鳴らして、とりあえずロビーまで。
307・・・308・・・部屋番号を見ても誰の部屋かなんてわからないが、
この辺はウチのやつらが占めているはずだった。
311・・・312・・・。
俺の目が暗がりで、313号室を通り過ぎようとしたとき、ふいに313号室が、開いた。
「・・・っ」
驚いて、俺は息を飲んだ。
俺以外にも寝付けなくて徘徊を決行するやつがいたのか。
「おー・・・」
まぁ一人よか二人で散歩したほうがほんの僅かでも楽しいかもしれんと声をかけようとしたが、
途中でやめた。
何故なら彼が、マトモな話し相手になるとは思えなかったからだ。
誤解の無いように言っておくと、そいつのアタマが破滅的に悪いとか、
例えば俺がそいつをスキとかキライとか、そういう問題ではなく、
単に彼の第一言語が日本語ではなかったからだ。
「ハァイ」
ちょっと掠れた声で、彼は俺に微笑みかけた。
オーストアリア人と日本人のハーフだという彼は相当に男前で、
どこぞの映画俳優に似てるなとぼんやりと思った。
「ども」
俺も会釈をする。
彼は一度だけ俺に微笑むと、もう俺のことなんか忘れたみたいに、
ぺたぺたとどこかへ歩いていき、暗がりに消えた。
「・・・日本の枕、合わないのかな・・・?」
どこか赤みを帯びたぼうっとした彼の表情を思い出し、俺はすぐさまそのことを忘れた。
だって俺の急務はロビーまで行ってブラブラすることだったから。
・・・・と、ここまでは、俺にとってなんら変哲の無い日常だった。誰だって、寝れなきゃ散歩して
みたり、筋トレしてみたりするだろ?
ただ、問題だったのは、313号室が彼の部屋じゃなかったってことだ。
このチームのベテラン捕手が、あくる日の朝でっかいアクビをしながら313と
ナンバリングされたキーをプラプラさせて、がしゃこんと自動販売機でお茶を買っているのを見たとき、
俺の頭には妙な絵がよぎったのだ。
そうだ、そうなのだ。そういえば、ブルペンでも試合でも、彼らは常に一緒なのだ。
捕手は彼のえらく曲がるカーブをベタ褒めし、褒められた彼は非常に興奮したように
何やら喋っている。通訳サンによると、彼はこのベテラン捕手にベタ惚れらしいのだ。
・・・おそらくそこに、他意は無い。無いはずだ。無いんだと思わせてくれ!!
でもさ、ちょっと引っ付きすぎじゃねぇ?
コーチ陣、どーしてそんなに暖かい微笑みで彼らを見やってるんだよ?
俺だけなのか?俺だけがこんなに気になってるのか?
だって隣で投げてる小柄な投手だって、それがまるで自然であるかのような態度なんだ。
やっぱり俺の目と頭がおかしいんだろうか!?
誰かにこの疑問をぶつけてみたいんだが、どうにも気まずくて誰にも言えないでいるのが現状だ。
微笑まれて、「当然」って公認されてたら、俺どうしよう。
「お前目ぇおかしいよ」って言われたら、俺、自分が正常だって思えなくなりそう。
・・・とにかく、俺が今いるチームは、こんなにも自由で、自由で・・・。
・・・・・・・自分を見失いそうです。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
花頭巾タソ…
新天地でもまあ色々がんがれ。
※※スカです。エロとお漏らしシーンあります。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「今週末は休日出勤なんです」
だからそっちへ行けません、と続くであろう恋人の決定的な言葉を聞き無くなかった俺は、先手を打った。
「俺も土曜日は飲みの約束があるから、気にするな」
「誰とですか?」
「隣の課の、同期のやつと」
ずっと誘われていたのだが、部下の椙山(すぎやま)と付き合いだしてから、職場の飲みの約束はずっと断っていた。
別に、椙山は何も言いやしない。同棲していた訳じゃないが何となく週末は俺の部屋で、ずっと二人で過ごしてきた。
椙山が、転勤になるまで。
別れようかという話は出なかった。
同性しかも同じ職場の部下にしつこく誘われるがまま、なんとなく肉体関係を続けてきて。
それが、距離が離れて機会が減っただけ。
「宮谷さん、飲み過ぎないでくださいよ」
心配そうに話す声を目を閉じて聞く。いつものあいつの顔が脳裏に浮かぶ。
「大丈夫だ。遅いから、切るぞ」
椙山の声を聞いた後は、何故かぐっすり眠れる。
気の置けない同期と、しこたま酒を飲んで帰ってみたら、部屋の前に椙山が座り込んでいた。
夢かな?と首を傾ぐと、ぐらりと体のバランスを崩した俺を椙山が支える。
「飲み過ぎですって」
抱き寄せられ、なじんだ体の感触が愛おしい。
「お前、何やってるんだよ。明日しか休みがないのに無理して帰ってくるやつがあるかよ」
臭いを嗅ぎたくてしっかりと抱きつくと、珍しく椙山が体を引き離しながら俺のスーツを探って鍵を取り出す。
「無理してません。…宮谷さん、そんなにくっつかれると、我慢できません」
真っ赤になって、椙山は慣れた手つきで鍵を開けて俺を部屋まで運ぶ。
「お前、我慢したことがあるのか」
くすくす笑いながら、俺は椙山の首に手を回してネクタイを片手で抜き取る。
耳朶が赤くなっているのがおかしくてふっと息を吹きかけると、噛みつくようなキスをしてきた。
「…すごく、会いたかったです」
酒を飲んできたことが悔しい。嗅覚が利かない。椙山の舌に舌を絡ませながら懐かしい味を楽しむ。
「仕事に影響でないうちに、早く帰れよ」
俺の服を脱がせてやりながら、ベッドに座り込む。
セックスに関しては、俺は自分では全く何もしないのだ。相手の服を脱がせてやる気もない。
こんなマグロと寝ていてよく、飽きないものだと思う。
「宮谷さんは、俺に会いたくなかったんですか?」
椙山が自分の服を脱ぎながら、俺を覗き込む。
俺はベッドで丸裸で待っていた。
そんな言葉より早くキスが欲しい。体を重ねて欲しい。抱いて欲しい。
どれも言えない酔っぱらった頭で、ようやく脱ぎ終わった椙山の腕を引いた。
「お前、随分体冷えてるな。馬鹿野郎。風邪引くぞ」
ひんやりとして、心地よい。
「宮谷さん…」
腕を抱え込んで頬ずりしながら肌の感触を楽しんでいると、ようやくやってきた。
爪先から足、腹、胸と体を重ねて、いつもの重さと久しぶりの安心感に包まれて。
ふと見上げると何か言いたげな、欲情に濡れた椙山の強い瞳と目線が合う。
「お帰り、椙山」
会いたかった。すごく、すごく会いたかった。
だけど俺に言えたのは当たり前の、普通の挨拶だけ。
だけど優しい杉山は察してくれたのか、体を開く俺を満たしてくれた。
「お前っ、ヤリ過ぎだ…っ」
腰が重くてだるい。うっとうしく絡みついてくる椙山を蹴りあげる。
こいつはまだ、俺の体の中に突っ込んだままなのだ。
「だって、宮谷さんが、もっと、って」
「言ってねぇよ!」
なんとか這いつくばりながらベッド下のミネラルウォーターのペットボトルを手にする。
喉が渇いて、頭が痛い。
「宮谷さん、あんまり動かないで下さい」
体を引きはがそうとじたばたしていると、余計に椙山のペニスが俺の中で質量を増す。
ぐっと、背後から腰を押しつけられた。
「ちょ、お前、まだやんのかよ」
まだ半分も飲んでいないのに。
元々椙山が用意してくれたペットボトルを口に咥えたまま、俺は体を震わせる。
ガツガツと泣きたくなるほど気持ちい所を擦り上げられて。
「……っ、も、……っ無理っ……」
腰どころか、体中が重くてどうにもならないのに。
俺のたった一カ所、椙山を受け入れている部分は、俺以上にどん欲だった。
「宮谷さんっ……」
いつの間にこんなに馴染んでしまったのだろう。
椙山の体の動きの一つ一つが俺を感じさせる。
一緒に揺れながら、最奥を突かれて俺ははしたない声で啼いて、ペットボトルが床に落ちた。
「宮谷さん、好きです」
ようやく抜いてくれて、俺はシーツを鎧のように身に纏ってその上からすっぽりと抱かれている。
「こんなオヤジに、そんなこと言ったってなぁ」
「30はオヤジじゃないって、いつも言ってるの宮谷さんじゃないですか」
珍しく、椙山が反論してくる。
「そしてお前は前途有望な、うちの会社の出世コース一番乗りだ。早く上の言うとおり、身を固めろよ」
「どうしてこんなときにそんなこと言うんですか」
さっきまであんなに可愛かったのにと聞きたくもない言葉を呟かれ、頭突きをくれてやる。
椙山は俺とは違って、本当に上司に好かれている。仕事も出来る。
だからさっさと俺の部署から引き抜かれて栄転になったのだ。
見た目も良い。人柄も良い。取引先からも見合いの話が来ていると聞く。
何故俺なんかとこうやって付き合っているのか、本当に分からない。
単なる元上司で、確かに新人だった椙山に処世術を叩き込んだが、それはいかに楽して仕事するかが主だった。
「お前もあんまり無理しないで、俺のことは気にするなよ」
この話はそれで終わりにするつもりだった。
昨晩からずっとヤリ疲れて昼過ぎになり、酒の抜けた今俺は尿意を感じてベッドから離れようとする。
「気にしないなんて出来ません」
ぐっと体を押さえ込まれて、これまでになく真剣に椙山が言ってくるのを、嫌な予感に感じる。
この話の流れはまずい。
「ずっと貴方に会いたかった。歯牙にもかけられてないと思っていたから、こうなって嬉しい」
そういって、ぴったりと俺の背中に密着する。
しかも、やつの堅い体の一部が当たっている。
なんてこいつは若いんだろう。昨晩から抜かずの3発に朝だって2発はやったのだ。
「本当に好きなんです。宮谷さん。貴方が欲しい…いつも」
ぐっと体に回された手が俺の下腹部を直撃して、これまでになく俺の尿意は高まる。
身を捩って逃れようとしても、許してくれない。
「なんて素敵なんだ、貴方は……」
熱い吐息で囁かれて、肩を噛まれて身が震える。
違う、そうじゃない、俺がこうなってるのは単なる朝勃ちで。
言い訳する機会も与えられぬままシーツを剥ぎ取られて昼間の日差しに身を曝した。
「……ぁ……はぁ……ぅう……っん、……っ……」
トイレに行きたい。その一言も俺は椙山に言えなかった。怖かった。
いや、そうじゃない。嬉しかったのだ。求めてくる、その情熱が。
「宮谷さん……もっと、俺を欲しがって」
嫌になるほど足を広げて、脈動する熱い肉の固まりを受け入れている。
「っああっ……う、……っひ……」
反り返った先端が俺の腹側を突くたびに、俺の体内は熱が荒れ狂う。
昨晩、しこたま酒を飲んでから10時間以上経っているのに1回もトイレに行っていない。
膀胱はぱんぱんに腫れていて、体が揺すられるたびに灼熱の衝撃が俺を襲う。
我慢できない。出してしまう。それ以上、俺を感じさせないでくれ。
伝えたいのに、言葉に出来ない。
椙山は化け物のように俺を喰らって、追い詰め、俺は意味をなさないうめき声を上げ続ける。
少しでも熱を逃がそうと身を捩ると、逆に様々な角度で一番良いところを責められる。
限界なんて、とっくに超えているのに。
尿意よりも激しい性感に、俺の排泄器官は先端からだらだらと先走りの液を垂れす
こんなにも俺ははしたなかったのだろうか。
否、飢えていたのだ。いつもは会えない恋人に。
「椙谷……」
思いこめて、口付ける。むせ返るような恋人の汗の臭いに俺は完全にトリップして。
気がつかないうちに熱を解放していつの間にか意識を失っていた。
目が覚めると薄暗く、夕方だった。
一時も待てない激しい尿意に急き立てられるように、俺は身じろぐ。
起き上がろうとして、ぎょっとする。
立てない。
後ろで寝ている椙山の姿が目に入り、こいつのせいだ、こいつのせいで腰が立たないのだと気づく。
「やばいぞ……」
これ以上、こいつに醜態を晒すわけにはいかない。
だけど、どうしても、泥沼どころか蟻地獄にはまり込んだみたいに俺の体は重くて持ち上がらない。
トイレは直ぐそこなのに。
足掻きながら、なんとか足をベッド下に付ける。
いける。これなら這っていっても5メートル。それまで持ってくれ、俺の膀胱。
励まそうにも恐ろしくて触れない下腹部を持てあましながらなんとか腰を上げる。
「ぐはっ」
ぐらりと体が前に倒れる。
とっさに手を突いて庇うも、床に付いたショックに俺の体は耐えきれるはずもなく。
やばいやばいやばい。歯を食いしばって、親知らずが痛む。
「宮谷さん……?」
椙山が起きてきた。
大好きな声を背中に聞きいて、張りに張り詰めた俺の最後のプライドはどこへ行ったか。
前屈みに、片膝を付いて自重を支えながら、堤防の決壊する映像が脳裏に浮かぶ。
「……宮谷さん?」
衣擦れの気配がする。
来るな。見るな。必死で祈りながら自分のペニスをきつく握り込む。
「どうしたの」
ぽんと肩に置かれた手。
その温かみに最後の緊張の糸が解けて、握り込んだ両手から尿が溢れた。
恋人に肩を抱かれて、俺は甘美なまでの倒錯感に尿を出し尽くした。
開放感は直ぐに過ぎ、どうしようもない羞恥心に子供のようにしゃくり上げる。
射精はまだ良い。二人でセックスした結果だから。
だけど失禁は完全に自分だけの問題で、俺はものすごく落ち込んだ。
いつも、椙山にはうるさいくらいに自己管理を言っているのに。
したくもない接待や飲みたくもない酒は断る、要領の良さをこれまで自慢してきたのに。
なのに。
椙山はいつの間にか熱いタオルで俺の身を清め新しいパジャマを着せて俺を寝かせて。
床の汚れも始末してくれて、俺の腰をマッサージしながら社会人最初の失敗を話し出す。
「三日徹夜して仕事した後に、寝ながら脱糞したことがありましてね」
吃驚して俺は顔を向けた。
「生理現象だから、恥ずかしがることは何もないですよ」
太股から膨ら脛まで凝りを解しながら、俺の髪を撫で頬にキスする。
「起こしてくれて良かったのに。抱いて世話するくらいの権利を下さい」
ようやく落ち着いて、言葉が身にしみる。
何か、返さなくては。
椙山の求めているものが体だけではないことを、俺は知っている。
そしてそれからずっと逃げている。俺はまだ好きの一言も言っていない。
時間だけが過ぎていく。
「見送ってやれないけど、時間だろう。帰れ」
椙山は酷く悲しい顔をして支度を始める。
彼は又来るだろうか。これが最後になるのだろうか。
「宮谷さん、」
スーツを着たいつもの椙山が、俺の手を握る。
その手をずっと見ていたが、また視界が滲んできた。悲しいことは何もないのに。
「今度は、俺が行くから、またな」
精一杯の意思表示。
「……待ってます」
椙山も泣き出しそうな俺と同じような顔をしていた。なんだかおかしくなって二人で笑った。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
>389
好みなのキタコレ。GJGJ!!
>363
イイヨイイヨー!萌えた!
>383
GJ!最萌えカプです。
>383
元ネタわからんが萌えた
>383
カプも好きだが花頭巾の語りにえらく萌えた
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| >363と同じ理由で、こっちに投下させてもらいます。
|
\ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | |> PLAY.
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┌┬―( ・∀・ )┐ ピッ | |
| |,, ( つ◇ | |
| ||―(_ ┐┐―|| |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
| || (__)_), || | °° ∞ ≡ ≡ |
403 :
1/4:2006/06/06(火) 21:37:07 ID:/0xjwUyb
吸血鬼になる夢を見た。
映画の中に出てくるような、不自然に伸びた犬歯…いや牙を持った俺は、
漫画の中に出てくる吸血鬼そのままに、コウモリを従え、人間を襲おうとしていた。
闇に隠れ、人通りのないところを歩く女に、声をかける。
ふりむいたその瞬間、捕える。
そして、やわらかな白い首筋に、噛みつき牙をたてる。
腕の中の美女は、悲鳴をあげる。
「大ちゃん…!?」
なぜか、聞き覚えのある低い声で、名前を呼ばれた。
驚いて顔をあげると、彼の大きな黒い目が、俺を見つめていた。
そこで俺は、目を覚ました。
しばらく、自分の状況が分からず、寝ぼけた頭で、彼の姿をさがす。
―――さっきのことを弁解しなければ。
―――俺は、お前だって知らずに噛み付いたんだよ。
もちろん彼が、傍になんているはずもない。
朝の生理現象で、元気に勃ちあがった下半身が布団にこすれて、ようやく自分の
状況を把握する。
…どういう夢を見たんだ、俺は。幼馴染で仕事仲間に噛み付く夢なんて。
しかし舌の上には、彼の血がまだ残っているかのように、甘い痺れがあった。
全部を、昨日飲んだ強い酒のせいにして、トイレに入り、全て出す。
しかし現実感を伴った夢は、彼の大きな目を俺の脳に刻み付けたままだった。
妙な罪悪感を持つ羽目になってしまった。俺は嘆息した。
404 :
2/4:2006/06/06(火) 21:37:47 ID:/0xjwUyb
そして、そんな日に限って、彼と二人きりで仕事をしなければならないのだ。
俺はいつもどおりに接した。つもりだった。しかし、彼は俺に何か異常を感じとったらしい。
そっと俺から距離を置いて、あまり目線をあわさないようにしてきた。
これが、長年つきあってきた成果なのかもしれない。触らぬ俺にたたりがないことを、
彼は一番良く理解してくれている。
いつもなら、ありがたく彼の気遣いにあぐらをかいて、こちらから話かけることもせず、
気持ちが落ち着くのを待つはずだったが、今日の俺は、何か自分の夢がのぞかれたようで、
居心地が悪くなり、いたたまれなかった。執拗に自分から彼に話しかけた。くだらない話題を
いくつも面白おかしく喋った。
雑誌のインタビューにも、いつもならあたりさわりのない答えを喋るはずなのに、
いらないリップサービスをして、大いに彼とインタビュアーを困惑させた。
「大ちゃん、どうしたの? 何かおかしいけど、大丈夫?」
一つ目のインタビューを終えた後、彼は心配そうに俺に聞きにきた。
俺は首をふり、「いや、ちょっと疲れてんのかも」とごまかす。
すると彼は、「そう言うかもと思って、これ持ってきたよ。飲みなよ」と、栄養ドリンクを俺に手渡した。
上目遣いで、俺の表情を伺う彼に、思わず何かの感情がわきあがる。
その感情の正体がつかめず、俺はあいまいに礼の言葉を口にして、彼から離れた。
なぜだか彼の目が、夢の中でみた彼の目と重なってしまい、まともに見ることができなかったのだ。
405 :
3/4:2006/06/06(火) 21:38:24 ID:/0xjwUyb
二つ目のインタビューは、俺はほとんど喋らなかった。彼にほとんど任せた。
彼はそんな俺を気遣ったのか、優等生めいた言葉を並べて、質問全てに答えている。
しばらくして、インタビュアーが、実は元占い師をやっていた、という話になった。
恥ずかしそうに彼女は、「勉強すれば誰でもできるんですよ」と言いながら、その話をしてくれた。
俺は興味がなかったが、彼は興味があるようで、その話をふくらませている。
これでは、どちらがインタビューしているのか分からないな、と思った時、インタビュアーが俺の方を見た。
「今でも私、夢占いは得意なんですよ。よろしければ、いかがですか?」
どんな特技だ、とか、何てことを言いやがる、とか、口にしてはいけない言葉が、頭の中でいくつか
飛び交った。その間に、彼が「やってもらいなよ。俺は、夢見ねぇから」と言ったため、俺がやる羽目に
なった。俺は、今朝の夢を口にするしかなかった。
「…今日見た夢は、その…吸血鬼になって、知り合いを噛む夢でした…けど」
「吸血鬼?」
彼女は、何がおかしいのか、コロコロと笑った。
「吸血鬼の夢って、何か意味あるんですか?」と、俺は一応聞く。しかし、彼女のニヤニヤした顔が不快で、
正直、答えを聞く気はしていなかった。彼女はしたり顔でうなずく。
「意味、ありますよ。自分が吸血鬼で、誰か女の子の血を吸ったんですよね?」
406 :
4/4:2006/06/06(火) 21:39:02 ID:/0xjwUyb
「そうです」
女の子ではなく男で、しかも目の前のこいつですよ、という言葉は、胸の中だけで呟いた。
「吸血鬼の夢は、性欲の夢ですよ。もし噛んだ女の子がお知りあいなら、その人に欲情しているってことです」
彼女はそれだけ言って、ころころと笑った。彼も笑っている。俺は笑えなかった。
男が男に欲情って…どういうことだ。
「そうか、大ちゃんは、誰かとエッチしたがってんだ」
彼がそう言って笑った。
俺は、思わずキツい言葉を口にしてしまった。
「占いなんてあてになりませんよ。そんないいかげんな」
そう言いながら、朝から心の奥にざわめいていた感情が、正体を知ったことで、さらに大きくざわめくように
なったことを、感じた。インチキなんかじゃないよ、と、彼がフォローしているが、俺はそれどころじゃない。
そうか。この気持ちの正体は…。
俺は、しどろもどろでフォローする彼を、ながめた。
ふと、夢の中の俺が噛み付いた、白くて細い首筋に目がいく。
そこに、小さなアザがあるのを見つけた。二つ並んで虫に刺されたかのようなアザ。
それは、夢が覚める寸前で俺が噛み付いた場所と同じ場所で。
彼が俺をふりかえり、目があうと、あの時にとらえたのと同じ、大きな目が、笑わずに俺を見ていた。
「そういえば、吸血鬼の夢は、『誰かに自分を想いながら自慰された時に見る』っていう説もあるんですよ」
インタビュアーの声を遠雷のように聴きながら、俺は朝に感じた彼の血の味を思い出していた。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 元ネタはメル欄ですが、ほぼ別人です。
| 色々とオメ汚しスマソ
\ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | □ STOP.
∧_∧ | |
┌┬―( ・∀・ )┐ ピッ | |
| |,, ( つ◇ | |
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| || (__)_), || | °° ∞ ≡ ≡ |
>>400 語り= オ カ ジ m
ベテラソホツュ= ナ カ ジ m
非ニホソジソ= m イ ケ ル
糾弾=刃霧
>383
すごく、萌えました。
元ネタも調べました。dクス!
411 :
1/2:2006/06/07(水) 09:10:48 ID:t7cEtb+E
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
モトネタハ 鬱アヌメKIBA カーン視点カンロベ(サカージャナイヨ!)
