扉を叩くドアの音。
40過ぎ程の男が送られて来た書留郵便を片手に
相手の返答も聞かず中へ入る。
「お前かい?何じゃ?」
「こんな物が匿名で裏の宛ても書かず、送られて来ました」
「どれ?貸しなさい」
「御読みに成られるので?」
「悪い事も読む事をせんと、為には成らんそ。れが例え、悪戯じゃったとしてもじゃ」
暇だしの。そう言って隊長が送った封筒の中身を空ける。暫らくは驚いていたが、
内容で『謎の誰か』は会長は察したようだ。こんな事を親切に教えてくれるのは
きっと『あの子達じゃろう』爺さんは悟った。伊達に歳は喰っていない。
坊は今、入院しておるからあの時隣に居た、聡明そうなあの別嬪さんかの?
儂にとっては多少、残酷だが・・しかし危ない橋を渡ってなさるのか、中々面白い事を考える。
さて、儂はどちらを取るとするかの。餓鬼道に陥った奴の儂の最後の手向けは、後か先か。
「・・諸行無常じゃ・・・」
「会長?」失うのは何時まで経っても儚いのぅ。会長は、送られた隊長の資料にそう呟き、溜息を吐いていた。
一段落した隊長は、小田原の病院に戻った。
トオルに今のところの経緯と今後の予定を話す。
「つー訳で訴訟取り下げはほぼ確実で、俺の仕事は一応終わった。
だが、これでSDが素直に引き下がるとは思えねぇ。M社の話はこのまま強行すんだろ。
爺さんにはM社清算の件は連絡しといたから、金策だの自分のとこの手形買い上げだのしてくれる筈だ。
連鎖倒産するかどうかは、申し訳無いが爺さんの手腕にかかってるんだが・・・。
夜勤の話じゃ奴の最終目的は、俺とお前の組織への取り込みなんで、
お前の会社からは一旦手を引くかもしれんが、まぁ多分また何かふっかけてくるだろう。
だから例の町内会会長を炊きつけて、ほとぼりが冷めた頃刑事告訴させてやろうかなーと。
んで、奴の収賄の噂は
>>784で掴んでるんだが、証拠が足んなくてな。手詰まり中。」
詳細な報告をじっと聞いていたトオルは、すまなそうに言った。
「悪いなぁ。切込・・・。」
「悪いと思ってんならとっとと退院してお前も働け。」
その時、開いたドアから馬並が顔を覗かせた。
「ハァ〜イお元気?」
「何だお前、退院したのか?」
「そうなのヨ〜。まだギプスはついてるんだケドもうすっかり良くなってるし。」
「トオルたんだって、もうすぐ退院できるでつよ。もうご飯も食べれるし、点滴しかしてないでつ。」
「トオルちゃんが退院したらお祝いパーティーしなきゃネ!
それで、これから夜勤ちゃんとこ顔出すつもりなんだケド、何か伝言あるかしら?」
「・・・夜勤のそばに2人、謎のお庭番がいるから、奴らに挨拶しといてくれ。」
「??いいケド・・・壁の幽霊さんとは違うのかしら?」
「そうだよ。で、増えたもう一匹が私念で離れないらしくて、夜勤相当、困ってるぜ」
それが原因で、見舞いに来れない事を夜勤は気に病んで居たと、隊長が
馬並に教えると、『何だと!!夜勤ちゃんは私しか倒しちゃイケナイのよおおおお!!』
新参者なんて、玩具にしてやんだから!!冗談じゃない!と言って夜勤の病院へすっdで行った。
ギブスはしている筈なのに、普段と同じ騒がしさに、残された三人は爆笑の渦に飲み込まれている。
特に隊長は、病院へ来た事でかなり癒されていた。
腹が痛く成る程笑う事、隊長にはどれ程振りだっただろうか。乃木公園に居た時の
帰り道で感じた、トオルとの隔たれた距離は今はもう、一切感じ無い。だから笑顔で笑える。
昼間腕に抱き上げた、野良猫にも居場所は在った様に、二人の在る場所が矢張り自分の居場所なのだ。
だから隊長は改めて、『守りたい』と思っていた。
笑っている二人揃った笑顔を見るのは本当に久し振りで、ベットから起きているトオルは
不意に二人を抱き寄せ、二人に向かって心が思うまま『愛しているよ』と告げていた。
そして、その頃
『SD様 切込氏が』
『分かって居る。メールに送信完了と届いていたよ』
『氏の報酬の方はどの様に?』『何れは下る部下に、報酬は必要かね?』下がれ
部下を下げたSDは、隊長へは報酬を払う気は毛頭無い様だった。それを隊長が判断した時
この事も計算に入れた隊長の報復の恐ろしさを、SDは一切思考せず、寧ろ侮っていた。
小田原から戻った馬並へ夜勤が目で、『この子何とかして〜』 と馬並に訴えていた。
馬並が夜勤を見やりそして、妖しく微笑む。 困った夜勤ちゃん少し可愛い。分かったよ。
「何だ!!お前は!!」「私はね、夜勤ちゃんの・・・」
その無言の微笑に、元リーダーが固まる所か、夜勤も一瞬、凍り付いていた。
キモイが、何故か魅力は有る。おかま姐さん独特のあの 惹き込まれる、妖しさが。
リーダが馬並へ、夜勤のなんなんだ。。。なんなんだと、ひるんでいる。
