モララーのビデオ棚in801板12

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564名無しさん@ローカルルール変更議論中
仕事帰りタクシーに乗りこみ数十分。窓の外の流れる景色を見ていたら
「このまま遠くまで連れて行ってくれませんか?」と、ついついタクシーの
運転手に言いかけた。赤の他人にこんなことを言いそうになるという
ことは、相当疲れている証拠だ。頭がメルヘンだ。日常生活にロマンが
入り込むと、それはそれは滑稽なことになる。少し痛む頭を軽く振り、
俺は目的地の変更を運転手に告げた。
「ジュソさん起きてる?」
目的地のマンションの下に着いた所で、目的の人間の携帯に電話をかける。
ややあって低音の声が聞こえた。
「え、オザワ?起きてるけど…何?」
「あのねぇ、何となく頭がメルヘンでファンタジーになっちゃってねぇ。
今ジュンソさん家の下。っていうか、玄関のまん前。」
「…はぁ!?」
「入れて。」
何も言わず彼はマンション入り口のオートロックを解除してくれた。
部屋に入ると部屋着の彼がしかめっ面をして立っていた。
「何なのよ。頭がメルヘンって。」
「タクシー乗ってたら、何かねぇ。乗りモン乗ってたらならない?」
「なりません。」
「タクシーの運ちゃんに"このまま遠くまで連れて行ってくれませんか?"
って言いそうになっちゃってねぇ。サムいでしょ?」
「極寒だな。」
565名無しさん@ローカルルール変更議論中:2006/01/10(火) 03:28:35 ID:PS1qAAw5
勝手知ったる人の家、とばかりにソファにどっかりと腰を下ろし煙草に火をつけた。
「うん、我ながら極寒だね。」
「…何飲む?」
「焼酎ウーロン茶割り。」
「ねぇよ。」
「何があんの?」
「マイヤーズラム、ビール、ジン、コーヒー、オレンジジュース。」
「マイヤーズオレンジ。」
「…はいはい。」
めんどくさそうに台所に立ち、グラスを二つ手に戻ってくる彼を煙草の
煙越しに見る。彼はラムオレンジと自分の分のビールを床に置き、
俺の隣に腰を下ろした。
「シェーカーあればもっと美味いんだけどね。」
「十分です。」
「何してたの?」
「ボーっとテレビ見てた。そしたらお前から電話がきた。以上。」
「…ジュソさん怒ってる?急に来たから。」
今更になって迷惑だったかな、と思うが仕方が無い。もう遅い。
「怒ってねぇよ。呆れてるだけ。」
「何に呆れてんのさ。」
「メルヘンでファンタジーなオザワさんに。」
「ジュソさんメルヘンとファンタジーの意味わかる?」
「馬鹿にしてんの?」
「からかってるだけ。」
566名無しさん@ローカルルール変更議論中:2006/01/10(火) 03:29:48 ID:PS1qAAw5

それっきり会話は途切れてしまった。何となくグラスについた滴を指で
ぬぐいソファで拭いてみる。右手に持った煙草はそろそろフィルターギリギリだ。
「…で、何しに来たの。」
「何したらいいの?」
「……出来ればこのまま帰れ。明日も仕事だし。」
「出来ると思う?」
「……出来るわけないか。」
「ジュソさん、ヤろ。」
「またお前はハッキリ言うねぇ…。」
「ヤりたいもんはヤりたいんだもん。しょうがないじゃん。」
「お前動物?」
「うん。今だけ。ヤらせてよジュソさん。」
「お生憎様………」
「あのさ、いいムードん時に突っ込み台詞は、止めようよ…」
「いいムードになってんのはお前だけだ」
「もうすぐジュソさんもいいムードになるって」
「あーあ、明日仕事…」
「愛と仕事は天秤にかけられないんだよ?」
「何だよそれ。」
「両方重すぎて天秤が壊れるからさ」
「……ぜってぇ言わねぇぞ?」
567名無しさん@ローカルルール変更議論中:2006/01/10(火) 03:30:47 ID:PS1qAAw5
そこからはもうお決まりのシーン展開。
肉体疲労に精神疲労は勝てない。
メルヘンもロマンティックも遥か彼方に。



「オザワさんまだ、どっか行きたい?」
「んー?もうイったからいいや。気ぃ済んだ。」
「………バカ。」
「アタシ認めないよ、って言わないの?」
「……ぜってぇ言わねぇ。」