―――――――――
怪盗ノーフェイスに顔に落書きされた。怒りを通り越して呆れてしまう。
わざわざ危険を冒して人の家に忍び込み、金目のものも取らずにくだらない嫌がらせをして去る。
そんな無意味なことをしそうな人間はおのずと限られてくるではないか。
私は洗面台の前で頭を抱えた。落書きが落ちないせいもあるが、いやでも容疑者が絞られてしまったからだ。
「ロべス・・・・なぜお前はそんなに馬鹿なんだ・・・・」
家人や使用人達に気付かれぬよう、湯を沸かしながら独りごちた。
実は、私は彼と過ちを犯したことがある。
一度きりだ。魔がさしたというか、ひっかけられたというか、そんな所だ。
ある日、会合が散会し、宴会が盛り上がり始めたのを期に先に帰ろうと席をたった。
無礼講じみた騒ぎは苦手だった。
人気のない中庭を通りかかると、噴水の影に人がいる。気分でも悪いのか、蹲っているようだ。
小さく舌打ちして傍による、面倒だが立場上放って行くわけにもいかない。
そんな殊勝な決意は直ぐに後悔に変わった。長い金髪が噴水に浸っているのも構わず排水溝に吐いていたのは、
自業自得と思われる人気者だったからだ。
さっと踵を返し立ち去ろうとした私の裾がすごい力で引っ張られた。
ぎょっとして振り返ると蒼白な顔に満面の笑み、だが目が笑っていない。
「部屋まで送って・・・・」それだけ言うと死んだように目を閉じた。それでも裾を掴んだ手は緩まない。
己の間の悪さに内心毒づきながら、ごてごて着込んだ大荷物を引きずり最寄の客室に向かうしかなかった。
今思うと、彼のあの様子は単なる酒の飲みすぎではなかったのかもしれない。
だがその時そこまで頭が回るはずもなく、ただ己の不運を呪うばかりだった。
412 :
2/2:2006/06/07(水) 09:11:34 ID:t7cEtb+E
苦しい苦しいとごねられて靴を脱がせ服を緩め、口を漱がせて寝かせてやる。
それから何故そんなことになったのか。
嗽のときに濡れた唇が誘っているとしか思えなかったことは確かだ。
口付けてしまってから、はっとし突き放そうとしたのを無言で抱きしめられ、あとは勢いだった。
当然、男と性行為の経験はないが、どうせ相手は慣れているのだろうからと気遣うこともしなかった。
体調が悪かったせいかあまり反応もなくつまらないものだったが、美女で名高かった母親に良く似た容姿は
十分興奮させてくれた。若くに亡くなったが、テンプラーの男で彼女に憧れなかったものはいなかっただろう。
幼い私もそのひとりだったものだ。
さて、国家を指導する名門の家に生まれ多くのことを学び、若くして相応の地位についた私と、
目立ちたいとか女性の人気を得たいとかの理由で少々腕を磨いただけの遊び人とでは話の合うはずが無い。
止むを得ない会合で眼にするくらいだったが、婦人に大げさな賛美をささげて媚び、
男連中にはくだらない冗談をいってふざけ、眉をひそめずにはいられない振る舞いばかりが目に付く。
そんな相手と成り行きとはいえ、関係をもってしまったとは人生の汚点だ。
数日後、介抱の礼だと尋ねてきた彼に言った。
「お前にとってはよくあることでも、私にとっては恥だ。誰も真に受けはしないだろうが、他言は無用にしてくれ。」
私の出したかなりの金額の金をそのままに無表情に立ち去り、それきりだった。
彼は相変わらず馬鹿馬鹿しい宴会にうつつを抜かし、私は妙な噂にならずに済んで安堵した。
それからもしばしば彼とは顔を合わせたが、あからさまに出すわけではなくとも私への態度は刺々しく生意気だ。
まあ、不敬なのは私に対してだけではなく、賢人会の誰もが思っていることだろうが。
しかし、顔に落書きなど痴話げんかの腹いせ地味たことをされて、犯人の心当たりがあるとはどうしたものか。
万が一にも私とロベスに個人的な問題があったと思われては非常に困る。
湯でも取れない染料に苛立ちながら私は、うっかりやってしまったことを心底後悔していた。
―――――――――
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
>>411 エロ描写ないのになんかエロイよ(*´Д`)ハァハァ
姐さんいいものまりがd
いまさら>364姐さんGJ!
元ネタはわからんかったけどおいしく頂きますた
>>411-412 聖域が!!
私の聖域のかわいこ美人のお貴族様があァァァ!!
gj!
新たな扉が開けました。dです。
>407
THX!THX!THX!!今更だが読んだ。萌えた。
まさかこんなところで幼馴染のSSが読めるとは思わんかった。GJ
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
某チームノ ヒショト マスコトー カイワダケ
―――――――――
「ひしょさん、ひしょさん」
こんな忙しい時にこんな呼び方で呼び止めるのはあいつだけだ、まったく空気を読まないんだから。
「どうしたんだい?」
「ぼくも、かんとくみたいにブログするの。ひしょさんのほうがさきだけど……」
そういえばこいつにもブログさせるってプロジェクトで聞いたが、まさか本気でこいつが書くとは。
「そうなんだ、頑張れよ」
無難に励まして立ち去ろうとしたが、スーツを引っ張ってくる。
「ねえねえ、ひしょさんもかんとくのこと、すき?」
人なつっこく、こどもっぽいこいつの事だ。おそらく“好き”という言葉に深い意味はないだろう。
しかし、人をからかうのが好きな他の連中に言いふらされても良いように答えなければと思った。
「そうだね、優しいし尊敬しているよ」
「……そんけい?」
「そうか、わからないか……」
こいつにわかる言い方はないかと言葉を探していたが、先に口を開いたのは向こうだった。
「あのね、ぼく……かんとくといるとドキドキするの。でも、かんとくがいないとさみしいし、もっといっしょにいたいっておもうんだ。これってそんけい?」
「ど、どうかな? 違うと思うよ」
動揺を抑えられないまま答えたが、さらに動揺するような言葉が投げかけられた。
「ちがうの? でも、ひしょさんはかんとくといるとき、ぼくとおなじかんじがするよ?」
「僕が?」
「うん、かんとくがいないとさみしそう」
「そ、そうかなあ?」
何を言い出すんだという焦りで、何も言えない。いや、それとも図星だからなのか?
「そうか!ひしょさんは、そんけいっていうのしてるから、かんとくがいないとさみしいんだね」
「そうだね、きっとそうだよ」
ようやく納得してくれたようなので、ほっとして立ち去ろうとしたが、思い出したようにカメラを取り出してきた。
「あ、そうだ! ひしょさん、しゃしんとってくれる?」
「ああ、いいよ」
ブログに使う写真だったのだろう、何気なく本社の製品のPRまでしているあたり本当にこいつは天然なんだろうか?と疑うのだが…
それ以上に、あいつが監督の事を好きだったなんて!そして、僕の気持ちがあいつに見抜かれていたなんて……
でも、あいつだったから見抜けたんだろうなあ。純粋で、こどものようなあいつだから。
それから同じ人が好きなもの同士、何となく仲良くなってしまったのだが、きっかけは誰にも言えない。
―――――――――
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
>>417-418 他九段ファンだけどほのぼのしたヨー(*´∀`)
感得秘書って今までなかったから新鮮なポジションだわー
ところでブログ見てきたけどなにあの凶悪にかわいい生き物は!!
区鳥の真ーくん日記や公の微々コラムに負けずに更新がんがって!
>>417 あの子か!
他チ仏ファソだけど悶絶したよ!GJ
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ゲーム戦国BASARA 人外パラレルだモナ
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 漁師な鬼×狐なオクラ。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 801でもなんでもネーヨ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
もとちかは慣れない山の中で、すっかり道に迷っておりました。
「まいったなぁ、今夜は野宿か?」
まいった、と言うわりに、その声色も顔つきもえらく暢気です。
腰から上は半ば裸のような無防備な格好だし、
左の目は顔を大きく覆うような眼帯に閉ざされてはいましたが、
腕自慢のもとちかは、山賊が来ようが狼が出ようが、槍の一振りで蹴散らす自信がありました。
月明かりを頼りに、鬱蒼と茂った松林の中でもひときわ高く聳える一本の下まで登ると
そこは山頂であるらしく、周囲の様子が一望できました。
龍が体を休めているような姿で連なる峰峰の、ここは中ほどにある山でした。
月に照らされて荘厳に静まり返る山の姿にしばし見蕩れていたもとちかは、
ふうと息を吐くと、肩に担いでいた槍と、その先に括り付けてあった荷物を下ろしました。
荷物の中から真っ先に大瓢を取り上げ、耳元で揺らし、
まだ中身がたっぷりあるのを音で確かめると、もとちかはにんまりと笑いました。
大瓢片手にどっかと腰を下ろし、火も焚かぬうちに、歯で瓢の栓を抜くとすぐさまぐびぐびやります。
「はぁ、人心地がついたぜぇ」
満足そうに手の甲で口を拭い、もとちかは月を見上げました。
琥珀のようにとろりと濃い色の満月は、妖しく美しい光を降り注ぎ、
もとちかの白銀の髪を照らしております。
もとちかが片手の瓢は放さぬまま、もう片方の手で荷物を探り、
掴み出したのは熨斗の掛かった鰹の生ぶしでした。
漁を司る神様のお社にこの生ぶしを奉る為に、もとちかは遙々海を渡ってやって来たのです。
しかしお供え物にと持って来た生ぶしは一山もあるので、一つや二ついいだろうと、
これっぽっちも悪びれずにもとちかは思っています。
無造作にこれまた歯で熨斗を破り取ると、そこいらへペっと吐き出して、
もとちかは生ぶしにかぶり付きました。子供のように嬉しそうです。
ひとくちめをゆっくり噛み締めて、ごくりと飲み下すと、再び瓢に口を着けました。
と、何か異な音が聞こえた気がして、もとちかは辺りを見回し、耳を澄ましました。
かすかな風に揺れる笹の音、木の枝の音、それとは異なる何か儚げな物音が確かに聞こえます。
瓢をその場に置くと、もとちかは物音のする方へ歩き出しました。
好奇心、が最大の理由ですが、その音―――もとちかは泣き声であると勝手に確信しておりますが、
それが、何か助けを求めているように思えてならなかったからです。
こんな夜更けにこんな山の奥深くで、助けを求めるのは常の人であるはずがありませんが、
そのものが何んであろうと、助けを求めるものを放っておけない、もとちかはそういう性分でした。
「それ」は間もなく見つかりました。
もとちかの膝ほどの高さの隈笹の根元で、月の光を受けて白っぽく光るものが盛んに蠢いて、
きゅうきゅうとか弱く鳴いております。
笹を掻き分けて覗き込めば、それは美しい毛並みの仔狐でした。
後足に食い込んだ罠をなんとか外そうと、前足と口とを使ってもがくのですが、
爪や歯で己が毛皮をますます傷つけるばかりで、もうどれほどの間そうしていたものか
せっかくの毛並みもあちこち血で汚れ、疲れきっている様子です。
「おいおい、無茶すんなって!お前の手じゃ無理だこりゃ…」
もとちかはすぐさま跪き、仔狐の足に食い込む縄を器用に解いてやりました。
気がつけば手に生ぶしを持ったまま来ていたので、それは足元へ置きます。
「うわ、けっこうひでぇ傷んなってるな…」
仔狐の足の具合を見て、我がことのように痛そうに眉を顰めたもとちかの手から
仔狐はするりと逃げていってしまいました。
「あッ、おい!待てよ、その足じゃあ…」
もとちかは追いかけようとしましたが、笹に足元を邪魔されるし、
仔狐の走りぶりは怪我をしていると思えぬほど軽やかだしで、すぐに見失ってしまいました。
「…ま、達者でな」
もとちかはすぐに諦め、仔狐の去った方へ向かってひと声掛けると、もと来た道を戻ろうとしました。
その時、足元に置いた生ぶしが爪先に当たりました。
もとちかは思いついて、生ぶしを罠の中へ括り付けました。
「こいつを仕掛けた野郎にとっちゃメシのタネだった筈のモンを、逃がしちまったんだもんな…」
もとちかは今度こそ、もと来た道を戻りました。
槍と大瓢を置いた松の根方まで戻って来ると、男が一人立っていてもとちかを迎えました。
今宵の月と同じ琥珀色の髪を肩の辺りで切り乱し、
松葉で染め上げたような深い緑色の着物を着ております。
額は白く、鼻は高く、顎は細く、唇は紅く、瞳は切れ長。ぞっとするほど美しい男でした。
それがただの人でないことを、もとちかはすぐに悟りましたが、恐ろしいとは思いませんでした。
「我が眷属が世話を掛けた」
男は唇を動かさず、もとちかの頭のなかに直に声を響かせました。
その響きは玲瓏としてもとちかの体を痺れさせ、酔わせます。
「帰り道を案内しよう。ここは人の宿には向かぬ山だ」
言葉と同時に、男はすっと右の腕を肩の高さまで上げました。
その指が指し示す方へ、誘われるようにもとちかが顔を向けると、
暗闇だけが広がっていた山肌に一筋、点々と光が灯って、けものみちを照らし出しておりました。
青白く揺れる、熱を持たないその炎の列に、もとちかはしばしの間うっとりと見蕩れました。
「二度と迷うなよ」
みたび男の声がして、もとちかは慌てて振り返ります。
「おっと、道案内は有難ぇが、山を降りる前に一緒に一杯…」
大瓢を持ち上げて誘ったもとちかの前には、しかし既に美しい男の姿はありませんでした。
山裾まで煌々と続く案内の灯だけが、男がまぼろしでなかった証のように揺らめいています。
もとちかは慌しく四方を見回し、やがて不貞腐れた溜息をひとつ、大きくフウと吐き出しました。
「ちぇ、恩人と思うなら、ちったぁ付き合えよ…」
もとちかが、そのまま腰を下ろしてまた酒を飲み始めようとした時、
目の前の灯の列がボっと一瞬、大きく燃え上がりました。
もとちかは目を丸くしてその様を見つめました。
「…なんだ?とっとと帰れって催促か?」
もとちかがからかう口調で言うと、炎はそうだと頷くように、またボっと燃え上がります。
「せっかちだなぁオイ」
もとちかが笑うと、炎は苛立ったように揺れて乱れました。
「お前が出てきて、俺に一杯付き合ってくれたら、山を降りてやってもいいぜ」
不敵な笑顔でもとちかが瓢に口をつけて見せると、青い炎がひとつ、もとちかの元へ飛んで来ました。
もとちかが目で追ううちに、炎はもとちかの手の中の瓢へ灯り、みるみる瓢を炎で包み込みました。
「お、おい!ちょっと待ってくれ!わかったわかった、降りるよ、山を降りりゃいいんだろ!」
もとちかがあたふたと立ち上がると、炎は何もなかったように消えました。
瓢にももとちかの手にも、炎に焼かれた痕など微塵も残っていません。
ちぇ、ともう一度呟いて、元親は纏めた荷物を肩に担いで、青い炎に導かれるままに山を降りたのでした。
麓へ辿り付くと、用済みとばかりに消えていこうとする炎に向かって、もとちかは大きな声で呼び掛けました。
「おい、俺ァまた来るぜ、あのチビの怪我の塩梅も気になるし、お前にもまた会いてぇしな!」
炎は最後にすうっと細く長く伸びてから、音もなく消えました。
あの美しい男が、不機嫌そうに目を細めた表情が目に浮かぶようです。
ほんの幾度かの瞬きの間しか向き合わなかった顔ですが、
もとちかの瞼の裏には、あの冴え冴えと美しい顔がはっきりと灼き付いておりました。
「今度こそ、一杯付き合ってもらうぜ?」
既に真っ黒い影に戻った山に向かって、にやりとひとつ微笑むと、
もとちかは月光に銀の髪を煌かせて悠然と歩き出しました。
____________
| __________ |
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ コレデオワリカヨ!!
| | | | ピッ (・∀・ )
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>>426 GJ! BASARAのパロってみたことなかったから萌えたよ(*´Д`)
こういう二人もありなのねー
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| 映画第二段に先駆けて、某海賊映画モノ
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| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 伏せ切れているだろうか…
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| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ガクブルだな
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
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429 :
1/7:2006/06/09(金) 04:04:11 ID:LuQMJIC9
俺が彼を見ると
彼も俺を見る
どうか かみさま。
―――どうか。
満月の光の中、本来の主を得た黒真珠が、新たな乗組員二人を乗せて進む。
一応客室に当たるらしい部屋の窓からは、ゆるやかな女の歌声が聞こえて
くる。
慣れない繕い物に神経を尖らせていた彼女は、ふと「綺麗な歌だ」と
しみじみ漏らす男の存在に気付いてその美しいおもてを上げた。
「お前さん、前から思ってたんだが、なかなか歌が上手いな」
「―――歌? ・・・って・・・」
黒真珠の船内、ようやく自分の空間になりつつある元は客間であった
らしい一室。気付けば、この船の持ち主であり同時に船長でもある男が、
いつの間にかのっそりと窓に腰掛けているではないか。彼女がこの部屋に
入って繕い物を始めてから随分と経っているのだが、いつものことながら
一体どこから入り込んだのか。
「あ〜の〜ね〜え! 貴方、プライベート・スペースって言葉を知って
いて? 歌がどうとか言う前に、挨拶の仕方を覚えるべきじゃないかしら!」
「まあまあそう怒るな、血圧上げると綺麗な肌に毒だぜ、白鳥さん」
「私はもう白鳥じゃなくってよ!!」
「それは失礼。新婚さんはもっと幸せそうにしてるもんだぜ、お嬢ちゃん」
「〜〜〜〜〜〜っ!」
どこまでも食えない、自らの寝室に不法侵入した男に、彼女は憤懣やるかた
ない様子でどっかりと椅子に座り直した。
430 :
2/7:2006/06/09(金) 04:06:15 ID:LuQMJIC9
「そもそも貴方、どうして私の部屋に何度も何度も何度も『遊びに』来るわけ?
お陰で彼が毎回心配してるんですからね! 私の身にもなってよね!!」
「そいつぁ悪かった、でも愛ゆえだ、許せ、お嬢ちゃん」
「茶化すのはよして頂戴!!」
「茶化してなんか。俺は真面目だぜ、マダーム?」
そう言って下手くそな(本当に下手くそな)ウィンクをよこしてくる相手に一気に
毒気を抜かれ、彼女は溜息をひとつ吐いて繕い物を再開することにした。元々
何処まで本気で何処まで冗談か分からないこの男に、真面目に取り合う方が間違って
いるのだと言うことは、先の一連の事件で行動を共にするうちに嫌という程思い知ら
されている。そしてそんな中で彼女が得た結論はひとつ。すなわち、『基本的にこの
男の言動は無視して自分のすべきことをやる』ということである。
「―――で? 歌がどうしたんですって? 」
手を動かしつつ、それでも律儀に聞き返してくる彼女の様子に、男はほんの少し
驚いたような顔になり、次いで至極満足そうに話を再開した。自分や夫のこういう
真面目なところがこの男にちょっかいをかけられる所以なのだと言うことには、
この生真面目夫婦は未だ気が付いていないらしい。
「いや、あいつも・・・奴の親父もな、歌が上手くてな。お嬢ちゃん、お前よく
歌を歌ってるだろう。さっきだって歌ってたし。あいつもよく歌うやつだった。
俺もよくあいつから、イギリスの古い歌とやらを聴かされたよ。お前さんの歌を
聴いてたら、なんか昔を思い出してなぁ」
「昔を?」
十年以上過去のまだ青年といえる年齢の男の側で、青い海をバックに陽気に歌を歌う
夫と同じ顔の男の姿を思い描いて、彼女は思わずクスリと笑みを零した。顔だけでなく、
性格まで夫に似ているという靴紐の男。きっとさぞかし船長とは、でこぼこコンビ
だったのだろう。
「暢気なものね。海賊って言っても」
「いやぁ、そうでもなかったけどなぁ」
何の気無しに言った言葉に、思いもかけない固い声音が返った、気がした。驚いて
男の方を見れば、彼は相も変わらず、窓枠を椅子代わりに外の海を見つめている。
431 :
3/7:2006/06/09(金) 04:08:05 ID:LuQMJIC9
「暢気じゃなかったと思うぜ、実際はな。あいつはすごくいいやつだったから、
とんでもなく青二才の船長にも付いてきてくれてな。でも、俺はとんでもなく
青二才だったから、影であいつがどれだけ俺のやらかした色んなことのフォロー
して、あいつ自身の首を絞め続けてたかなんて、考えたこともなかった。
………ほんとに、いいやつだったんだぜ。誰から見ても、多分。俺なんかの味方に、
付きさえしなけりゃ」
本当なら、誰かから殺されるような目にあわされる人間では、なかったのに、と。
どうしようもない悲しさと、後悔。滅多に感情を露わにしない船長が垣間見せた
剥き出しの悔恨に、彼女は何を言えば良いのか分からずにただ押し黙った。
彼がこんなにも自分を正直に語ることは珍しい。あの事件以来、久々の満月が
もたらした魔力のせいか。それともこれも、彼なりのフェイクの一環に過ぎないの
だろうか。
「どうしたの? あなたらしくもない。不安―――なの?」
「不安?」
思いもかけない言葉に驚いたのか、どこか遠くを見ていた男の両眼が、まるで
はじめてその存在に気付いたかのように彼女の姿を捕らえる。彼女はそっと椅子から
立ち上がり、男の居る窓の側に立って流れゆく夜の雲を見つめた。
「少なくとも、私は不安だわ。当たり前だけど海賊って、ただの船乗りとは違うもの。
お父様や閣下の力の及ぶところなら良いけれど、大洋に出たら国籍なんて関係なくなる。
そうしたら、本当に私はただの海賊だもの。捕まえられて、殺されるかも知れない。
その可能性は、ゼロではないんでしょう?」
「………まあな。すごいな、お嬢ちゃん。ただの愛に突っ走る考え無しかと思ってたら、
結構ちゃんと自分の立場分かってたんだなあ」
「だから、茶化さないでってば!! だって私は彼の妻だもの! 夫が選んだ道には
従うわ」
僅かに震えた、けれども固い決意に満ちた言葉に、男はほんの少し困ったように押し
黙った。
432 :
4/7:2006/06/09(金) 04:09:34 ID:LuQMJIC9
「ねえ、やっぱり……不安、なの?」
―――彼を失うかもしれないのが? という言葉を、彼女はすんでの所で押し
とどめた。
彼………幼少期に鍛冶屋に引き取られた、住み込み従業員の幼馴染。熱血漢で
正義感に溢れた、まっすぐで純真な、父親は貿易船の乗組員だったと信じていた
青年。
何も知らなければ本当は、海賊とは何の関係もない暮らしをして、幸せな一生を
送れたはずなのに。
けれども彼は、真実を知ってしまった。
本当の彼の父親は、……まごうことなき、海賊で。
そうしてその海賊は。
「貴方の、大切な………」
「―――大丈夫だ。お前さんは、この俺様が、この船にかけて絶対に死なせや
しない」
まるで彼女の思考を遮るかのように、男の至極真面目な声がかかる。また茶化
そうとしているのかと文句を言おうと思って目線を上げれば、思いもかけず真剣な
眼差しとぶつかった。彼女は合わせた目線を思わず逸らし、彼女にしては珍しく
歯切れの悪い口調でぶっきらぼうに返した。
「……それってなんだか、告白みたいに聞こえるけど」
「告白じゃない。これは、誓いだ」
真摯な男の声色に、彼女は逸らした目線をもう一度、黒目がちな船長の両眼に
合わせる。彼の表情からは何の感情も伺えはしなかったが、不思議とこの時の
彼女には、まるで男が泣き出す寸前の子供のように思えたのだ。
「……どうして、私にそんなことを?」
「お前さんは、奴の大事な女房だからな」
「彼の、為なの?」
「ああ、そうとも。奴の為だ。あいつのたった一人の息子である、お前さんを何より
大事にしてる奴の為に、お前さんの事は絶対に死なせやせんさ。勿論……奴のことも」
433 :
5/7:2006/06/09(金) 04:18:46 ID:LuQMJIC9
男のその言葉に、彼女は形の良い瞳を大きく見開いた。男が言う「あいつ」の
ことを、直接的には彼女は知らない。けれども男が彼の事をどれほど大切に思って
いたのかを知るには、それは十分すぎる一言だった。
「ねえ、やっぱり貴方が好きなのって、私じゃなくて……」
勿論それは………私の夫でもなくて。
悼むように言った台詞に、男は一瞬、微笑ったように見えた。
「……俺は、嘘つきだよ。……いつだってな」
でも、お前さんたちのことは好きだよ、と、呟くようなか細いその声すらもさらい
ゆくかのように、海からの風がふわりとカーテンを揺らす。
男は相変わらず、ぎょろついた大きな鳥のような目でこちらを見つめてきていて
……感情の読めないその瞳の奥の、きっと泣きそうになっているのではないかと
思われる表情がどうしても見たくて、彼女は食い入るように男の瞳を見つめ続けた。
と、室内の空気がわずかに動くのを感じる。姿の見えない妻を案じてのことか。
年若い元鍛冶屋が、彼女の在室を確認するかのように入り口から張りのある声を
投げてよこした。
「―――そこにいるの?」
「あ……」
「どうしたんだい?明かりも付けずに。誰かと話を?」
「ええ、あのね、今―――」
怪訝そうな夫の声に立ち上がりつつ男の居たはずの窓際を見ると、もうそこには
海風に揺れるカーテンと、部屋の中を優しく充たそうとする月光だけが留まって
いるのみで。
「……? 誰かいたのかい?」
(―――あいつも、歌が上手くてな)
何故彼が夫の前で姿を隠したのかなんて、分からない。ただ、あの内面を見せない
海賊の、ほんの少し感傷的な一面に、触れた気がして。
「今―――今ね、わたし、歌を聴きたいと……思ったのよ」
「歌……?」
434 :
6/7:2006/06/09(金) 04:20:02 ID:LuQMJIC9
(―――よく、イギリスの古い歌とやらを、聴かされたよ)
それだけで、こんなにも。
「ええ。歌よ。あなたの、歌。古い歌が良いわ。あなたのお父さんが……
歌ってたみたいな」
「父さんが……?」
「ねえ、聴かせて。お願いよ……」
「………」
胸元に頭を寄せ、甘えるように言う妻に、青年は戸惑いながらも窓際に腰掛ける。
一体急にどうしたのかと問う夫に、彼女は酷く優しい、そして彼女らしくもない
少しだけ寂しげな口調で囁いた。
「なんでもないの。……天の邪鬼な雀が、少しだけ昔を……懐かしんでるだけよ」
「雀……?」
分かったような分からないような表情で、それでも愛する妻の言葉に逆らえる
はずもなく、彼は低く静かに、歌い始めた。
幼い頃父から聴かされた―――懐かしい歌を。
“I see the moon,
and the moon sees me;
God bless the moon,
And God bless me……”
「………小娘め」
二人の部屋の窓のすぐ外で、漸く人ひとり入れる程の隙間に身を落ち着けた男は、
腐れたようにそう呟いた。
深々と帽子をかぶっているので、その表情は窺い知る事が出来ない。
耳に優しく響くのは、遠い昔に聴いた、もう届かない友の歌。
ああそうだ、長いこと……もう長いこと自分は、忘れていたのだ。
本当は月はこんなにも………優しくひとを包み込むものなのだと、言うことを。
435 :
7/7:2006/06/09(金) 04:20:44 ID:LuQMJIC9
黒真珠は、ゆるやかに月夜の海原を進む。
彼らが訪れるべき喧噪に巻き込まれるのは、もうほんの少しだけ、先のことかと
思われた。
“ぼくが月をみると、
月もぼくをみる。
かみさま 月をおまもりください
かみさま ぼくをおまもりください”
END
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ マザーグースうろ覚え
| | | | ピッ (・∀・ ) てか801なのかコレは・・・
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
you!うばっちゃえよ!・゚・(ノД`)・゚・。GJ!