「お友達 兼、 互いに、勝負仇よね?夜勤ちゃん」 この言葉に夜勤は安心したのか、笑顔で、馬並へ返答をした。
「はい。 私にとって とても・・大切な ねっ 」
しかし馴れ合う二人を目の前に、リーダーは不服の様だ。勝負は俺とするんだ!と言って聞かない。
「仕方の無い坊やだね〜 アンタ そんなに勝負挑みたいなら、大会で勝負なさい。でなきゃ
この人はね、普段場違いに挑まれる勝負は、絶対、やら無いの!」 「馬並だって、そうじゃないですか・・」
「で・・出ればちゃんと 勝負するのか?」
「まあ。あそこでタバスコなんて、使えませんから。。。ねえ」 それまで私の所に居座るつもりかしら・・(大汗)嫌だな〜
「夜勤ちゃん 言っておくけど、強いよ。出るんなら私の道場貸してあげるから、アンタはそこで、寝泊りしな」
「夜勤ちゃんが、逃げないって分かれば良いんでしょ?」 「良いのか!だったら俺はやる!お前に連れて行かれてやる!」
居座られ、夜勤の疲労が限界に近しいのを、隊長の話と、最近の夜勤の行動で馬並は悟り、
自分が預かると遠巻きに夜勤へ、助け舟を出した。夜勤が嬉しそうに馬並をとても拝んでいる。
≪馬並ちゃん お礼は、コルドンブルー カルヴァドス バランタイン30 三本タダです 感謝 感謝 ≫
数日後、東京地裁に出向いた隊長は、例のマンション訴訟が取り下げられた事を知った。
だが、SD側からはあれ以来一向に連絡が無い。
(俺が自分でこうやって見に来なきゃ、ばっくれたまま次の要求するつもりだったんだろうな。
さて、町内会使って次の勝負は半年後くらいか。それまでくだらねぇ事されなきゃいいんだが。)
考え事をしながら日比谷公園で煙草を吸っていた隊長の携帯が鳴る。
「もしもし?」「隊長でつか?トオルたんが大変でつよ!」
「どうしたっ?!何があった?!!!」「急いで車で病院来てくださいでつ!」
「だから何があっ」
Tu-Tu-・・・。質問にひろゆきが答える前に電話が切れた。
とめどもなく嫌な予想がうずまき、霞ヶ関の駅に向かって全力で走り出す。
今日ほど千代田線がのろいと感じた事は無い。赤坂で電車を飛び降りるとさらに走って自宅に帰り、
もの凄い勢いでトオルの車に飛び乗ると、そのままアクセルを踏み込んだ。
そして、転がるように小田原の病院に駆け込んだ隊長が見たものは・・・
私服に着替え、ひろゆきの退院手続きを待ちながら病院のロビーに立っている
自分とほとんど同じ身長で、でも自分より何倍もがっしりした体格の・・・大切な人の姿だった。
SDや、夜勤達が各々の場所で各自、自分の周りと対峙しているその頃
一週間後の退院予想より早く、トオルの正式な退院が、明後日と決まった。
医師が去ると、先程トオルが抱き付いて来た代わり、大はしゃぎで、今度はトオルへ二人が抱き付き返していた。
「明後日か!!トオル〜〜〜おめ!!俺 一段落したから居てやれる!」
「帰れるでつ〜〜〜〜 トオルた〜〜ん」
「うん。うん。切込 俺の性で ずっと一人にさせて 御免な ひろゆきも、俺の為にずっと御免」
「おいらも 全然帰らなかった・・でつ・・御免なさいでつ 隊長〜 トオルたんはおいらには、謝らなくて良いんでつよ」
「広かった部屋が又狭くなる・・か、謝るならもっと早くに帰って来やがれ、、お前達 待ってたぜ」
「切込〜」「隊長〜」トオルとひろゆきが、隊長を、とても愛し気に抱き締める。
抱き締められている隊長は、照れながら『お前ら 懐くんじゃ無ぇ!!』
と悪態を吐くその口とは対照に、隊長の表情は穏やかな、本当にとても幸せそうな 表情だった。
リロードしていなかったでつ・・大汗・・このまま退院で・・・おながいしまつ〜〜
(´-`).。oO(んじゃ<<870-871は脳内あぼーんということで。乙でし)
隊長は黙ったままその場に立ち尽くしていた。待ち遠しかったこの日を迎えた今
いざというと身体も言葉も自由にならない。
= 切込、騙す様な事して 御免 待ってたんだ =
優しい笑顔を向け、トオルは隊長へそう、言っていた。
待って居たのは隊長。本気で心配したんだと達の悪い冗談を
罵倒し、トオルに侘びさせなければ成らないのは隊長。
なのに、トオルは隊長に笑顔を手向け、それを言う。
『トオル お前・・ずるい・・・俺はお前に何も言え無ぇじゃねえか!トオル!!』
隊長がトオルの懐へ抱き付いている。その傍には博之が、射した日を浴び、
トオルと隊長を、見守る様に立っている。
それぞれが、手へ戻したかった 瞳に在る 現実。
残りのSD銭から一時だけ切り離された様な この日は、
三人にとり、穏やかでいて、とても幸せな 一日だった。
874 :
風と木の名無しさん:03/02/03 02:35 ID:6XKZ7NCN
現在ひろゆきと夜勤がリアルタイムでバトル中。
875 :
風と木の名無しさん:03/02/03 03:10 ID:szID1ElY
