モララーのビデオ棚 in 801 板 2

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771風と木の名無しさん:04/05/31 20:42 ID:m1D5nMLS
ホ綿ワはここ最近ジャンル自体に粘着アンチが張り付いてるんで
>742もファンを装ったアンチだとオモ。

そんなことはさておき>763-769萌えー!
私も映画見たばっかりなので激しく萌えますた(*´Д`)
772風と木の名無しさん:04/05/31 20:50 ID:PnGHCwXo
映画はまだ見てないけど見に行きたいと思ってたので
事前萌えできました!
実際に映画見るときはこの二人をチェックしてみます!
7731/2:04/05/31 23:14 ID:WWvOtfVP
久しぶりに福#物投下させていただきます。
木兆山→イ呆のようなそうでないような。

ほんの数時間絵空事を映すだけの白幕を少年は大きく開かれた窓のようだと言った。
知らない物、新しい物、世界にはそんな様々な物があることを教えてくれるのだと。
触れたいと望む事すら知らなかった、子供は今でも俺の隣に居る。

どこにでもある田舎町のどこにでもある映画館。
新作が出るたびに足を運ぶのが俺の唯一の趣味になっていた。
通い始めて暫くは切符ぎりの親父が嬉々として話しかけてきたが映画監督どころか
俳優の名前も碌にわからないと知れればただ毎回料金の受け渡しをするだけだ。
映画好きの不良中年仲間、との期待を裏切った事だけは少々悪いなと思ってはいる。

こんな田舎にも配給されるほどの人気作品だというのに劇場内は随分静かなものだった。
それも当然で観客は十人にも満たない。
この時代に敢えてCGではなく壮大なセットとエキストラで臨場感のある本格的な映像造りが売りの映画だから
きっと出演者の方がこの映画館で見る観客よりずっと多いだろう。
最近動く分だけは幾らか絞れてきたとはいえまだ重い身体を椅子に沈めてまだ白いスクリーンを見る。

――イ呆、馬鹿だな。こんなのただの作り事じゃないか。
もう二度と逢う事はないだろう少年、そう何年経っても少年のままの彼に話し掛ける。

――良いんだよ。詰まんない事言うなよ。楽しいんだからそれで良いんだ。
横から聞える声に微かに笑って売店で買った袋菓子を誰も居ないそこに置く。
そして俺は聞えるはずの無い声を聞き見える筈の無い姿を見る。
ほんの少し世界が良い方に動いたなら彼にも在り得た、ごく平凡な未来。
7742/2:04/05/31 23:20 ID:WWvOtfVP
――ガキみてぇな事を言うんだな。
また一緒に、また今度。望んだ事はただそれだけだった。
映画代くらい奢ってやって、菓子とアオイへの土産くらいは自分で買わせて。
切り取られた窓から楽しい絵空事を見て一緒に笑うのだ。

保と過ごした日々は鮮明なようでどこか滲んでいる。
印象ばかりが強くて一つも像を結ばないのだ。
手も握らなかった。唇も何もかも、少年の身体に触れる事は無かった。
ましてやわかりあう事など少しも無かったのだ。
けれど今、自分と少年の人生はこうして交わっている。
映画館へ行くたび、この絵空事の窓を見るたび俺は何よりもイ呆を思い出す。
切り取られた窓の向こうに見える世界は隣に座って夢中で映画を見ていた彼、なのだ。

俺が字幕を追う間、または幻のイ呆が袋菓子を握り締めている間に映画は進みやがてエンディングロールが流れ出す。
小さな女の子が暗い中少しおぼつかぬ足取りで横を通り過ぎた。
「あのおじちゃん沢山泣いてるね。悲しい事があったの?」
可愛らしい声を上品な母親らしい声が軽くたしなめて静かになると俺はまた一人で泣いた。

悲しくない。悲しいんじゃない。俺はただ、何度でも交わる少年の人生が愛おしいのだ。

775風と木の名無しさん:04/05/31 23:56 ID:JBHrtFDp
773さん、お久しぶりです。ありがとうございます。
わーん、原作思い出して泣ける〜
776風と木の名無しさん:04/05/31 23:58 ID:fWuS8Ty4
すいません。調子ぶっこいてもう一本ト口イもの投下させてください。
もうこれでやめにしますんで、長いけど許してくださいよモララー。
萌えすぎて死にそうなんです。羽ト×秋です。