>>428 801とはちょっと違うかもしれないけどメインの三人が好きなのでとても良かった(*´Д`*)
GJです!
オオーオオオー
昨日DVD見返して海賊熱フィーバーしてるところだった!
すんばらしいよ姐さん最高だヨーホ-!!
ちょっとビクビク感じイヤ怯えつつw慰留ネタです
外科医←研修医?研修医が落ちてから麻酔医が落ちる前くらい
ビデオトイウヨリ日記ダナ
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
最近の僕は研修医として、とても充実した日々を送っている。
以前とは比べものにならないくらい忙しいけれど、
多くの患者さんを救う手助けができるのはたまらなく嬉しい。
もう夜の病室で意識のない患者さんに話しかける事もなくなった。
代わりに当直の日はERでバタバタしている。浅田先生と一緒に。
浅田先生の手術はもちろん素晴らしくて、勉強になる事ばかりだ。
でもそれだけじゃない。
浅田先生の、患者さんを救おうとする努力の姿勢から学ぶ事の方が多いと思う。
それによほどの事がない限り疲れたそぶりを見せない体力とか、
パニックにならない冷静さとか、ずっとそばにいて見習いたいと思っている。
しかも背は高いし、男でもドキドキするくらいかっこいいし…とこれは関係ないか。
今夜も交通事故で運ばれてきた患者さんを無事に処置して、
浅田先生は大きな手から手術用の手袋を剥がし取っている。
その視線の先に気付いて、僕はまた胸にもやもやしたモノを感じてしまった。
麻酔医の粗世先生だ。いつものようにアイマスクをして長椅子にだらしなく寝そべっている。
どうして浅田先生はアイツを気にするんだろう。
確かに腕はいいのかもしれないけど、あの態度と良くない噂。
あんなのが浅田先生に近づくなんて…
そのあと僕は一人で先に院内のコンビニへ寄ってから医局に戻った。
アイツに話しかける浅田先生を見てるのも嫌だったから。
二人分の夜食を買うだけでたいして時間はかからなかったと思ったのに、
医局のソファには浅田先生がもう横になっていた。
さすがに疲れているのか、眠っているようだ。
ERを手伝いながらチームの事も考えなきゃいけないし、
きっと精神的にも大変なんだろうな。
僕は近くのブランケットを先生に着せ掛けて、思わず手を止めた。
薄明かりに浮かぶ精悍な顔。だけど強い視線の瞳も今は閉じられていて少し柔らかな印象だ。
そしてとても無防備。
それが僕に許されているのがなぜか嬉しくて、胸が騒いで、変だと思う間もなく
僕はその唇に吸い寄せられていた。
密やかな口づけが僕に気付かせたのは、恋というこの気持ちの名前と
こういうとき眼鏡がひどく邪魔だという事。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ ジサクジエンデシタ!ミジケェ!
実は起きてる安佐堕先生だったりと勝手に妄想(*´Д`)
とにかくGJ!!
外科医×研修医大好物なのでサイコ-でした!!
ちなみに慰留の避難所は今閉鎖中。
>>443姐さん、そんな顔しないであげて…。
元々自由にSS投下する所だろ?
そんな遺留を毛嫌いしなくてもいい希ガス。
以前割り込みされた姐さんか、おまいはw
>446に同意。大人気ないよ。
>440GJ 慰留見てないけど、かわいくて萌えたよ。
>>445 避難所閉鎖中とかスレ事情持ち込むな。
>>他
大人気ないとか関係ない、つまらなければ放置が通常だろうが。
>>448 でも('A`)は流石にちょっと無いんじゃないか。予想はしていたが。
どうせ('A`)してる人も慰留関係の人か慰留自体が気に食わない人だと思う。
慰留に興味ない人は普通にどうでもいいことだから。
ということでほっときましょう。
451 :
風と木の名無しさん:2006/06/10(土) 11:40:22 ID:BKINV5Ue
ジャンル者じゃないが祭の予感にここ数日ヲチしてたが…。
初心者リア厨に引っかき回されて、いい加減まともな慰留姐さん達が可哀想になってきた。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )短くて恐縮ですが、投下してみる。
貴方と二人きり。
でも、僕は一人ぼっち。
さっきコンビニで買った本に夢中になっている彼は、どんなに見つめたって僕に見向きもしない。
別に、いいけど。
構って欲しいわけじゃないし。
寂しいわけでもない。
…多分。
一人が好きな貴方にとって、さぞかし心地よい時間なんでしょうがね。
その間僕は、この時間をどう潰すか考えるしかないわけで。
…それにしても、嫌になるほど静かな部屋。
雑誌をめくる音と、その後しばし訪れる静寂。
時折、彼が飲んでいる紙コップのコーヒーを置く音も響いて聞こえる。
この繰り返しを、何度聞いた事か。
あぁ、暇だ。
喉元から込み上げる、小さなため息。
それすら彼の世界を邪魔してしまう様に思えて、静かに飲み込むばかり。
その本は面白いですか、とか。
コーヒー僕も飲みたいな、とか。
話したい事は、色々あるのに。
もう、それすらもどうでも良くなってしまった。
貴方は一人でいる時間が好きだっていうけど、そしたらその間は僕も一人ぼっちになるじゃないですか。
そこんとこ、どうなってます?
僕にも納得出来る説明を、お待ちしております。
「うわ…恐い寝顔」
パタン、と本を閉じる音。
近付いてくる笑い混じりの優しい声。
それらが耳元で響いた頃、まだ僕は夢の中で貴方を探していた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )こんな二人が、理想なんです。
>>452 萌えました!
最近計画投下が多くてウレシス
>>452 元ネタわからないけど情景が浮かぶようだよ(*´д`*)GJ!
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) 懐かしのユニット西側 目窪×ナルで投下してみます。
ぷっつりと膨らんだ皮膚が痛々しい。
恐る恐る触ると、張り詰めた皮膚から痛覚を通じて痛みが脳天に届く。
「っ…いたぁ…」
何度も何度も鏡を眺めがなら、西/野は額に出来たニキビを苦々しく見つめていた。
最近の過密スケジュールから、肌は荒れ放題。ニキビもたくさん出来ていた。
けれども…この額のニキビだけは、今まで以上に大物だった。
一度、膨れてきたところをちょっと爪で引っ掻いてみたが、
引っ掻いただけでは何とも無く…無駄に痛みだけが残った…。
潰そうか、いや痕が残るからやめようか。いっその事芯をとってしまおうか。
爪を立ててはみるものの、そこまで思い切れずにぷつりと膨らんだ場所に軽く痕をつけるだけだった。
「いい加減、潰そうか潰すまいか…」
こうやって、苦悩をしだして15分。
ノックの音と共に、ドアが開き声が聞こえる。
「失礼しますー」
声の主は、ゆるりと楽屋の中へ入ってきた。
聞き覚えのある声に、慌てて振り向くとそこに立っていたのは宇/治/原だった。
驚きながらも、また鏡を振り返る。そして、先ほどの行為に没頭しだした。
宇/治/原は出番が終わったのか、やれやれといった様子で椅子に腰をかけ煙草に火をつけていた。
いつも側にいるはずの相方の姿はどこにも無く…。
「ちょっと、煙草吸わんといてくれます?煙たいんですけど」
鏡の向こうで見え隠れした煙草とライターに目ざとく気がついた西/野は、
まだ、煙が立つか立たないかの吸いはじめだというのに、先に宇/治/原に釘を刺した。
西/野の煙草嫌いを知っているにもかかわらず、宇/治/原は2・3度謝りながらも煙草を吸い続けた。
「宇/治/原さん、ちょっと人の話聞いてますか?」
いい加減話を聞いてくれない先輩に呆れつつ、また西/野は言葉を続ける。
いつも、2人でいる時は煙草を吸うなとあれほど言っていたのに。
「西/野、お前何かりかりしとんや〜?」
鏡に映る宇/治/原の顔に、妙な苛立ちを覚える。
「俺が、あれだけ言ってるのに煙草やめてくれへんからやって」
「もうちょっと待って。あと少し」
「アホッ。あれだけ、俺の前で煙草吸うなって言ってるやないですか」
「ええやんええやん。たまには吸わせてもらわないとストレス溜まるわ」
いつもよりも長めに煙草を残し、テーブルの灰皿に火種の残る煙草を押し付けた。
最後に残りの煙が立ち昇り…ようやく、煙草が消えていく。
西/野の鼻に僅かな煙草の残り香が届く頃には、宇/治/原が気遣ってつけてくれた換気扇のお陰で
立ち上っていた煙は消えていた。
「それにしても、お前俺が入ってきてからずーっと、鏡見てるなぁ。何しとるん?そんなに自分が好きか?」
「…若人の象徴的悩みですよ。いいかげん、おっさんのあんたにはわかんないですけど」
鏡の向こうに映る西/野の口元がにやりと歪んだのがよくわかった。
憎まれ口を叩きながらも、何だかんだ言っては宇/治/原を気にかけているらしい。
「誰がおっさんやねん」
「ほら、そのつっこみ方がおっさんですよ。中川さんに似てきたんとちゃいます?」
「アホか。本物と一緒にすんな」
「それよりも、出番終わったんでしょ?今日、打ち合わせとちゃうんですか?」
「毎日打ち合わせばっかりちゃうわ。そんなん疲れるしなぁ。今日は早く帰るわ」
カバンを手に持ち、楽屋を出て行くと思いきや、西/野の座っている隣の椅子に腰をかけた。
「何やってるんですか。今日はもう帰るんとちゃうんですか?」
「いや〜、可愛い後輩が鏡の前で悩んでるから、先輩としてほって置く訳にはいかんやろ?」
「いちいち、首突っ込んできますね〜相変わらず」
茶々を入れてくる宇/治/原には目もくれず、大きなそればかりを気にしてはため息をつく。
そんな西/野の横顔を複雑な顔で見つめる宇/治/原。
いつもの西/野にしては深刻すぎる悩みなのだと察してしまう。
だからこそ、からかい甲斐もあるものだ。
「ニキビか?あ〜もう俺できへんわなぁ」
顔を急に覗き込まれて、今まで真剣に鏡を見ていた西/野は驚きを隠せない。
「って、邪魔せんといてくださいよ」
「悩むほど、深刻なニキビとやらを間近で拝見させてもらおうと思ってなぁ」
「からかうなら、俺の為にビ/フ/ナ/イ/トでも買ってきて下さいよ。
あんたのだ〜い好きなこの顔が、ニキビだらけになっちゃいますよーだ」
精一杯の強がりを言ってみるけれど。
言葉尻に僅かに残る緊張を隠しきれない。
こんなに間近に迫られる事は何度もあるけれど、いつまでたっても慣れないもので。
確か、好きだと言われて、間近でにっこり笑われたのが、今思えば初めてだったと思う。
「緊張すんなって。どれどれ、見せてもらいましょうかねぇ〜」
「羨ましいんでしょ?あ〜若いって罪〜」
ようやく、にきびの処置を決めた西/野は、気が晴れたように立ち上がろうとしたが、
隣に座っている宇/治/原に肩を押さえつけられて、阻止されてしまう。
そして、先ほどよりもぐっと顔を近づけられて、まじまじと顔を見つめられる。
呼吸すらも直に肌で感じることができるこの距離に、西/野の鼓動は早くなるばかり。
だけど宇/治/原に呼吸を感じられることが急に恥ずかしくなり、つい息を止めてしまう。
逆に、慌てふためいてころころと表情が変わる西/野から宇/治/原は目が離せない。
「あ〜この位置にニキビが出来たら、想いニキビなんやってなぁ」
宇/治/原が額のニキビをひと撫ですると、また苦痛に顔をゆがめる西/野。
「はぁ?」
宇/治/原の言葉に訳もわからずに撫でてくる指を払いのけようとする。
だが、払いのけてはまた、ニキビを撫で…を繰り返され、いい加減に腹が立ってきた。
「って、どういうことやねんな」
「お前が誰かの事想ってる証拠やってさ」
明らかに自分を見下ろす位置にいる宇/治/原の顔に満面の笑みが浮かぶ。
宇/治/原がたまに見せる、この自信に満ち溢れた笑顔。
どこか腹立たしく思うけれども…西/野はどうしても憎めなかった。
「うわ、宇/治/原さんめっちゃムカつくわ!なんやねん、そのいかにも余裕な笑みは!」
「そんなに照れるなって。お前が俺のこと好きなのは十分わかってるから」
肩を押さえつけていた手を頭へやり、
ぽむぽむとまるで犬でも誉めるかのごとく撫でられ、西/野はさらに顔の色を赤くした。
「ニキビ治すのも大変やけど、できるだけ治さんとけよ〜
そこにニキビがあるうちは、俺も結構安心してるんやから」
余裕の笑みを湛えたまま、宇/治/原は椅子の下においてあったカバンを肩にかけ、楽屋を後にした。
「それって、どういう意味や!そのままにしとけって事か!?」
残された西/野は、鏡の前で呆然としたまま。
そして、顔はいつまでも紅潮したままだった。
やっぱり、頭のいい人間の考える事は良くわからない。
そう思いながらも、久々にみた彼の顔が目の前をちらついてはなれないのはまぎれもない事実だった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
最近絡みが皆無になったけど、まだ萌えられる先輩後輩でした。
>457
懐かしいな、この2人。
かつて本命カプが片方のコンビだったころ、
このカプにも萌えてサイト作ろうとしたことがあったっけ。
萌えました。
先週先々週と教/育/委/員/会に出ててたまげた俺がGJと言いにきましたよ
この2人もいいけどニッスガもプチ流行してたよな
自分はおっさんの相方萌えだったわけですがw
464 :
1/2:2006/06/11(日) 07:36:50 ID:5nDP49Vj
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ コソーリカキステマース!
モトネタハ 鬱アヌメKIBA カーン視点カン+ロベ エロナーシ! ワレナガラ愉快ナ脳味噌ダ
―――――――――
ジーモットの襲撃は、あの異界から来た少年のスピリットの暴走によって斥けられた。
僥倖としかいいようがない。
大量のガイローズから発したガスで我が方の兵達は戦闘不能に陥り、
頼みのシャードチャンピオンの一人は敵と内通、もう一人は投獄されたうえ拷問にかけられていたのだから。
疲労を感じ、深い溜息をつく。
当面の危機は脱したとはいえ、デュマスは逃亡、いつ次の攻撃があるかもしれない。
なんとか手を打たねば、とはいえ使える駒は限られている。
とりあえずは、レドモド家に使いをやりロベスの着替えを取ってこさせることにした。
地下の牢に行ってみると彼は眠っているようだった。
外のあの騒ぎに気付かなかったのか、吊られた姿勢でよく休めるものだ。
デュマスがジョーカーであることが明白になった時点で、普通の牢屋に戻されるべきだったのだが
我々も忙しくそんな指示を出すどころではなかった。
衛兵に声を掛け鎖を外させる。
ゴト、と重い音がして床に崩れる体。
ぶつかった時、痛かったはずだが反応が無い、まさか死んでいるのかと焦って顔に手をやると息はしている。
そのまま汗で張り付いた金髪をかきあげると、傷付いた肌が現われた。
・・・・いやなものを見た。もとが傷ひとつないだけに異様な感じだ。
彼はジョーカーであることを否定していた、やっていないことを認めよと迫られ暴行を受けるというのは
さぞ口惜しかっただろう。
もっと反対してやるべきだったのか。
だが、賢者達の発言は重い、ジーコ様があの場におられれば止めてくださったろうに。
465 :
2/2:2006/06/11(日) 07:37:57 ID:5nDP49Vj
苦いものを噛み締めながら、兵に命じて塔の牢へ移す。
狭い階段を精一杯丁重に運ぶ二人の兵の様子に、彼は多くの者に好かれているようだと改めて不可解に思う。
今回のノーフェイス事件でも差し入れは尽きず、被害者から赦免の嘆願もあったという。
そういえば私も被害者だった、結局公にはしなかったが。
確かに、怒る気にもならないか。
着替えを置いて、湯でも菓子でも必要なものは与えるよう言いつける。
特別扱いではない、万一、ジーモットが再度侵攻してくれば叩き起こしてでも戦わせなければならないからだ。
彼はまだ目を閉じたままでいる。
以前の、あの時もそうだったが、憎まれ口を叩いていない時の彼はどうも目のやり場に困る。
衛兵の敬礼に送られつつ、ふと、背に視線を感じた。静かに、彼が見ているのがわかった。
気付いていたのか?
何時からだ。
だが、振り返らなかった、彼は自分はジョーカーではないといったのに。
きっと、私がやらせたと思っているだろうと考えると、今、目を合わせる勇気はなかった。
対決も駆け引きも明日以降にしてくれと心の中で呟き、知らぬ振りをして私は逃げた。
―――――――――
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! ナイショナイショ
│>PLAY ピッ◇⊂(・∀・)ジサクジエンガオオクリシマース
半生の綿鍋×富士井のリバで富士井視点
ムクガチャイイヨー
今までの自分ときたら、特定の友人も作らず一人黙々と己の世界に閉じこもっていた。
他人との付き合いが苦手な訳では無いが、誰か一人と深く付き合う事もなく、かと言って他人に疎まれない程度の会話や態度を示していた。
誰隔てなく付き合う。そう言えば聞こえはいいが、つまり何かに執着する熱さが足りない。
自分で言うのも何だが要領がいい。自分が作り上げた世界の深い知識と経験は盾になり殻になり、武器になった。
一人は気楽、寡黙がいい、沈黙は花、自分が好きだった。
「富士井」
放課後の廊下で、自分を呼ぶ声に振り向くと赤茶色の髪を揺らしながら彼が、綿鍋が笑いかけて来た。
綿鍋は興味深い。
二年前、綿鍋の噂を周りの人から聞く度に思っていた。
不良でありながら雑学に詳しく、恐らく広く浅い知識の範囲が自分と似ている。
目立つ行動や言動を好み大胆だが、ああ見えて情に深く頼りがいがある。
そして、
(…他人にはけして感じさせない不幸)
酷く惹かれた。
「西塔に叩かれるしマジついてねぇ」
「違反した綿鍋が悪い」
あら冷たい人、そう言って綿鍋がしなを作る。気持ちが悪くて蹴りを入れる真似をするとわざとらしく綿鍋がそれを避ける。
一緒に帰る約束をしていたのを忘れていた事は本人には秘密にして
「綿鍋の様子を見に職員室まで行こうとしてた」
と綿鍋の教室につくまでの間そう話ながら誤魔化した。
「富士井が来なくて良かった」
「何故?」
「頭叩かれて痛がってるの見られたくない」
綿鍋が笑う。その横顔は人を和まし引きつける力があった、柔軟な笑顔。
「席替えまだかなーっと」
教室のドアをがらりと開け綿鍋が自分の席へと向かう。その後ろを少し離れて追う。
自分の教室と同じ造りなのに、何故か雰囲気が違ってみえる。雨の匂いがした。
「こりゃ降るかも分からんね、曇り空だ」
綿鍋が鞄を担ぎ、近くの窓から空を仰ぐ。綿鍋に倣い空を見ると確かに鈍色の雲が落ちてくるようだった。
「傘…綿鍋持ってる?」
確か置き傘があった筈、鞄の中の折り畳み笠を探しながら綿鍋に問い掛けたが返事は無かった。
返事の代わりに、肩に綿鍋の手が置かれた。
鞄から視線を移し、肩に乗った手から腕を追う、綿鍋の顔を見上げる。
赤い髪の、少し大人びた青年に見えてはっとした。
「キスする?」
口からついて出て来た言葉は、自分でも予想しなかった文章だった。
「富士井…」
「キス魔の綿鍋」
綿鍋はスキンシップが人より過激だ。その一つにキス魔としての迷惑が学年で有名だった。
老若男女所構わず口を奪う。綿鍋は冗談と親愛と、少しばかりの困惑を相手に抱かせようとわざとキスをする。
自分はまだその被害にあっていなかった。
「やーん、富士井大胆」
綿鍋の顔が近付く。身構えてはいたが嫌悪は無かった事に自分でも驚いた。
自分は冷めた人間だとは思っていたがこれ程まで…
しかし綿鍋は遂に俺の口にまで到達しなかった。
「なーんちゃって」
また綿鍋は笑って誤魔化す。これは綿鍋の処世術だ。自覚しているのかは知らないがゎ彼もまた自分に似て、何処か冷めている節があった。
自分も綿鍋の処世術に処分されてしまう。
そう思い始めると胸が熱くなった。綿鍋の顔も見たくなくて目を伏せる。
「引いた?」
「引いてないけど」
なんで俺にはキスをしないんだ。焦る感覚に囚われた。
気がついたら先ず手が先に出た。綿鍋と同じように肩を掴み顔を近付けた。
頭突きのように暴力的なキスをして、やっと胸の痛みと焦りが消えた。
安心して手を離す。口を離す。綿鍋のキスは暖かだった。
綿鍋が脱力して、へなへなと壁に持たれ座り込む。ぽかんとした顔で、何故か笑える。
「…帰るんじゃないの」
「ちょ…待て!富士井!」
「もうさんざん待ったから待たない」
「富士井のキス魔!」
「それそっくりそのまま綿鍋に返す」
「だ…ばっ馬鹿!馬ー鹿!!」
後ろからばたばたと音を立てて綿鍋が追って来る。
彼の処世術を、盾を、殻を、武器を打ち崩したのは
(俺が初めてかな)
それと同時に自分の作り上げた世界がゆっくりと融けていく。
融合する相手を見つけて、受け入れようと融けていく。
この気持ちは初めてだ。本や知識で知っていたこの気持ちを経験するのは少し楽しみでもある。
他人の暖かさに積極的に触れたいと思ったのは、後にも先にも綿鍋が初めてだ。
だから、これからも綿鍋とは深く付き合いたいと、そう心の底から思った。
□ STOP ピッ⊂(・∀・)モウソウハキダシゴメンナサイ
>>466 GJキタコレ!