夜勤「僕の肛門も閉鎖されそうです」
トオル達一行は
夜勤達へ会うのは後日で、そのまま隊長の部屋へ帰っていた。
一応思い当る場所を探し回るも、夜勤が捕まらなかったのだ・・・
馬並曰く、何処かに羽根を伸ばしに行ったとかで、馬並も携帯でしか手が空かなく、
仕方が無しに馬並伝で、トオルの退院報告のみと成った。
扉を閉めると隊長が、トオルとひろゆきに、途端に抱き付かれている。
一ヶ月近くそういう事と無縁に成っていた隊長は、二人の眼差しに耐え切れない様で
顔を染め瞼を硬く閉ざし あれだけ待ち望んでいた自らの欲望に初めて恐怖を抱いていた。
抱き付かれているだけなのに高鳴る鼓動。トオルの愛撫を想い出すだけで、
途端、火照り出す 自己制御の効かない、貪欲な躰。
何故今まで『壊して欲しい』とか『抱いくれ』を平気で言えたのか、
離されていた一ヶ月は、『好きだ』すら言えない恥ずかしさも、隊長へ与えていた。
それを解きほぐす様にトオルが、隊長へ甘く囁いていた。
『 切込 もう 怖く ないよ 』
「う・・うるさ・・玄関なんかで、懐くんじゃ無ぇよ・・・お前ら・・」
潤む瞳で睨んでも全く説得力が無い。
「だったら奥なら、良いでつか?」
ひろゆきまで、隊長を抱きたいつもりらしい。
「もう!煩せんだ!! 茶くらい煎れろ!!」
二人を振り切り靴を脱ぎ捨て、ドカドカ部屋へ篭ってしまう隊長。
残された二人はたじろぎもせず、トオルは頭を掻いて
「こりゃ 口説き落とすの梃子摺るな・・・」と言っている。
「意地っ張りなんでつから〜隊長は」ひろゆきも、苦笑している。
「仕方無い、御望み通り 御茶でも煎れますか・・」
どうでも良い事は分かって居るが、閉まる岩戸を開けるには、それしかもう、方法が無い。
珈琲で良いのか迷ったが、トオルの部屋ではそちらが良いと言っていたのでトオルは
珈琲を煎れ、岩戸と化した篭り部屋の戸を叩いていた。後に引けなく成った隊長が
暫らくして鍵だけ開けると、トオルは無遠慮に部屋へ入り込み 何も言わず
伐の悪そうな隊長へ、珈琲を差し出していた。隊長は、それを素直に受け取っている。
「冷めてんぞ」「お前が早く、開けないからだよ・・・ひろゆき呼ぶぞ?」
「!・・トオル 待っ・・」 「切・・込・・」
トオルがひろゆきを呼ぼうとした瞬間、服を掴み少しの間、止める様に隊長は自らトオルの唇を塞いでいた。
冷えかけた珈琲とカップが床に散らばって逝く。結構丈夫なものらしく、
カップはそのまま転がった。
今までの不安を、全てぶつける様に隊長はトオルにキスをしていた。
トオルも謝りたい事だらけなのに隊長にキスをされると
言葉がもう、何も出て来なかった。
そして、当たり前にしていたキスがこの時程、心掻き立つ事は、お互い無かった。
何かが起きた事で、その重さを知り、大切さを、二人は改めてそれを思い知った。
トオルを抱き締める隊長の指先が震えている。
トオルもそれは同じで、今更でも、初めて隊長を腕へ抱き締めた時以上に
トオルは、とても大切な程優しく隊長を腕へ抱き、隊長の唇に力強く呼応していた。
「おいらがずっと病院でトオルたん独り占めしちゃったから、
隊長 今度は隊長にトオルたん 少し返すでつ 2人とも 愛してるでつよ」
トオルの煎れてくれた激甘カフェオーレを飲みながら、ひろゆきは幸せ気分でピーターちゃん相手に
リビングにて、一人そんな事を呟いていた。 後で2人に 抱いて貰おうと、思いながら。
トオルに優しくうながされ、ベッドに座る隊長。すぐ隣に座るトオル。
お互いがもどかしげに再度唇を求め、そのまま柔らかいベッドに沈む。
長い長いキスの間に、隊長の鼓動はこれ以上ないくらい速く、
そしてうまい棒も熱く固くなっていたが、トオルは唇への愛撫をやめようとしない。
あがらう隊長の腕を、病み上がりの身体とは思えない力で組み伏せるトオル。
またこの前みたいに、苦しいほど焦らされるのだろうか?
そう考えれば考えるほどに、かえって隊長の身体は燃え上がり、顔は羞恥にゆがむ。
そんな隊長の唇と透明な液体をつながらせたままのトオルの唇が、深いキスと言葉をかわるがわる繰り返す。
「切込・・・好きだよ・・・好きだ・・・大好きだ・・・愛してる・・・」
しばらくぶりのたまらない快感と、しばらくぶりだからこそ素直に求められないもどかしさで、
隊長は頭がおかしくなりそうで、ぎゅっと目を閉じ、身体をこわばらせていた。
目を硬く閉じ、体を強張らせ 怯える隊長にトオルは切なさを感じていた。
今まで抱いた中で今日程トオルの目に儚く映る隊長は無かった。
意地悪しても、奔放なまでにトオルを受け入れる隊長しかトオルは知らない。
「切込 俺の事 怖い ?」
トオルが切ない声で、隊長へ訊ねていた。隊長は途端、緊張が解け、トオルへ違う!
