>711
801で初めて泣いた(´Д⊂ヽ
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガエセナマモノヲオオクリシマス
>嘘つきさんと漫画家さん
>少し長いので途中で区切ります、すみません
>引っ張るほどのもんじゃ全然ないヨー
732 :
1/27:2006/05/19(金) 01:10:37 ID:cZH/fmUL
漫画家をしている僕にとっては、とてつもなく朝の早い時間に家のチャイムが鳴った。
チャイムで起こされはしたが、まだまだ眠いので無視を決め込む。
しかしなかなかチャイムは鳴り止まず、しまいには扉をどんどこ叩かれた。
僕の家の扉は、ガラスが埋め込まれているガラガラ式戸(命名:僕)なので、叩かれるとチャイム以上に音が響くのだ。
漫画家である僕の家にこんな時間に来る人間なんて、新聞の勧誘かNHKの集金しか思いつかない。
どちらも僕には関係の無い相手だ。
無視、無視、ともう一度眼を瞑ったのだが、やはりチャイムが鳴り止む事はなく、扉はどんどこ音を立てる。
まったくもって近所迷惑や。
僕はいらいらを隠さずに布団から出た。
とはいえ、何度も呼び掛けてんのに無視して悪いかな……なんて思ってしまう小市民な僕が隠さずに表現したいらいらなんて「もー」と小さく言っただけですけども。
733 :
2/27:2006/05/19(金) 01:11:52 ID:cZH/fmUL
欠伸と一緒に「何が来てもお断りですよー」と呟きながら玄関の扉を開ける。
開けた先には、僕の予想に反して、
長年の友であり、立ち上げた会社の社長でもある人物が立っていた。
ここから歩いて数分の場所にある仕事場で会える相手だ。
僕のスケジュール管理をしているから、僕よりも僕の睡眠時間を知っている相手でもある。
何故こんな時間に、と訝しく思いながらも居間に入るよう促した。
だが、社長は何故か玄関先で固まったまま動かない。
「……仕事の話?」
僕の問い掛けに、彼は緩く首を振って小さく口を開けた。
「お前を好きかも知れない」
彼の口から出た言葉は、
ただでさえハードスケジュールやのに、また新たな仕事を請け負ってきたんだろうなあ。でも、気遣い屋さんが時折顔をのぞかす社長の事やから、なかなか口に出されへんのかなあ。めんどいなあ。
という僕の予想を、見事に裏切るものだった。
しかもこっちがびっくりする程真剣な顔で言われた。
口調は軽い感じなんだけど、何が真剣って眼。
眼が恐い。
恐いくらい真剣。
734 :
3/27:2006/05/19(金) 01:12:45 ID:cZH/fmUL
今にも発射って感じ。
うっかりライダービームで打ち抜かれるかと思った。
アニメ版のデビルマンのやつです。……たぶん。
よく知らないけど言ってみたった。
とにかく、それくらい驚いたのだ。
まあ、ほんまに驚いたのは、「正直、初めて見るかもしれへん」ってくらい、真剣な顔の方で、内容に関していえば、「もっと熟考した方がええよ」だった。
寝起きの僕ならと、騙されると思ったのだろうか。
これは、
分類するに下手な嘘だ。
社長は嘘が大好きだ。
社長にとって、嘘を付くのは息をするのと同じくらい自然。
毎日のメシと歯磨きがセットなら毎日の社長と嘘もセット。
僕と漫画好きを切って離せないように社長と嘘も離せない、離れない。
735 :
4/27:2006/05/19(金) 01:13:42 ID:cZH/fmUL
昨日は、職場に勢い込んで入ってきたかと思うと、ハロプロが美少女アニメキャラクターのオーディションを開くから、僕のアニメ化した漫画キャラクターを応募させる! とか叫んでいた。
どうせいつもの嘘だって分かっていたのに、何故か僕は朝から仕事を中断させられて、昔連載していた漫画のキャラクターをむりやり六人描かされた。
社長自ら仕事を中断させてどーすんねん。
というつっこみをする余裕すらなかった。
一昨日は一昨日で「アメリカの大統領が女体化を支持」というニュースが一面の新聞(社長の手作りで全編デタラメ英語)を手に、どこかへ電話をしていた。
もちろん全編デタラメな英語だ。
電話の相手は僕たちが仕事を受けている会社の若手社員だと思うけど、一時間も訳の分からない言語に付き合わされていて、さすがに可哀想だった。
736 :
5/27:2006/05/19(金) 01:15:43 ID:cZH/fmUL
もともと、凝るだけ凝ってたいした事ない内容の嘘が多いのだが、ここ数日の社長の嘘はひどすぎる。気がする。
事実はどうあれ、単純かつ明解が社長のモットーだと言っているワリには、どうもそれに反している気がする。