まさかこのCPが読めるとは…(*´Д`)ハァハァ
>464
GJ!!口ベス萌え
474 :
下町1:2006/06/11(日) 15:56:00 ID:snJxkgqv
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) 下町妄想投下
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「ジャンケンしよか」
突然楽屋に入ってきた男は、座り込むと、面白くも無さそうに右手をブラブラと振った。
「なんやねん、急に」
濱田はだるそうに顔をあげると、呟いた。
この男が、濱田ひとりの楽屋を訪ねてくるなんて珍しい。
何かあったのだろうか。
「……別に」
松元は机に頬杖をついた。
濱田は特に気にも止めない風を装い、読みかけの新聞を捲った。何故だか動悸は俄に速くなっていた。
そういえば、最近収録中以外関係なく、松元の目を見ていない。
松元は、濱田こそ謎だらけの人間だと言うけれど、濱田からしてみれば、松元こそ、そうだった。
心の奥では何を考えているのか、わからない。
若い時分はどうしてもその謎が気になり、考え込みもしたけれど、其処に到達することで何かが変わってしまうような嫌な予感もして、濱田はそれを放棄していた。
しかし、仕事中にふとした瞬間合う視線で、微かだが、濱田は、松元という人間に触れた心地がし、安心を得ていたように思う。たった瞬間の積み重ねだけで。
しかし、その瞬間の触れあいすら、最近は無い事に気づいた。
目の前に座る男は酷く疲れているようにも見えた。
475 :
下町2:2006/06/11(日) 15:57:40 ID:snJxkgqv
「なんで、ジャンケンやねん」
謎かけは好きじゃない。
濱田は苛立ったように低い声を漏らした。
いつかだが、そう遠くもない未来に、松元はこの世界から足を洗うのだろう。
それは本人も冗談めかして言ってはいるし、濱田自身もそれを肌で感じることがあった。
それは何かのキッカケで松元の心を占領し、絡めとろうとする。
それは彼の問題であって、自分の立ち入る隙はない。
「俺が勝ったら……」
「……なんや」
「勝ったら、俺の言う事を聞いてくれるか」
松元は静かな声で言うと、墨色の瞳でじっと濱田の顔をみつめた。
何も読み取れない瞳。
濱田は背中に俄に汗が滲むのを感じた。有無を言わせない松元の雰囲気に抵抗するように口を挟んだ。
「ほんだら、俺が勝ったら、おまえ、俺の言う事を聞けよ」
「……ああ」
濱田の返事にホッとしたように息を漏らすと、松元は小さく頷いた。
勝って、いいのだろうか。
松元はどうしたいのだろう。
俺は、どうしたいのだろう。
「そもそも、なんでジャンケンなん……?」
そういう可愛くないところが愛しくもあり、好きだった、けれど……。
濱田の小さな呟きは、松元には聞こえていないようだった。
476 :
下町3:2006/06/11(日) 15:59:04 ID:snJxkgqv
濱田は手を出せないでいた。
いつのまにか静かな時間が流れていた。松元は沈黙に耐えかねたように小さく笑った。
「なんや、おまえ、たかだかジャンケンでそない真剣な顔して」
「え?」
弾かれたように濱田が顔をあげると、松元は「やめた、やめた」と言って立ち上がった。
「興が削がれた」
全く話が読めなかった。「なんやねんそれ」濱田は呆気にとられたように呟いた。
どういうことだろうか。
自分はどんな顔をしていたというのだろう。
「せんでええのか」
「何が」
「……だから、ジャンケン」
「そんなん、いつでも出来るやろ」
「そうなん?」
「ああ」
頷くと、松元は座っている濱田に向かって腕を伸ばした。
「?」
なんやの。
仕方が無く濱田がその手を掴むと、力任せにグイと立ち上がらせられた。
一瞬不思議そうな濱田の顔を覗き込むと、松元は、ふいに濱田の身体を抱きしめた。
柔らかな抱擁だった。
濱田はぼんやりと考えた。昔から、時々、こうやって松元は濱田の身体を抱きしめることがあった。
そこにはなんの理由もなく。ただ単に小さな子供が昔から使っている自分の匂いの染み付いた毛布に安心するように。
「ほなな」
そっと身体を離すと松元はドアに向かった。
いつも、いつも、このサインは、目の前の背中が弱っている時ではなかったか?
理由がない行為なんてない。そんなこと、分かっている筈なのに。
ジャンケンの代わりに、抱きしめられて、それでも黙っている俺は。
どんだけ卑怯モンやねんな。
それでも、怖い。怖くて仕方がないねや。
□ STOP ピッ⊂(・∀・)1コメサゲワスレゴメンナサイ!!
今更はまったBLゲーム俺の下であがけの社長×勤労少年
ハッピーエンド後〜ドラマCD前の出来事
エロありと見せかけて朝チュンです
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
なし崩しに壱哉の家に居着いてもうすぐ2ヶ月、新は一人思い悩んでいた。
壱哉が全く手を出してこようとしないのだ。時折戯れのように軽い口づけをしてくることはあるが、
それ以上進むことはない。
愛されていないわけではないと思う。大学受験のために勉強する環境だって整えてくれたし、
今朝だって新の作った朝食を美味しいと言って食べてくれた。たまにふと抱きしめてくることだってある。
とそこまで考えて新は顔を赤らめた。決して惚気ているわけではない。自分にとっては結構切実な問題なのだ。
もしかしたら壱哉は気を使っているのかもしれない。確かに最初は合意ではなかった。
でも、不器用なやり方しかできない壱哉を許し受け入れ、ずっと一緒にいると誓ったのは新の意思だ。
このままで良いわけがない。新だって、受け入れるほうの身ではあるが一端の男なのだ。
好きな人と一緒に暮らしていてずっと我慢できるほど人間はできていない。
こうなったら自分から誘ってやる!と決意して壱哉の寝室に向った。
寝室のドアを前にして一つ深呼吸をし、ドアをノックする。
「黒崎さん、ちょっといいか」
「どうした?新」
もう寝るところだったのか、パジャマ姿の壱哉は少し心配そうな顔で新を迎え入れた。
きっと今の自分の決意を秘めた顔が壱哉にそんな表情をさせているのだろう。
新は壱哉の手をひくとベッドに座らせ、自分もその横に腰かけた。
「あっ、あのっ」
「どうした?」
ここまで来て新はどうやって誘えばいいかを考えていないことに気がついた。
男を誘うすべなど知らない。新は元々女性の方が好きだし、そういった経験は壱哉との一回きりだ。
顔を赤らめたままなかなか話しはじめない新を壱哉は辛抱強く待っている。
こういう時は押し倒せばいいのか?それとも「やりたいんだけど」とか言うべきか?等と
頭の中でぐるぐると考えていたが、どうにもまとまりそうにない。
こうなったら…!と新は勢いに任せて壱哉に抱き付き口付けた。
それはただ押し付けるだけの口付けにすぎなかったが、どうやら壱哉は新が寝室に来た意図を
理解したらしい。目をぎゅっと閉じたまま動かない新を優しく抱きしめる。
「新、いいのか?無理しなくてもいいんだぞ」
「無理なんか、してねえ」
それでも何もしてこない壱哉を不審に思い顔をあげると、壱哉は少し戸惑っているような表情を浮かべていた。
「…最初があれだったからな」
「後悔してるのか?」
自分の面倒を見ているのは罪悪感からか、と顔を曇らせた新を見て、壱哉は新の頭をぽんぽんと優しくなでた。
「怖かったんだ」
「怖い?」
「もし、お前に受け入れられなかったら、と思うと…」
「あの時もういいって言っただろ。ずっと一緒にいるって、言ったじゃないか」
壱哉は新がまだ工事現場でアルバイトしていた頃に思いをはせた。
将来は弁護士になって困った人を助けるんだ、と目を輝かせて語った純粋な少年。
それを自分の欲望のままに弄んだ罪悪感が壱哉にはある。本当ならば自分は身をひくべきなのかもしれない。
しかし新を手放すことはどうしてもできなかった。そういった思いに捕われ、
壱哉は新に手を出すことができなかったのだ。
「あんただけが一方的に好きなんじゃないんだからな! お、俺だって…」
「新…」
一方的ではない、という新の精一杯の言葉を壱哉はかみ締めた。
「だからっ、分かれよっ!」
そう言うと新は壱哉をベッドに押し倒した。いきなりの行動に驚いた壱哉だが、
すぐに余裕を取り戻すと、新を仰向けにし上から覆い被る。
「まったく、俺を誘惑するなんて困った子猫だ」
「誰が子猫だっ!!」
子猫呼ばわりに抵抗を示しつつも、新はそっと壱哉の背に腕を回した。
翌朝、腰の痛みをかばいながらも朝食を作った新は、まだ寝ている壱哉を起こしにいった。
「おはよー、黒崎さん」
ベッドに腰かけ壱哉の肩をゆする。するとゆっくり壱哉は目を開いた。
「朝メシ、できてるぜ」
「…新」
「ん?」
「おはようの、キス」
壱哉はそう言うときょとんとした新を引き寄せ、おはようのキスという可愛らしい名称とは
かけ離れた濃厚な口付けをした。気付いたときは既に遅く、
新は壱哉の気が済むまで唇をむさぼられた。
やっと離してもらえた新はぜえぜえと荒れた息を整えながら、
二度と寝起きの壱哉には近づくまいと心に固く誓うのだった。
そんな新をよそに壱哉は満足げな笑みを浮かべていた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
予想以上に甘くなってしまったorz
>>479-483 GJ!!
久々にきてみたら社長×勤労少年に出会うなんて…(;´Д`)ハァハァ
あ/が/けキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
>>477 すごく萌えました。でも、こんな所で終わらすなんて殺生ですわ。
濱が不安なままだなんて可哀想で可哀想で・・
ぜひ続編を・・
>>477 キュンキュンきました(*´Д`)
末は勝って何したかったのかすごく気になります…つ、つづきを
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ナマモノ里予王求 サブマリン×ブラックシャドウ
―――――――――
「……痛かったですか」
静寂を破る、遠慮がちな声。
申し訳なさそうな感情が、表情に張り付いている。
「そりゃあね。でも、お前は速くないし、強くないし」
「痛いとこ突いてきますね……精進します」
にやりと笑ってやれば、同じようににやりと返ってくる。
気心の知れた、ヤツのクセだ。
「ま、僕に勝とうなんて、まだ早いよ」
「……敵わないな、敵なら尚更」
「ホールケーキ遅いな」
「相変わらず、甘いモノ好きですねぇ」
「お前にはやらないから」
「一口ぐらいくださいよ」
「一口だけな」
―――――――――
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
お食事風景でした。
>>488 ちょwwwwwwwwwさ、サヴマリソがこんな処で見れるとはハァハァwwww
ご、ご馳走様ですwwww
区鳥の船首数名が
>>488を恨めしそうに見ている件について
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ダヴィンチコードの白子×司教です。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 映画鑑賞後原作読了。白子愛暴走。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ナメナメレロレロシテルヨ…
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
493 :
1/3:2006/06/12(月) 23:05:31 ID:knm4rcJm
シ.ラ.スはベッドの傍らに跪き、床に額を押し付けて恐怖に震えていた。
「神よ……! 邪悪なわたしをどうか、お赦しください、お赦しください。どうか……ッ」
大きな身体の広い背中を丸めて、蒼白の面を上げることもできずに
許しを乞う様は見る者に滑稽さと憐れみを感じさせる。
(わたしは何ということをしてしまったのか…!)
血の色が透けた赤い目から涙が零れ落ち、床を濡らしていく。
痛々しいまでに白いうなじを剥き出しに、頭を垂れたまま、唇からは
謝罪の言葉が途切れることがない。太股にはシリスのベルトを巻いたままなので、
跪いた状態では深く食い込み、酷い痛みをもたらした。
けれど、その痛みも見捨てられる恐怖の前には掻き消える。
シ.ラ.スは自らの罪深さに絶望した。やはりシ.ラ.スは美しくなどない。
日々の苦行もシ.ラ.スの醜い欲望を抑えることはできなかった。
シ.ラ.スは神を裏切った。
いや、神などどうだっていいのだ。
シ.ラ.スは、自分を美しいと言い、天使だと言い、救いを与えてくれたア.リ.ン.ガ.ローサ司教を
裏切ってしまったのだ。
「神よお赦しを、神よお慈悲を、神よっ……」
そうでなければ、今すぐわたしに怒りの雷を落としてください。
地獄の業火で骨も残さずこの場から消し去ってください。
シ.ラ.スの祈りは、憐れにも次第に啜り泣きへと変わっていった。
「シ.ラ.ス」
天から降ってきたようなその人の声に、シ.ラ.スは本当に雷に打たれたように
全身を緊張させて固まった。嗚咽ごと吸い込んだ息を呑み、震えながら断罪の言葉を待つ。
けれど、その声と言葉は優しかった。
「シ.ラ.ス、わたしのシ.ラ.ス。わたしの天使」
真紅の目を剥いて床を見つめるシ.ラ.スの目の端に、裸足の爪先がそっと
ベッドから床へと下ろされるのが見えた。
色素欠乏症のシ.ラ.スの肌と比べて健康的な色彩を持った、尊い御足。
494 :
2/3:2006/06/12(月) 23:06:11 ID:knm4rcJm
シ.ラ.スは恐れと僅かな希望とでいっそう強く地に額を押し付ける。
その頭に、温かなぬくもりが優しく触れた。
「……シ.ラ.ス。主はおまえを罰することはありません」
シ.ラ.スはその手の温かさと声の優しさに勇気付けられ、未だ恐怖に慄きながらも
涙で頬を濡らしたままの蒼白の面をおずおずと上げる。
不安に怯えるシ.ラ.スを促すように、優しく髪を梳いていた指が頬へと滑り、彼を仰向かせた。
涙で霞む目に、慈悲深いア.リ.ン.ガ.ローサの微笑が映る。
「ああ……っ、神父さま、どうか…どうかお赦しください……わたしは、わたしはっ」
なおも流れる涙を、どこか憂うように目を伏せたア.リ.ン.ガ.ローサが優しく拭う。
痛む身体のせいで悩ましく眉間に皺を寄せるア.リ.ン.ガ.ローサは、ベッドから身を乗り出し、
シ.ラ.スの額に赦しのキスを落とす。
けれど、それは本当は赦しを乞う必要もない無実の罪だ。
「シ.ラ.ス、わたしの天使。神の愛する息子よ。怯えることはありません。主はおまえと共にある。わたしも……」
ア.リ.ン.ガ.ローサは言葉の続きを心の内に閉じ込める。
ただ一心にア.リ.ン.ガ.ローサを見上げるシ.ラ.スに、ア.リ.ン.ガ.ローサは望みを吐露することはできずに
ただ哀しげに微笑み、今度は赤く腫れる瞼に祝福のキスを贈る。
シ.ラ.スは息を呑むと、ア.リ.ン.ガ.ローサの唇から逃れるように顔を俯かせ、
再び足元へ頭を垂れてア.リ.ン.ガ.ローサの足に震える手で縋った。
その素足の甲に、シ.ラ.スが口付ける。
「神父さま…、慈悲深き神父さま……どうか、どうかわたしを見捨てたまうな!
あなたのお傍に侍り、あなたの足元に跪き、尊いあなたの御足へ口付けることをお赦しください、神よ…!
お赦しくださいお赦しくださいお赦し……」
けして途切れない贖罪の祈りがア.リ.ン.ガ.ローサの耳を哀しく打ち、その素足はシ.ラ.スの涙に濡れていく。
そして少し経つと、汚れた涙で穢してしまった足を、シ.ラ.スが舌で清め始める。
尊い身体の全てを清めたい欲望を、必死に神に祈ることで抑えつけながらも、
その舌は指にむしゃぶりつくことを止められなかった。
せり上がる熱はシリスの苦痛でも抑えがたかったが、ただ一心にその足を舐める、
その行為だけで飢えた心を満たした。
495 :
3/3:2006/06/12(月) 23:06:49 ID:knm4rcJm
ア.リ.ン.ガ.ローサは唇を噛み、シ.ラ.スの舌に与えられる甘やかな官能に震えた。
そして、込み上げる切なさを堪える。
ア.リ.ン.ガ.ローサが求めるなら、無垢なシ.ラ.スはどんなことも拒むことはないだろう。
それはけして誇張ではない。その無垢に、崇高なる神の僕であるア.リ.ン.ガ.ローサには、
けして付け入ることはできなかった。
あの日、ア.リ.ン.ガ.ローサの元に舞い降りた天使は酷く傷付いていた。
ア.リ.ン.ガ.ローサが当たり前の振る舞いをしただけで、まるで神の如くア.リ.ン.ガ.ローサを敬愛するシ.ラ.スに、
どうすればこの肉欲を伴う情熱を伝えられるというのか。
(この子は、勘違いをしているのだ)
初めて人の優しさに触れ、初めてそれを与えた人間を絶対と刷り込まれてしまった。
シ.ラ.スの愛は、まさしく子供が親を愛するものだったはずだ。
それがこうして、出会ったあの頃から育んだ親愛の情を超えてしまうのは、
ア.リ.ン.ガ.ローサの隠し切れなかった望みに歪まされてしまったのではないだろうか。
憐れな彼の天使のために、そして自身の罪深さに項垂れながら、ア.リ.ン.ガ.ローサは神に祈った。
そしてまたシ.ラ.スも。
彼の絶対、彼の命、彼の魂、彼の神。
ア.リ.ン.ガ.ローサ司教への穢れた愛に喘ぎながら、祈った。
――主よ、憐れみ給え。
____________
| __________ |
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 萌えに任せて初投稿。勝手が掴めない…。
| | | | ピッ (・∀・ ) お目汚し失礼しました。
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
伏せ方、大丈夫なんだろうか…。
>492
ダヴィンチコードってそんな話だったのか…!と激しく誤解してみるw
白子いいね白子
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| プリンセス・プリンセス アニメのみ原作未読
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 坂本(兄)×坂本(弟)
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| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
2日目の学祭も終わり、秋良は深夜遅くに帰宅した。
打ち上げに出たらしい。
以前の秋良なら、打ち上げなど断って真っ直ぐに帰ってくるはずなのに。
俺は秋良が浴室から出てくるのを見計らって廊下を歩いた。
「ハル兄、お風呂空いたよ―――わッ」
「秋良!」
いつものように俺は秋良を抱きしめた。
石鹸の香りに混じって甘いにおいがする。秋良のにおいだ。
「学祭、お疲れ様。大変だったろう」
「そんなことないよ。みんなに楽しんでもらえたし」
ふふ、と秋良は笑った。
秋良は以前よりも学校での出来事を話すようになった。
友達ができたらしく、この前は家に同級生を2人も連れてきた。
俺は自分が忘れられたような気がした。少し意地悪をしてやろう。
「お兄ちゃんは寂しかったよぉ!
昨日は秋良と一緒にいられるって聞いたから学祭に行ったのにさ、
ウォークラリーのハンコ押しで、ずーっとひとりで個室に置き去りなんだもん」
「あ、あれは・・・」
「酷いよ秋良!俺を騙したんだね」
「そ、そんなつもりは・・・」
秋良はうろたえ、俺を見上げた。
俺はますます悲しげな表情をつくった。
すると、秋良の大きな目が不安でいっぱいになった。
「分かってる。有定に言われたんだろう」
「ごめんなさい・・・」
秋良は本当に可愛い。
素直で、純粋で、真っ直ぐで―――俺を坂本晴海として見てくれる、ただひとりの人だ。
絶対、誰にも渡したくない。
「秋良。ちゅうしよう、ちゅう」
「え・・・」
「小さい頃はよくしたじゃないか」
「落ち着いて、ハル兄。僕もう高校生だよ」
秋良は最近、困った表情をするようにもなった。
以前は俺が構ってやるだけで、とても喜んでいたのに。
でも大丈夫。
「楽しい学祭で俺、ひとりぼっちだったんだよぉ。
みんなは楽しかったのかもしれないけど、俺だけひとりぼっちの思い出しかないんだよぉ。
だけどね、秋良がちゅうさせてくれたら楽しい思い出になると思うんだー」
秋良は一瞬泣きそうな顔になったが、俺に許す気はない。
じっと見つめていると、秋良は俯きがちに小さく頷いた。
「あの・・・ほ、ほっぺたなら・・・」
「うん!」
ほら。俺が頼めば、秋良は拒むことはしない。
俺は秋良の顎を指先で掴み、そっと唇を寄せた。
秋良はぎゅっと目をつむっている。
無防備なままの唇に、そのままキスしてやろうかとも思ったが
秋良に警戒心を抱かれることだけは避けたいので頬で我慢した。
それでも、湯上りの肌は湿気を含んでいて唇に吸い付くようだ。
「あ、あの、ハル兄、もう、いいかな・・・」
「ありがとう、秋良」
俺は秋良を腕の中から解放した。
「じゃ、おやすみ。秋良」
「おやすみなさい」
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 辻褄合わない、尻切れだけど終わり。
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
>>498 (*゚∀゚)GJ!弟受け好きだから萌たよ!!
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| | |> PLAY. | |
| | | | ∧_∧ 一応、とある「理想の上司←秘書」ですが
| | | | ピッ (・∀・ ) ただのリーマンもののような気もします
| | | | ◇⊂ ) __ 801であるかどうかも微妙です
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
忙しそうな若者が一人、資料と自分の至らなさを抱えて廊下を急いでいる。
本来なら彼はこの日のためにどんな資料を揃えればいいのか、どこで探せばいいのかは自分で調べてから集めるべき立場だ。
それなのに彼の直属の上司は、企画を立てた段階でどのような資料をどこからどうやって集めればいいかまで込みで指示を出す。
もちろんその方が資料は集めやすいし、彼がこの仕事をはじめて数ヶ月の新人だというのをわかった上でそういう指示を出しているのだろう。
まだ仕事に慣れていない彼に取ってはありがたくもあったが、まだ上司の信頼を完全に得られていないようで寂しくもあった。
ただただ言われた通りの資料を持って来るだけなら、誰でも出来る仕事なんじゃないだろうかという不安がよぎる。
しかし、そんな時はこの仕事を引き受けた時の事を思い出すようにしている。
あれは、すべてを失ったと思った日の夜だった。
事務所に呼ばれた時、すでに何を言われるかはわかっていた。
「来期の契約はない」
機械的にそう告げられた時、何もかも失った気がした。
もちろん芽が出なかった事や周りの動向でそうなる気配は感じていたし、覚悟はしていた。
それでも実際に告げられると、事実が重くのしかかってきた。
この世界に入る時は夢と希望が溢れていたが、今ここで彼が失ったのは夢や希望なんて甘いものだけでなく、職業や収入という生活に関わるものでもあるのだ。
他の場所で契約し、この世界にしがみつくという方法はある。
しかし同じようにこの世界を追われかかった者達が同じ試練を受けに来る、中には素晴らしい経歴を持った者もいる。
彼らと対等に渡り合えるかとなると、自信はない。
だからと言って夢を諦め、一般の企業に就職するにも今の世の中では厳しい。
これからどうすべきか……悩んでも悩んでも答えは出なかった。
その時、携帯電話が鳴った。
おそらく彼がこうなった事を知った友人が心配して電話したのだろう、そう思って表示を見ると信じられない名前がディスプレイに浮かび上がっていた。
「はい」
まだ信じられないまま電話に出ると、間違いなくあの人の声が聞こえる。
「お前さあ、これからどうするの?」
どうすると言われても、何も決まっていない。
それにいくらこの人でも今の自分を助ける事なんて出来るだろうか、事実をありのまま言うしかない。
「こうなったのが今日の今日なので、まだ何も……」
今の状況をそのまま告げると、驚くような言葉が返ってきた。
「あのさ、俺の秘書になってくれないかな。俺はお前にやってほしいんだよね」
どんな返事をしたのか、正確に覚えてはいない。
必要でない人間という烙印を押された彼が、誰もが憧れ、もちろん彼も憧れた人に“お前”が必要だと指名されたのだ。
それが嬉しかった事と、すぐに承諾した事は覚えていた。
彼は決断力があったわけではない、芽が出なかった原因も決断の遅さにあったかも知れないというぐらいだ。
それなのに、この人生に関わる決断は今までにない早さで出来た。
きっとこれが正解だったから、この道が正しいからだと彼は信じている。
誰もが憧れる“理想の上司”の元で働く日々は忙しく、そして充実している。
辛い仕事や自分の未熟さにぶつかる事があっても、“お前にやってほしい”と言われた事に支えられている。
彼は今日も任された仕事を続ける、5年後も10年後も必要だと言われるように。
あの人に、必要だと言われるように。
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 終わりです、読みにくいかも。
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
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>>504 このエピ聞いた時から気になってました。読めて嬉しいです。
>>504 ほぼリアルで遭遇していたのに、今頃になってやっと元ネタに気づいたよ。
でも、萌えました。秘書いいよ、秘書。
>>504 萌えたー。
しかし元ネタわからん。
わからんけど秘書ガンガレ超ガンガレ。
なんとなく読み返した蟲帥に再ハマり。
DVDまで揃えたあげく、マイナーCPの布教にのり出しました。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 蟲帥、ギソコ×イヒ野だってよ
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 久しぶりの投稿だね。テンプレずれてない?