 「ア樹レス。朝だよ。剣を見てくれると約束した時間だ」
 軽快な足音と共にパト口ク口スが部屋に入ってくる。しまったと
思いつつも、寝起きの重たい身体を起こし、ア樹レスは年下の従兄
弟を寝台のうえから見つめた。
 側で寝ていた妾たちも何事かと目を擦る。それもそのはず、恋を
交わした翌朝は寝坊して心ゆくまで名残を惜しむのがするのが人と
いうもの。しかし今朝は、雄鶏が暁の訪れを告げたばかりという時
間に眠りを奪われてしまった。この従兄弟のせいで。
 パト口ク口スはおそらくいつものように、召使に取次ぎもせず、
勝手知ったるとばかりに上がってきたのだろう。慌てふためいた様
子で召使がパト口ク口スの後に佇んでいる。数時間前に眠りに落ち
たばかりのア樹レスは溜息を吐いて、枕に顔を埋めた。
 「……眠い」
 「知らないよ。僕は約束したとおりに来ただけだもの」
 「……下がれ」
 従兄弟にではなく、褥を共にした女たちに言うと、妾たちはほと
んど半裸姿で寝所を出て行った。側を通り過ぎる女体を見て、パト
口ク口スの頬が紅くなる。それを見て、ゆっくりと寝台から降りて、
服を纏い始めていたア樹レスは目を細めた。
 「……パト口ク口ス」
 「嫌らしいね。三人もの女たちと夜を過ごすなんて」
 パト口ク口スが尖った声で言う。漁色を責められるのは今に始ま
ったことではなかったので、ア樹レスは聞き流していた。
 「この間教えた型は覚えたんだろうな」
 「覚えているよ。けれど、ア樹レス」
 「男というのはたまには女が必要なんだ」
777羽ト秋その2:04/06/01 00:00 ID:7iyeOoR/
 
 従兄弟の金髪を宥めるように撫でると、パト口ク口スが眉を寄せ
てみせた。「……僕には許さないくせに」
 「当たり前だ。お前はまだ女の身体を覚えるには早すぎる」
 「けれどもう17だ」
 「知っている」
 「それならどうして。父上はいいと言ってくれたのに」
 「強くなりたいなら私の言うことを聞け」
 そう言いながらも、ア樹レスは内心溜息を吐いていた。実際のと
ころ、パト口ク口スもそろそろ女を抱いてもいい年齢だ。こういっ
たことは下手に初心なままでいれば、却ってそれが命取りになるこ
ともある。それはわかっていたが、ア樹レスはどうしてもパト口ク
口スが女を持つことを許す気にはなれない。
 もう17か。パト口ク口スと共に外に出て朝陽の下を歩きながら、
時が止まってくれればどんなにかよかっただろうと思う。そんな想
いとは裏腹に、ア樹レスの従兄弟は日に日に成長し、さらに美しく
なっていく。
 パト口ク口スほど美しい人間はいまいとア樹レスは思う。春の空
のような色の瞳も、無造作に束ねられた金髪も全てが美しい。毎日
ア樹レスが槍や剣の手合わせをしてやっているせいか、ア樹レスの
恋人だった少年時代にはほっそりとしていた腕や脚は少しずつ筋肉
をつけていっているものの、相変わらず若木のようにどこか可憐だ
った。
 ア樹レスは長くこの年下の従兄弟を恋人としてきた。求愛の印と
して数え切れないほどの雄鶏を贈り、慈しんだものだった。永遠に
このときが続くものと思われたのだが、惜しいかなそうもいかない。
パト口ク口スが長じるにつれて、少年愛の対象として扱われ続ける
ことが世間では不自然とされるようになってしまった。
 とうとうパト口ク口スが15になったとき、友であるオ出ュッセ臼
にもそのような扱いをア樹レスが続ければ、一人前の男として扱わ
れず恥をかくのはパト口ク口スなのだとさりげなく諭され、ア樹レ
スはこの年若い従兄弟の未来のために、しぶしぶ身を引いたのだ。
778羽ト秋その3:04/06/01 00:02 ID:7iyeOoR/
 しかしこうして少年期を過ぎても、相変わらず自分を慕ってくれ、
輝くばかりに成長していくパト口ク口スを間近で見ていると、捨て
たはずの劣情が疼くことがある。手を伸ばしそうになることもしば
しばで、そのたびにア樹レスは自分を戒め、他の少年なり美しい女
たちなりを抱いて欲望を収めていたのだった。
 それも知らずに。
 まったく無邪気なものだと、ア樹レスは懸命に剣を合わせてくる
従兄弟を見ながら思う。しなやかな身体は、確かにもう少年のよう
なそれではない。男のそれだ。けれど美しいことには変わりはない。
自分はおかしいのだろうかと思う。
 