「分類:下手」どころか「分類:目的不明」だ。
嘘なんて相手をちょっと騙して、「みんな朗らか笑顔」を作るのが楽しいもんだろうに。
社長は、自分が楽しければ良いというタイプじゃないんだが。
「……返事は、いつでもいいから」
社長の真剣な顔に見入っていた僕に痺れをきらしたのか、社長の方から眼を反らした。
好きでもない相手に好きだと告白するとする。
相手は同じ男だから当然気持ち悪がって逃げるだろう。
それを見て周りは笑うね。
よっしゃー。
この告白はもしかして、単純かつ明解というモットーの元に軌道修正しようとしているのかもしれない。
長く友をやっているからか、簡単に社長の思考が読めた。
感情を左右する嘘を付くのはちょっと頂けないけど、僕なら気兼ねしなくていいと思ったんだろう。
なんせもうかれこれン年以上の付き合いだ。
737 :
6/27:2006/05/19(金) 01:17:33 ID:cZH/fmUL
嘘といえど、社長の(いつもの)嘘はちょっと笑えてちょっと和むものが大半なのも事実だし。
「嬉しいで」
これはほんま。
好きじゃなけりゃ、一緒に会社を設立したりないし。
面と向かって言う言葉じゃないですがね。
気持ち悪いもんね。
社長は真面目な顔で実行してるけど(それが笑いをうむんですかね)
「俺も好きやで」
続けて言って、ついでに笑顔を作ってやった。
というか、作らなくても自然に笑ってしまった。
その時の社長の顔といったらなんかもう、やっぱり驚いたとしかいえない。
真剣な顔から一気に泣きそうな顔になって、僕の身体を掬うように抱き締めてきたんだ。
返事はいつでもいいから、という事は、この嘘は後日に続くかもしれない。
毎日毎日嘘を付く社長の気紛れなたったひとつの嘘に、長く関わっていられない。
なんせ明日になれば、また新しい嘘を付かれるのだ。
この抱き締めてくるって行為も、嘘に真実味をもたらすための手段なんだろう。
ちょっと面倒くさいけど、明日も好きだとか言われるよりマシです。
ここで冗談やろー、と笑い飛ばしてしまうと、少しも騙されなかったのかとか言って、社長がちょいと沈んじゃいそうだし。
738 :
7/27:2006/05/19(金) 01:20:21 ID:cZH/fmUL
痛いほど込められる腕の力を感じながら、僕は逆に力を抜いた。されるがまま身体を委ねる。
「……本気で言ってる?」
「うんうん」
耳元で囁かれたから、同じ様に耳元で頷いてやる。
ちょっと軽く返事をしすぎたかと思ったが、社長が気にした素振りは無かった。
なんだったら、調子に乗らせてしまったかもしれない。
社長がゆっくりと僕の身体を床に倒したのだ。
玄関と居間が続きになっている家の作りなので、押し倒された場所は上半身が畳の上で下半身は、マットなんて引いていない玄関の板の上だった。
ちょうど腰辺りに、玄関と居間を繋げる敷居があたる。
やだなあ、痛いやん、と思ったし、実際、痛みがあるか、と、思ったけど、そんな事は杞憂で全然平気。
すげー気を使ったらしくめちゃめちゃ丁寧な押し倒しだった。
その何だかなあ、な優しさに報いて、取りあえず抵抗せずに倒れてやると、さらに身体をぎゅうぎゅう抱き締めてきた。
どっちかっていうと、こっちの方が痛いです。
僕の額に掛かった髪を後ろへ撫でて、僕の名前を甘い声で囁くなんていう芸当までしてくる。
『嘘だからこそより真面目に!』
739 :
8/27:2006/05/19(金) 01:22:29 ID:cZH/fmUL
いつも叫んでいる社長の言葉が脳裏を過って、僕はぷーと吹き出した。
『誠心誠意、心を込めて!』これも社長のモットーだ。
忠実なやつである。
仕事面にもよく出る彼の性格で。こういう所、嫌いじゃない。
「楽しいか?」不思議そうに社長が訊ねてきたので、僕は笑いをかみ殺しながら頷いた。
「うん、けっこう」
「そうか……俺はちょっと緊張しているかも知れない。ほら心臓」
社長の胸を触るように僕の手を持ち上げる。
触れた部分は確かに早鐘を打っていた。
「なんで緊張すんの」
相手は僕やん。
「なんでか、自分でも分かんね。見慣れてる顔だし……想像の上ではめちゃめちゃにひん剥いてあばいて弄って突っ込んでたんだけどな」
……
……おいおい、
どこのエロゲーですか。
また吹き出す。笑いをかみ殺すなんて持続出来たもんじゃない。
ン年以上もの付き合いだからか、どうも笑いのツボを熟知されている感がある。
「俺の前で緊張する必要なんてないやろ?」
「……そうだな。俺も明るいセックスの方が好きだし」
……セックス。
それは、つまり、僕か。
僕とセックスするって事か!