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
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半刻ほど前からぱらついていた雨が、本格的に降りだした。
このところこんな天気が続いている。
梅雨が近いせいだろうか。
「もう水無月だしなぁ……」
そう一人ごちたイヒ野は、縁側に胡坐をかいてぼんやりと外を眺めていた。
先程から湯を沸かすため風炉に火を焚いているので、部屋に向けた背が少し暑い。
しとしと しとしと
雨音に耳を傾けながら、何を見るでもなく、ただ視線を彷徨わせる。
目に映るのは、紗の布で覆いでも掛けたように輪郭がぼやけた庭の木々。向こうの森の暗い影。
靄に覆われた遠くの山の端に、手水鉢の横の椿の葉。
緑。翠。碧。
濃淡さえも溶け合ったその色は、ある特定の人物を想起させた。
今頃どこを旅しているのか、ここ三月便りさえも寄越さない薄情者の目に、よく似ている。
青みがかった不思議な緑。
生物として不自然なほどに透き通った、夜の闇でも光を放つような独特な色の瞳は、イヒ野が知る
他のどんな人間のものとも違った。
(だが、それを言うなら。)
銀の髪も、どこかに色を落としてきたような肌も、蟲を寄せるというその性質も。
いや、いっそ存在自体が『人とは違う』。
―――――どれほど気さくに接しようとも、その生死に深く関わる里人に対してはどうしても
超えられない一線がある。
それはイヒ野が自らを律するために設定した、明確な線引きだ。
一個人としてのイヒ野ではなく、一人の医家であるために、此処から先は立ち入らせないという決意だ。
その境界線を、それと知っていながらあっさりと踏み込んできたのが、ギソコだった。
他の誰とも違う。
イヒ野という一人の人間に、最も近しい男。
ふらりと現れては当たり前のように手を伸ばし、抱きしめ、翻弄し、熱の篭った視線の名残だけを残して
去っていく。
身勝手さをどれほど責めようとも、拒絶することができない。
愛してやまない蟲のように、無条件に自分を惹き付ける稀有なイキモノ。
ここにいない男を思い返すとともに、このところとんとご無沙汰の白い手が瞼に浮かぶ。
火照った肌の上を滑る冷たい手。
イヒ野の首筋を這い、腰を撫で、足首を掴むあの少し乾いた掌。
―――――――-――ギソコ。
思わずその名が口をついて出て、慌てて頭を振った。
「阿呆か俺は」
どこの健気な少女だ。
今日び遊里の戯言でも流行らない。
時雨の空に貴方を思い出します、などと―――
ガラにもない、と小さく哂う。
この雨がいけないのだ。
こうもしずしずと降り続けるから、妙に人恋しくなる。
誰が見ているわけでもないのに妙に気恥ずかしくなって、イヒ野はわざと乱暴に立ち上がると、
ずかずかと部屋へ戻った。
なんとはなしに、先ほど風炉にかけた鉄瓶の様子を見る。
欠片も沸く気配がない。
「水、入れすぎたかね」
茶を飲もうと思っただけなのだが、鉄瓶の中の水は、一人分には随分と過ぎた量だ。
しかし、今更捨てるのも業腹で、そのままそこに腰を下ろした。
何をするでもなく、黙って湯気を眺める。
視線の対象が外から鉄瓶に変わっただけだったのだが………。
片眼鏡が曇った。
「………」
(今、俺は全ての物に馬鹿にされている気がする。)
溜め息一つついて片眼鏡を外し、俯く。
厄日か、今日は。
なんでこういう日に限って患者が一人もこないのか。
いつもは釘を踏み抜いただの屋根から落ちただの、こちらの都合などお構いなしに
転がり込んでくるくせに。
レンズの曇りを拭いつつぽつりと呟く。
「隣の婆さんのところにでも行くか………」
湿気のせいで腰が痛いとぼやいていた老女を思い出す。
まだ往診を請われてはいないが、どうせ梅雨には一度診なければならないのだ。
手土産に膏薬の一つも持っていけば喜ぶだろう。
「暇だしなぁ」
と、何の気なしに零した独り言に、耳ざわりの良い声が応えを返した。
「暇だからってお前、医家の言うことじゃねぇな」
幻聴というにはあまりにも明瞭だった。
聞こえるはずの、ない声。
「!?」
驚いて振り返れば、縁側の向こうに、さっきまでなかった淡い人影が一つ。
どこか所在なさげに、つくねんと立っていた。
「よう」
頭から外套を被った男が、火の消えた煙草を咥えて片手を上げる。
「ギソコ!」
先ほどこっそりと思いを馳せていた男の、余りにも唐突な登場に、イヒ野は思わず
その手から片眼鏡を取り落とした。
落とした眼鏡をそのままに、目の前の存在を凝視する。
(まさか俺が呼んだから来たわけじゃなかろうな)
恋うる気持ちが天に通じたと素直に考えるには、イヒ野はいささか不信心すぎた。
それでも、今まさにこの時を狙ったようにギソコが現れたのが、単なる偶然だとはとても思えない。
以心伝心というべきか。
あるいは、噂をすれば影といったほうがいいのか。
(………人の心を読む蟲、なんてのもいるのかねぇ………)
更に激しく降りはじめた雨の中。
突然のことに喜ぶのも忘れて固まるイヒ野の顔に、久方ぶりに顔を出した薄情者が嬉しそうに
咥え煙草の口元を緩める。
木々や森や山よりも、なお鮮やかな碧の瞳が、真っ直ぐにイヒ野を映しだしていた。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ イヒが乙女に……尻切れとんぼスマソ。
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
>>513 GJ!
ギソコの瞳に映る乙女なイヒ先生、GJ!
もう蟲でも構わないから無沙汰を責めて甘えればいいと思いマスタ。
>>513 GJGJ!!このカプリング好きなので読めて嬉しい
イヒ先生乙女だ…テラカワユス
>513
ウホっGJ!
どっちがどっちでもこの二人が幸せそうなら無条件にモエス(*´д`)
>>513 GJ!漫画の空気と文章がピッタリで惚れたよ!イヒ先生カワユスなぁ
銀は多めに入った茶を見て感付いたりするんだろうかと妄想
524 :
1/4:2006/06/16(金) 10:22:44 ID:hIN1Yli1
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 指輪繋がりではまった某海外ナマモノカプでヨロ
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 名前出してないからわけがわからんな
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 斜陽だなあ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
525 :
2/4:2006/06/16(金) 10:23:21 ID:hIN1Yli1
「なんだか、随分と楽しいプライベートを満喫してるみたいだね?」
聊か揶揄のこもったその言葉に、数ヶ月ぶりに再会した愛する青年の身体を抱き
しめていた男は驚いたような表情をした。何の話だ? と問い掛けるような青灰
色が、青年のチョコレートブラウンの瞳を見返す。
「あんたも大概元気だね、って話だよ」
少々相手を責めるように笑いながら、彼はするりと男の腕の中から逃げ出してし
まった。遠ざかろうとする身体を再び捕らえようと手を伸ばしながら、男は漸く
得心がいったかのようにああ、と短く言葉を発した。
「なんだ、彼女の話か。別に君が気に掛けるほど何度も関係したわけじゃないが
ね。しかし、可愛いステディと熱烈恋愛中らしい王子様が、随分と心の狭いこと
を言うんだな?」
返す男の台詞も、聊か辛辣だ。その言葉に青年は一瞬目を丸くして、直後実に
楽しそうに人の悪そうな笑みを浮かべた。
「え? なになに、妬いてんの?」
「君こそどうなんだ。会うなり彼女の話など持ち出して」
「そんなの妬いてるに決まってんじゃん。あんたはどうなんだよ?」
「そりゃ勿論―――」
返事の代わりに返ったのは、力強く引き寄せる腕と、息も吐かせないほどの激し
い口付けだった。
526 :
3/4:2006/06/16(金) 10:24:54 ID:hIN1Yli1
「ん………っ、ぁ……」
はぁ、と浅く息を吐いて、甘く名前を呼ぶ。相も変わらずこの男は、ひとを蕩か
すようなキスをしてくれる。この唇に『彼女』も酔いしれたんだろうかと考える
と、仕方がないと割り切っていても何とも言えずむかっ腹が立ってくる。勿論、
完全に自分を棚上げしていると言う自覚はあるが。
「相変わらず、悔しいくらいうまいよなあ……」
「そりゃどうも。君も少しは上達したみたいだな?」
「そりゃあ、『熱烈恋愛中』だからね」
「―――それはご馳走様、と言うべきなのか…?」
声色の変わった男に、青年は悪戯っぽく笑って今度は自分から口付けた。
唇が触れる寸前―――『妬いてよ』と甘く、囁いて。
527 :
4/4:2006/06/16(金) 10:25:59 ID:hIN1Yli1
____________
| __________ |
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 最近は燃料がなくてサミシス。
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
>>524 多分違う気がするけど、好きカプ当てはめて萌えた
ありが?ォ
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| 和物ホラーゲームシレン2からフリーター&作家
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 百合っぺ6:00デモで阿部ちゃんが作家を連れて逃げてたらというAU話
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ちょっとネタバレかも注意
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
530 :
1:2006/06/17(土) 00:34:06 ID:2Gc/fQrP
三上に請われるままたどり着いたのは、果たして冥府と呼ぶに相応しい空間だった。
辺りを覆う分厚い闇の中心、赤い液体を湛えた水溜りの中に巨大な"何か"が佇んでいる。
現実感の欠落した光景を、阿部は呆然と眺めた。まるで出来損ないのSF映画だ。
水生生物を思わせる下半身に、不自然な程細くくびれた胴。
数メートルはあろうかという長い首の上に、見慣れた女の顔が乗っている。
(柳子?!…なワケねえか。何なんだよアレは……)
「脩!!」
悲鳴のような章子の叫びに阿部は我に返った。
三上は恍惚とした表情を浮かべ、一歩また一歩と水際へ近付いていく。
ぞっと背筋が冷えた。どう見ても尋常な様子ではない。阿部は走った。
水の中の異形から伸びてきた無数の触手が触れる寸前、辛うじて三上の腕を捉えた。
そのまま力一杯引き戻す。濡れた触手の先が僅かに頬を掠めた。
おぞましさに全身が総毛立ち、生理的な嫌悪感が瞬く間に全身を支配した。
「逃げるぞ!」
こみ上げる吐き気を堪え、弾かれたように走り出す。
何事か喚き続ける三上を引き摺るようにして、阿部はひたすらに地上を目指した。
けたたましい女の笑い声とサイレンの音が何処までも追ってきたが、決して振り返ることはなかった。
531 :
2:2006/06/17(土) 00:34:45 ID:2Gc/fQrP
「……ったく、どーなってんだよ」
阿部は毒づいた。答えが返ってくるわけもないが、それでも口に出さずにいられない。
際どいところで冥府から帰還を果たしたものの、章子とは再びはぐれてしまった。
他の人間もどうなったのか判らない。夢中で駆けて、いつの間にか森のような所にいた。
瓜生ヶ森の辺りだろうか。こういう事は島の地理に詳しい人間に聞くべきなのだろうが、
生憎と連れはまともな返事を期待出来るような状態にない。阿部は短く溜息をつく。
憔悴しきった目の前の男に、作家三上脩の怜悧な面影は微塵も無かった。
受け答えもまるで要領を得ず、お姉ちゃんがと繰り返すばかりで埒が明かない。
阿部は差し当たって安全そうな物影に隠れ、少し休憩をとることにした。
三上はある種のパニック状態にあるが、そう長くは続かない事を阿部は知っている。
泣くのと同じでひどく体力を消耗するのだ。
刺激せず、時間をおけばじきに正気を取り戻すだろう。柳子のときもそうだった。
「……ん?」
ポケットから煙草を取り出して、ライターが無い事に気付く。軽く舌打ちをした。
いつもこうだ。気付かぬうちに随分と色々なものを失くしてしまった。
すぐ隣に座り込んだまま、三上は沈黙を守っている。
放心しているのか、それとも何か考えを巡らしているのか、阿部にははかりかねた。
(確か三十三とかいったか……)
阿部からみれば九歳年上ということになるが、青褪めた横顔はひどく頼りなげに見えた。
守れるだろうか。ふいに、阿部はそんなことを思った。
他人の視界を利用して物が見えるとはいうが、本来三上は日常生活に盲導犬を必要とするほどの弱視だ。
行動はいかにも覚束無い。遅れず付いて来るだけで精一杯だろう。
足手まといには違いないが、まさかこんな所に見捨てていくわけにもいかない。
見慣れた部屋で、血にまみれて横たわる愛しい女の姿が脳裏に蘇る。
阿部はきつく目を閉じ、頭を振った。
柳子は死んでしまった。どんなに望んでも取り戻すことは出来ない。
しかし三上は生きている。一人が二人に増えただけだ、俺が何とかするさと腹を括った。
二度とあんな思いはしたくない。章子もきっと無事だ。絶対に生きて帰れる。
自分にそう言い聞かせ、呼吸を三つ数えたところで、咥えたままの煙草を勢いよく吐き出した。
532 :
3:2006/06/17(土) 00:36:32 ID:2Gc/fQrP
「なあ、ちっとは落ち着いたか?」
「……ああ…すまない。…もう、だいじょうぶだ」
覚えたての言葉を操るようなたどたどしさで三上は返した。
セットされていた黒髪は所々乱れて、疲れきった表情に濃い影を落としている。
とても大丈夫そうには見えないが、阿部は敢えて異を唱えないことにした。
「ところでさぁ、ここどこよ? 何か森っぽいんだけど」
三上は記憶を手繰り、島の全景を仔細に辿った。
「裏門の方から出たなら、ここは瓜生ヶ森で間違いないと思う。東に進めば金鉱の採掘所に、北へ進めば瀬礼洲に出る」
「採掘所ねえ…別に用はねえな。さすがに金とか掘ってる場合じゃねえし。…港は?」
「採掘所を崩谷方面に抜ければいずれは夜見島港に着くはずだ」
「船あんの?」
「さあ。何せこの状況だ、期待はしない方がいいだろう」
「そーだよなぁ。…ま、とりあえず行ってみっか。今から遊園地戻んのヤバすぎるもんな」
阿部は即決した。船の有無はさて置き、島の中心部をうろつくよりも建設的に思えた。
色々な可能性について考え込むよりも、思いつくことを手当たり次第試してみる方が余程性に合っている。
人はそれを短慮と呼ぶわけだが、本人に改めようという意志はない。
533 :
4:2006/06/17(土) 00:38:27 ID:2Gc/fQrP
「それからアンタは武器持つな。落っこってても拾うなよ。そっちのがかえって危ねえし」
「阿部さん…」
「心配しなくても俺がきっちり守ってやるよ。占い女みっけて早いとこ島から出ようぜ」
阿部の言葉に三上は少なからず驚き、それを悟られぬよう目を伏せた。心が動くのを感じた。
絶えず命の危険に曝されているこの状況下で、自分を連れて逃げるつもりらしい。
言動はラフだが、かなり人のいい青年のようだ。
阿部はちらちらと隣の様子を窺っていたが、やがて意を決したように手を伸ばした。
「!」
思いがけない接触に、今度は三上も動揺を隠せなかった。
「あー…アンタいつの間にかはぐれてるからさ。こっちのが面倒なくていいだろ?」
些か決まり悪そうに阿部が言った。迷子防止の為に手を繋ぐということらしい。
三上は幼子のように手を引かれる自分の姿をなるべく想像しないようにした。
「何というか…さぞかし様にならない姿だろうな…」
「今更ヘンな見栄張ってんじゃねーよ。どうせ見てんのなんてあのゾンビとか白アスパラみてーな化け物ぐらいだろ」
「違いない」
こんな時だというのに、思いがけず笑みがこぼれた。強い手だと三上は思った。
たった今、この手に生殺与奪の権を委ねたのだ。頷き、命の感触を確かめるように握り返す。
「うっしゃ、行くか」
驚くほど暢気な調子で阿部が言う。ふたりは先の知れない闇へと踏み出した。
午前24:00、前触れもなく異変は起こった。
「おいマジかよ!?」
悲鳴のような阿部の声に、切迫した事態を察して三上は身を固くした。
ビリビリと地を揺さぶるように轟くサイレンを合図に、荒れ狂う赤い海が、
上方から借り物の視界いっぱいに迫ってきた。ほんの数秒の出来事だった。
強烈な既視感。波に呑まれる衝撃と、手首に覚えた鈍い痛みを最後に、三上は意識を手放した。
534 :
5:2006/06/17(土) 00:40:11 ID:2Gc/fQrP
規則的に打ち寄せる波の音が、やけに遠く聞こえる。
「…いてて…チクショ、口ん中しょっぺえ……」
身を起こした阿部は恐る恐る辺りを見回してみた。周囲は明るく、まるで別世界だった
死臭に満ちた悪夢の夜を忘れたかのように、世界は柔らかな色彩で溢れかえっている。
静かだ、阿部は思った。ここは静かで、眠たくなるほどに穏やかだ。
「…んぁ?」
自分が何かを握り締めていることに、阿部はこの時初めて気付いた。
見ると、すぐ隣に横たわる男の手首をしっかりと掴んでいた。
すっかり我に返り、慌てて手を離す。真新しい痣がくっきりと赤く残った。
「おい、生きてっか?」
揺すると三上は呻き、いかにも大儀そうに薄らと目を開けた。
(ここは……?)
コンクリートの確かな感触を背に受けて、緩やかに意識は覚醒した。
疲労のためか、全身がひどく重い。指一本動かすことさえひどく億劫に感じられた。
思考は鈍く、温かな蜜の中でもがいている心地がする。
「ああ…何とか。一体…何が起こったんだ? たしか、津波が…」
そう、津波にのまれたのだ。夜見島港を目指している途中だった。サイレンが聞こえて、それで――――
「皆、消えちまったのか……?」
ぽつりと阿部が呟く。予感を肯定するように、他人と視覚を共有するあの奇妙な能力が消え失せていた。
自分の無実を信じてくれた章子、漁船に乗り合わせた眼鏡の雑誌記者、柳子に似た雰囲気を持つ不思議な女。
皆、津波に巻き込まれて死んでしまったのだろうか。
535 :
6:2006/06/17(土) 00:42:56 ID:2Gc/fQrP
「……っ」
阿部は泣いた。自分でも説明のつかない何かが、抑えようもなく溢れ出して止まらなくなった。
三上はじっと耳を澄まし、彼が抱えた傷の深さを思った。
掛けるべき言葉は何処にも見当たらない。途方に暮れてそっと手をのばした。
背を丸め、子供のように嗚咽する男を、遠い昔加奈江がしてくれたようにただ抱きしめてやった。
両手が三上の背を探り当て、溺れる者の無心さで縋り付く。
腕の中で泣き崩れる阿部は怪異から自分を守り続けた男とは別人のようで、何故だかずきりとした。
三上はその感覚を知らないわけではない。覚えのある、懐かしい痛みだ。
目の前に広がる凪いだ海を眺めながら、三上はすべてが終わったのだと感じていた。
混乱した頭はそのことをどう受け止めていいのか決めかねていたが、
少なくともこの世界に一人取り残されたわけではない。今はそのことを感謝せずにはいられなかった。
朝の光は、触れるものすべてを金色に染めて音もなく降り注いだ。
536 :
6:2006/06/17(土) 00:43:30 ID:2Gc/fQrP
低木の葉陰から、一対の黒い眸が浜辺の様子を見詰めていた。三上の相棒ツカサである。
聡明すぎるのも考えもので、姿を現すタイミングはかっているうち、出るに出られない雰囲気になってしまったのだ。
彼女は軽く鼻を鳴らし、仕様のない、といった態でその場に座り込んだ。そうして、傷付いた男に寄り添う主人の姿をしばし眺めた。
彼が自分から他人に触れようとするのを、ツカサはこれまで見たことがなかった。
空白の過去だけを見つめ、もう長いこと独りで生きてきた彼が本当に必要としているのは、同じ痛みを共有出来る"誰か"ではないのか。
失ってきたものの代償として、彼はそれを手に入れたのかも知れない。
そうならばいいとツカサは思う。主人の幸せを守ること、
それは盲導犬としての彼女の使命であり、絆を育んできたパートナーとしての願いでもあるのだから。
決してひとりきりにならないように、彼を導く光のあるようにと、いつも願っている。
ツカサは姿勢を崩し、揃えた前肢にゆったりと頭を預けた。
瞬きの感覚が次第に狭まってゆく。傷付き、暗闇の中を駆け続けた体が休息を必要としているのだ。
もう少し二人の様子を見守っていたかったが、本能の欲求に逆らうことが出来ずにまぶたを閉じる。
暖かなモノクロームの夢に守られて、彼女は束の間の眠りについた。
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| __________ |
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 位置関係方角その他色々とアレなのは勘弁してください
| | | | ピッ (・∀・ ) …あと特に801というほどのことが起こらなくて申し訳ない
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
そして阿部ちゃんはジェントルマソの魂をもつチンピラだと信じて疑わない
>>529 GJ! 支えあう先生とチンピラに正直涙
ツカサ男前だよツカサ・・・・・女の子だけど。
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| ギソコ×イヒ野再び!しつこく!