と強く否定していた。そして、理性を振り切れずに居るのが嫌だと トオルへ告げ。
それを聞かされたトオルは、何時もの様に全てを自分にさらけ出して欲しいと願った。
そして、一番躰が素直な、隊長のうまい棒を口へ含め、舌で、先端を玩び、絡め
優しく愛撫し、隊長の躰の奥に繋がれた、貪欲なその本能を、呼び醒まそうとしていた。
「んん・・っつ!トオル!!ああっ・・・ハア・うっ・トオル!! トオルーー!ハア あっ!」
「切込・・何も考えられない位・・俺だけ そうして 感じれば良いよ」
もう 何処へも行かない。誓う言葉を立てながらトオルは隊長を愛しく、愛撫し続けた。
久しぶりに隊長×ひろゆきが見たい・・・
隊長が、顔を埋めるトオルの頭に手を押し当て、
トオルにとても切ない表情を向けている。
このまま昇らせて解放してやろうと思ったが、トオルはしなかた。
「! トオル・・いっ・・」
高めて欲しいと言いたい隊長にトオルはそのまま
嫌だと逆手に取り、うまい棒から手を離し、
そこから上半身、首筋 隊長の耳元までを唇で辿り
焦らされ、睨む隊長の唇へ、トオルは自分の指を宛がった。
未然に終った箱根騒ぎの晩に見せたあの、隊長の恍惚な表情を。
トオルは、もう一度見たくなったのだ。
隊長は、躊躇した戸惑いを少し浮かべたが、求められる喜びは
愛を告げる言葉の何より相手を愛しくさせる。それが、指でさえ。
擬似愛撫を受け入れる隊長の顔から
トオルの見たいと思った表情が徐々に表れ出すと、隊長の擬似の愛撫は
その指から、何時しかトオルのうまい棒へと、真の愛撫に変わっていた。
「トオルたん…がんばってるでつね…」
カフェオレをすっかり飲み干したひろゆきがウサギのぬいぐるみ相手に
大人しくしている訳がない。耳を欹て、ドアを細め、中の様子を伺っていた。
最初は乱入するタイミングを図っての行為だったが、いつしか気分はすっかり
馬並になっていた。
「おいらはこっそり見てるでつよ〜
のぞきみもなかなかごきげんでつ くせになるでつ〜」うまい棒も元気になっていた。
トオルのうまい棒を丁寧に舌で指で絡め獲る隊長。
その度にトオルの頭を、擽ったく甘い感覚が伝っている。
「・・切・・込 ・・・」
「トオル・・・んっトオルウ・・・」
余に切ない声で隊長がずっと、掌に在るトオルを躰の中に欲しがっていた。
「もう欲しい?」
「もうじゃ・・な・・ずっと 欲しかっ・・んっうあ!トオル!ああっ」
トオルが隊長の*へうまい棒を挿れると、隊長から熱く濡れた声が
唇に溢れ出していた。お互い溶け合うほどの躰の熱さに、腕に在る本当の喜びを感じる。
そして、それを感じたいと想う、大切な人がこの2人には もう一人居る。
「トオル・・・ひろ・・ゆき・・呼んで・・・」
「良い・・のか・・」
「ドア・・開い・・てん・・フッ・・・あっ・・・あ”あ”あ」
「うん。ひろ ゆき・・入って・・おいで・・」
ドア越しで、2人をスクープしていた居たひろゆきが
瞳を潤ませ、申し訳無そうな表情で呼んだ2人に、素直に顔を覗かせていた。
「ば・・・ばれてたでつ・・・エヘヘ 隊長・・トオルたん・・・好きでつ おいらも 抱いて・・」
トオルたんには 隊長みたいに 愛して欲しい・・・
隊長には・・トオルたんに見せてる表情を おいらにも 見せて欲しいでつ・・・
ひろゆきはベッドに走り寄りながら、服を脱いでいく。
その間にもトオルに攻めたてられている隊長の喘ぎ声を塞ぐように、その唇を奪い、舌を絡ませるひろゆき。
隊長は自分の身体を襲うあまりの快感に気が狂いそうだった。
意識を飛ばしかけ、トオルを受け入れたまま白濁色の液体を溢れさせる。
それをひろゆきが丁寧に舌で絡め取る。
体勢を変えたひろゆきのうまい棒が、隊長の目の前にそそり立つ。
今逝ったばかりだというのに、貪欲にそれを口にふくませる隊長。
突然下半身を襲った快感に、ひろゆきはたまらずに切ない声をあげた。
そんな二人の醜態を見てますます興奮したトオルも、仰向けの隊長の足を自分の肩まで掲げ、
己のうまい棒でじっくりと隊長の身体を堪能している。
ひろゆきのうまい棒をふくんだ隊長の口から、自分の腰の動きに合わせて甘い吐息が漏れるのを聞く度に
トオルはたまらなくいとおしい気持ちになった。
そして三人とも久々の快楽に、夜がふけるまで、自我が吹き飛ぶほどに浸った。
今度はひろゆきが、トオルに抱かれている。
トオルはひろゆきには最初から一途に恋慕していたのが
尾を引き、何時も優しく壊さない様、とても大切に抱いてしまう。
今日はそれが嫌だと、隊長と同じ事をして 壊して欲しいと、トオルへ懇願していた。
トオルは躊躇したが、ひろゆきの瞳の奥の魔性には勝てず、トオルはそれを受け入れていた。
そして、隊長もひろゆきの乱れた表情に魅せられ、
昇らせない様駆け引きをしながら、トオルと二人、とても丁寧にひろゆきを愛撫していた。
それぞれの、違う快感がひろゆきを襲う。どちらが巧いとかではなく
対を張る情熱で、本気に成る二人にひろゆきが平気でいられる筈も無く、
ひろぽんの力を借りず、ひろゆきのままで、妖艶に変わり行くその様は
トオルと隊長の中にある、『幼い恋人』という概念を、全て打ち払うには、十分だった。
ひろゆきはもう、何をされているのかも判らない程 トオルと隊長の快楽だけを欲した。
