【日々】ある○○のいちにち【徒然】

【あるしごとにんのいちにち】

じゅうにねんまえ　しごとがえり　はしのしたで　こどもをひろった
ふゆのさむいさなか　ひとり　かわらであそんでいた
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まわりのにんげんにきくと　ちかくははおやにしなれて　ちちおやはもともといないとか
せわするにんげんもおらず　ひとり　いつもあそんでいるのだとか
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こえをかけると　ぱっとかおをあげて　こばしりにちかよってきた
おさないながらに　きれいなかおをしていた
とてもすなおな　めをしていた
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きまぐれだった
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ちいさなてをつないで　ふたりならんで　ちいさないえにかえった
いえのなかにひとのけはい
とをあけると　しごとのちゅうかいにんが　せんせい　とおれをよんだ
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こどもをそとにまたせて　しばらくしごとのはなし
はんときほどして　ちゅうかいにんはかえる
あらためてこどもをへやにいれると　そでをひいて　こどもがわらった
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せんせい　せんせい
↓
いみもしらないで　むじゃきにおれをよんだ
そのめが　とてもすなおだったので
しごとがえりのきたないてで　ちいさなからだを　だきしめた

こどもはとてもすなおで　なんでもいうことをきいた
せんせい　せんせいと　たもとをひいてなついてくる
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それがいじらしくて　かわいらしくて　たまらない
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きたないいえにかえるのが　たのしみになった
いえにもどるまえ　てをあらうのが　くせになった
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こどもがじゅうさんになるまで　ひざのうえにのせて　だいじにそだてた
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こどもがじゅうよんのとき　はじめてだいた
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こういのあいだじゅう　つらそうなかおとこえ
それでも　いやだ　とも　やめてくれ　とも　いわなかった
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こういがおわったあと　なみだでぐしゃぐしゃのかお
せんせい　おれ　もっとがんばんね
とちゅう　きうしなって　ごめんなさい
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つらいくせに　いきもととのっていないくせに　すなおなめでわらう
せんせい　と　おれのそでをひいてわらう
↓
このこはなんで　おれにひろわれた
どうしてこんな　さいていなにんげんに　ひろわれてしまった
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ぜつぼうかんがおれをおそう
それでも　どうしてもてばなしがたくて　かわいくて　いとしくて
また　ぬれたよごれたてで　だきしめた

こどもは　せいねんになった
さいきんでは　しごとをみつけて　やっといちにんまえだと　はしゃいでいた
あいかわらず　おれのことは　せんせいとよぶ
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ちかごろ　よのなかがおかしい
めっきり　きなくさくなってきた
おれのしごとが　どんどんたまる
つかれてかえると　おかえんなさいと　むかえてくれるこえが　すくいだった
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なかまがひとり　ころされた
なじみのゆうじょが　てびきしたらしい
もとじめがおれをよんだ
「おまえも　いろこをかっているだろう
すてるか　ころすか　ふたつにひとつだ」
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ひろったこのてで　すてろというのか
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だいたこのてで　ころせというのか
↓
だまりこんでいると　もとじめはさらにいった
「おまえができないならば　おれがころしてやろう
なかまをうしなうのは　もうまっぴらだ」
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わかりました　じぶんで　けりをつけます
↓
おもいあしで　いえじをたどる
ひとごろしのては　けっきょくなにもつかまないのだ
いいきかせながら　いえのとをひらいた

もうまよなかだというのに　かれはおれをでむかえた
こどものころとかわらない　くったくない　すなおなめ
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これいじょうはいわない　あすのあさ　でていけ
↓
ひじょうなことばをたたきつける
かれは　せんせい　と　しんじられないものをみるめで　おれをみた
↓
うるさい　せんせいなんてよぶな　おまえをひろったのは　きまぐれだ
もうあきた　でていけ　すぐにでていけ
↓
かれはだまってうつむいて　へやのおくにはいった
ちいさなものおと　みのまわりのものを　かたづけているおと
↓
なにもみたくない　ききたくない　うすいふとんに　よこになる
いつしかおとはやんで　かれがそっとちかくによった
せんせい　とよんで　ねころぶおれの　そでをひく
↓
どうか　からだだけはきをつけて　あなたはおれの　せかいです
あなたがおれを　たすけてくれた　すくってくれた
おれは　あなたを　あいしてる　せんせい　あなたを　あいしています
↓
そして　かれはでていった
これでいい　これでよかったのだ
じぶんでいいきかせながら　なみだがとまらない
ひとごろしがそだてた　じゅうごもとししたの　すなおなこども
いちどとしてくちにしたことはないけれど　だれよりなにより　あいしている
↓
あるしごとにんの　じゅうにねんのいとしいさいげつにまくをとじた　さいごのいちにち