740 :
9/27:2006/05/19(金) 01:27:27 ID:cZH/fmUL
嘘でもあんまりだ。
もう駄目だ。
もう駄目だった。
ぎゃははなんて可愛いもんじゃなく、僕は腹が痛くなるほど声をあげて笑ってしまった。
僕と社長、おっさん二人の想像セックスは、気持ち悪いなんて次元はとっくに通り越している。
僕は寝転んだまま、社長の腕の中で笑い転げた。
比喩じゃなく笑い転げる。
その間、社長は上半身を腕だけで支えて、両腕の間で転げ回っている僕の顔をじっと見つめていた。
田舎のばーちゃんが川やら畑やらで遊ぶ僕を見守っている時の表情とそっくりで、これまた僕のツボをがんがん押してきた。
もうやめてください。
「社長、ええわー」
笑いの合間、褒めるように社長の頭をぐりぐりと撫でる。
嫌味じゃなく、ほんとに嘘を付くことに命がけな姿が、いい。
「社長って言うなよ」
僕たちは仕事仲間である以上に、友人だから、僕が社長と呼ぶとたまにこうやって怒る。
社長じゃない頃からの知り合いという事だし、社員は僕と社長と……。
ま、普段呼ばれ馴れてないと、照れてしまうのだろうかね。
俺は、社長してるこいつも嫌いじゃないんだけど。
「ごめんごめん」とさらに頭をぐりぐりしてやったら、
「……」
突然、僕の首筋に顔を埋めてきた。
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
>すごく中途半端だ…続きは本日中に
eえエエーー!!!
て事は27で終了?早く読ませちくり
シャッチョーさんの暴れっぷりが気になる。
リアタイ乙です。
天然漫画家萌えるよ。
続きwktkで待ってます!
おええええええ???
生殺しじゃわれぇヽ(`Д´)ノトテモタノシミニシテマス漫画家カワイス
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガエセナマモノヲオオクリシマス
>嘘つきさんと漫画家さん続き
>容量と相談しつつ一気にイかせていただきます
746 :
10/27:2006/05/19(金) 11:05:13 ID:c2nRVNmb
「何しとん」
声を掛けたが、返事を返してこなかったので、くすぐったい鼻息には眼を瞑ってやって、笑い声をあげたまま僕の首に埋まっている社長の頭をただ撫でた。
なんだか僕、倩兮女みたいだ。
男だからけらけら男かな。
まあどちらでもいい。
とにかく、お互い、意味なく褒め合うのが、気色悪くてやはり笑えたのだ。
社長の手が僕の腹とか胸とか脇腹? あたりを彷徨っているのも笑いの原因だ。
めっちゃくすぐったいわ。
どこに置くべきか迷っているのかと思い、上から自分の手を重ねて動きを止めた。
ちょうど腹直筋(僕にはそれと分かるものは残念ながら無いです)あたりだ。
異様に密着した社長の身体からは、シャンプーの良い匂いがした。
どうやら社長は朝からシャワーでも浴びてきたらしい。
普段は仕事が忙しくて風呂すら入れない日々が続いているというのに、たまに時間通りに生活出来るようになると、彼は途端に身綺麗になる。
こっちが本性なんだろうと分かっていても、やはり僕にはツボだった。
まさか僕に会うためにシャワーを浴びてきたわけじゃないだろうが、こんな朝っぱらから真面目な顔で告白をしてきて、良い匂いを撒き散らせながら、男を押し倒すなんて、ほんと、命掛けている。
747 :
11/27:2006/05/19(金) 11:06:30 ID:c2nRVNmb
男に押し倒されながら、そんな事をつらつら考える僕。
というのも、かなり笑いのツボを刺激する。
口から笑いが漏れて肩を震わせると、社長が顔をあげて僕の顔を覗き込んできた。
「何か、調子狂うなあ……」
と頭を掻く。これは憂い顔っていうのかな。
絵になってなくもない。
「キスして、いいか?」
吐息を交えた声が耳に響いた。
僕は盛大に爆笑だ。
本当にどこのエロゲーだ。あ、ボブゲーか?