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| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 一方その頃、ギソコ視点。
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| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ウマクカケナカッタヨ……orz
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
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542 :
蟲帥 1/4:2006/06/19(月) 23:18:01 ID:nxCLiMFc
イヒ野が居を構える小さな漁村は、今いる場所から歩いて一日足らずだ。
最後に会ったのは、二月前か、三月前か。
そろそろ行ってもいいだろうと思うと、もうじっとしていられなかった。
空にかかる暗雲もなんのその。
昨夜の宿となった御堂に軽く手を合わせ、慌しく荷を担ぐと、足取りも軽く林道へと向かう。
林道を抜け、山を一つ迂回し、村を一つ抜け、低い尾根を越えればそこにはあいつが待っている。
自然に浮かんでくる笑みを押し殺し、少し撚れた蟲煙草を咥えて、慣れた仕草で火をつけた。
ギソコがイヒ野の家を訪れるのは、二月か三月に一度。長ければ半年も顔を見せないこともある。
それだけ間を空けても、留まれるのはせいぜい一、二週間が限度だ。
それ以上になると蟲が集まりすぎて大変なことになる。
蟲を寄せるギソコは、一つ処に身を落ち着けることが出来ない。
大切な相手ができたとしても、その相手のことを想えば、傍にいることはむしろ害になるのだ。
だから、距離を置かねばならない。
想う者を蟲から守るため、離れなければならない。
それを、『体質なのだから仕方ない』と諦めていたのはいつまでだったか。
イヒ野は知らないだろう。
旅の道すがら、ギソコが、蟲除けの香や蟲煙草の改良や体質改善の方法をかなり熱心に探していることを。
543 :
蟲帥 2/4:2006/06/19(月) 23:19:26 ID:nxCLiMFc
基本的なところが分ってねえんだろうなぁ、と肩を落とす。
できることならギソコだってもっと頻繁にイヒ野の顔が見たいし、長逗留を決め込みたいのだ。
誰が好き好んで惚れた相手から離れたいと思うだろうか。
旅に出るのは最早習い性となっているので、今更ずっと一緒にとは言わないが、できれせめて月に一度は
逢瀬を楽しみたいというのが人情だろう。
ところがイヒ野は、会いたいと思っているのは自分だけだと考えている節がある。
あれだけギソコが愛情表現をしているというのに、だ。
(鈍すぎるんじゃねえか、イヒ野)
最初は態度で示すだけだったギソコも、言わなきゃわからんとみて散々言葉にしたのだ。
似合わないと思いつつも、会う度に繰り返し『甘い言葉』とやらを吹き込んでいる。
にもかかわらず、イヒ野はどうも反応が薄い。
もちろんイヒ野がギソコを好いてくれているのは確実だ。
そこを疑ったことはない。
生来の性分からか、あまり素直に気持ちを口にはしないが、時折なんとか応えようとしている
のも分っている。
544 :
蟲帥 3/4:2006/06/19(月) 23:20:07 ID:nxCLiMFc
「無理しなくてもいいんだがな………」
ぷかりと煙を吐き出して溜め息をつく。
別にイヒ野に自分と同じ言葉を強要するつもりはない。
彼に望むのはただ一つ。
ただもう少し、ギソコがイヒ野を好いているという事実を認めてもらいたいだけだ。
寂しい日々を送らせていることも、不安にさせていることも、心底申し訳ないと思っている。
里心がつくのを恐れて手紙に返事を出さないのも、気にしてはいる。
こうして考えると自業自得かもしれない。
しかし。
しかしだ。
いい加減気付いてくれてもいいだろう。
お前よりも俺の方が、お前を恋うているのだと。
「それこそ無理かね」
前途多難な未来を暗示するように、天からぽつぽつと雨が降りだした。
ギソコの髪に落ちた雨粒が滑り落ち、煙草にじわりと染み込む。
545 :
蟲帥 3/4:2006/06/19(月) 23:21:29 ID:nxCLiMFc
「チッ」
小さく舌打ちをするが、それで雨が止むはずもない。
いつもならば雨宿りもでもするところだが、ギソコは歩みを止めぬまま外套を脱いで、頭の上から被った。
ここで休めば着くのは夜になるだろう。
それならいっそ、濡れてでも。
―――――――杯を片手に、目を細めて笑うイヒ野を思い出す。
(こんな時に浮かぶのが、酒を飲んでる姿か)
自分の想像に苦笑しつつ、雨の向こうを透かし見るように視線を遠くへと向けた。
もちろん、何も見えるはずはない。
だが、ギソコは満足そうに蟲煙草の煙で輪を一つ作ると、海辺の村を目指して、ゆっくりと尾根を降り始めた。
想い人の待つ家を目指して、一歩ずつ。
…………嗅ぎ慣れたはずの蟲煙草に混じって、僅かに潮の香りがした。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ あわわ、3/4が二つになっちゃった………
| | | | ピッ (・∀・ )しかもギソコがイヒ野に負けず劣らず乙女だ('A`)
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
>>542-545 姐さん待ってた! 萌え転がったよ!
ハァハァ(*´д`)乙女ドントコーイ!
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| も/や/し/も/ん 幼馴染二人組
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| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 単行本派なので未収録部分との矛盾があったらスマソ
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ オサナナジミモエ-
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
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「……やめた」
通信ボタンを押そうとしていた親指を終了ボタンに滑らせて、直.保は溜息をついた。
結.城.蛍。表示されていた名前が消えて、液晶が待ち受けに戻る。
どうせ、電話しても出ない。
蛍、元気か? こっちは今日試験が終ったとこだ。夏休みは実習まみれだけど、なんと実習先は沖縄だぜ。イエー!
せめてメールを打って、送信ボタンを押した。
履歴には蛍への送信の記録ばかりが山ほど溜まっていて、タイトルにRe:マークのついた受信メールなんて一つもない。それでも、出てさえもらえない電話よりはマシだと思った。
「ああもう、バッカみてえ!」
ちゃぶ台に携帯を放り出すと、直.保は畳の上にごろりと横になった。
大学に出てこなくなり、連絡が取れなくなってしまった幼馴染は、今どこで何をしているのか。
祖父同士の仲が良いのだから、救援物資の礼を言いに実家に電話した時にでも訊いてみればわかるのかもしれないけれど、なけなしのプライドが邪魔をした。
蛍は計画性のないことをする奴ではない。それに、入学したばかりの大学を自主休学したのだ、相当の考えがあったはずだ。
それなのに、親友だった筈なのに、自分には相談もせずにさっさと決めて、どこへ行くのかさえも言わずに姿を消した。
……なんてことを身内に知られるのが嫌だったし、何よりも。
なんだおめえ、まぁだ蛍君がいなけりゃ何ぁーんもできねぇのか。
祖父はそう言うに決まっている。
「んなわけじゃねえよ」
電話口で呵々と笑う声さえも想像できて、実際に言われたわけでもないのに面白くない気分になって、直.保は小さく唇を尖らせた。
樹.教授や、樹研究室に出入りしている先輩連中は何やかやと構ってくるし、授業中は大体のところ及.川と居るしで、大学生活で寂しいと感じたことはない。
ただ、子供の頃からいつも手が届く隣に居た奴が居ないというのは、なんだか身の回りの密度が急に下がったような気がするというか、風通しが良すぎるというか、スカスカして感じられる。それだけだ。
ちゃぶ台の上の携帯が省力モードに入ってライトが消えると、途端に部屋の中が薄暗くなる。上目に窓を見ると空が紺色で、いつのまにか日が暮れていたのだと気が付いた。
明かりをつけるために立ち上がるのも億劫だったので、直.保は枕代わりに座布団を引っ張って耳の下に敷くと、横向きに寝転がった。テスト勉強で、昨日までほとんど徹夜だったのが効いていて、瞼が重い。
トロリと閉じかけた目の前に、小さな光が現れた。
それは、蛍とか夜光性の茸とか、そういうものが発する燐光の色に、少し似ている。
ぽつぽつと現れた光の点、一つ一つの中心に、小さな生き物たちが居た。
見覚えのある奴らだ。
「あー、黒カビと青カビかー……」
呟く直.保にお構いなしに、カビたちはワヤワヤと、畳の上で井戸端会議などしているようだ。
そう言えば何日か前の朝、その辺りに牛乳をこぼした。遅刻しかけで急いでいたものだからロクに拭かなかったのが災いして、そこには菌糸を張るための水分と栄養がたっぷり、というわけか。
「悪いけどさ、畳かもすのは勘弁な。お前ら落ちねえんだもん……確か台所に期限切れの食パンがあるからさ、そっちに行ってくれよ……」
じゃあ今すぐここにそのパンを持って来い、と言われたが、もう体は睡眠モードに入っていて、指一本動かす気になれない。
(なんか最近、俺、菌たちとよく会話してんなあ……。やっぱ、ペットでも飼ったほうがいいのかもなぁ……)
ぼんやりとそう思ったのを最後に、直.保の意識はことりと眠りの闇に落ちた。
水の中や土の中、ありとあらゆる場所にわらわらと居る小さな生き物たちが、自分にしか見えないものだと知ったのは、物心ついてからしばらくしてのことだった。
見えるから見える、居るから居ると、直.保はただ見たままのことを口にしているのに、誰もが首を傾げるだけ。
終いには、嘘を吐くなと言われたり気味悪がられたりするのが大概で、直.保の言うことを信じて受け入れてくれたのは、祖父と、幼馴染の蛍だけだった。
『……けい』
砂場やプールに見覚えのないやつが居た時、悪さをするやつを見つけた時。
どうしていいか分からなくなると、直.保はいつも蛍の手を引っ張った。
『目ぇ瞑れ、直.保。あっち行こう』
そうすると蛍は直.保の手を引いて、離れたところへ連れて行ってくれる。
目を閉じて何も見えなくても、前を行くのが蛍だと思ったら怖くなんかなかった。
ぎゅっと握ると、ぎゅっと握り返してくれた暖かい手の感触を、今でもたまに夢に見る。
――こんな風に。
『けい』
夢の中で、直.保は目を開けた。
この薄暗さは、実家の蔵だ。
直.保を振り向いた蛍は子供用の礼服を着ていて、白いシャツが青白く光って見える。蛍の目は真っ赤で、直.保はそれを見て、そうだ、と思い出す。
これは、結.城.酒.造が蔵まるごとの腐造を出したあの夏の、蛍だ。亡くなってしまった杜氏の葬儀から帰って来たところ。
色が白くて顔が可愛くて、周囲から女の子みたいと言われるのを気にして、蛍は常々、男らしく振る舞うということに拘っていた。
その蛍があんな顔をしているのを直.保が見たのは、あの日だけだ。
爪が食い込むほど強く握られた手が痛かったけれど、直.保はただ蛍の手を握り返した。
そうすると蛍の顔がますます歪んだ。
『ごめん直.保、目ぇ瞑って』
震える声で言われて、直.保はまた目を閉じる。
手が離れた、と思ったのは一瞬で、すぐに、背中に腕の回る感触。まるで溺れている人間が助けの手にしがみついてくるように、強い力だった。
ぎゅう、と縋ってくる蛍の体は、熱が篭ったように熱い。
ぎゅう、と、直.保は蛍を抱き返した。
肩口に蛍の頬が触れていて、蛍の体温と同じに熱い雫でTシャツの生地が濡れるのが分かった。
蛍が泣きやんだ後も、姿が見えないのを心配した祖父が探しに来るまで、随分長いこと抱き合っていたのを憶えている。
目覚めると、辺りが真っ暗だった。
「うわ、何時だ……?」
直.保はのろのろと起き上がると、ちゃぶ台に手を伸ばして携帯を開いた。
辛うじて日付は変わっていないが、真夜中だ。少しうたた寝するだけのつもりだったのに、時間を損した気がした。
「……また、古い夢見るし」
真っ暗な部屋の中、呟く。
『直.保』
夢の中で聞いた、幼い日の蛍の声を思い出した。耳元で、唇の動きがわかるほど、吐息が首筋に触れるほど、近くで聞いた声。
妙な懐かしさというか、胸を絞られるような感情を覚えた。
中学高校と進めば、そうそう子供の頃のようにくっつき合うこともなくなる。声の近さのほかに、もう一つ今とは異なる点があった。
そういえば、いつから。
蛍に、沢木と苗字で呼ばれるようになったのだろう。
「…………ヤメ」
考えることを放棄して、頭を振り、直.保は立ち上がると明かりを点けた。
足元、眠る前にカビたちが騒いでいたあたりが少し黒ずんでいるのを発見して、あーあと呟く。
明日は午前中に部屋を大掃除して、昼から買い物に出かけよう。
沖縄に行くんだから、帽子と海パンを買うのだ。
実習の合間に遊ぶ時間くらいあるだろう。
連絡の一つも寄越さない幼馴染のことなんかこっちから忘れて、チャラく遊びまくってやる。
どうせなら一緒に行きたかったなんて、誰が思うものか。
次に会ったら、せいぜい思いっ切り自慢してやる。
唇をへの字に曲げたところで、ぐうと腹が鳴った。そういえば夕食もまだだった。
「とりあえず、飯食って風呂入って寝よ」
着信履歴の無い携帯を睨みつけると、直.保はまず台所へと向かった。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 乙女だな……。
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
長いって言われて5分割に……。3/4が二個ありますゴメソ。
あと改行とか見難かったらスマソです……。
萌やされました(*´Д`)
いいかもしだったよ(`・ω・´)
558 :
読心術(始):2006/06/21(水) 10:45:23 ID:ZETajrIF
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| お邪魔しますモナ
____________ \ _ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄V |60年代洋楽飴ナマモノ2人組(シ"ェリー×卜厶)。
| | | | \ 妄想舞台は'63年11月後半、22歳
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) ジケイレツ
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノコンランギミ
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
久々ですが、相変わらず長文萌吐きの場を借りに参りました。
多レス消費してしまいますが、一気に貼りますスマソ。
14スレの464-473と繋がっていますが、話は多分独立しています。
視点の入れ替わりがあります。
<注意>
・両名とも少々性格悪化気味です。雰囲気もちょっと暗めです。
・流血はありませんが、跡が残る程度の暴力的な行為が行われます。
・暴力的なイメージも出てきます。
・一応エロありです。
「…学生時代の卜マス…卜厶がどうだったかって? 彼はとにかく優しくて、
多少物思いに沈みがちな青年だった。あの性格の人間がショービジネスの
世界に進んだのは、『滑稽』と言うしかないね。
私たちは一時期、一緒に歌っていたんだ。
2人ともギターは下手だった。…彼の方がまだましだったかな。
“今度ギターがすごく上手い友人が来るから紹介するよ。一緒に歌ってみない?”って
ある日彼は僕を誘ったんだよ。そう、彼らはデュオじゃなく、トリオになる可能性も
あったというわけ。その誘いに乗っていたら今頃私も大金持ちだったかもね…(笑)。
……まぁ、私はシェ一クスピアに専念する人生以外眼中になかったから、
遠慮させてもらったけれど」
(スティ一ヴン・グリ一ンブラット/ハ一ヴァ一ド大学人文学部長
―2001年3月,大学新聞の取材に答えて)
「これは1963年に、卜厶のために書いた曲です。
当時彼はニューヨークのフォーク・クラブでソロとして歌っていました」
(シ"ェリーによる曲紹介―1965年BBCラジオ)
**********
その時代の大多数の若者と同様に、彼らもロバ一ト・ジマ一マンから強い影響を受け、
ギターを手にフォークソングを歌うようになっている。
2人は機会があれば一緒に歌うが、その機会は以前ほど多くはない。今では彼らは
違う世界に属しているから。
順調に大学を卒業したシ"ェリーは、音楽出版社で働きながら、イギリスとアメリカを
行き来しては演奏のキャリアを積んでいる。プロのミュージシャンであると自認し始める。
彼はミュージシャン達の集まるクラブや、労働者向けの酒場で歌い、演奏と交渉の
腕を磨いていく。
560 :
558:2006/06/21(水) 10:59:47 ID:yBaZEw4Q
申し訳ありません。PCの接続がうまくいかなくなってしまいました。
失礼いたしました。直ったらまたお邪魔させて下さい。
イギリス滞在中のシ"ェリーを、数回卜厶が訪ねる。異国の舞台に上って共に
歌うことも、客席でシ"ェリーが歌うのを―ソロでも、他のミュージシャンと一緒の
場合も―聞いているだけのこともある。
作曲を続けているのはシ"ェリーだけだ。シ"ェリーは離れて過ごすことの多い今でも、
曲を作ると真っ先に卜厶に聞かせたい、彼の感想を聞きたいと願う。現在彼が
作る作品は内省的なものが多く、その歌詞には彼が感じている疎外感が色濃く
現れている。卜厶はその内容を正確に読みとり、心から賞賛した後、彼を
抱き締めて少し不安そうに囁く。
「そんなに孤独? 寂しい? 僕がいても?」それを聞くとシ"ェリーはニヤッと笑う。
「ああ、お前といるのは、完全な存在になることだから。
唯一無二に完璧だから、釣合う奴なんていない…だから俺たちは絶対的に孤独なんだ」
卜厶はその発言の傲慢さを楽しむ。彼らは目を合わせて笑い、もう一度身体を重ねる。
その卜厶は大学卒業を目前にした時期に、建築家には向いていないらしい、
そもそもなりたいと思っていない自分に気づく。良い成績を保ってはいるが、
自分は数年間を無駄にしたと悟る。彼は芸術史に専攻を変更し、また一から
勉学に取り組む。
卜厶は大学院に進学するつもりだし、再び専攻を変えるつもりだ。自分が
昔から本当に大好きだった科目―数学に。
その決意を聞いたシ"ェリーは、何も言わずに口元に皮肉な笑みを浮かべ、
自分の予言の実現を寿ぐ。
かつて出したレコードの印税はとっくに使い果たしている。現在は同じ大学の
学生とアパートをシェアして家賃を節約し、奨学金と家庭教師のアルバイトで
生計を立てている。その仕事は彼に向いている。彼は将来数学者、あるいは
教師になろうと思っている。
彼も歌っているが、歌う場所は大学の友愛会や学生の集まるクラブだ。
仲間内の和やかな雰囲気の中、暖かな拍手に包まれて。
ある日、シ"ェリーは卜厶から、ルームメイトがしばらく留守にするので、
部屋に遊びに来るよう誘われる。
「ぁ…あと、近頃よく一緒に飲んでいる人、英文学が専門なんだ。
君と話が合うと思うよ」
シ"ェリーは電話口で怪訝な表情を浮かべる。卜厶が自分の友人を紹介するのは珍しい。
顔を合わせるのは一月ぶりくらいだ。卜厶はシ"ェリーの爪先から頭まで、値踏みする
ような視線を這わせ、その後意味ありげな笑みを向ける。
「なんだよ」
「いや、"セクシー"だな、と思って。感心しているんだよ」笑って続ける。
「そのマント、似合ってるよ」その後は彼特有の喉を鳴らす笑い声のみで言葉にならない。
シ"ェリーは自分が纏っている服を見下ろす。便利なので最近愛用している黒いケープ。
卜厶は相変わらずくたびれたシャツとジーンズ姿だ。
「進歩のないお前に言われたくないね」その服の裾をつかんで引き寄せ、抱き締める。
部屋で、彼のルームメイト、サンディと顔を合わせる。
「自分の部屋と思って寛いで下さいね」と言う彼は、ほとんど目が見えないらしい。
卜厶が時折手を添えて動作を助けている。卜厶と同じく学生だと聞いていたので
不思議に感じる。どうやって学生を続けているのだろうか。
「ああ、いつも卜マスからお話を伺っていますよ。子供の頃からとても仲が
良かったって。一緒に歌っていたんですよね。ギターの名手だとか。
滞在中に奏法を1つくらいご伝授いただけたらありがたいのですが」
『英文学専攻の』スティ一ヴンは、卜厶を卜マスと呼ぶ。彼はその少々仰々しい
正式名で呼ばれるのを嫌っていたはずだ。卜ミーと呼びかける自分が子供じみて感じられる。
「ええ、僕は成長が早くてね」シ"ェリーはにこりともせずに、真面目な口調で返す。
イギリスで身につけた手法だ。
「生後3週間でベッドに座って、僕の顔を見に来た彼のお母さんにこう言ったんだ。
“ねぇ、早く卜ミーを産んでよ。僕、寂しくなってきちゃったんだ”」
スティ一ヴンは声を立ててひとしきり笑い、
「本当にあなたたちは無二の親友なんですね」と言う。その慇懃な態度が癇に障る。
年下なのに、卜厶の保護者のように振舞うこの男。彼は自分と卜厶が同じ人種だと
思っているのだ。(「卜マスとはサマースクールで知合ったんですよ。
2人ともアルバイト講師でしてね」)衒学的な言辞を弄し、歌を『趣味』とする、
象牙の塔の住人だと。
…卜厶は歌うために生まれてきた生物なのに。
「卜マスのルームメイトに会いましたか?緑内障なんですよ彼が学生で
いられるのは卜マスの尽力のおかげって知ってますか?毎晩彼にテキストを
読み聞かせているんですよ本当に得難い友人ですよねぇ?」
スティ一ヴンが息を継がずに畳みかけている。
卜厶の顔を見ると照れくさそうだ。会わない間に、彼に妙な癖がついたことに
シ"ェリーは気づく。会話が途切れたときなどに、グラスを持っているときには
空いた右手を自分のうなじに這わせ、両手が空いている時にはもう一方の手の指で
下唇を軽く擦る。
「スティ一ヴ、大げさだよ。本当にちょっと読んでるだけだし、ブレスの練習になるし」
話題を切り替えようとするかのように、卜厶が身を乗り出す。
「君にプレゼントがあるんだ」シ"ェリーに告げてスティ一ヴンの肩を突つき、
一緒に立ち上がる。
彼ら―卜厶とスティ一ヴン―はステージに立ち、2人でシ"ェリーの作った曲を歌う。
小品だ。卜厶に歌わせるために作って、イギリスからその楽譜を送った曲。
彼が一人でも演奏できるように、少ない、簡単なコード構成の反戦曲。
席に戻ってきたスティ一ヴンをねぎらう。
「手応えは?」
「私には少々難しいですけど、なんとか」彼はまた慇懃に微笑む。
シ"ェリーの反応を待ち構える表情を浮かべる卜厶には声をかけない。
2人きりになったら、彼と少々話し合うことがある。
部屋に戻ってシャワーを浴び、多少酔いのまわった身体で寝支度を整える。
ルームメイトの視力の悪化以来同室で就寝しているらしく、ベッドが2つ、
きつそうに並べて置かれている。
**********
卜厶はベッドに腰かけ、目の前に立つシ"ェリーを見上げる。帰宅後、よそよそしい
態度をとり続ける彼が不可解だ。
親密さを取り戻すため、キスをしようと立ち上がりかけるが、肩を押さえられる。
良くない兆候だ。彼は自分を見下ろす体勢を保ちたがっている。
その手が移動して、卜厶の右頬にシ"ェリーの右手、正確には爪の部分だけが
そっと添えられる。彼の指に染み付いたギターの弦の鉄のにおいが鼻を突く。
「お前は俺の心が読めるだろう? 俺は今何を考えている? 当ててくれ」
「わからない。怒っているとしか。何に?」
シ"ェリーが溜息をつく。唇が皮肉な薄笑いを形作る。
「…ああ、本気でプレゼントだったのか。お前の悪い冗談かと思っていたけど」
「下手だった?」
「ちゃんと歌えていたのはわかっているんだろう?
1つ質問するから答えて欲しい。
…どうして『お前のための』曲を他の人間が伴奏して、一緒に歌っているんだ?
お前にも弾けるコードだけで作ったはずなんだけどな」
「弾けたよ…弾けたけど、歌いながらは押さえられなかったんだ。
練習していたら、彼が伴奏してあげるって言ってくれて」
「ああ、そうなんだ。それに飛びついたってことか」
指にほとんど力は込められていないのに、卜厶は頬にひどい圧迫感を感じる。
気のせいなのはわかっているのだが、どうにもできない。
その指を咥えて舐めて彼を昂ぶらせ、セックスに持ち込んで全てをうやむやに
してしまえたらどれほど楽だろう。最終的には彼は今夜も自分を抱くのだろうし。
しかし自分はそんな行動をとれる人間ではない。
口中に飲み込めない唾液が溜まってきている。それなのに口から喉にかけて
カラカラに乾いている感じだ。無言のまましばらく見つめ合う。
シ"ェリーの頬が緩む。
「卜ミー…」笑いを含んだ声が名前を呼ぶ。
「なに?」唾液のせいで、自分の声がくぐもっているのがわかる。
「目の色が濃くなってきてる」
シ"ェリーによると、自分は感じ始めると目の色が変化するらしい。真偽はわからない。
右頬から離された彼の指の腹が、今度は左頬を撫でる。極々軽く、力は入っていない。
ギターを弾き慣れた彼の指先は少し硬くなっていて、頬の皮膚を微かに引張る。
しかし自分は知っている。彼の手がどれほど力強く、同時に繊細に動くか。
自分が身につけることが出来なかった器用さで。耳元に口が寄せられる。
「2ヶ所コードが変わっていたのは、お前のアレンジ?
ボーカルはそのままで、合っていなかったよな」
「…スティ一ヴンが、弾きづらいから変えさせてって」
返すシ"ェリーの声にはっきりと嘲笑が現れる。
「お前でも弾けるのに?