焦らされ、煽られ 翻弄され 待ち侘びながら *へ 交互に挿れられる、トオルと隊長の うまい棒。
その二人の白濁液を躰に満たせ、ひろゆきは 恍惚な表情でトオルと隊長の腕に、崩れ堕ちた。
トオル達が淫靡な官能の世界に没頭している これはその、4時間前
夜勤は、羽根を伸ばしに 遠路遥々 胡瓜踊りを踊る為、北海道はすすき野歓楽街まで来ていた。
馬並の連絡を受け、雪祭りの準備が進められる大道理公園で、トオルの退院を知り、
大歓喜していると、また新な着信音が鳴った。
見た事の無い番号だったが、応対すると それは驚いた事に 逃亡中のitadakiからだった。
夜勤がitadakiへ、部下とリーダーの事を知らせるとitadakiは、気掛かりなのか、二人を、とても心配した様だった。
「本当は 君や 皆さんの前へ 行きたいのは山々だが・・・」
「御察しは致します しかし、切込隊長が仕事を終えても 状況は変わりません
だから貴方は姿を現さず、こうして 私に電話を下さった。 違いますか?」
「君は 相変わらず手厳しいが・・・そう・・だな・・」
「切込隊長は、火を消す事は出来ても 闇の黒い権力までは消せ無い 勿論、私も」
『それをする事が唯一出来るのは itadak 貴方だけ・・何の為の
規正法なんでしょう?地検や国税査察官って何でしたっけ?法自体 お飾りですか?』
夜勤は 辛くても 裏切るなら最後までSDを裏切れ。そう言っていた。
これに感化されたのか、itadakiは、押さえる全てのデーターを匿名で暴く事を夜勤へ告げ、電話を切った。
「政治家は 国民の為に有るんです その逆なんて、私は 真っ平御免」
「隊長」
「・・フウ・・グッ・・・・っんあ・・」
「切込・・・」
ひろゆきが、隊長の*へうまい棒を挿れている。
トオルは、うまい棒を隊長の口へ含ませ
掌に隊長のうまい棒を指で丁寧に絡めていた。
二日目の>92でひろゆきが隊長を抱くのは、未遂に終っている。
トオルしか知らない隊長は、うまい棒を含ませるトオルの瞳を見ながら
涙を流し、トオルに罪悪感を覚えていた『ひろゆきに抱かれ 浮気をしている』
そんな、抱えなくても良い罪悪感を。
しかし、 トオルもひろゆきも、そんな事は欠片にも、思っていない
隊長が満たされ、その取り乱した表情に、魅了させられてさえ居れば、
それだけで求められる事の 幸せ、嬉しさを トオルとひろゆきは十分、実感出来た。
「そんなに 悲しい 瞳 お前はしなくて 良いん・・だよ・・切込・・素直に 欲 し が れ 」
「隊長 もっと 感じて・・おいらを 強請・・って・・こんなに 熱いのに」
快楽に誘う男たちの呟きで、ようやく隊長の動揺が収まったかのように見えた。
隊長ははっきりと自分の気持ちを自覚したのだった。
― トオルを愛してる・・・ トオルにだけ愛されたい ― と。
この世で、唯ひとりに愛し愛されること。意外にも隊長は貞淑であった。
余に悲しい涙を流す隊長に、トオルも居を汲んだのか、
隊長の唇からうまい棒を抜き、ひろゆきを止めに入った。
本当に嫌なのだろう、隊長は解放された唇からは壊れた様に
トオルの名だけ小さく連呼し、助けてくれと咽び泣いていた。
ひろゆきはトオルの腕へ抱きすくめられ泣く隊長へ
何度も侘びを入れていた。
トオルも何度も隊長へ侘びを入れ、胸に振るえて縋るく隊長を
とても愛しく、そしてひろゆきに少しでも隊長を預けた事を心底、悔いながら、
隊長を宥め、トオルは力強く大切に、ずっと隊長をその胸に抱き締めていた。
「嫌だったんだ・・俺・・トオル・・ひ・・ろ・ゆ・き・・だけど・・ひろゆき 嫌いじゃ無・・愛して・・」
「隊長・・おいら・・おいら・・・隊長に酷い事・・そんなつもりじゃ・・無かったのに・・隊長」
「うん。 分かってる。 切込 もう、大丈夫だよ・・・二人とも御免 俺もちゃんと、お前たち 愛してる」
それでも、お互いがとても大切な想いは同じで、嫌いに成れる筈がない。
二人を腕に抱き締め、再びトオルは大切な何かを垣間見た。隊長もひろゆきも。
こうして切なく苦い、優しい夜は、やがて 眩しい朝へと変わり行くのだった。
キッチンで、カシャカシャ何かを泡立てる音がする。弐編だ
テーブルには、ナポレオンコニャック グレナデンシロップ
スポンジを作る、生地の材料等が置かれて有る。
イベント事の一切に幸薄い隊長達とは違い、弐編は
迫り来るあの、14日の為に本番の試作を作っていた。
勿論今はKittyは不在。居ない間に軽い試作を作り
これを今夜の、デザートに持ち込む気でいるのだ。
焼き上がるスポンジが、辺りに甘い芳香を漂わせている。
暫らくして生地が冷めると弐編は生地に、惜し気無くコニャックを
びっしょり浸らせ、片方の生地にはグレナデンを軽く塗り、
泡だて器で混ぜたチョコを間に挟み、何層か積み重ね
出来たお菓子に自称 『仏蘭西の誘惑』とか言う、とても
ヘボンな名前を付けていた。しかし弐編は、これを見詰めながら
孵って来た時のKittyを思い浮かべ、その表情はとても嬉しそうで、幸せそうだった。
そしてあれから3日経ち、
もう誰も愛せない位、トオルを愛し、惚れている事を己の中に
見出してしまった隊長は、それが、新たな悩みに成っていた。
ひろゆきに何処となく冷たい・・避けている様な隊長の様子が
心配で、トオルは寝かせていた三鼠を起す序にひろゆきには