(すみません。やった事ないので分かりませんが言ってみました。内容は、自分で罰ゲームと称して、楽しみながらやっていた大学の後輩のHくんに逐一報告された事はありますが。エロいシチュのとこばっかり)
「はいはい、どうぞ」
社長の頭に腕を回しす。
多分、この辺りで社長が「キッツい冗談」と叫んで僕から離れるだろう。
顰めっ面の社長を想像してまた笑った。
んだけど。
社長はやはり真っ剣な表情で、僕に顔を近付けてきた。
「……」
……毎日、よく嘘なんか付けるもんだ。僕はうっかり社長を尊敬した。
748 :
12/27:2006/05/19(金) 11:08:01 ID:c2nRVNmb
嘘付くのって、大変や……。
時間の感覚が無くなるほど僕たちはキスをした。
多分、何秒っていう世界じゃ、ない。
抵抗しないでいるのはなかなか気苦労だと思っていたのは最初だけで、次第にキスをしている唇に意識が集中してしまっていた。
久しぶりに感じる人の温もりは気持ち良くて心地良くて、抗うことなんて考えもしなかったのだ。
だけどまさか、ひとつの嘘で、唾液が絡むほどのキスまでするとは思わなかった。
社長になるべく鼻息を掛けまいと少ない酸素しか取り入れなかったら、息が上がってきた。
「……、くるし」
社長の胸を押す。
社長は「んー」と返事なんだか感じ入ってんだか(ひえー……)僕に分からないというか分かりたくない声を漏らした。
……僕正直ちょっと後者の理由で! 漏れそうやったので!
唇から舌を出して伸びた唾液を指で取り、僕から離れる。
それでも社長の顔に焦点が合わないほど間近にいたけど。
触れた胸は、さっきよりもさらに早く打っていた。
749 :
13/27:2006/05/19(金) 11:10:58 ID:c2nRVNmb
キスまでしておいてまだ緊張してるのだろうか。
それとも、キスが原因だろうか。
そりゃ、恐いよな。
実際、僕の息は上がっているし、心臓も少し早くなっていた。
でも、騙された感が強い程、後々安堵するのは事実。
今は恐いかもしれんし、騙されたって気付いた時に腹立つかもやけど、これはお互い様や。
あーでも、社長の心臓が早いのは、緊張というよりも、どこまで僕を騙せるのか気になっているから、の方かなあ。
いやいや、さすがにキスなんてしちゃったから、告白が嘘とは思ってないんだろうか、とか考えて慌ててるのかなあ。
……実は僕も社長が好きだったなんて?
あははは、そんなん、ありえへん!
ちょっと考えたらすぐ、気付くやろうに。
ま、今の状況が状況。社長の嘘告白に、僕が応えたから驚いてちょっと思考が鈍ってるとかだ、きっと。
社長は、僕と知り合って何年になるか覚えているのだろうか。
僕は社長の嘘なんてすぐに見抜けるし、騙されたフリだって出来るし、騙し返すことだって出来るっていうのに。
ま、実際んところは、本気やなんて思ってなくて、
僕が、「好きなんて嘘に決まってるやん。これ以上は冗談やないよ」っていつ根をあげるか、試してるだけなんやろうけど。
社長の方がさっさと根負けしてください。
750 :
14/27:2006/05/19(金) 11:12:56 ID:c2nRVNmb
「ごめんなさい、好きだなんて嘘でしたー」
って慌てて頭を下げたら、さらに笑ってやろう。
笑いがうまれたら、きっと社長の嘘は成功だし、僕だって騙し返してやったった、と、笑える。
僕の上がった口元に、社長がまたキスをする。
鼻や顎や頬や瞼にも額にも、ちゅっちゅってキスをされた。
「ちょ、くすぐったいわ」
「すぐに気持ち良くなるって」
……これよくエロゲで聞きます。
多分、日本に生息する成人向物の出演OKな声優さんやAV男優さんがしょっちゅう言わされているセリフやと思う。
そんなセリフを、うちの会社社長が言うなんて!
