温帯前線×寒冷前線
寒冷前線を追いかけて温帯前線が現れ、迫る
年に一度の出逢い
冷静な振りをしつつも拒みきれない寒冷前線
熱血系の温帯前線に組み敷かれ、いつしか梅雨前線に
天気予報を見てて妄想
・・・蒸し暑いんだ・・・orz
928 :
1/3:2005/07/08(金) 21:14:40 ID:tGCAavMb
「やー! 今年も会えたなっ、オホーツク海気団!」
「寄るな、小笠原気団」
「冷てぇなあ、オホーちゃんは〜」
「変な呼び方をするな」
毎年日本近海で、こいつと出くわしてしまう。私たち気団が毎年同じルートを移動するのは、
大自然の意思だから仕方がないのだが。
さっさと日本を通り過ぎよう。私は足を速める。しかしすれ違おうとした私の肩を、小笠原がぐいと引き寄せた。
逞しい腕の温もりに、内心どきりとした。明るい南の海の匂い。──生まれた場所が違うだけで、こうも違う。
湿気て冷たい陰鬱な私とはこんなにも違う。
「つれなくしないでくれよ。俺さ、あんたのことが好きなんだよ」
「馬鹿を言うな」
こいつにとっては気軽な言葉だろう。挨拶みたいに「好き」だなんて言うな、馬鹿が。
──いや、馬鹿なのは私の方だ。戯言に、こんなに動揺してしまう。
「好きだ」
「私は寒帯気団だ。曇天にするどころか、雨は降らせるし冷夏の原因にもなる」
「好きだってば」
「私のせいで吹く風を、何と言うか知っているか? 冷害風、餓死風……」
「よせよ、黙れ」
「私は」
強く抱きすくめられる。……温かい。
929 :
2/3:2005/07/08(金) 21:15:39 ID:tGCAavMb
「何でそんなにジギャクテキなわけ? ……お、おい、泣いてんのか?」
「泣くわけないだろう。……さっさと離れろ。ただでさえ私は日本で嫌われているのに。お前といると梅雨になる」
こいつと会いたくないんだ。こいつといると、何故だか涙が出そうになる。
うっかり泣きかけたところを見られてしまったのは恥だ、失敗だ。小笠原は妙に慌ててフォローしてくる。
「あー、えーっと、俺だってさ、雷雲発生させるわ夕立かますわで、内陸部じゃ厄介もんなんだぜ〜!」
「だがお前のいる夏は晴天が多い」
「でも蒸し暑くなるじゃん。お前はひやっこくて気持ちいいな」
でかい図体をして、懐っこく頬擦りしてくる。恥ずかしくて居た堪れない。
やめろ、と言えばこいつはすぐにやめるだろう。だが、その簡単な言葉が何故か声に出来ない。
耳をくすぐる髪は、見た目に反して意外と柔らかかった。温かな手が、私の手を握る。
「……さっきはお前のこと、冷たいなんて言ったけどさ。嘘だよ。だって手が冷たいやつは心があったけーんだ」
「迷信だ」
「俺は天気予報より嘘つかねぇよ?」
「何だ、その例えは」
馬鹿馬鹿しい例えに、思わず苦笑する。小笠原は白い歯を見せて笑った。
「へへっ。クールなあんたも好きだけど、笑ったカオがすげぇ好き」
「……何がそんなに楽しいんだ」
「楽しいっつーか、嬉しいんだ」
ぎゃうぎゅう、と力任せに抱き締めてくる。本当に暑苦しいやつだ。息苦しい。胸の奥もきゅうっと苦しい。
何なんだろう、自分はこのままおかしくなるんじゃないだろうか。
930 :
3/3:2005/07/08(金) 21:17:25 ID:tGCAavMb
「……離してくれ。雨が長引くと、日本が困る」
「日本のやつらも覚悟してるって。それにさ、ほら、雨が降るとオケ屋がもうかるって言うだろ」
「風が吹くと、だ」
「雨が降らねぇと傘屋も困る」
「……それでも、私は嫌われ者だ」
「あーあー、ほら、そんな湿っぽくなるなよ。ジメジメ溜め込んでねぇで、吐き出しちまえ」
まるで子どもをあやすように、広い手のひらが背中をさする。
胸につかえていたものが解けていくような心地良さに、肩の力が抜ける。涙腺が緩む。
泣き顔を見せたくなくて、厚い胸板に顔を押し付けた。
「俺、……実言うと、あんたの泣いた顔も好きなんだ。だから、いっぱい泣いていいよ」
大きな手で私の頭を撫でながら、小笠原が言った。私が顔を上げないままでいると、更に呟いた。
「でも、困ったな。……俺、変態かな。あんたが泣くと興奮する」
「……おちおち泣けないな」
私は出来るだけそっけなく応えた。──だが、実のところ私の心臓はひどく騒いでいた。
私の耳を撫でた、熱を帯びた湿った吐息。おそらく彼は無意識だろうが、そこには男の欲情が滲んでいた。
「あ、いや、でも、安心してくれよ。俺、ヘンな事しねぇよ」
慌てたように言い足して、彼は私を抱き締める。私はほっとした。だが少しがっかりした自分もいて、
私はひどく狼狽したのだった。
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検索していたら、気団で萌えてしまいました。非生物萌え万歳。
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