内緒で暫らくの間、『仕事で、どちらも出張』 という大層な名目で
隊長を、トオルの部屋へ連れ出していた。そうしないと
隊長のPCではやる事が限られる、最大のネックも有るからだったが。
そして ひろゆきは、一人にさせていると危険なので、北海道から
孵って来た、夜勤の所へ遊びに行かせてある。
本当は察しているのか、ひろゆきが、ならばと、自ら言い出したからだ。
長い時間、部屋ではトオルと隊長の間に、かなりの重い沈黙が訪れていた。
しかし、それはトオルがPCの作業に入った事で、破られる事に成る。
頼んだよと態々PC相手にディスプレイにさり気無いキスをし、
悦に浸っているトオルは冷静に見ると間抜けだが、隊長には何処か格好良かった。
それを打ち消す様に、隊長が悪態を吐き始める。
「本当の馬鹿ちんかね?お前って野郎はよ!」
「酷いなあ・・もっと 今からする事に相応しく 危険な男と 呼んでくれ 切込さん ( ̄ー ̄)ニヤリッ 」
そういいながら傍らの隊長の軽く尻をはたいた。
途端に隊長はトオルを意識し、身体が強張る。
この反応が可愛くもあるのだが、今現在の二人の力関係はトオルに分が有り過ぎる。
「…隊長は変わったでつ…」
夜勤のところでゲームにも飽きたひろゆきは明後日の方向を向いたまま呟いた。
おやおや、と夜勤は思った。
「どうしたんです?藪から棒に」
先日の公園で猫相手に見せた隊長の表情や態度を思い浮かべ、
その時受けた印象から想像したことを夜勤は口にした。
ひろゆきは遠くをみつめるように更に言葉を重ねた。
「おいらじゃ、イヤだって…トオルたんみたいに 隊長を愛したいのに…」
「ひろゆきさん、何かあったんですか?」
ひろゆきは
>>890-892であった事を掻い摘んでぽつりと夜勤に話してみた。
そんなところでしたか、と夜勤は起こった事柄に深く納得し、
隊長の変貌は実のところあまり良い変化ではないことも察した。
「恋は盲目とは良く言ったものです。しかし隊長のは、慕う愛が盲目過ぎです
最も一ヶ月ひろゆきさん達と離れていて、リバウンドでトオルに甘えたい
というのが 有るのかも知れません。がっあの二人にどうやって目を覚まして頂くか」
夜勤は本当は、元から彫れた相手に、愛情が奥深いのはきっと、隊長だという事を知っていた。
その対象がコロコロ変わるだけで、しかしトオルが抱いた事でそれは打ち止まった。
与える側が与えられる方へ変わると同じ立場に有る、元は自分が惜しみ無く、与えていた
その人でさえ見え無くなるのは、受けた側の無意識の自然な防御なのだろう。しかし
抱いてしまうかも知れない危険の計算も入れずひろゆきを夜勤の所へ自ら行きたいと
言わせたあの二人に夜勤はとうとう、堪忍袋の尾が切れていた。
『ひろゆきさん 御嫌でしょが、貴方は私に抱かれた事にしません?』
「夜勤たん???何を言っているのでつのか!!」
「あの二人を試す良い機会です。それでひろゆきさんに対する本心が出てくる筈。特に隊長のね」
「夜勤たんもの凄く鬼でつ 良いでつ おいらやるでつ!」
「恋愛なんて、本当は泥沼で、逃げ場は何処にも無い事、あの二人に覚えて頂きましょ」
「おいらは隊長とトオルたん信じてる。逃げないでつ 何が有っても」
「ところで、」
はい、なんでつか?とひろゆきが首を傾げて返事した。
そのひろゆきのふっくらした頬に夜勤は利き手を添えて言葉を繋げた。
「あんまり 私を過信しないで下さいね。
いいですか?私はそんなに善人でもないのですよ。そのこと決して忘れないで下さいね」
手を添えたまま夜勤はにんまり微笑んだ。
ゆっくりと夜勤の顔が近ずく、動けないひろゆき、
唇が重なる、夜勤の舌が何かを探すように動く、その動きに
意識が遠くなりそうになる。
「や、、夜勤たん、、」
その声に反応するように、舌の動きが激しくなる。
>518のあの時思った感情が、
夜勤に対し蘇って来る。
嫌う所か夜勤のキスに安心してさえいる。
答えも夜勤は『お兄さん』な存在の筈なのに、ひろゆきは
そうでは無い様な気がして。唇を奪う夜勤へひろゆきが夜勤の首へ両腕を回し
自らも舌を絡め出した。夜勤は驚いた。抵抗しない上に腕を回しキスに応えてさえいる
本当は、キスだけして少し ひろゆきを困らせるつもりで居たが・・・
= もう、押さえられそうも無いや これ以上、善い人で いられない =
腕に崩れるひろゆきを前に夜勤は意を決したかの如くそのままベットで
ひろゆきを組み伏し そしてひろゆきを、とても熱く抱いていた。
ひろゆきの胸が期待に高鳴る。
殊の外、夜勤の手が、絡んだ舌が暖かかったからかもしれない。
このまま身を委ねてしまいそうだった。しかし…
「だ・だめ、だめでつ、夜勤たん。ふりだけ、ふりだけだって・・・逝ったでつ!!」
在るだけの力を込めて夜勤の上半身を押し戻した。ひろゆきは(;´Д`)ハアハアして少し涙目になっていた。
冷たい目をしていた夜勤がもとの柔和な表情に戻った。
ほんの数秒黙ったままひろゆきを見つめる。
「ほら、もう忘れたんですか?」
あの笑顔で、今度は親愛を込めてひろゆきを抱きすくめた。
背中に回された夜勤の手はやはり暖かい。やんわりと体温が伝わってくる。
それは心が冷たいからですよ、と答えられたような気がするひろゆきだった。
夜勤がとうとうブチ切れた事など、露ほど知らず、トオルは三鼠を起していた。隊長は傍らで固まりながら見ている。