しかも僕に言うなんて!
これが笑い所でなければどこを笑う。
僕の戸惑いを余所に、社長の手は僕の腰を掴んで離さない。
顔中に触れていた唇は、また唇に戻ってきて、上の前歯を一個一個を舌で舐めてた。
うわー……としかいえない。
「……隣……行こうか」
社長が身体を起こして、僕の手を引っ張った。
うわー……。
751 :
15/27:2006/05/19(金) 11:14:54 ID:c2nRVNmb
息が上がったまま、僕はよろりと上半身を起こす。
隣の部屋には万年床が敷きっぱなしになっているわけで(っていうか、ついさっきまで布団で寝てました)人間ふたりいて、告白しーの答えーのという状況だと、この展開が自然なんでしょうが、一体どこまでするつもりなんだろう。
嘘ったって、ここにいるのは僕と社長だけで(僕の家なんだから当然です)僕が頷いた瞬間に僕の騙され確定なわけで、僕以外に騙す人間がいないわけで。
これ以上する必要、あるのかなあ。
「まだするん?」
「いや?」
問いに問いで返さないでください。
いやと訊かれても、別にいやではないとしか答えられない。
ネームに行き詰まっているのでまだ仕事に手を付けたくない気分だし、ネームに行き詰まっていると、作画に手を付けること自体出来ないし。
現実逃避は僕の趣味だし。
社長の嘘にとことん付き合ってやるのも悪くない。
社長が聞いたら怒りそうな事を考える。
どうせ、まだ寝ている予定だったし、その社長が、続けようとしているのだ。
怒られる言われはないよな。
「いやちゃうけど」
僕の言葉に、社長はあからさまにほっとしてみせた。
……演技派です。
「後で仕事、手伝うから」
「社長はトーンもベタも下手やから遠慮しとくわ」
「……アシさんの人数増やしていいから」
752 :
16/27:2006/05/19(金) 11:16:07 ID:c2nRVNmb
会社社長である社長は、社員(……僕と社長です)の中で一番忙しく、いろんな事に一番融通がきかない。
それでも彼は、僕の事を「うちの会社の稼ぎ頭君だからねー」と言って、本来なら僕がするはずの雑務の大半を毎日処理してくれている。
社長である前に、デザイナーでもあるから、自分に依頼された仕事だってあるというのに。
アシスタントへの給料だって人探しの労力だって馬鹿にならないだろうに。
どうせ口だけだろうなって、分かってる。でも、嘘でも嬉しかった。
僕たちは隣の部屋の布団の上でも、キスをした。
居間でしていたのよりさらに濃厚なやつ。
社長、キスすんの好きなんかなあ……。
ぼんやりと思う。
だって結構うまい、と思う。
僕はにゅるにゅるしたキスなんて、した事が無かった。
あんまり好きちゃうかったから。
唇を吸ったり噛んだり舐めたり。部屋にちゅっとかぐちゅとか、結構イヤらしい音が響く。
唾液が顎から首筋に垂れてんのに、社長は離してくれなかった。
無い胸を弄っていた社長の手は、Tシャツ越しに乳首を探りあてて、その場で待機しだしたし(でも全校集会の時にクラス別に並んでいる男子小学生なみにじっとしていない)服の裾から入り込んだ手は背骨あたりを何度も往復していた。
パンツがちょっとずり落ちてるみたいで、たまにケツの割れ目の上の方にまで指が触れて、かなり、むず痒いというかくすぐったいというか、もぞもぞする。
753 :
17/27:2006/05/19(金) 11:17:02 ID:c2nRVNmb
布越しに触れてくる乳首も似たような感じで。
口の中は余すところなく舐め回されているしで。
……正直やばいです。
チンコ、勃ちそう。
「……なあどこまでするん?」
止めないと、まだまだ続きそうなキスの合間に問い掛けた。
さっきも僕からキスを止めたので、何だか負けた気がして、ちょっと下を向く。
「お前がいいなら、どこまでも」
どこまでも……。999ですら終着駅があるっていうのに、僕たちにはないんでしょうか、社長さん。
……。
僕今、ちょっと現実逃避した。
いやいや。
目の当たりにした現実に、眼を反らし切れていないので、逃避ではないか。
メーテルだって微妙だけど現実だった。
そして今。
僕の眼は、社長に釘付けだ!