 そのまま数時間剣を合わせ、そろそろ今日は終わりにしようかと
いうことになった。パト口ク口スが汗を拭くのをア樹レスがぼんや
りと眺めていると、その視線に気づいたパト口ク口スが首を傾げる。
 「何」
 「お前は美しい男になった」
 静かに答えると、パト口ク口スが紅くなってさっと俯いた。それ
を苦い気持ちで見つめる。今は自分が許さなくとも、あと数年もす
れば多くの女や少年が、彼を愛するようになるだろう。それを思う
と確かに嫉妬を感じるのだ。
 「僕はあの頃より成長した?」
 まだア樹レスの腕に抱かれていた頃より。その意味がわかって、
ア樹レスは頷いた。パト口ク口スは嬉しさと悔しさが入り混じった
表情をして呟く。
 「それでは何故いつまでも子供扱いするのかなあ」
 「――女のことなら」
 まだ早いと、そろそろ苦しくなってきた言い訳を繰り返そうとす
ると、パト口ク口スはかぶりを振った。「僕はもう子供じゃないよ。
あなたが僕の年の頃には、もうすっかり大人扱いされてたはずだ」
 「とにかく、まだお前には早い」
779羽ト秋 その4:04/06/01 00:03 ID:7iyeOoR/
 苦々しさを隠しながらそう結論づけると、パト口ク口スはは
っきりと言った。 
 「僕だってたまに持て余すよ」
 何をと、聞かなくともわかる。笑い飛ばせばいいものを、ア樹レ
スは身体が熱くなるのを感じた。地面に腰を降ろしたまま黙ってい
るア樹レスに、パト口ク口スは身を乗り出すようにして囁いた。「
抱いてみたいんだ」
 「――女は駄目だ」
 「ケチ。それではどこかの」
 「少年も駄目だ……」
 こんな言葉で納得するはずはないと思いながら、ア樹レスは答え
る。するとパト口ク口スはふくれてみせた。「やっぱりいつまでも
子供のままだと思ってる」
 「思ってない」
 だからこんなに苦しい。いつまでも手元に置いておける少年のま
まならよかったのに、いつのまにかパト口ク口スは成長して、そし
ていつかは自分から離れて行ってしまうのだ。
 黙っていると、パト口ク口スもふてくされたように口を閉ざした。
その横顔を見て、ア樹レスは躊躇ったのちに低く問うた。
 「好きな女か少年でもできたか」
 「いいえ。今も変わらずあなたが好きだ。だけどア樹レスはもう
少年ではない僕には興味がないんだろ。ほんとにいやらしいよ。あ
なたは」
 乱暴な口調で言うと、パト口ク口スは立ち上がって剣を手に足早
に去っていく。ア樹レスは唖然としてそれを見守っていたが、我に
返って慌てて立ち上がり後を追った。
 「パト口ク口ス」
 肩を掴むと、パト口ク口スは涙目で睨んでみせた。
 「あなたに誰とも寝るなと言われれば僕は誰とも寝られない。嫌
われるのが怖いから。そして、あなたはもう僕とは寝ない。だけど
僕だって男なんだ。欲望を持て余すよ」
780羽ト秋 その5:04/06/01 00:07 ID:7iyeOoR/
 「……パト口ク口ス。私は」
 「あなたは思いつく限りの女や少年と寝て楽しむ。もう僕のこと
なんて考えもしない」
 パト口ク口スは嫉妬している。ア樹レスはそれと悟り、従兄弟
の横顔を見ながら、密かに喜びに震えた。
 「違う。……今でもお前を愛している。誰より愛している」
 深い吐息とともにア樹レスは告白した。こんなに勇気のいること
は、他にないだろうと思った。どんな戦いよりも、この一言を言う
方がア樹レスには勇気がいることだった。
 パト口ク口スはその言葉を聞いて、驚いて足を止めた。
 「ア樹レス、それじゃあ」
 「だからお前が誰かと肌を合わせることを許せずにいたんだ」
 「でもあなたはもう僕とは寝ないのに。もうずっと」
 「……いつまでもそういう扱いをしていれば、お前が他の者に軽
んじられる」
 「そうか。僕のことを思ってくれてたんだね」
 頷くと、パト口ク口スはあどけなさすら残る笑みを浮かべた。
 「……それじゃあ僕はあなたの言うとおり女も少年も抱かない」
 「ああ、そうしてくれ」
 「でも欲望はどうすればいいの」
 意味がわからずア樹レスが視線を泳がせると、パト口ク口スは繰
り返した。「眠れないこともあるんだ。あなたのことを考えて」
 「……僕は本当のことを言えばあなたとしか寝たいと思ったこと
はないよ」
 なんとなく話の行く末がわかって、しかし信じられずにア樹レス
は黙っていた。
 「だから女も少年も抱かない。けどもう17だもの。自信をつけた
いよ」
 