…可哀想に。可哀想な卜ミー、お前がそんな奴の伴奏で歌うなんて」
「なんでそんなに突っかかる? 君だって他の人と一緒に歌っているじゃないか」
「俺は仕事で歌っているんだ。必要なら誰とでも歌う。
お前は違うだろ。あいつと一緒に俺の曲を歌うのは楽しかったか?」
そこでシ"ェリーは一度悲しげに首を振る。偽りの納得をその声に込める。
「あぁ、そうか。わかった。…結局、あいつも俺もお前にとっては同じか。
歌う自分の伴奏者…どうせ俺のこともそうとしか見ていないんだろう」
卜厶は必死で首を振って否定する。今夜のシ"ェリーは怒っているのではない
―その場合の対応なら熟知している―傷ついているのだ。
しかしシ"ェリーはその口調を保ったまま問い続ける。
「もう1つ聞くけど、どうしてそんなに敏感になっているんだ? なにもしていないのに」
否定しようとするが、無駄だろう。自分が欲情していることは隠せなくなっている。
触れられた頬が熱くなっている。息が浅くなっている。
そして何よりも、脚の間に熱が集まりだしている。
「久しぶりに君の前で歌ったから、興奮しているんだろう」
「今日紹介された『おともだち』の誰かに開発してもらっていたのかと思ったよ」
「…彼らはそんなこと求めない」
「ふぅん、"求めない"んだ。
…求められたらどうする?応えるのか?俺に応えてくれたように。サンディはどうだ?
『テキストを読む以外にもその口を僕のために使って』って頼まれたらどうする?
お優しいお前は尽くしてあげるのかもしれないな」
「そんな仮定の質問には答えたくないね」
「仮説を立てるのが学者の仕事だろ、目指すなら考えてみろよ」
困惑顔の卜厶の両手がまた上がる。右手が首の後ろに回ってうなじの毛を引張り、
左手の親指の先は口元を擦りだす。
その両手首を掴んで身体から引き離して下ろさせる。彼の首の後ろに左手を
沿わせて頭を支え、キスして舌で口内を探る。その後口を離して下唇を舌先で辿る。
彼は目を閉じ、全身を震わせる。
「必要なのはこの感触?」
卜厶が目を閉じたまま軽く頷く。
「自分で再現したかったのか?…変な癖をつけて、可哀想に。
あいつと一緒に歌う? 嫌だね。3人でなにか一緒にしたいなら、今すぐここに
呼び出せよ。お前をあいつと2人で抱いてやるから」
卜厶が目を開いてシ"ェリーを見上げ、睨みつける。
「…彼は僕にそんな関心は持っていない」
シ"ェリーは怖じることなく見返し、こう吐き捨てる。
「お前の身体には興味なくとも、ベッドの中でお前の声がどう変化するかは彼も
知りたいだろうよ」
「僕の声をそんなに高く評価してくれて、本当に嬉しいよ」
卜厶が目をそらし、苦い笑みを浮かべて呟く。その顎を掴んで引き戻し、再び
視線を合わせ続ける。
「ごめん…勝手にあんなことをするべきじゃなかった」卜厶が謝罪する。
シ"ェリーは微かに勝利の笑みを浮かべる。
「お前が好きなようにアレンジするなら、歌いやすいように変えるならいいんだ。
お前のために書いた曲なんだからな」
もう一度身を屈めて口づける。口を開くと、卜厶が躊躇いがちに舌を差し込んでくる。
舌の先端が触れ合う。
一瞬、後頭部に熱した針を刺し込まれたように感じる。彼の舌に軽く歯を食い込ませ、
ある暴力的なイメージを思い浮かべる。
―このまま噛切ったらどうなるだろう。
舌がなくても声は出せるのだろうか…響く空間が増えて、声そのものの美しさは
増すかもしれない。
言葉を発することができなくなり、美しい鳴き声を上げるだけとなった彼を思い描く。
喋れなければ、同室の男に読み聞かせもできなくなるだろう。コミュニケーションを
取れる相手は自分だけだ。彼の心が読めるのは自分だけだから。
卜厶が大きく目を見開く。先刻と異なり、彼の瞳孔は針で突いたように収縮している。
彼はその想像を正確に読み取り、怯えているのだろう。
―ほら、やっぱりお前には俺の心が読める。
こんな時でも、それは強い喜びをもたらしてくれる。
しばらく舌を強く絡めあった後、顔を離し、
「俺はいったいどうしたいのかな?」と卜厶を見下ろしたまま尋ねる。
「僕を抱きたいんだと思う」
「どんな風に?」
彼は肩をすくめて、わざとらしく軽く答える。
「さぁ、そこまでは。お好きなように」
「なら、言う通りにしてくれる?」
彼が頷く。少し安心したようだ。いつものようにおどける余裕が出来たらしい。
「物理的に不可能でなければ」と彼が言い添える。
「四つん這いになって腰を持ち上げて誘って。…盛りのついた雌猫みたいに」
卜厶は表情を再び強張らせるが、溜息を吐くと無言で服を脱ぎ、ベッドに
上ってうつ伏せになり、腰を持ち上げる。その背中が反り返っている。
「相変わらず身体柔らかいな」と言うと、彼の顔が埋まった枕から言葉が返ってくる。
『…゛っと……君と………ている…らね』
ほとんど聞き取れないが、どうせ自分達の身長差について皮肉を言っているのだろう。
腰をつかみ、濡らした先端を押し当てる。そのままゆっくり貫いていくと、彼の背が
さらに反らされ、顔が枕からもちあがる。枕から離れた口から大きな呻き声が漏れる。
収めてからしばらく静止して前を愛撫すると、声は喘ぎに変化し、背中が汗ばみ始める。
その背筋を舌先で辿っていく。彼の首の付け根に唇をつけ、囁きかける。
「なぁ、お優しいチェシャキャット…猫の交尾ってどんなものか知っているか?」
返事を待たずに続ける。「雌の頸を咬んで押さえ込むんだってさ」
大きく開いた口から乾いた笑い声を洩らし、そのまま強く噛み付く。卜厶は痛みに
再び背中を大きく反らせる。全身が強張り、シ"ェリーの器官がきつく締めつけられる。
シ"ェリーは口を離して低く呻き、
「これは予想していなかったか?
そんなにサービスしてくれなくても、挿れているだけで十分気持ちいいぞ」と告げる。
「痣になるだろうから、見られたくないならしばらく襟を立てておいた方が良いと思う
…けどお前、服の着方がだらしないから心配だな」
そして今度は両腿に添えた手の指に力を込める。前に逃れようとする彼の皮膚に
シ"ェリーの指先が一層喰いこむ。
「そうすると余計痛いだろ。…お前が見られる場所に、痕が消える目安を
つけておきたいんだよ」
内容と行動にそぐわずその声は優しい。
卜厶はシ"ェリーの指がやっと離れた足に力を込めて腰をもう一度持ち上げ、
シ"ェリーに押し付けて動かす。彼が好むように。
シ"ェリーの声が裏返り、喘ぎ混じりのファルセットとなる。それを耳にして卜厶は、
この瞬間―シ"ェリーに表情を見られない態勢で、自分は快楽に呑み込まれる前―
にのみ自分に許す行動をとる…口元に傲慢な笑みを浮かべるのだ。
その後はその口からも喘ぎ声が零れだす。しかし頭の片隅、どんな環境下でも
『観察者』である彼の一部は考え続ける。
―この結果を自分は予期していたのではないか?…彼の曲を別の人間と歌う姿を見せ、
あのアレンジを聞かせて、彼が喜ぶと本当に思っていたのか?どうなるかはわかって
いただろう?
彼の心はその問いに肯定の答えを返す。
『彼だけ』だ。優しくない態度をとっても大丈夫だと思えるのはシ"ェリーに対してだけ。
関係が続くと確信できるのは彼とだけ。見返りが欲しくて優しく振舞う訳ではないけれど。
―なんて粗末で未熟な社交術…
卜厶は自嘲し、思考を止める。肉体の感覚に集中する。彼の手が優しく愛撫している。
彼は卜厶にどう触ればいいか熟知しているし、卜厶はシ"ェリーの自制心を奪うには
どう動けばいいのかを心得ている。
久しぶりだったからか、あるいは先ほどの小競り合いで興奮したのだろうか、
二人ともほぼ同時に、あっけなく達してしまう。シ"ェリーが卜厶の背に身を凭せ掛けて
顔を覗き込み、彼らは決まり悪げな微笑を交わす。
「お前が変えたいなら、変えてもいいんだ」シ"ェリーがまた囁く。
翌朝、鏡に映した背中をしかめ面で卜厶が見つめている。くっきりとした歯形。
腿についた指の痕。自分が男に組み伏せられ、両脚を押し拡げられていたことを示している。
寝室に戻ってシ"ェリーを睨みつけ、
「これが狙いだったんだろ」と言うと、彼が誠実そうに笑って
「いや、夢中だったからね」と嘯く。
通常のシャツで覆い続ける自信がなかったため、彼はその後しばらくハイネックの
服を着用する。不平を零しながら。
シ"ェリーの指導の下、卜厶はその曲をなんとか一人で演奏できるようになる。
まもなくスティ一ヴンは自分の大学に戻り、アートの記憶からその名前も消えていく。
だが『自分のため』に書かれたその歌を卜厶が忘れることはない。
数年後、イギリス民謡を基とした作品に取組むときに、卜厶が新たに曲をつける。
シ"ェリーの作った原曲とは異なる、主旋律に完璧に対応するハーモニーパートとして。
それは“詠.唱”と名付けられる。
彼らの全作品中、この1曲のみ『作曲者』として卜厶の名もクレジットされている。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ イツモアリガトウゴザイマス
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
長文多レス消費、そして私的な萌エピを数点入れたかったために
801と関係の薄い部分が長く続いたことをお詫びいたします。
途中、PCトラブルで一人見苦しく慌てて申し訳ありませんでした。
>>558 ずっと待ってた!投下してくれてありがとう!
攻の
>喘ぎ混じりのファルセット
がイイ!
>>558 わーい待ってました!
あなたのおかげで新しい萌え新地を開拓できました。
表現もネ申!
キテタ――――(゚∀゚)――――!!!!
>>572 我も我も。ファルセット(・∀・)イイ!!
男は音域広くて色んな声を出せるよね
保守っとく
ジャンル外なのにキュンと来ますた。
はまりそう…。
578 :
ウマ・1/2:2006/06/24(土) 17:46:43 ID:RaMacMly
ほしゅがてら、明日の夏のグランプリ
北の大地の星→三冠青年(→昨年冬のグランプリ覇者)……人間じゃないナマモノでスマソ
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「よ!お坊ちゃん、元気だったか?相変わらずすかした顔してんなあ」
こつんと頭を叩かれた感触と、聞き間違いようのない調子の声に僕は渋々そちらに顔を向けた。
「……お帰りなさい。ご病気もなく無事に帰国できて、本っ当によかったですねえ」
ちょっとだけ皮肉っぽく返事をすると、そこにいた彼はにやりと笑う。
洗練されているとは言い難い粗野な物腰や表情が、でも実際に彼の境遇を考えると返って
いやみがなく自然に様になっている。そんなことは絶対に彼自身に言ってやらないけれども。
「おお!お陰さまでな!しかもなんだか感謝状までもらったっさー!」
さー、で終わる語尾が、僕も育った地方の風を運んでくるようでつい顔が緩んでしまった。
それに、皮肉も通じてないし。検疫での騒ぎなんて、彼には何のダメージも与えなかったようだ。
まあそんなタフさがないと、毎回大変な行程を経て第一線で戦い続けることはできないんだろうな。
「国際レースを勝ったんですからねえ。あーすごいすごい、うらやましーい!」
彼はきっと気がつかない。そう思った僕は、ふざけた言葉の中に本音を少しだけ混ぜて茶化した。
国際レースでの勝利。
それは僕が、初めて僕を負かしたあの先輩と肩を並べるために今何よりも欲しいもの。
それを、目の前のこの相手はもう手にしている。胸の奥で何かがちりりと燃えていた。
579 :
ウマ・2/2:2006/06/24(土) 17:47:32 ID:RaMacMly
「んだよ、先輩に向かってそんな態度かよ!…なーんてな。お前さんだってこの後行くんだろ?」
案の定彼は僕の気持ちなんて考えもしないで、ぐりぐりと僕の頭を撫でた。
そう、この後僕も海外で戦う。そしてその初めての海外で、またあの先輩とも戦う。
はからずも同じものに登録していることを、運命だと思ってもいいだろうか。
今度こそ、勝てるのだろうか。勝ったら……振り向いてもらえるんだろうか。
そこまで考えても仕方がないけれども、考えずにもいられない。
そんな思考をうろうろしていると、いつの間にか僕の頭を撫でる手は止まっていた。
「なあ……今日のレースな、もし、もし俺がお前さんに勝ったら、お前さん少しは俺のことを」
不意に、低くてやたら真剣な声が響いてきたから驚いて、ぱたぱたと耳が立ってしまった。
唐突に何を言い出すのか、彼の真意がわからない。僕はそのままただじっと見返した。
それと、僕に勝つとか聞こえた気もするけど……冗談だよな。寝言は寝てから言ってもらいたい。
あの冬の時だって、四着だったくせに。
「いいや、やっぱりなんでもない!さーて、今日はどれだけ客入ってるかな!」
こっちのファンファーレ好きなんだよな、なんて余計おかしなことを言いながら、
僕達の故郷、まだ肌寒い北の大地からやってきた彼はそそくさと行ってしまった。
何だったんだろうと思いつつ、彼が運んできた新緑の匂いは妙に僕の心にいつまでも残った。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
北の大地の星、地味に凱旋門も視野に入ってるらすぃ
陣営が三冠君をばりばり意識してるのがモエ
遅レスですが…
>>110 大統領→三冠君だとヘタレ攻めっぽくてそれもイイ!
580 :
110:2006/06/25(日) 10:34:50 ID:2DOKWzbu
うわあああ!
そんな、今日は切るつもりだったのに、うっかり三冠(あらため四冠)君から馬単買いたくなるじゃないか……
ともあれGJGJー!
上司→秘書(一応モデルあり)
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
──これは勘違いだ、そんな事はありえない。
移動中の新幹線、彼は自分にそう言い聞かせながらスナック菓子をかじっていた。
車中での打ち合わせが一段落して話す事もなくなった今、彼の隣に座る秘書が興味深そうに彼を見つめているのだ。
彼の秘書として働くこの男は、実に献身的だ。
普段の周囲に対する気配りからすると、もともとこういう性格なのだろう。
もちろんそこを見込んで秘書という仕事を頼んだのだが、あまりに一生懸命なのでつい勘違いしてしまいそうになる。
浮かんでは振り払い、振り払ってはまた浮かぶそれを“勘違い”だと言い聞かせていた。
──もしかするとこいつは、俺の事が好きなんじゃないか?
努力家で献身的な性格の上に、秘書という立場だから自分に尽くしてくれているのだと言い聞かせる。
それでも、時々思ってしまうのだ。
その上に今、こうして興味深そうな視線に晒されていると勘違いもさらに深まるというものだ。
──こいつは一体、何を考えている?
彼が“勘違い”と戦っていると、沈黙を破ったのは秘書の方だった。
「お菓子、好きなんですね」
「え? ああ……」
手元のスナック菓子と秘書を交互に眺めた。
「たぶんそういうイメージないと思うんで、僕のブログで書いてもいいですか?」
そういえば本社命令でブログを書いていたな、と彼は思い出した。
──何だ、ブログのネタ探しか。
ほっとしたような、ガッカリしたような気持ちで承諾した。
新幹線が目的地に到着し、下車したところで秘書を食事に誘う。
ごく普通に快く答える秘書を見ながら、彼は心の中で叫ぶ。
──そんなにあっさりOKするなよ、俺はお前が自分の事を好きなんじゃないかと勘違いした男なんだぞ!
そう思いながらも、秘書の無警戒な笑顔を見ると健全な上司と部下の関係を続けていこうと決心するのだった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
>581
ブログ読んで悶々としてたら、キタ――――(゚∀゚)――――!!!
これは、すれ違ってる両思いと思っていいんですよね。
ストライクど真ん中だよ、GJ!
それにしても、あそこ関連のブログには萌えがいっぱいだなぁ。
583 :
風と木の名無しさん:2006/06/26(月) 01:23:22 ID:tk8BFMvF
ムキョー!!!!!!
ぴぃえむと秘書、これで3作目か。萌えるなあ
>>578-579 遅れましたがGJ!てか、来ると思ってたw
スポーツ総合スレ445で感想を書いた者です。
50嵐キシュが振り向いた時にちょい萌えた。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 北の国棒Q団らしいよ…。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 二枚看板の地味な方とQ団職員だって。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ヒドイモウソウダネ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
あいつの体を一番よく知っているのはこの俺だ。
どんなふうに触れたらどう反応するか、この手や指が全部覚えている。
試合が始まる前、あいつは決まって俺を呼ぶ。
俺と同じ仕事をしている奴は他にも何人かいる。なのに、いつも呼ばれるのは俺。
どうしていつも俺なのか。俺じゃなくたって誰でもできることなのに。
芝の上に敷いたマットにあいつが横たわれば、それは始まりの合図だ。
声をかけるでもなく、手招きするでもなく、ただ横になって俺が来るのを待っている。
今日はたまたま忙しくて、それに気づくのが遅れてしまった。
慌てて走っていくと、いかにも機嫌が悪そうな顔で俺を見る。
「遅い。」
「…ごめん、あっちでちょっとつかまってて。」
「そっか。」
素直に謝ったつもりだけど、それさえもお気に召さないらしい。
だって仕方ないじゃないか、俺はお前専属じゃないんだから。わがまま言うなよ。
言いたくても言えない言葉をぐっと飲み込んで、“今日の仕事”にかかる。
「痛いところとか張ってるところとか、ある?」
「全部。」
「…はいはい。」
膝を立てて仰向けに横たわっている、ただそれだけのことに静かな緊張感。
右膝に手をかけて、ゆっくり外側に開く。
う…ん、と目を閉じたまま小さくうめく様子に、どきっとしてしまう。
俺はストレッチの手伝いをしてるだけなんだ。何もやましいことはない。
「あのさ。」
「ん?」
「お前の手、好きだな。」
左側にも同じことをしようとして、不意にかけられた言葉。
落ち着け俺。ねぎらってくれてるだけだ。深い意味なんかないに決まってる。
早く冗談でかわさなきゃ。そう思うのに、口は開いてくれない。
「お前にやってもらうのが一番落ち着く。気持ちいいし。」
ああもう、ダメ押し。俺のすることをじっと見ながら、にこっと笑って言う。
この焦りっぷりを絶対に気取られてはいけない。いつも通りにやればいいんだ。
「…褒めてるんだぞ、何とか言ったらどうだ。」
「あ、あ、ありがとう。」
「何だ、どもったりして。変な奴だな。」
あきれたように笑って、うつぶせに姿勢を変えて次の工程を待っている。
機嫌のいいときにしか出ない鼻歌が、俺の耳をかすめていく。
無防備で鈍感。頭を軽くぶってやった。
俺の仕事は、あいつをできるだけ万全な状態で送り出してやること。
あいつの仕事がうまくいくなら、俺は他に何も望まない。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ アノストレッチエロインダモン
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
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| カイジとアカギの共演モナ!
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 続き物とかありえない…
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
男がそう言うが早いが、黒服が俺の拘束とボールギャグを解く。
突然のことだったので体勢が保てず床に倒れこんでしまった。
「それから、アカギ君…勘違いしてるようだけど、ありえないよ…ボクが掘ったり、掘られたりなんてのは…」
意味深に目配せをしながら男が言う。
掘る・・・言葉の意味が掴めない。
「ホントはカイジ君とウチの黒服でよかったんだけど…据え膳は頂かないと…ねえ」
それを合図に黒服の一人が何か棒状のものを持ち出してきた。
相変わらず暗くてよく見えないが、今度は黒服が近づいてきて服を脱がそうとするからそれどころではなくなった。
肘を曲げて脱がせまいとする刹那、アカギも黒服の一人を鮮やかに殴り倒すのが見えた。
結局、数に負けて情けない格好にされてしまったが…俺もアカギも。
「フフフ…」
色目というやつだろうか、そんな目で俺を見る男。咄嗟、背筋に怖気が走る。
「な…何をする気だ…!」
睨めつけて訴えても男は不気味に笑うだけ。言うだけ無駄だと思って目をそらした瞬間だった。
ケツに何か押し当てられている感触…
「う…わあっ!?」
飛びのこうとしたが黒服に囲まれていて、大した距離逃げられない。
そうこうしてる間も強く強く押し当てられる。
「くそっ…!ヤメ、ヤメロっ…!ぐっ…!ヤメロっ…!」
手も足も…挙句頭まで振り回して全身全霊で拒絶する。
どうかしてる…そんなものを…ケツの穴に…
「大層な悪趣味だな。どうする気だ…あんなもんを…?双頭になってたんじゃねえか?」
罰の悪い顔をしたアカギが男を睨みながら言う。
「ご覧のとおりカイジ君は暴れるでしょう。だから君は後から。大人しく見てなサイ」
そんな2人の会話を他所にますます強く押し進められる双頭バイブ。
痛みで顔を赤く青くさせながら、それでも、力いっぱいそれの侵入を拒んだ。
「ぐぐぐっ…!く…そっ…ヤメろっ…!!」
そのうちに俺は抵抗を諦め、出来る限り痛みから逃れられる楽な姿勢を模索した。
その拍子に、中のものがどこかにあたった。
「くっ…!」
異様な触感に気をとられた隙に、どうやらめいっぱいに押し込まれ終えたようだ。
半端ない痛みに頭がぼうとし、手足は痺れて感覚がなかった。
ただ、さっきの異様な触感だけが余韻のように残るだけ。
「ホラ、行きなサイ」
男がこちらにアカギを突き飛ばす。
アカギは舌打ちひとつしながらよろめいて傍に座り込んだ。
「いい加減にしろよ…っうっ…!」
大の男が四つんばいになって、アカギも逆向きにアレをねじこまれているようだった。
2人してやられたらマズい。俺とこの男の2人なら、逃げられる算段もあるやもしれない。
そう思い至るや、手足の感覚が戻ってきた。
「ぐ…」
「うぅっ…!」
俺とアカギの距離を引き離そうと、再び力を入れる。
2人の呻き声が響く。
「く…」
こめかみに汗が滲む。アカギの方はもう抜けそうだ。
そんな抵抗劇を男たちが黙って見守るわけがなく、アカギは再び押し戻された。
「っ…!」
脂汗をたらしながら、アカギが肩で息をするのを肩越しに見た。
いつの間にかビデオカメラを回しながら、男が近づいてきた。
「ぐっ…と、撮るなっ…!」
考えたら俺はこの上なく無様な格好をしている。羞恥心がこみ上げてきた。
「恥かしい?その姿勢じゃ辛いでしょう。アンタたち、仰向けにしてやりなさい」
言葉を合図に黒服達がやってくる。どさくさに紛れて体のあちこちを触られたが、
この上なく不安定な体勢なのでどうすることも出来ず、ただされるがまま仰向けにひっくり返された。
「くそっ…!くそっ…!くそっ…!くそっ…!」
そう言ってじた…じた…しても、ケツを貫く棒で男2人が繋がれてちゃあ、立ち上がることも出来ない。
悔しさがこみあげてきて、無駄と解っていても男を罵りながらじた…じた…してしまう。
「う…あっ…!」
反対側から、アカギの声が聞こえてきた。さっきから聞いてたのよりも、鼻にかかった声。
自分が暴れていて気付かなかったが、俺が暴れることによってアカギはかなりキツいのかもしれない。
そう思うとこれ以上動くわけにはいかなかった。
俺が大人しくなったのを見るや、黒服達がまたこちらに寄ってくる。
俺もアカギも動くに動けず、ただ男たちを睨んだ。
また変なところを触られちゃ敵わないと、腕だけでも使って些細な抵抗を試みた。
が、ダメっ…!
結果男たちは俺の方に集まってきて、腕も足も押さえつけられ、ますますされたい放題だった。
---視線しか…自由にならねえのかっ…!
悔しいが俺も男。意に介さず触れられれば勃つし感じてしまう。
ピク、ピクと反応してしまう自分の体が恨めしかった。
更に情けないことに、腰を動かしてはアカギにまで迷惑をかけてしまう。
見に覚えがないとは言え最初の狙いはどうやら俺の方。アカギはただ迷惑を被っただけ…!