社長の社長たる社長である社長の社長に!
社長の一部分に!
754 :
18/27:2006/05/19(金) 11:21:13 ID:c2nRVNmb
よく自分の漫画の中で驚きに人物が固まっているというテイストの絵を描くんです、僕。
眼が点で滑らかなハズの身体はてんで滑らかでなく
硬質的な質感がありまして簡略した絵を描く僕にはちょっと難しい技工かな
なんて思ったりもするんだけどその時の表現に当てはまるものを描きたいし
読者さんにも出来れば僕の頭の中にあるポーズを一緒に感じてもらいたいし
軟質と硬質の使いわけが出来るとギャグにメリハリが出てくるとも思うんです
ほら、漫画ってテンポ重視なところあったりするじゃないですか。
描く人それぞれのテンポというか波長というか。
そういうのを読者さんと共有出来たら漫画家冥利に尽きると思うんです。
軟質が硬質なんですよ。
軟質が硬質になってるんですよ。
今僕の眼の前の社長さんの軟質が硬質になってるいるんですよ。
僕の眼にもソレとはっきりわかるくらいにははっきりと。
「……」
嘘、だよね……?
僕、軟質希望なんですけど。
755 :
19/27:2006/05/19(金) 11:22:33 ID:c2nRVNmb
布団の上だからか、さっきより幾分乱暴に押し倒されて、今度は最初から舌を出したままキスされた。
ああ、確かにこのキスは軟質から硬質に変化させるに、十分かも知れない……。
僕の上に乗っかっている身体も熱いんだけど、僕の意識がめちゃめちゃ集中してしまっている部分はマグマとか火山とかいう表現しか思いつかないほど、熱かった。
(……。小説家でなくて漫画家だから語彙少なくてもさほど支障はないです)
強引に服を捲り上げられて、布越しに触れていた乳首を直に触られた。
というか、抓られた。
痛いと叫びたかったんだけど、キスされていたから、変にくぐもった声しか出なかった。
足の間に足を入れられ、両腕を脇から押さえられた。
なんだ、これ。
密着した下半身を下半身で擦られると、社長の熱が僕にまで移ってくるようだ。
なんですか、これ。
硬質物体が僕の下半身を否応なく刺激する。
恥も外聞もなく、本当にチンコが勃そうになってきた。
……今だって、半勃チンコにはなってます。
押さえられた手をむちゃくちゃに振り回したら、甲の部分が畳に付いたので、力一杯、畳を叩いた。
甲が畳に擦れて痛かったけど我慢。
キスで声も出せず、押さえ付けられた身体は身動きを制限されていた。
756 :
20/27:2006/05/19(金) 11:23:30 ID:c2nRVNmb
僕に出来たのは、畳を叩くくらいだったのだ。
触れている社長を叩くなんて出来ないし。(親から、人様に手をあげるなと躾けられているんです)
「何してんの」
社長が少しだけ唇を浮かして、僕の手に手を伸ばしてきた。
手を社長の掌に包み込まれる。社長は手も熱かった。
「お前の商売道具だろう。……夢中になりすぎた?」にやりと笑う。
いい嘘を思い付いた時の社長の顔だ。
「た、たんま! どいて、どいて」
僕は社長から顔を背けて叫んだ。
社長は何も言わず、僕の身体から離れて、隣にごろりと寝転がる。
離れてくれてほっとした。
正直いいまして、今、かなりヤバかった。
半勃ちどころか全開ですよ。
なんだって今その顔を見せるかな。
さすがに嘘でしたー冗談でしたーではすまされない気がする。
「……ごめん、急ぎすぎたか」
独り言のような呟きに、僕は社長を振り返った。
「なあ」
訊くのが恐いような恐ろしいような。
でも訊かないわけには進まない。
「……俺を好きなん?」
757 :
21/27:2006/05/19(金) 11:25:19 ID:c2nRVNmb
社長みたいに心臓をどきどきさせながら訊ねたら、社長はおもいっきり眉を顰めて苦笑した。
「さっきから、そう言ってるだろ?」
確かに言ってました。
今日僕の部屋に入った時から。
「好きだ、ずっと好きだった、愛してる、お前だけを愛している」
なんとも歯の浮くセリフをたくさん並べられました。
だけど僕は、
「またお前のお得意な嘘かと思ったんやけど」
「嘘?」
「うん」