只 これは、バックグラウンドのプロセスとして、リモートマシンで作動していることが必要な為
トオルはバックドアを開き、クライアントから送信される メッセージを待機。
その後リモートで指定した指示を実行し、バックドアが開かれると、トオルの遠隔操作が始まった。
解き放たれた、三鼠達は暴れ出すと、攻撃先のコンピューターの多くの
ファイアーウォールを、いとも容易く突破し、火達磨と成った鼠達は、
感染したコンピューターが貯めていた パスワード、あらゆる活動コピーを、
攻撃者のトオルへ電子メールの送信を可能にしていた。
その過程を見詰める トオルの眼差しは、隊長が今まで見て来た、どのトオルよりも
真剣で、頼もしかった。『馬鹿返上だぜ』 と隊長が、トオルに淡い思いを馳せていたその束の間、
「ファイアー突破すりゃ オッケーオッケー!!三つ子 ●● おめ〜〜!!」
三鼠をMッキーと言うトオルに隊長は やっぱ、バカチンだよ・・と 少しガッカリしていたのだが、
「防火壁って何だよ?」
俺らみたいなのを侵入防ぐ為のセキュだよ 外部ネットワークと接続したLANに
外部アクセス規制すんのに置くんだけど、鯖丸ごと壁になってセキュ担当したり
ルーターに障壁設置して、構築すんの。今まで これ突破する猛者は無かったんだ」
「そっか。トオル 有難う・・」
「お前に 何もしてやれて無いから 礼なんて良いよ ? 切込 ?どうした」
夜勤はひろゆきのうまい棒を愛撫する。
ひろゆきは隊長とトオルに罪悪感を感じながらも身をゆだねた。
夜勤のうまい棒も変化を見せていた。
「ひろゆきさん、少し力抜いてもらえますか」
夜勤の目は本気だ。トオルのそれとも、隊長のそれとも違う・・・
唯一人 自分だけを見詰め、手向けられる瞳。ひろゆきは、
弐編が何故帰らないか。ようやくその答えを、見い出していた。
隊長もそうなのだろう。そういう事には何故か疎いトオルだけが、気付かないだけで、
それを見付けた時トオルは、一体どちらを愛するのか・・・
だからひろゆきは、慣れない自分だけの瞳が怖かった。
夜勤は、自分で「私は冷たい」と言うが、ひろゆきは知っている。
その夜勤の冷たさが 本当は誰より、一番暖かい事を。
そう、思うと、ひろゆきの体から徐々に緊張が解けていた。
「夜勤・・た・・あっ・・夜・・き・・夜勤たぁん」
夜勤が甘えた様なひろゆきの自分を呼ぶ切ない声に
たまらない愛しさと、体の緩和を感じると、夜勤は今まで焦がれ止まずにいた、
ひろゆきへ、とても優しくそのうまい棒を、*に丁寧に挿れていた。
そしてその頃、トオルと一緒に三鼠を見ていた隊長は 暫らく沈黙の後
今のトオルに抱く 自分の正直な苦しい想いを、トオルへ、全て打ち明けていた。
隊長がひろゆきを避けるようになったのは、もちろん嫌いになったわけではない。
ひろゆきの前で醜態を曝したことが情けなくも恥ずかしかったからだ。
今まで好奇心や成り行きで己の*へ導いたこともあったが、あの夜、身体とは裏腹に
心がひろゆきを拒否してしまった。
与える事は出来ても、受け入れることが出来なかったヘタレな自分自身が信じられなかった。
みっともないくらい泣いて許しを乞い、開放されるまで慟哭した。
だが正直な話、ひろゆきが身体から離れた瞬間、気持ちが落ち着いてきたのだった。
そんな風に お前が俺を 変えてしまった
トオルに出会ってから 俺はどれだけ 泣いただろうか
吐き気がするほど トオル、お前を 愛している
心から絞り出された隊長の苦しい想いが切々と続く。トオルは黙って聞いていた。
「ひろゆきさん…」
久しぶりに心から満たされた気分で、ひろゆきは開放感を味わっていた。
夜勤はひろゆきの広い額にかかる髪をなでながら話し掛けてくる。
「どう抱いても傷つくのは分かっています。すみませんでしたね」
「…夜勤たん、そんな、おいら …(よかったでつ)」
「私は、ほんとうは、貴方を傷つけたくなかった」
夜勤はひろゆきの手を取ると、自分の口元に寄せ、そっと甲に口付けた。
それは信じていいのでつか?とのひろゆきの問いに、夜勤はにっこりと微笑む。
「さて、既成事実が、できちゃいましたね」
ひろゆきの瞳を見据えて、さらりと言う夜勤にひろゆきもなんだか笑ってしまった。
二人の笑い声が室内に響く。それも、とても、楽しそうに。
隊長が想いの丈をトオルへブチ撒け、それを聞いていたトオルは
隊長にそこまで惚れられて居た事に正直驚いていた。
いや、愛情が深いのは隊長だ。という事はトオルも判っているが。
「覚えているか?言ったよな・・お前 俺に」
『甘いな ひろゆきは 誰にも やらんよ って』
トオルのその言葉に隊長はハッ!としていた。
今のお前にそれが無い。そう言われた気がした。
トオルも出来るなら本当は誰か一人だけを愛してやりたいと想う
愛されたいとも。しかし、自分達には ひろゆきが居る。
ひろゆきが心から愛する本当の誰かを見付けなければ
それまでひろゆきを離す気等、どちらも毛頭無い。
トオルが隊長を腕に抱かず、逆に叱咤した事で
隊長の眼に、思い起した様な本来の強さが徐々に戻っていた。
隊長はトオルの目を見据えたまま、正面切って睨んできた。
その目つきは嫌な野郎だとトオルが初対面で受けた隊長そのものだった。
あのー、ちょっと…怖いんですけど、切り込みサン?