そんなジレンマにさいなまれる間も悪戯される俺の体。
いつになれば終えるのか、と、一秒がとても長く感じられる時間の中気絶するまで嬲られつづけた。
『くそ…』
最後に囁いたとき、反対側からもアカギの声が聞こえた。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ イヤ、ナンカスミマセン…
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
>586
まさかあのストレッチが…
萌えますた、ゴチでした。
>>590 続きありがとう!!待ってたんで嬉しいよ!
GJ!!
>>590 続きをありがとう…!やさしいおじさん…っ!!
萌えますた!
598 :
風と木の名無しさん:2006/06/27(火) 00:02:04 ID:6O3ItkUT
芸人スレでラーメンズの短編ができたっていってた人、ここで是非
うpしてくださいね!!!!おねがいします!!!!
age厨氏ね
ageてなくても厨だという罠
つーか釣りだろ。
602 :
風と木の名無しさん:2006/06/27(火) 04:11:40 ID:HYfiW8Ne
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| STINGの「バロック」とかいうゲームらしいよ…。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 主人公と上級天使だってよ。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ヒドイモウソウダネ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「愚か者だよ。だが、わたしは好きだよ、そんな愚かなおまえのことをね」
目を見開いた。罪人に、彼のような導くものが向ける言葉ではない。ぼくは、とても大きな罪を犯したはずなのに。
そう、――罪を。
一際目の裏の収縮が激しくなって、痛みを堪えながら息をつく。心拍数が上がっている。いや、心臓は最初から血の音が聞こえるぐらいに脈打って
いるはずだ。指先が動かし辛くて自分のからだとは思えないのも――最初からだ。ぼくの自由になるものは視覚と聴覚と鈍い体の動きぐらいで、嗅
覚も味覚もきっととっくの昔に歪んでいる。指の神経も――歪んでいるはずだ。像のように立ち続けるモノ達も歪んでいるのだ、ぼくのように罪を背
負ったものが歪んでいないわけがない。
翼が少し揺れる。彼に生えているのは本物の翼だ。白くて、羽毛のように、体温がある。赤と黒にゆがんだ世界の中でひとつだけ潔癖なままの人な
のだと、ぼくは思う。導き手なのだから。
「さあ、これを使うんだ」
上級天使は――多分ぼくの目を見て――、天使銃を放り投げた。天使銃が大熱波の余韻である陽炎の向こうで歪んで、それを受け取ろうと手を伸ばすと――上級天使が消えていた。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ ネタニスラナッテナカッタ…
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
あ、好きな台詞があったので妄想解釈してみた結果です。
>586
遅くなったけどGJ!
鈍感で無防備な侍モエス
土方市村で。
明治二年、五月五日、鉄之介は土方隊長に函館湾が見渡せる、和洋の旅館に 呼び出された。
五稜郭以外に、土方が私用の品物を置くために使っていた、洋式 の部屋に市村は緊張して、土方の前に立つ。
土方の愛用の品を土方の郷里に届けるように言いつけられた市村は土方に向かって初めて会った時からの思い
をうち明ける_ずっと京都で耐え、函館で秘めていた思いを。土方への気持ちを。
「隊長、このお話はお受け出来ません、私は足手まといかも知れませんが、ここで隊長と討ち死にする覚悟です」
「うぬ、私の命令が聞けない、とあらば、お前は無用の食客だ、ここで討ち果たすぞ!」
「隊長、薩長の芋弾に当たって犬死するよりも、あなたの愛刀のお手討ちにあった方が
私は幸せです」「い、市村・・・」大きな琥珀色の瞳に大粒の涙が浮かぶ。
あどけない顔は悲しみに歪み、幼さの残る細い肩はがたがたと震えだした。
「わ、私は一人、生き残って生き恥をさらすよりは、何時までもあなたのお側で・・・!」
愛刀、兼定に手をかけようとした土方の腰に縋って、市村は精一杯気持ちを伝える。
「市村、私の気持ちが分からないのか?お前はまだ若い、生きて、この時代の流れを見届けるんだ」
「嫌です、嫌、です・・・私は隊長のお側に居たい、側を離れるなんて死ぬよりも辛い!」
「い、市村・・・お前・・・」「隊長、一目お会いした時から、ずっと・・・嫌です、側に置いてください・・・」
一途な告白と必死の懇願に、土方は市村が何を伝えようとしているのか、解った。
彼が欲しいのは脱走の末の延命でも、平和な生活でも無かった。
この血飛沫の飛び交う戦場で、時代に殉じる為に供に命を燃やす毎日だったのだ。
「市村・・・」土方に膝をついてしがみつき、泣きじゃくる市村の頭を優しく撫でた。
「俺は側に居たいという連中が何人も冥途へ消えたのを見た・・・沖田は結核で、野村は戦死、山崎も・・・」
「隊長・・・」(それはきっとその人達の本望だったのでしょう、私だって・・・)
「お前は、そうであって欲しくない・・・ん?」腹の下に顔を埋めて泣いている市村の顔を上げさせた。
長い指を添えて、両手で優しく丸い頬を包んだ。「副長・・・」悲しみの為に瞳を開ける事が出来ない
市村は唇に柔らかい物が触れても、それが何であるか最初は解らなかった。
暖かい舌が入り込んで来た時、それが土方の思いを込めた接吻だと解り、体の血が逆流するほど、驚いた。
「市村・・・お願いだ、聞いてくれるな?」「副長・・・」副長と呼びたい、今は_
人に命令するときは胸を張り、有無を言わざず思い通りに動かして来た姿を知っている。
それが今、自分には思いを託し、命を繋げようとしている・・・
その慈愛に満ちた姿は、市村の育った村の寺で見た、慈母観音の姿そのもの。
自分よりも他者に愛を注ぐ物が持つ、清らかな光が土方の顔を包んで居た。
「わ、解りました」_逆らえない_この人には_解っていた筈なのに_
「で、では、私のお願いも聞いてください」「うん?なんだ?何でも言ってみなさい」
「お、思い出を、下さい、私に一夜の思い出を・・・消える事のない、あなたとの思い出を・・・」
「思い出・・・」「一晩、わ、わたしを恋人にして、くだ、さい、誰、の変わりでも構いません」
「鉄・・・」可愛らしい、緊張して硬直した姿に、今まで堪えていた市村の思いの深さを知り、
心が温かい色に染まってゆく。さっきまで、氷柱が立つように、殺風景だった心の中に_
「何を言うか、俺は今まで、抱きたい奴の変わりに誰かを抱いた事など一度もないぞ」
「副長・・・」「抱きたい奴をいつも、思い通りに抱いて来た今夜も、そうだ」「副長・・・」
もう一度、市村の唇を土方は優しく吸った。そして心をほぐすように、舌を絡め、接吻の甘さを教えた。
また明日書き込みます。^^
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| いわゆる学園BASARA、需要0毛利×島津同学年ネタモナ。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 毛利ファンに怒られるんじゃない?これ
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ オクラノクチョウガチガウゾゴルァ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
AAずれてたらスマソ。
人も疎らな黄昏時。
ここは倉庫と校舎の少し狭い隙間。
「やじゃ・・・ぁ・・・っ!もと、な・・・」
「静かにしてね」
僕は今、彼を組み敷いている。
ないてるね
でも
そんなきみも
うつくしい
「やめ、て・・・」
その質問には答えない。
後ろ手にベルトで縛られていて、彼は自由に動けない。
勿論、僕がやった。
「もとなり・・・!」
僕を呼ぶ、その震えた声
僕を見る、その怯えた目
その目から流れて、頬に流れていく綺麗な涙
それさえも、愛しくてしょうがない。
「僕のために、もっと泣いてくれる?」
感情を殺した声で、言う。
すると君は
「ひっ・・・う」
そんなに恐く言ったつもりはなかったんだけど。
でも嬉しいな。
さっきより、綺麗な涙が溢れてきた。
くみしいている、ぼくと
くみしかれている、きみ
ああ
しあわせ
僕は行為を、進めた。
君のナカを、ぐちゃぐちゃに掻き回そうとした。
「嫌ばい!やめ・・・!だれか・・・っ」
君が哀しそうな声で叫んだ。
いやだよ
ぼくいがいのひとに
こえをきかせないで
「んっ!んぅ・・・!」
少し乱暴に、その口に同じものをあてて黙らせた。
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ乱暴過ぎたかな。血の味が口の中に広がった。
ごめんね。
でも、もう誰も呼ばないで。
大人しくなった君は誰よりもうつくしい。
美しい君を、僕は世界一愛してるから、
世界一の愛で可愛がってあげよう。
何回も、躯を重ね合わせた。
その度に君からでる、甘酸っぱいような声。
「っはぁ・・・やぁっ」
「可愛いね、義弘くん」
なんだか僕は、その声が出やすくなる部分が分かってきた。
ああ、愉しくってしょうがない。
薄く焼けた肌に唇を宛がい、印を付ける。
きみは
ぼくのものだよ
だれにもわたさない
気付くと君は、ぐったりしていた。
僕はベルトを解いて、きちんと服を着せて彼をおぶった。
僕より少し小さな躯から伝わってくる熱に、嬉しさが込み上げてくる。
明日もまた、一緒に遊べるかな。
「好きだよ」
終
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ セリフスクナイカラ他カプデモウソウシテモヨシ・・・
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
スレ汚しスマソ。寝ます・・・
二連発か
>>607 とりあえず長時間スレを占有しないためにも
メモ帳か何かにあらかじめ書いたものをコピペして
投下するのをお勧めする。
623 :
373:2006/06/28(水) 01:44:20 ID:YgaMbxFE
>>622 ご指導有り難うございます。癖で即興が好きなんですよ。
困りました。色々制約があるんですね・・・(・ω・;)
しばらくお休みして、また遊びに来ます。
もう二度と来ないでいただけると有り難い。
>>1と空気が読めないなら二度と来るな。
と言っておく
お前の好み(カプ・ジャンルではなく書き方)を押し付けられてもな
大体書き方というか文体が散文(ry
>>623 制約じゃなくて常識だよ。
それが理解できないなら、しばらくと言わず
永遠に休んでてください。
つーか普通にヘタだしね
下手とかそういう批判はやめとけ
批判じゃなくて感想だろ?
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 流れ豚斬るよ。
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| パソ整理して出てきたSSです。
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ もう自サイトでは使わないネタなんだ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
632 :
1/5:2006/06/28(水) 15:30:57 ID:uB663gCk
「じゃぁ、目を閉じて、頭の中に振り子を思い浮かべて…」
かわく唇を、何度も舌で湿らせながら、俺は手に持った本を読み上げた。
目の前の幼馴染が、言うとおりに目を閉じてくれる。
彼の額にかざした手の平が、熱をもったかのように熱く、じっとりと汗ばんでいた。
「思い浮かべた…? じゃぁ、それが左右に揺れるのをイメージして…」
クーラーがきいているはずの室内は、沼のように湿気が満ちている気がした。
それは、俺が心の中に抱いていた、汚い気持ちが、湿度として出てきたようで。
居心地の悪い気持ちを拭い去るように、俺はさらに言葉を重ねた。
「左右に振れる振り子が、メトロノームにあわせて揺れるようになるよ…」
先ほど、幼馴染が言ったように、俺はメトロノームの音を彼に聞かせた。
時計の秒針のように、規則正しく刻む音に、俺も少し落ち着いてくる。
「ねぇカイちゃん…イメージした…?」
「うん…」
少し、いつもよりぼんやりした口調で、カイちゃんが答えてくれた。
閉じたまま、ピクリとも動かないまぶたを、俺はじっと見る。
「じゃぁ、それが今度は左右から前後に揺れるのが変わるよ…ゆっくり…ゆっくり…」
そう言って、彼の両手を握りしめ、左右から前後に揺らすと、だんだん体全体が
揺れるようになってきた。さっき、俺が、カイちゃんにやってもらったのと一緒だ。
「気持ちいい…? じゃぁ、そのままゆっくり横になって…。体全体から力抜いて…」
俺は、カチカチとメトロノームが刻む音にあわせて、本通り、ゆっくりと喋った。
カイちゃんの体から、ゆっくりと力が抜け、ベッドに倒れこむのを慌てて支える。
「では、イメージしてくれよ…」
俺は、本を持つ手に力をこめた。
633 :
2/5:2006/06/28(水) 15:32:23 ID:uB663gCk
それは、今朝、幼馴染のカイちゃんからかかってきた電話から、始まった。
サブカル系の雑誌や本が好きなカイちゃんが、古本屋で面白い本を買った、というのだ。
『催眠術で、ストレス解消する方法が載ってんだよ。
実験してみたいから、午後から家に来いよ。え? 安全だよ。間違いなく安全』
子供が喜ぶような話を、興奮でうわずった声で喋る彼に、俺は苦笑した。
安全って、何がどうなって安全なんて言い切れるんだよ。
もう、お互い大学生で、20歳超えているにも関わらず、そんなくだらないことで電話を
かけてくんなよ。そう思いながらも、彼が、そういったくだらないことにつきあわせる
相手として、自分が選ばれたことを、少し嬉しく思っていた。
「催眠術でストレス解消って、うさんくせぇよな。でもできたら、超お手軽だよ」
彼の家に行くと、第一声がそれだった。
古本屋の「50円」というシールが貼られたままの、その本は、よくある自己啓発本の中に
ポツンと埋もれていたそうだ。「誰でもできる 催眠術」「これであなたも、ストレス
知らず!」という帯の文句が、この上なく嘘臭い。
彼は、本を片手に見ながら、「俺の言うことを信じろよ」と、俺をベッドに座らせた。
やっていることは、今俺がやっていることと同じ。
頭の中に振り子をイメージさせて、リラックスさせ、「あなたのストレスは、もう
ありませんよ」と暗示をかけるだけだ。
俺は、半信半疑でその言葉を聞きながら、昨晩夜遅くまで飲み会だった影響もあり、
途中でグーグー寝てしまっていた。気がつけば、カイちゃんに揺り起こされて、
「お前一人、気持ちよさそうに眠りやがって。次は、俺がやるから」と、言われて。
そして今に至る。
634 :
3/5:2006/06/28(水) 15:33:23 ID:uB663gCk
彼は気持ちよさそうにベッドで寝ている。全身の力が抜けているように見える。
俺は、「あなたの心配事を考えてみてください。小さなことだと思いませんか」
とかいう、くだらない文句を、本に書いているままに喋っている。
本当に、いい年こいて、二人で何やってるんだろう。
そう思いながらも、俺は、じっと彼の反応を見つめていた。
彼はピクリとも動かず、俺の言葉を聞いている。
それはまるで、テレビで見たことがある催眠術にかかる人そっくりに見えた。
気のせいかもしれないが、彼の額にかざした手は、びっくりするほど熱くなっていた。
もしかして、カイちゃんは、本当に催眠術がかかっているんじゃないだろうか…。
今日何度も思い浮かべた、ある妄想が、また頭をよぎる。
俺が、「催眠術」と聞いて、真っ先に思い浮かべたのは、よくドラマなどである、
「暗示」だった。
「あなたは兎です」と言えば、手を頭の上に立てて飛び跳ねたり、指揮者の真似事を
して、大観衆の前で踊り狂ったりする、あの暗示だった。
だいたいストレス解消のコレだって、暗示に近いものがあるはずだ。
…もし、この催眠術が上手く彼にかかっていたとして。
彼が俺のことを好きになるよう、暗示をかけたら…。どうなるだろうか。
もう10年以上も前から、ずっと俺が考えているようなことを、彼も考えてくれるだろうか。
俺は、そこまで考えて、その妄想を頭から振り払った。
ダメだ。普通に考えて、そんなムシのいい話なんてない。
だいたいそんなことを、俺は望んでいるわけじゃ…
635 :
4/5:2006/06/28(水) 15:34:22 ID:uB663gCk
そうこうしている内に、暗示の言葉を読み終わり、もう本に書いてあるのは、彼を
催眠状態から解く手順だけになってしまった。
「…では、数を3つ数えたら、あなたはスッキリした気分で、今あったこと全てを
忘れて、起きることができ…ます…」
俺は、暑くもないのに汗が流れるのを感じながら、そう口にした。
そう。バカなことは考えないで。幼馴染のままで、ずっといれたらいいじゃないか。
「… … …」
しかし、数を数える前に、俺は我慢しきれなくて、つぶやいてしまった。
「…カイちゃん、今、起きてる?」
俺の声に、彼のまぶたはピクリとも動かなかった。
自分の心臓の鼓動を感じながら、俺はさらに言葉を続ける。
「…もし起きてないなら…」
唇を湿らそうと舐めた舌まで、カラカラにかわいていることに気づく。
一つ息を吸って、少しでも落ち着こうとしたが、失敗する。
「俺…」
「ストップ」
636 :
5/5:2006/06/28(水) 15:36:23 ID:uB663gCk
次の言葉を言おうとした瞬間、いきなり耳元から言葉が聞こえてきて、口が止まった。
言葉が出なかっただけじゃない。文字通り、俺の体自体が動きを止めたのだった。
何とか言葉をつむぎだそうとしたが、出るのは汗だけで、何一つ体が動いてくれない。
できるのは、まばたきと呼吸だけ。
やっとこさ、のどの奥から、低いうめき声が出せた時、ベッドで寝ていたカイちゃんが、
消えた。後ろに誰かの体温を感じる。そこでやっと、さっきの声が、カイちゃんの声だと
気づく。彼は、いつのまにか、俺が彼の額の上でかざしていたはずの右手を握りしめて、
俺の背後に立っていた。
「…催眠術って、こんなに効くとは思わなかったなあ」
起き上がったカイちゃんは、動かない体と、この状況にパニックになっている俺を、
ジロジロとながめて、のんびりと言った。
「本当にストップしているの? ユウ君」
息がかかる距離まで顔を近づけられるが、俺は顔をそむけるどころか、目すら動かす
ことができない。
「あせってる? 暗示が、よく効いてるのかな」
グイッと鼻をつままれたが、俺は抵抗することもできなかった。
「あ、その目は、どういうことかまだ分かってないよね。
説明すると、さっき催眠術で、お前に暗示をかけたんだよ。
マジで覚えてないの?」
カイちゃんが喋る言葉を聞きながら、俺はカイちゃんをバカみたいに見つめていた。
「『俺のこと好きなら、自分の意思に関係なく、俺の言うことに絶対服従』
って暗示をかけて、俺の布団に催眠術かけるように指示だしたら、ちゃんとやって
くれたもんな。本当に、ユウ君は俺のこと好きなんだね。嬉しいよ。
『ストップ』って言っただけなのに、ちゃんとフリーズしてくれてるし」
えらいえらい、と頭をなでられる。
「でさ。さっき、俺のこと、何て暗示にかけようとしてたの?」
カイちゃんの指が、俺の固まったままの唇をなぞった。
「言いなよ、ユウ」
彼の優しい命令の言葉に、俺の固まっていたはずの唇が、意思に反して動き出した。
彼は、そんな俺を満足そうに眺めていて。
それを嬉しく思う自分がいることに、俺は一番戸惑っていた。
____________
| __________ |
| | | | 昔、催眠モノにこってた頃のもんです。
| | □ STOP. | | お目汚しスマソ
| | | | ∧_∧ ミンナイナクナッチャッタ
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
>>631 腹黒キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
どきどきしながら読ませていただきました。
こういうのいいなぁ。
一足遅いが
>>602 これはいい歪みですね、GJ
>そんな愚かなお前の事をね
私もこの台詞は好きです、
>>602の主人公(12号かな)のように激しく動揺したものですよ
>631
ものすごい萌えました。萌えツボど真ん中です。本当に心の底からグッジョブと叫ばせてください。
>>631 萌える上に面白い展開ですっごい惹きつけられました!
>>631 _、_
( ,_ノ` ) n
 ̄ \ ( E) グッジョブ!!
フ /ヽ ヽ_//
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
湿気を含んだ、体にまとわりつくような空気だけを残して日が沈んでいく。この季節は余計に乾ききらなかった絵の具が臭う。
生徒のスケッチに一枚一枚朱を入れる美術教師の横で、体育教師がつまらなそうに絵の具箱をいじっていた。
「…まだ終わんないの」
「はい、もう少しですよ」
美術教師は顔を上げないまま答える。体育教師はますます不服そうな表情をして、美術室の中をうろつき始めた。
西日が射す窓からグラウンドを見下ろしながら、ジャージのポケットに手を突っ込んだままふらふらと窓辺を歩く。彼の茶色く染めた髪が日に当たり、金茶色に透けていた。
「…色、抜けてますね」
「何の?絵?」
「髪の毛」
だから彼は生徒の服装や髪型にもうるさく言わないのか、いや言えないのだ、と美術教師は妙に納得した。
「何回もブリーチしちゃうとね、もう黒染めしても完全には戻らないんスよね」
「そうなんですか」
戻らない、というのはどんな気分なんだろうかと美術教師は考えた。職業柄、彼は、必死に描き上げた絵に水滴を落としてしまったような気分を想像した。
拭き取ろうとしても紙に吸い取られ、擦れば擦るほど紙が毛羽立つ。
「勿体ないですね」
「黒より似合ってません?だからいいんスよ別に」
自分の長めの襟足を摘んで、体育教師は微笑んだ。
「センセの髪は真っ黒ですね」
スケッチをチェックする美術教師の向かい側に座り、その濡羽色の髪をまじまじと見る。
美術教師が顔を上げた。
視線がぶつかり、逸れることなく絡み合う。
体育教師は立ち上がり、二人はデスク越しにキスをした。
赤鉛筆が転がり落ちて、高い音を立てる。
絵の具箱の中、ゴールデンブラウンの絵の具とジェットブラックの絵の具が隣り合わせで置かれていた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ナカノヒトタチノコトクワシクナイノニ、カイチャッタヨ…
>>644 ももも萌エス!
中の人達っぽさもあってすっごい萌えました!GJ!
>>644 ちょwwwwww萌えたwwwwwwwwこの勢いで中の人にもはまりそうだ
>>644 私もあのCMに禿萌えしてるトコっすよ!
GJ!
>>644 ノシGJ!
腐萌えじゃないけど萌えたCMなので衝撃的だ!
>>644 中の人、べつカプなのに萌えちまった…GJ!
そろそろ次スレの準備?
誤爆?
毎度同様のレスが交わされるが、
スレの限界はレス数だけじゃなく容量も関係あるんだって。あと1KBだからむしろギリギリだ。
あ、そうか。容量のこと考えてなかった・・・orzイゴキヲツケマス
しかし残りは11kbな事実
一番最初はAA投下用に作ったんじゃなかったっけ?
で、SSもOKになった流れだったような…。
区切りを設ける必要はなか
すべて作品
日本語でおk
AA・SSの別、神文・厨文の差こそあれ、投下に可否の区切りを設ける必要などありませんよ。
ここに投下されるものは全て職人が精魂込めて創り上げた作品なのですから。
それを言うなら「すべてネタ」
自分がタネとはいえ少しワロス
埋めたほうがいいの?それとも落とすべき?
この板的には桜に攫われるのがベスト。
埋め込むのも堕とすのも、好みの問題でしょう。
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このスレッドは桜にさらわれました。
攫えなかったらすみません
ありがとうダミアン。
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桜が攫いたそうにこちらを見ています
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このスレッドは桜にさわられました。
月も見ていられないので、新しいスレッドをたててくださいです。。。
カオスでマターリ
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670 :
埋めてみよう:2006/07/02(日) 07:59:06 ID:Vo7ljwMM
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適当にレス交わしててスレ埋まるならいいけど
AA連貼りなんてただの荒らしじゃねーか
もうダメ?
まだいける?
い
イグーッ!
イった?
まだまだ
5
0
0
K
B
な
ら
次
ス
レ
は
名
作
揃
い
もう、ダメ…ッ!!
だあぁぁぁぁああ、じれったい
さっさとイケッ!
686 :
風と木の名無しさん:2006/07/02(日) 16:56:25 ID:hSTlK0gp
お前らもちつけwwww
まだ我慢するっ
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ダメ…月が見てる…
新しいスレッドでも見せ付けてやろうぜ
カオスでマターリ
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フィニッシュ…っ
うまった?
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ダメ…月が見てる…
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