781羽ト秋 その6:04/06/01 00:09 ID:7iyeOoR/

 つまり自信をつけさせてくれと、パト口ク口スはア樹レスに言っ
ているのだ。勇猛果敢にして最強の英雄と囁かれるア樹レスに向か
って。ア樹レスは眩暈を感じた。
 「駄目?僕はあなたに抱かれたいと今でも思うし、同じくらい抱
いてみたいとも思ってたんだ」
 そもそもパト口ク口スがいい年をして男に抱かれていては、もの
笑いの種になると思って自分は身を引いた。それなのにその自分が
パト口ク口スに抱かれるとあっては、もし人に知られればどれほど
嘲笑されるか。――しかし。
 「ダメ?ア樹レス。あなたと寝たいんだ」
 パト口ク口スが腕を掴んで、囁くように言う。その掠れた声と汗
の香りに、ア樹レスは呆気なく自分が陥落するのを感じた。
 頷くと、パト口ク口スが華やかに笑う。そして少しだけ背伸びを
して、ア樹レスの耳にキスをした。「――嬉しいよ」

 人に見られはしないかと気を揉みながら、ア樹レスは寝所の雨戸
を閉めた。家族はもちろん、奴隷達にだってみられてはまずい。―
―ような気がする。
 今朝は乱れていた寝台の上の布は、奴隷の手によって美しく整え
られていた。パト口ク口スは心なしか頬を高潮させ、その寝台に腰
を掛けている。
 ア樹レスは全ての雨戸を閉め切ると、ほとんどしぶしぶといった
態度で従兄弟のものへ歩み寄った。途中ふと思いついて、自分が少
年を抱くときに使う香油を棚から取り出す。やれやれ、こんなもの
を使われるのは、まだ自分が少年だった20年近い昔以来だと思った。
 あの頃は勇猛な男に抱かれ愛されれば、それを誇りには思ったも
のの、決して行為自体を嬉しいとは感じなかった。少年だったア樹
レスが喜んだのはむしろ行為の後の夜伽話、英雄達が自らの戦場で
の経験を語ってくれたことで、抱かれることそのものには特に喜び
はなかったのだ。
782羽ト秋 その7:04/06/01 00:11 ID:7iyeOoR/
 だからはっきり言って、今もア樹レスはこれからの行為への期待
はなかった。パト口ク口スに自信とやらをつけさせてやればいいの
であって、自身の快楽は問題ではないと思っていた。
 「ア樹レス、愛してる」
 だがこの年若い従兄弟に囁かれれば、何故か期待のようなものが
こみ上げる。それを持て余しつつア樹レスは服を脱ぐと、パト口ク
口スの手が促すままに寝台に腰を下ろし、パト口ク口スに口付けた。
 「私もお前を愛している」
 軽く舌を絡めた後囁けば、パト口ク口スはうっとりとした顔をし
てみせる。その表情に微笑んで、自分のそれより淡い色の金髪をゆ
っくりと撫でた。
 どうやら自分はこの従兄弟にはとことん甘いらしい。何をされて
も許してしまうだろう。仕方ないと腹を括って、香油の入った小瓶
を渡すと、パト口ク口スは一瞬きょとんとした顔をしてみせた。
 「……ああ」
 けれど流石に数年前までのことを思い出したらしく、頷いて小瓶
を受け取る。促すままに柔らかい織り布の上に横たわりながら、ア
樹レスは年上らしく言った。
 「言っておくが、苦痛を与えずに抱くのは難しいんだぞ。お前に
は一度も苦しい想いはさせなかったから知らないだろうが」
 「わかってる」
 眉を寄せ、怒ったようにパト口ク口スは言う。ア樹レスは覆い被
さってくるパトロ黒スの服を出来るだけ優しく脱がしながら、忠告を
続けた。
 「一人で意気込んではいけない。――まず優しくくちづけを」
 するものだ、と言うや否や、唇を奪われる。優しさとは程遠い、
荒々しいキスだったが、ア樹レスは自分でも驚くほど興奮した。
 「これでいいの」
 耳元で呟くパト口ク口スの声はどこか硬い。まるで知らない男の
ようで、ア樹レスはぎこちなく頷いた。するとパト口ク口スは少し
考えたあと、ア樹レスの耳を舐め、胸の突起に触れた。
783羽ト秋その8 あともうちょっと:04/06/01 00:14 ID:7iyeOoR/
「は……」
 それは驚くような快感だった。今までどんな女や少年と寝ても、
成人前、男に抱かれていた頃も、こんな快楽を感じたことはなかっ
た。思わず身を震わせると、パト口ク口スが顔を覗きこんできた。
 「気持ちいい?あなたがよくこうしてくれたのを思い出して」
 「……こういうときはあまり喋るものじゃない」
 やはりまだまだ子供だ。そうと思いながら言うと、不思議そうな
顔をしてみせる。
 「何故?愛してると囁かないと死にそうだ」
 「わかった。私も愛してるよ」
  笑って腰に手をまわす。パト口ク口スは嬉しげに頷いた。「う
ん。もっと言って」
  