トオルは内心ガクガクブルブルであった。
「…あのなー、俺は、お前のこと受け入れたけどさ、
お前は、どうよ?」
いきなり隊長が切り込んできた。どうよと言われてもトオルはどうしようもできない。
隊長の切り込みは更に続く。遠慮もなしに。
「 お 前 は 『受』 で き ん の ? 」
「・・・考えた事もない。」
トオルは正直に答えた。
「考えてみたらどうよ?」
「・・・・・・。ゾッとする。」
「・・・そうか。」
「相手がお前やひろゆきだとしても想像するとダメだな。俺、根っから男なんだと思う。
何つーかこう、生理的にダメだ。萎える。つーかお前、俺を抱きたいのか?」
「いや、そういう訳じゃねえよ。」
隊長はひろゆきの事はもちろん大切に思っている。
傷つける者がいれば許さないつもりだし、願いは何でも叶えてあげたい。抱きたいとも思う。
だが、トオルの事となると話が別だった。
正直、ひろゆきがトオルのそばにいるとかなり嫉妬する。トオルを独占したい。
トオルがひろゆきも愛しているのを知っているだけに、トオルの口から「ひろゆき」の単語が出るのが辛い。
トオルの事が好きだと自覚してから、日に日に強くなる自分の中の独占欲と、
それによって『ひろゆきがこのまま夜勤のものになってしまえばいい』と思ってしまう事、
だから、抱きたくはないがトオルを抱けば、自分だけのものになるかも、と考えてしまった事、
一瞬でもそう思った自分に、隊長は驚きと戸惑いと、そして恐怖を隠せなかった。
(ヤバイよな・・・俺)
「俺も、『受』やんの、ヤなわけよ。
・・・お前だから やってんだ。判れよ。」
お前だからやってると、その行為が持つ意味を少しでも理解して欲しかった。
トオルが、俺もお前ならいいよ、と言葉だけでも同意してくれればよかった。
肩を寄せ、抱きしめてくれなくても、それだけで心強くなれたかもしれない。
なのに、目の前の朴念仁はそんな気持ちを汲んでくれそうもないと隊長は思った。
ため息をつきながら、小さな声で隊長は言った。
「いいんだ…どうせ人の気持ちなんていつか変わるんだ。
お前が永遠に俺を好きでいてくれるかなんて分からんしな…。期待した俺が馬鹿なんだろ。」
自虐的な台詞を聞いていたトオルが隊長の肩を掴む。隊長の瞳を覗き込むように、その透き通ったブラウンの瞳で見つめる。
「…永遠でなければ、許せない?」
隊長は瞳を反らすことができなかった。いつも魅せられるトオルの瞳。卑怯だと思う。
「人は変わる、確かに。だから永遠にお前が好きだなんて嘘は、俺は言わない。
だがな、今俺がお前が好きで、大切に思う気持ちは嘘じゃない。それも信じられないか?」
隊長は首をふった。
「いいか?お前は俺の好きな人である前に、相棒であり親友であり尊敬できる人間であるんだよ。
もし恋愛感情が無くなる事があっても、お前が俺にとって特別な存在である事は変わらない。
分かるか?切込は俺にとって、特別な存在なんだよ。」
隊長は目を閉じた。震えていた。
「…一番特別か?俺が一番か?トオル…」
隊長の本音を聞いたトオルが、苦しげな顔になる。困り果てたトオルの声に途端に我に返る。
「すまん…変な事言って。」
「いや、我慢するな。俺が悪い。」
『お前は悪くない。俺だって同じ事をしてたじゃないか。』
この言葉を隊長は言えなかった。言えない代わりに、肩を掴む手を振り切ってトオルの胸に抱きついた。
やきもきしている隊長だっが実はトオル嫌がりながらも思考はしていて
《切込があれだけひろゆきを嫌がった訳、受ければ少しは判るかしら・・・
前に ひろゆきなら 俺の可愛い菊門捧げ様じゃないかとも思ったし・・・》
と血迷ったのか、そんな事を想っていた。最もそれには、訳が有るのだが
その訳とは、隊長が偶にしてくれる擬似愛撫の時に伝うあの、甘い痺れが
堪らなく好きで、受けてみればその先はどうなのかとまあ、こうだ。
そして、一度隊長に「抱きたいのか?」と訊いてしまった手前も有り。
《否とは言ったが切込本当は俺抱きたいんだ・・きつい目が言ってる・・偶には良いかも》
『なら・・抱く?俺の事・・けど挿れて嫌だと思ったら止めてくれな。
お前がひろゆき避けた様に俺はお前絶対に・・避けたくないからそれだけ頼むっす ええ。』
(リロードしていなかった・・大汗911脳内アボーンお願いします。。)
「切込」
天秤に架けた時その天秤が見えるなら、今はどちらが重いだろう
見えても其れに架ける事事態が本当は許される事では無い。
最初にうまい棒が向いた時点ではっきりしてやれずここまで来てしまった事を
トオルは後悔していた。 諦めた恋をさせる為、隊長を愛した訳では無かったのに。
ひろゆきを最初に想わなければきっと、逢った初めが ひろゆきや、夜勤でも無く、
隊長だったなら出会う順番が違うだけで、今はどちらが一番かすら言ってやれずに居る。
だが、惹かれて止まない漆黒の闇の瞳。それを手向ける隊長を放って置けない。
『俺は切込を放って置けない!!』あの時にひろゆきへ吐いた言葉とトオルが今
想った言葉が重なっていた。忍が初めに暴れた時胸へ飛び込み、最初に泣いたのも
意外と隊長で、トオルの中にこれまで有った隊長の面影が堰を切り出すと、隊長に対する
愛情が一気に込上げていた。
『切込!!』
抱きしめてきた腕に力が込められるのが分かる。
汚れ切ってる自分を真摯に受け止めてくれるトオル。
そのお前のやさしさが今の俺には辛いんだ…と隊長の心に再び葛藤が湧く。
半端な同情しやがって・・・
二編やひろゆきに長いこと哀しい思いをさせた、自分への罰だな
隊長を抱きしめたままトオルがささやく。
「すまない」
謝るなよ、お前が謝れば謝るほど俺は苦しいんだよ。
一番愛する人の胸に抱かれているのに、隊長は胸を掻きむしられる思いだった。
その頃、夜勤のところに居たひろゆきも迷っていた。
隊長とトオルのところに帰れば、二人から大切にされるのは分かっている。
だが、夜勤との既成事実を伝えたらどうなるだろう。
トオルはともかく、隊長はもう自分を愛さないかもしれない。
それでもいい、と少しは思うが、でもあれだけ愛され愛した隊長が自分から離れていくのは
ひろゆきにとって恐怖でもあった。