「違う。これは嘘じゃない。俺はお前が好きだから……」
社長が上半身を起こして、布団の上に座ったので、僕も彼に習って身体を起こす。
その拍子に捲り上がっていた服の裾が垂れて、元の格好に戻った。
社長はさらに渋い顔をした。
「……お前は、好きでもない人間とこんな事、出来るのか」
鬼畜エロゲーやったり作ったり、陵辱エロ同人の製作を手伝ったり買ったりしていた人間が、なんて純情な事を言うんでしょうか。
しかもそれ、もしも僕が漫画内で使おうとしたら、社長、めっちゃばかにする類いやろー。
758 :
22/27:2006/05/19(金) 11:29:07 ID:c2nRVNmb
「えーと、いや、なんやろ。出来へんわーって思ってたけど、実際は、案外出来るみたいやなあ」
あははーってなるべく軽く聞こえるように言った。
だって、社長から流れてくる空気が……。
バックがベタフラですよ。顔には縦線十六本。眼は白。
「……お前は俺のこと好きじゃないの? 好きって言ったのは、嘘か?」
「うわー。気持ち悪いこと聞かんといてーや」
「……おい答えろよ。好きか? 嫌いか? どっち」
「……それ、二択しかないん?」
おそるおそる訊いたら、社長ははっきりと頷いた。
そんなにはっきり頷かれると、答えはひとつしかない。
「じゃあ、まあ、好きや」
好きでなければ、共同で会社を設立しようなんて思わないだろうし。
こんな事、真面目な顔で聞かれると照れますな。
「でもこれ以上は無理なんだよな?」
「そんなん、かなり無理やろ」
ぶんぶんと首を振る。コレイジョウのこれも以上も深く考えたくない。
嘘だと思ってたから、何かいろいろ平気だったけど!
「……分かった」
って、全然納得してない顔で、社長は言った。
759 :
23/27:2006/05/19(金) 11:29:53 ID:c2nRVNmb
一体どこまでが本当でどこまでが嘘なのか、分からなくなっていた。
ただ、社長の顔が……それこそ、演技なんかじゃ到底出せないような、表情で、
……泣いていたんだ。
社長は横を向いていたし、袖ですぐに顔を覆ったからちゃんと確認出来たわけじゃないんだけど。
「俺、帰るわ」
「あ、仕事場? じゃあ俺も……」
気まずい雰囲気は作りたく無かった。
立ち上がった社長に合わせて僕も立ち上がる。
しかし社長はさらにさらに渋い顔をした。
「……勘弁してくれよ……」
社長はラオウの最後のシーン(馬に乗ってるやつね)みたいに天空を仰いで(もちろん僕の家の中だから、仰いだ先は空ではなく、古びた木の升目天井です)両腕で顔を覆った。
……演技なんだか本気なんだが笑わそうとしてるんだか、区別が付かない。笑えないけど。
「俺はたった今、振られたんだ。少しくらいひとりにしてくれよ。……明日には元通りになるから」
760 :
24/27:2006/05/19(金) 11:31:01 ID:c2nRVNmb
絞り出すように言われて、僕の心臓がなんだか痛む。
なあ、社長……。
もしかしてやけどな。
「……なあ、ほんまに俺のこと好きなん?」
社長は一旦下を向いたのだが、次に顔をあげた時には口角をあげていた。
「なんてな、嘘だよ」
「……」
「俺の嘘、うまいだろ?」
ああ、もう。
……問いに問いで返さないでください。
「俺は、俺の事好きなんか訊いてるんやけど」
「はは、まさか、違うって、嘘だって言ってるだろ。俺は嘘付くの得意なんだよ」
ああ、もう。
僕の部屋に来た時みたいな、ビーム発射しそうな眼で言われても全然説得力ないで。
だってもう見てしまったんやもん。
朝とは、全然違う。
「……ふうん、それ聞いて安心したわ」
笑ってみせた。
笑って社長の肩を叩くと、社長も「安心ね」と乾いた笑いを漏らした。
761 :
25/27:2006/05/19(金) 11:33:48 ID:c2nRVNmb
その後は。
僕が出勤出来るような服に着替えている間に帰ろうとする社長を強引に家に引き止めて、ふたり一緒にここから数分先にある仕事場に出社した。
(家にいてる時に、社長の眼の前でいつも通りに服を脱いでパンツ一丁になったら、とても恐い顔をされました。何も言ってこなかったけど)