 苦痛がないわけではなかったが、パト口ク口スの愛しているとい
う囁きはそれを消し飛ばしてしまった。結局パト口ク口スが欲望に
急いていたので、十分とは言えない愛撫のまま奥深くに迎えたもの
の、ア樹レス自身も目が眩むほど興奮していたのだ。
 自分の上で単純な律動を繰り返すパト口ク口スの薄い脇腹に触れ、
ア樹レスは低く呻いた。快楽が全身を駆け巡っていく。自分が欲し
かったのは、女でも少年でもない。この従兄弟だったのだと実感す
る。パト口ク口スはもう既にいつものあどけなさも吹き飛ばして、
一人の男として快楽を貪っている。ア樹レスもまた男としてそれを
受け止めながら、パト口ク口スを他の誰とも寝させたくないと思っ
た。
 パト口ク口スがア樹レスの体内で欲望を吐き出す。安堵し
たような溜息を吐いた後、気だるげな、けれど幸福そうな顔で、ア
樹レスのそれに触れて同じように終結を促されると、妙に照れくさ
くて興奮した。
 
 やがてゆっくりと引き抜き、パト口ク口スは上体を起こした。汗
ばんだ額に張り付いた髪を掻き上げる。ア樹レスは寝そべったまま、
その様子を見ていた。いつもよりどこか大人びた顔をしている従兄
弟を見ていると、乗り気でなかったこんな行為も悪くないと思う。
悪くないどころか、ひどく魅力的な行為なのだと知ってしまった。
「ア樹レス、愛してる。すごく素敵だった。綺麗で――昔男たち
が幼いあなたに夢中になったっていうのもわかるよ」
 パト口ク口スはそう言って深く口付ける。ア樹レスは黙っていた。
 「ア樹レス、愛してると言って」
 焦らしの戦法というのを年若い従兄弟は知らない。そういえば抱
いていた頃も猫かわいがりにしてきたから、焦らしたことなんてな
かったなと思いながら、ア樹レスはパト口ク口スを見つめた。
 「ア樹レス、さっきまでのように愛していると」
 じれったげに促す声に、ア樹レスはまだ細い腰を抱き寄せながら
笑った。きっと、こうしているとまたいつか自分はパト口ク口スを
抱いてしまう。抱かせてもしまう。溺れてしまうのは危険だと思ったが、
誘惑には抗えそうにない。どうしたものかとア樹レスは目を瞑った。
 「それとも、もう子供ではない僕にはやはり興味はないの。ア樹
レスは」不安げな声を、ア樹レスは目を閉じたまま遮った。
 
 
785羽ト秋ラスト:04/06/01 00:20 ID:7iyeOoR/
 「――私以外の誰とも寝るな。触れるな。そうしたら愛してやる」
 「――そんなのひどいや。あなたは色んな人と寝るくせに」
 「私はいいんだ。お前は駄目だ。お前は私のものだから。だから
他の者とは寝るな。ずっと私の……」
 これは命令ではなく、哀願なのだとア樹レスは自覚している。だ
けれど、パト口ク口スは気づいていないだろう。ア樹レスはパト口
ク口スの指に触れた。
 「……そうしたら何からも守ってやる」
 何からも。絶対に。そう思っていると。パト口ク口スが呟いた。
 「――ア樹レス、ア樹レス、でも僕もあなたを守る」
  ア樹レスは思わず微笑み、パト口ク口スを抱き寄せると、耳元
で愛していると囁いた。
 
 終

お目汚しスマソ。本当にモエな映画すぎて死にそうでした
786風と木の名無しさん:04/06/01 01:13 ID:gdaF8EU5
羽ト秋キタ―!(*´Д`)
も…萌え氏にそうです!
女神様ありがたや…!秋エローヌ!
787風と木の名無しさん:04/06/01 03:50 ID:tJz4OLxw
>>762
ネ申キテタ――――――!!

