今コピーしてあるものをペーストするスレその8

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960風と木の名無しさん
「僕は祥のセリヌンティウスにはなれるけれど、恋人にはなれないよ」
ぼそっと君が呟く。
セリヌンティウスってなんだっけと思いながら…僕はずっと君の髪を撫でていた。
ああ、太宰治だ。
メロスの帰りを信じて死を決意して捕縛された親友の名が、確かそんな名前だった…と、気が付くのにしばらくかかった。
君は「親友」の僕のためなら命も惜しまないけれど
僕の「恋人」には絶対になってくれないということか。
「…つまり、俺に抱かれるのは死ぬより嫌ってことか?…」
君はふるふると首を横に振ったが…僕にはそういわれたも同然だ。
961風と木の名無しさん:04/01/06 23:51 ID:YnHyV1gL
…僕が女の子だったらよかったのかな…
君がぽつりと言った。
それはずっと昔から僕も考えていたことだ。
もし君が女性だったら、僕はきっと君に求婚していただろう。
一生君ひとりを守って、君のために生きることができるのに、と。
でも、男女でありさえすればすべての恋が実るとは限らない。
君が女性に生まれてくれたとしても、それですべてが解決するわけではない。
もし君が女性で医学の道を選ばなかったとしても、大病院の跡継ぎであることに代わりは無い。
サラリーマンの息子の僕が無事医者になり、君に求婚したとして…すんなりと受け入れられる保証など無い。
たとえ君のお父さんに殴られようと蹴られようと、どんな無理難題を吹っかけられようと、君を許してもらえるのならどんなことにでも耐えるつもりではあるけれど。
それに…もし僕達が男同士でなかったら、僕達のこの10年の長きにわたる深い付き合いはありえなかった。
これほど狂おしく恋うほどに、僕が君を知ることは無かっただろうし。
女性として生まれた君が、今までみたいに僕に関心を持ってくれたとは限らない。
僕達の人生は交わることなく、交わったとしてもこれほど濃密なものではなかっただろう。
お互いの知らないところで、誰か別の相手とささやかな幸せを築いていたかもしれないんだ。
僕達は男同士に生まれたからこそこうして出会い
男同士に生まれたからこそこうして結ばれ得ない。
壁や床に触れている背中や下肢から、しんと寒さが染みとおった。

(from ○ン○ン○ッ○ス)