そんな事よりちょいと聞いてくれよ。
このあいだ、受の家行ったんです。受の家。
そしたらなんか蔦がめちゃくちゃいっぱい絡まってて入れないんです。
で、よく見たらなんかコウモリとか下がってて、ケケケケ、とか鳴いてるんです。
もうね、何だと。恐ろしすぎるよと。どこのファンタジーだよこの悪魔。
あのな、俺が来るって判ってんのに眠り姫の城みたいにしてんじゃねーよ、受。
コウモリだよ、コウモリ。
なんか狼とか黒猫とかもいるし。つまりオマエが眠り姫ですかと。当たり前だな。
門に俺の名前書いたハンカチなんか結んじゃってんの。もう嬉しくて見てらんない。
恐ろしげなペットども、受の生写真と汗拭きタオルやるからその道通せと。
眠り姫な受の城ってのはな、もっと陰鬱でありながらも甘々としてるべきなんだよ。
ベッドの向かいに座った受といつ砂吐きそうなエチーが始まってもおかしくない、
刺すかしゃぶるかいじくるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。俺以外は、すっこんでろ。
で、やっと通れたかと思ったら、いつの間にか目を覚ました受が、オウ、よく来たな、とか言ってるんです。
そこでまたしおしおですよ。
あのな、よく来たなじゃねーんだよ。可愛いが。
ほんの少し嬉しげな顔して何が、よく来たな、だ。
お前は本当に俺に来てほしかったのかとキスしながら問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。
お前、俺によく来たなって言ってみたかっただけちゃうんかと。
いつも俺の家だったから、自宅に呼びつけたくなったのとちゃうんかと。
オマエの行動が全て読めている俺から言わせてもらえば今、オマエの中での最高の欲求はやっぱり、
主人と奴隷プレイ、これだね。
眠り姫さながらに呼びつけておいて、オマエが主人役。そういうヒネた思考回路。
奴隷ってのはオマエの言うことを忠実に聞く。そん代わりごくごくたまに下克上。これ。
で、それなのにニヤリと笑って余裕なオマエ。オマエ最強。
しかしこれをすると次から俺が一生ヘタレ攻の域から脱出できないという
危険も伴う、諸刃の剣。何されても受に惚れまくってる、俺みたいな奴以外にはお薦め出来ない。
まあ俺は、結局オマエの命令形の言葉全てが愛しいってこった。