素敵なモエを、ありがとうございました。
788776:04/06/01 07:04 ID:7iyeOoR/
あっ、今気づいたけど少年への求愛の贈り物は
雄鶏じゃない。雌鳥だ。
ていうか少年がそんなもの貰って嬉しいのだろうか。
そのほかにもいろいろ怪しいところがあるけど許してください。
789風と木の名無しさん:04/06/01 12:28 ID:98TVdlkl
うおぉぉーい!
ト/口/イ キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!

ごちそうさまです!
790風と木の名無しさん:04/06/02 01:06 ID:mjDvCeFD
『雄鶏(英語だとcxxx)を贈る』ってなにかの
隠喩なのか〜と勘違いしてましたが、それはともかく
1061話ご馳走様でした。パ栗鼠もパトロ聖衣も
ごりごり甘え寄り切り押し倒しで凶悪に可愛いっすv
791風と木の名無しさん:04/06/02 23:21 ID:3YDEa629
あ・・・秋萌え!
792風と木の名無しさん:04/06/03 00:42 ID:Yl9zeX2t
1061話ふたつとも萌えますた。健気な秋がかわいいー。
793530:04/06/03 01:28 ID:BXoYtbAJ
振動×剤然書きの>530です。

超遅レスですが、
>699, 701 保管庫を維持してらっしゃる方どうもご苦労様です。
作品を分別して下さった>700さんもありがとうございました。
こういう風に保存されるなら、SSとそれ以外の文章は分けるべきでしたね(自分、
レス数の節約しか考えていませんでした)。

>740さん、分かりにくくてすみません。
そして>741さん、解説ありがとうございました。でも実は私はそのシリーズを
観ておらず、知っているのは2001年の待遊木安子が出ていた方だけなんです。

では次からまた2レス使います。
794振動×剤然(530 -11):04/06/03 01:32 ID:BXoYtbAJ
雑居ビルの3階に在りながら地下の穴蔵か船室のような印象のその店は、少し前に
織田霧医局長に教えられた。客あしらいがあっさりして落ち着ける場所だったはずが、
今夜は少し音楽が喧しい。
選択を誤った事を傍らの外科医に謝罪すると、
「なんだか昔に戻ったようだ。振動先生と居ると、自分まで若返ったように感じます」
と笑顔が返された。
言われてみれば――きびきびした若い印象でつい同輩のように思ってしまうが――
剤然は天下の難波大第一外科のトップである。普段飲むのは高級バーなのだろう。

やや暗い照明の下、カウンターに並んでバーボンのグラスを傾ける。音楽の喧騒と
回り始めた酔いを受けて話題は専門性の高いものから他愛無い世間話に流れていき、
やがてそれも途切れがちになった。
音楽が少し低くなった時、意匠を尽くした剤然のライターが小さい音を響かせる。
前の店でも何度か聴いたその音は、だんだん頻度を増すように思えた。
「ヘビースモーカーなんですね」
「ええ、医者の不養生というやつですか。特に酒を飲むとひどく欲しくなる」
「私も……、病院ではほとんど喫わなくなりましたけれど、なかなか止めるまでには」
振動もカウンターに置いた自分の箱を指先で突つく。
それを見遣った剤然は視線をふいと正面に投げた。
「……わないんですけどね」
言葉の前半を聞き取れなかった振動は、え?と相手の口元に耳を寄せる。
「昔から、なんですよ」
剤然はそう呟いて、点したばかりの煙草を何故か灰皿で揉み消した。
言い直さないという事は、聞こえなくても特に支障ない話だったのだ。
そう判断した振動が俯けた上体を少し起こすと、すぐ目の前に剤然の耳が有った。
795振動×剤然(530 -12):04/06/03 01:39 ID:BXoYtbAJ
耳朶の縁が紅く染まって、繊細な形が際立っていた。体温を感じるほど間近な
そこから、整髪料か何かの嫌味無い香りがほんのりと立ち上ってくる。
そのまま数秒間それを見つめ続けてから振動は我に返った。
他人の耳をしげしげと観察するなんて、自分は何をやっているんだろう。
それが千切れていたりもげそうなのだったら縫ってやるが、そうでもなければ――

少し酔ったか、と姿勢を正すと、隣に座る医師の上半身全体が目に入った。
同じくらい飲んでいるはずなのに、相変わらずぴっと伸びた背筋。小ぶりな
頭部のシルエットはきちんと整えられた黒い髪に続く滑らかな額、正面を向いた
目のくっきりした二重まぶたと高い鼻梁が構成している。そんな刻んだような
横顔の中で、酒で潤った唇だけがふっくらと柔らかそうだ。
きれいだな、と振動は素直に感じ、そして自分がそう感じた事に戸惑う。

