もう疲れたんだよ僕は」
「別れてくれ、韓国」
韓国は耳を疑った。
昨日、韓国はニホン家のスギナミ室に乱入し、そこで日本が編纂していた書物の審査作業を、
サヨックとともに、散々邪魔して暑さによるストレスを発散していた。
結局スギナミ室における妨害は無駄に終わったのだが、何、気に病むことはない。
これから先も、審査作業はニホン家の各部屋で行われる。
韓国は全ての部屋を訪れ、妨害するつもりだった。
そのための打ち合わせを、サヨックと焼肉屋で行うはずだったのだが、
サヨックが「冷やし中華(冷麺との区別がいまいちついていないらしい)を見たくない」と、
訳のわからない駄々を捏ねるので、サヨックが奢るとの条件で、出にーずに入ったところ、
先に入店していた日本に冒頭の言葉を投げつけられたのだ。
な、な…」
突然のことに韓国はまともに喋ることも出来ない。
「韓国は僕のことが嫌いなんだろ。確かにそうさせる原因を作ったのは
僕だけど、その頃には生まれてさえいなかった
僕の店子たちにまで、僕を嫌わせる権利は君には無いよ」
「う、うるさいニダ!ニホンの店子は子々孫々、未来永劫ウリに謝罪と賠(ry」
いつもの台詞を叫ぶことで、ようやく韓国は唇の硬直を解くことが出来た。
「どうしてさ。僕の店子たちだって、選んで僕の家に生まれてきたわけじゃないんだよ?
君の家に、ベトナム戦争後に生まれた君の店子たちに罪が無いように、
彼らにだって罪は無い」
そう言いながら、日本は自分と同じテーブルについていた若者達に目をやった。
いずれも韓国の知らぬ顔だった。その内の一人は、
「中核派もうダメぽ」と書いた団扇で顔を扇いでいる。サヨックの顔が引き攣るのが見えたが、
韓国にはその理由が解らなかった。
「原因を作ったのは僕、って言っておきながら、日本の謝罪には実が無いニダ!
賠償だってウリの店子一人一人には行き渡ってないニダ!」
「使い道は自分で決めたいって言ったのは韓国だろ…」
日本は掌で目を覆って、どさりと座席に腰掛けた。本当に疲れているようだ。そうさせたのは
韓国自身なのだが。
「実の無い謝罪、か……韓国、僕はね、別れるにあたって、君に最大にして最後の謝罪を、
目に見える形で表したいと思う」
勝手に別れるとか言うなニダ!と韓国は叫びかけたが、目に見える形、のくだりを聞いて、
何とか声を飲み込んだ。見える形?今度こそ新幹線をくれるとか?アニメやゲームを
オリジナルのデータごと、もちろん権利もくれるとか?韓国はワクテカした。
「君は僕の姿を目にしたり、残り香を嗅ぐだけでも我慢がならないようだ。
甚だしきは、僕の作った物を目にするだけでも精神的苦痛を覚えるようだ」
それは確かにそうだ。しかもそれを、アメリカやフランスが誉めようものなら、
ほぼ間違い無くかんしゃくおこる。
「だからね、韓国、君が二度と辛い思いをしなくて済むように」
「僕が君の庭に作った建築物は全て破壊し、清浄な更地に還す。
僕の作った物はチップ一つ、医薬品一つ君の家に『流出』しないようにする。
出版物や映像は、コピーに至るまで引き揚げる。君の店子が、『ついうっかり』僕の家の
サイトを見て、嫌な気持ちになっては申し訳ないから、韓国ドメインの
アクセスは全て弾く。拉致被害者や南北分離家族のようになっては
かわいそうだから、なぜか僕の家にいる君の店子たちは、全員君の家に送り届ける」
「アイゴ―――――――――――――――――――――――――ッッッ!!!!」
「や、やめてほしいニダ!!もう二度と審査の邪魔はしないニダ!!!」
「うーん、竹島と『不慮の事故』で僕の池に迷い込んできた君の家の船はどうしようかなあ……」
真剣な面持ちで思索する日本の目には、取り縋る韓国の姿は入ってこないようだった。
「い、嫌ニダ…日本と別れてはやっていけないニダ……」
「韓国、しっかりしなよ韓国!」
「はっ!?日本!?ここは…出にーず…じゃないニダ!?」
韓国は飛び起きた。はすみで、額に乗せられていた濡れタオルがぼたりと腿の上に落ちる。
「もー、何言ってるんだよ…あんな炎天下のスギナミ室で大騒ぎするから、
熱中症で倒れて病院に運ばれたんだよ、覚えてないの?」
「それじゃ今のは、夢、ニダか…?」
「はあ?…まあいいや、もう少し寝てなよ。タオルを冷たいのに替えてくるから」
そういって日本が温くなってしまったタオルを手に踵を返した瞬間。
「い、行かないでニダ!!そばにいてくれニダァ――――――!!!」
韓国が号泣してしがみついてきた。
「韓国!?どうしたんだよ!?」
「日本と離れるのは嫌ニダ!ウリ達はいつも一緒ニダ…うえっうえっうhくぇでdsdf5-611/…」
「離れるって、ひょうたん島じゃないんだからムリに決まってるだろそんなこと……」
泣きじゃくる韓国の背中をポンポンと叩きながら、(ああでも地道に半万年くらいかければいつかは…)と、
ハワイとご近所になる日を空しく想像する日本だった。