(……もうひとつ。僕が出社準備をしている間の大半、社長はトイレの中で待機してはりました)
仕事場ではふたりの後輩が机の上で原稿用紙と格闘していた。
ふたりとも、僕のアシさんをしながら、商業誌に投稿している。多分今は、自分の原稿を仕上げていたのだろう。
僕たちが中に入ると、「おはようございます」と笑顔を見せた。
僕も笑顔で答える。社長は、自分の席に付きながら、ぎこちなく笑っていた。
ああ、もう。
そんな顔アカンで、社長。
毎日飽きずに嘘付いてるっていうのに、こんなんじゃ「分類:超下手」だ。
薄々感じてたけど、やっぱりお前、嘘、下手やろ。
仕事場での社長は、ずっと項垂れたままで、仕事にも影響が出るくらいには沈んでいたみたいだった。
それでも、「外注が」とか「打ち合わせが」とかいって仕事場を出ようとする彼をこれまた強引に引き止めて、一日ずっと僕の傍で仕事させた。
社長は、仕事中の僕にひどく甘いのだ。
762 :
26/27:2006/05/19(金) 11:37:05 ID:c2nRVNmb
「どうせ、社長の仕事は大半がパソコンで出来るやん」
と言うだけで、彼は黙って自分の席に付く。
実際はそんな簡単なものじゃないだろうし、可哀想かなあとも思うんだけど、下手な嘘を付いた社長の自業自得だ。
下手な嘘は面白くないし、へたしたら、付いた方も付かれた方も一日気分が悪いものだ。
嘘を付かれる身の心境を慮って、社長には少し反省して貰う。
今後、調子に乗られると困るからな。
ま、でも、こういう時、嘘を思い付いて逃げようとしないのは愛すべき部分かもしれない。
僕は簡易キッチンでお茶を入れながら(原稿から離れるだけでも息抜きになるんで、人に頼まず自分で入れるんです。……余裕がある時は)黙々とパソコンを使う社長を見た。
今朝、僕の家に来た時ほどは真剣じゃない顔。
これがいつもの社長だ。
ま、仕事は真面目にこなしているんやろうけど。
アシさんの分と社長の分のお茶を入れて、僕は一人一人の席にカップを置いた。
社長にもお茶を持って行ってやると、彼は「おう、ありがとう」とでっかい溜息と一緒に返事をした。
沈んでいるのが一発で分かる。
まったく……嘘つきは、嘘つきらしくして欲しいもんだ。
気付いてしまったから、これが嘘の一貫じゃない事も分かっているし。
そんな素直な態度、見せられると、僕の良心がとっても痛むじゃないか。
僕は自席に戻りながら、呆れた溜息を付いた。
763 :
27/27:2006/05/19(金) 11:44:14 ID:c2nRVNmb
アシさんのひとりが、僕と社長を見て首を傾げたので、「気にせんといてー」とだけ言っておいた。
明日になれば、多分、元に戻ってるから。なあ、社長。
明日は朝一番で社長の家に行こうと思っている。
行って、今日、社長が僕に告げた言葉とそっくり同じセリフを告げる予定で。
それから、いつから僕を好きやったのか、じっくり訊いてやる予定で。
社長は嘘よりキスの方が上手いって言って、いろいろせがむ予定もある。
覚悟しといてな?
なんせ、思い出せるだけの、ここ暫くの出来事の中で、僕が一番集中して夢中になったのは社長とのキスだったんだ。
この先もそうそうこれ以上の集中力は発揮出来ないだろうとも、思うくらいにはね。
キスひとつですっかり社長の虜(わはは)になったとは思わないし思えないし、一生言うつもりはないけど、理由のひとつだろうというのは、嘘じゃない。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ!
>ホント長々と失礼しました
>>764 禿げた
凄い良いもの読んだ!本当にありがとう!
>764
リアルタイムでキタコレ
萌えました!!できればその後も読みたいです。
>>764 萌えた!!! そして笑ったwww
自分も続き読みたい!!
>>764 もう、楽しいし、元ネタが分からないけどキャラが愛しいし。
>>764 萌えて笑えるビデオに会えたのは久しぶりです!
GJ!
もし続きがあったら見たいです。
>764
禿げたw
漫画家カワユスカワユス!
その後が気になるよ〜
次スレへ移動!
うめ
もうだめ?
うめぼし
梅ノ木