振動は他人の容姿などにはおよそ無関心だった。若い医局員やナースたちは
今度の患者は美人だとかいい男だとかでさざめいている事もあるようだが、
彼は対象が患者であれば傷病の度合い、同僚であればその技術と能力にしか
興味が無く、親しくなってやっと人柄に思いが至る、その程度だ。
確かに出会いから剤然の笑顔には魅かれた。けれどそれは彼にその表情を
与えている人格に覚えたもので、造作とは無関係だったはずだ。実際、一緒に
居る相手の顔が美しい部類に属す事を、振動はそれまで意識してもいなかった。

でも今この瞬間、たしかにそう思ってしまったのだ。こんな事は数年以上も
無かった事、だが。
待てよ振動、相手は男だ。しかも自分より年長の、国立大学の教授殿じゃないか。
796振動×剤然(530 -12'):04/06/03 01:41 ID:BXoYtbAJ
この訳の分からない感覚を振り払おうと、振動はぎこちなく会話をひねり出す。
「軽いものに変えられたら如何です?」
カウンターの奥の壁をじっと見つめていた暗い瞳が振り返る直前、振動は
手の中のグラスに自分の視線を逃がした。
「それでは本数が増えるだけなのではないでしょうか」
「……よく有る話だ」
しかつめらしい返答に、下を向いたままやや無理矢理に笑って見せる。と、
剤然の目がその口元に留まるのを感じた。

+++
(すみません「改行が多すぎる」とはじかれてしまったので分けました)
797風と木の名無しさん:04/06/03 02:23 ID:3smAcz/t
振済キッ!(   )キタ(.  ゚)キタ!( ゚∀)キタ!!( ゚∀゚ )キタ!!!!!

今回も萌え萌えでした。
ぜひぜひ続きをお願いします。
遅くまで起きてて良かった・・・。
798風と木の名無しさん:04/06/03 02:28 ID:L0gyF7Hw
━━━━━(゚(゚∀(゚∀゚(☆∀☆)゚∀゚)∀゚)゚)━━━━━キタ!!

530さんいつもありがd。
二人の今後が激しく気になります。(*´Д`)
799風と木の名無しさん:04/06/04 11:36 ID:9L0u/8RD
>>494
遅レスだが、天井のボ雅たん最高でした
雅受けなもんで幸福絶頂でした
読めるとは思わなかったよハアハア( *´Д`)ハァハァ
800風と木の名無しさん:04/06/05 00:46 ID:89GVyl8s
530さん、GJGJ(*´Д`)ツヅキタノシミニシテマツ
801風と木の名無しさん:04/06/05 04:00 ID:TljL8ta6
容量が490越えてるんで、そろそろ次スレだね。
立てられないんで1のテンプレ修正版置いてきます。
>2-6は変更無しで良いのかな?

モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
なにしろモララーのコレクションなので何でもありに決まっています。


   |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   すごいのが入ったんだけど‥‥みる?
   |[][][]__\______  ___________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |      |/
    |[][][][][][][]//||  |  ∧_∧
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ( ・∀・ ) _
   |[][][][][][][][]_|| / (    つ| |
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    | | |  ̄
                    (__)_)


前スレ モララーのビデオ棚 in 801板2
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/801/1074431600/
ローカルルールの説明、およびテンプレは>>2-6のあたり

保管サイト(お絵描き掲示板・ぅpろだ有)
http://fire.prohosting.com/moravide/
802風と木の名無しさん:04/06/05 09:00 ID:2WbU+HEw
>791ナカーマ

も・・・漏れも秋萌えの予感・・・!
あんまり興味なかった中の人まで気になり始めたよハァハァ
803風と木の名無しさん:04/06/05 13:52 ID:OpyEYZDG
>>801オメ!
やってみたけど無理だったよ…(´・ω・`)
誰かよろしくお願いします。
804風と木の名無しさん:04/06/05 13:56 ID:Gldleadd
じゃあ僭越ながら私がやってみます
できるかなー
805風と木の名無しさん:04/06/05 14:05 ID:Gldleadd
立ちましたよん。何かミスがあったらゴメソ

モララーのビデオ棚in801板3
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/801/1086411533/
806風と木の名無しさん:04/06/05 18:39 ID:/lmg664T
てst
807風と木の名無しさん:04/06/05 19:08 ID:vL8hh8Uu
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ コノテープハオシマイット・・・
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
808モモ ◆sWeIv7tfds :04/06/12 19:44 ID:k2xstGBq
ok?
809モモ ◆sWeIv7tfds :04/06/12 19:45 ID:k2xstGBq
ok?
810モモ ◆sWeIv7tfds :04/06/12 19:46 ID:k2xstGBq
ok?
811風と木の名無しさん:04/06/17 20:34 ID:azJQts5T
ホシュ
812風と木の名無しさん:04/06/19 19:31 ID:Wkny0tvL
|∀‘) オドロット。
|⊂          
        ♪         
         ヽ ( ‘∀‘)ノ   ♪         ♪
  アメアメフレフレ  (  へ)          ♪
             く          
                       ♪            ♪ 
          ♪                  ♪
               ヽ (‘∀‘ )ノ   ♪
    カアサンガー!       (  へ)     
♪                  く     ♪ ジャノメデオムカエ   

