月刊午後連載の野球漫画SSです。
ぬるくてすいません。あと、キャラ名の漢字を実際のものとすこしいじってます。
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| | |> PLAY | | ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
| | | | ピッ (・∀・ ) 健全モノダシ
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「あ。やられた」
がさごそとベッドの下を漁っていた安倍は、そこに何もないことに気づいて舌打ちをした。
ベッドの下に置いておいた青少年本は、どうやらこの間遊びに来た4番打者に
さらわれてしまったらしい。
「読みたい本もってけとは言ったけどな…。限度ってもんを知れよあいつも」
所有者に遠慮して少しばかり残しておく心遣いってものは……ないに決まってるな。
天真爛漫が身上の4番打者は、笑顔で清々しく雑誌を返してくるに決まっている。
どうしても!というほどでもなく、しとこっかなぁ?程度のテンションでティッシュを用意
したところだったので、今日は止めようかなぁと思う。
ネタがないのに、ただしごいても盛り上がりというか爽快感に欠けるような気もした。
ティッシュを戻す気にもならず、安倍はベッドに寝転がった。薄汚れた木張りの天井
を見ていると、こないだまでの合宿を思い出して仕方がない。布団にぎゅうぎゅう詰めになって、
マニアックな下の話題を話し続けた。
『俺、本よりも実物! 同じクラスの可愛いA子ちゃんとかさ。
夢の中でだけど大好きとか言われてそのまま……』
『えろー。なまじ本人知ってると困んねえか?その点俺はな、
理想のさ!ぼ!きゅ!ばぁん!を想像しながらやるわけよ!』
そんなことを言っていたのは誰だったか、なんてことは覚えていない。
だがその言葉自体は、不思議に心の隙間に残っていた。
グラビアの女じゃなくて、自分理想のぼ!きゅ!ばん!
いったい、どんな女性像になるのか。
女性というからには、やわらくて、暖かいものだろう。
たとえば。
合宿の夜にモモカンに捕まれた手の温もりを思い出した。
いや、違う。いくら、やわらかくて暖かかった上に巨乳とはいえ、
甘夏を素手で握りつぶす女は遠慮したい。
次に思い浮かんだのはマネージャーだったが、あいにくと安倍は彼女の手なんか
触ったこともないし、それほど好意を抱いているわけでもないのに、こんな妄想に
つきあわせるのも失礼だと思って却下した。
理想の女を想像していたはずなのに、いつの間にか周りの女性の品定めになってしまっている。
「気を取り直して、と」
今度はボディラインから想像してみるかと、腕を上げて架空のシルエットをなぞり出す。
ぼん、な胸からきゅっとしまるあたりで手がふと止まった。
こんなんじゃ抜けない。
自分に想像力がないからか刺激が絶対的に足りない。
この方式にも相容れそうにないということだ。
ため息をついて、安倍は上体を起こしてベッド端に座った。
さっさと本の返却を催促して。ほかにすることは何があったか。
三橋が朝練に付き合えと言ってきてたから、明日は早起きする必要があるな。
そういえば、三橋の手も握ったということを思い出した。ごつごつしてて、
冷えてて、モモカンの手とは全然違っていた。練習狂いの生活を続けた三橋の手は、
同年代の誰にも似ていなかった。
がんばったのだと分かる、好ましい投手の手だった。
『俺も、安倍くんのことスキ!』
ついでに言われた言葉を思い出し、柄にもなく赤面をしてしまった。
あの発言は友情で、直球三ツ橋だから何も考えずに言ったに違いがない。
やばい。
あの時の手を。眼を。思い出したのと同時に、正直なほどに下半身に血がたぎってくるのが分かる。
三ツ橋が理想のぼ!きゅ!ばん!なはずがない。あいつは男だ。バッテリーだ。うちのエースだ。
理性で必死に押さえるが、結局負けてテッシュに手を伸ばすことになってしまった。
脳裏に、先ほどの台詞がよみがえる。
『えろー。なまじ本人知ってると困んねえか?』
困る。困るに決まってる。明日、どんな顔で部活に行けばいいってんだろうか。