     ♪    ♪                   
         ヽ ( ‘∀‘)ノ   ♪
    ウレシイナー! (  へ)          ♪
             く             ピッチピチチャプチャプ
          ♪                  ♪
               ヽ (‘∀‘ )ノ ♪
                 (  へ)     ランランラン! ♪
♪      ♪          く     ♪
813風と木の名無しさん:04/06/20 13:53 ID:9LhkshOU
(・∀・)ミタヨー♪
814風と木の名無しさん:04/06/25 00:07 ID:pmoVpmpW
保守。
815風と木の名無しさん:04/06/27 16:02 ID:mKQ1rEBU
素朴な疑問なのだけど、新スレ立ってるのに保守する必要あるの?
816風と木の名無しさん:04/06/27 20:20 ID:4ExmeOyt
>>815
でも保守やんなくても圧縮来るまで落ちないからねぇ。
むしろ書き込みをするほうが落ちる手助けになるわけで。

……どうでもいいんじゃないかな( ´∀`)?
817風と木の名無しさん:04/06/27 21:17 ID:DMrCoPV4
現在の容量、496KB。
容量オーバーで落とした方が良いんだろうか。
818風と木の名無しさん:04/06/30 20:08 ID:PTkGbnOQ
よく判らないけど、埋め立てするなら埋め草に。

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  映画の「×メソ」ネタらしいモナ‥‥。
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  DVD持ってないので間違ってるかも。
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
819マグ×茶:04/06/30 20:11 ID:PTkGbnOQ

 チェス盤を前に向かい合う。透明な強化プラスチックの監獄の中は隅々までが無機質な
白い明かりで照らし出されている。
 本来ならば心を読むことのできる相手と行うチェスなど無謀の一言に尽きるだろう。
 目の前にいる男の誠意をもってしか、このゲームは成立しない。
「読み違えたな。ここでキングを逃がしたのは良かったが、こちらにまだルークが残って
いたのを忘れていたのか?」
 年を経た、白く節ばった指がクリスタルの駒を敵陣へ動かす。
 相手側から軽く息を飲む気配がした。どうやら真実、手を読み損ねていたらしい。この
相手にしては珍しいことだ。
「……クイーンの動きを警戒しすぎたようだ」
「脅懦はときに人の判断を狂わせる。今回は失敗だったな」
 透明なプラスチックの監獄の中で二人はチェスを続けている。優勢なのは心を読むこと
のできる男の側ではなく、ただ一人この特別な監獄へ囚われている男――石慈界の帝王
マグ二一ト一ことヱリック・マグナス・レーンシャーの方だった。
820風と木の名無しさん

 真剣な眼差しでクリスタルのチェス盤を見詰め、次の手を考える相手はチャ一ノレズ・
フランシス・ヱグゼビア、「恵まれし子らの学園」の創設者にして「×―MEN」を率い、
プ口フェッサー×と呼ばれる男である。
 溜息をついたチャ一ノレズは視線をチェス盤から外さないまま、軽く肩を竦めてみせた。
「手厳しいな。私が隙を作るときを待ち構えて容赦なく攻めてくるのはチェス盤の上だけ
にしてくれないか?」
 生真面目な顔を僅かにしかめながらも視線は次の手を探している。否、実際には幾通り
もの定石をさらい、敵を降伏させる最良の手を選んでいるのだろう。
 無論マグ二一ト一の側もそれは読んでいる。どんな手が来ようとも対応できる自信はあった。
 相手の目が盤の上を、駒の上を行く度次に彼が打つだろう位置を探る。
 チャ一ノレズの側でもそれは感じ取れたのだろう、しばらく熟考した上でついに天を仰いだ。
「……どうも分が悪そうだ。今日はここまでにしていいだろうか?」
 今日のゲームにしても前回の面会からの続きだった。始まるときにはマグ二一ト一がやや
劣勢だったのだが。
「構わん。だが、あまり頻繁にここへ面会に来ると厄介な連中に目をつけられるぞ」
「忠告は拝聴しておこう。だが、私は君が言うほどに心配はしていないのだよ」